安倍政権が誕生したのは2012年12月26日のことです。
民主党前政権の国政運営失敗への国民の怒りを背に受けて、今年
で丸5年になりますが、その間、次の5回の選挙でことごとく勝
利し、磐石の政権運営を続けています。
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1.2012年12月14日/衆議院議員選挙
2.2013年 7月21日/参議院議員選挙
3.2014年10月14日/衆議院議員選挙
4.2016年 7月10日/参議院議員選挙
5.2017年10月14日/衆議院議員選挙
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国政ではありませんが、安倍政権が唯一負けた選挙は2017
年7月の都議会議員選挙だけです。このように5回の国政選挙で
勝利した結果、依然として50%前後の高い支持率を保ち「一強
多弱」の政権が続いています。
しかし、いわゆる「モリカケ疑惑」への内閣の誠意なき対応に
反発し、2017年4月〜8月には不支持が支持を上回る時期が
ありましたが、野党の信じられない不手際もあり、またしても安
倍政権の復活を許しています。それは、この政権の仕掛けも効い
ており、支持率が50%に戻ろうとしています。
安倍政権の功罪はいろいろありますが、最も許せないことがあ
ります。それがこの政権の巧妙なる「メディア規制」です。今年
のEJは、このテーマからはじめます。
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安倍政権の巧妙なるメディア支配の実態を探る
─ 安倍政権の驚くべき仕掛けとは何か ─
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安倍晋三首相が他の首相と違うのは、2回目の首相であるとい
うことです。2006年9月〜2007年8月まで第1次安倍政
権を運営しています。そのとき、「消えた年金問題」が起こり、
国民から強い怒りを買います。この問題は連日国会で取り上げら
れ、メディアでも大きく報道され、第1次安倍政権は、完膚なき
ままに叩かれたのです。安倍首相には、そのときのトラウマが強
く残っています。そのとき、安倍氏は「メディアだけは何とかし
ないといけない」と考えたはずです。
この安倍政権のメディア規制を取り上げて書いている著者は何
人かいますが、核心に迫っているものは少ないです。しかし、そ
のなかにあって、本音のところをあますところなく、400ペー
ジにわたって、痛烈に暴いている本があります。今回のテーマは
この本を中心として書いていくので、最初にご紹介しておくこと
にします。
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古賀茂明著
『日本中枢の狂謀』/講談社刊
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安倍政権に限らず、そもそも自民党政権には「3つの大罪」が
あるといいます。自民党議員のベテラン議員で、この大罪につい
てはっきりと口にする議員は皆無ですが、自民党の若手のホープ
の小泉進次郎議員はそれを明言しています。これについて、古賀
茂明氏は、小泉議員の名前を「若手自民党政治家K」と伏せては
いるものの、次のように述べています。
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日本が抱える大きな問題は、よく考えれば当然だが、ほとんど
自民党政治の結果である。つまり、政治的責任はすべて自民党に
あるといっても過言ではない。このことを考えるとき、私が思い
出すのは、いま自民党でもっとも人気のある若手政治家K氏の言
葉だ。ある会議で私の講演を聞いたK氏は、自民党の失敗につい
て、「3つの大罪」という言葉で要約した。第1は、900兆円
超(当時)の借金大国にしたこと。第2は、少子高齢化を放置し
て社会保障の基盤を危うくしたこと。第3は、原発の安全神話を
作り福島の事故を招いたことである。K氏はさらに、自民党が過
去の過ちを反省せずに政権に返り咲いたら、同じ過ちを繰り返す
のではないかと心配だと述べた。私にはそのときの記憶が鮮明に
残っている。 ──古賀茂明著
『日本中枢の狂謀』/講談社刊
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安倍首相がよくいう言葉に「われわれが野党だったとき、これ
までの政治を反省して・・・」というのがあります。ところが、
安倍政権が政権に復帰したとき、3つの大罪のどれも無視して政
権運営に当たっています。何も反省していない証拠です。
安倍首相は、何かにつけて民主党政権の失敗を口にしますが、
日本の現状に一番責任があるのは自民党政権です。計画なき財政
運営に終始し、少子高齢化にも有効な対策を施さず、原発再稼働
は積極的に進める──少なくとも、安倍政権は自民党の3つの大
罪など、カケラらも認めていないのです。
その安倍政権のなかにあって、日本の現状には少なくとも責任
のない若手の小泉進次郎議員は、自民党の大罪を明確に認め、反
省の弁を口にしていることは立派であり、大したものです。しか
し、その力量については及び腰なところがあります。それでも将
来大いに期待のできる人材であることは確かです。
メディアを規制する──独裁者が必ずやることです。自分を批
判する人の意見を封殺し、批判を抑え込むのです。そうすれば、
批判は表面上は出ないようになりますが、表面に出ない批判はマ
グマのように鬱積し、渦を巻きます。例えば、モリカケ問題の中
途半端な終り方には多くの国民が不満を持っています。本来そう
いうことを糾弾する責任はメディアにありますが、そのメディア
が完全に安倍政権に抑え込まれ、それが、だんだんひどくなって
います。こんなことは本来あってはならないことですが、それが
常態化しています。 ──[メディア規制の実態/001]
≪画像および関連情報≫
●安倍政権の圧力とテレビ局の忖度/池上彰氏の指摘
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今回の参院選(2016年)に際して、自民党は弁護士を
引き連れて放送局に乗り込み、公職選挙法違反の政党CMを
流せと圧力をかけた。安倍政権において、こうしたメディア
圧力はもはや日常茶飯事になっている。そして、テレビ局は
完全に飼いならされ、圧力をかけられる前に自ら政権の意向
を忖度し、過剰な自主規制を行っている。
ところが、これまで本サイトが何度も具体的に報じてきた
ように、テレビメディアにかかわる当事者たちからは、なか
なか具体的な話が出てこない。安倍政権に追い詰められて、
キャスター辞任に追い込まれたテレビ朝日『報道ステーショ
ン』の古舘伊知郎氏にしても、TBS『NEW23』の岸井
成格氏にしても、最後まで「政治的な圧力はなかった」「特
定の圧力を感じたことはない」という姿勢を崩さなかった。
結局、これからもテレビの世界で生きていくことを考えると
本当のことは言えない、ということなのだろう。
しかし、そんななか、いまも現役で数々のテレビ番組に出
演中の有名ジャーナリストが、この圧力問題についてかなり
踏み込んだ証言をした。そのジャーナリストとは池上彰氏。
池上氏は、緊急復刊された「朝日ジャーナル」(朝日新聞出
版)における元共同通信社編集主幹の原寿雄氏との対談で、
テレビ局の自主規制、さらに政権からの圧力の詳細を具体的
に語っているのだ。池上氏はまず「『報道の自由度』と言い
ますが、国が報道の自由を制限しているか、それとも報道機
関の側が勝手に自主規制したり、忖度したりして、自ら自由
を狭めているのか。日本では後者が多いような気がします」
と指摘した上で、古巣のNHKの体たらくを嘆く。
http://bit.ly/29Q5s37
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古賀 茂明氏