2017年08月22日

●「地下空間は基本設計前からの条件」(EJ第4588号)

 石原元知事は、築地市場の豊洲移転問題にはもともと関心は薄
かったものの、東京オリンピックの開催には強い意欲を持ってい
たのです。しかも、なぜか東京オリンピックの2016年開催に
は相当自信を持っていたようです。
 2009年2月6日、石原知事は「豊洲新市場整備方針」を決
定します。このときは「盛り土あり」の方針になっています。問
題なのは、この整備方針の巻末に記載されている豊洲新市場の開
場時期と環状2号線完成時期です。
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   ◎豊洲新市場開場時期及び整備スケジュール
    開場時期は平成26(2014)年12月
   ◎環状2号線完成スケジュール
    完成時期は平成28(2016)年 3月
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 環状2号線は、全長14キロの都道で、臨海部と都心を結ぶ大
動脈として機能させる予定の道路です。東京五輪では臨海部に選
手村を建築する予定のため、選手の移動にこの道路は不可欠にな
るのですが、この道路は築地市場が移転する前提で設計されてい
るのです。そのため石原知事は、豊洲新市場の開場時期をこの時
点で2014年12月と明記したのです。明らかに「2016年
東京五輪ありき」のスケジュールであるといえます。
 もうひとつ考慮すべきことがあります。2008年5月頃とい
えば、石原知事は自らの発案で設立した新銀行東京の経営が破綻
し、都が出資した1000億円を棄損、400億円の追加出資を
決めたことで、都議会や都民から厳しく批判されていた時期に当
たります。そういう時期に豊洲市場予定地の地下水から、環境基
準の4万3千倍のベンゼンが出て、石原知事にとって頭の痛い問
題が噴出した時期であったのです。
 そのため知事は、2008年7月に出された専門家会議の提言
──盛り土による市場整備にかかるコストのことを非常に気にし
ていたといいます。専門家会議の提言を実行すると、1000億
円ぐらいのコストかかるといわれていたからです。
 しかも、2009年には石原知事にとって計算外のことが2つ
も起きたのです。それは、2009年7月12日の都議選で「豊
洲市場への移転反対」を唱えていた民主党が自民党に勝利し、都
議会第1党になったことと、2009年10月2日にコペンハー
ゲンで開かれたIOC大会で、東京はオリンピックの開催地から
外れたことです。
 豊洲新市場の基本設計が「盛り土あり」ではじまったことは確
かです。しかし、2011年2月に基本設計プロポーザル(企画
提案型業者決定)で日建設計が採用されたときの基本設計には、
主要3棟の建物の地下には地下空間が描かれています。都が基本
設計に与えた条件のなかに、建物地下に「盛り土なし」の条件が
あったことになります。つまり、設計に当たって都が建物の下に
は地下空間を設けることを決めていたことは確かな事実です。
 小池知事の指示による「豊洲市場地下空間に関する調査特別チ
ーム」による「第2次自己検証調査報告書」によると、興味深い
ことがわかります。
 2012年5月30日の日建設計との打ち合わせで、都の担当
者は日建設計側に次の質問を行っているのです。
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 2012年5月16日に建物下の「盛り土なし」との指示を出
したが、以下の理由から、「盛り土あり」に変更は可能か。
            ──中澤誠/水谷和子/宇都宮健児著
           『築地移転の闇をひらく』/大月書店刊
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 「以下の理由」とは何かというと、「竣工後10年以降は、地
下水のポンプアップを中止する可能性があり、その場合、AP4
メートル程度まで地下水が上昇する可能性があるが、建物地下が
地下水のプールになるのを避けたい」というのが理由です。
 つまり、市場施設の建物下の「盛り土なし」で設計を指示して
おきながら、後で不安になり、変更を申し入れているのです。し
かし、日建設計は次のように変更を拒否しています。
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 これに対し日建設計は、「すでに6街区は図面がFIXし、社
内では実施設計を描き始め、後戻りできない状況である。さらに
埋土分の工期延長の懸念があることから、埋土なしの与条件で進
めていきたい」と回答しています。基本設計に着手した11年3
月から、盛り土なしは与条件として都から示されてきたことでし
たから、設計側から言えば今さらの感がある話だったのかもしれ
ません。設計の納期も全体の工期も待ったなしの状況で進められ
ていたことが、記録からも察することができます。
 東京都はその後、5、7街区の建物下の埋土についても同様の
要望を出していますが、その後、盛り土ありへの変更が実現され
ることはなく、全域での盛り土なしが確定しました。
      ──中澤誠/水谷和子/宇都宮健児著の前掲書より
─────────────────────────────
 「建物地下の空間がプールになるのを避けたい」──まさに現
在の状況を予測しています。小池都政になって地下空間が発見さ
れたとき、そこは地下水のプールになっていたのです。それは何
を意味するかというと、地下水管理システムが機能しないことの
証明であるからです。つまり、地下水の水位のコントロールがほ
ぼ不可能であることはあらかじめ予測されていたのです。
 それではなぜ、「盛り土あり」に設計を戻そうとしたのでしょ
うか。それは、盛り土があれば、ある程度の地下水は覆い隠すこ
とができるからです。つまり、豊洲の土地は、そんな難しいこと
をクリアしない限り、使える土地ではなく、まして生鮮食品を扱
う中央卸売市場として全く不適の土地なのです。建物が完成した
現在でも、その状況は何も変わっていないのです。
              ──[中央卸売市場論/035]

≪画像および関連情報≫
 ●卸売市場を建設することじたいが無理筋の計画
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   まずは、これまでの経緯を簡単に整理しておこう。
  報道・世論が沸騰する真っ只中、東京都の内部聴聞で地下空
  間を設けた理由について問われた当時の関係職員たちは、そ
  れが「汚染再発時の作業スペースだった」と証言した。次い
  で、小池都知事の采配で9月30日に公表された「自己検証
  報告書」には、地下空間の必要性を「技術会議が独自に提案
  した」と記されていた。
   ところが、10月7日に開かれた都議会の経済・港湾委員
  会に呼ばれた岸本良一中央卸売市場長は、「地下空間の必要
  性を提示したのは技術会議ではなく都職員の誤りだった」と
  謝罪した。複数回にわたる技術会議の全体を通して「空間」
  が議論されたため「技術会議の提案」と記録されてしまった
  のだという。
   10月13日になって、事態はさらに急転する。
  基本設計の発注先候補へのヒアリングを目的として開かれた
  「プロポーザル技術審査委員会・第3回」(2011年2月
  4日)の議事録で、都はそれまで黒塗りにしてきた部分を開
  示した。すでに報じられたように、そこには応募企業「日建
  設計」の主任技術者が「盛り土ではなく地下空間を」と提案
  する発言記録があったのである。  ──藤野幸太郎氏論文
                   http://bit.ly/2uRpgkf
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地下水のプール状態の豊洲新市場地下空間.jpg
地下水のプール状態の豊洲新市場地下空間
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2017年08月21日

●「専門家会議の提言を検証してみる」(EJ第4587号)

 石原都政のときの豊洲関連の土壌汚染隠しは、正しいデータを
提出しなければならない専門家会議にも及んでいます。それらは
小池都政になってからの情報公開──「海苔弁はがし」によって
すべて明らかになっています。メディアもそのことはわかってい
るはずですが、さらに自民党の支持率を下げることにつながるの
で、無視しているようにみえます。
 きわめてテクニカルな話になりますが、どのようなデータを隠
したのか、そしてその隠したことが、どのような結果をもたらし
ているのかについて、知っていただきたいと思います。
 土対法関連の専門用語に「難透水層」というものがあります。
地下水を通しにくいか、通しやすいかという意味で使われる地層
のことです。地下水を通しやすい「透水層」に対して、粘土など
のように水を通しにくい層を「難透水層」といいます。完全に水
を通さない層は「非透水層」と呼ばれます。
 これに関して「透水係数」という言葉があります。これは、土
の中を水が移動する速度をあらわす言葉です。難透水層が多いと
透水係数の数値は小さくなり、汚染物質が上昇してこないことの
証になります。そのため、土対法では、土の下に連続した難透水
層がないか少ない、つまり透水係数が高いと判断された場合は、
深さ10メートルまでの汚染調査が求めています。したがって、
非常に経費がかかることになります。
 一級建築士の水谷和子氏は、東京都の役人がこの透水係数の数
値を誤魔化していたといっています。これも小池知事の「海苔弁
はがし」で明らかになったのです。水谷和子氏は次のように述べ
ています。
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 私がこの問題に取り組み始めたのは、専門家会議の半ばころで
す。友人に勧められて参加した築地見学会で、案内してくれた仲
卸のまぐろ屋さんと名刺交換をしたのがきっかけです。
 専門家会議の論争が気になり、初めて開示請求したのが地質調
査報告書でした。驚くことに、そこに書かれていた透水係数が専
門家会議で示されていたものとは違っていたのです。都は数値を
10倍安全側に書き換えて専門家会議に報告していました。都は
後日それを「誤記」としてホームページ上に訂正文を載せたので
すが、そのときは、すでに専門家会議は終了し、新たに技術会議
が開かれていました。都の虚偽報告が調査深度決定に及ぼした影
響は大きかったと思います。報告書の前提が変わるほどだったは
ずです。                  ──水谷和子氏
            ──中澤誠/水谷和子/宇都宮健児著
           『築地移転の闇をひらく』/大月書店刊
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 透水係数を10倍改竄しているということは、難透水層がない
のにあったといっているのに等しいのです。そうであるとすると
難透水層があるという前提で構築された専門家会議の土壌汚染対
策をきちんとやっても、汚染を防ぐことは困難であるということ
を意味します。まして、その肝心な盛り土がなかったのですから
土壌汚染対策にはなっていないということです。
 そこで、専門家会議の提言を少し詳しく以下に検証します。豊
洲新市場の地下構造図を添付ファイルにしてあるので、それを参
照しながら説明します。ここで「AP」について説明する必要が
あります。これは、土木関係用語であり、「高さ」を示す数値で
す。「AP」とは東京都中央区新川にある霊岸島水位観測所の最
低水位をもって定められています。
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    TP:トウキョウ・ペイル/東京湾の平均海面
    AP: アラカワ・ペイル/荒川の工事基準面
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 図のAP+2メートルには砕石層があります。それより以下に
ついては東京都は何もしていないので、そこには高濃度の汚染土
壌が残されています。そのため、砕石層を含め4・5メートルの
盛り土をして、汚染土壌が上昇してくるのを防いでいるのです。
確かに盛り土は行われているのですが、肝心の市場建物の下の盛
り土は行われておらず、地下空間になっています。
 問題は地下水の水位です。満潮時の海水面がAP+2メートル
です。しかし、台風などで大雨が降ったりすると、一挙に地下水
の水位が上昇し、砕石層よりも上に上がってきます。そうすると
本来きれいなはずの盛り土は汚染されてしまいます。
 しかし、ベンゼンなどの揮発性のガスについては盛り土によっ
て防ぐことができます。しかし、市場建物の地下は空間ですから
地下空間にはガスが充満し、いろいろな隙間から建物内部に侵入
してきます。これは防ぐことはできません。
 そのため、地下水管理システムが必要になったのです。この地
下水管理システムによって、地下水の水位をAP+1・8メート
ル以下に保つことができれば、満潮時はもちろん、増水時でも砕
石層よりも上部に上がってこないようにできるというのが専門家
会議の提言なのです。しかし、既出の水谷和子氏は、次のように
反論しています。
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 地下水管理システムが本格作動したのは2016年10月17
日と言われています。建物外にある観測井戸の5週間分の地下水
位を見てみると、低くて砕石層の上端AP2・5メートル前後、
高くてAP4・5メートル付近にあります。専門家会議の管理水
位AP2メートルまで下がった記録はなく、また技術会議の提言
した日常管理水位AP1・8メートルに至ってはもちろん1度も
記録したことはありません。満潮時の海水面がAP2メートル付
近ですから、AP1・8メートルで日常管理することはそもそも
物理的に難しく、机上の空論であったのではないかと思います。
      ──中澤誠/水谷和子/宇都宮健児著の前掲書より
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              ──[中央卸売市場論/034]

≪画像および関連情報≫
 ●盛り土/地下空間/汚染物質――豊洲市場問題とは何か
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   2016年11月7日に築地から移転されるはずだった豊
  洲市場。汚染物質に対する安全性の検証の必要性から小池百
  合子都知事の移転延期決定後、「盛り土」「地下空間」など
  計画と異なる工事の実態が明るみになり、小池都知事の判断
  が注目を集めています。
   見えにくくなった豊洲市場問題の論点を建築という観点か
  ら、若山滋氏(建築家・名古屋工業大学名誉教授)が整理し
  ます。トランプ氏とクリントン氏の選挙戦は、嫌われ者どう
  し、史上最悪の大統領戦と言われ、アメリカを二分する接戦
  を演じたのだが、小池都知事の選挙戦は圧勝であった。結局
  日本でもアメリカでも、人々は「変化」を選択したのであり
  その余震がまだ続いている。
   圧勝の余勢を買って、新知事が就任後最初に問題としたの
  が、築地市場の豊洲移転である。いくつかの論点が浮かび上
  がったが、センセーショナルに報じられたのは盛り土問題で
  あった。今更、という印象もあるが「あれは一体何だったの
  か、建築の専門家として説明してほしい」という声も強いの
  で、正直な印象を述べてみたい。この話を聞いて、初めは何
  が問題なのかよく理解できなかった。すでに竣工した建築の
  下に、しかるべき盛り土が行なわれていない、というが、わ
  れわれの頭の中には、その程度の土は掘り返して工事するも
  のという考えがある。       http://bit.ly/2wlkwTx
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豊洲新市場の地下構造.jpg
豊洲新市場の地下構造
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2017年08月18日

●「『盛り土なし』技術会議の決定か」(EJ第4586号)

 専門家会議は、豊洲新市場の土地にどのような調査をしたので
しょうか。
 専門家会議は土壌汚染対策法(土対法)にしたがい、10メー
トルメッシュ(10メートル×10メートルの方眼)に分け、区
画ごとにサンプラー(サンプルをとる管)を土中に挿して、地下
水の概況調査を行っています。
 全体で約4100区画を調べた結果、ベンゼン4万3千倍、シ
アン化合物860倍の高濃度の汚染が見つかり、豊洲新市場全域
に高濃度汚染が広がっている可能性が出てきたのです。
 専門家会議の平田健正座長は、この汚染状態を重視しして、追
加調査を行っています。その結果、サンプラーがたまたまタール
溜まりを貫通した結果であることが判明したといいます。なぜ、
そんなことがいえるかというと、汚染が見つかった周辺の土にサ
ンプラーを挿して調べた結果、同様の汚染が発見できなかったか
らであるという説明をしています。
 この平田座長の言葉から、専門家会議が当初実施した土壌汚染
の調査方法がわかります。区画(メッシュ)の中心部分にサンプ
ラーを挿し、地下水を採取して調べます。もし、何も出なければ
その区画は土壌汚染なしと判断し、その区画については、何もし
ないのです。これに対して、もしある区画で高濃度の汚染が出た
場合は、その区画の他の部分をいくつか調べて、汚染がなければ
汚染の発覚した場所は、たまたまタール溜まりだったと判断し、
その周辺の土をすべて入れ替えるというやり方です。
 しかし、10メートルメッシュでそのやり方をすれば、ほとん
どの汚染を見逃してしまうことになります。おそらくタール溜ま
りはそれぞれの区画にまだら模様に存在していると考えられるか
らです。たまたま汚染がなかったからといって、その区画を「汚
染なし」と判断できないからです。さらにもっと問題なのは、ベ
ンゼンなどの揮発性物質のガスの上昇です。それを防ぐのに有効
なのは盛り土なのです。
 そのため、専門家会議は、全区画の2メール以下の土をすべて
入れ替え、その上に2・5メートルの盛り土をするという提言に
なったものと思われます。この専門家会議のこの汚染土壌処理に
ついて、一級建築士の水谷和子氏は、次のように述べています。
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 「ベンゼンやシアン化合物を含んだタールだまりはクラスター
爆弾のように散らばっている」と、日本環境学会・坂巻幸雄土壌
汚染ワーキンググループ長は発言しています。散らばったタール
だまりを全部探し出すことは、実際のところ不可能です。
 平田座長の結論も「汚染(タールだまり)を全部見つけること
はできない。したがって上部2メートルは全部土壌を除去、その
下は見つかった汚染は除去するが、見落とす汚染もあるから、地
下水も汚染される」でした。したがって「4・5メートルの健全
土を盛り土するが、盛り土が汚染されないように地下水位を管理
する」、以上が専門家会議の結論となったのです。
            ──中澤誠/水谷和子/宇都宮健児著
           『築地移転の闇をひらく』/大月書店刊
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 専門家会議はこの提言をまとめて解散し、その実施は、専門家
会議の解散直後に立ち上げられた「技術会議」に委ねられます。
しかし、この技術会議はメンバーや検討内容は非公開になってお
り、おそらくその技術会議のなかで、市場施設の地下の盛り土は
行わない決断がなされたものと思われます。
 専門家会議と技術会議──この2段構えの提言の実現機構につ
いては、8月2日付、EJ第4575号でも取り上げているよう
に、多くの疑惑があります。それは、技術会議が提言の骨抜きを
やっている疑惑があるからです。    http://bit.ly/2uT9y6x
 この場合、もし後になってそれが発覚しても、メンバーが非公
開であれば、追求しようがないからです。座長は原島文雄教授で
あると公開されていますが、原島教授はロボット工学の専門家で
あり、土壌汚染について専門外です。
 このように、証拠はありませんが、おそらく「盛り土なし」は
技術会議で決められたものと考えます。したがって、豊洲新市場
の設計段階から「盛り土なし」は前提になっていたのです。東京
都の新市場整備部は、市場関係者にはこのことを知られてはなら
ないと考えて、表向きは「盛り土あり」の概念図を公開していた
のです。どうせ建物の地下の話であり、建物が建ってしまえばわ
かるはずがないと考えたのでしょう。技術会議で決めたとすれば
石原知事がこの事実を知らないはずはないと考えます。
 しかし、設計が相当程度進んだ段階になって、新市場整備部は
「盛り土なし」が心配になり、「盛り土あり」の設計に変更しよ
うとしたフシがあります。永尾俊彦氏は、開示資料に基づいて、
次のように記述しています。
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 都は、盛土がなくても安全なのか不安だったらしく、「修正設
計報告書」では盛土がない場合のリスク評価まで行っていた。地
下水から揮発したベンゼンなどがガスとして隙間や亀裂から建物
内に入り、人の健康や生鮮食品にどの程度影響を与えるかを「レ
ベッカ」という計算式で試算した。これは専門家会議も使った式
を踏襲した。結論は10万人に1人という「目標発がんリスク」
をクリアするのは、ベンゼンの場合、地下水の環境基準は1リッ
トル当たり0・01ミリグラムだが、その約10倍の0・118
ミリグラムまでは許容されるとなっている。
         ──永尾俊彦著/岩波ブックレット/968
「ルポどうなる?どうする?築地市場/みんなの市場をつくる」
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 この「修正設計報告書」は、日本共産党都議団が入手したもの
です。「盛り土なし」の事実を東京都が最初から知っていたとす
れば、それは都民への裏切りそのものです。
              ──[中央卸売市場論/033]

