2019年10月07日

●「消費増税は経済成長を阻んでいる」(EJ第5103号)

 2019年10月1日、遂に消費税率が8%から10%にアッ
プされました。自民党と旧民主党野田内閣が合議した「社会保障
と税の一体改革」がやっと実現したことになります。しかし、こ
れが原因で、解散総選挙の結果、旧民主党は大敗を喫し、安倍内
閣が誕生しています。旧民主党は、公約にない増税をこともあろ
うに自民党と組んで実施したことで、国民の信を失い、野党に転
落し、現在の野党細分化の原因になったのです。
 この「社会保障と税の一体改革」では、当時5%であった消費
税は、次のように10%に引き上げる計画でした。
─────────────────────────────
    ◎2014年 4月 ・・ 5% →  8%
    ◎2015年10月 ・・ 8% → 10%
─────────────────────────────
 今考えると、これがいかに無謀な計画であったかということは
改めて考えるまでもなく、歴然としています。5%の税率を4年
弱で倍の10%にしようというのですから、超大緊縮政策になり
ます。日本は、そんな計画を早急に実施しなければならないほど
深刻な財政状況ではないからです。
 しかし、この計画がつくられたのは、元財務大臣の谷垣前自民
党総裁と、財務省に完全に洗脳された元財務大臣の野田首相(当
時)の2人が組んだからです。「社会保障と税の一体改革」を引
き継いだ安倍首相は、それを計画通り実施することが自らが推進
するアベノミクスにとって大きなマイナスになると肌で感じて、
2回にわたって、次のように増税を延期しています。
─────────────────────────────
  ◎2014年 4月 ・・ 5% → 8%に引き上げ
  ◎2015年10月 ・・ 1年6ヶ月、増税を先送り
  ◎2017年 4月 ・・ 2年6ヶ月、増税を先送り
─────────────────────────────
 安倍首相の経済政策であるアベノミクスには大きな問題があり
ますが、財務省と対立し、2回にわたって増税を先送りしたこと
は評価に値します。もちろん国家財政の状況によっては、増税を
しなければならないことはあります。しかし、消費税の増税だけ
は、絶対にやってはならないのです。増税すべき税は所得税など
他にたくさんあります。
 なぜ、消費税は増税すべきではないのでしょうか。これには、
いくつも理由があります。しかし、為政者から見ると、消費税は
薄く幅広く取ることのできる「美味しい」税金なのです。だから
財務省は国民を洗脳してまでも実現したい税金です。それに、日
本はまだ完全にはデフレの状況を脱していないのです。そのよう
なデフレの状況下で、2回も消費税を引き上げているのです。こ
れでは経済は成長しません。
 世界第2位の経済大国の座は、とっくの昔に中国に奪われ、今
やその規模は3倍にまで拡大しています。日米の経済格差は開く
ばかり、インドや韓国にも追い抜かれつつあります。韓国の文在
寅政権が、「日本何するものぞ」と日本を軽く見るのも経済がま
るで成長していないからです。過去20年間の日本の経済成長率
は、ダントツの世界最下位です。それは日本がデフレから脱却で
きておらず、そのデフレ下で、消費税を何回も上げたことと無関
係ではありません。消費税増税が、経済成長の足を引っ張ってい
るのではないかと思われます。
 そこで、今回のEJのテーマは、消費税を中心に日本の経済政
策にメスを入れようという企画です。
─────────────────────────────
     現在の日本の経済政策は間違っていないか
       ─消費税増税は諸悪の根源である─
─────────────────────────────
 10月1日の夕方、れいわ新撰組、山本太郎代表は、新宿西口
小田急デパート前で、街頭演説をしています。そこには大勢の人
が集まって山本代表の話を真剣に聞いていたのです。そこで山本
太郎代表は、聴衆に次のことを強調しています。そのとき、気に
なる話があります。
─────────────────────────────
 消費税増税で社会保障は充実しない。財政再建も進まない。
 それは、法人税の減税の穴埋めに使われるだけである。
             ──れいわ新撰組/山本太郎代表
─────────────────────────────
 この指摘は新鮮です。本当であれば、とんでもない話です。実
は増税分のほんの一部しか社会保障には回らないのです。8%を
10%にすることによって国には約5・5兆円入ってきますが、
その使い道について、政府は次のように決めています。
─────────────────────────────
    1.借金(国債)の返済 ・・ 約2・8兆円
    2.教育・子育ての充実 ・・ 約1・7兆円
    3.  社会保障の充実 ・・ 約1・0兆円
      ───────────────────
                   約5・5兆円
─────────────────────────────
 安倍政権は、教育無償化を声高らかに宣言していますが、その
財源には1・7兆円、その他の社会保障に回るのは、たったの1
兆円でしかないのです。実に入ってくる税収の半分以上の2・8
兆円が国債の返還、つまり借金の返済に回るのです。これが最大
の問題であるといえます。
 財務省は、これまで20〜30年以上もかけて、「日本の借金
はGDPの2倍以上」もあり、財政健全化を図らないと、大変な
ことになると、メディアをコントロールするなど、あらゆる手段
を講じて、国民を洗脳してきています。
 しかし、この考え方は、根本から間違っています。なぜ、消費
税の増税はだめなのかについて、明日から検討していきたいと考
えています。      ──[消費税増税を考える/001]

≪画像および関連情報≫
 ●選択肢は社会保障を維持するかどうか/時事オピニオン
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   2010年7月、参議院選挙の際に自由民主党が「消費税
  10%への引き上げ」を公約に掲げ、民主党の44議席を上
  回る51議席を獲得するなど、「消費税10%」は現実味を
  帯びてきた。では、そもそも消費税の増税はなぜ10%にす
  る必要があるのか?
   まず、初めに押さえておきたいのは日本の人口構成の推移
  だ。日本は現時点でも高齢者(65歳以上)の割合が世界で
  一番多い国となっていて、しかも高齢化率(人口に占める高
  齢者の割合)のスピードも、かつてどの先進国も経験したこ
  とのない速さで進んでいる。そのため、医療や介護や年金と
  いった社会保障の分野において、国の負担は増え続けること
  になる。
   そこで、政府の「社会保障国民会議」がさまざまなシミュ
  レーションを行い、医療と介護と年金において現在の社会保
  障の水準を維持するには、2025年度までに消費税を10
  %にする必要があることを08年11月の「最終報告」で公
  表した。内訳は、基礎年金で1%弱(現在の社会保険方式が
  前提)、医療と介護で4%弱、少子化対策で0・4〜0・6
  %程度で、合計5%程度。現在の消費税が5%なので合計で
  10%になる。これが10%という数字の根拠である。つま
  り、いま私たちには、大きく次の2つの選択肢がある。「社
  会保障は維持できなくても、このまま消費税を上げないでほ
  しい」か「少なくとも現在くらいの社会保障は維持してほし
  い」か、である。        https://bit.ly/30MRc3M
  ───────────────────────────

10月1日/れいわ新撰組山本太郎氏.jpg
10月1日/れいわ新撰組山本太郎氏
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2019年10月08日

●「消費増税は法人税減税の穴埋めか」(EJ第5104号)

 れいわ新撰組の山本太郎代表は、「消費税の税収は、法人税減
税の穴埋めに使われている」と訴えています。山本太郎代表は、
何を根拠にそう主張しているのでしょうか。山本代表の10月1
日の次の動画を参照にまず、この問題から入ることにします。
─────────────────────────────
      「増税!空気を読め!/消費税廃止」
       山本太郎(れいわ新選組代表)街頭演説会
          東京・新宿駅西口小田急デパート前
               https://bit.ly/2om46ZB
─────────────────────────────
 消費税3%が導入されたのは、1989年のことです。それ以
来3回の税率アップがあって10%になっています。山本代表は
1989年から2016年までの消費税による税収累計額と、そ
の間、何回か法人税減税があったわけですが、その法人税の税収
減少額とを比較しています。山本代表が街頭演説で使っているグ
ラフは、添付ファイルにしてありますが、ここでは、数字によっ
て比較します。
─────────────────────────────
   ◎1989年からの消費税収と法人税収の減少額
       消費税税収累計 ・・ 263・0兆円
      法人税減少額累計 ・・ 192・5兆円
─────────────────────────────
 山本代表は「消費税税収の73%が、法人税収の減少分に割り
当てられている」と主張しています。もし、本当であれば、これ
は、とんでもないことです。多くの人は、消費税増税は、社会保
障を充実させ、国の借金の返済のためだと考えているからです。
 しかし、この意見には疑問を持つ人が多いと思いますし、そう
かといって、間違っているともいえないところがあります。政府
としては、法人税を下げることによって、多くの外国企業が日本
に進出し、日本にお金を落とすことによる増収もあると反論する
はずです。しかし、お金に色はついていないので、国民からみる
と、入ってくる税金が、本当のところ、何に使われているか、必
ずしも明確ではない。だから、政府は「法人税の減少を消費税で
カバーしているわけではない」と反論できます。
 しかし、調べてみると、消費税の導入とその税率引き上げの時
期は、奇妙なほど法人税の減税の時期と一致しています。この事
実を知ると、山本太郎代表の主張していることが、信憑性を帯び
てくるのです。
─────────────────────────────
 ◎1989年/消費税3%を導入
  1989年/法人税42%から40%に引き下げ
  1990年/法人税40%から37・5%に引き下げ
 ◎1997年/消費税3%から5%に増税
  1998年/法人税37・5%から34・5%に引き下げ
  1999年/法人税34・5%から30・0%に引き下げ
  2012年/法人税30・0%から25・5%に引き下げ
 ◎2014年/消費税5%から8%に増税
  2014%/復興特別法人税の前倒し廃止
  2015年/法人税25・5%から23・9%に引き下げ
  2016年/法人税23・9%から23・4%に引き下げ
  2018年/法人税23・4%から23・2%に引き下げ
 ◎2019年/消費税8%から10%に増税
                  https://bit.ly/30SVmHw ─────────────────────────────
 この事実を突き付けられると、法人税の減税分が消費税による
税収増でカバーされているという山本代表の主張を「そんなバカ
な」とはいえなくなります。
 ところで、今回の消費税の8%から10%の引き上げについて
国民はどのように考えているでしょうか。
 日本経済新聞社とテレビ東京が、9月11〜12日に実施した
調査によると、次のようになっています。
─────────────────────────────
  消費税率10%への引き上げに賛成 ・・・・ 52%
  消費税率10%への引き上げに反対 ・・・・ 42%
             https://s.nikkei.com/2VjlASd ─────────────────────────────
 なんと「賛成」が50%を超えています。消費税10%への引
き上げについて多くの調査が行われてきましたが、「賛成」が5
割を超えたことは、はじめてのことです。政府の洗脳が効果を上
げてきた証拠です。その結果、多くの国民が、「社会保障を支え
るためなら、増税もやむなし」と考えつつあります。しかし、今
後膨張する社会保障の財源として消費税をあてることになると、
今後消費税率が、20%、30%とうなぎ上りにアップすること
は必至です。これについて、安倍政権の広報機関といわれる読売
新聞(オンライン)は、次のように書いています。
─────────────────────────────
 少子高齢化の進展に合わせて社会保障費は着実に増えていく。
これを支えるには、毎年安定した税収が見込める税が望ましい。
だが、法人税は、企業業績の浮き沈みによって増減する。所得税
も賃金や雇用に連動するため、景気が悪化すれば大きく減る。こ
うした税に比べて、消費税には税収が景気に左右されにくい特長
がある。生活を維持するため、一定の消費が必要だからだ。消費
税は公平性も高い。所得税は、働く現役世代を中心に課税するの
に対し、高齢者を含め商品やサービスを購入する人から幅広く徴
収するためだ。安倍内閣は、現役世代への支援を手厚くする「全
世代型社会保障」の実現を主要政策に掲げている。負担を現役世
代にしわ寄せしないためにも、消費税の活用が重要である。
                  https://bit.ly/2LNXWKA ─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/002]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税廃止が野党とこの国に残された唯一の活路
  ───────────────────────────
   「『憲法の重要性』とか『立憲主義』みたいな話って、多
  くの方には残念ながら、響かないと思うんですよね。目の前
  の生活でそれどころじゃない。今月を乗り切れるかどうか。
  それなら野党は、こうやって皆さんの暮らしを楽にします、
  と提案できなきゃ。第二次安倍政権が誕生してから、野党が
  今日まで負け続けてきた理由は、経済政策が弱すぎたこと。
  そこに尽きると思う。
   なぜなら、例えば与野党が安保法制や特定秘密保護法で激
  しく対立した時、世論調査では『自民党ちょっとやり過ぎだ
  よね』という答えが圧倒的に多かったわけです。そんなこと
  が何度もあったにもかかわらず、6年間の間に、5回選挙を
  やって、すべて野党は負けたわけですよね。その現実と向き
  合わなきゃならないですよ。
   理由は何か。野党はよく財政再建、財政規律と言いますよ
  ね。ですが、それを実際にやろうとすると何が起こるか、と
  言ったら、財政カットと増税がセットになるわけです。要す
  るに、『我々が勝ったら、今より生活が苦しくなります』と
  国民に宣言しているようなものですよね。20年以上もデフ
  レが続くこの状況でそんなことをやったら、本当にこの国は
  壊れてしまう。そういう民意に野党が寄り沿わないのは、ち
  ょっとあまりにも状況が飲み込めていないんじゃないでしょ
  うか」この男、左なのか右なのか。その言動は本気なのか、
  パフォーマンスに過ぎないのか。一般国民に寄り添う庶民派
  なのか、それともポピュリストか――。いま日本政界でもっ
  とも毀誉褒貶の激しい政治家、それが山本太郎だろう。
           時任兼作氏/ https://bit.ly/2Rr5FiU
  ───────────────────────────

1989年からの消費税収と法人税収の減少額.jpg
1989年からの消費税収と法人税収の減少額

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2019年10月09日

●「消費増税で高額所得者を潤わせる」(EJ第5105号)

 今回のテーマは、いつかは取り上げようと考えていたのですが
情報が徹底的に不足していました。ところが、今年に入って、安
倍内閣が、10月1日から予定通り消費税率の10%引き上げを
決断した思われる状況になって、急に消費税関連の本が多数出版
されるようになったのです。
 著者は、元内閣府官房参与からはじまって、元財務省官僚出身
の作家、元国税庁調査官、経済アナリスト、元国税庁出身で、政
府税制調査会特別委員など、プロばかり。私は、それらの本のほ
とんどを入手し、ていねいに読みこなした結果、そのからくりの
全貌がわかってきました。
 メディアは知っていて沈黙していますが、国民を愚弄するとん
でもないからくりです。多くの人は、そのからくりに気が付いて
いないし、完全に騙されています。
 といっても、安倍内閣は、そのスタート時点(2012年12
月)で、既に「社会保障と税の一体改革」の与野党合意はできて
おり、法律になっていました。つまり、安倍内閣はその実行だけ
を託されたことになります。これは、野田佳彦首相と谷垣禎一自
民党総裁(当時)が組んで、与野党で合意して成立させた法律で
す。2人とも財務大臣の経験者です。したがって、その目的は、
「財政の健全化」であって、「社会保障」ではない。だから「税
と社会保障の一体改革」と、「社会保障」と「税」を逆にして呼
ばれるようになっています。「社会保障と税の一体改革」──こ
れが正しいのです。
 本来であれば、2015年10月に10%に引き上げる予定で
したが、安倍内閣は2度にわたり、先送りしたので、4年遅れて
10%になっています。これについて、既に政界を引退している
谷垣禎一氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 安倍首相は消費増税には警戒的だったし、14年4月に5%か
ら8%に上げたときに苦労された。私と首相との間には経済の見
方や消費税の果すべき役割に関する考えに若干の違いがあった。
それぞれの持つ経済観や財政観が完全に一致しているわけではな
いのが政治だ。それよりも、ここまできたことを喜ぶということ
だろう。             ──谷垣禎一元自民党総裁
       2019年10月2日付、日本経済新聞朝刊より
─────────────────────────────
 ところで、安倍首相自身は、本当に税制に通じているのでしょ
うか。安倍首相は第1次政権で「消えた年金」で苦労したことも
あり、年金には詳しいですが、税制は詳しいとは思えません。税
制を中心にすべてを仕切っているのは財務省です。もっとも現在
の麻生財務相はわかっているとは思えませんが・・・。この人は
知ったかぶりをするだけの人物です。
 つねづね不思議に思っていることがあります。安倍首相が予定
の増税を延期するたびに、経団連の会長がそれを「財政再建が心
配である」などと批判していることです。一人例外はいましたが
そのことにはあえて言及しないことにします。増税は、大企業に
とってもマイナスであり、延期されれば助かるばずなのに、なぜ
批判するのかと思ったものです。
 しかし、昨日のEJで述べたように、消費税の導入や税率が上
がるときには、法人税の減税が行われていますが、それだけでは
なく、所得税の減税も行われているのです。しかし、減税で潤っ
たのは、高額所得者だけです。したがって、多くの人は、所得税
の減税のことは知りません。経団連などの大企業のトップは高額
所得者ですから、彼らは企業と自分自身に対する二重の減税の恩
典にあずかっているわけです。だから、増税が延期されると、不
満を漏らすのです。これが一つのからくりです。
 所得税の税収は、1991年には26・7兆円以上あったので
す。それが2018年には19兆円になっています。7・7兆円
減少しています。一方、法人税は、消費税が導入された1989
年には19兆円あったのですが、2018年には12兆円に減っ
ています。7兆円の減少です。1991年から2020年までの
約30年の間に所得税と法人税の税収は、14・7兆円も減って
います。つまり、消費税の税収の大半は、所得税と法人税の減税
の穴埋めで使われているのです。
 その減少分は、大企業と、そのトップを含む高額所得者(安倍
首相も麻生財務相も入る)たちをたっぷりと潤していることにな
ります。まだあります。大企業は、法人税減税で潤った分を社員
に分配せず、内部留保として貯め込んでいます。2017年度の
法人企業統計によると、企業の「利益剰余金」、いわゆる「内部
留保」は446兆4844億円と、前年度比9・9%増え、過去
最高になっています。増加は6年連続ですが、9・9%増という
伸び率はこの6年間で最も高いのです。いいですか、500兆円
ですよ!日本のGDPの一年分に匹敵します。これでは、社会保
障などに回せるお金はごくわずかになるのは当然です。
 米国では、景気対策といえば「減税」ですが、高額所得者は別
として、日本政府は絶対に減税はしません。そのとき、減税でき
ない理由として財務省がいうのは「日本は財政が厳しいから」で
す。ほとんどの国民はそう思っていますが、これは財務省の長年
によるメディアを巻き込んだプロパガンダの成果といえます。こ
れについては、改めて詳しく説明しますが、日本の財政は何ら問
題はない。国民は完全に騙されています。信じ難いことに、今回
の消費増税に50%の国民が賛成しています。驚きです。野党は
何をやっているんだといいたいです。一緒になって増税するのを
助けているのか!
 財務省による「消費税=社会保障の財源」の位置付けでは、消
費税の税率はどんどん上昇します。これによって国民はますます
貧しくなり、経済は停滞し、格差社会化が一段と進行します。日
本は消費税の導入によってデフレになり、それが3回にわたって
増税され、20年間デフレは持続し、今後さらに深化します。
            ──[消費税増税を考える/003]

≪画像および関連情報≫
 ●「社会保障のための増税」はまやかしである
  ───────────────────────────
   6月に閣議決定された「骨太の方針2019」は、10月
  の10%への消費税増税を明記。「社会保障に対する安定的
  な財源を確保する」などとしている。しかし「社会保障のた
  めの消費税増税」という議論は、法人税や所得税を減らす分
  を消費税分で置き換えるに過ぎず、まやかしの議論であるこ
  とはこの間の経緯を見ても明らかだ。1989年度から20
  18年度までの消費税収は累計372兆円。一方で、同時期
  の法人税の減収分は累計291兆円となる。消費税収の約8
  割が法人税収の穴埋めに使われたことになる。
   消費税導入時との比較では、現在の税収構造は、減税等に
  より所得税収、法人税収が低下。消費税収が、所得税収に匹
  敵するまでに増えているにもかかわらず、国の税収全体はほ
  とんど増えていない。財務省は2018年度一般会計の決算
  概要を発表。「国の税収はバブル期を超え最高」などと報じ
  られた。しかし、バブル期の1990年度と比べると、基幹
  3税のうち増えたのは消費税だけで、13兆円の増。所得税
  と法人税は、それぞれ6・1兆円減だ。
   第2次安倍内閣発足以来の7年間で、社会保障費は4兆2
  720億円も削減されてきた。さらにこの先も社会保障の給
  付抑制、負担増を実施する計画だ。https://bit.ly/2OvpOVt
  ───────────────────────────

谷垣禎一元自民党幹事長.jpg
谷垣禎一元自民党幹事長
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2019年10月10日

●「日本の消費税税率は本当に低いか」(EJ第5106号)

 日本の消費税は10%になりましたが、日本人は消費税に関し
て、漠然と次のイメージを持っています。
─────────────────────────────
      日本の消費税の税率は低いほうである
─────────────────────────────
 何となくヨーロッパの国の消費税は「高い」というイメージが
あります。2019年3月現在、消費税が一番高い国は、ハンガ
リーの27%です。以下、23%以上の国をご紹介します。
─────────────────────────────
  1.27% ハンガリー
  2.25% クロアチア、スウェーデン、デンマーク
        ノルウェー
  3.24% アイスランド、ギリシャ、フィンランド
  4.23% アイルランド、ポーランド、ポルトガル
                  https://bit.ly/2AQqCwr ─────────────────────────────
 逆に、消費税の低い国はどこでしょうか。今のところ一番低い
税率は5%です。
─────────────────────────────
  1.  5% 台湾、カナダ、ニウエ
  2.  7% マレーシア、シンガポール、タイ、パナマ
  3.7・5% バハマ、スイス
  4.  8% 日本(10月1日から10%)
                  https://bit.ly/2AQqCwr ─────────────────────────────
 しかし、消費税率だけを比較しても、真の比較にはならないの
です。たとえば、英国は消費税率は20%ですが、食料品の税率
は0%です。また、ドイツは19%ですが、食料品の軽減税率は
7%と日本より低いのです。それに加えて、低所得者に対する社
会保障の充実度の差もあります。したがって、税率だけで比較し
ても意味がないのです。そこで、主要国の消費税率を食料品の軽
減税率をつけて比較してみます。
─────────────────────────────
 ◎主要国の消費税率
      国名    消費税率   食料品の消費税率
    イギリス     20%          0
    フランス     20%       5・5%
    イタリア     22%      4〜10%
     ドイツ     19%         7%
    スペイン     21%      4〜10%
     スイス    7・7%       2・5%
   ノルウェー     25%        15%
  スウェーデン     25%        12%
      日本     10%         8%
                     ──大村大次郎著
  『消費税を払う奴はバカ!/サラリーマンと事業者のための
              「逃税」スキーム』/ビジネス社
─────────────────────────────
 これを見ると、日本の消費税の場合、税率8%までは、食料品
の軽減税率はなく一律8%であったし、税率を10%に上げる時
点で食料品については、これまでの8%の税率をそのまま適用す
るというザツな制度設計をしています。低所得で、年金暮らしの
高齢者に対して、“優しさ”というものがないのです。しかも、
そういう低所得者から吸い上げた消費税を、法人税の減税や高額
所得者への減税の穴埋めに使って恥じることがない。
 「社会保障と税の一体改革」では、軽減税率を導入することが
条件となっていたのに、7年という年月があったにもかかわらず
ロクに研究もせず、十分な実験もせず、実施間際になって、バタ
バタと複雑なシステムを構築しています。
 しかし、その5%還元のシステムも、中小店舗に絞ったうえ、
何チャラペイによる複雑なシステムを導入し、しかも来年の6月
までの期間限定です。これでは、スマホを持っていないお年寄り
や、持っていたとしても、設定ができない人を切り捨ててしまっ
ています。そこには、“優しさ”のカケラもありません。
 これに関して、元国税調査官の大村大次郎氏は、欧米先進国の
手厚い社会保障制度について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 欧米の先進国では、生活に困る人が出ないような社会保障シス
テムができ上がっている。失業者のいる家庭には、失業扶助制度
というものがあり、失業保険が切れた人や、失業保険に加入して
いなかった人の生活費が補助される。
 この制度はイギリス、フランス、ドイツ、スペイン、スウェー
デンなどが採用している。たとえばドイツでは、失業手当と生活
保護が連動しており、失業手当をもらえる期間は最長24ヶ月だ
が、もしそれでも職が見つからなければ、社会扶助(生活保護の
ようなもの)が受けられるようになっている。
 また、18歳未満の子供を持つ家庭には別途の手当が支給され
るし、公共職業安定所では、扶養家族がいるものを優先するなど
の配慮がされている。
 他の先進諸国でも、失業手当の支給が切れてもなお職が得られ
ない者は、失業手当とは切り離した政府からの給付が受けられる
制度を持っている。だから、不景気になったり、リストラの嵐が
吹き荒れても、国民は路頭に迷うことがないのだ。
               ──大村大次郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 こういう主張に対し政府は、日本は「高福祉・高負担」を受け
入れていないのだから、ヨーロッパとは違うというと思います。
しかし、そもそも政府自民党は、そういう福祉のあり方について
国民に真剣に提案したことが、かつてあっただろうか。
            ──[消費税増税を考える/004]

≪画像および関連情報≫
 ●異端理論よりもタチが悪い財務官僚の特権意識/田中秀臣氏
  ───────────────────────────
   世界的な経済政策論争の焦点が、「緊縮政策」か「反緊縮
  政策」かという対立にあることは、2008年のリーマンシ
  ョック前後から顕在化していた。日本では、90年代から続
  く長期停滞で、既にこの論争の対立軸に沿った経済政策の是
  非が長い間争われている。今日、話題の中心である消費増税
  を巡る論争も、緊縮と反緊縮の路線対立だといえる。
   日本経済新聞などは、安倍晋三首相が、10月の消費税率
  10%引き上げを決定し、噂される今夏の衆参同日選挙は回
  避の方向で動いていると観測記事を出した。だが、この観測
  が正しいかどうかはもちろんわからない。
   筆者は、嘉悦大の高橋洋一教授と月刊誌『WiLL』(2
  019年7月号)で、消費増税が実施されるか否かについて
  いくつかの政治的シナリオを具体的に提起しながら、対談し
  た。高橋教授も筆者も、一つの可能性として、安倍首相が外
  交的な成果によって支持率を高め、消費増税を延期せずに参
  院選だけを行う可能性を議論した。
   対談はトランプ米大統領の訪日前に収録されたので、その
  ときの外交上の成果は、安倍首相が訪朝して拉致問題などで
  進展を見ることを念頭に置いていた。今日では、イラン訪問
  による米国との仲裁役や6月の20カ国・地域(G20)首
  脳会議(サミット)で議長を務めたことによるイメージアッ
  プが具体的に上げられる。    https://bit.ly/2pN4yAj
  ───────────────────────────

5%還元店舗.jpg
5%還元店舗
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2019年10月11日

●「平成は消費税の導入の時代である」(EJ第5107号)

 2019年4月30日に「平成」が終わり、5月1日から「令
和」がはじまっています。テレビでは、さまざまな角度から平成
という時代を振り返っていましたが、平成の時代から消費税がス
タートしたことを強調した番組は少なかったと思います。しかし
経済・財政という観点からみると、消費税は、平成の世からはじ
まったのです。それも自民党の竹下内閣が、強行導入した法律で
す。成立までの流れをメモしておきます。
─────────────────────────────
      大平 正芳首相/1979年 1月
          ・「一般消費税」閣議決定
      中曽根康弘首相/1987年 2月
          ・「売上税」法案国会提出
      竹下  登首相/1988年12月
          ・遂に「消費税法」が成立
─────────────────────────────
 最初に消費税構想を口にしたのは大平正芳首相です。「一般消
費税」として閣議決定をしましたが、評判は最悪で、1979年
10月の総選挙の最中に導入断念を宣言したものの、選挙では大
敗を喫しています。しかし、自民党は、このときから、消費税の
導入を心に誓っていたようです。
 8年後、中曽根康弘首相は、「売上税」と名前を変えて、法案
を国会に提出しています。1987年2月のことです。しかし、
この法案は国民的な猛反対に遭い、同年5月に早々に廃案になっ
ています。
 しかしそれでも自民党はあきらめず、1988年12月に竹下
内閣で消費税法が成立しています。税率は3%。そして、198
8年12月に消費税法は施行されました。施行の直前、竹下首相
が、日本橋の三越本店で、消費税を支払ってネクタイを購入する
パフォーマンスを演じたのを今でも鮮明に覚えています。
 ところで、平成元年(1989年)という年は、どういう年で
あったのでしょうか。
 一言でいうと、バブルの絶頂期だったといえます。1989年
の大納会(証券取引所の年末の最終取引日)において、日経平均
株価は、3万8915円を記録しています。当時の世界企業時価
総額ランキングでは、上位50社中32社を日本企業が占め、日
本経済は「わが世の春」を謳歌していたのです。
 それが2019年のランキングでは、50社中43位にトヨタ
自動車が入っているのみのたったの1社になっています。これは
日本経済のかじ取りを誤ったとしかいいようがないです。
 変化が起きたのは1990年1月からです。1990年の大発
会(証券取引所の年始の最初の取引日)で、株価が全面安になっ
たのです。この異変に日本経済の担い手である霞が関の官僚、自
民党の政治家、そして経団連の大企業は、何が起きたか、まるで
理解できていなかったのです。
 それから、約30年、日本経済は低迷したままです。日本経済
は、深刻なデフレに陥り、令和の時代が始まっても、デフレから
完全に脱却できていない。はじめのうちは「失われた10年」と
いっていましたが、それはやがて「失われた20年」といわれる
ようになり、ついに何もいわなくなっています。「失われた30
年」はさすがに恥ずかしいからです。
 そんなデフレのなかにあって、消費税の税率は3回も引き上げ
られています。明らかな経済運営の大失敗です。1997年4月
に橋本龍太郎首相は、3%の消費税を5%に引き上げましたが、
増税は自らが決めたものではなく、村山政権からの引き継ぎだっ
たのです。当時は、自民・社会・さきがけ政権(自社さ政権)で
あり、野党との連立政権であったのです。
 その村山富市首相(社会党)のもとで、3%から5%の引き上
げが決められており、次の橋本政権にその実行が託されていたの
です。これは、自民党と民主党が組んで決めた「社会保障と税の
一体改革」の実現が、安倍政権に託されたのと同じ構図です。不
思議なことに、増税にはなぜか野党が一枚加わっています。これ
は野党のイメージをすこぶる悪くしています。
 ひどかったのは、1997年4月の橋本政権による消費税3%
〜5%への引き上げです。何が起きたかについては、中央大学名
誉教授、富岡幸雄氏の著書から引用します。
─────────────────────────────
 この引き上げが日本経済に与えたダメージは大きく、折からの
アジア通貨危機も重なり、きわめて深刻な事態を引き起こしまし
た。不良債権の処理を先送りにしていたツケが回り、北海道拓殖
銀行が破綻、山一証券が自主廃業を余儀なくされるなど、潰れる
ことはにないいわれた名門企業が破綻しました。バブル崩壊と消
費税のダブルパンチにより、日本経済はデフレによる不況という
「深い谷底」に突き落されたのです。「失われた10年」は、い
つしか「失われた20年」となり、結局は平成の30年間、日本
は停滞どころか、没落の道を歩みつづけました。
 1990年以前の30年間、先進6ヶ国(米国、西ドイツ、日
本、フランス、英国、イタリア)の中で、最も高かった国民1人
当りの国内総生産(GDP)の伸び率は、90年以降、6ヶ国中
の5位に転落。日本より下にはイタリアしかいなくなりました。
                      ──富岡幸雄著
        『消費税が国を滅ぼす』/文春新書/1233
─────────────────────────────
 デフレが持続しているのに増税をする──これは、絶対にやっ
てはならない禁じ手です。まして、消費税の増税は絶対にやって
はならないのです。それを日本政府は3回もやっているのです。
これではデフレからは脱却できません。なぜなら、消費税の増税
は、経済を疲弊させ、デフレを深化させる「経済の厄病神」だか
らです。なぜ、消費税が経済の厄病神なのかについて、来週から
のEJで明らかにしていきます。
            ──[消費税増税を考える/005]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税10%へ綱渡り 貿易戦争の影
  ───────────────────────────
   米中の貿易戦争という景気への逆風が吹く中で10月に消
  費税率が10%に上がる。バラマキ色が強い対策で景気と参
  院選という剣が峰を乗り越えて増税にこぎつけ、さらに「ポ
  スト10%」の議論も進めて超高齢社会を乗り切る算段を立
  てられるか。
   「8%から10%に2%引き上げる予定です」。昨年10
  月15日、安倍晋三首相は臨時閣議で消費増税対策の検討を
  指示した。その数日前に首相官邸内で詰めた首相発言の原案
  には「予定」の2文字はなかった。「『引き上げる予定』が
  いいんじゃないか」。首相との打ち合わせが終わった後にも
  かかわらず、官邸で影響力のある高官の一存で付け加えられ
  たのだ。財務省など霞が関の官僚には「官邸はまだ見送りの
  余地が残したいのか」と衝撃が広がった。財務省幹部は「歳
  出をケチらずに、増税の環境整備のためにやれることはなん
  でもやれという意味だろう」と受け止めた。景気の腰折れは
  政権運営に直結する。14年4月に消費税率を8%に引き上
  げた後は急激に消費が落ち込んだ。これを経験した首相はそ
  の後に2度の増税延期を決断した。政府内では増税対策が急
  ピッチに進んだ。財務省の太田充主計局長らは「効果がある
  対策はなんでもやる」とカジを切った。
               https://s.nikkei.com/2IFscpc
  ───────────────────────────
 ●添付ファイルの図出典/https://s.nikkei.com/2IFscpc

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予算のバラマキ、景気に影を落とす貿易戦争
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2019年10月15日

●「消費税最大の欠陥は逆進性である」(EJ第5108号)

 消費税といえば何といってもヨーロッパです。消費税というア
イデアは、1953年にフランス財務省の官僚であるモーリス・
ローレという人が考え出したものです。一方、米国には、合衆国
全体としては消費税という制度はないのです。
 フランスなどヨーロッパの国々は国土は比較的小さく、陸続き
ですから、人の移動が頻繁に行われます。日本でいえば、東京か
ら大阪に出掛けるような感覚で、ヨーロッパの国の人々は気軽に
外国に出掛けて行きます。
 こういうヨーロッパの国の場合、EUができる以前は、あまり
高い直接税(例えば所得税)をかけると、人々が外国に逃げてし
まい、どうしても徴税漏れが多くなります。もし、直接税が安い
国があると、そこに移住してしまうこともあるのです。そこで消
費に税金をかける消費税が考え出されたものと思われます。
 これに対して米国は直接税中心の国です。その国土は広く、国
内からは簡単に逃げられません。たとえ税金を支払わないで、ど
の州に逃げても、どこまでも追い掛けて税を徴収できます。しか
し、米国の場合、州ごとに税率が異なる「売上税」という間接税
が存在します。
 ヨーロッパの消費税について、元財務官僚で、嘉悦大学教授の
高橋洋一氏は、フランスの消費税について、次のような独特の見
解を述べています。
─────────────────────────────
 フランスで消費税が考案された理由には、フランス人がプライ
バシーを重視することも影響しているかもしれません。所得税は
いわば個人の懐に入り込む税制です。国家がプライバシーに介入
しないように考案された可能性もあります。
 増税派のなかには「ヨーロッパは高福祉にするために消費税率
を高くしている」という人がいますが、もともと消費税は福祉目
的とは何の関係がありません。消費税は目的税ではなく、一般財
源です。                  ──高橋洋一著
     『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書/1174
─────────────────────────────
 消費税の最大の欠陥は「逆進性」にあるといわれます。ところ
で、「逆進性」とは何でしょうか。
 日本の税金は「累進税」です。所得が多い人ほど税負担が重く
なるようになっています。「たくさん稼いでいる人、すなわち所
得が多い人からは、たくさん税金を払ってもらう」というのが累
進税です。これはきわめて合理的です。
 これに対して消費税は「逆進税」です。所得が多い人ほど税負
担が軽くなる税金です。これを「逆進性が強い」というのです。
 年収5000万円の人がいます。仮に年間1000万円消費す
るとします。残りの金額は貯蓄や投資に回せます。10%の消費
税がかかると、消費税額は年間100万円。収入に対して負担し
ている消費税の割合は2%です。
 一方、200万円の所得の人がいます。年間200万円では、
貯蓄する余裕はないので、収入するほぼ全額が消費に回ると考え
られます。そうすると、年間の消費額は200万円、消費税額は
年間20万円、収入に対する税負担は10%です。そうすると、
次のように収入が低いほど、税負担は重くなります。
─────────────────────────────
   年収5000万円 ・・・ 消費税負担 → 2%
   年収 200万円 ・・・ 消費税負担 →10%
─────────────────────────────
 これが消費税の逆進性です。貯蓄する余裕がないので、収入の
ほとんどを消費、それも食料品の購入に充てることになります。
そういう消費を狙ってかける税金が消費税です。これについて、
元国税調査官の大村大次郎氏は、消費税の逆進性について次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 税金には本来、所得の再分配の機能がある。所得の高い人から
多くの税金をとり、所得の少ない人に分配する、という機能であ
る。経済社会の中で生じたさまざまな矛盾を、それで是正しよう
ということだ。でも消費税は、所得の再分配と、まったく逆の機
能となっている。もし消費税が税収の柱になっていけば、お金持
ちはどんどん金持ちになって、貧乏人はどんどん貧乏人になる。
 これは、単なる理論的なことだけではない。実際「格差社会」
という言葉が使われはじめたのは、消費税が導入されてからであ
る。消費税と格差社会は時代的にまったくリンクしているのだ。
消費税が導入される前は日本は一億総中流社会と言われていた。
国民全部が、自分たちのことを中流階級だと思っでいたわけだ。
 つまり貧しい人がいなかったということだ。格差が広がったの
は、消費税が導入されてからなのである。  ──大村大次郎著
  『消費税を払う奴はバカ!/サラリーマンと事業者のための
              「逃税」スキーム』/ビジネス社
─────────────────────────────
 日本は世界第3位の経済大国です。しかし、所得格差のレベル
は、先進国でワースト8位です。いつのまにか格差社会になって
しまったのです。確かに、大村大次郎氏の指摘するように「日本
は格差社会である」といわれるようになったのは、消費税導入の
時期と一致します。
 橋本健二著の『新・日本の階級社会』(講談社現代新書)によ
ると、「格差社会」という言葉が日本社会を表現する言葉として
使われたのは、1988年11月19日付の朝日新聞社説「『格
差社会』でいいのか」からであり、その直後の1988年12月
に消費税法が成立しています。
 逆進性の強い消費税を導入し、それに加えて法人税の減税と高
額所得者への所得税の減税を続ければ大村氏のいう「お金持ちは
どんどん金持ちになって、貧乏人はどんどん貧乏人になる」こと
により、格差社会になるのは必然です。
            ──[消費税増税を考える/006]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税の逆進性を考える/大竹文雄の経済脳を鍛える
  ───────────────────────────
   国会で消費税増税が議論されている。野田佳彦首相は、消
  費増税に「政治生命をかける」としている。その割に、消費
  税に関する議論は建設的ではないように感じてしまう。増税
  は不可避のもとで、消費税なのか所得税なのか、という議論
  があれば、もう少し変わるのではないだろうか。消費税を否
  定する際の最大の根拠は、所得税は累進的だが、消費税は逆
  進的だというものだ。このことをもう少し考えてみよう。
   正確には、所得税は累進的にできるが、消費税は逆進的に
  しか課税できない、というべきであろう。所得に課税する場
  合であっても、比例的あるいは逆進的に課税されている場合
  もある。例えば、社会保険料はその例である。基本的に定率
  で課されている上、社会保険料には負担の上限もある。その
  ため、所得に対する社会保険料の支払額は逆進的になる。し
  かし、所得税は、通常、課税最低限がある上、限界税率が所
  得とともに上昇するので、所得に対する所得税負担率の比率
  である平均税率は上昇していく。
   これに対して、消費税は逆進的だと言われる。所得に対す
  る消費の比率である平均消費性向が、所得が低いほど高く、
  所得が高くなるにしたがって小さくなっていくという特徴が
  あるからだ。低所得者であっても生きていくためには消費を
  せざるを得ず、その消費に税金がかけられる。高所得者は、
  その所得の一部しか消費しなくても生きていけるのに、多額
  の貯蓄には課税されなくてすむ。なるほど消費税は逆進的で
  不公平に見える。        https://bit.ly/2Vxydte
  ───────────────────────────

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嘉悦大学教授/高橋洋一氏
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2019年10月16日

●「大平正芳首相の消費税導入の奮闘」(EJ第5109号)

 かつて税金に関して、「クロヨン」とか「トーゴーサンピン」
という言葉が流行したことがあります。これは、税務署の職業に
よる所得の捕捉率をあらわしています。
─────────────────────────────
    ◎クロヨン
        9割 ・・・ サラリーマン
        6割 ・・・  個人事業主
        4割 ・・・ 農林水産業者
    ◎トーゴーサンピン
       10割 ・・・ サラリーマン
        5割 ・・・   自営業者
        3割 ・・・ 農林水産業者
        1割 ・・・    政治家
─────────────────────────────
 これらの言葉が流行したのは、1960年(昭和35年)代で
あり、日本はそのとき経済成長の先陣に立っていました。その経
済成長の担い手である当時のサラリーマンには勢いがあり、彼ら
が「税の不公平さ」を訴える言葉として、これらのクロヨンやト
ーゴーサンピンが使われたのです。
 なぜなら、サラリーマンの税金は給与から天引きされ、9割〜
10割捕捉されてしまうからです。こうした税の不公平性に対す
るサラリーマンの不満は、選挙結果に確実に影響を与えるように
なっており、当時の政権党である自民党も、こうした声に対して
何らかの対策を講ずる必要があったのです。そのとき、自民党内
で、この問題解決の案のひとつして、密かに検討されていたのが
消費税の導入です。確かに税金を取る側から見た場合、消費税に
は、次の3つのメリットがあります。
─────────────────────────────
        1.脱税しにくい税である
        2.徴税コストが安くなる
        3.景気には左右されない
─────────────────────────────
 消費税のこれら3つの利点のうち、第1の「脱税しにくい税で
ある」については、改めて詳しく述べる必要がありますが、消費
税が、本当に脱税しにくい税であるとすると、第2の利点である
「徴税コストが安くなる」は実現できます。さらに、第3の「景
気には左右されない」は、誰でも理解できるはずです。しかし、
それは、消費税を正しく導入した場合に限られます。
 ところが、日本は正しいかたちで、消費税を導入していないの
です。それは、消費税導入に不可欠である「インボイス」を導入
せず、簡易課税制度を使っているからです。これでは、消費者が
正しく支払った税金が国に正しく収められず、「益税」が発生し
てしまう不公平な税制になってしまいます。自民党政府が消費税
の導入を急いだことが原点です。
 インボイスについては、改めて述べることにし、今日は、最初
に消費税を導入すべく奮闘した大平正芳首相について述べること
にします。大平内閣は、1978年12月から、1980年6月
まで続いた内閣です。大平氏は、池田勇人首相の秘書官を経て政
界に進出し、宏池会会長として「三角大福中(三木、田中、大平
福田、中曽根)」の一角を占め、田中内閣の外相として、日中国
交回復に貢献しましたが、四十日抗争やハプニング解散で精神や
体力を消耗し、選挙中に首相在任のまま死去した宰相です。
 重要なことは、大平正芳氏が大蔵省(現財務省)の出身であり
田中内閣と三木内閣において、大蔵大臣(財務大臣)を務めてい
ることです。したがって、大平正芳氏は、消費税制のことは正し
く理解しており、1979年1月に、日本に必要な税制として、
一般消費税の導入準備を1980年から実施することを閣議決定
しています。1978年12月に首相に就任し、1980年1月
からその導入準備を行おうとしたのですから、消費税導入は、首
相になる前から考えていた構想だったといえます。
 大平氏の消費税導入の動機になったのは、自身の大蔵大臣時代
に、赤字国債発行を行なわざるをえなかったことにあります。大
平氏は、つねづね次のようにいっていたのです。
─────────────────────────────
        赤字国債発行は万死に値する
               ──大平正芳
─────────────────────────────
 今でこそ、いわゆる赤字国債の発行は当たり前のことになって
しまっていますが、税収が足りないときに、経常経費として使う
目的で発行される赤字国債は、現在でも財政法上禁止されており
その発行に当っては、毎年度財政法の特例法として国会に提出し
その議決を得ることが求められるのです。あくまで財政法上は、
やってはならないことになっているのです。
 大平正芳氏は、三木内閣の大蔵大臣時代の1975年に、オイ
ルショックの後遺症による税収減を補うため、大規模な赤字国債
を発行せざるを得なかったのですが、これは、大平蔵相にとって
きわめて屈辱的なものだったのです。この大平首相について、高
橋洋一氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 大蔵省出身の大平首相は、このような財政規律の乱れを正すた
めに、全力を尽くすことになります。大平首相は大蔵省の出身で
すから、消費税が相互牽制によって適正な納税を促す制度である
ことをよく理解していました。総背番号制の見送りで不公平な課
税は是正できませんでしたが、消費税であれば、脱税も少なく、
総背番号なしで広く薄く課税することができます。大平内閣は脱
税がしにくい消費税導入に向かっていきました。
                      ──高橋洋一著
     『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書/1174
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/007]

≪画像および関連情報≫
 ●ニッポンの消費税導入「失敗」の歴史を振り返る
  ───────────────────────────
   安倍首相は1月10日、TV番組で2017年4月に予定
  する消費税率10%の引き上げについて「今度は景気判断は
  行わず、リーマン・ショックのようなことが起こらない限り
  予定通り引き上げていく」と述べました。過去を顧りみれば
  消費税導入までの道のりは、断念と失敗の連続でした。ジャ
  ーナリストの嶌信彦さんは、自身のメルマガ「時代を読む」
  の中で、消費税の「失敗の歴史」を振り返りながら、日本国
  民を騙してきたとも言える多くの疑問や問題点を指摘してい
  ます。税金──とりわけ消費税は国民一人一人の毎日の生活
  にかかわってくる税金だけに国民の関心はどこでも高い。そ
  れだけに、税金に対する基本的な哲学、考え方を国民が共有
  しておくことが重要になってくる。
   税の基本哲学とは、まず「公平」「公正」「簡素」といわ
  れる。誰に対しても公平な税制であり、何よりも公正でなく
  てはいけない。そして税の仕組みはできるだけ簡素でわかり
  やすいものするというのが税制を国民のものにする民主主義
  の源であり、最近はこれに加えて財政赤字を食い止める手段
  としても大きく期待されてきた。
   日本に消費税導入論が本格的に叫ばれたのは、1979年
  1月の大平正芳内閣時代で、1月に一般消費税を閣議決定し
  ている。しかし、これは10月の総選挙中に導入を断念し、
  選挙の勝利に賭けたが、総選挙も大幅に議席を減らし敗北し
  てしまう。政治家にとって消費税を口にすることは鬼門とさ
  れるようになる。        https://bit.ly/33o8YfB
  ───────────────────────────

「三角大福中」.jpg
「三角大福中」
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2019年10月17日

●「インボイス制度を知る必要がある」(EJ第5110号)

 消費税の「インボイス」について考えてみます。高橋洋一氏の
著書を参考にして説明します。そのためには、モノを売る業者が
どのようにして、消費税を納めるのかについて、理解する必要が
あります。消費税は10%として考えます。
 ある商品を仕入れて売る場合を想定します。8000円で仕入
れて、10000円で売るとします。商品を仕入れるとき、消費
税を10%支払います。800円です。そしてその商品を売ると
き、買い手から10%の消費税を受け取ります。10000円が
売値ですから、消費税は1000円です。
 さて、この業者は、消費税をいくら支払うのでしょうか。
 それは、売ったとき受け取った消費税1000円から、仕入れ
のとき支払った800円を引いて、200円を収めるのです。ま
とめると次のようになります。
─────────────────────────────
 仕入れ: 8000円×10%= 800円 消費税支払い
 販 売:10000円×10%=1000円 消費税受取り
       消費税納付:1000円−800円=200円
                      ──高橋洋一著
     『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書/1174
─────────────────────────────
 インボイスというのは、消費税の税率と税金の額を明記した請
求書/納付書のことです。上記の例で、仕入れ側は800円の消
費税を支払いますが、相手側は、800円を受け取ったことを明
記したインボイスを発行します。これは、仕入れ側が800円の
消費税を支払ったことの証明書になります。これがあると、消費
税を納めるさい、販売時に受け取った消費税1000円から、仕
入れのさい支払った消費税800円を控除できます。
 しかし、日本の消費税はインボイス制度を導入しておらず、簡
易課税制度を使っています。2016年11月末に可決・成立し
た税制改正関連法によると、2023年10月から実施されるこ
とになっていますが、面倒なので、実施を急いで、実施時期を先
延ばししたように見えます。それは次の名称になっていますが、
このことを知っている人は、ほとんどいません。
─────────────────────────────
     インボイス方式(適格請求書等保存方式)
─────────────────────────────
 それでは、現行の「簡易課税制度」とは何でしょうか。
 事業者は、あらかじめ業種の登録をしておくと、消費税を納付
するさい、業種ごとに決められている「みなし仕入れ率」という
ものを使って税額を控除できます。
 例えば、一般的なサービス業は、「みなし仕入れ率」が50%
になっています。例を上げて、説明します。
 あるサービス業の事業者の売り上げが100万円だとします。
そのさい、消費税は10万円受け取っています。しかし、インボ
イスが導入されていないので、仕入れのさい支払った消費税を証
明するものがありません。そこで「みなし仕入れ率」を使って計
算するのです。100万円の50%ですから、50万円というこ
とになります。そうすると、消費税は5万円になります。5万円
が仕入れのさい、支払った消費税とみなされるのです。そうする
と、納める消費税は「10万円−5万円=5万円」になります。
 仮定の話ですが、実際の仕入れ価格が30万円であったとしま
す。そうすると、支払っている消費税は3万円です。そうである
とすると、本来は「10万円−3万円=7万円」の消費税を支払
うべきなのですが、実際には5万円しか支払っていないので、事
業者は2万円トクすることになります。これを「益税」といいま
す。まとめると、次のようになります。
─────────────────────────────
 ◎現行の消費税納付
  売り上げ:100万円/消費税として10万円受領
  みなし仕入れ額:100万円×50%=50万円/消費税
  として5万円支払ったことになるとみなす
  納付する消費税:10万円−5万円=5万円
 ◎インボイスによる消費税納付
  売り上げ:100万円/消費税として10万円受領
  実際の仕入額:30万円/消費税3万円支払い
  納付する消費税:10万円−3万円=7万円
  益税:2万円        ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 上記のケースでいうと、本来国に納付されるべき2万円の消費
税が益税として事業者の懐に入ってしまうことを国として容認し
ていることになります。本来であれば、税率を上げる前にインボ
イス制度を導入すべきです。高橋洋一氏は自分はみなし仕入れ率
を使っていないとして、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ちなみに私はインボイス方式を長年主張している手前、みなし
仕入れ率を使った簡易課税の届け出はしていません。大学教授の
仕事以外にも執筆や講演などの仕事をしていますが、サービス業
の場合は50%のみなし仕入れ率を使えます。みなし仕入れ率を
使って簡易課税にすれば、たとえば印税100万円、消費税8万
円(8%の場合)を受け取った場合、消費税は4万円程度の納税
で済みます。
 しかし実際には、執筆や講演には仕入れというものはほとんど
発生しません。だから実額で仕入れを計算して、8万円近い消費
税を納付しています。簡易課税を申請すれば、納める消費税の額
を減らすことができますが、あえて実額で計算しています。簡易
課税を使ってしまうと、「インボイスを主張している人間が、自
分は簡易課税を使って利益を得ているじゃないか」と批判される
からです。           ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/008]

≪画像および関連情報≫
 ●消費増税で免税事業者が4年後に直面する本当の「大問題」
  ───────────────────────────
   消費税の税率引き上げと軽減税率の導入に伴って、免税事
  業者に問題が起きる。しかし、実は、これは「序曲」にすぎ
  ない。免税事業者にとっての本当の問題は、2023年から
  生じる。「インボイス」が導入され、消費税納税の仕組みが
  大きく変わるのだ。この問題は分かりにくい。しかし、経済
  活動に極めて大きな影響を与える可能性がある。場合によっ
  ては日本社会の根底を揺るがすような問題になりかねない。
   消費税は取引の各段階で課税される。したがって、そのま
  まだと、税額が累積してしまう。こうならないように、前段
  階でかかった消費税を控除する措置が取られる。これが「前
  段階税額控除」(あるいは「仕入税額控除」)と呼ばれる仕
  組みだ。ヨーロッパの付加価値税では、前段階税額控除のた
  めに、「インボイス」が使われている。これは、商品やサー
  ビスごとに、取引内容、税率、税額、取引金額などの法定事
  項を記載した書類だ。
   この書類に記されている消費税額を控除できる。インボイ
  スに基づかずに前段階税額控除を行うと、税務調査があった
  場合に否認される。例で説明しよう。広告会社のCが、化粧
  品会社Aのために宣伝用ポスターを製作するとする。最初に
  税のない世界を考える。     https://bit.ly/35vPZBI
 ───────────────────────────

2023年から導入されるインボイス.jpg
2023年から導入されるインボイス
 
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2019年10月18日

●「日本の消費税率は実質的に世界一」(EJ第5111号)

 消費税を導入する目的が、大平正芳元首相の執念であった赤字
国債をなくすことであったとすれば、その後3回の消費税の税率
引き上げの目的は何だったのでしょうか。
 政府が消費税を増税するときは、必ずその目的を明らかにしま
すが、気になることは、その目的がそのつど変わることです。あ
るときは、財政危機からの脱出であり、またあるときは、財政再
建であり、またあるときは社会保障の財源確保というようにくる
くる変わります。そのようにして、税率をきわめて短期間に、日
本の税制史上、類を見ないハイペースで、5%から10%に倍増
させたのです。
 それに、「〜の財源として」といいますが、消費税は目的税で
はなく、あくまで一般財源です。お金に色はついていないので、
徴税してしまえば、社会保障の財源に充てるといっても、本当に
社会保障に使われているのかどうか確かめようがないのです。そ
の証拠に、これほど消費税が増税されても、社会保障はどんどん
削減されているではありませんか。
 増税の勧進元は財務省であって、政治家ではありません。政治
家は選挙があるので、増税、とくに全国民に影響の大きい消費増
税は、自分にとって大きなマイナスです。増税に失敗して辞めて
いった政治家は何人もいます。このように、政治家は増税すれば
次の選挙で痛い目に遭うのでなるべくやりたくないものですが、
選挙の洗礼を浴びない財務省の役人、それも一部のキャリアは、
ひたすら税率アップを狙っています。彼らにとっては、目的はど
うでもいいのです。ひたすら税率を上げようとします。彼らは、
早くも2年後の12%税率アップを狙っています。
 竹下内閣で消費税が導入された直後の政府税制調査会の会長は
加藤寛慶応義塾大学教授でした。税制に造詣が深く、1990年
から2000年まで会長を務めています。このときの加藤教授の
消費増税の目的は「直間比率の是正」です。これについて、経済
アナリストの森永卓郎氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 加藤教授は、ミスター税調と呼ばれるほど圧倒的な影響力を持
ち、消費税率を引き上げていかなければならないと言い続けた。
その目的は、直間比率の是正だった。所得税や法人税といった直
接税は、景気に応じて大きく変動してしまう。一方、消費税のよ
うな間接税は、安定した税収が得られる。高齢社会の膨大な社会
保障財源を賄うためには、日本以外の先進国並みに間接税の比率
を高めていかなければならないというのが、加藤教授の持論だっ
た。ところが、その加藤教授が、政府税制調査会の会長を退任す
る際の最後の答申で、持論である直問比率の是正をもう一度主張
して花道を去ろうとしたら、大蔵省(当時)の官僚に制止された
そうだ。大蔵官僚とは、それまで手を携えて直間比率の是正を掲
げてきただけに、不審に思った加藤教授が問いただすと、大蔵官
僚は「直間比率の是正ではなく、財政危機を乗り切るためには消
費税率引き上げが必要と言ってください」と話したという。
           ──森永卓郎著/角川新書/K−126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 日本は、世界第3位の経済大国ですが、「家計調査」によると
国民の家計消費は激減しています。2002年に一世帯当たりの
家計消費は320万円を超えていましたが、現在は290万円に
なっています。先進国で家計消費が年々減っているのは、日本だ
けです。消費増税によって景気が低迷しているからです。
 このようにいうと、ヨーロッパの先進国の消費税率は日本より
高いではないかと反論されますが、ヨーロッパでは、消費税は高
いですが、物価は日本よりはるかに低いのです。だから日本では
消費増税されると、生活はますます苦しくなります。
 世界の物価ランキングを知っていますか。物価は「都市名」で
ランキングされますが、2018年の物価ランキングベスト10
を参考までに以下に示します。
─────────────────────────────
  ◎世界物価ランキング/2018(マーサー)
      1位   ルアンダ    アンゴラ
      2位     香港      香港
      3位     東京      日本
      4位 チューリッヒ     スイス
      5位 シンガポール  シンガポール
      6位    ソウル      韓国
      7位  ジュネーブ     スイス
      8位     上海      中国
      9位 ニューヨーク    アメリカ
     10位    ベルン     スイス
                  https://bit.ly/2pnEzzh ─────────────────────────────
 日本の物価は世界第3位である──こういう政府に都合の悪い
ことを新聞やテレビは一切報道しません。その見返りに新聞は増
税を免れています。最低です。政府とメディアが一体になって国
民を騙していることになります。
 日本は、消費税が10%になって、物価は世界第3位の高さで
す。これでは消費が増えるはずがないでしょう。日本の消費税は
実質的には世界一高いといえます。それを無視して財務省のキャ
リアは、国民のためではなく、自分たちのために、ひたすら増税
に走っています。彼らは根っこの部分で財界につながっているの
です。このあたりのことは来週解明します。
 経済的措置を誤ってデフレになり、それにもかかわらず消費税
の税率を何回も上げる。物価は世界第3位と高い。当然消費は大
幅に冷え込みます。そうすれば景気が悪くなり、いつまで経って
もデフレから脱却できない。まさにそういう「失われた30年」
が続いています。国民は「減税」という言葉を忘れてしまうほど
増税ばかりです。    ──[消費税増税を考える/009]

≪画像および関連情報≫
 ●元国税が暴露「消費税は社会保障のため不可欠」が大ウソ
  ───────────────────────────
   確かに、日本の間接税はヨーロッパ諸国に比べれば低いで
  す。しかし、日本の場合、公共料金やNHK受信料など「準
  税金」が非常に高く、国民生活の実態においては、高額の間
  接税を払っているのと同じ状況になっているのです。これは
  データとしても明確に表れているのです。
   間接税というのは、税金をモノの値段に上乗せする税金で
  す。間接税の最大の欠点というのは、モノの値段が上がる事
  です。それが一番、我々の生活に直結することです。もし、
  間接税を上げても、モノの値段が変わらないのだったら、間
  接税などいくら上げてもいいわけです。つまり、間接税とい
  うのは、国民がモノの高さを我慢することによって、間接的
  に税負担をするという税金なのです。
   となると、間接税というのは物価との関係をセットで考え
  なくてはなりません。もし物価がものすごく低い国だったら
  消費税を多少上げても、国民の生活にはそれほど影響はしま
  せん。でも物価がものすごく高い国だったら、消費税を上げ
  たならば、たちまち国民生活に影響することになります。で
  日本は物価が高いでしょうか、低いでしょうか?
   日本は、実は世界一物価が高い国なのです。世界最大のコ
  ンサルティング会社、マーサーによる世界の主要都市の20
  17年の物価ランキングでは、東京は世界第3位となってい
  ます。             https://bit.ly/2MKZgwZ
 ───────────────────────────

加藤寛元慶応義塾大学教授.jpg
加藤寛元慶応義塾大学教授
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2019年10月21日

●「超大企業ほど税金を払っていない」(EJ第5112号)

 日本の消費税が、その創設以来、この税制にとって不可欠であ
るはずのインボイス制度を導入しないまま導入され、3%〜10
%まで税率が引き上げられてきています。これでは、国に消費者
の納めた税金が十分収入されず、それによって利益を得る者が出
てきてしまいます。国は、そのことがわかっていて、インボイス
を導入していないのです。
 既に説明しているように、インボイスはけっして難しい制度で
はなく、導入しようと思えばできるのに、なんと2023年10
月から導入することになっていますが、その事実を多くの人は知
らないでいます。それまでは、「益税」の発生を黙認する簡易課
税制度を使うことになっています。きわめて不公平税制です。
 ところが、消費税の増税に合わせて、法人税が減税されている
事実については既に指摘した通りです。まるで法人税の減税で減
少した税収を消費税の税率を上げることによって、カバーしてい
るようです。だから「庶民には増税/大企業には減税」と批判さ
れるのです。
 しかし、政府は、日本の法人税は他国に比べて高く、外国の企
業が日本でビジネスをするさいのネックになっていると、法人税
減税の意義を強調しています。本当にそうなのでしょうか。日本
の法人税は本当に高いのでしょうか。
 財務省のウェブサイトに「法人実効税率の国際比較」というグ
ラフが出ています。各国の国税と地方税の合計の数字の比較です
が、これを高い順に並べると、次のようになります。2019年
1月現在の数字です。
─────────────────────────────
      1.フランス ・・・ 31・00%
      2. ドイツ ・・・ 29・89%
      3.  日本 ・・・ 29・74%
      4.アメリカ ・・・ 27・98%
      5. カナダ ・・・ 26・50%
      6.イタリア ・・・ 24・00%
      7.イギリス ・・・ 19・00%
                  https://bit.ly/2MtfITX ─────────────────────────────
 日本の場合、法人に課されるのは、法人税だけでなく、法人住
民税、法人事業税があります。法人税は国税ですが、法人住民税
と法人事業税は地方税です。これらを「法人3税」といいます。
それぞれ国によって基準が異なるので、順位で並べて比較するの
は問題があるかもしれませんが、これによると、日本の法人3税
(実効税率)は、確かに「高いレベル」といえます。日本の法人
税は、次のように計算されます。
─────────────────────────────
 「所得金額(=益金−損金)×税率」−税額控除=法人税額
─────────────────────────────
 法人税額は、商品などを販売して得た収入から、商品の原価や
人件費などの経費(損金)を引いた所得金額に税率をかけて、そ
こから税額控除をして計算されます。問題はこの「税額控除」で
す。これが税率とは関係なく、法人税額を大きく減らす仕組みに
なっているのです。日本の法人税には、大きな抜け穴が存在しま
す。その抜け穴は大企業に集中しています。
 その抜け穴の代表的なものとして、大村大次郎氏は次の2つの
制度を上げています。
─────────────────────────────
 1.           研究開発費減税  2003年
 2.外国子会社からの受取配当の益金不算入  2009年
                     ──大村大次郎著
  『消費税を払う奴はバカ!/サラリーマンと事業者のための
              「逃税」スキーム』/ビジネス社
─────────────────────────────
 「1」の「研究開発費減税」というのは、研究開発をした企業
は、その費用の10%分の税金を削減するというものです。限度
は、その企業の法人税額の25%です。
 この減税の特徴は、研究開発費を支出する余裕のある大企業し
か受けられないものであることです。しかも、研究開発費の範囲
が非常に広く設定されており、ちょっとした研究開発でも、製造
業の大企業であれば、受けられる減税です。これによって、法人
税は25%減税されることになります。大村大次郎氏によると、
全体の0・1%にも満たない資本金100億円超の大企業が、減
税額の80%を独占しているのです。まさに大企業のための減税
であるといえます。
 「2」の「外国子会社からの受取配当の益金不算入」は、外国
の子会社から配当を受け取った場合は、課税対象の所得金額から
外されるというものです。企業のグローバル化が進む現代では、
大企業の多くは海外の子会社を保有しています。ある企業が、海
外の子会社から500億円の配当を受け取ったとします。この場
合、この企業は、500億円の配当収入には税金はかからず、無
税になります。
 これは、現地国と日本での2重課税を防ぐのが目的ということ
になっています。外国子会社の配当収入は、一般的には、税金が
源泉徴収されるケースが多く、現地で払っているのだから、日本
では税金を払わなくてもいいという制度です。
 しかし、2重課税を防止するのであれば、現地で支払った分を
控除すればいいはずです。しかし、この制度は、現地でいくら税
金を払っているかに関係なく、全額控除できます。これによって
とんでもない大減税になるのです。
 日本のトップ企業であるトヨタ自動車は、この制度のおかげで
2008年から実に5年間、日本の法人税を払わないで済んでい
ます。その間、トヨタ自動車は、リーマンショックの2年以外は
黒字を出しています。このように儲けている企業ほど税金を払っ
ていないのです。    ──[消費税増税を考える/010]

≪画像および関連情報≫
 ●トヨタ5年間法人税を払っていなかった!そのカラクリ
  ───────────────────────────
   クルマの年間販売台数「世界一」のトヨタ自動車が法人税
  を納めていなかった。最近、巨額の利益を上げているはずな
  のに、なぜこんなことができるのか、とインターネットで怒
  りの声も出ている。
   トヨタの豊田章男社長は2014年3月期の決算会見で、
  09年3月期分から納めていなかった法人税を、14年3月
  期から支払えるようになったと語った。トヨタ自動車の20
  14年3月期連結決算によると、グループの世界販売台数が
  世界で初めて年間1000万台を突破。売上高は前期比16
  ・4%増の25兆6919億円、営業利益は6年ぶりに過去
  最高を更新して、73・5%増の2兆2921億円。税引き
  前当期純利益は、73・9%増の2兆4410億円の好決算
  だった。まさに、トヨタは、「世界一」の自動車メーカーに
  なった。この結果に、豊田章男社長は「一番うれしいのは納
  税できること」と喜んだ。豊田氏が社長に就任したのが20
  09年6月。「社長になってから国内では税金を払っていな
  かった。企業は税金を払って社会貢献するのが存続の一番の
  使命」と語り、「納税できる会社として、スタートラインに
  立てたことが素直にうれしい」と話した。トヨタ自動車は、
  たしかに法人税を払っていなかった。そのことは広報部も、
  「この5年間は払っていません」と認め、「13年度分を、
  この6月に納めます」と話している。
                  https://bit.ly/32t2Lz4
  ───────────────────────────

トヨタ自動車/豊田章男社長.jpg
トヨタ自動車/豊田章男社長
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2019年10月23日

●「大企業の実効税負担率はなぜ低い」(EJ第5113号)

 大企業優遇の日本の法人税のまやかしを徹底追及する経済学者
や税の専門家は、自民党が支配する政治情勢下では、ほとんどい
ませんが、ひとりだけこの問題を徹底的に追及している学者がい
ます。1925年生まれの中央大学名誉教授の富岡幸雄氏です。
 富岡幸雄氏は、学徒出陣で戦地に赴きましたが、復員後、国税
庁に勤務します。そのかたわら中央大学法学部の夜間部に通い、
第1回公認会計士試験、第1回税理士試験にそれぞれ第1号で合
格するという快挙を成し遂げた税の専門家です。
 その富岡幸雄氏は、いくつもの書籍で、日本の法人税のまやか
しを暴いています。その最新の一冊に次の書籍があります。
─────────────────────────────
                       富岡幸雄著
        『消費税が国を滅ぼす』/文春新書1233
─────────────────────────────
 この本では、法人税のまやかしを精緻に暴いていますが、内容
がやや専門的であるので、そりのエッセンスだけをご紹介するこ
とにします。とても内容があり、一読の価値があります。
 法人税、法人住民税、法人事業税のいわゆる「法人3税」の法
律で定められた税率を富岡幸雄氏は「法定総合税率」と表記して
いますが、メディアなどは「実効税率」と呼んでいます。最近で
は、政府当局にもこの表記を使っていますが、これは不可解なこ
とであると富岡氏はいっています。
 なぜなら、「実効税率」という表記は、法律で定められた税率
ではなく、実質的な税率という意味になってしまうからです。こ
の言葉を政府当局が使うのは理解できないことですが、わかって
いてあえてやっていると思うのです。
 そこで富岡氏は、企業の計上している利益に対して、実際に負
担している納税額の割合を「実効税負担率」と呼んでいます。こ
れを式で書くと、次のようになります。
─────────────────────────────
      実効税負担率=法人税等÷税引前純利益
                     ──富岡幸雄著
        『消費税が国を滅ぼす』/文春新書1233
─────────────────────────────
 「税引前純利益」とは、文字通り、税金が引かれる前の技術で
す。「法人税等」は少し専門的になりますが、損益計算書の「法
人税、住民税及び事業税」の欄にある数値のことで、実際に支払
った納税額をあらわしています。
 次の表は、単体で納税している事業会社のうち、税引前純利益
が600億円以上で、2018年度3月期における実効税負担率
が10%以下の事業会社を低い順序に並べたものです。
─────────────────────────────
   税引前純利益(万円)     法人税等 実効税負担率
 A社 1109億5700  16億1500  1・46%
 B社  976億0800  19億9400  2・04%
 C社 2915億7300 160億3500  5・50%
 D社 1394億2500 116億1500  8・33%
 H社  698億0900  74億0800 10・61%
 A社:新日鐵住金、B社:出光興産、C社:アステラス製薬、
 D社:HOYA、H社:富士フィルムHD
                ──富岡幸雄著の前掲書より
─────────────────────────────
 この数字を見ると、大企業が納めている法人税がいかに低いか
がわかります。新日鐡住金(現・日本製鉄)といえば、財界のリ
ーダー的存在です。その大企業の税引前純利益が約1110億円
もあるのに、法人税の納税額はたったの16億円です。出光昭和
シェルの出光興産も、税引前純利益は976億円なのに、納税額
は約20億円に過ぎないのです。
 以上は、単体で納税している事業会社ですが、連結納税してい
る事業会社で見ても同じことがいえます。本田技研工業の同じ2
018年度3月期の税引前純利益が1兆1149億7300万円
もあるのに、法人税は、136億6600万円であり、その実効
税負担率は1・23%という低さです。
 実効税負担率で、同じ時期のベスト10(低い順)に並べると
次のようになります。
─────────────────────────────
     1.本田技研工業 ・・・  1・23%
     2.  関西電力 ・・・ 11・31%
     3.  日本航空 ・・・ 15・37%
     4.  三菱電機 ・・・ 17・06%
     5.  三井物産 ・・・ 18・94%
     6.  住友商事 ・・・ 19・01%
     7.トヨタ自動車 ・・・ 19・25%
     8. 伊藤忠商事 ・・・ 19・73%
     9. 日産自動車 ・・・ 19・78%
    10. 日立製作所 ・・・ 20・62%
                ──富岡幸雄著の前掲書より
─────────────────────────────
 これを見ると、名だたる大企業がズラリです。トヨタ自動車の
税引前純利益は2兆6204億2900万円もあるのに、法人税
は5044億0600万円、実効税負担率は19・25%でしか
ないのです。
 これらの大企業が参加している財界総理のいる経団連は、「日
本の法人税は高い。下げろ!」と公言し、それをこれまで実現さ
せてきています。その税収の穴埋めに、もし消費税が使われてい
たとしたら、これはとても許せるものではないです。これでは日
本は、富める者はさらに巨万の富を得て、貧しい者はさらに貧し
くなる格差社会化が進行してしまいます。安倍政権は、長期政権
で、ひたすらこうした大企業偏重の政策をここまで進めてきてい
ます。         ──[消費税増税を考える/011]

≪画像および関連情報≫
 ●消費増税の議論で欠けていたもうひとつの大問題
  ───────────────────────────
   消費税増税を考える上でもう一つ、考えねばならないのが
  国民が納める税金──血税を、政府が自分の財布であるかの
  ように平気で無駄遣いしていないかという問題である。
   最近、大きな問題となっているものとして、これまでも再
  三問題にされてきた「原発マネー」の問題がある。関西電力
  の八木誠会長を含む役員ら20人が、関電高浜原発が立地す
  る福井県高浜町の元助役(今年3月に90歳で死亡)から、
  2011年からの7年間に計3億2千万円を受け取っていた
  という事実が明らかとなった。原発立地自治体には交付金や
  補助金など巨額の税金が注がれるが、それが「原発マネー」
  として還流していたとみられている。政治家もからんでいる
  という報道もある。今後、徹底的に真相を明らかにしてほし
  い。そして、その額の大きさからも、内容からも、見過ごす
  ことのできない大問題が、米国からの高額兵器の購入という
  問題である。その内実は、どしても必要なものを「購入」し
  ているというより、どうみても不必要なもの、あるいは「欠
  陥品」で他の国は買わないようなものまで、米国からの要求
  で次々と“爆買い”しているということだ。安倍首相がトラ
  ンプ大統領とたびたび対談してはそのたびに米国の高額兵器
  を“爆買い”することを約束させられているようだが、「週
  刊フラッシュ」の9月17日号には、「『血税5兆円を米国
  に』貢ぎリスト」と題した記事で、その爆買いの中身が紹介
  されている。          https://amba.to/31DjcYo
  ───────────────────────────

富岡幸雄氏.jpg
富岡幸雄氏
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2019年10月24日

●「中堅企業ほど法人税負担は大きい」(EJ第5114号)

 昨日のEJの復習です。「法定総合税率」というものがありま
す。これは「法人3税」と呼ばれる、法人税、法人地方税、法人
事業税を合計したものであり、法律で定められている税率です。
これを世間では「実効税率」といっています。法律で定められて
いる税率を「実効」と呼ぶのはおかしいと、富岡幸雄氏は指摘し
ています。そこで、実際に企業が納めている税金の割合を「実効
税負担率」と呼ぶことにします。
 こういう数字があります。赤字ではない利益を出している企業
──有所得法人全体の実効税負担率は「17・46%」(201
7年3月期・外国税額を含む)であるというものです。
 2017年度の法定総合税率は、「29・97%」となってお
り、17・46%はその法定総合税率の58・25%にしか達し
ていません。この数字について、富岡幸雄氏は、次の事実を指摘
しています。
─────────────────────────────
 この数字を細かく分析すると驚くようなことがわかります。実
効税負担率を企業規模ごとにみると、巨大企業、大企業、中堅企
業、中小企業、小規模企業という階層間で、著しい格差が存在し
ているのです。
 法人所得に対して課される、法人税・法人住民税・法人事業税
の全部に関する、実際の負担率(実効税負担率)は、企業全体の
平均ですと、17・46%なのですが、資本金100億円超の巨
大企業の負担率を平均すると16・25%と、さらに負担率が下
がっているのです。
 ところが、さらに上手がいます。巨大企業が多く含まれている
と推定される、連結申告法人にいたっては、平均すると負担率は
8・58%。じつに法律で定められた税率(法定税率)の3分の
1にも達していない税負担なのです。これに対して、資本金1億
円超、5億円以下の中堅企業を見てみますと、実際の税負担率は
27・27%となっており、法定税率に近い数字です。資本金別
に企業を区分してみると、最も高い負担率になっています。
                      ──富岡幸雄著
         『消費税が国を滅ぼす』/文春新書1233
─────────────────────────────
 富岡氏はきわめて重要な指摘をしています。巨大企業が含まれ
る連結申告法人の実効税負担率の平均が「8・58%」であるの
に対して、資本金が1億円超〜5億円以下の中堅企業については
「27・27%」と法定総合税率に近いことです。あまりにも格
差があり過ぎます。これによって大企業ほど、税金の負担率は低
く、中堅企業には高い負担になっていることです。
 富岡幸雄氏は、これに関して、次のように企業規模別の実効税
負担率を示しています。著書では棒グラフで示されていますが、
メルマガ用に表に変更して表示します。
─────────────────────────────
  ◎企業規模別の実効税負担率
   2017年3月期/法定税率29・97%調査
       1千万円以下 ・・・ 20・42%
       5千万円以下 ・・・ 23・10%
        1億円以下 ・・・ 22・67%
     ★  5億円以下 ・・・ 27・27%
       10億円以下 ・・・ 25・66%
      100億円以下 ・・・ 22・38%
      100億円 超 ・・・ 16・25%
         連結法人 ・・・  8・58%
                ──富岡幸雄著の前掲書より
─────────────────────────────
 これを棒グラフにすると、一目瞭然ですが、日本の法人税の負
担は、中堅企業が最も高く、その規模が拡大するにつれて、負担
は軽減されています。最も高いのは、資本金階級が5億円以下の
27・27%(★)です。それにしても、★印以上の企業につい
ては、税金負担率は大幅に軽減されています。
 これに対して1億円以下の企業に対しては、法人税は軽くなっ
ていますが、これは、法人税の軽減税率(年間所得800万円ま
で)が適用されているからです。しかし、その軽減率はきわめて
緩やかです。これについて、富岡幸雄氏は、次のように結論づけ
ています。
─────────────────────────────
 企業規模別というマクロの視点からすると、法人税の負担構造
は、「極大企業の極少の負担」「中堅中小企業の高負担」です。
企業規模が大きいほど負担が軽く、規模の小さい方が重いという
いわば「逆累進構造」になっているのです。「高い、高い」と喧
伝されている日本の法人税を、ほぼ額面通りに払っているのは、
声の大きな巨大企業ではなく、黒字を出している中堅企業なので
す。              ──富岡幸雄著の前掲書より
─────────────────────────────
 実は、大企業だけではなく、高額所得者、つまり富裕層にも税
法の抜け穴があります。消費税増税を説く御用学者は「日本の高
額所得者の税金は他の先進国よりも高い」とし、増税するのは所
得税ではなく、消費税であるという論法を使っています。このよ
うに、彼らは所得税の増税を避ける論法を展開するのです。
 所得が1億円の場合の所得税と住民税を1980年と2015
年で比較すると、次のようになります。
─────────────────────────────
◎所得が1億円の場合
 1980年 ・・ 所得税75%+住民税13%/計88%
 2015年 ・・ 所得税45%+住民税10%/計55%
─────────────────────────────
 35年の間に少しずつ税率は下げられ、88%だった税率は、
現在は55%まで下がっています。日本政府は金持ちには減税を
しているのです。    ──[消費税増税を考える/012]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税収19兆円のうち6兆が大企業に還付
  ───────────────────────────
   2014年4月に消費税率は5%から8%に引き上げられ
  ました。15年10月にはさらに10%へ引き上げ予定でし
  たが、17年4月へと延期し、さらに昨年には19年10月
  まで2年半延期すると安倍晋三首相は表明しました。
   世界経済の不透明感が増していることなどが理由でしたが
  いまだにデフレから脱却できないアベノミクスの大失敗が、
  景気の腰折れで決定的になることを避けたかったからにほか
  ならないでしょう。なにしろ消費税率アップは、小売業をは
  じめ一般消費者への影響は甚大だからです。
   政府・財務省は、将来の社会保障の財源を確保するうえで
  所得税や法人税の増税は適切ではなく、負担の公平性からも
  消費税率を引き上げることこそが、ベストと強調してきまし
  た。そして、財界や大手マスコミも消費税増税はやむなしの
  ポーズを決め込んできました。
   輸出大企業中心の財界にとっては、消費増税は大きなメリ
  ットがあるから当然でしょう。つまり、非常に不公平なカラ
  クリによって、莫大な権益を享受しているのが輸出大企業だ
  からです。また、大手マスコミも消費増税でうかつに政府に
  楯突くことはできません。これまで政府から戦後に国有地を
  格安で払い下げてもらい、テレビ局放送免許を独占的に付与
  され、激安の電波料で儲けさせてもらっているからです。
                  https://bit.ly/2zU7Zb5  
  ───────────────────────────

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消費税と法人税減税との関係
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2019年10月25日

●「大企業と財務省と消費増税の関係」(EJ第5115号)

 「大金を稼いだとしてもほとんどは税金に持っていかれる」と
昔はいっていたものです。こういう場合、所得税だけが念頭にあ
りますが、住民税を加えるべきです。なぜなら、所得に応じて住
民税もしっかり課税されるからです。しかし、財務省が、その高
さを気にするときは、こっそり住民税を外したりします。
─────────────────────────────
        本当の所得税=所得税+住民税
─────────────────────────────
 昨日のEJでご紹介した「所得が1億円の場合」の所得税と住
民税の税率を再現します。
─────────────────────────────
◎所得が1億円の場合
 1980年 ・・ 所得税75%+住民税13%/計88%
 2015年 ・・ 所得税45%+住民税10%/計55%
─────────────────────────────
 確かに1980年当時、所得税の最高税率は75%でしたが、
86年には70%に、87年には60%、89年には50%、そ
して現在は45%にまで下がっています。これに加えて、住民税
も、ピーク時は18%であったものの、現在では10%になって
います。
 実は所得税の最高税率は40%まで下がっていたのです。しか
し、「社会保障と税の一体改革」で、消費税の税率を倍増(5%
〜10%)させるので、所得税の最高税率が40%のままでは、
まずいということで、5%アップして45%にしています。20
13年の税制改正です。消費税の5%アップと合わせたつもりで
しょうか。小細工そのものです。
 しかし、こうした高額所得者に対する大幅な所得税の減税に気
が付いているのは、当の富裕層だけであり、一般庶民はまったく
気が付いていません。一般庶民は「減税」という言葉を忘れてし
まうほど、増税のラッシュを浴びています。
 2014年からわずか5年間で、5%の消費税の税率を10%
にするなど、先進国では例がなく、無茶苦茶です。しかも、日本
はまだデフレから完全に脱却していないのです。経済に影響が出
るのは当たり前のことです。
 こういう税制改革を推進するのは、政治家ではなく、財務省で
す。政治家は増税をすると、支持率が下がり、選挙に影響するの
で、嫌がります。そのため、財務省の高級官僚の重要な役目は、
政治家、それも財務大臣の税に対する考え方を変えさせることで
す。これはまさに「洗脳」です。その典型的な出来事が民主党政
権の公約破りの消費増税の強行です。菅直人元首相、野田佳彦元
首相は、2人とも財務大臣を務めていますが、そのさいに完全に
洗脳され、消費税増税推進派に変貌させられています。
 財務省としては、税収は少しでも多い方がいいに決まっていま
すが、それに加えて、安定した財源が欲しいわけです。しかし、
所得税は景気によって税収が変化するのに対して、消費税は景気
に左右されず、幅広い層から吸い上げることができるので、安定
しています。消費増税の目的は、これまで、直間比率の是正とか
財政再建のためであるとか、社会保障の財源とか、いろいろいわ
れていますが、消費税は目的税ではなく、使い道が限定されない
一般財源です。ですから、徴収してしまえば、何に使おうと財務
省の自由です。お金に色はついていないからです。
 実は、財務省と大企業(経団連)は、根っこの部分でつながっ
ています。これについて、大村大次郎氏は、次のように解説して
います。
─────────────────────────────
 まず最初に念頭に置いていただきたいのは、財務省のキャリア
官僚にとっては、「消費税は実利がある」ということである。消
費税が増税されることによって、彼らは間接的にではあるが、大
きな利益を手にするのだ。なぜなら、大企業と財務省は、根の部
分でつながっているからだ。
 ただ財務省といっても、財務省の職員すべてのことではない。
財務省の「キヤリア官僚」のみの話である。なぜ財務省のキャリ
ア官僚が、消費税の増税で利益を得るのかというと、それは彼ら
の「天下り先」に利をもたらすからだ。天下り先が潤うことで、
財務省のキャリア官僚たちは、間接的に実利を得るのだ。財務省
のキャリア官僚のほとんどは、退職後、日本の超一流企業に天下
りしている。三井、三菱などの旧財閥系企業グループをはじめ、
トヨタ、IT(日本たばこ産業)、各種の銀行、金融機関等々の
役員におさまるのだ。           ──大村大次郎著
  『消費税を払う奴はバカ!/サラリーマンと事業者のための
              「逃税」スキーム』/ビジネス社
─────────────────────────────
 財務省のキャリア官僚は、多くの場合、大企業各社から「非常
勤役員」のポストを用意されますが、大企業としては、彼らの仕
事に期待しているのではなく、在任中にいろいろ配慮してもらっ
たことのお返しとして、報酬という名目で、莫大な謝礼を払って
いるのです。
 とくに財務省のキャリアで、事務次官や国税庁長官の経験者に
ついては、専用車での送迎と、秘書付きの個室を与えられ、日中
からゴルフざんまいと、優雅な毎日を過ごすのです。そのうえ、
2年程度で退職し、各社を渡り歩き、そのつど莫大な退職金を手
にするので、8億円〜10億円も稼げます。大企業と財務省が、
根っこでつながっているというのはこのことを指しています。
 消費税を社会保障財源に使えば、企業としては、社会保険料を
値上げされずに済みます。他方、社会保障財源に社会保険料を充
てると、社会保障は労使折半ですから、企業側も応分の負担をせ
ざるを得ないのです。したがって、企業としては、社会保障は消
費税でやってくれれば満足です。やはり、財務省と大企業は根っ
こで深くつながっているといえます。
            ──[消費税増税を考える/013]

≪画像および関連情報≫
 ●財務官僚はこんないい会社に「天下り」していた
  ───────────────────────────
   約5000万円――。森友文書改ざんにおける渦中の人物
  である佐川宣寿前国税庁長官が受け取る予定の退職金だ。こ
  の金額を「安い」と思う国民はいないだろう。経団連が17
  年に発表したデータによると、経団連会員企業283社の大
  卒退職金の平均額は2374万円。佐川氏は、比較的高所得
  なサラリーマンの2倍以上の退職金を受け取ることになる。
  おまけに佐川氏は、勤続36年の次官級ポスト。年2500
  万円以上の俸給をすでに手にしているわけだ。
   佐川氏の今後の処遇は国会での追及と大阪地検の捜査次第
  だが(お咎めなし)、ふつう、階段を踏み外すことなくキャ
  リア街道を突き進んだ官僚たちには、省庁を退職後「ボーナ
  スステージ」が待っている。民主党政権時代に根絶されたは
  ずの「天下り」だ。
   17年に明るみに出た、文部科学省の再就職あっせん問題
  で巻き起こった批判もなんのその、特に第2次安倍政権にお
  ける天下りの復活は全官庁を通じてすさまじいものがある。
  民主党政権の12年度に1349件だった再就職状況は16
  年度に1775件と3割強増えているのだ。「それを象徴す
  るのが、元財務事務次官の丹呉泰健氏が会長職を務めるJT
  (日本たばこ産業)のトップ人事です。日本専売公社時代か
  らトップは大蔵官僚の指定席でしたが、民主党時代にそのイ
  スは撤去されました。      https://bit.ly/2BEL97C
  ───────────────────────────

経団連と財務省.jpg
経団連と財務省
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2019年10月28日

●「課税ベース浸蝕化が拡がっている」(EJ第5116号)

 税率だけを見ていても、税金の多寡はわかりません。「タック
ス・イロージョン」という税制ギャップが生ずるからです。タッ
クス・イロージョンとは、「課税ベースの浸蝕化」という意味で
す。法人税の計算式を再現します。
─────────────────────────────
 「所得金額(=益金−損金)×税率」−税額控除=法人税額
─────────────────────────────
 この式のなかの課税ベースは「所得金額」ですが、損金として
落とせる額が増えると、益金は減少し、課税ベースは小さくなり
低い税率がかかることになります。さらにそこから税額控除され
るケースもあるので、納める法人税額はさらに小さくなります。
したがって、税率の多寡では税金の大きさはわからないのです。
これについて、富岡幸雄氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 課税ベースが浸蝕されているため、本来、課税対象となるべき
所得が、課税の範囲から、抜け落ちているからです。要するに、
現実の「課税所得」が虫食いになり、削られ、本来の姿より小さ
くなってしまっているのです。
 私のマクロ分析によると、平均して課税所得の2割強が縮小さ
れています。なかでも巨大グループが多いと目される連結法人の
縮小率は40%を超えています。       ──富岡幸雄著
         『消費税が国を滅ぼす』/文春新書1233
─────────────────────────────
 2019年6月のことです。タックス・イロージョンの一端が
明らかになるニュースが起きたのです。ソフトバンクグループ株
式会社による過去最高といわれる4200億円の申告漏れの発覚
です。何が起きたか朝日新聞デジタルの記事をチェックしてみる
ことにします。
─────────────────────────────
 ソフトバンクグループ(SBG、東京都港区)が東京国税局の
税務調査を受け、約4200億円の申告漏れを指摘されたことが
わかった。2016年に約3兆円で買収した大手半導体会社の株
をめぐって巨額の損失を計上したが、同国税局は損失額の一部を
認めなかった模様だ。すでに修正申告したという。
 数千億円規模の申告漏れは極めて異例。日本IBMが約10年
前に約4千億円の申告漏れを指摘(後に最高裁決定で課税取り消
し)された例があるが、今回は、それを上回り過去最高額とみら
れる。ただ、修正申告後も損失が上回っていたため、追徴課税は
なかったという。  ──2019年6月19日付、朝日新聞D
                  https://bit.ly/2WkOpys ─────────────────────────────
 この朝日新聞デジタルの記事をもう少し詳しく述べると、ソフ
トバンクグループは、子会社の株を関連ファンドに現物出資した
さい、取得価格と時価評価の差額、約1兆4000億円の損失を
計上したのです。ところが国税庁は、その70%しか損失として
認めず、残りの約4200億円について申告漏れを指摘したので
す。これについて、当のソフトバンクグループは次のようにコメ
ントしています。
─────────────────────────────
 損金算入の時期で見解の相違があり修正申告した。約4000
億円は、19年3月期の損金に算入される。したがって、所得隠
しのような脱税に関わるものではない。
          ──2019年6月19日付、朝日新聞D
─────────────────────────────
 富岡幸雄氏によると、ソフトバンクグループは、アグレッシブ
な税務戦略を駆使する企業のひとつであるといっています。かか
るタックス・イロージョン現象は、複雑な税務会計システムのメ
カニズムのなかに埋没してしまい、公表される財務報告書からそ
れを発見することは、きわめて困難です。
 ソフトバンクグループの傘下には、多くの子会社があり、それ
ぞれが単体で税金を納めていますが、持ち株会社自体は、税引前
純利益が1624億2200万円もありながら、法人税は500
万円しか払っていません。その実効税負担率は0・003%に過
ぎないのです。これは、持ち株会社の収益が、子会社や関連会社
からの受取配当金が中心であるためです。税制上は「受取配当金
の益金不算入制度」という特例が認められているからです。
─────────────────────────────
 ◎単体納税している持ち株会社
         税引前純利益 法人税等  実効税負担率
 A/ G 1624億2200  500  0・003%
 B/HD  461億7000  900  0・019%
 C/HD  565億1300 3300  0・058%
 D/FG  328億4800 3600  0・110%
                       単位:万円
     A:ソフトバンクグループ B:飯田グループHD
        C:第一生命HD D:コンコルディアFG
                ──富岡幸雄著の前掲書より
─────────────────────────────
 高額所得者、いわゆる金持ちの多くは、株式や債券を保有して
いる人が多いです。株を保有していれば、インカムゲインとして
配当収入があります。これを配当所得といいますが、この配当所
得は税制上優遇されています。上記の持株会社が莫大な税引前純
利益を上げながら、ほとんど税金を払っていないのは、配当所得
の優遇措置のせいです。
 多くの金持ちが保有している株の配当所得を優遇するというこ
とは、高額所得者の税金を安くしていることと同じです。しかも
日本の配当所得に対する税金は、米国、英国、ドイツなどと比べ
て一番安いのです。そういう優遇措置のツケを消費増税によって
庶民に回しているのです。ハラが立ちませんか。
            ──[消費税増税を考える/014]

≪画像および関連情報≫
 ●所得1億円超の金持ちほど税優遇される現実/梶原一義氏
  ───────────────────────────
   2018年度税制改正で最大の焦点だった「所得税」の見
  直しは、高収入のサラリーマンが増税となる一方、株式譲渡
  益や配当所得など金融所得については、大きな改正がなかっ
  た。富裕層は胸をなで下ろしていることだろう。
   税金の額を計算する際の基となる「所得」や、計算された
  「税額」などから一定の金額を差し引くことを「控除」と呼
  ぶ。12月14日に決定された与党税制改正大綱によると、
  所得税ではすべての納税者に適用される基礎控除が38万円
  から48万円へと10万円引き上げられる。サラリーマンや
  公務員など給与所得者の税負担を軽くする給与所得控除は一
  律に10万円引き下げられ、上限額は現行の「年収1000
  万円超で年220万円」が「年収850万円超で年195万
  円」に引き下げられる。
   そのため、年収850万円超の給与所得者で、22歳以下
  の子どもや介護が必要な人がいる世帯を除く約230万人が
  2020年から増税となり、給与所得控除の縮小の影響を受
  けない自営業者やフリーランスの人は、大半が減税となる。
  年収850万円超の層は消費の牽引車であるため、今回の増
  税の影響による消費の一層の冷え込みが懸念される。拙著、
  『税金格差』でも詳しく解説しているが、所得税は2016
  年度(一般会計ベース)で17・5兆円と、税収が最も多い
  「国の基幹税」として、財源調達の機能や、所得再分配機能
  (所得の格差を是正する役割)が期待されている。
                  https://bit.ly/2qE0WRA
  ───────────────────────────

巧みな税務戦略/ソフトバンクG.jpg
巧みな税務戦略/ソフトバンクG

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2019年10月29日

●「配当所得に関わる優遇税制を知る」(EJ第5117号)

 時の政権の立場に立って考えてみます。その政権のトップは、
自分の政権で、将来につながる大きな仕事をしたいと、考えるで
しょう。そのさい、どこに、どのように働きかければいいかと政
治家は考えます。その働きかけるべき最も具体的にして明確な対
象は、大企業、なかんずく大企業のトップが集結する経団連のよ
うな組織になります。真の対象は国民ですが、あまりにも漠然と
しており、掴みどころがないマクロな存在であるからです。
 したがって時の政権は、大企業のトップたちと話し合い、政権
の支持や政策への理解を得ようとします。そのため、どうしても
大企業に有利な税制ができてしまうのです。ちなみに、大企業の
トップは、同時に“金持ち”でもあるのです。
 ここまで述べてきているように現在の税制は、どのように考え
ても、大企業そのものへの法人税の軽減や、いわゆる“金持ち”
に対する税制優遇は動かし難い事実です。そして何よりも許せな
いのは大企業や高額所得者を税制で優遇することによる税収の減
少を、消費増税を繰り返すことによって、埋めようとしているこ
とです。EJはこれをさらに追及していくことにします。
 “金持ち”と切っても切れないのが配当所得です。配当所得と
は、株の配当による収入のことです。配当所得の税金には次の2
つのメリットがあります。
─────────────────────────────
     1.総合課税と分離課税を自由に選べる
     2.日本の配当所得の税は先進国中最低
─────────────────────────────
 「1」のメリットについて検討します。
 配当所得を確定申告するさい、総合課税か分離課税を自由に選
択できます。例えば、配当所得を50万円、事業所得を800万
円、譲渡所得を100万円稼いだとします。全部で、950万円
(50+800+100)になり、これが総所得です。
 この950万円を総合課税すると、その税金は累進課税となり
所得税と住民税は次のようになります。
─────────────────────────────
 ◎総合課税
  所得税率 → 累進課税/5・105〜45・945%
  住民税率 → 10%
─────────────────────────────
 これに対して、配当所得だけを切り離して、個別に税額を計算
する方法を「申告分離課税」といいます。上記の例によると50
万円を他の所得(900万円)と分離して税額を計算します。税
率は次のようになります。
─────────────────────────────
 ◎申告分離課税
  所得税率 → 15%
  住民税率 →  5%
─────────────────────────────
 いわゆる“金持ち”は、所得が大きいので、申告分離課税を選
択します。このように、自分の所得に応じて、納税方法を自由に
選択できるのは便利です。
 なお、これとは別に「申告不要制度」というのもあります。自
分で申告しなくても、自動的に課税される制度です。配当所得が
得られるごとに源泉徴収されるので、確定申告する必要がないの
です。これによる税率は次の通りです。利用に当っては、源泉徴
収ができる特定口座が必要です。
─────────────────────────────
 ◎申告不要制度
  所得税率 → 15%
  住民税率 →  5%
─────────────────────────────
 「2」のメリットについて検討します。
 実は、日本の配当所得に対する税金は、主要先進国のなかで、
一番低いということです。
─────────────────────────────
      日本 ・・・        15%
    アメリカ ・・・      0〜20%
    イギリス ・・・   10〜37・5%
     ドイツ ・・・    26・375%
    フランス ・・・ 15・5〜60・5%
                  ──財務省のサイトより
─────────────────────────────
 安倍政権は、2015年から所得税の最高税率を、40%から
45%に引き上げています。2014年に消費税率を5%から8
%に引き上げており、2015年には、さらにそれを10%に引
き上げることになっていたからです。そのため、高額所得者には
45%の最高税率をかけるようにしてバランスをとったつもりな
のです。しかし、高額所得者の収入には、配当所得が多く含まれ
ており、最高税率の引き上げは一種のパフォーマンスです。
 三木義一青山学院大学法学部教授(専門は租税法、弁護士)は
次のように疑問を呈しています。
─────────────────────────────
 税制の大切な役割の一つが富(所得)の再分配です。資本主義
経済では自由競争で勝敗が分かれ、どうしても所得に差がつく。
そこで所得が高い人により高い税率を負担してもらい、所得が低
い層に社会保障として配分する。この再分配がしっかり機能して
いれば、社会は安定する。税制はそうやって設計すべきもの。
 しかし、自公政権の考え方はそうなっていない。累進課税を強
化するといいながら、抜け道をたくさんつくって富裕層を優遇し
再分配より経済成長を促す方向に変えている。経済成長は重要だ
が、そこで生まれた格差を是正することの方がもっと重要です。
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/015]

≪画像および関連情報≫
 ●日本人富裕層の納税額が米国の半分以下という不公平
  ───────────────────────────
   ここで大きな疑問を持った方も多いはずです。「日本の金
  持ちは、世界でもっとも税負担が大きい」ということを、政
  府や財界がよく喧伝してきたからです。確かに、日本の金持
  ちは“名目上の税率”は高いのです。先進国の最高税率は次
  のようになっています。
   ========================
   日本  :45・95%(復興税0・95%を含む)
   アメリカ:37・0%
   フランス:45・0%
   イギリス:45・0%
   ドイツ :45・0%
   ========================
   これを見ればわかるように、復興税を加えれば、先進国の
  中で一番高いと言えます。が、実際の税収を見ると、アメリ
  カのGDP比の半分以下しかないし、先進国のGDP比と比
  べても軒並み低いのです。「税率は先進国では高い方なのに
  実際の税収はアメリカの半分以下」これは非常に不思議な話
  です。なぜこういうことになっているのか、というと、日本
  の所得税には、金持ちに対して様々な抜け穴が用意されてい
  るからなのです。        https://bit.ly/31QuNDo
  ───────────────────────────

経団連.jpg
経団連

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2019年10月30日

●「なぜ日本だけが経済成長しないか」(EJ第5118号)

10月からの消費税率10%への引き上げについて、2019
年9月11日〜12日に実施された日本経済新聞社とテレビ東京
の世論調査の結果は、次の通りです。
─────────────────────────────
   ◎消費税率10%引き上げについて
          賛成 ・・ 52%
          反対 ・・ 42%
               https://s.nikkei.com/346w8ay ─────────────────────────────
 これは驚きの結果です。なぜなら、消費税率10%への賛成が
5割を超え、反対を上回るのは初めてのことだからです。社会保
障費の膨張に何らかの対策が必要かを尋ねたところ、「必要だ」
は85%に上っています。これは、財務省による国民向けのプロ
パガンダが成功を収めつつあることを示しています。
 財務省が国民向けのプロパガンダで目指しているのは、次の事
実(物語)を国民に認識させ、今後も消費税の増税に理解を示し
応じてもらうことにあります。この物語の執筆者は、安倍内閣の
元内閣官房参与、藤井聡・京都大学大学院教授です。
─────────────────────────────
 今の日本はもう、成長出来ない国になってしまった。人口は減
少するし、高齢者は増え続けるから、社会保障費が年々拡大し、
国の借金は膨大に膨らんだ。このままではもう、国が破綻するこ
とは間違いない。そんな悪夢を避けるには、不況でも安定的な税
収が得られる消費税を増税するしかない。消費増税は経済に確か
に少々悪影響を与えるが、それよりも国の破綻の方が遥かに深刻
な問題だ。だから日本を守るためには消費増税は、絶対に必要な
のだ。10%はまだ、一里塚だ。本来なら15%や20%程度に
まで上げなければならないのだ。にもかかわらず、我が国にはま
だ、そんな当たり前の状況認識を持たず、10%への消費増税を
阻止しようとする奴がいる。そういう奴は、日本を破綻させる不
道徳極まりない輩なのだ。       ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 現在、日本人のほとんどはこの物語を信じ始めています。それ
が世論調査にあらわれるようになったのです。しかし、事実はこ
れと異なります。確かに日本経済は深刻な状況にありますが、こ
れとは事実が異なります。日本人は、事実と違う物語を信じさせ
られています。
 多くの日本人は「日本は世界第3位の経済大国である」とまだ
思っています。しかし、それを数字で確認してみると、日本は既
に経済大国とはいえない状況に陥っています。
─────────────────────────────
   ◎世界各国のGDPシェア(ドル建て)の推移
           1995年   2015年
       日本  17・5%    5・9%
     アメリカ  24・6%   24・3%
       中国   2・4%   15・0%
    ヨーロッパ  33・6%   25・0%
      その他  21・8%   29・9%
          ──データ出典:「世界の統計2017」
─────────────────────────────
 これを見ると、今から24年前の1995年の日本は、世界の
2割近くのカネを稼ぎ出す、カネ持ち国家であり、米国に次いで
世界第2位の経済大国であったことは確かです。稼ぐということ
は、買ってもらえる財やサービスを生産できる力があり、それだ
け経済力が強いことをあらわしています。1995年といえば、
マイクロソフト社から「ウインドウズ95」が発売され、日本に
PCブームが巻き起こった年でもあります。
 しかし、それから20年後の2015年に、日本のGDPは、
17・5%から5・9%にまで落ち込んでいます。米国やヨーロ
ッパのシェアにそれほど変化はないのに、日本だけは、「4分の
1」の水準までシェアが縮まっています。これは、もはや落ち込
みというレベルではなく、「衰退」というべき状態です。この凋
落日本に代わって躍進したのは中国です。この20年間で7倍に
躍進し、かつての日本のポジションを奪っています。
 続いて、添付ファイルを見てください。これは、世界各国の名
目GDP(ドル建て)をあらわしたグラフです。これを見ると、
日本も他の国と同様に、1995年までは順調に成長していまし
たが、それ以降は、他国が順調に成長するなかで日本だけはジリ
ジリと足踏みし、衰退していっています。日本の世界に占める相
対的経済力が、3分の1にまで激減しているのがよくわかると思
います。
 これと同じことを指摘しているのは、経済アナリストの森永卓
郎氏です。日本が元気でなくなったのは、けっして「人口減」や
「高齢化」が原因ではないのです。どうして日本だけがこうなっ
てしまったのでしょうか。
─────────────────────────────
 国連統計で、世界のGDP(国内総生産)に占める日本の比率
(GDPシェア)をみると、1970年には6・2%だったが、
その後上昇を続け、1995年には、17・5%に達した。世界
経済の2割近くが日本だったのだ。ところが、その後、日本のG
DPシェアは転落を続け、2010年には8・6%になり、20
16年には6・5%となっている。つまり、この21年間で、日
本のGDPシェアは、3分の1に落ち込んだのだ。逆に言えば、
この21年、日本経済が世界並みの、つまり並日通の経済成長を
していたら、我々の所得は3倍になっていたことになる。
    ──森永卓郎著/『なぜ日本だけが成長できないのか』
                    角川新書K−241
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/016]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ日本だけが経済成長できないのか/森永卓郎氏
  ───────────────────────────
   プラザ合意の後、輸出がガツンと落ちて、とんでもない円
  高不況が日本経済を襲うわけです。そこで政府はこの円高不
  況対策として思い切った財政出動をして、日銀は金融緩和を
  して景気対策をしたのだということになっているのですけれ
  ども、それで何が起こったかと言うと、バブルが起きたわけ
  です。それが1980年代後半のバブル。良く調べて見ると
  このバブルは、日銀がわざと煽った可能性が極めて高いので
  す。どういうことかと言うと、昔は窓口指導と言って銀行に
  貸出枠を与えていました。これは役人が予算を消化するのと
  一緒で貸出枠までいっぱい貸さないと、次の年の貸出枠が減
  らされてしまう。ところが、円高不況で銀行に貸し先なんて
  無かったのです。仕方がないので不動産融資に走って投機が
  どんどん進んで行った。
   そしてバブルが崩壊する。このバブルの崩壊も、実は当時
  の大蔵省の総量規制、不動産融資を規制しようというものが
  きっかけだと言う人がいます。でも、きちんと歴史を見ると
  そうではないのです。バブルが崩壊した後締めに行っている
  のです。日銀の資金供給量を見ると日銀はバブルが崩壊して
  どんどん日本経済が悪化していくなかでも、どんどん金融を
  絞めて行く。つまり高い山とそこから先の深い谷を作ったの
  は大蔵省と日銀だったのです。どう考えても、わざとやった
  のです。            https://bit.ly/2qPvxMi
  ───────────────────────────

世界各国の名目GDP(ドル建て)の推移.jpg
世界各国の名目GDP(ドル建て)の推移
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2019年10月31日

●「日本は『衰退途上国』化している」(EJ第5119号)

 日本の経済力の現況の続きです。添付ファイルは、世界各国の
1995年〜2015年までの20年間の「経済成長率(名目G
DP成長率)のランキング」です。このランキングでは、情けな
いことに日本は断トツの最下位です。なぜなら、日本以外のすべ
ての国がプラスであるのに、日本だけがマイナスだからです。
 世界の成長率の平均は139%であり、世界経済はこの20年
間において、2・4倍拡大しています。目下日本と対立している
韓国の成長率は、世界平均を超えており、日本は大きな差をつけ
られています。だから、バカにされるのです。
 第1位はカタールで成長率は1968%、第2位は中国で、成
長率は1414%。彼らは「所得倍増」どころか、「所得15倍
増・20倍増」という驚くべき成長を遂げています。マイナスは
論外としても日本は先進国なので、成長率は低くなると思うなか
れ、米国ですら過去20年間で135%成長しているのです。こ
れは世界平均とほぼ同じ水準です。
 皮肉なことに、ドイツの成長率が30%と低いことです。それ
でもプラスであり、日本のようにマイナスではない。日本はマイ
ナス20%、日本の国民は、この20年間にかつてよりも0・8
倍の水準までその所得水準を縮小させてしまっています。この失
われた20年中、2009年から2012年までは民主党政権で
あったとはいえ、自民党政権の経済政策の失敗以外の何ものでも
ないといえます。日本だけが、世界で唯一貧困化してしまったの
ですから。藤井聡教授は、これについて、次のように述べ、日本
を「衰退途上国」と命名しています。
─────────────────────────────
 先進国でないとするなら日本は「発展途上国」なのかと言えば
残念ながら「発展途上国」ですらない。なぜなら発展途上国は、
文字通り「発展している」国だが、我が国は発展の正反対の「衰
退」し続けているからだ。我が国の将来には希望というより、む
しろ「悪夢」が広がっているのである。
 つまり我が国日本は今や、先進国でも発展途上国でもない異様
な国なのである。だからあえて我が国を分類するとするなら、先
進国でも発展途上国でもない、世界唯一の「衰退途上国」とでも
言わざるを得ない。          ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 なぜ、日本は、世界唯一の「衰退途上国」になってしまったの
でしょうか。EJは、その原因をこれから追及していきます。
 1985年9月22日のことです。ニューヨーク市のプラザホ
テルに、G5、先進5カ国の蔵相(財務相)と中央銀行総裁が集
まったのです。会議に集まった蔵相(財務相)は次の5人です。
─────────────────────────────
  西ドイツ財務相、  ゲルハルト・シュトルテンベルク
  フランス経済財政相、ピエール・ベレゴヴォワ
  アメリカ財務長官、 ジェイムズ・ベイカー
  イギリス蔵相、   ナイジェル・ローソン
  日本蔵相、     竹下登
─────────────────────────────
 目的は「為替を安定させる」というものでしたが、会議の内容
は実務者協議で決められており、会議自体は20分程度で合意に
いたっています。これが「プラザ合意」です。
 しかし、その合意の内容は、日本の「円」だけを狙い撃ちにし
て、各国の協調介入によって猛烈な円高に向かわせるというもの
でした。ちなみに、当時の円・ドル相場は1ドル=240円だっ
たのです。
 実際にこのプラザ合意によって、2年後の1987年末には、
1ドル=120円の超円高になっています。2年で2倍の円高で
す。問題は、日本の対応です。なぜ、そんな不利な合意を日本は
受け入れたのでしょうか。
 これについて、経済アナリストの森永卓郎氏は、次のように解
説しています。
─────────────────────────────
 1980年代、米国は苛立っていた。石油ショックの後、いち
早く厳しい排ガス規制への対応を成し遂げ、小型で燃費のよさを
実現した日本製の自動車は、米国市場を席巻していた。ところが
米国国内で販売される自動車の2割が日本車になるに及んで、米
国は怒りの爆発させた。厳しい日米交渉の結果、日本は米国への
輸出の自主規制をすることになり、1981年、日本は前年実績
比15%減の168万台以下に、輸出を抑制することになったの
だ。なぜ、関税ではなく、自主規制という形を採ったのかという
と、当時のレーガン政権は、自由貿易を掲げていたからだ。自由
貿易を掲げて、日本に牛肉やオレンジの市場開放を求める一方で
日本に自動車輸出の自主規制を求める。ダブルスタンダードの利
己主義政策だった。
 しかし、自動車産業を自主規制に追い込んだにもかかわらず、
産業全体としてみると、日本の輸出攻勢は止まらなかった。そこ
で、日本の勢いを一気に止めてしまおうというのが、プラザ合意
による円高政策だったのだ。         ──森永卓郎著
            『なぜ日本だけが成長できないのか』
                    角川新書K−241
─────────────────────────────
 このときは、日本は現在の中国どころではない米国からの脅威
による厳しい状況に置かれていたのです。それは1985年の日
本が、戦後40年も経っているのに、終戦後の沖縄と同じような
実質的に米国の占領下に置かれていたことを示しています。米国
の提案を拒否することは事実上困難だったのです。
 しかし、これが、結果として、日本に巨大なバブルを発生させ
る原因になります。超円高を受け入れることによって、一体何が
起きるか、それは日本の予測を超えていたのです。
            ──[消費税増税を考える/017]

≪画像および関連情報≫
 ●各国の20年間成長率ランキング/1995年〜2015年
  ───────────────────────────
  ◎グラフ出典
   藤井聡著
  『「10%消費税」が日本経済を破壊する/今こそ真の「税
  と社会保障の一体改革」を』晶文社

世界各国の20年間成長率ランキング.jpg
世界各国の20年間成長率ランキング
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2019年11月01日

●「日本はなぜ長期デフレに陥ったか」(EJ第5120号)

 現在、米国は、世界最強の「軍事力」を保有しています。しか
し、圧倒的な軍事力は相手側を威圧し、外交などでは有利に働き
ますが、実際にそれを行使することは、大きなデメリットも伴う
ので、簡単にはできません。そこで、米国は「経済力」という武
器を多用しています。現在、トランプ米政権が中国に仕掛けてい
る「関税戦争」がまさにそれです。米国にこれを仕掛けられると
どこの国でも、まず勝ち目はありません。
 「プラザ合意」が結ばれるまで、米国にとって日本は、その経
済力において、脅威的な存在だったといえます。現在の中国と同
じです。何しろ、安いコストで優れた製品を製造し、怒涛のよう
に輸出してくるからです。これに歯止めをかけるため米国は「プ
ラザ合意」による経済戦争を日本に仕掛けてきたのです。まさに
問答無用であり、日本はそれを拒否できなかったのです。
 1985年のプラザ合意によって、「1ドル=240円」だっ
た対ドル為替レートは、2年後の1987年末には、「1ドル=
120円」の超円高になっています。これは、日本から輸出する
製品に対して、一律100%の関税をかけるのと同じ影響を日本
にもたらしたといえます。
 あまり知られていないことですが、終戦後の沖縄で日本はプラ
ザ合意と同じような体験をさせられています。それは、1946
年4月に、米軍が発行する「B円」という軍票が沖縄での公式通
貨になったことです。はじめのうちはB円と日本円は等価の扱い
でしたが、その2年後の1948年7月には日本円の使用が禁止
され、沖縄で使える通貨はB円だけになっています。
 そして突然1950年4月から、「1B円=3円」に切り上げ
が行われたのです。これは、米軍が日本から資材などを輸入する
さいのコストを下げるのが、狙いだったと思われます。
 1958年にB円は廃止され、沖縄ではドルが使われるように
なりましたが、この8年間の「B円高」によって、沖縄の製造業
は国際競争力を失い、壊滅状態になります。現在でも、沖縄の製
造業は、他の地域に比べると、きわめて脆弱であり、産業全体の
GDPに占める製造業の割合は、全国平均の20・8%に対して
沖縄は4・9%程度です。通貨高の影響はとても大きいのです。
 このプラザ合意による超円高により、当然のことながら、日本
の輸出産業は、大きなダメージを受け、日本経済は深刻な景気後
退に突入します。政府と日銀は、この景気後退を食い止めるため
大規模な財政出動を行い、それに大胆な金融緩和を重ねる経済政
策を展開します。しかし、これが後になって、巨大なバブルを発
生させる原因になったといわれます。
 日銀は、そのとき「5・0%」だった公定歩合を1986年中
に4回も連続して下げています。
─────────────────────────────
     1986年 1月 ・・・・・ 4・5%
           3月 ・・・・・ 4・0%
           4月 ・・・・・ 3・5%
          11月 ・・・・・ 3・0%
     1987年 2月 ・・・・・ 2・5%
─────────────────────────────
 しかし、経済アナリストの森永卓郎氏は、バブルを発生させた
真の原因は、日銀の「窓口指導」にあることを指摘して次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
 日銀は、それぞれの銀行ごとに貸し出しの伸び率の上限を指示
する窓口指導をずっと行ってきた。バブル期には、窓口指導は表
向き廃止されたことになっていたが、現実には続いていた。銀行
は窓口指導で示された融資の伸び率を何が何でも達成しなければ
ならない。万が一達成できないと、翌年の伸び率を減らされてし
まうからだ。役人が予算を使い切ろうとするのと、同じ構造だ。
ところが、いくら融資を増やしたくても、円高不況で融資を受け
たいという資金ニーズがない。
 そこで、銀行がのめり込んでいったのが、不動産融資だった。
表向き、銀行は、不動産投機のための資金を貸してはならないこ
とになっている。しかし、体裁を整えることは難しいことではな
い。銀行は、不動産投機をビジネスに偽装して、不動産融資を拡
大していったのだ。不動産市場に投機資金が大量流入するのだか
ら、当然、不動産価格は、急上昇していくことになった。しかし
そのことは銀行にとって願ってもない変化だった。地価の上昇に
よって、不動産投機への融資が焦げ付くことがなかったからだ。
            ──森永卓郎著/角川新書K−241
            『なぜ日本だけが成長できないのか』
─────────────────────────────
 森永氏によると、バブルを発生させた犯人は、一応大蔵省と日
銀であるとしていますが、そのバックには“本当の犯人”として
の米国の存在を指摘しています。それは「前川レポート」と呼ば
れる日本としての構造改革レポートによって明らかであるとし、
次のように結論づけています。
─────────────────────────────
 (米国の意図は)プラザ合意によって日本を超円高に追い込み
円高不況に陥った日本に、景気対策としての大規模公共事業を実
施させる。さらに「海外資本による投資環境」という名の日本企
業の売却環境を整えさせる。私は、もうこの時点で、米国は、日
本経済の乗っ取り計画をきちんと整えていたのではないかと考え
ている。            ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 このようにして発生したバブルの崩壊によって、日本経済は深
刻なデフレに陥り、その後「失われた30年」といわれる経済成
長しない長いトンネルに入ってしまうのです。そして日本経済は
まだその長いトンネルから、完全に抜け出せないでいます。経済
政策のどこが間違ったのでしょうか。
            ──[消費税増税を考える/018]

≪画像および関連情報≫
 ●「1・57ショック」を打ち消した「バブル崩壊」
  ───────────────────────────
   エコノミストの立場から平成という時代を考える場合、振
  り返ってみて非常に重要な意味があったのが、平成元年(1
  989年)の日本の合計特殊出生率が、午(ひのえうま)の
  昭和41(1966年)の1・58を下回り、1・57まで
  低下していた「1・57ショック」である。
   平成2年(1990年)6月に人口動態統計から明らかに
  なった。人口減・少子高齢化が進む厳しい時代に突入してい
  く日本の将来像が、この時点で人々の知るところとなったわ
  けで、政府が危機感をテコにしながら人口対策を強力に推進
  していれば、現在の日本の経済および社会の姿は、良い方向
  で大きく違っていたはずである。
   ところが、平成元年の年末(終値3万8915・87円)
  をピークに、日経平均株価は急落した。さらに、不動産価格
  も大きく下落するという巨大バブル崩壊の衝撃によって、日
  本経済は暗くて長いトンネルに入ってしまった。大規模な公
  的資金の投入などによって銀行の不良債権問題への対処が進
  み、金融システムにまつわる不安感がなくなるまでに、相当
  な時間が必要だった。日本経済の「血液循環」を早急に回復
  させることが経済政策の焦点になり続ける間、人口の問題が
  顧みられる機会は大きく減り、長い時間が過ぎ去ってしまっ
  た。観光客誘致・少子化対策・女性や高齢者の活躍推進とい
  うメニューだけでは、人口面からの日本経済の「地盤沈下」
  を食い止めるのは、物理的にもはや困難である。
          ──上野泰也氏 https://bit.ly/32ZFhSf
  ───────────────────────────

森永卓郎氏.jpg
森永卓郎氏



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2019年11月05日

●「1997年からデフレ経済に突入」(EJ第5121号)

 安倍首相がアベノミクスの成果について誇らしげに語るとき、
いつも決まっていう言葉があります。
─────────────────────────────
 アベノミクスによって、日本経済は、もはやデフレとはいえ
 ない状況になっている。          ──安倍首相
─────────────────────────────
 しかし、2017年以降、安倍首相は、この言葉を口にしなく
なっています。それもそのはず、添付ファイルのグラフを見てい
ただくとわかるように、GDPデフレーターが、2017年から
マイナスになっており、デフレに逆戻りしているからです。
 ところで、「GDPデフレーター」とは何でしょうか。
 GDPデフレーターについて知る必要があります。経済学では
GDPデフレーターを次のように定義しています。
─────────────────────────────
 GDPデフレーターとは、ある国(地域)の名目GDPから
 実質GDPを算出するために用いられる物価指数である。
   名目GDP ・・・ 物価変動の影響を排除していない
   実質GDP ・・・ 物価変動の影響を排除済みである
                    ──ウィキペディア
                  https://bit.ly/34kHyHZ
─────────────────────────────
 したがって、GDPデフレーターの増加率が、プラスであれば
インフレーション、マイナスであればデフレーションとみなせる
のです。つまり、日本経済は2017年からデフレに逆戻りして
います。IMFや内閣府は、2年以上の継続的な物価下落をデフ
レと定義しています。
 確かに、2013年から民主党の野田政権から政権を引き継い
だ安倍政権は、アベノミクスによって、2014年から2016
年までは、GDPデフレーターはプラスになっており、デフレか
ら一応脱却したといえますが、2017年から再デフレに突入し
てしまっています。「もはやデフレとはいえない」とは、さすが
にいえない状況です。
 ところで、日本の現在のGDPは、約500兆円ですが、19
80年時点では250兆円しかなかったのです。約40年かかっ
てやっと倍増したことになります。そこで、日本の名目GDPの
推移を確認することにします。グラフにすることができないので
数字であらわすことにします。
 まず、1980年〜1996年までを2年ごとの数字を並べて
みると、次のようになります。
─────────────────────────────
  ◎1980〜1996年名目GDP推移  増加率
   1980年 ・・・ 250兆円
   1982年 ・・・ 282兆円 112・8%
   1984年 ・・・ 313兆円 119・9%
   1986年 ・・・ 350兆円 111・8%
   1988年 ・・・ 393兆円 112・2%
   1990年 ・・・ 453兆円 115・2%
   1992年 ・・・ 495兆円 108・8%
   1994年 ・・・ 501兆円 101・2%
   1996年 ・・・ 525兆円 104・7%
                  https://bit.ly/2Ny7pp3
─────────────────────────────
 これを見ると何のことはない。1980年から14年後に日本
の名目GDPは500兆円に達しています。倍増です。増加率は
すべて100%以上で順調に伸びています。
 しかし、1998年に入ると、状況が一変します。1998年
〜2012年までは、次のようになっています。
─────────────────────────────
  ◎1998〜2012年名目GDP推移  増加率
   1998年 ・・・ 527兆円 100・3%
   2000年 ・・・ 526兆円  99・8%
   2002年 ・・・ 515兆円  97・9%
   2004年 ・・・ 520兆円 100・9%
   2006年 ・・・ 526兆円 101・1%
   2008年 ・・・ 520兆円  98・8%
   2010年 ・・・ 500兆円  96・1%
   2012年 ・・・ 494兆円  98・8%
                  https://bit.ly/2Ny7pp3
─────────────────────────────
 増加率を見るとすぐわかるように、明らかに減速しています。
 藤井聡教授は、この間の名目GDPの伸びについて、次の指摘
をしています。
─────────────────────────────
 1997年以降、名目GDP、つまり、私達の所得の総額が縮
小する局面に入った。それ以後、米国バブルやリーマンショック
震災、そして安倍内閣下のアベノミクスなどの影響を受けて上下
してはいるものの、1997年以降、かつてのような力強い成長
は見られなくなった。そして、この1997年という時こそ、我
が国が3%から5%へと消費税を増税させた年なのだ。(中略)
 我が国は、1997年に「デフレ経済」に突入し、それ以後、
一向にそのデフレ状況から脱却できなくなったのである。
                   ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 1990年から日本経済は低成長期に入ったといわれますが、
1996年まではそれなりに成長してきています。しかし、19
97年以降は、上記の数値でも明らかなように、確かに成長しに
くくなっています。しかし、これだけのデータでは、原因が消費
増税とは断定できないと思います。他のデータも当ってみる必要
があります。      ──[消費税増税を考える/019]

≪画像および関連情報≫
 ●山一や拓銀の破綻から20年を経て想うこと
  ───────────────────────────
   今年(2017年)の秋で、1997年11月に相次いだ
  北海道拓殖銀行(拓銀)や山一証券などの経営破綻から20
  年が過ぎた。その当時、筆者は霞が関から松江財務事務所に
  派遣され単身赴任を始めたばかりであったが、「社員は悪く
  ありません」で記憶に残る山一社長の号泣記者会見の模様な
  ど、当時の状況を今も鮮明に覚えている。言うまでもないが
  拓銀は都市銀行の一角を占め、山一も四大証券の一角を占め
  る超名門企業であるとともに、「ツウ・ビッグ・ツウ・フェ
  イル」が典型的に当てはまる巨大金融機関でもあった。この
  11月は、三洋証券の破綻で始まったが、拓銀や山一までも
  が破綻したと聞いて、金融の世界がメルトダウンして行くよ
  うなうすら寒さを覚えたものである。また、この1997年
  であるが、7月にはタイを起点とする「アジア通貨危機」が
  発生し、日経平均株価もまたまた再暴落して行く中での金融
  危機でもあった。
   それから20年が過ぎた今、筆者が思うことはこの97年
  の金融危機が1980年代後半の資産価格(地価と株価)の
  高騰が紛れもなく「バブル」であったことを人々に自覚させ
  たことである。それと共に、90年代初頭からの資産価格の
  下落がバブルの崩壊であることを思い知らせたのである。
                  https://bit.ly/2oFXUvJ
  ───────────────────────────
 ●グラフ出典──三橋貴明著「米中覇権戦争/残酷な未来透視
  図/世界を救う最後のトリデは日本だった!」/ビジネス社


日本のGDP成長率とGDPデフレータ(_対前年比).jpg
日本のGDP成長率とGDPデフレータ(_対前年比)
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2019年11月06日

●「経済に関わる数値にはウソが多い」(EJ第5122号)

 安倍政権の問題点は、経済に関わる数値にウソというか、すり
かえというか、ごまかしというものがあることです。このことは
消費税増税にも関係があるので、いくつもありますが、分かりや
すいものを2つご紹介します。
─────────────────────────────
 安倍政権6年間(2012〜18年)で384万人の雇用が
 増加している。これはアベノミクスの成果である。
                      ──安倍首相
─────────────────────────────
 この数字に違いはないのですが、その内訳が問題です。384
万人増の内訳は次のようになっています。
─────────────────────────────
     ◎384万人増の内訳
      65歳以上 ・・・ 266万人増
     25〜64歳 ・・・  28万人増
     15〜24歳 ・・・  90万人増
     ◎ 90万人増の内訳
     高校生・大学生など   74万人増
           その他   16万人増
─────────────────────────────
 安倍政権の間に、雇用が384万人増えたといっても、その約
70%の266万人は65歳以上の高齢者です。老後2000万
円問題などもあり、年金が少ないので、働かざるを得ない高齢者
が多いのです。
 また、90万人増えたといっても、その約80%が高校生・大
学生であり、彼らは高い学費のために働かざるを得ない状況に追
い込まれているのです。15〜64歳の生産年齢人口は約44万
人しか増えていません。内訳を語らず、384万人の就業者増を
アベノミクスの成果と強調するのは問題があります。
 まだあります。安倍政権は、2015年10月に、日本の国民
経済の「生産」「支出」「所得」の金額の合計、名目GDPにお
いて、「2020年までに600兆円を達成する」ことを政権の
目標に掲げています。実はこれにはからくりがあるのです。GD
Pの統計手法を変更したからです。
─────────────────────────────
       平成17年基準/1993SNA
       平成23年基準/2008SNA
            SNA=System of National Accounts
─────────────────────────────
 今までの計算方法は「平成17年基準」ですが、これを「平成
23年基準」に変更すると、「研究開発投資」がGDPに乗って
くるのです。諸外国では、既に2008SNAを使用しているの
で、日本が2008SNAに変更すること自体は、当然のことで
すが、安倍政権はそのことを国民に周知させる必要があります。
 2008SNAに変更すると、GDPは、約30兆円近く増加
します。これがあったからこそ、安倍政権は、名目GDP600
兆達成目標を掲げたものと思われます。安倍政権は必ずともそれ
を隠しているわけではありませんが、そのことを明らかにしたう
えで、名目GDP600兆円を打ち出してはいないのです。多く
の国民はその事実を知らないでしょう。
 これについて、経世論研究所所長の三橋貴明氏は、次のように
安倍政権を批判しています。
─────────────────────────────
 (統計手法を変更するのであれば)当然の話として「名目GD
P600兆円目標」は、「630兆円」にアップデートしなけれ
ばならないはずだ。ところが、安倍政権は統計基準変更によるG
DPの拡大があったにもかかわらず、目標金額は「600兆円」
のままで据え置きした。「統計詐欺」、以外に何と表現するべき
なのか、筆者には言葉が見つからない。
 本書では紙幅の関係で取りあげることはできないが、安倍政権
及び財務省は様々な「統計マジック」を駆使し、あるいは「統計
詐欺」に手を染めているのだ。具体的には、厚生労働省の毎月勤
労統計調査の詐欺的なサンプル変更、公共事業の当初予算に社会
資本特別会計を含めることによる水増し、エンゲル係数を低く見
せるための「修正エンゲル係数」の公表、2014年4月以降の
景気後退を「隠蔽」した上で、「いざなぎ超えの景気拡大」と発
表するなど、枚挙にいとまがない。      ──三橋貴明著
            『米中覇権戦争/残酷な未来透視図/
    世界を救う最後のトリデは日本だった!』/ビジネス社
─────────────────────────────
 さて、ここから政府に騙されることなく、消費増税の影響を見
ていくことにします。添付ファイルは、日本の実質賃金の推移を
示しています。矢印で示してあるように、一貫して右肩下がりで
落ち込んでいます。
 その頂点を探ると、1997年です。いうまでもなく1997
年は、橋本政権によって、3%から5%への消費増税が行われた
年です。このことは、後で述べますが、このときの増税は、時期
も、タイミングも最悪のときに行われています。
 この増税によって、年々実質賃金が下がり、国民はそれに応じ
て消費できなくなるので、当然実質消費が減少します。そうする
と、需要が縮小し、それによって生産性向上が不要になるので、
実質賃金がまた下がるという悪循環で、どんどん実質消費がダウ
ンしているのです。
 安倍政権は、このような最悪の状況下で、2014年には消費
税の税率を5%から8%に引き上げ、実質賃金のさらなる落ち込
みを招いています。安倍政権は、経団連に対して、賃金引き上げ
の呼びかけをしていますが、そんなことをしても実質賃金は上昇
しないのです。そして、2019年10月、安倍政権は消費税率
の8%をさらに10%に引き上げたのです。まさに狂気の振る舞
いといえます。     ──[消費税増税を考える/020]

≪画像および関連情報≫
 ●いずれ議論不可避 消費税の「段階的増税論」とは
  ───────────────────────────
   10月1日、消費税率が、8%から10%へ引き上げられ
  た。10%超への追加増税については、安倍晋三首相が「今
  後10年、必要ない」と述べ“封印”したが、高齢者の増加
  で医療、介護など社会保障費が膨脹しており、「議論はいず
  れ避けられない」との見方が多い。仮に追加増税の議論が始
  まった場合、アイデアの一つとしてささやかれているのが、
  税率を小刻みに引き上げる“段階的増税論”だ。
   「現時点で(消費税率を8%へ引き上げた)平成26年の
  ような大きな駆け込み需要はみられない」。安倍首相は今月
  15日の参院予算委員会で、こう答弁した。政府は10%へ
  の増税にあたり、令和元年度当初予算に盛り込んだ2兆円超
  の「臨時・特別の措置」のほか、住宅ローン減税の拡充、食
  品などの税率を8%へ据え置く軽減税率の導入など、合計6
  兆6000億円分の景気底上げ策を打ち出した。
   足元の消費動向が安倍首相の答弁通りなら、政府の打ち出
  した対策が奏功したことになる。今後、米中貿易摩擦などに
  よる世界経済減速の影響も見極める必要があるが、景気が腰
  折れするような事態にならなければ、今回の消費税増税は、
  “成功”といえる。財務省にとっても、今後、消費税増税を
  続けていく突破口になりそうだ。 https://bit.ly/2N7F5uC
  ───────────────────────────
 ●グラフ出典──三橋貴明著「米中覇権戦争/残酷な未来透視
  図/世界を救う最後のトリデは日本だった!」/ビジネス社

日本の実質賃金の推移(現金給与総額).jpg
日本の実質賃金の推移(現金給与総額)
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2019年11月07日

●「なぜ1997年が問題になるのか」(EJ第5123号)

 少し固い話になりますが、消費増税がいかにマイナスかを理解
するうえでの前提知識になります。GDP(国内総生産)には、
それを支える3要素があります。次の3つです。
─────────────────────────────
   GDP=「民需」+「政府支出」+「貿易収支」
─────────────────────────────
 このなかの「民需」に注目していただきたいのです。「民需」
とは次の3つの要素の合計です。
─────────────────────────────
  「民需」=「個人消費」+「住宅投資」+「設備投資」
─────────────────────────────
 日本のGDPの構成要素は、個人消費が6割を占めています。
個人消費とは、個人(家計)が、物やサービスの購入に充てた金
額の総計です。しかし、住宅への投資は、別区分として扱われま
す。この個人消費が伸びないと、景気の回復は望めないのです。
─────────────────────────────
      個人消費がアップ ・・・ 景気回復
      個人消費がダウン ・・・ 景気悪化
─────────────────────────────
 最新の個人消費(消費支出)を日本経済新聞の「経済指標ダッ
シュボード」でチェックすると、最新の数字は、2019年8月
現在で「1%」です。これは、「2人以上世帯、実質前年比」で
す。あまりピリッといない数字です。
 個人消費(消費支出)は、平均所得によって左右されます。平
均所得が多くなればなるほど、個人消費は増加し、景気を押し上
げます。こんなことは小学生でもわかる理屈です。
 添付ファイルの上のグラフを見てください。これは、一世帯当
たりの平均所得金額の推移をあらわしています。90年代中盤ま
では所得は増加し続けていたのですが、1997年後は一貫して
右肩下がりで下落し続けています。1993年時点で平均所得は
664万円であったものが、2012年には、529万円まで下
がってしまっています。90年代のピーク時よりも135万円も
下落し、その分日本人は貧乏になっているのです。これについて
藤井聡教授は自著で、次のように述べています。
─────────────────────────────
 日本のGDPの停滞、衰退は、一軒一軒の世帯の視点から言え
ば、こうした世帯収入の下落を意味しているのである。ちなみに
万一日本経済が衰退せず、世帯の所得がピーク時から(さらに成
長せずとも)下落していなかった場合と実際の所得の推移とを比
較すれば、平均的な世帯は90年代からの約20年間で、約15
00万円もの所得をさらに得ていたという計算となる。
 逆に言うなら、日本がデフレになり、「衰退」しはじめたこと
で、日本の平均的な世帯は、約1500万円ものカネを失ってし
まったのである。それだけのカネがあれば、日本の各世帯は今よ
りも、どれだけ豊かな暮らしが出来たのだろうか。誠に残念な話
であるが、それこそ日本が「衰退途上国」と化してしまったこと
による、それぞれの世帯に対する「リアルな被害」の内実なので
ある。                ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 「消費税は消費に対する罰金である」といわれます。消費をす
るたびに罰金を科せられるのです。タバコ税は、タバコを吸う人
に対する罰金です。実際に、タバコ税を上げると、タバコの消費
が減少します。タバコは健康にとってよくない結果をもたらすの
で、タバコ税はいくら上げてもよいとさえいわれます。
 したがって、消費税を増税すれば当然消費が減少します。GD
P全体の約60%が個人消費ですから、消費税を上げればGDP
も減少します。今回の場合は、実質賃金が大幅にダウンしてきて
いるのに消費税を上げたのですから、当然消費に回るお金が少な
くなり、さらに個人消費を冷え込ませ、景気が悪化します。当た
り前のことが起きているのです。
 消費増税でもうひとつ指摘すべきことがあります。消費税を上
げれば、税収は増えるはずです。しかし、実際には税収は減少し
ています。添付ファイルの、下のグラフを見てください。このグ
ラフは、政府の税収の推移を示しています。増税直前には一時的
に税収は増加しているものの、増税直後の1998年には、直前
の52・1兆円から、49・4兆円まで、2・7兆円もの税収が
減少しています。その後、実際に消費税が入ってきて一時的に税
収は回復しますが、後は一貫して下がっています。どうしてこう
なるのでしょうか。
 税収を増やすために実施したはずの消費増税が、税収を下げて
いるのは、増税によってさらに景気が悪化し、日本経済全体が停
滞してデフレ化し、その結果、法人税や所得税などがすべて縮小
してしまった結果です。そのため、増税からわずか6年で、総税
収は10兆円以上も縮小してしまっています。
 これについて、藤井聡教授は、エコノミストである安達誠司氏
の次の発言を引用しています。
─────────────────────────────
 圧倒的多数の「専門家」は夏場に発生した「アジア通貨危機」
の影響の方がはるかに大きいと結論づけており、アジア通貨危機
がなければ、1997年の消費増税も景気に影響を与えなかった
だろうとと考えている。      ──藤井聡著の前掲書より
─────────────────────────────
 この説は一見正しいように見えます。しかし、アジア通貨危機
は、少なくとも日本にとっては一過性のものです。したがって、
時間の経過によって、やがては回復基調に戻るものです。それに
消費増税が重なったことが問題なのです。つまり、増税するタイ
ミングが最悪だったといえます。これについては、さらに問題を
掘り下げていくことにします。
            ──[消費税増税を考える/021]

≪画像および関連情報≫
 ●97年の消費税上げ、景気のマイナス要因ではない=財政審
  ───────────────────────────
  [東京 18日 ロイター] 財政制度等審議会(財務相の
  諮問機関、会長:吉川洋東大教授)の財政制度分科会は20
  10年5月18日、97年4月の消費税率引き上げが景気に
  与えた影響について議論を行った。会合後に会見した大串博
  志政務官によると、当時の消費税率引き上げは景気に対して
  主たるマイナス要因ではなかったとする意見が大勢を占め、
  成長率の低下について不良債権処理問題やアジア通貨危機の
  影響を指摘する声が多かったという。菅直人副総理兼財務・
  経済財政担当相は「お金の使い道を間違わなければ増税して
  も景気は良くなる」と指摘しており、財政審の見解はこうし
  た菅財務相の考えを追認した格好だ。
                  https://bit.ly/2JLmORW
  ───────────────────────────

1997年を境に起きた変化.jpg
1997年を境に起きた変化


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2019年11月08日

●「97年増税がデフレの真因である」(EJ第5124号)

 財務官僚、それも超エリートのキャリアにとって、3%から5
%への消費増税がデフレの真因といわれるのは、きわめて都合の
悪いことです。自分たちの夢の老後の計画がオジャンになってし
まうからです。彼らは、やっと10%になった消費税をここ数年
間のうちに、20%程度まで税率を引き上げることをもくろんで
います。国のためではなく、自分たちのためです。
 私は安倍晋三首相の政策スタンスに必ずしも賛成ではありませ
んが、ひとつだけ評価していたとがあります。それは、財務省の
いいなりにならず、既に法律化していた「社会保障と税の一体改
革」、つまり増税の先延ばしを図ったことです。それどころか首
相は一時は「8%を5%に下げる案」も検討したともいわれてい
ます。しかし安倍首相は、結果として2回の税率の引き上げを行
い、5%から10%に消費税率を倍増させてしまっています。
 経済アナリストの森永卓郎氏によると、なかなか増税しようと
しない安倍首相に対し、財務省は安倍政権の倒閣運動まで考えた
というのです。
─────────────────────────────
 私は、そもそも森友学園の問題は、財務省が安倍政権を追い
 詰めるためにやった自作自演の大芝居だったと考えている。
            ──森永卓郎著/角川新書K−241
            『なぜ日本だけが成長できないのか』
─────────────────────────────
 仰天の新説ですが、これについては、真偽のほどはわかりませ
んが、改めて取り上げるつもりです。当時財務省は、なかなか増
税しない安倍政権にいらだちを強めており、倒閣も視野に入れて
いたといわれています。
 さて、昨日のEJの巻末の「関連情報」でご紹介した財政制度
等審議会(財政審)のロイターニュースによるレポートを取り上
げます。この財政審は、民主党の鳩山政権時代の2010年5月
18日に行われています。ロイターニュースの伊藤純夫記者は、
この財政審の分科会において、井堀東大教授のコメントを次のよ
うに紹介しています。
─────────────────────────────
 18日の財政審・分科会では、井堀利宏東大教授が97年4月
の消費税率引き上げ(3%から5%に)が景気に与えた影響に関
連して、1)経済への影響をネットで見た場合、消費税増税より
も不良債権処理問題やアジア通貨危機の方が大きかった、2)増
税は将来の減税と等価であれば経済に中立、3)増税の使い道も
大きな問題−−などと説明した。
 当時の実質国内総生産(GDP)は消費税率引き上げ後の97
年4〜9月、98年1〜6月にマイナスに落ち込んだが、大串政
務官によると会合では、「消費税率引き上げが主たるマイナス要
因ではなかったとの議論が多かった」とし、不良債権処理問題や
アジア通貨危機による輸出の落ち込みが主因などとの見解が委員
の中から示されたという。      https://bit.ly/2NeRX2g
─────────────────────────────
 そもそも今回の消費増税の実現は、当時の鳩山政権において、
副総理兼財務・経済財政担当相を務めていた菅直人氏が、財務省
に完全に洗脳され、「お金の使い道を間違わなければ、増税して
も景気は良くなる」というわけのわからない言説を広めるように
なったことが原因にあります。
 そもそも財務省が主管する財政審において、消費増税の影響の
深刻さに言及する意見が出るはずがありません。財務省は何が何
でも消費増税を実現したいからです。そのため、財務省寄りの井
堀利宏東大教授は、増税後の景気の落ち込みの原因について「消
費税増税よりも、不良債権処理問題やアジア通貨危機の方が大き
かった」ことを強調しているのです。
 この考え方について、添付ファイルの上のグラフを見ていただ
きたいのです。このグラフは、藤井聡教授の本に掲載されていた
ものですが、これについて藤井教授は次のように述べています。
─────────────────────────────
 この図は、日本からの総輸出額の推移を示しているが、アジア
通貨危機が起こった1997年の直後、輸出はほとんど変わらず
「横ばい」となっている。これは、リーマンショック時の激しい
下落に比べれば雲泥の差があることがお分かりいただけよう。こ
の点から考えても、アジア通貨危機がデフレとなった原因である
という結論は引き出しようがないのである。
                   ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 もうひとつ専門家の間では、「日本がデフレ不況なのは、人口
減少が原因である」という説が話題になっています。この人口減
少説は、人口が減ると、モノやサービスを買う人が少なくなり、
経済が低迷し、少しずつデフレになっていくという考え方です。
 これについて、藤井聡教授は、日米欧の人口増加率のグラフを
示して、次のように反論しています。添付ファイルの下のグラフ
を見てください。
─────────────────────────────
 これは「日米欧」の各国の1995年から2017年にかけて
人口増加率を示したものだ。ご覧のように、我が国日本より人口
の減った国が実に15ヶ国もある。人口が最も減少している国は
リトアニアだが、その減少率は実に22%。人口減少がデフレの
原因であるのなら凄ましいデフレになり、GDPは大きく下落し
ている筈だ。しかしリトアニアの名目成長率は何と606%。経
済規模は実に7倍まで拡大しているわけだ。(中略)つまり「人
口が減れば、デフレになって経済が衰退する」という話は、事実
から完全にかけ離れた単なる「デマ」なのだ。
                 ──藤井聡著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/022]

≪画像および関連情報≫
 ●「デフレの正体」信じる愚劣/高橋洋一氏
  ───────────────────────────
   国債格付けばかりか、経済そのものにも「疎い」菅直人首
  相が2011年1月10日、東京・八重洲の書店で、日本政
  策投資銀行参事役、藻谷浩介氏の『デフレの正体』(角川新
  書)など7冊を購入したというニュースがあった。やはり首
  相の経済ブレーンがしっかりしていないのだなと思わざるを
  えない。
   同書はかなり好評であり、公称50万部突破と、売れてい
  る。「そうだったのか」のわかりやすい解説で定評のある池
  上彰氏も「藻谷さんは、労働力人口が減るということは、活
  発な消費活動をする若い人が激減するのだから、需要不足に
  なり、デフレになるのは当然だ、と指摘します。(中略)目
  からウロコでした」(「文藝春秋」2010年8月号)と絶
  賛した。            https://bit.ly/32fdzjo
  ───────────────────────────
 ●グラフ出典:──藤井聡著/晶文社/『「10%消費税」が
  日本経済を破壊する

デフレの真因のグラフ.jpg
デフレの真因のグラフ
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2019年11月11日

●「消費増税は国民の生命に直結する」(EJ第5125号)

 先週のEJ第5123号の続きです。消費税の税率を上げれば
税収は増えるはずです。しかし、実際はそうなっていない。19
97年4月の橋本内閣による消費税3%から5%の増税の場合、
その前後1年の1996年と1998年の国の総税収を比較する
と、次のようになっています。
─────────────────────────────
      1996年 ・・・・ 52・1兆円
      1998年 ・・・・ 49・4兆円
─────────────────────────────
 増税後、2・7兆円も税収が減少しています。なぜ、こんなこ
とになったのでしょうか。
 1980年代の後半から起こったバブル景気は、1991年か
ら1993年にかけて、高騰していた株価や地価が急落し、その
後、日本経済に負の影響が拡大していったのです。日本の経済成
長は停滞し、後に「失われた20年」といわれるようになる長い
トンネルに入ってしまったのです。
 そんなときに、橋本政権は、1997年に、前村山政権時代に
決まっていた3%から5%への消費増税を断行します。それだけ
でも経済にとって大ダメージであるのに、1998年に法人税を
37・5%〜34・5%に下げています。
 橋本政権がこの消費税の引き上げによる経済悪化が原因で退陣
すると、次の小渕内閣でも、1999年に34・5%に下げた法
人税をさらに30%まで下げています。つまり、消費税の増税直
後に7・5%も法人税を下げたことになります。国民との約束は
無視して増税するのに、財界との約束はきちんと果すのです。こ
れでは増税をしても税収が増えるはずがない。ちなみに2012
年のさらに4・5%の法人税の減税は、財務省に洗脳された民主
党の野田佳彦首相の下で行われています。
─────────────────────────────
 ◎1997年/消費税3%から5%に増税
  1998年/法人税37・5%から34・5%に引き下げ
  1999年/法人税34・5%から30・0%に引き下げ
  2012年/法人税30・0%から25・5%に引き下げ
─────────────────────────────
 この税収の減収がいかに大きかったかは、1997年を境とす
る赤字国債の増加によくあらわれています。添付ファイルを見て
ください。これは「赤字国債発行額の推移」を示しています。こ
れについての藤井聡教授の解説です。
─────────────────────────────
 1997年までは、増減しながらも「政府の借金」の金額は低
い水準に抑えられていた。1997年までの10年間の平均は、
3・1兆円というオーダーだった。ところが、1997年を境に
「政府の借金」はうなぎ登りに上昇。瞬く間に20兆円〜30兆
円の間をうろつく程の高い水準になってしまった。
 そして、その後の10年間の平均で、実に22・9兆円という
それまでよりも、約20兆円も高い水準になってしまったのであ
る。これは要するに、1997年を境に、日本経済が「デフレ不
況」に陥り、経済が「衰退」し、税収が大きく減ったことが原因
だ。                 ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 要するに藤井教授によると、今やGDPの2倍を超える政府の
借金の原因が、1997年4月に実施された3%から5%への消
費税の増税にあったというのです。バブルが崩壊して、デフレに
向かいつつあった時期において、それまでの勢いこそ失ったもの
の、そこそこ成長できていた日本経済に、壊滅的なダメージを与
えて、脱出困難なデフレに追い込んだのは、1997年の消費増
税だったのです。
 デフレは、経済政策において、よほどのミスを積み重ねない限
り、めったに陥ることはない経済現象です。その証拠に、先進国
はもちろんのこと、他の国においても、デフレに苦しんでいるの
は日本だけです。それよりもっと深刻なことは、デフレに陥った
真の原因が消費増税にあることが、為政者がまるでわかっていな
いことです。
 藤井教授は、デフレがどれほど悲惨なことかについて、次の説
明をしています。それは、自殺者数の推移との関連です。
─────────────────────────────
 消費増税直前の自殺者数が約2万2000人であったところ、
消費増税でそれが一気に3万3000人に拡大。自殺者数が実に
1万人以上も増大したのであり、その増大がまさに、消費増税に
よってデフレ化した1997年の直後に生じているのである。
 この1997年の異様な自殺者数の激増は、この年に何か決定
的な出来事が我が国で起こつたことを雄弁に物語っている。それ
こそ、日本の「デフレ不況への突入」なのであり、そしてそれを
導いた「消費増税」だったのである。
 ◎1997年前後の自殺者数の推移
  1997年以前10年平均自殺者数 ・・ 22418人
  1997年以後10年平均自殺者数 ・・ 32560人
                 ──藤井聡著の前掲書より
─────────────────────────────
 数字で見る限り、1997年を境に自殺者が平均で1万人以上
増えています。つまり、藤井教授がいいたいことは「10年間で
10万人以上もの人々が、消費税の増税によって自殺に追い込ま
れている」という深刻な事実です。
 このように、国の経済政策というものは、10万人単位の国民
の生命に直結するきわめて重大な影響をもたらすものであり、間
違えたでは済まないのです。藤井教授が前掲書を書こうと考えた
のは、このことが根本的な動機であると激白しています。政府は
今後も消費税を20%ぐらいまで上げようとしています。狂気の
沙汰です。       ──[消費税増税を考える/023]

≪画像および関連情報≫
 ●『「10%消費税」が日本経済を破壊する』書評
  ───────────────────────────
   2017年にメディアが報じた「戦後2番目に長い経済成
  長(いざなぎ景気)超えの好景気」には違和感を覚えた人も
  多いだろう。庶民には生活が良くなったとの実感がまったく
  ないからだ。
   17年末に、朝日新聞が報じた世論調査でも、景気回復を
  「実感していない」が82%に上っている。その庶民感覚が
  間違っていないことを著者の藤井聡教授がマクロデータを基
  に明らかにする。
   日本経済が、いまだデフレ経済下にあること、国内企業の
  99%を占める中小企業の景気は年々悪化し続けていること
  サラリーマンの給与が下がったままであること、その元凶が
  消費税増税にあったこと。
   1997年に消費税が3%から5%に上がった。消費増税
  後にデフレ不況に突入し、それまで22000人程度だった
  年間の自殺者が33000人に増え、10年以上も高止まり
  し続けたことが、著者が本書を出版することを企図した根本
  的な動機だという。デフレ化の原因が同年の「アジア通貨危
  機」ではないことも検証されている。17年の総選挙の時に
  「10%への消費増税」を公約に掲げる自由民主党が圧倒的
  多数を獲得したことで、消費増税を「国民世論が支持した」
  ことになってしまい、19年の秋に消費増税をすることが当
  たり前の空気ができてしまった。 https://bit.ly/2K5YA53
  ───────────────────────────

「赤字国債発行額」.jpg
「赤字国債発行額」
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2019年11月12日

●「消費増税は必然的にデフレを導く」(EJ第5126号)

 藤井聡京都大学大学院教授の話を聞いていると、何でもかんで
も原因を消費増税に結びつけている──このように感ずる人がい
るかもしれません。「他の多くの国でも消費税を導入しているで
はないか。それらの国はデフレにはならず、日本だけがなるのは
おかしい」という理屈です。
 当然の理屈です。最初は私も感じた疑問です。こういう疑問に
対して、藤井教授は、次のように反論しています。
─────────────────────────────
 (消費税を導入している)これらの国々がデフレではないのだ
から、消費税率をたかだか5%にあげたぐらいで日本だけがデフ
レになるなんてあり得ないじゃないか──しばしば消費税論者は
こうして消費税のさらなる増税を主張する。
 しかし、問題なのは「税率」そのものではない。
 彼らが「いつ」消費税をあげたのか、という点こそが問題なの
だ。そもそも1997年と言えば、世界の経済史の中でも特筆さ
れるほどの大事件であった1990年〜1991年にかけて生じ
た「バブル崩壊」の直後だった。文字通り「バブル景気」で沸い
ていた日本の株価が一気に下落し、多くの資産家が、資産を失っ
た。当時日本から消えてなくなってしまった資産額は、1500
兆円(!)とも言われている。     ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
─────────────────────────────
 空前のバブル景気が一気に崩れたのです。まさに未曾有の事態
です。こういうとき、政府は何をすればよいでしょうか。政府は
経済が失速することを何よりも恐れて、大規模な経済政策を始め
たのです。ここまでは正解でした。そのおかげで我が国は、19
96年までは、未曾有のバブル崩壊にもかかわらず、経済は失速
させないできています。したがって、そのまま続ければ、よかっ
たのです。しかし、政府の借金を異常なほど気にする財務省と、
その進言を受け入れた橋本龍太郎首相は1997年4月に3%〜
5%への消費増税を断行しています。この橋本龍太郎首相は、も
ちろん財務大臣、当時の蔵相を次のように務めています。橋本首
相は、大蔵大臣のほか、厚生大臣、運輸大臣、通産大臣も務めて
いる大臣のベテランです。
─────────────────────────────
  ◎第93代〜第94代大蔵大臣
   1989年 8月10日〜1991年10月14日
  ◎第103代大蔵大臣(兼務)
   1998年 1月28日〜1998年 1月30日
─────────────────────────────
 デフレがどのようにして発生するかについては、いくつかの説
があります。そこで、藤井聡教授による「消費増税をする時期を
誤ると、なぜデフレが発生するか」について、以下に説明するこ
とにします。添付ファイルを見てください。
 消費税の税率を上げると、当然のことながら、消費が縮小しま
す。消費が縮小すると、物価は下落し、それに伴い企業業績は悪
化します。そのとき企業はどうするでしょうか。
 企業としては、企業業績悪化に伴い、コスト削減を図らざるを
得なくなり、当然従業員の給与もカットされます。これによって
国民はさらなる貧困化、困窮化し、消費はさらに落ち込むことに
なります。このようにデフレスパイラルが起きます。
 企業は、「投資」を控えるようになり、「攻め」ではなく「守
り」の姿勢が強くなります。企業が投資を控えるようになると、
投資を生業とする企業の業績が悪化し、それによって企業の投資
意欲はさらに悪化し、ここでもデフレスパイラルが発生します。
このようにして、「世帯」と「企業」の両方でデフレスパイラル
が起きるのです。そうすると、倒産する企業も出現し、その結果
労働者の失業も増えていきます。
 以上のまとめとして、藤井教授は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 こうして、消費、物価、企業業績と投資、所得の全てが、互い
に循環的に影響を及ぼしあいながら同時に下落していくというの
が「デフレ不況」という経済現象なのである。
 そしてこのデフレ・スパイラルが進行していくプロセスの中で
政府においては財政を悪化させ、国民においては自殺者数が10
万人以上もの規模で「激増」したのである。そしてGDPは伸び
悩み、「衰退途上国」と化し、世界経済におけるGDPシェアが
転落していったのである。
 なお、以上の「デフレのメカニズム」の一つひとつのプロセス
はいずれも、単なる「理屈」や「イメージ」を並べ立てたものな
のでは決してない。いずれも、実証的なデータの裏付けのあるも
のばかりである。しかも、それらの「全て」が「1997年の消
費増税」こそが、デフレを導いた真犯人であることを雄弁に物語
っているのである。        ──藤井聡著の前掲書より
─────────────────────────────
 資本主義とは、企業の負債と投資拡大なしには、成長できない
経済モデルであるといえます。日本の場合、それが1990年の
バブルの崩壊によって行き詰まり、1996年までは、政府支出
を拡大し、国内の需要不足を補ったのです。ここまでは経済学の
セオリー通りであり、そのまま大胆に継続していけば、少なくと
もデフレにはなっていなかったはずです。
 しかし、日本は、そのとき米国から構造改革、すなわち、グロ
ーバリズムを迫られたのです。グローバリズムの目的は、「小さ
な政府」を目指すことであり、これは必然的に政府の規制や予算
を縮小することに繋がります。「緊縮財政」「規制緩和」「自由
貿易」の3つの政策を同時に推進するのがグローバリズムです。
 蔵相の経験の長い橋本首相は、政府支出をそのまま拡大する路
線がとれなかったのです。そして一貫して緊縮財政にのめり込み
1997年には最悪の消費増税を断行して、日本経済をデフレ化
させてしまったのです。 ──[消費税増税を考える/024]

≪画像および関連情報≫
 ●橋本龍太郎元首相の「悪」評価
  ───────────────────────────
   橋本龍太郎元首相が7月1日午後2時、多臓器不全のため
  入院先の東京・新宿の国立国際医療センターで、亡くなりま
  した。68歳でした。「50、60ははなたれ小僧、70、
  80は働き盛り、90になって迎えが来たら100まで待て
  と追い返せ」という言葉がある政治の世界では早すぎる死、
  ということになるでしょう。
   橋本氏といえば、ニックネームのハシリュウで知られ、自
  民党総裁時代には党本部に「龍ちゃんプリクラ」が設置され
  るなどの人気を博した人物。しかし、投資家の評価は決して
  芳しいものではありませんでした。それは、株価が如実に物
  語っています。
   日経平均株価はバブル景気の絶頂期1989年12月29
  日に、38915円87銭と史上最高値をつけました。しか
  しその後一転し、1991年2月から急落。1998年10
  月9日には、最高値から、実に67%の下落の12879円
  97銭となりました。この株価下落をよく見てみると、キッ
  カケに橋本氏が絡んでいるのです。
   橋本氏は80年代後半のバブル期には、大蔵大臣として不
  動産関連融資の総量規制を実施し、バブル崩壊の原因となり
  ました。総量規制とは、大蔵省(現財務省)が1990年4
  月から1991年末にかけて実施した、不動産向け貸出を抑
  制する規制のこと。不動産向け貸出額は激減し、それに伴っ
  て地価が大きく下落し始めたのです。長く続くバブル崩壊の
  始まりでした。         https://bit.ly/33wks0Y
  ───────────────────────────
 ●グラフ出典/──藤井聡著の前掲書より

消費増税がデフレを導くメカニズム.jpg
消費増税がデフレを導くメカニズム
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2019年11月13日

●「将来世代に『経済不況』を残すな」(EJ第5127号)

 EJで「消費税増税」をテーマに取り上げるのは、実は2回目
です。2014年に同じテーマで84回にわたって書いており、
ブログで見ることはできるので、ご紹介しておきます。
─────────────────────────────
 ◎消費税増税はなぜ必要かについて改めて考える
  2014年1月06日、EJ第3703号
       〜2014年5月09日、EJ第3786号
                  https://bit.ly/2NVmfpL
─────────────────────────────
 2014年1月6日が第1回ですが、この年の4月から消費税
が5%〜8%に引き上げられることが決まっていたのです。日本
の消費税には多くの疑問があります。このとき、それらの消費税
の疑問について明らかにするつもりで書いたのですが、十分書き
切れていません。そこで今回、その書き切れなかったところに重
点を置いて書いていくつもりです。
 消費増税をするさい、その大義名分として、よくいわれる次の
言葉があります。
─────────────────────────────
     将来世代に、現世代の「ツケ」を残すな!
─────────────────────────────
 現在日本の財政学者は、そのほとんどが財務省寄りの御用学者
であり、彼らは、「国の財政は、長期的安定が必要であり、健全
な保守政権というものは、現在だけでなく、将来を見据えて、持
続性のある財政を設計すべきである」と、まことしやかに説き、
上記の言葉を頻繁に口にします。
 これに対して、藤井聡京都大学大学院教授は、次のように猛反
論しています。
─────────────────────────────
 彼らが根本的に間違っているのは、将来に残してはいけないも
のは「経済不況」そのものなのだ、ということを無視していると
ころにあります。もしも、現世代の経済財政政策のせいで、「経
済不況」が放置され続けてしまえば、将来世代は「貧弱な国家経
済」や「格差社会」や「貧弱な科学技術水準の国家」を生きなけ
ればならなくなる。
 さらには、「防災力」も「国防力」も貧弱なままの国家を生き
なければならなくなる。政府それ自体も税収が得られなくなって
結局、将来世代の政府の「税収」も低くなってしまい、結果的に
は、将来世代の「借金」を増やしてしまうことになる。つまり、
彼らこそ近視眼的な「目先の借金」を削ることに躍起となってし
まった結果、経済、防災、格差、所得、福祉、軍事といったあら
ゆる側面で、「貧弱」な国家を将来世代に「つけ回し」してしま
い、その結果、「将来の財政」をさらに悪化させてしまうことに
なる。彼らこそが、「長期的な視野を持たない、浅薄で近視眼的
な態度」なわけです。            ──藤井聡教授
   『消費増税を凍結せよ』/「別冊クライテリオン」増刊号
              2018年12月号/啓文社書房
─────────────────────────────
 数ある消費税の本をていねいに読んでみると、多くの国民は、
政府というか財務省に騙されていることがいかに多いかよくわか
ります。しきりに消費増税を仕掛けているのはつねに財務省です
から、以後はその犯人を「財務省」として書くことにします。
 そもそも増税が必要なことは一応認めるとしても、なぜ、大衆
課税である消費税に真っ先に依存するのか、他にやるべきことが
たくさんあるはずです。それは、彼ら、財務省の一部のキャリア
官僚にとって、おいしいことがあるからです。
 そもそも多くの国民は、「日本の消費税は低い」と内心感じて
います。財務省のプロパガンダもありますが、それは「税率」を
見ているからです。確かにスウェーデンの消費税は25%であり
日本の10%はその半分にも達していません。しかし、少し別の
角度から見ると、意外な事実が判明するのです。
─────────────────────────────
   ◎主要国の国税収入全体に占める消費税の割合
        イギリス ・・・・・ 21・1%
         ドイツ ・・・・・ 35・6%
        イタリア ・・・・・ 28・3%
      スウェーデン ・・・・・ 18・5%
          日本 ・・・・・ 37・O%
   『消費増税を凍結せよ』/「別冊クライテリオン」増刊号
              2018年12月号/啓文社書房
─────────────────────────────
 これは、国税収入全体に占める消費税の割合について、日本と
欧州各国とを比較したものです。これで見ると、日本の10%の
消費税率は、国税収入に占める消費税の割合では、37%であり
スウェーデンの18・5%を大きく上回り、このなかでは一番高
くなっています。これは、日本の税収が消費税の税収に大きく依
存していることを示しています。大衆課税である消費税を増税し
法人税や高額所得者の所得税を下げているので、こういう結果に
なっているのです。これは、同時に税収全体のなかで日本は、法
人税と所得税がいかに少ないかを示しています。これによって、
次のことがウソではないことが分かります。
─────────────────────────────
 現自民党政権は、庶民には「増税」、大企業や高額所得者に
 は「減税」をしており、今後さらに消費税を上げることによ
 り、その傾向を強めようとしている。
─────────────────────────────
 英国は消費税の最高税率は20%ですが、軽減税率の幅が広い
のです。通勤交通費、食料品、新聞、雑誌、書籍、子供服、家庭
用燃料、電力、衣料品は税率ゼロであり、これを見ると、日本の
消費税がいかにお粗末であるか、よく分かると思います。
            ──[消費税増税を考える/025]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税10%になぜ増税となった?
  ───────────────────────────
   日本で初めて消費税が導入されたのは、1989年4月で
  した。当時、3%に設定されていた税率は、数年おきに国会
  でも議論の的になり、1997年に5%、2014年に8%
  と段階的に引き上げられてきました。
   そして2019年10月1日(火)、消費税は、8%から
  10%へ引き上げられ、いよいよ消費税率2桁の時代に突入
  します。
   そもそも消費税はなぜ導入されたのでしょうか?消費税が
  導入される以前、日本政府の税収は所得税が中心でした。し
  かし、社会構造の変化やサービス・消費の多様化など、世の
  中が大きく動いていくうちに、所得に応じて課税する所得税
  は時代遅れの制度面での課題が目立ち、税制の不均衡が、問
  題視されるようになりました。そこで、所得に関係なく、消
  費活動に対して誰にでも等しく課税する消費税が導入されま
  した。消費税は、所得状況とは無関係に課税されますから、
  働き手が少なくなっても税収が安定しています。そして、年
  金や福祉に関する財源とした目的税として消費税が導入され
  人口の高齢化が進行するとともに、その税額が引き上げられ
  ていったのです。消費税は導入されてから3%、5%、8%
  そして今回の10%へと少しずつ税率が引き上げられていま
  す。しかし、消費税率が2桁の10%ともなると、心理的な
  影響も大きく、多くの人が税負担を重く感じてしまいます。
                  https://bit.ly/2p5RyWH
  ───────────────────────────

「経済不況」を残してはいけない/藤井教授.jpg
「経済不況」を残してはいけない/藤井教授
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2019年11月14日

●「日本の財政は健全であり問題ない」(EJ第5128号)

 今から8年前、第2次安倍政権が発足する1年半前の2011
年6月のことです。当時与党だった自民党は、次の報告書を公表
しています。時の自民党総裁は谷垣禎一氏です。
─────────────────────────────
     「X─dayプロジェクト報告書」/自民党
─────────────────────────────
 「X─day」とは何でしょうか。
 これは国債暴落で財政危機が起きる「X─day」のことで、
その日に備える報告書です。
 この報告書では、積み上がった借金が原因で日本国債が信認を
失い、政府の資金調達が困難になり、金利が暴騰し、経済や国民
生活が大打撃を受ける可能性を指摘しています。この報告書が、
当時の民主党政権と野党の自民、公明両党が5%から10%への
消費増税を決めた12年の「3党合意」を後押ししたのです。
 参院選前の与野党の党首が並ぶ討論会で、安倍首相は次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
 今後10年間ぐらいの間は、私は消費税を上げる必要はない
 と思っています。             ──安倍首相
─────────────────────────────
 このとき、記者は、与野党の党首に対し、「未来永劫、10%
からあげなくてよいと考える党首は挙手願います」と聞いていま
す。複数の野党党首はこれに挙手しています。これに対し、安倍
首相は「未来永劫はいくらなんでも無責任」といい、「今後10
年間ぐらいの間・・」と発言したのです。しかし、その後、安倍
首相はこの「10年間」を何回も繰り返しています。これに財務
省は警戒感を深めているといいます。
 しかし、「X─dayプロジェクト報告書」は、一種のプロパ
ガンダです。財務省は、こういうプロパガンダを何十年もかけて
行い、国民に対して財政危機意識を植え付けることに成功してお
り、「社会保障と税の一体改革」で消費税は税率が10%になっ
てしまっています。そのカネは社会保障の充実に使うといってい
るものの、政府は、社会保障をどんどん削っています。EJは、
こういう政府のウソを暴いていきます。
 多くの日本人は、日本はGDPの2倍以上の借金を抱える借金
大国であり、財政再建が何よりも急務であると信じています。し
たがって、財政再建は必要であり、消費増税はやむなしというこ
とになるのです。
 しかし、これはウソであるとはっきりという人がいます。高橋
洋一嘉悦大学教授です。高橋洋一氏はただの学者ではなく、財務
省の出身であり、この問題の権威です。高橋氏は、ある座談会で
この問題について次のように述べています。
─────────────────────────────
 「財政再建」についてですが、世間には、「財政再建のために
増税を先送りするな」という人が結構いますが、「バランスシー
ト」の視点からいうなら、財政は何も危なくないというのは、一
目瞭然です。私は財務省にいた当時、誰もバランスシートをつく
ろうという人がいなかったけど、半ば強引に自分で作ったら、財
政危なくないって答えが明白になった(笑)。そして今も全くそ
の状態。というかむしろ、「改善」してます。 ──高橋洋一氏
   『消費増税を凍結せよ』/「別冊クライテリオン」増刊号
              2018年12月号/啓文社書房
─────────────────────────────
 「日本の財政は何も問題なく、最近ではむしろ改善している」
というのです。このように財務省出身の有名な学者がいっている
のに、財務省は何も聞こえないフリです。「証拠を示せ」という
人もいます。
 高橋洋一氏は、その証拠を今年の3月に上梓した書籍で発表し
ています。その証拠は、2018年10月のIMF(国際通貨基
金)の次のレポートに掲載されています。
─────────────────────────────
  Fiscsl Monitor October 2018 Managing Public Wealth
 「公的機関のバランスシート/対GDP比/2016年」
           ──高橋洋一著『消費増税は嘘ばかり』
                    PHP新書1174
─────────────────────────────
 このグラフを添付ファイルにしています。このグラフは、中央
政府と地方政府、政府関係機関、中央銀行のすべてを合わせた国
全体のバランスシートを国際比較したものです。
 グラフの見方を説明します。横棒グラフの真ん中の線に注目し
てください。この線の左と右は、次のことを意味しています。
─────────────────────────────
    左の部分 ─→ 資産/金融資産+非金融資産
    右の部分 ─→      負債/資産−負債
─────────────────────────────
 線(黒い棒)のある位置はそれぞれ違いますが、それは「純資
産」で、純資産の多い順に上から並んでいます。線(黒い棒)が
左へ行くほど純資産が少なく、右に行くほど純資産が多くなって
います。一番右に位置するのが、ポルトガルと英国です。逆に、
ロシアとノルウェーは純資産が少ないことを示しています。
 日本の純資産(資産−負債)は、ほぼゼロの近くにあります。
借金は多いけれどもそれに見合う資産があり、バランスがとれて
います。したがって、このグラフで見る限り、日本の財政状況は
健全であるといえます。IMFは、日本の財政の健全さをグラフ
にして、示してくれています。なお、このグラフは、年金も含め
たものであり、年金を含めても、日本の財政は健全であるという
ことです。どこが「破綻寸前」なのでしょうか。何を根拠に財務
省は、日本の財政を破綻寸前などとウソをつくのでしようか。そ
れは、消費税を増税したいからです。そのため、そういって国民
を騙しているのです。  ──[消費税増税を考える/026]

≪画像および関連情報≫
 ●日本の財政が破綻しない数多くの理由
  ───────────────────────────
   今回は、久留米大学商学部教授の塚崎公義が、財政破綻の
  可能性と増税の必要性について考えます。
   消費税の増税が迫って来ました。「財政赤字が巨額だから
  増税しないと」という緊縮財政派の主張に基づくものでしょ
  うが、増税しなくても財政は破綻しません。一方で、無理に
  増税して景気が悪化してしまえば税収は減り、景気対策は必
  要となり、財政はむしろ悪化してしまうかもしれません。そ
  こで今回は、増税の必要性を考える一助として、増税しない
  と財政が破綻するのか否かを考えてみましょう。
   理論的に日本の財政が破綻することはあり得ません。政府
  が日銀から借金して国債を全部償還してしまえば良いからで
  す。しかし、それはハイパーインフレをもたらしかねません
  から、本稿では考えないことにしましょう。
                  https://bit.ly/2KhCNaJ
  ───────────────────────────


公的機関のバランスシート(対GDP比/2016年).jpg
公的機関のバランスシート(対GDP比/2016年)
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2019年11月15日

●「資産を売り負債を圧縮しない理由」(EJ第5129号)

 「日本の財政状況は健全であり、改善の傾向にある」──高橋
洋一嘉悦大学教授の主張です。財務省のいっていることと真逆の
ことを財務省出身の学者が明言しているのです。証拠も示してい
ます。財務省はなぜ間違ったことを主張するのでしょうか。財務
省はウソをついていることになります。
 いや、さすがにウソはついていないのです。ウソをつけばバレ
たとき責任を取らされるからです。「政府の債務は、GDP対比
で200%以上である」ということ自体はウソではないのです。
ただ、資産に言及していないだけです。
 しかし、そういう発表を長くしていると、メディアは完全に間
違って事態をとらえます。2018年12月22日付、朝日新聞
の社説は、国債残高が1989年に161兆円だったのが、20
19年度には、897兆円に増えると指摘した上で、次のように
心配しています。高橋教授の指摘です。
─────────────────────────────
 歳出全体のおよそ4分の1は借金の返済にあてる国債費が占め
る。このままでは、安定した公的サービスを続けるのも難しくな
る。その危機感を政権に感じられないところが、恐ろしい。
          ──2018年12月22日付、朝日新聞
 ──高橋洋一著『消費増税は嘘ばかり』/PHP新書1174
─────────────────────────────
 財務省は、こういう文章をメディアに書かせたいので、政府の
債務だけを強調し、危機感を煽るのです。こういう記事を読むと
読者は、日本は借金で危機的な状況にあるので、借金を返すため
に増税はやむを得ないなと感じるでしょう。
 もうひとつ、こういう記事を朝日新聞が書いていることで、記
事にリアリティがあります。朝日新聞はどちらかというと、政権
に批判的な新聞だからです。新聞読者別の安倍政権の支持率を示
します。2017年6月実施の調査です。
─────────────────────────────
           支持する    支持しない
     産経新聞   86%       5%
     読売新聞   43%      29%
   日本経済新聞   41%      38%
     朝日新聞   14%      70%
     毎日新聞    9%      59%
     東京新聞    5%      42%
                  https://bit.ly/350KwBL
─────────────────────────────
 ここでもうひとつ、決定的なデータを示します。添付ファイル
を見てください。このグラフは一般政府(中央政府+地方政府)
の資産と負債をあらわしているIMFのグラフです。
 昨日のEJで示したグラフは、中央政府と地方政府、政府関係
機関、中央銀行のすべてを合わせた国全体のバランスシートの国
際比較であるのに対して、今回のグラフは、一般政府(中央政府
+地方政府)の資産と負債のバランスシートの国際比較です。
 このグラフで、一番目立っているのは日本です。なぜなら、負
債は238%、資産は220%と突出しているからです。グラフ
は、純資産順に並んでいます。日本の純資産は、次の計算をする
と、対GDP比マイナス18%になります。
─────────────────────────────
    資産210% − 負債238% = −18%
─────────────────────────────
 このグラフは、純資産額が大きい順に並んでいます。縦線(黒
い棒)が左側にある順です。これによると、日本は、アメリカ、
カナダ、ドイツよりは純資産が少ないですが、フランス、英国、
イタリアよりは純資産が多いことを示しています。
 このグラフを見て、世界の財務担当者は、一様に次のような疑
問を持つと思います。
─────────────────────────────
 グラフからはみ出すほど日本は資産が多いのに、なぜ資産を売
却して、負債を減らさないのか。 ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 当然の疑問です。これについて、高橋洋一氏は、財務省の魂胆
を次のように明らかにしています。
─────────────────────────────
 「まず資産を売って負債を減らす」のがバランスシートを保つ
ための優先策のはずです。では、なぜ日本の(財務省の)常識は
違うのか。財務官僚が愚かで、会計の基本に気付かないからでは
ありません。何よりも財務省が「資産」を抱え込むことが、同省
の官僚に大きなメリットをもたらしているからです。
 そのメリットは、「天下り先の確保」です。政府資産の大半は
金融資産で、天下りに使われているものです。したがって、資産
の売却は天下り先を減らし、官僚の人生設計に狂いを生じさせま
す。彼らは自分の再就職先を守るため、「資産は売れない」と異
を唱えているのです。      ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 日本は、採算が良いとはいえない多くの政府機関・団体などの
資産を数多く保有しています。普通の国では、負債が大きいとき
はそれらの資産を売却して負債を圧縮し、資産と負債のバランス
をとるものですが、日本ではそれをやると、「天下り先」が少な
くなってしまうので抱え込むのです。だから、グラフは他国と比
べると、異常な状態になるのです。これは、ほとんど犯罪的な行
為です。これらの自分たちにとって大事な資産を守るため、今後
も消費税の増税をやろうとしているからです。
 問題なのは、財務省が資産については語らず、負債の方だけを
強調することです。つまり、添付ファイルのIMFグラフの左側
(負債)だけを取り上げて、「債務残高の対GDP比を見ると、
我が国は主要先進国のなかで最悪の水準になっている」と訴えて
いることです。     ──[消費税増税を考える/027]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ日本は多額の借金でも「つぶれない」のか
  ───────────────────────────
   日本の借金は1071兆円──財務省が、2017年5月
  10日に発表した今年3月末時点の残高である。この額は今
  世紀に入って約1・5倍に膨らみ、今後も当面増え続ける。
  主要先進国の中で最大の借金を抱える日本は破綻しないのか
  私たちの生活はどうなるのだろう?
   この額を総人口で割ると、1人あたり850万円近く、こ
  れにはもちろん、0歳児も含まれる。年間の給与所得の平均
  520万円(15年、国税庁調べ)と比べると1・6倍以上
  だ。誤解のないよう申し添えると、これはあくまで国(日本
  政府)の借金で、後述のように国民はむしろ貸している側で
  ある。借金がここまで膨らんだのは、政府が長年赤字を続け
  ているからだ。2000年降で見ると、年間の平均赤字額は
  30兆円以上にのぼり、これがほぼそのまま借金になる。
                  https://bit.ly/2QgPgPv
  ───────────────────────────
  グラフ出典/──高橋洋一著の前掲書より

各国政府の資産と負債のバランスシート/2016年.jpg
各国政府の資産と負債のバランスシート/2016年
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2019年11月18日

●「IMFグラフで分かる財務省の嘘」(EJ第5130号)

 先週のEJ第5128号、第5129号の2回にわたってお届
けしたIMFのグラフは、日本の財務省に衝撃を与えています。
こんなものを公表されると、自分たちの工作がバレてしまうから
です。これに対する対策かどうかわかりませんが、財務省は「純
債務残高の国際比較/GDP比」という資料を出しています。こ
の資料を添付ファイルにしていますが、ここには、次の説明文が
付いています。
─────────────────────────────
 純債務残高とは政府の総債務残高から政府が保有する金融資産
(国民の保険料からなる年金積立金等)を差し引いたものです。
我が国は、純債務残高で見ても、主要先進国で最悪の水準となっ
ています。                   ──財務省
─────────────────────────────
 財務省は、このグラフではIMFのグラフには入っている「非
金融資産」を除いて比較しています。入れてしまうと、「最悪の
水準」にならないからです。財務省は、何が何でも「日本は主要
先進国で最悪の水準」にしたいようです。
 一般的に悪いところを隠そうとするならわかりますが、わざわ
ざ悪いところを見せつけようとする日本の財務省は異常です。そ
れは、一部のキャリア官僚の華麗な老後のために、消費増税を実
施しやすい環境を作ろうと必死になっているからです。
 国会などで野党が「借金が多いといっても、相応の資産がある
じゃないか」と財務省に迫っても、「そのような資産があっても
すぐには売却できないので、現実的ではない」と反論します。こ
れは非金融資産のことをいっています。IMFのグラフでわかる
ように、日本の資産の金融資産と非金融資産の割合は、半々であ
り、これを対GDP比で示すと、次のようになります。
─────────────────────────────
    金融資産 ・・・ 112%(対GDP比)
   非金融資産 ・・・ 109%(対GDP比)
─────────────────────────────
 「対GDP比200%の借金」といいますが、これによると、
資産(金融資産+非金融資産)の方も、対GDP比200%を超
えています。何の問題もないではないですか。資産に言及せず、
債務だけを強調するのは異常です。これについて、高橋洋一嘉悦
大学教授は次のように述べています。
─────────────────────────────
 財務省やマスコミは、借金が対GDP比200%を超えている
ということを喧伝しますが、縷々述べてきたように、日本はそれ
に見合った資産をもっています。借金の利払いが膨大になるとし
ても、対GDP比112%の金融資産をもっていますから、当然
金利収入が入ってきます。国の借金の大部分は国債です。国債の
金利は金融商品のなかで最も低い。一方、国がもっている金融資
産の金利は国債レベルかそれ以上ですから、わざわざ国債の利払
いだけを心配する必要はありません。     ──高橋洋一著
        『消費増税は嘘ばかり』/PHP新書1174
─────────────────────────────
 また、対GDP対比200%の政府の借金に関連して財務省は
次のように表現したことがあります。
─────────────────────────────
 債務残高が200%を超えるのは「敗戦当時の日本と同じ」
 である。                  ──財務省
─────────────────────────────
 これは、ひどい比喩です。敗戦当時の日本と21世紀の日本を
同列に比較しているからです。いうまでもなく、敗戦当時の日本
にはほとんど政府資産はなく、債務残高が200%を超えていた
のです。これは深刻であり、国家破綻の危機です。
 財務省は、現在の日本をこのときの日本と同じだといっている
のです。日本で最もアタマの良い人だけが就職できるといわれる
財務省の役人がこんな馬鹿げた比較をしています。だから、タメ
にするプロパガンダと言われるのです。21世紀の日本は、対G
DP対比200%超の政府債務はあっても、資産の対GDP比も
200%を超えています。敗戦当時とまるで違います。200%
を超える借金が心配ならは、資産を売って債務を減らせばよいの
です。2017年に来日したジョセフ・スティグリッツコロンビ
ア大学教授は、経済財政諮問会議で、日本の債務残高について、
次のように重大な発言をしています。
─────────────────────────────
 日本の政府債務残高は、実際のところ、多くの人がいうほど悪
くないということだ。なぜなら、政府債務残高の40%は、自分
自身が抱えているからだ。政府と日本銀行が一体となって政府債
務を相殺すればよい。少なくとも、債務残高に縛られて行動する
のはやめるべきだ。自分自身が抱えているのだから、債務残高は
見かけよりもずっと低いものとして考えるべきだ。
                ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 スティグリッツ教授は、重要な指摘をしています。それは「政
府債務の40%は自分自身が抱えていてる」という発言の部分で
すが、その意味がわかるでしょうか。
 それは、日銀が日本国債を約400兆円抱えていることを指摘
しています。だから、政府負債が1000兆円あっても、相殺す
れば、40%は瞬時に相殺されるといっているのです。
 これに対して、日本の名だたる増税派の御用学者たちは、何と
いったと思いますか。「スティグリッツ教授は間違っている」と
いったのです。こんなことだから、日本はいつまで経ってもノー
ベル経済学賞は取れないのです。しかし、この様子を見ていた財
務省の高級官僚たちは、「財政破綻を防ぐための増税」という戦
術から、「社会保障の財源としての増税」という戦術に切り換え
る必要があると察したようです。アタマは悪くないからです。
            ──[消費税増税を考える/028]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税10%/社会保障支える重要な財源だ/読売新聞
  ───────────────────────────
   消費税率が5年半ぶりに引き上げられ、8%から10%に
  なった。社会保障制度を安定させ、財政健全化を進めるため
  には欠かせない増税である。得られる新たな財源を、国民の
  将来不安の軽減に生かさなければならない。
   少子高齢化の進展に合わせて、社会保障費は着実に増えて
  いく。これを支えるには、毎年安定した税収が見込める税が
  望ましい。だが、法人税は、企業業績の浮き沈みによって増
  減する。所得税も賃金や雇用に連動するため、景気が悪化す
  れば大きく減る。
   こうした税に比べて、消費税には税収が景気に左右されに
  くい特長がある。生活を維持するため、一定の消費が必要だ
  からだ。消費税は公平性も高い。所得税は、働く現役世代を
  中心に課税するのに対し、高齢者を含め商品やサービスを購
  入する人から幅広く徴収するためだ。
   安倍内閣は、現役世代への支援を手厚くする「全世代型社
  会保障」の実現を主要政策に掲げている。負担を現役世代に
  しわ寄せしないためにも、消費税の活用が重要である。今回
  の引き上げで税収は約4・6兆円増える。このうち約2・8
  兆円を社会保障の充実などにあて、残りは財政再建に使う。
  国の借金は1000兆円を超える。債務残高のGDP比は主
  要国で最悪水準だ。将来世代へのツケ回しを避けるためにも
  財政の立て直しは急務である。政府は消費税の重要性を丁寧
  に国民に説明するべきだ。    https://bit.ly/2Ohkcwt
  ───────────────────────────

純債務残高の国際比較(対GDP比).jpg
純債務残高の国際比較(対GDP比)


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2019年11月19日

●「『統合政府』という考え方がある」(EJ第5131号)

 昨日のEJの続きです。2017年3月14日のことです。米
コロンビア大学教授のジョセフ・E・スティグリッツ氏は、経済
財政諮問会議に出席しています。そのときの写真を添付ファイル
にしてあります。
 これに関する資料は内閣府のウェブサイトに出ていますが、日
本のメディアは、なぜか、これを無視し、ほとんど報道していま
せん。高橋洋一嘉悦大学教授によると、このときのスティグリッ
ツ教授の発言の意味を理解できていなかったのが原因ではないか
というのです。
 スティグリッツ教授のこのときの発言について、内閣府は次の
ように伝えています。
─────────────────────────────
 スティグリッツ教授は、諮問会議での発言のなかで、政府・日
銀が保有する国債を「無効化」することを提言した。政府・日銀
が保有する国債を「無効化」することで、政府の債務は「瞬時に
減少」し、「不安はいくらか和らぐ」と主張。また、債務を永久
債や長期債に組み換えることで、「政府が直面する金利上昇リス
クを移転」できるとしている。    https://bit.ly/346nVn6
─────────────────────────────
 問題は、スティグリッツ教授がいう「無効化」をどのように捉
えるかです。高橋洋一教授によると、スティグリッツ教授の英文
原稿資料には「canceling」 になっています。これは、会計用語
で「相殺」を意味しています。それでは、何と何を「相殺」する
のでしょうか。
 その当時、日本銀行(中央銀行、以下日銀)は、約400兆円
の国債を保有していたのです。なぜ、そんなに巨額になったのか
というと、日銀はアベノミクスの一環で、史上最大規模の金融緩
和を行っているからです。具体的には、銀行の保有する国債を買
い上げ、通貨供給量を増やす量的金融緩和を行っているのです。
ちなみに、2018年3月末の時点では、日銀の保有する国債は
459兆5862億円になっています。日本のGDPに匹敵する
巨額の国債保有です。
 スティグリッツ教授がいうのと、約1000兆円の政府債務か
ら、当時日銀が保有する約400兆円の国債を相殺してしまえば
政府が抱え国債残高は、瞬時に、600兆円に減るじゃないかと
いっているのです。
 なぜ、そのようなことができるのでしょうか。
 これについては、日銀、すなわち、中央銀行について知る必要
があります。日銀には、次の3つの役割があります。
─────────────────────────────
           1.紙幣の発行
        →  2.政府の銀行
           3.銀行の銀行
─────────────────────────────
 ここで中央銀行論を述べるつもりはありませんが、ここで関連
があるのは、2の「政府の銀行」という機能です。日銀は、政府
の委託を受け、国のお金を管理しています。また、国債の発行や
外国為替の決済処理も行っています。
 そして、ここが一番重要なことですが、日銀は株式会社であり
その株式の55%は政府が持っています。つまり、日銀は、政府
の連結子会社ということになります。
 以下は、高橋洋一教授の言説です。経済学者は、財政・金融問
題を考えるとき、政府と中央銀行を一体として考えますが、それ
を「統合政府」といいます。この統合政府のバランスシートにつ
いて考えてみます。
 右側の「負債」を見ると、国債残高です。ところが左側の「資
産」を見ると、そこに中央銀行の保有する国債があります。これ
は「相殺」できます。右側のグロスの国債残高1000兆円から
左側の日銀保有国債残高を差し引くと、国債残高は、600兆円
と瞬時に減少します。つまり、統合政府という観点から見ると、
1000兆円の借金は600兆円に減少するのです。この程度の
政府の借金であればどうということはありません。
 スティグリッツ教授にいわせると、何を悩んでいるのかという
わけです。具体的にというと、スティグリッツ教授は、「政府債
務が巨額だからといって、それを前提に消費税を増税などするな
よ」と暗にアドバイスしてくれたのです。
 それを財政諮問会議でいうと、財務省の役人は苦虫を噛み潰し
たような顔になり、政府委員の経済学者は「とんでもない」とい
う顔になり、首相をはじめとする政治家はポカンとしてしまった
というわけです。
 それでは、国債の利払いはどうなるのでしょうか。
 日本政府は律義に日銀に利息を支払っていますが、それは最終
的には、日銀から政府への納付金として戻されてくるのです。し
たがって、利払いをする必要はないのです。つまり、日銀が政府
が保有する国債を買い取った瞬間、すなわち買いオペをした瞬間
に国債の償還は終ったという考え方です。
 ここで大事なことがあります。政府の子会社は日銀だけではな
いということです。それは、天下り役人を抱える特殊法人も子会
社です。現時点でそれらは約600兆円ほどあります。したがっ
て、これらを連結してバランスシートにして「相殺」してしまう
と、国債の債務残高(借金)は、ゼロになってしまいます。財務
省が「余計なことをいいやがって」と、苦虫を噛み潰した表情に
なるのは当然です。
 そういうわけで、財務省は消費増税の目的を「財政再建」では
なく、「社会保障の財源」としてアッピールする戦術に変更して
います。昨日のEJの「画像および関連情報」に読売新聞の社説
をご紹介しましたが、内容は財務省の思惑をそのまま代弁してい
ます。社会の公器としてのメディアというよりも、財務省の提灯
持ちのメディアになってしまっています。
            ──[消費税増税を考える/029]

≪画像および関連情報≫
 ●滑稽すぎる 「日本の財政は破綻する」論/高橋洋一氏
  ───────────────────────────
   このようにバランスシートで見ると、日銀の量的緩和の意
  味がはっきりする。政府と日銀の連結バランスシートを見る
  と、資産側は変化なし、負債側は国債減、日銀券(当座預金
  を含む)増となる。つまり、量的緩和は、政府と日銀を統合
  政府で見たとき、負債構成の変化であり、有利子の国債から
  無利子の日銀券への転換ということだ。
   このため、毎年転換分の利子相当の差益が発生する(これ
  をシニョレッジ〔通貨発行益〕という。毎年の差益を現在価
  値で合算すると量的緩和額になる)。
   また、政府からの日銀への利払いはただちに納付金となる
  ので、政府にとって日銀保有分の国債は債務でないのも同然
  になる。これで、連結ベースの国債額は減少するわけだ。
   量的緩和が、政府と日銀の連結バランスシートにおける負
  債構成の変化で、シニョレッジを稼げるメリットがある。と
  同時にデメリットもある。それはシニョレッジを大きくすれ
  ばするほど、インフレになるということだ。だから、デフレ
  の時にはシニョレッジを増やせるが、インフレの時には限界
  がある。その限界を決めるのがインフレ目標である。インフ
  レ目標の範囲内であればデメリットはないが、超えるとデメ
  リットになる。幸いなことに、今のところ、デメリットはな
  く、実質的な国債が減少している状態だ。
                  https://bit.ly/37aVJ4B
  ───────────────────────────

経済財政諮問会議でのスティグリッツ教授.jpg
経済財政諮問会議でのスティグリッツ教授
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2019年11月20日

●「財政ファイナンスの3つの副作用」(EJ第5132号)

 スティグリッツコロンビア大学教授による「日銀が保有する国
債を「相殺」することで、政府債務を減少させてはどうか」とい
うアドバイスに対して、政府委員を務めている経済学者たちは、
一様に顔をしかめたといいます。なぜでしょうか。
 経済学者たちは「それは『財政ファイナンス』であり、やって
はならない」と考えたからです。このことから、「スティグリッ
ツ教授は間違っている」という学者もいたといいます。しかし、
相手は2001年のノーベル経済学賞受賞の経済学者です。間違
えるはずがないではありませんか。そんなことだから、日本はい
つまで経ってもデフレから脱却できないのです。そんな国は、世
界中で日本しかありません。「御用経済学者よ、恥を知れ!」と
私はいいたいです。
 アベノミクスは、最初の1年目にやったことは正しかったと思
います。これによって停滞していた日本経済が急速に改善をはじ
めたからです。しかし、せっかく経済が立ち直ろうとしていると
きに消費増税をして、またしてもデフレに逆戻りさせています。
デフレの最中に増税という緊縮財政をとる──そんなことをすれ
ば経済がおかしくなるぐらい素人でもわかります。
 確かに日銀による国債の直接引き受けは、財政法第5条で禁止
されています。
─────────────────────────────
◎財政法
 第五条:すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引
 き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれ
 を借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合におい
 て、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。
─────────────────────────────
 日銀は、金融緩和の手段として、主として銀行が保有する国債
を買い取り、国債の保有をはじめたのですが、日銀が政府から直
接国債を引き受けようと、市場を通じて買おうと、日銀が国債を
保有するという事実には変わりがないので、アベノミクスは、財
政ファイナンスであるといえます。
 太平洋戦争のさい、政府は戦費調達のため、日銀に大量の国債
を引き受けさせています。しかし、このことが原因で、高率のイ
ンフレを招いてしまい、苦しんだことがあります。お金を大量に
供給させようとしたので、お金の価値が落ちて、インフレになっ
たのです。財政法の第5条は、そのときの苦い経験に懲りて設け
られたものです。
 なぜ、財政ファイナンスはいけないのでしょうか。中央銀行が
国債を買うと、次の3つの副作用が生まれるからです。
─────────────────────────────
         1.物価が上昇すること
         2.国債の価格が下がる
         3.国の通貨が安くなる
─────────────────────────────
 ここで考えてみるべきことがあります。現在の日本経済の状況
は、通常とは異なり、デフレの状況下にあります。経済アナリス
トの森永卓郎氏は、上記の財政ファイナンスの副作用が現在の日
本にはすべてプラスに働くとして、次のように述べています。
─────────────────────────────
 これらは、通常の経済状況だったら、大きな問題になる。しか
し、いまの日本ではまったく問題にならない。第1の物価上昇だ
が、現在の消費者物価指数は、前年比マイナスであり、日銀が掲
げる2%上昇という目標に遠く及んでいない。つまり、いまの日
本にとっては、物価が上がることのほうが、よいことなのだ。
 第2の国債価格の下落は、いまの日本では心配がない。10年
国債でも、ゼロ金利になっているからだ。むしろ少々国債価格が
値下がりして、プラスの金利がつくことのほうが、金融市場の正
常化のためには、望ましいことだ。
 第3の通貨安についても、2017年1月下旬現在の為替レー
トは、1ドル=110円台で、2016年初めの120円からみ
ても、円高が進んでいる。だから、本来の為替水準に戻すために
も少々の円安は、進んだほうが望ましいのだ。
 金融緩和の3つの副作用がすべてプラスに働く国は、現代の日
本くらいしかない。アベノミクスは、この好条件を活かして、財
政再建を進めてきたのだ。 ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 添付ファイルのグラフを見てください。これは、連結財務諸表
でみた純債務(細かな点線)と、日銀の国債保有額(太い点線)
そして純債務から、国債保有額を差し引いた実質純債務(太い実
線)をあらわしたものです。
 1997年の3%〜5%の消費増税によって日本経済はデフレ
に突入しています。1998年度の連結純債務は134兆円だっ
たのですが、毎年のように悪化し、2013年度には451兆円
に膨れ上がったのです。デフレが財政を破壊したのです。
 ところが、安倍政権のアベノミクスによる金融緩和で、デフレ
にブレーキがかかります。そして2013年から日銀の国債保有
は急激に増加します。その結果、それによる実質連結純債務は、
急速にゼロに向って伸びています。これがゼロになると、日本政
府は「無借金経営」を達成したことになります。
 「そんな、バカな!」というなかれ、これは手品でもマジック
でもインチキでもなく、正当な手続きなのです。しかし、安倍首
相がそこまでわかっていてやったとは思えない。結果として、そ
うなったとしか思えないのです。これは、別名「ヘリコプターマ
ネー」とも呼ばれており、安倍首相はこれに反対しているからで
す。ヘリコプターマネーは、日本では評判が悪いですが、これに
対する政府の無理解が、日本経済をいつまでもデフレの底に沈め
ているのです。これについてさらに詳しく説明します。
            ──[消費税増税を考える/030]

≪画像および関連情報≫
 ●政府の債務は返さなくてもいい/MUFGレポート
  ───────────────────────────
   政府の債務残高が1000兆円を超えてしまっており、も
  はやこの膨大な借金を返済することは不可能ではないかと言
  われたりすることが多い。その疑問には、自信(?)を持っ
  て答えることができる。返済が不可能であるどころか、借金
  の残高を削減することすらできない。つまり、債務残高が今
  後も増え続けるのは確実である。
   考えてみれば、それは驚くことでも何でもない。一般に借
  金残高を減らそうとすればフローの収支を黒字にする必要が
  あるから、政府の債務残高を削減するためには、毎年の財政
  収支を黒字化させなければならない。しかし、それを実現す
  るのはおよそ不可能である。   https://bit.ly/2OlyImX
  ───────────────────────────
 ●グラフの出典:──森永卓郎著の前掲書より

連結財務諸表から見た日本財政の推移.jpg
連結財務諸表から見た日本財政の推移
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2019年11月21日

●「日銀国債保有で政府債務が消える」(EJ第5133号)

 「ヘリコプターマネーはとても納得いかない」と考える人は多
いと思います。経済学者がこぞって反対していることについて高
橋洋一氏は、「経済学者はすこぶる会計に弱い。連結BSとかい
うと、さっぱりお手上げの学者が多いが、この程度は簿記レベル
の話である」といっています。
 そこで、平成27年度(2015年)末の日銀のバランスシー
トから、必要な数字を引き出して考えてみることにします。
─────────────────────────────
  ◎平成27年度末/日本銀行バランスシート
      【資産の部】
        金地金     4412億円
         現金     2099億円
         国債  3491955億円
   (資産の部合計)  4056481億円
      【負債の部】
      発行銀行券   955947億円
         預金  2829396億円
     うち当座預金  2754394億円
   (負債の部合計)  4020984億円
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 これによると、2015年末の日銀の資産は406兆円で、そ
のうち349兆円は国債であることがわかります。日銀の資産の
9割は国債なのです。負債の方をみると、発行銀行券、すなわち
日本銀行券が96兆円、日銀当座預金は275兆円、計371兆
円、この2つで負債の9割を占めています。
 したがって、日銀のバランスシートは、日銀券発行で得た資金
と銀行から預かっている当座預金で、国債を買っているという構
造になっていることがわかります。
 少し難しい2つの説明が必要です。
 1つは「日銀当座預金」です。日銀当座預金というのは、日銀
が、取引先の金融機関などから受け入れている当座預金のことで
す。それらの金融機関のうち、準備預金制度の対象となっている
金融機関(銀行預金残高1600億円超の信用金庫、農林中央金
庫)は他行との取引の決済をスムーズにするため、中央銀行の当
座預金口座に一定の準備預金を預け入れることが義務付けられて
います。この準備預金の最低金額(積むことが義務付けられてい
る金額)を超えて中央銀行に預けている預金を「超過準備」と呼
ぶのですが、この超過準備に付く金利をマイナスにする政策が、
「マイナス金利(政策)」です。
 2つは、日銀券の発行残高と、日銀当座預金の合計を「マネタ
リーベース」と呼んでいます。市中に出回っているお金の流通現
金と日銀当座預金の合計のことです。
 これらのことを頭において、経済アナリスト森永卓郎氏の次の
解説を読んでください。
─────────────────────────────
 国債を民間が保有していれば、政府は毎年国債の利払いをしな
ければならないし、満期がきたら、元本を返済しなければならな
い。しかし、日銀が持てば、話は別だ。政府はとりあえず日銀に
も利払いをしなければならないが、その利払い分は政府に戻って
くる。日銀は剰余金をすべて政府に納付することになっているか
らだ。また、日銀が国債を持ち続けてくれる限り、政府は元本を
返済する必要もないのだ。つまり、日銀が国債を買って、日銀券
を発行するということは、政府・日銀を一体として考えれば、国
債を日銀券にすり替えるということを意味する。日銀券に利払い
はされないし、元本返済がなされることは、もともとないから、
日銀が国債を買った瞬間に、借金が消えるのだ。
                ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 ここでひとつ疑問が生じます。日銀は保有している国債を今後
どうするのでしょうか。
 この国債を日銀が保有し続ければ、政府の借金は消えたままで
す。しかし、日銀が金融政策の一環として、金融引き締めをしな
ければならないとき、日銀は国債を売ることになります。これは
金融緩和の逆をすることになります。
 金融緩和は、国債を買って、代金としての資金を提供すること
ですが、金融引き締めは、国債を売って、資金を回収することに
なります。別な表現でいうと、マネタリーベースを減らすことで
す。そうすると、売った国債は民間の手に戻ることになるので、
政府はその分の国債の利払いや元本返済の義務を負うことになり
ます。しかし、現在はデフレであって、日銀は国債を買うペース
を少し落とすだけでも十分な金融引き締め効果があるので、そう
いう事態がすぐ訪れることは考えにくいことです。
 日銀が、国債を買って保有すると、その分を政府の借金から棒
引きしてよいということに違和感を覚える人は少なくないと思い
ますが、それは「通貨発行益」というものが理解できていないか
らです。財務省は1000兆円を超す政府の借金を一般家庭の借
金に譬えて説明していますが、政府と一般家庭を同列に扱うこと
は大きな誤解を生みます。
 なぜなら、個人の借金は必ず返済しなければなりませんが、政
府の借金は返す必要があるかどうかは疑問です。もちろん借金が
増加することは避けなければなりませんが、それは、長期間にわ
たって少しずつ返済していけばいいだけの話です。
 それに政府は緊急の場合、通貨を発行することができますが、
それは個人にはできないことです。この場合、通貨を発行すると
発行者には「通貨発行益」が与えられます。これが理解できてい
ないと、日銀が国債を保有すると、政府の借金が減るのか、納得
できないと思います。明日のEJでさらに説明します。
            ──[消費税増税を考える/031]

≪画像および関連情報≫
 ●「通貨発行益」とは何か/シェイブテイル日記2
  ───────────────────────────
   政府の収入、いわゆる歳入の源は、どこにあるのでしょう
  か。歳入=税収+国債ですか?いいえ。ちょっと違います。
  歳入=税収+国債+通貨発行益です。
   ではその通貨発行益とは一体何なのでしょうか。
  この重要な政府歳入源を知るか知らないかで、政府の財政に
  対する考え方は大きく異なってくるのは間違いありません。
  リフレ派の論客、高橋洋一嘉悦大学教授(大蔵省出身)は通貨
  発行益は、政府貨幣でも日銀券でも通貨を増やせばその殆ど
  が通貨発行益だという主張をしています。
   「金利がゼロなら貨幣と国債は完全代替物となるといえる
  が、実際には金利はゼロでない。だからこそ、マネタリーベ
  ースのところはシニョレッジ(通貨発行益)が発生するが、
  国債には発生しないのだ。これをイメージしやすくしたもの
  が、実は政府通貨のアイデアである。会計上の違いによって
  シニョレッジ(通貨発行益)の計上は、日銀の量的緩和では
  各期の利払い相当額、政府通貨発行では当期に全額となって
  いるが、現在価値ベースでみれば両者は同じ。要するに、マ
  ネタリーベースの増加額がシニョレッジ(通貨発行益)にな
  る。【シニョレッジ(通貨発行益)を見落としている量的緩
  和「懐疑論」の誤り】      https://bit.ly/2XvyRsa
  ───────────────────────────

経済アナリスト/森永卓郎氏.jpg
経済アナリスト/森永卓郎氏
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2019年11月22日

●「ジョン・ローの壮大な失敗の物語」(EJ第5134号)

 「通貨発行益(シニョリッジ)」というわかりにくい概念があ
ります。「シニョール」(seignior)というのは、古いフランス語
で中世の封建領主のことで、シニョリッジとは領主の持つ様々な
特権を意味していたのです。
 あなたがある国の王様だったとします。当然通貨発行権を持っ
ています。王室の生活を支えるためには費用がかかります。その
費用をあなたは、王立銀行券を作ってそれらの支払いに充てたと
します。支払われた王立銀行券は、その後、民の間に流通してい
きますが、あなたが作成した銀行券で購入したモノやサービスは
一切返済の必要がありません。これが「通貨発行益」です。
 このシニョリッジを理解するために、知っておくとよい話があ
ります。ジョン・ローの話です。しばらくお付き合いください。
「簿記の歴史物語」のサイトから、EJ風にアレンジしてご紹介
することにします。         https://bit.ly/2O5iEqm
 18世紀のフランスの時代の出来事です。ルイ14世統治下の
フランスです。ジョン・ローはもともとプロのギャンブラーでし
たが、最新の経済・金融知識を身に付けていたのです。
 当時、ルイ14世の放漫経営で、フランスは深刻な財政破綻状
態に陥っていたのです。1715年9月、ルイ14世が崩御する
と、オルレアン公フィリップが摂政となり、支配者になります。
ジョン・ローは、このオルレアン公に取り入ったのです。
 当時のフランスは、金銀の貴金属を貨幣として使っており、紙
幣は使っていませんでした。そうした貨幣は、一部の金持ちに集
まり、金持ちだけが儲かる社会だったといえます。
 ジョン・ローは、貴金属ではなく、紙幣を発行すれば流通する
はずだとして、民間銀行「バンク・ジェネラル」を設立します。
そして紙幣を発行するのですが、それを使う人がいなければ流通
しません。そこで、ジョン・ローは、オルレアン公の権力を背景
に、外国為替銀行を説き伏せてネットワークを作り、海外貿易の
決済にバンク・ジェネラルの銀行券を使えるようにしたのです。
 さらにオルレアン公は、税金はすべて銀行券で支払われなくて
はならないと命じました。効果はてきめんでした。銀行券は広く
流通し、貿易を刺激するようになったのです。これによって、王
室もなんとか賄えるようになっていったのです。
 1718年にバンク・ジェネラルは国有化され、王室銀行(バ
ンク・ロワイヤル)と名を改めました。代表者であるローは、よ
り強い権限を持つに至ります。
 次にジョン・ローのやったことは、銀行券の発行を貴金属の準
備と切り離したことです。つまり、ジョン・ローは、1971年
にリチャード・ニクソン米大統領がやったことを先取りしたので
す。すなわち、貴金属との交換できる保証のない「不換紙幣」を
誕生させたことです。
 たとえ貴金属と交換できなくても、「国王とその臣下が適切な
判断のもとに紙幣を発行しているはずだ」と人々に信じさせるこ
とができれば、貨幣制度は崩壊しないというのが、ジョン・ロー
の考え方です。ここまではある程度成功を収めており、ジョン・
ローの評価は高まっていました。そこで、ジョン・ローは、フラ
ンス政府の抱えている公的債務を解消し、フランスに巣食ってい
る金持ちどもを一掃する壮大な計画に着手します。
 ジョン・ローはオルレアン公の許可を得て、1717年に「西
方会社」を設立します。さらに、当時フランスの植民地だった米
国ルイジアナの開発権を入手するのです。当時ルイジアナは、ミ
シシッピ川の流れる未開の原野でしたが、ジョン・ローは、そこ
を地上に現れたエデンの楽園であるかのように過大に喧伝したの
です。この地は、フランスに莫大な富をもたらす約束の地であり
西方会社は必ずや大きな利益を上げるはずであると。
 この宣伝は効いたのです。そして、西方会社の株式をフランス
政府の公的債権と交換するように呼び掛けます。株式は、王室銀
行の銀行券で買えるようにしてあったのです。フランス国民は、
我がちに保有する国債を政府に売って、王室銀行券を手に入れ、
その銀行券で西方会社の株式を購入したのです。この頃から、西
方会社は「ミシシッピ会社」の愛称で呼ばれるようになっていき
ます。以下、その愛称を使います。
 この場合、政府が国債の買い取りに必要な王室銀行券は、王室
銀行が政府に貸し付けたのです。その結果、何が起こったかとい
うと、フランス経済は通貨の供給量の拡大にともなって活性化し
財政再建は急速に進んだのです。そしてジョン・ローは、国債を
王室銀行券にすり替えることによって、政府債務をゼロにするこ
とに成功したのです。1720年1月、ジョン・ローは、フラン
スの財務総監に任命され、彼の威光は頂点に達します。数週間後
には、ミシシッピ会社と王室銀行が統合されています。
 しかし、肝心のルイジアナの開発がうまくいかなかったことや
通貨を増やし過ぎたことによってバブルが発生します。そして、
バブルが崩壊したのです。株式市場の外では、深刻なインフレが
進行し、王室銀行券は信用を失っていきます。しかし、ミシシッ
ピ会社のバブル崩壊と、銀行券の信用失墜はもはや止められませ
んでした。そしてジョン・ローの作り上げた経済体制は完全に崩
壊します。ジョン・ローの話は失敗話として伝えられていますが
ヘリコプターマネーのヒントはここからとられています。森永卓
郎氏はこれについて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ジョン・ローはフランスを追われるようになり、彼は「稀代の
詐欺師」とか「錬金術師」と呼ばれるようになったが、ジョン・
ローの失敗はありもしない事業をでっちあげてバブルを起こした
ことにあって、ヘリコプターマネーが経済活性化と財政健全化に
大きく寄与したという事実は、このとき確認されている。
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/032]

≪画像および関連情報≫
 ●ヘリコプターマネーは、どうして危ないのか
  ───────────────────────────
   これまで「机上の空論」扱いされてきた政府・日本銀行に
  よる「ヘリコプターマネー政策」(以下、ヘリマネ)が全国
  紙の一面を飾り、ありうる政策の選択肢として堂々と議論さ
  れている。本当に投入されるとしたら、2013年4月開始
  の異次元金融緩和、2016年1月に導入が発表されたマイ
  ナス金利政策を上回る衝撃度である。
   ヘリマネ政策の主唱者の一人であるベン・バーナンキ前F
  RB(米連邦準備制度理事会)議長が12日に来日し、安倍
  晋三首相と会談したために、先週はヘリマネが市場の話題を
  さらった。7月28、29日に開かれる日本銀行の金融政策
  決定会合を控え、「日本でもヘリマネ政策が導入されるので
  はないか」とマーケットの憶測を呼んでいる。
   菅義偉官房長官が記者会見で「検討している事実はない」
  といくら否定しても、市場は浮き足立ったまま。黒田東彦日
  銀総裁が直前まで「考えていない」と言っておきながらマイ
  ナス金利政策を導入した過去を考えると、「あるかも」と市
  場関係者が考えるのは無理もないのかもしれない。
   ヘリマネ観測だけが原因ではないだろうが、為替市場は、
  7月15日に1ドル=105円台まで円安方向に大きく振れ
  た。英国がEU離脱を決定した後、一時、1万5000円台
  を割っていた日経平均株価は7月11日の週、5営業日の続
  伸となった。          https://bit.ly/32Zz5ZK
  ───────────────────────────

ジョン・ロー肖像画.jpg
ジョン・ロー肖像画

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2019年11月25日

●「明治維新のとき発行した政府紙幣」(EJ第5135号)

「ヘリコプターマネー政策」(以下、ヘリマネ政策)は、その
命名が、ヘリコプターからお金をばらまくというところからきて
いるので、「怪しいもの」、「やってはいけないもの」、「究極
の経済政策」という印象が強いと思います。その一般的な定義は
次の通りです。
─────────────────────────────
◎ヘリコプターマネー政策とは何か
 ヘリマネ政策とは、中央銀行が生み出した返済する必要のない
お金を、政府が国民に配る政策である。国が元利払いの必要がな
い債券(無利子永久債)などを中央銀行に渡し、引き換えに受け
取ったお金を商品券などの形で国民にばらまく。
─────────────────────────────
 ヘリマネ政策には、反対意見が多く、とくに日本では評判がよ
くない。お金というものは、ひたいに汗して働いた対価として得
られるもので、印刷して作るなんてとんでもないという考え方で
す。これは、国の政策を一般家庭のそれと同等に見ていることか
らくる誤解です。これについて、経済アナリストの森永卓郎氏は
次のように説明しています。
─────────────────────────────
 ヘリコプターマネーというのは、政府や中央銀行が、まるでヘ
リコプターからおかねをばらまくように、市中に貨幣を供給する
ことから名づけられた。このヘリコプターマネーは、日本ではと
ても評判が悪い。まるで打ち出の小槌のような魔法がありうるは
ずがないという先入観があるからだ。だから、主要政党のなかで
ヘリコプターマネーを支持する政党はないし、官僚も、財界人も
そして安倍総理までが、ヘリコプターマネーの実施を否定してい
る。しかし、私は、このヘリコプターマネーに対する無理解こそ
が、バブル崩壊以降、四半世紀にわたって日本経済を低迷させた
最大の原因だと考えている。
 ヘリコプターマネーは、けっしてあやしいものでほない。ヘリ
コプターマネーのアイデアは、ノーベル経済学賞受賞者であるミ
ルトン・フリードマンが1969年に提唱し、同じくノーベル経
済学賞受賞者であるポール・クルーグマンが、同様の政策を日本
経済に対して提案し、ベン・バーナンキ元FRB(連邦準備制度
理事会)議長が導入を推奨するなど、多くの偉大な経済学者が支
持をしている。      ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 なぜ、世界の名だたる経済学者が、日本にヘリマネ政策を勧め
るのかというと、日本の経済ががデフレ下にあり、そこから長い
間にわたって脱出できていないからです。それに、日本の場合、
既に検討したように、ヘリマネ政策を実施するさいに生ずる恐れ
のある副作用が起きる心配がほとんどないからです。しかし、安
倍政権は思い切りが悪く、実施できていません。
 それどころか、それらの著名な経済学者がやるべきではないと
アドバイスした消費増税を2回にわたって実施し、税率を5%か
ら10%に倍増させるという愚かな政策をとっています。経済と
いうものが、まるでわかっていない人たちです。
 歴史を遡ると、事実上のヘリマネ政策を日本は、明治維新のと
き、実施しています。ただ、明治維新のとき使ったのは「政府紙
幣」です。当時日本には中央銀行がなかったからです。ところで
「政府紙幣」とは何でしょうか。
─────────────────────────────
◎「政府紙幣」とは何か
 政府紙幣とは、「通貨発行権」を持つ政府が直接発行する紙幣
または、持たない場合において中央銀行が発行する銀行券と同じ
法定通貨としての価値や通用力が与えられた紙幣のことである。
        ──ウィキペディア https://bit.ly/2QIPcby ─────────────────────────────
 江戸時代には、地方の諸侯が領内での流通に限定した藩札を発
行していました。これも一種の地方政権の発行する政府紙幣の一
種であって、発行目的のひとつに領内の殖産興業があり、藩によ
っては濫発したため、額面よりも実際の価値が幕府発行の貨幣に
対して著しく低い場合も少なくなかったといいます。
 明治維新──日本の経済社会を根こそぎ作り替える大改革です
から、膨大な資金が必要だったのです。その資金を明治政府は、
政府紙幣の発行でまかなったのです。政府が発行する紙幣ですか
ら、その発行額から印刷経費を差し引いた全額が、通貨発行益と
して、直接政府の手元に残るのです。
 具体的にいうと、1868年(慶応4年)に明治政府は、政府
紙幣「太政官札」を発行します。その発行残高は次の通りです。
当時の物価はわからないが、現在まで物価がおよそ1万倍になっ
ていると仮定すると、現在の物価で4800億円になります。巨
額な資金です。
─────────────────────────────
     太政官札4800万両 → 4800億円
─────────────────────────────
 太政官札は、期限付きの政府紙幣であったので、1872年に
明治政府は、新しい政府紙幣「明治通宝」を発行し、太政官札の
大部分は、明治通宝に引き継がれたのです。しかし、その5年後
の1877年に西南戦争が勃発します。明治政府は戦費調達のた
め、明治通宝の大量発行に踏み切るのです。
 しかし、その結果、激しいインフレに見舞われます。そこで明
治政府は、1882年に日本銀行を設立し、1885年から日本
銀行券(兌換銀行券)が発行されたのです。これによって、明治
通宝は1899年に正式に運用停止になっています。
 太平洋戦争のときも日本政府は戦費調達のため、戦時国債が大
量に発行され、それを日銀に引き受けさせたので、インフレが昂
進し、戦後になってもなかなか収まらなかったのです。
            ──[消費税増税を考える/033]

≪画像および関連情報≫
 ●明治維新150年に振り返る「日本のお札」
  ───────────────────────────
   ところで、日本にお札(紙幣)が誕生したのはいつ頃かご
  存じですか。日本銀行金融研究所貨幣博物館によれば「16
  00年頃、伊勢の山田地方で、神職でもあった商人(御師)
  により秤量銀貨の釣り銭の代わりに山田羽書(小額銀貨の預
  り証)が発行され、紙幣として同地域で流通した」のが始ま
  りだとか。最初は私札だったのです。その後、各藩で藩札が
  大量に発行されました。
   全国で通用する紙幣が発行されたのは、明治政府誕生以降
  です。1868年(明治元年)に初めての政府紙幣「太政官
  札(だじょうかんさつ)」が発行されました。ただし、独立
  行政法人国立印刷局によれば「単純な製法のため偽造券が多
  発した」そうです。
   そのため、ドイツや米国などに製造を依頼し、「明治通宝
  札(十円券)」、「神功皇后札(十円券)」、「国立銀行紙
  幣(十円券・旧券)」などを発行しました。国産第1号の洋
  式紙幣は1877年に発行された「国立銀行紙幣(5円券・
  新券)」です。
   日本で初めて全国通用の政府紙幣「太政官札」が発行され
  て、間もなく150年になります。お札の発行に関して大き
  な転機となったのが、1882年に日本銀行が誕生したこと
  です。当時の紙幣は金や銀と交換できる兌換(だかん)券で
  した。しかし、1877年に西南戦争が勃発したことから、
  大量の政府紙幣や国立銀行紙幣が発行され、激しいインフレ
  ーションが発生し、実際には金銀と交換できない不換紙幣に
  なっていました。        https://bit.ly/2Da13r7
  ───────────────────────────

明治通宝.jpg
明治通宝
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2019年11月26日

●「通貨発行益について改めて考える」(EJ第5136号)

 少しややこしい話をします。
 「通貨発行益」には、2つの考え方があります。日本政府が国
債を発行して、民間銀行がそれを購入し、日銀が金融緩和の一環
として、それを買い取ります。この場合、政府は国債の利払いを
日銀に対して行いますが、その金額は後になって、日銀剰余金と
して政府に戻されます。政府はこれを「歳入」として受け入れ、
毎年の予算のなかで活用しています。この剰余金のことを通貨発
行益と呼ぶ経済学者がいます。
 しかし、これは間違いです。本当の通貨発行益というのは、日
銀が買い取った国債金額そのものから、その印刷代を差し引いた
ものをいうからです。したがって、その金額は利払い費を含む剰
余金とはケタ外れの金額になります。
 これに対して、経済アナリストの森永卓郎氏は、次の疑問を呈
しています。
─────────────────────────────
 (通貨発行益によって)日銀が国債を保有している限り、政府
は元本返済の必要はない。だから、本来であれば、国債の日銀買
い取りに基づく通貨発行益は、税収とともに政府の歳入として、
きちんと位置づけるべき性格のものなのだ。それをせずに、いわ
ば秘密の財源としてずっと隠してきたというのが、これまでの日
本財政の歴史なのだ。   ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 そういわれてみれば、森永氏の主張の通りです。問題は、政府
が、なぜ歳入として受け入れないかです。それは、何となくうし
ろめたさを感ずるからではないでしょうか。
 実際に政府は、通貨発行益を財源として活用しています。こう
いうことは、平時では何も問題を起こしていないのです。ただひ
とつ、貨幣の供給を増やし過ぎて、インフレーションになってし
まうときに限られます。
 井上智洋氏という日本の経済学者がいます。駒澤大学経済学部
の准教授です。井上氏に次の著作があります。
─────────────────────────────
                   井上智洋著
    『ヘリコプターマネー』/日本経済新聞社刊
─────────────────────────────
 井上智洋氏の本に出ているのが、「間接的財政ファイナンス」
というタイトルの図です。この図を添付ファイルにしてあります
ので、見てください。
 政府が国債を発行します。民間銀行がそれを購入します。その
国債を日銀が金融緩和の一環で買い取り、その代金を民間銀行の
日銀当座預金に振り込みます。本来であれば、銀行はその資金を
企業に融資して市中に通貨を拡大させるのですが、デフレ下では
企業に資金需要がなく、それができないのです。
 そのため、資金が日銀当座預金に法定準備を超えて積み上がる
だけです。しかも、法定準備を超える預金にはマイナスの金利が
かかるのです。アベノミクスでは、この段階で止まっており、市
中にお金が出回っていないのです。
 井上智洋氏は、ヘリコプターマネーには政府紙幣を発行する直
接方式と、国債を中央銀行が買い取り、その資金を財政資金に充
てる財政ファイナンスの2つの方式があり、このヘリコプターマ
ネーは、金融政策と財政政策の組み合わせであり、必要に応じて
駆使すべきものといっています。
 それに基づいて、森永卓郎氏は、いまやらなければならないこ
とについて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 (政府が)やらなければならないのは、中央銀行による国債買
い取りで得た通貨発行益を減税などの形で、政府が国民に戻すこ
とだ。銀行に資金を渡しても融資に回らないなら、国民に直接資
金を渡せば、国民の持つお金が増えるから、消費が増えて景気が
回復するのだ。         ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 ここで考えてみることがあります。アベノミクスは、浜田宏一
元イエール大学教授が設計者といわれますが、アベノミクスの、
いわゆる「3本の矢」の構想は、次のようになっています。
─────────────────────────────
           1.金融緩和
           2.財政出動
           3.成長戦略
─────────────────────────────
 このうち、「金融緩和」と「財政出動」を重ねてやっている初
期の段階では、アベノミクスによる経済状況の回復は著しいもの
あったのです。しかし、そこで安部政権は、既に法律化されてい
た5%から8%の消費増税をやったのです。経済の状況が少し改
善したと判断したからです。
 しかし、これは大失敗でした。経済がデフレの状態を脱出する
ことができなかったからです。このとき、安倍政権がやるべきこ
とは、増税ではなく、通貨発行益を利用した減税であったからで
す。財源は通貨発行益になります。おそらく安部首相の頭には、
企業への減税は別として、一般消費者に対する減税の発想はかけ
らもなかったと思います。それに、安部首相自身が通貨発行益が
わかっているとは、とても思えないからです。
 日本人の頭のなかには、日本はひどい財政赤字を抱えていて、
減税なんかとんでもないとの思いがあります。財務省の長年にわ
たるプロパガンダが見事に効いているからです。この財政赤字へ
のこだわりが経済の状況をおかしくしています。
 このアベノミクスの失敗を設計者である浜田宏一氏も認めてい
ます。プリンストン大学教授、クリストファー・シムズ氏の論文
を読んだからです。この論文については、明日のEJで考えるこ
とにします。      ──[消費税増税を考える/034]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ、財政赤字は減らないのか?/塚崎公義氏
  ───────────────────────────
   日本の財政が大幅な赤字である事は、誰でも知っているで
  しょうが、どれくらいの赤字なのでしょうか?昔から赤字を
  減らす努力をしているのにどうして減らないのでしょうか。
   毎年の財政が赤字だということは、その分の借金が積み重
  なり、借金の金額も莫大なものとなっていますが、一体どれ
  くらいでしょうか。そんなに借金していて、日本政府は倒産
  しないのでしょうか。今回は、日本の財政赤字について学び
  ましょう。国(中央政府)と地方公共団体に財政があり、国
  には一般会計と特別会計がありますが、単に「財政赤字」と
  呼ぶ場合には、国の一般会計の赤字を指すのが普通ですので
  本稿もそうします。
   ちなみに、「国が赤字」というのは「日本国の中央政府の
  一般会計が赤字だ」ということで、「日本国が赤字だ」とい
  うことではありませんので、注意して下さい。日本国と外国
  との取引は、経常収支統計に示されているように、大幅な黒
  字です。2017年予算の歳出は97兆円です。予算は歳出
  と歳入が同額ですから、歳入も97兆円です。もっとも、歳
  入の中には税収等63兆円のほかに「公債金」34兆円が含
  まれています。これは、税収等だけでは歳出のための費用が
  賄えないため、国債を発行して資金を調達する必要があるか
  らです。一般には、歳入予算の公債金を財政赤字と呼ぶ場合
  が多いようです。        https://bit.ly/35tFHkz
  ───────────────────────────
 ●図の出典/井上智洋著/『ヘリコプターマネー』/日本経済

間接的財政のファイナンス.jpg
間接的財政のファイナンス
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2019年11月27日

●「デフレ脱却のシムズ理論とは何か」(EJ第5137号)

 経済の状況には、インフレ的な状況とデフレ的な状況がありま
す。ともに「的な状況」でなくなり、本当に「インフレ」や「デ
フレ」になると、大変なことになります。それら2つの関係をま
とめると、次のようになります。
─────────────────────────────
    「インフレ的」な状況 → 経済は活性化する
          インフレの対処策には経験がある
     「デフレ的」な状況 → 経済は失速・低迷
          デフレの対処策には経験が乏しい
─────────────────────────────
 経済を活性化させようとするには、何らかの方法でインフレ的
な状況をつくり出す必要があります。ましてデフレに陥った場合
は、政府と中央銀行が協力してコトに当る必要があります。つま
り、政府の財政政策と中央銀行の金融政策を合体して、実施する
必要があるわけです。
 2016年8月のことです。ワイオミング州ジャクソンホール
で毎夏開かれる経済シンポジムは、「世界の中央銀行のお祭り」
といわれますが、その会議で、プリンストン大学教授のクリスト
ファー・シズム氏による基調報告があったのです。シムズ教授は
計量経済学の権威で、2011年に「マクロ経済における因果関
係の統計的な研究」の功績によって、ノーベル経済学賞を受賞し
ています。
 このときのシムズ氏の基調報告について、アベノミクスの設計
者といわれる浜田宏一元イエール大学教授は、インタビューを受
けて次のように答えています。
─────────────────────────────
 私はシムズ氏の論文を読み、衝撃を受けました。「金融政策は
なぜ効かないのか」という問いに、明快な答えを与えていたから
です。シムズ氏は「金融政策が効かない原因は『財政』にある」
というのです。
 中央銀行が量的緩和で貨幣量をふやしても、同時に政府が財政
赤字を減らそうとして増税を行えば、インフレにはならず、デフ
レになってしまう。シムズ氏の分析は(貨幣の価値を究極的に保
証しているのは国家の徴税権力である)とする物価水準の財政理
論(FTPL)の応用でした。そして、現在の日本の状況も例に
挙げて、なぜ金融政策だけではうまくいかないかをずばりと言い
当てていました。
 シムズ氏は、金融緩和が有効であることを認めたうえで「より
強い効果を出すためには、減税など財政拡大と組み合わせよ」と
提唱しています。従来の経済学では、財政規律が緩むと、過度な
インフレを招くうえに財政赤字はかさみ、経済にダメージを与え
ることが強調されていました。しかし、シムズ氏は意図的に「赤
字があっても財政を拡大するべき(時もある)」と主張します。
これは斬新なアイデアでした。        ──森永卓郎著
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
                     角川新書K126
─────────────────────────────
 「FTPL」とは、何でしょうか。
 FTPLとは、物価動向を決める要因として、財政政策を重要
視する考え方です。政府が将来増税しないと約束し、財政支出を
増やしていけば、人々が財政赤字拡大から、将来、インフレが起
こると予測し、消費や投資を拡大します。それが物価上昇の圧力
となり、インフレが発生して、デフレや低インフレ状態から脱し
得ると説く。FTPLは、次の言葉の頭文字をとったものです。
─────────────────────────────
       FTPL=物価水準の財政理論
       Fiscsl Theory of Price Level
─────────────────────────────
 このシムズ教授に「週刊ダイヤモンド」の記者が、19年の増
税前にインタビューをしています。
─────────────────────────────
──日本で19年に消費増税の実施を予定していますが、消費増
税については延期、凍結、実施のどれが望ましいのでしょうか。
シムズ教授:日本で19年10月の消費増税の実施はすでに決定
 ずみとなっています。ただ、当局が過ちを犯したと思う点は、
 彼らが、19年10月という具体的な時期を明文化したことで
 す。なぜなら、財政拡大策と消費増税による財政緊縮策を同時
 に行うことは矛盾しているからです。人々は、「将来に増税が
 待っている」と思えば、政府が財政支出を拡大しても、消費を
 拡大しないでしょう。もし、目標のインフレ水準が達成される
 まで「消費増税をしない」と言えば、人々に前向きな影響をも
 たらせたでしょう。その方針を続ける限り、人々はインフレを
 受け入れやすくなります。そうすれば彼らはお金を使うように
 なり、マネーの流れも活性化するに違いありません。
──「FTPL」を政策として実行した場合、成功すると思われ
 ますか。
シムズ教授:それが成功するかどうかは、政策当局者が将来の民
 間の意識を変えられるかどうかに懸かっています。ただ、非常
 に難しいことであることは確かです。
──仮にインフレが発生した場合、物価上昇率が、3%、4%な
どと、行き過ぎてしまう危険はないのでしょうか。
シムズ教授:インフレ対策については、中央銀行も財政当局も経
 験があり、何をすべきか、知っているはずです。例えば、政策
 金利の引き上げや財政改革(歳出抑制など)です。超低金利低
 インフレからいつまでも脱することができないというのも決し
 ていいことではありません。予期しない物価上昇などで急な調
 整を迫られたときに、打つ手がなくなるからです。
                  https://bit.ly/2XIzCOu ─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/035]

≪画像および関連情報≫
 ●コラム:シムズ理論、10の疑問=河野龍太郎氏
  ───────────────────────────
  [東京/2017年2月21日]──日本の財政について、
  筆者が懸念しているのは、ノーベル経済学賞を受賞した米プ
  リンストン大学のクリストファー・シムズ教授らが主張する
  「物価水準の財政理論(FTPL)」を根拠として、安倍晋
  三首相が財政健全化の方針を転換し、2%インフレが達成さ
  れるまで、消費増税と基礎的財政収支(プライマリーバラン
  ス、PB)黒字達成目標を凍結することである。
   以下、筆者がよく尋ねられる疑問に答える形で、「シムズ
  理論」を現実に応用する問題点を指摘したい。
  Q1)シムズ理論とは何か。
  理論のエッセンスは、1)ゼロ金利制約で金融政策が有効性
  を失う場合、追加財政が代役となり得る、2)その場合の追
  加財政は、将来の増税や歳出削減で賄うことを前提にした通
  常の財政赤字ではなく、インフレでファイナンスされた財政
  赤字、というものだ。これまで追加財政を繰り返しても、必
  ずしもインフレ醸成につながらなかったのは、追加財政を行
  う際、政府が、同時に財政健全化を約束していたからだとい
  う。追加財政を行っても、将来の増税や歳出削減を政府がア
  ナウンスすると、人々もそれを前提に行動するから支出は必
  ずしも増えず(リカーディアン効果)、それゆえ、需給ギャ
  ップの改善も十分ではなく、インフレ醸成にも十分つながら
  なかった。そこで、リカーディアン効果を回避すべく、増税
  や歳出削減を一切予定せず、インフレによる返済を前提とし
  た追加財政を行うべき、というのがシムズ教授らの主張だ。
                  https://bit.ly/35xkqGR
  ───────────────────────────


クリストファ・シムズ教授.jpg
クリストファ・シムズ教授
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2019年11月28日

●「『金融緩和+減税』が正解である」(EJ第5138号)

 日本の2016年度の名目GDPに占める個人消費の割合は、
55・7%です。米国は68・1%、英国は64・9%、ドイツ
は53・9%です。したがって、経済を活性化させようとすれば
個人消費を増加させる政策を取ればきわめて効果的です。減税は
その有力な手段のひとつになります。
 しかし、日本では、減税に、政治家が必ずいう言葉は「財源が
ない」。それに加えて、次の言葉を付け加えるのです。
─────────────────────────────
 「お金をばらまいても、消費者はその資金を貯蓄に回すので、
消費は増えない」と主張する経済学者もいる。確かに、手元にお
金が配られても、それが将来、増税となって跳ね返ってくるので
あれば、消費者は貯蓄をするだろう。しかし、ヘリコプターマネ
ーは、返す必要のない借金を財源としているのだから、将来の増
税はない。それでも、全額貯金をする消費者は残るだろうが、大
部分の国民はお金を使うだろう。ただでさえ、生活に余裕がない
からだ。         ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 アベノミクスでは、日銀は年間平均約80兆円の国債を購入し
ています。重要なことは、この分は返さなくてもよいので、それ
が減税の財源になります。ところが、本来であれば、「金融緩和
+減税」すべきところを「金融緩和+消費増税」をしてしまった
のですから、アベノミクスが真の成果を出せないでいるのです。
 極端な話ですが、仮にこれらの資金をすべて減税で国民に戻し
たとしたら、国民一人当たり63万円、4人家族の場合は252
万円、これだけのお金が政府からばらまかれたとしたら、かなり
の人がそれを貯蓄に回したとしても、消費は爆発し、物価は上が
り始めるはずです。
 ひとつ大きな疑問があります。安部首相は自民党の政治家です
が、少なくとも増税派ではないはずです。財務省とは一定の距離
を置いており、財務省の指示通りに動く政治家ではありません。
増税を2回にわたって延期したのも、安倍首相ならではです。他
の首相なら、たとえ当時の民主党の首相であっても、増税は計画
通りに実施したはずです。
 それに安部首相には、浜田宏一元イエール大学教授という学者
が、内閣官房参与として付いています。浜田教授はアベノミクス
の設計者です。それなのに、なぜ、明らかに間違いである「金融
緩和+消費増税」をやってしまったのでしょうか。
 それは、消費増税が、「社会保障と税の一体改革」として、法
律化されていたことが原因です。増税の規模と実施時期をあらか
じめ示し、法律化まですることは最大の悪手です。クリストファ
・シムズ教授も「人々は「将来に増税が待っている」と思えば消
費を拡大しない」といっているではありませんか。
 増税の時期の明示とその法律化は、財務省の仕組んだワナに政
権がはまったことを意味します。彼らとしては、どの政権になっ
ても、確実に増税が履行されるように法律化を企んだのです。当
時の民主党の野田政権と自民党の谷垣総裁という財務大臣経験者
がまんまとそのワナに嵌ったといえます。安部首相としても、浜
田教授としても、法律化までされている増税を無視はできなかっ
たものと思われます。本来であれば、2%の物価目標を掲げて、
「その達成までは増税しない」と宣言し、「金融緩和+減税」を
実施すべきだったのです。
 さて、シムズ理論には、わからないことが残っています。シム
ズ教授と「週刊ダイヤモンド」の記者のインタビューをもう少し
紹介することにします。
─────────────────────────────
──FTPL自体は1990年代からあったにもかかわらず、昨
 夏の米ジャクソンホール会議で急速に注目を集めました。
シムズ教授:日本においては、安倍晋三首相の存在が密接に関係
 しているでしょう。政治的な状況、ということです。ただ、私
 の論文に対する強い反響がその他の多くの場所であったことに
 は驚きました。
──ご自身の考えが政治的に利用されることをどう感じますか。
シムズ教授:政策が実行される際に、私の考えが政治家の目的に
 沿って使われるのであって、それぞれの政治家にとって役立つ
 かどうかは気にすることではありません。危険は常に、財政に
 よる刺激策が政治的なアピールに使われることにあります。私
 が主張しているのは、将来的な物価動向の行方がどうなるかを
 考えながら政策プランを策定することです。当局者は私が単純
 に支出を今すぐ増やせ、と言っているのだと誤解すべきではあ
 りません。
──ドナルド・トランプ米大統領は、減税やインフラ投資など財
 政拡大を掲げています。
シムズ教授:彼の政策では、何が実際に起きるのか不透明です。
 (FTPLにのっとったものではなく)ただ、財政赤字を膨ら
 ませる政策のように見えます。しかし、共和党内には、健全財
 政派の勢力もあり、トランプ氏の政策が全て実行されることに
 はならないでしょう。
──シムズ教授は、財政拡大はインフレターゲットを達成するま
 でのものであり、放漫財政を容認しているわけではないと言っ
 ているのですね。
シムズ教授:“適度”な財政悪化がインフレを起こすのに必要と
 言っているだけで、健全財政を放棄してもいいわけではありま
 せん。プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化も重
 要だとは思いますが、デフレ脱却にはインフレターゲットを実
 現するまでは、財政拡大が有効だと言いたいのです。税収が増
 加すれば、プライマリーバランスも改善します。
                  https://bit.ly/2KQ9dcx ─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/036]

≪画像および関連情報≫
 ●ヘリマネは「政府の債務整理」で将来への不安を減らす
  ───────────────────────────
   アベノミクスが行き詰まる中でMMTが注目されている。
  これはマクロ経済理論としては新しい話ではないが、ヘリコ
  プターマネーを公然と主張している点が論議を呼んでいる。
  これはそれほど突飛な話ではなく、不換紙幣は返済しなくて
  もいいという政府の特権を利用するものだ。
   もちろんヘリコプターからお金をばらまくというのは思考
  実験で、現実にはいろいろな実装手段が考えられる。これは
  金融政策ではなく政府支出をともなう財政政策なので、ダリ
  オの話を整理して、こういう非伝統的な財政政策を4つに分
  類してみた。
      クーポン配付        政府紙幣
        永久国債     国債の日銀引受
   このうちわかりやすいのは、今年10月の消費増税のとき
  予定されている「ポイント還元」のようなクーポンの配布だ
  ろう。これはヘリコプターから無差別にお金をばらまく政策
  に近い。今回の増税対策では約2兆円の財源が用意されてい
  るが、こういう一度限りのバラマキでは何も起こらない。い
  ちばん過激なのは、2003年にスティグリッツの提言した
  政府紙幣である。これは日銀券とは別の通貨を政府が発行す
  るものだが、国債との違いは通貨は返済の必要がないという
  ことだ。                ──池田信夫氏
                  https://bit.ly/2KOJBMY
  ───────────────────────────

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浜田宏一元イエール大学教授
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2019年11月29日

●「民間銀行の信用創造こそ規制せよ」(EJ第5139号)

 現代の日本人は「GDPの2倍を超える政府債務」をことのほ
か、深刻に考えるようになっています。これは、何度もいうよう
に、財務省のプロパガンダの成果です。これが増税を容認する考
え方につながるのです。財務省は長年にわたって、政府の債務の
大きさを日本人のアタマに刷り込んできたからです。
 しかし、太平洋戦争のさいに発行された戦時国債の額はいくら
かご存知ですか。GDPの約8倍、いまの金額に直すと4000
兆円にもなるのです。したがって、1000兆円を少し超える程
度の政府債務は大したことはないし、ケタが違います。
 そういう日本人にヘリコプターマネーの話をすると、「とんで
もない」とか、「大インフレになる」とかいって、まともに考え
てもらえない。そこでひとりの人物を紹介します。アデア・ター
ナー元英金融サービス機構(FSA)長官です。彼は近著『債務
さもなくば悪魔、ヘリコプターマネーは世界を救うか?』(日経
BP社)のなかで次のように述べています。
─────────────────────────────
 マネタリーファイナンスの技術的な論理は明快である。政府が
減税を実施するか、国民に直接現金を配るか、財政支出を増やす
一方、中央銀行がこの財源を新規通貨の発行で賄えば、マイナス
金利や国債発行による財政出動など、他の政策が効かない時でも
常に需要は刺激される。物価と成長率に対する影響は、刺激の規
模に依存する。この政策が必然的に過度なインフレを引き起こす
との主張は、単純に誤っている。また、将来の「インフレ税」や
銀行収益に対する暗黙の税が見込まれるので効果がないとの主張
は混乱した論理に基づいている。このため、ヘリコプターマネー
について唯一の反論、とはいえきわめて重要な反論は、政治的な
ものになる。どれだけ規模が小さくとも、いったんタブーを破っ
てマネタリーファイナンスを実施してしまうと、政治家が際限な
くマネタリーファイナンスを求め、インフレが冗進するのではな
いか、というものだ。だが、このリスクは、物価目標を掲げる独
立した中央銀行に、マネタリーファイナンスの規模の上限の決定
権を付与することで抑制することができる。
            ──アデア・ターナー著/高橋裕子訳
        『債務、さもなくば悪魔ヘリコプターマネーは
                     世界を救うか?』
─────────────────────────────
 アデア・ターナー氏は、危機をもたらすのは、民間金融機関の
信用創造であり、これをきちんと規制すべきであると主張してい
るのです。彼は2008年9月のリーマンショックの最大の原因
は民間金融機関が金融工学を使ってとんでもない信用創造を行っ
たからであると指摘しています。この考え方に立って、規制すべ
きは民間金融機関であって、政府や中央銀行には、もっと自由度
を与えるべきではないかと主張しているのです。
 これだけでは、少しわかりにくいと思うので、2017年1月
の日経記者によるアデア・ターナー氏との一問一答を参考までに
ご紹介します。きわめて貴重なやり取りであると思います。
─────────────────────────────
──近著『債務、さもなくば悪魔』でも、ヘリマネを提唱してい
 ますね。
ターナー氏:世界経済はかつてない債務の積み上がりに直面し、
 債務削減圧力と低すぎるインフレ率のために、伝統的な政策手
 段は行き詰まっている。
――日本の場合は
ターナー氏:2020年にプライマリーバランス(基礎的財政収
 支)を黒字にするのは、事実上不可能だ。黒字にしようと無理
 をして再びデフレ不況に陥れば、公的債務のGDP比は低下す
 るどころか上昇する。
――どうすればよいとお考えですか
ターナー氏:日銀が保有する国債の一部を、無利子の永久債に置
 き換えたらいい。ヘリマネと呼ばれる策だが、政府の利払いと
 元本償還が減り、そのぶん財政は自由度を回復する。
――財政規律が失われる心配がありませんか
ターナー氏:野放図なヘリマネが悪性のインフレを招いた歴史が
 あるのは確かだ。中央銀行による歯止めが必要なのはもちろん
 だ。どのくらいの金額の保有国債を無利子永久債に置き換える
 かは、日銀の金融政策決定会合が独立性を持って決める必要が
 ある。
――何か基準がないと心もとないのでは
ターナー氏:その際に歯止めとなるのはインフレ目標だ。経済が
 デフレを脱却し、2%の物価目標が実現されたなら、ヘリマネ
 政策は打ち止めにすべきだ。
――将来、金利が上昇した際に日銀の財務内容が悪化しないか
ターナー氏:無利子永久債は日銀の資産。それに対応する負債は
 民間銀行から預かっている準備預金だ。無利子永久債に相当す
 る金額の準備預金を無利子とすれば、日銀の財務内容は悪化せ
 ずにすむ。
――ヘリマネ政策を導入するタイミングは
ターナー氏:低インフレと低成長が長引けば、公的債務のGDP
 比は上昇するばかりだ。2%の物価目標を達成し、公的債務比
 率の分母となるGDPを拡大させるためにも、ヘリマネの採用
 時期は早ければ早い方がよい。https://s.nikkei.com/34v2gpf
─────────────────────────────
 お金を作り出すというと、中央銀行だけができることと考えま
すが、民間銀行も「信用創造」というメカニズムで、お金を創り
出しています。アデア・ターナー氏は、その民間の信用創造に、
もっと規制を厳しくすべしといっています。しかし、民間の銀行
もお金を創り出しているといってもピンとこないと思います。そ
れには「信用創造」というものをきちんと理解する必要がありま
す。これについては、来週のEJにおいて、詳しく説明します。
            ──[消費税増税を考える/037]

≪画像および関連情報≫
 ●マネタリーファイナンスはなぜ日本に必要か/ターナー氏
  ───────────────────────────
  [東京:10日]根強いデフレ圧力と公的債務問題に対して
  日本が取り得る最も有効な打開策は、中央銀行が財政赤字を
  穴埋めする「マネタリーファイナンス」を国民に向けて明示
  的に実行することだと、元英金融サービス機構(FSA)長
  官のアデア・ターナー氏は述べる。
   具体的には、政府が2019年10月の消費増税を延期し
  た上で2020年代半ばまで大幅な財政赤字を出し続ける一
  方、日銀は政府による国債発行とほぼ同じペースで国債購入
  を続け、かつその一部を無利子の永久債としてバランスシー
  トの資産に計上し、実質的に「消却」すべきだと説く。同氏
  の見解は以下の通り。
   日本政府と日銀に対する提案は3つある。第1に、政府は
  2019年10月に予定している(8%から10%への)消
  費税率引き上げを再延期し、高水準の財政赤字を計上し続け
  るべきだ。民間貯蓄超過を穴埋めするためには、相当規模の
  公的赤字が2020年代半ばまで必要なことを甘受すべきで
  ある。第2に、日銀は、政府による国債発行とほぼ同じペー
  スで国債を購入し続けるべきだ。そうすることで、日銀以外
  の主体が保有する国債が増えないようにする必要がある。
  第3に、日銀は、保有国債の一部を無利子永久国債としてバ
  ランスシートの資産に計上し、実質的に「消却」すべきだ。
                  https://bit.ly/2ONCS7e
  ───────────────────────────

アデア・ターナー氏.jpg
アデア・ターナー氏
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2019年12月02日

●「デフレなのになぜ緊縮策をとるか」(EJ第5140号)

 このところEJでは「財政ファイナンス」について書いてきて
います。意図的にではなく、アベノミクスによる金融緩和の結果
として、日銀は、2018年末時点で、478兆円の国債を保有
するにいたっており、政府の国債などの債務残高は1111兆円
と過去最高になっています。
 ここまで書いてきたように、財政ファイナンス的に考えると、
政府債務残高から日銀の保有する478兆円は差し引きしてよい
ということになります。しかし、一部の読者からの反応や何人か
に意見を聞いてみると、財政上非常に危険なことを書いていると
いう雰囲気であり、少なくとも本当にできることだとは思ってい
ないようです。財務省によるプロパガンダがここまで浸透してき
ていることを恐ろしく感じます。この問題に関しては、日本人の
頭が凝り固まっており、「そんな意見もあるのか」と、柔軟に考
えられなくなっているように感じます。
 ちなみに「プロパガンダ」といういい方は少しきついので「ポ
ジショントーク」というべきであるという意見もあります。
─────────────────────────────
 ポジショントークとは、自分の立場、立ち位置に由来して発言
を行うことである。転じて、自分の立場を利用して自分に有利な
状況になるように行う発言のことも指すようになっている。
                    ──ウィキペディア
─────────────────────────────
 財政ファイナンスに関する批判は、日銀が国債の買い入れを続
けると、ある日突然、とてつもなく高いインフレが日本経済を襲
い、それ以降はインフレのコントロールが利かなくなってしまう
というリスクが起きるというものです。
 突然、高率のインフレが襲ってくる。これに関して、森永卓郎
氏は、戦後の日本と米国の例を上げて説明しています。
─────────────────────────────
 たとえば、日中戦争から太平洋戦争に投入された戦費は、その
ほとんどが戦時国債によって調達された。当時の国民は、国から
国債を購入するよう強く推奨されたが、国民生活に余裕があるは
ずもなく、その大部分は日銀によって引き受けられた。日本政府
は、このときの国債を支払い不能にせず、戦後も償還を続けたが
戦争中から始まった高率のインフレで、償還金の実質的な価値は
ほとんどなくなってしまった。
 もう一つ、高率のインフレを招いた例として、挙げられること
が多いのが、1970年代のアメリカだ。ただし、このときのイ
ンフレは、1960年代後半からの財政拡張によってもたらされ
たインフレに石油ショックの影響が重なって生じたものだ。しか
も、突然インフレ率が高まったという事実はなく、インフレ率が
1960年代後半から徐々に高まっていった。
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 経済の歴史を調べてみると、1990年代以降は先進国では高
率のインフレは生じていないのです。リーマンショック後の英国
は、資金供給を5倍以上に引き上げていますが、インフレは生じ
ていません。そして何よりの証明は日本です。日銀が年間80兆
円以上の国債を買い続けていますが、物価は目標である2%に届
いていません。物価が上がりにくくなっているのです。
 これに関してエコノミストの水野和夫氏は、自著のなかで次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 需要超過経済から供給超過経済への転換と域内経済からグロー
バル経済への転換という大きな構造変化のなかで、そもそも物価
が上がりにくい経済が、生まれているのではないだろうか。特に
近年まで強烈な金融引き締めを続けてきた日本経済は、少々のこ
とでは、物価が上がらなくなっている。    ──水野和夫著
                    『株式会社の終焉』
           ディスカヴァー・トゥエンティンワン刊
─────────────────────────────
 重要なことは、よほどのことがない限り、物価が上がらない経
済になっているということです。つまり、インフレに強い経済が
出来上がっているということを意味します。これは、それだけ財
政を動かせる余裕が増えていることを意味しています。
 添付ファイルをご覧ください。これは、ドル建てで見た「一人
当りGDPの推移」をあらわしています。このグラフで注目すべ
きは、OECD(経済協力開発機構)の平均を超えているかどう
かです。日本は、1990年には、米国、フランスに次いで第3
位で、OECD平均を大きく上回っていたのですが、2002年
頃から、英国、ドイツにも抜かれ、OECD水準を大きく下回る
水準になっています。
 どうして、日本経済は伸びないのでしょうか。
 それは、ここまで述べてきているように、経済政策を誤ってい
るからです。一言でいうと、「デフレから脱却する」という名の
下に、日銀による大規模金融緩和を行いながら、「減税」をやら
なければいけないところで、正反対の「増税」をやっているから
です。つまり、安部政権は一貫して「緊縮政策」をとってきてい
るのです。それは現在もまだ続いています。
 5%だった消費税の税率を2回にわたって10%に倍増させる
一方で大企業については法人税を減税させています。しかしそれ
は従業員には還元されず、その結果、大企業の内部留保は426
兆円という空前の規模に達しています。安部政権の「庶民には増
税/大企業には減税」の悪政です。それでも日本国民は、安倍政
権に対して、多過ぎる支持を与えています。
 それに加えて、さらにマクロ経済スライドで年金を減額させ、
高齢者の医療費の自己負担を引き上げることを決めています。緊
縮、緊縮のオンパレードです。これでは、デフレから、いつまで
経っても脱却できません。──[消費税増税を考える/038]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ「446兆円」も貯め込むのか?
  ───────────────────────────
   日本企業の内部留保が6年連続で過去最高を更新したこと
  が明らかとなった。活況を呈する米国経済の追い風を受け、
  輸出産業を中心に好業績が続いているが、なぜ日本企業は利
  益を貯め込もうとしているのか、ライバル同士であるソニー
  とパナソニックの比較から探った。
   財務省が公表した法人企業統計によると、2017年度に
  おける日本企業(金融・保険業を除く)の内部留保は446
  兆4844億円と過去最高を記録した。昨年より40兆円以
  上も増えており、過去最高を更新するのは6年連続である。
   内部留保は貸借対照表(バランスシート)の利益剰余金の
  ことを指すケースが多いが、あくまでも会計上の概念であり
  実際に同額の現金が存在しているわけではない。しかしなが
  ら、内部留保がすべて資産に変わっているわけではなく、実
  際のところ半額程度の現金が何もしない状況で遊んでいる。
                  https://bit.ly/37SOwXk
  ───────────────────────────
 ●グラフ出典/森永卓郎著/角川新書K126の前掲書より

1人当りのGDPの推移(ドル建て).jpg
1人当りのGDPの推移(ドル建て)
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2019年12月03日

●「マネタリーベース正しく理解する」(EJ第5141号)

 11月29日のEJで、アデア・ターナー元英国金融サービス
機構長官の話を取り上げましたが、民間銀行の信用創造について
次のように述べています。
─────────────────────────────
 民間金融機関の信用創造を厳しく規制するとともに、政府と中
央銀行については、インフレ目標の厳守を前提に、ヘリコプター
マネーを実施すべきである。
     ──アデア・ターナー元英国金融サービス機構長長官
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 ここで、「民間金融機関の信用創造」とは何かについて、考え
る必要があります。お金を作っているのは、日銀だけではなく、
民間銀行でも作っているのです。それが「民間金融機関の信用創
造」です。
 それでは、銀行はどのようにして、お金を生み出しているので
しょうか。
 銀行というのは、顧客から預かっている預金の範囲内でお金を
貸し出しているのではないのです。預かっているお金よりもはる
かに多い量のお金を貸し出しています。
 誰かがA銀行に100万円預けたとします。A銀行は、法定準
備率分(1%とします)の1万円を中央銀行である日銀に預ける
と、残りの99万円を誰かに貸すことができます。一般に銀行か
らお金を借りるときは、その銀行の口座を開設するので、銀行は
融資のときは自行内の借り手の口座に99万円と書くだけです。
この時点において、最初に預けた100万円はそのままですから
A銀行の預金は199万円に増えたことになります。
 借り手はそのお金を使い、B銀行の誰かの口座に振り込んだと
すると、B銀行はその金額の法定準備率分を日銀に預け、残りを
誰かに貸すことができます。この時点で、最初の100万円の預
金も、B銀行で99万円の振込みを受け取った人の預金も存在し
ていますから、さらに98万100円が生まれ、合計300万円
近くになっています。このようにして借金とお金がグルグルと回
りながら増えて行き、仮に法定準備率が1%だとすると、100
万円の預金から、最大1億円のお金を作り出すことができるので
す。これを「信用創造」といい、それが現代のお金の発行の仕組
みになっています。なぜ、最大1億円であるかについて、次の式
をご覧ください。
─────────────────────────────
        100万円÷0・01=1億円
─────────────────────────────
 歴史を振り返ってみると、日本のバブルは民間銀行がこの信用
創造を膨らませ過ぎたことが原因であり、2008年9月のリー
マンショックが100年に一度の経済危機をもたらしたのも、民
間銀行が金融工学を使って、とんでもない信用創造を行ったから
であるといえます。
 アデア・ターナー元長官が、このような歴史的事実を踏まえて
規制すべきは民間金融機関であって、政府や中央銀行にはもっと
自由度を与えてもよいのではないかといっているのです。
 この「信用創造」に関連して、「マネタリーベース」という言
葉を理解する必要があります。
─────────────────────────────
 マネタリーベースとは、「日本銀行が供給する通貨」のことで
ある。具体的には市中に出回っているお金である「流通現金」の
ことである。流通現金とは、次の合計値である。
   流通現金=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+
        「日銀当座預金」
─────────────────────────────
 「日本銀行券発行高」とは、1万円札などの「お札」のことで
す。毎年どのくらい作られているのかというと、最新の2019
年度については、全部で30億枚、内訳は次の通りです。
─────────────────────────────
       1万円券 ・・・ 10・0億枚
       5千円券 ・・・  2・4億枚
       2千円券 ・・・    0億枚
       1千円券 ・・・ 17・6億枚
─────────────────────────────
 「貨幣流通高」とは10円玉などの貨幣(硬貨)の流通高を合
計したものです。なぜ、「発行高」ではなく、「流通高」になっ
ているのかというと、貨幣については、日銀保有分が除かれてい
るので、「流通高」と表記することになっています。
 「日銀当座預金」とは、都市銀行や地方銀行などの金融機関が
日銀に開設しておかなければならない口座のことです。いわゆる
「マイナス金利」は、この当座預金の一部にのみ、かかっていま
す。日銀当座預金は、詳しい説明は避けますが、次の3層になっ
ており、金利との関係は次の通りです。
─────────────────────────────
       政策金利残高 ・・・ −0・1%
      マクロ加算残高 ・・・  0・0%
         基礎残高 ・・・ +0・1%
─────────────────────────────
 この3層のうちの「政策金利残高」には、「−0・1%」」の
マイナス金利がかかっています。なぜ、マイナス金利をつけるの
かというと、ごく簡単にいうと、多くなり過ぎる日銀当座預金を
抑えるためです。
 マネタリーベースとは、上記の「日本銀行券発行高」と「貨幣
流通高」と「日銀当座預金」の合計をいいます。つまり、日本中
に流通しているお金の合計です。マネタリーベースは、通貨発行
益に深い関係があります。明日のEJで説明します。
            ──[消費税増税を考える/039]

≪画像および関連情報≫
 ●マネーサプライ(貨幣供給量)とは何か
  ───────────────────────────
   貨幣(マネー)は、商品を購入したり、企業が設備投資を
  する場合など、経済活動のすべてにおいて必要なものだ。日
  本経済を大きな旅客機、消費や設備投資などの経済活動をそ
  のエンジンとすると、貨幣は「燃料」に相当する。燃料が十
  分に供給されていれば、エンジンの出力も強くなって機体が
  上昇し、景気が良くなる。反対に燃料の供給が不十分だと、
  エンジンの出力が低下、機体が下降して、景気が悪化する。
   この貨幣の量を示すのが、マネーサプライ(貨幣供給量)
  であり、旅客機のコックピットに取り付けられた「燃料計」
  ということができる。
   貨幣の供給源は、中央銀行である日本銀行(日銀)だ。日
  銀は、銀行を中心とした金融機関に貨幣を供給、銀行はそれ
  を企業や個人に融資する。融資を受けた企業が機械を購入す
  るなどの設備投資を行えば、機械を製造した企業に売却代金
  としての貨幣が流れる。また、個人が銀行から融資を受けて
  自動車を購入した場合には、自動車メーカーに貨幣が渡り、
  従業員の給料や新たな設備投資となって、さらなる流れが発
  生する。日銀が供給した貨幣は、こうした様々なプロセスを
  経て、経済全体に行き渡っていくことになる。日銀が供給す
  る貨幣が、流通している貨幣の源になることから、これをマ
  ネタリーベース、あるいは、ハイパワードマネーと呼んでい
  る。              https://bit.ly/37VfP3h
  ───────────────────────────

銀行の信用創造のメカニズム.jpg
銀行の信用創造のメカニズム

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●「IMF専務理事消費税15%発言」(EJ第5142号)

 2019年11月25日のことです。国際通貨基金(IMF)
のゲオルギエワ専務理事は、日本の消費税率について「2030
年までに15%、50年までに20%へ増税する必要がある」と
の見解を発表しています。10月に10%への消費増税をしたば
かりであり、ネットなどでは「余計なお世話である」「内政干渉
そのもの」「あなたにいわれたくない」など、不満の声が、たく
さん上がっています。
 確かに10年先の話ではあるものの、「次は15%」といわれ
ると、それだけで、人々の消費意欲とか投資意欲が損なわれ、マ
イナスであるとの批判が渦巻いています。
 実は、この発言のバックに日本の財務省がいます。彼らは、早
くも国民に対して「次は15%」という増税の刷り込みをIMF
を利用して行ったのです。これについて、高橋洋一氏は『夕刊フ
ジ』の自身のコラムで、次のように書いています。
─────────────────────────────
 専務理事の来日は、IMF協定第4条の規定に基づき、加盟国
と毎年定例的に行っている経済に関する審査「4条協議」に合わ
せたもので、協議の終了と対日報告書の発表を受けて記者会見し
た。対日4条協議はIMF代表団が協議相手国を訪問し、経済・
金融情報を収集するとともに、その国の経済状況および政策につ
いて政府当局者等と協議する。筆者も、現役官僚のときに協議に
参加したこともある。日本側は財務省、内閣府等の課長補佐レベ
ルの実務担当者が中心であるが、IMFの副専務理事、理事や事
務局への出向者も多い財務省が日本側をリードし対応していた。
 対日報告書はIMFのものだが、日本政府、特に財務省の意向
が盛り込まれることもしばしばだ。IMFとしても、日本政府の
意に反することをあえて盛り込むのは政治リスクもあるので、日
本政府の抵抗のないものを採用しがちだ。財務省も、あえて外圧
を使ってでも、消費増税を打ち出すのがいいと考えているフシも
ある。その結果、対日報告書に消費増税が盛り込まれることとな
る。今回の専務理事の発言も、これまでと同じ背景だろう。
       ──【日本の解き方】 https://bit.ly/35XyOZf ─────────────────────────────
 IMF本部は、米ワシントンDCにありますが、そこにはIM
F理事室という部屋があり、日本の財務省から多くの職員が出向
して勤務しています。日本人が多いので、普段は英語ではなく日
本語で話しており、英語に不慣れな日本人駐在記者に重宝されて
います。日本のメディアが「ワシントン発」としてIMFのニュ
ースを流すときは、理事室がソースであることが多いのです。
 したがって、今回の専務理事の発言も財務省のレクを受けてお
り、財務省の意向に反する発言は出ないようになっています。し
かし、この発言を聞く日本人としては、「IMFまで消費税15
%が必要だといっている」として、重く受け止めてしまう傾向が
あります。財務省は、いわゆる「ガイアツ(外圧)」を利用して
増税の必要性をまんまとアッピールしたのです。
 財務省のやっていることは、犯罪的ですらあります。既に述べ
ているように、消費税を導入した頃から、法人税は7兆円減って
います。所得税も8兆円減っており、あわせて15兆円も減って
います。その間に消費税は13兆円増えたので、法人税と所得税
が減った分の83%を消費税がカバーしていることになります。
「大企業と金持ちには減税、庶民には増税」、まるで時代劇の悪
代官がやるような悪政です。
 財務省が、消費税を増税したがる理由は、一つはそれが「安定
財源」であって、経済が不況であろうが、なんであろうが、安定
的に取ることができるという点にあります。もう一つは、自分た
ちの輝かしい老後のために、大企業や金持と組んで、所得税や法
人税を減税するための「補填財源」として消費税を位置づけいて
いるフシがあります。
 藤井聡京都大学大学院教授は、「消費税は人頭税である」とし
て、次のように述べています。
─────────────────────────────
 よく言われる、「人頭税」っていう考え方がありますが、消費
税はそれに近いですよね。病気だろうが死にかけていようが、と
りあえず金を払えっていう話。一方で、累進性のある所得税は、
お金持ちからたくさん取りますし、法人税は「利益」にかかりま
すから、あまり儲かってない会社、例えば多くの中小企業は払わ
ないでいい。法人税や所得税を減税しておいて、消費税を増税す
るのは、格差を拡大することになりますね。(中略)
 消費増税という問題は、「成長」と「公平」という2つの問題
がある。消費増税をすると、成長もできなくなるし、格差も拡大
する。どっちの観点からもおかしいのが、消費税だ、ということ
です。──「別冊クライテリオン」増刊号/2018年12月号
           『消費増税を凍結せよ』/啓文社書房刊
─────────────────────────────
 確かに藤井教授のいわれる通りです。法人税は利益の出ていな
い赤字企業にはかからないし、所得税も所得の多寡に応じてかか
る税であるので、ある意味公平です。
 しかし消費税は、家計の状況が苦しい人や、所得の少ない人か
らも同率の税を徴収するので、情け容赦がない、一番残酷な税と
いえます。食料品に対する軽減税率といっても、主要国では0%
であるのに、日本では8%も徴収するのです。ちっとも「軽減」
税率ではなく、まさしく人頭税そのものです。そのため、萩生田
文科大臣ではありませんが、庶民は「身の丈に合わせて生きて行
くのに必要な食料品を買う」しかないのです。
 ヘリコプターマネーについても、財務省は御用学者を集めて理
論武装し、絶対認めない体制を敷いています。何しろ、ヘリマネ
政策を勧めるノーベル経済学賞受賞のスティグリッツコロンビア
大学教授のことを「スティグリッツ教授の理論は違っている」と
いうのですから、大変な自信です。
            ──[消費税増税を考える/040]

≪画像および関連情報≫
 ●「日本の消費税率さらに段階的に引き上げを」/IMF
  ───────────────────────────
   先月、IMF=国際通貨基金のトップに就任したゲオルギ
  エワ専務理事が来日し、高齢化によって増え続ける社会保障
  費を賄うため、日本では消費税率をさらに段階的に引き上げ
  る必要があるという認識を示しました。ゲオルギエワ専務理
  事は、都内で開いた記者会見で日本の財政について問われた
  のに対し「IMFとしては、日本は消費税により頼れる余地
  があると考えている」と述べました。
   会見に合わせて公表されたIMFの声明では、高齢化によ
  って増え続ける社会保障費の負担を賄うためには、消費税率
  を2030年までに15%に、2050年までに20%に、
  段階的に引き上げる必要があるとしています。
   またゲオルギエワ専務理事は、日本経済の見通しについて
  実質のGDPでことしは0・8%、来年は0・5%の伸びを
  見込んでいるとしたうえで、「日本経済の回復は世界的な景
  気減速と不確実性、それに日本自身の高齢化と人口減少の動
  きによって試されることになる」と述べました。
   そのうえでこれまで政府や日銀が進めてきた金融政策や財
  政政策、それに構造改革を改善する必要があると指摘しまし
  た。具体的には短期的な経済成長を維持するための財政政策
  や働く人たちの生産性を上げる労働市場の改革などの構造改
  革を再び活発に行うことが不可欠だなどとしています。
                  https://bit.ly/34IgN0x
  ───────────────────────────

ゲオルギエワIMF専務理事.jpg
  ゲオルギエワIMF専務理事
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2019年12月04日

●「IMF専務理事消費税15%発言」(EJ第5142号)

 2019年11月25日のことです。国際通貨基金(IMF)
のゲオルギエワ専務理事は、日本の消費税率について「2030
年までに15%、50年までに20%へ増税する必要がある」と
の見解を発表しています。10月に10%への消費増税をしたば
かりであり、ネットなどでは「余計なお世話である」「内政干渉
そのもの」「あなたにいわれたくない」など、不満の声が、たく
さん上がっています。
 確かに10年先の話ではあるものの、「次は15%」といわれ
ると、それだけで、人々の消費意欲とか投資意欲が損なわれ、マ
イナスであるとの批判が渦巻いています。
 実は、この発言のバックに日本の財務省がいます。彼らは、早
くも国民に対して「次は15%」という増税の刷り込みをIMF
を利用して行ったのです。これについて、高橋洋一氏は『夕刊フ
ジ』の自身のコラムで、次のように書いています。
─────────────────────────────
 専務理事の来日は、IMF協定第4条の規定に基づき、加盟国
と毎年定例的に行っている経済に関する審査「4条協議」に合わ
せたもので、協議の終了と対日報告書の発表を受けて記者会見し
た。対日4条協議はIMF代表団が協議相手国を訪問し、経済・
金融情報を収集するとともに、その国の経済状況および政策につ
いて政府当局者等と協議する。筆者も、現役官僚のときに協議に
参加したこともある。日本側は財務省、内閣府等の課長補佐レベ
ルの実務担当者が中心であるが、IMFの副専務理事、理事や事
務局への出向者も多い財務省が日本側をリードし対応していた。
 対日報告書はIMFのものだが、日本政府、特に財務省の意向
が盛り込まれることもしばしばだ。IMFとしても、日本政府の
意に反することをあえて盛り込むのは政治リスクもあるので、日
本政府の抵抗のないものを採用しがちだ。財務省も、あえて外圧
を使ってでも、消費増税を打ち出すのがいいと考えているフシも
ある。その結果、対日報告書に消費増税が盛り込まれることとな
る。今回の専務理事の発言も、これまでと同じ背景だろう。
       ──【日本の解き方】 https://bit.ly/35XyOZf
─────────────────────────────
 IMF本部は、米ワシントンDCにありますが、そこにはIM
F理事室という部屋があり、日本の財務省から多くの職員が出向
して勤務しています。日本人が多いので、普段は英語ではなく日
本語で話しており、英語に不慣れな日本人駐在記者に重宝されて
います。日本のメディアが「ワシントン発」としてIMFのニュ
ースを流すときは、理事室がソースであることが多いのです。
 したがって、今回の専務理事の発言も財務省のレクを受けてお
り、財務省の意向に反する発言は出ないようになっています。し
かし、この発言を聞く日本人としては、「IMFまで消費税15
%が必要だといっている」として、重く受け止めてしまう傾向が
あります。財務省は、いわゆる「ガイアツ(外圧)」を利用して
増税の必要性をまんまとアッピールしたのです。
 財務省のやっていることは、犯罪的ですらあります。既に述べ
ているように、消費税を導入した頃から、法人税は7兆円減って
います。所得税も8兆円減っており、あわせて15兆円も減って
います。その間に消費税は13兆円増えたので、法人税と所得税
が減った分の83%を消費税がカバーしていることになります。
「大企業と金持ちには減税、庶民には増税」、まるで時代劇の悪
代官がやるような悪政です。
 財務省が、消費税を増税したがる理由は、一つはそれが「安定
財源」であって、経済が不況であろうが、なんであろうが、安定
的に取ることができるという点にあります。もう一つは、自分た
ちの輝かしい老後のために、大企業や金持と組んで、所得税や法
人税を減税するための「補填財源」として消費税を位置づけいて
いるフシがあります。
 藤井聡京都大学大学院教授は、「消費税は人頭税である」とし
て、次のように述べています。
─────────────────────────────
 よく言われる、「人頭税」っていう考え方がありますが、消費
税はそれに近いですよね。病気だろうが死にかけていようが、と
りあえず金を払えっていう話。一方で、累進性のある所得税は、
お金持ちからたくさん取りますし、法人税は「利益」にかかりま
すから、あまり儲かってない会社、例えば多くの中小企業は払わ
ないでいい。法人税や所得税を減税しておいて、消費税を増税す
るのは、格差を拡大することになりますね。(中略)
 消費増税という問題は、「成長」と「公平」という2つの問題
がある。消費増税をすると、成長もできなくなるし、格差も拡大
する。どっちの観点からもおかしいのが、消費税だ、ということ
です。──「別冊クライテリオン」増刊号/2018年12月号
           『消費増税を凍結せよ』/啓文社書房刊
─────────────────────────────
 確かに藤井教授のいわれる通りです。法人税は利益の出ていな
い赤字企業にはかからないし、所得税も所得の多寡に応じてかか
る税であるので、ある意味公平です。
 しかし消費税は、家計の状況が苦しい人や、所得の少ない人か
らも同率の税を徴収するので、情け容赦がない、一番残酷な税と
いえます。食料品に対する軽減税率といっても、主要国では0%
であるのに、日本では8%も徴収するのです。ちっとも「軽減」
税率ではなく、まさしく人頭税そのものです。そのため、萩生田
文科大臣ではありませんが、庶民は「身の丈に合わせて生きて行
くのに必要な食料品を買う」しかないのです。
 ヘリコプターマネーについても、財務省は御用学者を集めて理
論武装し、絶対認めない体制を敷いています。何しろ、ヘリマネ
政策を勧めるノーベル経済学賞受賞のスティグリッツコロンビア
大学教授のことを「スティグリッツ教授の理論は違っている」と
いうのですから、大変な自信です。
            ──[消費税増税を考える/040]

≪画像および関連情報≫
 ●「日本の消費税率さらに段階的に引き上げを」/IMF
  ───────────────────────────
   先月、IMF=国際通貨基金のトップに就任したゲオルギ
  エワ専務理事が来日し、高齢化によって増え続ける社会保障
  費を賄うため、日本では消費税率をさらに段階的に引き上げ
  る必要があるという認識を示しました。ゲオルギエワ専務理
  事は、都内で開いた記者会見で日本の財政について問われた
  のに対し「IMFとしては、日本は消費税により頼れる余地
  があると考えている」と述べました。
   会見に合わせて公表されたIMFの声明では、高齢化によ
  って増え続ける社会保障費の負担を賄うためには、消費税率
  を2030年までに15%に、2050年までに20%に、
  段階的に引き上げる必要があるとしています。
   またゲオルギエワ専務理事は、日本経済の見通しについて
  実質のGDPでことしは0・8%、来年は0・5%の伸びを
  見込んでいるとしたうえで、「日本経済の回復は世界的な景
  気減速と不確実性、それに日本自身の高齢化と人口減少の動
  きによって試されることになる」と述べました。
   そのうえでこれまで政府や日銀が進めてきた金融政策や財
  政政策、それに構造改革を改善する必要があると指摘しまし
  た。具体的には短期的な経済成長を維持するための財政政策
  や働く人たちの生産性を上げる労働市場の改革などの構造改
  革を再び活発に行うことが不可欠だなどとしています。
                  https://bit.ly/34IgN0x
  ───────────────────────────

ゲオルギエワIMF専務理事.jpg
ゲオルギエワIMF専務理事
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2019年12月05日

●「日本の政府債務は危機的ではない」(EJ第5143号)

 ヘリコプターマネー政策に伴う「通貨発行益」に関する経済学
論争の難しい話は来週に回して、もう少し財務省について書くこ
とにします。
 財務省は、「日本の財政が破綻状態にある」と主張し続けてい
ます。財務省はそれを国民に伝えるために次のタイトルのパンフ
レットを作成しています。
─────────────────────────────
     「これからの日本のために財政を考える」
          https://www.mof.go.jp/zaisei/
─────────────────────────────
 このパンフレットに関しては、質問も受け付けてくれ、10人
以上のグループであれば、財務省の官僚がわざわざ説明に来てく
れるほどの力の入れようです。
 かなり量があるので、森永卓郎氏のまとめを引用して、考えて
いくことにします。
─────────────────────────────
 1.日本は高齢化に伴って社会保障費が急増しており、それを
  賄うための十分な課税をしてこなかったため、財政赤字が膨
  れ上がって主要先進国と比較し、最悪の状況になっている。
 2.今後、高齢化はさらに進展し、それに伴って医療や介護の
  費用が急増することから、持続可能な社会保障制度の確立が
  急務となっている。
 3.日本の国民負担率は諸外国と比べて低いから、社会保障の
  充実・安定化と財政健全化を同時に達成するために、安定財
  源である消費税率を引き上げていかざるを得ない。
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 「1」について検証します。
─────────────────────────────
 図表1
 ◎財務書類の概要(資産及び負債の状況)/2016年1月
          資産・負債差額  資産額  負債額
  国の財務書類   ▲492.0 679.8 1171.8
  (一般会計・特別会計)           単位=兆円
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「図表1」は、財務省が公表している「国の財務書類」の一部
です。これによると、日本政府(一般会計+特別会計)が抱える
負債は1172兆円になっています。GDPの2倍以上であり、
国民がよく知る数字です。
 しかし、その左の「資産額」を見ると、日本政府は680兆円
の資産を有しています。負債から資産は差し引いてもいいので、
「資産・負債差額」は492兆円ということになります。これを
「純債務」といいます。これが日本の財政の本当の数字です。こ
れによると、GDPの2倍以上といわれる借金は、GDPと同じ
程度しかないからです。この程度の借金であれば、別にどうとい
うことはないのです。
─────────────────────────────
 図表2
 ◎連結貸借対照表/2016年3月
 (資産・負債差額の部) 前会計年度   本会計年度
    資産・負債差額   451017615   439402904
                       単位=百万円
─────────────────────────────
 「図表2」は、2016年3月に財務省が発表した「連結財務
書類」です。「連結」というのは、日本政府(一般会計+特別会
計)に加えて、各省庁から監督を受けるとともに、財政支援を受
けている特殊法人、認可法人、独立行政法人、国立大学法人など
を含めた、より広い意味の政府全体の財務諸表であり、森永卓郎
氏は、日本の財政はこれで見るのが正しいといっています。
 これによると、2014年末の純債務は439兆円、その前年
の2013年度末の純債務は、451兆円だったので、1年間で
12兆円も減少していることがわかります。日本の借金は、毎年
増えているどころか、毎年改善を続けていることがわかります。
 このように、財務省が公表している財務書類の数字を見る限り
日本政府の借金は、資産を差し引きしない債務であり、資産を引
けば、借金は半減することがわかります。これに関して、財務省
がいう政府の負債に関して一家言を持つ高橋洋一嘉悦大学教授は
自身のコラムにおいて次のように述べています。
─────────────────────────────
 IMF(国際通貨基金)などの国際機関では、国の負債の大き
さを見る時に、資産を引いたネット債務でみるのが普通だ。資産
を無視して負債だけを見るのは適切でない。
 しかも、日本の場合、資産の中身が問題だ。現預金18兆円、
有価証券98兆円、貸付金143兆円、運用寄託金111兆円、
出資金59兆円の計428兆円が金融資産だ。運用寄託金は年金
資産だからまだいいとしても、有価証券は外為資産、貸付金と出
資金はいわゆる特殊法人等への資金提供だ。変動相場制の国では
これほど大きな外為資金を持たない。また、いわゆる特殊法人等
は官僚の天下り先として問題になっており、先進国でこれほど広
範な政府の子会社を持っている国もない。
                  https://bit.ly/34F6jz8
─────────────────────────────
 高橋洋一氏によると、各国政府の債務を比較するには、純債務
でやることになっているそうです。しかし、日本の財務省は債務
から資産を引いていないのです。これでは、日本の債務が突出し
てしまうのは当然です。普通の国では、財政危機であれば、売れ
る資産処分を先にするのが常識ですが、この資産処分を回避して
増税をやろうとしています。これは、どう考えてもおかしいなこ
とです。        ──[消費税増税を考える/041]

≪画像および関連情報≫
 ●「日本の借金1108兆円」NHKの報道が国民を惑わす
  ───────────────────────────
   たまたまNHKを見ていて非常に懸念を抱いたニュースが
  あった。「来年度予算案1100兆円の借金財政の先行き一
  段と不透明に」という記事で、インターネットでも読める。
   簡単に要旨を書くと、政府予算案の規模が大きく、歳出が
  増加する一方で歳入では国債の発行額が3分の1を占めるの
  が問題と指摘する。そして、来年度末には国と地方を合わせ
  た「借金」が1108兆円に上り、「先進国中最悪」になる
  ことに警鐘を鳴らすものである。報道は、このような財政状
  況が若い世代に将来不安をもたらしていると結んでいる。筆
  者から見れば、このようなNHKの報道こそが、財政状況へ
  のゆがんだ認識を広めることで、若い世代に不安を与えてい
  ると思う。
   まず、どこが、ゆがんでいるのだろうか。それは、政府の
  「1108兆円の借金」という見方である。単純に、日本の
  財政は借金=負債だけが存在するのではなく、資産も存在し
  ている。政府の持つ資産と負債を比較して、その上で事実上
  の「借金」を特定すべきである。負債の方が資産を上回って
  いれば、それを「純債務」と名付けよう。ただし、この純債
  務の大小だけがわかっても財政状況はまだ判断できない。だ
  が、ここまでの議論を、「政府のバランスシート問題」と名
  付けておく。          https://bit.ly/2LhhqXi
  ───────────────────────────


財務省のウソを暴く森永卓郎氏.jpg
財務省のウソを暴く森永卓郎氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月06日

●「平然と理屈をこね嘘をつく財務省」(EJ第5144号)

 企業が財政危機状態に陥ったとき、まずやるべきことは、企業
の持つ資産を売却し、少しでも負債を軽くすることです。これは
政府の場合も同じであり、政府の資産を売却することが先決です
が、日本政府は一向にそうしていません。11月15日のEJ掲
載の「各国政府の資産と負債のバランスシート」をもう一度見て
いただくとわかるように、日本はグラフからはみ出すほど、負債
と資産は多いのに、他国政府のように資産を売って負債を減らそ
うとしないのです。         https://bit.ly/33P1Ng5
 これについて財務省に説明を求めると、財務省は、堂々と、次
のように反論しています。
─────────────────────────────
 日本の政府は借金が多い一方で、資産もあり、資産を売れば借
金の返済は容易だという説もありますが、これについてどのよう
に考えていますか?
 ご質問にお答えいたします。
 国においては、企業会計の考え方を活用して貸借対照表(バラ
ンスシート)を作成しており、平成21年度末時点では1019
兆円の負債に対し、647兆円の資産が存在しています。
 しかしながらこれらの資産の大半は、性質上、売却して赤字国
債・建設国債の返済に充てられるものでなく、政府が保有する資
産を売却すれば借金の返済は容易であるというのは誤りです。
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 財務省は、上記に加えて、これに該当する資産として次の3つ
を上げています。
─────────────────────────────
 1.年金積立金の運用委託金(121兆円)
 2.道路・堤防などの公共用財産
   ・国道63兆円/堤防67兆円
 3.外貨証券(82兆円)財政融資資金貸付金(139兆円)
 4.出資金(58兆円)
─────────────────────────────
 財務省の回答は、国民を素人と下に見て、上から目線で対応し
てします。「素人だから、わかりっこない」と考えて、バカにし
ているのです。役人の答弁といえば、「桜を見る会」の野党の追
及でたびたびテレビに登場する内閣府の総務課長なる人物の、の
らりくらりと絶対に相手に尻尾を掴ませない答弁がさいたるもの
です。これを「霞が関文学」ともいうそうです。
 しかし、「1」の年金積立金の運用委託金の121兆円。これ
誰でも取り崩せないと一瞬思いますね。しかし、取り崩せるので
す。財務省の言い分はこうです。
─────────────────────────────
 年金積立金の運用寄託金(121兆円)は、将来の年金給付の
ために積み立てられているので、赤字国債・建設国債の返済のた
めに取り崩すことは困難です。  ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 この財務省の回答は正しくありません。国民には、そこまで頭
が回るまいとたかをくくっているのでしょう。日本の公的年金制
度は現在「賦課方式」です。しかし、もともとは「積立金方式」
だったのを2004年の年金制度改正で、賦課方式に変更したの
です。賦課方式というのは、国民全体が納めた保険料をその時点
の高齢者で山分けする方式です。したがって、基本的には積立金
は発生しません。つまり、この121兆円の積立金は、2004
年からは無用の存在になっているのです。
 この賦課方式──出生率の低下により、保険料を支払う現役世
代は減少し、逆に年金を受け取る高齢者は増えて行きます。当然
年金給付水準は必然的に落ちて行くことになります。そのため年
金給付水準を切り下げるために「マクロ経済スライド」という仕
組みが導入されたのです。自公政権の年金制度改悪です。
 したがって、121兆円の年金積立金の運用委託金というのは
積立金方式のときに積み立てたものであり、無用の存在ですが、
全額取り崩すにはリスクがあります。年金財政がある時期に赤字
になることもあるからです。しかし、121兆円もの資金を用意
しておく必要はなく、せいぜいその10の1も有していれば十分
です。だから、法律さえ変えれば、すぐにでも100兆円使える
ではありませんか。それでは、この121兆円は政府のバランス
シートでは、どう会計処理されているのでしょうか。森永卓郎氏
は、次のように説明しています。
─────────────────────────────
 ちなみに、連結の貸借対照表には、公的年金の寄託金という資
産項目は計上されていない。資産としてはカウントされているが
その他の有価証券や現預金と混ざって表示されているのだ。
 一方、公的年金の寄託金という項目がない代わりに、負債の部
に「公的年金預り金」が計上されている。なぜ預り金が「負債」
なのかと思われる方も多いだろう。政府は、この公的年金預り金
について、次のように説明している。「将来の年金給付財源に充
てるために保有していると認められる資産から未払金相当額を控
除した金額を『公的年金預り金』の科目で負債計上する」。
 つまりこういうことだ。いま公的年金が抱えている100兆円
を超える積立金の資産は、そのまま政府の連結貸借対照表の資産
として計上されている。年金積立金は、政府のものという扱いに
なっているのだ。しかし、そのままだと、国のバランスシートが
よくなりすぎてしまうと財務省は考えた。そこで、公的年金が抱
えている資産額から、未払い金を差し引いた額を「公的年金預り
金」として、負債の部に計上することによって、政府の純資産か
ら年金の積立金を事実上外しているのだ。
                ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/042]

≪画像および関連情報≫
 ●年金が食い潰されたのは?/江田けんじ氏
  ───────────────────────────
  「百年安心の年金」。
   この言葉は元々、04年当時、自公政権が言い出したこと
  です。そして、今回の「2000万円不足問題」が起こって
  国会の場で安倍首相がそれを追認しました。ただ、日経新聞
  が当時「百年先まで約束すると言えば、世界中の鬼という鬼
  が笑い狂って悶絶死することだろう」と痛罵したとおり、多
  くの国民は「百年安心」とは思っていません。
   そう、「百年安心の年金」も、3年前の「年金カット法強
  行」も、年金という「制度」は守るが、老後の「生活」は守
  れないということです。特に、16年暮れに強行採決された
  「年金カット法」は、物価が上がっても現役世代の賃金が下
  がれば、年金の支給額を減額。このルールに過去10年間の
  データを当てはめると、国民年金で年間4万円(月3300
  円)、厚生年金で年間14万円(月11800円)が減額と
  なります。これでは老後は苦しくなるばかりでしょう。
   かと言って、このお年寄りの減額(カット)で年金制度が
  将来安定するかと言うと、この法律で強化された「マクロ経
  済スライド」で、現役(若者)世代の基礎年金も、将来3割
  カットされる。国民の間に、お年寄りであれ若者であれ、老
  後をどう暮らしていったら良いか心配だという声が多いのも
  当然なのです。         https://bit.ly/386ioQ8
  ───────────────────────────

疑問に答える財務省.jpg
疑問に答える財務省
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする