2019年08月09日

●「ECRAは2層構造になっている」(EJ第5065号)

 8月5日(米国時間)のことです。トランプ政権は中国を25
年ぶりに「為替操作国」に指定しました。米中の戦いは、貿易摩
擦、ハイテク覇権に加えて、遂に為替金融の問題まで、拡大する
ことになったのです。このニュースは、4日の正午頃、外出中の
私のスマホに速報として飛び込んできました。中国が「1ドル=
7人民元」突破を容認したとトランプ政権は判断したのです。
 さて、かつてのCOCOM──共産圏への軍事技術や戦略物資
の輸出を禁止した委員会は、東西冷戦の終結に伴い、有名無実化
したのですが、通常兵器や関連技術の第三国への過度な売却やテ
ロリストに渡ることを防ぐ一種の紳士協定としてのみ残ることに
なったのです。それが「ワッセナーアレンジメント」です。
 これまで米国では、軍事転用が可能な品目の輸出に関しては、
商務省産業安全保障局(BIS)がEAR(輸出管理規則)とい
うルールにしたがって管理していたのです。これをかつてのCO
COMのように管理を厳しくしたのが、エクラ/ECRA(米国
輸出管理改革法)です。2018年8月13日に、2019年会
計年度の国防授権法に盛り込まれるかたちで成立しています。こ
れはまさに新COCOMです。この法律の内容を見ると、トラン
プ政権の本気度がわかります。
 ECRAは、次の2層構造になっています。
─────────────────────────────
  ◎ECRA(米国輸出管理改革法)
  1層目:先端技術やインフラ、ハイテクなどの14分野
  2層目:武器輸出禁止国に対する輸出管理を徹底させる
─────────────────────────────
 1層目の先端技術、インフラ、ハイテクなどの14分野は、中
国の「中国製造2025」にほぼ重なるのです。参考までにこの
14分野を以下に示します。これを見ると、現在の先端技術が具
体的に何であるかがわかります。
─────────────────────────────
     @バイオテクノロジー
     AAI・機械学習
     B測位技術
     Cマイクロプロセッサ
     D先進コンピューティング
     Eデータ分析
     F量子情報・量子センシング技術
     G輸送関連技術
     H付加製造技術(3Dプリンタなど)
     Iロボティクス
     Jプレインコンピュータインターフェース
     K極超音速
     L先端材料
     M先進セキュリティ技術
                 ──渡邊哲也著/徳間書店
       『「中国大崩壊」入門/何が起きているのか?/
        これからどうなるか?/どう対応すべきか?』
─────────────────────────────
 このECRAでは、270日以内に武器輸出禁止国に対する許
可条件を見直さなければならない決まりになっています。武器輸
出禁止国とは中国やイランですが、具体的には中国を指していま
す。そして、先端技術はどんどん進化するので、270日ごとに
その見直しを行うことになっているのです。
 ECRAが成立したのが2018年8月、施行されたのが10
月ですから、それから270日というと、今年の5月16日にな
りますが、トランプ大統領は、国家非常事態宣言を行い、「情報
通信技術とサービスのサプライチェーン(供給網)の保護に係る
大統領令」に署名しています。
 ここで知っておくべき米国のもうひとつの法律があります。そ
れは「国際緊急経済権限法/IEEPA」です。これは、国家非
常事態宣言を受けて発動されます。これについて、渡邊哲也氏は
次のように解説しています。
─────────────────────────────
 IEEPAは安全保障・外交政策・経済に対する異例かつ重大
な脅威に対し、非常事態宣言後、金融制裁にて、その脅威に対処
するものだ。具体的には、攻撃をたくらむ外国の組織もしくは外
国人の資産没収(米国の司法権の対象となる資産)、外国為替取
引・通貨および有価証券の輸出入の規制・禁止ができるものであ
り、安全保障の“伝家の宝刀”ともいえるものである。
                ──渡邊哲也著の前掲書より
─────────────────────────────
 現在、IEEPAが適用されているのは、イラン、シリア、北
朝鮮の3ヶ国に、ウクライナ問題によってロシアもIEEPAを
適用しています。実は、これは、きわめて強力にして、される方
としては、きわめてシビアな法律といえます。
 これによって米国商務省は、ファーウェイおよびその関連会社
69社を禁輸措置対象の「エンティティ・リスト/EL」に入れ
米国の技術および製品の輸出を禁止したのです。米国企業がEL
に入っている企業に技術や製品を輸出する場合、BIS、商務省
産業安全保障局(BIS)の許可が必要になりますが、実際に許
可が出ることはないのです。
 この場合、ある製品の部品や技術において、米国製の割合が、
25%以上の場合、輸出禁止商品になります。つまり、日本製の
製品であっても、米国製部品が25%を超える製品をELリスト
に記載されている中国企業に輸出すると、その日本企業は、この
米国商務省のDPL(取引禁止顧客リスト)に掲載され、米国企
業との取引や他国からの米国原産技術を含む商品の取引が停止さ
れることになります。なお、テロリストなどに関しては25%で
はなく、10%でDPLに掲載されます。
              ──[中国経済の真実/064]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイへの米制裁に要警戒/渡邊哲也氏
  ───────────────────────────
   米半導体大手のクアルコムは技術社員に対して、華為の社
  員と接触するのを禁じた。また、第三者を通じて技術や製品
  が渡ることを防止する規定があるため、最終利用者に注意を
  払う必要がある(エンドユース=用途確認)。
   万が一、違反した場合、取引禁止顧客リスト(DPL)に
  掲載され、包括的輸出許可を失い、取引先や銀行などから取
  引停止を宣告される可能性もある。企業は、存続の危機に陥
  る。米グーグルをはじめ世界中の華為取引先企業が、関係の
  見直しと情報遮断を始めたのはこのためだ。
   当然、日本企業もこの対象になる。日本独自の技術や製品
  は対象にならないが、米国の技術や製品が含まれていた場合
  日本企業も制裁を受ける可能性がある。
   一部のメディアでは、これがトランプ大統領の一存で行わ
  れているように報じられているが、これは米議会が昨年成立
  させた2019年の国防権限法(NDAA)と輸出管理改革
  法(ECRA)によるもので、トランプ大統領は議会の指示
  に従っているにすぎない。
   現在のところ、商務省による輸出規制だけであるが、今後
  財務省外国資産管理室(OFAC)が金融制裁の対象を公示
  する「SDNリスト」に掲載する可能性もある。既に中国軍
  装備発展部が掲載されている。  https://bit.ly/2ZHU2HA
  ───────────────────────────

ワシントンDCの商務省の建物.jpg
ワシントンDCの商務省の建物
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2019年08月08日

●「メディアの伝え方にも問題がある」(EJ第5064号)

 8月5日のBSフジ「プライムニュース」は、日韓関係を取り
上げています。番組のタイトルと出演者、要約動画をご紹介して
おきます。
─────────────────────────────
    ●BSフジ/「プライムニュース」
     2019年8月5日/午後8時から10時
    ◎タイトル
     『“ホワイト国除外”日韓関係の行き着く先』
    ◎出演者
     元駐韓特命全権大使/武藤正敏氏
     産経新聞ソウル駐在特別論説委員/黒田勝弘氏
     世相研究所日本研究センター長/陳昌洙氏
     前編/20分38秒  https://bit.ly/2KvjA4v
     後編/10分43秒  https://bit.ly/31ouboO
─────────────────────────────
 動画の後編で、韓国の陳昌洙氏が、次のようにいうシーンがあ
ります。「安倍さんのやり方はひどい。最高裁判決による強制執
行によって日本企業に実害が出た場合、それなりの処置(報復)
を取る」といっていたのに、その前に報復措置をとった。もし、
言葉通りだったら、こんな騒ぎにはならなかった」と。
 陳昌洙氏はこの番組の常連で、私は何回も意見を聞いたことが
あります。とても穏やかに話をする人ですが、ネット上には次の
ようにいう人がいます。
─────────────────────────────
 陳昌洙氏は、学者肌の「韓国人らしくない」穏やかな話しぶり
ですが、話してる内容は、いつものギャアギャアとヒステリック
にわめく韓国人と変わりません。   ──あるネット上の意見
─────────────────────────────
 まったくその通りで、今回の問題でこの人は、韓国の非は絶対
に認めないのです。そういう点は北朝鮮と同じです。それよりも
問題なのは、陳昌洙氏が今回の3品目の輸出規制とホワイト国外
しを、徴用工問題などについての日本の報復であると受け止めて
いることです。これは、メディアの当初の伝え方にも問題があり
ますが、完全な間違いです。
 問題は、米国の核合意からの離脱を受けて、イランが対抗処置
として、核合意の上限である「濃縮3・67%」を短期間で「濃
縮4・5%」まで引き上げたことです。これには大量のフッ化水
素が必要ですが、この物品は厳しく管理され、禁輸されているの
で、イランが大量に持っているはずがないものです。
 推測ですが、これについて日米で話し合いがもたれ、とりあえ
ず、日本は重要3品目の輸出を止めたのです。そのさい「韓国に
問題がある」ことを日米双方が認識しています。そして、7月1
日に公示、4日に韓国向け通関を停止しています。緊急を要する
からです。そして今後は、個別の契約ごとに審査し、許可を出す
方式にしたのです。このさい、許可の審査は、各地方局ではなく
経済産業省本省が行うことにしています。
 この時点では、韓国は依然としてホワイト国です。しかし、こ
れら3品目に加えて、兵器に転用される可能性のある物質につい
ても規制することにしたのです。そこで行ったのが韓国の「ホワ
イト国外し」です。これによる規制される品目は1000種類を
超えるといわれています。したがって、これらの措置は、徴用工
問題とは何も関係はないのです。もし、今後日本企業に本当に実
害が出ると、日本政府は躊躇なく報復を行うはずです。それを韓
国の日本研究の専門家がわかっていないことになります。
 もうひとつ、ホワイト国でなくても90日経てば、出荷される
ということをいうテレビのコメンテーターは多いですが、そんな
ことはありません。上記のように輸出品の個別審査は、経済産業
省扱いの本省検査になっており、より厳しいのです。そのため、
90日かかったうえで、「NO!」になることもあります。これ
について、渡邊哲也氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 この日本から韓国への輸出規制強化については、前提条件に国
家間の信頼の低下があるが、あくまでも「韓国の不適切かつ不適
正な輸出管理」が原因であり、この状況が改善されないかぎり、
輸出許可が下りない可能性がある。
 また、一部報道では、90日で許可が下りるかのように報じら
れているが、あくまでも90日以内に許可、不許可、継続審査を
通達しなくてはならないだけで、これは目安でも何でもない。カ
ーボンなどの場合、継続審査で1年程度かかったケースもあり、
認められないケース(自発的に取り下げる)も多数ある。
                 ──渡邊哲也著/徳間書店
       『「中国大崩壊」入門/何が起きているのか?/
        これからどうなるか?/どう対応すべきか?』
─────────────────────────────
 韓国と北朝鮮が異常に接近していることには、米国は不快感を
もっています。それは国連安保理決議により禁止されている北朝
鮮籍船舶の「瀬取り」を含む違法な海上活動の監視に、肝心の韓
国は入ろうとしないからです。
 現在、この監視活動に関しては、日本、米国、オーストラリア
カナダ、ニュージーランド、フランス、英国の7ヶ国が行ってお
り、韓国は入っていません。韓国は汗をかいていないのです。そ
れどころか、韓国が北朝鮮の瀬取りを助けている疑いすらありま
す。そういう国に、核兵器に転用可能な重要物資をホワイト国と
して、フリーに輸出できるでしょうか。
 トランプ大統領は、文在寅大統領からの日本との仲裁要請につ
いて、「両国がそれを望むなら・・・」という条件をつけていま
す。日本がそれを望まないことを知っているからです。もともと
日米で緊密に相談としてやった措置だからです。説明予定のEC
RAについては、明日のEJで説明します。
              ──[中国経済の真実/063]

≪画像および関連情報≫
 ●「ホワイト国」の条件は「信用できる国」
  ───────────────────────────
   予想通りと言うべきか、意外と言うべきか、政府は韓国に
  対して「ホワイト国」から除外することを正式に閣議決定し
  た。奇しくも米中貿易戦争が再燃した日に、日韓においても
  一種の貿易戦争の火蓋が切って落とされた格好となった。
   「ホワイト国」というのは、子どもでも解るように一言で
  直訳すると「信用できる国」ということになるだろうか。
   企業における「ホワイト企業」や「ブラック企業」のよう
  なもので、両者を分ける条件は「約束が守れる」かどうか。
   現在の韓国政府は、まともな法律や常識が通用せず両国間
  の約束を守らないという意味で、到底「ホワイト国」とは呼
  べそうにない。北朝鮮などのテロ支援国家を「ブラック国」
  と呼ぶなら、さしずめ、韓国は白黒がはっきりしない「グレ
  ー国」といったところだろうか。
   「ホワイト国」は世界に27カ国あり、アメリカ、カナダ
  オーストラリア、ニュージーランド、EU加盟国などの先進
  国ばかりが名を連ねており、アジアでは唯一、韓国のみが先
  進国として「ホワイト国」扱いされてきた。
   アジア、東南アジア、アフリカ、中東の国々は「ホワイト
  国」とは認定されていないが、近日中には、韓国もその中に
  入ってしまうことになる。韓国は、情報技術的には先進国で
  あっても、外交上、「約束を破る」などの先進国とは思えな
  い大人げない言動が目立ち、精神的には大人に成り切れてい
  ない国というイメージがある。(特に日本に対しては)
                  https://bit.ly/2ZCdQw1
  ───────────────────────────

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世相研究所日本研究センター長/陳昌洙氏
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2019年08月07日

●「ホワイト国外しは日米が事前協議」(EJ第5063号)

 韓国政府が逆上しています。文在寅大統領が日本を名指しして
「盗人猛々しい」と暴言を吐いています。韓国のトップが日本を
「盗人」と表現しているのです。この国の国会議長、文喜相(ム
ンヒサン)氏も同じ言葉を使って日本を批判しています。そこで
もう少し韓国について書くことにします。
 今回の問題は、半導体生産に欠かせない3品目の部品に関して
指定の韓国企業から需要に見合わない注文があり、その30%程
度が行方不明になっているということから始まっています。これ
に関して日本から再三調査するよう韓国に求めていますが、韓国
側が応じないため、実現していないのです。これらの部品は北朝
鮮に流れているのではないかといわれています。
 こういうケースは文在寅政権になって急増しており、このため
の会議は、韓国側は一度も応じていないのです。少なくともこれ
らの部品の一部がイランに流れていることは確かであり、それは
北朝鮮を経由している疑いがあります。
 これに関して韓国政府は「証拠を示せ」といって来ましたが、
2019年5月17日付、「朝鮮日報」が、韓国国会議員の調査
の結果として、これらの禁輸物資が大量に海外に流れていた事実
を報道すると、韓国政府は「4年間で156件の不正輸出があっ
た」ことを認めたのです。しかし、韓国政府は156件も摘発し
ているのは、韓国がきちんと管理している証拠であると、わけの
わからないことをいっています。一般的に不法輸出はあっても年
に数件であり、156件は明らかに異常な件数で、日本側はこれ
に関して詳細な情報を持っているといわれています。
 実は、今般の韓国への輸出規制強化やホワイト国外しについて
日本は米国と事前に協議していたと思われることがあります。そ
れは、2018年に米国が新設し、既にファーウェイなどに対し
て適用している次の2つの法律です。これについては、6月12
日付、EJ第5024号で紹介していますが、その要点とコメン
トを抜粋しておきます。
─────────────────────────────
   1.FIRRMA/外国投資リスク審査現代化法
   2.  ECRA/  アメリカ輸出管理改革法
 「1」は、外国人による投資審査を実施する対米外国投資委員
会の権限と範囲を拡大するものです。
 具体的には、「外国人」の定義を変更し、外国人の範囲を経営
に影響を与える取締役会への参加などまで拡大し、安全保障の定
義に、先端技術や不動産を加えています。これによって、中国企
業や中国人による先端技術や安全保障に関わる企業買収や不動産
投資は不可能になります。
 「2」は、事実上のココム(対共産圏輸出規制)に匹敵するも
のです。これによって、米国の武器輸出禁止国──ロシア、中国
ベネズエラ、イラクやテロ規制対象──などへ米国の「最先端お
よび基盤技術」を輸出することを禁じています。これに該当する
分野は14ありますが、日本企業をはじめとする他国が、これら
を今後中国に輸出するさいには、この法律によって、米国の許可
が必要になります。         https://bit.ly/2WDJPi3
─────────────────────────────
 日本では、2017年において「外国為替及び外国貿易法の一
部を改正する法律」をつくっていたのですが、5月27日のトラ
ンプ大統領来日に合わせて、官報で次の告示を行い、この8月1
日から、FIRRMAと重なる部分については、外国からの投資
審査を一気に厳格化させています。
─────────────────────────────
 対内直接投資等に係る事前届け出対象業種の追加等を行いま
 す。         ──2019年5月27日付、官報
                 https://bit.ly/2M1N3pM
─────────────────────────────
 これらの事実は、ネットには出ているものの、新聞などでは、
ほとんど報じられておらず、知っている人は少ないのですが、安
全保障に関しては甘い日本も、海外からの投資に関して、厳格な
審査をしなければならない事態になっているのです。これによっ
て日本が韓国に輸出を厳格化した例の3品を生産する企業に海外
から投資をすることは事実上不可能になったのです。
 もう少し、具体的な例を上げることにします。東芝は、米国産
液化天然ガス(LNG)事業を保有しており、赤字解消のために
中国企業に売却しようとしていたのですが、2019年4月にそ
の計画は破綻しています。FIRRMAによって、インフラ関連
企業を中国に売ることなど、不可能になったからです。
 ニューヨークのトランプタワーのすぐ近くに、このビルの警備
会社が入っているビルがあります。このビルを中国の海航集団と
いう企業が買収し、買収はほぼ成立していたのです。しかし20
18年8月、FIRRMAの成立に前後して、対米外国投資委員
会(CFIUS)は、海航集団に対して、売買契約無効と売却命
令を言い渡し、同ビルを強制的に売却させています。この法律は
こういうことができるのです。
 もうひとつの法律であるECRAは、「新COCOM」といわ
れ、既存の輸出規制ではカバーしきれない新しい基盤技術のうち
米国の安全保障にとって必要な技術を省庁間で特定し、輸出規制
の対象とすることを定めたものです。COCOMというのは、冷
戦時代の1949年11月、先進資本主義国による共産圏向け輸
出統制のための機関として発足した委員会の名称です。
 ECRAについては、明日のEJで詳しく述べますが、これが
構築されると、ハイテクや主要インフラ分野に対する規制が一段
と強化されることになりますが、そういう枠組みから韓国が外さ
れる可能性があります。現在の文在寅政権は、どう考えても北朝
鮮とさまざまな連携をとっていると考えられ、そういう意味から
も、今般の韓国に対する日本の輸出規制やホワイト国外しは、米
国と連携をとっているものと考えられます。
              ──[中国経済の真実/062]

