2010年04月15日

●「衆参同日選は十分ありうる話である」(EJ第2795号)

 昨年民主党で事業仕分けを行うさいに、新人議員を使うことに
幹事長室がブレーキをかけたことを覚えている人は多いと思いま
す。そのとき小沢は次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 僕らのように何十年も議員やっている者が見ても、なんのこと
 やらサッパリ解らないこんな分厚い予算書をパッと見ただけで
 問題点の判る新人議員なんているはずがない。それよりも、新
 人議員は再選されて一人前だ。“小泉チルドレン”の末路を見
 たら解るだろう。           ──小沢一郎幹事長
―――――――――――――――――――――――――――――
 素人の新人に予算書なんて読めないと断言するのは、間違った
考え方です。今回当選した新人議員の中には財務省出身者もいる
し、決算書などに詳しい専門家も当選しているのです。候補者を
一人ひとり選定している小沢が知らないはずはないのです。
 したがって、小沢幹事長が本気でそう思っているのではないこ
とは明らかです。小沢が一番強調したかったのは、「新人議員は
再選されて一人前だ。“小泉チルドレン”の末路を見たら解るだ
ろう」という部分なのです。
 それは、小沢が衆参同日選をひそかに計画していることをあら
わしているのです。小沢は新人議員に対し、「油断するな、選挙
は近いぞ!」というサインを送っていたのではないでしょうか。
 実は、野党──とくに自民党が一番恐れているのはこの衆参同
日選なのです。もし、ここでダブル選挙をやられると、資金面や
候補者集め、集票組織の機能不全などで、自民党は壊滅状態に陥
る恐れがあるからです。
 しかし、これは民主党の支持率が60%以上あるときの話であ
り、その後、小沢問題や鳩山内閣の稚拙な国会運営などで支持率
が下がってくると、だんだんその警戒心が薄れてきていることは
確かです。まして、最近は内閣支持率、政党支持率が大きくダウ
ンしており、そんなときにいくら小沢でも衆参同日選なんかやる
はずがないと多くの人が思っています。
 もし、そのように考えている人がいるとしたら、小沢という政
治家がどんなに腹の据わった度胸のある戦略家であることを知ら
ないのです。誰もがやらないと思っていることをタイミングを外
さず勇気を持って実行するところに小沢の真骨頂があるのです。
 現在連立与党の衆議院の議席数は次のようになっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
      民 主 党 ・・・・・ 307議席
      社 民 党 ・・・・・   7議席
      国民新党 ・・・・・   3儀節
      ――――――――――――――――
                 317議席
―――――――――――――――――――――――――――――
 317議席というと、衆議院の総議席480の66%に当たり
ます。これはちょうど総議席数の3分の2に当たるのです。かつ
ての自公政権のように、参議院で否決されても衆議院で再議決が
可能な数なのです。
 しかし、もし、参議院で単独過半数(連立与党で過半数)が取
れれば、再議決に必要な3分の2はいらないのです。過半数であ
る240議席を上回る250議席もあれば十分です。そうすると
衆参同日選で民主党が衆議院において、250議席以上を確保す
れば十分ということになります。
 政党支持率が今のままであると、衆議院は相当数を減らしそう
ですが、57議席分は余裕があるのです。いかに支持率が下がっ
たとはいえ、最大野党の自民党が今のようなていたらくですから
民主党がそんなに議席を減らすことはあり得ないと思います。
 衆参同日選の与党にとってのメリットは次の4つがあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
  1.仕掛ける方が十分準備できるので与党にとって有利
  2.衆参同日選では投票率が上がって与党に有利である
  3.衆院議員が自分の選挙のため参院候補者応援不十分
  4.衆院議員の個人組織がフル回転し参院に好影響出る
―――――――――――――――――――――――――――――
 もし、小沢幹事長が衆参同日選を仕掛けるとしたら、いつそれ
を決断するかです。解散権を持っているのは首相であり、これに
ついては与党が断然有利です。現在の状況では、まさか同日選を
やるとは他党は考えていないはずです。
 参議院選は衆議院選に比べると、どうしても投票率が落ちるの
です。しかし、同日選では投票率は向上します。現在、民主党は
組織をかなり固めており、投票率が上がらない方が有利といわれ
ますが、政党支持率が下がったといっても現時点でもトップを維
持しており、民主党に入れる人は多いと思います。参議院選だけ
の場合、政権交代が起きるわけではないので、民主党に少しお灸
をすえるという人も増えると思いますが、衆参同日選の場合は、
子ども手当や高校無償化をやった後でもあり、民主党に期待する
人も多いので、民主党に入れる人は多いと思います。
 みんなの党が善戦することは確かですが、最大野党の自民党や
公明党は大きな痛手を受けます。とくに自民党は、昨年の衆議院
選の大敗からまだ完全に立ち直っていないことや、離党が続き、
党内のゴタゴタがあるうえ、かつての集票組織は小沢によってほ
とんど切り崩されており、公明党の選挙協力も受けられないので
大幅に議席を減らすことは必至です。
 何といっても自民党が苦しいのは資金面です。参議院選だけで
も候補者に十分なサポートができないのに、衆参同日選では費用
がもっとかかるのです。経団連が企業・団体献金をやめた影響も
相当あると思います。それでいて、自民党の谷垣総裁は「普天間
が首尾よくいかないときは(衆院を解散して)国民の信を問え」
と迫っているのです。本当にそうなって一番困る政党は自民党な
のです。小沢という政治家は自民党を壊滅させようと考えており
絶好のチャンスは外さないのです。 ──[小沢一郎論/71]


