2018年03月20日

●「関係する3人の財務省元理財局長」(EJ第4727号)

 森友学園との国有地売却交渉では、いろいろな出来事が起きて
いるので、その交渉経過は複雑怪奇になっています。そこで、3
月18日付の朝日新聞を参照にして、その発端から、何が起こっ
たのか、わかりやすく整理してみることにします。
 森友学園の一連の国有地取引がはじまったのは2013年7月
8日のことです。籠池理事長自身が財務省近畿財務局を訪れ、国
有地の取得を申し入れています。8月に入ると、鴻池元防災担当
相の秘書から近畿財務局に電話があり、森友学園は資金繰りに余
裕がなく、土地を購入するまで、土地を貸してほしいと籠池理事
長が要望しているのでよろしく頼むと伝えてきたのです。
 しかし、近畿財務局としては、過去5年間の同種取引で、その
ような取引は例がなく、受け入れには難色を示します。その転機
になったのは、2014年4月28日、籠池理事長が財務局に打
ち合わせで訪れたとき、籠池夫妻と安倍首相の妻の昭恵氏が一緒
に写った写真を提示し、この件には安倍首相夫人が関わっている
ことを暗に示したことです。籠池氏によると、これによって、財
務局の態度は一変したといっています。
 近畿財務局は、本省の理財局に申請文書を送り、昭恵夫人案件
であることや政治家からも問い合わせがあったことを伝えたうえ
で、この「特例的な契約」を認めるよう要請し、理財局から承認
を得ています。2014年6月2日に近畿財務局は、「売却を前
提とした土地貸し付けに協力する」と森友学園に伝えています。
そして7月の人事で、2014年7月から2015年7月まで、
中原広氏が本省理財局長を務めるのです。
 2015年1月8日、昭恵夫人が森友学園を訪問し、その教育
方針に感涙したとする産経新聞のインターネット記事が掲載され
ます。その翌日の9日に近畿財務局が森友学園を訪問し、貸付料
の概算額を伝えています。
 同じ年の1月27日、大阪府私立学校審議会が、森友学園の小
学校設置計画を「条件つき」で「認可適当」と答申しています。
その2日後の29日、平沼赳夫元総務相の秘書が財務省理財局に
電話し、次のように相談しています。
─────────────────────────────
 近畿財務局が森友学園に提示した概算貸付料が高額であり、
 なんとかならないか。    ──平沼赳夫元総務相の秘書
─────────────────────────────
 2015年2月4日、近畿財務局は「10年以内の売却を前提
とした貸し付け契約を結ぶ特例の承認」を本省理財局に申請して
います。そして、2月17日、鳩山邦夫元総務相(故人)の秘書
が、わざわざ近畿財務局に出向いて、貸付料が高額であるので、
なんとかしてやってくれと、交渉しています。何とも親切な話で
あると思います。
 森友学園は、このようにして前例にない10年以内の売却を前
提に土地を貸し付けることを財務省側に飲ませ、そのうえでその
貸付料が高いとして、政治家を動員し、貸付料の減額を迫るとい
うしたたな交渉で財務省を着実に追い込んでいったのです。
 3月26日、森友学園側が「土地が軟弱地盤」であるとして、
貸付料の削減を財務局に要請します。これは、いいがかりに近い
要求でしたが、財務局は、素直に学園側に再検討を約束していま
す。何でも学園側のいいなりです。
 そして、地質調査会社から「軟弱地盤であるとは思えない」と
いう見解を聞いたものの、土地の鑑定をやり直し、それに基づく
貸付料で見積もり合わせを行っています。結果として、貸付料は
下げられ、学園側と財務局は合意に達しています。2015年4
月27日のことです。そして、4月30日、財務省理財局は、近
畿財務局による特例申請を承認するのです。
 5月に入って、公正証書手数料や契約書の違約金条項などでゴ
タゴタしたものの、5月29日に森友学園への土地貸し付けは合
意に達したのです。
 そして、2015年7月、理財局長の中原広氏は国税庁長官に
転出し、迫田英典氏が理財局長に就任します。2015年9月5
日、安倍昭恵氏は、森友学園で講演し、新設予定の小学校の名誉
校長に就任するのです。
 貸し付け合意後、森友学園は費用を用立てて、汚染土などを撤
去し、その費用を支払うよう近畿財務局に求めます。この費用の
支払いについて、2015年秋に籠池氏は、昭恵氏付きの政府職
員に、いつ払ってくれるのか、財務省への問い合わせを依頼し、
その政府職員は財務省から「16年度での予算措置を行う方向で
調整中」という回答を引き出しています。異例のことです。
 ここからが問題なのです。2016年3月11日、森友学園が
「新たなゴミ」を発見したと近畿財務局に連絡してきます。これ
を受けて、3月14日に近畿財務局は現地でゴミの確認に行って
います。そのとき、学園側は「ゴミの撤去費用を差し引いた額で
土地を買い取りたい」と提案したのです。
 4月14日に国土交通省大阪航空局が、ゴミの撤去費用の見積
もりを提出し、ゴミをめぐる学園側との協議内容などを記載した
文書を作成しています。5月中旬には、近畿財務局の職員が学園
とのやり取りで、次の発言していたことが学園側から提出された
音声データで明らかになっています。
─────────────────────────────
 土地の代金はゼロに近い金額まで努力する。しかし、1億3
 千万円を下回る金額はない。     ──近畿財務局職員
─────────────────────────────
 2016年6月17日、財務省本省人事で、迫田英典理財局長
は国税庁長官に栄転し、後任の理財局長として佐川宣寿氏が就任
します。就任の3日後の6月20日、近畿財務局と森友学園は、
ゴミの撤去費用8億1900万円を値引きし、1億3400万円
で学園に売却する契約を締結しています。このように、佐川理財
局長は契約の締結自体には関わっていないのです。
            ──[メディア規制の実態/051]

≪画像および関連情報≫
 ●森友問題の「決裁文書」の書き換えがなぜ問題なのか
  ───────────────────────────
   森友問題で国有地売却に関する決裁文書を巡り、国会審議
  が空転する事態になっている。財務省が決裁文書の原本を国
  会に提出せずにコピーで対応し、しかもそれが原本とは異な
  る内容のものであるという疑惑、つまり改ざんされた可能性
  が強まったのがその発端である。そして3月12日、財務省
  は決裁文書の書き換えを認めた。
   当初野党側からは、決裁手続きにおいて審査をする際の担
  当職員のチェック(ボールペン等を軽く押し押し当ててでき
  る点)の有無が、改ざんの可能性の根拠とされた。一方、与
  党側からは、決裁文書は途中で差し替えられる可能性がある
  のだから、改ざんなどではないといった主張も見られた。
   そもそも官庁の「決裁文書」とは、決裁手続きとはどのよ
  うなものなのか。国会議員も含めて憶測や想像に基づく発言
  が多いように思われるし、一方で元役人の国会議員にとって
  はあまりにも当たり前すぎて、そうしたことは当然分かって
  いるのが前提の発言が多いようで、一般有権者の目からはど
  うも分かりにくく、話が混線しているように思われる。そこ
  で、筆者は元役人として自らの経験に基づいて「決裁文書」
  や決裁手続きとはどのようなものなのか、少々解説してみた
  いと思う(むろん、基本的には同じであっても、府省や個別
  の手続きの性格によって形式等の違いは多少ありうるので、
  その点については予めお断りしておく)。
                   http://bit.ly/2GDRNMQ
  ───────────────────────────

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森友問題に関係する2人の元理財局長
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2018年03月19日

●「公文書書き換えは重大犯罪である」(EJ第4726号)

 ここで話を3月13日のEJ第4722号の時点に戻します。
3月2日付の朝日新聞朝刊1面トップ記事を再現します。
─────────────────────────────
   ◎森友文書書き換えの疑い
    財務省問題発覚後か/交渉経緯など複数個所
     ──2018年3月2日付、朝日新聞朝刊
─────────────────────────────
 この日を境に森友問題は、国有地決裁文書が書き換えられてい
るという大問題に発展します。またしても火をつけたのは、朝日
新聞です。しかし、いつもは朝日新聞に強いアレルギーを持つ安
倍官邸は、あれほど朝日新聞を攻撃してきたにもかかわらず、あ
まり強い反発を示さず、財務省は書き換えを認め、即日、その責
任をとって佐川国税庁長官は辞任を表明したのです。
 いつもであれば、トランプ米大統領のように「朝日新聞のフェ
イクニュースだ!」と反論する安倍官邸があまり騒がず、書き換
えを認める方向に動いたのです。それほど、朝日新聞の記事内容
が正確だったからです。つまり、安倍官邸は森友関連文書が書き
換えられていることを知っていたからです。もし、知っていたと
すれば、書き換え自体に官邸も絡んでいたことになります。
 問題は、朝日新聞がそのことを伝聞で知ったのか、書き換え前
の原本のコピーを持っているかどうかです。3月7日、首相官邸
で、菅義偉官房長官は、イラ立って、財務省の矢野康冶官房長に
何回も電話して、次のように命じたのです。
─────────────────────────────
   朝日と同じ文書を入手して、はやく官邸に報告しろ!!
                   ──菅義偉官房長官
─────────────────────────────
 朝日新聞の表現は「書き換えの疑い」であり、断定しておらず
極めて慎重です。もし朝日新聞がコピーを持っているなら、なぜ
写真を出さないのか。官邸は疑心暗鬼に陥ったのです。
 当時のある官邸スタッフは、朝日新聞の報道について、次のよ
うに述べていたのです。
─────────────────────────────
 官邸は、朝日が書き換え前の文書をおさえていること自体は、
間違いないと見ています。だが文書は数度にわたって書き換えら
れている可能性があり、どの段階のものを朝日が入手したのかが
わからない。対応のしようがなく、菅官房長官もイライラを募ら
せている。         ──「週刊現代」/3月24日号
─────────────────────────────
 あれこれ考えて、官邸は、大阪地検特捜部から流れたのではな
いかと気が付いたのです。もし、そうであれば、写真はもちろん
のこと、ネタ元をできる限り隠す必要があり、朝日新聞の報道の
慎重さはそれを裏付けています。大阪地検特捜部は、森友問題で
公用文書等毀棄容疑などで、近畿財務局職員の任意の事情聴取を
進めているのです。
 これに関して、杉田和博官房副長官は、オフレコを条件として
次のように記者に話しています。
─────────────────────────────
 朝日の文書がどこから出たものなのか、はっきりしたら、情報
漏洩で犯罪になるでしょう。だから、朝日も書きぶりが難しいだ
ろうね。ネタ元が出せないわけだよ。
              ──「週刊現代」/3月24日号
─────────────────────────────
 なぜ、大阪地検特捜部が森友問題を捜査しているのかというと
次のいきさつがあります。2017年9月15日、東京地検特捜
部は、2つの市民団体から出されていた財務省と国土交通省に対
する背任罪および公用文書等毀棄罪の訴えを受理したことを発表
しています。そこで、その立件捜査を大阪地検特捜部に移送する
ことを通知したのです。
 公用文書を書き換えることは犯罪です。裁判になれば、証拠と
して採用される可能性のある公用文書を書き換えたり、削除した
りすれば、「公用文書等毀棄罪」になりますし、場合によっては
「証拠隠滅罪」に問われ兼ねません。これは重要犯罪です。
 既に大阪地検特捜部は、前理財局長の佐川宣寿氏を事情聴取す
ると発表しています。自民党執行部が、佐川氏の証人喚問を受け
入れたのは、案外これが原因である可能性があります。なぜなら
こういう状況であれば、佐川氏は「その件は、刑事訴追を受ける
可能性があるので、発言を控えさせていただきます」を連発して
証言を拒むことができるからです。
 先日テレビで見ていたら、森友問題の公文書書き換えで、ある
弁護士は、公用文書を書き換えても、書き換え前と書き換え後の
内容の趣旨が変わらなければ、公用文書毀棄罪にはならないと主
張していました。本当かどうかはわかりませんが、最近森友問題
を討論する番組では、必ずといってよいほど、政府側の意見を代
弁する人物が配置されています。少しでも傷を浅くしようとする
官邸の配慮ではないかと思われます。
 別の弁護士によると、この公用文書書き換えは、国会議員の質
問権の侵害であり、偽計業務妨害罪になる可能性もあるというこ
とです。もし、そういうことになったら、1998年の「ノーパ
ンしゃぶしゃぶ事件」のとき以上の犯罪になります。
 このときは、逮捕・起訴された大蔵省(当時)官僚は7人で、
いずれも執行猶予付きの有罪判決が確定しています。そして、こ
の責任をとって、当時の三塚博大蔵大臣と松下康雄日本銀行総裁
が引責辞任し、大蔵省解体の要因になったのです。
 ところで、佐川宣寿氏が理財局長になったのは、2016年6
月のことであり、そのとき、問題の国有地は、8億1900万円
が値引きされ、1億3400万円で学園に売却する契約書が締結
されていたのです。つまり、佐川氏は契約締結当時の理財局長で
はないのです。その前任者こそ捜査する必要があります。
            ──[メディア規制の実態/050]

≪画像および関連情報≫
 ●森友学園めぐり財務省が公文書改ざんか/朝日新聞報道
  ───────────────────────────
   問題となっているのは、2015年〜16年に国が森友学
  園と国有地を取引した際、財務省近畿財務局の管財部門が、
  局内の「決裁」を受けるために作成した2つの公文書だ。2
  つの決裁文書はそれぞれ、国有地の貸付契約と売却契約に関
  するもの。1枚目に決裁完了日や局幹部の決裁印などがあり
  2枚目以降に交渉の経緯や取引内容などが記された「調書」
  が付いている。2017年2月、森友学園をめぐる問題が発
  覚すると、そのコピーが国会議員に提示された。
   森友学園との貸付契約と売却契約をめぐる決裁文書につい
  て、朝日新聞は、2月2日・3日に文書を「確認した」と報
  道。その上で「契約当時のもの」と「国会議員に提示された
  コピー」で、決裁文書の内容に違いがあると報じた。それに
  よると、決裁文書の起案日、決裁完了日、決裁印、番号はコ
  ピーと同じだが、文書の内容について「違いがある」とし、
  森友学園をめぐる問題発覚後に文書内容が改ざんされた可能
  性を伝えた。財務省はこれまでの国会答弁で、森友学園との
  事前の価格交渉を否定する答弁を繰り返していた。
  ・「全て法令に基づいて適正にやっている」(2017年2
   月24日:佐川宣寿・前理財局長=衆院予算委員会)
  ・「価格を提示したこともないし、先方からいくらで買いた
   いと希望があったこともない」(2017年3月15日:
  佐川氏=衆院財務金融委員会)
   一方で、朝日新聞は3日の朝刊で、「確認した」とする決
  裁文書に「学園の提案に応じて鑑定評価を行い」「価格提示
  を行う」などの記載があったと報じた。
                   http://bit.ly/2G2vH8Z
  ───────────────────────────

国会で答弁する佐川理財局長(当時).jpg
国会で答弁する佐川理財局長(当時)
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2018年03月16日

●「吉田調書は『虚報』か『誤報』か」(EJ第4735号)

 2つの「吉田」関連記事──吉田証言と吉田調書の記事を朝日
新聞が取り消したことによって、朝日新聞は各方面から批判の総
攻撃を受けることになります。
 「虚報」と「誤報」という言葉があります。この2つはよく似
ていますが、その意味するところはまったく違います。まさに水
と油ほどの違いがあります。
 「虚報」は、虚偽の事実を真実として伝えることです。この場
合、虚偽であることを知っていたにもかかわらず、真実として報
道することや虚偽の事実を持ち込んだ者にだまされて、それを真
実として報道することも含まれます。これに対して「誤報」とは
調査報道などで、間違っている事実を真実と信じて報道してしま
うことです。
 メディアが「虚報」や「誤報」をしてしまった場合、どう対応
すべきかについて、大石泰彦青山学院大学法学部教授は、次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 メディアが虚報を伝えた場合には、速やかな調査、記事の取り
消し・削除が必要になり、また関係者に厳しい処分が科せられる
のもやむを得ない。しかし、誤報の場合は違う。この場合にも、
適切な検証と必要な範囲の訂正は必要であるが、関係者の処分に
は慎重であるべきで、取り消しなどとんでもない。
                   http://bit.ly/2FPrkOn
─────────────────────────────
 朝日新聞の場合、「吉田証言」のケースは、吉田清冶という人
物に騙されて、真実でないことを報道したので、虚報といえると
思います。したがって、このケースでは朝日新聞が謝罪して、記
事を取り消したのは正しいといえます。
 しかし、吉田調書については、少なくとも虚報ではあり得ず、
調査報道ではよくある誤報に過ぎないといえます。むしろ、政府
が隠蔽していた772人分の400ページに及ぶインタビュー記
録である吉田調書の存在を明らかにしたことは、朝日新聞の功績
なのです。したがって、その関連記事を取り消すなどということ
は考えられないことです。この件について、大石泰彦教授は、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 慰安婦報道のうち、文筆家の吉田清治が日本軍による強制連行
を告白した「吉田証言」報道は、虚報性が高いと思う。しかし、
吉田調書報道が虚報でないことは明白であり、百歩譲ってもそれ
は勇み足の誤報である。むしろそれは、日本という国の体制の根
幹に存在する暗部に肉薄する、まれに見る優れた調査報道であっ
た。しかし、それゆえにこそ――同じく権力の核心に迫った、か
つての沖縄密約報道が徹底的に弾圧されたように――原発再稼働
をもくろむ政治・社会権力は、これに捏造のレッテルを貼りつけ
抹殺したかったのであろう。それは、この国でこれまでにも繰り
返されてきたことであり、今さら驚かないが、朝日の内部の何者
かがこれに呼応し、味噌も糞も一緒にすることで事態をごまかし
同紙が権力者以外は誰も望まない記事の取り消しという“自殺”
に至ったことは驚きであり、本当に残念である。
                   http://bit.ly/2paQiOH
─────────────────────────────
 マーティン・ファクラー氏は朝日新聞が苦労して入手した「吉
田調書」を、他紙は朝日新聞のスクープ以後に労せず入手してい
ます。このとき、吉田調書は基本的には民間の発電所で起きた事
故であるのに、官邸はまるで国家機密であるかのように非公開文
書にしており、簡単には入手できなかったはずです。
 ファクラー氏は、あくまで推測と断って、吉田調書は官邸から
他紙にリークされたものであるといっています。これは「暗黙の
ディール」といいます。それは次のようなものです。
─────────────────────────────
 記者クラブメディアの新聞記者には、暗黙のディール(合意)
がしばしば見受けられる。特別な情報を与えてもらう見返りに、
情報源に都合が良い記事を書くという取引だ。日本経済新聞でも
この類の経済記事をよく見かける。Aという会社がBという会社
を買収しようとしており、同時にCという会社も買収を計画して
いるとしよう。このときAに有利になる記事である場合は、情報
源はBやCではなく、Aである可能性が高い。
               ──マーティン・ファクラー著
      『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』/双葉社刊
─────────────────────────────
 ファクラー氏が何をいいたいのかというと、官邸がリークすれ
ば、官邸はAであり、「暗黙のディール」に倣って、産経新聞や
読売新聞は官邸を攻撃しないで、批判はすべて朝日新聞に向うと
考えたからです。官邸の狙い通りです。
 それどころか、読売新聞は、朝日新聞の評価が落ちたことを利
用して、朝日新聞への攻撃を強め、朝日新聞の読者を奪う目的で
「慰安婦報道検証/読売はどう伝えたか」というパンフレットま
で作成し、朝日新聞の購読者宅に大量配布したのです。実に汚い
やり方です。
 しかしその結果は意外なものだったのです。読売新聞は前年同
月比6・1%減と朝日新聞以上に読者数を減らしたのです。20
14年7〜12月のデータです。
─────────────────────────────
 ▼読売新聞  926万3986部/前年同期比6・1%減
 ▼朝日新聞  710万1074部/前年同期比5・9%減
 ▼毎日新聞  329万8779部/前年同期比1・5%減
 ▼日経新聞  275万0534部/前年同期比0・9%減
 ▼産経新聞  161万5209部/前年同期比0・1%減
         ──マーティン・ファクラー著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[メディア規制の実態/049]

≪画像および関連情報≫
 ●池上彰氏/朝日叩きに走る新聞、週刊誌を批判
  ───────────────────────────
   ありとあらゆるメディア、識者、ジャーナリストが問題の
  本質をネグって、“朝日吊るし上げ”に熱狂する言論状況。
  そんな中、本サイトは逆に朝日を叩く側、読売新聞や産経新
  聞、週刊誌、そして安倍政権に対して、「おまえたちも同じ
  アナのムジナだ!」と徹底批判を展開してきた。付和雷同、
  勝ち馬に乗ることしか考えていないこの国のメディアの中で
  こんな酔狂なまねをするのは自分たちくらいだろうと覚悟し
  つつ・・・。実際、いくら書いても孤立無援、本サイトの意
  見に同調してくれる新聞、テレビ、雑誌は皆無だった。
   ところがここにきて意外な人物が本サイトと同様、メディ
  アの“朝日叩き”への違和感を口にし始めた。その人物とは
  朝日新聞の連載で朝日の報道姿勢を批判するコラムを書いて
  掲載を拒否された池上彰氏だ。
   この問題は、朝日新聞による言論の封殺だとして読者から
  非常な不評を買い、朝日にとって「慰安婦問題」や「吉田調
  書」以上にダメ―ジになったと言われている。ところが、一
  方の当事者であるその池上氏が「週刊文春」(文藝春秋)9
  月25日号の連載コラム「池上彰のそこからですか!?」で、
  朝日を叩いている他のメディアも同じようなことをしている
  と指摘したのだ。    リテラ/ http://bit.ly/ZbHEQW
  ───────────────────────────

朝日新聞/木村伊量社長(当時).jpg
朝日新聞/木村伊量社長(当時)
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2018年03月15日

●「なぜ朝日新聞は記事を取り消すか」(EJ第4724号)

 朝日新聞の2つの「吉田」の取り消し事件のもうひとつの「吉
田」についても述べておくことにします。
─────────────────────────────
 → 1.吉田証言の取り消し ・・・ 慰安婦問題報道
   2.吉田調書の取り消し ・・・ 福 島原発報道
─────────────────────────────
 「2」の福島原発報道が2014年5月20日であるのに対し
て、「1」の慰安婦問題報道は2014年8月5〜6日であり、
具体的には、次の特集記事です。
─────────────────────────────
         「慰安婦報道を考える」
            2014年8月5〜6日付/朝日新聞
─────────────────────────────
 「1」の「吉田」は、吉田清治氏(故人)という人物です。吉
田清治氏は、福岡県出身とされる文筆家であり、朝日新聞紙上で
従軍慰安婦問題に関する「吉田証言」を発表します。報道記事は
13回、論評は3本です。しかし、十数年にわたって報道してき
た吉田清治氏の記事の大半の証言が、虚偽・創作であったと朝日
新聞自身が認めたのです。それが上記の特集です。
 吉田清治氏は、1982年以降、戦時中に韓国の済州島などで
アフリカの奴隷狩りのように、若い朝鮮人女性を軍令で捕獲・拉
致し、強制連行したと著書や新聞や講演などで語り、日本、韓国
アメリカなどで、何度もそのことを証言して来たのです。
 しかし、この吉田証言については、現代史家の秦郁彦氏が、吉
田氏が慰安婦狩りの舞台になったと証言した韓国の済州(チェジ
ュ)島で徹底的な現地調査を行い、1992年に産経新聞におい
て、その「虚偽性」を指摘したのです。その吉田氏も、96年に
週刊新潮の取材に「創作話」であったことを認めており、虚偽で
あったことは確かなことです。
 安倍晋三首相も、自民党青年局長時代の97年5月27日、衆
院決算委員会第二分科会で「そもそもこの『従軍慰安婦』につき
ましては、吉田清治なる詐欺師に近い人物が〜」と指摘し、首相
就任後の2007年3月5日、参院予算委員会でも「吉田証言は
まったく、後にでっち上げだったことが分かったわけでございま
す」と答弁しています。
 日本人の作家が慰安婦問題について虚偽の証言をする──日本
にとっては迷惑な話であり、外交的にもマイナスな話です。韓国
との関係も依然としてギクシャクしたままです。
 朝日新聞は、1982年からの10年後に秦郁彦氏がその虚偽
性を指摘したにもかかわらず放置し、さらに12年後の2014
年になって、やっと吉田証言がウソであったことを謝罪したので
す。これでは朝日新聞が批判されるのは当然です。
 しかし、元ニューヨーク・タイムズ東京支局長のマーティン・
ファクラー氏は、朝日新聞が吉田証言を取り消したのは間違いで
あると主張しています。吉田証言に疑問がもたれるようになった
のは90年代に入ってからです。それまで朝日新聞の記者は、吉
田氏がウソをついているとは知るよしもなかったのです。ウソと
知りながら、記者が意図的に記事を載せたのではないのです。
 それに吉田証言のことは、他の新聞社でも掲載しています。朝
日新聞以外の全国紙や通信社、地方紙、テレビ局も吉田証言を報
道しているのです。読売新聞、毎日新聞、産経新聞ですら吉田証
言を取り上げているのです。これらのメディアは記事を取り消し
ていません。それなのに、なぜ、朝日新聞だけが記事を取り消す
のでしょうか。
 ファクラー氏は、謝罪をしても、記事を取り消すべきではない
理由を次のように述べています。少し長いですが、なるほどと思
うことが多いので、引用します。
─────────────────────────────
 こんな例を挙げてみたい。19世紀まではニュートンの物理学
が完全に正しいと思われていた。20世紀に入ってから、アイン
シュタイン博士の相対性理論が発表されると、ニュートンの物理
学の一部は間違いだということがわかった。
 だからといって、ニューヨーク・タイムズが19世紀に書いた
ニュートンに関する記事を、すべて取り消す必要があるわけがな
い。人類がもつ知識は、時代の変遷にともなって少しずつ上書き
されていく。情報がアップデートされたときに、アップデート前
の古い情報をいちいち取り消す必要などないのだ。
 太陽系の一番外側にある冥王星は、つい最近までずっと惑星だ
と考えられてきた。06年8月、世界中の天文学者が参画する国
際天文学連合は、惑星の定義をあらためている。これにより、冥
王星は惑星ではなく、「準惑星」ということになった。だからと
いって、ニユーヨーク・タイムズが06年8月以前に「冥王星は
惑星」と書いている記事をすべて取り消すはずもない。
 朝日新聞が「吉田証言」を取り消したのは、「冥王星は惑星」
という過去の記事を取り消しにするかのような対応だ。日本を覆
う右傾化の空気が、想像以上に大きなプレッシャーになっていた
ことは理解できる。だが、必要のない記事取り消しを発表してし
まったがために、安倍政権や右派論客、ネット右翼たちに「それ
見ろ。朝日新聞は間違った情報を垂れ流す報道機関ではないか」
という格好の攻撃材料を与えてしまった。
               ──マーティン・ファクラー著
      『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』/双葉社刊
─────────────────────────────
 安倍政権になって朝日新聞は徹底的に攻撃されています。同じ
ように吉田証言を掲載していた他のメディアは口を拭って、朝日
新聞を批判しています。ある新聞社などは、この機会に朝日新聞
を叩き、朝日の読者を自社に乗り換えさせようとする卑劣な手段
までとっています。何しろ、総理大臣まで、いまだに朝日新聞を
攻撃しているのですから、トランプ米大統領のフェイクニュース
を笑えないのです。   ──[メディア規制の実態/048]

≪画像および関連情報≫
 ●「何年かかっても吉田証言の嘘訴える」/奥茂治氏
  ───────────────────────────
   朝鮮半島で女性らを強制連行したと偽証した故吉田清治氏
  の謝罪碑を無断で書き換えたとして、韓国で公用物損傷罪な
  どで在宅起訴された元自衛官、奥茂治被告(69)が出国禁
  止となってから24日で半年となる。公判で、検察は「慰安
  婦問題を歪曲しようとした」と指弾した。慰安婦問題の根源
  となった嘘をただそうと書き換えに及んだ奥被告の前には慰
  安婦問題で異論を許さない韓国社会の「壁」が立ちはだかっ
  た。(ソウル 桜井紀雄)
   「非常に長かったが、日韓で応援してくれる人も大勢おり
  苦にはならなかった」。21日に結審を終えた奥被告は、韓
  国警察の出頭要請で訪韓し、出国禁止措置が取られてからの
  約180日間をこう振り返った。特に長く感じたのが9月に
  在宅起訴を通知されてからの3カ月間だ。高血圧の受診など
  を理由に一時帰国を申し立てたが、認められず、いつ公判が
  始まるか見通しもつかない。裁判所に問い合わせたところ、
  「共犯者がつかまらないから」との説明だった。
   検察は碑の撤去を委任した吉田氏の長男の立件にこだわり
  日本に滞在したまま教唆罪で在宅起訴するという苦肉の策に
  出た。奥被告には公判直前の今月10日に正式な起訴状が届
  いた。「国際的に認定された慰安婦問題を歪曲しようとし、
  韓日外交に摩擦を生じさせかねない」。検察は論告求刑でこ
  う指摘した。奥被告は「日韓友好の妨げになっている吉田氏
  の嘘の碑文を消そうとしてやったこと。全く逆にとられてい
  る」と吐露した。検察には、朝日新聞が吉田氏の虚偽を認め
  記述を取り消した記事などを提出。丁寧に経緯を説明し、理
  解を得られたとの実感があっただけにやるせなさが募る。
       2017年12月24日 http://bit.ly/2FQjNz0
  ───────────────────────────

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吉田 清冶氏
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2018年03月14日

●「なぜ朝日は謝罪に追い込まれたか」(EJ第4723号)

 2011年3月15日朝、福島第一原発にいた東京電力の所員
の90%に当たる650人が、吉田所長の命令に反して、福島第
二原発に撤退したという事実は、当時の菅首相の言動と合わせて
考える必要があります。
 3月14日の深夜のことです。当時の海江田万里経済産業相は
東京電力の清水正孝社長から電話を受けたのです。そのときの清
水社長の申し入れは次の通りです。
─────────────────────────────
 放射線量が多く、これ以上、現場では作業ができません。所員
を第1原発から第2原発に退避させたいのですが・・。
                 ──東京電力清水正孝社長
─────────────────────────────
 海江田経産相は、直ちにそのことを菅首相に伝えたところ、菅
首相は「そんなことあり得ない」と怒鳴ったといいます。菅首相
は、15日午前ち4時17分、怒りを胸に自ら東京電力の本社に
乗り込み、清水社長や幹部社員と対峙します。そのときのやりと
り(想定)は次の通りです。
─────────────────────────────
菅 首相:本当に撤退を考えているのか。
清水社長:いや、そうではありません。すべてを引き揚げるわけ
     ではなく、必要な人員だけ残し、その他は離れるとい
     う意味です。
菅 首相:もし、撤退したときは東電は100%潰れることにな
     るからね。
清水社長:・・・
─────────────────────────────
 しかし、その時点では、福島第一原発からは650人が既に第
2原発に撤退していたのです。首相の許可は得ていない。首相の
判断を待っていたのでは、作業員に多くの死者が出ることを清水
社長はわかっていたからです。
 13日の午後も清水社長は菅首相に官邸に呼び出され、「なぜ
こんな事態になったんだ。あまりにも不手際を繰り返している」
と怒鳴られており、首相から撤退の許可をもらうことは無理と考
えたものと思われます。
 そのとき、清水社長は、菅首相から、政府と東電の統合本部の
設置を打診され、受け入れるしかなかったのです。菅首相として
は、これによって、勝手に撤退などさせないという強い意志を示
したのです。そして、統合本部には、首相の名代として、細野豪
志首相補佐官が常駐し、放射性物質の封じ込めから米国との連携
までを一手に担う体制こなります。
 それでは、朝日新聞の記事はどこが問題だったのでしょうか。
 朝日新聞としては、多くの東京電力の職員が、吉田所長の命令
に違反して撤退したと伝えることによって、強いインパクトを読
者に与えようとしたのです。これは、3月15日の早朝に菅首相
が自ら東京電力本社に乗り込んで、撤退を止めようとしたあのパ
フォーマンスとリンクします。
 しかし、これによって、吉田所長の制止にもかかわらず、多く
の作業員が第一原発から、第二原発に逃げ出したというイメージ
を与えてしまいます。これでは、危険を覚悟して働いている人た
ちにあまりにも失礼です。
 初めて遭遇する危機的状況において、大混乱が生じ、指揮系統
が機能せず、吉田所長の命令が正確に届かなかった。こういう事
実は、正確に報道する必要があります。災害時にはそういうこと
が起きるということを後世に残すためにも、起きた事実を報道す
べきです。そして、そういう事実を伝えることによって、「吉田
調書」というまだ国民に公開されていない調書が存在することを
多くの人に伝えることができるのです。
 これについて、元ニューヨーク・タイムズ東京支局長のマーテ
ィン・ファクラー氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 私から見れば、朝日新聞の「吉田調書」スクープは間違ってい
るわけではない。事実は合っていた。だが、記事の伝え方におい
て、間違えたニュアンスを読者に与えてしまった。「伝えるべき
事実を正確に伝える」という、調査報道において大切な細かな神
経の使い方が不足していたわけだ。その結果、大スクープのネタ
を手につかんでおきながら、朝日新聞は自壊への要因をつくって
しまったのだ。        ──マーティン・ファクラー著
      『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』/双葉社刊
─────────────────────────────
 朝日新聞の報道のおかしさに最初に気が付いたのは、吉田昌郎
氏本人に直接インタビューした経験を持つジャーナリストの門田
隆将氏です。門田氏は、「『朝日新聞』吉田調書報道の罪」と題
して、『週刊ポスト』/2014年6月20号に記事を掲載して
います。(巻末「画像および関連情報」参照)
 朝日新聞社は「朝日新聞社の名誉と信用を著しく毀損」してい
るとして、記事の取り消しを求める抗議書を送達し、訴訟による
法的措置をとると警告したのです。
 しかし、8月になると、他の報道機関も「吉田調書」を手に入
れ、朝日新聞のスクープを真っ向から否定する報道が相次いだの
です。8月18日の産経新聞、8月24日のNHK、8月30日
の読売新聞などがそうです。
 これらの動きを受けて、安倍政権も吉田昌郎所長の聴取記録書
を公開することに方針を転換し、2014年9月11日に内閣官
房が「吉田調書」を含む「政府事故調査委員会ヒアリング記録」
を正式に公開したのです。このとき吉田氏が上申書で非公開を求
めていた聴取記録書も本人の遺志に反して公開されています。
 ここに及んで、朝日新聞社は一段と追い詰められ、同日夜に朝
日新聞は木村伊量社長と杉浦信之取締役編集担当は記者会見を開
き、記事を取り消したうえで、謝罪したのです。
            ──[メディア規制の実態/047]

≪画像および関連情報≫
 ●門田隆将 朝日新聞「吉田調書」報道の罪 全文掲載
  ───────────────────────────
   午前6時過ぎ、ついに大きな衝撃音と共に2号機の圧力抑
  制室(通称・サプチャン)の圧力がゼロになった。「サプチ
  ャンに穴が空いたのか」。多くのプラントエンジニアはそう
  思ったという。恐れていた事態が現実になったと思った時、
  吉田所長は「各班は、最少人数を残して退避!」と叫んでい
  る。たとえ外の大気が「汚染」されていたとしても、ついに
  免震重要棟からも脱出させないといけない「時」が来たので
  ある。
   この時のことを朝日新聞は、1面トップで「所長命令に違
  反/原発撤退」「福島第一/所員の9割」と報じ、2面にも
  「葬られた命令違反」という特大の活字が躍った。要するに
  700名近い職員の9割が「吉田所長の命令に違反して、現
  場から福島第二(2F)に逃げた」というのだ。
   その根拠になる吉田調書の部分は、朝日(デジタル版)に
  よると、以下のようなものだ。
   「本当は私、2Fに行けと言っていないんですよ。ここが
  また伝言ゲームのあれのところで、行くとしたら2Fかとい
  う話をやっていて、退避をして、車を用意してという話をし
  たら、伝言した人間は、運転手に、福島第二に行けという指
  示をしたんです。         http://bit.ly/2GgNib4
  ───────────────────────────

作家/門田隆将氏.jpg
作家/門田 隆将氏
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2018年03月13日

●「吉田調書はなぜ非公開になったか」(EJ第4722号)

 2018年3月2日付の朝日新聞朝刊1面トップは、次のよう
に伝えています。
─────────────────────────────
   ◎森友文書書き換えの疑い
    財務省問題発覚後か/交渉経緯など複数個所
     ──2018年3月2日付、朝日新聞朝刊
─────────────────────────────
 これは朝日新聞の渾身のスクープといえます。このところ安倍
首相が先頭に立っての朝日新聞攻撃に対する「報復」ともとれる
スクープです。
 このEJは11日に執筆しています。ところがこの事件は10
日の夜に大きく動いたのです。財務省は、森友決裁文書に「書き
換え」があったことを認め、12日に国会で発表する運びになっ
たのです。まさに激動です。
 それによって事態がどう動くか、このEJ執筆時点では見通せ
ない状況です。そこで、朝日新聞が報道の失敗で謝罪した福島第
一原子力発電所事故「吉田調書」について、新聞のあり方との関
連から、先に書くことにします。特定文書を巡る騒動である点は
今回と同じです。
 2014年の夏は、朝日新聞にとって、さんざんな年であった
といえます。それは、次の2つの朝日新聞の報道が取り消しの処
分になり、朝日新聞は日本中からバッシングを受けることになっ
たからです。
─────────────────────────────
   1.吉田証言の取り消し ・・・ 慰安婦問題報道
 → 2.吉田調書の取り消し ・・・ 福 島原発報道
─────────────────────────────
 ここでは「2」の問題について考えていきます。2014年5
月20日のことです。朝日新聞の朝刊の1面に次の見出しが躍っ
たのです。一大スクープ記事です。
─────────────────────────────
   ◎所長命令に違反、原発撤退、福島第一、所員の9割
    政府事故調の「吉田調書」入手
           ──2014年5月20日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 「吉田調書」とは、2011年に発生した東日本大震災による
福島第一原子力発電所事故で、陣頭指揮にあたった吉田昌郎福島
第一原子力発電所所長(当時)が、政府事故調の聴取に応じたさ
いの記録文書であり、400ページ以上あります。当時政権を率
いていたのは、民主党の菅直人首相です。
 しかし、吉田昌郎氏は事故調に対して次の上申書を提出し、第
三者への公表を拒んでいたのです。なお、吉田昌郎氏は2013
年7月に死去しています。
─────────────────────────────
 国会事故調が内部で調査のために用いる限りにおいて承諾する
ものであり、本件資料が、国会事故調から第三者に向けて公表さ
れることは望みません。      ──2012年5月29日
─────────────────────────────
 つまり、吉田調書は本来外に出るはずのない文書なのです。そ
れを朝日新聞の木村英昭記者と宮崎知己記者は入手したのです。
どうやら、朝日新聞の記者はそういう秘密文書を手に入れるのは
得意のようです。そのうえで朝日新聞は、2014年5月20日
付の見出しの記事を掲載したのです。以下は、記事の概要です。
─────────────────────────────
 東日本大震災4日後の11月3月15日朝、第一原発にいた所
員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10
キロ南の福島第二原発へ撤退していた。その後、放射線量は急上
昇しており、事故対応が不十分になった可能性がある。東電はこ
の命令違反による現場離脱を3年以上伏せてきた。
               ──マーティン・ファクラー著
      『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』/双葉社刊
─────────────────────────────
 このとき政府の事故調(事故調査・検証委員会)は、吉田所長
を含む772人の関係者に、合計1479時間もの時間をかけて
聴き取り調査をしています。そしてその最終報告書は、2012
年7月23日に提出されています。しかし、当時の民主党政権は
調査結果を非公開にしています。確かに吉田所長の非公開の要望
はあったものの、政府としては全面非公開にするべきではなかっ
たのです。文書の非公開の扱いは、自民党の安倍政権になってか
らも続き、朝日新聞のスクープが行われるのです。
 朝日新聞の見出しを見ると、福島第一原発にいた東京電力の作
業員のほとんどが、吉田所長が「待機せよ」と命令したにもかか
わらず、10キロ南の福島第二原発に撤退したという意味にとれ
ます。「きっとパニックになり、命令を無視して一斉に逃げ出し
たんだな」というようにとれる内容です。
 しかし、事故調が聴き取りをした作業員の証言によると、命令
の内容がバラバラで、もともと事故のさいは、第二原発に撤退と
いうことになっていたので、それにしたがったまでというように
一貫していないのです。マーティン・ファクラー氏はこれについ
て、次のように述べています。
─────────────────────────────
 「秘密の調書」を熟読してみると、吉田所長の命令は現場まで
正確に伝わっていなかったことが読み取れる。まるで命令が伝言
ゲームのように伝わり、現場のスタッフが聞いた内容は、吉田所
長が出した当初の命令と異なっていた。スタッフが意図的に命令
違反したわけではなく、命令の内容を正確に把握しないまま誤っ
て撤退してしまった。これが実態だろう。
         ──マーティン・ファクラー著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[メディア規制の実態/046]

≪画像および関連情報≫
 ●「吉田調書」が教える「東電撤退事件」/竹内敬二氏
  ───────────────────────────
   2013年7月に亡くなった吉田昌郎・元福島第一原発所
  長は、政府事故調に400ページにわたる膨大な証言を残し
  ていた。格納容器の爆発危機に直面したとき、作業員の9割
  が所長の意図に反して第二原発に移ってしまった事実も語ら
  れている。菅首相が東電に乗り込んで「撤退は認めない」と
  叫んだ、有名な「東電撤退事件」の真相の一部がやっと現れ
  た。しかし、政府事故調の報告書には、このことがきちんと
  反映されているとは言い難い。現政府は吉田所長だけでなく
  772人に対して行われた調書を「非公表にする」としてい
  る。事故の詳細を教える一級の資料をなぜ出さない。
   吉田氏は政府事故調から計13回、延べ時間29時間にわ
  たって聴取された。担当したのは事故調事務局に出向してい
  た検事。「捜査のプロ」が事実を確認しながら聴取したもの
  で、資料としては一級品だ。この調書は公表された訳ではな
  く、朝日新聞が入手し、独自に2014年5月20日と、そ
  の後に報じた。事故調査では多くの人が聴取されたはずだが
  これほど詳しい記録が残されていることは知られていなかっ
  た。ほかのメディアでは報じられていないため、吉田調書が
  存在が明らかになったニュース自体を知らない人も多いだろ
  う。吉田調書は語り口調のまま書かれており、事故直後の原
  発内の恐怖、焦り、緊張がそのまま分かる。
                   http://bit.ly/2p9JYq7
  ───────────────────────────

「吉田調書」を伝える朝日新聞の記事.jpg
「吉田調書」を伝える朝日新聞の記事
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2018年03月12日

●「なぜ安倍首相は朝日を批判するか」(EJ第4721号)

 「一強」の安倍政権が大きく揺らいでいます。森友学園関連の
決裁文書を財務省が改ざんした疑いによって国会が止まっている
からです。これは、今回のテーマそのものではありませんが、メ
ディアのあり方にも関係するので、考えてみることにします。
 これは、「安倍首相VS朝日新聞」の最終戦争といわれていま
す。安倍首相による国会などでのあまりにも露骨な朝日新聞批判
に対するメディアとしての報復のように見えるからです。
 1月24日のEJ第4689号でも取り上げた2冊の保守系雑
誌があります。安倍政権を熱烈に支援し、それに反対を唱えるも
のを徹底的に攻撃する雑誌です。その最新号である4月号の表紙
を添付ファイルにしてあります。両誌は別の出版社ですが、4月
号の両誌のトップ記事は次の通りです。
─────────────────────────────
 ◎『月刊/Hanada』/2018年4月号
  ・総力大特集/「赤っ恥、朝日新聞」
    「言論の矜持」はどこへ    櫻井よしこ
    哀れ!朝日新聞の自殺     小川栄太郎
    「誤報して逆上」は昔っから   高山正之
 ◎『月刊WiLL』/2018年4月号
  ・やはり逃げたか、朝日論説主幹 
              櫻井よしこ/川村二郎
─────────────────────────────
 両誌はいずれも朝日新聞を取り上げ、激しい言葉で批判してい
ます。両誌の朝日新聞批判はほぼ常態化しており、朝日新聞とし
ては面白くないでしょう。両誌はそうすることによって、安倍政
権を支援しているのです。いわば「安倍首相大好き雑誌」です。
 一方、安倍首相は、国会で朝日新聞を名指しして、批判してい
ます。一国の首相が特定新聞社を名指しして、批判するのは異例
中の異例です。2018年2月20日付、毎日新聞(電子版)は
それを次のように伝えています。安倍首相の発言は、両誌の特集
にもリンクしています。
─────────────────────────────
 安倍晋三首相が先月末から国会の答弁で5回、学校法人「森友
学園」問題に絡んで朝日新聞批判を展開した。自民党参院議員の
フェイスブックにも朝日新聞を「哀れ」と書き込んだ。首相が公
の場などで特定の報道機関のバッシングを続けるのは異例だ。識
者は「首相は自分に都合のよい事実を切り取って自身への批判を
すり替えている」と指摘する。     【青島顕、川名壮志】
                   http://bit.ly/2EGLlqK
─────────────────────────────
 なぜ、朝日新聞は、このように批判されるのでしょうか。それ
には、2人の「吉田」に関わる報道の失敗、それも大失敗がある
からです。不思議なことに、2人とも奇しくも「吉田」という人
物なのです。2人の「吉田」とは次の通りです。
─────────────────────────────
 吉田清冶氏 ・・・ 吉田証言 ・・・    慰安婦問題
 吉田昌郎氏 ・・・ 吉田調書 ・・・ 福島第一原発事故
─────────────────────────────
 この2つの報道によって、朝日新聞は今も責められています。
「吉田調書」については、報道のあり方に関係するので、後で取
り上げて論評する予定です。
 これら2つの報道の失敗があるとしても、なぜ安倍首相は今国
会でわざわざ朝日新聞を名指しして批判するのでしょうか。最近
朝日新聞が、何か安倍政権にとって不都合なことをして、それを
批判するならわかりますが、持ち出してくるのは、すべて過去の
ことばかりです。それを前掲の保守系の2つの雑誌が記事として
取り上げ、コトを大きくするのです。異常ですらあります。リテ
ラの記事に次のような記述があります。
─────────────────────────────
 総理大臣がいちメディアを国会で吊し上げるなど、言論機関を
萎縮させる圧力行為としか言いようがないが、その批判の中身が
またひどかった。なんと安倍首相は、1989年に起こった珊瑚
事件をもち出し「(朝日は)なかなか謝らなかった」と言うと、
今度は福島第一原発事故での吉田調書や従軍慰安婦問題における
吉田清治証言を取り上げ、「吉田所長の調書。これも最初は全然
謝らなかった」「吉田清治の証言にいたってはですね、これはま
さに日本の誇りを傷つけたわけであります」と主張したのだ。
 いったいこの男はいつまで同じインチキな印象操作を続けるつ
もりなのか。本サイトで何度も書いているが、従軍慰安婦の強制
連行をめぐる吉田証言は朝日新聞だけの誤報ではない。産経や読
売、毎日も吉田氏を記事で紹介しており、産経は「被害証言がな
くとも、それで強制連行がなかったともいえない。吉田さんが、
証言者として重要なかぎを握っていることは確かだ」とまで書い
ていた。               http://bit.ly/2BZiQ62
─────────────────────────────
 吉田証言にしても、吉田調書にしても朝日新聞は正式にその非
を認め、謝罪しています。謝罪では済まないことであるとしても
それをわざわざ首相が今国会で蒸し返し、批判することはないと
思います。本にでも書けばよいことです。
 しかし、さすがの朝日新聞も、今国会での安倍首相の度重なる
批判には我慢の限界を超えたようです。そういう2月のある日、
朝日新聞の幹部が、国会議員OBに会ったとき、次のようなこと
を話したそうです。
─────────────────────────────
 自分たちはそれなりにやってきたつもりだが、国会の委員会で
の安倍首相の名指し攻撃は度を越している。そこまでやるなら、
こっちも腹を決めて勝負に出る。森友学園問題に関して隠し玉が
ある。      ──2018日3月5日発行/日刊ゲンダイ
─────────────────────────────
            ──[メディア規制の実態/045]

≪画像および関連情報≫
 ●月刊誌の『朝日新聞批判』が毎月のように続く理由
  ───────────────────────────
   ジャーナリストの田原総一朗氏はメディアの「朝日新聞批
  判」の訳を説く。「月刊Hanada」や「月刊WiLL」
  などの雑誌が毎月のように朝日新聞攻撃の大特集を展開して
  いる。もちろん言論、表現は自由だから、朝日新聞批判を行
  うのは何の問題もない。だが、毎月のように朝日新聞批判を
  まるで目玉企画としているのは尋常ではない。それほど新し
  い展開はないにもかかわらずだ。つまり、朝日新聞批判を目
  玉とすると雑誌が売れるということなのだろう。
   両誌が朝日新聞批判を大きく報じ始めたのは、森友・加計
  疑惑などが生じて、安倍内閣の支持率が落ち始めたころから
  である。そもそも朝日新聞や毎日新聞、東京新聞などは、安
  倍首相が「戦後レジームからの脱却」を唱え、東京裁判批判
  を展開したころから批判的だった。安倍首相が「ナショナリ
  スト」で、いわば「歴史修正主義」ではないか、ととらえた
  からだ。
   2013年12月に安倍首相が靖国神社に参拝すると、中
  国・韓国だけでなく米国も「失望した」と強く批判した。何
  人もの首相が靖国参拝をしたが、米国が批判をあらわにした
  のはこのときが初めてである。米国も、安倍首相が「歴史修
  正主義」ではないか、と疑ったのだ。
   安倍首相はその後、靖国参拝はしなくなったが、特定秘密
  保護法や集団的自衛権の行使容認など、それ以前の歴代首相
  がタブーとして避けてきた法案を次々に成立させて、野党は
  もちろん、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞などは強く批判し
  続けた。いわば、反安倍首相的な姿勢をはっきり示すように
  なった。             http://bit.ly/2p26T6k
  ───────────────────────────

朝日新聞を攻撃する2月刊誌.jpg
朝日新聞を攻撃する2月刊誌
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2018年03月09日

●「日本のメディアは一体になれない」(EJ第4720号)

 政府の圧力にやすやすと屈してへり下る──これが現在の日本
のメディアです。田原総一朗氏は、こうしたメディアについて、
「放送局の体質が脆弱になったもの」と嘆いていますが、米国の
メディアにはこういうことは考えられないそうです。
 なぜかというと、政府が圧力をかけてきたら、多くのメディア
が結束して反対の論陣を張るからです。これについて、元ニュー
ヨーク・タイムズ東京支局長のマーティン・ファクラー氏は、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 「報道ステーション」や朝日新聞に官邸から圧力がかかったの
であれば、こういうときこそ読売新聞も産経新聞も毎日新聞も、
連帯してメディア・スクラムを組み、官邸に反発するべきだ。メ
ディア単体への圧力は、風向きが変われば他のテレビ局なり新聞
社なりへの圧力へとすり替わる。
 ところが日本のメディアは「『報道ステーション』はケシカラ
ン」「朝日新聞は反日報道をしている」とメディア同士でケンカ
をしている。そのケンカを安倍政権はうまく利用しているのだ。
他のメディアが圧力を受けているのであれば、我が事のように憤
る。FCCJが取材拒否に遭っているのであれば、そのことを敢
えて取り上げて問題提起をする。会社という縦割りの縄張り意識
を捨てて、「ジャーナリズム」という一点で日本のジャーナリス
トは団結しなければ、権力者の思うつぼだ。
               ──マーティン・ファクラー著
      『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』/双葉社刊
─────────────────────────────
 日本のメディアは、ケンカしているというより、最初から政権
寄りとそうでないメディアに色分けされていて、結束できないの
です。しかも、日本のメディアは、新聞社がテレビ局が系列化さ
れており、メディア全体の色分けが行われているのです。
 系列化の契機になったのは、皇太子(今上天皇)のご成婚報道
なのです。この全国紙とテレビ局の系列化について、砂川浩慶氏
の本から引用することにします。
─────────────────────────────
 1959(昭和34)年の皇太子ご成婚の中継を機にスタート
した、テレビ報道の協力体制で、TBS系列(JNN)は、東京
のTBSと大阪の朝日放送が系列関係を結んでいた。また、東京
のNETは、大阪の毎日放送と系列関係にあった。これを全国紙
側からみれば、東京と大阪で系列関係に捻れが生じていることと
なる。1973年当時、全国紙は各テレビ局に相応の株を持って
いた。このため、朝日新開、毎日新聞、読売新聞の3社間で株式
の整理を行なった。朝日新聞と読売新聞が持っていたTBSの株
は、毎日新聞に譲渡、その一方、毎日新聞・朝日新聞が持ってい
た日本テレビの株は読売新聞に譲渡することとなった。また、N
ETの大株主である朝日新聞と東京12チャンネルの株主である
日経新聞での株式譲渡の詰も進展し、日経新聞が保有するNET
の株を朝日新聞に譲渡することとなった。
      ──砂川浩慶著『安倍官邸とテレビ』/集英社新書
─────────────────────────────
 NET(日本教育テレビ)など、今の若い人は聞いたことはな
いでしょうが、これが総合テレビ局になって、日本テレビになっ
たのです。
 このような経緯で、TBSと毎日新聞、日本テレビと読売新聞
NETと朝日新聞、東京12チャンネルと日経新聞という全国紙
と東京キー局の系列化が進んだのです。全国紙と在京テレビ局関
係図は次のようになっています。
─────────────────────────────
   読売新聞──日本テレビ放送網/読売テレビ放送
   毎日新聞──TBSテレビ──毎日放送
   産経新聞──フジテレビジョン──関西テレビ放送
   朝日新聞──テレビ朝日──朝日放送
   日経新聞──テレビ東京──テレビ大阪
                ──砂川浩慶著の前掲書より
─────────────────────────────
 実は、砂川氏の本にあるような新聞とテレビ局の系列化を主導
したのは、当時の総理大臣田中角栄氏なのです。田中首相の剛腕
がなければできなかったことであるといえます。田中角栄氏が総
理大臣になったのは1972年7月のことです。このときから日
本特有のメディアと自民党政治の関係が、現在の安倍政権まで繋
がっているのです。
 そして現在では、読売新聞系、産経新聞系、日経新聞が政権寄
りであり、毎日新聞系と朝日新聞系が左寄りといわれています。
したがって、政権が圧力を強めてきても、すべてのメディアが一
体になってそれに反対できないのです。
 2012年11月16日、衆議院解散の日です。このとき、T
BSによる「映り込み事件」が起きてます。これはTBSのミス
だったのですが、当時自民党総裁の安倍晋三氏は、直ちにフェイ
スブックで次のように抗議しています。最初からTBS憎しで選
挙が始まったのです。
─────────────────────────────
 11月16日放送のTBS『みのもんたの朝ズバー』で、NH
Kのキャスターの痴漢行為をニュースとして流す中で、なんと私
の顔写真が写し出されたそうです。ネットの指摘で明らかになり
ました。その日はまさに解散の日。ネガティブキャンペーンがは
じまったのでしょうか。もし事故なら私のところに謝罪があって
しかるべきですが、何もありません。(中略)
 これから一ヶ月こうしたマスコミとの戦いです。私は皆さんと
共に戦います。     ──安倍晋三氏のフェースブックより
                ──砂川浩慶著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[メディア規制の実態/044]

≪画像および関連情報≫
 ●安倍官房長官印象操作映像事件
  ───────────────────────────
  (TBSでは、同じようなミスを2006年にも起こしてい
  る)TBSのニュース番組「イブニング・ファイブ(JNN
  イブニング・ニュース)」は、2006年7月21日に73
  1部隊の特集を組んだ。その内容は、終戦後に日本上陸を果
  たすであろうアメリカ軍に対して、細菌兵器で攻撃する計画
  が731部隊にあったというものであった。その放送の中で
  TBS社内の一室で電話取材を行っている記者に迫る演出が
  あり、その途上にある小道具部屋で山積みされていた小道具
  とともに「安倍晋三顔写真」が約3秒間に渉って映し出され
  た。その際に「ゲリラ活動!?」というテロップが「安倍晋
  三顔写真」に重なって表示されていた。また、安倍晋三顔写
  真の横には構造計算書偽造問題で話題になったヒューザー社
  長小嶋進の顔写真もあった。
   この当時、小泉純一郎のの後継者を選ぶ自民党総裁選が近
  日中に行われる予定で、安倍も有力候補者として出馬するこ
  とになっていた。このことから「TBSが安倍のイメージダ
  ウンを狙った印象操作」という見方が広がった。「小嶋進顔
  写真」が隣にあったのも決して偶然ではなく、小嶋のマイナ
  スイメージを安倍に重ね合わせることを狙ったものであると
  いう見方もある。TBSは「電話取材中の記者を撮影する際
  取材に使った記者室のスペースが狭かったため、隣接する小
  道具部屋に保管してあった安倍官房長官のパネルが映った」
  とし、意図的なものでは無かったと釈明した。
        ──ウィキペディア  http://bit.ly/2FTi2P7
  ───────────────────────────

田中角栄元首相.jpg
田中 角栄元首相
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2018年03月08日

●「メディアが安倍政権に過度に忖度」(EJ第4719号)

 2016年2月4日のことです。衆院予算委員会において、民
主党の階猛議員(当時)が、安倍首相に対し、安倍政権を批判し
た報道番組のキャスターが次々と降ろされている事実を踏まえて
自民党の憲法改正草案について、次のように質問したのです。
─────────────────────────────
 表現の自由を制限し、言論機関を萎縮させていないか。言論機
関が、権力者の意向を忖度し、権力者への批判を控えるようにな
るのではないか。こういったことは民主主義の健全な発展にとっ
てマイナスである。          ──民主党/階猛議員
─────────────────────────────
 これに対して安倍首相は、少し憤然として、「日刊ゲンダイ」
を例に取り上げて、次のように答弁しています。
─────────────────────────────
 現在、まるで言論機関が萎縮しているかのような表現があった
が、全くしていない。今日、帰りにでも「日刊ゲンダイ」を読ん
でみてくださいよ。これが萎縮している姿ですか。全く萎縮して
いない。むしろ言論機関に対して失礼だ。    ──安倍首相
                   http://bit.ly/2H2bwFd
─────────────────────────────
 確かに「日刊ゲンダイ」のタイトル表記は、次のようにかなり
ストレートで、過激な表現です。
─────────────────────────────
◎データ捏造ぐらい朝飯前/一時が万時ペテン内閣の欺瞞政治
        ──2018年2月21日発行/日刊ゲンダイ
◎安倍首相よ どのツラ下げて改憲、3選?
        ──2018年3月 2日発行/日刊ゲンダイ
─────────────────────────────
 確かに、他のメディア規制国で、これほど露骨な政権批判はで
きないと思います。そういう意味では安倍首相の答弁にも一理あ
るといえなくもありません。
 安倍政権に批判的な立場をとる田原総一朗氏は『週刊朝日』の
コラムで、安倍政権による一連のメディア規制について、次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 私は、安倍政権により「政府の圧力」が強まったというより、
放送局の体質が脆弱になったのだととらえている。「圧力」では
なく、放送局の自己規制によって番組が無難化しているのであり
気骨があって評価されていたキャスター3人が、いずれも3月末
に降板したのも、放送局の自己批判であった。──田原総一朗氏
                   http://bit.ly/2oNKI3T
─────────────────────────────
 安倍首相は異常なほど自身が批判されることを嫌います。国会
での答弁でも、少しでもヤジられると、それを気にしてイライラ
するタイプです。そのため、批判されないように、メディアのト
ップとコンタクトし、協力を得ようとします。しかし、それでも
批判するメディアに対しては、強く要望したり、さまざまな圧力
をかけようとするのです。
 それを受け入れるメディアが多いのです。それが自主規制とい
うか、忖度というか、メディアの方が政権の要望を受け入れてし
まう傾向が強いのです。それを田原氏は、「放送局の体質が脆弱
になった」と嘆いているのです。それにしても、メディアは安倍
政権に譲り過ぎであると思います。いいなりです。
 米国のトランプ政権もメディアとは対立しています。しかし、
大統領は、特定メディアを「フェイクニュース」だとして批判し
ますが、メディアを規制しようとはしていません。米国のメディ
アは気骨があり、政権の規制などに屈しないからです。
 これが、米国の43位に対し、日本の72位という報道自由ラ
ンキングにおける米国と日本の差になっているのです。「魚心あ
れば水心あり」というのが、安倍政権と日本のメディアの癒着関
係ではないかと思います。
 「国境なき記者団」は、ネット検閲や情報統制を行っている国
を調査し、それに該当する国家を「インターネットの敵」と呼ん
でいます。2006年から2014年までに「インターネットの
敵」と指定された国は次の通りです。幸いなことに、日本は入っ
ていないし、監視対象国にもなっていません。
─────────────────────────────
    ◎「インターネットの敵の各国」
     アメリカ合衆国    シリア
     アラブ首長国連邦   スーダン
     イギリス       中華人民共和国
     イラン        トルクメニスタン
     インド        バーレーン
     ウズベキスタン    パキスタン
     エチオピア      ベトナム
     北朝鮮        キューバ
     サウジアラビア       http://bit.ly/1QlTFXg
─────────────────────────────
 しかし、「インターネットの敵」でも、その監視対象国でもな
いということは、手放しで喜べないのです。なぜなら、それは、
「それだけのICT技術を持っていない」ということも、意味す
るからです。監視対象国は次の11ヶ国です。
─────────────────────────────
     エジプト       タイ
     エリトリア      チュニジア
     オーストリア     トルコ
     カザフスタン     フランス
     韓国         マレーシア
     スリランカ         http://bit.ly/1QlTFXg
─────────────────────────────
            ──[メディア規制の実態/043]

≪画像および関連情報≫
 ●2つのランキングを比較する
  ───────────────────────────
   国境なき記者団のランキングは日本の多くのニュース・メ
  ディアがセンセーショナルに報道したので、ご存知の方は多
  いと思う。先進国であるはずの日本が報道の自由度で180
  カ国中72位(前年61位)と、かなり低位にランクされた
  というニュースは、確かにインパクトがあった。
   一方、同時期に発表されたフリーダムハウスの報道の自由
  度については日本ではあまり報道されなかったので、知らな
  い人が多いかもしれない。グーグルトレンドのスコアでは、
  フリーダムハウスが国境なき記者団を圧倒するように、グロ
  ーバルな認知度ではむしろフリーダムハウスの方が高いとも
  言えるのだが、日本が全体の44位というフリーダムハウス
  の結果は良くも悪くもない印象で、ニュースとして扱うには
  平凡に過ぎたのだろう。
   フリーダムハウスのランキングは、ツバルやソロモン諸島
  等の小国を網羅し、国境なき記者団が一まとめに扱う東カリ
  ブ諸国機構(OECS)についてもその構成国をそれぞれ別
  個に評価していることから、実は評価対象が20カ国も多く
  両者を比較するにはまずここを調整しなくてはならない。両
  者がどちらもカバーする評価対象は179カ国。その中での
  日本の順位は、フリーダムハウスが33位、国境なき記者団
  は変わらず72位だ。72位VS44位でも、印象はかなり
  違ったが、72位VS33位となれば違いはさらに際立つ。
  ではどちらかの「報道の自由度」が偏っているのだろうか?
                   http://bit.ly/2oN7gSr
  ───────────────────────────

衆院予算委での階猛議員の安倍首相への質問.jpg
衆院予算委での階猛議員の安倍首相への質問
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2018年03月07日

●「報道の自由度/日本は世界72位」(EJ第4718号)

 「国境なき記者団」という組織があります。言論の自由(報道
の自由を含む)の擁護を目的とする非政府組織です。1985年
に、フランスの元ラジオ局記者、ロベール・メナールによってパ
リで設立されています。
 具体的に何をやっているのかというと、世界中で拘束されてい
るジャーナリストの救出、死亡した場合の家族の支援、各国のメ
ディア規制の動きへの監視・警告を主な活動としています。20
02年からは、毎年14の団体と130人の特派員、ジャーナリ
スト、調査員、法律専門家、人権活動家たちが、それぞれの国の
「報道の自由レベル」を評価し、ランキングしています。「世界
報道自由ランキング」です。最新の2017年度のランキングベ
スト10をご紹介します。
─────────────────────────────
   ≪世界報道自由ランキングベスト10/2017≫
    1位:ノルウェー     6位:コスタリカ
    2位:スウェーデン    7位:スイス
    3位:フィンランド    8位:ジャマイカ
    4位:デンマーク     9位:ベルギー
    5位:オランダ     10位:アイスランド
─────────────────────────────
 どのような基準でランキングを判定しているかですが、180
ヶ国のメディア専門家、弁護士、社会学者からの、87の質問を
問うアンケートが配られ、その結果を数学的に計算し、評価を決
めるのです。
 第1位のノルウェーは、ここ15年間をとっても10回が第1
位であり、一番下がったランクは2006年の6位だけという素
晴らしいものです。第2位のスウェーデンは、平均すると10位
〜12位の国ですが、2015年から上昇しています。2015
年は第5位、2016年は第8位、そして2017年は第2位と
ランクアップしています。
 第3位のフィンランドは、今年こそ3位に甘んじていますが、
ノルウェーと1位争いをしてきた国です。過去15年をとっても
1位が11回とノルウェーを上回っています。15年間で、ノル
ウェーと同列1位が4回もあるのです。
 それでは、2017年ワースト10にはどういう国がはいって
いるでしょうか。おおよそ見当はつきますが、ワースト10は次
の通りです。
─────────────────────────────
 ≪世界報道自由ランキングワースト10/2017≫
  171位:赤道ギニア   176位:中華人民共和国
  172位:ジブチ     177位:シリア
  173位:キューバ    178位:トルクメニスタン
  174位:スーダン    179位:エリトリア
  175位:ベトナム    180位:北朝鮮
─────────────────────────────
 注目すべきは、176位に中華人民共和国(中国)がランクさ
れていることです。中国は、2002年には138位というこの
国としては上位のランクにあったのですが、習近平氏が総書記に
就任した2012年の174位から、さらに3ランク下がって、
現在では176位に定着しています。そして、最下位の180位
は北朝鮮です。この国については、もはや何もいうべきことはな
いし、コメントしたくもありません。
 重要なことは、ここにG7(日本、アメリカ、イギリス、ドイ
ツ、フランス、カナダ、イタリー)の国は、一国も入っていない
ことです。2017年度のG7の順位を以下に示します。
─────────────────────────────
          16位:ドイツ
          22位:カナダ
          39位:フランス
          40位:イギリス
          43位:アメリカ
          52位:イタリア
          72位:日本
─────────────────────────────
 情けない話ですが、日本は順位を下げて、52位のイタリアよ
りも20ランクも下の72位です。それも、2013年の安倍政
権の発足以降、急速にランクを下げているのです。
 そこで、世界報道自由ランキングと内閣との関係を調べてみる
と、次のようになります。
─────────────────────────────
   2006年/37位 ・・・ 小泉内閣/安倍内閣
   2007年/51位 ・・・ 安倍内閣/福田内閣
   2008年/37位 ・・・ 福田内閣/麻生内閣
   2009年/29位 ・・・ 麻生内閣/鳩山内閣
   2010年/17位 ・・・ 菅 内閣
   2011年/11位 ・・・ 菅 内閣/野田内閣
   2012年/22位 ・・・ 野田内閣/安倍内閣
   2013年/53位 ・・・ 安倍内閣
   2014年/59位 ・・・ 安倍内閣
   2015年/61位 ・・・ 安倍内閣
   2016年/72位 ・・・ 安倍内閣
   2017年/72位 ・・・ 安倍内閣
                   http://bit.ly/2FR9J6v
─────────────────────────────
 安倍政権、とくに第2次政権になってからの順位の落下は明確
です。2013年の53位から年々落下し、72位になっていま
す。これに対して、民主党政権ではランクは大幅に上昇し、20
11年には11位になっています。とくに、岡田、亀井両大臣は
記者クラブに関係なく、多くの記者を受け入れていたのです。
            ──[メディア規制の実態/042]

≪画像および関連情報≫
 ●日本は「報道の自由」を失っていくのか(安倍政権)
  ───────────────────────────
   国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RSF,本
  部パリ)は、2017年4月26日,2017年の世界各国
  の報道自由度ランキングを発表し,日本は72位だった。日
  本はG7=主要7か国で最低の順位で、推移を見ると、20
  10年は11位,2012年は22位,2013年は53位
  2014年は59位,2015年は61位,2016年は、
  72位と年々順位を下げている(あのトランプ政権で揺れる
  米国ですら43位である)。
   特に2012年から2013年にかけて大きく順位を下げ
  ているが,これは第2次安倍政権の影響も否定できないだろ
  う。以後,毎年順位を下げ続けており,前述のように主要先
  進国の中で最下位になってしまった。
   順位を下げた理由について,「国境なき記者団」は,東日
  本大震災や東京電力福島第一原子力発電所の事故の際に報道
  が規制されたり,情報の開示が限られたりしたと指摘してい
  るほか特定秘密保護法が施行されたことなどを挙げている。
  私は,上述のように2011年に起きた東日本大震災の際の
  報道姿勢から潮目が変わったと思っている。当時は民主党政
  権であったが,官邸からかなり報道規制があったと聞く。未
  曾有の大震災であるから「パニックを防ぐ」名目で情報を出
  さないのではなく,未曾有であるからこそ何もかも明らかに
  して,国民共々対応するべきであると思う。
                   http://bit.ly/2oOfBVK
  ───────────────────────────

オープン公開の岡田外相(当時)の記者会見.jpg
オープン公開の岡田外相(当時)の記者会見
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2018年03月06日

●「外国人記者の記事にも目を光らす」(EJ第4717号)

 ドイツの有力紙に「フランクフルター・アルゲマイネ」という
新聞があります。その新聞社の東京特派員だったカルステン・ゲ
ルミス記者が、日本外国特派員協会(FCCJ)の機関紙に、あ
る記事を寄稿したのです。その内容は、自分が東京で記者在任中
に日本政府から受けた「屈辱的攻撃」についてです。FCCJの
機関紙は「Number 1 Shinbum」といい、大変有名です。
 これについて、元ニューヨーク・タイムズ東京支局長マーティ
ン・ファクラー氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 15年4月まで、同紙の東京特派員を務めていたゲルミス記者
は、14年8月に「安倍政権の歴史修正主義が中韓のつながりを
強め、逆に日本を孤立化させる」といった主旨の記事を書いた。
すると、在フランクフルト総領事がアルゲマイネ紙本社に抗議に
訪れたというのだ。
 総領事はゲルミス記者の記事を中国が反日プロパガンダに利用
しており、「オカネが絡んでいるのではと疑ってしまう」。「中
国に渡航ビザを許可してもらうためでは」と文字どおり侮辱的な
発言をしたそうだ。ゲルミス記者はそうした発言を、寄稿した記
事の中ですべて否定し、外務省への怒りをあらわにした。外務省
はなぜアルゲマイネ紙と衝突するようなやり方をしたのだろう。
同紙はドイツにおける保守系の新聞で常日頃、落ち着いた論調を
紙面で展開している。何か極端な主張をして、日本政府を攻撃す
るようなメディアではない。  ──マーティン・ファクラー著
      『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』/双葉社刊
─────────────────────────────
 海外メディアは、日本のイメージを世界に伝える貴重な存在の
はずです。そういうメディアに対して、なぜ安倍政権は、記事内
容が気に入らないと、わざわざその記者の所属する新聞社の本社
に領事館の職員を訪問させ、抗議し、威嚇するような態度をする
のでしょうか。韓国がやっているように、もう少し海外メディア
に、戦略的に対応できないものでしょうか。
 「報道ステーション」を降板させられたあの古賀茂明氏は、日
本外国特派員協会から要請され、記者会見を行っています。日本
の大手メディアで、この古賀事件を取り上げるところが皆無のな
かで、FCCJは記者会見を申し入れてきたのです。このときの
FCCJの記者会見の印象について、古賀茂明氏は、次のように
語っています。
─────────────────────────────
 海外のメディアは、会場入りしたときから、私を非常に温かい
雰囲気で迎えてくれた。そうして私の講演に真剣に耳を傾け、メ
モを取る姿を見ていると、単に面白い話を聞きたいということで
はなく、まじめな記事を書こうという熱意が伝わってきた。
 驚いたのは、特派員たちの理解度の高さだ。もちろん、ゴシッ
プ的な質問は皆無。「報道の危機」という問題の本質をついた問
いが相次いだ。しかも、質問した全員が私の行動を称賛し、私以
上に日本のマスメディアの問題点を鋭く指摘した。私にとっては
久しぶりにまともな世界に身を置いて、自分自身が解放されるよ
うな感覚に包まれた。
       ──古賀茂明著/講談社刊/『日本中枢の狂謀』
─────────────────────────────
 2015年5月3日、「世界報道自由デー」と名付けられたこ
の日に、古賀茂明氏はFCCJから、報道の自由を促進する運動
に取り組んだ個人に対して贈られる「報道の自由の友賞」を授与
されています。
 受賞理由としては「表現の自由を抑圧しようとする政府に対す
る批判と、東京電力の問題を含む日本の政治や産業界に関する鋭
い評論活動に対して」とあります。FCCJは、古賀氏のジャー
ナリストとしての活動を精査し、著書も読むなどして、受賞を決
めているのです。
 ところで、ニューク・タイムズのマーティン・ファクラー氏が
東京支局長として赴任したのは2009年2月のことであり、そ
の直後の3月3日、当時の小沢一郎民主党代表の第一秘書である
大久保隆規氏が東京地検特捜部に逮捕される陸山会事件が起きる
のです。自民党一党支配の日本の政治が最も混乱し、動揺してい
た頃のことです。そして、同じ年の2009年9月に、自民党か
ら民主党への政権交代が起こり、自民党が下野して、鳩山内閣が
誕生します。そのとき、政権のメディアに対する姿勢が一変した
のです。ファクラー氏は、当時の鳩山政権のメディアへの対応を
次のように評価しています。
─────────────────────────────
 海外メディア記者として一番取材がしやすかったのは、民主党
政権時代だ。岡田克也氏が外務大臣になったときなど、外務省の
記者会見を真っ先に記者クラブ以外のメディアにも開放してくれ
た。雑誌やネットメディア、フリージャーナリスト、私のような
海外メディアの記者などから質問が出たとき、岡田大臣は真剣に
答えようとしてくれた。あのような記者会見のスタィルは、日本
の歴史を通じて極めて稀だ。東日本大震災が起きると、極端な情
報統制を行った民主党政権だが、以前に関して言えば、国民の知
る権利について最も真剣に向かい合っていたと断言できる。
         ──マーティン・ファクラー著の前掲書より
─────────────────────────────
 今や民主党政権というと、ボロクソのようにいわれますが、少
なくとも、メディア対応に関してはきちんと公約を守り、理想的
であったといえます。そのとき、国民は政治が何をしようとして
いるかが、自民党時代より、かなりよく見えたはずです。
 しかし、ファクラー氏も指摘しているように、菅政権になって
東日本大震災が起きると、突然隠蔽体質に逆戻りし、それが民主
党政権のイメージを著しく悪化させたのです。4つに分割された
民主党を引き継ぐ政党は、現在でも、その負の遺産を引きずって
います。        ──[メディア規制の実態/041]

≪画像および関連情報≫
 ●会見要請を辞退された外国特派員協会が安倍政権に困惑
  ───────────────────────────
   外国プレスが所属する日本外国特派員協会(FCCJ)が
  安倍政権に“困惑”している。FCCJは、参議院選挙前に
  6人の自民党幹部へ会見を要請したが、すべて「多忙」を理
  由に辞退された。14年の衆院選時も同様に自民党から会見
  を辞退されたという。「70年の実績があるFCCJ史上は
  じめての事態が続いている」とピーター・ランガン会長は訴
  える。以前の自民党では外相、防衛相などの会見は恒例とさ
  れ、第2次安倍内閣発足時には、菅義偉官房長官を含む閣僚
  が会見に応じたこともあった。しかし、最近は、FCCJの
  要請は繰り返し拒否されているという。なぜなのか?
   FCCJ報道企画委員会共同委員長で、ブルームバーグ・
  ニュースエディターのアンディ・シャープさんは、臆測は避
  けたいがと前置きした上で、「14年、拉致問題担当相だっ
  た山谷えり子議員の会見が一因ではないか」と話す。当時、
  山谷議員の質疑応答の際、外国人特派員らから、本来の目的
  である拉致問題よりも、在日特権を許さない市民の会(在特
  会)との関係について質問が集中したという。意表を突かれ
  質問された山谷議員はしどろもどろの回答に終始。FCCJ
  会員の外国人特派員がこう主張する。「協会主催の会見は、
  まとまりが悪い、フリーランスの出席も多いため、やりにく
  いという声がそれ以降、自民党議員から聞こえるようになっ
  た」。              http://bit.ly/2oMwSyO
  ───────────────────────────

マーティン・ファクラー氏.jpg
マーティン・ファクラー氏
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2018年03月05日

●「日本は右傾化しつつあるといえる」(EJ第4716号)

 ここまで書いてきたように、安倍政権におけるメディア、とく
にテレビ局に対する圧力は、いささか常軌を逸しています。これ
は、安倍首相自身が、テレビで批判されることを何よりも恐れて
いる証拠であるといえます。そのため、なりふり構わず、露骨に
圧力をかけ続けているのです。
 情けないことに、テレビ局サイドがその圧力に屈して、政府を
非難しなくなったことです。その結果、日本のテレビ局の番組は
その劣悪さのレベルを一段と高めています。テレビで報道すべき
テーマはたくさんあるのですが、報道できないので、時間を埋め
るのに四苦八苦しているのです。
 そういう劣悪番組のなかに「日本スゴイ!番組」があります。
長時間かけて、日本を礼賛する番組です。外国人も多く登場する
いわゆる「日本礼賛番組」です。日本が昔から有している技術の
凄さを自画自賛する番組です。これは、政府による日本人に対す
るプロパガンダであるという人もいます。これに警告を発してい
るあるサイトの記事をご紹介します。
─────────────────────────────
 「日本礼賛番組」に出てくる「日本の技術は最高だよね。文化
も素晴らしいし、人々は礼儀正しいし、憧れの国だよ!」とひた
すら日本を褒めちぎってくれる外国人は、TVの中にしか存在し
ません。無理矢理な演出と、「どうせ何を言っているか視聴者に
はわからないんだから」と適当につけられたテロップによる産物
に過ぎません。
 「日本で働くことを夢見る外国人」も、非常に限られた人たち
です。日本の労働環境の劣悪さは海外でもよく知られていますし
英語を話せる人が少ないこと、賃金が高くないこと、そもそも排
他的な国民性であることも多くの人が知っているので、高度な技
能を持つ人ほどわざわざ日本で働こうとはしません。これからも
日本の経済は縮小を続け、いっそう貧しい国になることが確定し
ているわけですから、そんな国にあえて移住しようという人はそ
うそういません。
 しかし、地上波で毎週何本も放送される「日本礼賛番組」を鵜
呑みにしている人たちは、そんなことは、夢にも考えないことで
しょう。「日本は世界最高の工業技術を持つ先進国で、日本のオ
タク文化は世界を席巻、日本人の慎ましやかな国民性は国際的に
大絶賛されている。日本に生まれてよかった、日本に生まれた自
分は幸せだ!!」と信じて疑わないはずです。
                   http://bit.ly/2GZ5d4W
─────────────────────────────
 私は、この主張に全面的に賛成はしませんが、こういう日本礼
賛論が日本に浸透すると、日本が右傾化する可能性は高いと思い
ます。露骨な政治圧力により、政治番組を極度に減らし、芸人に
よる劣悪番組とこのような日本賛美番組を増加させる──困った
傾向であると思っています。
 ところで、安倍首相は、ワシントン・ポストやウォール・スト
リート・ジャーナル、ブルーム・パークなどとは、よく単独イン
タビューに応じますが、ニューヨーク・タイムズとはインタビュ
ーをしないことで知られています。「批判的な記事を書かれる」
ことを嫌っているからです。
 トランプ米政権発足直後の2017年2月のことですが、ニュ
ーヨーク・タイムズは、安倍首相とトランプ大統領の風刺画(添
付ファイル)を掲載しています。この風刺画では安倍首相がトラ
ンプ大統領の言いなりなっている様子が描かれ、まるで召使いみ
たいな扱いになっています。こういうことを、日本のメディアは
一切報道しないのです。
 2009年2月から、2015年7月まで、ニューヨーク・タ
イムズの東京支局長を務めたマーティン・ファクラー氏は、これ
に関して、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ワシントン・ポストやウォール・ストリート・ジャーナルが安
倍首相の単独インタビューを取ったからといって、私がニューヨ
ーク・タイムズ本社から「ウチも安倍首相の単独インタビューを
取ってこい」と催促されることはない。政権に媚びた報道をし、
覚えがめでたいメディアに成り下がるくらいならば、取材ルート
など遮断されたほうがよほどマシだ。幸い、ニューヨーク・タイ
ムズはそうした記者の姿勢をバックアップしてくれる。在ニュー
ヨーク日本領事館の職員が、ニューヨーク・タイムズ本社に「東
京のマーティン・ファクラー記者が、日本政府に批判的な記事を
書いた」と抗議に来たことがある。そのとき私は「オマエは何を
やっているのだ」とニューヨークの本社から非難されるどころか
「官邸が言うことを鵜呑みにしなかったわけだな。プレッシャー
に負けずによくやった」と応援してもらったものだ。
               ──マーティン・ファクラー著
      『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』/双葉社刊
─────────────────────────────
 安倍政権は、日本に駐在する外国人記者の記事に関しても内容
をチェックしていて、問題ありと判断すると、その新聞社の本社
に外務省を使って抗議するのです。海外メディアの記者も国内メ
ディアと同じように扱えると思っているようです。
 マーティン・ファクラー氏によると、日本より韓国の方が少し
マシであるといいます。批判記事を書くと、韓国外務省の報道官
から電話があり、食事を誘ってきたそうです。それに応じると、
その報道官は、ファクラーさんには言論の自由があるので、記事
は自由に書いていただいて結構である。しかし、記事のこの部分
は、問題点があるので、次回これに関して取材されるときは、よ
い情報源を紹介すると伝えられたというのです。
 韓国は、なかなかしたたかです。記事内容に抗議するのではな
く、やんわりと問題点を説明して誤りを正すなど、戦略的に海外
メディアとうまく付き合っているからです。
            ──[メディア規制の実態/040]

≪画像および関連情報≫
 ●新聞記者の「エリート意識」/2017年3月
  ───────────────────────────
   もちろん、既存メディアにも問題がある。大手メディアは
  ニューヨークやワシントンといった都市部を中心に記事を作
  成し、広大な地方の問題には目を配ってこなかった。ブレア
  氏が続ける。「メディアは都会の現象ばかり報じて、『ラス
  トベルト』(かつての工業地帯。ラストは錆のことで、使わ
  れなくなった工場や機械を表現している)で何が起きている
  のかをきちんと報道しませんでした。外国や移民に仕事を奪
  われて不満を抱いているかつての工場労働者にトランプ氏の
  支持者が多いと言われていますが、これまで彼らの苦悩を見
  過ごしてきたことが、メディアが軽蔑される理由となってい
  ます。主流メディアが報じる米国の姿と、実際に地方で起き
  ている事実の間には、大きな断絶があることがわかったので
  す。メディアは反省して、断絶がどういうものかを理解する
  努力をするべきです」。
   日本でもメディアと政権の信用度は逆転しつつある。新聞
  通信調査会による世論調査によると、新聞の信頼度は100
  点満点中68・6点で、民放テレビは59・1点だ。しかも
  年々、信頼度は低下傾向にある。片や安倍政権の内閣支持率
  は66%と高水準が続く。安倍晋三総理はこうした状況を歓
  迎しているようだ。産経新聞によると、安倍総理は昨年11
  月に行われたトランプ大統領との初会談で、こう言ったとい
  う。「実はあなたと私には共通点がある」。怪訝な顔をする
  トランプを横目に安倍は続けた。「あなたはニューヨーク・
  タイムズに徹底的にたたかれた。私もNYTと提携している
  朝日新聞に徹底的にたたかれた。だが、私は勝った・・・」
  これを聞いたトランプは、右手の親指を突き立ててこう言っ
  た。「俺も勝った!」と。     http://bit.ly/2CUt1Vq
  ───────────────────────────

ニューヨーク・タイムズ誌掲載の風刺画.jpg
ニューヨーク・タイムズ誌掲載の風刺画
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2018年03月02日

●「国谷裕子MCはなぜ降板したのか」(EJ第4715)

 安倍政権の発足後、テレビ界において、実力も実績もある3人
のMC(メインキャスター)が降板させられています。いずれも
時期は2016年3月末です。表向きの理由は「番組の再編」で
すが、いずれも安倍政権が深く絡んでいるのです。
─────────────────────────────
  1.古館伊知郎氏/テレビ朝日「報道ステーション」
  2.岸井 成格氏/    TBS「ニュース23」
  3.国谷 裕子氏/ NHK「クローズアップ現代」
─────────────────────────────
 私は、上記の番組のうち、「1」と「3」は、時間のある限り
いつも見ていた番組です。とくに「3」の国谷裕子氏は、MCと
しては、素晴らしいキャスターであったと思います。家にいて、
午後9時のNHKのニュースを見たときは、そのまま国谷MCの
「クローズアップ現代」を視聴したものです。さらに30分見る
価値があると判断したからです。しかし、どうして、国谷氏は、
MCを辞めることになったのでしょうか。
 国谷裕子氏が「クローズアップ現代」のMCを始めたのは19
93年4月5日からです。もちろん初代のキャスターです。した
がって、23年間この番組を担当していたことになります。月曜
日から木曜日の午後9時30分から10時までの30分間、金曜
日は休みではあるものの、ほぼ毎日、いつも新しいニュースの話
題を届けるのですから、テーマを理解するだけでも大変です。
 テーマは、政治、経済、文化、医療、安全保障、ICTなど、
あらゆる分野に及ぶので、覚えるだけで大変です。国谷氏はそれ
を23年間続けたのですから、凄いことです。しかし、かなりき
つい仕事であるので、いずれ体力上の理由で、自分の方から辞め
ることを申し出ることはあっても、番組再編などの局側の理由で
降ろされるとは、考えてもいなかったと国谷氏はいっています。
 ところが、2015年12月26日、国谷裕子氏は、2016
年度の契約は更新しないことをNHKから告げられたのです。理
由は「番組の再編」。国谷氏にとっては考えてもいなかった理由
です。まさに青天の霹靂であったといえます。
 このときの国谷氏の心中について、「本と雑誌のニュースサイ
ト/リテラ」は、次のように書いています。
─────────────────────────────
 国谷氏の降板は「上層部からのキャスター交代の指示」によっ
て決定した──。国谷氏は降板を告げられたとき、こんなことを
考えたという。「ここ一、二年の〈クローズアップ現代〉のいく
つかが浮かんできた。ケネディ大使へのインタビュー、菅官房長
官へのインタビュー、沖縄の基地問題、出家詐欺報道・・。国谷
氏が頭に浮かべたこれらのうち、最大の原因として考えられてい
るのが、いわずもがな菅義偉官房長官への集団的自衛権にかんす
るインタビューだ。この14年7月3日の放送で、国谷氏は舌鋒
鋭く集団的自衛権の行使にかかわる問題点を次々に質したが、放
送終了後に菅官房長官が立腹し、官邸サイドはNHK上層部に猛
抗議をしたと「FRIDAY」(講談社)が報じたほどに問題と
なった。               http://bit.ly/2ESok48
─────────────────────────────
 なぜ、降板させられたのか──国谷MCがこれしかないと考え
たのが、2014年7月3日放送の菅官房長官へのインタビュー
です。このインタビューの何がいけなかったのか──国谷氏は振
り返って考えてみても、自分としては国民を代表して菅官房長官
に聞いたまでであり、問題があったと思えないといっています。
このときの映像をネット上で見つけました。約22分です。
─────────────────────────────
   ◎2014年7月3日/「クローズアップ現代」
    「集団的自衛権/菅官房長官に問う」/22分
               http://bit.ly/2BQCvnK
─────────────────────────────
 見ていただくとわかりますが、国谷氏の質問はMCとしては、
至極真っ当なものです。問題となると思われるやりとり次に示し
ますが、菅官房長官はどこがアタマにきたのでしょうか。
─────────────────────────────
国谷:憲法の解釈を変えるということは、ある意味では、日本の
   国の形の在り方を変えるということにも、つながるような
   変更だと思うんですけれども、その外的な要因が変わった
   国際的な状況が変わったということだけで、解釈を本当に
   変更してもいいんだろうかという声もありますよね。
菅 :それはですね、逆に42年間、そのままで本当によかった
   かどうかですよね。今、大きく国際化という中で、変わっ
   てることは、これ、事実じゃないでしょうか。そういう中
   で、憲法9条というものを、私たちは大事にする中で、従
   来の政府見解、そうしたものの基本的論理の枠内で、今回
   新たにわが国と密接な関係がある他国に対する武力攻撃が
   発生して、わが国の存立そのものが脅かされ、国民の生命
   自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険とい
   う、そういうことを形の中に入れて、今回、閣議決定をし
   たということです。
国谷:その密接な国というのが、どういう国なのか。当然、同盟
   国であるアメリカっていうのは、想像できるんですけれど
   も、それはあらかじめ決めておくのか、それともその時々
   の政権が、これは密接な関係のある国だと決めるのか、こ
   れ、限定的な行使ということをきちっと守っていくうえで
   も、影響がある問題だと思うんですけれども。
菅 :そこについては、同盟国でありますから、アメリカは当然
   であります。そのほかのことについては、そこは政府の判
   断、時々のこれは状況によって判断していくということに
   これはなってくるというふうに思います。
─────────────────────────────
            ──[メディア規制の実態/039]

≪画像および関連情報≫
 ●クロ現・国谷裕子氏降板 「官邸の意向」説は本当か?
  ───────────────────────────
   夜の報道番組の「顔」がまた1人変わる。NHKは4月の
  番組改編で『クローズアップ現代』を一新、22年間キャス
  ターを務めた国谷裕子氏を降板させる。
   「制作現場は『国谷さんを降板させれば、官邸の意向に屈
  したと邪推される』と懸念したが、最後は上層部に押し切ら
  れたそうです」(NHK社会部記者)
   確かに菅官房長官と国谷氏には浅からぬ「因縁」がある。
  同番組が1年半前に放映した『集団的自衛権/菅官房長官に
  問う』で、国谷氏は「国際的な状況が変わったということだ
  けで、解釈を変更していいのか」と厳しく突っ込み、菅氏が
  たじたじになる場面があった。それに対して官邸がNHKに
  抗議したという報道もあったが、菅氏は否定した。
   その後、番組に「やらせ問題」が発覚すると、政府・自民
  党は異常とも思える“介入”に出た。自民党はNHK副会長
  を呼んで事情聴取し、高市早苗・総務相がNHKに厳重注意
  した。そうした安倍政権のやり方を放送倫理・番組向上機構
  (BPO)が政治の「圧力」「介入」と批判すると、菅官房
  長官は「圧力との指摘はあたらない」(昨年11月)と反論
  し、言論圧力問題論争へと発展した経緯がある。もっとも、
  NHK内部には以前から「国谷氏が長くなりすぎたので交代
  させたい」という声があったので、官邸の意向がうまく利用
  されたという見方もある。     http://bit.ly/2sWRtFS
  ───────────────────────────

国谷裕子元「クローズアップ現代」MC.jpg
国谷 裕子元「クローズアップ現代」MC
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2018年03月01日

●「『ホット炭酸』をするテレビ各局」(EJ第4714号)

 安倍政権と「四季の会」によって誕生した籾井勝人NHK会長
は、その就任会見で、一応個人的見解であると断りながらも暴言
を連発します。2014年1月25日のことです。砂川浩慶氏は
これを「放言」とし、次のように述べています。
─────────────────────────────
 従軍慰安婦問題について「今のモラルでは悪いことだが、戦争
地域にはどこにもあった」とし、ドイツ、フランスの名をあげ、
さらに「なぜオランダにまだ飾り窓があるんですか」と発言。尖
閣諸島・竹島などの領土問題については「国際放送で日本の立場
を主張するのは当然。政府が『右』というものを『左』というわ
けにはいかない」。特定秘密保護法については「国会を通ってし
まったので、言ってもしょうがない」などと発言した。
 これらの発言に対して批判がわき起こり、籾井氏は国会に招致
される。そして、「個人的見解だ」「放送に反映させることはな
い」と発言を釈明した。しかし、2月12日の経営委員会では、
経営委員からの就任会見以降の混乱への質問に対して、「ぜひこ
の前の記者会見のテキストを全部見ていただきたい。それでもな
おかつ私は大変な失言をしたのでしょうか」と述べており、本心
からの反省は感じられない。
      ──砂川浩慶著『安倍官邸とテレビ』/集英社新書
─────────────────────────────
 籾井氏は、安倍政権が自分に何を期待しているかをよくわかっ
ているつもりで、この発言をしたと思います。しかし、こういう
ことは就任会見でいうべきではなく、これにより、籾井氏は国会
に招致され、何回も喚問を受けることになったのです。それ自体
安倍政権の望むことではなかったはずです。
 2017年7月23日、次期会長の指名の検討をする指名部会
が行われた頃から、NHK内部では当時の松本会長の再任はもは
やなく、新会長は安倍政権寄りの人物が送り込まれるという雰囲
気が漂っていたといいます。
 ちょうどその頃、国会では、特定秘密保護法案が審議されてい
たのです。11月26日に自公の与党とみんなの党の賛成で衆議
院を通過し、12月6日に参議院も通過して成立しています。
 その頃から「ホット炭酸」という妙な言葉が流行しはじめたの
です。「ホット炭酸」とは何でしようか。
 「ホット炭酸」とは、文字通り温かい炭酸飲料のことです。し
かし炭酸は温度が高いほど抜けやすくなるため、温かい炭酸飲料
の商品化は困難とされてきたのですが、日本コカコーラとキリン
ビバレッジが独自技術の採用で、実現させたものです。
 といっても流行しているのは「ホット炭酸」そのものではなく
安倍政権のテレビ局規制に対応するための方法として使われてい
るのです。
 特定秘密保護法の成立にいたる一連の報道で、ある日のこと、
NHKのメインニュース番組である「ニュースウオッチ9」で、
「ホット炭酸」の話題を長々と流し、肝心の特定秘密保護法関連
のニュースは、時間も短く、内容の是非に踏み込んだ解説を故意
に避けたことがあります。
 つまり、どうでもよいことを長々と流し、肝心なことはサラリ
と触れる程度にして逃げたのです。これは明らかな官邸対策であ
り、このことから、そういうテレビ局の対応のことを「ホット炭
酸」と呼ぶようになったのです。いわゆるギョーカイ用語の一種
であるといえます。
 実際に、NHKは、特定秘密保護法そのものに関する報道の時
間は民放に比べて少なく、報道の自由を狭めかねない問題では、
独自の取材や解説をまったくしなかったのです。こうした報道も
「新会長」就任後を意識して、報道局の幹部たちが政権の意向を
先取りし、忖度したものと思われます。NHKというのは、そう
いう組織なのです。
 実際に籾井会長になってからのNHKの報道は、誰の目にも明
らかなほどの政権寄りであり、そういう意味で安倍政権にとって
は、籾井会長を送り込んだことは成功であったといえます。その
実態は、NHKのOBを中心とする「放送を語る会」がまとめた
実証データによって明らかです。具体的には、『安保法案/テレ
ビニュースはどう伝えたか/検証・政治権力とテレビメディア』
(かもがわ出版)によって知ることができます。
 対象番組は、NHK「ニュース7」と「ニュースウォッチ9」
日本テレビ「NEWS ZERO」、テレビ朝日「報道ステーシ
ョン」、TBS「NEWS 23」、フジテレビ「みんなのニュ
ース」の民放を含む6番組です。このなかから、NHKの2番組
のコメントについて、砂川浩慶氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 NHKの「ニュース7」「ニュースウォッチ9」は、政権にマ
イナスになるような出来事や審議内容を極力伝えない傾向があっ
たこと、記者解説が「政府広報」という印象を与えていること、
国会審議の伝え方で政府・与党の主張に傾斜していることなどを
指摘している。
 NHKの報道で私が気になっているのは、その見せ方である。
国会審議の模様を報じる際、質問者の質疑後に安倍首相の答弁を
映し、特にコメントもなく次の話題へ移る。映像メディアの特性
として、この手法では全体の問題点は分からず、最後の安倍首相
の答弁だけが印象に残る。高市早苗総務大臣の停波発言問題でも
同様の手法が使われており、報道機関として、問題の解説より政
府の答弁を重視する姿勢が如実に表れている。
      ──砂川浩慶著『安倍官邸とテレビ』/集英社新書
─────────────────────────────
 NHKの報道はまるで政府広報である──NHKのOB自身が
実証データに基づいてそういっています。まさに「ホット炭酸」
そのもの。しかし、安倍政権は、そういうNHKのある番組も気
に入らず、圧力をかけて、著名キャスターを交代させるなどして
います。        ──[メディア規制の実態/038]

≪画像および関連情報≫
 ●時代の危機を感じるNHK首脳の人模様
  ───────────────────────────
   国営放送といえば、すぐ北朝鮮や中国のメディアが思い浮
  かぶ。一方、公共放送のイメージはいまひとつ定かでないが
  公共や公共性の概念を駅のコンコースに例えると分かりやす
  い。立場や考え方は違えども人それぞれに幸せを求め行き交
  う開かれた空間がコンコースであり、何か邪悪な意図で人々
  の自由な行動を妨げる者は排除されねばならない。公共放送
  も同じことで、広く人々を幸せに導く知識・情報の伝達が責
  務であり、特定の政治勢力が横車を押すような愚は厳に慎ま
  ねばならない。民主主義社会を支えるメディアであり、国営
  放送とは理念が異なる。
   その視点から見て公共放送NHKの籾井勝人会長と最高意
  思決定機関である経営委員会の委員2人による昨今の言動は
  深い不信感を抱かせる。現に欧米諸国のメディアのNHK批
  判は厳しく、ドイツ紙はNHKを国営放送と決め付けたうえ
  「日本の国営放送を中国的状況が支配している」とまで酷評
  している。ケネディ・駐日米国大使がNHKの取材を拒む事
  態も尋常なことではない。元従軍慰安婦の、人格をおとしめ
  る歴史の事実を否定、東京裁判は拒否し、思想の違う相手を
  「人間のくず」と呼ぶ。言論テロを称賛するような論文を発
  表する。批判を招く首脳陣の言動は多岐にわたるが、会長発
  言には公共放送トップの自覚を疑わせるものもあった。日本
  の知性を代表する立場だが、心に響く論理も言葉の修辞もま
  るで抜け落ちた品性を欠く言説に筆者は寒気を覚えた。籾井
  会長は主要な発言を撤回したが、本音はどうなのか不審な言
  動が続く。            http://bit.ly/1i0KnzK
  ───────────────────────────

当時のNHK「ニュースウォッチ9」.jpg
当時のNHK「ニュースウォッチ9」
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2018年02月28日

●「安倍政権によるNHK支配の実際」(EJ第4713号)

 NHKの年度予算はどのくらいあるかご存知でしょうか。
 2015年度を例にとると、6831億円です。世界の放送局
では最大規模になります。このうち受信料収入は6608億円で
96・7%を占めています。つまり、われわれ国民が支払う受信
料でNHKは成り立っていることがこれでわかります。
 われわれにとって最も身近な国内放送番組の制作費や、その送
出経費および人件費は5106億円。単純計算ですが、1日当た
り約14億円が使われている計算になります。これだけのお金が
使われているのですから、NHKは国民が求めている正しい報道
を心がける義務があります。時の政権におもねるような報道は絶
対にすべきではなく、正しく公平な報道に努めるべきです。
 第2次安倍政権では、最初から経営委員長を獲りに行き、物議
を醸したので、経営委員を増やす作戦に変更しています。経営委
員の総数は12人、任期は3年ですが、再任もあり得ます。民主
党政権時代の経営委員が次々と退任するときに、安倍政権の親派
の経営委員を送り込み、4名の親派の委員を確保して、会長選出
のキャスティングボードを握る作戦です。
 安倍政権がスタートしたときのNHK会長は、2011年に就
任した松本正之氏です。松本会長は受信料の値下げを断行する一
方で、経費削減を図り、増収を実現するなど、なかなかの経営成
果を上げており、その退任は2014年1月24日に迫っていた
ものの、再任が有力視されていたのです。
 しかし、安倍政権としては、意中の会長を送り込むため、次の
ように、4人の経営委員と1人の再任の人事案を国会に提示し、
衆参両院の同意を獲得したのです。これによって状況は一変し、
松本正之会長は退任必至となったのです。
─────────────────────────────
   ◎2013年11月11日         (敬称略)
    百田 尚樹(作家)
    本田 克彦(JT顧問)
   ◎2013年12月11日
    長谷川三千子(埼玉大学名誉教授)
    中島  尚正(海陽学園海陽中等教育学校長)
    石原   進(JR九州会長/再任)
      ──砂川浩慶著『安倍官邸とテレビ』/集英社新書
─────────────────────────────
 作家の百田尚樹氏は、2012年の自民党総裁選で、「安倍晋
三総理大臣を求める民間人有志の会」の発起人で、大の安倍ファ
ンですし、JT顧問の本田克彦氏は「四季の会」の有力メンバー
であり、東大の学生時代には、成蹊小学校に通っていた安倍氏の
家庭教授をしている間柄です。
 埼玉大学名誉教授の長谷川三千子氏も百田氏と同様に「安倍晋
三総理大臣を求める民間人有志の会」の会員です。海陽学園の中
島尚正氏については、海陽学園が「四季の会」の幹事役である葛
西敬之氏が創設に関わっているので、安倍親派です。再任の石原
進氏はJR九州会長ですが、同じ九州出身の籾井勝人氏を会長に
推薦したといわれています。
 本当のところ、誰が籾井勝人氏をNHK会長に就任させようと
したのでしょうか。12月10日の午後、安倍首相は次の人物と
会食しています。
─────────────────────────────
 12月10日付「首相動静」
 (午後)7時8分、東京南麻布の日本料理店『有栖川清水』。
葛西敬之JR東海会長、古森重隆富士フイルムホールディングス
会長らと食事。
─────────────────────────────
 葛西敬之氏と古森重隆氏はともに「四季の会」のメンバーであ
り、古森氏は第1次安倍政権のとき、NHKの経営委員長を務め
ているので、時期的に考えてもこの会食は、NHK次期会長の人
事に関する相談であったことは確かです。
 こうした財界の大御所が動き、立派な経営成果を上げている松
本正之会長(当時)の再任を覆してまで、推挙した籾井勝人氏と
は、どういう人物なのでしょうか。
 記者が「安倍首相がNHKの偏向報道を懸念しているが、不偏
不党をどう考えるか」と質問すると、次のように答えています。
これだけで、この人がどういう人であるかわかると思います。
─────────────────────────────
 それはNHKに限らず、テレビの報道は皆おかしいですよ。例
えば、「反対!」っていう人ばかり映して、「住民が反対してい
る」と。じゃあ何人デモに来ていたか、というのを言わない。僕
は言うべきだと思っている。賛成と反対があるならイーブンにや
りなさい。安倍さんが言っているのはそういうことですよ。何も
左がかっているから右にしろと言っているわけではないと僕は理
解しています。    ──籾井勝人氏 http://bit.ly/2EQV9dO
─────────────────────────────
 NHKでは、会長が任期満了になる6ヶ月前に、経営委員全員
による「指名部会」を立ち上げる決まりになっています。実際に
2013年7月23日に第1回の指名部会が開催され、松本会長
に再任を促していますが、松本会長はその場で辞意を表明してい
るのです。
 松本正之氏といえば、JR東海の副会長のときの上司が葛西敬
之氏であり、実際に会長になるときも、葛西敬之氏が支援してい
るのです。それなのに、葛西氏はこのとき「松本降ろし」を決断
しています。どうしてかというと、週刊誌報道によれば、NHK
会長になってからの松本氏は、葛西氏の要望を聞かなくなったか
らといわれていますが、真偽は不明です。松本会長にしても「四
季の会」というものがあり、安倍政権ができた以上、再任の要請
はあったとしても、自分はこのさい身を引くべきであると感じて
いたのではないかと思います。
            ──[メディア規制の実態/037]

≪画像および関連情報≫
 ●NHK会長が怒鳴り散らすと、何がマズイのか
  ───────────────────────────
   2015年2月18日午前、NHKの籾井勝人会長が民主
  党の総務部門会議に呼ばれて中期経営計画を説明する席で、
  顔を真っ赤にさせて国会議員とやりあった。このやりとりの
  様子は、NHKを除く、主要な民放テレビ局全社のニュース
  番組やワイドショーで取り上げられた。
   昨年の会長就任の記者会見では「従軍慰安婦」について、
  「どこの国でもやっていたこと」などと発言して問題になっ
  た際も、政治的に微妙な発言だと考えたのか、あるいは「個
  人的な発言」だとして「撤回」したことを配慮したのか日本
  テレビやフジテレビは「問題発言」というふうには取り上げ
  なかった。しかし、今回は違う。民放全社が「色をなして怒
  り狂うNHK会長」の映像を放送した。
   それは公共放送機関のトップという重職にある人物が、感
  情むき出しで怒鳴るという光景がめったに見られない「面白
  シーン」として、映像に記録されてしまったからだ。彼の政
  治的な主張やNHK会長としての対応の是非はともかくとし
  て、視聴者が驚くような「面白い映像」だったからである。
   (議員)「よくあることなんですか、本当に?」
   (会長)「よくあることじゃないですか」
   (議員)「撤回してください」
   (会長)「撤回しません」
  会場の去り際に議員から「失礼だ」と言われて、「あなたこ
  そ失礼だ」と紅潮させて興奮したまま議員に叫び続けた。こ
  の場面を放送したテレビ各局のカメラマンや編集者などは、
  「久々に面白いものを見てしまった」という感覚で放送した
  のだろうと想像する。       http://bit.ly/1zQeUqC
  ───────────────────────────

籾井勝人前NHK会長.jpg
籾井勝人前NHK会長
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2018年02月27日

●「経営委員長を送り込んだ1次政権」(EJ第4712号)

 第1次安倍政権は、2006年9月26日からスタートしてい
ます。2007年6月に、当時、富士フィルムホールディングス
社長(現会長)の古森重隆氏がNHK経営委員長に就任していま
す。これは安倍首相が「NHK支配」に向けて最初に実施した人
事です。政権によるメディア支配は最初から安倍首相の頭にあっ
たものと思われます。
 NHKの会長は、放送法上、経営委員会が任命し、その選出に
は、経営委員12名中、9名以上の同意が必要とされるのです。
つまり、経営委員うち4名が反対すると、会長になれないことに
なります。経営委員会は強い権限を持っているのです。
 そこで、安倍首相は、経営委員長に自分に近い人間を送り込も
うとしたのです。それが古森重隆氏です。古森氏は「四季の会」
のメンバーです。「四季の会」というのは、安倍晋三氏が若手議
員の頃から応援し、激励している財界人の会です。「ライブドア
ニュース」に次の解説があります。
─────────────────────────────
 「四季の会」は、葛西敬之・東海旅客鉄道(JR東海)会長が
幹事役を務める財界人の集まり。前回、安倍氏が政権を投げ出し
た後も、元首相を励まし続け、「再登板」を働きかけてきた。
 葛西氏が東大法学部で机を並べ親友だった与謝野馨氏(故人)
に「若手の有望株を呼んで勉強会をやろう」と持ちかけ、与謝野
氏が、当時官房副長官だった安倍氏を引き合わせたのが始まり。
2000年に「四季の会」は発足した。 http://bit.ly/2EPcCaE
─────────────────────────────
 安倍政権では、その第1次政権のときから、安倍首相の取り巻
きというか、応援団が多くいて、いろいろな分野で暗躍していま
す。NHKでも同様です。この古森経営委員長時代に、NHK会
長に就任した第19代の福地茂雄会長(アサヒビール相談役)と
20代の松本正之会長(JR東海副会長)は、いずれも「四季の
会」のメンバーです。
 しかし、古森経営委員長の評判は、必ずしも芳しいものではな
かったのです。やることが強引で、何かと物議をかもすことが多
く、番組内容に口を出すことも多々あったのです。そのため、日
本ジャーナリスト会議(JCJ)や、「NHKを監視・激励する
視聴者コミュニティ」などの市民団体が、古森経営委員長の解任
を要求したほどです。
 この第1次安倍政権のときに、放送行政全般を総括する総務大
臣のポストに就いていたのが、第2次安倍政権の官房長官を務め
ている菅義偉氏です。今と同じ構図です。このとき、菅総務相は
テレビ局への行政指導を連発しています。
 2006年9月〜2007年9月まで、菅総務相が行政指導を
行った案件を砂川浩慶氏の本から引用します。
─────────────────────────────
   1.2006年12月 8日
    毎日放送「2006ミズノクラシック」
   2.2007年 3月30日
    関西テレビ「発掘!あるある大事典U」
   3.2007年 4月27日
    TBS「人間!これでいいのだ」
    TBS「サンデージャポン」
    TBS「みのもんたの朝ズバー!」
   4.2007年 4月27日
    テレビ東京「今こそキレイになってやる!」
   5.2007年 4月27日
    毎日放送「たかじんONEMAN」
   6.2007年 4月27日
    テレビ信州「ゆうがたGet!」
      ──砂川浩慶著『安倍官邸とテレビ』/集英社新書
─────────────────────────────
 驚くべき数の多さです。しかも同じ日に、いくつもの行政指導
を行っています。これらを個別に見て行くと、政治的なものはな
く、単に一部に事実と異なる報道があったり、過剰な演出などの
指摘であり、総務省が目くじら立てて、行政指導をすべき事案で
はないと思われます。これについて、著者の砂川浩慶氏は、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 放送局が意図的に事実をまげた報道を行なうことは当然責めら
れるべきであるが、それは本来、視聴者と放送局という直接的な
関係の中で謝罪・訂正がなされるべきものである。免許付与権限
を持つ総務省が、国家権力を背景に放送局に威圧的な指導を繰り
返すことが大きな萎縮効果をもたらすのは明らかだ。
      ──砂川浩慶著『安倍官邸とテレビ』/集英社新書
─────────────────────────────
 実はこのとき、菅総務相は、テレビ局などの番組に行政がもっ
と介入しやすくできるよう放送法第175条を改正しようと画策
していたのです。そのため、放送局への介入を意図的に増やして
いたのではないかと考えられます。
 しかし、さすがにこの改正には「総務大臣の権限強化につなが
りかねない」との反対が多く出て、当時の民主党が反対し、自民
党との協議で却下されています。これを受けて放送界でBPOに
「放送倫理検証委員会」を設置することで収まっています。
 しかし、メディアを何とか規制し、政権にとって都合の悪いこ
とは報道させないようにしようとする安倍首相と菅官房長官のコ
ンビが再び復活し、もっと露骨にメディアを牛耳ろうとしている
のです。番組の細かなこと──例えば、街頭での国民の声を収録
したビデオに対し、総理大臣ともあろう人が、放送法違反である
として、直接クレームをつけることまでやっています。メディア
もそれと戦うどころか、政権の意向を忖度し、文句をつけられな
い内容の番組を制作し、国民の知る権利を大きく阻害しているの
です。         ──[メディア規制の実態/036]

≪画像および関連情報≫
 ●放送行政 口出しが過ぎる総務省(東京新聞社説)
  ───────────────────────────
   大臣が新たな強権を要求すれば、役人は番組の作り方を指
  南する−関西テレビの番組捏造問題を機に、放送に対する行
  政介入が目立つ。視聴者の怒りに乗じた、公権力の過度な口
  出しは危うい。菅義偉総務相は関西テレビに対して、捏造に
  関し経営責任にまで踏み込む報告を要求した。
   総務省情報通信政策局は、主要民放、NHKの番組チェッ
  ク体制を調査し「取材やVTR編集に局プロデューサーが立
  ち会う」「専門家の参画を進める」などと具体的な再発防止
  策を提言した。総務相らは自らを「放送監督官」と勘違いし
  ていないか。そうだとすれば戦前の意識だ。番組作りは各局
  独自の創意工夫が基本である。
   おまけに同相は、放送局に対する業務改善命令や課徴金な
  どを新設して、監督を強化すると言い出した。「事実と異な
  る報道に表現の自由はない」というのである。報道の何が事
  実と異なるか、一義的には明らかでないことが多い。行政に
  よる介入は極めて危険だ。この点は再発防止計画を命ずる同
  省の新方針も同じだ。放送法制では番組が政治的に公平であ
  ることや事実を曲げないことを求めている。放送免許取り消
  し、電波停止などの処分もある。処分発動の前例がないのは
  表現・報道の自由を侵しかねないからである。
                   http://bit.ly/2sRw1lt
  ───────────────────────────

菅総務大臣(当時).jpg
菅総務大臣(当時)
 
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2018年02月26日

●「テレビ局はなぜ放送法を恐れるか」(EJ第4711号)

 安倍首相は、その第1次政権と現在の第2次政権にかけて、メ
ディア、とくにテレビ局を完全に制圧し、強い批判の封じ込めに
成功しています。もともと安倍政権に親密なメディアとしては、
NHKと読売新聞とフジテレビです。
 この読売新聞とフジテレビのトップは、いずれも社長に就任し
てからの期間が長いのです。渡邊恒雄読売新聞グループ本社会長
は27年、日枝久フジテレビ会長は30年です。トップをいつま
でも続けていられるようです。これにならってか、テレビ朝日の
早河洋会長もいつまでもトップを続ける体制を作っています。
─────────────────────────────
 ≪社長への就任年月≫
  渡邊恒雄・読売新聞グループ本社会長 ・・ 1991年
  日枝 久・フジテレビ会長      ・・ 1988年
─────────────────────────────
 ここまでテレビ局の安倍政権への傾斜ぶりについて述べてきま
したが、NHKはどうなのでしょうか。安倍政権はもちろんNH
Kに対して手を打っています。それでも安倍政権にとっては、N
HKとフジテレビと読売テレビは安全パイなのです。
 ところで、NHKについては、立教大学教授の砂川浩慶氏の本
に、次のきわめて興味あることが載っています。
─────────────────────────────
 2015年7月21日、NHKニュースは「安保法制、来週か
ら参議院で審議入り」と報じた。この中で隠し撮り風の映像で伝
えたのが、車から降りてフジテレビに入る安倍首相と、満面の笑
みを浮かべて出迎える日枝久・フジテレビ会長、そして局を去る
安倍首相をこれまた満面の笑みで見送る日枝会長の姿であった。
 前日の7月20日、安倍首相は、フジテレビ「みんなのニュー
ス」(15時50分〜19時)に一時間余りにわたり生出演し、
安保法制の必要性を語っていた。そのスタジオ入りの前の映像で
ある。だがNHKニュースは、首相が番組に出演して語ったこと
を紹介するわけではなく、総理大臣とフジテレビの最高権力者と
のツーショットを映像で紹介しただけである。また、この映像に
は日枝会長を説明するテロップはなく、一般の視聴者には、安倍
首相以外の人物は誰なのか分からないものだった。
      ──砂川浩慶著『安倍官邸とテレビ』/集英社新書
─────────────────────────────
 NHKが報道したのは、「安保法制/来週から参議院で審議入
り」なのです。そのバックの映像にフジテレビ入りする安倍首相
を満面の笑みで出迎え、テレビ局を去る安倍首相を丁重に見送る
日枝会長の姿が映っていたのです。しかも映像についての説明は
一切なく、テロップも出ないのです。
 砂川氏は、読売新聞の記者が教えてくれたのだと断って、この
映像を使った理由を次のように明かしています。
─────────────────────────────
 まるで、安倍内閣を支持しているのはNHKだけじゃない、フ
ジテレビなんて会長自ら出迎えているぞ、というメッセージだ。
それを読売新聞が言えた義理ではないけれど・・・。
      ──砂川浩慶著『安倍官邸とテレビ』/集英社新書
─────────────────────────────
 もちろん、この映像の意味がわかる人は、フジテレビの会長の
顔を知っている人だけなので、明らかに玄人向けのメッセージで
あるといえます。
 しかし、なぜテレビ局は、なぜこうも、政府の圧力に弱いので
しょうか。
 それは日本の放送法は「再免許制」だからです。米国などの放
送免許は「更新制」です。運転免許などと同様に、とくに違反な
どがない場合は、そのまま更新されます。
 しかし、日本の場合、テレビ局に重大な違反があると、放送免
許を取り消し、復活するには、すべての申請を一から行う「再免
許制」をとっているのです。したがって、テレビ局としては放送
免許を取り消されると、大変なことになります。放送局の免許は
親局だけではなく、中継局や中継用の無線局も含むので、その申
請のやり直しは膨大な申請書類が必要になるからです。
 実際に安倍政権では、高市早苗総務相が放送法4条の「政治的
公平」の解釈について、一つの番組だけでも、実際に放送局に電
波停止を命じる可能性に言及しています。これでテレビ局は震え
上がってしまったのです。
 しかし、高市総務相のこの発言には議論があるのです。なぜな
ら、地上波に関しては、本来番組内容を理由とした免許停止はで
きないのです。なぜなら、地上波の免許は、電波を発射する設備
すなわち「ハード」に対する免許であって、放送される番組(ソ
フト)に対する免許ではないからです。したがって、番組内容に
問題があるからといって、再免許を拒否できないからです。
 しかし、1993年のいわゆる椿発言問題(1月16日/EJ
第4683号参照)において、当時の郵政省は、設備免許でも電
波停止が可能であるとして、次のように発言しています。
─────────────────────────────
 もし政治的公平を定めた放送法違反があれば、電波法第76条
によって、電波を止めることもできる。    ──郵政省幹部
      ──砂川浩慶著『安倍官邸とテレビ』/集英社新書
─────────────────────────────
 高市総務相の発言は、この発言をベースにしたものと思われま
す。いずれにせよ、総務相がテレビ局に対し、「電波停止」を口
にすることは、テレビ局に対する最大の脅し以外のなにものでも
ないのです。まさにやってはならない露骨な圧力です。
 この椿発言によって、在京テレビ局各社は、自発的に社内に報
道のあり方を検討する組織を設けて、番組の自主管理に取り組む
ようになったのです。これは、完全にテレビ局の敗北であり、現
在のテレビ番組の惨状を招くようになったといえます。
            ──[メディア規制の実態/035]

≪画像および関連情報≫
 ●一番ガバナンスがないのは、新聞社だった/高橋洋一氏
  ───────────────────────────
   世界基準で見てもこの日本のメディア構造は異常である。
  普通の国ではメディアも普通に買収される。経営者が代わる
  こともあるので、これが会社としてメディアとしての緊張感
  につながるのだ。
   たとえば2015年の11月に、日経新聞が、米フィナン
  シャル・タイムズを買収したことは記憶に新しい。日経新聞
  が、米フィナンシャル・タイムズの親会社だった英ピアソン
  から株式を買収して自らのグループに組み込んだのだが、こ
  れはごく普通の企業買収と言える。しかし日経新聞のほうは
  株式が譲渡できないから、決して買収されない仕組みになっ
  ている。そんなものは商法違反でないか、と憤る人もいるか
  もしれない。この状態を商法の適用除外にしているのが「日
  刊新聞紙法」なのだ。
   日刊新聞紙法はすごく短い法律で、正式には「日刊新聞紙
  の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する
  法律」という。名前に書いてあることがこの法律のすべてで
  「株式は譲渡されない」ということしか書いていない。新聞
  の既得権の最大のものと言っていい。普通に働いている人た
  ちには馴染みがないが、新聞社に務める人間ならみんな知っ
  ている法律だ。しかし、新聞社の人間でこのことを堂々と記
  事で書く人間はいない。新聞は企業の不祥事があった時に、
  「コーポレートガバナンスができていない」「社内制度が悪
  い」などと書き連ねるが、一番ガバナンスができていないは
  その新聞社なのだ。記者も、それが分かっているから日刊新
  聞紙法について恥ずかしくて書けないのだろう。
                   http://bit.ly/2sNJBGD
  ───────────────────────────

日枝久フジテレビ会長.jpg
日枝久フジテレビ会長
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2018年02月23日

●「『徹の部屋』では何が話されたか」(EJ第4710号)

 「AbemaTV」 (アベマTVと表記)というテレビがあります。
PCやスマホ向けのライブストリーミング形式で映像を配信する
インターネットテレビのことです。株式会社アベマTVが運営し
ていますが、放送事業者ではないので、放送法の対象にはならな
いのです。
 ライブストリーミングというのは、データをダウンロードしつ
つ同時に再生する方式のストリーミングの一種であり、映像や音
声をリアルタイムで配信し、リアルタイムでデータの変換を行い
そのままストリーミング再生するというものです。
 この株式会社アベマTVは、テレビ朝日が40%、サイバーエ
ージェントが60%を出資しており、取締役会長には、早河洋テ
レビ朝日会長、代表取締役社長には、藤田晋サイバーエージェン
ト社長が就任しています。この早河洋氏と藤田晋氏を結びつけた
のが、幻冬舎の見城徹社長です。
 既に述べているように、見城徹氏はテレビ朝日の放送番組審議
会会長を務めていますが、サイバーエージェントの藤田晋社長を
そのメンバーに加えています。このように、この早河、見城、藤
田の3氏は大変仲が良く、いろいろな企画を話し合い、実行に移
しています。
 そのひとつにアベマTVには「徹の部屋」という番組があり、
政財界の有名人を招いて、見城社長がゲストと本音で話し合うと
いうものです。
─────────────────────────────
    「徹の部屋」一番会いたい人物と本音トーク
                 ──アベマTV
─────────────────────────────
 2017年10月8日夜のことです。公示前とはいえ、選挙の
直前です。「徹の部屋」に安倍首相が出演したのです。そのとき
のメンバー(敬称略)は次の通りです。
─────────────────────────────
    「徹の部屋」一番会いたい人物と本音トーク
     司 会:見城徹/アシスタント:大石絵理
     出演者:安倍晋三首相
         ジャーナリスト/有本香
         ジャーナリスト/東海大学教授/末延日正
─────────────────────────────
 この日、この「徹の部屋」での出席者の発言をいくつか次にご
紹介します。ソースは「ニュースサイト/リテラ」です。読み易
いように文章を一部変更しています。
─────────────────────────────
見 城:ボクは、ずっーと安倍さんのファンなんですよ。日本の
    国は安倍さんじゃなきゃダメだと思っています。大石さ
    ん、安倍さんの印象どうですか。
大 石:ダンディでかっこいい方ですよね。
見 城:すごくハンサムですよ。内面が滲み出ているお顔です。
大 石:嘘が苦手そう。
見 城:ほんとうにね。信義に厚い方。私利私欲がない。だから
    足を引っ張られやすい。
末 延:安倍さん、いい人なの。正直だから嘘をいえない。だか
    ら、ちょっと口下手なところがある。
安 倍:きょうはね、そうやって褒めていただいて、本当にうれ
    しいですよ。
見 城:ほんとうにね。安倍さんにがんばっていただかないと、
    日本は経済も立ち行かなくなるし、北朝鮮からも守れな
    いし、外交も歴代の総理大臣でこれだけのことをやった
    人はいないですよ。ところが、メディアは報道すべきこ
    とを報道しない。
末 延:日本のメディアは権力監視を勘違いしている。
有 本:日本のメディアはね、そういう人たちだから。
末 延:総理がつらいのは、じっと聞いていなきゃいけない。反
    対した人も含めてね。日本の暮らしを当然守る責任があ
    る仕事ですよ。そこはしようがないですよね。総理大臣
    になったんだから。
安 倍:それは当然そうなんですね。私に批判的な人たちに対し
    ても総理大臣としてはその人のですね、生活(政策?)
    に対して・・・
末 延:それでも腹が立つでしょ?
安 倍:まだまだ人間ができていませんからね。
見 城:いい人すぎるんですよ。
末 延:正直ですよ。
安 倍:久々にそういっていただけて、うれしいです。もう、い
    ままでずっと「安倍独裁」とかいわれてですね、そんな
    ことはやっぱりなんですねえ。 http://bit.ly/2EGh9YH
─────────────────────────────
 中身のない、飲み屋で話すような話です。それにしても安倍首
相への歯の浮くようなお世辞の嵐です。これについて、リテラは
次のように締めくくっています。
─────────────────────────────
 もはや言葉を失うしかない。しかしきっと、安倍首相は見城を
はじめとする会食仲間から、いつもこのように、「人間として深
まっている」などとヨイショばかり受けているのだろう。そうし
てどんどん国民から背を向け、自分中心で政治を動かしてきたの
だろう。そんな「闇」が、この番組によってオープンにされたの
である。(一部略)見城は「ほんとにメディアは報道すべきこと
を報道しない」などと言って安倍首相を擁護したが、このような
為政者と距離も置かずにベッタリした関係を流すだけの番組を彼
は「あるべき放送」とでも考えているのだろうか。
                   http://bit.ly/2CzgRB2
─────────────────────────────
            ──[メディア規制の実態/034]

≪画像および関連情報≫
 ●アベノTVをめぐる見城、藤田、早河の関係
  ───────────────────────────
   じつはこのAbemaTV をめぐる、見城氏および藤田氏と早河
  会長の関係については、2017年6月29日のテレビ朝日
  株主総会でも問題視されていた。前述とは別の関係者がその
  ときの様子をこう語る。
   「総会ではAbemaTV と『徹の部屋』を名指しするかたちで
  見城氏と藤田氏がテレ朝の番組審議会委員であることは利益
  相反にあたるのではないかとの強い疑義が呈された。早川会
  長の指定で、広報やコンプラ関連を統べる両角(晃一)取締
  役が応答したのですが、ところが、口から出たのは彼らへの
  惜しみない賛辞。とくに見城氏に対しては『大変に高い見識
  をおもちの方』とか、『当社としても大変感謝してございま
  す』などと絶賛の嵐でした。一方、番組審議会については、
  『公平なチェック機関として機能を十分に活かしています』
  とだけ言って終わらせてしまった」。
   だが、今回の『徹の部屋』のあまりに露骨すぎる放送によ
  って、このAbemaTV 問題が再燃するのは必至だ。当然、次の
  株主総会では大きな問題になるだろうし、選挙後に告発の動
  きもあるのではないかともいわれている。
   しかし、一方で、テレビ朝日の安倍応援団による侵食は確
  実に影響を強めている。5月の安倍首相と早河会長、篠塚浩
  取締役報道局長、伊井忠義政治部長らの会食の直後、テレ朝
  の政治部記者が菅偉義官房長官の会見で“助け舟”質問をし
  たり、森友・加計問題追及の先陣をきってきた『羽鳥慎一モ
  ーニングショー』で、急に政権批判がトーンダウンしたり、
  また、8月には『グッド!モーニング』が加計問題をめぐり
  安倍首相の側近である萩生田光一自民党幹事長代行に全面謝
  罪する場面があった。テレビ朝日はこのまま、安倍一派に私
  物化されてしまうのか。それとも、自浄作用を発揮できるの
  か。その動向を今後も注視していく必要があるだろう。
                   http://bit.ly/2ERXubN
  ───────────────────────────

「徹の部屋」/2017年10月8日放送回.jpg
「徹の部屋」/2017年10月8日放送回
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2018年02月22日

●「どこもかしこも安倍応援団ばかり」(EJ第4709号)

 私が家にいるときに視聴しているテレビ番組と、そこに登場し
ている安倍首相親派のコメンテーターを再現します。
─────────────────────────────
       ◎「グッド!モーニング」
        ・宮家邦彦氏(水)
       ◎「羽鳥慎一モーニングショー」
     →  ・田崎史郎氏(随時出演)
       ◎「ワイドスクランブル第1部」
     →  ・末延吉正氏(木/金)
       ◎「ひるおび!」
        ・田崎史郎氏(随時出演)
─────────────────────────────
 元TBS記者の山口敬之氏が、レギュラーコメンテーターでは
ないが、「羽鳥慎一モーニングショー」に出演するようになった
のは、2016年11月に安倍首相が、米国大統領に当選したば
かりのトランプ氏と初会談を行った直後のことだったと覚えてい
ます。安倍首相は、トランプ氏に会って何を話したのか、それに
対するトランプ氏の反応はどうだったのかなどについて、当然の
ことながら、当時強い関心が集まっていたのです。
 そのとき、山口敬之氏について、『総理』という本の執筆者で
あることが紹介されています。これで山口氏が、安倍首相に近い
ジャーナリストであることが印象づけられたことになります。こ
の番組には、田崎史郎氏もよく出演します。テーマによっては、
田崎氏と山口氏の2人が、コメンテーターとして出演することも
あったと思います。2人は安倍首相をサポートする忠実なコメン
テーターであるといえます。
 山口敬之氏は、『総理』に続き、2017年1月に『暗闘』と
いう本も上梓しています。出版社いずれも幻冬舎です。
─────────────────────────────
  山口敬之著『総理』/幻冬舎/2016年 6月 9日
  山口敬之著『暗闘』/幻冬舎/2017年 1月27日
─────────────────────────────
 ところで、安倍政権は、どのようにして田崎氏や山口氏のよう
な安倍親派コメンテーターを「羽鳥慎一モーニングショー」にタ
イミングよく、送り込めるのでしょうか。
 それは、山口敬之氏の2冊の本の出版社、幻冬舎の見城社長の
力によるものです。幻冬舎の見城徹社長は、いわずと知れた安倍
首相の熱烈応援団の1人です。1月29日のEJ第4692号で
述べたように、見城社長はそれまで関係のあまり良くなかったテ
レビ朝日の早河洋会長や吉田慎一社長を安倍首相との会食会に連
れて行き、安倍首相との間を取り持っているのです。
 それに見城社長は、テレビ朝日の放送番組審議会の委員長を務
めており、番組に関していくらでも口を出せるのです。そのため
テレビ朝日のどの番組に誰を出せとか、出すなとか、出演者をい
くらでもコントロールできるのです。
 古賀茂明氏は、見城徹委員長から当時の「報道ステーション」
が、さまざまなクレームをつけられ、結局、惠村コメンテーター
が降板させられる原因になったことを次のように述べています。
─────────────────────────────
 レギュラーコメンテーターの恵村氏(古賀氏が出演していたと
きの朝日新聞論説委員)も、物腰は柔らかいが、圧力をものとも
せず、信念を貫く人物だ。従軍慰安婦問題に関して、「旧日本軍
の管理下で、自由を奪われて人権や尊厳を踏みにじられた女性が
いたことは確かだ」と発言したが、そのためテレビ朝日の放送番
組審議会で、幻冬舎社長の見城徹委員長から、「ひどすぎる」、
「番組をだいなしにした」「トンチンカン」などと、名指しで批
判されたこともある。私にいわせれば見城氏の意見のほうが「ひ
どすぎる」のだが、それだけ骨のある人物だということだ。この
発言の直後には、早河会長から現場に、「恵村を番組で使うわけ
にはいかない」という指示が出されたという。
       ──古賀茂明著/講談社刊/『日本中枢の狂謀』
─────────────────────────────
 テレビ朝日の午前10時25分からはじまる「ワイドスクラン
ブル」は、「徹子の部屋」をはさんで、1部と2部に分かれてい
ます。その1部の木曜日と金曜日のコメンテーターを務めるのが
末延吉正氏です。
 この末延吉正氏も、安倍応援団のコメンテーターで、安倍政権
をことさら持ち上げることはしないまでも、安倍政権の批判は一
切しない人です。調べてみると、末延吉正氏は山口県光市出身で
近所に岸信介宅があり、青少年時代から、安倍首相とは親しい存
在だったといわれています。
 末延吉正氏は、テレビ朝日の元社員で政治部長を務めていたの
です。末延氏が「ワイドスクランブル」のコメンテーターを2日
間務めるなど厚遇されているのは、安倍政権と強いパイプがある
からです。末延氏は、見城社長とも協力して、テレビ朝日と安倍
政権を結びつける役割を果たしています。ある政界関係者は、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 テレビ朝日の放送番組審議会会長をつとめる見城氏が安倍首相
に食い込み、早河会長との間を取り持ったことは有名ですが、そ
の見城氏と連携して、安倍首相とテレビ朝日のパイプ役をしてい
たのが末延さんだった。実際、末延さんは見城氏とともに頻繁に
安倍首相と会っています。          ──政界関係者
─────────────────────────────
 このように、安倍政権が警戒するテレビ局のひとつであるテレ
ビ朝日にも、これほど多くの安倍親派コメンテーターが送り込ま
れているのです。それに加えて、テレビ朝日の放送番組審議会委
員長にも安倍応援団の見城徹社長が就任しているのですから、テ
レビ朝日としては、安倍政権に対していいたいことはほとんどい
えないことになります。 ──[メディア規制の実態/033]

≪画像および関連情報≫
 ●「安倍首相とテレ朝のパイプ役」の姪のバイオリン演奏
  ───────────────────────────
   安倍官邸の圧力によって、古賀茂明氏や恵村順一郎氏を降
  板させ、長年、番組を支えてきたMチーフプロデューサーを
  更迭した『報道ステーション』(テレビ朝日系)。だが、テ
  レビ朝日側は、一貫して圧力を否定し、「番組のリニューア
  ル」のためだと言いはっている。しかし、その「リニューア
  ル」の中身はとんでもないものになりそうだ。
   実は、一昨日の2015年4月3日の放映でもその一端が
  垣間見えた。22時40分過ぎ、CM前に古館伊知郎が「今
  後月に一度こういう企画を、と考えています。まずその第一
  弾です」と告知したので、注目していたところ、CM明けに
  始まったのは、いきなり夜桜をバックにした女性のバイオリ
  ン生演奏。しかも、そこから「ムーンリバー」「上を向いて
  歩こう」と、2曲を延々6分間もわたって演奏し続けた。
   えっ、これが新企画?「報ステ」ってニュース番組じゃな
  かったっけ?と驚いた後、いや、もしかしたらとんでもない
  大物とか、今、注目のアーティストかもしれないと思い直し
  バイオリニストを調べてみた。この日、生演奏していた女性
  の名前は末延麻裕子氏。しかし、散発的にテレビには出てい
  るようだが、音楽関係者に聞いても、大物とか注目されてい
  るバイオリニストではまったくないらしい。
   しかも、この日の演奏はお世辞にも素晴らしいとは言えな
  いものだった。チューニングが狂ったようなアレンジで、音
  に柔らかみが全くない、放送環境が悪いのか、本人の実力な
  のか、聞きづらい。ツイッター等には「報ステのバイオリン
  へたくそじゃない?」などと、批判的な書き込みがいくつも
  見られた。「報ステ」はいったいなぜ、こんなバイオリニス
  トの演奏を放映したのだろうか。  http://bit.ly/2GqeiUf
  ───────────────────────────

末延吉正氏/ワイドスクランブル.jpg
末延 吉正氏/ワイドスクランブル
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | メディア規制の実態 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月21日

●「各ワイドショーに親派を送り込む」(EJ第4708号)

 平昌冬季五輪がはじまって、テレビはオリンピック報道一色に
染まっています。朝から昼にかけての複数のワイドショー、夕方
の各種ニュース番組、夜の報道番組にいたるまで、一日中オリン
ピック報道で埋め尽くされています。
 もちろん、今回の五輪は日本選手の活躍が顕著であるので、報
道が多くなるのは仕方がないのですが、それにしても、いささか
異常な報道過熱ぶりです。とくに高齢者で、一日中家にいて、テ
レビを見ている人にとっては、どのチャンネルでも、同じような
映像を何回も繰り返して見せられることになります。
 例えば、2月17日の男子フィギュアにおける羽生結弦選手と
宇野昌磨選手の金銀独占のニュースでも、他の番組で取り上げて
いることを知りながらも、自分の番組ではまだ取り上げていない
として、同じテーマを同じようなスタイルで、延々と報道してい
ます。つまり、メディアは、ワイドショーや報道番組をハシゴし
て見る視聴者が多いことを知りながらも、そういう報道を行って
います。17日は土曜であったので、週明けのワイドショーや報
道番組では、同じ切り口で取り上げ続けています。
 それと、日本のテレビは、異常なほど天気予報が多く、しかも
非常に時間が長いといえます。ワイドショー番組でも、ニュース
番組でも、夜の報道番組でも、必ず天気予報が入ります。私が必
ず見ることにしているWBS(ワールド・ビジネス・サテライト
/7チャンネル)は、天気予報はなかったのですが、昨年からは
天気予報をするようになっています。
 いまどき、天気予報はスマホで、全国版の予報はもちろんのこ
と、そのスマホのある場所の時間ごとの天気予報の詳細を見るこ
とができます。したがって、テレビで全国版の天気予報を大幅に
時間をとってまで放映する必要はないはずです。天気予報などは
専門チャンネルを設けておけばそれで済む話です。
 それでは、どうしてこのようなことが起きるのかというと、天
気予報とスポーツだけは、絶対に政府からクレームを受けること
がないからです。最近では、政治を取り上げて討論する番組を激
減させてしまった関係上、テレビでは時間を埋めるのに四苦八苦
しています。そのため、お笑い芸人を使ったくだらない番組を長
時間タレ流して、時間つぶしをしています。そういう意味で日本
はお笑い芸人天国であるといえます。もはや「日本のテレビは既
に死んだ」といっても過言ではないと思います。
 19日発行の「日刊ゲンダイ」は、このことに関連して、次の
ように報道しています。
─────────────────────────────
 男子フィギュアの羽生・宇野両選手の金銀メダル独占に、日本
中が「スゴい、スゴい」と猫も杓子も大騒ぎだ。(中略)ホンの
数ヶ月前、大メディアは「国難」と称した安倍に忖度し、まるで
戦争前夜のように北朝鮮危機をあおったものだ。ところが平昌五
輪が近づくと、敵視したはずの北の美女応援団を追いかけ回し、
「ほほ笑み外交」とはやし立てた。
 それに飽きたら、日本勢のメダルラッシュで早朝から深夜まで
バカ騒ぎだ。大新聞・テレビはすっかり五輪一色に染まり、日本
選手がメダルを取れれば「よかった、よかった」の大合唱。北朝
鮮危機なんて忘れたかのように全国に浮かれ気分をまき散らして
いる。このメディアの無節操ぶりは、あまりにもヒドすぎる。
    ──2018年2月19日発行/「日刊ゲンダイ」より
─────────────────────────────
 私は家にいるときは、テレビ朝日を中心に見ることにしていま
す。午前5時から8時までの「グッド!モーニング」、午前8時
から10時までの「羽鳥慎一モーニングショー」、さらに10時
30分から12時までの「ワイドスクランブル第1部」、そして
TBSの「ひるおび」というようにです。
 この順序でテレビを視聴して、気がついたことがあります。そ
れは、どの番組も安倍政権に対して好意的な発言をするコメンテ
ーターが最低1人が配備されていることです。
─────────────────────────────
       ◎「グッド!モーニング」
        ・宮家邦彦氏(水)
       ◎「羽鳥慎一モーニングショー」
        ・田崎史郎氏(随時出演)
       ◎「ワイドスクランブル第1部」
        ・末延吉正氏(木/金)
       ◎「ひるおび!」
        ・田崎史郎氏(随時出演)
─────────────────────────────
 「グッド!モーニング」の水曜コメンテーターの宮家邦彦氏は
キャノングローバル戦略研究所研究主幹です。外務省出身の外交
官ですが、他の番組にも多く出演します。しかし、どの番組でも
安倍首相に対して、批判してもよい場面でも、ほとんど批判的コ
メントをせず、やんわりと擁護します。
 調べてみると、第1次安倍政権のとき、官邸において、非公式
ではあるものの、安倍昭恵夫人のサポートをする「アッキー対策
室」が設置され、宮家邦彦氏が「首相公邸連絡調整官」に任命さ
れているのです。これについては巻末の≪画像および関連情報≫
に「プレジデントオンライン」の記事を掲載するので、読んでい
ただきたいと思います。宮家氏の安倍首相擁護発言のウラには、
こういう関係が影響していると思います。
 「羽鳥慎一モーニングショー」では、田崎史郎氏はテーマに基
づいて出演しており、レギュラー・コメンテーターではありませ
ん。これは午後からのTBSの「ひるおび!」でも同様です。こ
の出演は現在でも続いています。
 もう一人、2016年まで、元TBS記者の山口敬之氏も田崎
史郎氏と同じ立場で「羽鳥慎一モーニングショー」に出演してい
たのです。つまり、この番組には、安倍官邸に近い人物が2人も
出演していたのです。  ──[メディア規制の実態/032]

≪画像および関連情報≫
 ●首相官邸に“アッキー部屋”設置、本当の目的は?
  ───────────────────────────
   安倍晋三首相は、参院選後も、2013年7月下旬の東南
  アジア訪問をはじめ8、9月も精力的に外遊をこなす予定だ
  が、首相官邸の不安の種は、ファーストレディーの“アッキ
  ー”こと安倍昭恵夫人の言動。昭恵夫人は、安倍氏の首相就
  任前にみずから居酒屋を開業、女将稼業を始めるなど自由闊
  達な人柄で知られる。夫の首相就任により女将のほうは休業
  状態だが、その一方で、政府・自民党の政策と真逆の脱原発
  論を主張したり、参院選の候補者選びに口を出すなど目立つ
  ことしきり。「アッキーの脱原発発言に自民党幹部は眉をひ
  そめていたが、参院選の候補者選びにも口を出したのはまず
  かった。というのもアッキーが推した候補が暴力団と関係し
  ていたことが発覚したからです。首相就任から半年以上たっ
  ても、いまだに首相が公邸に引っ越せないのも、不自由な公
  邸生活をアッキーが嫌がっているから。首相周辺では5月頃
  から“アッキーの教育係兼監視役が必要”という声が上がっ
  ていました」(官邸関係者)
   そこで官邸では、6月から非公式に“アッキー対策室”を
  設置したという。「あくまで非公式なものでオープンにされ
  ていないが、外務省等から来たスタッフ2〜3人が、首相の
  外遊に同行する際の振る舞い方、外遊先の文化事情などを含
  めて、アッキーに対し“ファーストレディー教育”をしてい
  るそうです。官邸に1室、部屋も用意し、時々アッキーも顔
  を見せているらしい」(別の関係者)アッキー対策は今回が
  初めてではない。第1次安倍政権のときもそうした“教育”
  のために元外交官の宮家邦彦氏(現・評論家)が「首相公邸
  連絡調整官」に就任している。   http://bit.ly/2mDvfFd
  ───────────────────────────

宮家邦彦氏.jpg
宮家 邦彦氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | メディア規制の実態 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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