2017年06月26日

●「崩壊寸前にある米国と韓国の関係」(EJ第4549号)

 1月4日から書き続けてきている今回のテーマ「米中戦争の可
能性」は、30日に終了し、7月3日からのEJは、新しいスタ
イルでお届けする予定です。
 6月29日〜30日、韓国の文在寅大統領はホワイトハウスを
訪れ、トランプ大統領と会談します。しかし、この米韓首脳会談
は難問山積であり、決裂することはないと思われますが、結果し
だいでは、米韓関係に亀裂が入る恐れがあります。これは日本に
も大きな影響があります。
 韓国についての辛口評論家として知られる室谷克実氏は、文在
寅大統領について次のようにいったことがあります。
─────────────────────────────
 文在寅大統領は、表向きに発言していることと、実際にやっ
 ていることとは違うことが多い。     ──室谷克実氏
─────────────────────────────
 実際に大統領に当選してからの43日、文在寅大統領の言動に
は、室谷克実氏のいう通りのことが起きています。それは米韓関
係に影響を与えることが多いのです。現在、韓国の文在寅政権と
米国のトランプ政権との間には次の2つの問題があります。
─────────────────────────────
        1.THAAD配備トラブル
        2.韓国高官による問題発言
─────────────────────────────
 1は「THAAD配備トラブル」です。
 THAADの在韓米軍配備地に関しては、前政権との約定に基
づいて、小規模な環境影響評価が進められ、今月中に終了する予
定だったのです。
 ところが、文在寅政権は、法令に基づいて環境影響評価を出す
べきであり、それには1年程度かかると主張したのです。これに
対してトランプ政権は強く反発します。これを受けて6月8日、
トランプ政権は、マティス国防長官やティラーソン国務長官を集
めて緊急会議を行っています。米メディアのなかにはこの動きを
「米韓同盟の危機」と報じたところもあります。そこで何が議論
されたかについては明らかになっていませんが、今後の米韓関係
について、真剣に話し合われたと考えられます。
 この会議について国際政治学者の藤井厳喜氏は、次のように述
べています。
─────────────────────────────
 このままいくと、北朝鮮に「超太陽政策」を取っている文氏の
望む通り、THAADが配備されない事態となりかねない。米韓
同盟は存亡の危機に立っており、トランプ氏は米韓首脳会談に向
けた対応策を協議したのだろう。トランプ政権は、今後「在韓米
軍削減」や「THAADの韓国外での配備を含めた厳しい処置を
文政権に突きつけるのではないか。
          ──2017年6月9日発行「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 ただ、トランプ政権は、この問題に関して、トーマス・シャノ
ン国務次官を6月13日〜15日に韓国に派遣したのです。その
交渉結果についても公表されていませんが、米韓首脳会談で話し
合われることになるはずです。
 米国の政府関係者は「文政権についてトランプ政権は愛想を尽
かしつつある」といい、次のように述べています。
─────────────────────────────
 韓国が北朝鮮制裁の「抜け穴」となるようであれば、トランプ
政権は看過できず、米韓関係は取り返しがつかないことになるだ
ろう。米韓関係が冷え込めば、在韓米軍関係者や韓国滞在の米国
人は脱出を急ぐ。これは、米軍による北朝鮮攻撃のハードルを一
気に下げるだろう。──2017年6月12日発行「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 2は「韓国高官による問題発言」です。
 「THAAD配備トラブル」で米トランプ政権の怒りというか
緊張が伝わっているはずの文在寅大統領の外交・安全保障特別補
佐官/文正仁氏は、6月20日訪米し、そこでの発言が波紋を広
げています。韓国聯合ニュースの報道です。
─────────────────────────────
 韓国・聯合ニュースによると、朝鮮半島の南北統一と外交・安
全保障を担当している文正仁(ムン・ジョンイン)特別補佐官は
16日、ワシントンにおいて、北朝鮮が核開発や弾道ミサイルの
実験を中止すれば、韓国は米国と協議し、在韓米軍の戦略兵器の
削減や米韓合同軍事訓練の規模を縮小させてもいいと発言した。
 韓国大統領府は「文特別補佐官の個人的な見方による発言」だ
とし、政府の公式見解ではないとコメントしたが、文特別補佐官
の発言は米国の「核放棄が絶対的な前提条件」とする主張とは明
らかに食い違うものであり、韓国国内では米韓同盟の今後にマイ
ナス影響が生じることを懸念する声が上がっている。また、文特
別補佐官は米国通とされる人物ではあるが、「在韓米軍だろうと
韓国大統領だろうと、韓国の法律を上回ることはできない。もし
文在寅大統領が法を犯せば、弾劾の対象になり得る」と語るなど
問題発言をたびたび行っている。韓国の専門家の中には、こうし
た発言は米韓首脳会談を見込んだ高度な交渉戦略ではないかとの
見方もあるという。          http://bit.ly/2tUZBCd
─────────────────────────────
 この特別補佐官の発言は、個人的見解では済まないものであり
確信犯的発言です。上記の「米韓首脳会談を見込んだ高度な交渉
戦略」の可能性も十分あります。それほど、韓国の文政権は北朝
鮮一辺倒の政権なのです。
 この発言が原因で、米韓関係が崩れたとしたら、北朝鮮や中国
は、拍手喝采するでしよう。心配なのは、これによって、北朝鮮
への攻撃のハードルが一気に下がることです。米軍はソウルを気
にせず、一気に攻撃に移る可能性があります。
             ──[米中戦争の可能性/119]

≪画像および関連情報≫
 ●THAADに続いて文正仁大統領補佐官/冷めたワシントン
  ───────────────────────────
   首脳会談を10日後に控えて韓米関係が前例がないほどの
  異常気流に包まれている。核心は韓国新政権に対する米国の
  「不信感」だ。16日(現地時間)に文正仁(ムン・ジョン
  イン)大統領統一・外交・安保特別補佐官がワシントンでし
  た発言が大きな波紋を呼んだ。文特別補佐官は「文在寅(ム
  ン・ジェイン)大統領が2つのことを提案したが、一つは北
  が核・ミサイル活動を中断すれば米国との議論を通じて韓米
  合同軍事訓練を縮小できるということだ。私の考えでは、文
  大統領は韓半島(朝鮮半島)への米国の戦略武器展開を縮小
  することも念頭に置いている」と述べた。東アジア財団と、
  ウッドロー・ウィルソンセンターが共同で主催したセミナー
  でだ。セミナーでの発言後、文特別補佐官は特派員懇談会で
  文大統領の条件のない南北対話提案に対する米国の反対に言
  及しながら、「北が非核化しなければ対話をしないというの
  を我々がどのように受け入れるのか」とし「南北対話は朝米
  対話と条件を合わせる必要はない」とも述べた。
   米国の反応は冷たかった。国務省のエドワーズ報道官(東
  アジア・太平洋担当)は17日(現地時間)、文特別補佐官
  の発言に対する中央日報側の質問に「私たちはミスター文の
  個人の見解と見ている」とし「韓国政府の公式政策が反映さ
  れていないはずだ。韓国政府に確かめてほしい」と答えた。
                   http://bit.ly/2sXjQlH
  ───────────────────────────

韓国/文在寅大統領.jpg
韓国/文在寅大統領
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月23日

●「米国は北朝鮮を先制攻撃するのか」(EJ第4548号)

 このところ北朝鮮への緊張感が少し緩んでいるような感じがし
ます。有力な米国ウォッチャーによると、トランプ米大統領は、
ロシアゲート疑惑で北朝鮮どころではないともいわれていますが
本当にそうなのでしょうか。
 そういえば、最近は米空母、カールビンソンやロナルド・レー
ガンの情報が入ってこなくなっています。現在、どこにいるので
しょうか。それとも引き上げたのでしょうか。もっとも空母や原
子力潜水艦などの艦艇が現在どこにいるかは極秘なのです。今回
米軍は、あえてそれを明かし、北朝鮮にもの凄いプレッシャーを
かけたのです。しかし、それがどこにいるかわからなくなった現
在の方が北朝鮮にとってはリスクが大きいといえます。
 米軍が北朝鮮に先制攻撃するのではないかと思われていた時点
があります。それは2017年4月12日です。このとき、米国
は日本政府に次のように伝えていたのです。
─────────────────────────────
 ◎米が日本に「北朝鮮攻撃」を言及/報道局
 北朝鮮の核や弾道ミサイル開発をめぐり、アメリカ政府が日本
政府に対し、中国の対応によっては、アメリカが北朝鮮への軍事
攻撃に踏み切る可能性を伝えていたことがわかった。
 軍事攻撃の可能性への言及があったのは、先週、行われたアメ
リカと中国の首脳会談より前の4月上旬で、日米の外交筋による
と、北朝鮮への対応に関し、アメリカ政府高官は、日本政府高官
に対し「選択肢は2つしかない。中国が対応するか、われわれが
攻撃するかだ」と述べ、「攻撃」という表現を使って、アメリカ
の方針を説明した。          http://bit.ly/2rEm4Tu
─────────────────────────────
 4月6日に行われた米中首脳会談で習近平主席は「100日の
猶予」をトランプ米大統領に求め、了承されています。会談中の
シリアへのミサイル攻撃は大きなショックを習近平主席に与えた
と思われます。このように、4月中は米国はなかなか強気であり
やる気満々だったのです。
 しかし、5月に入ると米国の態度は一変します。先制攻撃につ
いて逡巡する発言が相次いだのです。それは、マクマスター大統
領補佐官にはじまって、マティス国防長官、ティラーソン国務長
官と続きます。5月19日の朝日新聞デジタルは、マティス国防
長官の発言次のように伝えています。
─────────────────────────────
 マティス氏は会見で、北朝鮮の核・ミサイル問題を解決する手
段としての軍事行動について「信じられない規模での悲劇が起き
る」と指摘した。米軍が北朝鮮の関連施設を先制攻撃した場合、
反撃によって同盟国の日本や韓国などへの被害が出ることを念頭
に発言したものとみられる。
 トランプ政権は「すべての選択肢がテーブルの上にある」とし
て、軍事行動も辞さない構えで北朝鮮に圧力をかけてきた。マテ
ィス氏の発言は、軍事行動という選択肢に消極的な立場を示した
ものだ。マティス氏はまた、日韓や中国などとの協力で、外交的
な解決を目指す考えを示した。(ワシントン=峯村健司)
                   http://bit.ly/2qH7wmj
─────────────────────────────
 「もし、米国が北朝鮮と戦争すれば、信じられないほどの悲劇
が起きる」──これはどこかで聞いたセリフです。かつてクリン
トン米大統領が北朝鮮を攻撃しようとしたとき、在韓米軍司令官
から「とんでもない被害が起きる」と警告されたセリフと同じで
す。4月に「北朝鮮を攻める」といい、日本にまで通告していた
米国が今頃になっていう発言ではないです。そんなことはとっく
にわかっていたことです。これはどう考えても不自然です。急に
怖気づいたのでしょうか。
 何かウラがあります。論理的に考えても、今こそが米国が北朝
鮮からの脅威を取り除くラストチャンスです。米国がこの機会を
見逃すことはないと思います。
─────────────────────────────
 1.北朝鮮のミサイル技術を分析すると、ICBMは実質的
   には完成の域に達している。
 2.核兵器に関しては5回の実験で完成しているし、その小
   型化も一年以内に完成する。
 3.このまま北朝鮮の核・ミサイル開発を放置すると、米国
   の安全保障上の脅威になる。
─────────────────────────────
 情報によると、米国は北朝鮮に関する情報をほとんど集めてい
るのです。地上地下を含めて、あらゆる核施設、ミサイルをはじ
めとする兵器の位置、金正恩委員長をはじめとする幹部の居場所
にいたるまで、すべてを把握しています。さまざまな諜報を通し
て、今までに既に得ている情報に加えて、変化、最新の情報も取
得しているはずです。まして、空母2隻を含む米国の大艦隊が朝
鮮半島のすぐ近くに、2ヶ月以上にわたり常駐していたのです。
 何もしていないはずがないのです。無人偵察機を飛ばしたり、
脱北者から聞き取りをしたり、攻撃に必要な情報はすべて集めて
いるはずです。その結果、いま攻撃すると、悲惨な結果に終わる
と判断したのでしょうか。世界最強の米軍が北朝鮮のような小国
に怯んだのでしょうか。
 中国が米国に猶予を求めた100日は7月中旬に到達します。
今のところ中国は目に見えるかたちでの北朝鮮への制裁をかけて
いるようには思えない。米国のイライラも募っています。
 しかし、中国は米国に何をいわれても、ここまで述べてきたよ
うに、国内事情により北朝鮮をコントロールできないのです。重
要なのは、米国は中国から北朝鮮への限定攻撃の許可を得ている
ことです。それにここにきて、米国と韓国の文在寅政権との間に
隙間風が吹きはじめています。今月末には米韓首脳会談が行われ
ますが、どうなるか予断を許さない状況になっています。
             ──[米中戦争の可能性/118]

≪画像および関連情報≫
 ●北朝鮮と米国、戦争になる可能性はあるのか/東洋経済OL
  ───────────────────────────
   [ワシントン4月27/ロイター]トランプ米大統領は、
  北朝鮮の核・ミサイル開発を巡ってこう着状態となれば、同
  国との大きな紛争が起きる可能性があると述べた上で、外交
  的な解決を望む姿勢を示した。ロイターとのインタビューで
  語った。また、韓国政府に対しては、米軍による新型迎撃ミ
  サイル(THAAD)システム配備の対価として10億ドル
  (約1110億円)の支払いを求める考えを示した。
   29日に、就任から100日を迎えるトランプ氏は、大統
  領執務室でロイターに対し「最終的に北朝鮮と大きな、大き
  な紛争が起きる可能性はある」と述べた。一方、平和的な解
  決を望む姿勢もうかがわせ、「外交的に解決したいが、非常
  に困難だ」とも語った。
   また、北朝鮮の行動抑制に向けた取り組みへの中国の協力
  について、習近平国家主席を称賛。「精一杯力を尽くしてく
  れていると確信している。混乱や死は決して見たくないだろ
  う」と述べた。
   ただ「そうは言っても習氏が愛情を持っているのは中国で
  あり、中国の国民だ。何かを実行したいと思ってもできない
  ということも恐らくあり得る」との見方も示した。
                   http://bit.ly/2ssfGkY
  ───────────────────────────

トランプ米大統領VS金正恩委員長.jpg
トランプ米大統領VS金正恩委員長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月22日

●「朝鮮戦争に参戦した義勇軍の正体」(EJ第4547号)

 ここで「朝鮮戦争」を振り返ってみる必要があります。朝鮮が
日本の植民地支配から解放されたのは、1945年8月15日の
ことです。時あたかも東西冷戦が進行するなかで、朝鮮は南北に
分断されたのです。1948年に朝鮮半島に政治体制の異なる2
つの国家が成立したのです。
─────────────────────────────
   1.朝鮮民主主義人民共和国 ・・ 社会主義体制
   2.       大韓民国 ・・ 資本主義体制
─────────────────────────────
 戦争が起きたのは1950年6月のことです。北朝鮮の金日成
は、中国革命に続いて、朝鮮半島でも社会主義統一国家をつくる
べきであるとして、6月25日に軍事行動を起こし、38度線を
越えて大韓民国に攻め込んだのです。
 国連安全保障理事会は緊急会議を開催し、北朝鮮に即時停戦と
北朝鮮軍の撤退勧告を決議しています。このとき常任理事国のソ
連は中国代表権問題で他の4常任理事国と対立し、安保理をボイ
コットしていたので、ソ連抜きの安保理決議になったのです。
 ことは急を要しており、国連軍を結成するには時間がかかると
して、トルーマン米大統領は米国軍を単独で朝鮮半島に派遣する
ことを決意し、日本駐留の米軍に出動を命じたのです。
 6月28日、北朝鮮軍はソウルを占領し、引き続き破竹の勢い
で南進したのです。大田で米軍を破り、国連軍としての米軍が朝
鮮半島に到着したときには、北朝鮮軍は半島南端の釜山に迫って
いたのです。
 7月7日、国連安保理は、国連軍の派遣をソ連抜きで決定し、
マッカーサー元帥を統一司令長官に任命します。国連軍といって
も全体の90%は米軍だったのです。9月15日、マッカーサー
司令長官は、仁川上陸作戦で北朝鮮軍の背後を突いて形勢を逆転
し、ソウルを奪回します。国連軍はそのまま38度線を越えて進
撃し、10月20日に平壌を陥落させたのです。
 ところが、中国が突然参戦するのです。しかし参戦したのは中
国人民解放軍ではなく、中国人民義勇軍なのです。その結果、国
連軍は38度線まで押し戻され、1953年7月27日、南北朝
鮮代表、米中代表が板門店で朝鮮休戦協定を結びます。
 中国義勇軍がどのようにして、国連軍を38度線まで押し戻し
たかについて、関連サイトの記事を紹介します。
─────────────────────────────
 中朝国境付近に集結した中国義勇軍(実質人民解放軍)は10
月19日から、隠密裏に鴨緑江を渡り、北朝鮮への侵入を開始し
た。中国軍は11月に入り国連軍に対して攻勢をかけ、アメリカ
軍やイギリス軍を撃破し南下を続けた。国連軍は中国人民解放軍
の参戦を予想していなかった上、補給線が延び切って、武器弾薬
・防寒具が不足しており、これに即応することができなかった。
 11月24日には国連軍も鴨緑江付近より、中国義勇軍に対す
る攻撃を開始するが、中国人民軍は山間部を移動し、神出鬼没な
攻撃と人海戦術により、国連軍を圧倒、その山間部を進撃してい
た韓国第二軍が壊滅すると黄海側、日本海側を進む国連軍も包囲
され、平壌を放棄し38度線近くまで潰走した。
                   http://bit.ly/2slw9HB
─────────────────────────────
 この「中国義勇軍」の参戦によって、敗戦一歩手前までいった
北朝鮮は救われたのです。もし、北朝鮮が降伏していれば、その
時点で朝鮮半島は、大韓民国として統一されていたはずです。そ
のため、中国と北朝鮮の同盟は、「血の友誼の同盟」として長く
語り継がれることになったのです。
 しかし、野口裕之氏によると、この中国義勇軍は、人民解放軍
所属の第4野戦軍で、朝鮮族らが中心となって編成された「外人
部隊」だったのです。20日付のEJ第4545号でも述べたよ
うに瀋陽軍区に住みついた朝鮮系の匪賊、馬賊の末裔であり、も
ともと北朝鮮とは深い親交があったのです。したがって、人民解
放軍には所属しているものの、北朝鮮とは同じ民族であり、義勇
軍として参戦しても不思議はないのです。
─────────────────────────────
 「瀋陽軍区」が北朝鮮と、北京を半ば無視してよしみを通じる
背景には出自がある。中国は朝鮮戦争勃発を受けて“義勇軍”を
送ったが、実体は人民解放軍所属の第四野戦軍。当時人民解放軍
最強の第四野戦軍こそ瀋陽軍区の前身で、朝鮮族らが中心となっ
て編成された「外人部隊」だった。瀋陽軍区の管轄域には延辺朝
鮮族自治州も含まれ、軍区全体では最大180万人もの朝鮮族が
居住する。いわば、「瀋陽軍区」と北朝鮮の朝鮮人民軍は「血の
盟友」として今に至る。金正日総書記(1941〜2011年)
も2009年以降、11回も瀋陽軍区を訪れた。──野口裕之氏
                   http://bit.ly/2tEIHrE
─────────────────────────────
 2017年4月、中国が米国の要請を受け入れて、核放棄をし
なければ、さらに厳しい経済制裁をかけると警告したことに北朝
鮮は21日の朝鮮中央通信で、名指しはしなかったものの、次の
ように中国を抗議したのです。北朝鮮が中国を批判することは、
きわめて異例なことです。
─────────────────────────────
 彼ら(中国)が誰かに踊らされて経済制裁に執着するならば、
われわれとの関係に及ぼす破局的な結果も覚悟すべきだ。われわ
れの核抑止力は国と民族の生存権を守るためのものであり、何か
と交換するためのものではない。
       ──2017年4月21日付、朝鮮中央通信より
─────────────────────────────
 しかし、中国の義勇軍は北部戦区の瀋陽地域に今でも残ってい
るのです。したがっていくら習近平主席の北京が米国の要請を受
けて経済制裁をかけようとしても、義勇軍がサポートするので制
裁は効かないのです。   ──[米中戦争の可能性/117]

≪画像および関連情報≫
 ●朝鮮戦争/中国義勇軍参加の裏話
  ───────────────────────────
   金日成はスターリンに南朝鮮(韓国)進攻の支援を、そし
  て毛沢東は台湾進攻の支援を求めた。スターリンはいずれに
  も支援を約束したが、ソ連の利益に鑑みて、戦争は朝鮮を先
  とし、中国を朝鮮戦争に介入させた。(北海閑人著『中国が
  ひた隠す毛沢東の真実』)
   毛沢東には、自分がアメリカに負けるはずがない、という
  確信があった。中国には何百万もの兵隊を使い捨てにできる
  という基本的な強みがあるからだ。ちょうど厄介払いしたい
  と思っている部隊もあったー朝鮮戦争は、国民党部隊の敗残
  兵を戦場に送って始末する恰好の機会になるだろう。彼らは
  内戦末期に部隊ごとまとまって投稿してきた国民党軍兵士で
  毛沢東は意図的に彼らを朝鮮の戦場に送り込んだ。万が一国
  連軍が始末をつけてくれなかった場合に備えて、後方には特
  別の処刑部隊が待機して戦線から逃げもどってきた兵士たち
  を始末することになっていた。(ユン・チアン『マオ誰も知
  らなかった毛沢東』(下))
   『マオ』については酷評があるが、この国民党部隊の敗残
  兵を朝鮮戦争に投入したのは本当らしい。軍事評論家佐藤守
  氏はブログ「朝鮮戦争裏話」でこう書いている。93歳の元
  特務機関員門脇氏の体験談ヒアリングだ。
   <毛沢東が、自分に降伏してきた米軍の最新装備を誇る蒋
  介石軍を“後顧の憂い”を除去するために見事に「始末」し
  た根拠を教えていただきたいと事前に申し上げていたのだが
  中国の軍事科学出版社などが出したこれに関する詳細な歴史
  研究書を見せていただき、それが事実であったことが確認で
  きた。              http://bit.ly/2sOTX8h
  ───────────────────────────

国連軍を指揮するマッカーサー司令官/朝鮮戦争.jpg
国連軍を指揮するマッカーサー司令官/朝鮮戦争
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月21日

●「北朝鮮と中国瀋陽軍区の親密関係」(EJ第4546号)

 中国について考えるとき、どうしても中国をひとつのまとまっ
た国としてみてしまいますが、中国の国内において“核心”の習
近平主席でも、支配できない地域があるのです。その地域こそ、
北朝鮮と密接な関係のあるかつての「瀋陽軍区」、現在の「北部
戦区」です。
 既に述べているように、北部戦区(正確には北部戦区の瀋陽地
域)は、北朝鮮と国境を接しており、長年にわたって北朝鮮とは
親交があることは、昨日のEJで述べた通りです。この北部戦区
を支配しているのは、チャイナセブンにおける江沢民派の次の3
人(〇印)です。
─────────────────────────────
  ◎チャイナセブン
  序列第1位/習近平国家主席 ・・・・・・ 太子党派
  序列第2位/李克強首相 ・・・・・・・・ 共青団派
 〇序列第3位/張徳江全人代常務委員 ・・・ 江沢民派
  序列第4位/兪正声人民政治協会議主席 ・・ 太子党
 〇序列第5位/劉雲山政治局常務委員 ・・・ 江沢民派
  序列第6位/王岐山中央規律検査委員会書記  太子党
 〇序列第7位/張高麗副首相 ・・・・・・・ 江沢民派
─────────────────────────────
 チャイナセブンの序列第3位の張徳江全人代常務委員、第5位
の劉雲山政治局常務委員、第7位の張高麗副首相の3人は、いず
れも江沢民派で、習近平主席とは対立関係にあり、激しい権力抗
争を繰り広げています。そして彼らの支配する北部戦区は、現在
の金正恩体制の生殺与奪の権を握っている存在といえます。
 この北部戦区の江沢民派の人脈については、4月10日と11
日のEJで詳しく述べているので、参照してください。
─────────────────────────────
 ◎4月10日付、EJ第4497号
 「北朝鮮は張徳江氏が掌握している」http://bit.ly/2oTI3b1
 ◎4月11日付、EJ第4498号
 「北朝鮮と中国の本当の関係を探る」http://bit.ly/2okPtkG
─────────────────────────────
 これら3人の江沢民派のチャイナセブンが、中国において、ど
のくらい強い力を持っているかは、人民解放軍を自分の配下に置
こうとする習近平主席による軍制改革において、自らの支配地域
をかえって拡張させたことによってもわかります。いわば、焼け
太りに成功しているのです。
 習近平主席は、軍制改革で、北京軍区と瀋陽軍区を合併させ、
その新戦区をすべて中国最高指導部で管轄しようと目論んだので
すが、3人の猛反対によって断念しています。それどころか、張
徳江全人代常務委員は、瀋陽軍区に加えて、劉雲山政治局常務委
員が支配してきた北京軍区の一部の内モンゴル自治区を取り込み
さらに山東省を飛び地として確保するなど、北部戦区を大拡張さ
せたのです。これは習近平主席の敗北といえます。
 先の米中首脳会談で、トランプ米大統領は、北朝鮮の第6回目
の核実験やICBMの発射を抑えるよう、習近平国家主席に強い
プレッシャーをかけましたが、彼に北朝鮮をどうこうできる力は
事実上ないといえます。そこで習近平主席はトランプ米大統領に
100日間の猶予を求め了解を得ています。時間稼ぎです。米中
首脳会談は4月6日に行われているので、期限は7月初旬に終了
します。あと15日ほどです。
 しかし、現時点でも習近平主席には、北部戦区をコントロール
できていないのです。もちろん石油を止めることはできますが、
もしそれを強行すると、北部戦区が北朝鮮と組んでクーデターを
起こしかねないのです。これに関連して、野口裕之氏は、次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 最精強を誇る「瀋陽軍区」は、習主席にとって目障りどころか
政治生命まで左右する「超危険な存在」であった。いや、依然、
「超危険な存在」と言うべきだ。今なお北部戦区は「瀋陽軍区」
なのだ。習主席は北京より平壌と親しい「瀋陽軍区」によるクー
デターを極度に恐れている。「瀋陽軍区」高官の一族らは、北朝
鮮に埋蔵されるレアメタルの採掘権を相当数保有する。「瀋陽軍
区」が密輸支援する武器+エネルギー+食糧+生活必需品武器や
脱北者摘発の見返りだ。北朝鮮の軍事パレードで登場するミサイ
ルや戦車の一部も「瀋陽軍区」が貸している、と分析する関係者
の話も聞いた。            http://bit.ly/2tk3v8q
─────────────────────────────
 習近平主席が北朝鮮に対し、石油供給停止などの強い経済制裁
に踏み切れないでいるのは、もしそれをやると、北部戦区が北朝
鮮と組んで、クーデターを起こし兼ねないからです。ここに北朝
鮮の核が効いてくるのです。それは、おそらく北京にとって最悪
のクーデターになるはずです。野口裕之氏は、クーデターの可能
性について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 1.北京が北朝鮮崩壊を誘発させるレベルの対北完全経済制
   裁に踏み切れば「瀋陽軍区」はクーデターを考える。
 2.他の戦区の通常戦力では鎮圧できず、北京は旧成都軍区
   にある核戦力を使って威嚇し、恭順させるしかない。
 3.「瀋陽軍区」としては、北朝鮮との連携で、核戦力さえ
   握れば、旧成都地区の核戦力を封じることができる。
                  http://bit.ly/2tk3v8q
─────────────────────────────
 北部戦区の高官たちは、北朝鮮に埋蔵されるレアメタルの採掘
権と引き換えに、高濃度ウランを生み出す遠心分離機用の金属・
酸化アルミニウムなどの核関連物質や、戦車用バッテリーなどの
大量の通常兵器の関連部品を北朝鮮に密かに売りつけているとい
われているのです。もちろんそのなかに、戦略物資の重油も含ま
れているのです。     ──[米中戦争の可能性/116]

≪画像および関連情報≫
 ●北朝鮮の後ろ盾/瀋陽軍区とロスチャイルド家の関係
  ───────────────────────────
   現在の北朝鮮の武力解除に向けての緊迫した事態を考慮す
  る上で、北朝鮮の後ろ盾である瀋陽軍区に注目する必要があ
  ります。ここが重要なのは、フルフォード氏がこれまで何度
  も日本、韓国、北朝鮮、旧満州を統合する「ネオ満州国」と
  いう統一国家建設の構想を持つ支配層が居ることを言及して
  いるためです。取り上げた野口裕之氏の瀋陽軍区に関する記
  事は大変優れた明快なもので、引用元で全文をご覧になるこ
  とを勧めます。
   記事によると、瀋陽軍区は中国人民解放軍の中でも最精強
  な軍区であり、習近平氏の政治生命まで左右する「超危険な
  存在」とのことです。ここが、北朝鮮に対して、武器・エネ
  ルギー・食料・生活必需品を密輸し、見返りに北朝鮮に内蔵
  されるレアメタルの採掘権を得ているようです。
   北京は瀋陽軍区を警戒し、核武装を許さないため、瀋陽軍
  区は北朝鮮に原料や技術を流し、北朝鮮が核を保有すること
  で、事実上の瀋陽軍区の核保有を目指しているということで
  す。記事では、北朝鮮と瀋陽軍区は一蓮托生であるとしてい
  ます。なので、北朝鮮の武装解除は瀋陽軍区の消滅につなが
  ります。イスラエルは将来の移住先としてネオ満州国を考え
  ており、瀋陽軍区に多数のイスラエル企業が入り込み、将来
  のイスラエルからの移民に備えています。
                   http://bit.ly/2sQr0sq
  ───────────────────────────

劉雲山政治局常務委員.jpg
劉雲山政治局常務委員
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月20日

●「中国でクーデターは起こらないか」(EJ第4545号)

 中国のジニ係数が0・7に達し、クーデターが起きても不思議
でないレベルに達しています。それほど格差が拡大しているから
です。しかし、クーデターなどは起きないと何清蓮氏はいうので
す。彼は、中国の民衆のことを「自己組織化の能力に欠け、ばら
ばらな砂のような存在である」と表現しています。
 何清蓮氏はそれに加えて現在の習近平政権の力は強大であり、
仮に民衆が天安門事件のようなクーデターを起こしても、たちま
ち鎮圧されるとして、次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国政府は高度に組織化された完全武装の独裁政権である。そ
の武装力は中国の歴代王朝のなかでもずば抜けている。この世界
第3位の軍事大国に対峙する民衆は、刃物類を購入することさえ
制限を受けている始末である。当局の武装力と民間の抵抗力の格
差には前代未聞の開きが生じている。
 2015年7月9日に始まった「一斉摘発行動」によって権利
擁護活動家が一網打尽にされた後は、国内ではたとえゆるいつな
がりであっても、組織的な反対勢力は一掃された。つまり、軍事
クーデターでも起きない限り、中共の統治を武力で終わらせるこ
とは不可能なのである。
 何清蓮×程暁農著/中川友訳/ワニブックス「PLUS新書」
 「中国──とっくにクライシスなのに崩壊しない“紅い帝国”
のカラクリ/在米中国人経済学者の精緻な分析で浮かび上がる」
─────────────────────────────
 中国のジニ係数については、中国ウオッチャーの宮崎正弘氏も
言及しています。2013年頃、中国のジニ係数は0・62ぐら
いで最悪であるといわれていたのです。しかし、中国の国家統計
局の出す数字はあまり信用できず、本当の数字はわからないです
が、北京大学が2016年12月に独自調査に基づいて発表した
数字の0・73がひとり歩きしています。これについて、宮崎正
弘氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 ジニ係数が0・73などとは異常事態である。所得格差、富の
偏在に対しても国民の不満を「反日」ですり替え、「愛国主義」
の具体的ジェスチャーとして、アメリカの無人潜水艇を捕獲した
り、空母「遼寧」を西太平洋に派遣したりして、「中国はアメリ
カと伍せる軍事大国だ」と国民を鼓舞しても、それは支配階級の
演出する危ういナショナリズムだから、効果は期待できなくなっ
た。富裕層は、愛国の虚実を知っており、インテリ層は情報操作
だという本質を見抜いている。そして、庶民は急に愛国などと言
われても、馬鹿馬鹿しくて関心を抱かない。目先の食事がいちば
ん大事なのである。        ──宮崎正弘著/徳間書店
     『米国混乱の隙に覇権を狙う中国は必ず滅ぼされる』
─────────────────────────────
 中国では人民によるクーデターは起こらない──何清蓮氏はこ
う述べています。しかし、軍事ジャーナリストの野口裕之氏によ
ると、クーデターは起こり得るというのです。以下、野口裕之氏
のレポートに基づいて、要約して述べることにします。
 それは北朝鮮に深く関係する話です。現在の北朝鮮に隣接する
中国側の部分、すなわち旧満州東部からロシア沿海州南西部は、
李氏朝鮮の時代(1392〜1910)以降、多くの朝鮮人が移
住したのです。深い森林で覆われ、朝鮮総督府の支配も届かない
無法地帯で、匪賊や馬賊の根拠地だったのです。彼らは頻繁に越
境して、朝鮮半島の北部(北朝鮮)の町村を襲っては、朝鮮人ら
への略奪や殺戮を繰り返したのです。
 時代が経過して、これらの匪賊や馬賊は中国の人民解放軍にな
ります。そしてこの地域は「瀋陽軍区」に属することになったの
です。彼らは、長い間にわたる付き合いから、しだいに人民解放
軍と生活必需品や武器やエネルギーなどをお互いに交換するよう
になります。これがいわゆる「辺境貿易」のはじまりです。
 この辺境貿易は、ケ小平が市場経済の号令をかけた1992年
から公認されたので、これを契機に大きく発展することになりま
す。このときから、中朝貿易には、中国政府が認可した企業が行
なう一般貿易と、国境周辺の地方人民政府が許認可権を持ってい
る辺境貿易の2つになったのです。
 実は、この瀋陽軍区は習近平主席による軍制改革によって「北
部戦区」に再編成されたのですが、これについては、1月24日
付、EJ第4444号で述べています。北部戦区の本部は瀋陽で
あり、ロシアと北朝鮮方面で軍事衝突などに対応する戦力です。
そして5戦区中最大の戦力なのです。
 これについて、「闇株新聞」の著者が次のように分かり易く書
いているので、参考までに引用します。
─────────────────────────────
 「瀋陽軍区」は中国人民解放軍ではあるものの、朝鮮系の馬賊
・匪賊の末裔が多く(だから強い)、北朝鮮に武器・エネルギー
・食料・生活必需品を密輸し、さらに、北朝鮮のレアメタル採掘
権なども入手し不正蓄財に励んでいます。これは経済制裁を受け
ている北朝鮮にとってもメリットがあり、経済制裁の「抜け穴」
となっています。
 もともと中国人民解放軍とは軍務だけではなく、武器や食料な
どを自己調達する「軍産複合体」のようなものですが、とくに、
「瀋陽軍区」は不正蓄財で潤い、ますます中央政府と対立するよ
うになっていきました。        http://bit.ly/2sDVMEf
─────────────────────────────
 この戦区が瀋陽軍区であったときのトップは、当時中央軍事委
員会副主席だった徐才厚(江沢民派)です。徐才厚は中国人民解
放軍のナンバー2、制服組のトップを務めた人物です。しかし、
習近平主席は、腐敗キャンペーンの一環で、病気療養中の徐才厚
を汚職など規律違反を理由に病院で逮捕し、連行しています。彼
は党籍を剥奪され、その後死亡しています。
             ──[米中戦争の可能性/115]

