2021年04月19日

●「ぜんぜん修正されないCOCOA」(第5473号)

 今日から「デジタル社会論」の後編に入りますが、最初のテー
マとして再び取り上げるのは、新型コロナウイルス接触確認アプ
リ「COCOA」の話題です。4月17日(土)の各紙に厚労省
から同アプリの不具合報告書が提出されたからです。日本経済新
聞と朝日新聞は、次のタイトルで取り上げています。
─────────────────────────────
 ◎COCOA無責任の連鎖/行政DXへ重い教訓
  多重委託/厚労省に専門知識なく
         ──2021年4月17日付、日本経済新聞
 ◎COCOA不具合放置
  国と企業無責任連鎖/厚労省検証
           ──2021年4月17日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 このCOCOAトラブルは、日本の役所がいかにICTに弱い
かを露呈しており、世界から見ても実にみっともない話です。実
は、英国は、日本から3ヵ月遅れて同種のアプリを導入していま
すが、アプリのダウンロード数は、この2月に2100万件を超
え、人口の3分の1に達しています。これについて、英国政府と
信頼ある機関は次のように公表しています。
─────────────────────────────
 2月9日には、アラン・チューリング研究所とオックスフォー
ド大学が「(このアプリで)60万件の感染を予防できた可能性
がある」との検証結果を政府と公表しています。
 日本は、こうした検証の入り口にすら立てていない。アプリの
ダウンロード数は3月末で人口のほぼ4分の1の2653万件。
肝心の陽性登録数は、1万2千件にとどまる。信頼の失墜も大き
い。       ──2021年4月17日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 ところで、COCOAはどのようなアプリなのでしょうか。復
習しておくことにします。
 COCOAは、ブルートゥースのクラス3を利用しているので
COCOAをインストールしているスマホ同士が、1メートルの
範囲内に入り、15分以上そのままだと、スマホ同士で「接触符
号」を交換し、それぞれのスマホに保存します。
 さて、COCOAをインストールしているユーザーの誰かが、
PCR検査を受けて陽性が判明したとします。この場合、そのユ
ーザーは、あくまで自分の意思で、アプリに登録することになり
ますが、そのさい保健所から発行される「通知番号」をアプリに
入力することになっています。
 「通知番号」が入力されると、アプリは、感染していた可能性
のある期間の「日次鍵」と時間情報をまとめた「診断鍵」と呼ば
れる情報を通知サーバ−に送ります。通知サーバーは、受け取っ
た「診断鍵」をCOCOAをインストールしている全ユーザーに
送信します。
 スマホ側では、「診断鍵」に含まれる情報から、陽性者の「接
触符号」を生成し、過去に交換して、スマホに保存中の「接触符
号」と比較し、一致するものがあると、感染の可能性があるので
ユーザーに通知するという仕組みです。ロジックは実によくでき
ています。
 COCOAが機能していないことは、どのようにして判明した
のでしょうか。
 それは、コロナ陽性になったPR会社社長、次原悦子氏が、そ
の結果、濃厚接触者になった家族のスマホに、接触通知が届いて
いないことを不審に思ったことがきっかけです。この社長は、ツ
イッターで、次のようにツイートしています。
─────────────────────────────
 拡散希望。接触確認アプリCOCOA。今はこれを絶対に鵜呑
みにしないで!責任追及は後にして、陽性登録したのに過去14
日間どころか、私が濃厚接触者にしてしまった家族にさえ、誰に
も、通知はきていません。ブルーツゥースも確認済み。COCO
Aを見ている人がいるならばそれはとても危険! ♯コロナ陽性
─────────────────────────────
 このPR会社社長は、このことを国民民主党代表の玉木雄一郎
氏に訴えたのです。そこで、玉木代表は、1月13日の衆議院内
閣委員会で、厚労省に問い正しています。ところが、厚労省の役
人は、ぬけぬけと次のように答弁しています。
─────────────────────────────
 1メートル以内で15分以上実際には接近していなかったり、
ブルートゥース機能をオフにしてしまったりなど、適切に作動で
きていないケースも考えられる。      ──厚労省担当者
─────────────────────────────
 この役人、まるで、ユーザー側に責任のあるようなものいいで
す。しかも、COCOAのアンドロイド版の不具合を厚労省が認
めてから、約4ヵ月も経過した後でも、この表現であり、おまけ
にこのPR会社社長のスマホはアンドロイドではなく、厚労省が
問題なしとしているアイフォーンなのです。
 ちなみに、「設定が違っている」といわれたこのPR会社社長
は、アプリのアップデートを最新にし、ブルーツゥースの設定を
確認し、息子のスマホを横に並べて、再度実験しましたが、何も
届かなかったとといいます。
 厚労省に限らず、日本の役所のICT感度のレベルは、きわめ
てローレベルです。今どき厚労省はまだFAXを使っているよう
ですが、これはそこで働く人のICT感度が低いことを表してい
ます。一般企業であれば、事務を担うレベルからの提案で、せめ
てFAXは引退させられるはずです。田村厚労大臣は、ポツリと
こういっています。「オレのところにも届いていいはずの通知が
届いていない。オレも被害者の一人」と。
 冗談ではない。田村厚労相は、最高責任者です。総額3・9億
円も使って、こんなチンケなものしかできないのでしょうか。責
任重大です。       ──[デジタル社会論U/001]

≪画像および関連情報≫
 ●接触確認アプリCOCOA失敗の本質
  ───────────────────────────
   接触確認アプリCOCOAが政治問題化しています。昨年
  6月、首相の肝煎りでリリースされ、感染対策の切り札担う
  かと期待されました。ダウンロードは2千万件を超えました
  が、9月末から2月中旬まで、ユーザーの3割ほどを占める
  アンドロイドユーザーに通知が届かない不具合が見つかりま
  した。そしてiOSにも深刻な不具合があると発表されまし
  た。政府は、相次ぐ不具合を修正することで、COCOAを
  正常に機能させようと躍起になっています。僕は絶望してい
  ます。COCOAは日本人の能力を超えたプロジェクトでし
  た。そのことを人々が認められないことに、僕は絶望してい
  ます。厚労省だけの問題ではない。犯人探しをして処分すれ
  ば済むというものではない。ITの問題ですらない。なぜそ
  れが分からないのか。これは日本の統治能力の問題であり、
  民度の問題です。
   「現時点の我々の政府の能力では、このプロジェクトを成
  功させることはできない」という戦略的思考ができない。精
  神論でなんでも出来ると認めようとしない。あの敗戦から何
  も学んでいない。開発に失敗したことを怒るべきではないの
  です。やったこと自体が間違いだったのですから。
   「なぜやったのだ」と怒るべきなのです。その合理的思考
  ができない人々に絶望しています。あの敗戦から何も学ばな
  かった人々に。         https://bit.ly/3gmSOwH
  ───────────────────────────
世紀の大失敗/COCOA.jpg
世紀の大失敗/COCOA
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論後編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]