2019年12月25日

●「経済成長しないと所得は増えない」(EJ第5157号)

 2019年も今日を含めて7日間となりました。EJは、営業
日に毎日送付することを原則にしており、この原則にしたがうと
12月27日(金)までお届けし、2020年は1月6日からと
いうことになります。9日間のお休みです。EJにとって、こん
なに長いお休みは、はじめてのことです。
 今回は、次のテーマで10月7日からスタートし、今回で54
回を数えています。
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     現在の日本の経済政策は間違っていないか
       ─消費税増税は諸悪の根源である─
─────────────────────────────
 「現在の日本の経済政策は間違っていないか」がメインタイト
ルですが、明らかに自民党の経済政策は間違っています。世界の
先進国で、日本だけが成長しないのは、消費税の導入のタイミン
グを完全に誤り、それによってデフレに陥っているのに、無謀に
も3回にわたり、その税率を引き上げ、10%にしたことです。
これでは、デフレは深化する一方です。それがなぜわからないの
でしょうか。その最大の責任は財務省にあります。
 そもそも「日本は借金まみれの国である」という財務省の前提
自体が財務省のプロパガンダであり、それが間違っていることに
ついて、ここまで54回のEJで述べたつもりです。しかし、こ
れでテーマを終わるわけにはいかないのです。どうすればよいの
かについて、議論を展開すべきであると思っているからです。
 したがって、新年からは、テーマは変わりますが、基本的には
消費税の話を続けます。おそらく来年には総選挙があると思いま
すが、そのときの選挙の争点は「消費税の是非」になると思われ
るからです。具体的には、「消費税の税率をさらに上げるか」、
「消費税を廃止するか」が問われることになると思います。
 そういうわけで、今回を含め、あと3回の今年中のEJは、消
費税に関連することについて自由に書きます。
 「生産」「支出」「所得」の関係について考えてみます。「所
得」とは何でしょうか。
 生産者がモノやサービスを「生産」します。顧客がその生産さ
れたモノやサービスを消費するために「支出」します。その結果
として生産者は「所得」を手にすることができます。所得を手に
した生産者は、その所得をもって顧客側に回り、誰か別の生産者
が生産したモノやサービスを購入します。そうすると、別の生産
者に「所得」が生まれ、今度はその生産者が顧客側に回ります。
この所得創出のプロセスが回転しているのが実体経済です。
 ここからが大事ですが、この「生産」「支出」「所得」は、必
ずイコールになるということです。さらに、国内の「生産」の合
計が「国内総生産/GDP」ということになります。
 以上のことをふまえて、経済評論家の三橋貴明氏は、自著で、
次のように述べています。
─────────────────────────────
 「豊かになる」とは、所得が増えることを意味する。GDPが
増え、経済成長している国が「豊かになっている」と判断できる
のは、所得の総計が増えているためなのだ。無論、所得以上に物
価が上がってしまうと、実質的に国民は貧乏になる。いわゆる、
実質賃金の下落だ。実質賃金が上昇する、つまりは、物価以上の
ペースで所得が伸びる状況を創り出すのが政府の仕事である。何
しろ、実質賃金の上昇こそが「国民が豊かになっている」証なの
だ。 『消費増税を凍結せよ』/「別冊クライテリオン」増刊号
              2018年12月号/啓文社書房
─────────────────────────────
 国民の立場から見ると、GDPが成長することを自らの問題に
照らしてみることはしないものです。GDPが成長すれば、それ
はそれでいいことであるし、成長しなくても、そんなに深刻には
考えないものです。どこか国民としては、そういうひとを他人事
のように感じていないでしょうか。
 しかし、それは間違いです。GDP(名目GDP成長率)が伸
びるということは、「所得」が増えることであり、豊かになるこ
とを意味しています。10月31日のEJ第5119号で指摘し
たように、1995年〜2015年までの20年間の名目GDP
のランキングで日本は最下位です。この20年間に世界の成長率
は平均で139%です。しかし、日本だけは「マイナス20%」
なのです。つまり、日本をのぞくすべての国がプラスであるのに
日本だけがマイナスです。この事実をどれほどの日本人は知って
いるでしょうか。2度目になりますが、そのグラフを添付ファイ
ルとして再現します。
 明らかに、自民党の経済政策は失敗しており、情けないことに
政府も国民も、それが間違っていることに気が付いていないよう
です。その原因は消費増税のタイミングにあります。
 日本のデフレは、どこからはじまったのかというと、それは、
1997年以降であるということができます。橋本龍太郎政権が
消費税を3%から5%に上げて以来です。このとき、橋本政権は
消費税率の引き上げと同時に、公共投資削減など、一連の緊縮政
策を強行しています。まさに最悪の政策であり、経済のことが何
もわかっていない内閣であるといえます。もちろん内閣のバック
には大蔵省(財務省)がいます。それに橋本首相は蔵相の経験者
であり、自分は何でも知っていると思い込んでいます。
 その1997年以来、日本の実質賃金指数は、経済のデフレ化
を受け、一貫して右肩下がりに下がっています。しかもデフレで
物価が下がっているにもかかわらず、それ以上のペースで所得が
縮小し、実質賃金が落ち込んでいったのです。それは安部政権に
なってからも止まることはなく下がっています。(11月6日付
EJ第5122号の添付ファイル参照)。つまり「所得」が減っ
ているのです。生産が伸びなければ、所得は下がり、支出は少な
くなります。つまり、日本人は、ここ20年以上、貧乏になりつ
つあるのです。     ──[消費税増税を考える/055]

≪画像および関連情報≫
 ●各国の20年間成長率ランキング/1995年〜2015年
  ◎グラフ出典
   藤井聡著
  『「10%消費税」が日本経済を破壊する/今こそ真の「税
  と社会保障の一体改革」を』晶文社

世界各国の20年間成長率ランキング.jpg
世界各国の20年間成長率ランキング

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2019年12月24日

●「財務官僚の天下り3大ポストとは」(EJ第5156号)

 キャリア官僚、なかんずく財務官僚は、なぜ天下り先の確保に
必死になるのでしょうか。
 それには、焦りがあると思います。かつて財務省の天下り先と
いえば、次の3大ポストがありました。しかし、これらのポスト
は、並みの財務官僚では、いずれも務まらないポストになってい
るのです。
─────────────────────────────
        1.   日本銀行(日銀)
        2.東京証券取引所(東証)
        3. 日本開発銀行(開銀)
─────────────────────────────
 第1に、日本銀行ですが、ここは最もハードルが高いポストで
あるといえます。現在の黒田東彦日銀総裁は、東大法学部出身の
元財務官僚ですが、主として国際金融と主税畑でキャリアを積み
「ミスター円」として知られた榊原英資氏の後任として、財務官
に就任しています。
 1999年から財務省を退官するまでの3年半にわたってこの
ポストにあり、2003年に一橋大学大学院教授を経て、アジア
開発銀行総裁に就任、2013年3月まで務めています。普通の
財務官僚とは違うのです。黒田東彦日銀総裁について高橋洋一氏
は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 現在の黒田東彦総裁は、金融政策を勉強した人なので、日銀に
行くことができましたが、いまや並みの財務官僚には務まらない
ポストです。経済学の理解は必須で、世界の中央銀行のトップと
渡り合うには、少なくとも博士号ぐらいはないと、会話になりま
せん。                   ──高橋洋一著
      『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書1174
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 第2に、東京証券取引所ですが、2001年に株式会社に組織
変更されるまでは、大蔵官僚の天下りの指定席だったのです。2
013年に旧大阪証券取引所の株式市場も統合し、米国ニューヨ
ーク証券取引所、英国ロンドン証券取引所とともに、「世界三大
証券取引所」の一つといわれています。
 2000年以降、証券・金融メカニズムが複雑化し、2004
年に元大蔵官僚の社長が退いてからは、東京証券取引所の生え抜
きや証券会社の大物トップが社長を務めるようになり、天下りは
困難化しています。証券のプロでも何でもない財務官僚にトップ
が務まるはずがないからです。
 第3に、日本開発銀行は、1951年に設立された全額政府出
資の政府系金融機関ですが、1999年に日本政策投資銀行に業
務を引き継ぎ解散しています。このポストについて、高橋洋一氏
は次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
 本来、日本政策投資銀行は完全民営化して、政府からの資金提
供の流れを断ち切る予定でした。そうすれば財務官僚の天下りも
消え、三兆円弱の出資金が戻ってきて借金の返済に充てることも
できたでしょう。「金の切れ目が緑の切れ目」で政府関係機関を
完全民営化し、政府からの出資が終われば、天下りもなくなりま
す。補助金も口利きもないのに、わざわざ官僚を雇おうとする機
関はおらず、各機関のプロパーが社長・役員に就くようになるは
ずです。
 政府関係機関に天下り官僚が次々と来るため、プロパーの幹部
が行き先を失ってしまい、結局、孫会社のようなものをつくり、
天下りします。玉突き状態のように官庁OBが入ってこなくなる
ことは、政府関係機関の人にとっても大歓迎だと思います。
                ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 大蔵省の時代から定番ポストといわれたこれらの天下りポスト
が、今や簡単には天下りできなくなりつつあります。このように
して、天下りポストは全体として減ってきているのです。
 そういう状況の下で、財務省は、現在でも管理下にある特殊法
人をいろいろな理屈をつけて、天下り先として確保しようとして
います。そのひとつに日本たばこ産業株式会社(JT)がありま
す。このJTについて、財務省は「政策目的の特殊法人は、民営
化しても株式の保有を続ける必要がある」として、現在もJT株
を保有しています。
 日本たばこ産業株式会社(JT)は、1985年4月に設立さ
れ、日本専売公社のタバコ事業を引き継ぎ、現在にいたっていま
す。日経平均株価およびTOPIXの構成銘柄の1つです。M&
Aにより、たばこ事業を世界展開しており、企業別の世界シェア
は、2018年時点で第4位(8・4%)です。2019年現在
JTの会長には、元財務事務次官の丹呉泰健氏が取締役会長を務
めています。
 財務省がJTの株保有に現在でもこだわっているのは、何とか
してJTを天下り先として残したいという意思のあらわれである
と考えられます。このJTに対する財務省のかかわり方について
の高橋洋一氏のコメントです。
─────────────────────────────
 たばこの健康問題が取り沙汰されるなか、「なぜ政府が株を保
有して、片方の立場に立つようなことをするのか」といわれて、
財務省も抵抗しきれなくなりました。当初は100%の株を保有
していましたが、やがて50%に下がり、33%強にまで減りま
した。それでも現在、2・4兆円分の株式があります。何の政策
目的もないのに、政府が一企業に2兆円を超える出資をする必要
はありません。完全民営化して政府保有株をゼロにすれば、2兆
円を政府債務の返済に充てられるし、官僚の天下りも難しくなり
ます。             ──高橋洋一著の前掲書より
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            ──[消費税増税を考える/054]

≪画像および関連情報≫
 ●読売新聞と安倍政権の関係
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   産経新聞の記事では、主な財務次官OBの進路先として、
  丹呉泰健氏が日本たばこ産業会長、勝栄二郎氏がIIJ社長
  真砂靖氏が日本テレビホールディングス社外取締役と書かれ
  ている。それぞれ木下氏の前々々任、前々任、前任の財務次
  官である。
   ただ、丹呉氏は、読売新聞グループ本社(と東京本社)の
  監査役をしていた(2010年12月〜12年12月)。ま
  た、その後任次官の勝氏も、同じく読売新聞東京本社監査役
  に就任した(2014年6月)。つまり、日テレHD社外取
  締役の真砂氏を含め最近の財務次官は、3代続いて読売・日
  テレグループにお世話になっている。
   その一方で、最近、読売新聞の変貌ぶりも話題になってい
  る。ジャーナリストの須田慎一郎氏によれば、読売のスタン
  スは、安倍政権寄りになっているという。安倍政権が、読売
  を「特別扱いしている」とも。某高官の話として「もう朝日
  新聞や毎日新聞は読む必要はありませんよ。新聞は、読売の
  一紙だけ読んでいれば十分」らしい。最近の朝日新聞騒動を
  踏まえて、財務次官の天下り先を読み解くと、脈絡のない世
  間の動きがちょっと見えてくるような気がする。朝日新聞の
  ヘマの背後で、天下りが難しくなってもタダでは転ばない財
  務省とそれをちゃっかり取り込む読売があった。
                  https://bit.ly/35Q64SC
  ───────────────────────────


黒田東彦日銀総裁.jpg
黒田東彦日銀総裁.
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2019年12月23日

●「キャリア官僚の天下りは問題山積」(EJ第5155号)

 なぜ、財務省は消費税を増税しようとするのでしょうか。
 表向きと本音があります。表向きは、いろいろありますが、そ
れを少しずつ変化させてきています。最初は「直間比率の是正」
でしたが、いつの間にか「財政危機を乗切るため」に変わり、こ
れについて財務省は「1000兆円を超えるGDPの2倍以上の
国の借金」という一大プロパガンダを展開し、日本人のほとんど
にそれを信じさせることに成功しています。
 その結果、このたびの10%への消費増税に関しては、世論調
査で「賛成」が「反対」を上回る結果を得ています。「そんなに
借金があるのでは10%程度の増税は仕方がない」という、いわ
ばあきらめに近い「賛成」です。しかし、最近では論点を少しず
つ「社会保障費の補填」に移しています。
 しかし、彼らの本心は、経済の好不況に関係なく、どのように
でも使える自由財源の確保です。消費税は、それにぴったりの財
源なのです。これがあると法人税の減税にも使えるし、それが天
下り先の確保にもつながります。法人税を多額に支払う企業は優
良企業であり、格好の天下り先になるからです。
 ひとつ例を挙げると、2013年まで財務事務次官を務めたM
S氏(62歳)は、2014年に日本テレビホールディングスの
社外取締役に就任し、2015年に読売新聞大阪本社の非常勤監
査役と三井不動産の社外監査役に就任する──といった具合で、
1年ごとにポストが変わっていますが、それぞれのポストで高額
の退職金を受け取っています。
 それに加えて、豊富な自由財源があると、有力な天下り先にな
る政府関係機関を守ることができます。キャリア官僚にとって一
番怖いのは「政府関係機関の統廃合」です。なぜなら、有力な天
下り先が大幅に減ってしまうからです。
 この政府関係機関の統廃合を一番積極的にやったのは、郵政民
営化を旗印に掲げた小泉内閣です。小泉内閣では、「政策金融改
革」を大胆に実行に移しています。例えば、いわゆる金融公庫は
次の4つがあり、それぞれ管轄する省庁が違っていたのです。こ
れら省庁別の公庫は、各省庁の官僚にとって、格好の天下り先に
なっていたのです。
─────────────────────────────
    1.  国民金融公庫 ・・・ 大蔵省
    2.環境衛生金融公庫 ・・・ 厚生省
    3.農林企業金融公庫 ・・・ 農水省
    4.中小企業金融公庫 ・・・ 経産省
─────────────────────────────
 小泉内閣は、これら4つの金融公庫を「日本政策金融公庫」に
一本化したのです。これによって、官僚にとっては天下り先がな
くなり、政府にとっては、それぞれの公庫に出していた出資金を
減らすことにつながり、意義のあることといえます。当然のこと
ながら、小泉内閣では天下りにブレーキがかかっています。
 しかし、安部政権になってからは、天下りは復活し、公然と行
われるようになったのです。安部首相は、小泉内閣では官房長官
を務めていたのに、こういうところは、まったく学んでいないと
思います。
 しかし、小泉内閣の目玉ともいえる郵政民営化は、昨今のかん
ぽ不正営業の顛末を見る限り、成功しているとはいえないでしょ
う。日本郵政グループは、2007年に民営化しましたが、政府
はまだ57%の株式を保有しています。
 その象徴的な事件が2019年12月20日(金)に起きてい
ます。鈴木茂樹総務事務次官の突然の更迭人事です。かんぽ営業
不正をめぐる日本郵政グループへの行政処分の検討状況に関する
情報を日本郵政側に漏洩したことによる更迭です。
 鈴木茂樹総務事務次官が情報を流した相手は、日本郵政グルー
プの鈴木康雄上級副社長です。日本経済新聞は、この鈴木副社長
について次のように報道しています。
─────────────────────────────
 情報を受け取った鈴木副社長は1973年に旧郵政省に入省。
2009年に総務次官に就いた。13年から郵政の副社長を務め
る。郵政グループの人事を取り仕切るなど実権を握ってきた。鈴
木前次官は、81年入省で、今年7月に次官に就いた。当然2人
は旧知の仲だ。
 10年の退官後も「郵政のドン」と呼ばれる鈴木副社長は現役
次官を上回る影響力を持つとされた。郵政グループの幹部は「鈴
木副社長に総務省が情報を入れるにはこれまでも普通にあった」
と明かす。郵政がかんぽ問題を報じたNHKに抗議した中心人物
でもある。   ──2019年12月21日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 かんぽ問題に関しての日本郵政グループの3人のトップの対応
は最低です。民営化すれば、企業として稼いで利益を出さなけれ
ばなりませんが、十分なノウハウを持っていないので、無茶苦茶
で強引な営業管理をした結果です。
 この問題は、ことがあきらかになる一年前にNHKが番組とし
て取り上げ、警告していますが、それに食ってかかったのが、日
本郵政副社長の鈴木康雄氏です。本当のことをスバリ報道されて
焦ったのか、NHKの上田前会長を口を極めて批判し、NHKか
ら詫び状をとっています。
 なぜ、鈴木副社長がそんなに強気になれるのかというと、電波
を管轄する元総務次官を務めており、辞めても俺には総務省に子
分がたくさんおり、NHKなんかどうとでもなるとの脅しがあっ
たものと考えられるのです。
 皮肉にもその子分の一人と思われる鈴木茂樹前総務次官から、
日本郵政の鈴木副社長は行政処分の情報を得ていたのです。事務
次官同士は先輩、後輩の関係でつながっていたのです。これは人
事の失敗です。やはり、日本郵政グループの役員にその監督官庁
出身のキャリアが天下りすることには問題があるのです。
            ──[消費税増税を考える/053]

≪画像および関連情報≫
 ●監督側のはずが…旧郵政省人脈、なれ合い深刻
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   総務次官による行政処分情報の漏洩で、本来厳しく監督す
  べきはずの官庁がなれ合いに染まっていたことが明らかにな
  り、かんぽ生命保険の不適切販売問題が混迷を深めている。
  日本郵政グループのガバナンス(企業統治)の欠如が問題の
  根本原因だが、それを官庁や政治が許容してきた構図も浮か
  び上がる。問題収束はさらに遠ざかった。
   「信頼回復のために社員みんなで必死なのに、一体何がし
  たかったのか」。日本郵政関係者は情報漏洩の一報を聞いて
  嘆いた。情報の漏洩先だった日本郵政の鈴木康雄副社長は、
  ある国会議員をして「郵政グループの実質的な最高権力者。
  長門(正貢)社長なんて目じゃない」と言わしめる。かんぽ
  生命保険の不正販売問題を報じたNHK番組への抗議を主導
  したことでも有名。官邸との関係も深いのがパワーのゆえん
  だ。その人物が総務省の事務方トップの鈴木茂樹前総務次官
  と結託していた。天下りで経営陣に幹部を送り込む手法は旧
  郵政省時代から続く。平成25年6月に鈴木副社長が日本郵
  政入りして以降、旧郵政省出身で先輩後輩関係にあった事務
  次官はほかにも電通グループ副社長を務める桜井俊氏(27
  年7月〜28年6月)もいる。先輩と後輩の間柄で厳格に引
  かれるべき一線が曖昧になり、かんぽ不正の温床になったと
  もみえる。           https://bit.ly/35O94yz
  ───────────────────────────

suzukiyasuonihonyuuseihukushachou.jpg
鈴木康雄日本郵政副社長
 
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2019年12月20日

●「天下りの温床である政府関係機関」(EJ第5154号)

 少し難しくなってきているので整理します。本来会計というも
のは、ひとつにまとめた方がスッキリします。税金や公債などを
財源として受け入れ、社会保障、地方交付金、教育、公共事業、
防衛など、国の基本的な政策の経費を賄う会計を「一般会計」と
呼んでいます。
 しかし、国は上記以外に多くの事業に取り組んでおり、それは
広範囲にわたっています。しかもその内容は、複雑多岐であり、
そのため、事業によっては、その歳入・歳出を「一般会計」と区
分し、別の会計に計上する方が、個々の事業状況や資金の運用実
績などが明確になる場合もあります。これが「特別会計」です。
「特別会計」には、次の3つの要件が決められています。
─────────────────────────────
 @国が特定の事業を行なう場合
  ・年金特別会計など
 A特定の資金を保有してその運用を行う場合
  ・財政投融資特別会計、外国為替資金特別会計など
 Bその他特定の歳入をもって特定の歳出に充て、一般の歳入・
  歳出と区分して経理する必要がある場合
  ・国債整理基金特別会計など
─────────────────────────────
 特別会計の数も変化しています。戦後は最も多くて45会計も
ありましたが、行政改革が行われる前は31会計、2015年現
在では14会計になっています。整理されつつあるのです。
 会計の規模については、特別会計は、国債の償還を行うための
「国債整理基金特別会計」(約200兆円)や、年金や健康保険
などの資金を管理する「年金特別会計」(約80兆円)などが含
まれるので、本家である一般会計額の4倍近くになっています。
 したがって、国の予算としては、一般会計と特別会計を合わせ
て見る必要がありますが、財務省はあえて、「一般会計=国の予
算」という位置付けで話をしようするのです。プライマリーバラ
ンスなどはそのさいたるものです。その方が彼らにとって都合が
よいからです。
 高橋洋一氏は、ストックをあらわす複数のB/Sをよく見る必
要があるといいます。複数のB/Sを見ると、B/SとB/Sの
間には資金のフローがあることがわかるからです。例えば、出資
金について、次の2つのB/Sがあります。
─────────────────────────────
  「一般会計」+「特別会計」のBS    72・5兆円
  「連結会計」(政府関係機関含む)のBS 18・8兆円
                      ──高橋洋一著
      『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書1174
─────────────────────────────
 「一般会計」+「特別会計」のB/Sを見ると、資産の欄に出
資金として「72・5兆円」が計上されています。しかし、政府
関係機関を含む連結会計のB/Sには、出資金の額は「18・8
兆円」に減っています。その差額は53・7兆円です。これは、
政府本体から政府関係機関への資金のフローです。これについて
高橋洋一氏は、次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
 この54兆円という出資金によって、各省庁は政府関係機関を
コントロールして自分たちの天下り先としてきたのです。BSを
仔細に眺めれば、天下りの構図も見えてきます。PLだけ見てい
る人には、こうした情報は入りません。
 財務省がフローのことばかり口にするのは、彼らはバランスシ
ートの話が苦手ということもありますが、国民に隠したいことが
あるからです。「天下りの温床である政府関係機関を全部民営化
して、出資金を全部返してもらい、国の借金の穴埋めに充てれば
かなり借金が減りますね」といわれることを恐れています。
                ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 約54兆円といえば途方もない大金です。これは、政府本体が
政府関係機関に多額の出資をしていることを意味します。政府関
係機関とは、特別の法律によって設立された全額政府出資の法人
であり、その予算は一般会計予算や特別会計予算と一体として、
国会の議決を必要とする機関のことです。
 政府本体が全額出資して、政府関係機関をつくり、そこにキャ
リア官僚が天下りをするという構図です。しかも、省庁ごとに政
府関係機関をつくることを認めたので、政府からの出資金が巨額
になってしまったのです。つまり、省庁ごとに天下り用の政府関
係機関を持っていることになります。
 各省庁のキャリア官僚からすれば、日本経済がどうなろうと、
そういう天下り先さえ確保されていれば、自分たちだけはいい思
いができると考えています。しかも、これらの機関は、企業的な
経営によって効率的な運営が行えるよう、省庁とは独立した機関
になっているので、天下りする役人にとっては天国です。そこそ
この実績を上げていればまず潰れることはないからです。
 各省庁は、このような政府関係機関をつくるとき、政策目的の
ために設立していると必ずいいます。しかし、これは、政府関係
機関をつくるのが目的で、政策目的の方は後から付けた理屈とい
うか建前でしかないのです。その証拠に、とっくの昔に政策目的
が終えていても、多くの政府関係機関は、新しい看板を掛け替え
て残っているからです。
 しかも、このような政府関係機関に投入されている資金は、出
資金だけでなく、貸付金もあります。政府本体からは、貸付金と
いう名目で、多額な資金が流れています。政府本体は「財投債」
を発行し、政府関係機関に貸し付けています。財投債はもちろん
政府の借金です。
 日本政府の借金が巨額でそんなに心配なら、増税などしないで
これら政府関係機関をすべて民営化すれば、出資金と貸付金を出
す必要はなくなります。 ──[消費税増税を考える/052]

≪画像および関連情報≫
 ●政府関係機関予算とはなんだろうか
  ───────────────────────────
   国の予算として、一般会計と特別会計をみてきた。もうひ
  とつあった政府関係機関予算というのをみてみよう。政府関
  係機関予算とは、特別の法律によって設立された政府出資の
  法人で、その予算を国会に提出して議決を経なければならな
  い機関の予算だという。毎年、財務省主計局編集で、その内
  訳を収録した出版物が発行されている。
   現在政府関係機関予算の対象は、国民生活金融公庫、住宅
  金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、公営企業
  金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、国際協力銀行、日本政策
  投資銀行、商工組合中央金庫(商工中金)の9機関がある。
  商工中金を除く8機関は政府が資本金を全額出資している。
  それぞれに所管官庁があり、トップに、事務次官経験者が天
  下ったりする縄張りとなってきた。
   つまり、政府関係機関予算とは、政府系金融機関の予算の
  ことだ。民間では対応が困難とされる(はずの)分野や顧客
  に対し、資金の貸付を行う公的金融機関であり、本来は民間
  金融機関の補完的役割を果たすのが筋である。政府系金融機
  関の成り立ちをみると、1936年に設立された商工中金以
  外、国民生活金融公庫(もと国民金融公庫)が1949年、
  住宅金融公庫が1950年、といったぐあいに、みな戦後ほ
  ぼ10年以内に設立されている。 https://bit.ly/38PShgz
  ───────────────────────────

政府関係機関.jpg
政府関係機関
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2019年12月19日

●「菅政権がPB目標を導入した理由」(EJ第5153号)

 よく考えてみると、財務省の増税路線を突き進め、「社会保障
と税の一体改革」を実現させたのは、当時の民主党政権での菅直
人内閣です。この内閣は国の経済に関する知識がきわめて不足し
ており、そこを財務省につけ込まれたのです。「プライマリーバ
ランスの黒字化」を目標に掲げたのもこの内閣です。
 旧民主党というと、何かにつけて鳩山元首相が槍玉に上げられ
批判されますが、財務省に完全に洗脳され、当時野党の自民党と
共謀して、亡国の消費増税を実現させた責任は、菅直人元首相と
野田前首相の2人にあります。現在の野党の弱体化、迷走ぶりは
この2つの内閣に対する国民の怒りが解けないからです。
 彼らは、財務省のいう「日本は深刻な財政危機にあり、破綻の
淵に立っている」という主張をアタマから信じ込み、増税路線を
突き進みます。加えて、2010年のG20トロントサミットに
おいて、財政の持続可能性の確保と健全化が強調され、「深刻な
財政問題に直面する諸国は健全化を加速する必要がある」との合
意がなされると、財務省の口車に乗って、菅政権は「2020年
までのプライマリーバランスの黒字化」を閣議決定しています。
これがいかに愚かなことであったかについて、三橋貴明氏は次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 2011年3月11日に、東日本大震災が発生。東日本大震災
クラスの大規模自然災害が発生した以上、政府は国債でも何でも
発行し、速やかに財源を調達。復興に取り掛からなければなりま
せん。ところが、前年にPB(プライマリーバランス)目標が決
定されていました。復興予算は、もちろん「国債関係費を除く政
府の歳出」に該当します。東北の復旧・復興で新たな支出が生じ
た以上、政府は他の予算を削るか、もしくは「増税」をする必要
があったのです。結果、まさかとは思いましたが、復興特別税と
いう形の増税が行われました。しかも、復興増税は被災地からも
容赦なく徴収されたのです。もはや、ここまでくると「狂気」と
しか呼びようがありません。     https://bit.ly/2PVEkVR
─────────────────────────────
 なぜ、当時の菅直人政権が財務省にまるめ込められたのかにつ
いては、理由があります。国会の質疑で、「菅・林の乗数論争」
というのがあったのです。ここで「林」とは、自民党の林芳正議
員のことです。2010年1月26日の参議院予算委員会でのや
り取りです。といっても、詳しいことは忘れている人も多いと思
うので、小笠原誠治氏のブログを参考にして、その一部を再現す
ることにします。当時、菅直人氏は財務相です。▲▲は両者の発
言に対するコメントです。
─────────────────────────────
菅 :(自民党は)1兆円出して、1兆円しか効果がないような
 やり方をしてきて、経済の低迷を招いた。
林 :乗数効果のことを言っていると思うが、公共事業の乗数効
 果は、最低「1」ある。では、子ども手当の乗数効果はどれだ
 けあるのか?
菅 :1兆円出して、1兆円の効果しかないのは、事実上効果は
 ゼロだ。
▲▲菅財務相は「おうむ返し」をして何も答えていない。財務省
がきちんとサポートしていないか、したとしても大臣が乗数効果
自体を知らないので、理解できない。こういうとき、大事なこと
は知ったかぶりせず「知らない」というべきだ。
林 :私の質問は、子ども手当の乗数効果をどのくらいとみてい
 るか、ということだ。
長妻:民間最終消費支出を1兆円程度押し上げる。これは実質G
 DPを0・2%ほど引き上げる。
▲▲ここで長妻厚労相が助っ人に入って、役人のペーパーを読ん
でいるが、彼も内容を理解しているとは思えない。
林 :消費の効果を言ったので、使う額でその額を割ったら乗数
 が算出できる。
仙谷:子ども手当の乗数効果は計算していない。ただ1以上であ
 ることは間違いない。幼保一体化などをすれば1・3、1・5
 以上にもなる。
▲▲仙石行政刷新担当相まで助っ人に入ったが、「1以上」とい
うのは正しくない。1兆円支給されても、全額貯蓄に回れば「ゼ
ロ」である。            https://bit.ly/35oQs8h
─────────────────────────────
 結局、このやり取りは、林議員による「菅財務相、消費性向と
乗数効果の違いをご説明ください」という質問にまで発展するの
です。林議員としては、菅財務相が、この違いを知らないことが
わかったからです。みっともない話です。テレビ中継されている
参議院予算委員会において、財務相が経済学のいろはも知らない
ことがわかってしまったからです。もっとも経済に強い林芳正議
員と経済の基礎がわかっていない菅財務相では、はじめから勝負
は見えていたといえます。
 それを財務省の役人が十分なサポートをしていたとは思えない
のです。そういうところから、あるいはいうことを聞かせるため
に、わざと恥をかかせたのではないかといわれるのです。高橋洋
一氏はこのやり取りを次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
S君:(消費性向と乗数効果、財務大臣どころか、経済学部の1
 年生でも知っていないといけないマクロ経済のイロハ中のイロ
 ハ)それを財務大臣が知らなかった!これはショックです。
教授:国民もショックだけど、菅さんもよほどショックだったん
 だろうね。おそらく「財務省の話に耳を傾けないと、赤っ恥を
 かき続けることになる」って思ったんじゃないかな。で、その
 日を境に、心を入れ替えて、財務省のいいなりになっていくわ
 け。──高橋洋一著『数学を知らずに経済を語るな』/PHP
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/051]

≪画像および関連情報≫
 ●【藤井聡】「プライマリー・バランス黒字化」の「悪行」
  ───────────────────────────
   【マスメディアは、PB黒字化が難しくなった事を批判し
  ている】政府の「基礎的な財政収支」を意味する「プライマ
  リーバランス」、略称PB。わが国政府は、2010年の菅
  直人内閣の時に、「2020年にこのPBを黒字化する」と
  いう目標をたてました。そして現在の安倍内閣も、この目標
  を引き継いだ財政運営をしています。
   その結果、「PB赤字」は、昨年度までで16兆円以上も
  削られました。そして2010年の頃の「半分」にまで縮小
  しました。これは、菅直人氏が建てた「中間目標」が達成さ
  れたことを意味しています。ただし、今年1月に公表した直
  近の財政シミュレーションによると、このままPB赤字は縮
  小していきますが、2020年時点でも「8・3兆円」の赤
  字が残される見込み――となっています。これについて、多
  くのマスメディアが「批判的」な論調を展開しています。例
  えば毎日新聞は、「基礎的財政収支:20年度赤字8.3兆
  円険しい財政再建」という見出しで、政府を非難する記事を
  配信しています。この記事で、財政再建に積極的でない安倍
  内閣を批判し、最終的に、『「首相はむしろ、教育無償化や
  子育て支援など歳出拡大を伴う施策の強化に意欲を見せてお
  り、黒字化目標を変えたがっているのでは」(首相周辺)と
  の声も出ている。財政健全化は一層難しくなりそうだ』
                  https://bit.ly/2to7gOx
  ───────────────────────────

「菅/林乗数論争」.jpg
「菅/林乗数論争」
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2019年12月18日

●「財務官僚はPL的発想の人が多い」(EJ第5152号)

 少し会計の話をする必要があります。公認会計士の藤沼寛夫氏
のサイトを参照して説明します。   https://bit.ly/2suiaSq
 期末決算において作成を求められる決算書には、次の2つがあ
ります。
─────────────────────────────
       1.貸借対照表 ・・・ B/S
       2.損益計算書 ・・・ P/L
─────────────────────────────
 一言でいうと、B/Sはストック情報、P/Lはフロー情報を
あらわします。両者は独立したものではなく、一定の関連性を有
しています。
 もう少し詳しくいうと、B/Sは、現在どのくらい財産を保有
しているかを示す決算書であるといいます。企業でいえば、安全
性を示しています。B/Sでは、期末日現在のストック情報(財
政状態)を、資産・負債・純資産に分けて表形式で表現します。
例えば、次のようにです。
─────────────────────────────
    資産:1500万円(500万円+1000万円)
    負債: 700万円
   純資産: 800万円(差額)
─────────────────────────────
 これに対してP/Lは、1年間の経営成績を示す決算書であり
収益性、成長性を示すものです。収益と費用を表示し、その差額
を当期純損益として表形式で表現します。当年度で稼いだお金が
収益、そのために費やしたお金が費用になります。売上は500
万円、売上原価150万円、地代家賃120万円とします。
─────────────────────────────
    収益:500万円
    費用:270万円(150万円+120万円)
   純利益:230万円(500万円−270万円)
─────────────────────────────
 このB/S、P/Lに関して高橋洋一氏は、財務官僚について
次のように興味深いことをいっています。
─────────────────────────────
 財務官僚は一般に、BSの考え方が苦手です。とくに主計局・
主税局の人たちは収入と支出のPLのみで財政を考える人ばかり
で、BSの発想がほとんどありません。政府の財産を管理してい
る理財局ですら、PLの視点しかない人が大半です。理財局が担
当している財政投融資についても、収入と支出の話はよく出まし
たが、残高の話をする人がほとんどいないのが実態でした。
 よくいわれるプライマリーバランス(基礎的財政収支)も、た
んに収入と支出の差額の話であって、BSのレベルで話をしてい
るわけではありません。しかも、プライマリーバランスというの
は、しばしば一般会計の話です。本来は、すべての部門の収支も
すべて含めないといけません。一般会計の話だけをするのは、国
民に対するごまかしにつながります。     ──高橋洋一著
      『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書1174
─────────────────────────────
 「財務官僚、とくに主計局・主税局の人たちは、P/Lの視点
でしかものを見ない」という高橋洋一氏の指摘は、非常に興味深
いです。そのさいたるものは、「基礎的財政収支(プライマリー
バランス)」の目標化です。これも高橋洋一氏が指摘するように
収支の差額の話、すなわち、P/Lレベルの話です。しかも、安
部政権はこれを達成しようとしている。これを守ることが「財政
再建」と勘違いしているようです。安部首相はまったくわかって
いません。彼も財務省に洗脳されてしまっています。
 藤井聡京都大学大学院教授は、「プライマリーバランスの黒字
化は亡国の道である」というレポートを書いて、プライマリーバ
ランスの黒字化政策の危険性を説いています。何が危険かという
と、これをやると、日本はますます貧乏になるからです。実際に
日本の貧乏化は加速しています。それを知らないのは日本人だけ
です。プライマリーバランスの定義は次の通りです。
─────────────────────────────
 財政収支において、借入金を除く税収などの歳入と過去の借入
に対する元利払いを除いた歳出の差のこと。そのバランスが均衡
していれば、借金に頼らない行政サービスをしているということ
を表すが、赤字なら後々に借金が増えていることを示す。プライ
マリーバランスの赤字が続いている限り、それを埋めるために国
債発行残高は増加せざるをえない状況が継続する。
                  https://bit.ly/34l85V7 ─────────────────────────────
 これは、要するに「政府は税収の範囲で支出する」ということ
を意味しています。つまり、超緊縮政策なのです。ですから、デ
フレで税収が少ないのに、支出がどんどん削られていきます。だ
から、国民の貧乏化が加速するのです。
 これを続けると、藤井聡教授は次の7つの理由により、日本は
滅びると警告しています。その7つの理由を上げます。
─────────────────────────────
     1.デフレが続く
     2.財政が悪化する
     3.産業競争力や労働生産性が低下する
     4.地方を衰退させている
     5.国防・防災力が下がる
     6.文化が衰弱する
     7.日本が後進国化する
                  https://bit.ly/38FlI4V ─────────────────────────────
 日本では、正しいことを指摘している人が「異端の人」的扱い
をされているような気がします。
            ──[消費税増税を考える/050]

≪画像および関連情報≫
 ●筆者を「共演NG」にする人たち
  ───────────────────────────
   最近、財務省ではないが、その関係者と意見をかわすこと
  がよくある。筆者は財務省出身者であるが、これまで財務省
  関係者に避けられることがしばしばあった。たとえばかつて
  財務省のよき理解者である与謝野馨氏と日本テレビで共演を
  依頼されていたが、突然、「その話はなかったことにしてく
  れ」と言われたことがある。財務省審議会の常連である某経
  済学者にいたっては、共演という話があったのに、急に出演
  しないことになった。いわゆる共演NGである。
   こちらに共演NGはないのだが、相手がNGというのだか
  ら仕方ない。今回、ラジオ日本の『清水勝利のこれでいいの
  かニッポン』からオファーがあり、共演NGを聞かれた。こ
  の番組は、政治家の方がよく出ている番組だ。いつものよう
  に「特にNGはありません」というと、「高橋さんの財政論
  を論破したいという政治家がいるので共演してもらいたい」
  ということだった。ところがその政治家は、財務省から「高
  橋を論破するのは無理」といわれたようだ。急遽出演しない
  ことが決まった。そこで共演となったのが、中川雅治参議院
  議員(自民)、宮本徹衆議院議員(共産)、小黒一正法政大
  教授であった。中川氏と小黒氏は財務省出身である。
                  https://bit.ly/38HAV5y
  ───────────────────────────


「PBの黒字化は亡国の道」と説く藤井教授.jpg
「PBの黒字化は亡国の道」と説く藤井教授
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2019年12月17日

●「日本の実質的な借金は600兆円」(EJ第5151号)

 政府の「財務書類」を企業のそれと対比させると次のようにな
ります。
─────────────────────────────
              国         会社
   @       一般会計 ・・・・ 事業部決算
   A  一般会計+特別会計 ・・・・  単体決算
   B連結会計(日銀を除く) ・・・・  連結決算
                      ──高橋洋一著
      『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書1174
─────────────────────────────
 財務省は、国の財政の話をするときは、あくまで「一般会計」
を前面に出して話します。一般会計であれば、いろいろごまかし
が効くからです。ですから、「政府の会計=一般会計」と誤解す
る人が多くなります。しかし、政府の本当の会計を知るには、特
別会計も合わせて見る必要があります。
─────────────────────────────
     政府の会計 = 一般会計 + 特別会計
─────────────────────────────
 「連結会計」とは、企業でいえばグループ決算ですが、国の場
合、特殊法人など、政府関係機関をすべて含めた会計が政府の連
結会計です。連結会計には、特殊法人、認可法人、独立行政法人
国立大学法人が連結されています。
 特殊法人というのは、日本郵政、日本政策投資銀行、国際協力
銀行などです。認可法人は預金保険機構などであり、独立行政法
人は、国際協力機構、中小企業基盤整備機構、都市再生機構、日
本高速道路保有・債務返済機構など、たくさんあります。これら
のほとんどは、公務員の主要な天下り先になっています。
 注目すべきは、特殊法人のなかに国際協力銀行(JBIC)が
入っていることです。12月9日のEJ第5145号で指摘した
例の加計学園問題で、徹頭徹尾首相をかばった経済産業省のキャ
リア官僚、柳瀬唯夫氏がシニアアドバイザーとして就任したのが
JBICです。退官から約1年間、世間の注目を外れ、ほとぼり
のさめたところで、ちゃっかりと特殊法人のJBICに収まって
いるのです。したがって、財務省は、こうした天下りのために政
府系金融機関を死守しているのです。
 さて、連結会計からは、日銀、すなわち、中央銀行が外れてい
ます。ここがポイントです。これは、財務省による「まやかし」
の手法の一つである──高橋洋一嘉悦大学教授はこのように指摘
しています。
 なぜなら、連結会計から日銀を外すのは日本だけであり、これ
は、きわめて不都合なことです。11月14日のEJ第5128
号の添付ファイル、「公的機関のバランスシート/IMFレポー
ト/対GDP比」で、IMFが国際比較に用いているのは、各国
の中央銀行を含めた会計であるからです。それなのに日本だけが
日銀を外しているのです。      https://bit.ly/34nrXH2
 同じ条件の下で比較すべきデータが、日本だけは中央銀行を外
して比較しています。これでは比較になりません。また、借金だ
けを強調し、資産を差し引かないデータで、日本人に対して日本
財政の危機を煽り、消費増税しやすい雰囲気を醸成しようとする
財務省の犯罪的な手口といえます。
 政府の「財務書類」として公表されている資料により、数字を
入れてみます。日銀を除く国全体の連結会計と、日銀のバランス
シートは次の通りです。
─────────────────────────────
      ◎日銀を除く国全体の連結会計
        資産 ・・・・  986兆円
        負債 ・・・・ 1470兆円
       純資産 ・・・・ ▲483兆円
              以上平成28年度
      ◎日銀のバランスシート
        資産 ・・・・  490兆円
        負債 ・・・・  486兆円
       純資産 ・・・・    4兆円
              以上平成29年度
                ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 上記の日銀のバランスシートについて、高橋洋一氏は、次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 中央銀行の場合、形式的には純資産がほぼゼロ(日銀の場合は
4兆円)になりますが、中央銀行には形式的な負債はあっても、
経済的な負担になる実質的な負担はありません。ですから、日銀
の純資産は、実質的には490兆円近くとなり、日銀を含めた日
本政府全体の純資産(純負債)は、ゼロに近い数字になります。
                ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 一般的に「国の借金」といわれるものは、「一般会計+特別会
計」のバランスシート上の借金の額です。具体的にいうと、借金
とは、公債、政府短期証券、借入金の合計であり、1059兆円
ほどの額になります。これが、いわゆる「1000兆円を超える
借金」です。
 しかし、日銀は資産490兆円中、約400兆円ほどの国債を
保有しており、日銀を含めた国全体の連結会計で見ると、この約
400兆円の国債は相殺され、政府の実質的な借金額は約600
兆円ということになるのです。
 しかし、あのスティグリッツ教授が「日本の場合、借金の4割
は相殺できる」と指摘しているのに、日本政府は絶対認めようと
しないのです。そのために、連結会計から日銀を外しているのか
もしれません。どうしても借金の額を大きく見せたいのです。
            ──[消費税増税を考える/049]

≪画像および関連情報≫
 ●「国債を巡る危険な楽観論」/五十嵐敬喜氏
  ───────────────────────────
   2019年3月末時点で「国の借金」は、1103兆35
  43億円、18年度末に比べて15兆5414億円増えた。
  深刻な事態だが、こんな反論もよく耳にする。国債は国の負
  債ではあるが、それを保有している人には資産だ。わが国の
  国債はその9割以上を日本人が保有しており、いわば家庭内
  借金のようなものだ。将来、返済される際には、日本の中で
  お金が右から左に動くだけだから問題ない、と。
   本当にそうか。具体的に考えてみよう。政府が国債を発行
  して、お金を調達する。国債を買うのは日本人だ。政府はそ
  れで得たお金を支出する。そのお金を受け取るのも、日本人
  だ。国債を買う人は、持っていたお金を手放して国債を手に
  入れる。お金も国債も、その人にとっては資産だから、資産
  の中身が変わるだけで、保有する資産の額は増えも減りもし
  ない。一方、財政支出を受け取る人は、受け取った分だけお
  金(金融資産)が増える。全体を見ると、国債発行という手
  段を使って、当面お金を使う予定のない人の現金が、今お金
  を必要としている人に渡り、国民全体の資産は増えている。
  (同時に政府の負債が増えている)。国債が償還されるとき
  には何が起こるか。政府は国民から徴税したお金を国債の保
  有者に渡して、国債を償還する。徴税された人の金融資産は
  その分、減少するが、国債の保有者の資産は不変だ。国債と
  いう資産が償還されてなくなり、代わりに償還金を受け取る
  からだ。結果として、国民全体の資産が減少する(同時に政
  府の負債がなくなる)。     https://bit.ly/36vKfaG
  ───────────────────────────

スティグリッツ教授.jpg
スティグリッツ教授
  
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2019年12月16日

●「報道ゼロのマレーシア消費税廃止」(EJ第5150号)

 「財務省の官僚はアタマが良い」とあまり考えないほうがよい
と思います。彼らの多くはけっして経済に強くないし、まして会
計にはすこぶる弱い──嘉悦大学教授の高橋洋一氏はこのように
いっています。
 確かにその証拠に日本はいつまでもデフレから脱却できないで
います。政治家は何もわかっていないし、日本経済の浮沈は財務
官僚の手に委ねられているからです。
 高橋洋一氏の本を読んでわかったことがあります。それは、財
務省が大蔵省と呼ばれていた時代から、国の負債を大きく見せて
つねに日本の財政危機を国民に訴えていたということです。その
方が増税をするとき、都合がよいからです。
 今回のテーマでは、「消費税は百害あって一理なし」というこ
とを明らかにし、「消費税を廃止する」ことは十分可能であるこ
とを訴えたいと意図しています。このことを一番鮮明に党の公約
に掲げているのは、山本太郎代表が率いる議員たった2人の「れ
いわ新撰組」だけです。
 日本では政治的意図があって、メディアは、ほとんどニュース
にしませんが、マレーシアでは、2018年6月1日から6%の
消費税が廃止されています。マレーシアでは、2018年5月に
実施された総選挙で、「消費税廃止」の公約を掲げたマハティー
ル元首相率いる希望連盟が勝利し、マハティール氏が首相に返り
咲いて、公約を実現したのです。そのとたん、マレーシアでは経
済が急速に成長をはじめています。こんなビッグニュースを日本
国民のほとんどが知らないのです。どういうわけか、メディアが
封印しているからです。
 インターネットには、これに関するたくさんレポートが出てい
るのに、誰も知らないというのは、日本人のネットリテラシーが
遅れていることをあらわしています。現代の日本人は、ネットを
使っても自分に関心のあることしか、見ようとしないのです。消
費税廃止後のマレーシアの経済については、目下データ収集中で
あり、改めてEJでもお伝えします。
 高橋洋一氏が作成したという国のバランスシートについて、少
し詳しく知ることが必要です。高橋氏の本を参考にして、以下に
説明することにします。
 政府が「財務書類」として、発表している会計には、次の3種
類があります。
─────────────────────────────
        @       一般会計
        A  一般会計+特別会計
        B連結会計(日銀を除く)
─────────────────────────────
 「一般会計」とは何でしょうか。
 一般会計とは、「一般的な行政にかかる経費を扱うもの」とい
うことができます。具体的にいうと、社会保障、地方交付税交付
金等、公共事業、文教および科学振興、防衛、その他、国債費な
どに当てられるものであり、予算の時期に各新聞で発表されるも
のがそれに該当します。
 問題なのは、これを国民から見ると、予算の全貌だと思ってし
まうことです。財務省もわざとそう思わせるようにしています。
しかし、高橋洋一氏にいわせると、一般会計は企業でいえば「事
業部予算」でしかないのです。
 したがって、あくまで、「一般会計」と「特別会計」とを合わ
せたものが国の会計ということになります。それなら、「特別会
計」とは何でしょうか。
 「特別会計」については、小泉内閣のときに、塩川正十郎財務
相の次の有名な発言があります。
─────────────────────────────
 母屋(一般会計)では節約をしてお粥をすすっているというの
に、離れ(特別会計)では子供が贅沢にすき焼きを食べている。
                   ──塩川正十郎財務相
─────────────────────────────
 これは、一般会計が赤字を削ってやっているのに、特別会計で
は贅沢をしていることを皮肉ったのです。財務大臣がそういうの
ですから、間違いのないことです。
 法律上の定義としては、「特定の事業を行う場合」に「一般の
歳入歳出と区分して経理する必要がある」経理のことと説明され
ています。つまり、一般会計から切り離して独立して行われる経
理ということです。
 特別会計は、簡単にいうと、特定事業のための予算です。原則
的にはその事業に関連してのみ使われることになります。たとえ
ば、自動車安全特別会計であれば道路整備に利用されますし、エ
ネルギー対策特別会計であれば、産油国への協力費や天然ガスの
開発などに充てられています。最も新しいところでは東日本大震
災復興特別会計があり、こちらは文字どおり復興を進めるための
予算となっています。
 一般会計か、特別会計かのどちらにするかは、恣意的に決める
ことができます。会社の事業部の分け方が会社の都合でいかよう
にでもできるのと同じです。高橋洋一氏は、これについて、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 財務省は、ごまかしの効く一般会計をいつも前面に出してレク
チャーを施すので、政治家もマスコミも一般会計のことしか視野
に入らず、問題にしない。経済記者も含めて、多くの人は「一般
会計」を「政府の会計」と誤解しているようです。しかしはっき
りいえば、一般会計だけを見ても政府のことはわかりません。一
般会計と特別会計の両方を合わせたものが「政府の会計」です。
合算を見なければいけない。         ──高橋洋一著
      『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書1174
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/048]

≪画像および関連情報≫
 ●報道されない「特別会計」を足した平成31年度予算の真相
  ───────────────────────────
   2019年3月27日に成立した2019年度予算(一般
  会計)は約101兆円でした。昨年よりも3・7兆円増えた
  のですが、そのうち2兆円が増税対策に使われます。最も大
  きく伸びたのは社会保障関係費で、その増額分は1兆円でし
  た。項目別の累計額を見ると、社会保障関係費は34兆円な
  ので、一般会計の3分の1です。7兆円の公共投資、約6兆
  円の教育予算(科学含む)に比べると、段違いの規模を誇っ
  ていることが分かります。
   しかし、これは政府予算の全てではありません。政府予算
  には「一般会計」のほかにも「特別会計」があるからです。
  特別会計というのは、国が行う事業や資金運用などに用いる
  会計のことです。
   具体的には、年金(医療含む)、財政投融資、地方財政の
  支援、震災復興などの項目があり、それらを足すと、額面上
  は400兆円近い規模になります。しかし、そこには、一般
  会計と特別会計で二重に計算された金額が含まれているので
  実額は半分程度です。重複分を除いた特別会計は200兆円
  程度と見られています。(一般会計の場合、重複分を引くと
  実額は45兆円前後になる)例えば、2017年は、特別会
  計の実額が196兆円、一般会計の実額(重複分除く)が、
  43兆円。両者の合計は239兆円でした。
                  https://bit.ly/34jnANu
  ───────────────────────────

塩川正十郎元財務相.jpg
塩川正十郎元財務相

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2019年12月13日

●「東大法学部出身と国家財政の知識」(EJ第5149号)

 「キャリア官僚」とは、どういう官僚でしょうか。
 「キャリア官僚」には、ちゃんと定義があります。
─────────────────────────────
 日本における国家公務員試験の総合職試験、上級甲種試験又は
T種試験(旧外務T種を含む)等に合格し、幹部候補生として中
央省庁に採用された国家公務員の俗称である。
                    ──ウィキペディア
─────────────────────────────
 財務省は、指定の国家公務員試験にトップランクで合格した数
人しか入省できないのです。だから、日本人は、東大を卒業して
財務省に入省すると、「凄い秀才」と認めてしまうところがあり
ます。これは大きな間違いです。
 彼らは東大を卒業したといっても、その多くは法学部出身であ
り、そういう人に、専攻の異なる経済・財政・金融のことが本当
に理解できるのか、疑問に感じます。
 まして現代はICTの時代であり、コンピュ−タも発達してい
るので、自分が仕事に使うシステムを自らプログラミングして構
築する能力も不可欠になっています。しかし、東大出身の財務省
のキャリアがコンピュータに強いとは、とても思えないのです。
私は、ここ15年ほど、あるIT企業の新人研修を担当している
ので、そのことはよくわかります。
 しかし、財務省では、東大の法学部出身の俊秀のプロパー職員
が、基本的に内部の研修と職務経験だけで昇進し、そのなかで、
たった一人が事務次官にまで上り詰める。このようなやり方で、
日本経済の司令塔になる人材を育てられるのでしょうか。
 これに対して米国の財務省は新卒の一括採用ではなく、特定の
能力を持つ人を採用する中途入省の採用スタイルです。米国財務
省のウェブサイトの採用のページには、次のようなスペシャリス
トの応募を求めています。
─────────────────────────────
 Accountants                    会計士
 Attorneys                     弁護士
 Budget Analysts              予算アナリスト
 Contract Specialists              契約専門官
 Economists/International Economists  (国際)経済学者
 Financial Analysts          金融アナリスト
 Human Resources/EEO Specialists 人材管理/育成の専門家
 Information Technology Specialists  ITスペシャリスト
 Intelligence Specialists       情報スペシャリスト
               ──上念司著/講談社+α新書
      『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』
─────────────────────────────
 上記の上念氏の本には、経済の専門紙である日本経済新聞社の
人材採用について書かれている部分があります。大変興味深いの
で、引用を含めてご紹介します。
 日本経済新聞社では、記者の採用条件に、経済、金融、経営、
会計などの履修は含まれておらず、2020年入社定期採用の応
募は、次のようになっています。
─────────────────────────────
 ◎2020年入社第3回定期採用試験
 1991年4月2日以降に生まれた方で、次に該当する方が対
象です。
 @日本の四年制大学・大学院を2020年3月までに卒業・修
  了見込みまたは既卒の方
 A海外の大学・大学院に在籍している方(交換留学は除く)は
  日本の四年制大学・大学院と同等の学位で、2020年3月
  までに卒業・修了見込みまたは既卒の方。学部・学科は問い
  ません。            https://bit.ly/359clbr
─────────────────────────────
 日本経済新聞社は、例年50人〜60人の学生を採用していま
すが、そのほとんどは「学部・学科は問わない」という幅広い条
件での応募者受け入れです。あくまで、出身学部は問わず、記者
は社内で育てるという方針のようです。これはこれでよいと思い
ます。記者志望の学生にとってはありがたいことでしょう。
 もちろん中途採用もあります。募集職種としては、記者(写真
・映像記者を含む)、高度な専門記者、デジタルIT、グローバ
ル、インデックス事業、営業・企画と分かれていますが、「高度
な専門記者」の項目には次の記述があります。
─────────────────────────────
 経済、財政、マーケット、企業経営、外交・安全保障、IT、
エネルギーなどの分野に関して、専門的視点から深い解説記事な
どを書ける人材を求めています。博士号または同等の専門知識を
お持ちの方や、シンクタンク、大学、企業、研究機関、官庁など
で、実務・研究経験を積んだ専門的な分析力を持つ方を歓迎しま
す。                https://bit.ly/2sj1rla
─────────────────────────────
 このように確かに専門家を募集していますが、上念氏によると
日本経済新聞の記者で中途採用の人はほとんどいないというので
す。実際に日本経済新聞の記者に聞くと、「高度な専門記者」と
いう職種で採用された人に社内で会ったことはないといいます。
上念司氏はこういっています。
─────────────────────────────
 もちろん新卒からたたき上げの新聞記者のなかにも、自分で積
極的に勉強して正しい経済知識を身に付けた例外的な人もいます
が、圧倒的に少数派です。こうした人が新聞社の中枢から外れて
主に雑誌やネット媒体などに寄稿しているのも、高度な専門記者
が邪魔なことと、まったく同じ理由です。そんなスキルは、新聞
の紙面を作るには不要なのです。  ──上念司著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/047]

≪画像および関連情報≫
 ●財務省なのに法学部出身ておかしくね?
  ───────────────────────────
   財務省の事務次官。それはもう、官僚のなかでトップ中の
  トップ。雲の上の上の上。この財務省の事務次官というポス
  ト、法学部出身の人ばかりなるっておかしくね?
   財務省のホームページに「財務省の使命」というのが書か
  れています。「納税者としての国民の視点に立ち、効率的か
  つ透明性の高い行政を行い、国の財務を総合的に管理運営す
  ることにより、健全で活力ある経済及び安心で豊かな社会を
  実現するとともに、世界経済の安定的発展に貢献すること。
  /財務省」
   ものすごく簡単にいえば、お金や経済を扱ってるところ。
  普通に考えて大学で学ぶべき学問とすれば経済学でしょう。
  しかし、法学部出身の多いこと多いこと。ウィキペディアで
  で調べたところ、財務事務次官のほとんどが法学部出身。肝
  心の経済学部卒はなんと3人だけ。過去50人以上いるなか
  で、3人て。イギリス大蔵省の事務次官。イギリス大蔵省と
  いうところです。
   ここにも事務方のトップがおりまして。ウィキペディアで
  調べた結果がこちら。「こちらは直近の5人調べただけです
  が、みなさん経済学を学んだり、教えたりという人たちでし
  て・・・。かなり強大な力をもつ日本の財務省。トップだけ
  じゃなくて、職員のほとんどが法学部出身。果たしてこのこ
  とと日本だけが長期のデフレということと関係が?
                  https://bit.ly/2P9c0Qp
  ───────────────────────────

日本経済新聞社本社ビル.jpg
日本経済新聞社本社ビル
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2019年12月12日

●「国のBSはどのようにしてできか」(EJ第5148号)

 日本の財政の状況を正確に知るには、国のバランスシートを調
べるしかないといいます。この、日本国のバランスシートを最初
に作ったのは、元大蔵官僚の高橋洋一嘉悦大学教授です。このこ
とは、高橋洋一氏の本を多く読んでいた私はかなり以前から知っ
ていましたが、それを本気で調べようとしたことは一度もなかっ
たのです。しかし、日本の財政について詳しく知るには、バラン
スシートの分析が不可欠であることは確かです。
 ちなみに、1990年代半ばまで、世界でも国のバランスシー
トをつくるところはなく、日本が最初であったといいます。しか
し、このバランスシートは完成後封印され、公表されることはな
かったといいます。その事情について、高橋洋一氏は次のように
述べています。
─────────────────────────────
 完成した日本政府のバランスシートは世界に先駆けたものでし
たが、公表は長く封印されていました。当時の大蔵省は現在の財
務省と同じく、バランスシートの右側にある負債部分だけを大き
くクローズアップして日本の財政危機を訴えていたからです。左
側にある資産の部分が公になると、従来の説明と矛盾が生じてし
まいます。それでバランスシートの作成時、上から「これはお蔵
人りだ」といわれたのを記憶しています。
 その後、2000年代に小泉純一郎内閣が誕生すると、財務省
内からも「そろそろバランスシートを公表したほうがよい」とい
う声が上がり始めました。そこで小泉首相に「こういうものがあ
りますよ」と見せたところ、「いいじゃないか」となり、公表さ
れました。       ──高橋洋一著/PHP新書1174
                『「消費増税」は嘘ばかり』
─────────────────────────────
 日本政府のバランスシートが公表されたのは、2004年のこ
とですが、現在では、財務省のホームページにバランスシートが
公表されています。
 高橋洋一氏が、バランスシートを作る必要があると考えたのは
当時高橋氏が財政投融資の担当だったからです。財政投融資につ
いては、既に簡単に述べていますが、当時大蔵省の資金運用部は
郵便貯金や年金などで集めたお金を吸い上げ、政府系金融機関や
政府関係法人に貸し付けるという銀行と同じ仕事をやっていたの
です。その資金総額は実に約400兆円、金利の変動によっては
破綻リスクもあり得る状態であり、ALM(アセット・ライアビ
リティ・マネジメント)の導入は不可欠だったのです。
 ALMは、ごく簡単にいうと、金利変動によって財務状況全体
がどのように変化するかについてシミュレーションするシステム
です。これによって、金利変動に伴う将来のバランスシートの変
化をある程度予測できるのです。そのためには、財政投融資のバ
ランスシートを作らなければなりませんが、そのためには国全体
のバランスシートを作る必要があるのです。
 高橋洋一氏は、大蔵省理財局内に「資金企画室」というチーム
を作ってもらい、この仕事に取り組んだのです。国のバランスシ
ートを作成し、そのなかから財政投融資の分だけを抜き出し、A
LM分析をするプログラムを構築したのです。秀才ばかりといわ
れる大蔵省にも、そういうことができるスタッフはほとんどいな
かったと、高橋洋一氏は述懐しています。
─────────────────────────────
 私にこの仕事ができたのは、大蔵省では珍しい数学科出身(東
京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業)だったからです。
私の上司はALMについて幹部に説明する際、机の上に分厚い本
をドンと置いて、「ここに高橋のやっていることが全部書いてあ
る」といったら皆、黙ってしまった。文系の官僚には、理解し難
い内容だったと思います。ALMの重要性に関する分析や、ペー
パーは出ていましたが、誰も実行できない状況でした。いくら必
要性がわかっていても、コンピュータのプログラムを書いてシス
テムをつくれる大蔵官僚は当時いませんでした。
                ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 1994年頃の話といいますが、当時PCは結構官庁や企業で
は普及していて、プログラミングのできる人は結構PCを使いこ
なしていたのです。私も当時BASICという言語でプログラミ
ングを書いてPCを使っていたのです。それに1995年11月
に、「ウインドウズ95」が発売され、一挙にPCは一般家庭に
も幅広く普及をはじめたのです。
 ところで、かつての大蔵省理財局、現在の財務省でもそうです
が、秀才の巣といわれますが、学部別に見ると、法学部の出身者
が圧倒的に多く、経済や会計のわかる官僚が少ないといえます。
これは最近になってもあまり変わっていないようです。
 ここに平成24年度(2012年)の財務省入省者のキャリア
官僚の出身大学および学部のリストがあります。36人の同期の
うち、東京大学法学部の占める割合が約3分の2に当る11人で
す。やはり官僚は東大優位です。これを学部別に見ると、次のよ
うになります。
─────────────────────────────
              人数    割合
        法学部  20人 55・6%
       経済学部  11人 30・6%
        その他   5人 13・9%
 上念司著/『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』
               講談社+α新書/744−1C
─────────────────────────────
 これらの36人中大学院卒業のテクノクラートは7名で、意外
に少ないのです。しかも専門学科は法学部が半分以上と、経済を
分析する力はけっして強いとはいえないと思います。先進国では
ほとんどがテクノクラートの人材ばかりです。
            ──[消費税増税を考える/046]

≪画像および関連情報≫
 ●【国の借金は1000兆円って本当?】
  ───────────────────────────
   日本の借金は1000兆円を突破していて、このまま借金
  が増え続けると日本が財政破綻すると言われることがありま
  す。このような「日本の借金問題」は昔から言われているこ
  とであり、少なくとも1980年代以降、政府債務は右肩上
  がりで増え続けています。
   しかし、厚生労働省の大学等卒業予定者の就職内定状況調
  査によると2018年卒の大学生の就職内定率は91・2%
  で1997年の調査開始以来最高の内定率を記録していると
  言われており、日本の財政は破綻するどころか景気が良いと
  さえ言えます。いつか破綻するかもしれないと言われている
  日本政府の財政状態について本当はどのようになっているの
  でしょうか。本記事では日本の借金問題について考察を行い
  ます。まずは日本の借金は本当に1000兆円なのかという
  ことについて検証します。
   例えば、持ち家を購入して数年しか経っていない家庭はお
  そらく家のローンとして数千万円の借金を抱えているでしょ
  う。しかし、給料が貰えてローンが返せている限り、借金に
  よって家を取り上げられることもなければ、借金で首が回ら
  なくなることもないでしょう。手元にお金があって、きちん
  とお金を払っている限り借金があっても問題ないのです。
                  https://bit.ly/2RFwwdd
  ───────────────────────────

日本国のバランスシートをはじめて作成した高橋洋一教授.jpg
日本国のバランスシートをはじめて作成した高橋洋一教授
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2019年12月11日

●「帳簿に載っているもの全て売れる」(EJ第5147号)

 政府の借金が過大であるというが、政府は資産を多く保有して
いるという疑問に対して、財務省は、それらは資産であっても処
分できないものがほとんどであると答えてきています。
 しかし、ここまで反論してきているように、借金が本当に深刻
であるなら、いくらでも処分が可能です。なお、企業や団体への
「出資金」についても、財務省は処分はできないと次のように答
えています。なお、数字は2009年当時のものです。
─────────────────────────────
 出資金(58兆円)は、その大部分が独立行政法人、国立大学
法人、国際機関等に対するもので、これらに対する出資は、そも
そも市場で売買される対象ではありません。
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 財務省は、天下り先を確保するために、なるべく政府系企業や
団体を必死で残そうとします。そのため、政府機関や団体の民営
化には徹底的に抵抗します。わかりやすい例を上げると、国立印
刷局という法人があります。紙幣や郵便切手などの印刷をする独
立行政法人です。
 紙幣や金券の印刷であるとはいえ、やっていることは、印刷会
社と同じです。したがって完全に民営化して、株式を売却すれば
その分負債をなくすことができます。別に売却すべしといってい
るわけではありません。財務省が「できない」というから、「で
きる」といっているだけです。
 それに財務省は、すぐに売れるが、それは自分たちが直接不利
益を受けるため、財産として上げないものはたくさんあります。
その代表として森永卓郎氏が上げるのは、「国家公務員住宅」で
す。ILO(国際労働機関)は、「社宅は労働者の思想統制につ
ながるので望ましくない」という見解を示しているそうです。森
永卓郎氏は、それならすべて売却すべしとして、次のように述べ
ています。
─────────────────────────────
 国家公務員住宅は、戦後の住宅不足のなかで、給与の低い公務
員の生活を支えるために、造られた。その数は2010年で、国
が所有するだけで、18万戸(2015年9月末時点で16・6
万戸)。民主党(当時)政権時代に、債務削減のため、真に公務
に必要なものを除いて削減する方針がきめられたが、それでも、
16万戸は必要とされた。危機管理要員や緊急参集要員などが入
居するためだ。財務省の資料によると、本省の勤務者のうち「国
会対応、法案作成及び予算等の業務に従事し、深夜・早朝におけ
る勤務を強いられる」職員には公務員住宅が必要だというのだ。
しかし、私は、経済企画庁で2年間勤務したが、埼玉県所沢市の
自宅から通っていた。もちろん、国会対応や法案作成の業務にも
携わり、深夜の勤務もしていた。危機管理要員というが、民間企
業にも危機管理要員はたくさんいる。しかし、彼らのほとんどは
社宅には住んでいないのだ。   ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 ここまでの記述で、財務省は必要以上に過大に日本政府の借金
の大きさを強調していることがわかると思います。その財務省の
主張を日本のメディアは、批判も反論もせず、ほぼそのまま報道
します。財務省には逆らわないことにしているようです。
 財務省は、莫大な広報予算を有しており、それを前提にメディ
アに睨みを利かせているからです。例えば、消費増税を実施する
場合、政府は相当巨額の広報予算を組みます。CMの制作やその
放映、新聞の全面広告などですが、そのさい財務省に批判的なメ
ディアに関しては、その配分に差をつける、いや差をつけるかも
知れないぞと脅しをかけるからです。そういうわけで、「さわら
ぬ神に祟りなし」というわけです。
 森永卓郎氏と並んで、そういう財務省の姿勢を批判している高
橋洋一氏は、よく日本経済新聞を例にとって、次のような話をす
ることがあります。なぜ、日本経済新聞社かというと、同社は経
済の専門紙でありながら、財務省が「日本は1087兆円の借金
を抱えている」という情報を流すと、何の検証もせず、そのまま
報道し、「国民一人当たり859万円の借金」と財務省の提灯持
ちまでするからです。ざっと次のような話です。
 日本経済新聞社には、ざっくりですが、2017年12月末の
時点で、負債が3000億円ほどあります。そのうち、長期借入
金は1000億円ぐらいです。社員数は3000人なので、社員
1人当たり実に1億円の負債です。もし、借金の大きさだけで破
綻が決まるとしたら、国民一人当たり850万円の借金を抱える
日本国よりも、日本経済新聞社は、はるかに破綻懸念が大きいと
いうことになります。
 しかし、日本経済新聞社は約6000億円の資産を持っていま
す。純資産は3000億円。資産と負債の両面で見なければ、会
社の健全性は判断できないのです。これは常識的なことであり、
まして経済記者が、資産のことに触れずに借金のことだけを書く
のは考えられないことである──高橋洋一氏はこのように主張す
るのです。そのさい、それらの資産が売却できるかどうかは、問
題にする必要はないのです。これについて、高橋洋一氏は次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 政府の帳簿も企業の帳簿も同じことですが、帳簿に載っている
ものは当然、すべて値段が付いています。したがって国有資産も
値段が付いている以上、理論上は売却できます。値段を付けられ
ない資産は帳簿に載せることはできません。だから帳簿に載って
いること自体がマーケットバリューを有する、すなわち「売却可
能」という意味です。  ──高橋洋一著/PHP新書1174
                『「消費増税」は嘘ばかり』
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/045]

≪画像および関連情報≫
 ●日本は世界第2位の「政府の隠れ資産」大国だ
  ───────────────────────────
   日本の公的債務はGDPの200%を上回り、OECD加
  盟諸国の平均の2倍以上に達する。しかも高齢化社会、低イ
  ンフレ、増税への強硬な反対が障害となり、解決への糸口は
  見えない。しかしここにひとつ、ほとんど注目されない別の
  一面が存在している。国民の目から隠されているが、大半の
  国の政府は驚くほどたくさんの資産を所有しており、それは
  超債務国も例外ではない。これらの資産を構成するのは国営
  産業の遺産で、具体的には空港、港、発電所、地方または全
  国レベルの公共交通システム、たとえば東京メトロなどが含
  まれる。
   ただし、大きな価値のある資産は見えないところに隠され
  ているケースが多い。実のところほとんどの政府、それも特
  に自治体は、大きな不動産ポートフォリオを所有している。
  そして、広大な土地と知的所有権を合計した商業的価値はと
  てつもなく大きい。実は、公的資産がその国のGDPのなか
  で占める割合を分析すると、日本は、信頼できる統計のある
  国々の中で、世界第2位に位置している。その額は、問題視
  されている公的債務を上回り、GDPの2倍以上となってい
  る。GDPの2倍以上の公的資産を持つ国は、日本のほかに
  ノルウェー、ラトビア、チェコの3カ国しかない(IMFの
  2013年データより筆者ら推計)。
                  https://bit.ly/2Yvs1n5
  ───────────────────────────

一般政府の資産がGDPに占める割合.jpg
一般政府の資産がGDPに占める割合

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2019年12月10日

●「政府系金融機関を全て民営化する」(EJ第5146号)

 昨日のEJの「関連情報」でお知らせした重要情報を再確認し
ます。2019年8月15日現在、日本は約2年ぶりに中国を抜
いて、米国債の最大の保有国に返り咲いています。
 しかし、これは、日本が最大にしたというよりも、中国が外貨
準備を大幅に減らしたことが原因です。以下は2018年8月と
2019年8月の日本と中国の外貨準備高の比較です。中国は、
2018年から大幅に米国債を減らしています。これは、米中貿
易戦争と無関係ではないはずです。
─────────────────────────────
 ◎日本と中国の外貨準備高比較(USドル)
       2018年8月      2019年8月
  日本 1兆2593億ドル    1兆1228億ドル
  中国 3兆1097億ドル    1兆1125億ドル
                https://bit.ly/2qw9Jp4
─────────────────────────────
 日本は、こういう外貨準備などの金融資産をたくさん保有して
いますが、それはいずれも政府の借金の返済に使えないとする財
務省の主張を再現します。
─────────────────────────────
 外貨証券(82兆円)や財政融資資金貸付金(139兆円)は
FBや財投債という別の借金によって調達した資金を財源とした
資産であり、これらの借金の返済に充てられるものであるため、
赤字国債・建設国債の返済に充てることはできません。
(2009年当時)    ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 難しい言葉がたくさん出てきました。外貨証券や財政融資資金
貸付金などの金融資産は、「別の借金によって調達した資金を財
源としている」といっていますが、これは何を意味しているので
しょうか。
 既に述べているように、日本政府が保有している「外貨証券」
のほとんどは、「円売りドル買いの為替介入をした残骸」であり
米国債のかたちで残されています。
 この円売り・ドル買い介入の場合には、政府短期証券(為券)
の発行により円資金を調達し、外国為替市場における為替介入に
よりこの円資金を売却し、ドルを購入します。「別の借金によっ
て調達した資金を財源としている」というのは、このことをいっ
ているのです。
 政府短期証券は、連結財務書類の負債の部に載っています。つ
まり、国の広義の借金に含まれているので、保有している米国債
を売れば、政府の債務は減少することになり、借金を減らすため
に使えます。したがって、外貨証券(米国債)を売れないとする
財務省の主張は誤りです。
 日本政府が米国債を売れないとするのは、過去の“ある事件”
の心理的圧力があるからです。その“ある事件”とは、橋本龍太
郎元総理の米コロンビア大学の講演での発言にあるのです。
─────────────────────────────
 1997年6月23日、当時の橋本龍太郎首相が米コロンビア
大学での講演のあとの質疑応答で、「米国債を売りたい衝動に駆
られることがある」とジョーク交じりにコメントした。NYダウ
は192ドル下落、1987年のブラックマンデー以来の大幅な
下げとなった。1985年のプラザ合意以降の急激な円高ドル安
(260円から85円へ)が進むなかでの発言だったが、「もし
売るようなことがあれば、(米国への)宣戦布告とみなすと脅さ
れた」とささやかれた。米国が拡大する日本の対米貿易黒字に苛
立ちを強め、円高誘導カードをちらつかせていたことなどが背景
だった。              https://bit.ly/2Yt4DGz
─────────────────────────────
 この事件がきっかけになって、日本政府は、米国債を売れなく
なってしまったのです。しかし、米国債は世界で一番流動性の高
い有価証券であり、もっとも売りやすい。冒頭の「外貨準備高比
較」で明らかなように、中国などは、遠慮なく売っています。さ
すがに日中がまとめて売れば、確実に世界経済は大混乱になりま
すが、少しずつ売る分には、まったく問題がないのです。
 続いて、「財政融資資金貸付金」とは何でしょうか。
 財政融資資金貸付金とは、政府が日本政策投資銀行などの政府
系金融機関に貸し付けている資金です。この資金は、政府系金融
機関を通じて、中小企業や国民に貸し付けられています。政府が
資金を調達する理由は、その方が資金の調達コストが安くて済む
からです。政府の方が信用力が高いからです。もし、政府系金融
機関がやろうとすると、信用力の差で、高い金利を払う必要があ
ります。そのため、政府が代りに債券を発行すると、安い金利で
資金を調達できます。これが「財投債」です。
 財政融資資金貸付金は、2009年の時点で「139兆円」も
あります。財務省のいう別の借金によって調達した資金とは「財
投債」のことです。財務省は、この財政融資資金貸付金を政府の
借金の返済に使えないといっていますが、森永卓郎氏は、これに
対して次のように反論しています。
─────────────────────────────
 政府は、財投債で調達した資金をそのまま政府系金融機関に貸
し付けている。国の連結財務書類(国の貸借対照表)のなかでは
財投債の発行額は、負債の部に計上されているが、資産の部には
政府が政府系金融機関に貸し付けたお金が「貸付金」という形で
加えられている。だから、政府系金融機関を完全に民営に移し、
国が資金調達を肩代わりするのを止めて、政府系金融機関が自ら
資金調達をするように変更すれば、財投債発行分が資産からも負
債からも消えてしまうことになる。つまり、グロスの借金は瞬時
に減少するのだ。        ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/044]

≪画像および関連情報≫
 ●国の債務とはみなされない国債の不思議
  ───────────────────────────
   国債であって、国の債務ではない国債が存在する。しかも
  その残高は、総国債残高の1割強に当たる99兆円にも達し
  ている。近々に公表される見込みの2015年6月末残高は
  100兆円を超えるであろう。その国債とは、財政投融資特
  別会計から発行される国債、いわゆる財投債のことである。
   国債管理を担う財務省が「国の債務ではない」と言ってい
  る訳ではないが、例えば、国際標準の概念区分に従う国民経
  済計算統計(GDP統計)上においては、財投債は国の債務
  とはみなされていない。政府債務残高やコクサイ(国債)残
  高のコクサイ(国際)比較で用いられる数値においても、こ
  の財投債は除かれている。財政投融資特別会計自体が、政府
  ではなく、擬制的に「公的金融機関」に分類されているから
  である。しかし、意外なほどに、これらの事実に対する注目
  度は低い。では、なぜ、このような分類が適用されるのだろ
  うか?
   財政投融資とは、「国の信用や制度に基づいて調達した有
  償の公的資金を用いて、公庫、独立行政法人・特殊法人、国
  の特別会計や地方公共団体に対して行う長期・低利の資金供
  給」のことであり、その原資の中心を担っているのが財投債
  である。──ニッセイ基礎研究所 https://bit.ly/38kxr8Y
  ───────────────────────────

橋本龍太郎元総理.jpg
橋本龍太郎元総理
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2019年12月09日

●「高速道路も一般道路も売却できる」(EJ第5145号)

 前号の復習です。現在、日本国のバランスシートには、年金積
立金の運用寄託金の費目で121兆円が計上されています。この
金額は、日本政府の莫大な借金の穴うめに使えるではないかとの
問いに、財務省は「将来の年金給付のため積み立てられている」
として、取り崩せないとしています。
 この財務省のいい分は、もっともなように聞こえますが、これ
ウソです。現在日本の公的年金は2004年から「賦課方式」に
なっており、この方式には積立金は発生しないのです。現在積み
上がっている121兆円は「積み立て方式」時代の積立金であっ
て、その10%程度を安全のために残し、法律を変更すれば、約
100兆円は使用可能です。財務省は、こういうウソを平気でつ
くので、騙されないよう注意が必要です。
 続いて、「資産はあるがそのほとんどは使えない」とする財務
省の別の回答を示します。
─────────────────────────────
 道路・堤防等の公共用財産については、例えば、国道(63兆
円)などや堤防等(67兆円)として、公共の用に供されている
ものであり、また、収益を生むわけでもないので、買い手はおら
ず、売却の対象とはなりません。       ──森永卓郎著
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
                     角川新書K126
─────────────────────────────
 確かに、「資産があるじゃないか。借金が大変なら、なぜ売ら
ない?」とは指摘するものの、国民も道路や橋まで売れといって
いるわけではありません。他に売れる資産があるでしょうといっ
ているだけです。
 しかし、「道路や橋は売れない」と財務省がいい切るのには問
題があります。そこまでいうと、ウソになります。なぜなら、イ
タリア政府は、高速道路を保有する政府系のアウトストラーデ社
を民営化し、株式を売却しているからです。イタリアは政府負債
が大きく、EU委員会から政府債務残高をGDPの60%以内に
するよう求められていたのです。これによって、イタリア政府は
高速道路のために抱えていた負債は消滅し、政府債務はGDPの
60%以内に収まったのです。しかし、イタリアの国民は、これ
によって何の不便も感じていないのです。アウトストラーデ社は
普段と変わりないサービスを提供しているからです。
 財務省は、政府系の企業がどんなに効率の悪い経営をしていて
も、絶対に売却しようとせず、必死になってそれを守ろうとしま
す。なぜなら、売却してしまうと、自分たちが天下りする企業が
少なくなるのを本能的に恐れるからです。その代わりに、国民に
は平然と消費増税を押し付けてきます。
 少し脱線しますが、柳瀬唯夫氏という元経産省のキャリア官僚
を覚えておられると思います。例の加計学園が新設する大学の獣
医学部認可をめぐって、当時、首相秘書官だった柳瀬氏が「首相
案件」と発言したことが問題視されました。2018年5月に参
考人招致の場において、柳瀬参考人は、徹頭徹尾首相をかばう答
弁をして乗り切り、7月には早々に退官しています。
 その柳瀬氏は、現在、財務省所管の「国際協力銀行」(JBI
C)のシニアアドバイザーに就任しています。ここは経産省とも
関連があり、なかなかよいポストです。明らかな論功行賞人事と
いえます。このように、キャリア官僚たちは、自分たちの天下り
の場所だけは絶対に手放さないのです。それは天下国家どころか
国民のために尽くすどころか、自己中心そのもの。官僚の質も落
ちたものです。
 なお、「高速道路だけでなく一般道路も売れる」と森永卓郎氏
は次のように述べています。
─────────────────────────────
 実は日本の高速道路もすでに株式会社化されている。ただし、
そのすべての株式は日本政府が保有している。だから、イタリア
と同じように、政府保有株を市場で売却してしまえば、道路に関
する政府の借金は、すぐにでも減らすことができるのだ。ただし
そう言うと、高速道路は売れても、料金収入を得ることができな
い一般国道は売れないだろうという反論がすぐに返ってくるだろ
う。しかし、一般国道を売ることも容易だ。一般国道の所有権を
証券化し、それを小口化して売りに出せばよいのだ。証券の所有
者には、国が道路の使用料を毎年支払うようにすればよい。いま
は超低金利の時代だから、証券の販売価格の0・1%くらいの使
用料を毎年国が支払えば証券の買い手はいくらでもいるだろう。
堤防も同じ仕組みを採れば、簡単に売却することができる。
                ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 高速道路や一般道路や堤防などをわざわざ売却しなくても、政
府は、それぞれ100兆円規模の外貨証券、財政融資資金貸付金
を保有しています。これなどはすぐにでも売却に資産のはずです
が、財務省は、次のように反論しています。
─────────────────────────────
 外貨証券(82兆円)や財政融資資金貸付金(139兆円)は
FBや財投債という別の借金によって調達した資金を財源とした
資産であり、これらの借金の返済に充てられるものであるため、
赤字国債・建設国債の返済に充てることはできません。
(2009年当時)       ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 日本政府が保有している外貨証券といえば、米国債がほとんど
です。この米国債について、森永卓郎氏は、「政府が円高を防ぐ
ために為替市場にドル買い・円売りの介入をしたときの残骸」と
表現しています。
 為替介入をするためにドルを買ったのですが、現金で持ってい
ても意味がないので、金利の付く米国債のかたちで保有していま
す。売ろうと思えば十分売れますが、日本政府は頑なに売ろうと
しません。       ──[消費税増税を考える/043]

≪画像および関連情報≫
 ●米国債保有で日本が2年ぶり首位6月、中国抜き返す
  ───────────────────────────
  【ニューヨーク=後藤達也】米財務省が2019年8月15
  日発表した国際資本収支統計によると、日本が2017年5
  月以来、約2年ぶりに米国債の最大の保有国となった。6月
  の保有額は1兆1228億ドル(約120兆円)と5月より
  218億ドル増え、首位だった中国を抜いた。生命保険や年
  金基金などの機関投資家が比較的利回りの高い米国債への投
  資を増やしたとみられる。
   中国の6月の保有額は前月比23億ドル増の1兆1125
  億ドルだった。5月に米政府が中国への追加関税を表明して
  以降、市場では報復措置として米国債を売るとの観測もあっ
  たが、6月までは目立った動きはみられない。
   日本の財務省によれば日本の投資家は6月に海外の中長期
  債を3兆円強買い越した。その過半が米国債だった計算にな
  る。7月以降も日本は外債を買い越している。米国債の利回
  りは低下傾向が続いているが、日本や欧州よりは金利が高く
  為替リスクをとってでも米国債を買う投資家が増えている。
  米国債の急速な金利低下(価格上昇)を促す主要な買い手に
  もなっている。      https://s.nikkei.com/3521S1F
  ───────────────────────────


柳瀬唯夫氏.jpg
柳瀬唯夫氏
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2019年12月06日

●「平然と理屈をこね嘘をつく財務省」(EJ第5144号)

 企業が財政危機状態に陥ったとき、まずやるべきことは、企業
の持つ資産を売却し、少しでも負債を軽くすることです。これは
政府の場合も同じであり、政府の資産を売却することが先決です
が、日本政府は一向にそうしていません。11月15日のEJ掲
載の「各国政府の資産と負債のバランスシート」をもう一度見て
いただくとわかるように、日本はグラフからはみ出すほど、負債
と資産は多いのに、他国政府のように資産を売って負債を減らそ
うとしないのです。         https://bit.ly/33P1Ng5
 これについて財務省に説明を求めると、財務省は、堂々と、次
のように反論しています。
─────────────────────────────
 日本の政府は借金が多い一方で、資産もあり、資産を売れば借
金の返済は容易だという説もありますが、これについてどのよう
に考えていますか?
 ご質問にお答えいたします。
 国においては、企業会計の考え方を活用して貸借対照表(バラ
ンスシート)を作成しており、平成21年度末時点では1019
兆円の負債に対し、647兆円の資産が存在しています。
 しかしながらこれらの資産の大半は、性質上、売却して赤字国
債・建設国債の返済に充てられるものでなく、政府が保有する資
産を売却すれば借金の返済は容易であるというのは誤りです。
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 財務省は、上記に加えて、これに該当する資産として次の3つ
を上げています。
─────────────────────────────
 1.年金積立金の運用委託金(121兆円)
 2.道路・堤防などの公共用財産
   ・国道63兆円/堤防67兆円
 3.外貨証券(82兆円)財政融資資金貸付金(139兆円)
 4.出資金(58兆円)
─────────────────────────────
 財務省の回答は、国民を素人と下に見て、上から目線で対応し
てします。「素人だから、わかりっこない」と考えて、バカにし
ているのです。役人の答弁といえば、「桜を見る会」の野党の追
及でたびたびテレビに登場する内閣府の総務課長なる人物の、の
らりくらりと絶対に相手に尻尾を掴ませない答弁がさいたるもの
です。これを「霞が関文学」ともいうそうです。
 しかし、「1」の年金積立金の運用委託金の121兆円。これ
誰でも取り崩せないと一瞬思いますね。しかし、取り崩せるので
す。財務省の言い分はこうです。
─────────────────────────────
 年金積立金の運用寄託金(121兆円)は、将来の年金給付の
ために積み立てられているので、赤字国債・建設国債の返済のた
めに取り崩すことは困難です。  ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 この財務省の回答は正しくありません。国民には、そこまで頭
が回るまいとたかをくくっているのでしょう。日本の公的年金制
度は現在「賦課方式」です。しかし、もともとは「積立金方式」
だったのを2004年の年金制度改正で、賦課方式に変更したの
です。賦課方式というのは、国民全体が納めた保険料をその時点
の高齢者で山分けする方式です。したがって、基本的には積立金
は発生しません。つまり、この121兆円の積立金は、2004
年からは無用の存在になっているのです。
 この賦課方式──出生率の低下により、保険料を支払う現役世
代は減少し、逆に年金を受け取る高齢者は増えて行きます。当然
年金給付水準は必然的に落ちて行くことになります。そのため年
金給付水準を切り下げるために「マクロ経済スライド」という仕
組みが導入されたのです。自公政権の年金制度改悪です。
 したがって、121兆円の年金積立金の運用委託金というのは
積立金方式のときに積み立てたものであり、無用の存在ですが、
全額取り崩すにはリスクがあります。年金財政がある時期に赤字
になることもあるからです。しかし、121兆円もの資金を用意
しておく必要はなく、せいぜいその10の1も有していれば十分
です。だから、法律さえ変えれば、すぐにでも100兆円使える
ではありませんか。それでは、この121兆円は政府のバランス
シートでは、どう会計処理されているのでしょうか。森永卓郎氏
は、次のように説明しています。
─────────────────────────────
 ちなみに、連結の貸借対照表には、公的年金の寄託金という資
産項目は計上されていない。資産としてはカウントされているが
その他の有価証券や現預金と混ざって表示されているのだ。
 一方、公的年金の寄託金という項目がない代わりに、負債の部
に「公的年金預り金」が計上されている。なぜ預り金が「負債」
なのかと思われる方も多いだろう。政府は、この公的年金預り金
について、次のように説明している。「将来の年金給付財源に充
てるために保有していると認められる資産から未払金相当額を控
除した金額を『公的年金預り金』の科目で負債計上する」。
 つまりこういうことだ。いま公的年金が抱えている100兆円
を超える積立金の資産は、そのまま政府の連結貸借対照表の資産
として計上されている。年金積立金は、政府のものという扱いに
なっているのだ。しかし、そのままだと、国のバランスシートが
よくなりすぎてしまうと財務省は考えた。そこで、公的年金が抱
えている資産額から、未払い金を差し引いた額を「公的年金預り
金」として、負債の部に計上することによって、政府の純資産か
ら年金の積立金を事実上外しているのだ。
                ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/042]

≪画像および関連情報≫
 ●年金が食い潰されたのは?/江田けんじ氏
  ───────────────────────────
  「百年安心の年金」。
   この言葉は元々、04年当時、自公政権が言い出したこと
  です。そして、今回の「2000万円不足問題」が起こって
  国会の場で安倍首相がそれを追認しました。ただ、日経新聞
  が当時「百年先まで約束すると言えば、世界中の鬼という鬼
  が笑い狂って悶絶死することだろう」と痛罵したとおり、多
  くの国民は「百年安心」とは思っていません。
   そう、「百年安心の年金」も、3年前の「年金カット法強
  行」も、年金という「制度」は守るが、老後の「生活」は守
  れないということです。特に、16年暮れに強行採決された
  「年金カット法」は、物価が上がっても現役世代の賃金が下
  がれば、年金の支給額を減額。このルールに過去10年間の
  データを当てはめると、国民年金で年間4万円(月3300
  円)、厚生年金で年間14万円(月11800円)が減額と
  なります。これでは老後は苦しくなるばかりでしょう。
   かと言って、このお年寄りの減額(カット)で年金制度が
  将来安定するかと言うと、この法律で強化された「マクロ経
  済スライド」で、現役(若者)世代の基礎年金も、将来3割
  カットされる。国民の間に、お年寄りであれ若者であれ、老
  後をどう暮らしていったら良いか心配だという声が多いのも
  当然なのです。         https://bit.ly/386ioQ8
  ───────────────────────────

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疑問に答える財務省
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2019年12月05日

●「日本の政府債務は危機的ではない」(EJ第5143号)

 ヘリコプターマネー政策に伴う「通貨発行益」に関する経済学
論争の難しい話は来週に回して、もう少し財務省について書くこ
とにします。
 財務省は、「日本の財政が破綻状態にある」と主張し続けてい
ます。財務省はそれを国民に伝えるために次のタイトルのパンフ
レットを作成しています。
─────────────────────────────
     「これからの日本のために財政を考える」
          https://www.mof.go.jp/zaisei/
─────────────────────────────
 このパンフレットに関しては、質問も受け付けてくれ、10人
以上のグループであれば、財務省の官僚がわざわざ説明に来てく
れるほどの力の入れようです。
 かなり量があるので、森永卓郎氏のまとめを引用して、考えて
いくことにします。
─────────────────────────────
 1.日本は高齢化に伴って社会保障費が急増しており、それを
  賄うための十分な課税をしてこなかったため、財政赤字が膨
  れ上がって主要先進国と比較し、最悪の状況になっている。
 2.今後、高齢化はさらに進展し、それに伴って医療や介護の
  費用が急増することから、持続可能な社会保障制度の確立が
  急務となっている。
 3.日本の国民負担率は諸外国と比べて低いから、社会保障の
  充実・安定化と財政健全化を同時に達成するために、安定財
  源である消費税率を引き上げていかざるを得ない。
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 「1」について検証します。
─────────────────────────────
 図表1
 ◎財務書類の概要(資産及び負債の状況)/2016年1月
          資産・負債差額  資産額  負債額
  国の財務書類   ▲492.0 679.8 1171.8
  (一般会計・特別会計)           単位=兆円
─────────────────────────────
「図表1」は、財務省が公表している「国の財務書類」の一部
です。これによると、日本政府(一般会計+特別会計)が抱える
負債は1172兆円になっています。GDPの2倍以上であり、
国民がよく知る数字です。
 しかし、その左の「資産額」を見ると、日本政府は680兆円
の資産を有しています。負債から資産は差し引いてもいいので、
「資産・負債差額」は492兆円ということになります。これを
「純債務」といいます。これが日本の財政の本当の数字です。こ
れによると、GDPの2倍以上といわれる借金は、GDPと同じ
程度しかないからです。この程度の借金であれば、別にどうとい
うことはないのです。
─────────────────────────────
 図表2
 ◎連結貸借対照表/2016年3月
 (資産・負債差額の部) 前会計年度   本会計年度
    資産・負債差額   451017615   439402904
                       単位=百万円
─────────────────────────────
 「図表2」は、2016年3月に財務省が発表した「連結財務
書類」です。「連結」というのは、日本政府(一般会計+特別会
計)に加えて、各省庁から監督を受けるとともに、財政支援を受
けている特殊法人、認可法人、独立行政法人、国立大学法人など
を含めた、より広い意味の政府全体の財務諸表であり、森永卓郎
氏は、日本の財政はこれで見るのが正しいといっています。
 これによると、2014年末の純債務は439兆円、その前年
の2013年度末の純債務は、451兆円だったので、1年間で
12兆円も減少していることがわかります。日本の借金は、毎年
増えているどころか、毎年改善を続けていることがわかります。
 このように、財務省が公表している財務書類の数字を見る限り
日本政府の借金は、資産を差し引きしない債務であり、資産を引
けば、借金は半減することがわかります。これに関して、財務省
がいう政府の負債に関して一家言を持つ高橋洋一嘉悦大学教授は
自身のコラムにおいて次のように述べています。
─────────────────────────────
 IMF(国際通貨基金)などの国際機関では、国の負債の大き
さを見る時に、資産を引いたネット債務でみるのが普通だ。資産
を無視して負債だけを見るのは適切でない。
 しかも、日本の場合、資産の中身が問題だ。現預金18兆円、
有価証券98兆円、貸付金143兆円、運用寄託金111兆円、
出資金59兆円の計428兆円が金融資産だ。運用寄託金は年金
資産だからまだいいとしても、有価証券は外為資産、貸付金と出
資金はいわゆる特殊法人等への資金提供だ。変動相場制の国では
これほど大きな外為資金を持たない。また、いわゆる特殊法人等
は官僚の天下り先として問題になっており、先進国でこれほど広
範な政府の子会社を持っている国もない。
                  https://bit.ly/34F6jz8
─────────────────────────────
 高橋洋一氏によると、各国政府の債務を比較するには、純債務
でやることになっているそうです。しかし、日本の財務省は債務
から資産を引いていないのです。これでは、日本の債務が突出し
てしまうのは当然です。普通の国では、財政危機であれば、売れ
る資産処分を先にするのが常識ですが、この資産処分を回避して
増税をやろうとしています。これは、どう考えてもおかしいなこ
とです。        ──[消費税増税を考える/041]

≪画像および関連情報≫
 ●「日本の借金1108兆円」NHKの報道が国民を惑わす
  ───────────────────────────
   たまたまNHKを見ていて非常に懸念を抱いたニュースが
  あった。「来年度予算案1100兆円の借金財政の先行き一
  段と不透明に」という記事で、インターネットでも読める。
   簡単に要旨を書くと、政府予算案の規模が大きく、歳出が
  増加する一方で歳入では国債の発行額が3分の1を占めるの
  が問題と指摘する。そして、来年度末には国と地方を合わせ
  た「借金」が1108兆円に上り、「先進国中最悪」になる
  ことに警鐘を鳴らすものである。報道は、このような財政状
  況が若い世代に将来不安をもたらしていると結んでいる。筆
  者から見れば、このようなNHKの報道こそが、財政状況へ
  のゆがんだ認識を広めることで、若い世代に不安を与えてい
  ると思う。
   まず、どこが、ゆがんでいるのだろうか。それは、政府の
  「1108兆円の借金」という見方である。単純に、日本の
  財政は借金=負債だけが存在するのではなく、資産も存在し
  ている。政府の持つ資産と負債を比較して、その上で事実上
  の「借金」を特定すべきである。負債の方が資産を上回って
  いれば、それを「純債務」と名付けよう。ただし、この純債
  務の大小だけがわかっても財政状況はまだ判断できない。だ
  が、ここまでの議論を、「政府のバランスシート問題」と名
  付けておく。          https://bit.ly/2LhhqXi
  ───────────────────────────


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財務省のウソを暴く森永卓郎氏
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2019年12月04日

●「IMF専務理事消費税15%発言」(EJ第5142号)

 2019年11月25日のことです。国際通貨基金(IMF)
のゲオルギエワ専務理事は、日本の消費税率について「2030
年までに15%、50年までに20%へ増税する必要がある」と
の見解を発表しています。10月に10%への消費増税をしたば
かりであり、ネットなどでは「余計なお世話である」「内政干渉
そのもの」「あなたにいわれたくない」など、不満の声が、たく
さん上がっています。
 確かに10年先の話ではあるものの、「次は15%」といわれ
ると、それだけで、人々の消費意欲とか投資意欲が損なわれ、マ
イナスであるとの批判が渦巻いています。
 実は、この発言のバックに日本の財務省がいます。彼らは、早
くも国民に対して「次は15%」という増税の刷り込みをIMF
を利用して行ったのです。これについて、高橋洋一氏は『夕刊フ
ジ』の自身のコラムで、次のように書いています。
─────────────────────────────
 専務理事の来日は、IMF協定第4条の規定に基づき、加盟国
と毎年定例的に行っている経済に関する審査「4条協議」に合わ
せたもので、協議の終了と対日報告書の発表を受けて記者会見し
た。対日4条協議はIMF代表団が協議相手国を訪問し、経済・
金融情報を収集するとともに、その国の経済状況および政策につ
いて政府当局者等と協議する。筆者も、現役官僚のときに協議に
参加したこともある。日本側は財務省、内閣府等の課長補佐レベ
ルの実務担当者が中心であるが、IMFの副専務理事、理事や事
務局への出向者も多い財務省が日本側をリードし対応していた。
 対日報告書はIMFのものだが、日本政府、特に財務省の意向
が盛り込まれることもしばしばだ。IMFとしても、日本政府の
意に反することをあえて盛り込むのは政治リスクもあるので、日
本政府の抵抗のないものを採用しがちだ。財務省も、あえて外圧
を使ってでも、消費増税を打ち出すのがいいと考えているフシも
ある。その結果、対日報告書に消費増税が盛り込まれることとな
る。今回の専務理事の発言も、これまでと同じ背景だろう。
       ──【日本の解き方】 https://bit.ly/35XyOZf
─────────────────────────────
 IMF本部は、米ワシントンDCにありますが、そこにはIM
F理事室という部屋があり、日本の財務省から多くの職員が出向
して勤務しています。日本人が多いので、普段は英語ではなく日
本語で話しており、英語に不慣れな日本人駐在記者に重宝されて
います。日本のメディアが「ワシントン発」としてIMFのニュ
ースを流すときは、理事室がソースであることが多いのです。
 したがって、今回の専務理事の発言も財務省のレクを受けてお
り、財務省の意向に反する発言は出ないようになっています。し
かし、この発言を聞く日本人としては、「IMFまで消費税15
%が必要だといっている」として、重く受け止めてしまう傾向が
あります。財務省は、いわゆる「ガイアツ(外圧)」を利用して
増税の必要性をまんまとアッピールしたのです。
 財務省のやっていることは、犯罪的ですらあります。既に述べ
ているように、消費税を導入した頃から、法人税は7兆円減って
います。所得税も8兆円減っており、あわせて15兆円も減って
います。その間に消費税は13兆円増えたので、法人税と所得税
が減った分の83%を消費税がカバーしていることになります。
「大企業と金持ちには減税、庶民には増税」、まるで時代劇の悪
代官がやるような悪政です。
 財務省が、消費税を増税したがる理由は、一つはそれが「安定
財源」であって、経済が不況であろうが、なんであろうが、安定
的に取ることができるという点にあります。もう一つは、自分た
ちの輝かしい老後のために、大企業や金持と組んで、所得税や法
人税を減税するための「補填財源」として消費税を位置づけいて
いるフシがあります。
 藤井聡京都大学大学院教授は、「消費税は人頭税である」とし
て、次のように述べています。
─────────────────────────────
 よく言われる、「人頭税」っていう考え方がありますが、消費
税はそれに近いですよね。病気だろうが死にかけていようが、と
りあえず金を払えっていう話。一方で、累進性のある所得税は、
お金持ちからたくさん取りますし、法人税は「利益」にかかりま
すから、あまり儲かってない会社、例えば多くの中小企業は払わ
ないでいい。法人税や所得税を減税しておいて、消費税を増税す
るのは、格差を拡大することになりますね。(中略)
 消費増税という問題は、「成長」と「公平」という2つの問題
がある。消費増税をすると、成長もできなくなるし、格差も拡大
する。どっちの観点からもおかしいのが、消費税だ、ということ
です。──「別冊クライテリオン」増刊号/2018年12月号
           『消費増税を凍結せよ』/啓文社書房刊
─────────────────────────────
 確かに藤井教授のいわれる通りです。法人税は利益の出ていな
い赤字企業にはかからないし、所得税も所得の多寡に応じてかか
る税であるので、ある意味公平です。
 しかし消費税は、家計の状況が苦しい人や、所得の少ない人か
らも同率の税を徴収するので、情け容赦がない、一番残酷な税と
いえます。食料品に対する軽減税率といっても、主要国では0%
であるのに、日本では8%も徴収するのです。ちっとも「軽減」
税率ではなく、まさしく人頭税そのものです。そのため、萩生田
文科大臣ではありませんが、庶民は「身の丈に合わせて生きて行
くのに必要な食料品を買う」しかないのです。
 ヘリコプターマネーについても、財務省は御用学者を集めて理
論武装し、絶対認めない体制を敷いています。何しろ、ヘリマネ
政策を勧めるノーベル経済学賞受賞のスティグリッツコロンビア
大学教授のことを「スティグリッツ教授の理論は違っている」と
いうのですから、大変な自信です。
            ──[消費税増税を考える/040]

≪画像および関連情報≫
 ●「日本の消費税率さらに段階的に引き上げを」/IMF
  ───────────────────────────
   先月、IMF=国際通貨基金のトップに就任したゲオルギ
  エワ専務理事が来日し、高齢化によって増え続ける社会保障
  費を賄うため、日本では消費税率をさらに段階的に引き上げ
  る必要があるという認識を示しました。ゲオルギエワ専務理
  事は、都内で開いた記者会見で日本の財政について問われた
  のに対し「IMFとしては、日本は消費税により頼れる余地
  があると考えている」と述べました。
   会見に合わせて公表されたIMFの声明では、高齢化によ
  って増え続ける社会保障費の負担を賄うためには、消費税率
  を2030年までに15%に、2050年までに20%に、
  段階的に引き上げる必要があるとしています。
   またゲオルギエワ専務理事は、日本経済の見通しについて
  実質のGDPでことしは0・8%、来年は0・5%の伸びを
  見込んでいるとしたうえで、「日本経済の回復は世界的な景
  気減速と不確実性、それに日本自身の高齢化と人口減少の動
  きによって試されることになる」と述べました。
   そのうえでこれまで政府や日銀が進めてきた金融政策や財
  政政策、それに構造改革を改善する必要があると指摘しまし
  た。具体的には短期的な経済成長を維持するための財政政策
  や働く人たちの生産性を上げる労働市場の改革などの構造改
  革を再び活発に行うことが不可欠だなどとしています。
                  https://bit.ly/34IgN0x
  ───────────────────────────

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ゲオルギエワIMF専務理事
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2019年12月03日

●「IMF専務理事消費税15%発言」(EJ第5142号)

 2019年11月25日のことです。国際通貨基金(IMF)
のゲオルギエワ専務理事は、日本の消費税率について「2030
年までに15%、50年までに20%へ増税する必要がある」と
の見解を発表しています。10月に10%への消費増税をしたば
かりであり、ネットなどでは「余計なお世話である」「内政干渉
そのもの」「あなたにいわれたくない」など、不満の声が、たく
さん上がっています。
 確かに10年先の話ではあるものの、「次は15%」といわれ
ると、それだけで、人々の消費意欲とか投資意欲が損なわれ、マ
イナスであるとの批判が渦巻いています。
 実は、この発言のバックに日本の財務省がいます。彼らは、早
くも国民に対して「次は15%」という増税の刷り込みをIMF
を利用して行ったのです。これについて、高橋洋一氏は『夕刊フ
ジ』の自身のコラムで、次のように書いています。
─────────────────────────────
 専務理事の来日は、IMF協定第4条の規定に基づき、加盟国
と毎年定例的に行っている経済に関する審査「4条協議」に合わ
せたもので、協議の終了と対日報告書の発表を受けて記者会見し
た。対日4条協議はIMF代表団が協議相手国を訪問し、経済・
金融情報を収集するとともに、その国の経済状況および政策につ
いて政府当局者等と協議する。筆者も、現役官僚のときに協議に
参加したこともある。日本側は財務省、内閣府等の課長補佐レベ
ルの実務担当者が中心であるが、IMFの副専務理事、理事や事
務局への出向者も多い財務省が日本側をリードし対応していた。
 対日報告書はIMFのものだが、日本政府、特に財務省の意向
が盛り込まれることもしばしばだ。IMFとしても、日本政府の
意に反することをあえて盛り込むのは政治リスクもあるので、日
本政府の抵抗のないものを採用しがちだ。財務省も、あえて外圧
を使ってでも、消費増税を打ち出すのがいいと考えているフシも
ある。その結果、対日報告書に消費増税が盛り込まれることとな
る。今回の専務理事の発言も、これまでと同じ背景だろう。
       ──【日本の解き方】 https://bit.ly/35XyOZf ─────────────────────────────
 IMF本部は、米ワシントンDCにありますが、そこにはIM
F理事室という部屋があり、日本の財務省から多くの職員が出向
して勤務しています。日本人が多いので、普段は英語ではなく日
本語で話しており、英語に不慣れな日本人駐在記者に重宝されて
います。日本のメディアが「ワシントン発」としてIMFのニュ
ースを流すときは、理事室がソースであることが多いのです。
 したがって、今回の専務理事の発言も財務省のレクを受けてお
り、財務省の意向に反する発言は出ないようになっています。し
かし、この発言を聞く日本人としては、「IMFまで消費税15
%が必要だといっている」として、重く受け止めてしまう傾向が
あります。財務省は、いわゆる「ガイアツ(外圧)」を利用して
増税の必要性をまんまとアッピールしたのです。
 財務省のやっていることは、犯罪的ですらあります。既に述べ
ているように、消費税を導入した頃から、法人税は7兆円減って
います。所得税も8兆円減っており、あわせて15兆円も減って
います。その間に消費税は13兆円増えたので、法人税と所得税
が減った分の83%を消費税がカバーしていることになります。
「大企業と金持ちには減税、庶民には増税」、まるで時代劇の悪
代官がやるような悪政です。
 財務省が、消費税を増税したがる理由は、一つはそれが「安定
財源」であって、経済が不況であろうが、なんであろうが、安定
的に取ることができるという点にあります。もう一つは、自分た
ちの輝かしい老後のために、大企業や金持と組んで、所得税や法
人税を減税するための「補填財源」として消費税を位置づけいて
いるフシがあります。
 藤井聡京都大学大学院教授は、「消費税は人頭税である」とし
て、次のように述べています。
─────────────────────────────
 よく言われる、「人頭税」っていう考え方がありますが、消費
税はそれに近いですよね。病気だろうが死にかけていようが、と
りあえず金を払えっていう話。一方で、累進性のある所得税は、
お金持ちからたくさん取りますし、法人税は「利益」にかかりま
すから、あまり儲かってない会社、例えば多くの中小企業は払わ
ないでいい。法人税や所得税を減税しておいて、消費税を増税す
るのは、格差を拡大することになりますね。(中略)
 消費増税という問題は、「成長」と「公平」という2つの問題
がある。消費増税をすると、成長もできなくなるし、格差も拡大
する。どっちの観点からもおかしいのが、消費税だ、ということ
です。──「別冊クライテリオン」増刊号/2018年12月号
           『消費増税を凍結せよ』/啓文社書房刊
─────────────────────────────
 確かに藤井教授のいわれる通りです。法人税は利益の出ていな
い赤字企業にはかからないし、所得税も所得の多寡に応じてかか
る税であるので、ある意味公平です。
 しかし消費税は、家計の状況が苦しい人や、所得の少ない人か
らも同率の税を徴収するので、情け容赦がない、一番残酷な税と
いえます。食料品に対する軽減税率といっても、主要国では0%
であるのに、日本では8%も徴収するのです。ちっとも「軽減」
税率ではなく、まさしく人頭税そのものです。そのため、萩生田
文科大臣ではありませんが、庶民は「身の丈に合わせて生きて行
くのに必要な食料品を買う」しかないのです。
 ヘリコプターマネーについても、財務省は御用学者を集めて理
論武装し、絶対認めない体制を敷いています。何しろ、ヘリマネ
政策を勧めるノーベル経済学賞受賞のスティグリッツコロンビア
大学教授のことを「スティグリッツ教授の理論は違っている」と
いうのですから、大変な自信です。
            ──[消費税増税を考える/040]

≪画像および関連情報≫
 ●「日本の消費税率さらに段階的に引き上げを」/IMF
  ───────────────────────────
   先月、IMF=国際通貨基金のトップに就任したゲオルギ
  エワ専務理事が来日し、高齢化によって増え続ける社会保障
  費を賄うため、日本では消費税率をさらに段階的に引き上げ
  る必要があるという認識を示しました。ゲオルギエワ専務理
  事は、都内で開いた記者会見で日本の財政について問われた
  のに対し「IMFとしては、日本は消費税により頼れる余地
  があると考えている」と述べました。
   会見に合わせて公表されたIMFの声明では、高齢化によ
  って増え続ける社会保障費の負担を賄うためには、消費税率
  を2030年までに15%に、2050年までに20%に、
  段階的に引き上げる必要があるとしています。
   またゲオルギエワ専務理事は、日本経済の見通しについて
  実質のGDPでことしは0・8%、来年は0・5%の伸びを
  見込んでいるとしたうえで、「日本経済の回復は世界的な景
  気減速と不確実性、それに日本自身の高齢化と人口減少の動
  きによって試されることになる」と述べました。
   そのうえでこれまで政府や日銀が進めてきた金融政策や財
  政政策、それに構造改革を改善する必要があると指摘しまし
  た。具体的には短期的な経済成長を維持するための財政政策
  や働く人たちの生産性を上げる労働市場の改革などの構造改
  革を再び活発に行うことが不可欠だなどとしています。
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  ゲオルギエワIMF専務理事
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●「マネタリーベース正しく理解する」(EJ第5141号)

 11月29日のEJで、アデア・ターナー元英国金融サービス
機構長官の話を取り上げましたが、民間銀行の信用創造について
次のように述べています。
─────────────────────────────
 民間金融機関の信用創造を厳しく規制するとともに、政府と中
央銀行については、インフレ目標の厳守を前提に、ヘリコプター
マネーを実施すべきである。
     ──アデア・ターナー元英国金融サービス機構長長官
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 ここで、「民間金融機関の信用創造」とは何かについて、考え
る必要があります。お金を作っているのは、日銀だけではなく、
民間銀行でも作っているのです。それが「民間金融機関の信用創
造」です。
 それでは、銀行はどのようにして、お金を生み出しているので
しょうか。
 銀行というのは、顧客から預かっている預金の範囲内でお金を
貸し出しているのではないのです。預かっているお金よりもはる
かに多い量のお金を貸し出しています。
 誰かがA銀行に100万円預けたとします。A銀行は、法定準
備率分(1%とします)の1万円を中央銀行である日銀に預ける
と、残りの99万円を誰かに貸すことができます。一般に銀行か
らお金を借りるときは、その銀行の口座を開設するので、銀行は
融資のときは自行内の借り手の口座に99万円と書くだけです。
この時点において、最初に預けた100万円はそのままですから
A銀行の預金は199万円に増えたことになります。
 借り手はそのお金を使い、B銀行の誰かの口座に振り込んだと
すると、B銀行はその金額の法定準備率分を日銀に預け、残りを
誰かに貸すことができます。この時点で、最初の100万円の預
金も、B銀行で99万円の振込みを受け取った人の預金も存在し
ていますから、さらに98万100円が生まれ、合計300万円
近くになっています。このようにして借金とお金がグルグルと回
りながら増えて行き、仮に法定準備率が1%だとすると、100
万円の預金から、最大1億円のお金を作り出すことができるので
す。これを「信用創造」といい、それが現代のお金の発行の仕組
みになっています。なぜ、最大1億円であるかについて、次の式
をご覧ください。
─────────────────────────────
        100万円÷0・01=1億円
─────────────────────────────
 歴史を振り返ってみると、日本のバブルは民間銀行がこの信用
創造を膨らませ過ぎたことが原因であり、2008年9月のリー
マンショックが100年に一度の経済危機をもたらしたのも、民
間銀行が金融工学を使って、とんでもない信用創造を行ったから
であるといえます。
 アデア・ターナー元長官が、このような歴史的事実を踏まえて
規制すべきは民間金融機関であって、政府や中央銀行にはもっと
自由度を与えてもよいのではないかといっているのです。
 この「信用創造」に関連して、「マネタリーベース」という言
葉を理解する必要があります。
─────────────────────────────
 マネタリーベースとは、「日本銀行が供給する通貨」のことで
ある。具体的には市中に出回っているお金である「流通現金」の
ことである。流通現金とは、次の合計値である。
   流通現金=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+
        「日銀当座預金」
─────────────────────────────
 「日本銀行券発行高」とは、1万円札などの「お札」のことで
す。毎年どのくらい作られているのかというと、最新の2019
年度については、全部で30億枚、内訳は次の通りです。
─────────────────────────────
       1万円券 ・・・ 10・0億枚
       5千円券 ・・・  2・4億枚
       2千円券 ・・・    0億枚
       1千円券 ・・・ 17・6億枚
─────────────────────────────
 「貨幣流通高」とは10円玉などの貨幣(硬貨)の流通高を合
計したものです。なぜ、「発行高」ではなく、「流通高」になっ
ているのかというと、貨幣については、日銀保有分が除かれてい
るので、「流通高」と表記することになっています。
 「日銀当座預金」とは、都市銀行や地方銀行などの金融機関が
日銀に開設しておかなければならない口座のことです。いわゆる
「マイナス金利」は、この当座預金の一部にのみ、かかっていま
す。日銀当座預金は、詳しい説明は避けますが、次の3層になっ
ており、金利との関係は次の通りです。
─────────────────────────────
       政策金利残高 ・・・ −0・1%
      マクロ加算残高 ・・・  0・0%
         基礎残高 ・・・ +0・1%
─────────────────────────────
 この3層のうちの「政策金利残高」には、「−0・1%」」の
マイナス金利がかかっています。なぜ、マイナス金利をつけるの
かというと、ごく簡単にいうと、多くなり過ぎる日銀当座預金を
抑えるためです。
 マネタリーベースとは、上記の「日本銀行券発行高」と「貨幣
流通高」と「日銀当座預金」の合計をいいます。つまり、日本中
に流通しているお金の合計です。マネタリーベースは、通貨発行
益に深い関係があります。明日のEJで説明します。
            ──[消費税増税を考える/039]

≪画像および関連情報≫
 ●マネーサプライ(貨幣供給量)とは何か
  ───────────────────────────
   貨幣(マネー)は、商品を購入したり、企業が設備投資を
  する場合など、経済活動のすべてにおいて必要なものだ。日
  本経済を大きな旅客機、消費や設備投資などの経済活動をそ
  のエンジンとすると、貨幣は「燃料」に相当する。燃料が十
  分に供給されていれば、エンジンの出力も強くなって機体が
  上昇し、景気が良くなる。反対に燃料の供給が不十分だと、
  エンジンの出力が低下、機体が下降して、景気が悪化する。
   この貨幣の量を示すのが、マネーサプライ(貨幣供給量)
  であり、旅客機のコックピットに取り付けられた「燃料計」
  ということができる。
   貨幣の供給源は、中央銀行である日本銀行(日銀)だ。日
  銀は、銀行を中心とした金融機関に貨幣を供給、銀行はそれ
  を企業や個人に融資する。融資を受けた企業が機械を購入す
  るなどの設備投資を行えば、機械を製造した企業に売却代金
  としての貨幣が流れる。また、個人が銀行から融資を受けて
  自動車を購入した場合には、自動車メーカーに貨幣が渡り、
  従業員の給料や新たな設備投資となって、さらなる流れが発
  生する。日銀が供給した貨幣は、こうした様々なプロセスを
  経て、経済全体に行き渡っていくことになる。日銀が供給す
  る貨幣が、流通している貨幣の源になることから、これをマ
  ネタリーベース、あるいは、ハイパワードマネーと呼んでい
  る。              https://bit.ly/37VfP3h
  ───────────────────────────

銀行の信用創造のメカニズム.jpg
銀行の信用創造のメカニズム

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2019年12月02日

●「デフレなのになぜ緊縮策をとるか」(EJ第5140号)

 このところEJでは「財政ファイナンス」について書いてきて
います。意図的にではなく、アベノミクスによる金融緩和の結果
として、日銀は、2018年末時点で、478兆円の国債を保有
するにいたっており、政府の国債などの債務残高は1111兆円
と過去最高になっています。
 ここまで書いてきたように、財政ファイナンス的に考えると、
政府債務残高から日銀の保有する478兆円は差し引きしてよい
ということになります。しかし、一部の読者からの反応や何人か
に意見を聞いてみると、財政上非常に危険なことを書いていると
いう雰囲気であり、少なくとも本当にできることだとは思ってい
ないようです。財務省によるプロパガンダがここまで浸透してき
ていることを恐ろしく感じます。この問題に関しては、日本人の
頭が凝り固まっており、「そんな意見もあるのか」と、柔軟に考
えられなくなっているように感じます。
 ちなみに「プロパガンダ」といういい方は少しきついので「ポ
ジショントーク」というべきであるという意見もあります。
─────────────────────────────
 ポジショントークとは、自分の立場、立ち位置に由来して発言
を行うことである。転じて、自分の立場を利用して自分に有利な
状況になるように行う発言のことも指すようになっている。
                    ──ウィキペディア
─────────────────────────────
 財政ファイナンスに関する批判は、日銀が国債の買い入れを続
けると、ある日突然、とてつもなく高いインフレが日本経済を襲
い、それ以降はインフレのコントロールが利かなくなってしまう
というリスクが起きるというものです。
 突然、高率のインフレが襲ってくる。これに関して、森永卓郎
氏は、戦後の日本と米国の例を上げて説明しています。
─────────────────────────────
 たとえば、日中戦争から太平洋戦争に投入された戦費は、その
ほとんどが戦時国債によって調達された。当時の国民は、国から
国債を購入するよう強く推奨されたが、国民生活に余裕があるは
ずもなく、その大部分は日銀によって引き受けられた。日本政府
は、このときの国債を支払い不能にせず、戦後も償還を続けたが
戦争中から始まった高率のインフレで、償還金の実質的な価値は
ほとんどなくなってしまった。
 もう一つ、高率のインフレを招いた例として、挙げられること
が多いのが、1970年代のアメリカだ。ただし、このときのイ
ンフレは、1960年代後半からの財政拡張によってもたらされ
たインフレに石油ショックの影響が重なって生じたものだ。しか
も、突然インフレ率が高まったという事実はなく、インフレ率が
1960年代後半から徐々に高まっていった。
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 経済の歴史を調べてみると、1990年代以降は先進国では高
率のインフレは生じていないのです。リーマンショック後の英国
は、資金供給を5倍以上に引き上げていますが、インフレは生じ
ていません。そして何よりの証明は日本です。日銀が年間80兆
円以上の国債を買い続けていますが、物価は目標である2%に届
いていません。物価が上がりにくくなっているのです。
 これに関してエコノミストの水野和夫氏は、自著のなかで次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 需要超過経済から供給超過経済への転換と域内経済からグロー
バル経済への転換という大きな構造変化のなかで、そもそも物価
が上がりにくい経済が、生まれているのではないだろうか。特に
近年まで強烈な金融引き締めを続けてきた日本経済は、少々のこ
とでは、物価が上がらなくなっている。    ──水野和夫著
                    『株式会社の終焉』
           ディスカヴァー・トゥエンティンワン刊
─────────────────────────────
 重要なことは、よほどのことがない限り、物価が上がらない経
済になっているということです。つまり、インフレに強い経済が
出来上がっているということを意味します。これは、それだけ財
政を動かせる余裕が増えていることを意味しています。
 添付ファイルをご覧ください。これは、ドル建てで見た「一人
当りGDPの推移」をあらわしています。このグラフで注目すべ
きは、OECD(経済協力開発機構)の平均を超えているかどう
かです。日本は、1990年には、米国、フランスに次いで第3
位で、OECD平均を大きく上回っていたのですが、2002年
頃から、英国、ドイツにも抜かれ、OECD水準を大きく下回る
水準になっています。
 どうして、日本経済は伸びないのでしょうか。
 それは、ここまで述べてきているように、経済政策を誤ってい
るからです。一言でいうと、「デフレから脱却する」という名の
下に、日銀による大規模金融緩和を行いながら、「減税」をやら
なければいけないところで、正反対の「増税」をやっているから
です。つまり、安部政権は一貫して「緊縮政策」をとってきてい
るのです。それは現在もまだ続いています。
 5%だった消費税の税率を2回にわたって10%に倍増させる
一方で大企業については法人税を減税させています。しかしそれ
は従業員には還元されず、その結果、大企業の内部留保は426
兆円という空前の規模に達しています。安部政権の「庶民には増
税/大企業には減税」の悪政です。それでも日本国民は、安倍政
権に対して、多過ぎる支持を与えています。
 それに加えて、さらにマクロ経済スライドで年金を減額させ、
高齢者の医療費の自己負担を引き上げることを決めています。緊
縮、緊縮のオンパレードです。これでは、デフレから、いつまで
経っても脱却できません。──[消費税増税を考える/038]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ「446兆円」も貯め込むのか?
  ───────────────────────────
   日本企業の内部留保が6年連続で過去最高を更新したこと
  が明らかとなった。活況を呈する米国経済の追い風を受け、
  輸出産業を中心に好業績が続いているが、なぜ日本企業は利
  益を貯め込もうとしているのか、ライバル同士であるソニー
  とパナソニックの比較から探った。
   財務省が公表した法人企業統計によると、2017年度に
  おける日本企業(金融・保険業を除く)の内部留保は446
  兆4844億円と過去最高を記録した。昨年より40兆円以
  上も増えており、過去最高を更新するのは6年連続である。
   内部留保は貸借対照表(バランスシート)の利益剰余金の
  ことを指すケースが多いが、あくまでも会計上の概念であり
  実際に同額の現金が存在しているわけではない。しかしなが
  ら、内部留保がすべて資産に変わっているわけではなく、実
  際のところ半額程度の現金が何もしない状況で遊んでいる。
                  https://bit.ly/37SOwXk
  ───────────────────────────
 ●グラフ出典/森永卓郎著/角川新書K126の前掲書より

1人当りのGDPの推移(ドル建て).jpg
1人当りのGDPの推移(ドル建て)
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2019年11月29日

●「民間銀行の信用創造こそ規制せよ」(EJ第5139号)

 現代の日本人は「GDPの2倍を超える政府債務」をことのほ
か、深刻に考えるようになっています。これは、何度もいうよう
に、財務省のプロパガンダの成果です。これが増税を容認する考
え方につながるのです。財務省は長年にわたって、政府の債務の
大きさを日本人のアタマに刷り込んできたからです。
 しかし、太平洋戦争のさいに発行された戦時国債の額はいくら
かご存知ですか。GDPの約8倍、いまの金額に直すと4000
兆円にもなるのです。したがって、1000兆円を少し超える程
度の政府債務は大したことはないし、ケタが違います。
 そういう日本人にヘリコプターマネーの話をすると、「とんで
もない」とか、「大インフレになる」とかいって、まともに考え
てもらえない。そこでひとりの人物を紹介します。アデア・ター
ナー元英金融サービス機構(FSA)長官です。彼は近著『債務
さもなくば悪魔、ヘリコプターマネーは世界を救うか?』(日経
BP社)のなかで次のように述べています。
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 マネタリーファイナンスの技術的な論理は明快である。政府が
減税を実施するか、国民に直接現金を配るか、財政支出を増やす
一方、中央銀行がこの財源を新規通貨の発行で賄えば、マイナス
金利や国債発行による財政出動など、他の政策が効かない時でも
常に需要は刺激される。物価と成長率に対する影響は、刺激の規
模に依存する。この政策が必然的に過度なインフレを引き起こす
との主張は、単純に誤っている。また、将来の「インフレ税」や
銀行収益に対する暗黙の税が見込まれるので効果がないとの主張
は混乱した論理に基づいている。このため、ヘリコプターマネー
について唯一の反論、とはいえきわめて重要な反論は、政治的な
ものになる。どれだけ規模が小さくとも、いったんタブーを破っ
てマネタリーファイナンスを実施してしまうと、政治家が際限な
くマネタリーファイナンスを求め、インフレが冗進するのではな
いか、というものだ。だが、このリスクは、物価目標を掲げる独
立した中央銀行に、マネタリーファイナンスの規模の上限の決定
権を付与することで抑制することができる。
            ──アデア・ターナー著/高橋裕子訳
        『債務、さもなくば悪魔ヘリコプターマネーは
                     世界を救うか?』
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 アデア・ターナー氏は、危機をもたらすのは、民間金融機関の
信用創造であり、これをきちんと規制すべきであると主張してい
るのです。彼は2008年9月のリーマンショックの最大の原因
は民間金融機関が金融工学を使ってとんでもない信用創造を行っ
たからであると指摘しています。この考え方に立って、規制すべ
きは民間金融機関であって、政府や中央銀行には、もっと自由度
を与えるべきではないかと主張しているのです。
 これだけでは、少しわかりにくいと思うので、2017年1月
の日経記者によるアデア・ターナー氏との一問一答を参考までに
ご紹介します。きわめて貴重なやり取りであると思います。
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──近著『債務、さもなくば悪魔』でも、ヘリマネを提唱してい
 ますね。
ターナー氏:世界経済はかつてない債務の積み上がりに直面し、
 債務削減圧力と低すぎるインフレ率のために、伝統的な政策手
 段は行き詰まっている。
――日本の場合は
ターナー氏:2020年にプライマリーバランス(基礎的財政収
 支)を黒字にするのは、事実上不可能だ。黒字にしようと無理
 をして再びデフレ不況に陥れば、公的債務のGDP比は低下す
 るどころか上昇する。
――どうすればよいとお考えですか
ターナー氏:日銀が保有する国債の一部を、無利子の永久債に置
 き換えたらいい。ヘリマネと呼ばれる策だが、政府の利払いと
 元本償還が減り、そのぶん財政は自由度を回復する。
――財政規律が失われる心配がありませんか
ターナー氏:野放図なヘリマネが悪性のインフレを招いた歴史が
 あるのは確かだ。中央銀行による歯止めが必要なのはもちろん
 だ。どのくらいの金額の保有国債を無利子永久債に置き換える
 かは、日銀の金融政策決定会合が独立性を持って決める必要が
 ある。
――何か基準がないと心もとないのでは
ターナー氏:その際に歯止めとなるのはインフレ目標だ。経済が
 デフレを脱却し、2%の物価目標が実現されたなら、ヘリマネ
 政策は打ち止めにすべきだ。
――将来、金利が上昇した際に日銀の財務内容が悪化しないか
ターナー氏:無利子永久債は日銀の資産。それに対応する負債は
 民間銀行から預かっている準備預金だ。無利子永久債に相当す
 る金額の準備預金を無利子とすれば、日銀の財務内容は悪化せ
 ずにすむ。
――ヘリマネ政策を導入するタイミングは
ターナー氏:低インフレと低成長が長引けば、公的債務のGDP
 比は上昇するばかりだ。2%の物価目標を達成し、公的債務比
 率の分母となるGDPを拡大させるためにも、ヘリマネの採用
 時期は早ければ早い方がよい。https://s.nikkei.com/34v2gpf
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 お金を作り出すというと、中央銀行だけができることと考えま
すが、民間銀行も「信用創造」というメカニズムで、お金を創り
出しています。アデア・ターナー氏は、その民間の信用創造に、
もっと規制を厳しくすべしといっています。しかし、民間の銀行
もお金を創り出しているといってもピンとこないと思います。そ
れには「信用創造」というものをきちんと理解する必要がありま
す。これについては、来週のEJにおいて、詳しく説明します。
            ──[消費税増税を考える/037]

≪画像および関連情報≫
 ●マネタリーファイナンスはなぜ日本に必要か/ターナー氏
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  [東京:10日]根強いデフレ圧力と公的債務問題に対して
  日本が取り得る最も有効な打開策は、中央銀行が財政赤字を
  穴埋めする「マネタリーファイナンス」を国民に向けて明示
  的に実行することだと、元英金融サービス機構(FSA)長
  官のアデア・ターナー氏は述べる。
   具体的には、政府が2019年10月の消費増税を延期し
  た上で2020年代半ばまで大幅な財政赤字を出し続ける一
  方、日銀は政府による国債発行とほぼ同じペースで国債購入
  を続け、かつその一部を無利子の永久債としてバランスシー
  トの資産に計上し、実質的に「消却」すべきだと説く。同氏
  の見解は以下の通り。
   日本政府と日銀に対する提案は3つある。第1に、政府は
  2019年10月に予定している(8%から10%への)消
  費税率引き上げを再延期し、高水準の財政赤字を計上し続け
  るべきだ。民間貯蓄超過を穴埋めするためには、相当規模の
  公的赤字が2020年代半ばまで必要なことを甘受すべきで
  ある。第2に、日銀は、政府による国債発行とほぼ同じペー
  スで国債を購入し続けるべきだ。そうすることで、日銀以外
  の主体が保有する国債が増えないようにする必要がある。
  第3に、日銀は、保有国債の一部を無利子永久国債としてバ
  ランスシートの資産に計上し、実質的に「消却」すべきだ。
                  https://bit.ly/2ONCS7e
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アデア・ターナー氏.jpg
アデア・ターナー氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする