2023年02月17日

●「23年の日本の経済見通しは順調」(第5909号)

 2月14日のことです。2022年10〜12月期のGDPの
速報値が、内閣府から発表されました。14日の日本経済新聞夕
刊は、これについて次のように報道しています。
─────────────────────────────
◎日本のGDP年率0・6%増
         /10〜12/2四半期ぶりプラス
 内閣府が14日発表した2022年10〜12月期の国内総生
産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整
値で前期比0・2%増、年率換算で0・6%増だった。プラス成
長は2四半期ぶり。22年の実質GDPは前年比1・1%増で、
2年連続のプラスだった。新型コロナウイルス禍から経済の正常
化が緩やかに進んでいる。    ──2022年2月14日付
                   日本経済新聞夕刊より
─────────────────────────────
 これによって、2022年の成長率は、個人消費や設備投資な
どが全体を押し上げた結果、2022年における実質経済成長率
は、1・1%になっています。海外需要は0・6ポイント押し下
げになったものの、国内需要が1・7ポイントのプラスになって
います。
 GDPを項目別にみると、個人消費は2・1%増加し、コロナ
禍からの回復によって、サービスなどの消費が伸びています。設
備投資は1・8%増と、2021年の0・8%増からの伸びが加
速しています。
 しかし、2022年は、1〜3月期と7〜9月期がマイナス成
長になるなど、コロナ禍からの回復の足取りは鈍く、2022年
暦年のGDPは546兆円と、コロナ禍前の水準である550兆
円を下回っている状態です。後藤茂之経済財政・再生相は、次の
ようにコメントを出しています。
─────────────────────────────
 ウィズコロナの下で景気が緩やかに持ち直している。目下の物
価高に対する最大の処方箋は、物価上昇に負けない継続的な賃上
げの実現である。       ──後藤茂之経済財政・再生相
─────────────────────────────
 ちなみに、名目GDPは1・3%で、実質GDP1・1%を上
回っています。これは、物価が上昇し、時価のGDP、すなわち
名目GDPが膨らんだ結果です。これを調整するためのGDPデ
フレーターは、前年比プラス0・2%であり、これは2021年
のマイナス0・2%から、上昇に転じています。
 なお、GDPデフレータは、名目GDPの物価水準の変化分を
調整するときに使われます。物価が上昇している場合には、「名
目GDP>実質GDP」となりますが、物価が下落している場合
には、物価の下落分をGDPデフレーターにより膨らませるため
反対に「名目GDP<実質GDP」となります。
 2月9日のEJ第5903号でご紹介した2023年のIMF
の「世界経済見通し」について、2月14日の日本経済新聞夕刊
では、次のようにコメントしています。このなかで日本の経済見
通しについては、1・8%と上方修正し、インフレで苦しむ欧米
と違って、日本は、G7トップの成長率を確保できるものと伝え
ています。
─────────────────────────────
 国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しによると、23年に
日本の実質成長率は1・8%に加速する。この数字だけとれば、
インフレ退治の利上げの影響もあって、成長が鈍化すると思われ
る米国(1・4%)やユーロ圏(0・7%)を上回る予測だ。実
態として経済の正常化は米欧が先行しており、日本はコロナ前と
比べたGDPの回復ではなお後れを取る。
     ──2022年2月14日付、日本経済新聞夕刊より
─────────────────────────────
 それでは、2023年1〜3月期はどうなるかについて、日本
経済新聞は、民間エコノミスト10人に対して、今後の経済見通
しを聞いたところ、次のように、2022年10〜12月期に続
いて、2期連続のプラス成長と予測しています。
─────────────────────────────
    ◎2023年1〜3月期経済見通し
     実質成長率の予測平均=前年比年率1・6%
─────────────────────────────
 10人の予測によると、1〜3月期の実質成長率は1%台半ば
に回復し、2023年を通して1%台を維持すると予測していま
す。個人消費が前年比0・4%増加し、設備投資も0・6%増加
して支えるからです。
 10人の民間エコノミストの予測で一番意見が分かれたのが、
「外需」です。外需とは、輸出から輸入を差し引いたものです。
多くのエコノミストは、世界経済は利上げによる景気減速懸念が
高まると判断し、輸出は減少するとみています。輸出の減少は、
日本経済を下押しします。
 しかし、前向きの見方もあります。伊藤忠総研の前田淳氏は、
外需は0・3ポイントプラス寄与するとしています。それは、イ
ンバウンドが大きく回復するとみているからです。
 インバウンド(Inbound) とは、外国人が訪れてくる旅行のこ
とで、日本へのインバウンドを訪日外国人旅行または訪日旅行と
いいます。これに対し、自国から外国へ出かける旅行をアウトバ
ウンド(Outbound)または海外旅行といいます。
 このインバウンドは、GDP統計では「輸出」に含まれます。
経済学では、輸出が増加すると、国民の収入が増えて国内の消費
も増加するという理論があります。さらに、消費が増えると、ま
た誰かの収入が増え、さらに消費が増えるという好循環が発生す
るため、インバウンド需要による経済効果は、単純な輸出額の増
加よりも大きなものとなるという考え方です。いずれにせよ、日
本経済は、多くの人が考えているより、良い方向に向かっている
といえます。     ──[メタバースと日本経済/025]

≪画像および関連情報≫
 ●緩慢な経済成長/インフレ、ピークに達する/国際通貨基金
  ───────────────────────────
   世界経済成長率は、2022年の3・4%(推定値)から
  2023年に2・9%へ鈍化した後、2024年には3・1
  %へと加速する見込みだ。2023年の予測は、2022年
  10月の世界経済見通し時点から0・2%ポイント上方修正
  されたものの、歴史的(2000―2019年)な平均であ
  る3・8%を下回っている。物価上昇に対処するための中央
  銀行による利上げと、ロシアのウクライナでの戦争が引き続
  き、経済活動の重しとなっている。中国では2022年に新
  型コロナウイルスの急速な感染拡大が成長の妨げとなったが
  最近国境を再び開放したことで当初の予想よりも速い回復の
  道筋がついた。
   世界のインフレ率は、2022年の8・8%から2023
  年に6・6%、2024年に4・3%と鈍化していく見込み
  だが、両年とも依然としてパンデミック前(2017―20
  19年)の水準である約3・5%は上回っている。
   リスクのバランスは依然下振れ方向に傾いているが、20
  22年10月のWEO以降、下振れリスクは和らいだ。上振
  れリスクとしては、各国で見られる繰延需要によって景気が
  押し上げられることや、インフレが予想よりも速く落ち着く
  ことが挙げられる。      https://bit.ly/3xqWepG
  ───────────────────────────
日本経済/2019との比較.jpg
日本経済/2019との比較
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2023年02月16日

●「メーカーの国内回帰の動きが顕著」(第5908号)

 2022年2月24日──ロシアがウクライナに対する軍事侵
攻に踏み切った日です。それから約1年が経過しようとしていま
す。ロシアが特別軍事作戦と呼称する”戦争”は、まだ終結する
どころか、ますます激しくなっています。
 この1年で日本には大きな変化が起きつつあります。これにつ
いては、添付ファイルを参照してください。このグラフは次の2
つのことを示しています。
─────────────────────────────
    @2022年1月〜12月のドル円相場の推移
    A2022年度の製造業の設備投資額の伸び率
─────────────────────────────
 @は「2022年1月〜12月のドル円相場の推移」です。
 こういう危機になると、これまでであれば、円は買われる傾向
にあったのですが、今回の危機では、ドル高が一気に進み、3月
頃から円安の傾向が顕著になり、一時は「1ドル=150円」を
付けるなど、約32年ぶりの円安水準になっています。
 Aは「2022年度の製造業の設備投資額の伸び率」です。
 正確にいうと、2022年度の製造業の設備投資額の前年比伸
び率を示したものです。以下に数字を書き出してみます。
─────────────────────────────
      2022年 3月 ・・  9・0%
      2022年 6月 ・・ 20・5%
      2022年 9月 ・・ 21・2%
      2022年12月 ・・ 20・3%
─────────────────────────────
 現在、日本企業の設備投資意欲が増加しています。22年度の
製造業による設備投資の計画額は、2022年6月以降、20%
増加しています。その中心にあるのは、海外ではなく、国内への
投資です。一体何が起きたのでしょうか。
 1つは円安傾向です。2021年の始めは、1ドル=100円
強だったのですが、ウクライナ危機が起きると、1ドル=120
円を超え、秋までに1ドル=150円まで駆け上がるのです。
 思えば、日本企業の海外生産は、90年代以降の急激な円高を
背景に急進展しています。日本の有力メーカーは、円高でも利益
が出せる生産体制を求めて、中国をはじめ、東南アジア、そして
欧米へと海外生産を拡大させてきたのです。
 しかし、今その海外生産の潮流に変化が生じています。円安に
なると、日本国内での生産に優位が生まれ、海外からの輸入は割
高となり、デメリットを発生させる恐れがあります。問題は、今
回の円安が一時的なものかどうかの見極めです。なぜなら、円安
傾向になったからといって、国内生産に回帰して、また円高にな
るリスクもあるからです。
 こう1つは国際情勢の変化があります。米中対立の激化による
世界経済の分断の動きです。米国による対中国制裁関税の影響は
脱中国を加速させています。さらにそれにウクライナ危機が加わ
り、経済安全保障の面でも過度の海外依存は、有事のさいに国民
生活を脅かすリスクになり、国内回帰の必要性が高まりつつある
のが現状といえます。
 このような情勢変化を受けて、すでに多くの日本の有力メーカ
ーが海外生産を減らし、国内回帰に向けて、実際に行動を起こし
ています。その具体的な例を以下に示します。
─────────────────────────────
◎半導体大手のルネサスエレクトロニクスは、5月に電気自動車
 (EV)向けに需要が拡大するパワー半導体の生産能力増強を
 発表。14年にいったん閉鎖した甲府工場を復活させることを
 明らかにした。
◎SUBARUは、EV専用として約60年ぶりに国内新工場の
 建設を決め、既存工場でのEV生産を含め約2500億円を投
 資する方針である。
◎SMCは岩手県遠野工場(遠野市)のエリアを整備して、「遠
 野サプライヤーパーク」を建設。サプライヤーを誘致し、生産
 能力を拡大する計画である。
◎TDKは、秋田県にかほ市に電子部品の新たな生産拠点となる
 「稲倉工場西サイト」を建設中で、秋田地区の電子部品の生産
 拠点強化を進めている。
◎セイコーエプソンは、水平多関節(スカラ)ロボットの生産能
 力を25年度までに、国内で20年度比で5倍に高める方針で
 あることも伝わっている。米国輸出時の対中制裁関税の影響を
 避けるため、国内での生産能力を増強する意向があるとみられ
 ている。             https://bit.ly/3jWlMrt
─────────────────────────────
 今回の動きのきっかけになったと思われるのは、先端半導体の
量産で世界一の台湾積体電路製造(TSMC)の熊本県での新工
場建設です。日本政府は数千億円規模の支援をするというかたち
での国策誘致であり、これが、日本への設備投資回帰の呼び水に
なったといえます。
 岸田首相は、2022年10月の所信表明演説で、TSMCの
熊本工場について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 大きな経済効果・雇用創出が見込まれ、経済安全保障の要とな
る半導体には、今後とくに力を入れる。この分野に官民の投資を
集める。                   ──岸田首相
─────────────────────────────
 TSMC熊本工場は、敷地面積約21ヘクタール(東京ドーム
約4・5個分)もあり、2024年末までに稼働予定とされてい
ます。TSMC子会社には、ソニーグループやデンソーも出資し
ており、その投資額は総額86億ドル(約1兆1000億円)で
あり、同工場の雇用予定者は1700人を見込んでいます。まさ
に日本は大きく変化しようとしています。
           ──[メタバースと日本経済/024]

≪画像および関連情報≫
 ●製造業、国内回帰相次ぐ 円安で輸出強化の動きも
  ───────────────────────────
   製造業の間で生産の「国内回帰」が相次いでいる。新型コ
  ロナウイルスや米中貿易摩擦などで混乱したサプライチェー
  ン(供給網)見直しの一環だが、急速な円安を踏まえ、輸出
  競争力の強化をにらんだ動きも出てきた。海外移転を進めて
  きた製造業にとって、歴史的な円安は大きな転機となる可能
  性もある。
   生活用品メーカーのアイリスオーヤマ(仙台市)は9月以
  降、衣装ケースなど約50種類のプラスチック製品の生産を
  中国から国内の複数工場に移し始めた。原油高で日本への輸
  送費用が膨らんでおり、「国内生産への切り替えでコストを
  平均2割削減できる」(同社)という。
   アパレル大手のワールドは、岡山県の工場などで生産能力
  を増強し、百貨店向け製品の国内生産比率を4割から9割に
  高める。コロナ対策のロックダウン(都市封鎖)で、海外か
  らの輸入が滞ったためだ。JVCケンウッドは、カーナビの
  製造をインドネシアや中国から日本に移し、長野県伊那市に
  ある工場の生産規模を5倍に増やす。
   これらは国内販売分を国内で生産する取り組みだが、日立
  製作所の子会社は冷蔵庫などの白物家電に関し、国内生産に
  占める輸出の割合を来年3月までに従来の2倍の10%に引
  き上げる方針だ。円安は海外での価格競争力強化につながり
  企業収益へのメリットも大きい。政府も月内に策定する経済
  対策に、円安を生かして事業展開する企業への支援策を盛り
  込む考えだ。          https://bit.ly/3JZ8SDP
  ───────────────────────────
 ●グラフの出典/日経ビジネス/02.13
円安の進行と企業の設備投資意欲.jpg
円安の進行と企業の設備投資意欲
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2023年02月15日

●「最も期待できない閣僚とはだれか」(第5907号)

 繰り返しになりますが、現在、日本経済は30年ぶりに良いポ
ジションにつけています。しかし、電気代を筆頭に諸物価が高騰
し、国民の生活は苦しくなっています。高インフレに襲われてい
る米国はFRBによる利上げが続いていて、日米の金利差の拡大
によって円安が定着しています。「インフレ(物価高)と安い日
本」──多くの日本国民はこれをマイナスとしてとらえていて、
政府にさらなる支援を求めています。
 しかし、2023年は、IMFの予測では、G7では日本の経
済成長率はトップと予想されており、政府としての舵取りを間違
えなければ、日本経済はかなり成長する可能性があります。
 黒田日銀総裁の目指す2%の物価上昇は、まだ達成されていま
せんが、日本経済は長い間なかった3%程度のインフレになって
おり、状況は変化しつつあります。
 いわば千載一遇のチャンスが巡りつつあるといえますが、岸田
内閣は「防衛増税」をはじめとする増税を持ち出し、そのせっか
くのチャンスをブチ壊そうとしています。
 そこで気になるのが、日銀新総裁の人事です。しかし、13日
と14日の2日間、EJで検討した結果、植田和男新総裁は、当
面は黒田路線を継続するということなので、適切な人選であった
と評価できると思います。
 問題は、岸田内閣自身です。岸田首相は聞く力を標榜していま
すが、防衛増税などは独断で決めています。そのため、相変わら
ず支持率が低迷していますが、本人はなぜ支持率が低いか、きっ
とわかっていないと思います。
 ところで、女性誌『女性自身』が「岸田政権で最も期待できな
い閣僚」のテーマでアンケートを実施し、約501人の男女から
回答を得ています。ベスト5は次の通りです。
─────────────────────────────
     ◎岸田政権で最も期待できない閣僚
      第1位:岸田文雄 ・・・ 244票
      第2位:高市早苗 ・・・  42票
      第3位:河野太郎 ・・・  39票
      第4位:林 芳正 ・・・  31票
      第5位:浜田靖一 ・・・  15票
─────────────────────────────
 驚くなかれ、第1位は岸田総理大臣で、その得票は全投票数の
約50%を占めるダントツの244票を集めています。なぜ、そ
うなるのか、実際の国民の声は次のようになっています。
─────────────────────────────
・「景気が増税できるほどに回復していないのに、増税しようと
 しているから」(10代男性・学生)
・「国民の生活や将来や今の状況をわかってない」(50代女性
 ・専業主婦)
・「国民に寄り添う力も聞く力も決断する力も何もない。増税な
 どを決断するのはやたらと早い」(60代女性・専業主婦)
・「何が『聞く力』だ。国民の声なんて、何一つも聞いてない。
 ニュースで、顔を観るのも嫌」(40代女性・会社員)
・また2月9日にはフィリピンへ2年で6000億円の官民支援
 を約束したばかり。国民の生活負担が増えるなかでの”海外支
 援”に対する不満の声も少なくない。
・「外国にばかりいい顔をして国民には増税を迫るから」(30
 代女性・専業主婦)
・「国民のためになるようなことは検討に検討を重ね、防衛増税
 はさっさと決める。外国人を大切にして国民を守る気がない」
 (30代女性・医療従事者)    https://bit.ly/3YrEeXR
─────────────────────────────
 確かに、岸田首相の物事の決め方を見ると、「聞く耳を持つ」
といいながら、国民にとっては、十分検討し、慎重に決めて欲し
いことは自ら速断し、すぐに実行して欲しいことは、検討に検討
を重ね、国民にとって不満足な形で実施するか、なかなか実施し
ようとしないところがあります。だから、「検討使(遣唐使)」
といわれるのです。
 振り返ってみると、安倍元首相の国葬に始まり、防衛費増額に
伴う防衛増税、原発再稼働・新設などのエネルギー政策大転換は
「令和の真珠湾攻撃/トラトラトラ」と揶揄されるほど速断して
いますが、統一教会問題、少子化対策、LGBT問題などは相当
な時間をかけています。
 ところで、2023年以降の日本が明るいという根拠の一つと
して、2022年度の設備投資動向計画(修正計画)において、
全産業の投資額が前年度実績25・1%増の30兆8048億円
となり、2007年度以来、15年ぶりに過去最高を更新してい
る事実があります。つまり、設備投資が急増しているわけです。
─────────────────────────────
◎設備投資修正計画(▲は減)
        社数      A     B     C
 全 産 業 950 308048  0・4% 25・1%
 ・ 製造業 525 186909  1・1% 28・2%
 ・非製造業 425 121139 ▲0・7% 20・6%
 海外投資額 578  35202  1・4% 41・3%
           註:A/2022年度修正計画(億円)
                 B/  当初計画比増減率
                 C 21年度実績比増減率
─────────────────────────────
 けん引しているのは製造業で、1・1%増と2年連続プラスに
なっています。その投資額は18兆6909億円と前年度実績比
28・2%増で、1988年以来34年ぶりの高い伸び率である
といえます。しかし、非製造業は伸び悩んでいます。その修正率
は0・7%減と、3年連続のマイナスです。コロナの影響で設備
納入が遅れ、工期遅延が生じているからです。
           ──[メタバースと日本経済/023]

