2020年01月06日

●「日本は成長の大切さを忘れている」(EJ第5160号)

このEJは、令和2年最初のEJです。本年もEJをよろしくお
願いします。
 日本が長年にわたってデフレから脱却できず、まるで経済成長
できない理由は、消費税の導入と、3回にわたる税率引き上げが
基本的な原因である──これが10月7日から12月27日まで
の57回のレポートの一応の結論です。
 しかし、消費税を導入しているのは日本だけでなく、2017
年4月現在、世界152ヶ国で導入されています。しかし、どの
国も不況に陥っているわけでなく、デフレになって抜け出せない
でいるのは日本だけです。
 しかも、日本よりも税率の高い国が多い。世界一消費税率が高
い国はハンガリーで27%、以下、スウェーデン、ノルウェー、
デンマークは25%、イタリアが22%、ベルギー、オランダが
21%、イギリス、フランスが20%というように、税率に関し
ては、日本の10%よりはるかに高い国が多いのです。だから、
財務省系の増税主義者は、10%に上げたとたん、次は15%だ
20%だといい出しています。
 既に指摘していることですが、大事な事実があります。日本の
消費税の税率は他国に比して、本当に低いのかということです。
国税収入に占める消費税の割合を見ると、日本は消費税率が5%
の段階で24・4%、10%になると、国税収入全体に占める比
率は37%になり、これを他国と比較すると、日本はダントツの
世界一です。ちなみにこの資料は財務省の資料です。
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       ◎国税収入に占める消費税の割合
         イギリス ・・ 21.1%
          ドイツ ・・ 35.6%
         イタリア ・・ 28.3%
       スウェーデン ・・ 18.5%
           日本 ・・ 37.0%
             ──財務省・財務総合政策研究所編
          「財政金融統計月報」/2010年4月他
─────────────────────────────
 これは、日本の財政収入は、世界で最も消費税に依存している
割合が高いことを意味しています。消費税率が25%のスウェー
デンすら18・5%に過ぎないからです。
 なぜ、こんなことになっているのかについて、菊地英博日本金
融財政研究所所長は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 なぜこうなっているのかというと、消費税が法人税の減税の原
資になっているからだ。消費税が最初導入された1989年から
2014年までの消費税収入は累計で282兆円になる。一方で
この間、法人税が255兆円減税されました。つまり、消費増税
で増えた282兆円の税収のうち、9割が「法人税減税の原資」
になったのです。これほど不公平税制はない。このままでは格差
はどんどん拡大していきます。
 ──『消費増税を凍結せよ』/「別冊クライテリオン」増刊号
              2018年12月号/啓文社書房
─────────────────────────────
 最近の日本は、韓国の問題をはじめとして、外国から軽視され
ることが多いように感じます。今年の新年の最大のニュースとい
えば、カルロス・ゴーン被告の国外脱走です。ゴーン被告の自宅
には監視カメラが設置されているため、ゴーン被告は、夕食会の
音楽演奏に訪れた楽団の楽器の箱に隠れて自宅を脱出し、警備の
うすい地方空港から国外に出国し、トルコを経由してプライベー
トジェットを利用してレバノンに入国しています。
 レバノン政府は「カルロス・ゴーン氏はフランスのパスポート
で合法的に入国した」と発表していますが、ゴーン被告のフラン
スのパスポートは弘中弁護士事務所が管理しており、それは使わ
れていない。合法的というが、明らかにどこかで不正が行われて
います。しかもゴーン本人は「有罪が予想される日本の偏った司
法制度の下でのとらわれの身ではなくなった」と勝利宣言までし
ています。さらに欧米のメディアはゴーン氏に同情的です。私は
日本は完全にバカにされているように感じます。
 なぜ、バカにされるのか。それは長い間にわたり、日本はまる
で「経済成長していない」からです。これについて、京都大学大
学院教授の藤井聡氏は、悲憤慷慨しています。
─────────────────────────────
 日本は成長というものが、どれだけ大事なのかということにつ
いて分からな過ぎる。過去20年の間に、諸外国の経済は、もう
2・4倍に成長しているのに、日本だけは80%まで縮小してい
る。このままで行けば、世界経済のなかの日本のシェアはおおよ
そ「1割程度」まで凋落する。もしそうなったら諸外国はもう日
本なんか相手にしようとしないし、貧困と格差がもっと拡がって
日本の科学技術力も防災力も国防力も皆、ダメになる。挙句に財
政だって悪くなる。      ──藤井聡京都大学大学院教授
 ──『消費増税を凍結せよ』/「別冊クライテリオン」増刊号
              2018年12月号/啓文社書房
─────────────────────────────
 本当に日本は、もはや成長できないのでしょうか。深刻な少子
高齢化の問題もありますが、政治家は有効な手を打てずに諦めて
いるように感じます。しかし少子高齢化はこれからどこの国でも
起きる問題であり、解決できないはずはありません。それを乗り
越えてきた国もあります。何よりも早く、諸悪の根源である消費
税を廃止することです。そのために政治が動くべきです。そこで
明日からEJのテーマを次のように設定して考えていきます。
─────────────────────────────
    どうしたら日本経済を成長させることができるか
    ── 消費税を廃止することは可能である ──
─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/001]

≪画像および関連情報≫
 ●日本はなぜ成長しないのか?
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   シンガポールが1人あたりGDPで日本を抜き日本がアジ
  アナンバー1の座から落ちたことは私にとっては衝撃だった
  のですが、大前研一さんの『アジアで最も豊かな国から転落
  した日本』というコラムによると、日本ではあまりニュース
  にならなかったそうで、コラムにはこう書かれてました。
   本当ならシンガポールに抜かれたことで、日本全体にショ
  ックを受けてほしいところだ。しかし「あれ、抜かれちゃっ
  てた」という感じで、ケロっとしている。これでは日本の未
  来が危ういというものではないか」
   私がシンガポールに来て以来、聞かれて一番答えに悩む質
  問というのが「日本はなぜ成長しないのか?」という質問。
  この質問が仕事のミーティングの合間に場をつなぐために気
  軽に発せられた質問ならば(相手も鋭い分析など求めていな
  い)、適当に答えようもあるのですが、これが真剣に内部者
  の見解を聞きたいと思っている親しい友達からの質問だった
  りすると、答えに困る。自分にも解がないから。なので、い
  つものごとく本を読みあさっています。
   まず最初に読んだのが勝間さんが薦めていた『人間を幸福
  にしない日本というシステム』。私は基本的に母国は好きな
  ので、『ひ弱な男の国とフワフワした女の国日本』のような
  センセーショナルに煽っただけのようなタイトルの本は読ま
  ないのですが、この本は私が知らなかったことも多く(官僚
  主義の根深さ、など)、納得できる箇所も多かった。でも、
  具体的な解決策まで示せていないと思います。
                  https://bit.ly/2MKrhpq
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菊池英博氏.jpg
菊池英博氏

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2020年01月01日

●「新年のご挨拶/2020.1.1」

 EJ読者の皆様、2020年、明けまして、おめでとうござい
ます。EJをいつもご愛読いただき、心より御礼申し上げます。
本年もよろしくお願いいたします。
 2019年のEJは、1月4日の第4920号から12月27
日の第5159号までの240本を、営業日の毎日、一日も欠か
さず、お届けしました。その間、同じコンテンツをブログにも投
稿しています。2019年に取り上げたテーマは、次の3つにな
ります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.米中ロ覇権争いの行方 ・・・・・・・・・・ 82回
 2.中国経済の真実 ・・・・・・・・・・・・・101回
 3.消費税増税を考える ・・・・・・・・・・・ 57回
   ―――――――――――――――――――――――――
                        240回
―――――――――――――――――――――――――――――
 今年は、6日からお届けする2020年のEJについて書くこ
とにします。2019年5月9日、EJは第5000号に到達し
ました。書き始めたのは1998年10月15日、これを第1号
として、以来、21年5ヶ月の営業日の毎日お届けし、昨年の5
月9日に第5000号に達しました。2019年9月18日には
EJ読者による「EJ5000号発行記念祝賀パーティー」を茅
場町証券会館、ホテルオークラレストランニホンバシで盛大に開
いていただきました。この会の開催に関わった方々や、お祝い金
などをご送付いただいた方々に対し、改めて御礼申し上げます。
長い間、EJを支えていただき、有難うございました。
 さて、10月7日からスタートさせた消費税のテーマは、EJ
としては2回目です。2014年1月6日から、同年5月9日ま
での84回、消費税について書いています。動機は、この年の4
月から安部政権は消費税を5%〜8%に引き上げることを決断し
たからです。昨年の2回目のときも、安部政権が10月から消費
税率を10%まで引き上げることを決めたので、書こうと思った
のです。しかし、まだ書き足りません。そこでタイトルは変更し
ますが、事実上の続編を1月6日からスタートさせることにしま
す。そしてこの議論には、ニューヨーク州立大学のステファニー
・ケルトン教授らが主唱するMMT理論(現代貨幣理論)も登場
させるつもりでおります。
 さて、10月1日からの消費税の10%への引き上げ以来、表
面上何事もなく過ぎているように見えます。大納会の日経平均株
価も、2万3656円62銭と比較的高い株価で締めくくること
ができています。しかし、これは日本の実力を表す株価ではない
と思います。米中貿易戦争の思惑が絡んだ株価になっています。
統計数字、専門家の情報をまとめると、2020年の日本経済は
大荒れ必至の情勢です。
 10月の「景気動向指数」は前月より5・1ポイント悪化し、
この悪化幅は、2014年の増税後を上回り、8年7か月ぶりの
大きさです。しかも、3ヶ月連続の悪化です。10月の家計調査
によると、1世帯当たりの消費支出はこちらも前年同月比5・1
%減少していますし、これも2014年4月の4・6%減よりも
落ち込み幅が大きいです。経済評論家の斎藤満氏は、今後の日本
経済について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 20年2月に発表される、19年10月〜12月期のGDPは
マイナス成長になるはずです。とにかく足元の景気が良くない。
予想以上に消費が冷え込んでいます。やはり消費税増税はやるべ
きではなかった。なにしろ高齢化が進んだ日本は、全世帯の52
%が年金世帯です。しかも、法人企業統計によると、19年4月
以降、企業が支払った人件費はマイナスです。要するに、日本人
は総貧乏になっている。増税を強行したら、景気が悪化するのは
当たり前です。          ──経済評論家の斎藤満氏
                日刊ゲンダイ新春特別号より
─────────────────────────────
 新聞などメディアは伝えていませんが、求人数も大幅に減って
います。その証拠に政府は、2019年11月の月例経済報告で
「雇用情勢」を下方修正しています。5年ぶりのことです。こう
なると、当然株価にも影響が出てきますが、政府は日銀を使って
必死に株価を支えると思われるので、株高は当面維持されると思
います。しかし、これにも限界があります。実体経済に裏づけら
れた株価ではないので、いつ暴落しても不思議はありません。
 2020年には必ず解散総選挙があります。現有の与党の議席
は次の通りです。
─────────────────────────────
 ◎与党現有議席/314議席
  自民党285/公明党29
 ◎鈴木哲夫氏の予測
  自民党223/公明党28/維新の会10/野党新党180
  共産党12/れいわ6/無所属6
─────────────────────────────
 政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、立憲民主党と国民民主党
などが野党新党になり、共産党が全面的に選挙協力するとの前提
で予測しています。この場合、自民党は単独過半数(233)を
割り込むことになります。安部首相退陣必至です。
 問題は、公明党の集票能力が落ちていることです。1選挙区当
たりの公明票は約1万7000票です。これに対して共産党のそ
れは。2万〜3万票で公明党票を大きく上回っています。
 そして、次の選挙では、野党は「消費税5%減税」を公約に掲
げてくると思われます。そのため、「社会保障と税の一体改革」
で一度増税に賛成している立憲民主党や国民民主党のままではダ
メであり、野党新党として戦う必要があったのです。
 マハティール首相率いるマレーシアでは、公約の6%の消費税
廃止を決断し、実施しています。日本でも今年は消費税廃止が政
治のテーマになると思います。読者の皆様、今年もEJをよろし
くお願いいたします。EJの配信は6日からです。

≪画像および関連情報≫
 ●消費税を廃止したマレーシアはどうなったか?
  ───────────────────────────
   参議院選挙で、2議席を獲得して大躍進を果たした「れい
  わ新選組」。その公約の1つに「消費税廃止」があった。そ
  して山本太郎党首が実例としてあげたのが、マレーシアだっ
  た。実際に政見放送から引用する。
   「消費税は廃止。…実際に、消費税を廃止した国あります
  よ。マレーシアです。マレーシアは、法人税の次に税収の多
  かった消費税を廃止。高級なサービスなどを利用するときに
  かかる金持ち向けの税制を復活させました。なぜ、マレーシ
  アにできたことが、日本にはできないって、いうんでしょう
  か?」(参照:れいわ新選組)
   ちょうどそのころ、おあつらえ向きにとでもいうべきか、
  筆者宅には2人のマレーシア人が滞在していた。ムハンマド
  (34)とアミルディン(25)の2人である。ムハンマド
  は化学で博士号をもつ国家公務員で、アミルディンは大学院
  生で、ちなみにこの二人は従兄弟同士でもある。「消費税廃
  止」の実態を、二人に聞いてみることにした。
  マレーシア人に聞いた「消費税廃止」「今の政権が成立した
  のが、去年の5月だった。先に説明しておくと、マレーシア
  は一院制で議席数は222、つまり過半数をとるには112
  議席が必要ということだな」ムハンマドが切り出した。彼の
  職業は国家公務員、つまり役人である。
                  https://bit.ly/39uGqVM
  ───────────────────────────

令和庚子.jpg
令和庚子
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2019年12月27日

●「なぜ建設国債は伸びていないのか」(EJ第5159号)

 財務省のサイトで、国の財務書類を見ていると、興味ある事実
をたくさん見ることができます。そのひとつに「建設国債」があ
ります。平成29年度(2017年)の「公債残高の内訳」は、
次のようになっています。
─────────────────────────────
  ◎公債残高の内訳
   建設国債   274.6兆円(+ 1.3兆円)
   特例国債   555.3兆円(+23.0兆円)
    その他    27.6兆円(▲ 1.0兆円)
   ――――――――――――――――――――――
          857.5兆円(+23.4兆円)
                  https://bit.ly/2EPaX2e ─────────────────────────────
 これによると、いわゆる公債(以下国債)の残高は、2017
年度においては約858兆円あることがわかります。その内訳を
みると、そのうち、約555兆円が「特例国債」で65%を占め
前年度から23兆円も増えていることがわかります。これに対し
て約275兆円が「建設国債」であり、32%を占めています。
前年度から1・3兆円増えていますが、その伸びは「特例国債」
に比べると、少ないです。
 ここで特例国債と建設国債の違いをしっかり頭に入れる必要が
あります。国債は、政府の借金ですが、1975年までは、国債
といえば建設国債を意味していたのです。日本の財政は、財政法
第4条において、借金に依らない財政、財政収支の均衡を原則に
掲げています。
─────────────────────────────
◎財政法第4条
 国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源とし
なければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源
については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又
は借入金をなすことができる。    https://bit.ly/37apNN4
─────────────────────────────
 この財政法第4条の但し書きで認められている国債は建設国債
です。国の歳出に関しては、あくまで税収によって行わなけれな
らないとしていますが、道路や橋などのインフラの建設、つまり
投資的経費については、国債の発行を認めています。これが建設
国債です。
 実際に日本の財政は、1965年までは、入ってくる税収の範
囲内で歳出を行う均衡財政主義の原則のもとで運営されてきたの
です。しかし、国を発展させるには、インフラの建設などの投資
的経費が必要になりますが、それまで税収で賄うことは不可能で
あり、そのさいには建設国債を発行してそれを行うことが財政法
で定められているのです。
 第1回の東京オリンピックが行われた1964年頃から、19
75年頃までの約10年間は、この建設国債が盛んに発行され、
インフラ建設と整備が急速に進められたのです。この建設国債に
関しては、それに対応する資産があることと、その返済ルールが
きちんと決められており、そういう意味で心配のない借金であり
政府の借金から外しても何ら問題はないのです。
 しかし、1970年代に入ると、日本は、2度にわたる石油危
機に直面し、その後、経済成長率が大幅に低下するという重大な
変化を経験します。これによって、恒常的な財源が不足するとい
う事態に陥ったのです。これを受けて、いわゆる赤字国債の大量
発行が始まります。
 赤字国債を発行するには、毎年度、そのための特例の法律を定
めて、その法律に基づいて国債が発行されます。そのため、この
国債を「特例国債」と呼ぶのです。これが赤字国債です。この残
高が、2017年現在、約555兆円あり、毎年積み上がってい
ることになります。この特例国債の問題点について、経済学者の
植草一秀氏は、自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 赤字国債は国債発行によって調達した資金を、経常的な支出に
充ててしまうため、建設国債と異なり、借金に見合う資産が形成
されない。この部分が将来へのツケまわしと表現されれば、確か
にその側面が存在する。したがって、政府債務のなかで、問題が
あると言わざるを得ないものが特例国債ということになる。
               ──植草一秀著『日本の再生/
    機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却』/青志社刊
─────────────────────────────
 添付ファイルをご覧ください。これは、日本の国債種別発行残
高の推移を示しています。これによると、いわゆる赤字国債(特
例国債)は右肩上がりで増えていますが、建設国債は2000年
以降、ほとんど横ばいであることが分かります。
 これは何を意味しているかです。はっきりしていることは、経
済がさかんに成長しているときは、建設国債は増えるはずですが
デフレから脱却できずに、経済がまるで成長しないため、特例国
債だけが増える結果になっています。
 明らかに日本は経済政策を間違えています。三橋貴明氏による
と、次の悪循環に陥っているというのです。「デフレ深刻化→所
得停滞→税収不足→赤字国債発行→「国の借金で破綻する」→緊
縮財政→デフレ深刻化」そして最後にこう結んでいます。「ここ
まで愚かな国は人類史上に先例がない」と。
 今日のEJは、2019年の最後のEJになります。新年は1
月6日からの発行になります。既に申し上げているように、テー
マは変わりますが、基本的には10月7日からはじめたテーマの
第2部になります。なぜ同種のテーマを続けるかというと、20
20年は「消費税」が政治の大きなテーマになるからです。
 本年のEJのご愛読を感謝するとともに、新年もEJをよろし
くお願いいたします。どうか良いお年をお迎えください。
        ──[消費税増税を考える/057/最終回]