≪画像および関連情報≫
 ●国内最強の軍隊を有する瀋陽軍区
  ───────────────────────────
   江沢民のあとの胡錦濤、習近平は共産党軍事委員会委員長
  であっても人民解放軍の統制がまったくでいていない。この
  ことが北朝鮮危機の問題にあらわれている。「反習近平の勢
  力が北朝鮮を握っていて、それに習近平は指一本、触れられ
  ない」といったのは共産党の幹部レベルでの権力闘争ではな
  く、現在の共産党指導部が人民解放軍の支配下にある北朝鮮
  をどうすることもできないということだ。
   俗に「3つの50万トン」という言葉がある。石炭、原油
  穀物を各50万トンずつ、中国が北朝鮮に無償で提供とする
  という援助契約だ。そのなかで一番大事なのは原油の50万
  トンであり、北朝鮮は中国経由で原油の供給を受けている。
  中国はその原油を止めたと称しているが、本当に止まったか
  どうかはわからない。北朝鮮にとって原油供給減は丹東から
  新義州につながる、鴨緑江の河口に敷設されたパイプライン
  一本だけである。この唯一のパイプラインが象徴するように
  中国は板挑戦経済の首根っこを押さえている。したがって、
  中国が北朝鮮を完全にコントロールしている。ただし、対北
  朝鮮用のパイプラインのバルブを握っているのは、北京の中
  央政府ではない。北朝鮮と1300キロの国境を接している
  人民解放軍の瀋陽軍区である。したがって、正確には「中国
  の人民解放軍・瀋陽軍区が北朝鮮をコントロールしている」
  というべきだろう。       http://amba.to/2sf2Eax
  ───────────────────────────

勢力が拡大した北部軍区(瀋陽軍区).jpg
勢力が拡大した北部軍区(瀋陽軍区)
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月19日

●「中国ジニ係数は危険レベルにある」(EJ第4544号)

 「中国崩壊論」というのは、2015年を契機に急に表に出て
くるようになっています。2015年に中国経済が危機的兆候を
見せはじめたからです。それが一番現実味を帯びたのは、ジョー
ジ・ワシントン大学のシャンボー教授の『終焉に向かい始めた中
国共産党』の論文です。これについては、6月12日付、EJ第
4539号で述べています。
 しかし何清蓮/程暁農両氏(以下、何清蓮氏)によると、シャ
ンボー教授をはじめとする外部のウォッチャーたちは、民主主義
国家の経験から中国に危機が発生すると判断しており、それは必
ずしも正しくないとして、次のように反論しています。
─────────────────────────────
 中国政府が他国の政府と違う最大の点は、それが専制政府であ
り、資源を集中させる能力が民主的な政府とはけた違いに強いと
いうことである。執政者が危機はどこにあるかを察知さえすれば
その防衛能力は民主的な政府より、とりわけ無力で弱々しい民主
的な政府よりはるかに高い。
 2016年に中国はGDP成長率の緩やかな減速という状況の
なかにあって、全国の税収は11・59兆元に達した。これは前
年比42%の増加である。さらに今後数年以内に、地方政府の税
収増加の重点は不動産税の徴収に向けられるだろう。
 何清蓮×程暁農著/中川友訳/ワニブックス「PLUS新書」
 「中国──とっくにクライシスなのに崩壊しない“紅い帝国”
のカラクリ/在米中国人経済学者の精緻な分析で浮かび上がる」
─────────────────────────────
 ここで何清蓮氏はきわめて重要なことを述べています。中国で
は現在でも不動産税(日本の固定資産税)を徴収していないとい
う事実です。どうしてかというと、中国では所得に比べてあまり
にも不動産価格が高いからです。もし、課税を強行すると、大半
の中国人には耐えがたい重税になります。そのため暴動を恐れて
中国政府は課税に踏み切れなかったのです。何清蓮氏の本から、
2015年のデータを示すと、次のようになります。
─────────────────────────────
    不動産平均価格 ・・・ 年収の22・95倍
    中国人平均年収 ・・・ 年収/7820ドル
─────────────────────────────
 しかし、国家に危機が訪れれば、不動産税課税に踏み切るはず
であり、それは巨額の税収増を生むことになります。したがって
中国は簡単には破綻しないのです。
 それに、現在中国おける住宅の保有率は、米国や日本などの先
進国よりも信じられないほど高いのです。したがって、不動産税
の課税対象は非常に広いのです。
─────────────────────────────
   ≪都市部≫
   ・住宅保有率 ・・・・・・・・・ 88・12%
   ・一世帯当たり住宅保有数 ・・・  1・22戸
   ≪農村部≫
   ・住宅保有率 ・・・・・・・・・ 94・72%
   ・一世帯当たり住宅保有数 ・・・  1・15%
       ──「中国家庭金融調査報告」/2014
             ──何清蓮×程暁農著の前掲書より
─────────────────────────────
 ここで都市部において、一世帯当たりの住宅保有数1・22戸
をもっと具体的に述べると、1戸を保有する世帯は69・05%
であり、2戸を保有する世帯は15・55%、3戸以上を持つ世
帯は3・63%です。彼らは、住むというよりも、投資物件とし
て不動産を保有しているのです。こういう経済構造は、経済成長
が続いているうちはいいのですが、ひとたび成長が止まると、ひ
どい貧富の格差を生み出すことになります。
 このように何軒も住宅を保有する層がいる一方で、中国の都市
部には住宅を保有していない11・88%の世帯があります。彼
らは、購買能力をまったく欠いた貧困層であり、住宅を購入する
どころか、その日その日を生き永らえるのに精一杯なのです。住
宅を購入するなど、夢のまた夢です。
 そのため、中国のジニ係数は、ジリジリと上昇し、現在異常な
高さに達しています。
─────────────────────────────
      1995年 ・・・・・・ 0・45
      2002年 ・・・・・・ 0・55
      2012年 ・・・・・・ 0・73
─────────────────────────────
 ジニ係数は、1936年にイタリアの統計学者コンラッド・ジ
ニが考案し、その名をとって「ジニ係数」と呼ばれています。完
全平等社会であれば「0」、完全不平等社会であれば「1」とな
るのです。
─────────────────────────────
  0・1〜0・2 ほとんど格差のない社会
  0・2〜0・3 格差少なく安定した社会
  0・3〜0・4 格差のある社会
  0・4〜0・5 厳しい格差、社会が不安定になる要素
  0・5〜0・6 格差が限度を超え、社会的不満が激増
  0・6〜0・7 社会的動乱が発生してもおかしくない
  0・7〜    革命が起こるか、動乱状態に突入する
                http://nkbp.jp/2tfzN4a
─────────────────────────────
 日本のジニ係数は2012年は「0・320」です。格差社会
です。これに対して中国は「0・73」です。革命が起きても不
思議はないレベルに達しています。社会の頂点にいる1%の世帯
が全国の3分の1以上の資産を占有しているのです。しかも底辺
層の25%の世帯の資産の総額は、全体の1%ぐらいしかないの
です。          ──[米中戦争の可能性/114]

≪画像および関連情報≫
 ●中国最新報告書/「貧富格差が危険ラインに」
  ───────────────────────────
   中国の名門大学、北京大学の最新調査報告・家庭追跡調査
  報告書シリーズ「中国人生活発展報告2015」により、同
  国の貧富の差がいっそう拡大していることが改めて確認され
  た。同報告書によると、全体の1%の世帯が国民総資産の約
  3分の1を保有する一方で、全世帯数の25%を占める最下
  層世帯が所有する資産はわずか1%前後にとどまり、貧富の
  格差を示すジニ係数は危険ラインに迫っている。
   報告書が発表した中国の種類別ジニ係数で、所得のジニ係
  数は80年代初頭の0・3前後から現在は0・45以上に、
  資産のジニ係数は95年の0・45から12年の0・73に
  上昇している。
   ジニ係数とは、国民全体の所得や資産分配の不平等さ、あ
  るいは格差を測るための指標の一つである。値の範囲は0か
  ら1で、値が大きいほど格差が大きく、それにより社会の不
  満も高まることから、一般に社会騒乱多発の警戒ラインは、
  0・4、危険ラインは0・6とされている。12年9月に中
  国当局が発表した初の「社会管理に関する政府報告書・中国
  社会管理革新レポート」には、中国における社会格差が既に
  同警戒ラインに迫っていると記されている。
                   http://bit.ly/2sCQ4Cw
  ───────────────────────────

ジニ係数対比(OECD).jpg
ジニ係数対比(OECD)
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月16日

●「中国はなぜ『盗賊型政権』なのか」(EJ第4543号)

 何清蓮/程暁農両氏の本には「盗賊型政権」という言葉が出て
きます。著者によると、現在の中国には、盗賊型政権に見られる
盗賊型統治の特徴がすべて備わっているといいます。
 それでは「盗賊型政権」とは何でしょうか。
─────────────────────────────
 盗賊型政権とは、統治者が厚顔無恥にも公共財と民間財を略奪
して、はばからぬ政権である。
 何清蓮×程暁農著/中川友訳/ワニブックス「PLUS新書」
 「中国──とっくにクライシスなのに崩壊しない“紅い帝国”
のカラクリ/在米中国人経済学者の精緻な分析で浮かび上がる」
─────────────────────────────
 公共財と民間財を略奪する──といっても、ピンとこないので
著者が実例として上げてくる2つの政権について簡単にご紹介す
ることにします。
─────────────────────────────
  1.アルフレッド・ストロエスネル政権/パラグアイ
  2.            モブツ政権/ザイール
─────────────────────────────
 「1」は、パラグアイのストロエスネル政権です。
 ストロエスネル政権は、1954年から89年までパラグアイ
を統治した政権です。1954年7月、ストロエスネルは、対立
候補なしで大統領に選出されると、共産党非合法化に続き、すべ
ての革新団体の禁止と新聞の自由の制限を実施して、独裁体制を
確立し、予算の6割を軍事費に充てています。
 その独裁ぶりに反発し、左翼勢力による権力奪取の試みがあっ
たものの失敗し、反対勢力がほとんど海外へ亡命したので、19
58年から88年まで、5年の任期ごとに8選を果たし、独裁体
制を築いてやりたい放題の政権運営をしています。
 当時は東西冷戦下であり、反共の砦として米国、ドイツ、日本
とくに日本からの手厚い借款を受けて、国内の近代化を推し進め
各種のインフラを整備し、世界最大級の水力発電所を建設して電
力を隣国に売却することで利益を得るなど、経済の安定化に寄与
する貢献もしているのです。
 「2」は、ザイールのモブツ政権です。
 モブツ政権は、1965年から97年までザイール(現コンゴ
民主共和国)を統治した政権です。モブツは軍人上がりで、19
65年にクーデターで政権を掌握し、大統領に就任すると、やは
り東西冷戦を利用して、アフリカにおける反共の砦を任じ、その
見返りに西側先進国からの支援金を一手に引き受けて、そのほと
んどを着服したのです。
 モブツの不正蓄財は総額およそ50億ドルといわれ、西欧諸国
や西アフリカ、モロッコ、ブラジルなどに、豪華別荘や古城・豪
邸を保有し、隠し銀行口座を設けています。モブツに私物化され
た政権を揶揄する言葉として、「モブツの個人資産は、ザイール
共和国の対外債務に等しい」といわれたのです。
 パラグアイのストロエスネル政権も、ザイールのモブツ政権も
反対勢力を追放し、政権を批判するメディアを封じ、自分のやり
たい放題をやっています。両政権とも反共の砦として西側諸国か
らの支援を私物化しています。ストロエスネル政権は政権末期に
おいて、幹部の腐敗が横行し、民心を失い、クーデターで倒れて
います。ともに公共財と民間財を略奪して私物化するという不祥
事を起こしているのです。
 何清蓮/程暁農両氏は、中国が典型的な盗賊型政権であるとし
て、次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国の現政権は今述べた「盗賊型政権」の特徴をすべて兼ね備
えている。収賄者は政府の上層から中層・下層に至るまで広く分
布し、どんな小役人であれ、手中にある権力を利用してレント・
シーキング〔権力を利用した不法な超過利潤の追求、すなわち汚
職・腐敗を指す〕にいそしまない者はいない。世界の数ある「盗
賊型政権」が用いた略奪手段は、ひとつ残らず中国で実践されて
いる。          ──何清蓮×程暁農著k前掲書より
─────────────────────────────
 ここで「レント・シーキング」という言葉が使われています。
これは、民間企業などが政府や官僚組織へ働きかけを行い、法制
度や政治政策の変更を行なわせることをいうのです。規制のため
実現できないことを上層機関に賄賂などを使う働きかけによって
可能にする手口です。これは下から上へのレント・シーキングで
す。レントというのは「超過利潤」を意味します。
 現在、日本の国会で連日行われている加計学園の獣医学部新設
をめぐり、官邸サイドの働きかけがあったかどうかが討論されて
いますが、中国ではこういうとき、賄賂を使うことが常態化して
いるのです。儲けが出そうな業種における許可証──例えば、炭
坑や金坑などの各種鉱山業の採掘許可証などは役人が私腹をこや
す格好の手段になっています。
 中国は国家によって土地が独占されています。地方政府は権力
を駆使して土地を利用している農民を立ち退かせ、その土地を高
値で不動産デベロッパーに売却して暴利をむさぼるのです。そし
て、その不動産デベロッパーが共産党幹部の家族であったりする
のです。そういう意味で中国の役人は、土地転売でボロ儲けする
不動産ブローカーそのものといえます。
 このように、中国では上層・中層・下層に腐敗が蔓延しており
それが常態化しています。まさに盗賊的政権そのものです。しか
し、中国では、現在克服困難な経済的、社会的な難題が山積して
いるのです。これは、腐敗一掃キャンペーンぐらいで解決できる
ものではないのです。
 中国にとって今や繁栄は過去のものになっています。中国人が
目にしているものは、空を覆うスモッグ、汚染された土地、真っ
黒な河川、そして仕事の機会を得られない数億人にも及ぶ失業者
なのです。        ──[米中戦争の可能性/113]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の衰退と日本の出番/朝倉慶氏
  ───────────────────────────
   先日朝倉慶の「中国ゴーストタウンセミナー」ということ
  で、中国の現状を視察してきましたが、ツアー参加者一同予
  想以上の衝撃を受けました。内陸部オルドスでは人のいない
  マンション群が山のように連なっています。そして回りに作
  られた広大に続く工場群はただの一つも動いていません。そ
  して最も驚くべきことはそれらの工場群やマンション群を取
  り巻くインフラや道路が非常に綺麗で整備つくされ続けてい
  るということです。
   人のいないマンション群や稼働しない工場を想像してみて
  ください。それが延々と続く姿を想像してみてください。当
  然廃墟のようにすたれて人が全くいない、まさにゴーストタ
  ウンが出現してそれは薄気味の悪いところに思えませんか?
   ところが現実は全く違うのです。廃墟でありながら今も整
  備され続けていて、道路はちり一つなく綺麗に整備、掃除さ
  れているのです。何処に行っても人影もまばら、特に子供の
  姿はほとんど見かけることはありませんでした。ところがマ
  ンション群にはその広大な建物の一つ二つに電気がともると
  ころ、全くともらないところ、とにかく人の気配は全くあり
  ません。そしてそれらが何故綺麗になっているかというと実
  は、連日清掃しているからなのです。たまに会う人々はまさ
  に清掃の仕事をしている人のようで、この人のいない街を何
  故かしっかりと清掃し続けて清潔さを保とうとしているよう
  です。              http://bit.ly/2ssLK9d
  ───────────────────────────

ストロエスネル大統領/モブツ大統領.jpg
ストロエスネル大統領/モブツ大統領
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月15日

●「中国は衰退するが、崩壊はしない」(EJ第4542号)

 昨日のEJで、社会主義国の政治的転換と経済的転換について
述べましたが、政治と経済のどちらが先に転換されるかによって
結果が違ってきます。
─────────────────────────────
   1.政治的転換が先に起きる ・・ 中 欧モデル
   2.政治・経済の転換が同時 ・・ ロシアモデル
   3.経済的転換が先に起きる ・・ 中 国モデル
─────────────────────────────
 中国の場合は、専制的な共産党一党支配の政治体制はそのまま
で、経済的転換が先に行われた「3」のケースです。これは、最
悪のパターンです。「3」のケースでは共産党のエリート(紅い
エリート)たちは資本家になり、自分たちの利益のために、民主
化を妨害し阻止します。なぜなら、民主化とは、紅いエリートた
ちの政治的特権を剥奪することを意味するからです。したがって
彼らがそんなことをするはずがありません。
 中国の急速な経済発展と一時的な繁栄は、社会主義国特有の政
府によるすべての資源(リソース)を集中させた結果によるもの
です。その場合、民主主義国と違って、生態環境の汚染や国民の
健康的配慮などは一切なく、いわば略奪的な方法で経済を高度に
発展させ、異例のスピートでGDPを向上させたのです。このよ
うなことは、政府が専制的権限を持っている社会主義国でないと
できないことです。
 その結果、中国に何が起きたでしょうか。
 何清蓮/程暁農両氏は、社会主義国であれ、民主主義国であれ
どんな社会であれ、人がその生存を支えるための条件として次の
4つの要素を上げ、現在の中国の実情を説明しています。
─────────────────────────────
  1.水や土地や大気の安全などの生存基盤が確立している
  2.社会の構成員間の関係を調節する倫理・道徳システム
  3.社会の構成員の最低ラインの生存が確保される就業率
  4.社会の正常な運営を維持する政治的統合力が存在する
 何清蓮×程暁農著/中川友訳/ワニブックス「PLUS新書」
 「中国──とっくにクライシスなのに崩壊しない“紅い帝国”
のカラクリ/在米中国人経済学者の精緻な分析で浮かび上がる」
─────────────────────────────
 何清蓮/程暁農両氏によると、現在の中国で残っている要素は
「4」だけであるといいます。他の条件は、既に崩壊していると
いうのです。
 中国では、人が生きて行くために不可欠な水や大気は、極限ま
で汚染され、「1」は既に崩壊しています。工場から垂れ流され
る真黒な煙、何が浮いているのかわからない川、汚染された土地
枯れ果てた湖沼など。北京などの大都市の表通りはきれいである
ものの、一歩裏に回れば、生活ゴミの山。政府は本気で環境対策
に取り組んでいるとはとうてい思えないのです。
 社会では収賄や収奪が当たり前になり、そこに倫理・道徳シス
テムは働いておらず、上層から下層まで、腐敗は広く社会に蔓延
し、「2」も崩壊しています。それに加えて物価は高騰し、最低
限の収入を確保するための職の確保も、難しい状況になっていま
す。貧富の格差は拡大するばかりで、ワールドクラスの大富豪が
多数おり、豊かな中間層が海外で爆買いしている一方で、数億人
に及ぶ生活困窮者がその日暮らしの生活を送っています。そのた
め「3」も破綻しているといえます。
 それでいて、中国は崩壊しないというのです。このような中国
の現況を踏まえて、何清蓮/程暁農両氏は「中国は衰退はするが
崩壊しない」として、次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国政府はすべての資源を集中させて「安定の維持」に努めて
いる。かたや中国の民衆は、自己組織化の能力に欠け、「ばらば
らな砂」に等しいため、中国共産党という巨岩には抗うすべもな
い。したがって共産党政権は今後20年から30年、崩壊するこ
とはあり得ず、中国社会は長期にわたって「衰退するが、崩壊し
ない」状態のままに置かれるだろう。このプロセスは共産党政権
が中国の未来を犠牲にして自身の存続を図るプロセスであり、中
国が日々衰えてゆくプロセスにほかならない。もちろん、それは
中国が外に向けて負の影響をまき散らすプロセスでもある。例え
ば、海外への中国人の大量移住、環境汚染の外国への流出、国内
の矛盾から目を逸らさせるために対外的な衝突を仕掛ける等々で
ある。          ──何清蓮×程暁農著の前掲書より
─────────────────────────────
 現在中国では、習近平国家主席が中心になって「腐敗一掃キャ
ンペーン」を実施しています。しかし、中国の腐敗は、上層から
中層、下層まで行われており、日常茶飯事化しています。習近平
首席がやっているのは、腐敗キャンペーンを利用して政敵を排除
する権力抗争そのものに過ぎないのです。
 2016年4月3日に、ICIJ(国際調査報道ジャーナリス
ト連合)はパナマ文書を公表し、オフショア・カンパニーを開設
して資産を移転した権力者のリストを公開しています。パナマ文
書は、1150万件ありますが、その30%は中国人なのです。
約3万3000人の中国関係者と4188社のオフショア・カン
パニーの存在が明らかになっています。
 データベースを検索すると、中国の現職高級官僚とローマ字表
記が一致する多くの名前が発見されたのです。習近平の義兄・ケ
家貴、李鵬の娘・李小琳、温家宝の息子・温雲松、前全国政治協
商会議主席の買慶林、現政治局常務委員の劉運山などの親族・子
女の名前が続々と出てきています。
 中国共産党は国内への波及を恐れ、言論統制を行い、インター
ネットでも厳重な規制を行い、関連ワードで検索しても絶対に出
てこないようにしています。このことを踏まえて、何清蓮/程暁
農両氏は、現在の中国の政権を名付けて「盗賊型政権」と呼んで
います。         ──[米中戦争の可能性/112]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平政権に痛恨の一撃 パナマ文書は中国経済の時限爆弾
  ───────────────────────────
   世界中に波紋を広げている「パナマ文書」で名前が挙がっ
  た中国の習近平国家主席は、情報統制に必死だ。「中国内で
  ネット検索すると、『パナマ文書』という言葉はヒットしま
  すが、中国人の名前は一切出てきません。メディアも右へな
  らえです」(在中マスコミ関係者)
   そりゃそうだ。政権発足から一貫して「反腐敗」を掲げ、
  民衆の支持を得てきた習国家主席の姉の夫や、党幹部の親族
  がタックスヘイブン(租税回避地)を利用していたなんて知
  れ渡ったらシャレでは済まされない。中国事情に詳しいジャ
  ーナリストの柏木理佳氏が言う。「ただ、情報統制にも限界
  があります。ネット上で噂が出回りそうになれば、当局が削
  除するといういたちごっこが続いていますが、それこそ中国
  人は世界中にいる。今はSNSがありますし、個人間のやり
  とりをすべて取り締まることは難しい。都市部だけでなく地
  方まで情報が広がるのも時間の問題でしょう」
   習政権にとってパナマ文書は、まさに“時限爆弾”。中国
  経済も減速どころか、急ブレーキがかかりかねない。「そも
  そも今の中国経済は、インターネットなどのサービス業だけ
  が支えている。そこに厳しい規制をかけること自体、自分で
  自分の首を絞めるようなもので、加えて『物価だけ上がって
  給料が上がらない』というエリート層の不満も充満してきて
  いる。パナマ文書をきっかけに、たまりにたまった民衆のス
  トレスが爆発し、大規模な反政府デモにつながる恐れはあり
  ます」(柏木理佳氏)       http://bit.ly/2sgn8Ro
  ───────────────────────────

パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」.jpg
パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月14日

●「中国は世界一をなぜ目指さないか」(EJ第4541号)

 何清蓮と程暁農両氏による中国論は、われわれにまったく新し
い視点から中国を見せてくれるような気がします。それは、他の
中国関連本から得られる中国観とは大きく異なるものです。
 2001年以降、急成長を始めた中国経済という急行列車に多
くの国が競って乗ろうとし、中国の経済成長はますます加速しま
す。そして、2008年のリーマンショックでは、「4兆元の投
資」といわれる巨大な財政出動と併せて空前の金融緩和を行い、
危機を短期間で終息させるに及んで、中国の存在感は、一挙に高
まったといえます。そして、2010年にはGDPで日本を抜い
て世界第2位の経済大国になったのです。あとは、いつ米国に追
いつき、米国を抜くかという段階に達したのです。少なくとも世
界はそう見ていたのです。これからは、中国の時代である、と。
 しかし、当の中国は、この時点からそれまでの「中国モデル」
とか「北京コンセンサス」というようなハイトーンの対外宣伝戦
略をやめています。そして、2009年2月、外遊中のメキシコ
で、当時副主席であった習近平氏による次の有名な発言が行われ
たのです。
─────────────────────────────
 腹がいっぱいになって暇になった外国人が、われわれの欠点を
あれこれあげつらっている。中国は革命を輸出せず、飢餓や貧困
も輸出せず、外国に悪さもしない。これ以上いいことがあるか。
               ──習近平国家副主席(当時)
─────────────────────────────
 この発言は、仲間うちの記者たちと話したときのものですが、
次期国家指導者としての発言としてふさわしくないと批判を浴び
たのです。1970年代末から始まった改革開放以降、欧米に対
し、一貫して協調路線を取ってきた中国の指導者がこのような強
硬な発言をしたことがなかったからです。
 ところで中国は、もっとも胸を張ってよいこの時期になぜ突出
するのを控えるような対応をしたのでしょうか。何清蓮と程暁農
両氏によると、政府の指導者がこの時点で、いずれ中国に訪れる
であろう経済的困難を感じており、その要因が克服することが難
しいものであっことがわかっていたからであるというのです。
 中国経済に問題があることは、次のようなことからも窺い知る
ことができます。2008年から2016年まで、経済系メディ
アの年頭ニュースには、決まって次のフレーズが掲げられていた
といいます。こういうニュースは、経済が担当の首相であったり
一流のエコノミストの発言が基になるのですが、年が明けるたび
に、中国政府は何らかの不安を感じていたことになります。
─────────────────────────────
    今年は中国経済にとって最も困難な1年になる
─────────────────────────────
 このことは非常に民主主義国の陣営にとって、理解しがたいこ
とです。中国経済が発展をはじめたとき、国際社会は「中国の民
主化が進む」と歓迎したのです。中国の民主化が進めば、対外的
な軍事拡張によって人口過剰の危機を転嫁するのではないかとい
う国際社会が密かに恐れていた不安が解消されるからです。
 しかし、そうはならなかったし、当の中国は、最初から民主化
させるつもりなど全然なく、あくまで共産党による独裁体制を維
持する方針だったからです。それは、毛沢東の秘書を務めたこと
がある次の共産党の長老の言葉によってわかります。
─────────────────────────────
 人類を進歩させるものは民主主義、人治、科学、改革の4つ。
逆に人類の進歩を邪魔し、後退させるものは、独裁、人治、愚昧
革命の4つだ。毛沢東は後の4つのことで、文革など国家を大混
乱に陥れた。ケ小平は、愚昧をやめ、科学を進め、革命をやめ、
改革に力を入れた。しかし独裁と人治は継承した。
 そして、江沢民、胡錦濤、習近平は「3人ともケ小平の描いた
欠陥のある設計図の実行者でしかない。しかも、残念なことに、
政治家としての魅力も実力も能力も小粒になっている」と。
      ──矢板明夫著/『習近平/共産中国最弱の帝王』
                         文藝春秋
─────────────────────────────
 歴史的にはっきりしていることがあります。私有を公有にする
共産党政権は、最終的には存続することができないということで
す。存続させるためには、何らかのかたちで資本主義経済を取り
入れる必要があります。
 社会主義国の経済と政治の転換には、歴史的にみて、次の3つ
のモデルがあります。
─────────────────────────────
          1.中 欧モデル
          2.ロシアモデル
          3.中 国モデル
─────────────────────────────
 「1」は「中 欧モデル」です。
 中欧諸国の転換は、旧体制に異議を唱える知識人層によって共
産主義が一掃され、体制変換が行われています。このモデルでは
共産党エリートの居場所はないのです。ポーランド、ハンガリー
チェコ、スロヴァキアがこのモデルです。
 「2」は「ロシアモデル」です。
 このモデルでは、共産党エリートが民主派エリートに変身した
ので、転換でもたらされた多くの恩恵にあずかっていますが、庶
民も私有化プロセスのなかで、一部の所有権を確保しています。
旧来の権力者が新社会を率いた典型的なモデルといえます。
 「3」は「中 国モデル」です。
 このモデルでは、全面的な公有制と計画経済は放棄したものの
共産党資本主義によって全体主義制度を強固なものにし、共産党
指導者が私有化のプロセスで数々の犯罪行為を行っています。そ
のため、国家全体に深刻な腐敗をもたらしているのです。
             ──[米中戦争の可能性/111]

≪画像および関連情報≫
 ●資本主義と共存する中国共産党の謎
  ───────────────────────────
   今日、中国共産党はこの国の唯一の政党でありつづけてい
  る。過去30数年間に多くの観測筋や解説者が、中国はいず
  れ西洋型の資本主義へ向かうだろうと期待を寄せた。その過
  程で中国共産党は、市場改革が進展するにつれ重要性を失う
  か、共産主義とともに廃れるか、民主化を受け入れて台湾や
  韓国と同じ道を歩むだろうと見られた。
   しかし今日、中国共産党に、その一党支配体制を改める用
  意があるとの兆しは見当たらない。その割合を高めている私
  企業家や大学卒業者も含めて、あらゆる職業の8000万人
  以上の党員(2011年末現在)をかかえる党は、かつてな
  いほど強大に見える。共産党が存続して、中国型の資本主義
  はますます異質で好戦的な勢力、西洋の資本主義を打倒しな
  いまでも、これと対立する勢力に見える。
   経済の自由化と共産党支配の継続とのややこしい協調関係
  中国における共産党の存続は、経済改革の最も顕著な特徴に
  違いないが、それは多くの人に改革の始めから終わりまで中
  国の党国家としての一見誤りのない役割に目を向けさせた。
  旧ソ連圏のように、これまでの与党・共産党が次々に崩壊し
  市場主導の改革への道が拓かれた移行経済(トランジション
  ・エコノミー)とは違って、中国は共産党と市場経済がとも
  に繁栄できるように見える唯一の例として際立っている。
                  http://nkbp.jp/2r59FYr
  ───────────────────────────

全権力を掌握しつつある習近平国家主席.jpg
全権力を掌握しつつある習近平国家主席
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月13日

●「中国は自分の国をどう見ているか」(EJ第4540号)

 数ある中国崩壊論に関する書籍のなかで、最新刊で内容のある
次の本を発見し、読んでいます。在米中国人経済学者2名による
精緻な中国分析ですが、なかなか読み応えがあります。
─────────────────────────────
 何清蓮×程暁農著/中川友訳/ワニブックス「PLUS新書」
 「中国──とっくにクライシスなのに崩壊しない“紅い帝国”
のカラクリ/在米中国人経済学者の精緻な分析で浮かび上がる」
─────────────────────────────
 「米中戦争はあるのか」について考えるとき、今後中国がどう
なるのかについて判断することが不可欠になります。とくに米国
の大統領は、アジア情勢に米国としてどう向き合うべきかを決め
るとき、この判断が必要です。
 オバマ大統領は、大統領に就任したときは、アジアにはほとん
ど関心がなく、同盟国である日本の首相にさえ、早く会おうとし
なかったのです。しかし、大統領就任後7年が経過した第2期政
権の終わり頃になって、中国についての次の見解を発表していま
す。あまりにも遅すぎるし、その間に南シナ海に中国にやすやす
と人工島を造られてしまっています。
─────────────────────────────
 弱体化しおびえた中国は、成功に満ち興隆する中国よりさら
 に脅威である。           ──オバマ前大統領
─────────────────────────────
 オバマ大統領のいう「弱体化しおびえた中国」とは、現在の中
国のことですが、その中国の方が国際社会にとって脅威であると
して、その理由を次のように述べています。
─────────────────────────────
 かりに中国が失敗した場合、国民を満足させられるような成長
軌道を維持できず、そのため国民の結束を図る原理として民族主
義に訴えるとしたら、もし中国が国際秩序の維持、構築という大
国に見合う責任をとても担えきれそうにないと感じたなら、もし
中国がこの世界を勢力圏の視点からしかとらえないなら、我々は
将来的に中国と衝突することになる可能性ばかりか、これから訪
れる多くの問題の対処にはさらなる困難がともなうことを覚悟す
べきだろう。               ──オバマ大統領
               何清蓮×程暁農著の前掲書より
─────────────────────────────
 冒頭の中国を分析した書籍の著者(何清蓮/程暁農両氏)につ
いて簡単にご紹介しておく必要があります。
 何清蓮(か・せいれん)氏は、1956年に湖南省生まれの中
国人で、上海復旦大学を卒業。その後記者生活を送り、中国社会
科学院の特約研究員を経て2001年に米国へ脱出。現在、ボイ
ス・オブ・アメリカのコラムニストとして活躍しています。
 程暁農(てい・ぎょうのう)氏は、1952年に上海市生まれ
の中国人で、中国経済体制改革研究所の総合研究所の元主任。独
仏に留学後に米プリンストン大学で博士号を取得し、現在は同大
学の当代中国研究センターCEOを務めています。
 中国は、当時のクリントン米大統領の支援を受けてWTOに加
盟するや急速に経済成長を始めます。そして、2003年頃から
「中国の平和的台頭」を対外宣伝のポイントに据えるのです。こ
れは、中国共産党の理論界の重鎮である鄭必堅氏の次の論文の発
表がきっかけになっています。
─────────────────────────────
              鄭必堅著「中国の平和的台頭」
 「フォーリン・アフェアーズ誌」/2005年9月10日号
─────────────────────────────
 ところが、2006年になると、中国の対外宣伝ポイントは次
のように変更されるのです。
─────────────────────────────
 北京コンセンサスがワシントン・コンセンサスに取って代わ
 り、世界に向けて「中国モデル」を輸出する。
─────────────────────────────
 いま考えると、この頃が中国の絶頂期であったといえます。こ
こでいう中国モデルとは次の発展方式のことです。
─────────────────────────────
     1.共産党独裁体制下での公有制を土台に
     2.市場原理を導入して経済を活性化させ
     3.外国資本技術の導入で成長を加速する
─────────────────────────────
 共産党独裁体制下での市場経済の導入という世界初めてのモデ
ルが成功しつつあり、中国はこの「中国モデル」の輸出に意欲を
示したのです。このモデルは、ベネズエラの当時のチャベス大統
領によって絶賛され、発展途上国において、一時大いにもてはや
されることになったのです。
 2010年に中国は日本を抜いて、世界第2の経済大国になり
ます。しかし、中国は、この時点から対外宣伝ポイントのトーン
落とし、以下のように一変するのです。
─────────────────────────────
 2010年、中国のGDPが初めて日本を追い抜き、中国は世
界第2の経済体となった。しかし、中国政府の将来的な見通しは
かなり慎重なものへと転じ、中国は多くの方面でいまだ発展途上
国レベルにあると述べるようになった。11年3月、IMF(国
際通貨基金)のあるリポートが、購買力平価ベースで計算すると
中国のGDPは5年後にアメリカを追い越し、2016年は「中
国の世紀の元年」となり、「アメリカの時代」はもはや終わりを
告げつつあると述べた。これに対し、中国側はただちに国家統計
局の馬建堂局長がIMFのリポートヘの反論を公表し、中国の経
済発展のレベルはまだまだ低い水準にあると訴えた。
               何清蓮×程暁農著の前掲書より
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/110]

≪画像および関連情報≫
 ●何とか合意できた「北京コンセンサス」
  ───────────────────────────
   日本と中国の政府間外交が機能停止に陥っている状況の中
  で、私たちの民間外交がどのような役割を果たせるのか、と
  いうことがずっと問われてきました。そこで、私たちは、民
  間の中に冷静な議論をつくり上げ、日中の民間レベルで「両
  国の間に戦争を起こすようなことは絶対にしない」、という
  ことで合意することを目指しました。
   しかし実をいうと、その合意である「北京コンセンサス」
  も、直前になって完成を一時断念しました。「不戦宣言」と
  いう誰もが納得できるような大きな意義のある宣言も、政府
  間外交というフィルターを通して見ると、いろいろな問題が
  出てきます。例えば、尖閣諸島(釣魚島)をどう扱えばいい
  のか、歴史認識をどうすればいいか、など様々な問題がある
  わけす。そこで、コンセンサスには日中間で合意できないこ
  とは記載しない、合意できることだけを記載しようというこ
  とになりましたが、その線引きの判断が最後の最後までずれ
  込みました。
   それでも、私たちはどうしても不戦宣言を出したかった。
  そこで、発表の場となる最終日の全体会議が始まる深夜のぎ
  りぎりの局面になってようやく作成作業を再開し、朝の4時
  までかかって文面をつくったわけです。その作業には明石康
  ・元国連事務次長や宮本雄二元駐中国特命全権大使、それか
  ら武藤敏郎・大和総研理事長、元日銀副総裁といった皆さん
  が、ご高齢にもかかわらず、夜を徹して協力してくださいま
  した。明け方まで全員で文面を何度も見直して、最終的な文
  章を完成させ、12時ぐらいに「北京コンセンサス」として
  世界に向けて公表することができました。
                   http://bit.ly/2t0PfjR
  ───────────────────────────

在米中国人経済学者の中国分析本.jpg
在米中国人経済学者の中国分析本
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月12日

●「シャンボー教授による中国崩壊論」(EJ第4539号)

 「中国はなぜ崩壊しないのか」についてさらに考えます。仮に
中国の不動産バブルが崩壊したとします。しかし、社会主義国で
あれば、国家が大量の資金を投入してバブルを鎮めることは、程
度にもよりますが、十分可能です。そして、社会主義国であれば
そのようにしたことを外部に隠蔽することも可能です。経済統計
数字を改ざんすることができるのです。
 この考え方に立つと、中国の不動産バブルはとっくに崩壊して
いる可能性もあります。既に国家として密かに処理されており、
それが外部には、そのようには見えないだけではないかとも考え
られます。中国崩壊論はかなり昔から何回も出てきているのです
が、それと同等の中国繁栄論も出ており、国際社会では崩壊論を
まともに信用する識者は少なかったのです。
 ところが、2015年に入ると、中国に対する国際社会の見方
が繁栄論から崩壊論に一変するのです。それは、ジョージ・ワシ
ントン大学の国際政治学者であるデイビッド・シャンボー教授が
執筆した次の論評が公開されたからです。
─────────────────────────────
          デイビッド・シャンボー著
      『終焉に向かい始めた中国共産党』
     ウォール・ストリート・ジャーナル紙
─────────────────────────────
 この論評は大変な反響を呼んだのです。なぜなら、デイビッド
・シャンボー教授は、ワシントンでも有名な親中派の学者であり
その見解は信用されていたからです。「あのシャンボー教授がい
うのであれば、中国はきっとそうなのだろう」と考える人が多く
ショックが拡大したのです。それは2001年のゴードン・チャ
ン氏の本のときとは比較にならなかったのです。
 「ゴードン・チャン氏のとき」とは何でしょうか。
 ゴードン・チャン氏は、米国の作家で、2001年に次の著書
を上梓したのです。
─────────────────────────────
    ゴードン・チャン著/栗原百代・渡会圭子訳
     『やがて中国の崩壊がはじまる』/草思社
─────────────────────────────
 この本は話題になりましたが、多くの人にはにわかに中国が崩
壊するとはとても考えられなかったのです。2001年といえば
中国がWTOに加盟したばかりであり、中国の経済が急成長をは
じめたときであったからです。本文中には「中国経済は10年以
内に崩壊する」と予言していますが、2010年には中国はGD
Pで日本を抜いて世界第2位の経済大国になっており、ゴードン
・チャン氏の予言は、大外れだったといえます。
 しかし、2015年は、誰の目にも中国の衰えが明らかになっ
た年であり、その年に出されたデイビッド・シャンボー教授の論
評が国際社会に強いインパクトを与えたのです。
 デイビッド・シャンボー教授は、現在の中国には、体制の脆弱
性を示す次の5つの亀裂があることを指摘しています。
─────────────────────────────
 1.中国の経済エリートたちは、既に片足をドアの外に出し
   ており、もし少しでも体制が揺らぎ始めれば、大挙して
   逃亡する用意だけはできている。
 2.習近平は、政治的な抑圧を大幅に強化している。これは
   党の指導者たちの不安と自信のなさの表れである。今後
   この傾向はますます強化される。
 3.政権に忠誠を誓っているように見える者たちも、実際に
   はそう装っているだけである。そうしないとこの社会で
   は生きていけないと思っている。
 4.党及び軍にはびこる腐敗は、社会全体に蔓延している。
   根本原因は一党支配体制にあり、反腐敗キャンペーンで
   は問題解決は困難と思っている。
 5.中国経済は制度的な落とし穴にはまっており、簡単には
   脱出できない。党の大胆な経済改革パッケージも既得権
   益層がその実施を妨害している。
─────────────────────────────
 シャンボー教授によると、中国の政治体制は見かけ以上に壊れ
ており、現在、習近平主席は、反対派と腐敗を厳しく取り締まる
ことによって、党の支配を強化しようとしていると指摘していま
す。しかし、その独裁政治は、中国の社会と体制に強いストレス
を与えており、限界点は近づいているといいます。それは、上記
の5つの亀裂によく表れています。
 共産党による一党独裁体制は、その最終段階に既に入っており
思った以上に進んでいるといえます。そして、共産党支配は静か
に終わる可能性は少なく、意外に長引き、混沌とし、暴力を伴う
ものになると、習近平体制がクーデターによって失脚する可能性
についても指摘しています。
 これら5つの亀裂は、現在の政治システム(中国共産党の一党
支配)が原因で顕在化したものです。したがって、この亀裂は、
中国の政治改革によってのみ解決できる──とシャンボー教授は
いいます。しかし、それは非常に困難なことです。
 このシャンボー教授の論評は、あまりにも大きな反響を呼んだ
ので、シャンボー教授はその後の講演会で、次のように若干の修
正を行っています。
─────────────────────────────
 「中国が崩壊する」と予測したのではなく、「中国共産党の延
長式の没落」を予測した。崩壊とは別の問題。ゴードン・チャン
氏と一緒にしないでほしい。      ──とシャンボー教授
                  http://exci.to/2rP8bTm
─────────────────────────────
 中国の将来を予測することは非常に困難です。しかし、崩壊は
しないまでも「衰退」に向うことは避けられないと教授は予測し
ているのです。      ──[米中戦争の可能性/109]

≪画像および関連情報≫
 ●「中国経済崩壊論」の拡散でAIIBつぶしに乗り出すか
  ───────────────────────────
   「中国経済崩壊論」の拡散も、米国が今後、取るであろう
  戦略だ。これは「経済戦」の一環である。米国は現在、日本
  と欧州を巻き込み、「対ロシア経済制裁」をしている。しか
  し、ロシアと違い、世界第2の経済大国・中国に経済制裁を
  課すことは、困難だろう。そもそも、「AIIBをつくった
  から制裁する」とはいえない。他の理由で中国を経済制裁し
  ようにも、欧州が「制裁はイヤだ!」といえば、またもや米
  国の権威は失墜する。
   では、どうするのか?「中国経済の崩壊は近いですよ」と
  いう噂を広めるのだ。実をいうと、これは完全な「噂」でも
  ない。実際、中国のGDP成長率は、年々下がっている。賃
  金水準が上がり、外国企業がどんどん東南アジアなどに逃げ
  出している。だから、米国が「中国経済の崩壊は近い」とプ
  ロパガンダしても、必ずしもウソとはいえない。
   事実、最近「中国崩壊説」をよく見かけるようになった。
  たとえば、ゴールドマン・サックスの元共同経営者ロイ・ス
  ミス氏は2015年3月2日、「中国経済の現状は1980
  年代の日本と似ている点が多い」「日本と同様、バブル崩壊
  に見舞われるだろう」と述べた。さらに、かつては、親中派
  だったデヴィッド・シャンボー(ジョージ・ワシントン大学
  教授)は3月6日、「ウォール・ストリート・ジャーナル」
  に、「終焉に向かいはじめた中国共産党」を寄稿して、中国
  政府を激怒させた。        http://bit.ly/2s7eN2s
  ───────────────────────────

ディビッド・シャンボー教授.jpg
ディビッド・シャンボー教授
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月09日

●「中国はどうしてまだ崩壊しないか」(EJ第4538号)

 書店に行ってみるとわかることですが、「中国は崩壊する」を
テーマにする本と「中国はなぜ崩壊しないか」をテーマにする本
が溢れています。前者と後者を比率でいうと、7対3です。この
ところ後者の本が新刊書では多くなっています。
 「なぜ、中国は崩壊しないのか」については、中国が社会主義
国であるということに尽きると思います。なぜなら、社会主義の
国であれば、資本主義国ではやってはならないことが何でもでき
るからです。統計を改ざんし、事実を隠してウソの報告をしても
誰からも咎められることはないからです。たとえ、中国経済が、
とっくの昔に崩壊していても、それを隠すことだって十分可能で
す。国家がその気になれば何でもできるのです。
 その典型的な例を日本にみることができます。現在、多くの日
本人は、日本の政府債務がGDP対比で200%を超えているこ
とを知っています。数字で示されれば、確かにその通りであり、
信じてしまいます。
 GDP対比200%以上であるのは「政府債務」ですが、多く
の人は、それを「日本の債務」とイコールでとらえています。そ
のため、多くの日本人は、日本は途方もない借金大国だと考えて
しまっています。しかし、これは、財務省がマスコミを使って国
民にそう思わせているだけです。なぜ、そんなことをするのかと
いうと、国民に「増税やむなし」と思わせたいからです。
 その一方で、日本が「世界一の債権大国」であることをほとん
どの日本人は知りません。それも1年や2年ではないのです。日
本が25年連続の世界一の債権大国であることを・・・。
 なぜ、こんなことになるのかというと、マスコミが政府におも
ねっており、伝えるべきことを正しく伝えていないからです。世
界一成功した投資家といわれるウォーレン・バフェット氏は、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 マスコミが馬鹿な国は、国民も馬鹿になり、投資家も馬鹿に
 なる。           ──ウォーレン・バフェット
─────────────────────────────
 バフェット氏の指摘は強烈です。これは日本のことをいってい
るのかもしれません。知って欲しいことがあります。政府を含む
国の数字は原則として自己申告であるということです。国際機関
ではその数字が正しいかどうかはチェックしないのです。ところ
で、日本の財務省は借金を多くみせたいのです。その場合、どこ
までを借金に含めるかは財務省の判断に委ねられています。
 日本の借金には、為替介入の引当金、特殊法人の借金、有料道
路の建設費まで含め、そのうえ地方自治体の借金や、「第3セク
ター」のようなものまで全て政府の借金に入れています。つまり
日本の借金は「官僚の天下り費や飲み屋のつけ」まで含まれてい
ることになります。借金を大きくみせたいからです。
 これに対してドイツの借金は、あくまで「政府の借金」だけに
絞っています。財務省が「日本の借金」を外国と比較するなら、
アメリカやドイツと同じ基準で計算するべきであるし、基準が違
うなら、世界の政府の借金の比較はそもそも意味がないことにな
ります。もうひとつ論点があります。
 資本主義国では、政府が発行する国債などを中央銀行が直接引
き受けることなどにより、中央銀行が政府の財政赤字を補填する
形で資金を出すことを「財政ファイナンス」として、禁じていま
す。しかし、日本はデフレから脱却するために「異次元の金融緩
和」を続けています。これは政府の財政赤字を補てんするためで
はありませんが、結果としては日銀の保有する国債は膨大な量に
なっています。これに関して、経済評論家の三橋貴明氏は次のよ
うに述べています。なお、これは三橋氏の2014年6月20日
のレポートであることをお断りしておきます。
─────────────────────────────
 日本銀行が2014年6月18日に発表した1〜3月の資金循
環統計によると、日銀がもつ国債の残高は3月末で201兆円と
なり、昨年3月末より57・2%増えた。国債全体に占める日銀
の保有残高の割合は20・1%で、保険会社を抜いて初めて最大
の保有者となった。日銀の保有残高が急増したのは、昨年4月か
ら始めた大規模な「金融緩和」で市場に大量のお金を流すために
満期が長い「長期国債」を金融機関から毎月6兆〜8兆円買って
いるからだ。今年末には長期国債の保有残高が190兆円と20
12年末(89兆円)の2倍になる。
 日本銀行が国債を保有した場合、政府は借金を返済する必要も
利払いをする必要もなくなります。一応、政府は日本銀行が保有
する国債に対し、律儀に金利を支払っていますが、日銀の決算終
了後に「国庫納付金」として返還されています。
 というわけで、日銀の国債保有が量的緩和で増えている以上、
現在は政府の借金が実質的に減り続けているというのが真実なの
です。それにも関わらず、財務省やマスコミは相変わらず、「国
の借金1000兆円突破!間もなく破綻!」といった論調で国民
を煽り、悲壮感をまき散らし、経済成長やデフレ脱却の妨害をし
ています。              http://bit.ly/2rTlILK
─────────────────────────────
 政府の借金は、返済しなくてもよいといいませんが、個人の借
金と違って、完済しゼロにする必要はないのです。返す場合でも
長期間にわたって少しずつ返済すればよいのです。それは、政府
の寿命は一般人と違って永遠に続くと考えているからです。財務
省はあえて政府の借金を家計の借金と同一視し説明しています。
 公表していませんが、中国の借金はGDP対比300%を確実
に超えています。中国はこれを返済するつもりはないし、返済で
きないでしょう。現在も政府債務は増え続けていますが、これに
よって中国経済が崩壊する様子はみられないのです。つまり、社
会主義国では何でもやれるのです。しかし、ものには限界という
ものがあります。いつかは突然崩壊するはずです。それは明日か
も知れないのです。    ──[米中戦争の可能性/108]

≪画像および関連情報≫
 ●日本の政府債務残高、実は世界最速ペースで減少
  ───────────────────────────
   日本は国内総生産(GDP)比で世界最大の政府債務残高
  を抱える国として長年知られてきた。しかし、実情は変わり
  つつある。実効ベースで見た場合、公的借り入れ負担は年間
  にGDPの15ポイントに相当するペースで急減していると
  の推計もあるためで、そうだとすれば一段と管理可能な水準
  に向かっていることになる。
   変貌の謎を解く鍵は日本銀行による先例のない日本国債買
  い入れだ。一部エコノミストはこれを政府債務の「マネタイ
  ゼーション(貨幣化)」と呼ぶ。政府のバランスシートに国
  債の負債は残るが、もはや民間部門が保有するわけではない
  ため、実効ベースでは関係ないというのが、一部識者の見方
  だ。日本の政府債務残高はグロスベースで現在、GDPの2
  倍余りと推計されるが、日銀統計を使ったシュルツ氏の算定
  では、銀行や家計など民間部門から日銀に保有が移行しつつ
  あることで大きな影響が生じている。同氏の推計によれば、
  政府債務残高のうち、民間保有分は2012年末の第2次安
  倍晋三内閣発足直前のGDP比177%から、向こう2−3
  年で同100%程度に低下する見通しだ。日本が借り入れを
  減らしている訳ではない。安倍政権はさらなる財政刺激策を
  準備中であり、その資金は国債発行で賄われる。
                   http://bit.ly/2sfaXE9
  ───────────────────────────

経済評論家/三橋貴明氏.jpg
経済評論家/三橋貴明氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月08日

●「海外でトラブルが頻発の中国PT」(EJ第4537号)

 中国には「冊封体制」という考え方があります。「冊封(さく
ほう)」とは、かつての中国の皇帝が貢物をもってきた周辺諸国
の君主に官号・爵位などを与えて君臣関係を結び、彼らにその統
治を認めることをいうのです。
 経済や軍事力で力をつけてきた中国は、どうやらこの冊封体制
の再現を考えているようです。しかし、中国はここまで見てきた
ように、国内に大きな問題を抱え込んでいます。そのため、力を
国外へ向けようとしています。
 中国が最も力を入れてきたのがアフリカです。南ア、タンザニ
ア、ザンビア、ガーナ、ナイジェリア、アンゴラ、モーリシャス
アルジェリア、マダガルガスなどに中国は進出しています。中国
はこれらの国々に対して、札束攻勢をかけたのです。
 しかし、中国の評判は芳しくないのです。ほとんどのプロジェ
クトがうまくいっていないからです。アフリカ各地で中国排斥運
動まで起きています。やり方が汚いからです。これについて宮崎
正弘氏は、次のように中国のやり方を明かしています。
─────────────────────────────
 とにかくアフリカの場合はまず不良品を売りつける。それから
プロジェクトはもらったのはいいけども、全部役に立たない。国
のトップは買収される。要するに大統領宮殿を造ってくれるって
いうんで靡くわけですよ。つぎにこのプロジェクトをやると言っ
で、それは結局国の借金なんですよね。つぎに農地を買われる。
すでに何万エーカーという土地を買って、そこで中国人が来て農
作物を作って、それをみんな中国へ持って帰るというわけ。それ
は頭に来ますよ。現地の雇用がないんだから、トランプが雇用が
いちばん大事だと言っているように。どこの国だって雇用がいち
ばん大事。だから中国はもう要らない。出で行けということにな
るでしょうね。        ──宮崎正弘/石平著/WAC
         『いよいよトランプが習近平を退治する!』
─────────────────────────────
 もちろん中国の実績がゼロというわけではないのです。アフリ
カ南部諸国をつなぐ高圧電線網、ザンビアの発電所、アンゴラの
鉄道、コンゴの橋と道路など、実績はいくつもあります。しかし
多くの場合、それがトラブルを生んでいるのです。
 ザンビアのケースを取り上げます。多くの海外プロジェクトで
中国は、現地で雇用せず、多くの中国人作業員を現地に送り込み
作業が終了すると引き上げるか、その地にそのまま居座るという
方式を取るのですが、ザンビアの場合、20億ドルを投資し、2
万人もの現地雇用を創出したのです。
 こういう海外プロジェクトをやる場合は、国有企業が進出する
のですが、多くの場合、企業の態度が横柄なのです。そのため、
多くのトラブルが起きます。2006年には銅山を買いとった中
国企業に対し、現地労働者の激しい抗議デモが発生したのです。
このとき、中国人側が発砲し、46人が殺害されるという悲惨な
事件が起きたのです。これによって一気に反中感情が爆発したの
です。以来、ザンビアの対中感情は現在も悪いままです。
 中国の海外プロジェクトがなぜうまくいかないのかについては
別の理由もあります。高橋洋一氏は、自著で次のような恐るべき
事実を明らかにしています。
─────────────────────────────
 中国が海外でのプロジェクトで安値受注できるのは、犯罪者を
労働者として送り込んでいるという側面もある。監獄生活か海外
労働のどちらを選ぶか囚人に選択させ、ほぼタダ働きさせている
のだ。そのなかには死刑囚まで含まれている。中国の刑務所で死
刑囚を収容できる上限の人数は400万人で、刑務所は「満員御
礼」の状況が続いているという事情も背後にはあるのだが・・。
 おまけに、中国人の傲慢な態度が現地の人々から総スカンを喰
らっている。一人っ子政策のおかげで「小皇帝」と呼ばれ、甘や
かされて大人になった者が世界へ出ている。これも大きなリスク
要因。アフリカ各地で中国人排斥運動のデモが頻発しているのも
そういった背景があるのだろう。
      ──高橋洋一著/『中国GDPの大嘘』/講談社刊
─────────────────────────────
 受注契約直前に中国側にひっくり返されたインドネシアの高速
鉄道建設についてこういう話があります。これは、インドネシア
におけるジャカルタからバンドンまでの高速鉄道建設計画であり
2016年1月21日に、ジョコ大統領や中国要人が出席して、
華々しく、起工式が催されています。
 しかし、この計画は現在も着工されていないのです。そもそも
起工式の時点で建設認可が下りていなかったのです。認可に必要
な必要書類が揃っていなかったからです。中国側からの書類が不
足しており、提出された書類も中国語で記載されており、審査員
が読んで理解できなかったのです。これは工事を日本から分捕っ
て受注した中国側の怠慢そのものです。
 なお、受注前に中国側から提出された提案書には、日本の提案
書をまる写ししたものが入っていたのです。日本側は、提案に当
たって、ボーリング調査や地質調査などを数年かけて行い、精密
なデータを作成しているのです。中国側は、そうした調査を一切
行わず、日本のデータをコピーしています。しかもルートも日本
案とまったく同じなのです。
 それでは、日本側のデータがどうして中国側に渡っていたので
しょうか。それは、推測するしかありませんが、インドネシア側
の誰かが中国側に漏らしたか、中国側が買い取ったかのいずれか
ではないかと思います。このようなことをしていると、中国はも
ちろん、インドネシアも国際的信用を失ってしまいます。
 実は、中国が受注した高速鉄道計画が頓挫するのは、これだけ
ではないのです。米国のエクスプレスウェスト社と中国鉄道公司
との合弁によるラスベガスとロサンゼルスを結ぶ高速鉄道計画は
中国側がするべきことを時間通りにやっていないという理由で合
弁解消になっています。  ──[米中戦争の可能性/107]

≪画像および関連情報≫
 ●中国高速鉄道、各国が相次いでキャンセル
  ───────────────────────────
   日本が競合の末に敗れたインドネシアを始め、世界各国で
  破格の条件を提示し次々と高速鉄道計画の受注に成功した中
  国ですが、アメリカでは工事の中止が決定、その他の国でも
  同じような動きが出始めるなど、ここに来て暗雲が立ち込め
  ています。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴
  史、中国・韓国の真実」』の著者で評論家の黄文雄さんはこ
  れについて「世界が中国のインチキぶりにようやく気が付き
  始めた結果」と一刀両断し、習近平政権がますます苦境に追
  い込まれることになるとの厳しい私見を記しています。
  このところ、中国の高速鉄道の輸出計画が次々と挫折してい
  ます。6月8日には、ラスベガスとロサンゼルスを結ぶ高速
  鉄道の計画で、アメリカのエクスプレスウエスト社が中国鉄
  道総公司との合弁解消を発表しました。この合弁は2015
  年9月の習近平主席の訪米前に発表されたものです。201
  6年9月に  も着工する見通しでしたが、エクスプレスウ
  エスト社は合弁解消の理由として「中国企業がやるべきこと
  を時間通りできていない」と計画の遅れが原因だったとして
  います。中国側は寝耳に水のことだったようで「無責任で契
  約違反だ」と批判していますが、もともと習近平主席の訪米
  の成果として強調するためにぶち上げたプロジェクトであっ
  た可能性も高く、むしろアメリカ企業のほうが中国企業の実
  態を見て危機感をのでしょう。   http://bit.ly/29zHFIc
  ───────────────────────────

インドネシア・ジョコ大統領/安倍首相.jpg
インドネシア・ジョコ大統領/安倍首相
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月07日

●「独自の技術を持たない中国の悲劇」(EJ第4536号)

 このままでは中国は崩壊せざるを得ない──このことをさらに
実証していきます。歴史人口学者、エマニュエル・ドット氏は中
国の繁栄について次のような厳しい指摘をしています。
─────────────────────────────
 中国の経済的な繁栄は、中国の指導者たちが有益な決断を主体
的に下した結果、得られたものではなく、経済的な力関係の中で
欧米日の資本主義諸国から押し付けられたものを受け入れたから
こそ得られたものなのです。一見、中国の最高指導者たちは賢そ
うに見えますが、実はそう賢くもありません。彼らの進路を決め
てきたのは、中国の膨大な人口を安価な労働力として「使ってき
た」欧米日のグローバル企業なのです。その意味で、いびつな中
国経済を生んだのは、欧米日のグローバル企業なのです。だから
彼らには、中国経済の不安定な現状に対して多いに責任があると
いえる。               http://bit.ly/2rRtyGn
─────────────────────────────
 ドット氏の「一見、中国の最高指導者たちは賢そうに見えます
が、実はそう賢くもありません」という指摘は誠に強烈ですが、
中国の為政者のやっていることを見ると、そう思わざるを得ない
ことが多いのです。
 かつて中国は「世界の工場」といわれましたが、実は独自技術
ゼロの国なのです。こういうと、中国は米国に匹敵するステルス
戦闘機も開発しているし、宇宙開発でも有人飛行にさえ成功して
いるではないかと反論する人もいますが、実は独自開発はほとん
どなく、コピー技術ばかりです。高橋洋一氏はこれについて次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 まず、ステルス戦闘機。中国のサイバー攻撃によって、英米が
共同開発した最新鋭ステルス戦闘機「F−35」の設計に関する
機密情報が漏洩したことは、周知の事実である。「F−35」戦
闘機を開発・製造しているロッキード・マーチン社がサイバー攻
撃を受け、フォルムなどの機密情報が盗まれたのだ。(中略)
 では、有人飛行に成功したロケット技術については、どうだろ
うか。2003年には「神舟五号」ロケットにより、世界で3番
目の有人宇宙飛行を成功させた。その後も宇宙ステーション計画
や、月探査、あるいは火星探査計画も進めている。その技術は、
1950年代に友好関係にあったソ連から多くを学んでいる。そ
の後は独自で開発を進めてきたのは事実であるが、他の分野、た
とえば一眼レフカメラの技術などでは、ドイツや日本には遠く及
ばない。  ──高橋洋一著/『中国GDPの大嘘』/講談社刊
─────────────────────────────
 中国に独自技術が乏しいことは確かです。いわゆる「爆買い」
で多くの中国人が日本に来て買ったものは、炊飯器などの家電製
品、一眼レフカメラ、スキンケア化粧品、目薬などです。これは
中国には、それらの日本製品に対抗できる製品がないことを意味
しています。実は、ロケットや戦闘機を作る技術よりも、一眼レ
フカメラを作る技術の方がはるかに難しいのです。
 中国系の情報サイト「レコード・チャイナ」に、驚くべきこと
が出ています。中国車のほとんどに三菱自動車のエンジンが搭載
されているというのです。中国はどうしても高性能な自動車エン
ジンが作れないのです。微博には「これじゃ、国産車といえない
よね」という類いの書き込みも増えているといいます。
─────────────────────────────
2016年3月4日、中国のポータルサイト・今日頭条が、中国
メーカーが製造する自動車のエンジンはほとんどが日本メーカー
であることを指摘する記事を掲載した。記事によれば、多くの中
国メーカーの自動車が三菱からエンジンの供給を受けていると紹
介。三菱自動車は、中国に瀋陽航天三菱とハルピン東安三菱の2
社の合弁会社があり、中国でエンジンを製造していると伝えた。
 その上で、中国の自動車メーカーの多くが三菱エンジンを採用
する理由について、「中国ブランドには成熟したエンジン製造技
術がない」ことと、「三菱エンジンは安定していて燃費が良く、
メンテナンスが容易であり、中国で生産しているためコストも安
かった」ことを挙げた。        http://bit.ly/2rwLKC5
─────────────────────────────
 中国にとってもっと深刻なことがあるのです。それは日本と同
じ少子高齢化の進行です。しかし、日本よりも中国の場合はもっ
と事態は深刻なのです。それは生産年齢人口(15歳〜59歳)
の急速な減少傾向です。
 中国では、2012年に生産年齢人口が建国以来はじめて減少
に転じたのです。それは一人っ子政策が原因です。2014年に
なると、1年で370万人の人口が減少したのです。さすがにこ
れに危機感を抱いた中国政府は一人っ子政策を緩和することを決
めています。それは夫婦のどちらかが一人っ子であれば、第2子
を認めることにしたのです。しかし、緩和策はあくまで第2子ま
でであって、第3子は現在も認められていないのです。
 中国政府は、この一人っ子政策の改正によって、毎年200万
人の新生児が誕生し、2050年までに労働人口が3400万人
増えるという試算を発表したのです。しかし、新生児は1年の目
標の4分の1の50万人にも満たなかったのです。
 なぜ、そんなに減ったのでしょうか。それは、教育費の高騰に
よって第2子を生むことができなくになっていたのです。それに
子供を多くつくるよりも自分たちの生活を充実させたいと考える
中国人が多くなったことも影響しています。
 もうひとつ深刻なことがあります。それは環境汚染の影響によ
ると見られるがん患者が激増し、これによる労働人口の喪失が発
生していることです。この環境汚染が原因で、毎年220万人も
の死亡者が出ています。この労働人口の減少によって労働コスト
はますます上昇し、中国は「世界の工場」にもなれなくなってい
るのです。このように中国経済は、まさに満身創痍の状態である
といえます。       ──[米中戦争の可能性/106]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の人口が激減へ、2100年には6億人にまで減少か
  ───────────────────────────
   2016年7月1日、台湾メディア・中時電子報は、世界
  最大の人口を抱える中国だが、将来的に現在の半数程度にま
  で激減する可能性があると報じた。
   中国は深刻な高齢化や労働人口の減少など、人口に関する
  構造的な問題に直面している。出生率がさらに減少すれば、
  今世紀末には人口が10億人程度になることが予想され、最
  悪の場合には6億人にまで減少する恐れもあるという。そう
  なれば、消費力も生産力も現在の半分にまで落ち込むことに
  なり、経済問題や社会問題も引き起こされることになる。
   中国のシンクタンク・中国社会科学院の研究によると19
  78年の改革開放から30年は人口の多さが経済成長に大き
  く貢献してきたが、現在は逆に人口の多さに起因する不満や
  問題が増えている。しかし、十分な労働年齢人口が確保でき
  なくなり、さらに介護を必要とする高齢者が増えた場合には
  どう対処すればよいのかと指摘している。
   急激に人口が減る恐れが出ている背景には、長年続けられ
  てきた計画出産政策(一人っ子政策)がある。人口の男女比
  バランスが崩れてしまい、男性が女性よりも3000万人も
  多い状況となっている。そのため、一定年齢層で妊婦が少な
  く、子どもが生まれにくい“断層”のような時期が発生して
  しまうという。米ウィスコンシン大学の専門家は、政府が即
  座に出産・育児を奨励するなど、適切な対策を講じたとして
  も、2100年の人口が8億人を超えることはないと予測し
  ている。(翻訳・編集/岡田)   http://bit.ly/2sD5lQG
  ───────────────────────────

中国について語るエマニュエル・ドット氏.jpg
中国について語るエマニュエル・ドット氏
 
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月06日

●「ドットとピケティが論ずる中国論」(EJ第4535号)

 エマニュエル・トッドという人がいます。フランス国立人口統
計学研究所(INED)の研究員を務める1951年生まれの歴
史人口学者です。次の2つの著書で、ソ連邦の崩壊とその後の米
国の衰退を予想しています。
─────────────────────────────
  『最後の転落』(1976) ・・・・ ソ連邦の崩壊
   『帝国以後』(2002) ・・・・  米国の衰退
─────────────────────────────
 エマニュエル・トッド氏は、ソ連邦の乳児死亡率の高さに注目
し、「ソ連邦は崩壊する」と予想したのです。当時は米ソ冷戦の
最中であり、ソ連邦の政治体制は盤石に見えたので、崩壊など誰
も信用しなかったのです。しかし、1991年にソ連邦はトッド
氏の予想通りに崩壊したのです。
 そのエマニュエル・トッド氏は、中国をどう見ているのでしょ
うか。彼の中国に対する予測はきわめて悲観的なのです。
─────────────────────────────
 私は中国については、非常に悲観的だ。ほとんどの歴史人口学
者はそうだと思う。その人口が膨大であるのに対し、出生率が極
端に低いという問題を抱えている。中国は全員が豊かになる前に
高齢化社会に突入する。
 他方、社会保障制度が未整備で、男の子を選択するための偏っ
た人工中絶が行われている結果、男女比率のバランスが取れてい
ない。経済については、膨大な輸出能力を持っている。しかし、
私はこの国が自分で運命を操れる怪物であるとは思わない。共産
党のビートルズ(成功した世界的スター)ではなく、西側が経済
成長を実現するための輸出基地と言える。利益率を上げるために
中国の安い労働力を使うことは西側にとって自然な決定だった。
 現状の中国経済は設備投資比率がGDPの40%、50%に達
している。それは、経済バランスから見て異様であり、スターリ
ン時代の旧ソ連がそうであったように、経済が非効率であること
を示している。           http://nkbp.jp/1hFYFt8
─────────────────────────────
 さすが人口歴史学者らしい分析です。衝撃的なのは「社会保障
制度が未整備で、男の子を選択するための偏った人工中絶が行わ
れている結果、男女比率のバランスが取れていない」という指摘
です。どのくらい男女のバランスが悪いのか国連の調査によると
次のようになっています。
─────────────────────────────
 世界の平均 ・・・ 女子の出生100/男子の出生105
 中国の場合 ・・・ 女子の出生100/男子の出生117
─────────────────────────────
 女子の出生100に対して、男子の出生が107を超えると不
均衡とされるので、「117」という数字がいかに異常であるか
わかると思います。
 これほどの差があるということは、女子を妊娠したことがわか
ると、選択的に堕胎を行っていたか、出生しても当局に申告して
いないかのどちらかであるということです。これは、中国が前近
代的な父権主義社会であることを示しています。
 ドット氏によると、伝統的な中国社会の長所は、強い父権の下
における平等主義にあるといいます。とくに兄弟間の平等性が重
視されてきたのです。社会にこういう平等主義があったからこそ
中国では共産主義革命が起きたのです。実際に毛沢東は「すべて
の人は平等であるべきだ」といっています。そのとき中国は貧し
い国だったのですが、人々はきっと幸福だったはずです。
 しかし、ケ小平は中国に改革開放政策を取り入れたのです。そ
の結果、中国は急速に経済成長を始めたのです。しかし、中国は
平等主義の社会であり、経済成長によって、不平等や貧富の格差
がすさまじい勢いで広がると、潜在的な政治的不安定度が高くな
り、社会に不満が渦巻くようになったのです。
 中国政府は、この人民の不満をナショナリズムを高揚させるこ
とで外に向けようとします。それが反日政策・反日教育になった
のです。これはきわめて危険なことです。中国としてはそうせざ
るを得ないところに追い込まれたといえます。
 フランスの経済学者であるトマ・ピケティ氏は、これについて
日本と比較し次のように述べています。
─────────────────────────────
 日本は経済成長の過程で格差が解消されていきましたが、中国
は経済が発展すればするほど格差が広がっています。中国は社会
主義の国であるはずなのに、大部分の資本が一握りの人に独占さ
れています。このことを私は理解できない。
       ──トマ・ピケティ氏 http://nkbp.jp/2qK39X3
─────────────────────────────
 ここで素朴な疑問が生じます。どうして中国では経済成長する
につれて格差が拡大してしまったのでしょうか。トマ・ピケティ
氏は、それは企業や政府の間にはびこる汚職・賄賂にあると指摘
しています。その意味で、習政権がいま取り組んでいる反腐敗運
動は、それが正しく行われれば富の不平等な分配を是正できると
いい、次のように述べています。
─────────────────────────────
 そもそも中国ではなぜここまで汚職が蔓延するのでしょうか。
それは、個人の収入をきちんと管理する制度がないからです。賄
賂を受け取っても長期にわたって誰にも気が付かれないので、通
常ではあり得ない金額の蓄財に走る人もいます。だからこそ、反
腐敗運動は格差是正に非常に効果があるのです。
       ──トマ・ピケティ氏 http://nkbp.jp/2qK39X3
─────────────────────────────
 しかし、習近平主席は反腐敗運動を自らの権力拡張に使おうと
しており、腐敗は依然として減っていないのです。そのため軍拡
を行い、ますますナショナリズムを高めるという悪循環に陥って
いるのです。       ──[米中戦争の可能性/105]

≪画像および関連情報≫
 ●世界のこれから。2023年、中国が滅びる!?
  ───────────────────────────
  「外婚制共同体家族国家は必ずどこかの時点で崩壊する
   これは、いま、世界で注目を集めているフランスの人類学
  者エマニュエル・トッドの家類型論から導き出される結論で
  す。トッドは、「家族システム」という考え方において、家
  族をその類似点と相違点から、大きく4つの類型に整理して
  考えています。その一つが、外婚制共同体家族国家です。特
  徴としては、「男子は長男、次男以下の区別なく、結婚後も
  両親と同居。そのため、かなりの大家族となる。父親の権威
  は強く、兄弟たちは結婚後もその権威に従う。ただし、父親
  の死後は、財産は完全に兄弟同士で平等に分割され、兄弟は
  このときにそれぞれ独立した家を構える」などがあげられま
  す。ロシアや中国がこのタイプとなります。
   ソ連の崩壊を、トッドは1976年の著書『最後の転落』
  で予言し、実際にソ連は1991年に崩壊しました。では、
  80年代までのソ連に匹敵する共産主義大国、現在の中国は
  どうなのか。やはり崩壊するのか。
   慎重なトッドは、断言はしていません。しかし、「カタス
  トロフィーのシナリオも考えられる」という答えは出してい
  ます。その理由の一つは、家族類型に内在する危機です。外
  婚制共同体家族社会では、カリスマ的な父親が、権力者と権
  威者を兼ねた独裁者として君臨する一方、兄弟=国民が横並
  びに並んで従います。これは縦型の権威主義と、横型の平等
  主義を二つ合わせたものですが、この二つはうまく折り合う
  バランスを見つけるのが非常に難しく、常に、構造的な危機
  を内包しています。       http://exci.to/2qQFFyA
  ───────────────────────────

エマニュエル・ドット/トマ・ピケティ.jpg
エマニュエル・ドット/トマ・ピケティ
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月05日

●「中国はソ連邦に酷似してきている」(EJ第4534号)

 今後一体中国はどうなるのでしょうか。このテーマを読み説く
ため、中国を論じた多くの本を読んでみたのですが、その予測は
いずれも暗いものです。「かつてのソ連邦と同じ運命になる」と
いう意見も多いのです。
 中国の経済関係の統計は信用できないということを指摘してき
ましたが、仮に数字を恣意的に改ざんしても、中国は社会主義国
であるので、ある程度の期間はもつのです。しかし、そういうデ
タラメな国家運営をやっていると、いつかは崩壊します。ソ連邦
がその典型です。ソ連邦と中国を比較してみます。
─────────────────────────────
         建国年     崩壊年   存続期間
  ソ連邦  1922年   1991年    69年
  中国   1949年            68年
─────────────────────────────
 ソ連邦は69年間で崩壊しています。それでも約70年間もっ
たのです。それがある日突然崩壊したのです。表面的には誰も崩
壊するとは思っていなかったので、世界は驚愕したものです。
 それでは中国はどうでしょうか。同じように中国も大きな矛盾
を抱えており、それが積もり積もっています。そして、今年で既
に68年間が経過しています。今のところ中国も表面的にはとて
も崩壊するようには見えませんが、崩壊する要因は少なくないの
です。中国が一番恐れているのは、人民の反乱です。
 中国の人口は13億人を超えています。それを少数のエリート
集団の共産党が一党で支えています。共産党一党支配です。もし
人民が何かに不満を持って立ち上がったら、共産党はひとたまり
もないからです。その人民の不満を一番起こしやすいのが経済不
調・崩壊であるといえます。
 政治評論家の長谷川慶太郎氏は、中国がもし崩壊すると、何が
起きるかについて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 あれほどの広大な国土と世界一の大きな人口を抱える大国が崩
壊した場合、その後、もう一度中央集権国家を建設するには、中
核となる政治勢力が必要であるが、その時にはもはやそれを担え
る政治勢力は存在しない。そうなれば中国は、抗争、内乱等の大
混乱を経て、各地にそれぞれ、解放軍の幹部が中心となって成立
する新しい国家が次々に生まれることになるだろう。
 具体的には、著者は中国全土が現在ある7つの大軍区(洛陽軍
区、北京軍区、済南軍区、南京軍区、広州軍区、成都軍区、蘭州
軍区)に従って、それぞれが独立国家になる、すなわち中国は分
裂国家となるという判断で事態を見るべきであると考えている。
            ──長谷川慶太郎著/東洋経済新報社
        『中国崩壊前夜/北朝鮮は韓国に統合される』
─────────────────────────────
 長谷川氏の著著は、2014年5月に発刊されているので、上
記のように7軍区で説明されていますが、現在これは5戦区に改
編になっています。
 ソ連邦でもそうですが、社会主義国の最大の問題点は、賄賂の
横行です。そのことがよくわかっている習近平主席は、「ハエも
トラも切る」として、腐敗排除キャンペーンを行っていますが、
とても根絶できるるものではないのです。高橋洋一氏がこんな話
をしています。高橋氏の著者からその部分を引用します。
─────────────────────────────
 2015年、日本の政界にさざ波が立った。高支持率を維持し
続ける安倍政権を支えてきた経済再生担当大臣の甘利明氏に、収
賄疑惑が降りかかったのだ。ここで私がこの事件を持ち出したの
は、中国のネットユーザーの声が面白かったからである。たとえ
ばこんな声だ。
 「政治のみならず、企業、公共機関など、日本の社会はすべて
透明度が高い。まったく恐ろしい国家だ」。「100万円程度で
辞任?それくらいなら、下級公務員でも、もらっているよ」
 お金を受けとったとされる甘利氏を擁護、あるいは日本社会を
賞賛する声が目立ったのである。これは別に皮肉ではない。つま
り、それだけ中国社会の腐敗ぶりが凄まじいのだ。
      ──高橋洋一著/『中国GDPの大嘘』/講談社刊
─────────────────────────────
 中国は2015年11月に贈収賄罪の刑法を改正しています。
それまでは、贈収賄の規模や収賄額を基準にして量刑を決めてい
たのですが、それを「贈収賄の額プラス情状」に改めたのです。
これは、収賄額が巨額であっても反習近平派の収賄状況について
暴露すれば、刑を減刑するし、収賄額が少なくとも口を割らない
場合は、重刑になることもあるというものです。
 驚くべきことですが、中国には『賄賂白書』というものがある
のです。この賄賂白書について、近藤大介氏は、次のように述べ
ています。
─────────────────────────────
 反腐敗闘争には、実はカラクリがある。私が北京に住んでいた
胡錦清時代の2010年8月、中国経済改革研究基金会国民経済
研究所という民間経済シンクタンクが、中国初の『賄賂白書』を
発表した。それによると中国のGDPの3割にあたる4兆元(約
70兆円、当時)が「賄賂経済」だという。胡錦清時代には「全
民腐敗」という言葉が流行語になるほど、社会に賄賂が蔓延して
いた。               ──近藤大介著/講談社
     『活中論/巨大化&混迷化の中国と日本のチャンス』
─────────────────────────────
 『賄賂白書』について当時の温家宝首相は、「わが国は腐敗に
まみれている」といって嘆いたそうですが、その温家宝首相も後
に一族で27億ドルもの不正蓄財が指摘されたのです。中国の腐
敗の深刻さは底なしといえます。これが積もり積もると、経済の
崩壊はある日突然起こり、国家は破綻に追い込まれるのです。
             ──[米中戦争の可能性/104]

≪画像および関連情報≫
 ●ソ連と酷似してきた中国/急激な成長と衰退
  ───────────────────────────
   中国の急激な成長期が終わり、衰退期に入ると予測されて
  いるが、共産国家は衰退期を上手く乗り切れない。崩壊した
  ソ連は発足から急成長を続けたが、たった一度の衰退期を乗
  り切れずに崩壊した。最近の中国は何から何まで過去のソ連
  にそっくりで、双子の兄弟のようです。
   かつて共産国家ソ連はユーラシア大陸のほとんどを勢力下
  に置いて、世界を支配するかに思えました。ベトナム戦争で
  アメリカが敗れ、ソ連側が勝った頃に拡大は頂点に達し、ソ
  連が新たなリーダーになるように見えた。中国も、リーマン
  ショック頃まで急拡大し、世界のリーダーになるのは時間の
  問題と思われました。
   不思議な事にアメリカに挑む新興勢力は必ず、米国の7割
  程度の国力をピークに、衰退期に入る。ソ連と戦後日本がそ
  うだったし、中国も同じくらいのGDPで頭打ちになり、衰
  退期に入りました。「7割の法則」が在るのかどうか知りま
  せんが、アメリカの衰退時期と新興国家の成長期が重なると
  こうなっている。ソ連は1917年のロシア革命で誕生した
  が、伝説のように市民が蜂起した訳ではなく、ドイツの悪巧
  みで発生した。当時第一次大戦で負けそうだったドイツは、
  対戦相手のロシアで革命を起こさせて有利にするため、レー
  ニンを送り込んだ。レーニンはロシア人だがドイツに亡命し
  て国家崩壊を企む人物で、日本で言えば麻原彰晃レベルの人
  間でした。普通は誰も相手にしませんが、ロシアは大戦や財
  政危機で国民生活が破綻しており、飢えた人々はレーニンに
  従った。             http://bit.ly/2slm2km
  ───────────────────────────

政治評論家/長谷川慶太郎氏.jpg
政治評論家/長谷川慶太郎氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月02日

●「人民元換物投機でビットコインへ」(EJ第4533号)

 5月12日にイタリアで開かれたG7財務相・中央銀行総裁会
議で麻生財務相は、次のように演説しています。
─────────────────────────────
 中国は人民元安に歯止めをかけるため、元の海外送金を規制し
ている。麻生氏は「外国資本が本国に送金する際に支障が出てい
る。国際社会としても注視する必要がある。経常取引に規制をか
けるのはIMFの協定違反である。資本規制が行き過ぎていると
すれば、日本として言わなければいけない。
                http://s.nikkei.com/2qF13GW
─────────────────────────────
 実は中国の資本規制は、企業だけでなく、個人にもかけられて
いるのです。なぜ、個人にまで資本規制をかけるのかというと、
2015年以降の資本の流出額が半端ではないからです。
 ちなみに、2015年の流出額は、実に1兆ドル(約121兆
円)であり、前年の7倍以上、過去最高の流出額です。2016
年も同様の流出額に達しています。その原因は、人民銀行が20
15年8月に人民元の大幅切り下げを行ったからです。
 この人民元の切り下げは予想外の措置であり、金融市場に衝撃
が走ったのです。これについて、ブラウン・ブラザーズ・ハリマ
ン通貨ストラジスト、CFAの村田雅氏は、自著で次のように述
べています。
─────────────────────────────
 中国当局が元をドルペッグ制に戻したという見方が金融市場に
広がってきた2015年8月11日の午前10時過ぎ、人民銀は
人民元の対ドルレートの基準値を前日(10日)の1ドル=6・
1162元から6・229元に設定すると発表した。人民元の対
ドルでの下落率は、1・8%と過去最大になった。予想外の切り
下げによって、金融市場には衝撃が走った。
              ──村田雅志著/東洋経済新報社
          『次のバブルが迫る/人民元の切り下げ』
─────────────────────────────
 これによって世界には、中国当局への不信感が高まると同時に
中国国内では人民元安の不安から、人民元をドルに両替しようと
する人が殺到したのです。そのため銀行窓口では「ドルがない」
として、数千ドル規模の両替が断られるようになり、国内の不安
感が、一層高まったのです。取り付け騒ぎです。
 中国が現在行っている、いわゆる「管理された変動相場制」と
は、毎日「基準値」というものを算出して決めています。基準値
とは、前日の市場での終値を参考に上下2%の変動を当局が決定
し、毎朝発表する方式です。
 2015年8月の人民元大幅切り下げは、中国当局が基準値の
算出方式を突然変更し、人民元相場を市場実勢に近づけようとし
たのです。つまり、当局の意思によって人民元の対ドルレートを
恣意的に決めることができるということです。さらに5月26日
も基準値の算出方式を変更しています。資本流出が止まらないか
らです。つまり、どんどん市場化に逆行しているわけです。
 そこで富裕層は、さまざまな手段で資金を海外に逃がそうとし
ています。とにかく中国人は、自国の通貨人民元を信用していな
いのです。そこでやるのは「換物投機」です。これがはじまるの
は、国家にとって危険な兆候です。
 中国の事情に詳しい宮崎正弘氏は、通貨ルーブルの価値がどん
どん下落する当時のソ連の崩壊時の状況について、次のように述
べています。
─────────────────────────────
 89年に東西冷戦が終わって、91年12月にソ連が崩壊する
までの2年間、ルーブル札は旧ループル札のままだったんです。
それが89年のときは、強制両替で旅行に行ったら、1日たとえ
ば公式レートでかならず両替しなきゃいけない。そうすると、1
ルーブルでが240円だった。東西冷戦が終わったら、60円に
なって突然1円を切った。91年に1円を切って、12銭になっ
た。たった2年間でドーンと2千分の1になったのです。
 そのとき、ロシア人がどういう投資行動を取ったかというと、
換物投機。簡単なんですよ。通貨が下がるんだから、いま持って
ているうちにドルに換える。闇ドルでもいい。2番目、住宅を買
う。自動車を買う。だから、いま中国でやってるのは、その前兆
じゃない?          ──宮崎正弘/石平著/WAC
         『いよいよトランプが習近平を退治する!』
─────────────────────────────
 実は、中国でも同じようなことが起きています。何がなんでも
人民元をモノに換えようとしているのです。換物投機で金を買い
時計(ロレックス)を買い、最近ではそれがビットコイン(仮想
通貨)に向っています。
 そのため、現在、ビットコインが急騰しています。ビットコイ
ンの価格は、2016年までは「1ビットコイン(BTC)=5
万円」程度で落ち着いていたのですが、2016年後半には10
万円を超えたのです。これが2017年に入ると20万円を超え
5月23日には30万円の高値をつけたのです。このビットコイ
ン高騰の背景には中国の存在があります。人民元の換物投機の対
象にビットコインが選ばれているからです。5月20日付、日本
経済新聞は、ビットコインについて次の記事を掲載しています。
─────────────────────────────
 インターネット上の仮想通貨ビットコインの価格が急上昇して
いる。ドル建て相場は5月19日、伝統的な「無国籍通貨」の金
の史上最高値を上回った。(中略)取引の大半を中国が占める。
人民元の先安観が背景にあり、参加者の8割〜9割は中国人との
説もある。資本規制で個人の投資先が限られるなか、規制の抜け
穴としてビットコインに資金を移す動きが強まった。
         ──2017年5月20日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/103]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の「元」の下落とビットコインの高騰は表裏一体
  ───────────────────────────
   「2016年という1年は、中国の人民元がゆっくりと下
  落していく現実に、世界の市場が適応していかなければなら
  ない年だった」
   このように米紙「ニューヨーク・タイムズ」が指摘すると
  おり、人民元は対ドルで年間約7%の下落となり、リーマン
  ショック前の水準にまで迫った。この人民元安の原因は、世
  界的なドル高傾向などが関連した複合的なものだという。
   フランス紙「ル・モンド」は、中国の経済成長が鈍化した
  ことから、当局も輸出を刺激するために人民元の価値が下が
  ることを容認した、と書く。
   また同紙は別の記事で、中国の債券市場が発展しすぎてバ
  ブル状態に近くなり、不良債権問題も生じつつあると指摘す
  る。国際決済銀行の「中国は3年以内に深刻な危機に見舞わ
  れる」という予測を引き、中国全体の債務がGDPの250
  %を超えた状態が、人民元への信頼も失わせているのだと説
  いている。米「ブルームバーグ」も同様に解説し、加えて、
  「2016年は中国政府当局が資本の国外流出を防ごうとし
  て規制の強化を繰り返したことが、かえって人民元の信頼を
  損ね、さらなる資本の流出を招く悪循環に陥った」と述べて
  いる。では流出した中国の資本はどこに向かっているのかと
  いえば、仮想通貨の「ビットコイン」だという。
                   http://bit.ly/2qHcyxF
  ───────────────────────────

人民元下落/ビットコイン急騰.jpg
人民元下落/ビットコイン急騰 
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年06月01日

●「ラガルド理事はなぜ親中国なのか」(EJ第4532号)

 そもそもIMF(国際通貨基金)は、なぜ中国をSDRに加え
たのでしょうか。人民元がSDRの構成通貨になると、人民元は
自由な市場で取引され、価格が自由に変動する変動相場制へ移行
するのが前提とならなければならないはずです。なぜなら、そう
でなければ、とても国際通貨とはいえないからです。
 しかし、そうではないのです。中国は変動相場制には移行せず
中国の事情による「管理された変動相場制」のままです。人民元
がSDRに採用された直後の2015年12月1日、中国人民銀
行(中央銀行)の易網副総裁は、記者会見で、記者からの「為替
レートは市場に任せるのか」の問いに次のように答えています。
─────────────────────────────
 われわれの長期にわたる目標は、変動相場制への移行である。
その目標が実現する頃には、為替介入はほとんどなくなっている
だろう。ただし、われわれが現在採用しているのは、管理された
変動相場制であり、市場の安定化のためには、ある程度の介入は
行う。IMFは、われわれの為替レート形成のメカニズムを変え
ることまでは求めていない。  ──中国人民銀行・易網副総裁
      ──高橋洋一著/『中国GDPの大嘘』/講談社刊
─────────────────────────────
 誰が考えても人民元のSDRの構成通貨入りは時期尚早です。
しかし、それを主導したのはIMFのラガルド専務理事です。ラ
ガルド氏は、2007年6月からフランスのフィヨン内閣の財務
相を務めていたのですが、2011年6月28日、前任者ストロ
スカーン氏の不祥事による辞任を受けて、IMF専務理事に就任
したのです。女性としてはじめてのIMFの専務理事です。
 ラガルド専務理事はその後中国への傾斜を一層強めます。中国
としては、SDR入りを目指しているので、ラガルド専務理事に
に接近し、取り入ったことは確かです。それは近藤大介氏の本の
次の一節でもよくわかります。
─────────────────────────────
 2015年10月1日から一週間の国慶節(建国記念日)の連
休中、中国メディアは連日、「入籠/ルーラン」の吉報を大々的
に伝えた。「入籠」とは、文字通り「籠」(通貨バスケット)に
入る」、すなわち中国が、IMF(国際通貨基金)でSDR(特
別引出権)を獲得し、国際通貨となったことを意味する。人民元
を国際通貨にすることは、中国の長年の悲願だった。
 9月30日、IMFのラガルド専務理事は、わざわざチャイナ
ドレスを身にまとって会見。「入籠」について、「世界にとって
歴史的な日であり祝福したい」と述べた。(中国中央電視台)
                  ──近藤大介著/講談社
     『活中論/巨大化&混迷化の中国と日本のチャンス』
─────────────────────────────
 しかし、中国人民元はSDR入りした後、まるで坂から転げ落
ちるように下落を続けたのです。2016年の人民元の対ドルの
下落率は6%超となり、これは、大規模な切り下げのあった19
94年以来の大きさになったのです。これについて、近藤大介氏
は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 人民元の下落も止まらない。2016年の為替レートは1ドル
6・4895元か6・9429元まで下落し、2017年は「1
ドル7元時代」を迎える可能性が出てきた。日本では円安になる
と、輸出産業が伸びる上、株高になって景気が回復すると思いが
ちだが、新興国の中国では、元安は資金流出と、それに伴う経済
の「底抜け」を意味する。    ──近藤大介著の前掲書より
─────────────────────────────
 この人民元の下落は中国が一番恐れていたことです。そこで中
国は人民元の流出を防ぐために、資本規制を強めたのです。その
資本規制は現在でも続いており、中国進出企業に大きなダメージ
を与えています。
 それは、中国に進出している日本をはじめとする外国の企業が
人民元で得た利益を自国に持ち出すことができないからです。こ
れでは人民元はとても国際通貨といえないのです。経済の専門家
であるはずのラガルド氏が、そのようなことがわからないはずは
ないのです。それにもかかわらず、ラガルド専務理事は、なぜ中
国に肩入れしたのでしょうか。
 それは、ラガルド氏には政治的な思惑があったからです。ラガ
ルド氏はフィヨン内閣の財務相時代のことで、裁判沙汰を抱えて
いたからです。裁判はラガルド氏にとって不利な状況であり、裁
判結果によっては、IMF専務理事のポストの再任も難しくなる
可能性があったのです。
 ラガルド専務理事の任期は、2016年7月までであり、次期
専務理事のポストを確保するためには、中国の協力は不可欠だっ
たのです。中国は人民元のSDR入りの尽力者であるラガルド氏
の支持を早くから表明しており、ラガルド氏は問題なく専務理事
に再任されたのです。
 しかし、裁判については、2016年12月19日に次の判決
が出たのです。有罪なのに刑罰免除の判決です。
─────────────────────────────
【パリ時事】国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事が、フ
ランス財務相時代に担当した損害賠償訴訟の調停が職務怠慢に当
たるかが争われた公判で、パリの共和国法院(閣僚の事件を扱う
裁判所)は2016年12月19日、専務理事を有罪とする一方
刑罰は免除する判決を言い渡した。専務理事は財務相当時の20
08年、仏実業家が政府系金融機関に対して起こした損害賠償訴
訟で、政府側代表として調停に参加。捜査当局は、国庫から実業
家に支払われた約4億ユーロ(約490億円)の和解金が過度に
高額だったと判断し、専務理事の怠慢によって支払額が膨らんだ
と主張した。             http://bit.ly/2rn3uSp
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/102]

≪画像および関連情報≫
 ●「人民元、SDR入り」で何が変わるのか/福島香織氏
  ───────────────────────────
   IMFの加盟国に対し、出資額に比して配られ、通貨危機
  に陥った際には外貨に交換できる仮想通貨「SDR」。従来
  は米ドル、ユーロ、円、英ポンドが構成通貨であったが、こ
  こに5番目の通貨として人民元が加わることになった。構成
  比率はドル、ユーロに続く10・92%で日本の8・33%
  を上回る。現実にはSDR入りしたからといって、各国中央
  銀行がすぐ外貨準備高として人民元保有を増やすようになる
  とか、人民元に対する信用が一気に上昇するというわけでは
  ないだろう。なぜなら、人民元は今なお、制限なく自由に外
  貨と兌換できる通貨ではないし、その相場は市場原理ではな
  く政府の介入によってなんとか安定しているからだ。
   米国はこれまでも、たびたび、中国を為替操作国と批判し
  てきた。大統領選共和党候補のトランプ氏は、当選の暁には
  中国を為替操作国認定する、と言明している。SDR通貨は
  5年に一度見直され、その時、もし資格がないと判断されれ
  ば、SDRから外される可能性もある。今後5年の間で、人
  民元が市場化されるのか。本当に自由化されるのかによって
  も、影響力は変わってくる。一方、自由化市場についてあま
  り肯定的な姿勢ではない習近平政権にとっては、政治的な意
  味が大きい。人民元の国際通貨の仲間入りを政権として実現
  させた。ちなみに中国が長年、人民元のSDR入りに拘り続
  けてきたのは、米ドル基軸体制を切り崩し、人民元こそが国
  際基軸通貨として世界金融を支配するという遠大な野望の第
  一歩という位置づけだからだ。  http://nkbp.jp/2rmXhWU
  ───────────────────────────

有罪判決を受けたラガルドIMF専務理事.jpg
有罪判決を受けたラガルドIMF専務理事
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月31日

●「SDR構成通貨に値しない人民元」(EJ第4531号)

 2017年4月26日、中国共産党中央委員会の機関紙である
人民日報は、次の趣旨の報道を行っています。
─────────────────────────────
 過去20年にわたって「中国経済崩壊論」が幾度となく言われ
ハードランディングするなどと主張する西洋の専門家もいたが、
これらの予言は一度も当たったことがない。中国経済の長期的な
発展の傾向は基本的に変わっておらず、この先の中国経済はさら
に健全で持続的に発展する。
 世界経済の成長にも大きく貢献し、経済構造からみても中国経
済の質はますます良くなっており、ここ数年は国民総生産(GD
P)成長率6・5%前後を維持していて、中国が目標とする「小
康社会」が実現していると論じ、中国経済崩壊論などは全く成り
立つ訳がない。    ──2017年4月26日付、人民日報
─────────────────────────────
 人民日報のこの報道に対し、皮肉な話ですが、中国のネットユ
ーザーは「そんなに深刻とは思っていなかったが、人民日報がこ
う言うということは・・・」とか、「人民日報がこういう記事を
出すとは、本当に経済はダメなんだな」などのコメントが寄せら
れ、人民日報の記事から逆のことを読み取っているのです。要す
るに、政府系メディアの報道を全く信用していないのです。
 どうしてこのような評価になったのかというと、習近平政権の
経済運営がかなりひどいからです。中国では、ケ小平ルールとい
うものがあって、本来、経済問題は国務院総理(首相)、すなわ
ち、李克強首相の仕事なのです。しかも李首相は北京大学で経済
学博士号を持つ経済の専門家であり、適任です。
 しかし、習主席は経済問題も習近平グループでやるという野望
を持っており、李首相の政策にことごとくクレームをつけたので
す。そのため、李首相は自分の思うように経済を動かすことがで
きず、経済は混乱しています。これについて、近藤大介氏は習政
権の経済運営について、次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
 習近平政権の約4年間を評価すると、政治分野と軍事分野に関
しては、習近平が強い指導力を発揮している。(中略)ところが
経済分野に関してだけは、この4年間というもの落第点である。
たとえてみれば、今日大雨が降ったから慌てて傘を用意し、今度
は台風が吹き荒れだしたから戸や窓を補強するといった具合だ。
万事後手後手で、かつ出たとこ勝負のため、長期的な見通しや整
合性に乏しい。           ──近藤大介著/講談社
     『活中論/巨大化&混迷化の中国と日本のチャンス』
─────────────────────────────
 中国という国は、どのようなことでも世界一になろうとする国
なのです。実際にGDPにおいては、2010年8月に日本を抜
き、世界第2の経済大国になっています。そのときの中国の喜び
というか、高揚した気持ちを2010年8月17日付の「環境時
報」は次のように伝えています。
─────────────────────────────
 わが国はこの5年間、イタリア、フランス、イギリス、ドイツ
を、GDPで追い抜いてきたが、今回ついに、日本を追い抜いて
世界第二の経済大国となった。日本では、内閣府がこの事実を発
表した10分後に、日経平均株価が今年最大の下げ幅となる91
00ポイントまで下落してしまった。実際、中国の今年の予測経
済成長率は10%なのに日本は3%にすぎない。日本は1968
年に西ドイツを追い抜いて以来、40数年間にわたって守り抜い
てきた「世界第二の経済大国」の地位から陥落したのだ。
       ──2010年8月17日付、「環境時報」より
─────────────────────────────
 もちろん国家が「世界一になる」というような目標を持つこと
自体はわるいことではありません。しかし、そのために長年にわ
たって異常なほど巨額な不動産投資を積み上げて、GDPを増加
させ、日本を抜いたのです。その結果、中国国内に100ヶ所以
上の巨大な「鬼城」ができてしまったのです。既に述べているよ
うに、鬼城は一向に解決されておらず、そのままです。
 それに加えて中国は、通貨でもドルに代わって人民元を基軸通
貨にしようという野望をいだいています。そのためにIMF(国
際通貨基金)が認定するSDR(特別引出権)に入ることに執念
を燃やし、さまざまな政治工作を繰り広げて、2015年11月
30日の理事会で、中国人民元をSDRの構成通貨のひとつにす
ることが認定されています。その構成比率は次の通りです。
─────────────────────────────
            構成通貨比率  決済通貨シェア
  ドル(アメリカ)  41・73%   40・87%
  ユーロ(EU)   30・93%   30・82%
  人民元(中国)   10・92%    1・72%
  円(日本)      8・33%    3・46%
  ポンド(イギリス)  8・09%    8・73%
        註:済通貨シェア(2016年6月統計)
─────────────────────────────
 SDRの構成通貨になるには2つの条件──「貿易規模と代金
決済で使われる通貨比率の高さ」と「金融市場で自由に交換でき
る」という2つの基本条件を満たしていることが求められるので
すが、人民元にはその基本的条件を満たしていないのです。それ
でもIMFのラガルド専務理事は、中国に異常に肩入れし、人民
元のSDR入りを認めさせたのです。
 実際に2016年6月統計による決済通貨のシェアでは、人民
元は構成比率の10・92%に対して、わずかに1・72%を占
めたに過ぎないのです。実際に中国は、海外との経常決済に占め
る人民元建ての決済金額のシェアは、2015年の26%から、
2016年末には16%に縮小しています。人民元をSDRに加
えたIMFのラガルド専務理事の責任は大きいといえます。
             ──[米中戦争の可能性/101]

≪画像および関連情報≫
 ●悲願のSDR入りを果たした中国/読売オンライン
  ───────────────────────────
   IMFが2015年11月30日に人民元をSDR構成通
  貨として採用することを正式に決定すると、中国国営新華社
  は即座に速報を打ち、「歴史的な一歩」と歓迎した。李克強
  首相も中国の改革・開放の成果を国際社会が認めたものとし
  て高く評価した。
   SDRとはIMFが加盟国に対し、出資比率に応じて配る
  国際通貨の一種。通貨危機などで外貨不足に陥った加盟国は
  SDRを他国に渡せば、米ドルなどと交換できる。SDRの
  構成通貨見直しは5年ごとに実施される。前回2010年の
  見直しの際には、中国の期待に反する形でIMFは人民元の
  SDR採用を見送っている。中国としては捲土重来を期す形
  で、人民元の国際化に向けて着実に規制の緩和、自由化を進
  めてきた。
   経済面では米国発の金融危機、欧州発の財政危機後の激動
  の世界経済をけん引してきたとの自負もあるだろう。今や中
  国は名目GDPでは世界第2位の経済大国であり、実質的な
  購買力をベースとした為替換算では14年に米国を追い越し
  て世界第1位の経済大国となった。SDR入りは中国にとっ
  て外交的勝利であり、また、自らの経済力に見合った当然の
  帰結との思いもあろう。      http://bit.ly/2rcbqnw
  ───────────────────────────

IMFラガルド専務理事.jpg
IMFラガルド専務理事
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月30日

●「中国経済実態は既に崩壊している」(EJ第4530号)

 中国経済はどうなっているのでしょうか。2016年は中国経
済悪化のニュースが頻繁に飛び込んできたものですが、2017
年に入ると、そういうニュースは影を潜めています。
 しかし、それは中国の景気が回復したということではなく、中
国当局が経済のマイナス報道の規制を行っているからです。それ
では、その実態はどうなのでしょうか。
 中国経済の現況を正しく把握するために、歴史的に中国経済の
重要な動きについて、以下に簡単にメモしておきます。
─────────────────────────────
     1980年 ・・・・ 改革開放路線開始
     1990年 ・・・・ 証券取引所を開設
     1994年 ・・・・ 管理変動相場制へ
     2001年 ・・・・ WTOに正式加盟
     2016年 ・・・・ 人民元SDR入り
─────────────────────────────
 中国の改革開放路線は、ケ小平政権時代の1980年代から始
まっています。社会主義国が特区方式で、実質的な資本主義化を
実現するという「社会主義市場経済」がスタートしたのです。世
界ではじめてのことです。
 それは、1990年代の江沢民政権のときに加速し、上海に証
券取引所を開設し、株式会社方式を導入します。その頃から消費
者物価指数が上昇し、1994年までに2ケタのインフレを記録
しています。1994年に二重相場制から「管理された変動相場
制」に移行し、人民元を大幅に切り下げています。
 アジア通貨危機を経て、中国経済は安価な労働力と資源を背景
に急速に工業力を付けて輸出を大幅に伸ばしたのです。その結果
2000年には米国の対中貿易赤字が対日赤字を上回ってしまっ
たのです。
 このような工業化を遂げて世界の経済大国になった中国に対し
米国のクリントン政権の強い後押しによって、2001年12月
に中国はWTO(世界貿易機関)加盟を果たすのです。このよう
にして、13億人の巨大市場である中国貿易は自由化され、20
04年に中国は遂に日本を抜いて世界3位の経済大国になったの
です。そして、2016年10月に人民元はIMFでSDR(特
別引出権)を獲得し、国際通貨になったのです。ちなみに中国で
はこのSDR入りのことを「入籠(ルーラン)」といいます。
 このように書くと、中国経済は前途洋々のようにみえますが、
本当のところは四苦八苦の状態です。社会主義市場経済というも
のがうまく機能しなくなっているのです。
 2016年12月は中国がWTOに加盟して15周年だったの
ですが、そのためのイベントは開かれていないのです。とにかく
習政権になってから、経済の面ではきわめて不振なのです。もと
もと社会主義国において市場経済を行うのは、資本主義への傾斜
を強めなければならないのですが、習近平政権では逆に社会主義
への傾斜を強めているので、いろいろなところに矛盾が噴き出し
てきています。
 既出の近藤大介氏の本に、ある中国経済関係者の声が出ていた
のでご紹介します。
─────────────────────────────
 WTOの議定書には、中国の加盟から15年経ったら、加盟国
は中国を『市場経済国』と認定し、中国の輸出品に対する反ダン
ピングの関税算定の代替国から外すと記されている。だが、現実
はどうだ?アメリカが拒否し、EUが拒否し、日本も拒否してい
る。先進国が揃って、WTO違反を犯しているのだ。
                  ──近藤大介著/講談社
     『活中論/巨大化&混迷化の中国と日本のチャンス』
─────────────────────────────
 この発言を聞くと、いかに中国がわかっていないかがよくわか
ります。中国のWTO加盟のいきさつから考えて、15年も経て
ば、中国は社会主義国が市場経済を行うことによって表面化する
数々の矛盾を解決して、独裁国家から脱却するだろうと西側先進
国は期待していたのです。なぜなら、経済面の矛盾を修正しよう
とすると、資本主義化せざるを得ないからです。しかし、習政権
になってからは、資本主義化ではなく、社会主義化を強めている
のです。これでは「市場経済圏」と認定することは困難です。
 中国経済の矛盾の兆候がさまざまな面に出てきています。その
実態について、中国に詳しい福島香織氏は「すでにクラッシュし
ている」といっています。それを社会主義国の特有のからくりと
嘘でもって大丈夫なように見せているというのです。統計数字の
水増しをはじめ、地方政府、国有企業、銀行の巨額債務をいかに
して隠すかについて研究しているのです。
 それでは、一体そのシナリオはどうなるのかについて、福島氏
は次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国の経済崩壊とは、じつはすでに崩壊している経済の実態を
受け入れることなのだ。中国では実質破綻状態にありながら、中
央政府からの補助金で倒産せずにいる国有企業を「ゾンビ企業」
と呼んでいるが、中国経済がすでに「ゾンビ経済」なのだ。すで
に死んでいる経済をきちんと死なせる。そのとき、何が起きるの
か。最悪のシナリオは、国有企業と銀行の倒産ラッシュ、大量の
失業者の出現、ようやく形成されてきたそこそこ豊かな中間層の
消失、人民元の大暴落と消費者物価のハイパーインフレ・・・。
当然日本を含む世界経済も無傷ではいられない。だが本当に恐ろ
しいのは、突如、人民元が紙くずとなり財産を失った人民の怒り
が社会不安を引き起こし、それを政権が力ずくで抑え込もうとす
るときに発生する流血と混乱の可能性だ。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/100]

≪画像および関連情報≫
 ●中国はいつ崩壊するの?/梶井彩子氏
  ───────────────────────────
   「中国崩壊」が指摘されるようになって、一体、何年経つ
  だろうか。体制どころか経済さえも、まだまだ崩壊している
  ようには見えない。それどころか、緩やかに衰退するアメリ
  カを凌駕せんとする勢いは、今なお継続されているように見
  える。「中国崩壊論」を注意深く読めば@条件付き崩壊(○
  ×になった時、崩壊する)A崩壊が「始まった」(完全崩壊
  までに何年もかかる)B実質はすでに崩壊している(にもか
  かわらず表向きそうは見えない)――というものに分けられ
  る。確かに説得力があると思われるデータを提示しているも
  のもある。常に自虐的で「日本もうダメ」「中国に従うしか
  ない」とするような一部の人々もいることを考えれば、「中
  国にもこれだけの弱点がある」「日本の方がずっと安定して
  いる。中国は崩壊しそうなほど不安定」とする論調に意味は
  ある。実際、不安定であることに間違いはないし、崩壊後の
  リスクも考えておかねばならない。「中国脅威論」を煽りす
  ぎるのが問題であるのも確かだ。
   だがそこは諸刃の剣。これは読む側が気を付けるべきこと
  だと思うが、「中国崩壊論」を読んで事実を把握する、ある
  いは溜飲を下げるだけでなく、読んだことで中国に対して、
  「油断」してしまうフシはないだろうか。
                   http://bit.ly/2qtYh7l
  ───────────────────────────

近藤大介氏.jpg
近藤 大介氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(7) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする