2016年12月27日

●「トランプ政権が対中国強硬な理由」(EJ第4429号)

 なぜ米国の政権は、ウォール街、とりわけゴールドマンサック
スの出身者を財務長官などの経済閣僚クラスの要職に採用するの
でしょうか。実際にクリントン政権とそれに続くブッシュ(子)
政権では、次のように、ゴールドマンサックスのトップが就任し
ています。
─────────────────────────────
   クリントン政権 ・・・  ロバート・ルービン氏
    ブッシュ政権 ・・・ ヘンリー・ポールソン氏
─────────────────────────────
 オバマ政権では、ゴールドマンの出身者ではないが、財務省の
出身で、国際担当財務次官も務めているティモシー・ガイトナー
氏が財務長官に就任しています。ガイトーナー氏は、ルービン財
務長官の下で働いていた経験の持ち主です。
 なぜ、米政権の財務官僚に、ウォール街の大物が必要なのかと
いうと、米国は世界最大の債務国であって、世界中からカネを集
める仕組みを作らないと、米国という国がもたないからです。そ
のため、米政権とウォール街は運命共同体として機能せざせるを
得ないのです。実際にどのような仕組みを作ったのかについて、
産経新聞特別記者の田村秀男氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ウォール街では金融危機が起きるたびにゴールドマンやその出
身者が辣腕を振ってきた。ルービン財務長官(当時、以下同じ)
は、1990年代前半に日本叩きの手段としたドル安・円高を止
めて強いドルを演出し、海外からの資金流入を促す一方で、アジ
ア諸国に金融自由化を強要し、投資資金を流し込んだ。(中略)
 株式市場が低迷する2001年に、ゴールドマンは「BRIC
s」の金融用語を発案し、ブラジル、ロシア、インド、中国をひ
とまとめにした投資手法を編み出し、外部のカネを集めて世界に
再配分、さらに米国に還流させ、幾度も稼ぐウォール街特有のビ
ジネスモデルを再強化した。       ──田村秀男氏論文
           「トランプ政権は日本経済のチャンス」
        ──「月刊Haneda2月号」/新春特大号
─────────────────────────────
 ところが、このウォール街中心政権は、2007年にサブプラ
イム危機、2008年にはリーマンショックに見舞われます。こ
の未曽有の危機処理に当たったのは、時のポールソン財務長官で
す。このときポールソン氏が何をしたかについては、彼の回想録
に詳しく書かれています。
 ポールソン長官は、実は親中派であり、財務長官に就任以来、
中国の要人との間に人脈を築き、ひたすら中国に米国債を持たせ
ることに腐心したのです。そのため中国でポールソン長官は「米
国債のセールスパーソン」といわれたのです。
 したがって、リーマン・ショックが起きたとき、ポールソン長
官は、中国の王岐山副首相に電話し、経営破綻しかけているモル
ガン・スタンレーへの緊急融資を打診します。しかし、これは実
現には至らなかったものの、時の中国の胡錦濤政権は米国債を継
続的に買い増しし、米国経済を支えたのです。そのため、中国の
米国債保有額は日本を抜いて世界一になったのです。
 この構図があるからこそ、その後のオバマ政権では、中国の人
権問題には目をつむり、南シナ海での人工島建設についても、口
では批判するものの、せいぜい航行の自由作戦と称して人工島の
近くを軍艦で航行する程度でお茶を濁していたのです。
 さらに習国家主席が執念を燃やしていた人民元のIMFの特別
引き出し権(SDR)入りまで容認したのも、大量の米国債を中
国に握られているため、今後も継続して国債を買ってもらわなけ
ればならないので、どうしても対中外交は軟弱なものになってし
まったのです。誰の目にも、人民元の国際通貨化は、時期尚早で
あることは明らかであったにもかかわらずこれを認めたののも、
中国が米国債を大量に保有しているからだったのです。
 しかし、トランプ次期政権は、その中国に対して、「一つの中
国」を含め、経済、安全保障の両面において、強硬な姿勢を打ち
出しています。あれほど、中国に対して弱腰であったオバマ政権
とは大きな違いです。それは、事情が変わったからなのです。
 添付ファイルを見てください。このグラフは、日中の対米貿易
収支と日中の米国債保有の推移をあらわしています。
 これによると、中国の対米貿易黒字は急膨張しているのに対し
日本のそれは縮小傾向にあります。これに対して、太い折れ線は
中国の米国債保有残高を示しています。これはサブプライム危機
の2008年頃に日本を抜き、2009年のリーマンショック以
降、急速に増えています。
 しかし、2011年頃から中国の米国債保有額は減少に転じ、
2016年になって、その保有額の日中逆転が生じています。一
方、中国の貿易黒字は膨張の一途をたどり、今や米貿易赤字総額
の5割ぐらいを占めるようになっています。どうしてこのような
変化が生じたかについて、産経新聞特別記者の田村秀男氏は、次
のように明解に分析しています。
─────────────────────────────
 中国は、対米貿易黒字で年間約3500億ドルのドルを稼いで
いるが、それを米市場に還流させるどころか、さらに米市場から
投資を引き揚げている。不動産バブル崩壊不安が漂う中国からの
巨額の資本流出に伴い、北京当局が外貨準備のドル資産を売って
人民元を買い支えざるをえなくなっている。
 安値輸出攻勢をかけて米国の中間層を痛めつけているうえに、
中国はいまや米金融市場の足をすくう巨大な問題勢力になった。
ワシントンは中国の金融パワーにへりくだる必要は全くなくなっ
た。「中貨(中国製品)排斥」で何の不都合があるものか。とは
言え、このままトランプ次期政権は強硬路線を貫徹できるのか。
                ──田村秀男氏前掲論文より
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/114]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏が仕掛ける中国試し、「台湾カード」の危険性
  ───────────────────────────
  [ワシントン5日/ロイター]ドナルド・トランプ次期米大
  統領は先週、台湾の蔡英文総統と電話会談し、中国に対する
  強硬姿勢を示唆したが、貿易や北朝鮮といった問題をめぐり
  中国から譲歩を引き出すための危険な賭けをどこまで推し進
  めるのかは定かではない。
   米国と台湾の首脳は1979年の米中国交正常化以来、直
  接コンタクトを取っていなかった。トランプ氏と蔡氏の電話
  会談を受け、中国政府は外交ルートを通じて、米国政府に抗
  議。来年1月に退陣するオバマ政権は、長年かけて共和/民
  主両党による政権が慎重に築き上げてきた対中関係の進展を
  損ないかねないと警告した。
   もしトランプ氏が過度に自分の考えを通そうとするなら、
  中国との軍事対立を招く可能性があると、専門家らは指摘す
  る。同氏の側近とマイク・ペンス次期米副大統領は、蔡氏と
  の10分間に及ぶ電話会談は「表敬」であり、対中政策の変
  更を示すものではないとして、火消しに追われている。
   しかしトランプ氏は4日、中国の経済・軍事政策をツイッ
  ターで批判し、火に油を注いだ。一方、同氏の経済顧問であ
  るスティーブン・ムーア氏は、中国が気に入らなくても「お
  好きなように」と述べた。元米高官を含む専門家らは、台湾
  首脳との電話会談は中国に対する警告の第一弾にすぎないと
  みている。            http://bit.ly/2gYwGYg
  ───────────────────────────
 ●図表出典/田村秀男氏前掲論文より

米国の対日中貿易赤字と日中の米国債保有残高(億ドル).jpg
米国の対日中貿易赤字と日中の米国債保有残高(億ドル)
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2016年12月26日

●「トランプ次期政権とゴールドマン」(EJ第4428号)

 2016年も今日を含めてあと6日です。EJは28日までお
届けします。それでこのテーマは終了します。
 ところで、次期大統領に決まったトランプ氏は、世界に先駆け
てなぜ安倍晋三首相に会ったのでしょうか。
 12月24日のことですが、BS朝日の「激論!クロスファイ
ア」に出演した菅官房長官は、司会の田原総一朗氏に同じ質問を
され、会談が成功した理由として次の2つを上げています。
─────────────────────────────
 1.大統領選投票日の3日前に日本政府はトランプ事務所に
   電話を入れ、当選したときの祝いの電話はどこにかけれ
   ばよいか尋ねている。
 2.当選直後の安倍VSトランプの電話会談の内容は極めて
   好感触で、同席した菅官房長官は「2人はウマが合う」
   ことを感じたという。
─────────────────────────────
 日本政府がトランプ氏にお祝いの電話をかけたとき、先方の対
応が非常に好意的であったことは確かのようです。菅官房長官に
よると、安倍首相が会談を提案すると、トランプ氏はすぐに同意
してくれたといいます。
 これだけではないのです。EJでここまで述べてきているよう
に、トランプ次期米政権は中国の「一つの中国」を批判し、中国
に対する強硬派を次々と安全保障関係の要職につけています。こ
れを見ると、トランプ次期米政権は、中国に対して相当の強い姿
勢で臨むという強い意思を感じます。
 この米国の中国に対する強硬姿勢は、何かと中国から脅威を受
けている日本にとって好都合です。果たしてこれは偶然なのか、
それともトランプ次期米政権に何らかの狙いがあってあえてやっ
ていることなのでしょうか。
 結論からいうと、けっして偶然ではなく、ちゃんとした考え方
に基づいて行われているのです。その知恵をトランプ氏に授けて
いるのが、米外交政策の超大物であるヘンリー・キッシンジャー
博士ではないかといわれています。
 ここで思い出していただきたいことがあります。トランプ氏は
大統領予備選を勝ち抜き、共和党の大統領候補になることが確定
した直後の2016年5月18日、ニューヨーク在住のキッシン
ジャー博士の自宅を訪ねているのです。これは実に重要な意味を
持っています。
 評論家の副島隆彦氏は、トランプ氏のキッシンジャー博士宅訪
問によって、トランプ氏が次期米大統領になることを確信したと
いいます。それは、トランプ氏がデイヴィッド・ロックフェラー
氏につながってくることを意味するからです。このとき、娘婿の
ジャレッド・クシュナー氏もトランプ氏に同行しています。これ
については2016年8月18日のEJ第4342号でご紹介し
ています。http://bit.ly/2b0mMYc
 もうひとつ、トランプ次期米政権の経済関係の要職の顔ぶれを
見ると、政権の中枢にゴールドマンサックスをはじめ、ニューヨ
ークのウォール街出身の大物が陣取っていることがわかります。
例えば、2016年12月1日付の日本経済新聞には、次の記事
が掲載されています。
─────────────────────────────
【ニューヨーク=山下晃】トランプ次期米大統領の政権移行チー
ムがゴールドマン・サックスの社長兼最高執行責任者(COO)
のゲーリー・コーン氏(56)を政権の要職に据える検討を進め
ていることが分かった。すでに同社出身のスティーブン・ムニュ
ーチン氏が財務長官に指名されており、実現すればトランプ政権
でのゴールドマン色が一段と色濃くなる。
 米メディアによると、米行政管理予算局(OMB)局長などで
の起用が検討されている。コーン氏は11月29日にトランプ氏
の自宅のトランプタワーを訪れ面会している。
 コーン氏は、現在ゴールドマンのナンバー2。最高経営責任者
(CEO)のロイド・ブランクファイン氏がトップの座を譲らず
コーン氏の行く末はウォール街で度々話題に上る。起用が検討さ
れている行政管理予算局は予算の調整や執行を担う。局長は大統
領に直属し現在のルー財務長官も同ポストを経験しており、政権
の重要ポスト。だが金融業界での格はコーン氏の方がムニューチ
ン氏より上との見方があり、コーン氏が引き受けるかは不透明な
部分が残る。   ──2016年12月1日付、日本経済新聞
                http://s.nikkei.com/2i3ZIcH
─────────────────────────────
 ゴールドマンサックスが政権の中枢に座る体制は、米国の政権
ではずっと続いています。クリントン政権、ブッシュ(子)政権
そしてオバマ政権でも同様です。しかし、これらの政権において
彼らは、いずれも中国の利権狙いの政権であり、日本には厳しい
政権だったのです。しかし、2008年にリーマン・ショックに
見舞われると状況は少しずつ変化してきたのです。
 しかし、トランプ氏は、選挙期間中、ゴールドマンサックスを
「特別利益団体ゴールドマンサックス」と厳しく攻撃していたの
です。クリントン氏とのゴールドマンサックスの資金面での癒着
を批判しての言動です。実際にウォール街は、大統領選では、民
主党のヒラリー・クリントン氏へ7800万ドルもの献金をした
のに対し、トランプ陣営にはその100分の1しか出していない
のです。
 しかし、トランプ氏は選挙に勝利し、大統領になることが確定
すると、ゴールドマンサックスへの批判をひっこめ、逆に積極的
にゴールドマン出身者を採用し始めたのです。財務長官にゴール
ドマンサックスの元幹部のスティーブン・ムニューチン氏を指名
し、新聞報道にあるように、ゴールドマンサックスの社長兼CO
Oのゲーリー・コーン氏を米行政管理予算局の局長に任用しよう
としています。そこには何があったのでしょうか。
            ──[孤立主義化する米国/113]

≪画像および関連情報≫
 ●ウォール街の敵か味方か/2016年11月14日
  ───────────────────────────
   米次期政権の財務長官候補に、JPモルガン・チェースの
  ジェイミー・ダイモンCEOや、ゴールドマン・サックス元
  幹部、スティーブン・ムニューチン氏などの名が挙がってい
  ることが、米CNBCの報道から明らかになった。「大手銀
  行の敵か味方か」と論じられてきたトランプ氏だが、ゴール
  ドマンCEOは「強気の経済政策が市場にポジティブな影響
  をもたらす」と歓迎の意を示している。
   ロイター通信は、下院金融委のジェブ・ヘンサーリング委
  員長も有力視されていると報じている。いずれも内部の事情
  に詳しい関係者筋からの情報で、トランプ氏側から正式なコ
  メントは発表されていない。
   過去に何度か財務長官候補として浮上したことのあるダイ
  モンCEOは、以前から財務長官の地位には興味がない意思
  を明確にしている。またトランプ氏の政治界進出に関しても
  「政治経験のない実業家が大統領になれるはずがない」と一
  貫して否定的な態度を貫いてきた。
   新政権誕生後には「世界に変化の時期が訪れている」とい
  うメモを社内にまわし、「組織リーダーが協力しあって、経
  済成長に貢献する手段を模索する必要がある」と現実を受け
  とめながら前向きに進んでいく方向性を打ちだしている。し
  かしトランプ氏に対する不信感が突如消滅したというわけで
  はないはずだ。          http://bit.ly/2hT0uZc
  ───────────────────────────

ウォール街はトランプ次期政権の味方か.jpg
ウォール街はトランプ次期政権の味方か
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2016年12月22日

●「東/南シナ海で中国が決起する?」(EJ第4427号)

 トランプ次期米大統領は、コミュニケーションの手段としてツ
イッターを多用します。現代は、コミュニケーションの手段がた
くさんあります。メール、ブログ、ツイッター、フェースブック
LINE、インスタグラムなどです。
 これらのコミュニケーションツールのなかで、ツイッターは一
番シンプルで、ストレートで、拡散性が高いと思います。それは
私も使っているので、よくわかります。しかし、次の米国の大統
領になる超有名人がツィートを連発すると、世界中に大きな影響
を与えることになってしまいます。
 それに、これらのコミュニケーション手段を使ってのコミュニ
ケーションには問題があります。それは、それらがキューレス・
メディアであることです。ここで「キューレス」とは、言葉が足
りないという意味です。つまり、言葉が足りないので、誤解を招
き、相手を必要以上に怒らせてしまう恐れがあることです。とく
にツイッターは、文字が140字に制限されているので、超キュ
ーレス・メディアということになります。
 このことについて書かれている本があります。2000年の発
行なので、SNSがまだ登場していない時期であり、メールが取
り上げられていますが、SNSも同じことです。
─────────────────────────────
 メールは「キューレス」であるところに特徴があります。相手
から与えられる情報が少ないからこそ、相手がほんとうは何を感
じているか、考えているかがわからないのです。情報が限られる
となると、人は勝手に相手のことを想像力で補います。
 この「キューレス」は悪い方向にも作用します。微妙な言い回
しやメールの文章の中で一瞬むかっとしたような気持ちがあると
微妙に文章に反映されます。その微妙な感情の揺れの部分が、想
像を膨らませている相手にダイレクトに響いていくということも
起きてきます。そして、それは人を非常に感情的にします。
             ──小林正幸著/ダイヤモンド社刊
 『なぜ、メールは人を感情的にするのか/Eメールの心理学』
─────────────────────────────
 もし、SNSでの対話が“感情的”になりやすいとすれば、現
在、中国とトランプ氏のやり取りは最悪であるといえます。トラ
ンプ氏は、台湾の蔡英文総統からの電話を受けたことを中国から
非難されたとき、次のようにツィートしています。
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 中国が通貨切り下げや、中国に入る米国製品への重い課税、南
シナ海の真ん中での大規模な軍事複合施設の建設を、われわれに
了解を求めてきただろうか。そうは思わない。 ──トランプ氏
─────────────────────────────
 これに関して中国は国際情報紙「環球時報」を使って、次のよ
うにトランプ氏を徹底的に罵倒しています。中国もここまでいっ
てしまうと、その修復はきわめて困難なものになります。
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 中国共産党中央機関紙「人民日報」傘下の国際情報紙『環球時
報』(12月12日付)は、「トランプよ、お聞きあれ・・「一
つの中国』は売買できない」と題した社説を掲載した。「(次期
アメリカ大統領は外交を理解しないガキだ。『一つの中国』政策
は、売買できないものだ。単なる商人であるトランプは、何にで
も値段を付けられ、かつ自分の実力は強大で、自分の好きなよう
に売買できると、思い上がっているようだ。それならアメリカの
憲法にも値段を付けて、サウジアラビアやシンガポールなど盟友
の政治制度と売買してみろ。中国はトランプと、がっぷり四つの
闘争を展開していくべきだ。奴にクギを打ちつけて、中国を痛め
つけてはならないと思い知らせてやるがよい。中国は十分な弾薬
を準備していく・・」    ──「週刊現代」新春合併特大号
─────────────────────────────
 12月16日に中国海軍が米海軍の水中グライダーを奪ったと
き、トランプ氏は次のようにツィートしています。そして17日
に、中国が水中グライダーの返還の用意があるというと、またし
ても、それに対応してツィートを発信しています。
─────────────────────────────
◎中国は公海で米海軍無人潜水機を盗んだ。水中から奪い、中国
 に持ち帰る前代未聞の行為だ。
◎返還するそうだが、盗んだ無人潜水機などいらないと中国にい
 いたい。そっちで持っておけ!
─────────────────────────────
 ますます事態は深刻になりつつあります。未確認情報ですが、
中国は退任間近のオバマ政権に対し、トランプ政権が発足する1
月20日までに、「一つの中国」見直しの方針変更を要求してい
るといいます。複数の米軍、米情報当局関係者から得た情報に次
のようなものがあります。
─────────────────────────────
 中国政府関係者、工作員が「トランプ氏が対中強硬策に出たら
報復する」と米国の政財界関係者を脅している。報復対象米企業
リストを作成し、「トランプ氏と決別しろ」と関係者に迫ってい
るという。        ──12月19日発行「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 そこで、現在囁かれているのは、中国が来年1月のトランプ政
権発足までに、南シナ海と東シナ海で、中国が決起するという極
秘情報です。具体的には、事実上オバマ政権が「死に体」である
現在、南シナ海の人工島の軍事基地化を一段と進め、東シナ海で
は、偽装漁船による海上民兵を使って尖閣諸島上陸を行い、既成
事実化する作戦です。
 まさかとは思いますが、中国が焦っているのは間違いないこと
で、これ以上中国とトランプ氏の冷たい会話が繰り返され、ヒー
トアップすると、そういうことが絶対に起こらないとはいえない
のです。日本はそこまで見極めて行動することが求められている
のです。        ──[孤立主義化する米国/112]

