2019年08月21日

●「ファーウェイとファイブ・アイズ」(EJ第5072号)

 2018年12月1日、カナダのバンクーバー空港において、
孟晩舟ファーウェイ副会長兼CFOは逮捕されましたが、そのさ
い、カナダ警察は、副会長のPCとスマホを押収し、それらの暗
証番号を強制的に聞き出しています。これらには、ファーウェイ
の最高機密情報が入っていたことは確実で、それがカナダ経由で
米国当局に渡っていると考えられます。
 これらを分析すると、ファーウェイにおいて、孟副会長が何を
していたのかの情報は、かなり詳しくカナダと米国は、把握して
いることになります。同時にそれらの情報は、その他の「ファイ
ブ・アイズ」の加盟国である、オーストラリア、英国、ニュージ
ーランドにも伝わっていることになります。
 2018年7月17日、カナダのトルドー首相は、ファイブ・
アイズの諜報機関トップをカナダ東部のノバスコシア州のリゾー
ト地に招いて密談をしたことは7月31日のEJ第5058号で
述べましたが、そのとき既に「ファーウェイ排除キャンペーン」
を展開することを決めています。なお、この活動には、ファイブ
・アイズのメンバーではないドイツや日本など、米国の同盟国に
も参加を呼び掛けることを決めています。孟晩舟副会長が逮捕さ
れる5ヶ月も前の話です。
 その後のファイブ・アイズのファーウェイをめぐる出来事を近
藤大介氏の本から引用します。
─────────────────────────────
◎2018年
  8月13日:トランプ大統領が国防権限法に署名
    23日:オーストラリア政府がファーウェイとZTEと
        の取引を禁止
    28日:オーストラリアのゴールドコーストで「フィブ
   〜29日:アイズ」の安全保障担当閣僚会議開催
 11月27日:ニュージーランド政府がファーウェイとの取引
        を禁止
 12月 1日:カナダ当局が、ファーウェイの孟晩舟副会長を
        逮捕
     5日:アメリカ国務省、商務省幹部が香港入りして、
    〜7日:ファーウェイの取引を調査
◎2019年
  1月28日:アメリカ司法省が、孟副会長とファーウェイを
        起訴
  5月16日:アメリカ商務省が、ファーウェイを「エンティ
        ティ・リスト」に追加
                      ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 一方、ファーウェイは、ファイブ・アイズの切り崩しを行って
います。狙いは、EU離脱で揺れる英国の教育機関に対する露骨
な働きかけです。英国のオックスフォード大学は、ファーウェイ
から750万ドルの寄付申し入れがあって、大学理事会はいった
ん受け入れ、その後「保留」にしています。
 このようなファーウェイからの寄付は、オックスフォード大学
だけでなく、スレイ大学、ケンブリッジ大学にもそれぞれ100
万ドルの寄付を行っていのす。標的は、すべて次世代通信技術の
5G開発で世界の先端を行くラボに限定されています。
 問題はカナダです。孟晩舟副会長を米国からの要請で逮捕した
からです。孟晩舟氏の逮捕後の2018年12月13日には、駐
カナダ中国大使が、カナダの有力紙「グローバル・ポスト」に寄
稿し、ファーウェイに成り代わって、次のようにカナダ政府を批
判しています。
─────────────────────────────
 「ファイブ・アイズ連盟」は、「ファーウェイは国家の安全を
脅かす」と噛みついているが、ただの一つたりとも、その根拠を
示していない。ただ社会に恐怖心を散布し、国民を誤った方向に
導こうとしているのだ。
 もしもファーウェイの電信設備に安全上のリスクが存在するな
ら、西側国家の電信設備にも、同様の安全上のリスクが存在する
ことになる。使用している科学技術は、まったく同様のものだか
らだ。それは、プリズム事件(スノーデン氏やウィキリークスが
暴露した、アメリカ政府による全世界の違法情報収集活動)を見
れば明らかだ。
 彼らはいまだに陳腐な冷戦思考の中で中国を捉え、中国共産党
が指導する社会主義の中国は終始、「異質」だと見ているのだ。
彼らの懸念は、中国の発展があまりに早く、しかもそれは経済分
野にとどまらず、科学技術分野でも西側国家を超えつつあるため
「国家の安全」のレッテルを被せて中国企業を叩き、中国の発展
を妨げようとしているのだ。──廬沙野カナダ駐カナダ中国大使
                      ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 ファーウェイは中国の民営企業です。その民営企業の副会長の
逮捕に、駐カナダ中国大使が、コメントとして抗議声明を出すの
は多少はわかるとしても、わざわざこういう内容のレポートまで
書いて、メディアに寄稿するなど、あり得ないことです。それは
「ファーウェイ=中国」と考えている証拠です。
 「プリズム事件」の「プリズム」というのは、米国国家安全保
障局(NSA)が、2007年から運営する極秘の監視プログラ
ムのことです。これが、「プリズム事件」として知られるように
なったのは、プリズムによって、日本、ブラジル、フランス、ド
イツなどの首脳35人が、電話盗聴の対象になっていたと、エド
ワード・スノーデン氏が暴露したからです。
 しかし、ファーウェイは、少なくとも、ファイブ・アイズの取
り込みには失敗し、かえって警戒心を強めてしまったようです。
              ──[中国経済の真実/071]

≪画像および関連情報≫
 ●世界に衝撃を与えた米国の盗聴プログラム「プリズム」
  ───────────────────────────
   スノーデンが選んだフリージャーナリスト、グレン・グリ
  ーンウォルドからはなんのアクションもなかった。そこで、
  スノーデンはドキュメンタリー映像作家、ローラ・ポイトラ
  スに連絡をとることにした。ポイトラスは、イラク戦争の最
  中にイラクに飛び、イラク人の生活のドキュメンタリー映画
  を制作したりしている。さらに、NSAの不当な監視に関す
  るドキュメンタリー映画も作り、ポイトラス自身がNSAに
  監視されていた。空港を利用するときは、まず間違いなく拘
  束され、手帳やカメラ、パソコンは押収され、内容を分析し
  た上で返却されるという状態になっていた。
   そのため、ポイトラスはPGPはもちろん、暗号化通信ソ
  フトOTRなどもすでに使っていた。ポイトラスには連絡が
  とりやすかった。それでも、このようなメールを送るときは
  オフィスはもちろん自宅でも絶対にやらなかった。一度、N
  SAに捕捉されたら、パソコン内にある通信ユニットのシリ
  アル番号であるMACアドレスで簡単に追跡されてしまうの
  で、安物の新しいパソコンを買い、ショッピングセンターな
  どのWi-Fi を使ってメールを送った。ポイトラスは、グリー
  ンウォルドと面識があるばかりでなく、同志といってもいい
  ほどの間柄だったのでポイトラスに「情報提供をする。グリ
  ーンウォルドと協力して公開してほしい」という暗号化メー
  ルを送った。          https://bit.ly/2KXk17Z
  ───────────────────────────

ファーウェイ深せん本社.jpg
ファーウェイ深せん本社

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2019年08月22日

●「EUからの華為技術排除は可能か」(EJ第5073号)

 米中貿易戦争が一段と激しさを増してきています。米商務省は
8月19日、ファーウェイに対する禁輸強化を一段と強める措置
を発表しています。何をやったのか整理します。
 米商務省は、5月に、ファーウェイ本体と関連会社68社をE
L(禁輸リスト)に加えています。今回やったのは、新たに中国
本土の研究所やヨーロッパの販売会社46社を制裁対象に指定し
たことです。これは、それらの会社を経由して米国製品が渡るこ
とを完全に防ぐためです。
 しかし、米商務省は、ファーウェイが既存のネットワークや携
帯電話の安全性を保つため、保守に必要な部材やソフトウェアに
限っては輸出を許可してきましたが、これについては11月18
日まで延長すると発表しています。おそらくそうしないと、米国
内の企業に大きな影響を与えるからです。
 このような米国によるファーウェイへの締め付け強化に対して
ファーウェイが一番頭を悩ましているのは、OSを含むアプリの
提供です。一番深刻なのは、スマホOSの「アンドロイド」や、
グーグルの「アプリストア」が使えなくなることです。アンドロ
イドは、世界のスマホ向けOSで、70%以上の圧倒的なシェア
を占めているからです。
 ファーウェイは、それに備えて「鴻蒙/ハーモニー」という独
自OSを既に開発していますが、これに切り換えると、中国国内
はともかくとして、利用者離れは避けられなくなります。そのた
め、ファーウェイは、あくまでアンドロイドの利用を優先化させ
るといっています。
 問題はヨーロッパ(EU)がどうなるかです。ファーウェイの
息の根を止めるには、EUからファーウェイを駆逐する必要があ
ると考えています。これについては、2019年2月以降、ポン
ペオ国務長官とペンス副大統領は、EU市場からファーウェイを
排除すべく、ヨーロッパ各地に乗り込んで、ファーウェイを使わ
ないよう説得工作を行っています。これについて、情勢を把握し
ておく必要があります。
 ポンペオ国務長官は、2019年2月11日から15日まで、
ハンガリー、スロヴァキア、ポーランドを歴訪しています。とく
に注目されるのは、2月11日のハンガリーでのシーヤールトー
・ペーテル外務貿易相との会談であり、その後の記者会見での両
者のコメントです。
─────────────────────────────
ポンベオ長官:アメリカが長年、東欧諸国から遠ざかっているう
 ちに、価値観を共有しない人たち(中国)が、その隙間を埋め
 てしまった。ファーウェイの通信ネットワークが及ぼすリスク
 に対する知見を、今後われわれは共有していかねばならない。
 そうでないと、アメリカが(ヨーロッパの)各国と協力しにく
 くなる」
シーヤールトー外相:わが国が中国といかに協力しょうと、それ
 がアメリカとのパートナシップを危うくすることはない。中国
 について誤ったことを行うのはよくない。それに、ファーウェ
 イのヨーロッパでの大口取引先は、ハンガリーではなくドイツ
 とイギリスだ。              ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 ハンガリーは完全に中国寄りです。それは、中欧と東欧諸国の
共通スタンスです。中欧と東欧諸国16ヶ国は、「一帯一路」の
重要な拠点になっており、「16+1」の会議(中国+中欧・東
欧首脳会議)を2012年から開いています。今年の4月からは
ギリシャもそれに加わって、「17+1」になっています。
 これとある意味において対照的であるのはポーランドです。2
月13日に、ペンス副大統領とポーランドのドゥダ大統領との会
談後の共同記者会見では、ペンス副大統領は、1月8日にポーラ
ンドが、ファーウェイ現地社員ら2人を逮捕したことを賞賛して
次のように述べています。
─────────────────────────────
 (ファーウェイ社員2人の)逮捕は素晴らしい行動だった。
 アメリカは、ポーランドの軍事パートナーであることを嬉し
 く思う。             ──ペンス米副大統領
                ──近藤大介著の前掲書より
─────────────────────────────
 ポーランドは、ロシアの脅威に直面している国であり、米軍基
地の誘致を熱心に求めているほどです。そういう意味において、
トランプ政権にとってポーランドは、ヨーロッパの模範国家であ
り、これを受けて、米国から新型ロケット砲システムの供与が行
われています。これに対して、最も中国寄りなのはポルトガルで
す。ポルトガルといえば、マカオを植民地にしていた国ですが、
その返還を巡って、中国のパワーを嫌というほど、思い知らされ
ていたのです。2018年12月5日、国内最大のポルトガルテ
レコムが、ファーウェイと5G設備及びサービスについての覚書
を交わしています。その4日前にファーウェイの孟晩舟副会長が
カナダで逮捕されていることを考えると、いかに中国に傾斜して
いるかが、理解できます。
 肝心の英国もフランスもドイツも、米国の求めるファーウェイ
排除には積極的ではないといえます。そうかといって、米国と徹
底的に対立することはできないというスタンスです。EUは、米
国とNATO(北大西洋条約機構)という軍事同盟を結んでおり
共通の敵であるロシアと対峙しています。したがって、米軍は絶
対に必要なのです。
 その一方で、ドイツやフランスをはじめとする多くの国におい
て、最大の貿易相手国は中国です。したがって、軍事は米国に頼
り、経済は中国に頼りたいという立場なのです。これは、日本を
はじめとするアジア諸国と近いスタンスです。そういう意味で、
EUは、難しい対応を迫られているといえます。
              ──[中国経済の真実/072]

≪画像および関連情報≫
 ●対ファーウェイで米欧に溝、EU、対中警戒は解かず
  ───────────────────────────
  【ブリュッセル=森本学】次世代通信規格「5G」の通信網
  構築で、華為技術(ファーウェイ)など中国企業の製品を排
  除するかを巡って、米欧の溝が目立ってきた。欧州委員会が
  26日、加盟国に示した「勧告」では、米国が強く求めてき
  た同社製品の全面排除を見送った。米政府は同社製品の採用
  は同盟国間の軍事協力に影響するとけん制しており、通商問
  題などで対立する米欧の新たな火種となりそうだ。
   「加盟国は国家安全保障上の理由から企業を排除する権利
  を持つ」。勧告はファーウェイ製品の採用の判断を各国政府
  に委ねる姿勢を鮮明にした。背景にはファーウェイへの対応
  を巡る加盟国間の温度差がある。
   ドイツは特定の企業を排除しない方針を示したほか、イタ
  リアは同社との連携に前向きな姿勢をみせている。ポルトガ
  ルでは2018年12月、5Gを巡って大手通信会社がファ
  ーウェイとの覚書の署名に踏み切った。
   一方、トランプ政権との関係強化を目指すポーランドは同
  社の現地法人の男をスパイ容疑で逮捕するなど強硬姿勢を示
  している。加盟国間で同社への対応は大きく異なっており、
  EUとして共通の対処方針をまとめきれない事情があった。
  一方、勧告では5Gのセキュリティー対策強化が「欧州の戦
  略的な独立性を確保するうえで決定的に重要だ」と指摘。E
  U一体で監視を強化することも呼び掛けた。名指しは、しな
  かったものの、中国企業への警戒がにじむ内容となった。
               https://s.nikkei.com/2HjNRCq
  ───────────────────────────

ハンガリーSアVメリカ外相会談.jpg
ハンガリーSVアメリカ外相会談
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2019年08月23日

●「EUとファーウェイとの親密関係」(EJ第5074号)

 ヨーロッパ(EU)各国の本音は、「安全保障は米国/経済は
中国」と決めています。ムシがいいのです。ドイツなどは、中国
のお陰で経済を立て直しています。メルケル首相は、日本にはほ
とんど来ず、ひたすら中国ばかり行っていたのです。
 もともとヨーロッパ諸国は、携帯電話に関しては中国との結び
つきが強いのです。「GSMA」という携帯電話会社で構成する
団体があります。世界750社以上の携帯電話会社が参加してい
ます。GSMAは、次の言葉の言葉の頭文字をとったものです。
─────────────────────────────
  GSMAとは・・・
  Global System for Mobile communications Association ─────────────────────────────
 「GSM」とは、携帯電話の統一規格であり、GSMを採用し
た国同士では、国境を越えても自分の機種で携帯電話サービスを
そのまま利用できるので便利です。そのため、GSMはヨーロッ
パの統一規格になっています。GSMAは、1995年にロンド
ンで設立されています。
 ちなみに、日本の携帯電話の通信網の場合、GSMには対応し
ていない。このため、通話が国内に限られていて、一般に海外で
の使用ができないのです。したがって、海外で携帯電話を使うに
は、GSM対応の海外専用端末を携帯電話会社からレンタルして
使用することになります。
 GSMAは、毎年2月にはスペインのバルセロナ、6月には中
国の上海で、各社の携帯電話の見本市であるMWCを開催してお
り、年々その規模が拡大しています。今年のMWCは次のように
予定通り行われています。いうまでもないことながら、MWCで
は、ファーウェイがいつも主役なのです。
─────────────────────────────
 ◎MWC/2019バルセロナ
  2019年2月25日〜2月28日
 ◎MWC/2019上海
  2019年6月26日〜6月28日
          MWC=モバイル・ワールド・コングレス
─────────────────────────────
 今年のMWCは、米中貿易戦争のさなかに行われたのですが、
GSMAは、2月14日に次の声明を出しています。
─────────────────────────────
 GSMAは、ヨーロッパで、通信インフラ供給ネットワークの
安全と競争を保護するよう要求する。
 ネットワークのさまざまなセグメント(アクセス、トランスポ
ート、及びコア)への機器の供給を妨げる行為は、ヨーロッパの
事業者、企業、および市民にとってコストを増大させる。ヨーロ
ッパの携帯電話事業者は、すでにヨーロッパ全土の国家安全保障
機関との協力関係を確立しており、重大なリスクは完全に回避可
能なのだ。                 ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 問題はこのような声明がなぜ出たかです。GSMA加盟の各国
としては、既にファーウェイを中心にまとまっており、その安全
性については、自分たちが責任を持って行うので、われわれは、
米国が主張する「ファーウェイ排除」には組みしないというヨー
ロッパとしての考え方を主張しているように思えます。
 しかし、そうはいってもヨーロッパにとって米国は、安全保障
の面で重要な存在であり、正面切って「ファーウェイは排除でき
ない」とはいえないのです。その結果出てきたのが、EUの欧州
委員会による「5Gネットワークのセキュリティに対するEUの
共通取り組み勧告」です。3月26日のことです。
─────────────────────────────
国家レベル ・・・ 各加盟国は、(2019年)6月末までに
 5Gネットワーク・インフラの国家リスク評価を終える。その
 際、各加盟国は国家安全上の理由で、国家の標準やレベルの枠
 組みに適合しない企業を市場から排除する権利を有する。
EUレベル ・・・ 各加盟国は、ENISA(欧州ネットワー
 ク情報セキュリティ庁)のサポートを受けて、相互に情報交換
 を行う。そして(2019年)10月1日までに、関連するリ
 スク評価を終える。EUのネットワークと情報システム協力グ
 ループは、12月末までに、国家及びEUレベルで識別された
 サイバー・セキュリティのリスクに対処するための対策を策定
 する。                  ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 この時点(3月26日)では、EUとしては、5Gを安全保障
にかかわる核心的部分とそうでない部分に分け、核心的な部分に
ついてはファーウェイを排除するが、そうでない部分は受け入れ
るという方針を立てていたのです。トランプ大統領もファーウェ
イの扱いに関しては緩和の可能性に言及しています。
 しかし、トランプ政権の軍事強硬派は、ファーウェイを取引材
料に使おうとするトランプ大統領のやり方には賛成せず、EUか
らファーウェイを完全に排除させる決断をしたのです。その決断
は、5月15日、米商務省がファーウェイとその関連会社をEL
(禁輸リスト)に入れたことです。
 ELに入れられると、その企業に米国から製品やサービスを輸
出するには、商務省産業安全局(BIS)からの個別承認が必要
になりますが、これは「原則非承認」ということになっているの
で、実質上の禁輸措置です。これは、どこかの国を迂回しての輸
出も禁止されるので、ファーウェイにとっては、非常に厳しい制
裁になります。結局のところ、EUも不満ながらも米国の方針に
従わざるを得なくなりつつあります。もし、ヨーロッパ市場も失
うと、ファーウェイにとって大ピンチになります。
              ──[中国経済の真実/073]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプのファーウェイ制裁、日本の選ぶべき道は?
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   中国の大手通信機器ファーウェイが6月17日、アメリカ
  の制裁の影響で、今後2年間の売上高が3兆3000億円減
  るという見通しを明らかにしました。特に、主力のスマート
  フォンの世界販売が今年(2019年)2割減。とりわけ海
  外での販売が4割減と大きく落ち込んでいます。5月15日
  にトランプ大統領が、アメリカの安全保障の脅威となる企業
  の通信技術を、アメリカ企業が利用することを禁止する大統
  領令を出した。また、アメリカの商務省はこの大統領令とは
  別に、対イランの経済制裁に違反したとして、アメリカ企業
  がファーウェイと取引することを事実上禁止する措置をして
  います。
   アメリカ企業はファーウェイにスマホの部品を供給しては
  いけないだけでなく、この措置にはソフトウェアも含まれま
  す。例えば、いまスマホのなかにグーグル・プレイやGメー
  ルがあらかじめ入っていますが、それが利用できなくなる。
  これから新発売されるものは、搭載できなくなる可能性が高
  いのです。アメリカがファーウェイを事実上制裁するのは、
  ファーウェイはスマホだけでなく通信設備も作っています。
  その通信設備にはスパイウェアが組み込まれていて、情報を
  盗んでいると言うのです。バックドアという情報の勝手口の
  ようなものが付いていて、そこから通信内容がダダ漏れして
  中国政府に渡ってしまうというものがアメリカの主張です。
                  https://bit.ly/2Z4WFXU
  ───────────────────────────

MWC/2019上海.jpg
MWC/2019上海
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2019年08月26日

●「文在寅韓国大統領の支持率が急落」(EJ第5075号)

 「韓国GSOMIA破棄」──韓国文在寅政権の愚かな決定で
す。これで日韓両国は、容易には元の状態に戻ることは不可能に
なったといえます。一線を越えてしまったのです。現在、EJは
米中貿易戦争、それも中国に重点を置いて書いていますが、これ
は日本や米国はもちろんのこと、中国にも関係のある問題であり
避けて通ることはできないので、メディアが報じない視点から検
証することにします。
 文在寅大統領がGSOMIAを破棄した直接的な理由は、自身
の支持率のことを考えた結果であると思います。韓国の大統領の
任期は5年であり、再選はありません。文大統領が大統領に就任
したのは、2017年5月であり、既に今年の5月で2年が経過
しています。任期はあと3年です。
 就任当初は80%を越えていた文大統領支持率は、自らの経済
政策の失敗などにより、今年に入ってからは、半分の40%台に
下落しています。韓国の大統領は、5年の任期の半分を過ぎると
レームダック化して求心力がなくなるものです。文大統領の場合
も、2年半直前の時点で既に支持率が就任時の半分以下であり、
さらに失政を重ねると、前任の朴大統領のように弾劾裁判にかけ
られたり、退任後に逮捕されたり、実に悲惨な目に遭う可能性が
あります。したがって、韓国の大統領は、自身の支持率には異常
なほど、神経を尖らせるものです。
 そこに、安倍政権による韓国のホワイト国外しの宣言が行われ
ます。この決定にいたる過程にはいろいろなことがあるのですが
それは後で述べるとして、文政権はこれに対していささか異常に
反応します。それは、まさに“逆ギレ”に近いものです。日本側
があっけにとられるほどです。
 文大統領はこれを千載一遇のチャンスとしてとらえたのです。
反日をやる絶好の機会です。韓国の大統領がよくやる、支持率が
下がったときの反日行動です。果せるかな、安倍政権による韓国
のホワイト国外しに端を発する韓国の日本製品不買運動、日本に
行かない運動(日本への旅行中止)などの激しい反日運動によっ
て、文大統領の支持率は回復し、40%台を脱して、50%台に
復帰したのです。2019年7月半ばのことです。
 しかし、反日運動が頂点に達していた7月22日時点と、その
1ヶ月後の文大統領の支持率を比較すると、実に興味深いことが
分かります。
─────────────────────────────
  ◎2019年7月22日   ◎2019年8月23日
    支 持:51・8%     支 持:46・7%
    不支持:43・1%     不支持:49・2%
           韓国世論調査会社/リアルメーター調べ
─────────────────────────────
 文大統領の“逆切れ”に近い反日運動の効果によって、50%
台に復帰した文大統領の支持率は、「GSOMIA破棄」を宣言
することになるその1ヶ月後には、またしても40%台に落下し
しかも支持と不支持が逆転しています。大変化です。なぜ、逆転
したのでしょうか。
 日本のメディアは、なぜかこのことを報道していないので、文
大統領の支持率は高いままだと思っている人が多いようです。残
念ながら、韓国の国民が「反日活動などするべきではない」とし
て、声を上げているわけではありません。ぜんぜん別の理由で、
大統領の支持率が急降下しているのです。大統領は、これに頭を
かかえているといわれます。
 現在、文大統領のいる青瓦台には、超左派系の”反日の戦士”
が集結しています。誰も文大統領のいうことに、逆らうことはで
きません。文大統領は、そのなかから、自分の次の大統領候補を
選び、育てようとしています。その一人と目される候補者に、元
大統領府民情首席秘書官のチョ・グク氏がいます。
 2019年8月9日、チェ・グク氏は、大統領府で文在寅大統
領によって法務部長官候補者(法相)に指名されています。民情
首席秘書官は、政府高官の監視と司法機関を統括するポストで、
政府高官や大統領の親戚など、権力層に対する捜査や、組閣のた
めの候補者推薦と人事検証などを主要業務とするだけに、大統領
府秘書官の中でも、大統領と最も近い関係にあります。そのため
事実上の「政権のナンバー2」といえます。
 チョ・グク氏は、文在寅大統領が次期大統領候補の一人として
選んでいるだけあって、超左派で、最も尖鋭な反日の戦士です。
したがって、文大統領は、韓国のホワイト国外しで反日が盛り上
がっている今のタイミングで、自分の右腕として政権の一角に据
えようとしたのです。
 ところが、そのチョ・グク氏に、複数の疑惑が浮上し、大問題
になります。なかでも、チョ・グク氏の娘の不正入学疑惑につい
ては、とくに韓国の若年層を中心に怒りの輪が広がっています。
韓国ではそれほど一流大学の入学が困難だからです。8月22日
付、「聯合ニュース」は次のように報道しています。
─────────────────────────────
 釜山大は22日、法務部長官候補に指名されたチョ国(チョ・
グク)前青瓦台民情首席秘書官の娘が、同大医学専門大学院に入
学するまでの過程全般について内部的に検討・調査を進めている
と明らかにした。チョ氏は長官候補に指名されてから娘が高校生
のときに医学論文の第1著者に名を連ね、大学や大学院に不正入
学したとの疑惑が持ち上がり批判にさらされている。娘は、20
15年に同大学院に入学した。釜山大側がこれまでに確認した事
実は、チョ氏の娘が大学院の入学選考のときに提出した自己紹介
書に問題の医学論文について言及しなかったことだ。釜山大関係
者は、チョ氏の娘が論文の第1著者として名を連ねた事実を自己
紹介書には記載しなかったことを確認したと説明した。
                  https://bit.ly/2LbNYkW ─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/074]

≪画像および関連情報≫
 ●危ういチョ・グク法務部長官候補の選択は
  ───────────────────────────
   法務部長官候補であるチョ・グク氏が危うい状況に置かれ
  ている。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が最も信頼する人物
  の一人と評価され、次期大統領候補にまで分類されたので、
  検証において激しい攻防が予想されたが、これほど激しいと
  は予想できなかった。とうとう彼の進退が取りざたされるこ
  とが全くおかしくない状況にまで至った。
   チョ候補者は9日、大統領府で文在寅大統領によって法務
  部長官候補者に指名された後、「誓海盟山」を語った。「海
  と山に誓う」という意味で、壬辰戦争(文禄・慶長の役)の
  時、李舜臣将軍が倭敵を打ち破るという意志を込めて詠んだ
  詩に登場する。彼が忠武公・李舜臣の詩まで取りあげて誓っ
  たのは、正な法秩序の確立、検察改革、法務部の革新」だっ
  た。生涯進歩的な観点で法を学び、教えてきたチョ候補者が
  法務部長官となって繰り広げる新しい法行政への期待が大き
  かった。
   半月近くたった今、好機といえる状況は過ぎ去った。チョ
  候補者は、連日相次ぐ疑惑の釈明に汲々としている。現在ま
  で人事聴聞会準備チームが出した公式釈明だけで20回にの
  ぼる。チョ候補者の実弟をはじめ、チョ候補者が投資した私
  募ファンド会社、同社が投資した会社まで釈明し、しまいに
  は離婚した元妻まで、私と息子は関わらせないでほしい」と
  訴えた。            https://bit.ly/2PcTGrN
  ───────────────────────────

疑惑のエリート/チョ・グク氏.jpg
疑惑のエリート/チョ・グク氏
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2019年08月27日

●「GSOMIAの破棄は既定の決断」(EJ第5076号)

 朝鮮の言葉に「ムルタギ」というのがあるそうです。これは、
「スキャンダルなどを水で薄めること」という意味で、スキャン
ダルを隠すことをいいます。まさに文在寅大統領は、自身が法相
に指名したショ・グク氏の不祥事から目を反らすため、GSOM
IAを破棄したのではないかと韓国内でいわれています。
 ケント・ギルバート氏は、8月23日発行の「夕刊フジ」の自
身のコラム「ニッポンの新常識」で、次のように韓国を批判して
います。こういう問題は、日本人よりも、外国のコラムニストの
論調を伝える方が、感情的にならないのでよいと考えます。
─────────────────────────────
 そもそも文政権になって、韓国の異常さに拍車がかかった気が
する。国会議長は「天皇陛下(現上皇さま)への謝罪要求」を突
き付け、韓国政府は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最
終的に解決」した、いわゆる「元徴用工」への補償問題を蒸し返
した。韓国海軍駆逐艦による自衛隊機へのレーダー照射事件では
非を認めない。
 慰安婦問題の、「最終的かつ不可逆的な解決」で一致した20
15年の日韓合意も反故(ほご)にし、日本政府が10億円を拠
出した「和解・癒やし財団」は、一方的解散となった。5億円が
残っていたはずだが、日本政府に返却されることもなく、藪の中
だ。協定や合意に「完全かつ最終的」とか、「最終的かつ不可逆
的」と書かざるを得ないほど、韓国に信用がない証拠といえる。
日本政府は念押しとして文書を入れたが、それでも文政権は国家
間の約束を破ったわけだ。           「夕刊フジ」
        ──「ニッポンの新常識」ケント・ギルバート
─────────────────────────────
 とにかく困るのは、韓国文政権が平気でウソをつくことです。
韓国駆逐艦によるレーダー照射事件では、明確な証拠を突き付け
ても絶対に認めない。これでは、国と国のまともな対話などでき
る状況ではないです。
 もうひとつ別の説もあります。8月25日付、日本経済新聞は
文政権がGSOMIAの破棄を決めたのは、朴槿恵前政権の功績
つぶしであるとして次の記事を掲載しています。、
─────────────────────────────
 韓国の文在寅政権が、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOM
IA)の破棄を決めた。日本政府が対韓輸出管理の厳格化を打ち
出したことで、安全保障面での「協力環境に重大な変化をもたら
した」としているが、文大統領が破棄を決定した理由はもうひと
つある。朴槿恵前政権の功績つぶしだ。(中略)
 GSOMIAの締結過程で、朴政権の対応に問題がなかったわ
けではない。革新系の当時の野党勢力が締結に反対し、国民の間
でも慎重論が根強いなか、朴政権は「北朝鮮の核・ミサイル問題
の解決」に不可欠だとして日本との交渉開始からわずか1ヶ月足
らずでスピード決着させた。北朝鮮脅威論をあおり、自らのスキ
ャンダルから国民の関心をそらそうとしたのではないかとの疑念
も浮上していた。こうした経緯を踏まえれば、文政権はもともと
日韓のGSOMIAに否定的だったともいえる。
       ──2019年8月25日付、日本経済新聞朝刊
─────────────────────────────
 もともと文大統領は、GSOMIAに反対であり、朴槿恵前政
権のスキャンダルによる自滅もあるが、慰安婦問題の、最終的、
不可逆的解決にも、GSOMIAの締結にも反対だった当時の野
党勢力の盛り上がりによって、政権トップに着いた人です。だか
ら、日本との関係が悪化している現状を絶好の好機として捉え、
GSOMIAを破棄したのです。今なら100%日本のせいにで
きるからです。
 世論調査会社リアルメーターが8月上旬に実施した調査による
と、GSOMIAの破棄には、賛成の方が多いのです。
─────────────────────────────
       ◎GSOMIAの破棄への賛否
         賛成 ・・・ 47・7%
         反対 ・・・ 39・3%
              ──世論調査会社リアルメーター
─────────────────────────────
 GSOMIAの破棄については、もうひとつ気になる情報があ
ります。それは、軍によるクーデター勃発の可能性です。GSO
MIA協定の締結後わかったことですが、想定以上に日本からの
情報が多く、それが、正確かつ有益な情報だったのです。つまり
GSOMIAは、韓国軍にとっても、非常に役に立つ軍事情報で
あることがわかったのです。
 こんな話があります。最近の話ですが、北朝鮮が短距離ミサイ
ルを発射したとき、その着弾地点を韓国側が修正したことがあり
ます。そのとき、わざわざ「日本サイドの情報に基づき」とそれ
が日本からの情報であることを明かしたのです。GSOMIAに
基づく日本の情報が役立っていることを何とかして、青瓦台に伝
えたかったからです。しかし、青瓦台は「日本の情報は、ほとん
ど役立っていない」ときめつけたのです。
 かつて朝鮮人民軍と対峙してきた元韓国国防省北韓分析官で、
拓殖大学主任研究員のコ・ヨンチョル氏は、GSOMIA破棄が
きっかけで起きるクーデターの可能性に言及しています。韓国で
は、そういうことが何回も起きているのです。
─────────────────────────────
 現役の将官らは今回の文氏の判断を100%近くが「まさか」
と失望している。軍人は敵(北朝鮮)と戦い、勝利するのを目的
としているが、「このまま北朝鮮に韓国が飲み込まれるくらいな
らば」と、正義感の強い一部の軍人たちが、政権の指導者に政変
(クーデター)を仕掛ける公算がより大きくなったとみる。
       ──コ・ヨンチョル氏/23日発行「夕刊フジ」
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/075]

≪画像および関連情報≫
 ●文在寅打倒クーデターは、本当に起きるのか
  ───────────────────────────
   韓国・文在寅政権が、日本との軍事情報包括保護協定(G
  SOMIA)破棄を決めたことで、北朝鮮との「赤化統一」
  路線に進むのではないかとの懸念が現実味を増している。北
  朝鮮は、GSOMIA破棄を歓迎しているはずなのに、けさ
  早く短距離弾道ミサイルを発射したが、松川るい参議院議員
  が「南北融和は行き過ぎると諸刃の剣」であり、できる限り
  体制を護持したいのが本音であると推察すれば、短距離ミサ
  イルの発射は、統一に向けた、ある種の主導権争いの一里塚
  と解釈できるかもしれない。
   元自衛隊情報幹部の鈴木衛士氏が以前予測したように「G
  SOMIA破棄なら文大統領は失脚」とみる向きはあるもの
  の、文大統領の任期は2022年5月までまだ3年弱ある。
  一線を超えた文大統領が自らの生き残りもかけて、反日と北
  朝鮮との融和をさらに進めていくことへの危惧は増すばかり
  だ。著名な軍事アナリストの小川和久氏も、GSOMIA破
  棄の翌23日夜、フェースブックの公開投稿において、「G
  SOMIA破棄、韓国軍部は、動きを見せるか」と問いかけ
  た。これに一般の人から「クーデターとかは、あり得る問題
  でしょうかね」と尋ねられたのに対し、小川氏は、「文在寅
  が北朝鮮を利していると思ったら、起こりうることだと考え
  ておいたほうがよいでしょう。日本の物差しでは判断できな
  い国ですから」とコメントしている。
                  https://bit.ly/2ZoAono
  ───────────────────────────

GSOMIA破棄を決めた韓国安全保障会議.jpg
GSOMIA破棄を決めた韓国安全保障会議
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2019年08月28日

●「奉陪到底/最後まで付合ってやる」(EJ第5077号)

 話を米中貿易戦争に戻します。このテーマも今回が76回目で
あり、そろそろ締めくくる必要があります。さて、次は、米中の
貿易戦争に通暁しているある中国人の言葉です。
─────────────────────────────
 5月以降、中国国内で完全に潮目が変わった。それまではトラ
ンプ政権にある程度、花を持たせてやれば解決は可能と考えてい
た。ところがもうわが方の堪忍袋の緒が切れたのだ。外交部の報
道官も「奉陪到底」と強調しだしたではないか。──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 「奉陪到底」は、前に一度説明したことがあります。この言葉
は、中国では次のように発音します。
─────────────────────────────
      「奉陪到底」/フェンペイ・タオディ
            最後まで付き合ってやる
─────────────────────────────
 これは、2011年に中国で公開された任侠映画のタイトルで
す。2018年3月にトランプ大統領が貿易戦争の宣戦布告をし
たさい、その対応策を議論する幹部会議の席で、習近平主席がこ
の言葉を使ったとして、有名になったといわれています。
 潮目が変わる5月に何があったかを探ってみると、米中閣僚会
議の決裂とファーウェイのEL(エンティティ・リスト)入りで
す。これで習近平国家主席は、ハラをくくったのです。「とこと
ん、アメリカと付き合ってやる!」と。
 米国は、既に対中輸入額の2500億ドル分について,25%
の関税をかけています。第1弾340億ドル、第2弾160億ド
ル、第3弾2000億ドル、計2500億ドルです。
 これに対して中国は、第1弾と第2弾は同額分の報復関税をか
けて対抗しましたが、第3弾に関しては600億ドル分しか報復
関税をかけることができなかったのです。対米輸入額がそんなに
なかったからです。
 ところが、トランプ政権は、9月1日に1100億ドル、12
月15日に1600億ドル──これで対中輸入額のほとんど全額
になりますが、これらに対して10%の関税を第4弾としてかけ
ると宣言します。これに対して、中国が人民元安で対抗しようと
すると、8月5日に米国は中国を「為替操作国」に指定するなど
対立はますます激しくなっていきます。
 そこで8月23日に中国が動きます。中国は、米国のいう9月
1日と12月15日の2回に分けて、対米輸入額5078品目、
758億ドル(約8兆円)分の米国製品に5%か10%の追加関
税をかけると公表したのです。これによって、米農家の関心の高
い大豆は、追加関税率が現行の25%から9月から30%に跳ね
上がることになります。これにトランプ大統領は激怒し、次のツ
イートを投稿しています。
─────────────────────────────
 われわれに中国は必要ない。率直に言えば、中国がいない方
 が、状況はマシだろう        ──トランプ大統領
─────────────────────────────
 そして、既に25%の関税のかかっている、第1弾〜第3弾の
2500億ドル分の税率を30%に引き上げ、10%をかけると
いっていた第4弾の2700億ドルに対しては、5%引き上げて
15%にする──このように、米通商代表部(USTR)は即日
発表したのです。
 目には目を、歯には歯をの報復合戦です。米国と中国がこれを
繰り返して行くと何が起きるのでしょうか。近藤大介氏によると
中国は次の4段階に分けて考えているといいます。分かりやすい
ように言葉の表現を一部をいい換えています。
─────────────────────────────
     第1段階「関税合戦」
         ・米中の関税の掛け合い
     第2段階「覇権争い」
         ・5Gハイテク覇権争い
     第3段階「経済戦争」
         ・経済のブロック化進行
     第4段階「軍事衝突」
         ・台湾をめぐる局地戦闘
                ──近藤大介著の前掲書より
─────────────────────────────
 まず、第1段階の「関税合戦」は、2018年7月に米国が開
戦し、これまで全面的に拡大しています。それと同時に、ファー
ウェイをめぐるハイテク(5G)覇権争いが起きています。これ
については、2018年8月にトランプ政権は国防権限法を制定
して開戦し、今年の5月にファーウェイをEL(エンティティリ
スト)に入れたことによって、その戦線は、世界中に拡大しつつ
あります。第3段階の「経済のブロック化」は、第1段階と第2
段階が重なった結果、生ずるものです。経済のブロック化の兆候
について、近藤大介氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 米中貿易額は1979年の国交正常化以降、2018年の40
周年に至るまで、25億ドルから6335億ドル(約69・7兆
円)へと253倍も増えた。だが、中国側の統計によると、20
19年第1四半期の貿易額は8158億元(約13・6兆円)で
輸出で3・7%、輸入で28・3%も、前年同期比で減少してい
る。また投資額も、2018年の米中相互の直接投資額の合計は
180億ドルで前年比60%も減少した。内訳は、中国からアメ
リカへの投資額が50億ドルで83%減少、アメリカから中国へ
の投資が、130億ドルで、7・1%の減少だ。特に中国からア
メリカへの投資の減少が顕著だ。 ──近藤大介著の前掲書より
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/076]

≪画像および関連情報≫
 ●米中覇権争いで進む「世界経済ブロック化」
  ───────────────────────────
   米政権は中国が技術を盗み出し個人のデータ情報を国民監
  視や治安維持の道具に使っていると非難。中国からの輸入品
  への高関税付加や、中国企業の米IT企業買収を阻止してい
  る。中国側は「グーグルなど米国企業もブラックボックスで
  あり、膨大なデータを米政府も活用している」と応酬してい
  る。米中の対立は次代の覇権争いの様相を呈し、厳しい攻防
  が続いており、世界経済の低迷に拍車をかけている。特に懸
  念されるのは「世界経済のブロック化」だ。保護主義の蔓延
  が誘導するブロック化の危険性は歴史が証明している。
   1929年に米国に端を発した世界大恐慌を受けて米国が
  30年代に実施した貿易戦争により、全世界の貿易は66%
  萎縮。米国が関税率を引き上げ他の国も対抗、全世界の貿易
  コストが10%上昇した。さらに主要国は相次いで「ブロッ
  ク経済」政策を採用。英国によるポンド圏、フランスによる
  フラン圏、さらに米国のドル圏などの、貿易の「囲い込み」
  現象が出現した。世界経済がブロックに分割されたことによ
  り、ドイツやイタリア、日本など植民地を持たないか少ない
  国は不況の影響をより深刻に受けることになった。その結果
  イタリアやドイツではファシスト、ナチス、日本では軍部な
  ど、「世界秩序の変更」を求める勢力が台頭し、第2次世界
  大戦の引き金になった。戦後の自由貿易体制の構築は、「ブ
  ロック経済への反省」の結果実現した。ブロック化が進行す
  れば、特に資源が乏しく貿易投資立国の日本は大きな影響を
  受ける。            http://exci.to/2PfSowo
  ───────────────────────────

G20大阪での米中首脳会談.jpg
G20大阪での米中首脳会談
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2019年08月29日

●「経済ブロック化は戦争に発展する」(EJ第5078号)

 中国は、米国との貿易戦争についてハラをくくり、「奉陪到底
/とことんやってやる!」という意思を持っています。そうする
と、最悪の場合、事態は次の4段階で進むことを前回指摘しまし
たが、4段階を再現します。
─────────────────────────────
          第1段階「関税合戦」
          第2段階「覇権争い」
          第3段階「経済戦争」
          第4段階「軍事衝突」
─────────────────────────────
 このうち、第1段階の「関税合戦」は、ドロ沼化しています。
それと同時に5Gをめぐる「覇権争い」が起きています。ファー
ウェイを採用するか、排除するか、の問題です。2019年8月
28日付、日本経済新聞によると、カンボジアについて次のよう
に報じています。
─────────────────────────────
 ◎カンボジア、中国5G導入/通信大手ファーウェイと組む
                 東南アで先陣 年内にも
        ──2019年8月28日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 カンボジアはもともと外交的に中国と親密であり、カンボジア
政府は、ファーウェイと5G分野で覚書を結んでいますが、中国
が、この時期の発表を後押しした可能性があります。カンボジア
は、経済的に後発ですが、中国としては、早く発表させることに
よって、他の東南アジアの国々に影響を与えようとしていたので
す。もちろんカンボジアは、インフラ支援も、中国からたっぷり
投資を受けて行っています。
 この「関税合戦」と「覇権争い」によって、経済はどんどんブ
ロック化し、その結果として「経済戦争」が激化していきます。
ここまでは前回述べた通りです。
 ところで、経済のブロック化というのは何でしょうか。
 実は、経済のブロック化は、最終的には戦争を引き起こす可能
性があり、とても危険なことです。第2次世界大戦も、主要各国
が保護主義に走り、世界経済がブロック化した結果、起きている
からです。このことについて、元オムロン会長の立石信雄氏は次
のように述べています。
─────────────────────────────
 トランプ大統領による「米国ファースト」をきっかけに保護主
義が世界中で蔓延。米中の次代の覇権争いを巡る攻防も世界経済
の低迷に拍車をかけている。特に危惧されるのは「世界経済のブ
ロック化」ではないだろうか。
 ブロック化の危険性は歴史が証明している。1929年に米国
に端を発した世界大恐慌を受けて米国が30年代に実施した貿易
戦争により、全世界の貿易は66%萎縮。米国が関税率を引き上
げ他の国も対抗、全世界の貿易コストが10%上昇した。
 さらに主要国は、相次いで「ブロック経済」政策を採用。英国
によるポンド圏、フランスによるフラン圏、さらに米国のドルブ
ロック圏などの、貿易の「囲い込み」現象が出現した。世界経済
がブロックに分割されたことにより、ドイツやイタリア、日本な
ど植民地を持たないか少ない国は、不況の影響をより深刻に受け
ることになった。その結果、イタリアやドイツではファシスト、
ナチス、日本では軍部など、「世界秩序の変更」を求める勢力が
台頭し、第2次世界大戦の大きな原因になったと言われる。
              ──元オムロン会長の立石信雄氏
                  http://exci.to/2Zu8KRG ─────────────────────────────
 ここで気になることがあります。トランプ大統領が本を全然読
まない人であることです。トランプ氏の豪華な自宅には、書棚が
ないそうです。そのような人が、現在超大国米国の大統領をして
いるのです。彼は、米国第一主義の保護政策を続けて行くと、世
界経済がブロック化し、最悪の場合、戦争の危険にまで発展する
ことなど、考えもしないでしょう。自分のやっていることが自分
でわかっていないのです。
 本を読む人と読まない人──目には見えませんが、両者の間に
は埋めようのない差が出来てしまうものです。本を読まない人は
物事を筋道を立てて深く考えない人です。つまり、思索をしない
人です。「たかが本を読まないくらいでそんわけあるまい」と思
う人は、きっと、その人が本を読まない、もしくは本を読むこと
に価値を感じていない人だからです。読書の本当の価値を知って
いるのは、読書をする人だけであるからです。
 ネット上の「ワン・ボックス・ニュース」は、トランプ氏につ
いて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 彼(トランプ氏)は、新聞でも見出し以上を読むことはなく、
本などのより長い文章は尚更読みません。実際、最新の政権内部
の暴露本を書いたマイケル・ウルフが、ホワイトハウス内に1年
近くに渡り居座ることが出来たのは、トランプを含む政権内の側
近の殆どが、本を全く読まないという背景があった。ウルフは、
メディア王ルパート・マードックの暴露本を書いた情報を得るた
めならば手段を選ばない人物として知られる。
                  https://bit.ly/348qCp1 ─────────────────────────────
 本人に先が見えないなら、先の読める人物がスタッフにいれば
よいのですが、トランプ氏は、そういう人物を次々とクビにして
しまうので、話にならないのです。トランプ本人は、自分は先が
読めると信じているので、どうしようもないです。
 冒頭の第4段階は「軍事衝突」となっています。それは、当然
米国と中国の軍事衝突を意味します。それは、習近平政権が台湾
を統一できるかどうかを巡る軍事衝突を意味しています。
              ──[中国経済の真実/077]

≪画像および関連情報≫
 ●真面目な話だが、トランプはどれくらいバカなのか?
  ───────────────────────────
   私は1年以上前からワシントンの当局者たちから、共和党
  のロビイストや共和党寄りの保守系政治評論家から、果ては
  何人かの議会の共和党員からこんな言葉を聴いてきた、「ド
  ナルド・トランプは著しくバカである」と。
   私は彼らの言う事が正しいはずがないと思った。なぜなら
  本当に愚かな人間が米国という超大国の大統領になるなどと
  いうことが起こるはずが無いと思っていたからだ。
   "あの"ジョージ・W・ブッシュにさえ、大統領選挙キャン
  ペーンやその後のホワイトハウス執務で賢く優秀なスタッフ
  を雇う"最低限の賢さ"があった。
   数ヵ月前にレックス・ティラーソン米国務長官がトランプ
  を「救い難いバカ」と呼んだが、私はそれを無視した。大統
  領の内閣で働く事の難しさや思うように物事が進まない事に
  内閣の人間が苛立ちを覚えることはよくあることであり、か
  つて他の大統領の内閣の人間が、彼らの上司を同様の言葉を
  使い不満をあらわにした事もあったからである。そして今回
  の、ジャーナリストのマイケル・ウルフ氏によるトランプ政
  権の内幕を描いた暴露本「炎と怒り:トランプのホワイトハ
  ウス、その内幕)」だ。これはホワイトハウスの上級職員を
  含む、大統領候補時代と大統領時代のトランプと接した関係
  者200人以上の人にインタビューした代物だ。
                  https://bit.ly/2ZqT0mJ
  ─────────────────────

”本を読まない”トランプ大統領の執務光景.jpg
本を読まない”トランプ大統領の執務光景

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2019年08月30日

●「フェデックス問題を知っているか」(EJ第5079号)

 最近のトランプ大統領は、明らかに焦っています。トランプ氏
の最大の関心事は来年11月の選挙です。まだ時間があります。
しかし、ヤマ場は来年の3月3日、「スーパー・チューズデ−」
です。この日、民主、共和両党の候補者選びが天王山を迎えるか
らです。この日までに目立った成果を上げておかないと、再選が
厳しくなるといわれます。しかし、最近のトランプ氏の言動はお
かしいことの連続です。ある日、突然「グリーンランドを購入し
たい」といい出し、「バカげている」と一蹴した、デンマークの
メッテ・フレデリクセン首相に「ひどいことをいわれた。むかつ
くし、侮辱的だ」と激高したかと思うと、その後、デンマーク首
相が電話すると、「彼女はすばらしい女性だ」と絶賛するなど、
情緒不安定です。トランプ大統領は73歳ですが、大事な決定を
しなければならない米国の大統領が情緒不安定では困ります。
 5月31日のことです。中国は、米国のEL(エンティティ・
リスト)に対抗し、「不信企業リスト」制度を実施すると発表し
ました。これには米フェデックス問題が関係しています。「不信
企業リスト」について、ブルームバークの記事を引用します。
─────────────────────────────
 中国は、国内企業の利益を害すると判断した企業を標的とする
ため、「信頼できない」企業のリストを作成する。華為技術に対
する米国の措置に対抗するもので、数千社の外国企業に影響する
可能性がある。
 中国は市場規則に従わず契約に違反して供給を停止したり中国
企業の合法的利益を大きく損なう行為をしたりする外国企業と団
体、個人の一覧を策定する仕組みを整備すると、商務省の高峰報
道官が述べた。リストに載った企業などに対しては「必要な措置
を取る」とし、詳細は近く発表すると付け加えた。
 米政府はファーウェイによる米国での機器販売や米企業からの
購買を妨げる措置を取り、米中の貿易戦争は、関税以外にまで広
がった。高報道官の説明は、具体的な部分に踏み込んでいないが
アルファベット傘下のグーグルやクアルコム、インテルなど米国
のテクノロジー企業に加え、ファーウェイへの部品供給を停止し
た米国外の企業も対象となる可能性がある。日本の東芝や、ソフ
トバンク傘下の英アームもこれに当てはまる。
                  https://bit.ly/30EPzpS ─────────────────────────────
 「フェデックス問題」とは何でしょうか。フェデックスとは、
世界220ヶ国・地域を網羅し、年間売上高655億ドルを誇る
世界最大の航空貨物運送会社、フェデックス・エクスプレスのこ
とです。この事件は、日本では、ほとんど報道されていないので
知る人は少ないと思います。
 いきさつを簡略に説明します。5月17日のことですが、ファ
ーウェイのハノイのオフィスは、香港とシンガポールのオフィス
に向けて、重要書類をフェデックスで送ったのです。ところが、
これらの書類は、香港のフェデックス事務所にいったん行き、そ
こから米国に転送されていることが判明したのです。
 5月19日と20日のことです。ファーウェイ・ジャパンは、
東京から、ファーウェイの深せん本社に向けて、フェデックスで
小包を送ったのですが、その小包は米国のテネシー州メンフィス
へ送られていたことがわかったのです。
 問題は、5月17日が、米国がファーウェイをELに入れた翌
日であり、この日を境にして、米国がファーウェイの書類や荷物
を米国に転送していることです。この事件について、6月1日付
の中国国営新華社通信は、次のように報道しています。
─────────────────────────────
 米フェデックス・エクスプレスがわが国で起こした、荷物が明
記されていない住所へ送られていた行為は、利用客の合法的な権
益を著しく損害するものであり、わが国の配達業界の関連法規に
違反するものである。よって国家の関連部門が立案し、調査する
ことを決定した。   ──2019年6月1日付、新華社通信
                      ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 フェデックスといえば、改革開放初期の1984年に中国支社
を設立し、1994年には、運送会社としてはじめて中国税関当
局とネット接続することが許されている、中国における模範企業
です。フェデックスは、この件について、6月下旬に米国商務省
に訴訟を起こしています。おそらく、商務省からフェデックスに
何らかの命令があったものと思われます。これは、いささかやり
過ぎではないかと思われます。フェデックスは、「誤配」として
ファーウェイに詫びを入れていますが、フェデックスが、中国の
「不信企業リスト」記載の第1号になる可能性があります。
 7月に入って、中国はフェデックスの「誤配」の弁解と詫びを
受け入れないと言明し、次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国外務省の華春瑩報道官は北京で7月26日開いた記者会見
で、関連当局がフェデックスの問題で調査を進めており、米国に
荷物が送られたのは、オペレーション上のミスによるものではな
かったことが判明していると語った。調査を担当している具体的
な当局機関の名前は挙げなかった。
 華報道官は法に従い徹底的な調査を当局が続けるとも述べ、こ
れまでの調査でフェデックスによる他の活動も法律に反している
ことが分かったと説明した。フェデックスはウェブサイトに同日
掲載した資料で、同社の謝罪を中国が拒否した後も、この問題の
調査で中国当局に全面的に協力しており、これからも協力を続け
ると表明。適用され得る全法規制の「完全な順守にコミットして
いる」とコメントした。       https://bit.ly/2LdphVe
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/078]