≪画像および関連情報≫
 ●「検討おじさん」岸田氏の経済政策が空中分解の訳
  ───────────────────────────
   やろう、これをやろうと検討しながら、なかなか実行に移
  さない。このことは、「新しい資本主義」ほど当てはまるも
  のはないだろう。
   具体的には、1)日本の企業と国民間にある所得配分を是
  正することによって消費者の購買力を高める、2)日本が高
  度成長期のように多くの起業家を生み出すことで生産性上昇
  を加速させる、というどちらの計画についても、数カ月にわ
  たる検討の末、政府は中途半端な姿勢を示している。
   関係者によれば、岸田首相らはこれらの目標に対して真摯
  に取り組んでいるという。だが、同首相はどんな問題でも抵
  抗勢力に出会うと、たいてい引き下がってしまう。本稿では
  前者の再配分について、現在どのような状況にあるのか検証
  する。
   20年以上にわたって、日本政府は日本の所得配分の偏り
  に大きな役割を果たしてきた。法人に対する税金を1994
  年の最高税率52%から現在の30・6%まで引き下げる一
  方で、消費税を通じて国民には増税してきた。これが、消費
  者の需要、つまりGDPの成長が鈍い主な理由のひとつであ
  る。データを見てみよう。1995年から2022年まで、
  非金融企業の税引き前利益はGDPの6%から17%近くま
  で急増している。それは、賃金の緊縮と金利の引き下げが重
  なったためである。       https://bit.ly/3xiXgUy
  ───────────────────────────
迷走を続ける岸田内閣.jpg
迷走を続ける岸田内閣
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2023年02月14日

●「植田新総裁への内外専門家の評価」(第5906号)

 政府が植田日銀新総裁を決めたことに対しての国内だけでなく
世界の反響について、もう少し探ることにします。このEJは、
12日(日)に書いていますが、11日は土曜日と建国記念日が
重なっているので祝日であり、夕刊は休刊です。おまけに13日
の月曜日は新聞休刊日ですべての新聞が休刊です。肝心な時に新
聞はきちんと報道できないのです。全新聞が休む新聞休刊日は廃
止すべきです。
 実は、経済専門紙の日経が大チョンボを冒しています。日経は
6日の夕刊、7日朝刊において「日銀新総裁雨宮氏に打診」とい
うスクープを放っていますが、これが大間違いだったことです。
しかし、10日になると、「総裁に植田氏」の報道が一斉に流れ
雨宮副総裁説は一掃されています。これは、官邸からのリークで
あると思われます。
 実は読売新聞の解説によると、新日銀総裁の人選は首相、木原
官房副長官らが、水面下で折衝を重ね、1月下旬には、植田和男
氏の起用が固まったとあるので、2月7日の日経の大スクープは
まさに大間違いだったことになります。読売新聞は、どうして何
でも知っているのでしょうか。
 10日夕方に政府が植田氏を日銀新総裁に起用するとの人事を
固めたという報道が流れると、長期金利(10年物国債の金利)
は上限の0・5%まで上昇し、円相場は「1ドル=129円台」
まで円高が進みましたが、植田氏が「当面金融緩和を継続する」
と発言すると、131円台まで円が売られています。
 植田氏にはこのようなエピソードがあります。2000年8月
こと。植田氏は日銀審議委員をしていましたが、当時日本経済は
バブルが崩壊し、デフレで苦しんでいたのです。その8月の金融
政策決定会合で、「ゼロ金利を解除して利上げをする」という案
に植田氏は、審議委員として反対投票を投じています。
 そのとき、反対したのはたったの2人で、ゼロ金利政策の解除
は賛成多数で決まっています。しかし、その後、国内景気は一層
悪化し、利上げの決定は日銀の拙速であったとの批判が数多く出
されています。景気の動向を見極めないで、利上げをするとこう
いうことが起きるのです。今回もそれに似ています。
 植田日銀新総裁について、日本をよく知る海外のストラテジス
トの評価を拾ってみます。ストラテジストとは、経済動向などを
分析し、投資に関するストラテジー(Strategy=戦略)や方針を
立案する専門家のことです。
─────────────────────────────
◎バンダ・リサーチ/ビラジ・バテル氏(ロンドン在勤)
 これは私の臆測に過ぎないが、雨宮氏が就任を辞退したという
ことは、ハト派でイールドカーブコントロール支持者と見なされ
る同氏と岸田政権との間に明らかな緊張があるということではな
いか。結論として、市場は「クロダノミクス・アベノミクス」か
ら離れた新たな日銀の政策枠組みの確率が高まったことを織り込
まなければならないだろう。これは究極的に円にプラスだ。
◎ノルディア銀行/ヤン・フォンヘリッヒ氏(ヘルシンキ在勤)
 植田氏の下では、少なくとも雨宮氏の場合よりは政策修正の可
能性が高いと市場は考えている。しかし見通しは、数カ月前や日
銀が、10年物国債の許容変動幅を拡大した時に比べ、はるかに
不透明である。
◎CIBC/ジェレミー・ストレッチ氏(ロンドン在勤)
 植田氏は次期日銀総裁の有力候補の中には入っていなかったが
1998〜2005年に日銀審議委員を務めた経歴から、明らか
にある程度の信頼性がある。雨宮氏が起用されるとの観測がかね
てからあり、同氏は路線継続のための候補で、アベノミクスを延
長すると見なされていた。従って、雨宮氏以外の誰であっても政
策正常化を進める確率は比較的高いと考えられ、米国債と日本国
債の利回り格差縮小を促し、円高には寛容になるだろう。
 註:CIBC/カナディアン・インペリアル・バンク・オブ・
   コマース           https://bit.ly/3IhyABX
─────────────────────────────
 続いて、植田和男氏について、日本の専門家の評価はどうなっ
ているでしょうか。
─────────────────────────────
◎三菱UFJ銀行の関戸孝洋氏
 どれ程の難局が待ち受けているか、大げさに言っても言い切れ
ない。日銀は過去10年で相当のことをしてきた。政策も非常に
複雑になった。わずかな政策修正でも多くの市場が影響を受ける
だろう。
◎クレディ・アグリコル証券の会田卓司氏
 植田体制でも日銀が2023年中に金融引き締めに転じること
はないとの従来の予想を変えていない。新執行部の下、日銀が現
行の金融政策の点検・検証を行うとしても、金融緩和効果の持続
性を維持するための手段が議論となり、必ずしも金融引き締めに
つながるものにはならない可能性が高い。
◎元日銀審議委員/野村総合研究所の木内登英氏
 植田氏は、黒田氏の政策姿勢とは距離を置いている。慎重かつ
緩やかに金融緩和の枠組みの見直し、金融政策の正常化を進めて
いくだろう。
◎東短リサーチの加藤出氏
 例えば、米景気が悪化して利下げが視野に入ってくるような状
況になれば、政策の変更を見送るなどの柔軟性を持つ人である。
─────────────────────────────
 以上の専門家の意見を総合すれば、植田和男新日銀総裁は、黒
田政策を急激に変更することはなく、当面は金融緩和を継続しな
がら、じっくりと状況を見極めて、少しずつ政策を変更していく
人のように考えられます。リフレ派とか、構造改革派のように、
「何とか派」というくくり方に当てはまらない人であり、現総裁
を引き継ぐ人材としては最適の人といえます。
           ──[メタバースと日本経済/022]

≪画像および関連情報≫
 ●首相が日銀総裁起用意向の植田氏“現状は金融緩和継続
  が重要”
  ───────────────────────────
   こと4月で任期が切れる日銀の黒田総裁の後任に、岸田総
  理大臣は、日銀の元審議委員で経済学者の植田和男氏を起用
  する意向を固めました。
   植田氏は10日夜、都内で記者団に対し後任の日銀総裁へ
  の起用について「現時点では何も申し上げられません」と述
  べました。一方で今の日銀の大規模な金融緩和については、
  「金融政策は景気と物価の現状と見通しにもとづいて運営し
  なければいけない。そうした観点から現在の日本銀行の政策
  は適切であると思います。現状では金融緩和の継続が必要で
  あると考えています」と述べました。
   在任日数が歴代最長となっている日銀の黒田総裁は、今の
  2期目の任期が4月8日に満了を迎えることから岸田総理大
  臣は、後任人事の検討を進めてきました。そして、日銀の元
  審議委員で経済学者の植田和男氏を起用する意向を固め与党
  幹部らに伝えました。
   岸田総理大臣としては、植田氏が、日銀の政策運営に深く
  関わった経験があることに加え、経済や金融をめぐる幅広い
  研究実績を重視したものと見られます。日銀総裁の交代は、
  10年ぶりで、新たな総裁は、ひずみも指摘されている「異
  次元の金融緩和」の「出口戦略」をどう描くかといった難し
  い課題に取り組むことになります。
                  https://bit.ly/3jOxEvJ
  ───────────────────────────
植田和男氏.jpg
植田和男氏
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2023年02月13日

●「黒田金融政策は当分の間継続する」(第5905号)

 今朝のEJの一番のニュースは、何といっても日銀総裁人事で
しょう。当面の日本経済浮上のカギは、黒田総裁後任の新日銀総
裁が握っているといっても過言ではないからです。
 2月11日付、日本経済新聞は、次期日銀総裁と副総裁の人事
について次のように報道しています。
─────────────────────────────
 政府は日銀の黒田東彦総裁(78)の後任に経済学者で元日銀
審議委員の植田和男氏(71)を起用する人事を固めた。黒田氏
の任期は4月8日まで。政府は人事案を2月14日に国会に提示
する。衆参両院の同意を経て内閣が任命する。
 副総裁には氷見野良三前金融庁長官、内田真一日銀理事を起用
する方針だ。現在の雨宮正佳、若田部昌澄両副総裁の任期は3月
19日まで。政府は黒田氏の後任総裁として雨宮副総裁に打診し
たが、同氏は辞退した。
         ──2023年2月11日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 報道を受けて、植田和男氏は、自宅前で朝日新聞の取材に次の
ように、答えています。
─────────────────────────────
記者:黒田総裁による日銀の金融政策について、この10年をど
 う見ているか。
植田:金融政策は景気と物価の現状、それから将来の見通しをも
 とに決めていかなければならない。現状の金融政策は適切だと
 考えている。当面、現状は金融緩和を継続する必要がある。
           ──2023年2月11日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 植田氏が、まだ就任前であるにもかかわらず、「当面、金融緩
和を継続する必要がある」と言明したのは、日本経済新聞が次期
総裁は雨宮副総裁」と報道したとき、市場で円が売られ、株高に
なったからであると思われます。そのため、慎重に市場にメッセ
ージを送ったものと思われます。
 副総裁には、氷見野良三前金融庁長官、内田真一日銀理事を起
用する方針とされていますが、とくに内田真一日銀理事の起用は
注目すべきです。なぜなら、この人事なら、植田新総裁になって
も、まさに植田氏のいう通り、当面は黒田時代の金融政策と大き
な変化はないと考えられるからです。
 内田真一氏とはどういう経歴の人物なのでしょうか。
 内田真一氏は、日銀のプロパーで、前日銀総裁の白川方明氏の
時代の2012年に、40歳の若さで新潟支店長から、企画ライ
ンの重要幹部である企画局長に起用されています。そして、黒田
総裁になってからも企画局長を続投しています。
 黒田総裁になって、総裁の指示で、当時理事で、急遽大阪から
呼び戻された雨宮氏らとともに2週間ほどで「異次元緩和」の原
案を作り上げています。つまり、内田真一氏は「異次元緩和」の
原案の作成者でもあるのです。
 しかし、「2年で2%」の日銀の目標がなかなか達成できない
と、2016年にはマイナス金利政策の導入をしたり、その後の
イールドカーブ・コントロールなどにも、内田氏は、企画局長し
てとして関わっています。
 内田真一氏は、2017年には名古屋支店長、18年には国際
担当の理事になって、企画ラインから離れますが、20年5月に
は、企画局などを担当する理事に昇進し、企画ラインの事務方の
トップに就任しています。明らかに、黒田総裁後を睨んだ人事配
置と考えられます。
 日銀の金融政策・市場エディターで、日本経済新聞の「日銀ウ
オッチ」の執筆を務める大塚節雄氏は、2022年4月2日の時
点て、内田真一氏の次期日銀総裁の副総裁就任を次のように予測
しています。
─────────────────────────────
 日銀は企業や家計を苦しめる輸入インフレを「望ましい物価上
昇ではない」とみて緩和継続の構えを崩さない。米国など海外の
金融引き締め路線のあおりで円安と金利上昇圧力が生じ、3月下
旬には日銀が「指し値オペ」と呼ぶ国債購入の手段で長期金利の
上昇を抑え込もうとするほど円安が進み、円相場は一時1ドル=
125円台まで下落した。海外勢には「日銀が物価上昇と円安の
圧力を放置するのは正しい態度ではない」(外国銀行ストラテジ
スト)として早期の政策修正の観測もくすぶる。
 修正は簡単ではない。いったん金利上昇を容認してしまうと際
限のない債券売りの投機を呼び込みかねない。結局は金融緩和に
追い込まれ、むしろ円安圧力が再燃するリスクもある。そもそも
巨額債務を日銀に支えてもらっている政府にとって、利払い負担
の急増につながる金利上昇は許容しにくい。東短リサーチの加藤
出社長は「様々な不確実性がある非常に難しい局面のなか、現在
の緩和の仕組みに精通する内田氏に引き続き実務のかじ取りを担
わせる必要がある、ということかもしれない」とみる。
               https://s.nikkei.com/3loKZey
─────────────────────────────
 岸田内閣が、次期日銀総裁として本命視したのは、雨宮正佳副
総裁だったのですが、雨宮氏は「今後の金融政策には新しい視点
が必要である」として固辞したため、人事は難航をきわめたとい
われます。最終的には、学者ではあるが、実務経験もあり、現在
の金融政策にも精通している植田和男氏に頼ったといわれます。
しかし、黒田体制を支えた政策参謀である内田真一氏を副総裁と
して残せば、引き継ぎはうまく行くと考えたフシがあります。
 もう1人の副総裁候補である氷見野良三氏は、国際金融姿勢を
担うバーゼル銀行監督委員会や金融安定理事会で要職を務めた国
際派として知られています。ちなみに、氷見野良三氏は、日銀プ
ロパーではなく、大蔵省(財務省)の出身であり、組織変更で、
金融庁に移籍したことを記しておきます。
           ──[メタバースと日本経済/021]

≪画像および関連情報≫
 ●日銀総裁人事、植田氏の起用に驚きも・・・市場は緩和策の
  行方に注目/読売新聞オンライン
  ───────────────────────────
   新たな日本銀行総裁として政府が指名したのは、経済学者
  の植田和男氏(71)だった。新体制は、戦後初となる学者
  出身の総裁をトップに、副総裁として、金融システムの分野
  で世界をリードしてきた行政マンと、マイナス金利政策を立
  案・設計した日銀マンが脇を固める3人の「トロイカ体制」
  となる。
  「政策の判断を論理的に、判断の結果を分かりやすく説明す
  ることが大事だ」。植田氏は10日夜の取材でこう語った。
  黒田東彦総裁の下で10年続いてきた金融緩和を急に転換す
  れば、金融市場の混乱を招きかねないとの認識がある。
   金融政策の転換は、金融市場を通じて、企業や家計にも打
  撃を与えかねない。低金利を続けるために日銀が大量の国債
  を買い入れているため、日銀の国債保有比率は5割を超えて
  いる。仮に日銀が、国債の買い入れを減らせば、金利が急騰
  する可能性がある。金利の上昇で債券価格が下落すると、国
  債を持つ金融機関の業績は悪化する。企業への貸し出しが鈍
  る可能性もある。
   家計にとっては金利の上昇を通じた負担が増えかねない。
  日銀が昨年12月に長期金利の上限を0・25%から0・5
  %に拡大しただけで、長期金利に連動する金利固定型の住宅
  ローンの利率は軒並み上昇した。日銀がマイナス金利政策の
  撤廃などに動けば、住宅ローンの7割を占める変動型金利に
  も影響を及ぼしかねない。    https://bit.ly/3RNTs7b
  ───────────────────────────
内田真一氏.jpg
内田真一氏
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2023年02月10日

●「『令和のトラトラトラ』が勃発」(第5904号)

 昨日のEJでご紹介したように、2023年は日本経済にとっ
て、30年ぶりに巡ってきた経済成長のチャンスのようです。2
月7日の日本経済新聞の報道によると、政府が次期日銀総裁の後
任として、雨宮正佳副総裁に就任を打診したことがわかると、円
相場は3円以上値下がりし、「1ドル=132円」台半ばまで円
安が進み、日経平均株価は、一時300円以上値上がりしていま
す。金融緩和が当分続くとの期待からです。
 環境面から判断すると、日本の経済成長はやっと軌道に乗ろう
としています。マイルドなインフレが続く限り、日本の経済成長
は軌道に乗ると考えられるからです。しかし、大きなマイナス要
因があります。それは、岸田政権による増税路線が、日本経済に
とってこの千載一遇のチャンスをブチ壊しかねないことです。そ
のバックには財務省の存在があります。
 この財務省がどのような省庁であるか、もっと多くの人が知る
必要があります。事実上の「官庁の官庁」であり、莫大な国家予
算を握り、各政権に重要な影響力を持つ主力官庁です。最近では
「増税カルト教団」と呼ぶ人さえいます。
 ところで、『安倍晋三・回顧録』(中央公論新社)という本が
発刊されているのをご存知でしょうか。
 この回顧録は、安倍氏が首相を退任後の2020年10月から
21年10月、読売新聞特別編集委員の橋本五郎氏らが18回、
計36時間行ったインタビューを中心に構成され、2月6日に店
頭発売されています。
 この本で安倍氏は、森友学園への国有地売却をめぐる問題につ
いて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 「籠池泰典学園理事長という人物に一度も会ったことがないの
で、潔白だという自信があった」と自身の関与を否定。「財務省
の策略」の可能性に言及し、「財務省は当初から土地取引が深刻
な問題だと分かっていたはずだ。でも、私の元には、土地取引の
交渉記録などは届けられなかった。森友問題は、マスコミの報道
で初めて知ることが多かった」としている。
            ──2023年2月7日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 森友学園事件が安倍首相失脚への策略であったか否かは別とし
て、故安倍晋三氏という政治家は、私の判断ではもっとも厳しく
財務省と対立した人物であったと思っています。このようにいう
と、5%の消費税の税率を自分の任期中に10%に倍増させたで
はないかと反論されますが、この増税は、民主党の野田政権が、
当時下野中の自民党の増税派と組んで法律化したもので、安倍氏
としては、実施するより、他に方法がなかったといえます。その
代わり、安倍首相は、複数の延期と解散総選挙で信を問うていま
す。なお、アベノミクスが成功しなかった原因の一つもこの増税
にあるといえます。
 岸田政権による「1兆円増税」決定を映画のエンドロール風に
書くと、次のようになります。
─────────────────────────────
        主演:岸田文雄内閣総理大臣
        助演:宮沢洋一自民党税調会長
        脇役:木原誠二官房副長官
  製作/脚本/演出:財務省
─────────────────────────────
 岸田首相の周りは、ぎっしりと財務省人材で埋まっています。
税調会長の宮沢洋一氏は首相のいとこですし、政権の内閣官房副
長官の木原誠二氏や総理大臣補佐官の村井英樹氏は財務省出身で
す。さらに、首相の義弟に、財務省理財局長、国税庁長官を務め
た可部哲生氏がいます。加えて、自身の不祥事で総務大臣を辞任
した前総務大臣の寺田稔氏も財務省の出身です。
 まさに財務省一家です。これを財務省が利用しないとは考えら
れないことです。
 それでは「1兆円増税」がどのように決まったかについて、ご
紹介します。
 2022年12月8日(木)のことです。81年前の同日、太
平洋戦争が勃発しています。政府与党政策懇談会という聞き慣れ
ない名前の会議において、岸田首相がいきなり与党側に次のこと
をいい出したのです。トップダウンです。
─────────────────────────────
 安全保障環境が急速に厳しさを増すなか、防衛費は5年以内に
緊急的に強化する必要がある。2027年度以降、財源が毎年4
兆円不足するが、うち約1兆円については国民の税制で協力をお
願いしなければならない。           ──岸田首相
─────────────────────────────
 これを宮沢洋一自民党税調会長は、まるで総理からそういう発
言があることをあらかじめ知っていたかのように、「防衛費の財
源問題が降ってきた。来週から議論する」と引き取っています。
12月15日の与党税制改正大綱の取りまとめまで1週間しかな
いタイミングです。
 これに対して、高市早苗経済安全保障担当相、西村康稔経済担
当相が反対を表明したが、そのまま押し切られています。もとも
と2人が呼ばれたのは政府与党連絡会議であり、そんな案件が飛
び出す会議ではなかったのですが、会議名は財務省の策略によっ
て「政策懇談会」と直前に変更されていたのです。
 翌9日から自民党内は蜂の巣をつつく騒ぎになり、萩生田政調
会長が開いた会議では、発言者の8割が反対論をぶったといわれ
ます。しかし、そのときの会議での反対論は、財務官僚によって
逐一記録され、官邸に上げられています。
 その後、官邸の根回しによって、森元総理が動き、反対の動き
は、鎮静化させられています。官邸ではこの策略を「令和の真珠
湾攻撃」と呼んでいるといわれています。
           ──[メタバースと日本経済/020]

≪画像および関連情報≫
 ●年1兆円の「防衛増税」はあり得ない/その前に講じるべき
  打ち手
  ───────────────────────────
   岸田文雄首相が表明した、いわゆる年間1兆円の「防衛増
  税」をめぐって批判が噴出している。自民党で行われた会合
  では怒号が飛び交う展開になった。岸田首相は、2023年
  年度から2027年度の5年間の防衛費を43兆円規模とす
  る方針で、2019年度から2023年度の総額の約1・5
  倍の金額となり、新たに十数兆円の財源が必要となる。
   財源確保の対象となっているのが「法人税」「たばこ税」
  「所得税」だ。12月11日時点では、法人税7000億〜
  8000億円・たばこ税2000億円強・東日本大震災の復
  興特別所得税2000億円を確保する案が出ている。地政学
  リスクが高まるなか、GDPの2%程度に防衛費を増強する
  ことは既定路線になっている。ただ「そもそも2%で足りる
  のか」「防衛費を何に使うのか」といった議論も必要だ。イ
  ンフラや国際協力など、直接防衛費とは関係ない費目が入る
  のかもしれないという懸念もある。明らかに、「防衛力の中
  身」の説明が足りていない段階での増税はあり得ない。
   現在候補に挙がる3つの税についてはどう考えるべきか。
   「法人税」は企業が賃金を払った後、残った利益に対して
  課税するものであるため、賃上げに影響はないとの意見も見
  かける。しかし、そうとは言い切れない。企業は、法人税が
  課税されるとなれば設備投資や人的資本への投資を萎縮し、
  保守姿勢になるのが普通だ。経営者の決断に、数値だけでな
  く、「不安感・気持ち」の判断も寄与することを考えれば、
  「賃上げ」は明らかにマイナス。 https://bit.ly/3ll184O
  ───────────────────────────
年1兆円強の財源が不足.jpg
年1兆円強の財源が不足
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2023年02月09日

●「日本は『眠れる森の美女』である」(第5903号)

 2022年12月の話です。慶応義塾大学名誉教授の竹中平蔵
氏の話です。彼は次のようなことを話していたそうです。
─────────────────────────────
 先日参加したロンドンの会合で、参加者から「日本はスリーピ
ングビューティー(眠れる森の美女)」と言われた。企業にはテ
クノロジーも、人材もお金もある。円安をきっかけに、改めて日
本に進出する機運が高まっている。      ──竹中平蔵氏
─────────────────────────────
 「眠れる森の美女」は、ヨーロッパに伝わる古い童話で、魔法
使いによる100年の呪いで眠り続けているお姫様のことです。
ある王子様がその呪いを解いて、お姫様が目を覚ますという話で
す。チャイコフスキー作曲のバレエ音楽にもなっています。
 「眠れる獅子が目を覚ます」という言葉もありますが、現在の
日本は「獅子」というよりも「美女」の表現の方がふさわしいと
いう判断になったものと思われます。
 なぜ、このように、いわれたかというと、2022年10月に
発表されたIMF(国際通貨基金)の「世界経済見通し」が原因
と思われます。これについては、添付ファイルの3つのグラフの
うち、左上の棒グラフをご覧ください。数字を書き出しておくこ
とにします。
─────────────────────────────
    ◎IMFの主要先進国の予想経済成長
          日本 ・・  1・6%
         カナダ ・・  1・5%
          米国 ・・  1・0%
        フランス ・・  0・7%
          英国 ・・  0・3%
        イタリア ・・ ▲0・2%
         ドイツ ・・ ▲0・3%
─────────────────────────────
 これによると、2023年の日本は、G7のなかで最も経済成
長率が高く、適度なインフレがあって、金融緩和が続くという、
株式のようなリスク資産にとっては、極めて居心地の良い外部環
境が続くという判断がされていることがわかります。
 失われた30年といわれ、成長しない経済が特色であった日本
が、予測とはいえ、2023年度は経済成長率がトップになると
は、考えられないことです。昨年後半に急速な円安が進んだこと
によって、多くの人が黒田日銀総裁のことをボロクソに批判しま
したが、黒田総裁の方針は間違っていなかったといえます。
 これについては、添付ファイルの左下の折れ線グラフを参照し
てください。三井住友DSアセットマネジメントの解説を以下に
示します。
─────────────────────────────
 エネルギーや食品の価格上昇を背景に、世界的な高インフレが
続いています。特に欧米諸国は一次産品の値上がりがサービス価
格や賃金にも波及し、ユーロ圏では10%超、米国でも7%台後
半のインフレが続いています。一方の日本では、久しぶりの物価
高が大いに話題となっていますが、消費者物価指数(CPI)
の前年同月比上昇率は3%台にとどまり、変動の大きい食品(酒
類を除く)やエネルギーを除いたCPIは、1・5%の上昇にと
どまっています(2022年10月現在)。
 エネルギー価格の高騰や円安の一服から、日本のインフレは今
後もマイルドな水準に留まる可能性が高そうです。このため日銀
は、当面現在の金融緩和を続けるものと思われ、欧米のように大
幅な利上げによる景気後退リスクをあまり意識しなくてもよさそ
うです。       ──三井住友DSアセットマネジメント
─────────────────────────────
 解説にもあるように、欧米諸国は7%から10%の高インフレ
に見舞われ、中央銀行は政策金利の利上げを行うことによって、
インフレを抑え込もうとしています。しかし、それが長期化する
と、景気が失速し、必然的に経済が弱体化します。
 しかし、日本は、もともと30年デフレで、欧米諸国とは真逆
の金融緩和を現在も続けているのです。それでも物価は高騰して
いますが、欧米諸国よりもはるかに低く、約3%程度に抑えられ
ています。いわゆるマイルドなインフレですが、もともと日本は
それを目指していたはずです。
 黒田日銀総裁は、「異次元金融緩和」の目的として、「2%の
物価上昇」を目指していたのです。もっとも日銀の目指している
のはCPIでも「コアコアCPI」の方です。コアコアCPIと
は、天候や市況など、外的要因に左右されやすい食料(酒類を除
く)とエネルギーを除いて算出した指数のことです。これについ
て、竹中平蔵氏は、次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
 市場であまり議論されないのが不思議だが、日銀の黒田東彦総
裁が就任してから、コアコアCPIの上昇率が2%を超えたのは
初めてのこと。これが続くと日銀は政策を変えやすくなる。
                      ──竹中平蔵氏
─────────────────────────────
 「コアコアCPIの上昇率が2%を超える」とは、日銀の目標
であり、このレベルのマイルドなインフレが持続することは、日
本にとって好都合なことです。これについては、添付ファイルの
右上の折れ線グラフをご覧ください。
 これは、主要株価指数の推移を示していますが、日本のTOP
IXと日経平均がダントツです。この状況が持続して、岸田政権
が経済政策を間違えなければ、日本は完全にデフレから脱却し、
経済は成長するはずです。マイルドなインフレなら、企業は賃上
げをし易くなるし、設備投資も活況化するはずです。そうすれば
日経平均株価4万円超えも実現する可能性があります。しかし、
岸田政権はうまく経済をコントロールできるでしょうか。
           ──[メタバースと日本経済/019]

≪画像および関連情報≫
 ●2023年の日本経済見通し
  ───────────────────────────
   日本は欧米と比べてコロナ禍からの回復が遅れていたが、
  2022年には感染症と経済活動の両立が進む中で順調に回
  復した。ただし、実質GDPは、2019年平均の水準まで
  回復しきれていない。
   2023年の実質GDP成長率は、前年比+1%台の緩や
  かな回復が続く見通しである。海外経済の減速により輸出は
  弱含むことが想定されるが、コロナ禍からの回復余地が残っ
  ている個人消費や設備投資の回復が続き、内需主導の緩やか
  な回復が続くとみられる。2022年は欧米で記録的な高イ
  ンフレが続いていた中、日本のインフレ率は相対的に低位で
  はあったものの、4月以降は日銀の物価目標である2%を超
  えて推移してきた。       https://bit.ly/3x0c8a6
  ───────────────────────────
2023年の日本を占う3つのグラフ.jpg
2023年の日本を占う3つのグラフ
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2023年02月08日

●「失われた30年/自公政権に責任あり」(第5902号)

 今年に入ってからのEJは、日本においてプラスの面を探して
取り上げています。なぜかというと、元旦夜の「朝生」で、今年
の日本が良くなると答えた人が14%で、悪くなると答えた人が
85%もいたからです。きわめて悲観的な意見です。
 そのため、日本にも世界トップのものがあるとして、対外純資
産31年連続の世界第一位をご紹介したのです。2021年度の
日本の対外純資産は411兆1841億円であり、2位のドイツ
に約100兆円の差をつけています。しかし、この事実を知って
いる日本人は非常に少ないと思います。なぜなら、国もメディア
もこのことを積極的にPRしないからです。
 それから日本人なら子供まで知っている「借金大国日本」の本
当の実態の分析です。日本の国債残高は、2022年度末には約
1029兆円。これは財政を生み出す元となる国の財政規模(G
DP)の2倍を超えています。これがきわめて深刻な事態である
ことは確かです。
 しかし、これにも対外純資産世界一に加えて、国の保有する金
融資産などを考慮する純債務で見たり、日銀がその約半分の国債
を保有している現状についても検討すると、必ずしも危機とはい
えないのです。むしろ問題なのは、失われた30年といわれる経
済の低成長による労働賃金が伸びていないことの方が問題です。
その30年のほとんどの期間において政権を担ってきた自公政権
の経済政策の失敗こそ責任が問われるべきです。
 「防衛増税」に対する国民の怒りがくすぶっています。国民の
多くは、防衛費増額には賛成であるものの、増税はないだろうと
思っています。消費税の税率を5%から10%に倍増させたばか
りであり、現在起きているインフレによる諸物価高騰に政府とし
て何の対策も講じていない岸田政権に対する怒りからでしょう。
 しかし、防衛増税は既に決まっています。決まっていないのは
実施時期だけです。野党は、通常国会で追及するといっています
が、どのように追及しても、政府は絶対に防衛増税を変更しない
でしょう。岸田政権はこの問題に関しては、「聞く耳をもたない
政権」であるからです。
 野党は「増税するなら解散して信を問え!」といっていますが
岸田政権は広島サミット後を解散の時期を慎重に探っているもの
と思われます。仮に選挙をしても、自民党が勝利すると思ってい
るからです。
 しかし、岸田政権について、自民党元事務局長の久米晃氏は、
雑誌『選択』の取材に次のように答えています。自民党は決して
安泰ではないということです。
─────────────────────────────
──自民党はこの10年間、国政選挙で勝ち続けています。
久米:勝ったように見えているだけだ。第2次安倍晋三政権が誕
 生した2012年の総選挙以降、自民党が「国政選挙8連勝」
 などといっているが、間違っている。投票率はずっと下がり続
 けて、有権者の半分程度しか選挙に参加しない。前回の参議院
 議員選挙で自民党の比例票は1800万程度しかとれておらず
 野党を合わせた数字より低いのが実情。それでも野党側に勢い
 がないから、勝っているように見えるだけだ。投票というのは
 有権者による未来への先行投資。選挙に行かないのは、政治に
 対する期待感がないからだ。自民党は決して安泰ではない。
  ──『選択』/2023年2月号「巻頭インタビュー」より
─────────────────────────────
 問題なのは、防衛増税に反対しているのは野党だけではなく、
自民党内部の旧安倍派を中心とする勢力であることです。「国債
60年償還ルール」の変更を主張しているのもこの勢力です。
 この「国債60年償還ルール」の変更ないし、廃止に関して、
ネットではさまざまな批判が出ています。それはこのルールを変
更したり、廃止すると、日本国債の信認が下がるというレポート
です。私は、これらのレポートのほとんどを読みましたが、レポ
ートの著者を調べると、そのほとんどが財務省出身の学者です。
増税の時期になると、いつもこれらの財務省の御用学者たちが蠢
動を始めるのです。
 岸田政権が2023年と2024年にかけて計画している増税
スケジュールは次の通りです。
─────────────────────────────
◎2023年
    4月:国民健康保険料の上限を2万円引き上げ
      :自賠責保険料の引き上げ
   10月:インボイス制度導入(消費税引き上げ議論開始)
◎2024年
    4月:たばこ税増税
      :法人税増税
      :所得税増税
      :復興特別所得税の期間延長
    年内:後期高齢者医療保険の保険料上限を年73万円に
       引き上げ
      :高齢者の介護保険の自己負担を1割から2割へ
      :国民年金加入年齢を60歳から65歳に引き上げ
       決定
                  https://bit.ly/3HVQf28
─────────────────────────────
 もの凄い増税ラッシュです。上記以外に、「異次元の少子化対
策」の財源として、消費税税率13%も、きっと行われるとみて
います。これでは、日本経済はさらに失速し、失われた40年、
50年になってしまいます。
 岸田首相は政権奪取の記者会見で、ある記者から、「財務省の
ポチといわれていますが」といわれ、苦笑いをしていましたが、
首相周辺のスタッフのほとんどが、財務省の出身者で固められて
おり、首相のその提案の上に身を委ねているからです。
           ──[メタバースと日本経済/018]