≪画像および関連情報≫
 ●公共投資は本当に日本の負債を増やしたのか/三橋貴明氏
  ───────────────────────────
   「日本政府の負債が増え続けているのは公共投資をやりす
  ぎたからだ」という話を聞いたことがありませんか?
   「日本政府の負債が増え続けているのは公共投資をやりす
  ぎたからだ」というのは本当でしょうか?ここではそれを検
  証してみたいと思います。
   ですがその前に、このようなもっともらしい言説に惑わさ
  れず、真実を見極めるために、三橋貴明が使っている分析手
  法はいくつあると思いますか?
   実は“たったの3つ”しかありません。この3つを知って
  磨いていくだけであなたはきっと賢くなります。イメージで
  語る連中に騙されなくなります。なぜここまで言い切れるの
  か?それは・・・。あなたがこのような情報の分析手法をこ
  れまで一切学んだことがないはずだからです。私たちは、い
  い加減な情報発信をするマスメディアに日々振り回されてい
  ます。ウンザリされている方も多いのではないでしょうか。
   現代人は情報リテラシー(読み取り能力)がないと言われ
  ますが、ではどうすれば良いのか、何を学べばいいのか、具
  体的なことは誰も教えてくれません・・・。それもそのはず
  私たち情報を受け取る側の国民は、情報の分析手法や、真実
  の見極め方なんて学んだことがありません。
                  https://bit.ly/2tRVwUR
  ───────────────────────────
 ●グラフの出典/三橋貴明著『米中覇権戦争/残酷な未来透視
  図』/ビジネス社刊

nihonnokokusaishubetuhakkouzandakanosuii.jpg
日本の国債種別発行残高の推移.
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2019年12月26日

●「大企業が内部留保を貯め込む理由」(EJ第5158)

 最近安部首相は「アベノミクス」という言葉をあまり口にしな
くなっています。当初は何かといえば「アベノミクス」を口にし
その成果を強調していたものですが、最近はこの言葉を、あまり
口にしません。しかし、アベノミクスで景気がよくなったことは
確かです。なぜなら、安部政権が発足する前と、7年後の現在と
では、次の2つの数字が明らかに異なるからです。
─────────────────────────────
            日経平均株価   有効求人倍率
  2012年11月   8661円    0・80倍
  2019年11月 2万3278円    1・57倍
─────────────────────────────
 日経平均株価に関しては2・68倍、有効求人倍率に関しても
2倍になっています。これは大変なことです。この数字だけを見
ても、景気がよくなったことは確かです。安部政権が最長期政権
になったのはこの成果があってのことです。
 しかし、多くの人は、景気が良くなった実感が感じられないで
います。それは賃金が上昇しないからです。つまり、景気拡大の
成果が、広く国民に還元されていないのです。それは、企業の数
字を見ると、よくわかります。
 安部政権が発足したのは、2012年12月です。したがって
安部政権の初めての決算は2013年1〜3月期です。このデー
タと、5年後の2018年1〜3月期のデータを比べてみると、
その5年間で何が起きたかが鮮明になります。
 法人統計を見ると、金融・保険業を除く全産業の売上高は、5
年前よりも10・7%増えています。これは、この5年間で経済
が大きく成長したことを意味しています。そのなかにおいて、経
常利益は38・8%増と、売上高をはるかに上回る伸び率になっ
ています。どうして、こんなに経常利益が増えたのでしょうか。
 それは、従業員給与が2・5%増に抑えられているからです。
売上高を伸ばして、従業員給与を抑制すれば、利益が増えるのは
当然のことです。その結果として、企業が抱える内部留保(利益
剰余金)は、2018年3月末で、427兆円という莫大な金額
に達しています。427兆円といえば、日本のGDPに近い数字
です。途方もない数字になっています。
 企業がこれらの内都留保のほんの一部でも従業員に還元すれば
労働者の所得が増えて、国民は、景気回復の実感が得られるよう
になるはずです。しかし、昨今の企業は、労働分配率を下げる行
動をとり続けています。法人企業統計を見ると、企業の持つ現預
金の金額がわかります。2018年3月末の現預金は202兆円
で、5年前より35%も増えているのです。明らかに企業は膨大
なキャッシュを貯め込んでいます。
 どうして、企業は202兆円もの膨大な現預金を持っているの
でしょうか。預金を持っていても金利はわずかであり、それは、
企業の自己資本比率(ROE)の向上に貢献しないはずです。だ
から、賃上げで物価を上げ、デフレから脱却して物価上昇と賃金
上昇の好循環をもたらしたい安部政権としては、再三再四無駄に
キャッシュを持っていないで賃金を上げてくれと財界に要請して
います。ちなみに、自己資本比率とは返済不要の自己資本が全体
の資本調達の何%あるかを示す数値で、次の式で算出します。
─────────────────────────────
     自己資本÷総資本(自己資本+他人資本)
─────────────────────────────
 これに対して、次のような考え方があります。早稲田大学政治
経済学部教授、東京財団上席研究員、原田泰氏の考え方です。
─────────────────────────────
 経営者の立場で考えてみよう。企業にはよく分からない理由で
次々に危機が襲ってくるものだ。『ルーズヴェルト・ゲーム』な
ど、池井戸潤氏の企業小説を読むと、突然の融資打ち切り、取引
先の購入中止、購入中止をちらつかせた大幅な価格引き下げ、特
許を侵害しているという脅しなど、企業には次から次へと危機が
襲ってくる。危機の頻度が多すぎるような気はするが、それぞれ
はリアルである。個々の企業に対するショックだけでなく、経済
全体に対するショックもある。金融危機、世界不況、円の急騰、
資源価格の暴騰など、危機はいくらでも襲ってくる。
 一番頼りになるのはキャッシュである。融資を打ち切られても
キャッシュがあれば耐えられる。どんな場合でも銀行が貸し出し
に応ずるという契約をすることも考えられるが、突然、融資を打
ち切られるのであれば、そんな契約はあてにならないと企業は思
うだろう。             https://bit.ly/2PTdUFq
─────────────────────────────
 上記の原田教授の考え方は、大企業が内部留保を厚くする理由
として、一般的にいわれているものです。しかし、いまひとつ腑
に落ちないというか、納得できない考え方です。
 これに対して、森永卓郎氏は、企業が内部留保を貯め込む理由
について、「役員報酬の決まり方の変更」にあるとして、次のよ
うに述べています。これなら、納得できます。
─────────────────────────────
 かつては、一流企業の役員でも、年収は2000万円とか30
00万円の固定給だった。ところが、いまの役員報酬は、米国型
の報酬体系を採る会社が増えて、業績連動給とストップオプショ
ンのような株価連動給の2本立てになっている。しかも、役員報
酬の額は、数億円という高額報酬が珍しくなくなった。そうした
時代に役員が自分の懐を潤そうとしたら、やることは一つだ。成
長の成果を従業員に分配せず、利益を拡大する。それで業績連動
給が増える。そして、増やした利益を会社に貯め込む。そうすれ
ば企業価値が上がるから、株価も連動して、株価連動給が増える
のだ。         ──森永卓郎著/角川新書K−241
            『なぜ日本だけが成長できないのか』
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/056]

≪画像および関連情報≫
 ●それでも日本企業が「内部留保」をため込む理由
  ───────────────────────────
   19年9月の内閣改造に合わせて行われた自民党の役員人
  事で、税制調査会長に就任した甘利明衆議院議員は、就任と
  同時に、企業の内部留保を投資に回す環境を整えるための税
  制上の優遇措置を検討する考えをぶち上げた。党の税制調査
  会長は税制改正に大きな権限を持つポストで、会長ら「イン
  ナー」と呼ばれる非公式幹部会が事実上の決定権を握る。
   かつては山中貞則会長が税調のドンとして圧倒的な力を誇
  り、時の首相ですら口を挟めないと言われた。最近では税制
  に通じた長老は減り、力が落ちているとされる。それでも2
  代前、15年まで会長を務めた野田毅氏は、消費増税を巡っ
  て安倍晋三首相と対立した。
   そういう意味で、今回の税調会長交代はちょっとした「事
  件」だった。会長だった宮沢洋一・参議院議員が小委員長に
  まわる異例の人事で、しかも新会長に就いた甘利氏は安倍首
  相の信頼が厚いことで知られる。大蔵省(現財務省)出身の
  宮沢氏から民間企業経験もある甘利氏にバトンが渡ったこと
  で、税制改正に関して財務省の影響力が低下することになり
  そうだ。野田氏は最高顧問に残留したが、インナーには、塩
  崎恭久氏や石原伸晃氏、林芳正氏ら安倍首相に近い人物が並
  び、税制改正に首相の意向が反映できる体制が整ってきたと
  もいえる。           https://bit.ly/2ESqVZy
  ───────────────────────────

甘利明税制調査会長.jpg
甘利明税制調査会長
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2019年12月25日

●「経済成長しないと所得は増えない」(EJ第5157号)

 2019年も今日を含めて7日間となりました。EJは、営業
日に毎日送付することを原則にしており、この原則にしたがうと
12月27日(金)までお届けし、2020年は1月6日からと
いうことになります。9日間のお休みです。EJにとって、こん
なに長いお休みは、はじめてのことです。
 今回は、次のテーマで10月7日からスタートし、今回で54
回を数えています。
─────────────────────────────
     現在の日本の経済政策は間違っていないか
       ─消費税増税は諸悪の根源である─
─────────────────────────────
 「現在の日本の経済政策は間違っていないか」がメインタイト
ルですが、明らかに自民党の経済政策は間違っています。世界の
先進国で、日本だけが成長しないのは、消費税の導入のタイミン
グを完全に誤り、それによってデフレに陥っているのに、無謀に
も3回にわたり、その税率を引き上げ、10%にしたことです。
これでは、デフレは深化する一方です。それがなぜわからないの
でしょうか。その最大の責任は財務省にあります。
 そもそも「日本は借金まみれの国である」という財務省の前提
自体が財務省のプロパガンダであり、それが間違っていることに
ついて、ここまで54回のEJで述べたつもりです。しかし、こ
れでテーマを終わるわけにはいかないのです。どうすればよいの
かについて、議論を展開すべきであると思っているからです。
 したがって、新年からは、テーマは変わりますが、基本的には
消費税の話を続けます。おそらく来年には総選挙があると思いま
すが、そのときの選挙の争点は「消費税の是非」になると思われ
るからです。具体的には、「消費税の税率をさらに上げるか」、
「消費税を廃止するか」が問われることになると思います。
 そういうわけで、今回を含め、あと3回の今年中のEJは、消
費税に関連することについて自由に書きます。
 「生産」「支出」「所得」の関係について考えてみます。「所
得」とは何でしょうか。
 生産者がモノやサービスを「生産」します。顧客がその生産さ
れたモノやサービスを消費するために「支出」します。その結果
として生産者は「所得」を手にすることができます。所得を手に
した生産者は、その所得をもって顧客側に回り、誰か別の生産者
が生産したモノやサービスを購入します。そうすると、別の生産
者に「所得」が生まれ、今度はその生産者が顧客側に回ります。
この所得創出のプロセスが回転しているのが実体経済です。
 ここからが大事ですが、この「生産」「支出」「所得」は、必
ずイコールになるということです。さらに、国内の「生産」の合
計が「国内総生産/GDP」ということになります。
 以上のことをふまえて、経済評論家の三橋貴明氏は、自著で、
次のように述べています。
─────────────────────────────
 「豊かになる」とは、所得が増えることを意味する。GDPが
増え、経済成長している国が「豊かになっている」と判断できる
のは、所得の総計が増えているためなのだ。無論、所得以上に物
価が上がってしまうと、実質的に国民は貧乏になる。いわゆる、
実質賃金の下落だ。実質賃金が上昇する、つまりは、物価以上の
ペースで所得が伸びる状況を創り出すのが政府の仕事である。何
しろ、実質賃金の上昇こそが「国民が豊かになっている」証なの
だ。 『消費増税を凍結せよ』/「別冊クライテリオン」増刊号
              2018年12月号/啓文社書房
─────────────────────────────
 国民の立場から見ると、GDPが成長することを自らの問題に
照らしてみることはしないものです。GDPが成長すれば、それ
はそれでいいことであるし、成長しなくても、そんなに深刻には
考えないものです。どこか国民としては、そういうひとを他人事
のように感じていないでしょうか。
 しかし、それは間違いです。GDP(名目GDP成長率)が伸
びるということは、「所得」が増えることであり、豊かになるこ
とを意味しています。10月31日のEJ第5119号で指摘し
たように、1995年〜2015年までの20年間の名目GDP
のランキングで日本は最下位です。この20年間に世界の成長率
は平均で139%です。しかし、日本だけは「マイナス20%」
なのです。つまり、日本をのぞくすべての国がプラスであるのに
日本だけがマイナスです。この事実をどれほどの日本人は知って
いるでしょうか。2度目になりますが、そのグラフを添付ファイ
ルとして再現します。
 明らかに、自民党の経済政策は失敗しており、情けないことに
政府も国民も、それが間違っていることに気が付いていないよう
です。その原因は消費増税のタイミングにあります。
 日本のデフレは、どこからはじまったのかというと、それは、
1997年以降であるということができます。橋本龍太郎政権が
消費税を3%から5%に上げて以来です。このとき、橋本政権は
消費税率の引き上げと同時に、公共投資削減など、一連の緊縮政
策を強行しています。まさに最悪の政策であり、経済のことが何
もわかっていない内閣であるといえます。もちろん内閣のバック
には大蔵省(財務省)がいます。それに橋本首相は蔵相の経験者
であり、自分は何でも知っていると思い込んでいます。
 その1997年以来、日本の実質賃金指数は、経済のデフレ化
を受け、一貫して右肩下がりに下がっています。しかもデフレで
物価が下がっているにもかかわらず、それ以上のペースで所得が
縮小し、実質賃金が落ち込んでいったのです。それは安部政権に
なってからも止まることはなく下がっています。(11月6日付
EJ第5122号の添付ファイル参照)。つまり「所得」が減っ
ているのです。生産が伸びなければ、所得は下がり、支出は少な
くなります。つまり、日本人は、ここ20年以上、貧乏になりつ
つあるのです。     ──[消費税増税を考える/055]

≪画像および関連情報≫
 ●各国の20年間成長率ランキング/1995年〜2015年
  ◎グラフ出典
   藤井聡著
  『「10%消費税」が日本経済を破壊する/今こそ真の「税
  と社会保障の一体改革」を』晶文社

世界各国の20年間成長率ランキング.jpg
世界各国の20年間成長率ランキング

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2019年12月24日

●「財務官僚の天下り3大ポストとは」(EJ第5156号)