≪画像および関連情報≫
 ●フェデックス、ファーウェイ端末の配達拒否で謝罪
  ───────────────────────────
   2019年6月23日、中国紙・新京報は、米物流大手の
  フェデックスが、英国から米国へのファーウェイ製スマート
  フォンの配達を拒否した問題で謝罪したと報じた。記事は、
  米コンピューター誌、PCマガジンの21日付報道を引用。
  同誌の英国在住記者がフェデックス経由で、米国のオフィス
  にファーウェイ製スマホを送ったところ「米国政府とファー
  ウェイとの間の問題」を理由に差し戻されたと伝えた。
   記事によると、同誌の関係者はツイッターに「これは全く
  ばかげている。われわれの英国のライターが送ろうとしてい
  たのは、「ファーウェイP30」で、新品ではなく既存の端
  末だ。オフィス間の運送にすぎないのにこんな事が起きた」
  と投稿した。
   問題が明るみになったことを受け、フェデックスは「問題
  の荷物は手違いで送り主の元に戻された。われわれは業務上
  のミスをおわびする」との声明を発表。ファーウェイの広報
  担当者はSNS上で「この事件はエンティティーリストに対
  する完全な誤解だ」とコメントしたという。米商務省は先月
  国家の安全保障上の問題を理由に、米政府の許可なく米企業
  から部品などを購入することを禁止する「エンティティーリ
  スト」にファーウェイと関連会社を追加した。フェデックス
  は先月、日本から中国のファーウェイに発送された荷物2個
  を米国に転送したほか、ベトナムからファーウェイのアジア
  エリアのオフィスに発送された荷物2個も米国に転送しよう
  としたことについて、「配達ミス」があったと釈明したばか
  りだった。(翻訳・編集/柳川)  http://exci.to/2MIO3zt
  ───────────────────────────

米フェデックスの貨物機.jpg
米フェデックスの貨物機
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2019年09月02日

●「なぜ、ファーウェイを排除するか」(EJ第5080号)

 8月29日、米国は、11番目の統合軍として「宇宙軍」を創
設したと発表しました。かねてからトランプ大統領は「作る」と
宣言していたので、その実現と考えている人は多いと思いますが
実は、宇宙軍は既に1985年9月23日に設立されています。
しかし、2002年10月1日に米国戦略軍に整理・統合されて
いたものを統合軍の一つとして独立させたのです。したがって、
昨日今日できたものではなく、相当の積み上げがあります。宇宙
軍事の一部は中国が先行しているものの、全体としては米国の方
が、かなりハイ・レベルにあるといえます。
 ところで、統合軍とは何でしょうか。米軍は、管轄地域別6統
合軍、機能別4統合軍があり、今回宇宙軍が機能別統合軍の一つ
として追加され、11統合軍となったのです。
─────────────────────────────
      ◎管轄地域別統合軍
        1.アメリカ北方軍
        2.アメリカ中央軍
        3.アメリカアフリカ軍
        4.アメリカ欧州軍
        5.アメリカインド太平洋軍
        6.アメリカ南方軍
      ◎機能別統合軍
        7.アメリカ特殊作戦軍
        8.アメリカ戦略軍
        9.アメリカ輸送軍
       10.アメリカサイバー軍
     ⇒ 11.アメリカ宇宙軍
       ──ウィキペディア  https://bit.ly/34fIC0o ─────────────────────────────
 このなかで、日本を含むアジアを担当しているのは、アメリカ
インド太平洋軍です。これを見ると、米国はやはり地球規模の軍
隊を率いています。口では否定しても、やはり米国は、「世界の
警察官」なのです。
 宇宙軍にも関係することですが、現在、米中貿易戦争のカギを
握っているのは、華為技術(ファーウェイ)です。ファーウェイ
は本当にスパイなのでしょうか。これについては、識者によって
意見は二分されています。
 米国において、ファーウェイに関する疑問は、トランプ政権に
なってからではなく、オバマ政権の頃から出ていたのです。20
12年に下院で、ファーウェイ、ZTEなどの中国の通信機器大
手企業が、米国の安全保障を脅かしているという内容の報告書が
提出されたのです。このときの懸念は、ファーウェイの創業者で
ある任正非氏が人民解放軍の出身であり、軍との関係が懸念され
るとして、米国政府機関などで中国製通信機器の使用が禁止され
ています。
 そしてこれは、ファーウェイではありませんが、2016年に
は中国ADUPS製ファームウェアを採用したスマホで、バック
ドアが検出されています。ファームウェアとは、スマホに最初か
ら装備されている機能のことです。これによると、72時間ごと
に中国にあるサーバーに、ユーザーの位置情報や通話履歴、連絡
先、情報入力したメッセージなどが、自動的に送信されるように
なっていたのです。
 2017年3月には、中国ZTEに対し、イランと北朝鮮への
違法な輸出があったとして、米国は11億9000万ドルの罰金
を科しています。しかし、2018年4月に、その申告に虚偽が
あったとして、米国商務省は、米国企業に対し、ZTEへの部品
販売を禁止しています。
 ファーウェイに関してネット上に出ているものとしては、ファ
ーウェイ製ノートPCにバックドアが発見されたとするマイクロ
ソフトの次の報告です。
─────────────────────────────
 報道によれば、技術者らはOSの中核部分である、カーネルに
異常な作動を見つけた。技術者らが異常な作動を追跡した結果、
ファーウェイが開発したデバイス管理ドライバーが原因であると
判明した。マイクロソフトがさらに調査を進め、設計上の誤りを
発見した。技術者はローカル権限の昇格を許すセキュリティキー
上の脆弱性につながっていると指摘する。 ──マイクロソフト
─────────────────────────────
 しかし、明確にバックドアと指摘しておらず、単なるバグであ
る可能性もあります。ファーウェイに関しては、決定的という証
拠は上がっておらず、ZTEやADUPSがやっているので、お
そらくファーウェイもやっているだろうという推測に基づく情報
です。確かにファーウェイのエンジニアが米国企業の機密部品の
写真を撮るなどの不正行為を行っている事例は複数ありますが、
いずれも関係者は処分されており、企業としての組織的なもので
はないとファーウェイ側は主張しています。
 それでも米国は、ファーウェイを米国から締め出そうとしてい
ます。それは、次期通信核心規格「5G」関連技術の特許出願に
おいて、ファーウェイがリードしているからです。
─────────────────────────────
   ファーウェイ(中国) ・・・・・ 15・05%
   ノキア(フィンランド) ・・・・ 13・92%
   サムソン(韓国) ・・・・・・・ 12・74%
   LG(韓国) ・・・・・・・・・ 12・34%
   ZTE(中国) ・・・・・・・・ 11・70%
   クアルコム(米国) ・・・・・・  8・19%
   エリクソン(スウェーデン) ・・  7・93%
   インテル(米国) ・・・・・・・  5・34%
          ──ドイツIPリッテクス社の調査による
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/079]

≪画像および関連情報≫
 ●米中対立の発火はポーランドから/華為技術スパイ事件
  ───────────────────────────
   2019年1月の冷え込みの厳しい朝、ポーランドの国内
  公安機関(ISA)が、ワルシャワのアパートの一室に立ち
  入った。彼らは写真や電子機器を没収、アパートに住む外国
  人ビジネスマンを逮捕した。ポーランド語に堪能な元外交官
  でもあるこのビジネスマンに対する容疑は世間を驚かせた。
  ポーランドの元安全保障当局者と協力し、ある国のためにス
  パイ活動を行った、というものだった。まるで冷戦時代のス
  パイ小説、その21世紀版のようだが、相手はかつて敵だっ
  た米国でも、ソ連時代の盟主ロシアでもなく、中国だった。
   ビジネスマンは中国人で、世界最大の通信機器メーカー、
  華為技術(ファーウェイ)の営業担当者。そして、同じ日に
  逮捕された協力者とされるポーランドの元当局者は、一兵卒
  ではなくサイバーセキュリティを専門とする幹部だった。
   この逮捕によって、中国を相手にした米国の「新冷戦」の
  新たな戦端が開かれた。米国は次世代高速通信規格「5G」
  の導入に当たってファーウェイ機器を使用しないよう同盟国
  に働きかけており、ファーウェイは新冷戦の中心的な存在と
  なっている。トランプ米政権は5月、国内通信網にファーウ
  ェイ機器を使用することを禁じ、米企業が同社に製品を販売
  することを規制した。米政府は、ファーウェイが中国政府の
  支配下にあるとみて、同社の5G技術がスパイ行為や重要イ
  ンフラの妨害などに悪用されかねないと懸念している。ファ
  ーウエイ側は、こうした指摘を否定している。
                  https://bit.ly/346BFyK
  ─────────────────────────

ワルシャワ中心部のファーウェイ.jpg
ワルシャワ中心部のファーウェイ
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2019年09月03日

●「華為技術に大衝撃を与えるARM」(EJ第5081号)

 2019年5月16日、米国商務省は、ファーウェイとその関
連会社68社をEL(エンティティリスト)に追加すると発表し
ましたが、これによって米国企業は、政府の許可なしに、ファー
ウェイに対して、製品や部品などを売買することはできなくなっ
ています。
 重要なのは、この制裁措置は米国だけの問題ではなく、米国の
技術や製品を利用した第三国の企業が、ファーウェイと取り引き
した場合にも、再輸出として制裁が適用されることです。たとえ
ば、米国以外のある企業が、米国の部品を一定割合利用した製品
を開発し、その製品をファーウェイに販売した場合にも、制裁が
及ぶという厳しいものです。
 これに違反すると、今度はDPLに掲載されてしまいます。D
PLは「重大違反者リスト」のことで、次の英語の頭文字をとっ
たものです。
─────────────────────────────
        DPL/Denied Persons List
              重大違反者リスト
─────────────────────────────
 DPLに掲載されると、米国市場から締め出され、かつ米国や
海外からの輸出もストップされます。つまり、DPLはサッカー
でいうと、イエローカードを2枚もらったのと同じです。
 それでも違反を重ねると、最後の手段であるSDNリストに入
れられ、金融制裁を受けることになります。これによって、ドル
送金の禁止や在米資産の凍結が行使され、身動きが取れなくなっ
てしまいます。ファーウェイは、今のところまだSDNリストに
は入っていません。SDNについては、8月13日のEJ第50
66号で説明しています。      https://bit.ly/2ORQzFC
 これに素早く対応したのがグーグルです。5月20日、ファー
ウェイの新しいスマホに対し、ハード、ソフト(アンドロイドを
含む)を供給しないと発表したのです。このグーグルの、発表に
よって、世界的に、ファーウェイとの取引きを中止する動きが広
がったのです。ロイターによると、5月22日の時点で、次のよ
うな企業が、ファーウェイとの取引中止を発表しています。
─────────────────────────────
  1.アルファベット
  2.ルメンタム・ホールディングス(光学製品)
  3.コルボ(半導体)
  4.アナログ・デバイシズ(半導体デバイシズ)
  5.インファイ(半導体)
  6.アーム(半導体設計)
  7.シノプシス(半導体設計支援)
  8.パナソニック
  9.米国半導体メーカー各社
    インテル、クアルコム、ザイリンクス、ブロードコム
    各社           ──渡邊哲也著/徳間書店
       『「中国大崩壊」入門/何が起きているのか?/
        これからどうなるか?/どう対応すべきか?』
─────────────────────────────
 こういう動きに対してファーウェイは、表面的には、非常に強
気な対応をしていますが、最も痛手であると思われるのが、半導
体設計の英国の「アーム/ARM」がファーウェイへのライセン
スを停止したことです。アームの正式な名称は、アーム・ホール
ディングス(以下、アーム)といいます。
 ところで、アームとはどういう企業かご存知でしょうか。
 アームについて話す前に、その前提知識を少し知る必要があり
ます。PCのCPUといえばインテルが有名です。「インテル、
入ってる」のあのCMのインテルです。インテルは、マイクロソ
フトと組んで「ウィンテル」時代を作り上げ、CPUといえばイ
ンテル、OSといえばウインドウズといわれるほどになったのは
周知の事実です。
 今でもPCのCPUは、アップルは例外として、インテルか、
その仲間のAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイス)が中心
ですが、スマホやタブレットのCPUは違うのです。スマホやタ
ブレットもPCそのものであり、もちろんCPUが搭載されてい
ますが、そのCPUは、ズバリ、アームといっても過言ではない
のです。そのシェアは実に90%以上に達しています。
 それでは、なぜ「アームのCPU」といわないのでしょうか。
それは、CPUの製造は行わず、CPUの設計を行い、いわばそ
の設計図についてのライセンスを供与するという独自のビジネス
モデルによって急成長した企業です。アームのCPUの最大の特
色は、消費電力が少なくて済む設計になって点です。
 2010年(12月期)時点でのアーム・ホールディングスの
概要を示しておきます。
─────────────────────────────
 ◎英国/アーム・ホールディングスの概要
  売上高  ・・・ 4億660万ポンド(約520億円)
  経常利益 ・・・ 1億6740ポンド(約214億円)
  設立   ・・・ 1990年
  所在地  ・・・ 英国ケンブリッジ
─────────────────────────────
 2010年当時のアームの売上高は、わずか日本円で520億
円に過ぎない。それが、2016年の時点では、米アップル、米
グーグル、韓国サムスン電子、ソニー、任天堂など、世界の名だ
たるIT企業にとってアームは必要不可欠な存在であり、ファー
ウェイもアームに大きく依存する事態になっています。
 ファーウェイは、ハイシリコンという半導体制作企業を有して
いますが、そのハイシリコンがアームの半導体設計に大きく依存
しているのです。したがって、今回、アームが手を引いたことは
ファーウェイにとって、大打撃であると思われます。
              ──[中国経済の真実/080]

≪画像および関連情報≫
 ●追い詰められるファーウェイ/世界読み解くニュースサロン
  ───────────────────────────
   中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の任正
  非・最高経営責任者(CEO)は2019年1月20日、中
  国中央テレビ(CCTV)のインタビューで、ファーウェイ
  排除の動きを強めてる米国に対し、こんな発言をしている。
  「買わないなら向こうが損するだけだ」
   ファーウェイの騒動が18年に大きく動いてから、任正非
  CEOやファーウェイは強気の姿勢を崩していない。ただそ
  の一方で、ファーウェイはこんな「顔」ものぞかせている。
  実は最近、同社はメディアに対する「怪しい」PR活動をし
  ていることが暴露されているのだ。
   米ワシントン・ポスト紙は3月12日、「ファーウェイ、
  “お色気攻勢”も意味ないよ」という記事を掲載。この記事
  の筆者であるコラムニストが、「これまで聞いたこともない
  ようなPR企業から、広東省深セン市にあるファーウェイ本
  社のツアーの招待を受けた」と書いている。さらにコラムニ
  ストは、「この申し出によれば、私が同社を訪問し、幹部ら
  と面会し、『同社が米国で直面しているさまざまな課題につ
  いて、オフレコ(秘密)の議論』をする機会があるという。
  ファーウェイはこの視察旅行で全ての費用を支払うつもりだ
  とし、さらにこの提案を公にはしないよう求めてきた」と書
  く。「そこで私は全てのやりとりと、申し出を却下する旨を
  ツイッターで公開した」これは、米国のジャーナリストの感
  覚では買収工作にも近い。    https://bit.ly/2HF0Cro
  ───────────────────────────

ARMのチップ.jpg

ARMのチップ
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2019年09月04日

●「華為技術に衝撃!ARM取引停止」(EJ第5082号)

 英国の半導体設計支援企業「アーム」の話を続けます。ファー
ウェイが、アームから半導体の設計支援を受けられなくなること
が、ファーウェイにとってどのくらいのダメージになるかを知る
必要があるからです。
 ファーウェイは、表面上は強気を装っていますが、内心は深刻
そのものです。それは、孟晩舟副会長が逮捕されて以来、謎の経
営者といわれるほど滅多に人前に姿を現さないファーウェイの任
正非CEOが、頻繁にメディアの前に出てくるようになったこと
によく表れています。危機感の表れといえます。
 任正非CEOは、社内ですら自分を正面に出さない人であり、
ファーウェイの社員ですら、とくに若い人は、CEOの顔も、話
も直接聞いたことがない人が多いといわれています。ファーウェ
イは、独特の社員持ち株制を実施しており、任正非CEOの持ち
株比率は、わずか1・3%しかなく、通常のCEOのように社内
で振る舞うことを抑えているのかもしれません。
 近藤大介氏の本に興味深い逸話が紹介されています。任正非C
EOの人柄について、ある古参社員の話として、次のように紹介
されています。
─────────────────────────────
 本人はまったく飾らない性格で、深せん市の中心部にある自宅
から、庶民の服装で愛車のBMWを自分で、運転して出勤してく
る。わが社には社用機もないし、「金融業と不動産業は容易に儲
かってしまうので手を出さない」と戒めている。昼には時折、社
員食堂で食べているのを見かけるが、自分の写真や銅像を社内に
掲げることを厳禁しているため、若い社員は気づかない。先日、
エレベーターに同乗した若い社員が「入社して長いんですか?」
と任CEOに声を掛けた。そうしたらCEOは、「だいぶ古株な
んだよ」と答えたそうだ(笑)。       ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 さて、アームについてもうひとつ、あらかじめ知っておくべき
ことがあります。それは、アームが、2016年に日本のソフト
バンクグループに買収されたことです。2016年といえば、英
国において、EUを離脱すべきかどうかを決める国民投票が行わ
れた年です。2016年6月23日に国民投票が実施され、残留
48%、離脱52%の僅差で、離脱派が勝利を収めています。
 この国民投票に注目していたのは、孫正義ソフトバンクCEO
です。かねてから、孫正義氏は、アームという企業に関心があり
M&Aを仕掛けようとしていたのですが、株価が高くてなかなか
実現しなかったといいます。しかし、国民投票で離脱派が勝利す
ると、孫CEOは急遽英国に飛んでいます。英国の将来に不安を
感じた投資家が株を一斉に売却し、株価が下がると読んだからで
す。果せるかな、株は一斉に下がり、それに乗じて、ソフトバン
クは、アームの買収に成功したのです。
 それでもその買収金額は、実に240億ポンド(約3兆300
0億円)であり、日本企業による海外企業のM&Aとしては、過
去最大の金額になったのです。孫正義CEOがなぜアームに目を
つけたかについては、改めて述べますが、アームを日本企業が実
質的に保有していることは、非常に意義があります。
 ファーウェイとアームの関係について、既出の渡邊哲也氏は、
次のように述べています。
─────────────────────────────
 ファーウェイのCPUは、台湾セミコンダクター(TSMC)
で生産されているが、これはアームのコアと設計が基礎になって
いる。このため、CPUの在庫がなくなり次第、生産が停止する
と思われる。これに対して、ファーウェイ側は問題解決可能とし
ているが、アームによれば、設計にアメリカ技術が使われている
ということなので、アメリカが使用許可を与えないかぎり、解決
するのは不可能だろう。      ──渡邊哲也著/徳間書店
       『「中国大崩壊」入門/何が起きているのか?/
        これからどうなるか?/どう対応すべきか?』
─────────────────────────────
 ファーウェイとの取引を停止した理由としてアームは、半導体
の設計について米国の技術を多く使っているので、米国の許諾が
ない限り、輸出できないからであるとしています。
 もうひとつファーウェイにとって打撃なのは、アームに続いて
米国に本社を置く企業、シノプシスも、ファーウェイとの取引を
停止したことです。この企業は、集積回路、やや専門的になりま
すが、とくにASIC製造に用いる論理合成ツールのデファクト
スタンダードは、この企業のツールがないと、設計できないので
す。ASICとは「特定用途向け集積回路」のことです。
 OSもCPUも内製化できるとファーウェイは豪語しています
が、アームとシノプシスからの設計支援がストップすると、その
内製化は非常に困難になるはずです。
 アームがどんなに凄い企業かがわかる話があります。2016
年1月のことですが、マイクロソフトは、そのときの次期OSで
ある「ウインドウズ8」を、インテルだけでなく、アーム設計の
CPUでも動作させると発表しています。インテルの強さの源泉
であったウインドウズ対応のCPUの技術独占が、このとき音を
立てて崩れたのです。
 その原因となったのは、アームのCPUを採用したアイフォー
ンやアンドロイド端末が、マイクロソフトの独壇場であったPC
市場を侵食し始めたことにマイクロソフトが危機感を抱いたから
です。つまり、アームのCPUは、必ずPC市場に参入してくる
と考えたのです。そのため、マイクロソフトは、アームとの提携
が不可欠であると判断したといえます。
 既に2016年時点で、アームが設計に関わった半導体は、ス
マホ、タブレット、家電、ゲーム機、自動車など、様々な用途に
使われており、その年間の出荷量は、既にインテルを超えていた
のです。          ──[中国経済の真実/081]

≪画像および関連情報≫
 ●グーグルよりも深刻?英ARMがファーウェイと取引停止
  ───────────────────────────
   5月21日、華為技術(ファーウェイ)任正非CEO(最
  高経営責任者)は中国メディアの取材に応じてこう述べた時
  その翌日に半導体製造の開発・設計の前提がひっくり返ると
  は思っていなかっただろうか。
   BBC(英国放送協会)は22日、英半導体設計大手のA
  RM(アーム)ホールディングスがファーウェイとの取引を
  停止するよう従業員に通知したと報じた。米国がファーウェ
  イを国家安全保障や外交政策上の懸念があるとして、「エン
  ティティー・リスト」と呼ぶ取引禁止対象リストに載せたこ
  とを受けた措置だ。ARMの技術の一部に米国由来のものが
  あり、規制に抵触すると判断した。ARMは「米政府の全て
  の規制に従うがそれ以上のコメントはない」としているとい
  う。米調査会社のIDCによれば、2019年第1四半期の
  ファーウェイのスマートフォンは世界シェアは米アップルを
  抜き、韓国サムスン電子に続く2位。だが、ARMの技術が
  利用できなくなれば、ファーウェイのスマートフォン事業は
  大きな打撃を受ける可能性が高い。グーグルによるOS(基
  本ソフト)「アンドロイド」の輸出禁止に際しても、「ずっ
  と開発してきた独自OSを提供すればよい」と動じなかった
  ファーウェイだが、ARMの技術だけは当面代替が不可能だ
  とみられるからだ。       https://bit.ly/2Mn1Sob
  ───────────────────────────

アームの買収を発表する孫正義氏.jpg
アームの買収を発表する孫正義氏
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2019年09月05日

●「SBはなぜARMを買収したのか」(EJ第5083号)

 ソフトバンクグループの会長兼社長の孫正義氏は、なぜ、アー
ムを買収したのでしょうか。
 なぜ、携帯電話会社のソフトバンクが、半導体製造設計会社を
必要とするのかについて、当時、孫氏は、記者からさんざん質問
されたものの、孫氏は、それらに明確に答えていないのです。し
かし、今ならわかるような気がします。
 たとえば、2016年当時、日本では「IoT」という言葉は
比較的新鮮な言葉でしたが、現在では誰でも耳にする言葉になっ
ています。「自動運転車」も将来可能ということはわかっていて
も、当時はあまり現実的ではありませんでしたが、今ではすぐに
でも実現できるレベルに技術が達しています。
 その他、スマートウォッチに代表されるさまざまなウェアラブ
ル機器も流行しつつあります。そういえば、最近アップルウォッ
チをしている人をよく見かけます。これらの世界は今やすべてと
いってよいほど、アームが支配しつつあります。まさに孫氏は、
先見の明がある経営者であるといえます。
 これについて、ジャーナリストの大河原克行氏は、それを囲碁
に例えて、適切な説明をしています。
─────────────────────────────
 囲碁は、碁石のすぐ隣に打つのは素人のやり方。遠く離れたと
ころに打ち、それが、50手目、100手目になると力を発揮す
る。3年、5年、10年が経過すれば、ソフトバンクグループに
ARMがいる意味が分かる。ソフトバンクグループの中核中の中
核になる企業がARMであるとする。    ──大河原克行氏
                  https://bit.ly/2lYeRje ─────────────────────────────
 孫正義氏は、アーム買収に対して相当の準備をして臨んでいる
ことは確かです。当時のメイ新首相とは、電話で会談して了解を
とっていますし、アーム側のいくつかの条件も飲んでいます。こ
れは推測ですが、英国政府レベルも含めた次の3つの条件を了承
していたことは確かです。
─────────────────────────────
       1.現行経営陣を信頼し維持する
       2.本社は英国から移動させない
       3.現在の雇用を守り、維持する
─────────────────────────────
 2018年7月に東京都内で開催された「ソフトバンク・ワー
ルド/2018」において、孫正義氏は基調講演のなかで、アー
ムについてふれています。そのときのレポートの一部です。
─────────────────────────────
 今回の講演は「AI」づくしだった。孫氏は未来予想図として
今後「AIによってあらゆる産業が再定義される」とし、「AI
のトップランナーである注目企業をグループに迎え入れるAI群
戦略」の方針を打ち出した。
 「パソコン」「インターネット」「モバイルインターネット」
が情報産業として社会を変革してきたが、今後は「AI」が牽引
していくだろうという予測を立てた。その上で、エッジ側とクラ
ウド側の両方でAIの潮流が起こるとした。「エッジ」側で現在
既に普及しているデバイスは「スマートフォン」だが、スマート
フォンに100%組み込まれているチップとして、2016年グ
ループに加えた「ARM」社をあげた。https://bit.ly/2jXiogX
─────────────────────────────
 アームの話をしているので、ついでに述べると、PCのCPU
とスマホやタブレットのCPUは、基本的には違うのです。その
違いを明確にするには、相当紙面が必要になるので、詳しくは述
べませんが、基本的なことだけ次に述べておきます。
 スマホのCPUは、CPUというよりも、「SoC」と呼ぶべ
きなのです。
─────────────────────────────
 ◎SoCとは何か
  System on a Chip  チップ上にあらゆるパーツを搭載し
  たプロセッサである。
─────────────────────────────
 CPUというのは、単独でシステムを動かせません。CPU以
外に、映像を担当するグラフィックボード、記憶領域としてのハ
ードディスク(HDD/SSD)、そしてメインメモリ、これら
のパーツを統合するマザーボードなどが必要です。
 しかしスマホや家電の場合、とにかく端末が小さいので、PC
のように、すべてセットとすることは困難です。そこで、システ
ムを動かすために必要なパーツを、あらかじめまとめて作ってし
まったのです。
 スマホ向けの「SoC」の一つに、クアルコム社製の「スナッ
プドラゴン835」というのがあります。そこには、次の4つが
パーツとして、すべて内蔵されているのです。
─────────────────────────────
     ◎スナップドラゴン835/Snapdragon 835
      CPU
      GPU
      チップセット
      WiFi
─────────────────────────────
 アームは、こういう細密な半導体設計を実に見事にやってのけ
る高度な技術を有しています。したがって、半導体を制作するメ
ーカーとしては、アームの設計に頼らざるを得ないのです。それ
はインテルですら、例外ではないのです。
 もちろん、ファーウェイもアームの半導体設計に大きく依存し
ています。ファーウェイの任正非CEOは、表面上強気を装って
いますが、アームがファーウェイとの取引停止を決めたことには
相当なショックを受けているはずです。
              ──[中国経済の真実/082]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイ/ARMライセンス停止で危惧「未来の分断」
  ───────────────────────────
   ARMは、SoCはやCPUそのものを出荷する企業では
  なく、製造に必要なアーキテクチャを供給する企業だ。クア
  ルコムやアップル、そしてファーウェイらは、ARMから、
  ライセンスを受けたアーキテクチャに基づき、オリジナルの
  SoCを作っており、半導体そのものはそれぞれ別。だが、
  アーキテクチャは同じであるためソフトには互換性があり、
  同じように使えている。
   ファーウェイは自社スマホ、特にハイエンド製品では、自
  分達が開発・生産するオリジナルSoC「キリン」シリーズ
  を使っている。生産と設計を担当しているのは、ファーウェ
  イの子会社であるハイシリコン。だから、SoCという製品
  を海外から直接輸入しているわけではないので、今回の制裁
  にも関係はないだろう・・・。初期にはそんな風に考える関
  係者が多かった。筆者も、そう思っていた。だが、ARMが
  ライセンス供与を停止するという報道が流れたことで、この
  前提が崩れるのでは・・・という考え方も生まれた。
   現実問題どうなるのか?
   ARMやファーウェイのコメントからは正確なところが読
  み取りづらいが、一般論としては以下のような流れだろう、
  と想定できる。ARMは多数のアーキテクチャをライセンス
  供与しているが、ファーウェイは、最新の「ARMv8」ア
  ーキテクチャのライセンスを受け、「キリン」などを製造し
  ている。            https://bit.ly/2lvfIaY
  ───────────────────────────