≪画像および関連情報≫
 ●「失われた30年」でなく「失った30年」、デジタル革命
  を逸した日本の危機
  ───────────────────────────
   「失った30年」。経済同友会が2022年10月11日
  に発表した提言に次のような一節がある。「バブル崩壊後の
  『失われた30年』は、自責の念を込めて、敢えて『失った
  30年』と表現したい。特に、イノベーションによる社会変
  革は民間が主導すべきであり、企業経営者には日本再興を本
  気で成し遂げる気概に欠けていた」。
   その反省はよしとしよう。ただ、責任は経営者だけにある
  のではない。同友会の提言でも「失った30年は政治・行政
  ・企業による不作為」と記している。そして何よりも問題な
  のは、直近の10年間の不作為だ。少し前までよく使われた
  フレーズは「失われた20年」であった。本来ならこの10
  年は失われた20年を取り戻すべく、DX(デジタル変革)
  などの改革に全力で取り組まなければいけなかった。
   10年前から今日に至るまで、この問題意識は広く共有さ
  れていたはずだ。2012年12月に成立した第2次安倍晋
  三政権の経済政策、いわゆるアベノミクスでは、金融緩和や
  財政出動と共に成長戦略が「3本の矢」とされた。中でも重
  要なのが成長戦略で、規制緩和などにより民間の投資を引き
  出し、イノベーションによる社会変革や経済の持続的成長を
  促そうというものだった。    https://bit.ly/3XkEJC1
  ───────────────────────────
防衛費増額/増税の記者会見.jpg
防衛費増額/増税の記者会見
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2023年02月07日

●「日銀保有国債は政府債務と相殺される」(第5901号)

 知識を整理して先に進みます。政府の借金である国債の残高は
2022年末には1029兆円に上るとみられています。この額
は、国の経済規模(GDP)の2倍を超えており、主要先進国の
中で最も高い水準にあります。
 しかし、この国債残高の半分の約500兆円は日銀が保有して
います。これは、2012年から発足した安倍政権が、日銀と連
携して2020年9月まで推し進めてきた経済政策「アベノミク
ス」の結果であるといえます。
 この日銀の保有する国債約500兆円について、2つの意見が
あります。
─────────────────────────────
    @政府の借金である国債の半分はなくなっている
    A中央銀行による過大な国債保有はリスクがある
─────────────────────────────
 @の根拠は、日銀は政府の子会社であり、政府と中央銀行を合
わせた統合政府バランシートで見れば、政府の国債残高の約半分
は相殺されるという考え方です。
 Aの根拠は、中央銀行が国債の約半分を引き受けても、それは
統合政府バランシート上で負債に計上され、それは、日銀にリス
クをもたらすという考え方です。
 大量に国債を引き受けたことによる中央銀行(日銀)のリスク
について考えてみます。リスクの1つに「日銀が大損をする」リ
スクがあるといいます。
 日銀は金融機関から高値で国債を買っていますが、景気が良く
なると、国債価格は下落します。景気が回復したので、日銀が、
金融緩和策から金融引き締め策へと転ずると、日銀には逆ザヤと
なって巨額の損失が生じます。だから、中央銀行が国債を買うこ
とには強い批判があるのです。
 これに関して、米国の中央銀行であるFRB元議長のベン・バ
ーナンキ氏が、来日したとき、日銀関係者などから、日銀のリス
クについて質問があったのですが、そのとき、バーナンキ元FR
B議長は、次のように答えています。
─────────────────────────────
 日銀資産の評価損は政府資産の評価益だから問題はない。もし
気にするなら、政府と日銀の間で損失補填契約を結べはいい。
             ──ベン・バーナンキ元FRB議長
                 ──高橋洋一著/あさ出版
    『新・国債の真実/99%の日本人がわかっていない』
─────────────────────────────
 それでは、日銀はどのようにして、国債を入手したのでしょう
か。国債は民間金融機関が保有しているので、日銀は各金融機関
が日銀に対して設定している日銀当座預金に代金を振り込んで国
債を入手しています。
 この場合、政府債務である国債は、当座預金ということになっ
ていますが、投資家は貨幣そのものと認識します。つまり、国債
は貨幣に置き換わっただけです。したがって、統合政府バランシ
ート上では、国債は「資産」に、貨幣や当座預金は「負債」に記
載されます。つまり、国債を貨幣化したに過ぎず、実際としては
それ以上でもそれ以下でもありません。
 これをめぐって、経済学者の高橋洋一氏と田中秀明明治大学教
授が「日銀の当座預金に債務性はあるかないか」というかなりテ
クニカルな論争を繰り広げています。この論争について、経済評
論家の加谷珪一氏は、2016年の時点で、次のように論評して
います。
─────────────────────────────
 高橋氏が主張するように、政府と日銀のバランスシートを統合
すれば政府がもつ負債900兆円のうち、日銀が保有する400
兆円分の国債は相殺され、政府の負債は実質的に500兆円に減
少する。理屈上は、政府が持つ負債をすべて日銀が買い取れば、
政府の借金をゼロにすることも可能だ。
 では、消えてしまった借金はどこに行ったのだろうか。それは
日銀当座預金ということになる。日銀は400兆円の国債を保有
する代わりに、同じ金額分の通貨(日本銀行券と当座預金)を発
行しているので、この会計上の操作は、政府債務を貨幣化したこ
とにほかならない。簡単に言ってしまえば輪転機を回して借金分
だけお札を印刷したというわけだ。
 ここで両氏は、当座預金の債務性について論争を繰り広げてい
る。田中氏は、当座預金を帳消しにはできず、しかもこれを維持
するためには、相応の金利負担が必要であり、実質的に国債と変
わらないと主張。高橋氏は、原則として当座預金は無利息で償還
期限はないので、実質的な債務性はないと主張し、両氏の主張は
対立している。というよりも、両氏の主張はあまり噛み合ってい
ない。               https://bit.ly/3joJXPf
─────────────────────────────
 「日銀の当座預金に債務性はあるかないか」という議論はテク
ニカルで難しいですが、高橋洋一氏のいう通り、日銀当座預金は
一般的な意味での「債務」という解釈にはなりにくいと考えられ
ます。したがって、日銀が国債を買うということは、高橋氏のい
う通り、有償還・有利子の国債を無償還・無利子のマネタリーベ
ースに置き換えることを意味しているのです。
─────────────────────────────
 統合政府のバランスシートで考えるというのは、日銀が購入し
た有償還・有利子の国債が、無償還・無利子のマネタリーベース
と置き換えられることを意味する。このため統合政府のバランス
シートの負債は、負債側は国債等950兆円、日銀券100兆円
日銀当座預金300兆円となるが、マネタリーベースの400兆
円は実質的に負債から除いて考えてもいい。  ──高橋洋一氏
                  https://bit.ly/3jsXtkP
─────────────────────────────
           ──[メタバースと日本経済/017]

≪画像および関連情報≫
 ●日銀当座預金を民間銀行の「預金」と勘違いする人々へ
  高橋洋一氏
  ───────────────────────────
   この「ダイヤモンド・オンライン」(DOL)で興味深い
  論考があった。11月1日の田中秀明氏による「『日本は借
  金が巨額でも資産があるから大丈夫』という虚構」である。
  田中氏は財務官僚出身で、民主党政権時代にブレーンになっ
  ていた人だ。
   この記事は、2015年2月5日の筆者の「国の債務超過
  490兆円を意外と簡単に減らす方法」への反論だろう。こ
  れは、日銀のマネタリーベースには実質的な債務性がないこ
  とを使うと、統合政府ベースで実質的に国債はなくなること
  を書いたものだ。
   田中氏の論考は長く誤りが少なくないが、ここでは次の一
  点に絞っておこう。
   11月1日付けのDOLの論考で、《「統合政府ベースで
  日銀が保有する国債を相殺することができても、日銀に預け
  た民間の預金は負債として残り、統合ベースで見た場合に負
  債が減ることはない。もし、政府が強制的に負債の部から預
  金を落とし政府の負債を減らすというのであれば、それは国
  民から貯蓄を奪うことであり、言い換えれば、預金に対して
  100%の税率で課税することになる。先ほど連結のBSで
  説明した、日本郵政が保有している国債と同じことだ。」》
  と説明している。この記述は誤りである。
                  https://bit.ly/3XVhtvj
  ───────────────────────────
加谷珪一氏.jpg
加谷珪一氏
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2023年02月06日

●「日銀当座預金に債務性はあるか否か」(第5900号)

 今回のテーマの第1回(1月4日)において、「朝まで生テレ
ビ」での森永卓郎氏の発言をご紹介しています。この発言をもう
一度再現します。
─────────────────────────────
 2020年度でいうと、政府が1600兆円の負債をかかえて
います。その一方で、1100兆円の資産を持っており、その7
割は金融資産なんです。つまり、日本の純債務は500兆円しか
ない。GDPとほぼ同額の債務であるなら、先進国ではほぼ並み
の水準です。しかも、日本の場合、日銀が大量に国債を持ってい
て、それが500兆円ぐらいになる。日銀が国債を保有した瞬間
に借金は消えるんです。ということは、日本は、完全に無借金に
なっているのです。にもかかわらず、財務省は増税を続けようと
している。         ──森永卓郎氏の朝生の発言より
─────────────────────────────
 会計学では、負債の総額を「グロス」、負債から資産を引いた
額を「ネット」といいます。森永卓郎氏によると、日本のネット
債務(純債務)は約500兆円であり、GDPとほぼ同額の債務
なので並みの水準であり、財政破綻の心配などないといっていま
す。これに対して、財務省系の人々は、資産を一切無視して、借
金の大きさだけを問題視しています。
 この森永氏の主張に対して、高橋洋一氏は、自著で次のように
述べています。
─────────────────────────────
 伝統的な財政の考え方では、政府のグロス債務、または債務残
高の対GDP比に着目する。バランスシートの右側だけを見て、
借金がどれだけあるか、その借金がGDPに占める割合はどれぐ
らいか、ということだ。
 しかし、借金だけ見るのは一面的すぎて、本当の財政状況はつ
かめない。それを、まずバランスシートの右側と左側の両方を見
よう。しかも日銀のバランスシートも合体させてみよう、という
のが、「統合政府バランスシート」だ。これは私が勝手にいって
いることではない。        ──高橋洋一著/あさ出版
    『新・国債の真実/99%の日本人がわかっていない』
─────────────────────────────
 その「統合政府バランスシート」として、高橋洋一氏は、次の
図を掲げています。
─────────────────────────────
   ◎資 産       ◎負債
    資 産 1000   国 債   1500
    国 債  500
    徴税権  400   銀行券など  500
─────────────────────────────
 高橋洋一氏は、負債の「銀行券など」について、「利子負担な
し、償還(返済)負担なしだから、実質的に債務とはいえない。
したがって税収を除いても『統合政府バランスシート』の資産と
負債は、ほぼイーブンになる」といっています。
 これに対して、言論プラットフォーム「アゴラ」の代表である
池田信夫氏は、次のように述べて、政府と日銀の本物の連結財務
諸表を示しています。これについては、添付ファイルをご覧くだ
さい。
─────────────────────────────
 本物の財務省の連結財務諸表では、資産が1121兆円なのに
対して、負債は1661兆円。政府(一般会計+特別会計)は、
540兆円の債務超過なのだ。
 高橋氏のバランスシートがバランスしていないのは、統合政府
の負債に日銀当座預金を入れていないからだ。540兆円の国債
は日銀当座預金でファイナンスされているので、統合政府では負
債側にも同額が計上される。国債をすべて日銀が買い取ったとし
ても、図のように統合政府の負債は消えない。日銀の市中銀行に
対する負債に置き換わっただけだ。
 政府が債務超過になるのは大した問題ではない。ほとんどの国
の財政は赤字だが、資金繰りには困らない。国債が消化できなく
なくなったら増税すればいい。それが高橋氏の図に描かれている
「徴税権」である。つまり、将来の税収が借金の担保になってい
るのだ。
 徴税権は簿外資産で、正確にいうとプライマリーバランスの累
積黒字である。現実には将来、540兆円も黒字が出ることは考
えられないが、国債を全額償還する必要はない。消費税をヨーロ
ッパ並みに上げるだけで、毎年20兆円以上、黒字が増えること
が、財源の担保になっている。    https://bit.ly/3RC6CnF
─────────────────────────────
 日銀当座預金とは何でしょうか。
 日銀当座預金とは、金融機関が日本銀行に開設している原則と
して無利息の当座預金のことです。主として、金融機関同士や、
日銀、国との決済手段のほか、金融機関が企業や個人に支払う現
金通貨の支払い準備、準備預金制度の対象となっている金融機関
の準備預金のために利用されます。
 添付ファイルの「統合政府バランスシート」では、540兆円
の国債は、日銀当座預金でファイナンスされているので、統合政
府バランスシートでは、負債側に同額が計上されています。国債
を日銀が購入したからといって、政府債務がその分なくなること
はないというのです。
 これについては、高橋洋一氏と明治大学教授の田中秀明氏が、
日本の政府債務問題について同様の論争を繰り広げています。し
かし、当初は巨額の政府債務をめぐる是非の話だったものの、日
銀の当座預金に債務性はあるのかという、かなりテクニカルな問
題に入り込んでしまっています。
 果たしてどちらが正しいのでしょうか。明日のEJでもこの問
題について考えることにします。
           ──[メタバースと日本経済/016]

≪画像および関連情報≫
 ●日銀の債務超過懸念の真相、世界の有識者は「心配無用」
  高橋洋一氏
  ───────────────────────────
   日銀が金融引き締めに転じた際、赤字や債務超過が懸念さ
  れるという説が話題になっているが、その是非はどうか。
   景気が良くなれば国債金利が上がる(国債価格は下落。割
  引債なら、金利1%なら価格99円だが、金利2%なら98
  円)ので、国債を保有していた日銀は損失になるという論説
  だ。実はこの種の議論は、20年以上前から行われている。
   かつてローレンス・サマーズ元米財務長官が来日したとき
  日銀関係者から同様の質問が出たことがあるが、サマーズ氏
  は一言、「So what?(それがどうした)」 とあきれて返答
  したのだ。
   説明は二通りある。一つは中央銀行だけでみる。中央銀行
  の負債は、ほぼ銀行券と当座預金で、銀行券はもちろん無利
  息・無償還だ。形式的に負債であるが、負担がないのだから
  経済的な意味で負債性はない。
   当座預金は銀行券と完全に代替する。このため、これも本
  来は無利息・無償還だ。民間企業が民間金融機関に預ける当
  座預金をみればわかる。しかし、日銀の場合、民間金融機関
  への「お小遣い」として、200兆円までは0・1%の利息
  をつけている。この付利は白川方明(まさあき)総裁時代に
  設けられたものであって、それ以前はなかった。本来の無利
  息であれば、債務超過という概念に意味はないが、仮に一定
  の債務超過になっても大したことはない。むしろ当座預金へ
  の付利を止めるべきだ。    https://bit.ly/3HUKpOs
  ───────────────────────────
統合政府/連結貸借対照表.jpg
統合政府/連結貸借対照表
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2023年02月03日

●「統合政府で日本の財政はどうなるか」(第5899号)

 「日本銀行は政府の子会社である」という安倍元首相の発言の
2つの問題点を再現します。
─────────────────────────────
   1.日本銀行は本当に政府の子会社であるかどうか
 → 2.日本銀行が半分相当の国債を持つとなぜ安心か
─────────────────────────────
 続いて「2」について考えます。
 「統合政府」という考え方があります。政府と中央銀行(日本
では日本銀行)を一体化したものを「統合政府」といい、国の財
政状況は統合政府として考えるべきであるという考え方です。
 この「統合政府」の考え方について、鈴木財務相は、2022
年3月16日の参院財政金融委員会において、次のように反対意
見を述べています。
─────────────────────────────
 日銀は、政府から独立して金融政策を行っているにもかかわら
ず、日銀が永久に国債を保有し、結果的に財政ファイナンスを行
うと誤解される恐れがあるため、財政を統合政府で考えるのは適
切でない。                 ──鈴木財務相
─────────────────────────────
 現在、日銀は安倍元首相によるアベノミクス政策の推進によっ
て政府の借金である国債の50%以上を保有しています。これは
統合政府の考え方に立つと、子会社が親会社の債務を負っている
に過ぎないことになります。
 したがって、政府と日銀を統合した連結財務諸表を作れば、親
会社の債権・債務が相殺されてしまいます。これによって政府債
務は激減し、その結果、日本の財政は危機的ではなくなり、逆に
財政余力が生じることになります。このように、統合政府によっ
て、政府と中央銀行が連結財務諸表を作ることは、世界の常識に
なっています。
 そのため、ノーベル経済学賞受賞経済学者、ジョセフ・スティ
グリッツ教授が来日したときに、「政府や日銀が保有する国債を
相殺すると、日銀の資産である国債が相殺される」という発言を
したのです。高橋洋一氏によると、スティグリッツ教授のいった
「相殺する」という言葉は、英文の原資料では「cancelling」と
いう英語をなっていたそうです。
 しかし、会社法上の親子会社が連結財務諸表で一体に評価でき
るのは、その親子会社の目指す目的が一致していることが条件に
なります。しかし、政府と日銀はその目指すものが異なります。
政府と日銀の目指すものとは次の通りです。
─────────────────────────────
 @政府の目的は、国民の生活水準向上のために、福祉、公共投
  資、教育、防衛などの歳出を行うことである。
 A中央銀行の最大の目的は、国民が生活するうえで絶対に欠か
  せない通貨の価値を安定化させることである。
─────────────────────────────
 第2次安倍政権が発足した2013年は、日本経済はデレフの
状況にあったといえます。デフレとは、通貨の価値が強すぎる状
況であり、日銀としては、デフレを克服するには、通貨を増加さ
せることによって、通貨を弱める必要があります。一方政府とし
ては「デフレから脱却する」ためには、継続的に、大規模な財政
出動をする必要があります。
 したがって、「デフレから脱却する」という局面においては、
政府と日銀の目的は、ある程度一致しているといえます。すなわ
ち、政府がアベノミクスを掲げて、デフレ克服に取り組む局面に
おいては、統合政府は説得力を持つことができるといえます。
 しかし、インフレが懸念される状況になると、事情が変わって
きます。インフレが激しくなると、通貨価値は棄損され、国民生
活を混乱に陥れます。日銀としては、通貨価値の安定を図るため
に、膨張する政府の財政を監視する役割を担うことになります。
この段階において、政府と日銀の目指す目的が異なってきます。
そうなってくると、統合政府の考え方は説得力を失いつつあると
いえます。現在はそういう状況に近づきつつあるといえます。ま
さしくこの時期において、日銀の黒田東彦総裁は退任し、3月に
は新総裁が着任することになります。
 統合政府の危うさを指摘する声も多くあります。金融PLUS
の金融グループ次長の石川潤氏は、統合政府について、次の指摘
をしています。
─────────────────────────────
 日銀が国債を買えば買うほど統合政府の負債から国債は消えて
無利子の日銀券や超低金利の当座預金に置き換わる。日銀が買っ
てくれる限り、国債発行を増やしても問題ないという発想はここ
から生まれてくる。
 だが、こうした発想はかなり危ういといえる。日銀はコストな
しにお金を生み出せるとみられがちだが、これは利子の付かない
日銀券の発行などに限った話。現在、日銀の負債は日銀券120
兆円に対し、当座預金が550兆円程度ある。
 当座預金は民間銀行が国債などを日銀に売った見返りとして受
け取ったお金の積み上がりなどで、日銀の国債保有が増えるにし
たがって膨らんできた。民間銀行に支払う当座預金の金利はいま
でこそ極めて低いが、日銀が利上げに動く局面では、政策金利と
同じように上がっていく。
 日銀が国債を買い続けても、言い換えれば、統合政府の負債が
国債から当座預金に置き換わっても、負担はなくならない。むし
ろ、負債が長期の国債から短期の当座預金に置き換わることで、
将来の金利上昇局面で負担が膨らみやすくなる。
               https://s.nikkei.com/3X90rsB
─────────────────────────────
 実際の統合政府のバランスシートについては、来週のEJで詳
細をご紹介することにします。
           ──[メタバースと日本経済/015]

≪画像および関連情報≫
 ●過大債務の実態は不変/銀行課税リスクは避けられない
  スティグリッツ教授の「日銀保有国債の無効化」提案
  ───────────────────────────
   ジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授が、20
  17年3月14日の経済財政諮問会議に出席して行ったプレ
  ゼンテーションが反響を呼んでいる。スティグリッツ教授の
  提案の狙いを考察し、その実現方法と効果(副作用)を検討
  してみる。これは『金利と経済』でも触れた「統合政府とい
  う観点から財政コストを考える」点の応用問題ともいえる。
   スティグリッツ教授のプレゼンテーションに関して公表さ
  れた資料をみると、最終的な結論部分には、下記のように記
  されている。
  ・金融政策は限界に到達しており、日本は成長に悪影響を及
   ぼすことなく必要な税収を得るため、炭素税を導入する必
   要がある。
  ・最も重要なのは構造政策―イノベーションにおけるリーダ
   ーシップを日本が取り戻すために必要な政策を含む。
  ・世界第2位の民主主義国家として、世界は、来る数年間の
   日本のリーダーシップを特に必要とするだろう。
   プレゼンテーション資料全体の流れをみても、スティグリ
  ッツ教授の従来の持論でもある炭素税の導入が関心の中心で
  あることがわかる。しかし、メディアが大きく報道したのは
  必ずしも炭素税導入ではなかった。たとえば、ブルームバー
  グは「スティグリッツ教授:政府・日銀保有国債の無効化主
  張−諮問会議」という見出しで今回のプレゼンテーションを
  報道した。           https://bit.ly/3YaVu3d
  ───────────────────────────
鈴木俊一財務相.jpg
鈴木俊一財務相
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2023年02月02日

●「安倍元首相の『日銀子会社発言』」(第5898号)

 2022年5月9日のことです。故安倍晋三元首相が大分市の
会合で、次の発言をして、大騒ぎになったのを覚えているでしょ
うか。奇しくもその2か月後に、安倍首相は銃撃され、亡くなっ
ています。そのときの発言は次の通りです。
─────────────────────────────
 政府の1000兆円の借金(国債)の半分は日銀に国債を買っ
てもらっている。しかし、日銀は政府の子会社なので、60年で
返済の満期が来たら、返さないで借り換えて構わない。心配する
必要はない。              ──安倍晋三元首相
              https://s.nikkei.com/3JuOV7H
─────────────────────────────
 この発言の趣旨は、日本政府は約1000兆円の借金(国債)
を抱えているが、政府の子会社である日本銀行(日銀)がその約
半分を買ってくれているので、財政破綻などを心配しなくてもよ
いということです。しかし、この安倍発言には、次の2つの問題
点があります。
─────────────────────────────
   1.日本銀行は本当に政府の子会社であるかどうか
   2.日本銀行が半分相当の国債を持つとなぜ安心か
─────────────────────────────
 最初に「1」について考えます。
 この安倍元首相の発言について、鈴木俊一財務相は次のように
明確に否定しています。2022年5月13日のことです。
─────────────────────────────
 日銀は政府の子会社にはあたらない。政府は日銀に55%出資
しているものの、議決権を持たないことなどから、政府が経営を
支配している法人とは言えず、会社法でいうところの子会社には
あたらない。              ──鈴木俊一財務相
                  https://bit.ly/3Ds0hFI
─────────────────────────────
 当の黒田総裁も安倍元首相の発言に対して、5月13日にオン
ラインで行った講演で次のように反論しています。
─────────────────────────────
 日本銀行は、政府から過半の出資を受けているが、議決権が付
与されていないし、金融政策は、政策委員会が決定を行う仕組み
である。日本銀行の金融政策や業務運営は、日銀法により自主性
が認められていて、日本銀行は政府が経営を支配している法人で
はない。               ──黒田東彦日銀総裁
                  https://bit.ly/3RiN7jO
─────────────────────────────
 安倍元首相の発言に対して、肯定的発言も多数あります。国民
民主党代表の玉木雄一郎氏は、ツイッターで次のコメントを発信
し、これに対して「アゴラ」を運営する経済学者、池田信夫氏は
玉木氏のツイートに関連して、次のコメントをしています。
─────────────────────────────
◎国民民主党代表玉木雄一郎氏
 安倍元総理の「日銀は政府の子会社」発言に反発が出ているが
政府は日銀の株の55%保有しており、「統合政府」の考え方は
国際的にも常識。さらに財政法5条但書に基づき借換え債の直接
引受は行われている。その上で、一般的な直接引受は禁止されて
いるので、にわかに独立性が害されているわけではない。
◎池田信夫氏/「アゴラ」
 野党では玉木さんだけが正確に理解している。「統合政府」で
考えるのは常識で、問題は「直接引き受け」を認めるかどうか。
今の日銀法では認めていないが、これも検討の余地がある。
─────────────────────────────
 そして、極め付きは、やはり高橋洋一氏です。高橋洋一氏は、
5月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK!Cozy up!」 に出
演し、次のやり取りをしています。
─────────────────────────────
飯田:この発言に対して「日銀の独立性を脅かす発言だ」と一部
 が報じています。
高橋:この件については私は昔から「マスコミが間違っている」
 と言っているし、安倍さんは小泉政権のときに、副長官や幹事
長、官房長官をされていましたので、安倍さんには何回も説明し
たことがあります。
高橋:何が間違っているかと言うと、「独立性」という意味をマ
 スコミが勘違いしているのです。「子会社としての独立性があ
 る」ということですが、日々のオペレーションについては親会
 社から指示は受けませんよね。指示を受けるのは、大きな方針
 だけです。そういう意味での「独立性」ということです。これ
 は元FRB議長のバーナンキさんも言っています。
飯田:FRBの議長だった方。
高橋:バーナンキさんが日本へ来たときに、日銀で講演したので
 す。そのときに「どういう話をしたらいいか」と私に聞くので
 「独立性の話について、日本の解釈は間違っています」と言っ
 たら、彼はいま私が言ったようなことと同じような話をしてく
 れたのです。しかし、マスコミの報道では、なぜかそこだけ落
 ちていた。
飯田:報じられなかった。
高橋:そこだけすっぽり落ちていた。「ええ?」と思ったので、
 FRBのホームページを確認したら、FRBのホームページに
 は全部きちんと書いてありました。 https://bit.ly/3kRzlIS
─────────────────────────────
 このように、政府や日銀は公式には「日銀は政府の子会社では
ない」と否定しているものの、「日銀の独立性」の解釈の違いで
あって、安倍元首相の発言は、間違いではないといえます。問題
は、「2」の国債の保有の問題ですが、これについては、明日の
EJで検討することにします。
           ──[メタバースと日本経済/014]

≪画像および関連情報≫
 ●「日銀は政府の子会社」/安倍氏発言は本音か?
  焦りの表れか?
  ───────────────────────────
   「日銀は政府の子会社だ」。安倍晋三・元総理のこの発言
  が大きな波紋を広げている。政府・日銀はこれを真っ向から
  否定しているが、政府内では「安倍さんの本音が出た」と見
  る向きも多い。
   発言が飛び出したのは2022年5月9日、大分市で開か
  れた会合だった。安倍氏は1000兆円の政府債務のうち、
  半分は国債の形で日銀が購入しているとしたうえで「日銀は
  政府の子会社なので満期が来たら、返さないで何回借り換え
  てもかまわない。心配する必要はない」と解説してみせた。
   安倍氏は2012年末に政権に返り咲くと、翌13年1月
  に日銀に「物価目標2%」の導入を飲ませ、日銀にアベノミ
  クスの一翼を担わせてきた。黒田東彦氏を総裁に据えたほか
  副総裁、審議委員といった日銀の最高意思決定機関の人事も
  任命権者とし牛耳り、日銀を事実上、政府の支配下に置いて
  きた。
   この間、空前の異次元の金融緩和を続けさせるなど、日銀
  を「便利使い」してきたと言っても過言でない安倍氏として
  は、「政府の子会社」発言に何の違和感も抱かなかったのか
  もしれない。しかし、思わぬ批判が沸き起こった。「身内」
  であるはずの政府・与党内からの猛批判にさらされているの
  だ。「日本銀行は政府がその経営を支配している銀行とは言
  えず、会社法でいうところの子会社にはあたらない」
                  https://bit.ly/3XRrOZ1
  ───────────────────────────
「日銀は政府の子会社」発言の安倍元首相.jpg
「日銀は政府の子会社」発言の安倍元首相
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2023年02月01日

●「『60年償還ルール』高橋氏の意見」(第5897号)

 1月25日のニッポン放送「飯田浩司のOK!Cozy up!」 に
高橋洋一氏が出演して、「60年償還ルール」について、次のや
りとりがあったのです。
─────────────────────────────
高橋:いま話題になっている「60年償還ルール」というのがあ
 りますよね。
飯田:国債の・・
高橋:あれを一時的に撤廃する。2023年度予算では16・4
 兆円の債務償還費があるけれど、実はこれを他のところに繰り
 入れることができるのです。債務償還費をどこに繰り入れるか
 と言うと、もともと国債整理基金特別会計というものがありま
 す。予算で一般会計の歳出は立っていて、他のものはすべて国
 民に配るのだけれど、これは国債整理基金特別会計として、国
 のポケットに繰り入れるのです。
飯田:政府が支出してどこかにお金が行く。
高橋:行き先は間違いなく国のポケットです。右のポケットか、
 左のポケットなのです。左のポケットにはもう1つ、防衛力強
 化資金がある。そこに繰り入れればいいのです。そうすると、
 防衛財源確保法案は、ほとんど意味がなくなるし、防衛増税は
 全部吹っ飛ぶのですよ。
飯田:なるほど。          https://bit.ly/3HgEEcv
─────────────────────────────
 このやり取りを聞いていて理解できるでしょうか。重要なポイ
ントは、毎年の国家予算には、国債残高の1・6%が一般会計か
ら、国債整理基金特別会計に組み入れられることになっているの
です。2023年度予算では、16・4兆円が国債整理基金特別
会計という国のポケットに入ります。これは、国債の償還費に充
てられる資金です。
 実は、この「60年償還ルール」のような制度は、最初はどこ
の国もやっていたのですが、今では合理性がないということで、
廃止しており、今でもやっているのは日本だけです。なぜ、日本
はやっているのかというと、「財務省がやっているから」としか
いいようがないです。
 その旧態依然たる制度を大学の財政学の教授の多くは、何だか
んだとと理屈をつけて、その重要性を説いています。そうしない
と、国債の信認がなくなり、国債が暴落すると発言し、財務省の
歓心を買っています。まさに財務省のポチです。ポチにならない
と、テレビにも出してもらえないからです。メディアも事情はよ
くわかっているのに、財務省を怒らすような記事を書くことは、
まずないといえます。
 しかし、国債整理基金特別会計のポケットにはお金が積んであ
るので、高橋洋一氏によると、財務省ではときどきそれを別の目
的で使うことがあるそうです。それでは、償還のとき、お金が足
りなくなるではないかといいますが、もともと定額で支払うもの
を定率で積んでいるので、そこには誤差が生じ、不足分は借換債
に含めて処理しています。これについては、高橋洋一氏の次の発
言に注目していただきたいと思います。
─────────────────────────────
高橋:「それで何が悪いのか?」ということです。「国債整理基
 金特別会計を他に繰り入れたら国債が暴落する」と財務省は言
 うのだけれど、私は財務省のなかでこれを何回も破った常習犯
 なのです。
飯田:そうなのですか?
高橋:11回やりました。そのうち3回くらいは私の関連です。
 財務省からは、それをやると「国債が暴落する」と言われたの
 ですが、「暴落しない!」と言って進めてしまいました。そう
 したら、全然暴落しなかったのです。
飯田:何に使ったのですか?
高橋:他に使いました。いろいろと。
飯田:前例はあるのですか?
高橋:11回あります。今回は12回目をつくるかどうか、それ
 だけの話ですし、過去11回は何の問題もないですから。
飯田:なるほど。
高橋:まず大丈夫ですね。他の国でこんなことをしているところ
 はないから、まったく大丈夫です。
飯田:「60年償還ルール」で償還費を積んでいる国は、先進国
 にはない。
高橋:ありません。「国債償還が滞るではないか」と言うけれど
 国債整理基金特別会計では借換債という国債を出せるから、何
 の問題もないです。償還資金のための借換債を出すという意味
 で、まったく何の問題も起こりません。過去11回も行ったこ
 とがあるのに、12回目ができないというのは、信じられない
 です。そんなことになったら予算が混乱するでしょう。
飯田:確かに。
高橋:予算組み替えでも私はいいと思うけれど、財務省は絶対に
 嫌だと言うでしょうね。
飯田:なるほど。でも国民からすると、「他からそうやってお金
 が出てくるのであれば、まずはそちらをやってよ」と思います
 よね。いきなり増税ではなくて。  https://bit.ly/3Hg2V2f
─────────────────────────────
 高橋洋一チャンネルという動画があります。「国債60年償還
ルール」について、高橋洋一氏が解説しています。きわめて明快
な解説です。ぜひご覧ください。
─────────────────────────────
   ◎高橋洋一チャンネル
    今回の質問:国債60年償還ルールについて
                  10分22分
             https://bit.ly/3kPx8O2
─────────────────────────────
           ──[メタバースと日本経済/013]

