れは原油高騰の裏側で金も高騰していることです。それも相当急
ピッチで値を上げてきているのです。
実は金の国際相場の上昇は現ブッシュ政権成立直後の2001
年4月頃から始まっているのです。2007年秋頃からそれが急
ピッチになり、遂に2008年3月中旬に「1オンス=1000
ドル」を突破しているのです。もちろん史上はじめてです。
エコノミストたちの分析によると、金の高騰はサブプライム問
題の影響で世界の過剰流動性マネーが金に流れ込んだことと、中
国やインドの実需の増加などによるものであるとしていますが、
これは原油高騰と同じ構図というようになります。しかし、本当
にそうなのでしょうか。
原油はともかくとして、金相場の高騰に関しては相当深いウラ
があるようなのです。そこで、金相場を中心に国際経済を見ると
という視点があってもよいと考えて、少しずつ関連の本を集めて
きたのですが、金に関する本はきわめて少なく、果たしてどこま
で掘り下げられるかは不明ですが、今日から次のタイトルで金の
問題を追及していくことにします。
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「金」をコントロールする米国の長期金融戦略を探る
―― このままでは日本は3度の敗戦になる ――
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なお、今回のテーマに関連のあるテーマを過去にEJで取り上
げていますので、あわせて読んでいただきたいと思います。
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『日米経済関係の謎』/全20回
2006年3月31日/EJ第1806号〜2006年4月
28日/EJ第1826号
http://electronic-journal.seesaa.net/article/15838071.html
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さて、原油高が止まらないということは「ドル安」が進んでい
るということを意味しています。一部のエコノミストによると、
米国のサブプライム問題はこの先一層深刻化してドルは暴落し、
米国のドル覇権は失墜するという論調が盛んです。しかし、本当
にそうなるでしょうか。
産経新聞社編集委員の田村秀男氏は、ドルの暴落について次の
ように述べています。
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「ドル暴落」が実際に起これば、米国は全世界に張り巡らせた
軍事基地を維持できなくなる。値打ちがどんどん下がるドル札
を那覇、横須賀あるいは東京六本木のバーやホテルで受け取っ
てもらえなくなったら、また、基地の家族がドル建ての給料で
暮らせなくなったときどうなるかを想定すればよい。何よりも
基地が物資を調達できなくなったとき、米国は海外での軍事力
を事実上失う。そんな事態をだれも望んではいない。よくも悪
くも、米国の金融・軍事パワーが世界を経営しないと、自国や
周辺を安定させられない。 ――田村秀男著
『経済で読む「日・米・中」関係/国際政治学入門』より
扶桑社新書/031
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「ドル暴落」と簡単にいいますが、もし、いま起こったとした
ら大混乱になることは必至です。したがって、遠い将来のことは
別として現時点で「ドル暴落」を望む世界の指導者は一人もいな
いといってよいと思います。
確かにロシアの新大統領メドベージェフ氏は「資源をルーブル
で決済すると宣言しましたが、基軸通貨のドル体制を崩そうとは
考えていないはずです。どこの国も目先の自国の繁栄を考えてい
るからです。中国にしてもインドにしても同様です。
中国やインドは、できる限りドルに対して自国通貨を大幅に上
昇させまいとして、ドルを買い上げ、米国債の購入を続けていま
す。もちろん日本も同様です。いずれも自国通貨に対するドルの
安定を少なくとも現時点では強く望んでいるのです。したがって
そう簡単にドル暴落は起こらないのです。
原油価格はドルで表示されています。これによってドルの力が
裏打ちされ、強くなっているといえるのです。つまり、原油はか
つての金本位制時代の金にも相当する存在なのです。
これに正面から逆らった最初のアラブ産油国はサダム・フセイ
ンのイラクだけです。1999年にユーロが誕生すると、フセイ
ンは2000年に原油の決済通貨をユーロに変更します。そして
2003年のイラク攻撃のあと、米国はイラク原油の決済通貨を
ユーロからドルに戻しています。
また、2007年にイランが、原油のドル決済完全に停止と宣
言し、現在のところユーロと円で決済しています。しかし、欧州
はそれに対応せずにドルを維持しています。現時点においても、
米国によるイラン攻撃の噂が消えないのはそのあたりにも原因が
あるといわれています。
ここでわれわれは「基軸通貨」というものの持つ意味を改めて
考える必要があると思います。現在のドルは金の裏付けのない単
なる紙切れに過ぎないものです。しかし、その紙切れで米国は世
界中から必要なものを何でも買えるのです。
原油はドルで決済することになっていますので、原油を購入す
るときは、自国通貨でドルを買い、そのうえで購入するという面
倒なことを強いられるのです。
米国の場合、もし、ドルが足りなければ印刷すればよいわけで
米国はこれによって、世界中から巨大な富を集めることができる
のです。それはドルが基軸通貨であるからできることなのです。
したがって、米国が一番恐れるのは、ドルの刷り過ぎによって
インフレになることです。インフレになるとドルの価値は下がっ
てしまうからです。したがって、FRBはそうならないようあら
ゆる手を打っています。 ―― [金の戦争/01]
≪画像および関連情報≫
●「基軸通貨」とは何か
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英ポンドは19世紀半ば以降、国際金融の中心地としてのイ
ギリスの強力な立場を背景に基軸通貨としての役割を担って
いたが、第一次世界大戦で欧州各国は経済が疲弊し逆にアメ
リカは戦争特需で経済が急成長したため、基軸通貨が機能面
で英ポンドから米ドルへ移り、第二次世界大戦後はアメリカ
がIMF体制の下で各国中央銀行に対して米ドルの金兌換を
約束したこと及びアメリカの経済力を背景に米ドルが名実共
に基軸通貨となった。欧州単一通貨・ユーロが将来的に米ド
ルと並ぶ基軸通貨に成長するとの見方もあるが、対外取引の
80%以上が米ドルで行われていることから、現在のところ
の実質的な基軸通貨としての地位は揺らいでいない。
――ウィキペディア
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