先見の明のある経営者/孫正義氏.jpg
先見の明のある経営者/孫正義氏
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2019年09月06日

●「ソフトバンクを警戒する米国政府」(EJ第5084号)

 こんな話があります。米国政府は、中国の通信機器メーカーに
厳しい措置に踏み切るさい、とくにソフトバンクグループに対し
て厳しい警戒の目を向けたそうです。なぜなら、ソフトバンクは
中国系最大のIT企業アリババの筆頭株主であり、ファーウェイ
とは業務提携して、4Gのときから同社の基地局を採用、設備投
資の約10パーセントがファーウェイとZTEの機器購入に充て
られていたからです。また、ソフトバンク・ホークスは、ファー
ウェイがスポンサーになっており、選手の帽子にはファーウェイ
のロゴマークが入っているほど親ファーウェイ企業だからです。
 2018年12月6日にカナダで孟晩舟副会長が逮捕されたと
いうニュースが入ると、日本政府は、10日、直ちにファーウェ
イを念頭に、次の申し合わせを決定しています。
─────────────────────────────
 IT調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続
 に関する申し合わせ
  第4項:契約方式
   総合評価落札方式や規格競争等、価格面のみならず総合
   的な評価を行う契約方式を採用する。
                      ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 役所言葉で、わかりにくい表現ですが、要するに「価格が安い
からといって(ファーウェイ製品の)入札を決めてはならない」
という通達であり、「ファーウェイ製品を使うな」という申し合
わせです。これが出ると、NTTドコモ、KDDI、楽天は、直
ちに、ファーウェイの訣別を決め、次々と発表しています。
 しかし、この時点でソフトバンクは、態度を表明していない。
ソフトバンクは、12月19日に株式上場を控えており、実に嫌
なタイミングであったからです。それにもうひとつ、ソフトバン
クにとって気になることもあったのです。それは、不可解な通信
トラブルの発生です。2018年12月6日の午後に、ソフトバ
ンクの通信回線は突然不通になり、日本中で大混乱になったので
すが、その日の午前中に孟晩舟副会長が逮捕されたというニュー
スが入っています。この2つに何らかの関係があるのではないか
という情報がソフトバンクに入ったのです。
 通信トラブルの原因は、表面上はソフトバンクがパケット交換
機に使っているスウェーデンの大手通信機器メーカー、エリクソ
ンのマシンの不具合になっていますが、何らかの方法で、米国が
ソフトバンクの通信を停止させ、ソフトバンクに「ファーウェイ
を使うな」という警告を発したという説が出てきたのです。
 これに対して、既出の近藤大介氏は、その説を肯定はしないも
のの、次のように述べています。
─────────────────────────────
 私がこの時、思い起こしたのは、1991年の湾岸戦争開戦の
日のことだった。アメリカはイラクを攻撃するにあたって、自国
を除く世界中のGPS(全地球測位システム)をストップさせた
のだ。そのため日本のシステムも大混乱に陥った。あの時、アメ
リカはいざとなれば何でもできるし、かつやってしまう国なのだ
と再認識した。同様に、あまりにファーウェイに近づきすぎてい
るソフトバンクに、警告を発したのではないか。ソフトバンクは
直後の12月19日に株式上場を控えていたから、これ以上の抵
抗はできず、白旗を揚げたというわけだ。
                ──近藤大介著の前掲書より
─────────────────────────────
 まして、ソフトバンクグループは、傘下にアームを子会社とし
て保有しており、ある意味において、ファーウェイの生殺与奪の
権を握っている企業であるので、米国が強権を発動したのではな
いかとも考えられます。
 12月6日、いきなりアイフォーンがネットに接続できなくな
り、どうしても正常化しないので、私は自分のマシンが故障した
のではないかと思ったことをよく覚えています。まさか、米国に
よるソフトバンクへの警告だったとは・・・。
 ところで「金盾」(きんじゅん)という言葉をご存知ですか。
 「金盾」とは、中国で国家が政策として運用しているインター
ネット検閲・規制システムのことです。中国において金盾は、海
外と国民の間に立ちふさがる”電脳版万里の長城”と呼ばれてい
ます。中国では、グーグルでの検索はできないし、Gメールは開
けない。また、ユーチューブで動画を見ることも、フェースブッ
クで友達の日記をながめることも、LINEで連絡を取ることも
できないのです。息苦しくありませんか。すべては、金盾がそう
いう情報をすべて遮断しているからです。
 それでいて、トランプ米大統領が訪中している間は、グーグル
やツイッターは正常に機能したそうです。情報を遮断しているこ
とを米国の大統領に実感して欲しくなかったものと思われます。
 中国は、国家であらゆる情報を管理しています。新聞、雑誌、
テレビはもちろんのこと、携帯電話の通話内容、SMS(ショー
ト・メッセージ・サービス)、メールに至るまで、およそすべて
のメディアは国家によって管理されています。それは、中国人だ
けでなく、中国への観光客や、中国に住む外国人にも適用される
のです。とくに2016年から2017年にかけて、中国が成立
させた次の2つの法律に大きな問題点があります。
─────────────────────────────
        1.サイバーセキュリティ法
             2016年11月
        2.      国家情報法
             2017年 6月
─────────────────────────────
 これら2つの中国の国内法は、他国から見ると、中国人や中国
企業はいつでもスパイやスパイ組織になれるということを示して
います。          ──[中国経済の真実/083]

≪画像および関連情報≫
 ●華為技術、SBホークスの主要スポンサーから外れる
  ───────────────────────────
   中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)が今季
  から、ソフトバンクグループが保有する、福岡ソフトバンク
  ホークスの主要スポンサーから外れた。昨年まで3年連続で
  務めていた。ユニホームやキャップ、ヘルメットなどに自社
  のロゴを入れる主要スポンサーは4社あり、ファーウェイ・
  ジャパン端末統括本部の硲夏希広報担当によると、今年はそ
  のいずれにも入らない。2016〜18年シーズンは、ホー
  クスの選手が帽子に「HUAWEI」の赤いロゴを付けて試
  合に出場していた。19年シーズンは29日に開幕する。
   ファーウェイの硲氏は主要スポンサーに入らなかった理由
  について、「ソフトバンクとの協議の中で最良の選択をした
  結果」と述べた。一方、球場内の電光掲示板に広告を出すな
  ど、引き続き球団を支援していくと言う。
   通信子会社のソフトバンクは、ファーウェイの基地局設備
  を採用し、次世代通信システム(5G)で共同開発や実証実
  験も行う関係だが、米中貿易摩擦が過熱する中、ファーウェ
  イ副会長が逮捕され、日本でも同社製品の使用を取りやめる
  動きがある。ソフトバンクGの孫正義社長は2月の決算会見
  で通信設備入れ替えの可能性に言及、5Gの移動通信システ
  ムは安定性やコストの面から総合的に判断すると述べた。
                  https://bit.ly/2JBcb5z
  ───────────────────────────

ソフトバンクホークスの帽子に華為技術のロゴマーク.jpg
ソフトバンクホークスの帽子に華為技術のロゴマーク
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2019年09月09日

●「華為技術は本当に信用できるのか」(EJ第5085号)

 9月3日のことです。ファーウェイは、日本政府に対して、あ
る提案をしています。どういう提案かというと、「5G」関連の
通信機器などに搭載されているソフトウェア(ソースコード)の
内容を開示するので、検証して欲しいというものです。ソースコ
ードとは、プログラムの設計図のようなものです。
 ファーウェイは、すでに英国やオーストラリアなどで、製品の
ソースコードを公開しています。オーストラリアは、ファーウェ
イを5G市場から明確に締め出しましたが、英国をはじめとする
欧州では、その採用の是非について目下検討中です。一般的にい
われているほど、米国によるファーウェイの排除要求に対して同
盟国は一枚岩ではないのです。
 まして、日本は、アームを傘下に持つソフトバンクグループを
有する国であり、これまでファーウェイとは、相互依存の関係に
あります。ファーウェイにとって日本は、一番味方になって欲し
い国です。しかし、日本は、既に2018年12月の時点で政府
調達では、ファーウェイだけでなく、中国の通信機器を排除する
ことを決めています。そのため、今回のファーウェイの提案に対
し、9月5日、菅官房長官は、ファーウェイからソースコードの
提供があったことを認めたうえで、次のように述べています。
─────────────────────────────
 現時点で政府は、特定企業の製品のソースコードを検証してお
らず、同社の提案に何らかの対応を行う予定はない。
                      ──菅官房長官
          2019年9月6日付、日本経済新聞より
─────────────────────────────
 ここで、基本的なことを考える必要があります。ファーウェイ
の製品には、本当に問題があるのか、本当に技術を盗んでいるの
かどうかということです。
 「テカナリエ」と企業があります。日本の企業ですが、会社名
は、次の英語をそのまま読んだものです。
─────────────────────────────
 ◎“Technology analyze for everyone”=テカナリエ
  研究解析調査会社。半導体の設計・開発、解析、マーケッ
  トなど、専門分野の経験豊富なメンバーで構成。代表取締
  役CEOは清水洋治氏。    https://bit.ly/2lGVD1d
─────────────────────────────
 2018年12月17日、このテカナリエは、ファーウェイの
当時の最新スマホ「Mate20 Pro」を分解した結果を次のように公
表しています。「余計なもの」が入っていないか調べたのです。
─────────────────────────────
 全ての半導体チップが存在する領域を細かく、1個1個チェッ
クを行ったが、「余計なもの」は全く存在しなかった。「余計な
もの」という言い方が適切かどうかは分からないが、余計なもの
を具体的に教えて欲しいくらいである。通信部には米国のパワー
アンプが並ぶだけである。センサーはドイツ製、日本製ばかりで
ある。メモリは韓国製。ここに全てのチップを並べて見せたいく
らいである。技術面ではお互いがリスペクトし合い、競争し合い
より良いものを作ることにいそしんでいると思えてならない。こ
うした素晴らしい技術が停滞しないことを望むばかりである。
 「Mate20 Pro」を隅から隅まで観察したが、「余計なもの」は
一切存在しなかった、ということをあらためて強調しておく。む
しろ「Mate20 Pro」は、研ぎ澄まされ、洗練された2018年最
高のスマートフォンの一つであったと結論付けたい。
                      ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 テカナリエのCEOの清水洋治氏については、中国分析の第一
人者である遠藤誉氏も「日本の第1級の専門家」として自著で紹
介していますし、EJでも取り上げています。
 問題は法律です。なかでも、9月6日のEJ第5084号で指
摘した2つの法律(サイバーセキュリティ法/国家情報法)がき
わめて問題なのです。
 サイバーセキュリティ法は、別名「インターネット安全法」と
呼ばれています。何が安全なのかというと、中国から見て、中国
共産党にとって「安全」であるという意味です。
 この法律は、中国では、国内企業、外資企業にかかわらず、イ
ンターネット関連商品およびインターネットサービスを中国の基
準に適合させることが求められます。具体的にいうと、中国国内
でネットワークを運営したり、使う場合、それによって収集され
た個人情報やデータは、中国国内に保存されなければならないと
いうのです。しかも重要データは、原則国外に移転できないし、
「重要」の定義もはっきりしていない。データの海外持ち出しに
は、中国当局の安全審査が必要になります。しかし、年1回は、
中国当局の検査や報告などが義務付けられています。中国支社か
ら本社に送るデータもその対象になります。これでは、企業の機
密情報はすべて中国に吸い上げられることになります。
 もうひとつの国家情報法は、既に説明しているように、中国の
すべての団体や市民に対して、情報当局による調査への支援や協
力を義務付けるものです。ファーウェイは、この法律の存在にも
かかわらず、「絶対に情報は国に漏らさない」と強弁しています
が、国家から情報の提供を求められれば、中国国民として、提供
せざるを得なくなるはずです。
 中国側は、国家情報法への懸念について、国家への情報提供に
ついては、この法律の第8条で「人権を尊重、保障し、個人や組
織の合法的利益を守らなければならない」としていると反論して
いますが、何しろ共産党の指導が憲法の上位にある中国のことで
すから、すべては中国共産党によって恣意的に解釈されてしまう
ので、反論になっていない。中国に「人権尊重」といわれても、
とても信用できるものではないのです。
              ──[中国経済の真実/084]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイのスマホは“危険”なのか/山田敏弘氏
  ───────────────────────────
   米紙「ウォールストリート・ジャーナル」は先日、米国が
  中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の製品を
  使わないよう友好国に要請していると報じた。日本でもこの
  ニュースは大きく取り上げられた。
   実はこの問題、欧米の情報機関関係者やサイバーセキュリ
  ティ関係者の間で、以前から取り沙汰されてきた。筆者もこ
  のニュースについては注視しており、これまでもさまざまな
  媒体で何度も記事を書いてきた経緯がある。
   国内外の知人らと話していると、ファーウェイの商品が、
  「安価でハイスペックな機器である」と評価する人たちも多
  い。先日仕事で訪れた、中国と複雑な関係にある台湾でも、
  IT関係者は「賛否あるが、コストパフォーマンスの良さは
  否定できない」と言っていたのが印象的だった。日本でも、
  最近ファーウェイのタブレットを購入したという日本人のテ
  レビ関係者から、「品質は申し分ない」と聞いていた。事実
  日本の「価格コム」でスマートフォンランキングを見ると、
  ファーウェイのスマホが1位、タブレットでも3位につけて
  いる(11月27日時点)。
   とはいえ、このテレビ関係者はニュースを見ていて不安に
  なるという。仕事柄、いろいろな情報を扱うこの関係者は、
  中国政府系ハッカーなどによるサイバー攻撃でスパイ行為に
  さらされる危険性があるのではないか、と心配していた。こ
  こまでとは言わないでも、同じように気になっている人も少
  なくないだろう。        https://bit.ly/2WWesvo
  ───────────────────────────

テカナリエ/清水洋治CEO.jpg
テカナリエ/清水洋治CEO
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2019年09月10日

●「米中貿易戦争は米中価値観の衝突」(EJ第5086号)

 9月6日、韓国国会では、法相候補のチョ・グク氏の適性審査
が行われましたが、その審査会の開催中にチョ・グク氏の妻であ
るチョン・ギョンシム韓国東洋大教授が、私文書偽造で、突然在
宅起訴されたのです。7日の午前0時に時効が迫っていたからで
す。娘が同大学の総長賞を受けたと申請し、他大学の大学院に無
試験入学している件につき、総長賞はウソで、妻が偽造したもの
であることが判明したのです。この件で、チョ・グク氏自身も、
東洋大学総長と電話で話しており、無関係ではありません。
 疑惑は、他にもたくさんあり、いずれも、良心のかけらもない
ものばかりで、まして法を預かる法務大臣には不適任です。それ
でもチョ・グク氏は、法相候補を下りるつもりはなく、文大統領
も、何があろうと法相に任命する構えです(本稿執筆当時)。こ
れまでもそうしてきているからです。
 6日の世論調査会社「リアルメーター」の調査では、チョ・グ
ク氏の法相任命についての賛否は次の通りです。
─────────────────────────────
       任命賛成 ・・・・ 40・1%
       任命反対 ・・・・ 56・2%
         ──世論調査会社「リアルメーター」の調査
─────────────────────────────
 驚くのは、それでもチョ・グク氏の「任命賛成」が40%もい
ることです。日本ならあり得ないことです。やはり、日本人と韓
国人では価値観が異なるようです。
 ファーウェイは「わが社の通信機器のどこに問題があるのか。
ハードウェアもソースコードもすべて公開するから、問題がある
なら、指摘してくれ」と米国をはじめ、世界に訴えています。実
際に調べてみても、問題は発見されていないことは既に述べてい
る通りです。それなら、なぜ排除するのか。ファーウェイからす
ると、大いに不満であると思います。
 中国事情に詳しいジャーナリストの福島香織氏が、中国と日本
の比較論で、面白いことをいっています。
─────────────────────────────
 中国は、時代の流れが日本の3倍ぐらい速い。つまり、日本が
100年かけて歩んできた道を30年ぐらいで進んできたわけで
す。たとえば、日本ではさらし首のような残酷なことが行われて
いた時代から、すでに100年以上(100年どころではないで
すね)が経っていますが、中国ではつい30年ぐらい前まで公開
処刑があってそのような時代感覚で見ている。中国は文化大革命
や天安門事件で、残酷で野蛮なことをしたと言うと、日本だって
磔獄門やさらし首をやったでしょうと、日本の100年ぐらい前
のことと同じ感覚で見ているのです。──渡邊哲也/福島香織著
     『中国大自滅/世界から排除される「ウソと略奪」の
                中華帝国の末路』/徳間書店
─────────────────────────────
 もっとも日本には民主主義という基本があって、普通選挙が行
われるし、報道の自由もあるので、弾圧や虐殺があれば直ちに報
道されて大騒ぎになり、そういうことは行われないのに対して、
中国では、現在でも中国共産党が軍隊もメディアも握っており、
報道の自由もなく、情報が完全に遮断されているので、相当ひど
い人権弾圧をしても、表沙汰にならないのです。これは、価値観
の相違といえます。
 結局米国は、こういう価値観の国である中国をWTOに参加さ
せ、自由社会、自由経済のなかに組み込んでしまったのです。そ
うすればきっと中国は、自由主義国家に体制変換をするだろうと
甘く考えたのです。しかし、中国は、体制変換どころか、それに
よって得た富を体制を強化させることに使い、世界第2位の経済
大国として、経済面でも、軍事面でも、科学技術面でも、米国に
迫る存在になりつつあります。これは、米国にとって誤算であり
大失敗であったといえます。
 つまり、いま米国と中国との間に起きていることは、中国のイ
デオロギー、秩序、華夷思想に対して、西側の既存のスタンダー
ド、それも米国がつくり上げた思想や価値観とのせめぎ合い、ヘ
ゲモニーの争いといえます。まさに価値観の衝突であり、文明の
衝突でもあります。
 米国の考え方は、「ペンス演説」に明確にあらわれています。
これは、トランプ大統領の考え方というよりは、米国議会のそれ
です。米中貿易戦争における中国は、米国にとっていみじくも投
資家、ジョージ・ソロス氏のいう「中国は開かれた自由社会の最
も危険な敵」であり、米国の絶対優位を脅かす国なのです。福島
氏の指摘する「ペンス演説」の本質です。
─────────────────────────────
 ペンス演説では、中国が、製造業高度化戦略として掲げている
「中国製造2025」について、ロボット工学、バイオテクノロ
ジー、AIなどの世界の先端産業の支配を目指すものだとし、軍
事技術を含む米国の技術の大規模な窃盗であると断罪しました。
中国をジョージ・オーウエルの小説「1984」のような監視国
家を作り、宗教を弾圧する自由社会の敵と位置づけました。
 習近平政権が掲げる、経済一体化新シルクロード構想「一帯一
路」戦略はアジア、アフリカ、ヨーロッパからアフリカに至るま
で各国を借金漬けにし、政治にも干渉するようになっていると批
判しました。さらに米国のジャーナリズムやアカデミズム、映画
や企業、官公庁に中国が金を使って操り、プロパガンダを流し、
次の大統領選にも影響を与えようとしている、と、危機感を示し
ました。こうした中国の世界支配の野望から米一国の民主主義を
守るために断固戦う姿勢をペンスは打ち出し、一部メディアから
は、米国の中国に対する宣戦布告″という見出しもつけられま
した。                   ──福島香織著
   『習近平の敗北/紅い中国・中国の危機』/ワニブックス
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/085]

≪画像および関連情報≫
 ●米中貿易摩擦とテック・ウォーが本質的に異なるワケ
  ───────────────────────────
   米中貿易摩擦で米国が問題視しているのは、知的財産権保
  護の不十分さ、国営企業優遇、補助金供与など中国の不公正
  です。対してテック・ウォーは、中国企業による米国企業に
  対する技術移転の強要、米国企業買収時の不適切な技術移転
  など、安全保障上の問題を指摘しています。米国では、中国
  製の通信機器を使うことに安全保障上の問題があるという考
  え方が強まっています。その意味で、テック・ウォーは軍事
  ・ハイテクの安全保障を含む覇権戦争といえます。
   テクノロジーのほとんどの分野で米国が圧倒的に強いのは
  間違いありません。しかしながら、中国が不正・不適切な手
  段でハイレベルな情報技術を集め、米国を抜き去る事態だけ
  は避けたいと思っています。だから、世界の製造大国を目指
  すという政策「中国製造2025」を目の敵にしているので
  す。公正な技術競争であれば仕方ないのですが、そうでなけ
  れば関税や取引禁止などで制御せざるを得ない、といった考
  えが米国のテック・ウォーの背景にあると考えられます。
   中国が5G(第5世代移動通信システム)などで強みを持
  つといわれますが、まだ技術立国とはいえないようです。中
  国を代表する上海/深センCSI300指数の業種構成比を
  みると、300銘柄のうち情報技術関連は34銘柄で、指数
  全体の時価総額比率では10%もありません。
                  https://bit.ly/2k9sZ8O
  ───────────────────────────

マイク・ペンス米副大統領.jpg
マイク・ペンス米副大統領

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2019年09月11日

●「なぜ韓国と上手に付き合えないか」(EJ第5087号)

 9月6日には、韓国に関連して、いろいろなことが起きていま
す。韓国もこんなことをいつまでもしつこく続けていると、本当
に日韓両国は後戻りできないところにきてしまいます。
─────────────────────────────
【ソウル共同】韓国のソウル市議会は6日、特定の、日本企業を
「戦犯企業」と定義し、市などが今後その企業の製品を購入しな
いよう努力義務を課す条例案を可決した。同日午前にも釜山市議
会で同様の条例が可決されたばかり。菅義偉官房長官は6日の記
者会見で「不適切、不合理な主張に基づき不当に非難し、経済的
不利益を及ぼす内容で、極めて遺憾だ」と強く反発した。
 韓国を代表する2都市で成立したことにより、全国でも相次ぐ
とみられる。今後どのように運用され、日本への影響がどうなる
かは不透明だ。韓国紙、朝鮮日報によると、ソウル市は条例に反
対の立場を示しているとされる。        ──中日新聞
                  https://bit.ly/2kxSS24 ─────────────────────────────
 どうして韓国は、過去のことを何度も蒸し返すのかについては
朝鮮文化の基調をなす「恨」の思想によるものであるという人が
います。単なる恨み、辛みではなく、悲哀、無念さ、痛恨、無常
観、優越者に対する憧憬や嫉妬などの感情をいいます。
 詳しくは、よくわかりませんが、この思想は、儒教にも関係が
あるといわれています。どうしてこのような思想が生まれるのか
というと、それは、韓国という国が、日本を含む多くの国によっ
て支配された歴史があるからです。これは、中国にも通じるもの
があるといえます。中国問題を考えるとき、儒教については考慮
に入れる必要があります。
 その点、日本は島国であって、どこかの国から支配されたこと
がほとんどない国です。終戦後にGHQに占領された7年間ぐら
いのものです。私などは、その時代に生きてきているので、よく
わかりますが、支配されたといっても、支配者である米国にマイ
ナスの感情をもっていないです。そのせいか、日本は、他国の文
化を取り入れるのにあまり抵抗というものがない。こういう日本
人の特性について、渡邊哲也氏と福島香織氏は、共著の対談本で
次のように述べています。
─────────────────────────────
渡邊:基本的に日本というのは多神教社会で、もともと神道とい
 うのは、全てのものに神が宿るという考え方です。ですから、
 日本人ほどいろいろな異文化を取り込みやすい文化はないので
 しょう。たとえば、12月24日にキリスト教を祝って、12
 月31日になるとお寺に行って除夜の鐘を聞いて、元旦は神社
 に行って神様に祈っています。最近では、ハロウィンまで取り
 込んでしまう。
福島:八百万の神というのは、相当奔放で、恋愛もするし喧嘩も
 する。人間臭い神さまたちで、結構、大らかですよね。そこに
 儒教が渡ってきましたが、日本人は全部まるごと受け入れるの
 ではなくて、自分たちの得になるものとならないものを分けて
 取捨選択しました。儒教の良いところというのは、たとえば孝
 とか徳とか、親孝行とか、年長者を敬うとか、礼節を持てとか
 そういう部分は結構入れましたが。──渡邊哲也/福島香織著
     『中国大自滅/世界から排除される「ウソと略奪」の
                中華帝国の末路』/徳間書店
─────────────────────────────
 上記の福島氏の言葉に、日本人は「儒教の良いところを取り入
れている」というのがあります。「長幼の序」などは、真っ先に
取り入れています。長幼の序とは、年長者と年少者の間にある秩
序のことです。このことに関連して、電車に設けられている「優
先席」の話があります。
 昔の電車に「優先席」はありませんでしたが、老人や障害者な
どが電車に乗ると、必ずといってよいほど、席を譲る人が現れた
ものであり、「優先席」のようなものは、必要なかったのです。
これは「道徳」であり、単に社会の規準に従うというだけではな
く、これを「自発的に行なう精神」と捉えています。日本には間
違いなく「道徳」があったのです。
 これに対して「モラル」という言葉がありますが、これによっ
て優先席は設置されたといわれます。これは「その社会の規範」
であると同時に、「その社会に対する姿勢」という意味合いが含
まれます。いわば「ルール」のようなものと考えるべきです。
 しかし、優先席が設けられると、優先席以外の席では老人や障
害者が前に立っても、平然として席を譲らない若者が多いのは確
かですが、それでも席を譲る若者もたくさんいます。これは家庭
での教育に関係していると思います。
 それどころか、優先席に若者が座って動かないケースもよくあ
ります。スマホを操作するには、座っていた方が操作しやすいか
らです。彼らは、そこが優先席であるかどうかより、空いている
かどうかで座るのです。かつての道徳は消えているようです。
 私もよく電車に乗って出掛ける老人の一人ですが、席を譲られ
るのが嫌であり、申し訳ないので、座れる電車を選んで乗ること
にしています。急行に乗らず普通に乗るとか、それでも混んだ電
車に乗るときは、なるべく優先席の前には立たないようにするな
ど、席を譲られる状況を避けて乗っています。
 そもそも中華思想では、中国が世界の中心(華のあるところ)
であって、中国を兄とするなら、朝鮮はその弟分の「小中華」、
日本などは「東夷」という蛮族として位置づけられています。そ
のため、朝鮮の人は、中国からの距離によって、日本をひとつ下
に見る傾向があります。儒教の考え方です。日本では、とても受
け入れられない考え方ですが、中国や韓国と付き合うときは、そ
ういう考え方を相手が持っていることも、念頭におく必要があり
ます。日本は、独自の価値観や思想がありながら、西側の価値観
に馴染んでしまっていますが、韓国や北朝鮮は、まだ馴染めてお
らず、小中華のままです。  ──[中国経済の真実/086]

≪画像および関連情報≫
 ●買ってはいけない「儒教本」お粗末な中身/古谷経衛氏
  ───────────────────────────
   そもそもこの「小中華思想」の解釈が間違っている。韓国
  が持つと「される」小中華思想とは中国をナンバー1と捉え
  て、半島がその次、日本がその下という秩序ではない。17
  世紀中葉、漢民族の国・明朝が滅亡して満州族の王朝清が勃
  興すると、東アジアの華夷秩序は崩壊した。華夷秩序は漢民
  族の王朝を頂点とした国家の上下関係を指すので、その中心
  である明(みん)が滅べばこの秩序は機能しない。
   大陸における明朝から清朝への王朝交代――これを「華夷
  変態」と呼ぶ――によって、華夷秩序をけん引する正統なる
  後継者は明朝の属国であった朝鮮に移った。したがって朝鮮
  こそが明朝亡き後の華夷秩序の後継者である。これが「小中
  華思想」の正しい解釈である。
   つまり「小中華思想」とは、朝鮮こそが世界の一等国とい
  う発想なのである。それなのに、「中国1番、半島2番、日
  本3番」というネット上の間違った歴史解釈を、この本は疑
  うことなくそのまま転写している。「小中華思想」に基づく
  韓国一等主義は、現代においては「高句麗論争(朝鮮半島北
  部と満州の一部を支配した高句麗が、朝鮮民族の王朝だとす
  る韓国側歴史学者と、それを否定する中国側学者の論争)」
  などにも顕著に見て取れるが、そういった海外の歴史論争の
  時事についても、著者の疎さが伺える。全般としては、高校
  程度の日本史、東アジア史の把握も正確にできているかどう
  か疑わしい。          https://bit.ly/2lJYdU8
  ───────────────────────────

日本製品の不買条例/ソウル市議会.jpg
日本製品の不買条例/ソウル市議会
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2019年09月12日

●「日本と中国のモノ作りの発想の差」(EJ第5088号)

 過去の歴史において、他国からあまり侵略されたことのない日
本では、中国や朝鮮と違って、卑屈な性格やコンプレックスがな
いので、どのような文化も受容して、自分のものにする力があり
ます。しかも、自国にとってプラスのもののみを受け取れる判断
が日本人はできるのです。
 したがって、儒教が入ってきても、天命思想や華夷思想、易姓
革命、科挙制度といった儒教的な支配の論理・思想は入れず、孝
とか、徳とか、親孝行とか、長幼の序とか、礼節を持てとか、そ
ういう部分はしっかりと取り入れています。こういうところが、
日本の優れている点であるといえます。
 これに対して、中国について、福島香織氏は、次のように述べ
ています。
─────────────────────────────
 中国人は、モンゴル帝国、元のように、「夷秋」と呼んで蔑ん
でいた異民族たちに支配された時代が、もっとも中国が繁栄し、
高度な文明が築かれたものだから、ものすごくコンプレックスを
抱いている。だから、元の後に漢民族の明が成立したときに、漢
民族がいちばん偉いということを強調した。東洋史学者の岡田英
弘氏によると、コンプレックスの裏返しみたいなものが中華思想
や華夷思想なのだそうです。そういうふうに考えると、日本は異
民族に支配されたことがないから、まったくコンプレックスとい
うものがない。          ──渡邊哲也/福島香織著
     『中国大自滅/世界から排除される「ウソと略奪」の
                中華帝国の末路』/徳間書店
─────────────────────────────
 日本がどのような文化でも受け入れ、自分のものにできる力の
典型に料理があります。日本は、世界中の料理が食べられる国と
して有名です。カレー、スパゲッティー、中華料理、ドイツ料理
フランス料理、韓国料理、ロシア料理など、何でもあります。し
かも、それらをすべて日本人の口に合うよう、ジャパンナイズド
してしまっています。
 なかでも、典型的なものに「ラーメン」があります。ラーメン
は「拉麺」と中国表記するので、中華料理だと思う人は、多いで
す。確かに、ラーメンは中華麺とスープを主とし、様々な具(チ
ャーシュー、メンマ、味付け玉子、刻み葱、海苔など)を組み合
わせた麺料理であり、かつて「シナソバ」といっていた時期があ
ります。
 しかし、中国人が日本に来て何を食べたいかと聞くと「ラーメ
ン」と答える人が多いことは確かです。ラーメンは、もはやジャ
パンナイズドされた日本料理になっているのです。カレーライス
も完全に日本独特の料理です。料理について、日本の特徴的な点
を福島香織氏は次のように指摘しています。
─────────────────────────────
 料理の話を言うと、日本で特徴的なのが、さまざまなジャンル
の料理を出す店がある一方で、数種類の料理に特化している専門
店も多いことです。鰻屋と言ったら鰻しか出さない、うどん屋と
言ったらうどん、蕎麦屋と言ったら基本的に蕎麦だけ。それでも
一流店がいくつもあって、店が運営できるということが、中国人
にとっては驚きです。
 つまり何か一つのものに対するこだわりがすごい。食べ物だけ
でなく、ほかの分野でもそういうところがあります。その専門性
に対して、リスペクトして究めていくというのも日本人的な部分
でしょう。100年続いている店や企業が中国にいくつあるか。
創業から150年以上の北京ダックで有名な全衆徳は、北京ダッ
クだけじゃ儲からない、ふかひれも鮑も出します。今ものすごく
赤字で、大変なことになっているようですが、いわゆる老舗とか
100年続いている会社とかは、中国にはほとんどありません。
           ──渡邊哲也/福島香織著の前掲書より
─────────────────────────────
 日本のラーメンは、中国の麺料理の中華麺とスープという構成
をベースに、そこに何かを加え、日本人の好みに合うよう、麺と
スープそれぞれに独自の工夫を加えて、作り上げたものです。そ
れが「日本ラーメン」として、世界的に人気のある麺料理に成長
しています。それでいて、その原点が中国であることに日本とし
ては何のこだわりを持っていない。だから、中国料理店のメニュ
ーに必ずラーメンはあります。
 しかし、中国は、スクラップ・アンド・ビルドの文化です。他
国から購入した完成品をバラバラにし、それを再構築していく過
程で、それがいかにも中国由来の製品であるかのように見せる力
はとても上手です。しかし、それらの完成品を構成している部品
例えばモーターであるとか、精巧なネジであるとか、金型である
とかなどを作る技術は中国にはないのです。その典型が中国の新
幹線です。根幹部分は、完全に日本の技術の盗用ですが、中国独
自の開発であるとして輸出までしています。
 問題は安全性です。日本は安全には、念には念を入れて作ろう
としますが、中国はきわめて大ざっぱです。作ってみて走らせて
みる。事故を起こして死者や怪我人が出たとしてもかまわない。
トライ・アンド・エラーでだんだん直していけばよいという考え
方です。人の命を非常に軽く考えています。しかも、そういうも
のを作る企業のほとんどは国有企業ですから、事故は公表せず、
隠蔽できるものは、隠してしまうのです。中国は全体主義国家で
すから、それができるのです。
 実は、AIやゲノム、宇宙技術などでは、人の命をあまり気に
せず、開発を進められる中国と、人命を何よりも大切にする米国
をはじめとする西側諸国とは大きく異なり、その点で西側諸国は
中国に猛追されているといえます。
 福音派で、プロテスタントのなかでも最も厳しく敬虔な流派に
属するペンス米副大統領は、その点は絶対に許せないとして、あ
の厳しい演説をしたのです。これが米中貿易戦争の核心です。
              ──[中国経済の真実/087]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の高速鉄道、気づいた各国が相次いでキャンセル
  ───────────────────────────
   日本が競合の末に敗れたインドネシアを始め、世界各国で
  破格の条件を提示し次々と高速鉄道計画の受注に成功した中
  国ですが、アメリカでは工事の中止が決定、その他の国でも
  同じような動きが出始めるなど、ここに来て暗雲が立ち込め
  ています。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴
  史、中国・韓国の真実」』の著者で評論家の黄文雄さんは、
  これについて「世界が中国のインチキぶりにようやく気が付
  き始めた結果」と一刀両断し、習近平政権がますます苦境に
  追い込まれることになるとの厳しい私見を記しています。
   このところ、中国の高速鉄道の輸出計画が次々と挫折して
  います。2016年6月8日には、ラスベガスとロサンゼル
  スを結ぶ高速鉄道の計画で、アメリカのエクスプレスウエス
  ト社が中国鉄道総公司との合弁解消を発表しました。
   この合弁は、昨年9月の習近平主席の訪米前に発表された
  ものです。今年の9月にも着工する見通しでしたが、エクス
  プレスウエスト社は合弁解消の理由として「中国企業がやる
  べきことを時間通りできていない」と計画の遅れが原因だっ
  たとしています。中国側は寝耳に水のことだったようで「無
  責任で契約違反だ」と批判していますが、もともと習近平主
  席の訪米の成果として強調するためにぶち上げたプロジェク
  トであった可能性も高く、むしろアメリカ企業のほうが中国
  企業の実態を見て危機感を持ったのでしょう。
            https://www.mag2.com/p/news/210774
  ───────────────────────────

日本式「ラーメン」.jpg
日本式「ラーメン」
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2019年09月13日

j●「中国の技術が急伸した理由は何か」(EJ第5089号)

 これまで中国は「技術がない国」といわれてきています。ひと
つ例を上げれば、まともなモーターひとつ作れない。この状況は
以前から変わっておらず、現在も同様の状況です。
 そのため、中国の自動車メーカーの多くは、三菱自動車のエン
ジンを使っているといわれます。また、世界一のモーター製造企
業である日本電産から、莫大な量の製品を仕入れています。した
がって、日本電産の中国への輸出量を調べれば、中国の経済の状
況が分かるといわれるほどです。米中貿易戦争が開始された昨年
秋以降、日本電産から中国への輸出量は大幅に減っています。
 その中国が、最近では、AIやゲノム開発、宇宙技術、スマホ
技術、ドローン技術などでは世界をリードしつつあります。とく
に宇宙技術においては、世界ではじめて月の裏側に無人ロボット
を着陸させ、世界を仰天させています。一体、中国で何が起きて
いるのでしょうか。
 これに関して、福島香織氏と渡邊哲也氏は、次のように議論を
展開しています。
─────────────────────────────
福島:中国のテレビでは、初の有人宇宙飛行成功とか、初めて月
 面の裏側に無人ロケットを着陸させたなど、いろいろ言ってい
 ますが、ある中国人技術者から、「あのロケットを一つつくる
 のに、いったい何人が死んでいるか知っていますか?」と聞か
 れたことがあります。「そういう報道はいっさいないけど、結
 構死んでいるのですか?」と尋ねたら、「死んでるに決まって
 いるじゃないですか」みたいなことを言う。
  つまり、ロケット打ち上げ成功の裏で、爆発ミスを何度も繰
 り返し、何人も死んでいるということなのです。しかし、ロケ
 ット発射実験などは砂漠のど真ん中でやっているので、誰も知
 らない。報道もしません。日本でそんな事故を起こしたら、も
 のすごく叩かれるし、下手をしたら、プロジェクト打ち切りと
 かになるでしょう。中国ではそれがない。
渡邊:一つの成功例があればいいんです。中国では失敗しないよ
 うにつくるのではなくて、とりあえずつくってみて、失敗した
 らつくりなおすというのが可能なのです。そのうえ、中国共産
 党がバックにいる。民間企業ではない。
福島:赤字や損失、利益のことなどは考えなくてもいい。
            ──渡邊哲也/福島香織著/徳間書店
     『中国大自滅/世界から排除される「ウソと略奪」の
                     中華帝国の末路』
─────────────────────────────
 このように、中国は倫理観、道徳観、人権意識がきわめて低い
国です。あの石原慎太郎氏がテレビの討論番組で、「シナは人口
が13億人もいるので、人が死ぬということを軽く考えている。
少しぐらい減ってもいいと思っている」とよくいっていましたが
人権に問題がある国であることは確かです。
 あまりEJでは取り上げたくない話ですが、「ウイグル人の臓
器強制提供」というおぞましい話があるのです。中国では、臓器
移植手術件数が年間10数万件あるといいますが、このなかには
ウイグル人の割合が高いといわれています。かつて中国は、「死
刑囚=臓器の提供者」という時代があったのですが、さすがに最
近では、国際的批判を気にして、死刑囚に臓器を提供させること
を禁止しています。しかし、2015年くらいまでは、公然と行
われていたことは確かです。その死刑囚で最も多いのが、ウイグ
ル人であるといわれています。次の数字をご覧ください。
─────────────────────────────
    ◎2017年度の統計
     ウイグル人自体の人口は中国全体の1・5%
     新疆公安当局の逮捕者の総数は 約23万人
     これは中国全体の逮捕者の21%であること
─────────────────────────────
 中国で、刑事事件の犯罪者として逮捕される数は、ウイグル人
が圧倒的です。この数字を見ると、明らかにウイグル人に偏って
います。犯罪者が多いということは、死刑囚も多くなり、臓器提
供者もウイグル人に集中しています。多くの検体が提供されれば
医学が進歩するのは当然です。ペンス米副大統領が演説でいって
いるのは、そういう国が覇権国になることだけは、絶対に許せな
いということなのです。
 聞くに堪えない話ですが、中国の監獄内で死刑囚の世話をして
いた人から聞いた話として、福島香織氏は、そのおぞましさを次
のように述べています。
─────────────────────────────
 死刑囚たちは、いつ死刑が執行されるかわかりません。ですが
そろそろ誰かの死刑が執行されるなというサインがあるのです。
それがドナー適合を調べる血液検査です。この検査が行われると
2週間から1ヶ月後くらいに死刑が行われる。つまり、死刑と移
植手術のタイミングを合わせるのです。そのことを死刑囚も知っ
ているため、検査の段階でみんな半狂乱になるそうです。2週間
から1ヶ月、いつ死刑が執行されるかわからない、という恐怖に
さいなまれて自殺してしまうこともある。(中略)
 臓器をとられることは、死刑囚にとっては恐怖なのです。泣き
叫び、死を願う。食事を拒否するので、歯を割って流動食の管を
入れなければならなかったりする。地獄だったそうです。
           ──渡邊哲也/福島香織著の前掲書より
─────────────────────────────
 そういう倫理観のない国、道徳心が欠如している国が世界の覇
権国になったら何が起きるでしょうか。しかも、多くの技術がサ
イバー攻撃によって窃取されている。そんなことは、絶対に許さ
ないと、ペンス米副大統領は、米国を代表して厳しく糾弾してい
ます。この価値観の異なる中国という存在は、実にやっかいな存
在であり、これに関して世界はしっかりと、向き合う必要があり
ます。           ──[中国経済の真実/088]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の『臓器移植ビジネス』驚愕の実態と新事実
  ───────────────────────────
   英国のロンドンで開かれている「中国の強制臓器収奪に関
  する民衆法廷」で、中国の驚くべき実態が明らかになった。
  昨年末の第1回公聴会での民衆法廷は「全く疑いの余地なく
  中国では強制臓器収奪が行われてきたことを確信する」との
  中間報告声明を出した。無実の罪で囚われた法輪功信徒たち
  からの強制臓器収奪、ウイグル自治区の強制収容所で中国共
  産党当局が強行する容赦ない民族浄化の実態が明らかにされ
  た。民衆法廷を提起した国際人権団体『クリスチャン・ソリ
  ダリティ・ワールドワイド』も、「中国は残虐な臓器取引で
  非難を浴びているが、その行為の証明は難しい。なぜなら被
  害者の体は廃棄され、行為の目撃者は、医師、警察官、刑務
  官など関係者に限られるからだ。が、そうであっても厳しい
  判断を裏付ける証拠はそろっている。法輪功メンバーやウイ
  グル族だけでなく、チベットの仏教徒、地下教会のキリスト
  教徒など多くの『良心の囚人』に医学的検査を受けさせ、彼
  らから無理やり臓器を摘出している」と述べている。
   そんな中、航空史上最大のミステリーといわれるマレーシ
  ア航空機失踪事件から3月8日で5年目を迎えたが、実は同
  事件は違法な臓器移植を隠蔽するため中国の江沢民元主席が
  実行した大量暗殺事件ではないかという説が浮上している。
                  http://exci.to/2kDvQa2
  ───────────────────────────

作家/渡邊哲也氏.jpg
作家/渡邊哲也氏

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2019年09月17日

●「中国不動産の暴落が始まっている」(EJ第5090号)

 10月1日からトランプ米大統領は、2500億ドル(約27
兆円)分の中国製品に対する制裁関税を、現在の25%から30
%に引き上げると宣言していましたが、9月11日、10月15
日まで延期すると発表しています。中国の劉鶴副首相からの要請
を受け入れたのです。10月1日に中国が建国70周年を迎える
からです。このニュースは、9月12日の日本経済新聞夕刊に次
のタイトルで報道されています。
─────────────────────────────
   ◎対中関税拡大を延期
    トランプ氏「建国70年」配慮/来月15日に
   ──2019年9月12日付、日本経済新聞夕刊
─────────────────────────────
 しかし、単に中国が建国70周年の記念日だからといって、一
度宣言した関税引き上げを延期するような甘いトランプ大統領で
はないはずだと思って調べてみると、中国は11日に一部の米国
製品を報復関税の対象から外すと、米国側に伝達してきていたの
です。それならということで、トランプ大統領は関税引き上げ時
期の延期に応じたのです。「引き延ばしの“利息”は支払います
よ」という、中国の“ディール”です。
 この米中貿易戦争を実務レベルで仕切っているのは、ライトハ
イザーUSTR代表とロス商務長官の2人です。この2人は数々
の通商協議を仕切ってきているプロ中のプロです。日本にとって
きわめて手強い相手です。
 ライトハイザー氏は、レーガン政権で、米国通商代表次席代表
を務め、日米貿易摩擦で日本に鉄鋼の輸出自主規制を受け入れさ
せたスゴ腕の持ち主。交渉の場で、日本の提案書を紙飛行機にし
て投げ返した話は有名です。
 ウィルバー・ロス商務長官は、金融のプロで、投資家であり、
銀行家でもある人です。これまでに特殊な手法を駆使して、数多
くの企業を乗っ取ったり、再建したりしてきています。トランプ
氏も1990年に3番目のカジノリゾートで経営に失敗し、その
とき、破産アドバイザーチームの債権者代表を務めていたロス氏
に助けられています。
 今回の日米貿易協議、いろいろウラがありそうですが、今回の
内閣改造で外相に昇進した茂木経済再生相は、こういう手だれを
向こうに回して協議し、よくまとめたと思います。彼は、英語力
が高く、米国人並みに微妙な喜怒哀楽を表現できるといいます。
 さて、現在の中国は、日本のかつてのバブル崩壊期と同じ状況
にあるとみなすことができると思います。日本との貿易交渉で成
功体験のあるライトハイザーUSTR代表とロス商務長官が次に
中国に仕掛けるのは、金融面での絞め上げです。あまり表には出
ていませんが、現在中国はドル不足で苦しんでいます。それも、
きわめて深刻なドル払底ぶりです。米国は、そこを狙って仕掛け
てくると思われます。中国に詳しい評論家の宮崎正弘氏は、それ
を次のように表現しています。
─────────────────────────────
 国内財政危機は不動産ローン残高が4600兆円、地方債残高
が1500兆円内外もあることに代弁されるように、奇策、詐術
を使ってももはや経済の回復は覚束ないだろう。中国のドル払底
ぶりが露見したのは外銀からドルをかき集め、短期債権で繰り延
べている実態が判明したからだった。凄まじい自転車操業が連日
繰り返されている。      ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
 『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機が始まる』
─────────────────────────────
 ドル不足になると、中国は外銀からドルの調達を余儀なくされ
ます。ところがそういう弱みに付け込んで、銀行は通常より高い
金利を要求してくるのです。かつて日本も通常の金利プラス2%
の「リスクプレミアム」を掛けられたことがあります。「ジャパ
ンプレミアム」です。
 そのため、日本は、それまでに買い漁っていた米国の不動産を
叩き売ってドルを調達したのです。ロックフェラーセンター、ロ
スの目抜き通りのウィルシャー・ブルーバードの多くのビル、そ
してハリウッド映画などが次々と処分されたのです。これによっ
て、かつて世界主要銀行ランキング10行中、6行を占めていた
日本の銀行のうち、昔の名前で現在残っているのは「三菱」だけ
という状態になっています。まさに、これと同じことが現在、中
国に起きているのです。
 中国の場合、株式上場が規約の厳格化の問題があって難しいの
で、投資家の多くは、企業株には関心がないのです。中国の不動
産関連企業は、窮余の一策として、ドル建ての社債発行を盛んに
行っています。しかし、欧米の金融界では、中国企業の社債起債
には2%の金利を上乗せていますし、IMF(国際通貨基金)も
中国向け融資の金利を上げると公表しています。「チャイナ・プ
レミアム」です。ADB(アジア開発銀行)も最大の借り手であ
る中国に「チャイナ・プレミアム」を適用するめ方針です。そも
そも超金満国であるはずの中国が、なぜ最大の借り手なのでしょ
うか。どうしてこんなことになるのでしょうか。
 それは、中国の負債総額が一体どのくらいか、誰もわからなく
なっているからです。なぜなら、中国の金融関連データは不透明
ですし、水増しは必ずあるし、おそらく共産党幹部もどのくらい
借金があるか、わからなくなっているはずです。
 中国の不動産関連企業のドル建て社債の直近3ヶ月の利回りは
7・8%、これにはもちろん「チャイナ・プレミアム」が上乗せ
されています。7・8%とは、ロシアの10年物国債の利回りが
7・75%とほぼ同列です。中国の不動産大手の「当代置業」が
今年の1月に発行した社債の金利は実に15・5%です。中国の
エクセレント・カンパニーの一つといわれる「恒大集団」でさえ
8%〜9%。宮崎正弘氏によると、この傾向は、中国の不動産の
暴落が確実に始っていることを物語るといっています。
              ──[中国経済の真実/089]

≪画像および関連情報≫
 ●中国不動産市場に異変/買い手見つからぬ「流動性リスク」
  ───────────────────────────
   不動産バブルが生じていると言われて久しい中国だが、中
  国共産主義青年団(共青団)の機関紙である中国青年報は、
  2019年1月27日、北京市や上海市、深セン市などの、
  「一線都市」において、中古不動産市場の価格が下落し続け
  ており、流動性リスクが顕在化し始めていると伝え、「中国
  の不動産市場は『買えば儲かる』という時代ではなくなりつ
  つある」と伝えている。
   北京市や上海市など、中国国内でも特に重要な都市が一線
  都市に指定されており、これまで不動産市場全体の価格高騰
  を牽引してきたのも一線都市の市場だった。その一線都市の
  不動産市場に異変が生じているとなれば、決して穏やかな話
  ではない。
   記事は、一線都市であっても「高級不動産が投げ売りされ
  ていて、中古不動産も値引き合戦が見られる」と紹介する一
  方、それでも、取引の成約数は低迷していると強調し、20
  18年下半期から現在にかけて、不動産市場の低迷はすでに
  中古市場へと波及していると指摘した。
   さらに、中国ではこれまで「不動産は元本割れがない」、
  「不動産は買った時より高い値で売れる」という「神話」が
  存在したが、この神話はすでに終わったと強調。「借金をし
  て不動産を買っても儲かる」という黄金の時代は過ぎ去った
  と伝え、売ろうとしても買い手が見つからないという「流動
  性の低下」が見られるとし、不動産ディベロッパーをはじめ
  とする業界関係者は誰もが焦りを感じていると伝えた。
                  https://bit.ly/2kIVri1
  ───────────────────────────

米国の2人の策略家.jpg
米国の2人の策略家
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2019年09月18日

●「米香港人権法案は香港を救えるか(EJ第5091号)

 香港のデモに異変が起きています。「逃亡犯条例」改正案が正
式に撤回されたにもかかわらず、デモは以前と同じ規模で継続さ
れ、そのデモの渦のなかに、なぜか星條旗が何本もはためいてい
ます。そして、香港デモ隊は次のスローガンを掲げるようになっ
ています。香港情勢が変わろうとしているようです。
─────────────────────────────
       「香港に自由を!法律の成立を!」
─────────────────────────────
 ここでいう法律とは何かというと、現在、米議会で審議されて
いる「香港人権・民主主義法案」のことです。香港政府と、その
バックにいる中国政府が、今頃になって「逃亡犯条例」改正案を
完全撤回したのは、米議会でこの法案の審議が、急ピッチで進ん
でいることに焦ったからです。したがって、デモ隊は「アメリカ
がんばれ!」といって星條旗を振っているわけです。
 香港政府と中国政府は、この米国の「香港人権法案」は、もと
もと「逃亡犯条例」改正案が成立すると、香港の自由や人権、自
治が侵害され、これによって米国をはじめとして、香港に進出し
ている他国の国民の香港における安全や利益が脅かされるのを何
とか防がないといけないという背景のもとで、審議が進められて
いると、比較的甘く考えていたようです。
 このような法律ができることは、中国にとって好ましいことで
はないので、中国政府は、クサイ芝居をうって、香港の林鄭月娥
行政長官に「香港人権法案」の基盤になる「逃亡犯条例」改正案
の完全撤回を指示したのです。そうすれば、「香港人権法案」は
撤回されると考えたからです。しかし、「逃亡犯条例」改正案の
撤回があまりにも遅すぎといえます。もし、中国政府が、本当に
そう思っていたとしたら、それは、トランプ大統領というよりも
米国議会の本気度を見誤っていたとしかいえないでしょう。
 米国には、香港に関して、次の法律が存在します。この法律は
1992年に米議会を通過し、1997年7月1日、香港が中国
に返還されると同時に効力が発生しています。
─────────────────────────────
     ◎「米国・香港政策法」
      United States-Hong Kong Policy Act
      合衆国合衆国法典第22編第66条22
─────────────────────────────
 香港返還に当っては、中国と英国の間に「中英連合声明」とい
うものが署名されています。1984年12月19日に、中国の
趙紫陽国務院総理と、英国のマーガレット・サッチャー首相が、
北京で署名しています。これは、声明というかたちをとっていま
すが、国際条約と同等の地位を有する重いものです。
 香港政策法は、その「中英連合声明」を担保するものと位置づ
けられます。基本的には、香港は中国に帰属するものの、いわゆ
る一国二制度として、米国は香港に香港政策法の下で、通商や投
資、出入国、海運など、特別待遇を提供するということを約束し
ています。つまり、香港は中国にあって中国にあらざるプレイス
として、米国との貿易交渉において、中国としても便利な地域に
なっていたのです。
 しかし、香港政策法には、いくつか不備があることがわかって
きたのです。そのひとつとして、香港が特別待遇を受けるために
不可欠である「香港への十分な自治」が、本当に与えられている
のかどうかをチェックする基準が明確でないことがわかってきた
のです。今のままでは、米国が香港に付与した特別待遇を中国政
府が悪用しても、それをチェックできないからです。そのきっか
けになったのは、香港の「逃亡犯条例」改正案です。
 それにもう一つ、関税の掛け合いになっている米中貿易摩擦に
おいて、中国が香港を巧妙に利用しているとし、共和党のマルコ
・ルビオ上院議員が、この9月にワシントン・ポスト紙に寄稿し
たレポート「中国は香港で本性露呈/米国は傍観できぬ」があり
ます。以下は、エリス・コンサルティング代表・法学博士/立花
聡氏によるその一節の抄訳です。
─────────────────────────────
 香港の特別な地位に注目して欲しい。それはつまり、独立関税
区域として開放的な国際金融システムや、米ドルペッグ制(連動
制)の香港ドルがあって、北京はこれらの仕組みを利用して、利
益を得ていることだ。だから、米国は行政的に外交的にこれらの
条件を制限しなければならない。さらに、マグニツキー法を生か
す方法もある。人権侵害にかかわる当局者の個人を制裁すること
だ。マグニツキー法は外国の個人や組織を制裁することを認めて
いる。    ──2019年9月3日付、ワシントンポスト紙
                  https://bit.ly/2khdefV ─────────────────────────────
 香港人権法案は、いわば香港政策法の強化版といえます。この
改正案では、米議会は、米国務長官に対し、香港が各種関連法に
基づき、人権や自由ないし自治を保障しているかどうかなどにつ
いて、毎年レポートの提出を求めることができます。これについ
て、立花聡氏は、次のように説明しています。
─────────────────────────────
 分かりやすくいえば、香港は上場企業のようなもので、経営の
透明性が必要であり、それを検証する監査役を米国が引き受け、
毎年監査報告書を作成し、開示し、そこで国際社会の信頼を得る
ということである。         https://bit.ly/2ma0sQW
─────────────────────────────
 ちなみに、香港人権法案は、共和党だけでなく、民主党のナン
シー・ペロシ下院議長も賛成しており、共和、民主賛成可能な法
案であって、9月中に成立する予定です。つまり、米議会は、香
港市民側に立っており、中国政府としては、絶体絶命な状況に追
い込まれています。この動きに、果して中国政府はどのように対
処するのでしょうか。注目されます。
              ──[中国経済の真実/090]

