2020年04月13日

●「なぜ、デフレから脱却できないか」(EJ第5226号)

 EJの今回のテーマも今回で67回になり、そろそろしめくく
る時期になりつつあります。ところで今回のテーマは、2020
年1月6日から、次のテーマで、スターとしています。
─────────────────────────────
    どうしたら日本経済を成長させることができるか
    ── 消費税を廃止することは可能である ──
─────────────────────────────
 テーマの狙いは、「消費税を減税できるか/廃止できるか」を
論点にしたかったのです。次の衆院選は、来年、2021年9月
までに必ずありますが、そのときは、消費税の是非がメインテー
マになると判断したからです。
 安倍政権の経済政策、アベノミクスは、完全な失敗に終わって
います。どうしてでしょうか。それは、ズバリ、政権発足以来7
年を超える長期政権であるのに、安倍政権の重要な目的であるは
ずの「日本経済のデフレからの脱却」が実現できていないからで
す。それどころか、性懲りもなく、反省のかけらもなく、2回に
わたる消費増税を重ねて、デフレを一層深刻化させてしまってい
ます。おまけに、今年の2月頃から深刻化した新型コロナウイル
スの世界的感染の拡大によって、世界経済はドロ沼に落ち込もう
としています。もはや経済どころではなく、どうやって自分の命
を守るかがメインテーマになりつつあります。
 MMT(現代貨幣理論)のような経済理論を調べていると、経
済や財政に関する考え方が変わってきます。MMTの観点に立つ
と、これまで主流派といわれている経済学の考え方が、完全に間
違っているように見えてきます。物理学などの自然科学と違って
経済学は、経済に関する捉え方によって、経済政策のあり方が変
わってくるのです。
 井上智洋駒澤大学経済学部准教授は、MMTに関する自著の冒
頭で、次のように述べています。
─────────────────────────────
 平成の30年間は、失われた30年で終わりました。この時代
に私たちは、多くのものを失ってきました。デフレ不況とそれに
伴う政府支出の出し惜しみによって、少なからぬ国民が生活の安
定や人生そのものを失いました。
 企業はイノベーションカを、大学は科学技術カを、家計は消費
意欲を、若者はチャレンジ精神をそれぞれ失いました。我が国の
国力衰退は、目を覆わんばかりです。
 この国を再興するには、デフレ不況からの完全な脱却を果たす
以外にありません。そのためには、「拡張的財政政策」を大々的
に実施する必要があります。「拡張的財政政策」というのは、税
金を減らして財政支出を増やすことです。そうすると政府の借金
は増大します。ですが、財政の拡大なくして、デフレ不況からの
脱却はありません。
 それを怠ったために失われた10年は、20年となり、30年
近くにまで延長されました。それにもかかわらず2019年10
月に消費税が増税され、政府支出の出し惜しみも続いています。
デフレ不況という長く暗いトンネルの出口には、まだたどり着け
そうもありません。             ──井上智洋著
    『MMT/現代貨幣理論とは何か』/講談社選書メチエ
─────────────────────────────
 井上准教授の指摘は核心を衝いています。解決策は実にシンプ
ルです。デフレ不況から脱却するには、コロナウイルスの感染拡
大を奇貨として、経済的な手当として、10%まで引き上げた消
費税の税率を元に戻し、財政支出を増やすしかないのです。増税
ではなく、減税をすべきだったのです。それでいて法人税の減税
はやっており、大企業に媚を売っています。やり方が、完全に間
違っています。財政の拡大なくしてデフレからの脱却はないし、
これを達成せずして、日本経済を復活させることは不可能です。
 しかし、問題は、これほどの失敗を重ねても、安倍政権は、自
らの失敗を認めようとはしていないことです。安倍政権は、経済
運営の失敗をすべてコロナウイルスの感染拡大のせいにしようと
していますが、これはとんでもないことです。
 2020年4月8日、安倍首相は、非常事態宣言は発出し、記
者会見を行っています。法律上は、非常事態宣言の発出後、実施
権限は自治体の長に移っています。担当する自治体の長は、担当
の自治体の状況に応じて、政策を実施できるのです。
 しかし、どの範囲まで休業要請の幅を広げるのかについて、政
府と東京都との間に見解の相違があり、最終決定までにゴタゴタ
したのです。2週間ほど様子を見て、拡大の幅を確定すべきとす
る西村経済再生担当相に対して、小池東京都知事は、「危機管理
の要諦として、はじめにドカーンと厳しい施策を打ち出し、経過
を見て少しずつ緩めていくべき」と主張し、対立したのです。そ
れに加えて、休業補償に後ろ向きの政府に対して、東京都は独自
の休業実施への協力金を支払うと宣言し、ここでも意見の違いを
見せたのです。休業補償について、安倍首相は次のようにいって
います。
─────────────────────────────
    個別の損失を直接補償するのは現実的ではない
                   ──安倍首相
─────────────────────────────
 この政府と東京都知事との意見衝突は話し合いがついたものの
このやり取りは、全面的に小池都知事の方が正しいし、さすがに
防衛相の経験者だけのことはあると感心したしだいです。太平洋
戦争の失敗にみられるように、戦力の小出しの逐次投入は、最悪
の結果を招くだけです。本当に首相が望むように外出制限の80
%の達成を期するのであれば、国としてきちんと休業補償をつけ
て、その確実性を狙うべきです。なぜ、その程度の財源を渋って
いるのでしょうか。事態がもっと深刻化すればやらざるを得なく
なると思いますが、それではもはや手遅れなのです。
           ──[消費税は廃止できるか/067]

≪画像および関連情報≫
 ●【休業補償】国は公平な仕組み検討を/高知新聞社説
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるため、緊急事
  態宣言にどう実効性を持たせるか。感染の終息後に回復でき
  るだけの力を国民経済にどう与えるか。政府は整理し直すべ
  きではないか。感染が急拡大する東京都が新型コロナ特措法
  の緊急事態宣言を受けた休業要請に踏み切った。対象業種・
  施設は大学や学習塾、劇場や映画館、美術館、ナイトクラブ
  バー、パチンコ店など幅広い。
   要請に応じた中小事業所には「感染拡大防止協力金」とし
  て単独店舗事業者は50万円、複数店舗を持つ事業者には、
  100万円を支給する。国内で最も状況が悪化している首都
  の封じ込め策が奏功するかどうかは、他の自治体にも影響し
  よう。特措法には休業要請に伴う補償の規定はないが、これ
  までの外出自粛要請でも既に大きな打撃を受けている事業主
  は多い。休業要請があっても、やむにやまれず営業を続けて
  は感染抑止の効果は薄くなる。
   法的裏付けがある休業要請をしておきながら、損失は自己
  責任というのは事業主に酷に過ぎる。東京の50万〜100
  万円が十分な額かどうかは不明にしても、行政による損失補
  償は当然である。疑問が残るのは政府と都の調整が難航し、
  宣言から3日を要したことだ。休業要請に前向きな都に対し
  政府は当初、外出自粛要請の効果を見極めるべきだとして、
  2週間程度見送るよう求めた。  https://bit.ly/3aYOIFG
  ──────────────────────────

西村経済再生担当相/小池東京都知事.jpg
西村経済再生担当相/小池東京都知事

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2020年04月10日

●「事業規模にこだわる緊急経済対策」(EJ第5225号)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府は、4月7日に
緊急事態宣言を出すとともに、過去最大となる事業規模108兆
円の緊急経済対策を決定し、発表しました。緊急事態宣言の対象
地域は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、
福岡県の7都府県です。
 事業規模108兆円といえば、GDPの約2割に相当する今ま
でにない規模です。この緊急経済対策を実行するため、政府は追
加の歳出が総額で16兆8057億円に上がる今年度の補正予算
案を固めています。年度の当初に補正予算案を編成することは異
例なことです。財源はどうするのでしょうか。
 必要な財源は、全額、追加の国債で賄う方針で、内訳は次のよ
うになっています。当初予算と合わせた2020年度の国債発行
額は49兆3619億円になります。
─────────────────────────────
    ◎補正予算公債金
     赤字国債 ・・・・ 14兆4767億円
     建設国債 ・・・・  2兆3290億円
              ──────────
               16兆8057億円
    ◎当初予算公債金
     赤字国債 ・・・・ 25兆4462億円
     建設国債 ・・・・  7兆1100億円
              ──────────
               32兆5562億円
    ◎公債金合計     49兆3619億円
─────────────────────────────
 今回の経済対策は一見すると超大判振る舞いに見えます。確か
に、リーマンショック後の2009年4月に麻生内閣が実施した
経済対策の事業規模56・8兆円の約2倍ですし、GDPの2割
相当というのはとんでもない巨額な金額であることは確かです。
 しかし、この「最大級」はいささか疑問です。安倍首相はかな
り早い段階からこのGDP2割にこだわっていたといいます。そ
れは、首相がドイツの経済対策を意識していたからです。ドイツ
は、7500億ユーロ(約90兆円)規模の経済対策を既に実施
していますが、これがGDP比で約2割に該当するのです。
 そのため、今回の経済対策の事業規模には、あれもこれも何で
もかんでも注ぎ込んで、意識的にGDPの2割にしたフシがあり
ます。2019年末に決めた経済対策での未執行分や、既に発表
済みの感染対策でまだ実施されていなもの、後から返済を求める
融資などの金額も上乗せし、それに納税や社会保険料支払いの猶
予分の26兆円まで加えて、やっとGDPの2割にしているので
す。安倍首相にとっては、経済政策の中身や使い勝手ではなく、
「2割」という規模にこだわったようです。「やってる感内閣」
の面目躍如といったところです。
 それでいて、事実上閉店を強制されているレストランなどの飲
食店や、バー、クラブなどの店舗の休業補償については、頑なに
応じようとしないのです。その点、ドイツでフリーランスの仕事
をしているある日本人が、ルールにしたがってメールで休業補償
の申請をしたところ、3日で現金が振り込まれたといいます。と
にかくドイツは、金額も巨額であるし、スピードも非常に早いの
です。それに対して日本は、金額についてはこだわったものの、
スピードに関しては知らん顔です。
 政府のドタバタぶりもひどいものです。なかでも「減収世帯へ
の30万円支給」については、あまりの評判の悪さに自民党の総
務会で、早くも「一率で現金を配るべきだった」と反省の声が出
ていますが、安倍首相は「全世帯一率現金給付」は、配付に3ヶ
月以上時間がかかり、実効性がないの1点張りで、まったく聞く
耳を持たないという姿勢です。
 いずれにせよ、公債金の総額が約50兆円になろうとも、80
兆円になろうとも、100兆円になろうとも、MMTの考え方に
立てば、財政出動は何も問題はないのです。それでは、ただでさ
え巨額になっている政府の借金が激増してしまうということが心
配であれば、こういうときこそ、政府紙幣を発行することを検討
すべきです。
 政府紙幣については、2月20日のEJ第5191号で述べて
いますが、これ以上政府の借金を増やしたくないというのであれ
ば、こういう方法も使えます。法律の改正が必要になりますが、
国会で堂々と議論して発行すべきです。https://bit.ly/2wobEz5
 新型コロナウイルス蔓延関連の経済対策として、神奈川県の黒
岩知事は、4月7日に、次の趣旨の発言をしています。
─────────────────────────────
 神奈川県の黒岩祐治知事は7日、新型コロナウイルスの感染拡
大の影響で内定を取り消された人や、職を失った人らを、任期付
き職員として臨時雇用する規模について、100人程度とする方
針を明らかにした。
 県人事課によると、2021年3月末までを任期とした非常勤
の雇用を想定している。任期中に新しい職を探してもらう狙いと
いう。公務員試験を受ける必要はなく、面接試験を中心に実施す
る見込みだ。黒岩知事は「優秀な方はそのまま県庁職員に登用す
る道もつくりたい」と述べた。
          ──2020年4月7日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 これは、MMTの「雇用保障プログラム」(JGP)の考え方
に似ています。今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって内
定を取り消された人が大勢いるそうですが、そういう人を自治体
が任期付きで臨時雇用し、任期中に職探しをしてもらうというも
のです。大変良いことであるし、これによって救われる人は多い
と思います。これを国家レベルでやるのがJGPですが、実施す
れば、経済回復に大きく貢献するはずです。
           ──[消費税は廃止できるか/066]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ感染拡大の収束後の話ばかりが充実しているのか
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策につ
  いて、政府は4月6日に開かれた自民・公明両党の会議で、
  所得が減少した世帯への現金30万円の給付や、児童手当の
  上乗せなどを行う案を示しました。しかし、この緊急経済対
  策案は、いくぶん理解しがたい部分があります。
   4月6日に開かれた自民党と公明党との会議で、政府は新
  型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策の案を提
  示しました。治療薬として効果が期待される「アビガン」を
  年度内に200万人分の備蓄を目指すことなどを盛り込んだ
  「感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発」
  や、1世帯あたり30万円の現金給付などの「雇用の維持と
  事業の継続」についての対策が明らかにされました。
   しかし、この案には明確な金額など規模が示されておらず
  中小および小規模事業者などを対象にした給付金についても
  明示されていませんでした。「緊急」対策と言う割に、具体
  的な記述が少ないのです。
   この緊急経済対策案を通して読んでみると、曖昧な部分と
  明示されている部分の差が大きく、バランスの悪いものにな
  っているように感じられました。これを読んだある地方自治
  体の経済担当職員は、「非常に細かく書き込まれている部分
  と、粗々で内容がほとんどない部分の差が激しい。
                  https://bit.ly/3bYwFPW
  ───────────────────────────

「緊急経済対策」を発表する安倍首相.jpg
「緊急経済対策」を発表する安倍首相
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2020年04月09日

●「なぜ全員一律に現金給付しないか」(EJ第5224号)

 新型コロナウイルスの蔓延による政府の緊急経済対策の一つで
ある「一世帯30万円の現金給付」が、本稿執筆時点の7日朝の
時点で、自民党と公明党がまだモメています。公明党は、かなり
早い段階で自民党に対し、「国民一律10万円の現金給付」を申
し入れており、それを全国の組織に流してしまっているのです。
ところが、それが厳しい条件付きになったので、全国の組織から
突き上げを食って、困惑しているといわれます。
 「国民全員に現金を配付する」というのは、MMTとも深く関
係するので、今回、取り上げることにします。結論からいうと、
今回の現金給付案は、財務省に牛耳られている自民党首脳部の非
常にケチくさい政策案であり、これはおそらく経済的にも、政治
的にも与党にとってマイナスでしかない政策になると思います。
以下、詳しく見ていくことにします。
 一番問題なのは、条件が厳し過ぎることです。そもそもどうい
う世帯に30万円が給付されるのかというと、その支給対象は、
次のようになっています。
─────────────────────────────
◎一世帯30万円の支給対象
 今回の新型コロナウイルス蔓延の影響で、収入が5割程度下が
るなど急減した世帯で、それによって年収が、個人住民税(均等
割)非課税の水準になるか、個人住民税非課税水準の2倍以下に
なる世帯が条件。これに該当する世帯は、それを証明する書類を
もって、自治体に自己申告することが必要になる。
─────────────────────────────
 これは非常に厳しい条件です。まず、収入が5割程度減ったこ
とをどのように証明するのかです。自分が対象になるかどうか、
わからないので、おそらく市区町村の受付窓口には、その問い合
わせのため、人が殺到し、そこに「3密/密閉・密集・密接」空
間ができてしまう可能性が十分あります。
 要するに、今回の新型コロナウイルスの影響で所得が半減して
も、それによって住民税非課税水準にならないと支給されないと
いうことになります。給与所得者の場合、個人住民税非課税水準
の2倍以下になる世帯ならOKという一定の救済措置はあるもの
の、きわめて複雑な条件ということになります。
 この厳しい条件に該当する世帯は、全5800万円世帯のうち
約1000万世帯になりますが、1000万世帯に30万円を配
付しても、たったの3兆円です。あまりにもケチくさい政策であ
ると思います。今回の経済対策をまとめた岸田文雄政調会長は、
財務省寄りの増税派で、強いリーダーシップもないので、どうし
てもこういうぬるい政策になってしまうのです。この人が経済政
策をまとめるトップである限り、消費税の減税など、とても実現
できそうもありません。
 上武大教授で、経済学者の田中秀臣氏は、今回の条件付き現金
給付案について、次のように問題点を指摘しています。
─────────────────────────────
 フリーランスや自営業者などの場合、ここ2ヶ月で所得が減少
したと書類で証明することも難しい。市区町村の窓口で、自己申
告するにも、審査の段階での混乱も予想される。このままでは、
日本経済は大きく減速したままになる。    ──田中秀臣氏
             2020年4月4日発行、夕刊フジ
─────────────────────────────
 テレビ朝日の羽鳥慎一モーニングショーで、コメンテーターを
務める玉川徹氏は、現金給付には、スピードが何よりも大事であ
るとして、次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
 日本以外の国では、誰彼を問わないで(現金を)全員に配ると
いうようにやっているところがある。なぜそういうことをやって
いるかって言ったら、それがいちばん早いからなんですよね。
 また、ここで優先順位ですけど、この現金給付で優先順位でい
ちばん高いのは、スピードです。とにかく早く出すってことが重
要なんです。足りなかったらまた出せばいいだけの話ですから、
スピードがいちばん大事なんですね。
 そこで所得制限してみたり、それに対する申請を、どういうよ
うにするかとか考えてる前に、配っちゃえばいいんですよ、まず
足りなかったらまた配ればいいだけで・・・。だから、ここでも
また優先順位を取り違えている。        ──玉川徹氏
                  https://bit.ly/39Lu6z1 ─────────────────────────────
 このように主張する玉川徹氏に対し、4月7日の羽鳥愼一モー
ニングショーにおいて、ジャーナリストの田崎史郎氏は、玉川氏
に対し、全国民一律に現金を配付するにはかなりの時間がかかる
と反論しています。この田崎史郎なる人物は、かねてから、政府
の意向を代弁することで批判されていましたが、最近テレビ局で
は、逆に政府側のスタンスを聞くために、田崎氏の出演を求める
ようになっています。本人もそのつもりで出演しています。
 「全世帯にマスクが届くのであれば、現金も届けられるのでは
ないか」という玉川氏に対し、国民の住所を把握しているのは自
治体であり、マスクと違って現金を届けるには、どうしても時間
がかかると反論したのです。
 2008年のリーマン・ショックのときは、麻生政権でしたが
全国民に1万2000円(18歳以下2万円)を届けています。
しかし、このときも配付に相当時間を要し、しかもその大半が貯
蓄に回されたという批判があったといいます。田崎史郎氏による
と、今回自己申告制にしたのは、このやり方が一番早く現金を必
要とする人に届けられるからであると主張しています。
 いずれにしても全員給付でない限り、もらえない世帯からは、
不公平であるとの反発が出るのは必至であり、まして所得制限の
複雑さによって、本来支給されるべき人にも現金が届かなかった
ら、政府の措置としては最悪になります。
           ──[消費税は廃止できるか/065]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ経済対策、総額108兆円/7日閣議決定
  ───────────────────────────
   安倍晋三首相は6日、新型コロナウイルスの感染拡大を受
  け、総額108兆円規模の緊急経済対策を実施すると発表し
  た。国内総生産(GDP)の2割に相当し、事業規模は過去
  最大。首相は「経済に与える甚大な影響を踏まえ、過去にな
  い、強大な規模となる対策を実施する」と述べた。7日に対
  策に必要な経費を盛り込んだ2020年度補正予算案を閣議
  決定し、大型連休前の成立を目指す。
   政府はリーマン・ショック後の09年4月に策定した事業
  規模56兆8000億円を大幅に上回る対策を実施し、経済
  の悪化を最小限に食い止めたい考えだ。
   108兆円のうち、収入が大幅に減少し、住民税が非課税
  となる水準まで落ち込んだ低所得者世帯や、中小・個人事業
  者らへの現金給付は6兆円超を予定。対象世帯には30万円
  売り上げが急減した中堅・中小企業には200万円、フリー
  ランスなど個人事業者には100万円を支給する。税金や社
  会保険の納付猶予は26兆円規模を想定。20年度補正予算
  案で、新型コロナウイルス感染症対策として、新たに1兆円
  以上の予備費も計上する。児童手当は子ども1人当たり1万
  円を上乗せする。
   民間企業の資金繰り支援策として、中小企業が民間金融機
  関から「実質無利子・無担保」で融資を受けられる制度を創
  設。中堅・大企業向けは、日本政策投資銀行などの融資を活
  用する。            https://bit.ly/2Vc18Dv
  ────────────────────────

玉川徹氏.jpg
玉川徹氏
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2020年04月08日

●「なぜ、貨幣を名刺に見立てたのか」(EJ第5223号)

 ウォーレン・モスラーの物語の続きです。この話にはいささか
不自然なことが2つあります。
─────────────────────────────
 1.子供たちにとって最も関心の薄い名刺を貨幣に見立てて
   いること。
 2.名刺に擬せられた貨幣の目的が専ら納税の手段になって
   いること。
─────────────────────────────
 「1」について考えます。
 なぜ、名刺なのでしょうか。おそらく名刺は子供たちにとって
最も興味のないものであると思われるます。井上智洋駒澤大学経
済学部准教授は、自著の最終章「MMTの余白に」で、名刺では
なく、ポケモンカードだったら、きっと子供たちの反応は大きく
違ったのではないかと述べています。確かにポケモンカードだっ
たら、子供たちは目の色を変えて手伝いをしたと思われます。大
人はともかく、ポケモンカードは子供たちにとって、金貨や銀貨
のような素材価値のある貨幣に相当するものだからです。
 しかし、モスラー氏の狙いは、最も素材として価値のない名刺
を使い、それが価値を生む過程を説明したいので、あえてそうし
たのではないかとも考えられます。それに、子供たちとしては、
月末にパパに30枚の名刺を上納することに慣れてくると、子供
たちの間で、名刺を使っておもちゃを買ったり、お菓子を買った
り、名刺の貸し借りをしたりできるようになると考えられます。
 実際に現実の貨幣は、納税の手段だけではなく、交換の媒介と
して機能しています。お金を使っての買い物です。長く使ってい
ると、自然にそのようになっていくのです。
 しかし、MMTでは、貨幣の目的はあくまで納税の手段である
とし、交換の手段として使われることを「ババ抜き貨幣論」であ
るとして、批判しています。なぜ、「ババ抜き貨幣論」というの
でしょうか。
 「ババ抜き」というトランプ遊びは、始めに同数のカードを人
数分配り、1枚ずつ他者から抜き取り、同じ札があれば捨て、最
後にババ(ジョーカー)を持っている人が負けるというゲームで
す。この場合、自分の持つババに価値があるのは、他の人がそれ
を引く可能性があるからです。ここから、自分の持つお金に価値
があるのは、他の人がそれを受け取ってくれるからであると考え
るのです。人生の最後の瞬間にお金を持っていても、個人として
は、それはムダ金になります。このような貨幣についての考え方
が「ババ抜き貨幣論」ですが、日本で、これをもう少し行儀のよ
い貨幣論にまとめた人が岩井克人氏という経済学者です。「貨幣
の自己循環論法」といいます。岩井克人氏は、あるインタビュー
で、自身の貨幣論について、次のように説明しています。
─────────────────────────────
 お金がお金となるのは、他の人も受け取ってくれると予想する
から、だれもが受け取る、という自己循環論法です。他人が受け
取ってくれれば、お金はお金として通用する。それを疑い始めた
ら、お金として通用しなくなる。日常的にはほとんど意識してい
ないが、根底では、他の人がお金として受け取ってくれると信じ
ていて、その他の人も他の人が受け取ってくれると信じている。
深いところで信じ合っている仕組みに支えられているのです。
 金や銀などの金属、もっと昔は貝などの、多くの人が欲しい商
品が貨幣に変わったという「貨幣商品説」や、共同体の長老や王
様、政府といった権威が、「これを貨幣とする」と決めたという
「貨幣法制説」、他にも貸し借りから始まったという説がありま
す。もしかしたら歴史をさかのぼって、「貨幣が生まれた」とい
う瞬間があるかもしれないが、理論的には決定できない。ただ、
私が「貝がお金だ」と宣言しても、お金としては使えない。他の
人がお金として受け取ってくれるからお金になる、1人や2人で
はなく世の中の大多数の人が、貝をお金として受け取ってくれな
いといけない。   ──岩井克人氏 https://bit.ly/2ytUArV
─────────────────────────────
 「2」について考えます。
 貨幣の目的は、いろいろあるのに、なぜ納税の手段だけが強調
されるのでしょうか。確かに貨幣は納税に使っていますが、貨幣
はそれを受け取ってくれる人がいる限りにおいて、いろいろなも
のの交換手段として使われます。
 それに現在では、貨幣には地域通貨や仮想通貨などいろいろあ
り、それを受け取る人がいる限り、流通しています。しかし、人
が貨幣を欲しがる理由の根幹にあるのが納税の手段として使える
ことです。藤井聡京都大学大学院教授は、これについて、次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 よくよく考えてみれば、この「政府に対する税金の支払い」以
上に、万人が避けられない支払い行為というものはない。買い物
にせよ、外食にせよ、特定の商品やレストランを使わねばならな
い理由などない。気に入らなければ、別の店やレストランを使え
ば良いのである。
 しかし、税金だけは、「別の政府」等ないのだから、逃れられ
ないのである。その逃れられない支払いにおいて、「政府への税
は円で支払え」と定められてしまえば、その徴税対象とされてい
る個人や法人の「全て」に、円の入手が義務付けられることにな
る。そうなれば、電力会社も鉄道会社も外食産業も電機メーカー
も皆、「円」を使って商売を始めるようになり、労働者への支払
いもまた「円」を使うようになるのだ。(中略)
 どのような通貨であっても、特定の政府が、「徴税」と結びつ
ける政治決定を下せば、その通貨の流通は一気に拡大し、支配的
なものとなっていくのである。     ──藤井聡著/晶文社
   『MMTによる令和「新」経済論/現代貨幣理論の真実』
─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/064]

≪画像および関連情報≫
 ●アメリカで大論争の「現代貨幣理論」とは何か/中野剛志氏
  ───────────────────────────
   黒田日銀総裁が記者会見(2019年3月15日)におい
  て現代貨幣理論について問われると、「必ずしも整合的に体
  系化された理論ではない」という認識を示したうえで、「財
  政赤字や債務残高を考慮しないという考え方は、極端な主張
  だ」と答えている。
   しかし、現代貨幣理論は、クナップ、ケインズ、シュンペ
  ーター、ラーナー、ミンスキーといった偉大な先駆者の業績
  の上に成立した「整合的に体系化された理論」なのである。
  にもかかわらず、黒田総裁が「必ずしも整合的に体系化され
  た理論ではない」と感じるのは、それが主流派経済学とはパ
  ラダイムが違うからにほかならない。
   ここで、「現代貨幣理論」のポイントの一部をごく簡単に
  説明しよう。まず、政府は、「通貨」の単位(例えば、円、
  ドル、ポンドなど)を決めることができる。そして、政府と
  中央銀行は、その決められた単位の通貨を発行する権限を持
  つ。次に、政府は国民に対して、その通貨によって納税する
  義務を課す。すると、その通貨は、納税手段としての価値を
  持つので、取引や貯蓄の手段としても使われるようになる。
  紙切れにすぎないお札が、お金としての価値を持って使われ
  るのは、そのためである。    https://bit.ly/2ULzjCY
  ───────────────────────────


岩井克人教授.jpg
岩井克人教授
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2020年04月07日

●「モスラーの物語が訴えていること」(EJ第5222号)

 ここでもう一度「ウォーレン・モスラーの物語」を復習する必
要があります。ステファニー・ケルトン教授が来日講演のさい、
冒頭でしたという話です。3月2日のEJ第5197号において
ご紹介しています。子供とパパの名刺の話です。話をもっとリア
ルに修正し、再度ご紹介します。
 子供が3人いるモスラー家は、家を新築し、引っ越したのです
が、モスラー氏は子供たちがまったく家の手伝いをしないことに
不満を持っていました。そこで、「もし家の手伝いをすれば、何
を手伝ったかに応じてパパの名刺をあげるよ」と子供たちに提案
したのです。自分の部屋の片づけは1枚、皿洗いは3枚、庭の掃
除なら5枚というようにです。
 しかし、子供たちは一向に手伝いをしようとしません。そこで
モスラー氏はどうして手伝わないのか子供たちに聞いたのです。
そうしたら、「パパの名刺なんて欲しくないから」という返事が
返ってきたのです。確かに子供たちにとっては、パパの名刺なん
か何の価値もなかったからです。
 そこで、モスラー氏は子供たちに宣言しました。「毎月、月末
までに30枚の名刺を提出しないと、この家から出て行ってもら
い、親戚の家の子にするよ」と。親戚の家には子供がおらず、引
き取ってもいいといっていたし、そのことを子供たちも知ってい
たからです。
 父親のこの厳しい宣言に、子供たちは慌てて家の手伝いをする
ようになります。しかし、月末までに名刺を30枚集めるのは大
変で、定例的な仕事を手伝った後、「ほかにやることはないの」
と親に聞くようになったのです。このようにして、名刺は急に価
値を持つようになったのです。
 この「ウォーレン・モスラーの物語」について、井上智洋駒澤
大学准教授は、この小話からMMTの基本である次の3つのこと
が導けるとしています。
─────────────────────────────
 1つ目は、納税より先に政府支出があるということです。モズ
ラー氏は手伝いをした子供たちに名刺を渡しました。これは公共
事業を行った業者に政府がお金を支払うことに類似しています。
子供たちがパパに名刺を渡すという納税相当の行為を行うのは、
その後です。
 2つ目は、納税によって貨幣は価値をもつようになるというこ
とです。名刺はただの紙切れなので、パパへ上納すべきチケット
でもないかぎり、子供たちはそれを欲しがりません。同様に、紙
幣はただの紙切れなので、納税すべきチケットでもないかぎり、
誰もそれに価値があるなどと思わないというわけです。
 3つ目は、租税は財源ではないということです。モズラー氏が
名刺を欲しがらないのと同様に、政府も貨幣が欲しいわけではあ
りません。名刺にせよ、紙幣にせよ、印刷すれば済む詣です。租
税を徴収しなかったとしても、政府は紙幣を印刷することで(キ
ーボードを叩くだけで)、いくらでも財源を作り出すことができ
ます。                   ──井上智洋著
    『MMT/現代貨幣理論とは何か』/講談社選書メチエ
─────────────────────────────
 井上准教授の指摘する1つ目は、スペンディング・ファースト
です。政府は、最初にお金を作り出して支出しているということ
です。税金として納められたお金(税収)から支出しているわけ
ではないのです。
 2つ目の指摘は、モスラー家のルールとして、月30枚の名刺
の提出を強制化したとたん、名刺が突然価値をもったように、政
府が作り出したお金に対しても、国家として強制力をかけること
によって、価値を持たせているという点です。
 これによって、租税、すなわち税収が政府支出の財源ではない
ことがよくわかります。3つ目の指摘です。政府はその都度お金
を作り出し、政府支出として使っているということです。ただし
国民には、できるだけ税収や国債の範囲内でそれを使っているよ
うに偽装しています。本当は、税収の額に関係なく、いくらでも
お金を作り出せるのです。
 この考え方に立つと、日本のように、税収を超える予算を毎年
組んで使っても問題はないということになります。昨日のEJの
関連情報でも述べているように、ほとんどの人は、「政府が何か
税金などを貯めている金庫のようなものを持っていて、そこから
お金を支出している」と考えていますが、それは違うことがよく
わかると思います。
 そうであるとすると、国民が納めた税金はどうなるのでしよう
か。これについて、藤井聡京都大学大学院教授は、次のように解
説しています。
─────────────────────────────
 納税したオカネがどうなるのかと言えば──それは「消える」
のである。そもそも「貨幣」とは、「国家の負債」、つまり「国
家が国民に対して借りがあるという記録」であった。「納税」と
いうものは、国民にしてみれば、「国家の借りを、国家に返して
やる」ことと引き換えに「納税義務を果たしたことにする」こと
をいう。つまり、(納税という)国民の借りと、(貨幣という)
国家の借りとを突き合わせ、両者の借りを消滅させるのである。
だから、納税すれば、国民の納税義務が(その分)消滅すると同
時に、国家の負債である貨幣もまた、消滅するのである。
                   ──藤井聡著/晶文社
   『MMTによる令和「新」経済論/現代貨幣理論の真実』
─────────────────────────────
 これは、ウォーレン・モスラーの話で考えるとすぐわかること
です。子供たちは税金のかたちで名刺を返してきますが、名刺は
ボロボロになっていて、再利用できません。モスラー氏は、おそ
らくシュレッダーにかけて廃棄しているはずです。名刺は低コス
トで印刷できるからです。貨幣もまったく同じです。
           ──[消費税は廃止できるか/063]

≪画像および関連情報≫
 ●MMTは平成の誤りを検証するツールである/西田昌司氏
  ───────────────────────────
   MMTとは、貨幣の正体を貴金属などのモノでは無く、国
  家や銀行の債務であるという事実を元に、経済現象を再定義
  した理論です。貨幣の正体が債務であることは、日銀も財務
  省も認めていることです。問題は、現在主流となっている経
  済学が、その理論の前提として、貨幣を債務ではなくモノと
  して扱っていることなのです。そのため、理論と現実が整合
  しなくなっているのです。このことに彼らは気がついていま
  せん。その結果、主流派経済学は現実に起こっている経済現
  象を説明できなくなっています。「国債残高が、これ以上大
  きくなればハイパーインフレが起きる」と彼らは20年以上
  前から訴えてきました。しかし、実際には、日本はハイパー
  インフレどころか、デフレで苦しんでいます。この事実も彼
  らは認めようとしていません。「今はいいが、財政再建を諦
  めれば、通貨の信認は崩れ、いつか必ず破綻する」という妄
  言を未だに言い続けています。
   自分達の学んだ理論にしがみつき、現実を直視しない彼等
  の態度では、知識人としての資格はありません。自分達の前
  提とする条件でしか通用しない理屈を現実の世界に当てはめ
  現実がそれと違う結果になっていても、その事実を直視しな
  い様では、最早科学ではなく、宗教です。
                  https://bit.ly/2X7t6ma
  ───────────────────────────

