は内容のいかんに関わらず、習慣としてNHKの大河ドラマは必
ず見ることにしています。もちろん今回も一度も欠かさず、見て
いますが、見れば見るほど坂本龍馬という人間がよくわからなく
なるのです。今回の『龍馬伝』はいささかおかしいのではないで
しょうか。
別に歴史を忠実に描けというつもりはないのです。ドラマなの
ですから、いろいろな脚色があってよいし、何よりも面白いこと
が一番ですが、それほど面白いわけでもないのです。何よりも問
題なのは、坂本龍馬という人間を意図的にある特定のイメージに
変質させて伝えようとしている──そんな気がするのです。
私が今回EJのテーマとして、「坂本龍馬」を取り上げる気に
なったのは、まだ猛暑が続く8月のある日に、浜松町のdan文
教堂で次の本を発見して購入してからです。
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榊原英資著
『龍馬伝説の虚実/勝者が書いた維新の歴史』
朝日新聞出版刊
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著者を見て一瞬間違えではないかと思ったのです。しかし、著
者は紛れもなく、経済学者で「ミスター円」の異名を持つ榊原英
資氏に間違いないのです。榊原氏は本の「はじめに」で次のよう
に述べています。
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現在の国際経済、そのなかの日本経済を理解する上でも、歴史
特に世界のなかの日本の歴史を理解することはきわめて重要で
す。なかでも明治維新から第二次世界大戦に至る時代がどのよ
うな時期だったかについては、かなりの誤解があるようです。
そしてその誤解には龍馬伝説が深く絡んでいると思われます。
筆者は、龍馬をめぐる誤解を正すことによって明治という時代
を再評価し、それを「戦後」を考える一つのよすがにしてみた
いと考えています。 ──榊原英資著/朝日新聞出版刊
『龍馬伝説の虚実/勝者が書いた維新の歴史』
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歴史は勝者が書くのが通常ですが、榊原氏は坂本龍馬を司馬遼
太郎のように勝者である薩長の側から見るのではなく、幕府の側
つまり、横井小楠や勝海舟の側から見ると、かなり違った光景が
見えてくるといっています。
司馬遼太郎は、そのベストセラー『竜馬がゆく』において龍馬
を薩長同盟を成立させ、幕藩体制を倒して、素晴らしい明治をつ
くった革命児として描いています。しかし、本当に、そうなので
しょうか。
『竜馬がゆく』は、司馬遼太郎が昭和37年(1962年)〜
41年(1966年)に産経新聞に連載され、その連載完結の2
年後にはNHKの大河ドラマ『竜馬がゆく』が、演出・和田勉、
主演・北大路欣也で放映されています。
それから約半世紀にわたり、龍馬に関しては、学術的なものか
ら小説のたぐいまで、膨大な書籍で取り上げられ、映画、演劇、
TVドラマ、マンガ、ゲームなど、とても数え切れない大変な数
に達していると思います。
司馬遼太郎が『竜馬がゆく』を書く以前、というより戦前の日
本では、坂本龍馬の人気は大したことではなかったのです。ちな
みに戦前においては、東京帝国大学の学生新聞が毎年行っていた
「尊敬する人物」のベスト4は次のようになっているのです。
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1.楠木正成
2.吉田松陰
3.西郷隆盛
4.乃木希典
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もし、現在であれば、おそらく坂本龍馬はダントツで第1位に
輝くはずです。しかし、現在幅広く伝えられている龍馬像は実際
の龍馬とはかなり違うものではないかと思うのです。
EJでは、そこを追求したいと思います。しかし、とくに今回
に限らず、今まで何回にもわたるNHKの大河ドラマの伝える龍
馬像は相当インパクトが強いですから、そのイメージを崩すのは
容易ではありませんが、あえて挑戦したいと考えています。ポイ
ントは次の2点です。
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1.今までとは異なる視点から坂本龍馬を探る
2.フリーメーソンと龍馬の接点を探ってみる
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1はともかくとして、なぜここにフリーメーソンが出てくるの
でしょうか。
それは、世の中を一変させるような大革命の裏では、フリーメ
ーソンは、必ず活躍しているからです。代表的なものを上げると
アメリカの独立戦争、そしてフランス革命があります。これらは
いずれもフリーメーソンと密接な関係があるのです。
そうであるとすると、日本における最大の政変である明治維新
においても何らかのかたちでフリーメーソンがからんでいると考
えるのは、それほど不思議なことではないのです。
今までの坂本龍馬に関するドラマなどでは、それがフリーメー
ソンとの関係で演出されることはないでしょう。しかし、明治維
新でもフリーメーソンは裏でからんでいるのです。EJではその
観点からも坂本龍馬にスポットを当てていくつもりです。
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『新しい視点から読み解く坂本龍馬論』
─ 龍馬は真の姿を明らかにする ─
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─── [新視点からの龍馬論/01]
≪画像および関連情報≫
●山田雅稔のブログより/榊原英資氏の龍馬論
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『龍馬伝説の虚実』(榊原英資著 朝日新聞出版刊)を読み
ました。『第一章 龍馬伝説は明治一六年に始まった』の中
の「忘れられていた竜馬」の項から抜粋し、番号を付けて紹
介します。『@明治維新の直前、1867年11月15日に
坂本龍馬は暗殺されますが、維新後しばらく龍馬は忘れられ
た存在でした。龍馬がはじめて注目されるのは、1883年
(明治16年)。土佐の自由民権運動の新聞、土陽新聞にお
いてです。A歴史家・加来耕三はその経緯を次のように記し
ています。「作者は自由民権運動家で文筆家の坂崎紫瀾(し
らん)であった。(中略)幾度か単行本としても刊行された
が、人気の高かったことから、後世の人々は、この物語をす
べて、事実であるかのごとく記憶してしまった。
http://masatoshiyamada.blog108.fc2.com/blog-entry-687.html
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榊原 英資著『龍馬伝説の虚実』