≪画像および関連情報≫
 ●中国、トランプ氏の真意見極め 台湾は対米関係強化
  ───────────────────────────
   【北京=山田周平、台北=伊原健作】中国外務省は3日、
  トランプ次期米大統領と台湾の蔡英文総統の電話協議につい
  て「米国が一つの中国の政策を守り、台湾問題を慎重かつ妥
  当に処理することを促す」とけん制する耿爽副報道局長の談
  話を発表した。トランプ政権の発足を機に米台が接近するこ
  とを警戒している。
   ただ、談話は中国の従来の立場を確認するにとどめ、トラ
  ンプ氏への直接の批判はない。中国の王毅外相は談話に先立
  ち「台湾の小細工にすぎない」と香港メディアの取材に答え
  批判の矛先を蔡総統に向けた。まずはトランプ氏の真意を見
  極める構えとみられる。
   中国の共産党政権は台湾統一を悲願としているが、武器供
  与など米国による台湾支援が大きな障害だと認識。トランプ
  次期政権が台湾との交流拡大に動けば米台へ厳しい対抗措置
  をとる見通しだ。
   一方、台湾の蔡英文政権はトランプ氏の当選直後から関係
  強化を切望。安全保障と経済でトランプ氏の内向き志向に危
  機感を深めていたためだ。電話協議を現地メディアは「歴史
  的」と評価。ただ中国側からの圧力が強まることへの懸念も
  残る。「特に経済発展と『国防』の強化について意見と理念
  を分かち合えた」。台湾の総統府は3日、会談の成果を誇示
  するコメントを出した。その後「台米、両岸(中台)関係は
  ともに非常に重要で、衝突しない」とも表明、中国側に理解
  を求めた。         http://s.nikkei.com/2hTQBrP
  ───────────────────────────

ドナルド・トランプ次期米大統領.jpg
ドナルド・トランプ次期米大統領
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2016年12月21日

●「中国を追い詰めている4つの事実」(EJ第4426号)

 現在中国は、米国からすさまじいプレッシャーを受けていると
いえます。それは次の4つの事実と深く関わっています。これに
より、中国軍が南シナ海と東シナ海で、不穏な動きを見せる可能
性があります。
─────────────────────────────
 1.次期米国トランプ政権の安全保障関連の閣僚人事構想が
   極端に「反中国」である。
 2.トランプ次期大統領が台湾の蔡英文総統からの祝意の電
   話を受け、対話したこと。
 3.トランプ氏がFOXテレビのインタビューで「一つの中
   国」に疑問を示したこと。
 4.米日露が連携を結ぶ動きがあり、安全保障面で中国が脅
   かされる恐れがあること。
─────────────────────────────
 「1」の反中国閣僚人事構想について述べます。偶然ではなく
十分練られた人事構想であるといえます。
 次期トランプ政権の閣僚人事において、「反中国」の傾向が見
られることは既に述べていますが、さらに新しい情報について書
くことにします。
 トランプ氏は、国務長官にエクソン・モービルCEOのレック
ス・ティラーソン氏を指名しています。ティラーソン氏を強く推
薦した人物は3人いますが、すべて強硬な反中国派であることで
す。いずれもブッシュ(子)政権時の閣僚です。
 1人は、国防長官のロバート・ゲーツ氏です。そしてもう1人
は、国務長官や大統領補佐官を務めたコンドリーザ・ライス氏、
さらにもう1人は、ウィルバー・ロス次期商務長官の下で米通商
代表部(USTR)代表に就く予定の、米大手鉄鋼メーカーCE
Oのダン・ディミッコ氏です。これらの3人は、コテコテの対中
強硬派として知られています。
 さらに、閣僚ではありませんが、ロス商務長官のスタッフに就
任するR・ライティザー、J・ゲリッシュ両弁護士は、中国の鉄
鋼ダンピング問題や国際貿易訴訟を得意としています。よくぞこ
こまで集めたりと思えるほど、反中国の強硬派ばかりの布陣なの
です。中国も当然のことながら、分析をしていると思うので、不
安になるのは当然です。
 「2」と「3」は、トランプ氏による「一つの中国」に対する
見直し発言です。
 トランプ氏の台湾発言は、ついうっかり口にしたのではなく、
十分考えたうえでの発言です。この発言の背景について、中国分
析の第一人者である遠藤誉氏は、次のように解説しています。
─────────────────────────────
 トランプ氏の周囲には「米国は中国との通商交渉で強硬姿勢を
貫け」と主張する経済学者のピーター・ナブァロ氏や、タカ派の
ジョン・ボルトン元国連大使がいて、中国に対し、「台湾カード
を使え」とアドバイスしているようだ。     ──遠藤誉氏
               ──19日発行の「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 米国は「一つの中国」をなぜ認めたのでしょうか。これには少
し歴史を振り返る必要があります。
 中国と米国は、1972年から国交正常化交渉を始めていたの
です。そのとき台湾が中国の一部かどうかをめぐって、もめにも
めたのです。それで7年の月日が流れています。
 結局ニクソン政権は、泥沼化したベトナム戦争からの撤退のた
め、中ソ対立を抱えていた中国に接近したのです。そのため、米
国は中国が主張する「一つの中国」を受け入れたのです。しかし
現在も台湾とは民間レベルで親密な関係を保っているし、台湾と
の間における事実上の軍事同盟によって「台湾関係法」を結び、
武器を売却するなど、親密な関係にあります。
 これについて、中国はその都度反発しながらも、米国が一応は
「一つの中国」の原則は認めているので、大いに不満ではあるも
のの、米中関係を平和裡に保ってきたのです。
 ところがトランプ氏は、まだ大統領就任前ではあるものの、そ
の「一つの中国」の原則の見直しに言及したのですから、中国が
反発するのは当然といえます。もし、トランプ氏があくまでこれ
にこだわるとどうなるでしょうか。これについて、遠藤誉氏は次
のようにいっています。
─────────────────────────────
 問題は、トランプ氏が本当に台湾の独立を支持すれば、戦争が
起きる、ということ。中国は2005年に「反国家分裂法」を制
定した。「台湾が独立するなら、武力を行使して鎮圧する」と書
いてある。その心配は。「ビジネスのため、そこまでいかないと
思う。だがトランプ氏は何を言い、何をやるか予測不可能だ」。
               ──19日発行の「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 こういう状況ににおいて、東シナ海と南シナ海において、中国
は、それぞれ不可解なアクションを起こしてきています。
 12月10日、中国軍機6機が沖縄本島と宮古島の間を通過し
たさい、航空自衛隊のF─15戦闘機が、スクランブル(緊急発
進)しています。当然の防衛措置ですが、中国国防省は「空自機
が『妨害弾』を発射して安全を脅かした」と抗議したのです。
これに対して日本側は、妨害弾など発射していないので、「事実
と異なる」と反論・抗議しています。これが東シナ海での中国の
アクションです。
 南シナ海については、12月15日午後、中国海軍が、米海軍
の測量艦「パウディッチ」が、水中グライダー2機を回収しよう
としたところ、中国海軍艦艇が割って入り、1機を強奪するとい
う不可解な行動をとったことです。これについては、昨日のEJ
で詳しく述べています。中国は何を狙っているのでしょうか。こ
れについては、明日のEJで続いて取り上げます。
            ──[孤立主義化する米国/111]

≪画像および関連情報≫
 ●宮古海峡沖を中国軍用機6機が通過
  ───────────────────────────
   12月10日午前、沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡の上
  空を中国軍のSU30戦闘機2機や情報収集機など合計6機
  が通過したと発表されました。航空自衛隊戦闘機がスクラン
  ブル発進(緊急発進)し対応しましたが、中国機による領空
  侵犯はなかったようです。同日夜になり、中国国防省が定例
  の遠洋訓練をしていた中国空軍機に対し、虚空自衛隊の戦闘
  機「F−15」2機が接近し、妨害弾(フレアとみられる)
  を発射し乗員の安全に危害を与えたとして、日本側に厳重な
  申し入れを行ったと発表しました。
   自衛隊機による同様の対応は今年夏頃にも起きており、中
  国軍機による攻撃動作(ミサイルロックオン)を回避する為
  フレアを作動させ退避しています。防衛省によると「中国機
  の飛行を妨害した事実はない」とコメントしており、この騒
  ぎは日本国内でも報じられています。
   防衛省の発表によると10日午前、中国軍用機(戦闘機な
  ど)6機が東シナ海から沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を
  抜け、太平洋の方面に飛行したということです。確認された
  のは「SU30戦闘機」2機、「H6爆撃機」2機、「TU
  154情報収集機」1機、「Y8情報収集機」1機の合わせ
  て6機。その後、SU30戦闘機2機はUターンして東シナ
  海方面に戻ったということですが、ほかの4機は先島諸島の
  太平洋側を南西方向に飛行したということです。
                   http://bit.ly/2hM0QBu
  ───────────────────────────

中国軍戦闘機/沖縄/宮古島.jpg
中国軍戦闘機/沖縄/宮古島
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2016年12月20日

●「米新政権をテストする中国の策略」(EJ第4425号)

 ヒラリー・クリントン氏が大統領選に敗北したことによって、
米国と中国との間の不自然な結びつきが防止できたことは日本に
とって幸いであったと思います。
 しかし、トランプ次期米政権の対中国政策はまだ十分見えてき
ていませんが、安全保障関係の閣僚人事やトランプ氏による「一
つの中国の原則に縛られない」という発言によって、中国に対し
て相当強い姿勢で臨む可能性も高まってきています。
 そのような矢先に、中国と米国の間で、ひとつのもめ事が発生
したのです。米海軍の水中グライダーが中国海軍に捕獲されると
いう事件です。これは「トランプ/米国」VS「習/中国」の前
哨戦とでもいうべき出来事であるといえます。
 事件の内容については、12月17日付「ヤフー・ニュース」
から引用します。
─────────────────────────────
◎中国艦船、米潜水機奪う=南シナ海で海洋調査中/国防総省
 米国防総省は16日、中国海軍の艦船が南シナ海の公海で15
日に、米海軍海洋調査船の無人潜水機を「違法に」奪ったと発表
した。米側は中国に対し、潜水機の即時返還を公式に要求した。
国防総省のデービス報道部長は「ほかに同種の例は聞いたことが
ない」とし、中国の行動を国際法違反と批判した。
 潜水機が奪われた現場は、フィリピンのスービック湾北西沖約
50カイリ(約93キロ)で、米調査船「バウディッチ」は無線
で中国艦船に潜水機を返すよう要求した。「(中国)艦船は無線
連絡を認識したが、(返還)要求は無視された」という。デービ
ス部長によれば、調査船が潜水機2機を回収しようとしたところ
中国艦船が近づき、小型ボートを出して1機を奪った。潜水機は
海水温や塩分濃度など一般的な情報を収集しており、機密情報に
は全く関係していないという。     http://bit.ly/2gOsnOd
─────────────────────────────
 実は中国は、新しい米政権が発足するタイミングで、同じよう
なことをこれまでも仕掛けてきているのです。新政権の反応を見
ようとしているのです。これは中国の常套手段です。
 ジョージ・ブッシュ(子)政権が発足した2001年4月、海
南島沖約110キロメートルの国際空域で、米海軍EP─3と中
国戦闘機が接触し、中国人のパイロットが行方不明になるという
事件が起きています。この事件(海南島事件)について、ウイキ
ペディアは次のように伝えています。
─────────────────────────────
 2001年4月1日、午前8時55分(中国標準時)海南島か
ら東南に110キロメートルの南シナ海上空の公海上で、中国国
内の無線通信傍受の偵察活動をしていたアメリカ海軍所属の電子
偵察機EP─3Eと中国人民解放軍海軍航空隊所属のJ─811
戦闘機が空中衝突する事故が発生した。そのため、中国人民解放
軍機が墜落しパイロットが行方不明になった。一方のアメリカ軍
偵察機は大きな損傷を負ったが、至近の海南島の飛行場に午前9
時33分に不時着した。搭乗員は中国当局によって身柄を拘束さ
れた。                http://bit.ly/2hMsUlq
─────────────────────────────
 事故が起きたのは、あくまで「南シナ海上空の公海上」です。
しかし、米国の情報収集飛行に苛立った中国の戦闘機は米海軍の
EP─3に異常接近し、接触して両機とも墜落したのです。
 事件を知ったブッシュ大統領は、江沢民国家主席にホットライ
ンを使って電話をかけたのですが、江主席は一向に電話に出ず、
13回目にやっとつながったといいます。
 実はこのとき、江沢民は事件を知るとうろたえて、ブッシュ大
統領からの電話に出ず、「どうしょう」と側近を集めてその対応
について協議したといいます。まさか衝突して両機が落ちること
は考えていなかったからです。当時の米中関係は極めて悪く、米
中戦争になる危険性もあったのです。これが海南島事件です。
 そのブッシュ政権が終わってオバマ政権が発足したのは、20
09年1月20日のことです。その3月8日、南シナ海の公海上
で、米海軍の音響測定艦インペッカブルが中国海軍の調査船5隻
にさまざまな妨害されたのです。その事件の詳細は、次のAFP
の記事を参照してください。
─────────────────────────────
【3月10日AFP】米国防総省は、南シナ海の公海上で8日、
5隻の中国艦船が、米海軍の非武装の調査船「インペッカブル」
に対し、約8メートル以内に近づくなどの危険な妨害行為を行っ
たと発表した。同省はまた、この事態に対し中国当局に抗議した
ことを明らかにした。
 国防総省によると、インペッカブルは中国・海南島の南120
キロメ点で活動中、5隻の中国の艦船に取り囲まれた。このうち
2隻が15メートル以内まで接近し、中国国旗を振りながら同海
域から退去するように要求したという。インペッカブルは中国艦
船に向け放水を行ったが、この際、中国艦船の乗組員は下着姿に
なったという。            http://bit.ly/2hMJG3Z
─────────────────────────────
 またしても公海上での進路妨害です。中国は、国連海洋法条約
(UNCLOS)を都合良く解釈し、ここはわれわれの海だと主
張し、他国に実力行使をしているのです。誠に傍若無人な対応で
あると思います。
 今回の潜水機捕獲事件が起きたのは、フィリピンのスービック
湾北西約50カイリの国際水域で、中国が実効支配しようしてい
るスカボロー礁よりずっとフィリピン寄りの位置です。ここの水
中での調査で中国にクレームをつけられるいわれはないのです。
 在英の国際ジャーナリストの木村正人氏は、この事件は「『一
つの中国』の原則という中国の核心的利益を踏みにじったトラン
プ氏への牽制と、南シナ海は中国の海であることを周辺国に知ら
しめる狙いがある」と述べています。
            ──[孤立主義化する米国/110]

≪画像および関連情報≫
 ●米海軍の水中グライダー捕獲事件
  ───────────────────────────
   中国が軍事要塞化を進める南シナ海の国際水域で海洋調査
  をしていた米海軍の無人水中グライダーが12月15日、中
  国海軍に捕獲される事件が起きました。米国防総省は、主権
  国家は他国の管轄権に属さないという「主権免除」を前面に
  打ち出し、水中グライダーの即時返還を求めています。
   米国のトランプ次期大統領は11日放送の米テレビ番組で
  米中関係の出発点となってきた「一つの中国」原則について
  「どうして我々が縛られなければならないのか」と疑問を呈
  したばかりです。台湾は中国の一部であるという「一つの中
  国」政策は、習近平国家主席の核心的利益をなすだけに中国
  は敏感に反応したようです。
   この事件は、トランプ・習時代の米中関係を占う重要な意
  味を持っています。ユーラシア大陸の地政学を考えると、大
  国の中国とロシアに手を組まれるほど厄介なことはありませ
  ん。トランプ氏はロシアのプーチン大統領に宥和的な発言を
  繰り返す一方で、中国には非常に厳しい発言を繰り返してい
  ます。トランプ氏が「米国の国防費を負担しろ」と日本や韓
  国などの同盟国に無理難題を押し付け、中国経済圏に対して
  防波堤を築く環太平洋経済連携協定(TPP)を破棄すれば
  アジア太平洋で米国のプレゼンスは間違いなく低下するでし
  ょう。              http://bit.ly/2gYNbps
  ───────────────────────────