≪画像および関連情報≫
 ●防衛財源確保「国債60年償還」延長論も 自民が本格議論
  ───────────────────────────
   防衛費増額の財源を巡る自民党の特命委員会が16日に始
  まった。歳出改革や税外収入など、増税以外の財源を模索す
  る。国債の「60年償還ルール」見直しで財源を捻出すべき
  だとの案も浮上する。償還期間を延長・廃止しても、浮いた
  国債費を防衛費に使えば借金は膨らむ。借金返済の担保が消
  えれば、市場の信認を失う恐れもある。
   萩生田光一政調会長が委員長を務める。初回の16日は非
  公開の役員会を開いた。増税幅の圧縮に向け、税以外の財源
  を議論する。安倍派を中心に根強い増税への不満を吸収する
  狙いがある。政府は防衛財源の確保法案を通常国会に提出す
  る方針だ。16日は法案審査を優先的に実施することで一致
  した。出席した党幹部は、「国会での法案審議が一段落した
  タイミングで税以外の財源論を議論する。『60年償還ルー
  ル』も議題に上がる」との見通しを示した。
   政府は2022年末、27年度の防衛費を現状から3・7
  兆円ほど上積みする方針を決めた。うち2・6兆円以上を歳
  出改革や税外収入、決算剰余金で捻出。残り1兆円強を法人
  ・所得・たばこの3税の増税で確保する。増税時期の具体的
  な議論は23年に先送りした。
               https://s.nikkei.com/40d4XJe
  ───────────────────────────
飯田浩司のOK!Cozy up!.jpg
飯田浩司のOK!Cozy up!
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2023年01月31日

●「60年償還ルール見直し実現するか」(第5896号)

 1月25日の衆議院代表質問で、立憲民主党の泉健太代表と岸
田首相の間で、防衛費増額の財源と防衛力強化に関して、次のや
りとりがありました。
─────────────────────────────
泉 健太代表:額ありき、増税ありきだ。決算剰余金の防衛費へ
 の転用は問題。特定財源化すれば、あらかじめ予算を膨らませ
 て余らせることで(さらに)転用可能だ。
岸田文雄首相:行財政改革の努力を最大限行う。決算剰余金は過
 去の実績を踏まえて規模を見込んでいる。あらかじめ予算を膨
 らませて防衛費に充てることは意図していない。
泉 健太代表:国債の「60年償還ルール」を変更して防衛費を
 捻出するのか。
岸田文雄首相:(ルールを)見直し、政策的な経費増加に使うと
 結果的に国債発行額は増加する。さらには市場の信認への影響
 に留意する必要がある。
         ──2023年1月26日付、朝日新聞より
─────────────────────────────
 岸田首相は、役人の書いた答弁書を読んでいますが、それは、
ルールを見直すと、結果的に国債発行額は増加し、市場の信認が
損なわれるというものです。
 財務省側に立って、「60年償還ルール」の見直しに反対を述
べる主要な意見を列挙することにします。
─────────────────────────────
◎鈴木財務相ほか
 償還期間を延ばすと、国債に対する信用にも影響してくる。日
本の債務残高対国内総生産(GDP)比はすでに世界最悪水準に
あり、異次元緩和で国債を大量購入してきた日銀が政策を見直せ
ば、借換債を含む国債を市場で消化しきれるのかという課題に直
面することになる。日銀が金融緩和策を修正し、金利が上がれば
その分、利払い費も増える。
◎土居丈朗慶応大学教授
 国債償還費は財源とはいえない。米国は議会が政府債務に上限
を設け、ドイツは国債発行を例外とするなど日本より厳しい財政
規律のルールがある。日本では60年償還ルールがそれにあたり
見直す場合には他の規律を考える必要がある。
◎木内登英野村総合研究所エクゼクティブ・エコノミスト
 赤字国債も含めて「60年償還ルール」が見直され、期間が延
長されれば、より将来世代へ負担を転嫁することになる。世代間
の負担の公平性の観点、経済の観点からの問題はより深まること
になる。償還ルールの期間を延長しても、政府の国債発行額、つ
まり政府の債務の水準は変わらない。他方、償還費を抑えること
が可能となるため、新規国債発行へのハードルが下がることで、
財政の規律が一段と緩むことになりかねない。それは、潜在的な
金利上昇リスクや通貨価値の信認低下リスクを高めるだろう。
─────────────────────────────
 財務省系の人は、今回のように、防衛国債を発行しようとした
り、償還ルールを変更しようとしたりすると、「国債が増加して
国債の信認が落ち、長期金利が上がって国債が暴落する」とか、
「将来世代に負担を転嫁する」といって反対します。
 さらに、「日本の債務残高対国内総生産(GDP)比はすでに
世界最悪水準である」とか、「日本は、財政破綻という氷山に向
かって突き進んでいる」のように強い言葉で警告を発し、今にも
日本の財政破綻が起きるかのようにいいます。
 しかし、その一方において、日本は債務残高にほぼ匹敵する金
融資産を保有していることに加えて、国債のほとんどが国内で消
費されているので心配はないとか、日本はダントツの対外純資産
国であって、しかも31年連続世界一であるという事実があった
りします。
 安倍晋三政権のときですが、経済財政諮問会議に2001年に
ノーベル経済学賞を受賞した米国のスティグリッツ・コロンビア
大学教授が出席したことがあります。そのとき、スティグリッツ
教授は、次のように安倍首相にアドバイスしています。
─────────────────────────────
    永久債と長期債で、債務を再構築したらどうか
      ──スティグリッツ・コロンビア大学教授
─────────────────────────────
 この提言にしたがって、永久債はともかくとして、100年後
に償還される国債であれば、少なくとも3世代くらいは、償還費
のことを心配しなくてもいいし、償還費該当分を教育費や防衛費
など他のことに使えることになります。
 「元本が戻ってこない国債なんか売れない」という人がいるか
もしれません。しかし、投資で重要なのは、「元本」よりも「利
子」なのです。
 仮に年率5%の国債を100万円購入したとします。100万
円の5%は5万円であり、20年で100万円の元が取れ、あと
は毎年5万円ずつ増えていくことになります。投資としての魅力
は十分あります。まして相手は民間企業ではなく、政府であり、
絶対安心です。十分売れると思います。
 国家は永続するという前提に立っています。したがって、今回
の「60年償還ルール」の見直し議論は、必ずしも廃止せよとい
うのではなく、60年を80年に延ばすぐらいのことなら十分可
能であるし、それをしたからといって、日本国債の信認が失われ
暴落することなど起こり得ないと思います。
 木内登英氏のいうように、「60年償還ルール」を「80年償
還ルール」に変更すれば、10年後の償還額は7500億円と、
25%減少することになり、その分を防衛費増額の財源に回すこ
とは可能です。しかし、財務省色の強い岸田政権で果たしてこれ
が実現できるかというと、それはほとんど実現性がないと考えら
れます。おそらく防衛増税は実現するものと思われます。
           ──[メタバースと日本経済/012]

≪画像および関連情報≫
 ●国債「60年償還ルール」見直しで防衛費捻出の悪手
  ───────────────────────────
   自民党内で国債の「60年償還ルール」見直しの議論が始
  まっている。岸田文雄政権が決めた防衛費増額では、その財
  源として歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入、増税の4
  つの確保策が検討されている。積極財政派が多数集まる安倍
  派では、増税への反対意見が強いが、同派の幹部である萩生
  田光一政調会長、世耕弘成参議院幹事長らが中心となって浮
  上させたのが、国債60年償還ルールの見直しだ。
   現在のところ、2027年度ベースで年1兆円強(防衛費
  増額の約4分の1)を増税で確保するというのが政府の計画
  だが、償還ルール見直しによって新たに防衛費財源を捻出で
  きれば、増税幅は圧縮できる。安倍派を中心とした積極財政
  派の狙いはそこにある。
   建設国債を財源とした公共事業の建築物は、耐用年数がお
  おむね60年であるため、その建築のための借金(国債)も
  60年で現金償還を完了させるのが望ましいのではないか。
  そうした考え方から生まれたのが60年償還ルールだ。
   具体的には、国債発行残高の1・6%(約60分の1)を
  毎年度の国債償還費として一般会計に計上する。実際には誤
  差が生じるものの、そうやって60年かけて元本を償還して
  いく形を取る。         https://bit.ly/3jawM44
  ───────────────────────────
ジョセフ・スティグリッツ教授.jpg
ジョセフ・スティグリッツ教授
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2023年01月30日

●「朝日政治部記者の書いた衝撃記事」(第5895号)

 「国債60年償還ルール」の話を続けます。岸田政権は、その
スタッフのほとんどが財務省官僚出身であり、岸田首相は彼らの
提言に乗って政権運営を行っています。岸田首相は、あの「日本
は財政破綻に向かっている」という論文を『文芸春秋』誌にわざ
わざ掲載した事務次官をそのまま現職に置いており、財務省的イ
デオロギーに染まっているといえます。
 防衛費増額に増税を持ち出したことで、「国債60年償還ルー
ル」の廃止ないし見直し議論が自民党内から沸き起こり、おそら
く財務省は内心「しまった」と思っていると思います。まさに、
「瓢箪から駒」であります。おそらく財務省が一番国民に知られ
たくないことは、このルールが日本独自のものであり、主要国に
おいては一切行われていないルールであることでしょう。
 そもそもG7の主要国では、国債は利息は支払うものの、その
元本については返済する意思はなく、償還期限が来たら、すべて
借換債を発行して済ませています。それにもかかわらず、どこの
国もやっていない国債の政府への元本返還を日本はわざわざやっ
ているのです。そうであるのに、「日本は借金大国である」とか
「そのうち財政破綻という氷山にぶつかる」とか、評判はさんざ
んです。理屈に合わないではありませんか。
 もともとこの考え方は、1966年に財政法第4条に基づいて
「建設国債」が発行されたとき、この国債については元本につい
ても60年かけて返済しようとして生まれたものです。その趣旨
は悪くないと思います。しかし、それが今やすべての国債に適用
されているのです。
 一方、国債60年償還ルールが適用されない国債もあります。
その典型的なものが「復興債」です。東日本大震災のための復興
債は、償還が復興特別増税に紐付けされています。震災発生時は
民主党の菅直人政権でしたが、期せずして増税議論が巻き起こり
復興特別増税が決まったのです。財務省にとっては「渡りに船」
でしょう。当時のデフレ色濃厚の日本において、増税をするとは
常識的には考えられないことであり、その結果として、日本経済
は、経済成長が一向に実現されないでいます。
 本来菅直人元首相は、突然、所得税増税を掲げて参院選を戦い
大敗北を喫しており、増税賛成派です。その菅内閣に続いたのが
こともあろうに自民党と組んで「社会保障と税の一体改革」を実
現させた野田佳彦内閣です。野田佳彦氏は、自身のこの決断を誇
りに思っているそうですが、多くの国民は、民主党に対して怒り
をもっています。その考え方は、立憲民主党の枝野前代表に受け
継がれています。立憲民主党の支持率が上がらない理由がここに
あります。マニフェストなる公約を破っての増税の恨みは非常に
強く大きいのです。
 それは、民主党の政権獲得時の選挙で「消費税を上げない」と
いう公約を平然と破り、消費税の5%の税率を10%に倍増させ
たからです。しかも、その増税額は社会保障の充実に一向に寄与
しているとは考えられません。野田氏は、財務大臣のときに、財
務省に洗脳されたものと思われます。
 東日本大震災による復興財源の確保を目的とする復興増税は、
所得税、住民税、法人税に上乗せするという形で徴収されていま
す。所得税に関しては、2013年(平成25年)1月1日から
の25年間(2038年まで)、税額に2・1%を上乗せすると
いう形で現在も徴収されているのです。あと16年徴収されるこ
とになります。
 岸田首相の防衛増税に関する所得税増税の考え方はこうです。
復興増税は忘れている人もいるほど長期の増税であり、「国民は
税額の2・1%天引きに慣れている」はずであるから、その税金
の額を増やさずに期間をさらに長期化させても、問題はないと考
えているようです。
 今回の防衛増税に対して国民はどのように考えているでしょう
か。政府寄りとされるNNN(読売テレビ)と読売新聞の調査で
さえ、反対派が賛成派の倍以上という大差になっています。
─────────────────────────────
     ◎NNN/読売新聞/1月19日
      防衛増税に賛成する ・・・ 28%
      防衛増税に反対する ・・・ 63%
─────────────────────────────
 しかし、NNN/読売新聞は、世論調査の結果の報道をしたに
過ぎず、岸田政権としては、世論がどうであれ、増税を実施する
構えです。そもそもメディアは、国債60年償還ルールの問題点
を知っていながら、まったく報道しません。新聞もテレビのモー
ニングショーなども同様です。
 そのような報道をすると、財務省はそのメディアに対して圧力
を加えるからであり、財務省は、そのための潤沢な予算を持って
います。
 しかし、この国債60年償還ルールの見直しに火をつけたのは
朝日新聞です。その記事は、2023年1月12日の朝刊に掲載
されています。この記事のリード文をご紹介します。
─────────────────────────────
 防衛費増額の財源確保をめぐり、自民党は近く政府の借金にあ
たる国債を安定的に返済するしくみである「60年償還ルール」
を見直す議論を始める。制度の廃止や60年の延長が想定される
が、市場の信認に影響を与えかねない。財務省も財政規律が緩む
ことを警戒しており、国債残高が膨張する恐れもある。
          ──2023年1月12日/朝日新聞朝刊
                   https://bit.ly/3jc4fLz
─────────────────────────────
 非常に慎重な書き方ですが、この記事は政治部に所属する記者
が書いたものです。財務省ベッタリの経済部の記者には絶対に書
けない記事です。国債60年償還ルールを見直せば、増税をする
必要はなく、防衛費増額を賄うことは可能です。
           ──[メタバースと日本経済/011]

≪画像および関連情報≫
 ●防衛財源議論で国債償還ルール変更が浮上:岸田首相は施政
  方針演説で増税への理解を訴える/木内登英氏
  ───────────────────────────
   政府は、防衛費増額について、歳出削減策などとともに、
  増税策を含む財源確保を昨年末に閣議決定した。岸田首相は
  1月23日の施政方針演説で、増税実施の決意を改めて述べ
  るとともに、増税実施への理解を広く国民に呼びかけるとみ
  られる。
   しかし閣議決定されたにもかかわらず、増税実施への反対
  意見は与党自民党の中で根強く残る異例の事態となっており
  財源議論は未だ決着していない。実際、自民党は19日に、
  防衛費増額の財源について増税以外の確保策を検討する特命
  委員会の初会合を開いた。その中では、一段の歳出改革や税
  外収入などが検討されたが、さらに、国債の「60年償還ル
  ール」を見直すことも議論されたのである。これは国債償還
  費を減らし、それを防衛費増額の財源に回すことを狙った措
  置であるが、財政健全化の観点からは大いに問題だ。
   政府が発行した長期国債を、60年かけて完全に償還する
  という「60年償還ルール」がある。例えば10年国債を6
  兆円発行すると、10年後の満期には1兆円を完全に償還し
  た上で、残り5兆円分については、10年の借換債を発行し
  て借り換えるのである。仮に「60年償還ルール」を「80
  年償還ルール」に変更すれば、10年後の償還額は7500
  億円と、25%減少することになる。その分を防衛費増額の
  財源に回すことは可能である。  https://bit.ly/3WJo0I0
  ───────────────────────────
防衛増税に反対する萩生田政調会長.jpg
防衛増税に反対する萩生田政調会長
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2023年01月27日

●「国債60年償還ルールを廃止せよ」(第5894号)

 1月23日から通常国会がはじまっています。閣議決定された
にもかかわらず、防衛増税実施への反対意見は、与党の自民党の
なかでも根強くあります。防衛費増額の財源確保について、政府
は十分な努力をしていないという不満が渦巻いているからです。
そのための特命委員会も結成され、1月19日に初会合を開いて
います。
 この特命委員会で、国債の「60年償還ルール」を見直すこと
が議論されています。ところで、「60年償還ルール」とはどの
ようなルールでしょうか。
 たとえば、2000年に600億円の10年物国債を発行して
財政支出を行ったとします。2010年になると、600億円の
国債の償還期限がきますが、このさい600億円の国債を償還す
ると同時に、500億円の10年物国債の借換債を発行して、実
質100億円だけ償還します。
 2020年にこの500億円の国債の償還期限がきますが、そ
のさい500億円の国債を償還すると同時に、400億円の10
年物国債を発行して、実質100億円だけ償還します。このよう
に、10年ごとに6分の1ずつ償還していくと、2000年発行
の国債は、2060年に事実上償還を終えることになります。こ
れが、国債の「60年償還ルール」です。
 それでは、なぜ「60年」なのでしょうか。
 一応の理屈はあります。国債を発行して、橋や道路という国の
インフラを整備するとします。これらのインフラの平均耐用年数
が約60年だからです。したがって、耐用年数までに債務の返済
を終えるようにすれば、「インフラという資産」と「国債という
負債」はバランスすることになります。つまり、政府のバランス
シートにおいて、「資産」と「負債」は一致するわけです。
 しかし、これは「建設国債」という名の国債に適用される理屈
であって、「特例公債」──国の歳出が歳入を超えた額に対して
補填目的で発行される国債(赤字国債)にはあてはまらないこと
は明白です。それでは、特例公債はどうするのでしょうか。
 何国債であろうと関係ないのです。すべて60年償還ルールで
償還します。そもそも「なんとか国債」という区別自体が無意味
なのです。なぜなら、これは政府内での便宜的な呼び名であって
国債は国債だからです。仮に、「建設国債」を買おうとしてもそ
んな国債はないので、買うことは不可能です。
 それでは、毎年償還する60分の1の償還費は、どこからくる
のでしょうか。それは「国債整理基金特別会計」です。毎年の国
債残高の「1・6%」が一般会計から組み入れられることになっ
ています。これを「定率繰入」(定率法)といいます。これに対
して、上の例のように10年後に一定額(100億円)を償還す
るのは「定額法」といいます。つまり、債務の償還は定額法なの
に、償還費の積み立ては定率法──これじゃ、計算が合うはずが
ありません。
 ところで、なぜ、1・6%なのでしょうか。それはきっと60
分の1を意識しているものと思われます。上の例にしたがって、
実際に計算してみます。10年経過すると、600億円の1・6
%にあたる9・6億円が国債整理基金特別会計に積み立てられ、
10年目には、100億円ではなく、9・6億円が償還されるこ
とになる──4億円不足します。
 この1・6%は国債残高の1・6%であるので、残高が少なく
なってくると、積立額も減ってきます。上の例で60年目になる
と、国債残高は100億円であるのに、年間積立額は1・6億円
しかなく、84億円も不足します。それでは、どうするのかとい
うと、不足額は別途一般会計から支出することになります。そう
であるなら、年間積立など意味はありません。きわめていい加減
であり、わざわざ財政を悪く見せたいのでしょうか。
 実は、「60年償還ルール」のようなことをやっている国は日
本だけです。グローバル・スタンダードでは、原則的に、政府の
債務(国内で自国通貨で発行されたもの)は、完全に返済(債務
をゼロに)することはなく、事実上、永続的に借り換え(満期が
来た国債を償還するさい、償還額と同額の国債を発行する)され
債務残高は維持されていきます。
 これが個人であれば、「借金を借金して返済する」ことになる
ので問題ですが、国のレベルであれば、何の問題もないのです。
米国、英国、フランス、ドイツなどの主要国は、単に利払いしか
計上していないのです。まして、日本の財政破綻率は、先進国の
なかではドイツと並んで最も低いレベルです。それなのに、財務
省はこの「60年償還ルール」を行い、わざわざ財政を厳しくし
ているのです。
 ZUUオンラインのサイトに掲載されているレポートでは、こ
の日本のやり方に関して次のように述べています。
─────────────────────────────
 グローバル・スタンダードでは積み上がった国の債務をどう返
していくのかという問いそのものが存在せず、利払いを続けなが
ら、債務残高を経済状況も安定させながらどう維持していくのか
という問いのみ存在する。
 その理由は、政府の負債の反対側には、同額の民間の資産が発
生し、国債の発行(国内で自国通貨で発行されるもの)は貨幣と
同じようなものとみなされるからだ。
 日本の異常な財政運営をグローバル・スタンダードに改革すれ
ば、歳出は債務償還費分の16・8兆円程度も削減できることに
なる。防衛費増額分は増税なしに十分にカバーでき、新しい資本
主義の成長投資に本予算でしっかりコミットすることまで可能と
なる。60年償還ルールを廃止するような柔軟な(国民を苦しめ
ない)歳出改革ができれば、積極財政の方針を維持でき、新しい
資本主義で「成長と分配」の好循環の実績を出すことも可能とな
るだろう。             https://bit.ly/3R6LFRu
─────────────────────────────
           ──[メタバースと日本経済/010]

≪画像および関連情報≫
 ●「建設国債の買いオペ」は実行可能か――国債の「60年償
  還ルール」について考える
  ───────────────────────────
   防衛費増額分の財源確保の問題をめぐって、国債の「60
  年償還ルール」のことが話題になっている。このルールを見
  直せば、「埋蔵金」が発掘できて増税なしで防衛財源が確保
  できるという話もあるようだが、そのようなことは実現する
  のだろうか。以下ではこの点について論点整理を行い、それ
  を踏まえて財政運営をめぐる課題について考えてみることと
  したい。
   あらかじめ記しておくと、60年償還ルールをめぐる議論
  をながめるうえでの大事なポイントは、財源不足を補填する
  手段という財政運営の面から見た場合の「国債」と、国が資
  金調達をするために発行する債券(金融商品)としての「国
  債」をきちんと分けて考えるということだ。赤字国債・建設
  国債というのは前者(財政面)から見た場合の国債の区分で
  あり、短期国債・長期国債というのは後者(金融面)から見
  た場合の国債の区分である。
   この両者の違いを意識的に分けて考えると、議論の見通し
  がよくなる。まずはこの点を確認するために、「建設国債の
  買いオペ」について考えてみよう。10年前、「日銀に建設
  国債を買ってもらう」という安倍晋三自民党総裁(当時)の
  発言が話題になったことがあった(2012年11月17日
  の熊本市での講演における発言)。https://bit.ly/3JoQ9B0
 ●グラフの出典/https://bit.ly/401U3G3
  ───────────────────────────
国債60年償還ルール.jpg
国債60年償還ルール
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2023年01月26日

●「誇るべきでない最大の対外純資産国」(第5893号)

 対外純資産は、毎年5月頃に発表されますが、2021年の対
外純資産のベスト4は次の通りとなっています。対外純資産とは
企業や政府などが海外に持つ外貨建て資産の評価額のことで、日
本は、31年連続世界第1位です。
─────────────────────────────
   ◎対外純資産ベスト4
    第1位/日 本 ・・ 411兆1841億円
    第2位/ドイツ ・・ 315兆7207億円
    第3位/香 港 ・・ 242兆7482億円
    第4位/中 国 ・・ 226兆5134億円
─────────────────────────────
 日本が経常黒字を続ける限り、その累積結果として、世界一の
対外純資産のステータスが保持されることになります。しかし、
対外純資産を支える構造は大きく変化しています。これについて
は、添付ファイルのグラフをご覧ください。
 その構造変化は、10年前から顕著になっています。2010
年以前は、海外投資としては証券投資が中心であり、直接投資は
限定的であったのです。ここで、証券投資とは、国外の株式や債
券などの金融資産に投資することであり、これに対して直接投資
とは、国外で事業活動を行うために企業を買収したり、生産設備
などに投資したりすることをいいます。
 これについて、みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの
唐鎌大輔氏は、次のように解説しています。
─────────────────────────────
 2000年代前半においては、日本の対外純資産は、その大半
が証券投資残高、すなわち米国債や米国株などに代表される海外
の有価証券だった。しかし、2011〜2012年頃を境に日本
から海外への対外直接投資が増えた結果、2021年末時点では
約半分(45・8%)は直接投資残高になっている。これは、日
本企業による旺盛な海外企業の買収(いわゆるクロスボーダーM
&A)の結果である。(一部略)
 リーマンショック後は、「金利なき世界」が常態化していたの
で、収益率に優れる直接投資が証券投資より好まれるのは合理的
な展開だったが、背景事情はそれだけとは考えにくい。それまで
断続的に日本が直面していた超円高や自然災害(地震、台風、津
波など)、硬直的な雇用法制など日本特有の様々なカントリーリ
スクが考慮された結果、直接投資は増えてきたのだという解説は
多い。とりわけ、2011〜2012年という時代を境にして直
接投資が増えていることを鑑みれば、やはり2008〜2012
年の超円高局面、2011年3月に発生した東日本大震災などの
影響は大きかったのではないかと推測される。
          ──唐鎌大輔著/日経プレミアムシリーズ
             『「強い円」はどこへ行ったのか』
─────────────────────────────
 この対外純資産の構造変化は、「有事の円買い」に大きな影響
を与えることになります。証券投資が中心であった時代では、有
事が起きたとき、流動性の高い海外有価証券を手放して円に換え
ることは容易に予想することができます。この場合は、有事の円
買いは機能を発揮することになります。
 しかし、直接投資の場合は、リスク回避のために買収した企業
を簡単に手放すとは考えにくいのです。したがって、直接投資の
割合が増えるということは、外貨のまま戻ってこない円の割合が
増えることを意味します。事実そういう傾向は強くなっており、
結果としてそれは「有事の円買い」そのものの退潮を意味するこ
とになるのです。
 しかし、ここで日本として考えるべきことがあります。ここま
で円の価値を支えてきたと思われる「世界最大の対外純資産国」
というステータスは、それほど日本として誇れるべきものではな
いということをです。
 なぜなら、国内から国外への証券投資や直接投資が旺盛だとい
うことは、日本企業として、日本国内に投資すべき魅力的な対象
がないことを意味します。企業として、縮小し続ける国内市場に
投資するよりも、勢いのある海外企業の買収や出資を通じて時間
や市場を買う方が、経営上プラスであると判断した結果であると
考えられるからです。
 唐鎌大輔氏にいわせると、『「世界最大の対外純資産国」は、
単純に資金の流れだけを捉えれば、日本企業による資本逃避(キ
ャピタルフライト)といえなくもない』と断じています。そうす
ると、このステータスは、いわゆる「失われた30年」の副産物
とみなすこともできます。
 31年連続世界一の「世界最大の対外純資産国」というステー
タスを日本はいつまで守れるでしょうか。日本の背後には、ドイ
ツが迫ってきています。これについて、唐鎌大輔氏は、次のよう
に分析しています。
─────────────────────────────
 この点、筆者は諸外国、とりわけドイツとの比較を気にしてい
る。ドイツは単一通貨ユーロという「永遠の割安通貨」を武器に
貿易黒字を稼ぎ続け、「世界最大の経常黒字国」としてのステー
タスを盤石なものにしてきた。この経常黒字のほとんどが貿易黒
字であり、通常ならば「通貨高→輸出減→貿易黒字縮小→経常黒
字縮小」という展開を辿るはずである。
 しかし、ユーロはドイツのほかイタリアやスペインやギリシャ
を含めてユーロであるため、ドイツの地力に相応しいほど強くな
ることは構造上絶対にない。だから、ドイツの経常黒字は減りづ
らいという特質がある。この点は断続的な通貨高をひとつの要因
として輸出企業が生産拠点の海外移管を進め、貿易黒字が消滅し
た日本とは対照的である。
    ──唐鎌大輔著/日経プレミアムシリーズの前掲書より
─────────────────────────────
           ──[メタバースと日本経済/009]

≪画像および関連情報≫
 ●日本は31年連続「世界最大の対外純資産国」/
  それでも円買いに貢献しない理由/唐鎌大輔氏
  ───────────────────────────
   円の信認に注目が集まりやすい昨今、「世界最大の対外純
  資産国」というステータスが「安全資産としての円」のより
  どころになっているのは間違いない。その意味で、年1度の
  対外資産負債残高統計は丁寧にチェックする価値がある。こ
  の点、5月27日、財務省から『本邦対外資産負債残高の状
  況(2021年末時点)』が公表されている。
   今回の本欄ではこの数字を詳しく掘り下げてみたい。具体
  的な数字を見ると、日本の企業や政府、個人が海外に持つ資
  産から負債を引いた対外純資産残高は、前年比56・1兆円
  増の411兆1841億円と2年ぶりに増加している。これ
  は年間の増加幅としては過去最大だ。2位のドイツ(315
  ・7兆円)との差は100兆円近くまでに拡大しており、こ
  れで31年連続「世界最大の対外純資産国」のステータスを
  維持したことになる。      https://bit.ly/3ZTUoup
 ●グラフ出典/──唐鎌大輔著の前掲書より
  ───────────────────────────
日本の対外純資産関連データ.jpg
日本の対外純資産関連データ
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2023年01月25日

●「日本経済に構造変化が起きている」(第5892号)

 「有事の円買い」という言葉があります。2008年に起きた
リーマンショックや、2011年の東日本大震災後では、円が安
全資産として、世界中の投資家から買われ、円高になったもので
す。とくに、2011年10月21日には、「1ドル=75円」
まで円高が進んだのです。
 しかし、日本は国民の誰もが知るいわゆる「借金大国」であっ
て、普通国債の残高は2022年度末には1029兆円に達して
います。そんな国の通貨が、なぜ、有事のさい、世界中の投資家
から買われるのでしょうか。
 それは、日本が世界一の「債権国家」であるからです。財務省
は、日本が稀有の借金大国であることは、財務省のトップである
財務事務次官が、わざわざ一般誌に論文を発表してまで国民に周
知させようとしますが、日本が世界一の債権国家を続けているこ
とは積極的には報道しないので、多くの国民はこの事実を知らな
いでいます。
 しかし、日本は、海外に莫大な資産を保有しているのです。し
たがって、リーマンショックのような経済市場が混乱する有事が
起きた場合、日本の企業や個人の多くが、海外にある資産を国内
へ引き上げることが予想されます。海外資産(多くの場合は米ド
ル建て)を国内に引き上げるということは、米ドルを売って円を
買うということであり、この動きが円高を進行させているという
わけです。これが有事の円買いです。
 しかし、今回のロシアによるウクライナ侵攻では円安が進行し
ています。有事の円買いが起きておらず、逆に円が売られていま
す。この事実をもって「円の実力が低下している」という論調が
支配的です。2022年10月21日には「1ドル=150円」
になったことをもって「円の価値は半減/75円→150円」と
までいわれていますが、必ずしもそうとはいえないと思います。
それならば、2022年2月にウクライナ危機が起きたとき、な
ぜ、円が買われず、ドルが買われたのでしょうか。
 これについて、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大
作チーフ為替ストラテジストは、それには2つの理由があるとし
て、次のように解説しています。
─────────────────────────────
 大きく2つの理由があります。1つ目は、確かに株価が崩れる
と円買いの連想が働きますが、足元では、ユーロやポーランド・
ズロチなど幅広い通貨に対して、全面的なドル買いが起きていま
す。ドルは世界一の軍事大国の通貨であり、世界中で使われる基
軸通貨であって、市場での流動性も円より高い。この「有事のド
ル買い」と「有事の円買い」が綱引き状態になっています。
 もう1つは、需給面で日本の貿易収支が赤字に転落しているこ
とです。国際商品は基本的に決済にドルを使います。日本の1月
の通関統計をみると、貿易赤字は2兆円規模に上っており、輸入
のためのドル買い需要がそれなりに出ていると考えられます。
                      ──植野大作氏
                  https://bit.ly/3kthDLz
─────────────────────────────
 ロシアのウクライナ侵攻により、コモディディ価格が上昇傾向
にあります。「コモディティ」とは、「商品先物」として取引さ
れているもののことです。具体的に何かというと、原油や天然ガ
スなどのエネルギー、銅や鉄鉱石などの工業用金属、金やプラチ
ナなどの貴金属、あるいは木材や小麦などまで含め、商品先物と
して取引されているもの。それらを総称して「コモディティ」と
呼んでいるのです。
 ウクライナやロシアは、穀倉地帯で貴金属の輸出国でもありま
す。したがって、コモディティー価格が上昇傾向にあるのですが
ドル買い需要が強くなるとの見方から、円買いは限定的になりま
す。逆にいえば、ユーロやズロチといった他の通貨に対しては円
買いがそれなりに進んでいます。
 しかし、今回の円安には構造変化が起きているという見方があ
ります。みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストである唐鎌
太輔氏による分析です。添付ファイルをご覧ください。
 変化は、2002年から2011年の10年間と、2012年
から2021年までの10年間を比較してみるとわかるというの
です。2つのグラフがありますが、はじめに、棒グラフの方を見
てください。
 経常収支は、約172兆円から約144兆円と減少しているも
のの、依然高水準にあります。これは、貿易収支が約96兆円か
ら約8兆円の赤字に転落したものの、第一次所得収支が約125
兆円から約195兆円へと大幅に黒字が拡大した結果なのです。
 続いて折れ線グラフの方をご覧ください。これは、貿易収支と
ドル円相場の推移をあらわしています。これを見ると、2012
年以降、貿易黒字が稼げなくなった結果、その後に際立った円高
・ドル安が起きていないことが分かります。これらについて、唐
鎌大輔氏は、近刊著書で次のように述べています。
─────────────────────────────
 「貿易収支ではなく所得収支で稼ぐ」というのは「成熟した債
権国」の姿である。リーマンショック、欧州債務危機、アベノミ
クスという局面変化を経験した直後の10年間(2012〜20
21年)で日本は、「未成熟の債権国」を卒業し、国の発展段階
が1つ進んだという事実は間違いなく、ここに構造変化の跡を確
認することはできる。            ──唐鎌大輔著
             『「強い円」はどこへ行ったのか』
                  日経プレミアムシリーズ
─────────────────────────────
 2021年から2022年にかけて、資源価格が高騰し、貿易
赤字が拡大しつつあります。2022年上半期(1月〜6月)の
貿易赤字は過去最大を記録しています。この状態がいつまで続く
のかについても注視する必要があります。
           ──[メタバースと日本経済/008]

≪画像および関連情報≫
 ●「円安」で起こっている日本人が知りたくないこと
  ───────────────────────────
   短期的には、アメリカのインフレ率急落を祈ることが、超
  円安に対処するための日本の唯一の選択肢かもしれない。し
  かし、長期的には、日本企業の競争力を根本的に強化しなけ
  ればならない。なぜなら、それが「実質」円安の根本原因だ
  からである(「実質」円の定義と経済的意義は後述する)。
  円安は、日本企業が国際市場で元気をなくしているから起き
  ているのだ。
   まず、短期的な話をしよう。この1年半、円安の唯一最大
  の要因は、アメリカの金利と日本の金利の差である。そして
  金利の上昇は、アメリカの高インフレに対するアメリカの武
  器である。日米金利差が大きければ大きいほど、日本からア
  メリカへの資金流入が増え、円安が進む。
                  https://bit.ly/3iWQTCM
 ●グラフ出典/唐鎌大輔著の前掲書より
  ───────────────────────────
2つのグラフ.jpg
2つのグラフ
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2023年01月24日

●「日本経済のポジションとはどこか」(第5891号)

 2022年10月21日、それは起きたのです。その日の外国
為替市場は「1ドル=151円」を付けたのです。これは、32
年ぶりの円安であり、日本経済にとって衝撃的な出来事だったと
いえます。問題は、この円安をどう見るかです。
 さまざまな意見がありますが、日本の通貨である円の推移を鋭
い視線で分析している、みずほ銀行、唐鎌大輔チーフマーケット
・エコノミストは次のように述べています。
─────────────────────────────
 従来「1ドル=100〜120円」だった円相場の変動域が、
「120〜140円」や「130円〜150円にスライドしてい
る可能性は高い。この原因として、日本の貿易黒字の消滅と対外
直接投資の急拡大がある。          ──唐鎌大輔氏
─────────────────────────────
 確かに、1922年度の貿易赤字(通関ベース)は20兆45
60億円であり、比較可能な1979年以降で最大になる見通し
です。2023年も13兆5540億円の赤字になるといわれて
います。
 ここで、国際収支の発展段階説における日本のポジションに話
を戻す必要があります。国際収支の発展段階説を以下に再現する
ことにします。
─────────────────────────────
          @未成熟な債務国
          A成熟した債務国
          B  債務返済国
          C未成熟な債権国
        → D成熟した債権国
        → E債権取り崩し国
─────────────────────────────
 以上のうち、@からCまでは簡単に説明をしております。結論
から先にいうと、日本はDの「成熟した債権国」のポジションに
あります。Dの「成熟した債権国」とEの「債権取り崩し国」の
違いは次のようになっています。
─────────────────────────────
           成熟した債権国   債権取り崩し国
      経常収支      黒字        赤字
 貿易・サービス収支      赤字        赤字
   第一次所得収支    大幅黒字        黒字
     対外純資産    大幅黒字        黒字
      金融収支      赤字        黒字
    ──唐鎌大輔著/『「強い円」はどこへ行ったのか』
                 日経プレミアムシリーズ
─────────────────────────────
 前提的な知識として「経常収支」について理解する必要があり
ます。経常収支とは、海外との貿易や投資といった経済取引で生
じた収支を示す経済指標のことです。
 この経常収支の構成要素として、自動車などのモノの輸出から
輸入を差し引いた貿易収支、旅行や特許使用料などのサービス収
支、海外からの利子や配当を示す第1次所得収支、政府開発援助
(ODA)などの第2次所得収支があります。
 この経常収支に、企業の買収や株式投資など金融資産の動きを
示す「金融収支」を加えたものが、国際収支となります。これに
ついては、財務省が毎月統計を公表しています。
 文章で説明すると、わかりにくいので、財務省が公表している
数値を以下に示します。
─────────────────────────────
                 2022年9月現在
   貿易・サービス収支 ・・・ ▲2兆1028億円
        貿易収支 ・・・ ▲1兆7597億円
          輸出 ・・・  8兆8275億円
          輸入 ・・・ 10兆5872億円
      サービス収支 ・・・   ▲3431億円
     第1次所得収支 ・・・  3兆2226億円
     第2次所得収支 ・・・   ▲2104億円
   −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
        経常収支 ・・・    9094億円
                  https://bit.ly/3ZRL0ra
─────────────────────────────
 第1次所得収支の3兆2226億円から、貿易・サービス収支
の赤字2兆1028億円と第2次所得収支の赤字2104億円を
引くと、9094億円という経常収支が得られます。
 コロナ禍で海外の旅行客が日本に来れなくなることによる、い
わゆるインバウンド需要が減り、サービス収支が赤字になったこ
とと、原油や天然ガスなどのエネルギー資源の大半を海外に依存
する日本は、折からの円安ということもあって、貿易収支は赤字
になっています。
 もともと日本という国は、1970年以降、貿易黒字を確保し
たうえで、海外投資の利子や配当金などの第1次所得収支の黒字
を加えて、大幅な経常黒字を稼ぐ国だったのです。このときの日
本は、国際収支の発展段階説では、Cの「未成熟な債権国」だっ
たのです。この膨大な経常黒字の累積が「世界最大の対外純資産
国」を築き上げたのです。このとき日本は、貿易収支と所得収支
の両方で稼ぐ国家だったわけです。
 しかし、コロナ禍から完全に脱却していないことはあるものの
貿易収支は赤字に転落し、結局、現在、日本の経常収支を支えて
いるのは、第1次所得収支だけということになります。しかし、
第1次所得収支の累積額は大きく、現在でも依然として「世界最
大の対外純資産国」のステータスを守っています。したがって、
現在の日本は、国際収支の発展段階説のDの「成熟した債権国」
に位置付けられているといえます。
           ──[メタバースと日本経済/007]

≪画像および関連情報≫
 ●成熟した債権国に進む日本経済/長谷川正氏
  ───────────────────────────
   日本経済を過去数十年間にわたって振り返ると、大きく変
  化している。この変化を多方面からとらえることができるが
  その1つは産業構造からのアプローチである。石油ショック
  後、産業の「軽薄短小化」、すなわちエネルギー消費量が少
  ない産業構造への転換が生じたが、生産するものは依然とし
  て「モノ」であった。その後、さらに構造転換が進み現在、
  「情報」という目には見えないもの、すなわち「IT化」が
  進展している。このほか、就業構造の変化からもとらえるこ
  とができる。女性の就業率が高まり、いまや日本経済は、女
  性労働力なしでは成り立たなくなっている。労働市場では、
  さらに終身雇用・年功序列制度といった日本経済に深く根付
  いていたと思われた制度が、最近では崩れてきている。この
  ように日本経済の変化を多方面からとらえることができるが
  本レポートでは、日本と海外との、「モノ」や「サービス」
  さらに「所得」の取引によってとらえることにする。日本経
  済の国際化が急速に進んでいるだけに、海外との取引におい
  て、日本経済の構造転換が鮮明に表れているはずである。本
  レポートで明らかになったことを前もって述べると、次の点
  である。
   @貿易・サービス収支の黒字額が縮小傾向にあること。
   A一方、所得収支黒字額は拡大傾向にあること。
   すなわち、日本経済は成熟した債権国に進みつつある。こ
  の動きは、今後さらに強まると見込まれる。なお、「成熟し
  た債権国」の厳密な定義については後で行うことにする。
                  https://bit.ly/3Hm89Lb
  ───────────────────────────
経常収支の推移.jpg
経常収支の推移
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | メタバースと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年01月23日

●「政府のエネルギー対策で大丈夫か」(第5890号)

 EJは、1月12日と13日、16日から20日までの7日間
休刊とさせていただきました。24年間継続してきた営業日連載
記録が途切れてしまいましたが、今日からEJを再開します。こ
れからもEJをよろしくお願いします。
 2023年1月21日付の日本経済新聞によると、2022年
12月の消費者物価指数(CPI)は、4・0%に上昇したとい
うことです。これは、変動幅の大きい生鮮食品を除く前年同月比
での上昇率です。消費者物価指数4%の上昇は、第2次石油危機
の影響で物価が上昇した1981年12月以来、実に41年ぶり
のことです。
 あらゆるものが値上がりしていますが、とくにエネルギー関連
は実に15・2%上昇し、その伸び率は、前月の13・8%から
拡大しています。このうち、電気代は21・3%、都市ガス代は
33・3%も上がっています。
 このような物価高騰で心配されるのは、消費の落ち込みによる
大不況の到来です。総務省による昨年11月の家計調査によると
物価変動の影響をのぞいた実質の消費支出は、6カ月ぶりに前年
比マイナスになり、明らかに消費マインドが弱まっています。今
回の不況が深刻なのは、今年の前半にかけての中国、米国、欧州
が景気減速に陥る懸念があることです。
 これに対して、岸田首相はどのような対策を講じようとしてい
るのでしょうか。岸田首相は、エネルギー価格高騰対策として、
次のように述べています。
─────────────────────────────
 物価高騰の一番の原因となっているガソリン、灯油、電力、ガ
スに対して、集中的な激変緩和措置を講じる。エネルギー関連の
物価高対策として「総額6兆円、平均的な家庭で23年前半に総
額4万5000円の支援となる。        ──岸田首相
              https://s.nikkei.com/3Hku1GN
─────────────────────────────
 23年前半までに平均家庭に対して4万5000円の補助──
これを人気取りのためのバラマキという批判もありますが、岸田
政権としては、もっと「異次元の措置」を講ずるべきです。これ
によって日本経済が不況の淵に沈んでしまうと、元も子もないか
らです。
 実際に、日本をはるかにを上回る大胆な補助をしている国があ
ります。それはドイツです。
─────────────────────────────
【ベルリン=南毅郎】エネルギー問題に関するドイツの専門家委
員会は2022年10月10日、高騰するガス価格の抑制に向け
た具体案をまとめた。12月に国民の負担軽減へ一時金を出し、
2023年3月からガス価格に上限を設ける措置が柱だ。ショル
ツ政権は最大2000億ユーロ(約28兆円)規模の総合対策を
表明済みで、実現すればうち900億ユーロ相当を投じることに
なる。委員会がまとめた中間報告書によると、負担軽減策は2段
階で構成する。
 まず12月に一時金を支給することで、ガス価格の上限制を導
入するまでのつなぎ措置として利用者の負担を直接和らげる。金
額にして1カ月分以上のガス代が免除される可能性がある。
 そのうえで、ガス価格の上限制は23年3月から24年4月ま
で導入する案を示した。具体的には、ガス価格を1キロワット時
あたり原則12セントに抑えることで利用者の負担増を防ぐ。補
助対象は過去の利用実績に照らしてガス消費量の8割となる見込
みだ。産業用ガスは7セントに引き下げ、先行して23年1月か
ら導入する案も盛り込んだ。 https://s.nikkei.com/3QWXNEP
─────────────────────────────
 日本の総額6兆円に対してドイツは2000億ユーロ(約28
兆円)のうち、900億ユーロ(約12兆4000億円)をエネ
ルギー支援に充てるといっているのです。規模がぜんぜん違いま
す。ドイツという国は平時はシブチンといわれるほど、財政を引
き締める国ですが、コロナ禍やウクライナ危機のようなときは、
素早く巨額の資金を使い、国民に手厚い支援を行います。
 諸物価物価高騰は、昨年の秋頃から顕著になっていたのです。
そこでドイツは、12月に一時金を支給し、2023年3月から
ガス価格に上限を設ける措置を設けるという2段構えです。これ
なら、国民は不安を感じないでしょう。その一時金──1か月分
のガス代に相当──は既に年末に支払われています。
 日本についてはどうでしょうか。岸田首相は、2022年10
月に、上記のようなエネルギー価格高騰抑制対策を打ち出しただ
けです。これでは、本当にやってくれるのか、国民は不安になる
と思います。しかも、2023年1月21付の日本経済新聞は、
一面で次のような報道を行っています。
─────────────────────────────
◎東電、3割値上げ申請へ/家庭向け今夏までの実施目指す
 東京電力ホールディングス(HD)は来週はじめにも一般家庭
向け電気料金の値上げを経済産業省に申請する。経産省が認可す
る規制料金とよばれるプランで、家庭向け契約の過半を占める。
申請する値上げ幅は3割前後となる見通し。国の審査を経て今夏
までの料金引き上げを目指す。東電が規制料金を上げるのは、東
日本大震災後に収支が悪化した2012年以来、11年ぶりとな
る。             https://s.nikkei.com/3iS6zaj
─────────────────────────────
 東日本大震災のとき、時の民主党政権が何をしたでしょうか。
なんと復興特別所得税です。税額は、基準所得税額の2・1%で
日本国民は現在もこの税金を支払っています。「こんなときに増
税とは」──信じられない話ですが、岸田政権は、この復興特別
所得税の期間を延長し、防衛費の一部に充てようとしています。
この国民生活が苦しいときにまたしても増税です。どうやら「減
税」という手段は岸田首相の頭の中にはないようです。
           ──[メタバースと日本経済/006]

≪画像および関連情報≫
 ●日本が抱えているエネルギー問題
  ───────────────────────────
   朝食にガスコンロで卵を焼いてトースターでパンを焼く。
  電車に乗って会社や学校へ向かいながら、スマートホンで、
  ニュースをチェックする。日中、パソコンに向かって仕事や
  勉強をし、夜には冷房が効いた快適な部屋で、宅配便で届い
  た本を読む・・・。
   日本のこうした便利な暮らしを支えているのは、電気や都
  市ガス、ガソリンといったエネルギーです。エネルギーなく
  して成立し得ない現代の生活スタイルですが、実は、日本の
  実質GDP当たりのエネルギー消費は世界平均を大きく下回
  ることに成功しています。GDP世界第1位のアメリカと比
  べ、約2分の1、同じ非資源国の韓国と比べ約3分の1程度
  の消費に抑えられているのです。これは、1970年代、2
  度に渡って生じた石油ショックを教訓として、官民を挙げて
  省エネルギー対策に注力してきた結果といえるでしょう。
   しかし、エネルギー利用効率が非常に良い一方で、日本の
  エネルギー需要量そのものは、石油ショック後拡大していま
  す。経済成長と共に生活が便利になり、家庭や企業でのエネ
  ルギー利用機器や自動車の利用が増えていったことがその原
  因です。最終エネルギー消費量は2004年度まで増え続け
  ましたが、その後は減少傾向となり、第1次石油ショック当
  時の1973年度に比べ、2015年度では全体で1・2倍
  のエネルギー需要量となっています。
                  https://bit.ly/3WlYPuY
  ───────────────────────────
総合経済対策で記者会見する岸田首相.jpg
総合経済対策で記者会見する岸田首相
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | メタバースと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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