2022年10月03日

●「インターネットが変わりつつある」(第5825号)

 ダグラス・アダムズという英国のSF作家がいますが、ご存知
でしょうか。『銀河ヒッチハイク・ガイド』という著作で知られ
この本は、彼の存命中に、全世界で、1500万冊も売れたそう
です。最初は、1978年にBBCのラジオドラマとして始まり
2005年には映画化もされています。
 ネタバレになるので、ごく簡単にその概要を述べると、次のよ
うなSFドラマです。
─────────────────────────────
 宇宙バイパス建設のために、ある日突然、地球は破壊されてし
まう。宇宙人に救出され、最後の地球人となってしまったのは、
ごく平凡な英国男性のアーサー・デント(マーティン・フリーマ
ン)。宇宙でのサバイバル術を銀河系最大のベストセラー「銀河
ヒッチハイク・ガイド」で学び、生き残りをかけて宇宙をさまよ
う。 ──2005年9月10日公開 https://bit.ly/3fsIN2F
─────────────────────────────
 このダグラス・アダムズには、「ダグラス・アダムズの法則」
といわれるものが伝えられていますが、こちらは非常に示唆に富
むものです。
─────────────────────────────
≪ダグラス・アダムズの法則≫
 1.自分が生まれたときに世の中に存在したものは、普通で当
  たり前のものと感じる。
 2.15歳から35歳までに発明されたものは、新しく刺激的
  で、革命的に感じ、その分野で自分のキャリアを積むことが
  できる。
 3.35歳以降に発明されたものは、物事の自然の摂理に反し
  たものと感じる。       https://bit.ly/3Rst3dd
─────────────────────────────
 来年2023年4月に企業に入社する予定の大卒新入社員は、
2000年生まれであり、インターネットが実用レベルになった
年に生まれています。2000年時点における日本におけるイン
ターネットの普及率は37・1%でしたが、その後、光回線の登
場により、ネット普及率は64・3%に跳ね上がり、全人口の半
分以上がネットにつながったのです。
 ダグラス・アダムズの法則によると、2000年生まれの人は
実用レベルに達しているインターネットを自然な世界の一部とし
て受け止め、ごく自然に使いこなしている世代、すなわち、デジ
タルネイティブの世代ということになります。
 そのインターネットが変わりつつあります。そのバズワードは
「Web3」と「Web3.0」 「メタバース」などです。最近
の新聞や雑誌にも、このバズワードは盛んに登場するようになっ
ています。これは、インターネットが変わろうとしていることを
示しています。
 「Web3」と「Web3.0」 はどう違うのでしょうか。そ
もそもインターネットと「Web/ウェブ」の違いは?──そん
な細かいことはどうでもいいじゃないかという人もいるかも知れ
ませんが、インターネットが変化しようとしているときなので、
知識を整理しておく必要があります。
 インターネットとWeb(ウェブ)との違いは何でしょうか。
 時代によって解釈が違ってきています。インターネットの普及
初期の頃は次の関係だったといえます。
─────────────────────────────
   インターネット=Web
   Web=WWW/World Wide Web/クモの巣状のもの
─────────────────────────────
 「Web」というのは、くもの巣を意味しています。したがっ
て、「WWW」は、地球を覆い尽くしているくもの巣状のものと
いう意味で、インターネットそのものを指しています。もう少し
ていねいにいうと、「世界中どこにいても、コンピューターなど
によって情報を得られるシステム」がWWWです。
 しかし、現時点では、インターネットとWebは、分けてとら
えるべきです。その捉え方は次の通りです。
─────────────────────────────
   インターネット ・・・  ネットワークインフラ
       Web ・・・ ネット上に築かれるもの
─────────────────────────────
 インターネットは、インフラなのです。道とか情報ハイウェー
という表現もあります。つまり、インターネットは「道」であり
「Web」はその道を通るデータということができます。この場
合、ウェブサイトはWebということになります。インフラであ
るインターネット上に築かれるものだからです。
 それでは、「Web3」と「Web3.0」 は、どう違うので
しょうか。
 これは、同じ意味の場合もあるし、そうでないときもあると思
います。「Web3.0」 という場合は、Webの変遷を説明す
るときは次のように使います。新しいWebそのものを指すとき
は「Web3/ウェブ・スリー」となります。いずれにしても厳
密なものではありません。私は、全体を意味するときは「ウェブ
3」と表記することにします。
─────────────────────────────
     Web1.0/Web2.0/Web3.0
─────────────────────────────
 さて、今日からはじまるEJの新テーマは、次のようにしたい
と考えています。
─────────────────────────────
   「メタバースとは何か/ウェブ3で何が変わるか」
     ── メタバースのビジネスへの影響 ──
─────────────────────────────
           ──[ウェブ3/メタバース/001]

≪画像および関連情報≫
 ●野村証券は悩んでいる/Web3、熱狂と不信
  日本経済新聞
  ───────────────────────────
   「もっとコミットしないと生き残れない」「あまり踏み込
  むな」。今春、野村ホールディングス(HD)の経営会議は
  紛糾した。暗号資産(仮想通貨)を含むデジタル資産にどう
  関わるか。激論の末、グループ最高経営責任者(CEO)の
  奥田健太郎がひきとった。「新しい技術を無視はできない」
   野村は仮想通貨に半身の構えだった。2020年に機関投
  資家向けにデジタル資産の管理サービスを始めたが、海外に
  限定していた。巨額の仮想通貨が流出した、18年のコイン
  チェック事件以降、金融庁が規制強化に乗り出していたから
  だ。だが、技術の進歩は速い。ブロックチェーン(分散型台
  帳)を基盤にした次世代インターネット「Web3(ウェブ
  スリー)」が登場。世界のWeb3企業は株式ではなく、事
  業やプロジェクトの価値を裏付けに発行するトークンを使っ
  て資金調達を始めた。
   株式の引き受けや新規株式公開など、「株式会社」ととも
  に成長してきた証券会社の事業モデルは今後も続くのか。答
  えを迫られた野村は株式とトークンを組み合わせた資金調達
  支援に乗り出す。執行役員の池田肇は言う。「トークンの世
  界を理解するのは時間がかかる。だが触っておかないと気付
  いた時には市場の変化に取り残されているかもしれない」
   1990年代に離陸したネットは、利用者が「見るだけ」
  のWeb1.0、 SNS(交流サイト)などで「自ら発信す
  る」Web2.0 へと進化したが、米GAFAなどにデータ
  や利益が集中するようになった。
              https://s.nikkei.com/3dYfLaQ
  ───────────────────────────
ダグラス・アダムズ.jpg
ダグラス・アダムズ
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2022年10月04日

●「Webはどのように変遷したのか」(第5826号)

 Web、すなわち、インターネットの変遷について考える必要
があります。それをまとめると、次のようになります。
─────────────────────────────
       Web1.0  ・・・   見る
       Web2.0  ・・・   書く
       Web3.0  ・・・ 参加する
─────────────────────────────
 「Web1.0」の特色は「見る」です。
 かつて情報を公開する方法としては、出版社による紙媒体の書
籍や新聞や雑誌と、放送局を通じての電波によるラジオやテレビ
しかありませんでした。まして、情報の公開者と情報の受信者が
直接つながることは簡単なことではなかったのです。
 それが、いわゆるウェブサイト(ホームページ)を通じて、出
版社や放送局の介在なしで、誰でも情報を公開でき、その情報に
誰もがウェブブラウザによって、ダイレクトにつながることがで
きるようになったのです。これはきわめて画期的なことであった
といえます。これによって、ウェブサイトを通じてモノを売るe
コマースも可能になっています。
 ところで、日本で個人として、最初のウェブサイトを立ち上げ
たのは、誰だかご存知ですか。
 日本で最初の個人ホームページは「富ヶ谷」と命名され、株式
会社デジタルガレージの前身である有限会社エコシスが立ち上げ
ています。この有限会社エコシスというのは、伊藤穰一氏が創業
した企業です。1993年のことです。
 1993年といえば、ウインドウズ95の発売よりも前であり
日本におけるPCの世帯普及率は10%台程度、一部専門家やマ
ニアに限られた普及だったといえます。199O年代後半、とく
にウインドウズ95が発売されてからは、一挙に世帯普及率が倍
増し、2000年には50%台に乗っています。
 しかし、ウインドウズ95が発売された1995年には、検索
エンジンはまだ登場していなかったのです。1995年12月に
ソフトバンクが、米国のヤフー!株を一部買い取り、1996年
4月から、日本版の「ヤフー!ジャパン」サービスを開始してい
ます。ポータルサイトの出現です。これによって、インターネッ
ト上のウェブサイトを探す「ネットサーフィン」が大流行するこ
とになります。
 ポータルサイトとは、インターネットにアクセスするさい、最
初に訪問するサイトのことです。ポータルとは、門や入口を意味
し、特に大きな建物の門に使われた言葉です。ユーザーは、PC
を立ち上げると、ブラウザを起動し、ポータルサイトにアクセス
します。そこには、項目別にサイトのありかを示すURLが整理
されているので、自分が探したいサイトにアクセスできます。
 そうすると、ポータルサイトには多くのユーザーがアクセスす
ることになるので、そこは有力な広告媒体になります。
 ところが、1998年にグーグルが、独創的な検索技術──ロ
ボット型検索エンジンを開発し、バナー広告などを排除したシン
プルな画面を提供することによって、多くのユーザーを集めるこ
とに成功します。
 以上が「Web1.0」 の概要です。そのキーワードは、あく
までウェブサイトを「見る」であったのです。このWeb1.0
から現在のインターネットであるWeb2.0 への変化に関して
スタートアップ企業Kusan の創業者兼CEOである高橋卓巳氏は
自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 1990年代、欧州原子核研究機構(CERN)のティム・バ
ーナーズ=リー氏が開発したのがWWW(ワールド・ワイド・ウ
ェブ)。これを使って個人や企業がホームページを開設し始めた
Web1.0 は、利用者が様々な情報に触れられる(read)よう
になった革命だった。続く2000年代に、米オライリーのティ
ム・オライリー氏が提唱したWeb2.0 は、ブログなどからは
じまり、SNSが登場したことで個人が誰でも自由に自ら情報を
世界に発信(Write) 可能にする革命だった。市民によるSNS
への書き込みは社会や政治を左右し、10年末には中東で民主化
活動「アラブの春」が起こった。  ──高橋卓巳著/日経BP
『Web3コンテンツ革命/個人と企業の経済ルールが変わる』
─────────────────────────────
 ここで覚えておくべきは、ウェブサイトの開発者の名前です。
これほど画期的な発明をしながら、ほとんどの人、少なくとも日
本人でティム・バーナーズ=リー氏のことを知っている人が少な
いからです。
 「Web2.0」 の特色は「書く」です。
 「Web2.0」 は現在のインターネットのことです。その典
型はブログの登場です。これによって、「Web1.0」 の「見
る」に加えて、個人の情報発信がさらに容易になり、それをホス
ティングする企業が登場しています。ホスティングとは、サーバ
ーを貸し出すことをいいます。2005年頃のことです。
 それまで、ウェブサイトを立ち上げるには、自らサーバーを用
意し、プログラミングをする必要があり、そのハードルは、いさ
さか高かったのです。しかし、ブログは、サーバーをホスティン
グする企業の提供するツールによって、誰でも容易に立ち上げる
ことができるようになったのです。これによって、ブログを含む
ウェブサイトを見たり、書いたりできるようになっていきます。
 2005年3月末の日本国内のブログの閲覧者数は、1651
万人に達しています。これは、月に一度はブログを閲覧する人の
人数を意味しています。
 2008年にアイフォーンが発売されると、日本語対応のフェ
イスブックとツイッターが使えるようになって、一段とウェブに
「書く」ことが簡単になり、ウェブ上で、見ることも書くことも
簡単にできるようになっています。これが「Web2.0」 の概
要です。       ──[ウェブ3/メタバース/002]

≪画像および関連情報≫
 ●Web2.0 的キーマンに聞く/次世代ビジネスモデル
              小川浩氏/2005年12月
  ───────────────────────────
   筆者は、自分自身でもWeb2.0 に関わる事業を行って
  いく立場にあります。また、さまざまなブログや著作を通し
  て自らの見解を発表させていただく機会にも恵まれているわ
  けですが、本連載ではWeb2.0 におけるビジネスモデル
  情報・分析を適宜お届けしていきたいと考えています。
   特にケーススタディを重要視し、原則としてWeb2.0
  という領域に関わる企業や、組織のキーマンをお招きして、
  Web2.0 をキーワードにインタビューしていきます。実
  際に事業に携わる最前線の人たちの生の言葉をお伝えするこ
  とで、Web2.0 のリアルな部分に焦点を合わせていける
  ことでしょう。
   今回はその導入部として、まず筆者が「Web2.0 とは
  何か」を整理してみたいと思います。改めて、Web2.0
  という言葉を目にしたり耳にしたことがある方は、少なから
  ずいると思います。
   この数年間にWebの世界で起きたさまざまなイベントに
  よって、Webの環境が激変してきており、その状態を分析
  した多くの識者が、現在から近未来にかけての方向性をまと
  めて定義づけようとしていますが、それらを端的に表現した
  もの、それがWeb2.0 です。
   その意味で、Web2.0 はいまだ進行形であり、現時点
  での静的なポイントを示すものというより、数年間のスパン
  での“環境変化”として認識されるべきと筆者は考えていま
  す。             https://bit.ly/3dYlRYJ
  ───────────────────────────
ティム・バーナーズ・リー氏.jpg
ティム・バーナーズ・リー氏
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2022年10月05日

●「GAFAが破壊者と呼ばれる理由」( 第5827号)

 昨日のEJで示した「インターネットの変遷のまとめ」を再現
します。「Web2.0」 の話を続けます。
─────────────────────────────
       Web1.0  ・・・   見る
     → Web2.0  ・・・   書く
       Web3.0  ・・・ 参加する
─────────────────────────────
 「Web2.0」 は、現在、我々が利用しているインターネッ
トです。その利用率は2020年で83.4% です。これは平均
利用率ですが、13〜59歳の利用率は約95%、6〜12歳/
60〜69歳でも82%、70歳以上でも半数以上の人が利用し
ています。したがって、ほぼ全年齢でインターネットは使われて
いるといえます。もはやインターネットなしの生活は、考えられ
ないものになっているのです。これが現在のインターネットであ
る「Web2.0」 の利用状況です。
 インターネットの利用がこれほど増えたのは、スマホの普及が
大きく貢献しています。インターネットを利用する場合、かつて
はPCからでしたが、現在では、ほとんどがスマホからの利用に
なっています。2020年におけるスマホからのインターネット
利用率は68.3% であり、約7割がスマホです。現在、スマホ
などのモバイル端末の保有率は90%を超えています。
 なぜ、スマホによるインターネットの利用が増えたかというと
PCからの利用は、ユーザー自身がブラウザの立ち上げなど、若
干の手続きが必要であるのに対して、スマホでは、必要なときに
自動的にインターネットにつながるからです。
 「Web2.0」 の特色は「書く」ですが、これと「見る」が
連結され、SNSを利用するコミュニケーションが普及し、深く
浸透しています。SNSのなかでも、利用者の多いLINEの普
及率は年代別に次のようになっています。
─────────────────────────────
         10代 ・・・・ 93%以上
      20〜40代 ・・・・ 95%以上
       50代以上 ・・・・ 85%以上
─────────────────────────────
 インターネットの普及がここまで進んだということは、それを
使う側から見ると、便利になったということができます。インタ
ーネットに、このような利便性をもたらしたのは、米国を代表す
る大手テック企業「GAFA」──グーグル、アップル、フェイ
スブック、アマゾンの4社であり、これにマイクロソフト社を加
えて「GAFAM」と呼称することがあります。なお、「F」の
フェイスブックは、2021年10月28日、社名を「メタ」に
変更しており、厳密にはGAFAでないのですが、以下も、GA
FAと呼称することにします。
 2020年5月のことです。このGAFAM5社の時価総額が
東証1部約2170社の時価総額を10兆円上回ったのです。
─────────────────────────────
   東証1部2170社の時価総額 ・・ 550兆円
       GAFAMの時価総額 ・・ 560兆円
               ──2020年5月現在
    株式時価総額 =上場企業の株価×発行済株式数
─────────────────────────────
 しかし、その約1年後の2021年8月に、マイクロソフトを
除くGAFAの時価総額は7兆ドル(770兆円)になり、日本
企業すべての時価総額6・9兆ドル(約759兆円)を超えてい
ます。2021年度の日本のGDPは536.3兆円 ですが、こ
れをGAFA4社の時価総額は軽く上回っているのです。これは
まことに驚くべきことです。
 GAFAの4社は、「ディスラプター(破壊者)」と呼ばれま
す。正確にいうと、「デジタルディスラプター」です。これは、
クラウドやビッグデータ、IоT、AIなどのデジタルテクノロ
ジーを活用することにより、既存の業界の秩序やビジネスモデル
を破壊するプレイヤーを指します。
 「Web1.0」 の時代にディスラプトされたのは、メディア
と広告業界です。それは、ウェブサイトを通じて、情報の発信者
と受信者がダイレクトにつながることができるようになったこと
です。これにより、多くの人をウェブに呼び込むことができるよ
うになり、ウェブのビジネスモデルとして、広告が定着すること
になります。しかも「Web2.0」 になると、ウェブにアクセ
スする人に合わせて関連広告を表示できるようになっています。
まさに広告の革命です。
 「Web2.0」 の時代にディスラプトされたのは、ポータル
サイトです。ポータルサイトの代表格のヤフー!は、世界最大の
ユーザーと、巨額の資金、世界最高の人材を抱えているといわれ
ていましたが、2人の大学院生が設立した200人程度のスター
トアップ企業、グーグルが検索エンジンを作ったとき、絶頂期の
ヤフー!は、検索エンジンが現在のようにネットの入り口になる
とはまったく考えておらず、鷹揚にもグーグルの検索エンジンを
自社のポータルサイトに採用したのです。ヤフー!は、グーグル
の検索エンジンをポータルサイトの機能の一部としか考えていな
かったからです。
 ヤフー!がグーグルの検索エンジンを採用したことは、検索エ
ンジンの優秀性の証明になり、多くのユーザーがグーグル検索エ
ンジンを使うようになり、やがてポータルサイトから離れていく
ことになったのです。ヤフー!が気が付いたときは既に遅く、グ
ーグルに追いつけなくなっていたのです。まさに「庇を貸して母
屋を取れら」という状態になったわけです。
 かつては13兆円の企業価値のあったヤフー!は、2017年
に通信会社ベライゾンに、約5000億円で買収されてしまいま
す。技術の変化の速さを誤ると、こうなってしまうのです。
           ──[ウェブ3/メタバース/003]

≪画像および関連情報≫
 ●日本人は「GAFAの恐ろしさ」を知らなすぎる
  「四強企業の真実」は現代人の必須科目だ/塩野誠氏
  ───────────────────────────
   あなたの生活は、「地上の人間を殺す権威」を与えられた
  「四騎士」にコントロールされている。ヨハネの黙示録にな
  ぞらえて現代の「四騎士」とされる巨大企業を、人々はGA
  FA(ガーファ)と呼ぶ。そう、あなたもよく知っている、
  グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンである。
   本書の著者スコット・ギャロウェイ氏は、多様な背景を持
  つ大学教授だ。オンライン通販会社の株式上場を経験した起
  業家、そして投資家であり、懐かしい方もいるであろうゲー
  トウェイ・コンピュータの役員を務めた経験もある。
   さらに、ファッションブランドのエディー・バウアーでも
  役員を務め、ニューヨーク大学経営大学院(MBA)では、
  マーケティング論、ブランド戦略を教えている。
   著者のつくったオンライン通販会社はアマゾンによって息
  の根を止められたという。著者が投資を行い、経営改革に乗
  り出したニューヨークタイムズ社のコンテンツはグーグルに
  よって一瞬にして検索結果の奥底(下位)へと飛ばされた。
  四騎士たちGAFAを語るには、ギャロウェイ氏ほどうって
  つけの人間もなかなかいないだろう。本書は神にも擬せられ
  るほどの力を持つようになったGAFAについての力作だ。
  その歴史とビジネスモデルを詳細に分析し、GAFAが支配
  する世界で企業はどうすべきか、個人はどう学び、どういう
  キャリアを目指すべきかを語っている。
                 https://bit.ly/3e1AZEP
  ───────────────────────────
四騎士GAFA.jpg
四騎士GAFA
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2022年10月06日

●「GAFAビジネスについて考える」(第5828号)

 今回のテーマのメインは「Web3.0」 ですが、なかなか本
題に入れないでいます。それは、なぜ、現在のインターネットが
変わらざるを得なくなったのかについて、知っておくべきことが
たくさんあるからです。
 GAFAはプラットフォーム企業といわれています。これらの
企業はインターネット上にプラットフォームという空間を構築し
そこで様々な無料のサービスを提供します。そのサービスが多く
のユーザーに受け入れられれば、そのプラットフォームに多くの
ユーザーが集まることになります。したがって、そこに広告を掲
載すれば、多くの人がそれらの広告を見ることになります。
 この最もシンプルなかたちが初期の「ポータルサイト」である
といえます。グーグルの検索エンジンが登場する前の話であり、
当時のネットユーザーは、PCでブラウザを起動し、最初にポー
タルサイトにアクセスします。当然そのサイトには、多くのアク
セスが集中することになり、有力な広告媒体になります。もちろ
んサイトには一定の広告枠が設けられ、広告主を募集し、バナー
広告を置きます。ユーザーがそのバナーをクリックすると、その
広告主のサイトにジャンプするというわけです。
 その後にグーグルの検索エンジンが登場します。この検索エン
ジンは、高速で、正確な検索結果をユーザーに返すことに特化し
ており、多くのユーザーに無料で提供されたのです。もちろん、
さまざまなポータルサイトにも、グーグルは惜しみなく検索エン
ジンの技術を提供しており、ポータルサイトのほとんどで採用さ
れています。
 しかし、その検索エンジンは、検索窓があるだけのシンプルな
もので、広告などは一切ない。その代わり、検索されたサイトを
グーグル独自の「ページランクアルゴリズム」によって、順番に
掲載し、そこからユーザーが選んでクリックして開いたサイト上
に、ユーザーにマッチングする広告を掲載できるようにしている
のです。当時のポータルサイトとは発想も技術も違うのです。
 このページランクアルゴリズムについて、KDDI総研リサー
チフェローの小林雅一氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 同社(グーグル社)最初の製品(サービス)である検索エンジ
ンは、両創業者(ラリー・ページ/セルゲイ・プリン)の博士課
程における共同研究テーマ「ページランク・アルゴリズム」にも
とづいている。
 これはあるウェブページ(ホームページ)に張られたリンクの
数や、リンク元ページの重要性などを給合的に評価することで、
検索画面における、そのページの表示順位を決める仕組みだ。ち
なみに「ページランク」という呼称は「ウェブページ」ではなく
同アルゴリズムの発案者「ラリー・ページ」のページに由来して
いる。ページランク・アルゴリズムは学術論文の評価方法に似て
いる。つまり「ほかからの引用回数が多い論文ほど評価が高い」
とする着想にもとづいている。学者の両親に育てられたページは
ウェブページへのリンク数が論文の引用回数と同じ意味をもつこ
とを直観的に見抜いていた。       ──小林雅一著論文
                『グーグルのビジネス戦略』
        /出井伸之監修『進化するプラットフォーム』
                  角川インターネット講座
─────────────────────────────
 グーグル以外の例でプラットフォームビジネス戦略について考
えてみることにします。昨日のEJでも示したように、LINE
の普及率は全年齢で見ても90%を超えています。比較的短い期
間で膨大なユーザーを獲得しているからです。これは、携帯電話
各社が提供するレイヤーをプラットフォームとするプラットフォ
ームビジネスといえます。
 各携帯電話会社のスマホ上で、LINEが提供するアプリをダ
ウンロードして使うものですが、その土台(レイヤー)部分は各
携帯電話会社のものです。
 LINEのサービスを使うことによって、パケットが発生しま
すが、このパケット料金については、携帯電話会社とユーザーと
の契約によって携帯電話会社に支払われることになります。しか
し、LINEのアプリ上で発生するすべてのデータはLINEの
ものになり、これをベースとして、LINEはさまざまなサービ
スをユーザーに提供することができます。
 こういう形態は、実は古くから存在し、例えば、不動産仲介業
はプラットフォームビジネスであるということができます。例を
上げます。東京・渋谷に「SHIBUYA109」というショッ
ピングビルがあります。109を運営しているのは、東急モール
ズデベロップメントという東急電鉄の子会社の商業施設運営会社
ですが、東急グループ自身がここに店を出しているわけではない
のです。ここに入っている店舗はすべて東急グループとは資本関
係のないテナントから成り、テナント同士を競合させ、店舗の入
れ替えを頻繁に行うことによって、消費者に新しいファッション
を提供しています。これは、東急グループのプラットフォームビ
ジネスといえます。
 続いてインターネットのホテル予約を考えてみます。楽天トラ
ベルの場合、ユーザーは楽天トラベルの予約サイトにアクセスし
サイト内で多くのホテルのなかから、自由にホテルを選択できる
のです。この場合、楽天トラベルはプラットフォームビジネスと
いうことになります。ホテル側は、楽天トラベルと契約すること
で、このサイトでユーザーにサービスをオファーできます。
 これらがプラットフォームビジネスの概要ですが、GAFAの
場合、それぞれの企業が多彩なサービスをネット上で提供してい
るので、そこには、膨大なサービスの利用履歴がビックデータと
して、ストックされ、積み上げられることになります。この情報
が一か所に集中してビッグデータとして蓄積されることが、現在
大きな社会問題になっているのです。
           ──[ウェブ3/メタバース/004]

≪画像および関連情報≫
 ●マーケットを支配するGAFAのプラットフォーム戦略
  島田晴雄氏
  ───────────────────────────
   GAFAはプラットフォーマーという新しいビジネスモデ
  ルを構築した。いずれも若い企業ながら、瞬く間にIT巨人
  に上り詰めたのは、彼らが多くのデータを集めることにより
  顧客を引きつけ、データ集積によるネットワーク効果を引き
  起こしたために他ならない。4社それぞれの具体的な展開を
  見ていこう。
   もう一つの大きなイノベーションとして、特にGAFAが
  代表したのは、プラットフォーマーというビジネスモデルで
  す。インターネットを通じて、さまざまなサービスのプラッ
  トフォームを提供するのが、プラットフォーマーといわれる
  ものです。
   プラットフォーマーは、情報を伝達するだけでなく情報か
  ら価値を生むということで、新しい情報産業といえます。収
  集する情報は必ずしも機密情報ではなく、フェイスブックの
  「いいね!」のような、それ自体としては価値がなく、ただ
  で集められるもの。ただし大量になって、ディープラーニン
  グをさせると、非常に恐ろしい明確な答えが出てきたりする
  ので、大量に集めることで価値を生みます。
                 https://bit.ly/3C8yf0q
  ───────────────────────────
渋谷109.jpg
渋谷109
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2022年10月07日

●「企業価値を変化させる3つの法則」(第5829号)

 このところ急激な円安が進み、日本の凋落ぶりが一層際立って
います。考えてみると、日本は1991年にバブルが崩壊し、日
本経済は長期の経済停滞に陥っていますが、この時期は日本では
PCが普及し、いわゆるIT革命が始まった時期と一致していま
す。そして、1995年以降になると、企業でも家庭でもインタ
ーネットの利用が始まっています。日本の凋落はちょうどこの頃
から始まり、現在にいたっています。
 20世紀の日本は、ものづくりに成功し、第2次産業革命が生
み出した工業化社会の後半に当たる1980年代には「ジャパン
・アズ・ナンバーワン」であるとか、「21世紀は日本の世紀」
などともてはやされ、米国に次ぐ世界第2位の経済大国に駆け上
がっています。形のあるものづくりでは、日本は世界を制覇した
のです。あの米国が日本車をハンマーで叩き割ったぐらいですか
ら、日本の当時の経済成長は脅威のマトであったのです。
 しかし、インターネットが普及する1990年以降、日本の凋
落がはじまっているという見方があるのです。いわゆるIT革命
がはじまってから日本の凋落がはじまっているという見方ですが
新しい見方であるといえます。つまり、日本は「Web1.0」
の波に乗り遅れ、「Web2.0」 にも乗り遅れているのです。
 2022年10月6日付の日本経済新聞によると、スイスの国
際経営開発研究所(IMD)が、このほど発表した2022年の
「世界デジタル競争力ランキング」で、日本は人材不足などから
世界29位と前年より順位を1つ下げています。これでは、これ
から始まる「Web3.0」 にも乗り遅れること必至です。
 その当時の日本の企業価値の考え方は、総売上高と利益をベー
スにして時価総額が決まると考えてきたのですが、インターネッ
トが普及してからは、その考え方に大きな変化が起きており、日
本はそれについて行っていないのです。
 これについて、今年の6月2日に亡くなった出井伸之元ソニー
社長は、それは次の3つの法則により、企業価値の考え方が変化
したためであるといっています。
─────────────────────────────
 1.ムーアの法則
   インテル社ファウンダーのゴードン・ムーア博士が提唱し
  た経験則で、半導体の集積密度は時間の経過に対して指数関
  数的に上昇する、というもの。CPUのスピードは、1.5
  年で2倍、10年で換算すると、100倍ほどになる。
 2.収穫逓減の法則
   半導体企業は、規模を大きくしていくことで、競争力を増
  していく、というもの。
 3.メトカーフの法則
   インターネットの外部性。SNSなどにみられるように、
  サービスのユーザーが増加することで、情報コンテンツおよ
  びその情報ユーザーが共に自律的な増加をする。そのため、
  企業価値も自律的に飛躍的な増加をみせる。
         ──出井伸之監修/角川インターネット講座
               『進化するプラットフォーム/
          グーグル・アップル・アマゾンを超えて』
─────────────────────────────
 GAFAによって代表されるプラットフォーム企業の発展は、
これら3つの法則に基づいています。出井伸之氏がソニーの社長
になったのは1995年のことです。1995年は象徴的な年で
インターネットの商用化が全世界で解禁され、日本では11月に
「ウインドウズ95」が発売されています。
 その前年の1994年に出井氏は、企画スタッフとして、ロサ
ンゼルスで当時米国の副大統領であったアル・ゴア氏のスピーチ
を聞く機会があったといいます。そのスピーチとは「情報スーパ
ーハイウェイ構想」であり、出井氏はこれを聞いて大きなショッ
クを受けたといいます。
 情報スーパーハイウェイ構想(NII)とは「全米情報基盤」
のことで、1993年にビル・クリントン米大統領の指揮のもと
で推進された、米国合衆国のすべてのコンピュータを光ケーブル
などによる高速通信回線で結ぶという構想のことです。NIIは
次の言葉の略です。
─────────────────────────────
      ◎情報スーパーハイウェイ構想/NII
       National Information Infrastructure
─────────────────────────────
 この情報スーパーハイウェイ構想を聞いた出井伸之氏は、ソニ
ーの企画役員として、当時のソニーの社長、大賀典雄氏宛てにレ
ポートを送っています。その要旨は次の通りです。
─────────────────────────────
 ・21世紀の初頭には、ネットワークを利用した巨大企業が、
  2、3社出現する。
 ・通信インフラを利用したビジネス統合者が成長する。
          Multiple Software & Service Integrator
 ・メディアは、一方通行マスメディアから、パーソナルメディ
  アへの変革が起きる。
                   1994年1月28日
   ──出井伸之監修/角川インターネット講座の前掲書より
─────────────────────────────
 この出井氏の予測は、プラットフォーマーの出現によって、現
実のものになっています。それから20年後の2015年現在、
ソニーとアマゾングループの比較してみると、2つの企業の総売
上、利益に大差はないものの、ソニーの時価総額は、アマゾング
ループの6分の1程度でしかなかったのです。
 GAFAによって代表されるプラットフォーマーの分析につい
ては、さらに考えて行くことにします。それが「Web3.0」
と深く関連があるからです。
           ──[ウェブ3/メタバース/005]

≪画像および関連情報≫
 ●情報過剰は新たな脅威/[虚実のはざま]第6部
  私の提言<1> 西田亮介東京工業大学准教授
  ───────────────────────────
   ネット空間に真偽不明の情報が飛び交い、社会に混乱や不
  信を生む。その危うさをコロナ禍は浮き彫りにした。しかし
  この問題に特効薬は存在せず、多角的な対策と継続的な議論
  が求められる。私たちはどう備えるべきなのか。シリーズの
  第6部では、各分野の識者が現状を読み解き、ヒントを提示
  する。
   人々に「情報源を確認しよう」と繰り返し呼びかけること
  は重要だ。しかし、それだけでは解決できない段階に来てい
  る。私たちは「情報過剰」という以前とは根本的に異なる環
  境に置かれているからだ。
   発信の中心がマスメディアに限られていた頃とは違い、誰
  でも発信者になれる今、人々は膨大な情報に囲まれている。
  特定の分野で影響力を持つ「インフルエンサー」が無数に現
  れ、選択肢が多様化したのは良いことだが、根拠のない話や
  デマもあふれるようになった。真実かのように巧妙に装い、
  人を操ろうとする発信者もいる。
   しかし、増大する情報量に対し、人間の注意力や認知能力
  は限られている。SNSに流れる投稿の真偽確認に手間や時
  間をかけられる人は多くはない。そもそも一般の人には、調
  べるインセンティブ(動機付け)が働きにくい。人は自分の
  価値観や願望に合う言説に触れていたい習性があり、いくら
  でも自分好みのものが得られる環境で、あえて根拠を確かめ
  る気持ちにはなりにくいだろう。 https://bit.ly/3CcGw3h
  ───────────────────────────
出井伸之元ソニー社長.jpg
出井伸之元ソニー社長
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2022年10月11日

●「日本でGAFAが生まれない理由」(第5830号)