≪画像および関連情報≫
 ●自民党も警戒している「衆参同日選」
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  自民党は4月5日、谷垣禎一総裁ら党執行部が現職以外の衆
  院選選挙区支部長や参院選立候補予定者らと意見交換する懇
  談会を党本部で開き、今後の党運営や参院選のマニフェスト
  などについて議論した。本県からは前衆院議員で栃木1区支
  部長の船田元氏と同2区支部長の西川公也氏が出席。船田氏
  は、民主党の小沢一郎幹事長の選挙戦略について「衆参ダブ
  ル選挙だってやるかもしれない」と指摘。自民党では未定の
  小選挙区支部長が少なくないことから、支部長を早急に決め
  準備を進めるよう求めた。
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20100405/305304
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党首討論.jpg
党首討論
posted by 平野 浩 at 04:29| Comment(1) | TrackBack(0) | 小沢一郎論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月16日

●「鳩山内閣は『子ども内閣』である」(EJ第2796号)

 2010年1月26日の国会で、次のような珍妙なやりとりが
行われたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 菅直人 財務相:1兆円の予算を使って1兆円の効果しかない
         公共事業はだめだ
 林 芳正 議員:では子ども手当の乗数効果はどれぐらいか
 長妻  厚労相:子ども手当は実質GDPを0.2 %押し上げ
         るが、乗数効果はわからない
 林 芳正 議員:GDPの増分を財政支出で割れば乗数効果は
         出るだろう
 菅直人 財務相:1以上であることは間違いない。幼保一体化
         すれば・・・(ヤジで意味不明・中断。3分
         後に再開)
 菅直人 財務相:子ども手当の消費性向は0.7 程度。定額給
         付金は0.3ぐらいだった
 林 芳正 議員:消費性向と乗数効果とはどう違うか
 菅直人 財務相:乗数効果の詳細な計算はまだしていない
 林 芳正 議員:計算すればわかるだろう。消費性向と乗数効
         果の関係は?
 菅直人 財務相:1兆円の事業に金を使ったとき1.3 兆円の
         効果があれば、乗数効果は1.3 ・・・
         (中断。1分後に再開)
 林 芳正 議員:消費性向が0.7 ということは1を切ってい
         る。財政支出より低いのだから、財政支出を
         切って子ども手当にしたら、景気への効果は
         マイナスになるのではないか?
         (中断。1分後に再開)
 菅直人 財務相:子ども手当の効果は1以下だが、その他の効
         果がある。子育てで働けない人が働けるとか
         少子化が防げるとか・・・
 林 芳正 議員:市場が暗くなるといけないので、もうやめる
―――――――――――――――――――――――――――――
 このやりとりは、自民党の林議員が自分の経済の知識をひけら
かすためにやったと思われているようだが、それは違う。菅財務
相が次のように述べたことに、林議員が疑問を持って食い下がっ
た結果なのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 自民党は1兆円の予算で1兆円の効果しかないやり方をやって
 きた。自民党政権の投資は経済波及効果が低かった。
                       ──菅財務相
―――――――――――――――――――――――――――――
 これに対して林議員は「乗数効果のことをいっているのか」と
反論し、「子ども手当の乗数効果はどれぐらいか」と逆質問した
のです。そうしたら政務官だか役人だかが出てきてゴチャゴチャ
した結果、菅財務相は「0.7」 だと答えてしまったのです。
 これが違っているのです。面倒になるので、計算式の説明はし
ないが、次のように「2.3」 と答えればよかったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     0.7 ÷ 0.3 =2.3333・・・
―――――――――――――――――――――――――――――
 このやりとりで何がわかったかといえば、菅財務相が乗数効果
について何もわかっていないことが判明したことです。これにつ
いて、池田信夫氏は次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは理科系の菅氏は当然ご存じの無限等比級数の和の公式で
 消費性向が0.7 であれば、乗数効果は1/0.3 =3.33
 となる。これは大学1年生の春学期で習う超初歩的なマクロ経
 済学の常識で、菅氏のような答案を出したら不可である。乗数
 も知らない落第生が、7兆円の景気対策を出して「成長戦略」
 を立案しているのは恐るべきことだ。やっぱり「官僚主導」で
 やったほうがいいんじゃないの。
   http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51353169.html
―――――――――――――――――――――――――――――
 このように、現在の鳩山内閣は「子ども店長」ならぬ「子ども
内閣」です。何も知らず、基礎的知識があるとはいえません。昨
今の大学生の学力低下を嘆く前に大臣たるもの、勉強して自らの
知識を増やし、磨きをかけるべきです。
 小沢は、民主党入りして、民主党の議員の実力と限界を一番よ
く知っているのです。まして与党はやったことはない。こんな連
中に内閣を組閣させたら大変なことになると考えて、自民党との
大連立話に乗ろうとしたのです。経験豊富なベテランの中でもま
れれば、成長するだろう。天下取りはそれからでも遅くはない、
と。・・・しかし、民主党の幹部は全員反対したので、小沢は代
表を辞任しようとしたのです。そのあたりのことが元自由党以外
の民主党の幹部議員はわかっていないのです。
 小沢の考える二大政党制の相手は自民党ではないのです。自民
党はこのままでは消えると考えています。それでは、対するこち
ら側は民主党かというと、それも違うのです。民主党は右から左
までウイングが広すぎるのです。それに組合と深く結び付いてお
り脱組合が必要です。これをやらない限り、本当の「政治主導」
など実現しない──小沢はそう考えているのです。
 それではどうするのか。夏の参議院選で勝利したら、小沢は民
主党をばらしにかかると思います。もし、それがうまくいかない
ときは、小沢親派を連れて民主党を出て、政策や理念を同じくす
る小政党と組んで新しい保守党の連立政権を作り、三度政権交代
を成し遂げるのではないか・・・、と私は考えます。
 1月4日から書いてきた「小沢一郎論」は今回でひとまず終了
します。そして、夏の参議院選の結果次第では、もう一度角度を
変えて取り上げるつもりです。長い間のご愛読を心より、感謝い
たします。      ――──[小沢一郎論/72/最終回]


≪画像および関連情報≫
 ●「乗数効果」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  マクロ経済学で用いられる経済効果で、政府や企業が投資す
  ることで得られる効果が、さらなる経済効果へと波及してい
  き、初めの投資から何倍もの経済効果を得られること。ここ
  でいう経済効果は、国民所得とも置き換えられる。投資によ
  って得られる国民所得から消費に向かい、国民所得が伸び、
  再び消費が伸びるという仕組みが循環していくことで乗数効
  果が生まれる。
     http://m-words.jp/w/E4B997E695B0E58AB9E69E9C.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

答弁に窮する管直人財務相.jpg
答弁に窮する管直人財務相
posted by 平野 浩 at 04:15| Comment(1) | TrackBack(0) | 小沢一郎論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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