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講演するステファニー・ケルトン教授
 
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2020年04月06日

●「MMTの主張はパラドッスである」(EJ第5221号)

 MMTの主張は一見すると「パラドックス」です。ところで、
パラドックスとは何でしょうか。ウィキペディアなどでは意外に
難しい解説が出ていますが、「パラドックス」をわかりやすく説
明すると、次のようになります。
─────────────────────────────
 「パラドックス」は、英語の「paradox」 のことで、「逆説」
「ジレンマ」「背反」「矛盾」などを意味する言葉です。世間一
般的には正しいと認識されているものごとに対し「反対の主張、
反対である状況や事態、また反対の概念」、つまり「定説にさか
らうもの」を指す言葉でもあります。
 細かく言えば「矛盾」よりは意味の幅が広く「見かけの上で判
断する真偽が、実際の真偽と反対であること」となりますが、地
球上にはあらゆる分野で数多くの「パラドックス」が存在してい
ることに多くの人が驚くことでしょう。https://bit.ly/2UHGVX5
─────────────────────────────
 MMTでは、税金の捉え方が常識とは違うのです。政府は徴税
権を持っています。政府はそれを使って税金を集め、それによる
税収で政府支出をしていると、誰でも考えています。したがって
これは上記の、「世間一般的には正しいと認識されているものご
と」に当ります。
 しかし、MMTでは、4月3日(金)のEJ(EJ第5220
号)でも述べたように、「そうではない」と否定します。つまり
「税は政府支出の財源ではない」というのがその理由です。これ
は、まさにパラドックスということになります。
 EJ第5220号では、駒澤大学経済学部准教授の井上智洋氏
の次の記述に注目しています。
─────────────────────────────
 政府支出の財源が、租税や国債であるかのように偽装されて
 いる。               ──井上智祥准教授
─────────────────────────────
 井上氏は、サラッと表現していますが、これは大変なことを述
べています。政府支出の財源は、税収と国債であると誰でもそう
考えていますが、井上氏は、もちろんMMTの考え方として、そ
れを明確に否定しているからです。
 しかし、主流派経済学では、まず租税があって、それを財源に
して政府支出を行うと考えています。これに対して、MMTでは
まず、政府支出があって、国民はそれによって得たお金で税金を
支払います。スペンディング・ファーストです。井上准教授は、
租税の目的について次のように述べています。
─────────────────────────────
 租税の目的は財源の確保にあると誰しも思うでしょうし、ほと
んどの経済学者もそう考えています。ところが、MMTでは、租
税の目的が財源の確保であることを明確に否定しています。
 政府は国民に対し、納税義務を課します。貨幣は納税義務を果
たすためのチケットであり、国民はこのチケットを手に入れなけ
ればなりません。それゆえに、このチケットつまり貨幣は価値を
もつのです。租税はそのためにこそあって財源ではないので、貨
幣を市中から回収してしまったら用済みです。 ──井上智洋著
    『MMT/現代貨幣理論とは何か』/講談社選書メチエ
─────────────────────────────
 「貨幣は納税義務を果たすためのチケットである」というのは
少しわかりにくいかもしれないので、ていねいに考えてみます。
 国民には納税義務があります。なぜなら、国民は、その国に住
むことにより、政府(国)に対して恩があり、借りがあるという
ことになります。
 お金は、いわゆる万年筆マネーとして作り出される単なる数字
に過ぎませんが、それを「現金」と交換できると誰もが信じてい
るので、価値があります。
 その一方で、その現金の裏づけは、それが納税に使えるという
事実によって、裏づけられています。つまり、現金は「納税クー
ポン券」であるということです。なぜなら、その納税クーポン券
が価値を持っているのは、国家の徴税権が実体的な強制力として
存在しているからです。国家が税金を支払うことを国民に義務付
け、もし、納税しないと、「脱税」の罪で、国家権力で刑事罰を
加えることができるからです。
 これについて、藤井聡京都大学大学院教授は、「お金というも
のは『負債』の記録である」といい、次のように述べています。
─────────────────────────────
 1万円札は、「国家が国民に対して(税金にして)1万円分の
借りがある、という記録」として世間に流通しているのである。
だから、あなたがその1万円を資産として財布に持っているなら
それによってあなたは「国家に対する1万円分の貸しがある」状
態になれるのである。だからあなたほそれを通して、政府があな
たに課する納税義務を、1万円分帳消しにすることができるので
ある。                ──藤井聡著/晶文社
   『MMTによる令和「新」経済論/現代貨幣理論の真実』
─────────────────────────────
 新型コロナウイルス蔓延による経済対策として、「現金給付」
が話題になっています。何か異様ことのように受け止める向きも
多いと思いますが、これこそ、スペンディング・ファーストその
ものなのです。
 スペンディング・ファーストというのは、現金を初めに支出し
たのは政府であるという歴史的事実ではなく、毎年政府がそれに
よって政府支出を行っていることを指しています。税収を使って
いる訳ではないのです。しかし、表面上は、税収+国債の範囲内
を意識して、あたかもそこから支出しているように「偽装」して
いるのです。これについては、明日のEJで、もっと詳しく説明
します。       ──[消費税は廃止できるか/062]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税廃止は本当に可能なのか?/3/Cargo
  ───────────────────────────
   前回コラムで、「需要の減少」が起こる悪循環をどう断ち
  切れば良いのかという課題に対して、反緊縮派は一つに「消
  費税廃止」を提案していることをお伝えした。加えて、二つ
  目の有効策がこの「財政出動」になる。これは消費税廃止で
  無くなった消費税収に替わる財源を得るため、また国民経済
  を後押しするための政策となる。減税と財政出動、上述した
  中学校の教科書通りの財政政策だ。
   「財政出動すると財源が減ってしまうのではないか」と思
  われる方もいるかもしれない。それも当然だろう。普通の人
  は、政府が、何か税金などを貯めている金庫のようなものを
  持っていて、そこからお金を支出していると考えている。し
  かしその考えは誤りである。政府が支出すると、実体経済市
  場に通貨が創造されるので、支出することそれすなわち財源
  となることを意味する。政府が誰かに支払いをすると、新し
  い通貨がこの世に「無から生まれる」のだ。
   このことをMMTは「万年筆マネー」や「スペンディング
  ・ファースト」という概念をもって説明するが、少し複雑な
  仕組みなので我慢して以下を読み進めてもらいたい。
   信用創造(通貨を創造すること)には経路が2つある。一
  つは、金融機関によって保有される既発国債と交換する形で
  中央銀行が創造した貨幣(実体経済市場では使用不可能な準
  備預金)を元手にして、金融機関が一般企業や個人に貸し出
  すときに起こる。中央銀行が国債を買い入れることを「買い
  オペ」と言い、国債と交換する形で貨幣を増やすことを「量
  的金融緩和」と言うが、基本的には同じことを指している。
  何を言っているのかわからないという方は下記の「教えて!
  にちぎん」と「ニチギンマン」の説明も見てもらいたい。
                  https://bit.ly/3bQYWrD
  ───────────────────────────

井上智洋駒澤大学准教授.jpg
井上智洋駒澤大学准教授
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2020年04月03日

●「明示的財政ファイナンスとは何か」(EJ第5220号)

 MMTについて書いているあるサイトによると、MMTは現代
貨幣理論などというような大袈裟な理論ではなく、見たままの、
当たり前のことをいっているだけではないかと主張しています。
 リンゴが木から地面に落ちるのを見て、「リンゴが落ちた」と
いい、地球は平らで端の部分は瀧になっているというのに対して
地球を一周したが、そんな瀧なんてなかったという事実をいって
いるだけというのです。
 錯覚している人が多いのです。例を上げると、多くの人は、民
間銀行は預金というかたちで資金を集め、銀行はその預金をベー
スにして企業や個人に貸し出しをすると考えています。そんなこ
とは、常識じゃないかというわけです。
 これについて、井上智洋駒澤大学准教授は、次のように述べて
います。
─────────────────────────────
 主流派経済学者は、まず家計が民間銀行に預金し、その預金を
基に企業に貸し出しを行うと考えがちです。これを「又貸し説」
と言います。その後企業は、賃金や配当といった形で家計にお金
を供給します。しかし、この順番だとそもそも家計は最初に預金
すべきお金をどこから得たのか謎が残ります。
 それに対し、MMTはまず貸し出しの際の預金通貨の創造があ
り、そのお金を企業は投資や賃金の支払いに使います。賃金を得
た家計はそのお金の一部を預金します。要するに、MMTが主張
しているのは、又貸し説は間違いであって、万年筆マネー論が正
しいということです。貸し出しの際に預金通貨が創造されるとい
うことは、貸し出しを行う度に、世の中に出回るお金「マネース
トック」(現金十預金)が増えていくことを意味します。
                      ──井上智洋著
    『MMT/現代貨幣理論とは何か』/講談社選書メチエ
─────────────────────────────
 最初に、家計が預金するのではないのです。銀行が貸し出しの
さいに預金通貨という万年筆マネーを創造し、そのお金を企業は
投資や賃金の支払いに使うので、そうして得たお金を家計は、そ
の一部を銀行に預金するのです。預金が先にあって、そこからお
金を貸すのではないのです。これをMMTでは「スペンディング
・ファースト」といっています。
 「約50兆円しか税収がないのに、毎年100兆円を超える予
算を使っている。これじゃ借金が累積して日本は破綻する」とい
われますが、MMTでは「税は政府支出の財源ではない」という
のです。「何をバカなことを!」というなかれ、よく考えてみる
と、そもそも歳入(税収)を歳出(政府支出)に使うのは、不可
能なのです。
 これについて、経済評論家の三橋貴明氏は、なぜ不可能なのか
について、次のように説明しています。
─────────────────────────────
 確定申告は、例えば2019年であれば「2019年1月1日
から12月31日」までの課税期間の収入・支出、控除等を税務
署に申告し、納付すべき税額を確定する。確定申告の時期は「2
020年2月16日から3月15日までの1ヶ月間」である。繰
り返すが、2019年の経済的な行為について、我々は翌20年
2月及び3月に申告しているのだ。つまりは、2020年3月以
降、確定申告後の税金支払いまで、政府は最終的な税収を得られ
ないことになる。
 ところが、政府は2020年の予算については普通に執行して
いる。おカネを支出しているのだ。政府は税収や国債発行(民間
金融機関からの借入)なしでも、予算を支出できる。というより
も実際にしている。支出が先、つまりは、スペンディング・ファ
ーストである。           https://bit.ly/3dU52tc
─────────────────────────────
 具体的に、どのようにして政府支出をするのかというと、それ
はきわめて簡単なのです。財務省が「財務省証券」を発行し、そ
れを日銀に持ち込み、その金額を日銀の政府当座預金口座に電子
的に記入してもらうだけです。政府は、このようにして、徴税や
国債発行なしでも、ごく簡単にお金を発行できるのです。
 これは、これは、政府の一時的な借金のように見えますが、日
銀は政府の子会社であり、事実上政府がお金を発行しているのと
同じなのです。これは、「明示的財政ファイナンス(OMF)」
と呼ばれています。OMFは、次の言葉の略です。
─────────────────────────────
      ◎明示的財政ファイナンス(OMF)
           Overt Monetary Financing
─────────────────────────────
 この明示的財政ファイナンスについて、井上智洋准教授は、次
のように解説しています。
─────────────────────────────
 (明示的)財政ファイナンスというのは、政府が貨幣発行を財
源に支出を行うことです。これは、実際に行われていることで、
MMTの文脈では、中央銀行がキーストロークによって作り出し
たお金を、政府が支出に充てることを意味します。
 ただし、実際には政府支出の財源が租税や国債であるかのよう
に偽装されています。支出と同額の税金を徴収したり国債を発行
したりすることによって、あたかも財政ファイナンスを行ってい
ないかのような装飾が施されているというわけです。OMFは、
その装飾をはぎとって、あからさまに、財政ファイナンスを実施
しようということです。     ──井上智洋著の前掲書より
─────────────────────────────
 この説明で印象的なのは、「政府支出の財源が租税や国債であ
るかのよう偽装されている」という部分です。つまり、これは、
表向きは政府支出は税収や国債であるように国民には思わせる必
要があるということを意味しています。
           ──[消費税は廃止できるか/061]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ今、現代財政理論なのか/鷲尾香一氏
  ───────────────────────────
   2019年初めから、現代貨幣理論(MMT)という新た
  な経済理論がメディアなどの盛んに取り上げられた。MMT
  の最大の特徴は、「財政赤字に問題はなく、政府が財政再建
  を行わなくとも、財政が破たんすることはない」という考え
  方で、その成功例として、政府債務がGDP(国内総生産)
  の240%にも達しながらインフレにも陥らず、財政破たん
  もしていない「日本」が取り上げられているためだ。
   国内では数年前から「政府総債務残高が家計純金融資産残
  高を上回なければ、国債消化に困難が生じることはなく、財
  政危機が起きることはない」という考え方「現代財政理論」
  が、一部の学者やエコノミストのあいだで唱えられている。
  MMTでは財政について、不況期には、政府が借金をしても
  (財政赤字でも)、政府支出を増加させることで資金が民間
  に回り、景気が回復すると考える。
   不況時の財政黒字は、民間に資金が回っていないことを意
  味し、不況時に財政支出を行わないと、不況は一段と深刻化
  するという考え方だ。そして、「政府債務がどれだけ膨らん
  で、財政赤字となろうとも、財政再建を行わなくとも、債務
  不履行に陥ることはない」と理論付けている。
                  https://bit.ly/39vNW1m
  ───────────────────────────

経済評論家/三橋貴明氏.jpg
経済評論家/三橋貴明氏
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2020年04月02日

●「巧妙に緊縮政策をとった小泉政権」(EJ第5219号)

 ブキャナンの思想というのは、エリート意識をくすぐるところ
があります。政治家というものは、選挙で選ばれる存在であり、
どうしても国民に痛みを強いる政策は実施を躊躇ってしまうもの
です。その点、ある意味において、それを比較的上手にやったの
は、小泉政権であると思います。小泉首相は、国民に対して、国
民が一番気にしていた増税をしないことを約束しています。
─────────────────────────────
 自民党の総裁任期は3年あるが、その間に消費税の税率を上
 げる環境にはない。 ──2003年9月22日/小泉首相
─────────────────────────────
 やや微妙な表現ですが、国民にとっては「自分の任期中は消費
増税はしない」と約束したのと同じであり、国民にとって好感を
もって受け止められています。
 そのうえで、国債の発行と公共事業について、次のことを宣言
しています。これは、明らかに、緊縮経済政策をとることを国民
に宣言したのと同じです。
─────────────────────────────
  国債発行額30兆円以下とし、公共事業は10%削減する
                      ──小泉首相
─────────────────────────────
 「バラマキはやらず、国債発行を制限する」──このように赤
字国債の発行を少しでも制限するという宣言は、かっこよいし、
増税と違って国債発行の制限は、国民にとって直接的な痛みにつ
ながるわけではないので、受け入れ易いのです。もちろん、国債
発行が制限されると、それだけ政府支出が制限されることになる
ので、国民にとっても大いに関係のあることですが、直接的では
ないので許容できるのです。
 このようにして、小泉政権は結局のところ、国債発行に一定の
ブレーキをかけ、任期中、緊縮財政を押し通したのですが、国民
の人気は上々の内閣だったといえます。そして、自らの政治目標
である郵政の民営化を成し遂げると、意外に早く身を引いたので
す。引き際も実に見事なものでした。
 ある政治目標を達成する場合、その財源を国債を発行して求め
るのと、増税に求めるのとでは、大きな違いがあります。例えば
「予算が100兆円を突破し、国の債務残高が増えている」とい
われても一般の国民にはピンときませんが、その一方で、増税を
するといわれると、それは直接的な痛みになるので、多くの人は
強硬に反対します。消費税が反対されるのは、人々が自由にお金
を使う余地を小さくするからです。このように目的は同じである
にもかかわらず、財源を調達する方法が異なることによって人々
の反応は異なってきます。
 ブキャナンは、このことを「財政錯覚」と呼んだのです。この
言葉は、民主主義国家の財政が、赤字続きの状態に陥り易く、財
政規律が緩みがちになるという関連性を考えるさいに、よく使わ
れる言葉です。
 確かに「バラマキ」をやるよりも、緊縮政策をとる方が外向き
には見栄えがよいので、ブキャナン思想の信奉者が多いのです。
赤字国債を発行するとか、財政出動をせよとかいうと、何か不道
徳のようなことをいっているような気がして、気がひけます。
 その点、日本の財政は危機的状況にあり、国の借金を減らすた
めに、何とか手を打たなければならないというように、緊縮を唱
えている方が、まともな人物に見えるものです。
 ですから、いくら財政を拡大しても大丈夫だと堂々と主張する
MMTなどは、きわめて不道徳なものとみなされてしまうわけで
す。この現象について、藤井聡京都大学大学院教授は、次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
 ブキャナン理論は、インテリ達の「選民思想」をくすぐるとい
う特徴がある。つまり、ブキャナン理論を信じておきさえすれば
「他の人々は皆概して愚かだけど、俺の言う通り緊縮をやれば、
それで国が救われるんだ」と考えることができ、自らを選民の地
位に位置付けることが可能となるのである。
 だから、MMT的財政拡大論を耳にした途端、彼らが即座にM
MTを否定したくなるのは、自分自身の虚栄心を満足させるため
でもあったのだ。つまり彼らは、自分がインテリであると思われ
るために、さらに言うなら、他者からインテリであることを疑わ
れないようにするためだけに、単なるポーズで国債発行を不道徳
呼ばわりしているのである。      ──藤井聡著/晶文社
   『MMTによる令和「新」経済論/現代貨幣理論の真実』
─────────────────────────────
 この問題は、日本がなぜ25年もの間、デフレから脱却できな
いでいることにも関係があります。日本では、ある政権が、勇断
をもって巨額の財政出動をしても、必ずといってもよいほど、そ
の後、増税などの緊縮政策を行い、せっかくの財政拡大の効果を
潰しています。
 2012年暮れに政権を民主党から奪還した自民党政権は20
13年から、アベノミクス第1の矢として「異次元な金融緩和」
と第2の矢としての「機動的な財政出動」を実施して、何とか景
気を少し上向きにさせたものの、2014年4月に5%〜8%へ
の消費増税でそれを潰し、そのダメージが癒えていない2019
年10月に重ねて8%〜10%への消費増税によって、GDPを
大幅に押し下げる大ダメージを与えています。これは、それほど
日本の政府の中枢や経済学者に、ブキャナン思想の持ち主が多い
ということを意味しています。
 そこに予期していなかった新型コロナウイルスの蔓延による経
済のダメージが重なって、経済は想定を超える深刻な事態に陥っ
ています。今こそ緊急にして大幅な財政措置が必要なときですが
こんなときでも、財政出動には反対のブレーキは効いていて、政
府は真に思い切った措置がとれないでいるようです。
           ──[消費税は廃止できるか/060]

≪画像および関連情報≫
 ●三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』
  ───────────────────────────
   MMTという黒船襲来を受け、いわゆるリフレ派の論客が
  口を揃えたように、「MMTなど採用したら、インフレ率を
  制御できなくなる」と、ヒステリックに叫んでいる光景は滑
  稽極まりない。そもそも、いわゆるリフレ派は「デフレ脱却
  =インフレ」を目指したのではなかったのか。
   もっとも、いわゆるリフレ派が主流派経済学の傍流である
  ことを理解すれば、彼らの奇妙な行動の理由が分かる。主流
  派経済学は、とにかく「財政政策」が嫌いなのである。
   というわけで、いわゆるリフレ派を含む主流派経済学者た
  ちは、日本国内で「MMTで財政を拡大し、日本がインフレ
  になると、インフレ率上昇を制御できなくなる」と、財政民
  主主義を全否定する発言を繰り返す。政府の財政の決定権は
  我々日本国民が保持している。我々が主権者として財政政策
  を定める権利は、憲法で保障されているのだ。インフレ率が
  健全な範囲を超えて上昇していく局面になったならば、国民
  が主権に基づき政府の財政規模を縮小すれば済む話である。
  「そんなことができるはずがない! 有権者は我がままだ」
  と、ブキャナンさながらに主張する非・民主主義者は、早々
  に日本国から立ち去って欲しい。何しろ、彼らは自分たちが
  憲法違反丸出しの発言を繰り返していることを自覚できない
  ほどの愚者なのである。     http://exci.to/2WUAQrI
  ───────────────────────────

小泉純一郎元首相.jpg
小泉純一郎元首相
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2020年04月01日

●「ブキャナン思想に染まる経済学者」(EJ第5218号)

 米国の財政学者、ジェームズ・M・ブキャナンの著書に『財政
赤字の政治経済学』という本があります。ブキャナンは、この本
に書かれている理論で、1986年にノーベル経済学賞を受賞し
ています。どのような理論でしょうか。
 政治家は選挙で選ばれるので、人気取りのため、公共事業など
の「バラマキ」に走りがちになって、その結果、財政赤字が拡大
してしまう──要するに、ケインズ経済学の欠点を指摘する理論
といえます。「借金はよくないもの」というのは世界共通の「常
識」、国の財政には財政規律を守ることが必要であり、それなり
の説得力があったので、次のようなことが先進国のエリートたち
の「常識」になっているのです。
─────────────────────────────
 民衆の主張や要求を一切無視して「財政規律」を守ることが、
国全体を守る上で、とても大切な「道徳的に正しい行為である」
                   ──藤井聡著/晶文社
   『MMTによる令和「新」経済論/現代貨幣理論の真実』
─────────────────────────────
 そして今や、このブキャナン思想が、先進国の政府、OECD
やIMFなどの国際機関の基本的な運営方針になっています。と
くに日本では、政治家、官僚、学者といったインテリ層が、この
ブキャナン思想に汚染されています。藤井聡教授にいわせると、
「住民達は皆バカで、そんな住民が好きな財政拡大は不道徳なも
のだ」とまでいっています。
 なお、ブキャナンは財政均衡論者であり、日本は財政法第4条
で原則として国債発行を禁止し、均衡財政を法律の条文に書いて
います。完全に日本はブキャナン思想に染まっています。加えて
日本では、田中角栄の「金権政治」やロッキード事件などが起こ
り、ますますブキャナン思想が根付いてしまったのです。
 これに関して、昨日のEJの関連情報でご紹介した「経済コラ
ムマガジン」には次のような興味あることが書いてあります。
─────────────────────────────
 橋本・小泉首相の話に戻る。両者は決して経済が強いと定評の
ある政治家ではない。党内では両者はともに厚生族として活動し
ており、両者は厚生大臣の経験者である。特に小泉氏は厚生大臣
しか閣僚経験がない。また、橋本内閣の財政改革路線も、橋本首
相自身ではなく、梶山静六官房長官(この政治家も経済に弱かっ
た)が強引に進めていたのが実状である。
 しかし、筆者が考える橋本・小泉首相の最も重要な共通点は、
両者がともに「慶応大学」の出身者という点である。「何をばか
なことを」と思われる方が随分いると想われるが、これが結構大
事なことである。慶応大学は割りとはっきり特定の経済理論に傾
倒している。大学全体にJ・M・ブキャナンの影響を強く受けて
いるのである。ブキャナンは公共経済学者で、86年にノーベル
経済学賞を受賞したえらい学者である。そして日本のブキャナン
の研究の第一人者が、以前慶応大学経済学部長で、現在千葉商科
大学長の加藤寛氏(故人)である。
 橋本元首相はどれだけ加藤寛氏の影響があったかはっきりしな
いが、行政改革委員会や政府税調の要職にあった加藤寛氏と相当
の接触があったものと想像される。一方、小泉氏は、はっきりと
学生時代は加藤寛氏の授業を熱心に聴講していたとテレビで発言
していた。             https://bit.ly/33X1npY
─────────────────────────────
 「経済コラムマガジン」の著者が指摘するように、最悪の時期
に消費税の3%〜5%の増税をして、日本のデフレを深刻化させ
たのは橋本龍太郎首相率いる橋本政権です。増税の翌年から、日
本は長期デフレに突入しています。
 2001年からの小泉純一郎首相率いる小泉政権は、国債発行
に30兆円枠を設け、国債をその枠以下に絞るなど歳出を抑制し
たものの、そのため、景気対策が疎かになり、デフレを一層深化
させた内閣であるといえます。「民間が出来ることは民間にまか
せる」という旗印の下で、小さい政府を目指し、郵政民営化を中
心に民営化を推進した内閣です。
 ちなみに、ブキャナンの著した『財政赤字の政治経済学』は、
政治学者であるリチャード・E・ワグナーとの共著になっていま
す。ブキャナンは、必然的に財政赤字が膨らむケインズ経済学を
政治的側面から分析するために、ワグナーと共同研究を行ったの
です。そのため、この本で述べられている考え方は、「ブキャナ
ン・ワグナーの定理」とも呼ばれています。
 しかし、このブキャナン・ワグナーの定理が主張された頃の米
国は、第2次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争と続く戦争によ
るによる財政赤字の積み重ねで経済は疲弊し、貿易赤字と財政赤
字が増え続けていた時代であり、インフレが続いていたのです。
それでもなお、政治家は選挙に勝つために歳出を抑えることがで
きず、歳出を増やす政策を、取り続けざるをえなかったといえま
す。また、金利も高くなり、民間と政府が資金を奪いあうクラウ
ディングアウトの状態にあったのです。クラウディングアウトと
は、大量の国債発行で市中金利が上がり、それによって民間の資
金需要が抑えられることをいいます。
 こういう状況になれば、だれでもケインズ経済学に疑問を抱き
否定したくなるはずです。そういう状況で、ブキャナン・ワグナ
ーの定理が出てきているのです。しかし、1979年版の『財政
赤字の政治経済学』では、次の指摘が加えられます。
─────────────────────────────
 需要不足の経済状態から脱出するための理想的な経済政策は、
政府貨幣発行を財源とする赤字予算を組むことである。
─────────────────────────────
 驚くべきことですが、ブキャナンは、政府貨幣発行に言及して
います。ブキャナンを信奉するのであれば、もっとブキャナン思
想について勉強すべきであると思います。
           ──[消費税は廃止できるか/059]

≪画像および関連情報≫
 ●現代貨幣理論批判の分類と反論をわかりやすく解説する
  ───────────────────────────
   もっともポピュラーな現代貨幣理論(MMT)批判です。
  現代貨幣理論(MMT)を実施すると、ハイパーインフレに
  なる!というものです。
   この批判には、重要な要素があります。ジェームズ・M・
  ブキャナンの「赤字の民主主義ケインズが遺したもの」を、
  批判理論の根底にしています。赤字の民主主義とはなにか?
  ───────────────────────────
  【赤字の民主主義】
   民主主義で一度、財政赤字を認めると永続して拡大する。
  なぜなら、民主主義において「与えられるなら、与えてもら
  いたい」という国民の動機が、原動力となる。一度財政政策
  をすると、延々と財政政策が求められるようになる。
  ───────────────────────────
   ブキャナンが提唱したのは、上記のような理論です。が、
  この理論。大きな見落としがあります。「民主主義ではない
  資本主義国家も、赤字を拡大し続ける」という事実です。じ
  つは民主主義は関係ありません。「資本主義それ自体が永続
  的に、負債を拡大し続ける」経済形態なのです。実際にアメ
  リカや日本、自国通貨建ての世界の先進国で、国債発行額が
  増え続けていない国家は存在しません。
                  https://bit.ly/3dyvQPo
  ───────────────────────────

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慶応義塾大学出身の2人の首相

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2020年03月31日

●「バラマキのためらいの正体は何か」(EJ第5217号)

 2020年3月28日付、日本経済新聞の1面のトップに次の
記事が出ています。
─────────────────────────────
【現金給付所得減世帯に/経済対策50兆円超GDPの1割】
 政府は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策
で、5月にも所得が大幅に減少した世帯に現金を給付する検討に
入った。条件が当てはまる1世帯に20万円〜30万円程度とす
る案がある。売り上げの急減が予想される飲食業や観光業は割引
券や商品券を発行して支える。経済対策の事業規模は名目国内総
生産(GDP)の1割にあたる56兆円超をめざす。
       ──2020年3月28日付、日本経済新聞朝刊
─────────────────────────────
 同じことを米国のトランプ政権は、もっとシンプルに、もっと
素早くやろうとしています。新型コロナウイルス対策として2兆
ドル(約220兆円)規模の経済刺激策を既にを与野党で既に合
意しており、4月に実施することを決めています。とくに、大人
1人当り最大1200ドル(約13万円)の現金給付は、4月中
に配付するとしています。こういう現金給付は何よりもスピード
が勝負です。
 それにしても、日本は、なぜ、現金給付に1ヶ月もの時間を要
するのでしょうか。それは「所得が大幅に減少した世帯」という
条件をつけているからです。しかし、そういう条件に当てはまる
世帯を、どのような基準で選ぶのでしょうか。仮にどのように公
平に選んだとしても、絶対に不公平になるし、時間もかかるので
す。しかも一律10万円の現金給付というニュースが拡がると、
政府は慌ててメディアに「一律ではない」と否定させています。
期待されては困るという考え方でしょう。
 そもそも今回の新型コロナウイルスの蔓延で、何も被害を受け
ていない人など一人もいません。マスク不足や、トイレットペー
パーやティッシュの不足、移動や行動の制限、集会の禁止、会食
の禁止、ただ見るだけの花見まで禁止と、禁止のオンパレードで
す。国民はうっとうしい毎日を過ごしているのです。ところが安
倍首相の奥方は、この時期にレストランの庭とはいえ、花見を楽
しんでいるではありませんか。こんなことは許されることではあ
りません。国民は怒っています。しかも、そのことを野党議員が
国会で質問すると、首相は「それではレストランに行ってはいけ
ないのか」と反論し、しまいには「そんな大声でツバキを飛ばす
な」と逆ギレする始末。なぜ「このような時期に不適切だった。
妻に代ってお詫びする」と潔く謝罪できないのでしょうか。
 このさいは、野党の要求しているように、条件なしの一律10
万円を4月早々に配付すべきです。国会議員にも配ることになり
ますが、条件に当てはまる世帯を探している時間なんかない。こ
んな問題で、時間をかけるのは愚かなことです。この案なら誰か
らも批判はこないと思います。
 新型コロナウイルス蔓延による今回の緊急経済対策は、いわゆ
る「バラマキ」と呼ばれます。なかでも、国民に一律に現金を配
るなどは「バラマキ」の典型です。そのため、緊急経済対策とい
う大義名分があっても、実施側としては何となく躊躇するもので
す。これはどこからくるものでしょうか。
 かつて民主党が天下を取ったとき、公約の子育て支援の「子ど
も手当」を実施に移そうとしたとき、財務省は一切協力せず、財
源がなくて、実現しなかったことがあります。そのとき、野党に
なった自民党は「子ども手当」を「バラマキ」と呼んだのです。
相手の民主党が政権運営に慣れないことを逆手にとって、財務省
を抱き込んで、「子ども手当」の阻止したのです。それでいて、
自民党は政権を奪還すると、幼児教育費の無償化を含む「子ども
手当」をもっと拡大したものを消費増税を財源として実施に移し
ています。「子ども手当」の提案は正しかったのです。
 ところで、「バラマキ」といえば、ケインズ経済学に基づく不
況対策として行われる公共事業も「バラマキ」であり、財政赤字
が膨らむ原因になるからと、避けるべきとの風潮があります。赤
字国債を発行するなど政権党としては、それが必要であっても何
となく実施を躊躇うのです。今回のような未曾有の新型コロナウ
イルス禍でもない限り、赤字国債を発行してやれないのです。そ
れは一体どこから来るのでしょうか。
 それは、3月27日のEJ第5215号で取り上げた米国の財
政学者、ジェームズ・M・ブキャナンの財政思想から来るもので
あり、日本の財務省系の財政学者のほとんどは、この財政思想に
染まっています。ブキャナンは財政均衡主義の元祖です。
 ジェームズ・ブキャナンとして検索すると、同名の米国第15
代大統領の名前が出てきますが別人です。財政学者として検索し
ないと出てこないのです。ジェームズ・M・ブキャナンについて
真壁昭夫教授は次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 1986年にノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者ジェ
ームズ・ブキヤナンは、財政の規律に強くこだわった経済学者で
した。彼は、民主主義の下で財政支出は増加し続けるため、均衡
財政(財政の歳出と歳入のバランスをとる)の考えに基づき、税
収の範囲内で予算を組む必要があると主張しました。この考えは
景気が悪化した際に、政府(官僚)は必要に応じて財政支出を拡
大させ、経済成長率を高める能力を持つというケインズの考えと
異なります。ブキャナンの考え方に基づくと、財政黒字の黒字を
実現する(財政赤字をなくす)ためには、国民の負担が欠かせま
せん。例えば、増税や歳出のカットが考えられます。いずれも、
わたしたちが避けたいと思う政策です。増税はわたしたちが自由
に使うことのできるお金を減少させます。   ──真壁昭夫著
   『MMT(現代貨幣理論)の教科書/日本は借金し放題?
       暴論か正論かを見極める』/ビジネス教育出版社
─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/058]

≪画像および関連情報≫
 ●逆噴射の財政政策/経済コラムマガジン
  ───────────────────────────
   ブキャナン経済学の真髄は「民主主義的意思決定過程の中
  では、景気が過熱しているときでも、人々が好まない緊縮的
  政策をとることができない」という主張である。つまり民主
  国家では、どうしても財政支出が増え続け、どんどんインフ
  レが進行するメカニズムを持っているというのである。これ
  はまさに一種のケインズ政策批判である。ブキャナンはこの
  分析を政治学者であるワグナーとの共同研究で行っている。
  そしてこのような考えは「ブキャナン・ワグナーの定理」と
  呼ばれている。この定理は84年両者の共著「赤字財政の政
  治経済学」の中で展開されている。
   しかしこの種の定理が、今日の日本でも有効なのかどうか
  が大問題である。これを考えるにはまず当時の米国経済を簡
  単に見ておく必要がある。第二次世界大戦時から、米国の財
  政は危機管理下に入った。膨大な戦費の負担と社会主義国の
  ソ連の登場に対抗するための大幅な福祉予算の増額があった
  からである。歳出を大幅に増やしたが、これを税収ではとて
  も賄えない。米国の連銀は42年から51年まで青空天井で
  政府の財務省証券を購入した。10年物の財務省証券の利回
  りが2・5%以上に上昇しないように、連銀は証券を買い続
  けたのである。         https://bit.ly/2wLe4I1
  ───────────────────────────


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立憲民主党杉尾議員/昭恵夫人のお花見追及
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2020年03月30日

●「日本のウイルス封じ込めの考え方」(EJ第5216号)

 新型コロナウイルスの蔓延が止まらず、行動を制限されるなか
うっとうしい毎日が続いてます。各企業では、ちょうど新年度を
迎えるこの時期に感染のピークが来つつあるので、入社式、新入
社員研修などの年度始の恒例行事に重大な影響が出ています。
 新型コロナウイルス蔓延の問題は、経済全般に深刻な影響を及
ぼし、一部野党の掲げる消費税減税の実現の可能性も出ているの
で、関連話題として取り上げ検討します。膨大な赤字国債も発行
せざるを得ないので、MMTが嫌でも関心のマトになります。
 ウイルス蔓延の問題は、連日ワイドショーで取り上げられ、い
つも見ていますが、一番内容が濃かったのは、22日(日)放映
の『NHKスペシャル/パンデミックとの闘い』です。ネット上
で映像を見つけたので、ご覧になっていない方は、ぜひ視ていた
だきたいと思います。ただし、4月3日/17時で映像は見られ
なくなります。
─────────────────────────────
   ◎2020年3月22日放映
    『NHKスペシャル/パンデミックとの闘い〜
          感染拡大は封じ込められるか〜』
                      65分
              https://bit.ly/2QQmjcK
─────────────────────────────
 この番組には、ワイドショーには一回も出演していない厚労省
クラスター対策班のメンバーの一人、押谷仁東北大学大学院医学
系研究科微生物学分野教授が出演していますが、この専門家の発
言がとくに注目されます。
 まず、3月27日正午の時点での感染者数の多い各国の数値を
押さえておきます。
─────────────────────────────
            感染者数    死亡者数
     米国    85505    1288
     中国    81340    3292
     イタリア  80589    8165
     スペイン  56188    4089
     ドイツ   43938     267
     イラン   29406    2234
     フランス  29155    1696
     英国    11658     578
     スイス   10714     161
     韓国     9332     139
     日本     1387      46
                  https://bit.ly/3arCncy ─────────────────────────────
 こうして見ると、日本の感染者数と死亡数の少なさは群を抜い
ています。しかも、日本は中国と距離的にも近く、相互交流も多
いのに、この数字は明らかに少な過ぎます。そのため、日本はオ
リンピックが迫っている関係上、あえて検査数を絞って、感染者
の数を少なくしているのではないかと、海外から疑いの目が向け
られています。日本人のなかにも、そう思っている人は少なくな
いと思います。
 しかし、上記の『NHKスペシャル』で、押谷仁教授は少し違
う意見を述べています。その部分をご紹介します。
─────────────────────────────
アナ:日本は、検査数が少ないので、見逃している感染者が多数
 いるのではないかという指摘もあるんですが。
押谷:本当に多数の感染者を見逃しているのであれば、日本でも
 既にオーバーシュートが起きているはずです。しかし、現実に
 オーバーシュートは起きていない。日本のPCR検査は、クラ
 スターを見つけるために十分な検査がなされていて、そのため
 に日本では、オーバーシュートは起きていない。
  実は、このウイルスは、80%の人はだれにも感染させてい
 ないのです。つまり、このウイルスは、全ての感染者を見つけ
 ないといけないウイルスではないのです。クラスターさえ、見
 つけられていればある程度制御できる。むしろ全ての人に、P
 CR検査を受けさせるということになると、医療機関に多くの
 人が殺到して、医療機関で感染が拡がってしまう危険があって
 むしろPCR検査を抑えているのです。その結果において、日
 本はこの状態で踏みとどまっているのです。──押谷仁教授/
      『NHKスペシャル/パンデミックとの戦い』より
─────────────────────────────
 押谷教授がいう「このウイルスは、全ての感染者を見つけない
といけないウイルスではない」という部分が重要です。このウイ
ルスは感染しても、とくに若い人の場合、そのまま治ってしまう
ケースが多いのです。しかし、そういう人が密閉空間にいると、
大勢の人が感染するリスクが高くなります。だから、密閉空間の
集会など、国民の行動を規制せざるをえないのです。
 しかし、片っ端から検査すれば、そういう軽い感染者も含めて
大勢の感染者が見つかり、隔離しなければならなくなります。そ
うなると、隔離場所の確保が困難になり、病院でも院内感染とい
うクラスターが発生し、重症者を受け入れることができず、医療
崩壊が起こりかねなくなります。院内感染が恐いのは、医師も感
染してしまうことです。
 そうであるなら、有限の受け入れ可能な病床数を念頭に置いて
そこに重症者のみを受け入れ、治療する方がベターであるという
のが日本の考え方のようです。しかし、多くのクラスターが発生
し、それが結合すると、まさにオーバーシュートが起きてしまい
イタリアのように重症者でも治療できない悲惨な医療崩壊が起き
てしまいます。心配なのは、押谷先生が映像を見る限り、とても
お疲れのように見えることです。日本の医療の優秀性は、死者の
少ないことで証明されています。医療崩壊だけは絶対に起こして
はならないのです。  ──[消費税は廃止できるか/057]

≪画像および関連情報≫
 ●日本は本当に「持ちこたえている」のか?
  ───────────────────────────
   ニューヨークタイムズ(NYT)紙は、これまで何度かP
  CR検査の実態を記事にし、検査数を増やせと訴えてきた。
  その結果、ニューヨーク州は全米の州のなかで確認された感
  染者数(confirmed cases) がいちばん多い州になり、いま
  や連日1000人以上の新型コロナウイルスの感染者が確認
  されるようになった。
   それに比べ日本はどうだろうか?確認された感染者の数は
  1日平均30〜50人ほどだ。ニューヨーク州の人口は、約
  2000万人。日本の人口の約6分の1である。そこで、連
  日1000人以上の確認された感染者が出ていることを思う
  と、日本のあまりの少なさに疑問を持たれる人も多いのでは
  なかろうか?
   確認された感染者数の少なさをもって、政府も専門家委員
  会も「(日本は)持ちこたえている」としている。が、はた
  してこれは本当なのか?そもそも検査数を絞りに絞って、症
  状がひどくならないと検査していないのだから、なんの根拠
  もないのではなかろうか?
   ということで、ではアメリカではどのようにPCR検査が
  行われているのか?NYT紙の記事から見てみたい。特筆す
  べきは、なんと記者がやっとのことで検査を受け、陽性にな
  った体験手記が掲載されたことだ。https://bit.ly/2ygi9ob
  ───────────────────────────

NHKスペシャル『パンデミックとの闘い』のシーンより.jpg
NHKスペシャル『パンデミックとの闘い』のシーンより
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2020年03月27日

●「政府はエリートでなければならぬ」(EJ第5215号)

 「ハーヴェイ・ロードの前提」という言葉があります。ジョン
・メイナード・ケインズが、英国のケンブリッジのハーヴェイ・
ロード6番地に住んでいたことから、そう呼ばれます。一国を治
める者は「ハーヴェイ・ロードの前提」を満たす必要があるとい
うように使われます。これは、次のことを意味する言葉です。
─────────────────────────────
 「ハーヴェイ・ロードの前提」とは、政府は民間経済主体より
も優れた政策判断を下すことができる。     ──ケインズ
─────────────────────────────
 これに似た言葉にプラトンの「哲人政治」があります。これは
古代ギリシアの哲学者プラトンが、その著書『ポリテイア』にお
いてあらわした政治理念であり、次のことを意味しています。
─────────────────────────────
 政治とは「正義」を実現することであり、善のイデアによって
国民を導くことであるから,哲人が王となるか、あるいは、王が
哲人とならなければ,実現されない。      ──プラトン
─────────────────────────────
 要するに、これらは「高度に学問を修めた賢いエリートが国を
治めなければならない」ということをいっているのですが、単な
る理想論に過ぎません。なぜなら、民主的に選挙で選ばれたリー
ダーというものは、どうしても大衆受けを狙った愚かな選択をし
てしまうものだからです。
 ジェームズ・M・ブキャナンという米国の財政経済学者がいま
す。彼は次の本のなかで、「ハーヴェイ・ロードの前提」、すな
わち、ケインズ主義的財政政策を批判しています。
─────────────────────────────
 ケインズは、少人数の知識エリートによる政策運営を理想とし
ていただけでなく、現実の政治も基本的には、そのように動いて
いると想定していたのである。──ジェームス・M・ブキャナン
      &リチャード・E・ワグナー共著/大野一(翻訳)
         『赤字の民主主義/ケインズが残したもの』
                   日経BPクラシックス
─────────────────────────────
 要するにブキャナンは、選挙で選ばれた政治家の下でケインズ
政策が行われている限り、財政赤字が巨額化することは避けられ
ないというのです。むしろ、選挙で選ばれたわけではない中央銀
行のエリート官僚の手で行われる金融政策の方が、「ハーヴェイ
・ロードの前提」を満たすともいっています。
 伝統的なケインズ政策において、景気が悪いとき政府は、道路
や橋を建設するなどの公共事業を行い、雇用を確保するとともに
景気を刺激し、逆に景気が良いときは、インフレにならないよう
に、政府支出をコントロールする──これらは、政治家の裁量に
よって行われます。
 このような裁量的なコントロールではなく、状況に応じて的確
に正しい措置が自動的に行われる装置のことを経済学では、次の
ようにいいます。
─────────────────────────────
   ビルト・イン・スタビライザー(自動安定化装置)
                 built-in stabilizer
─────────────────────────────
 藤井聡京都大学大学院教授は、所得税と法人税には、一種のビ
ルト・イン・スタビライザー機能が、備わっていると述べていま
す。これについて説明します。
 所得税には「累進性」があります。所得が高ければ高いほど、
所得税率が高くなっていく仕組みです。もし、所得が150万円
であれば税率は5%ですが、所得が500万円になると、20%
もし1000万円なら33%、4000万円以上であれば45%
になります。
 デフレになると、多くの人の所得が下がり、税率が下がれば下
がるほど、自動的に減税されることになります。そのため、所得
税による所得の下落を緩和し、それを通して家計の消費の拡大が
もたらされ、貨幣循環量が拡大されます。これに対して、インフ
レになると、税率が上がり、それを通して貨幣循環量の拡大が抑
止されることになります。
 法人税の場合はどうでしょうか。法人税は「売り上げ」にかか
るのではなく、「利益」にかかります。景気が良くて黒字経営に
なれば法人税は支払わなければなりませんが、景気が悪く赤字経
営になると、法人税の支払いは免除されます。所得税と同様に、
法人税も、日本の場合は景気の動向によって20%から0%へと
自動的に減税されます。これによって、デフレ圧力は自動的に軽
減されることになります。
 これに対して、所得税、法人税にみられるビルト・イン・スタ
ビライザー機能が付いていないのが消費税です。しかし、藤井教
授は、消費税に一種のビルト・イン・スタビライザー的機能をつ
けることは、不可能ではないといいます。消費税は、市場におけ
るマネーの循環そのものに対する徴税であり、貨幣循環量を直接
的、かつ、効果的に調整するものとして機能します。消費税の税
率を「インフレ率」に連動させるのです。藤井教授はこれについ
て、カナダの例を上げています。
─────────────────────────────
 カナダでは、1990年までは「付加価値税」(日本で言う消
費税)が導入されていなかったが、80年代後半はインフレ率は
4%を超えていた。こうした状況の中、1991年に付加価値税
を7%で導入したところ、90年代のインフレ率はおおよそ2%
を下回る水準に抑制された。一方で、景気後退局面に入った20
06年7月に、月に5%へと引き下げられた。
                   ──藤井聡著/晶文社
   『MMTによる令和「新」経済論/現代貨幣理論の真実』
─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/056]

≪画像および関連情報≫
 ●ハーヴェイロードの賢者はいずこ
  ───────────────────────────
   今の日本社会は、ひどく混乱をしているようにみえます。
  国民の気持ちや願いが、政治に反映されているようにはみえ
  ません。経済や金が重要課題として、政策がつくられていま
  す。一方で、拝金的な行為を蔑み、幸福や満足度などを重視
  している多くの個人がいます。社会的弱者や若者を守り育て
  る社会であるべきだとわかっていながら、しわ寄せがいく仕
  組みが、日本では徐々につくりあげられています。
   テレビや紙面ではコメンテータや評論家が、好き勝手な意
  見を述べますが、だれもその発言に責任は負いません。責任
  を問われるようなジャーナリズムは、横並びの報道や意見、
  あるいは社の方針に基づいた考えしか述べていません。発言
  に責任を持つべき政治家も、言葉尻やささやかな不祥事は追
  求され、ポストを追われます。しかし、政治生命を立たれる
  ことなく、発言力を持っています。国を危険に陥れるような
  もっと大きな政策の誤りに対しては、だれも責任を取りませ
  ん。みんなが、このような間違いに気づいているはずです。
  かつての世界には、賢者と偉大なる指導者がいました。偉大
  なる指導者が、賢者の判断に基いて、混乱した世の中を治め
  ていたことがありました。日本でも、偉大な武将にはよい軍
  師が革命の英雄には賢者の思想がありました。そのような賢
  者が存在したのは、明治維新から明治ころまででしょうか。
                  https://bit.ly/3drVvcr
  ───────────────────────────

ジェームズ・M・ブキャナン.jpg
ジェムズ・M・ブキャナン
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2020年03月26日

●「『雇用保障プログラム』とは何か」(EJ第5214号)

 MMTが、経済政策の中軸に据えている「雇用保障プログラム
(JGP)」とは、具体的に何でしょうか。
 すべての経済政策の目的は、「国民の幸福の確保と拡大」にあ
ります。重要なのは、それを左右するのが「失業率の低減」であ
ることです。多くの不幸の原因は「貧困」にありますが、その多
くは、「失業」によってもたらされるからです。
 添付ファイルをご覧ください。2つのグラフがありますが、上
のグラフを見てください。これは1978年から2018年まで
の「自殺者数の推移」をあらわしています。
 グラフのスタート時点の自殺者は、年間約2万人です。総数の
推移を目で追っていくと、バブルが崩壊した1990年頃から自
殺者はゆるやかに増加していることがわかります。
 1997年には自殺者は約2万4千人になり、デフレに突入し
た1998年には3万2千人に跳ね上がっています。それ以来約
10年間、3万2千人のレベルに高止まりしています。これが下
落をはじめるのが2010年以降です。この頃から雇用状況は少
しずつ改善をはじめ、安倍政権になってから、失業者は大きく減
少すると、2018年頃には、1978年当時の2万人のレベル
までまで減少しています。不況は自殺者を増やすのです。
 続いて下のグラフを見てください。これは賃金の推移をあらわ
しています。2015年を100として設定しています。バブル
崩壊後の1990年以降も賃金は伸びていますが、デフレのはじ
まる1998年以降、一貫して低下しています。
 「名目賃金」とは、給料などの額面をあらわし、「実質賃金」
は、名目賃金の物価に対する割合をあらわしています。平成のは
じまりは1989年ですが、以来30年間、実質賃金は一貫して
下落しています。実質賃金の低下は、給料で購入できるものの量
が減ったことをあらわしており、それだけ貧乏化が進んだことを
意味します。主要国でこんな異常事態になった国は日本のみ。日
本は経済政策を完全に間違っているのです。それを端的にあらわ
しているのは次の事実です。
─────────────────────────────
      ◎一人当たり名目GDP
       2000年 ・・・・・  2位
       2017年 ・・・・・ 25位
─────────────────────────────
 それでは、JGPとは、どのようなプログラムでしょうか。藤
井聡京都大学大学院教授は、次のように説明しています。
─────────────────────────────
 失業者が一定以上存在するような状況において、公務員を増や
したり公共投資などを行って雇用を生み出し、失業者がいない完
全雇用を目指すと同時に、政府が設定した最低賃金を実現させる
ことを目指す政策である。したがって、JGPはこれまで雇用保
障プログラムや、就労保障プログラム等と呼ばれてきたが、ここ
では、そのJGPが賃金水準の確保も明確に視野に収めたもので
あることから「就労・賃金保証」プログラムと呼称する。
                   ──藤井聡著/晶文社
   『MMTによる令和「新」経済論/現代貨幣理論の真実』
─────────────────────────────
 この「就労・賃金保証」プログラムは、1929年の世界大恐
慌のさい、米国は「ニューディール政策」として行っています。
このニューディールという言葉は、「新規まき直し」という意味
の思い切った経済政策のことをいいます。
 このプログラムは、政府が「最後の雇い手」としての役割を担
い、民間では雇ってくれない人々を対象とし、政府が直接的な雇
い手となり、完全雇用を目指します。世界ではじめて、ジョン・
メイナード・ケインズの理論を取り入れた経済政策ともいわれて
います。この「最後の雇い手」という言葉ですが、資金不足に陥
った銀行が、他の銀行からお金を借りることができなくなったと
きに、中央銀行が「最後の貸し手」としての役割を果たすという
ことになぞらえています。
─────────────────────────────
  ◎最後の貸し手  Lender of Last Resort  ELR
  ◎最後の雇い手 Employer of Last Resort  LLR
─────────────────────────────
 大恐慌のさいは、大規模な治水事業や道路事業を展開し、全国
で1300万人もの人々を雇用しています。このさい、政府が作
り出す就労機会の賃金はどのように設定されるのかというと、政
府が想定する「最低賃金」になります。最低賃金のレベルは、普
通に生活をしていける最小必要限のレベルに固定されます。そう
することによって、それ以下の賃金で働いている、ブラック企業
の労働者に転職を促し、吸収できます。そうなると、そういうブ
ラック企業では働き手が奪われていき、労働賃金を上げることに
よって、脱ブラック化が進むことになります。
 もし、景気が回復すると、当然のことながら、より高い賃金を
保証する民間企業が増えるので、労働者はそのような企業に転職
して行くことになります。これについて、井上智洋教授は次のよ
うに説明をしています。
─────────────────────────────
 政府がJGPで雇用する労働者の賃金は、「基本的公共部門賃
金」と言われています。ここでは、たんに「基本賃金」と呼ぶこ
とにします。仮に、JGPの賃金を時給1500円と決定したと
しましょう。そうすると、民間企業では、1500円以上の時給
に設定しないと、労働者を雇用することはできません。コンビニ
でのバイトの時給が1200円だったら、労働者はそのバイトを
辞めてJGPのほうに参加することでしょう。したがって、基本
賃金は、事実上最低賃金になるのです。    ──井上智洋著
    『MMT/現代貨幣理論とは何か』/講談社選書メチエ
─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/055]

≪画像および関連情報≫
 ●MMTの雇用保障プログラムが目指すものとその限界
  ───────────────────────────
   ネット界隈では非主流派経済学の一つMMTは、しばらく
  話題になりそうだ。毎日新聞のコラムで取り上げられている
  し、日経新聞でも紹介された。しかしメディアではまだMM
  Tの柱の一つ、雇用保証プログラム(JGP)について注目
  されていない。MMT教祖たちの長い議論でもはっきり言及
  されているので、これを無視してMMTは理解はできない。
   このように書くと、なにやら壮大な仕掛けな気がするが、
  JGPの概要の説明は難しくない。政府や地方自治体が最低
  賃金で雇用を用意し、望む全員に提供するというものだ。M
  MT教祖は、総需要管理政策で雇用を増やすのではなく、J
  GPによってルーズな完全雇用をインフレなしで実現すると
  している。           https://bit.ly/2vKQtXF
  ───────────────────────────
 ●グラフの出典/──井上智洋著の前掲書より

自殺者数の推移と名目賃金指数・実質賃金指数の推移.jpg
 自殺者数の推移と名目賃金指数・実質賃金指数の推移
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2020年03月25日

●「なぜマネーストックと改称したか」(EJ第5213号)

 どうしたら、景気を良くすることができるでしょうか。
 素人判断ですが、ここにひとつの答えがあります。それは、世
の中に流通するお金の量を増やせば、景気が良くなるというもの
です。これをめぐる経済学の論争は数多くあります。印象に残っ
ている例として、当時上智大学教授であった岩田規久男氏と日本
銀行金融研究所の翁邦雄氏との論争です。
─────────────────────────────
 ◎岩田規久男氏
  マネタリーベースを増やせば、マネーストックも増大する
  はずであり、日銀は不況解消のための役割を果たしている
  といえない。
 ◎  翁邦雄氏
  日銀は資金需要に応じてマネーストックが増大し、それに
  順応するように日銀はマネタリーベースを増大させている
  だけである。
      ──井上智洋著『MMT/現代貨幣理論とは何か』
                     講談社選書メチエ
─────────────────────────────
 ここで翁邦雄氏がいいたいことは、「マネーストックもマネタ
リーベースも内生的に決定されるので、日銀はマネーストックを
コントロールできない」ということです。これは、「日銀理論」
といわれ、これまで日銀がずっと死守してきた考え方です。
 日本のデフレ不況が深刻化した1998年時の速水優総裁以来
2003年の福井俊彦総裁、リーマンショック直後の2008年
の白川方明総裁──とくに白川総裁に関しては、「なぜ、引き締
めばかりやっているのか」と、率直にいって、私自身、日銀の対
応に不満を抱いたことはたくさんありますが、すべてこの日銀理
論に原因があったようです。
 日銀理論に深く関連しているのは「マネーストック」という言
葉です。これは、世の中に流通している「預金+現金」のことで
国際的には「マネーサプライ」と呼ばれているものです。日本で
も同じマネーサプライという言葉を使ってきたのですが、白川方
明総裁時の2008年に「マネーストック」に変更しています。
「マネーをサプライできない」という意味で、名称を変更したも
のと思われます。日銀にとって、日銀理論はそれほど重要な考え
方なのです。
 日銀理論を信奉する白川前日銀総裁について、白川氏の師匠で
ある浜田宏一イエール大学名誉教授は、ブログにおいて、「白川
総裁には何度も失望させられた」とし、日銀理論とは何かについ
ては、畏友の若田部昌澄教授が2008年に書いた原稿から、次
のように引用しています。
─────────────────────────────
 私のみるところ、それ(日銀理論)は「一連の限定句」、平た
くいうと「できない集」である。つまり、原則として日銀は民間
の資金需要に対して資金を供給しているので、物価の決定につい
ても限定的であり、とりうる政策手段も限定的であり、政府との
協調関係も限定的であるべきというものである。たとえば、長期
国債の購入によって貨幣供給量を増やすということは、それが財
政政策の領分に入るので禁じ手であるとされる。
──「PHPビジネスオンライン衆知」https://bit.ly/3acgZrF
─────────────────────────────
 しかし、2013年に黒田東彦総裁になると、日銀理論の反対
者である岩田規久男氏が副総裁に就任したことによって日銀は一
変し、積極性を見せています。現在、岩田副総裁は退任しました
が、若田部昌澄氏が副総裁になっています。
 しかし、黒田総裁によって、これまでの日銀では考えられない
異次元金融緩和が行われていますが、7年経過した現在でも、目
標であるインフレ率の2%は依然として達成できていません。や
はり、何かが間違っているのだと思います。
 以上のように、MMT派は「金融政策は不安定であり、あてに
できない」としています。金融政策というのは、中央銀行が行う
政策で、お金の量や利子率を操作して、インフレ率や失業率を調
整することを目的としています。
 それでは、何を持ってインフレ率や失業率を調整するかという
と、「雇用保障プログラム」というものをMMTでは用意してい
るのです。
 ここで、MMTが主流派経済学と異なる3つの論点の再現をす
ると、3つ目に「雇用保障プログラム」が出てきます。
─────────────────────────────
       1.   財政的な予算制約はない
       2.   金融政策は有効ではない
    →  3.雇用保障プログラムを導入せよ
─────────────────────────────
 「雇用保障プログラム」は、Job Guarantee Program のことで
JGPと略して呼ばれます。これは、職を求める失業者を政府が
すべて雇い入れ、仕事をさせるプログラムです。どうして、これ
によって金融政策のようなことができるかについて、井上智洋駒
澤大学准教授は次のように説明しています。
─────────────────────────────
 景気が悪いときに、経済はデフレ気味になります。その際、J
GPが導入されていれば、失業者をたくさん雇い入れるために政
府支出が増えて、それによって景気が刺激され、物価の下落が抑
えられます。逆に、景気が良いときに、経済はインフレ気味にな
ります。そうすると、民間の雇用が増え賃金も上昇するので、政
府に雇われていた人はもっと給料の高い仕事を求めて民間企業に
務めるようになるので、政府の支出が減ることにより景気が抑制
され、インフレ率は低下します。   ──井上智洋著『MMT
        /現代貨幣理論とは何か』/講談社選書メチエ
─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/054]

≪画像および関連情報≫
 ●日銀が「意味不明ガイダンス」を出した理由/小幡績氏
  ───────────────────────────
   私の予想は外れた。前回(9月18〜19日開催)の金融
  政策決定会合後、黒田東彦日銀総裁は次の10月末の金融政
  策決定会合では必ず何かをする、というメッセージを打ち出
  したから、何かをせざるを得ず、しかし、実際には何をやっ
  てもマイナスだから、マイナスが最低限と思われるマイナス
  金利の拡大をする、と私は前回のコラム「日銀は必ず動くは
  ずだが、一体何ができるのか」で予想した。これは見事に外
  れた訳だが、なぜ外れたのだろうか。私しか関心がないかも
  しれないが、将棋では、対局後の感想戦が強くなる最短コー
  スと言われる。次の予想へ向けて反省会をしてみよう。
   まず、アメリカが追加利下げをしたというのは予想通り。
  日銀の金融政策決定会合の一日目と二日目の間に公表され、
  パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見が
  行われた後に、日銀の決定、黒田総裁会見だから、なぜアメ
  リカは3回連続利下げ、欧州は量的緩和再開、というフルサ
  ービスなのに、日銀だけなぜ何も金融市場にサービスしてく
  れないのか、円高が進んでもいいのか、という批判がくるは
  ずだった。しかし、欧米の動きは予想通りだったにもかかわ
  らず、日銀が利下げしなくとも、批判はこなかった。批判が
  こないならあえて悪い政策である利下げをすることほど愚か
  しいことはない。だから利下げしなかったのは合理的だが、
  問題はなぜ批判されなかったのか、ということだ。
                  https://bit.ly/2QBtmWO
  ───────────────────────────

iwatanitiginhukusousaitokurodanitiginsousai.jpg
岩田日銀副総裁と黒田日銀総裁
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2020年03月24日

●「金融政策は有効ではない/MMT」(EJ第5212号)

 MMTが主流派経済学と異なる3つの論点をさらに再現するこ
とにします。
─────────────────────────────
       1.   財政的な予算制約はない
     → 2.   金融政策は有効ではない
       3.雇用保障プログラムを導入せよ
─────────────────────────────
 このうち、「1」については説明が終わっているので、「2」
の「金融政策は有効ではない」について考えます。
 MMTの経済学者であるポスト・ケインジアンは、主流派経済
学派のニュー・ケインジアンが信奉する金融政策の有効性につい
ては否定的です。厳密にいうと、よって立つ貨幣供給理論が異な
るのです。
─────────────────────────────
   ニュー・ケインジアン ・・ 外生的貨幣供給理論
   ポスト・ケインジアン ・・ 内生的貨幣供給理論
      ──井上智洋著『MMT/現代貨幣理論とは何か』
                     講談社選書メチエ
─────────────────────────────
 難しい経済学の理論はやめてごく簡単にいうと、上記の2つの
貨幣供給理論の違いは、中央銀行の金融政策によって世の中に流
通するお金の量(貨幣量)をコントロールできるかどうかにあり
ます。コントロールできるという主流派のニュー・ケインジアン
に対して、コントロールできないとするポスト・ケインジアン、
すなわち、MMTが対立しているわけです。
 そもそも金融政策とは、物価の安定を通して日々の暮らし、す
なわち経済が、健全に発展するよう金融を調整することであり、
中央銀行がその役割を担っています。日本の場合は、日本銀行、
ユーロ圏は欧州中央銀行(ECB)、米国は連邦準備理事会(F
RB)が中央銀行です。
 日銀とECBはの場合、その目的は、物価の安定を図ることと
金融システムの安定を確立することですが、FRBの場合、物価
と金融システムの安定に加えて、完全雇用の達成も政策の目的に
加えています。ここで「完全雇用」というのは、失業者がゼロに
なる状態ではなく、働く意欲と能力のある人が、その時の賃金水
準ですべて雇われている状態のことです。
 ところで「景気が良い」というのは、どういう状態をいうので
しょうか。これについて、法政大学大学院政策創造研究科教授の
真壁昭夫氏は、次のように説明しています。
─────────────────────────────
 世界の主要な中央銀行は、1年間で2%の物価の上昇率が物価
を安定させつつ経済が持続的な成長を実現するために適している
と考えています。日銀も、2%の物価目標の実現を目指していま
す。この2%(消費者物価指数の前年同月比で見た変化率)とい
う数字の根拠に関しては、様々な議論があります。
 まず、物価上昇率が年間プラス2%ということは、物価が上昇
しているということです。物価が上昇しているということは、需
要(人々がモノをほしいと思う気持ち)が高まっているというこ
とです。これは、経済の成長に欠かせません。多くの国の中央銀
行が2%の物価上昇率を目指すことは、グローバルスタンダード
だとしています。経験則として、1%の物価上昇率よりも2%の
物価上昇率を目指したほうが、長い目線で経済の安定を目指し、
景気が減速した際の対応も進めやすいとの見方が多いです。各国
の中央銀行は、人々が安定した経済環境の中で、お金の価値に不
安を感じることなく、成長を享受していくためには2%の物価上
昇率が適していると考えています。      ──真壁昭夫著
   『MMT(現代貨幣理論)の教科書/日本は借金し放題?
       暴論か正論かを見極める』/ビジネス教育出版社
─────────────────────────────
 日本は、安倍政権の2013年4月から、日銀が「2年間で2
%の物価上昇を実現する」ことを強くコミットして、異次元金融
緩和政策(量的質的金融緩和)を展開していますが、7年にもな
る現在も、目標を達成できていません。何かが間違っているので
す。その反動として、現在、クローズアップしてきているのがM
MTです。
 添付ファイルとして、「わが国の消費者物価指数の推移」のグ
ラフを付けていますが、これは真壁昭夫教授の本に出ていたもの
です。同じようなグラフを3月18日のEJ第5209号でもつ
けています。今回のグラフは、生鮮食品を除いたコアCPIと、
それに加えてエネルギーを除いたコアコアCPIの両方が出てい
るのでわかりやすいと思います。これについて、真壁昭夫教授は
次のように解説しています。
─────────────────────────────
 エネルギーや生鮮食品の価格は、天候や原油価格の動向に左右
されます。それを含んだCPI総合は、上下に振れを伴いつつも
前年同月比でみた場合に安定的に2%程度の水準を維持できてい
ません。なお、2014年のCPIの上振れは、消費税率の引き
上げの影響によるものです。また、コアCPI、コアコアCPI
は、前年同月比1%の上昇率を維持することも難しいのが、実情
です。             ──真壁昭夫著の前掲書より
─────────────────────────────
 これでわかったことがあります。金融政策には限界があるとい
うことです。7年やっても目標が達成できないということは、や
り方が間違っているのです。そういう意味でアベノミクスは、日
銀の金融政策に頼り過ぎであり、その一方で2回にわたって増税
をして、経済成長の足を引っ張っています。
 物価上昇率が2%ということは、経済が成長している──需要
が高まっていることを意味します。つまり、MMTでは、そのた
めにこそ、積極的な財政出動が必要であると説いているのです。
           ──[消費税は廃止できるか/053]

≪画像および関連情報≫
 ●骨太解説「日本の金融政策」がかくも無力なワケ
  ───────────────────────────
   現在、日本はじめ世界の先進諸国は一様に異常な経済状況
  に直面している。ゼロないしマイナスの金利、天文学的とも
  言うべき金融の量的緩和にもかかわらず、多くの経済はいま
  だ力強い回復を取り戻せていない。
   なぜバブル崩壊後の経済が長期不況に苦しまなければなら
  ないのか。なぜ伝統的な金融政策はそうした不況に対して総
  じて無力なのか。なぜ財政赤字が拡大しているのに長期金利
  が低下するのか。
   こうした疑問に答える書として、リチャード・クー氏の新
  刊『「追われる国」の経済学』が高い評価を受けている。経
  済学の重鎮である藪下史郎氏が、クー氏が展開している経済
  理論の本質について読み解く。
   『「追われる国」の経済学』(以下、本書)で展開される
  議論の基礎となるクー氏の日本経済の捉え方は、以下のよう
  にまとめることができるだろう。
   資金の主たる借り手は民間企業であるが、高度成長期にお
  いては設備投資のための資金需要が旺盛であり、とくにアメ
  リカなどの先進国の後を追う形で投資を拡大するため資金需
  要も増加した。そのときには物価・賃金も上昇してきた。こ
  の期間のことを黄金時代と呼んでいるが、日本は成熟経済で
  あった。しかし、物価・賃金の上昇と新興国による追い上げ
  によって、日本経済の国際競争力が低下し、市場が奪われる
  ことになる。          https://bit.ly/3a9h2ob
  ───────────────────────────
 ●グラフの出典/──真壁昭夫著の前掲書より


わが国の消費者物価指数の推移.jpg
わが国の消費者物価指数の推移




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2020年03月23日

●「財政出動が足りないアベノミクス」(EJ第5211号)

 3月17日のEJ第5208号で取り上げたMMTが主流派経
済学と異なる3つの論点を再現します。
─────────────────────────────
       1.   財政的な予算制約はない
       2.   金融政策は有効ではない
       3.雇用保障プログラムを導入せよ
─────────────────────────────
 「1」について若干補足します。自民党の安倍政権が2013
年からはじめた、いわゆるアベノミクスで、世の中に流通するお
金の量や、それによる名目GDPがどうなったかについて、デー
タを整理してみます。まず、マネタリーベースの変化です。
─────────────────────────────
     ◎マネタリーベースの変化
      2013年3月 ・・・ 135兆円
      2018年4月 ・・・ 492兆円
                   3.64倍
─────────────────────────────
 マネタリーベースとは、市中に出回る現金と預金準備(民間金
融機関が日銀に設けている日銀当座預金にストックされているお
金)の合計です。マネタリーベースは、日銀が直接コントロール
できるお金です。日銀は金融機関が保有する国債などの資産を買
い取り、当座預金口座にその対価を入金します。日銀は異次元金
融緩和政策をとっており、この金額が増えているのは当然です。
 これに対してマネーストックとは、金融機関から経済全体に供
給されているお金の総量です。つまり、現金と預金の合計が、マ
ネーストックです。この量が増えると、景気が良くなります。
─────────────────────────────
     ◎マネーストックの変化
      2013年3月 ・・・ 844兆円
      2018年4月 ・・ 1003兆円
                   1.19倍
─────────────────────────────
 市中に流通する現金、すなわち、マネーストックを増やすには
民間銀行がマネタリーベースを企業や政府に積極的に貸し出せば
よいのです。そして、その増えたお金によって、財やサービスの
購入が行われると、それに応じて名目GDPが増えます。
─────────────────────────────
     ◎名目GDPの変化
      2013年 ・・・ 503兆円
      2018年 ・・・ 556兆円
                 1.11倍
─────────────────────────────
 このように数字を並べてみると、日銀は異次元金融緩和を継続
し、マネーストックを3・64倍と、大幅に増やしているものの
マネーストックの増加率は今ひとつです。これは、民間(企業・
個人)がもっと借り入れを増やし、マネーストックを増加させな
いと、景気を良くすることはできないのです。
 つまり、金融政策には限界があり、金融政策と財政政策を一緒
にやる必要があります。安倍政権は金融政策に頼り過ぎており、
そのためマネーストックの伸びは今一つとなっています。
 それにしても、政府は、デフレにもかかわらず、なぜ財政出動
をためらうのでしょうか。いまは、増税をやっているときではな
いのです。安倍政権がアベノミクスにおいて財政出動をしたのは
最初の一年間だけであり、その後2回にわたり、消費税の税率を
5%引き上げています。超緊縮政策です。安倍首相は、自分が何
をしているかわかっていないようです。日銀の異次元緩和と合わ
せてせっかく調子よくスタートできたのに、2回の増税でその成
果を潰し、ふって湧いた新型コロナウイルスの蔓延で日経平均株
価は下落し、安倍政権発足時の水準に戻りつつあります。
 新型コロナウイルスの蔓延で、多くの国は鎖国状態になり、人
の動きが制限され、経済がパニックに陥りつつあります。こうい
うときは、一刻も早く現金を支給する必要があります。
 このとき、トランプ米政権は素早く1兆ドル(約107兆円)
規模の経済対策を打ち出していますが、これは正解です。この金
額は米国にとって過去最大の大きさです。ちなみに、リーマンシ
ョック時の米国の経済対策は次の通りです
─────────────────────────────
      ◎2008年金融危機/ブッシュ政権
                7000億ドル
      ◎2009年金融危機/ オバマ政権
                7800億ドル
─────────────────────────────
 安倍政権でも、所得制限なしに、国民一人1万円とか2万円と
かの現金給付を考えているようであるが、この程度の金額では、
まったく意味をなさないのです。スケールが小さすぎるといって
よいでしょう。
 現在のこのような事態を受けて、3月13日、経済学の教科書
でも有名な米国の経済学者、グレゴリー・マンキュー・ハーバー
ド大学教授は、ブログで次の提言をしています。マンキュー教授
は共和党寄りの経済学者です。
─────────────────────────────
 手始めにすべての米国人に1000ドル(約11万円)の小
 切手を可能な限り早急に送るべきだ。 ──マンキュー教授
─────────────────────────────
 トランプ大統領は、マンキュー教授からの提言を受けて、2週
間以内に、国民1人当り、1000ドル以上の支給を含む最大1
兆2000億ドル規模の経済対策を打ち出すとアナウンスしてい
ます。トランプ大統領としては、この時点で経済が失速すると、
大統領選挙に影響してくるので必死です。
           ──[消費税は廃止できるか/052]

≪画像および関連情報≫
 ●米、新型コロナで1兆ドルの経済対策 現金給付盛る
  ───────────────────────────
   【ワシントン=河浪武史】トランプ米政権は17日、新型
  コロナウイルスによる経済不安を抑えるため、総額1兆ドル
  (約107兆円)の景気刺激策の検討に入った。ムニューシ
  ン財務長官は「極めて大きな経済対策となる。米国民に小切
  手を直接送る施策を検討している」と述べ、現金給付を盛り
  込む考えを明らかにした。ボーイングなど米航空関連企業へ
  の支援策などと合わせ、17日中に詳細を固めたい考えだ。
   ムニューシン財務長官は17日、与野党の議会指導部と相
  次いで会談し、大型の景気刺激策の詰めの協議に入った。同
  長官は「1兆ドルの経済対策を提案した。極めて大きな景気
  刺激策となる」と記者団に述べた。トランプ大統領は労使が
  負担する給与税の免除を提案。新型コロナで売上高が急減す
  る航空会社や宿泊業などの資金支援も盛り込む。
   今回の経済対策が1兆ドル規模となれば、連邦政府の年間
  歳出(4・7兆ドル)の2割を超える異例の大型景気対策と
  なり、2008年のリーマン・ショック直後の緊急対策を上
  回る規模となる。08年時は銀行への公的資金注入や自動車
  メーカーへの資金支援などを目的に、ブッシュ政権(当時)
  が7000億ドルの緊急予算を用意。翌09年にオバマ政権
  がインフラ投資や失業保険の拡充などを目的に、7800億
  ドル規模の景気対策を成立させた経緯がある。
               https://s.nikkei.com/2U1vxVA
  ───────────────────────────

マンキューハーバード大学教授.jpg
マンキューハーバード大学教授
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2020年03月19日

●「このさい消費税を0%に減税せよ」(EJ第5210号)

 新型コロナの蔓延で経済が深刻な打撃を受けつつあり、消費税
減税の話が出ています。EJの今回のテーマは、昨年来のテーマ
である「消費税」の続編としてはじまっているので、今日はこの
問題を取り上げることにします。夕刊フジの田村秀男氏のコラム
『独話回覧』などを参考にさせていただいています。
 消費増税直後の昨年10〜12月期の国内総生産(GDP)は
前期比年率換算で「マイナス7・1%」という誰もが驚く下落率
でした。これは、東日本大震災直後を上回る景気の急落です。明
らかなる増税の大失敗であるといえます。
 それに加えて、今年1〜3月期は、突然降って湧いた新型コロ
ナショックでマイナス成長が加速し、2008年9月のリーマン
・ショック後の10〜12月期の「マイナス2・4%」を確実に
下回るといわれています。2期連続のマイナス成長です。
 これに対して、消費税増税を仕組んだ内閣府の財務官僚と経産
官僚たちは、昨年10〜12月期の景気の落ち込みの主因は消費
増税ではなく、台風と温冬による農作物や道路などのインフラが
ダメージを受けた結果であるといっています。問題をすり替えて
真の原因を隠蔽する──彼らの手口ですが、またしてもこんな卑
劣な対応をやっているのです。
 こうした官僚たちや、財務省からの指令で安倍政権の提灯持ち
を務める御用経済学者たちに対して、田村秀男氏は、次のように
怒りをにじませながら、痛烈に批判しています。
─────────────────────────────
 台風被害は、東日本に集中しているのに、台風の影響を受けな
かった西日本の消費の落ち込みが激しかった。暖冬というなら、
衣料品需要への影響に集中するはずだが、小売りの売り上げ減は
全品目に及んでいる。見え見えの嘘を貫き通す閣僚、官僚やエコ
ノミストには良心のかけらもないようだ。
 コロナ恐慌不安に対し、日銀の黒田東彦総裁は小出しの追加緩
和で応じようとし、麻生太郎財務相は、財務官僚の振り付け通り
財政出動を否定する。家計消費意欲が増税によって致命的なまで
に委縮した惨状を、日銀、財務省とも無視する。財務官僚OBの
黒田氏や東大などの財務省御用経済学者たちは安倍首相に、金融
緩和によって、需要減をカバーできると弁じたが、とっくに露見
した嘘っぱちを恥じ入ることはない。
         ──2020年3月16日発行『夕刊フジ』
                「田村秀男/独話回覧」より
─────────────────────────────
 財務省は、消費増税によって個人消費がどのように落ち込もう
とも、国民がどのように反対しようとも、消費税の税率を何とか
20%台まで引き上げたいと考えています。なぜなら、財務省に
とって消費税はそれほどおいしい税金だからです。まして苦労に
苦労を重ねて引き上げた税率を「下げる」などということには絶
対に反対します。
 しかし、新型コロナウイルスの蔓延により、麻生財務相じゃな
いが、経済が未曾有の危機に陥りつつあります。そうなると、自
民党の内部からも消費税減税の声が上がっています。国民は、消
費増税をするとき、安倍首相や菅官房長官が、何度も何度も繰り
返した次の言葉を忘れていないからです。
─────────────────────────────
 リーマン級の経済危機でも起きない限り、消費増税を予定通
 り実施する                ──安倍首相
─────────────────────────────
 増税実施後のことではあるものの、そのリーマン級の経済危機
が日本のみならず、世界中で起きようとしているのです。増税の
引き下げをいまやらずしていつやるのでしょうか。
 この消費税の減税について、現在出ているのは、次の3つのプ
ランです。
─────────────────────────────
        @消費税を当分0%に下げる
        A消費税を当分5%に下げる
        B現金給付によって対応する
─────────────────────────────
 現在、自民党内部から出ているプランは、@かAですが、首相
周辺、つまり内閣府は、減税を否定し、Bを主張しています。こ
れまで減税が取り沙汰されると、必ず出てくるのはBです。しか
し、Bをやっても、その恩恵が受けられる対象は一部に限られ、
大きな効果が出ないし、すべて貯蓄に回ってしまい、消費の底上
げにはならないのです。消費税は、消費に対する罰金であり、そ
の罰金がなくなるとなれば、消費する人が増えるはずです。
 どうしても減税せざるを得ない事態に対処し、財務省は既に手
を打っているようです。財務省寄りのコメントを発信するテレビ
のコメンテーターの一部は、上記@〜Bのほかのもうひとつの提
案をしています。
─────────────────────────────
        C軽減税率を全てに拡大する
─────────────────────────────
 現在、食料品などには軽減税率として8%の税率がかかってい
ます。この軽減税率8%を全商品に拡大する案です。つまり、2
%の引き下げです。これが最も手続き的には簡単な案であるとい
われます。財務省としては、消費税の減税をどうしても行わなけ
ればならない場合、何とかCで食い止めようとしているのです。
つまり最後の砦です。
 しかし、この程度の減税ではインパクトが弱いのです。もとも
と、食料品に対する税率の8%は高過ぎます。消費税を採用して
いる国では、食料品などの生活必需品の税率はすべて0%です。
 そして、減税反対派が必ずいう言葉があります。それは「下げ
るのはいいが、元に戻すときは大変である」です。さらに「下げ
た分の財源はどうするのか」です。
           ──[消費税は廃止できるか/051]

≪画像および関連情報≫
 ●【藤井聡】最大のコロナショック対策は、「消費税凍結」で
  ある。〜「非常時には消費減税は効果が無い」を打ち払え〜
  ───────────────────────────
   驚きました。コロナ大不況で、緊急経済対策が必要なのは
  今、誰の目にも明らか。そして、そんな対策の中でも、消費
  のすさまじい冷え込みを緩和するための消費税減税、さらに
  は廃止がとりわけ効果的なのは論を待ちません。そう思って
  いると、こんなニュースが飛び込んできました。
   「非常時はみんな買い物をしないから、減税しても効果が
  ない」一体誰がこんなこと言ってるのかとよく見てみますと
  立憲民主党の枝野代表でした。  https://bit.ly/2x1JdHb
  曰く、「背景には「責任政党としての自負」(立民関係者)
  に加え、れいわ新選組の山本太郎代表が、「消費税率5%」
  を次期衆院選での野党共闘の条件にしていることがある。立
  民は国民などとの合流が頓挫したばかりで、野党が減税でま
  とまり、れいわに主導権を奪われることを警戒している」
   この報道が正しいのだとすれば、国民の暮らしよりも、自
  らの政治的利益を追求しているということですから、政権の
  持続を第一目標に掲げる現政権と何も変わらないということ
  になってしまいます。誠に情けないことこの上ない話ですが
  ・・・「今、消費減税をしても仕方ない」という意見は、与
  党の中でもよく聞きますし、そして、テレビでもコメンテー
  ター達が何度も発言しています。彼らは一様に「所得補償」
  や「融資」は賛同するのですが、消費減税、消費税凍結には
  賛同しない・・・というのは、はっきり言って、物事を何も
  分かっていないからに他なりません。
                  https://bit.ly/3b2B83I
  ───────────────────────────

koronahukyoutaisakunoshouhizeigenzeinihantaisuruedanodaihyou.jpg
コロナ不況対策の消費税減税に反対する枝野代表

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2020年03月18日

●「インフレは十分制御が可能である」(EJ第5209号)

 なぜ、安倍政権によるアベノミクスが、MMTに脚光を浴びさ
せることになったのでしょうか。これについて、経済評論家で作
家の三橋貴明氏が、ネット上の何本ものレポートで、分析してお
られるので、要約してご紹介することにします。
 MMTに反対する日本の経済学者たちは、はじめのうち、次の
ように主張していたのです。
─────────────────────────────
 MMTで財政赤字を増やすと、国債金利が急騰し、日本は財
 政破綻、デフォルト(債務不履行)する!
─────────────────────────────
 添付ファイルには、2つのグラフを付けていますが、上のグラ
フを見てください。このグラフを見ると、日本政府の長期債務残
高(左軸/兆円)は、右肩上がりで増加していますが、10年物
国債の長期金利(右軸/%)は減る一方です。
 さすがにこれを突き付けられると、MMTに反対する日本の経
済学者たちは、こそこそと論理をすり替えて、次のようにいい出
したのです。三橋貴明氏によると、日銀審議委員の原田泰氏をは
じめとするリフレ派までもがこれに同調しています。
─────────────────────────────
 MMTで財政赤字を増やすと、インフレ率上昇を制御できな
 くなる!
─────────────────────────────
 MMTでは、自国通貨建ての国債のみを発行している政府が財
政的な予算制約に直面することはないとします。しかし、経済は
生産と需要について実物的あるいは環境的な限界というものがあ
ります。それがインフレ率です。
 インフレ率は、総需要と供給能力のバランスで決まりますが、
これまでの経済学では、インフレ率は「おカネの発行量」で決ま
るとされています。しかし、2012年末に安倍政権が発足し、
2013年に黒田東彦元財務官が日銀総裁に就任すると、異次元
金融緩和政策(金融政策)が展開され、「マネタリーベース」を
約360兆円に増やしたものの、インフレ率はコアコアCPIで
ほぼゼロに終っています。
 コアコアCPIというのは、物価変動を把握しやすいように、
価格変動の大きい食料、エネルギーを除いた物価指数を意味して
います。ちなみに、エネルギーに含まれる品目は、電気代や都市
ガス代、プロパンガス、灯油、ガソリンなどです。
 「マネタリーベース」とは、預金準備と現金をまとめたもので
あり、これは中央銀行が直接発行できるお金です。預金準備とは
民間銀行が日銀に対して持つ当座預金口座にストックされている
お金のことです。これに対して実際に、世の中に出回っているお
金(現金+預金)を「マネーストック」といいますが、お金の量
を増やしてインフレ率に影響を与えるには、マネーストックを、
もっと増やす必要があるのです。
 マネタリーベースに対するマネーストックの割合を、「信用乗
数」というのですが、主流派のマクロ経済学の教科書には、「信
用乗数は一定である」と書いてあります。そうであれば、中央銀
行がマネタリーベースを増やすと、世の中に出回るお金の総量で
あるマネーストックも同じ割合で増えるはずです。しかし、実際
はそうなっていないのです。
 MMT反対派は、MMTによって財政出動した場合、いったん
インフレ率が上がり始めると、MMT賛成派は増税をするなどコ
ントロールできるというが、インフレは制御できなくなるといっ
て反論します。そこで、添付ファイルの下のグラフを見てくださ
い。ここに1990年12月から2019年9月までの日本のイ
ンフレ率が赤い折れ線グラフで示されています。青い折れ線につ
いては、ここでの話には関係がないので、無視してください。
 これを見ると、1994年以降、多くの期間でインフレ率がマ
イナスになるデフレに陥っていますが、2014年に急騰してい
ます。これは、もちろん消費税の5%〜8%への増税によるもの
です。これについて三橋貴明氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 図のインフレ率を見れば分かるが、我が国のコアコアCPIは
2014年4月に急増し、15年4月に急落した。理由はもちろ
ん、消費税増税である。消費税増税は強制的な物価の引き上げで
あるため、確かに一時的にインフレ率は高まる。とはいえ、実際
に需要が増えたわけではないため、1年後に増税による上乗せ分
が消えると、インフレ率は急落するわけだ。
 さらに重要なのは、消費税増税という財政政策による需要縮小
が、15年4月以降のインフレ率も抑制してしまったという点で
ある。コアコアCPIは、17年にマイナスに突入し、その後も
ゼロ近辺で低迷し続けている。
 つまりは、金融政策ではなく財政政策による需要の強制的な縮
小(消費税増税)がインフレ率を抑制したという「事実」が、過
去5年間の日本の「実績」により証明されたわけである。
 分かりやすく書くと、例えば、財政拡大によりインフレ率が高
まり、政府が緊縮路線に転じたとしても、インフレ率上昇が止ま
らないならば、それこそ、「消費税増税」をすればいいという話
だ。消費税は消費に対する罰金である。罰金を増やされた国民は
消費縮小に転じるため、総需要は間違いなく抑制される。結果、
インフレ率は落ち着く。       http://exci.to/2Wgmz8h
─────────────────────────────
 これではっきりしたことがあります。それは、金融政策による
インフレ率のコントロールには限界があるということです。なぜ
なら、360兆円ものマネタリーベースの拡大にもかかわらず、
日本のインフレ率を引き上げ、デフレからの脱却を実現できない
からです。デフレというのは、総需要が不足する経済現象です。
政府が財政を拡大し、需要を創出しない限り、デフレ脱却は永遠
に実現しないまま、日本はどんどん貧しくなっていきます。
           ──[消費税は廃止できるか/050]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜデフレ脱却ができなかったのか:黒田日銀の5年を振り
  返る/渡辺務氏(2018年2月6日)
  ───────────────────────────
   黒田東彦日本銀行総裁は2%の物価上昇を政策目標に掲げ
  てきたが、日本経済は、依然として達成にほど遠い状態にあ
  る。筆者は、値上げに慎重な企業行動がデフレ脱却の障害に
  なっていると指摘する。
   日銀の黒田総裁による異次元金融緩和の開始から間もなく
  5年になる。日銀は2%の消費者物価上昇を目標として掲げ
  大規模な量的緩和やマイナス金利政策を実施してきたが、現
  状、消費者物価上昇率(除く生鮮食品、エネルギー)は前年
  比0・3%(2017年12月)であり、デフレからの脱却
  を果たせていない。しかし5年間の緩和を通じ、デフレ発生
  の仕組みについて新たに見えてきたことは少なくなく、デフ
  レ脱却に向けて今後何をすべきかも明らかになった。以下で
  は企業の価格設定行動の視点から物価の現状を整理する。
                  https://bit.ly/3d227y5
  ───────────────────────────

日本政府の長期債務残高と長期金利/日本のインフレ率.jpg
日本政府の長期債務残高と長期金利/日本のインフレ率

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2020年03月17日

●「MMTと主流派/どこが違うのか」(EJ第5208号)

 経済学には右派と左派があります。図で描くと添付ファイルの
ようになります。この図は、井上智洋駒澤大学准教授の本に出て
いたものです。添付ファイルを見てください。
 現代の経済学の中軸は「ケインズ主義」、すなわち、ケインズ
経済学です。これには、次の2つがあります。
─────────────────────────────
   1.ニュー・ケインジアン ・・  主流派経済学
   2.ポスト・ケインジアン ・・ 非主流派経済学
─────────────────────────────
 経済学を明確に分類することは容易なことではありませんが、
MMTの位置づけを明確にするするため、井上准教授の本を参考
にして、大ざっぱに述べることにします。
 軸の右に「新古典派経済学」があり、それは小さな政府を目指
す市場経済をベースにする経済学です。市場はその調整メカニズ
ムにまかせていれば、基本的には円滑に機能するばずであり、政
府が介入する必要はないと考える傾向の強い経済学です。これに
対して、軸の左には「マルクス経済学」があり、それは大きな政
府を目指す計画経済をベースとしています。
 「ニュー・ケインジアン」は、やや右寄りのポジションに位置
しており、資本主義にも肯定的であり、そのため、「ケインズ右
派」といわれます。現在、主流派経済学といわれている経済学は
これを指しています。
 これに対して「ポスト・ケインジアン」は、マルクス経済学も
部分的に取り入れており、資本主義にもそれほど肯定的ではなく
「ケインズ左派」と位置づけられます。これは、マルクス経済学
も含め、非主流派経済学といわれます。MMTは、こちらに属し
ています。
 しかし、経済学は、基本的には科学のようにどれが正しいとは
いうことができず、その違いは、考え方、捉え方の差であるとい
うことができます。これについて、井上准教授は、こういう学問
分野での部族争いについて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 このように、経済学者は派閥に分かれてたがいに争い合う傾向
が高い人たちです。他の学問分野では類を見ないほど派閥争いが
盛んで、私はそれを「部族ごっこ」と呼んでいます。経済学者に
は原始的な本能を宿した人が多いのか、すぐに部族ごっこが勃発
してしまうのです。それが経済学の面白いところではあるのです
が、党派性にこだわるというのは、学者としてのあるべき姿では
ありません。学者たるもの、仲間意識や敵愾心に惑わされずに、
何が真実であるのかを徹底して考え抜くべきでしょう。(中略)
 MMTが提起する議論は、それが正しいにせよ、間違っている
にせよ、日本の経済学者にとって、いまもっとも重要なテーマと
言えます。なにしろ、政府は借金を増やすべきか、減らすべきな
のかといった大問題に関わってくるからです。
      ──井上智洋著『MMT/現代貨幣理論とは何か』
                     講談社選書メチエ
─────────────────────────────
 どのような経済学にせよ、ひとつでパーフェクトなものはない
はずです。それなら、互いに良いところを取り入れ、パーフェク
ト化を図るべきですが、どうしても、イデオロギー論争のように
なってしまうのです。
 そのため、現在のように、MMTがマスコミに取り上げられ、
脚光を浴びると、主流派のポスト・ケインジアンたちは、ろくに
MMTを十分調べようとせず、生半可な知識でMMTを「ブード
ゥー経済学」などと侮辱し、全力で叩き潰そうとします。ネット
上にはそういう論説で溢れています。
 MMTが主流派経済学と異なる論点として、井上准教授は次の
3つを上げています。
─────────────────────────────
       1.   財政的な予算制約はない
       2.   金融政策は有効ではない
       3.雇用保障プログラムを導入せよ
─────────────────────────────
 上記の3点について、ほとんどの主流派経済学者はすべて反対
の立場をとります。しかし、井上准教授は、3点について自身の
立場を次のように明らかにしています。
─────────────────────────────
 私自身は、@「財政的な予算制約はない」については賛成であ
り、A「金融政策は有効ではない」と、B「雇用保障プログラム
を導入せよ」については、頭ごなしに否定するわけではないけど
かなりの違和感や疑問があるという立場です。つまり、私もMM
Tに全面賛成ではありません。それでも、すでに述べたとおり、
現在の日本経済という文脈では、@「財政的な予算制約はない」
はとても重要な論点だと捉えており、本書のような書籍を執筆し
ているわけです。        ──井上智洋著の前掲書より
─────────────────────────────
 @に関しては、MMTは自国通貨建て国債のみを発行している
国の政府にとって、財政的な予算制約はないという意味です。し
かし、すべての経済は、生産と需要については一定の限界という
ものがあり、その限界とは「インフレ率」のことです。つまり、
過度のインフレにならない程度の上限があるというのです。
 インフレ率は、「総需要(=名目GDP)」と「供給能力(=
潜在GDP)」のバランスで決定されますが、主流派経済学では
インフレ率は、「おカネの発行量」により決まることになってい
ます。しかし、図らずもそれが正しくないことを証明したのが日
本であるといえます。すなわち、安倍政権のアベノミクスによっ
て、MMTは脚光を浴びることになったのです。
 それは、何を意味しているのでしょうか。これについては、明
日のEJ以降で、検討して行くことにします。
           ──[消費税は廃止できるか/049]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ財政赤字でも政府支出できる?経済学者・松尾匡氏が語
  るMMT理論に対する誤解と疑問点
  ───────────────────────────
   金利を下げても設備投資が増えない、というのはよくある
  主張ですが、景気が過熱した時に金利を上げることでインフ
  レを抑える効果自体も否定する点は非常に特異です。多くの
  人がこれは違うんじゃないかと思うところで、極端な話50
  %の金利にしたらデフレ不況に叩き落されるでしょう、と。
  ──これについて、MMT側の反論としてはどのような議論
  がありますか?
   MMTの主張としては、設備投資するかどうかは金利以外
  の様々な要因によって決まるとしています。特に将来どれく
  らい儲かるかによって決まり、金利はそれに比べれば影響を
  与えない、と。その説明としては、一つにはインフレを抑え
  るために金利を上げようとすると、金利も生産コストですか
  ら、企業は売値を決める時にコストに上乗せする。そのこと
  で、かえって物価が上がるよ、という考え方をしています。
  あるいは、金利を上げると利子収入が増え、そうした人たち
  が支出を増やすことでますます景気が過熱する、という言い
  方もします。そういった可能性もあると、言っているわけで
  す。ただ、私は設備投資が金利にどれくらい反応するかは、
  最終的には実証で決める問題だと思っていて、数字を出さず
  に今の段階であれこれ言っても仕方がない。だから、私は現
  時点では「金利をいくら上げてもインフレは抑えられない」
  というのは信じられません、と言うしかないです。
                  https://bit.ly/2QdRazt
  ───────────────────────────

経済学における右派と左派.jpg
経済学における右派と左派





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2020年03月16日

●「バーニー・サンダーズは勝てるか」(EJ第5207号)

 今日のEJは、11月の米大統領選に向けた民主党候補指名争
いの現況について述べることにします。MMTを支持していると
されるバーニー・サンダーズ上院議員が善戦しているからです。
既に述べているように、MMTの主唱者の一人のステファニー・
ケルトン教授はサンダーズ氏の政策顧問を務めています。ケルト
ン教授は、前回の民主党候補指名争いでも、サンダーズの政策顧
問をして、ヒラリー・クリントン氏と戦っています。
 勝敗を決めるとされる14州の予備選が集中した「スーパー・
チューズデイ」では、ジョー・バイデン前副大統領が10州を制
し、優位に立っています。
 緒戦に優位だったビート・ブティジェッジ前インデアナ州サウ
スベンド市長、マイケル・ブルームバーク前ニューヨーク市長、
エリザベス・ウォーレン上院議員は撤退を表明し、ブティジェッ
ジ氏とブルームバーク氏は、バイデン氏支持を表明、現在、バイ
デン氏が優位に立っています。
 現在の状況について、大前研一氏は、夕刊フジのコラム「ニュ
ース時評」で次のように書いています。アメリカの事情に詳しい
大前研一氏のこのコラムは、興味ある情報が満載で、私はいつも
愛読しています。
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 私がサンダーズのアドバイザーだったら、この状況を打開する
ために、副大統領候補にエリザベス・ウォーレン上院議員の指名
を勧めるだろう。ウォーレン氏は、候補者争いから降りた後、だ
れを支持するか明らかにしていない。
 このウォーレンという女性は、男をやり込めることにかけては
天才的といってよい。民主党の候補者が集まったテレビ討論会で
も、ブルームバーク氏を昔のパワハラ、セクハラ問題でコテンパ
ンにやっつけた。ブルームバーク氏はマイク・タイソンに殴られ
たようにボコボコにされた。
 さらにサンダースとも、取っ組み合いのケンカをする勢いだっ
た。このパワー、女性問題の黒い過去を持つドナルド・トランプ
大統領相手にも通用するのではないか。
       ──2020年3月13日発行「夕刊フジ」より
          「サンダーズ氏逆転へ“最強タッグ”を」
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 エリザベス・ウォーレン上院議員は、破産法などを専門とする
大学教授を経て、上院議員に就任。大統領選に向けて富裕層への
増税案など数多くの政策を発表しています。選挙集会の後、聴衆
との写真撮影に長時間応じることでも話題となりました。支持率
でトップに立った時期もありましたが、予備選が集中した「スー
パーチューズデー」では、地元の東部マサチューセッツ州でも3
位と低迷し、撤退を表明しています。
 記者団に「大統領選からは撤退するが、理不尽な状況に置かれ
た勤勉な人々のために戦うことはやめない」と語り、今後誰を支
持するかについては「時間が必要」と明言を避けています。
 サンダース氏は、自らを社会主義者といっていますが、大前研
一氏によると、サンダース氏は真面目な人で、かなり長い間、バ
ーモント州リッチモンド市の市長を務めており、素晴らしい業績
を残しているのです。貧困層の住宅問題を解決したり、再生エネ
ルギーを利用して環境問題にも前向きで取り組むなど、単なる左
派ではない。しかし、この実績が全米に知られていないことが、
ネックになっています。
 MMTを取り入れると、現在米国の若者が苦しんでいる、学生
ローンも解決できるし、教育の無償化も実現します。それに、日
本では考えられないことですが、米国では、どんなに大金持ちや
富裕層でも、親が学費を出すことはないのです。ですから借入を
するのですが、これがかなりの負担になっていて、私立大学の平
均授業料が年間で3万6900ドル、約400万円あまりになっ
ています。このように、学生ローンを抱えている人は4500万
人もいるのです。
 それにサンダーズ氏は、ニューヨークのウォール街のことを気
にしない政策が出来る大統領候補であるといえます。富裕層から
カネをとって、貧困層に回す政策は米国の若者に受け入れられて
おり、大変人気があるのです。
 これに対して、ジョー・バイデン氏は、オバマ政権の副大統領
として知名度は高いし、黒人に人気があるといわれており、それ
に社会主義者のサンダーズ氏ではトランプ大統領に勝てないと思
われているので、このままでは、民主党の大統領候補の指名を受
けるといわれています。しかし、大前研一氏は、バイデン氏につ
いて、次のように厳しく論評しています。
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 現在、穏健派で、黒人票を持っているといわれるバイデン氏が
圧倒的に有利だとみられている。しかし、黒人票に強いというの
は本当なのか。私は疑問を持っている。
 バラク・オバマ前大統領の下で副大統領を8年やっていたとい
うことが根拠になっているだけ。オバマ氏の背後霊を使いながら
戦っているに過ぎない感じがする。だいたい、バイデン氏は、8
年の間に何か実績があるのか。息子をウクライナや中国に送り込
んで儲けさせていただけだ。
       ──2020年3月13日発行「夕刊フジ」より
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 民主党の大統領候補が決まっていない時点でのAIの予測では
トランプ大統領の再選はないという予測になっているそうです。
どれほどの精度かは不明ですが、トランプ大統領も万全の状態で
ないことは確かです。それに突如巻き起こった新型コロナの対策
の是非も再選に影響してくると思います。
 AIは、民主党の大統領候補をバイデン氏であると推定し、ト
ランプ敗北を予測したものと思われますが、サンダーズ氏であっ
たら、MMTも絡んで、もっと面白いことになると思います。
           ──[消費税は廃止できるか/048]

≪画像および関連情報≫
 ●2020年の注目ートランプの再選はありか、なしか。
  世界はどう見る?
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   これはおそらく、今年最大の問題ではないにしても、大き
  な問題の一つに数えられるでしょう。ドナルド・トランプ氏
  は11月に米大統領に再選されるでしょうか。
   トランプ大統領が貿易協定の再交渉や軍事同盟を推進し、
  反移民政策や入国禁止まで実施し国際的緊張を高めているこ
  とから、アメリカと他国の関係性がトランプ政権の前面に出
  ています。
   しかし、米国での選挙が近づいている今、世界が彼をどう
  思うかが、問題なのでしょうか。最近のグローバルアドバイ
  ザー調査では、トランプ氏が米大統領に再選されるかどうか
  を世界33か国の22500人以上の調査対象者に尋ねまし
  た。その結果は、人々が考えているほど明確ではなく、独自
  のナショナリストや移民排斥主義者の波により、国々の間で
  二極化が見られます。
   全体では、調査対象者の44%がトランプ氏が大統領に再
  選される可能性は低いと回答しましたが、35%は再選はあ
  り得ると考えています。
   トルコ(57%)、韓国(56%)、フィリピン(55%)、イ
  タリアとベルギー(53%)の人々は、トランプ氏が「再選さ
  れない」と回答する傾向が強く、香港(54%)、イスラエル
  (53%)、インド(48%)、米国(46%)、英国(42%)で
  は再選すると回答する傾向が強く出ていました。
                  https://bit.ly/38KfdN2
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サンダーズVSバイデン.jpg
サンダーズVSバイデン
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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