ジンです。ところで、今日から新しいテーマになります。今年の
EJは28日まで送付いたしますが、あと14回しか、ありませ
ん。そこで、EJとしては、はじめての試みですが、テーマを決
めないフリーテーマで年内は14回書き、1月からは新しいテー
マを設定して連載することにします。
年末が押し迫りつつある2018年の現在、注目すべきは「米
中貿易戦争」の行方がどうなるかです。なぜなら、この「経済戦
争」の決着がどうなるかは、日本の将来にとっても重要な影響が
あるからです。それにこの経済戦争は簡単には決着しません。し
たがって、この問題について考えてみる価値があります。
12月1日、G20が行われたアルゼンチンの首都ブエノスア
イレスでの米中首脳会談では、次のように激突を避け、90日間
の休戦をすることで合意しています。
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米国は、2019年1月からの追加関税拡大は当面せずに、中
国に90日間の猶予を与える。90日以内に、中国による技術移
転、知的財産の侵害などが改善されなければ、追加関税拡大を実
施する。 ──米中首脳会談における合意
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表面上は両国間の休戦合意ですが、ボクシングに例えると、米
国の繰り出す強烈なパンチとボディーブローにふらふらになった
中国がノックアウト寸前にクリンチに逃れ、ゴングに救われたよ
うなものだったといえます。
「インサイドライン」編集長の歳川隆雄氏の分析ですが、この
会談を中国がいかに重視していたかを示す事実があります。それ
は、習近平主席の最側近で、党中央の官房長官ともいうべき丁薛
祥党中央弁公室主任(政治局員)がこの会談に参加していること
です。官房長官が国のトップと一緒に海外の会議に参加すること
はないのです。日本でいえば、安倍首相の外遊に菅官房長官が同
行するようなものです。官房長官はあくまで留守番役です。
習主席としては、丁党中央弁公室主任に厳しい米国の姿勢を直
に見せておきたかったものと思われます。そもそも習主席が最も
恐れたのは、会談そのものが中止になることだったのです。トラ
ンプ米大統領は気まぐれであり、いつなんどき中止をいい出すか
わからなかったからです。
夕食をしながらの会談(ワーキング・ディナー)というと、終
始和やかに会談が進められるイメージがありますが、そうとは限
らないのです。外向きはともかく、開催場所や食事の内容などで
交渉相手に対し、言外に意思を伝えることが多いのです。
そういう意味で今回の米中首脳会談は、中国側にとって、相当
屈辱的なものだったのですが、中国側はそれに耐えて会談を受け
入れています。今回の米中首脳会談これについて、歳川隆雄氏は
次のように述べています。
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もう一つ指摘すべきは、今回の夕食を交えた米中首脳会談(ワ
ーキングディナー)が、どのようにセットされたのかを知ること
だ。会場のブエノスアイレスの最高級ホテル「パラシオドゥハウ
・パークハイアット」はトランプ大統領が宿泊したホテル。習近
平氏はトランプ氏の宿舎を訪れたのである。「朝貢」とは言わな
いが、習氏には屈辱だったに違いない。
当夜のメニューは、アルゼンチン風のサーロイン・ステーキ、
サラダ(バジルマヨネーズ・ドレッシング)、キャラメル和えパ
ンケーキ、そして、アルゼンチンワイン「ザペタ」のシャルドネ
2009年(白)、同マルベック2014年(赤)。支払いも米
国負担。そう言えば、マールアラ−ゴでの夕食会も、ステーキ、
シーザーサラダ、パンケーキだった。しかも、供されたカリフォ
ルニアワインは「チャークヒル」シャルドネ2014年(白)、
「ジラード」カベルネ・ソーヴィニヨン2014年(赤)であり
各々25〜30ドルのチープなものだった。トランプ氏は習近平
氏をおちょくっているのではないかと疑いたくなる。これにはも
ちろん、理由がある。一言でいえば、習近平・中国は、トランプ
・米国に追い詰められていたのだ。背に腹は代えられないという
ことである。 https://bit.ly/2Qib8LR
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実は、中国はこの会談において「隠れた譲歩」をいくつかして
います。中国としては何としてでも「休戦」を引き出したかった
からです。それに対し米国は、会談を行った同じ12月1日に、
ファーウェイの孟晩舟副会長をカナダ政府に要請して逮捕させて
います。これはかなり強気の対応といえます。ファーウェイが、
イランへの違法輸出に関わった容疑で逮捕です。ファーウェイは
米グーグルのスマホ用基本ソフト「アンドロイド」や米クアルコ
ムの半導体を採用するなど、米国企業と幅広く取引しているので
もし米国が制裁に踏み切ると、経営に大きな打撃を与える公算が
大きいといえます。
ところで、習近平主席が米国に対して行ったという「隠れた譲
歩」とは何でしょうか。
それは、米半導体大手のクアルコムによるオランダの半導体大
手のNXPセミコンダクターズの買収に関しての譲歩です。
クアルコムは、NXPセミコンダクターズを買収すべく、関係
国や株主の承認を得ていましたが、中国が「独占禁止法に違反す
る」として反対し、断念に追い込まれていたのです。トランプ政
権は、この8月、国防権限法で、中国の通信大手ZTE(中興通
訊)の米国との取引を禁止しましたが、ZTEの半導体のほとん
どは、クアルコムから輸入していたのです。
習主席は、トランプ大統領に対して、「クアルコムが再度、買
収の意思表示をしたら、承認する」と告げたといいます。これは
トランプ氏に白旗を上げたに等しいのです。もし、関税引き上げ
が実施されると、中国経済は相当厳しい状況になるからです。
──[フリーテーマ/001]
≪画像および関連情報≫
●ファーウェイ副会長逮捕/カナダ首相、政治的思惑を否定
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ファーウェイ創業者の娘でもある孟副会長は1日、米国の
要請に基づき、カナダ西部ヴァンクーヴァーの空港で逮捕さ
れた。中国政府は逮捕が人権侵害だとして孟氏の釈放を求め
ている。保釈聴問会は7日に開かれる。逮捕容疑は公式には
発表されていない。ファーウェイは「孟氏のいかなる不正も
把握していない」と述べた。
ただし米当局は、ファーウェイによるイラン制裁違反の可
能性について捜査してきた。複数報道は、副会長の逮捕はそ
の捜査に関連している可能性があると示唆した。ジョン・ボ
ルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はこの件に
ついて、記者団の質問にコメントしなかった。
その一方で、中国企業の商慣行と業務内容が、中国政府の
「手先」になっている可能性について、一般論として「非常
に大きな懸念」を抱いているとボルトン氏は述べた。逮捕を
受け、欧州株は2年ぶりの安値をつけたほか、アジアの主要
株価も大きく下落した。市場アナリストたちは、逮捕により
米中貿易戦争の危険性が再燃したとの意見だ。ただし、米株
式市場の主要3指数は6日の取引終了までにやや回復した。
主要3指数の1つ、ナスダック総合指数は前日より高値で終
わった。ファーウェイCFO兼副会長の孟氏は、同社創業者
の任正非氏の娘でもある。ファーウェイは通信機器・サービ
ス業界で世界最大手企業の1つ。2018年第2四半期(4
〜6月)の世界スマートフォン出荷台数で米アップルを上回
り、世界第2位のスマートフォン製造企業となった。
https://bbc.in/2L7v1iU
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孟晩舟ファーウェイ副会長