≪画像および関連情報≫
 ●韓国では「単なる報復ではなく、韓国潰し」と戦々恐々
  ───────────────────────────
   2019年7月4日、日本政府は韓国に対する輸出規制の
  強化策を発動した。「報復はけしからん」と息巻く韓国人が
  多い中で「そんな生易しいことでは終わらない。日本は我が
  国を潰すつもりだ」と見切る韓国メディアが出てきた。(鈴
  置高史/韓国観察者)
   7月4日のウォン相場は前日比2・70ウォン高の1ドル
  =1168・60ウォンで引けた。1日から3日まで、韓国
  向けIT製品の素材の輸出規制強化――いわゆる「日本の対
  韓報復」を嫌気し売られていたウォンが、少し持ち直した。
   今年第1四半期のGDPが、マイナス成長と判明した4月
  25日以降、ウォンは売られ、一時は1200ウォンに迫っ
  た。ただ、ドルの利上げ観測から、6月24日以降は、11
  50ウォン台に落ちついていた。しかし日本が「大韓民国向
  け輸出管理の運用の見直しについて」を発表した7月1日以
  降、再びウォンは売られた。7月1日は、前日比、4・10
  ウォン安の1158・80ウォン、2日は7・20ウォン安
  の1166ウォン、そして3日は・30ウォン安の1171
  ・30ウォンと下げ続けた。IT製品の素材が円滑に日本か
  ら入らなくなると、半導体など主力産業がマヒすると韓国は
  焦っている。だが、その心配の前に、韓国経済の持病たる資
  本逃避を懸念せざるを得なくなった。
                  https://bit.ly/2T61dXy
  ───────────────────────────

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文剤寅韓国大統領
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2019年08月06日

●「イランはなぜウラン濃縮が可能か」(EJ第5062号)

 日本の韓国への輸出規制強化の問題、米国による中国への貿易
戦争の継続、そして非核化をめぐる米朝の問題──これら一見バ
ラバラに見える出来事が、すべてがつながっているということに
ついて書いています。そういう位置付けのなかで、中国の問題を
考える必要があるからです。
 トランプ大統領の率いる米国は、現在はイラン問題に関して頭
がいっぱいの状態です。実は上記の3つの出来事は、すべてイラ
ン問題につながっているのです。米国は、まだ核兵器を保有して
いないイランについては、必要と判断すれば、躊躇なく戦争を仕
掛ける可能性は十分あります。既にトランプ大統領は、ホルムズ
海峡で米海軍の無人偵察機が撃墜されたことを受けて攻撃を命令
し、攻撃開始直前に思い止まっています。やる気十分です。
 さて、そもそもイランの核合意とは何でしょうか。
 2002年にイランでウラン濃縮施設が見つかったことを契機
に、イランが核兵器を持てないようにすることを目的として、米
英仏独中ロ6ヶ国とEU連合が2015年に締結した合意協定で
す。その見返りとしてイランには、経済制裁を段階的に解除して
いく約束をしています。
 しかし、トランプ氏は大統領になると、大統領選挙のときの公
約であるとして、このイラン核合意から離脱したのです。当然の
ことながらイランは反発し、2019年7月8日に、イラン核合
意で制限された範囲を超えるウラン濃縮活動を再開することを表
明します。この時期が、日本が韓国への輸出規制を強化させた時
期と一致するのです。
 もう少し詳しく説明すると、この核合意では、「濃縮3・67
%」が濃縮の上限とされていたのですが、イラン政府は、濃縮は
「4・5%」に達したとし、さらに濃縮のレベルを上げて、やが
て20%まで引き上げると宣言しています。さて、この宣言は何
を意味しているのでしょうか。これについて、作家で経済評論家
の渡邊哲也氏の最近刊書から引用します。
─────────────────────────────
 原爆製造に使えるウラン濃度は90%。20%までの濃縮は時
間がかかり難しいが、20%から90%までは比較的短期間で達
成できるとされており、イランが濃縮度を20%まで引き上げた
場合、核製造に王手がかかることになる。
 また、2〜5%までは発電用、20%までは医療用という言い
訳ができるが、20%を超えた場合、核爆弾製造以外の用途はな
く、これまでのような民生用という言い訳ができなくなる。これ
を受けて、アメリカはイランに警告を発し、中止しなければ攻撃
も視野に入るとしている。     ──渡邊哲也著/徳間書店
       『「中国大崩壊」入門/何が起きているのか?/
        これからどうなるか?/どう対応すべきか?』
─────────────────────────────
 ウランの濃縮技術は、20%までが非常に難しく、時間がかか
るのですが、これを超えるとあとは一気に進むそうです。そこで
「3・67%」を上限とし、20%を超えさせないようにすると
いうのがイラン核合意のポイントなのです。
 そしてここが重要なのですが、このウランの濃縮に不可欠なの
が「フッ化水素」と「遠心分離機」です。どちらもイランへの禁
輸品目であり、ワッセナーアレンジメントの規制製品になってい
ます。ワッセナーアレンジメントとは、通常兵器の輸出管理に関
する国際的な申し合わせであり、42ヶ国が協定を結んでおり、
通称「新ココム」と呼ばれています。ワッセナーというのは、オ
ランダのハーグ近郊の場所の名称です。
 イランは、「フッ化水素」と「遠心分離機」をどこから手に入
れたのでしょうか。
 このうち、「フッ化水素」については、日本が韓国に対して輸
出管理を厳格化させた「エッチングガス」のことであり、ホワイ
ト国であった韓国の関与が疑われるのです。もちろん直接ではな
いものの、たとえば、「韓国→北朝鮮→イラン」というルートで
第三国を通じて、フッ化水素が大量にイランに渡った可能性は高
いといえます。
 遠心分離機については、中国の関与が考えられます。また、イ
ランに通信システムを提供したのはファーウェイであり、中国と
イランはサイバー分野でも協力関係を構築しているといわれてい
ます。米国はこれに強く反発しており、そもそもファーウェイの
孟晩舟CFOがカナダで逮捕されたのは、この容疑なのです。
 2018年9月のことですが、イランの国防相は、中国の国防
相と会談し、中国・イラン両軍の協力を積極的に進めることで合
意しています。このようにファーウェイは、イランにも不可分に
結びついているのです。
 日本の韓国への輸出規制強化は、日米が事前に話し合った結果
行われたものであると考えます。トランプ大統領が、韓国文在寅
大統領から仲裁を電話で頼まれて「両国が望むなら」と条件をつ
けたり、ポンペオ国務長官が仲裁と称して、下手な芝居をしてい
ますが、あくまでポーズであり、日本は事前に話し合われたこと
を粛々とやっているだけです。
 ここで、輸出規制強化とホワイト国外しを一体として説明して
きていますが、この2つは分けて考えるべきです。まず、7月1
日に公示し、即日実施されたのは、フッ化ポリイミド、レジスト
そしてフッ化水素の3品目の輸出規制です。これについては、こ
の時点で韓国向け通関が停止しています。
 これに続いて、パブリックコメントを募集したうえで、韓国を
「ホワイト国」から除外する手続きが行われています。これにつ
いては、既に2日に閣議決定が行われ、7日に公布し、28日か
ら施行することになっています。
 ちなみに、最初の一週間で集まったパブリックコメントは、約
6300件、賛成は6200件以上で98%以上。反対はわずか
60件のみであったといわれています。
              ──[中国経済の真実/061]

≪画像および関連情報≫
 ●輸出規制の真相、日米韓の安保連携から逸脱する韓国
  ───────────────────────────
   輸出管理強化をめぐり、日韓関係が一段と緊張している。
  日本政府は今週にも、貿易上の優遇措置を適用する「ホワイ
  ト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定する予定だ。
  日本側の措置に関しては、ぜひともご理解いただきたい点が
  ある。批判を覚悟で申し上げれば、この問題は、2国間関係
  だけでなく、より大局的な視点から判断すべきだということ
  だ。確かに、WTO(世界貿易機関)と安全保障輸出管理の
  世界から見れば、今回の措置は周到に準備された、韓国の急
  所を突く極めて効果的な一撃である。決して一般的な貿易制
  限ではない。あくまで、韓国に対し従来認めてきた特例をや
  めて、一般のメンバー国と同様の待遇に戻すにすぎないから
  だ。この点は今後の「ホワイト国」リストからの除外につい
  ても同様だろう。
   今回の輸出管理強化措置自体は極めて合理的かつ正当なも
  のだ。日本は長く忍耐を続ける中で、今回やむにやまれぬ理
  由で実施した。国際法上整合性があり、一般日本国民の支持
  も得ている。しかし、問題の本質は輸出管理強化の是非では
  ない。日韓関係のより本質的な問題は、過去数年間に韓国外
  交が冷戦時代の韓米日同盟志向から大きくかじを切り始めた
  ことである。韓国側は日本側の対応を「徴用」を巡る問題へ
  の経済的報復と批判。日本側は今回の措置があくまで安全保
  障貿易管理の適切な実施に関わる問題で批判は当たらないと
  反論する。だが、これらはいずれも問題の原因ではなく結果
  であり、2国間関係と多国間安全保障を混同する韓国の不毛
  な議論には出口がない。ではこの問題をいかに理解すべきな
  のか。             https://bit.ly/2MGfd9p
  ───────────────────────────

核施設を視察するロウハニ大統領.jpg

核施設を視察するロウハニ大統領

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2019年08月05日

●「3つの出来事は全て関係している」(EJ第5061号)

 2019年8月2日、日本政府は韓国向け輸出管理の厳格化を
閣議決定しています。いわゆる韓国をホワイト国から外す安倍政
権の決断です。これによって8月28日以降は、韓国向け輸出の
さいには、ほぼすべての品目で経産省は個別審査を求める可能性
があります。
 これに先立つ1日、トランプ米政権は、米国が輸入する3千億
ドル分の中国製品に、9月1日から追加関税10%を上乗せする
と表明しています。これによって、米国が中国から輸入するほぼ
すべての中国製品に高率の関税がかかることになります。なお、
この10%の関税は25%になる可能性もあるといっています。
 一方、北朝鮮は2日、短距離弾道ミサイルとみられる飛翔体を
発射しています。この一週間で3回を数えていますが、トランプ
大統領は「小さいヤツはいい」と問題視していません。メディア
は、北朝鮮の短距離ミサイル発射は、5日〜20日にかけて予定
されている米韓合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーデ
ィアン」への反発であると伝えています。今回、規模については
従来より縮小されています。
 一見すると、これら3つの出来事は、バラバラであり、何の関
係もないように見えます。しかし、ていねいに分析すると、3つ
は密接に関係しているのです。米国をはじめとする先進国が一番
恐れているのは、世界中に核が拡散されることです。それを一番
やりそうな国は北朝鮮です。
 北朝鮮は、核兵器を作る技術もそれを搭載してミサイルを飛ば
す技術も保有しつつある非常に危険な国です。この北朝鮮とイラ
ンは深いつながりがあります。イランは、1985年頃から北朝
鮮にミサイル開発の技術支援を受け、中距離弾道ミサイル「シャ
ハブ3」を開発しています。これは、北朝鮮の準中距離弾道ミサ
イル「ノドン」がモデルになっているといわれています。
 北朝鮮とイランは、2015年には技術者交換を行い、北朝鮮
が2013年2月に行った3度目の核実験には、イランの技術者
も立ち合い、視察を行っています。北朝鮮とイランはそういう仲
なのです。彼らが目指しているのは、イランの「シャハブ3」の
先端部分を核爆弾搭載に適した形状に改良すべく技術を交換しよ
うとしています。イランは、北朝鮮からバルブなど、ミサイル関
連部品を輸入し、その見返りに北朝鮮がのどから手が出るほど欲
しい原油を供給しています。
 トランプ政権が発足した2017年はじめの時点では、米国は
北朝鮮の金正恩委員長にも、イランの最高指導者ハメネイ師にも
会えない状態でいたのです。この「会えない」状態というのは、
最もリスクがある──とトランプ氏は考えています。ある人物に
ついて、どのように豊富な客観的情報があっても、実際に「会っ
て話す」ぐらい、重要な情報はないと、ビジネスの世界で百戦練
磨のトランプ氏はいうのです。
 だから、金正恩委員長には、トランプ氏は周囲の人が驚くほど
積極的に会ったし、その後、合計3回も会っています。トランプ
氏としては、会って話した結果、金正恩委員長がどういう人物か
よくわかり、彼なら何とかコントロールできると考えたものと思
われます。
 しかし、ハメネイ師には、トランプ大統領は、どうしても会う
ことができないのです。そこで会うことができるとする盟友の安
倍首相に、会ってくれと頼んだわけです。ハメネイ師との会談に
ついて安倍首相は、電話で詳しく伝えています。このように、何
かコトを進めようとするとき、その中心人物に会うことにトラン
プ氏は強い意欲を燃やしているのです。
 これについて、元外務省主任分析官の佐藤優氏と思想史研究者
の片山杜秀氏は、『平成史』と『現代に生きるファシズム』とい
う2冊の対談書籍を立て続けに出版していますが、このなかで、
次の興味あるやり取りがあります。
─────────────────────────────
片山:イランは神権政治の国です。大統領は、日本と同じレベル
 の民主的な選挙で選びますが、大統領は軍事でも、立法でも、
 司法でも、行政でも最終的な権限を持っていません。すべてを
 司るのがハメネイ師だということですね。
佐藤:その通りです。ハメネイ師が出てきたことは、アメリカか
 らしてもびっくりだった。ハメネイ師が何を考えているかを、
 彼らは一番知りたいんです。それで、結果はどうだったのか。
 イラン公式の宣伝サイト「Pars Today」が安倍―ハメネイ会談
 の数時間後に伝えた内容によれば、ハメネイ師は、トランプは
 交渉に値しない、メッセージは返すつもりはない、という厳し
 い姿勢だったそうです。一方で、同サイトは、ハメネイ師は、
 オバマも含めてアメリカの指導者で信頼できる人間などほとん
 どいないとも語ったと報じています。オバマも信用できない。
 それと同じレベルでトランプも信用できない。ということは、
 オバマとトランプは同じレベルです。オバマと取引ができたの
 なら、トランプとも取引できるという意味になるんです。
                  http://exci.to/2YHGMFL ─────────────────────────────
 6月13日、奇しくも安倍首相がハメネイ師に会った日、ホル
ムズ海峡付近で、日本のタンカーなど2隻が攻撃され、6月20
日には、イラン革命防衛隊が、やはりホルムズ海峡付近で、米軍
無人機を撃墜しています。このとき、トランプ大統領は、イラン
に対する報復攻撃を命令し、作戦実施10分前に中止を命令して
います。重要なことは、米国はまだ核を持っていないイランに対
しては、ことによっては攻撃する可能性があるということです。
 その場合、米国は「二正面作戦」を避けるため、G20での習
近平主席との会談では貿易戦争は一時休戦とし、6月末の訪韓時
に電撃的に金委員長とも板門店で会って、イランへの攻撃のため
の布石を打ったのです。トランプ氏としては、一時的にでも北朝
鮮とイランとの関係を遮断したかったものと思われます。
              ──[中国経済の真実/060]

≪画像および関連情報≫
 ●日本のタンカーへの攻撃の犯人は誰か
  ───────────────────────────
  佐藤:起きている事態はとても深刻なものです。ホルムズ海
   峡の国際航路帯は、イランの領海内には設けられていませ
   ん。アラブ首長国連邦とオマーンの領海にあります。オマ
   ーンは、日本ではよく知られていない国ですがもともとは
   船乗り、シンドバッドの国です。その海洋国オマーンの領
   海で、今回の事件は起きました。領海内で、軍事活動を行
   うということは、宣戦布告を意味します。もしどこかの国
   がやったとしたら、事実上、戦争に限りなく近いことを意
   味します。ここでもし、イランが戦争する意思があるとア
   メリカが見做していたら、もうトランプは攻撃していたは
   ずです。そうなっていないのはなぜか。ハメネイ師が安倍
   首相に発したメッセージが歯止めになったからでしょう。
  片山:どうもイランがやろうとしていると思えない、とトラ
   ンプは思ったということですね。安倍―ハメネイ会談は、
   とても重要な意味を持っていたわけですね。
  佐藤:その通りです。今回の「犯人」には4つの可能性があ
   ります。1つ目は、イランのハメネイ師が命じたというも
   の。2つ目は、ハメネイ師は関知していないけど、ハメネ
   イ師配下の軍隊=イスラム革命防衛隊が暴発したというも
   の。3つ目は、アメリカ謀略説です。それぞれの立場から
   もっともらしく語られていますが、どれも露見した際のリ
   スクが高すぎます。そうなると蓋然性が高いのが4つ目。
   内戦下のイエメンの、フーシ派がやったというシナリオで
   す。             http://exci.to/2yzrggz
  ───────────────────────────

安倍首相VSハメネイ師.jpg
安倍首相VSハメネイ師
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2019年08月02日

●「中国は1ドル=7人民元守れるか」(EJ第5060号)

 国際金融市場では、米中貿易戦争の激化によって、最悪の場合
起きるであろう金融危機の可能性について、深刻な懸念が拡大し
ています。ヨーロッパのバンカーや金融アナリストたちは関係国
のGDP、輸出統計、外貨準備などを精密に分析し、デフォルト
の可能性のある国を慎重に探っています。宮崎正弘氏によると、
次の8ヶ国がデフォルトの可能性が高いといわれています。
─────────────────────────────
       モンゴル     キルギス
       モンテネグロ   モルディブ
       パキスタン    ジブチ
       ラオス      タジキスタン
   ──宮崎正弘著/『世界から追い出され壊れ始めた中国/
     各国で見てきたチャイナパワーの終わり』/徳間書店
─────────────────────────────
 これら8つの国は、いずれも中国が最大の債権国であり、もし
ひとつでもデフォルトが宣言されると、中国に甚大な被害が及ぶ
ことになります。これに加えて、既にIMFに支援を求めている
か、求める可能性の高い国として、ベネズエラ、ニカラグア、コ
ンゴ共和国、ジンバブエの4ヶ国が上げられていますが、本当に
IMF管理になると、これらも資金の貸し手はダントツに中国で
あるので、最も被害を受けます。IMFは資金の貸し手に対し、
80%前後の債権放棄を迫るからです。
 もうひとつ中国にとって頭の痛い問題は人民元安の進行です。
中国にとって為替の死守すべきラインとは次の通りです。
─────────────────────────────
        ◎中国にとって為替の死守線
           1ドル = 7人民元
─────────────────────────────
 中国は、為替のデットラインを「1ドル=7元」に設定してい
ます。これ以上元安が進むと、輸出には有利な環境にはなるもの
の、資本が大量に流出してしまう恐れがあり、どうしても7元で
食い止める必要があるからです。
 米中貿易戦争が5月10日の第3幕(3000億ドル分に25
%の関税追加)に入ったとき、ドル高/元安がじりじり進行し、
6月10日には、「1ドル=6・9625元」という7%ライン
ぎりぎりのドル高/元安水準になっています。
 それが、6月29日のG20サミット大阪での米中首脳会談に
より、米中通商協議が再開されることが決まると、為替は「1ド
ル=6・8168元」と、5月10日以来、8週間ぶりのドル安
/元高の水準に戻っています。
 今後の人民元の情勢について、植野大作三菱UFJモルガン・
スタンレー証券/チーフ為替ストラテジストは、次のようにコメ
ントしています。
─────────────────────────────
 このまま人民元がしっかりと下げ止まるかどうかは未知数だ。
米国と中国が不毛な輸入増税合戦を停止して話し合いのテーブル
に戻ることになったのは朗報だが、さめた目線で評価すれば、協
議自体は「中断する前の状態」に戻ったに過ぎない。これまで米
中の間で繰り広げられた通商交渉は、単なる貿易摩擦の範疇を超
え、知的財産権の保護や国家安全保障の問題なども複雑に絡んだ
次世代技術の制空権争いの様相を呈している。
 双方とも「譲れぬ一線」があるとみられ、たとえ協議が再開さ
れても早期決着のハッピーエンドは期待しにくい。2020年の
米大統領選挙で再選を狙うトランプ大統領が、景気悪化のリスク
を冒してまで泥沼の関税合戦を再開するとは思えないが、これま
で貫いてきた対中強硬姿勢には国内世論の一定の支持がある。交
渉の長期化は避けられないだろう。      ──植野大作氏
                  https://bit.ly/2Zi1UPY ─────────────────────────────
 現在、中国は異常な外貨持ち出し制限をかけています。宮崎正
弘氏によると、元中国人民銀行の幹部だった人が、海外留学中の
子供に送金しようとして銀行に行くと、1回の送金限度は、3千
ドルまでと断られたという。かつて海外留学生ヘの送金は、1回
3万ドルまで可能だったはずだが、現在は3千ドルに制限されて
いるというのです。今年の6月の話です。
 北京駐在の日本人のビジネスパーソンの話ですが、帰国するこ
とになって、銀行に行くと、外国人については「1人当たり1年
間で5万ドルまで」といわれたといいます。このビジネスパーソ
ンは、仕方がないので、1年後わざわざ預金を下ろしに北京まで
行ったというのです。
 中国は外貨流出に神経をとがらせています。しかし、公的に外
貨準備は世界一位の「3兆ドル」といっている中国です。なぜそ
んなに外貨流出に慎重になるのでしょうか。
 実は、現在の中国の外貨準備はまだ世界1位ですが、「3兆ド
ル」ではありません。大幅に減っています。諸説があるのですが
宮崎正弘氏によると、最新の数字は次の通りです。
─────────────────────────────
     ◎米国債保有額/2019年5月12日現在
        中国 ・・・・ 1兆1230億ドル
        日本 ・・・・ 1兆0420億ドル
                ──宮崎正弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 中国は、フェースブックが提唱した新暗号資産「リブラ」を警
戒しています。ビットコインのときも多くの中国人が使い、中国
政府は規制を強化しましたが、今回も警戒しています。新暗号資
産「リブラ」については、EJのテーマとして取り上げるつもり
ですが、これが果して定着するかどうかは疑問です。要するに、
中国人は、自国の通貨「人民元」を信用していないのです。だか
ら他の通貨を持とうとして必死になるのです。
              ──[中国経済の真実/059]

≪画像および関連情報≫
 ●動かないドル円相場の行方と人民元の関係/田渕直也氏
  ───────────────────────────
   たびたぞ触れてきたが、昨年来、ドル円為替相場の変動率
  は記録的な低水準となっている。昨年末以降、米国金利が急
  低下しているにもかかわらず、やはりドル円レートはほとん
  ど動かない。為替相場は、少なくとも短期的には2ヶ国間の
  金利差に連動するのが普通であり、ドル円相場の最近の動向
  はこのセオリーに反する異常事態と言ってもよい。まずは、
  この背景について改めて整理してみよう。
   昨年2018年は、米国金利が大きく上昇し、セオリーに
  従えばドル高円安になるべき一年だった。ところが、ドル円
  レートは狭いレンジで上下するだけで、大きくは動かなかっ
  た。今、ドル金利が低下しているのに円高が進まないのは、
  その反動とも受け取れる。
   では、昨年米国金利が上昇したときにドル買いが強まらな
  かったのはなぜか。金利の上昇が米国資産市場の価格変動リ
  スクを高め、その結果、日本から米国への投資の流れが勢い
  をなくしたことが大きな要因になったと考えられる。一方、
  今の金利低下局面では、それと逆に、米国資産市場が安定を
  取り戻し、それにつれて日本から米国資産への投資の流れが
  再開しているとみられるのである。
   こうした見方は、ドル円レートと、米国株式市場の変動率
  (VIX指数)との連動性が高まっていることからもうかが
  える。VIX指数が上昇すると円が買われ(リスクオフの円
  買い)、VIX指数が落ち着くと緩やかなドル高が再開する
  というパターンが続いているのだ。その結果、VIX低下時
  の緩やかなドル高とVIX上昇時の短期的円高が交互し、結
  果として比較的狭いレンジ内の取引に終始しているというわ
  けだ。             https://bit.ly/2YztNll
  ───────────────────────────

米ドル/人民元/2012年〜2019年.jpg
米ドル/人民元/2012年〜2019年

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2019年08月01日

●「包商銀行国有化は金融危機の前兆」(EJ第5059号)

 「一帯一路」の話から、中国の経済の話に戻します。大きな事
件が起きるときは必ず前兆というものがあります。これに関して
「ベア・スターンズ」という米国の大手投資銀行(証券会社)の
名前を覚えているでしょうか。
 べア・スターンズは、ゴールドマン・サックス、モルガン・ス
タンレー、メリルリンチ、リーマン・ブラザーズに次ぐ米国第5
位の大手投資銀行のひとつです。このべア・スターンズが、20
07年2月に倒産の危機に瀕したのです。サブプライムローンが
原因でした。
 このベア・スターンズを米国政府は救済したのです。なぜか。
時のポールソン米財務長官の判断だったといわれます。これがモ
ラルハザードの始りで、市場に一気に楽観論が広まります。それ
から1年後に、リーマンブラザーズが同じ原因で危機に陥ります
が、こちらは救済されなかったのです。そして、いわゆるリーマ
ン・ショックが起きることになります。
 なぜ、ベア・スターンズは救済されたのに、リーマンブラザー
ズは救済されなかったのでしょうか。これについて私は、過去に
EJで書いています。興味があったら、読んでください。
─────────────────────────────
    2008年9月26日付、EJ第2418号
    「救済されたベアとされなかったリーマン」
     テーマ:「サブプライム不況と日本経済」
                  https://bit.ly/2YwaaPj ─────────────────────────────
 一転して、2019年5月24日、「包商銀行」という中国の
地方銀行が倒産の危機に瀕します。内蒙古省を拠点とする地方銀
行ですが、この銀行を、中国銀行保険監督管理委員会(CBIR
C)が、89%の株式を取得して、公的に管理し、元本の30%
削減という措置をとります。つまり、国有化したわけですが、こ
れらの措置を中国当局は電光石火やったのです。こんなことは過
去20年間なかったことで、不安が広がります。
 中国当局は、なぜこのような地方銀行を電光石火救済したので
しょうか。包商銀行は、608億元の資産と270億元の預金が
あり、不良債権率は1・48%と報告されています。なぜ、それ
が経営危機に陥ったのか、はっきりしていないのです。
 米国のベア・スターンズの例にならって、これを中国の金融危
機の前兆とみる専門家もいます。何が何でも隠したかったことが
あると思われます。包商銀行の国家管理について、中国人民銀行
(中央銀行)は、わざわざ次のコメントを出しています。金融不
安の打ち消しを図ったものと思われます。
─────────────────────────────
 包商銀行の国家管理は、単独の案件であり、金融不安は何も
 ない。          ──中国人民銀行(中央銀行)
─────────────────────────────
 中国に詳しい評論家の宮崎正弘氏の最近刊書によると、包商銀
行は、明天証券グループの隠れ蓑の役割を果たしていた銀行であ
るとする次の記述があります。
─────────────────────────────
 じつは同行(包商銀行)は、肖建華が主導した投機集団、明夫
証券グループの隠れ蓑であった。インサイダー取引の前衛部隊役
を担い、217億元を投下してシャドーバンキング(影の銀行)
機能をやらされていたうえ、肖建華のATMとして駆使され、投
機資金に回されていたことが判明した。この包商銀行の国家管理
事件によって、中国の金融危機が表面化した。上海、北京を避け
て内蒙古省の銀行を活用したのも、中央政界とは無縁のバンカー
だったから、利用価値があったのだろう。   ──宮崎正弘著
           『世界から追い出され壊れ始めた中国/
     各国で見てきたチャイナパワーの終わり』/徳間書店
─────────────────────────────
 肖建華とは何者でしょうか。
 郭文貴という人がいます。この人の名前は中国の証券業界で知
られています。郭文貴氏は、江沢民時代から証券界の黒幕として
香港を根城に、一部の中国共産党幹部と組んで、インサイダー取
引を大々的に展開したのです。江沢民派閥に属する人物です。
 ところが、習近平政権になると、江沢民派閥の不正蓄財にメス
が入り、次々と江沢民派閥の有力者が逮捕されるに及んで、身の
危険を感じて、郭文貴氏は米国に逃げ込んだのです。しかし、米
国にこっそり隠れているわけではなく、ニューヨークの豪邸に住
み、テレビやネットの媒体を駆使して、習近平一派の不正蓄財や
不正経済行為を暴露し続けているのです。あのトランプ米大統領
の盟友といわれるスティーブン・バノン氏とも交流があるといわ
れています。
 肖建華氏は、この郭文貴氏の番頭格の存在であり、江沢民人脈
の金庫番といわれていた人物です。肖建華氏は香港のフォーシー
ズンズという一流ホテルに長期滞在し、4人のボディガードに囲
まれていたといいます。
 しかし、彼はこのホテルから、白昼堂々と中国当局に拉致され
当局の取り調べを受け、その後行方不明です。香港では、現在も
「逃亡犯条例」反対のデモが終息していませんが、そんな条例は
なくても中国当局はこのように大物を中国に拉致できるのです。
 彼は、包商銀行を隠れ蓑にして、明天証券グループという投機
集団を駆使してインサイダー取引や、シャドーバンキング、投機
資金など、数々の不正行為をやっていたものと考えられます。
 したがって、包商銀行をオープンに潰してしまうと、銀行を通
じた数々の悪行が明るみに出てしまうことになります。これは、
他行への波及効果で、金融危機にそままま結びつくので、素早く
国家管理にしたものと思われます。中国には4000行の銀行、
地方銀行、信用組合がありますが、そのうち420行が問題を抱
えているといわれます。いつ破綻しても不思議はないのです。
              ──[中国経済の真実/058]

≪画像および関連情報≫
 ●中国、包商銀行の破綻回避は吉とでるか
  ───────────────────────────
   包商銀行の件は、同行の派手な来歴ゆえに関心を集めてい
  る。筆頭株主にして主要な借り手である金融グループ、トゥ
  モロ─・ホールディングスを経営していた富豪の肖建華氏は
  2017年に香港のホテルから失踪。同グループの資産は今
  小分けにして売却中だ。
   中国には破綻寸前の地銀がいくらでもあるが、包商銀は経
  営が特に危ない。UBSのジェーソン・ベッドフォード氏は
  昨年公表した報告書で、ティア1資本比率が8%を切って、
  国内最悪水準となっている3行の1つに同行を挙げた。今年
  第1・四半期の中国の銀行資産に占める都市銀行の割合は、
  13%、地方銀行は7%にとどまるものの、抱える金融リス
  クという点では地銀の比率がとびきり大きい。国有大手銀行
  が政府保証のついた最優良顧客を確保している以上「雑魚」
  は残り物で我慢せざるを得ないからだ。
   損失隠しのための工作が施されるのは、珍しいことではな
  い。2018年、上海浦東発展銀行は、不良債権を隠すため
  に1493社ものペーパーカンパニーを使ったとして罰金を
  科された。大連銀行は幾度も救済を受けている。中国政府は
  15年に預金保護制度を導入した。これにより、理論上は銀
  行が破綻しても一般預金者に被害が及ばなくなったはずだ。
  しかし制度の整備はまだ道半ば。昨年9月時点で預金保険の
  資金はわずか120億ドル、今年3月時点でもまだ、制度の
  執行にあたる当局の設立が話し合われている状態だった。
                  https://bit.ly/2GCPOtu
  ───────────────────────────

中国人民銀行.jpg
中国人民銀行
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2019年07月31日

●「オーストラリアと華為技術の関係」(EJ第5058号)

 「ファイブ・アイズ」とは、米国、英国、オーストラリア、カ
ナダ、ニュージーランド(NZ)で機密情報を共有する5ヶ国の
枠組みのことです。安倍政権は、日本政府として、このファイブ
・アイズとの関係を深めつつあります。
 ファイブアイズについて知るには、「シギント」というものを
理解する必要があります。これは、普通の人にとって、全く知る
必要のない特殊なインテリジェントの用語です。
─────────────────────────────
 ◎シギント/SIGINT、signals intelligence
  シギントとは、通信、電磁波、信号などの主として傍受を
  利用した諜報・諜報活動のことである。
                  https://bit.ly/2RPoFv4 ─────────────────────────────
 要するに、シギントとは通信傍受手段です。あの元NSAの局
員であるエドワード・スノーデン氏によると、NSAは「世界最
強のシギント」であるといわれています。
 諜報活動における情報入手は、シギントを含めて、次の4つが
あります。ファイブ・アイズは、このうち、シギントを中心とし
て、5ヶ国が情報を共有するというものです。
─────────────────────────────
     1.イミント
      ・偵察衛星や偵察機による写真偵察
     2.シギント
      ・電波や電子信号傍受による情報収集
     3.ヒューミント
      ・人間による情報収集
     4.カウンターインテリジェンス
      ・防諜、外国の諜報活動への対抗策
─────────────────────────────
 ファイブ・アイズというのは、世界中に張り巡らしたシギント
の設備や盗聴情報を、相互利用・共同利用するために結んだ協定
のことです。このグループのコンピュータ・ネットワークは「エ
シュロン」と呼ばれています。もともと秘密協定なのですが、こ
のエシュロンの言葉とともに、その一部が知られるようになって
きています。
 2018年7月17日のことです。カナダのノバスコシア州の
どこかで、ファイブ・アイズは秘密会合を開いています。この会
合には、カナダのトルドー首相、オーストラリアのターンブル首
相、それに5ヶ国の情報機関のトップ全員が出席しています。
 この会議において、2001年9月のアメリカ中枢同時テロ以
降、テロ対策に力を入れる陰で、スパイ活動が疎かになっている
ことが指摘され、その間に中国がシギントを中心とするスパイ技
術を盗み、自国でウイグル族などの宗教弾圧にその技術を利用し
ているとの報告が行われています。
 もともとこのときの会合は、ロシアを敵として戦略を練る秘密
会議だったようです。というのは、この会合に出席した英国秘密
情報部のヤンガー長官が、英国南部でロシアの元情報機関員らが
神経剤で襲撃された事件について、ファイブ・アイズがまとまっ
て対応したことが大きな成果であることを報告したのですが、同
会議に出席していたジーナ・ハスペル米CIA長官は、現在、一
番危険なのは中国共産党の台頭であり、その中国共産党のスパイ
技術の中心になっているのは、ファーウェイとZTEであるとし
て、その会合で、ファーウェイとZTEを、5G──5世代移動
通信システムから排除するを提案し、了承されています。
 このとき、トランプ米大統領は、なぜ参加していなかったのか
というと、中間選挙の前であり、動けなかったのではないかと思
います。しかし、中国のリスクは最大であるということは、ハス
ペルCIA長官を通じてファイブ・アイズのメンバーには伝わっ
ています。この会合において、ファイブ・アイズの情報共有に、
日本とドイツも参加させることが決まったようです。
 注目すべきは、この会議に出席していたオーストラリアのター
ンブル首相です。彼は、トランプ大統領との電話会談で、トラン
プ大統領から電話をガチャ切りされた中国寄りの首相ですが、タ
ーンブル首相は、すぐにトランプ大統領に電話をかけ、オースト
ラリアは、5GからファーウェイとZTEを外すことをわざわざ
伝えています。イメージを変えたかったものと思われます。
 しかし、ファーウェイは親中のターンブル政権のときに、オー
ストラリアには深く食い込んでいたのです。宮崎正弘氏の本には
ファーウェイがターンブル政権に深く食い込んでいたことを示す
ことが書かれています。
─────────────────────────────
 豪政府高官だった3人をファーウェイは、「取締役」に雇用し
高給を支払って事実上の代理人を務めさせ、オーストラリア市場
の拡大に協力させてきた。豪政府は労働党のジラード政権から、
ターンブル保守政権まで、国家安全保障部門は、ファーウェイヘ
の警戒を怠らなかった。
 「ファーウェイ(豪)」は現地法人を装いながらも、事実上の
スパイ機関として、機密情報を入手していた。2011年から、
ファーウェイ豪社取締役になっていた3人の高官とは、ジョン・
ブルンピー元ヴィクトリア州副首相、ダウナー外相、そしてジョ
ン・ロード元海軍中将で、いずれもが「ファーウェイのスパイ行
為という陰謀論には証拠がない」と中国を擁護してきた。
 豪メディアは3人に疑惑の目を向けてきた。それというのも、
孟晩舟が2005年10月から、11年8月まで、中国と豪の間
を行き来していたからだ。   ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
 『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機が始まる』
─────────────────────────────
 この秘密会合の直後にオーストラリアには政変があり、ターン
ブル首相は、現在のスコット・モリソン氏に代わっています。
              ──[中国経済の真実/057]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイ排除の内幕、激化する米中5G戦争
  ───────────────────────────
   オーストラリア通信電子局(ASD)のエージェントであ
  る彼らに与えられた課題は、あらゆる種類のサイバー攻撃ツ
  ールを使って、対象国の次世代通信規格「5G」通信網の内
  部機器にアクセスできた場合、どのような損害を与えること
  ができるか、というものだ。
   このチームが発見した事実は、豪州の安全保障当局者や政
  治指導者を青ざめさせた、と現旧政府当局者は明かす。5G
  の攻撃ポテンシャルはあまりにも大きく、オーストラリアが
  攻撃対象となった場合、非常に無防備な状態になる。5Gが
  スパイ行為や重要インフラに対する妨害工作に悪用されるリ
  スクについて理解されたことが、豪州にとってすべてを一変
  させた、と関係者は話す。
   電力から水の供給、下水に至るすべての必須インフラの中
  枢にある情報通信にとって5Gは必要不可欠な要素になる。
  マイク・バージェスASD長官は3月、5G技術の安全性が
  いかに重要かについて、シドニーの研究機関で行ったスピー
  チでこのように説明した。
   世界的な影響力拡大を目指す中国政府の支柱の1つとなっ
  た創立30年の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に
  対する世界的な締め付けを主導したのは、米政府だと広く考
  えられている。しかし、5Gを巡って実際に行動を促したの
  はオーストラリアであり、米国の反応は当初鈍く、英国など
  欧州諸国は、安全保障上の懸念とファーウェイの誇る低価格
  競争力の板挟みになっていたことが、ロイターの20人を超
  える現旧西側当局者への取材で明らかになった。
                  https://bit.ly/2YSDhIT
  ───────────────────────────

スコット・モリソン首相.jpg
スコット・モリソン首相

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2019年07月30日

●「オーストラリア政権について知る」(EJ第5057号)

 私がオーストラリアの首相に関心を持ったのは、ターンブル首
相がはじめてです。なぜかというと、オーストラリアにほぼ導入
が決まっていた日本の「そうりゅう型」潜水艦導入をターンブル
首相が突如取りやめたからです。
 調べてみると、このマルコム・ターンブルなる人物は、親中派
の元実業家であり、それなら導入中止は当然と思ったし、日本の
潜水艦導入中止を「日本の技術が中国に渡らなくてよかった」と
いう趣旨のツイートを発信したので記憶に残っていたのです。
 ところで、安倍首相は、オーストラリアの首相と仲が良かった
はずです。だから、潜水艦の導入の話になったはずですが、安倍
首相と仲が良かったのは、ターンブル首相の前のトニー・アボッ
ト首相です。そのアボット首相は党内の政治クーデターで、政権
交代を余儀なくされたのです。直近のオーストラリア3代のデー
タを以下にまとめます。
─────────────────────────────
 ◎トニー・アボット
  2013年 9月18日〜2015年 9月15日
 ◎マルコム・ターンブル(首相就任前の役職:通信相)
  第1次政権
  2015年 9月15日〜2016年 7月19日
  第2次政権
  2016年 7月19日〜2018年 8月24日
 ◎スコット・モリソン (首相就任前の役職:財務相)
  2018年 8月24日〜在任中
                  https://bit.ly/2YnB1wZ ─────────────────────────────
 ごく大ざっぱにいってしまうと、アボット氏からターンブル氏
への交代と同じようなことが、ターンブル氏からモリソン氏への
交代において起きているのです。いずれもオーストラリア与党の
自由党のなかの政権闘争です。与党の自由党の政権運営がうまく
いかず、支持率が低迷した挙句の政権交代です。
 ちなみに就任直後のトランプ大統領がオーストラリアの首相と
の電話会談で、移民問題で意見が衝突し、トランプ大統領が途中
で電話をガチャ切りした相手はこのターンブル首相です。
 関心があるのは、あれほど親中派だったターンブル政権がなぜ
中国とうまくいかなくなったかです。これについて、ロイターは
2018年6月19日に「焦点:火花散らすオーストラリアと中
国、なぜ関係悪化したか」というレポートを出していますが、そ
の中心部分を以下に示します。
─────────────────────────────
 輸出ブームを駆り立てた画期的な自由貿易協定(FTA)を中
国と結んでからようやく2年がたとうとしている中、ターンブル
首相は、外国の影響を制限するのを目的とした新たな法案を提出
する理由として、中国による「干渉」を挙げた。
 ターンブル首相は昨年(2016年)、議会において、中国共
産党がオーストラリアのメディアや大学、政治に干渉していると
の報告に懸念を示した。その中には、野党議員が中国の利害関係
者と密接な関係を持ち、献金を受けていたとの報告も含まれ、後
にこの議員は辞職に追い込まれた。ターンブル首相率いる中道右
派政権は、外国からの政治献金を禁止したり、外国のために働く
ロビイストに登録を義務付けたりする法案を準備している。また
諜報の定義変更も提案されており、犯罪の対象となる活動が拡大
することになる。(中略)中国によるオーストラリアへの干渉問
題は同年、中国軍と近い関係にあるとされる中国企業に北部ダー
ウィン港を貸与する契約が浮上し、一段と批判されるようになっ
た。同契約を巡っては、米海軍兵士1500人超が駐留する基地
が近いことから、米国も懸念を示したとされる。
                  https://bit.ly/2ME522O ─────────────────────────────
 実は、2019年5月18日にオーストラリアでは総選挙があ
り、選挙前の予想では、野党の労働党が圧倒的に優勢だったので
す。中国が選挙資金などを含めて積極的に支援したフシがありま
す。しかし、結果は予想に反して、与党のモリソン政権が勝利し
たのです。大逆転勝利です。
 この勝利を世界のメディアは「奇跡」と報道し、それをトラン
プ氏の米国大統領の当選と英国のブレグジットと同様に予測する
のが困難な出来事に例えたほどです。これは、オーストラリアの
国民が、親中路線の労働党を嫌ったからであり、明確に中国に対
して「NO!」を突き付けたことになります。
 南太平洋を中国から守るには、何といっても重鎮のオーストラ
リアを親中派にさせないことであり、今回の総選挙は、それを実
現した選挙結果であるといえます。それに「ファイブ・アイズ」
という5つの国の諜報連携を機能させるためにも、オーストラリ
アが親中国では困るのです。ファイブ・アイズの5つの諜報機関
とは次の通りです。
─────────────────────────────
    ◎ファイブ・アイズ
     1.アメリカ
       アメリカ国家安全保障局/NSA
     2.イギリス
       政府通信本部/GCHQ
     3.カナダ
       カナダ通信保安局/CSEC
     4.オーストラリア
       参謀本部国防通信局/DSD
     5.ニュージーランド
       政府通信保安局/GCSB
                  https://bit.ly/2insxgt ─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/056]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏、豪首相との電話会談を「最悪」と打ち切り
  ───────────────────────────
   米紙ワシントン・ポストは2017年2月1日、ドナルド
  ・トランプ米大統領が先月28日にオーストラリアのマルコ
  ム・ターンブル首相と電話で会談した際、豪国内の難民を米
  国が受け入れるという両国の合意を批判し、予定時間を切り
  上げ会談を一方的に終わらせたと報じた。
   同紙によると、28日に、各国首脳と電話会談を相次いで
  行ったトランプ氏は、ターンブル首相との会談を「今までで
  最悪」と呼んだという。トランプ大統領は、会談後にツイッ
  ターで、難民の再定住計画について「この馬鹿な取り引きの
  中身を調べる」とコメントした。
   オバマ前政権時にまとめられた合意では、オーストラリア
  で難民申請した1250人を米国が受け入れることになって
  いた。オーストラリア政府に対しては、難民申請した人々を
  自国で受け入れずナウルとパプアニューギニアの施設に収容
  したことで、非難の声が上がっていた。
   トランプ氏は先月27日に、イスラム教徒が多数を占める
  特定7ヶ国の入国を一時的に禁止する大統領令に署名。ター
  ンブル豪首相は、難民の米国再定住の合意が実行されるのか
  説明を求めていた。28日にはターンブル首相のほか、ロシ
  アのウラジーミル・プーチン大統領など4人の首脳がトラン
  プ大統領と電話で会談した。ワシントン・ポスト紙は、電話
  会談について報告を受けた複数の米高官の話として、会談は
  1時間の予定だったものの、25分たったところでトランプ
  氏がいきなり打ち切ったと報じた。https://bbc.in/2JYz7KZ
  ───────────────────────────

トランプ米大統領とターンブル豪首相電話会談.jpg
トランプ米大統領とターンブル豪首相電話会談
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2019年07月29日

●「オーストラリアはなぜ変貌したか」(EJ第5056号)

 「一帯一路」のことを「BRI」とか「OBOR」と呼ぶこと
があります。「一帯一路」の英語表記を示しておきます。
─────────────────────────────
   ◎「一帯一路」・・・
     BRI  The Belt and Road Initiative
    OBOR One Belt, One Road Initiative
─────────────────────────────
 さて、2018年11月のことです。18日と19日の2日間
にわたって、パプアニューギニアにおいて、APEC首脳会議が
開かれたのです。そのAPECについて、日本経済新聞は次のよ
うに伝えています。
─────────────────────────────
【ポートモレスビー=辻隆史】日米中など21ヶ国・地域が参加
して、パプアニューギニアで開かれたアジア太平洋経済協力会議
(APEC)首脳会議が、18日、2日間の協議を終えて閉幕し
た。米国と中国が互いの通商政策をめぐり対立。議長国のパプア
が首脳宣言の採択を断念する異例の事態となった。首脳宣言を断
念するのは1993年の第1回会議以来、初めて。
               https://s.nikkei.com/2YoEUlb ─────────────────────────────
 この会議で米国と中国は激突したのです。宣言の原案の「保護
主義と対抗する」という表現に米国が猛反発し、中国はトランプ
政権を念頭に「一国主義と対抗する」との文言を盛るよう求め、
米国が削除を強く要求するという具合です。
 加えて米国は中国を念頭に不公正な貿易慣行の撤廃を求める表
現を盛り込むよう主張し、中国が反発するというように、米国と
中国の主張が激突し、結局、首脳宣言の採択を断念せざるを得な
くなったのです。
 その背景には、中国が南太平洋を「一帯一路」の投資対象国に
算入したことにあります。これによって、中国は、米、英、仏、
豪、ニュージーランド(NZ)の利害と直接対峙することになっ
たのです。実際にこの地域における中国の投資は、オーストラリ
アを抜き去っています。2018年10月現在、南太平洋全域で
中国が推進中のプロジェクトは218件、金額は17億8120
万ドルに達しています。金額が大きい順に並べると、次のように
なります。
─────────────────────────────
  ◎南太平洋における中国の投資状況
   パプアニューギニア ・・・ 6億3250万ドル
   フィジー      ・・・ 3億5900万ドル
   バヌアツ      ・・・ 2億4250万ドル
   東ティモール    ・・・   5216万ドル
   クック諸島(NZ) ・・・   4986万ドル
   サモア       ・・・   2301万ドル
   トンガ       ・・・   1720万ドル
   ニウエ島(NZ)  ・・・     70万ドル
              ──2018年10月現在
               ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
 『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機が始まる』
─────────────────────────────
 これを見ると、飛び抜けて中国からの投資が大きいのが、昨年
APECの会場になったポート・モレスビーを首都に持つパプア
ニューギニアであることがわかります。ちなみに、この地域は、
太平洋戦争中、日本の多くの艦船が沈没し、多くの犠牲者を出し
た場所であり、なかでも激戦地といわれたラバウルとガダルカナ
ルもこの海域に含まれます。
 これらの国がもし中国による「債務の罠」に嵌ったら、大変な
ことになります。こういう状況を許したのは、かつての親中国国
家オーストラリアです。評論家の宮崎正弘氏は、オーストラリア
の中国傾斜ぶりについて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 従来は中国の投資歓迎、シドニーは50万人もの中国人が住み
巨大なチャイナタウンが拡がって華僑の大活躍がなされてきた。
シドニーだけで、発行されている華字紙は5種、いずれもカラー
印刷で100ページ近く、求人や弁護士事務所、留学方法の広告
で埋め尽くされている。怪しげなマッサージパーラーの広告もあ
る。チャイナタウンのコミユニティ紙である。筆者もシドニーで
全部の華字紙を購入したが、日本で言えば全国紙5紙の正月特大
版を持つほどの重み。ずしりとその重量を感じたものだった。
 オーストラリアは鉄鉱石、石炭などに恵まれた資源王国だから
資源鉱区には次々とチャイナマネーが入り、鉄鉱石も石炭も中国
が買うので、資源関連企業はウハウハだった。そのうち軍港ダー
ウィンの埠頭を、オーストラリアは99年の貸与を中国企業に認
めたほど、親中路線だったのだ。 ──宮崎正弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 このように、オーストラリアは親中政権だったのです。なぜ、
過去形なのかというと、現在は中国に対して要警戒に変貌を遂げ
ているからです。これについて理解するには、2015年以降の
オーストラリアの政権について知る必要があります。
 現在のオーストラリアの首相は、スコット・モリソン氏ですが
その前任者はマルコム・ターンブル氏です。2人とも、保守系の
オーストラリア自由党の議員ですが、このターンブル氏こそ「中
国はオーストラリアと抗日で戦った最も長い同盟国」であるとし
最大の貿易相手国である中国を最重視する政権だったのです。そ
して、中国によるダーウィン港の99年租借を認めたのも、ター
ンブル前首相なのです。
 そのターンブル氏の後任者が現在のスコット・モリソン首相で
す。この首相になってはじめて中国の危険性に気付くのです。し
かし、今年の5月の選挙において、モリソン首相は政権維持が危
なかったのです。      ──[中国経済の真実/055]

≪画像および関連情報≫
 ●「一帯一路」で南シナ海から中東で影響力行使
  ───────────────────────────
   中国は、空母打撃群の展開を通じて、南シナ海からインド
  洋、中東沖など広範囲の沿岸諸国への影響力行使を狙ってい
  る。また現段階で中国初の国産空母が米軍の直接的な脅威と
  なる可能性は低いが、長期的には、太平洋で米軍を排除する
  「接近阻止・領域拒否」戦略の実現に向けた足がかりとする
  構えだ。中国が掲げる現代版シルクロード経済圏構想「一帯
  一路」で、中東はその要衝にあたる。
   ただ、地域大国のサウジアラビアは米国の同盟国であり、
  イランはロシアが影響力を保持。中国が現在、アフリカ東部
  ジブチで中国海軍の「補給施設」を建設しているのは、海外
  基地として中東への軍事プレゼンスを高める狙いもある。
   一帯一路のうち「海上シルクロード」と呼ばれる東南アジ
  アから南アジア、中東沖につながるルートで空母を展開させ
  ることで、「沿岸諸国に影響力を行使できるプレーヤーとし
  て、米露に中国が加わる可能性」(東京財団の小原凡司研究
  員)も指摘されている。
   また、今後いずれかの国産空母が南シナ海を管轄する南海
  艦隊に配属される見通しで、領有権争いを抱える沿岸国への
  軍事的圧力も高まりそうだ。一方、中国にとっては太平洋で
  制海権を握ることも長期的な野望だ。中国初の空母「遼寧」
  は昨年12月、九州や沖縄、台湾などを結ぶ「第1列島線」
  を初めて越え西太平洋に進出した。https://bit.ly/2Mi5XrZ
  ───────────────────────────

オーストラリアのターンブル前首相.jpg
オーストラリアのターンブル前首相

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2019年07月26日

●「スリランカとモルディブのケース」(EJ第5055号)

 「一帯一路」構想は、イタリアの加盟で、一見すると、中国の
思うように進んでいるように見えますが、必ずしもそういうこと
ではないのです。「一帯一路」に加盟して、その関連プロジェク
トの進行──高速鉄道や高速道路などの工事の進捗は、けっして
芳しいものではないからです。
 中国は、日本のように十分な調査に基づいて工事全体の設計を
していないので、その結果、工事が難航して遅延し、未完成の状
態で政権交代が起きると、前政権と中国の癒着が、必ずといって
よいほど発覚するのです。マレーシアのナジブ政権しかり、モル
ディブのヤミーン政権しかり、スリランカのラジャパクサ政権し
かり、パキスタンのシャリフ政権しかりです。これらはほんの一
部に過ぎず、まだたくさんあります。
 それにしても、モルディブとスリランカといえば、インドに近
い海の要衝です。まだあります。パキスタン、ヤンマーもそうで
す。もし、これらの国がすべて中国化すると、インドは安全保障
上深刻な事態になります。中国は、そういう場所をピンポイント
で選んで、「一帯一路」を仕掛けているわけです。
 スリランカは、ラジャパクサ大統領時代に「一帯一路」に参加
したものの、資金不足になって「債務の罠」に落ち、ハンバント
タ港を中国に99年間租借せざるを得なくなっています。これに
ついて、宮崎正弘氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 スリランカの対外債務は、531億ドル(2018年9月末時
点)。翌19年に償還期限が来る負債額は49億ドル。さらに、
2020年までにあと150億ドル。パキスタンと同様に、スリ
ランカがIMF管理になるのは時間の問題かもしれない。99年
の租借を飲まされ、ハンバントタ港を中国に明け渡す無惨な結果
を招いたのは、ラジャバクサ前大統領の強気の読みと中国との親
密なコネクションからだったが、結局は返済できず「借金の罠」
に落ちた。番狂わせで彼は落選し、無名のシリセナがスリランカ
大統領となった。
 コロンボからスリランカの名勝地キャンディに至るハイウエー
は、途中悪路、崖や河沿いを縫うように車で4時間近くかかる。
鉄道もあるが、1日2本程度で、しかも外国人観光客でほぼ満員
だ。この区間にハイウェーを通すのはスリランカの政治家なら誰
もが魅力と思うだろう。ましてや票に繋がる美味しいプロジェク
トと考えられた。ところが資金不足に陥り、現場労働者の日当が
支払えず、あちこちで工事が中断した状況になっていた。
               ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
 『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機が始まる』
─────────────────────────────
 モルディブでも、スリランカと同じようなことが起きているの
です。当事者はヤミーン前大統領です。2019年2月18日、
ヤミーン氏に対して、マネーロンダリング容疑で正式起訴するた
めの予審が開かれ、検察側はヤミーン氏が証人の証言を妨害しよ
うとしたと主張。結局、証人に賄賂を渡して偽証するよう要請し
た容疑で逮捕されています。
 モルディブに中国はどのようにかかわっているのかについて、
宮崎正弘氏の本から引用します。
─────────────────────────────
 モルディブ政府は現在、ヤミーン前政権が、中国からいったい
幾ら借りたのか、借金は全体で幾らあるのかを精査している。こ
の財務精査の過程で、ヤミーン時代の面妖な取引、その送金ルー
トの明細や不明瞭な使途などが明るみに出た。あたかもマレーシ
アの1MBDファンドから大金を横領していたナジブ前首相の経
済犯罪と似ているが、少額の汚職なので、世界の金融界は喋って
いるだけである。中国は空港と首都マーレを繋いだ海上橋梁を請
け負い、2018年9月の大統領選挙直前の8月31日に完成さ
せた。空港の拡張工事も中国が請け負っていた。インドはあたか
も下腹にナイフを突きつけられたような要衝にあるモルディブの
動向に神経を尖らせ、軍港に転用される可能性を監視してきた。
また新政権発足と同時にモルディブ重視に傾き、当面の金融シス
テムの安定、信用回復のために14億ドルの信用枠を供与した。
                ──宮崎正弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 添付ファイルに、インドとモルディブ、スリランカの位置関係
を示す地図をつけています。宮崎氏の「インドはあたかも下腹に
ナイフを突きつけられたような要衝」と表現していますが、これ
ら2つの国は、まさにそういう位置にあります。中国は明らかに
場所を選んで「一帯一路」に引き入れ、「債務の罠」を仕掛けて
重要港を事実上手に入れようとしています。
 「一帯一路」によるインフラ建設は、中国は人も資材もすべて
中国から持ってくるのです。中国にとって「一帯一路」は、国有
企業に仕事を与える手段なので、現地では、まったく雇用を生ま
ないのです。これも「一帯一路」加盟国にとって、大きな不満に
なっています。
 そのため、現地では、中国語と英語の看板のみで、現地の言語
は全く使われていないのです。売り出しマンションの価格も人民
元で表示されています。これでは、現地が中国に占領されている
のと同じです。スリランカでは、シンハリ語とタミール語の表示
がないのは、ローカルランゲージ法に違反するとして、中国に改
善を求めたといいます。
 それに加えて、環境破壊がひどいのです。そのため、現地では
嫌中意識がすこぶる高まっており、中国人襲撃事件も多発してい
ます。これでは世界中に嫌中主義が拡大する一方ですが、中国人
はまったく歯牙にもかけないのです。あくまで中国の利益優先で
すから、「一帯一路」計画は、「新植民地主義」といわれていま
す。そういうことをある程度理解した上でのイタリアの「一帯一
路」加盟には、世界中が懸念を表明しています。
              ──[中国経済の真実/054]

≪画像および関連情報≫
 ●自爆テロのスリランカはインド洋に浮かぶ真珠
  ───────────────────────────
   「分割して統治せよ」。英仏が採用した植民地支配の原則
  だ。この政策では、植民地の多数派が排除され、少数派が優
  遇される。支配者にとって都合がいいからだ。
   少し脇道に入るが、イラク(イギリスが領土を決めて19
  22年にイラク王国を建国)では、人口の60%を占めるア
  ラブ人シーア派が権力から排除され、人口の20%を占める
  少数派のアラブ人スンニ派がサダム政権を経て、2003年
  のイラク戦争まで支配権を握る。またシリア(フランスが植
  民地にした)では、人口の12%のアラウィー派が軍隊で重
  用され、バアス党革命で権力を握り、苛烈なシリア内戦を経
  て、現在もアサド政権が続く。
   スリランカの場合、イギリスがシンハリ人よりも重用した
  のが、少数派のタミル人だ。タミル人は英語を積極的に受け
  入れる。多くのタミル人が植民地時代に官僚や法律家という
  公職に就いた。だが、スリランカ独立後は、多数派であるシ
  ンハリ人と仏教の巻き返しの時代に入る。
   シンハラ語のみを公用語とし、仏教に対し国教に準じた地
  位を与えたシンハリ人政権の政策によって、タミル人との対
  立は決定的になる。1983年に始まり、2009年にタミ
  ル人の敗北宣言で終わる内戦では、死者10万人で難民30
  万人という惨禍を招く。タミル人は、「タミール・イーラム
  解放のトラ」(LTTE)という武装組織を立ち上げ、政府
  に応戦したものの、大勢を覆せなかった。
                  https://bit.ly/2JNYyyN
  ───────────────────────────

スリランカとモルディブの位置関係.jpg
スリランカとモルディブの位置関係
















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2019年07月25日

●「イタリア一帯一路加盟とEU分断」(EJ第5054号)

 「一帯一路」とは、かつてのシルクロードの復活であるといわ
れます。ところで、「シルクロード」とは何でしょうか。一般的
には、シルクロードとは、ユーラシア大陸を通る東西の交通路の
総称です。しかし、この概念は漠然としています。具体的には、
次の3つに分けて考えるべきです。
─────────────────────────────
   1.北方の草原地帯のルート ・・   草原の道
   2.中央の乾燥地帯のルート ・・ オアシスの道
   3.インド南端を通る海の道 ・・    海の道
─────────────────────────────
 このうち、もっとも古くから利用されていたのが「オアシスの
道」です。中国からローマへは絹、アルタイ山脈から中国へは金
が重要な交易品となっていたことから、「シルクロード」といわ
れるようになったのです。
 このような前提に立って、福島香織氏は、「一帯一路」構想に
ついて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国は一時期、海洋覇権を取らなければ世界制覇できない、自
分たちの野望は達成できないという考え方でしたが、おそらくい
ろいろな研究者からのアドバイスなどがあり、長期的なスパンの
中で、海洋国家文明と大陸国家文明の入れ替えが起こるだろうと
考えるようになった。また、宇宙時代がくると、もう海洋覇権の
時代ではないと思い至り、もう一度、陸路の軍事輸送網というも
のを見直すべきだという意見から、「一帯一路」の構想が始まっ
たという話を聞いたことがあります。
 もう一度大陸国家を再編成するとなると、そこで重要になって
くるのは、ロシアはもちろんですが、ヨーロッパです。だから中
国はヨーロッパと組もうとしている。そうなると、海洋国家であ
るイギリス、アメリカ、日本あたりと対立することになるという
イメージで世界を2分割して、新たな世界秩序の支配者となる。
そんなイメージでつくつたのが「一帯一路」構想なのです。
                 ──渡邊哲也/福島香織著
     『中国大自滅/世界から排除される「ウソと略奪」の
                中華帝国の末路』/徳間書店
─────────────────────────────
 中国には古くから「天命思想」といわれるものがあります。有
徳の天子が天帝から命ぜられて天下を治めるというものです。そ
の天子のいるところが「中華」であり、すなわち、中国であると
いうものです。
 その外側には野蛮な「夷狄(いてき)」の世界があるのですが
それらの野蛮人も中華の徳にふれると、やがては人間になれる、
だから、中華の恩恵を施してやる、というのが、中華思想であり
冊封(さくほう)体制なのです。中国にとっては、日本も米国も
すべて夷狄なのです。
 「一帯一路」というのは、経済政策というよりも、かつてのシ
ルクロードを復活させ、ヨーロッパも含めて新しい冊封体制によ
る世界を作ろうとしているのです。
 それでは、冊封体制とは何でしょうか。
 冊封体制というのは、中国の歴代王朝が、東アジアの国際秩序
を維持するために用いた対外政策のことです。冊封体制について
は、中国史の専門家である西嶋定生氏の解説を引用します。
─────────────────────────────
 中国の皇帝が周辺諸国の首長を冊封して、これに王・侯の爵位
を授け、その国を外藩国として統属させる体制を私は冊封体制と
呼んでいる。冊封という形式は、本来は国内の王・侯に対する爵
位授与を意味するものであるが、その形式が周辺諸国に対する中
国王朝の統属形式に用いられたのである。そしてこの冊封体制を
基軸として、周辺諸国と中国との政治的・文化的関係が形成され
そこに東アジア世界が出現すると考えるのである。
        ──「世界史の窓」 https://bit.ly/2GnPKO4
─────────────────────────────
 かつてのシルクロードは、唐の都の長安からローマまで続く道
のりであり、今回、イタリアを一帯一路に加盟させたということ
は、ローマを落としたということで、中国にとって格別な意義が
あります。既に中国は、2017年に打ち出され、現在進行中の
高速鉄道網や高速道路は、ハンガリー、セルビア、そして、ギリ
シャのピレウス港を結ぶかたちで、バルカン半島を押さえつつあ
ります。これにイタリア半島も手に入れると、地中海の玄関を中
国は押さえたことになります。このように、中国は目下ヨーロッ
パを攻めているのです。
 ギリシャ、ハンガリー、セルビアは既に中国の「債務の罠」に
嵌っており、抜け出せなくなっています。それに加えてイタリア
も深入りしそうな情勢です。イタリアのマッタレッラ大統領やコ
ンテ首相は、一帯一路の参加についてかなり前のめりになってい
る感じです。中国としては、イタリアを取り込むことで、G7の
分断を仕掛けているのです。
 もちろん米国は、イタリアに警告を発していますが、イタリア
は、既に聞く耳を持っていないようです。香港英字紙サウスチャ
イナ・モーニング・ポスト(電子版)の伝えるところによると、
「イタリアのジュセッペ・コンテ首相が米国の警告を無視し、中
国が提唱する巨大経済圏構想『一帯一路』との緊密な協力を推進
している。消息筋によると、米国が近隣諸国の間でのイタリアの
声望を損なうと警告する中、コンテ政権は、中国企業にトリエス
テ港へのアクセスを拡大し、両国の大手電力会社間の協力を一層
強化することを計画している。そして、コンテ首相は、『一帯一
路』参加は、イタリアにとってチャンスとなる」と大きな期待を
寄せているのです。
 これでは、イタリアもいずれ「債務の罠」に嵌る危険性が増大
すると思われます。これは、事実上のヨーロッパの分断にもつな
がることになります。    ──[中国経済の真実/053]

≪画像および関連情報≫
 ●EUと中国 〜「新たな冷戦」での立ち位置を模索
  ───────────────────────────
   イタリア北東部のトリエステと聞いて、かつての東西冷戦
  において一つの象徴となった都市だった、と思い浮かべる方
  は、かなりの歴史通だと言えるでしょう。トリエステは、冷
  戦時代に西側陣営と東側陣営とを分断した「鉄のカーテン」
  の南端でした。もっとも、ベルリンの壁と違って、「鉄のカ
  ーテン」は実際に壁のような建造物が敷設されたわけではあ
  りません。1946年にイギリスの首相チャーチルが演説で
  用いた比喩です。いわく、「北はバルト海のシュテッティン
  から南はアドリア海のトリエステまで、鉄のカーテンが大陸
  に降ろされている」とし、その「カーテン」の東側にあるヨ
  ーロッパ諸国はソビエトの影響下にあると説明しました。冷
  戦の到来を予言した演説でした。
   それから長い年月が過ぎ、冷戦も終わりました。しかし、
  今、再びトリエステが注目を集め始めています。アメリカと
  中国の対立が、「新たな冷戦」の様相を呈する中、トリエス
  テが中国の「一帯一路」構想における「海のシルクロード」
  のヨーロッパでの到達地となったためです。従来からのパー
  トナーであるアメリカとの関係を維持しつつ、急速にヨーロ
  ッパにも進出する中国と、どう向き合うのか。EUはその立
  ち位置を模索しています。
         ──国際報道2019キャスター/池畑修平
                  https://bit.ly/2Z9dLjk
  ───────────────────────────

習近平主席とイタリア・コンテ首相.jpg
習近平主席とイタリア・コンテ首相
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2019年07月24日

●「なぜ一帯一路計画に加盟したのか」(EJ第5053号)

 2019年3月のことです。21日から23日までの3日間の
日程で、習近平国家主席はイタリアを訪問し、コンテ首相と首脳
会談を行っています。そこで、イタリアは、中国の推進する「一
帯一路」計画に関する覚書に署名しています。これで一帯一路の
署名国は、124ヶ国に達しましたが、G7の署名国はイタリア
がはじめてです。
 イタリアは、ユーロ圏3位の経済大国であるものの、2018
年末から景気後退に苦しんでいるのです。イタリアは、リーマン
ショック後に起きたPIIGS危機で、もっとも大きなダメージ
を受けた国であるといえます。銀行の破綻が相次ぎ、経済が回復
していない。ちなみにPIIGSとは、ポルトガル、イタリア、
アイルランド、ギリシャ、スペインのことで、いずれも財政悪化
が懸念されていたのです。
 実は、EUには、経済の運営上、大きな問題があります。それ
は、EU各国には中央銀行はあるものの、統一通貨ユーロの金融
政策は、欧州中央銀行(ECB)だけが行い、EU参加各国では
独自の金融政策を行うことができないことです。
 景気が悪くなったとき、普通の国では中央銀行が金利を下げて
市中の通貨供給量を増加させると同時に、政府が適宜財政出動を
行うことによって、景気回復の処置が取れるのですが、EUの各
国は、統一通貨ユーロを勝手に刷ることはできないので、なかな
か景気を回復させることができないでいます。
 EUのなかで最も経済がしっかりしているのはドイツですが、
ECBがドイツ主導のEU全体の景気状況に合わせて金利を引き
上げたりすると、景気の悪い国は、さらに景気が後退してしまう
ことになります。イタリアは、まさにそういう状況に陥っている
といえます。したがって、現在、イタリアにとって海外の資金は
どうしても欲しいのです。
 中国は、そういう状況を見抜いたうえで、援助の手を差し伸べ
るのです。その目的は、事実上「港」を取得することです。やは
りPIIGS危機で破綻したギリシャに対して、EU側とIMF
(国際通貨基金)が支援の条件として国有資産の売却を求めたこ
とがあります。それを受けてギリシャ政府は、ピレウス港を運営
する国営会社の67%の株式を中国のコスコ・グループ(中国遠
洋運輸集団)に売却したのです。これは、中国の戦略──「海の
一帯一路計画」のはじまりです。
 これには、IMFが重要な役割を果たすのです。そこで中国は
IMFトップの専務理事に、クリスティーヌ・ラガルド氏を送り
込んだのです。なぜラガルド氏は中国寄りなのかについて、EJ
は、2017年に取り上げたテーマ『米中戦争の可能性』で書い
ているので、ご紹介しておきます。
─────────────────────────────
                2017年06月01日
  EJ第4532号『ラガルド理事はなぜ親中国なのか』
                https://bit.ly/2rlME4q
─────────────────────────────
 クリスティーヌ・ラガルド氏は、9月12日付でIMF専務理
事を退任し、さらに出世して、11月に欧州中央銀行(ECB)
総裁(現マリオ・ドラギ総裁)に就任することになっています。
そうなると、今後、ますます中国寄りの裁定が行われる可能性が
あります。
 そもそも一帯一路は、大航海時代の英国がとった戦略を意識し
ており、各地域の重要港をひとつずつ押さえていく戦略です。し
たがって、中国がイタリアを一帯一路に参加させた狙いは、アド
リア海に面した重要港であるトリエステ港とイタリア最大のジェ
ノバ港を取得する狙いがあると考えられます。
 実際問題として、トリエステ港もジェノバ港も、設備がボロボ
ロになっており、修復が必要なのですが、財政難でそれができな
いのです。2018年8月のことですが、ジェノバで高速道路の
高架橋が崩落して、走行中の車や人や、橋の下の住民を含め43
人の犠牲者を出すという大惨事が起きています。この事故につい
てロイターは次のように伝えています。
─────────────────────────────
 [ジェノバ14日/ロイター]イタリア北部ジェノバで14日
高速道路の高架橋が約80メートルにわたって崩落し、ANSA
通信によると、少なくとも35人が死亡した。現場は激しい雨に
見舞われていたという。崩落した高架橋は高さ約50メートルで
自動車35台が巻き込まれた。がれきは工場や他の建造物の上や
川に落下し、ソーシャルメディアには、がれきの下敷きになった
トラックの写真が投稿された。
 サルビーニ内相は「このような惨事は受け入れがたい」とした
上で、責任の所在を明らかにするつもりだと述べた。高架橋は、
1960年代後半に建設。トニネッリ運輸相は保守点検が行われ
ていなかった可能性があるとした。  https://bit.ly/2GpsKOF ─────────────────────────────
 こうした中国の「港」をひとつずつ押さえて行く戦略に関連し
て、「債務の罠」とか「債務トラップ」という言葉がよく聞かれ
ます。相手の弱みにつけこんで、借金のカタに港の99年間の租
借契約を結ばせるやり方です。「借金の罠」というと、私などは
シェイクスピアの喜劇「ベニスの商人」のシャイロックという高
利貸しを連想します。「中国=シャイロック」という印象を持っ
てしまいます。
 ちなみに、「ベニスの商人」の商人は、シャイロックを指すの
ではなく、アントーニオという商人のことです。いずれにしても
一帯一路の札ビラ外交はあまり良いイメージではなく、中国全体
のイメージダウンにつながってしまいます。それでも習主席は、
米国との貿易戦争さなかの3月にイタリアに行き、一帯一路の覚
書に調印しているのです。一体中国は、何を目的として、この一
帯一路計画を進めているのでしょうか。
              ──[中国経済の真実/052]

≪画像および関連情報≫
 ●イタリアの「一帯一路」参加/のっぴきならないその背景
  ───────────────────────────
   イタリアが中国の一帯一路のプロジェクトに参加すること
  になった。このことについて、欧州連合(EU)そして米国
  は、中国がこれを契機にヨーロッパを支配するようになるの
  ではないかと警戒感を表明している。
   しかし、イタリアにして見れば事情もあるようだ。 例え
  ば、イランとの核問題を発端に米国がロシアに制裁を科し、
  それに協力してEUもロシアに制裁を科した件だ。イタリア
  はそれまで積極的にロシアと貿易取引を伸展させていたのだ
  が、この制裁によって、ご破算になってしまったのだ。また
  EUに対する反感も育ちつつある。ユーロの導入によって、
  イタリアのリラは弱い通貨となり、しかもイタリア政府が輸
  出奨励金を支給していたことなどがユーロの導入で廃止せざ
  るを得なくなってイタリアはそれまで半世紀以上イタリア経
  済を支えて来た輸出立国から後退してしまった。現在長期に
  亘って景気が低迷している事態を前にポピュリズム政府は、
  財政赤字を幾分か増やしても景気回復に政府は公共投資を進
  めて行きたいと望んでいる。ところが、それに対してもEU
  は、財政緊縮策の適用を連立政権のイタリア政府に要求して
  いる。現状のイタリアは失業率10・5%、国の負債はGD
  Pの132%にまで及んでおり、非常に厳しい経済環境にあ
  る。それ故、外国からの投資は是が非でも必要とされている
  のである。           https://bit.ly/2YjZFOU
  ───────────────────────────

イタリア/ジェノバでの高速道路崩落.jpg
イタリア/ジェノバでの高速道路崩落

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2019年07月23日

●「借金地獄を止められない鉄道建設」(EJ第5052号)

 中国は、米中貿易摩擦では、米国と正面から向き合うというよ
りも、「持久戦」の構えに入っているように見えます。最近では
ニュースにもならない状況です。しかし、現在中国は、さまざま
な問題で、苦境に陥っています。
 何よりも国有企業の資金繰りができなくなり、失業者が街に溢
れ、物価は上昇し、中央政府への不満が高まりつつあります。こ
れは、中国にとって危険な状況です。何よりも国内の不況対策に
早急に力を入れざるを得ない状況にあります。それには、大きな
問題を抱える公共事業を続行せざるを得ないのです。
 それには、中国の新幹線の延長工事を2019年も拡大させる
ことにし、日本円で13兆円を投入することになっています。こ
の13兆円という金額は、日本の公共事業の総額の2倍に当りま
すが、この巨額の資金を、新幹線の延長工事だけに投入すること
になるのです。途方もない話です。
 中国がはじめて新幹線を走らせたのは、2006年の「北京〜
天津」間です。それから13年間でその営業距離は2万5000
キロを超えています。これに対し日本は、半世紀もの年月をかけ
て、たったの3000キロです。中国はそれをさらに延長しよう
としているのです。
 しかも、日本のJR東海も、JR東日本も、黒字の経営をして
いるのに対し、中国の新幹線の赤字は天文学的になっています。
中国の新幹線の毎年の収入は約9兆円、そこから維持費、人件費
保全費、電力などのコストを差し引くと、天文学的な赤字になっ
てしまうのです。
 どうしてそうなるのかというと、中国新幹線の黒字区間は次の
2区間だけで、あとはすべて赤字だからです。
─────────────────────────────
          「北京〜上海」区間
          「北京〜広州」区間
─────────────────────────────
 費用対効果で見ると、最も黒字区間は「北京〜上海」区間で、
その乗客はキロ当たり4800万人、最も赤字区間は、万里の長
城の最西端から新疆ウイグルをつなぐ「蘭州〜ウルムチ」で、キ
ロ当たり230万人です。これに対して、日本の新幹線は平均で
キロ当り3400万人となっています。
 その結果、中国新幹線の累積赤字額について、2019年1月
29日、北京交通大学都市化研究センターは、次のように発表し
ています。
─────────────────────────────
 中国新幹線(高速鉄道)は、借金も「高速増殖」で、その累積
債務は707億ドル(約78兆円)に達している。
            ──北京交通大学都市化研究センター
─────────────────────────────
 78兆円といえば、日本の旧国鉄の累積赤字24兆円の約3倍
強になりますが、これがさらに積み重なると、恐ろしい近未来が
見えてきます。なぜ、このような赤字体質をさらに肥大化させる
愚劣なプロジェクトを中国は続けようとするのでしょうか。これ
について、中国に詳しい評論家の宮崎正弘氏は、次の3つの理由
を上げています。
─────────────────────────────
 1.国有企業の救済のため、景気浮揚のためのプロジェクトの
   継続という至上命令がある。
 2.海外の新幹線工事受注が必ずしもうまくいっていないので
   内需でしのぐしかないこと。
 3.国有企業の宿痾ともいうべき余剰生産と失業対策であり、
   事業の継続が不可避である。
               ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
 『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機が始まる』
─────────────────────────────
 まず、「1」について考えます。
 中国新幹線の工事を担う産業構造はピラミッド型になっていて
インフラ建設だけでも十数社があります。そのすべてが国有企業
です。これらの国有企業に従事する労働者、設計技師、エンジニ
ア、電気工事、運搬、発電事業など、中国経済の中枢を担ってい
ます。彼らに仕事を与えるためには、たとえコストパフォーマン
スが悪くても、仕事を与える必要があるのです。
 続いて「2」について考えます。
 そのためには、どうしても海外で新幹線受注を獲得する必要が
あります。しかし、海外で新幹線受注を競り落としても、親中派
の政権が変わると、事業が途中で頓挫してしまうこと多くなって
います。これについては改めて述べますが、いくつか取り上げる
と、ベネズエラは正式に中止、マレーシアは20%で中断、イン
ドネシアは用地買収ができず着工不能、タイは青写真のままであ
り、ベトナムはそっぽを向いてしまう、というように、トラブル
のオンパレードなのです。
 最後は「3」について考えます。
 これについては、宮崎正弘氏の著書から引用します。
─────────────────────────────
 中国の鉄道は、もともと軍の利権であり、守旧派が堅持する部
局でもあり、鉄道建設、下請け系列と傍系、さらには付随する研
究所や大学、高専など運転手予備軍を育ててきた。レール、電力
設備、砂利、セメント、ジャッキそのほか、あらゆる産業の裾野
が拡がる産業でもあり、プロジェクトをやめると、大量の失業者
が出るからだ。
 それにしても赤字を肥大化させる一方の事業を継続しなければ
ならないという、小学生が考えても分かるような明らかな矛盾を
全体主義国家では誰も咎めないのである。
                ──宮崎正弘著の前掲書より
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/051]

≪画像および関連情報≫
 ●中国が突き進む「一帯一路」とユーラシア鉄道網の思惑
  ───────────────────────────
   海外の鉄道ニュース記事をチェックすると「一帯一路」と
  いうキーワードをよく見かける。これは中国が進める広域経
  済圏構想で、中国国内にとどまる話ではなく、ユーラシア大
  陸全体に及ぶ構想だ。そのなかで、鉄道貨物輸送「中欧班列
  (チャイナ・レールウェイ・エクスプレス)」が交通インフ
  ラとして存在感を高めている。
   数年前まで、中国の鉄道の話題といえば高速鉄道網の延伸
  だった。日本の新幹線技術も取り入れた中国版新幹線は20
  08年に北京と天津を結ぶ京津城路として開業した。路線距
  離は約117キロ、最高速度は時速350キロだ。その後、
  既存路線の高速化や新路線の建設を着々と進めた。
   中国高速鉄道といえば、11年に起きた温州市の脱線衝突
  事故の記憶が残る。しかし、その後大きな事故は報じられて
  いない。安全対策と信頼の回復が適切に行われたようだ。結
  果、航空機より低価格で市民に支持された。中国高速鉄道は
  中国国土の東半分に網の目のような路線網を形成し、10年
  間で2万9000キロに達した。全てが同じ設計速度ではな
  く、時速200キロ、250キロ、300キロ、350キロ
  の4区分となっている。これとは別格の存在として上海リニ
  アモーターカーがあり、最高速度は時速430キロだ。ただ
  し、ドイツのトランスラピッド方式を採用したリニアモータ
  ーカー路線は、運行費用とドイツからの技術移転の交渉がま
  とまらず、中国大陸の高速鉄道の主流にはなれなかった。
                  https://bit.ly/2W663E5
  ───────────────────────────

中国の高速鉄道車両.jpg
中国の高速鉄道車両
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2019年07月22日

●「信用できない中国実質経済成長率」(EJ第5051号)

 7月15日のことです。中国の2019年4月〜6月期の実質
経済成長率が発表されました。それは、1月〜3月期よりもさら
に0・2ポイント減速しています。
─────────────────────────────
  2019年4月〜6月期    2019年1月〜3月期
         6・2%           6・4%
─────────────────────────────
 「6・2%」という数字は、統計を開始した1992年以降で
最低であり、リーマンショック直後の2009年の6・4%も下
回っています。しかし、各国の経済統計担当者は、この中国の数
字が大ウソであることはわかっています。昭和初期生まれの人が
ピンとくる表現を使えば「大本営発表」そのものです。6%台の
実質経済成長率は、通常の感覚でいえば「凄い成長率」であるか
らです。それがなぜ深刻なのでしょうか。
 経済成長率に限らず、こういう国家統計は申告制です。何を経
済成長率に含めるか含めないか、どのように計算するかなど、す
べては申告制ですから、国のさじ加減でどのようにでもなるので
す。中国の経済統計が信用できないことは、李克強首相ですら認
めているのですから、世界中が知っています。
 これは「債務(借金)」についても同じことがいえます。日本
は「GDP対比200%以上の債務を抱えている」──これは、
さんざんいわれています。日本は超借金大国であると。これは、
財務省が資産を無視して、借金だけを申告しているからです。な
ぜ、そんなことをするのか。増税をしやすくするためとしか考え
られません。つまり、日本の場合、経済の状況を実態よりも悪く
申告しているのです。中国とは逆です。
 ここで留意すべきは、この負債は「国の債務」と考えている人
が多いですが、「政府の債務」です。このあたりがわざとぼかさ
れています。この政府の債務には、中央政府と地方政府の両方が
含まれています。これを一緒にして、国の借金として考えている
人が多いです。この場合、地方政府の債務については中国と違い
日本では、ほとんど破綻を心配する必要はないのです。
 この地方政府の借金の安全性について、植草一秀氏は2011
年発行の自著において、次のように述べています。
─────────────────────────────
 地方政府の借金は、それぞれの地方の金融機関などが資金の出
し手となっており、どの経済主体がいくら地方自治体に資金を供
給するかについて綿密な計画がたてられ、その計画に基づいて地
方債が発行されている。
 また、地方債を発行できる事業も限定されており、基本的には
借金返済の裏付けが確かでないものには、地方債発行が認められ
ないような仕組みが取られている。したがって、この200兆円
の地方債の残高については、基本的に大きな懸念が生じる恐れが
ないと言っても過言でない。例外的に地方政府の財政危機が表面
化するケースがあるが、巨大な地方債残高を抱えたまま地方政府
が破綻するといった事態は想定されないのである。
               ──植草一秀著『日本の再生/
    機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却』/青志社刊
                   2011年11月発刊
─────────────────────────────
 ここで植草一秀氏のいう「200兆円」とは、2011年度末
の借金残高合計が、894兆円になるという予測に基づいていま
す。これは日本のGDPの185%に相当しますが、894兆円
の内訳は次の通りです。地方政府の借金は外して申告しても一向
に問題がないということをいいたいわけです。
─────────────────────────────
      中央政府 ・・・・・・ 693兆円
      地方政府 ・・・・・・ 201兆円
─────────────────────────────
 日本に比べると、中国はきわめて深刻です。中国の経済データ
は、各地に配置されている中国共産党幹部が、その所管する地方
のGDPを北京に報告しますが、目標値をクリアしないとその幹
部の失点になるので、報告数値を水増しすることが慣例です。
 そこで、中国の本当の数字を探る試みがいろいろ行われていま
す。その一つが「李克強指数」です。鉄道貨物輸送量や融資、電
力消費のデータですが、最近では、それらの数値も信用できるも
のではなくなってきています。
 そこで産経新聞特別記者・田村秀男氏は、自動車とセメント生
産の前年比増減率をベースにして、「タムラ・フジ産経指数」を
作り、それによって分析する方法を考えたのです。自動車生産台
数は、外資との合弁が多いため、誤魔化しが効かず、セメント生
産は、政治的裁量とは無関係なので、わざわざウソをつく必要が
ないからです。
 添付ファイルのグラフは、自動車、セメント生産の前年比増減
率に実質GDPの伸び率を組み合わせたものです。これについて
田村秀男氏は、次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
 成長率の水準を抜きにすれば趨勢はきれいに連動し、いずれも
右肩下がり曲線である。自動車は工業生産の要で、セメントは不
動産開発が柱となるハコモノ投資(総固定資産投資)を100%
反映する。総固定資産投資のGDP構成比は40〜50%に上り
昨年は8%前後の伸び率になっている。
 ところがセメント生産は、前年比マイナスで、いかにも不自然
だ。固定資産投資は土地の所有権を売買する権限を持つ地方政府
の裁量次第だから、ウワモノの投資をしたように偽装できる。セ
メントと自動車生産動向からすれば、実際の中国経済は実質マイ
ナス成長に陥っている。そして4〜6月期はさらに下落に加速が
かかっていると推計できるのだ。   https://bit.ly/2XWrWf6
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/050]

≪画像および関連情報≫
 ●中国のGDPは嘘であり水増しされている
  ───────────────────────────
   中国が毛沢東による1949年の建国当初から手本として
  きたのは、一早く共産主義を確立していた大国ソビエト連邦
  でした。ソ連から一万人の顧問が中国を訪れて産業育成の方
  法を始めとして統計システムまで持ち込まれました。しかし
  そもそもソ連の統計が大嘘であったということがソ連崩壊と
  同時に明らかになったのです。
   実はソ連は崩壊するまでは世界第2位のGDPということ
  になってたのですが、崩壊後に明らかになったGDPは発表
  の半分の規模でしかなかったのです。また、1928年から
  1985年の国民所得の伸びは実際には6・5倍にしかなっ
  ていなかったにも関わらず、90倍に拡大していると誇大に
  も程がある統計を出していたのです。
   しかし、非常に巧妙につくられていたみたいでノーベル経
  済学賞を受賞したサミュエルソンでするソ連の統計をみて、
  『ソ連は成長している』と結論付けてしまっていました。結
  局、ソ連にしても中国にしても一党独裁で国家を収めている
  国では、共産党のおかげで国が成長していると国民を騙さな
  いといけないのです。騙さないと、不満が爆発して革命が起
  き一党独裁政権が瓦解してしまいますからね。ただ、嘘の統
  計をねつ造し続けても国家は瓦解します。
                  https://bit.ly/2GmsCiV
  ───────────────────────────

中国の自動車、セメント生産と実質GDPの前年比増減率.jpg
中国の自動車、セメント生産と実質GDPの前年比増減率
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2019年07月19日

●「主役が敬遠した映画『新聞記者』」(EJ第5050号)

 映画『新聞記者』が、結果として、安倍政権を批判する内容に
なったのは、東京新聞社会部記者、望月衣塑子氏の本(『新聞記
者』/角川書店)を原案としているからです。望月記者といえば
菅官房長官の会見の席で、よく通る大きな声で、鋭い質問をする
ことで有名であり、それがきっかけになって、有名になった新聞
記者です。
 官房長官の会見では、菅官房長官の番記者の質問が中心で、な
かなか番記者以外の記者に質問は回ってこないのです。しかし、
望月記者は、そこは巧みに、かなり強引に質問を行います。した
がって、番記者からさまざまな妨害を受けますが、望月記者はい
つも敢然と官房長官に鋭い質問を浴びせます。官房長官としては
もっとも質問して欲しくない問題を臆せず取り上げて質問するの
で、菅官房長官からは露骨に嫌われています。
 望月記者は、2017年3月、森友学園、加計学園の取材チー
ムに参加し、前川喜平文部科学省前事務次官へのインタビュー記
事などを手がけたことや、元TBS記者からの準強姦の被害を訴
えた女性ジャーナリスト伊藤詩織氏へのインタビュー、取材をし
たことで、「告発している2人の勇気を見ているだけでいいのだ
ろうか」と思いたち、2017年6月から、菅官房長官の記者会
見に出席するようになったのです。
 安倍政権の最大の問題点は、メディアを規制して、国民の知る
権利を制限する傾向があることです。官邸はテレビ番組をウオッ
チングし、政府批判をするコメンテーターを慎重に排除したり、
番組そのものを潰したり、政権にとって不利な言説を封じようと
します。基本的には、中国のやっていることと、程度の差こそあ
れ、あまり変わらないひどさです。
 そのため、森友学園にしても、加計学園にしても、それに関連
する文書改ざん事件にしても、真相が明らかにならないまま幕引
きをされ、国民の間には何となくすっきりしない、もやもや感が
残っていることは確かです。映画では、安倍政権で起きたそれら
の問題の裏側で何が行われているのか、新聞記者の立場から迫る
内容になっています。
 映画『新聞記者』では、松坂桃季演じる内閣情報調査室の官僚
杉原と、韓国人女優シム・ウンギョン演じる東都新聞記者吉岡が
ダブル主演を務めています。なぜ、この映画の主演が韓国人なの
かという点については、吉岡のキャスティングが難航したからで
す。当初は、宮崎あおいや満島ひかりを予定して交渉したのです
が、いずれも断られています。なぜなら、この映画に出演すると
内容が内容だけに、「反政府」のイメージがついてしまうことを
恐れたからです。その結果、吉岡エリカ役には、韓国人女優のシ
ム・ウンギョンが抜擢されることになったのです。役柄としては
日本人の父と韓国人の母の間に生まれ、米国育ちという設定に、
なっています。
 それだけ、安倍政権下では、一度政権に睨まれると、ろくなこ
とがないのです。俳優といえども、その後の仕事について、何ら
かの不利益なことが起きる可能性があるからです。いや、実際に
起きているのです。これが現安倍政権の最大の問題点であると、
私は考えています。こんなことがあっては絶対にいけないし、政
権としてやってはならないことです。
 そういう意味において、人気俳優の松坂桃季が、この映画に主
演した意義は大きいとして、ある映画ライターは、次のように述
べています。
─────────────────────────────
 人気俳優の松坂がこの映画の出演をよく承諾したと映画関係者
の間では話題になっています。映画の中でも正義と職務の間で葛
藤する官僚の役柄をみごとに演じている。役者としても一皮むけ
たと思います。            ──ある映画ライター
                  http://exci.to/2XGLsMq
─────────────────────────────
 この映画の監督は藤井道人です。河村プロデューサーは、藤井
監督が、「人間の善悪」をテーマに撮った前作「デイアンドナイ
ト」を見て、「若い感覚でこの映画を撮ったら、きっと受けると
直観的に思ったと」といいます。
 しかし、当の藤井監督は、河村プロデューサーから、この映画
の監督の依頼を受けたとき、すぐに断っています。政治的な問題
ではなく、自分に合わないと考えたからです。藤井監督は次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 政治も勉強したことがないし、自分で新聞も取ったことが、な
かった。親は新聞を取っていたけど、大学に入って一人暮らしを
始めたときに月4000円も払えないし。自分が「参加していな
い」ってことも自覚はしていた。断るには十分な理由があったん
ですよね。                ──藤井道人監督
                  https://bit.ly/2YdGbM0
─────────────────────────────
 そこからが、河村プロデューサーと藤井監督との話し合いがは
じまったのです。「政治に興味がない」といったとき、河村プロ
デューサーの次の言葉が印象に残ったといいます。
─────────────────────────────
 政治に興味がない、政治から逃げるっていうのは、民主主義を
放棄しているってことだと俺は思う。 ──河村プロデューサー
─────────────────────────────
 この言葉は心に響いたと藤井監督はいっています。新聞を読ん
でいない監督が描く新聞記者の世界──望遠レンズを使って撮る
など、若い監督らしい工夫が満載の作品です。よくぞ制作したと
いう感じです。ジャーナリストの田原総一朗氏は、この映画を次
のように絶賛しています。
 「面白い!!非常にドラマチックかつサスペンスフル!新聞記
者と上層部の関係、官僚機関の構造がよくわかった。ジャーナリ
スト/田原総一朗」     ──[中国経済の真実/049]

≪画像および関連情報≫
 ●内閣調査室が望月記者を調べ始めているという証言あり
  ───────────────────────────
   もうひとつ興味深かったのは、この座談会で東京新聞の望
  月記者も自分が内調に狙われていたことを明かしたことだ。
  「私自身の記憶で言うと、やはり非常にバトルを官房長官と
  やっていたときに、ある内調(の人物)が、非常に仲が良い
  と、私はその議員が誰だか知らないんですけど、その国会議
  員に、内調が『望月さんってどんな人?』という調べる電話
  をかけてきた。この国会議員が非常に仲が良い、あるジャー
  ナリストの人に『望月さんのこと内調が調べ始めたよ』とい
  う話をするんですね。この人から私に『望月、調べられてい
  るから気を付けておけ』っていう」「彼(内調)が知ってい
  る政治家とかジャーナリストを使って、あなたを見ているん
  ですよと、ウォッチングしているんですよ、ということを、
  やっぱり政権を批判的に言ったり厳しめにつっこんでいる私
  とかに対して、間接的な圧力になるように、そういうことを
  やると」
   官房長官会見で質問をおこなうことは、記者として当然の
  行為であり、それに答えるのが官房長官の務めだ。しかし、
  その当然のことをするだけの望月記者に質問妨害をおこなっ
  たり、官邸記者クラブに恫喝文書を叩きつけている官邸。だ
  が、それだけではなく、内調を使ってこんな脅しまで実行し
  ているのだ。いや、内調と官邸による情報操作、マスコミ工
  作は映画で描かれているもの以外でもいくらでもある。
                  https://bit.ly/32qDK7P
  ───────────────────────────

映画『新聞記者』の一シーン.jpg
映画『新聞記者』の一シーン
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2019年07月18日

●「映画『新聞記者』の狙いとは何か」(EJ第5049号)

 この連載は、米中貿易戦争下の中国経済がどうなるかがメイン
テーマです。しかし、7月8日のEJから、この問題に関係する
米国と北朝鮮の問題を取り上げて書いています。今週は、日本で
は、参院選最終ウィークであり、今日と明日は、脱線しついでに
選挙に絡む問題についても書くことにします。そして、22日か
ら話を中国の問題に戻します。
 7月12日のことですが、折からの降りしきる雨のなか、澁谷
まで足を運んで、話題の映画『新聞記者』を観に行きました。ど
うしても観たかったし、12日が上映の最終日だったからです。
 どこでこの映画を上映しているのか。新聞にはまったく出てお
らず、ネットに頼って、上映館を見つけました。澁谷の「ユーロ
スペース」という聞いたことのない映画館です。やっと映画館を
見つけて、驚きました。すべて座席指定の入れ替え制なのです。
しかも満員。やっと入場券を手に入れましたが、もう少し、遅く
行ったら、この回は観られないところでした。
 観客は、中高年とシニアばかりと思っていましたが、かなり若
い人も多く、ほとんど宣伝もしていないのにもかかわらず、すぐ
満員になりました。この映画がいかに話題になっているかがよく
分かります。それにしても、ほとんど新聞を読まない現代の若者
が『新聞記者』という映画を観るとは!、ちょっと驚きでした。
 映画の興行収入は、公開6日目に1億円を突破し、初週末3日
間の数字を2週目週末が上回り、動員対比102・9%、興収対
比104・1%の高稼働を記録しています。そして、公開11日
目の8日(月)、動員数は、実に17万2127人、興行収入は
2億1055万5640円と、遂に2億円を突破しています。
 よく知られているように、この映画は、東京新聞社会部記者の
望月衣塑子氏の著書『新聞記者』(角川書店)を原案としていま
すが、本の内容は、望月衣塑子氏のいわば自伝のノン・フィクシ
ョンです。これを基にして、フィクションに仕上げたのは、河村
光庸プロデューサーと藤井道人監督の仕事です。
 まずはともあれ、この映画の「予告編」がありますので、ご覧
ください。時間は1分8秒です。
─────────────────────────────
       映画『新聞記者』/予告編(動画)
            https://bit.ly/2Y3HRqZ
             配給会社スターサンズ
 韓国の若手女優シム・ウンギョン演じる新聞記者・吉岡エリカ
が働く新聞社に、「医療系大学の新設」に関する秘密文書がファ
クスで届く。吉岡が内閣府のキーパーソンである神崎にたどり着
こうとした矢先、神崎が自殺する。
 一方、松坂桃李ふんする内閣情報調査室の若手官僚、杉原拓海
は外務省時代の神崎の後輩。慕っていた上司の死をきっかけに官
邸の闇を知り、吉岡と出会う。そこから2人は人生をかけた選択
を迫られていく・・・・。
─────────────────────────────
 この映画『新聞記者』は、通常の映画と異なることが、実にた
くさん起きたのです。いくつか上げてみます。
─────────────────────────────
     1.主役がなかなか決まらなかったこと
     2.全テレビ局がプロモーションを拒否
     3.映画関連サイトのサーバーがダウン
     4.ネットでの異常な批判的な書き込み
─────────────────────────────
 なぜ、このようなことが起きたのでしょうか。
 それは、この映画が安倍政権下で起こった数々の不正を描いて
いるからです。しかも、映画が公開される期間が参院選の期間と
重なっているからです。
 安倍政権下の数々の不正とは、さまざまな国会の論戦でも、政
府側の問題のはぐらかし、逃げの答弁、ごはん論法などによって
国民の多くが今でも釈然としないと感じていることばかりです。
 株式会社ロストニュースが編集制作し、株式会社サイゾーが配
付展開する日本のニュースサイト「リテラ」では、次のように表
現しています。
─────────────────────────────
 映画『新聞記者』には、安倍政権下で実際に起こった様々な不
正を想起させるエピソードがてんこ盛りになっている。たとえば
物語の核でもある大学新設計画をめぐる不正は明らかに加計学園
問題を意識させるし、ほかにも、前川喜平・元文科事務次官への
謀略報道をモチーフにしているとしか思えない文科省官僚に対す
るスキャンダル攻撃、伊藤詩織さんの告発を彷彿とさせる“総理
ベッタリ記者”による性暴力事件もみ消し、森友公文書改ざん問
題を示唆する官僚の自殺などのエピソードも出てくる。
 さらに、こうした政権の謀略を担う機関として、内閣情報調査
室がクローズアップされ、映画で描かれた数々の謀略工作のほと
んどに関与しているという設定になっていた。
                  https://bit.ly/2NRBAuC
─────────────────────────────
 東京新聞社会部の望月衣塑子記者といえば、菅官房長官に対し
て、大きな声で鋭い質問をすることで、知られており、官邸から
さまざまな嫌がらせを受けているといわれます。その望月記者の
本を原案とする映画ができることで慌てた官邸は、映画の内容を
を公開前に手に入れ、激怒したといわれます。テレビ局への締め
付けは、当然官邸の指示によるものと思われます。
 「この国は形だけの民主主義でいいのだ」──これは内調の若
手官僚杉原(松坂桃季)の上司の言葉ですが、その言葉通りのこ
とを官邸はやっています。テレビでの映画のプロモーションを妨
害し、唯一のネットの公式サイトでのプロモーションも、複数の
特定IPアドレスからの集中攻撃によってサーバーがダウンさせ
られ、思うにまかせなかったのですが、それでも映画は満員の盛
況なのです。        ──[中国経済の真実/048]

≪画像および関連情報≫
 ●批評家が絶賛、映画「新聞記者」が暴いた安倍政権の暗部
  ───────────────────────────
   老後資金2000万円不足問題や、ずさんなイージス・ア
  ショア候補地調査など、参院選を前に国民の怒りをかきたて
  る不祥事が続く安倍政権だが、28日から公開される、映画
  「新聞記者」のキョーレツな内容は、さらに彼らを悩ませる
  ことになりそうだ。
   東京新聞記者・望月衣塑子氏(44)のノンフィクション
  を原案に、「デイアンドナイト」など本格的な人間ドラマで
  定評ある藤井道人監督が、映画オリジナルの脚本を練り上げ
  て実写化したポリティカルドラマ。これが今、試写を見た業
  界関係者の間で大変な話題になっているのだ。その内容を、
  映画批評家の前田有一氏が驚きを隠せぬ様子で語る。
   「タイトルこそ著書に合わせていますが、映画版はもはや
  “安倍政権の闇”とでも題したくなるほど現政権の疑惑を網
  羅した内容です。最近ハリウッドでは、チェイニー副大統領
  を描いた『バイス』など政治批判の映画が話題ですが、しょ
  せんは過去の話。本作は現政権の、現在進行中の未解決事件
  を映画化した点で前代未聞です。ハリウッドでさえ、こんな
  ことをしようという無謀な映画人はいない。社会派映画史に
  刻まれるべき偉業です」
   映画は女記者(シム・ウンギョン)が、加計学園がモデル
  とおぼしき特区の新設大学にまつわる内部告発を受け取材を
  始めたところ、あらゆる手段で政権を守ろうとする内閣情報
  調査室から激しい妨害にあう様子を、重厚な演出で描く。
                  http://exci.to/2JIUDlF
  ───────────────────────────

東京新聞社会部望月衣塑子記者.jpg
東京新聞社会部望月衣塑子記者

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2019年07月17日

●「羅先にTHAADを設置する提案」(EJ第5048号)

 2019年7月11日のEJ第5045号で、「北朝鮮に米軍
基地を置く」という情報をお伝えしましたが、多くの人は「そん
な馬鹿な!そんなことはあり得ない」と考えたと思います。情報
の出所は4日発行の「夕刊フジ」の連載コラム、鈴木棟一氏のコ
ラム『風雲永田町』です。
 ところが7月4日発行の「夕刊フジ」で、今度はジャーナリス
トの有本香氏が、自身のコラム『有本香の以読制毒/読を以て毒
を制す』において、この情報について次のように述べています。
─────────────────────────────
 ◎北朝鮮に米軍基地計画情報/金正恩が懇願か
  筆者が最初にこの話を耳にしたのは、ベトナムの首都ハノ
 イで行われた米朝首脳会談の少し後。与太話の類と思って聞
 き流した。だが、最近、複数の朝鮮ウォッチャーが口にし、
 政府関係者からも「関心を寄せざるを得ない話題」との言を
 得、無視できないと思い直した。
        ──2019年7月11日発行「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 有本香氏は、この情報に関連して、北朝鮮の北東部、日本海に
面する羅先(ラソン)という港町のことを取り上げています。こ
の羅先という町は、北朝鮮の経済特区になっており、主として中
国とロシアの資本が入っています。
 カジノが完備しているエンペラーホテルは、香港資本のホテル
であるし、羅津港は中国とロシアが整備しています。中国は羅津
港の一部埠頭の50年間の租借権を持っていますが、この契約を
率先してやったのが、叔父の張成沢であり、現在のところこの租
借権は宙に浮いています。
 ロシアは、ロ朝国境のハサン駅から羅津港まで約50キロメー
トルをロシアの車両が台車交換なしで直接乗り入れることができ
る工事を2013年秋に完成させています。
 このように、北朝鮮が他のアジア諸国の中国による港湾整備案
件と違うことは、中国だけでなく、ロシアやモンゴルなどにも利
用を呼びかけて、「3すくみ」の状態を作り、どこか一国、例え
ば中国に勝手をさせないようにすることです。この「3すくみ」
の状況について有本香氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 周囲の大国を次々と自らの問題に引き込み、時々に優勢な国に
付いて利を得る。この事大主義的外交術は、古来、朝鮮で行われ
てきた「伝統芸」だ。といっても現在のところ、中露をすくませ
るに十分な「第3の力」を得るに至っていない。
 そこで考えた「ウルトラC」の新ターゲットが、ドナルド・ト
ランプ大統領の米国ということのようだ。金正恩朝鮮労働党委員
長自身が「羅先」に言及し、トランプ氏やマイク・ポンペオ国務
長官に、「韓国が配備を嫌がっている米軍の最新鋭迎撃システム
『THAAD/高高度防衛ミサイル』をうちへ」といったとの仰
天話も聞かれる。 ──2019年7月11日発行「夕刊フジ」
          『有本香の以読制毒/読を以て毒を制す』
─────────────────────────────
 驚くべきことであるが、真偽のほどはわからないものの、金正
恩委員長は、「『THAAD』を羅先に設置してはどうか」と提
案しているというのです。それは、米軍基地を羅先に置くことを
意味しています。そうすると、羅先に申し分ない「米中露の3す
くみ」の状態ができることを意味し、金正恩委員長の狙いである
体制保証は実を結ぶことになります。
 実際にこういう提案が行われたかどうかは不明ですが、トラン
プ大統領としては、金正恩委員長を年齢は若いが、なかなかでき
る男と評価しているはずです。「この男、他にやることはないの
か」とか、「リトルロケットマン」とこき下ろしていたときと比
べると、大変な変化です。
 対照的に評価を大きく落としているのは、韓国の文在寅大統領
です。せっかく米朝の仲介役を買って出たのですが、以後は完全
にお役御免です。今回の板門店での歴史的米朝首脳会談にも、文
在寅政権は関与していないのです。
 そもそもG20大阪サミット直後の韓国訪問も、何度も米国に
懇願してやっと実現したものですが、トランプ大統領はその場を
利用して、韓国抜きで親書とツイートで確かめ合い、劇的に板門
店で会談を開いたのです。これについて、国際舞台で活躍する国
際交渉人の島田久仁彦氏は次のように解説しています。
─────────────────────────────
 今回のサプライズに際し、一つ確実に言えることがあるとした
ら、残念ながら「韓国そして文大統領は全く関与していない」と
いうことでしょう。29日のG20会合中に、トランプ大統領か
ら、「私のツイート見たか?」と尋ねられ、「はい」と答えたと
伝えられていますが、それまで何も知らされておらず、この“工
作”に全く関与できていないことが浮き彫りになりました。
 そして、面白いことに、頼みに頼み込んで大阪の後、ソウルに
立ち寄ってもらい、米韓首脳会談を!と狙っての招待だったにも
拘らず、実質的に米韓で話し合われた内容は、正直何もなく、こ
の訪問自体、うまくアメリカに“利用”されてしまいました。
 それでも意地からでしょうか。トランプ大統領に付き添って板
門店に赴きましたが、米朝の間に入ることはできず、38度線を
挟んでトランプ大統領と金正恩氏が握手するという歴史的な瞬間
にも立ち会うことが許されませんでした。
 皆さんも生中継の映像を観られたかもしれませんが、トランプ
大統領が韓国側の建物からドアを開けて出た際、後ろに文大統領
が控えていましたが、歩き出して自分も2人の首脳に加わろうと
思った矢先、目の前でドアを閉じられてしまいました。まるでト
ランプ大統領から「お前は用なしだ!」とでも言われたかのよう
な瞬間でした。           https://bit.ly/2xX9T9j
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/047]

≪画像および関連情報≫
 ●サプライズ米朝会談実現でも「文在寅はずし」は終わらない
  ───────────────────────────
   6月30日、トランプ米大統領の「ツイッター提案」から
  始まった板門店(パンムンジョム)でのサプライズ米朝首脳
  会談の推移を、韓国メディアは固唾を飲んで見守った。
   韓国メディアが関心を寄せたのは、会談そのものの成否だ
  けではない。それに劣らず、文在寅大統領の「立ち位置」が
  注目の的となったのだ。というのも、北朝鮮メディアはこの
  前日まで、「思考と精神がマヒしている」などと言葉を極め
  て文在寅大統領を罵倒していたからだ。
   文在寅政権はこの間、北朝鮮に対してたいへんな気の使い
  ようだった。特に、金正恩党委員長が最も批判されることを
  嫌う、北朝鮮国内における残忍な人権侵害からは露骨に目を
  背けてきた。
   それにもかかわらず、北朝鮮は最近になって、文在寅氏に
  対する個人攻撃を開始していた。日米との不協和音に加え、
  北朝鮮からもハシゴを外される危機に直面していたのだ。北
  朝鮮が腹を立てているのは、韓国が米国との協調を優先し、
  南北首脳会談で合意したはずの経済協力に、文在寅政権がな
  かなか踏み出そうとしないからだ。もっとも韓国としても、
  北朝鮮の非核化が進展していない以上、おいそれと経済協力
  に踏み出すことなどできない。そこで文在寅政権は、米朝対
  話の「仲介者」を自任して当事者としての立場を守ろうとし
  てきたわけだが、北朝鮮は「(韓国の)仲介など不要だ」と
  明言している。これを受けて韓国メディアは、北朝鮮が板門
  店での米朝首脳の対面の場から、文在寅氏を締め出すのでは
  ないかと心配したわけだ。    https://bit.ly/2xKdreN
  ───────────────────────────

劇的で歴史的な米朝首脳会談/板門店.jpg
劇的で歴史的な米朝首脳会談/板門店
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2019年07月16日

●「北朝鮮要人は漁船で日本に亡命か」(EJ第5047号)

 2018年12月20日、能登半島沖の日本の排他的経済水域
──そこに2隻の北朝鮮の漁船がいたのですが、この船にはたっ
た4人しか乗っていなかったのです。この4人とは、果して何者
でしょうか。この4人がどういう人物かについて、菅沼光弘氏の
本から要約します。
 金正恩氏の父、金正日氏が亡くなったのは、2011年12月
17日のことです。金正日氏がとっていた政治は「先軍政治」で
あり、軍が経済を含めてすべての国家権力を握る政治体制です。
このときは、当然のことながら、軍隊や軍人が優遇されていたの
です。なかでも、権力を持っていたのは、金ファミリーを護衛す
る任務を持つ護衛総局という部署で、李乙雪(リ・ウルソル)と
いう人物が司令官を務めていたのです。朝鮮人民軍元帥には、当
然金正恩氏が就任していますが、李乙雪も元帥の称号を持ってい
たのです。
 李乙雪は、金日成に仕え、あのパルチザン戦争にも参加した勇
者で、金正恩氏が2012年4月に軍事パレードを観閲したとき
はまだ健在であり、金委員長の隣に元帥の服を着て立っていまし
た。彼は贅沢三昧を尽くし、金ファミリーよりも、豪奢な生活を
していたといわれています。
 しかし、金正恩委員長は、父親の「先軍政治」とは異なる政治
体制を目指そうとしたのです。彼は、真の強国とは「経済に強い
国」であると考えていたからです。念頭にあったのは、中国では
なく米国です。それに当時の軍は腐敗にまみれており、根こそぎ
の改革が急務でした。中国と同じです。そして打ち出したのが、
「並進政治」です。並進政治とは、軍事建設もやるが、経済にも
重点を置き、軍事と経済を並進させるという意味です。
─────────────────────────────
        金正日 ・・・・ 先軍政治
        金正恩 ・・・・ 並進政治
─────────────────────────────
 金正恩委員長は、軍人よりも科学者、とくに核やミサイル技術
やIT技術に優れた科学者を優遇したり、何とか経済を活性化さ
せようと力を入れたのですが、それをやればやるほど、経済制裁
がきつくなっていったのです。それに軍の改革は、李乙雪元帥が
健在のうちは、さすがに手をつけられなかったのです。
 その李乙雪元帥は、2015年11月7日に死亡し、軍事改革
を進めるのに、障害はなくなったのです。それ以後のことについ
て、菅沼光弘氏は次のように書いています。
─────────────────────────────
 李乙雪が死んで、軍人の粛正が進めやすくなった。金正恩は、
次々と軍人を粛清してきましたが、最後に残ったのが護衛総局で
す。金正恩はこれに手を着け、かなりの人を逮捕した2018年
12月に「遭難した漁船」には、護衛総局の幹部の何人かが逃亡
するために乗っていたのではないか。金正恩が彼(ら)を捕まえ
てくれ、と文在寅に頼んだというのが、事の次第ではないかと私
は考えています。もし、そうだとすれば、日本も北朝鮮に協力し
たことになるのですね。海上自衛隊のP・1哨戒機は、すべてを
知っていたと考えるのが常識です。      ──菅沼光弘著
             『金正恩が朝鮮半島を統一する日/
        日本にとって恐怖のシナリオ』/秀和システム
─────────────────────────────
 この菅沼光弘氏の説は、なかなか説得力があります。人民軍の
幹部が次々と逮捕され、処刑されるのを見て、幹部級の大物が漁
船で日本を目指し逃亡を図る──十分考えられることです。なぜ
漁船なのかというと、北朝鮮の場合、航空機を使うことが困難で
あり、漁船を使うのが一番手っとり早いからです。目指すのは日
本。日本は沿岸警備が甘く、上陸しやすいのです。実際に、多く
の北朝鮮の漁船が沿岸で発見されています。
 推測ですが、当局が逮捕を予定していた元護衛総局の大物幹部
数人が漁船に乗って逃亡を図った。わかったのは、出航してかな
り経ってからです。報告を受けた金正恩委員長は、韓国の文在寅
大統領に電話して、「捕まえてくれ」と依頼したのではないか。
そのとき、武装していることも伝えています。
 文在寅大統領は、この要請を受けて、直ちに警備艇と攻撃され
ることにも備えて、駆逐艦を派遣したのです。もしかすると、日
本の哨戒機に発見されたとき、火器管制レーダーを発射して追い
払うことも最初から考えていたのではないでしょうか。文在寅大
統領としては、ここで金正恩委員長を助けておけば、あとあと韓
国にプラスになると計算したと思われます。
 韓国には「事大主義」という考え方があります。これは「弱い
者が強い者の言いなりになって仕えること」という意味です。直
近の「事大」として、菅沼光弘氏は、韓国におけるTHHADミ
サイル設置をめぐる一連の対中姿勢にあると指摘しています。し
かし、日本に対してはヒステリックに文句をつけてくるのです。
─────────────────────────────
 韓国はTHHADミサイルを2017年9月に慶尚北道星州に
配備したと発表しました。国内の反対運動が盛んで場所をどこに
するか、大もめにもめたのですが、結局ロッテ財閥が開発したゴ
ルフ場に設置されました。
 韓国の言い分では北朝鮮のミサイルに備えるという口実で配備
したのですが、設置場所から見ても、中国のミサイルがアメリカ
に飛んでいく前に迎撃するためだ、というのが明々白々でした。
当然、中国が韓国に対して猛烈なクレームを付けてきます。中国
は、中国国内にあるロッテグループの工場や店舗を全部閉鎖して
しまいました。それだけの報復を受けたわけですが、文在寅政権
はなんの抗議もしなかった。唯々諾々とそれを受け入れた。これ
を「事大主義」と言わずして何を事大主義と言うか。
                ──菅沼光弘著の前掲書より
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/046]

≪画像および関連情報≫
 ●半島国家の悲しき世界観/宮家邦彦氏
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   日本の嫌韓派の人々が韓国を批判する際によく使う言葉が
  「事大主義」の弊害なるものだ。事大主義といっても若い読
  者はあまりピンと来ないだろうが、北東ユーラシアの地政学
  を理解するうえで、「事大主義」は、「華夷思想」「冊封体
  制」「朝貢関係」などとともに、必須の概念だといえよう。
   事大主義とは、「小」が「大」に事える、つまり、強い勢
  力には付き従うという行動様式であり、語源は、『孟子』の
  「以小事大」である。国語辞典によれば、「はっきりした自
  分の主義、定見がなく、ただ勢力の強いものにつき従ってい
  く」という意味で、たとえば次のように使われる。
   事大主義とは朝鮮の伝統的外交政策だ。大に事えるから事
  大。この大というのはむろん中国のことなのだが。つまり中
  国は韓国の上位にある国だったから、そこから侵略されても
  ある程度仕方がないとあきらめる。しかし、日本は韓国より
  下位の国だ、だから侵略されると腹が立つ。上司になぐられ
  ても我慢できるが、家来になぐられると腹が立つ、という心
  理だ。(2013年12月16日付、『NEWSポストセブ
  ン』)朝鮮は、中国に貢ぎ物をささげる朝貢国として、存続
  してきた。大国に事える事大主義の伝統が抜きがたくある。
  日本が近代化に懸命に汗を流しているころも、官僚らは惰眠
  をむさぼり、経済も軍事力も衰亡していた。その朝鮮を国家
  として独立させ、西洋の進出に備えようというのが日本の姿
  勢だった。(2014年7月19日付、『産経新聞』WEB
  版)              https://bit.ly/30qElVo
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李乙雪元帥と金正恩委員長.jpg
李乙雪元帥と金正恩委員長
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posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年07月12日

●「なぜ韓国はレーダーを照射したか」(EJ第5046号)

 日本による輸出規制の強化で韓国の文在寅大統領の対応がドタ
バタしています。7月10日、文大統領は、大手財閥のトップを
緊急招集し、「官民緊急体制」を構築しようとしています。この
文在寅大統領は、何事でもそうですが、本質と向き合おうとはせ
ず、姑息な対応に終始する人です。
 この会合に、サムスン電子の李在鎔(イ・ジョヨン)副会長と
ロッテの辛東彬(シン・ドンゴン)会長は日本出張のため、欠席
しています。サムスン電子の李在鎔副会長は今週はじめから日本
に滞在し、銀行をはじめ、日本で関係者と協議を重ねています。
大統領と話しても解決する問題ではないからです。この会議への
出席者の本音も次の通りです。
─────────────────────────────
 政府が話し合うべきは、われわれではなくて、日本政府では
 ないのか。             ──大手財閥トップ
─────────────────────────────
 韓国の文在寅政権と北朝鮮の金正恩政権はおかしい──このよ
うに考える人が多くなっています。文大統領は、2018年9月
に金正恩委員長の招きで訪朝し、首脳会談のあと、マスゲームに
招待されて、大歓迎され、完全に舞い上がってしまったのです。
もともと、この大統領は、着任当初から北朝鮮に融和姿勢をとっ
てきた人ですが、この訪朝で、完全に金委員長に取り込まれてし
まったといえます。
 実は、このことと、昨年末からの数々の韓国の日本に対する不
可解な対応とは重要な関係があるのです。先日、朝鮮問題に関す
る次の新刊書を購入し、現在読んでいます。
─────────────────────────────
       元公安調査庁調査第2部長/菅沼光弘著
         『金正恩が朝鮮半島を統一する日/
    日本にとって恐怖のシナリオ』/秀和システム
─────────────────────────────
 著者の菅沼光弘氏は、1959年に公安調査庁に入庁し、35
年間にわたって、ソ連、北朝鮮、中国の情報収集の仕事に従事し
た諜報関係のプロです。この本のなかに、韓国海軍のレーダー照
射事件のことが書かれています。
 その真相は、一般にいわれているものとは、まるで違うもので
す。それは、北朝鮮の内部事情がわかっていないと絶対に書けな
い内容であるので、EJのスタイルでご紹介することにします。
 期日は2018年12月20日、午後3時頃、場所は能登半島
沖の日本の排他的経済水域内に、韓国警備救難艦「サンボンギョ
5001」と北朝鮮の漁船2隻、それに加えて少し離れたところ
に、韓国海軍駆逐艦「クアンゲト・デワン(広開土大王)」がい
たのです。このとき、海上自衛隊P・1哨戒機が、能登半島沖の
海上で警戒監視中だったのです。
 この状況において、P・1哨戒機は、異様な船舶が集結してい
るので、監視しようとしたのです。そのとき、いきなり、韓国海
軍駆逐艦から、火器管制レーダーの照射を受けたのです。ここか
らすべてが始まっています。
 この火器管制レーダーの照射は、ミサイルや砲弾を命中させる
ために、目標にレーダー波を継続的に照射して、その位置や速度
などを正確に把握するために行うものです。したがって、レーダ
ー照射を受けた航空機は、急遽退避行動を取ります。
 そもそも、なぜ、日本の排他的経済水域に、2隻の北朝鮮の漁
船、韓国の警備救難艇、それに韓国の駆逐艦がいるのかです。韓
国側の説明によると、北朝鮮籍の漁船が遭難したので、それを救
助に来たというのです。しかし、当日の天候は悪くなく、遭難す
るような状況ではないのです。それに救難にしては、あまりにも
大袈裟です。2隻の小さな漁船に対して、5000トン級の警備
救難艇、さらに駆逐艦まで現場に駆けつけているからです。
 後でわかったことですが、漁船からはSOS信号は発信されて
いないのです。もし、無線でSOS信号が出ていれば、当然日本
も気が付くはずです。海上保安庁は無線をキャッチしていないの
です。それなら韓国は、どのようにして、漁船の遭難を知ったの
でしょうか。
 もうひとつ、表に出ていない情報があります。漁船は2隻で、
漁船に乗っていたのはたったの4人であるということです。それ
を助けるために、警備救難艇と軍艦が駆け付ける──きわめて異
常な状況です。
 推測ですが、それは、韓国から北朝鮮への「瀬取り」の現場で
あったとするものです。しかし、この説には難点があります。そ
れは、なぜ、日本の排他的経済水域というリスクの多い場所をわ
ざわざ選んだのかということです。もっと安全な場所がいくらで
もあるはずです。まして人数が4人ということになると、瀬取り
は考えられません。
 これに関して、菅沼光弘氏の推理はさすがです。これは、現在
の韓国と北朝鮮の親密度をよくあらわしています。
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 ここからは、私の推測ですが、どうも北朝鮮から韓国政府に対
して、ひそかに依頼があったのではないだろうか。
 北朝鮮から外に出ることになると、北にとって大変不都合な人
がその船に乗っていたのではないか。軍艦を派遣するというのは
武装している可能性があったからではないか。普通の巡視艇では
撃沈されるかもしれない。それでは、誰がその漁船″に乗って
いたのか。結果論から言うと不明です。韓国は、誰が乗っていた
かも、漁民であったかどうかも、一切発表していません。救出し
た人たちをただちに北朝鮮に送り返してしまった。
                ──菅沼光弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 場所から考えて、4人は、漁船を使って日本に逃げ込もうとし
たと思われます。どういうことが考えられるかについては、来週
のEJでお話しします。   ──[中国経済の真実/045]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ韓国艦はレーダー照射したのか/長谷川幸洋氏
  ───────────────────────────
   韓国海軍の駆逐艦が、海上自衛隊P1哨戒機に対して火器
  管制用レーダーを照射した問題が長引いている。問題そのも
  のは、あまりに韓国が子供じみていて、まともに論じる気に
  もならないが、この際、「韓国とどう付き合うべきか」は考
  え直してみる必要がある。
   私は「もはや韓国は友好国ではない」という前提で対応す
  べきだと思う。韓国人に対する「90日間のビザなし入国措
  置」も見直すべきだ。簡単に問題を振り返ると、韓国駆逐艦
  は昨年12月20日午後、日本の排他的経済水域(EEZ)
  である能登半島沖で、海自哨戒機に対し、複数回、数分間に
  わたって火器管制用レーダーを照射した。当初、韓国海軍は
  レーダー照射を認めていたが、24日になって照射の事実を
  否定した。
   これに対し、防衛省は哨戒機が撮影した当時の映像を公開
  したが、韓国側は「威嚇的な低空飛行をした」として日本に
  謝罪を求めた。火器管制用レーダーを照射すれば特有の電波
  が記録されるので、日本側は証拠を握っている。防衛省が公
  開した動画でも、「間違いなく向こうのFC系(火器管制レ
  ーダー)です」「記録がとれているかどうか確認してくださ
  い」「データはとれています」という機長とクルーの冷静な
  やりとりが公開されている。   https://bit.ly/2LhBdra
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韓国海軍の駆逐艦「広開土大王」.jpg
韓国海軍の駆逐艦「広開土大王」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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