 なぜ米国ではGAFAが生まれ、中国ではBATHが生まれて
いるのに、日本では生まれないのか。米国と中国では、それぞれ
そっくり同じものが生まれているのです。
─────────────────────────────
    ◎GAFA(米国)
     G ・・    グーグル/検索エンジン
     A ・・    アップル/デバイス販売
     F ・・    フェイスブック/SNS
     A ・・     アマゾン/ECサイト
    ◎BATH(中国)
     B ・・    バイドウ/検索エンジン
     A ・・     アリババ/ECサイト
     T ・・      テンセント/SNS
     H ・・  ファーウェイ/デバイス販売
─────────────────────────────
 深田萌絵氏という人がいます。ITコンサルティングサービス
AI、ネットワーク関連の技術協力を提供する Revatron 株式会
社の創業者です。深田萌絵氏は、日本でなぜGAFAやBATH
が生まれない理由について、著書で次のように述べています。
─────────────────────────────
 米中からは世界が羨望するビッグテックが生まれてきたのだが
なぜ日本からビッグテックが生まれないのか。背景に若い起業家
が抱えるGAFAのビジネスモデルに対する根本的な分析不足、
政治的背景への理解不足と簡単な技術的誤解がある。
 ビジネスプランを競うビジネスコンテストや、起業家を育てる
インキュベーションプロジェクトなどに参加すると、「GAFA
に憧れて起業した」というたくさんの若者に出会う。そして、G
AFAに憧れてクラウドサービスやアプリを始めたという起業家
の多くに根本的な勘違いがあるということを痛感している。
 「そもそもGAFAが何故成功したのか」ということを分析し
ていない。「ガレージでビジネスを始めて、ハッカー精神で成功
した」という「貧乏人でも気合で金持ちになれるというフェアリ
ーテ−ル(おとぎ話)」を信じているのだ。  ──深田萌絵著
    『メタバースがGAFA帝国の世界支配を破壊する!』
                         宝島社刊
─────────────────────────────
 日本は、もの作りの面では、十分世界に対抗できる技術を有し
ている国です。コンピュータの製作でも、他国にけっしてひけを
とっていません。しかし、ITに関しては残念ながら、頗る弱い
といえます。その証拠に、日本では、マイクロソフトやアップル
に対抗できるソフトウェア企業は、ほぼ皆無といってよいです。
日本はかたちのないものを作るのは得意ではないのです。
 それでもSNSでは、フェイスブック(現在はメタ)より前に
日本では「ミクシィ」とソーシャルメディアがあったのです。し
かし、ミクシィは、ユーザーが思うように拡大せず、2021年
11月にガラケー版のミクシィはサービスを終了しています。な
お、PC版のサービスは現在も継続中です。
 なぜ、ミクシィのユーザーが拡大しなかったかというと、「招
待制」という特別な方式をとっていたからです。つまり、既存の
ユーザーからの紹介がないと入会できないシステムになっていた
のです。これは、高級の社交クラブなどにおいて採用されていた
入会のシステムであり、これをSNSに取り入れることによって
特別感を出したかったのでしょう。
 それともうひとつ、グローバル対応という名の多言語対応がな
されなかったことも重要な原因です。そうこうしているうちに、
後発のフェイスブックに抜かれてしまったのです。フェイスブッ
クは、実名での登録が条件ですが、入会そのものには、制限がな
かったからです。
 今から思えば、GAFAが急成長したのは、元ソニー社長の出
井伸之氏の指摘する3つの法則が、本当の意味でよくわかってい
なかったからといえます。3つの法則を再現します。
─────────────────────────────
          @  ムーアの法則
          A 収穫逓増の法則
          Bメトカーフの法則
─────────────────────────────
 これら3つの法則は、それぞれ関連のある法則です。GAFA
のビジネスモデルを理解するうえで、しっかりと理解しておく必
要があります。その概要について、以下にまとめます。
 @は「ムーアの法則」です。
 これは、あまりにも有名な半導体チップに関するの法則で、半
導体の集積密度は時間の経過に対して、指数関数的に上昇すると
いうものです。物理学者でもあり、インテル社のCEOのゴード
ン・ムーア博士が経験則として唱えたものです。
 CPUの速度は1・5年で2倍、10年に換算すると、100
倍程度になるが、価格は変わらないという経験則です。
 Aは「収穫逓増の法則」です。
 これは、もともと経済学用語です。グラフで、時間を横軸にと
り、縦軸に収入(販売高)をとると、最初は緩やかではあるもの
の、時間の経過にしたがって、倍々の速度で、収入規模を拡大さ
せていくというものです。やがて指数関数的に収入が増大するの
で、あっという間に上場企業や巨大企業に成長します。そのよう
な経済・経営の法則のことを「収穫逓増の法則」といいます。
 Bは「メトカーフの法則」です。
 メトカーフというのは、イーサネットの開発者であるロバート
・メトカーフのことで、「ネットワークの価値は、それに接続す
る端末や利用者の数の2乗に比例する」という法則です。これは
「インターネットの外部性」と呼ばれています。明日のEJで、
その意味について考えることにします。
           ──[ウェブ3/メタバース/006]

≪画像および関連情報≫
 ●日本に「GAFA」級の企業が生まれない根本原因
  ───────────────────────────
   ここ数年、政府や自治体、大学、企業などの努力もあって
  スタートアップやベンチャー企業に対する社会の認知度が高
  まり、設立数も徐々に増えている。しかし、イノベーション
  のリーダーであるアメリカに比べるまでもなく、中国に比べ
  ても依然盛り上がりに欠けているのが実情だ。
   スタートアップといえば、アメリカのシリコンバレーと中
  国の深せんがベンチマーク的な存在となっているが、残念な
  がら、日本ではこれに相当する「聖地」が存在しない。
   また、アメリカの調査会社CB Insights が発表したユニコ
  ーン企業数(2020年11月末時点)を見ても、アメリカ
  の242社や中国の119社に比べて日本はわずか4社と存
  在感が小さい。なぜ、このような格差が生じたのか?
   1つの原因はデジタル化の遅れだ。世界各国ではIT技術
  をベースに斬新なモノやサービスを提供するスタートアップ
  企業が競い合っている。しかし、キャッシュレス決済をはじ
  め日本は全般的にデジタル化が遅れており、そこから生まれ
  るスタートアップ企業数も少ない。
   また、アメリカの場合、最初からグローバル市場を視野に
  入れて起業する企業が多く、中国の場合、14億人という巨
  大な市場を抱えているため、企業にとってスケールの大きい
  戦略が描きやすい。これに対して、日本の国内市場は決して
  小さくないが、ユニコーンという巨大な「怪獣」を育てるに
  は物足りない。        https://bit.ly/3EtUUHk
  ───────────────────────────
ゴードン・ムーア博士.jpg
ゴードン・ムーア博士
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2022年10月12日

●「六次の隔たりという考え方がある」(第5831号)

 GAFAを誕生させた3つの法則の1つ「収穫逓増の法則」に
ついて、詳しく考えます。
 はじめにシンプルな例から考えてみます。50人の人がいて、
それぞれの人に50人の友人・知人がいるとします。これらの友
人・知人がそれぞれ重複せず──といってもそういうことはあり
得ませんが──名目的につながったとします。そうすると、5回
目のつながりの人数であるNは、これだけで軽く3億人を超えて
しまいます。
─────────────────────────────
N=50×50×50×50×50=312,500,000人
                   ─→3億1250万人
─────────────────────────────
 続いて、もうひとつ少し複雑な例で考えてみます。
 Aさんという人がいます。このAさんが44人の知り合いを持
っているとします。そのAさんの知り合いであるZさんたち44
人が、Aさんとも互いに重複しない知り合いを44人持ち、Zさ
んの知り合いであるYさんが、AさんともZさんとも互いに重複
しない知り合いを44人持っているとします。さらにYさんの知
り合いであるXさんが、AさんともZさんともYさんとも互いに
重複しない知り合いを44人持っているとする・・・このように
続けて6次まで行くと、その間接的知人は次のようになります。
─────────────────────────────
      44の6乗=7,256,313,856人
         ─→72億5631万3856人
─────────────────────────────
 72億といえば、地球の総人口(70億人/国連人口部/20
11年現在)を超えています。このケースは44人ですが、それ
ぞれの人が持つ重複しない知り合いの数を23人にすると、次の
ようになります。
─────────────────────────────
      23の6乗=148,035,889人
         ─→1億4803万5889人
─────────────────────────────
 これは、日本の総人口(1億2805万7352人/2010
年国勢調査にもとづく2010年10月1日現在の確定値)を上
回ってしまいます。
 このような現象を「六次の隔たり」といいます。すべての物事
は、6ステップ以内でつながっていて、友達の友達を介して、世
界中の人々と間接的な知り合いになることができるというもので
す。この「六次の隔たり」は単なる仮説ですが、この仮説をビジ
ネスモデルとして採用したのがGAFAです。収穫逓増型ビジネ
スモデルといいます。
 従来型のビジネスモデルの場合、規模の拡大を図った先に「収
穫逓減の法則」が待ち構えており、投資効率が次第に悪くなるの
が通例です。それに対して、収穫逓増型ビジネスモデルの場合に
は、一度、損益分岐点を超えてしまえば、それから先は大きな追
加コストをあまり必要としないため、伸びた売り上げのほとんど
全部が利益になります。
 ウェブサイトの使いやすさ研究の第1人者であるヤコブ・ニー
ルセン博士のサイトでは、収穫逓増の原理の有効性について、次
の記述があります。
─────────────────────────────
 収穫逓減が支配する世間一般とは違って、ある種の業界には変
わった傾向が見られる。特にソフトウェア業界は、収穫逓増の原
理で動いているようで、取引規模を拡大した方が、得るものも大
きくなるのである。ソフトウェアの製造費(フロッピーやCD)
は、そもそもコードを開発するのにかかったR&Dの費用に比べ
れば、非常に安価だ。従って、本当に儲けようと思ったら数を売
る以外にない。さらに、顧客は大手ベンダーの製品を買うことに
より大きな価値を見出している。なぜなら、そのソフトを使って
いる人が他にもたくさんいるからである。
 事業規模を2倍にすれば、多少なりとも2倍に近い価値が出せ
るのだろうか?従来の産業では収穫逓減の原理が働いて、100
%拡大しても、たとえば90%くらいの価値しか生み出せない。
 収穫逓増が支配するソフトウェアやその他の産業では、100
%の拡大が、例えば150%の価値を生む。大きいことがいいこ
とかどうか(まあ、だいたいはそうだが)ではなく、大きくなれ
ばどれだけよくなるかが問題なのだ。 https://bit.ly/3VfPUfd
─────────────────────────────
 「収穫逓増の法則」に続いて、「ムーアの法則」について、考
えることにします。
 ムーアの法則の公式は、n年後のトランジスタ倍率をpとする
と、公式は次のようになります。
─────────────────────────────
           p=2n/1.5
─────────────────────────────
 この公式にしたがって、時間の経過と倍率を計算してみると、
次のようになります。
─────────────────────────────
        時間             倍率
      2年後 ・・・・・     2.52倍
      5年後 ・・・・・    10.08倍
     10年後 ・・・・・   101.06倍
     20年後 ・・・・・ 10321.03倍
─────────────────────────────
 インテルの元CEO、ゴードン・ムーア博士が、この法則を提
唱したのは1965年のことです。この法則と収穫逓増の法則の
関係や、インテルの法則が何をもたらしたかについては、明日の
EJで説明することにします。
           ──[ウェブ3/メタバース/007]

≪画像および関連情報≫
 ●IT企業が儲かるメカニズムを経済学的に説明してみた
  ───────────────────────────
   21世紀に入ると、新興のアメリカIT企業が収穫逓増の
  法則に乗ってすさまじい勢いで成長していく。仕事ではパソ
  コンを使うが、日常的にはスマホやタブレットなど、モバイ
  ルが現在は主流だ。モバイルのOSは、2016年時点で、
  アップルのiOSとグーグルのアンドロイドが市場を二分し
  ている(国によってシェアはだいぶ違うが、日本ではほぼ二
  分)。モバイル市場では、さまざまなアプリを供給する企業
  が収穫逓増を実現している。たとえば日本のSNSで知られ
  ミクシィは、SNS市場ではフェイスブックに敗れたものの
  2013年10月に発売したスマホゲーム「モンスタースト
  ライク」の投入で急激に成長した。
   スマホゲームの追加生産要素(労働・資本)はほとんど増
  えない。課金は通信会社が行なう。ユーザーはダウンロード
  するだけだ。ヒットすればかんたんに収穫逓増になる。
   ミクシィの売上高(営業利益)は、2014年3月期で、
  122億円(5億円)と中堅企業並みだったが、「モンスタ
  ーストライク」のヒットが始まった結果、2015年3月期
  には1129億円(527億円)と、売上で9・3倍、営業
  利益で105倍(!)と、絵に描いたような収穫逓増となっ
  た。2016年3月期は2088億円(950億円)とさら
  に増えているが、そろそろ収穫逓増のカーブは収穫逓減に移
  ろうとしている。        https://bit.ly/3TqKE71
  ───────────────────────────
六次の隔たり.jpg
六次の隔たり
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2022年10月13日

●「ムーアの法則についてさらに知る」(第5832号)

 「ムーアの法則」はゴードン・ムーア博士が発見した経験則で
あるといわれます。ところで、「経験則」とは何でしょうか。改
めて考えてみることにします。
 ITの技術に少しでもかかわった人は「ムーアの法則」のこと
はよく知っています。そしてこの法則の提唱者がゴードン・ムー
ア博士であり、そしてそのムーア博士が、著名な半導体メーカー
インテルの創業者であることも知っています。しかし、ムーア氏
が「ムーアの法則」を発表したのがインテルを創業する前であっ
たことを知る人は少ないと思います。
 簡単に経歴を振り返ってみると、ゴードン・ムーア氏は、カル
フォルニア工科大学大学院で、赤外線分光学分野の研究で化学博
士号を取得しています。そして、卒業後ジョンズ・ホプキンス大
学応用物理学研究所に入社していますが、研究チームの解散とと
もに退社。その後、ウィリアム・ショックレー博士に誘われて、
1956年にショックレー半導体研究所に入社。ここではじめて
ムーア氏は半導体の仕事に携わります。
 しかし、ショックレー博士との折り合いの悪さから8人の仲間
とともに同社を退社することになります。後にこの時の8人の研
究員は「8人の裏切り者」と呼ばれることになります。そして、
1957年にムーア氏は仲間と一緒にフェアチャイルドセミコン
ダクターを設立。この企業は、1961年にはICの大量生産に
乗り出し、60年代半ばには世界最大の半導体メーカーに成長し
ています。このように、ムーア氏は1956年から半導体製作の
仕事に関わっており、様々な経験を積んでいるのです。
 1965年の春のことです。ムーア氏は、「エレクトロニクス
マガジン」誌から、同誌の35周年を記念して、コンピュータの
未来についての記事を依頼されます。当時、集積回路の最先端の
試作品でも、1つのコンピュータチップに集積されるトランジス
タの数は30個が限界だったのです。
 ムーア氏は、論文を書くために情報を集めたところ、驚くべき
ことを発見します。それは、1枚のチップに集積されるトランジ
スタの数は、1959年から毎年倍増していたという事実です。
ムーア氏は、この傾向がこれから先も続くと予測し、10年先の
1975年には、それは6万5000個という途方もない数にな
るだろうということを論文に書き上げたのです。
 この論文でムーア氏は、将来家庭用コンピュータが誕生するこ
と、携帯用通信機器や自動操縦の自動車の出現まで予測していま
す。そして、この論文が後に「ムーアの法則」と呼ばれるように
なるのです。しかし、ムーア氏は、トラブルからフェアチャイル
ドセミコンダクタを退社し、1968年7月18日にインテルを
設立します。そして、最初からこの論文を目標に半導体チップの
製造に取り組んだのです。
 つまり、ムーア氏はそれまでの自身の半導体チップ製造の経験
とその技術発展の歴史の調査に基づいて、つまり経験則に立って
チップの製造に取り組んだのです。まさに経験則です。
 これについて、非常にわかりやすいイメージで説明した記事を
ネット上で発見したので、ご紹介することにします。
─────────────────────────────
 「シリコンチップに搭載されるトランジスタは18〜24カ月
で2倍に増える」というムーアの法則。現在では、当時の4万倍
の数のトランジスタが乗っかっている計算になるという。
 これを理解しようと筆者が頭に浮かべたイメージは30センチ
×60センチお盆があって、その上に直径6センチのコップが、
50個並んでいる。1年後、同じお盆に100個のコップを並べ
てね。と言われて途方に暮れる自分の姿だった。
 普通の人間ならば、「もっと大きいお盆を持って来い」が正解
だと私は思う。しかし、研究者、技術者たちは、毎年のように、
この課題をクリアーし続けてきた。この法則が破られていないと
いうことは、現在(4万倍ならば)200万個のコップを同じお
盆に乗せていることになる。    https://bit.ly/3ehDzGH
─────────────────────────────
 1971年にインテルは、世界初のマイクロ・プロセッサであ
る「インテル4004」(よんまるまるよん)を開発しましたが
これには2300個のトランジスタが詰め込まれていたのです。
さらに、1979年の「8088」は2900個、1995年の
「ペンティアムプロ」には550万個、さらに2015年の第5
世代コアプロセッサには13億個のトランジスタが搭載されてい
ます。これは、ムーアの法則がきちんと働いている結果であると
いえます。
 いうまでもないことながら、ムーア博士によるムーアの法則の
論文が示唆した「家庭用コンピュータ」はPCとして、「携帯用
通信機器」はスマートフォンで既に実現しており、「自動操縦の
自動車」も実現しつつあり、すべて予言は的中しています。
 ムーア博士が86歳になったとき、あるイベントで、10年後
の世界はどうなるのかについて次のように述べています。
─────────────────────────────
 インターネットの開発は私にとって驚きだ。ネットによって新
しい機会のドアが開くことに気がつかなかったし、高速道路で自
動運転車を見ることになるとも思わなかった。現在は、コンピュ
ーターが人間の利便性を向上するためにどんなことをできるかを
探る初期段階にあり、今後は人工知能が進化していく、と予想す
る。    ──ゴードン・ムーア氏 https://bit.ly/3ErqSnz
─────────────────────────────
 2000年以前の話ですが、、日本は半導体製造分野でトップ
を走っていたことを知る若者は少ないと思います。ムーアの法則
が発表された以後の1980年代、NEC、日立、東芝はトップ
を独走し、インテルがトップになったのは1990年代になって
からです。アイデアも品質も悪くないのですが、世界標準になれ
る製品が作れなかったことが最大の敗因といえます。
           ──[ウェブ3/メタバース/008]

≪画像および関連情報≫
 ●ムーアの法則」もう限界/新たな集積回路探る動き
  ───────────────────────────
   回路の集積度を上げて機能を高めながら製造コストは下げ
  る――。半導体産業の成長を支えてきた「ムーアの法則」が
  限界に近づいている。今の微細加工技術で最小線幅が7ナノ
  (ナノは10億分の1)メートルに達する2020年ごろに
  理論的な壁にぶつかるからだ。その先、半導体はどのような
  技術革新を遂げるのか。新しい集積回路を作るアイデアが議
  論されている。
   「半導体集積回路の集積度は1年半から2年で倍増する」
  半導体最大手の米インテルを創業した一人、ゴードン・ムー
  ア氏は1965年、まだ登場していない集積回路の進歩を展
  望する論文でこんな予測を唱えた。実際に回路の集積度はこ
  の予測通りに高まり、後にムーアの法則と呼ばれるようにな
  った。半導体チップの基本素子のトランジスタは小さくなる
  と性能が高まり、1つのチップに収まる数を多くできる。微
  細化を追究することで性能を向上させてきた。そのために回
  路の線幅をできるだけ細くする技術開発を進めた。
  インテルが71年に発売した最初のプロセッサ「4004」
  は線幅が10マイクロ(マイクロは100万分の1)メート
  ルで、1つのチップに2300個のトランジスタが載ってい
  た。2015年発売の最新型プロセッサー「スカイレイク」
  は線幅が14ナノメートルになり、10億個以上のトランジ
  スタを搭載している。インテルによると、プロセッサーの計
  算能力は半世紀で3500倍向上した。
               https://s.nikkei.com/3TcRr46
  ───────────────────────────
インテル4004.jpg
インテル4004
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2022年10月14日

●「メトカーフの法則について考える」(第5833号)

 ムーアの法則、収穫逓増の法則に続くのは、「メトカーフの法
則」です。ところで、ロバート・メランクトン・メトカーフ(メ
トカフ)とは何者でしょうか。
 メトカーフ氏は、米国の電気工学エンジニアで、パロアルト研
究所在籍時に、イーサネット、すなわち、LANの開発者として
知られています。メトカーフの法則というのは、既に何回もご紹
介しているように、次の内容です。
─────────────────────────────
 ネットワークの価値は、そのネットワークに接続するユーザー
 数の2乗に比例する。        ──メトカーフの法則
─────────────────────────────
 FAXを例にして解説します。FAXは自分一人が持っていて
も誰とも送受信できず、メリットはありません。したがって、こ
のときのFAXによるネットワークの価値は「0」です。
 友達の1人がFAXを購入したとします。そうすると、その友
達とはFAXによる送受信ができるので、送信と受信を別に数え
て、ネットワークの価値は「2」になります。
 さらにもう一人の友達がFAXを購入したとします。3人がF
AX持っているので、3人がそれぞれ自分以外の2人と送受信で
きることになり、ネットワークの価値は「6」になります。式で
書くと次のようになります。
─────────────────────────────
    ネットワークの価値=n×(n−1)
    ネットワークの価値=
    FAXの全ユーザー数×(ユーザー数−1)
─────────────────────────────
 仮に10人がFAXを持っていると、[10×(10−1)=
90]となり、ネットワークの価値は90になります。nが十分
大きくなると、「nの2乗」と一致するため、冒頭のネットワー
クの法則の定義になります。
 ここで重要なのはユーザーの数によるネットワークの価値の増
大が、コストの増大をはるかに上回るということです。このケー
スにおけるコストは「FAXの単価×台数」と考えられるので、
ユーザーの数に比例して増加します。しかし、ネットワークの価
値の増大は、ユーザー数の2乗に比例し、指数関数的に増えるの
で、コストの増大を大きく上回ることになります。
 添付ファイルをご覧ください。これは、NTTデータ経営研究
所が発表したネットビジネスのユーザー数と売上高の推移を表し
たものです。これは、クックパッド、LINE、フェイスブック
(現メタ)について、ユーザー数の推移(上)と売上高(下)を
示しています。いずれも、ユーザー数及び売上高が、時間の経過
とともに、指数関数的に増加していることがわかります。
 これを見ると、ビジネスの初期段階でいかに多くのユーザーを
獲得するかが、ビジネスの成否のカギを握ります。したがって、
初期の段階において、誰もが参加できるプラットフォームをネッ
ト上に用意し、そのプラットフォーム上で、多くの「無料サービ
ス」提供し、ユーザーを囲い込み、ユーザー数を劇的に増加させ
るのです。
 確かに、プラットフォーマー企業は、初期のシステム開発やデ
ーターセンターのコスト、あるいは広告費など、初期コストは膨
大ですが、ユーザーが増えてくると、メトカーフの法則が働いて
コストの割合はどんどん減り、利益率は大きく押し上げられるこ
とになります。
 かつてのものづくり大国の名をほしいままにした日本の製造業
とGAFAに代表されるプラットフォーマー企業とを天動説と地
動説の例で説明しているレポートがあります。アクセンチュア株
式会社製造・流通本部特別顧問の川原崎由博氏のレポートの一部
をご紹介します。興味があれば全文を読むことができます。
─────────────────────────────
 かつて日本の製造業が元気だった時代と現在を、天文学の「天
動説」と「地動説」にたとえて比較してみましょう。「天動説」
の時代は、たとえば自動車産業であれば、自動車メーカーを頂点
に巨大な業界が形成され、中古車販売、レンタル、メンテナンス
保険、金融などの関連業種がその下に連なっていました。自動車
会社はそのヒエラルキーの内部で完結する「企業中心」、「自己
完結型」のスキームを構成し、優れた製品を作り、消費者に提供
してさえいれば、十分な利益を確保することができたのです。
 一方、現在のプラットフォーマーの世界は「地動説」です。こ
れはサプライ側の企業ではなく、サプライチェーンの外側にいる
顧客や消費者といったステークホルダーが中心となって動かす世
界です。まず、消費者中心の社会・生活があって、その周囲をメ
ディアや家電製品、あるいはレジャー、コミュニケーションとい
ったさまざまな領域の製品やサービスが取り囲んでいます。ここ
では消費者が主役であり、自動車でさえ「モビリティ」という1
つの領域の構成要素に過ぎません。
 この世界を支配しているのが、いま「プラットフォーマー」と
呼ばれている新しい企業です。プラットフォーム企業は従来の企
業ヒエラルキーのさらに上位に君臨し、メーカーなどの企業群を
その配下に従えてコントロールする、いわば超越的な存在です。
この劇的な地位交代に戸惑う方も少なくないでしょう。しかし、
これこそがまぎれもなく現在の市場の「世界」なのです。
               https://accntu.re/3rMtRPQ
─────────────────────────────
 日本のビジネス界は、このWeb2.0 の波に完全に乗り遅れ
ています。これから脱却するには、これまで積み重ねてきた経験
値や世界観そのものを、変更するというレベルではなく、一度す
べてを捨て去って、ゼロベースで考える必要があると、川原崎由
博氏はいっています。急がないと、既にWeb2.0 の世界が終
了し、Web3.0 の世界に入ろうとしているからです。
           ──[ウェブ3/メタバース/009]

≪画像および関連情報≫
 ●プラットフォーマー勝者の法則コミュニティとネットワー
  クの力を爆発させる方法
  ───────────────────────────
   もともと伝統的な小売業者、製造業者だった彼らは、いか
  にしてプラットフォーマーとなったか。ビジネスモデルを設
  計、点火、上昇、安定させる方法(ロケットモデル)を明らか
  にする。
   ウーバーは世界最大のタクシー会社だが、クルマを1台も
  所有していない。フェイスブックは世界一の人気メディアだ
  が、コンテンツをまったく生み出さない。アリババは世界一
  の流通企業だが、在庫を全く持たない。エアビーアンドビー
  は世界最大の宿泊提供者だが、不動産を所有していない。
      ――トム・グッドウィン(ゼニスメディア副社長)
   プラットフォーム自体は生産も販売もしないが、2つ以上
  の顧客グループ(ウーバーならドライバーと乗客)を誘致し
  て仲介し、お互いに取引できるようにすることで、大きな価
  値を生み出している。本書は、プラットフォームビジネスと
  伝統的ビジネスモデルの違い、そこで働く経済原理、プラッ
  トフォームビジネスならではの成功法則(ライフステージご
  とに直面する課題と対応策)を明らかにする。
   たとえば、プラットフォームを立ち上げるために必要な手
  間と労力。それは「ロケット」の打ち上げにも匹敵する。2
  つ以上ある市場(サイド)に人を集め、それぞれに拡大策とマ
  ーケティングを実施する必要がある。プラットフォームを始
  動するというのは、2つの会社を同時に起業するようなもの
  だと言ってよい。        https://bit.ly/3VdmvT7
  ───────────────────────────
ネットビジネスのユーザー数と売上高の推移.jpg
ネットビジネスのユーザー数と売上高の推移
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2022年10月17日

●「インターネットはインフラである」(第5834号)

 今回のテーマは、次世代インターネットといわれる「Web3
.0 」を解明することす。しかし、これを解明するには現在のイ
ンターネットである「Web2.0」 について詳しく知る必要が
あり、9回まではそのことについて書いてきています。
 とくに「Web2.0」 上で一大発展を遂げたGAFAによっ
て代表されるプラットフォーム・ビジネスが社会を支配した3つ
の法則、「ムーアの法則」「収穫逓増の法則」「メトカーフの法
則」についても取り上げて検討してきています。
 しかし、ここでもうひとつ踏み込んで、インターネットの社会
インフラとしての本質についても理解しておく必要があります。
そうでないと、現在のインターネットとは何であり、インターネ
ットがなぜサービスプラットフォームとして発展したかがわから
ないからです。
 現在、書店では、Web3.0 やウェブ3に関する本が多く出
版されています。そのほとんどを購入して読んでみましたが、ど
の本も、わかったようなわからないような内容です。それは、多
くの人にとって、現在のインターネットというものが、十分解明
されていないからです。
 このことについて、ネット上で次のように述べている人がいる
のでご紹介します。
─────────────────────────────
 近年、「Web3.0」 というキーワードが急速に注目されて
いる。多くの人が慣れ親しんだ現在のインターネットを「Web
2.0」と定義し、そこから脱却することを提唱する概念だ。
 「Web3.0」 というキーワードを目にする機会が増える一
方で、「わかったようでわからない」という声を聞くことも増え
た。実際に「Web3.0」 のコンセプトを実現可能にするブロ
ックチェーンは大変わかりづらい技術である。さらに、具体例や
ユースケースのイメージも沸かないため、現在のインターネット
との違いを比較してもピンとこない。実際に普及する現実的なイ
メージが湧かないという意見もよく耳にする。
                  https://bit.ly/3CAylxN
─────────────────────────────
 今回のテーマの第1回で、インターネットとWebの違いにつ
いて書きましたが、そのときインターネットを次のように定義し
ています。さらに、インターネットの本質は道路(情報ハイウェ
イ)に近いものであると指摘しています。
─────────────────────────────
    インターネットはネットワークインフラである
─────────────────────────────
 そもそもインフラとは、生活や産業を成り立たせるために必要
な施設やサービスであり、ネットワークインフラは、そのうちの
ひとつであって、生活や産業に必要な「何か」を流通させる目的
をもったインフラです。ここでいう「何か」とは、次の3つのこ
とを意味しています。
─────────────────────────────
          @トランスポート設備
          A流通管理・制御機能
          B    コンテンツ
─────────────────────────────
 添付ファイルをご覧ください。これは、物流の流通サービスを
あらわした図であり、それぞれのインフラのオープン性の大小を
見ることができます。
 これらの3つについて、電気、ガス、水のライフライン、鉄道
のネットワーク、道路のケースを考えてみることにします。
 第1に、ライフラインについです。
 トランスポート設備については、送電線や水道管があります。
これらを利用して、物質やエネルギーを各家庭まで届ける管理・
制御機能があり、この場合のコンテンツに当たる電気やガスの生
成まで、すべてこれらのインフラの提供者である電力会社やガス
会社が行っています。
 これらのインフラについては、電力会社やガス会社が厳重に管
理し、他のいかなる者もそれらのインフラを勝手に使うことは許
されていないのです。エンドユーザーとしては、電力会社やガス
会社が定めたサービス規約にしたがって、電気やガスや水道を決
められた方法で受け取る以外のことはできないのです。
 鉄道については、どうでしょうか。
 鉄道ネットワークを支えるインフラである線路や駅や電車など
はトランスポート設備であり、それらの管理・制御機能は、イン
フラの提供者であるJRをはじめとする鉄道会社が提供していま
す。これらのインフラを鉄道会社以外の何者も、勝手に使うこと
はできないし、線路に自分の好きな乗り物を走らすこともできな
いことはいうまでもないことです。
 しかし、鉄道の場合のコンテンツに当たる鉄道で運ぶもの、つ
まり、人や物質については、法律や鉄道会社の定めたルールに違
反しない限りにおいて、エンドユーザーが自由に持ち込むことが
できます。つまり、鉄道インフラはサービスはクローズであるが
コンテンツはユーザーに解放されており、生活インフラよりもオ
ープンなインフラであるといえます。
 道路についてはどうでしょうか。
 道路も鉄道と同様に、物流や人の移動のための不可欠なネット
ワークインフラです。道路そのものや交差点、信号機などはトラ
ンスポート設備は、国や地方自治体が所有していますが、そこを
走る車や車を使った配送サービスの管理・制御機能、さらにコン
テンツである人や物質はユーザーが持ち込むかたちになっていま
す。どの道をどのように使って、何を、どこに、どういう条件で
運ぶかはすべてユーザーに委ねられています。道路というインフ
ラは、その上で行われるサービスや運ばれる物質に関しては、す
べてオープンなインフラであるということです。
           ──[ウェブ3/メタバース/010]

≪画像および関連情報≫
 ●ネットワークインフラとは?ネットワークインフラの効率化
  に必要なスキルを徹底解説!
  ───────────────────────────
   まずはネットワークインフラとはどんなものなのかを理解
  していきましょう。
   ネットワークインフラを簡単に表すと、インターネットや
  PC、プリンタなどを使えるようにするための土台です。そ
  もそもインフラとは、社会生活や経済の基盤を形成する構造
  物のことを指し、道路や発電所・学校・病院・公園などが該
  当します。
   交通インフラや社会インフラなど、インフラにも様々な分
  野が存在するのです。その中で最近とくに重要視されている
  のがネットワークインフラ(ITインフラ)になります。I
  T業界のインフラに該当するのが、ネットワークであるイン
  ターネットやLAN、ハードウェアやOSなどです。これら
  のものを総称してネットワークインフラといわれています。
   IT業界でシステムを構築するなどで使われるシステムは
  アプリケーションとインフラから成り立っているのです。
   簡単に表すとインフラを道路とするなら、アプリケーショ
  ンは車、システムは社会の構造や仕組みということになりま
  す。つまりエンジニアがシステムを作るとなると、アプリケ
  ーションとインフラの両方の理解が必要になるのです。
                 https://bit.ly/3CY4m4q
  ───────────────────────────
 ●図の出典/出井伸之監修/『進化するプラットフォーム』/
  角川インターネット講座
物流の流通サービス.jpg
物流の流通サービス
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2022年10月18日

●「情報通信インフラとしてのネット」(第5835号)

 昨日に続いて、電気・ガス・水道のライフライン・インフラ、
それよりもオープン性の高い鉄道や道路などの生活に不可欠な移
動インフラと、インターネットを含む情報流通インフラとを比較
することにします。代表的な情報流通インフラとしては、放送、
電話、インターネットがあります。
 ここでの記述は、次の論文を参考にして、記述していることを
お断りしておきます。
─────────────────────────────
  (株)IIJイノベーションインスティテュート代表取締役
浅羽登志也氏の論文『社会の基盤OSとしてのインターネット』
      ──出井伸之監修/『進化するプラットフォーム』
                  角川インターネット講座
─────────────────────────────
 はじめに「放送」について考えます。
 「放送」には、ラジオ放送とテレビ放送がありますが、放送で
は、同じ内容の情報を多くの人に一斉に伝えるサービスを提供し
ます。このサービスを提供する事業者、すなわち放送局は、国か
ら特定の周波数帯の電波の割り当てを受けており、その周波数帯
を使って、放送サービスを提供しています。
 放送局は、電波を発信するためのインフラの構築と、どの曜日
の、どの時間帯に、どの番組を放送するかのサービスの構成や管
理を行い、さらにコンテンツとしての番組の製作までを一貫して
行っています。つまり、放送局は、トランスポートインフラ、サ
ービス制御、コンテンツの全てを管理しているのです。
 この放送に、視聴者であるエンドユーザーが入り込む余地はほ
とんどないといえます。ユーザーが放送に参加する視聴者参加番
組というのはありますが、生中継番組は別として、放送における
視聴者の言動をどこまで流すかに関しては、放送局側の判断で決
められます。つまり、放送局が不適切と判断するコンテンツは放
送されないことになります。
 「電話」について考えます。
 電話や電信は、特定の個人やデバイスを通信回線でつなぎ、そ
の間の通話や電信を媒介するサービスです。通信ネットワークイ
ンフラの構築や電話・電信サービスのコントロールは、すべて通
信事業者が行いますが、コンテンツである通話や電信の内容は、
犯罪にかかわるものは別として、ユーザーが自由に流すことがで
きます。つまり、コンテンツはユーザーが自由に持ち込むことが
できるのです。
 続いて、インターネットのケースを考えますが、その前にミネ
ラルウォーター宅配サービスを例として取り上げます。添付ファ
イルの図を参照してください。
 水は生活インフラとして、水道会社から水道管のネットワーク
を通して全家庭に供給されています。これをユーザーの観点で見
ると、ユーザーは水道の蛇口をひねるだけで、いつでも浄水が得
られるようになっています。
 これに対して、ミネラルウォーターをいつでも飲める宅配サー
ビスがあります。このサービスは、既に実施している業者が複数
あり、利用者が増えつつあります。
 この場合のコンテンツはミネラルウォーターです。業者の立場
に立って考えると、ミネラルウォーターを精製する必要はなく、
第三者から仕入れることも可能です。この場合、次の3つの問題
を解決することが必要になります。
─────────────────────────────
 @ユーザーに届けるミネラルウォーターの容器をどうするか
 Aユーザーにどのようなインターフェースで水を提供するか
 Bユーザーにどういう手順でミネラルウォーターを届けるか
─────────────────────────────
 @のミネラルウォーターの容器としては、専用の大きなペット
ボトルを作り、それを配送するためのトラックを用意します。そ
して道路を使って定期的に家庭に届けます。
 Aユーザーへのインターフェースとして、蛇口が付いたウォー
ターサーバーが必要になります。これは、ユーザーにレンタルし
てもらうなどの方策が必要になります。ユーザーは、定期的に業
者から届くペットボトルをさかさまにしてウォーターサーバーに
セットし、サーバーの蛇口をひねると、ミネラルウォーターが出
てくる仕組みになっています。サーバーによっては、冷水と温水
の両方が出るものがあり、これがセットされると、いつでも冷水
でも温水でも飲むことができます。この場合、蛇口は2つ付くこ
とになります。
 Bのミネラルウォーターの届け方は、宅配のトラックが道路と
いうオープンなネットワークインフラを使って契約宅に定期的に
届けることになります。
 このようにして、上記の3つの問題はすべて解決できます。こ
のミネラルウォーター宅配システムを採用したユーザーの立場に
立つと、家庭には生活インフラとして、いつても水が供給されて
いることに加えて、飲み水については、冷水でも温水でも専用の
サーバーから供給されることになります。
 このサービスは既に実現されています。ジャパネットたかたの
「富士山の天然水定期配送サービス」です。初期費用、冷水温水
付きサーバーレンタル料、水の料金(月3本の場合)、配送料金
全て込みで、毎月4000以下でこのサービスが受けられます。
なかなかよく考えられているサービスであると思います。
 といっても、ここでは、ミネラルウォーター宅配サービスその
ものを宣伝するのが目的ではなく、情報流通インフラとしてのイ
ンターネットの可能性についての説明用モデルとして、このサー
ビスを説明しています。
 インターネットは、情報流通ネットワークインフラにおいて、
物流インフラの道路のような役割を目指すので、明日のEJから
この例を参考に説明していきます。
           ──[ウェブ3/メタバース/011]

≪画像および関連情報≫
 ●インターネットを支える 通信インフラ/樋口雅文氏
  ───────────────────────────
   1992年に日本初の商用インターネットサービスが開始
  されてから約18年が経った。現在では多くの企業や個人に
  インターネットが利用されるようになり、インターネットは
  社会的インフラの一つとして認知されるに至っている。電子
  メールやWWWなど、インターネットを基盤とするアプリケ
  ーションを多くの人が使うようになり、それらのアプリケー
  ションに依存して、生活やビジネスが運営されている場面も
  多くなった。そのため、インターネットが安定的に運用かつ
  提供されることが社会にとって必然ともいえる状況ができあ
  がっている。本稿では、インターネットサービスを支えるイ
  ンフラ、更に安定してサービスを提供するために用いられる
  技術について解説する。
   まず、日本のインターネットがどのような構造をもってい
  るかについて説明する。大きく分けて以下の三つの部分に分
  けてとらえられる。
   @アクセス系ネットワーク/ユーザのオフィス・自宅から
  ネットワーク拠点(多くの場合、通信事業者の局舎など)ま
  でをつなぐネットワーク。Aアクセス系ネットワーク/全国
  に点在するネットワーク拠点を、相互に接続するネットワー
  ク。Bインターネットデータセンタ/ネットワークそのもの
  ではないが、ネットワークにユーザが接続する際に行う認証
  設備や、利用実績に基づき課金を行うための設備、またサー
  ビスの管理・監視等を行う設備を収容するビルで、バックボ
  ーンネットワークの中核近くに存在する。
                 https://bit.ly/3RZPp69
  ───────────────────────────
道路を用いたミネラルウォーター宅配サービス.jpg
道路を用いたミネラルウォーター宅配サービス
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2022年10月19日

●「情報流通インフラインターネット」(第5836号)

 情報流通のネットワークにおいて、物流インフラの道路に該当
するのがインターネットです。しかし、インターネット上に各種
の情報をそのまま流すことはできません。ミネラルウォーターを
入れる容器(ペットボトル)が必要であったように、情報によっ
てそれぞれ容器、入れ物が必要になります。
 例えば、映像や音声のデータの圧縮規格であるMPEGや、M
PEGで使われている音声圧縮規格のMP3は、まさにその入れ
物に該当します。これらは、映像や音声コンテンツをデジタル化
してインターネット上に流すためのフォーマットになります。
 スカイプ(Skpe)というサービスがあります。2021年7月
にサービスを終了していますが、インターネットを使って音声通
信ができます。なお、音声通信はLINEでも可能です。スカイ
プではコンテンツである音声を運ぶための入れ物としてGIPS
社の音声符号化方式を採用しています。これによりパケットネッ
トワーク上で、リアルコミュニケーションが可能になります。
 さて、ミネラルウォーターの蛇口に当たるものとしては、各種
ヘッドセットがありますし、スマホ上でソフトウェアを起動すれ
ば、そのまま電話機が蛇口になり、耳に音声が流れます。手順と
してはP2P方式などのプロトコルを使っています。P2P方式
は、サーバーがないノード(ネットワークに参加しているPC)
による協調動作によって機能する通信モデルです。
 興味深いのは、公共の普通の水道水の供給サービスと、ミネラ
ルウォーター宅配サービスが、通信インフラである電話と、スカ
イプによる音声通話サービスとよく似ていることです。これは、
情報通信の分野では、今やインターネットは、オープンインフラ
になっており、あらゆる可能性があります。これに関して、II
Jイノベーションインスティテュート代表取締役、浅羽登志也氏
は論文のなかで、次のように述べています。
─────────────────────────────
 オープンインフラの特徴はすべてインターネットにも当てはま
る。例えば、道路が車に何が積まれているかを関知しなかったよ
うに、インターネットもパケットに含まれるデータがどんなもの
かについて関知しない。だからこそ、映像だろうが音声だろうが
何だろうが、インターネットという共通のネットワークの上で流
すことができる。ただ、そのための情報表現フォーマット、ユー
ザーインターフェース、そして、流通のためのプロトコルさえ決
めればよいのである。
 すると、放送網という専用ネットワークで流されていたテレビ
映像も、電話網という専用のネットワークで流されていた音声も
インターネットというひとつの汎用のネットワークの上に融合す
ることができる。(中略)まったく同じサービスを作る必要はな
く、むしろこの新しい付加価値に着目し、そこを伸ばしていくよ
うな発想の方が重要となる。        ──浅羽登志也著
         『社会の基盤OSとしてのインターネット』
      ──出井伸之監修/『進化するプラットフォーム』
                  角川インターネット講座
─────────────────────────────
 インターネットの商用サービスが始まったのは、1990年代
のことです。1989年には、世界初のインターネット・サービ
ス・プロバイダ(ISP)のPSIネットが発足しています。も
ともと米国の国防総省(ペンタゴン)でインターネットの開設に
従事していた人物が設立した企業です。
 インターネットといえば、米国のイメージが強いですが、その
研究・利用に関しては、日本もけっして遅くはないのです。19
84年、東京大学、東京工業大学、慶應義塾大学が実験的にネッ
トワークを結び実現した「JUNET」、1988年の産学協同
プロジェクト「WIDEプロジェクト」がスタートを切っていま
す。いずれも、村井純慶応義塾大学名誉教授が設立しています。
 もっとも商用接続サービスがスタートした時点では、1990
年代前半のインターネットユーザーは、エンジニアやIT系企業
などのITリテラシーの高い層に限られていたのです。
 ISPにしても、その頃はインターネットにつなぐことだけが
サービスのすべてだったのです。その当時のインターネットの利
用の状況について、浅羽登志也氏は次のように書いています。
─────────────────────────────
 これは道路の比喩でいえば、どこにもつながっていなかった自
宅の前の私道を最寄りの公道につないでもらったので、車を運転
して自由にどこにでも行けるようになった、というのと同じ状態
である。そこから先はユーザーが自分で考えて自分で行動しなけ
れば何もできない。これと同じように、インターネットにつなが
っても、電子メールを使いたければ、自社内でメール配信を行う
ためのサーバーを立ち上げて、ISPのメールサーバーに接続し
クライアントソフトウェアも入手して、その設定も自分でやらな
ければならなかった。情報サービスを利用したければ、そのサー
ビスを利用するために必要なソフトウェアを入手し、サーバーの
ドメイン名など必要な情報を調べ、ソフトウェアの設定を自分で
行わなければならなかったのだ。      ──浅羽登志也氏
   ──出井伸之監修/角川インターネット講座の前掲書より
─────────────────────────────
 どんな技術でもそうですが、その初期の使い勝手はけっしてよ
くないものです。当時のインターネットは、そのプロトコルであ
るTCP/IPプロトコルをよく理解した人でないと、利用する
ことは難しかったのです。
 初期のこのように使い勝手の悪かったインターネットを素人で
も使えるように劇的に変えたのは、ティム・バーナーズ=リー氏
の開発によるWWW(ワールド・ワイド・ウェブ)だっのです。
WWWについては、明日からのEJで述べることにします。
           ──[ウェブ3/メタバース/012]

≪画像および関連情報≫
 ●インターネットの歴史と発展/IIJ
  ───────────────────────────
   インターネットが発展してきた今日、もはやインターネッ
  トがない世界を想像すらできなくなってしまいました。いま
  や検索だけでなく、ビジネスや金融、公共サービスなど、イ
  ンターネットは、ありとあらゆるものに関係しています。電
  気・ガス・水道に次いで生活に欠かせないものになっている
  といえるでしょう。
   では、インターネットが普及する前は、コンピュータ同士
  の通信はどのような方法が使われていたのでしょうか?
   当時のコンピューターネットワークは、特定の目的のため
  にコンピュータを個別に接続したものを指していました。例
  えば、銀行預金の確認用ネットワークであれば預金確認のみ
  商品発注のネットワークであれば商品発注のみのネットワー
  クで、用途に限ったネットワークだったのです。
   なお、日本で初めてコンピュータのネットワークが実用化
  されたのは、1964年の東京オリンピックだと言われてい
  ます。各会場での競技結果を集計し、放送センターに集まっ
  た各国のマスコミに向けて、情報を伝えるための専用ネット
  ワークとして作られたものでした。そもそもインターネット
  は研究目的で作られたもの。それまで専用のネットワークだ
  ったものを、汎用性のあるものにしようということが研究目
  的のひとつでした。      https://bit.ly/3expTYu
  ───────────────────────────
インターネットの歴史.jpg
インターネットの歴史
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2022年10月20日

●「WWW技術の意味するものは何か」(第5837号)

 インターネットの原型は、1969年に米国で構築されたネッ
トワーク「ARPA(アーパ)ネット」といわれています。この
「ARPA」とは何でしょうか。これは、米国高等研究計画局の
ことです。現在は、これに「Defense」(国防) の「D」が加え
られ、「DARPA(ダーパ)」といわれています。
─────────────────────────────
   ◎ARPA/米国高等研究計画局
    Advanced Research Projects Agency
   ◎DARPA/米国国防等研究計画局
    Defense Advanced Research Projects Agency
─────────────────────────────
 1983年になって、ARPAネットに現在のインターネット
のプロトコルであるTCP/IPが採用され、本当の意味でのイ
ンターネットの原型が出来上がったといえます。
 それはさておき、初期のインターネットは、商用サービスがは
じまったといっても、非常に使い勝手がよくなく、素人ユーザー
が使いこなすにはハードルが高かったといえます。技術者、研究
者しか使いこなせないネットワークであったといえます。その使
いにくさを一挙に変えたのはWWW──ワールド・ワイド・ウェ
ブの登場からです。そのとき、何が起こったのかについて知って
おくべきことがあります。
 ウェブの生みの親は、既に述べているように、ティム・バーナ
ーズ=リー博士(1955年6月8日〜)です。ティム氏は英国
のコンピュータ科学者であり、2012年のロンドン五輪の開会
式の第2部にも登場しています。英国はもちろん世界的にも有名
人ですが、日本人でティム氏のことを知る人は、ほとんどいない
と思います。開会式のそのときの状況についてご紹介します。ご
覧になった人も多いと思います。
─────────────────────────────
 最終部では、イギリスの計算機技師でWWWの生みの親である
ティム・バーナーズ=リーが登場。世界初のウェブ・サーバと、
ウェブブラウザを開発したネキストキューブも登場させ、リーが
「これはみんなのために」というメッセージをタイプすると、観
客席のLED照明にも同様の文字が表示された。このメッセージ
は、世界を皆で共有するためのWWWと、競争相手とオリンピッ
クを観戦する人々の多様性に対する援用の両方の表明であった。
       ──ウィキペディア https://bit.ly/3VvFM21
─────────────────────────────
 それではWWWは何なのでしょうか。
 そもそもインターネットの前身であるARPAネットの目的は
巷間いわれている軍事目的ではなく、学術研究者の情報や研究の
データをスムーズに閲覧できるようにすることにあったのです。
しかし、ARPAネットでは、その目的が実現できておらず、そ
れを名実ともに実現したのは、スイスにある研究機関であるCE
RN(セルン)に研究者として籍を置いていたティム・バーナー
ズ=リー氏の発案によるWWWだったのです。
 1991年8月6日のことです。ティム氏は、世界初のウェブ
サイトを公開しています。英国ではこの日を「ウェブの誕生日」
と呼んでいます。そのときの目玉になったのが、「ハイパーテキ
スト(Hyper Text)」という仕組みです。このハイパーという言
葉は「驚くべき」というような意味があり、ハイパーテキストは
「驚くべき文字」「驚くべき文書」ということになります。「驚
くべき文字」とは一体何でしょうか。
 それは、今では当たり前になっていますが、文字をクリックす
ると、他のウェブページに移動する「リンク」の機能を意味して
おり、そういう機能を持っている文書のことを「ハイパーテキス
ト」といっています。
 ティム氏は、研究に関係のある文献やデータをできる限り、一
つのコンピュータに集め、さらにそれらの文書同士をリンクさせ
る仕組みを考案し、実現させたのです。そういうウェブサイトを
構築するための約束事を「HTML」という言語にまとめ、誰で
もこの言語を使えば、容易にウェブサイトを作れるようにしてい
ます。HTMLは次の言葉の略です。
─────────────────────────────
      ◎HTML
       HyperText Markup Language
─────────────────────────────
 ティム氏はこのとき、「WWWクライアント」というブラウザ
を開発し、無料で公開しています。ブラウザがないと、ウェブサ
イトを見ることはできないからです。ティム氏はこのブラウザに
ついて、その作り方すべて公開しています。ティム氏のこの情報
の公開によって、激しい「ブラウザ戦争」が起きるのですが、こ
れについては改めて述べます。
 なぜ、WWWという名称にしたかについては、紆余曲折があっ
たようです。当初は、「The Information Mine/情報鉱山」とい
う名前にしようと思ったそうです。これなら「TIM/ティム」
となるからです。しかし、ティム氏は、それでは自分本位過ぎる
として撤回し、WWWにしたそうです。
 整理すると、ティム氏の開発したのは、次の3つの技術という
ことになります。
─────────────────────────────
   @ URL ・・ ウェブページの所在地指定記号
   AHTTP ・・ 通信のさいの転送のプロトコル
   BHTML ・・ ウェブページ作成のための言語
─────────────────────────────
 この仕組みは、現在われわれがウェブサイトを作成したり、多
くの人がアクセスしてウェブサイトを見ることができる仕組みの
すべてです。しかし、これほどの発明をした偉人を多くの日本人
は、なぜ名前すら知らないのでしょうか。
           ──[ウェブ3/メタバース/013]

≪画像および関連情報≫
 ●WWWの誕生から30年、インターネットはどこに
  向かうのか/ティム・バーナーズ・リー氏
  ───────────────────────────
   わたしがワールド・ワイド・ウェブ(WWW)の基になる
  情報管理システムの提案書を書き上げた1989年3月から
  ちょうど30年が経った。現在、世界の半分はインターネッ
  トに接続されている。この機会にここまでたどり着いたこと
  を祝うと同時に、達成できていないことは何かを考えてみる
  べきだろう。
   ウェブは公共の広場、図書館、医者のいる場所、小売店、
  学校、デザイン事務所、企業のオフィス、映画館、銀行など
  実にさまざまな役割を果たすようになっている。新しいウェ
  ブサイトが開設され、これまでになかったサーヴィスが始ま
  るたびに、ネットにつながっている人々とそうでない人々の
  格差は拡大していく。このため、万人がウェブにアクセスで
  きるような環境を整えることが緊急の課題となる。
   インターネットは、これまで周縁部に追いやられていたグ
  ループに発言の場を提供することで新たな機会を創出し、生
  活の利便性の向上に寄与した。その一方で、犯罪者にもチャ
  ンスを与えた。ウェブは憎しみを拡散する手段となり、あら
  ゆる種類の違法行為を容易にしている。ネットが悪用される
  事例が頻繁に報じられるなか、これに恐怖を抱き、ウェブは
  本当に世の中をよい方向に向かわせることができるのか疑問
  に感じる人がいることは理解できる。ただ、過去30年で、
  ウェブがどれだけ変わったかを思えば、この先の30年でこ
  れと同じだけプラスの変革を遂げることができると期待しな
  いのは、いささか想像力に欠けるし、なによりも戦う前から
  敗  北を認めるようなものだ。https://bit.ly/3yM7pdy
  ───────────────────────────
WWWの開発者/ティム・バーナーズ=リー氏.jpg
WWWの開発者/ティム・バーナーズ=リー氏
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2022年10月21日

●「ウェブ基盤技術関連の3つの技術」(第5838号)

 今やインターネットといえばWeb(ウェブ)の時代です。こ
のウェブに関連する基盤技術を開発した人がティム・バーナーズ
=リー氏です。ウインドウズ95に付属していたブラウザには、
デスクトップ上で「インターネット」というラベルが付けられて
いたので、ユーザーは「インターネット=ウェブ」だと思うよう
なったといいます。
 しかし、ウェブの登場は、それ以前からインターネットにかか
わってきた人々にとっては、あまり愉快なことではなかったよう
です。これについて、日本のインターネットの草分けといわれる
村井純慶応義塾大学名誉教授は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ウインドウズ95とともに、インターネットの利用者は急激に
増加したが、早くからインターネットにかかわっていた技術者は
少々苦い思いでいた。(中略)長い年月をかけて基礎技術を積み
上げてきたインターネット屋にしてみれば、ブラウザーの背後で
動いているインフラのほうこそがインターネットなのだ。まだ簡
素なマークに従って文書を表示するばかりであったウェブが、イ
ンターネットと思われるのは面白くなかった。それは日本でも同
じである。インターネットコミュニティは、ウェブが「お嫌い」
だった。このため、ウェブ記述に使うHTMLの標準化も、ウェ
ブ技術の標準化団体であるW3Cに押し出した形になった。イン
ターネット屋とインターネット利用者の乖離の始まりである。
           ──村井純著『インターネットの基礎/
  情報革命を支えるインフラストラクチャー』/角川学芸出版
─────────────────────────────
 要するに、インターネットはインフラであり、ウェブ、すなわ
ち、WWWはそのインフラの上に築かれたものであるという考え
方です。そのインフラとしての基礎技術を積み上げてきた人々に
とってWWWは、あまり面白くはなかったようです。
 ティム・バーナーズ=リー氏の開発したウェブ基盤技術の3つ
を再現します。
─────────────────────────────
   @ URL ・・ ウェブページの所在地指定記号
   AHTTP ・・ 通信のさいの転送のプロトコル
   BHTML ・・ ウェブページ作成のための言語
─────────────────────────────
 これら3つの技術は、ウェブサイトにアクセスし、それを表示
させる技術です。添付ファイルにしたがって説明します。
 クライアントは、ブラウザを起動し、インターネット上のもの
や情報の位置を示す「URL」を指定し、インターネット上にあ
るウェブサーバーに対して、コンテンツを取り寄せる方法である
「HTTP」で送信リクエストを行います。なお、URLは「U
RI」ともいいます。
 ウェブサーバーは、その送信リクエストを受け付けて、指定の
「HTML文書」(HTMLで記述された文書)をHTTPでク
ライアントに送信してきます。そして、クライアントは、その送
信されてきたHTML文書をディスプレイに送信させるのです。
 これら3つの技術のうち、HTML文書の概念は、米国の社会
科学者にして思想家のテッド・ネルソンが実現しようとしていた
ハイパーテキストのアイデアからティム氏がヒントを得て、ウェ
ブサイトを発明しています。これについて、村井純教授は次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 HTML文書の最も大きな特徴は、情報の断片から別の情報の
断片へとリンクをたどっていけることだ。この概念はすでにテッ
ド・ネルソンが1960年から実現しようとしてきたハイパーテ
キストというシステムに見ることができる。ネルソンは、決まっ
た順番で情報を読むのではなく、人の思考に沿って、どこからで
も読み始められ、好きな情報にわたり歩け、しかも改訂ができる
壮大な文献システムをコンピューターネットワークの上につくり
たかったのだ。
 CERNに滞在していたティム・バーナーズ=リーは、そのハ
イパーテキストのアイデアに触発され、それを実現するHTML
という簡便な方法を考えた。そしてマーク・アンドリーセンらが
そのHTML文書を解釈して表示するモザイクというブラウザー
をつくつたのである。それが、現在のブラウザーの始祖である。
HTTPという通信手順はそのときにできた。
          ──村井純著/角川学芸出版の前掲書より
─────────────────────────────
 クロード・シャノン、ポール・バラン、ティム・バーナーズ=
リー、ボブ・メトカーフ、そして村井純──これらの名前を現代
の大学生に問うと、ほとんど誰も知らないのが実情です。ちなみ
に、クロード・シャノンは情報工学理論の創始者で、情報の最小
単位「ビット」の概念の考案者、ポール・バランはパケット交換
方式の開発者、ティム・バーナーズ=リーはウェブサイトの開発
者、ボブ・メトカーフはイーサネット(LAN)の開発者、そし
て村井純氏は、日本のインターネットの普及・発展に尽くしてい
る「日本のインターネットの父」といわれる人物です。いずれも
現代のITの発展に不可欠な「ITの偉人」ばかりですが、なぜ
現代人が知らないのかというと、学校でインターネットそのもの
について、教えていないのだと思います。
 現代は、インターネットなしには1日も暮らせないほど、イン
ターネットが深く浸透しています。そのインターネットは、どの
ような経緯で誰が考案し、どのようにして実用化されたかという
インターネットの歴史について知ることは、非常に重要であると
考えます。そうでないと、既にウェブ3という新しいインターネ
ットの時代に入っている現代を生き抜くことが難しくなります。
PC、タブレット操作やプログラミングも大切ですが、インター
ネットの歴史についても小学生から教えるべきです。
           ──[ウェブ3/メタバース/014]

≪画像および関連情報≫
 ●ホームページ制作の歴史
  ───────────────────────────
   アメリカ国防省のサポートを得てW3Cを設立し、今では
  世界で約400社以上のW3Cメンバー企業との共同運営で
  進められています。設立場所がアメリカでしたので、Web
  はイギリス生まれ、アメリカ育ちという事になります。
   Webに関わる数え切れない位の会社やサービスが誕生し
  て来ましたが、2014年は、W3CがHTMLのルールを
  作り始めて20年の節目になります。
   2014年10月28日にW3Cが「HTML5」という
  次世代HTMLの仕様を完全に決め、規格文書が公式に発表
  されました。「HTML4.01」 1999年にリリースさ
  れていますので、ここまで大きいリリースは、約15年ぶり
  になります。
   HTML5は、Webサイトを作るための役割だけでなく
  ウインドウズやマック、アンドロイドやアイフォーンなど環
  境に依存せず、ブラウザさえあればアプリも動く事のできる
  言語でもあります。テレビ、カーナビ、エアコン、洗濯機な
  ど、PCハードの環境を備えていれば、どこにでもブラウザ
  を載せて、Webと繋げられるのです。プラグイン等を利用
  しなくてもブラウザで動きます。それらに技術は業界の垣根
  も飛び越えます。        https://bit.ly/3TyfieD
  ───────────────────────────
ウェブサイトはどのように表示されるか.jpg
ウェブサイトはどのように表示されるか
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2022年10月24日

●「ニコラ・テスラを知っているのか」(第5839号)

 私はここ20年ほど、エンジニアのたまごの若者たちに、IT
技術を教えています。そのとき、必ずいう言葉があります。「良
いエンジニアになるにはその技術の歴史をたどれ!」です。どん
な技術にもその発明者や考案者がおり、彼らの足跡をたどれば、
何を目的としてどのようにその技術を開発したかがわかります。
これはエンジニアにとって新しい技術の開発のヒントになること
が多いからです。
 ウェブ3も同じであると思います。現在のウェブ2をよく知ら
ずして、いきなりウェブ3に挑んでも、理解することは困難であ
ると思います。だから、ウェブ2の歴史をたどっているのです。
 ITそのものの話ではありませんが、ITに不可欠な電気の話
をします。電気の発明がトーマス・エジソンの手になることは誰
でも知っています。エジソンは、生涯におよそ1300もの発明
と技術革新を行った人物です。蓄音機、白熱電球、活動写真など
──すべてエジソンの発明です。
 エジソンは、J・Pモルガンから多額の出資を受け、エジソン
・ゼネラル・エレクトリック社(現在のGEの前身)を設立し、
発電から送電までを含む電力系統の事業化に成功しています。し
かし、そのとき、エジソンの電力会社には、クロアチア出身のセ
ルビア系米国人のきわめて優秀な電気エンジニアがいて、エジソ
ンに常日頃からアドバイスしていたことを知る人はきわめて少な
いと思います。そのエンジニアの名前はニコラ・テスラです。
 しかし、多くの場合、エジソンとテスラは技術の論争で意見が
合わず、不仲であったといわれます。そのため、テスラは、1年
ほどでエジソンの会社を退社し、新会社を立ち上げ、多くの発明
をしていますが、そのほとんどはエジソンの高名の陰に埋もれて
今や知る人ぞ知る存在になっています。エンジニアとしては、非
常に不幸な人生を送った人です。
 しかし、ニコラ・テスラの名前は、確実に現代に蘇ってきてい
ます。交流電気方式をはじめ、無線操縦、蛍光灯などといった現
在において使われている技術も多いからですが、何といってもあ
の電気自動車メーカーのオーナーで、宇宙ビジネスも手掛け、最
近では衛星を使った通信システム「スターリンク」の開発者とし
て名高いイーロン・マスク氏が、ニコラ・テスラという天才エン
ジニアの偉業を忘れないように、自社の自動車会社の社名を「テ
スラ・モーターズ」と名付けたからです。
 テスラは電気や電磁波を用いるテクノロジーの歴史を語るうえ
で重要な人物であり、磁束密度の単位「テスラ」にその名を残し
ており、LIFE誌が1999年に選んだ「この1000年で最
も重要な功績を残した世界の人物100人」に選ばれています。
 さて、エジソンとテスラが激しく意見を戦わせたという送電方
式について述べることにします。テスラは、学校の授業で、「グ
ラム発電機(発電機とモーターの機能を併せ持つ直流電流の発電
装置)」がモーター回転時に激しく火花を発しているのを見て、
そこにエネルギーの損失が起こっていることを見抜き、発電方法
の改善を考えはじめるのです。
 その研究の結果、世界ではじめての交流電流の発電装置を発明
します。テスラは、これをもとにして、交流電流による発電・送
電のアイデアを発展させていきました。その結果、テスラは電気
の送電方式は交流で行うべしという意見を述べ、直流を主張する
エジソンと激しくぶつかったのです。おそらくエジソンには、交
流というものが理解できなかったものと思われます。この論争の
結果、テスラはエジソンとたもとを分かつことになります。
 その結果は、どうなったでしょうか。エジソンは電気の発明家
として世界的に有名になり、世界中の小学校の教科書にそのこと
が載っている偉人です。これに比べると、テスラのことを知る人
はわめて少ないです。
 エジソンとテスラの電気の送電方式の論争の勝敗はどのように
着いたのでしょうか。電気には次の2つがあります。
─────────────────────────────
       交流 ・・・ Altermate Current
       直流 ・・・   Direct Current
─────────────────────────────
 家庭のAC電源から得られる電流は交流です。これは英語の読
みを見れば明らかです。いわゆるAC電源から得られる電気は交
流なのです。電気を送るとき、直流で送るべきと主張するエジソ
ンと交流を主張するテスラ、この勝負はテスラの勝利であり、エ
ジソンの完敗です。
 ちなみに、電池に豆電球をつないで光らせるときに流れる電気
は直流です。電気はつねに一方通行で変化しません。一方、交流
は、電気の流れや電圧が変化する特性があり、送電に適していま
す。したがって、送電には直流電流よりもコストがかからず、利
用者の扱いやすい電圧に変圧できるメリットがあります。
 上述の通り、電池から流れる電気は直流です。そのため、バッ
テリーを内蔵した製品の電気系統は直流で構成されています。自
動車やノートPC、スマホは直流です。そのため、AC電源を使
うときは、交流を直流に変換する装置が必要です。テレビやデス
クトップPCやステレオなどは、動作に安定した電圧が必須のた
め、交流を直流に変換して使っています。
 こういう事情からすると、エジソンを発明王、電気の発明者と
称えるのはよいとして、エジソンに反対し、あくまで交流での送
電方式を主張し、結局それが正しかったたニコラ・テスラのこと
も合わせて伝えるべきであります。
 今から考えると、エジソンは典型的な実験科学者、テスラは理
論科学者として研究手法が「水と油」であったことが示唆されま
す。テスラは、IEEEの最高勲章である「エジソン勲章」の受
章を1916年に打診され、一度は固辞するものの、1917年
に受賞しています。現代人は、この天才科学者、ニコラ・テスラ
のことをもっと詳しく知るべきであると思います。
           ──[ウェブ3/メタバース/015]

≪画像および関連情報≫
 ●テスラCEOも惚れた天才科学者の孤独死
  ───────────────────────────
   富も名声も得たはずのカリスマが、貧しく寂しい最期を迎
  える。それはなぜ?ビジネスと人生の失敗学を探求する本連
  載。第1回に取り上げるのは、天才科学者ニコラ・テスラ。
  電気自動車のテスラを率いるイーロン・マスクCEOをはじ
  め、スタートアップ界隈を中心に今も多くのファンを持つ。
  発明王エジソンを負かしたはずが、ホテルの一室で孤独死。
  どうして一体、こんなことに・・・。
   男が暮らしていたホテルのドアには、「ドント・ディスタ
  ーブ(起こさないでください)という札が三日間もかけられ
  たままだった。不審に思ったメイドが中に入ってみると、男
  はベッドで息絶えていた。検死の結果、死亡推定日時は19
  43年1月7日の午後10時半、死因は冠動脈血栓症とされ
  た。男は自宅を持たず、長年ホテル暮らしを続けてきた。か
  つてはウォルドーフ・アストリア・ホテルなどの名門ホテル
  を定宿とし、食事もホテルの高級レストランで取るという贅
  沢な暮らしをしていた。しかし、晩年は借金を抱えて支払い
  が滞り、宿泊費の安いホテルに、移らざるを得なくなってい
  た。男の日課は近くの公園にいるハトのエサやりだった。体
  調がすぐれないときには、ホテル従業員に「代行」を依頼す
  るほど溺愛していたという。生涯独身で極度の潔癖症、身の
  回りの世話を他人に委ねることを拒んでいた男にとって公園
  にいるハトが唯一心を開くことができる存在だったようだ。
  男の名前はニコラ・テスラ(Nikola Tesla)。
                 https://bit.ly/3shDNB3
  ───────────────────────────
天才科学者ニコラ・テスラ.jpg
天才科学者ニコラ・テスラ
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2022年10月25日

●「ニコラ・テスラとラリー・ペイジ」(第5840号)

 昨日、ニコラ・テスラの話をしましたが、このニコラ・テスラ
は、約100年以上前に「ニューヨーク・タイムズ」上で、「無
線の未来」というタイトルで、次のコラムを書いています。読ん
でみてください。
─────────────────────────────
 無線技術が発達すれば、ニューヨークのビジネスマンがロンド
ンのオフィスへ瞬時に指示を出すことが出来る。時計より小さい
その機械で音楽や歌、政治指導者のスピーチ、牧師の説教を遠く
どこからでも聞くことが出来る。また、同じようにして任意の画
像・図面・プリントを1つの場所から送信することも可能であり
それを一つの機械から万人へ送信することも可能になるだろう。
今後数年間の技術が良い発展を遂げるなら、私たちはそのような
未来を確信することが出来ると思う。 https://bit.ly/3F8Fgl2
─────────────────────────────
 このなかで「時計より小さいその機械」というものは、どうみ
ても現代のスマホです。その機械で音楽も聴けるし、写真や画像
などもどこへでも送れる──100年前といえば、1922年、
当時は電話が発明された程度で、まだラジオすらなかった時代で
す。これによっても、ニコラ・テスラが、いかに稀有な天才だっ
たかがわかります。ちなみに、日本における初めてのラジオは、
1925年(大正14年)3月のことです。ニコラ・テスラがそ
の時代に既にスマホの出現を予言していたとは驚きです。
 ニコラ・テスラは、生涯独身を通し、家を持たず、ホテル住ま
いだったといいます。当初は、支援者も多かったものの、あまり
にも突飛な発明も多く、次第に支援者が離れ、最後は料金の安い
ホテルで孤独死しています。
 このようなニコラ・テスラの生涯を本を読んで知って、涙した
12歳の少年がいたのです。エジソンを超える能力を持ち、卓越
した技術のアイデアを持っていても、ビジネスのノウハウがない
と成功できないとその少年は悟ったのです。その少年こそ、後の
グーグルの創業者、ローレンス・エドワード・ペイジ氏です。通
常、彼はラリー・ページといわれています。
 ラリー・ページ氏は、ミシガン大学卒業後、スタンフォード大
学計算機科学の博士課程に進学し、ウェブのリンク構造、人間と
コンピュータの相互作用、検索エンジン、情報アクセス・インタ
フェースの拡張性、個人的なデータのデータマイニング手法など
を研究しています。
 そのとき、同じくスタンフォード大学計算機科学の博士課程に
在籍していたセルゲイ・ブリン氏と出会い、次のタイトルの論文
を共著で書いています。
─────────────────────────────
          ラリー・ページ/セルゲイ・プリン共著
    『大規模なハイパーテキスト的なウェブ検索エンジン
                     に関する分析』
─────────────────────────────
 そして、1998年にラリー・ページ氏とセルゲイ・プリン氏
は、共同でグーグル社を設立。従業員が200人程度になったと
き、そのとき既に経営者として経験豊富なエリック・シュミット
氏を誘い、グーグル社の最高経営責任者に擁立したのです。20
01年8月のことです。
 エリック・シュミット氏は、サン・マイクロシステムズ社の最
高技術責任者と執行役員、1997年からソフト開発会社のノベ
ル社の最高経営責任者を務め、重要な経営戦略や技術開発の中心
的な役割を果たしていた人物です。ラリー・ページ氏は、ニコラ
・テスラの例にならい、経営にその道のプロを招聘したのです。
 エリック・シュミット氏のグーグル参加は、今から考えると、
絶妙のタイミングだったといえます。そのときの様子について、
小林雅一氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 当初、グーグルは利益を度外視して検索エンジンの精度やスピ
ードの向上、ユーザーインタフェースの改良などに専念した。こ
れによって、グーグル検索の利用者数はうなぎ上りに増加した。
人々はパソコンを起動すると同時に、ブラウザーを開いてグーグ
ルから暮らしや仕事の情報を漁るようになった。それまでの「ウ
ィンドウズ」のようなOS(基本ソフト)に代わって、グーグル
検索が無数のユーザーとコンピューターを結び付ける事実上のプ
ラットフォームと化した。
 しかし爆発的に増加する利用者とトラフィックに対応して高速
サーバーや大容量のディスクスペースを続々と買い足すなど、グ
ーグルは巨額の設備投資に迫られ、当初の資金は瞬く間に失われ
ていった。利用者ばかりが増え、一向に利益を生み出す気配のな
いグーグルに、クライナー・パーキンスをはじめ大口の投資家た
ちはしびれを切らしはじめた。        ──小林雅一著
                『グーグルのビジネス戦略』
      ──出井伸之監修/『進化するプラットフォーム』
                  角川インターネット講座
─────────────────────────────
 エリック・シュミットCEOが、ラリーページとセルゲイ・プ
リンの2人と相談して始めたのが検索連動広告「アドワーズ」で
す。これは、簡単にいうと、ユーザーが入力する検索キーワード
に関連するシンプルなテキスト広告をPC画面に表示するという
ものです。その表示スペースは、オークション形式によって提供
され、高い料金を受け入れた広告主に対しては画面の上位から目
立つ表示スペースを割り当て、ユーザーからクリックされた回数
に応じても広告にはよい場所が提供されるというものです。
 このアドワーズは、これまでテレビや新聞などのお金のかかる
広告スペースを買うことができなかった中小企業や個人事業主に
人気が出て、グーグルのドル箱となり、2002年には創業以来
初めての黒字化に成功しています。
           ──[ウェブ3/メタバース/016]

≪画像および関連情報≫
 ●「10倍のスケールで考える」/Googleが革新的なプロダ
  クトを生み出すために心がけていること
  ───────────────────────────
  サルマン・カーン氏(以下、サルマン):10〜15歳ぐら
   い世代が違う人として知恵を分けていただきたいのですが
   グーグルのすごいところはエリック、ラリー、セルゲイの
   三頭政治だと思うのです。従来のビジネス論から見ると難
   しいですし、何か判断をする時も大変だと思います。どう
   やって行われたのですか?
  エリック・シュミット氏(以下、エリック):私が語らなく
   とも、ちゃんと機能しているという結果が、何より物語っ
   ていると思います。チームとしてのリーダーシップは、説
   得力ではなく成果で評価するべきです。何も言わずに責務
   を果たすチームは評価されるべきです。
    もうひとつ思うのは、世界的にもこの業界においても成
   功する会社は、複数のリーダーがいる会社だと思います。
   メディアはひとりの人物を持て囃しがちです。もちろんそ
   の人も賞賛されるべきですが、実際は数人で動いているの
   が実情なのです。
    ラリーとセルゲイと共に築き上げた関係性の中では、お
   互いの意見をたくさん言い合います。会社としても、オー
   ナーとしても、勝つために言い合っていることを認識して
   いたから、お互いの動機に対する疑問は一度も抱いたこと
   はありません。具体的な戦略で揉めることはありましたが
   それはむしろとても良いことです。
                  https://bit.ly/3TPuRif
  ───────────────────────────
エリック・シュミット氏.jpg
エリック・シュミット氏
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2022年10月26日

●「GAFAによる事実上の言論統制」(第5841号)

 10月22日のことです。中国共産党大会の閉幕式で、胡錦濤
前総書記の不自然な議場からの退席がありました。共産党大会は
非公開ですが、閉幕式の一部はメディアに公開されます。胡前総
書記の退席は、メディアが会場に入った直後の出来事です。
 映像を丁寧に見ると、本人は、退出を嫌がっているのに、屈強
なスタッフに無理やり右腕を掴まれて意思に反して退席させられ
たようにしか見えません。本来であればこういうモメ事はメディ
アに見せないようにするものですが、それを党大会に出席する幹
部に対して見せたということは、習近平新体制から幹部へのメッ
セージ──中国共産党青年団派はもういらないというメッセージ
のように思えるのです。実際に、同派の李克強氏、汪洋氏、そし
て首相確実とされた胡春華氏は、いずれもチャイナセブンから外
されています。
 24日になって、新華社はこの退出事件を「胡氏の体調不良」
と伝えていますが、それはツイッターで英語で伝えられ、国内メ
ディアは、この退席事件を封印し、ネットも含めて一切伝えてい
ません。中国国内では、ツイッターは使えないようになっており
新華社があえてツイッターを使ったということは外国向けである
ことは明らかです。ツイッターに代表されるSNSは、中国のよ
うに、国家が介入して、都合の悪い情報は流さないようにもでき
るメディアなのです。
 現代人の9割近い人がインターネットを利用し、自由な経路で
自由に情報を得ていると思っていますが、実際にどのようにして
情報を入手しているかについて考えると、ほとんどGAFAに閉
じ込められてしまっているといえます。
 インターネット上で情報を調べようとする人のほとんどは、グ
ーグルのサーバーに接続し、検索のエンジンを使い、サイトにた
どり着いています。ちなみに、グーグルの世界シェアは92%で
す。フェイスブック(現メタ)で友達とメッセージを交わそうと
すると、フェイスブックのサーバーに接続し、そこに多くのプラ
イベートの情報を残すことになります。さらに、ネットで何か買
い物をしようとすると、日本人の40%以上は、アマゾンのサー
バーと対話することになります。
 スマホから情報を得るには、そのためのアプリをダウンロード
する必要があります。そのアプリは、次のマーケットから入手す
ることになります。しかし、そのほとんどは、アップストアか、
グーグルプレイから入手しています。
─────────────────────────────
            アップストア
           グーグルプレイ
        アマゾンアプリストア
        マイクロソフトストア
               その他
─────────────────────────────
 これらの情報の提供者であるGAFAは、一定の規約に従って
流す情報を制限しています。社会に悪影響を与えると考えられる
情報などは制限し、流さないようにすることができます。この基
準が甘いと、GAFAにとって都合の悪い情報を流さないように
することも可能です。ユーザーにとっては、無料なので、自分が
検索した情報が出てこないからといって、文句をいう人はいない
はずです。そうなると、GAFAが見てよいと判断する情報しか
ユーザーは読めないことになります。現在のインターネットであ
るWeb2.0 はそういう世界です。これは、それだけGAFA
の力が強いことを意味しています。
 もし、GAFAの規約に従わないで、問題のある情報を発信し
続けたとすると、最悪の場合、トランプ前米大統領がツイッター
フェイスブック、ユーチューブから公式アカウントを停止された
ように、事実上インターネットが使えなくなります。このように
インターネットが使えなくなることを「グーグル八分」といって
います。実際問題として、もし、グーグルが一切使えなくなると
インターネットの利用は困難になります。
 実は、グーグル傘下のユーチューブは、各国の国家機関と連携
して、不適切な投稿動画を削除するため、日本の法務省を「公認
報告者」として2021年に認定しています。日本の国家機関が
公認報告者になることははじめてのことです。これが過度に過ぎ
ると、言論の自由の阻害になります。朝日新聞デジタルの記事を
以下に示します。
─────────────────────────────
 動画投稿サイト「ユーチューブ」に不適切な投稿の情報を提供
する「公認報告者」として、法務省が運営会社のグーグルから認
定を受けた。日本の政府機関では初めて。後を絶たないネット上
の誹謗(ひぼう)中傷に対し、同省は巨大IT企業と連携を進め
ることで対策の強化を図りたい考えだ。
 ユーチューブは、自動検出システムやユーザーからの情報提供
により、差別表現や嫌がらせなどの不適切な投稿を見つけ、ガイ
ドラインに違反していないか審査のうえ削除している。情報提供
の実績から信頼できると判断した個人や団体を公認報告者に認定
しており、その情報は優先的に審査される。
 法務省は、ネット上の投稿について全国の法務局で相談を受け
て対応を助言しているが、中でも個人で解決が難しいものについ
ては違法性を調査のうえ、サイトやSNSの事業者、プロバイダ
に削除を要請している。グーグルから認定を受けたことで、より
効果が上がることが期待される。
 同省が人権侵害の疑いがあると判断した相談は、昨年1年間に
1693件。2011年の636件から増え続けて17年には、
2217件と過去最多を記録し、その後も高止まりの状況が続い
ている。(伊藤和也) ──2121年4月30日付、朝日新聞
                  https://bit.ly/3z3UyDt
─────────────────────────────
           ──[ウェブ3/メタバース/017]

≪画像および関連情報≫
 ●GAFA規制「12の論点」
  ついに姿を表した新しい枠組みとは
  ───────────────────────────
   グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルのGAF
  A各社は、近年のテック大手規制分割論の高まりに対して、
  「政府規制に賛成しながら、そのルールを自ら作る」、「従
  来の自主規制の枠組みを根本から変えるのではなく、運用を
  アップデートする」ことを主張してきた。
   7月23日には米司法省が反トラスト法(独占禁止法)に
  違反していないか、「検索やソーシャルメディア、ネット小
  売」に対する調査を開始したと発表した。それぞれグーグル
  フェイスブック、アマゾンを指すものと解釈されている。ユ
  ーザーの不利益を、従来より幅広く解釈する姿勢を打ち出し
  た。その一方で、翌7月24日には米連邦取引委員会(FT
  C)のフェイスブックに対するプライバシー侵害を巡る調査
  が終了し、制裁金50億ドル(約5400億円)の和解案で
  合意がなされ、事実上の自主規制を同社に認める形で調査が
  決着した。
   これは、フェイスブックのシェリル・サンドバーグ最高執
  行責任者(COO)が、「弊社は世界各国の政府と協力して
  正しいルールの制定に努力している」と述べるなど、規制さ
  れる側がそのルールの決定や運用に関与すべきとの立場を追
  認したものだ。さらに各社は市場独占を防ぐ規制分割論に対
  する強固な反論を用意している。複数の米メディアに挙げら
  れた主張をまとめてみた。   https://bit.ly/3F7NN7C
  ───────────────────────────
胡錦濤前総書記/不可解な退出.jpg
胡錦濤前総書記/不可解な退出
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2022年10月27日

●「PRISMとGAFAその関係は」(第5842号)

 中国は超監視社会といわれています。それは、高度に発達しつ
つあるAI(人工機能)を使って、超高度の監視体制を築き上げ
ています。これに関して次のような話があります。
─────────────────────────────
 上海を訪れた日本人ビジネスマンが、財布を無くし、交番に駆
け込んだ。そのわずか1時間後、警察からビジネスマンに「財布
が見つかった」と連絡があった。警官の説明はこうだ。
 「あなたはけさ、8時45分23秒に滞在先のホテルを出まし
たね。8時47分32秒にタクシーを拾い、9時12分29秒に
降りましたね。通りを歩いた人混みの中で財布をすられました。
それは9時15分45秒の出来事です。犯人はすぐにわかりまし
た。こうして財布は戻りました」。警察官はこう言って胸を張っ
た。「わが国は世界で最も安全な国なのです」。
                  https://bit.ly/3srBN9w
─────────────────────────────
 このようなハイテクによる監視社会の構築には、何かと批判が
多いものですが、程度の差こそあれ、どこの国でもやっているこ
とです。とくに米国は、こういうことでもダントツの先進国であ
るといえるのです。
 2013年のことです。米国政府によるネット監視が批判のマ
トになったのです。米国家安全保障局(NSA)が、世界中で、
メールなどから個人情報を閲覧していたことが暴露されたからで
す。米政府も「テロ行為を未然に防ぐ目的で行っていた」とこれ
について認めています。具体的な証拠を突きつけられたので、認
めざるを得ない状況に追い込まれたのです。
 英ガーディアン紙が、「NSAがベライゾンやAT&Tなどの
米通信大手企業から通話記録を令状で入手していた」と報じたこ
とが始まりで、NSAは「PRISM(プリズム)」と呼ばれる
監視・閲覧機能を使って、世界中のメールを閲覧していることが
明らかになったのです。
 この情報をリークしたのは、元CIA(米中央情報局)職員の
エドワード・スノーデン氏であり、何しろ顔出しで登場し、暴露
したので、大騒ぎになったのです。スノーデン氏は、米国を脱出
し、一時香港に在住していましたが、現在は亡命を求めて、ロシ
アにいるといわれています。この「PRISM」にGAFAが協
力していることはいうまでもないことです。
 GAFAについて詳しく知る必要があります。GAFAは何に
よって企業を支えているか、基本的なことを整理してみます。い
ずれも2021年のデータです。
 第1は「G」──グーグルです。なお、グーグルのグループ企
業は「アルファベット」(2015年設立)といいます。グーグ
ルのプラットフォームは、検索エンジンの「グーグル」、スマホ
用OS「アンドロイド」、アプリストア「グーグル・プレイ」、
グーグルサービスとしては、Gメール、グーグル・マップなど多
数があります。その割合は次の通りです。
─────────────────────────────
          検索広告 ・・ 57.8%
      ユーチューブ広告 ・・ 11.2%
         ネット広告 ・・ 12.3%
      グーグルサービス ・・ 10.9%
      グーグルクラウド ・・  7.5%
           その他 ・・  0.3%
─────────────────────────────
 第2は「A」──アップルです。
 アップルのプラットフォームは、アイフォーン、マック、アイ
パッドなどのハードウェアです。アップルは2015年から音楽
ストリーミングサービス「アップル・ミュージック」をはじめて
おり、世界で6000万人以上が利用しています。
─────────────────────────────
        アイフォーン ・・ 52.5%
           マック ・・  9.6%
         アイパッド ・・  8.7%
   その他周辺アクセサリー ・・ 10.5%
          サービス ・・ 18.7%
─────────────────────────────
 第3は「F」──フェイスブック(現メタ)です。
 メタのプラットフォームはSNSの「フェースブック」と「イ
ンスタグラム」であり、それに関連する広告収入が同社を支えて
います。広告オンリーが企業の支えです。
─────────────────────────────
            広告 ・・ 97.5%
           その他 ・・  0.6%
─────────────────────────────
 第4は「A」──アマゾンです。
 アマゾンのプラットフォームは、何といっても、ECサービス
の「アマゾン」です。アマゾンは、世界に向けて強力な営業力を
持っており、世界中のメーカー、販売業者がアマゾンで自社商品
を扱ってもらいたいと考えています。アマゾンは、どのような人
がどのような商品を購入しているかのデータを保有しているので
小売業にとってアマゾンは不可欠なプラットフォームです。
─────────────────────────────
          EC小売 ・・ 47.3%
    販売業者向けサービス ・・ 22.0%
 サブスクリプションサービス ・・  6.8%
            広告 ・・  6.8%
           AWS ・・  6.6%
          店舗販売 ・・ 13.2%
           その他 ・・  0.5%
─────────────────────────────
           ──[ウェブ3/メタバース/018]

≪画像および関連情報≫
 ●GAFA徹底解説「4社の実態と今後の動向」
  ───────────────────────────
   米国のGoogle、Apple、Facebook、Amazon の4大ネット企
  業をGAFA(ガーファ)と呼ぶことに対し、中国の代表的
  な民間巨大企業で3大ネット企業のバイドゥ、アリババ、テ
  ンセントの3社を「BAT(バット)」と呼ぶ。中部大学特
  任教授の細川昌彦さんは、「中国は米国のGAFAをコピー
  した『BAT』で成功したが、国家主導が行き過ぎて、欧米
  の対中警戒感を強めてしまった。このままでは中国の『デジ
  タル覇権』は失敗する」という。
   GAFAは、「神にも擬せられる力をもつ」といわれる。
  共通するのは、市場の変化をとらえた戦略を大胆に編み出し
  ていくマネジメント能力の高さである。GAFAはインター
  ネットという市場を貪欲に開拓した。検索エンジン、音楽配
  信、SNS、eコマースなどの領域で、新しい稼ぎ方をいち
  早く見いだしていった。
   一方、日本の主要企業は、品質の高い製品を提供する管理
  能力には優れていたが、従前のビジネスモデルにとらわれて
  しまった。この差は、時価総額のちがいに現れている。米国
  の経済成長を支えてきたIT先端企業の成長期待が低下しつ
  つある。その1つが、2018年3月に起こったフェイスブ
  ックのデータ不正流出問題だ。グーグルに関しても、データ
  セキュリティ面への不安が高まっている。ユーザーの個人情
  報をどう管理・保護していくかは、多くのIT企業に共通す
  る課題だ。アマゾンに関しても、データ管理・保護に関する
  規制強化の影響は免れない。   https://bit.ly/3TyMgfi
  ───────────────────────────
エドワード・スノーデン氏.jpg
エドワード・スノーデン氏
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2022年10月28日

●「GAFAと政治との関係性を探る」(第5843号)

 Web2.0 によってGAFAが誕生し、GAFAの数多くの
無料サービスを享受している一般人からすれば、便利になったと
感じている人は多いと思います。しかし、GAFAを政治という
観点でとらえると、いろいろ問題が出てきます。
 米国には、「通信品位法」という法律があります。この法律の
230条にプロバイダ(SNSなどのプラットフォームサービス
およびISP)の免責(媒介者免責)を定めた条文があります。
そこには、次のように定められています。
─────────────────────────────
◎通信品位法第230条
 @第三者が発信する情報について原則として責任を負わない。
 A有害なコンテンツに対する削除などの対応(アクセスを制限
  するため、誠実かつ任意にとった措置)に関し、責任を問わ
  れない。
─────────────────────────────
 この通信品位法230条は、トランプ前大統領がGAFAに対
し、「撤廃するぞ!」と、さんざん脅しをかけていたことで知ら
れています。米議会上院は2020年11月29日に「230条
の広範な免責は巨大IT企業に悪行を許しているのか?」と題し
た公聴会を開き、フェイスブック、グーグル、ツイッターのトッ
プをオンラインで呼び出し、巨大ITプラットフォームが、そこ
で発信されている情報の内容について、あまりに無責任ではない
かとクレームをつけたのです。
 何が無責任なのかというと、要するに「勝手に検閲のような関
与をするな」という共和党側からの文句です。たとえば、トラン
プ大統領の脱税疑惑報道は制限しないのに、バイデン元副大統領
の不正疑惑報道はプライバシーなどを理由に制限しているのはア
ンフェアで恣意的な検閲ではないかと批判しているのです。
 これに対して、民主党からは「悪い投稿にもっと責任を持って
関与すべきである」という意見が出されており、フェイクニュー
スの拡散などの悪質かつ選挙などにも影響を与えうる投稿はもっ
と制限すべきだとしています。
 シリコンバレーの企業の多くは民主党支持で固まっています。
2020年の米大統領選挙では、バイデン陣営が選挙中に公表し
たリストによると、バイデン陣営の資金集めにはシリコンバレー
の企業が多数協力しています。とくに副大統領候補のカマラ・ハ
リス氏は、北カリフォルニアの出身で、シリコンバレーとは深い
つながりがあるからです。
 これに対して、トランプ前大統領は、鉄鋼や自動車などの製造
業をラストベルト地帯に戻し、伝統的産業の雇用を増やす一方で
「アップル製品は敵だ」などと、ハイテク企業やシリコンバレー
企業などに対して敵対的な発言をしています。
 トランプ政権は「H−1Bビザ」の発給制限を行っています。
「H−1Bビザ」とは、専門技術者として米国で一時的に就労す
る場合を対象としたビザで、米国の学士またはそれと同等の経歴
を持っていることが条件になります。最初の認可で3年間有効な
ビザが発行され、2年の延長が1回のみ可能で、継続しての滞在
は5年が限度となります。このビザの発給制限が行われると、技
術者の確保が苦しくなります。
 しかし、GAFAの時価総額が一国のGDPを超えるほどのレ
ベルに達しているだけに、現在、「GAFA分割論」が提案され
ています。このGAFA問題について、野口悠紀雄一橋大学名誉
教授は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 アメリカはこれまで、IBMやAT&Tという巨大情報企業を
独禁法によって企業分割することで、その力を弱めてきた。GA
FA分割論は、これと同じ手法を適用しようとするものだ。しか
し、プラットフォーム企業に対してその手法が有効でないことを
バイデン政権は重々承知しているのではないだろうか?
 そして、ハイテク企業がアメリカの強さの源泉であり、中国に
対する最強の武器であると認識しているから、友好的な立場をと
るだろう。こうしたことを考えると、アメリカでは、ハイテク産
業に関する条件が好転する可能性がある。もしそのようなことに
なれば、中国における変化と合わせて、技術開発力のバランスは
これまでとは大きく変わる可能性がある。
 ただし、アメリカでもIT企業の巨大化に対する国民の反発が
強まっているので、放置するわけにもいかない。どのような手段
で対処するかの手探りが続くだろう。トランプ政権下のアメリカ
司法省は、2020年10月20日に反トラスト法違反でグーグ
ルを提訴している。この問題は複雑だ。シリコンバレーと、民主
党共和党の関係が、いくつかの面で「ねじれて」いるからだ。
                  https://bit.ly/3SBesN7
─────────────────────────────
 VR(ヴァーチャル・リアリティ)産業のパイオニアであるオ
キュラスという企業があります。その創業者であるパーマー・ラ
ッキー氏は、2015年8月の「TIME誌」の表紙を飾るほど
の有名人です。2014年にラッキーCEOは、フェイスブック
にオキュラスを売却し、フェイスブックに入社したものの、20
17年に突然解雇されています。
 なぜ、解雇されたのかについては、ザッカーバークCEOが口
を閉ざしているので不明ですが、ラッキー氏がテッド・クルーズ
上院議員をはじめとする共和党議員や、トランプ前大統領の支持
団体に寄付していたことが、ザッカーバークCEOの怒りに触れ
て、解雇されたといわれています。問題は、世界で30億人近い
ユーザーを持つフェイスブックが、このように政治的敏感である
とそれに合わないコンテンツが制限されたり、削除されたりしな
いか懸念されます。なぜなら、GAFAは、通信品位法第230
条によって、意に沿わないコンテンツを削除しようと思えばでき
るからです。フェイスブックはとくにその傾向が強いのです。
           ──[ウェブ3/メタバース/019]

≪画像および関連情報≫
 ●パルマー・ラッキー氏、退社は一方的解雇だったのか?
  ───────────────────────────
   Oculus Riftの発案者であり、Oculus社 の共同創業者パル
  マー・ラッキー氏が親会社のフェイスブックを退職すると明
  らかになったのは2017年3月でした。当時の経緯につい
  て、複数の英語メディアがフェイスブックからの圧力があっ
  たと報道。フェイスブックが反論する騒動となっています。
   ラッキー氏は2016年9月、米大統領選で反ヒラリー・
  クリントン氏のキャンペーンに1万ドルを寄付し、ドナルド
  ・トランプ現大統領を支持したとされています。その後ラッ
  キー氏は自身の行動のインパクトについて謝罪。トランプ氏
  ではなく、共和党候補のゲーリー・ジョンソン氏に投票した
  と弁明していました。しかし、2017年3月にはフェイス
  ブックからの退社が決まっています。
   それから約1年半。2018年10月、ラッキー氏は、C
  NBCのインタビューに対し、退社は彼の意思ではなかった
  と答えました。さらに、翌11月、ウォール・ストリート・
  ジャーナルは、ラッキー氏が「ジョンソン氏に投票した」と
  いう回答もフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO
  の指示によるものだ、と報じています。これを期にラッキー
  氏は表舞台から追いやられ、最終的には解雇されたというこ
  とです。ただしこの報道に対してフェイスブックは、公式に
  反論。同社のAR/VR部門のアンドリュー・ボスワース氏
  は、11月11日、ツイッターで、「常に明言している通り
  政治的な発言の権利はパルマーに委ねられています。我々が
  彼に事実と異なることを述べるよう、圧力をかけたことはあ
  りません」と述べています。   https://bit.ly/3Dfs5vZ
  ───────────────────────────
TIME誌の表紙を飾るパーマー・ラッキー氏.jpg
TIME誌の表紙を飾るパーマー・ラッキー氏
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2022年10月31日

●「GAFAにより抹殺されたSNS」(第5844号)

 何らかのかたちで、インターネットを事業として使う人たちに
とって、GAFAは絶対的な存在であるといえます。今回は、そ
れに関する知られざる事件を取り上げます。
 「パーラー」というSNSをご存知ですか。パーラーは、20
18年8月に開設された非主流を自称するミニブログ兼SNSで
米ネバダ州ヘンダーソンに拠点を置いています。
 パーラーは、2020年の段階で、ユーザーが約100万人し
かいないというとてもマイナーなSNSだったのです。ところが
2020年の大統領選後の10月〜11月、フェイスブックやツ
イッターで言論統制を受け、アカウントが取り消されたユーザー
が、大挙してパーラーに移行し、わずか数カ月で1500万人近
いユーザーを獲得したのです。
 ところが、パーラーは、2021年1月6日に起きた米国会議
事堂デモ乱入事件で、トランプ支持者による暴動を煽ったという
ことで、グーグルとアップルからクレームをつけられたのです。
SNSのモバイルアプリ事業者であるパーラーは、暴力を扇動し
ないように規約を守るべきという主張です。しかし、パーラーは
これに反論します。もともと、ユーザーの言論の自由を守るとい
うのが、パーラーのポリシーなのでこれを無視します。
 これに対して、グーグルとアップルは、「もし規約を守らない
のであれば、アプリストアから追い出すぞ」と、さらに圧力をか
けてきたのです。
 パーラーはこの警告も無視したので、グーグルは、パーラーの
対応を不満として、公共の安全上の脅威であるとして、グーグル
プレイストアからパーラーのアプリを削除し、アップルもそれに
したがったのです。アプリを削除されるとユーザーが増えなくな
るので、アプリ業者であるパーラーにとって命取りになります。
 これについて、ITコンサルタントの深田萌絵氏は次のように
述べています。
─────────────────────────────
 勝者となったGAFAにとって言論統制はたやすい。インター
ネット空間というのは、入り口が独占されており、私たちはネッ
トに接続するのにグーグルかアップル、マイクロソフトのブラウ
ザを立ち上げる。既にGAFAに牛耳られてしまっているので、
グーグルやアップルを経由せずにインターネットに入るとなると
かなり選択肢が少なくなるのだ。
 また、ユーザーにアプリを提供するためのアプリケーションス
トアは、グーグルプレイ、アップルストアがほとんどをので、こ
の二つから締め出されるとアプリ業者は窮地に陥る。だからグー
グルやアップルがどんなに高いパーセンテージの手数料を求めて
きても、ノーとは言えない状況にある。それがこのアプリ業界支
配の捉なのだ。           ──深田萌絵著/宝島社
     『メタバースがGAFA帝国の世界支配を破壊する』
─────────────────────────────
 しかし、パーラーはアプリは締め出されましたが、データはア
マゾンのクラウドサービスAWSに収録されています。そこに追
い討ちがきます。2021年1月9日にアマゾンは「24時間後
にサービスを停止するので、移行準備をしてください」と通告し
1月10日以降パーラーは完全にオフラインになってしまったの
です。これに対し、パーラーのジョン・マッツェCEOは、アマ
ゾンを次のように批判し、提訴します。
─────────────────────────────
 これはインターネットにおける言論の自由の完全な排除の試み
である。とくにサーバーの利用停止は、生命維持装置を付けた入
院患者の電源コードを抜くことと同じである。
                   ──ジョン・マッツェ
─────────────────────────────
 もっともわかりやすい例を上げると、トランプ前大統領がほと
んどのSNSから排除されています。トランプ前大統領の発言に
問題があるとしても、膨大な権力を有する米国の大統領でさえ、
インターネットの世界では、場合によっては言論を抹殺されてし
まうのです。
 アレックス・ジョーンズという極右のラジオ番組司会者、ユー
チューバー、保守派の評論家がいます。彼は、ツイッター、ユー
チューブ、スポティファイ、ボードキャストなどのさまざまなプ
ラットフォームから、同じ日に一斉にデータが削除されてしまっ
ています。
 インターネット空間は、広大なる空間のように見えますが、そ
の実態は意外に狭い世界なのです。それは、いわゆるGAFA+
Mが、世界シェアの多くを握っているからです。インターネット
の世界は、次のように一部の企業によって独占されています。彼
らが連携を組むと、このインターネットの世界は非常に狭苦しい
世界になってしまうのです。
─────────────────────────────
   ◎PC用OSの世界シェア
    ウインドウズ   ・・・・・ 75.86%
    OSX(テン)  ・・・・・ 15.76%
   ◎ブラウザの世界シェア
    クローム     ・・・・・ 62.78%
    サファリ     ・・・・・ 19.30%
    フィアフォックス ・・・・・  4.20%
    エッジ      ・・・・・  4.06%
   ◎モバイルOSの世界シェア
    アンドロイド   ・・・・・ 70.97%
    iOS      ・・・・・ 28.27%
   ◎検索エンジンの世界シェア
    グーグル     ・・・・・ 92.01%
    ビング      ・・・・・  2.96%
─────────────────────────────
           ──[ウェブ3/メタバース/020]

≪画像および関連情報≫
 ●民間企業が主導した、トランプ大統領「ネット追放劇」に
  見る“権限”とリスク
  ───────────────────────────
   この4年間、いい意味でも悪い意味でも、米国をぶっつぶ
  してきたトランプ大統領。最後の最後で、連邦議会の議事堂
  を襲撃する事件を煽ったことで、ここ4年の負の側面の全て
  の責任を一身に背負って退場することとなった。今後しばら
  くは、米国の「ミス」「問題」は全てトランプのせいにされ
  ることだろう。
   米国では今、議会襲撃事件によって新たな展開が起きて騒
  動になっている。トランプ大統領のツイッターやフェイスブ
  ックなどのSNSやオンラインサービスのアカウントが次々
  と使用禁止になったことだ。さらにアップルやグーグルもト
  ランプ支持の保守派たちが集まっていたSNS「パーラー」
  というアプリをダウンロードできないようにする措置に出て
  いる。さらにパーラーのサーバをアマゾンが停止してしまう
  事態にもなった。
   要するにトランプ大統領がオンラインから存在を消されつ
  つある状況になっているのだ。この動きによって、米国では
  SNSなどの運営企業が暴走していると大きな騒動になって
  いる。そもそも一民間企業であるSNSなどのサービス事業
  者が、世界一の大国の大統領に対して口封じをする権利があ
  るのか、と。ご存じの通り、SNSとトランプの戦いは今に
  始まったことではない。もともとは、2016年の米大統領
  選で、ロシアなど国外からSNSを使ったフェイクニュース
  が拡散され、トランプ陣営に有利に働いたと取り沙汰された
  ことが発端だった。SNSが国際的にも情報工作に悪用され
  ている実態が顕在化したのだ。  https://bit.ly/3FnVcjn
  ───────────────────────────
ジョン・マッツェ/パーラーCEO.jpg
ジョン・マッツェ/パーラーCEO
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2022年11月01日

●「ツイッターの買収で何が起きるか」(第5845号)

 10月27日のことです。米起業家のイーロン・マスク氏は、
総額440億ドル(約6兆4000億円)で、ツイッターの買収
取引を完了しています。ツイッター買収に関して、イーロン・マ
スク氏は、次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
 僕がツイッターを取得したのは、文明の未来のため、共通のデ
ジタルな町の広場が必要だからだ。健全な形で、暴力をふるうこ
となく、幅広い考えを話し合うことのできる場所が。今では、ソ
ーシャルメディアが、極右と極左のエコーチェンバー(自分が聞
きたい意見だけが増幅されて響く空間)になって、さらに憎悪を
生み出してこの社会を分断する、そういう危険が増している。
 ほとんどの伝統的メディアはクリックをひっきりなしに追求す
ることで、こうした極端な分断をあおり、材料を提供してきた。
それが自分たちの収入になると信じているからだ。しかし、そう
することで対話の機会が失われてしまう。だから僕はツイッター
を買った。それが、簡単だからでも、金もうけになるからでもな
い。自分が愛する人類を助けるためにそうした。(中略)
 もちろんツイッターは、誰でも何でも好き勝手に言えて何の責
任もとらない、そんな無法地帯になってはならない!国の法に従
うのに加えて、このプラットフォームは温かい、全員を歓迎する
場所でなくてはならない。自分の好みに従って、望む経験を選べ
る場所でなくてはならない。     ──イーロン・マスク氏
                 https://bbc.in/3Fr6MtV
─────────────────────────────
 「SNSは、自分が聞きたい意見だけが増幅されて響くエコー
チェンバーであってはならない」──確かにマスク氏のいう通り
であり、なかなか見事な表現であると思います。私も、実名です
が、ツイッターは2010年からやっているので、今後のツイッ
ターの変化には強い関心を持っています。
 マスク氏は、表現の自由を重視し、投稿への介入は可能な限り
減らす方針であるともいっています。そのうえで、ツイートが表
示されるアルゴリズムを公開し、「スパム」と呼ばれる不正行為
を極力減らす方針であるといいます。
 マスク氏によるツイッターの買収は、米国の保守層には歓迎さ
れ、強い期待を示しているといわれます。もともとマスク氏は、
次のように保守層の声に理解を示していたからです。
─────────────────────────────
 ツイッターはサンフランシスコに本社があり、左派に強く偏っ
ている。もっと公平になる必要がある。 ──イーロン・マスク
─────────────────────────────
 このような情勢から、トランプ前大統領とその支持者は、マス
ク氏によるツイッター買収完了に大きな期待を抱いているといわ
れています。しかし、マスク氏がトランプ氏らのアカウントの復
活を許すかどうかは今のところ不透明です。
 また、マスク氏のツイッター社の経営方針にも不安な面もあり
ます。それは、買収後にツイッターを上場廃止にする方針を示し
ているからです。非公開化されれば開示すべき情報も減り、外部
からのチェックがしにくくなるからです。マスク氏はテスラの広
報部門も解散しており、米メディアの取材にも応じていないと聞
いています。
 日本では、いわゆるGAFA関連の有名SNSを使っている人
がほとんどですが、米国では、特定の政治的な意見を掲載するS
NSがたくさんあります。昨日のEJでご紹介したパーラーをは
じめ、他にもたくさんあります。
 「Gab」というSNSがあります。パーラーと同じ保守系の
SNSです。他のSNSを追放された極右のネット・ユーザーが
プラットフォームとして使っているSNSです。パーラーと同じ
ような経過でGAFAから締め出され、自社サーバーを構築して
立ち上げたのがGabです。Gabは、ネオナチ、白人至上主義
者、オルタナ右翼などといった、極端な政治思想の持ち主にとっ
て「安息の地」とされています。
 自社サーバーの構築は容易ではありませんが、Gabにはサー
バー構築のエンジニアは大勢いるといいます。いずれも、GAF
Aからクビになったエンジニアたちです。これについて、深田萌
絵氏は自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 Gabは2021年1月当時、1時間に1万人以上のユーザー
が増えていた。サーバーを増やすには、ただアンカーサーバーを
増やすだけでなく、ロードバランサーなど数種類のサーバーを用
意して増やしていくので結構時間がかかる。幸いにもサーバーを
構築するエンジニアがたくさん来ていると話していた。2020
年の選挙でシリコンバレーに勤める多くのトランプ支持者がクビ
になったことが影響していたかもしれない。以前からトランプ支
持者はいじめられ、GAFAに勤めるエンジニアはトランプ支持
でクビになっている。        ──深田萌絵著/宝島社
     『メタバースがGAFA帝国の世界支配を破壊する』
─────────────────────────────
 ちなみにトランプ前大統領は、ツイッターなど、著名SNSか
ら締め出されて、新しいSNSを立ち上げています。それは、ト
ランプ氏が経営するメディア企業「トランプ・メディア&テクノ
ロジー・グループ(TMTG)」の「Truth Social」です。この
iOSアプリが、2022年2月22日に米アップ・ストアに公
開されています。しかし、このアプリをダウンロードして、アカ
ウントを作成しようとすると、ウェイティング(順番待ち)リス
トに登録されたという画面が表示されるだけだといいます。例え
ば、「需要の急増のため、あなたをウェイトリストに追加しまし
た。あなたの順番は13万5828番目です」という表示が行わ
れます。おそらくサーバーの容量の不足が原因であると考えられ
ます。だから、トランプ氏はツイッターのアカウント復帰を切望
しているのです。   ──[ウェブ3/メタバース/021]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏「良識ある人に渡った」/マスク氏のツイッター
  買収を歓迎
  ───────────────────────────
   米電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任
  者(CEO)が買収した米ツイッターについて、トランプ前
  米大統領は、28日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャ
  ル」の投稿で、「ツイッターが良識のある人の手に渡り、と
  てもうれしい」とコメントした。
   トランプ氏は「ツイッターは(自動的に投稿を拡散する)
  ボットやフェイクアカウントを取り除くための努力をしなけ
  ればならない。(ツイッターは)より小さくなるが、良くな
  る」として、マスク氏の買収を歓迎した。
   一方で、自身のSNSについて「先週、ティックトック、
  ツイッター、フェイスブックなどを含めた他のプラットフォ
  ームより多くの数字を得た」として、「私の目には(自身の
  SNSが)より良くみえる」とコメントした。
   トランプ氏の「数字」の意味は不明だが、フェイスブック
  を運営する米メタだけでグループ全体の月間利用者は約37
  億人いる。米フォーブス誌は今春、トゥルース・ソーシャル
  の利用者数を約200万人と報じていた。マスク氏がツイッ
  ターを買収したことで、トゥルース・ソーシャルなどの保守
  系の新興SNSには逆風になるとの見方もある。トランプ氏
  は投稿で「私はトゥルースを愛している!」として、引き続
  き自身のSNSを使う意向を示した。(サンフランシスコ=
  五十嵐大介)          https://bit.ly/3gSBVfG
  ───────────────────────────
イーロン・マスク氏.jpg
イーロン・マスク氏
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2022年11月02日

●「GAFAMの直近業績に問題あり」(第5846号)

 インフレの急速な進行により、米国の景気減速が顕著です。米
国の経済をけん引してきた米IT大手、いわゆるGAFAMの成
長に黄信号が点滅しています。2022年7〜9月期の業績は、
次の通りです。
─────────────────────────────
  ◎米IT大手/2022年7月〜9月期業績/1
                売上高    増減率
      アップル  901.46億ドル   8%
   マイクロソフト  501.22億ドル  11%
   アルファベット  690.92億ドル   6%
        メタ  277.14億ドル  ▲4%
      アマゾン 1271.01億ドル  15%
  ◎米IT大手/2022年7月〜9月期業績/2
                純利益    増減率
      アップル  207.21億ドル   1%
   マイクロソフト  175.56億ドル ▲14%
   アルファベット  139.10億ドル ▲27%
        メタ   43.95億ドル ▲52%
      アマゾン   28.72億ドル ▲ 9%
        ──2022年10月29日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 これによると、GAFAMのうち、アップルをのぞく4社は減
益に追い込まれており、景気減速と競争激化が原因であると考え
られます。これを受けて株式市場では、市場予想を下回ったとし
て、失望売りが広がり、GAFAMの時価総額の合計は、この1
週間で約4300億ドル(約63兆円)減少しています。
 アマゾンは、決算説明会において、CFO(最高財務責任者)
は、次のように説明しています。
─────────────────────────────
 消費者は、買い物に慎重になり、企業もテクノロジーや広告へ
の支出を見直す傾向が強まっている。
           ──ブライアン・オルサブスキーCFO
        ──2022年10月29日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 しかし、景気の影響を受けやすい広告事業と違って、アマゾン
マイクロソフト、アルファベット(グーグルの持ち株会社)の3
強にはクラウド事業があります。クラウド事業は、おりしも新型
コロナ禍が後押しした企業のDX(デジタルトランスフォーメー
ション)の波に乗って、ここ数年は、ドル箱となっていたはずで
す。しかし、これら3強はいずれも「景気後退がクラウドの成長
を妨げている」と口を揃えています。
 クラウド事業は急成長しましたが、景気が減速し、過剰なクラ
ウド投資に対する懸念が生じ始めています。それに、エネルギー
コストの上昇も懸念されています。電気や天然ガスの価格が高騰
し、ここ数年で2倍に跳ね上がっているからです。
 売上高の増減率でみると、GAFAM5社中アルファベットと
メタの2社が低くなっています。メタにいたっては、広告事業が
ほとんどなので、4%のマイナスです。これは、競争の激化によ
るものとして、日本経済新聞は次のように書いています。
─────────────────────────────
 さらに深刻なのは、競争の激化だ。SNS(交流サイト)では
中国発のTikTok(ティックトック)が若年層を中心に利用
者を増やし、広告の売上高が急増している。メタの画像共有アプ
リ、インスタグラムなどと、利用者層が重なり、アルファベッド
の動画共有サービス、ユーチューブとも競合。7〜8月期にユー
チューブの広告売上高は、初めて減少した。
        ──2022年10月29日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 この7〜9月期の業績で凋落が目立つのは、メタ(フェイブッ
ク)です。メタの売上高は、前年同期比4%減の、277億ドル
(約4兆円)、純利益は、52%減の44億ドル(約6400億
円)になっていますが、4半期連続で前年同期を下回っており、
これは過去10年で初めてのことです。
 そもそも2021年10月28日にフェイスブックがメタに社
名を変更した理由は、直接的には、顧客情報保護をめぐるアップ
ルとの対立です。この事情について、2021年10月29日付
の日本経済新聞は次のように報道しています。
─────────────────────────────
 フェイブックが社名を変更した背景には、同社が世界で36億
人近い利用者を抱える一方、事業基盤を他社に依存している弱み
がある。直近では米アップルがスマートフォンでプライバシー保
護策を強めたことで、主力の広告事業が直撃を受けた。ザッカー
バーグ氏は2021年10月28日もアップルのアプリ配信サー
ビスなどを念頭に「選択肢の乏しさと高い手数料が技術革新を阻
害している」と主張した。   ──2021年10月29日付
       日本経済新聞 https://s.nikkei.com/3DhMe4w
─────────────────────────────
 フェイブックは、交流サイト(SNS)で収集した個人データ
を分析し、利用者の関心に沿った広告を表示するターゲティング
(追跡型)広告で巨額の利益を上げてきたのですが、アップルは
2021年春からアプリによる利用者情報の追跡通知の可否を利
用者に求めると表明。これに対してフェイスブックは、収益源の
広告ビジネスが打撃を受けると猛反対し、シリコンバレーの隣人
同士の争いが泥沼化したのです。この理由について、アップルの
クックCEOは次のように述べています。
─────────────────────────────
 生活の全データが収集され、販売されるのが当たり前になれば
私たちは人間としての自由を失う。──アップル/クックCEO
─────────────────────────────
           ──[ウェブ3/メタバース/022]

≪画像および関連情報≫
 ●Amazon赤字転落、Google減益、Facebook株価暴落/GA
  FAの「この世の春」はなぜ終わったのか
  ───────────────────────────
   2022年になってアップルを除くGAFAの業績悪化が
  顕在化している。業績悪化の原因はそれぞれ異なるようなの
  で、会社別に詳しく見てみよう。
  【アマゾン】
   2022年第1四半期の最終損益は38億ドルの赤字だっ
  た。アマゾンの赤字転落は2015年1〜3月期以来7年ぶ
  り。アマゾンのCEO(最高財務責任者)によると、赤字要
  因はインフレ、生産性低下および過剰設備による60億ドル
  (約8100億円)ものコスト増で、中でも米国外への輸送
  コストはコロナ前の2倍以上に、燃料費は1年前の1・5倍
  になっているそうだ。
   アマゾンは主に単価の低い日用品等を高頻度で小口配送す
  る業態だ。「プライム会員は何回でも配送料無料」という看
  板サービスは(米国内で)10年前の79ドルから、現在は
  119ドルまで値上げしているが、筆者はここに「物流コス
  トの高騰分をストレートに価格転嫁できない」という弱点が
  あるとみている。アマゾンの株価は7月15日終値で113
  ・55ドル。昨年11月18日の最高値から38%も下げて
  いる。コロナパンデミックによる物流の混乱はいまだ続いて
  おり、米国内の人件費高騰、燃料費高騰も長引きそうだ。こ
  れらが解消されるまで同社の収益は不安定な状況が続くだろ
  う。              https://bit.ly/3DpNzX1
  ───────────────────────────
米IT大手の株価/2021.jpg
米IT大手の株価/2021
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2022年11月04日

●「日本でGAFAが生まれない理由」(第5847号)

 ここで考えてみるべきことがあります。日本にはなぜ「GAF
A」が生まれないのでしょうか。
 このことに関連する深刻な事実があります。2018年度に中
央省庁が発注した競争契約の70%が「一者応札」であったとい
う事実です。一者応札とは何でしょうか。
 一者応札は、競争入札において、1者しか応札者がない入札事
例のことで、1者応募ともいいます。これは、とくに官公庁の一
般競争入札において問題視されています。とくに既存システムの
改修案件に関しては1者応札が94%を超えているのです。これ
は1社独占につながるので大問題です。しかし、なぜ、こんなに
高率になってしまうのでしょうか。
 この状態を「ベンダーロックイン」といいます。ベンダーロッ
クインとは、特定の事業者(ベンダー)を利用し続けなくてはな
らなくて、他社の参入が困難な状態のことをいいます。ソフトウ
ェアの機能改修やバージョンアップ、ハードウェアのメンテナン
スなどの情報システムを独自仕様にしていまうと、業者を他社へ
の切り替えすることが難しくなってしまいます。
 なぜこんなことが起きるのかというと、システムの改修を受注
した業者が、過度にカスタマイズを重ねることによって、システ
ムを開発したITベンダー以外が、改修やメンテナンスの受注を
困難にしてしまうからです。
 これによって、NTTデータやNEC、富士通、日立製作所な
どのITゼネコンといわれる大手ベンダーやその子会社によって
受注が独占され、新しいアイデアを豊富に持つスタートアップ企
業が誕生しにくくなってしまうのです。
 さくらインターネット株式会社という企業があります。大阪市
北区に本社を置く、ホスティングサーバーを中心とするデータセ
ンター事業およびインターネットサービス事業を行う企業です。
日本のインターネット黎明期よりホスティングサーバーの提供を
行っており、日本最大手企業です。このさくらインターネットの
社長である田中邦裕氏は、ベンダーロックインについて次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
 ソフトウェアはコピーすれば簡単に大量生産できます。にもか
かわらず、わざわざ一件一件カスタマイズした割高なシステムを
作り上げて売って回って、利益を上げようとする。要は、ソフト
を売っているのではなく、ヒトとモノを売っている。ソフトウェ
ア産業のような顔をしたモノづくり産業のままなんです。
           ──田中邦裕さくらインターネット社長
                  https://bit.ly/3sRNF4X
─────────────────────────────
 確かにソフトウェアはコピーできるし、標準的なOSを利用す
れば、時間の経過によって、ソフトウェアの機能は大幅に向上し
ていきます。それは、1995年に日本にウインドウズ95が導
入された以降のITの発達を見れば、明らかです。このような時
代に、標準的なシステムにあえて背を向けて、特殊なシステムを
作り上げる愚を日本は冒しています。だから、1者応札から脱却
できないのです。
 「iモード」によって世界に先行したはずの「ガラ携」でもそ
うであったように、日本は世界の標準になるようなシステムを作
るのが苦手なのです。だから、カラパゴスといわれるのです。そ
の証拠にアイフォーンの登場によって、日本式ケータイはあっと
いう間に吸収されてしまったではありませんか。ここに、日本に
おけるITのスタートアップが育たない原点があります。
 ところで、さくらインターネットの社長、田中邦裕氏とはどう
いう人物なのでしょうか。
 田中裕也氏は京都の舞鶴工業高校専門学校在学中の1996年
にレンタルサーバー事業を始めています。年齢は18歳です。マ
イクロソフトのビル・ゲイツ氏、フェイスブック(メタ)のザッ
カー・バーク氏が19歳で起業したことを考えると、田中氏は1
年早い。そういう意味で田中邦裕氏は、当時GAFAに一番近い
位置にいたといえます。さくらインターネット創業のきっかけに
ついて、田中氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 創業のきっかけは、高専の級友らに自分が立てたウェブサーバ
を貸してあげたことだったという。自分でサーバを立て、所属す
るロボコンサークルのホームページを作ったら、それがあまりに
楽しいので周囲にもサイト作りを勧め、サーバを貸してあげたら
「同級生の間にあっという間に広がった」。金を払ってでもサー
バを借りたいという友人らの声を聞き、「これはビジネスになる
な」と思ったのだ。
 90年代後半は、日本でIT業界が盛り上がりを見せ始めた時
期だった。田中の創業と同じ96年には、ソフトバンクと米国ヤ
フーが合弁で日本法人のヤフーを設立。ホリエモンこと堀江貴文
(48歳)がライブドアの前身、有限会社オン・ザ・エッヂを設
立したのも96年だった。楽天は97年、サイバーエージェント
は98年の創業である。       https://bit.ly/3sRNF4X
─────────────────────────────
 このように、90年代後半は日本において、多くの企業が誕生
し、IT業界が盛り上がった時期だったのですが、現在生き残っ
ている企業は数えるほどしかいないのです。これについて、田中
社長は、「日本という国はスタートアップがGAFAになろうと
すると、潰す力が加わる」といっています。
 田中社長はその典型的な例として、ライブドア事件を上げてい
ます。ライブドア事件とは、2004年9月期の決算報告に虚偽
があるということで、証券取引法などの違反により、ホリエモン
や取締役が起訴された事件のことです。これによって、堀江貴文
氏は逮捕され、実刑が確定しています。しかし、現在でも何が問
題か堀江氏と検察側の意見は食い違ったままです。
           ──[ウェブ3/メタバース/023]

≪画像および関連情報≫
 ●ライブドア事件の3つの争点/堀江貴文氏の主張
  ───────────────────────────
   そもそもライブドア事件というのは、私は「違法でない」
  と考えております。3つの争点があります。「マネーライフ
  事件」「ファンドでの自社株取引」「架空取引」、この3つ
  の論点があるわけです。
   まず、マネーライフ事件ですが、これは、2006年1月
  16日の強制捜査及びその1週間後の私の逮捕容疑になった
  事件です。マネーライフ事件では、ライブドアファイナンス
  が実質所有していると言われているファンドが持っていたマ
  ネーライフという会社を、バリュークリックジャパンという
  会社に売った時の(マネーライフの)株価の算定方法に、D
  CF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法という方式
  を採っていたのですが、「この企業価値評価が適正でない」
  と検察庁から指摘されています。DCF(ディスカウント・
  キャッシュ・フロー)法 ・・・ 将来発生するキャッシュ
  が、現時点でどのくらいの価値があるのかを算出する手法の
  こと。
   マネーライフは赤字の会社だったのですが、こういった会
  社を売る際に将来伸びるということを前提にして、「『今は
  赤字だけども、将来黒字になってお金をたくさん稼ぐ』とい
  うことまで評価して企業を売買する」というのはベンチャー
  企業の世界では当たり前のことで、米国でも赤字なのに何千
  億円という価値で取引されている会社は山ほどあります。日
  本にもたくさんあります。こういったことを「NO」だと検
  察庁は判断しました。      https://bit.ly/3h8hH1s
  ───────────────────────────
さくらインターネット/田中邦裕社長.jpg
さくらインターネット/田中邦裕社長
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2022年11月07日

●「ソフトウェアが理解できぬ日本人」(第5848号)

 今でもそうですが、日本という国は「もの作り国家」としての
誇りを持っています。これは、日本の国家としての「強み」では
ありますが、世界中でPCが普及しはじめた1990年代以降は
それが日本にとって大きなブレーキになり、成長の足を引っ張っ
ているように思えます。
 1995年にウインドウズ95が発売され、多くの人がPCを
使うようになり、それに備えて、PCの操作を電話でサポートす
る米国のコールセンターの業者が、続々と日本に上陸してきたの
です。しかし、それから数年後、それらの業者は、ほとんど日本
から引き上げてしまっています。何が起きたのでしょうか。
 それは、日本のPCユーザーは、PCのハードウェアやソフト
ウェアの知識に乏しく、電話では業者との対話が成立しなかった
からです。例えば、PCを操作している途中で、PCが動かなく
なったとします。ユーザーがコールセンターに電話すると、コー
ルセンター側は当然PCの現在の状態を聞こうとします。
 しかし、ユーザーは「PCが突然動かなくなった」としか、状
況を説明できないのです。当時のPCのユーザーの多くは、ハー
ドウェアとソフトウェアを一体のもの、すなわち、ハードととら
えており、「動作停止=PCの故障」という発想の人が多かった
からです。つまり、ソフトウェアはPCというハードウェアを動
かすパーツのような存在として見ていたのだと思います。これで
はコールセンターはその役割を果たせないので、空しく引き上げ
てしまったのです。
 もう少し時代を遡って、1985年(昭和60年)という年を
考えてみます。なぜ、1985年かというと、この年の著作権法
の改正で、コンピュータのプログラムが「プログラムの著作物」
(著作権法10条1項9号)として、著作権法の保護の対象にな
ることが決まったからです。
 この年代は、日本の対米輸出が増加し、米国による市場開放圧
力はすさまじかったのです。そのとき、日本が、積極的に輸入関
税撤廃に動いたのが、コンピュータや周辺機器の分野だったので
す。当時日本は「電子立国」を目指していて、その自負もあった
のでしょう。その結果、日本のコンピュータメーカーの対米輸出
は急伸しており、結果として日本の貿易収支は「入超」から「出
超」に転じ、1984年には、日本側の黒字は、20億ドルも増
加しています。
─────────────────────────────
       ◎入超
        輸入額が輸出額を上回ること
       ◎出超
        輸出額が輸入額より多いこと
─────────────────────────────
 当時の通産省(現経産省)もこの状況を見て、これなら輸入関
税を撤廃できると考えたのです。しかし、この判断は、日本とい
う国が、コンピュータというものをいかにハードウェアしか見て
いないかをあらわしています。つまり、ソフトウェアというもの
をハードウェアの一部の部品として見ていたことの証明です。
 すなわち、確かにコンピュータのハードウェアは「出超」でも
ソフトウェアから見ると「入超」だったからです。これではいか
に輸出が伸びても、利益が上がらない、一向に儲からないことに
なります。当時の日本にはソフトウェアという概念はなく、ソフ
トウェアの輸入の統計すらなかったのですが、日銀の「国際収支
統計月報」によると、1984年度の日本の技術貿易収支は16
億ドルの赤字になっています。これは、そのほとんどはおそらく
ソフトウェアだったと思われます。
 かつて日本には、ソフトウェアの概念がなかったことの証明と
もいうべき象徴的なマシン(機械)が存在したのです。それが、
「日本語ワードプロセッサ」です。それは、ハードとソフトが一
体となった日本語の文章を作成するマシンです。
 1977年(昭和52年)にシャープが試作機を開発し、それ
をビジネスショウに出品しています。私はそのマシンを実際に見
ています。しかし、このマシンには、かな漢字変換機能は装備さ
れていなかったのです。
 1985年になると、かな漢字変換機能が装備され、プリンタ
付きのマシンが出現してきています。カシオが「HW100」を
59800円で発売すると、これに対抗して、キャノンが「PW
−10E」を49800円で発売するなど、販売競争が過熱した
のです。マスコミには「電卓競争の再現」として取り上げられ、
ソニー、セイコーエプソンなどの企業も参入して、ますますヒー
トアップしていったのです。
 今から考えると、このワープロ専用機が普及したことが、日本
のデジタル化の遅れの一因になっているといえます。当時欧米の
ほとんどの国が、現在我々が行っているOS上のアプリケーショ
ンとしてワープロを使っているときに、日本では文章を作るマシ
ンを使っていたからです。
 実際このワープロ専用機はなかなか便利なマシンなのです。日
本語タイプライターは、漢字やひらがなの数が多いため、大掛か
りなマシンであり、価格も高いし、操作も煩雑であるのに対し、
ワープロ専用機はタイプライターよりも小さく、漢字変換機能も
装備されており、プリンタも付いているので、日本語の文章を作
成するには、PCよりも非常に便利なマシンだったといえます。
 しかし、このワープロ専用機を使い続けたことにより、PCの
普及が遅れ、、日本としては、このデジタル時代に不可欠である
次の3つのことが欠落してしまう結果になったといえます。
─────────────────────────────
     @PCをハードとソフトの合体として捉える
     Aソフトウェアの概念が欠落してしまうこと
     BOSとアプリケーションの概念が欠落する
─────────────────────────────
           ──[ウェブ3/メタバース/024]

≪画像および関連情報≫
 ●日本のIT業界の失われた50年、人月商売清算の日は近い
  ───────────────────────────
   「要員の高齢化が進むなかで膨大な既存システムのメンテ
  ナンス作業に追われ、新しく生じる経営ニーズに十分応じき
  れないのが実情といわれ、また時間的余裕と適切な教育機会
  の不足等により、急速に発展を続ける技術情報や高度な実務
  的専門知識を取得することすら困難な状況にある」
   「産業社会全体として優秀なソフトウェア技術者が不足し
  ているといいながら、彼らを処遇する方法がいっこうに改善
  されていない。日本のソフトウェア技術者をめぐる問題は解
  決していない」
   いかがだろうか。最初がある調査報告書の文面、次が識者
  のコメントだ。ユーザー企業側、ITベンダー側を問わず、
  技術者なら誰もが「全くその通り」と激しく同意することだ
  ろう。だが同時に「何を今さら、散々言い尽くされてきた事
  を改めて言っているだけではないか」と失笑を漏らすかもし
  れない。実は、これらは1983年、つまり35年前に出版
  された本の一節である。
   『ソフト技術者の反乱・情報革命の戦士たち』(下田博次
  著、日本経済新聞社刊)。最近、この本を自宅の本棚の中か
  ら見つけた。ほこりを被った本棚を掃除しようと、最初に手
  に取ったのがこの本だった。明らかに未読。パラパラとペー
  ジをめくって目にとまったのが、冒頭で紹介した2つの見解
  だ。予想できたこととはいえ、今の技術者の状況と瓜二つ、
  寸分たがわない。       https://bit.ly/3UqN5qr
  ───────────────────────────
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日本語ワードプロセッサ/HW100
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2022年11月08日

●「日本のベンチャー投資は少ないか」(第5849号)

 このセッションでは、なぜ、日本ではGAFAが生まれないの
かについて考えています。
 さくらインターネットの田中邦裕社長は、1985年の著作権
法の改正で、コンピュータのプログラムが著作権法の保護の対象
になった時点で、日立、NEC、富士通などの日本の巨大ITベ
ンダーは、ソフトウェア会社に転換すべきではなかったかと問い
かけています。その理由について田中社長は、次のように意見を
述べています。
─────────────────────────────
 ソフトウェアなしにはコンピューターは動かない。しかも、ソ
フトウェアはオンラインで簡単に配布でき、一度開発すれば無限
にコピーでき、著作権法で守られている。限界費用が限りなくゼ
ロに近くて、ものすごく効率がいい。だから、ソフトウェアを自
社で持っている会社はうまくいきましたよね。
 例えば、独立系システムインテグレーターのオービックは、自
社開発の会計ソフトなどパッケージソフトが好調で、時価総額は
1兆8000億円。これはNECより高い。
            ──さくらインターネット田中邦裕氏
                  https://bit.ly/3U69JEF
─────────────────────────────
 田中社長が激白するのは、巨大ITベンダーである日立、NE
C、富士通などが、ソフトウェア産業ではなく、ソフトウェア製
造業になってしまっているからです。年間2兆円近い国や地方自
治体のIT調達の多くは、ITゼネコンと化しているソフトウェ
ア製造業の日立、NEC、富士通などの巨大ITベンダーが受注
しています。これがベンダーロックインを招き、極めて割高な発
注になってしまっている。これでは、中小のIT企業、ましてス
タートアップ企業には資金は回らない。これについて田中社長は
さらに次のように批判しています。
─────────────────────────────
 ソフトウェア産業とソフトウェア製造業は全く違う商売。だが
日本では、ソフトウェア製造業ばかりに金が集まるので、そこに
安住し、本当のソフトウェア産業に生まれ変わろうとはしなかっ
た。IT企業を名乗りながら、売っているのはモノと人。ソフト
ウェアは海外からの借りもののまま。これでは、いつまでもイノ
ベーションは生まれない。──さくらインターネット田中邦裕氏
                  https://bit.ly/3U69JEF
─────────────────────────────
 日本では、巨大ITベンダーがベンダーロックインを招き、中
小IT企業やスタートアップ企業に資金が回らないことに加えて
そもそも日本のベンチャー投資額が他国に比べて非常に低いこと
が上げられます。
 7万社のベンチャー企業の資金調達データを持つオランダの調
査会社、ディールームの資料によると、2021年の国別のベン
チャー投資の流入額は、1位は米国の3761億ドル(約49兆
円)で、全体の62%を占めて圧倒的です。2位は中国の611
億ドル、3位はインドの477億ドルです。
 日本は11位の35億ドルで全体に占める割合は、0・57%
でしかないのです。米国の100分の1です。これは、英国、ド
イツ、フランス、スウェーデンなど欧州各国よりも低い。
 米国には、世界の羨望のマトになっているベンチャーキャピタ
ルが存在します。ベンチャーキャピタルとは、基本的には、新興
企業の事業計画と人材の質について、念入りに評価をくだし、潜
在的な成長力が大きいとみなせた企業に初期段階で投資します。
 ある聡明な起業家が新しいウェブサービスのアイデアを思い付
いたとします。しかし、このアイデアは2%の確率で大成功を収
めるが、失敗する確率は98%であるとします。
 銀行は、資金の回収のことを最優先に考えるし、これらの新興
企業は、質の高い担保も提供できないので、この種のビジネスに
は関心を示さないはずです。しかし、もしその企業が成功した場
合、当然ですが、その恩恵に浴せないことになります。
 この場合のベンチャーキャピタルの考え方について、米国の経
済学者のタイラー・コーエン氏は次のように説明しています。
─────────────────────────────
 ベンチャーキャピタルは、成功の確率が乏しいことを承知のう
えで投資をおこない、成功した場合に恩恵を手にする。ベンチャ
ーキャピタルは、何十社、時には何百社にも投資する。その大半
が失敗しても、ごく一握りが成功するだけで十分な利益を得られ
ると考えているのだ。ベンチャーキャピタルが新興企業に提供す
るのは、資金だけではない。専門知識や経験を提供する体制も整
えている。助言や指導、メンタリングや監督もおこなう。
 シリコンバレーのベンチャーキャピタルが最も力を入れるのは
新興企業の人材の質を見極めること、そして、投資先企業が優れ
た人材を採用し、適切な取締役をそろえ、有用な人的ネットワー
クをはぐくむのを支援することだ。有能なベンチャーキャピタリ
ストは人を見る目が肥えていて、人と人とを結びつけ、ほかの人
たちの活動を後押しすることに長けている。投資を通じて創造的
活動に人材を結集させ、大きな成果を生み出させているのだ。こ
の点で、ベンチャーキャピタルは、人々の能力を最大限発揮させ
る役割を果たしていると言える。   https://bit.ly/3NFADRK
─────────────────────────────
 ベンチャーキャピタルとIPOは、米国の資本主義システムの
なかで銀行融資や債券市場とともに、資金が流れる企業を選別す
る役割を果たしています。IPOは、株を投資家に売り出して証
券取引所に上場することをいいます。
 しかし、日本は、長い間にわたって、「ゾンビ銀行」や「ゾン
ビ企業」を生き延びさせてきています。これでは、新しいビジネ
スに資金が流れにくくなるのです。ベンチャーキャピタルを増や
し、的確に資金を提供する必要があります。
           ──[ウェブ3/メタバース/025]

≪画像および関連情報≫
 ●日本ではスタートアップ企業が育たない。その深刻な理由
  ───────────────────────────
   日本では、年間40万人にも及ぶ人口減が問題として騒が
  れているが、実は企業数も急激に減少している。2017版
  中小企業白書によると、99年には484万社あった企業数
  が、09年には421万社へ、さらに14年には382万社
  へと減っている。15年間で実に100万社以上の減少であ
  る。09年から14年で見ると、開業数は66万社、廃業は
  113万社であった。中小企業の経営者の高齢化が進んでい
  ることを考えると、廃業数が増えるのは仕方がない。問題は
  開業数が増えないことである。特に、将来の大企業に発展し
  ていく可能性のあるIT、バイオテクノロジー、ロボティッ
  クス等のスタートアップ企業の不足は深刻である。
   なぜ、日本でスタートアップが育たないのか。
   まず考えられるのは、ベンチャー・キャピタルが育ってい
  ないことである。ベンチャー企業の16年の資金調達額は、
  2099億円、そのうち950億円をベンチャー・キャピタ
  ルが占めている。14年の資金調達額が1390億円、15
  年は1716億円であったから、順調に伸びてきていること
  は間違いない。しかし、アメリカの状況と比較してみると、
  その差に愕がく然ぜんとする。 https://bit.ly/3zKSTTR
  ───────────────────────────
日本のベンチャー投資額/米国の100分の1.jpg
日本のベンチャー投資額/米国の100分の1
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2022年11月09日

●「GAFAの対抗勢力は出現しない」(第5850号)

 2022年10月6日付の日本経済新聞に、GAFAに関する
次の記事が掲載されています。
─────────────────────────────
◎クラウドにも不況の足音/アマゾン採用凍結
【シリコンバレー=佐藤浩実】高成長を続けてきたクラウドコン
ピューティング基盤の市場に変調の兆しが出てきた。7〜9月期
は市場の成長率が3割を下回り、最大手の米アマゾン・ドット・
コムは採用凍結に動く。金融引き締めによる景気後退やインフレ
の長期化を警戒する顧客の倹約姿勢が「不況に強い」とされるク
ラウドにも影響を及ぼし始めた。
         ──2022年10月6日付の日本経済新聞
─────────────────────────────
 現在、米国は急速なインフレに見舞われ、不況が懸念されてい
ます。といっても、アマゾンの場合、7〜9月期のAWSの売上
高が、前年同期比27%増の205億ドル(約3兆円)を維持し
ています。
 しかし、4〜6月期と比べて伸び率は6ポイント落ちており、
今後成長率は20%台半ばまで下がるとみられています。想定よ
りも減速が急ピッチであることから、採用凍結に踏み切ったもの
と考えられます。
 しかし、不況になると、企業は自社設備への投資を控えてクラ
ウドに切り替える企業が多くなることが予想され、成長率は20
%台を維持できるものの、その分競争が激化し、値引きも広がる
ので、利益率が下がることが考えられます。
 さて、なぜ、日本にはGAFAが誕生しないのかの話を続ける
ことにします。実は米国でもヨーロッパでも、フェイスブックが
IPOする前後は、第2のGAFAに憧れて、SNSベンチャー
やクラウドアーカイブや動画配信企業などが多く誕生しています
が、そのほとんどは撤退しています。もちろん、ユニークなもの
は、GAFAに買収され、GAFAの一部になっています。なぜ
生き残れないのかについては、次の3つの理由があります。
─────────────────────────────
     @データーセンターの費用が莫大である
     Aユーザーを増加させるのが困難である
     B事業の収益化戦略が極めて困難である
─────────────────────────────
 第1は「データーセンターの費用が莫大である」ことです。
 多くの若手起業家は、ウェブサービスに、そんな巨大なデータ
ーセンターが必要であるとは考えていないのです。クラウドサー
ビスを利用する方法がないわけではないが、割高なコストがかか
り、自社デ―ターセンターを持つ同業他社にコスト面で太刀打ち
できないことは明らかです。
 なぜ、データセンターが必要かについて深田萌氏は、自著で次
のように述べています。
─────────────────────────────
 クラウドサービスを本気で始めれば、サーバーの数が足りない
どころの話ではない。皆さんが投稿するデータ、写真から動画ま
で保管するわけなので、ストレージがたくさん必要だ。
 そのストレージにアクセスするサーバー、そのサーバーを繋ぐ
ゲートウェイ、そこから外に出て行く回線、回線費用があって、
その電力を賄わなければならない。さらに電力を使っているから
データセンターの中はとても熱くなる。熱くなると、ハードウェ
アは不具合を起こすので、今度はガンガン冷却しなければいけな
い。冷却の電気代を節約しようとすれば、寒い地方にデータセン
ターを作らなければならない。東北や北海道にデータセンターを
作るのはそのためである。      ──深田萌絵著/宝島社
     『メタバースがGAFA帝国の世界支配を破壊する』
─────────────────────────────
 現在、GAFAMは、米アリゾナ州で相次いで巨大データセン
ターを建設しています。フェイスブック(メタ)は、アリゾナ州
の州都フェニックスに近いメサ市に8億ドルをかけてデーターセ
ンターを構築すると発表しているし、グーグルも同市に10億ド
ルを投じてデーターセンターを建設中です。なお、メサ市には、
アップルも130平方フィートのデーターセンターや運用管理セ
ンターを建設しています。さらにマイクロソフトもアリゾナ州に
マイクロソフト・アジュールの新リージョンを開設するという具
合で、砂漠の都市アリゾナ州では目下GAFAMのデーターセン
ターの建設ラッシュです。
 なぜ、砂漠に作るのかというと、太陽光発電を使うので、脱炭
素図れるからです。しかし、データーセンターは、1日に400
万ガロン(約1510万リットル)の水を使うので、深刻な干ば
つに見舞われているメサ市では、データーセンターは迷惑施設扱
いにされているといわれます。
 第2は「ユーザーを増加させるのが困難である」ことです。
 これらデーターセンター建設費用や維持費は、ベンチャーキャ
ピタルから資金を集めるしかありませんが、ベンチャーキャビタ
ルは、技術力よりもユーザー数を重視します。しかし、ユーザー
数を増やすには、先行のGAFAが既に集めているので、大きく
ユーザー数を伸ばすのは困難です。
 2021年5月にメサ市議会はフェイスブックによるデータ−
センター建設計画について審議し、このデーターセンターが1日
につき、175万ガロン(約660万リットル)の水を冷却用に
使うとして、建設に反対する意見が出されたといわれます。
 第3は「事業の収益化戦略が極めて困難である」ことです。
 もともとGAFAのビジネスモデルの収益化には時間がかかる
のです。しかも、GAFAが既に存在している状況での後発のビ
ジネスでの収益化はさらに困難です。GAFAは既に先行の利を
得ており、GAFAと同じようなビジネスでは成功させることは
きわめて困難であるといえます。
           ──[ウェブ3/メタバース/026]

≪画像および関連情報≫
 ●進化するDCに最適な運用が求められる
  ───────────────────────────
   従来、DC(データーセンター)には社会システムを支え
  る「安定性」、運用コスト面での「経済性」、そして省エネ
  実現による「環境性」が求められてきた。「これに対し新型
  コロナウイルスが社会活動に甚大な影響を及ぼす中で、DC
  にも新しい役割が求められるようになってきました」とJD
  CCの藤巻秀明氏は指摘する。それは、企業などに浸透する
  テレワークの基盤となり、そこでの新たな情報の共有や伝達
  手段を提供し、次世代ワークスタイルの実現を支援していく
  ということだ。
   こうした要件を受けて、単独DCによる高信頼性の追求か
  ら複数DCの利用によって可用性を担保するという運用形態
  が増加する一方、ネットワークハブDCの重要性も高まって
  いる。例えば、5Gの基盤を念頭にGAFAに代表されるハ
  イパースケーラーが、キャリアの統括局にエッジDCを展開
  するという動きも顕著だ。さらに、ハイブリッドクラウドの
  本格的普及に対応してDC間の閉域網接続による運用も拡大
  している。また、ハイパースケーラーが自社のクラウド基盤
  をラック単位で顧客のプライベートクラウドのDC内に展開
  するといった動きも見られるという。
   こうしたDCの形態の変化に伴い、当然、新たな運用スタ
  イルが必要になる。「JDCCではDC運用の標準マニュア
  ル化を進めており、プロアクティブなキャパシティ管理の考
  え方やインシデント発生時の標準手順の作成法、高効率運用
  技術、パンデミック対策など基本部分に加え、新たなDCの
  形態に即した運用の在り方を解説する『データセンター運用
  ガイドブック』を2020年12月に上梓。ぜひご活用いた
  だければと思います」と藤巻氏は語る。
                https://nkbp.jp/3E6n6iW
  ───────────────────────────
フェイスブックメサデーターセンター完成図.jpg
フェイスブックメサデーターセンター完成図
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2022年11月10日

●「日本ではGAFAMは誕生しない」(第5851号)

 「ウィナー・テイクス・オール/Winner takes all」という言
葉があります。「一人勝ち」「勝者総取り」という意味です。元
来選挙用語──とくに米国の大統領選挙において使われている用
語です。州での勝者がその州の代議員を総取りする仕組みです。
 この現象が米国でGAFAにおいて起きているのです。GAF
Aは、高いシェアと売上高を獲得し、結果としてビッグデータを
取得する。そしてGAFAは、それらを駆使しながらさらに新し
いソリューションをユーザーに提供し、ますますシェアを伸ばし
不動の地位を確立するという「ウィナー・テイクス・オール」が
実現されつつあります。
 したがって、日本にGAFAのような企業が生まれないのは、
当然であるといえます。先行者利益が大きいので、同じような企
業は育たないのです。これについて、カルフォルニア大学バーク
レー校のスティーヴン・ヴォ―ゲル教授は、ベンチャーキャピタ
ルや活発な労働市場の土台がない日本ではGAFAは育たないと
して、次のように述べています。
─────────────────────────────
 日本にGAFAがないことは、賃金停滞の一要因かもしれませ
んが、主要因、ましてや最大の要因だとは思いません。繰り返し
ますが、GAFAがあるのは米国だけだからです。中国には独自
のテック大手がありますが、それは、国内市場が巨大で閉鎖的だ
という理由によるものです。
 欧州にもGAFAはありませんが、欧州経済はGAFAなしで
も大丈夫でしょう?韓国では日本を上回る賃上げが見られますが
韓国にもGAFAはありません。日本は独自のGAFAを持たず
とも賃金と経済成長を押し上げる大きな可能性を秘めています。
 日本が第2のシリコンバレーを目指し、うまくいかなかったか
らといって、ほかの分野でもだめだというわけではありません。
米国モデルを真似るのではなく、独自の道で、成功を目指すべき
です。もちろん、日本がデジタル革命のリーダーだったとしたら
生産性の大幅な上昇に伴い、賃金も上がっていたことでしょう。
しかし、そのようなシナリオは描きにくいうえに、そうした道を
目指すことが日本にとって最も生産的な戦略だとも思いません。
   ──「プレジデント・オンライン」/2022年6月8日
                  https://bit.ly/3Ut8teL
─────────────────────────────
 スティーヴン・ヴォ―ゲル教授は、日本はデジタル化など、不
得意な分野で勝負しようとせず、得意な分野で力を発揮すべきで
あるといっています。かつての日本や日本経済は、イノベーショ
ンに溢れていたと教授はいいます。ひとつ例を上げるならば、現
在、世界中に浸透している自動車の製造モデルは、トヨタ式の日
本型モデルを基準にしています。自動車の先進国の米国でさえト
ヨタ式を取り入れています。これはとても凄いことであるといえ
ます。とにかく日本は、製造業の分野においては、見事なまでイ
ノベーティブであったと教授はいいます。
 ところが世界第2の経済大国になった頃から、日本はイノベー
ション力を失っているようにみえます。どうしたのでしょうか。
豊かな国になったので、気が緩んでしまったのでしょうか──ス
ティーヴン・ヴォ―ゲル教授はこのようにいっています。
 日本のデジタル化について、スティーヴン・ヴォ―ゲル教授は
次のように日本にアドバイスしています。とても的確な指摘であ
ると思います。
─────────────────────────────
 米国のデジタル革命は、ユーザー側から推し進められたもので
す。それがインターネット革命の本質なのです。米IBMや米通
信大手のAT&Tがトップダウンでできるものではありません。
顧客のソフトウェア企業やメガバンクなどが、情報システムを使
うための新しいアプリや方法を生み出し、ボトムアップで進んで
いったのがデジタル革命なのです。
 日本には、ボトムアップ型のデジタル革命が必要です。日本は
米国のように、デジタル革命の配当をめいっぱい享受するところ
までいっていません。デジタル革命は生産性を高めますが、革命
が道半ばであれば、生産性の上昇も道半ばです。
 日本はデジタル化を進めるべきです。それもかなり積極的に。
それには、ソフトウエア・エンジニアを増やす必要があります。
もっと多くの人々がプログラミングを学ぶべきです。
             ──スティーヴン・ヴォ―ゲル教授
                 https://bit.ly/3WAHfVg
─────────────────────────────
 岸田内閣は「リスキリング(学び直し)」を強化する政策を推
進しようとしていますが、それなら、スティーヴン・ヴォ―ゲル
教授がいうように、プログラミングを強化すべきです。「国民総
プログラミング」ぐらいの気持ちでやるべきではないかと思いま
す。そうすれば、日本のデジタル化は一挙に進みます。
 ところで「リスキリング」とは何でしょうか。
 リスキリングとは、新しい職業に就くために、あるいは今の職
業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要な
スキルを獲得する、獲得させることをいいます。岸田首相は「労
働移動を促しながら、就業者のデジタル分野などでのリスキリン
グ支援を大幅に強化する」といい、そのために「5年で1兆円を
注ぎ込む」と言明しています。
 「リスキリング」と似た言葉に「リカレント教育」というのが
あります。リカレント教育とは、一旦仕事から離れて、大学や専
門学校などの教育機関で学ぶことを意味しています。したがって
リカレント教育は、多くの場合、「従業員が自主的に別のスキル
を学ぶ」ことを意味しています。これに対して、リスキリングの
場合は、仕事から一旦離れるのではなく、業務と並行しながら必
要なスキルを身につけていきます。これを多くの国民が生かせれ
ば、日本はかつてのイノベーティブな力を取り戻せるはずです。
           ──[ウェブ3/メタバース/027]

≪画像および関連情報≫
 ●岸田政権が注力する「リスキリングで資格取得」の時代錯誤
  本来学ぶべきスキルとは
  ───────────────────────────
   今年、ビジネス分野で注目されている言葉のひとつが「リ
  スキリング」だ。社会人が、市場のニーズや成長分野のビジ
  ネスに対応できるよう、新たなスキルを身につけることであ
  る。岸田政権も“人への投資”に大きな予算を振り分ける方
  針を打ち出し、「リスキリング支援」に1兆円を投じること
  を示した。だが、経営コンサルタントの大前研一氏は「岸田
  政権の唱えるリスキリングでは経済成長につながらない」と
  指摘する。
   岸田文雄首相は開会中の臨時国会の所信表明演説で、個人
  のリスキリング(成長分野に移動するための学び直し)に対
  する公的支援に「5年間で1兆円」を投じると表明した。も
  ともと政府は6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基
  本方針(骨太の方針)」の中で「人への投資」に3年間で、
  4000億円規模の予算を投入するとしていたが、そのパッ
  ケージをさらに拡充することにしたのである。
   主要な経済誌も、こぞって大特集を組み、官民挙げてリス
  キリングやリカレント(社会人になっても、それぞれのタイ
  ミングで学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていく
  こと)、資格取得のブームを盛んに煽っているが、その中身
  は噴飯物である。なぜなら、そこで主に勧めているのは公認
  会計士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、宅
  地建物取引士、不動産鑑定士、中小企業診断士、建築士など
  のいわゆる「サムライビジネス(士業)」だからである。こ
  れらは国家資格であり、各分野の専門知識の記憶力を問う試
  験に合格すれば取得できる。  https://bit.ly/3TgIeam
  ───────────────────────────
スティーヴン・ヴォ―ゲル教授.jpg
スティーヴン・ヴォ―ゲル教授
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2022年11月11日

●「日の丸半導体の大躍進の80年代」(第5852号)

 「日本はかつて製造業において、見事なまでイノベーティブで
あった」──スティーヴン・ヴォ―ゲル教授の言葉です。教授は
例として、トヨタ式の自動車製造モデルを上げていましたが、そ
れだけではないのです。1980年代から1990年代は、半導
体の分野においても日本の天下だったのです。
 添付ファイルをご覧ください。これは1971年から1996
年までの半導体メーカーの売上高ランキング(ベスト10)を示
したものです。1986年、1989年、1992年、1996
年のベスト5を以下に示します。日本勢が圧倒的です。
─────────────────────────────
     1986年 1989年 1992年 1996年
  1位   NEC   NEC  インテル  インテル
  2位    日立    東芝   NEC   NEC
  3位    東芝    日立    東芝 モトローラ
  4位 モトローラ モトローラ モトローラ    日立
  5位    TI   富士通    日立    東芝
         註:TI:テキサス・インスツルメント社
─────────────────────────────
 1970年代から1980年代にかけて、半導体製造における
日本企業の進出は驚くべきものだったといいます。日本勢──N
EC、日立、東芝、富士通の各社は、まさに破竹の勢いで驀進し
米国のモトローラ、フェアチャイルド、テキサツインスツルメン
トを駆逐し、上位独占を果たしています。
 実は、その中にインテルも入っています。そもそもインテル社
は半導体メモリの分野で先行し、世界初のSRAMとDRAMを
製造しています。
─────────────────────────────
      ◎1969年 4月
       世界初のSRAM3101を発表
      ◎1970年10月
       世界初のDRAM1103を発表
─────────────────────────────
 しかし、インテルは1985年10月にDRAM事業から撤退
し、CPUの開発・生産に経営資源を集中しています。撤退の理
由は、日本企業の怒涛のような進出です。当時の日本企業はそれ
ほど強かったのです。
 インテルという企業は、1968年7月18日、フェアチャイ
ルドセミコンダクタを退職したロバート・ノイス、ゴードン・ム
ーアらが設立し、3番目の社員として入社したのがアンドルー・
グローヴです。当初は半導体メモリを主力製品とし、磁気コアメ
モリの置き換えと駆逐を目的としたのです。
 それがどうして半導体メモリから撤退することを決断したのか
について、今では入手不能のゴードン・ムーア氏の著書『インテ
ルとともに──ゴードン・ムーア/私の半導体人生』(日経BP
M)に次のように記述されています。きわめて示唆に富む内容で
あるので、少し長いがご紹介します。
─────────────────────────────
 85年の初めのことだ。グローブ社長といよいよDRAM工場
を着工するかどうか、最終的な話し合いをすることになった。グ
ローブ社長は私に、「もし、あなたがインテルを経営するために
外部からスカウトされてきた経営者だったとしたら、DRAMへ
の投資をするだろうか」と尋ねてきた。
 「いいやそうはしないだろう」。私はこう答えた。「私もそう
だ」。グローブ氏もこう言い、インテルのDRAMからの撤退が
決まった。決断は本当につらかった。繰り返しになるが、DRA
Mこそインテルの第一歩だった。それに誰だって劣勢に立たされ
た市場から撤退することを望むはずもない。市場でとても高い評
価を得てもいた。しかしわれわれには明らかによりビジネス的に
魅力のある他の製品があったし、DRAM生産にそれほど大きな
投資をするだけの条件も揃っていなかった。一定のシェアを確保
して大手の一角に人らなければ、事業に関わるメリットはないと
判断せざるをえなかった。
 米国には80年代半ばまで8社のDRAMメーカーがあった。
日本企業の攻勢と半導体不況で1社、また1社と撤退に追い込ま
れていった。インテルもこの「撤退組」の仲間入りをすることに
なった。
 米企業で踏みとどまったのは、DRAM専業で選択肢のなかっ
たマイクロン・テクノロジーとDRAM生産の中核部隊を日本に
移していたテキサス・インスツルメンツの2社だけとなった。
           ──ゴードン・ムーア著/日経BPM刊
/『インテルとともに──ゴードン・ムーア/私の半導体人生』
─────────────────────────────
 日本勢の進出によって名だたる米国の半導体メーカーが次々に
撤退に追い込まれる──GAFAに席巻されている日本企業しか
見ていない現代の若い人の知らない出来事です。2000年以前
にはこんなことがあったのです。
 スティーヴン・ヴォ―ゲル教授がいう「日本はかつて製造業に
おいて、見事なまでイノベーティブであった」というのは、この
ことを指しています。
 しかし、2000年以降の日本は、経済の面でも技術の面でも
サッパリで、デフレの底に沈んでいます。私は現在でもあるIT
企業で新入職員にIT技術を教えていますが、そのさいに、必ず
いっているのは「技術の歴史を調べよ」ということです。
─────────────────────────────
 優れたエンジニアになりたければ、技術の歴史について学ぶべ
きです。歴史とはいい換えれば「他人の経験」ですが、人間は言
語と想像力を駆使することにより、他人の歴史を疑似的に体験で
きるからである。
─────────────────────────────
           ──[ウェブ3/メタバース/028]

≪画像および関連情報≫
 ●日本の半導体はなぜ沈んでしまったのか?
  ───────────────────────────
   1980年代にアメリカを追い抜き世界一だった日本の半
  導体はアメリカにより叩き潰され、その間、韓国が追い上げ
  た。土日だけサムスンに通って破格的高給で核心技術を売り
  まくった東芝社員の吐露を明かす時が来た。
   1980年代半ば、日本の半導体は世界を席巻し全盛期に
  あった。技術力だけでなく、売上高においてもアメリカを抜
  いてトップに躍り出、世界シェアの50%を超えたこともあ
  る。特にDRAM(Dynamic Random Access Memory)は
  日本の得意分野で、廉価でもあった。
   それに対してアメリカは通商法301条に基づく提訴や反
  ダンピング訴訟などを起こして、70年代末から日本の半導
  体産業政策を批判し続けてきた。
   「日本半導体のアメリカ進出は、アメリカのハイテク産業
  あるいは防衛産業の基礎を脅かすという安全保障上の問題が
  ある」というのが、アメリカの対日批判の論拠の一つであっ
  た。日米安保条約で結ばれた「同盟国」であるはずの日本に
  対してさえ、「アメリカにとっての防衛産業の基礎を脅かす
  という安全保障上の問題がある」として、激しい批判を繰り
  広げたのである。こうして1986年7月に結ばれたのが、
  「日米半導体協定」(第一次協定)だ。
                  https://bit.ly/2SzCr5g
  ───────────────────────────
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2022年11月14日

●「次世代半導体製造会社が誕生する」(第5853号)

 2022年11月11日の日本経済新聞のトップ記事は、日本
が誇るトップクラスの8社、トヨタ自動車、NTT、ソニーグル
ープ、NEC、ソフトバンク、デンソー、キオクシアホールディ
ングス、三菱UFJ銀行が新会社「ラピダス」を設立し、202
0年代後半に向けて、半導体製造技術の確立を目指すというもの
です。当然政府も補助金を拠出し支援します。
 11月11日のEJでは、2000年以前の日の丸半導体の活
躍について書いたばかりなので、これは将来に希望の持てるニュ
ースですが、あまりにも遅過ぎの感があります。それでもチャレ
ンジすることには意味があります。
 こういう記事が出た機会に、半導体について、少し述べること
にします。メタバースとも関係があります。現在、半導体におい
て日本がどういうポジションに置かれているかを知ることには、
意味があると思います。
 そもそも「半導体」(semiconductor)とは何でしょうか。
─────────────────────────────
 @導 体 → 電気を通すもの
        金・銅・アルミ・鉄など
 A不導体 → 電気を通さないもの
        ゴム・石英ガラス・セラミックス・雲母など
 B半導体 → ある条件下では電気を通し、特定の条件下で
        は電気を通さないもの
        シリコン、カーボン、ゲルマニウムなど
─────────────────────────────
 半導体の世界には紛らわしい言葉がたくさんあります。ICと
いう言葉があります。ICとは、「集積回路」のことです。IC
(integrated circuit)は、半導体の表面に微細かつ複雑な電子
回路を形成した上で封入した電子部品のことです。これがICで
すが、一般的にICというときは、「半導体集積回路」を意味し
ています。CPUも半導体集積回路であり、ICであるというこ
とです。なお、ICには「SSI」と「LSI」がありますが、
SSIは小規模な集積回路のことであり、LSIは大規模な集積
回路を意味しています。
 今回新会社「ラピダス」が製造を目指す「ロジック半導体」と
いうのは、データ処理を担う「ロジック(論理素子)」といわれ
る集積回路のことです。ロジック半導体は、回路を微細にして計
算を担うトランジスタの数を増やし、その能力を向上させてきて
います。現在、アイフォーンに搭載されている最先端チップには
160億個のトランジスタが敷き詰められています。
 ロジック半導体の性能は、回路の幅が微細なほど性能が高くな
ります。半導体はnm(ナノメートル)という単位を使いますが
1ナノメートルは10億分の1メートルのこと。1ミリメートル
の1000分の1の1マイクロメートルのさらに1000分の1
が1ナノメートルということになります。
 車に使う半導体の場合、28nm、40nm、65nmのもの
ですが、これは5世代前の古い技術です。「ラピダス」が製造を
目指す「ロジック半導体」は、「ビヨンド2ナノ」であり、とて
つもない高度な技術が必要になります。
 現在、5ナノメートル以下のロジック半導体は、台湾のTSM
C(台湾積体電路)と韓国のサムソン電子でしか製造できず、日
本の技術レベルは、40ナノメートルで止まっています。それを
新会社が2ナノ以上にしようというですから、途方もなく高い目
標であるといえます。
 ちなみに半導体には、ロジック半導体のほかに、メモリーやセ
ンサーがあります。メモリーについては、東芝の半導体メモリー
事業を分社化して設立されたキオクシアがNAND型フラッシュ
メモリー生産していますし、センサーについてはソニーが強く、
なかでもイメージセンサーはソニーの独壇場です。
 さらに、2021年6月に日本は、半導体などデジタル基盤を
強化するため、TSMCを日本に誘致することが決まっており、
2024年から稼働することになっています。米国もアリゾナ州
に、TSMCの3ナノメートル製造プロセスの工場建設をを進め
ています。経済安保の一環です。
 しかし、一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏は、TSMCを日本
に誘致する計画について若干疑問を持っているようです。なぜな
ら、日本の半導体産業衰退の原因は、技術者の質ではなく、経営
者の質であるとして、次のように述べています。
─────────────────────────────
 1980年代、日本はメモリーで世界の半分を生産、日米半導
体摩擦を起こすまでになった。私の大学の同級生は半導体関係の
仕事についた者が多かったのだが、日本の半導体は、生産面で強
いだけでなく、国際学界でも世界一と誇らしげに語ってくれた。
それを思い出すと、いまの日本の惨状は信じられない。では、ど
うしたら、この状態から脱却できるのだろうか?
 そのための鍵は、半導体製造装置産業を分析すると、見いだす
ことができるように思う。日本の競争力は、半導体では落ちたが
その製造装置では依然として強く、世界シェアも高い。例えば、
半導体テスター最大手のアドバンテストは、海外売上比率は92
%前後だ。東京エレクトロンは85%だ。これら半導体製造装置
メーカーに共通するのは、大手総合電機メーカーから独立してい
ることだ。大企業の一部ではなく、世界の半導体メーカーを相手
にして技術開発に励んできた。そして、世界的水平分業の一環と
しての地位を築いた。つまり、日本の半導体産業衰退の原因は、
技術者の質ではなく、経営者の質であり、不適切な経営戦略だっ
たのだ。そこに手をつけない限り、いくら金を出して最先端ファ
ウンドリーを誘致しても、日本の半導体産業が復活することはな
いだろう。         ──野口悠紀雄一橋大学名誉教授
                  https://bit.ly/3E4tHJ8
─────────────────────────────
           ──[ウェブ3/メタバース/029]

≪画像および関連情報≫
 ●“日の丸半導体”復活なるか 経産省が『キオクシア』に
  巨額補助
  ───────────────────────────
   「半導体サプライチェーン(供給網)の強靭化や、半導体
  産業の発展に貢献することが期待されている。経済産業省と
  しても、関連人材の確保を含め、地方自治体や関係省庁と連
  携しつつ、しっかりと伴走していく」──こう語るのは、経
  済産業大臣の萩生田光一氏(当時)。
   経済産業省は、半導体大手キオクシアや、協業の米ウエス
  タンデジタルが、三重県四日市市に建設する新たな生産設備
  (第7製造棟)に対し、最大929億円を補助することを決
  めた。経済安全保障上、不可欠な半導体を国内で安定して生
  産できる体制をつくることが目的だ。
   政府は6月に、ファウンドリー(半導体受託製造)世界最
  大手の台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に建設する新
  工場に対して、最大4760億円を補助することを決定。今
  回が巨額助成の第二弾となる。
   キオクシア社長の早坂伸夫氏は「日本政府からの支援に感
  謝している。経済安全保障の観点において重要な半導体であ
  る最先端フラッシュメモリの安定的な国内生産を継続し、国
  内・地域経済や半導体関連産業の発展に貢献していく」との
  コメントを発表。主力の3次元フラッシュメモリや、次世代
  製品の開発・生産を目指すことになる。
                 https://bit.ly/3toMMRC
  ───────────────────────────
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半導体メーカー/世界ランキング2021
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2022年11月15日

●「TSMC日本への誘致/真の理由」(第5854号)

 次世代半導体の国産化を目指す共同出資会社「ラピダス」の話
の続きです。実は、国(経済産業省)が主導する半導体のこのよ
うなプロジェクトは初めてのことではないのです。1999年に
NECと日立製作所が半導体メモリー事業を統合して「エルピー
ダ」という企業を立ち上げています。
 1999年というと富士通が、2001年には東芝が、DRA
M事業から撤退しています。そのような年にエルピーダは三菱電
機のDRAM事業を譲受して、国内最後のDRAMメーカーとし
て日の丸を背負ったのです。
 しかし、当時の急激な円高もあって、韓国サムスン電子などと
の競合に敗れ、2012年2月27日に会社更生法を申請し、経
営破綻してしまったのです。日本は、どちらかというと、米国の
ように、このような国家プロジェクトを運営することは、あまり
得意ではなく、ここまで何回も失敗を重ねてきています。
 今回のプロジェクトでも、次世代半導体の量産化を始めるまで
に5兆円規模の資金が必要であり、出資企業からは「これまでの
ように、金をドブに捨てることにならないよう、しっかりと今後
の展開を見ていく必要がある」という慎重な意見があることは確
かです。今回だけは失敗は許されないのです。
 1980年代の日本の半導体ビジネスは、シェアを50%を取
るなど破竹の勢いでしたが、これを潰したのは米国です。具体的
には「日米半導体協定」の存在です。この協定は1986年から
1996年まで日本を縛ったのです。この協定によって、日本は
次のような不平等ルールを守らさられたのです。
─────────────────────────────
 日本市場における外国製半導体のシェアを20%以上に高め
 ること。              ──日米半導体協定
─────────────────────────────
 当時の日本は、米国にとって安全保障をのぞく経済上の最大の
脅威であり、その締め付けは強烈であったのです。当時、外資系
半導体メーカーで日本市場を担当していた人物は「米国政府は国
家戦略で日本の半導体産業をたたいたが、それに対して当時日本
の通産省は中途半端な妥協をしてしまった」と当時のことを振り
返っています。それでは、これから日本は半導体の戦略として、
どのようにしていくべきでしょうか。
 これについて、ビジネスコンサルタントの天野眞也氏がキーマ
ンと対談する「アマノスコーブ」という企画で、東芝チーフエバ
ンジェリストの大幸秀生氏と対談をしているサイトがあります。
「エバンジェリスト」というのはIT業界の新しい職種で、IT
トレンドや技術について啓蒙する仕事を担う人のことです。この
対談のなかにヒントがあるようです。話は「半導体不足」のこと
からはじまっています。
─────────────────────────────
天野:半導体不足の解消の見通しは年内(2021年)というこ
 とですが、この先もやはりこういうことが起こって、半導体が
 なくなるとすごく困っちゃうじゃないですか。
大幸:そうですね。
天野:「こういうふうにしておけばいい」というのは、あるんで
 すか?
大幸:おお、なかなかいい質問ですね(笑)。
天野:いえいえ(笑)。
大幸:従来はマルチベンダーといって、複数の会社が国際標準み
 たいなものを作って、「ピンコンパチブル」という互換性のあ
 るものを世界に供給していたのですが、今はそれがだいぶ少な
 くなっています。
天野:寡占状態になっちゃったというお話がありましたね。
大幸:なっています。集積すればするほど専用チップになっちゃ
 うんですね。スマホ用だったら、スマホ用になっちゃうのです
 が、その中のある部分は、実はドローンに使えるとか、実はデ
 ジカメに使える、というのは当然あるんですよ。
  なので、それをむしろバラして小さな単位で汎用的に使えな
 いかと、複数のチップを1つのパッケージに封止して使う、昔
 は「SiP」(System in Package)とか、「MCM」(Multi
  Chip Module)と呼んでいて、最近は「チップレット」と呼ん
 でいる、最初にすごく高価で高機能の半導体を設計して、それ
 をいつでもバラけられるようにする、というものがあります。
 ファウンドリーができる外のパートナーがいれば、どこでも作
 れるというふうにしていこうという動きがちょっとあります。
大幸:もともとそれ(チップレット)は、AMDという会社が先
 行していました。AMDはインテルのライバルなので、インテ
 ルを横目に見ながら。ただ、最近はそれをインテルが真似しよ
 うとしているという話もあります。
天野:なるほど。ワンチップじゃなくて、全部あとからモジュー
 ルで分離できるのはすごくいいですね。
大幸:そうです。今日本に、台湾のTSMCを誘致するという話
 がありますが、実はそれが1つのポイントになっています。集
 積化のために日本と台湾は手を結ぶのではないと。シリコン上
 に1つにするのは台湾のほうが優れているし、世界中に彼らの
 パートナーはいます。台湾が日本に何を求めているかというと
 チップレットやSiPみたいに、例えば3次元構造でいろいろ
 なチップを積層しながら1つのモジュールにするという技術で
 す。これは日本が長けていると彼らは見ているんですね。
                 https://bit.ly/3Tuq5WS
─────────────────────────────
 このやりとりを読むと、今回の日本と台湾のTSMCの提携は
意義があることが読み取れます。日本はICの小さな単位をパー
ツとして作る技術に優れており、TSMCはそれらのパーツをひ
とつの半導体集積回路(IC)にまとめる技術に優れている──
これが今回のTSMCの日本誘致の裏にあるのではないかと考え
られます。      ──[ウェブ3/メタバース/030]

≪画像および関連情報≫
 ●「日の丸半導体」が凋落したこれだけの根本原因
  ───────────────────────────
  ――そもそも、半導体産業の黎明期に日本は、なぜ勝てたの
  ですか。
   1940年代後半に、半導体を発明したのはアメリカだ。
  1980年代に、そのアメリカに日本は半導体の製造で勝っ
  た。それは、1970年代に日本が新しい技術を作ったから
  だ。たとえばクリーンルームという概念を生み出した。アメ
  リカでは製造現場に靴で入っていたが、日本では清浄な環境
  で造らないと不良が出るクリーンルームを作った。半導体の
  基本特許はアメリカ発かもしれないが、LSI(大規模集積
  回路)にしたのも日本だ。私たちの先輩がゼロから切磋琢磨
  しながらやった。もう1つ大事なことがある。マーケットが
  あったことだ。
   当時、日本の大手電機はみんなNTTファミリーで、通信
  機器やコンピュータを造っていた。半導体は自社の通信機器
  やコンピュータの部門が大口顧客だった。自社のハードを強
  くするために強い半導体がいる。通信機器部門やコンピュー
  タ部門にとって、自社で半導体部門を持つメリットが、あっ
  た。各社が、よりよいコンピュータを作ろうと競い合った。
  自社の大口顧客に応えるために、半導体部門も開発に力を注
  いだ。半導体を利用する顧客が近くにいることでよいものが
  できた。それを外に売れば十分に勝てた。1980年代から
  90年代の初頭まではね。   https://bit.ly/3O2wBmg
  ───────────────────────────
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大幸秀成氏と天野眞也氏の対談
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2022年11月16日

●「GAFAとマイクロソフトの関係」(第5855号)

 「GAFAM」の最後のM、マイクロソフトは何となくGAF
Aの仲間外れのような「プラスM」の状態です。どうして、こう
なったのか、マイクロソフトの現状について考えます。
 2012年6月のことです。講談社の野間省伸社長が南アフリ
カのケープタウンで行われた国際出版連合(IPA)の会議に参
加したとき、「GAFMA(ガフマ)」という言葉を耳にしたと
いわれます。これが出版業界に対する脅威であるとみなしてそう
呼んだのです。「M」はもちろんマイクロソフトのことです。
 ところが、その後、「GAFMA」からマイクロソフトのMが
外れ、「GAFA」と呼ばれるようになっています。マイクロソ
フトに何があったのでしょうか。
 マイクロソフトといえば、PCのOSで圧倒的なシェアを獲得
しているIT業界の盟主ですが、基本的なデバイスが、PCから
スマホへと移行するなかで、モバイル化、クラウド化という技術
革新の波に乗り遅れ、GAFAの台頭を許しています。
 もちろんマイクロソフトほどの企業が何もしなかったわけでは
ありません。2000年には「ウィンドウズモバイル」を開発し
携帯情報端末PDAに搭載したのですが、スマホへの対応は遅れ
てしまっています。
 2011年には当時携帯電話のトップだったフィンランドのノ
キアと提携し、ウィンドウズモバイルを搭載した「ウィンドウズ
フォン」を発売したのですが、既にスマホ市場では、アップルの
「iOS」とグーグルの「アンドロイド」によって席巻された後
のことだったのです。
 クラウド事業にもマイクロソフトは遅れをとっています。クラ
ウド事業は2006年にアマゾンがAWSをリリースし、競合相
手がいないなかで市場シェアを急伸していたからです。マイクロ
ソフトが「ウィンドウズ・アジュール」をリリースしたのは20
10年であり、アマゾンに4年遅れています。しかも、マイクロ
ソフトは当初クラウドには消極的だったのです。それまでのマイ
クロソフトのビジネスモデルに合わないからです。
 2013年にマイクロソフトは、ノキアを7000億円で買収
し、ウィンドウズフォンで、アップルとグーグルに戦いを挑みま
すが、状況を変えることはできず、当時のCEOのスティーブ・
バルマー氏は、ノキア買収の責任をとって、辞任に追い込まれて
しまいます。
 クラウド事業がマイクロソフトのビジネスモデルと合わない点
について、立教大学ビジネススクール教授である田中道昭氏は次
のように述べています。
─────────────────────────────
 マイクロソフトの収益の柱は、ウィンドウズのライセンス料と
同OS上で動くアプリケーションソフトの「オフィス」の販売で
す。ウィンドウズがPCの標準ソフトとなり、世界中に広がって
いくにつれ、莫大な利益をもたらしました。ワードやエクセル、
パワーポイントが使える「オフィス」はパッケージ商品として販
売されてきたソフトです。バージョンやグレードによって価格が
変わるものの、1本あたり数万円という値段で販売されます。
 一方のクラウド事業はネットサービスやソフトを文字通りクラ
ウド上で提供します。パッケージ化された商品ではありません。
仮にクラウド事業で「オフィス」をはじめとするアプリケーショ
ンソフトの提供を始めてしまうと、パッケージ商品の存在意義が
なくなってしまいます。この点が「クラウドサービスが以前のマ
イクロソフトとは相容れないビジネスモデル」である所以なので
す。       ──田中道昭教授 https://bit.ly/3tqnxyh
─────────────────────────────
 2014年、バルマー氏の後を継いで、マイクロソフト3代目
のCEOに就任したのはサディア・ナデラ氏です。当時マイクロ
ソフトは、既に大企業になっており、大企業にありがちな深刻な
組織の硬直化と固定マインドセットが起きていたのです。
 納期を守ること、目標数字を達成することなど、形式的なこと
が何よりも重視され、かつてのマイクロソフトにあった自由闊達
さがなくなってしまっています。また、部下は直接上司より上の
上司と話すことが禁じられ、上層幹部が組織の下のほうにいる社
員と話すときは上司を通してしかできず、上下のコミュニケーシ
ョンがうまくとれない状況になっていたといえます。
 加えて、技術のトレンドなど、世の中の新しい動きに対しても
実際にそのことを知らないでも「そんなこと知ってる」というス
タンスをとり、企業として新しいトレンドに対応する柔軟さが欠
落してしまっています。これを固定マインドセットといい、これ
があると、新しい変化の波に対応できず、改革を阻み、現状維持
をとしとする態度が組織に充満してしまうのです。
 こういう現状のマイクロソフトをナデラCEOは、次の目標に
したがって改革に着手したのです。
─────────────────────────────
 マイクロソフトは「モバイルファースト」と「クラウドファー
スト」という世界を見据えた「生産性とプラットフォーム」カン
パニーである。      ──マイクロソフトの理想の世界観
─────────────────────────────
 ナデラCEOがやったことはいろいろありますが、なかでも、
看板商品である「オフィス」のクラウド版をリリースし、これを
iOSやアンドロイドなどのスマホOS上でも動くようにしたこ
とが画期的です。なぜなら、これによって従来の「OSと一緒に
ソフトを売る」というマイクロソフトの戦略を一変させたからで
す。これはマイクロソフトにとって大変化です。
 そして、クラウド版の「オフィス」にサブスクリプション(定
期購読/継続購入)を導入し、月額あるいは年額で利用できるよ
うにしています。これは、マイクロソフトにとって、大変革であ
るといえます。この「ナデラ改革」については、明日のEJでも
続いて取り上げることにします。
           ──[ウェブ3/メタバース/031]

≪画像および関連情報≫
 ●変貌するMS/かつては囲い込み、いま「オープン化」
  ───────────────────────────
   米マイクロソフト(MS)が変貌(へんぼう)している。
  かつては他社を押しのけてウィンドウズを販売し、顧客を囲
  い込む姿勢で知られたが、今のキーワードは「オープン化」
  と「多角化」だ。グーグル、アマゾン、フェイスブック、ア
  ップルの「GAFA」の陰に隠れてかつてほどめだたないが
  実は今の時価総額は4社を上回る。何が起こっているのか。
   「オープンソースのプロジェクトとして、各国における自
  由で公正な選挙を守る事業を始めます」
   6日朝、シアトルで開いたMSの開発者向け会議の冒頭で
  サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)はこのように宣
  言した。ロシアによる2016年の米大統領選への介入など
  が問題になる中で、その基盤となる強固な選挙システムのソ
  フトを、オープンソースで作る取り組みだ。
   世界中の技術者が自由にソフトを改良できる「オープンソ
  ース」にMSが注力する姿は、創業者のビル・ゲイツ氏が率
  いたころと比べると隔世の感がある。
   1990年代から2000年代にかけて、基本ソフト(O
  S)「ウィンドウズ」の売り上げを伸ばしてきたMSは、自
  社ソフトの知的財産を厳しく管理。ウィンドウズとビジネス
  統合ソフト「オフィス」を二本柱に、オープンソース陣営と
  は激しく対立してきた。    https://bit.ly/3UQKeHF
  ───────────────────────────
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ナデラ/マイクロソフトCEO
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2022年11月17日

●「ナデラCEOはどう改革をしたか」(第5856号)

 マイクロソフトという企業は、従業員12万人をかかえる売上
高約10兆円の巨大企業です。これほどの巨大企業を変革するの
は尋常なことではありませんが、サティア・ナデラCEOはそれ
を見事にやり遂げたのです。ナデラCEOが何をやったかについ
ては後から述べることにし、マイクロソフトの最近の業績からそ
の成果の一端を示すことにします。
 前のスティーブ・バルマーCEOのときは、時代の変化である
スマートフォン、ソーシャル・メディア、クラウドなどの変化に
すべて乗り遅れてしまったマイクロソフトですが、直近のマイク
ロソフトの業績を見ると、米国の株式市場において、時価総額で
はアップルとトップ争いを繰り広げています。
─────────────────────────────
 ◎時価総額(ドル)
  第1位:マイクロソフト ・・・ 1兆3211億ドル
  第2位:   アップル ・・・ 1兆2559億ドル
             ──2020年4月14日現在
─────────────────────────────
 2019年6月期のマイクロソフトの売上高は、前年比14%
増の1258億ドル(13兆8380億円)であり、営業利益、
経常利益、純利益を含めていずれも過去最高となっています。
 とくに純利益については、前年比で2・4倍になる392億ド
ル(4兆3120億円)になっています。トヨタ自動車の201
9年3月期の純利益が1兆8829億円ですから、マイクロソフ
トがいかに高収益であるかがわかると思います。
 とくに成長ぶりが際立っているのは、クラウドサービスのウィ
ンドウズ・アジュールです。調査会社のガートナーが2020年
8月に発表したところによると、クラウド市場のシェアは、20
19年8月時点で次のようになっています。
─────────────────────────────
     ◎クラウド市場のシェア
        AWS ・・・・・ 45・0%
      アジュール ・・・・・ 17・9%
       アリババ ・・・・・  9・1%
            ──2020年8月現在
─────────────────────────────
 AWSのシェアは盤石ですが、年間の成長率で見ると、アマゾ
ンの29%に対して、マイクロソフトは57・8%であり、その
差は確実に迫っています。眠れる巨人が今や目を覚ましつつある
といえます。
 サティア・ナデラCEOは、どのようにしてマイクロソフトを
再生させたのでしょうか。
 ナデラCEOは、「企業ミッション」に続いて「世界観」を掲
げたのです。
─────────────────────────────
【Mission(企業ミッション)】
  地球上のすべての個人とすべての組織がより多くのことを達
 成できるようにする
【Worldview(世界観)】
  モバイルファースト、クラウドファースト
─────────────────────────────
 ところで「世界観」とは何でしょうか。
 世界観とは、この世界で自分はどのような役割を果たしていく
ことが期待されているのかを明らかにしたものです。これを企業
ミッションとともに企業が掲げるのは稀有なことです。
 「モバイルファースト、クラウドファースト」という世界観は
さまざまなモバイル機器が世の中に広がり、クラウドによって、
ネットワークが実現されて、どこでも使える、どこでも働けると
いうことを意味しています。
 この世界観は、2年後の2017年に次のように変わっている
のです。
─────────────────────────────
【Worldview(世界観)】
  インテリジェントクラウド、インテリジェントジェット
─────────────────────────────
 この「世界観」について、マイクロソフト日本法人の前社長の
平野拓也氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 サティアはいろんな話をしますが、この世界観というのを、と
ても大事にするんです。ここがひとつ、とてもユニークなところ
だと思いました。ミッションを語るトップは多いと思うのですが
世界観を語る人は、なかなかいないと思います。
 今、我々がいる世界はどこで、今後ある世界はこうですよ、と
いう世界観を毎回、話していくんです。会社が何か変わらないと
いけないというときに、わかりやすい形でシンボリックに語って
いく。(2017年の世界観に関しては)モバイルデバイスは一
度クラウドに接続して、そこから何かをやっていたというところ
から、デバイスにもAIがつき、インテリジェントに自らが動く
時代になるということです。ありとあらゆるもので、デバイス側
でコンピューティングができる時代が来るということです。では
そのために何をしないといけないか。ハードウェアとの関係をど
うしないといけないかですね。
         ──平野拓也前マイクロソフト日本法人社長
                 https://bit.ly/3g4N5hg
─────────────────────────────
 どうやらマイクロソフトのナデラCEOは、かなり変わった人
物のようです。しかし、マイクロソフトは目に見えて着実に立ち
直っており、「+M」の地位から脱却しつつあり、ナデラCEO
の手腕は高く評価されています。明日のEJでは、ナデラCEO
はどのような人物か、さらに探ってみたいと思います。
           ──[ウェブ3/メタバース/032]

≪画像および関連情報≫
 ●マイクロソフトの社風を一変させた“再興の立役者”サティ
  ア・ナデラがすすめる必読書11冊
  ───────────────────────────
   マイクロソフトCEOのサティア・ナデラの人生にとって
  読書は欠かせないものだ。ナデラはグローバル企業のCEO
  の中でもトップクラスの存在感を誇る。そのリーダーシップ
  には定評があり、2020年度の報酬額は、4290万ドル
  (約42億9000万円)にものぼる。
   米キャリア情報サイト「コンパラブリー」の2019年ベ
  ストCEO、また『フォーチュン』の「2019年を代表す
  るビジネスパーソン」にも選出されている。さらにマーケッ
  ツ・インサイダーでは、ナデラ率いるマイクロソフトが創業
  から44年で1兆ドル(約100兆円)を超える企業価値を
  達成したと紹介している。
   そんな輝かしいキャリアを歩むナデラは「自分のアイデア
  は読書習慣によるものだ」と言う。「ファストカンパニー」
  のインタビューでは、次のように話している。
   「この本を数ページ、あの本を数ページと読み進めます。
  もちろん最初から最後まで読む本もありますが、とにかく本
  がないと生きていけないんです」エコノミック・タイムズの
  インタビューではスタンフォード大学の心理学者キャロル・
  ドゥエックの『マインドセット』を読んだことが、マイクロ
  ソフトの文化を変えるきっかけになったと語っている。
   「何でも学ぶ」マインドセットを取り入れた結果、枠にと
  らわれずに考えるようになり、やりづらい企業改革も、進め
  やすくなったという。     https://bit.ly/3GhUJ2O
  ───────────────────────────
サティア・ナデラMS/CEO.jpg
サティア・ナデラMS/CEO
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2022年11月18日

●「組織が内向きになる人事評価制度」(第5857号)

 今やメディアではGAFAがいろいろなことで話題になってい
ます。直接的にはアマゾンやメタの大量解雇ですが、これからも
ビジネス環境が変わるなかで、GAFAは話題の中心になり続け
ると思います。
 GAFAに加えてM、すなわち、マイクロソフトは特殊なポジ
ションに置かれています。もともとは「GAFMA」と呼ばれ、
しっかりなかに入っていたのです。それから「GAFA」になっ
て完全にMが外され、さらに「GAFA+M」になり、最近では
「GAFAM」とまた一体化したりしています。いわゆるネット
時代において、マイクロソフトの評価が変化しているのです。
 マイクロソフトの現CEOであるサティア・ナデラ氏について
書く前に、前CEOのスティーブ・バルマー氏がどういう人物で
あったかについて知る必要があります。なぜなら、ナデラ氏とバ
ルマー氏とは、ほぼあらゆる面において、正反対の性格の人物で
あるからです。
 スティーブ・バルマー氏は、高校時代にSATの数学で800
点満点を取るという数学の天才です。SATというのは、カレッ
ジボードという団体が主催する標準テストで、大学入学時に参考
にされるテストです。バルマー氏はハーバード大学に入学します
が、そのとき学生寮の同じ部屋の仲間が、後にマイクロソフトを
設立するビル・ゲイツ氏だったのです。
 ビル・ゲイツ氏は、ハーバード大学を中退していますが、バル
マー氏は、ハーバード大学を第2位優等で卒業し、数学と経済学
の学位を取得しています。卒業後、オハイオ州に本拠を持つ世界
最大の一般消費財メーカーP&Gに、アシスタントプロダクトマ
ネージャーとして2年間勤務しますが、ビル・ゲイツ氏に説得さ
れ、1980年にマイクロソフトに事務担当管理職として入社。
マイクロソフトの30人目の従業員になっています。
 バルマー氏は、OSの開発、経営、販売、サポート事業部門長
などで大活躍します。バルマー氏は、技術者肌のビル・ゲイツ氏
に対して、経営のアドバイザー的な役割を果たし、売上高を3倍
にし、利益を2倍へと押し上げ、マイクロソフトを大企業に仕立
て上げた立役者であることは確かです。しかし、携帯端末事業に
おいては、アップルやグーグルの後塵を拝し、明らかにネット時
代に乗り遅れてしまっているのです。それは、マイクロソフトと
いう組織全体が「内向き」になってしまったことが原因であると
考えられます。
 重要なことは、マイクロソフトが、なぜ「内向き」になってし
まったかにあります。そのひとつとして考えられるのはバルマー
CEOが導入した「スタック・ランキング」という人事評価制度
です。これは、マネージャーが社員をいくつかのレベルにランク
付けする評価制度です。
 あるプロジェクトにエンジニアとマーケターの合計10人が参
加したとすると、それは、次の割合で評価されます。
─────────────────────────────
    ◎「スタック・ランキング」
     「最 高」レベル ・・・ 20%/2人
     「中 間」レベル ・・・ 70%/7人
     「不適格」レベル ・・・ 10%/1人
─────────────────────────────
 プロジェクトの結果に関わらず、この評価の割合は変化しない
のです。この場合、誰でも「不適格」にはなりたくないので、何
とか「中間」レベルに入ろうとし、そのためには評価者に対して
おべっかも含めて、あらゆることをしようとします。このような
状況では、とても外部の諸変化に目を向ける余裕はなくなるし、
「内向き」にならざるを得ないことになります。組織の活力も奪
われてしまうでしょう。
 この「スタック・ランキング」について、関連サイトが次のよ
うに書いているので、ご紹介します。
─────────────────────────────
 たとえば同僚の1人が上司にお世辞を言い続けて、それで「最
高」レベルにランクされたとしたらどうだろうか。他の人たちは
その代わりにそれより下のレベルにランクされてしまうし、必ず
誰かが「不適格」にランクされることになるのだ。
 また、プロジェクトが完了し、その成果が現れるまでには数ヶ
月、場合によっては数年かかるにもかかわらず、評価は短期の間
に下される。本来、プロジェクトの目的は、良い製品を世の中に
送り出すことのはずなのだが、この評価制度だと、誰もが、自分
の社内での短期的な評価を高めることを目的に動くようになる。
他人の功績を横取りすることや、優れたアイデアをすべて自分の
発案のように見せかけることが横行する。
 バルマー時代の有名な風刺画が、その状態を見事に表現してい
る。ひたすら効率を重視するアマゾンの組織が単純な階層構造に
なっていたのに対し、マイクロソフトは、互いが互いに銃口を向
け組織内で皆が常に戦っている状態になっていた。スタック・ラ
ンキングは、社内に無数の「ミニチュアのバルマー」を作り出す
仕組みだった。バルマーのように誰もが皆に対して攻撃的な態度
を取り、誰もがマイクロソフトの中の世界だけに目を向けるよう
になる。              https://bit.ly/3EBxb7K
─────────────────────────────
 バルマーCEOにとって、市場での競争は「ジハード/聖戦」
ととらえ、競合企業をただ打ち負かすのではなく、相手の息の根
を止め、地上から消滅させようとする。確かにPCのOSの世界
においては、アップルにわずかのシェアを許したものの、ほぼ独
占といっても過言ではないと思います。
 どうやら、バルマー前CEOは、マイクロソフトの社員にとっ
ては理想のトップではなかったようです。その証拠に、バルマー
氏が退任することが明らかになったとき、マイクロソフトの株価
は一気に7・5%上昇したことでそれは明らかです。
           ──[ウェブ3/メタバース/033]

≪画像および関連情報≫
 ●【電子版】ゲイツ氏との関係、ハードウエア参入で悪化
  ──MSのバルマー前CEO
  ───────────────────────────
   【ブルームバーグ】米マイクロソフトの前最高経営責任者
  (CEO)スティーブ・バルマー氏は、ハードウエア事業参
  入にかじを切った自身の決断がビル・ゲイツ氏との関係が悪
  化した一因になったと振り返った。ゲイツ氏は同社創業者で
  長年の友人でもあったが、バルマー氏が唯一後悔しているの
  は、もっと早くやらなかったことだという。
   14年間にわたりマイクロソフトCEOを務めたバルマー
  氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、もう
  一度全てをやり直せるとしたら、数年早くモバイル機器事業
  に参入しただろうと発言。最終的に参入を決めた当時、ゲイ
  ツ氏や取締役会の他のメンバーは異議を唱えたと明らかにし
  た。ゲイツ氏と「疎遠になった」のは、マイクロソフトが自
  らのハンドセットやタブレットを生産すべきかをめぐる不一
  致が一因だったと指摘。「われわれ2人のどちらにとっても
  容易なことではまったくなかった。会社の戦略的な方向性に
  ついて、意見にわずかな相違」があったと述べた。
   さらに「ハードウエア事業の重要性について根本的な意見
  の相違があった」とし、「私はサーフェスを推した。取締役
  会はその支援にやや消極的だった。そのような時期に電話事
  業で何をすべきかが議論になり、状況が、最高潮に達した」
  と語った。          https://bit.ly/3WYCQM6
  ───────────────────────────
スティーブ・バルマー前MS/CEO.jpg
スティーブ・バルマー前MS/CEO
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2022年11月21日

●「ナデラCEOは何をどう変えたか」(第5858号)

 スティーブ・バルマー氏の後を継いでCEOになったサティア
・ナデラ氏は、インド生まれ。父親は公務員で、転勤が多かった
そうです。ナデラ氏の10代の頃の目標は、名門インド工科大学
ヘの入学です。しかし、試験に失敗。父親は失望、落胆したそう
です。マニパル工科大学に入学し、電気工学の学士号を取得しま
す。コンピュータ関連の学科に入りたかったのですが、そういう
学科がこの大学にはなかったからです。
 21歳のときに大学院に入るため、米国に留学します。しかし
入学したのはMITやカルフォルニア工科大学などの有名校では
なく、どちらかというと、地味なウィスコンシン大学ミルウォー
キー校の情報科学学科でしたが、成績は優秀だったといいます。
サン・マイクロシステムズに入社しますが、マイクロソフトから
オファーがあり、1992年にマイクロソフトに転職します。
 月曜日から金曜日、シアトルのマイクロソフトに勤務しながら
金曜日の夜にはシカゴに飛び、シカゴ大学の土曜日のクラスに出
席し、その後マイクロソフトに戻るという生活をし、2年半かけ
てMBAを取得しています。
 マイクロソフトに入社したナデラ氏は、バルマー氏とは正反対
の穏やかな性格ながら、ゆっくりとではあるが着実に業績目標を
達成し、少しずつ出世の階段を上がっていったのです。
 サーバー部門、ビジネスソリューション部門などを経て、20
08年にオンライン・サービス部門の上級副社長、2011年に
はサーバー&ツール部門副社長、2013年には、クラウドやエ
ンタープライズエンジニアリング部門の上級副社長に就任。そし
て2014年、スティーブ・バルマーCEOの後を継いで、3代
目のCEOに就任しています。
 CEOに就任したサティア・ナデラ氏は、マイクロソフトをど
のように改革したのでしょうか。それは、「内向き」になってい
るマイクロソフトを「外向き」に、いい換えると、外に向かって
心を開くことを求めたのです。
 そのためにまずやったことは、最悪の人事制度といわれる「ス
タック・ランキング」を廃止したことです。これによって、マイ
クロソフトの社員は、自分を守るため、自分の周囲に築いていた
壁を少しずつ壊しはじめ、恐る恐る外に目を向けるようになって
いったといいます。
 ナデラCEOは、社員に対して、次の趣旨のことを繰り返し、
説いています。
─────────────────────────────
 自分の言いたいことばかりを言うのではなく、他人の話によく
耳を傾ければ、向こう見ずに前に進むことは防げるだろう。常に
外に向かって心を開いていれば、固定観念を排除できる。そうす
れば、行動の結果は自ずと良くなるはずだ。他人に惜しみなく何
かを与えられる人になれば、周囲から感謝されるようになる。皆
が互いに感謝し合っている環境では新しいものが生まれやすい。
「敵」とみなせる相手に対しても、過剰に攻撃的にならなければ
敵を仲間に変えられる可能性がある。
 なぜこの態度が良いのかは、立場を反転させてみればよくわか
る。いつも話をよく聴いてくれて、長所を最大限活かせるよう手
助けをしてくれ、絶えず周囲から守ってくれる、そういう人がい
たら、共に働きたいとあなたも思うのではないだろうか。
                  https://bit.ly/3gfQN87
─────────────────────────────
 ナデラCEOは、「マイクロソフトは何のために存在するべき
か」について真剣に考えたといいます。そして、そのときナデラ
CEOは、今起きている次の2つの現象に注目したのです。
─────────────────────────────
          @デバイスの多様化
          Aクラウド化の拡大
─────────────────────────────
 マイクロソフトのかつての戦略は「世界中の机と家庭に1台の
コンピューターを」というものです。これは、PCの普及によっ
て実現しています。そしてそのPCのOSのシェアを制すれば、
マイクロソフト製品は黙っていても売れると考えたのです。
 確かにPCのOSのシェアを制すれば、世界中のソフトウェア
企業は、そのOSをベースにしてソフトウェアを開発せざるを得
なくなり、この分野でマイクロソフトに対抗する企業は消滅する
──これは「敵を完膚なきまで叩きのめし、息の根を止める」戦
略です。マイクロソフトはそれをミッションにし、PCの世界で
はこのミッションを実現しています。
 しかし、「今は違う」とナデラCEOは考えたのです。現在は
PCだけでなく、あらゆるデバイスがインターネットに接続され
る時代です。「一家に1台」どころが、当時のコンピュータより
もはるかに高性能なスマートフォンを1人1台保有して使ってい
ます。つまり、「デバイスの多様化」が起きています。
 これに伴い、各企業の情報を自社コンピュータに保存する、い
わゆるオンプレミスではなしに、外部の事業者のクラウドサービ
スを利用する方式に移行する動きが加速しています。その方がは
るかにメリットが大きいからです。それに、あらゆる情報がデジ
タル化されることで、これによって、物理的な制約を気にするこ
となく、情報の保存や活用が自由にできる状態づくりが進んでい
ます。すなわち、すなわち、「クラウド化の拡大」です。
 ナデラCEOは、現代はハードウェアのモバイル化ではなく、
「経験のモバイル化」が進んでいると見ています。つまり、個々
のデバイスに縛られず、いつでも、どこでも、人間が知的体験が
得られる社会づくりが進んでいるというのです。
 このような社会においては、従来のように、競争に打ち勝って
自社製品を売り込み、成長しても、企業として価値が薄いと考え
たのです。それよりも世の中のすべての企業や個人が力を得られ
るサービスを提供することが価値があると考えたわけです。
           ──[ウェブ3/メタバース/034]

≪画像および関連情報≫
 ●「自分たちはなんのために存在しているのか」売上高10兆
  円企業の改革とは?――マイクロソフト再始動(1)
  ───────────────────────────
   新時代に乗り遅れていたとばかり思われていたマイクロソ
  フトが、実は大きく躍進していることをご存じだろうか。日
  本では、まだまだ知られていないが、売上高10兆円、従業
  員12万人の巨大企業が、大きく変貌を遂げているのだ。株
  価は急伸し、先端企業と十分に伍している。何が変わったの
  か。なぜ変わることができたのか。『マイクロソフト/再始
  動する最強企業』(ダイヤモンド社)の著者、上阪徹氏がお
  届けする第1回目。
   マイクロソフトと聞いてどんなイメージを持つだろうか。
   真っ先に思い浮かぶのは、ウインドウズであり、ワードで
  あり、エクセルであり、パワーポイントであり、ビジネスに
  欠かすことのできないソフトウェアを作っている会社、だろ
  う。ITの世界で近年、大きな話題を獲得してきたのは、い
  わゆるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、ア
  マゾン)。マイクロソフトは、PC時代からスマートフォン
  時代への切り替わりに乗り遅れ、全盛期はとうに過ぎた企業
  というイメージを持つ人も少なくないかもしれない。しかし
  世界では(日本でもITの世界を知る人たちの間では)、そ
  うではないのだ。マイクロソフトは今、大いなる注目企業な
  のである。ところがこの事実は、日本では一般の人に驚くほ
  ど知られない。         https://bit.ly/3Xb3fXn
  ───────────────────────────
マイクロソフトCEO/サティア・ナデラ.jpg
マイクロソフトCEO/サティア・ナデラ/CEO
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2022年11月22日

●「ライバルに力を与える戦略/MS」(第5859号)

 サティア・ナデラ氏がCEOに就任したとき、ITの世界では
次の2つのことが起きていたのです。これについては、昨日触れ
ましたが、再現します。
─────────────────────────────
          @デバイスの多様化
          Aクラウド化の拡大
─────────────────────────────
 2007年6月29日、アップルはアイフォーンを発売。名前
は、世界的に大ヒットしたデジタルオーディオプレーヤー「アイ
ポッド」にちなんで付けた名称です。このアイフォーンについて
バルマーCEOは、単に批判するだけでなく、マイクロソフトの
デベロッパーたちを囲い込むことによって、アイフォーンのエコ
システムへの参入を阻止しようとしたのです。それでも、もし、
デベロッパーたちがアップルと組んだら、今後、マイクロソフト
関連の仕事はそのデベロッパーには一切させないようにすると圧
力をかけています。
 ここで「エコシステム」というのは、一つの製品を作るために
多くの企業が協業することが必要ですが、そういう協業のシステ
ムをエコシステムといいます。アイフォーンの場合、内蔵カメラ
やスクリーン、組み立て、アプリ、販売などをそれぞれの企業が
担当しなければなりませんが、そういう協業のシステムを「エコ
システム」と呼んでいます。元来の意味は、生態系を表す用語で
同じ領域で暮らす生物や植物が、お互いに依存しながら生態系を
維持している仕組みのことを指していう言葉です。
 バルマーCEOのやったことは、アップルを敵とみなして攻撃
し、相手の息の根を止めるというマイクロソフトの従来の戦略で
す。ナデラ氏もそのとき、それはそれで正しいと考えていたとい
います。しかし、アイフォーンは、15億台近くが販売され、ア
プリ開発者とアクセサリーメーカーのための巨大ビジネスを生み
出し、われわれの生活を一変させた驚異のマシンです。
 既にそのとき、従来のマイクロソフトの戦略は機能不全に陥っ
ていたといえます。これについて、プレジデント・オンライン誌
は、バルマー時代のマイクロソフトについて、次のように批判し
ています。
─────────────────────────────
 フォーブス誌は「バルマー氏は、今日のアメリカの大手上場企
業の中で最悪のCEOだ」と断じた。同様の評価をしていたのは
フォーブス誌だけではないだろう。彼の攻撃的な自分以外はすべ
て敵とみなすような態度のせいで、マイクロソフトは、スマート
フォン、ソーシャル・メディア、クラウドなどが中心となる時代
に乗り遅れた。彼の任期中に起きた大きな変化にはすべて乗り遅
れたと言ってもいいだろう。もちろん、ITのように変化の速い
業界で企業を経営していれば、失敗はつきものだが、それにして
も失敗が多すぎた。
 問題はただ新しい発想を排除したことだけではない。バルマー
は元来、極めて知的能力の高い人だ。ビル・ゲイツと同じくハー
バード大学出身で特に数学には秀でた才能を発揮した。また、大
変な読書家でもある。平静な時には、すぐに怒りを露わにする自
分を恥じることもあった。強い気持ちがつい表に出てしまうこと
があるのだと自己弁護をしてはいたが・・・。
 だが、本人がいくらあとで悔やもうと、招いた結果が変わるこ
とはない。バルマーがCEOを退任すると発表した日、マイクロ
ソフトの株価は、一気に7・5パーセントも上昇した。
                  https://bit.ly/3At9XxS
─────────────────────────────
 このバルマーCEOの失敗からナデラCEOは多くのことを学
んでいます。現代はデバイスが多様化しています。いいかえると
「PCからスマートフォンへ」という流れができているのです。
以前はスマホを使う人はPCを持っていたのですが、今ではスマ
ホだけしか持っていない人も増えています。
 この流れが読めていれば、マイクロソフトは、ハードウェアに
は手を出さず、ソフトウェアで勝負すべきであったといえます。
もともとPCのOSで90%以上のシェアを持つマイクロソフト
ですから、マイクロソフトと組めば、その企業は多くのメリット
が得られるはずです。
 創業者のビル・ゲイツ氏は、「マイクロソフトはソフトウェア
の企業である。ハードウェアに手を出すべきでない」というスタ
ンスです。それにもかかわらず、バルマーCEOは、タブレット
としても使えるノートPCの「サーフェス」の開発を行っていま
す。この件で、バルマーCEOは、ビル・ゲイツ氏と意見の対立
があり、不仲になったともいわれています。
 ナデラCEOは、マイクロソフトのソフトウェアを生かすこと
によって、「ライバルに力を与える」戦略に打って出ることを決
め、自らシリコンバレーを訪れ、競合他社のエンジニアたちと会
い、次々と提携を結んでいったのです。とくに長年のライバルで
あるアップルとの提携は注目されます。
 アイフォーンよりも良いハードウェアを作るという従来の戦略
を止め、アイフォーン向けのアプリを作り、アイフォーンでマイ
クロソフト製品を多く使ってもらう戦略に切り換えたのです。こ
れは営業戦略の大転換です。アップルのマックPCやアイパッド
でもマイクロソフトのソフトウェアが使えるようにするだけでな
く、ウインドウズをゲーム機のOSにも、IоTのOSとしても
使えるようにしたのです。
 このことは、マイクロソフトを潤すだけでなく、ライバルにも
力を与えることになります。マイクロソフトはPCのOSで90
%以上のシェアを持つ世界最大のソフトウェア会社であり、他の
企業とのコラボレーションは、相手企業にも多くのメリットを与
えることになるからです。これは、従来のマイクロソフトでは、
考えられないほどの戦略転換であるといえます。
           ──[ウェブ3/メタバース/035]

≪画像および関連情報≫
 ●インド頭脳に未来を託す――マイクロソフトなどグローバル
  企業のトップ人事
  ───────────────────────────
   米国のマイクロソフトが2月初め、新しいCEO(最高経
  営責任者)としてインド生まれのサトヤ・ナデラ(46)を
  抜擢した。グローバル企業の間で、インド系の経営者をトッ
  プに起用する人事が増えており、「CEOはインド最大の輸
  出品」(タイム誌)とも言われている。その半面、インド本
  国の経済が伸び悩んでいることから、人材の国外流出に懸念
  も出ている。
   上級副社長からCEOに昇格したナデラは、今ではIT企
  業がひしめくインド南部のハイテク都市、ハイデラバードに
  生まれた。幼いころは腕白なクリケット好きの少年だった。
  父は上級国家公務員で、マンモハン・シン首相のもとで政府
  の計画委員会の幹部として働いていた。その家庭でエリート
  教育を受け、大学で電子工学を専攻したが、コンピューター
  工学を学ぶ環境は不十分だったため、1980年代後半に米
  国に渡った。「技術で世界を変えたい」という情熱に駆り立
  てられた。
   ウィンスコンシン大学で学んだ後、最初に入社したのは、
  当時、汎用コンピューターから小型化する「ダウンサイジン
  グ」の波に乗っていたサンマイクロシステムだ。同社の創業
  メンバーでインド生まれのIT技術者、ヴィノッド・コスラ
  の存在が若いナデラの事業欲に強い影響を与えた。ナデラは
  1992年にマイクロソフトに転じた。西海岸のシアトルに
  ある本社に勤めながら、休暇をやりくりしてシカゴ大学でM
  BA学位を取得し、技術系経営者の道をひた走った。
                 https://bit.ly/3ErH9Ht
  ───────────────────────────
サーフェス・スタディオ2+.jpg
サーフェス・スタディオ2+
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2022年11月24日

●「ナデラCEOによるクラウド戦略」(第5860号)

 このところ、GAFAとマイクロソフトのことを取り上げてい
ますが、このいわゆるGAFAMが、メタバースを推進し、拡大
し、支える企業の中核になると考えているからです。マイクロソ
フトのクラウド事業についても述べる必要があります。
 2022年11月22日付の日本経済新聞にクラウド関連の次
の記事が出ています。
─────────────────────────────
◎米テック、クラウドで競争/普及は「初期から中期」
 米マイクロソフトサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)
は日本経済新聞の単独インタビューに応じ、テクノロジー企業の
競争軸はクラウドになるとの見方を示した。世界経済の減速懸念
が強まるなかでインターネット広告やネット通販は「頭打ちして
いる」と他社との違いを強調。すでに売上高の過半となったクラ
ウド事業の「成長余力は大きい」として、人工知能(AI)へ積
極投資し連携を進める考えを示した。
        ──2022年11月22日付、日本経済新聞
               https://s.nikkei.com/3XmCq2j
─────────────────────────────
 マイクロソフトのナデラCEOは、上記の記事では、「我々は
GAFAとは違う」と胸を張っていますが、マイクロソフトのク
ラウドへの進出は大きく遅れたのです。
 スティーブ・バルマー氏がマイクロソフトのCEOに就任した
のは2000年1月、アマゾンがクラウドサービス「AWS(ア
マゾン・ウェブ・サービス」をリリースしたのは2004年のこ
とです。しかし、マイクロソフトがクラウドサービス「ウィンド
ウズ・アジュール」をスタートさせたのは2010年であり、ア
マゾンと6年の開きがあります。
 なぜ、マイクロソフトは6年も遅れたのでしょうか。当時のマ
イクロソフトは、どちらかというと、クラウドビジネスに消極的
であったからです。
 その理由はマイクロソフトのビジネスモデルにあります。マイ
クロソフトの当時の収益の柱は、PCにOSとしてインストール
されるウィンドウズのライセンス料と、1本当たり数万円といわ
れるパッケージソフト「オフィス」の売り上げがメインです。ウ
ィンドウズPCは世界中で使われているので、とんでもない売上
高になります。しかも、OSのウィンドウズも、パッケージソフ
トの「オフィス」もバージョンがあり、バージョンアップのたび
ごとに料金がとれる。こんなよい商売はないのです。
 クラウドビジネスといっても多岐にわたりますが、マイクロソ
フトがクラウドサービスを始めるとなると、「オフィス」のクラ
ウドサービスから始めることになります。そうなると、これまで
ドル箱である主力の最強パッケージソフトの存在意義が失われる
ことになり、マイクロソフトとしてはなかなか決断できなかった
ものと思われます。
 しかし、スマートフォンがPCに取って代わるようになるにつ
れ、クラウドの重要性はますます高まってきたのです。スマート
フォンで動くアプリのほとんどがクラウド上で動くサービスだっ
たからです。それに何よりも顧客にとってクラウドサービスは、
大きなメリットがあるのです。
 マイクロソフトは、2011年6月に「オフィス365」を発
売しています。これを個人で使うと、買い切り型と比較すると、
次のメリットがあります。バージョンごとに「オフィス」を買う
よりもはるかにメリットがあります。
─────────────────────────────
   @費用は使った分だけ支払うサブスクリプション型
   Aつねに最新バージョンのソフトウェアが使用可能
   Bデータの収録にはオンラインストレージが使える
─────────────────────────────
 しかし、先行したAWSは、マイクロソフトがクラウドへの移
行を逡巡している間にそうそうたる顧客を獲得しています。ゼネ
ラル・エレクトリック(GE)、マクドナルド、ネットメディア
のバスフィード、民泊のエアビーアンドピー、それに、ネットフ
リックスまで名を連ねています。
 日本でも、日立製作所、キャノン、キリンビール、ファースト
リテイリング、三菱UFJ銀行など、業種に関係なく、続々と、
AWSを導入しています。
 決定的といえるのが、米中央情報局(CIA)がAWSの顧客
に加わったことです。2013年に6億ドルで契約を締結してい
ます。政府機関の仕事は、IBMのような昔からの大企業が独占
的に受注してきただけに、IBMとしては大ショックです。IB
Mも提案書を政府に提出し、政府に対して再度検討するよう求め
ましたが、米連邦裁判所は、これに対して次のコメントを出し、
IBMの提案を退けています。
─────────────────────────────
 AWSのオファーの方がIBMよりも技術的に優れており、競
合の結果は、接戦と言いがたいほどかけ離れている。
                     ──米連邦裁判所
─────────────────────────────
 しかし、2014年にナデラCEOが就任すると、それまでの
PCのOSのウィンドウズの企業から、クラウドを中核とする企
業への変革を行っています。それを意識してか、「ウィンドウズ
・アジュール」を「マイクロソフト・アジュール」に、「オフィ
ス365」を「マイクロソフト365」というように、名称を変
更しています。
 ところで「365」とは何を意味しているのでしょうか。これ
は1年の日数であることは確かですが、マイクロソフトがどのよ
うな思いでこの数字を使ったまではわかっていません。「365
日休まず働ける社畜専用サービス」と揶揄する向きもありますが
本当のところはどうなのでしょうか。
           ──[ウェブ3/メタバース/036]

≪画像および関連情報≫
 ●アマゾン/AWSとはとは?
  ───────────────────────────
   「AWS」とは、アマゾンが提供するクラウドサービスの
  総称です。そもそもはアマゾンのインフラを支えるために作
  られたものですが、他社にも提供しようと2006年7月に
  公開されました。利用しているのは、「インターネット上で
  何らかのサービスを提供したい」、「インターネット上にデ
  ータを保存しておきたい」と考える企業や個人です。
   AWSの基本サービスは、レンタルサーバー、データベー
  ス、ストレージを利用したデータ保存、画像認識などです。
  サービスの種類は大きく分けて100以上、細分化すると、
  700以上もあり、今現在も増え続けているそうです!
   種類が多くて便利な反面、多過ぎて全体像が見えにくく、
  具体的にどんなことができるのかがわかりにくいという一面
  もあります。
   そもそも「パブリッククラウド」とは、企業や個人など不
  特定のユーザーに、サーバーやストレージ、データベース、
  ソフトウェアといったクラウドコンピューティング環境をイ
  ンターネットを通じて提供するサービスのことです。AWS
  のほかにも、Google Cloud Platform、IBM Cloud、Alibaba
  Cloudといったパブリッククラウドがあります。
   総務省の「平成30年版情報通信白書」によると、企業に
  おけるクラウドサービス利用状況は56・9%で、2016
  年から大幅に増加しています。そのうちの85・2%がサー
  ビスの効果を実感しているといいます。
                  https://bit.ly/3ViP5S0
  ───────────────────────────
マイクロソフト・アジュール.jpg
マイクロソフト・アジュール
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2022年11月25日

●「iPadでオフィスアプリが動く」(第5861号)

 マイクロソフトのナデラCEOは、スティーブ・バルマー前C
EOまでのマイクロソフトの戦略である競合相手を「敵」とみな
して打ち負かし、息の根を止める戦略を転換し、逆に「ライバル
に力を与える」戦略にチェンジしています。
 その最大の目玉がアップルとの提携であるといえます。PCの
世界において、2021年現在、ウィンドウズは、81・8%の
シェアを確保しており、iOSは7・9%となっています。かつ
てはウィンドウズのシェアは90%に達し、完全にPCのOSを
制覇していたのです。まさに他社の息の根を止めています。
 元来日本はマックファンが多く、世界に比べると、日本のマッ
クPCのシェアは大きいのです。とくにデザイン関係の仕事をす
る人の多くは、昔からマックを使っています。日頃ウィンドウズ
PCを使っている人のなかにも、マックに乗り換えようかという
思いに駆られる人も少なくないはずですが、まったく互換性がな
いので、これまではあきらめる人も多かったと思います。
 マイクロソフト対アップル──これはかつてビデオの世界での
VHSとソニーのベータマックスとの規格の違いによく似ている
と思います。もっとも「VHS対ベータ」といっても、最近の若
い人には何のことかきっとわからない人が多いと思いますが。
 ところが今やデバイスが多様化しています。デスクトップPC
やノートPCの他に、タブレット、スマートフォンなど、PCの
と類似性の高いデバイスが多くなっています。
 ちなみに、日本における2022年6月現在のOSのシェアを
示すと次のようになっています。このパーセンテージは、PCと
モバイルを合わせたシェアです。
─────────────────────────────
       ウィンドウズ ・・ 42.39%
          iOS ・・ 26.33%
       アンドロイド ・・ 14.10%
           不明 ・・  9.17%
          OSX ・・  6.97%
        リナックス ・・  0.47%
          その他 ・・  O.57%
─────────────────────────────
 ナデラCEOの戦略転換により、アップルデバイス上で、ワー
ド、エクセル、パワーポイントなどの「オフィス」のソフトウェ
アが動作するようになっています。ここでいうアップルデバイス
とは、マックPC、アイフォーン、iPadなどです。アップル
以外ですが、アンドロイド・スマホでも利用できます。もっとも
アイフォーンのような小さなディスプレーでは使いにくいでしょ
うが、iPadで動くとなると、これはいろいろなことに活用で
きます。
 これは「マイクロソフト386」で実現しています。当初「オ
フィス365」といっていたのですが、2020年4月22日に
「チームズ/Teams」 (リモートワーク・コラボレーション・ツ
ール)など、いくつかの機能を追加し、名称を「マイクロソフト
365」に変更したのです。その使い勝手については、まだ問題
はあるものの、1カ月間、無料で試すことができます。
 ところで、iPadというマシンの位置づけについて考えてみ
ることにします。アイフォーンとiPadの発売時期を以下に示
すると、意外に接近しています。
─────────────────────────────
      iPhone ・・・・・ 2008年4月
       iPad ・・・・・ 2010年4月
─────────────────────────────
 現在、世界を席巻しているアイフォーンとiPadは、当時の
アップルCEO、スティーブ・ジョブズの主導のもと、開発され
たものです。これらは、2つバラバラに開発されたのではなく、
2つセットで開発されています。ジョブズCEOは、PCには、
次の2つのタイプが必要になると考えたのです。
─────────────────────────────
         @データを「作る」PC
         Aデータを「見る」PC
─────────────────────────────
 PCというのは、元来データを「作る」コンピュータです。エ
クセルで表計算をするのも、ワードで文章で作成するのも、パワ
ーポイントでスライドを作成するのもデータを作っています。使
えば使うほど、データがストックされていきます。したがって、
何らかの仕事に使うコンピュータであり、仕事に使うコンピュー
タであるといえます。
 PCを使う場合、その姿勢は椅子に座って、ディスプレイに向
かい、前かがみの姿勢を取ります。そうしないと、キーボードも
マウスも操作しにくいからです。この姿勢のことを「リーンフォ
ワード」といいます。
 ジョブズCEOは、やがて映像やデータを「見る」コンピュー
タが必要になると考えたのです。そのコンピュータでは、テレビ
やユーチューブなどの映像を見たり、映画を見たり、電子ブック
や新聞の電子版を読んだりできます。これらは、もちろんPCで
も見ることができますが、前かがみのリーンフォワードではいさ
さか窮屈です。やはり、背中をソファにつけた姿勢の方がラクで
あるし、その方が楽しめます。この背中をソファにつけた姿勢の
ことを「リーンバック」といいます。
 これについては、添付ファイルをご覧ください。ジョブズCE
Oは、iPadを紹介するイベントで、舞台にソファを持ち込み
このことをファンに伝えています。このように、アイフォーンと
iPadは、発売時期が重なっていますが、それは、「作る」コ
ンピュータのPCに加えて、「見る」コンピュータのアイフォー
ンとiPadを少しでも同時に発表したかったからなのです。実
際に現代では、アイフォーンとiPadはそのように使われてい
ます。        ──[ウェブ3/メタバース/037]

≪画像および関連情報≫
 ●無料で使える?iPadでMicrosoftのOfficeを賢く使いこ
  なす方法
  ───────────────────────────
   2020年9月15日、iPadシリーズに、フルモデル
  チェンジしたiPadエア(第4世代)が発表されました。
  年々性能が進化して、どのモデルもノートPCと肩を並べる
  性能となっているiPadシリーズ。外出先での仕事や、学
  校の授業でオフィスを利用してより便利に使いたいという方
  も多いことでしょう。今回はiPadシリーズで、マイクロ
  ソフトオフィスを使いこなす方法を紹介します。
   マイクロソフト365のの料金体系は、「家庭向け」と、
  「一般法人向け」に大別されます。家庭向けサブスクリプシ
  ョンサービスの「マイクロソフト365パーソナル」は、ウ
  ィンドウズ、マック、iPadといったタブレットやスマー
  トフォンなど、同一ユーザーが使用するデバイスに5台まで
  同時にサインインできて、料金は年間1万2984円(税込
  み)。月額1284円(税込み)の月払い形式も選択可能で
  す。一般法人向けのサービスは、基本は年間契約。1ユーザ
  ーあたりの価格が設定されていて、一番リーズナブルな「マ
  イクロソフト・ビジネス・ベーシック」は、1ユーザーにつ
  き月額540円(税抜)。そのほか、複数のプランが用意さ
  れています。     https://bit.ly/3U1w6KR
  ───────────────────────────
リーンフォワードとリーンバック.jpg
リーンフォワードとリーンバック
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2022年11月28日

●「なぜGAFAMについて知るのか」(第5862号)

 「Web3/メタバース」のタイトルを掲げて、10月3日か
ら書いてきましたが、前回までで37回になります。しかし、こ
こまで書いたことは、GAFAMの話が中心であり、テーマに関
することはほとんど書いていません。それは、現在のインターネ
ットであるWeb2がどういうものであるかについて知る必要が
あるからです。
 GAFAMについての記述が多くなったのは、GAFAMが、
Web2の支配者であるからです。Web3は、そのアンチテー
ゼとして登場してきたものです。
 今回のテーマに関する参考書は、すべて購入し、読み込みまし
たが、非常に難解です。このテーマに関する本には、次の2種類
があります。
─────────────────────────────
       @Web3からの解明を試みる本
       Aメタバースから説明を試みる本
─────────────────────────────
 「メタバース」が何であるか手っ取り早く知りたければ、Aと
いうことになりますが、そうすると、Web3の理解が曖昧にな
ります。そうではなく、Web3から説明しようとすれば、イン
ターネットの歴史を振り返り、とくに現代のインターネットであ
るWeb2についての詳しい説明が必要になります。EJでは熟
慮の結果、@から入ることにしました。したがって、GAFAM
の話が長くなったのです。
 『日経ビジネス』/2022年11月28日号の特集に次の記
事が掲載されています。私は、『日経ビジネス』を雑誌とオンラ
インの両方で契約していますが、Web3の記事が特集として掲
載されたのは今回が初めてです。
─────────────────────────────
   ◎Web3の正体/始まった「デジタル独立運動」
            ──2022年11月28日号
─────────────────────────────
 この『日経ビジネス』の特集の「PART4」にジュリアン・
ポール・アサンジ氏に対する次のような話が出ているので、紹介
することにします。
 2007年7月12日のことです。イラクの首都バクダットに
展開していた米軍の歩兵部隊が敵対勢力からロケットランチャー
によって、攻撃を受けたのです。ロケットランチャーとは、個人
が携帯し、肩に担ぐなどして使用する小火器です。援護を要請さ
れた米軍の攻撃ヘリコプター「アパッチ」は間もなく現場に飛来
し、ロケットランチャーを持つ一団に攻撃ヘリから攻撃を加えて
います。
 しかし、この一団はロイター通信の記者たちで、記者が手にし
ていたのは、望遠レンズ付きのカメラだったのです。それと気が
付かずに攻撃したので、これにより、記者を含む多数の民間人を
殺害してしまったのです。しかし、この事件は、軍事機密として
明らかにされることはなかったのです。
 しかし、それから15年後、この事実は、ジュリアン・アサン
ジ氏の創設による内部告白サイト「ウィキリークス」によって暴
露されてしまいます。米司法省は、多数の国家機密を暴露した罪
で、アサンジ氏を起訴しましたが、アサンジ氏は現在、別の罪で
英国のロンドンの刑務所に収監されています。
 このアサンジ氏の異母弟に当たるガブリエル・シプトン氏は、
何とか「兄ジュリアンの自由を求めて世界最強の軍事力を持つ米
国と戦う」としていますが、そのために手にする武器は、Web
3の中核技術であるブロックチェーンです。これより先について
は、『日経ビジネス』の記事を紹介します。
─────────────────────────────
 ブロックチェーンは、ネットワークに参加する全員のコンピュ
ーターでデータを管理する、全く新しい発想のデータべ−ス技術
である。国家権力に屈しづらいとされる。権力者が圧力をかけよ
うにも、その相手が広く分散していて曖昧になっているからだ。
ブロックチェーンを土台に開発された「暗号資産(仮想通貨)」
の取引を、国家が阻止するなどといったことは困難だ。
 シプトン氏をはじめとするアサンジ氏の支援者は、訴訟費用を
賄うために22年2月、仮想通貨での募金活動に乗り出し、瞬く
間に5200万ドル(約73億円)相当を集めた。シプトン氏は
「米国政府であろうと、仮想通貨には手出しできないことが改め
て裏付けられた」と強調する。
 「仮想通貨が持つ国家権力への強い耐性を最初に証明したのが
ウィキリークスだった」とシプトン氏は指摘する。ウィキリーク
スは10年に米国政府の外交機密を大量に公開した。その直後か
ら、金融機関や決済機関が一斉に取引を中止したり、口座を凍結
したりして、ウィキリークスの運営資金を支えていた募金活動を
阻止した。米国政府の圧力が背景にあったと考えるのが自然だろ
う。    ──『日経ビジネス』/2022年11月28日号
─────────────────────────────
 もし、ガブリエル・シプトン氏がウィキリークスの運営資金を
ネットによるクラウドファンディングなどで集めようとしたら、
米国政府からの何らかの圧力で、失敗していたはずです。仮想通
貨建て──おそらくビットコインで募金活動をしたので、それに
反対する勢力がどうすることもできなかったといえます。ビット
コインは、ブロックチェーン技術を使っているからです。
 アサンジ氏に続く大物の告発者として、エドワード・スノーデ
ン氏がいます。スノーデン氏は、NASAの元職員で、NASA
が米大手IT各社の協力を得て、世界規模で人々を監視している
事実を暴露しています。スノーデン氏は現在ロシアにいるとされ
ていますが、Web3を信奉するスタートアップ企業家たちは、
何らかの手段で、スノーデン氏を支援しようとしているとされて
います。このようにWeb2は個人情報を守れないのです。
           ──[ウェブ3/メタバース/038]

≪画像および関連情報≫
 ●Web2.0のサービスが新たなセキュリティリスクに
  ───────────────────────────
   シマンテックは2006年11月6日、インターネット上
  に見られる脅威の動向に関する記者説明会を開催。同社で不
  正プログラムの解析などを担当する「セキュリティ・レスポ
  ンス」のメンバーが2006年に見られた脅威の傾向や、2
  007年にかけての見通しを語った。セキュリティ・レスポ
  ンス・オペレーションディレクターであるケビン・ホーガン
  氏(写真)によると、最近の傾向の一つとして、インターネ
  ット・エクスプローラやファイアフォックス、マイクロソフ
  トやジャストシステムのオフィスソフトといった、アプリケ
  ーションのぜい弱性を悪用する攻撃が増えている点が挙げら
  れるという。これは手法としては以前から見られたものだ。
  修正プログラムがリリースされるなどしてOSのぜい弱性が
  以前より発見しにくくなったり、見つけても悪用するために
  さまざまな条件が伴ったりするようになってきた。そのため
  手間を惜しんだ不正プログラム作成者がアプリケーションの
  ぜい弱性に目を向けているのではないかという。「半自動的
  にアプリケーションのぜい弱性を探すツールもあり、OSの
  ぜい弱性よりも探しやすい」(同氏)。感染経路としては、ユ
  ーザーにファイルやリンクをクリックさせて不正プログラム
  をダウンロードさせるというタイプが多い。例えば興味をか
  き立てるような内容のメールを送信し、メール上に貼り付け
  られたURLをクリックすると感染するといったものだ。
                 https://bit.ly/3U9KcK3
  ───────────────────────────
『日経ビジネス』/2022年11月28日号.jpg
『日経ビジネス』/2022年11月28日号
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2022年11月29日

●「メタバース/遅れてはならぬ日本」(第5863号)

 2022年11月27日付、日本経済新聞にメタバース関連の
特許数の国際比較が報道されています。記事の一部とランキング
を以下に示します。
─────────────────────────────
◎メタバース韓中勢台頭
 メタバース(仮想空間)端末の開発で韓国と中国の企業が存在
感を高めている。関連特許の件数を調べるとLG電子など韓国勢
が首位と2位になり中国勢も4位につけた。同端末は、スマート
フォンの次の有力な電子機器になるとみられ、2026年の世界
市場は10兆円規模まで拡大する見込み。日本勢が出遅れる一方
巨大市場での主導権獲得に向けて韓中勢が布石を打ちつつある。
◎特許数ランキング
 1位:LG電子(韓国)
 2位:サムスン電子(韓国)
 3位:メタ(米国)
 4位:ファーウェイ(中国)
 5位:マイクロソフト(米国)
 6位:ソニーグループ(日本)
 7位:クアルコム(米国)
 8位:マジックリーブ(米国)
 9位:インテル(米国)
10位:アップル(米国)
        ──2022年11月27日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 上位20社の特許数の合計は7760件ですが、企業の国籍別
では米国が57%、韓国は19%、中国は12%、日本は8%で
す。それにしても韓国は1位と2位を占め、勢いがあります。こ
れは、半導体メモリのDRAMの製造においても、韓国は同様に
第1位と第2位を独占(1位:サムソン電子/2位:SKハイニ
ックス)しています。かつてこの分野では日本が独占していたも
のですが、現在この分野には日本の影もありません。現在の日本
には勢いがないのです。それだけに、Web3において、日本は
絶対に乗り遅れてはならないのです。
 国光宏尚氏という人がいます。スターアップ企業サードバース
の代表者です。サードバースは「10億人が生活する新しい仮想
世界の創造」をビジョンに設立されたスタートアップ企業です。
この国光宏尚氏のメタバース関連の著作の『メタバースとWeb
3』(MDN)は、2022年4月に発売され、私が購入した7
月には6刷を発行しています。よく売れているのです。
 国光氏によると、Web2の入り口は2007年であるとして
います。2007年にはアイフォーンが登場しています。この時
期に重大なパラダイムシフトが起きているのです。
 この時期に日本の国内では、NTTドコモの「iモード」が全
盛時代だったのです。iモードは1999年に登場し、携帯電話
からでもメールが発信できるということで、申し込みが殺到し、
iモードブームが起きています。この頃の日本の携帯電話──後
に「ガラケー」と呼ばれるようになりますが──カメラが付いた
り、カラーディスプレイになるなど、当時、世界をリードしてい
たといっても過言はないといえます。
 2004年にはミクシー、2005年にはグリーが登場し、S
NSも盛んだったのです。ツイッターやフェイスブックが登場す
るのは、それから5年後の2010年のことです。日本にも十分
チャンスがあったはずですが、日本はチャンスを逃しています。
 国光宏尚氏は、これについて、上記の書籍で次のように述べて
います。とても示唆に富む意味のある予言的な内容です。なお、
国光氏の言葉には専門語が多く、難解なので、括弧内に説明を加
えています。
─────────────────────────────
 大きなチャンスは、新しいパラダイムシフトの入り口にこそあ
ります。スマホ、ソーシャル、クラウドの2007年に始まった
Web2.0 の大波、ただおいしいところは最初の頃に始めたプ
レイヤーがとっていき、パラダイムが成熟化してきた今はニッチ
な領域しか残っていない状況になりました。最近の日本のスター
トアップだと、C(コンシューマー)向けのサービスはニッチな
スマホアプリか、インフルエンサー系、D2C(製造者がダイレ
クトに消費者と取り引きをする)ばかり、B(ビジネス)向けも
ニッチなパーティカルSaaSだけになってきて、業界全体に閉
塞感が生まれていました。
 ここに生まれてきたのが新しいパラダイムWeb3.0 (国光
流定義)です。デバイスは、スマホからVR(仮想現実)、AR
(拡張現実)、MR(複合現実)になっていき、データはソーシ
ャルからブロックチェーンへ、データの活用方法はクラウドから
AIへ。この次の10年間のパラダイムは]R(メタバース)、
ブロックチェーン(Web3)、AIへと変わっていきます。
      ──国光宏尚著『メタバースとWeb3』/MDN
─────────────────────────────
 文中の「SaaS」とは、「Software as a Service」 の略で
提供者であるサーバー側で稼働するソフトウェアを利用者である
クライアント側がネットに接続しているPCからソフトウェアを
必要な機能や分量のみを選択して利用できる提供形態のことをい
うのです。
 GAFAMといいますが、Fのフェイスブックは既に「メタ」
に社名を変更しています。そういう意味からも、GAFAMとい
う言葉はやがて消えていくはずです。
 問題は、フェイスブックのCEOのマーク・ザッカーバーク氏
は、なぜ、フェイスブックの社名を「メタ」に変更したかです。
数ある不祥事によるフェイスブックのリブランディングという説
もありますが、本当のところは、ザッカーバークCEOは、アッ
プルを見返したかったのではないかと思われます。
           ──[ウェブ3/メタバース/039]

≪画像および関連情報≫
 ●Facebook、崖っぷちの社名変更 「メタバース」も難路
  ───────────────────────────
  【シリコンバレー=奥平和行】米フェイスブックの創業以来
  の事業転換に打って出る。社名を「メタ」に変更し、軸足を
  SNS(交流サイト)から「メタバース」と呼ぶ仮想空間の
  構築や関連サービスに移す。ただ、収益化への道のりは遠く
  足元では企業体質や管理体制への批判が高まり崖っぷちだ。
  計画が思惑通り進むかは予断を許さない。
   「フェイスブックはSNSの代名詞となったが、当社の幅
  広い事業を代表しなくなり将来はさらに難しくなる」。20
  21年10月28日に開いた開発者会議でマーク・ザッカー
  バーグ最高経営責任者(CEO)は説明した。新社名のメタ
  は「先に」を意味するギリシャ語が語源で、事業の柱とした
  いメタバースからとった。
   2004年の設立から使用してきた社名を変える直接の理
  由は仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などの技術を活用
  して仮想空間で遊んだり交流したりできるメタバースの構築
  を優先するためだ。「本格的な普及は5〜10年後」(ザッ
  カーバーグ氏)だが、2021年だけで約100億ドル(約
  1兆1000億円)を投じる。背景には同社が世界で36億
  人近い利用者を抱える一方、事業基盤を他社に依存している
  弱みがある。直近では米アップルがスマートフォンでプライ
  バシー保護策を強めたことで、主力の広告事業が直撃を受け
  た。ザッカーバーグ氏は28日もアップルのアプリ配信サー
  ビスなどを念頭に「選択肢の乏しさと高い手数料が技術革新
  を阻害している」と主張した。
              https://s.nikkei.com/3AQ7xJU
  ───────────────────────────
国光宏尚氏.jpg
国光宏尚氏
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2022年11月30日

●「アップルとFBに根深い確執あり」(第5864号)

 「メタバース」──今やITのことに関心のない人でも、この
言葉を知らない人がないほど、その認知度は上がっています。こ
のような現象のことを「バズる」と呼んでいますが、これは英語
の「Buzz」からきており、動詞で「がやがや言う・噂になる」と
いう意味になります。
 その原因をつくったのは、間違いなくマーク・ザッカーバーク
氏──現「メタ」(旧フェイスブック)のCEOです。社名変更
は、2021年10月28日に行われています。さらに2022
年1月、かねてから発行を予告していた同社の仮想通貨「ディエ
ム」(前名称リブラ)の発行の断念も発表されています。問題は
なぜ社名を変更したかです。
 2018年以降、フェイスブックは数々の問題を引き起こして
います。約8700万人に及ぶユーザー情報流出問題、プライバ
シーの扱いなどに関する姿勢が問題視された問題などで、ザッカ
ーバークCEOは、これらの件で、2018年4月10日と11
日の両日、米連邦議会上院司法委員会と、米連邦政府下院エネル
ギーおよび商業対策委員会の公聴会に呼び出され、数時間に及ぶ
議員からの質問攻めにあっています。
 こういう状況ではあったものの、ザッカーバークCEOが一番
頭を悩ましていたものは、アップルが2021年春から実施して
いるプライバシー保護を強化するポリシー改訂です。具体的には
オンラインのターゲティング(追跡型)広告をやめるというポリ
シーです。これは、売り上げの98.5 %が広告収入であるフェ
イスブックにとっては、大ショックです。
 Web2.0 の勝者はGAFAMとよくいわれますが、真の勝
者は、アップルとグーグルです。とくに、ハード、OS、ストア
のすべてを握っているのはアップルです。フェイスブックは、そ
のアップルやグーグルの手の平の上で何とか生き残っているみじ
めな存在──ザッカーバークCEOは、フェイスブックをそのよ
うに捉えていたのです。
 アップルのティム・クックCEOは、このところ、いろいろな
ところで、フェイスブックの個人情報の扱いについて、批判を強
めています。いくつかのサイトから、2人の発言の一部をまとめ
て編集すると、次のようになります。
─────────────────────────────
◎ティム・クックCEOのフェイスブック批判
・フェイスブックなどの企業は、複数のソースからかき集めてき
 たデータを使った詳細な個人プロファイルを作っているが、こ
 のように個人データを取り扱うことは抑制されるべきである。
・個人的に規制を行うことは好きではないが、ベストな規制とは
 「規制がないこと」であり、「自己規制」である。しかし、も
 うすでにその段階は超えている気がする。何らかの歯止めが講
 じられる必要がある。
・アップルは、ユーザーではなくハードウェアを売ってビジネス
 を回すという方針が示されている。実際のところもしアップル
 がユーザーをマネタイズしたら莫大なお金が舞い込んでくる。
 しかし、アップルはそうはしないことを選んでいる。
・(あなたがザッカーバークCEOだったらと尋ねられて)私は
 ああいう状況にはならない。    https://bit.ly/3VbdwkF
・われわれは個人情報を取り引きするようなことはしない。われ
 われにとってプライバシーは人権。市民の自由である。
・無料のオンラインサービスにおいて、利用者は顧客ではない。
 利用者は製品である。       https://bit.ly/3F6ZV8p
◎マーク・ザッカーバークCEOの反論
・(フェイスブックがユーザーの収益化から得られる利益を優先
 しているとの指摘に)真実とはまったく一致していない。現実
 には、世界中のすべての人をつなぐのに役立つサービスを構築
 したい場合、支払う余裕がない人がたくさんいる。
               https://nbcnews.to/2pZxAJn
・(プライバシーは人権、市民の自由という主張に対して)もし
 も、金持ちだけに限定されないサービスを作りたいなら、人々
 が恩恵を受けやすいようにしないといけない。誰もがストック
 ホルム症候群(誘拐・監禁の犯人と長時間をともに過ごすこと
 で、犯人に好意や共感を覚えてしまう症状)にかかって、より
 多額の金額を払わせようとする会社に利用者を大切にしている
 と納得させられないことが大事である。馬鹿げたことだと思う
 から。              https://bit.ly/3AOanPy
─────────────────────────────
 ああいえばこういうの議論のようですが、とにかくこの2人、
仲が良くないのです。アップルのクックCEOによる一連のフェ
イスブック批判に対して、ザッカーバークCEOは、それまで社
員に無料でアイフォーンを使わせていたのですが、クック氏の批
判がよほど悔しかったのか、アイフォーンをすべてをアンドロイ
ドに変更したそうです。
 これに関して、昨日のEJでご紹介したサードバース社CEO
の国光宏尚氏は、マーク・ザッカーバークCEOの本音について
次のように述べています。
─────────────────────────────
 だからこそ、次の戦いでは「自分で自分の運命をコントロール
できるプラットフォームを作る」との強い意思で、VRには20
14年から累計数兆円もの資金を投じてきました。
 そして、いよいよ1000万台を超えて、完全にアップルから
独立した自分の城(プラットフォーム)が見えてきた。だから、
もうザッカーバーグ自身はアップルの奴隷に過ぎなかったフェイ
スブックアプリ群には興味がないはずです(笑)。「ここからい
よいよ俺が一国の主だ」と。過去の屈辱とは決別して、ついに自
分の時代になると、社名もメタに変えたわけです。
      ──国光宏尚著『メタバースとWeb3』/MDN
─────────────────────────────
           ──[ウェブ3/メタバース/040]

≪画像および関連情報≫
 ●フェイスブック、強まる批判/検閲疑惑に内部文書
  流出報道も
  ───────────────────────────
   世界最大のSNSの米フェイスブック(FB)への批判が
  強まっている。欧米メディアが内部の情報をもとに、ベトナ
  ムで投稿への検閲を受け入れていたことなどを相次いで報じ
  た。各国の民主主義のあり方に影響を及ぼすような問題が表
  面化しており、FBは対応を迫られている。
   FBはグループで約36億人の利用者がいるまでに大きく
  なった。差別や暴力をあおるような投稿に十分対応してこな
  かったと、これまでも指摘されていた。今回は内部文書とさ
  れる資料や元従業員の証言をもとに複数の問題が浮上し、説
  明が求められている。マーク・ザッカーバーグ最高経営責任
  者(CEO)は報道に反論しているが、2004年の創業以
  来ともされる厳しい状況に追い込まれた。
   米ワシントン・ポスト紙は25日、3人の関係者らの証言
  として、ザッカーバーグ氏がベトナム共産党の要求を受け入
  れ、反政府派の投稿を検閲することを認めていたと報じた。
  今年1月の共産党大会を前に、「FBは『反国家』の投稿へ
  の検閲を著しく増やし、政府がほぼ完全にプラットフォーム
  をコントロールできるようにした」という。米ニューヨーク
  ・タイムズ(NYT)紙は、FBがインドで反イスラムなど
  の有害な投稿が拡散しているのを知りながら、対応を怠って
  いたと報じた。         https://bit.ly/3F8HqR4
  ───────────────────────────
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ザッカーバークCEO/クックCEO
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2022年12月01日

●「ゲームからメタバース世界に入る」(第5865号)

 昨日のEJにおけるアップルのクックCEOの次の発言を再現
します。気になる言葉だからです。
─────────────────────────────
 われわれは個人情報を取り引きするようなことはしない。われ
われにとってプライバシーは人権。市民の自由である。
                    ──ティム・クック
─────────────────────────────
 1月28日は何の日かご存知ですか。
 「データプライバシーデー」です。データプライバシーデーと
というのは、プライバシーの尊重とデータの保護への信頼を確保
することをテーマとし、毎年1月28日に行われるデータの守秘
と保護に関する意識の向上および議論の喚起のための国際的な取
り組みのことです。
 2021年1月28日には、コンピュータ、プライバシー、デ
ータ保護に関する国際会議「CPDP」が開催され、アップルの
ティム・クックCEOがスピーチをしています。
─────────────────────────────
 私の考えでは、プライバシーは今世紀最大の問題の一つです。
気候変動は最大の問題であり、プライバシーも同じぐらい重要な
問題なのです。(中略)この2つの問題は、その重大性に応じて
対処しなければなりません。深く考え、どうすれば改善できるか
どうすれば次の世代に今よりもずっとよい未来を残せるかを考え
る必要があるのです。
 ご存じのとおり、私は暗号化──バックドアのないエンドツー
エンドの暗号化の熱烈な支持者です。私はエンドツーエンドの暗
号化をなくそう、弱めようとする動きをつねに警戒しています。
                 ──クーリエ・ジャポン編
        『変貌する未来/世界企業14社の次期戦略』
                  講談社現代新書2625
─────────────────────────────
 クックCEOのいうエンドツーエンドの暗号化というのは、各
デバイスから派生したキーと、そのデバイスの持ち主しか知り得
ないデバイスパスコードを使って、情報を暗号化して、サービス
の管理者や第三者などがデータをコピーできないようにする技術
のことです。
 GAFAMのなかで、フェイスブック、すなわち、メタが一番
Web3に熱心なことはわかりますが、もうひとつ、Web3に
熱心な企業があります。それはマイクロソフトです。
 2021年10月にオンラインで開催された企業向けのプライ
ベートイベントの基調講演において、サティア・ナデラCEOは
次のように述べています。
─────────────────────────────
 メタバースは物理的な世界とデジタルの世界を横断した共有体
験を実現できる。例えば、企業が自社のDX(デジタルトランス
フォーメーション)を推進する中で、メタバースは人々がデジタ
ル環境で出会い、アバターを使って会議をより快適に行い、クリ
エイティブなコラボレーションをグローバルで促進できるように
支援することができる。(中略)
 メタバースというのは、仮想空間における社会というだけでな
く、そこに参加する私たちそれぞれの社会への関わり方について
も、これまでにないさまざまな選択肢を与えてくれるのではない
か。そうした社会との新しい関わり方について、これからみんな
で考えて創り上げていきたい。今、マイクロソフトからお見せし
ているメタバースは、新しい社会への可能性のまだほんの一部だ
と考えている。ぜひ、多くの皆さんのご協力をお願いしたい。
   ──サティア・ナデラCEO https://bit.ly/3VDuPuq
─────────────────────────────
 日本でマイクロソフトというと、ワード、エクセル、パワーポ
イントのビジネスユースのソフトウェア企業という印象が強いで
すが、実際には、任天堂、ソニーと並ぶゲーム業界における3大
プラットフォームのひとつなのです。同社が2005年に発売し
た「Xbox360」 という家庭用ゲーム機は、世界で8600万台
を売り上げています。
 そのハードウェアは、「Xbox Series X/S」 で最高レベルに達
し、これを「XBox Game Pass」というコンピュータゲームのサ
ブスクリプションサービスで利用することができます。
 2022年1月18日のことです。マイクロソフトは、ゲーム
大手のアクティビジョン・ブリザードを687億ドルで買収する
と発表したのです。ブルームバークは、このニュースを次のよう
に伝えています。
─────────────────────────────
 米マイクロソフトはゲームソフト会社アクティビジョン・ブリ
ザードを1株当たり96ドルで買収すると発表した。買収は全て
現金で行い、アクティビジョンの純現金を含む企業価値を687
億ドル(約7兆8700億円)と評価する。
                  https://bit.ly/3Vxcr6A
─────────────────────────────
 なお、マイクロソフトによるアクティビジョン・ブリザードの
買収手続きは、まだ終わっていませんが、もし、買収に成功する
と、マイクロソフトは、テンセント、ソニーに次ぐ世界第3位の
ゲーム会社となります。しかも、アクティビジョン・ブリザード
の現在の業績を含めたとしても、マイクロソフト内のゲーム部門
は、年間売上高の約13%に過ぎないのです。
 なぜ、マイクロソフトがゲームに力を入れるかというと、メタ
バースの成否のカギは、世界中のゲーマーを上手に取り込めるか
にかかっているからです。まず、ゲームで切り拓いて、経済圏を
形成し、そのうえでビジネス分野に参入することになりますが、
この場合、もともとビジネス分野に強いマイクロソフトにとって
非常に有利な状況になります。
           ──[ウェブ3/メタバース/041]

≪画像および関連情報≫
 ●マイクロソフトのActivision Blizzard買収に暗雲?
  ───────────────────────────
   マイクロソフトが今年1月より進めているアクティビジョ
  ン・ブリザードの買収ですが、内部関係者が買収の破談を懸
  念する状況になっていると海外メディア・ニューヨーク・ポ
  ストが報じています。この買収は現在米国、英国、欧州連合
  の独占禁止法当局が調査中。しかし、買収発表時のアクティ
  ビジョンの株価が82ドル以上であったのに対し記事執筆時
  点では71・10ドルにまで下落しており、買収が成立する
  かどうかに対し投資家が懐疑的になっているようです。一部
  関係者やアナリストは、メタやグーグルといった企業に比べ
  比較的規制当局との関係が良好だったマイクロソフトが、こ
  れほどの厳しい調査を受けることを予想していなかった可能
  性が高いとコメントしています。
   当局で問題とされているのは、マイクロソフトが規制当局
  やライバルであるソニーに対し提示している約束です。マイ
  クロソフトは以前より買収後も『コール オブ デューティ』
  をプレイステーションなど他のプラットフォーム向けに提供
  することを公言していますが、法的拘束力を持つ契約はまだ
  行われていない状態です。しかし、現地時間11月8日より
  開始される可能性のある本格的な調査を前に、『コール・オ
  ブ・デューティ』をプレイステーション向けに提供し続ける
  ことを正式に契約するといった行動的救済など、EU規制当
  局に対する法的救済措置の提供を拒否したとロイター通信が
  報じています。         https://bit.ly/3ENitsV
  ───────────────────────────
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Xボックス・シリーズX
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2022年12月02日

●「メタバースすぐそこまできている」(第5866号)

 世の中は既にWeb3の世界に入っています。その兆候はあち
こちにあらわれています。
 11月28日のことです。株式会社ローソンから次のニュース
リリースが出されました。
─────────────────────────────
 株式会社ローソン(本社:東京都品川区、代表取締役社長:竹
増貞信、以下「ローソン」)は11月28日(月)に、食品ロス
削減やプラスチック削減などの環境負荷軽減や、アバターによる
制約のない働き方の実現、DX活用で創出するお客様との温かい
コミュニケーションなど、20を超えるサステナブルな施策を集
約した「グリーンローソン」を東京都豊島区にオープンします。
                  https://bit.ly/3OShjRD
─────────────────────────────
 「グリーンローソン」は、ローソンが目指す近未来型店舗の1
つです。この店舗には、次の男女のアバター店員が登場し、接客
にあたる点がユニークです。
─────────────────────────────
          @あおいさん(女)
          Aそらとさん(男)
─────────────────────────────
 この「アバター接客」は、アバター事業を手掛けるAVITA
(アビータ)株式会社とローソンが組んで実現したものです。そ
の狙いは、「時間」や「場所」、「年齢」や「性別」、「様々な
障害」に制約されない新たな働き方を実現するために導入された
ものです。
 アバター接客を行うことによって、時間・距離・年齢・介護や
育児で外出しづらい・身体的なハンディキャップがあるなど、さ
まざまな障害や制約にとらわれることなく、誰もがいきいきと働
くことができる“全員参加型社会”の実現を目指すことが可能に
なるというのです。
 メタバースについて考えるとき、そこでは自分の分身であるア
バターが自分に代わって活躍するということになるのですが、そ
のアバターが何となく、漫画チックというか、現実味がないとい
うか、しょせんゲームの世界と考えてしまうものです。
 アバターについて基本的なことをいうと、ユーザーはアバター
の1人称視点でその空間を見ることができ、頭や手の動きはその
ままアバターの動きに反映されるのです。また、メタバースのな
かで他のユーザーと会話をすると、発言したユーザーの声はその
アバターの位置から聞こえ、身振りや手振り、聞いている人の顔
の向きや頷きなども見ることができ、実際にその空間にいる感覚
でコミュニケーションをとることができます。
 この3年間、コロナ禍によって、私自身ZooMによるリモー
ト講義を何回もやってきましたが、このようなビデオ通話による
リモート会話よりも、アバターによるコミュニケーションの方が
視覚的、感覚的な情報量の多さや会話のしやすさに大きな優位性
があるように感じます。
 もうひとつ、11月29日付の日本経済新聞(電子版)にもメ
タバース関連の記事が掲載されています。
─────────────────────────────
◎しごと進化論
 製薬大手の英アストラゼネカ日本法人が、医師との接点を担う
医薬情報担当者(MR)の働き方を大胆に見直した。全国67カ
所の営業所を廃止。その上でMRがメタバース(仮想空間)で働
ける環境を整え、医師との面談もオンラインに切り替えた。営業
所と病院を何度も往復する伝統的な働き方にメスを入れ、生産性
の向上をめざす。製薬以外の幅広い業界にも参考になりそうだ。
        ──2022年11月29日付の日本経済新聞
               https://s.nikkei.com/3iqQ7xo
─────────────────────────────
 ところで、MRとは何でしようか。
 医療ドラマなどには、必ず登場しますが、病院などで医師に近
づき、医薬品の情報を提供する女性、もちろん女性とは限らない
ですが、ドラマではなぜか女性のMRがよく登場します。ちなみ
に、MRは、次の言葉の省略形です。
─────────────────────────────
        ◎MR(医療情報担当者)
         Medical Representatives
─────────────────────────────
 アストラゼネカ日本法人は、2020年8月から営業所閉鎖を
開始し、2021年4月までに全廃しています。当初は、コミュ
ニケーションをとるために、オンライン会議を実施していたので
すが、オンライン会議の場合、会議が終わって退出すると、そこ
で会話が終わってしまうことに気が付いたのです。これによって
業務以外のプライベートの会話が激減し、チームとしての一体感
がなくなってしまったといいます。
 アストラゼネカでは、検討の結果、バーチャルオフィスの導入
を決め、「オヴィス(oVice)」 のバーチャルオフィスを採用し
たのです。なぜ、オヴィスかというと、初期投資や月額費用が、
リーズナブルであり、導入しやすかったからです。それにオヴィ
スのバーチャル空間は後から必要に応じて拡張することも可能で
あり、現在では600人規模のイベントも開催できるようになっ
ています。
 これはメタバースに非常に近くなっています。これまで会うこ
とが困難だった人ともコミュニケーションがとれます。例えば、
沖縄の人と北海道の人が隣の席で働くこともできるし、上司と部
下の距離も以前よりも格段に縮まっています。病院での仕事が終
わったあと、カフェなどでPCを操作してバーチャルオフィスに
出勤し、いろいろな人とコミュニケーションがとれる──このよ
うに、メタバースは、すぐそこまで近づいてきているのです。
           ──[ウェブ3/メタバース/042]

≪画像および関連情報≫
 ●アステラス製薬、VR・メタバースで「デジタル営業」
  ───────────────────────────
   アステラス製薬が仮想現実(VR)と現実世界を融合した
  クロスリアリティー(XR)を活用した「デジタル営業」の
  領域を強化している。2022年度からMR(複合現実)を
  使って病気の概要を患者に伝えるサービスや、メタバースを
  使った講演会システムの構築を始めた。新型コロナウイルス
  の感染拡大で患者や医師、製薬会社の営業担当者らのコミュ
  ニケーションが減るなか、疾患への理解を深めてもらう狙い
  である。
   「薬を飲み続けないと、腰が曲がって冷蔵庫の一番上にあ
  る魚のパックに手が届かなくなりますよ」
   VRゴーグルをかけた患者に対し、医師がこう説明する。
  骨粗しょう症の患者は骨が曲がるのを防ぐため、定期的な薬
  剤の服用が求められる。ただ、すぐに症状が出ないため服薬
  を面倒に感じる患者も少なくない。
   VRでは仮に患者の背中が曲がった場合に、どれくらい視
  野が変わってしまうのかを表示する。背骨が曲がらなければ
  冷蔵庫の一番上まで手が届くが、症状が進むと冷蔵庫を見上
  げなければ一番上の棚が見えない。こうした症状が悪化した
  ケースをリアルに見せることで、医師は服薬を続けるよう促
  せる。現在は骨粗しょう症と高コレステロール血症で実証実
  験を続けており、数年後をめどに、医療機関への導入を目指
  す。将来的に手がける領域を広げる考えで、VRを使ったサ
  ービスは医療機関に無償で提供する。
               https://s.nikkei.com/3XLWkEc
  ───────────────────────────
グリーン・ローソン.jpg
グリーン・ローソン
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