 キャリア官僚、なかんずく財務官僚は、なぜ天下り先の確保に
必死になるのでしょうか。
 それには、焦りがあると思います。かつて財務省の天下り先と
いえば、次の3大ポストがありました。しかし、これらのポスト
は、並みの財務官僚では、いずれも務まらないポストになってい
るのです。
─────────────────────────────
        1.   日本銀行(日銀)
        2.東京証券取引所(東証)
        3. 日本開発銀行(開銀)
─────────────────────────────
 第1に、日本銀行ですが、ここは最もハードルが高いポストで
あるといえます。現在の黒田東彦日銀総裁は、東大法学部出身の
元財務官僚ですが、主として国際金融と主税畑でキャリアを積み
「ミスター円」として知られた榊原英資氏の後任として、財務官
に就任しています。
 1999年から財務省を退官するまでの3年半にわたってこの
ポストにあり、2003年に一橋大学大学院教授を経て、アジア
開発銀行総裁に就任、2013年3月まで務めています。普通の
財務官僚とは違うのです。黒田東彦日銀総裁について高橋洋一氏
は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 現在の黒田東彦総裁は、金融政策を勉強した人なので、日銀に
行くことができましたが、いまや並みの財務官僚には務まらない
ポストです。経済学の理解は必須で、世界の中央銀行のトップと
渡り合うには、少なくとも博士号ぐらいはないと、会話になりま
せん。                   ──高橋洋一著
      『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書1174
─────────────────────────────
 第2に、東京証券取引所ですが、2001年に株式会社に組織
変更されるまでは、大蔵官僚の天下りの指定席だったのです。2
013年に旧大阪証券取引所の株式市場も統合し、米国ニューヨ
ーク証券取引所、英国ロンドン証券取引所とともに、「世界三大
証券取引所」の一つといわれています。
 2000年以降、証券・金融メカニズムが複雑化し、2004
年に元大蔵官僚の社長が退いてからは、東京証券取引所の生え抜
きや証券会社の大物トップが社長を務めるようになり、天下りは
困難化しています。証券のプロでも何でもない財務官僚にトップ
が務まるはずがないからです。
 第3に、日本開発銀行は、1951年に設立された全額政府出
資の政府系金融機関ですが、1999年に日本政策投資銀行に業
務を引き継ぎ解散しています。このポストについて、高橋洋一氏
は次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
 本来、日本政策投資銀行は完全民営化して、政府からの資金提
供の流れを断ち切る予定でした。そうすれば財務官僚の天下りも
消え、三兆円弱の出資金が戻ってきて借金の返済に充てることも
できたでしょう。「金の切れ目が緑の切れ目」で政府関係機関を
完全民営化し、政府からの出資が終われば、天下りもなくなりま
す。補助金も口利きもないのに、わざわざ官僚を雇おうとする機
関はおらず、各機関のプロパーが社長・役員に就くようになるは
ずです。
 政府関係機関に天下り官僚が次々と来るため、プロパーの幹部
が行き先を失ってしまい、結局、孫会社のようなものをつくり、
天下りします。玉突き状態のように官庁OBが入ってこなくなる
ことは、政府関係機関の人にとっても大歓迎だと思います。
                ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 大蔵省の時代から定番ポストといわれたこれらの天下りポスト
が、今や簡単には天下りできなくなりつつあります。このように
して、天下りポストは全体として減ってきているのです。
 そういう状況の下で、財務省は、現在でも管理下にある特殊法
人をいろいろな理屈をつけて、天下り先として確保しようとして
います。そのひとつに日本たばこ産業株式会社(JT)がありま
す。このJTについて、財務省は「政策目的の特殊法人は、民営
化しても株式の保有を続ける必要がある」として、現在もJT株
を保有しています。
 日本たばこ産業株式会社(JT)は、1985年4月に設立さ
れ、日本専売公社のタバコ事業を引き継ぎ、現在にいたっていま
す。日経平均株価およびTOPIXの構成銘柄の1つです。M&
Aにより、たばこ事業を世界展開しており、企業別の世界シェア
は、2018年時点で第4位(8・4%)です。2019年現在
JTの会長には、元財務事務次官の丹呉泰健氏が取締役会長を務
めています。
 財務省がJTの株保有に現在でもこだわっているのは、何とか
してJTを天下り先として残したいという意思のあらわれである
と考えられます。このJTに対する財務省のかかわり方について
の高橋洋一氏のコメントです。
─────────────────────────────
 たばこの健康問題が取り沙汰されるなか、「なぜ政府が株を保
有して、片方の立場に立つようなことをするのか」といわれて、
財務省も抵抗しきれなくなりました。当初は100%の株を保有
していましたが、やがて50%に下がり、33%強にまで減りま
した。それでも現在、2・4兆円分の株式があります。何の政策
目的もないのに、政府が一企業に2兆円を超える出資をする必要
はありません。完全民営化して政府保有株をゼロにすれば、2兆
円を政府債務の返済に充てられるし、官僚の天下りも難しくなり
ます。             ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/054]

≪画像および関連情報≫
 ●読売新聞と安倍政権の関係
  ───────────────────────────
   産経新聞の記事では、主な財務次官OBの進路先として、
  丹呉泰健氏が日本たばこ産業会長、勝栄二郎氏がIIJ社長
  真砂靖氏が日本テレビホールディングス社外取締役と書かれ
  ている。それぞれ木下氏の前々々任、前々任、前任の財務次
  官である。
   ただ、丹呉氏は、読売新聞グループ本社(と東京本社)の
  監査役をしていた(2010年12月〜12年12月)。ま
  た、その後任次官の勝氏も、同じく読売新聞東京本社監査役
  に就任した(2014年6月)。つまり、日テレHD社外取
  締役の真砂氏を含め最近の財務次官は、3代続いて読売・日
  テレグループにお世話になっている。
   その一方で、最近、読売新聞の変貌ぶりも話題になってい
  る。ジャーナリストの須田慎一郎氏によれば、読売のスタン
  スは、安倍政権寄りになっているという。安倍政権が、読売
  を「特別扱いしている」とも。某高官の話として「もう朝日
  新聞や毎日新聞は読む必要はありませんよ。新聞は、読売の
  一紙だけ読んでいれば十分」らしい。最近の朝日新聞騒動を
  踏まえて、財務次官の天下り先を読み解くと、脈絡のない世
  間の動きがちょっと見えてくるような気がする。朝日新聞の
  ヘマの背後で、天下りが難しくなってもタダでは転ばない財
  務省とそれをちゃっかり取り込む読売があった。
                  https://bit.ly/35Q64SC
  ───────────────────────────


黒田東彦日銀総裁.jpg
黒田東彦日銀総裁.
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2019年12月23日

●「キャリア官僚の天下りは問題山積」(EJ第5155号)

 なぜ、財務省は消費税を増税しようとするのでしょうか。
 表向きと本音があります。表向きは、いろいろありますが、そ
れを少しずつ変化させてきています。最初は「直間比率の是正」
でしたが、いつの間にか「財政危機を乗切るため」に変わり、こ
れについて財務省は「1000兆円を超えるGDPの2倍以上の
国の借金」という一大プロパガンダを展開し、日本人のほとんど
にそれを信じさせることに成功しています。
 その結果、このたびの10%への消費増税に関しては、世論調
査で「賛成」が「反対」を上回る結果を得ています。「そんなに
借金があるのでは10%程度の増税は仕方がない」という、いわ
ばあきらめに近い「賛成」です。しかし、最近では論点を少しず
つ「社会保障費の補填」に移しています。
 しかし、彼らの本心は、経済の好不況に関係なく、どのように
でも使える自由財源の確保です。消費税は、それにぴったりの財
源なのです。これがあると法人税の減税にも使えるし、それが天
下り先の確保にもつながります。法人税を多額に支払う企業は優
良企業であり、格好の天下り先になるからです。
 ひとつ例を挙げると、2013年まで財務事務次官を務めたM
S氏(62歳)は、2014年に日本テレビホールディングスの
社外取締役に就任し、2015年に読売新聞大阪本社の非常勤監
査役と三井不動産の社外監査役に就任する──といった具合で、
1年ごとにポストが変わっていますが、それぞれのポストで高額
の退職金を受け取っています。
 それに加えて、豊富な自由財源があると、有力な天下り先にな
る政府関係機関を守ることができます。キャリア官僚にとって一
番怖いのは「政府関係機関の統廃合」です。なぜなら、有力な天
下り先が大幅に減ってしまうからです。
 この政府関係機関の統廃合を一番積極的にやったのは、郵政民
営化を旗印に掲げた小泉内閣です。小泉内閣では、「政策金融改
革」を大胆に実行に移しています。例えば、いわゆる金融公庫は
次の4つがあり、それぞれ管轄する省庁が違っていたのです。こ
れら省庁別の公庫は、各省庁の官僚にとって、格好の天下り先に
なっていたのです。
─────────────────────────────
    1.  国民金融公庫 ・・・ 大蔵省
    2.環境衛生金融公庫 ・・・ 厚生省
    3.農林企業金融公庫 ・・・ 農水省
    4.中小企業金融公庫 ・・・ 経産省
─────────────────────────────
 小泉内閣は、これら4つの金融公庫を「日本政策金融公庫」に
一本化したのです。これによって、官僚にとっては天下り先がな
くなり、政府にとっては、それぞれの公庫に出していた出資金を
減らすことにつながり、意義のあることといえます。当然のこと
ながら、小泉内閣では天下りにブレーキがかかっています。
 しかし、安部政権になってからは、天下りは復活し、公然と行
われるようになったのです。安部首相は、小泉内閣では官房長官
を務めていたのに、こういうところは、まったく学んでいないと
思います。
 しかし、小泉内閣の目玉ともいえる郵政民営化は、昨今のかん
ぽ不正営業の顛末を見る限り、成功しているとはいえないでしょ
う。日本郵政グループは、2007年に民営化しましたが、政府
はまだ57%の株式を保有しています。
 その象徴的な事件が2019年12月20日(金)に起きてい
ます。鈴木茂樹総務事務次官の突然の更迭人事です。かんぽ営業
不正をめぐる日本郵政グループへの行政処分の検討状況に関する
情報を日本郵政側に漏洩したことによる更迭です。
 鈴木茂樹総務事務次官が情報を流した相手は、日本郵政グルー
プの鈴木康雄上級副社長です。日本経済新聞は、この鈴木副社長
について次のように報道しています。
─────────────────────────────
 情報を受け取った鈴木副社長は1973年に旧郵政省に入省。
2009年に総務次官に就いた。13年から郵政の副社長を務め
る。郵政グループの人事を取り仕切るなど実権を握ってきた。鈴
木前次官は、81年入省で、今年7月に次官に就いた。当然2人
は旧知の仲だ。
 10年の退官後も「郵政のドン」と呼ばれる鈴木副社長は現役
次官を上回る影響力を持つとされた。郵政グループの幹部は「鈴
木副社長に総務省が情報を入れるにはこれまでも普通にあった」
と明かす。郵政がかんぽ問題を報じたNHKに抗議した中心人物
でもある。   ──2019年12月21日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 かんぽ問題に関しての日本郵政グループの3人のトップの対応
は最低です。民営化すれば、企業として稼いで利益を出さなけれ
ばなりませんが、十分なノウハウを持っていないので、無茶苦茶
で強引な営業管理をした結果です。
 この問題は、ことがあきらかになる一年前にNHKが番組とし
て取り上げ、警告していますが、それに食ってかかったのが、日
本郵政副社長の鈴木康雄氏です。本当のことをスバリ報道されて
焦ったのか、NHKの上田前会長を口を極めて批判し、NHKか
ら詫び状をとっています。
 なぜ、鈴木副社長がそんなに強気になれるのかというと、電波
を管轄する元総務次官を務めており、辞めても俺には総務省に子
分がたくさんおり、NHKなんかどうとでもなるとの脅しがあっ
たものと考えられるのです。
 皮肉にもその子分の一人と思われる鈴木茂樹前総務次官から、
日本郵政の鈴木副社長は行政処分の情報を得ていたのです。事務
次官同士は先輩、後輩の関係でつながっていたのです。これは人
事の失敗です。やはり、日本郵政グループの役員にその監督官庁
出身のキャリアが天下りすることには問題があるのです。
            ──[消費税増税を考える/053]

≪画像および関連情報≫
 ●監督側のはずが…旧郵政省人脈、なれ合い深刻
  ───────────────────────────
   総務次官による行政処分情報の漏洩で、本来厳しく監督す
  べきはずの官庁がなれ合いに染まっていたことが明らかにな
  り、かんぽ生命保険の不適切販売問題が混迷を深めている。
  日本郵政グループのガバナンス(企業統治)の欠如が問題の
  根本原因だが、それを官庁や政治が許容してきた構図も浮か
  び上がる。問題収束はさらに遠ざかった。
   「信頼回復のために社員みんなで必死なのに、一体何がし
  たかったのか」。日本郵政関係者は情報漏洩の一報を聞いて
  嘆いた。情報の漏洩先だった日本郵政の鈴木康雄副社長は、
  ある国会議員をして「郵政グループの実質的な最高権力者。
  長門(正貢)社長なんて目じゃない」と言わしめる。かんぽ
  生命保険の不正販売問題を報じたNHK番組への抗議を主導
  したことでも有名。官邸との関係も深いのがパワーのゆえん
  だ。その人物が総務省の事務方トップの鈴木茂樹前総務次官
  と結託していた。天下りで経営陣に幹部を送り込む手法は旧
  郵政省時代から続く。平成25年6月に鈴木副社長が日本郵
  政入りして以降、旧郵政省出身で先輩後輩関係にあった事務
  次官はほかにも電通グループ副社長を務める桜井俊氏(27
  年7月〜28年6月)もいる。先輩と後輩の間柄で厳格に引
  かれるべき一線が曖昧になり、かんぽ不正の温床になったと
  もみえる。           https://bit.ly/35O94yz
  ───────────────────────────

suzukiyasuonihonyuuseihukushachou.jpg
鈴木康雄日本郵政副社長
 
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2019年12月20日

●「天下りの温床である政府関係機関」(EJ第5154号)

 少し難しくなってきているので整理します。本来会計というも
のは、ひとつにまとめた方がスッキリします。税金や公債などを
財源として受け入れ、社会保障、地方交付金、教育、公共事業、
防衛など、国の基本的な政策の経費を賄う会計を「一般会計」と
呼んでいます。
 しかし、国は上記以外に多くの事業に取り組んでおり、それは
広範囲にわたっています。しかもその内容は、複雑多岐であり、
そのため、事業によっては、その歳入・歳出を「一般会計」と区
分し、別の会計に計上する方が、個々の事業状況や資金の運用実
績などが明確になる場合もあります。これが「特別会計」です。
「特別会計」には、次の3つの要件が決められています。
─────────────────────────────
 @国が特定の事業を行なう場合
  ・年金特別会計など
 A特定の資金を保有してその運用を行う場合
  ・財政投融資特別会計、外国為替資金特別会計など
 Bその他特定の歳入をもって特定の歳出に充て、一般の歳入・
  歳出と区分して経理する必要がある場合
  ・国債整理基金特別会計など
─────────────────────────────
 特別会計の数も変化しています。戦後は最も多くて45会計も
ありましたが、行政改革が行われる前は31会計、2015年現
在では14会計になっています。整理されつつあるのです。
 会計の規模については、特別会計は、国債の償還を行うための
「国債整理基金特別会計」(約200兆円)や、年金や健康保険
などの資金を管理する「年金特別会計」(約80兆円)などが含
まれるので、本家である一般会計額の4倍近くになっています。
 したがって、国の予算としては、一般会計と特別会計を合わせ
て見る必要がありますが、財務省はあえて、「一般会計=国の予
算」という位置付けで話をしようするのです。プライマリーバラ
ンスなどはそのさいたるものです。その方が彼らにとって都合が
よいからです。
 高橋洋一氏は、ストックをあらわす複数のB/Sをよく見る必
要があるといいます。複数のB/Sを見ると、B/SとB/Sの
間には資金のフローがあることがわかるからです。例えば、出資
金について、次の2つのB/Sがあります。
─────────────────────────────
  「一般会計」+「特別会計」のBS    72・5兆円
  「連結会計」(政府関係機関含む)のBS 18・8兆円
                      ──高橋洋一著
      『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書1174
─────────────────────────────
 「一般会計」+「特別会計」のB/Sを見ると、資産の欄に出
資金として「72・5兆円」が計上されています。しかし、政府
関係機関を含む連結会計のB/Sには、出資金の額は「18・8
兆円」に減っています。その差額は53・7兆円です。これは、
政府本体から政府関係機関への資金のフローです。これについて
高橋洋一氏は、次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
 この54兆円という出資金によって、各省庁は政府関係機関を
コントロールして自分たちの天下り先としてきたのです。BSを
仔細に眺めれば、天下りの構図も見えてきます。PLだけ見てい
る人には、こうした情報は入りません。
 財務省がフローのことばかり口にするのは、彼らはバランスシ
ートの話が苦手ということもありますが、国民に隠したいことが
あるからです。「天下りの温床である政府関係機関を全部民営化
して、出資金を全部返してもらい、国の借金の穴埋めに充てれば
かなり借金が減りますね」といわれることを恐れています。
                ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 約54兆円といえば途方もない大金です。これは、政府本体が
政府関係機関に多額の出資をしていることを意味します。政府関
係機関とは、特別の法律によって設立された全額政府出資の法人
であり、その予算は一般会計予算や特別会計予算と一体として、
国会の議決を必要とする機関のことです。
 政府本体が全額出資して、政府関係機関をつくり、そこにキャ
リア官僚が天下りをするという構図です。しかも、省庁ごとに政
府関係機関をつくることを認めたので、政府からの出資金が巨額
になってしまったのです。つまり、省庁ごとに天下り用の政府関
係機関を持っていることになります。
 各省庁のキャリア官僚からすれば、日本経済がどうなろうと、
そういう天下り先さえ確保されていれば、自分たちだけはいい思
いができると考えています。しかも、これらの機関は、企業的な
経営によって効率的な運営が行えるよう、省庁とは独立した機関
になっているので、天下りする役人にとっては天国です。そこそ
この実績を上げていればまず潰れることはないからです。
 各省庁は、このような政府関係機関をつくるとき、政策目的の
ために設立していると必ずいいます。しかし、これは、政府関係
機関をつくるのが目的で、政策目的の方は後から付けた理屈とい
うか建前でしかないのです。その証拠に、とっくの昔に政策目的
が終えていても、多くの政府関係機関は、新しい看板を掛け替え
て残っているからです。
 しかも、このような政府関係機関に投入されている資金は、出
資金だけでなく、貸付金もあります。政府本体からは、貸付金と
いう名目で、多額な資金が流れています。政府本体は「財投債」
を発行し、政府関係機関に貸し付けています。財投債はもちろん
政府の借金です。
 日本政府の借金が巨額でそんなに心配なら、増税などしないで
これら政府関係機関をすべて民営化すれば、出資金と貸付金を出
す必要はなくなります。 ──[消費税増税を考える/052]

≪画像および関連情報≫
 ●政府関係機関予算とはなんだろうか
  ───────────────────────────
   国の予算として、一般会計と特別会計をみてきた。もうひ
  とつあった政府関係機関予算というのをみてみよう。政府関
  係機関予算とは、特別の法律によって設立された政府出資の
  法人で、その予算を国会に提出して議決を経なければならな
  い機関の予算だという。毎年、財務省主計局編集で、その内
  訳を収録した出版物が発行されている。
   現在政府関係機関予算の対象は、国民生活金融公庫、住宅
  金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、公営企業
  金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、国際協力銀行、日本政策
  投資銀行、商工組合中央金庫(商工中金)の9機関がある。
  商工中金を除く8機関は政府が資本金を全額出資している。
  それぞれに所管官庁があり、トップに、事務次官経験者が天
  下ったりする縄張りとなってきた。
   つまり、政府関係機関予算とは、政府系金融機関の予算の
  ことだ。民間では対応が困難とされる(はずの)分野や顧客
  に対し、資金の貸付を行う公的金融機関であり、本来は民間
  金融機関の補完的役割を果たすのが筋である。政府系金融機
  関の成り立ちをみると、1936年に設立された商工中金以
  外、国民生活金融公庫(もと国民金融公庫)が1949年、
  住宅金融公庫が1950年、といったぐあいに、みな戦後ほ
  ぼ10年以内に設立されている。 https://bit.ly/38PShgz
  ───────────────────────────

政府関係機関.jpg
政府関係機関
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2019年12月19日

●「菅政権がPB目標を導入した理由」(EJ第5153号)

 よく考えてみると、財務省の増税路線を突き進め、「社会保障
と税の一体改革」を実現させたのは、当時の民主党政権での菅直
人内閣です。この内閣は国の経済に関する知識がきわめて不足し
ており、そこを財務省につけ込まれたのです。「プライマリーバ
ランスの黒字化」を目標に掲げたのもこの内閣です。
 旧民主党というと、何かにつけて鳩山元首相が槍玉に上げられ
批判されますが、財務省に完全に洗脳され、当時野党の自民党と
共謀して、亡国の消費増税を実現させた責任は、菅直人元首相と
野田前首相の2人にあります。現在の野党の弱体化、迷走ぶりは
この2つの内閣に対する国民の怒りが解けないからです。
 彼らは、財務省のいう「日本は深刻な財政危機にあり、破綻の
淵に立っている」という主張をアタマから信じ込み、増税路線を
突き進みます。加えて、2010年のG20トロントサミットに
おいて、財政の持続可能性の確保と健全化が強調され、「深刻な
財政問題に直面する諸国は健全化を加速する必要がある」との合
意がなされると、財務省の口車に乗って、菅政権は「2020年
までのプライマリーバランスの黒字化」を閣議決定しています。
これがいかに愚かなことであったかについて、三橋貴明氏は次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 2011年3月11日に、東日本大震災が発生。東日本大震災
クラスの大規模自然災害が発生した以上、政府は国債でも何でも
発行し、速やかに財源を調達。復興に取り掛からなければなりま
せん。ところが、前年にPB(プライマリーバランス)目標が決
定されていました。復興予算は、もちろん「国債関係費を除く政
府の歳出」に該当します。東北の復旧・復興で新たな支出が生じ
た以上、政府は他の予算を削るか、もしくは「増税」をする必要
があったのです。結果、まさかとは思いましたが、復興特別税と
いう形の増税が行われました。しかも、復興増税は被災地からも
容赦なく徴収されたのです。もはや、ここまでくると「狂気」と
しか呼びようがありません。     https://bit.ly/2PVEkVR
─────────────────────────────
 なぜ、当時の菅直人政権が財務省にまるめ込められたのかにつ
いては、理由があります。国会の質疑で、「菅・林の乗数論争」
というのがあったのです。ここで「林」とは、自民党の林芳正議
員のことです。2010年1月26日の参議院予算委員会でのや
り取りです。といっても、詳しいことは忘れている人も多いと思
うので、小笠原誠治氏のブログを参考にして、その一部を再現す
ることにします。当時、菅直人氏は財務相です。▲▲は両者の発
言に対するコメントです。
─────────────────────────────
菅 :(自民党は)1兆円出して、1兆円しか効果がないような
 やり方をしてきて、経済の低迷を招いた。
林 :乗数効果のことを言っていると思うが、公共事業の乗数効
 果は、最低「1」ある。では、子ども手当の乗数効果はどれだ
 けあるのか?
菅 :1兆円出して、1兆円の効果しかないのは、事実上効果は
 ゼロだ。
▲▲菅財務相は「おうむ返し」をして何も答えていない。財務省
がきちんとサポートしていないか、したとしても大臣が乗数効果
自体を知らないので、理解できない。こういうとき、大事なこと
は知ったかぶりせず「知らない」というべきだ。
林 :私の質問は、子ども手当の乗数効果をどのくらいとみてい
 るか、ということだ。
長妻:民間最終消費支出を1兆円程度押し上げる。これは実質G
 DPを0・2%ほど引き上げる。
▲▲ここで長妻厚労相が助っ人に入って、役人のペーパーを読ん
でいるが、彼も内容を理解しているとは思えない。
林 :消費の効果を言ったので、使う額でその額を割ったら乗数
 が算出できる。
仙谷:子ども手当の乗数効果は計算していない。ただ1以上であ
 ることは間違いない。幼保一体化などをすれば1・3、1・5
 以上にもなる。
▲▲仙石行政刷新担当相まで助っ人に入ったが、「1以上」とい
うのは正しくない。1兆円支給されても、全額貯蓄に回れば「ゼ
ロ」である。            https://bit.ly/35oQs8h
─────────────────────────────
 結局、このやり取りは、林議員による「菅財務相、消費性向と
乗数効果の違いをご説明ください」という質問にまで発展するの
です。林議員としては、菅財務相が、この違いを知らないことが
わかったからです。みっともない話です。テレビ中継されている
参議院予算委員会において、財務相が経済学のいろはも知らない
ことがわかってしまったからです。もっとも経済に強い林芳正議
員と経済の基礎がわかっていない菅財務相では、はじめから勝負
は見えていたといえます。
 それを財務省の役人が十分なサポートをしていたとは思えない
のです。そういうところから、あるいはいうことを聞かせるため
に、わざと恥をかかせたのではないかといわれるのです。高橋洋
一氏はこのやり取りを次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
S君:(消費性向と乗数効果、財務大臣どころか、経済学部の1
 年生でも知っていないといけないマクロ経済のイロハ中のイロ
 ハ)それを財務大臣が知らなかった!これはショックです。
教授:国民もショックだけど、菅さんもよほどショックだったん
 だろうね。おそらく「財務省の話に耳を傾けないと、赤っ恥を
 かき続けることになる」って思ったんじゃないかな。で、その
 日を境に、心を入れ替えて、財務省のいいなりになっていくわ
 け。──高橋洋一著『数学を知らずに経済を語るな』/PHP
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/051]

≪画像および関連情報≫
 ●【藤井聡】「プライマリー・バランス黒字化」の「悪行」
  ───────────────────────────
   【マスメディアは、PB黒字化が難しくなった事を批判し
  ている】政府の「基礎的な財政収支」を意味する「プライマ
  リーバランス」、略称PB。わが国政府は、2010年の菅
  直人内閣の時に、「2020年にこのPBを黒字化する」と
  いう目標をたてました。そして現在の安倍内閣も、この目標
  を引き継いだ財政運営をしています。
   その結果、「PB赤字」は、昨年度までで16兆円以上も
  削られました。そして2010年の頃の「半分」にまで縮小
  しました。これは、菅直人氏が建てた「中間目標」が達成さ
  れたことを意味しています。ただし、今年1月に公表した直
  近の財政シミュレーションによると、このままPB赤字は縮
  小していきますが、2020年時点でも「8・3兆円」の赤
  字が残される見込み――となっています。これについて、多
  くのマスメディアが「批判的」な論調を展開しています。例
  えば毎日新聞は、「基礎的財政収支:20年度赤字8.3兆
  円険しい財政再建」という見出しで、政府を非難する記事を
  配信しています。この記事で、財政再建に積極的でない安倍
  内閣を批判し、最終的に、『「首相はむしろ、教育無償化や
  子育て支援など歳出拡大を伴う施策の強化に意欲を見せてお
  り、黒字化目標を変えたがっているのでは」(首相周辺)と
  の声も出ている。財政健全化は一層難しくなりそうだ』
                  https://bit.ly/2to7gOx
  ───────────────────────────

「菅/林乗数論争」.jpg
「菅/林乗数論争」
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2019年12月18日

●「財務官僚はPL的発想の人が多い」(EJ第5152号)

 少し会計の話をする必要があります。公認会計士の藤沼寛夫氏
のサイトを参照して説明します。   https://bit.ly/2suiaSq
 期末決算において作成を求められる決算書には、次の2つがあ
ります。
─────────────────────────────
       1.貸借対照表 ・・・ B/S
       2.損益計算書 ・・・ P/L
─────────────────────────────
 一言でいうと、B/Sはストック情報、P/Lはフロー情報を
あらわします。両者は独立したものではなく、一定の関連性を有
しています。
 もう少し詳しくいうと、B/Sは、現在どのくらい財産を保有
しているかを示す決算書であるといいます。企業でいえば、安全
性を示しています。B/Sでは、期末日現在のストック情報(財
政状態)を、資産・負債・純資産に分けて表形式で表現します。
例えば、次のようにです。
─────────────────────────────
    資産:1500万円(500万円+1000万円)
    負債: 700万円
   純資産: 800万円(差額)
─────────────────────────────
 これに対してP/Lは、1年間の経営成績を示す決算書であり
収益性、成長性を示すものです。収益と費用を表示し、その差額
を当期純損益として表形式で表現します。当年度で稼いだお金が
収益、そのために費やしたお金が費用になります。売上は500
万円、売上原価150万円、地代家賃120万円とします。
─────────────────────────────
    収益:500万円
    費用:270万円(150万円+120万円)
   純利益:230万円(500万円−270万円)
─────────────────────────────
 このB/S、P/Lに関して高橋洋一氏は、財務官僚について
次のように興味深いことをいっています。
─────────────────────────────
 財務官僚は一般に、BSの考え方が苦手です。とくに主計局・
主税局の人たちは収入と支出のPLのみで財政を考える人ばかり
で、BSの発想がほとんどありません。政府の財産を管理してい
る理財局ですら、PLの視点しかない人が大半です。理財局が担
当している財政投融資についても、収入と支出の話はよく出まし
たが、残高の話をする人がほとんどいないのが実態でした。
 よくいわれるプライマリーバランス(基礎的財政収支)も、た
んに収入と支出の差額の話であって、BSのレベルで話をしてい
るわけではありません。しかも、プライマリーバランスというの
は、しばしば一般会計の話です。本来は、すべての部門の収支も
すべて含めないといけません。一般会計の話だけをするのは、国
民に対するごまかしにつながります。     ──高橋洋一著
      『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書1174
─────────────────────────────
 「財務官僚、とくに主計局・主税局の人たちは、P/Lの視点
でしかものを見ない」という高橋洋一氏の指摘は、非常に興味深
いです。そのさいたるものは、「基礎的財政収支(プライマリー
バランス)」の目標化です。これも高橋洋一氏が指摘するように
収支の差額の話、すなわち、P/Lレベルの話です。しかも、安
部政権はこれを達成しようとしている。これを守ることが「財政
再建」と勘違いしているようです。安部首相はまったくわかって
いません。彼も財務省に洗脳されてしまっています。
 藤井聡京都大学大学院教授は、「プライマリーバランスの黒字
化は亡国の道である」というレポートを書いて、プライマリーバ
ランスの黒字化政策の危険性を説いています。何が危険かという
と、これをやると、日本はますます貧乏になるからです。実際に
日本の貧乏化は加速しています。それを知らないのは日本人だけ
です。プライマリーバランスの定義は次の通りです。
─────────────────────────────
 財政収支において、借入金を除く税収などの歳入と過去の借入
に対する元利払いを除いた歳出の差のこと。そのバランスが均衡
していれば、借金に頼らない行政サービスをしているということ
を表すが、赤字なら後々に借金が増えていることを示す。プライ
マリーバランスの赤字が続いている限り、それを埋めるために国
債発行残高は増加せざるをえない状況が継続する。
                  https://bit.ly/34l85V7 ─────────────────────────────
 これは、要するに「政府は税収の範囲で支出する」ということ
を意味しています。つまり、超緊縮政策なのです。ですから、デ
フレで税収が少ないのに、支出がどんどん削られていきます。だ
から、国民の貧乏化が加速するのです。
 これを続けると、藤井聡教授は次の7つの理由により、日本は
滅びると警告しています。その7つの理由を上げます。
─────────────────────────────
     1.デフレが続く
     2.財政が悪化する
     3.産業競争力や労働生産性が低下する
     4.地方を衰退させている
     5.国防・防災力が下がる
     6.文化が衰弱する
     7.日本が後進国化する
                  https://bit.ly/38FlI4V ─────────────────────────────
 日本では、正しいことを指摘している人が「異端の人」的扱い
をされているような気がします。
            ──[消費税増税を考える/050]

≪画像および関連情報≫
 ●筆者を「共演NG」にする人たち
  ───────────────────────────
   最近、財務省ではないが、その関係者と意見をかわすこと
  がよくある。筆者は財務省出身者であるが、これまで財務省
  関係者に避けられることがしばしばあった。たとえばかつて
  財務省のよき理解者である与謝野馨氏と日本テレビで共演を
  依頼されていたが、突然、「その話はなかったことにしてく
  れ」と言われたことがある。財務省審議会の常連である某経
  済学者にいたっては、共演という話があったのに、急に出演
  しないことになった。いわゆる共演NGである。
   こちらに共演NGはないのだが、相手がNGというのだか
  ら仕方ない。今回、ラジオ日本の『清水勝利のこれでいいの
  かニッポン』からオファーがあり、共演NGを聞かれた。こ
  の番組は、政治家の方がよく出ている番組だ。いつものよう
  に「特にNGはありません」というと、「高橋さんの財政論
  を論破したいという政治家がいるので共演してもらいたい」
  ということだった。ところがその政治家は、財務省から「高
  橋を論破するのは無理」といわれたようだ。急遽出演しない
  ことが決まった。そこで共演となったのが、中川雅治参議院
  議員(自民)、宮本徹衆議院議員(共産)、小黒一正法政大
  教授であった。中川氏と小黒氏は財務省出身である。
                  https://bit.ly/38HAV5y
  ───────────────────────────


「PBの黒字化は亡国の道」と説く藤井教授.jpg
「PBの黒字化は亡国の道」と説く藤井教授
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2019年12月17日

●「日本の実質的な借金は600兆円」(EJ第5151号)

 政府の「財務書類」を企業のそれと対比させると次のようにな
ります。
─────────────────────────────
              国         会社
   @       一般会計 ・・・・ 事業部決算
   A  一般会計+特別会計 ・・・・  単体決算
   B連結会計(日銀を除く) ・・・・  連結決算
                      ──高橋洋一著
      『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書1174
─────────────────────────────
 財務省は、国の財政の話をするときは、あくまで「一般会計」
を前面に出して話します。一般会計であれば、いろいろごまかし
が効くからです。ですから、「政府の会計=一般会計」と誤解す
る人が多くなります。しかし、政府の本当の会計を知るには、特
別会計も合わせて見る必要があります。
─────────────────────────────
     政府の会計 = 一般会計 + 特別会計
─────────────────────────────
 「連結会計」とは、企業でいえばグループ決算ですが、国の場
合、特殊法人など、政府関係機関をすべて含めた会計が政府の連
結会計です。連結会計には、特殊法人、認可法人、独立行政法人
国立大学法人が連結されています。
 特殊法人というのは、日本郵政、日本政策投資銀行、国際協力
銀行などです。認可法人は預金保険機構などであり、独立行政法
人は、国際協力機構、中小企業基盤整備機構、都市再生機構、日
本高速道路保有・債務返済機構など、たくさんあります。これら
のほとんどは、公務員の主要な天下り先になっています。
 注目すべきは、特殊法人のなかに国際協力銀行(JBIC)が
入っていることです。12月9日のEJ第5145号で指摘した
例の加計学園問題で、徹頭徹尾首相をかばった経済産業省のキャ
リア官僚、柳瀬唯夫氏がシニアアドバイザーとして就任したのが
JBICです。退官から約1年間、世間の注目を外れ、ほとぼり
のさめたところで、ちゃっかりと特殊法人のJBICに収まって
いるのです。したがって、財務省は、こうした天下りのために政
府系金融機関を死守しているのです。
 さて、連結会計からは、日銀、すなわち、中央銀行が外れてい
ます。ここがポイントです。これは、財務省による「まやかし」
の手法の一つである──高橋洋一嘉悦大学教授はこのように指摘
しています。
 なぜなら、連結会計から日銀を外すのは日本だけであり、これ
は、きわめて不都合なことです。11月14日のEJ第5128
号の添付ファイル、「公的機関のバランスシート/IMFレポー
ト/対GDP比」で、IMFが国際比較に用いているのは、各国
の中央銀行を含めた会計であるからです。それなのに日本だけが
日銀を外しているのです。      https://bit.ly/34nrXH2
 同じ条件の下で比較すべきデータが、日本だけは中央銀行を外
して比較しています。これでは比較になりません。また、借金だ
けを強調し、資産を差し引かないデータで、日本人に対して日本
財政の危機を煽り、消費増税しやすい雰囲気を醸成しようとする
財務省の犯罪的な手口といえます。
 政府の「財務書類」として公表されている資料により、数字を
入れてみます。日銀を除く国全体の連結会計と、日銀のバランス
シートは次の通りです。
─────────────────────────────
      ◎日銀を除く国全体の連結会計
        資産 ・・・・  986兆円
        負債 ・・・・ 1470兆円
       純資産 ・・・・ ▲483兆円
              以上平成28年度
      ◎日銀のバランスシート
        資産 ・・・・  490兆円
        負債 ・・・・  486兆円
       純資産 ・・・・    4兆円
              以上平成29年度
                ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 上記の日銀のバランスシートについて、高橋洋一氏は、次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 中央銀行の場合、形式的には純資産がほぼゼロ(日銀の場合は
4兆円)になりますが、中央銀行には形式的な負債はあっても、
経済的な負担になる実質的な負担はありません。ですから、日銀
の純資産は、実質的には490兆円近くとなり、日銀を含めた日
本政府全体の純資産(純負債)は、ゼロに近い数字になります。
                ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 一般的に「国の借金」といわれるものは、「一般会計+特別会
計」のバランスシート上の借金の額です。具体的にいうと、借金
とは、公債、政府短期証券、借入金の合計であり、1059兆円
ほどの額になります。これが、いわゆる「1000兆円を超える
借金」です。
 しかし、日銀は資産490兆円中、約400兆円ほどの国債を
保有しており、日銀を含めた国全体の連結会計で見ると、この約
400兆円の国債は相殺され、政府の実質的な借金額は約600
兆円ということになるのです。
 しかし、あのスティグリッツ教授が「日本の場合、借金の4割
は相殺できる」と指摘しているのに、日本政府は絶対認めようと
しないのです。そのために、連結会計から日銀を外しているのか
もしれません。どうしても借金の額を大きく見せたいのです。
            ──[消費税増税を考える/049]

≪画像および関連情報≫
 ●「国債を巡る危険な楽観論」/五十嵐敬喜氏
  ───────────────────────────
   2019年3月末時点で「国の借金」は、1103兆35
  43億円、18年度末に比べて15兆5414億円増えた。
  深刻な事態だが、こんな反論もよく耳にする。国債は国の負
  債ではあるが、それを保有している人には資産だ。わが国の
  国債はその9割以上を日本人が保有しており、いわば家庭内
  借金のようなものだ。将来、返済される際には、日本の中で
  お金が右から左に動くだけだから問題ない、と。
   本当にそうか。具体的に考えてみよう。政府が国債を発行
  して、お金を調達する。国債を買うのは日本人だ。政府はそ
  れで得たお金を支出する。そのお金を受け取るのも、日本人
  だ。国債を買う人は、持っていたお金を手放して国債を手に
  入れる。お金も国債も、その人にとっては資産だから、資産
  の中身が変わるだけで、保有する資産の額は増えも減りもし
  ない。一方、財政支出を受け取る人は、受け取った分だけお
  金(金融資産)が増える。全体を見ると、国債発行という手
  段を使って、当面お金を使う予定のない人の現金が、今お金
  を必要としている人に渡り、国民全体の資産は増えている。
  (同時に政府の負債が増えている)。国債が償還されるとき
  には何が起こるか。政府は国民から徴税したお金を国債の保
  有者に渡して、国債を償還する。徴税された人の金融資産は
  その分、減少するが、国債の保有者の資産は不変だ。国債と
  いう資産が償還されてなくなり、代わりに償還金を受け取る
  からだ。結果として、国民全体の資産が減少する(同時に政
  府の負債がなくなる)。     https://bit.ly/36vKfaG
  ───────────────────────────

スティグリッツ教授.jpg
スティグリッツ教授
  
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2019年12月16日

●「報道ゼロのマレーシア消費税廃止」(EJ第5150号)

 「財務省の官僚はアタマが良い」とあまり考えないほうがよい
と思います。彼らの多くはけっして経済に強くないし、まして会
計にはすこぶる弱い──嘉悦大学教授の高橋洋一氏はこのように
いっています。
 確かにその証拠に日本はいつまでもデフレから脱却できないで
います。政治家は何もわかっていないし、日本経済の浮沈は財務
官僚の手に委ねられているからです。
 高橋洋一氏の本を読んでわかったことがあります。それは、財
務省が大蔵省と呼ばれていた時代から、国の負債を大きく見せて
つねに日本の財政危機を国民に訴えていたということです。その
方が増税をするとき、都合がよいからです。
 今回のテーマでは、「消費税は百害あって一理なし」というこ
とを明らかにし、「消費税を廃止する」ことは十分可能であるこ
とを訴えたいと意図しています。このことを一番鮮明に党の公約
に掲げているのは、山本太郎代表が率いる議員たった2人の「れ
いわ新撰組」だけです。
 日本では政治的意図があって、メディアは、ほとんどニュース
にしませんが、マレーシアでは、2018年6月1日から6%の
消費税が廃止されています。マレーシアでは、2018年5月に
実施された総選挙で、「消費税廃止」の公約を掲げたマハティー
ル元首相率いる希望連盟が勝利し、マハティール氏が首相に返り
咲いて、公約を実現したのです。そのとたん、マレーシアでは経
済が急速に成長をはじめています。こんなビッグニュースを日本
国民のほとんどが知らないのです。どういうわけか、メディアが
封印しているからです。
 インターネットには、これに関するたくさんレポートが出てい
るのに、誰も知らないというのは、日本人のネットリテラシーが
遅れていることをあらわしています。現代の日本人は、ネットを
使っても自分に関心のあることしか、見ようとしないのです。消
費税廃止後のマレーシアの経済については、目下データ収集中で
あり、改めてEJでもお伝えします。
 高橋洋一氏が作成したという国のバランスシートについて、少
し詳しく知ることが必要です。高橋氏の本を参考にして、以下に
説明することにします。
 政府が「財務書類」として、発表している会計には、次の3種
類があります。
─────────────────────────────
        @       一般会計
        A  一般会計+特別会計
        B連結会計(日銀を除く)
─────────────────────────────
 「一般会計」とは何でしょうか。
 一般会計とは、「一般的な行政にかかる経費を扱うもの」とい
うことができます。具体的にいうと、社会保障、地方交付税交付
金等、公共事業、文教および科学振興、防衛、その他、国債費な
どに当てられるものであり、予算の時期に各新聞で発表されるも
のがそれに該当します。
 問題なのは、これを国民から見ると、予算の全貌だと思ってし
まうことです。財務省もわざとそう思わせるようにしています。
しかし、高橋洋一氏にいわせると、一般会計は企業でいえば「事
業部予算」でしかないのです。
 したがって、あくまで、「一般会計」と「特別会計」とを合わ
せたものが国の会計ということになります。それなら、「特別会
計」とは何でしょうか。
 「特別会計」については、小泉内閣のときに、塩川正十郎財務
相の次の有名な発言があります。
─────────────────────────────
 母屋(一般会計)では節約をしてお粥をすすっているというの
に、離れ(特別会計)では子供が贅沢にすき焼きを食べている。
                   ──塩川正十郎財務相
─────────────────────────────
 これは、一般会計が赤字を削ってやっているのに、特別会計で
は贅沢をしていることを皮肉ったのです。財務大臣がそういうの
ですから、間違いのないことです。
 法律上の定義としては、「特定の事業を行う場合」に「一般の
歳入歳出と区分して経理する必要がある」経理のことと説明され
ています。つまり、一般会計から切り離して独立して行われる経
理ということです。
 特別会計は、簡単にいうと、特定事業のための予算です。原則
的にはその事業に関連してのみ使われることになります。たとえ
ば、自動車安全特別会計であれば道路整備に利用されますし、エ
ネルギー対策特別会計であれば、産油国への協力費や天然ガスの
開発などに充てられています。最も新しいところでは東日本大震
災復興特別会計があり、こちらは文字どおり復興を進めるための
予算となっています。
 一般会計か、特別会計かのどちらにするかは、恣意的に決める
ことができます。会社の事業部の分け方が会社の都合でいかよう
にでもできるのと同じです。高橋洋一氏は、これについて、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 財務省は、ごまかしの効く一般会計をいつも前面に出してレク
チャーを施すので、政治家もマスコミも一般会計のことしか視野
に入らず、問題にしない。経済記者も含めて、多くの人は「一般
会計」を「政府の会計」と誤解しているようです。しかしはっき
りいえば、一般会計だけを見ても政府のことはわかりません。一
般会計と特別会計の両方を合わせたものが「政府の会計」です。
合算を見なければいけない。         ──高橋洋一著
      『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書1174
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/048]

≪画像および関連情報≫
 ●報道されない「特別会計」を足した平成31年度予算の真相
  ───────────────────────────
   2019年3月27日に成立した2019年度予算(一般
  会計)は約101兆円でした。昨年よりも3・7兆円増えた
  のですが、そのうち2兆円が増税対策に使われます。最も大
  きく伸びたのは社会保障関係費で、その増額分は1兆円でし
  た。項目別の累計額を見ると、社会保障関係費は34兆円な
  ので、一般会計の3分の1です。7兆円の公共投資、約6兆
  円の教育予算(科学含む)に比べると、段違いの規模を誇っ
  ていることが分かります。
   しかし、これは政府予算の全てではありません。政府予算
  には「一般会計」のほかにも「特別会計」があるからです。
  特別会計というのは、国が行う事業や資金運用などに用いる
  会計のことです。
   具体的には、年金(医療含む)、財政投融資、地方財政の
  支援、震災復興などの項目があり、それらを足すと、額面上
  は400兆円近い規模になります。しかし、そこには、一般
  会計と特別会計で二重に計算された金額が含まれているので
  実額は半分程度です。重複分を除いた特別会計は200兆円
  程度と見られています。(一般会計の場合、重複分を引くと
  実額は45兆円前後になる)例えば、2017年は、特別会
  計の実額が196兆円、一般会計の実額(重複分除く)が、
  43兆円。両者の合計は239兆円でした。
                  https://bit.ly/34jnANu
  ───────────────────────────

塩川正十郎元財務相.jpg
塩川正十郎元財務相

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2019年12月13日

●「東大法学部出身と国家財政の知識」(EJ第5149号)

 「キャリア官僚」とは、どういう官僚でしょうか。
 「キャリア官僚」には、ちゃんと定義があります。
─────────────────────────────
 日本における国家公務員試験の総合職試験、上級甲種試験又は
T種試験(旧外務T種を含む)等に合格し、幹部候補生として中
央省庁に採用された国家公務員の俗称である。
                    ──ウィキペディア
─────────────────────────────
 財務省は、指定の国家公務員試験にトップランクで合格した数
人しか入省できないのです。だから、日本人は、東大を卒業して
財務省に入省すると、「凄い秀才」と認めてしまうところがあり
ます。これは大きな間違いです。
 彼らは東大を卒業したといっても、その多くは法学部出身であ
り、そういう人に、専攻の異なる経済・財政・金融のことが本当
に理解できるのか、疑問に感じます。
 まして現代はICTの時代であり、コンピュ−タも発達してい
るので、自分が仕事に使うシステムを自らプログラミングして構
築する能力も不可欠になっています。しかし、東大出身の財務省
のキャリアがコンピュータに強いとは、とても思えないのです。
私は、ここ15年ほど、あるIT企業の新人研修を担当している
ので、そのことはよくわかります。
 しかし、財務省では、東大の法学部出身の俊秀のプロパー職員
が、基本的に内部の研修と職務経験だけで昇進し、そのなかで、
たった一人が事務次官にまで上り詰める。このようなやり方で、
日本経済の司令塔になる人材を育てられるのでしょうか。
 これに対して米国の財務省は新卒の一括採用ではなく、特定の
能力を持つ人を採用する中途入省の採用スタイルです。米国財務
省のウェブサイトの採用のページには、次のようなスペシャリス
トの応募を求めています。
─────────────────────────────
 Accountants                    会計士
 Attorneys                     弁護士
 Budget Analysts              予算アナリスト
 Contract Specialists              契約専門官
 Economists/International Economists  (国際)経済学者
 Financial Analysts          金融アナリスト
 Human Resources/EEO Specialists 人材管理/育成の専門家
 Information Technology Specialists  ITスペシャリスト
 Intelligence Specialists       情報スペシャリスト
               ──上念司著/講談社+α新書
      『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』
─────────────────────────────
 上記の上念氏の本には、経済の専門紙である日本経済新聞社の
人材採用について書かれている部分があります。大変興味深いの
で、引用を含めてご紹介します。
 日本経済新聞社では、記者の採用条件に、経済、金融、経営、
会計などの履修は含まれておらず、2020年入社定期採用の応
募は、次のようになっています。
─────────────────────────────
 ◎2020年入社第3回定期採用試験
 1991年4月2日以降に生まれた方で、次に該当する方が対
象です。
 @日本の四年制大学・大学院を2020年3月までに卒業・修
  了見込みまたは既卒の方
 A海外の大学・大学院に在籍している方(交換留学は除く)は
  日本の四年制大学・大学院と同等の学位で、2020年3月
  までに卒業・修了見込みまたは既卒の方。学部・学科は問い
  ません。            https://bit.ly/359clbr
─────────────────────────────
 日本経済新聞社は、例年50人〜60人の学生を採用していま
すが、そのほとんどは「学部・学科は問わない」という幅広い条
件での応募者受け入れです。あくまで、出身学部は問わず、記者
は社内で育てるという方針のようです。これはこれでよいと思い
ます。記者志望の学生にとってはありがたいことでしょう。
 もちろん中途採用もあります。募集職種としては、記者(写真
・映像記者を含む)、高度な専門記者、デジタルIT、グローバ
ル、インデックス事業、営業・企画と分かれていますが、「高度
な専門記者」の項目には次の記述があります。
─────────────────────────────
 経済、財政、マーケット、企業経営、外交・安全保障、IT、
エネルギーなどの分野に関して、専門的視点から深い解説記事な
どを書ける人材を求めています。博士号または同等の専門知識を
お持ちの方や、シンクタンク、大学、企業、研究機関、官庁など
で、実務・研究経験を積んだ専門的な分析力を持つ方を歓迎しま
す。                https://bit.ly/2sj1rla
─────────────────────────────
 このように確かに専門家を募集していますが、上念氏によると
日本経済新聞の記者で中途採用の人はほとんどいないというので
す。実際に日本経済新聞の記者に聞くと、「高度な専門記者」と
いう職種で採用された人に社内で会ったことはないといいます。
上念司氏はこういっています。
─────────────────────────────
 もちろん新卒からたたき上げの新聞記者のなかにも、自分で積
極的に勉強して正しい経済知識を身に付けた例外的な人もいます
が、圧倒的に少数派です。こうした人が新聞社の中枢から外れて
主に雑誌やネット媒体などに寄稿しているのも、高度な専門記者
が邪魔なことと、まったく同じ理由です。そんなスキルは、新聞
の紙面を作るには不要なのです。  ──上念司著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/047]

≪画像および関連情報≫
 ●財務省なのに法学部出身ておかしくね?
  ───────────────────────────
   財務省の事務次官。それはもう、官僚のなかでトップ中の
  トップ。雲の上の上の上。この財務省の事務次官というポス
  ト、法学部出身の人ばかりなるっておかしくね?
   財務省のホームページに「財務省の使命」というのが書か
  れています。「納税者としての国民の視点に立ち、効率的か
  つ透明性の高い行政を行い、国の財務を総合的に管理運営す
  ることにより、健全で活力ある経済及び安心で豊かな社会を
  実現するとともに、世界経済の安定的発展に貢献すること。
  /財務省」
   ものすごく簡単にいえば、お金や経済を扱ってるところ。
  普通に考えて大学で学ぶべき学問とすれば経済学でしょう。
  しかし、法学部出身の多いこと多いこと。ウィキペディアで
  で調べたところ、財務事務次官のほとんどが法学部出身。肝
  心の経済学部卒はなんと3人だけ。過去50人以上いるなか
  で、3人て。イギリス大蔵省の事務次官。イギリス大蔵省と
  いうところです。
   ここにも事務方のトップがおりまして。ウィキペディアで
  調べた結果がこちら。「こちらは直近の5人調べただけです
  が、みなさん経済学を学んだり、教えたりという人たちでし
  て・・・。かなり強大な力をもつ日本の財務省。トップだけ
  じゃなくて、職員のほとんどが法学部出身。果たしてこのこ
  とと日本だけが長期のデフレということと関係が?
                  https://bit.ly/2P9c0Qp
  ───────────────────────────

日本経済新聞社本社ビル.jpg
日本経済新聞社本社ビル
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2019年12月12日

●「国のBSはどのようにしてできか」(EJ第5148号)

 日本の財政の状況を正確に知るには、国のバランスシートを調
べるしかないといいます。この、日本国のバランスシートを最初
に作ったのは、元大蔵官僚の高橋洋一嘉悦大学教授です。このこ
とは、高橋洋一氏の本を多く読んでいた私はかなり以前から知っ
ていましたが、それを本気で調べようとしたことは一度もなかっ
たのです。しかし、日本の財政について詳しく知るには、バラン
スシートの分析が不可欠であることは確かです。
 ちなみに、1990年代半ばまで、世界でも国のバランスシー
トをつくるところはなく、日本が最初であったといいます。しか
し、このバランスシートは完成後封印され、公表されることはな
かったといいます。その事情について、高橋洋一氏は次のように
述べています。
─────────────────────────────
 完成した日本政府のバランスシートは世界に先駆けたものでし
たが、公表は長く封印されていました。当時の大蔵省は現在の財
務省と同じく、バランスシートの右側にある負債部分だけを大き
くクローズアップして日本の財政危機を訴えていたからです。左
側にある資産の部分が公になると、従来の説明と矛盾が生じてし
まいます。それでバランスシートの作成時、上から「これはお蔵
人りだ」といわれたのを記憶しています。
 その後、2000年代に小泉純一郎内閣が誕生すると、財務省
内からも「そろそろバランスシートを公表したほうがよい」とい
う声が上がり始めました。そこで小泉首相に「こういうものがあ
りますよ」と見せたところ、「いいじゃないか」となり、公表さ
れました。       ──高橋洋一著/PHP新書1174
                『「消費増税」は嘘ばかり』
─────────────────────────────
 日本政府のバランスシートが公表されたのは、2004年のこ
とですが、現在では、財務省のホームページにバランスシートが
公表されています。
 高橋洋一氏が、バランスシートを作る必要があると考えたのは
当時高橋氏が財政投融資の担当だったからです。財政投融資につ
いては、既に簡単に述べていますが、当時大蔵省の資金運用部は
郵便貯金や年金などで集めたお金を吸い上げ、政府系金融機関や
政府関係法人に貸し付けるという銀行と同じ仕事をやっていたの
です。その資金総額は実に約400兆円、金利の変動によっては
破綻リスクもあり得る状態であり、ALM(アセット・ライアビ
リティ・マネジメント)の導入は不可欠だったのです。
 ALMは、ごく簡単にいうと、金利変動によって財務状況全体
がどのように変化するかについてシミュレーションするシステム
です。これによって、金利変動に伴う将来のバランスシートの変
化をある程度予測できるのです。そのためには、財政投融資のバ
ランスシートを作らなければなりませんが、そのためには国全体
のバランスシートを作る必要があるのです。
 高橋洋一氏は、大蔵省理財局内に「資金企画室」というチーム
を作ってもらい、この仕事に取り組んだのです。国のバランスシ
ートを作成し、そのなかから財政投融資の分だけを抜き出し、A
LM分析をするプログラムを構築したのです。秀才ばかりといわ
れる大蔵省にも、そういうことができるスタッフはほとんどいな
かったと、高橋洋一氏は述懐しています。
─────────────────────────────
 私にこの仕事ができたのは、大蔵省では珍しい数学科出身(東
京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業)だったからです。
私の上司はALMについて幹部に説明する際、机の上に分厚い本
をドンと置いて、「ここに高橋のやっていることが全部書いてあ
る」といったら皆、黙ってしまった。文系の官僚には、理解し難
い内容だったと思います。ALMの重要性に関する分析や、ペー
パーは出ていましたが、誰も実行できない状況でした。いくら必
要性がわかっていても、コンピュータのプログラムを書いてシス
テムをつくれる大蔵官僚は当時いませんでした。
                ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 1994年頃の話といいますが、当時PCは結構官庁や企業で
は普及していて、プログラミングのできる人は結構PCを使いこ
なしていたのです。私も当時BASICという言語でプログラミ
ングを書いてPCを使っていたのです。それに1995年11月
に、「ウインドウズ95」が発売され、一挙にPCは一般家庭に
も幅広く普及をはじめたのです。
 ところで、かつての大蔵省理財局、現在の財務省でもそうです
が、秀才の巣といわれますが、学部別に見ると、法学部の出身者
が圧倒的に多く、経済や会計のわかる官僚が少ないといえます。
これは最近になってもあまり変わっていないようです。
 ここに平成24年度(2012年)の財務省入省者のキャリア
官僚の出身大学および学部のリストがあります。36人の同期の
うち、東京大学法学部の占める割合が約3分の2に当る11人で
す。やはり官僚は東大優位です。これを学部別に見ると、次のよ
うになります。
─────────────────────────────
              人数    割合
        法学部  20人 55・6%
       経済学部  11人 30・6%
        その他   5人 13・9%
 上念司著/『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』
               講談社+α新書/744−1C
─────────────────────────────
 これらの36人中大学院卒業のテクノクラートは7名で、意外
に少ないのです。しかも専門学科は法学部が半分以上と、経済を
分析する力はけっして強いとはいえないと思います。先進国では
ほとんどがテクノクラートの人材ばかりです。
            ──[消費税増税を考える/046]

≪画像および関連情報≫
 ●【国の借金は1000兆円って本当?】
  ───────────────────────────
   日本の借金は1000兆円を突破していて、このまま借金
  が増え続けると日本が財政破綻すると言われることがありま
  す。このような「日本の借金問題」は昔から言われているこ
  とであり、少なくとも1980年代以降、政府債務は右肩上
  がりで増え続けています。
   しかし、厚生労働省の大学等卒業予定者の就職内定状況調
  査によると2018年卒の大学生の就職内定率は91・2%
  で1997年の調査開始以来最高の内定率を記録していると
  言われており、日本の財政は破綻するどころか景気が良いと
  さえ言えます。いつか破綻するかもしれないと言われている
  日本政府の財政状態について本当はどのようになっているの
  でしょうか。本記事では日本の借金問題について考察を行い
  ます。まずは日本の借金は本当に1000兆円なのかという
  ことについて検証します。
   例えば、持ち家を購入して数年しか経っていない家庭はお
  そらく家のローンとして数千万円の借金を抱えているでしょ
  う。しかし、給料が貰えてローンが返せている限り、借金に
  よって家を取り上げられることもなければ、借金で首が回ら
  なくなることもないでしょう。手元にお金があって、きちん
  とお金を払っている限り借金があっても問題ないのです。
                  https://bit.ly/2RFwwdd
  ───────────────────────────

日本国のバランスシートをはじめて作成した高橋洋一教授.jpg
日本国のバランスシートをはじめて作成した高橋洋一教授
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2019年12月11日

●「帳簿に載っているもの全て売れる」(EJ第5147号)

 政府の借金が過大であるというが、政府は資産を多く保有して
いるという疑問に対して、財務省は、それらは資産であっても処
分できないものがほとんどであると答えてきています。
 しかし、ここまで反論してきているように、借金が本当に深刻
であるなら、いくらでも処分が可能です。なお、企業や団体への
「出資金」についても、財務省は処分はできないと次のように答
えています。なお、数字は2009年当時のものです。
─────────────────────────────
 出資金(58兆円)は、その大部分が独立行政法人、国立大学
法人、国際機関等に対するもので、これらに対する出資は、そも
そも市場で売買される対象ではありません。
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 財務省は、天下り先を確保するために、なるべく政府系企業や
団体を必死で残そうとします。そのため、政府機関や団体の民営
化には徹底的に抵抗します。わかりやすい例を上げると、国立印
刷局という法人があります。紙幣や郵便切手などの印刷をする独
立行政法人です。
 紙幣や金券の印刷であるとはいえ、やっていることは、印刷会
社と同じです。したがって完全に民営化して、株式を売却すれば
その分負債をなくすことができます。別に売却すべしといってい
るわけではありません。財務省が「できない」というから、「で
きる」といっているだけです。
 それに財務省は、すぐに売れるが、それは自分たちが直接不利
益を受けるため、財産として上げないものはたくさんあります。
その代表として森永卓郎氏が上げるのは、「国家公務員住宅」で
す。ILO(国際労働機関)は、「社宅は労働者の思想統制につ
ながるので望ましくない」という見解を示しているそうです。森
永卓郎氏は、それならすべて売却すべしとして、次のように述べ
ています。
─────────────────────────────
 国家公務員住宅は、戦後の住宅不足のなかで、給与の低い公務
員の生活を支えるために、造られた。その数は2010年で、国
が所有するだけで、18万戸(2015年9月末時点で16・6
万戸)。民主党(当時)政権時代に、債務削減のため、真に公務
に必要なものを除いて削減する方針がきめられたが、それでも、
16万戸は必要とされた。危機管理要員や緊急参集要員などが入
居するためだ。財務省の資料によると、本省の勤務者のうち「国
会対応、法案作成及び予算等の業務に従事し、深夜・早朝におけ
る勤務を強いられる」職員には公務員住宅が必要だというのだ。
しかし、私は、経済企画庁で2年間勤務したが、埼玉県所沢市の
自宅から通っていた。もちろん、国会対応や法案作成の業務にも
携わり、深夜の勤務もしていた。危機管理要員というが、民間企
業にも危機管理要員はたくさんいる。しかし、彼らのほとんどは
社宅には住んでいないのだ。   ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 ここまでの記述で、財務省は必要以上に過大に日本政府の借金
の大きさを強調していることがわかると思います。その財務省の
主張を日本のメディアは、批判も反論もせず、ほぼそのまま報道
します。財務省には逆らわないことにしているようです。
 財務省は、莫大な広報予算を有しており、それを前提にメディ
アに睨みを利かせているからです。例えば、消費増税を実施する
場合、政府は相当巨額の広報予算を組みます。CMの制作やその
放映、新聞の全面広告などですが、そのさい財務省に批判的なメ
ディアに関しては、その配分に差をつける、いや差をつけるかも
知れないぞと脅しをかけるからです。そういうわけで、「さわら
ぬ神に祟りなし」というわけです。
 森永卓郎氏と並んで、そういう財務省の姿勢を批判している高
橋洋一氏は、よく日本経済新聞を例にとって、次のような話をす
ることがあります。なぜ、日本経済新聞社かというと、同社は経
済の専門紙でありながら、財務省が「日本は1087兆円の借金
を抱えている」という情報を流すと、何の検証もせず、そのまま
報道し、「国民一人当たり859万円の借金」と財務省の提灯持
ちまでするからです。ざっと次のような話です。
 日本経済新聞社には、ざっくりですが、2017年12月末の
時点で、負債が3000億円ほどあります。そのうち、長期借入
金は1000億円ぐらいです。社員数は3000人なので、社員
1人当たり実に1億円の負債です。もし、借金の大きさだけで破
綻が決まるとしたら、国民一人当たり850万円の借金を抱える
日本国よりも、日本経済新聞社は、はるかに破綻懸念が大きいと
いうことになります。
 しかし、日本経済新聞社は約6000億円の資産を持っていま
す。純資産は3000億円。資産と負債の両面で見なければ、会
社の健全性は判断できないのです。これは常識的なことであり、
まして経済記者が、資産のことに触れずに借金のことだけを書く
のは考えられないことである──高橋洋一氏はこのように主張す
るのです。そのさい、それらの資産が売却できるかどうかは、問
題にする必要はないのです。これについて、高橋洋一氏は次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 政府の帳簿も企業の帳簿も同じことですが、帳簿に載っている
ものは当然、すべて値段が付いています。したがって国有資産も
値段が付いている以上、理論上は売却できます。値段を付けられ
ない資産は帳簿に載せることはできません。だから帳簿に載って
いること自体がマーケットバリューを有する、すなわち「売却可
能」という意味です。  ──高橋洋一著/PHP新書1174
                『「消費増税」は嘘ばかり』
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/045]

≪画像および関連情報≫
 ●日本は世界第2位の「政府の隠れ資産」大国だ
  ───────────────────────────
   日本の公的債務はGDPの200%を上回り、OECD加
  盟諸国の平均の2倍以上に達する。しかも高齢化社会、低イ
  ンフレ、増税への強硬な反対が障害となり、解決への糸口は
  見えない。しかしここにひとつ、ほとんど注目されない別の
  一面が存在している。国民の目から隠されているが、大半の
  国の政府は驚くほどたくさんの資産を所有しており、それは
  超債務国も例外ではない。これらの資産を構成するのは国営
  産業の遺産で、具体的には空港、港、発電所、地方または全
  国レベルの公共交通システム、たとえば東京メトロなどが含
  まれる。
   ただし、大きな価値のある資産は見えないところに隠され
  ているケースが多い。実のところほとんどの政府、それも特
  に自治体は、大きな不動産ポートフォリオを所有している。
  そして、広大な土地と知的所有権を合計した商業的価値はと
  てつもなく大きい。実は、公的資産がその国のGDPのなか
  で占める割合を分析すると、日本は、信頼できる統計のある
  国々の中で、世界第2位に位置している。その額は、問題視
  されている公的債務を上回り、GDPの2倍以上となってい
  る。GDPの2倍以上の公的資産を持つ国は、日本のほかに
  ノルウェー、ラトビア、チェコの3カ国しかない(IMFの
  2013年データより筆者ら推計)。
                  https://bit.ly/2Yvs1n5
  ───────────────────────────

一般政府の資産がGDPに占める割合.jpg
一般政府の資産がGDPに占める割合

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2019年12月10日

●「政府系金融機関を全て民営化する」(EJ第5146号)

 昨日のEJの「関連情報」でお知らせした重要情報を再確認し
ます。2019年8月15日現在、日本は約2年ぶりに中国を抜
いて、米国債の最大の保有国に返り咲いています。
 しかし、これは、日本が最大にしたというよりも、中国が外貨
準備を大幅に減らしたことが原因です。以下は2018年8月と
2019年8月の日本と中国の外貨準備高の比較です。中国は、
2018年から大幅に米国債を減らしています。これは、米中貿
易戦争と無関係ではないはずです。
─────────────────────────────
 ◎日本と中国の外貨準備高比較(USドル)
       2018年8月      2019年8月
  日本 1兆2593億ドル    1兆1228億ドル
  中国 3兆1097億ドル    1兆1125億ドル
                https://bit.ly/2qw9Jp4
─────────────────────────────
 日本は、こういう外貨準備などの金融資産をたくさん保有して
いますが、それはいずれも政府の借金の返済に使えないとする財
務省の主張を再現します。
─────────────────────────────
 外貨証券(82兆円)や財政融資資金貸付金(139兆円)は
FBや財投債という別の借金によって調達した資金を財源とした
資産であり、これらの借金の返済に充てられるものであるため、
赤字国債・建設国債の返済に充てることはできません。
(2009年当時)    ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 難しい言葉がたくさん出てきました。外貨証券や財政融資資金
貸付金などの金融資産は、「別の借金によって調達した資金を財
源としている」といっていますが、これは何を意味しているので
しょうか。
 既に述べているように、日本政府が保有している「外貨証券」
のほとんどは、「円売りドル買いの為替介入をした残骸」であり
米国債のかたちで残されています。
 この円売り・ドル買い介入の場合には、政府短期証券(為券)
の発行により円資金を調達し、外国為替市場における為替介入に
よりこの円資金を売却し、ドルを購入します。「別の借金によっ
て調達した資金を財源としている」というのは、このことをいっ
ているのです。
 政府短期証券は、連結財務書類の負債の部に載っています。つ
まり、国の広義の借金に含まれているので、保有している米国債
を売れば、政府の債務は減少することになり、借金を減らすため
に使えます。したがって、外貨証券(米国債)を売れないとする
財務省の主張は誤りです。
 日本政府が米国債を売れないとするのは、過去の“ある事件”
の心理的圧力があるからです。その“ある事件”とは、橋本龍太
郎元総理の米コロンビア大学の講演での発言にあるのです。
─────────────────────────────
 1997年6月23日、当時の橋本龍太郎首相が米コロンビア
大学での講演のあとの質疑応答で、「米国債を売りたい衝動に駆
られることがある」とジョーク交じりにコメントした。NYダウ
は192ドル下落、1987年のブラックマンデー以来の大幅な
下げとなった。1985年のプラザ合意以降の急激な円高ドル安
(260円から85円へ)が進むなかでの発言だったが、「もし
売るようなことがあれば、(米国への)宣戦布告とみなすと脅さ
れた」とささやかれた。米国が拡大する日本の対米貿易黒字に苛
立ちを強め、円高誘導カードをちらつかせていたことなどが背景
だった。              https://bit.ly/2Yt4DGz
─────────────────────────────
 この事件がきっかけになって、日本政府は、米国債を売れなく
なってしまったのです。しかし、米国債は世界で一番流動性の高
い有価証券であり、もっとも売りやすい。冒頭の「外貨準備高比
較」で明らかなように、中国などは、遠慮なく売っています。さ
すがに日中がまとめて売れば、確実に世界経済は大混乱になりま
すが、少しずつ売る分には、まったく問題がないのです。
 続いて、「財政融資資金貸付金」とは何でしょうか。
 財政融資資金貸付金とは、政府が日本政策投資銀行などの政府
系金融機関に貸し付けている資金です。この資金は、政府系金融
機関を通じて、中小企業や国民に貸し付けられています。政府が
資金を調達する理由は、その方が資金の調達コストが安くて済む
からです。政府の方が信用力が高いからです。もし、政府系金融
機関がやろうとすると、信用力の差で、高い金利を払う必要があ
ります。そのため、政府が代りに債券を発行すると、安い金利で
資金を調達できます。これが「財投債」です。
 財政融資資金貸付金は、2009年の時点で「139兆円」も
あります。財務省のいう別の借金によって調達した資金とは「財
投債」のことです。財務省は、この財政融資資金貸付金を政府の
借金の返済に使えないといっていますが、森永卓郎氏は、これに
対して次のように反論しています。
─────────────────────────────
 政府は、財投債で調達した資金をそのまま政府系金融機関に貸
し付けている。国の連結財務書類(国の貸借対照表)のなかでは
財投債の発行額は、負債の部に計上されているが、資産の部には
政府が政府系金融機関に貸し付けたお金が「貸付金」という形で
加えられている。だから、政府系金融機関を完全に民営に移し、
国が資金調達を肩代わりするのを止めて、政府系金融機関が自ら
資金調達をするように変更すれば、財投債発行分が資産からも負
債からも消えてしまうことになる。つまり、グロスの借金は瞬時
に減少するのだ。        ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/044]

≪画像および関連情報≫
 ●国の債務とはみなされない国債の不思議
  ───────────────────────────
   国債であって、国の債務ではない国債が存在する。しかも
  その残高は、総国債残高の1割強に当たる99兆円にも達し
  ている。近々に公表される見込みの2015年6月末残高は
  100兆円を超えるであろう。その国債とは、財政投融資特
  別会計から発行される国債、いわゆる財投債のことである。
   国債管理を担う財務省が「国の債務ではない」と言ってい
  る訳ではないが、例えば、国際標準の概念区分に従う国民経
  済計算統計(GDP統計)上においては、財投債は国の債務
  とはみなされていない。政府債務残高やコクサイ(国債)残
  高のコクサイ(国際)比較で用いられる数値においても、こ
  の財投債は除かれている。財政投融資特別会計自体が、政府
  ではなく、擬制的に「公的金融機関」に分類されているから
  である。しかし、意外なほどに、これらの事実に対する注目
  度は低い。では、なぜ、このような分類が適用されるのだろ
  うか?
   財政投融資とは、「国の信用や制度に基づいて調達した有
  償の公的資金を用いて、公庫、独立行政法人・特殊法人、国
  の特別会計や地方公共団体に対して行う長期・低利の資金供
  給」のことであり、その原資の中心を担っているのが財投債
  である。──ニッセイ基礎研究所 https://bit.ly/38kxr8Y
  ───────────────────────────

橋本龍太郎元総理.jpg
橋本龍太郎元総理
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2019年12月09日

●「高速道路も一般道路も売却できる」(EJ第5145号)

 前号の復習です。現在、日本国のバランスシートには、年金積
立金の運用寄託金の費目で121兆円が計上されています。この
金額は、日本政府の莫大な借金の穴うめに使えるではないかとの
問いに、財務省は「将来の年金給付のため積み立てられている」
として、取り崩せないとしています。
 この財務省のいい分は、もっともなように聞こえますが、これ
ウソです。現在日本の公的年金は2004年から「賦課方式」に
なっており、この方式には積立金は発生しないのです。現在積み
上がっている121兆円は「積み立て方式」時代の積立金であっ
て、その10%程度を安全のために残し、法律を変更すれば、約
100兆円は使用可能です。財務省は、こういうウソを平気でつ
くので、騙されないよう注意が必要です。
 続いて、「資産はあるがそのほとんどは使えない」とする財務
省の別の回答を示します。
─────────────────────────────
 道路・堤防等の公共用財産については、例えば、国道(63兆
円)などや堤防等(67兆円)として、公共の用に供されている
ものであり、また、収益を生むわけでもないので、買い手はおら
ず、売却の対象とはなりません。       ──森永卓郎著
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
                     角川新書K126
─────────────────────────────
 確かに、「資産があるじゃないか。借金が大変なら、なぜ売ら
ない?」とは指摘するものの、国民も道路や橋まで売れといって
いるわけではありません。他に売れる資産があるでしょうといっ
ているだけです。
 しかし、「道路や橋は売れない」と財務省がいい切るのには問
題があります。そこまでいうと、ウソになります。なぜなら、イ
タリア政府は、高速道路を保有する政府系のアウトストラーデ社
を民営化し、株式を売却しているからです。イタリアは政府負債
が大きく、EU委員会から政府債務残高をGDPの60%以内に
するよう求められていたのです。これによって、イタリア政府は
高速道路のために抱えていた負債は消滅し、政府債務はGDPの
60%以内に収まったのです。しかし、イタリアの国民は、これ
によって何の不便も感じていないのです。アウトストラーデ社は
普段と変わりないサービスを提供しているからです。
 財務省は、政府系の企業がどんなに効率の悪い経営をしていて
も、絶対に売却しようとせず、必死になってそれを守ろうとしま
す。なぜなら、売却してしまうと、自分たちが天下りする企業が
少なくなるのを本能的に恐れるからです。その代わりに、国民に
は平然と消費増税を押し付けてきます。
 少し脱線しますが、柳瀬唯夫氏という元経産省のキャリア官僚
を覚えておられると思います。例の加計学園が新設する大学の獣
医学部認可をめぐって、当時、首相秘書官だった柳瀬氏が「首相
案件」と発言したことが問題視されました。2018年5月に参
考人招致の場において、柳瀬参考人は、徹頭徹尾首相をかばう答
弁をして乗り切り、7月には早々に退官しています。
 その柳瀬氏は、現在、財務省所管の「国際協力銀行」(JBI
C)のシニアアドバイザーに就任しています。ここは経産省とも
関連があり、なかなかよいポストです。明らかな論功行賞人事と
いえます。このように、キャリア官僚たちは、自分たちの天下り
の場所だけは絶対に手放さないのです。それは天下国家どころか
国民のために尽くすどころか、自己中心そのもの。官僚の質も落
ちたものです。
 なお、「高速道路だけでなく一般道路も売れる」と森永卓郎氏
は次のように述べています。
─────────────────────────────
 実は日本の高速道路もすでに株式会社化されている。ただし、
そのすべての株式は日本政府が保有している。だから、イタリア
と同じように、政府保有株を市場で売却してしまえば、道路に関
する政府の借金は、すぐにでも減らすことができるのだ。ただし
そう言うと、高速道路は売れても、料金収入を得ることができな
い一般国道は売れないだろうという反論がすぐに返ってくるだろ
う。しかし、一般国道を売ることも容易だ。一般国道の所有権を
証券化し、それを小口化して売りに出せばよいのだ。証券の所有
者には、国が道路の使用料を毎年支払うようにすればよい。いま
は超低金利の時代だから、証券の販売価格の0・1%くらいの使
用料を毎年国が支払えば証券の買い手はいくらでもいるだろう。
堤防も同じ仕組みを採れば、簡単に売却することができる。
                ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 高速道路や一般道路や堤防などをわざわざ売却しなくても、政
府は、それぞれ100兆円規模の外貨証券、財政融資資金貸付金
を保有しています。これなどはすぐにでも売却に資産のはずです
が、財務省は、次のように反論しています。
─────────────────────────────
 外貨証券(82兆円)や財政融資資金貸付金(139兆円)は
FBや財投債という別の借金によって調達した資金を財源とした
資産であり、これらの借金の返済に充てられるものであるため、
赤字国債・建設国債の返済に充てることはできません。
(2009年当時)       ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 日本政府が保有している外貨証券といえば、米国債がほとんど
です。この米国債について、森永卓郎氏は、「政府が円高を防ぐ
ために為替市場にドル買い・円売りの介入をしたときの残骸」と
表現しています。
 為替介入をするためにドルを買ったのですが、現金で持ってい
ても意味がないので、金利の付く米国債のかたちで保有していま
す。売ろうと思えば十分売れますが、日本政府は頑なに売ろうと
しません。       ──[消費税増税を考える/043]

≪画像および関連情報≫
 ●米国債保有で日本が2年ぶり首位6月、中国抜き返す
  ───────────────────────────
  【ニューヨーク=後藤達也】米財務省が2019年8月15
  日発表した国際資本収支統計によると、日本が2017年5
  月以来、約2年ぶりに米国債の最大の保有国となった。6月
  の保有額は1兆1228億ドル(約120兆円)と5月より
  218億ドル増え、首位だった中国を抜いた。生命保険や年
  金基金などの機関投資家が比較的利回りの高い米国債への投
  資を増やしたとみられる。
   中国の6月の保有額は前月比23億ドル増の1兆1125
  億ドルだった。5月に米政府が中国への追加関税を表明して
  以降、市場では報復措置として米国債を売るとの観測もあっ
  たが、6月までは目立った動きはみられない。
   日本の財務省によれば日本の投資家は6月に海外の中長期
  債を3兆円強買い越した。その過半が米国債だった計算にな
  る。7月以降も日本は外債を買い越している。米国債の利回
  りは低下傾向が続いているが、日本や欧州よりは金利が高く
  為替リスクをとってでも米国債を買う投資家が増えている。
  米国債の急速な金利低下(価格上昇)を促す主要な買い手に
  もなっている。      https://s.nikkei.com/3521S1F
  ───────────────────────────


柳瀬唯夫氏.jpg
柳瀬唯夫氏
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2019年12月06日

●「平然と理屈をこね嘘をつく財務省」(EJ第5144号)

 企業が財政危機状態に陥ったとき、まずやるべきことは、企業
の持つ資産を売却し、少しでも負債を軽くすることです。これは
政府の場合も同じであり、政府の資産を売却することが先決です
が、日本政府は一向にそうしていません。11月15日のEJ掲
載の「各国政府の資産と負債のバランスシート」をもう一度見て
いただくとわかるように、日本はグラフからはみ出すほど、負債
と資産は多いのに、他国政府のように資産を売って負債を減らそ
うとしないのです。         https://bit.ly/33P1Ng5
 これについて財務省に説明を求めると、財務省は、堂々と、次
のように反論しています。
─────────────────────────────
 日本の政府は借金が多い一方で、資産もあり、資産を売れば借
金の返済は容易だという説もありますが、これについてどのよう
に考えていますか?
 ご質問にお答えいたします。
 国においては、企業会計の考え方を活用して貸借対照表(バラ
ンスシート)を作成しており、平成21年度末時点では1019
兆円の負債に対し、647兆円の資産が存在しています。
 しかしながらこれらの資産の大半は、性質上、売却して赤字国
債・建設国債の返済に充てられるものでなく、政府が保有する資
産を売却すれば借金の返済は容易であるというのは誤りです。
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 財務省は、上記に加えて、これに該当する資産として次の3つ
を上げています。
─────────────────────────────
 1.年金積立金の運用委託金(121兆円)
 2.道路・堤防などの公共用財産
   ・国道63兆円/堤防67兆円
 3.外貨証券(82兆円)財政融資資金貸付金(139兆円)
 4.出資金(58兆円)
─────────────────────────────
 財務省の回答は、国民を素人と下に見て、上から目線で対応し
てします。「素人だから、わかりっこない」と考えて、バカにし
ているのです。役人の答弁といえば、「桜を見る会」の野党の追
及でたびたびテレビに登場する内閣府の総務課長なる人物の、の
らりくらりと絶対に相手に尻尾を掴ませない答弁がさいたるもの
です。これを「霞が関文学」ともいうそうです。
 しかし、「1」の年金積立金の運用委託金の121兆円。これ
誰でも取り崩せないと一瞬思いますね。しかし、取り崩せるので
す。財務省の言い分はこうです。
─────────────────────────────
 年金積立金の運用寄託金(121兆円)は、将来の年金給付の
ために積み立てられているので、赤字国債・建設国債の返済のた
めに取り崩すことは困難です。  ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 この財務省の回答は正しくありません。国民には、そこまで頭
が回るまいとたかをくくっているのでしょう。日本の公的年金制
度は現在「賦課方式」です。しかし、もともとは「積立金方式」
だったのを2004年の年金制度改正で、賦課方式に変更したの
です。賦課方式というのは、国民全体が納めた保険料をその時点
の高齢者で山分けする方式です。したがって、基本的には積立金
は発生しません。つまり、この121兆円の積立金は、2004
年からは無用の存在になっているのです。
 この賦課方式──出生率の低下により、保険料を支払う現役世
代は減少し、逆に年金を受け取る高齢者は増えて行きます。当然
年金給付水準は必然的に落ちて行くことになります。そのため年
金給付水準を切り下げるために「マクロ経済スライド」という仕
組みが導入されたのです。自公政権の年金制度改悪です。
 したがって、121兆円の年金積立金の運用委託金というのは
積立金方式のときに積み立てたものであり、無用の存在ですが、
全額取り崩すにはリスクがあります。年金財政がある時期に赤字
になることもあるからです。しかし、121兆円もの資金を用意
しておく必要はなく、せいぜいその10の1も有していれば十分
です。だから、法律さえ変えれば、すぐにでも100兆円使える
ではありませんか。それでは、この121兆円は政府のバランス
シートでは、どう会計処理されているのでしょうか。森永卓郎氏
は、次のように説明しています。
─────────────────────────────
 ちなみに、連結の貸借対照表には、公的年金の寄託金という資
産項目は計上されていない。資産としてはカウントされているが
その他の有価証券や現預金と混ざって表示されているのだ。
 一方、公的年金の寄託金という項目がない代わりに、負債の部
に「公的年金預り金」が計上されている。なぜ預り金が「負債」
なのかと思われる方も多いだろう。政府は、この公的年金預り金
について、次のように説明している。「将来の年金給付財源に充
てるために保有していると認められる資産から未払金相当額を控
除した金額を『公的年金預り金』の科目で負債計上する」。
 つまりこういうことだ。いま公的年金が抱えている100兆円
を超える積立金の資産は、そのまま政府の連結貸借対照表の資産
として計上されている。年金積立金は、政府のものという扱いに
なっているのだ。しかし、そのままだと、国のバランスシートが
よくなりすぎてしまうと財務省は考えた。そこで、公的年金が抱
えている資産額から、未払い金を差し引いた額を「公的年金預り
金」として、負債の部に計上することによって、政府の純資産か
ら年金の積立金を事実上外しているのだ。
                ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/042]

≪画像および関連情報≫
 ●年金が食い潰されたのは?/江田けんじ氏
  ───────────────────────────
  「百年安心の年金」。
   この言葉は元々、04年当時、自公政権が言い出したこと
  です。そして、今回の「2000万円不足問題」が起こって
  国会の場で安倍首相がそれを追認しました。ただ、日経新聞
  が当時「百年先まで約束すると言えば、世界中の鬼という鬼
  が笑い狂って悶絶死することだろう」と痛罵したとおり、多
  くの国民は「百年安心」とは思っていません。
   そう、「百年安心の年金」も、3年前の「年金カット法強
  行」も、年金という「制度」は守るが、老後の「生活」は守
  れないということです。特に、16年暮れに強行採決された
  「年金カット法」は、物価が上がっても現役世代の賃金が下
  がれば、年金の支給額を減額。このルールに過去10年間の
  データを当てはめると、国民年金で年間4万円(月3300
  円)、厚生年金で年間14万円(月11800円)が減額と
  なります。これでは老後は苦しくなるばかりでしょう。
   かと言って、このお年寄りの減額(カット)で年金制度が
  将来安定するかと言うと、この法律で強化された「マクロ経
  済スライド」で、現役(若者)世代の基礎年金も、将来3割
  カットされる。国民の間に、お年寄りであれ若者であれ、老
  後をどう暮らしていったら良いか心配だという声が多いのも
  当然なのです。         https://bit.ly/386ioQ8
  ───────────────────────────

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疑問に答える財務省
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2019年12月05日

●「日本の政府債務は危機的ではない」(EJ第5143号)

 ヘリコプターマネー政策に伴う「通貨発行益」に関する経済学
論争の難しい話は来週に回して、もう少し財務省について書くこ
とにします。
 財務省は、「日本の財政が破綻状態にある」と主張し続けてい
ます。財務省はそれを国民に伝えるために次のタイトルのパンフ
レットを作成しています。
─────────────────────────────
     「これからの日本のために財政を考える」
          https://www.mof.go.jp/zaisei/
─────────────────────────────
 このパンフレットに関しては、質問も受け付けてくれ、10人
以上のグループであれば、財務省の官僚がわざわざ説明に来てく
れるほどの力の入れようです。
 かなり量があるので、森永卓郎氏のまとめを引用して、考えて
いくことにします。
─────────────────────────────
 1.日本は高齢化に伴って社会保障費が急増しており、それを
  賄うための十分な課税をしてこなかったため、財政赤字が膨
  れ上がって主要先進国と比較し、最悪の状況になっている。
 2.今後、高齢化はさらに進展し、それに伴って医療や介護の
  費用が急増することから、持続可能な社会保障制度の確立が
  急務となっている。
 3.日本の国民負担率は諸外国と比べて低いから、社会保障の
  充実・安定化と財政健全化を同時に達成するために、安定財
  源である消費税率を引き上げていかざるを得ない。
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 「1」について検証します。
─────────────────────────────
 図表1
 ◎財務書類の概要(資産及び負債の状況)/2016年1月
          資産・負債差額  資産額  負債額
  国の財務書類   ▲492.0 679.8 1171.8
  (一般会計・特別会計)           単位=兆円
─────────────────────────────
「図表1」は、財務省が公表している「国の財務書類」の一部
です。これによると、日本政府(一般会計+特別会計)が抱える
負債は1172兆円になっています。GDPの2倍以上であり、
国民がよく知る数字です。
 しかし、その左の「資産額」を見ると、日本政府は680兆円
の資産を有しています。負債から資産は差し引いてもいいので、
「資産・負債差額」は492兆円ということになります。これを
「純債務」といいます。これが日本の財政の本当の数字です。こ
れによると、GDPの2倍以上といわれる借金は、GDPと同じ
程度しかないからです。この程度の借金であれば、別にどうとい
うことはないのです。
─────────────────────────────
 図表2
 ◎連結貸借対照表/2016年3月
 (資産・負債差額の部) 前会計年度   本会計年度
    資産・負債差額   451017615   439402904
                       単位=百万円
─────────────────────────────
 「図表2」は、2016年3月に財務省が発表した「連結財務
書類」です。「連結」というのは、日本政府(一般会計+特別会
計)に加えて、各省庁から監督を受けるとともに、財政支援を受
けている特殊法人、認可法人、独立行政法人、国立大学法人など
を含めた、より広い意味の政府全体の財務諸表であり、森永卓郎
氏は、日本の財政はこれで見るのが正しいといっています。
 これによると、2014年末の純債務は439兆円、その前年
の2013年度末の純債務は、451兆円だったので、1年間で
12兆円も減少していることがわかります。日本の借金は、毎年
増えているどころか、毎年改善を続けていることがわかります。
 このように、財務省が公表している財務書類の数字を見る限り
日本政府の借金は、資産を差し引きしない債務であり、資産を引
けば、借金は半減することがわかります。これに関して、財務省
がいう政府の負債に関して一家言を持つ高橋洋一嘉悦大学教授は
自身のコラムにおいて次のように述べています。
─────────────────────────────
 IMF(国際通貨基金)などの国際機関では、国の負債の大き
さを見る時に、資産を引いたネット債務でみるのが普通だ。資産
を無視して負債だけを見るのは適切でない。
 しかも、日本の場合、資産の中身が問題だ。現預金18兆円、
有価証券98兆円、貸付金143兆円、運用寄託金111兆円、
出資金59兆円の計428兆円が金融資産だ。運用寄託金は年金
資産だからまだいいとしても、有価証券は外為資産、貸付金と出
資金はいわゆる特殊法人等への資金提供だ。変動相場制の国では
これほど大きな外為資金を持たない。また、いわゆる特殊法人等
は官僚の天下り先として問題になっており、先進国でこれほど広
範な政府の子会社を持っている国もない。
                  https://bit.ly/34F6jz8
─────────────────────────────
 高橋洋一氏によると、各国政府の債務を比較するには、純債務
でやることになっているそうです。しかし、日本の財務省は債務
から資産を引いていないのです。これでは、日本の債務が突出し
てしまうのは当然です。普通の国では、財政危機であれば、売れ
る資産処分を先にするのが常識ですが、この資産処分を回避して
増税をやろうとしています。これは、どう考えてもおかしいなこ
とです。        ──[消費税増税を考える/041]

≪画像および関連情報≫
 ●「日本の借金1108兆円」NHKの報道が国民を惑わす
  ───────────────────────────
   たまたまNHKを見ていて非常に懸念を抱いたニュースが
  あった。「来年度予算案1100兆円の借金財政の先行き一
  段と不透明に」という記事で、インターネットでも読める。
   簡単に要旨を書くと、政府予算案の規模が大きく、歳出が
  増加する一方で歳入では国債の発行額が3分の1を占めるの
  が問題と指摘する。そして、来年度末には国と地方を合わせ
  た「借金」が1108兆円に上り、「先進国中最悪」になる
  ことに警鐘を鳴らすものである。報道は、このような財政状
  況が若い世代に将来不安をもたらしていると結んでいる。筆
  者から見れば、このようなNHKの報道こそが、財政状況へ
  のゆがんだ認識を広めることで、若い世代に不安を与えてい
  ると思う。
   まず、どこが、ゆがんでいるのだろうか。それは、政府の
  「1108兆円の借金」という見方である。単純に、日本の
  財政は借金=負債だけが存在するのではなく、資産も存在し
  ている。政府の持つ資産と負債を比較して、その上で事実上
  の「借金」を特定すべきである。負債の方が資産を上回って
  いれば、それを「純債務」と名付けよう。ただし、この純債
  務の大小だけがわかっても財政状況はまだ判断できない。だ
  が、ここまでの議論を、「政府のバランスシート問題」と名
  付けておく。          https://bit.ly/2LhhqXi
  ───────────────────────────


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財務省のウソを暴く森永卓郎氏
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2019年12月04日

●「IMF専務理事消費税15%発言」(EJ第5142号)

 2019年11月25日のことです。国際通貨基金(IMF)
のゲオルギエワ専務理事は、日本の消費税率について「2030
年までに15%、50年までに20%へ増税する必要がある」と
の見解を発表しています。10月に10%への消費増税をしたば
かりであり、ネットなどでは「余計なお世話である」「内政干渉
そのもの」「あなたにいわれたくない」など、不満の声が、たく
さん上がっています。
 確かに10年先の話ではあるものの、「次は15%」といわれ
ると、それだけで、人々の消費意欲とか投資意欲が損なわれ、マ
イナスであるとの批判が渦巻いています。
 実は、この発言のバックに日本の財務省がいます。彼らは、早
くも国民に対して「次は15%」という増税の刷り込みをIMF
を利用して行ったのです。これについて、高橋洋一氏は『夕刊フ
ジ』の自身のコラムで、次のように書いています。
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 専務理事の来日は、IMF協定第4条の規定に基づき、加盟国
と毎年定例的に行っている経済に関する審査「4条協議」に合わ
せたもので、協議の終了と対日報告書の発表を受けて記者会見し
た。対日4条協議はIMF代表団が協議相手国を訪問し、経済・
金融情報を収集するとともに、その国の経済状況および政策につ
いて政府当局者等と協議する。筆者も、現役官僚のときに協議に
参加したこともある。日本側は財務省、内閣府等の課長補佐レベ
ルの実務担当者が中心であるが、IMFの副専務理事、理事や事
務局への出向者も多い財務省が日本側をリードし対応していた。
 対日報告書はIMFのものだが、日本政府、特に財務省の意向
が盛り込まれることもしばしばだ。IMFとしても、日本政府の
意に反することをあえて盛り込むのは政治リスクもあるので、日
本政府の抵抗のないものを採用しがちだ。財務省も、あえて外圧
を使ってでも、消費増税を打ち出すのがいいと考えているフシも
ある。その結果、対日報告書に消費増税が盛り込まれることとな
る。今回の専務理事の発言も、これまでと同じ背景だろう。
       ──【日本の解き方】 https://bit.ly/35XyOZf
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 IMF本部は、米ワシントンDCにありますが、そこにはIM
F理事室という部屋があり、日本の財務省から多くの職員が出向
して勤務しています。日本人が多いので、普段は英語ではなく日
本語で話しており、英語に不慣れな日本人駐在記者に重宝されて
います。日本のメディアが「ワシントン発」としてIMFのニュ
ースを流すときは、理事室がソースであることが多いのです。
 したがって、今回の専務理事の発言も財務省のレクを受けてお
り、財務省の意向に反する発言は出ないようになっています。し
かし、この発言を聞く日本人としては、「IMFまで消費税15
%が必要だといっている」として、重く受け止めてしまう傾向が
あります。財務省は、いわゆる「ガイアツ(外圧)」を利用して
増税の必要性をまんまとアッピールしたのです。
 財務省のやっていることは、犯罪的ですらあります。既に述べ
ているように、消費税を導入した頃から、法人税は7兆円減って
います。所得税も8兆円減っており、あわせて15兆円も減って
います。その間に消費税は13兆円増えたので、法人税と所得税
が減った分の83%を消費税がカバーしていることになります。
「大企業と金持ちには減税、庶民には増税」、まるで時代劇の悪
代官がやるような悪政です。
 財務省が、消費税を増税したがる理由は、一つはそれが「安定
財源」であって、経済が不況であろうが、なんであろうが、安定
的に取ることができるという点にあります。もう一つは、自分た
ちの輝かしい老後のために、大企業や金持と組んで、所得税や法
人税を減税するための「補填財源」として消費税を位置づけいて
いるフシがあります。
 藤井聡京都大学大学院教授は、「消費税は人頭税である」とし
て、次のように述べています。
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 よく言われる、「人頭税」っていう考え方がありますが、消費
税はそれに近いですよね。病気だろうが死にかけていようが、と
りあえず金を払えっていう話。一方で、累進性のある所得税は、
お金持ちからたくさん取りますし、法人税は「利益」にかかりま
すから、あまり儲かってない会社、例えば多くの中小企業は払わ
ないでいい。法人税や所得税を減税しておいて、消費税を増税す
るのは、格差を拡大することになりますね。(中略)
 消費増税という問題は、「成長」と「公平」という2つの問題
がある。消費増税をすると、成長もできなくなるし、格差も拡大
する。どっちの観点からもおかしいのが、消費税だ、ということ
です。──「別冊クライテリオン」増刊号/2018年12月号
           『消費増税を凍結せよ』/啓文社書房刊
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 確かに藤井教授のいわれる通りです。法人税は利益の出ていな
い赤字企業にはかからないし、所得税も所得の多寡に応じてかか
る税であるので、ある意味公平です。
 しかし消費税は、家計の状況が苦しい人や、所得の少ない人か
らも同率の税を徴収するので、情け容赦がない、一番残酷な税と
いえます。食料品に対する軽減税率といっても、主要国では0%
であるのに、日本では8%も徴収するのです。ちっとも「軽減」
税率ではなく、まさしく人頭税そのものです。そのため、萩生田
文科大臣ではありませんが、庶民は「身の丈に合わせて生きて行
くのに必要な食料品を買う」しかないのです。
 ヘリコプターマネーについても、財務省は御用学者を集めて理
論武装し、絶対認めない体制を敷いています。何しろ、ヘリマネ
政策を勧めるノーベル経済学賞受賞のスティグリッツコロンビア
大学教授のことを「スティグリッツ教授の理論は違っている」と
いうのですから、大変な自信です。
            ──[消費税増税を考える/040]

≪画像および関連情報≫
 ●「日本の消費税率さらに段階的に引き上げを」/IMF
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   先月、IMF=国際通貨基金のトップに就任したゲオルギ
  エワ専務理事が来日し、高齢化によって増え続ける社会保障
  費を賄うため、日本では消費税率をさらに段階的に引き上げ
  る必要があるという認識を示しました。ゲオルギエワ専務理
  事は、都内で開いた記者会見で日本の財政について問われた
  のに対し「IMFとしては、日本は消費税により頼れる余地
  があると考えている」と述べました。
   会見に合わせて公表されたIMFの声明では、高齢化によ
  って増え続ける社会保障費の負担を賄うためには、消費税率
  を2030年までに15%に、2050年までに20%に、
  段階的に引き上げる必要があるとしています。
   またゲオルギエワ専務理事は、日本経済の見通しについて
  実質のGDPでことしは0・8%、来年は0・5%の伸びを
  見込んでいるとしたうえで、「日本経済の回復は世界的な景
  気減速と不確実性、それに日本自身の高齢化と人口減少の動
  きによって試されることになる」と述べました。
   そのうえでこれまで政府や日銀が進めてきた金融政策や財
  政政策、それに構造改革を改善する必要があると指摘しまし
  た。具体的には短期的な経済成長を維持するための財政政策
  や働く人たちの生産性を上げる労働市場の改革などの構造改
  革を再び活発に行うことが不可欠だなどとしています。
                  https://bit.ly/34IgN0x
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ゲオルギエワIMF専務理事.jpg
ゲオルギエワIMF専務理事
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