は本当に破綻危機なのか」です。といっても難しい話をするつも
りはありません。最近の小泉政権の経済政策に関して、日頃すっ
きりしない問題を提起し、解明してみたいのです。
最近の日本には「悲観論」が溢れているように感じます。書店
に行くと経済本のコーナーに「国家破綻」について書かれた本が
たくさん並んでいます。国家破綻というのは、国の財政が破綻す
ることであり、「国家的財政破綻」ともいいます。これに関連し
て、まことしやかに預金封鎖説まで喧伝される始末です。
また、テレビでは、かなり高名な経済評論家――とくに財務省
出身者――までが、国家危機的な発言を平気で繰り返しているの
をよく見聞きします。
これに加えて少子高齢化傾向、年金破綻、大増税問題、中国脅
威論と日本のアジアでの孤立、世界に冠たる日本の技術の空洞化
など、目一杯の悲観論で溢れています。まるで日本は現在、空前
絶後、未曾有の危機にあるかのようです。
確かに財務省は、2005年6月末の政府債務を795兆円と
発表しています。これはとんでもない巨額の借金であり、このま
ま行くと日本という国家は破綻する――したがって、なるべく国
債を発行しないで、緊縮財政を行い、消費税の引き上げを含む大
増税を実施して財政再建に取り組むというのです。
しかし、本当に日本の国家破綻はあり得るのでしょうか。
最初に結論をいっておきましょう。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
そんなことは絶対にあり得ない。しかし、現政権のよう
な政策が続くと、破綻はあり得る・・・・・・と
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
経済の専門家である増田悦佐氏によると、破綻本、破綻説が乱
立する現象は、日本経済の危機ではなく、「日本型知識人の知的
能力崩壊の危機」であり、「破綻本は根拠のない危機への対策と
して非常に危険な方針を取らせようとしている」と警告を発して
います。病状よりも治療法の方がよほど危険なのです。
多くの人が巧妙なレトリックに引っかかっているように思いま
す。これから、増田悦佐氏をはじめとするいろいろな説をご紹介
しながら、そのレトリックを解いてみたいと思います。
テレビの経済番組で次のような話をよく聞きます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
日本の税収は40兆円しかない。しかし、使っているのは80
兆円。40兆円の赤字である。月収40万円しかない家庭が、
月に80万円の生活をしている。足りない部分はサラ金から借
りているのだ。これなら、やがて、家計は借金の山となり、破
綻する。日本の現状はこれと同じであり、やがて破綻する。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
一見正しいように思えるかも知れませんが、このロジックは完
全に間違っています。それは、次の2つ事実をベースにして考え
てみるとすぐわかることです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
1.国は一銭も稼いでいない。稼いでいるのは国民である。
2.税金で取るのも国債で金を集めるのも同じことである。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
月収が40万円しかないサラリーマンが、さらに40万円をサ
ラ金から借りて月に生活費を80万円使っているケース――この
ケースは間違いなく破綻します。破綻させないようにするにはど
うしたらよいでしょうか。
それには何よりもサラ金からの借金することをやめさせること
です。そして極力収入に見合う生活をするよう無駄な出費を切り
詰めること――サラ金会社のCMでうるさくいっている「収支の
バランス」をはかることです。どうしても月に40万円では生活
できないのであれば、別の収入の道を探るしかないでしょう。
財務省はこのロジックで、この借金サラリーマンのケースを日
本という国家にあてはめて、赤字生活を脱出させることを政策に
掲げています。うっかりすると、ひっかかってしまいますが、こ
の例はとてもおかしい。国家と家庭とは違うのです。
まず、考えるべきことは、「国は一銭も稼いでいないし、これ
からも稼ぐつもりはない」ということです。稼いでいるのは国民
なのです。40兆円という収入は国民から取り立てた税金です。
国はその40兆円を使って、国防とか警察・消防、社会保障な
ど、国民の暮らしに不可欠なサービスを提供しているのです。し
かし、現在はそれが大幅に不足している。だから、その分国債を
発行して穴うめをしているわけです。
国債というのは、国が国民に対して借用書を書いてお金を借り
ることです。したがって、国から見ると、税金も国債も、どちら
も国民から取り立てるものという点は同じです。
ただ、国民から見ると、税金は「取り立てられる」という感じ
であるのに対して、国債は「購入する」ものであり、購入するし
ないは自由であって、しかも多少なりとも利息がつくので抵抗が
ないのです。
このように国債は国が国民から借りる借金です。これが積もり
積もって795兆円になったのです。借金には違いないので、国
はいずれは税金を多くとって返すか、債務不履行して破綻するか
の選択肢しかないことになります。
返さないよりも返すことはよいことであり、計画を立ててやっ
ていけば必ず返せるはずです。決して無理をすることはない。着
実に返していけばよいことです。なぜなら、国は超・超長期ロー
ンが組めるからです。
ここが大事なことです。先ほどの例のサラリーマンの場合であ
ればローンはせいぜい20年か30年ですが、国は40年、50
年、場合によっては100年ローンだって可能なのです。ですか
ら、国が返すという意思さえあれば、必ず財政再建はできること
なのです。あわてることはないのです。・・・[日本経済01]
≪画像および関連情報≫
・増田悦佐著、『国家破綻はありえない』、PHP研究所刊
―――――――――――――――――――――――――――
まず最初に、ほとんどの危機本、破綻本が政府が貧乏になっ
たことと国民が貧乏になったことの区別さえついていない。
今どんどん貧乏になっているのは日本国政府であって、日本
国民じゃない。この区別さえ分からないような人間が書いて
いる本は、ゴミのようなもので真剣に検討する価値はない。
――上掲本より
―――――――――――――――――――――――――――