がいます。分かりやすい独特の経済分析をするので人気があり、
彼の所説は大変説得力があります。
1995年〜1997年の人気アナリストランキング/エコノ
ミスト部門で第1位――『日経金融新聞』であり、さらに、19
98年〜2000年、債券アナリストランキングのエコノミスト
部門で第1位――『日経公社債情報』という大変人気のあるエコ
ノミストなのです。
そのため、1995年以降の経済を扱うテレビ番組では常連の
エコノミストであり、橋本内閣、小渕内閣、森内閣の時代にあっ
ては、テレビ、雑誌、新聞などのマスコミで大活躍をしていたの
です。しかし、2001年に小泉内閣になると、なぜか急にマス
コミから遠ざけられ、テレビには一切登場しなくなったのです。
確かにリチャード・クー氏は当時しきりと財政出動の重要性を
説き、小泉内閣の推進する構造改革と正反対の主張をしていたの
で、官邸筋から嫌われたのかも知れないのです。しかし、クー氏
は従来のマクロ経済政策としての財政出動を主張したのではなく
彼独自の理論――バランスシート不況論をベースとしてそれを主
張していたことを知っている人はほとんどいなかったのです。
2003年にリチャード・クー氏は、『デフレとバランスシー
ト不況の経済学』(徳間書店刊)を発刊し、自らの論拠を明らか
にしています。この本に書かれているクー氏の主張は、非常に説
得力があり、EJでも次の19回にわたって紹介しています。
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2003年11月17日EJ第1233号〜
2003年12月12日EJ第1251号
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そして、2007年1月にクー氏は再びバランスシート不況を
取り上げ、多くのデータによって、15年間にわたる日本の不況
がバランスシート不況であることを実証し、金融政策中心の従来
の経済学の誤りを指摘するする次の本を出版したのです。
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リチャード・クー著
『「陰」と「陽」の経済学/我々はどのような不況と
戦ってきたか』 ――東洋経済新報社刊
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この本は総ページ数372ページの大著です。簡単に読破でき
る分量ではありません。しかし、そこにはクー氏の独自の理論が
分かりやすく紹介されており、EJでは次のタイトルでクー氏の
所説をご紹介したいと思います。
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「日本経済生還の謎/リチャード・クー氏によるバランスシ
ート不況論で分析する」
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小泉内閣のスローガンは「構造改革なくして景気回復なし」で
す。しかし、本当に構造改革が行われた結果、景気が回復したの
でしょうか。
その答えは「ノー」です。それは、不況の原因が構造問題では
ないからです。クー氏によると、構造問題を抱えた経済の例とし
て、25年前の英国と米国の経済を上げています。時の米国の大
統領はレーガン、英国の首相はサッチャーだったのです。
当時の米国や英国では、ストライキが頻発して、作っているも
のは不良品の山――とくに米国車はあまりにも故障が多かったの
で、国民はこぞって日本車を購入したのです。
当時の連邦準備制度理事会(FRB)は景気を向上させるため
に金融緩和をやったためインフレ率が一時2ケタになるまでに悪
化したのです。さらに国内製品が不良品なので、国民は輸入品を
買うため貿易赤字は拡大――その結果ドルが下落し、国内のイン
フレが一段と加速するという悪循環に陥ったのです。こういう経
済こそ構造問題のある経済なのです。
つまり、構造問題がある経済というのは、ストライキが頻発す
ることによってわかるように企業の供給力に問題があって、良い
製品ができない経済であるということです。そういう経済の特徴
をまとめると次のようになります。
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1.インフレが発生する
2.通貨が下落し高金利
3.設備投資意欲は弱い
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クー氏がいうのは、こういう構造問題を抱えた経済を回復させ
るには、従来のマクロの金融や財政政策で解決するのは困難であ
るというのです。
レーガンやサッチャーは、ここで思い切ったサプライサイド改
革を実施したのですが、当時の主流の経済学者は「ブードゥーエ
コノミクス」といってバカにしたのです。レーガンのいっている
ことは単なるおまじないだといったのです。日本でも多くの経済
学者は「花見酒の経済」といっており、まるで評価していなかっ
たのです。
レーガン就任時の経済指標を上げておきます。15年前の日本
と比べるとどうでしょうか。
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1.インフレ率2ケタ
2.短期金利が22%
3.長期金利が14%
4.住宅ローン17%(30年固定)
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15年前の日本は、インフレなどなく、短期金利、長期金利、
住宅ローン金利は、いずれも人類史上最低の水準であり、ストラ
イキなど――プロ野球のストはあったが――どこにもなかったの
です。 −― [日本経済回復の謎/01]
≪画像および関連情報≫
・リチャード・クー氏
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日本や世界経済が大きく変化するなかで、既存の経済学やそ
の理論にとらわれず、必要ならバランスシート不況論のよう
に、自ら新しい理論構築をしてでも現実に見合った経済分析
をしようと心がけています。また、米国での実務経験などを
ふまえ、国民経済的見地から、マスコミの流行に振られぬ政
策提言をして行きたい。 ――リチャード・クー
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