2020年03月13日

●「MMTは赤字フクロウ派に属する」(EJ第5206号)

 井上智洋駒澤大学准教授によると、MMTの支持者は、世界的
には左派の人が多いそうですが、日本の場合は、左派の支持者は
少なく、どちらかというと、右派の支持者が多いそうです。なぜ
左派の支持者が少ないかというと、国家が強権的に国民に納税義
務を課すことによって、マネー、すなわち貨幣が流通するという
租税貨幣論の考え方に、国家の暴力性が感じ取れるという点にあ
るようです。
 左派を自任する経済学者の松尾匡立命館大学教授は、これにつ
いて次のように述べています。
─────────────────────────────
 MMTは、政府が出す通貨も債務とみなす。政府が公衆に対し
て持つ徴税債権を相殺・消滅させるものという意味で、政府の公
衆に対する債務だと言うのである。この論理が成り立つには、国
民は皆もともと納税債務を国家に負っているという前提がなけれ
ばならない。これは私にはなかなか心情的に受け入れがたい前提
である。             ──松尾匡立命館大学教授
      ──井上智洋著『MMT/現代貨幣理論とは何か』
                     講談社選書メチエ
─────────────────────────────
 このところ、MMTについて、「貨幣も国債も統合政府の債務
証書であり、国民に対する債務である」ということについて論じ
ていますが、きわめてわかりにくい話になっています。国債が政
府の国民に対する借金ということはよく理解できるとしても、貨
幣も同じであるというのは、理解しにくいと思います。ちなみに
「統合政府」とは、政府と中央銀行を一緒にした表現です。
 これについては、国家と国民の間の「貸し借り」関係というも
のが、その前提としてあります。藤井聡京都大学大学院教授は、
これについて、次のように解説しています。
─────────────────────────────
 そもそも国家は国民に対して、あらゆる安全を保証してやり、
インフラや基礎教育を提供してやり、衛生や治安や芸術や文化を
提供してやっている。つまり、地政学的、防災的、社会秩序的、
経済的、文化的なあらゆる意味で、「国家は国民を守っている・
庇護している」わけであり、だから国民が国民でい続ける限り、
国家に対して巨大な「借り」、あるいは巨大な「負債」「恩」が
ある状況にある。したがって、国民は、国民として生き続ける限
り、国家に対してその借り=負債=恩を、返し続けなければなら
ない。                ──藤井聡著/晶文社
   『MMTによる令和「新」経済論/現代貨幣理論の真実』
─────────────────────────────
 具体的に考えてみます。あるとき、統合政府は100兆円のお
金を創出し、それを使ったとします。スペンディング・ファース
トです。その一方で、ほぼ時を同じくして、60兆円の税収を得
たとすると、国民の手元には40兆円のお金、貨幣が残ります。
 ここで大事なことは、納税して国家に返済するということは、
そのお金が市場から消滅することを意味します。上のケースでい
うと、税金として納められた60兆円は市場から消滅してしまう
ことになります。
 現在、日本政府は、増税して国債の発行に頼らずに、その年の
国民生活に必要な支出がまかなえるようにするプライマリー・バ
ランスを目指しています。財政均衡主義です。民間という立場か
ら見ると、それは当然のことですし、そうすべきです。しかし、
国家という立場に立つと、それでは世のなかに流通するお金を消
滅させ、国を貧乏にする政策ということになるのです。
 さて、国民の手元に残った40兆円について、藤井聡京都大学
大学院教授は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 この40兆円の貨幣は、確かに、国民の国家に対する「貸し」
であり、国家の国民に対する「借り」(負債)だ。しかし、その
40兆円の貨幣には、どこにも返済期日など書かれていない。仮
にそれらが現金通貨だと考えたとすれば、その一枚一枚は確かに
国家の負債であったとしても、いつまでに政府は、その負債を解
消しなければならないとは書いていないのだ。ここが、一般的な
「借金」という概念と全く違う点なのだ。(中略)
 つまりそれは、いわゆる「借金」とは到底言えない代物なので
ある。では、それが「借金」でないとするなら、一体何と呼べば
よいのかと言えば──それこそ「貨幣」なのである!その40兆
円の政府の負債は「40兆円の貨幣」「40兆円のオカネ」と呼
ぶ他にない代物なのである!──藤井聡著/晶文社の前掲書より
─────────────────────────────
 アバ・ラーナーというロシアの経済学者がいます。ケンブリッ
ジ大学でケインズに会って、ケインズ主義者になった人です。彼
は、政府が財政出動をするときは、雇用や物価の安定のため、ど
のくらい支出すべきかを考えるべきであって、そのさい、財政が
健全かどうかを考慮する必要は何もないと主張する「機能的財政
論」を展開した人です。
 ステファニー・ケルトン教授は、財政政策のスタンスを次の3
つに分類しています。
─────────────────────────────
      @赤字タカ派=短期的均衡財政主義
      A赤字ハト派=長期的均衡財政主義
      B赤字フクロウ派=反均衡財政主義
                ──井上智洋著の前掲書より
─────────────────────────────
 これについては改めて述べますが、日本の財務省は、基本的に
は「赤字タカ派」ですが、実際には「赤字ハト派」にならざるを
得ない状況になっています。主流経済学者のほとんどは@かAの
立場です。これに対してMMTは、Bの「赤字フクロウ派」の立
場をとります。ケルトン教授自身はBの立場を表明しています。
           ──[消費税は廃止できるか/047]

≪画像および関連情報≫
 ●私が意義を見いだす理由/MMTは新次元の政策・均衡財政
  主義の再考を=岡本英男氏
  ───────────────────────────
   福祉国家とその財政を研究テーマとしている筆者が、MM
  Tの理論を本格的に研究し始めたのは2008年のリーマン
  ・ショック後である。福祉国家実現には、完全雇用こそが、
  もっとも有効な手段である。第一次・第二次世界大戦の元凶
  も、職がないことへの庶民の不満の高まりであった。職のな
  い者を給付や税控除で救済するのも一手段ではある。しかし
  国家による雇用保障は、国民に「自分が社会で必要とされて
  いる」という自尊心を醸成もできる。
   1940年代から、主権国家は雇用を保障する制度整備に
  努めた。しかし、80年代に、米国レーガン政権、英国サッ
  チャー政権が緊縮財政や国営企業の民営化など新自由主義的
  な政策を採った。日本でも中曽根政権が国鉄などの民営化を
  進めた。一連の流れは、雇用の拡大政策を民間投資刺激型に
  転換することであった。この結果、問われるのは、政府の雇
  用保障政策ではなく、個々人が雇用される能力を持つかどう
  かになった。
   米バードカレッジのランダル・レイ教授が彼の理論支柱と
  なる『Understanding Modern Money』を世に問うた98年と
  いう時代は、民間投資刺激型の雇用拡大策が機能しないこと
  が徐々に明らかになりつつあるころだった。
                  https://bit.ly/2vYepXz
  ───────────────────────────


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講演するケルトン教授
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2020年03月12日

●「お金も国債も統合政府の債務証書」(EJ第5205号)

 MMTは、天動説に対する地動説のようなものであると、よく
いわれます。世の中の一般の人が、常識的に認識しているお金に
関する考え方が「天動説」であるとすると、MMTにおけるそれ
は「地動説」であるというのです。天動説を信じていた人が、な
かなか地動説を受け入れられなかったと同じように、MMTの考
え方を理解できない人が多いのです。
 昨日のEJの続きです。「国債とは何か」について考えます。
そのためにはもう一度「お金(マネー)とは何か」について検討
する必要があります。しかし、「お金」の定義をうんぬんすると
話が面倒になるので、単に「お金」として話を進めることにしま
す。いろいろな本を読んだのですが、井上智洋駒澤大学准教授の
説明が一番わかりやすいと思うので、以下に要約して説明するこ
とにします。
 いわゆるお金は、紙幣も硬貨もありますが、そのほとんどは銀
行に預けている預金のように、データであり、記録のかたちで存
在しています。ところでそれは、何の記録でしょうか。
 それは債務の記録です。MMTでは、「お金は『債務証書』で
ある」というのです。つまり、借金の証拠となる書類を意味して
います。MMTでは、この債務証書のことを「IOU」と呼んで
います。「IOU」は、次の頭文字をとっています。
─────────────────────────────
   ◎IOU/ I owe you. 「私は君に借りがある」
─────────────────────────────
 お金が債務証書であるとすると、預金は民間銀行の債務証書で
すし、現金と預金準備は中央銀行(日銀)の債務証書ということ
になります。預金準備というのは、民間銀行が中央銀行に対して
持つ当座預金に貯まっているお金のことです。
 国債といえば、政府の国民に対する債務(借金)であり、まさ
に債務証書そのものですが、MMTでは、お金(貨幣)も同様に
国民に対する債務であるというのです。
 ここで「政府」とは、主流派経済学では慣例上、政府と中央銀
行をまとめた「統合政府」のことですが、MMTでも政府という
場合は統合政府を意味しています。しかし、お金が統合政府の債
務証書であることに、MMTでは哲学的な含蓄を込めています。
MMTの有力な主唱者のランダル・レイ教授は、これについて次
のように述べています。
─────────────────────────────
 国王は、支払いにおいて割り符や硬貨を発行する。それが、国
王を罪深い債務者の立場に置く。国王は、自らの債務証書を受け
戻して、負債から解放される。
      ──井上智洋著『MMT/現代貨幣理論とは何か』
                     講談社選書メチエ
─────────────────────────────
 上記のランダル・レイ教授の言葉で、「国王」を総合政府、割
り符や硬貨を現金や預金準備に置き換えると、罪深い債務者の統
合政府は、自らの債務証書を受け戻して負債から解放され、租税
義務を負っている国民は、債務証書たるお金で税金を納めること
によって、この義務から解き放たれるのです。つまり、租税は、
統合政府と国民の双方を債務から解放させるのです。
 つまり、お金も国債も、いずれも統合政府の債務証書であり、
ほとんど同じものであるといえます。それについて井上智洋准教
授は、最近イタリアで起きた次の出来事を通して、このことを説
明しています。
─────────────────────────────
 2019年9月まで、イタリアの連立政権の第一党は「五つ星
運動」で、連立相手は「同盟」という政党でした。2019年5
月にその「同盟」が、「ミニBOT」という、国債(短期財務証
券)を発行する計画を発表しています。これは無利子永久債、つ
まり利子が付かないし満期もない国債です。
 満期がないというのは、国債を償還しなくてよい、つまり国債
と引き換えに政府がお金を返さなくてよいということです。利子
がもらえないし元本すら返してもらえないような国債を持ってい
て何の得があるのかと誰しも疑問を抱くでしょう。
 ミニBOTは代わりに、納税や決済(買い物)に使うことがで
きます。要するにこれは貨幣であり、実際にユーロとは別の「第
2の通貨」などと言われています。ユーロ圏の国が貨幣を勝手に
発行したら、ユーロの意味がなくなってしまうので、EUの本部
からは「またイタリアか、いい加減にしろ!」などと怒られてい
ます。結局のところ、この計画は実行には移されないようですが
イタリアらしくてやんちゃな、そして微笑ましいエピソードと言
えるでしょう。         ──井上智洋著の前掲書より
─────────────────────────────
 イタリアの連立政権は、なぜ「ミニBOT」なる通貨まがいの
国債を発行しようとしたのかというと、ユーロ圏の国々は、自国
の通貨発行権を放棄しているからです。そのため、自国の通貨量
をコントロールできないのです。そうかといって脱退することは
イギリスの例を見ればわかるようにほぼ困難です。これがEUと
いうシステムの最大の問題点であるといえます。
 これによってわかることは、国債というものをほんの少し変形
するだけでお金、すなわち貨幣になり得ることです。したがって
整理すると、次のようになります。
─────────────────────────────
      お金=決済と納税が可能な無利子永久債
      国債=決済と納税には使えぬ有利子貨幣
─────────────────────────────
 問題は、お金(貨幣)にせよ、国債にせよ、いわゆる統合政府
の債務証書、すなわち借金であるとすると、それは本当に返済す
べきものなのかどうかにあります。MMTでは、それは租税を通
じて統合政府に戻ってくるべきであると考えています。
           ──[消費税は廃止できるか/046]

≪画像および関連情報≫
 ●第11話・通貨と国債の関係について
  ───────────────────────────
   ある国の経済成長を促すために、インフレを積極的に利用
  しようというやり方がある。この手法を用いる場合、「市中
  に通貨を供給してやる」必要がある。ではどうやって通貨の
  供給量を増やすか?
   中央銀行が紙幣を作って、勝手に空からバラ撒いてもお金
  は増える。これで確実にインフレにはなる。しかしインフレ
  が行き過ぎて、逆にお金を回収する必要に迫られた場合、は
  たして市民が空から降ってきた紙幣をシュレッダーにかけて
  くれるかは甚だ微妙だ。必要以上の圧倒的な量のお金が市中
  に流通したままでは、コントロールできない悪性のインフレ
  のタネとなる。
   また外国人がそういう国と商取引をする場合、当該国の紙
  幣に価値を見出すことも出来ない。ヘリでカネをばらまく国
  の通貨を後生大事に保有していても、ある時突然カネが増え
  ていて、結果、通貨の価値が下落していた・・・では、所有
  する気にはならない。
   しかもこれは外国人も自国民も同じ。なのでその国は誰か
  らも信頼もされないだろう。無責任なお金ということでは、
  お菓子のおまけについてくる「こども銀行券」と同じだし、
  利子もお菓子もついてない。   https://bit.ly/3cL2Fbn
  ───────────────────────────

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ランダル・レイ授.教
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2020年03月11日

●「記者とケルトン教授との一問一答」(EJ第5204号)

 MMTにスポットライトを当てた一人である、元ウエイトレス
の29歳のオカシオ・コルテス下院議員ですが、彼女の掲げる政
策は、次の3つです。
─────────────────────────────
   1.GND ・・・ グリーン・ニュー・ディール
   2.JGP ・・・       国民総雇用保証
   3.MFA ・・・         国民皆保険
─────────────────────────────
 オカシオ・コルテス下院議員の政策の達成には、莫大な資金が
かかります。彼女は、その財源の調達にMMTの考え方を使おう
と考えています。そのためには、民主党のバーニー・サンダーズ
上院議員が大統領になることがベストです。ステファニー・ケル
トン教授は、サンダーズ上院議員の政策顧問にして、オカシオ・
コルテス下院議員の経済アドバイザーを務めています。
 ここに、記者(Q)とケルトン教授(A)とのMMTに関する
一問一答があります。MMTの理解につながると思われるので、
何回かに分けてご紹介し、解説を加えることにします。
─────────────────────────────
Q:グリーンニューディールの財源は、ちゃんと確保できるので
  しょうか?
A:はい、連邦政府は、自国通貨で売りに出されているものは何
  でも購入することができます。
Q:あなたは、政府は新規の支出のために、ただ「カネを刷れば
  いい」というのですか?
A: 逆に他になにか方法があるんですか?
Q:他の方法ですって?税率を上げられるじゃないですか!
A:そういうものではないのです。政府が国民経済に注いだお金
  の一部を、税は吸収してしまいます。支出と税収を同額にす
  ることもできるかもしれません。でも政府はふつう、税収よ
  り多くのお金を支出していますし、それによって市場にはよ
  り沢山のお金が出回りますよね。 https://bit.ly/2Q4sGJc ─────────────────────────────
 MMTでは、税金は財源とは考えないのです。これは、とても
わかりにくい考え方です。主流派経済学では、税金が税収として
得られ、政府はそれを財源として支出を行うと考えています。当
たり前なことであると誰しも考えます。
 しかしMMTでは、逆に政府支出がまずあって、国民はそれに
よって得たお金で納税できると考えます。これを「スペンディン
グ・ファースト」といいます。税金についてケルトン教授は重要
なことをいっています。「税金は、政府が国民経済に注いだお金
の一部を税は吸収する」と。
 3月2日のEJで述べた「ウォーレン・モスラーの話」を思い
出してください。モスラーは、子供たちのお手伝いに応じて、名
刺(お金)を与えています。スペンディング・ファーストです。
子供たちはそうして集めた名刺、すなわちお金で納税を行ってい
ます。このように、徴税は、貨幣に価値を与え、市中に流通する
貨幣の量を調節する役割をもっています。すなわち、徴税は、市
中から貨幣を吸収する行為として位置付けられています。
─────────────────────────────
Q:いやいや、それは(国債発行による)赤字支出じゃないです
  か?あなた、まーた、政府債務を積み上げるんですね?
A:いいえ、国債を買うためのドルは、赤字支出からくるもので
  はありません!それは、そもそも「借り入れ」ではありませ
  ん。人々がドルと国債を交換したときには、政府が発行した
  おカネを別の形で持ちかえたというだけのことです。
Q:でも、結局、我々は負債を返済する必要がありますよね?
A:政府は常に国債を償還しています。簡単ですよ。国債の売り
  手(多くは銀行)の口座の証券の項目を引き算して、中央銀
  行預け金の項目を足し算するだけです。これをNY連邦準備
  銀行はキーボードを叩くだけで終わらせるんです。
Q:しかし、利子の支払いはどうなるんですか?利払いによって
  使用可能なお金は少なくなりますよね?
A:それは間違いです。政府が利子を支払う方法も、あらゆる支
  払いと同じです。いつだって何にでも支払いが増やせます。
  その上限を決めるのが物価上昇率なのです。
                  https://bit.ly/2Q4sGJc ─────────────────────────────
 ここでは、MMTの本質を論じています。「国債とは何か」が
論じられています。これについては、残りの紙面で述べることは
困難であるので、明日のEJで述べることになります。
 前のブロックで、記者は「政府は新規の支出のためにただ『カ
ネ』を刷ればいい」といっていますが、これは日本的な表現であ
り、日本の読者向けにそう訳したものと思われます。MMTでは
次の2つの表現を使っています。
─────────────────────────────
       @     「万年筆マネー」
       A「キーストローク・マネー」
─────────────────────────────
 ここまで何度も述べてきた銀行の信用創造の仕組みによれば、
無一文の銀行でも、お金を貸す能力があるといえます。銀行は預
金者から預かったお金を貸しているのではないからです。もちろ
ん、法的な規制があって、無一文の銀行ではお金は貸せませんが
その規制がなければ貸すことができるのです。それは、きわめて
簡単なことです。貸付を希望する人の口座に「○○万円」と書き
込むことによって、貸したことになるからです。
 この「書き込む」という言葉によって、「万年筆マネー」とい
う表現が生まれたのですが、実際には、キーボードのキーをスト
ロークすることによって貸し付けが可能になるので、「キースト
ローク・マネー」という表現に変わってきているのです。
           ──[消費税は廃止できるか/045]

≪画像および関連情報≫
 ●異端の経済理論「MMT」を恐れてはいけない理由
  ───────────────────────────
   現代貨幣理論は、その名のとおり、「貨幣」論を起点とす
  る経済理論であるが、この現代貨幣理論と主流派経済学とで
  は、貨幣の理解からして、180度違うのである。
   まさに、地動説と天動説の相違と比肩できるほど、異なっ
  ているのだ。では、ここで、現代貨幣理論が立脚する貨幣論
  について、ごく簡単に解説しよう。
   今日、「通貨」と呼ばれるものには「現金通貨(お札とコ
  イン)」と「預金通貨(銀行預金)」がある。「銀行預金」
  が「通貨」に含まれるのは、我々が給料の支払いや納税など
  のために銀行預金を利用するなど、日常生活において、事実
  上「通貨」として使っているからである。ちなみに「通貨」
  のうち、そのほとんどを預金通貨が占めており、現金通貨が
  占める割合は、ごくわずかである。ここまでは、主流派経済
  学でも異論はないであろう。
   問題は、通貨のほとんどを占める「銀行預金」と貸し出し
  との関係である。通俗的な見方によれば、銀行は、預金を集
  めて、それを貸し出しているものと思われている。しかし、
  これは銀行実務の実態とは異なる。
   実際には、銀行の預金が貸し出されるのではなく、その反
  対に、銀行が貸し出しを行うことによって預金が生まれてい
  るのである(これを「信用創造」という)。驚かれたかもし
  れないが、これは事実である。      ──中野剛志氏
                  https://bit.ly/2TA7NHP
  ───────────────────────────

sanda-zu/korutesuryougiin.jpg
サンダーズ/コルテス両議員 
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2020年03月10日

●「ケルトンはサンダースの政策顧問」(EJ第5203号)

 新しい理論というか、考え方というか、新しい見解というか、
そういうものが公開されると、その内容がユニークであればある
ほど、必ず反対意見が出てきます。まして、それが自分のつねに
主張していることに矛盾する場合は、猛然と反論します。
 MMT(現代貨幣理論)に関しては、著名な経済学者のほとん
どが反対の立場をとっていますし、日本の経済学者、経済評論家
ジャーナリストなどの多くは賛成ではないようです。しかし、消
費増税に反対の立場をとる藤井聡京都大学大学院教授は、MMT
の解説書を上梓して、賛成の立場をとっておられます。
 しかし、まだ立場をはっきりさせていない専門家もたくさんい
ます。きちんと勉強していないのでしょう。政治家では、自民党
参議院議員の西田昌司氏が、MMTに賛成の立場を明確にしてお
り、とても目立っています。
 それでいて、ステファニー・ケルトン教授が2019年7月に
来日し講演をしたとき、受講希望者が殺到、抽選で2回の講演会
の参加者を決めたといわれます。そのとき、1回の受講者は60
人に制限されていたようです。おそらく出席者は経済の専門家が
多かったはずです。トンデモ理論といわれながらも、どのような
理論か、本家の学者の話を直接聴きたかったに違いありません。
 そもそも米国でMMTの議論が巻き起こったのは、2019年
1月のことです。それは、史上最年少の女性下院議員であるアレ
キサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員の掲げる「グリーン
・ニューディール政策」についての議論が原因です。この政策は
太陽光や風力などの再生可能エネルギーを100%にしようとす
るもので、当然のことながら、巨額の資金が必要になりますが、
その財源として赤字国債を上げています。これに関してオカシオ
・コルテス下院議員は、次のように主張しています。
─────────────────────────────
 グリーンニューディールを成功させる方法に関しては、富裕層
課税など、いくつもの財源創出方法があります。政府の赤字支出
は良いことです。そしてグリーンニューディールを実現させるた
めには、財政黒字こそが、経済にダメージを与えるとするMMT
の考えを、”絶対に”私たちの主要議論にする必要があります。
              ──オカシオ・コルテス下院議員
                  https://bit.ly/39ArTY9 ─────────────────────────────
 実は、ナンシー・ペロシ下院議長は、オカシオ・コルテス議員
だけでなく、民主党の大統領候補、さらに70人の民主党議員が
GND(グリーン・ニューディール政策)に賛同していると言明
しており、コルテス下院議員については、その実現を目指させる
ため、気候変動委・予算編成委の部署へ異動させています。
 もちろん、米民主党のすべてがMMTに賛成しているわけでは
ありませんが、その予算化の案の一つとして、MMTの検討を始
めているのは事実です。
 民主党大統領予備選挙の候補であるバーニー・サンダーズ上院
議員と、エリザベス・ウォーレン上院議員(大統領候補から撤退
表明)は、GNDの財源について、次のように述べています。
─────────────────────────────
◎バーニー・サンダーズ上院議員
 ・雇用、格差是正、インフラ整備、貿易、退職保障および教育
 に対して(国債発行して)赤字支出をしなければならない。例
 えば、インフラに5年で1兆ドル以上の投資をすれば1300
 万の高給の雇用を創出できるでしょう。
◎エリザベス・ウォーレン上院議員
 ・政府預金(税収)で支出増加を賄うとする議会の現在のやり
 方は全く意味をなしません。教育やインフラ、人々や国内企業
 への投資など、時間の経過とともに本当の価値を生み出す投資
 があります。そういったことを我々の政府会計では考慮すべき
 です。              https://bit.ly/39ArTY9
─────────────────────────────
 サンダース上院議員にしても、ウォーレン上院議員にしても、
MMTとはっきり口にしていませんが、明らかにMMT的考え方
を述べています。なぜ、MMTなのでしょうか。彼らとMMTは
どういう関係があるのでしょうか。
 それは、ステファニー・ケルトン教授が、バーニー・サンダー
ズ上院議員の政策顧問を務めているからです。ちなみに、ケルト
ン教授は、オカシオ・コルテス下院議員の経済アドバイザーも務
めています。したがって、もし、サンダース上院議員が大統領に
になったら、MMTが米国の経済政策に大きな影響を与えること
になる可能性があります。
 これに対して、米国の主流派の経済学者の3人は、それぞれ次
のようなバカにしたような言葉を連ねて反対しています。
─────────────────────────────
  ◎ポール・クルーグマン氏(ノーベル経済学賞受賞者)
   ・「理解不能」
  ◎ケネス・ロゴス氏(経済学者/ハーバード大学教授)
   ・「ナンセンス」
  ◎ローレンス・サマーズ氏(経済学者で、元財務長官)
   ・「ブードゥー経済学」(いかがわしい経済学)
      ──井上智洋著『MMT/現代貨幣理論とは何か』
                     講談社選書メチエ
─────────────────────────────
 経済学の世界で主流を占めているのは、「ニュー・ケインジア
ン」と呼ばれる人たちです。経済学の教本を出していて著名なグ
レゴリー・マンキューやクルーグマンは、このグループに属しま
す。これに対して、「ポスト・ケインジアン」と呼ばれる一派が
あり、MMT系の経済学者はこれに属します。同じケインジアン
ですが、右寄りのニューケインジアン、左寄りのポストケインジ
アンの考え方は大きく異なります。
           ──[消費税は廃止できるか/044]

≪画像および関連情報≫
 ●ケルトン教授が、顧問のバーニー・サンダース氏を大統領に
                 ──2019年5月の記事
  ───────────────────────────
   MMT(現代貨幣理論)の提唱者の1人、ニューヨーク州
  立大学のステファニー・ケルトン教授が6月に訪日するそう
  です。自民党議員でMMTを支持する安藤ひろし氏と西田昌
  司氏と会うことを楽しみにしています。いいですねえ。政治
  のダイナミズム。アメリカが日本が変わろうとしています。
   ケルトン教授は2016年の米国大統領選でバーニー・サ
  ンダース上院議員の顧問を務めており、2020年の大統領
  選でも同氏の顧問を務めることになりました。MMTが注目
  されている今、最高のタイミングで、最高の人が大統領候補
  として名乗りを上げ、最高の人が顧問を務めることにわくわ
  くしています。
   ところが今、民主党の大統領候補を選ぶ予備選ではジョー
  ・バイデン議員が大きくリードしています。サンダース氏は
  2位につけており、実質、両候補の戦いになりそうです。ど
  ちらも70代の半ばと高齢ですが、エネルギッシュに、選挙
  キャンペーンを繰り広げており、かっこいいと思います。し
  かし、やはり勝って欲しいのはサンダース氏。サンダース氏
  が勝てば、文字通りアメリカが変わります。当然日本も、世
  界も変わることになります。   https://bit.ly/2TxL6E8
  ───────────────────────────

西田昌司自民党参院議員.jpg
西田昌司自民党参院議員
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2020年03月09日

●「経済学者ゴドリーのSFCモデル」(EJ第5202号)

 MMTの主唱者の一人であるステファニー・ケルトン教授が来
日講演のさい、示したグラフを今日のEJの添付ファイルにして
います。ケルトン教授は、「財政再建」の旗印のもとで、いつも
目の敵にされている「財政赤字」について、添付ファイルのグラ
フを示し、次のように述べています。
─────────────────────────────
 財政赤字は政府側からの見方でしかありません。我々民間の側
からバランスシートを見ましょう。すると、政府の赤字と同じだ
けが民間の黒字となります。政府の赤字は悪でも脅威でもなく、
財務のミスマネジメントの証拠となるものでもない。そういう見
方ではなく、政府の赤字は単なる手段なのです
                  https://bit.ly/2TGp3tQ ─────────────────────────────
 確かにグラフを見ると、「民間の黒字=政府の赤字」になって
います。このことをMMTの「理論的な想定」とする向きがあり
ますが、そうではなく、これは「定義上の事実」なのです。狐に
つままれるようだという人もいますが、そんなことはなく、ごく
当たり前の事実をいっているのです。
 これについて、駒澤大学経済学部准教授の井上智洋氏は、自著
で、次のように解説しています。とてもわかりやすい解説である
と思います。
─────────────────────────────
 「MMTはただの会計学的な事実なので否定しようがない」と
か、「経済学者よりも、経理係や税理士のような実務家のはうが
MMTを理解しやすい」といったことが、しばしばMMTの支持
者によってつぶやかれて(文字どおりツイートされて)いますが
ゴドリーのSFCモデルのことを指して言っているのでしょう。
 借り手がいれば必ず貸し手がいるわけで、考えてみれば当然の
ことです。民間部門の中でも、誰かの「債務」は誰かの「債権」
を意味しています。債務というのは金品を支払う義務ということ
で、債権というのは金品を要求する権利のことです。
 私が友達にお金を貸せば、私は債権者で友達は債務者です。銀
行が政府にお金を貸せば、銀行が債権をもち政府は債務を負いま
す。そして、債権は土地やお金などとともに資産に含まれます。
 したがって、政府が借金をすればするほど、民間部門の金融資
産が増大するのです。こうしたこともまた、当たり前の事実で重
要であるにもかかわらず、主流派経済学者によって見過ごされが
ちでした。 ──井上智洋著『MMT/現代貨幣理論とは何か』
                     講談社選書メチエ
─────────────────────────────
 井上智洋准教授の説明にわからないことがひとつあります。そ
れは「ゴドリーのSFCモデル」です。これは、何を意味してい
るのでしょうか。
 実は、来日講演会のさい、ケルトン教授は、MMTに関連して
アバ・ラーナー、ハイマン・ミンスキー、ウェイン・ゴドリーの
3人の名前を上げて、会場に次のように問いかけています。
─────────────────────────────
   ウェイン・ゴドリーを知っている人、手を上げて?
           ──ステファニー・ケルトン教授
─────────────────────────────
 これに対して挙手したのは、60人いる参加者のうちのたった
の3人だったといいます。しかし、ゴドリーのMMTへの貢献度
は、ラーナー、ミンスキーに何ら劣ることはないのです。それは
何といっても、「ストック・フロー・一貫モデル」にあります。
SFCとは、次の頭文字をとっています。ゴドリーは、「政府部
門の赤字」は、「民間部門の黒字」という当たり前の会計的事実
を、このSFCモデルとして定式化し、MMTに取り込んだので
す。SFCモデルの定義も書いておきます。
─────────────────────────────
        ストック・フロー・一貫モデル
        Stock-flow Consistent Model
 厳密な会計のフレームワークに基づくことにより、経済のすべ
てのフローとストックを正しく包括的に統合することが保証され
たマクロ経済モデルの一群のことである。
─────────────────────────────
 ゴドリーは、少し変わった英国の経済学者で、オックスフォー
ド大学を卒業したあと、なぜか、パリ音楽院で音楽を学び、BB
Cウェールズ管弦楽団の首席オーボエ奏者を務めていたことがわ
かっています。
 政府の借金の限度は、民間の金融資産が天井になる──このよ
うなことがよくいわれますが、これはSFCモデルを踏まえると
ナンセンスなのです。なぜなら、政府が借金した分だけ、民間金
融資産が増えているからです。財務省は、民間金融資産が政府へ
の貸し出しに回されているといっていますが、これは完全に順序
が逆です。なぜなら、政府が借金をすればするほど、民間部門の
金融資産が増大するからです。
 井上智洋准教授は、次のような興味ある事実を自著のなかで指
摘しています。
─────────────────────────────
 政府の借金がゼロということは、民間金融純資産がゼロである
ことを意味します。果してそれは望ましいことなのでしょうか。
そして政府部門の黒字は、民間部門の赤字を意味します。アメリ
カのクリントン大統領の時代に政府黒字が達成され、多くの経済
学者がそれを肯定的に見ている一方で、ゴドリーやランダル・レ
イ氏は警告を発しました。    ──井上智洋著の前掲書より
─────────────────────────────
 政府部門の黒字は、民間部門の赤字を意味するのです。だから
ゴドリーは警告をしたのですが、そのとき誰もこの警告を一顧だ
にしませんでした。それが政府部門の赤字が巨大化して、MMT
が注目されています。 ──[消費税は廃止できるか/043]

≪画像および関連情報≫
 ●ウェイン・ゴドリー/危機をモデル化した経済学者
  ───────────────────────────
   ボストン─2008年の金融危機と大停滞は、依然として
  生々しく痛みを伴う記憶だが、多くの経済学者は、1930
  年代の大恐慌時代とその後に起こった考え方に根本的な変更
  が必要かどうかを自問している。国際通貨基金(IMF)の
  チーフエコノミスト、オリビエ・ブランチャードは2011
  年の会議で「我々は新世界に入っている」と述べた。「経済
  危機は私たち多くの信念を疑わせるものであった。私たちは
  この知的挑戦を受け入れる必要がある。」
   危機を予測することができなかった主流モデルの改革に経
  済学者たちが挑戦するならば、差し迫っていた危機に気づい
  ていた数少ない経済学者の一人である、レヴィ経済研究所の
  ウェイン・ゴドリーを参考にしなければならないだろう。残
  念ながらゴドリー氏は、2010年に83歳で亡くなった。
  しかし、彼の影響は広がり始めている。フィナンシャル・タ
  イムスの著名コラムニスト、マーチン・ウルフや、ゴールド
  マン・サックスのグローバル投資研究のチーフエコノミスト
  ジャン・ハッジアスが、ゴドリーのアプローチを拝借してい
  る。北米と欧州のいくつかの経済学者グループ(危機後に金
  融と慈善家ジョージ・ソロスによって設立された新経済思考
  研究所が支援しているグループも含まれる)も彼のモデルを
  使い始めている。        https://bit.ly/2PVAnRH
  ───────────────────────────

kerutonkyoujuga2019nen7gatunonihonkouendeshiyoushitagurahu.jpg
ケルトン教授が2019年7月の日本講演で使用したグラフ
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2020年03月06日

●「日本は緊縮病により貧乏化が進行」(EJ第5201号)

 日本の経済学者でエコノミスト、日本銀行政策委員会審議委員
の原田泰氏は、MMTについて次のように批判しています。
─────────────────────────────
 (MMTをやれば)必ずインフレが起きる。(提唱者は)イン
フレになれば、増税や政府支出を減らしてコントロールできると
言っているが、現実問題としてできるかというと非常に怪しい。
         ──2019年5月22日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 政府の借金をどんどん増やすと、必ずインフレになる。インフ
レになったら、コントロールできない──これがMMTに反対す
るほとんどの経済学者の意見です。
 安倍首相率いる日本政府は、アベノミクスを行いながら、20
25年には借金をゼロにする(プライマリーバランスゼロ)とい
う目標を立て、消費増税を繰り返し、毎年の予算を可能な限り抑
制しようとしています。つまり、MMTとは真逆の政策を展開し
ていることになります。
 考えてみると、アベノミクスが好調だったのは、日銀による異
次元の金融緩和と機動的な財政出動を同時にやっていた最初の時
期に限られていたことがよくわかります。日経平均株価は急上昇
し、やがて株価は倍以上になり、雇用が劇的に改善しています。
 そのアベノミクスを完全に壊したのは、2014年4月の3%
の第1回目の消費増税と、息の根を止めたというか、止めるであ
ろうと思われる、2019年10月の2%の消費増税です。現在
ではアベノミクスという言葉すら使われなくなっています。それ
に、予期していなかった新型コロナウイルスの蔓延による深刻な
経済へのダメージが加わって、個人消費は大幅にダウンし、日本
のデフレはさらに深化してしまうことは確実です。このさい思い
切って、消費税の税率を5%に戻すべきです。もし、やらなけれ
ば、次の選挙で、現在の与党(自民党プラス公明党)は確実に敗
北することは必至です。
 メディアが伝えないので、ほとんどの日本人は認識していませ
んが、2015年までの20年間で、日本のGDPは、ドル建て
換算で20%も縮小しています。このマイナス20%という数字
はもちろん世界最下位です。なぜ、マイナス成長になるのかとい
うと、日本は「緊縮病」という病気にかかっているからです。主
導しているのは財務省です。同じように、緊縮病にかかっている
国にドイツがあり、ドイツは世界のなかで、日本に次いで成長率
の低い国家になっています。
 財務省は、政府の借金があまりにも膨大になると、財政破綻が
起こり、日本が破綻してしまうと国民に説いています。これは完
全な間違いですが、そのことを一般家庭の借金に置き換えて説明
するので、多くの国民は納得してしまいます。
 そこで、これを防ぐために、消費税を増税して、少しずつでも
借金を返し、基本的には入ってくる税収ですべてを賄うようにす
べきであるとして、2014年からわずか5年間で、消費税の税
率を5%から10%に倍増させたのです。
 それでいて、海外の格付会社が、日本国債の格付けを下げよう
とすると、財務省は「自国通貨建ての国債が破綻することなどあ
り得ない」とMMTの主張と同じ理屈で反論します。この財務省
の「外国格付け会社宛意見要旨」については、2月27日のEJ
第5195号で紹介しています。   https://bit.ly/39ozYz7
 いつも国民に訴えていることと、海外の格付会社にいっている
ことが真逆なのです。もし、格付会社にいっていることが正しい
のであれば、財務省は国民を騙していることになります。
 ここで考えてみるべき国があります。それは中国です。中国の
債務の対GDP比は、あまり大き過ぎて公表されていませんが、
それは日本の比ではないはずです。そのため「そのうち中国経済
は破綻する」と期待している向きもありますが、一向に財政的に
潰れそうもありません。中国は巨額の財政出動で得た潤沢な資金
をあらゆる分野に投入し、経済の面でも、軍事面でも、科学技術
の面でも、米国に着々と迫りつつあります。
 この中国について、藤井聡京都大学大学院教授は、「中国は緊
縮病にかかっていない」として、次のように述べています。
─────────────────────────────
 そんな緊縮病という不安神経症を全く患っていないが故に、こ
こ20年ほど超絶なるスピードで経済成長を果たした国がある。
中国だ。彼らは、リーマンショックなどの不況になれば、借金が
増えることなどお構いなしに、50兆円を上回る凄まじい財政出
動を果たし、たちどころにショックから立ち直った。そのおかげ
で凄まじく経済は成長し、税収も拡大、今度はその資金を使って
ユーラシア全土でインフラ投資を展開する「一帯一路構想」をぶ
ち上げ、政府支出を拡大し続けている。そしてその結果、税収も
格段に上昇させ、中央政府においては、財政赤字の問題など何も
なかったように成長し続けている。   ──藤井聡著/晶文社
   『MMTによる令和「新」経済論/現代貨幣理論の真実』
─────────────────────────────
 考えてみると、戦後の日本も緊縮病などにかかっておらず、積
極的な政府支出を行い、それを拡大させています。それだけでは
足りず、世界銀行から多額の借金をして、東名高速道路などの大
型のインフラ投資を繰り返し、積極的な政府支出を大きく積み上
げていったのです。その結果、日本は超高度成長を成し遂げ、世
界第2位の経済大国になっています。
 それが一転して、現在の日本は、過剰なほどの緊縮を行うよう
になり、それが国家の衰退と国民の貧困化を招いています。それ
でいて、政府は一向に緊縮化をやめようせず、借金を減らすこと
しか考えておらず、財政規律の重圧に押しつぶされるようになっ
ています。MMTはその真逆の考え方です。このMMTの考え方
に基づいて、大胆な減税、思い切った財政出動などの政府支出を
行い、何よりもデフレからの脱却を成し遂げる必要があると思い
ます。        ──[消費税は廃止できるか/042]

≪画像および関連情報≫
 ●MMTも主流派経済学もどっちもどっちな理由
  ───────────────────────────
   財政赤字の積極的な拡大を推奨する「現代金融理論/MM
  T」をめぐり、米国では経済学者たちがメディアを巻き込み
  論争を展開している。その論争の内容は、われわれ日本人に
  とっては失笑を禁じえないところがある。また、ある種のデ
  ジャビュを感じるものでもある。
   MMTを主張する経済学者たちは、経済学コミュニティに
  おいては少数派だ。批判する経済学者のほうが数も多いうえ
  地位や名声もはるかに高い。この数カ月間で、ポール・クル
  ーグマン、ラリー・サマーズ、ケネス・ロゴフといったそう
  そうたる面々がMMTを批判する議論を展開しており、ジェ
  ローム・パウエルFRB(米国連邦準備制度理事会)議長や
  黒田東彦日本銀行総裁をはじめ、現役の中央銀行幹部も批判
  の弁を述べている。メディアはこの論争を「主流派経済学V
  S非主流派経済学」という描き方で盛り上げている。
   印象から言えば「非主流派」がずいぶんと威勢よく攻勢を
  かけているのに対し、「主流派」の反論は何やら昔ながらの
  教科書を紐解くような内容で、今ひとつ歯切れが悪い。経済
  学コミュニティの外野からは、小勢ながら果敢に攻める「非
  主流派」に「ヤンヤ」の声が掛かる状況だ。MMTは現状打
  破のための最終兵器であるかのように喧伝されており、米国
  では特にポピュリスト政治家やトランプ政権を政治的に攻め
  あぐねている野党民主党の政治家の中にこの理論の信奉者が
  少なからずいる。        https://bit.ly/2vwMdLk
  ───────────────────────────

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原田泰日銀政策委員会審議委員

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2020年03月05日

●「政府はお金をいくらでもつくれる」(EJ第5200号)

 MMT(現代貨幣理論)について多くの人は、最近急に出てき
たいかがわしい理論と捉えているようです。まず、この誤解から
解く必要があります。MMTについて、藤井聡京都大学大学院教
授は、自著で次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 その源流は、19世紀後半から20世紀初頭に活躍したドイツ
歴史学派の学者、G・F・クナップが展開した貨幣論にある。そ
して経済学全体に巨大な影響を及ぼしたJ・A・シュンペーター
や、J・M・ケインズ等の経済理論やA・ラーナーが提唱した財
政論に影響を受けつつ経済政策論を展開した(ポストケインズ主
義の代表的論客であった)H・ミンスキーの薫陶を受けたL・R
・レイらによって体系化されたものだ。実際レイは、彼の著書、
『MMT現代貨幣理論入門』の中で、MMTを「巨人たちの偉業
の上に成り立っている」ものと的確に表現している。
 だからそれは、MMTについて聞きかじった程度の知識しかな
い日本の記者達が「トンデモ理論」だの「異端」だのと批判でき
るようなレベルの代物ではない、正統な経済理論なのである。し
たがって、その中身を知れば知るほどに、誰もが納得してしまわ
ざるを得ない、極めて理性的な理論なのである。
                   ──藤井聡著/晶文社
   『MMTによる令和「新」経済論/現代貨幣理論の真実』
─────────────────────────────
 いわゆるお金、マネー (money)は、「貨幣」とも「通貨」と
も呼ばれます。この違いをはっきりさせておく必要があります。
「貨幣」は「紙幣」に対応するものであり、狭義としては「鋳造
貨幣」、すなわち、政府の発行する「硬貨」(500円ニッケル
黄銅貨幣、100円白銅貨幣、50円白銅貨幣、10円青銅貨幣
5円黄銅貨幣、1円アルミニウム貨幣の6種類)を意味します。
これに対して「紙幣」とは、日本銀行が発行する「日本銀行券」
を指しています。
 これに加えて「通貨」という言葉を使って整理すると、通貨に
は「現金通貨」と「預金通貨」があります。現金通貨には、流通
している紙幣と硬貨、それに銀行に預金されている預金通貨があ
ります。この預金通貨のほとんどは、紙幣や硬貨という具体的な
お金の数ではなく、デジタルな預金情報として存在しているだけ
です。これはこれまでも何回も述べています。
 MMTを理解するには、現代社会におけるお金とは、国家が作
り出すものであることを理解する必要があります。よく「日銀は
お金(紙幣)を刷る」といいますが、実際にお金を刷っているの
は、日銀ではなく国立印刷局です。それも、日銀の指示によって
印刷しているのではなく、財務省の計画にしたがって、必要な分
だけ印刷しているのです。
 これは、今回のテーマの冒頭でも述べましたが、ここで必要な
分とは、古くなったり、破損した紙幣を交換する分と、お金の総
量が増えるにしたがって増やす分の2つです。この後者の「お金
の総量が増えるにしたがって増やす分」とは、何を意味している
のでしょうか。
 世の中に流通しているお金の総量と、紙幣(日本銀行券)の総
量は、同一ではないのです。紙幣の総量は約100兆円、世の中
に流通しているお金の総量は約1300兆円(M3)です。流通
しているお金のほとんどは預金情報としてデジタルなかたちで存
在しており、紙幣というお金としての具体的な形が必要な分しか
印刷しないのです。
 もうひとつはっきりさせておくべきことがあります。一般的に
は、政府は国債の発行をすることはできるものの、お金を作り出
すのは中央銀行である日銀の仕事であるという考え方です。日銀
には政策の独立性が認められており、あくまでお金を作り出すの
は、日銀であるというです。これについて、藤井聡教授は、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 実際、私達が普段使っている千円札や一万円札には「日本銀行
券」と書かれている。つまりそれは、「日本銀行」という日本の
中央銀行が作り出したものだ。そして、その日本銀行の株主は、
55%が日本国政府であり、日本政府の事実上の「子会社」であ
る。もちろん、日本銀行には経営の自主性が認められているが、
日本銀行法第四条に「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節
が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の
経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡
を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」とも明記さ
れており、政府から完全に独立な振る舞いをすることは法律的に
も禁じられている。だから、政府というものを中央銀行と一体的
なものとして捉えるのなら、政府は貨幣を作り出すことができる
のである。        ──藤井聡著/晶文社の前掲書より
─────────────────────────────
 政府と日銀を一体のものと捉え、政府と日銀のバランスシート
を合体させることを「統合政府」といいますが、この考え方に立
つとMMTはスンナリ理解できるのです。統合政府の場合、国債
は政府の債務であるが、日銀にとっては資産であり、この資産と
負債は相殺できることになります。
 統合政府はともかくとして、「政府は貨幣を作り出すことがで
きる」のは確かです。そうであるなら、次のことが成立します。
─────────────────────────────
 政府は、自国通貨建ての国債で破綻することは、事実上あり
 得ない。            ──MMTの基本的前提
─────────────────────────────
 要するに、日本政府が日本円の借金を返せなくなってしまうこ
とはあり得ないということです。なぜなら、日本円を作っている
のが日本政府であれば、自身が「作ることのできる円」を返せな
くなることはあり得ないからです。
           ──[消費税は廃止できるか/041]

≪画像および関連情報≫
 ●「天下の暴論」MMTから学ぶこと
  ───────────────────────────
   「国はどんなに借金をしても、その重荷で破綻することは
  ない」と言い切って、積極的な財政出動をよびかけるアメリ
  カ発の異端の経済理論=MMTが話題になっています。
   最初に聞いた時、わたしは「天下の暴論」と思いました。
  長年、国の財政を取材し、借金が膨らみ続ける状況に警鐘を
  ならす原稿を書き、解説してきた身にとって、借金を減らす
  努力を「全否定」するかのような経済理論は、「元も子もな
  い」と思ったからです。日本の政府、中央銀行の関係者も含
  めて、そう思う人が多いでしょう。
   ただ、暴論として片づけずに、世界一の経済大国アメリカ
  で議論になっているわけを知りたいと、取材することにしま
  した。(アメリカ総局記者 野口修司)
   MMTは、「Modern Monetary Theory」という学説。その
  要点は、「自国の通貨を持つ国家は、債務返済に充てるお金
  を際限なく発行できるため、政府債務や財政赤字で破綻する
  ことはない」というもの。景気を上向かせ、雇用を生み出し
  ていくためにも、「政府は借金を気にせず、積極的に財政出
  動すべきだ」と説いています。私が取材に向かったのは、ニ
  ューヨークから車で北に2時間あまり。バード・カレッジの
  ランダル・レイ教授。MMTを四半世紀にわたって研究して
  いる経済学者です。       https://bit.ly/38jdwWL
  ───────────────────────────
MMTを体系化したL・R・レイ教授.jpg
MMTを体系化したL・R・レイ教授
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2020年03月04日

●「政府と個人は分離して考えること」(EJ第5199号)

MMTを考えるとき、既に述べてきていることですが、次の2
つを分けて考える必要があります。
─────────────────────────────
 1.「国」と「政府」は分けて考えること。国という場合は、
   政府の他に「民間(企業と個人)」が入る。
 2.「政府」と「個人」は分けて考えること。個人の世界での
   常識は政府の世界では必ずしも通用しない。
─────────────────────────────
 「1」に関しては、ここまでのEJの記述では、峻別してきて
います。財務省は、1100兆円を超える借金を「日本の借金」
と表現し、国民一人当たり876万円の借金になるとその大きさ
を国民にアッピールしています。増税をやり易い環境を作るため
の財務省のプロパガンダです。
 これは正しくないのです。1100兆円を超える借金は、国で
はなく政府の借金です。政府の借金を例えるのであれば、個人で
はなく、企業のはずです。政府と企業は個人よりも似ていること
が多いからです。しかし、財務省は、巧みに政府の借金を企業で
はなく、個人にすり替えています。
 「2」に関してはMMTを正しく捉えるために必要になる考え
方です。個人の世界の常識や慣習は、必ずしも政府レベルでは通
用しないことが多いからです。具体的には、政府が借金をするこ
とは、個人が借金をすることとは違うということです。
 個人の世界では、借金はなるべくしない方がいいし、返済能力
レベルを超える借金はすべきではありません。必要に迫られて借
金をした場合は、返済計画に基づいて、なるべく早く返済するの
は世間の常識です。
 しかし、政府の借金については、いわゆる世間の常識になって
いる借金に対する常識や慣行は通用せず、政府と個人はあくまで
分けて考えるべきです。とくにMMTを正しく理解するためには
そうすべきです。
 政府の借金は国債を発行することで行われますが、日本の場合
ほとんどが国内で消化されているので、それを保有する人にとっ
ては資産となります。つまり、政府の借金は、国民の資産になっ
ているのです。
 MMTについて、法政大学大学院政策創造研究科教授の真壁昭
夫教授は、MMTに関する自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 もし皆さんが、「皆さんは働いて、お金を稼ぐ力を持っていま
す。その力を裏付けに、自由にお金を借りることができます。返
済の問題を気にする必要はないから、どんどんお金を借りて、食
事でも旅行でも、好きなことを思う存分楽しんでください」とい
われたとしましょう。
 皆さんがそれを信じると仮定すると、多くの人がお金を借り、
消費や投資を行います。その結果、モノやサービスを提供した人
は収入を手にします。企業の儲けも増えるでしょう。これは、借
金が資産を生むことを意味します。
 これと同じようなことを、MMTの専門家たちは、国単位で実
施しようと考えています。「国は徴税力を裏付けに、自分の国の
通貨で自由に債務を発行できる。通貨の発行は思うがままにコン
トロールでき、借金を返済できなくなることは心配する必要はな
い」と主張しています。その上で彼らは、借金が経済の活動を活
発化させ、国民の資産(富)を増加させ、望ましい経済環境を達
成できると考えます。            ──真壁昭夫著
 『MMT(現代貨幣理論)の教科書/日本は借金し放題?暴論
         か正論かを見極める』/ビジネス教育出版社
─────────────────────────────
 個人の借金と政府の借金で同じことがひとつあります。お金を
借りると、そのレンタル料として、金利を貸し手に支払わなけれ
ばなりません。金利がかかることは、政府の借金も個人の借金も
同じです。しかし、現在日本では、金利が非常に低い水準で推移
しています。2020年2月時点の長期金利(10年物国債の金
利)は、マイナス0・105%です。
 もうひとつ、これに加えて日本の場合、物価もほとんど上昇し
ていない。しかも経常収支は黒字であり、海外から多くのお金を
受け取っており、企業は多くの資金を保有しています。こんな状
況下において、日本は短期間の間に財政再建と称して消費税の5
%を10%に倍増させています。わざわざ個人消費を冷やし、景
気を悪化させ、デフレを長期化させようとしています。
 MMTの主唱者は、物価に関して、どのように考えているので
しょうか。
─────────────────────────────
 MMTを支持する専門家らは、「物価の上昇を怖がるな」と説
いています。インフレのリスクを怖がると、政府の財政政策が慎
重になってしまい、結果的に、景気の回復が思うように進まなく
なってしまうからです。MMTでは、政府には物価をコントロー
ルする能力があると考えます。
 例えば、政府が大規模に債券を発行して、インフラ投資などの
公共事業を進めたとしましょう。公共事業が始まり、多くの人が
建設現場などで働けるようになりました。コンクリートやアスフ
ァルト、橋などの建設に使われる鋼材など、多くのモノが必要と
されます。モノが必要とされることを「需要」といいます。より
多くのモノが必要とされる場合、景気が回復する中で、需要が高
まり、モノの価格が持続的に上昇する。これが、インフレです。
                ──真壁昭夫著の前掲書より
─────────────────────────────
 MMTにとって、物価は財政支出を続けるかどうかの重要な尺
度になっています。MMTでは、政府が望ましい物価の水準を定
め、その水準が達成されるまで、財政支出を進めればよいと考え
ます。現在、アベノミクスで日銀が2%の物価目標を追っている
のとよく似ています。 ──[消費税は廃止できるか/040]

≪画像および関連情報≫
 ●MMTという妖怪が徘徊している/三輪晴治氏
  ───────────────────────────
   MMTが徘徊し始めてから,世界の多くの経済学者や政府
  の役人が躍起になって,それは魔物だ,でたらめな理屈だと
  騒ぎ立てている。かつて天動説の時代に,地動説が唱えられ
  始めたときのようである。
   MMTという妖怪の正体は次のようなものであるらしい。
  「為替が変動相場制をとる国で,その国の自国通貨建てでの
  国債は,いくら発行しても財政破綻になることはない」とい
  うものである。そしてこの妖怪には尻尾がついている。それ
  は「供給能力、つまりインフレ率という国債発行の上限はあ
  る」ということ。
   そして「デフレ,イノベーション力の衰退,富の格差など
  によりその国の経済のバランスが崩れているとき,その崩れ
  を是正し,経済の活力をつけるために必要な資金であれば,
  それがいかに大きなものであっても政府がそれを供給しても
  問題はない」。MMTの基本の考え方は「国の債務は国民の
  資産である」という「信用創造」の理論と事実である。
   世界の経済学者,政府,政治家は,この妖怪についていろ
  いろの欠陥をあげつらい,批判している。最も多い批判は,
  MMTではハイパーインフレーションになるというものであ
  る。MMTはインフレになれば金の供給をストップし,増税
  をすればよいというが,それを実際にコントロールすること
  は不可能だと言う。       https://bit.ly/2wZzjWl
  ───────────────────────────

真壁昭夫教授.jpg
真壁昭夫教授
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2020年03月03日

●「ケルトン教授/財政均衡論を否定」(EJ第5198号)

 2019年7月16日のステファニー・ケルトン教授の講演の
続きです。引き続き、『週刊現代』記者である、小川匡則氏のレ
ポートに基づいて、要約してご紹介します。
 ケルトン教授は、「インフレをどうやって防ぐか」というのは
同時に「デフレをどう防ぐか」を考えることでもある、といいま
す。つまり、経済とは、「インフレもデフレも過度にならない、
ちょうどいい状態を維持させるための調整を行うことである──
それがMMTの柱であるといいます。
 ここで、ケルトン教授は、2つの洗面台の図を示して、講演を
続けます。その図を添付ファイルにしてあります。上のシンクを
見てください。
─────────────────────────────
 シンクに水が溢れているのは、インフレの状態です。税金は、
その水を減らすためのものなのです。税金の目的は所得を誰かか
ら奪うことです。なぜ、支出能力を減らすのか。それはインフレ
を規制したいからです。つまり、徴税というのは政府支出の財源
を見つけるためではなく、経済から支出能力を取り除くためのも
のです。           ──小川匡則氏のレポート要旨
                  https://bit.ly/3ciIX6D ─────────────────────────────
 また、ケルトン教授は、インフレを抑制する手段として「規制
緩和」も上げています。かつて石油ショックで石油価格が暴騰し
たとき、規制を緩和して天然ガスも使えるようにしてインフレを
防いだことがあるからです。政府は、インフレが過度になりそう
なときは、増税や規制緩和などの政策を駆使して抑えるべきであ
るというのです。
 続いて下のシンクを見てください。下のシンクは水が少なく、
景気が悪い状態をあらわしており、まさに今の日本であるとケル
トン教授はいいます。問題は、どのようにして水を貯めるかが問
われています。それは、政府が国債を発行して、政府支出を増や
し、水をたくさん出し、それに加えて減税をすることによって、
出て行く水を減らし、水を貯めるのです。現在の日本にはそれが
求められています。
 しかし、現在の日本は、景気の良くないデフレ下にあるのに、
短い間に消費税の税率を2回も引き上げ、「プライマリー・バラ
ンス黒字化」と「財政均衡」と「財政再建」をやろうとして、真
逆の政策を取っています。ケルトン教授は、「現在インフレの問
題を抱えていない日本のような国が、消費増税をするということ
は経済的な意味をなしていない。それによって予算の財源を得よ
うとしても適切な政策目的になり得ない」といい、次のように主
張しています。
─────────────────────────────
 経済のバランスをとることです。予算を均衡することではなく
支出と税金を調整することによって、「シンクの水が完全雇用に
なっても溢れ出ない」、「インフレをきたさない」という状況に
コントロールすることです。MMTは、特定の予算支出を目標と
することはないし、政府赤字を何%にするといった目標設定もし
ない。適切な政策目標は「健全な経済を維持する」ということで
す。あくまで経済のバランスをとることが重要です。つまり、予
算の均衡ではなく、経済の均衡です。
               ──小川匡則氏のレポート要旨
                  https://bit.ly/3cloUnY ─────────────────────────────
 ケルトン教授の主張は、日本の財務省の財政に対する考え方と
は完全に真逆です。経済学の主流を自任する経済学者もこぞって
反対しています。なぜなら、もし、この考え方を認めると、自ら
の学説が壊れてしまうからです。
 MMTに対する反論は、掃いて捨てるほどたくさんありますが
「いかがわしい」とか、「そんなうまい話があるわけはない」と
かいう、非論理的なものばかりです。
 このレポートの最後で、レポートの制作者である小川匡則氏は
次のように述べています。
─────────────────────────────
 MMTの話題になると、必ず「ハイパーインフレになるリスク
がある」といったステレオタイプな批判が出るが、むしろそのイ
ンフレ率の調整にこそ注力するのがMMTなのである。だからこ
そ、いま日本人が考えるべきは、経済状況や社会状況を踏まえた
上で「インフレの要因」を分析することだろう。
 例えば、国債を財源として教育無償化を実現するとしよう。そ
れで果たしてインフレ要因になるだろうか。タダで教育を受けら
れ、教員をはじめとしてそこで働く人たちに仕事を与えることが
できる。それでいて何かの価格高騰を招くのだろうか。
 一方、公共工事を一気に極端に増やした場合には人手不足、資
材不足などで工事費が大幅に上がり、一時的にインフレ圧力を招
くかもしれない。では、どの程度の投資であれば適切なインフレ
率に収まるのか。大切なことはそうした分析をして、適切な政府
支出額を決めていくことである。       ──小川匡則氏
                  https://bit.ly/3abP7nl ─────────────────────────────
 このMMTについて、麻生財務大臣は次のように、反論になら
ない反論をしています。この人はビットコインのときもそうでし
たが、新しい発想や概念に対して、いつもトンチンカンなコメン
トをして失笑を買っています。
─────────────────────────────
 MMTなんてナンセンス。日本はMMTの実験場になる気は
 さらさらない。           ──麻生太郎財務相
─────────────────────────────
 それにしてもこのようなレベルの人が財務大臣を何年やってい
るのでしょうか。これでは、日本は貧しくなるばかりです。
           ──[消費税は廃止できるか/039]

≪画像および関連情報≫
 ●MMTに強い違和感を感じざるをえない2つの理由
               ──エコノミスト/村上尚己氏
  ───────────────────────────
   アメリカで経済論争を巻き起こしているMMT(現代貨幣
  理論)の提唱者の1人、ステファニー・ケルトン教授(NY
  州立大学教授)が来日した。MMTは「異端の経済理論」と
  紹介されるとともに、これについてさまざまな見解が伝えら
  れている。筆者は、東京都内で行われたケルトン教授の講演
  会に参加する機会に恵まれたので、今回のコラムではこれを
  紹介したい。
   MMTの理論は幅広い分野に及んでいるため、筆者は、M
  MTについて全てを十分理解しているわけでない。ただ投資
  家の視点からは、ある程度理解を深めることができたと考え
  ている。まず、MMTが異端の経済理論とされる特徴の一つ
  は、財政赤字や公的債務の規模にとらわれずに、財政赤字を
  大きく増やすことが可能、と主張する点である。
                  https://bit.ly/388h6my
  ───────────────────────────

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ケルトン教授提示のイラスト
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2020年03月02日

●「ウォーレン・モスラーによる物語」(EJ第5197号)

 MMT(現代貨幣理論)の主唱者の一人である、ニューヨーク
州立大のステファニー・ケルトン教授が来日し、2019年7月
16日、都内で講演を行っています。その講演会の冒頭において
ケルトン教授は「ある物語」を語っています。MMTを理解する
前提の話なので、これについて、『週刊現代』記者である小川匡
則氏の次のレポートに基づいて、要約してご紹介します。詳細に
ついては、小川匡則氏のレポートを読んでください。
─────────────────────────────
 MMT(現代貨幣理論)が日本経済を「大復活」させるかも
 しれない。         ──週刊現代記者/小川匡則
                 https://bit.ly/2wft54c
─────────────────────────────
 なお、ケルトン教授は、最初に「この物語は、ウォーレン・モ
スラーから聞いた話である」と断っています。ウォーレン・モス
ラーとは何者でしょうか。
 ウォーレン・モスラーは、金融の実務家です。ファンドマネー
ジャーをやっており、MMTをリードする理論家の一人です。モ
スラーについては、改めて取り上げます。
─────────────────────────────
 ウォーレンには2人の子供がいました。ウォーレンは子供たち
に対して家事を手伝うよう求め、その家事の内容に応じて、自分
の名刺を渡すことを告げたのです。皿洗いなら3枚、芝刈りをし
たら20枚というようにです。
 しかし、子供たちは全然家事を手伝おうとはしませんでした。
ウォーレンがその理由を子供たちに聞くと、「パパの名刺なんか
もらっても意味がない」といったのです。そこで、ウォーレンは
一計を案じ、「この美しい庭園のある家にこれからも住み続けた
いのであれば、月末に30枚の名刺を提出しなさい」と子供たち
に宣言したのです。
 そうしたら、急に子供たちは積極的に家事を手伝い、必死に名
刺を集めるようになったのです。──小川匡則氏のレポート要旨
─────────────────────────────
 「月末に30枚の名刺を出せ」と、子供たちに名刺での支払い
を義務化すると、突然名刺が価値を持つようになったのです。子
供たちは、名刺を集めて父親に支払わないと、家を追い出されて
しまうことを知ったからです。そして、ケルトン教授は、次のよ
うに物語を続けます。
─────────────────────────────
 子供たちが家事を手伝い始めたのは、名刺を集めないと自分た
ちが生きていけないことを認識したからです。そこでウォーレン
は気づきました。「近代的な貨幣制度ってこういうことなんだ」
と。つまり、もし彼が子供に国家における税金と同じものを強要
できるのであれば、この何の価値もない名刺に価値をもたらすこ
とができる。そうすると、彼らはその名刺を稼ごうと努力するよ
うになる、と。
 もちろん、ウォーレンは名刺を好きなだけ印刷することができ
る。しかし、子供たちに来月も手伝わせるために、名刺を回収す
ること(=提出を義務づけること)が必要だったのです。
               ──小川匡則氏のレポート要旨
─────────────────────────────
 ここで「名刺」とは貨幣であり、その「一定の数の名刺の提出
を義務づけること」は「税金の徴収」に当ります。そして、その
税金の徴収によって貨幣に価値を生じさせ、信用を担保すること
になるのです。そして、この物語から得られる教訓として、ケル
トン教授は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ウォーレンは名刺を回収する(課税する)前に、まず名刺(お
金)を使わなくてはならない。つまり、課税の前に支出が先にこ
なくてはならないのです。
 そのことを政府に置き換えると、次のようになります。政府は
税収のために税を課し、それで財政支出をするのではなく、政府
が支出することが先です。その支出されるお金を発行できるのが
政府です。政府は好きなだけお金を発行でき、財政的に縛られる
ことはありません。もちろん、無制限にお金を発行してもいいと
いうわけではなく、その制約となるのは「インフレ」です。
               ──小川匡則氏のレポート要旨
─────────────────────────────
 ここでケルトン教授は、非常にわかりにくいことをいっていま
す。政府支出をする財源は、税収ではなく、国債の発行で得られ
た資金であるという点です。そして、国民が税金を支払うのは、
「納税の義務がある」からであり、「インフレの調整機能を果す
ため」であるといいます。
 常識的には政府支出は税収によって行われ、本来できる限り税
収の範囲内で行われるべきものだが、それが不可能であるときは
手続きを踏んで赤字国債を発行し、それで政府支出を賄うことに
なります。日本の場合、これが長く続いているので、財政赤字が
拡大し、そのGDP対比が200%を超えてしまったわけです。
 ところが、ケルトン教授がいうのは、財政赤字を何ら気にする
ことなく、政府支出は国債の発行によって政府支出を行うべきで
あるとしています。もちろん無制限にそれができるわけではなく
歯止めになるのはインフレであるというのです。ケルトン教授は
次のように力説しています。
─────────────────────────────
 政府にとって財政が制約になるわけではない。何が制約になる
かというと「インフレ」です。インフレは最も注目すべきリスク
です。貨幣量は使えるリソースによって供給量が決まります。も
し、支出が需要を上回ればインフレになる。それはまさに気にす
るべき正当な制約なのです。  ──小川匡則氏のレポート要旨
─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/038]

≪画像および関連情報≫
 ●MMT提唱の米教授講演 「消費増税 適切でない」「財政
  赤字脅威ではない」/ステファニー・ケルトン教授
  ───────────────────────────
   自国通貨建てで借金する国は赤字が増えても破綻しないと
  主張する「MMT(現代貨幣理論)」の代表的な論者の一人
  であるニューヨーク州立大のステファニー・ケルトン教授が
  2019年7月16日、国会内で講演し、「政府の財政赤字
  は悪でも脅威でもない」と話した。(生島章弘)
   ケルトン氏は民間団体の招きで来日した。MMTの考え方
  では、自国通貨を持つ国では政府は紙幣をいくらでも刷るこ
  とができるため、財政破綻しないとされる。主流派の経済学
  者らからは異端視されている。ケルトン氏は国債発行によっ
  て生じる政府の財政赤字に関して「公的債務の大きさに惑わ
  されるべきではない。(社会保障や公共事業などで)財政支
  出を増やすことで雇用や所得は上昇する」と強調した。
   ただ、安倍政権の経済政策「アベノミクス」については、
  「あまりにも中央銀行に依存することは支持しない。民間に
  お金を借りる意欲がなければ金利引き下げは役に立たない」
  と述べ、金融政策より財政政策の比重を高めるべきだという
  考えを示した。また、日本政府が10月に予定する消費税率
  10%への引き上げについても「適切な政策ではない」と批
  判した。ケルトン氏は講演後の記者会見でも消費税増税に否
  定的な見解を重ねて表明。その上で「家計の支出こそ、経済
  のけん引力として最も重要だ」として、個人の所得を高める
  財政政策の重要性を訴えた。   https://bit.ly/2uDwgSU
  ───────────────────────────

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ステファニー・ケルトン教授

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2020年02月28日

●「財政を実態より悪くみせる財務省」(EJ第5196号)

 今日は金曜日です。金曜日のEJは、次のEJまで土曜と日曜
の2日間が空くので、どうしてもつながりが悪くなります。した
がって、今日はMMTの周辺の話をします。MMTの本格的な話
は3月2日からになります。さて、消費増税に関して、次のこと
がよくいわれます。聞いたことがあると思います。
─────────────────────────────
 消費税の税率を1%アップすると、2・5兆円税収が増える
─────────────────────────────
 このことをあまり疑う人はいないと思います。税率を上げるの
ですから、その分が増加して、2・5兆円になるのだろうと誰で
も考えます。しかし、よく考えてみると、必ずしもその金額が増
えるとは限らないのではないでしょうか。もし、本当に1%につ
き2・5兆円増えるのであれば、次のように税収が増えたことに
なります。
─────────────────────────────
  ◎第1回/1989年 0%〜 3%  7・5兆円増
  ◎第2回/1997年 3%〜 5%  5・0兆円増
  ◎第3回/2014年 5%〜 8%  7・5兆円増
  ◎第4回/2019年 8%〜10%  5・0兆円増
─────────────────────────────
 実際はどうだったのでしょうか。私の知るかぎり、その結果は
新聞などでは、公表されていないはずです。しかし、経済評論家
の上念司氏の本にその結果が出ています。それによると、第4回
の増税はやったばかりなのでまだ結果が出ていませんが、3回ま
での増税では、いずれも「1%=2・5兆円」は未達成の結果に
終っています。
─────────────────────────────
  ◎第1回/1989年 0%〜 3%
   54・9兆円 → 60・1兆円  +5・2兆円
  ◎第2回/1997年 3%〜 5%
   53・9兆円 → 49・5兆円  −4・5兆円
  ◎第3回/2014年 5%〜 8%
   54・0兆円 → 56・4兆円  +2・4兆円
               ──上念司著/講談社+α新書
      『財務省と題新聞が隠す本当は世界一の日本経済』
─────────────────────────────
 3回とも未達成というのも驚きですが、なかでも悲惨な結果に
終ったのは、第2回の3%〜5%への増税です。増税しているの
に税収が4・5兆円もマイナスになってしまっているからです。
これでは、何のための増税かわからなくなります。
 どうしてこういう結果になるのかについて、上念氏は次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
■税収=名目GDP×税率
 税率を上げても名目GDPに変化がなければ、確かに税収は増
えるでしょう。しかし税率を上げると、人々は支出を抑制し、モ
ノを買わなくなります。そうすると景気が悪くなって、名目GD
Pの伸びが鈍化したり、場合によってはマイナスになる。そして
その落ち込みが税率の上げ幅より大きければ当然、税収も減って
しまうことになるわけです。
 具体的にいえば、消費税の増税によって、消費税だけの税収は
確かに増えるかもしれません。しかし、景気が悪くなることで企
業の収益が悪化し、消費税以外の所得税や法人税が大幅な減収と
なります。1997年のケースは、消費税の増収分よりも所得税
や法人税の減収の幅のほうがはるかに大きかったために、全体と
しての税収が減ってしまったのです。
         ──上念司著/講談社+α新書の前掲書より
─────────────────────────────
 つまり、税収を増やすには名目GDPを上げればよいのです。
名目GDPと税収の間の相関係数は「0・82」であり、相関係
数が「0・7」以上あると、強い相関があるといえます。上念司
氏によると、「GDPが1%増えると、税収は3%以上増える」
そうです。ところが、名目GDPが1%増えたら、税収がどのく
らい増えるかについて、財務省は、公式見解として、次のように
述べています。税収弾性値とは、名目GDPが1%増えると、税
収がどのくらい増えるかを表す数値です。
─────────────────────────────
     名目GDPの税収弾性値はほぼ「1」である
─────────────────────────────
 この数値は明らかに低いのです。財務省から聞き出したとされ
る下記の2005年から2012年度までの税収弾性値を見ると
かなり、高い値であり、平均値は「7・5」になるそうです。こ
の数字はさすがに高いとしても、「3」ぐらいになっても不思議
はありません。それを財務省は「1」としています。長期的には
そうなるというのです。これも日本の財政を実態よりも悪く見せ
たい財務省の思惑なのでしょうか。財務省は何が何でも増税を積
み重ねたいようです。
─────────────────────────────
 ◎平成17年度から24年度の税収弾性値
    平成17(2005)年度 ・・・ 15・6
    平成18(2006)年度 ・・・  6・3
    平成19(2007)年度 ・・・  0・0
    平成20(2008)年度 ・・・  2・6
    平成21(2009)年度 ・・・  4・0
    平成22(2010)年度 ・・・  6・2
    平成23(2011)年度 ・・・ 弾性値マイナス
    平成24(2012)年度 ・・・ 27・0
         ──上念司著/講談社+α新書の前掲書より
─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/037]

≪画像および関連情報≫
 ●税収弾性値の議論で抜け落ちる「重要な視点」とは
  ───────────────────────────
   税収の伸び率が名目GDP成長率の何倍になるのかという
  弾性値の議論が活発だ。現在(2015年)の景気回復局面
  では、弾性値(10年ローリング)は3・5倍程度となって
  いるが、数十年のかなり長期的な平均では1倍程度と言われ
  る。6月中に政府がまとめる財政健全化計画の議論では、こ
  の弾性値の前提を控えめな1倍程度とするのか、それより大
  きい数字とするのか、意見が割れているようだ。
   倍数が大きくなれば、名目GDP成長率の伸びに対して税
  収の見積もり(伸び率)も大きくなり、政府の目標である、
  2020年度のプライマリーバランスの黒字化達成のための
  歳出削減幅は、小さくてもすむことになる。
   この議論で疑問なのは、税収の伸び率と名目GDP成長率
  というフローの比較だけが行われていることだ。税収と名目
  GDPの水準比較の議論がほとんど行われておらず、抜け落
  ちている視点であると言える。バブル期の1990年度の税
  収(除く消費税)の名目GDPに対する割合は12%程度で
  あった。しかし、その後に急落が続き、デフレに陥った19
  90た年代後半からは、割合は7%程度となっている。現在
  税収の弾性値が1倍を大きく上回ってきているため、割合は
  上昇傾向にある。日本がデフレを完全に脱却していけば、こ
  の割合は1990年度までとは言わないが、今後もしっかり
  とした上昇が続くはずである。このような税収水準の上方へ
  の調整を考えると、税収の弾性値が2020年度という短い
  期間で1倍程度にとどまるというのは非現実的である。
                  https://bit.ly/37VtuGp
  ──────────────────────────

上念司氏.jpg
上念司氏

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2020年02月27日

●「財務省は財政をどう考えているか」(EJ第5195号)

 日本政府の財政が深刻な状況にあることはほとんど常識化され
ています。しかし、その根拠は、政府債務の対GDP比が200
%を超えているということに過ぎないのです。
 しかし、日本の場合、他の国では当然のようにやっている金融
資産を債務から差し引かず、債務だけを発表しています。それは
政府の借金を多く見せようとする財務省の策略です。借金が大き
い方が増税しやすいからです。
 本当のところは、どうなのでしょうか。少し長いですが、次の
文章を読んでください。これは、米国の格付会社が日本国債の格
付けを下げたときに、財務省がその格付会社に突き付けた抗議文
書と質問状の全文です。
─────────────────────────────
◎外国格付け会社宛意見書要旨
1.貴社による日本国債の格付けについては、当方としては日本
 経済の強固なファンダメンタルズを考えると既に低過ぎ、更な
 る格下げは根拠を欠くと考えている。貴社の格付け判定は、従
 来より定性的な説明が大宗である一方、客観的な基準を欠き、
 これは、格付けの信頼性にも関わる大きな問題と考えている。
  従って、以下の諸点に閲し、貴社の考え方を具体的・定量的
 に明らかにされたい。
 @日米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられ
  ない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。
 A格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経
  済のファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべき
  である。
  例えば、以下の要素をどのように評価しているのか。
  ・マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国
  ・その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に
   消化されている
  ・日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も
   世界最高
 B各国間の格付けの整合性に疑問。次のような例はどのように
  説明されるのか。
  ・1人当たりのGDPが日本の3分の1で、かつ大きな経常
   赤字国でも、日本より格付けが高い国がある。
  ・1976年のポンド危機とIMF借入れの僅か2年後(1
   978年)に発行された英国の外債や双子の赤字の持続性
   が疑問視された1980年代半ばの米国債はAAA格を維
   持した。
  ・日本国債がシングルAに格下げされれば、日本より経済の
   ファンダメンタルズではるかに格差のある新興市場国と同
   格付けとなる。
2.以上の疑問の提示は、日本政府が改革について真剣ではない
 ということでは全くない。政府は実際、財政構造改革をはじめ
 とする各般の構造改革を真撃に遂行している。同時に、格付け
 について、市場はより客観性・透明性の高い方法論や基準を必
 要としている。       ──上念司著/講談社+α新書
      『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』
─────────────────────────────
 どうでしょうか。米国の格付会社は、この質問状にまともには
答えられないはずです。すべてが、真実で固められているからで
す。そのため、主張には強い説得力があります。財務省は、日本
国民に対しては、借金で首がまわらないから増税しかないといっ
ておきながら、外に対しては、このようにまるで違うことをいっ
ているのです。
 さて、財務省は主張のなかで「日米など先進国の自国通貨建て
国債のデフォルトは考えられない」と明言しています。これはま
さにMMTそのものです。財務省の役人は、ちゃんとわかってい
るのです。しかし、国民よりも、自分たちの利益を優先させてお
り、借金の多額さをよいことに、増税を実現させようとしている
のです。これでは公務員として失格です。
 安倍首相もMMTを知らないはずはないと思います。それなら
安倍首相は、なぜ借金など気にしないで、消費増税を凍結し、積
極的に財政出動して、日本経済をデフレから脱却させないでいる
のでしょうか。なぜ2014年に5%〜8%、2019年に8%
〜10%の大増税を実施し、デフレ脱却を不可能にしてしまった
のでしょうか。自分のやったことがわかっているのでしょうか。
 それは、安倍首相には一国のリーダーにとって不可欠な「大胆
な決断力」が欠如しているからです。消費増税も2回延期しまし
たが、結局は実施して、その結果、10月〜12月のGDP成長
率を年率6・3%というとんでもないマイナス成長にしてしまっ
ています。安倍首相のやっていることは「やってる感」は感じさ
せるものの、結局何も実現しないで終っています。
 それは、新型肺炎コロナウイルスの政府としての対応にもよく
あらわれています。この国家的危機に対して、国民の安全と財産
を守らなければならない安倍首相は、リーダーシップをとってい
ません。あるサイトでは、この問題の政府の対応について、次の
ように批判しています。「やってる感」じゃだめなのです。
─────────────────────────────
 新型肺炎の対策で日本は初動を誤った。検査体制に万全を尽く
し、早期発見に努め、市中感染が広がる前に封じ込めをしなくて
はいけなかったのに、検査をせず、感染者を探し出すことをせず
3週間も市中で感染が連鎖するのを閑却した。政府発表の見かけ
の数字は少ないが、市中では3次4次の感染が広がっている。W
HOの進藤奈邦子は、「今一番、世界中が心配しているのが日本
だ」「他の国では全部の感染者が(誰から感染したのか経路が)
追える。日本だけ様相が違う」と言い、日本のルーズな対応に警
鐘を鳴らした。           http://exci.to/37QVqLq
─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/036]

≪画像および関連情報≫
 ●永田町大混乱!「新型コロナVS安倍VS菅」
  最後に勝つのは誰だ!/「プレジデント」3月6日号
  ───────────────────────────
   世界中で感染拡大している新型コロナウイルスをめぐり、
  安倍晋三政権の後手後手な対応が批判を浴びている。現在は
  国・湖北省に滞在した外国人の入国を拒否するようになった
  が、当初は「震源地」である武漢市からチャーター機で帰国
  した日本人全員を検査することができず、感染症法に基づく
  「指定感染症」の政令施行日や搭乗者負担としていたチャー
  ター機費用も土壇場で方針転換するなど不手際ぶりが浮き彫
  りになっている。「危機管理」の強さを売りにしてきたはず
  の安倍政権に今、何が起きているのか。
   野党が繰り返し追及してきた森友・加計問題や財務省の文
  書改ざん問題など、「普通ならば内閣が吹っ飛ぶ」(閣僚経
  験者)とされたテーマでも乗り切り、史上最長政権となった
  安倍内閣だが、新型コロナウイルスをめぐる対応はあまりに
  遅く、お粗末さが目立つ。
   中国・湖北省では2019年12月以降、新型コロナウイ
  ルス関連肺炎の発生が確認されていたが、日本政府が関係閣
  僚会議で対応方針を決定したのは20年1月21日。その方
  針も感染リスクが高い地域からの帰国者・入国者に対する健
  康状態の確認や情報収集・情報提供など4項目で、この時点
  で安倍首相は「持続的なヒトからヒトへの感染が確認されて
  いる状況ではないが、一層の警戒が必要となる。感染症の発
  生状況など情報収集の徹底に万全を期してほしい」との認識
  だった。            https://bit.ly/2PmiFqu
  ───────────────────────────

WHO/進藤奈邦子氏.jpg
WHO/進藤奈邦子氏
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2020年02月26日

●「MMTという現代貨幣理論がある」(EJ第5194号)

 いま日本では、1年間で集まる税金が約50兆円あります。こ
れだけあれば何でもできるだろうと思うよね。ところが、国が使
うお金は1年間で約97兆円。つまり47兆円も足りない、とい
うことです。税金を倍にしたら足りるかもしれないけど、みんな
大反対するに決まっているよね。そこで日本は、足りないぶんを
借金してまかなっています。(・・・)
 日本は毎年のようにお金を借りて、いまでは全部で1000兆
円までふくらんでいます。こんなにたくさんの借金をしている国
は世界で日本だけ。だから「日本はこのままでは借金を返せなく
なり、つぶれてしまいますよ」と心配している人もいます。
                       ──池上彰著
        『池上彰のはじめてのお金の教科書』/幻冬舎
─────────────────────────────
 これは池上彰氏の子供向けの絵本に出ている説明です。池上彰
氏は、テレビの番組で、日本や世界で起きているさまざまな出来
事を取り上げ、ていねいにわかり易く解説をする人物としては第
一人者です。しかし、政治的に微妙な問題については、慎重な表
現を巧みに使って解説を施しています。
 上記の日本政府の借金についても「『日本はこのままでは借金
を返せなくなり、つぶれてしまいますよ』と心配している人もい
ます」という微妙な表現を使っています。けっして政府の方針に
逆らってはいないのです。政府の方針とは、2025年までにプ
ライマリーバランスを黒字化するというものです。池上氏の解説
は、基本的にはこれに沿って説明しています。そうしないと、池
上氏といえども、長期間にわたってテレビに出演し続けることは
できないでしょう。財務省の目が光っているからです。
 日本という国は、首がまわらないぐらい膨大な借金を抱えてい
て、このままでは破綻する──今やこれは、子供も含めて、日本
人の共通認識になりつつあります。それだけ財務省のプロパガン
ダが効いてきています。
 しかし、日本政府は、それほどの借金を抱えながらも、国連を
はじめとする国際機関の出資金は米国に次いでつねに上位を占め
ODAを含め、貧困国に積極的に資金を援助しています。安倍首
相も世界各国を飛び回ってお金をばら撒いています。とても借金
大国らしくありません。どうしてそのようなことが、できるので
しょうか。そんなお金はどこにあるのでしょうか。
 この政府の借金の捉え方について画期的な解釈を施し、現在話
題になっている経済の運営に関わる理論があります。MMT──
Modan Monetary Theory がそれです。その定義は次のようになっ
ています。
─────────────────────────────
 MMTとは、自分の国のお金(通貨)で債券を発行できる国は
デフォルトに陥ることはなく、政府は財政の悪化をそれほど気に
せず、積極的に国債を発行して、景気刺激策を進めることができ
るという財政の運営に関する理論です。
 MMTの条件には次の3つがあります。
  @経営黒字である
  A自国通貨建ての国債が発行できる
  Bインフレが起きていない        ──真壁昭夫著
             『MMT(現代貨幣理論)の教科書
        /日本は借金し放題?暴論か正論か見極める』
                   ビジネス教育出版社刊
─────────────────────────────
 MMTに対する日本のメディアの反応をひろってみると、次の
ようになります。
─────────────────────────────
◎産経新聞/2019年4月23日
 「財政赤字を容認する現代貨幣理論(MMT)」
◎日本経済新聞/2019年3月15日
 「『財政赤字は問題ない』とする異端の経済政策論」
◎朝日新聞/2019年4月26日
 「財政赤字なんか膨らんでもへっちゃらで、中央銀行に紙幣を
 刷らせれば財源はいくらでもある、というかなりの『トンデモ
 理論』である」           ──藤井聡著/晶文社
   『MMTによる令和「新」経済論/現代貨幣理論の真実』
─────────────────────────────
 このように日本においてMMTは、「異端」「トンデモ理論」
として捉えられており、米国でも、グリーン・スパン元FRB議
長やサマーズ元米財務長官などの主流派の学者はみなこの理論を
否定していますが、米国ではある若い下院議員がMMTを主張し
たことで大きな話題になったのです。
─────────────────────────────
 実際、MMTが話題になったのは、アメリカの下院議員選挙で
最年少議員として当選した20代のアレキサンドリア・オカシオ
=コルテスが、MMTの重要性を主張し、政府による積極的な財
政拡大を通してアメリカ経済を活性化していくことが必要だ、財
政赤字を気にしてそれをしなければ、アメリカ経済は疲弊してし
まうのではないかと、主張したことがきっかけだった。オカシオ
=コルテス議員は今、ツイッターで300万人のフォロワーを抱
え、彼女の動画再生回数は4000万を超え、オンラインメディ
ア、ナウ・ジスの動画で、過去最高を記録するほどの「フィーバ
ー」状態になっている。  ──藤井聡著/晶文社の前掲書より
─────────────────────────────
 MMTは、EJがここまで述べてきたことと重要な関係がある
と思います。財務省系の日本の経済学者は、ろくに調べもしない
で、MMTを「トンデモ理論」とコキ下ろしていますが、それは
自分たちにとって都合の悪い理論だからです。明日から、MMT
にメスを入れていきたいと考えています。
           ──[消費税は廃止できるか/035]

≪画像および関連情報≫
 ●「MMT」がトンデモ経済理論と言えないこれだけの理由
                      /安達誠司氏
  ───────────────────────────
   最近、「MMT(現代貨幣理論)」という新しい経済理論
  が内外で話題になっている。MMTとは、簡単にいえば「自
  国通貨建てで政府債務を拡大させれば物理的な生産力の上限
  まで経済を拡大させることができる」という考え方である。
  つまり、MMTは「自国通貨建てで財政赤字を拡大させれば
  政府は簡単に経済の長期停滞から脱出できる」と主張して世
  間の注目を集めているのである。
   当然のように、主流の経済学者のほとんどがMMTを強く
  批判している。特に、ブランシャール、クルーグマン、ロゴ
  フ、サマーズといった主流派経済学の重鎮たちは、執拗にM
  MT批判を展開している。
   ところで、彼らの批判は大きく分けて2つである。1つは
  財政支出の拡大によって金利が急騰し、民間投資が阻害され
  てしまう懸念(クラウディングアウト)である。そして2つ
  めは、財政支出を無限に拡大させることによる(ハイパー)
  インフレ懸念である。このような批判に対し、MMTを主張
  する人たち(「MMTer」といわれているらしい)は、以
  下のように反論している。1つめのクラウディングアウト懸
  念に対しては、「中央銀行が固定(ゼロ)金利政策を採用し
  財政赤字をそのままファイナンスすれば、財政赤字の増加分
  そのまま資金供給が増加するので、民間投資が押し出される
  ことはない(また、中央銀行がゼロ金利政策を長期間維持す
  ることが予想できれば、将来の政策金利の予想で決まる長期
  金利も低位安定するはずである)。https://bit.ly/3a3pJQF
  ───────────────────────────

オカシオ・コルテス下院議員.jpg
オカシオ・コルテス下院議員
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2020年02月25日

●「実質GDP▲6・3%は実に深刻」(EJ第5193号)

 2020年2月17日のことです。消費増税後の10月〜12
月期の国内総生産(GDP)の数値が発表されたのです。
─────────────────────────────
  ◎GDP/2019年10月〜12月期(前期比)速報値
    ─────────────────────
    実質GDP   ▲1・6%(年率6・3%)
    ─────────────────────
     個人消費   ▲2・9%
     住宅投資   ▲2・7%
     設備投資   ▲3・7%
     公共投資    1・1%
    内需寄与度   ▲2・1%
       輸出   ▲0・1%
       輸入   ▲2・6%
    外需寄与度    0・5%
    名目GDP   ▲1・2%(年率4・9%)
─────────────────────────────
 10月に消費増税をしているので、実質GDPが前期比で相当
程度落ち込むのは十分予測されたのですが、市場予想の平均値は
年率「▲3・9%」、かなり厳しい予測でも「▲4・5%」程度
であったのです。それが「▲6・3%」ですから、明らかにネガ
ティブ・サプライズであるといえます。
 この前期比6・3%という数字はきわめて深刻です。これは、
個人消費の急減を主因とするマイナス成長であり、消費増税によ
る悪影響が、当初予定されたよりもはるかに大きかったことを示
しているからです。前回の5%から8%への3%の消費増税は、
直前の1〜3月期の駆け込みと直後の4月〜6月期の反動が次の
ように明確であったのに対し、今回は、増税前の盛り上がりがな
かったのに、増税後の落ち込みが大きいのです。
─────────────────────────────
              直前3ヶ月  直後3ヶ月
   前回(2014年)  +4・1%  ▲7・4%
   今回(2019年)  +0・5%  ▲6・3%
─────────────────────────────
 これに関して、第一生命経済研究所経済調査部の主席エコノミ
ストの新家義貴氏は、次のように分析しています。
─────────────────────────────
 今回の消費増税では、そもそもの税率引き上げ幅が2%と14
年の3%引き上げと比べて小さいことに加え、軽減税率やキャッ
シュレスポイントの導入、幼児教育無償化等、多くの対策が実施
されたことから、
 @需要平準化策の効果で駆け込み需要や反動減は相当程度抑
  制される、
 A負担増が限定的であるため、実質購買力減少に伴う消費の
  減少は小さななものにとどまる、
との見方が当初は多かった。だが実際には、駆け込み需要も反動
減も意外に大きく、負担増による下押しも予想以上に大きかった
印象だ。今回の落ち込みについては、「前回の増税時よりも個人
消費の落ち込みは小さかった」と評価するよりも、「引き上げ幅
が前回よりも小さい上、これだけの対策を実施したにもかかわら
ず、想定以上の落ち込みとなった」と見る方が妥当と考える。
                  https://bit.ly/32j58oE ─────────────────────────────
 これに対して安倍首相は、実質GDPが「▲6・3%」になっ
たことについて、2月17日の衆院予算委員会において、次のよ
うなノーテンキな答弁しています。
─────────────────────────────
 おもに個人消費が消費税率引き上げにともなう一定程度の反動
減に加え、台風や暖冬の影響を受けたことから、前期比マイナス
に転じました。良好な雇用、所得環境に加えて、今後、経済対策
の効果が発生していくことを踏まえれば、我が国、経済は基調と
しては今後とも内需主導の緩やかな回復が継続していくものと考
えております。──2020年2月17日/衆院予算委員会での
                      安倍首相の答弁
─────────────────────────────
 要するに安倍首相がいいたいことは、軽減税率やキャッシュレ
スポイント還元などの効果により、駆け込み需要が0・5%と小
さかったのだが、台風や暖冬の影響を受けて、前期比マイナスに
なったものと、消費増税の影響を台風や暖冬のそれにすり替えて
いるのです。
 これに対し、既出のエコノミストの新家義貴氏は、新型肺炎に
よる悪影響もあって、1〜3月期もマイナス成長になるとして、
次のように述べています。
─────────────────────────────
 元々筆者は、@増税に伴う家計負担増の影響が残存することに
加え、そもそもの所得の伸びが弱いことから、個人消費の戻りは
鈍いものにとどまること、A輸入の反動増や在庫削減の動きが成
長率を押し下げること、等から1〜3月期の反発は、10〜12
月期の落ち込みの大きさの割に小幅なものにとどまると予想して
いた。そこにさらに追い打ちをかけるのが新型肺炎による悪影響
である。中国人観光客の急減に伴ってサービス輸出が落ち込むこ
とに加え、中国経済の悪化により財輸出も下押しされる可能性が
高い。工場の操業停止によって中国における生産活動は大幅に落
ち込んだとみられることに加え、サプライチェーンを通じた悪影
響も懸念されており、日本からの輸出にも少なくとも短期的には
大きな悪影響が及ぶとみられる。こうした下押しを考えると、1
〜3月期についてもマイナス成長が続く可能性がある。
                  https://bit.ly/32j58oE ─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/034]

≪画像および関連情報≫
 ●10〜12月GDP大幅減で露呈「日本の脆弱性
  ───────────────────────────
   今回のGDP(国内総生産)下落が、いかにインパクトが
  大きいのかについては、2019年における各四半期の数字
  を見れば一目瞭然である。2019年1〜3月の実質成長率
  (四半期ベース)はプラス0・6%、4〜6月は、プラス0
  ・5%、7〜9月期はプラス0・1%と徐々に低下していた
  が、10〜12月期では一気にマイナス1・6%となった。
  これを年率換算すると、6・3%にもなる。
   10〜12月期の数字が悪いことは当初から分かっていた
  ことであり、場合によってはマイナス成長に転じる可能性に
  ついても指摘されていたが、ここまで数字が悪いとは思って
  いなかった人も多かったと考えられる。項目別では何かが大
  きく足を引っ張ったのではなく、景気とは無関係に決まる政
  府支出を除き、ほぼすべての項目が大幅マイナスとなった。
   GDPの約6割を占める個人消費はマイナス2・9%(以
  下すべて四半期ベース)、住宅はマイナス2・7%、企業の
  設備投資に至っては3・7%ものマイナスである。10月の
  増税で個人が消費を絞り、住宅購入にもブレーキがかかった
  と見られるが、設備投資が大幅なマイナスということは企業
  心理も著しく悪化したことを示している。もともと企業は、
  国内市場に悲観的で設備投資を抑制してきたが、消費増税を
  きっかけにさらに将来への投資を削減した格好だ。
                  https://bit.ly/39SC3CY
  ───────────────────────────


実質GDP成長率/10〜12月期.jpg
実質GDP成長率/10〜12月期
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2020年02月21日

●「政府紙幣政策には賛否両論がある」(EJ第5192号)

 自民党内には、「政府紙幣」に対して反対者が多いです。その
中心は、元財務大臣経験者です。財務省は予算を握っている関係
上、他の省庁とは違い、大臣として大過なく過ごすためには、官
僚の協力がとくに不可欠な部署といえます。そうすると、どうし
ても財務省に洗脳されてしまうのです。
 統一見解があるわけではありませんが、財務省の政府紙幣に関
する一般的な考え方は次のようなものです。
─────────────────────────────
 日本銀行券に加えてさらに政府紙幣を大量発行すれば、大幅な
供給過剰に陥って円の信用が著しく低下し、収束不能の高インフ
レーション、過度な円安に向かう危険性がある。
 ある程度の円高是正であれば景気対策として有効性もあるが、
それを超えて大幅な円安が進行すれば、輸出には有利な反面、原
料の輸入価格の著しい上昇も招くため、結果的に高インフレ発生
を意味する。              ──ウィキペディア
─────────────────────────────
 このように、「収束不能の高インフレ」、すなわちハイパーイ
ンフレを恐れているようですが、とくに日本の場合、政府紙幣を
発行したからといって、インフレになる可能性は低く、ましてハ
イパーインフレにはなりません。
 安倍政権の発足以来、黒田総裁が率いる日銀は、異次元金融緩
和と称して、大規模な金融緩和をスタートさせてから8年になろ
うとしていますが、設定した2%のインフレ目標にまだ到達して
いない状況です。インフレにしようと努力してもなかなかインフ
レにはならないのです。まして現在の日本が、政府の借金を政府
紙幣に置き換えたとしても、ハイパーインフレになることはあり
得ないことであり、政府紙幣導入の反論になっていないと思いま
す。政府紙幣に対して反対論を唱える一部の自民党議員の発言を
以下にまとめます。
─────────────────────────────
◎中川昭一元財務相
 日銀券を2つ作るようなもので、中央銀行があるなかでは、世
界中にこういうものを使っているところはないと聞いている。あ
まりに次元の違う問題を喚起する可能性がある。
◎伊吹文明元財務相
 政府紙幣はマリファナである。有権者に吸わせて、いい気分に
して票を取ろうという意図でやってはいけない。
◎高村正彦元外相
 中央銀行が一元管理することが大切だということは、歴史上人
類が学んできた知恵。安易に例外を認めるべきではない。
─────────────────────────────
 このように、政府紙幣はいわば奇策のひとつとされ、あまり人
前では口にできない政策であったといえます。しかし、口には出
さないが、この政策に賛同している政治家、経済学者(とくにケ
インジアン)は多くいます。
 その一人に元大蔵官僚の榊原英資青山学院大学教授がいます。
榊原氏は、『中央公論』/2002年7月号に次の論文を執筆し
ています。しかし、榊原氏は、政府紙幣をあくまで緊急避難的な
政策として位置付けています。
─────────────────────────────
 「日本が構造的デフレを乗り切るために/政府紙幣の発行で
 過剰債務を一掃せよ」──『中央公論』/2002年7月号
─────────────────────────────
 また、元大蔵官僚で、嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、2004
年に日本政府内で政府紙幣の発行を提案し、その準備の文書「政
府紙幣発行の財政金融上の位置づけ」を作成しています。この高
橋論文では、日銀券とは別に財務省が政府紙幣を発行し、国民に
配るという政策を提言しています。
 それでは、現日銀総裁の黒田東彦氏は、政府紙幣に関してどの
ように考えていたのでしょうか。これについては既にご紹介済み
の『経済コラムマガジン』に、内閣官房参与(前財務省財務官)
時代の黒田東彦氏の意見が紹介されています。
─────────────────────────────
 筆者は、スティグリッツ教授の提案に対して、経済の専門家か
らこのような初歩的で的外れの疑念や批難が続くこと自体を危惧
する。このような状況では、いきなり政府紙幣発行はちょっと無
理かもしれない。
 このように混乱している議論に対して、黒田東彦内閣官房参与
(前財務省財務官)が「日銀がもっと大量に国債を購入すること
が現実的」と発言している。これは穏当な意見であり、筆者もこ
れに同感せざるを得ない。ちなみに黒田前財務省財務官は、以前
からリフレ(穏やかなインフレ)政策を主張している。
 政府紙幣の発行も日銀による国債購入も実質的に国の借金にな
らない。そこで政府紙幣への理解が進まないようなら、まず日銀
の国債購入によって積極財政政策のための資金を賄う他はない。
ただ日銀による国債購入には難点がある。日銀は国債購入の限度
を日銀券の発行額と一応定めているのである。これがネックとな
る可能性がある。したがって日銀がどうしても限度額にたいして
柔軟な姿勢を示せないなら、最後の手段として政府貨幣(紙幣)
のオプションは取って置くべきである。 2003年5月5日付
 『経済コラムマガジン』第295号 https://bit.ly/38vO7tD ─────────────────────────────
 かりそめにも経済学者として世界的な権威であるスティグリッ
ツ教授が勧めている提案です。単に政府紙幣を発行せよといって
いるのではなく、現在の日本には、大きなデフレギャップが存在
するので、相当額の政府紙幣が発行できるし、やってみる価値が
あるといっているだけです。この政策によって物価上昇率が限度
額を超えるようであれば、政府紙幣の発行をセーブすればよいの
であって、目くじら立てて反対するような話ではないのです。
           ──[消費税は廃止できるか/033]

≪画像および関連情報≫
 ●新紙幣を「政府の電子マネー」として発行したら
  ───────────────────────────
   政府が2024年から新紙幣を発行すると発表したが、キ
  ャッシュレス化を進めているとき、時代錯誤な話だ。むしろ
  脱税の温床になっている1万円札は廃止すべきだ、というの
  がロゴフの提案である。そこで電子マネーの時代にふさわし
  い新通貨を考えてみた。これは日本銀行の発行する紙幣では
  なく、政府(財務省)の発行する電子マネーである。日銀が
  1882年に設立される前は、政府紙幣が発行されていた。
  今でも政府が紙幣を発行することは(立法すれば)可能であ
  る。2003年にもスティグリッツが提言したことがある。
  その論理は明快だ。
   政府紙幣の発行により債務のファイナンスを行います。日
  銀と財務省の適切な政策についての私の観察では、たとえ政
  府紙幣の発行を始めたとしても印刷機のスピードをただ速め
  るようなことはしないと確信しています。政府紙幣の発行ス
  ピードは非常に緩やかなものとなるでしょう。真の問題は、
  政府紙幣を増発しすぎるということではなく、むしろ政府紙
  幣の増発が不十分な量で終わるということです。したがって
  不連続性については例証は存在せず、緩やかに増発すればハ
  イパーインフレを引き起こすことはありません。経済理論に
  よれば、適正なインフレ率が存在し、この水準となるように
  供給量を調節することができるのです。
                  https://bit.ly/2P3hs7j
  ───────────────────────────

榊原英資氏と黒田東彦氏.jpg
榊原英資氏と黒田東彦氏.
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2020年02月20日

●「政府紙幣を発行するとどうなるか」(EJ第5191号)

 「政府紙幣」を具体的に考えてみます。政府紙幣については、
賛否両論がありますが、日本の国内では否定的であり、「怪しい
もの」という見方がほとんどです。ビットコインのときとよく似
ています。しかし、本当のところは、政府紙幣がどういうものか
わかっている人が、きわめて少ないのです。
 当時、与謝野馨経済財政相(故人)が、テレビ番組(テレビ朝
日『サンデープロジェクト』)に出演して、司会の田原聡一郎氏
から政府紙幣についてコメントを求められたとき、与謝野氏が政
府紙幣を日銀紙幣と別物にして、「『円』は使えないよ。『両』
にでもするのか」とバカにしたように話したとき、私はテレビを
視ていたので、印象に残っています。経済財政大臣ですら、ほと
んどわかっていないのです。
 そこで、既出の大西つねき氏の所説に戻って、政府紙幣につい
て具体的に検討します。政府には、通貨発行権があり、その気に
なれば、政府紙幣を発行できます。しかも、やり方はそんなに難
しくありません。必要なのは首相の決断だけです。
 100兆円の政府紙幣を導入することにします。この場合、1
兆円の政府紙幣を100枚印刷します。これで100兆円。そし
て、その政府紙幣を全額日銀に預けます。日銀は、それを金庫に
収納し、政府預金口座に100兆円と書き込みます。これで終わ
りです。したがって、流通するのは、日銀券であり、政府紙幣と
いう名のお札が流通するわけではないのです。与謝野大臣は、そ
のことが理解できていなかったのです。
 しかし、政府がこれをやるには、法改正が必要になります。当
然国会で審議されます。政府はその目的をきちんと国民に説明し
十分な国会審議を経て、法改正を行い、そのうえではじめて実施
可能になります。
 1月24日のEJ第5173号では、平成29年度(2017
年度)予算案の数字を使って分析をしましたが、これと同じモデ
ルを使って100兆円の政府紙幣を導入するとどうなるかについ
て分析を行うことにします。添付ファイルの図をご覧ください。
この図は大西つねき氏の本に出ているものです。
 図の中央の「平成29年度予算案」の部分を見てください。税
収は58兆円、その他の収入は5兆円で、合計63兆円の歳入で
す。この歳入に対して、国債費以外の政府支出が74兆円であり
基礎収支(63−74)は、マイナス11兆円になります。
 これに国債費は、次の通り、23兆円になりますが、償還分の
14兆円は借り換え分であるので、正味の不足金額は20兆円と
いうことになります。この20兆円を、従来は毎年赤字国債でカ
バーしていたのです。
─────────────────────────────
    基礎収支11兆円 + 利息9兆円 =20兆円
─────────────────────────────
 こういう前提に立って、政府紙幣100兆円を導入してみるこ
とにします。100兆円あれば、赤字分の20兆円を賄っても、
80兆円残るので、この分に対応する政府の借金を削減すること
ができます。図の右部分の「国債残高」を見てください。国債残
高は、平成28年度末で845兆円ですが、そこから、80兆円
を差し引くと、残高は765兆円になります。
─────────────────────────────
     845兆円 − 80兆円 = 765兆円
─────────────────────────────
 続いて、図の左部分、「マネーストック」のところを見てくだ
さい。市中にどのくらいのお金が回るかを見ることができます。
58兆円と5兆円の63兆円は、税金などとして政府に吸い上げ
られますが、政府支出の74兆円、基礎収支の差額11兆円、利
息の9兆円は支払われるので、民間に流通する通貨量に変化はあ
りません。その結果、政府紙幣でカバーした20兆円が増加して
次のように1010兆円になります。
─────────────────────────────
    990兆円 + 20兆円 = 1010兆円
─────────────────────────────
 ここで重要なことは、100兆円の政府紙幣を導入することに
よって、市中に流通するお金は20兆円増加しながら、政府の借
金は80兆円減少することです。あくまで計算上ですが、これを
10年間続けると、政府の借金はほぼなくなり、市中に回るお金
は毎年20兆円ずつ増えて、約1200兆円になります。
 しかも政府紙幣として発行するお金は政府の借金にはならない
のです。法改正は必要であるものの、ここまで述べてきているよ
うに、比較的簡単に発行できます。それにも関わらず、なぜ政府
はやらないのでしょうか。
 日本の場合、政府の借金がある程度巨額になっても、それに対
応する資産が十分あり、財政破綻を起こすことはありません。し
かし、借金が年々増加し、増えて行くことは決して好ましいこと
ではありません。それは利息がバカにならないからです。
 国債の利息の9兆円ですが、元本である約900兆円からする
と、0・1%に過ぎません。しかし、この利息水準でも10年経
つと約100兆円になるのです。まして、金利が上がると、大変
なことになります。既に利息分だけで、この35年で累計300
兆円になっています。しかしそれを政府紙幣で返した場合、向こ
う10年の利息はおそらく半減し、50兆円ぐらいになるでしょ
う。この50兆円でいろいろなことができます。教育予算を充実
化させたり、少子化対策にも役立てることができます。
 このように金利の重しを取り除くだけでも、経済は間違いなく
活性化します。だからこそ、スティグリッツ教授は、日本政府に
政府紙幣の導入を勧めたのです。日本は現在深刻なデフレ下にあ
り、相当量の政府紙幣を発行してもインフレにはならないからで
す。日本にはそれをやれる条件が整っているのです。このまま経
済に弱い財務省の役人にまかせておくと、日本の財政はも確実に
破綻します。     ──[消費税は廃止できるか/032]

≪画像および関連情報≫
 ●借金でお金を発行する時代は必ず終わる/大西つねき氏
  ───────────────────────────
   今の金融経済を俯瞰で見てみましょう。お金というのは、
  信用創造の仕組みで説明した通り、誰かの借金として発行さ
  れます。つまり、常にほぼ同じ額の借金が表裏一体で存在す
  るということです。これは政府の借金がお金を増やす仕組み
  で述べたように、政府の借金を返せば皆さんのお金がなくな
  る、ということからもわかります。相殺すればゼロというこ
  とです。私たちの金融経済というのは、最も単純化して言う
  と、相殺すればゼロのお金と借金を、奪い合い、押しつけ合
  っているだけです。もちろん奪い合うのはお金で、押し付け
  合うのは借金です。借金を押しつけるというのは実感が湧か
  ないかもしれませんが、この日本に生まれただけで政府の借
  金(=後払いの税金)が押しつけられるのです。そして、そ
  こから脱却するために奪い合うのです。奪い合うという言葉
  にも抵抗があるかもしれませんが、全て相殺すればゼロ、つ
  まりお金の部分だけ見ればゼロサムの世界ですから、みんな
  がプラスということはありません。奪わなければ負けるので
  す。つまり、金融の世界というのは、みんなで仲良く分け合
  えない世界なのです。必ず、マイナスの人がいるわけですか
  ら。しかも、金利という仕組みがプラスもマイナスも加速度
  的に大きくし、その差を広げます。 https://bit.ly/3bGNC1X
  ───────────────────────────
 ●図の出典/大西つねき著『私が総理大臣ならこうする/日本
  と世界の新世紀ビジョン』/白順社刊

政府通貨で政府の借金を返すと?.jpg
政府通貨で政府の借金を返すと?

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2020年02月19日

●「スティグリッツ教授の提案の賛否」(EJ第5190号)

 2003年4月14日のことです。ノーベル経済学賞受賞のジ
ョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授が来日し、東京都
内で講演とシンポジウムを開いています。4月15日付、日本経
済新聞は、次のように報道しています。
─────────────────────────────
 日本経済新聞社と日本経済研究センターは14日、ノーベル経
済学賞受賞者のスティグリッツ米コロンビア大教授を招き、「日
本経済再生の処方を探る」と題したシンポジウムを東京都内で開
いた。スティグリッツ氏は基調講演で、デフレ克服のため「通貨
切り下げはプラス効果を持つ」と述べ、円安誘導が有効との見方
を示した。
 シンポジウムはスティグリッツ氏の来日を記念して開催。講演
後の討論会に榊原英資慶大教授、白川方明日銀理事、八代尚宏日
本経済研究センター理事長が参加した。スティグリッツ氏はデフ
レという難題を克服するには思考の転換が必要と指摘。「紙幣を
増刷する対策もある」と大胆な提言をした。日銀に代わって政府
が「政府紙幣」を発行する案だ。これに対し、日銀の白川理事は
日銀券が政府の紙幣に置き換わるだけだとし「問題を解決する方
策とは思えない」と反論した。  ──2003年4月15日付
                     日本経済新聞朝刊
─────────────────────────────
 スティグリッツ教授といえば、消費増税の実施判断のさいにも
安倍首相は日本に招いて意見を聞いています。しかし、日本政府
は話は聞くものの、彼らの意見を絶対に採用しません。聞き置く
だけです。「高名な学者からも意見も聞いている」というポーズ
を見せているだけです。それに財務省は、スティグリッツ教授の
意見には絶対反対であり、安倍首相が教授の意見を採用しないよ
うに神経を尖らせています。
 2003年4月の来日のときは、上記の日本経済新聞の報道に
もあるように、講演後の討論会に、榊原英資慶大教授、白川方明
日銀理事、八代尚宏日本経済研究センター理事長が参加しました
が、榊原英資慶大教授は教授の意見を前向きにとらえていたもの
の、2008年に日銀総裁になる白川方明日銀理事は、スティグ
リッツ教授による政府紙幣の提案に聞く耳を持たず、反対してい
ます。「それなら、日本のデフレを何とかしろよ!」といいたく
なりますが、だから、日本の経済学者たちは、いつまで経っても
ノーベル経済学賞が取れないのです。
 驚くべきは、白川方明理事が、スティグリッツ教授の提案する
政府紙幣の発行に関して次のように反対したことです。
─────────────────────────────
 (政府紙幣は)日銀券が政府の紙幣に置き換わるだけである
                  ──白川方明日銀理事
─────────────────────────────
 本当にそういったとすると、5年後に日銀総裁になる白川氏と
しては、考えられない発言です。これについて、伝統ある『経済
コラムマガジン』は次のように論評し、白川発言に疑問を呈して
います。
─────────────────────────────
 大きな誤解は、政府紙幣が発行されても、日銀券が政府紙幣に
置き換わるだけであり、経済に何の影響を与えないという意見で
ある。たしかに公務員の給料支払いを日銀券ではなく、政府紙幣
で行ったり、国債の買いオペを政府紙幣で行えば、そのようなこ
とになる。もっともその分だけ国の借金は増えないが。しかしそ
のようなばかげたことを主張するため、わざわざスティグリッツ
教授が来日し、政府紙幣に関した発言を行うはずがない。
                  https://bit.ly/38vO7tD ─────────────────────────────
 ネット上で、そのときのスティグリッツ教授の提案を論評した
記事を探したのですが、よいものがなく、その中では『経済コラ
ムマガジン』の論評が光っています。スティグリッツ教授は、デ
フレギャップの大きい日本だからこそ、政府紙幣の発行の提案を
したと思われます。
─────────────────────────────
 スティグリッツ教授は、デフレに陥っている日本経済に処方箋
をいくつか提案している。「円安誘導」、「銀行システムの立直
し」と言ったありきたりの政策に加え、なんと「プリンティング
マネー(政府紙幣)の発行」をスティグリッツ教授は提案した。
これは各方面に衝撃を与えており、波紋がひろがりつつある。こ
れはまさに筆者達が以前から主張していた政策である。(中略)
 この政府紙幣発行に対して色々の反論や解説がなされている。
しかしそれらのほとんどが間違っているか、的外れである。この
ような反論を行っている人物達が、日銀の理事だったり、リチャ
ード・クー氏なのだから、こちらも驚く。それほど日本において
は政府貨幣(紙幣)に対する知識や情報が乏しいのである。
 日銀券と政府紙幣の違いは、日銀券が日銀の債務に計上される
のに対して、政府紙幣は国の借金にならないことである。今日の
コインにもいえることであるが、額面からコインの製造経費を差
引いた額が国の収入になる。
 スティグリッツ教授の主張は「この政府貨幣(紙幣)の発行を
もっと大規模に行え」ということである。さらに重要なことはこ
の貨幣鋳造益や紙幣造幣益を『財政政策』に使えと提案している
のである。今日、国債の発行が巨額になり、政府は、「30兆円
枠」に見られるように、財政支出を削ろうと四苦八苦している。
しかしこれによってさらに日本のデフレは深刻になっている。そ
こで教授は、国の借金を増やさなくとも良い政府紙幣を発行し、
その紙幣造幣益を使って、減税や公共投資を行えば良いと提案し
ているのである。         ──2003年5月5日付
 『経済コラムマガジン』第295号 https://bit.ly/38vO7tD ─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/031]

≪画像および関連情報≫
 ●風の行方とハードボイルドワンダーランド
  ───────────────────────────
   さて、2003年にノーベル経済学賞のスティグリッツ氏
  が来日し、財務省幹部の前で「政府紙幣」の発行について講
  演した。紙幣は日銀が発行し、貨幣は政府(造幣局)が日銀
  と独立して発行している。国債を日銀が購入することは、財
  政法で禁じられているので、政府が高額硬貨である政府紙幣
  を発行すれば、財政赤字問題は解決するというもの。国会議
  員の何人かも興味を示していたが、やがて話はなくなった。
  多分、実務レベルから見ると、明らかな財政ファイナンスと
  して日本の信認が失われ、円暴落等のリスクを勘案すれば非
  現実的だったのだろう。日銀の白川総裁の記者会見における
  政府紙幣に対する回答がある。「政府紙幣が市中から日銀に
  還流して来たとき、仮に政府がこれを回収せず、日銀に保有
  され続けるという形で政府紙幣が発行されるケースを考える
  と、政府は回収のための財源を必要としないことになるが、
  この仕組みは日銀に無利息で償還期間のない政府の債務を保
  有させるという点で、無利息の永久国債を日銀に引き受けさ
  せることに等しく、大きな弊害が生じる」。当時は国債を日
  銀が買い取るなどということ自体考えられなかったのだ。
                  https://bit.ly/2Sx32hR
  ───────────────────────────

「政府紙幣」の採用を説くスティグリッツ教授.jpg
「政府紙幣」の採用を説くスティグリッツ教授




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2020年02月18日

●「政府紙幣の発行という手段がある」(EJ第5189号)

 家計の借金と政府の借金は異なります。したがって、慌ててゼ
ロになるまで返済を急ぐ必要はありませんが、そうかといって借
金が年々増加するのを放置するのは好ましくありません。この場
合、重要なことは、経済を冷やさないことです。なぜなら、経済
が活性化し、税収が増えれば借金は少しずつでも減少していくは
ずです。個人と違って国家は永遠の存在ですから、超長期間にわ
たって少しずつでも返済していけばよいのです。
 ところが、現在政府や財務省がやっていることは、消費税を増
税してその増収分のほとんどを借金の返済に回すという「増税し
て借金を返す」最悪の手段です。これでは、いつまでもデフレか
ら脱却できず、逆に借金が増えてしまいます。
 それでは、どうすればよいでしょうか。
 その1つの手段として、「政府紙幣を発行する」という方法が
あります。この話は、2008年9月のリーマンショックの影響
で、深刻な不況が広がるなか、2009年の時点で、一時話題に
なったことがあります。この政府紙幣発行を取り上げ、導入を提
言したのは、あの高橋洋一嘉悦大学教授(当時/東洋大学教授)
です。高橋洋一氏は、2009年2月13日付の産経新聞「単刀
直言」で政府紙幣について次のように述べています。
─────────────────────────────
 10年や20年に1度の不況ならば、政府紙幣の発行は必要な
いが、「100年に1度」の大不況となれば別だ。「100年に
1度の対応」が当然必要となる。そこで、私が提案しているのが
政府紙幣25兆円を発行し、日銀の量的緩和で25兆円を供給、
さらに「埋蔵金」25兆円を活用し、計75兆円の資金を市中に
供給するプランだ。2、3年で集中的に行い、さまざまな政策を
組み合わせれば、多方面に効果が出るはずだ。
 大デフレ時のインフレは良薬だ。デフレは、例えて言えば氷風
呂。政府紙幣は熱湯。普段のお湯ならやけどをするが、氷風呂な
ら熱湯を入れない方が凍え死ぬ。金融政策は本来日銀の仕事だが
日銀が何もしないのならば政府がやるしかないのでないか。イン
フレ懸念の観点から歯止めが必要、というのならば、「インフレ
率3%になれば発行を止める」など物価安定目標をさだめればよ
い。これは同時に財政規律の確保にもつながる。
   ──2009年2月13日付の産経新聞「単刀直言」より
─────────────────────────────
 政府紙幣とは何でしょうか。
 政府紙幣とは、「通貨発行権」を持つ政府が直接発行する紙幣
のことで、「国家紙幣」とも呼ばれます。政府紙幣などというと
禁断の方法のようにいわれますが、シンガポールの通貨「シンガ
ポールドル」は政府紙幣です。これは、シンガポール金融管理局
が紙幣の発行と管理を行っているので、中央銀行の業務を政府が
自ら行っていることになります。
 まだあります。「香港ドル」がそうです。中国の香港特別行政
区の法定通貨「香港ドル」は、香港金融管理局で民営銀行3行が
紙幣を発行していますが、そのうち、10ドル香港紙幣は、香港
特別行政区政府の発行する政府紙幣です。
 歴史的に見ると、日本、とくに明治維新後の明治政府は、政府
紙幣を何回も発行しています。戊辰戦争のときの「太政官札」、
西南戦争時の「明治通宝」などがそうです。
 明治維新の新政府は、税制などの歳入システムが未整備のまま
で発足したので、当時の政府支出の大部分は、太政官札などの政
府紙幣で行われていたのです。このような政府紙幣を発行すると
ハイパーインフレが懸念されますが、当時は経済がデフレ状態に
あったので、物価も上昇せず、経済も順調に拡大しています。現
在の日本もデフレ状態にあるので、この事実は重要な参考ポイン
トになります。
 しかし、明治15年(1877年)6月にそれら政府紙幣の整
理の目的もあって、日本銀行条例が制定され、同年10月10日
に日本銀行が業務を開始しています。その後太平洋戦争下の19
38年、金属を優先的に軍需に回すため、当時補助貨幣(硬貨)
だった50銭が政府紙幣化されていますが、その後、政府紙幣の
話が浮上することはなかったのです。
 リーマンショックにより深刻化した景気後退期において、自民
党のある政治家が、当時の麻生太郎首相に対して、政府紙幣発行
の政策提言書を提出しています。その政治家は、第1次安倍改造
内閣で金融担当大臣を務めた渡辺喜美氏です。その政策提言書の
最後には、次のような文言が書かれていたのです。
─────────────────────────────
 政府紙幣発行などの提言が速やか、かつ真摯に検討、審議され
ない場合、政治家としての義命により、自民党を離党する。
                       ──渡辺喜美
─────────────────────────────
 麻生内閣は、この政策提言を無視したので、渡辺喜美氏は自民
党を離党しています。当時、麻生内閣は、不況対策を含むあらゆ
る面で、小沢一郎代表の指揮する民主党に追い詰められており、
不況も深刻化していたので、もし総選挙を行えば、ほぼ確実に政
権を失う危機にあったのです。麻生政権は、野党から解散総選挙
を要求されていたのです。
 この時期の政府紙幣発行の提言は、従来とは、次の2つの面で
背景が異なっていたのです。
─────────────────────────────
 1.財政上の目的である。国債の発行残高が膨れ上がってい
   る状況下で、国債を増やさずに、政府の財源をつくるこ
   とである。
 2.金融政策上の目的である。政府紙幣発行によってマネー
   サプライを増やし、デフレからの脱却を図ろうというわ
   けである。
─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/030]

≪画像および関連情報≫
 ●「お札を刷って国の借金帳消し」ははたして可能か
            ──「高橋洋一の俗論を撃つ!」より
  ───────────────────────────
   ある人から、お札を刷って国の借金を帳消しにできないか
  と聞かれた。これは、後で詳しく述べるが、ある程度はでき
  る。また、これと大いに関係があるが、かつて筆者が政府紙
  幣の発行を主張したこともあり、しばしばそのメリットとデ
  メリットを聞かれる。
   実は、政府紙幣の発行と日銀の量的緩和は、経済効果とい
  う観点から見れば、両者はほぼ同じである。日本の経済学者
  は、財政学と金融論(金融政策)が縦割りになっており、政
  府紙幣はそれらの狭間に入るのでキワモノ扱いである。この
  ため、日銀の量的緩和でも理解不足の人が多いのは残念であ
  る。まず政府紙幣はそれほど突飛なものではなく、ほぼ現行
  制度の中の話である。かつて政府紙幣を生理的に嫌った与謝
  野馨氏は、経済財政相時代にとんでもない発言をした。
   テレビ番組で与謝野氏は、政府紙幣について「『円』って
  いうのは使えないんですよ。だから、『両』とかにね、しな
  いと。信用あります?流通しないですよ」と言った。
   これは、政府紙幣が現行制度で構成できることを知らずに
  言ったことで、ある意味法律違反の発言だ。通貨の単位及び
  貨幣の発行等に関する法律(以下「通貨法」)第二条第一項
  には「通貨の額面価格の単位は円とし、その額面価格は一円
  の整数倍とする」とある。政府紙幣は法定通貨であり、その
  通貨単位を「両」なんて勝手に言ってはいけない。それも、
  現職経済担当閣僚がテレビで公言するのだから、困ったもの
  だった。            https://bit.ly/2OYDU17
  ───────────────────────────

渡辺喜美氏.jpg
渡辺喜美氏
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2020年02月17日

●「国債は政府の借金だが国民の資産」(EJ第5188号)

 政府の借金は、経済に深刻な打撃を与える消費増税までして、
返さなければならないものなのでしょうか。財務省は2014年
の5%〜8%への引き上げのときは、増収分の80%を返済に充
てているし、8%〜10%への引き上げでも50%を返済するこ
とになっています。財務省はまるで「悪代官」そのものです。そ
もそも毎年借金が増えるのは政府の財政運営の失敗が原因です。
その政府の失敗のツケをなぜ庶民の収入から取り立てるのでしょ
うか。だから、悪代官です。
 ネットのなかで、この問題に関する高校生と先生の次のやり取
りを見つけたので、ご紹介します。
─────────────────────────────
高校生:でも、日本に1000兆円も借金があるのは本当なんで
 すよね。それってやっぱり大変なことですよね。
先 生:もし、借金をゼロにする必要があるなら、そうかもしれ
 ないね。
高校生:え、借金はなくさないといけないんじゃないんですか?
 それに一人当たりに置き換えると863万円の借金って・・。
 やっぱりすごくやばそうな気がするんですけど・・・。
先 生:確かに、個人であったら借金はないほうがいいし、なる
 べく早く返したほうがいい。しかし、政府の借金はそうではな
 い。むしろ政府の借金は「あったほうがいい」といっても過言
 ではないんだ。
高校生:えっ、借金なのに、あったほうがいい?どういうことで
 すか!?              https://bit.ly/37q4pmr
─────────────────────────────
 「政府の借金はあったほうがよい」──この言葉から、何がわ
かるでしょうか。
 この言葉から財務省の狡猾さが透けて見えます。もともと政府
の活動を何かに例えるとしたら「個人」ではなく、「企業」では
ないでしょうか。上記の先生と高校生のやり取りの答えは、「企
業」です。企業は借金があった方がよいのです。そのため、政府
の財政をあえて個人の借金にすり替えたのです。つまり、政府の
借金を本来比較すべきものではない家計と比較しているのです。
先生と高校生のやり取りをもう少し続けることにします。
─────────────────────────────
先生:「政府」を「企業」に置き換えて考えてみると分かりやす
 いかもしれないね。あくまでも、たとえるのは「個人」ではな
 く「企業」だ。企業というのは、大体自己資金だけで起業など
 できないので、銀行などからお金を借りる。そして起業した後
 も、ずっとお金を借り続けるのが普通なんだよ。そのお金で、
 新しい機械を入れたり、多くの人を雇ったり、自社ビルを建て
 たりして、商売を広げていくためだ。こうやって、いろんな企
 業が銀行からお金を借りて商売を広げることで、お金が多くや
 りとりされ、経済が活性化するんだよ。つまり、多くの企業が
 銀行からたくさん融資を受けて、活発に設備投資をしているわ
 けで、もしも一切借金をしなくなったら、ただただ経済が縮小
 していくことになるんだよ。    https://bit.ly/37q4pmr
─────────────────────────────
 そのやり取りの後、先生は、日本全体の一般家庭の家計と企業
の財務状況の数字を高校生に次のように示します。2018年3
月末時点の数字です。
─────────────────────────────
           家計部門    企業部門
      資産 1829兆円  1178兆円
      負債  318兆円  1732兆円
           資産超過    負債超過
                  https://bit.ly/37q4pmr
─────────────────────────────
 これを見ると、家計部門は借金が少なく、企業部門は借金が多
いですが、これは当たり前のことなのです。それからもうひとつ
考えるべきことがあります。
 政府の借金の中心は国債です。日本の場合、国債の引き受け手
の90%は日本国民です。したがって、国債は、政府から見ると
国民からの借金です。これがとんどん増えているということは、
銀行から積極的にお金を借りて事業を発展させている企業が伸び
ているように、政府も積極的に政策を進めていることをあらわし
ています。そうすれば、経済は発展・成長し、国が豊かになって
行くわけです。日本の場合、政府の借金の大きさが問題ではなく
経済が成長しないことの方が、はるかに大問題です。
 一方、国民から見ると、国債は「資産」になります。つまり、
政府の借金(国債)が大きければ大きいほど、国民がたくさんの
資産を持っていることになるのです。これは、「プラスのサイク
ル」です。しかし、現在、日本は逆のことをしています。国民か
らあまねくお金を収奪する消費税を増税してお金を集め、そのほ
とんどを政府の借金の返済に充てています。税金が高くなると、
国民の収入は減り、国債が減るということは、国民の持つ資産が
減ることを意味しています。
 消費増税をすると、「消費税は消費の罰金」ですから個人消費
が直撃され、GDPの成長にブレーキがかかり、景気が悪化しま
す。その結果、税収が減少し、政府はその穴埋めに赤字国債を発
行し、借金を増やします。同じように借金が増えるのですが、こ
れは「マイナスのサイクル」です。これがひどくなったのが、デ
フレです。日本の場合、それが20年以上続いています。
 現在のように、何回も消費増税をして、政府の借金を返済する
ことを続けていくと、経済は勢いを失い、国民は貧乏になるので
ますますマイナスのサイクルにはまってしまい、なかなか抜け出
せなくなります。これをプラスのサイクルに戻すには、相当の荒
療治が必要になります。どうしても政府の借金が気になるのであ
れば、それをやるしかないことになります。
           ──[消費税は廃止できるか/029]

≪画像および関連情報≫
 ●国の借金は返す必要があるか(十字路)
  ───────────────────────────
   1000兆円にも及ぶ国の借金(国債)は果たして返せる
  のかという問いに対し、私は強い確信を持って答えられる。
  絶対に返せないと。借金は借り換えると増えも減りもしない
  が、借り増すと増え、返済したときにようやく減少する。当
  然のことだ。手元にある1985年以降30年間ほどのデー
  タを見ると、我が国の国債残高は一貫して増え続けてきた。
  ほとんど増えなかったごく短い期間はあるものの、減ったこ
  とは一度もない。つまり実質的には我々はこの間、期限を迎
  えた借金をひたすら借り換え、さらに借り増しをする一方で
  返済したことは一度もないということだ。だから国債発行残
  高が増え続けてきた。
   残念だがこの図式は今後も変わらない。今年度の一般会計
  を見ると、税収等の歳入が63兆円ある一方、政策経費の歳
  出が74兆円だから、差し引き11兆円の赤字だ。そこに既
  存の国債の利払い費が9兆円加わって、合計20兆円の借り
  増しが発生する。借金を減らすには、収支を年間20兆円以
  上改善させて黒字にしないといけない。少子高齢化が今後さ
  らに進行する我が国で、それが可能とは到底思えない。
   しかし実は借金はあってもよい。増えてもよいのだ。大事
  なのは体力とのバランス。企業でいえば収益力との見合い、
  国でいえば債務残高を名目国内総生産(GDP)と比べた比
  率だ。この数値を着実に低下させていけるのであれば、借金
  は増え続けても問題ないと言える。
               https://s.nikkei.com/2uMpYR4
  ───────────────────────────

「悪代官」の財務省.jpg
「悪代官」の財務省
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2020年02月14日

●「政府の借金は返さなくてもいいか」(EJ第5187号)

 政府の借金──財務省やメディアは「国の借金」と称していま
すが、「政府の借金」というべきです。メディアの表記は、明ら
かに財務省が指導しています。「国の借金」というときは、民間
(企業・個人)が入るので、意味が違ってきます。それでも、財
務省はあえて「国の借金」と表現します。増税したいからです。
これに関して、次の基本的な疑問があります。
─────────────────────────────
      政府の借金は返済しなければならないか
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 民間(企業・個人)の借金は、もちろん返済する必要がありま
す。そんなことは常識です。財務省は、そういう民間の常識を巧
みに政府の借金に利用しようとしていますが、民間の借金と政府
の借金は明らかに違うものです。
 政府の借金に関する興味ある話があるのでご紹介します。以下
EJ風にまとめますが、オリジナルサイトは、巻末の≪画像およ
び関連情報≫に掲載しておきますので、EJを読んだ後に、興味
があれば、そちらの方も読んでください。
 100人の村人のいる村があります。この村にはときどき盗賊
団が攻め込んでくるので、監視カメラ付きの高い壁を作る必要性
に迫られていたのです。どこかの大国の大統領も同じようなこと
をいっていましたね。それはともかく、その費用には、1000
万円ほどかかるのですが、村にはそんなお金はありません。
 そこで村長は、村人からお金を借りることにしたのです。1人
10万円の拠出になります。この拠出金によって、監視カメラ付
きの高い壁ができて、村人の生活は以前よりも安全になったので
すが、村には1000万円の借金ができたことになります。
 問題はその借金をどのようにして村人に返すのかということで
す。税金として集める方法があります。村人全員が壁のお蔭で助
かっているので、「壁利用税」を徴収する方法があります。村人
全員から毎年1万円の壁利用税を徴収する方法です。村から1万
円の拠出金が返済され、10年で10万円が完済されるというわ
けです。その後も壁利用税を続けるとしたら、それは村に資金と
してストックされ、その後の壁や監視カメラの修復用に使えるな
ど、役に立つと思います。
 しかし、毎年1万円の壁利用税を払って、毎年その1万円が戻
されるというのは、村人の立場に立つと、プラスマイナスゼロに
なるので、借金が返ってこないのと同じことになります。この場
合は、村人全体で、壁の建設費用を負担したということになり、
これ自体は何の問題も生じないことになります。つまり、村の借
金は返済しなくても問題はないということです。
 この村には、裕福の程度に応じて、次の3段階があると仮定す
ることにします。お金持の人20人、普通の人30人、貧乏な人
50人です。壁の建設は急ぐので、お金持ちの20人に50万円
ずつ負担してもらい、1000万円の資金を作り、壁を建設した
とします。この場合、お金持ちの20人は村として必要な支出を
「仮の負担」をしたことになります。
 壁の建設費用は村人全員で負担するのですが、その資金はお金
持ち20人がいったん立て替えたことになります。つまり、「実
際の負担」の前に「仮の負担」をしたのです。実際の負担とは税
金というかたちで集めることになります。
─────────────────────────────
      お金持ち20人 ・・・・ 20万円
      普通の人30人 ・・・・ 10万円
      貧乏な人50人 ・・・・  6万円
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 以上のように、村人全員がお金を税金として村に収めて、その
集めたお金を仮に負担してくれた人(お金持ち)に返すのです。
これは、政府が国債を発行して資金を集め、必要なことに使って
国債を償還することに匹敵します。
 つまり、こういうことになります。政府にお金を貸すというこ
とは、政府が国民のために使うお金を仮に負担することであり、
政府に税金を納めるということは、そのお金を実際に負担すると
いうことになります。
 これが正しいとすると、政府の借金返済問題は、仮の負担を実
際の負担にどのように再分配するかの問題に過ぎないということ
になります。まして、日本の場合、国債のほとんどが国内で消化
されているので、つまり、国民が政府に貸している場合、政府の
借金問題は、国民との間での再分配をどうするかという話でしか
なくなるのです。
 もうひとつ大事なことがあります。壁を建設するのに支払った
1000万円がどこに行くかの問題です。もし、村の建築業者に
壁の建設を頼んだとすると、その1000万円は村に落ちること
になります。
 話を簡単にするため、村にはお金持ち20人の持つ1000万
円しかなかったと仮定します。村長はその1000万円を借りて
壁を建設し、壁を作る仕事をした人に総額1000万円支払った
とします。そうすると、村人の手元の資金は1000円と変わり
ませんが、1000万円を調達したお金持ち20人は、村に対し
て、貸付債権1000万円を保有することになります。貸付債権
とは、「村債」、国でいえば「国債」です。
 そうすると、村人の持つ金融資産としては、1000万円の現
金と、村債1000万円で、合計2000万円を持っていること
になります。つまり、政府がお金を借りて使うと、その分だけ国
民の財産が増えるということになるのです。
 わかったようでわからない話かもしれませんが、この話によっ
て、政府の借金は民間の借金とは根本的に性格の異なるものであ
ることは理解していただけると思います。財務省は、増税をしや
すくするため、政府の借金と民間の借金を一緒にして説明してい
るのです。その方が彼らにとって都合がよいからです。
           ──[消費税は廃止できるか/028]

≪画像および関連情報≫
 ●「経済学を疑え!」/政府の借金は返す必要がない
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  「今日は、政府が国民に借りた借金は返す必要が無いという
  話をしよう」
  「えっ、借金は返すのが当たり前でしょう」
  「まあ、話を聞いてよ。例によって、100人の村人がいる
  村の話だ」
  「聞いてあげるわ」
  「この村の周辺で賊が出るようになって、襲撃に備えるため
  村の周囲を壁で囲おうということになったんだ」
  「ほう」
  「壁を作る工事には1000万円かかる。そのための財源が
  無かったので、村民から借りることにする」
  「ふーん。村人は100人いるから、一人あたり10万円っ
  てこと?」
  「そうなるね。村人は一人10万円ずつ村長にお金を貸して
  計1000万円で壁が作られた」
  「良かった良かった。これで安心ね」
  「そうだね。さて、問題は借金の返済だ。村長は村人に10
  万円ずつ返さなきゃいけない」
  「どうやって返すの?」
  「税金で集めるしかないね。村長は、壁使用税という名目で
  一人あたり年間1万円の税金を集めることにした」
  「えー!村長が働いて稼いで返すんじゃないの?」
  「村長がそんなことをする義理はないよ。壁を作ったのは誰
  のためだった?」        https://bit.ly/2UIOdKn
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100人の村.jpg
100人の村
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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