≪画像および関連情報≫
 ●香港で数万人デモ、米議会に「香港人権法」早期可決求める
  ───────────────────────────
   香港市民は9月8日、香港の高度な自治を守る「香港人権
  ・民主主義法案」の早期成立を求め、米国総領事館までデモ
  行進した。数万人が参加した。終了間際、警察は催涙弾など
  を使ってデモ隊の強制排除に乗り出した。市民数人が拘束さ
  れ、負傷者も出た。香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・
  ラム)行政長官が4日、「逃亡犯条例」改正案の正式撤回を
  表明したが、事態が収束する兆しはなく、連続14週目のデ
  モとなった。
   6月13日、マルコ・ルビオ米上院議員らの上下両院の超
  党派議員が同法案を提出した。法案は、米政府に対して香港
  の高度な自治を検証するよう義務付けるほか「香港の自治と
  民主・自由を圧迫する者や責任者に制裁を科す」と定める。
  米議会で、近く審議が再開される可能性がある。
   香港市民は8日午後1時半〜6時半まで、遮打花園(チャ
  ーター・ガーデン)で法案の可決を求める集会を開いた。ま
  た、一部の市民は午後2時半から、米国旗を掲げてデモ行進
  した。警察が米総領事館の近くでバリケードを設置したため
  デモ参加者らは総領事館に近づけなかった。総領事館は職員
  を近くの幹線道路、下亜厘畢道に派遣し、市民からの請願書
  を受け取った。香港人女優の葉コ嫻氏(71)は、英語で書
  かれた「どうか『香港人権・民主主義法案』を可決させて」
  のプラカードを掲げてデモ行進に参加した。大紀元の取材に
  対して「米政府が香港(市民)を助けてくれることを望む」
  と述べた。           http://exci.to/2mgI9tx
  ───────────────────────────

香港デモで星條旗がはためいている.jpg
香港デモで星條旗がはためいている
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2019年09月19日

●「香港デモの介入への3つのリスク」(EJ第5092号)

 もし、米議会で、「香港人権法案」が成立すると、どうなるの
でしょうか。
 香港人権法案には、米国が香港に付与した特別待遇を悪用して
いないかどうかを監督・監査する権限があることに加えて、香港
の自治権が毀損されていないかどうかについても審査し、毀損が
認められた場合、米国は香港に付与してきた特別待遇を打ち切る
ことができます。
 さらに、香港の人権や民主・自治を侵害した者に対しては、米
国における資産を凍結したり、米国への入国を拒否するなどの制
裁を課すことが可能になります。もし、デモ隊に対して、当局側
が武力を用いて制圧するようなことがあると、それらに関係する
当局者たちが制裁の対象者にされる可能性があります。
 この法案審議に関して、中国は当然のことながら、反発を強め
ています。中国は香港デモのバックには、必ず米国がいると感じ
ているからです。といっても、言葉では、「とんでもない内政干
渉である」と語気を強めていますが、米議会の法案の審議のこと
ですから、中国としては、どうすることもできないのです。トラ
ンプ大統領も中国に、香港デモを貿易交渉に関連させて、次の発
言をし、プレッシャーをかけています。
─────────────────────────────
 第二の天安門事件となれば、対処が非常に難しくなる。中国が
香港で何らかの暴力を行使すれば、中国との貿易交渉で合意する
ことは非常に難しくなる。私は、中国の習主席がこの問題を解決
できると信じており、習主席が抗議に参加している人々と会談す
れば解決するはずだ。         ──トランプ米大統領
                  https://bit.ly/2maVLX4
─────────────────────────────
 実際に中国としても、香港から数10キロの深せんに武装警察
を集結させており、その訓練シーンが報道させるなど、香港に強
いプレッシャーをかけています。もし、ゴーサインが出れば、数
時間のうちに装甲車を含めて香港中心部に突入が可能であるとい
います。しかし、ゴーサインを出すには、香港政府が「香港基本
法第14条」に基づき、中国政府に対して協力を求めるか、中国
政府が「駐軍法第6条」に基づき、独自に判断を下すか、どちら
かになります。
 しかし、どちらにせよ、中国の武装警察が鎮圧に乗り出すとな
ると、天安門事件並みの大混乱になることは確実であり、中国と
しては容易にはできない重い決断になります。なぜなら、この決
断には、次の3つのリスクが伴うからです。
─────────────────────────────
 1.金融・貿易都市としての香港を実質的に失うことに等し
   く、経済的リスクが大きい。・・・・「第1のリスク」
 2.中国の国家統一にかかわる香港・台湾問題において、政
   策の見直しが不可欠になる。・・・・「第2のリスク」
 3.「武力で民衆のデモを鎮圧」とネガティブに報道され、
   マイナスのイメージになる。・・・・「第3のリスク」
─────────────────────────────
 「1」のリスクについて考察します。
 中国にとって香港の存在は、米中貿易摩擦の激化によって、中
国がドルなどの外貨不足に陥ったときの備えとして、きわめて重
要な位置を占めています。
 現状でも、中国への海外からの直接投資は、その半分以上が香
港経由であり、しかも、香港に拠点をおく海外企業は膨大な数で
あり、多くが直接・間接に中国とのビジネスを行っています。も
し、それらの海外企業が一斉に香港から逃げ出せば、香港の経済
価値は一挙に失われることになります。これによって、膨大な資
産価値を蓄えている香港の不動産・証券市場もクラッシュし、そ
の影響は中国経済に波及することは確実です。
 「2」のリスクについて考察します。
 もし、武装警察にせよ、中国が香港に介入すると、それは「一
国二制度」が名実ともに失敗であったと国際社会によって認定さ
れることになります。その代価は、単に香港のみならず、中国が
国家統一の目標に掲げる台湾問題で払うことになります。目下、
経済の失政を問われて支持率が下がっている台湾の蔡英文総統は
香港デモの長期化によって、日々香港問題に同情的になる台湾世
論の後押しを受けて、リードされていた国民党の韓国瑜候補に追
いつきつつあります。これは、中国にとって大問題です。
 「3」のリスクについて考察します。
 これは、真実がそのまま世界中に報道されるリスクです。香港
デモに対して、明確なかたちで中国政府が介入すると、それは確
実にネガティブに報道されることになります。なぜなら、香港は
北京ではないからです。天安門事件のときのように、情報の封鎖
は不可能であり、世界中に詳細な情報が流され、これによって、
大国としての地位を築きつつある中国の国際的な名声は一気に地
に落ちることになります。それは、また、「一帯一路」を国策と
して世界中に展開する中国の大戦略にも深いダメージを及ぼすも
のになることも確実です。
 このように、中国政府にとって香港介入は、切りたくても切れ
ないカードであるといえます。しかし、この見方は、いわゆる西
側の論理に立っての客観的判断です。中国政府の立場に立つと、
上記の「3つのリスク」を冒しても、香港のデモは、中国の手に
よって鎮圧する必要があると考えるはずです。
 もし、香港の解決において、この西側の論理を受け入れると、
それは単に香港や台湾のみならず、国内で押さえ込んでいるウィ
グルやチベットにまで波及し、中国共産党の一党支配そのものが
揺らぐ恐れがあります。そうなると、中国としては、やらざるを
得なくなるものと考えられます。すべては、習近平国家主席の決
断にかかっています。中国が、香港民衆の要求をすべて飲んで、
デモを終息させるとはとても思えない状況です。
              ──[中国経済の真実/091]

≪画像および関連情報≫
 ●「第2の天安門」の懸念が消えない香港デモ
  ───────────────────────────
   8月8日付の英エコノミスト誌は、天安門事件のようなこ
  とにならないようにとの希望、期待を表明し、そういうこと
  になった場合、「中国の安定も繁栄も」悪影響を受けると中
  国に警告している。しかし、中国の共産党指導部がどう考え
  るか、予断を許さない状況である。
   ここで思い出される事件は、1968年のソ連軍のチェコ
  侵攻である。まさかソ連がそこまで乱暴なことはしないであ
  ろうと考えていたが、間違いであった。8月21日、タス通
  信が「ソ連はチェコ人民に友好的援助を提供することにした
  その援助には軍事的手段によるものも含まれる」と報じ、ソ
  連軍は、チェコに軍事侵攻した。実は、この侵攻の前に、赤
  軍とワルシャワ条約機構の軍隊がチェコ周辺で演習をしてい
  たことが、あとから分かった。
   今回も香港に近い深せんで人民解放軍が演習をしている。
  部隊が集結している。それを踏まえて、トランプ大統領は、
  中国に自制を求め、習近平主席に香港のデモの代表者らと対
  話することを訴えているが、習近平がそれに応じる気配は今
  の所ない。人民解放軍は、香港自治政府の要請があれば、い
  つでも出動する用意があるとしており、国務院の香港担当部
  局は、我々の自制を弱さと受け取ってはならないと警告を発
  している。           https://bit.ly/2kj2gXk
  ───────────────────────────

「第2の天安門事件の懸念が消えない香港デモ」.jpg
「第2の天安門事件の懸念が消えない香港デモ」
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2019年09月20日

●「習近平主席の台湾政策『習五条』」(EJ第5093号)

 このテーマの連載は、9月30日まで継続しますが、中国問題
を取り上げている以上、台湾問題に言及する必要があります。い
うまでもなく、台湾問題は日本に直接影響する問題だからです。
 中国の歴代トップは、任期中のどこかの時点で、台湾について
の方針というか、政策というか、メッセージを発表しています。
それは、次のように呼ばれています。
─────────────────────────────
      1.「葉九条」/葉剣英/1981年
      2.「ケ六条」/ケ小平/1983年
      3.「江八点」/江沢民/1995年
      4.「胡六点」/胡錦濤/2008年
      5.「習五条」/習近平/2019年
─────────────────────────────
 あらかじめ知っておくべきことがあります。それは「台湾同胞
に告げる書」の存在です。これは、1979年元旦に全国人民代
表大会常務委員会によって発表された声明です。その内容は、祖
国の平和統一に取り組む政治運営方針を宣言し、軍事対峙状態の
打ち切り、両岸同胞の自由な往来、航路・郵便・商業経路の開通
および経済文化交流の展開などの重要な主張を提唱したものであ
り、両岸関係(中国と台湾)の発展に、新たなチャンスをもたら
した歴史的文書であるといえます。
 その後、葉剣英、ケ小平、江沢民、胡錦濤の歴代4主席が、そ
れぞれ台湾に関する政策を発表していますが、それらが、上記の
「葉九条」以下の政策です。そして、現在の習近平主席は、20
19年1月2日に「台湾同胞に告げる書40周年記念行事」の席
上において、「習五条」と呼ばれる台湾政策を発表しています。
 これらの中国国家主席の台湾政策のなかで、「武力統一を排除
しない」ということを明確に述べているのは、「江八点」と「習
五条」だけです。この2つについて考えていきます。
 最初は「江八点」について考えます。
 江沢民主席による「江八点」は、台湾に対して、統一のために
は武力行使も辞さない強硬姿勢を打ち出しています。これには実
は伏線があります。というのは、1996年には台湾で総統選挙
が行われ、李登輝氏が立候補したのです。そのとき、李登輝候補
は、両岸の政治分離の現実や、民主化促進を含む中国が絶対に容
認できない6つの主張を盛り込んだ「李六点」を発表し、選挙を
戦っていたのです。
 李登輝候補の優勢が伝えられると、江沢民主席は、中国人民解
放軍に命じて、選挙への恫喝として軍事演習を強行し、台湾に近
い基隆沖海域にミサイルを撃ち込むなど、威嚇行為を行ったので
す。しかし、これに対して米国のクリントン政権は、ベトナム戦
争以来の最大級の軍事力を行使して反応したのです。ニミッツを
中心とした二つの航空母艦群や第7航空母艦群、インディペンデ
ンスを中心にした第5航空母艦群が台湾海峡に入ったのです。こ
れには、中国は成す術もなく、海軍を引き上げています。第3次
台湾海峡危機です。江沢民政権の大失敗です。
 江沢民政権の後を継いだ胡錦濤政権は、江沢民政権の対台湾政
策の失敗を見て、あくまで両岸の平和的発展に重点を置き、対話
や融和政策を呼びかける「胡六点」を打ち出しています。そこで
は「台湾統一」というスローガンを封印し、経済に重点を置き、
ウィンウィンの関係を目指したのです。いま考えると、この胡錦
濤政権のこうした台湾政策は比較的うまくいき、親中派の国民党
馬英九政権を誕生させています。経済政策に重点を置き、中国の
巨大市場を開き、両岸のビジネスを大きく発展させています。福
島香織氏は、この胡錦濤政権時代が、台湾人民の心を中国にしっ
かりと引き寄せ、一番中台統一に現実味が出てきた時期であった
といっています。
 しかし、習近平主席は、胡錦濤主席の台湾政策を引き継がず、
胡錦濤政権では封印した「台湾統一」を再び持ち出し、馬英九政
権に貿易のサービス協定の調印や施行を迫るなど、その経済的な
併合を急ぐ姿勢を露骨に見せるようになったのです。
 これに台湾の若者が危機感を覚えるようになり、そして起きた
のが「ひまわり学生運動」です。2014年3月18日、台湾の
学生と市民らが、立法院(日本の国会議事堂にあたる)を占拠し
たのです。3月18日に起きたことから、「318学運」とも呼
ばれています。
 これは、習近平台湾政策の明らかな失敗であり、これが原因で
国民党が敗れ、蔡英文・民進党政権が誕生するのです。2016
年5月20日のことです。
 台湾での蔡英文政権の誕生は、習近平主席を焦らせ、これが、
2019年1月2日の「習五条」の内容に影響しています。その
内容は次の通りです。そこでは「中国人は中国人を攻撃しない。
だが武力行使放棄は約束しない」と恫喝しています。
─────────────────────────────
 @平和統一の実現が目標。台湾同胞はみな正々堂々とした中国
  人で、ともに「中国の夢」を共有できる。台湾問題は民族の
  弱さが生んだもので「民族復興」によって終結する。
 A一国二制度の台湾版を模索。「92年コンセンサス」と台湾
  独立反対という共同の政治基礎の上で、各政党各界の代表者
  と話し合いたい。
 B一つの中国原則を堅持。中国人は中国人を攻撃しない。だが
  武力行使放棄は約束しない。外部勢力の干渉と少数の台湾独
  立派に対しては一切の必要な選択肢を留保する。
 C経済融合を加速させる。両岸共同の市場、インフラ融合を進
  める。特に馬祖・金門島のインフラ一体化を推進。
 D台湾同胞との心の絆を強化。台湾青年が祖国で夢を追い実現
  することを熱烈歓迎。          ──福島香織著
   『習近平の敗北/紅い中国・中国の危機』/ワニブックス
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/092]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平の台湾政策演説に拒否反応を示した台湾
  ───────────────────────────
   2019年1月2日、中国の習近平国家主席は、台湾政策
  について包括的な演説を行い、その中で、台湾統一は「一国
  二制度」によるという方式を打ち出した。「一国二制度」は
  香港が中国に返還された際に中国が50年間の香港統治のた
  めの方式として約束したものである。
   蔡英文総統は、同発言に対し、直ちに「台湾の大多数の民
  意が『一国二制度』を受け入れることは絶対にない」と断言
  した。さらに、野党国民党支持者などで受け入れる人の多い
  「92年コンセンサス」(「一つの中国」の内容は中台それ
  ぞれが解釈する。台湾にとっては「一つの中国」は「中華民
  国」を意味する)に関しては、北京当局によって「一国二制
  度」と実質的に同じものと定義されたため、これまで期待さ
  れていた同床異夢の曖昧さがなくなったとして、もうこれを
  口にするはやめるべきだと訴えた。
   「一国二制度」は、かつてケ小平によって台湾統治の方式
  として検討されたことはあったが、実際には香港統治に利用
  された。今日の民主化した台湾の人たちが受け入れる余地の
  ほとんどない方式であり、今日の状況下でこのような方式を
  打ち出したこと自体、中国がいかに台湾の現状を知らないか
  の証左と見られても不思議ではない。
                  https://bit.ly/2GA4DOj
  ───────────────────────────

「習五条」を発表する習近平主席.jpg
「習五条」を発表する習近平主席
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2019年09月24日

●「トランプ米大統領の訪台の可能性」(EJ第5094号)

 9月16日のことです。台湾の外交部(外務省)は、次の発表
を行っています。
─────────────────────────────
【台北=伊原健作】台湾の外交部(外務省)は16日、外交関係
のある南太平洋の島しょ国・ソロモン諸島との国交を断絶すると
発表した。同国が台湾と断交し、中国と国交を樹立することを決
めたためという。2016年に発足した蔡英文政権が外交関係を
失うのは6ヶ国目で、台湾を外交承認するのは、残り16ヶ国と
なった。           https://s.nikkei.com/2kqHkxE
─────────────────────────────
 これによって、ソロモン諸島のソガバレ政権は、近く正式に中
国と国交を樹立することになります。ソロモン諸島は、1983
年から一貫して台湾と外交関係を持ち、「一つの中国」を掲げる
中国と国交がない国の一つでした。しかしすぐ近くのパプアニュ
ーギニア、バヌアツ、フィジー、トンガは既に中国と国交を結び
中国の手によって、インフラの整備がどんどん進んでいるのを見
て、台湾と断交することにしたものと思われます。
 いきなりソロモン諸島といわれてもピンとこないと思うので、
頭のなかに地図を描いてみてください。オーストラリアから見て
ソロモン諸島は右上に横たわる島です。真上にパプアニューギニ
アがあり、ソロモン諸島の下には、バヌアツ、フィジー、トンガ
がある。線で結ぶと、オーストラリアを包囲する「群島の長城」
ができあがります。これによって、米軍が、オーストラリアの基
地を使えなくする狙いがあります。
 この戦略は、太平洋戦争当時、旧日本軍が米国とオーストラリ
アの航路を遮断するために使ったものであり、中国はそれを意識
しているのでしょうか。旧日本軍は、パプアニューギニアのラバ
ウルを占領し、ここを南方作戦の拠点とし、「FS作戦」と称し
て、フィジーとサモアの攻略を検討し、これに頓挫すると、今度
はソロモン諸島のガダルカナル島に航空基地をつくって、オース
トラリアや南太平洋を攻略する拠点にしようとしたのです。この
ガダルカナル島をめぐる日本軍と米連合軍の死闘は、あまりにも
有名です。
 さて、日本も中国と国交を正常化するとき、中国のいう「一つ
の中国」を受け入れ、台湾とは断交しています。しかし、そうで
あるからといって、「台湾を中国の一部であるとは認めてはいな
い」のです。それは、日中共同声明の次のフレーズををみれば、
明らかです。
─────────────────────────────
 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分
の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人
民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項
に基づく立場を堅持する。
     ──日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明より
─────────────────────────────
 つまり、中国が「台湾は自国領土の一部である」と主張してい
ることを日本政府は理解し、その立場を尊重するといっているに
過ぎないのです。ちなみに、米国も同じ立場です。しかし、米国
の場合、「台湾関係法」という特殊な法律を制定し、国交はない
ものの、台湾の地位を守っています。これに加えて、2018年
3月16日には「台湾旅行法」が成立しています。これは、米国
及び台湾の高級官僚の相互の交流訪問を促進する法律です。
 この法律の成立で狙っていることについて、渡邊哲也氏は次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 いまアメリカでは、在米華僑が中心となって議会に強いロビー
活動をしかけており、下院では、台湾総統に議会演説をしてほし
いというオファーが出てきているといいます。もし、台湾の総統
やそれに類する人がアメリカの議会で演説をするようなことにな
ると、台湾としては断交以来の歴史的快挙ということにもなるで
しょう。そして、それが実現すれば、「返礼」という形でトラン
プ大統領やペンス副大統領などが台湾を電撃訪問する可能性も高
まります。事実、アメリカ議会はホワイトハウスに対して、アメ
リカ高官の台湾訪問を求めており、それに関する法整備は終わっ
ているのです。          ──渡邊哲也/福島香織著
     『中国大自滅/世界から排除される「ウソと略奪」の
                中華帝国の末路』/徳間書店
─────────────────────────────
 2018年12月31日には、米議会で台湾に関してもう一つ
重要な法律が成立しています。「アジア再保証イニシアチブ法」
がそれです。これは、台湾に対する継続的な武器の供与と米台に
おける事実上の安全保障条約に近いものです。それどころか、マ
ルコ・ルビオ議員を中心とするアメリカのブッシュ系の議員たち
にいたっては、「台湾を国家認証すべきである」とまで、いいだ
しているのです。
 実際に今年の7月に、台湾の蔡英文総統が、外交関係のあるカ
リブ海諸国を訪れるのに合わせて、米国を訪問し、実に4泊して
います。これは非常に長い滞在になります。米国務省としては、
あくまで私的訪問であるとしているものの、着実に米台の関係が
緊密化しつつあることは確かです。
 当然のことながら、中国はこれに猛反発していますが、「台湾
旅行法」を盾にして、来年の台湾総統選の前にトランプ大統領が
電撃的に台湾を訪問する可能性もあります。まさにニクソン訪中
の上書きです。これが実現したら、米国が台湾を国家として承認
することも可能になります。中国は、内心この事態を一番恐れて
いるといわれます。
 そのためにも米国としては、北朝鮮を手なずけておく必要があ
ります。現在のトランプ大統領の北朝鮮に対する奇妙な態度もこ
のシナリオがあれば、理解できます。中国にとって、深刻な事態
になりつつあります。    ──[中国経済の真実/093]

≪画像および関連情報≫
 ●台湾へのF16売却は、米国「蔡英文再選支持」のサイン
  ───────────────────────────
   台湾にとって長年の悲願であった米国のF16売却が、ど
  うやら実現しそうである。米トランプ政権は、米議会に対し
  て、F16の売却を認めるとの方針を通知したと米主要メデ
  ィアが伝えた。この通知は非公式の段階であるが、すでに各
  方面で広く報じられており、議会にも反対の声はないとみら
  れ、66機計80億ドルという近年にない台湾への巨額武器
  売却が、この台湾総選挙まで残り5ヶ月を切った敏感な時期
  で実現に向かうことの意味は大きい。
   この売却を報じた米メディアは、加熱する米中貿易戦争と
  緊迫する香港情勢において、中国の牽制を目的としたものだ
  という見方を伝えている。それは必ずしも間違いではないか
  もしれないが、筆者として強調したいのは、米トランプ政権
  が来たる台湾総統選において、現職の民進党・蔡英文総統を
  支持するというサインをこのF16売却承認を通して明確に
  伝えた、という点である。
   F16の売却については、台湾の蔡英文政権はトランプ政
  権にかねてから打診をしており、前向きな感触を得ていた。
  蔡英文総統は、この7月に外遊するなかでニューヨークでの
  トランジット滞在を米側に認められるなど「破格の好待遇を
  米国から受けた」だと評価された。売却のニュースが流れる
  前に、蔡英文政権の高官は訪米の結果から「F16は大丈夫
  だ」と筆者に語っていた。これが実現すれば、7月に同様に
  米議会に通知された米戦車の売却以上の「快挙」となる。
                  https://bit.ly/2m43oys
  ───────────────────────────

米国を訪問した蔡英文台湾総統.jpg
米国を訪問した蔡英文台湾総統
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2019年09月25日

●「戦略拠点はスービック米海軍基地」(EJ第5095号)

 9月21日(土)の朝刊によると、太平洋の島国キリバスも台
湾と断交したそうです。米国との貿易での対立をにらんで、中国
の太平洋への進出の執念を感じます。中国は10月に建国70周
年を迎えるので、その実績づくりを急いでいます。
 米国には苦い経験があります。それは、米軍のアジア最大の海
軍基地であったスービックをフィリピンに返還したことです。返
還したことによって、中国が侵略を開始し、結果として、南シナ
海に人工島を作らせる原因になったからです。
 かつてフィリピンの米軍基地には、クラーク空軍基地と、スー
ビック海軍基地の2つがあったのです。現在は、その2つとも、
フィリピンに返還してしまっています。
 なぜ、返還したかというと、これには、間接的原因と直接的原
因の2つがあります。
─────────────────────────────
    1.間接的原因 ・・・ ピナツボ山の大噴火
    2.直接的原因 ・・・ 比上院が批准を拒否
─────────────────────────────
 スービック湾地域は、1884年からスペインが海軍基地とし
て利用していましたが、1898年の米西戦争(アメリカとスペ
インの戦争)に米国が勝ち、米国に管理権が移っています。そし
て、1991年末まで、スービック海軍基地は、米海軍の重要な
軍事拠点になっていたのです。
 1989年12月にフィリピンでは、国軍が最大規模の反乱を
起こします。米国はアキノ政権を支援し、米空軍機を反乱軍牽制
のため投入し、鎮圧に成功します。これを契機に1990年11
月に米国は、基地交渉で大筋合意したのですが、1991年6月
にピナツボ山が大噴火し、クラーク空軍基地とスービック海軍基
地の両方とも使えなくなってしまったのです。これが、間接的原
因となったのです。
 1991年8月に米比友好協力防衛条約が調印され、これによ
り、クラーク空軍基地の返還とスービック海軍基地の使用10年
延長が合意されます。しかし、同年9月16日、フィリピン上院
によって批准が拒否されるのです。これが、米軍がスービック海
軍基地から撤退する直接的原因になったのです。そして1991
年11月にクラーク空軍基地はフィリピンに返還され、1992
年9月には、スービック海軍基地もフィリピンに返還されること
になったのです。
 米軍がスービック海軍基地を手放した真の原因が今ひとつよく
わかりませんが、1991年といえば、ソ連が消滅した年であり
世界の緊張が大きく後退したことも影響しています。それに火山
崩壊による基地の修復にも莫大な費用がかかるということも米軍
が撤退した理由のひとつになっていると思います。つまり、米軍
は、原状回復しないままで撤退したのです。
 なぜ、スービック米海軍基地の話を詳しくしたかというと、こ
の海軍基地の復活が、台湾の安全保障のカギを握っているからで
す。2015年になって、オバマ前大統領とフィリピンのアロヨ
前大統領との間で、基地を復活させる合意ができていたのです。
ところが次のドゥテルテ大統領とオバマ大統領が喧嘩してしまい
それがペンディングになってしまいます。これには、バックに中
国の関与が疑われます。
 1995年に米軍がフィリピンから完全に撤退すると、中国は
フィリピンの領土である「ミスチーフ環礁」に勝手に上陸し、中
国漁民を守るためと称して、環礁に建物を強引に建て、その岩場
の周囲を開発し、続々と建物を建築し、今や風量発電やヘリポー
トまで作ってしまったことは周知のことです。まるで米軍がフィ
リピンから引き上げるのを待っていたかのように、勝手に人工島
を作ってしまったのです。
 これに対し、アキノ大統領は(当時)は、国連海洋法条約に基
づき、常設仲裁裁判所へ提訴し、次の結果を得ています。
─────────────────────────────
 ◎南シナ海 国際仲裁裁判 中国に厳しい内容に
  南シナ海を巡り、フィリピンが申し立てた国際的な仲裁裁判
 で、裁判所は12日、中国が南シナ海のほぼ全域に管轄権を主
 張しているのは「法的根拠がなく、国際法に違反する」という
 判断を示し、フィリピンの主張を全面的に認め、中国にとって
 極めて厳しい内容となりました。  ──2016年7月3日
                          NHK
─────────────────────────────
 しかし、中国は常設仲裁裁判所の判決を受け入れず、一向に従
う気はないです。それで米国を中心として始ったのが、「航行の
自由作戦」です。これには米軍による台湾防衛を見据えた深い戦
略的意図があります。ここにきてトランプ大統領とドゥテルテ大
統領の間で、スービック海軍基地の復活計画がまとまりつつあり
ます。この計画には、日本の自衛隊も海軍基地回復を支援する予
定になっています。スービック海軍基地は、台湾防衛の要といえ
るでしょう。これについて、渡邊哲也氏は、トランプ大統領の訪
台計画との関連で、次のようにいっています。
─────────────────────────────
 仮にトランプ訪台にスービック基地復活が間に合わない場合、
スービック湾に第7艦隊を配備し、場合によっては台湾海峡に空
母を出動させる。そのための準備もすでに行われていて、実際や
るやらないは別にして、航行の自由作戦で約20年ぶりにアメリ
カの艦艇が台湾海峡を横切る訓練が行われています。スービック
についてはどのような形にせよ、アメリカ海軍を再配備させれば
中国を黙らすことができるでしょう。
            ──石平?渡邊哲也著/ビジネス社刊
 『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺す時/日本は14億市
               場をいますぐ「損切り」せよ』
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/094]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ大統領は訪台を/蔡政権を勢いづかせる起爆剤に
  ───────────────────────────
   台湾の次期総統選挙の前哨戦で、2018年11月24日
  に投開票される統一地方選挙まで1ヶ月を切った。蔡英文総
  統率いる与党の支持率は2割台に低迷し、現有の議席を守り
  抜けるかが焦点となっている。
   与党の支持率は、政権交代しても経済状況がよくならない
  という不満などで低下。また蔡氏は、中国との統一でもなく
  独立でもない「現状維持」の方針を掲げているものの、その
  姿勢が「弱腰」として捉えられ、批判を受けている。
   地方選の中でも注目されているのが、首都の台北市長選。
  現職で無所属の河文哲(コー・ウェンチョー)氏が、二大政党
  の不満の受け皿として支持を伸ばし、与党候補者が追う展開
  となっている。
   蔡陣営が、台北市長などの有力選挙で敗北すれば、責任論
  に発展する可能性があり、2020年の総統選の再選にも影
  響が及ぶ。もし蔡氏が再選できなければ、日米などが連携し
  て形成しつつある「対中包囲網」の一角が崩れかねない
  求心力を失いつつある与党が支持率を回復させる起爆剤とな
  るのは、「トランプ米大統領の台湾訪問」だろう。
                  https://bit.ly/2m2CNBZ
  ───────────────────────────

スービック海軍基地.jpg
スービック海軍基地


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2019年09月26日

●「瀬取り監視に参加していない韓国」(EJ第5096号)

 2019年9月22日付、朝日新聞の一面に次のタイトルの記
事が掲載されています。
─────────────────────────────
     ◎「瀬取り」8ヶ国監視/中国牽制の思惑
      ──2019年9月22日付、朝日新聞
 東シナ海から南シナ海にかけ、日米を中心とする計8カ国の艦
船や航空機が集結している。表向き、北朝鮮船籍に洋上で積み荷
を積み替える違法な「瀬取り」の監視を目的に揚げる。(中略)
 この枠組みは昨年1月、カナダでの北朝鮮関係外相会合で決ま
った。監視活動の参加国は「ファイブ・アイズ」と呼ばれる米、
英、豪、カナダ、ニュージーランドと、日仏韓。日本以外は朝鮮
国連軍の構成国だ。
─────────────────────────────
 この「瀬取り」監視に一番熱心に取り組んでいるのは、日本と
米国です。日米、とくに北朝鮮からの核・ミサイルを含む軍事的
脅威を直接受けている日本は、北朝鮮の完全にして、検証可能な
かつ不可逆的な方法での、すべての大量破壊兵器およびあらゆる
射程の弾道ミサイルの廃棄の実現に向けて、国連安保理決議を完
全に履行する必要があると考えて、空と海から、この取り組みに
参加しているのです。
 この監視活動に、現在、日米の他に、次の各国が、航空機と艦
艇で参加しています。
─────────────────────────────
 ◎航空機による警戒監視活動
  オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、フランス
 ◎艦 艇による警戒監視活動
  オーストラリア、カナダ、英国、フランス
  以上に日米を加えた7カ国
─────────────────────────────
 ここで押さえておかなければならないことがあります。それは
「朝鮮国連軍」(以下、国連軍)についてです。朝鮮戦争が勃発
したのは1950年6月25日のことです。これを受けて国連軍
は、6月27日、国連安保理決議第83号および84号に基づい
て創設されています。この国連軍は、現在も朝鮮半島の平和と安
全の保持のために、重要な役割を果たしています。その構成国は
次の18カ国です。
─────────────────────────────
 ◎朝鮮国連軍構成国
  オーストラリア   ギリシャ      韓国
  ベルギー      イタリア      南アフリカ
  カナダ       オランダ      タイ
  コロンビア     ニュージーランド  トルコ
  デンマーク     ノルウェー     イギリス
  フランス      フィリピン     アメリカ
─────────────────────────────
 朝鮮戦争は、1953年7月に休戦協定が成立し、1957年
7月に、国連軍司令部が韓国ソウルに移され、日本には国連軍後
方司令部が設立されます。この後方司令部は、2007年11月
以降、横田基地に置かれています。なお、国連軍司令官は、在韓
米軍司令官エイブラムス陸軍大将が務めています。
 この国連軍後方司令部には、オーストラリア、イギリス、イタ
リア、カナダ、フランス、トルコ、ニュージーランド、フィリピ
ン、タイの9カ国の駐在武官が、それぞれ在京大使館に常駐して
おり、国連軍連絡将校としての務めを果しています。これらの連
絡将校が日本に滞在する間の権利・義務その他の地位および待遇
は「国連地位協定」として、定められています。つまり、朝鮮戦
争はまだ終っておらず、一朝ことが起きると、即座に国連軍とし
て行動を起こせる体制を敷いているのです。今回の「瀬取り」監
視活動もこの国連軍としての枠組みにおいて行われています。
 なぜ、「瀬取り」監視活動の背景について詳しく述べたのかと
いうと、2つ理由があります。
 1つの理由は、この「瀬取り」監視活動に、本来主役として対
応すべき韓国が参加していないのではないかという疑いです。こ
のことについて、日本の外務省は、VOA(ボイス・オブ・アメ
リカ)の「韓国は参加していますか」の質問に対して、次のよう
に答えています。
─────────────────────────────
 韓国は、「瀬取り」監視活動のために航空機や艦艇を派遣し
 た記録はない。       ──2019年6月6日放送
─────────────────────────────
 何となく歯に異物がはさまった表現ですが、明らかに「参加し
ていない」といっています。冒頭の朝日新聞の記事でも、韓国は
参加していることになっています。ところが、韓国は、参加して
いないだけでなく、韓国駆逐艦が、北朝鮮の瀬取りを見逃したり
韓国籍の船舶が、瀬取りをしているとの次の情報もあります。
─────────────────────────────
 疑惑の対象となっているのは、韓国籍のタンカー「Pパイオニ
ア号」だ。同船は、2017年9月、北朝鮮籍の2艘の船舶に対
し、瀬取りの手法で石油製品を提供したものと見られている。韓
国海洋警察庁は今年1月、同船船長と管理会社を、南北交流協力
法および船舶入出港法違反の疑いで送検した。事実であれば韓国
国内法だけでなく、国連安全保障理事会の制裁決議への違反にも
当たる。              https://bit.ly/2kWyCaH
─────────────────────────────
 疑惑はこのほか、たくさんあります。実際に「瀬取り」監視活
動をやっている国は、韓国が、この活動に参加していないことを
知っています。もう一つの理由は、明日のEJで述べます。
 なお、このテーマは30日で終了する予定でしたが、新情報が
あるので、10月4日まで続けることにします。
              ──[中国経済の真実/095]

≪画像および関連情報≫
 ●監視不参加を暴露された韓国が愚かすぎる自爆的反論
  ───────────────────────────
   日本政府が、北朝鮮による、海上での違法な物資積み替え
  (瀬取り)を取り締まるための多国籍活動に韓国は参加して
  いない、と明らかにした。日本の外務省は6月5日(現地時
  間)「対北朝鮮海上監視のための多国籍活動に韓国も参加し
  ているか」という米政府系放送ボイス・オブ・アメリカ(V
  OA)の質問に、「韓国は参加していない。韓国が監視活動
  のため航空機や艦船を派遣した記録はない」と答えた。
   同放送は「日本の外務省によると、日本・米国・英国・カ
  ナダ・フランス・オーストラリア・ニュージーランドの7カ
  国は、昨年初めから東シナ海とその近海で北朝鮮の制裁回避
  行為を取り締まっている。日本は参加国の詳細な作戦規模や
  期間などを同省のウェブサイト上で公開している」と報道し
  た。韓国は日本の外務省が公開した国際協力リストに含まれ
  ておらず、7カ国の統合作戦からも外れている。
   韓国国防部(省に相当)はこれについて、「韓国軍の作戦
  区域内では北朝鮮による瀬取りの取り締まり支援作戦や国際
  協力活動を実施している」と反論した。国防部関係者は「外
  信が報道した7カ国の多国籍作戦区域は、東シナ海とその近
  海で、韓国軍の作戦区域からは離れている」と述べた。韓国
  軍は主に海軍はP3C海上哨戒機などを使って西海(黄海)
  地域で収集された北朝鮮による瀬取り関連情報を米軍などに
  提供してきたと言われている。  https://bit.ly/2kZhssT
  ───────────────────────────

瀬取りの現場/手前北朝鮮船舶.jpg
瀬取りの現場/手前北朝鮮船舶


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2019年09月27日

●「瀬取り監視と航行自由作戦の関係」(EJ第5097号)

 9月23日夕方(日本時間24日朝)、ドナルド・トランプ米
大統領と韓国文在寅大統領が、ニューヨークで首脳会談を行って
います。この席では、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMI
A)の破棄についての話は出なかったといわれています。実際に
は、出たかもしれませんが、公式には、GSOMIA破棄の件が
話し合われたという情報は入っていません。
 これには、2つの考え方があります。1つは、米国は国務省を
はじめ、関係部署の要人が、正式に不満を表明しており、改めて
大統領がいうまでもないという考え方です。
 もう一つは、トランプ大統領は、GSOMIAのことがわかっ
ていないのではないかというものです。これは、24日のBSフ
ジプライムニュースにおいて、笹川平和財団上席研究員の渡邊恒
雄氏が述べています。
─────────────────────────────
 トランプ大統領は、文書は読まないし、長いブリーフィングを
嫌がる。最近はボルトン大統領補佐官が罷免されたので、ブリー
フィングをする人がいなくなっています。だから、もしかしたら
GSOMIAのことがよくわかっていないのかもしれない。
            ──渡邊恒夫笹川平和財団上席研究員
─────────────────────────────
 米国大統領としては、お粗末な話ですが、会談の様子は、2人
の写真を見る限り、トランプ大統領は非常に険しい表情をしてお
り、あまりよい雰囲気の会談になっていないことは確かです。
 ここで大事なことがあります。米国は、朝鮮半島を失ったとし
ても、アジアの権益を失うことはないということです。しかし、
地政学的に考えると、台湾やフィリピン、インドネシアを失うと
太平洋の半分まで失うことになります。したがって、この日本列
島、沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ線は、第1列島線といいます
が、このラインの防衛は米国にとって重要であり、とくに台湾の
重要さは、朝鮮半島の比ではないといえます。
 しかし、台湾には、中国のスパイとされる軍人も大量に入り込
んでいて、一朝ことが起きると、台湾軍にまかせるには不安が多
いといわれます。とにかく中国の「ハニートラップ」に、ひっか
かっている者が多いそうです。そこで台湾有事のさいには、前衛
部隊として台湾軍には活動させるものの、自衛隊が協力するかた
ちで、作戦本部は米軍が仕切る体制をとると思われます。
 台湾には、不安な要素がもうひとつあります。それは、中国の
軍事力が増強している点です。これによって、米軍と中国の間に
局地戦が起きる恐れがあります。福島香織氏は、その懸念につい
て、次のように述べています。
─────────────────────────────
 台湾で不安な要素は、アメリカ国防情報局(DIA)が、20
19年年初に発表した「中国軍事カレポート」で、中国の兵器シ
ステムの一部の領域がすでに世界最先端水準になっていると論じ
られていたことです。
 人民解放軍は自軍の戦闘能力に自信を深めており、最終的には
中国指導部に局地戦争を発動する冒険を犯させうるという分析を
出しています。そのレポート自体には「台湾」という言葉は出て
こなかったと思いますが、このレポートをまとめた関係者がAF
Pに対して、「最大の心配事として、中国が自分たち解放軍の実
力が相当高くなったと自信を深めたとき、中国の国内問題が一つ
の臨界点に達したら、軍事力の使用で地域の衝突問題を解決しよ
うとすることがありうる」とコメントしているのです。「その自
信の度合いによっては、軍事力による台湾統一という選択肢を中
国指導部に取らせる可能性もある」というところまでコメントし
ている。             ──渡邊哲也/福島香織著
     『中国大自滅/世界から排除される「ウソと略奪」の
                中華帝国の末路』/徳間書店
─────────────────────────────
 実は、米軍が「航行の自由作戦」を継続して行っているのは、
このためなのです。前号で、「瀬取り」監視活動の背景について
詳しく述べたのは、一つは「韓国が参加していないこと」を指摘
するためであり、もうひとつの理由は、南シナ海での有事のさい
直ちに対応がとれる体制の確保です。
 現在、北朝鮮制裁のための「瀬取り」の監視名目で、日本、米
国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、フラン
スの7ヶ国が東シナ海に入ってきていますが、もし、南シナ海で
何かが起きたとき、これらの軍は、すぐにも南シナ海に入ること
ができます。つまり、「瀬取り」監視目的と「航行の自由作戦」
が連動しているわけです。これには中国は手も足も出ません。
 日本と英国の安全保障声明では、2012年に完成予定の英国
の新鋭空母「クイーン・エリザベス」を南シナ海に派遣すること
が決まっています。また、この地域に駐留させる計画もあるとい
います。この「航行の自由作戦」について、渡邊哲也氏は、次の
ようにコメントしています。
─────────────────────────────
 中国と軍事対立のあるインドも、これまでのインド洋からヨー
ロッパに向けての海洋戦略を大胆に変更し、南シナ海から太平洋
への展開を拡大する「アクト・イースト」に舵を切り替え始めて
いるのです。そして、アメリカ軍、自衛隊、オーストラリア軍、
フランス軍など、太平洋を守る部隊との合同軍事訓練を拡大して
います。南シナ海は一種の内海であり、上下の海域を閉鎖されれ
ば、中国は外洋には出られなくなる。これを熟知する海洋大国が
軍事作戦で威嚇しているわけです。中国の肩を持つふりをしてい
るロシアですが、歴史的にも中国とロシアは同床異夢であり、ア
メリカ優勢とみれば、中国を裏切る可能性も高い。そうなれば、
中国は一気に劣勢に転じるわけです。
           ──渡邊哲也/福島香織著の前掲書より
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/096]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ米政権、南シナ海での中国のミサイル実験を憂慮
  ───────────────────────────
   【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米政権は、南シナ海で
  中国が最近、対艦弾道ミサイルとみられるミサイル発射実験
  を行ったことに対して警戒を強めている。米軍関係者はミサ
  イル発射について、南シナ海の軍事拠点化を進める中国が、
  西太平洋からの、米海軍の排除を図る「接近阻止・領域拒否
  (A2/AD)戦略」を本格化させている兆候とみており、
  米政権は南シナ海での「航行の自由」作戦をさらに活発化さ
  せるなどして中国の覇権的行動を牽制していく考えだ。
   米国防総省のイーストバーン報道官は7月2日、「中国が
  南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島付近の人工構
  造物から、ミサイルを発射したことを承知している」と確認
  した。報道官はその上で、ミサイル発射は中国の習近平国家
  主席が2015年9月に訪米した際、ホワイトハウスでの米
  中首脳会談後の声明で南シナ海に造成した人工島を軍事拠点
  化しないとする声明を発表したにもかかわらず、今回の行動
  は声明と真っ向から矛盾するとして、「真に憂慮すべき事態
  だ」と懸念を表明した。
   さらに、「中国の行動は、地域に平和をもたらしたいとす
  る主張に反し、南シナ海の領有権を主張する他の関係国に対
  する威嚇を狙った強圧的行動だ」と非難した。米海軍は今年
  に入り、南シナ海にある中国の人工島の12カイリ(約22
  キロ)内に艦船を派遣する航行の自由作戦を頻繁に実施。ま
  た、台湾海峡でも1カ月に1回の割合で艦船を通過させ、中
  国に対抗する姿勢を鮮明にしてきた。中国による今回のミサ
  イル発射は米海軍による一連の動きに、警告を発する狙いが
  あった可能性がある。      https://bit.ly/2lUkBdZ
  ───────────────────────────

「航行の自由作戦」/米国.jpg
「航行の自由作戦」/米国
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2019年09月30日

●「GSOMIAの廃棄は外交の勝利」(EJ第5098号)

 米国と中国、日本と韓国──これらの国と国との関係は、国の
トップが誰になっても、今後ますます険しくなっていき、修復さ
れることはないと考えます。これは、国の価値観が根本的に異な
るからです。
 中国をWTOに加盟させ、その経済発展を援助した米国、日本
をはじめとする西側諸国は、そのようにサポートすれば、中国も
民主主義国家に脱皮すると考えたからです。香港の1国2制度も
50年も経てば、中国の方が変わると期待したのです。
 しかし、そのいずれも予測は大きく外れ、中国は巨大な経済力
を持つ、米国に対抗する超覇権国になろうとしています。西側諸
国は、やっと今になってそのことに気が付いたのです。これは、
最近の日韓関係を見ても明らかです。
 現在、日本と韓国の関係は、どちらかが一歩引いて謝罪し、修
復を求めない限り、解決しないと思います。これまでは、つねに
日本が一歩引いて、問題を解決してきたのですが、今回ばかりは
日本は一歩も引かないし、何が起ころうと、韓国の文在寅政権も
一歩も譲ることはないと考えます。文在寅大統領は、絶好の機会
とばかり、GSOMIAを廃棄しています。これで北朝鮮に恩が
売れるし、そのバックに君臨する中国にもきっと褒めてもらえる
からです。文在寅大統領はまさに確信犯です。
 どうしてこうなってしまうのでしょうか。それは価値観の違い
です。現在、販売中の『文藝春秋』10月号の特集に、「日韓断
絶」が取り上げられていますが、そこにヒントがあります。
 韓国によるGSOMIA破棄は、作家で外交評論家の佐藤優氏
によると、日本外交の”大勝利”であるとして、その理由につい
て、次のように述べています。
─────────────────────────────
 首相官邸や外務省の狙いは、まさにこのGSOMIAを対日
カード″として使わせない、ということにありました。
 韓国側は、「ホワイト国」除外の撤回や徴用工問題での譲歩な
どをGSOMIAを″人質≠ノして要求してきます。この協定が
あるかぎり、今後ずっとこの状況が続いてしまう。これでは日本
側からすれば、「すでに実効性を失っていて、あってもなくても
実質的に同じなら、こんな協定はなくていい」となる。しかも、
米国が望まない協定の破棄を日本からではなく韓国に言わせる。
そうすれば、「責任は百パーセント韓国側にある」と主張できま
す。まさにこうしたシナリオ通りに事態が動いたわけです。その
意味で、短期的に言えば、日本外交の大勝利≠ナす。
      ──『文藝春秋』10月号「総力特集/日韓断絶/
                 憤激と裏切りの朝鮮半島」
─────────────────────────────
 「GSOMIAなんてなくても大丈夫」ということを確信した
のは、GSOMIA破棄決定直後の8月24日早朝に、北朝鮮が
発射した短距離弾道ミサイルについて、日本政府は韓国よりも早
く発表したことです。しかも、弾道ミサイルであることを断定し
ています。これまでの6回の北朝鮮のミサイル発射に関しては、
いずれも韓国の方が早かったにもかかわらずです。日本と韓国の
発表時間は次の通りです。実に26分の差があります。
─────────────────────────────
       ◎日本/防衛省発表
        8月24日/午前7時10分
       ◎韓国/韓国合同参謀本部発表
        8月24日/午前7時36分
          ──『文藝春秋』10月号(2019年)
─────────────────────────────
 日本と韓国は準同盟国のはずです。しかし、その韓国の大統領
が、臨時閣僚会議を開き、日本を名指しして、「盗人たけだけし
い」といった時点で、その信頼関係は完全に壊れています。そん
な国と、軍事機密協定など結ぶことは困難です。ただ、韓国にし
てみると、GSOMIAの破棄は米国との関係を確実に悪化させ
ます。これは韓国としてはできるだけ避けたいので、一時は「G
SOMIAを一時延期させ、実質的に情報の交換を行わず、対日
カードとしてGSOMIAを利用する」と案も検討したといわれ
ています。しかし、8月15日の「光復節」で文大統領が日本に
対話を呼びかけたにもかかわらず、日本が反応しなかったことか
ら、GSOMIAの破棄に踏み切ったのです。
 文在寅政権になる前の朴槿恵政権の頃から、韓国はいつもゴー
ルポストを動かして日本を揺さぶってきています。つまり、韓国
は日本に対して何らかの自信を持ち始めたのです。「日本何する
ものぞ!」という自信です。もともと「事大主義」(大にはつか
える)でやってきた国ですが、あることによって、日本に対して
自信を深めているのです。それによって、日韓基本条約なんか韓
国の力が弱かった頃の不平等条約であり、そんなものは覆しても
いいという考えています。その「あること」について、佐藤優氏
は、次のように解説しています。
─────────────────────────────
 日韓基本条約が締結された1965年当時、韓国の一人当たり
名目GDPは100ドルを超える程度で、日本の約8分の1。そ
れが2018年時点では、日本が3万9000ドルなのに対して
韓国は3万1000ドルにまで伸びています。しかも、韓国の方
が物価が安いゆえに、購買力平価で見た生活水準はほぼ変わらな
い。インバウンドで来日した裕福な韓国人からすれば、皮膚感覚
として「日本の生活水準は低い」と感じるほどでしょう。その結
果、韓国が経済的に弱かった時期に結ばれた日韓基本条約や日韓
請求権協定が不当な条約に見えるのです。
          ──『文藝春秋』10月号(2019年)
─────────────────────────────
 韓国の一人当たりの名目GDPがここまで伸びたことには、日
本が大きく寄与しているのですが、韓国はそういうことを露ほど
も考えない国なのです。   ──[中国経済の真実/097]

≪画像および関連情報≫
 ●日韓経済力比較 差は縮まりつつあるが逆転の可能性は?
  ───────────────────────────
   元徴用工への賠償命令判決にレーダー照射問題と、日韓関
  係に改善の兆しは見えない。いま両国に求められているのは
  経済力から軍事力、学力からスポーツまで、感情論が一切排
  除されたデータに基づき、お互いの現状を認識し合うことで
  ある。
   ここでは経済力を見てみる。名目GDPは総人口数の多い
  日本が韓国を上回るのは当然だが、国民一人当たりの同数値
  で比べても日本は約4万ドルで、韓国は約3万ドル。世帯年
  収は日本が429万円で、韓国は357万円と、現状は日本
  が上回っている。
   一方で、IMF(国際通貨基金)が予測する2019年の
  経済成長率は、日本が1・1%であるのに対し、韓国は2・
  6%とその差は徐々に詰まりつつある。今後、逆転の可能性
  はあるのか。元韓国大使で評論家の武藤正敏氏はこう見る。
   「サムスンをはじめとする韓国の財閥は、オーナーによる
  カリスマ経営や徹底した競争主義で世界に通用する急成長を
  遂げ、それが韓国成長の原動力となってきた。ただし、文在
  寅大統領は『財閥解体』を掲げており、サムスンも2018
  年10〜12月期は前年同期比29%減益となるなど落ち込
  んでいる。このままでは、成長に歯止めがかかるのではない
  か」              https://bit.ly/2lNu1bg
  ───────────────────────────


作家/佐藤優氏.jpg
作家/佐藤優氏
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2019年10月01日

●「韓国のデモに異変が出てきている」(EJ第5099号)

 韓国では、相変わらず毎日のようにデモが行われています。し
かし、現在では反日デモはなりを潜め、「文在寅辞めろ!」のデ
モが拡大しています。それは、直接的にはチョ・グク法相の一連
のスキャンダルや、韓国経済の危機的状況による文在寅政権への
批判が高まっているためですが、韓国国民は、文在寅大統領が最
近口にしはじめた次の言葉に不安を感じ始めたのです。
─────────────────────────────
 平和統一こそ経済大国の近道。2032年に「ソウル/平壌
 五輪/45年に1つの国、ワン・コリア」へ
       ──8月15日光復節での文在寅大統領の演説
─────────────────────────────
 つまり、文在寅政権による北朝鮮主導の赤化統一への警戒が強
くなっているのです。しかし、文政権はメディア統制を強めてお
り、この動きが拡大しないようコントロールしています。
 それにしても2018年から現在にかけて韓国が日本に対して
行ってきている行動は、日本人には理解しがたいことがあまりに
も多いです。これについては、以前のEJでも述べましたが、そ
の原因について、作家で、数学者の藤原正彦氏が、「中国への卑
屈、日本への軽蔑」と題して、次のような見事な筆致で述べてい
るので、その一部を引用します。
─────────────────────────────
 2000年にわたる中国の支配下で、朝鮮の人々の意識に刷り
込まれていったのが「華夷秩序」という考え方でした。これは、
中国こそが優れた文明を持つ世界の中心(華)であり、その世界
から外れた周辺の異民族を夷狄(蛮族)とみなすものです。「華
夷秩序」に則れば、本来は朝鮮民族は夷狄ですが、朝鮮は中国の
冊封下に入って、属国として礼を尽くしていたため、「中華」の
一員として認められていました。朝鮮は小中華としての「誇り」
を持っていたのです。
 ただ、小中華としての朝鮮が大中華である中国を凌駕すること
はあり得ないため、必然的に朝鮮の人々は、大国に対しての「卑
屈」を感じることになります。その心理的ストレスを解消しよう
と、中華の外にある日本を蛮族として「軽蔑」することで、心の
均衡を保ってきたのです。優越感をプラス、劣等感をマイナスと
すると、大体どの人も両方を足すと0になるようになっているの
です。中国に対する「卑屈」と日本に対する「軽蔑」。この2つ
の感情が常にセットとなり、長い歳月にわたって朝鮮の人々の精
神的支柱として存在してきました。
      ──『文藝春秋』10月号「総力特集/日韓断絶/
                 憤激と裏切りの朝鮮半島」
─────────────────────────────
 藤原正彦氏は、上記の「中国に対する『卑屈』と日本に対する
『軽蔑』」の例として、韓国における米軍のTHAAD(地上配
備型ミサイル迎撃システム)配備を上げています。THAAD設
置の場所を提供したロッテグループに対し、中国は徹底的な不買
運動、韓国ツァーの全面中止など、今の韓国が日本にやっている
のと同じようなことを中国は韓国に対して行い、ロッテを中国か
ら、遂に追い出してしまっています。また、現代自動車も北京工
場の一つが閉鎖に追い込まれています。
 それにもかかわらず、そのとき韓国では、中国を非難するデモ
は一切起きていないのです。「華夷秩序」上では、目上である中
国からの圧力は仕方がないと考えるからです。しかし、それが目
下(と朝鮮人は思っている)の日本が何か韓国に不利益なことを
すると、信じられないほど執拗に、延々とデモや不買運動が起き
るのです。日本は蛮族ですから、何をしてもよいと考えているの
でしょうか。「華夷秩序」の論理ではそうなるのです。
 もちろん国民全般がそのように考えて、デモや不買運動を起こ
しているのではなく、すべて官制のデモです。青瓦台が指揮して
やらせているのです。当然メディアもコントロールし、他国にそ
ういう不利益な情報が流れないようにしています。こうなると、
韓国はもはや民主主義国とはいえなくなります。
 その韓国において、『反日種族主義』(添付ファイル)という
本がベストセラーになっています。李栄薫(イ・ヨンフン)ソウ
ル大学名誉教授ら6人の学者の共著である同書のテーマは、「歴
史問題に関する嘘や無知、誤解に基づく韓国の『反日』は、未発
達な精神文化の表れであり、これを克服しなければ韓国社会の発
展はない」というものです。よくぞいってくれたという本です。
日本語版も出るようなので、読んでみたいと思います。
 こういう本が堂々と出版される韓国は、中国よりはよほどマシ
ですが、政治の上層部にはまるで効いていない。現在、スキャン
ダルを重ねているチョ・クグ氏がこの本を読み、次のように感想
を述べたことをテレビで知りました。
─────────────────────────────
 『反日種族主義』を読んだが、ウソをウソで塗り固めていて
 吐き気をもよおした。         ──チョ・グク氏
─────────────────────────────
 このような本が出ても、小さいときから「反日教育」で刷り込
まれてきているので、受け付けないのです。しかし、一般人であ
れば別として、チョ・グク氏は名門ソウル大学の教授であり、物
事を客観的に判断できるはずの学者です。しかも、データは豊富
にあり、それらを分析できる能力があるはずです。それによって
真実が見えないはずがないのです。
 例えば、竹島が韓国の領土ではないことなどは、学者であれば
それも紹介されているように、彼が途方もなく優れた学者である
ならば、客観的にデータを見ればわかるはずです。それでも国の
ために、政治的にそのようにはみないことにしているのかもしれ
ません。だから、この国では、『反日種族主義』のように、真実
を記述した本が出たとしても、青瓦台は平然とそれを否定して反
日政策を続けるのです。このままでは、韓国は危険な状態に陥っ
てしまうはずです。     ──[中国経済の真実/098]

≪画像および関連情報≫
 ●「この国は嘘つきの天国」韓国ベストセラー本の中身
  ───────────────────────────
  <今の韓国社会の雰囲気とは真逆を行く書籍、『反日種族主
  義』だが、韓国の書店でベストセラーになっている>
   日本でも注目されている韓国のベストセラー本『反日種族
  主義』が、引き続き売れている。ソウルにいるデイリーNK
  ジャパン記者によれば、ソウル市中心部の大型書店で今週も
  総合ランキング1位である。
   李栄薫(イ・ヨンフン)ソウル大学名誉教授ら、6人の学
  者の共著である同書のテーマをざっくり言うと、「歴史問題
  に関する嘘や無知、誤解に基づく韓国の『反日』は、未発達
  な精神文化の表れであり、これを克服しなければ韓国社会の
  発展はない」というものだ。
   最近の韓国社会の雰囲気とは真逆に置かれる内容だが、否
  定派も含め、同書を手に取る人が圧倒的に多いのも韓国社会
  の現実なのだ。日韓関係の悪化を受けて、歴史関係の書籍が
  全体的に売れているというが、同書に追随する本は見当たら
  ない。ただ、前出のデイリーNKジャパン記者によれば、同
  書が売れに売れながらも、その内容に基づく「大論争」が始
  まる気配はまだ見えないという。同書は従軍慰安婦、徴用工
  日韓併合などについて韓国の「常識」に強烈に異を唱えてい
  るわけだから、その内容を受け入れられない学者や運動家は
  ひとつひとつ根拠を挙げて論駁しなければならない。そうす
  れば、同書にも誤りがあることが判明するかもしれない。
                  https://bit.ly/2oeDrxp
  ───────────────────────────

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「反日種族主義」韓国書店第1位
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2019年10月02日

●「文在寅では韓国が地球から消える」(EJ第5100号)

 既にご紹介している『文藝春秋』10月号「総力特集/日韓断
絶」には、「韓国高官X」なる人物が登場し、作家の麻生幾氏と
対談しています。高官といってもいろいろあるので、もう少し正
確にいうと、次のようになります。
─────────────────────────────
 韓国大統領直属の情報機関「国家情報院」のエリート情報部
 員として、長年、対日関係の最前線で活躍してきている。こ
 れまで、日韓関係が悪化するとき、X氏はその中心にいて解
 決に尽力してきている人物。現職かOBかは、本人の身の安
 全上明らかにできない。
 ──『文藝春秋』2019年10月号「総力特集/日韓断絶/
                 憤激と裏切りの朝鮮半島」
─────────────────────────────
 このX氏いわく「文在寅では大韓民国が地球から消える」と心
配しています。このX氏が訴える韓国文在寅政権の内情は、驚く
べきものであり、一読の価値があります。『文藝春秋』は、現在
でも購入可能であるので、興味のある方は一読されることをお勧
めします。EJでは、残念ながら、その一部しかお伝えすること
ができないからです。
 朴槿恵政権は、最初のうちこそ、日本と対話することに頑なで
あったものの、オバマ米大統領の仲介もあって、当時最大の問題
であった慰安婦問題について日本と韓国は協議を重ね、遂に解決
へと導いたのです。これは、安倍政権と朴槿恵政権の最大の業績
といえるものです。積年の課題を解決したからです。それを文在
寅政権は、完全に破壊してしまったのです。これについて、高官
X氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 バク・クネ大統領時代に、慰安婦問題の合意に尽力した者たち
の多くは、優秀で一流だった。しかし、ムン政権になって、積弊
(過去の積もりに積もった弊害)という名の下、多数の職員が逮
捕され、取り調べを受け、辞職を余儀なくされた。
 国情院の誰もが、ムン政権に逆らえない。逆らえば、ムン政権
が密かに「査定対象者」と指定した上で、これもまた人事という
恐怖感で呪縛している司法機関に通告し、あらぬ疑惑を捏造し、
簡単に逮捕してしまうからだ。現在のムン政権とは、政府職員を
恐怖で縛り付けることが常態化している、つまり独裁国家と同じ
なのだ。        ──『文藝春秋』2019年10月号
─────────────────────────────
 文大統領は、司法に自分の腹心を送り込み、司法をコントロー
ルしようとしています。徴用工判決もこの工作によって出された
ものであり、文政権はそれに深く関わっています。文大統領は、
GSOMIAを就任時点から、何とか破棄すべく考えていたとい
われます。もし、GSOMIAの破棄に成功すると、北朝鮮と中
国に大きな貸しをつくることができるからです。
 文大統領は、就任早々、国情院に対し、次の命令を出している
ことがわかっています。
─────────────────────────────
 日本政府機関に対しては、北朝鮮に関する一切の情報を提供
 してはならない。提供するのは、北朝鮮のミサイル発射情報
 に関する数値的データのみでいい。   ──文在寅大統領
            ──『文藝春秋』2019年10月号
─────────────────────────────
 なんのことはない。拉致に関する情報は日本に提供するなと、
韓国の大統領自身が国情院に命令しているのです。GSOMIA
が締結されたのは、2016年11月のことですが、これによっ
て衝撃を受けたのは、中国です。そして2017年11月に文在
寅政権に対し、「三不一限」を約束させています。「三不一限」
とは、次の3つの約束です。
─────────────────────────────
 ◎「三不一限」
  1.米国のミサイル防衛(MD)体制に加わらないこと
  2.韓米日安保協力を軍事同盟に発展させてはならない
  3.THAAD(サード)の追加配備には拒否を貫くこと
─────────────────────────────
 もしかすると、徴用工判決からはじまり、慰安婦合意の破棄、
レーダー照射事件などの韓国の一連の不可解な日本に対する対応
は、GSOMIAを破棄するための工作だった可能性すらあるの
です。しかし、文大統領は、GSOMIAがいかに韓国の安全保
障上重要であるかがまるでわかっていないようです。韓国高官X
氏は、GSOMIAの破棄について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ジーソミア破棄で(韓国)国民が覚悟を持たなければならない
ことは、同盟国を守るためにアメリカが作成し、運用していた安
全保障システムを、その同盟国の韓国が「破壊」した、という事
実である。その安全保障システム≠フ中心となるべきものがジ
ーソミアだった。ジーソミアは単なる象徴ではない。USW(対
潜水艦戦)で圧倒的な情報を握る自衛隊から素早く戦術情報を受
け取ることは半島有事において欠かせないものであり、SLBM
(水中発射弾道ミサイル)を搭載した北朝鮮潜水艦のローカライ
ズ(位置特定)情報がリアルタイムで入ってくるかどうかは、韓
国のみならず、在韓米軍の存亡にもかかわる。
            ──『文藝春秋』2019年10月号
─────────────────────────────
 文政権になってから、日本の対韓政策が180度変わっていま
す。内閣官房関係者は、内閣官房の高官から、様々な会議を通じ
て、「北朝鮮と韓国は一体化しているとの認識で、注視し、情報
収集に当ってほしい」との指示があったといいます。米国と日本
政府は、かなり以前から、すべてのことがわかったうえでの対応
をしてきたものと考えられます。
              ──[中国経済の真実/099]

≪画像および関連情報≫
 ●特集・韓国大統領/なんとも事大主義で夜郎自大
  ───────────────────────────
   韓国の文在寅政権が窮地に陥っている。文氏が「外交の天
  才」(韓国大統領府)ぶりを発揮した結果、同盟国・米国の
  トランプ大統領には軽視され、頼みの中国にはないがしろに
  され、ラブコールを送り続ける北朝鮮には馬鹿にされ、日本
  との関係では、約束破りを続けて、戦後最悪の修復不能状態
  となった。
   日本が安全保障上の理由で対韓輸出管理の厳格化を実施し
  たのは、韓国による日韓請求権協定破りへの対抗・報復措置
  という以前の軽微な措置だが、韓国には甚大な影響を及ぼし
  ている。文政権の経済政策の失敗により、先行きが暗かった
  韓国経済はさらに下降することになった。
   文政権は、もともとの経済失政をすべて日本に押し付ける
  気だろうが、それで韓国の景気が浮揚するわけでも何でもな
  い。韓国人がちょっと気の毒になりはするが、その韓国人自
  身が文氏をリーダーに選んで高い支持率を与え、文氏の扇動
  に乗せられて反日デモを行ったり、日本製品不買運動に走っ
  たりしているのだから、どうしようもない。毎度繰り返され
  る反日の光景は、ただ日本人を呆れさせるばかりである。こ
  の外交も経済もどん詰まりの現状は、文政権と韓国自身が招
  いた自業自得であり、一切の責任は文氏にある。
                  https://bit.ly/2m0WuKN
  ───────────────────────────

GSOMIA破棄を決めた文在寅韓国大統領.jpg
GSOMIA破棄を決めた文在寅韓国大統領
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2019年10月03日

●「米国は韓国をどのように考えるか」(EJ第5101号)

 前回のテーマは「米中ロ覇権争いの行方」でしたが、話の中心
は中国です。今回のテーマはズバリ「中国経済の真実」であり、
メインはもちろん中国です。そういうわけで、このところEJは
180回にわたり、中国について特集を組んでいます。
 しかしながら、今後中国がどうなるかについては、関連書のほ
とんどを読みましたが、一向に見えてきません。現代の中国は、
社会主義国にして、市場経済を営むという、今までになかった国
家の壮大な実験をやっているような気がします。こと経済政策に
関しては、やっていることは無謀であり、もし自由主義社会であ
れば、とっくに経済が破綻してもおかしくない状況ですが、現在
も膨張を続けています。しかし、大きな危険をはらんでおり、あ
る日突然破綻しても、おかしくはありません。
 ただ、中国問題にとって最大の不安要素は「台湾」です。何し
ろ、台湾をめぐって、米中の局地戦争が起きても、おかしくない
からです。9月25日のことですが、米議会の上下両院の外交委
員会は、米政府に対し、香港の自治が十分に認められているかの
検証を義務付ける「香港・人権・民主主義法案」をそれぞれ全会
一致で可決しています。この法案は、この後、両院の本会議での
可決を受けて、トランプ大統領が署名すれば成立します。
 これに対して、中国外務省の耿爽副報道局長は、次のように反
発しています。
─────────────────────────────
      強烈な憤慨と断固たる反対を表明する
         ──2019年9月27日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 これを受けてか、香港のデモはさらに激しさを増しています。
これがそのまま台湾問題に波及します。こんな話があります。5
月中旬のことですが、台湾のNSC(国家安全会議)のトップが
訪米します。訪米の目的は、ジョン・ボルトン安全保障担当補佐
官と会談するためです。ボルトン補佐官の発言です。
─────────────────────────────
 朝鮮半島情勢については、これまで韓国が守っているラインが
ある。つまり三十八度線だ。しかし、近い将来、そのラインは、
東シナ海にまで下りてくる。つまり、朝鮮半島情勢が直接、台湾
に繋がる。台湾はそのことに覚悟をもって備えて欲しい。
       ──ボルトン安全保障担当大統領補佐官(当時)
 ──『文藝春秋』2019年10月号「総力特集/日韓断絶/
                 憤激と裏切りの朝鮮半島」
─────────────────────────────
 ボルトン氏のこの発言は重要です。そこには、「韓国の存在が
ない」からです。ボルトン補佐官は辞めましたが、米国による台
湾の戦略的位置づけは、彼の個人的な考え方であるはずがないし
米国の方針です。
 米国は、おそらく北朝鮮と韓国は将来連邦国家になるとみてい
ます。そうなったとき、米国にとって朝鮮半島はもはや同盟国で
はなく、脅威的対象国になるとみています。そのため、2018
年に次の2つの法律を相次いで成立させたのです。
─────────────────────────────
 2018年 3月16日/        「台湾旅行法」
 2018年12月31日/「アジア再保証イニシアチブ法」
─────────────────────────────
 「台湾旅行法」では、米国大統領の台湾訪問を狙い、「アジア
再保証イニシアチブ法」によって台湾に継続的な武器の供与を可
能にし、事実上の米台安全保障条約にしようとしています。
 文在寅韓国大統領はおそらくこう考えています。彼は、来年の
選挙に勝って、憲法を改正し、1期5年の、大統領の任期を2期
10年にしようとしています。そのうえで、さらに憲法の改正を
行い、社会主義民主国家を宣言、北朝鮮との統一連邦国家への道
を具体的に進めると思われます。この場合、連邦国家といっても
実質的に北朝鮮に同化されてしまうはずです。韓国高官のX氏は
もし連邦国家になると、名実ともに大韓民国という国家は消滅し
てしまうとして、危機感を募らせているのです。
 こういう情報もあります。韓国内には、朝鮮労働党の秘密党員
がたくさん潜伏しています。これらの秘密党員が2014年6月
15日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(当時第一書記)に対
して、忠誠を誓う「誓詞文」を送っています。そこには、10カ
条の誓約が書かれていますが、その一部をご紹介します。
─────────────────────────────
 「韓国の、自由民主主義体制をたたき潰し、全朝鮮半島に主体
(チュチェ)思想化を実現するのに、一命を藁(わら)のように
ささげます」「駐韓米軍を南半分から完全に追い払う」「南側政
府の警察、検察など司法部と行政部に浸透し、政府の行政機関を
マヒさせ」などなど、恐ろしいことが書いてあるのですが、最後
に40の個人・団体名があり、そこに「文在寅」の名前があると
いうのです。 ──9月27日発行/D(電子)版「夕刊フジ」
       関連ユーチューブ動画 https://bit.ly/2onZ7qN ─────────────────────────────
 これは、月刊「Hanada」10月号に掲載されているので
すが、同誌は、増刷分を含めて現在売り切れています。最初の報
道から1ヶ月以上経っていますが、韓国政府からは、同誌に対し
て何のクレームもないそうです。これに関するユーチューブによ
る動画(5分2秒)もあるので、ぜひご覧ください。
 このように、米中貿易戦争といいますが、中国だけではなく、
北朝鮮、韓国を含めて見る必要があります。2019年1月4日
から、主として米中の覇権争い、それに加えて、隣国韓国と日本
の関係について書いてきましたが、このテーマは、本日で終了し
ます。長い間のご愛読感謝いたします。10月7日からは、新し
いテーマでお送りします。なお、明日、10月4日のEJはEJ
5000号記念の特別版をお届けいたします。
              ──[中国経済の真実/100]

≪画像および関連情報≫
 ●韓国はもはや「内戦」状態/北朝鮮が全半島を支配する日
  ───────────────────────────
   「韓国は革命前夜だ」と言ったら、韓国人の洪ヒョン氏が
  「前夜ではありません。すでに内戦です」と反論した。憲法
  裁判所が朴槿恵大統領弾劾訴追を承認して、罷免の決定を下
  したのが今年3月10日だった。保守派はこの判断を合憲だ
  とは認めず、「国民抵抗権」の旗印の下に「国民抵抗本部」
  を設置し、街頭に出て弾劾を弾劾すると気勢を上げる。憲法
  裁判所の判断を暴力によって覆そうとする試みを法治国家の
  枠組みのどこに位置づけ得るのか。洪氏はこう説明する。
   「韓国憲法は、国家が正常に機能しない場合、国民抵抗権
  で立ち上がることを認めています。これは韓国が北朝鮮と対
  峙して生まれた国家だからこそ設けられた、憲法で保証され
  た国民の権利なのです。北朝鮮の支配下で、ルールだからと
  いって従えば、韓国の自由や民主主義が死んでしまう。その
  ときに立ち上がる権利を保障したのです」
   いま国民抵抗本部に集まる人々が増えているという。組織
  の中心軸を構成するのが、韓国の陸・海・空の退役軍人の会
  だ。現役の軍人を除く軍関係者が勢揃いしていることの意味
  は大きい。保守派の人々の抱く強い危機感は、5月9日の大
  統領選挙で文在寅氏が当選する可能性が高いと言われていた
  時点から強まっていた。そして実際、文氏は韓国の大統領に
  なった。洪氏はかつてこう語っていた。
                  https://bit.ly/2maMkYd
  ───────────────────────────

ボルトン前安全保障担当大統領補佐官.jpg
ボルトン前安全保障担当大統領補佐官
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2019年10月04日

●「EJ5千号発行記念祝賀会が開催」(EJ第5102号)

 今回はEJの特別号です。2019年9月18日、「EJ50
00号発行記念祝賀パーティー」が茅場町証券会館、ホテルオー
クラレストランニホンバシで開催され、長年にわたるEJの読者
が雨のなか、多数参加されました。また、当日会場には出席され
ませんでしたが、大勢の方から、お祝いのメッセージとともに、
記念品代をお寄せいただいております。
 EJの書き手としての私、平野浩として、このような会を開い
ていただいたことについて、今回の発起人を務めていただいた8
人の方々をはじめ、雨のなか祝賀パーティーにご参加していただ
いた方々、記念品代をお寄せいただいた方々に対し、厚く御礼申
し上げます。本当にありがとうございました。EJの本号をかり
まして、御礼申し上げます。本号は、特別号として、「エレクト
ロニック・ジャーナル」について書くことにします。
 EJ第1号を配信したのは、1998年10月15日のことで
す。メールマガジンとして約50人ほどの方に配信したことを覚
えています。それ以来、私が今まで守っていることがあります。
それは、基本的にEJは「配信してほしい」と希望した人にしか
配信しないことです。1998年当時のITといえば、メールと
ウェブサイトが中心であり、ブログはまだ登場していなかったの
です。ブログが登場するのは、2005年のことです。
 EJは、もともと私の明治生命での最後の職場になった明生シ
ステムサービス(MSS)の時代に、私は「家庭教授部」という
部の部長をしていました。確か10人前後の部員がいましたが、
それらの部員と技術情報を共有するために、毎日「電子情報」を
配信していたのです。実は、EJの前身はこの「電子情報」なの
です。当時日本のITは、スタートしたばかりであり、そのリテ
ラシーは、今から考えると、信じられないくらい、初歩的なレベ
ルに止まっていたのです。
 1998年12月28日のEJ第50号で伝えているEJの配
信者は全部で69人です。内訳は、明治生命本社関係9人、明治
生命OB8人、MSS18人、その他外部関係34人、全体の約
半数は外部の人です。なぜ、明治生命本社関係が少ないかという
と、当時の明治生命は、特定の手続きをした人以外は、外部から
メールを送信できなかったからです。
 EJ第50号には、次の記述があります。こんなことは、今で
は信じられないと思うでしょうが、当時のITのリテラシーは、
その程度のレベルだったのです。
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 1998年の年の終りに明治生命に関して、若干苦言を呈した
いと思います。私は、今年の9月25日の最後の「電子情報」で
メールアドレスの敬称(社長、専務、常務など)をやめるよう金
子社長に提案しました。そのようなことをやっているのは明治生
命だけだからです。それにメンテナンスに膨大な手間がかかるな
どの理由からです。名前の方は変化しませんが、役職は毎年変化
するからです。あわせて、社外にインターネットを通じてメール
を出すとき、コードで届くのは何とかならないかということも提
案しました。社内では、コードと氏名の変換プログラムによって
漢字で読めますが、社外に送るときは相手にコードで届いてしま
う点です。 ──1998年12月28日付、EJ第50号より
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 当時明治生命では、社内メールには役職が付いていたのです。
関係者としては「役職なし」を提案したのですが、上層部はがん
として聞き入れなかったのです。そのため、私は当時の金子社長
にメールで「役職全廃」をストレートに提案したのです。金子社
長からは「前向きに検討する」という返信メールをいただきまし
たが、実際に役職が撤廃されるまで相当時間がかかったのです。
1998年というのは、ことITに関しては、日本では、そのよ
うなレベルでした。完全な内部指向です。
 EJは「作品型情報」を目指しています。読み切りのコンテン
ツではなく、作品として残せるコンテンツにするというのが作品
型情報の意味です。1つのテーマについて書くとき、膨大な情報
を集めます。とくに本は、何冊も読みます。当然本からの引用は
多くなります。そのため、EJを読んでいただくと、読み手は、
結果として多くの本を参照したことになるのです。しかし、テー
マ全体としては、私の主張を貫いているつもりです。
 少しでも文章を読み易くするために、ツイッターをやっていま
す。交流を目的とする使い方ではなく、情報発信型のツイッター
です。2010年1月4日からはじめましたが、以来一日も休ま
ず、ツイートを発信しており、現在フォロワーは、2・2万人い
ます。これ以上はなかなか増えません。このあたりが、私の限界
ではないかと感じています。
 ツイッターは、長い文章を140字にまとめる訓練に役立ちま
す。しかもツイッターは、「いいね」と「リツィート」の数とし
て数値で評価されるので、コンテンツの影響度を客観的に知るこ
とができます。2・2万人のフォロワーの内容は多士済々です。
なかには有名人も多くいます。有名人は、何十万、何百万という
フォロワーを持つ人が多いので、それらの有名人の方が、私のツ
イートをリツィートすると、とんでもない数の人にツイートが届
くことになります。その結果、フォロワーが増えるのです。
 400字原稿用紙7枚の量のEJを毎日書いて配信するのは、
正直いって大変です。最近では、さすがに息切れしつつあるのが
現状です。しかし、ひとつ書き上げると、大きな達成感を感じる
ことができます。今やそれが、生き甲斐になりつつあります。
 今後、何号まで書き続けられるか、私にもわかりません。しか
し、熱心に読んでくださる読者がいて、それを実感できるとき、
続ける意欲が湧いてきます。9月18日の5000号記念のパー
ティーは、改めて、継続してEJを書く意欲が湧いて来たような
気がします。本当にありがとうございました。10月7日からは
新しいテーマに取り組む予定です。
              ──[中国経済の真実/101]

≪画像および関連情報≫
 ●EJ5000号パーティー風景

「乾杯」パーティー写真1.jpg
 
「乾杯」パーティー写真1

「懇談」パーティー写真2.jpg
「懇談」パーティー写真2

「オペラ歌手」パーティー写真3.jpg
「オペラ歌手」パーティー写真3
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする