2018年12月10日

●「米中首脳会談は米国の圧勝である」(EJ第4907号)

 EJはテーマを決めて連載するスタイルのメール/ウェブマガ
ジンです。ところで、今日から新しいテーマになります。今年の
EJは28日まで送付いたしますが、あと14回しか、ありませ
ん。そこで、EJとしては、はじめての試みですが、テーマを決
めないフリーテーマで年内は14回書き、1月からは新しいテー
マを設定して連載することにします。
 年末が押し迫りつつある2018年の現在、注目すべきは「米
中貿易戦争」の行方がどうなるかです。なぜなら、この「経済戦
争」の決着がどうなるかは、日本の将来にとっても重要な影響が
あるからです。それにこの経済戦争は簡単には決着しません。し
たがって、この問題について考えてみる価値があります。
 12月1日、G20が行われたアルゼンチンの首都ブエノスア
イレスでの米中首脳会談では、次のように激突を避け、90日間
の休戦をすることで合意しています。
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 米国は、2019年1月からの追加関税拡大は当面せずに、中
国に90日間の猶予を与える。90日以内に、中国による技術移
転、知的財産の侵害などが改善されなければ、追加関税拡大を実
施する。           ──米中首脳会談における合意
─────────────────────────────
 表面上は両国間の休戦合意ですが、ボクシングに例えると、米
国の繰り出す強烈なパンチとボディーブローにふらふらになった
中国がノックアウト寸前にクリンチに逃れ、ゴングに救われたよ
うなものだったといえます。
 「インサイドライン」編集長の歳川隆雄氏の分析ですが、この
会談を中国がいかに重視していたかを示す事実があります。それ
は、習近平主席の最側近で、党中央の官房長官ともいうべき丁薛
祥党中央弁公室主任(政治局員)がこの会談に参加していること
です。官房長官が国のトップと一緒に海外の会議に参加すること
はないのです。日本でいえば、安倍首相の外遊に菅官房長官が同
行するようなものです。官房長官はあくまで留守番役です。
 習主席としては、丁党中央弁公室主任に厳しい米国の姿勢を直
に見せておきたかったものと思われます。そもそも習主席が最も
恐れたのは、会談そのものが中止になることだったのです。トラ
ンプ米大統領は気まぐれであり、いつなんどき中止をいい出すか
わからなかったからです。
 夕食をしながらの会談(ワーキング・ディナー)というと、終
始和やかに会談が進められるイメージがありますが、そうとは限
らないのです。外向きはともかく、開催場所や食事の内容などで
交渉相手に対し、言外に意思を伝えることが多いのです。
 そういう意味で今回の米中首脳会談は、中国側にとって、相当
屈辱的なものだったのですが、中国側はそれに耐えて会談を受け
入れています。今回の米中首脳会談これについて、歳川隆雄氏は
次のように述べています。
─────────────────────────────
 もう一つ指摘すべきは、今回の夕食を交えた米中首脳会談(ワ
ーキングディナー)が、どのようにセットされたのかを知ること
だ。会場のブエノスアイレスの最高級ホテル「パラシオドゥハウ
・パークハイアット」はトランプ大統領が宿泊したホテル。習近
平氏はトランプ氏の宿舎を訪れたのである。「朝貢」とは言わな
いが、習氏には屈辱だったに違いない。
 当夜のメニューは、アルゼンチン風のサーロイン・ステーキ、
サラダ(バジルマヨネーズ・ドレッシング)、キャラメル和えパ
ンケーキ、そして、アルゼンチンワイン「ザペタ」のシャルドネ
2009年(白)、同マルベック2014年(赤)。支払いも米
国負担。そう言えば、マールアラ−ゴでの夕食会も、ステーキ、
シーザーサラダ、パンケーキだった。しかも、供されたカリフォ
ルニアワインは「チャークヒル」シャルドネ2014年(白)、
「ジラード」カベルネ・ソーヴィニヨン2014年(赤)であり
各々25〜30ドルのチープなものだった。トランプ氏は習近平
氏をおちょくっているのではないかと疑いたくなる。これにはも
ちろん、理由がある。一言でいえば、習近平・中国は、トランプ
・米国に追い詰められていたのだ。背に腹は代えられないという
ことである。            https://bit.ly/2Qib8LR
─────────────────────────────
 実は、中国はこの会談において「隠れた譲歩」をいくつかして
います。中国としては何としてでも「休戦」を引き出したかった
からです。それに対し米国は、会談を行った同じ12月1日に、
ファーウェイの孟晩舟副会長をカナダ政府に要請して逮捕させて
います。これはかなり強気の対応といえます。ファーウェイが、
イランへの違法輸出に関わった容疑で逮捕です。ファーウェイは
米グーグルのスマホ用基本ソフト「アンドロイド」や米クアルコ
ムの半導体を採用するなど、米国企業と幅広く取引しているので
もし米国が制裁に踏み切ると、経営に大きな打撃を与える公算が
大きいといえます。
 ところで、習近平主席が米国に対して行ったという「隠れた譲
歩」とは何でしょうか。
 それは、米半導体大手のクアルコムによるオランダの半導体大
手のNXPセミコンダクターズの買収に関しての譲歩です。
 クアルコムは、NXPセミコンダクターズを買収すべく、関係
国や株主の承認を得ていましたが、中国が「独占禁止法に違反す
る」として反対し、断念に追い込まれていたのです。トランプ政
権は、この8月、国防権限法で、中国の通信大手ZTE(中興通
訊)の米国との取引を禁止しましたが、ZTEの半導体のほとん
どは、クアルコムから輸入していたのです。
 習主席は、トランプ大統領に対して、「クアルコムが再度、買
収の意思表示をしたら、承認する」と告げたといいます。これは
トランプ氏に白旗を上げたに等しいのです。もし、関税引き上げ
が実施されると、中国経済は相当厳しい状況になるからです。
               ──[フリーテーマ/001]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイ副会長逮捕/カナダ首相、政治的思惑を否定
  ───────────────────────────
   ファーウェイ創業者の娘でもある孟副会長は1日、米国の
  要請に基づき、カナダ西部ヴァンクーヴァーの空港で逮捕さ
  れた。中国政府は逮捕が人権侵害だとして孟氏の釈放を求め
  ている。保釈聴問会は7日に開かれる。逮捕容疑は公式には
  発表されていない。ファーウェイは「孟氏のいかなる不正も
  把握していない」と述べた。
   ただし米当局は、ファーウェイによるイラン制裁違反の可
  能性について捜査してきた。複数報道は、副会長の逮捕はそ
  の捜査に関連している可能性があると示唆した。ジョン・ボ
  ルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)はこの件に
  ついて、記者団の質問にコメントしなかった。
   その一方で、中国企業の商慣行と業務内容が、中国政府の
  「手先」になっている可能性について、一般論として「非常
  に大きな懸念」を抱いているとボルトン氏は述べた。逮捕を
  受け、欧州株は2年ぶりの安値をつけたほか、アジアの主要
  株価も大きく下落した。市場アナリストたちは、逮捕により
  米中貿易戦争の危険性が再燃したとの意見だ。ただし、米株
  式市場の主要3指数は6日の取引終了までにやや回復した。
  主要3指数の1つ、ナスダック総合指数は前日より高値で終
  わった。ファーウェイCFO兼副会長の孟氏は、同社創業者
  の任正非氏の娘でもある。ファーウェイは通信機器・サービ
  ス業界で世界最大手企業の1つ。2018年第2四半期(4
  〜6月)の世界スマートフォン出荷台数で米アップルを上回
  り、世界第2位のスマートフォン製造企業となった。
                  https://bbc.in/2L7v1iU
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孟晩舟ファーウェイ副会長.jpg
孟晩舟ファーウェイ副会長
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2018年12月11日

●「宣戦布告なき戦争が勃発している」(EJ第4908号)

 中国には「韜光養晦」(とうこうようかい)という言葉があり
ます。これは、これまで中国の国際社会に対する態度をあらわす
言葉として使われてきています。そもそもこの言葉は、中国の国
家指導者、ケ小平の演説が根拠になっているといわれています。
その意味は次の通りです。
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     韜光養晦 → 才能を隠し、内に力を蓄える
─────────────────────────────
 「力のないときは、あれこれいうんじゃない。じっと我慢し、
内に力を蓄えよ」という教えです。しかし、中国はとっくの昔に
国際社会に対してこの態度をかなぐり捨て、爪も牙も剥き出しの
中国になっています。
 それは、2005年から始まっているのです。当時の米国のロ
バート・ゼーリック国務副長官が台頭する中国に対し、ステーク
ホルダー(利害共有国)になってほしいと呼び掛けたのがきっか
けといわれています。以来13年間、今や米国と正面から対立す
るようになっています。
 それを端的にあらわしているのが、APECでのペンス副大統
領の中国を意識した演説です。はっきりと中国を特定し、次の要
旨の演説を26分間にわたってブチまくったのです。これは「言
葉による戦争」そのものです。
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 独立戦争からまもなく、ジョージ・ワシントン初代大統領は、
負債と外国の干渉が、独立によって得たすべてのものを脅かす恐
れがあると警告した。
 こんにちにおいても、すべての国は主権を脅かす負債を受け入
れてはならない。国益を守り、独立を保持するべきだ。アメリカ
のように、常に自国ファーストで行くべきなのだ。
 アメリカはよりよい選択肢を提供する。パートナーを借金の海
に溺れさせることはない。独立を脅迫したり、譲歩させたりする
こともない。アメリカはオープンにフェアに行動する。(一帯一
路のように)ベルト(帯)を締めすぎたり片道切符のようになる
こともない。今日、インド太平洋透明化イニシアティブを誇り高
く発表する。それは4億ドル以上に上るアメリカの資金援助であ
り、この地域の国民が腐敗に対抗し、主権を強化するのに役立つ
ものだ。
 皆さんが米中の競争を案じているのは分かっている。米中の競
争が地域の経済を傷つけたり、南シナ海での発展が軍事的緊張を
高めてしまうのではといったことだ。そこで私は明確にしたい。
アメリカは中国とのよりよい関係を求めている。だがそれは、公
正で、相互主義的で、主権の尊重に基づくものだ。
 もしも中国が、隣国の主権を尊重し、自由・公正・相互主義的
な貿易を受け入れ、人権と自由を守るのであれば、自由で開放さ
れたインド太平洋地域において、その名誉は保たれる。アメリカ
人は、それ以上は望まない。     https://bit.ly/2BYK6Ak
─────────────────────────────
 トランプ米大統領は、現在の中国の存在は、過去数十年にわた
る米国の対中戦略の失敗に原因があるといっていますが、それは
まさにその通りです。そこで、トランプ政権は、対中戦略を従来
の「接触戦略」から、「全方位封じ込め戦略」に転換を図ってい
ますが、これは正解であるといえます。
 米ソ冷戦が崩壊した1990年代以降、米国の対中政策は一貫
していないのです。民主党のクリントン政権は、中国を国際舞台
に引き出し、国際ルールに従わせる「エンゲージメント戦略」を
とり、米中関係を安定させています。ここでいうエンゲージメン
トとは、「関与する」という意味です。国際ルールを守るように
なれば、中国も少しずつ民主国家になって行くだろうと期待した
のです。しかし、これは見事に裏切られます。
 クリントン政権に続く共和党のブッシュ政権では、中国の軍事
的、経済的台頭を抑え込む「ヘッジ戦略」を取りながらも、急膨
張し、巨大化する中国市場を獲得したいと希求する米国企業の要
請に答えて「接触政策」もとったので、政策が中途半端なものに
なったことは確かです。
 再び政権は民主党に戻り、オバマ政権が誕生します。このとき
中国側は西側と協調を図ろうとする胡錦濤政権だったので、再び
「エンゲージメント戦略」をとります。しかし、2012年秋に
強権的な習政権が生まれると、対中強硬戦略に転換したものの、
中国が南シナ海で軍事拠点化を進め、対外膨張、覇権主義の牙を
むき出しても、オバマ政権は言葉では非難したものの、実際には
何も有効な手を打てなかったのです。
 このオバマ政権を受け継いだ現トランプ政権は、現在の覇権主
義を目指す中国の存在は、歴代米政権の対中政策の失敗であると
し、強力な「全方位封じ込め政策」をとったのです。その内容は
中国にとって非常にシビアであり、習政権は改めてトランプ大統
領の底しれぬ恐ろしさを感じているはずです。
 いま中国の習政権が困っているのは、米国との全面衝突の時期
が予定よりも早くやってきてしまったことです。その原因は、予
想に反して、クリントン氏ではなく、トランプ氏が大統領に選ば
れたことにあります。
 よく知られているように、トランプ政権はメディアとバトルを
繰り広げています。マスコミはトランプ大統領を毛嫌いしており
米中貿易戦争をかなり度の強い色眼鏡を通して見ています。その
ため、トランプ政権が何を考え、中国に対して、どのような手を
打っているかがかえって見えにくくなっています。
 それに加えて、トランプ氏はツイートを頻繁に発進し、メディ
アがそれを伝えるので、それがトランプ政権が何を画策している
のかをさらに見えにくくしています。実は、トランプ政権は、こ
と対中国戦略に関する限り、きわめて有効な手を打っており、こ
れにより習政権はかなり追い詰められています。
               ──[フリーテーマ/002]

≪画像および関連情報≫
 ●米外交シンクタンクの専門家に米中摩擦を聞く
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   習主席の究極の目的は偉大な国として中国を再生させるこ
  とだ思います。その時に浮上する疑問は、どのようにそれを
  達成するか、どのようにして世界的な舞台で存在感を取り戻
  していくのか、ということです。これまでに習主席が決定し
  たことを見ると、国内では抑圧的で独裁的、国外では野心的
  で拡大志向な国家を構築することです。
   習主席がそれをどのように進めたかというと、第一に中央
  集権化を進めました。中国を改革・開放に導いた当時の最高
  指導者、ケ小平が構築した集団指導体制ではなく、彼の手中
  に権力を集中することで実現したんですね。
   第二に、共産党が中国社会と中国経済に深く入り込みまし
  た。企業の中に細胞組織を作るように命じたのは一例です。
  そして第三に、外国からの影響が国に及ばないように、制限
  と規制の「仮想の壁」を築きました。
   中国は製造業の高度化を目指す「中国製造2025」を進
  めていますが、この壁によってAI(人工知能)や新素材な
  ど、最先端の分野で多国籍企業が公正に競争できなくなる可
  能性があります。また、外国のNGO(非政府組織)の管理
  に関する新たな法律によって、外国のNGOが中国の取引相
  手と協力することが難しくなりました。ご存じの通り、イン
  ターネットへのアクセス制限も厳しくなっています。
               ──エリザベス・エコノミー氏
                  https://nkbp.jp/2RLcuLH
  ───────────────────────────

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APECで演説するペンス副大統領
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2018年12月12日

●「ファーウェーにのみ半導体を提供」(EJ第4909号)

 中国の習政権は既に米国に対し、「宣戦布告なき戦争」を仕掛
けています。それは、軍事だけでなく、外交、経済まで「全面的
かつ総合的な対米戦争」を仕掛けているのです。そのことが記述
され、その実施を中国企業や大学に求める内部文書があるそうで
す。このなかに「千人計画」という計画があります。
 「千人計画」は、高度な技術を持った外国人材を発見してリク
ルートし、中国へ招聘したり、中国の技術進歩のためのプロジェ
クトに参加させる計画のことです。中国はこの計画を2008年
から進めてきています。その結果として米国人を中心に多くの人
材がこの計画に参加しています。とくに米国に滞在して研究業務
に当たる米国籍を取得した中国人が多いのです。
 しかし、トランプ政権になると、「千年計画」に選ばれた研究
者や技術者が、スパイ容疑でFBIに逮捕されたり、国外追放処
分を受けたりするようになったのです。それによって、この計画
は、「入獄計画」と揶揄されるようになっています。ネットには
次のような情報が多く出ています。
─────────────────────────────
 米テキサス州ヒューストン主要日刊紙ヒューストン・クロニク
ルの2018年8月の報道によると、FBIは同月、テキサス大
学やヒューストン大学など20の大学の関係者が集まった会議で
外国勢力による技術情報窃盗、特に「内部関係者」による情報漏
えいに警戒し、対策を講じるよう求めた。
 FBIは近年、「千人計画」に選ばれた研究者に注意を払って
いる。昨年9月、バージニア工科大学の張以恆教授は不正詐取を
企てたとして逮捕された。また、今年8月、ゼネラル・エレクト
リック社の鄭小清チーフエンジニアが重要技術情報を盗み、中国
企業に渡したとして同氏を逮捕した。両氏ともに「千人計画」に
リクルートされていた。
 サウスカロライナ大学の謝田教授は3つの情報源から得た話と
して、「ヒューストンの研究機関にFBIが訪れた。その直後、
複数の中国人研究者が解雇された」と大紀元に伝えた。在米学者
の間では「FBIは千人計画のリストに基づいて違反者を摘発し
ている」との話が広がっている。   https://bit.ly/2zNj25C
─────────────────────────────
 2018年3月の話ですが、中国の大手国有通信機器メーカー
中興通訊(ZTE)が米国製部品(クアルコム)を使った製品の
イランや北朝鮮向け輸出禁止措置に違反としたとして、7年間の
米国部品の調達禁止の制裁が科されています。ZTEは、100
%クアルコムの半導体に頼っていたので、いきなり経営不振に追
いやられたのです。その習政権の内部文書には、次のように書か
れているといいます。
─────────────────────────────
 米政権は中国との競争の核心が科学技術競争にあるとの見方を
ますます強め、軍事技術だけでなく、高度人材獲得も含めた全方
位の科学技術の対中封鎖に向っている。
 米国の中国を標的とした先端技術流出への規制はさらに強化さ
れる。窓の開いている残りの半年から1年間のうちにできるだけ
多くの先端技術、先端設備、先端製品を米国から取り込み、戦略
備蓄を構築せよ。   ──『選択』/2018年12月号より
─────────────────────────────
 中国政府は、ZTEに対する制裁の報復として、クアルコムが
オランダの半導体大手のNXPセミコンダクターズを買収しよう
としたとき、独占禁止法違反であるとして反対したのです。しか
し、アルゼンチンでの米中首脳会談で、習近平主席がこれを取り
下げる意向を示したことは既に述べた通りです。中国は非常に追
い込まれているのです。
 半導体を制する──これが中国が立てた目標です。スタート時
点の2009年の段階では、半導体トップ50のなかに2社しか
中国のメーカーは入っていなかったのですが、2016年は11
社、2017年度になると、トップ10に2社も入るようになっ
たのです。
 なぜこんなに急速に伸びたのかというと、それは、2015年
5月にスタートした「中国製造2025」という国家政策がある
からです。そしてそのトップに立っているのが「ファーウェイ」
なのです。中国政府は、このファーウェイという企業をきわめて
重要であると位置付けていて、クアルコムから半導体の提供を断
られたZTEのような目に遭わないようにしています。
 ファーウェイは、2004年にハイシリコン・テクノロジーズ
という企業を分離し、半導体の研究開発に専念させています。そ
のうえで、ハイシリコンが製造した半導体は、ファーウェイにし
か販売しないことにしているのです。ハイシリコンの技術レベル
は高く、米国最大手で、世界のトップである半導体メーカー、ク
アルコムと互角の勝負ができるレベルに達しています。
 こんな話があります。2012年のことですが、ハイシリコン
は「K3V2」というチップを発表したのです。このチップは、
「150Mbps」 対応のチップです。これは1秒間に150メガビッ
トの情報を送れることを意味します。これは凄いことなのです。
クアルコムでさえ、当時「100Mbps」 までの対応だったので、世
界中が驚いたといいます。
 それもプロトタイプではなく、これを搭載したワイ・ファイ・
ルータが当時のイー・モバイルから発売されています。ファーウ
ェイは、このように高いレベルの技術力を持つハイシリコン・テ
クノロジーズから、半導体の独占提供を保証されており、米国に
とって最大の脅威になりつつあります。絶対他には売らないとい
うこともそこに何らかの機能を加えることも可能になります。
 それだけに今回のカナダでのファーウェイ副社長の逮捕は、中
国にとって大衝撃です。ZTEへのクアルコムからの半導体の提
供の停止に続く米国からの圧力に、中国としては「中国製造20
25」に重大な影響が出ることを懸念しています。
               ──[フリーテーマ/003]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプが恐れる中国の国家戦略「中国製造2025」
  ───────────────────────────
   中間選挙はトランプ大統領率いる共和党の実質的勝利に終
  わり、対中貿易戦争は先鋭化の兆しを見せている。7月に開
  始した総額2500億ドルの制裁関税だけでなく、中国企業
  による対米投資の制限や米国製品の輸出管理を強化。だが、
  9月の物品関連の対中貿易赤字は402億ドルと過去最大を
  記録し、むしろ拡大している。
   米中貿易戦争の行方を東京福祉大学国際交流センター長で
  最新刊『「中国製造2025」の衝撃』(PHP研究所)を
  12月22日に発売する遠藤誉氏はこう読み解いた。
   「米国は4月、中国の通信機器大手のZTEとファーウェ
  イに対して、米サプライヤーとの取引を7年間禁じる制裁を
  課しました。中国を代表するハイテク2社を米国から締め出
  す“ライバル潰し”との国内報道もあったが、本質を見誤っ
  ている。注目すべきは、中国のハイテク製品は半導体をはじ
  めとするキーパーツの9割を輸入に依存している事実です。
  習近平政権はこのままでは彼が目指す『中華民族の偉大なる
  復興』は成し得ないと考え、’15年に製造業高度化の国家
  戦略『中国製造2025』を策定し、’25年までに半導体
  などキーパーツの7割を国産化することを目指している。問
  題なのは、半導体などのコア技術は汎用性が高く、軍事や宇
  宙開発にも転用できることです。 https://bit.ly/2G7H2pl
  ───────────────────────────

「中国製造2025」ポスター.jpg
「中国製造2025」ポスター
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2018年12月13日

●「ハイシリコンとクアルコムの関係」(EJ第4910号)

 連日ファーウェイの記事が新聞を飾っています。そこでファー
ウェイについて新聞には出ていない情報を中心に、もうしばらく
書くことにします。
 ところで、ファーウェイの呼び方について、中国分析の第一人
者である遠藤誉氏は次のように述べています。しかし、EJでは
「ファーウェイ」と表記することにします。
─────────────────────────────
 日本では、「Hua-wei」 を「ファーウェイ」と読ませているが
「Hua」は「ホァ」であって、「ファ」ではない。「ファ」 なら
「Fa」など、「F」の文字がなければならない。 慣用に反するが
ここでは発音に忠実に「ホァーウェイ」とした。 ──遠藤誉氏
                  https://bit.ly/2C4j7mS
─────────────────────────────
 クアルコムという企業について考察します。クアルコムは、カ
ルフォルニア州で、1985年に創業していますが、キッシンジ
ャー・アソシエイツを通して早くから中国に進出しています。中
国では「高通」という名前で知られています。
 しかし、1989年6月4日の天安門事件で、米国を中心とす
る西側諸国が中国に対して経済封鎖を始めると、クアルコムは中
国でのビジネスを中止したのです。
 2000年に当時の朱鎔基首相がWTO加盟のために清華大学
の経済管理学院に米国の財閥を中心に顧問委員会を設けたのです
が、クアルコムもそのメンバーになっています。そして1998
年には、北京郵電大学に共同研究所を設立しています。遠藤誉氏
によると、この大学はファーウェイの頭脳ともいうべきハイシリ
コン・テクノロジーズ社の何庭波総裁を輩出した大学なのです。
 遠藤誉氏は、ハイシリコンの何庭波総裁とクアルコムの関係に
ついて、次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 ハイシリコンの何庭波総裁は女性で、まだ40代の若さだ。自
分を研究者と呼ばせない、生粋のエンジニアである。ビジネスに
煩わされたくないので、華為の研究部門から独立し研究開発に専
念した。(中略)クアルコムの北京郵電大学への力の入れようは
尋常ではなく、北京郵電大学内に「クアルコム杯(高通杯)」と
いうものまで設立したりして、人材養成のために巨額の研究投資
(ときには1億ドル)を行っている。      ──遠藤誉氏
                  https://bit.ly/2QqmhKl
─────────────────────────────
 遠藤誉氏は何庭波氏が北京郵電大学を卒業したのが、1996
年、クアルコムが同大学内に共同研究所を設立したのが1998
年であるので、何庭波氏がクアルコムの指導を受けていた可能性
は高いと指摘しています。そうすると、ハイシリコンの高度な半
導体の技術のベースには、クアルコムの技術が入っている可能性
は高いと考えられます。
 昨日のEJで、ハイシリコンがファーウェイにしか半導体を提
供しないと書きましたが、これは中国政府の指導によるものでは
なく、ハイシリコンのポリシーなのです。もし、政府主導である
ならば、クアルコムに半導体の提供を断られて窮地に陥っている
ZTEに対して、ハイシリコンに半導体を提供するよう命令する
はずですが、遠藤氏によると、ハイシリコンは政府のいうことも
頑として受け入れないだろうといっています。
 ファーウェイやハイシリコンと中国政府の関係について、遠藤
氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 日本のメディアは、ホァーウェイ(華為技術、Hua-wei )を持
ち出すときに、まるで接頭語のように、「中国政府と癒着してい
る」とか、「中国政府と関係が深い」と書き立てているが、それ
がどれほど危険なことか、気が付いているだろうか。
 ホァーウェイの頭脳であるハイシリコンは、その研究開発した
半導体を、ホァーウェイにしか売らず、他社には売らない。まし
ていわんや、中国政府になど提供したり、いまこの段階ではまだ
していないのである。
 もし中国政府と癒着していたり、中国政府と関係が深かったり
するのであれば、習近平国家主席は中国共産党一党支配体制の命
運を賭けて国家戦略「中国製造2025」を推進しているのだか
ら、中国政府にハイシリコンが研究開発した最先鋭の半導体の成
果を提供するはずだろう。
 しかし、ハイシリコンもホァーウェイも、今のところ、まだそ
うしていない。それはハイシリコン立ち上げ時点で、ハイシリコ
ンの成果はホァーウェイにしか提供しないという約束しているか
らだろう。      ──遠藤誉氏 https://bit.ly/2Bg9gsm
─────────────────────────────
 なぜ、ハイシリコンは経営危機に瀕しているZTEに半導体を
売らないのでしょうか。それは、ハイシリコンのポリシーである
からと書きましたが、それだけではないはずです。
 今やハイシリコンは、クアルコムに対抗するための中国の先兵
です。これまでにもそういう戦いを繰り返しています。クアルコ
ムが「スナップドラゴン」という半導体の新製品を出すと、ハイ
シリコンは、それと同レベルの「キリン」という半導体を出すと
いうように競っているのです。
 そのようなハイシリコンに、ZTEをはじめとする多くの中国
のハイテク企業に半導体を提供する余裕はないのです。両社全力
で壮絶なチップ戦争を繰り広げているからです。
 しかし、米国から半導体の提供を断られてしまうと、そうした
ハイテク企業が潰れかねない。そういうわけで、白羽の矢が立っ
たのが、日本なのです。日本はクアルコムやハイシリコンのよう
な高性能チップを作る能力はありませんが、中国企業に半導体チ
ップを提供できる力はあるのです。そこで中国は、日本との関係
を改善させ、その役割を担わせようとしているのです。
               ──[フリーテーマ/004]

≪画像および関連情報≫
 ●李克強訪日、中国が関係改善を進める3つの事情
  ───────────────────────────
   習近平政権は、尖閣諸島の「国有化」問題が起こってから
  程なくして発足し、日中関係の改善が難しい状況であっこと
  から、どうしても「日本に対して厳しい」というイメージが
  つきまとう。
   だが、5月8日から4日間、中国の李克強首相が日本を訪
  問し、天皇陛下を始め、安倍晋三首相や与野党関係者と会談
  し、両国関係の改善を印象づけた。李の訪日は、5月9日付
  けの『環球時報』に発表された評論も、2010年以来の釣
  魚島問題、歴史問題などで最悪の状態に陥った日中関係が、
   大幅に改善しつつあることを示していると指摘している。
  歴史問題や領土問題など長年の課題こそ解決はしてはいない
  ものの、日中関係がここまで改善してきたのは、日本国内に
  対中関係改善の動きが出てきたこともあるが、中国の政治・
  経済情勢も関係している。
   だが、「中華民族の偉大なる復興」を強調しすぎると、ナ
  ショナリズムを刺激する恐れもあり、外交でそれを前面に押
  し出すと諸外国の誤解を招きかねない。そのため中国外交は
  「人類運命共同体」を前面に押し出した「国際主義」的な外
  交に方向転換する。中国の提唱する「一帯一路」構想は、中
  国の発展計画と沿線諸国との発展計画の“ドッキング”を目
  的とし、中国外交の「国際主義」的側面を反映したものであ
  る。              https://bit.ly/2EqhZMI
  ───────────────────────────

スナップドラゴン.jpg
スナップドラゴン
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2018年12月14日

●「なぜ、ファーウェイが問題なのか」(EJ第4911号)

 12月11日、カナダのバンクーバー裁判所は、ファーウェイ
副会長孟晩舟容疑者の保釈を条件付きで決定しています。その条
件とは、次の3つです。これらの条件は、おそらく米国の要請に
よるものと思われます。
─────────────────────────────
      1.約8億5000万円の保釈金納付
      2.保有するすべてのパスポート提出
      3.所在地確認可能なGPS機器装着
─────────────────────────────
 これは、いわゆる「5G/第5世代移動通信システム」をめぐ
る米中の覇権争いなのです。このファーウェイの副会長の逮捕に
ついて、中国の王毅国務委員兼外相は、次のように報復をちらつ
かせて発言しています。
─────────────────────────────
 中国国民の正当な権益を侵害するいじめのような行為に対し
 中国は絶対に座視しない。全力で中国国民の合法的な権利を
 守る。          ──中国の王毅国務委員兼外相
─────────────────────────────
 つまり、不当に人を逮捕するなら、こっちも捕まえるぞといわ
んばかりの脅しです。早速カナダの元外交官、マイケル・コブリ
グ氏を中国で拘束しています。中国は、その拘束理由を明らかに
していませんが、「報復」の可能性は十分あります。それに加え
て、13日の情報では、もう一人カナダ人が中国当局から事情聴
取されているようですが、詳細は不明です。
 これは、相手がカナダだからやったのであって、もし米国が逮
捕した場合は、中国は北朝鮮と違って、これほど露骨な手法をと
らないのです。中国は、軍事力や情報力では勝てない米国にはそ
ういう手をとらないのです。まして貿易戦争中にやるはずがない
のです。
 むしろ、今後米国の同盟国を中心に、5Gシステムからファー
ウェイ製品を外す動きが広がると思われますが、その場合、例え
ば中国は日本人を拘束することで、政府に圧力をかけ、米国に協
力しないよう求める可能性は十分考えられます。この時期の中国
旅行は拘束リスクがつきまとうので、用心が必要です。
 そもそもファーウェイの何が問題なのでしょうか。
 それは情報漏洩です。ネットにおいて、ソフトウェアによる情
報漏洩はよく行われますが、通信機器自体に特殊な仕掛けを施す
ことによって情報を吸い上げるのです。つまり、ハードウェアに
仕掛けられているので、その機器を除去しない限り、問題は解決
しないのです。
 現在の米中衝突は、「5G」をめぐるものです。これは基地局
に関わってきます。現在、世界における基地局装置のシェアは、
次のようになっています。
─────────────────────────────
     1位:ファーウェイ ・・・ 27・9%
     2位: エリクソン ・・・ 26・6%
     3位:   ノキア ・・・ 23・3%
     4位:   ZTE ・・・ 13・0%
─────────────────────────────
 これによると、ファーウェイはダントツの1位。4位にやはり
中国のZTEが入っています。2位のエリクソンはスウェーデン
の通信機器メーカー、3位のノキアは、フィンランドの通信施設
・無線技術を中心とする開発ベンダーです。明らかに、5Gでは
中国が一歩リードしています。
 こうした中国躍進の原動力になっているのが習近平政権が掲げ
る産業政策で、2015年5月に発表した「中国製造2025」
です。次世代情報技術や新エネルギー車など10の重点分野と、
23の品目を設定し、製造業の高度化を達成し、「世界の製造強
国の先頭グループ入り」を目指す10年計画です。これは、10
年で米国に追いつき、抜ける体制を目標としています。
 この「中国製造2025」について、ハドソン研究所主席研究
員の日高義樹氏は、近著において次のように述べています。
─────────────────────────────
 2018年のはじめ、アメリカ国防稔省とCIAがトランプ大
統領に、中国が「チャイナ・メイド2025」と銘打っている計
画について報告書を送った。中国が2025年までに、人工頭脳
AIを含めたあらゆる先端技術で、アメリカに勝とうとしている
という計画である。
 アメリカの専門家たちは、AIやロボット、ナノ技術などの分
野で中国がアメリカに追いつくのは、2050年頃になると予測
していた。それより25年も早く追いつくというこの報告は、ト
ランプ政権に大きな衝撃を与えた。
 アメリカの専門家たちの予測よりもはるかに早く、アメリカに
追いつくために中国は、これまで以上に、アメリカの先端技術を
盗んだり、あるいはアメリカに進出する中国企業が、アメリカで
生産技術の秘密をかすめとったりして中国本土に送り続けると考
えられる。中国の戦略的な目的は、人工知能AIでアメリカの軍
事力に勝つことである。人工知能の研究、開発について我が国で
はもっぱら、自動車運転に大きな関心が払われている。平和ボケ
国家の典型的な受け取り方であろう。──日高義樹著/徳間書店
        『アメリカに敗れ去る中国/安倍外交の危機』
─────────────────────────────
 12月12日の複数の米メディアの伝えるところによると、中
国政府は「中国製造2025」の達成時期を10年先送りさせる
案を検討しているといわれます。つまり、「中国製造2035」
に変更するというわけです。
 しかし、その計画に国が大量の資金を投じていることが問題で
あるとトランプ政権は指摘しており、とてもその程度のことでは
米国は容認しないと思われます。
               ──[フリーテーマ/005]

≪画像および関連情報≫
 ●「中国製造2025」が米貿易紛争に巻き込まれたか?
  ───────────────────────────
   米中間には巨額な貿易不均衡が生じており、それを是正す
  べきことは両国間で一致しているが、その原因やアプローチ
  方法について、両国の考え方はかみ合わない。話し合いはう
  まく行かず、米国は一方的な貿易制裁措置という極端なアプ
  ローチで中国に譲歩を迫っているが、中国も対抗措置を発表
  して、貿易紛争の度合いが増してきている。米国の制裁措置
  案は、既存の貿易製品(鉄鋼など)からハイテク製品へシフ
  トし、未来の産業を育成する産業政策「中国製造2025」
  をターゲットとしたのである。
   米国は、建前では中国が「中国製造2025」という産業
  政策を通じて不公正な補助金によって対象産業の過剰生産能
  力を形成したり、市場取引によらない海外技術の獲得をサポ
  ートしたりすることを批判している。一方、世界の主要メデ
  ィアは、米国政府高官の話を引用して、米中貿易摩擦の原因
  は貿易不均衡よりも次世代産業技術をめぐる覇権争いという
  背景があると報じている。2018年4月16日に米商務省
  は、対イラン制裁法令に違反した社員を処分する約束を履行
  していないという理由で中国の大手通信機器メーカーZTE
  への部品(ICチップやソフトのすべて)輸出を禁ずる行政
  措置を取った。米中貿易紛争がエスカレートしている時期と
  重なり、米国の禁止措置は対中ハイテク産業を狙ったもので
  あるとの見方が中国では一気に広がった。
                  https://bit.ly/2EkELEL
  ───────────────────────────

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日高義樹氏/ハドソン研究所首席研究員
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2018年12月17日

●「中国の『国家情報法』の恐ろしさ」(EJ第4912号)

 一体ファーウエイの何が問題なのでしょうか。
 野村総合研究所セキュアテクノロジーズの時田剛氏によると、
ファーウェイの製品に仕様書にないポート(通信の出入り口)が
見つかった例があるそうです。つまり、ハードウェアに仕掛けが
施されているようです。以下、時田氏と日経記者のやり取りを引
用します。
─────────────────────────────
記者:ファーウェイ製品による情報漏洩の被害は実際に起ってい
 ますか。
時田:実害は断定できないが、これまでに何度か深刻な問題が見
 つかっている。例えば、通信機器に仕様書にないポートが見つ
 かった例がある。インターネットで外部と通信が可能なため、
 不正にデータを盗み出すバックドア(裏口)に悪用できる。た
 だ、それがファーウェイの故意かどうか分からない。開発時の
 設定作業に利用していたポートを停止せずに製品を出荷したと
 しても不思議はない。
記者:バックドアを使うと、どんな情報を取得でき、何ができる
 のですか。
時田:携帯電話の基地局を例にとると、基地局を経由するスマー
 トフォン(スマホ)の端末識別用の情報や通信の宛先情報がわ
 かる。悪用すれば、政府の要人がどこで誰とやり取りしている
 のかなどを特定できる。
  企業の拠点に設置するネット接続用のルータ−などは、設定
 次第で社内ネットワークに流れるあらゆる情報を取得できる。
 機密性の高い情報技術を盗まれるなどの被害が考えられる。
記者:最新技術を使って、そうした機器を見つけ出せないのでし
 ょうか。
時田:難しい。全ての製品を検査するのは不可能だ。しかも最近
 の不正プログラムは、特定の時間しか動作しないなど、手が込
 んでいる。どこまで検査すれば安全なのかというゴールを設定
 できない。  ──2018年12月12日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 ファーウェイ副会長逮捕の背景に、中国政府が2018年6月
に施行した「国家情報法」なる法律の存在があります。この法律
は、国家の安全保障強化のため、国内外の「情報工作活動」に法
的根拠を与えるもので、2017年12月に全国人民代表大会で
審議入りし、2018年6月27日に採択されています。
 国家主権の維持や領土保全などのため、国内外の組織や個人な
どを対象に情報収集を強める狙いが考えられます。国家安全局員
を外国に派遣し、彼らに中国の国家機密を漏洩する恐れのある人
物を監視、調査する権限を与えることも、この法律ならすべてが
可能になります。ひどい話です。
 また、この法律によると、例えば、ファーウェイが全くその気
がなくても、国家のためであれば、製品に細工を施し、情報を盗
み出すこともしなければならないことになります。民主主義国家
では考えられないことですが、この法律なら、その国の法律を無
視して、やりたい放題ができることになります。
 習近平国家主席は、「国家安全法」、「反テロ法」、「反スパ
イ法」、「NGO管理法」、「インターネット安全法」といった
法律を次々と制定し、国家としての管理・規制を強めています。
習近平政権のこのような対応に対し、トランプ政権は、関税引き
上げを武器として、その対抗措置をとったのです。
 米国のトランプ大統領は、2018年8月13日、2019会
計年度(18年10月〜19年9月)に戦費を含め計7160億
ドル(約80兆円)の国防予算を計上する「国防権限法案」に署
名し、同法は成立しています。米メディアによると、国防予算は
この9年間で最大規模になります。トランプ大統領は、東部ニュ
ーヨーク州のフォートドラム陸軍基地で大勢の兵士を前に署名式
を開き、巨額の予算確保で「米軍再建」重視を強調しています。
 この法律のなかで、米政府機関とその取引企業に対し、中国情
報通信大手のファーウェイやZTEの機器を使うことを禁止する
など、対中強硬姿勢を鮮明にしたのです。中国外務省の陸慷報道
局長は、国防権限法に「強烈な不満」を表明、「冷戦思考とゼロ
サムゲームの理念を捨て、正確かつ客観的に両国関係を扱うよう
米国側に促す」とコメントを発表しています。
 このような状況において、カナダでファーウェイの副会長が逮
捕されたのです。そして米国は、日本を含む同盟国にも中国通信
企業の製品を使わないよう要請しており、この動きは今後拡大す
るものと思われます。既に日本は米国の要請に答える措置をとっ
ており、ソフトバンクをはじめとする通信大手企業はその対応を
急いでいます。
 つまり、米国はちゃんと国防権限法の法令にしたがって、孟晩
舟容疑者の身柄の米国への引き渡しをカナダに対して求めている
のです。こうなってくると、米国のこうした対中国強硬姿勢が、
休戦どころか、容易には収束する可能性が低いことがわかると思
います。トランプ政権は本気です。
 何しろファーウェイは、通信基地局で世界シェア第1位、スマ
ホで2位、半導体だけで年間調達額は1・5兆円を超え、日本企
業からも5000億円規模の部品を購入しているのです。したが
って、ファーウェイ排除の動きがさらに加速すると、そのサプラ
イチェーンを担う日本や米国の企業にとって、大きな打撃になる
ことは確かです。
 かつての東西冷戦の時代と異なり、米国、中国という2大経済
大国がそれぞれ「自国第一」で確執を強めると、結局、国境を超
えて互いに依存し合うグローバル企業に犠牲を強いることになる
のです。これらのグローバル企業は、国家間の安全保障をめぐる
「地政学リスク」を突き付けられていることになります。そもそ
も超大国が覇権を求め、対立を深めると、どちらの国にとっても
けっしてよい結果にはならないのです。
               ──[フリーテーマ/006]

≪画像および関連情報≫
 ●経済と安全保障は分けて考えるべきである
  ───────────────────────────
   各国を巻き込んだ米中冷戦の様相をみせはじめた「安全保
  障に関する中国メーカー排除」方針である。日本政府も実質
  的な「中国メーカー排除」が念頭にあるという論調の報道は
  12月に入って以降強まるばかりだ。
   2018年初め、年初め、FBI(連邦捜査局)やCIA
  (中央情報局)、NASA(国家安全保障局)の高官は上院
  の情報委員会で、ファーウェイとZTEのスマートフォンに
  関して、アメリカ国民に2社の製品とサービスの利用を勧め
  ないとする見解を示した。政府が中国を問題視する根本的な
  理由は何なのか。そして、私たちが日常的に使うスマートフ
  ォンの風景や、日本経済はこの先どういう状況に入っていく
  の  か。その解釈を、前総務大臣政務官で、通信行政に詳
  しい衆議院議員の小林史明氏に聞いた。
   そもそも、なぜ日本政府はこのタイミングで、政府調達機
  器に関する基準の強化を図ったのか。日本政府はアメリカの
  要請に答えたのではないかという見解もあるが、小林氏は、
  「もともと取り組んでいたが、改めて答えた形」と語る。小
  林氏「時期については、いくつかの観点があります。1つは
  2018年7月27日にサプライチェーンリスクに関する閣
  議決定があり、きちんと強化していくという話は以前からあ
  りました。具体的に(国として)どうするということを世の
  中に伝えていくタイミングでした」。
                  https://bit.ly/2rDz5hD
  ───────────────────────────

渦中のファーウェイ.jpg
渦中のファーウェイ
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2018年12月18日

●「護衛艦は駆逐艦とほぼ同じである」(EJ第4913号)

 今回からテーマを変更します。護衛艦『いずも』の空母化の問
題について考えます。これは、新たな防衛力整備の指針「防衛計
画の大綱」と、平成31〜35年度の「中期防衛力整備計画」の
骨子案にも載っています。これをめぐり、空母は攻撃用艦艇であ
り、日本は憲法の関係上持てないのではないかなど、いろいろな
議論が出ているので、検討する価値があります。
 日本以外の国で、「軍隊で一番上の階級は何か」と問われれば
どこの国でも「大将」と答えます。そんなことは子供でも知って
いることです。しかし、日本の自衛隊で一番エライ人は誰かと日
本人に聞くと、答えられる人はほとんどいないといいます。これ
は、とてもおかしな話です。
 自衛隊のトップは「将」です。自衛隊には、陸、海、空の3つ
がありますので、陸将、海将、空将ということになります。しか
し、日本の将は、他国の軍隊の「中将」に該当し、「大将」では
ないのです。
 しかし、「将」の上には、陸海空それぞれに「幕僚長」の役職
があり、それら3つの幕僚長を総括する役職として、「統合幕僚
長」がいます。それらの4人は「幕僚長たる将」ということで陸
海空のトップを務めるのです。
─────────────────────────────
    1.統合幕僚長
    2.陸上自衛隊 ・・・・ 陸上幕僚長たる将
    3.海上自衛隊 ・・・・ 海上幕僚長たる将
    4.航空自衛隊 ・・・・ 航空幕僚長たる将
─────────────────────────────
 「将」は桜のマークは3つですが、上記4人の幕僚長には、マ
ークは4つ付いています。つまり、事実上「大将」をあらわして
いるのです。なお、「元帥」は、一般的には階級ではなく、名誉
称号です。大学の名誉教授と同じです。
 旧日本軍では大将に、帝政ドイツでは上級大将に与えられる称
号であり、英国、韓国では名誉昇任ですが、米国では元帥は戦時
のみの階級であり、名誉階級としては「大元帥」の称号を使って
います。
 自衛隊関係者か、自衛隊によほど興味を持っていてる人でない
と、自衛隊の階級などはほとんどの人は知らないと思います。し
かし、そんな国は世界中で日本だけです。
 なぜ、こんなことを書いたかというと、日本は太平洋戦争での
敗戦に懲りて、「戦争」をイメージする言葉を一切使わなくなっ
たのです。日本人は、呼称を変えると、あたかも本質まで変わる
かのように思い込む特性があります。
 そういえば、戦中、戦後を通じ、次のようないい替えや呼び替
えをしてきています。そこに「2度と戦争はしない」との思いを
込めているつもりなのです。
─────────────────────────────
         「全滅」 → 「玉砕」
         「退却」 → 「転進」
         「敗戦」 → 「終戦」
         「戦車」 → 「特車」など
─────────────────────────────
 米軍の要請で軍隊を作ることになったときも、軍隊ではなく、
「警察予備隊」「保安隊」「自衛隊」というように、きわめて意
識的に、「軍」という言葉を使わず、自衛隊は、軍隊ではないイ
メージづくりをやっています。しかし、そのようなことをしても
ほとんど意味がないのです。かえって、国民の国防への関心が薄
れるだけです。
 海外では、水上戦闘艦は、巡洋艦、駆逐艦、フリゲ−ト艦など
いろいろ分かれていますが、海上自衛隊では、これらの水上戦闘
艦はすべて「護衛艦」という名称で呼ぶのです。
 自衛隊の艦艇の全体呼称は「自衛艦」です。大分類では、自衛
艦は、「警備艦」と「補助艦」に分かれます。その警備艦は次の
4つに分かれます。
─────────────────────────────
       1.機動艦艇 ─── 護衛艦
                  潜水艦
       2.機雷艦艇
       3.哨戒艦艇
       4.輸送艦艇
                  https://bit.ly/2UPv9ba
─────────────────────────────
 これでわかるように、護衛艦は「機動艦艇」のなかに入ってお
り、そこには、「護衛艦」と「潜水艦」があります。つまり、戦
闘艦としては、この2種類しかないのです。
 もうひとつ知っておくべきことがあります。軍事ジャーナリス
トの清谷信二氏によると、護衛艦とは、駆逐艦とほぼ同義語であ
るということです。駆逐艦とは、「小型で速力が速く、魚雷攻撃
や奇襲・警戒・護衛を任務とする軍艦」のことです。軍事ジャー
ナリストでもなければ、普通の日本人は、駆逐艦、巡洋艦、フリ
ゲート艦の違いなどわからないでしょう。それは、そのまま国防
に対する意識の低さにつながるのです。
 護衛艦には、次の4種類があります。
─────────────────────────────
     1.    汎用護衛艦 ・・・  DD
     2.ヘリコプター護衛艦 ・・・ DDH
     3.  ミサイル護衛艦 ・・・ DDG
     4.    護衛護衛艦 ・・・  DE
─────────────────────────────
 この分類上は『いずも』は、DDH、ヘリコプター護衛艦とい
うことになります。これは、諸外国では、ヘリコプター駆逐艦と
分類されますが、世界の海軍関係者で『いずも』を駆逐艦と思っ
ている人はいないはずです。  ──[フリーテーマ/007]

≪画像および関連情報≫
 ●「世界は日本を警戒すべき」/北朝鮮非難を強める
  ───────────────────────────
   北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は2018年12月
  14日、日本政府が海上自衛隊の「いずも」型護衛艦を実質
  的な空母として運用しようとしていることを受けて、「日本
  はアジア太平洋地域と世界の平和を害する悪性腫瘍」である
  と非難する論評を掲載した。
   また国営の朝鮮中央通信も12日付の論評で、「日本は中
  国に対抗するために空母を保有しようとすると公言している
  が、それは武力増強、海外膨張に対する日本の野心を示す」
  ものだとして、「世界は、日本の軽挙妄動に警戒心を高めな
  ければならない」と主張した。
   最近の北朝鮮の対日非難には、大きく2つの流れがある。
  ひとつは歴史問題に言及し、日本に朝鮮半島支配の過去清算
  を迫る論調だ。例えば従軍慰安婦問題では、日本軍が慰安婦
  を虐殺したとされる映像など新資料を提示しながら、謝罪と
  賠償を迫っている。
   また、韓国最高裁が日本企業に対し、元徴用工への賠償命
  令を下したことを巡る日韓の反目にも、介入しようとしてい
  る。日韓の間には1965年の請求権協定が存在するが、日
  朝間にはそういった約束事が何も存在しない。そのため北朝
  鮮は「わが国には一から改めて過去清算をしてもらう」との
  立場を強調しているのだ。対日非難のもうひとつの流れが、
  今回のような日本の軍備増強に対する非難だ。
                  https://bit.ly/2rAdsyQ
  ───────────────────────────


護衛艦『いずも』.jpg
護衛艦『いずも』
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2018年12月19日

●「『いずも』型護衛艦について知る」(EJ第4914号)

 護衛艦「いずも」について調べていて、気がついたことがあり
ます。それは、日本人は大人でも戦争で使われる兵器についての
知識が著しく欠如しているということです。
 戦前は、子供向けの兵器の絵本──図鑑のようなものがあり、
それらによって、例えば、海軍の艦艇では、戦艦、巡洋艦、駆逐
艦、潜水艦、航空母艦、哨戒艦などの戦闘艦艇の知識補給は、小
さい頃から自然に行われていたのです。
 しかし、戦後は、戦争アレルギーというか、戦争に関係するも
の、軍隊に関するものになるべく触れないように教育が行われた
こともあって、そうして育った大人がそういう知識が極端に欠け
てしまっているのです。これでは国民が国防に関する関心をなく
し、日本は平和ボケといわれても、仕方がないでしょう。
 そういうわけで、空母是か非かを論ずる前に、そもそも護衛艦
「いずも」がどのような護衛艦なのかについて詳しく知ることが
必要です。軍事ジャーナリストの清谷信二氏のブログの記事を参
照にして、ご紹介していくことにします。
 まず、清谷信二氏は、「いずも」は自衛隊の護衛艦中最大の艦
艇であるとして次のように述べています。
─────────────────────────────
 「いずも」は2010年度(平成22年度)に承認された、い
わゆる22DDHの一番艦で、旧式化したDDH、「しらね」の
後継として建造された。基準排水量は1万9500トンで海上自
衛隊の護衛艦中、最大である。すでに就役している16DDHの
「ひゅうが」級の1万3500トンよりもさらに大きい。
                  https://bit.ly/2S6E9Hd
─────────────────────────────
 既に述べているように、「DDH」というのはヘリコプター護
衛艦のことであり、DDHとは、次の言葉の頭文字をとったもの
です。「22」とか「16」は、建造年度をあらわしています。
「16」は、平成16年(2004年)、「22」は、平成22
年(2010年)をあらわしています。
─────────────────────────────
          DDH=ヘリコプター護衛艦
         Defense Destroyer Helicopter
─────────────────────────────
 空母といえば、旗艦として多くの艦隊を率いる指揮能力が求め
られますが、「いずも」は果してその能力を保有しているかどう
か、また、護衛艦中最大を誇る「いずも」には、どのくらいの数
のヘリを搭載できるのか、それは、同じDDHの「ひゅうが」と
比べてどのくらいの差があるのかについて、清谷氏は、次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
 「いずも」は各国の空母や強襲揚陸艦と同様に、全通式と呼ば
れる飛行甲板を有している。22DDHの「いずも」は、16D
DHの「ひゅうが」級と同様に、旗艦として艦隊の高い指揮能力
を持つ。また搭載した多数のヘリコプターを使うことにより、高
い対潜水艦戦能力を持つ。
 運用するヘリコプターは「ひゅうが」級が哨戒ヘリ3機、救難
輸送ヘリ1機の計4機に対して、「いずも」では哨戒ヘリ7機、
艦上輸送ヘリなど2機の計9機と、2倍以上のヘリコプターを運
用できる(実際は10機程度の運用が可能だろう)。また駐機ス
ポットは「ひゅうが」級が4ヶ所に対して、「いずも」では5ヶ
所に増え、同時にヘリコプター5機の発着が可能だ。
                  https://bit.ly/2S6E9Hd
─────────────────────────────
 護衛艦「いずも」は、「ひゅうが」の倍、10台のヘリの運用
が可能になります。つまり、「いずも」は海上で次々とヘリを飛
ばして、対潜水艦戦に対して威力を発揮できます。また、「いず
も」は、同時にヘリを5機を発進できる能力を持っています。
 これからの「いずも」の最大の狙いは、垂直離着陸可能なF−
35戦闘機を搭載し、真の空母化を実現できるかどうかにありま
す。これについて、清谷氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 飛行甲板はオスプレイや米海兵隊などが採用した垂直離着陸が
可能なF−35B戦闘機が離発着地に噴出する高温の排気ガスに
耐えられる処理がされている。「いずも」が企画されたのはオス
プレイの調達のはるか以前であることから、恐らくは米軍との共
同作戦を想定して、このような処理をしたのだろう。
 乗員は最大470名で、このうちヘリ要員と司令部要員が併せ
て270名、そのほかの乗員は200名となっている。幹部(将
校)以外の女性自衛官が90名程度乗り込めるような設備(シャ
ワーなど)も備えられている(幹部は個室なので特別な設備は必
要ない)。
 「ひゅうが」級と大きく異なるのは、車両などの輸送用デッキ
を装備していることだ。トラックならば、陸上自衛隊の標準的な
3・5トントラック50台を艦内のデッキに収容できる(飛行甲
板含まず)。この場合、ヘリコプターを搭載するスペースはなく
なる。このデッキの高さは、地対空誘導弾パトリオット(PAC
3)が搭載できる前提で設計されている。また、F−35B戦闘
機や、オスプレイも収容も可能だ。ただ戦車などの装軌車輛は、
履帯でデッキ床面がこすれるために搭載することはできない。
                  https://bit.ly/2BqDPM7
─────────────────────────────
 「いずも」の最大の問題点は、空母としては、攻撃用の兵装が
「ひゅうが」よりも貧弱であることです。最大の攻撃手段は、ヘ
リコプターのみです。そういう意味では、「いずも」はヘリ空母
ないし多目的空母であって、これまでのように「=駆逐艦」とい
うことはできないのです。しかし、この点は防衛大綱において明
確にされ、閣議決定されることになっています。
               ──[フリーテーマ/008]

≪画像および関連情報≫
 ●護衛艦・いずも 「空母化」を与党了承
  ───────────────────────────
   政府は12月11日、新しい防衛計画の大綱(防衛大綱)
  の与党ワーキングチーム(WT)に対し、海上自衛隊のいず
  も型護衛艦の事実上の「空母化」などを盛り込んだ新大綱と
  中期防衛力整備計画(中期防)の両素案を示し、大筋で了承
  された。いずも型で運用を想定するステルス戦闘機F35B
  は常時搭載はせず、「必要な場合に運用する」と明記。憲法
  解釈で保有が禁じられている「攻撃型空母」には当たらない
  と説明し、慎重だった公明党も容認した。
   いずも型を「空母化」する改修は、海洋進出を図る中国を
  にらんで防空体制を強化する狙い。自民党は空母化を念頭に
  「多用途運用母艦」導入を提言したが、公明党が憲法上の疑
  義を懸念し、与党WTが了承を3回見送っていた。
   政府はこの日、短距離離陸・垂直着陸型戦闘機として想定
  するF35Bを常時は艦載しないとし、新大綱の素案には、
  「必要な場合に現有艦艇からの運用を可能とする」と記すに
  とどめた。いずも型を常に空母として運用するわけではない
  と主張することで、「(性能、能力で)空母と言えず、専守
  防衛の範囲内に収まる」との解釈だ。公明党はこうした「制
  約」の文書化を正式了承の条件としたが、専守防衛から逸脱
  する懸念はなおつきまといそうだ。https://bit.ly/2rwVo8P
  ───────────────────────────

ヘリ10機運用可能な護衛艦「いずも」.jpg
ヘリ10機運用可能な護衛艦「いずも」
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2018年12月20日

●「日本海軍悲願の『空母化』実現か」(EJ第4915号)

 日本政府は、2018年12月18日午前、新たな防衛力整備
の指針「防衛計画の大綱」と、2019年〜23年度の「中期防
衛力整備計画」(中期防)を閣議決定しています。
 これは今までにない重大な決定です。この計画は、昨日今日に
練られたものではなく、制服組が主導して周到な計画の下に年数
をかけてやっと実現にこぎつけた計画であるといえます。自衛隊
が空母を持つことは、現在の海上自衛隊の母体になっている「日
本海軍」の悲願であったからです。
 なぜ、「日本海軍悲願の空母」なのでしょうか。それは、かつ
て日本海軍が世界に先駆けた「空母大国」であったからです。そ
れを知るためには、報道ジャーナリスト伊藤明弘氏の次の一文を
読んでいただく必要があります。
─────────────────────────────
 ここで少々、空母の歴史をひもといてみたい。世界初の水上機
母艦は、1912年、フランス海軍が「ラ・フードル」を改装し
水上機8機の収容設備と滑走台を設置して誕生した。日本では、
早くもその2年後、1914年に「若宮丸」が特設水上機母艦と
して第一次世界大戦の青島攻略戦に参加している。
 1918年、英海軍が、世界で初めて全通飛行甲板を採用した
「アーガス」「ハーミーズ」を建造した。現在の空母をイメージ
していただければいいのだが、甲板全体が滑走台となっている構
造だ。しかし、世界初の「新造空母」、つまりいちから空母とし
て建造された戦艦は、実は1922年12月27日に完成した日
本の「鳳翔」なのである。
 公試排水量は1万500トン、全長179・5メートル、艦載
機は艦戦8機、同補用3機、艦攻6機、同補用2機。カタパルト
はなかったものの、着艦には、光学式着艦システムや、航空機の
フックにワイヤーを引っかけるという、現代でも使い続けられて
いる方式が採用された。
 「鳳翔」は、第一次上海事変、太平洋戦争開戦からミッドウェ
ー海戦に参加し、のちに練習空母として、呉鎮守府第四予備艦と
なった。終戦後は除籍しつつも復員艦として特別輸送艦となり、
1947年に解体され寿命をまっとうした珍しい軍艦である。
 日本海軍は正規空母をのべ26隻を運用し、他にも、航空巡洋
艦、航空戦艦、はたまた潜水空母まで建造した。そして、これら
を使って、世界初の空母を中心とした機動部隊を編成。真珠湾奇
襲攻撃を成功させた。
 これを受け、米海軍も大艦巨砲主義を捨てて、日本をまねたタ
スクフォース(任務航空艦隊)をすぐさま編成した。日本海軍は
まさに世界に先駆けた「空母大国」だったのである。
 戦後は冷戦という状況下、米ソの空母の大型化や原子力空母の
導入が加速。現在のような「空母打撃群」として成長したため、
かつて日本が空母大国だったというイメージは色あせてしまった
が、その事実はもっと知られてしかるべきだろう。
                      ──伊藤明弘著
    「海上自衛隊『悲願の空母』になる『いずも』の実力」
                  https://bit.ly/2Bq1JaG
─────────────────────────────
 日本海軍に関しては、もうひとつ話があります。それは、日本
海軍は終戦後、解体されることなく、海上自衛隊にそのまま引き
継がれているという事実です。
 これは、阿川尚之氏の次の著作に詳しく出ています。この本は
何度読み返しても感動できる内容で、多くの人に読んでいただき
たい名著であると思います。
─────────────────────────────
                       阿川尚之著
  「海の友情/米国海軍と海上自衛隊」/中公新書1574
─────────────────────────────
 太平洋戦争直後、日本の沿岸には、米海軍が敷設した感応機雷
が1万1千個、帝国海軍が敷設した防御用機雷が、約5万5千個
残っていたのです。実際に機雷に触れて民間船舶が沈没し、大量
の死者を出しており、これらの機雷の存在は経済活動再開のがん
となっていたのです。これに対して米軍が何をしたのかについて
は、阿川尚之氏の本から引用します。文中の「アワー」とは、元
米海軍中佐、ジェームス・アワー氏のことです。
─────────────────────────────
 昭和20年(1945年)8月の敗戦を機に、帝国海軍は消滅
する。海軍軍人は武装解除され、戦艦「長門」をはじめとする残
存艦艇は、しかるべく処分された。海軍省は12月1日第二復員
省と名前を変え、外地からの軍人復員援助がその主要な任務とな
る。しかし、この間、戦争中の任務をほとんど中断せずに続行し
た部隊がある。海軍掃海部隊である。(中略)
 米軍は機雷処理の仕事を帝国海軍の掃海部隊に行なわせた。ポ
ツダム宣言受諾後マニラで開かれた日米軍担当者の会議で、終戦
処理の一環として連合軍進駐までに機雷をすべて除去するように
との命令が下される。9月になって横須賀に到着した米海軍当局
者は、掃海が完了していないと責任者を叱責した。しかし短期間
で何万という数の機雷を処理するのほとても無理である。米軍は
日本沿岸水域の掃海作業を甘く見ていたようだとアワーは言う。
12月に入ると田村久三海軍大佐の指揮する帝国海軍掃海部隊は
海軍省が廃止されて新しく発足した第二復員省に籍を移し、掃海
の仕事を続けた。使用する艦艇、乗組員ともに、海軍時代そのま
まである。GHQの民生局は掃海部隊を指揮する旧海軍士官を追
放しようとしたが、米極東海軍司令部がこれに反対し、所属はと
もかく海軍の現役部隊がそっくりそのまま残った。アワーが帝国
海軍は消滅しなかったという理由は、ここにある。このころ、掃
海部隊の陣容ほ艦船391隻、人員2万9100名を数えた。
                ──阿川尚之著の前掲書より
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               ──[フリーテーマ/009]

≪画像および関連情報≫
 ●「いずも」空母化に神経とがらせる中国
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   中国は、安倍政権が進める大型護衛艦「いずも」の空母化
  に神経を尖らせている。空母化と並んで中国が警戒するのが
  護衛艦の南シナ海とインド洋への長期派遣で、トランプ政権
  の「航行の自由作戦」を補完する「哨戒活動」とみなす。日
  中関係は5月の首脳会談で改善軌道に乗ったが、中国側は安
  倍政権が「安全保障面では中国を敵視している」(中国軍系
  研究者)と不信感を隠さない。
   「いずも」は、全長248メートルの全通式甲板を備え、
  対潜水艦を主任務とするヘリ搭載護衛艦で、海上自衛隊は同
  型護衛艦を4隻保有している。第二次大戦の敗戦で旧帝国海
  軍の空母機動艦隊が解体されたため、空母保有は、自衛隊に
  とって「悲願」だったと言える。
   空母化へは、甲板の塗装を変えて耐熱性を上げる改修をす
  れば、F35B最新鋭ステルス型戦闘機を搭載できるように
  なる。防衛省は4月末、F35Bの発着や格納が可能かどう
  か「いずも」の能力向上に関する調査内容を公表。さらに自
  民党は5月、2018年末に策定される新たな「防衛計画の
  大綱」(防衛大綱)と中期防(中期防衛力整備計画)に向け
  「多用途運用母艦」の早期実現を図る提言をまとめ、空母化
  が現実味を帯びてきた。     https://bit.ly/2T0qVfd
  ───────────────────────────

阿川尚之氏.jpg
阿川尚之氏
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2018年12月21日

●「いずも型空母は果して機能するか」(EJ第4916号)

 報道ジャーナリストの伊藤明弘氏は、防衛省のある施設におい
て、ジェット戦闘機を搭載した護衛艦「いずも」の模型を見せて
もらったといいます。2017年11月のことです。その模型は
現行の「いずも」がフラットな甲板を持つのに対して、やぐらの
ようなスキージャンプ台状の甲板を備えていたそうです。ちょう
ど、中国の空母「遼寧」のような形と思われます。
 少なくとも現在の「いずも」とは形が異なるのです。ジャンプ
台がついているということは、見た目はより「空母」らしく見え
るので、設計が変更されたのではないかと思われます。しかし、
就役時点では、野党の政治家の追及は、ほとんどなかったという
のです。彼らはこの問題に関心が薄いのです。
 「いずも」が就役したのは2015年3月25日のことです。
第3護衛艦隊群(舞鶴基地)に編成替えとなった「ひゅうが」に
代わって、「いずも」は第1護衛艦隊群第1護衛隊に編入されて
います。定係港は横須賀です。初任務は、2016年4月に発生
した熊本地震による災害派遣です。被災地支援にあたる陸上自衛
隊を輸送する任務です。
 あくまで「いずも」は、DDH=ヘリコプター護衛艦、すなわ
ち、「護衛艦=駆逐艦」として就役したのです。しかし、「いず
も」は明らかに駆逐艦には相応しくないのです。そして2017
年のクリスマスの時期に、「いずも」が空母に改修されるという
情報が拡散されたのです。
 なぜ、2017年暮れかというと、2019年度から新しい中
期防衛力整備計画が始まるからです。これによって、1番艦「い
ずも」と2番艦「かが」を「いずも」型として、戦闘機の発着が
可能なものに改修するというのです。
 問題は、「いずも」が、日本の憲法の制約上、保有が認められ
ないとされている「攻撃型空母」に該当するかどうかです。とこ
ろで、空母の定義というものはあるのでしょうか。
 1921年のワシントン軍縮会議において、空母の定義は決め
られており、それは次のようになっています。
─────────────────────────────
 水上艦船であり、専ら航空機を搭載する目的を以って計画され
航空機はその艦上から出発し、又その艦上に降着し得るように整
備され基本排水量が1万トンを超えるものを航空母艦という。
─────────────────────────────
 ところが、1930年のロンドン海軍軍縮条約では、基本排水
量が1万トン未満でも空母に含まれることになります。ところで
「基本排水量」とは何でしょうか。
─────────────────────────────
 基本排水量とは、船舶の重量を表す数値で、排水量の計測方法
のひとつである。満載の状態から、燃料と予備缶水(水)の重量
を差し引いた状態を示したもの。
─────────────────────────────
 この定義にあてはめると、「いずも」型は建造費が1139億
円で、基準排水量は1万9500トンであり、十分に「空母」と
いえるサイズです。しかし、サイズ、その大きさから、空母を定
義するのは問題があります。
 「ナショナル・インタレスト」という米防衛誌は、空母は、単
に攻撃力だけでなく、防衛にも役立つと指摘しています。
─────────────────────────────
 空母の能力は、攻撃的役割に限定されているわけではない。空
母は、味方の水上艦と基地を敵の攻撃から守るために戦闘機を展
開できるし、敵の船や潜水艦の位置を把握するために偵察機とヘ
リコプターを発進させることもできる。
         ──「ナショナル・インタレスト/電子版」
─────────────────────────────
 理屈から考えても、日本のような島国が、数隻の空母を運用し
離島を守り、領海をパトロールするのは理にかなっており、専守
防衛に反しないと思います。攻撃と防御は表裏一体であり、防御
に重点を置く「防御型空母」というものがあってもおかしくない
と思います。とくに、尖閣諸島の防衛には、空母はきわめて有効
な手段です。
 「いずも」型DDHに搭載される戦闘機についても述べておく
ことにします。F35という戦闘機には次の2種類があります。
─────────────────────────────
  F35A ・・・      通常離着陸/ CTOL
  F35B ・・・ 短距離離陸・垂直着陸/STOVL
─────────────────────────────
 「F35A」は、通常離着陸の戦闘機ですが、既に42機は三
沢基地に配備されることに決まっています。これに対して「F3
5B」は200メートルほどの短距離で発進し、着陸するときは
垂直に降りるのです。したがって、「いずも」型護衛艦には「F
35B」が搭載されることになります。
 「いずも」型DDHを空母化し、F35Bを搭載する考え方に
対して、香田洋二元海上自衛隊司令官は、日米同盟の役割分担を
守るためには効果があるとしています。日米同盟の役割分担とは
日本が盾(日本の防衛)、米国が矛(相手国への攻撃)を守るこ
とです。これについて香田氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 日本は矛の機能を論じる前に、いまだ十分でない盾の機能を高
める必要があると考えます。まずは、日本の防衛作戦(盾)に米
軍を巻き込まないですむようにすることです。巻き込めば、その
分、米軍の打撃力を削ぐことになります。そうならないようにし
て、米軍には得意の打撃作戦(矛)で力を発揮してもらうように
するのです。その前提が、米軍の安全な来援を確実ならしめるこ
とであり、自衛隊は我が国の直截的な防衛に加え、米軍来援を支
援する力を養う必要もあります。   https://nkbp.jp/2UVeT8l
─────────────────────────────
               ──[フリーテーマ/010]

≪画像および関連情報≫
 ●日本に空母は必要か/米メディアが分析
  ───────────────────────────
   米防衛メディア『ディヘンス・ワン』も、中国の脅威が増
  すなか、特に離島防衛が鍵となる現状では、日本が空母を保
  有することには一定の妥当性があると見ている。ただし、日
  本政府は運用面と財政面の2点において、果たして空母がベ
  ストな選択なのか、よく考えるべきだとしている。
   運用面では、尖閣諸島に比較的近い無人島などに無人機を
  配備するという「より安く、人員も必要としない」オプショ
  ンもあると指摘。ただし、「日本には無人機で制空権を確保
  する技術はない」とし、その取得に莫大な予算と長い年月を
  注ぎ込む必要があるとしている。そのため、短期的に見れば
  空母の方が現実的ではあるが、「20機程度のF35Bで、
  数で勝る中国空軍を相手に制空権を維持できるのかという疑
  問は残る」とも言う。
   「いずも」と「かが」をそれぞれ改修して計20機余りの
  F36Bを新規に購入するのに必要な予算は、約40億ドル
  だと言われている。安倍政権は、2019年度の防衛予算に
  約5兆3000億円要求しているが、その約8%に当たる予
  算を空母につぎ込めるのか。「ディヘンス・ワン」は、空母
  部隊の維持費もかかるとし、「既に人口減で隊員の確保に四
  苦八苦している自衛隊が新たな人員を確保できるのか」と人
  材難の可能性にも言及している。 https://bit.ly/2GtBEgC
  ───────────────────────────

香田洋二元海上自衛隊司令官.jpg
香田洋二元海上自衛隊司令官
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2018年12月25日

●「いずもの空母化の真の目的は何か」(EJ第4917号)

 護衛艦「いずも」の空母化の真の目的は何でしょうか。
 その目的に答える前に、トランプ米大統領が2017年11月
に来日したとき、安倍首相に対して、次の3つのことを要求して
いたことはご存知ですか。
─────────────────────────────
          1.憲法9条改正
          2.   核装備
          3.  空母保有
─────────────────────────────
 日本にとって、いずれも実現が困難な要求ばかりですが、大統
領選挙のときから、トランプ氏がいっていたことばかりであって
目新しさはありません。この人は、どんなに困難な状況でも自分
の主張を押し通す人です。メキシコとの国境のカベのことをまだ
いっています。そのために政府機関が閉鎖されることになっても
平気な人なのです。自分の選挙のことしかアタマない人であるの
で、そうなるのです。
 これら3つのうちでは「3」の実現性が一番高いです。おそら
く安倍首相と海自幹部とは「してやったり」と思ったはずです。
日本が事実上の空母を持つことに米国は反対はおろか、歓迎する
という姿勢だからです。トランプ政権としては、これによって、
F35が大量に売れるメリットもあります。
 日本としても海上自衛隊の本音では、制服組を中心に空母を持
ちたいと考えているし、護衛艦「いずも」は、はじめからそれを
狙って建造されています。何しろ空母保有は、海上自衛隊の長年
の悲願だからです。
 果せるかな、トランプ大統領が来日した直後から、「いずも」
が空母に改修されるという情報が噂として拡散したのです。明ら
かに防衛省からのリークです。安倍首相が空母への改修について
トランプ大統領に前向きな返事をしたものと思われます。
 そこで、冒頭の質問、「いずも」の空母化の真の目的は何かに
ついて考えてみます。
 「いずも」の空母化の目的は、何よりも尖閣諸島の防衛にある
と思います。もし「いずも」が、F35Bで空母化されると、中
国は尖閣諸島に近づくことも困難になります。
 現在、沖縄の那覇基地のF15戦闘機が、尖閣諸島上空を守っ
ています。しかし、尖閣諸島まで30分かかります。燃料の搭載
量には限界があり、防空任務は1時間ちょっとしか就けないので
す。往復1時間かかってしまうので、仮に戦闘になると、せいぜ
い5分程度しかもたないのです。
 したがって、尖閣諸島の防衛の基本は、「島が奪われてから、
奪い返す」戦略ということになります。そのために佐賀県に陸上
自衛隊の水陸機動団がいます。これは、米軍の海兵隊をまねたも
のであり、尖閣が奪われたら、艦艇やオスプレイで上陸部隊を運
び、逆上陸して奪い返す戦略です。
 しかし、この作戦は、制空権をとることが前提になります。そ
のときのため、長崎県佐世保に海兵隊が運用している「ワプス式
強襲揚陸艦」という軽空母が配備されています。自衛隊は、米軍
とこの強襲揚陸艦を使って、何回も共同訓練を行っています。
 このワプス式強襲揚陸艦(添付ファイル)は「いずも」とそっ
くりであり、F35Bを搭載できます。これによって尖閣上空の
制空権をとるのです。護衛艦「いずも」は、この強襲揚陸艦を前
提に設計されたものと考えられます。したがって、F35B搭載
の「いずも」が尖閣諸島周辺をパトロールしていれば、すぐにで
も尖閣上空の制空権を掌握できます。
 これはまだ決まっていないことですが、このF35Bには空対
他対艦ミサイル「JSM」を搭載できます。防衛省は、F35A
(通常離着陸)への搭載を検討しているそうです。JSMについ
て書かれているサイトでは、次の説明があります。
─────────────────────────────
 「空対地ミサイル」とは、将来F−35Aにおける運用能力付
加が予定されている「JSM(統合打撃ミサイル)」を指してお
り、JSMは現在のところノルウェーのコングスベルグ社および
アメリカのレイセオン社が開発中です。
 JSMはジェットエンジンを搭載することで約300キロメー
トルの長射程を持ち、また高いステルス性を持つことによって迎
撃されにくい特徴をもった巡航ミサイルであり、敵の地対空ミサ
イルの射程圏外から攻撃が可能であることを意味する「スタンド
オフ・ウエポン」です。       https://bit.ly/2EJuMKv
─────────────────────────────
 JSMは、もちろんF35B(短距離離陸・垂直着陸)にも搭
載できます。実際問題として空母化した「いずも」にJSMが搭
載されると、尖閣諸島の防衛は万全なものになります。当然中国
は猛烈に批判しています。ある中国メディアは、もし「いずも」
が空母化されると、その戦力は中国の空母「遼寧」を超えるとい
う以下の記事を書いています。
─────────────────────────────
 中国初の空母である「遼寧」は、ソ連で設計された未完成の空
母であった「ワリヤーグ」を購入し、中国が自前で建造を行って
完成したものだ。遼寧にはカタパルトがないというネックもあり
中国は国産空母建造を大々的に進めているが、中国メディアの快
資訊はこのほど「日本がいずも型護衛艦を空母に改修し、F35
B戦闘機を艦載するとなれば、その戦力は遼寧を超える」と論じ
る記事を掲載した。
 記事は、日本がヘリコプター搭載護衛艦である「いずも型護衛
艦」を改修して軽空母として運用しようとしているのは「公然の
秘密」であったと主張し、これはいずも型護衛艦を戦闘機を運用
する空母に改修することを防衛大綱に盛り込む方針だと報じられ
たことで裏付けられたと主張した。  https://bit.ly/2EIVm6p
─────────────────────────────
               ──[フリーテーマ/011]

≪画像および関連情報≫
 ●護衛艦いずもの空母化は松島の再現
  ───────────────────────────
   清国が海軍を増強し、戦艦「定遠」(1885年就役)と
  「鎮遠」(1885年竣工)を保有すると、当時の日本海軍
  を上回る戦力を持った。焦る日本海軍は「松島」型防護巡洋
  艦に戦艦並みの主砲を搭載して対抗した。定遠と鎮遠の主砲
  は32センチだから、松島型にも32センチ主砲を搭載する
  ことで対抗する強引さだった。
   当時の日本の予算不足だけではなく、日本海軍内部の汚職
  で近代化が遅れていた。この状況下にあっても、黄海海戦は
  現場の指揮で切り抜けることができた。現代日本では、自衛
  隊総兵力は存在するだけの戦力であり、野党による不毛な魔
  女狩り裁判が行われている。今は中国海軍の戦力増強が目に
  見えているのに、野党により悪しき際限が行われている。
   護衛艦「いずも」は空母化によりF−35Bを運用可能。
  だが使えることと使いこなすことは別物で、護衛艦いずもは
  松島の再現と言える。F−35Bを運用すれば、空戦・対地
  攻撃・対艦攻撃は可能になる。だが、護衛艦いずもが運用で
  きる機体数は少ない。最初から空母運用を想定されていない
  ので、実戦では松島と同じ強引な運用を押し付けられること
  になる。これは現場指揮官と将兵に、最初から無理難題を押
  し付けることになる。現場の苦闘で戦術を覆し、さらには戦
  略も覆させる強引さ。これでは最初から、戦略が欠落してい
  る証だ。これは防衛省の責任ではなく、軍政権を持つ政治家
  の怠慢が原因である。      https://bit.ly/2QKkxvH
  ───────────────────────────

ワプス式強襲揚陸艦.jpg
ワプス式強襲揚陸艦
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2018年12月26日

●「日本の軍事力/世界第8位の意味」(EJ第4918号)

 香田洋二元海上自衛隊司令官は、日米同盟における日米の役割
分担──日本の「盾」と米国の「矛」は、バランスがとれていな
ければならないといっています。日本の防衛力をもっと高めない
と日米同盟は機能しないといっているのです。これについて、香
田洋二氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 日米同盟の基本は、自衛隊が敵の第1波の侵攻を食い止めてい
る間に、米軍が侵攻国に対して反撃することで、敵国の物理的な
侵攻能力や戦争継続活動に必要な工業施設などの戦略ターゲット
を破壊して、敵の侵略の意図をくじくことです。
 それにより敵の侵略戦争を停戦・終戦にもっていくということ
です。要するに、米軍の来援、すなわち来援米軍による侵略国の
策源地に対する戦略打撃がなければ戦争を終わらせることができ
ないのです。
 しかし、その基本となる、敵国の策源地を攻撃するために必須
となる米軍の来援部隊を自衛隊がどのように支援するかについて
は、今日の我が国で深く議論されていません。そして、そのため
の十分な予算も装備も自衛隊には与えられていません。
                  https://nkbp.jp/2AmWgSr
─────────────────────────────
 この「盾」の能力を強化するためのプラン──とくに島嶼防衛
強化には、複数のプランがあります。現在調達が進んでいるF3
5Aと空中給油機の増加による防衛能力の強化と、「いずも」と
F35Bとの組み合わせによる空母化がありますが、これについ
ては、精緻な比較検討が必要であると香田氏は説いています。
 それからもうひとつ、香田氏は、島を取られたら、それを取り
返す作戦については強い疑問を持っています。島はとられないよ
うにしなければならないと説いています。
─────────────────────────────
 島を取られないようにしなければなりません。昨今の我が国の
防衛論議では、防衛省の公刊資料も含め、島嶼奪還作戦が注目を
集めていますが、歴史、とくに前大戦における我が国の苦い経験
を振り返れば、一度取られた島を取り返せた例はありません。
 島を取られない体制構築の第一要件が、敵が侵攻する兆候を早
期に察知するための早期警戒能力の向上です。また、南西諸島の
島嶼防衛に限らず、我が国防衛全体の立場からも、敵侵攻の際に
最初に狙われるのは固定レーダーサイトです。その際の早期警戒
能力損失を局限して補完する早期警戒機EE−2Dなどの数を増
やすことが重要です。        https://nkbp.jp/2AmWgSr
─────────────────────────────
 「攻撃は最大の防御なり」というように、強固な「守り」とは
「攻撃」することです。何かすると攻められることがわかると、
ちょっかいを出しにくくなります。逆に、攻めてこないとわかる
と、いろいろちょっかいを出してくるものです。中国の公船がし
ばしば、堂々と尖閣諸島の領海に入ってくるのは、そうしても日
本は攻めてこないことを知っているからです。
 したがって、攻めないで守りに徹する専守防衛は、かえってコ
ストがかかるのです。香田氏のいう「盾」の役割を日本が完全に
果すには膨大なコストがかかります。実際に日本は米国から最新
兵器を言い値で買い、米軍と軍事演習を重ねているので、膨大な
軍事コストがかかっています。
 ところで、「世界軍事力ランキング」というものがあります。
このランキングは、武器の種類、国の人口、軍の兵士の数、地理
的な環境、弾道ミサイルの数、交通・物流の潜在力、自然資源、
工業水準、衝突への対応力など55項目のデータをもとに決定さ
れます。2018年度のランキング10位は、次のようになって
います。日本は、第8位にランクされています。
─────────────────────────────
        軍事力指数     兵員    軍事予算
 @アメリカ 0.0818  208万人 6470億ドル
 A ロシア 0.0841  359万人  470億ドル
 B 中 国 0.0852  269万人 1510億ドル
 C インド 0.1417  421万人  470億ドル
 Dフランス 0.1869   39万人  400億ドル
 Eイギリス 0.1917   28万人  500億ドル
 F 韓 国 0.2001  583万人  400億ドル
 G 日 本 0.2107   31万人  440億ドル
 H トルコ 0.2216   72万人  102億ドル
 I ドイツ 0.2461   21万人  452億ドル
                  https://bit.ly/2SgmsF5
─────────────────────────────
 このランクに韓国と日本が第7位と第8位を占めているのは驚
きです。なぜなら、第1位の米国から第6位の英国までは、すべ
て核保有国だからです。ということは、核保有国ではない軍事強
国は、韓国と日本ということになります。これまで、北朝鮮と対
峙してきた韓国の軍事力の高いことはわかるものの、専守防衛の
はずの日本の第8位は驚きです。2017年度は、日本が第7位
で、韓国は第8位でした。両国は、このところ大体このポジショ
ンにいます。
 日本について、ロシアの軍事専門家の言葉です。日本は事実上
の世界第4位といっています。
─────────────────────────────
 軍事力の世界の第4位は日本かもしれない」とロシアの軍事専
門家らが解説している。戦後の兵器製造において、制限が設けら
れてきたものの、高い技術力を持っており、「米国の支援の下で
ひとたび全力で軍備拡張すれば、短時間のうちにロシアや中国に
肩を並べる可能性が極めて高い」と分析されたことを伝えた。
                  https://bit.ly/2rSOWcA
─────────────────────────────
               ──[フリーテーマ/012]

≪画像および関連情報≫
 ●日本の本当の軍事力を見誤るな!/中国
  ───────────────────────────
   米国の軍事力評価機関「グローバル・ファイヤーパワー」
  がまとめた2018年の軍事力ランキングによれば、日本は
  8位だったのに対して、中国は米国とロシアに次ぐ3位だっ
  た。このランキングの評価で言えば、中国の軍事力のほうが
  日本を大きく上回っているが、中国メディアの今日頭条はこ
  のほど、表面的な事象だけで見ていては日本の本当の軍事力
  を見誤ると論じる記事を掲載した。
   記事は、日本は太平洋戦争の敗戦国であり、憲法で軍隊の
  保有は禁じられていることを指摘し、それゆえ日本は専守防
  衛の自衛隊しかないと指摘。自衛隊の兵力で言えば、中国人
  民解放軍より圧倒的に少ないことを強調する一方、過小評価
  できないのはその装備の先進性であることを強調した。
   たとえば、海上自衛隊には先進的な艦艇が数多く存在し、
  空母に改修できるヘリコプター搭載護衛艦を複数保有してい
  るほか、日本の潜水艦の性能は世界有数であることを強調し
  た。また、航空自衛隊には米国の戦闘機が配備されており、
  その戦力は中国にとって大きな脅威であると指摘した。また
  日本には約5万人もの米軍兵がいて、F35Bをはじめとす
  る最新鋭のステルス戦闘機も配備されていると指摘。日本は
  これまでも準空母と呼ぶべき「いずも型護衛艦」について、
  「空母への改修はしない」と主張していたが、ここにきて空
  母化に前向きな姿勢を見せはじめたとし、「日本は自国の軍
  事力について、煙幕を使って外部から正確な姿が見えないよ
  うにしている」と主張、表面的な事象だけで日本の軍事力を
  評価してはならないと論じた。  (編集担当:村山健二)
                  https://bit.ly/2EFR92x
  ───────────────────────────

F35B戦闘機.jpg
F35B戦闘機

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2018年12月27日

●「貿易摩擦がハイテク摩擦へと発展」(EJ第4919号)

 今年のEJは本日で終了します。再び米中貿易戦争の話です。
なぜなら、これがどうなるかによって、来るべき2019年の世
界経済を決めると思われるからです。これが原因で、25日の日
経平均は、2万円を大きく割っています。
 現在、この案件でホワイトハウス内を仕切っているのは、ピー
ター・ナヴァロ大統領補佐官です。実はEJでは、2017年1
月4日からの新テーマである『米中戦争の可能性は本当にあるの
か/そのとき日本はどうするか』で、このピーター・ナヴァロ氏
の著書『米中もし戦わば』(文藝春秋)を取り上げ、冒頭に次の
質問を紹介しています。再現します。
─────────────────────────────
【問題】歴史上の事例に鑑みて、新興勢力=中国と既成の超大国
=アメリカとの間に戦争が起きる可能性を選べ。
  「1」 非常に高い
  「2」ほとんどない
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 この正解は「1」の「非常に高い」です。ナヴァロ氏は、これ
にはきちんとした歴史的根拠があるとし、紀元前五世紀の「ペロ
ポネソス戦争」を上げています。この戦争は、当時の覇権国家ス
パルタを中心とする勢力と、新興勢力のアテネを中心する勢力と
の間の30年に及ぶ戦争です。
 EJがこれを紹介した2017年1月から、2年の時が過ぎよ
うとしています。本当の戦争こそ起きていないものの、貿易戦争
という名の貿易をめぐる米中の戦争は激しさを増し、目下、米中
は極度の緊張状態にあります。そして、ナヴァロ氏は、この戦争
について記述したハーバード大学の政治学者であるグラハム・ア
リソン氏の言葉を紹介しています。再現します。
─────────────────────────────
 この劇的な(アテネの)勃興にスパルタはショックを受け、為
政者たちは恐怖心から対抗策を取ろうとした。威嚇が威嚇を呼び
競争から対立が生まれ、それがついに衝突へと発展した。30年
に及ぶペロポネソス戦争の末、両国はともに荒廃した。
           ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
 ここでのスパルタを米国、アテネを中国に置き換えると、本物
の戦争ではないものの、それに近いことがいま起きつつあるとい
えます。何しろ、この本の著者のピーター・ナヴァロ氏が、現ト
ランプ政権の大統領補佐官として、貿易問題を担当しているので
対中摩擦が生じているのです。
 トランプ大統領は、大統領選挙のときから、年3800億ドル
(約43兆円)の対中貿易赤字に強い不満を表明していますが、
2018年7月に制裁関税を発動した理由は、「知的財産権の侵
害」であり、貿易摩擦というよりも、その本質はハイテク摩擦に
なっているのです。
 ピーター・ナヴァロ大統領補佐官は、中国のことを次のように
非常に厳しく批判しています。
─────────────────────────────
 中国は、世界貿易の最大のぺテン師であり、米国にとって最大
の貿易赤字国でもある。貿易の不正が続くなら、トランプ氏は防
御的な関税を課す。
 中国は5カ年計画をつくり、政府主導で大量の産業補助金を投
じている。中国産業を守るため、高率の輸入関税を課し(許認可
などの)非関税障壁もある。これら全ての解決が90日間の米中
交渉の主題である。        ──ピーター・ナヴァロ氏
             ──12月23日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 つまり、米国と中国の対立は、貿易不均衡に端を発した経済摩
擦ではじまったのですが、それがテクノロジーや軍事面での覇権
争いに発展しているのです。貿易摩擦のはずが、ハイテク摩擦に
すり替わっています。これは、トランプ政権の3人の「超」の付
く対中強硬派のなせるわざであるといえます。
─────────────────────────────
               ペンス副大統領
      ナヴァロ大統領補佐官(貿易担当)
    ボルトン大統領補佐官(安全保障担当)
─────────────────────────────
 当のトランプ大統領は、むしろこの3人よりは、それほど強い
対中強硬派ではなく、企業家であるため、企業の赤字と貿易赤字
を一緒にしており、何とか中国と取引しようと考えているフシが
あります。しかし、安全保障が絡んでくると、とても90日で解
決することは困難です。
 トランプ大統領はほとんどわかっていないのです。こんな話が
あります。日米首脳会談の前夜、トランプ大統領は安倍首相にど
のように話そうかと考えていたのです。そこで、ドルが高い方が
良いのか、安い方が良いのか迷ったそうです。貿易にはドルが安
い方がよいはずですが、米国は貿易重視ではないので、専門家は
皆、ドルが高い方が良いというのです。
 トランプ氏は、安倍首相に為替について噛みついてやろうとし
て考えたのですが、よくわからない。既に真夜中だったにもかか
わらず、国家安全保障を担当するフリン大統領補佐官に電話をし
米国としては、ドルが高かったほうがいいのか、安かった方がい
いのかどっちだと尋ねたのです。しかし、フリン氏は「経済の専
門家に聞いたらどうか」として答えず、結局わからなかったので
安倍首相には為替の話をしなかったのです。トランプ大統領は、
その程度の人なのです。
 今年のEJは今回で終わりです。一年間EJをご愛読ありがと
うございます。新年は新しいテーマで、4日から配信します。よ
いお年をお迎えください。   ──[フリーテーマ/013]

≪画像および関連情報≫
 ●中国、外資への「技術移転強制」禁止へ/法案準備
  ───────────────────────────
   北京(CNN)中国政府は25日までに、中国で事業を行
  う外国企業の知的財産保護に向けた法律を導入する姿勢を明
  らかにした。国会にあたる全国人民代表大会(全人代)に法
  案が提出された。この中では、外国企業に対する強制的な中
  国企業への技術移転について禁じることが盛り込まれた。こ
  うした知財の移転については、米国のトランプ大統領らから
  批判の声が出ていた。
   華南米国商工会議所の幹部は、こうした取り組みについて
  「中国政府による重要で正しい動きだ」として一定の評価を
  示した。ただ、同幹部は、法改正がなされても、中国で活動
  する外国企業は、強制力の欠如や地元政府による不公平な取
  り扱いなど他の困難に直面するのではないかとの見方を示し
  た。中国国営新華社通信は、「平等な取り扱い」と同時に、
  「安定的で透明性があり予測可能な投資環境が生まれる」と
  強調。新法によって、外国企業は、事業の発展を支援する全
  ての国策を享受し、政府調達に参加できるとしている。
  中国当局はこれまで、外国企業に対して不公平な取り扱いを
  行っているという指摘について否定していた。トランプ大統
  領は繰り返し、中国政府による科学技術の盗難について懸念
  を表明しているが、今回の新法導入は、こうした批判に対応
  するものといえそうだ。     https://bit.ly/2EJUBcs
  ───────────────────────────

ピーター・ナヴァロ大統領補佐官.jpg
ピーター・ナヴァロ大統領補佐官
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2019年01月01日

●「新年のご挨拶/2019.1.1」

 EJ読者の皆様、2019年、明けまして、おめでとうござい
ます。EJをいつもご愛読いただき、心より御礼申し上げます。
本年もよろしくお願いいたします。
 EJは、1998年10月15日を第1号として配信し、以来
営業日の毎日、お送りしておりますが、既に21年が経過し、今
年は22年目に突入します。大きなフシ目である5000号は5
月頃に達成予定です。
 2018年のEJは、1月5日の第4677号から12月27
日の第4919号までの245本を、営業日の毎日、一日も欠か
さず、お届けしました。その間、同じコンテンツをブログにも投
稿しています。2018年に取り上げたテーマは、次の4つにな
ります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.安倍政権のメディア支配 ・・・・・・・・・ 80回
 2.次世代テクノロジー論U ・・・・・・・・・ 74回
 3.日航機123便墜落事件の謎 ・・・・・・・ 78回
 4.フリーテーマ ・・・・・・・・・・・・・・ 13回
   ―――――――――――――――――――――――――
                        245回
―――――――――――――――――――――――――――――
 テーマごとにどのくらいの人が読んでくれているか、ブログの
アクセス数から判断します。UUはそのテーマを読みに来ている
人を示し、PVは他のテーマを読みに来ている人を表していると
考えられます。あくまで、1日当りのアクセス数です。
─────────────────────────────
 ≪安倍政権のメディア支配≫
             UU      PV
    1月 ・・ 1441人   6739回
    2月 ・・ 1257人   5090回
    3月 ・・ 1179人   5017回
    4月 ・・ 1192人   5518回
 ≪次世代テクノロジー論U≫
    5月 ・・ 1041人   5403回
    6月 ・・  958人   4110回
    7月 ・・  914人   4349回
    8月 ・・  898人   4451回
 ≪日航機123便墜落事件の謎≫+≪フリーテーマ≫
    9月 ・・ 1006人   5254回
   10月 ・・ 1129人   5554回
   11月 ・・  938人   4274回
   12月 ・・ 1048人   4901回
─────────────────────────────
 2018年は、1日当りのUUのアクセス数が1000回を切
る月が4回もあり、EJが飽きられているのかなと反省していま
す。それでも、1日当りのページビュー(PV)は5000回を
維持しています。
 ツイッターも続けていますが、昨年の12月時点よりもフォロ
ワーは350人ほど減っています。フォロワーは、2万人もいる
と、200〜300人が動くことは何回もあるので、十分取り戻
せる段階にいると思っています。ツイッターのアナリティクスに
ついては、URLをクリックしてください。
─────────────────────────────
      2018年12月31日/午後8時現在
          ツイート ・・・ 18887
          フォロー ・・・    10
         フォロワー ・・・ 22134
             https://bit.ly/2EmOx6T
─────────────────────────────
 ここで改めてEJの本質を考えてみると、まず、テーマを決め
ます。そのうえで、そのテーマに関して、本や雑誌やネットで発
言している人、コメントしている人、研究している人、本を出し
ている人などの所説をできる限り、ていねいに読んで紹介し、そ
のうえで私の意見を述べるというかたちをとっています。私はこ
のスタイルを「作品型情報」と名付けています。
 したがって、EJを読むことによって、そのテーマに関するさ
まざまな意見を知ることができます。とくにネットでは、そのテ
ーマに関するコメントはもとより、動画で、講演やインタビュー
なども紹介しているので、ていねいに読んでいただくとさまざま
な情報を入手することができます。
 そのためには、とにかく関連本を収集し、丹念に読むことが求
められます。これには、相当のエネルギーを使います。著者が何
をいいたいのか、文章から探るのです。
 そしてネットから関連情報を探し出します。これにはかなりテ
クニックがいります。最近のネット検索は、AIが導入されてい
るので、キーワードを工夫すると、思いがけない重要な情報を把
握することができます。これに関しては、「ワイアード」に「人
工知能はグーグル検索を大きく変えようとしている」と題して、
次の記事が掲載されています。
─────────────────────────────
 グーグル検索では、「ページランク」と呼ばれるアルゴリズム
によって、検索結果の表示順が決められてきた。いま、その中枢
・検索エンジンに「人工知能」が浸透し始め、次の新しい時代へ
と動き出している。         https://bit.ly/2R2nec0
─────────────────────────────
 記事によると、グーグル検索のエンジン部門のトップが、AI
部門の総括責任者に代わったのです。この交代劇は、テック業界
そのものの転換期の象徴と見てとれるのです。実際にグーグルは
「ランクブレイン」という検索キーワードにおけるクエリを解釈
するアルゴリズムを開発しています。このように技術はどんどん
進化しているのです。
 EJは、4日から新しいテーマでお送りします。本年もEJを
よろしくお願いします。

≪画像および関連情報≫
 ●グーグルの検索改革
  ───────────────────────────
   皆さんは、『ジョン・ジャナンドレア』という人物を知っ
  ていますか?もし彼の名前を知っている人は、相当なグーグ
  ル通か、もしくはAIや検索システムに関するテクノロジー
  に詳しい方かと思います。
   彼は、グーグルの人工知能(AI)部門の統括責任者でり
  かつ、検索エンジン関連の責任者を兼任している、スーパー
  すごい人とだけ言っておきましょう!
   なぜ、AI部門と検索エンジン部門の責任者が一緒なのか
  は、人工知能を利用したテクノロジーが、グーグルの基盤の
  今、そして未来を支えていることに他なりません。
   2015年にグーグルは、「ランクブレイン」が使ってい
  ると発表しています。これを簡単に言いますと、『検索ユー
  ザーが、何をどういった目的で、探しているのかを、自動的
  に学習&予測し、そして、そのユーザーが求めている最適な
  コンテンツを導きやすくる』新しいAIを利用したアルゴリ
  ズムです。
   具体的な例でいえば、昔の検索エンジンであれば、例えば
  検索窓に「CM車の歌 かっこいい」 と入力して検索しても
  検索ユーザーが考えて探している情報を、的確に検索上位に
  表示できませんでした。しかしながら、本日現在においては
  同じ「CM車の歌 かっこいい」 で検索するとホンダの「サ
  チモスの「STAY TUNE」と、的確 に上位に表示して返してく
  れます!CMのメーカー名や、曲のフレーズ、頭文字なども
  必要ありません。これってすごいですよね!ほとんどのユー
  ザーにとってこれが求めていた検索結果になると思います。
                  https://bit.ly/2EXTrKn
  ───────────────────────────

亥年/2019年.jpg
亥年/2019年
posted by 平野 浩 at 06:14| Comment(0) | フリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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