2020年06月12日

●「WHO事務局長は時間稼ぎに協力」(EJ第5266号)

 テドロス事務局長は、緊急事態宣言を発出した2020年1月
30日の記者会見で次のようにいっています。
─────────────────────────────
 1.WHOは新型肺炎の発生を制御する中国の能力に対して
   自信を持っている。
 2.緊急事態宣言が発出されても、中国への渡航や交易を制
   限する必要はない。
 3.だが医療体制の整備が遅れている国への感染拡大防止の
   支援は必要である。
─────────────────────────────
 このようにいくら「中国寄り」と批判されても全く怯むことな
く、手放しで中国を礼賛しています。
 これによって中国は大助かりです。これを受けて、1月31日
付の「環境時報」と、中央テレビ局CCTVのニュースは、次の
ように報道しています。これは、中国の情勢に詳しい遠藤誉氏に
よる情報提供です。
─────────────────────────────
◎WHOは何といったか
 WHOは確かに緊急事態宣言を出したものの、しかしそれは決
して中国に対して自信がないことの表れではない。それどころか
全くその逆で、テドロスは「中国が疫病の感染予防に対して行っ
ている努力とその措置は前代未聞なほど素晴らしい」とさえ言っ
ているのだ。さらにテドロスは、中国は感染予防措置に関して、
「新しいスタンダード」を世界に先んじて打ち出すことに成功し
ているとさえ言っている。
◎中央テレビ局CCTVニュース
 たしかにWHOは緊急事態宣言を出したが、しかしこれはあく
までも中国以外の国での感染拡大を防止するために出されたもの
で、WHO事務局長はむしろ中国が現在行っている予防対策とあ
らゆる措置を高く評価し、「歴史上、ここまで立派にやった例は
ない」とまで断言し、中国を絶賛している。
                  https://bit.ly/2AS8Iwo ─────────────────────────────
 テドロス事務局長は、中国のための時間稼ぎに協力していたと
いえます。2020年1月といえば、新型コロナウイルスの感染
元は中国の武漢であり、感染者数も死者数も、すべて中国が中心
だったはずです。この状況を変えるきっかけになったのは、1月
23日の武漢市のロックダウンです。これによって、感染者数は
少しずつ押さえ込まれ、死者数も減っていったのです。そして、
3月になって、感染の中心地が中国ではなく、ヨーロッパに移る
と、すかさずパンデミックを宣言し、「中国武漢発のウイルス」
という印象を弱めることに成功しています。テドロス事務局長は
この中国の時間稼ぎに最大限の協力をしたのです。
 つまり、中国は、ヨーロッパでの感染の拡大を待ち、それらの
国に大量の医療物資や医師団を派遣するなど、まさに「放火犯が
消防士」に変身したかのような活動を行い、一帯一路に賛同する
国々を中心に支援を拡大したのです。それによって「中国寄り」
の国を増やして行こうという戦略です。テドロス事務局長は、こ
ういう状況になるように中国に協力して時間を稼ぎ、そのうえで
3月11日にパンデミックを宣言したのです。
 実は中国にとって一番重要だったのは、WHOが1月22日の
緊急委員会で、緊急事態宣言(PHEIC)の発出を先送りして
いることです。これに関連するのは、1月23日午前10時から
の武漢市のロックダウンです。
 1月22日に習近平主席は、フランスのマクロン大統領やドイ
ツのメルケル首相と電話会談を行っています。そこで習近平首席
は、次のことを訴えたそうです。
─────────────────────────────
 中国は感染発生以来、予防制御の措置を周到に行い、WHOな
どにも速やかに情報を提供している。中国は、国際社会と協力し
て、対策を取る考えである。       ──習近平国家主席
─────────────────────────────
 いうまでもなく、フランスやドイツはWHOの有力国であり、
発言力が強い国です。習近平主席が、それら2つの国のトップに
直接訴えたかったのは、「どうか、今回は緊急事態宣言を出さな
いでほしい」ということです。すべてうまくテドロス事務局長が
仕切ると思うものの、念のため、それらの有力国に根回しをした
ものと思われます。
 問題は、昨日のEJで述べているように、武漢市のロックダウ
ンの「通告」と「実行」には8時間もの時間差があることです。
このことを指摘しているのも中国分析の第1人者である遠藤誉氏
です。それでは、武漢市のロックダウンはいつ通告されたかとい
うと、1月23日午前2時5分に通告されていますが、その実行
は、午前10時からです。実行までに8時間もあります。ロック
ダウンの内容は、武漢市政府のウェブサイトに表示されたもので
すが、これを見たら、あなたは、武漢市に留まりますか、それと
も脱出しますか。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルス感染による肺炎の流行を防御することを全
面的に遂行し、効果的にウイルスの伝染経路を遮断し、疫病の蔓
延を断固阻止し、人民群衆の生命安全と健康を確保するために、
ここに以下のことを通告する。
 2020年1月23日10時を以て、全市のバス、地下鉄、フ
ェリーボート、長距離旅客輸送を含む公共交通を全て、暫定的に
停止する。特殊な原因がない限り、市民は武漢を離れてはならな
い。武漢から外部に移動する飛行場や列車の駅は暫時封鎖する。
いつごろ回復するかは追って通知する。広大なる市民と旅客の理
解と協力を求める!         https://bit.ly/2AcL9P7
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/010]

≪画像および関連情報≫
 ●WHOの中国賛美「過剰」/テドロス氏、政治家の側面
  ―元法律顧問
  ───────────────────────────
   【ベルリン時事】世界保健機関(WHO)の元法律顧問、
  ジネーブ国際開発高等研究所のジャンルカ・ブルチ非常勤教
  授は4月28日、時事通信の電話インタビューに応じ、新型
  コロナウイルスをめぐるWHOの中国賛美について、「過剰
  だ」と苦言を呈した。テドロス事務局長については、前任者
  より「政治家の側面」が強く、危機対応の手法にもそれが現
  れていると分析した。主なやりとりは以下の通り。
  ―中国への配慮で対応が遅れたと批判がある。
   WHOは警察ではなく、(加盟国の)調査権限はない。通
  常はNGOなど民間情報源も使うが、情報統制されている中
  国では、難しかった。情報提供の協力確保のため、友好姿勢
  に徹したのかもしれない。とはいえ繰り返される中国賛辞に
  は驚いた。理由を臆測したくないが、少々過剰だった。
  ―テドロス氏とチャン前事務局長の違いは?
   テドロス氏はエチオピアで保健相や外相を歴任し、政治家
  の側面が強い。チャン氏は政治のバックグラウンドはなかっ
  た。過小評価されていることであるが、このため、テドロス
  氏はトランプ米大統領など、大物政治家にコンタクトを取り
  やすい。
  ―WHOと政治の関係は?
   国連機関は政治的であるのは避けられない。緊急事態宣言
  は専門家委員会の助言に基づくが、政治的意味合いも強く、
  純粋に技術的なことと捉えるのは幻想だ。対象国の国民を驚
  かせないようにする必要がある。テドロス氏が1月末の宣言
  前に中国の習近平国家主席に会ったことを批判されたが、必
  要なことだった。        https://bit.ly/2YhTglq
  ───────────────────────────

中国・武漢鉄道駅前.jpg
中国・武漢鉄道駅前
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2020年06月11日

●「WHOは1月には何をしていたか」(EJ第5265号)

 WHOのテドロス事務局長は、今回のコロナ禍で、中国のため
に、何をやったのでしょうか。3月11日のパンデミック宣言ま
でに、彼が何をやったか、時系列的に検証することにします。
 報道によれば、WHOが中国武漢で発生した正体不明の感染症
の情報を得たのは、2019年12月31日のことです。中国か
ら正式に情報が伝えられたのはこの日といわれます。この時点で
は、人から人へ感染するかどうかは不明とされています。しかし
複数の情報によれば、中国ではこのウイルスが人から人へ感染す
ることは、かなり早くから、わかっていたはずです。
 1月2日、WHOは対策チームを発足させ、中国国内の専門家
と協力しつつ調査をはじめています。この時点で感染の中心地は
武漢市内にある海鮮市場ということになっています。1月10日
になって、WHO対策チームは、武漢を中心にコロナウイルスの
新型の発生を確認しますが、人から人への感染は依然不明である
とするものの、武漢市からの渡航者との接触は避けるべきである
と加盟国に提唱しています。その間、武漢での感染の拡大は、ま
さに風雲急を告げていたのです。
 1月中旬になると、日本でも感染者が発生するようになってい
ます。中国武漢からの観光客を案内して感染した都内在住の70
代のタクシーの運転手が、都内の屋形船で開かれた個人タクシー
組合支部の新年会に出席して、クラスター感染が起きたのもこの
頃のことです。
 WHOでは、1月22日の午後8時に、第1回の国際保健規則
(IHR)に基づく緊急委員会を開催しています。WHOの事務
局長は、通常この緊急委員会において、国際的に懸念される公衆
衛生上の緊急事態(PHEIC)宣言を発出し、WHO加盟各国
に対して警告し、さらなる情報提供を求めることになります。そ
のとき武漢では、爆発的に感染が拡大していたのですから、当然
のことながらWHOは、緊急事態宣言を発出するものと思われた
のです。しかし、きわめて不可解な話ですが、このときの緊急委
員会では、中国とその同盟国の反対で、テドロス事務局長による
緊急事態宣言の発出を見送っています。時期尚早であるというの
です。1月23日のことです。
 ところが中国政府は、その同じ23日に武漢市をロックダウン
しています。実は、このロックダウンは、きわめて変則的な時間
に通告され、実施されているのです。正確にいうと、1月23日
の午前2時5分に発布され、23日の午前10時から開始されて
います。通告から実施まで実に8時間もあります。この8時間の
空白は謎ですが、これについては改めて述べることにします。
 1月28日、習近平国家主席からの急な連絡で、テドロス事務
長とスタッフは、急遽北京に飛んでいます。そして、ツートップ
である習近平首席と李克強首相と面会しています。そのとき、テ
ドロス事務局長は、次のように中国政府を絶賛しています。
─────────────────────────────
 中国政府は、オープンかつ透明性のある情報開示をしている。
新記録といえる短期間で病原体を突き止め、WHOや各国のウイ
ルスの遺伝子配列情報を進んでシェアしている。
                ──WHOテドロス事務局長
─────────────────────────────
 1月30日、WHOは再度緊急委員会を開催し、新型コロナウ
イルスについて緊急事態宣言(PHEIC)を発出しています。
どう考えても、あまりにも遅い緊急事態の発出ですが、その記者
会見で、「緊急事態宣言の発出が遅れたのではないか」と問われ
テドロス事務局長は、実に珍妙な発言をし、直ちに側近に発言を
訂正されるドタバタを演じています。
─────────────────────────────
 22日の緊急委での緊急事態宣言の発出の見送りは適切であっ
たと考えている。その時点では、感染者はわずか82名で、死者
数はゼロだったからである。      ──テドロス事務局長
─────────────────────────────
 この発言に対し、WHO技術部門のリーダー、米国のマリア・
バン・ケーコブ医師は、「感染者82名うんぬんは中国以外での
数字であり、中国ではこの段階で7711人の感染に加え、1万
2167人の感染の疑い、1370人の入院患者に加え、170
人の死者が出ていた」と指摘し、数字の訂正を求めたのです。テ
ドロス事務局長にいわせれば、中国は感染を十分押さえ込める実
力を有しており、中国以外の国が問題なのだとハナからそう考え
ているようです。彼は、これほどの中国信者なのです。しかも、
次の言葉まで添えています。
─────────────────────────────
 緊急事態は発出しますが、そうだからといって、国際的なヒト
やモノの移動制限は推奨しない。    ──テドロス事務局長
─────────────────────────────
 テドロス事務局長は確信犯です。国際保健衛生分野のトップ外
交官・政治家として、「中国寄り」といわれることを十分承知し
たうえで、WHO事務局長として職務を果しています。テドロス
事務局長について、キャノングローバル戦略研究所研究員の本多
倫彬氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 状況の把握と封じ込めを求めるWHOのトップの目には、そも
そも中国寄りという姿勢を差し引いても、中国の取り組みは頼も
しく映っただろう。中国と距離の近い事務局長だからこそ、中国
からの情報を広範に入手できた可能性もある。逆に言えば、中国
を批判すればそうした情報が取れなくなるし、自らの支持母体を
失うという計算も働いたのかもしれない。いずれにしても、検査
数自体が少なく、また封じ込めも自粛という形の日本のような国
と比べたとき、中国はテドロス事務局長にとって優れたものに見
えたことだろうことは指摘できる。  https://bit.ly/3h8osfz ─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/009]

≪画像および関連情報≫
 ●批判呼ぶテドロス事務局長の「中国擁護」/背景にWHOと
  中国の蜜月の仲
  ───────────────────────────
   肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり
  中国当局の初動の遅さを指摘する声が世界で高まる中、世界
  保健機関(WHO)のテドロス事務局長が中国を擁護し続け
  ている。テドロス氏が中国寄りの発言を続ける背景には、長
  年にわたる中国とWHOの「蜜月の仲」があるとされる。
   テドロス氏は2月12日、新型肺炎の治療法やワクチンに
  ついて話し合う専門家会合後の記者会見で語気を強めた。事
  の発端は、会場の記者が「WHOは、中国の対応を称賛する
  ように中国から圧力を受けたのか」とテドロス氏に批判的な
  質問をぶつけたことだ。
   質問を聞いたテドロス氏はこわばった表情で、「中国は感
  染の拡大を遅らせるために多くの良いことをしている」と説
  明。「ほとんどすべての加盟国が、中国の対応を評価してい
  る」と言い切った。
   テドロス氏はさらに、中国の習近平国家主席について「知
  識を持っており、危機に対応するリーダーシップを発揮して
  いる」と語り、称賛を繰り返した。これまで、テドロス氏は
  新型ウイルスの問題で、一貫して中国の肩を持つような発言
  を続けてきた。中国外務省によると、テドロス氏が1月28
  日に習氏と会談した際も「(中国は)時宜にかなった有力な
  措置を講じている」と対応を評価した。
                  https://bit.ly/2Ym1XLk
  ──────────────────────────

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習近平国家主席とテドロスWHO事務局長
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2020年06月10日

●「テドロス事務局長は何をやったか」(EJ第5264号)

 トランプ米大統領は、「WHO(世界保健機関)は中国寄り」
と批判し、WHO脱退を宣言しています。WHOが中国寄りとい
うことは、現職のテドロス・アダノム事務局長が中国寄りの姿勢
ということになります。WHO事務局長の権限はそれほど大きい
のです。テドロス事務局長は一体何をやったのでしょうか。
 テドロス事務局長がパンデミック宣言をしたのは、2020年
3月11日のことです。しかし、これは本当の意味のパンデミッ
ク宣言ではないという識者がいます。国際政治評論家で、翻訳家
の白川司氏です。まず、WHOのパンデミック宣言を伝える日経
電子版の記事をご覧ください。
─────────────────────────────
 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は3月11日、世
界で感染が広がる新型コロナウイルスについて「パンデミック」
とみなせると表明した。WHOがパンデミックと認定したのは、
2009年に流行した新型インフルエンザ以来11年ぶり。中国
以外での感染ペースが加速する現状に強い懸念を示し、各国に対
策の強化を促した。         ──日経電子版記事より
─────────────────────────────
 確かにテドロス事務局長は「パンデミックとみなせる」といっ
ているだけです。実際に事務局長は、正確には次のように述べて
います。以下は、白川司氏の分析にしたがって書きます。
─────────────────────────────
 過去2週間、中国以外で、新型コロナウイルスによる肺炎の患
者数は13倍になっており、ウイルスの上陸国は3倍になってい
る。114カ国に11万8000人以上の患者がおり、4291
人が亡くなった。それゆえ、私たちはCOVID−19がパンデ
ミックにあるとみなしうると評価した。 ──テドロス事務局長
─────────────────────────────
 ここで、わざわざ中国を外して、それ以外の国について述べて
いることは注目に値します。白川司氏は、パンデミック宣言とみ
なしうるという部分の英語を示し、次のように述べています。
─────────────────────────────
 We have therefore made the assessment that COVID-19 can
 be characterized as a pandemic.
 ここでcanが使われている点に注意すべきだろう。canは「で
きる」というのが中心の意味で、ここは「みなそうとすればみな
せる」という意味になり、「今その可能性がある」と言っている
にすぎない。つまり、「パンデミックの可能性があるだけであり
まだパンデミックではない」と解釈することも可能なのである。
 このことは、後に続く言葉からも裏づけされる。「パンデミッ
クという言葉を軽々しく使うべきではない。もし使い方が不適切
だと、過度に不安をあおったり、もう戦えないと根拠もなく諦め
たりして、不必要な病気や死につながるからだ」
                  https://bit.ly/3dIUdcS ─────────────────────────────
 テドロス事務局長は、事態をパンデミックと呼ぶには、制御不
能の状態にならないといけないと考えているようです。事務局長
はこうもいっています。「今回がコロナウイルスによって起きる
初めてのパンデミックということになるが、それは制御可能なパ
ンデミックになる」と。非常にまわりくどいいい方です。なぜ、
このようなことをいったのでしょうか。
 白川司氏は、会見でのテドロス事務局長の次の言葉に注目して
います。
─────────────────────────────
 114カ国11万8OOO人の患者のうち、90%以上が4カ
国に集中しており、そのうち中国と韓国の2カ国では罹患数が有
意に下がっている。       ──テドロスWHO事務局長
─────────────────────────────
 白川氏によると、ここでいう4カ国とは、中国、韓国、イラン
イタリアですが、この会見の行われた3月11日の時点では、中
国の感染者数が他国を圧倒的していたのです。事務局長はそのこ
とに触れず、その中国を韓国と一緒に「罹患数が有意に下がって
いる」という表現で、明らかに中国の感染者数の多さから目をそ
らさせようとしています。
 さらに会見の終りの部分では、感染の中心地はもはや中国では
なく、ヨーロッパであるとの布石を打っています。
─────────────────────────────
 いまや新型肺炎渦の中国で報告されたよりも多くの患者が、ヨ
ーロッパにおいて、日々、報告されている。
 More cases are now being reported every day than were
 reported in China at the height of its epidemic.
                  https://bit.ly/3dIUdcS ─────────────────────────────
 そのうえで、テドロス事務局長は、2日後の3月13日、「新
型コロナウイルスのパンデミックの中心はヨーロッパである」と
宣言しています。白川司氏によると、このときの「中心」という
言葉に「epicenter」 を使っていますが、これは中心というより
も「震源地」を意味するかなり強い言葉だそうです。
 このテドロス事務局長の宣言によってメディアの論調は、これ
までの中国発の新型コロナウイルスの蔓延のそれから、ヨーロッ
パ中心に変わってしまったのです。つまり、テドロス事務局長は
これによって見事に「中国外しとヨーロッパへの責任転換」を成
し遂げたことになります。これでは、WHOが中国と共闘を組ん
でいると疑われても仕方がないでしょう。
 それにしてもWHOはどうなってしまったのでしょうか。今回
は白川司氏のレポートを中心に、WHOのテドロス事務局長によ
る新型コロナウイルスのパンデミック宣言を中心にご紹介しまた
が、2020年1月〜3月11日までの間にも、いろいろ納得の
いかないことが多々あったのです。明日のEJでは、それについ
て述べます。   ──[『コロナ』後の世界の変貌/008]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の傀儡「WHOテドロス事務局長」トンデモ発言録
  忌み嫌う台湾に学べ
  ───────────────────────────
   コロナ禍は人災である。世界的な大流行を招いた戦犯は、
  WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長その人だ。数々
  のトンデモ発言を聞けば、もはや中国の傀儡で“免疫不全”
  に陥っているのは誰の目にも明らか。彼が忌み嫌う台湾にこ
  そ、対策を学ぶべきではないか。
   もはや失笑を禁じ得ないが、国連のホームページには、こ
  んな紹介文がある。〈WHOは、グローバルな保健問題につ
  いてリーダーシップを発揮し、健康に関する研究課題を作成
  し、規範や基準を設定する〉今回もテドロス事務局長がリー
  ダーとして早々に警告を発すれば、世界に危機が周知され各
  国政府は感染対策を徹底できたはずだ。さる海外通信社の東
  京特派員が解説する。「彼はWHOで初めて医師の資格を持
  たずにトップとなった人物。中国から多額の経済援助を受け
  るエチオピアで長く保健相を務め、首根っこを習近平国家主
  席に掴まれているのです」故にWHOは1月5日、「中国で
  原因不明の肺炎が見つかった」と認めながら、同月30日ま
  で「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を先
  送り。ようやく発表した席でも、テドロス事務局長は災いを
  招いた国をこう庇(かば)った。〈中国は短時間で病原菌を
  特定し、即座に共有し、診断ツールの迅速な発展を導いた。
  内外に完全な透明性を約束した〉 https://bit.ly/2UBu7kH
  ───────────────────────────

テドロスWHO事務局長.jpg
テドロスWHO事務局長
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2020年06月09日

●「石正麗とはどのような学者なのか」(EJ第5263号)

 今回の新型コロナウイルスの中心人物とされる石正麗氏とは、
どういう人物でしょうか。
 石正麗氏は、中国の武漢の大学で生物学を学び、2000年に
フランスのモンペリエ大学でウィルス学の博士号を取得していま
す。2002〜2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)
流行後の2006年、オーストラリア連邦科学産業研究機構(C
SIRO)の管轄下のオーストラリア疾病予防センター(ACD
P)で3ヶ月間、訪問学者として「SARSとコウモリの関係」
を研究しています。そして、講演で石正麗氏は、いつも次のこと
を警告していたそうです。
─────────────────────────────
 野生動物の商取引を規制するなど、その危険性に細心の注意
 が払われないと、各種コロナウイルスがSARSと同じよう
 に猛威を振るうことになる。        ──石正麗氏
─────────────────────────────
 石生麗氏は、SARSやMARSなどのコウモリ由来のウイル
ス研究の第一人者であり、今回の新型コロナウイルスは、その遺
伝子コードが中国特有のキクガシラコウモリという小型コードに
酷似しているというのです。
 なお、MARSは「中東呼吸器症候群」といわれ、あるテレビ
局ではその感染源をラクダを正解とするクイズ問題を出していま
したが、これはコウモリからラクダに感染したもので、元はコウ
モリが正しいのです。このように、石正麗氏は、そのコウモリ由
来のコロナウイルス研究の専門家であり、武漢P4研究所にラボ
ラトリを持つウイルス学者です。したがって、今回の新型コロナ
ウイルスも武漢P4研究所から流出したのではないかと噂され、
そういう意味で石正麗氏はまさに渦中の学者であるといえます。
 4月末頃のことですが、この石正麗氏について、次のような気
になる情報がネット上を駆け巡ったのです。
─────────────────────────────
 石正麗氏は、1000件近い秘密研究文書を持ち出して、家族
と共に欧州に逃亡し、フランスの米国大使館に亡命を申請した。
─────────────────────────────
 ありそうな話ですが、当のフランス米国大使館からのメッセー
ジもなく、これはどうやら本当の話ではないようです。この亡命
説について、中国共産党機関紙・人民日報系「環境時報」は、石
正麗氏が「微信/ウィーチャット」上で、友人に向けて書いたと
する次の文章を掲載し、この情報を否定しています。
─────────────────────────────
 私(石正麗)と私の家族はみな元気です。いかに多くの困難が
あろうと『叛逃(国に背いて亡命すること)』のデマにあるよう
な状況にはなりえない。我々は何も間違ったことはしていない。
我々の心の中には、科学に対する揺るぎない信念がある。
                  https://bit.ly/3h1hZTC ─────────────────────────────
 しかし、現在、石正麗氏は行方不明です。「環境時報」が伝え
た上記の石正麗氏のコメントの報道は、本人が友人に対して発信
したコメントを紹介しているだけで、彼女が中国の国民に対して
話している言葉ではないのです。亡命がウソであるならば、中国
政府は本人をテレビに出して、堂々と否定させるべきです。
 まして石正麗氏によると、今回の新型コロナウイルスは、彼女
のチームが、2013年に雲南省で採取したサンプルと96%一
致しているそうであり、世界中のウイルス学者が石正麗氏の意見
を求めています。もし、中国政府が石正麗氏の口を封じているの
であるとすると、それこそ完全な情報隠蔽です。
 英語圏5ヶ国(米国、英国、オーストラリア、カナダ、ニュー
ジーランド)による最強の諜報ネットワークである「ファイブ・
アイズ」が、目下石正麗氏の行方に関して調査をしているという
情報があります。中国はWHOと組んで、明らかに事実を隠蔽し
ている疑いがあるからです。
 ことの経緯から考えて、トランプ米政権がいっているように、
今回の新型コロナウイルスは、武漢P4研究所から間違って流出
したものと考えられます。しかも、それは早ければ、10月後半
か、遅くても11月には起こっていたのではないかと考えられる
のです。もし、中国がWHOに報告した12月31日であるとす
ると、その後の武漢での感染拡大のスピートがあまりにも早過ぎ
るからです。
 実際に武漢P4研究所では、今回のウイルスと96%一致する
ウイルスが存在しており、それが何らかの事故で流出してしまっ
たと考えられます。そうすると、その責任者は、石正麗氏という
ことになります。そのカギを握る石正麗氏の行方は、現在のとこ
ろわかっていないのです。
 頻繁に中国に滞在し、中国各地方の人口動態や社会状況に詳し
い米国人学者のスティーブン・モシャー氏は、今回のウイルス流
出について、ニューヨークの有力新聞「ニューヨーク・ポスト」
2020年2月21日に次の記事を書いています。
─────────────────────────────
 人民解放軍の高度ウイルス使用の生物戦争の最高権威で細菌学
者の陳薇少将が1月に武漢へ派遣された。陳少将は軍内部でこれ
までSARS(重症急性呼吸器症候群)やエボラ熱、炭素病はじ
め、コロナウイルスの研究をしており、武漢の生物安全実験室と
の関係が深い。中国当局は武漢の海鮮物市場からコロナウイルス
が発生したという説を流しているが、当初の感染者たちはいずれ
も同市場に足を踏み入れたことがなかった。同市場で売買された
コウモリが発生源という説もあるが、この市場では当時、コウモ
リは売られていなかった。          ──古森義久著
           『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす/
       非常事態で問われる国家のあり方』/ビジネス社
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/007]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ“武漢研究所流出説”に複数の状況証拠/トラン
  プ政権は動かぬ証拠を示せるか?       木村太郎氏
  ───────────────────────────
   「動かぬ証拠」を示すのは、難しいとは思うが、「状況証
  拠」ならば既にいくつか明らかにされている。「武漢研究所
  の危険を警告する電報が国務省へ送られていた」(ワシント
  ン・ポスト紙電子版4月14日)
   同記事によれば、米国政府は、2018年1月以来、北京
  駐在のリック・スウィツアー参事官らの視察団を同研究所に
  派遣して実情を視察させていた。その結果、視察団は、同研
  究所の運営に問題があることを警告する報告を「取扱注意電
  報」として国務省に送っていた。
   「武漢ウイルス研究所では、コウモリから採取したコロナ
  ウイルスがヒトに感染し、SARSの時のような感染拡大を
  招く恐れがあることを発見していた」報告はこう伝え、さら
  に研究所の安全対策についてこうも述べていた。
   「同研究所の科学者たちとの交流で、同研究所にはウイル
  ス流出を防止するために必要な熟達した技術者や調査官が決
  定的に不足していることが分かった」
   この警告が中国側に伝えられたかどうかは定かではないが
  新型コロナウイルスの汚染が拡大した2020年2月16日
  中国共産党の英字紙「グローバル・タイムズ」電子版に次の
  ような記事が掲載された。「ウイルス研究所の疫学的運営の
  抜け穴を修正するためのガイドラインが発表された」
            https://www.fnn.jp/articles/-/39936
  ───────────────────────────

武漢P4研究所.jpg
武漢P4研究所.
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2020年06月08日

●「19年12月10日のある出来事」(EJ第5262号)

 新型コロナウイルスの感染が始まった場所は、間違いなく武漢
です。中国政府は、米軍がウイルスを武漢に持ち込んだというあ
り得ない説を唱えていますが、感染元は武漢です。これだけは、
動かしようのない事実です。
 そして、その武漢には、2つのウイルス研究所があります。し
かもその1つは「バイオセーフティレベル4」(P4研究所)と
いう国際基準をクリアした中国唯一の研究所です。ちなみに、季
節性インフルエンザはレベル2(P2)、結核や狂犬病はレベル
3(P3)、そして、エボラ出血熱などの最もリスクの高いもの
はレベル4(P4)ということになります。人から人への感染力
の強い新型コロナウイルスもこのレベルに該当します。
 こういう状況が揃えば、今回のウイルスがそのP4研究所から
流出したのではないかと疑うことはごく自然なことです。まして
武漢P4研究所の検体の管理には問題があるという指摘が以前か
ら出ていたのです。
 この武漢P4研究所に関してこんな話があります。2019年
12月10日のことです。習近平主席が鋭意進める「一帯一路計
画」の一環である長江(揚子江)に関わる巨大プロジェクトがあ
り、昨年12月の上旬から一週間の予定で、中国内陸部の揚子江
一帯を視察する国際的専門家集団のツァーがあったのです。
 2019年12月10日、午前9時、その一行が地方の財界幹
部の案内で、武漢市内の中心部にある長江科学技術院にやってき
たのです。このツァーのスケジュールのひとつです。この同じブ
ロックのなかに「中国科学技術院P4研究所」があります。
 ツァーの一行は、中央本部棟の3階の応接室に通され、予定で
は、しかるべき科学院幹部が出迎える予定になっていたのです。
しかし、待てど暮らせどその幹部が登場しない。慌てた案内の財
界幹部は、科学技術院の職員に、しかるべき人物を連れてくるよ
うに強く求めたのです。
 そこに登場したのは、スカートとブラウスの上にジャケットを
羽織った女性で、名刺交換をしたところ、その名刺には次の記載
があったといいます。
─────────────────────────────
          長江科学技術院教授
                石正麗
─────────────────────────────
 一行はこの石正麗教授の案内で、技術院のなかをみせてもらっ
ています。しかし、技術院のなかは、ガランとしてほとんど人影
はなかったそうです。ただ、石正麗教授が「これは私のラボラト
リです」と紹介した部屋には多くの研究員がおり、何らかの実験
をしていたそうです。そのとき、自分は、SARSやMERSの
ような人類の敵になるウイルスの研究をやっているとその職務を
具体的に説明しています。
 以前にこの技術院を訪問したことのある人の話によると、技術
院の敷地内は乗用車や業者のトラックが頻繁に出入りし、技術院
のなかは、白衣の研究者が多く行き来する活気に満ちた場所だっ
たといいます。ところが、その日は技術院のなかにはほとんど人
はおらず、その後の武漢の市中案内でも、いつもなら必ず目にす
るはずの市民はほとんどいなかったというのです。
 この話は、月刊『Haneda』/2020年7月青葉号の、フリー
ジャーナリスト山口敬之氏のレポートに出ていたものです。この
日の技術院の様子は今にして考えると、重要な意味をもってくる
と思います。この日の技術院について、山口敬之氏は、次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
 12月10日の武漢で一体何が起きていたのか。一行の1人は
こう類推する。武漢P4研究所の周辺で何らかの事故があって、
公的機関により一帯は「封鎖」もしくは「立入制限措置」が取ら
れていたのではないか。
 しかも、武漢在住の財界幹部が科学院幹部の不在に激怒したこ
とからみて、「封鎖情報」はごく一部の関係者だけに知らされ、
ほとんどの武漢市民には告知されていなかったのではないか。
 これらはあくまで類推であり、真相は闇のなかだが、ひとつだ
けはっきりしていることがある。他の全ての研究者や業者が去り
閑散とした研究施設で、ウイルス研究の専門家である石正麗のチ
ームだけが、何らかの研究を続けていたという事実だ。
           ──『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 この話が本当であるとすると、昨年の10月以降、何らかの事
故によって新型コロナウイルスが研究所から流出し、一部の関係
者には技術院からの隔離措置が取られ、石正麗教授のチームだけ
が分析を行っていたのではないかといわれています。12月10
日の時点で、技術院に人影がなかったのは、それが原因と考えら
れます。
 こういう情報もあります。米国のNBCが米政府当局者の話
として、次の情報を報道しています。
─────────────────────────────
 1019年10月7日から3週間、武漢P4研究所の高セキュ
リティ区域で、携帯電話の通信が完全に途絶えていた。
           ──『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 仮に10月の時点でウイルスが流出する事故があったとすれば
今年1月以降の武漢地域での感染爆発は整合性がとれます。中国
がWHOに「原因不明の肺炎の発生」を伝えたのが12月31日
であり、翌日の1月1日に海鮮市場を閉鎖していますが、それか
ら感染が急拡大するにはスピードが早過ぎるのです。ちなみに、
1月5日時点での感染者は59人、うち7人が重症、9日に初の
死者が出たことになっています。やはり、中国は意図的にヒト対
ヒト感染の情報をかなり長期間隠蔽していたことになります。こ
れは問題です。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/006]

≪画像および関連情報≫
 ●新型ウイルスの起源追跡 中国のコウモリ洞窟探る
  日経サイエンス
  ───────────────────────────
   今回の新型コロナウイルスはどこから来たのか?
   中国・武漢ウイルス研究所の石正麗(シー・ジェンリー)
  氏らは、中国南部・雲南省のキクガシラコウモリで同チーム
  が以前に発見していたコロナウイルスと新型ウイルスのゲノ
  ム配列が96%同じであることを突き止め、2月初めに学術
  誌に報告した。短期間で起源を特定できたのは、石らが長年
  にわたって動物が保有するウイルスを追跡してきたからだ。
  人間と野生動物が接触する機会が増え、アウトブレーク(集
  団感染)が起こりやすくなっている。
   野生動物が自然の保有宿主となっているウイルスが変異し
  人間に感染するケースが知られている。2002年に重症急
  性呼吸器症候群(SARS)を引き起こしたコロナウイルス
  もコウモリが保有宿主だった。これを特定したのが、非営利
  研究機関エコヘルス・アライアンス(本部ニューヨーク)と
  石らの国際チームだ。石はウイルス学者だが、中国各地のコ
  ウモリ洞窟を調査してきたことから、研究仲間からは親しみ
  を込めて「中国のバットウーマン」と呼ばれている。保有宿
  主を突き止めるには野生動物の血液や糞を採集し、ウイルス
  の遺伝物質(RNAやDNA)が含まれているかどうかを解
  析する。人里離れたコウモリ洞窟を踏査してこれを実行する
  のはたいへんな作業だ。石らはSARSウイルスの起源を追
  跡するなかで注目した雲南省の洞窟を徹底的に調べ、遺伝的
  に非常に多様な数百種のコウモリ媒介ウイルスを発見した。
                  https://bit.ly/3eTyn6t
  ───────────────────────────

石正麗研究員.jpg
石正麗研究員

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2020年06月05日

●「消去論文には何が書いてあったか」(EJ第5261号)

 昨日のEJの最後でお伝えした中国政府によって消された論文
は、インターネット上で削除されたコンテンツを回復させるツー
ル「ウェイバック・マシーン」で読むことができます。論文は英
語で記述されています。
─────────────────────────────
    The possible orgins of 2019-nCoV coronavirus
               https://bit.ly/2Y91ZGz
─────────────────────────────
 この論文について、ジャーナリストの時任兼作氏がその要約を
『WiLL』7月特大号に要約を掲載しています。EJでは、そ
の要約をさらに要約し、以下に説明つきで、掲載することにしま
す。論文は、新型コロナウイルスの発生源について、次の3つに
絞って検証しています。
─────────────────────────────
      1.      武漢海鮮市場発生説
      2.   武漢疾病管理予防センター
      3.中国科学院・武漢ウイルス研究所
─────────────────────────────
 まず、論文は、「1」の「武漢海鮮市場発生説」については、
可能性が低いとして、次のように否定しています。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスが中国で伝染病を発生させた。2020年
2月6日までに564人の死者を含め、2万8千60人が感染し
たことが検査で確認されている。
 今週の(学術誌)『ネイチャー』の解説によると、患者から検
出されたゲノム配列の96%あるいは89%が中型コウモリ由来
のZC45型コロナウイルスと一致したという。(中略)
 ZC45型コロナウイルスを運ぶコウモリは、雲南省または浙
江省で発見されたが、どちらも海鮮市場から900キロ以上離れ
ている。(そもそも)コウモリは通常、洞窟や森に生息している
ものだ。だが、海鮮市場は人口1500万人の大都市である武漢
の住宅密集地区にある。コウモリが市場まで飛んでくる可能性も
非常に低い。(中略)自治体の報告と31人の住民および28人
の訪問者の証言によると、コウモリは食料源だったことはなく、
市場で取引されてもいなかったという。
                ──『WiLL』7月特大号
─────────────────────────────
 続いて論文は、発生源の可能性として、海鮮市場周辺をスクリ
ーニングした結果、海鮮市場から280メートル以内の距離にあ
る「2」の「武漢疾病管理予防センター」(WHCDC)が発生
源の可能性があるとして、次のように書いています。
─────────────────────────────
 武漢疾病管理予防センター(WHCDC)は、研究の目的で所
内に数々の動物を飼育していたが、そのうちの1つは病原体の収
集と識別に特化したものであった。ある研究では、湖北省で中型
コウモリを含む155匹のコウモリが捕獲され、また他の450
匹のコウモリは浙江省で捕獲されていたこともわかった。収集の
専門家が、論文の貢献度表記の中でそう記している。
 さらにこの専門家が収集していたのがウイルスであったことが
2017年と2019年に全国的な新聞や、ウェブサイトなどで
報じられている。(中略)
 捕獲された動物には手術が施され、組織サンプルがDNAおよ
びRNAの抽出とシーケンシンク(塩基配列の解明)のために採
取されたという。組織サンプルと汚染された廃棄物が病原体の供
給源だった。これらは、海鮮市場からわずか280メートルほど
のところに存在したのである。またWHCDCは、今回の伝染病
流行の期間中、最初に感染した医者グループが勤務するユニオン
病院に隣接してもいた。確かなことは、今後の研究を待つ必要が
あるが、ウイルスが研究所の周辺に漏れ、初期の患者を汚染した
としてもおかしくない。     ──『WiLL』7月特大号
─────────────────────────────
 最後に論文は、海鮮市場から約12キロ離れている「3」の中
国科学院・武漢ウイルス研究所からの発生の可能性について、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 この研究所は、中国のキクガシラコウモリが、2002年から
2003年にかけて流行した重症急性呼吸器症候群(SARSコ
ロナウイルス)の発生源であるとの報告を行っている。
 SARSコロナウイルスの逆遺伝学システムを用いてキメラウ
イルス(異なる遺伝子情報を同一個体内に混在させたウイルス)
を発生させるプロジェクトに参加した主任研究者は、ヒトに伝染
する可能性について報告している。憶測ではあるが、はっきりと
言えば、SARSコロナウイルスまたはその派生物が研究所から
漏れたかもしれないということだ。
 要するに、誰かが新型コロナウイルスの変異と関係していたの
である。武漢にある研究所は、自然発生的な遺伝子組み換えや中
間宿主の発生源であっただけでなく、おそらく、猛威を振るうコ
ロナウイルスの発生源でもあったのだ。
                ──『WiLL』7月特大号
─────────────────────────────
 この論文が相当信憑性のあるものであることは、中国政府が直
ちにこの論文を削除し、執筆者の2人の学者の行方が分からない
ということでわかります。ポンペオ米国務長官は、5月3日、新
型コロナウイルスの発生源が、武漢の研究所であるとする「かな
りの量の証拠」があると発言しています。
 同じ武漢に2つもウイルス研究所があるのですから、疑われて
も当然といえます。だからこそ、中国政府は、何としてもそれか
ら目をそらさせるために、武漢の海鮮市場が発生源であることを
PRしたものと思われます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/005]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ、中国・武漢ウイルス研究所が発生源「かなりの
  証拠」=米ポンペオ国務長官
  ───────────────────────────
   ポンペオ米国務長官は5月3日、新型コロナウイルスにつ
  き、中国の研究所が発生源である「かなりの量の証拠」があ
  ると述べた。ただ、人為的に作り出されたものではないとの
  米情報機関の結論に異議は唱えなかった。長官は、ABCの
  番組で「このウイルスが武漢の研究所から出たことを示すか
  なりの量の証拠がある」と語った。
   また「最も優秀な専門家らはこれまでのところ、(新型ウ
  イルスが)人為的なものだと考えているようだ。現時点でそ
  れを信じない理由はない」と述べた。ただ、米情報機関の結
  論と異なることを指摘されると、「情報機関の見解を認識し
  ている。彼らが、間違っていると考える理由はない」とも述
  べた。米国家情報長官室(ODNI)は先月4月30日、新
  型コロナウイルスについて「人造でも遺伝子操作されたもの
  でもないという科学的な総意に同意する」との認識を表明し
  た。国務省は、ポンペオ長官の発言について説明を求めた取
  材に現時点で応じていない。中国共産党機関紙・人民日報傘
  下の環球時報は社説で、同長官の発言は「はったり」だとし
  長官は武漢の研究所が発生源である証拠を持っていないと指
  摘。米国に証拠を示すよう求めた。「トランプ政権は引き続
  き、異例の宣伝工作を展開するとともに、COVID−19
  (新型コロナウイルス感染症)との闘いにおける世界的な取
  り組みを妨げようとしている」と批判した。
                   https://bit.ly/3gL7O5f
  ───────────────────────────

中国科学院・武漢ウイルス研究所.jpg 
 
中国科学院・武漢ウイルス研究所



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2020年06月04日

●「ウイルスは武漢研究所からの流出」(EJ第5260号)

 重要なのは、中国の党中央が新型コロナウイルスの発生をどの
時点で知ったかです。今のところ2019年12月の後半という
ことになっていますが、もっと以前から知っていたという情報も
あります。WHOに対しては、「正体不明の肺炎の発生」を12
月31日に報告していることは既に述べた通りです。
 このウイルスは、「中国の生物兵器である」という情報がネッ
トなどで流布されていますが、これといった証拠もなく、いずれ
も信用できるレベルの情報とは思えない、いわゆる「陰謀論」の
類いといえます。中国が現在の時点で、新型コロナウイルスを意
図的にばら撒くメリットがないからです。
 しかし、この手の噂が消えないのには、武漢には次の2つのウ
イルスの研究所があり、そこから流出したのではないかと疑われ
ているのです。
─────────────────────────────
      1.中国科学院・武漢ウイルス研究所
      2.   武漢疾病管理予防センター
─────────────────────────────
 当初感染場所とされたのは武漢の海鮮市場です。上記の2つの
ウイルス研究所と海鮮市場との距離は、武漢ウイルス研究所から
は12キロメートル、武漢疾病管理予防センターからは、280
メートルしか離れていないのです。
 それでは、なぜ、これらのウイルス研究所からの流出説が出て
きているのでしょうか。トランプ大統領もそれなりの根拠に基づ
いてその流出説を疑っています。
 中国科学院・武漢ウイルス研究所は、国際基準で危険度が最も
高い病原体を扱える「バイオセーフティーレベル(BSL)4」
に位置付けられています。しかし、この研究施設について、英科
学誌『ネイチャー』が、2017年2月に「同研究施設は検体の
管理が杜撰であり、病原体が流出する恐れがある」という記事に
おいて警告を発しています。
 また、米紙ワシントン・タイムズ(電子版)は、今年1月26
日、この施設は中国の生物兵器計画に関係し「新型コロナウイル
スが流出した可能性がある」というイスラエル軍元関係者の分析
を伝えています。中国メディアによると、インドの研究者も「人
がウイルスをつくった」という推論をネット上に投稿しているな
ど、この研究施設についてはその管理の不備を伝える情報がいく
つも出ています。
 まだあります。2018年に外交官の肩書を持つCIAの科学
専門官も何度も武漢ウイルス研究所を視察し、その管理体制の問
題点などについて警告する外交公電を送っています。この件につ
き、もとCIA長官だったポンペオ国務長官はかなり重要な情報
を握っているようです。したがって、新型コロナウイルスがこの
研究所から流出したとする疑いは相当濃厚であるといえます。
 2020年4月17日のことです。トランプ米大統領は、「ウ
イルスが武漢P4研究所から流出したという情報が広く流れてい
るが、これについてどう考えるか」という記者の質問に対して、
次のように答えています。
─────────────────────────────
 我々もその点について関心をもっている。いま大勢の人が調べ
ている。武漢の研究所からのウイルス流出説は、理にかなってい
る。中国はある種のコウモリがウイルスの発生源との立場をとっ
ているが、そのコウモリは武漢に生息していない。市内の海鮮市
場でも売られていなかった。このコウモリの生息域は、武漢から
60キロ以上も離れている。したがって、ウイルスの自然発生は
あり得ない。             ──トランプ米大統領
─────────────────────────────
 トランプ大統領が「コウモリ」に言及したことは、非常に意味
があります。コウモリに由来するウイルスによる感染には次の3
つがあり、今回の新型コロナウイルスにも関係があるからです。
─────────────────────────────
 1.エボラ出血熱 ・・・・・・・・・・ 1976年以降
 2.SARS(重症性呼吸器症候群)・・ 2002年以降
 3.MARS (中東呼吸器症候群)・・ 2012年以降
─────────────────────────────
 こういう米国の主張について、中国の趙立堅報道官は、次のよ
うに反論しています。
─────────────────────────────
 WHOの事務局長も、ウイルスが武漢研究所でつくられたこと
を示す証拠はないと繰り返し、発表していることも念のため、申
し上げる。また、世界の多くの著名な医学者が、研究所から流出
したという説は、科学的根拠に乏しいと考えている。
                     ──趙立堅報道官
─────────────────────────────
 もうひとつ、そのさなかに、この問題に関して中国政府によっ
て消されたという論文があります。この論文は、広東省広州市の
華南理工大学・生物科学与工程学院の肖波濤(シャオ・ボタオ)
教授と生物学に通じる研究者が執筆したとする論文です。
 この論文は、2020年2月6日に研究者向けサイトにアップ
されましたが、ほどなくして中国政府によって削除され、肖波濤
教授ら2人の行方がわからなくなってしまっています。論文だけ
でなく、研究者の口をも封じたと思われます。
 しかし、最近はウェブサイトから削除しても復元できる技術が
進んでおり、EJはその全文を入手しているす。以下はその論文
のことを伝えているレポートです。ご一読ください。
─────────────────────────────
   ◎新型ウイルスの発生源は武漢の研究所のコウモリ
    The possible orgins of 2019-nCoV coronavirus
               https://bit.ly/2MgW1xI
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/004]

≪画像および関連情報≫
 ●「新型ウイルスは実験室で生まれた可能性もある」とする
  論文が登場
  ───────────────────────────
   パンデミック(世界的大流行)を引き起こした新型コロナ
  ウイルスについて、実験室で生まれた可能性も排除すべきで
  ないとする論文が発表された。アメリカのトランプ政権高官
  や情報機関は新型コロナウイルスの発生源が中国の武漢ウイ
  ルス研究所であると主張しているが、中国はそうした見方を
  陰謀論だと一蹴している。
   専門家はおしなべて中国の立場を支持しており、新型コロ
  ナウイルスは自然に(たぶん武漢の海鮮市場で)人間への感
  染力を手にしたと考えている。新型コロナウイルスが遺伝子
  操作を受けていないことを示す証拠も、そうした見方を補強
  している。
   本誌は複数の専門家に依頼し、問題の論文に目を通しても
  らった。そして得られた評価は、「この分析に使われた手法
  は有効性が証明されておらず、主張を裏付けるようなさらな
  る研究が出てくるまでは結論を急ぐべきではない」というも
  のだった。問題の論文はブリティッシュコロンビア大学やマ
  サチューセッツ工科大学、ハーバード大学の研究者の共著で
  コールドスプリングハーバー研究所が主催するウェブサイト
  「バイオアーカイブ」で発表された。査読は受けていない。
  この論文が新型コロナウイルスが何らかの実験室で生まれた
  可能性(ごく小さな可能性かもしれないが)を主張する根拠
  は、自然から生まれたものにしては「人間によく適応してい
  る」からだという。       https://bit.ly/2zPJnmw
  ───────────────────────────

趙立堅中国報道官.jpg
趙立堅中国報道官
 
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2020年06月03日

●「コロナ禍は中国の高等戦略なのか」(EJ第5259号)

 5月29日のことです。トランプ米大統領は、対中政策を発表
しています。ポイントは2つあります。
─────────────────────────────
     1.WHO(世界保健機関)から脱退する
     2.香港への優遇措置を見直し、撤廃する
─────────────────────────────
 トランプ大統領の米国は遂にここまでやるかという感じです。
「2」については改めて述べるとして、「1」については、5月
18日に「WHOは中国に対し、新型コロナ発生源の独立調査を
公に求めなかった」とし、組織運営に関し、30日以内に本質的
な改善が見られなければ、現在暫定的に実施している「資金拠出
停止を恒久化する」と警告するとともに、WHO脱退の可能性も
示唆していたのです。
 しかし、「30日以内」として日限を切っているにもかかわら
ず、たった12日後のWHO脱退通告です。中国が香港への統制
を強める「香港国家安全法」の導入を決めたことで、まとめて対
中政策を発表したものと思われます。かなり、乱暴なことの決め
方です。WHOとしても、トランプ大統領の要請に対して、どう
対応していいかわからないでいたものと思われます。何しろ米国
は、WHOに対し、年間4億5千万ドルもの資金を拠出している
超大国です。脱退されると、WHOにとっては、その影響力にお
いても、資金的にも大問題になります。
 どうしてこのようなことになったのでしょうか。
 その背景的事実として認識しておくべきことがあります。それ
は、現在、習近平国家主席と中国共産党指導部が、数々の難問を
抱えていることです。例えば、香港での激しい抗議活動、独立を
志向する蔡英文台湾政府の再選、中国のイスラム教徒抑圧の暴露
と批判、そして、なかでも最も影響が大きいのは、米国トランプ
政権による厳しい貿易政策による中国経済のつまずきなどであり
これによる習近平主席への批判や反対意見が、共産党内で高まり
つつあることです。まさにこういうときに、新型コロナウイルス
感染拡大が起きたのです。
 こういう状況において、トランプ大統領は、CIA(中央情報
局)、NSA(国家安全保障局)、DIA(国防情報局)に命じ
て、中国が新型コロナウイルス感染症に責任があるかどうかを知
るためのあらゆる情報を調べ上げるよう指示しています。
 こういう情報機関の政治利用に関して、元CIA高官3人が、
米国の外交専門誌『フォーリン・ポリシー』に、やや批判的なレ
ポートを共同執筆しています。
─────────────────────────────
 アメリカがパンデミックに直面している現状において、こうし
た政治化が行われていること自体が特に懸念される。情報機関に
問われている重要な質問事項――新型コロナウイルスは自然界の
ものか、それとも中国の研究室から流出したものか?中国政府は
伝染病の範囲と規模をどの程度事実を曲げて述べていたか?――
への回答は、特に中国に関して、アメリカの安全保障政策の将来
に多大な影響を与えることになるであろう。
 こうした質問に対してトランプ大統領が求めている回答は知っ
ている。われわれが分からないのは、アメリカの情報機関でキャ
リアを積んでいる分析官が、真実が分かったときに、その真実を
語ることが許されるのかだ。     https://bit.ly/2ZOZcol
─────────────────────────────
 この調査結果がどのようなものであったかについてはわからな
いが、当初、トランプ大統領と側近補佐官たちは、今回の新型コ
ロナウイルスのパンデミックの原因について、ウイルスが中国武
漢のウイルス研究所から誤って流出したものの、その事実を隠蔽
し、時間稼ぎをしたと中国政府を非難しようとしていたのです。
しかし、最近では非難の度合いを一段と高めて、中国政府が故意
にこのウイルスを世界に拡散させたという大胆な告発に動いてい
るのです。
 このシナリオは、米国の保守系のシンクタンクである「ハドソ
ン研究所」の上級副社長、ルイス・リビー氏が、4月29日に発
刊された保守系雑誌『ナショナル・レビュー』に次のように書い
ています。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスが主に中国国内で猛威を振るっている限り
中国経済の成長だけを妨げ、中国政府だけが汚名を被る事態を招
くこととなる。習近平中国国家主席にとっては困難が増し、悪夢
のような展開が待っていた。その間ずっと、世界経済は予想どお
り飛躍し、中国から顧客を奪い、中国が長い間求めている栄光を
横取りするかに見えた。しかし、パンデミックは中国にとって僥
倖となる可能性も持っていた。新型コロナウイルスが蔓延すれば
中国政権内部の悩みは拡散し、また一方で、新型コロナウイルス
感染症で経済が弱体化した国々は、中国製品に対する依存度を高
めざるを得なくなる。トランプ大統領の再選はもはや確実ではな
くなり、アメリカ経済の弱体化は、アメリカの国防支出に影響を
与えるに違いない。         https://bit.ly/2Atk5KQ
─────────────────────────────
 ルイス・リビー氏は恐ろしいことをいっています。中国政府は
わざと数万人の旅行者を新型コロナウイルスに感染させ、欧米各
国に送り込んで感染を拡大させたというのです。しかし、本当に
中国は、そこまでやるでしょうか。
 このルイス・リビーなる人物は、ブッシュ(子)政権のチェイ
ニー元副大統領のかつての副大統領補佐官です。イラクが大量破
壊兵器を持っており、911のテロ攻撃に関わっているというシ
ナリオを書いて、イラク戦争に導いた人物です。2007年に偽
証罪と司法妨害の有罪判決を受けていましたが、2018年4月
にトランプ大統領によって恩赦を受けています。トランプ大統領
は、本当にそういう人の調査結果を信じているのでしょうか。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/003]

≪画像および関連情報≫
 ●特別リポート:なぜブラジルは「コロナ感染大国」に転落
  したのか
  ───────────────────────────
  [サンパウロ/リオデジャネイロ/26日/ロイター]─3
  月中旬、ブラジルは感染の足音が聞こえ始めていた新型コロ
  ナウイルスに先制攻撃を加えた。保健省はクルーズ船の運航
  停止を命じ、地方自治体に、大規模イベントの中止を要請し
  た。海外からの旅行者には1週間の自主隔離を呼びかけた。
  世界保健機構(WHO)がパンデミック(世界的大流行)を
  宣言してからわずか2日後、3月13日のことだった。この
  時点でブラジルでは新型コロナウイルスによる死者は1人も
  報告されていなかった。公衆衛生当局は、先手先手を打とう
  としているように見えた。
   だが、それから24時間も経たないうちに、保健省は各地
  の自治体から「批判と提言」があったとして、自らの勧告を
  骨抜きにしてしまった。当時の状況に詳しい関係者4人によ
  ると、この変化の背景にはボルソナロ大統領の首席補佐官室
  の介入があったという。
   「軌道修正は圧力によるものだ」と、保健省の免疫・感染
  症局長だった疫学者ジュリオ・クロダ氏は語る。当時、この
  方針転換が関心を集めることはあまりなかった。しかし、こ
  の関係者4によると、ブラジル政府の危機対応の転機になっ
  た。ウイルス対応の主導権は、公衆衛生に責任を持つ保健省
  から、「カーサ・シビル」と呼ばれる大統領首席補佐官室へ
  と移っていたという。同室を率いるのは、ウォルター・スー
  ザ・ブラガ・ネット陸軍大将である。
                  https://bit.ly/2BcI9lG
  ───────────────────────────

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習近平国家主席/トランプ大統領.
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2020年06月02日

●「中国は消防士のふりをする放火犯」(EJ第5258号)

 中国がまず狙いを定めたのはイタリアです。感染の爆発に医療
品不足で悩むイタリアに対して、中国は支援物資として大量のマ
スクを送り込んだのです。この中国のイタリア支援に関するダイ
ヤモンド・オンラインの記事があります。
─────────────────────────────
 3月12日、イタリア北部のロンバルディア州の空港に、中国
の医療チームが30トンの医療物資とともに到着した。この様子
は中国のテレビでも大々的に取り上げられて、「人類共通の枠組
み」で取り組んできた外交の成果だと自画自賛した。
 すでに2月以降、イタリアでは北部を中心に新型コロナウイル
ス感染が拡大して、深刻さを増していた。時を経るごとに死者が
激増。特に人工呼吸器などの医療機器が大幅に不足し、医療崩壊
が始まっていた。
 イタリア政府はすぐにEUに医療物資支援を求めたが、3月に
なってもそれに応える国はなかった。それどころかドイツが4日
にマスクなどの輸出を禁止。フランスも3日にマスクの政府管理
を始めて国境を閉鎖。イタリアはEUへの失望を隠さなかった。
 そんなときに、救いの手を差し伸べたのが中国だったわけであ
る。ロンバルディア州政府は中国の配慮に感謝の言葉を述べた。
 EU各国が中国への警戒感を強める中、EUの主要国でありな
がら、中国の国際投資政策「一帯一路」を受け入れたイタリアは
恩人でもある。最近はそのイタリアですら中国に警戒を見せ始め
ていたが、今回の速やかな対応はイタリア世論にも微妙な影響を
与えた。              https://bit.ly/2XFUiHz
─────────────────────────────
 イタリアにはこんな話もあるのです。中国の支援に対し、ルイ
ジ・ディマイオ外相は、李軍華イタリア大使に会って、感謝を伝
えたのですが、それだけでは収まらなかったのです。全国会議員
のもとに、イタリア語版の中国の宣伝誌が郵送され、議会として
中国への「感謝表明」を迫られたといいます。
 フランスに関してこんな情報もあります。2020年4月4日
に、米国のマーク・グリーン下院議員(共和党)が、FOXニュ
ースの番組で暴露したといわれています。既出の長谷川幸洋氏の
情報です。
─────────────────────────────
 中国の習近平国家主席は、フランスのエマニュエル・マクロン
大統領との電話会談で、中国がマスクを10億枚寄贈する見返り
に、華為技術(ファーウェイ)社製の第5世代移動通信システム
(5G)をフランスに導入するよう持ちかけた。FOXニュース
         ──月刊『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 この報道によって、中国への非難が殺到したといいます。中仏
の両政府ともに、その事実を否定したものの、誰もがファーウェ
イの真の意図を見抜いていたのです。中国にとって5G敷設は世
界のIT覇権を握るための中核ですが、マスク外交はそれを進め
るため手段でもあったのです。『選択』/2020年5月号にも
次の記事が掲載されています。
─────────────────────────────
 米ウィスコンシン州上院のロジャー・ロス議長は2月末、中国
の在シカゴ総領事館から、突然、メールを受け取った。「中国の
ウイルスとの闘いを支持し、称える決議を、州議会で採択してほ
しい」という内容だ。無視したところ、13日後にまたメール。
議長は「バカ野郎」と返事を送った。同州議会は結局、「中国の
隠蔽」を糾弾する決議を採択した。
              ──『選択』/2020年5月号
─────────────────────────────
 2月の下旬のことですが、中国の王毅外相は、イタリアのディ
マイオ外相と電話会談をし、イタリアに対して、次のように呼び
かけています。
─────────────────────────────
    イタリアと健康シルクロードをともに築きたい
                 ──王毅中国外相
─────────────────────────────
 中国はEUの一角が崩せると考えて、膨大な量の医療物資の提
供と3次にわたる医療チームを送り込んでいます。ちなみに、中
国が医療チームを送り込んだ国は、次の12ヶ国です。
─────────────────────────────
      イラン        ロシア
      イラク        カザフスタン
      イタリア       ミャンマー
      セルビア       フィリピン
      カンボジア      ベネズエラ
      パキスタン      ラオス
               ──2020年4月13日現在
─────────────────────────────
 ここまでの中国の一連の行動を見ると、中国は「消防士のふり
をする放火犯」以外の何者でもないといえます。こういう中国の
振る舞いについて、EUの外相に当るボレル外交安全保障上級代
表は、次のように警告をしています。
─────────────────────────────
 中国は、自分たちが、米国と違って責任感があり、信頼できる
パートナーであるとしているが、我々は、情報戦や「気前のいい
政治」を使って、影響力を高めようとする地政学的な要素がある
ことに注意しなければならない。     ──ボレルEU外相
─────────────────────────────
 このような中国の動きに関して、世界中が非難の目を向けつつ
あります。とくに米国との関係は、今回のコロナ禍について中国
が責任を回避するメッセージを出すに及んで、抜き差しならない
状況に陥りつつあります。中国と米国は、一触即発の状況に陥り
つつあります。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/002]

≪画像および関連情報≫
 ●イタリア支援でEUにくさびを打ち込んだ中国/マスク外交
  は中国の本領「トロイの木馬作戦」/みずほ銀行/唐鎌大輔氏
  ───────────────────────────
   欧州全域が新型コロナウィルス対応に苦慮する中、その隙
  を突くような中国の鋭い外交が展開されている。中長期的に
  欧州が抱える地政学リスクを考察するうえで、大変に重要な
  意味を持つ動きと見られるので簡単に整理しておきたい。
   過去、中国はギリシャの財政的困窮につけ込んで同国の港
  を買収し、近年はこれを足がかりにしてEU(欧州連合)域
  内に複数の戦略投資を行ってきた。中国は「一帯一路」構想
  の下、欧州各国の要衝で多くの投資を展開しており、一部で
  はEUの内側からの崩壊を狙う「トロイの木馬」作戦とまで
  呼ばれている。相手の弱みを見つけるや否や、機敏に攻め込
  む外交姿勢は中国の本領である。こうした文脈で、中国から
  イタリアへの人道支援は注目される。
   感染者の爆発的拡大に対応が追いつかず、いわゆる医療崩
  壊の状態に陥っているイタリアでは、マスクを筆頭とする医
  療物資支援をEUに求めてきた。しかし、イタリア当局者か
  ら「EUのどの国も応じてくれなかった(マッサーリ駐EU
  大使)」との不満が漏れるように、混乱のさなかでEUは連
  帯感を示すには至っていない。逆にフランスやドイツが国外
  へのマスク輸出を抑止する政策を行って、これをフォンデア
  ライエン欧州委員長が「一方的な行動は良くない」といさめ
  る体たらくである。       https://bit.ly/36L3qyt
  ───────────────────────────

dhimaio/itariagaishou/oukichuugokugaishou.jpg
ディマイオ・イタリア外相/王毅中国外相
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2020年06月01日

●「習近平はなぜ時間稼ぎをしたのか」(EJ第5257号)

 今日からEJは新しいテーマになります。今年に入って2回目
のテーマです。ステイホームの期間中、家にこもってさまざまな
テーマを考えましたが、現在の状況において、新型コロナウイル
ス感染関連のテーマ以外は考えられないと思います。なぜなら、
このウイルスの蔓延によって、経済も、外交も、医療も、ビジネ
スも、教育も根こそぎ変わろうとしているからです。そこで、以
下のテーマで書くことにします。当分は、ニュースと平行しなが
ら書くことになります。
─────────────────────────────
   「『コロナ後』の世界はどのように変貌を遂げるか」
     ─ 米中激変で、日本はどう対応すべきか ─
─────────────────────────────
 中国で原因不明の新型肺炎が発生したのは、2019年11月
頃といわれています。それに最初に気が付いたのは、34歳の李
文亮医師(眼科医)です。「ヘンな肺炎が流行っている」──彼
はそのことをSNSに発信したところ大拡散し、李医師は1月3
日に警察に呼び出され、「デマ拡散」で、訓戒処分を受けていま
す。ということは、党中央は、李医師よりも早くウイルスの感染
拡大を知っていたことになります。
 その証拠に中国は、正体のわからない肺炎が集団発生したこと
を2019年12月31日にWHOに報告しています。明らかに
1ヶ月以上遅らせて報告したことになります。そのとき、中国当
局は、次のようにWHOに報告しています。
─────────────────────────────
  人から人に感染するという明白な証拠は見つかっていない
                      ──中国当局
─────────────────────────────
 1月22日、WHO調査団が訪中していますが、このとき調査
団は、武漢において人から人に感染したという証拠はあるものの
完全に解明するには、さらなる調査が必要との見解を示していま
す。これもWHOとしてはきわめてぬるい対応です。1月下旬に
なって、テドロス事務局長と幹部3人が北京に飛んでいます。実
は、公式の招待を受けたのは午前7時半で、その日の午後8時に
は、飛行機に乗っていたという慌ただしさです。「至急来い!」
と呼ばれたのでしょう。そして、テドロス事務局長は1月28日
に習近平国家主席と会談しています。
 このときの会談では、データと生物学的資料を共有することを
とくに協議したといわれますが、それはあくまで表向きで、テド
ロス事務局長は習主席から「パンデミック宣言」は少し伸ばして
欲しいと要請されているはずです。習主席としては、低価格で、
医療用品を輸入するための時間を稼ぎたかったからです。
 なぜなら、1月に入ってから、中国は、マスクや防護服などの
輸出を禁止する一方で、それらの医療用品の輸入を猛烈に増やし
ています。お人好しの国、日本では、多くの企業や自治体、個人
が、マスクや防護服を中国に寄贈しています。そのとき、日本人
の多くは「マスクなんてどこでも買える」と考えていたのです。
 このことは、米国の国土安全保障省(DHS)が報告書にまと
めていますが、輸出規制がバレないように、数字をごまかし、貿
易データの公表をわざと遅らせて、輸出入の増減を隠していたの
です。このせいで、1月以降、日本でもあっという間にマスクが
店から消えたのです。中国においてマスクの現地生産している米
国の「3M」なども輸出規制措置に遭っています。
 このとき、中国共産党が、どのように動いていたかについて、
ジャーナリストの長谷川幸洋氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国共産党はどれほど組織だって買い占めに動いていたのか。
 中国福建省からの移住者が多いカナダの例を挙げよう。カナダ
の有力メディア、グローバル・ニュースは4月30日、買い占め
作戦を暴露する長文の調査報道記事をネットに掲載した。以下の
ようだ。「カナダの中国領事館が1月半ば、緊急指令を出した。
「武漢で発生した新型コロナウイルスはあまりに危険で、感染力
が強い。そのために、看護師や医師たちは防護用品を使い果たし
てしまった。彼らは医療用のN95マスクや防護服(PPE)を
必要としている。大至急、買い集めて、祖国に送れ」という内容
だった。直ちに在カナダ中国人を総動員した「買い占め大作戦」
が始まった。司令塔を務めたのは、バンクーバーとトロント、モ
ントリオールの中国領事館である。彼らは本国の「中央統一戦線
工作部(UFWD)」と連携して、中国人コミュニティに「N9
5マスクと[PPEをできる限り、買い集めよ」と指示した。U
FWDは、習近平国家主席に直結している政府の組織だ。
  ──長谷川幸洋氏/月刊『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 ちょうどこのとき、多くの日本人は、中国の武漢の感染のひど
い状況をテレビで他人事のように見ていたのです。ただ、正月気
分が残る1月18日に屋形船でのクラスターが発生したことから
日本人も少し警戒をはじめたのですが、そのときにはあらゆるド
ラックストアーからマスクが消滅していたのです。
 WHOが、新型コロナウイルスを、パンデミック(世界的大流
行)に相当すると宣言したのは、実に3月11日のことです。W
HOは、その理由を次のように述べています。
─────────────────────────────
 過去2週間で中国以外での感染者数が13倍に増え、今後、さ
らに感染者や感染が確認される国の数が増えると予想される。
                ──WHO(世界保健機構)
─────────────────────────────
 中国とWHOの共同作戦に世界が騙されたのです。とくに米国
の感染状況はひどく、5月28日現在、感染者数は170万人、
死亡者数は10万人を超えています。すべてを知っている米国の
トランプ大統領は、中国に対してかんかんに怒っています。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/001]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナを告発し罰せられた医師。死後に「処分は不当
  でした」と発表、その本当のワケは?
  ───────────────────────────
   原因不明の肺炎の発生に警鐘を鳴らしたつもりが、逆に処
  分の対象になり、訓戒を受けた医師。後に自ら新型コロナウ
  イルスに感染し死亡したこの医師に対し、中国政府の調査チ
  ームが「処分は不当だった」と結論を出した。だが本当の狙
  いは、単に医師の名誉回復だけではなさそうだ。
   この医師とは武漢市中心医院の眼科医だった李文亮氏(享
  年34歳)李医師は、まだ中国政府が新型コロナウイルスに
  よる肺炎の発生を公式に認めていなかった去年12月30日
  の段階で「市場で7人のSARS(重症急性呼吸器症候群)
  感染が確認された」などの情報をSNS上のグループチャッ
  トに発信した。同僚の医師たちに防疫措置を採るよう注意喚
  起するのが目的だった。感謝されてしかるべき行為。しかし
  4日後の1月3日、李医師が受けたのは賞賛ではなく、地元
  警察からの呼び出しだった。「グループチャットに流したS
  ARSの情報は正しくなかった。今後は注意します」李医師
  は警察で反省させられた上、訓戒処分を受けた。
   李医師は、1月6日に眼科で82歳の患者を診察するが、
  この患者は後に新型コロナウイルスの感染により死亡する。
  李医師自身も10日から発熱の症状が出た。それから1か月
  を待たず、2月7日、李文亮医師は新型コロナウイルスによ
  る肺炎で死亡した。まだ34歳の若さにもかかわらず。
                  https://bit.ly/2AlHPk4
  ───────────────────────────

テドロス事務総長/習近平国家主席.jpg
テドロス事務総長/習近平国家主席
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2020年05月29日

●「コロナ後は消費税減税を行うべき」(EJ第5256号)

 このテーマの連載は、2020年1月6日(月)から、次のテ
ーマで書いてきましたが、今回をもって最終回とします。
─────────────────────────────
    どうしたら日本経済を成長させることができるか
    ── 消費税を廃止することは可能である ──
─────────────────────────────
 昨年10月の安倍政権による消費増税で、個人消費が大きく落
ち込み、10月〜12月期のGDPと、コロナ禍がからんだ1月
〜3月期のGDPも2期連続のマイナス成長に陥っています。新
型コロナ感染が起きたので、すべてはコロナのせいにされてしま
いそうですが、日本の場合は、消費増税で個人消費が大きく落ち
込んだところにコロナ禍が重なっていることを、深く認識すべき
であります。
 日本経済はいまだに長期デフレからなかなか脱却できずにいま
す。それは、デフレにもかかわらず、5%だった消費税を10%
に倍増させたことに大きな原因があります。デフレ時の増税は絶
対の禁じ手であるのに、愚かにも、日本は何回も、その禁じ手を
使っています。そこで、まさに消費税そのものを見直すべきとき
にきていると感じ、このテーマを取り上げたのです。
 昨年来の令和新撰組による「消費税廃止」運動や、景気対策と
して「消費税5%ダウン」の声のうねりの拡大は、令和2年の前
半期に盛り上がるものと予測し、来るべき次の衆議院議員選挙で
は、消費税の是非が大きなテーマになるはずだったのです。折し
もMMT(現代貨幣論)が話題になっており、MMTの正体につ
いてもその本質に迫れると考えて、MMTを取り上げ、ここまで
論じてきています。
 しかし、3月に入ってからのWHOによる新型コロナウイルス
によるパンデミック宣言(2020年3月11日)によって、何
もかもコロナに様変わりし、テレビも朝から晩まで、コロナ一色
に染まっています。そしてあらゆるものが、新型コロナによって
変化しようとしています。
 しかし、皮肉なことに、この新型コロナによって、消費税減税
が実現できる可能性が出てきています。それは、自民党の内部か
らの消費税減税の動きです。これについて、参議院議員の青山茂
晴氏は、共同通信の記者時代に、総理番記者として、消費税をは
じめて導入した竹下登総理との思い出について次のように語って
います。つねづね竹下総理は「消費税を目的税にしてはいかん」
といっていたのです。
─────────────────────────────
 財務省は、安倍総理を動かして、消費税を目的税にしてしまっ
た。安倍総理の大きな間違いである。消費税を初めて導入した竹
下総理と、総理番記者だったわたしは、暮夜ひそかに、共同通信
の政治部にも一切何も言わず、朝5時頃まで竹下総理の私邸、か
つて佐藤栄作邸だった日本家屋の玄関の間で、奥さんの直子さん
やお手伝いさんを起こさないように斗酒を呑んでいた。「一内閣
一課題だ。日本で初めて(税の)直間比率の見直しをやるために
消費税を導入できれば、俺は辞任していいんだよ」と言う竹下総
理はまた、「本当の目的は所得税を代わりに画期的に下げること
だ」と繰り返して仰り、「だからな、消費税を目的税にしちゃい
かん。青山くん、俺が死んだ後もこれは忘れるな」と美味しそう
に盃をあげた。  ──月刊『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 しかし、財務省は実に腹黒いというか、ずるいのです。財務省
にとって、消費税だけは絶対に廃止されたくない、おいしい税制
です。広く網をかけて大量の税を集め、しかも所得税のように、
景気には左右されない税金だからです。
 なぜ、安倍首相は、消費税を目的税にしてしまったのでしょう
か。安倍首相は消費増税にはもともと反対だったからです。それ
は、財務省が「全世代型社会保障」と「教育無償化」いうエサを
ぶら下げて、安倍首相を説得したからです。
 なぜ、そうしたのかというと、そのために消費税法の本体だけ
ではなく、厚労省の予算、文科省の予算と各省庁の予算をめぐる
法律に「消費税の税収を活用し」という文面を入れて、簡単には
減税できないようにしているのです。森友問題の文書改ざんとい
い、中心官庁でありながら、省益のためには法律に違反すること
まで平然と行い、国民のためだけではなく、己の省益のため、悪
知恵を働かせているのです。
 今回のコロナショックにさいして、青山茂晴氏は次のように述
べています。
─────────────────────────────
 武漢熱ショックによる世界の壊滅的な景気後退のなかで、日本
だけに特殊事情がある。それは、昨年の12月に武漢熱が始まる
その2ヶ月近く前、10月1日に間違って消費増税に踏み切り、
それが空前の景気後退を起こしつつあるところに武漢熱に襲われ
た。ここはスキーとは違う。競技スキーは前の失敗に拘っていて
は、転倒が待つ。経済は、前の失敗に拘らないと目標を見誤る。
西暦2020年6月現在の日本経済において眼前の旗門とは、感
染症の収束の度合いを上げること、2次感染、3次感染に備える
ことだ。しかし同時に、一本先の旗門、個人消費の再起こそを見
つめなければならない。
         ──月刊『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 青山茂晴氏は、自民党内に「日本の尊厳と国益を守る会」の代
表を務めています。衆参両院の自民党議員54人が名を連ねてい
ます。これらの与党からの議員立法により、消費減税を実現させ
ようとしています。「5%を軸とし、武漢熱ショック後10%に
戻す」「軽減税率全品目10%」「消費税法があっても、当分の
間、課税を停止する」などいろいろな案があるといいます。消費
減税、機運は高まっています。このテーマの長い間のご愛読を感
謝します。  ──[消費税は廃止できるか/097/最終回]

≪画像および関連情報≫
 ●青山繁晴〜ポストコロナこそ消費減税が必要である理由
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   ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」 (5月15日
  放送)に自由民主党参議院議員の青山繁晴が出演。自民党の
  議員連盟「日本の未来を考える勉強会」と共に、自らが代表
  を務める「日本の尊厳と国益を護る会」が新型コロナウイル
  スへの経済対策として訴える消費税減税への動きについて解
  説した。
   新型コロナウイルス問題での緊急経済対策として、消費税
  の減税を求める動きは自民党から始まった。産経新聞による
  と3月11日、自民党の議員連盟「日本の未来を考える勉強
  会」が税率0%を政府に提言。そして青山繁晴が代表を務め
  る、自民党の「日本の尊厳と国益を護る会」も税率を軽減す
  る訴えを、議員立法にも向けて動いている。
  飯田)その議論も含めて、13日に「日本の尊厳と国益を護
  る会」総会が開かれ、その後、会見も行われました。議員立
  法を与党でやるというのは珍しいことです。
  青山)茨の道ではあります。立法府という名の通り、本来は
  議員が全部の法律をつくってもおかしくないのです。政府が
  国会に提出した法案、内閣が提出した法案という意味で、こ
  れを閣法と言いますけれど、実態としては、もちろん細かい
  ところは行政官、官僚がつくっているのですが、安倍総理も
  含め、政治家が関与していることも事実です。
                  https://bit.ly/3c792nN
  ───────────────────────────

青山茂晴参議院議員.jpg
青山茂晴参議院議員
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2020年05月28日

●「抗原検査には多くのことに使える」(EJ第5255号)

 安倍内閣の支持率が20%台に急落しています。もちろん今ま
でにも何回もあったことですが、そのつど安倍内閣は支持を取り
戻しています。しかし、今回は新型コロナウイルス対策の内閣の
対応にも批判が出ており、その他のいろいろな要素が加わって深
刻化しています。
 5月23日と24日に実施された朝日新聞と毎日新聞の世論調
査は次のようになっています。
─────────────────────────────
  ◎朝日新聞の世論調査
           支持する     支持しない
   内閣支持率    29%       52%
   コロナ対策    30%       57%
  ◎毎日新聞の世論調査
   内閣支持率    27%       64%
   コロナ対策    39%       53%
─────────────────────────────
 森友問題、桜を見る会、検事総長人事など、安倍政権には積年
の不祥事が多々あり、内閣支持率において、不支持が支持を大幅
に上回ることは当然であると思います。しかし、政府のコロナ対
策はそんなに悪くはないと思います。中国は日本の隣国であり、
多くの中国人観光客が来日しており、人口からみても感染者数、
死者数ともによく押さえ込んでいると思います。とくに死者数は
どう考えても世界各国に比べ圧倒的に低いといえます。
─────────────────────────────
     ◎2020年5月26日現在
      感染者数 ・・・・・ 16591人
      回復者数 ・・・・・ 13771人
       死者数 ・・・・・   851人
─────────────────────────────
 それでは、国民は何に怒っているのでしょうか。
 それは何をしても「遅い」の一言に尽きます。とくに布マスク
については、4月1日に首相が約束し、そろそろ2ヶ月になろう
としているのに、26日現在、私のところには届いていないし、
10万円給付のための自治体のはがきすらきていません。
 鳴りもの入りで打ち出した雇用調整助成金については、申請の
ための書類が多過ぎて、プロに頼む人が多いそうですが、そのプ
ロですら、音を上げるほど、書類を揃えるのが難しいそうです。
概して役人は、必要のない人間にお金を与えてはまずいと考える
せいか、お金の出る手続きはどうしても申請を複雑化させる傾向
があります。これが目詰まりの原因です。
 5月26日付の朝日新聞「経済気象台」は、布マスクについて
次のように書いています。
─────────────────────────────
 布マスクの配布は4月27日に始まったが、不良品の多発でも
たつき、今も行き渡っていない。その間に、不足していたマスク
は市中に出回り始めている。労働組合が50枚入りの箱を全組合
員に支給した会社もあるという。緊急事態宣言は25日、継続し
ていた5都道府県についても解除されることになった。(中略)
 高校時代の漢文の授業では、「過ちては則ち改めるに憚ること
勿れ」とも教わった。「給食マスク」とも揶揄される愚策をなぜ
強行するのか。ここは素直に中止し、せめて郵送料の支払いを少
しでも削減すべきではないか。、(玄)
           ──2020年5月26日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 新型コロナ感染者のなかには、感染しても無症状で、そのまま
治る人もいます。この無症状感染者の感染力が一番強いとなると
感染拡大を防ぐためには、そういう人をいかに早く発見し、隔離
することが必要になります。しかし、それは絶望的に困難な仕事
です。しかし、感染者本人が自覚していないので、あちこち歩き
回るからです。
 しかし、「抗原検査」であれば、それはある程度可能です。そ
のためのキットも次のように厚労省は承認しています。価格は、
6000円と手ごろな価格であり、最短10分で判定可能です。
─────────────────────────────
 厚生労働省は、20120年5月13日、みらかホールディン
グス子会社の富士レビオが承認申請していた新型コロナウイルス
の抗原検査キット「エスプラインSARS−CoV−2」を承認
し、同日の中央社会保険医療協議会(中医協)で保険適用の検査
費を6000円に定めた。行政検査となる場合は全額公費負担と
なる。まずは患者発生数の多い都道府県で帰国者・接触者外来を
持つ医療機関や特定機能病院から供給が開始される見込み。
                  https://nkbp.jp/3d62nLW ─────────────────────────────
 もっともこういう抗原検査でも国民全員に検査を実施するのは
大変です。しかし、例えば企業の従業員全員を検査することは十
分可能です。もし社員のなかで、1人でも新型コロナウイルスの
感染者がいると、企業自体がクラスターになりやすく、経営者と
しては不安です。こういう場合、従業員全員に抗原検査をすれば
感染者をクラスターになる前に発見できます。
 もっとも、この抗原検査で「陰性」になっても感染者ではない
という100%の判定はできませんが、発熱などの症状が出てい
る陰性者は、医師の判断により、PCR検査を実施すれば、陰性
か陽性かを確定できます。
 他にも利用法はたくさんあります。最も感染が疑われる年配の
肺炎患者全員の検査であるとか、ある特定会議の出席者全員に対
する検査など、少しでも早く、感染の有無を知りたいケースにつ
いて、抗原検査は活用できます。
 この抗原検査に、唾液によるPCR検査を併用すれば、感染者
の発見は一層早まることは確実で、状況に合わせたさまざまな活
用が期待できます。  ──[消費税は廃止できるか/096]

≪画像および関連情報≫
 ●抗原・抗体検査 特性踏まえて有効活用を/毎日新聞
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスに感染しているかどうかを調べる「抗
  原検査」が承認された。この検査は、ウイルスを構成するた
  んぱく質の有無を調べる。最大の利点は、10〜30分で結
  果が出ることだ。その場で感染が分かるため、使い勝手がい
  い。感染が疑われる症状がある人はまず医療機関などで抗原
  検査を受け、「陽性」であれば感染確定とみなす。「陰性」
  の場合のみ、PCR検査に回す。
   精度は、PCR検査より劣るが、現場の負担軽減につなが
  る。これまで、感染を知る手段は、PCR検査に限られてい
  た。だが、実施体制の整備が追いつかず、必要とする人に速
  やかな検査を提供できていなかった。
   背景には、窓口となる保健所、検査を受け持つ地方衛生研
  究所の業務過多がある。検体の運搬にも困難がつきまとう。
  こうした現状を抗原検査で補いながら、流行の第2波に備え
  て検査体制の拡充を急ぐべきだ。検体採取の際に2次感染す
  るリスクが低い唾液を使う方法も研究されている。検査の選
  択肢を増やす努力を続けてほしい。「抗体検査」も導入され
  る。この検査は、過去に感染していたかどうかが分かる。東
  京、大阪、宮城の3都府県で、計1万人を対象に実施する方
  針だ。抗体を持つ人の割合を知ることで、ウイルスがどの程
  度社会に広がっているかを推し量れる。
                  https://bit.ly/2M0k3wQ
  ───────────────────────────

抗原検査キット「「エスプラインSARS−CoV−2」.jpg
抗原検査キット「「エスプラインSARS−CoV−2」
posted by 平野 浩 at 13:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月27日

●「国民全員検査/無症状感染者捕捉」(EJ第5254号)

 昨日のEJにおける小林慶一郎氏と玉川徹氏との対談のなかで
「抗原検査」という言葉が出てきましたが、PCR検査、抗体検
査とはどう違うのかについて、説明しておきます。
 「抗原」とは何でしょうか。
 「抗原」というのは、生体内に侵入して抗体をつくらせ、その
抗体とだけ結合して反応する物質で、細菌毒素・菌体成分や多く
の異種タンパク質がこれに該当します。
 抗原検査自体はインフルエンザの簡易検査と同じです。鼻咽頭
から検体を採取し、ウイルスに特有の物質とくっつく物質が入っ
た液体に入れると、数分で結果は出ます。検査精度はPCR検査
と比べると若干劣るものの、判定が早く出る点が最大のメリット
であるといえます。
 政府は5月9日、新型コロナウイルスを患者の検体から、15
〜30分で検出する「抗原検査」のキットを13日に薬事承認し
保険適用とすることを決めています。開発会社は「富士レビオ」
(東京)です。
 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策本部は、この「抗原
検査」をどのように活用しようとしているのでしょうか。それを
示しているガイドラインの図を添付ファイルにしてあります。添
付ファイルを見てください。簡単に説明します。
 感染が疑われる場合、最初に抗原検査を実施します。PCR検
査は受検のハードルは高いですが、抗原検査であれば、多くの人
が検査を受けられます。これによって「陽性」が出ると、その人
は間違いなく、新型コロナ感染症の感染者であり、入院措置また
は宿泊医療による隔離が行われます。
 問題は、抗原検査の結果が「陰性」だった場合です。「陰性」
だったといっても感染していないとはいえないからです。そうい
う場合は、医師の判断により、PCR検査を受けるべきかどうか
が決められます。この場合、医師がどういう基準でPCR検査を
受検させるのかがはっきりしませんが、おそらく無症状の人は、
きっと外されると思います。
 しかし、5月25日のEJ第5252号の台湾疾病コントロー
ルセンターのレポートでは、無症状の感染者ほど感染力が強いと
いう結果が出ており、もし、その人が感染者であった場合、多く
の二次感染者を出すことになります。
 小林慶一郎氏と玉川徹氏の対談では、国民全員に「抗原検査」
をするという話が出ていましたが、この検査で「陰性」になって
も、同じことがいえます。つまり、「感染者でない」とはいえな
いわけです。そのため、小林慶一郎氏も「あくまで理想論であり
感染者を100%判定できる検査方法があれば」とかなり厳しい
前提条件をつけています。そういう意味では、抗原検査はもちろ
んのこと、PCR検査といえども、その精度は100%ではない
のですが、現状一番正確に判定できる検査法は、PCR検査しか
ないのです。
 もっとも「抗原検査」が役立つ場面があります。ある特定エリ
アにおいてクラスターが発生し、かなりの数の濃厚接触者がいる
場合、急いで感染者を特定したいとき、抗原検査は威力を発揮し
ます。判定に時間がかからないからです。
 もうひとつ明るいニュースがあります。それは、検体に唾液を
使うPCR検査です。PCR検査には、検体を鼻の奥から採取す
るときに、医師らが感染するリスクがあります。そのため、医師
らは厳重に防護服に身を包み、慎重に検体を採取することになり
ます。手間がかかるし、リスクもあるので、だから、一般のクリ
ニックではできないのです。
 しかし、検体が唾液であれば、検体採取を被検者自身ができる
し、自分で採取して郵送もできるので便利です。これにより、大
勢の人のPCR検査が可能になります。しかも、検査の精度は一
般のPCR検査と変わりないし、判定時間も短て済みます。20
20年5月16日付の日本経済新聞は、この唾液によるPCR検
査について、次のように伝えています。
─────────────────────────────
 タカラバイオは、唾液から新型コロナウイルスの感染の有無を
調べるPCR検査用検査試薬を発売する。厚生労働省の認可など
を経て発売は早くて5月末になる見通し。鼻や喉から粘液を採取
する検査は医療従事者のサポートが必要だが、唾液による採取は
簡単で自分でもできるという。自宅で採取して検査場所に郵送す
るような使い方も可能になりそうだ。本格的に普及すれば、検査
機会の拡充につながりそうだ。
 厚労省は唾液を検体に使うPCR検査法を5月中にも認める公
算だ。タカラバイオは国内で初めて唾液を用いる検査試薬を発売
する見通し。既に月200万検体分の量産体制を整えている。唾
液による検体の採取の利点は2次感染のリスクが少ないことだ。
PCR検査には現在、鼻の奥の粘液が使用されているが、検体を
取る際にせきやくしゃみが出やすく、医療従事者に感染する危険
性がある。唾液の場合は、専用の容器に吐き出すだけで採取でき
る。PCR検査では検体に含まれるコロナウイルスの遺伝子を増
幅して感染の有無を判断する。タカラバイオが開発した試薬は唾
液に含まれる不純物を取り除かなくても遺伝子を増幅でき、約1
時間で検査結果が判明するという。  https://bit.ly/3cY2CJb ─────────────────────────────
 この唾液によるPCR検査は画期的であり、これを使えば、国
民全員を検査することも不可能ではないといえます。しかも厚労
省は5月中にも認可する方針であるといいます。
 もし、台湾やドイツの指摘する無症状感染者の感染力が強いと
いうことになると、その無症状感染者をいかにして見つけるかが
重要になります。これは、ほとんど不可能に近いですが、それを
可能にする方法が、国民全体のPCR検査しかないということに
なります。これを実行するには、時間とコストの高いカベがあり
ますが、工夫すれば、国民全員を検査しなくても効果的な方法は
あると思います。   ──[消費税は廃止できるか/095]

≪画像および関連情報≫
 ●コロナ感染者隔離のための検査は「地獄への道」/岩村充氏
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルス禍に出口らしきものが見え始めたとた
  ん、国民全体をPCR法その他で検査し、感染が疑われる人
  を隔離することで経済を立て直そうという提言が出てきた。
  (小黒一正・関山健『新型コロナ・V字回復プロジェクト〜
  「全国民に検査」を次なるフェーズの一丁目一番地に』)。
   提言は、今の日本の問題は、ウイルス禍に対するに「命か
  経済か」の二者択一から離れられないでいるところにあると
  する。だから、ここで大きな経済資源を投じて国民全体を検
  査する体制を整備し感染者を完全に隔離する体制を整えれば
  非感染とされた人は安心して経済活動にいそしめるはずだ。
  つまり「命も経済も」という出口があるはずだ、そう主張す
  るのである。
   だが、すでに反論として書いたように(『「自由」を危機
  にさらす(「全員PCR検査法査論」の罠)、筆者はこれに
  反対である。理由は、検査と隔離だけでは感染爆発を止めら
  れないだけでなく、こうした提言が実施されたときに生じる
  自由あるいは、人権への危機を予感せざるをえないからであ
  る。今回は、やや具体的に説明しよう。あなたが何かのきっ
  かけで、新型ウイルスへの感染を心配する状況に至ったとす
  る。すでにウイルス感染症への特効薬のようなものが開発さ
  れていて、それを処方してもらえばウイルスが完治する、あ
  るいは、完治とまで行かなくても、軽症化すると知っていた
  らぜひ検査を受けたいと望むだろう。検査結果が陰性なら安
  心するだろうし、陽性なら、薬を処方してもらえるはずだか
  らだ。             https://bit.ly/3bXLqC4
  ───────────────────────────
 ●添付ファイルの図の出典/https://bit.ly/2AXQxFJ

厚労省の示した検査のガイドライン.jpg
厚労省の示した検査のガイドライン
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2020年05月26日

●「市中から感染者を完全に隔離する」(EJ第5253号)

 2020年5月19日(火)の「羽鳥慎一モーニングショー」
では、最近はあまり行われていない「そもそも総研」が番組内で
急遽行われたのです。玉川徹氏が、東京財団政策研究所/小林慶
一郎研究主幹に、新型コロナウイルス感染拡大阻止対策について
インタビューしています。ご覧になっていない人も多いと思われ
るので、そのエッセンスをご紹介することにします。
 小林慶一郎氏はこういっています。新型コロナウイルスの感染
拡大は、日本においては、緊急事態宣言による休業要請によって
現在のところは低く抑えられています。しかし、これは「人と人
が極力会わないようにする」という、経済を犠牲にする「消極戦
略」による成果なのです。
 これから第2波が来るといわれますが、それまで数ヶ月の時間
が稼げると思うので、今こそ、これまでの「閉じこもり戦略」か
ら「新たな戦略」へ転換するチャンスであると思います。
 あくまで理想論ですが、もし、感染者かどうかを100%判定
できる検査方法があるとするならば、1回だけ全国民にその検査
を受けてもらって、その結果、陽性になった人は、隔離をして、
2週間だけ社会から外れてもらうと、その他の人は感染者ではな
いので、経済も社会も回していけることになります。それで問題
は解決するというのです。
 ノーベル経済学賞を受賞したポール・ローマーという米国の経
済学者がいますが、彼は、米国民全体が2週間に1回、全員検査
を受けられるようにすれば、陽性者を隔離して、他の人は普通に
経済を再開しても構わないという提言をしています。似たような
提言がハーバード大学の倫理学センターの学者グループからも出
ています。イギリスにある公衆衛生学の専門家グループも、イギ
リスで、1日1000万件の検査をやれば、経済は再開できると
いう提言を出しています。
 もちろんこれは、あくまで理想論でありますが、考え方の基本
は、非常に筋がいい考え方だと思います。感染者と非感染者が接
触しなければ、新たな感染は生まれないからです。症状がない人
を検査することは意味があるのかという人もいますが、私は医療
にとっても意味があると思います。それは、大量に無症状の人を
大量に隔離できれば、無症状の人たちが、さらに感染を広げる可
能性を減らすことができます。それは、結局、医療の現場にやっ
てくる重症者の数を将来的に減らすことになるので、医療の役に
立つと思います。
 1日の検査数としては、現在が2万件であるとすると、10倍
以上必要です。数兆円規模の資金を使えば、検査機器の大量購入
大量生産、検査人員1万人を他業種から集めて訓練するならば、
1日数10万件のPCR検査は可能です。また、民間ホテルを借
り上げて、50万人分の隔離施設を確保できると考えています。
 本当は、1日10万件ではなく、100万件とか、1000万
件というところまでいった方が良いというのが、理論モデルでは
出てきます。なぜなら、1日1000万件の検査が可能となれば
2週間で国民全員の検査が可能になるからです。
 ここからは、小林慶一郎氏と玉川徹氏の対談になります。
─────────────────────────────
玉川:今PCR検査だと、1万8000円ぐらいのコストが掛っ
 ているみたいなんですね。コストと簡便さでいうと、「抗原検
 査キット」というのが日本でも承認されまして、これが、大体
 6000円くらいだというふうにいわれているんですね。仮に
 1万円で計算すると、日本人全員に抗原検査をやった場合、1
 兆3000億円になりますよね。これぐらいのオーダーだった
 ら、どうなんでしょうね。
小林:全員というのは物理的に難しいと思うんですけれど、理想
 論としては、1兆円とか、2兆円のお金で済むのであれば、私
 は安いと思っている。IMFの予想によると、経済成長率が、
 マイナス3%とか、マイナス5%に今年はなってしまうわけで
 すよね。自粛と休業を1年間続けたら、マイナス5%だとする
 と、25兆円くらい。日本のGDPが500兆円なので、経済
 損失が25兆円出てしまうわけです。
玉川:そうですね。
小林:1回全国民が検査を受けてもらってそれで経済再開すれば
 その25兆円の経済損失がなくなって、その代りに検査コスト
 2兆円とか3兆円ぐらいかかるということだったら、極めて安
 いですよね。
玉川:ああ、そうですね。要するに、今まで検査というものは、
 医療だったわけですよね。そういう発想ではない、というわけ
 ですか。
小林:医療のためでもあり、かつ社会の不安をなくすためでもあ
 るという発想だと思うんですね。例えば、自分が消費者として
 レストランに食事に行くとか、あるいは買い物に行く時に感染
 してしまうかもしれないという不安を感じるわけですよね。
玉川:それは絶対ありますよ。
小林:感染の不安があることが経済や社会をものすごく痛めつけ
 る、委縮させてしまうというものがある。これを逆にいうと、
 検査することによって、感染者が社会の中からいなくなれば、
 私たちは感染の不安を感じなくて、経済ももっとV字回復する
 可能性がある。何度も緊急事態を繰り返して、そしてそのつど
 現金給付で財政を出していくというのは、ある意味で感染の拡
 大という状況に受動的に対応する受け身戦略だと思うんです。
 それに対して検査を大量に行って、無症状の感染者を社会の中
 から捕捉して、そして一時的に隔離してもらうというやり方が
 ある種、感染の拡大を積極的に閉じ込めようという感染コント
 ロールの積極戦略だと思うんです。そういう積極戦略に切り換
 えるタイミングがちょうど今だと思うんです。
       ──「羽鳥慎一モーニングショー」/5月19日
─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/094]

≪画像および関連情報≫
 ●いまこそ、国民全員にPCR検査を!なぜ日本は検査数を絞
  るのか
  ───────────────────────────
   政府は4月16日に、「緊急事態宣言」の対象地域を全国
  に拡大することを決め、安倍晋三首相は、「特にゴールデン
  ウィークにおける人の移動を最小化する観点から」、「最低
  7割、極力8割の接触削減を何としても実現しなければなら
  ない」と訴えた。
   だが、連休前の段階でも「8割接触削減」を達成できてい
  るかは疑わしい。422日、国の専門家会議は「オンライン
  帰省」「オンライン飲み会」「遠隔診療」など、具体的な行
  動を「10のポイント」として示し、大型連休中も自宅で過
  ごすよう提言した。
   4月24日時点で、国内の感染者数はクルーズ船の乗客・
  乗員を合わせて、1万3575人となった。公表される日々
  の感染者数は爆発的な増加傾向とは言えず、安倍首相の言う
  「ギリギリ持ちこたえている」という印象も与えるが、一方
  で、死者数の増加が続いている。国内の死者数は24日時点
  で358人に上っている。
   感染者数が急増していない背景には、検査数の抑制がある
  と言われている。オーバーシュートを起こして医療現場が崩
  壊せぬよう、「軽症者は様子をみる」「重症化してからPC
  R検査」というフローが一般化しているからだ。だが、発熱
  しながら自宅待機をしている間に容体が急変し亡くなった女
  優・岡江久美子さんのケースがきっかけの1つとなり、国内
  ではその方針に対して、大きな疑念が湧き上がっている。
                  https://bit.ly/2A4unks
  ───────────────────────────

小林慶一郎氏/日本財団.jpg
小林慶一郎氏/日本財団

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2020年05月25日

●「日本の感染予防策は間違っている」(EJ第5252号)

 先週金曜日のEJで、台湾からもたらされた新型コロナウイル
スに関する情報について分析を続けます。もし、この情報が正し
いとすると、新型コロナウイルスの感染に対する対応策が変わる
ほど重要です。
 サンプルは、新型コロナウスルスに感染した100人とその濃
厚接触者2761人です。濃厚接触者の内訳は、次の通りです。
─────────────────────────────
         家族 ・・・・・  219人
      病院関係者 ・・・・・  697人
        その他 ・・・・・ 1755人
      ―――――――――――――――――
                  2671人
─────────────────────────────
 このうち、二次感染をしたのは22人(0・7%)ですが、い
つ接触したかについて、接触歴は次の3つに分かれています。
─────────────────────────────
            症状が出る前 ・・ 10人
         発症日から3日以内 ・・  9人
    発症日から4日目ないし5日目 ・・  3人
         5日目以降の感染者 ・・  なし
    ―――――――――――――――――――――
                      22人
─────────────────────────────
 この結果は実に衝撃です。22人の二次感染者の約半数、10
人が症状の出る前に感染していることです。発熱やせきなどの症
状が出てから3日以内までを含めると、それまでに86%が感染
していることになります。症状が出て3日くらいまでは、他人は
もちろんのこと、本人も「まさかコロナでは!?」と、二次感染
を疑っていない、一番警戒していないときです。そういう無警戒
のときに、新型コロナウイルスは最も感染力が強いのです。
 そして症状が出てから、4日目、5日目になると症状がだんだ
んひどくなり、「もしかコロナでは!?」と本人が疑いを強めた
頃になると、二次感染者は3人となり、周囲が最も警戒する6日
目以降になると、皮肉なことに感染者はいなくなるのです。つま
り、PCR検査を受けようと考える頃には、ほとんど感染しなく
なるのです。そうであるなら、医療関係者は、あのものものしい
防護服に身を包む必要はなくなります。
 症状がまったく出ないが、PCR検査で陽性と判定された人に
ついては、その判定の日から一週間はホテルなどに隔離する必要
があるものの、この期間が経過しても無症状であれば、その後は
自宅に戻してもよいことになります。現在やっているPCR検査
で「陰性」が2回確認されないと帰宅できないという措置は意味
がないことになります。
 以上は、台湾疾病コントロールセンターが主導した研究ですが
この台湾の研究報告のレポートは、英文ですが、その出典を明ら
かにしておきます。
─────────────────────────────
     ◎台湾疾病コントロールセンターレポート
             https://bit.ly/3g66jhM
─────────────────────────────
 この台湾のケースにつながる研究報告がドイツからも届いてい
ます。これは、ウイルス分離実験の話ですが、診断直後は、高い
確率でウイルスを分離増殖できたものの、日を経るごとに減少し
発症から8日目以降では、検査した全員がウイルスを分離できな
かったというのです。これについて、小島勢二名古屋大学名誉教
授は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスの分離培養は、もっとも危険な病原体を扱
える限られた研究所しかできない。ウイルスの定量や分離培養の
結果も、台湾から報告された研究と符合しており、これらの研究
結果を総合すると、新型コロナウイルスは、症状が出てから1週
間経てば、すでに感染力を失っていると考えられる。
 この研究結果は、今後の新型コロナウイルスの感染対策に極め
て重要な意味を持つ。今回の知見をもとに、これまでのわが国に
おける新型コロナ感染対策を顧みるとともに、今後の対策にこの
結果をどう生かすかについて論じてみたい。
 従来、保健所が窓口になっている帰国者・接触者相談センター
では、PCR検査を受ける基準は、発熱などの症状が表れてから
4日以上経過してからとされてきた。(一部略)実際、ほとんど
の患者が、PCR検査を受けるのは発症から5日目以降であった
と思われる。さらに、PCR検査の結果が届いて陽性が判明し、
隔離されるのは、多くは発症から1週間以上経過してからであっ
た。すなわち、最も感染リスクが高い時期には隔離されておらず
すでに感染のリスクがなくなってから厳重な隔離管理をされてい
たことになる。台湾では、今回の結果をもとに、発症後1週間経
過し、病状が悪化する恐れがなければ、隔離する必要はないとし
て自宅療養を勧めることになった。  https://bit.ly/2ZsNBuH ─────────────────────────────
 もし、この台湾疾病センターの報告やドイツの研究成果が正し
いとすると、日本はすべて真逆のことをやっていることになりま
す。発熱はもちろんのこと、息苦しさなどのそれらしき症状が出
ている人──すわわち、もっとも他の人に感染しやすい時期には
PCR検査が受けられず、発症後一週間以上経過してから、隔離
し、治療の結果、症状が出なくなり、感染の危険がまるでないに
もかかわらず、ホテルなどで隔離を継続し、PCR検査で2回の
「陰性」が確認できないと、解放されないのです。
 厚労省の専門家会議は、この小島勢二名古屋大学名誉教授の情
報をどのように考えているのでしょうか。それにしてもこの新型
コロナウイルス、実にやっかいな存在です。
           ──[消費税は廃止できるか/093]

≪画像および関連情報≫
 ●別の人へ感染のリスク、発症2〜3日前から 中国で推計
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスに感染した人が別の人に感染させる時
  期は、発症の2〜3日前から始まり、発症前後に最も感染さ
  せやすくなるとの推計を、中国・広州医科大などのグループ
  が発表した。発症前に起きた感染は約4割と見積もられ、多
  くの人が感染に気づかないままウイルスを広げている可能性
  がある。グループは、国内外の報告を集め、感染した人とさ
  せた人が特定され、発症日もわかる77ペアの情報を分析し
  た。ある人が発症し、感染させた別の人も発症するまでには
  推計で平均5・8日。先行研究から潜伏期間が5・2日を平
  均としてばらつきがあると仮定すると、他人への感染は発症
  の2・3日前から起き、0・7日前がピークだった。発症前
  に起きた感染は推計44%で、発症から7日後には急速に感
  染させにくくなっていた。
   グループは広州医科大の関連病院の患者94人に対し、発
  症から32日間のどから検体を取ってウイルス量も調べた。
  ばらつきは大きいが全体の傾向としては、ウイルス量は初日
  が最も多く、21日ごろにはほぼ検出できなくなっていた。
  これらのことから、グループは、ウイルスの排出は発症の2
  〜3日前から始まっているとみている。
                  https://bit.ly/3bTV491
  ───────────────────────────

台北市内で記者会見をする陳時中・衛生福利部長.jpg
台北市内で記者会見をする陳時中・衛生福利部長

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2020年05月22日

●「無症状陽性者の感染力はより強い」(EJ第5251号)

 ワタミ株式会社の会長兼グループCEOの渡邊美樹氏が「夕刊
フジ」の自身のコラム「経営者の目線」で、「新しい生活様式」
について、次のように論評しています。
─────────────────────────────
 政府の専門家会議が示した「新しい生活様式」を見て、愕然と
した。この様式に直接該当する業界は、廃業や倒産ラッシュの危
機に直面する。カラオケ、飲食店、スポーツジム、冠婚葬祭など
業界そのものが立ち行かなくなる。もちろん、感染症の専門家を
責めるつもりはない。彼らも経済の専門家の意見を求めている。
この新しい生活様式の食事の項目では、「大皿は避けて、料理は
個々に」「対面でなく、横並びで座ろう」「料理に集中、おしゃ
べりは控えめに」「お酌、グラスやお猪口の回し飲みは避けて」
などの表現が並ぶ。これは居酒屋そのものの否定だ。経済的な救
済策も示さないでこの様式を発表しても、結局は「生きていくた
め営業する」中小の経営者も出てくるわけで、中途半端なものに
なってしまう。──「経営者の目線/新しい生活様式で倒産が増
 える」/渡辺美樹氏/2020年5月19日発行「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 「新しい生活様式」はどう考えても無理があります。したがっ
て、これを新型コロナウイルスを封じ込めるまでのあくまで暫定
的な対策として捉え、1日も早くウイルスの感染をストップさせ
ることに国として全力を尽くす必要があります。
 新型コロナウイルスの感染に関する重要な情報が台湾からもた
らされています。今日は、この情報について検証することにしま
す。その前提的知識として、PCR検査について知る必要があり
ます。そもそもPCR検査の「PCR」とは何を意味しているの
でしょうか。
─────────────────────────────
      PCR=Polymerase Chain Reaction
             ポリメラーゼ連鎖反応
─────────────────────────────
 「ポリメラーゼ」というのは、私たちの細胞の中で遺伝子(D
NAあるいはRNA)が増幅するときに働く酵素の名前です。こ
のように、PCRの説明をしようとすると、遺伝子の難しい話に
なってしまうので、以下、ごく大ざっぱに説明します。
 PCR検査は、厳密にいうと、次の2つがあり、2つを総合し
てPCR検査と呼んでいます。
─────────────────────────────
            @定性検査
            A定量検査
─────────────────────────────
 第1は「定性検査」の説明です。
 ウイルスの遺伝子はとても小さくて目に見えないので、特殊な
装置を使って、目的の遺伝子を増加させるのです。その結果、目
で確認できた場合は「陽性」、確認できなければ「陰性」と判断
します。これが「定性検査」であり、正式には「PCR法」と呼
ばれています。
 第2は、「定量検査」の説明です。
 PCRの1サイクルで、目的の遺伝子は2倍になりますが、増
やした遺伝子がある量に達するのに、PCRを何サイクル回した
かが分かれば、最初に存在する遺伝子の量を推定することができ
ます。これが「定量検査」ですが、正式には「リアルタイムPC
R法」といいます。
 さて、日本では、新型コロナウイルスの感染者は、すべて病院
に入院・隔離(症状がない人はホテル)されますが、退院が許さ
れるには、PCR検査で2回続けて「陰性」と判定される必要が
あります。また、感染者の濃厚接触者も、原則2週間の待機が求
められ、これが常識になっています。
 しかし、難治性血液疾患などを専門とする小島勢二名古屋大学
名誉教授は、最近の知見では、この2回続けて「陰性」の判定は
必要がないのではないかという意見を述べています。その最近の
知見とは、台湾からもたらされた研究報告です。その要点をご紹
介します。
─────────────────────────────
 台湾で新型コロナウイルス感染の確定診断がついた100人に
濃厚接触した2761人について、濃厚接触者が最初に患者に接
触した時期と、感染の有無との関係について調べた。患者のうち
9人は無症状であった。濃厚接触者の内訳は、家族が219人、
病院関係者が697人、その他が1755人である。2761人
の濃厚接触者のうち、二次感染したのは22人(0・7%)、で
あった。軽症患者よりも重症患者に接触した人の方が、感染する
リスクが高かった。無症状の患者に接触した91人のうち、二次
感染をおこした人はいなかった。
 二次感染した22人のうち、10人は患者に症状が出る前の接
触歴があり、9人は症状が出た日から3日以内、3人は4日目あ
るいは5日目だった。すなわち、発熱やせきなどの症状が表れて
から6日目以降に接触しても、感染することはなかったのだ。無
症状の患者に接触した人についても、PCR検査が陽性となった
日から数えて6日目以降になると感染者はいなかった。二次感染
者の半数には患者に症状が出る前に接触歴があったが、この時期
に患者との接触を避けるのは不可能であろう。
                  https://bit.ly/2LI0JEv ─────────────────────────────
 これは、新型コロナウイルス陽性の判定の出た100人につい
ての分析です。注目すべきは、その濃厚接触者2761人のうち
実際に感染したのは22人ですが、そのうち10人(45%)は
患者が症状の出る前に接触歴があったという点です。つまり、無
症状のときの接触による感染が非常に多い点です。詳しい分析に
ついては、来週のEJで行うことにします。
           ──[消費税は廃止できるか/092]

≪画像および関連情報≫
  ●PCR検査の現状と課題 「検査可能」なぜ増えない?
  ───────────────────────────
   東京・世田谷区で、単身赴任の50代の会社員の男性が新
  型コロナウイルスに感染して、死亡したことがわかった。男
  性は保健所に電話しようとしたが、つながらずその後、死亡
  した。PCR検査の結果が出たのは亡くなったあとだった。
  PCR検査をめぐっては、コロナ対策推進室の職員が感染し
  所管する西村康稔経済再生担当相が、念のためPCR検査を
  受けたことが、ネットでやり玉に挙げられる騒ぎも起きてい
  る。これについて、西村康稔経済再生担当相は「危機管理の
  観点から医師と相談し、自費でPCR検査を受けました」と
  話した。
   PCR検査を受けられる人と受けられない人について、別
  所氏はどう考えているのか。別所哲也氏「市民のレベルで考
  えると、PCR検査を受けたいのに受けられない。保健所も
  一生懸命やってくださっているでしょうけど、パンクしてい
  る。こういう気持ちから考えたら、なぜ優先されるのかと感
  情的になってしまうことはわかります。ただ、危機管理とい
  うところで、ある程度の立場の方々がPCR検査を必要とす
  るのであれば、法律を決めるなり、ルールを決めておく。自
  費であればいいということではなく、これはむしろ公費でも
  いいと思います。公費であっても危機管理の観点から許され
  る人は誰で、そしてどのような手続きを踏めばいいのかとい
  うことを、堂々と情報公開されるような仕組みが必要だと思
  います」      https://www.fnn.jp/articles/-/37505
  ───────────────────────────

小島勢二名古屋大学名誉教授.jpg
小島勢二名古屋大学名誉教授
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2020年05月21日

●「抗体検査では一体何がわかるのか」(EJ第5250号)

 新型コロナ時代の「新しい生活様式」──政府の専門家会議に
よる提言です。新型コロナウイルスと共存する戦略といっている
が、このような生活を人々はいつまで耐えられるでしょうか。
 どこに行くにも暑苦しいマスクをして、どの商店も、飛沫感染
を防ぐため、店員と客との間には、透明のビニールシートが張ら
れています。
 要するに、誰がウイルスの感染者かわからないので、人と人と
の接触を極力避け、買い物も極力最小必要限度のものに絞るとい
うことになってしまいます。「新しい生活様式」は、飲食店には
最も不向きであり、当然お客は大幅に減少するので、経営が成り
立つわけがありません。こういうことをしていると、経済的には
大きなダメージになります。
 基本的には、「新しい生活様式」は、100年以上前のスペイ
ンかぜのときと同じ、閉じこもり戦略と同じであり、新型コロナ
ウイルスに対する人類の敗北を意味します。いかにも疫学や医学
的見地に立ったうえでの提言であるといえます。これを守り続け
ると、経済は壊滅状態に陥ることは必至です。
 しかし、今週になって、新型コロナウイルスに関する新しい情
報が続々と出てきています。そのなかには、今回のコロナ禍を解
決できるかもしれない、将来に希望が持てる情報もあります。ひ
とつずつ見て行くことにします。
 「抗体検査」というものがあります。「抗体」とは、自分とは
違った異物、ウイルスや細菌などが体内に入り込んだとき、その
たんぱく質に対して反応し、体から追い出すためにできる対抗物
質のことで、これがあるかどうかを調べる検査が「抗体検査」で
す。この検査は「検査キット」が既にできていて、検体として血
液を使い、約15分で結果が判明します。
 この抗体検査を厚労省と東大などの研究チームが既に実施して
おり、その結果が出ているので、以下に示します。
─────────────────────────────
                  検査対象   陽性率
          厚生労働省:東京500人  0・6%
                東北500人  0・4%
 東大など研究チーム:糖尿病等受診者500人  0・6%
     ──5/19日「羽鳥慎一モーニングショー」より
─────────────────────────────
 この抗体検査を受診した各500人は、少なくとも新型コロナ
ウイルス感染症にかかっていると自覚していない人々です。しか
し、そのなかにも無症状の感染者がいるのです。
 もし、この「0・6%」が正しいとすると、東京都の人口であ
る977万人の0・6%、5万5620人が新型コロナに感染し
ていると推定できることになります。5月18日現在の東京の感
染者数は5065人ですから、その10倍以上の発見されていな
い市中感染者がいると想定できます。このように、抗体検査は、
感染症の全体像を把握し、これによって、公衆衛生上の対策を講
ずることができます。しかし、まったく感染していなくても「陽
性」と出ることもあり、抗体検査のキットの精度については、ま
だ検証されておらず、その精度は検査キットによって玉石混交の
状態であるといわれます。
 この抗体検査にはもうひとつメリットがあります。それは、次
の2つ抗体が検出できることです。
─────────────────────────────
       @IgM抗体/感染の初期に検出
       AIgG抗体/一定期間後に検出
─────────────────────────────
 「IgM抗体」というのは、感染してすぐ現れる抗体です。続
いて1週間前後に「IgG抗体」が現れ、急に上昇します。これ
については、添付ファイルを見てください。したがって、抗体検
査をして「陽性」の場合、検出した抗体の種類によって、感染の
時期が特定できるメリットがあります。
 新型コロナウイルスは、多くの症例において潜伏期が数日〜2
週間程度と比較的長く、症状が出現してから約5〜7日経過した
後に、症状が急速に悪化し、重篤な肺炎にいたるとされているの
で、抗体検査の結果、「IgM抗体」が発見できれば、感染初期
の患者であると判断できます。もちろん、抗体検査で陽性と判定
された場合、改めてPCR検査をして、真の感染者かどうかを判
定することになります。
 新型コロナウイルス感染症に関して、もうひとつ重要な情報が
あります。5月19日の「サンケイビズ」は、次の最新情報を伝
えています。韓国からの最新情報です。
─────────────────────────────
 【ソウル=桜井紀雄】韓国の防疫当局は18日、新型コロナウ
イルスの感染症が完治しながら、再陽性と判定された人について
他の人に感染させる恐れはないとの分析結果を明らかにした。韓
国では再陽性判定が400人を超えるなど、再陽性事例が相次ぎ
完治後も再検査や2週間の自主隔離を求めてきたが、19日から
は完治すれば、すぐに仕事などの日常生活に戻れるよう指針を改
める。再陽性は日本を含め別の国でも発生しており、他の国の対
応策にも影響を与える可能性がある。
 韓国では、15日現在、完治して隔離が解除された9821人
の4・5%に当たる447人が完治後に再陽性判定を受けた。防
疫当局が再陽性者285人と接触した790人を調査した結果、
再陽性後の接触に伴う感染は確認されなかった。
         ──2020年5月18日付、サンケイビズ
                  https://bit.ly/3bLJPzf ─────────────────────────────
 衝撃的な情報です。しかし、役に立つ情報です。もし、これが
正しいとなると、新型コロナウイルス感染症が完治した人は、他
の人に感染させる心配はないので、普通の生活に戻れることにな
るからです。     ──[消費税は廃止できるか/091]

≪画像および関連情報≫
 ●外出禁止を解除する前に「抗体検査」をすべき理由
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの感染者のうち、かなりの割合が非常
  に軽症か無症状であることがはっきりしてきた。感染を広げ
  うるこうした「見えない感染者」が、感染者数の実態を把握
  するうえでも、パンデミックの対策を講じるうえでも混乱の
  もととなっている。
   これまでのところ、無症状感染者の見積もりには大きなば
  らつきがある。4月12日、米国立アレルギー感染症研究所
  のアンソニー・ファウチ所長は、無症状感染者の割合は50
  %にのぼる可能性があると示唆した。これは、米国疾病対策
  センター(CDC)による以前の見積もりの約2倍の数字で
  ある。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗員・
  乗客では18%という低い数字が報告され、武漢からチャー
  ター機で日本に帰国した感染者の29%が無症状だったとの
  報告もある。中国当局は4月から無症状感染者の追跡を開始
  しており、現時点でその割合を60%と報告している。数字
  に大きな差があるのは「集団と研究デザインと研究のタイミ
  ングの違いにより大きな差が出ることを反映している」と、
  世界保健機関(WHO)の感染症対策チームを率いた経験を
  もつ香港大学の福田敬二氏は説明する。幸い、無症状感染の
  履歴を検出できる検査がある。血清中の抗体と呼ばれるタン
  パク質を調べる「抗体検査」だ。これなら本人が気づいてい
  なくても、回復から長い時間が経ってからでも、感染してい
  たかどうかを調べられる。    https://nkbp.jp/3cKwp81
  ───────────────────────────
  ●グラフの出典/https://bit.ly/2LHTPz4

ウイルス感染による血清抗体.jpg
 
ウイルス感染による血清抗体
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2020年05月20日

●「厚労省のコロナ対策は遅れている」(EJ第5249号)

 対策は見えてきたようです。新型コロナウイルスの感染拡大を
阻止するには、ほとんど症状の出ていない軽症の感染者をいかに
して発見し、PCR検査を行い、隔離するかにかかっているとい
うことです。
 それには、PCR検査を増加させるしかありません。しかし、
日本の場合、PCR検査体制には多くの目詰まりがあって、現在
でも、一向に改善の兆しが見られないでいます。4月末現在の各
国のPCR検査の現状と当面の目標を以下に示します。これを見
ると、日本の検査数は、各国に比べると、一段と低い水準です。
人口比では、日本はドイツの14分の1です。安倍首相は、4月
6日に1日2万件の検査を目標に上げましたが、1ヶ月以上経過
しても、達成できていない情勢です。
─────────────────────────────
 ◎各国の1日の検査目標と感染者数/日本経済新聞
          現状    目標  新規感染者/1日
   米 国  23万件  29万件   2万7000人
   ドイツ   7万件  20万件     1700人
   英 国   3万件  10万件     4600人
  フランス   2万件  10万件     1400人
   日 本 0・9万件   2万件      380人
              https://s.nikkei.com/2WJLlOh ─────────────────────────────
 しかし、厚労省は、2020年5月15日現在、「目標の1日
2万件はすでに達成している」として、次のような報道が行われ
ています。
─────────────────────────────
 厚生労働省は15日、新型コロナウイルス感染の有無を調べる
PCR検査について、1日当たりの検査能力が約2万2000件
に達したと発表した。感染が疑われる人が検査を希望しても受け
られないとの不満が相次ぎ、安倍晋三首相が4月「1日2万件」
を目標に体制強化を掲げていた。厚労省によると、PCR検査は
国立感染症研究所や検疫所、民間企業、大学などに機器があり、
1日に検査可能な件数は5月13日時点で、1万9420件だっ
た。15日に民間で新たに2640件の検査が可能になり、全国
で2万2000件を超えた。国内の検査体制をめぐっては、諸外
国と比べてPCR検査の件数が少なく、感染の実態をつかめない
恐れが指摘されていたほか、検査を受けられないことで入院が遅
れるとの声が上がっていた。   ──時事ドットコムニュース
                  https://bit.ly/3dTp1al ─────────────────────────────
 厚労省が2万人は達成しているとしているのは、民間の数字を
加えたものですが、数字の問題ではないはずです。5月13日に
は、大相撲高田川部屋の力士、勝武士が、重篤な症状になってい
るにもかかわらず、医療機関をたらしい回しにされた挙句、亡く
なっています。民間病院は、院内感染を恐れて、どこも受け入れ
なかったそうです。何のための検査体制の確立なのかということ
が、厚労省にはわかっていないようです。
 ネットには、次の批判的な書き込みがアップされています。数
字の辻褄合わせをしても意味がないのです。検査の必要な人が全
員検査を受けられる体制にすることが大切なのです。
─────────────────────────────
 PCR検査『2万件に「拡充する」が、2万件「検査する」と
は、言っていない』/加藤勝信厚労相。厚生労働省『「募って」
いるが、「募集」していない』/安倍首相、自民党安倍政権、日
本新型コロナウイルス/20200501
                  https://bit.ly/3e7hgxZ ─────────────────────────────
 PCR検査の「目詰まり」になっているのは、人材不足に加え
て、検査用試薬、防護服、サージカルマスクなどのPCR検査に
不可欠な医療部品の不足が依然として解決していないからです。
今頃になっても、検査用の防護服やマスクがないなどとは、先進
国の日本としては、実にみっともない話です。
 確かに政府の対応は、全般的に遅いです。世帯当り2枚配布の
アベノマスク、国民1人当たり10万円給付、何も達成されては
いません。とくにアベノマスクに関しては、1ヶ月半を過ぎてい
るのに依然として5%ぐらいしか届いていません。多くのことが
PCR検査と同様なのです。
 朝日新聞社が16日と17日に実施した緊急の世論調査で、新
型コロナウイルスに対する政府の対応について、次のような厳し
い結果が出ています。
─────────────────────────────
      ◎安倍晋三首相が指導力を発揮しているか
        発揮している ・・・・ 30%
       発揮していない ・・・・ 57%
      ◎安倍内閣の支持率
          支持する ・・・・ 33%
         支持しない ・・・・ 47%
         ──2020年5月18日付、朝日新聞朝刊
─────────────────────────────
 新型コロナ対策の国民の不満は、加藤厚労相の対応のまずさに
も原因があります。ものごとが徹底していないことに力を尽くし
ていないように見えるのです。加藤勝信氏は元大蔵官僚であり、
そのやり方はきわめて「官僚的」です。
 例の「目安が相談とか受診のひとつの基準のように誤解されて
いる」という誤解発言についても、本人は本心からそう考えてい
て、誤解のないように各保健所には何回も通達を出していると発
言しています。通達を出せば、下部組織はその通りに動くと考え
ているようです。いかにも官僚的です。そのため、すべてのこと
が遅くなってしまっているのです。
           ──[消費税は廃止できるか/090]

≪画像および関連情報≫
 ●「10万円給付」は6月以降に? なぜこんなに手続きが遅
  いのか/加谷珪一氏
  ───────────────────────────
   今回のコロナ危機では、日本政府が実施する各種支援策の
  手続きに異様に時間がかかるという問題が発生している。手
  続きがどれだけスムーズに実施できるのかは、その国の社会
  システムの完成度と比例しているが、日本の場合はどこに問
  題があるのだろうか。
   政府は、コロナ危機に対応するため、全国民を対象に一律
  10万円の支給を決定した。だが、実際の支払いまでにはか
  なりの時間がかかると言われており、人口の多い自治体では
  6月以降になる可能性もあるという。似たような支援策を実
  施したアメリカでは、決定から約2週間で振り込みが始まる
  など、手続きは極めて迅速だった。
   アメリカで素早い支払いが実施できたのは確定申告の制度
  によるところが大きい。アメリカはほとんどの人が自分で確
  定申告を行って税金を納めるので、税務当局は個人の年収や
  住所、口座番号を把握している。同国の給付金は家族構成や
  年収によって金額が変わるが、税務当局のシステムが自動的
  に金額を計算して、勝手に振り込んでくれるので国民は何も
  しなくてもよい。日本は源泉徴収制度を採用しており、企業
  に徴税業務を肩代わりさせているため、税務当局は基本的に
  一定年収以上の源泉徴収票しか企業から受け取らないなど、
  個人の正確な納税額や口座情報を把握していない。
                  https://bit.ly/2X8Qjmi
  ───────────────────────────

加藤勝信厚労大臣.jpg
加藤勝信厚労大臣.
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2020年05月19日

●「注目すべき小田垣SIQRモデル」(EJ第5248号)

 「新型コロナ時代の新しい生活様式」──これについては実は
多くの批判があります。商店の場合、入店時の手の消毒、体温検
査はよいとしても、とくに食事などを提供するレストランなどの
飲食店では、要請される次の3つのことを本当に守ると、店は経
営的に成り立たなくなるはずです。
─────────────────────────────
          @対面で座らない
          Aお喋りをしない
          B社会的距離厳守
─────────────────────────────
 人々が飲食店を利用する場合、ただ単に1人でその店で飲食を
するだけではなく、商談をしたり、何人かとお喋りをしたり、話
し合いをしたり、打ち合わせをするために使うことが多々あるの
です。しかし、「新しい生活様式」では、そういうことは一切で
きなくなり、当然そのためのお客は減るし、もし、店で本当に社
会的距離を守ると、小さいスペースの店ではテーブルが多く置け
なくなり、必然的に飲食のコストが高くなり、小さいスペースの
お店は経営的にやっていけなくなります。
 それでは、どうすればよいのでしょうか。論理的には解決策は
あります。そもそも人と会うのを禁止するのは、相手が感染者か
もしれないからです。しかも、厄介なことに、誰も自分が感染者
であることはわからないのです。新型コロナウイルスは感染して
いても、何の症状も出ない人が多数おり、そういう人が街を歩き
回って、多くの人に感染させているものと考えられます。
 こういう場合、感染を防ぐ方法がひとつだけあります。それは
人と会うのを避ければよいのです。日本の場合、このところ感染
者数が減ってきていますが、政府の緊急事態宣言によって、人々
が外出を自粛し、人に会うのを減らしているからです。しかし、
このまま何の方策も講ぜず、外出自粛を解除し、また、人と会う
ようになれば、問題は何も解決していないので、また感染者が増
えることになります。
 このことに関連する「SIRモデル」というものがあります。
1927年にスペインかぜの流行を解析するために、英国で開発
された数式です。「SIR」は次のことを意味しています。
─────────────────────────────
     S ・・ 感受性保持者(Susceptible)
     I ・・ 感染者     (Infected)
     R ・・ 免疫保持者  (Recovered)
                  https://bit.ly/2y9BMi1 ─────────────────────────────
 数式などは難しくなるので、省略しますが、「SIR」につい
て説明します。「S」の「感受性保持者」とは、まだ感染してい
ない人のことです。「I」は「感染者」です。発見して、隔離す
る必要があります。「R」は一度かかって治った人です。したが
って、「I」を発見して隔離すれば、「S」と「R」は普通の生
活をすることができます。スペインかぜの場合、新型コロナウイ
ルスと違って、感染すると、短期間に急速な肺炎が進み、皮膚や
粘膜が暗青色になるチアノーゼの症状を引き起こすケースが多く
無症状の感染者いなかったと考えられます。
 しかし、1927年と今とでは医療のレベルに大きな差があり
世界中で5億人が感染したといわれます。この数は当時の世界人
口の4分の1程度に相当するといわれ、最大で5000万人が亡
くなったといわれています。
 さて、この「SIRモデル」を改良した人がいます。九州大学
名誉教授(社会物理学)の小田垣孝氏です。小田垣教授は、今回
の新型コロナウイルスについて、次の論文を発表しています。
─────────────────────────────
    科学教育総合研究所/小田垣 孝九州大学名誉教授
      「新型コロナウイルスの蔓延に関する一考察」
                https://bit.ly/2LBzb3C
─────────────────────────────
 「SIRモデル」を新型コロナウイルス感染症に応用する場合
の最大の問題点は、感染者を他人にウイルスを感染させる存在と
して一律に扱っている点です。新型コロナウイルスの場合、無症
状や軽症のため、PCR検査を受けないで通常の生活を送る感染
者がいることです。
 そこで、小田垣孝教授は、感染者を「市中感染者」と「隔離感
染者」に分けて、「SIRモデル」を「SIQRモデル」として
次のように改良したのです。
─────────────────────────────
     S ・・感受性保持者(Susceptible)
     I ・・市中感染者(Infected at large)
     Q ・・隔離感染者(Quarantined)
     R ・・免疫保持者(Recovered)
─────────────────────────────
 問題は「市中感染者」をいかにして発見し、隔離するかにかか
っています。そのためにはPCR検査の数をいかにして増やすか
です。つまり、市中感染者(I)をPCR検査数を増やすことに
よって発見し、隔離すれば、人との接触機会の削減幅を大きく増
やすことができます。
 この「SIQRモデル」で、新規感染者数が10分の1になる
までの日数を計算すると、次のようななります。
─────────────────────────────
     @検査数が現状だと、接触8割削減で23日
     A検査数が今の2倍で接触5割削減で14日
     B検査数が今の4倍で接触削減なしで 8日
─────────────────────────────
 問題はPCR検査の数です。この達成には多くのネックがあり
それらをどのように解決するかがカギです。この問題については
続いて考えます。   ──[消費税は廃止できるか/089]

≪画像および関連情報≫
 ●5億人感染のスペイン風邪は「絶好の教科書」
  ───────────────────────────
   今次コロナ禍では緊急事態宣言が1都6府県に発令され、
  いよいよ欧米に準じる感染の爆発的拡大が喫緊の問題となっ
  てきた。焦眉の関心事は「このコロナ禍はいつ終わるのか」
  ということである。
   当初、「夏になれば自然に終わるのでは」という楽観論が
  あったが、低緯度地帯(マレーシア・ブラジル・インドネシ
  ア等)でも感染者が激増している現状、気温と感染拡大の相
  関は「あまりなさそう」であるというのが正直なところか。
  感染症の専門家も、今次コロナ禍がいつ終わるのか、誰しも
  が断定できる状況ではない。
   しかし私たちは、過去に目を転じて、過ぎ去った厄災の軌
  跡から現在にその教訓を汲み取ることはできる。ちょうど、
  100年前に全世界的に流行し、世界人口の約3分の1にあ
  たる5億人が感染。そのうち2000万から4500万人の
  命を奪った「スペイン風邪」のパンデミックは、私たちに様
  々な知見を与えてくれる絶好の「教科書」となり得よう。
   1918年〜1920年にかけてパンデミックを引き起こ
  したスペイン風邪は、元来その発症地点がアメリカ・カンザ
  ス州の米陸軍兵営であったが、当時第1次大戦中で戦時報道
  管制の枠外だった中立国のスペインから情報が世界に発信さ
  れたことにより「スペイン風邪/スパニッシュ・インフルエ
  ンザ」と名付けられ、おおむね1918年9月末から10月
  初頭にかけて船舶を通じ日本に上陸した。
                  https://bit.ly/3fWQda7
  ───────────────────────────

小田垣孝九州大学名誉教授.jpg
小田垣孝九州大学名誉教授
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2020年05月18日

●「安倍政権の政策には主体性がない」(EJ第5247号)

 今やあらゆるテレビ番組が、連日連夜新型コロナウイルスの感
染問題をメインに報道しています。まして政府による緊急事態宣
言の発出による外出自粛がかかっているので、どうしてもテレビ
の番組を見ることになります。私の場合、EJの情報収集もある
ので、毎日かなり真剣に見ています。
 その結果、わかることがあります。それは「政府に主体性がな
い」ということです。安部首相は、本当に困難なことに直面する
と、他人に丸投げする悪いクセがあります。今回の問題が起きた
とき、これは厚労省マターであるとして、厚生労働大臣の加藤勝
信氏に全面的にまかせ、自分は一歩引いています。
 そして、2月14日に、「新型コロナウイルス感染症専門家会
議(以下、専門家会議)」を立ち上げ、座長に脇田隆宇国立感染
症研究所所長、副座長に尾身茂独立行政法人地域医療機能推進機
構理事長を任命しています。しかし、事実上副座長の尾身茂氏が
実務を担当し、専門家会議を仕切ることになります。
 尾身茂氏は元厚生官僚であり、前職は、WHOの西太平洋地域
事務局感染症対策部部長を務めていた人物です。もとはといえば
官僚ですから、安倍首相としては使いやすかったのではないかと
思われます。
 ここまではいいのです。だが、専門家会議は、新型コロナウイ
ルス感染症の対策について、医学的見地からアドバイスするため
の組織です。しかし、安倍首相が今回のコロナ禍に対して何かを
するときは、必ず「専門家の意見をよく聞いて」と発言していま
す。何か起きたときの責任回避にも聞えます。しかも、専門家会
議には経済の専門家が1人も入っていないのです。
 2月28日に、北海道の鈴木直道知事が、3週間の「緊急事態
宣言」を出し、とくに週末の外出を控えるよう呼びかけると、安
倍首相は内心動揺します。欧米各国が都市のロックダウンに踏み
切っているからです。
 そして北海道が感染者の押さえ込みに成功すると、専門家会議
がオーバーシュートを起こさないために「外出を8割削減すると
約1ヶ月で感染の拡大を抑え込むことができる」と提案すると、
安部首相は、国としての緊急事態宣言について、検討をはじめま
す。本来であれば、このときに専門家会議に経済の専門家を加え
緊急事態宣言を出したさいの経済の状況はどうなるか、それを少
しでも軽減するための休業補償などを措置を含む経済対策をどう
するかについて慎重に検討すべきだったのですが、それをやって
いない。それどころか、何を勘違いしたのか休業補償などをやっ
ている国はないなどと事実と違う発言をして、4月7日に5月の
連休明けまでの国としての緊急事態宣言を発出するにいたるので
す。そして、これも大方が予想していたように、緊急事態宣言は
さらに5月31日まで、延長されたのです。
 これによる経済へのダメージについて、第一生命経済研究所首
席エコノミストの永濱利廣氏は次のように述べています。
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 失業者は、5月6日の期限までに、36万8000人におよぶ
と試算していましたが、7日から31日までの延長で、33万1
OOO人が加わり、69万9000人になる計算です。GDPベ
ースの経済損失は、延長前で7・2兆円、延長で6・5兆円が加
わり、13・7兆円。GDPを年間2・5%押し下げます。倒産
に関しては、正確には試算していませんが、リーマンショックの
とき、通常より年間1400件以上増えたので、今回も1000
件以上は増える可能性があります。 ──永濱利廣エコノミスト
       ──「週刊新潮」/5月21日夏端月増大号より
─────────────────────────────
 この緊急事態宣言の延長に対し、大阪府の吉村洋文知事から政
府には出口戦略がないと批判されると、一転して緊急事態宣言の
対象から39県を解除すると5月14日に宣言し、実行に移して
います。このように、安倍政権の対応は、そのすべてが後付けで
す。政府に主体性がないのです。そのため、むしろ知事の政治力
に国民の期待が集まっています。
 まさに国家的危機です。そうでなくとも安倍政権は、首相の政
治信条である「憲法改正」に関連して、何回も「国難」とか「国
家危機」を口にし、解散もしてきましたが、今こそ本当の危機に
襲われているのです。しかし、案に相違してその対応はいずれも
遅く、ほとんどが後付けです。未曾有の国難に対して、右往左往
しているように見えます。
 それからもうひとつ、政府はこの緊急事態宣言解除の一種の条
件のようなものとして、「新しい生活様式」なるものが提唱され
ましたが、これに関して強い反発が出ています。政府に主体性が
まるでなく、あまりにも感染症学の専門家の意見がそのままモロ
に出ているからです。これに関して、既出の永濱利廣氏と、精神
科医の和田秀樹氏は、次のように疑問を呈しています。
─────────────────────────────
◎永濱利廣氏(経済エコノミスト)
 政府は今回、「新しい生活様式」を提唱しましたが、これを正
直に守って行動した場合、最低3年、経済が戻らない可能性があ
る。通販ばかりになったら、実店舗がある店はどうにもならない
し、飲食も対面はよくないとなれば、飲食店への客の出入りは半
減します。
◎和田秀樹氏(精神科医)
 いまの状況を見ると、感染症学者は、経済や、自粛を強いられ
ている人のメンタルのことを、こんなにも考えてくれないのか、
と思う。ここまで専門バカなのかと呆れてしまいます。
       ──「週刊新潮」/5月21日夏端月増大号より
─────────────────────────────
 専門家会議は、医学的見地からアドバイスするための組織に過
ぎないのですが、安倍政権は、それをそのままストレートに国民
に伝えているだけです。政府の主体性が、まるで感じられないの
です。        ──[消費税は廃止できるか/088]

≪画像および関連情報≫
 ●飲食店、「新生活様式」に怒り爆発 自粛に加えて「食事は
  横並び」に我慢の限界「店がつぶれる」
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   安倍晋三首相は4日、新型コロナウイルスの感染拡大を受
  け、6日が期限だった「緊急事態宣言」に関して全都道府県
  を対象としたまま今月31日まで期間延長すると表明した。
  宣言解除の目安となる目標値は口にせず、国民にとっては出
  口が見えない状況。東京都、大阪府など13の「特定警戒都
  道府県」以外の34県を念頭に置いた「新しい生活様式」も
  発表され「横並びで食事」という驚きの指針が示された。
   政府が打ち出した「新しい生活様式」を受け、飲食店関係
  者からは怒りの声や疑問の声が上がった。特に問題視された
  のは、食事に関する「対面ではなく横並びで座ろう」「大皿
  は避けて」「おしゃべりは控えめに」の各項目だった。
   山口県にある大規模な割烹(かっぽう)料理店の経営者は
  「横並びの形式に従う店なんかないでしょう。50人の団体
  にどうやって食事してもらうんですか?お通夜でもおしゃべ
  りはするでしょう?」と怒り爆発。福島県の居酒屋の店長は
  「自粛させられて、さらに横並びでは店がつぶれる。だった
  ら一晩中営業させてもらわないと割に合わない」と納得いか
  ない様子だった。「新しい生活様式」は、現段階では13の
  「特定警戒都道府県」以外の34県に県内の外出や小規模イ
  ベントの開催を認めることに伴う要請。いずれ特定警戒都道
  府県にも波及していくとみられるが、都内にある中華料理店
  の従業員は、「10人掛けの円卓を5人ずつ2卓に分けるし
  かない。中華の大皿をやめるんですか?」と戸惑いを隠せな
  い。              https://bit.ly/2ZacE5D
  ───────────────────────────

永濱利廣氏.jpg
永濱利廣氏

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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