≪画像および関連情報≫
 ●都がまたウソ 豊洲新市場“地下空間の危険性”認識
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   豊洲市場問題をめぐって、またまた東京都の役人のウソが
  発覚した。土壌汚染対策として専門家会議が提言した「盛り
  土」を無視し、主要建物の地下部分に巨大な空間を設けてい
  たことについて、都は「土壌汚染対策法でベンゼンの拡散を
  防ぐには、厚さ10センチ以上のコンクリートで遮断すれば
  いいと定められており、安全性に問題はない」と釈明してい
  る。しかし、都は土壌汚染対策に着手した2007年当時か
  ら、地下空間の危険性を認識していたことが分かったのだ。
   2016年9月14日の読売新聞によると、都は07年5
  月に土壌汚染対策を検討する専門家会議を設置。その初会合
  で、建物の下に地下空間を設け、市場で運搬用に使われるタ
  ーレー(荷台付き小型三輪車)置き場などに使用する案を提
  示した。
   これに対して委員である専門家は「ベンゼンなど揮発性の
  物質は、ちょっとでも隙間や亀裂があれば室内に入り込む可
  能性がある」と指摘。都はこれを受けて、ターレー置き場を
  地下から地上に変更した。
   ところがその後、都は独断で地下空間を設けることを決め
  11年3月に市場建物の基本設計の入札を実施した。ウソに
  ウソを重ねる都庁の役人に、もはや市場移転問題を担当する
  資格はない。もし民間企業だったら「全員クビ」が当たり前
  だ。               http://bit.ly/2w9xowC
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原島文雄氏.jpg
原島 文雄氏
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2017年08月17日

●「『盛り土なし』は早い段階で決定」(EJ第4585号)

 小池都政になった2016年8月25日、この日は、豊洲新市
場の食品を扱うすべての建物の地下が「地下空間」になっている
事実を東京都がはじめて認めた日です。
 事態を重大視した日本共産党都議団は、東京都に対し、現地視
察を申し入れ、9月7日に豊洲7街区の水産卸売棟地下の視察が
認められます。そのとき共産党都議団が目にしたのは、建物の地
下に広がる空間と、床一面に相当量の水が溜まっている光景だっ
たのです。その敷地は2メートルの新しい土の上に2・5メート
ルの盛り土で固められているはずだっのです。
 小池知事は、9月10日の土曜日に緊急記者会見を開き、衝撃
の事実を明らかにします。このときの記者会見のニュースのひと
つを再現します。
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 9月10日午後5時から開かれたの緊急会見の中で小池知事は
東京都が、敷地全体に行ったと説明してきた盛り土について、実
際には水産卸売場など主要な建物の地下では、行われていなかっ
たことを明らかにした。その上で「青果棟、水産棟などにおいて
4・5メートルの盛り土が、行われていなかったのではないかと
いった疑問が出てきた」とした上で、建物の下が空間になってい
て盛り土がない状態になっていたと説明した。「『全てが盛り土
がされている』というのは、現状において正しくないということ
で、ここで訂正したい」と表明。都のこれまでの説明に、問題が
あったという認識を示した。      http://bit.ly/2fEQ5Bs
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 翌日から各テレビ局のワイドショーはこのニュースを大々的に
取り上げ、豊洲新市場の地下がどのようになっているかについて
模型などを使って、連日報道が行われたのです。
 そもそも「盛り土」とは、どのような目的で、行われることに
なっていたかについて、8月10日のEJ第4581号で説明し
た専門家会議の結論を再現します。
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 1.東京ガスの工場のあった旧地盤面から2メートルの土を
   入れ替え、その上に2・5メートルの盛り土をする。
 2.地下水管理システムを設計・構築し、汚染地下水が上昇
   して盛り土を再汚染しないようにコントロールする。
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 このとき石原都政では、石原知事自身の考え方なのか、知事の
スタッフの知恵なのかはわかりませんが、実に巧妙な「科学的根
拠」づくりの仕組みをつくっていたのです。それは、専門家会議
の解散直後に「技術会議」を設置したことです。この会議の目的
は、専門家会議で提言されたものを具体化することです。
 しかし、この技術会議は、座長はロボット工学の権威である原
島文雄東京電機大学教授であることはわかっていますが、他のス
タッフは一切非公開です。したがって、誰がどのように発言し、
何を決定し、何をしなかったかは明らかにされないのです。
 そのため、専門家会議で提言されたことでも、その具体化が行
われるプロセスで技術会議で変更されてしまうことは十分あり得
ることです。仮に専門家会議の提言をそのまま実行すると膨大な
資金がかかるので、一部を実施しないで、価格を下げるようなこ
ともやっています。このように、スタッフも内容も非公開であれ
ば、何をされても都民にはわからないのです。
 さて、専門家会議の豊洲新市場の土壌汚染対策は、東京ガス工
場時代の地表面から2メートルの地下の土はすべてきれいな土に
入れ替え、その上に2・5メートルの盛り土をする──すなわち
4・5メートルの土を盛るというのが1つ目の柱です。
 それに加えて、汚染地下水が上昇して盛り土を再汚染させない
ため、地下水をAP(水位基準)2メートル以下に制御し、管理
する地下水管理システムを設置します。これが2つ目の柱です。
この2つがうまく機能すれば、土壌汚染は防げるというのが、専
門家会議の提言です。
 問題は、その提言を技術会議がどのようにして具体化したのか
についてはまったく不明なことです。しかし、これら2つの柱の
うち、建物の下にあるべきはずの盛り土はなく、地下空間がポカ
リと空いて、水がたまっていたのです。どうしてこのようになっ
てしまったのでしょうか。
 地下水管理システムの設計を請け負ったのは、日水コン(本社
東京/野村喜一社長)ですが、東京都に次の2つの設計報告書を
提出しています。
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      1.詳細設計報告書/2014年3月
      2.修正設計報告書/2015年3月
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 これら2つの報告書には「地下水管理システムの概要」と題し
た概念図が掲載されているのですが、この図には盛り土がなく、
地下空間が描かれています。なお、このシステムに関しては、東
京都の中央卸売市場の土壌汚染を所管する土木部門、システムの
設計監理を行う建設部門の担当になっています。
 したがって、これら2つの部門の担当者は、報告書を見ている
はずであり、盛り土のないことは最初から知っていたはずです。
しかし、小池知事に提出するためにまとめた「第1次自己検証報
告書」では、建設部門は知っていたが、土木部門は知らなかった
と記述しています。明らかに土木部門はウソをついています。
 もうひとつ不可解なことがあります。「土壌汚染対策工事と地
下水管理に関する協議会」という卸や仲卸など市場関係者と情報
交換する協議会があります。こ協議会にも「詳細設計報告書」は
配付されていますが、概念図に関しては盛り土がちゃんと載って
いるのです。つまり、東京都は市場関係者に関しては、盛り土が
あることにしていたのです。東京都の担当部署は、市場関係者に
対し、明らかにウソをついてきたことになります。
              ──[中央卸売市場論/032]

≪画像および関連情報≫
 ●豊洲問題で都が技術会議録の改竄疑惑?
  ───────────────────────────
   今朝、たまたま『モーニングバード』という、羽鳥さんの
  やってるモーニングショーを見てたら、スクープということ
  で、都がHP上の会議録を9月16日になって追加資料を掲
  載していた、ということが明らかになったそうだ。また、毎
  日新聞も同様の改竄疑惑を報じている。
   東京都が盛り土問題発覚後の9月16日に、盛り土の工法
  を検討した「技術会議」の会議録に「『建物下に作業空間を
  確保する必要がある』と提言を受けた」との資料を追加し、
  公表していたことが分かった。技術会議の複数の元委員は、
  毎日新聞の取材に「作業空間をつくる認識はなかった」と証
  言しており、都が会議録を改ざんした可能性もある。
   都が追加したのはホームページ(HP)上に掲載されてい
  る第9回技術会議(2008年12月25日開催)の「技術
  会議が独自に提案した事項」との資料。資料では汚染物質の
  除去・地下水浄化の確認方法として「地下水から基準値を超
  える汚染物質が検出された場合、浄化できるように建物下に
  作業空間を確保する必要がある」と記載されている。
   追加掲載に当たって、都は一部の委員に「会議録に詳細な
  資料を追加する」と連絡したが、資料の内容は説明しなかっ
  たという。毎日新聞のこれまでの取材に、委員を務めた根本
  祐二氏や川田誠一氏は「盛り土をするという前提で議論して
  いた。技術会議では、空洞をつくるという話にはなっていな
  い」と証言している。       http://bit.ly/2uCs84x
  ───────────────────────────
 ●図形出典/赤旗編集局著/日本共産党東京都議団監修「徹底
  追及【築地市場の】豊洲移転」/新日本出版社

豊洲新市場の地下の状況.jpg
豊洲新市場の地下の状況
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2017年08月16日

●「豊洲移転反対/一貫性なき民主党」(EJ第4584号)

 都議会の「花輪造反事件」は、東日本大震災の騒ぎのなかで都
民には、ほとんど知られることなく忘れ去られたのです。それが
2016年に小池百合子氏が東京都知事選に出馬し、勝利したこ
とによってこの事件が蘇ったのです。小池氏が「都議会にはドン
がいる」と暗に内田茂氏の存在を指摘する発言をしたことにより
内田氏の剛腕ぶりを示す逸話のひとつとして、この事件がワイド
ショーなどに取上げられたからです。
 花輪智史氏は、世田谷区議を1期務めた後、2005年に民主
党から出馬し初当選、2009年の都議選でも再選し、民主党が
第1党になったことによって、市場移転特別委員会委員長に就任
するなど、有力中堅議員として活躍しつつあったのです。
 しかし、2011年3月11日、自民党の誘いに乗り、民主党
に会派離脱届を提出し、豊洲移転の経費を含む中央卸売市場会計
予算案に賛成、成立させたのです。その翌月、都議会議員を辞職
し、世田谷区議選に自公両党の推薦を受けて出馬したのです。こ
こまでは自民党との下約束があったものと思われます。
 しかし、自民党の幹部や石原知事の応援を受けたものの、あえ
なく落選。その後、2度にわたり選挙に挑戦したものの、次のよ
うにいずれも落選しています。やはり「裏切り者」のレッテルは
非常に重かったといえます。
─────────────────────────────
  ◎2011年04月24日
   ・世田谷区議選に出馬するも落選
  ◎2012年12月16日
   ・衆議院選挙に維新比例で出馬するも落選
  ◎2013年06月23日
   ・都議会議員選挙に日本維新の会で出馬するも落選
─────────────────────────────
 ところで民主党は、2010年3月の豊洲の土地取得費を含む
予算に賛成しています。このとき、民主党は第1党で多数を持っ
ており、豊洲の土地取得費を削除する修正案を通すことができた
のですが、ほとんど無意味ともいえる付帯決議を付けることで予
算案に賛成しています。
 それでいて民主党は、翌年の豊洲移転経費を含む予算案には反
対に転じましたが、与党は花輪議員の裏切りによって予算案を可
決させます。このように民主党の行動には一貫性がなく、都議選
でも公約を破っています。そういう意味では、豊洲移転を決めた
のは自公両党だけではなく、民主党も一枚噛んでいます。
 国会でも同様です。2009年の衆院選で自民党を倒して悲願
の政権交代を成し遂げながら、公約したことをきちんと実施しな
い一方で、やらないと約束した消費税の増税を党内の反対を押し
切って自公両党と一緒に実現させ、多くの議員を離党させる原因
をつくっています。要するに何事にも中途半端なのです。これで
は、都民を含む国民に支持が広がらないのは当然です。
 民主党の政権交代の立役者である小沢一郎自由党代表は、野党
としての民進党の中途半端さについて、『週刊ポスト』誌のイン
タビューで、次のように述べています。
─────────────────────────────
──:安倍政権に厳しく対峙すべき野党も、民進党をはじめ、本
   気で戦っているようには見えない。
小沢:無気力に見える。野党がやるべきはいい意味の政権批判。
   僕は、第1次安倍政権のときは、年金問題、次の福田政権
   はガソリン税問題で攻め立てた。「民の竈」の話だから、
   必ず国民の信頼が得られると信じていたから。それが響い
   て安倍さんは退陣した。今でも、野党が国民の暮らしを考
   えて反対すれば、共感を得られる。多少荒っぽいことやっ
   てもね。
──:それはどうだろうか。ガソリン国会の時のように院内でピ
   ケを張ったりすれば、国民に冷ややかな視線で見られるだ
   けではないか。
小沢:違います。政権と一体となったメディアが国民にそう思わ
   せようとしているだけだ。ガソリン国会では、野党がとこ
   とん騒いだから、メディアが報道し、国民に野党の主張が
   伝わった。今回の共謀罪だって、野党がもっと騒いで委員
   会で採決させずに国会を止めていれば、国民は「野党は何
   を騒いでいるんだ?」となる。野党は人数が少ないから、
   国民に知らせるために多少荒っぽいやり方は仕方がない。
──「反対ばかりするな」と批判されるのを恐れて、「建設的野
   党」になろうとしている。
小沢:法案を作る役人はあらかじめ修正の“のりしろ”を考えて
   提出しているから、野党が修正協議に乗ってくればしめた
   もの。本来、野党は対案を出さなくとも困らない。堂々と
   「基本的な考え方が違うから、政府の法案に沿った対案な
   んかない」と言えばよい。
        ──『週刊ポスト』/2017年5月26日号
─────────────────────────────
 築地市場の豊洲移転について、自民党と公明党は、一貫して賛
成の姿勢を取る一方で、日本共産党は一貫して反対しています。
これら3党は旗手鮮明ですが、民主党(民進党)だけは、どっち
つかずの姿勢です。当時の鳩山由紀夫代表(政権交代前)は、次
のように街頭で連呼していたのです。
─────────────────────────────
 築地市場移転をやめさせるためには、たった一つ、都議選で
 勝つことです。           ──鳩山由紀夫代表
─────────────────────────────
 これについては、「関連情報」の日本共産党「しんぶん赤旗」
を読んでください。政策がフラフラするようでは、何年経っても
国民の信用は得られないと思います。民主党(民進党)は、それ
にまだ気が付いていないようです。都議会の民進党はどちらかと
いえば自公寄りです。    ──[中央卸売市場論/031]

≪画像および関連情報≫
 ●都議会民主党 また公約破り/「しんぶん赤旗」
  ───────────────────────────
   都立3小児病院の廃止に続いて築地市場移転予算も賛成。
  民主党が自民党と密室協議を重ねたあげくに、築地市場の豊
  洲移転予算に賛成する方針に転じたことは、都議選公約を再
  び投げ捨てるものにほかなりません。
   民主党は昨年7月の都議選で「築地市場の移転に・・民主
  党は、「民主はNO/自民はYES」をマニフェストの最重
  点に掲げました。築地市場前での告示第一声で鳩山由紀夫代
  表は、「築地市場移転をやめさせるためには、たった一つ、
  都議選で勝つことです」と強調。多くの都議候補が「築地市
  場は現在地で再整備」と公約しました。
   都議選の結果、与党の自民党・公明党が過半数を割り、日
  本共産党、民主党、生活者ネット・みらいが過半数を占め、
  石原慎太郎知事の無謀な市場移転計画にストップをかけるこ
  とができる議会構成となりました。
   猛毒物質のベンゼン、シアン化合物、ヒ素で高濃度汚染さ
  れた豊洲地区への市場移転計画には、仲卸業者や消費者団体
  日本環境学会など各団体が反対、集会やデモには日本共産党
  のほか民主議員も参加しました。
   移転問題が焦点となった今都議会で、日本共産党は新年度
  の中央卸売市場会計予算案から移転関連予算全額を削除する
  修正案、民主党は用地取得費だけ削除する修正案を各会派に
  提示。「土地購入費削除」の一点で共同すれば豊洲移転にス
  トップをかけられる可能性が生まれました。
                   http://bit.ly/2vT9RQ7
  ───────────────────────────

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現在の野党について語る/小沢一郎氏
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2017年08月15日

●「豊洲予算への民主党の不可解対応」(EJ第4583号)

 東京都は、何回かに分けて、豊洲の土地を購入しています。東
京都はその都度予算案を議会の審議にかけて通しています。なか
でも節目というべき予算の可決は次の2つです。
─────────────────────────────
  1.豊洲新市場予定地の用地取得費1260億円の可決
               ──2010年3月30日
  2.豊洲移転の経費を含む中央卸売市場会計予算の可決
               ──2011年3月11日
─────────────────────────────
 これらの2つの予算案を阻めば、築地市場の豊洲移転は阻止す
ることはできたはずです。しかるに、結果としてこれら2つ予算
案は、当時都議会第1党の民主党が原因で、可決されています。
民主党は、2009年夏の都議選で圧勝し、54議席を獲得し、
都議会第1党になっています。ちなみに民主党は、都議選で「移
転反対」を公約にして勝利しているのです。
 「1」に関しては、昨日のEJで述べた通り、民主党は、付帯
決議として民主党の要望が盛り込まれたので、可決に賛成したと
主張していますが、その「付帯決議」とは次の通りです。
─────────────────────────────
 築地市場の老朽化を踏まえると、早期の新市場の開場が必要で
あるが、これを実現するためには、なお解決すべき課題が多いこ
とから、予算の執行に当たっては、以下の諸点に留意すること。
 1.議会として、現在地再整備の可能性について、大方の事
   業者の合意形成に向け検討し、一定期間内に検討結果を
   まとめるものとする。知事は議会における検討結果を尊
   重すること。
 2.土壌汚染対策について、効果確認実験結果を科学的に検
   証し、有効性を確認するとともに、継続的にオープンな
   形で検証をし、無害化された安全な状態での開場を可能
   とすること。
 3.知事は、市場事業者それぞれの置かれている状況及び意
   見などを聴取し、合意形成など「新市場整備」が直面し
   ているさまざまな状況を打開するための有効な方策を検
   討すること。
          ──「都政新報」 http://bit.ly/2hT3iao
─────────────────────────────
 この付帯決議は、築地市場の再整備について可能性を検討し、
豊洲に移転する場合は、市場関係者の合意と、豊洲市場の土壌汚
染対策をオープンで行い、無害化の状態で開場できるようにする
など、「築地市場の移転反対」を掲げていた党としては、きわめ
てゆるい条件といえます。そもそも「付帯決議」には法的拘束力
はなく、移転反対の公約に反する行動をとることの単なるエクス
キューズでしかないものです。
 「2」の予算案の可決の経緯について述べます。
 この予算は、豊洲移転の経費を含む中央卸売市場会計予算であ
り、これが決まると、築地市場の豊洲への移転は事実上決まって
しまう重要な予算です。
 この予算が審議されたときの都議会の情勢は、定員127人の
うち欠員が1人おり、議長を除くと125人、豊洲移転の賛否で
は「賛成62対反対63」で、反対派の方が1票ながら上回って
いたのです。
 ところが、反対のはずの民主党議員が1人裏切って移転賛成派
に回り、予算案は可決されたのです。またしても民主党によって
豊洲移転がほぼ確定することになります。そこには一体何があっ
たのでしょうか。
 裏切ったのは、「東京都中央卸売市場築地市場の移転・再整備
に関する特別委員会」の委員長を務めていた民主党の花輪智史議
員です。花輪氏は、都議会で議決の直前、民主党に会派離脱届を
出して、姿をくらましたのです。
 2011年3月11日の採決当日、行方不明だった花輪智史議
員は、自民党議員2人にガードされて議場に姿を現し、花輪議員
が予算案に賛成票を投じて、予算案は可決されます。この状況を
見れば、誰が考えても自民党の有力者があることを条件にして、
花輪議員を取り込み、寝返らせたことは明らかです。これを主導
したのは、落選中の内田自民党都連幹事長ではないかといわれて
います。その約1時間後にあの東日本大震災が起きるのです。
 花輪議員は、3月25日付で、会派離脱の理由と、なぜ自分が
築地市場の豊洲移転に賛成したかについて、次のブログで詳細に
述べています。その一部を掲載します。
─────────────────────────────
◎「私の決断」/2011年3月25日
 私は、一昨年の9月25日から「東京都中央卸売市場築地市場
の移転・再整備に関する特別委員会」委員長の職にありました。
 この特別委員会は、3人の学識経験者と15人の業界関係者な
どの参考人招致を含め、1年半にも及び、委員会と理事会を開催
し、土日も含めて、熱心かつ真摯な議論を重ねてまいりました。
また、大阪市中央卸売市場の視察も実施し、議論を深めてまいり
ました。公正中立な委員会の運営に努めるという使命を負った委
員長であったがゆえ、この間、私は、所属していた都議会民主党
の一議員という立場を超えて、築地市場の移転・再整備について
冷静に考えることができたと思っています。
 こうした議論と熟考を重ねた末、申し上げなければならないこ
とは、「この問題をこれ以上先送りすることは許されない」とい
うことです。私、花輪ともふみは、この時点で築地市場の移転・
再整備問題に「結論を出す」大きな決断をするに至りました。
 私は、都民のみなさんのために最良、最善の選択は何かを熟慮
した結果、今回、豊洲移転経費を含む東京都中央卸売市場会計予
算に賛成いたします。         http://bit.ly/2uzg9oo
─────────────────────────────
              ──[中央卸売市場論/030]

≪画像および関連情報≫
 ●カネのために魂を悪魔に売ると大災害が起きる?
  ───────────────────────────
   2011年3月11日の現実に起きたドラマは凄いもので
  ある。東日本大震災は2011年3月11日の14時46分
  頃。この14時46分頃という時刻はSF小説の小松左京著
  「日本沈没」での日本沈没が始まる時刻とほぼ同じ。そして
  2011年3月11日13時何分(正確には解らないが13
  時代)に、都議会で63票VS62票で築地市場の豊洲移転
  が決定する。
  ―――――――――――――――――――――――――――
    ◎築地市場豊洲移転決定
        →2011年3月11日13時××分頃
    ◎東日本大震災
        →2011年3月11日14時46分頃
  ───────────────────────────
   上記の二つの大事件は因果関係があるのか?ありそうであ
  る。しかしその関係をハッキリさせることは当然難しい。し
  かし世界には偶然というものは存在しない。この二つの大事
  件は非常に深く関係しているだろう。
   築地市場が豊洲市場に移転を決定する投票は、63票VS
  62票で決まった。たった1票差。しかもその大事な1票と
  投じた人物は、ずっと反豊洲移転派の民主党都議であった。
  しかし投票の直前に行方不明となり、2011年3月11日
  の投票日に豊洲移転推進派の自民党の都議に守られて、豊洲
  移転賛成に1票を投じたのである。http://exci.to/2wTPVcC
  ───────────────────────────

モーニング・ショーのフリップ.jpg
モーニング・ショーのフリップ
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2017年08月14日

●「豊洲移転予算はなぜ成立したのか」(EJ第4582号)

 築地市場の豊洲移転を推し進めた石原都政にとって、大きな誤
算の1つは、2009年都議選における自民党の惨敗です。この
とき自民党は48議席を10議席減らし、38議席しか獲得でき
ず、第1党の地位を失います。これは1965年の黒い霧事件に
よる自主解散で日本社会党に第1党を奪われて以来の大敗です。
2009年7月12日の都議選の結果は次の通りです。
─────────────────────────────
      ◎2009年7月12日/都議選結果
            獲得議席  改選前議席
      自由民主党   38     48
      公明党     23     22
      民主党     54     34
      生活者ネット   2      4
      日本共産党    8     13
      無所属      2      4
─────────────────────────────
 当時豊洲移転を推進していたのは、自由民主党と公明党に無所
属であり、豊洲移転に反対していたのは民主党、生活者ネット、
日本共産党です。選挙前と選挙後の推進派と反対派の数は次のよ
うになります。
─────────────────────────────
        豊洲移転推進派  豊洲移転反対派
     選挙前     74       51
     選挙後     63       64
─────────────────────────────
 選挙の結果、たった1票差ではあるものの、豊洲移転反対派の
票が賛成派を上回ったのです。なお、この選挙で内田茂氏は落選
しましたが、自民党東京都連幹事長の職は続けています。確証は
ないものの、この間、内田東京都連幹事長は築地市場の豊洲移転
に向けて、種々の裏工作を行ったものと推定されます。
 この2009年夏の都議選について、日本共産党赤旗編集局は
次のように書いています。
─────────────────────────────
 09年夏の都議選で、共産党都議団は13から8議席に後退す
る一方、民主党は、「築地市場の移転に民主党はNO!自民党は
YES」とマニフェストに掲げ、34から54議席になり、築地
市場の豊洲移転問題で反対を表明する会派が多数となりました。
 その結果、その直後の9月の都議会第3回定例会で「東京都中
央卸売市場築地市場の移転・再整備に関する特別委員会」が設置
されます。
 翌10年の都議会第1回例会で、共産党都議団は、市場会計に
おける築地市場の1300億円近い豊洲新市場移転関連経費を削
除する修正案を提出しました。都議選で「移転ノー」を公約した
政党・会派が共同すれば、少なくとも移転用地購入費を削除でき
たのです。ところが民主党は、移転中止の公約を破り、共産党の
修正案に反対し、自らは修正案も提出せずに、予算に賛成したの
です。     ──赤旗編集局著/日本共産党東京都議団監修
     「徹底追及【築地市場の】豊洲移転」/新日本出版社
─────────────────────────────
 1票差であっても多数は多数です。「これで豊洲移転を阻止で
きる」と日本共産党東京都議団が考えても不思議はありません。
なぜなら、民主党は「豊洲移転NO!」を公約に掲げて選挙戦を
戦ったのですから当然のことです。
 しかし、多数をとったはずの民主党は、その後の重要な局面に
おいて不思議な行動をとることになります。なお、選挙後に設置
された上記の「東京都中央卸売市場築地市場の移転・再整備に関
する特別委員会」の委員長は、民主党の花輪智史氏という議員で
あることを覚えておく必要があります。
 このとき、豊洲移転の重要局面といえば、予算の都議会におけ
る承認です。
─────────────────────────────
  1.豊洲新市場予定地の用地取得費1260億円の可決
  2.豊洲移転の経費を含む中央卸売市場会計予算の可決
─────────────────────────────
 上記「1」については、都議会予算特別委員会において、第1
党である民主党は、反対であったはずの築地市場の移転関連予算
について、一転して賛成に回り、可決されています。これについ
て、「都政新報」(2010年3月30日)は、次のように報道
しています。
─────────────────────────────
 都議会予算特別委員会は28日未明、築地市場の移転関連経費
の扱いで対立していた中央卸売市場会計予算案に付帯決議を付け
て、民主、自民、公明の賛成多数で可決した。民主党は、豊洲新
市場予定地の用地取得費1260億円を削除する修正案を準備し
ていたが、提案を見送り、原案可決に回った。同党の大沢昇幹事
長は「修正案と同等の意味合いを持つ付帯決議がまとまり、我々
の要求が盛り込まれた」と語った。しかし、会派内からは「都が
現在地再整備をフェアに検討してくれるのか」と懸念する声も聞
かれた。本会議の採決は、きょう30日に行われ、都青少年健全
育成条例改正案を除くすべての議案が可決される見通し。
                   http://bit.ly/2hT3iao
─────────────────────────────
 豊洲移転反対の公約を掲げた選挙戦を戦って勝利したはずの民
主党は、なぜ移転関連予算に賛成したのでしょうか。もし、民主
党が反対すれば、1260億円の移転関連経費は予算から削除で
きたのです。それが一転しての可決です。そこに何らかの裏工作
があったのではないかと疑われているのです。
 民主党のいい分としては、「付帯決議が通ったので、修正案を
用意していたが、撤回した」といっているのですが、どのような
付帯決議でしょうか。    ──[中央卸売市場論/029]

≪画像および関連情報≫
 ●民主、予算案賛成へ「都民から裏切りだ」/しんぶん赤旗
  ───────────────────────────
   東京都が築地市場(中央区)を高濃度の有害物質で汚染さ
  れた江東区豊洲地区に移転させようとする問題で、都議会民
  主党は2010年3月27日、移転経費を盛り込んだ新年度
  都中央卸売市場  会計予算案に賛成し、移転予定地の購入
  費を削除する修正案の提出を取りやめる方針を固めました。
  昨年の都議選での公約を破るもので、都民から「裏切りだ」
  との批判があがっています。同党は土地購入費を削除する修
  正案を各会派に提示していましたが、自民党などと密室協議
  を重ねた結果、提出を取りやめたもの。
   27日の都議会予算特別委員会で民主党の和田宗春都議は
  「現在地再整備を検討すべきだ」としながら、土地購入費の
  削除は求めませんでした。
   日本共産党の大山とも子都議は、マスコミの世論調査でも
  6〜7割が豊洲移転に反対し、築地での再整備を望んでいる
  ことをあげ、「築地市場の現在地再整備は技術的には十分可
  能であり、再整備案を公募しないのは無責任だ」ときびしく
  批判しました。日本共産党は、土地購入費を含む移転関連経
  費1281億円を全額削除する修正案を発表。民主党などに
  対し土地購入費削除の一点で共同し、修正案を成立させるよ
  う申し入れていました。      http://bit.ly/2fAdROS
  ───────────────────────────

予算案可決後の石原知事.jpg
予算案可決後の石原知事
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2017年08月10日

●「なぜ内田茂氏はドンと呼ばれたか」(EJ第4581号)

 2005年7月、石原知事の側近の浜渦副知事が辞任に追い込
まれます。しかし、石原知事は、浜渦氏が辞任した後も、相変わ
らず週に2〜3回しか登庁しないのです。その間の仕事はすべて
部下に任せ切りです。
 2005年〜2007年までの知事日程表によると、知事の登
庁日数は次のようになっています。
─────────────────────────────
       2005年 ・・・・ 129日
       2006年 ・・・・ 126日
       2007年 ・・・・ 103日
─────────────────────────────
 これによると、石原知事は3日に一度しか登庁していないこと
になります。非常に良い身分です。石原氏は、この3年の間に作
家として次のベストセラーを出しています。
─────────────────────────────
 「俺は君のためにこそ死ににいく」(映画脚本)/2005
 「老いてこそ人生」(幻冬舎文庫)/2002
 「新・堕落論─我欲と天罰」(新潮新書)/2011
─────────────────────────────
 知事が3日に一度しか登庁しないので、その間の知事の仕事を
カバーしていたのは、かつての浜渦副知事であり、そのため浜渦
副知事は副知事でありながら、事実上知事の権限の一部を行使し
ていたといえます。これでは浜渦独裁になります。
 それでは、浜渦氏が辞めた後は誰がその役割をやっていたので
しょうか。
 その役割は、内田茂氏が浜渦氏から引き継いだのです。つまり
内田氏は、都議会議員として都議会議長を務めながら、浜渦氏に
代わって副知事の仕事を手伝い、さらに自民党東京都連の幹事長
も務めていたことになります。これが石原知事在任中は続いてい
たことになるので、これなら、東京都議会のみならず、東京都選
出の自民党議員に対しても、内田氏が絶大な権限を有していたこ
とが理解できると思います。もちろん、築地市場の豊洲移転につ
いても内田氏は深く関与しています。
 それでは、なぜ、石原知事は、内田茂氏に心を許したのでしょ
うか。都知事選のときは、内田氏のことを「都庁の悪人」といい
その悪人を退治するとまでいっていたのにです。
 これについて、東京都政に詳しい政治評論家の鈴木哲夫氏は、
ベテラン国会議員の言葉として、次のように述べています。
─────────────────────────────
 石原知事は都議会自民を守旧派に見立ててみずからの存在を高
めようとしていました。本来、都議会自民党は徹底的にケンカし
ていい敵でしたが、内田さんは逆に石原人気を利用し、むしろ味
方につければいいと考えるのです。石原知事側近であり、剛腕で
強敵の浜渦武生元副知事だけは表立って辞任に追い込み、一方で
は、石原知事の子煩悩を利用して2人の息子、伸晃さんと宏高さ
んをいわば人質≠ノした。         ──鈴木哲夫著
  『誰も書けなかった/東京都政の真実』/イースト・プレス
─────────────────────────────
 東京都政のトップという重要な役目を担いながら、3分の1し
か登庁せず、自分の関心のあることしか真面目に向き合おうとし
ない石原知事の仕事ぶりに心底怒りを覚えますが、それが築地市
場の移転にどのように影響して行ったのかについて、このあとの
EJで考えていくことにします。
 石原知事が設置した専門家会議は、2008年7月に土壌汚染
対策の専門家会議の結論をまとめて、解散しています。その結論
は、次の2つの柱から成っています。
─────────────────────────────
 1.東京ガスの工場のあった旧地盤面から2メートルの土を
   入れ替え、その上に2・5メートルの盛り土をする。
 2.地下水管理システムを設計・構築し、汚染地下水が上昇
   して盛り土を再汚染しないようにコントロールする。
─────────────────────────────
 もう少し詳しく解説します。まず、最も汚染のひどい旧ガス工
場の地盤面から地下2メートルまでの土をすべて入れ替え、その
上に2・5メートルの盛り土をするのです。盛り土は、ベンゼン
や揮発性ガスの上昇を抑えるのに有効な措置です。
 しかし、それでは、その盛り土の下に汚染された地下水が残っ
てしまい、せっかくの盛り土が再汚染される恐れがあります。そ
のため、地下水を浄化する管理システムを構築し、盛り土の再汚
染を防ぐというものです。
 この専門家会議の決定には、よくわからないながらも、それな
りの説得力があったので、仲卸業者などの豊洲移転反対派の市場
関係者の一部には「ここまでやってくれるなら」と、築地移転の
ための準備に取り組む業者も出はじめていたのです。
 しかし、小池知事の時代になって、この盛り土がなく、その部
分には地下空間ができていたことが判明したのです。これは、専
門家会議が結論として出した土壌汚染対策が無意味になることを
意味します。しかし、これについては、後から述べるとして、そ
の先を進めます。
 この専門家会議の結論は、2008年8月に新発足の技術会議
に委ねられ、2009年2月に「豊洲新市場整備方針」が決定さ
れます。この方針には、間違いなく盛り土はあったのです。
 土壌汚染問題が解決したことに自信を持った石原知事は、20
10年10月22日に議会で築地市場の豊洲移転を正式に表明し
ます。そして石原知事は次のように宣言したのです。
─────────────────────────────
 もし、議会が決めかねているならば、知事が大きく歯車を回す
ことになる。                 ──石原知事
─────────────────────────────
              ──[中央卸売市場論/028]

≪画像および関連情報≫
 ●「豊洲の盛り土」/専門家会議
  ───────────────────────────
   2007年に「4・5メートルの盛り土が前提」と答申を
  出した専門家会議が、問題発覚を受けて再結集した。座長の
  平田健正・放送大学和歌山学習センター所長が17日、都庁
  で会見を開き、今後の対策を示した。
   会見にはオブザーバーとして会議に参加する「市場問題プ
  ロジェクトチーム(PT)」の小島敏郎座長(元環境省審議
  官・弁護士)も臨席した。
   開口一番、平田座長は「前回と同じメンバーで、事務局も
  都から独立する形であればお引き受けする」と条件を都に突
  きつけたことを明らかにした。
   本来ならば、自分達が専門的見地から提言した事を頭から
  無視した東京都に、また協力する筋合いは無い。専門家会議
  は都からのフリーハンドを約束させた。再調査したデータも
  専門家会議で一元管理する。会議は全て公開の席上で行ない
  答申の時期も制約はないという。
   平田座長は、メディアに対しても公平でない部分が多々あ
  るとし、全て情報は会議を通すと明言した。
   この日、平田座長は冒頭発言だけでなく記者との質疑応答
  まで、会見の一切を取り仕切った。都に任せると都合のいい
  記者に都合のいい質問をさせるからだ。平田座長はまた「築
  地市場の方々とのコミュニケーションができるような雰囲気
  作りが一番大事。会議の席上でご意見を伺って行きたい」と
  述べた。             http://bit.ly/2d4TaJZ
  ───────────────────────────

都議会本会議における内田茂都議.jpg
都議会本会議における内田茂都議
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2017年08月09日

●「『石原VS内田』の凄まじい暗闘」(EJ第4580号)

 もう一度東京都知事のポジションについて考えてみる必要があ
ります。石原慎太郎氏は、自民党の国会議員でしたが、だからと
いって、都議会自民党から支援を受けられるかというと、それは
関係がないのです。なぜなら、東京都知事も都議会議員も都民か
ら直接選挙で選ばれるからです。
 石原氏が1999年4月に都知事選に出馬したとき、都議会自
民党は、当時の森喜朗自民党幹事長とともに、元国連事務次長の
明石康氏を担いで、石原氏と戦っています。したがって、都議会
自民党と自民党にとって石原陣営は敵なのです。ちょうど小池知
事が立候補した状況とよく似ています。
 まして石原氏は、1995年の衆院本会議で勤続25年表彰を
受けた際の挨拶で議員辞職を表明しています。そのとき、おおよ
そ次のような刺激的な発言をしています。
─────────────────────────────
 私が所属する自民党を含めてすべての政党は、最も利己的で卑
しい保身に走っている。このような何もしない政党には、とても
いる気がしないので、この機会に国会議員を辞職したい。
             ──石原慎太郎衆議院議員(当時)
─────────────────────────────
 それだけに、1999年に突如都知事選に出馬を表明したとき
は、都民からかなりの驚きをもって受け止められ、既成政党批判
の受け皿にもなって、都知事選に勝利を収めています。しかし、
こういう状況で誕生した都知事は、都議会の運営には相当の苦労
を強いられるものです。石原都政も副知事人事すら決まらない状
況で最初からつまづいたことは、既に述べた通りです。
 権力というものは、それが何であれ、長期化すると、必ず腐敗
するものです。都議会自民党も長い間にわたって、自分たちの天
下がいつまでも続くように、それこそ営々と数多くの利権を作り
上げてきたのです。彼らにとってときどき代わる都知事に対し、
何かというと「二元代表制」を口にし、知事と都議会は車の両輪
であると主張し、どんな知事が誕生しようとも、何ら恐れること
はなかったのです。
 自分たちに従わなければ知事を潰すし、知事が従えば是々非々
で協力するものの、利権には知事といえども絶対に手を触れさせ
ない姿勢を堅持したのです。それが如実にあらわれたのは、20
09年の都議会議員選挙です。民主党が自民党に勝利し、政権交
代を成し遂げた年の都議選です。
 このとき、都議選で自民党候補は大量落選し、東京都連幹事長
を務めていた内田茂氏も落選しています。この事態に石原知事を
はじめ東京都選出の自民党国会議員たちは、チャンス到来とばか
り、内田氏を都連幹事長の座から外そうとしたのです。しかし、
それは失敗し、内田氏は落選議員でありながら自民党東京都連幹
事長の職を続け、利権を死守しています。
 そのときの自民党東京都連の混乱を元東京都議会議員で、現在
「都民ファーストの会」の代表を務める野田数氏は、ブログで次
のように述べています。
─────────────────────────────
 当時の石原慎太郎知事も加わり、石原伸晃都連会長以下、都連
の国会議員は、落選した内田氏を都連幹事長から外そうとしてい
た。しかし、都議会議員の数が圧倒的に多く、多勢に無勢であっ
た国会議員と石原知事は、都議会議員の抵抗になすすべがなかっ
た。加えて東京都連の幹事長職は、東京都内の各級選挙の公認権
を持ち、業界団体に対しての影響力も強いため、小選挙区選出の
国会議員は最後まで抵抗しきれなかったのである。そのときの抵
抗も内田氏本人が前面に出るのではなく、側近で現議長の川井し
げお氏(当時)が数少ない国会議員の前で机をバンバン叩いて威
嚇していたという。私も会派の控え室で「内田先生じゃないとカ
ネ作れないじゃないか!」と凄んでいるのを聞いたことがある。
        ──「私は「都議会のドン」内田茂の裏の顔を
       ここまで知っている!」 http://bit.ly/2aZ0sd3
─────────────────────────────
 2005年5月18日のことです。腹心の浜渦副知事が百条委
員会で答弁を偽証と認定された日の6日後です。石原知事は長男
の伸晃氏の仲介で、内田茂議長と話し合っています。その会談の
目的は浜渦氏を辞任させるので、告発を見送って欲しいという要
請であると思われます。
 内田議長はそれを了承し、ある提案をします。それは石原知事
の三男である宏高氏のことです。当時宏高氏は、みずほ銀行を退
職して、2003年11月の衆院選に東京3区から自民党公認で
出馬したものの落選し、浪人中であったのです。
 たまたま宏高氏の東京3区の隣の4区で、2005年10月に
補選が予定されていたのです。不祥事で同区の中西一善・自民党
衆院議員が辞職したことによる補選です。内田氏はこの4区の補
選で宏高氏が立候補するなら、東京都連として公認を出し、応援
すると提案します。東京都選出の国会議員は、選挙のさいは都議
会議員の応援を受けるので、願ってもない提案です。
 結局、石原知事は、息子を人質にとられ、「浜渦辞任」と「宏
高公認」を取り引きしたのです。実際には宏高氏は、この補選で
はなく、同年9月に突如行われた小泉首相による「郵政選挙」で
東京3区から立候補し、民主党(当時)の松原仁氏を破って初当
選しています。
 しかし、流石の内田茂氏も、腹心の川井前議長も、小池百合子
知事の前では何もすることができず、内田氏は自らの後継者も先
の都議選で当選させられなかったのです。都議会自民党は、20
09年の都議選のときより惨敗し、23名しか当選者を出すこと
しかできなかったのです。公明党と同数です。
 東京都知事が地域政党を立ち上げ、多数の候補者を擁立し、当
選させることによって知事自身の勢力を作る──これは今までの
都知事には誰もできなかったことであり、都議会を改革する新し
い方法であるといえます。  ──[中央卸売市場論/027]

≪画像および関連情報≫
 ●「都議会のドン」内田茂の裏の顔をここまで知っている!
  ───────────────────────────
   2011年7月1日に自民党所属都議会議員の樺山卓司氏
  が自殺した後、都議会上層部のご機嫌取りかウケを狙ったの
  かわからないが、若手の議員たちがこぞって樺山氏の自殺を
  揶揄するような発言をしていた。さらにベテラン議員たちも
  また酒の肴のように冒涜を通り越した言葉を発していたので
  ある。若手からベテランまで、まるで「ポイント稼ぎ」とし
  か思えないような異常ないじめ方だった。
   樺山氏が自殺した時も多くの国会議員に相談したが、誰一
  人として声を上げてくれる人はいなかった。みんな厄介ごと
  のように、樺山氏の問題を封印したのである。この自浄能力
  のない自民党都連が現状のままなら、都民にとっては不利益
  しか与えないだろう。
   東京都議会は首都東京を牽引する議会だから、開かれた議
  論闊達な場だとお思いの有権者も多くいただろうが、実態は
  そのようになっていない。都議会を一言で言えば、ムラ社会
  であり、ムラ議会なのである。議論など一切行われず、とり
  わけ都議会自民党の所属議員は上層部の決定に追随するだけ
  である。たとえ賛否が分かれる案件も一糸乱れることなく賛
  成するのはこのような体質によるものだ。本来であれば、政
  策も自民党内で様々な議論があり、意見集約を経た結果、賛
  成か反対か判断するはずだが、そのようなプロセスもない。
  このものを言わせない体質が大きな問題であり、都民からの
  不信感を呼んでいる。       http://bit.ly/2vdO82P
  ───────────────────────────

野田数都民ファーストの会代表.jpg
野田数都民ファーストの会代表
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2017年08月08日

●「百条委員会での浜渦副知事追放劇」(EJ第4579号)

 なぜ、社会福祉総合学院問題を詳細に書いているのかというと
小池知事が登場するまでの都庁と都議会の関係がどのようなもの
であったかの一端を知るためです。なぜ、市場関係者の意向を無
視して築地市場が豊洲のガス工場の跡地へ移転することになった
のかについても、このことと無関係ではないからです。
 当時、江東区選出の民主党都議会議員であった柿沢未途氏(現
民進党衆議院議員)は、ネット上の「定例会報告」のサイトで、
社会福祉総合学院問題と百条委員会の顛末について、痛烈に批判
しているので、概要をご紹介することにします。かなり長文なの
で、部分的に取りあげて解説します。
 まず、柿沢未途氏はこの百条委員会(2005年5月12日)
によって、なぜ、特別職の3人が辞任することになったのかにつ
いて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 特別職3人が辞表を出すという事態の裏側には、都議会の有力
議員の理事者側への働きかけがあったと言われています。そうし
た議会側の働きかけに応じる形で特別職が辞表を書いたという話
を私たちも聞いています。もしこれが事実だとするなら、議会か
ら執行機関側への重大な政治介入というべきであり、浜渦副知事
の議会への働きかけを云々する資格などありません。
 さらに言えば、強引な「偽証」認定こそ行ったものの、浜渦副
知事の「やらせ質問」に関する立証も十分とは言えません。わが
会派の名取幹事長の証言によれば、わが会派がこの問題に取り組
む端緒となったのは、浜渦副知事の働きかけというより、むしろ
石原知事からの問題提起だったことが明らかになっています。
          ──平成17年第2回定例会/柿沢未途氏
                   http://bit.ly/2vDGm5k
─────────────────────────────
 百条委員会で浜渦副知事は、民主党に「やらせ質問」の働きか
けを行ったのかと質問され、「やっていない」と答えています。
これが「偽証」と認定されたのです。しかし、当の民主党の名取
幹事長は、質問をしたのは浜渦氏というよりも、石原知事からの
問題提起であるといっています。実際、石原知事は2005年5
月20日の記者会見で次のように発言しています。
─────────────────────────────
 名取幹事長とある席で会った時に、「非常にこれについて関心
をもっているので、民主党もこの問題について考えてほしい。詳
しくは、監理団体担当の浜渦から聞いてくれ」と言った。その後
彼が呼ばれて説明をしたと思うが、そのとき、質問をやってほし
いと依頼はしてないはずである。        ──石原知事
                   http://bit.ly/2hpuwFv
─────────────────────────────
 浜渦氏の発言が虚偽であるとするから、「やらせ質問」をする
よう求められた富田政調会長の証言が必要になります。しかし、
富田氏は、自分は社会福祉総合学院問題とは無関係であることを
理由として百条委員会の出席を拒否したのです。そのため浜渦氏
の「やらせ質問」の立証は不十分のままです。
 百条委員会の調査項目は1〜5まであるのですが、「やらせ質
問」に当たるものはなく、強いていえば6の「その他調査に必要
な事項」に辛うじて該当しますが、これはあくまで1〜5に関連
するものであり、「やらせ質問」はテーマではないのです。しか
し、百条委員会では、肝心の社会福祉総合学院問題について質疑
はなく、「やらせ質問」があったなかったに終始したのです。ま
さに、都庁と都議会は伏魔殿そのものです。
─────────────────────────────
 そもそもこの百条委員会は、特定の個人を糾弾し、断罪するた
めに設置された委員会ではありません。社会福祉総合学院の運営
等に関して、違法、不法、あるいは不適正な点はないか、そのこ
とを調査するために設置されたものです。
 にもかかわらず百条委員会の議論は、浜渦副知事の「やらせ質
問」追及に終始し、さらにその立証を目的として、わが会派の富
田議員の証人出頭まで求めてきました。そして「社会福祉総合学
院の運営等と何ら関わりがない」ことを理由として、出頭要請に
応じないと、富田議員は刑事告発相当であるとの議決まで行いま
した。一体、何のために設置された百条委員会だったのか、浜渦
副知事を追い落とし、返す刀で民主党議員を吊るし上げようとい
う、そうした政治的な意図をもった委員会であったのかと勘ぐら
ざるを得ません。  ──平成17年第2回定例会/柿沢未途氏
─────────────────────────────
 これは、何が何でも政敵を追い落とすという当時の都議会自民
党と公明党の暴挙というべきです。さらに、柿沢未途氏は、次の
ように書いて、「定例会報告」を終えています。
─────────────────────────────
 社会福祉総合学院の施設の90%以上が、いや委託部分を含め
ると100%近くが、特定の学校法人の施設として使用されてい
る実態、そしてそれに対して都が総額21億円もの補助金を支出
している実態、包括外部監査でも指摘をされたこうした実態が、
都民の目から見て、はたして適正なものと言えるのか、非常に疑
問です。
 こうした疑問に対して詳細な検討がなされないまま、浜渦副知
事を辞職に追い込んだことをもって、百条委員会は、その幕を閉
じようとしています。まことに本末転倒と言わざるを得ません。
 議会と知事、そして官僚機構を巻き込んだ都庁内の「コップの
中の嵐」を、都民は冷ややかな目で見ています。
          ──平成17年第2回定例会/柿沢未途氏
─────────────────────────────
 このようにして、石原知事は腹心の部下である浜渦武生副知事
を失うのです。その後、石原知事はどのようにして、都政運営を
行ったのでしょうか。これについて興味深い事実があります。
              ──[中央卸売市場論/026]

≪画像および関連情報≫
 ●石原&浜渦都政の異常さを証言からみてみる
  ───────────────────────────
   2005年7月3日投票の都議会議員選挙まで1ヶ月をき
  りました。都議選を前に、石原都知事の30年来の側近・浜
  渦武生副知事の強権的な姿勢が明らかになってきています。
  週に2・3回しか都庁に来ない知事に代わって都庁を支配。
  都庁の各部署は、浜渦氏に事前に説明しないと知事にブリー
  フィング(事業説明)できない状況だったと報じられていま
  す。強権ぶりに気づかなかったという知事の姿勢は情けない
  限りですが。浜渦氏に指示をうけるため、「お手紙」と呼ば
  れる文書を出すことが当たり前。現場の声が届かないトップ
  ダウンの都政運営のもとで、福祉・保育施策も次々に切られ
  ているというのが実態です。
   具体的な証言でふれていきます。「彼は弱者といわれる者
  すべてが嫌いなのです。障害者、高齢者、女性、外国人、貧
  しい人、失業者、ホームレスなど。でも、地方自治体におい
  て、これらの人々のために行う施策は大きな比重を占めるも
  のであり、嫌だから切り捨ててよいものではないはずです。
  しかし、石原慎太郎は、それを行っているのです。弱者や福
  祉などという言葉は彼の前では禁句のようなものでしょう。
  (中略)想定問答を作る職員は、これまで作り上げてきた福
  祉の理念がガラガラと崩れるのを、自ら率先して、理論構成
  していかなければなりません。知事はそれを見て笑っている
  のでしょう。どうせ職員など、局長も含めて、奴隷のように
  しか見ていないでしょうから。   http://bit.ly/2vC2nk8
  ───────────────────────────

柿沢未途衆院議員.jpg
柿沢未途衆院議員
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2017年08月07日

●「35年にわたる都議会の漆黒の闇」(EJ第4578号)

 就任2期目の2005年頃までの石原知事は、思うように仕事
が進まず、焦っていたように感じます。国会議員より自治体の首
長の方が、国のトップのようなものだから何でもできるといわれ
ますが、それには議会をコントロールする必要があります。
 日本では、憲法93条で、地方自治体の首長と地方議員を住民
が直接選挙で選ぶ「二元代表制」をとるよう定めています。二元
代表制では、議員は法律や予算などを審議・決定する権限を有し
ますが、その執行は行政の長が責任をもつため、立法権と行政権
の分離が徹底化されるといわれます。
 石原知事の2期目(1999年4月〜2007年3月)までは
都議会は自公両党が過半数を握っており、なかでも自民党の力が
強く、とくに当時議長の内田茂氏の力が突出しており、知事とい
えども内田氏の了解なしにはことが進まなかったのです。当時野
党第一党の民主党(当時/後の民進党)も、野党というよりも、
与党の自公両党に近いスタンスだったといえます。
 そこで石原知事としては、都議会自民党が死守している最大の
利権である福祉関係の利権のひとつを摘発しようとしたのです。
これが東京都社会福祉総合学院をめぐる事件です。石原知事と浜
渦副知事は、この摘発に乗り出そうとします。
 2005年1月20日のことです。都庁知事室には、包括外部
監査人の守屋俊晴氏(公認会計士)が、監査結果の事前報告にき
ていました。しかし、監査人からは、社会福祉総合学院について
詳しい説明がなかったので、浜渦副知事は、社会福祉総合学院に
ついて詳しい説明を要求します。
 その翌日の21日、再び守屋監査人が補助者の公認会計士を伴
い、浜渦副知事室を訪問し、どのような書類を作成するか知事の
リクエストを浜渦氏に求めたところ、副知事からは「時系列につ
いて報告して欲しい」という要望が出されたといいます。
 2月2日になって、包括外部監査人から「監査報告概要版の補
足説明」という書類が届けられます。そこには、次のようなこと
が書かれていたのです。
─────────────────────────────
◎「監査報告概要版の補足説明」
 敬心学園(社会福祉事業団から物件を借りている学校法人)の
収益事業に対して都が補助金を出していることにもなる。土地と
建物の財産的価値を考慮に入れた賃貸料で契約できるように交渉
し、それができないならば5年間の賃貸借契約の期間満了をもっ
て、更新せず、全庁的に本件資産の有効活用を図るなど、抜本的
な対策を講じる必要がある。
        ──「都政新法報」  http://bit.ly/2hpuwFv
─────────────────────────────
 社会福祉総合学院問題を、補助金の不正疑惑とみるかどうかは
見解の分かれるところですが、知事サイドは不正であると考えた
のです。しかし、不正とする以上は、もっと証拠を揃えるべきで
あり、その根拠とされる書類(上記)を監査人に要求して作らせ
ているところから、都議会自民党はこれを石原知事らによる「疑
惑の捏造」と判断したのです。
 しかし、知事サイドとしては、この問題を議会で取り上げるに
は野党に質問してもらう必要があります。石原知事の「けがにん
が出る」発言の直後に浜渦副知事は民主党の富田政調会長を自室
に呼んで次のように質問を要請します。2005年2月25日の
ことです。
─────────────────────────────
 予算特別委員会で質問をしてほしい。学院の件について、疑問
点を並べてくれればいい。知事が「けしからん。担当の副知事か
ら答弁させる」と言う。あとはすべて自分が答弁する。
                ──上掲「都政新法報」より
─────────────────────────────
 2005年3月3日、本会議の休憩中に民主党の名取憲彦幹事
長は、議長室に内田議長を訪問し、富田政調会長が浜渦副知事に
しつこく質問するよう頼まれ、困っていると相談しています。そ
のとき、内田議長もその件について多くの情報を握っており、名
取幹事長に次のようにアドバイスしています。
─────────────────────────────
 そんなことを民主党の会派として受けたら大問題にもなるし、
議会の中でも孤立する。あなたの会派もバラバラになってしまう
のではないか。議会の立場としても見過ごすことはできない。こ
の問題で私は、一切関与していないのだから、議会に手を突っ込
むようなことはやめさせた方がいい。質問はやらせない方がいい
んじゃないか。         ──上掲「都政新法報」より
─────────────────────────────
 結局、民主党は、知事サイドの要請を受けて、2005年3月
14日、予算特別委員会において、東京都社会福祉総合学院問題
について質問しています。このときの浜渦副知事の答弁が後の百
条委員会の設置に繋がるのです。
 この民主党の質問と浜渦副知事の答弁について、都議会自民党
と公明党は、内容に重大な疑義があるとして、これまで35年間
一度も開催されたことのない百条委員会の開催を決めます。35
年間開催されなかったのは、都議会と都庁との癒着が原因である
ことは明らかです。
 そして、2005年5月12日に百条委員会が開催されたので
す。しかし、そこで審議されたのは、百条委員会のメインの議題
であるべき社会福祉総合学院問題の内容ではなく、浜渦副知事が
民主党に対して議会での質問を働きかけた「やらせ質問」を重大
視し、浜渦氏の答弁を偽証と認定したのです。百条委員会が多数
を持つ与党ペースで、進んだからです。
 百条委員会の結果、浜渦副知事、福永副知事、横山教育長、櫻
井出納長が辞職する騒ぎになったのですが、これは与党勢力が浜
渦副知事を追い落とすための委員会であったことは明らかです。
              ──[中央卸売市場論/025]

≪画像および関連情報≫
 ●浜渦副知事更迭で何が見えたか/世田谷区長保坂展人氏
  ───────────────────────────
   東京都政で前代未聞の「副知事VS自公」の睨み合いは、
  石原知事の側近である浜渦副知事更迭で、いちおうの決着を
  見たかに見える。いかにも伏魔殿と呼ばれる東京都庁と都議
  会を象徴するような話じゃないか。税金の使い道をチェック
  するために議会があるのだとしたら、3月に民主党都議が、
  (浜渦副知事に依頼されたという社会福祉総合学院の運営を
  めぐる問題点)の徹底的な審議するべきだ。
   都議会民主党の対応が、いっそう事態を把握することを阻
  んではいないだろうか。浜渦氏に質問を依頼されたかどうか
  ――これが都議会の自民・公明側が問題にした点だが、「依
  頼されていない」と主張しながら百条委員会に出席しないと
  いう姿勢には疑問が残る。事実、民主党会派内からも批判の
  声もあがっている。
   橋梁をめぐる談合事件では都の発注する工事を請け負って
  きた建設会社に都のOBが天下り、都側の発注情報を得て談
  合調整を進めていたとの報道(5月29日朝日新聞)もあり
  石原都政下の「改革」なるものが官僚利権の撤廃にはほど遠
  いうわべだけのものだったことを示している。
   やがて来月、都議会議員選挙がある。本来なら、都庁・都
  議会を含めた大騒動の顛末が有権者の大きな注目・関心を集
  めてもおかしくないが、現実は正反対だという。「構図が複
  雑」すぎて、いったい何が問題で、誰と誰が衝突して、人事
  紛争となっているのか判らないので関心が持てないというの
  だ。               http://bit.ly/2ufwkXP
  ───────────────────────────

世田谷区長/保坂展人氏.jpg
世田谷区長/保坂展人氏
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2017年08月04日

●「社会福祉総合学院事件の深層探る」(EJ第4577号)

 1999年4月に東京都知事に初当選してから、少なくとも、
2007年4月の都知事第3期当選の頃までの石原都政は、石原
慎太郎氏個人の政治家兼作家の高い人気に支えられ、高い支持率
を誇っていたといえます。2003年に都議会議長に就任した内
田茂氏の率いる都議会自民党も、当初この石原知事の高い人気を
利用しようと考えていたフシがあります。
 しかし内田氏にとってうるさい存在になってきたのは、石原知
事の命を受けて忠実に動く浜渦武生副知事(当時)の存在です。
石原都政は、長い間にわたって守り続けてきた都議会自民党の利
権にまで手をつけようとしてきたからです。
 元来政治家としての石原慎太郎氏は地方の首長よりも国会議員
に向いていると思います。一時期「石原慎太郎を総理にしたい」
と本気で考えていた国民が多くいたことは確かです。「彼なら日
本政治の閉塞感を一掃してくれる」と期待したからです。
 しかし、国会議員としての石原氏はポストに恵まれず、「東京
から日本を変える」をスローガンに東京都知事選に打って出たの
です。それに「伏魔殿といわれる都議会を変える」という強い意
思と正義感をもって都政に臨んだことは確かです。
 ところで、浜渦武生氏という石原慎太郎氏の腹心の部下といわ
れる人物は、2005年7月に100条委員会にかけられ、偽証
をしたとして辞任させられています。それから12年後の今年の
5月に、築地市場の豊洲移転における東京ガスとの交渉において
またしても100条委員会にかけられ、都議会から偽証と認定さ
れています。2回にわたる100条委員会です。
 この事実だけを見ると、浜渦氏は、よほど悪いことをした人物
のように思えますが、2007年の偽証告発の理由について都民
は知る必要があります。それによって、当時の都議会自民党の実
態がわかるからです。浜渦氏が最初の100条委員会にかけられ
たのは、「東京都社会福祉総合学院」に関する事件の関連です。
浜渦氏は、東京都の監理団体の担当を任されていたのです。
 2005年2月23日のことです。東京都政の包括外部監査で
東京都の補助金で建設された東京都社会福祉総合学院の施設が民
間の学校法人に、格安で転貸されている実態が明るみに出たので
す。自民党都議会議員にとって、福祉関係の利権はきわめて重要
です。それを都議会のドンといわれる内田茂都議会議長(当時)
が仕切っており、知事といえども踏み込めない牙城といわれてき
たのです。しかし石原知事は、浜渦副知事を監理団体担当者に任
命し、そこへの切り込もうとしたのです。
 そもそも「東京都社会福祉総合学院」は何であり、何が問題な
のでしょうか。
─────────────────────────────
 この東京都社会福祉総合学院は施設の建設中に当初計画が変更
となり、学校教育を終え社会に一端出た後、最新の知識や高度な
技術を習得するために行なわれるいわゆるリカレント教育に特化
するということになった。その結果、東京都社会福祉総合学院は
開校時、昼間はほとんど施設を利用しないことになっていた。
 東京都社会福祉総合学院は、翌年、昼間に空いた教室を民間の
学校法人に貸し付けた。同時に、夜間行なっている学院の事業も
同じ民間の学校法人に運営委託するとしたのである。その後、民
間の学校法人は、東京都社会福祉事業団と5年間の定期建物賃貸
借契約を結ぶとともに、新たな専門学校である臨床福祉専門学校
を設立し、昼間の空いた教室を使用し現在に至っている。
                   http://bit.ly/2u61jFo
─────────────────────────────
 社会福祉事業団は、金融機関から融資を受けて校舎を建設して
います。当然、支払いが発生しますが、それは全額東京都からの
補助金で支払えるのです。そもそもなぜ補助金が出るかというと
社会福祉事業団の事業を援助するためです。
 しかし、社会福祉事業団は学校施設を民間の学校法人に貸し付
け、本来事業団が行うべき事業(リカレント教育)もその学校法
人に委託しています。もちろんは学校施設のテナント料は入りま
すが、結果として、東京都が民間の学校法人に補助金を継続的に
出しているのと同じになります。包括的外部監査報告によると、
その総額は21億円以上になるというのです。
 浜渦副知事は、知事の指示をバックに、包括外部監査人と都庁
の総務、財務、福祉保健の3局長に対して、精力的に調査をはじ
めたのです。その都度浜渦副知事から報告を受けている石原知事
は、定例会見でこの問題について次のように発言しています。
─────────────────────────────
 とても大事な問題が出てきて私もちょっとびっくりしている。
都有地を使って、特定の学校法人が学校を設置して運営している
ということだが、私は認めた覚えはない。(平成)13年11月
に民間に委託するということだけは聞いたが、かなり無理なこと
をしている感じがする。大体、学校なんて、前後合わせて3ヶ月
でできるもんじゃない。しかも、残っている文書の中に「特例中
の特例」だとか、どういう権限で出たかわからない「念書」なる
ものがあって、とっても大変な問題だと思う。そういう形で運営
されていたのは初めて聞いた。正すものは正していかないといけ
ないと思っている。けが人が出るかもしらんね、この問題は。
                   http://bit.ly/2hpuwFv
─────────────────────────────
 「けが人が出るかもしれんね」──この発言は石原知事から都
議会のドンといわれる内田都議会議長に対する強烈な牽制になっ
たのです。石原知事が選挙中にいっていた「都知事の悪人を成敗
する」を実行に移すぞという都議会自民党への石原流の威嚇だっ
たと考えられます。
 しかし、石原知事も浜渦副知事も、少し事態を甘く見ていたよ
うです。結果としてこの悪人成敗は失敗し、石原知事は腹心の部
下である浜渦副知事を失うことになるのです。これについては来
週のEJで述べます。    ──[中央卸売市場論/024]

≪画像および関連情報≫
 ●政争に終わらせてはいけない東京都の社会福祉法人問題
  ───────────────────────────
   学院の建物は、学院の委託事業および独自の福祉人材養成
  事業を学院の建物を用いて行うという条件のもと公募した結
  果、平成14年4月に特定の学校法人に5年間の定期建物賃
  貸借契約を結んで一括賃貸されており、建物の90パーセン
  ト相当部分は特定の学校法人が使用し、賃貸料収入は事業団
  の収益事業として計上されている。
   学院の建物は、特定の学校法人が継続的に使用する可能性
  があるが、借入金償還額および利息相当額は、すべて都から
  の補助金として事業団に支出されており、現況を維持すれば
  今後、平成22年までに約18億円、累積で約21億円が都
  から支出されることが見込まれている。
   学院建物の賃貸料はプロポーザル方式による提案額を参考
  として決定されている。平成15年度の賃貸料は56700
  千円であるのに対し、その維持コストは、東京都が所有する
  土地の地代を考慮しなくても現在の賃貸料より大きな費用で
  あり、学院建物の建設経緯と福祉人材養成機関としての性質
  を考慮しても現在の賃貸料とは大きな乖離がある。
   施設の活用状況を見ても、1)シャワー設備付きアリーナ
  2)防音装置付きピアノ練習室および3)OA室等の利用度
  はきわめて低いままになっている。
   よって、このような学院運営の実態を踏まえ、都からの補
  助を極力削減できるよう、学院の運営のあり方について抜本
  的な見直しを図られたい。     http://bit.ly/2vvoDwR
  ───────────────────────────

浜渦武生氏/内田茂氏.jpg
浜渦武生氏/内田茂氏
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2017年08月03日

●「激しい対立と確執/浜渦VS内田」(EJ第4576号)

 ここで再び内田茂氏に話を戻します。以下は次の「週刊文春」
の記事を参照にして記述します。
─────────────────────────────
 「石原慎太郎とドン内田“無責任コンビ”の癒着『豊洲問題』
混迷の元凶」    ──「週刊文春」2016年10月6日号
                   http://bit.ly/2tXoIou
─────────────────────────────
 石原慎太郎氏がはじめて当選を果たした1999年4月の東京
都知事選。そのとき、都議会自民党幹部の内田茂氏は、森喜朗自
民党幹事長(当時)と一緒に、明石康元国連事務次長を擁立して
います。それに対する石原陣営は、内田茂氏を念頭に次のスロー
ガンを掲げていたのです。「ブラックボックスと戦う」といって
いた小池氏とよく似ています。
─────────────────────────────
          都政の悪人を成敗する
─────────────────────────────
 したがって、石原氏が知事になったときは、知事と都議会自民
党は険悪な関係にあったといえます。石原知事がそのことを思い
知るのは、腹心の友の浜渦武生氏を副知事に就任させる人事案が
議会で否決されたときです。当時都議会では自民党と公明党が過
半数を握っており、それに加えて内田氏が都議会運営に強い影響
力を発揮できたので、知事の人事案を否決できたのです。
 人事案だけではなく、予算案をはじめ、知事の出すほとんどの
案に対し、議会はことごとく反対します。これには、石原知事も
困り果て、当時の小渕恵三首相に「議会が回らないので、助けて
欲しい」と頼み込みます。結局、野中官房長官(当時)の仲介で
内田氏との手打ちの場が築地の料亭に設営されます。
 その場には、野中官房長官、内田茂氏と都議3人が顔を揃えた
のですが、その席で石原知事は「よろしくお願いします」と頭を
下げ、内田氏との手打ちが行われます。そして、その直後に石原
知事は築地を視察し、「狭い、古い、危ない」と発言しているの
です。築地市場の移転についても、その場で何らかのやり取りが
あったものと思われます。そして、約1年後の2000年7月に
浜渦氏の副知事就任を都議会は承認しています。
 浜渦氏は副知事に任命されると、石原知事の命を受け、豊洲の
土地取得のため、東京ガスとの交渉に辣腕を振うのですが、実は
豊洲のある江東区の区長にも手を打っています。東京都の優位性
をフルに使った巧みな交渉です。しかし、その結果、豊洲の土地
は取得できたものの、東京都にとって非常に高い買い物になって
しまったのです。
─────────────────────────────
 浜渦氏は、当時の江東区長に「豊洲に架かる橋を5本、環状2
号線の整備、観光施設の開設」を約束し、江東区長から東京ガス
に「跡地を新市場に」と要望させた。東京ガスにも工事費軽減な
どの“アメ”を与え、2001年7月に移転合意にこぎつけたの
です。しかしその後も東京ガスに譲歩を重ねた結果、都は“汚染
された土地”に“きれいな土地”並みの代金を支払う羽目になっ
た。その額は計1900億円近くにのぼります。(都庁幹部)
          ──「週刊文春」2016年10月6日号
─────────────────────────────
 石原元知事は、自分に関心のあることしか興味はなく、興味の
ないことは人任せにしてしまうところがあります。市場移転問題
も、興味のない仕事のひとつです。都庁への出勤も週に2〜3回
で、その分副知事、とくに信頼している浜渦氏にすべて任せてし
まうことが多かったといいます。そのため、浜渦氏は都庁内で大
変強い権限を握ることになります。そのことを「週刊文春」は次
のように書いています。
─────────────────────────────
 浜渦氏に説明に行く時は手紙を書かないといけない。手紙を見
て、来る必要のない職員には電話で断ったり、×と返事を出した
りしていました。気に入らないことをした職員には詫び状も書か
せていた。この“お手紙行政”によって、浜渦氏は情報をコント
ロールするシステムを作り上げたのです。(元都庁幹部)
          ──「週刊文春」2016年10月6日号
─────────────────────────────
 そういう浜渦氏に対して、内田茂氏は警戒を強めつつも、石原
知事の人気は利用できると考えます。「是々非々で行く」という
のが内田氏の考え方です。これは、石原都政では成功しましたが
小池都政には通じなかったといえます。
 2003年に内田氏は都議会議長に就任します。議長は権力の
象徴です。都議会自民党は、国との太いパイプを利用し、さまざ
きな利権を握ってきたのです。都知事と議会はどちらも東京都民
から選挙で選ばれており、「二元代表制」であるとして、どのよ
うな知事が就任しても都議会、なかんずく都議会議長は都政に対
して大きな影響力を持つことになります。しかし、浜渦氏が事実
上知事の権限を代行するようになると、内田氏の利権にもどんど
ん手を突っ込んできたのです。2004年に大手町の合同庁舎跡
地が三菱地所に払い下げられる計画をめぐり、浜渦氏と内田氏は
激突することになります。この場面に誰もが知っている意外な人
物が登場します。
─────────────────────────────
 国の都市再生本部の和泉洋人氏(現・首相補佐官)と連携し、
この計画を主導していたのが浜渦氏です。一方、地元業者から陳
情を受けていた内田氏は特定企業を優遇していると不満を持って
いた。04年末、議長室で内田氏は浜渦氏と話し合いましたが、
交渉は決裂。内田氏は激怒していました。浜渦氏は後に三菱地所
と都が出資する東京交通会館の副社長に天下りします。
          ──「週刊文春」2016年10月6日号
─────────────────────────────
              ──[中央卸売市場論/023]

≪画像および関連情報≫
 ●三菱地所などに恩恵/特定企業利する「都市再生」
  ───────────────────────────
   都心の国有地を入札なしの随意契約で安く売らせ、その後
  土地の容積率を一気に現行の2・4倍に当たる最高クラスの
  1690%にまで引き上げて延べ床面積を増やし、開発する
  三菱地所などに大きな利益をあげさせる――。石原都政と小
  泉内閣の肝いりで進んでいる「都市再生」プロジェクトの計
  画案が本紙の調べで判明しました。特定企業を利する不透明
  さに地元の東京・千代田区でも批判が出ています。
   この国有地は東京・大手町合同庁舎跡地約1・3ヘクター
  ル。もともと競争入札で売却される予定でしたが、石原都知
  事が2002年秋、塩川財務相(当時)に「大手町地区の街
  づくり」に向けた「処分」を要望。その後、政府の都市再生
  本部(本部長・小泉首相)が「大手町合同庁舎跡地の活用に
  よる国際ビジネス拠点」づくりとして第5次都市再生プロジ
  ェクトに決定しました。国、都はそれぞれ約6千万円、8百
  万円の調査費(04年度)をつけています。
   この実態を示すのが本紙の入手した独立行政法人・都市再
  生機構(旧都市基盤整備公団・地域振興整備公団)や三菱地
  所作成の資料です。資料によると、まず、都市再生機構が受
  け皿になって国有地を随意契約で安く購入。土地区画整理事
  業でこの土地を日本経団連などの土地と交換し、経団連など
  を跡地に移転させます(図)。   ──「しんぶん赤旗」
                   http://bit.ly/2uizNjo
  ───────────────────────────

大手町合同庁舎跡地をめぐる状況.jpg
大手町合同庁舎跡地をめぐる状況
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2017年08月02日

●「豊洲の用地はブラウンフィールド」(EJ第4575号)

 2008年5月に豊洲移転予定地の地下水と土壌から大量の汚
染物質が検出されたことに対して、都の専門家会議は対策として
次の提言を行っています。その提言の内容については、今までで
あれば全面「海苔弁」であったのですが、小池知事の情報公開に
よって、永尾俊彦氏はその内容を入手しています。
─────────────────────────────
 これまで検討していた対策として、ガス工場の操業時の地盤面
から下2メートルの土を入れ替え、その上に2・5メートルの盛
り土をすることに加えて、今後検討するべき対策として、操業時
の地盤2メートル下から不透水層までの土壌の入れ替えも検討が
必要である。なお、この実施には約973億円の費用がかかる。
  ──2008年4月16日付、石原知事へのブリーフィング
         ──永尾俊彦著/岩波ブックレット/968
「ルポどうなる?どうする?築地市場/みんなの市場をつくる」
─────────────────────────────
 ここで「不透水層」とは、水を通さない粘性の土層のことで、
土対法では「難透水層」といいます。豊洲の場合、場所によって
それぞれ異なりますが、地下数メートルのところに2〜20メー
トルにわたって不透水層が存在しています。つまり、豊洲の対象
地域の不透水層までの土をすべて汚染のない土と入れ替えるべし
という提言です。もちろん大工事になります。
 東京都の市場当局は、この専門家会議の提案を技術会議に持ち
込み、実現可能な計画に変更させています。技術会議では、それ
を専門家会議が地下水の移動を止めるために盛り込んでいる建物
下の止水板をやめることで費用を586億円に削減しています。
しかし、それでも巨額な土壌整備費です。
 本来売り地の土壌汚染費用は売主の負担であり、東京ガスが負
担する義務があります。しかし、浜渦元副知事を中心とするこれ
までの東京ガスとの交渉では、2005年5月30日付で「豊洲
地区用地の土壌処理に関する確認書」が交わされており、東京ガ
スは、その確認書に基づき102億円かけて2007年4月27
日に工事を終了し、都環境局に「汚染防止措置完了届」を提出し
ています。つまり、それ以上の汚染が出ても、東京ガス側には負
担義務はないのです。
 ところが、2010年1月5日付の朝日新聞は、東京都と東京
ガスとの合意文書や確認書には、土地の売却後に汚染物質が出た
場合の汚染者負担での処理を義務付ける「瑕疵担保条項」がない
ことをスクープしたのです。
─────────────────────────────
 都は、豊洲地区(江東区)の予定地を所有していた東京ガスに対
策費約586億円の一部負担を求める協議を申し入れている。だ
が、同社との合意文書には、新たな汚染に対する同社の費用負担
などの義務を定めた条項がなく、障害になる恐れがあるという。
解決への道のりは不透明だ。
          ──2010年1月5日付、朝日新聞より
─────────────────────────────
 このことが新聞に出たことで、汚染原因者の東京ガスが負担し
ないのはおかしいとの声が上がり、東京都としては東京ガスに対
して追加費用の負担を求めざるを得なくなったのです。
 しかし、合意書や確認書で決められていることの処理は終わっ
ているとして、東京ガス側の抵抗は激しかったのです。その交渉
の模様について、永尾俊彦氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 その協議は2011年1月18日から始まった。当初、都は東
ガスに都独自の対策を行った分などを除く222億円の負担を求
めた。だが、東ガスの大幅値下げ要求に都はどんどん譲歩し、2
月7日には86億円を提示するが、東ガスは抵抗。2月25日の
交渉では、東ガスは「70億円」を提示したが、都は「知事に説
明している手前、最低80億円は死守したい」と譲らなかった。
「知事に説明」していたのだから、石原知事も暇庇担保責任を問
えないことや東ガス負担額について知っていた。結局78億円で
妥結する。           ──永尾俊彦著の前掲書より
─────────────────────────────
 ひどい話です。586億円かかる汚染土壌対策費のうち、東京
ガスは、値切りに値切って78億円で済ましているのです。結局
東京ガスは土壌汚染対策費は、180億円しかかかっていないの
です。東京都の収支計算は次のようになります。
─────────────────────────────
     豊洲用地費 ・・・・・・ 1882億円
     土壌汚染対策費 ・・・・  858億円
     防潮護岸工事費 ・・・・  330億円
     ―――――――――――――――――――
                  3070億円
       註:@用地費は東京ガス以外分を含む
         A防潮護岸工事は全額東京都負担
─────────────────────────────
 用地費1882億円に対して、土壌汚染対策費858億円で用
地費の45・5%。用地費の20%〜40%になると「ブラウン
フィールド」になるので、豊洲の土地は完全なブラウンフィール
ドで、本来売れない土地です。それを時価で買ってもらったこと
になるので、東京ガスは大儲けということになります。東京ガス
は汚染対策費としては180億円しか負担していないからです。
それだけに、石原元知事と浜渦元副知事には、重大な責任があり
ます。そもそもガス工場の跡地に中央卸売市場を移転させること
自体が間違いなのです。
 そのせいか、東京ガスは、2013年〜15年の3年間に都職
員を4人受け入れるなど、都庁の「天下り先」になっています。
都庁から人材を受け入れる理由を聞くと、「自治体の施策に精通
した人材へのニーズがある」と答えています。
              ──[中央卸売市場論/022]

≪画像および関連情報≫
 ●豊洲問題で都が技術会議録の改竄疑惑
  ───────────────────────────
   東京都が盛り土問題発覚後の2016年9月16日に、盛
  り土の工法を検討した「技術会議」の会議録に「『建物下に
  作業空間を確保する必要がある』と提言を受けた」との資料
  を追加し、公表していたことが分かった。技術会議の複数の
  元委員は、毎日新聞の取材に、「作業空間をつくる認識はな
  かった」と証言しており、都が会議録を改ざんした可能性も
  ある。
   都が追加したのはホームページ(HP)上に掲載されてい
  る第9回技術会議(2008年12月25日開催)の「技術
  会議が独自に提案した事項」との資料。資料では汚染物質の
  除去・地下水浄化の確認方法として「地下水から基準値を超
  える汚染物質が検出された場合、浄化できるように建物下に
  作業空間を確保する必要がある」と記載されている。
   追加掲載に当たって、都は一部の委員に「会議録に詳細な
  資料を追加する」と連絡したが、資料の内容は説明しなかっ
  たという。毎日新聞のこれまでの取材に、委員を務めた根本
  祐二氏や川田誠一氏は「盛り土をするという前提で議論して
  いた。技術会議では、空洞をつくるという話にはなっていな
  い」と証言している。追加資料が掲載されたことについて、
  委員を務めた長谷川猛氏は「技術会議が作業空間を設けるよ
  う提言をした事実はない。技術会議の提言とすることで責任
  転嫁しようとしているのではないか」と話した。【林田七恵
  芳賀竜也】            http://bit.ly/2vX3KaJ
  ───────────────────────────

朝日新聞のスクープ記事.jpg
朝日新聞のスクープ記事
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2017年08月01日

●「専門家会議と技術会議新設の理由」(EJ第4574号)

 石原都政の3期目──2007年4月〜2011年3月の知事
選では、石原知事は公約にはじめて「豊洲の土壌汚染の解決」を
掲げて当選しています。豊洲の土地の汚染状況が市場関係者だけ
でなく、都民も強い関心を持つようになったからです。
 3期目の石原都政は、この公約を実現させるため豊洲の土壌汚
染対策の提言をするための「専門家会議」を立ち上げ、2007
年5月19日に第1回の専門家会議を開催しています。専門家会
議の座長は、平田健正和歌山大学教授です。
 この会議は、小池都政になった2016年10月15日に同じ
メンバーで再招集されています。豊洲市場にあるべきはずの盛り
土がなく、それに対する対策を練るためです。なぜ、石原都政時
代と同じメンバーかというと、それが平田健正氏の座長を引き受
ける条件だったからです。しかし、この専門家会議の人選と平田
座長についてはあまり評判がよくないのです。以下は、『論座』
/2007年12月号に掲載された記事です。
─────────────────────────────
 専門家会議の座長である平田健正和歌山大学システム工学部教
授(環境水理学)は、三菱金属(現・三菱マテリアル)などが開
発した複合施設、大阪アメニティパーク(OAP)内のマンショ
ンを関連会社が土壌汚染を隠して販売した事件で、三菱側と住民
側が対策を話し合うために設置された検討会で、三菱側推薦の学
者として座長を務めているのだ。
 また、平田座長は土壌汚染の修復ビジネスに力を入れている三
井金属鉱業や前澤工業などから、01年〜06年の6年間に14
50万円も寄付を受けている。OAPの検討会では、住民側推薦
の学者として前出の畑教授も選ばれた。
 ところが、畑教授らの日本環境学会は豊洲の土壌汚染に早くか
ら取り組んできたのに、同学会の学者は都の専門家会議には一人
も選ばれなかった。都のいう「公正」さとは、私企業のそれにす
ら及ばない程度のものなのだ。
 また、首都直下型地震が今後30年以内に起こる確率は70%
とされるが、同会議には地震の専門家も入っていない。さらに食
品衛生の専門家も、何より最大の利害関係者である、市場で働く
人々の代表が入っていない。     http://amba.to/2u9f1mn
           ──『論座』/2007年12月号より
─────────────────────────────
 専門家会議のメンバーの選定に当たったのは当時の後藤正新市
場建設調整担当部長です。後藤部長は「公正に選定した」といっ
ていますが、後藤部長が独断で決めるということは考えられない
ことであり、石原知事サイドから、何らかの指示があったことは
間違いないと思います。石原知事はかつて環境大臣を経験してお
り、土壌汚染関係の専門家人脈を知っている可能性は大です。
 とうのは、東京都としては、この時点であまり学問的に厳格な
検査をやって欲しくはないはずです。ビジネス的観点からある程
度妥協のできる人物が座長であって欲しいのです。そういう意味
で公害訴訟において、企業側の座長の経験のある平田健正氏は、
石原都政では最適任だったのでしょう。
 そういう観点から、厳格な査定をすることで知られる日本環境
学会の畑教授や食品の専門家、市場関係者、地震学者などは選か
ら漏れているのです。石原知事は、今年の3月3日の会見で専門
家会議について次のように触れています。
─────────────────────────────
 豊洲市場は科学者が「問題ない」といっているんですよ。それ
なのに移転せず、築地で働いている人を生殺しにして、ランニン
グコストを無駄にしている責任は小池さんにある。
                ──石原慎太郎元東京都知事
                   http://bit.ly/2f087xA
─────────────────────────────
 この石原発言に関係しますが、都議選前に自民党都議の何人か
がテレビで、「小池知事は自分が選んだ専門家会議が『豊洲は安
全である』といっているのに移転を決められないでいる」と発言
していましたが、これは大間違いです。小池都政における専門家
会議は、小池知事自身が選んだメンバーではなく、石原都政のと
きの専門家会議が再現されたものだからです。
 この専門家会議を結成した2007年10月、東京都の調査で
豊洲の地下水から環境基準の1000倍のベンゼン、80倍のシ
アン化合物を検出したのです。これを受けて、東京都は土壌汚染
詳細調査を開始し、さらに2008年5月の詳細調査では、豊洲
の土壌から環境基準の4万3000倍のベンゼンなど高濃度の汚
染物質を検出したのです。
 この問題に対応するため、東京都は2008年8月、専門家会
議の提言を実現するための「技術会議」(座長/原島文雄東京電
機大学教授)を発足させています。しかし、この技術会議にも不
可解なことが多いのです。いちばん不可解なのは、メンバーが座
長以外は公表されていないことであり、原島座長の専門はロボッ
ト工学であり、土壌汚染の専門家ではないことです。これについ
て、あるサイトは次のように書いています。
─────────────────────────────
 技術会議の委員は、環境・土木・情報処理の各分野から学識経
験者5名を選定するというが、原島座長のみ公表で委員名は明ら
かにされていない。加えて原島座長はロボット工学が専門の電気
工学者であり、専門分野の不適合性は否めない。また、石原知事
の意向により、「なるべく低価格で短期間で実施できる新技術工
法を選定するために設置された」という。
                  http://amba.to/2uaQixG
─────────────────────────────
 さらに東京都は、任命直後に原島文雄氏を首都大学東京の学長
に招聘しているのです。2009年から4年間です。この事実か
ら原島座長は、やはり東京都に近い学者であるといえます。
              ──[中央卸売市場論/021]

≪画像および関連情報≫
 ●豊洲市場の設計に対する疑問/お墨付きを与えた技術会議
  ───────────────────────────
   豊洲市場は、日建設計が都から発注を受け、設計図面・施
  工図面を書き上げた。それを都は発注条件を満たしているか
  細部にわたって検証し、必要あれば図面の書き換えなど要請
  し、最終図面を了承して、ゼネコン側に図面を渡し、ゼネコ
  ンは設計図面を忠実に施工する。
   施工の進捗については、日建設計は設計の管理・監修業務
  も請け負っており、また、都の担当局の専門家も図面どおり
  に進捗しているか必ずチェックに入る。
   以上が通常も行われている大型官庁工事の設計会社や施主
  官庁の進捗検査の有りようだ。下記図では都の説明図ではな
  い空洞が建物地下にあることが確認され、都は説明不足だっ
  た、説明を忘れていたとおトボケ答弁を繰り返している。
   東京に住むとわかるが地震が昔から多い、それも東日本大
  震災後は頻繁に発生している。豊洲市場は向こう何十年も使
  用するもの。30年以内に大きな地震の発生確率もすでに国
  や都から発表されている。建築物に対しての液状化対策工事
  はなされているが、地下に眠る有害物質が噴出してくる可能
  性は拭いきれない。万が一、地下空洞コンクリにひび割れが
  多数発生し、有害物質が地下室に噴出すれば、その対策工事
  に市場は長期にわたり閉鎖に追い込まれる可能性もある。
                   http://bit.ly/2vd8Guk
  ───────────────────────────

「専門家会議」の平田健正座長.jpg
「専門家会議」の平田健正座長
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2017年07月31日

●「東京ガスのシナリオに屈した東京都」(EJ第4573号)

 築地市場を東京ガス豊洲工場跡地に移転する──この重要な決
定は、2001年にすべてが決まっています。2001年の年表
の一部を再現します。
─────────────────────────────
 2001年 7月 6日:「築地市場の豊洲移転に関する東
             京都と東京ガスの基本合意」締結
 2001年 7月18日:「基本合意に当たっての確認書」
             /知事本部/野村實、東京ガス活
             財推進室木照男の署名
 2001年10月 1日:環境確保条例施行
─────────────────────────────
 ここで重要なポイントは、7月6日の「築地市場の豊洲移転に
関する東京都と東京ガスの基本合意書」は公表されているものの
7月18日に交わされたという「基本合意に当たっての確認書」
は、あくまで水面下の合意であり、署名当事者以外誰もその存在
を否定していることです。
 実は、東京都はその後何回も東京ガスと土壌汚染対策について
合意を積み重ねています。2002年7月31日に、「豊洲地区
開発整備に係る合意」が東京都と東京ガスとの間に締結されてい
ます。これによって汚染土壌対策は、東京ガスが都の環境確保条
例に基づき、調査および必要な土壌汚染対策を実施し、措置完了
の届出を行うことになります。この合意書の押印者は前川耀男知
事本部長(現・練馬区長)、高橋信行港湾局長碇山市場長以下5
人の局長です。これにより、東京ガスとの交渉は、前川知事本部
長がトップを務める知事本局が行っていたことがわかります。
 2003年2月に「土壌汚染対策法(土対法)」が施行されま
す。その間、石原知事は引き続き知事に在職していますが、豊洲
問題を担当する東京都の担当者は何人も代わっています。確認書
の存在を知らない担当者からすれば、土対法が施行されているの
で、それと比較すると、東京ガスの土壌汚染に対する取り組みは
あまりにも甘いと考えるのは当然のことです。
 しかし、その後の東京都と東京ガスの土壌汚染に関する交渉の
経過をみると、署名者以外誰も知らないと主張するこの2001
年7月18日の「基本合意に当たっての確認書」がカベになって
豊洲市場の土壌汚染問題は東京都に不利に展開します。その交渉
について永尾俊彦氏は自著で次のように記述しています。
─────────────────────────────
 この日(2003年4月3日)、都側からは環境局の部長らも
参加し、都は「(東ガスの)2001年2月の(豊洲の土壌汚染
対策の)工事計画書に、『環境負荷の高い箇所から対策を実施』
と書いてあるのは、当面負荷の高い所から実施し、最終的に全部
処理するということなのか」と質問した。
 東ガスは、「そうではなく、汚染の中心部である負荷の高い箇
所のみ実施する」と答えた。その根拠として東ガスは「平成13
(2001)年7月に市場移転に関する基本合意が締結され、現
処理計画で対策を実施すると確認している」と先に紹介した確認
書の内容をタテにとる。都は重ねて「(東ガスのガス工場の)操
業由来の部分は全部(東ガスが)処理する」のではないのかと問
うが、東ガスは「売却時には汚染土壌は残る」と明言している。
 なおも東ガスの汚染処理範囲を広げようとする都に対して、東
ガスは「そもそも、市場の移転は(浜渦)副知事を含めた話であ
り、そのために土地を売却するのであるから、今の処理計画が不
満なら話が白紙に戻る」と開き直る。
 同年5月29日にも都は、東ガスの汚染処理範囲を広げようと
するが、東ガスは「2001年7月の二者間合意で土壌汚染対策
は今の計画で良い旨確認している」とここでも「二者間合意」、
つまり確認書をタテに譲らない。
         ──永尾俊彦著/岩波ブックレット/968
「ルポどうなる?どうする?築地市場/みんなの市場をつくる」
─────────────────────────────
 このような丁々発止としたやり取りの結果、東京都と東京ガス
は、2005年5月31日付で、「豊洲地区用地の土壌処理に関
する確認書」を交わしています。その確認書には次のことが決め
られていたのです。
─────────────────────────────
 環境基準を超える操業由来の汚染土壌はAP(荒川河口の基準
水面)2メートルより下にあるものを除き、除去するか、または
原位置での浄化などにより、処理基準以下となる対策を行う。
       ──「豊洲地区用地の土壌処理に関する確認書」
─────────────────────────────
 しかも、この確認書では、AP2メートル以下の汚染は残った
ままになります。実は、2011年3月11日の東日本大震災で
豊洲地区は液状化していたことを共産党都議団が現地調査で確認
しており、ひどい汚染状態に戻っているのです。しかし、この事
実については、共産党都議団以外は口を閉ざして積極的に語ろう
としていないのです。
 東京ガスは、この確認書に基づき、102億円をかけて、工事
を行い、2007年4月27日に都環境局に「汚染防止措置完了
届」を提出しています。東京ガスとしては、これによって豊洲の
土壌汚染処理は終りと考えていたと思います。
 おりしも、浜渦副知事は、2005年7月、当時の100条委
員会における証言が偽証と認定され、辞任しています。偶然です
が、まるで東京ガスとの一連の土壌汚染問題の処理が終わるタイ
ミングで都庁から去っていることになります。
 なぜ、浜渦副知事が都庁を去ることになったのかについては、
築地市場の豊洲移転問題と無関係ではないので、改めて検証する
ことにします。
 皮肉なことに、東京ガスによる土壌の汚染防止措置完了以後に
豊洲の地下水から、環境基準を大幅に超える汚染の発見が相次ぐ
ことになるのです。     ──[中央卸売市場論/020]

≪画像および関連情報≫
 ●豊洲用地、渋る東京ガスを説得/都側「無茶な話だが」
  ───────────────────────────
   東京都の豊洲市場(江東区)の用地購入や土壌汚染対策工
  事をめぐり、所有者だった東京ガスと都との交渉記録が情報
  公開請求に対して開示されたことが分かった。これまで大部
  分が黒塗りだったが、情報公開を進める小池百合子知事の方
  針で、一部の固有名詞を除いて明らかにされた。都が築地市
  場(中央区)の豊洲移転にこだわった経緯が具体的に見えて
  きた。開示されたのは、1998〜2005年と11年の交
  渉記録など。約140枚の文書で、同社と都の計31回の交
  渉内容が記録されている。土地売却や追加の土壌汚染対策工
  事に消極的だった東京ガス側に対し、都が説得を続ける様子
  が分かる。共産党都議団の請求に都が応じた。
   豊洲市場用地をめぐる交渉記録文書は、これまで都議会な
  どで資料要求や情報公開請求がされてきたが、大部分が黒塗
  りだった。しかし、「移転を決めた石原慎太郎知事時代の責
  任を調べる」とする小池氏の方針を受けて、都が東京ガス側
  と協議し、同社側の固有名詞を除いてほぼ開示された。まだ
  非開示の文書もあり、交渉の全容が判明したとは言えない。
  豊洲への移転決定の経緯について、当時の知事だった石原氏
  は小池氏の質問に「(当時の資料を)全て公開し、何が行わ
  れたかご覧いただくしかない」などと回答。小池氏は資料の
  調査を続ける方針を示している。  http://bit.ly/2eXLD0g
  ───────────────────────────

これまで浮上した移転候補地.jpg
これまで浮上した移転候補地
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2017年07月28日

●「東京ガスを不当に儲けさせる内容」(EJ第4572号)

 東京ガスは、一貫して豊洲工場跡地の売却には消極姿勢を見せ
ていたのですが、その狙いは何だったのでしょうか。
 それは、汚染された土地を東京都に売り付ける「批判かわし」
ではないかと考えられます。なぜなら、豊洲工場の跡地は汚染が
ひどいことは最初からわかっており、本来であれば「売れない土
地」なのです。土壌汚染対策費が、用地費の20%を大きく超え
る「ブラウンフィールド」に該当するからです。
 その問題の土地を東京都が買ってくれるというのですから、東
京ガスにとっては願ってもない話です。それでもそこに中央卸売
市場ができるということになると、東京ガスとしても汚染を懸念
して、汚染の少ない豊洲の根本部分の一、二街地ではどうかと提
案したのですが、東京都は40ヘクタールの広さが必要であると
主張して、この提案を断っています。そして、もっとも汚染度の
高い五、六七街区を選んだのです。
 東京ガスの立場に立って考えると、一番心配なのは土壌汚染対
策費用が嵩張ることです。しかし、東京ガスは、東京都が築地市
場代替地が豊洲しかないことを知っていたので、その足元をみて
浜渦副知事との水面下の折衝で、おそらく相当強く土壌汚染対策
費用の軽減を主張し、もっとも満足すべき条件で、豊洲工場跡地
を売ることに成功したものと考えられます。
 これについて、2001年の動きをもう1度検証する必要があ
ります。なぜなら、この年に築地市場を豊洲の東京ガス工場跡地
に移転させる基本条件が決まっているからです。重要なことは、
東京都と東京ガスが水面下で締結されたとする「築地市場の豊洲
移転に関する東京都と東京ガスの基本合意に当たっての確認書」
であり、それは水面下の「密約」であるといえます。
─────────────────────────────
◎2001年 1月25日:東京ガスは実施済みの土壌汚染調
             査の結果および対策工事内容発表
◎2001年 2月21日:浜渦副知事が東京ガス副社長と、
             豊洲移転について条件協議開始の
             「覚書」を締結
       2月21日:石原知事が都議会で築地市場を豊
             洲に移転する方針で、東京ガスと
             条件協議を進めると表明
       4月18日:中央卸売市場審議会の「都卸売市
             場整備基本方針」答申。豊洲を移
             転候補地として検討すべきである
       7月 6日:「築地市場の豊洲移転に関する東
             京都と東京ガスの基本合意」締結
       7月18日:「基本合意に当たっての確認書」
             /知事本部/野村實、東京ガス活
             財推進室木照男の署名
      10月 1日:環境確保条例条例施行
      12月21日:都卸売市場整備計画(第7次)策
             定。築地市場の豊洲地区への移転
             を決定
─────────────────────────────
 東京ガスは、東京都に売却する土地の土壌汚染を本気でやれば
売却が困難になることは百も承知だったのです。したがって20
01年1月25日に公表した土壌汚染調査の結果と対策工事内容
は、汚染のとくにひどいところだけ掘削除去し、盛り土によって
汚染を防ぐ処理をするという「現処理計画」をベースに公表した
のです。しかし、これによって、土壌汚染対策を東京ガスが実施
するという意思表明ができたことになります。
 この東京ガスの「現処理計画」に明確な裏付けを与えるため、
東京都は「土壌汚染対策法」の成立前に「環境確保条例」を制定
し、2001年10月1日から施行しています。これによって、
「現処理計画」には正当性が与えられ、その後さらに汚染が生じ
ても「30メートル・メッシュ」という甘い対応で切り抜けるこ
とができるからです。
 2月21日に、東京都と東京ガスは、細部の条件を詰める「覚
書」を締結し、石原都知事は、それに基づいて築地市場を豊洲へ
移転する方針であることを都議会に発表します。
 5ヶ月後の7月6日、東京都と東京ガスは「築地市場の豊洲移
転に関する東京都と東京ガスの基本合意」を締結しますが、12
日後に「基本合意に当たっての確認書」が東京都と東京ガスの間
で交わされています。この確認書については、水面下で交わされ
3月の100条委員会のさいに、東京ガスが提出した大量の資料
のなかから発見されています。
 この確認書の存在について認めたのは、当時知事本部の野村實
氏なる人物だけで、石原元都知事をはじめ、浜渦元副知事ら喚問
された都側の関係者は全員「知らない」と否定しています。
 これについて、既出の永尾俊彦氏は、自著において、次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
 東ガスが浜渦副知事に示した用地交渉に応じる条件は、土地区
画整理事業に参加する東ガスの負担金と東ガスの土地価格はいく
らかを示すことだったが、浜渦副知事の結んだ基本合意には、そ
の2つの条件提示がない。しかし、確認書には東ガスなど開発者
が負担するはずだった防潮護岸の負担金330億円をゼロにし、
東ガスの土地価格は区画整理事業後に推計1661億円になり、
371億円も増えるなど東ガスをボロもうけさせる二条件が示さ
れている。    ──永尾俊彦著/岩波ブックレット/968
「ルポどうなる?どうする?築地市場/みんなの市場をつくる」
─────────────────────────────
 2017年6月31日、100条委員会ではこの確認書などに
関して、浜渦武生氏と赤星経昭氏の2人を偽証と認定し、刑事告
発しています。100条委員会での証言に偽証があったと認定さ
れたからです。       ──[中央卸売市場論/019]

≪画像および関連情報≫
 ●浜渦氏らの偽証認定/「しんぶん赤旗」
  ───────────────────────────
   東京都築地市場(中央区)の東京ガス豊洲工場跡地(江東
  区)への移転問題に関する都議会調査特別委員会(百条委員
  会)は31日、証人尋問での浜渦武生元副知事ら2人の陳述
  が偽証だと認定し、本会議において刑事告発の議決を求める
  動議を可決しました。日本共産党、公明党、東京改革(民進
  党系)、都民ファーストの会、生活者ネットが賛成し、自民
  党は反対しました。
   浜渦氏は、豊洲の用地取得の交渉を担いました。証人尋問
  で、東京ガスが市場移転を受け入れる2001年7月の「基
  本合意」以降は、合意と一体で結ばれた「確認書」の存在を
  知らず、相談も報告も受けていないなどと述べました。
   動議提出会派を代表して日本共産党の、かち佳代子都議が
  賛成意見を表明しました。かち都議は、浜渦氏が関与し、報
  告を受けた記録が5件以上に及び、「勘違いや記憶違いなど
  とは言えない」と指摘。偽証の動機について「汚染対策でも
  費用負担でも譲歩を重ね、4万3000倍のベンゼンが検出
  されながら、汚染処理費の東京ガス負担はわずか78億円で
  かつ瑕疵(かし)担保責任を免責するという結果となった責
  任を逃れるためだった」と批判しました。
   偽証認定の提案について、自民党が前回の意見開陳でまと
  もに反論できずに、「ためにする告発」などと発言したこと
  に対し、かち都議は「誹謗(ひぼう)中傷以外の何物でもな
  い。浜渦氏を擁護する自民党の態度はあまりにも見苦しい」
  と強調しました。百条委は、元都政策報道室理事の赤星経昭
  氏についても、「確認書」などを知らないと述べたことにつ
  いて偽証と認定しました。     http://bit.ly/2eQ0Hgp
  ───────────────────────────

浜渦元副知事/赤星元政策情報室理事.jpg
浜渦元副知事/赤星元政策情報室理事
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2017年07月27日

●「東京都と東京ガスとの『確認書』」(EJ第4571号)

 話が複雑になってきたので、少し整理して先に進めます。そも
そも東京都は、なぜ多くの業者が望んでいる築地市場再整備を断
念し、中央卸売市場を誰も望んでいない豊洲に移転させようとし
たのでしょうか。
 それは、鈴木俊一都政の臨海副都心開発計画に基づく箱モノ行
政失敗の尻拭いに、市場会計の築地市場整備費を使い切ってしま
い、価値の高い築地市場の土地を売却して、帳尻を合わせるしか
なくなったからです。つまり、築地を売るのが目的であって、そ
のために中央卸売市場をどこかに移転せざるを得なくなったので
す。その移転先が東京ガス豊洲工場の跡地だったのです。
 東京ガス豊洲工場は、1956年から1988年まで約30年
以上にわたって都市ガスを製造していたのです。当然のことなが
ら、その製造過程ではヒ素が使われ、ベンゼン、シアン化合物が
副産物として生成されていたのです。また、タールも生み出され
ドラム缶に入れて仮置きされていたものの、長い年月が経過して
ドラム缶が腐食し、タールが地中に深く沁み込んでしまっている
のです。東京ガスによると、あまりにもタールの量が多いので、
その残滓を木屑と混ぜて、都内の銭湯に燃料として出荷していた
といいます。それほどの量だったのです。
 そのような場所に、こともあろうに生鮮物を扱う中央卸売市場
を移転させようと画策してきた当時の市場長や港湾局長、石原都
政以降の知事、副知事、市場長らの東京都の幹部は、何の良心の
呵責もないのでしょうか。少なくとも、私が調べてきた限りでは
豊洲移転を推進しようとしてきた関係者は、食の安全・安心をま
るで考えていないといわざるを得ないのです。
 それどころか、彼らは、土壌汚染を誤魔化し、その結果として
東京ガスに不当な利益供与を行ったとしか思えないのです。その
証拠はいくつもあります。そのひとつが2001年7月6日の基
本合意の12日後に当たる7月18日付の「確認書」です。情報
開示請求でその確認書を入手した既出の永尾俊彦氏は、この確認
書について自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 開示請求でわたしは、「基本合意」の「確認書」を入手した。
「マル秘」と押印されたその確認書の日付は2001年7月18
日。「基本合意」を交わしたわずか12日後だ。この確認書には
汚染処理について「現処理計画」によるとされている。「現処理
計画」とは、東ガスが2001年2月にまとめた汚染土壌の工事
計画書のことで、操業由来の汚染のひどい所のみ掘削除去するが
主として盛土によって汚染の拡散を防ぐ計画だ。全面掘削よりは
るかに安上がりになる。
 また、土地の譲渡価格は「売買契約締結時の時価相当額を基本
とし、協議する」とある。汚染が残る土地を「時価相当額」つま
り、汚染を考慮しない売買時の価格で買いますよという意味だ。
公表されなかった文書ではこんなことを決めていた。これは正真
正銘の「密約」だ。
 都側は、知事本部「野村實」、東ガス側は、活財推進室「高木
照男」と直筆で署名されているが、役職名も公印もない。100
条委員会では、石原元知事や浜渦元副知事ら喚問された都側の関
係者は野村氏以外全員この確認書を「知らない」と否定した。
         ──永尾俊彦著/岩波ブックレット/968
「ルポどうなる?どうする?築地市場/みんなの市場をつくる」
─────────────────────────────
 この確認書について注目すべき点がいくつもあります。
 注目すべき点の第1は、この確認書においてはじめて土壌汚染
処理について触れていることです。「土壌汚染処理については、
『現処理計画』による」と書いてあります。
 この「現処理計画」は汚染のとくにひどいところだけ掘削除去
し、盛り土によって汚染を防ぐ処理のことです。この計画のバッ
クボーンとなる法的根拠は2000年12月に東京都が公布し、
2001年10月施行の「環境確保条例」です。
 この条例は、2002年5月公布、2003年2月施行の「土
壌汚染対策法」をにらんで東京都があえて制定したのではないか
と思われます。まるで豊洲の土地を購入するために東京都が制定
したと思われても仕方がないのです。土対法の方が環境確保条例
よりもはるかに厳しいからです。
 注目すべき点の第2は、土地の譲渡価格についてふれているこ
とです。土地の譲渡価格は「売買契約締結時の時価相当額を基本
とし、協議する」とあります。要するに、土地に汚染が残ってい
ても、時価相当額で購入するといっているのです。これはとんで
もないことです。通常、土壌汚染対策費が用地費の20〜40%
になると、「ブラウンフィールド」といって、売買が成立しない
のです。そのために、土壌汚染があるのにないことにして、譲渡
価格を決めたのでしょうか。
 注目すべき点の第3は、この確認書の存在を石原元知事も浜渦
元副知事も「知らない」といっていることです。認めたのは、確
認書に署名のある野村實氏だけです。浜渦氏に至っては100条
委員会において、怒りをにじませて次のようにいっています。
─────────────────────────────
 基本合意については、確かに自分がまとめたものである。しか
し、わたしが東京ガスとの交渉を担当していたのは基本合意まで
で、その先はさわっていない。役人が勝手なことをしてくれた。
                      ──浜渦武生氏
─────────────────────────────
 このように浜渦氏は「確認書は知らない」といっていますが、
確認書のタイトルは、「基本合意にあたっての確認書」となって
おり、別文書になっているものの、基本合意とセットであること
は明らかです。それを浜渦氏は「そんなものは知らない」という
のですが、きわめて不自然です。
 この確認書については、引き続き疑問点を追及していくことに
します。          ──[中央卸売市場論/018]

≪画像および関連情報≫
 ●「ブラウンフィールド」とは何か
  ───────────────────────────
   「ブラウンフィールド」、直訳すると“茶色い大地”とな
  ります。このように呼ばれる土地にどのようなイメージを持
  つでしょうか?
   大部分の人は、植物が生育していない、土がむき出しの土
  地や広大な原野を想像すると思われますが、実は、「ブラウ
  ンフィールド」とは、“産業活動等に起因した汚染土壌の存
  在、もしくは存在する可能性により遊休化した土地”のこと
  を指します。つまり、土壌汚染が原因となって、売却や再利
  用ができずに放置されている土地のことです。
   想像していただきましょう。新宿駅から電車で30分の私
  鉄沿線、駅徒歩5分の場所にある廃業した工場、再開発をし
  てマンションにするには絶好の土地です。しかしながら、5
  年以上、土地が再開発される様子もありません。不思議な話
  だとは思いませんか?
   実はこの土地、かつて操業していた工場で使用していた有
  害物質の漏洩や廃棄物の埋め立て等により、土壌汚染が発生
  しているのです。しかも、敷地全域、地面から地下10メー
  トル近くまで汚染が広がっています。これらの土壌汚染浄化
  費用は、土地の価格の2倍以上と算定されました。つまり、
  土地所有者がこの土地を売却すると、土地価格の2倍以上の
  土壌汚染対策費用が必要となることになります。
                   http://bit.ly/2upd48s
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東京ガス豊洲工場.jpg
東京ガス豊洲工場
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2017年07月26日

●「土対法と環境確保条例の関係探る」(EJ第4570号)

 2001年2月21日──この日は重要な日です。石原知事が
都議会で「豊洲に移転する」と正式に表明した日だからです。
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 中央卸売市場については、豊洲地区を新しい市場の候補地と
 し、今後、関係者と本格的な協議を進める。──石原都知事
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 しかし、2000年12月の第54回審議会でも関係者の同意
が得られておらず、築地市場のある中央区も移転に同意していな
い時点での発表です。きわめて乱暴な決定といえます。
 それが何に基づいているのかというと、東京都が豊洲への移転
について、東京ガスと諸条件の協議を始めるとする「覚書」を締
結したからです。「覚書」の日付も2001年2月21日です。
 問題は、協議をはじめる「覚書」のレベルで、なぜ石原知事が
移転を表明したかということです。
 それは協議に入れば東京ガスは必ず豊洲を売るという確証が得
られていたからです。その根拠が「土壌汚染対策法(土対法)」
という法律にあるのです。時の石原都政は、築地市場の豊洲への
移転を決断させるために、とんでもないことをしているのです。
 まず、「築地移転問題の真相を読む」という座談会での一級建
築士・水谷和子氏の発言を読んでください。
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 問題は、法律(土対法)の制定過程、条例の制定過程です。土
対法が成立するのが、2002年5月で、翌年2月に施行されま
す。しかしそれに先だって、環境確保条例を東京都は2000年
12月に公布、2001年10月には施行しています。つまり、
法成立の前にすでに条例ができているということです。土対法の
準備過程の情報は東京都にもしっかり入っていたはずですし、タ
イミング的にはまるで東京ガスと交渉するためにつくった条例に
見えてしまいます。   ──中澤誠/水谷和子/宇都宮健児著
            「築地移転の闇をひらく」/大月書店
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 この問題を考えるさいに重要なのは、2000年12月22日
に行われた東京都と東京ガスの会談で、赤星経昭理事が浜渦副知
事の指示として東京ガスに迫った次の発言です。
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 東京ガスの豊洲地域の汚染調査の結果(赤星氏は「土壌汚染X
デー」といっている)、莫大な費用のかかる汚染除去をしなけれ
ばならなくなる。しかし、石原知事の安全宣言があれば、覆土す
る拡散防止でよしとする都の「環境確保条例」で処理できるので
早く決断した方がよい。       ──赤星氏発言(要旨)
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 この発言を赤星氏もそれを指示したとする浜渦氏も否定してい
ます。しかし、100条委員会のさい、東京ガスから提出された
資料のなかに、このことを記録したメモがあったのです。
 土対法が成立すると、「10メートル・メッシュ」で土壌汚染
の調査をしなければならなくなります。こうなると、巨額の費用
が東京ガスにかかります。ただし、この法律は、2002年5月
に成立し、2003年2月に施行されています。この土対法の構
想は、1995年くらいから国レベルの準備が始まっており、自
治体には早くから情報が伝わっていたはずです。
 そこで、東京都は、この法律が成立する前の2000年12月
に「環境確保条例」なる条例を制定し、土対法よりも早く施行さ
せたのです。「環境確保条例」の施行は、2001年10月から
になります。この条例では、土対法よりはるかに粗い調査で済む
「30メートル・メッシュ」を容認しています。こうすれば、豊
洲市場の調査は、2001年の調査なので、「環境確保条例」が
適用されることになります。
 水谷和子氏のいうように、タイミング的に見ても「環境確保条
例」は、東京都が東京ガスと交渉するためにつくった条例といわ
れても仕方がないといえます。浜渦副知事(当時)は、このまだ
成立していない「環境確保条例」を使って、東京ガスに豊洲の土
地を売るよう迫ったのです。
 本来であれば、土地の売主である東京ガスが負担すべき土壌汚
染対策費を不当に軽減させる措置を講ずることは、それだけ東京
ガスの利益増大に貢献することを意味します。豊洲の土地購入を
巡る東京都の対応はそれに近く、きわめて問題です。
 2001年2月21日の「覚書」には、土壌汚染対策をどうす
るかについての記述はないのです。2001年7月6日に、東京
都と東京ガスは、「覚書」以降の交渉を踏まえて、浜渦副知事と
東京ガスの伊藤副社長が次の基本合意を結びますが、そこにも土
壌汚染対策の記述はないのです。
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                  2001年7月6日付
 築地市場の豊洲移転に関する東京都と東京ガスとの基本合意
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 ところがです。2000年12月の「覚書」にも、2001年
7月の「基本合意」にも、それぞれセットになった「確認書」が
あることがわかったのです。それは、東京ガスが100条委員会
に提出した資料のなかに存在したのです。
 永尾俊彦氏は、情報開示請求により、「基本合意」とセットに
なった「確認書」を入手しています。内容は、明日のEJで述べ
ますが、こういう重要資料が「海苔弁」なしで入手できるように
なったことは真相の解明に役立ちます。
 自民党や自民党支持勢力は、小池都政を「既に決まっているこ
とをほじくり返し、仕事らしい仕事は何もしていない」と批判し
ていますが、小池知事は「海苔弁」をなくしたことだけでも大変
な功績があると思います。自民党は、自分たちに都合の悪い資料
は今も徹底的に隠しまくっているからです。今後も過去の悪事は
どんどん明るみに出てくると思います。「情報公開」は小池都政
の大きな功績です。     ──[中央卸売市場論/017]

≪画像および関連情報≫
 ●土壌汚染地に食品市場の建設を許容する技術者は皆無
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   豊洲市場では目下、建物の地下を空洞にした決定プロセス
  が、大きな問題になっています。実は、土木学会・建設マネ
  ジメント委員会・環境修復事業マネジメント研究小委員会が
  2013年に、豊洲への市場建設について調べていました。
  土木学会は建築学会と並んで、建設関係者に大きな影響力を
  持つ有力な学会です。その具体的な内容は、日本大学理工学
  部土木工学科に2013年4月に提出された、下池季樹氏に
  よる学位請求論文、『土壌汚染対策事業の最適なマネジメン
  ト手法導入に関する研究』に掲載されています。この論文は
  審査に合格し、同氏には2013年10月に工学博士の学位
  が授与されました。
   執筆者の下池季樹氏は、土壌汚染対策事業の現場管理に従
  事している技術者ですが、それと同時に土木学会・環境修復
  事業マネジメント研究小委員会の小委員長という立場にあり
  ました。そして同論文自体は、小委員会のメンバーと協同し
  て、調査・研究した成果に基づいています。したがって、個
  人の論文であると同時に、土木学会小委員会による豊洲事業
  への見解であるとも受け取れるのです。同論文の中に、豊洲
  市場と土壌汚染対策法の「怪しい関係」が記されています。
  同法を管轄するのは環境省で、小池百合子都知事は元環境大
  臣でした。小池知事は「怪しい関係」に気がついているので
  しょうか。           http://nkbp.jp/2eEZd8P
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100条委員会での浜渦武生氏.jpg
100条委員会での浜渦武生氏
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2017年07月25日

●「浜渦副知事による水面下での交渉」(EJ第4569号)

 東京ガスはもともとは自分の方から東京都に話を持ちかけなが
ら、当初から東京都に対し、なぜ、「売る気はない」と口にして
いたのでしょうか。
 それはよい条件で豊洲を売るための作戦なのです。東京ガス側
は、東京都が豊洲の土地を必要とする事情を入手した多くの情報
をから把握しており、相当無理な条件を出しても、東京都は必ず
買うと踏んでいたようです。
 東京ガスは、東京都との交渉に臨むに当たって、次の3つの目
標を立てています。これが東京ガスのシナリオです。したたかな
きわめてムシのいい目標であるといえます。
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    1.汚染地を汚染なしの正常価格にて購入させる
    2.土壌汚染対策は法律が求める最低限のレベル
    3.後で新たな土壌汚染が発覚しても負担しない
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 結果として、東京ガスは、この目標を3つともクリアし、最高
の条件で東京都に売ることに成功しています。そういう意味で東
京ガスの作戦は大成功に終わったといえます。
 東京ガスは、豊洲埠頭の先端部に当たる6街区と7街区は売れ
ないと主張し、豊洲地域の根本に当たる4街区と5街区ではどう
か東京都に提案します。
 東京ガスとしては、先端部は開発計画があるとしていたものの
この部分はかつてのガス工場の中心部であり、土壌汚染が最も深
刻であったからと思われます。本来汚れた部分の処理は売主の負
担になるので、それを避けたかったものと思われます。
 しかし、東京都側は次の理由から、あくまで先端部の土地の取
得にこだわったのです。そのさい、土壌汚染のことをほとんど気
にしていないのは気になるところです。
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 市場を豊洲地域の根本(4、5街区)に配置すると、まちが先
端部と既成市街地に分断される。
         ──永尾俊彦著/岩波ブックレット/968
「ルポどうなる?どうする?築地市場/みんなの市場をつくる」
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 結果として現在の豊洲市場の配置は次のようになっています。
つまり、汚染の最もひどい街区に水産仲卸棟と水産卸棟を配置し
ているのです。
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        5街区 ・・・   青果棟
        6街区 ・・・ 水産仲卸棟
        7街区 ・・・  水産卸棟
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 2000年7月に副知事に就任した浜渦武生氏が東京ガスとの
交渉の担当者として、はじめて東京ガスを訪問したのは2000
年10月4日のことです。そのとき、区画整理事業で土地の価格
がどのくらいになるのか、開発者負担金がどのくらいかを示して
欲しいと東京ガス側から要請があったのです。これに対して浜渦
氏は「それについては水面下でやりましょう」と提案し、了承さ
れています。
 当時の会談の記録を見ると、東京都は東京ガスのために次の3
つの対策に配慮するという約束をしています。東京ガスという一
企業のために、東京都がここまで配慮するということは普通はあ
り得ないことです。
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         1.東京ガスの株主対策
         2.東京ガスの役員対策
         3.東ガスの社会的責任
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 「1」は、豊洲地域の売却によって、東京ガスの株主に損をさ
せない仕組みを作ることに東京都は配慮するということを意味し
ています。「2」は、東京ガスの役員に対しては、市場移転によ
るプラスイメージを与えるよう努力するということです。「3」
は、東京都からの申し入れにより、東京ガスとしては「公共事業
には協力する」という社是に沿って、市場移転を受け入れるとい
う格好をとるということが確認されています。
 その後は、まさに「水面下」での交渉であったように、記録は
残っていないのです。しかし、2017年3月の100条委員会
で東京ガスから提出された資料に、2000年12月22日、浜
渦氏の腹心の部下といわれる赤星経昭理事が浜渦氏の指示として
次のことを迫ったとするメモがあったのです。
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 「土壌汚染Xデー」を迎えれば土壌問題が噴出し、豊洲の地価
が下落する。石原知事が安全宣言で救済するから、早急に結論を
出して欲しい。         ──永尾俊彦著の前掲書より
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 ここでいう「土壌汚染Xデー」というのは、2001年1月に
発表予定だった東京ガスの豊洲地域の汚染調査結果のことで、も
し、そこで高い数字が出ても、莫大な費用のかかる汚染除去では
なく、石原知事の安全宣言があれば、覆土する拡散防止でよしと
する都の環境確保条例で処理できるので、早く決断せよと迫った
ものと考えられます。なお、このメモの存在について、赤星経昭
氏は否定しています。
 このメモに基づき、2001年2月21日、移転についての諸
条件の協議をはじめる「覚書」が浜渦副知事と東京ガスの伊藤春
野副社長の間で交わされたのです。そして同日、石原知事は都議
会において、築地市場の豊洲移転を正式に表明しています。
 「覚書」の内容は、市場移転による土地利用の変更に伴い、土
地区画整理事業費と公共減歩、防潮護岸の整備の開発者負担など
を見直したものです。内容については明日のEJで説明します。
              ──[中央卸売市場論/016]

≪画像および関連情報≫
 ●音喜多氏が提起した「土壌Xデー」とは何か
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  2017年年3月11日(土)
  ○音喜多議員の発言
   「東京ガス側から提出された資料から、我々都民ファース
  トの会は驚くべき新たな事実を発見いたしました。それは、
  浜渦副知事が都の環境確保条例と国の土壌汚染対策法の成立
  を、ある意味では利用して東京ガスに圧迫あるいは脅迫とも
  とれる交渉を行って、強引に土地の売却を承諾させていた可
  能性を示唆するものです」。
   「東京都と東京ガスの交渉において、都側の赤星理事は、
  浜渦副知事からの指示として、土壌汚染Xデー、あるいは、
  Xデーという単語を用いて、この日、これは土壌Xデーです
  ね、を迎えれば、土壌問題が噴出し、東京ガスが所有する土
  地の価格が下落する。結論さえ出せば、石原知事が安全宣言
  で救済するから、早急に結論を出すように、などと伝えてい
  る様子が克明に記録をされています」。
  「この東京ガス側の記録の作成者は末尾に脅かしてきた、こ
  れ以上議論をしても無駄など、激しい憤りを節々ににじませ
  ています。・・」。「福永証人に伺います。当時、引継ぎを
  行った浜渦副知事及び赤星理事たちが、このようなあからさ
  まな政治的圧力を用いた交渉を行っていたことはご存知でし
  たでしょうか。この東京ガス側に赤星理事が突き付けて土壌
  Xデー、この単語に聞き覚えはないでしょうか」。
  ○福永証人/「全てに全く事実を承知しておりません」
                   http://bit.ly/2vKHaRN
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東京ガス豊洲工場操業時/1968年.jpg
東京ガス豊洲工場操業時/1968年
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