2019年06月18日

●「一国二制度の深い闇の部分を探る」(EJ第5028号)

 予想したように、6月16日のメディアは、林鄭月娥香港行政
長官が「『逃亡犯条例』の審議を延期する」と発表したニュース
を一斉に伝えています。
─────────────────────────────
◎香港長官/強硬姿勢を転換/親中派・経済界の異論受け
 /逃亡犯条例改正「先送り」
 香港社会を揺るがした「逃亡犯条例」改正案について、香港政
府は15日、「先送り」を表明した。強気を貫いてきた林鄭月娥
行政長官だが、身内からもいさめる声が出て、方針転換に追い込
まれた。国際社会の注目が集まるなか、中国政府も危機感を強め
た。       ──2019年6月16日付、朝日新聞朝刊
─────────────────────────────
 一国二制度──本来この制度は、香港返還から50年間、20
47年まで守られることになっています。しかし、中国はそのよ
うなことを守るつもりは一切ないのです。そこで、香港基本法で
は、2007年以降に必要であれば改正できることになっている
ので、2014年に香港の行政長官を中国共産党が恣意的に選べ
る仕組みにしようとしたのです。これによって香港では「雨傘運
動」が起きましたが、中国政府の後押しによって、これを制し、
その仕組みの導入に成功しています。
 この仕組みによって行政長官に選出されたのが、現在の林鄭月
娥行政長官です。その後、香港の一国二制度を骨抜きにするスケ
ジュールは、中国政府から林鄭月娥行政長官に指示が出されてい
るはずです。この長官は中国政府の傀儡だからです。
 行政長官選挙の仕組み導入に続いて中国政府が行政長官に指示
していたのが、今回の「逃亡犯条例」です。実は正確にいうと、
「逃亡犯条例」改正案なのです。香港基本法23条には、次の記
述があります。
─────────────────────────────
【香港基本法第23条】
 香港特別行政区は、国家分裂や反逆、国家機密を盗み取るなど
の行為を禁じる法律を自ら作る。
─────────────────────────────
 香港政府は、この条文に基づいた条例を2003年にも導入を
試みたのですが、香港市民の猛反対に遭い、撤回を余儀なくされ
ています。日経ビジネスの池田信太朗氏によると、「2003年
当時といまとでは、中国の力、香港の国際的な地位ともに大きく
異なる。中国政府と、その意向を受けた香港政府が今回は強行す
るという可能性は小さくない」と述べています。
 習近平政権は、政権を批判する言説、とくに習近平氏に関わる
スキャンダルの報道をとくに嫌い、香港の書店を最初から警戒し
ていたのです。香港の書店では、中国政府を批判する書籍を多く
扱っていたからです。2015年には、そういう書店関係者が突
然失踪する事件が起きています。
 これについては、中国事情に詳しい福島香織氏による、次のレ
ポートがあるので、どのような事件であったのか、冒頭の書き出
し部分をご紹介することにします。
─────────────────────────────
 年明け(2016年)早々の私にとって一番衝撃的なニュース
は、銅鑼湾書店の関係者が次々と失踪したことだ。香港の出版界
にひしひしと圧力が迫っていることは承知していたが、まさか香
港内に住んでいる人間、しかも外国パスポートを持っている人間
が突然消えるほど、香港が物騒なことになっているとは。
 銅鑼湾書店関係者の失踪は5人。まず昨年10月17日に店筆
頭株主・桂民海の行方が分からなくなり、10月24日に同書店
の創始人で店長の林栄基が消え、10月26日に株主の呂波、書
店経理の張志平、そして最後に12月30日に店主の李波がいな
くなった。いったい何が起きたのか。     ──福島香織著
 『香港銅鑼湾書店「失踪事件」の暗澹』/香港の一国二制度を
  見殺しにするな』        https://bit.ly/2MOrTgd
─────────────────────────────
 これらの失踪者たちは、やがて全員戻ったものの、何があった
かについては口を閉ざしています。このように、言論の自由が守
られているはずの香港でも、一国二制度の壁を乗り越えて、法的
手続きを経ずに、中国当局は当事者を中国に連行し、取り調べを
やっているのです。
 当時、銅鑼湾書店の店主である桂民海氏には「双規」に対する
批判本を出版する計画があり、それが中国共産党の逆鱗に触れて
事実上の“拘束”をして取り調べられたものと思われるのです。
 「双規」とは何でしょうか。
 「双規」とは、中国共産党による強制捜査、逮捕、無期限拘束
自白強要、特定外の拷問、処罰のことで、司法とは別なのです。
福島氏は、次のような恐ろしい事実を指摘しています。
─────────────────────────────
 双規は、共産党中央規律委員会による党員の取り調べ制度、司
法制度外の党規に基づく制度で、逮捕状も拘留期限も決められて
おらず、拷問による死者まで出す前近代的制度と知識人の間で非
難されている。人権派弁護士・浦志強が、微博などのつぶやきを
もって「民族の仇恨を扇動した罪」というわけの分からない容疑
で逮捕、起訴され執行猶予付き判決が出たことは記憶に新しいが
浦志強が本当に冤罪逮捕された原因は、彼が双規の違憲性を世論
に問おうとしたことではないか、と見られている。
                  https://bit.ly/2XgGTay ─────────────────────────────
 この福島氏の指摘は実に恐ろしい。司法で取り調べをするので
はなく、共産党中央規律委員会による党員の取り調べ制度を使っ
ているのです。これなら、共産党当局としては何でもできます。
そういうことを、もっとやり易くさせるため、今回の「逃亡犯条
例」改正案を香港当局は成立させようとしたのです。
              ──[中国経済の真実/027]

≪画像および関連情報≫
 ●逃亡犯条例の改正延期/香港政府トップが記者会見
  ───────────────────────────
   中国本土への容疑者引渡しを可能にする「逃亡犯条例」の
  改正をめぐって、多数のけが人が出る大規模なデモが続いて
  いた香港。香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官
  6月15日に記者会見し、改正案の審議を一時中断すること
  を発表した。会見を詳報する。
   現地メディア「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」
  は、会見をテキスト記事としてタイムラインで速報した。現
  地時間の午後3時10分すぎに始まった会見は約1時間半に
  及んだ。林鄭長官は改正案について、「もとは香港への愛情
  と香港人への配慮から進めたものだった」と釈明。「私たち
  が至らなかったせいで、香港で大きな対立を引き起こしてし
  まった。私たちは多くの人を失望させ、悲しませた。私もま
  た、悲しみ、後悔しました。私たちは誠意をこめて、そして
  謙虚に批判を受け入れます」と語った。
   問題となっている改正案のきっかけは、2018年に台湾
  で発生した殺人事件。香港人の男が犯行後に香港へ逃げ帰っ
  てしまったため、台湾当局による拘束を免れたのが問題視さ
  れた。今回の改正案は、香港が犯罪容疑者にとって「拘束さ
  れない地域」として逃げ場にならないように提案された側面
  もあった。林鄭長官は、「私たちは法の抜け穴を塞ぐ必要が
  あります。したがって、現段階では法案を撤回することはで
  きない」と述べた。       https://bit.ly/2XR3sQf
  ───────────────────────────

「toubouhanjourei」shingienkiwohyoumei/hayashigyouseichoukan.jpg
「逃亡犯条例」審議延期を表明/林行政長官

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月17日

●「19年の香港デモは前回と異なる」(EJ第5027号)

 この原稿は、6月15日に書いていますが、本日以降どうなる
かわからない中国に関する重要な問題を取り上げます。それは、
香港における「逃亡犯条例」を巡る大規模なデモです。なぜ、こ
れが問題なのかについて分析します。
 香港は「一国二制度」が条件で、1997年に英国から中国に
返還されたのです。この制度は、香港では50年間守られること
になっているので、資本主義など中国本土とは異なる経済・政治
制度が維持されることが約束され、外交と国防をのぞく「高度な
自治」が認められています。
 香港の憲法にあたる香港基本法には、中国本土では制約される
言論・報道・出版の自由、集会やデモの自由、信仰の自由などが
明記され、それが2047年まで守られることになっています。
現在、香港に進出している日本をはじめとする世界各国の企業は
この一国二制度を前提として進出しています。
 この香港基本法は、「必要であれば、2007年以降に修正で
きる」と定められています。香港の民主派は、この年にある制度
変更を行うことを決めていたのです。それは、香港のトップであ
る行政長官を民意で選びたいということです。つまり、香港市民
一人ひとりが投票する「普通選挙」によって決めることです。
 このことはよく誤解があるのですが、実は政府の代表を民意で
選ぶ普通選挙は、英国統治時代からなかったのです。つまり、香
港は、英国統治時代から「法治主義」や「資本主義」はあっても
「民主主義」は最初からなかったのです。中国は、そういう香港
を英国から返還されたのであって、民主主義の香港を引き継いだ
わけではなかったのです。
 もっとも中国としては、50年間、当時の香港の制度を引き継
ぐつもりでなく、時間をかけて、少しずつ、骨抜きにして、なる
べく早く中国本土並みにし、スムーズに中国の一部に編入したい
と計算していたものと思われます。
 しかし、民主派は、制度変更が可能になる2007年に普通選
挙を要求してきたのです。そのとき、中国本部は香港行政長官に
指令を出して、「2007年に変更可能ではなく、2007年以
降に変更可能である」として、このさいは先延ばしすべきである
と時間稼ぎをしたのです。
 そして、さらに7年経った2014年、中国政府は次の新制度
を提案したのです。
─────────────────────────────
 1.一人一票の投票権を付与する
 2.行政長官候補は指名委員会の過半数の支持が必要である
 3.候補者は2〜3人に限定する
─────────────────────────────
 これは普通選挙とは程遠い内容です。香港の民主化団体の「学
民思想」などの団体は、指名委員会の多数は親中派で占められる
ため、中央政府の意に沿わない人物の立候補を事実上排除する方
針として、学生を動員して授業のボイコットを開始したのです。
これを契機として、「雨傘運動」は、このような経過で始まった
のです。なぜ、学生たちは雨傘を持っていたかというと、それは
催涙弾を防ぐのが目的であったといわれます。
 しかし、国際金融センター香港の中心部で、9月末に始まり、
79日間にわたって道路を占拠するという不法行為から、香港市
民の支持も失い、デモは失速してしまったのです。その結果、形
式だけの普通選挙すら行われず、1200人の指名委員による間
接選挙により、行政長官が選出されるようになったのです。
 しかし、雨傘運動の本当の原因は、何だったのかというと、日
経電子版開発長の池田信太朗氏は「それはすぐれて経済の闘争で
もあった」ことを指摘しています。
─────────────────────────────
 香港デモ(雨傘運動)とは何だったのか。もちろんそれは、民
主主義を手にしたいと願う香港市民の政治運動だった。あるいは
英国が、香港を返還した折に約束された「一国二制度」が失われ
つつあることに危機感を覚えた香港市民たちの抵抗だった。
 だが、「政治」の闘争であると同時に、すぐれて「経済」の闘
争でもあったと思う。デモ期間中、私は何度もデモ隊を訪れて話
を聞いた。なぜこの場にいるのか。何を勝ち取ろうとして闘争す
るのか。彼らはもちろん「民主主義」や「普通選挙」を答えに挙
げる。だが重ねて「なぜ民主主義が必要なのか」「なぜ普通選挙
を実現したいのか」と問うと、その答えはいつも経済問題に帰す
る。       ──池田信太朗氏 https://bit.ly/2Zs1Z34
─────────────────────────────
 この池田信太朗氏のレポートは、雨傘運動の本質をよく捉えて
おり、参考になるので、ご紹介しておきます。なお、タイトル中
の「香港デモ」は、雨傘運動のことです。
─────────────────────────────
                  池田信太朗著
    『不夜城の陥落、力を失いつつある香港デモ』
              https://bit.ly/2XeHmdf
─────────────────────────────
 そして、それから5年後の2019年、再び香港において大規
模なデモが起きたのです。池田信太朗氏は、雨傘運動と今回のデ
モの違いを次のように述べています。
─────────────────────────────
 「いまないものを求めた」のが雨傘革命だった。これに対して
今回のデモは「いまあるものが失われようとしていることを食い
止める」という闘争だ。          ──池田信太朗氏
─────────────────────────────
 今回の香港デモ「逃亡犯条例」は、もしこれが通ると、香港が
香港でなくなるとの危機感が香港市民には強いのです。それにこ
の条例は、香港市民だけに影響のある条例ではなく、香港に進出
している外国企業や香港への旅行者にも影響する可能性のある条
例といえます。       ──[中国経済の真実/026]

≪画像および関連情報≫
 ●香港デモで懸念される"天安門事件"の再来
  ───────────────────────────
   1989年6月4日の「天安門事件」から30年の節目を
  迎えた。事件後、中国は国民に対する監視の目を強化して言
  論の自由を奪い、共産党による一党独裁体制を貫いた。その
  体制の下で、経済発展を遂げ、世界第2位の経済大国になっ
  た。中国政府は国民に豊かさというアメをなめさせた。その
  結果、国民は監視というムチの痛みに鈍感になった。生活の
  水準の向上を喜び、いまの一党独裁体制を賛美する中国人も
  多い。日本や欧米は経済的に豊かになれば、中国は一党独裁
  体制を改めるとの見通しを立てていた。だが、中国は経済発
  展を遂げても政治改革には乗り出さず、一党独裁体制を堅持
  した。日米欧の見通しは間違っていたのだろうか。沙鴎一歩
  はその見通しが誤っていたのではなく、政治改革を経ていな
  い中国の経済発展がニセモノであると考える。
   中国の市場経済は閉ざされたまま解放されていない。中国
  政府は鉄道、エネルギー、通信、軍事という国の重要な基幹
  産業を握り、巨額の利益を上げる。地方政府も毛細血管のよ
  うに張り巡らされたネットワークで民間部門から富を吸い上
  げている。中国国民が味わっているのは、真の豊かさではな
  い。中国の経済発展には大きなほころびが生じ、中国経済は
  いつ何時、そのバブルがはじけてもおかしくない。
                  https://bit.ly/2RlFlH8
  ───────────────────────────

香港における「雨傘運動」.jpg
香港における「雨傘運動」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月14日

●「人民元安に誘導し関税を相殺する」(EJ第5026号)

 6月10日、トランプ米大統領は、米CNBCテレビのインタ
ピューで、G20大阪での習近平主席との会談はあると思うし、
話し合えば一定の合意に到達することは可能であるとしたものの
会談が実現しない場合について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 もし月内の米中首脳会談が実現しなければ、中国からの全輸入
品に関税を課す「第4弾」を直ちに実施する。これが行われると
中国には一大事だが、米国は他国から製品を買えるので、問題で
はない。   ──2019年6月11日付、日本経済新聞夕刊
─────────────────────────────
 トランプ大統領のこの発言は、6月10日時点で、首脳会談に
ついて中国から何のメッセージもないことを示していて、少しイ
ライラしており、会談開催を中国側に呼び掛け、催促したものと
思われます。しかし、本日、14日になっても、中国は首脳会談
について何も米側にいってきていないのです。C20大阪まで、
あと2週間しかないにもかかわらずです。
 習近平主席は、そもそもこの米中貿易摩擦について、どのよう
な戦略を考えていたのでしょうか。この習近平主席のハラのなか
について、石平氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 いま習主席が考えているのは戦略ではない。今回の貿易戦争を
何とか軟着陸させないと、アメリカの関税の引き上げを止めない
と、自分の目の前で中国経済が潰れる。潰れたら自分は終わり。
だから、いまの習主席は延命策しか考えていません。
 危機から逃れるために、できるだけアメリカの関税の引き上げ
実施時期を延ばす。あるいは終わらせる。そのためには、アメリ
カが突き付けてくる要求をとりあえず呑んでいく。だが、呑んで
いくとしても、すべて実行するつもりなど毛頭ない。これが中国
の一貫したやり方、常套手段です。
            ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき/
     日本市場は14億市場をいますぐ「損切り」せよ!』
─────────────────────────────
 習近平主席は、この考え方で、昨年12月1日の首脳会談を受
け入れ、「第3弾」の関税引き上げを5月10日まで5ヶ月間延
期させたのです。なぜ、会談が決裂したかというと、米国は、中
国が約束ごとを履行しない場合のさまざまな懲罰的措置を合意文
書に盛り込ませようとしたからです。
 現在、トランプ大統領は、「第3弾」の関税引き上げを実施し
た上で、「第4弾」の実施を振りかざして、6月末のG20大阪
での米中首脳会談の実施を迫っているのですが、今のところ中国
に動きはありません。
 現在、中国は米国からの輸入品の約70%に報復関税をかけて
おり、実際に中国が今やれることは、次の2つぐらいしかないと
いわれています。
─────────────────────────────
     1.希土類(レアアース)の輸出管理規制
     2.   為替相場を人民元安に誘導する
─────────────────────────────
 「1」についてはまだ行われていませんが、「2」については
既にはじまっています。中国が米国に輸出する場合、輸出品のド
ル建ての販売価格は関税分跳ね上がりますが、この場合、人民元
が安くなれば、それだけ販売価格を下げる余地が生まれ、関税引
き上げ効果が緩和されます。中国はこれを狙っているのです。
 2019年6月12日付の日本経済新聞は、次の見出しをつけ
て、関連記事を掲載しています。
─────────────────────────────
 ◎中国危うい「元安カード」/G20にらみ米と神経戦
                1ドル7元試す展開に
 【上海=張勇祥】中国が人民元安を対米カードに再び使い始め
た。中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁による元安容認発言を
を受けて、元の対ドル相場は1ドル=7元を試す展開となってい
る。米政権の制裁関税拡大をけん制する狙いがあるが、元安は資
本流出にもつながりかねない。6月末の20ヶ国・地域首脳会議
(G20大阪サミット)に向けて米中の神経戦が続きそうだ。
         ──2019年6月12日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 4月の終わりまでは「1ドル=6・7元」で推移していたので
す。このラインよりも人民元が上がると「元安」になります。そ
して、5月5日に、トランプ大統領が「制裁関税」を引き上げる
といった時点から「6・8元」という元安水準になり、5月19
日に、人民銀行潘副総裁が「人民元は合理的な水準で安定してい
る」と発言すると、元はさらに安くなり、「6・9元」の水準を
突破しています。そして、6月7日の人民銀行易総裁の「具体的
な為替の数字がより重要と思っていない」という元安容認発言が
飛び出したのです。
 こういう状況を分析してゴールドマン・サックスは、今後3ヶ
月で「1ドル=7・05元」までの元安進行を予想しており、こ
れを見る限り、中国は為替を操作することによって、米国との対
立長期化に備えていると思われます。
 この人民銀行易総裁とムニューシン米財務長官は、G20中央
銀行総裁会議のため訪れている福岡市で9日に会談を行い、「お
互いに関心のあるテーマについて率直に意見交換をした」とだけ
述べていますが、会談内容については不明です。
 理屈のうえでは、10%の関税引き上げは、10%の通貨安で
相殺できるのです。中国があからさまにこれをやると、米国は中
国を「為替操作国」に指定することは確実です。これは、きわめ
て危険なチキンゲームであり、これによって中国経済が破綻し、
金融危機が起きる可能性もありうるのです。
              ──[中国経済の真実/025]

≪画像および関連情報≫
 ●くすぶる「資本流出→人民元安」のリスク/唐鎌大輔氏
  ───────────────────────────
   あまり話題にはなっていないが、国際通貨基金(IMF)
  は、2019年4月に発表した春季世界経済見通しの中で、
  中国の経常収支が2022年には66億ドルの赤字になると
  予想している。金融危機発生から10年あまりで、一時は世
  界最大だった黒字が完全になくなってしまうという変化の大
  きさには驚きを覚える。
   同期間に一貫して高水準の黒字を維持し、世界最大の経常
  黒字国としての地位を確立したドイツとは対照的である。ア
  メリカのトランプ政権は通商政策上、中国を目の敵にしてい
  るが、これは貿易黒字(正確には対米黒字)の大きさを捉え
  たものである。しかし、貿易収支を含むより幅広な概念であ
  る中国の経常収支は黒字が激減しており、今や赤字化を展望
  するに至っているというのが現状なのである。
   中国の経常黒字がはっきりと減少し始めたのは2016年
  後半以降だ。背景には、貿易収支の黒字が頭打ちになる一方
  サービス収支の赤字が着実に増えてきたという構図がある。
   こうした流れの中、2018年は1〜3月期の経常収支が
  341億ドルの赤字となり、2001年4〜6月期以来の赤
  字を記録したことが話題となった。2011年以降、サービ
  ス収支赤字がじわじわ増えている一方、例年1〜3月期は春
  節(旧正月。中国の企業は一斉に長い休みに入る)の影響で
  貿易黒字が縮小するため、遂に、前者が後者を超える規模に
  至ったのである。        https://bit.ly/2WxerNj
  ───────────────────────────

中国人民銀行易綱総裁.jpg
中国人民銀行易綱総裁
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月13日

●「『李鴻章』になりたくない習近平」(EJ第5025号)

 6月9日のことです。中国共産党機関紙の「人民日報」の伝え
るところによると、中国政府は「国家技術安全管理リスト」とい
う仕組みを設けるということです。新制度の詳細は明らかにされ
ていませんが、世界で競争力を持つ中国国内の技術をリストアッ
プし、研究開発を後押しするほか、国外への輸出を管理、制限す
る目的があるとみられます。
 具体的な対象技術について、人民日報は、次のように述べてい
るので、ご紹介します。
─────────────────────────────
 人民日報は、中国が航空宇宙や高速鉄道、モバイル決裁、次世
代通信規格「5G」でイノベーションを起こしたと強調し、こう
した分野が規制対象と示唆した。特に5G分野では、中国は必須
となる特許出願数で3割強を占めているとされており、ハイテク
分野で中国の存在感が急速に高まっていることは確かだ。
 ハイテク分野では、すでに米国は中国通信機器最大手、為華技
術(ファーウェイ)の排除に動いている。中国側が輸出を制限す
るだけでは、有効な交渉カードとならないとの見方もある。
         ──2019年6月11日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 米国には既に「エンティティー・リスト(EL)」というもの
があります。安全保障上の懸念のある外国企業を記載し、輸出を
規制するものです。既にELには、多くの中国企業が記載されて
います。中国も中国企業に不当に損害を与えた外国企業を列挙す
る「中国版EL」を創設する考えですが、いずれも米国の後追い
であり、米国に大きなダメージを与えるものではないのです。
 「目には目を」ではないが、いくら技術輸出を制限しても、中
国の技術が世界を上回っているものは限られており、この分野で
の制裁合戦では米国の方に利があります。中国としては何らかの
かたちで、米国と話をつける必要がありますが、中国はなぜ話し
合いをしょうとしないのでしょうか。
 石平氏は、「習近平主席は現代の『李鴻章』になりたくない」
ので、トランプ大統領とのサシの会談を本音では、避けようとし
ているといいます。李鴻章について石平氏は、次のように説明し
ています。
─────────────────────────────
 李鴻章というのは、清王朝晩期の重臣で約20年間、清国の外
交をつかさどった人物だ。日清戦争で清国が日本に完敗したのち
李鴻章は、下関で日本側との交渉に当たり「下関条約」に署名し
た。この条約によって遼東半島と台湾が日本に割譲されたため、
当事者の李鴻章は、「喪権辱国」(国権を喪失させ国を辱めるこ
と)の張本人にされて、現在に至っても、罵声を浴び続ける存在
である。              https://bit.ly/2KFc9tf
─────────────────────────────
 本来「現代の李鴻章」という責めを受けるのは、日中交渉を任
された劉鶴氏の方です。何かと口が悪いということで評判の良く
ない北京大の孔教授にいたっては、劉鶴氏を「李鴻章以下」と罵
倒しています。
 こういう状況の下で、習主席がトランプ大統領と直接会談を行
うことは、大きなリスクを負うことになります。それは、現在の
中国が習近平独裁体制であるからです。現在の中国共産党政権内
では、習主席が、政治、軍事、外交、経済などのすべてにおいて
決定権をもっています。したがって、国として決断するすべての
ことにおける責任は習主席にあります。「喪権辱国」──国権を
喪失させ、国を辱めることの意味ですが、これについても責任も
すべて習主席が追うことになるのです。
 ケ小平は、もし独裁制をとれば、こうなることがわかっていて
集団指導体制を敷いたのです。それを習近平主席がすべて壊して
独裁体制を弾いたため、全責任が自分にかかってきてしまう状況
に陥っているのです。
 それでは、かつての毛沢東の独裁体制では、なぜ、そうならな
かったのでしょうか。毛沢東独裁体制と習近平独裁体制の違いに
ついて、石平氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 かつての毛沢東独裁時代と比べると、習主席の独裁にはもう一
つ大きな欠陥があります。毛沢東は絶対的なカリスマとして共産
党と国家の上に君臨し、個人独裁体制を築き上げたが、その一方
で毛沢東には周恩来という非凡な能力を持つ首相がいて、毛沢東
体制を内部から支えていました。毛沢東体制下の周恩来首相は、
毛沢東の権威に絶対的に服従しながら、首相として経済・外交な
どの実務を一手に引き受けていたのです。
 周知のように、1972年の田中角栄訪中の際、田中首相との
難しい交渉も喧嘩もすべて周恩来が担当、それらが、すべてまと
まった後に、毛沢東が出てきて角栄と会談、「大所高所」の諸に
興じたのです。その際、もし日中交渉が不首尾に終われば、当然
周恩来一人がその全責任を負うこととなったでしょう。
 周恩来のような非凡な才能を備えて誠心誠意に仕えてくれる偉
大なる忠臣がいるからこそ、毛沢東独裁は彼が死ぬまでの27年
も続いたわけです。
 残念ながら、いまの習政権には周恩来のような有能な忠臣はい
ません。共産党政治局と政府中枢には、習近平氏の幼なじみや地
方勤務時代の元部下からなる側近グループはいることはいるけれ
ど、ほぼ全員が無能なイエスマンであって、周恩来のような傑物
は一人もいない。    ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき/
     日本市場は14億市場をいますぐ「損切り」せよ!』
─────────────────────────────
 中国の皇帝は、自身のことを「孤家」または「寡人」と呼んだ
そうですが、現在の中国の“皇帝”である習近平主席は文字通り
そうなりつつあります。果して習近平主席はどう動くかが注目さ
れます。          ──[中国経済の真実/024]

≪画像および関連情報≫
 ●米中貿易協議、習主席の苦境/石平のチャイナ・ウォッチ
  ───────────────────────────
   北京大の孔教授が劉鶴氏のことを「李鴻章以下」と罵倒し
  たことは、要するに、米中貿易協議における中国側の譲歩を
  「喪権辱国」だと批判したことである。それは、孔教授だけ
  の意見ではなく、国内一部勢力の声を代弁しているのであろ
  う。このような状況下で、トランプ大統領との首脳会談で貿
  易協議に決着をつけることは、習主席にとって大変難しいこ
  とであろう。劉鶴氏が当事者として米国側との合意に達した
  場合、国内で罵声を浴びるのは劉氏の方だが、習主席自身が
  米国へ出向いてトランプ大統領と「城下の盟」を結んだ場合
  「李鴻章」同様の汚名を背負って批判されるのは習主席自身
  である。
   「民族の偉大なる復興」を政治看板とする習主席はまさに
  「看板倒れ」となって、指導者としての威信に大きな傷がつ
  く。国内の反対勢力はそれを理由に巻き返しを図ってくる可
  能性もある。だから、トランプ大統領との屈辱的な首脳会談
  へ行きたくないのは習主席の本音であろう。
   しかし彼自身が行かなければ、貿易戦争に収拾をつけるこ
  とは不可能となり、中国経済は今まで以上の深刻な打撃を受
  けることとなろう。それでは習主席の政権基盤が大きく揺ら
  いでしまう。習主席にとって今の状況は、まさに進むも地獄
  退くも地獄なのである。それでも習主席は多大なリスクを覚
  悟して米中首脳会談に応じる以外に道はないだろうが、米中
  貿易戦争が、それで終息する保証があるわけでもない。彼に
  とっていばらの道はさらに続くであろう。
                  https://bit.ly/2MDdMu4
  ───────────────────────────

会談するのかしないのか/米中首脳.jpg
会談するのかしないのか/米中首脳
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月12日

●「G20で米中首脳会談はできるか」(EJ第5024号)

 米国の「中国排除」はかなり本気です。米中通商協議でも、知
的財産権などの構造協議への確実な対応を中国に求めており、そ
の実効性が担保されない限り、中国とは合意しないと、ライトハ
イザー米通商代表部代表は、3月12日に、上院財政委員会で証
言していることから、その本気度が読み取れます。
 それは、中国側も十分理解しており、当初はそれに対応するた
め、「外商投資法」を自主的に成立させるなど、米国側に大幅に
譲歩する姿勢を見せていたのです。
 しかし、米国はそれだけでは満足しないのです。中国と合意し
た場合でも、中国がそれをきちんと履行しない場合、いつでも中
国に制裁関税がかけられるようにし、それについても合意文書に
明記することを求めたのです。つまり、ルールの実効性の担保を
厳しく中国に求めたわけです。
 中国はこれに反発したのです。これは、メンツを重んずる中国
にとって屈辱的であり、つねに米国の監視下で行動しなければな
らなくなるとして、閣僚級協議の合意を蹴ったのです。この状況
では、G20での米中首脳会談の開催は難しいと思われます。
 米国の本気度は、国防権限法に合わせるかたちで、次の2つの
法律を成立させていることでもわかります。
─────────────────────────────
   1.外国投資リスク審査現代化法/FIRRMA
   2.    米国輸出管理改革法/  ECRA
─────────────────────────────
 これらの法律についての詳しい説明は避けますが、「1」は、
外国人による投資審査を実施する対米外国投資委員会の権限と範
囲を拡大するものです。
 具体的には、「外国人」の定義を変更し、外国人の範囲を経営
に影響を与える取締役会への参加などまで拡大し、安全保障の定
義に、先端技術や不動産を加えています。これによって、中国企
業や中国人による先端技術や安全保障に関わる企業買収や不動産
投資は不可能になります。
 「2」は、事実上のココム(対共産圏輸出規制)に匹敵するも
のです。これによって、米国の武器輸出禁止国──ロシア、中国
ベネズエラ、イラクやテロ規制対象──などへ米国の「最先端お
よび基盤技術」を輸出することを禁じています。これに該当する
分野は14ありますが、日本企業をはじめとする他国が、これら
を今後中国に輸出するさいには、この法律によって、米国の許可
が必要になります。
 ところで、このような状況で、6月28日〜29日のG20大
阪において、米中首脳会談が行われるでしょうか。
 今のところ、その気配はいっさい感じられないのです。もし、
首脳会談が実施されるとしたら、現在、水面下で事務方が交渉を
重ねているはずですが、そういう情報はないのです。6月2日に
中国側は、中国国務院として、米中貿易協議における中国の立場
を示す白書を発表し、米国の言行不一致によって、協議は曲折し
ていることを非難しています。
 6月2日発表の白書では、「米国への全輸出品目に高率関税が
かけられたとしても経済に問題なし」という強気の発表が行われ
ていますが、本当にそんなことになったら、中国の経済は大変な
ことになります。そこで、米国の要求を受け入れるとしても、米
国の要求する「ルールの実効性の担保」だけは外させ、その代わ
り「すべての追加関税の撤廃」だけは、中国としては習近平国家
主席のメンツを守るために勝ち取る必要があります。しかし、こ
れは、非常に難しい問題です。
 これに関して、渡邊哲也氏と石平氏の対談では、次のやり取り
が行われています。
─────────────────────────────
渡邊:アメリカ側が「すべての追加関税撤廃」という中国側の条
 件を呑むのはちょっと考えられない。合意に達したとしでも追
 加関税を部分的に保留して中国側に圧力をかけ続けることは、
 かねてよりアメリカ側の戦略であるからです。
石平:だから中国が望むような結果になる唯一の可能性は、要す
 るにトランプ大統領が習主席とサシで会ったうえで、トップダ
 ウン的に決断する以外にはない。
渡邊:しかし習主席がいつまでもトランプ大統領との会談を躊躇
 うならば何も始まらないでしょう。たとえ米中首脳会談が行わ
 れたとしでも、トランプ大統領が、「全追加関税撤廃」という
 中国側の要求を退けで席を立ってしまう可能性がある。いや、
 そちらのほうが濃厚ですよ。
            ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき/
     日本市場は14億市場をいますぐ「損切り」せよ!』
─────────────────────────────
 トランプ大統領は、ツイッターで「習主席と会談したい」と会
談に意欲を示していますが、実現は困難であると思われます。中
国側も、中国人民銀行(中央銀行)の戴相竜元総裁は、5月31
日、6月末に大阪で開催されるG20において、米中首脳会談が
行われたとしても、進展が困難であるとして、次のように発言し
早くも煙幕を張っています。
─────────────────────────────
 いじめで「アメリカ・ファースト」だ。これらを調整するのは
困難だ。日本で6月に開かれる首脳会合で大きな進展を得るのは
難しいだろうと私は予想している。     ──戴相竜元総裁
                  https://bit.ly/2Z9UM7U ─────────────────────────────
 閣僚級の協議で決着がつかなかったら、トップ同士がサシで話
し合って解決する──これは常識です。トランプ大統領は「やろ
う」といっているのに、習主席の返事はありません。彼は、サシ
ではどういしても話し合えない事情があるからです。
              ──[中国経済の真実/023]

≪画像および関連情報≫
 ●対中関税めぐる決定は「G20後」/トランプ米大統領
  ───────────────────────────
  [シャノン(アイルランド)/北京/カーン(フランス)6
  日/ロイター]トランプ米大統領は6日、対中関税を「少な
  くとも」さらに3000億ドル分上乗せする可能性があるが
  中国もメキシコも米国との貿易交渉で合意を望んでいるとの
  認識を示し、対中関税措置については、28─29日に大阪
  で開催されるG20(20カ国・地域)首脳会議後に決定す
  ると述べた。
   トランプ氏はG20首脳会議期間中に中国の習近平国家主
  席との会談を予定。具体的な日程はまだ決まっていないが、
  実現すれば、2018年末にアルゼンチンのブエノスアイレ
  スで行われた米中首脳会談以来となる。
   トランプ大統領は、3000億ドルの中国製品に対する関
  税措置の発動を巡る決定は習主席との会談後になると表明。
  「決定はG20首脳会議後2週間以内に行う。習主席と会談
  するが、どうなるか見てみよう」と述べた。大統領は中国と
  の協議は続いていると述べたが、直接の交渉は5月10日以
  降行われていない。これに先立ちトランプ氏は、アイルラン
  ドのシャノン空港で大統領専用機に搭乗する前に記者団に対
  し、「中国との協議については多くの興味深いことが起きて
  いる。次に何が起きるか。少なくとも3000億ドルを上乗
  せする可能性がある。適切な時期に行う」と発言。
                  https://bit.ly/2WmPJPC
  ───────────────────────────

G20/大阪での米中首脳会談見送りか.jpg
G20/大阪での米中首脳会談見送りか
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月11日

●「米議会のパンダハガーは殆ど消滅」(EJ第5023号)

 現在のFBI長官は、クリストファ・レイ氏です。そのレイ長
官は、ちょうど1年前に次の発言をしていたのです。
─────────────────────────────
 我々は孔子学院を注視している。いくつかの事例は捜査段階
 にある。              ──レイFBI長官
─────────────────────────────
 レイ長官のところには、孔子学院に関する不穏な情報が入って
いたので、このような発言をしたのです。それから1年が経った
4月下旬、レイ長官は、1年前よりもっと具体的に、次のような
警告発言をしています。
─────────────────────────────
 中国のスパイ活動ほど深刻な脅威はない。彼らは情報機関や
 国営企業、民間企業を始め、大学院生や研究者ら様々な人々
 を使って情報を盗んでいる。我々は、孔子学院を懸念してい
 る。         ──クリストファ・レイFBI長官
            2019年6月8日付、朝日新聞朝刊
─────────────────────────────
 「パンダハガー」という言葉があります。「パンダを抱く人」
という意味です。「パンダ=中国」と考えると、中国の外交工作
の手中に嵌って親中に傾倒している国、外交官、国会議員、すな
わち、親中派のことを指す言葉です。
 孔子学院は、感受性の強い世界中の若者に、中国を否定せず、
中国にシンパシイを感ずる人になってもらいたい──そういう親
中派を世界中に作るのが孔子学院の狙いなのです。
 世界中の国に拡がるパンダハガー、とくに米国の現状について
渡邊哲也氏は次のように述べています
─────────────────────────────
 アメリカはトランプ大統領の対中政策に対して共和党で95%
民主党では3分の2が「まだ生ぬるい」と考えて、ファーウェイ
やZTEへの規制強化を求めているのが現状です。さらに昨年の
中間選挙後は親中国派というか、パンダハガーが壊滅的に減り、
全議員中で微々たるものになっています。
            ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき/
     日本市場は14億市場をいますぐ「損切り」せよ!』
─────────────────────────────
 トランプ大統領の支持率は、就任当時は30%台、しかし就任
直後の2月には46%に上昇しています。これはご祝儀相場とい
われています。案の定その後は大きく下がっています。
 その後は37%〜40%で推移していましたが、2019年に
入ると上昇をはじめ、米調査会社ギャラップが4月17日〜30
日に実施した調査で過去最高の46%になったのです。これには
ロシアとの共謀がシロだったことや、経済指標の改善などが原因
に上げられますが、中国に対する関税を使った強気の貿易交渉と
けっして無関係ではないのです。
 昨年11月の中間選挙において、キリスト教福音派のペンス副
大統領の活躍により、いわゆる「パンダハガー」の議員は、ほと
んど排除され、現状は微々たる状態になっています。ペンス副大
統領は、ガチガチの反中国派であり、それは、中間選挙前の10
月4日に行われた「ペンス演説」によっても明らかです。
 一見強硬にみえるトランプ大統領のやり方は、共和党、民主党
ともに生ぬるいと考えており、こと対中国に関しては、超党派な
のです。このように、中国にとっては、現在、誠に厳しい状況に
なっています。
 スパイ拠点といわれている孔子学院の排除に関して渡邊哲也氏
は、次のように述べています。米国の安全保障に基づき、関連す
る中国人の排除がはじまっています。
─────────────────────────────
 米国の留学生ビザはこれまで5年だったものが、1年の更新に
変わりました。特に米国の国防に関する技術や先端技術にかかわ
る部分に関しては、いっそうの中国排除が始まっています。米国
の国防技術を扱うすべての企業に対して、中国人の採用を制限す
るよう要請しています。また関係各国にも米国の「国防権限法」
に基づき、同様のことを要請し始めています。安全保障や軍事分
野から中国人がどんどん追い出されていることになります。これ
はもう完全に次のCOCOM前哨戦と言えるでしょう。
               ──渡邊哲也著/ビジネス社刊
        『GAFAvs中国/世界支配は「石油」から
              「ビッグデータ」に大転換した』
─────────────────────────────
 ここまでの米中貿易戦争によって、中国経済は今後どういう状
況になっていくでしょうか。
 物価高と株安、通貨安が起きています。通貨安については、中
国人民銀行(中央銀行)は、利下げを含めて大々的な金融緩和に
踏み切らざるを得ない状況にあり、しかも外貨準備は激減してい
るので、通貨の大量供給は必然的に人民元安へと導くことになり
ます。中国としては、資本規制、とくにドル送金やドルの持ち出
しが極度に規制されることになります。宮崎正弘氏も、次のよう
に述べ、中国発の金融恐慌が起こりかねない状況と懸念を示して
います。少なくとも市場はこのように判断しています。
─────────────────────────────
 中国人民銀行(中央銀行)は、ドルの裏付けのない人民元をじ
ゃかすかと印刷しているが、産経新聞の田村秀男氏の試算によれ
ば「外貨資産の64%しかドルの裏付けがない」という寒々しい
状態、暴落前夜の様相になってきた。つまり残りの36%は通貨
の垂れ流しをしていることになり、この意味するところは人民元
の大暴落である。       ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
 『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融機器が始まる』
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/022]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプはなぜ中国を貿易で追い込もうとするのか?
  ───────────────────────────
   日本の10連休が続いている間にアメリカの株価は上がり
  続けていました。どうもアメリカ経済は底堅いということで
  特に政府が3日に発表した前月4月の雇用統計は、驚異的な
  数字でした。農業部門を除く新規の雇用者数が26万人強の
  増加となり、予想を8万人近く上回ったのです。この結果、
  失業率は3・6%まで下がりました。
   リーマンショック後の株安に沈んだ2009年の秋には、
  10%の大台に乗っていたこともあることを思うと隔世の感
  があります。この3・6%というのは、1969年以来とい
  うのですから恐れ入ります。
   トランプ政権は、ここへ来て「弾劾訴追」を受けることは
  なかったものの、独立機関として設置された特別検察官のレ
  ポートが公表される中で苦境に立っていました。ロシアとの
  「共謀ほどではないが協調」をして、ヒラリーを陥れようと
  したこと、「司法妨害」として立件できるほどではないが、
  「FBIや司法省に圧力」を掛け続けたことを暴かれて、支
  持率が下がっていました。そんな中で、これだけ素晴らしい
  雇用を実現し、そうした実体経済の好調を受けて株価も好調
  というのはラッキーとしか言いようがありません。大統領は
  自分の政策の成果だと自画自賛していますが、本当に政策の
  成果なのかどうかはともかく、経済が結果オーライであれば
  2020年の大統領選での再選は視野に入ってきます。
                  https://bit.ly/2ZgV24Z
  ───────────────────────────

クリストファ・レイFBI長官.jpg

クリストファ・レイFBI長官
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月10日

●「孔子学院が次々と閉鎖されている」(EJ第5022号)

 2019年6月8日の朝日新聞は、第1面と第2面で、「孔子
学院」を次のような見出しをつけて取り上げています。
─────────────────────────────
 ◎第1面/米中争覇
  「孔子学院」米安保の脅威?/中国を警戒次々閉鎖
 ◎第2面/米中争覇
  FBI長官「スパイ活動懸念」
  孔子学院への圧力超党派に/米教授会「閉鎖は非合理的」
          ──2019年6月8日付、朝日新聞朝刊
─────────────────────────────
 「孔子学院」排除は、新COCOMと関係があります。孔子学
院とは何でしょうか。ウィキペディアによると、孔子学院は次の
ように説明されています。
─────────────────────────────
 孔子学院(こうしがくいん)とは、中華人民共和国が海外の大
学などの教育機関と提携し、中国語や中国文化の教育及び宣伝、
中国との友好関係醸成を目的に設立した公的機関である。教育部
が管轄する国家漢語国際推進領導小組弁公室が管轄し、北京市に
本部を設置し、国外の学院はその下部機構となる。孔子の名を冠
しているが、あくまでも中国語語学教育機関であって、儒学教育
機関ではない。 ──ウィキペディア https://bit.ly/2Itf31p ─────────────────────────────
 孔子学院といっても儒教を教えるわけではなく、中国語や中国
文化を教える教育機関です。中国が海外の大学などと提携を結び
2004年から国家プロジェクトとして、スタートさせたもので
す。孔子学院が大学にとって魅力的なのは、米国のケースですが
孔子学園開設時に学校に10万ドル〜20万ドルを提供し、教室
の建設や講師の費用は中国が負担するという点です。つまり、中
国丸がかえの教育機関であり、中国語の授業を増やしたいが、資
金難で対応できない大学にとって、まさに渡りに船のおいしい話
なのです。2018年12月末の時点で、147ヶ国・地域に計
548校が開設されています。なかでも米国は、最多の105校
もあり、日本にも15校あります。
 ちなみに、孔子学院と似たような組織は、中国以外にもありま
す。ゲーテ・インスティテュート、ブリティッシュ・カウンシル
なども、それぞれの政府の運営するものです。他に、「フランス
学院」というのもあるといわれています。しかし、中国の孔子学
院は、他国のものといささか異なるのです。
 これらの孔子学院は、中国教育省傘下の国家漢語国際推進領導
グループ弁室(漢弁)の傘下の機関として、位置づけられていま
す。つまり、海外のすべての孔子学院は、中国政府によって、完
全にコントロールされているのです。こういう状況なので、教え
るカリキュラムやテキストなどはすべて中国主導で決められてお
り、大学に対しても一切開示されていないのです。
 中国から派遣される講師は、漢弁との間で「中国の国益を害す
る行為に関与すれば契約を打ち切る」とする誓約書にサインさせ
られているので、台湾独立問題や天安門事件などは、絶対に取り
上げることはないのです。要するに、孔子学院は中国政府による
政治宣伝のプロパガンダ機関なのです。
 中国共産党政治局常務委員の劉雲山氏は、孔子学院について次
のようにいっています。
─────────────────────────────
 孔子学院は、中国の文化戦争の戦場であり、かならず中国が使
用している教材を使用し、中国的社会主義を世界に拡大する目的
がある。             ──劉雲山政治局常務委員
                  https://bit.ly/2Itf31p ─────────────────────────────
 米中貿易戦争が始まる前にも、各国で孔子学院の閉鎖は起こっ
ています。これについては、2014年7月4日発行の「宮崎正
弘の国際ニュース・早読み」で宮崎氏が、カナダのケースを取り
上げ、次のように述べています。
─────────────────────────────
 カナダのトロントにある「孔子学院」の前でPTAがプラカー
ドを掲げて、反対運動を展開している。カリキュラムの偏向を問
題視しているのだ。
 そもそも「孔子学院とは孔子に名を借りて中国共産党の宣伝を
している。教育目的を逸脱し、子供らの教育に向上に役に立たな
い」とするカナダ市民、とくに中国系住民の抗議が教育委員会に
集中していた。カナダへ移住した中国人は共産党をきらって国を
捨てた人々が多い。トロント教育委員会は、「孔子学院の9月再
開」を暫定的に中止させる動機を圧倒的多数で可決させた(14
年6月25日、EPOCH TIMES)。決議案は、付帯条件
として「もし再開させるのであれば、教材の公開を義務付ける」
とした。
 トロントの孔子学院は2011年に37名の教職員が中国に招
待され、五星ホテルと豪華レストランで連日もてなされてきた。
そのあげくにカナダに孔子学院が開設された経緯がある。まるで
中国政府の出資による文化戦争の先兵として、利用されていると
批判が渦巻いていたのだ。      https://bit.ly/1qsFuWp
─────────────────────────────
 孔子学院をスパイ機関として決めつける見方もありますが、そ
うではないと思います。それは諜報機関の仕事であって、孔子学
院の仕事ではないのです。むしろ、中国の「中華思想」を指導す
ることによって、その国のなかに「中国の親派」をつくり、将来
のスパイ要員として育てようとしているのではないかと考えられ
るのです。
 しかし、米中の貿易戦争が起きると、いわゆる「統一戦線」の
一環として孔子学院がとらえられ、各大学での孔子学院の閉鎖が
次々と起きる事態となっているのです。
              ──[中国経済の真実/021]

≪画像および関連情報≫
 ●中国語学習の孔子学院、米で閉鎖続く 対立で排除の動き
  ───────────────────────────
   中国政府が米国内の大学と提携して設置した中国語学習の
  教育機関「孔子学院」の閉鎖が、相次いでいる。2018年
  12月10日には、ミシガン大が来年の閉鎖を表明。今年に
  入り、閉鎖決定は6校目となった。米政界では「中国共産党
  の宣伝機関」「学問の自由が脅かされる」などと、批判が強
  まっており、中国のソフトパワーを排除する動きが広がって
  いる。ミシガン大の担当者は朝日新聞の取材に対し、同大学
  は2019年に期限を迎える孔子学院との契約を更新しない
  ことを明らかにした。すでに中国側には大学の方針を伝えた
  という。
   全米学者協会(NAS)によると、米国内の孔子学院の設
  置は05年3月にメリーランド大を皮切りに始まり、12月
  現在、100の総合・単科大学に設置されている。米メディ
  アによると、孔子学院が米国の大学で増え始めたのは景気後
  退の時期と重なる。中国政府が資金提供をするため、大学側
  にとっては自己負担を抑えて中国語授業を提供できるとして
  重宝されてきた経緯があるという。
   しかし、14年になって風向きが変わり始める。米国大学
  教授協会(AAUP)は同年6月、孔子学院は、中国政府の
  政治的主張と強く結びついているとして問題視し、「孔子学
  院は中国政府の一機関であり、『学問の自由』を無視してい
  る」と批判。孔子学院をめぐって大学側と中国側が交わす契
  約の中で、中国側が「学問の自由」を認め、契約の透明性の
  向上に応じなければ孔子学院の契約を打ち切るよう求めた。
                  https://bit.ly/31gvWoH
  ───────────────────────────

孔子学院の開設.jpg
孔子学院の開設

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月07日

●「米議会は中国に怒りを溜めている」(EJ第5021号)

 ロシアと中国──米国は、これら2つの大国と事実上の「軍事
対立」を行っています。もちろん直接戦火を交えたわけではあり
ませんが、軍事的に対立をしていることは確かです。
 ロシアとは、2014年のソチのオリンピック直後に行われた
クリミア紛争において対立を深め、中国とは、中国が領有権を主
張する南シナ海で、2012年から航行の自由作戦を頻繁に行い
中国と対立しています。これらは、いずれも「軍事対立」であり
安全保障を全てのことに優先させる米国は、今後「冷戦」という
名の「平和」を求めて行くことになります。こうなった以上、米
国が新ココム的措置をとることは必然であるといえます。
 この新ココム的措置について、既出の宮崎正弘氏は次のように
述べています。
─────────────────────────────
 米国の新ココム的な措置は、米議会が、2018年に可決した
「2019年度国防権限法/NDAA2019」が基本にある。
規制されるのはAI(人工知能)、バイオ、測位テクノロジー、
マイクロプロセッサー、次世代コンピュータ、データ分析技術、
ロボット、先端的材料など。その多くは日本企業に関連が深く、
ましてIC(集積回路)などは米国の基本特許であるケースやク
ロス・ライセンス契約による技術が目立つため、実際には米国が
国防権限法の運用を強めれば強めるだけ、日本企業の対中輸出も
自動的に縮小する。韓国、台湾も同様な影響を受ける。
               ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
 『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融機器が始まる』
─────────────────────────────
 ホワイトハウスのなかには次の組織が誕生しています。共和、
民主を問わず、超党派の議員が要請して誕生したのです。
─────────────────────────────
           枢要技術安全室
─────────────────────────────
 「枢要技術安全室」とは何でしょうか。
 これは、共和、民主を問わず、超党派の議員──米上院情報特
別委員会のウォーナー副委員長(民主党)と同委に所属するルビ
オ上院議員(共和党)などが中心になって提出した法案です。別
にトランプ大統領が指示したわけではないのです。枢要技術安全
室は、中国などによる先端技術のスパイ行為や米国から中国への
技術移転など、米国の安全保障を脅かす行為に対抗するための関
係省庁の取り組みを統括する組織です。
 日本のメディアでは、一般的にトランプ大統領を、やることが
ハタメチャで、何をするかわからない予測不能な大統領と捉えて
います。中国に対する一連の厳しい姿勢も、そういう性格から出
てきているものと中国も考えています。したがって、次の大統領
選挙で民主党に政権交代したら、中国に対する姿勢も大きく変化
するだろうと甘く考えています。米国との貿易摩擦について中国
が、トランプの次の大統領を念頭に、持久戦に持ち込む戦略をと
ろうとしているのは、そのためです。
 しかし、これは間違っています。こと中国に関しては、トラン
プ大統領よりも議会の方がはるかに厳しいのです。その例として
トランプ政権が中国の通信機器メーカーであるZTEの制裁を解
除したことへの議会の強い反発があります。ZTEをめぐるいき
さつについて既出の山田敏弘氏は次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 米政府は18年4月、対イラン・対北朝鮮の制裁に関連する合
意にZTEが違反したとして、米国企業にZTEとの取引禁止措
置をとった。これによって、半導体など基幹部品を調達できなく
なったZTEは、スマホなどの生産ができなくなってしまった。
追い詰められたZTEは、習近平国家主席に泣きつき、トランプ
への口利きを要請。結局、ZTEはトランプに屈して、10億ド
ルの罰金を支払った上で、今後10年間、米国の内部監視チーム
を入れることにも合意した。     https://bit.ly/2Wtz4Pp
─────────────────────────────
 トランプ大統領は、ZTEとビジネスをしたのです。しかし、
議会は「それは許さない」と怒っています。トランプ大統領は、
ファーウェイに関しても、ZTEのスタイルでビジネス的な解決
を考えているようですが、米議会ではそれに対し、強く警戒して
いるといわれます。これに関連して、渡邊哲也氏は、小森義久産
経新聞ワシントン駐在客員特派員のレポートを取り上げ、次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 小森義久氏によると、ワシントンではこのところ中国に関して
「統一戦線」という用語が頻繁に語られているといいます。統一
戦線とは、「統一戦線工作部」という中国共産党内の内部組織を
指しますが、これは共産党が他国を侵略するために、その国のあ
らゆる組織に入り込み党の意図する方針へ誘導することが目的で
す。つまり、米国内における各界から中国による工作が行なわれ
ていることを指摘する声が高まっているわけです。たとえば、半
官半民のシンクタンク「ウィルソン・センター」によると、「米
国の主要大学は長年、中国政府工作員によって中国に関する教育
や研究の自由を侵害され、学問の独立への深刻な脅威を受けてき
た」といいます。(中略)もはや中国の脅威が抜本的に取り除か
れるまでは、この路線は継続されると中長期的に見たほうがいい
でしょう。少なくとも、トランプ大統領だけの問題ではないこと
が明らかにされたのです。   ──渡邊哲也著/ビジネス社刊
        『GAFAvs中国/世界支配は「石油」から
              「ビッグデータ」に大転換した』
─────────────────────────────
 小森氏がこのレポートで訴えているのは、米国の主要大学にお
いて、中国政府工作員による中国に関する教育や研究の自由が侵
害されていることへの危機感です。それは、極めて深刻な事態に
なっているのです。     ──[中国経済の真実/020]

≪画像および関連情報≫
 ●海外に魔の手を伸ばす中国の「統一戦線工作」
  ───────────────────────────
   「統一戦線を組もう」とは、仲間内の日常会話でも使われ
  る表現である。しかし、国際政治の場において、外交戦、情
  報・世論戦、謀略戦、懐柔策などを複雑に絡めて展開される
  「統一戦線工作」は、奇々怪々として、国家に深刻な問題を
  投げかける。というのも中国が習近平政権になって、海外に
  おける「統一戦線工作」を一段と強化しているからである。
   先日、中国の「『統一戦線工作』が浮き彫りに」という米
  国からの記事(「古森義久のあめりかノート」、産経新聞、
  平成30年9月23日付)が掲載された。
   詳細は、この後に譲るとして、米国では、統一戦線方式と
  呼ばれる中国の対米工作に関する調査報告書が発表されたこ
  とをきっかけに、習近平政権が「統一戦線工作」によって米
  国の対中態度を変えようとしていることが明らかになった。
  そして、米国全体の対中姿勢が激変し、官と民、保守とリベ
  ラルを問わず、「中国との対決」が、米国のコンセンサスに
  なってきたというものである。「統一戦線工作」とは、本来
  革命政党である共産党が主敵を倒すために、第3の勢力に意
  図や正体を隠しながら接近・浸透し、丸め込んで巧みに操り
  その目的を達成しようとする工作である。
                  https://bit.ly/2HZCWPm
  ───────────────────────────


小森義久氏.jpg
小森義久氏


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月06日

●「ファーウェイ排除と新COCOM」(EJ第5020号)

 「ファーウェイがスパイ工作をしているという証拠を示せ」と
いう問いに対して、米国は一切応じていません。先の「プライム
ニュース」で、朱建栄東洋学園大学教授は、米国がその問いに応
えていないという事実をもって、「ファーウェイはスパイではな
い」と主張していましたが、これはおかしな論理です。
 米国にいわせれば、ファーウェイが怪しいという事例は、過去
にいくつもあるからです。国際ジャーナリスト、山田敏弘氏のレ
ポートによると、2017年には、エチオピアに拠点を持つアフ
リカ連合(AU)の本部コンピュータシステムから、過去5年間
にわたって、毎晩、真夜中の0時から午前2時の間に、機密情報
が上海に送信されていることが判明しています。このシステムは
中国政府がファーウェイ製の機器やケーブルなどを使って、設置
したものといわれています。
 また、2014年には、オーストラリアの大手企業が、会社の
ネットワークから、ファーウェイ製品を介して不正にデータが中
国に送られていることを発見したといわれています。それ以降、
オーストラリア政府は、政府関係機関や大手企業などで、ファー
ウェイ機器を使わないよう通達を出しています。同じような事例
は、オランダでも、イタリアでも見られるのです。
 それでは、米国はなぜ証拠を示さないのかについて、国際ジャ
ーナリストの山田敏弘氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 そもそも必要とあれば、国民の代表である議会議員らが連邦議
会の委員会できちんとした捜査を行うことになる。現状、米国内
では、その必要性すら議論されていない。過去にファーウェイが
米国のメーカーなどから機密情報を盗んできた証拠もあるし、そ
れはファーウェイ側も否定しないはずだ。そんな背景からも、米
国側に言わせれば、今のところスパイ工作や中国政府とのつなが
りを証明するまでもない。
 さらに付け加えれば、ある元情報関係者は、こんな「可能性」
を筆者に話していた。「もし米国が新たにファーウェイによるス
パイ工作などのハードエビデンス(動かぬ証拠)を持っていたと
しても、それが米国側から中国に対するサイバー攻撃やハッキン
グなどで得たものならば、公表はできるはずがないですね。それ
自体が、機密作戦だからです」    https://bit.ly/2wBbWPp
─────────────────────────────
 米国は何といってもIT大国です。中国のサイバー攻撃を鋭く
批判しますが、米国もやっているのです。情報が盗まれたとなれ
ば、あらゆる方法を使って、それを確かめるために、サイバー技
術やハッキングを駆使することもあるはずです。仮にサイバー技
術によって、中国の不正を発見したとしても、それを証拠として
示すことはあり得ないのです。中国側もそれがわかっているので
あえて「証拠を出せ」といっている可能性があります。そうなる
と、裁判の結果もはっきりとしないものになります。
 既出の山田敏弘氏は、ファーウェイは相手に「証拠を示せ」と
いうのではなく、自身がさまざまな情報を開示して、同社の製品
には何の問題もないということを示すべきではないかといってい
ます。そして、それをきちんとやったケースとして、サムスンの
「ギャラクシーノート7」発火事件の後処理のケースを上げて、
次のように述べています。
─────────────────────────────
 2016年に韓国サムスン電子製スマホである「ギャラクシー
ノート7」が火を噴いた事件を覚えているだろうか。当時サムス
ンは、その大打撃から挽回するために、客観的に調査を行う外部
の専門家を雇い、徹底した内部調査を開始。その結果を広く公表
することで、自社製品の安全性を訴えた。さらに、欧米などのさ
まざまなメディアをバッテリー工場に招き、取材もさせた。そう
することで、安全性と再発防止に向けた意思を対外的にアピール
した。ファーウェイも本部で開催する記者会見にメディアを呼ぶ
だけでなく、きちんと情報を開示するなどして「後ろめたいこと
はない」ということをアピールすべきではないだろうか。
                  https://bit.ly/2Z47cy7
─────────────────────────────
 このようなトランプ米政権によるファーウェイ排除の政策は、
かつてのソ連に対するココム(COCOM)の復活ではないかと
いう見方もあります。米ソ冷戦時代、ソ連が米国に追いすがらん
とするのを技術面で蹴落とすため、米国は共産圏諸国への先端技
術の輸出を規制しています。
 COCOMとは「対共産圏輸出統制委員会」のことで、100
品目以上の軍事技術関連物質で、特定の性能を超えるもののソ連
を中心とする共産圏への輸出を禁止したのです。これは先進国間
の紳士協定で、各国は制限品目をその性能とともに、自国の法律
に明記し、これを越えるものを企業が輸出する場合には、各国政
府の許可取得を義務付けたのです。
 1982年のことです。東芝機械は、制限を越える性能の工作
機械をソ連に輸出したことにより、東芝機械は、全米から袋叩き
にあったのです。なぜなら、東芝機械の工作機械の輸出によって
ソ連の潜水艦のスクリュー研磨精度が顕著に向上し、雑音が生じ
なくなったことで潜水艦の探索が難しくなったからです。
 このココムという仕組みは、結果として、ソ連経済の足を大き
く引っ張り、ソ連を崩壊に導いたのです。実は、ココムは、「チ
ンコム(CHINCOM)」というかたちで中国にも適用されて
いたのですが、米国や日本はソ連ほど厳しく適用していなかった
のです。なぜなら、当時の中国は、スポーツ・シューズを作るの
がせいいっぱいの技術レベルであり、安全保障的な脅威をぜんぜ
ん感じていなかったからです。この西側先進国の大いなる油断が
現在の化け物のような中国をつくってしまったのです。今の中国
を作ったのは、世界第一の経済大国の米国と当時2位の経済大国
の日本であるといっても過言ではないのです。
              ──[中国経済の真実/019]

≪画像および関連情報≫
 ●「徹底してエビデンスを出して排除すべき!」
  ───────────────────────────
   報道プライムサンデーのご意見番、落合陽一氏(ピクシー
  ダストテクノロジーCEO)がこう表現するのは、中国の通
  信機器大手、ファーウェイ(華為技術)の孟晩舟副会長逮捕
  を巡る問題だ。
   ファーウェイは現在、スマホの販売台数シェアでアップル
  社を抜き世界第2位のグローバル企業。1987年、中国人
  民解放軍出身の任正非氏が創業した。今回逮捕された容疑者
  は、任氏の娘で次期CEOの有力候補とみられる人物だ。落
  合氏は次のように語る。
   「これは国際的な貿易の対立なのか、経済的な対立なのか
  もしくは安全保障上のものなのか、三つ巴の関係になってい
  て、どうしようもない」
   今回の事件の背景に、いったい何があるのか?2018年
  12月16日放送の報道プライムサンデーでは、ファーウェ
  イの成長の軌跡から、問題の真相と今後に迫った。
   佐藤雅俊氏が入手した情報によれば、日本の、ある法人向
  けのファーウェイ製スマホを分析したところ、スパイウェア
  が発見されたという。これはユーザーが知らない間に、遠隔
  操作でネットの閲覧履歴情報などを盗んだり、マイクのスイ
  ッチを入れてユーザーの会話を盗み聞きしたりすることがで
  きるソフトで、スパイの様な動きをする“悪質”なものであ
  るという。佐藤氏は「ファーウェイが(情報を)取っている
  のではなく、中国政府が取っていると思われる。防衛関係の
  技術や日本の最先端の技術を搾取して中国の繁栄にいかそう
  と」と続ける。         https://bit.ly/2HUH7M0
  ───────────────────────────

山田敏弘氏/国際ジャーナリスト.jpg
山田敏弘氏/国際ジャーナリスト
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月05日

●「孟晩舟氏はスパイの元締めである」(EJ第5019号)

 6月3日の「BSフジ/プライムニュース」では、後編で米中
問題が取り上げられました。そのテーマと出席者、要約ビデオを
ご紹介します。
―────────────────────────────
  「中期化か米中新冷戦」/6月3日/プライムニュース」
  出演者:小森義久/ 産経新聞ワシントン駐在客員特派員
      安井明彦/   みずほ総合研究所欧米調査部長
      朱 建栄/         東洋学園大学教授
      冨坂 聡/    拓殖大学海外事情研究所教授
                要約ビデオ:22分30秒
                 https://bit.ly/2WCAztT
─────────────────────────────
 この出演メンバーを見ると、小森義久氏は米国の視点から中国
問題を論ずる第一人者であり、、安井明彦氏は米国、中国のどち
ら寄りでもない中間派です。これに対して、朱建栄氏は中国人の
評論家であり、当然のことながら中国の立場の代弁者です。かな
りあくが強く、強引な発言をする人物です。
 冨坂聡氏は中国問題の専門家であり、中国に関する多くの著作
があり、私は何冊も富坂氏の本を読んでいます。しかし、中国の
評論家はほとんどそうですが、中国に対する発言のトーンは抑え
気味です。あまり、中国にとってきつい発言をすると、おそらく
情報の入手に影響が出るものと考えられます。
 ところで、要約ビデオではカットされていますが、ファーウェ
イの問題を巡って、小森氏と冨坂氏が激しく対立したシーンがあ
ります。それは、小森氏の「冨坂さんの情報は古い」という発言
に対して、冨坂氏が激しく反論したのです。
 小森氏によると、ファーウェイによる情報窃盗やスパイ行為な
どのトラブルは、目に余るものであり、米国議会では10年以上
にわたって問題視され、議論されてきた問題なのです。したがっ
て、米国はこの問題に関しては絶対に譲れないし、極端なことを
いうと、米中の安全保障をめぐる議論は、中国共産党が倒れるま
でつづくといっても過言ではないといいます。ちなみにこの問題
について与野党(共和党/民主党)の意見は一致しており、米国
の総意であることを小森氏は強調しています。
 朱建栄氏は、ファーウェイに関する複数の裁判がいずれも有罪
に認定されていないと主張し、5月30日のEJ第5015号で
も取り上げた米CNBC記者によるポンペオ国務長官への「証拠
を示せ」との質問にポンペオ長官が答えられない事実を指摘して
います。そして、中国に5G技術で先を越されて米国は焦ってお
り、同盟国にファーウェイ排除を呼びかけているに過ぎないと発
言しています。
 この朱建栄氏の発言には問題があります。国際法を順守し、同
じルールでの競争で、5G技術において中国が米国を上回ったの
であれば、米国はその技術を中国から積極的に受け入れ、活用す
るはずです。
 そうではないのです。ペンス副大統領の演説でも述べられてい
るように、南シナ海における人工島の建設のように、国際的なル
ールを守らず、自国の論理だけでものごとを強引に押し進め、あ
まつさえサイバー技術を駆使して、情報を窃取しようとする──
これでは、たとえ5Gのパーツにそういう細工がしていなかった
としても、中国政府にきわめて近い企業であるファーウェイの製
品を使うのを躊躇う国が多く出てくるはずです。要するに信用で
きないのです。
 カナダで逮捕された孟晩舟副会長についても、多くの謎があり
ます。新聞報道にもあったように、孟晩舟氏には離婚歴があり、
7つのパスポートを所有していたとされています。しかも、彼女
には4人の子供がいるのです。
 中国は一人っ子政策を執っているのに、なぜ4人の子供を持つ
ことができたのでしょうか。しかも、それらの子供たちは、世界
各国に分散して住んでいます。そのことひとつとっても、中国の
トップクラスでないと不可能なことです。これだけでも、ファー
ウェイという企業が普通の民営企業でなく、中国政府に近い特権
階級であることがわかります。
 7つのパスポートは、中国、香港、カナダとあと4つは、中国
のパスポートで別名だそうです。これは、国家安全部との関連で
しか発行されないので、これだけで孟晩舟氏がスパイの元締めで
ある可能性が濃くなります。これは、ファーウェイに関する重要
事実といえます。
 中国の専門家を自称するなら、こういう事実こそ明かして欲し
いものです。この事実を指摘したのは、中国ウオッチャーとして
知られる宮崎正弘氏です。宮崎正弘は、「ファーウェイという企
業は、謎だらけである」として、次のように述べています。
─────────────────────────────
 バンクーバーに孟晩舟は3軒の豪邸を持ち、不動産業界で「大
豪邸」のカテゴリーに分類されるほどの物件ばかり。広い庭付き
数台のガレージ、3階建ての英国風。ただし、夫名義で登記され
ている。孟女史はカナダ永住権を持ち、保険証を保持し、カナダ
で税金も納めていたとされる。また4人の子供たちは香港、探せ
ん、バンクーバー、マサチューセッツ州にばらばらに住んでいて
前夫との間にできた長男だけがバンクーバーにいるようだが、孟
晩舟とは別の住まいである。
 さて、孟晩舟の父親でもあり、ファーウェイの創業者の任正非
(74歳)、実は2日遅れて、バンクーバー経由でアルゼンチン
に向かう予定だった。娘の拘束を開いて任正非は海外出張を取り
やめた。つまり米国の狙いは娘ではなくファーウェイ最高経営責
任者(CEO)の任正非その人だったのである。──宮崎正弘著
 『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融機器が始まる』
                       ビジネス社刊
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/018]

≪画像および関連情報≫
 ●8つのパスポートを持つ孟晩舟を「スパイじゃない」と中国
  ───────────────────────────
   米国の要請を受けてカナダ当局に拘束された中国通信機器
  大手・ファーウェイの孟晩舟(モウ・バンシュウ)最高財務責
  任者(CFO)は、中国や香港のパスポートを計8通以上所持
  していたとされ、中国当局による「特別扱い」に、注目が集
  まっている。
   カナダ政府の訴追資料によると、孟CFOは過去11年間
  に、中国の旅券を4通、香港の旅券を3通、計7通発給され
  ていた。さらに、香港紙『明報』は、孟CFOが7通とは別
  に中国の「公務普通旅券」を所持していたと報道している。
   計8通のうち、香港旅券の2通は異なる名前とされる。孟
  CFOが海外での信用が低い中国のパスポートを使うことで
  その活動を捕捉されることを懸念し、中国政府の指示で複数
  の旅券を使い分けていた可能性がある。つまり孟CFOは、
  中国の諜報員(スパイ)であることを複数のパスポート所持で
  証明してしまっているわけだ。
   「中国外務省の陸慷(リク・コウ)報道局長は、12月10
  日の定例記者会見で、『孟氏が中国国民であることは明らか
  だ。(旅券は)この事件の核心でも根本の問題でもない』とし
  て、旅券の発給記録など事実関係の確認には応じませんでし
  た。要は旅券の複数保持を否定していないわけで、スパイと
  いう問題を不当逮捕=人権問題に置き替えようとしているわ
  けです」(国際ジャーナリスト)  https://bit.ly/2EQjVNk
  ───────────────────────────

6月3日/BSフジ「プライムニュース」.jpg
6月3日/BSフジ「プライムニュース」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月04日

●「中国国務院/長文白書で米国牽制」(EJ第5018号)

 6月2日のことです。中国国務院は、米国との貿易摩擦問題に
おける中国の立場を詳細に記述した白書を発表しています。
─────────────────────────────
【北京=西見由章】中国国務院(政府)新聞弁公室は2日、米中
貿易摩擦をめぐる中国の立場を詳述した白書を発表し、中国の核
心的利益に関わる「重大な原則的問題」については決して譲歩し
ない立場を改めて強調した。また貿易協議において米側が「中国
の主権に関わる強制的な要求を合意に盛り込むよう固執し、双方
の溝が埋まらなくなった」と非難した。
 白書は貿易協議に曲折を生じさせている原因を「米国の言行不
一致」と主張。中国側が既に約束した合意から後退したとのトラ
ンプ米政権の批判については「米側も要求を何度も変更した」と
反論した。さらに「対話のドアは開かれているが、戦いは徹底的
に受けて立つ」と言及。中国の内需は巨大で、「経済の見通しは
非常に楽観できる」とし、持久戦にも自信をみせた。
 中国当局は米物流大手フェデックスが中国の通信機器大手、華
為技術(ファーウェイ)の書類を無断で米国に転送したとされる
問題をめぐり、フェデックスの調査・立件を決定。また中国企業
に差別的措置をとった外国企業を「信頼できない組織」としてブ
ラックリスト化する方針も公表し、米企業を狙い撃ちにする姿勢
を強めている。           https://bit.ly/2KksW4t
─────────────────────────────
 この白書は、今後の米中関係について、きわめて重要なことを
訴えています。こういう白書が休日に発表されることはきわめて
珍しく、それだけ重要さを意味しています。中国のいわんとして
いることをまとめると、次の4つのポイントになります。
─────────────────────────────
 1.中国の体制変換に関わる重要な原則的問題については中
   国は絶対に譲らない。
 2.交渉決裂の原因は、要求を何度も変更し、エスカレート
   させた米国側にある。
 3.中国としては対話の窓口をつねに開けているが、戦うと
   いうなら受けて立つ。
 4.持久戦になっても、中国の内需は巨大で、経済の見通し
   は非常に楽観できる。
─────────────────────────────
 これによって大阪でのG20のさいの米中首脳会談の実現性は
きわめて困難になったといえます。首脳会談が実現できるかどう
かのボールはこれまで中国側にあったのですが、この白書の発表
で、ボールは米国側に戻されています。米国が首脳会談を求める
場合、白書の原則を認めることになり、会談が行われるかどうか
不透明な情勢です。
 しかし、2018年9月末にも中国は似たような白書を出して
おり、「関税のこん棒で脅されながらの交渉はできない」と王受
文商務次官は、エラソーに発言していましたが、その後中国経済
が悪化すると、11月には習近平国家主席がトランプ大統領に直
接電話を入れ、12月1日にブエノスアイレスで米中首脳会談が
行われたのです。10月に上海株が急落し、多くの中国企業が倒
産したからです。
 昨年末の会談の結果、数ヶ月の時間稼ぎができた中国は、増値
税(日本の消費税)を下げるなどの景気対策によって、一応経済
の減速が止まると、またしても白書によって自国の体面を保つ宣
言を行ったのです。しかし、4月の経済指標は軒並み悪化し、5
月の製造業の量況感は3ヶ月ぶりに50ラインを割っています。
とてもじゃないが、「経済の見通しは非常に楽観できる」という
状況ではないといえます。
 しかし、これとは別の見方があります。今回の白書はあくまで
国内向けであり、表向きの強気の姿勢のウラで、水面下で米国と
話し合い、米国寄りにかじを切る「プランB」を模索するという
ものです。何しろ相手は予測不能の行動を取るトランプ大統領で
あり、このまま抵抗を続けると、とことん最後まで追い詰められ
る恐怖を感じているからと思われます。
 中国は、最初は単なる貿易問題であると思っていたのです。そ
こで、習近平国家主席はトランプ大統領を国賓として中国に招待
し──どこかの国と似ていますが──米国から巨額の買い物をす
れば問題は解決できると簡単に考えたのです。
 しかし、そのこととは別ルートで、米国はファーウェイとの間
でいろいろトラブルになっていたのです。それがたまたまである
か、あえてであるかは不明ですが、18年12月1日の米中首脳
会談と同じ日に、ファーウェイ副会長の孟晩舟氏が、カナダで逮
捕されたのです。米国の要請のもとでの逮捕です。この時点で、
米中の貿易摩擦問題とファーウェイの問題が一緒になり、問題が
大きくなって、現在に至っています。ところで、ファーウェイの
孟晩舟容疑者は、何の容疑で逮捕されたのでしょうか。
 米国司法省は、孟晩舟副会長が、ファーウェイの秘密の子会社
「スカイコム」に米国が制裁措置を課しているイランとの取引を
実行させ、制裁逃れのために、米国の金融機関に虚偽の事実を告
げたとされる容疑です。現在も孟容疑者の身柄は、カナダにあり
ますが、米国に移送されると、30年の実刑をいい渡される可能
性があります。米国家経済会議のクドロー委員長は、これについ
て、次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
 対イラン経済制裁に関連してわれわれはファーウェイに、いく
ども警告してきた。アメリカはイランに経済制裁を課している。
イランはわれわれわの政策に反した行動を行っている。アメリカ
が制裁を課するのは当然だ。ただし、この(逮捕)がトランプ大
統領が決定した90日間の(対中制裁の)延期に影響を及ぼすと
は思わない。            https://tcrn.ch/2YWFC5Q
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/017]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイ副会長、カナダで逮捕 米当局が要請
  ───────────────────────────
   カナダ司法省によると、孟容疑者は2018年12月1日
  にヴァンクーヴァーで逮捕された。米当局が孟容疑者の身柄
  引き渡しを求めているという。ファーウェイは、容疑に関す
  る情報はほとんどなく、「孟氏のいかなる不正も把握してい
  ない」と述べた。
   孟容疑者は、ファーウェイを創業した任正非氏の娘。同社
  によると、孟容疑者は航空便の乗り継ぎ中に拘束された。カ
  ナダ司法省の報道官は、7日に孟容疑者の保釈聴問会を開く
  としている。ただ同報道官は、孟容疑者からの要請を受けて
  裁判所が報道禁止を命じているとし、詳細については発言し
  なかった。
   米メディアは、米国のイラン制裁に違反した疑いでファー
  ウェイが捜査を受けていると伝えている。また、ファーウェ
  イの技術はスパイ目的で中国政府に利用される可能性があり
  米国の国家安全保障の脅威になるとして、米議員らも同社を
  繰り返し非難してきた。
   ファーウェイは声明で、「事業展開している地域の輸出規
  制や制裁に関する法律、さらに国連(UN)や米国、欧州連
  合(EU)の法規を含む、あらゆる関連法を」同社は順守し
  ていると述べた。「当社は、カナダおよび米国の法制度が最
  終的に公正な結論に至ると信じている」
                  https://bbc.in/2XmFH26
  ───────────────────────────

中国国務院/米中貿易摩擦問題のスタンス表明.jpg
中国国務院/米中貿易摩擦問題のスタンス表明

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月03日

●「米中貿易戦争はいつまで続くのか」(第5017号)

 米国と中国の通信を巡る貿易戦争は、米中協議が事実上破綻し
たことにより、激しさを増す一方です。6月28日〜29日に大
阪で開催されるG20サミットでのトランプ大統領と習近平国家
主席の米中会談で打開が図られる可能性はほとんどないといわれ
ています。実は、G20での米中会談が本当に開かれるかどうか
すら微妙になっているからです。
 こうした米中の衝突は、起きるべくして起きています。それは
単なる貿易問題ではなく、その本質は、米国をはじめとする資本
主義自由経済と中国の共産主義計画経済の対立であるからです。
このまま続ければ、おそらく中国共産党が倒れるまで続くことに
なります。この点について、既出の渡邊哲也氏の解説です。
─────────────────────────────
 本来、共産主義計画経済と資本主義自由経済は対立する概念で
す。政府資本と政府の統制による価格決定を基本とする共産主義
と民間資本と市場での価格決定を基本とする資本主義。「この2
つの概念のいいとこ取りをしたのが中国であり、政府主導による
資本の増大と、一部共産党資本家の投資により伸びてきたのが中
国経済です」(「」はEJ)
 そして、資産バブルにより拡張した「消費」が中国を支えてき
た半面、大きな矛盾を抱えたがために、他国との摩擦を生んでし
まったのはご承知のとおりです。資本主義のリーダーである米国
がこれを認めないとしたことで、歪(ゆがみ)が露見、中国の社
会構造を揺るがしているわけです。中国のこれ以上の経済拡張は
中国の軍事力の拡大を招き、同時に米国の覇権を脅かします。
 また、それは自由主義という価値観の敗北を意味します。この
本質があっての経済戦争であることから、米国は追撃の手を緩め
ないでしょう。        ──渡邊哲也著/ビジネス社刊
        『GAFAvs中国/世界支配は「石油」から
              「ビッグデータ」に大転換した』
─────────────────────────────
 この解説のなかで重要なのは「」の部分です。中国が体制を転
換していないのに米国は資本主義自由経済に引き入れ、それを最
大限に支援したのは、他ならぬ世界1位と2位の経済大国、米国
と日本であるといえます。そうすれば、中国が自ら体制変換をす
ると甘く考えたからです。
 かたちの上から見ると、中国にも民営企業があり、民主主義国
と同様の経営をやっているように見えます。実はそうではないの
です。何しろ中国は、国家主席、すなわち国のトップが共産党の
総書記に頭の上がらない国なのです。もちろん中国共産党総書記
と中国の国家主席では同一人(兼務)ですが、組織上どちらが偉
いかといったら、共産党の総書記の方が上なのです。
 同様に、民間企業といっても民間企業の取締役会の上に中国共
産党の支部があって、民営企業を含めたすべての企業が共産党の
支配下に置かれているのです。だから、外貨準備が不足した場合
政府の命令ひとつで、民間企業が海外に保有している資産を売却
してドルを獲得することが可能なのです。
 したがって、中国政府が国家情報法に基づいて、ファーウェイ
に情報提供を迫った場合、「それは拒否できる」といくらファー
ウェイの任正非CEOが断言しても、信用できるものではないの
です。ファーウェイのCEOも共産党員であるからです。
 共産主義と資本主義──本来、価値観の違う国同士が、経済運
営をうまくやっていけるはずがないのです。それぞれの文明社会
のなかで、別々にやっていくしかないのです。それなら、米国は
なぜ、体制変換のないまま、中国をWTO(世界貿易機関)に加
入させ、価値観の違う国との経済運営を許したのでしょうか。こ
れについて、石平氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 アメリカの中国に対する考え方は蒋介石時代、毛沢東時代から
不変で、中国が経済的な繁栄をものにすれば、西側の価値観を受
け入れるようになるという自分勝手≠ネ妄想でした。アメリカ
はずっと妄想を抱きながら、中国の近代化を支援し、アメリカの
市場を中国のために開放しできた。中国製品を目一杯購入し、無
制限に中国人留学生を受け入れてきました。アメリカに留学した
中国人がアメリカの価値観を母国に持ち帰る。そういう人たちが
中国の政治の主導権を握ったら中国は変わるだろうと。しかし、
実際にはすべて裏切られてしまった。       ──石平氏
            ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき/
     日本市場は14億市場をいますぐ「損切り」せよ!』
─────────────────────────────
 米国が「中国はきっと民主主義国になる」という“妄想”を抱
くようになった原因は、日本での成功体験にあるという意見もあ
ります。敗戦国の日本は、米国の価値観を素直に受け入れ、米国
からの経済支援を受けて、世界第2の経済大国にまで経済発展を
遂げています。米国人から見ると、同じ東洋人であり、見た目も
よく似ているので、中国人も日本人も同じように見えたのだと思
います。
 米国の日本における統治がうまくいったのは、日本はアジアで
ありながら海洋国家であり、基本的な価値観は、英国に非常に近
いのです。したがって、大陸国家である中国とは基本的価値観が
異なるのです。これについて、石平氏は次のように「アメリカは
価値観の押し売りはやめるべきである」といいます。
─────────────────────────────
 中国にしてみれば、アメリカは自分たちの価値観を押し付けて
中国の体制を転覆しようと企んでいる。そう受け止めていた。そ
れで逆に中国はアメリカに対抗心を持つようになった。だから、
アメリカは、価値観の押し付け、押し売りはやめるべきです。
             ──石平×渡邊哲也著の前掲書より
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/016]

≪画像および関連情報≫
 ●米中貿易摩擦激化で広がる中国メディアの「忖度」
  ───────────────────────────
   トランプ大統領がツイッターでのつぶやきで予告した通り
  米国政府は5月10日、2000億ドル分の中国製品につい
  て関税をこれまでの10%から25%に引き上げた。米国に
  よる中国製品の関税引き上げは中国経済にどのような影響を
  もたらすのか。普段から付き合いのある中国国内の証券会社
  のアナリストに取材を申し込んだところ、返ってきたのは、
  「今回は応じられません」との答えだった。
   理由を問うと「みんなが答えていない中で、自分だけが話
  すのはちょっと・・・」。いつもの明快な口調が消え失せ、
  口ごもる様子には、はっきりと言えないが察してくれという
  空気がにじんでいた。
   米国政府は、10日の関税引き上げに続き、13日には、
  スマートフォンなど消費財を多く含む約3000億ドル分を
  制裁関税の対象とする「第4弾」の措置も発表した。それで
  も中国政府は外務省の耿爽副報道局長が「貿易戦争を恐れて
  はいない。最後まで付き合う」と述べるなど、強気の姿勢を
  崩さない。共同通信は、米中貿易交渉の緊張が一気に高まる
  キッカケとなった5日の米トランプ大統領のツイートの後、
  現地メディアに報道規制がかけられたと指摘している。指摘
  通り、主要紙やネットメディアではツイートを分析する記事
  を見ることはできなかった。その後、中国国内のメディアに
  よる報道は、基本的には中国政府の公式見解を繰り返すにと
  どまっている。         https://bit.ly/2YDFLLm
  ───────────────────────────

評論家/石平氏.jpg
評論家/石平氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月31日

●「最強の未公開企業/ファーウェイ」(EJ第5016号)

 遠藤誉氏は、ファーウェイという企業が、どのような企業であ
るかについて、レポートの最後に「追記」として書いていますの
で、今回はこれを要約してお伝えします。
 中国共産党の一党独裁国家、中国という国にとって重要なのは
あくまで国有企業であり、民営企業ではないのです。とくに習近
平政権では国有企業優先です。しかし、皮肉なことに、現在の中
国は、民営企業、それも世界中でビジネスを展開するグローバル
企業によって躍進し輝いているといえます。
 ファーウェイも中国政府から潰されかけたことがあるのです。
つねに中国政府から嫌がらせを受けてきたので、イノベーション
を起こして、最先端の半導体チップの製造技術で生き残りを賭け
たのです。そのため、任正非CEOは、政府によって潰されない
ように次の2つの手を打ったのです。
─────────────────────────────
      1.海外に多くの支店を保有すること
      2.従業員持ち株制度を導入したこと
─────────────────────────────
 ひとつは、海外支店網の拡充です。確かに海外に幅広く支店網
を持っていると、潰しにくくなります。そういう思惑もあって、
現在ファーウェイは、海外に170の支店網を有しています。
 もうひとつは、従業員持ち株制度を導入したことです。最先端
技術で生き残るには、従業員のモチベーションを高め、高度な技
術力を保有する必要があります。そのための従業員持ち株制度で
すが、これについて遠藤誉氏は自著で次のように書います。
─────────────────────────────
 2つ目の「従業員持ち株制」というのも、従業員の働く意欲を
強化する意味で、すばらしいアイディアだ。ホァーウェイ総裁の
任正非自身の持ち株は1・3%で、残りの98・7%の株主は、
すべて従業員なのである。だから従業員の働くモチベーションを
高め、優秀で若い人材を惹きつけていく。会社の収益が増えれば
給料以外に株の収益が従業員のポケットに入るのだから、なんと
しても会社全体を成長させ発展させていこうと思うだろう。こう
して働くモチベーションをこの上なく高めてくれる。だから任総
裁はホァーウェイを上場させないのだという。おまけに会長は3
人いて輪番制で、半年に1回ごとに代わる。だから、我欲による
腐敗が起きない。           ──遠藤誉著/PHP
              『「中国製造2025」の衝撃/
            習近平はいま何を目論んでいるのか』
─────────────────────────────
 任正非CEOは、何よりも社員のモチベーション向上が重要と
考えたのです。なぜかというと、半導体の技術レベルを世界最高
レベルの米国クアルコムと同レベルの半導体を作るためです。そ
れには、企業一丸となって、並はずれた努力が必要になります。
その結果、従業員が98・7%の株を握るという特異な未公開企
業が誕生したのです。それがファーウェイという企業なのです。
 そこまで技術レベルを高めておけば、もし中国政府が潰しにか
かってきても、米国企業に売れるからです。ところが現在、ファ
ーウェイは、半導体チップの製作において、クアルコムに肩を並
べるどころか、クアルコムを抜く技術力を蓄えつつあります。任
正非CEOは、そうなると今度は米国が圧力をかけてくるに違い
ないと考えたのです。事実その通りになりつつありますが、任正
非CEOは、そのことを予測して本を書いています。そのタイト
ルは、『次に倒れるのは華為(Huawei)だ』であり、この本を基
にして、邦訳された本が次の本です。
─────────────────────────────
  田濤(著/原著)/呉春波(著/原著)/内村和雄/訳
 『最強の未公開企業ファーウェイ/冬は必ずやってくる』
                   東洋経済新報社刊
─────────────────────────────
 この本は、まだ読んでいませんが、読む必要がありそうです。
というのは、米国によるファーウェイ排除の原因がこの本から読
み取れる可能性が高いからです。アマゾンは、この本を推薦する
一文のなかで、次のように書いています。
─────────────────────────────
 ファーウェイは急成長するにつれて、かつて教えを請い、信頼
を寄せた米企業から訴えられたり、人民解放軍と密接なつながり
を持ち、保護を受け、通信情報を軍に流しているのではないかと
ウワサされ、ロビイストの暗躍する米議会に問題視されて、いわ
ばアメリカそのものを敵に回したこともありました。任の経営哲
学は時に秘密主義とも呼ばれ、株式公開をしないこともあり、実
態がなかなかうかがい知れず、厚いベールに包まれてきたことも
そうした憶測を助長しました。    https://amzn.to/2Wc7o13
─────────────────────────────
 こうした米国の疑心暗鬼が、現在のファーウェイ排除の原因に
なっているのではないかと考えます。何か確たる証拠があるので
はない。何となく怪しいというレベルではないかと遠藤氏はいう
のです。しかし、遠藤氏にいわせると、それは任正非CEO自身
が事前に予測していたことだといいます。ファーウェイの技術レ
ベルが上がってくると、どうしてもそういう疑心暗鬼が生まれて
くる──遠藤氏はそう考えているようです。
 このレポートの結びのところで、遠藤誉氏は次のようにいって
います。この文章を読んで少しホッとした感じです。
─────────────────────────────
 「中国政府の支援がない状態で、ここまで巨大化できるはずが
ないだろう」と疑うのは中国政治の真相を知らない者の邪推だ。
筆者は、「言論弾圧をする国に世界を制覇させてはならない」と
いう警鐘を鳴らすために執筆活動を続けている。この信念は揺る
がない。       ──遠藤誉氏 https://bit.ly/2Wsemyt
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/015]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイのスマホは“危険”なのか
  ───────────────────────────
   米紙ウォールストリート・ジャーナルは先日、米国が中国
  の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の製品を使わ
  ないよう友好国に要請していると報じた。日本でもこのニュ
  ースは大きく取り上げられた。
   実はこの問題、欧米の情報機関関係者やサイバーセキュリ
  ティ関係者の間で、以前から取り沙汰されてきた。筆者もこ
  のニュースについては注視しており、これまでもさまざまな
  媒体で何度も記事を書いてきた経緯がある。
   国内外の知人らと話していると、ファーウェイの商品が、
  「安価でハイスペックな機器である」と評価する人たちも多
  い。先日仕事で訪れた、中国と複雑な関係にある台湾でも、
  IT関係者は「賛否あるが、コストパフォーマンスの良さは
  否定できない」と言っていたのが印象的だった。日本でも、
  最近ファーウェイのタブレットを購入したという日本人のテ
  レビ関係者から、「品質は申し分ない」と聞いていた。事実
  日本の「価格.com(カカクドットコム)」でスマートフォン
  ランキングを見ると、ファーウェイのスマホが1位、タブレ
  ットでも3位につけている(11月27日時点)。
   とはいえ、このテレビ関係者はニュースを見ていて不安に
  なるという。仕事柄、いろいろな情報を扱うこの関係者は、
  中国政府系ハッカーなどによるサイバー攻撃でスパイ行為に
  さらされる危険性があるのではないか、と心配していた。こ
  こまでとは言わないでも、同じように気になっている人も少
  なくないだろう。        https://bit.ly/2WWesvo
  ───────────────────────────

先端技術の米中の対決.jpg
先端技術の米中の対決
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月30日

●「国家情報法と任正非CEOの反論」(EJ第5015号)

 ポンペオ国務長官にインタビューを仕掛けた米CNBCテレビ
のアンドリュー・ロス・ソーキンス記者が、ファーウェイトップ
の任正非CEOへの次の発言を再現することにします。
─────────────────────────────
ソーキン:私はリスクを減らすことに興味はありません。私が質
 問しているのは、ファーウェイのCEOが「ほら、私たちは他
 者と情報を共有していません。私たちは中国政府と協力してい
 ないのです」と主張しているからです。
─────────────────────────────
 遠藤誉氏は、任正非CEOが、この「私たちは中国政府と協力
していない」という発言を、いつ、どのような場面での発言かに
ついて調査しています。その結果、それは、今年の1月15日に
AP通信やCNBCを含めた英語圏の海外記者による集団インタ
ビューのなかでの発言であることがわかったのです。
 そこでは、記者たちから、中国の「国家情報法」との関連での
ファーウェイの対応をとことん聞いているのです。そのときの任
正非CEOの回答を要約して再現します。
─────────────────────────────
記者団:あなたは、中国政府の要求があっても、絶対に従わない
 と言っていますが、しかし、あなたは共産党員ですよね。それ
 でも中国政府の要求を拒否できるというのですか?どうやって
 中国政府に抵抗できるのですか?どうやって顧客を安心させる
 ことができるのですか?
任正非:私の会社はビジネスの会社だ。ビジネス企業の価値観は
 顧客が中心だ。私個人の政治的信仰とビジネス行動は必ずしも
 一致しない。私は、絶対に中国政府に服従して顧客を裏切るよ
 うなことはしない。今日のインタビューが報道された後の将来
 20年から30年、もし私がまだ生きていたとしたら、私がい
 ま言った言葉を覚えておいてほしい。そして私が行動を以て、
 この言葉を証明することを見届けてほしい。
記者団:アップルはアメリカ政府の要求に従わず、政府を訴えて
 司法に持ち込んだ。中国にはファーウェイに、このような行動
 を可能ならしめる法律制度はあるか?
任正非:私は絶対に中国政府の要求を実行しない。となると中国
 政府が私を訴えるのであって、私が政府を訴えることにならな
 い。もっとも私は中国政府が私を訴えるか否かは分からない。
                  https://bit.ly/2Wtht9g
─────────────────────────────
 この記者団と任正非CEOのやり取りを聞いて、ファーウェイ
のCEOのいっていることに納得できるでしょうか。CEOは、
「私としては絶対に政府に屈服しない」と強調するだけで、それ
をもって信用してくれといわれても、素直に受け入れられないと
思います。何しろ、中国は、これまで、共産党の命令に従わない
者に対し、情け容赦ない弾圧をやってきているからです。
 これに対して遠藤誉氏は、国家情報法における「情報」とは、
中国には民主化を求めて国家転覆を図ろうとする者がたくさんお
り、そういう個人や組織の所在を知っている者が政府に密告する
ことを合法化したものであるといいます。つまり、「反政府分子
を匿ってはならない」という趣旨の法律であるというのです。
 しかし、国家情報法第7条は、「いかなる組織及び国民も、法
に基づき国家情報活動に対する支持、援助及び協力を行い、知り
得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない」と、
いくらでも情報の拡大解釈ができる条文になっており、恣意的運
用が行われる可能性は十分あると思います。
 しかし、遠藤氏は、「もし、任正非CEOが国家情報法に基づ
き、知り得た情報を中国政府に提供したら、どうなるか」という
観点で次のようにも述べていますが、こちらは納得できます。
─────────────────────────────
 これが「国家情報法」の基本ではあるが、仮に、海外の感覚で
「国家情報法」を解釈し、ファーウェイが中国政府に屈服したと
しよう。そのとき、何が起きるか――?
 まずファーウェイ社員の燃えるような使命感は、その瞬間に消
失する。新しい半導体チップを命を賭けて設計していくぞという
ような意欲は無くなり、普通の国有企業の従業員のように、やる
気が無くなり、真に意欲を持つ者は、ファーウェイから去って、
もっと小さな民間企業に移るだろう。つまり、この時点で中国は
5Gにおいて世界の最先端から脱落し、ハイテク国家戦略「中国
製造2025」の完成も絵に描いた餅になってしまうということ
である。この構図が面白いのだ!
 習近平国家主席は、このことに激しく苦悩しているだろう。こ
こにこそ「中国の特色ある社会主義国家」の限界があることに気
が付かなければならない。           ──遠藤誉氏
                  https://bit.ly/2HFihQa
─────────────────────────────
 遠藤氏は、日本人に対しても怒りをぶつけています。「一部の
日本人は、(私が)少しでもファーウェイと中国政府の関係に関
する真相を書くと、『アイツは中国の工作員だ』と誹謗すること
しかしない」と。そして、日本のメディアの対応に関しても次の
ように疑問を呈しています。
─────────────────────────────
 ファーウェイに関して「証拠を出せ」とアメリカ政府に迫って
いないのは、日本国、一国であることを認識したいものである。
アメリカのメディアでさえ、「証拠を出せ」と迫っていることが
このCNBC報道で分かったはずだ。しかし共同通信は、その部
分は無視して、「嘘つきだ」という部分だけを切り取って日本人
に知らせた。これは、国益に適っているのだろうか?私たちには
「真実を知る権利」がある。          ──遠藤誉氏
                  https://bit.ly/2Wsemyt
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/014]

≪画像および関連情報≫
 ●日本もファーウェイ排除の方針。その懸念の真偽と被る影響
  ───────────────────────────
   貿易問題や通信分野の覇権争いで対立する米中。米国政府
  はファーウェイやZTEを名指しで政府調達から排除した。
  さらに、同盟国に中国通信大手の排除を要請した模様だ。そ
  して、日本政府は「IT調達に係る国の物品等又は役務の調
  達方針及び調達手続に関する申合せ、(以下、IT調達申合
  わせ)」を公表した。
   そもそも、日本政府はサイバーセキュリティにまったく無
  頓着なわけではなく、従来から中国製品を警戒していた。そ
  れでも敢えてIT調達申合せを公表したのは、米国政府の要
  請に呼応して同調姿勢を明確化する狙いなのだろう。
   ただ、日中関係が改善傾向にある中で、日本政府としては
  中国政府を過度に刺激したくないはずだ。日本政府はIT調
  達申合せについて「防護すべき情報システム、機器、役務な
  どの調達に関する方針や手続きを定め、特定の企業や機器の
  排除が目的ではない」と説明し、名指しは避けて中国政府に
  配慮した格好だ。
   IT調達申合せの公表前には複数の報道機関が日本政府に
  よる中国通信大手の排除を報じ、それに中国政府は強い表現
  で反発した。しかし、IT調達申合せの内容を公表後は不快
  感こそ示したが、発言は抑制的な表現にとどめた。名指しで
  排除されない限り、中国政府としては強い表現での反発は難
  しく、この点は日本政府の狙い通りだ。
                  https://bit.ly/2ECV6UU
  ───────────────────────────

遠藤誉筑波大学名誉教授/理学博士.jpg
遠藤誉筑波大学名誉教授/理学博士
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月29日

●「ファーウェイがスパイである証拠」(EJ第5014号)

 昨日のEJの「画像および関連情報」でもお知らせしています
が、4月23日に開催された英国の国家安全保障会議において、
米国とともにファイブアイズの中心国、英国のメイ首相は、英国
としては、ファーウェイの製品を5Gの中核部分からは外すもの
の、他の部分では残すことを宣言しています。
 メイ首相の発表の約1ヶ月前に、英国の監督機関がファーウェ
イのセキュリティを精査して、厳しい内容の報告書を提出したに
もかかわらずです。この報告書では、ファーウェイについて次の
ように論評しています。
─────────────────────────────
 ファーウェイ社のソフトウェアエンジニアリングとサイバーセ
キュリティの能力には、深刻かつ意図的な欠陥がある。しかし、
英国の重要なネットワークへのファーウェイの関与が国のセキュ
リティにもたらす、すべてのリスクは、長期的には十分に軽減で
きる、という限定的な確証しか提供できない。
        報告書(英文) → https://tcrn.ch/2YuHIdA ─────────────────────────────
 英国の監督機関は、一方で「深刻かつ意図的な欠陥がある」と
いいながらも、他方「それがもたらすリスクは長期的には十分軽
減できる」という曖昧な表現にとどめています。ここにメイ政権
の中国への配慮が感じられるのです。
 しかし、このメイ首相の決定には、英国の内務大臣と外務大臣
防衛大臣、通商大臣、国際開発大臣らが懸念を示したことが伝え
られています。メイ首相としては、EU離脱となると、中国は重
要な貿易相手国になるので、そういう観点から、サイバーセキュ
リティの面で甘さが出てしまったのではないかと考えられます。
もともと英国は、米国が「ファーウェイのここが問題である」と
いう証拠を示さないことに不満を持っていたといわれます。
 この「なぜファーウェイは問題があるのか」について、米国が
きちんとした証拠を示していないことをEU各国が不安を持って
いることは確かです。これについて、遠藤誉氏は、5月23日の
米CNBCのテレビ記者、アンドリュー・ロス・ソーキン氏によ
るポンペオ国務長官へのインタビューを取り上げ、分析している
ので、以下にご紹介します。
─────────────────────────────
ソーキン:国務長官、教えていただきたいのですが、ハーウェイ
 がハードウェアを利用して、スパイソフトや何かスパイ行為を
 行うことを明確に示唆する証拠を今日は提供できますか。
ポンペオ:うーん、そうだね。それは間違った質問だよ、アンド
 リュー。もしあなたが自分の情報を、つまり、自分の情報をだ
 ね。中国共産党に渡すのは、あなたにとって実際上、凄まじい
 リスクを伴う行為になるわけだよ。中国共産党は、今日は利用
 しないかもしれない。明日も利用しないかもしれない。
ソーキン:私はリスクを減らすことに興味はありません。私が質
 問しているのは、ファーウェイのCEOが「ほら、私たちは他
 者と情報を共有していません。私たちは中国政府と協力してい
 ないのです」と主張しているからです。だから、何か明確な証
 拠を示してください。
ポンペオ:それはまさに嘘だよ。それはまさに嘘だ。中国政府と
 協力していないというのは、嘘の声明だ。
                  https://bit.ly/2K90XVp ─────────────────────────────
 ここに示した日本語訳は遠藤誉氏による翻訳です。遠藤氏は、
ポンペオ国務長官の受け応えは明らかにシドロモドロである──
そういうのです。それは英語の原文で読むと、一層明らかである
といっています。
 以下の英文は、アンドリュー記者に対するポンペオ国務長官の
返事ですが、明らかに間違っているところがあります。遠藤氏は
それを根拠にシドロモドロといっているのです。
─────────────────────────────
  That's the wrong question, Andrew. If you put your
  information, your information, in the hands of the
  Chinese Communist Party, it's de facto a real risk
  to you.They may not use it today. They may not use
  it tomorrow.
─────────────────────────────
 それは最後の部分「They may not use it tomorrow」です。こ
れは「今日」と「明日」が関連を持っています。「(情報を入手
しても)今日は使わないかもしれないが、明日は使うかもしれな
い」という意味の「They may use it tomorrow」ならわかります
が、ポンペオ国務長官は、「They may not use it tomorrow」と
いっています。これだと意味がわからなくなります。「not」 は
不要なのです。米国人、しかも国務長官ともあろう人が、母国語
で、こんな間違えをするはずがないので、遠藤氏はシドロモドロ
になっていたんじゃないかといっているのです。
 しかし、仮にファーウェイがスパイをしているという確たる証
拠があったとして、それを国務長官という地位にある人がメディ
アに話せるでしょうか。そんなことはできるはずはないのです。
ポンペオ国務長官は、そういう質問をはぐらかす会話の技術が上
手でないだけだと思います。
 しかし、遠藤誉氏は、これほどまでして、なぜ、ファーウェイ
をかばうような発言をするのでしょうか。ファーウェイをあまり
追いつめるとロクなことにならないとまで発言しています。遠藤
氏の本を読むと、ファーウェイの創業者である任正非氏は確かに
人民解放軍に在籍していたものの、それは「軍民転換」といって
そういう人はたくさんおり、だからといって、軍のために何かを
することはないし、ましてスパイなどではないといいます。
 しかし、自由主義陣営は、「ファーウェイ排除」でまとまりそ
うな情勢です。とくにグーグルのソフトウェア制限は、ファーウ
ェイにとって深刻です。   ──[中国経済の真実/013]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイ排除の内幕、激化する米中5G戦争
  ───────────────────────────
   [キャンベラ/21日/ロイター]2018年初頭、オー
  ストラリア首都キャンベラにある低層ビル群の内部では、政
  府のハッカーたちが、破壊的なデジタル戦争ゲームを遂行し
  ていた。
   オーストラリア通信電子局(ASD)のエージェントであ
  る彼らに与えられた課題は、あらゆる種類のサイバー攻撃ツ
  ールを使って、対象国の次世代通信規格「5G」通信網の内
  部機器にアクセスできた場合、どのような損害を与えること
  ができるか、というものだ。
   このチームが発見した事実は、豪州の安全保障当局者や政
  治指導者を青ざめさせた、と現旧政府当局者は明かす。5G
  の攻撃ポテンシャルはあまりにも大きく、オーストラリアが
  攻撃対象となった場合、非常に無防備な状態になる。5Gが
  スパイ行為や重要インフラに対する妨害工作に悪用されるリ
  スクについて理解されたことが、豪州にとってすべてを一変
  させた、と関係者は話す。
  電力から水の供給、下水に至るすべての必須インフラの中枢
  にある情報通信にとって5Gは必要不可欠な要素になる──
  マイク・バージェスASD長官は3月、5G技術の安全性が
  いかに重要かについて、シドニーの研究機関で行ったスピー
  チでこのように説明した。「世界的な影響力拡大を目指す中
  国政府の支柱の1つとなった創立30年の通信機器大手、華
  為技術(ファーウェイ)に対する世界的な締め付けを主導し
  たのは、米政府だと広く考えられている。
                  https://bit.ly/2YSDhIT
  ───────────────────────────

誤魔化し方が上手ではないポンペオ国務長官.jpg
誤魔化し方が上手ではないポンペオ国務長官

続きを読む
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月28日

●「さらば米国よ、われに欧州ありき」(EJ第5013号)

 世界中でファーウェイ離れが起きているなか、遠藤誉氏が次の
タイトルで夕刊紙にコメントを寄せています。
─────────────────────────────
 ◎ファーウェイは「へこたれない/世界は2極化へ」
 米国は、これ(=中国の通信大手の締め出し)を対中圧力の切
り札にしたいという希望を持っているようだが、切り札にはなら
ない。ファーウェイはへこたれない。「米国市場を引き揚げても
欧州がある」と思っている。
 具体的には。ファーウェイの創業者で、最高経営責任者(CE
O)の任正非氏が中国メディアに語った。
 「米国から撤退する。米国には感謝する。ここまでわが社を有
名にしてくれた。それだけ技術が高いと、世界が知るようになっ
た」と。余裕を感じさせる。
           ──「鈴木棟一の風雲永田町」6064
           2019年5月21日発行「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 いま起きている世界中からのファーウェイ離れにも関わらず、
任正非CEOは米国に対して皮肉をいう余裕があると、遠藤氏は
いっています。それは任正非CEOの「米国市場を引き揚げても
欧州がある」というところにあるといえます。これは重要な発言
です。確かに、欧州(EU)と米国は、現在ギクシャクしていま
すが、本当にEUは米国の警告に従わないつもりでしょうか。
 これに関して遠藤氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 欧州諸国は、米国が「証拠を出さない」ことを理由に「ファー
ウェイを排除しない」方向に動いている。ファーウェイは欧州で
強い。米国のやり方は、1990年代の対日圧力と似ている。
           ──「鈴木棟一の風雲永田町」6064
─────────────────────────────
 ファーウェイが本当に情報を盗んでいたのかということに関し
ては遠藤氏は重要な情報を掴んでいるので、これについては改め
て取り上げることにします。
 EJの掴んだ情報によると、中国は「ファイブアイズ」の分断
を仕掛けており、これによってEU諸国のなかには「ファーウェ
イを排除しない」決断をしている国が出てきています。ところで
「ファイブアイズ」とは何でしょうか。
 ファイブアイズとは、諜報活動に関する「ある協定」を締結し
ている5ヶ国──米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュー
ジーランド──の諜報機関の間の協定のことです。
 ここでいうある協定とは、「UKUSA(ウクサ)」といい、
UKUSAとは英国と米国の協定を意味しています。「UK」は
ユナイテッド・キングダム、英国を意味し、「US」は、ユナイ
テッド・ステート、米国のこと、「A」は「Agreement」、 協定
を意味します。つまり、ファイブアイズは、英国と米国を中心と
して、それに英語圏の3ヶ国を加えた5ヶ国の諜報機関間の協定
のことです。参考までに、これら5ヶ国の諜報機関を次に示して
おきます。
─────────────────────────────
     イギリス → GCHQ      政府通信本部
     アメリカ →  NSA アメリカ国家安全保障局
      カナダ → CSEC    カナダ通信保安局
  オートスラリア →  DSD   参謀本部国防通信局
 ニュージーランド → GCSB     政府通信保安局
                 https://bit.ly/2insxgt
─────────────────────────────
 それでは、「UKUSA協定」では具体的に何を利用できるの
でしょうか。
 もともと秘密協定であり、明確には分からないのですが、加盟
国間で傍受した盗聴内容や情報を共同利用していることは確かで
す。問題はその手段です。それは、通信、電磁波、信号などの主
として傍受を利用した諜報活動のことです。これら5ヶ国は、世
界中に張り巡らした諜報網を使って情報を集め、それらを相互利
用、共同利用しているのです。しかし、互いを盗聴することは禁
じられています。これらの設備というか、システムのことを「シ
ギント」と呼んでいます。
 なお、「UKUSA協定」のネットワークは「エシュロン」と
呼ばれています。この名前を聞いたことがある人は多いと思いま
す。このように、ファイブアイズには、通信ネットワーク機器に
重要な関連があり、それにファーウェイが絡んでいるのは当然と
いえます。
 中国は、ファイブアイズの中心国、英国に的を絞って何年もか
けて、関係構築を築いてきています。その英国は、現在EU離脱
問題で大揺れであり、EUを離脱した場合、それも合意なき離脱
の場合、中国は重要な貿易相手国になります。したがって、米国
の要請にしたがって、ファーウェイ排除に積極的に動けないので
す。このことは、やはり中国が重要な貿易相手国であるニュージ
ーランドも同じ立場です。中国は、ニュージーランドに対して強
いプレッシャーをかけています。EU全体も今後この動きに同調
する可能性もあり、それを見越して、任正非CEOは「欧州があ
る」といったのです。こういう動きも含めて、遠藤誉氏は、コメ
ントの最後に次のように「2つの可能性」を示唆しています。
─────────────────────────────
 2つの可能性がある。1つは世界の資本や企業が中国から引き
揚げて、中国経済が干上がる。2つには、中国が対米貿易を無視
することによって、世界が「米国か、非米国か」の2極に分かれ
る。後者の場合、グローバル経済を中国が回すことになる。この
2つの進路の鍵を握るのは、案外日本かもしれない。
           ──「鈴木棟一の風雲永田町」6064
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/012]

≪画像および関連情報≫
 ●英国はファーウェイを5Gサプライヤーにすることに難色
  ───────────────────────────
   中国の通信機器ベンダーの関与が国のセキュリティにリス
  クをもたらすとの懸念にもかかわらず、イギリスの政府は、
  同国の5Gネットワークの一部の中核的でない部分に関して
  ファーウェイをサプライヤーとして認めることになった。し
  かし政府の記者発表によれば、ネットワークの中核的な部分
  からは除外される。
   米国時間4月23日の国家安全保障会議の会合における英
  国メイ首相の決定を今朝のテレグラフ紙が報じた。同紙によ
  ると、複数の閣僚が彼女のアプローチに懸念を表明した。そ
  れらは、内務大臣と外務大臣、防衛大臣、通商大臣、国際開
  発大臣である。FT(フィナンシャル・タイムズ)は、英国
  5Gネットワークへのファーウェイの関与に厳しい制約を課
  すのは、閣僚たちが提起した懸念のレベルが高いことを反映
  している、と報じている。
   5Gによる次世代ネットワークの構築にファーウェイの部
  分的関与を許すというメイ首相の黄信号的決定の1か月前に
  は、英国監督機関が、この中国企業のセキュリティへのアプ
  ローチを評価して厳しい報告書を提出したばかりだ。ファー
  ウェイ・サイバーセキュリティ評価センター監督委員会の第
  5次年次報告書は、同社のソフトウェアエンジニアリングと
  サイバーセキュリティの能力には「深刻かつ意図的な欠陥が
  ある」と酷評している。     https://tcrn.ch/2HALtrI
  ───────────────────────────

「米国よ、さらば」/任正非CEO.jpg
「米国よ、さらば」/任正非CEO
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月27日

●「世界中でファーウェイ離れが加速」(EJ第5012号)

 米中貿易戦争は、日を追って激しさを増す一方です。5月19
日、米ロイターが、「グーグルはファーウェイ向けのソフトウェ
アの出荷を停止し、今後ファーウェイ製品では、グーグルプレイ
やGメールを利用できなくなる見込み」と報道すると、世界中で
ファーウェイ離れが起きて、拡大しつつあります。
 とくに、携帯電話のOSとして広いシェアを持つ「アンドロイ
ド」のサービス──OSの最新版への更新や、Gメールをはじめ
グーグルマップ、ユーチューブなどのいわゆるグーグルアプリが
利用できなくなるとの不安が広がると、携帯大手などに続き、消
費者に身近なネット通販や小売の店頭においても、ファーウェイ
離れは一段と加速したのです。
 アマゾンもファーウェイ販売のページにおいて、次の表示を行
い、ファーウェイ製品の事実上の販売停止を行っています。
─────────────────────────────
 本製品は、OS(オペレーションシステム)などについて懸念
が発生しています。  ──アマゾンのファーウェイ製品ページ
─────────────────────────────
 「アンドロイドOS」を使う機器は世界で25億台以上あり、
グーグルのソフトウェアの利用が制限されている中国国内向けを
のぞき、ファーウェイのスマホも基本的にすべて使っています。
ちなみに、ファーウェイは、2018年にサムスン電子、アップ
ルに次ぐ世界3位の2億600万台のスマホを出荷し、2019
年第1四半期にアップルを抜いて、世界2位に進出しています。
 このアンドロイドが使えなくなるかもしれない事態を受けて、
日本のKDDI(au)とソフトバンク系のワイモバイルなどが
ファーウェイの新規機種「P30」の販売延期を決め、予約を中
止しています。改めてICTの世界におけるグーグルの影響力の
大きさを知る思いがあります。
 ところで、ファーウェイの最新機種「P30」は、なかなか魅
力的な製品なのです。3つのカメラが搭載されており、高画質に
加えて、超広角・望遠機能を備えています。しかし、ハードウェ
アとしての機能がいかに優れていても、世界中で使われているグ
ーグルのソフトウェアが使えなくなる可能性があると知ると、世
界中で買い控えが起きてしまうのです。
 このような事態になっても、ファーウェイの任正非CEOは、
傘下に半導体子会社「ハイシリコン」を有しているとして、半導
体に関しては世界レベルを超えるチップを自前で生産できるし、
OSをはじめとするソフトウェアに関しても、表向きは、独自制
作が可能であると、強気の姿勢を崩していないのです。
 しかし、そのハイシリコンは、英国のARM(アーム)という
半導体設計情報を提供する企業から、多くの設計情報の提供を受
けています。アームは、自社では半導体の製造を行わず、開発や
設計に特化し、半導体メーカーからの技術使用料などを収益源と
する企業です。
 そのアームが英国BBCの報道によると「ファーウェイとの取
引を中止する」と宣言したのです。これはファーウェイにとって
致命的な打撃といえます。高度な技術を持つハイシリコンといえ
ども、アームの協力なくしては、世界に通用する半導体チップの
生産ができないからです。とくにアームは、スマホ向け半導体の
設計では、90%の圧倒的なシェアを持っているからです。実は
このアームを英国のEU離脱騒ぎでポンドが急落したのを受けて
2016年にソフトバンクが買収しているのです。
 アームについて、「日経ビジネス」の広岡延隆上海支局長は、
次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 ARMは、省電力半導体設計に強みを持ち、現在のスマートフ
ォン向け半導体チップの大半は、同社技術を採用している。米ク
アルコムや米アップル、韓国サムスン電子、台湾メディアテック
など、半導体チップメーカーはARMの設計情報のライセンスを
受けずには、事実上ビジネスを継続できない。そしてファーウェ
イの半導体開発を担う中核子会社、海思半導体(ハイシリコン)
もARMの技術に頼っていた一社だった。
 英国はファーウェイにとって、西側諸国における「砦」のよう
な存在だった。ファーウェイは英国政府と比較的緊密な関係を保
ち、技術情報の提供を欠かさなかった。英国が、米国の意向に反
してファーウェイを「5G」から排除しなかったのは、こうした
取り組みがあったからだ。      https://bit.ly/2Mn1Sob
─────────────────────────────
 そうすると、ファーウェイの命運を握っているのは、ソフトバ
ンクの孫正義CEOであるといえます。孫正義氏にとっては、悲
願である傘下の米携帯電話4位のスプリントと3位のTモバイル
との合併計画があり、トランプ政権とトラブルを起こせない立場
にいます。この合併に関しては、オバマ政権では実現できなかっ
たものの、トランプ政権になって米連邦通信委員会(FCC)の
承認を勝ち取っています。しかし、米司法省がまだ反対しており
孫氏としては、トランプ政権との関係は良くしておきたいという
思惑があり、ファーウェイとの取引を停止せざるを得ない状況に
あります。
 トランプ大統領は、5月23日、このファーウェイ問題を米中
通商協議で、取引に使う考えを次のように示しています。
─────────────────────────────
 G20で習近平国家主席と会談するが、そのさい、ファーウェ
イも何らかの形で、取引に含まれる。ただし、安全保障や軍事的
な観点から、ファーウェイのやってきたことは、非常に危険なこ
とである。               ──トランプ大統領
           ──2019年5月25日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 実際問題として、米中貿易戦争は、単なる通商協議ではなく、
安全保障の面における米国の基本戦略になりつつあります。
              ──[中国経済の真実/011]

≪画像および関連情報≫
 ●グーグルよりも深刻? 英ARMがファーウェイと取引停止
  ───────────────────────────
   ソフトバンクグループは2016年、3・3兆円をかけて
  英半導体設計大手のARMを買収した。スマートフォン向け
  CPUなどで豊富な実績を持つARMだが、ソフトバンクグ
  ループはなぜ、それだけ巨額の資金を投じてARMを買収し
  たのか。またARMの買収によって、ソフトバンクグループ
  は、何を目指そうとしているのだろうか。
   これまで、英ボーダフォンの日本法人や米スプリントなど
  大規模な企業買収を繰り返して大きな驚きを与えてきたソフ
  トバンクグループ。だがそうした中でも最も大きな規模の買
  収となったのが、2016年買収した英ARMである。
   ARMは、CPUなどの設計を手掛ける企業で、その設計
  をCPUなどを開発・製造するメーカーにライセンス提供し
  ロイヤリティを得るというビジネスを展開している。それゆ
  え同社の設計を採用する企業にはスマートフォン向けのチッ
  プセット「Snapdragon」シリーズで知られる米クアルコムな
  ど、非常に多くの企業が名を連ねている。
   ARMの設計を採用したチップセットは多種多様な機器に
  搭載されているが、中でもよく知られているのは、やはり、
  スマートフォンやタブレット向けのチップセットであろう。
  今やスマートフォンの9割以上は、ARMの設計を採用した
  チップセットを採用していると言われており、スマートフォ
  ン開発になくてはならない存在となっているのだ。だが、A
  RMの買収と、これまでソフトバンクが巨額で買収した企業
  とを比べると、ある大きな違いが見られる。それは、ARM
  が経営不振に陥っているわけではないということだ。
                  https://bit.ly/2Mn1Sob
  ───────────────────────────

ソフトバンクARMを買収.jpg
 
ソフトバンクARMを買収
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月24日

●「人民元の防衛と中国の外貨準備高」(EJ第5011号)

 中国の外貨準備は他国と比べると、とても特殊です。そもそも
外貨準備とは次のようなものをいいます。
─────────────────────────────
 ◎外貨準備とは・・・
 各国の通貨当局(中央銀行/中央政府などの金融当局)の管理
下にある直ちに利用可能な対外資産のことである。通貨当局が急
激な為替相場の変動を抑制するとき(為替介入)や、他国に対す
る外貨建債務の返済が困難になったときなどに用いられる。
                  https://bit.ly/2wcTgFK
─────────────────────────────
 ところが、中国では、上記の外貨準備の他に、国有銀行が有す
る企業の外貨も外貨準備のなかに含めているのです。ここでいう
「企業の外貨」とは、企業のドル決済預かり金や企業のドル預金
も外貨準備として報告しているのです。これは明らかなルール違
反ですが、中国政府はまったく意に介さないのです。
 中国という国は、すべてを自国中心に考えるのです。本来自由
貿易をするからには、国際法はもちろんのこと、国際的な約束事
というか規則、決まりを遵守することが必要ですが、中国は、国
際法でも自国独自の勝手な解釈で運用しようとします。南シナ海
における人工島も勝手な歴史認識で強行し、国際司法裁判所の判
決も、絶対に受け入れません。したがって、中国の経済に関する
公表数字も信頼のおけるものではないのです。
 最近では、国(国有銀行)が保有しているものだけでなく、中
国企業や個人の保有する外貨(国内であれ、海外であれ)も、す
べて含めて外貨準備と考えているのです。「そんなバカな!」と
いうなかれ、中国は大真面目で、そう考えています。
 それに加えて、2017年から、中国にとっては都合のよい制
度ができたのです。その制度は、CRS(共通報告基準)と呼ば
れ、OECDが策定したものです。
─────────────────────────────
 ◎CRSとは/Common Reporting Standard
 外国の金融機関に保有する口座を利用した国際的な租税回避を
防止するために、経済協力開発機構(OECD)が策定した金融
口座情報を自動交換する制度である。報告された情報は、各国の
税務当局間で相互に共有される。
─────────────────────────────
 CRSを簡単にいうと、日本で暮らす外国人と、外国に住む日
本人の税務情報や資産情報を当局同士で交換する制度です。なぜ
この制度が中国にとって都合がよいかというと、中国人が海外に
密かに資産を移したり、入手したりしても、CRSによりすべて
把握できるからです。
 仮にある中国人が米国に資産を持っていたとします。それはド
ル資産になりますが、そのドル資産も中国の外貨準備に含まれて
いるのです。もし、中国の外貨が足りなくなったときは、そのド
ル資産を売却させ、それに見合う人民元と引き換えます。人民元
であれば、いくらでも刷れますが、まさかドルを刷るわけにはい
かないからです。
 そこまで無理をしている中国の外貨準備の現況について、渡邊
哲也氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 2014年には、3・6兆ドルあった中国の外貨準備は、いま
2・8兆ドルに落ち込んだとされています。この2・8兆ドルの
うち米国債は1・1兆ドル程度しかなくて、あとは何を持ってい
るかは非公表という状況です。
 中国の銀行が海外の銀行から借りている金額が1・6兆ドルで
そのうち3ヶ月以内に満期が来る短期債務が1・15兆ドル。つ
まり、保有する米国債の額と短期債務の額がイコールになってし
まっている。かつてJ・Pモルガンが、中国の外貨準備がどの程
度になったら危機的水準かという試算を行った。それが2・6兆
ドルでしたから、危機的水準に非常に近いところまで落ちてきた
ことになります。ちなみに日本は、同じく1・1兆ドルの米国債
を保有していますが、そのほぼすべてを政府が使えます。
            ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき』
─────────────────────────────
 参考までに、2017年末の外貨準備の額のベスト5をご紹介
することにします。
─────────────────────────────
    1位:     中国  3兆2353億ドル
    2位:     日本  1兆2640億ドル
    3位:    スイス    8108億ドル
    4位:   ユーロ圏    8007億ドル
    5位:サウジアラビア    5008億ドル
                  https://bit.ly/2EPM88h
─────────────────────────────
 これを見ると、中国の3兆2353億ドルは、日本の約3倍で
あり、文句なしに世界一です。中国の外貨準備の定義の違いもあ
るが、それを考慮しても圧倒的です。しかし、金融の専門家であ
る小宮一慶氏の分析によると、3・2兆ドルという数字から中国
の人民銀行の人民元防衛のための「介入」の凄さが見えるという
のです。かつて中国の外貨準備高は4兆ドル近くあり、2017
年の時点で1兆ドルも減っている──これは、中国人民銀行によ
る強烈な「人民元買い支えオペレーション」の結果であると小宮
氏はいいます。
 しかも2017年の3・2兆ドルは、現在では、渡邊哲也氏に
よると、さらに1兆ドル減少し、2・8兆ドルになっています。
J・Pモルガンによる危機的水準が2・6兆ドルであり、現在が
2・8兆ドルですから、まさに中国は、ギリギリのところまで追
い詰められているということがいえます。
              ──[中国経済の真実/010]

≪画像および関連情報≫
 ●中国、外貨準備に見る手詰まり感/梅澤利文氏
  ───────────────────────────
   中国外貨準備の減少は、人民元が重要な節目である対ドル
  レートで1ドル7人民元に近づく中で、中国当局がこれ以上
  の人民元安を放置できない姿勢が示唆されたと見られます。
  中国景気に減速傾向が見られる中、中国当局は景気刺激策が
  求められる中での為替介入に、政策的なジレンマもうかがえ
  ます。これが日本ならば、通貨安(円安)は極端でない限り
  歓迎されるところでしょう。しかし、中国では事情が異なり
  ます。
   まず、中国は米中貿易戦争の当事国であり、対米貿易黒字
  の拡大は通商交渉を困難にする恐れがあります。米財務省は
  2018年10月17日に半期に一度の外国為替報告書を発
  表しました。今回、米国は中国を為替操作国に認定するのは
  見送りました。しかし、前回(4月)の報告書に比べ、中国
  への姿勢は厳しさを増しています。ムニューシン米財務長官
  は中国の為替の透明性欠如と最近の元安が懸念材料と強い調
  子で指摘しています。
  仮に中国を為替操作国と認定すれば、米国は必要に応じて関
  税を課す可能性もあり、米国に新たな関税という武器を手渡
  すこととなる恐れもあります。
   次に人民元安を放置した場合、資本逃避も懸念されます。
  中国の資本逃避の目安として、国際収支統計の資本勘定で、
  ネットの金融収支を見てみると、足元でマイナスに転じてい
  ます。             https://bit.ly/2VH034u
  ───────────────────────────

中国の外貨準備高.jpg
中国の外貨準備高
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月23日

●「外貨準備がギリギリの状況の中国」(EJ第5010号)

 2019年3月5日〜3月15日の10日間、中国は北京で全
人代を開いています。全人代とは「全国人民代表大会」、中国の
一院制議会のことです。しかし、今年の全人代は、秋の「四中全
会」を開催せずに行われたのです。これは、異例中の異例なこと
であり、絶対といわれる習近平総書記の権力基盤が必ずしも盤石
ではないことを物語っています。
 四中全会が開催できなかった原因は、もちろん米国のトランプ
政権による貿易戦争にあります。これによって、中国経済は大ダ
メージを受けており、3月の全人代では、かなり強力な景気対策
を打ち出しています。
─────────────────────────────
   @増値税(付加価値税)引き下げ/16%→13%
   A             中小企業向けの減税
   B   年金など社会保障費の企業負担の引き下げ
   C     家電販売に8%〜25%の補助金支給
            ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき』
─────────────────────────────
 日本の消費税にあたる増値税を3%引き下げています。国内の
個人消費が冷え込んでいるからです。増値税を3%下げて、家電
販売には8%〜25%の補助金を出すというのですから、家電は
買い得です。かなり大判振る舞いです。おそらく効果はある程度
出ると思います。
 日本では、景気が悪化しているのに、消費税を8%から2%税
率を引き上げようとしていますが、これはとんでもない大間違い
です。引き上げたら、景気はさらに悪化し、安倍政権のレームダ
ック化は一段と促進します。増税ではなく、8%から5%に引き
下げるという手もあるのです。そうすれば、個人消費は間違いな
く急回復します。国民が「減税」という言葉を忘れるほど、日本
では増税ばかりしています。
 「ドーマーの定理」というものがあります。これは、長期的な
財税維持のために必要とされる条件です。この定理のもともとの
概念は次の通りです。
─────────────────────────────
 ドーマーの定理とは──
 経済成長率が、国債金利よりも高いという条件を満たすとき
 財政維持は可能である。
─────────────────────────────
 1940年代にロシア系アメリカ人の経済学者エブセイ・ドー
マーによってこの定理は提唱されたのです。2019年の全人代
では、中国の経済成長率は「+6・0〜6・5%」と発表されて
いますが、これは事実ではないと思われます。
 向松祚教授によると、本当は「1・67%」であるといわれて
いますが、中国の10年物国債の金利は3・2%であるので、経
済成長率1・67%は長期金利を大きく下回っています。つまり
財政破綻状態ということになるのです。
 普通であれば、金利を経済成長率以下に下げればいいのですが
中国の場合はそれができないのです。なぜなら、ここまでバブル
づけになっている経済なので、金利調整で利下げをすると、確実
にハイパーインフレになってしまうからです。本当は、2018
年度から、緩やかに金融を引き締めつつあったのですが、米国に
貿易戦争を起こされて、意に反して経済を再拡大しなければなら
なくなり、中国は危ない橋を渡っているのです。
 現在の中国にとって一番怖いのは通貨危機です。中国国内のこ
とであれば、人民元を刷れば解決しますが、外国との関係になる
と、この手は使えないのです。外貨、とくにドルが必要になりま
す。そのため、どの国でも相応の外貨準備を備蓄しています。そ
うしないと、必要なものを輸入できなくなるし、対外債務(外貨
建ての借金)が払えなくなると、国が破綻してしまいます。
 この中国の外貨準備について、米中貿易戦争によって相当苦し
くなっており、普通の国では考えられない方法で、外貨を獲得し
ていると渡邊哲也氏がいっています。
─────────────────────────────
 たしかにいま中国の外貨準備はギリギリの状況になっている可
能性が高いです。ところが、一党独裁国家の中国は他の国ではあ
り得ない“特殊”な外貨準備があります。このところ中国政府は
中国の企業が海外で買った不動産や事業をすべて売却せよと命じ
ていますよね。その売却金が見えない外貨準備になってくるわけ
です。すでに破綻状態にある海航(集団)、安邦(保険集団)、
エンタテインメント事業の万達(ワンダ)あたりは過去に買収し
た海外企業の株式を売って現金化して、外貨準備に組み込み、通
貨防衛に使っています。あるいは、中国人富裕層が持つ海外資産
を強制的に売却させて現金化し、それを海外への支払いに充てて
います。         ──石平×渡邊哲也著の前掲書より
─────────────────────────────
 要するに、国が外貨準備として持っている外貨が不足している
わけです。しかし、中国共産党の幹部も含めて、中国という国は
本当のところ危ないと感じており、密かに海外資産を持つ中国人
は多くなっているのです。中国政府は、中国の企業や個人が海外
に持つ資産も外貨準備と考えています。
 范冰冰(ファンビンビン)という中国人の美人女優失踪事件と
いうのがありました。彼女は海外に多くの資産を持っており、中
国当局のターゲットになっていたのです。中国では、中国人が海
外に資産を移すことをさまざまな法律で規制しています。
 范冰冰氏は、中国当局に脱税容疑で拘留され、146億円もの
巨額の罰金が科せられたのですが、当局はそういう方法で、中国
人の持つ海外資産を没収し、外貨準備に組み入れているのです。
問題は、中国の企業や個人の持つ海外資産をどのようにして把握
するかですが、これには、ちゃんとした方法があるのです。
              ──[中国経済の真実/009]

≪画像および関連情報≫
 ●女優・范冰冰に脱税疑惑?
  ───────────────────────────
   中国で最も美しいといわれる人気女優・范冰冰(ファン・
  ビンビン)の脱税疑惑が思わぬ方向に広がるかもしれない。
  単なる美人女優のスキャンダルでなく、これも権力闘争、し
  かも軍部がらみとなると気になるではないか。今回は芸能ゴ
  シップを深読みしてみたい。
   范冰冰は山東省出身、1981年生まれで、女優、歌手と
  多方面で活躍している。日本では日中合作映画「墨攻」に出
  演したことで知られ、サントリー・ウーロン茶のCMでも親
  しまれるようになった。最近では主演を務めた映画「わたし
  は潘金蓮じゃない」(馮小剛監督、2016)で、サン・セ
  バスチャン国際映画祭の最優秀女優賞を受賞。カンヌ国際映
  画祭のレッドカーペットの常連でもあり、昨年はコンペティ
  ション部門の審査委員に選ばれて話題になった。
   范の婚約者の李晨は、知名度はかなり劣るが、人気の中国
  人俳優で、昨年の彼女の36回目の誕生日に正式にプロポー
  ズ。このとき、李晨が愛の証に贈った范冰冰そっくりの人形
  が、マリーナ・ビチコバという世界的に有名な人形師に特注
  したものでお値段30万ドル、というのも話題となった。そ
  んな大人気女優の范冰冰だが、黒い噂が一つあった。元国家
  副主席で2017年までは中央規律検査委員会書記として反
  腐敗キャンペーンの陣頭指揮をとっていた王岐山の愛人であ
  ったという噂だ。この噂の出元は、米国に逃亡した巨額汚職
  容疑で国際指名手配中の実業家・郭文貴だ。ただ、郭文貴が
  インターネットを通じて流すこうした情報の多くが共産党指
  導者たちの動揺や疑心暗鬼を狙ったガセ情報という見方も強
  いし、私もあまり信じていない。 https://bit.ly/2wbpfWQ
  ───────────────────────────

范冰冰(ファン・ビンビン).jpg
范冰冰(ファン・ビンビン)

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月22日

●「なぜ、四中全会は開催されないか」(EJ第5009号)

 昨日のEJの最後のところで、「中国の政界で極めて異例の事
態が起きている」と書きました。一体何のことでしょうか。今回
はその説明からはじめることにします。その“政治的事件”を理
解するためには、前提になる中国共産党の意思決定のやり方や運
営の決まりについて知ることが必要になります。
 習近平氏が中国共産党第5代中央委員会総書記に就任したのは
2012年11月15日のことです。このポストは、この国、中
華人民共和国の最高位です。国のトップ、国家主席よりも総書記
の方が上のポストです。習近平氏が第7代国家主席になったのは
2013年3月14日のことです。
 中国共産党の重要な方針の決定は、党大会、正確には、中国共
産党全国代表大会で行われます。中国の政治は、中国共産党がす
べてを指導することになっているので、党大会は中国共産党の最
高意思決定機関です。党大会は、5年に1回、1週間程度の日程
で開催されることになっています。
 しかし、5年に1回では間が空き過ぎるので、5年ごとの党大
会を1つの「期」ととらえ、その期のうちに「中全会(中国共産
党中央委員会全会)」という会議を7回実施することになってい
るのです。
─────────────────────────────
 第一中全会 ・・・ 中央委員の紹介と党執行役員人事決定
 第二中全会 ・・・ 国務院(政府)の人事/首相/副首相
 第三中全会 ・・・ 新指導部による国家運営の方向性伝達
 ―――――――――――――――――――――――――――
 第四中全会 ・・・ 方針の微調整や法改正/経済政策変更
 第五中全会 ・・・ 方針の微調整や法改正/経済政策変更
 第六中全会 ・・・ 方針の微調整や法改正/経済政策変更
 第七中全会 ・・・ 方針の微調整や法改正/経済政策変更
─────────────────────────────
 「第一中全会」は、党大会の直後に開催されます。そこでは、
主として新しい中央委員の紹介や、党の執行役員の人事を決める
ことになるので、党大会の直後に開催されることが恒例となって
いるのです。
 続いて、「第二中全会」は、国務院──最高国家行政機関で日
本の内閣に該当──の役員人事を決定します。2期目の習近平政
権は2018年1月18日〜19日の2日間行われています。
 「第三中全会」は、2期目の習近平政権が、国家をどのように
運営していくのかについて、その基本的な方向を伝達するために
行われます。習近平政権の第三中全会は、2018年2月26日
〜28日に行われています。
 ここまではほぼ予定通りに行われたのですが、ちょうど第三中
全会が終了した後、トランプ米大統領が対中貿易戦争を宣言した
のです。ここからがおかしいくなったのです。本来であれば、秋
には第四中全会が開催されなければならないのですが、それが現
在も行われていないのです。
 2018年11月14日の日付で、ネット上に掲載されている
福島香織氏のレポートには、四中全会開催のアナウンスがないこ
とについて次のように書かれています。
─────────────────────────────
 11月中旬にもなって、中国共産党の秋の重要な政治会議であ
る四中全会のアナウンスがない。10月20日、安倍晋三首相訪
中直前に開かれるという情報もあったが、習近平は強引に香港マ
カオ珠海大橋開通式出席を含めた南方視察の予定を入れて、これ
を11月頭に延期とした。だが11月初旬、習近平は上海で開催
された輸出博覧会の開幕式出席という予定を入れて、さらに、延
期。では米国の中間選挙の結果をみてから開くのだろうかと思わ
れていたが、中間選挙が終わってからもう一週間だ。14、17
日にはAPEC年度総会などの日程が入っており、11月中旬も
時間がありそうもない。
 改革開放以来、秋の中央委員会総会がこんなに遅くなったこと
はない。共産党内部で何か揉めていて総会を開くどころではない
のだ、と噂が立っている。      https://bit.ly/2LWclqn
─────────────────────────────
 四中全会からは、国の運営方針などを変更する場合や法改正を
する場合、その情報を伝える会議になります。したがって、この
ときの四中全会は重要であり、例年よりも開くニーズがあるので
すが、なぜか習政権はいまだに開催していないのです。
 本テーマを書くとき、主として参考にさせていただいている2
冊の本──石平/渡邊哲也両氏、宮崎正弘氏の本では、この四中
全会が開催されないことに関して次のように記述されています。
─────────────────────────────
◎渡邊哲也氏
 18年の秋に開かれるはずだった「四中全会」が開かれません
でした。そのため今回は、党の承認がない形での政策公表(全人
代)になっています。これには複数の理由があり、米中貿易戦争
が激化し、バブルの崩壊が危惧されるなか習近平国家主席への辞
任圧力が強まっており、四中全会でクーデターを起こされるのを
恐れたのではないかと言われています。一党独裁であっても、中
全会では、党が政策承認する会議であるため、承認の決を採るわ
けです。        ──石平×渡邊哲也著/ビジネス社刊
       『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺すとき』
◎宮崎正弘氏
 トランプ大統領の対中政策の基軸転換に周章狼狽した中国の習
近平国家主席は米中貿易戦争の不手際の責任を回避するため、定
例の四中全会を開催せず、付け刃の対応に追われた。中央委員会
全体会議を開催せずに全人代になだれこむという異常事態となっ
たのだ。           ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機 が始まる』
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/008]

≪画像および関連情報≫
 ●批判恐れ? 重要会議が開かれない理由/福島香織氏
  ───────────────────────────
   では、なぜ四中全会がこんなにも遅れているのか。強引に
  憲法を変え、集団指導体制の根本を揺るがし、個人独裁体制
  を打ち立てようとしている習近平政権二期目のやり方は、党
  内部でもいろいろ物議をかもしている。よほど内部で揉めて
  いるようだ。具体的に何を揉めているのだろう。
   一説によると、今四中全会を開くと、習近平の大バッシン
  グ大会になってしまい、その権力の座が危ない、と習近平自
  身が恐れているから開けないのではないか、という。ラジオ
  ・フリー・アジアの取材に清華大学政治学部元講師の呉強が
  こうコメントしていた。
  「習近平は南方視察の間、一度も大した演説をしなかった。
  改革開放についても何も語らなかった。四中全会の日程も、
  いまだアナウンスされていない。その理由について、北京の
  権力闘争が膠着状態に陥っているのではないかと思われる」
  「わかっているのは習近平にしろ中国共産党にしろ、誰も未
  来に対する長期的な改革開放についての明確な計画を持って
  いないということ。これに加えて年初以来の憲法改正が引き
  起こした権力の真空と密接に関係していると思われる。大衆
  にしても、党幹部にしても目下一切の責任は習近平一個人に
  すべてあると考えている。党の幹部は現在二つの選択に直面
  している。党に忠誠を誓うべきか、あるいは習近平個人に忠
  誠を誓うべきか」        https://bit.ly/2HFdsFl
  ───────────────────────────

四中全会での習近平国家主席/2015.jpg
四中全会での習近平国家主席/2015
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
RDF Site Summary