米国製/水中グライダー.jpg
米国製/水中グライダー
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2016年12月19日

●「クリントン家と中国との黒い関係」(EJ第4424号)

 米国大統領選が始まったとき、多くの日本人は、ヒラリー・ク
リントン候補の勝利を願ったと思います。少なくとも予備選にお
いて、強く日本への非難を繰り返していたドナルド・トランプ候
補よりもマシと考えたからだと思います。
 日本の安全保障上脅威なのは中国の存在です。中国は日本の尖
閣諸島を核心的利益と位置づけ、いずれ武力によって奪い取るつ
もりで、実際に何回もアタックをかけてきています。そのさい、
日本の後ろ盾になってくれる存在は米国であり、どのような人が
米国の大統領になるかは最大の関心事項になります。
 トランプ氏についての詳しい情報がなかったときの状態におい
ては、少なくとも米国の国務長官として「尖閣諸島の紛争は日米
安保条約第5条の適用範囲に入る」と明言してくれたクリントン
氏が大統領としてベストであると考えたのは当然です。
 しかし、結論から先にいえば、対中国を気にするのであれば、
ヒラリー・クリントン大統領は最悪だったといえます。なぜなら
クリントン家はあまりにも中国にべったりの関係だからです。そ
の関係は、1980年代にはじまるのです。今から46年も前か
らのことなのです。
 中国では、ケ小平主席の後を継いだ江沢民氏は、自身が国家主
席になる1990年代から、米国とのパイプ作り工作をはじめて
います。そのとき、なぜか、当時米国のアーカンソー州知事を務
めるビル・クリントン氏とその妻であるヒラリー・クリントン氏
に目をつけたのです。
 もともとビル・クリントン氏が、なぜ突如大統領選に出馬し、
当時湾岸戦争に勝利して人気上昇中のジョージ・ブッシュ(父)
大統領の再選を阻んだのかは疑問ですが、これについては既に述
べているので、さらなる言及は避けることにします。江沢民氏も
当時のビル・クリントン氏が大統領になる可能性が高いという情
報をどこからか掴んでいたものと思われます。
 そのとき、ビル・クリントン氏は、アーカンソー州の2期目の
知事を務めていたのです。ビルとヒラリー両氏は1975年に結
婚し、1978年にビル氏が32歳の若さでアーカンソー州知事
に当選すると、アーカンソー州のファースト・レディとして積極
的に活躍するかたわら、弁護士の仕事もしていたのです。そして
ヒラリー氏は、アーカンソー法律事務所の上級パートナーを務め
るようになります。
 中国の江沢民氏は、このアーカンソー法律事務所に目をつけた
のです。彼は、自らの支配下にあるリッポ・グループをアーカン
ソー法律事務所と顧問契約を締結させ、そこを通して巨額の報酬
をクリントン家に送り込んだのです。
 ところでリッポ・グループ(リッポ財閥)とは何でしょうか。
 リッポ・グループは、インドネシアの華僑華人のかたちをとっ
ていますが、明らかに中国と密接につながっているのです。日本
の評論家で、国際政治・米国金融アナリストである伊藤貫氏の著
作から引用します。
─────────────────────────────
 中国共産党と人民解放軍は、クリントン夫妻に対して多額の贈
賄をするパイプとして、インドネシア・香港・中国に拠点を持つ
リッポ・グループ(力宝集団)を使用した。リッポ・グループは
インドネシアの華僑財閥・リアディ家が所有する企業集団であり
銀行業・不動産業・流通業・観光業等を経営している。
               ──伊藤貫著/PHP研究所刊
               「中国の『核』が世界を制す」
─────────────────────────────
 つまり、リッポグループは、人民解放軍のスパイ機関といって
よいのです。そういうグループから資金支援を受けて、ビル・ク
リントン氏は、1992年の大統領選に出馬し、大方の予想を覆
して大統領に就任します。そして、2期目も同グループからの支
援を受けて再選を果たしたのです。
 つまり、ビル・クリントン氏は、1993年1月20日〜20
01年まで大統領の地位にあったのですが、その間、当然のこと
ながら、クリントン家とリッポ・グループとの関係は、ますます
深くなっていったのです。
 1997年頃のことですが、米国民主党の政治家たちが中国か
ら収賄している疑惑があるというニュースが米国のマスコミに流
れ、それが中国政府スパイ組織による深刻な外交問題に発展する
のです。これを受けてFBIは事実関係の調査に乗り出しますが
たちまち、捜査の中断に追い込まれます。これについて伊藤貫氏
は次のように書いています。
─────────────────────────────
 しかし、FBIと連邦政府検察官による贈賄事件の捜査は、数
ヶ月しか続かなかった。1997年初頭、ホワイトハウスの命令
を受けた司法省が、この件に関する捜査を打ち切る決定を下した
からである。
 この事件の捜査を続行するために独立検察官を任命することを
主張したキャリア検察官、チャールス・ラベラは、即刻、解雇さ
れた。他の検察官たちはラベラが即座にクビになったのを見て、
「この事件には、深入りしないほうがよい」と理解した。
                 ──伊藤貫著の前掲書より
─────────────────────────────
 1998年のことですが、クリントン大統領は企業家1200
人を連れて中国を訪問します。そのときクリントン氏は、多くの
米国の利権を中国に渡したと思われます。中国全土にマクドナル
ド店舗が広まり、核兵器や軍事技術も中国に供与し、中国軍隊の
近代化にも貢献したといわれています。
 しかも、このときクリントン大統領は、9日間も中国に滞在し
ながら、日本に立ち寄ることなく帰国したことから「ジャパン・
パッシング(日本無視政策)」という言葉が流行し、米民主党政
権は「反日・親中」という認識を再確認させることになったので
す。          ──[孤立主義化する米国/109]

≪画像および関連情報≫
 ●中国から狙われたクリントン夫妻
  ───────────────────────────
   中国はケ小平時代に発足させた人民解放軍系企業が、兵器
  や麻薬の密輸など非合法ビジネスを含め、対外ビジネスに積
  極的に参入していった。米国にも、人民解放軍系のペーパー
  カンパニーが続々と増えていった。
   並行して、世界の華僑華人財閥とのネットワーク強化に力
  を注ぐ政策を打ち出し、中国共産党幹部は、華僑華人の資金
  をどこへ避難させ、どこへ投下するか、情報力と機動力のあ
  る華人らと連携しながら管理運営をしていった。
   こういった中国共産党の対外工作において、米政治家の中
  で早々にターゲットとなった1組が、民主党のクリントン夫
  妻だった。その“物語”は1980年代初頭−アーカンソー
  州知事のビル・クリントン氏が脚光を浴び始めた時代にまで
  遡(さかのぼ)る。インドネシアの華人財閥、リッポー・グ
  ループ(力宝集団)は、ヒラリー氏が当時、上級パートナー
  を務めていたアーカンソーの法律事務所を顧問とし、高額の
  報酬を支払う。
  銀行の買収など、リッポーは米国で勢力を拡大させつつ、人
  民解放軍系企業からクリントン夫妻への資金提供や、民主党
  への政治献金などでのパイプ役を務めていったとされる。米
  国の法律では、大統領選や知事選などの立候補者が、外国人
  や市民権を持たない人間から選挙資金の提供を受けることを
  禁じている。           http://bit.ly/2he69pE
  ───────────────────────────

クリントン米大統領と江沢民国家主席.jpg
クリントン米大統領と江沢民国家主席
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2016年12月16日

●「親ロ/中東が重視のトランプ政権」(EJ第4423号)

 14日にトランプ次期政権における安全保障関係の中心閣僚が
ほぼ決まったようです。
─────────────────────────────
  国務長官 ・・・・・・・ レックス・ティラーソン氏
  国家安全保障補佐官 ・・    マイケル・フリン氏
  国防長官 ・・・・・・・  ジェームズ・マティス氏
─────────────────────────────
 結局、トランプ次期米国大統領は、国務長官に、米石油大手エ
クソン・モービル会長兼最高経営責任者(CEO)のレックス・
ティラーソン氏を選んだのです。ティラーソン氏は企業経営者で
はありますが、外交経験ゼロの民間人です。国務長官にこのよう
な民間人を起用するのはきわめて異例なことです。
 ティラーソン氏は石油事業を通じてロシアのプーチン大統領と
長い親交があり、ロシアに接近したいと考えているトランプ氏に
とって願ってもない人材といえます。しかし、ティラーソン氏は
ロシアのクリミア併合による米国などが実施した対ロ制裁には反
対の立場です。したがって、同氏の国務長官就任によって、米国
は、これまでの対ロ路線を大きく変える可能性があります。
 問題は、ティラーソン国務長官が上院の承認を得られるかどう
かです。新政権の閣僚は上院の承認手続きが必要ですが、与党の
共和党は、伝統的に「反ロ」の傾向が強いのです。ティラーソン
氏の起用について、党重鎮のジョン・マケイン氏と、上院議員で
トランプ氏と予備選を戦ったマルコ・ルビオ氏は、ティラーソン
氏の起用に次のように難色を示しています。
─────────────────────────────
 ◎ジョン・マケイン上院軍事委員長
  ・ティラーソン氏がプーチン大統領と個人的に親しい間柄
   であることが懸念される。
 ◎マルコ・ルビオ上院議員
  ・国務長官として望む人物はプーチン氏の友人ではない。
         ──2016年12月14日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 トランプ氏と共和党幹部は、まだ完全には和解していないので
す。したがって、共和党の上院議員が数人反対に回ると、国務長
官就任が承認されない可能性は十分あります。
 それにもうひとつ重要な問題があります。それは、大統領選挙
において、ロシアがトランプ氏が有利になるように、民主党の全
国委員会のサーバーをハッキングし、ウィキリークスに提供した
との米中央情報局(CIA)の分析結果の発表です。これは、ロ
シアによるハッキングであるとほぼ断定しています。
 これに対してジョン・マケイン氏は、12月12日に「これは
深刻な問題であり、一つの戦争である」とあからさまにロシアを
批判しています。トランプ氏は「馬鹿げている」と一蹴していま
すが、共和党との仲がこれ以上悪化すると、トランプ新政権は、
出だしから、つまづくことになってしまいます。
 トランプ政権の安全保障関係閣僚の布陣を見ると、次の2つの
特色が明確になっています。
─────────────────────────────
           1.親ロシア
           2.中東重視
─────────────────────────────
 「1」については、選挙期間中からトランプ氏はロシアのプー
チン大統領に親ロのメッセージを送り、大統領に決まると、ロシ
ア通のティラーソン氏を国務長官に任命するなど、親ロの実現を
図ろうとしていることから、明らかであるといえます。
 「2」に関しては、国防長官にジェームズ・マティス元中央軍
司令官、国家安全保障補佐官にマイケル・フリン氏を任命したこ
とで明らかです。マティス氏は、湾岸戦争やイラク戦争など、中
東での紛争で、長く指揮をとっており、経験豊富です。フリン氏
は、元国防情報局長であり、中東での情報活動や戦闘指揮経験豊
かな軍人です。いずれも中東の専門家なのです。
 明らかに、IS掃討や対テロで、ロシアと共闘して成果を上げ
ようとしているのです。したがって、アジアで台頭する中国とど
う向き合うのかが注目されます。しかし、トランプ氏の台湾をめ
ぐる対応を見ても相当強い姿勢で臨むことは考えられます。
 少なくとも、クリントン氏が大統領選で勝利し、大統領になっ
た方が、日本と中国との関係は厳しくなっていたと思われます。
なぜなら、中国とクリントン家の関係は非常に深いからです。表
面的にはともかく、クリントン夫妻は「親中国」であることは明
らかです。
 しかし、民主党(現民進党)時代に、中国との間で尖閣諸島で
もめたとき、訪米した前原外相に対して、クリントン国務長官は
尖閣諸島に関して、次のように明言しています。確か尖閣諸島に
関して、米国の高官がここまで踏み込んだ発言をしたのは、はじ
めてのことです。2010年10月29日のことです。
─────────────────────────────
 はっきり改めていいたい。尖閣諸島は日米安保条約第5条の
 (適用)範囲に入る。日本国民を守る義務を重視している。
                 ──クリントン国務長官
─────────────────────────────
 このとき多くの日本人は、クリントン国務長官の発言を好感し
たと思います。そしてこのクリントン国務長官の発言が、後のオ
バマ大統領の同様の発言につながったといえます。
 しかし、国務長官の立場と大統領の立場は基本的に異なるので
す。クリントン氏は確かにこの発言をしましたが、大統領になっ
ても、この発言を繰り返すとは限らないのです。それは、夫のク
リントン大統領と中国との関係、クリントン財団と中国との関係
を見ていくと、わかります。このクリントン財団と中国との関係
については、来週のEJで述べることにします。
            ──[孤立主義化する米国/108]

≪画像および関連情報≫
 ●サイバー攻撃 関与を指摘されるロシアとトランプの関係
  ───────────────────────────
   ロシア政府が関与した疑いのあるサイバー攻撃が世界中で
  相次いでいる。7月には米民主党全国本部のサーバーにサイ
  バー攻撃が仕掛けられ、内部メールの内容が流出し、民主党
  内部でサンダース候補(当時)の勢いを落とすための協議が
  行われていた事実が判明。委員長が辞任する騒ぎへと発展し
  たが、クリントン候補はサイバー攻撃をロシア情報機関が関
  与したものであったと断言している。9月にはホワイトハウ
  スのスタッフのメールがハッキングされ、ミシェル・オバマ
  大統領夫人のパスポート用写真などが流失。米ヤフーも約5
  億人分の個人情報が盗まれたと発表したが、複数の米メディ
  アは政府関係者の話として、これらのサイバー攻撃にロシア
  政府が関与している可能性が非常に高いと伝えている。一方
  でトランプ陣営とロシアとのつながりを指摘する声もある。
   大統領選挙まで1週間を切ったが、複数の米メディアはク
  リントン候補が依然としてトランプ候補に数ポイントの差を
  つけてリードしていると伝えているものの、トランプ候補の
  支持率が直前になって再び上昇傾向にあると伝えるメディア
  もあり、最後まで展開が読めないのも今回の選挙の大きな特
  徴だ。これまでの大統領選挙でも舌禍によって道半ばにして
  自滅した候補は存在したが、トランプ候補には自らの発言に
  よって支持率を下げてしまうケースが頻繁にあり、メディア
  を何度も賑わせてきた発言が、ここに来て自身の首を絞めて
  いるようにも思われる。      http://bit.ly/2hrssvw
  ───────────────────────────

レックス・ティラーソン氏.jpg
 
レックス・ティラーソン氏
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2016年12月15日

●「トランプ政権の対中国戦略を探る」(EJ第4422号)

 トランプ次期米大統領は思っていた以上に、なかなかしたたか
です。トランプ氏は、外国の首脳としては最初に安倍首相に会っ
ていますが、それだけではないのです。世界のビジネスパーソン
に先駆けてソフトバンクの孫正義氏にも会っています。なぜ、日
本人とばかり会うのでしょうか。
 それは、日本がカネを持っていることを知っているからです。
孫正義氏は、12月5日にトランプ氏と会い、総額500億ドル
(約5兆7200億円)を米国のIT分野に投資し、5万人の雇
用を創出することを約束しています。
 孫氏としては、かつて傘下の米スプリント社に加えてTモバイ
ルUSを買収しようとしたとき、オバマ政権にストップをかけら
れ、米国戦略の修正を余儀なくされています。そのため、次期大
統領に誰よりも早く会って、大統領の求める投資を約束し、買収
戦略を前進させようとしているのです。おそらく約束が果たされ
れば、今度はトランプ政権はソフトバンクの邪魔はしないと思わ
れます。ビジネスの取引だからです。まさにビジネス・ファース
トといえます。
 それでは、トランプ次期大統領は、安倍首相には何を要求して
くるのでしょうか。
 これに関して、ジャーナリストの歳川隆雄氏は、夕刊フジのコ
ラム「永田町・霞が関インサイド」で次のように述べています。
─────────────────────────────
 ハッキリしていることがある。トランプ氏が大統領選挙期間中
に掲げた公約に、法人税を15%まで引き下げること、国内イン
フラに1兆ドル(114兆4300億円)投資する、2つがあっ
た。一方で減税して、他方で財政出動するというのは、相いれな
い。財源はどこにあるのか、ということである。
 だから、トランプ氏は安倍首相に対して、@米国債の買い増し
A米国製武器購入とシェールガスの輸入B日本企業の米国進出に
よる工場建設──を求めている。──「歳川隆雄の永田町・霞が
関インサイド」/2016年12月12発行/「夕刊フジ」より
─────────────────────────────
 しかし、外交とビジネスとは違います。米国にとって外交上最
も難しいのが中国への対応です。中国は、オバマ大統領の弱腰を
見抜いて、南シナ海に人工島を埋め立て、その軍事基地化を超ス
ピードで進めています。これによる米国の威信は大きく低下した
といっても過言ではないでしょう。
 これに対してトランプ氏は「強いアメリカ」を標榜して大統領
選を戦っています。問題はこの強いアメリカをどのようにして実
現させるかです。現時点で考えられるトランプ氏の戦略としては
次の3つが考えられます。
─────────────────────────────
 1.国防長官や国家安全保障担当大統領補佐官などの安全保
  障関連スタッフに軍部強硬派を起用する。
 2.あえて中国を刺激する発言を行い、オバマ政権との安全
  保障の考え方が異なることを知らしめる。
 3.しかし、中国との対話の窓口はいつでも開けておき、い
  つでも話し合いができる状況を確保する。
─────────────────────────────
 「1」については、早くからトランプ氏が国家安全保障補佐官
にマイケル・フリン氏を起用したことからはじまっています。フ
リン氏は、元アメリカ陸軍中将で、2012年から2014年ま
で、国防情報局長を務めた人物です。イラク戦争やアフガニスタ
ン戦争にも従軍しています。軍人出身です。
 問題は国防長官です。国防長官にはジェームズ・マティス氏が
指名されています。マティス氏は、アメリカ海兵隊の軍人で、最
終階級は大将です。NATO変革連合軍最高司令官、アメリカ統
合戦力軍司令官、アメリカ中央軍司令官などの要職を歴任してい
ます。つまり、大ベテランの軍人出身です。
 トランプ次期米大統領が安全保障の閣僚に元軍人の強行派を起
用するということは、米国との間にトラブル案件を持つ国に対す
る大きなプレッシャーになります。とくに中国は、違法に南シナ
海に人工島を建設しているので、強いプレッシャーを感じている
はずです。なぜなら、まだ現在の中国の軍事力では、とうてい米
国には勝てないからです。
 トランプ氏が続いてやったことは、中国駐在米国大使に、中西
部アイオワ州の知事を務める共和党のテリー・ブランスタド氏を
指名したことです。これは「3」に該当します。対話の窓口を設
けたのです。ブランスタド氏は習国家主席の古い友人なのです。
以下は、NHKニュース・ウェブの紹介記事の一部です。
─────────────────────────────
 アメリカメディアによりますと、ブランスタド氏は30年余り
前の1985年に、当時、河北省の農村部の幹部としてアイオワ
州を訪れた習近平氏と出会ったということです。習主席は4年前
に中国の最高指導者に就く直前に国家副主席として訪米した際に
もアイオワ州を訪れています。その際にはブランスタド氏が夕食
会を行うなど、両者は交流を続けていて、ブランスタド氏は習主
席を「古い友人」だとしています。   http://bit.ly/2hnEgyL
─────────────────────────────
 そして、今回トランプ氏は、中国に対して、中国が絶対に譲れ
ない「一つの中国」に疑問を呈したのです。これは「2」に該当
しますが、歴代の米国の大統領では絶対にいえなかった痛烈なパ
ンチです。まだ大統領になっていない現時点を利用して、中国が
激怒することを十分承知したうえで、あの発言をしたのです。
 いずれにせよ、トランプ氏の発言は、米中関係の根幹を揺るが
す言動であり、政権がスタートすると同時に米中は話し合いを持
つと考えられます。そのさい、ブランスタド中国駐在米国大使を
通して行われるものと思われます。このようにトランプ氏はなか
なかしたたかです。日本も油断は禁物です。
            ──[孤立主義化する米国/107]

≪画像および関連情報≫
 ●中国が強い懸念表明/「一つの中国」めぐるトランプ発言で
  ───────────────────────────
  [北京 12日 ロイター]──中国外務省の耿爽報道官は
  12日、米国政府がこれまで維持してきた「一つの中国」政
  策を必ずしも堅持する必要はないとしたトランプ次期米大統
  領の発言について、極めて強い懸念を表明した。
   外務省は、台湾における中国の核心的利益を米国が認識で
  きない場合、米国との協力は「論外」であると主張。両国間
  に存在する多くの商業や安全保障問題について、この論点を
  交渉材料にしようとするトランプ氏のあらゆる試みを拒否す
  ると示唆した。耿報道官は「中国は報道について認識してお
  り、深刻な懸念を持っていると表明する。台湾問題は中国の
  主権と領土の保全にかかわるものであり、中国の核心的利益
  を内包するものであることをここに強調する」と述べた。
   さらに「『一つの中国』政策の支持は、中国と米国の関係
  発展のための政治的基礎となる指針だ。この基礎が妨げられ
  るか損害を受けた場合、中米関係や重要分野における両国の
  協力を健全に発展させることは不可能となる」と言明した。
  報道官は、外務相より上位に位置する楊潔チ・国務委員(外
  交担当)が最近ニューヨークを訪問し、フリン元米国防情報
  局長を含めトランプ氏の顧問と会見したと述べ、「中米関係
  や重要課題に関する意見交換を行った」と話した。会見の時
  期など詳細については触れず、今回の台湾をめぐる発言より
  前のことなのかどうかについても説明しなかった。
                   http://bit.ly/2hhcNi1
  ───────────────────────────

習国家主席とアイオワ州知事ブランスタド氏.jpg
習国家主席とアイオワ州知事ブランスタド氏
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2016年12月14日

●「トランプ言及/一つの中国に疑問」(EJ第4421号)

 今回の米国の大統領選がはじまったとき、日本にとっては次の
米国の大統領が、クリントン氏でもトランプ氏でもかまわないが
中国に対して毅然とした態度を取る大統領が望ましいと多くの日
本人は考えていたと思います。
 結果は次期米大統領はドナルド・トランプ氏に決定したのです
が、本当のところはまだわからないものの、閣僚人事やトランプ
氏の台湾の蔡英文総統との電話会談などを見ている限り、次期政
権の対中国強硬姿勢が読み取れます。
 トランプ氏の蔡英文総統との電話会談には、12月12日には
米中の間で第2ラウンドがあり、トランプ氏と中国との関係は一
段と厳しくなりそうな雰囲気です。何が起きたのか整理しておく
ことにします。
─────────────────────────────
◎蔡英文総統からの電話について
 ・「聞かされたのは1、2時間前だ。会話は短時間で、お祝
  いを受けた。電話を取らないのは失礼ではないか」。
◎「1つの中国」の政策について
 ・「『一つの中国』政策については十分に理解しているが、
  中国と貿易などについて合意でもしない限り、なぜ堅持す
  る必要があるのかわからない」。
◎電話会談の中国の反論について
 ・「中国が人民元の価値引き下げについて(米企業が競争上
  厳しくなる)、あるいは中国に輸出される米製品に高率の
  税を課すこと(米国は中国製品に課税していない)、南シ
  ナ海の真ん中に大規模な軍事施設を建設することに、われ
  われに許可を求めただろうか。私はそうは思わない」。
─────────────────────────────
 この発言に中国政府は衝撃を受けたのです。米国の新政権とは
絶対にモメたくはないが、中国が核心的利益として位置付けてい
る問題を真正面から批判され、外交上後に引けなくなりつつあり
ます。しかし、この件で沈黙を続けていると、国民の批判が強ま
るのは必至で、中国は、12日に次の反論をAFP通信に展開し
たのです。しかし、少し言葉が過ぎたようです。
─────────────────────────────
【12月12日AFP】(更新)中国の国営メディアは12日、
中国本土と台湾は不可分の領土だとする「一つの中国」の原則は
「交渉の余地がない」として、この原則を維持しなければ中国が
米国の敵対勢力を支援する可能性があるとドナルド・トランプ次
期米大統領に警告した。
 これに先立ちトランプ氏は、11日放送された米FOXニュー
スのインタビューで、「中国と貿易などで合意していない限り、
なぜ『一つの中国』政策に縛られないといけないのか」と疑問を
呈し、中国が貿易や外交政策などで譲歩しなければ、米国は、こ
の原則を維持しない可能性があると示唆していた。「『一つの中
国』の原則は、取引材料にはならない」。中国の国営英字紙・環
球時報は、12日にインターネットに掲載した無記名の解説記事
でこのように述べ、トランプ氏を「外交に無知な子ども」とこき
下ろした。              http://bit.ly/2hDkgon
─────────────────────────────
 中国の対応は最悪である──実に上から目線で、次期米大統領
のトランプ氏を「外交に無知な子ども」と決め付け、「一つの中
国の原則を認めないなら、中国は米国の敵対勢力を支援する可能
性がある」とまで言及したからです。これでは、米中両国の間に
は簡単には修復できない亀裂が生じてしまいます。
 ところで、中国の発言で興味があるのは、「米国の敵対勢力」
とはどこを指しているのでしょうか。
 今まで米国と敵対しているのは、北朝鮮、イラン、シリア、そ
してロシア、その他、911などのテロを仕掛けてくるテロ組織
ということになります。しかし、テロ組織は別として、米国新政
権の出方によっては、イランやロシアは、必ずしも敵対勢力には
ならないと思います。
 注目すべきなのは「支援」という言葉です。これは、小さい国
ではあるが、中国が支援すれば、米国にとっては手ごわい相手に
なるぞといっているのです。
 それに該当する国はひとつあります。それは北朝鮮です。北朝
鮮はもともと中国が相当に肩入れしており、ミサイルの発射や核
実験など、中国は国連の度重なる制裁決議に賛成しながら、ウラ
で支援を続けてきたのは北朝鮮です。したがって、中国としては
ウラでやってきたことを今度は堂々と支援するぞという脅しでは
ないでしょうか。しかし、それをすると、中国は国際社会を敵に
回してしまうことになります。
 このニュースについて、新聞休刊日明けの12日の日本経済新
聞の夕刊は、このニュースを「一つの中国に縛られず/トランプ
氏が言及」というタイトルでトップ記事に掲げ、次のように報道
しています。トランプ氏は「私は完全に『一つの中国』の政策を
理解している」と力説したうえで、表記の発言をしています。こ
れに対する中国外務省の反応です。
─────────────────────────────
 中国は台湾問題を譲歩できない「核心的利益」と位置づけてい
る。2日の蔡総統との電話協議についてトランプ陣営に抗議した
ばかり。台湾問題を適切に扱うよう求めていただけに衝撃は大き
い。中国外務省はトランプ氏の出方を見極めるため、正式就任前
の言動は抑制的に反応する方針を示している。
 ただ、外交関係者の中にはトランプ氏の外交政策への不信感が
徐々に高まっている。共産党機関紙の人民日報系の「環境時報」
(電子版)は「トランプ氏は外交経験がないため、強硬派の影響
を受けやすい」と警戒心を示した。2016年12月12日付、
                   日本経済新聞夕刊より
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/106]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏、「一つの中国」政策終わりを示唆
  ───────────────────────────
   ドナルド・トランプ次期米大統領は11日、米政府が19
  79年以来堅持してきた「一つの中国」政策を続けるべきか
  疑問視する発言をした。米フォックス・ニュースとのインタ
  ビューで述べた。
   トランプ氏は、「通商を含めて色々なことについて中国と
  取り引きして合意しない限り、どうして『一つの中国』政策
  に縛られなきゃならないのか分からない」と述べた。米国は
  1979年に台湾と断交して以来、台湾を分離した省とみな
  す中国の「一国二制度」方針を尊重し、台湾を独立国家とし
  て扱うことは避けてきた。これに対してトランプ氏は2日、
  米大統領や次期大統領としての37年来の慣例を破り、台湾
  の蔡英文総統と電話で会談。中国はこれに正式抗議したが、
  トランプ氏はさらに中国の為替政策や南シナ海での活動を批
  判するツィートを連発した。
   トランプ氏はフォックス・ニュースに対して、自分が台湾
  総統からの電話に出るか出ないか決めるのは、中国政府では
  ないと強調。「中国に命令されたくないし、これは、僕にか
  かってきた電話だった。とても素敵な電話だった。短くて。
  それに、いったいなんでどこかの国が僕に、その電話は受け
  るなとか言えるんだ?正直いえば、あの電話をとらないのは
  とても失礼なことだったと思う」とトランプ氏は述べた。
                   http://bbc.in/2hkJlIf
  ───────────────────────────

トランプ次期米大統領/蔡英文台湾総統.jpg
トランプ次期米大統領/蔡英文台湾総統
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2016年12月13日

●「国務長官の地位とクリントン財団」(EJ第4420号)

 クリントン財団──その本質は「慈善団体」です。それでいて
「財団」なのです。慈善財団として有名なのは、古くは、ロック
フェラー財団、カーネギー財団、フォード財団などがあります。
これらの慈善団体は、集めたお金を寄付しているのではなく、集
めたお金で営利事業を行い、その利益の一部を寄付しているので
す。したがって、非営利事業といっても営利事業なのです。
 仮に「トヨタ財団」は100兆円売り上げても、1000億円
程度を寄付すれば、非課税になるという仕組みです。したがって
ビル・ゲイツ氏やパフェット氏などの米国の富豪は、こぞって財
団を作って一種の節税をしているのです。ビル・クリントン元大
統領も当初はそういう目的で財団を設立したのです。
 クリントン財団は、当初「クリントン大統領記念図書館」の建
設資金を集めるために設立されています。その後、慈善事業を行
う非営利財団法人に模様替えしています。そして現在では、スタ
ッフが2000人を超えるグローバルな組織になっています。
 クリントン財団の理事長は別にいますが、事実上クリントン一
族がオーナーの財団です。ビル・クリントンと妻のヒラリー・ク
リントン、そして娘のチェルシー氏はいずれも理事会のメンバー
です。なお、ヒラリー氏は大統領選に出るため、2015年で理
事を退任しています。
 この財団について、米国在住の日本出身のジャーナリストであ
る高濱賛氏は、クリントン元大統領とのインタビューで、次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 この財団はビル・クリントンとクリントン一族にとっての「リ
ビング・レガシー」(living legacy =生きつづける遺産)だっ
た。最初は自分の「大統領記念図書館」を作るつもりだったのが
その後、なにか「世のため、人のために活動を続けたい」と考え
るようになった。これだけ世界規模でチャリティ活動をやってい
る米大統領経験者はほかにいない。  http://nkbp.jp/2hjBfiY
─────────────────────────────
 しかし、クリントン財団のカネ集めは、クリントン国務長官の
地位を利用する悪質なものに変質していったのです。日本では昨
今、政治家の地位を利用して「口利き」をする行為は、「あっせ
ん利得処罰法」という法律に触れますが、クリントン国務長官は
クリントン財団を利用してこれに近いことをやっていたと考えら
れるのです。
 それは、国務長官時代のクリントン氏のメールがウィキリーク
スによって暴かれてわかったことですが、これに関するひとつの
例が「ニューズウィーク」のサイトに出ています。
─────────────────────────────
 2009年のメールで、クリントン財団幹部のダグラス・バン
ドは、財団に大口の寄付をしたレバノン系ナイジェリア人富豪を
国務省のレバノン専門家に紹介したいと依頼していた。クリント
ンの側近フーマ・アベディンが役に立てそうだと示唆すると、バ
ンドはすぐに駐レバノン米大使に電話してほしいと応じた。「非
常に重要な案件だ」と、バンドは付け加えた。
 AP通信は国務長官就任以来2年間のヒラリーの公式日程を分
析し、彼女が面会したアメリカや外国の政府関係者を除く民間人
の半数以上がクリントン財団か、財団の国際プログラムに寄付を
していたと結論付けた。85人の寄付者が総額1億5600万ド
ルを寄付している(ヒラリーは、財団に総額1億7000万ドル
を寄付した少なくとも16ヶ国の外国政府代表者とも会談してい
るが、この数字には含まれていない)。 http://bit.ly/2hjIIi6
─────────────────────────────
 つまり、簡単にいうと、クリントン国務長官と何らかのコンタ
クト──直接会うとか、頼みごとがある場合は、何はともあれ、
クリントン財団に自発的に寄付せよとのメッセージを出している
のです。米国では、寄付者と会って話したり、もてなしたりする
のは当たり前の行為になっているのです。
 また、米国では、大統領選において、その陣営に対して資金調
達を行い、およそ50万ドル(約5000万円)以上の資金協力
をして当選に一役買った人物を各国の大使に任命することはよく
あることです。つまり、お金で地位を買うということになります
が、そういうことは米国ではよく行われているのです。
 まして、クリントン氏は国務大臣ですから、大使の任命には強
い権限があるのです。第1次オバマ政権で日本駐在米大使に任命
されたジョン・ルース氏(2009年〜2013年)も、オバマ
氏への多額献金者の一人であったといいます。これについて、高
濱賛氏は、カリフォルニア大学バークレー校の政治学教授の一人
の言葉として、次のように述べています。
─────────────────────────────
 歴代の大統領は多かれ少なかれ、大口の献金者に便宜を供与し
てきた。巨額の選挙資金を出した支持者を主要国の駐在大使や政
府高官に任命するのは通例にすらなっている。誰も咎めたことが
ないが、大使のポストをカネで買うなどということが他の国で罷
り通るのだろうか。
 通常、大統領職を終えた政治家はおとなしく、悠々自適な隠居
生活を送る。だが、ビル氏の場合はちょっと違う。置かれた生活
環境が他の大統領経験者とは違っていた。何せ、奥さんが現役バ
リバリの政治家で国務長官になったり、大統領になろうとしたり
していること自体、前代未聞だよ。  http://nkbp.jp/2hnp5TH
─────────────────────────────
 もっともクリントン財団は、人権や保健事業で慈善団体として
高い業績を上げているのは確かです。だが、ヒラリー・クリント
ンが、大統領になった場合、寄付者はクリントン財団を彼女の影
響力を勝ち取る絶好のルートとみなすはずです。もちろん、ビル
・クリントン氏やヒラリー・クリントン氏が財団から離れたとし
ても、財団が存在している限り、そうなることは明らかにいえる
と思います。      ──[孤立主義化する米国/105]

≪画像および関連情報≫
 ●今さら言われても/クリントン財団の倫理問題けじめ
  ───────────────────────────
   ビル・クリントン氏は、自身の財団がビルとヒラリーの同
  夫妻、あるいは米政府に倫理的な衝突ないし葛藤を一切もた
  らさないと長年にわたって主張してきた。だが、ここに来て
  彼は真実をようやく認めた。それも、少しだけだが。ビル氏
  は、ヒラリー氏が大統領になればクリントン財団(それは慈
  善団体を装った「スーパーPAC=特別政治行動委員会であ
  る)は、外国あるいは企業の献金を受け取らないと述べたの
  だ。ビル氏はまた、財団の理事を辞任し、財団の理事長的存
  在である娘のチェルシー氏は財団のための資金集めをやめる
  という。彼らに今さらそう言われても、という感がある。
   ヒラリー氏が大統領になると、この種の資金集めが問題に
  なるというのならば、彼女が国務長官だった時、あるいは大
  統領選に立候補している今、なぜ問題でなかったのか?答え
  は、それは問題であったし、問題であり続けている。そして
  彼らはそのことを知っている。しかし、この財団は彼らクリ
  ントン家の政治的な将来にとって余りにも大切なので、クリ
  ントン王朝のカップルが、ホワイトハウスの大統領執務室に
  戻って行く態勢になるまで、それを手放せなかった。今やヒ
  ラリー氏が、共和党候補のドナルド・トランプ氏を支持率で
  リードしている。このため、ビル氏は彼らのペイ・ツー・プ
  レイ(参加したいならカネを払え)式の政治に対する新たな
  制約をうやうやしく受け入れられるのだ。
                 http://on.wsj.com/2htQOW3
  ───────────────────────────

ビル・クリントン氏の講演.jpg
ビル・クリントン氏の講演
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2016年12月12日

●「クリントン氏を潰した2つの爆弾」(EJ第4419号)

 クリントン疑惑の最後に「クリントン財団」の疑惑について書
くことにします。そもそもこの財団は何を目的として設立され、
どのように利用されてきたのでしょうか。
 クリントン財団が設立されたのは2001年のことです。20
01年といえば、ビル・クリントン元大統領が8年の任期を経て
退任した年です。財団の目的は、次の大統領選で妻のヒラリー・
クリントン氏を大統領にするための資金作りです。大統領選への
出馬時期は、2008年の大統領選に絞られていたのです。
─────────────────────────────
    ◎ビル・クリントン大統領の任期
    1993年1月20日〜2001年1月20日
─────────────────────────────
 そのためか、ビル・クリントン大統領の講演料は、10万ドル
(約1050万円)単位の超高額であり、それに加えて、2万〜
4万ドルの高額のチャーター機利用料を請求するのです。ところ
が、2008年の大統領選では、バラク・オバマ氏との対決でし
たが、ヒラリー氏はこの戦いに敗れてしまいます。
 しかし、新大統領のオバマ氏から、国務長官の就任を求められ
受け入れます。これによって、次の大統領選の出馬は2016年
にターゲットを絞ったのです。ヒラリー・クリントン氏が国務長
官に在任中にクリントン財団の集金力は急速に増えるのです。
─────────────────────────────
    ◎バラク・オバマ大統領の任期
     2009年1月20日〜2017年1月20日
    ◎ヒラリー・クリントン国務長官の任期
     2001年1月20日〜2013年1月20日
─────────────────────────────
 米国の大統領経験者が任期満了後に企業や団体、大学などで講
演を行い、高額の謝礼を受け取ることはよくあることです。しか
し、慈善活動の普及のために財団を設立しながら、、実はその目
的が妻の大統領選出馬のための資金作りというのは異例です。
 クリントン家のカネ作りがどれほどエゲツナイかについて、ザ
・ウォルストリート・ジャーナル(WSJ)は、次のように書い
ています。
─────────────────────────────
 ◎ビル・クリントン氏公演で多額のチャーター代請求
 内部告発サイト「ウィキリークス」は、今週(2016年10
月)、クリントン一家の慈善団体「クリントン財団」の資金調達
担当者が、同財団に寄付を行った企業に対しビル氏に講演などの
「営利」行為を依頼して謝礼を支払うよう促すメールを送ってい
たことを暴露し、ヒラリー氏の選挙運動に打撃を与えている。
 WSJが入手した資料によれば、一部の大学関係者は、ビル氏
側が講演を知らせるプレスリリースの掲載やソーシャルメディア
への投稿についても、事前チェックを要求したことにいら立ちを
みせた。ビル氏側は、講演に当たってメディアのインタビューな
どを受け付けないことが多いが、プレスリリースにはそのことを
載せないよう求めたという。
 クリントン夫妻はここ数年、1回20万〜50万ドルの超高額
の講演をしてきたことをめぐって批判を浴びている。講演先には
財政難に見舞われている大学もあった。こうした講演はヒラリー
氏が国務長官を辞任し、今回の大統領選への出馬を表明するまで
の間の2014年に急増した。   http://on.wsj.com/2hhprxC
─────────────────────────────
 今回の大統領選において、このクリントン財団に関して、次の
2つの爆弾が炸裂したのです。書籍と映画です。
─────────────────────────────
      1.書籍『クリントン・キャッシュ』
      2. 映画『クリントン財団の疑惑』
─────────────────────────────
 まず、「1」の書籍は、2015年に米国で発売され、日本語
版は、2016年2月10日に発売されています。選挙戦の年に
ぶつけてきているのです。
─────────────────────────────
         ピーター・シュバイツァー著/小濱由美子訳
 『クリントン・キャッシュ/外国政府と企業がクリントン夫妻
             を「大金持ち」にした手法と理由』
         ──LUFTメディアコミュニケーション刊
─────────────────────────────
 この本を映画化したのが、「2」の映画『クリントン財団の疑
惑』です。この映画は2016年5月にカンヌ映画祭で上映され
現地で衝撃を与えたあと、世界にそのインパクトが波及。注目の
なか、7月に全米で公開されたドキュメンタリーです。残念なが
ら、日本では上演されていませんが、予告編は次のニコニコ動画
のサイトで観ることができます。
─────────────────────────────
      映画『クリントン財団の疑惑』予告編
             http://bit.ly/2hhhXrL
─────────────────────────────
 この映画では、ヒラリー氏が国務長官になった時期に、夫の元
米大統領ビル・クリントンが設立したクリントン財団で起こした
資金洗浄と収賄の数々が示されます。
 アメリカのウラン鉱山がカナダ企業からロシア企業に買収され
る上での不正。サウジアラビアほか20ヶ国余への武器売買に絡
む軍事産業との癒着。スウェーデンの通信機メーカー、エリクソ
ン社が当時、経済制裁中のイランで営業できた理由・・などなど
驚愕の内容が続くのです。あまりの強烈な情報の羅列に、観るも
のはただただ呆然となるといった内容です。
 これらの2つの爆弾が2016年の大統領選の年に炸裂したの
です。クリントン陣営にとっては大ショックです。
            ──[孤立主義化する米国/104]

≪画像および関連情報≫
 ●クリントンに脅威になる映画
  ───────────────────────────
   昨年出版された「クリントン・キャッシュ」は、クリント
  ン一家の慈善団体「クリントン財団」に海外の政府や企業が
  多額の寄付を行った見返りに、当時、国務長官であったヒラ
  リー・クリントン氏から何らかの有利な取り計らいを受けた
  説を資料や証言などで裏付けた本である。クリントン氏の国
  務長官としての影響力が、「お金」で買われてきたとも言え
  る。法律上、外国からの政治献金は禁じられているが、海外
  からの財団への寄付は可能である。そこで慈善団体と称する
  クリントン財団への寄付として海外の政府や企業から資金を
  受けとったのである。出版当初、疑惑はでっち上げで根拠が
  ないとクリントン側は反論していた。その後本の内容の信憑
  性を巡り、ニューヨーク・タイムズ紙、CNN、ワシントン
  ・ポスト紙、ウォール・ストリート・ジャーナル紙など主要
  メディアが分析と調査を行った。本の内容の裏付けは取れ、
  信憑性が確認された。したがって、本が発売された去年とは
  状況が違い、クリントン氏が映画の内容を否定、反論するこ
  とはできない。
   著者のピーター・シュヴァイツァー氏は、本の中で「クリ
  ントン元大統領のエゴと政治家ヒラリーのキャリアを押し上
  げ、夫婦に世界的な影響力と金銭的な報酬をもたらした」と
  主張している。クリントン夫妻は国益より個人の利益を優先
  したのである。          http://bit.ly/2hkkvpt
  ───────────────────────────

書籍「クリントン・キャッシュ」.jpg
書籍「クリントン・キャッシュ」
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2016年12月09日

●「1700通のメールの内容は何か」(EJ第4418号)

 1700通のヒラリーメール──ウィキリークスの創始者であ
るジュリアン・アサンジ氏は、このメールを米大統領選の投票の
直前に公開すると宣言していたのですが、本当に公開されたので
しょうか。
 結論からいうと、1700通のメールは、公開されなかったの
です。ジュリアン・アサンジ氏のインターネット回線が切断され
たからです。どうしてこのようなことが起こったのかについては
現在アサンジ氏がどのような状況に置かれているのかについて知
る必要があります。
 アサンジ氏は、2012年よりロンドンのエクアドル大使館に
いるのです。彼は、オーストラリア人のジャーナリストですが、
ウィキリークスの活動をしている関係上、いろいろあって、ロン
ドンのエクアドル大使館に政治亡命したのです。
 アサンジ氏の「1700通のヒラリーメール」の公開予告に慌
てたケリー米国務長官がエクアドル政府に掛け合って、アサンジ
氏のインターネット回線を切らせたのです。ケリー国務長官は、
コロンビア革命軍(FARC/反政府左翼ゲリラ)の和平の実現
を引き替え条件に出したといわれます。
 アサンジ氏のいるエクアドル大使館はロンドンの中央にありま
すが、アサンジ氏は大使館を一歩でも出ると、ロンドン警察に逮
捕され、米国に引き渡されます。しかし、インターネットの回線
を切断されてしまうと、外部との連絡がとれず、ウィキリークス
の活動に影響が出ることになります。
 そこで、アサンジ氏は、同じオーストラリア人のジョン・ピル
ガー氏のインタビューを受けることにしたのです。インタビュー
は2016年11月5日にエクアドル大使館において、25分間
にわたって行われています。
 このインタビューのなかから「1700通のヒラリーメール」
の関連部分を抜き出すことにします。ジュリアン・アサンジ氏は
「JA」、ジョン・ピルガー氏は「JP」と略記します。
─────────────────────────────
JP:彼女は一体なぜ、リビアの破壊にこれほど熱心だったので
   すか? 電子メールで一体何がわかるか、 そこで何が起き
   たのか、少しお話し願えますか?というのは、リビアは今
   のシリアにおける余りに多くの破壊行為の大変な源なので
   すから。ISILや聖戦主義など。あれは、ほとんどヒラ
   リー・クリントンの侵略でした。電子メールで、あれにつ
   いて何がわかりますか?
JA:リビア、誰の戦争というよりも、ヒラリー・クリントンの
   戦争でした。バラク・オバマは当初、反対しました。一体
   誰がこれを主張したのか。ヒラリー・クリントンです。
    彼女の電子メールに証拠として残っています。彼女は、
   お気に入りの代理人、シドニー・ブルーメンソールをこれ
   に当てました。我々が公表した3万3千通のヒラリー・ク
   リントン電子メールの中には、リビアに関する1700通
   以上の電子メールがあります。リビアに安価な石油があっ
   たからではないのです。カダフィ排除と、リビア国家の打
   倒・・・大統領本選挙への準備に利用したいものだと、彼
   女は感じていたのです。
    2011年末に、ヒラリー・クリントンのために作成さ
   れた「リビアのチクタク」と呼ばれる内部文書があり、そ
   れは、リビア国内で約4万人の死者をもたらし、聖戦士が
   入り込み、ISISが入り込み、ヨーロッパの難民・移民
   危機を招いたリビア国家の破壊で、彼女がいかに中心人物
   であるかという時系列的説明になっています。
                   http://bit.ly/2gWYuPE
─────────────────────────────
 上記のアサンジ氏の話によると、クリントン国務長官(当時)
は、何が何でもリビアのカダフィー大佐を殺害し、リビアが保有
する富や武器を奪う強い意思を持っていたように思います。
 クリントン国務長官は、国務長官在任中、20カ国に総額16
50億ドルの武器売買取引を成立させています。武器輸出の商談
成立の前後に、軍事産業からクリントン財団への寄付が行われて
きているのです。これによって、オバマ政権は米国史上もっとも
大量の武器を輸出した政権になったほどです。このあたりのこと
を副島隆彦氏は、次のように明確に書いています。
─────────────────────────────
 カダフィを惨殺して(2011年10月20日)、リビアの国
家資金をすべて、アメリカの特殊部隊(スペシャル・フォーシズ
/CIAとの合同軍)が奪い取った。この資金おそらく200億
ドル(2・4兆円)ぐらいが、今のIS(アイエス)の凶暴な7
万人の傭兵部隊(マーシナリー)の設立資金になったのである。
ISは2014年6月10日に、突如、北イラクの都市モスルを
制圧して出現した。時間の流れがきちんと符合する。
                      ──副島隆彦著
      『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社
─────────────────────────────
 アサンジ氏によると、米国の国務長官という地位の人が、独裁
者というだけで、米国にとって脅威ではなく、何の罪もないアフ
リカの星であるリビアの国家元首の殺害に加担し、それによって
得られる武器はシリアの反政府軍の支援に回し、そこから得られ
る資金は、こともあろうに自らの大統領選挙に使おうとしていた
のではないかといっているのです。
 つまり、ヒラリーメール──それも1700通のメールの内容
は、カダフィー殺害に関してクリントン国務長官からのスティー
ブンス大使やブルメンソール氏に対する指示や、さまざまな報告
などのやり取りがわかるものとなっているのです。したがって、
このメールについては、米国としては、絶対に外に出させないと
して、アサンジ氏の通信手段であるインターネットを切断したも
のと思われます。    ──[孤立主義化する米国/103]

≪画像および関連情報≫
 ●ウィキリークスの創始者、ジュリアン・ポール・アサンジ
  ───────────────────────────
   ジュリアン・アサンジという男を覚えているだろうか。
   ウィキリークスの創始者であるジュリアン・ポール・アサ
  ンジは現在、未だに、イギリスのエクアドル大使館に身を潜
  めている。もう彼是2012年から3年以上の間にわたって
  同国大使館から一歩も出ていないのではと推測される。
   というのもエクアドル大使館周りでは厳重な警戒態勢が敷
  かれており、イギリス政府がアサンジの身柄拘束を狙ってい
  るためだ。大使館内に留まっている間はイギリス政府は手出
  しはできないが、一歩でも外を出た瞬間に捕まえられてしま
  うだろう。外交官ではないので外交官特権を行使することは
  できず、車で大使館から出たとしても移動後も警察車両に追
  跡され、車から出たところを確保されるに決まっている。
   要するに、アサンジは今軟禁状態にあるのだ。しかも、い
  つ解放されるかも分からない。一度捕まってしまえば、イギ
  リスからスウェーデンに引き渡され、その後アメリカに連れ
  て行かれるのは明白だ。アサンジはそれをもっとも恐れてい
  る。ウィキリークスで大損害を与えた、アメリカに連れて行
  かれることを。ウィキリークスでは米英を中心とした国家機
  密などの文書を大量に流出・公開させており、トップシーク
  レットの文書が流出することなどで国家が隠蔽し続けていた
  悪事などが一挙明るみに出ており、国家レベルでの自国民に
  対する諜報活動などに批判が続出している。
                   http://bit.ly/2g1nVLi
  ───────────────────────────

アサンジVSクリントン.jpg
アサンジVSクリントン
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2016年12月08日

●「1700通メールの意味するもの」(EJ第4417号)

 2016年8月〜9月11日までのヒラリーメール関連の出来
事を時系列に示します。一口メモも付けておきます。
─────────────────────────────
◎ 8月01日
 ・トランプ氏はオハイオ州集会で選挙集計の不正について言及
 ・クリントン財団の秘密を暴いた作家ソーン氏が山中で不審死
◎ 8月 3日
 ・英BBCはヒラリーメール問題が大統領選の中心議論と報道
◎ 8月 4日
 ・クリントン財団の秘密を調査中の弁護士ルーカス氏の不審死
◎ 8月 9日
 ・アサンジはヒラリーメール1700通を投票直前に公表予告
◎ 8月10日
 ・オバマ大統領はISISの創立者であるとトランプ氏が発言
◎ 8月11日
 ・FBIと司法省がメールとクリントン財団への合同捜査開始
◎ 8月22日
 ・裁判所は1万4900通の復元メールの公開を国務省に命令
◎ 9月 3日
 ・FBIがヒラリー氏への尋問書(供述調書)公開に踏み切る
◎ 9月 5日
 ・WSJ紙は尋問書を読んでヒラリー氏を批判。信頼崩壊宣言
◎ 9月11日
 ・クリントン氏は追悼式典の最中に気分不良で中途で退席する
◎ 9月26日
 ・第1回大統領選討論/  オハイオ州デイトン、ライト大学
◎10月 9日
 ・第2回大統領選討論/    ミズーリ州、ワシントン大学
◎10月19日
 ・第3回大統領選討論/  ネバダ州ラスベガス、ネバダ大学
─────────────────────────────
 トランプ氏は、テレビ討論のさい、司会者に投票結果を受け入
れるかと聞かれ、明言を避けています。そのあとで「自分が勝っ
たときは受け入れる」と発言をしましたが、これは米国の投票シ
ステムに疑問があるからです。これについて副島隆彦氏は、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 トランプが、「大統領選で(各州の得票計算の段階で)不正行
為が行われるのではないかと私は危惧している」とオハイオ州の
演説で語った。トランプが心配しているのは「アリストス・シス
テム」“Alistossystem” という名の選挙集票の不正計算のコン
ピュータ・ソフトであり、これが使用されると、集票計算に変更
が加えられて投票結果をねじ曲げる不正が行われる。日本でも、
2000年ごろから「ムサシ」という名の不正選挙用のソフトが
使われ始めたと囁かれるようになった。
                 ──副島隆彦著/光文社刊
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
─────────────────────────────
 2016年8月9日、ウィキリークスの創設者のジュリアン・
アサンジ氏は、次のように発言しています。
─────────────────────────────
 ヒラリーとリビア・ベンガジ事件に関係するヒラリーメール
 1700通を10月中に公開する。 ジュリアン・アサンジ
─────────────────────────────
 このアサンジ氏のいう「1700通のメール」とは、どういう
内容のメールなのでしょうか。
 メールの正確な総数は不明ですが、おそらく全部で5〜6万通
はあったと考えられます。メールを使っている人ならば容易にわ
かると思いますが、1万通のメールが溜まるのにたいして時間は
かからないからです。
 ヒラリー・クリントン氏が国務長官を務めたのは、2009年
〜2013年の4年間です。私用メールの問題は、2012年9
月にリビア東部ベンガジで起きた米領事館襲撃事件をめぐる調査
の過程で発覚しています。
 クリントン氏は、国務長官退任後の2014年に、国務省の求
めに応じ、在任中の3万件のメールを提出しています。FBIは
クリントン氏が在任中に使っていた複数のサーバーや携帯端末を
徹底的に調査したものの、クリントン氏のアカウントには、直接
何者かが侵入した形跡はないことがわかっています。
 しかし、メールは他の誰かとやり取りするものであり、通信相
手のアカウントがハッキングされる可能性もあります。実際に、
クリントン氏が国務長官のとき、私的側近を務めていたシドニー
・ブルメンソール氏に送ったメールが多数ありますが、ブルメン
ソール氏のアカウントがハッキングされ、外部に流出してしまっ
ています。これについては、11月22日付、EJ第4406号
で取り上げています。         http://bit.ly/2gaxc4l
 実はヒラリーメールのうち、最も重要なのは2011年のメー
ル──カダフィー殺害とリビア国崩壊時点のメールなのです。こ
れに関連するメールが「1700通のメール」なのです。結果と
して、これらのメールは既に国務省は把握していますが、国家機
密として公開されていないのです。開示してもその部分は、いわ
ゆる「のり弁」になっているのです。
 ウィキリークスの創設者であるジュリアン・アサンジ氏が、8
月9日に「ヒラリーメール1700通を選挙投票の直前に公開す
る」と通告したのは、クリントン陣営や国務省に対する脅し(ブ
ラフ)です。もし、本当に公開されれば、クリントン氏が勝つこ
とは不可能になるだけでなく、米国という国の権威にも関わる重
大事態となります。これについて国務省は直ちに行動を起こして
います。これについては明日のEJで述べます。
            ──[孤立主義化する米国/102]

≪画像および関連情報≫
 ●ウィキリークス「ヒラリーの証拠メール持っている」
  ───────────────────────────
   アメリカ大統領選挙は外交政策(過激イスラム主義、移民
  規制政策)が表の大きな争点ですが、裏の争点というか本当
  の争点は「オバマとヒラリーの外交政策の失敗」です。それ
  が「アラブの春」を引き金とする中東のブッシュ政権終了時
  以上の混乱です。
   それは何かというと、シリア、リビア、エジプトの政権転
  覆で、これにアメリカ国務省が関わっていたのではないかと
  するものです。ずい分前からアメリカがシリアの反体制派に
  武器を供与していて、その結果として、アルカイダよりも更
  に恐ろしいISIS(イスラム国)が生まれたということは
  言われてきました。「いや、アメリカは穏健派の反アサド大
  統領派にだけ武器を供与するんだ」と言っていましたが、実
  際はそうではなくものすごく過激な勢力に武器を与えていた
  のではないかという疑惑。それがまさしくリビアのベンガジ
  領事館襲撃(2012年9月11日の事件)ですが、ここの
  オペレーションにヒラリー・クリントン国務長官が関わって
  いたのではないかと言われていた。ただ、いまままでは断片
  的な状況証拠やメールしかなかった。その証拠となるメール
  を、ウィキリークス代表のジュリアン・アサンジが持ってい
  ると発言しました。発言した場所は、日本でもよく知られる
  「デモクラシーNOW」という番組でのインタビューの中で
  ヒラリーとリビア関連のメールは1700通あるそうで、こ
  れをしかるべくタイミングを見て、検索できる形で公開する
  とアサンジは言っている。    http://amba.to/2fZeDQe
  ───────────────────────────

ジュリアン・アサンジ氏.jpg
ジュリアン・アサンジ氏
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2016年12月07日

●「サンダース支持者を取り込めない」(EJ第4416号)

 昨日のEJでお知らせした2016年7月の出来事のうち、4
つを再現します。
─────────────────────────────
◎ 7月07日
 ・下院の行政監視委員会はコミーFBI長官を呼び、喚問実施
◎ 7月12日
 ・リンチ司法長官は、下院ベンガジ特別委員会に呼ばれて喚問
◎ 7月22日
 ・ウィキリークスがDNCの大物7人の内部メールの束を公開
◎ 7月25日
 ・民主党全国大会初日、サンダーズ支持者が大会から大挙退場
─────────────────────────────
 クリントン陣営としては、2016年7月25日〜28日の民
主党全国大会前に何とかしてヒラリーメール問題を鎮静化させた
かったのです。そのため、ビル・クリントン氏は、旧知のロレッ
タ・リンチ司法長官と直接会って、「ヒラリー不起訴」の確約を
とろうとしたのです。そのため、6月27日にビル・クリントン
氏は、フェニックス空港でリンチ司法長官に密かに面会し、おそ
らくその確約を得ているはずです。
 しかし、一方の共和党としては、まともに戦ったのでは、知名
度はもちろんのこと、政治家としても実績のあるクリント氏に勝
てないので、むしろヒラリーメール問題で突破口を開こうと考え
たものと思われます。
 ビル・クリントン氏とリンチ司法長官の「密会」はメディアの
知るところとなり、ヒラリーメール問題は、鎮静化どころか、か
えって炎上する結果になったのです。
 7日7日、下院の行政監視委員会はコミーFBI長官を呼び、
喚問を実施しています。喚問のポイントは、コミー長官が踏み込
み過ぎた発言をしたからです。これについて、副島隆彦氏は次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 ジェームズ・コーミーFBI長官がヒラリー・メール問題の捜
査について、「クリントン氏は国家機密文書の取り扱いできわめ
て不注意であった。しかし、このことで刑事起訴できるほどのこ
とではない」と司法省(=検察庁)に対して、推奨(レコメンデ
ーション)を出した。
 ここでコーミーFBI長官が「ヒラリー・クリントンを不起訴
にすることが妥当である」とまで、司法省に対して判断を示した
ことが問題となった。本来なら、「FBIとしては極めて違法性
が高いと判断する。しかし、刑事起訴するか否かは司法省が決め
てください」とコーミー長官は言うべきであった。コーミー長官
自身に疑惑が出て非難されることになった」。
                 ──副島隆彦著/光文社刊
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
─────────────────────────────
 コミーFBI長官へのこの喚問を契機に、FBIと司法省は合
同で、終了したはずのヒラリーメールの再調査を開始しているし
国務省もそれまで中断していたヒラリーメールの内部監査を再開
すると発表しています。いや、そうせざるを得なかったのです。
 これに対して、ヒラリー派に属する国務省高官は、過去の悪事
が暴かれることを恐れ、内部監査にさまざまなブレーキをかけて
妨害したといいます。
 さらに7月25日には、ロレッタ・リンチ司法長官が下院ベン
ガジ事件特別委員会に呼ばれて喚問を受けています。これは、5
時間に及ぶ長時間喚問で、ガウディ委員長が「リンチをリンチし
た」といわれるほど厳しかったといわれます。
 副島隆彦氏によると、「リンチ=私刑/私的制裁」という言葉
は、昔リンチ(Lynch) という名前の裁判官が南部にいて、たく
さんの犯罪容疑者の黒人に死刑判決を出したことから生まれたと
いわれています。
 このようにして、民主党全国大会までに何とかヒラリーメール
騒ぎの鎮静化を狙ったヒラリー陣営の画策は失敗し、かえって騒
ぎが大きくなる最悪の結果になってしまったのです。それに加え
て、クリントン陣営にさらなるダメージを与えたのは、7月22
日、ウィキリークスがDNCの大物7人の内部メールの束を公開
したことです。
 こともあろうに、DNCがクリントン氏を確実に勝たせるため
に、民主党の予備選の候補者であるバーニー・サンダース氏の選
挙妨害をやっていた事実が白日の下に晒されたのですから、サン
ダース支持者が怒ったのは当然です。
 しかし、それでもサンダース氏は、自身の支持者に対して、次
のように訴えていたのです。
─────────────────────────────
 「ブーイング、背中を向けること、退出すること。そういった
デモストレーションで、私たちの運動の信頼性は損なわれてしま
う」。代議員たちに向けたメッセージの中で、サンダース氏はこ
う述べた。「それこそ、商業主義のメディアが求めているものな
のです。それこそ、ドナルド・トランプが求めているものなので
す。しかしそれは、この国の革新的運動を発展させるものではあ
りません」。            http://huff.to/2ae2GGv
─────────────────────────────
 しかし、サンダース氏のこの説得にもかかわらず、民主党全国
大会の初日には、サンダース支持派の各州代議員たちは反発して
「ウォーク・アウト」と叫んで退場したのです。そのため、大会
会場に多くの空席が生じ、あわてて党本部がエキストラを雇って
穴埋めをしたほどだったといいます。
 この傾向は、全国大会だけではなく、各州のクリントン氏の集
会でも人が集まらず、エキストラや映像処理による仮装を施した
といわれています。しかし、トランプ氏の集会はどこも満員だっ
たといいます。     ──[孤立主義化する米国/101]

≪画像および関連情報≫
 ●サンダース支持者/ヒラリーよりもトランプを
  ───────────────────────────
   米大統領選の民主党候補指名でヒラリー・クリントン前国
  務長官と争ったバーニー・サンダース上院議員は25日の党
  大会初日、11月の本選でクリントン氏に投票するよう自ら
  の支持者らに呼び掛けた。
   ところが、支持者の一部からはブーイングも上がり、サン
  ダース氏がもはや自身が始めた「政治革命」をコントロール
  できなくなったことを印象付けた。サンダース氏から支持表
  明を得たことはクリントン氏にとっては大きな勝利となった
  が、サンダース氏支持者の取り込みに不安を残した。
   数百人のサンダース氏支持者は党大会の会場周辺で、クリ
  ントン氏の候補指名に反対するデモ行進を決行。サンダース
  氏の演説中には、同氏支持者とクリントン氏支持者の間で小
  競り合いも発生したという。
   クリントン氏と共和党ドナルド・トランプ氏の支持率が拮
  抗するなか、クリントン氏はこれまで以上にサンダース氏支
  持者の票が必要だ。サンダース氏は指名レースの党員集会・
  予備選で1300万票を獲得。コロラド、インディアナ、ミ
  シガン、ニューハンプシャー各州で勝利を収め、アイオワ州
  でも勝利の一歩手前に迫った。これらの州は11月の本選に
  おいても激戦が予想されるため、クリントン氏がトランプ氏
  に勝つには、サンダース氏支持者らの票の一部がぜひとも必
  要となる。            http://bit.ly/2gmYtkH
  ───────────────────────────

サンダース支持者のデモ.jpg
サンダース支持者のデモ
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2016年12月06日

●「メール問題と苦闘/ヒラリー陣営」(EJ第4415号)

 7月11日から執筆している今回のテーマ「孤立主義化する米
国」は、今回でちょうど100回になります。しかし、12月に
入っているので、このままこのテーマを続け、新年から、新しい
テーマに取り組みます。12月はヒラリーメール問題の真相究明
トランプ次期政権の正体、日本との関係、とくに日米安全保障条
約への影響などにも言及するつもりです。
 さて、ヒラリーメール問題が、いかにしてクリントン氏を追い
詰めたのかについて、選挙本番の2016年6月と7月について
時系列に追ってみると、次のようになります。1行メモをつけて
おきます。EJ第4411号で取り上げたクリントン周辺の不審
死5人中3人は、6月と7月に死亡しています。
 これをみると、7月の共和党全国大会と民主党全国大会の前後
に実にさまざまなことが起きているのがわかると思います。これ
までの大統領選挙では考えられなかったことであり、きわめて異
例なことです。
─────────────────────────────
◎ 6月22日
 ・ジョン・アッシュ氏がヒラリー氏関連の議会証言前日に死去
◎ 6月27日
 ・ビル・クリントン氏がリンチ司法長官と長官専用機内で密談
◎ 7月02日
 ・FBIがクリントン氏を呼び、事情聴取。3・5時間かかる
◎ 7月05日
 ・コミー長官声明。ヒラリー氏は不注意だが、刑事訴追できぬ
◎ 7月06日
 ・リンチ司法長官はクリントン氏を立件・訴追はしないと発表
◎ 7月07日
 ・下院の行政監視委員会はコミーFBI長官を呼び、喚問実施
◎ 7月10日
 ・DNC職員のセス・リッチ氏FBIとの面接に行く途中射殺
◎ 7月12日
 ・リンチ司法長官は、下院ベンガジ特別委員会に呼ばれて喚問
◎ 7月18日
 ・共和党大会第1日目。初日からトランプ候補が登場する異例
◎ 7月19日
 ・共和党大会第2日目。クリスティー知事のヒラリー模擬裁判
◎ 7月21日
 ・共和党大会第4日目。トランプ氏が候補者指名受諾演説実施
◎ 7月22日
 ・ウィキリークスがDNCの大物7人の内部メールの束を公開
◎ 7月24日
 ・共和党全国委員長のワッサーマンシュルツ氏が突然辞任表明
◎ 7月25日
 ・民主党全国大会初日、サンダーズ支持者が大会から大挙退場
 ・副大統領候補ケイン氏の補佐役のジョン・モンタノ氏が急死
─────────────────────────────
 2016年7月25日の民主党全国大会に向けて、クリントン
陣営としては、いわゆるヒラリーメール問題を何とか鎮静化させ
ておきたかったものと思われます。
 そこで、ヒラリー氏の夫であるビル・クリントン元大統領は、
ロレッタ・リンチ司法長官と会って、「訴追しない」との言質を
取りたかったのです。1999年にクリントン大統領はロレッタ
・リンチ氏をニューヨーク州東部地区連邦裁判判事に任命してお
り、関係は良好だったといわれます。
 2016年6月27日、ビル・クリントン氏は、プライベート
・ジェット機で、アリゾナ州のフェニックス空港に行き、飛行機
から降りずに機内で、ロレッタ・リンチ司法長官の専用機が来る
のを待っていたのです。
 事前の約束があったのか、待ち伏せしたのかはわかりませんが
その後リンチ司法長官の専用機が空港に着陸すると、ビル・クリ
ントン氏はプライベート・ジェット機から降りて、司法長官専用
機に乗り込み、そこで30分間にわたって密談しているのです。
 しかし、この「密会」は、2日後に地元のフェニックスの新聞
にスッパ抜かれてしまいます。そのためリンチ司法長官は、6月
30日に記者会見をせざるを得なくなり、「クリントン氏と会っ
たが、ヒラリーメール問題については話していない。旅行やゴル
フや孫のことを話しただけ」と述べています。
 しかし、7月2日にFBIはヒラリー・クリントン氏をワシン
トンに出頭させ、3時間30分にわたって尋問しています。この
尋問調書(58ページ)は、9月3日にFBIによってメディア
に公開されていますが、そのうちの14ページ分は、日本でいう
ところの「ノリ弁」状になっていたのです。これは国家機密に関
わるメールの交信内容であることを示しています。
 ところがFBIのコミー長官は、ヒラリーメール問題の調査に
おいて、「クリントン氏は国家機密の扱いについては非常に不注
意だったが、このことで刑事告訴できるほどのことではない」と
いう意見を付けて、司法省の判断にまかせています。
 このFBIのレコメンディションを受けてリンチ司法長官は、
その翌日の7月6日に次の決定を発表したのです。
─────────────────────────────
 FBIの判断を全面的に受け入れて、ヒラリー・メール問題を
起訴(立件・訴追)しないことを司法省として決定する。
               ──ロレッタ・リンチ司法長官
                 ──副島隆彦著/光文社刊
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
─────────────────────────────
 リンチ司法長官とビル・クリントン氏との「密会」がバレてい
るので、この司法当局の判断について、米国国内で強い批判の嵐
が巻き起こったのは当然のことといえます。
            ──[孤立主義化する米国/100]

≪画像および関連情報≫
 ●FBI、クリントン氏メール問題見直すと発言
  ───────────────────────────
   クリントン氏が、米国務長官時代に公務メールを私用サー
  バーで扱っていた問題で、FBIはすでに機密情報を含むメ
  ールも私用サーバーを経由していたと確認。コーミー長官は
  7月、クリントン氏とスタッフの行動は「きわめて不注意」
  だったものの、訴追には相当しないと発表していた。
   しかしコーミー長官は28日、連邦議会に対して書簡で、
  捜査員が発見した「別件に関する」メールが「(メール問題
  の)捜査に関係する様子」のため、メール問題を「見直す」
  と説明した。「この資料が重要かどうかまだ精査できていな
  いし、この追加作業を終えるまでどれくらいかかるのか予測
  できない」と長官は書いている。
   消息筋によると、問題のメールは、クリントン氏の右腕と
  も言われる最も近い側近、フマ・アベディン氏の別居中の夫
  アンソニー・ウィーナー元下院議員に対する捜査の中で発見
  された。FBIは、ウィーナー元議員が15歳少女に性的な
  メールを送っていた疑いに関連して、元議員やアベディンさ
  んの電子端末を押収して調べていた。メールが何通あり、誰
  が発信あるいは受信したものかは明らかにされていない。ア
  イオワ州デモインで記者会見したクリントン氏は、「米国の
  人たちはただちに、すべての事実を完全に知らされるべきで
  す」と強調。「この問題がなんであれ、(FBIは)なんと
  しても、滞りなくこの問題を説明しなくてはならない」と求
  めた。              http://bbc.in/2fVxfAm
  ───────────────────────────

クリントン夫妻.jpg
クリントン夫妻
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2016年12月05日

●「ロシアは真にハッキングの犯人か」(EJ第4414号)

 絶対有利とみられていたヒラリー・クリントン氏が大統領選に
敗れた原因はいろいろあるものの、最も大きなダメージは、その
出陣式ともいうべき民主党全国大会の直前に「民主党の中心人物
7人」の1万9000通以上のメールが、内部告発サイトのウィ
キリークスによって白日の下に晒されたことであるといえます。
 どうしてかというと、これによって予備選でサンダーズを支持
した共和党の支持者がクリントン氏から完全に離れたからです。
それは当然です。候補者をサポートすべき民主党全国委員会(D
NC)が、クリントン氏を当選させるために、サンダーズ氏を潰
そうと画策していたことがバレてしまったからです。
 もし、民主党全国委員会のサーバーのハッキングが本当にロシ
アによるものであるとすれば、このハッキングとメールの公開は
クリントン氏を不利にさせ、トランプ氏を勝たせるためにはきわ
めて効果的であったことになります。
 しかし、当のロシアのプーチン大統領は、2016年9月1日
にブルームバークの取材に応じ、DNCのサーバー侵入事件につ
いて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ・よく聞きなさい。そもそも誰がハッキングしたのかは重要で
  はない。重要なのは国民に公開された情報の内容だ。そちら
  について議論するべきである。
 ・犯人捜しにつながる些細な物事を論点にして、国民の関心を
  「問題の本質」から反らす必要はない。
 ・それでも私は、ふたたび言おう。この事件に関して私は何も
  知らない。またロシアが国家レベルで、それを行ったことは
  一度もない。           http://bit.ly/2gXsOKA
─────────────────────────────
 ロシアがこの情報漏洩に関わったかどうかは本当のところは不
明ですが、常識的に考えれは、ロシアのサーバー攻撃を担当する
チームが、DNCのサーバーをハッキングし、そのメール情報を
ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジ氏に提供した可能
性は高いと思います。しかし、当然のことながら、アサンジ氏は
「そのような証拠は一切ない」という微妙な表現で、そのことを
否定しています。
 しかし、プーチン大統領は「ロシアがやったのではない」と明
確に否定しているものの、まるでブルームバークの記者をからか
うかのように、次のような趣旨のことを述べています。
─────────────────────────────
 仮にロシアが、機密情報を利用して、米国の大統領選挙に影響
を与えたいと願ったとしても、米国の政治は複雑な色合いを持っ
ており、それを理解することは、わが国の外務省にいる専門家で
すら、それを汲むのに充分な感性を持っているのか、私には確信
がもてない。   ──プーチン大統領 http://bit.ly/2gXsOKA
─────────────────────────────
 これに対して米国当局は、2016年7月25日、この情報漏
洩事件について、「どのようにしてDNCのサーバーがハッキン
グされたのか。またこの侵害が、ロシアがトランプに利益をもた
らすための事件か否かについて、現在FBIは、鋭意捜査してい
る」という見解を表明したのです。
 つまり、FBIは、DNCのサーバーのハッキングが、プーチ
ン大統領と犬猿の仲のヒラリー・クリントン氏より、プーチンに
友好的なトランプ氏を大統領にすることを望んで行われたロシア
によるハッキングではないかということがいいたいのです。
 これに対して、9月7日付の「RT/旧ロシア・トゥデイ」は
次のように米当局に反論しています。
─────────────────────────────
◎タイトル「米国のメディアが、DNCのスキャンダルを誤魔化
 すため、反ロシアの『魔女狩り』を始めた」
 極めて重要な選挙が行われる年に、大量の漏洩メールによって
「民主党の姑息な取引」が暴かれたとき、米国のメディアは何を
しようとするだろう?もちろん、ロシアの批判だ。
 さまざまな国に諜報活動を働いている張本人でありながら、証
拠もないまま、米政府はロシアへの帰属ばかりを続けている。米
メディアも、国内のスキャンダルに触れようとせず、米国の主張
をまことしやかに伝えている。     http://bit.ly/2gXsOKA
─────────────────────────────
 ロシアによると思われる米大統領選の関与は、投票にまで及ん
でいる可能性があります。現在、米国での選挙の投票は、電子投
票と紙による投票の二本立て行われています。
 しかし、電子投票機は不正操作などに弱く、紙による記録も残
らないので、正確に集計できないとの懸念が根強いのです。それ
でも未だに広く普及しており、ロイターの調べによると、11月
の米大統領選では、国民の4人に1人が電子投票機で投票するこ
とになります。ロシアのハッキングは、この電子投票に影響を与
えた可能性があります。
 ロイターが、米国勢調査局、選挙補助委員会、選挙監視団体な
どのデータを分析したところ、全国民の25%に当たる4400
万人の有権者が、電子投票機を使う管区に住んでいる計算になり
ます。このなかには、ジョージア、ペンシルベニア、バージニア
といった激戦州も含まれているのです。
 とくに次の3州は票差が非常に少なく、再集計が求められてお
り、ウィスコンシン州は再集計をすることが決まっています。も
し、この3州の結果が覆ると、クリントン氏が逆転します。
─────────────────────────────
              選挙人     票差
     ウィスコンシン  10人   0・7%
     ペンシルベニア  20人   1・2%
        ミシガン  16人   0・3%
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/099]

≪画像および関連情報≫
 ●米大統領選3州で不正操作か/専門家が不審な傾向を指摘
  ───────────────────────────
  (CNN)今月8日に投開票された米大統領選をめぐり、激
  戦となった一部の州で票数が不正に操作されたり、コンピュ
  ーターシステムへの不正侵入があったりした可能性を、著名
  な専門家らのグループが指摘していることが23日までに分
  かった。
   ミシガン大学のコンピューター科学者、アレックス・ホル
  ダーマン教授らによると、大統領選で民主党地盤とされなが
  ら共和党のドナルド・トランプ氏が制したウィスコンシン、
  ミシガン、ペンシルベニア各州の集計結果に不審な傾向がみ
  られるという。同教授らのグループは17日、敗北した民主
  党候補、ヒラリー・クリントン氏の陣営幹部らに対し、3州
  の再集計を要請するべきだと申し入れた。
   申し入れの内容に詳しい情報筋によれば、これらの州では
  機械を使った電子投票方式の郡でクリントン氏の獲得票が少
  なく、投票用紙に記入する方式の郡での票数を7%も下回っ
  ていたことが判明した。グループは、不正侵入の証拠が見つ
  かったわけではないとしたうえで、独立機関による調査が必
  要だと主張している。米誌ニューヨーク・マガジンが最初に
  報じた。CNNは、同グループやトランプ氏の政権移行チー
  ムに取材を試みたが、22日夜の時点で回答は得られていな
  い。クリントン陣営の関係者は、この指摘に基づく監査を要
  請するかどうかについて明言を避けた。
                   http://bit.ly/2fOxvBq
  ───────────────────────────

米国の電子投票機.jpg
米国の電子投票機
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2016年12月02日

●「ロシアの2つのハッカーグループ」(EJ第4413号)

 民主党全国委員会(DNC)のサーバーへのハッキングは、本
当にロシアのやったことなのでしょうか。
 民主党全国委員会への侵入というと、1972年のウォーター
ゲート事件を思い出します。DNCは、1972年の事件当時は
事件名になったポトマック川近くのウォーターゲートビルにあっ
たのですが、現在は、そこから南東4・3キロ離れた連邦議会議
事堂近くのビルにあります。
 DNCがネットワークの異常に気が付いたのは、2016年5
月のことです。早速ネットワーク・セキュリティ企業のクラウド
ストライク社に調査を依頼して情報流出が判明したのです。6月
にDNCと米当局はこれを「ロシア政府による諜報活動」と断定
しています。
 その直後、「グッシファー2・0」と名乗るハッカーが、次の
声明を発表したのです。
─────────────────────────────
 これは私が単独で行った犯行である。すでに主要な数千点の
 ファイルやメールはウィキリークスに提供している。彼らは
 近いうちにそれを公開するだろう. http://bit.ly/2ghDaDZ
─────────────────────────────
 「グッシファー(GUCCIFER)」というと、ヒラリー・クリント
ン氏の側近であるシドニー・ブルメンソール氏のメールをハッキ
ングしたハッカーの名前を思い出します。犯人はそれを知ってい
て、「グッシファー2・0」という名前を使ったのではないかと
思われます。
 7月22日にウィキリークスは、DNCのサーバーから流出し
たと思われるメールを公開したのです。公開者はそのさい、公開
したデータは、「米民主党の中心人物7人」のメールボックスか
ら得たものであることを断っています。
 これらの公開メールのなかには、なかなか興味深いものがあり
ます。それは、民主党全国委員会の最高財務責任者であるブラッ
ド・マーシャル氏の次のメールです。
─────────────────────────────
◎表題「No Shit/そんなことは分かってんだよ」
 ケンタッキー州とウエストバージニア州において「あなたの信
仰は?」と彼に質問してもらえるよう誰かに頼めないだろうか。
 彼は無神論者だろう。彼が無神論者であることが判明すれば少
しは違った結果になりそうだ。南部バプテスト協議会のメンバー
が多い私の票田の人々は、「ユダヤ人」と「無神論者」の間に明
確な境界線を引くだろう。       http://bit.ly/2ghDaDZ
─────────────────────────────
 ここでいう「無神論者のユダヤ人」といっているのは、明らか
に、バーニー・サンダーズ氏を指しています。要するに、予備選
においてサンダーズ氏が困る質問をして、その勢いを止めようと
していることがこのメールでわかります。
 何しろ、同じ共和党の候補者のサンダーズ氏の勢いにブレーキ
をかけて、クリントン氏を有利にしようと民主党全国委員会が仕
組んでいることが明らかになったのです。これは、どうみても不
公平そのものです。
 今回サンダーズを熱心に支持していた人々は、もともと極端な
ヒラリー嫌いであり、それに加えて民主党全国大会の直前にウィ
キリークスの情報公開で、民主党全国委員会が最初からサンダー
ス氏を潰そうと画策していたことがわかったので、怒り狂ったの
は当然です。これでは、サンダース氏の支持者が素直にヒラリー
氏支持に回れなくなったのは当然で、クリントン氏の敗因のひと
つになったといえます。
 この民主党全国委員会のハッキングに対して、FBIなどの米
当局は、ロシアによるものであると断定したのです。それは、ロ
シアの次の2つのハッキング・グループの侵入の形跡を掴んでい
たからです。
─────────────────────────────
     1.ファンシーベア(別名:APT28)
     2. コージーベア(別名:APT29)
─────────────────────────────
 「1」は「ファンシーベア」です。
 これは、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の指揮下にある
グループです。
 このグループは、2000年代半ばから活動し、これまでに米
航空宇宙局(NASA)や国防総省、エネルギー省などの米政府
機関やメディアなどに対して、サイバー攻撃を行っています。そ
れは米国のみならず、西ヨーロッパ、ブラジル、カナダ、中国、
イラン、マレーシア、韓国、日本でも積極的に活発に活動を行っ
ているのです。
 典型的な手法は、標的とした組織のドメイン名を取得し、偽の
ウェブサイトを立ち上げて、内部システム侵入のパスワードなど
の情報を盗み出すというものです。
 「2」は「コージーベア」です。
 コージベアは、ファンシーベアよりもさらに高いスキルを持つ
グループとされています。これはソ連国家保安委員会(KGB)
の後継組織で、諜報活動を行うロシア連邦保安庁(FSB)との
関連が指摘されています。
 2015年のホワイトハウスや国務省、統合参謀本部へのサイ
バー攻撃や、西ヨーロッパ、ブラジル、中国、メキシコ、ニュー
ジーランド、韓国、トルコ、日本への攻撃が疑われています。
 このグループの典型的な手法は、特定の組織や個人に向けてカ
スタマイズした内容の偽メールを送り、侵入プログラムをダウン
ロードさせる「スペア型攻撃」を得意とし、PCのウイルス対策
ソフトにはひっかからない特性を持っています。
 しかし、ファンシーベアとコージベアはそれぞれ独立してハッ
キングを行っており、連携している形跡はないのです。競争して
いるようです。     ──[孤立主義化する米国/098]

≪画像および関連情報≫
 ●米大統領選 露ハッカー集団「コージーベア」が暗躍か?
  ───────────────────────────
  【ワシントン=加納宏幸】米大統領選の民主党候補クリント
  ン前国務長官の陣営幹部のメールが暴露された問題で、米政
  府はロシア情報機関がハッキングに関与したとみている。ク
  リントン氏の秘密を暴き、プーチン露大統領を「力強い指導
  者」とたたえる共和党候補トランプ氏を勝たせようとしてい
  るとの見立てだ。同氏は苦戦しているとはいえ、サイバー攻
  撃への米国の脆弱さは露呈し、クリントン氏は19日のテレ
  ビ討論会で、プーチン、トランプ両氏の「結託」を印象づけ
  ようとした。
   「プーチン氏は操り人形(トランプ氏)を米大統領にしよ
  うとしている。ロシアは米国へのサイバー攻撃に携わり、ト
  ランプ氏は私たちの仲間へのスパイ行為をけしかけた」
   クリントン氏の念頭には、自らの私用メール問題でトラン
  プ氏が今年夏に発した一言がある。同氏はロシアに対し、消
  去されたメールへのハッキングを呼びかけていたのだ。クリ
  ントン陣営は10月18日、「トランプ氏はプーチン氏のス
  パイ活動を悪用しているが、クリントン氏は大統領として、
  プーチン氏の容認できない行為に抵抗し彼を甘やかさない」
  との声明を発表した。       http://bit.ly/2fK7D9F
  ───────────────────────────

バーニー・サンダーズ氏.jpg
バーニー・サンダーズ氏
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2016年12月01日

●「異様づくめだった両党の全国大会」(EJ第4412号)

 今回の米大統領選には、予備選の段階から各種の日本のメディ
アは多くの記者を派遣し、長期間にわたって大統領選の取材して
います。しかし、肝心なことは何も伝えてきていないのです。
 今振り返ると、最終的に2大政党の候補者を決定する共和党全
国大会と民主党では、両方とも異常なことが起きていたことを日
本のメディアは何も伝えていません。
─────────────────────────────
 1.共和党全国大会 ・・ 2016年7月18日〜21日
 2.民主党全国大会 ・・ 2016年7月25日〜28日
─────────────────────────────
 これらの両大会は、予備選を勝ち抜いた両党の候補者を正式候
補者として決定し、それぞれの党が一丸となってその正式候補者
を応援し、盛り上げる大会のはずです。しかし、今回は両大会と
もきわめて異常な状況に陥っていたのです。
 共和党全国大会については、本来であれば、党の長老や大統領
経験者が出席し、党の正式候補者であるドナルド・トランプ氏を
党の支持者に紹介し、その健闘を讃えるとともに、本選に向けて
激励するべきですが、そのようになっていないのです。
 なぜなら、党の重鎮や大統領経験者はほとんど大会を欠席し、
そのため、トランプ陣営としては、4日間のスケジュールが埋ま
らず、1日目からトランプ氏本人が登場し、家族などをフル動員
して、家族が応援演説をやっています。
 2日目からは、既に述べたように、クリスティーニュージャー
ジー知事が登壇し、トランプ氏を支持すると表明し、対抗相手で
あるヒラリー・クリントン氏の模擬裁判を実施したのです。彼は
ヒラリー氏の罪状を読み上げ、ひとつずつ「彼女は有罪か」と会
場に問いかけると、会場からは「ギルティー!(有罪だ)」の大
合唱が起こっているのです。そして、「ヒラリーを逮捕、投獄せ
よ!」と声を揃えるのです。異常そのものです。
 この状況を日本のメディアは取材しているはずですが、大会1
日目は伝えたものの、2日目以降は一切伝えていないのです。ど
うしてでしょうか。日本のメディアもクリントン氏に不利な情報
は伝えたくないのでしょうか。これについて、副島隆彦氏は、自
著の「まえがき」の冒頭で、次のように書いています。
─────────────────────────────
 いったい、超大国アメリカの政治に何が起きているのか。なぜ
ヒラリーは逮捕され、裁判で有罪判決を受け、刑務所に入らなけ
ればならないのか。その理由を日本国向けに書く人がいない。だ
から私が詳しく書く。
 アメリカの共和党の党大会(7月19日)で、7千人の党員が
集まった大会会場で、「ロック・ハー・アップ」──「ヒラリー
を逮捕せよ、投獄せよ」の激しい怒号の大合唱が沸き起こった。
(添付ファイル)の大会会場の様子の写真のとおりである。とこ
ろが不思議なことに日本ではこういう真実が少しも広まらない。
                 ──副島隆彦著/光文社刊
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
─────────────────────────────
 この共和党全国大会と負けず劣らず異様だったのは民主党全国
大会も同じです。民主党大会では、共和党の大会と違って、表面
上は、オバマ大統領が応援に駆け付け、党の重鎮も出席し、通常
の大会運営が行われたのですが、実際は開催前からてんやわんや
だったのです。
 というのは、民主党全国大会の4日前の7月22日のことです
が、とんでもないものが内部告発サイトのウィキリークスに公開
されたのです。それは民主党の全国大会(DNC/デモクラット
・ナショナル・コミティ)のサーバーがハッキングされ、デビー
・ワッサーマンシュルツ委員長のメールが大量に公開されたので
す。副島氏によると、民主党全国委員会のトップは、日本でいえ
ば、自民党の幹事長に相当する大物だということです。
 問題は、そのメールの中身です。それは、大統領選の予備選に
おいて、党の全国委員会のメンバーが、予備選で、好調な同じ民
主党の候補者であるサンダーズ氏の評判をいかに下げるか、どの
ように対抗するかについて指示したり、どのように選挙運動を妨
害するかについて指導したりする内容だったのです。
 当然のことですが、これにサンダーズ支持派は怒り狂ったので
す。この反発を受けて、全国大会前日の7月24日、ワッサーマ
ン・シュルツ全国委員長は、大会閉幕と同時に辞任すると表明し
たのです。
 そのようにして、25日から行われた民主党全国大会の様子に
ついて、副島隆彦氏は次のように書いています。
─────────────────────────────
 そして民主党大会が開かれた4日間にもヒラリー非難の激しい
嵐が続いた。ヒラリーがやってきたことは犯罪だ、という怒りが
まじめな民主党員の活動家たちの中に広がっていった。「代議員
35人が、ウォーク・アウト(大会場から抗議の退場)をした」
と報じられたが、実際にはそんな少数ではなくて、300人以上
いた。3千人の代議員のうちの300人だ。
 彼らは、このあと会場の外のプレス・テントの前に座り込んで
「真実を世界中に報道してください」と要請した。しかしメディ
アは知らん顔だ。やがて、大会を警備する警備員たちに排除され
た。彼ら、ヒラリー反対派は「ヒラリー・フォー・プリズン(ヒ
ラリーを刑務所へ)」の看板(プラカード)を掲げて行進した。
                ──副島隆彦著の前掲書より
─────────────────────────────
 何のことはない。共和党全国大会も民主党全国大会も両方とも
ヒラリー・クリントン氏を非難しているのです。共和党の場合は
まだわかるとしても、民主党全国大会までクリントン氏を非難す
るのはきわめて異常なことです。それにしてもロシアは、なぜ、
ハッキングしたのでしょうか。
            ──[孤立主義化する米国/097]

≪画像および関連情報≫
 ●「民主党はサンダースを勝たせたくなかった」
  ───────────────────────────
   7月25日から4日間の日程で始まる、アメリカ民主党全
  国大会。ところが、開幕の前日から波乱が起きた。党全国委
  員長のデビー・ワッサーマンシュルツ氏が「党大会が終わっ
  た後に委員長を辞任する」と発表したのだ。
   引き金になったのは、22日に発表された内部告発サイト
  「ウィキリークス」の告発だ。同サイトは、民主党全国委員
  会の幹部の間で交わされた1万9252通にも上るEメール
  を公開。民主党予備選挙で、ヒラリー氏がサンダース氏に勝
  つよう働きかけていたことを明らかにした。
   例えば、委員会の最高財務責任者である、ブラッド・マー
  シャル氏は、サンダース氏が「無神論者」であることを理由
  に同氏に不利な選挙戦を仕掛けようとしたと思われるEメー
  ルを送っている。メールでは人物の名前は書かれていないが
  サンダース氏だとみられている。マーシャル氏自身は「メー
  ルはサンダース氏について触れたものではない」と疑惑を否
  定している。
  民主党がサンダース氏を、支援しない態度をとっていること
  を、党全国委員長のワッサーマンシュルツ氏は、何カ月前か
  らも批判されていた。同氏は11月の大統領選までは委員長
  の座に留まると主張していたが、今回のウィキリークスのE
  メール公開により、辞任を避けられなくなった。
                  http://huff.to/2gs7Qjf
  ───────────────────────────
 ●写真出典/副島隆彦著の前掲書より

共和党全国大会/2016.jpg
共和党全国大会/2016
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2016年11月30日

●「クリントン周辺で連発する不審死」(EJ第4411号)

 2016年の米大統領選の最中の6月〜8月に、クリントン陣
営に何らかの関係のある人物が次々と5人も亡くなっています。
それらは次の人物です。
─────────────────────────────
 1. ジョン・アッシュ ・・ 2016年6月22日死亡
 2.   セス・リッチ ・・ 2016年7月10日死亡
 3. ジョー・モンタノ ・・ 2016年7月25日死亡
 4.ヴィクター・ソーン ・・ 2016年8月01日死亡
 5.ショーン・ルーカス ・・ 2016年8月04日死亡
─────────────────────────────
 「1」は、ジョン・アッシュ氏の死です。
 ジョン・アッシュ氏は、黒人エリートの国連職員ですが、民主
党本部とヒラリー・クリントン氏のことで、議会で宣誓証言をす
る前日(諸説あり)の6月22日に亡くなっています。ヒラリー
氏に不利な証言をする予定だったようです。死因は、自宅でベン
チ・プレスをしているときに心臓麻痺を起して亡くなったことに
なっています。なお、ニューヨーク州ドッブス・フェリーの警察
当局は、後になって死因を修正、練習時に喉を損壊し亡くなった
としています。
 しかし、ジョン・アッシュ氏の場合は一応病死であり、死亡に
よって、ヒラリー氏を利することはあっても、ヒラリー陣営の仕
業とはいえないと考えられます。
 「2」は、セス・リッチ氏の死です。
 セス・リッチ氏は28歳、民主党の全国委員会の幹部職員です
が、FBIの捜査官との面会に向う途中で、銃弾を数発受けて死
亡しています。7月10日のことです。
 セス・リッチ氏は、民主党本部の腐敗というか不祥事に強い怒
りを持っていて、それらを内部告発しようとしていたのです。と
くに当時民主党本部のやっていたバーニー・サンダーズへの選挙
妨害や、ヒラリーメールの証拠をFBIに提出しようとして、そ
れによって被害を受ける関係者に殺されたものと思われます。
 セス・リッチ氏が暴こうとしていたことは、ロシア情報局が実
施したとみられるハッキングによって、結果として暴かれること
になったのです。これに関する次の記事があります。
─────────────────────────────
 米国民主党全国委員会のコンピューター・サーバーがハッキン
グされ、民主党本部によるバーニー・サンダース議員への意図的
なサボタージュを示す2万通のEメールがウィキリークスによっ
て報じられました。
 この事件の責任を取って、民主党全国委員会の委員長であるデ
ビー・ワッサーマン・シュルツ議員が辞任しています。このハッ
キングには、ロシア情報局が関連していたと見られ、FBIやC
IAの捜査では、米国大統領選挙において、民主党ヒラリー・ク
リントン候補のダメージを狙い、ドナルド・トランプ氏の当選を
促す意図があったという見方が強まり、ホワイトハウスもこれを
確認しています。           http://bit.ly/2gueTeg
─────────────────────────────
 「3」は、ジョー・モンタノ氏の死です。
 ジョー・モンタノ氏は民主党全国大会の元議長で、セス・リッ
チ氏と同様に、ヒラリー・クリントン氏が選出されるために行っ
てきた違法的な活動をすべて把握していたといわれます。
 ジョー・モンタノ氏の死については、「ヒラリーと不審な仲間
たち」のサイトに次のように出ています。
─────────────────────────────
 ジョー・モンタノ氏の家族によると、彼が遺体で発見されたの
は、民主党全国大会に出席するため、でかける準備をしている時
だったという。家族によると彼の健康は絶好調だった。
 彼の死は民主党全国大会(DNC)の当時、議長だったデビ―
・ワッサーマン・シュルツの件を表沙汰にしたウィキリークスの
暴露から数時間内のことだった。モンタノはまた、副大統領候補
であり、機密にあずかってると推察されているティム・ケインの
補佐役でもあった。インサイダー紙によるとモンタノはDNCの
不祥事とティム・ケインについてあまりにも知りすぎていたと解
説している。             http://bit.ly/2gufnNT
─────────────────────────────
 「4」は、ヴィクター・ソーン氏の死です。
 ヴィクター・ソーン氏については、その著書を副島隆彦氏は翻
訳しています。副島氏はソーン氏について、驚きをもって次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 ヴィクター・ソーン氏が死んだのは8月1日だ。彼は作家で、
クリントン財団の秘密を暴いた本を書いた人だ。自分の家のそば
の山で、銃弾を浴びて死んでいるのが発見された。何と、このヴ
ィクター・ソーン氏は、私、副島隆彦が、2006年に翻訳出版
した『次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた』(徳間書
店)の著者である。(中略)私はヴィクター・ソーン氏とメール
を交信しながら、この本を翻訳した。だから、人ごとではない。
私は、彼を同志、仲間として、追悼する。
                 ──副島隆彦著/光文社刊
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
─────────────────────────────
 「5」は、ショーン・ルーカス氏の死です。
 彼は民主党のサンダース氏の支持者で、クリントン財団と民主
党本部(DNC)の秘密の利益供与を調べていた弁護士です。ル
ーカス氏は、DNCの不正行為を暴露しようと準備していたので
す。彼は、8月4日に自宅で不審な死を遂げています。
 このように、クリントン陣営と民主党にとって都合の悪い人物
が、6月〜8月に実に5人も死亡しているのです。しかし、米国
のメディアはこのことをほとんど報道していないのです。なぜで
しょうか。       ──[孤立主義化する米国/096]

≪画像および関連情報≫
 ●クリントン夫妻の友人47人の不審死
  ───────────────────────────
   夫は第42代米国大統領ビル・クリントンで、自身も米国
  初の女性大統領を狙うヒラリー・クリントン。昨今、彼女の
  名前をメディアで見聞きしない日はない。しかしビルとヒラ
  リーの周囲には、どす黒い疑惑が渦巻いていた──!?
   クリントン夫妻の周りに「不自然な死」が多いことをご存
  じだろうか?実は最近になって、複数の海外メディアがこの
  疑惑を報じていて、その数何と47人。「クリントン夫妻の
  友人たちは、変な死に方をする癖をお持ちのようだ」と皮肉
  られている。その中でも特に有名な10人を紹介したい。
  ■ジェームス・マクドゥガル:1998年/心臓発作
   マクドゥガルはアーカンソー時代、クリントン夫妻の不動
  産ビジネスのパートナーであった。しかしこのビジネスには
  不正があり、後に社名を取って「ホワイトウォーター疑惑」
  と呼ばれるようになった。マクドゥガルはこの不正を訴追さ
  れ、3年半の懲役刑を受けて服役中に持病の心臓発作を起こ
  した。彼が発作を起こした時、除細動器が刑務所に常設され
  ていたが使用されず、時間のかかる遠方の福祉病院に運ばれ
  た。彼はクリントン夫妻を訴追しようとしたスター検察官側
  の最重要証人として裁判に出廷予定であったが、彼の死によ
  り訴追は困難となった。      http://bit.ly/2f7VTPN
  ───────────────────────────
 ●写真出典/──副島隆彦著の前掲書より

クリントン周辺で次々と起きる不審死.jpg
クリントン周辺で次々と起きる不審死
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2016年11月29日

●「失敗したヒラリーメールの火消し」(EJ第4410号)

 米大統領選におけるテレビ討論において、トランプ氏とクリン
トン氏は次のやり取りをしています。
─────────────────────────────
 クリントン:ドナルド・トランプのような人間に米国の法律が
       任されていないのは喜ばしいことだ。
  トランプ:もし、俺様が法律を担う立場なら、お前は確実に
       刑務所行きだ!
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 まことに低レベルのやり取りですが、クリントン氏には、リビ
ア侵攻、アルカイダ支援、ショックドクトリン、それにクリント
ン財団、ウォール街との癒着、そして公務に私的メールの使用と
まるで米国版「疑惑の総合商社」です。これでもし選挙に負ける
と「刑務所行き」も十分あり得ることだったのです。実際にヒラ
リーメール問題についてトランプ氏は、特別検察官を任命して、
問題を追及すると明言していたのです。
 しかし、選挙終了後、トランプ氏は、ヒラリー疑惑をどうする
のかについてニューヨーク・タイムズ紙の記者に問われると、次
のように答えているのです。
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 私は前に進みたい。後退したくない。クリントン一家を傷つけ
たくないんだ。本当にそんなことしたくない。彼女は大変な思い
をしてきたし、いろいろな形でとても苦しんできたからね。
                 ──ドナルド・トランプ氏
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 まるで「仏のトランプ」への変貌です。しかしこれについて、
トランプ氏の支持者たちは強く反発しています。共和党支持者で
ある「レッド・ステイト・コム」は、約束していた特別検察官を
任命しないなら、「この候補は、これまで本人が主張していたよ
うな人間ではないという赤裸々な事実」が明かされることになる
と書いています。赤(レッド)は共和党の色であり、共和党の強
い州は「レッド・ステイト」と呼ばれるのです。
 また、トランプ氏を強力に支持してきた右派メディア「ブライ
トバート・ニュース」は、「約束が違う」とトランプ氏の立場修
正を非難しています。ブライトバートの前最高経営責任者は、ス
ティーブ・バノン氏であり、彼は次期トランプ政権の首席戦略官
に任命されているので、ヒラリーメール問題がトランプ氏のいう
ようにこのままになるとはとても思えないのです。
 今回の米大統領選においてクリントン陣営は、終始ヒラリーメ
ールの対応に追われ、その結果選挙に敗れるという最悪の結果に
終わっています。しかも、この問題は大統領選が終了してもまだ
終わっていないのです。
 ヒラリーメール問題があまねく世界の知るところとなったのは
2015年3月3日付のニューヨーク・タイムズ紙の報道です。
その翌日、AP通信がヒラリーメールを追跡した結果、ニューヨ
ークチャパクア地区にあるクリントン氏の自宅のサーバーにたど
り着いたと報道しています。
 クリントン氏のITの知識は十分ではなく、自宅のサーバーは
元国務省職員でクリントン氏の選挙スタッフのブライアン・パグ
リアンス氏によってセットされたこともわかっています。しかし
そのサーバーには何のセキュリティ対策も施されていなかったと
いわれます。これでは、メールが流出するはずです。もし表に出
せないメールをやり取りするのであれば、もっと厳重なセキュリ
ティー対策を施すべきであったのです。
 そして、ニューヨーク・タイムズ紙報道の1ヶ月後の2015
年4月12日に、ヒラリー・クリントン氏は大統領選への出馬を
正式に表明しています。クリントン氏にとって最悪のタイミング
での出馬表明になってしまったといえます。
 その点日本の政治家は、閣僚でも平気で個人のメールアカウン
トを使うし、普通の携帯電話で重要な会話をやり取りしているの
です。安倍首相ですらドコモのケータイを使っています。要職に
ある者は、たとえ個人的な対話でもすべてが公務になると認識す
べきです。ヒラリーメールの深刻さについて、副島隆彦氏は次の
ように述べています。
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 ヒラリーが国務長官に就任した(2009年1月)後、すぐに
この私的なメール・アカウントを契約して使い始めた。ヒラリー
が、国家機密が厳重に保護されている国務省のアカウント(暗号
化され三重に防衛されている)を使わずに、個人アカウントのメ
ールで、自分の手下、配下の国務省の下部組織である、CIAの
特殊部隊(暗殺部隊、破壊工作班)をいいように使っていた。そ
れが、ヒラリー・メールの公表とともに今どんどんバレようとし
ている。それがまさしくべンガジ事件であり、ヒラリー・メール
問題だ。ヒラリーはもう逃げられない。
                 ──副島隆彦著/光文社刊
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
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 クリントン陣営としては、当然ヒラリーメール問題の火消しを
必死になってやっています。気になるのは、2016年6月27
日に、ロレッタ・リンチ米司法長官が、ビル・クリントン元大統
領と密談していたことです。ヒラリー氏の夫であるビル・クリン
トン元大統領はこの事件の利害関係人であり、司法長官は会うべ
きではないのです。
 それも話し合っている場所が異常な場所なのです。アリゾナ州
の空港に駐機していた司法長官専用機の中で、2人は何かを話し
ていたのです。時期が時期だけにそれがヒラリーメール問題であ
ることは明らかであると思います。
 しかし、後に何を話したのかについて聞かれたリンチ司法長官
は「ビル・クリントン氏とは孫とゴルフの話をしただけ」と答え
ています。そんな話なら、空港のティールームでも話せばよいの
です。         ──[孤立主義化する米国/095]

≪画像および関連情報≫
 ●ヒラリー氏/夫の失態で窮地に!
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   クリントン元大統領と言えば、マサチューセッツ州の予備
  選でも選挙違反と思しき行動を取って一部で猛烈な批判を浴
  びたものです。今度は、妻ヒラリーのメール問題の調査をめ
  ぐり最終段階にある米司法省の長官に歩み寄るという失態を
  犯してしまいました。
   オブザーバーによると、アリゾナ州のフェニックス空港に
  て離陸するはずのクリントン元大統領が乗ったプライベート
  ・ジェット機は、ロレッタ・リンチ米司法長官が控える航空
  機が同じ滑走路に着陸するまで待機していたといいます。明
  らかに、クリントン元米大統領が面会する機会を伺っていた
  と解釈できますよね?リンチ米司法長官と言えば、当時大統
  領だったクリントン氏にNY東部地区連邦地方裁判所の判事
  に指名された人物です。
   妻のクリントン候補は暫く沈黙していたものの、FBIで
  聴取を受けた後にNBCのインタビューに応じるなかで夫と
  ロレッタ米司法長官との面会に触れ「短い、偶然の機会だっ
  た」と振り返っていました。その上で、両者の顔合わせがい
  かに政治的に批判を招くものだったかとお互い認識したと言
  及、二度とこうした面会はないと述べた一方で「後の祭り」
  と断っていました。もともと、クリントン元大統領は空港で
  誰かに話しかける癖があったようです。
                   http://bit.ly/2gtUVQW
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ロレッタ・リンチ米司法長官.jpg
ロレッタ・リンチ米司法長官
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする