2016年10月24日

●「米大統領選はクリントン氏勝利か」(EJ第4386号)

 10月19日に米大統領選の3回目のテレビ討論会がラスベガ
スで行われ、CNNテレビの世論調査ではクリントン氏が勝利し
たことを伝えています。
─────────────────────────────
               第3回  第2回  第1回
  ドナルド・トランプ ・・ 39%  34%  27%
 ヒラリー・クリントン ・・◎52% ◎57% ◎62%
─────────────────────────────
 クリントン氏の3連勝です。しかし、これだけでは最終結果を
判断できないのです。なぜなら、CNNは民主党系のメディアで
あり、民主党の大統領候補に有利だからです。それに、クリント
ン氏は勝っているとはいえ、62、57、52と毎回ポイントを
減らしているのに対し、トランプ氏は、27、34、39と逆に
ポイントを増やしています。
 トランプ氏は、政治の経験がないことに加えて、討論の準備も
不十分であり、政策論ではクリントン氏に勝てないことを米国民
はよく知っています。したがって、クリントン氏が討論に勝つの
は織り込み済みなのです。それにトランプ氏には最低な女性蔑視
問題もあり、本来であれば、80対20ぐらいでクリントン氏が
勝っていても不思議ではないのに13ポイント差しかないのは、
クリントン氏が米国民に嫌われている証拠といえます。
 それでは、あと2週間後に迫った大統領選挙の結果はどうなる
のでしょうか。
 主な世論調査を平均した米政治専門サイト「リアル・クリア・
ポリティクス」が20日に公表した最新の支持率は、次のように
なっています。
─────────────────────────────
     ドナルド・トランプ ・・・ 42.1%
    ヒラリー・クリントン ・・・◎48.5%
─────────────────────────────
 クリントン氏は、トランプ氏に6.4 ポイントの差をつけてい
ます。米国の大統領選では、終盤にきて5ポイントの差があれば
当選安全圏にあるといわれます。したがって、この2週間、何事
もなければ、クリントン氏の楽勝であるといえます。
 しかし、クリントン氏には弱点があります。それは、健康問題
とメール問題の2つです。これについては、改めて述べますが、
あと1週間しかないものの、オクトーバー・サプライズが起きて
も不思議ではない状況です。
 もう少し詳しく見ることにしましょう。10の重要州における
支持率を分析します。項目のなかの「12年結果」とは2012
年の前回選挙でその州で勝利した政党です。このときはオバマ大
統領が勝ったので、当然民主党が多くなっています。
─────────────────────────────
            トランプ   クリントン 12年結果
     アリゾナ ◎42.5%   41.8%   共和党
     オハイオ ◎46.5%   46.0%   民主党
    バージニア  36.0%  ◎46.8%   民主党
     フロリダ  43.8%  ◎47.4%   民主党
      ネバダ  41.8%  ◎46.5%   民主党
     ミネソタ  41.3%  ◎45.3%   民主党
     アイオワ ◎45.0%   41.7%   民主党
ニューハンプシャー  38.4%  ◎45.6%   民主党
 ノースカロライナ  44.2%  ◎47.0%   共和党
    ジョージア ◎46.8%   41.5%   共和党
        ──2016年10月21日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 この10州のなかで、アリゾナ、オハイオ、バージニア、フロ
リダはとくに重要な州です。アリゾナは、共和党が過去50年で
一度しか落としていない牙城です。しかし、現在接戦になってお
り、クリントン氏は十分逆転可能です。
 米大統領選では「フロリダ州とオハイオ州をとった方が勝利す
る」といわれています。それは、オハイオ州とフロリダ州は、い
わゆる激戦州であり、毎回どっちが勝つかわからないからです。
それに両州は選挙人が多い州です。オハイオ州は18人、フロリ
ダ州は29人です。したがって、フロリダ州をとった方が勝つと
いわれているのです。
 オハイオ州はトランプ氏が勝っていますが、差はわずかであり
大接戦です。フロリダ州についてはクリントン氏が3.6 ポイン
トリードしています。10州の勝敗は、トランプ氏4州、クリン
トン氏6州とクリントン氏が大きくリードしています。よほどの
ことがない限り、クリントン氏の勝利は動かないでしょう。
 このような情勢をふまえて、現在、両候補の獲得している選挙
人の数は次の通りです。ちなみに選挙人の総数538人中270
人が過半数になります。
─────────────────────────────
     ドナルド・トランプ ・・・・ 170人
    ヒラリー・クリントン ・・・・ 260人
─────────────────────────────
 クリントン氏は選挙人をあと10人とれば勝ちです。オハイオ
州で逆転できればそれで決まりです。しかし、投票率やまだ態度
を決めていない有権者も10%程度いると思われます。そういう
意味で、選挙は何が起きるかわからないのです。
 21日晩のフジプライムニュースに出演した著名な米国の歴史
学者、エドワード・ルトワック氏は、今回の大統領選について、
「どちらが大統領になっても弱い大統領になるだろう。したがっ
て、議会の力が強くなり、議会は内向きなので、どうしても政権
は『内向き』にならざるを得ない。しかし、秘密外交はできる。
次の大統領は、きっとニクソンのような大統領になるかもしれな
い」という意味深なコメントしています。
            ──[孤立主義化する米国/071]

≪画像および関連情報≫
 ●最後のテレビ討論でトランプ氏のある一言
  ───────────────────────────
   米国大統領選挙に向けた共和党のドナルド・トランプ候補
  と民主党のヒラリー・クリントン候補による最後のテレビ討
  論会が水曜夜、ラスベガスで開かれた。冒頭で握手を交わす
  こともなく、すぐさま最高裁と妊娠中絶問題についての討論
  になったが、この日ツイッターで大きな話題となったのは、
  討論開始15分ほどで、移民政策についてトランプ氏が発し
  た言葉だった。
   「この国に居る"悪いオンブレ"(hombre=スペイン語で、
  「男、ヤツ」の意味)たちを追い出すのだ」と、特にメキシ
  コからの不法移民に立ち向かう自らの姿勢を表明したのであ
  る。この発言に先立ち、トランプ氏は、「アメリカは麻薬組
  織のリーダーを国内から排除する手段を講じなければならな
  い」と発言している。
   この"悪いオンブレ"という言葉は瞬く間にネットで拡散、
  多くの人々がその言葉の使い方を非難した。「ドナルドさん
  よ、アンタはどうしようもないね。"悪いオンブレ"なんちゃ
  って、ヒスパニック系の票は諦めたんだね」「俺たち“悪い
  オンブレ“はバッド・カンパニー(=英国のハードロックバ
  ンド、意味は悪友)"の曲をフォーク/ウエスタンでカバーす
  る新しいバンドだぜ」などをツイート。また、この発言に端
  を発して交わされた論戦は、今回のテレビ討論会が始まって
  から最初の1時間で最も白熱したものとなった。
                   http://bit.ly/2eYNscc
  ───────────────────────────

米大統領選/第3回テレビ討論会.jpg
米大統領選/第3回テレビ討論会
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2016年10月25日

●「奴隷制をめぐる南部と北部の諍い」(EJ第4387号)

 米国大統領選において、今の時点で「オクトーバー・サプライ
ズ」が起きるかどうは不明です。ここでオクトーバー・サプライ
ズとは、メール問題でヒラリー・クリントン候補が失脚すること
を意味します。これは、10月中でなくても、11月に入ってか
らでも起きますし、11月8日に仮にクリントン氏が大統領に選
ばれたとしても、その後に起きる可能性もあります。米国にとっ
てきわめて深刻な事態です。
 ネットでは、今年の5月頃から、その種の情報が一貫して流れ
ており、9月以降多くなっています。これに関し、評論家の副島
隆彦氏は、2016年10月20日付で、次の新刊書を緊急上梓
しています。
─────────────────────────────
                      副島隆彦著
  『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
                       光文社刊
─────────────────────────────
 「逮捕、投獄」とは穏やかならざる言葉ですが、トランプ氏も
テレビ討論で「大統領になったら、クリントン氏を投獄する」と
いっています。そこには、なかなかメール問題でクリントン氏を
逮捕しない米司法当局への苛立ちが読み取れます。
 EJでは、この情報について現在リサーチしており、そのうえ
で取り上げるつもりです。それまでは、アメリカ合衆国の歴史を
書いていきます。アメリカという国を知るためです。
 3代大統領から6代大統領までは、民主共和党、すなわち、リ
パブリカン党の大統領が続くのですが、この党の中も二つに分か
れてきます。このことは、19日のEJ第4383号で述べてい
ますが、再現します。
─────────────────────────────
  1.民主共和党 ・・   アンドリュー・ジャクソン
  2.国民共和党 ・・ ジョン・クインシー・アダムズ
─────────────────────────────
 アンドリュー・ジャクソン率いる民主共和党は、ジャクソンが
7代大統領になると同時に「民主党」になり、6代大統領のジョ
ン・クインシー・アダムズは、リパブリカン党(民主共和党)を
「国民共和党」と改称し、以後主導します。これがホイッグ党に
なっていくのです。やがてこのホイッグ党が、後の共和党になる
のです。そこにからんでくるのは、次の2つの問題です。
─────────────────────────────
           1.保護貿易
           2.奴隷制度
─────────────────────────────
 「1」は「保護貿易」です。
 当時の米国は、北部では商工業が発展し、南部では綿花の栽培
が盛んだったのです。しかし、北部では、国際競争力はまだ十分
ではないので、国内市場を守るため、高い関税をかける貿易保護
政策をとります。
 これに対して南部では綿花の栽培をしていたのですが、コスト
の低い奴隷の労働力を前提としていたので、国際競争力はあった
のです。そのため、南部の民主党は自由貿易を主張し、議会はこ
の問題で何回も紛糾します。
 「2」は「奴隷制度」です。
 奴隷制度に関しては南部と北部は完全に意見が割れてしまって
います。南部にとって奴隷制度は安い労働力確保のため不可欠で
あるのに対して、北部は奴隷制度を廃止すべきであると訴えたか
らです。当時、奴隷制度を存続すべきかどうかは、州の判断に任
せられており、奴隷制度を存続させる州は「奴隷州」、そうでな
い州は「自由州」と呼ばれていたのです。
 米国の州は、西部の開拓を進め、数が増えて行ったのですが、
それらの州が自由州になるか奴隷州になるかは、お互い死活問題
になります。とくに南部は、自由州が過半数に達することを非常
に恐れていたのです。もし過半数になると、奴隷制度を廃止する
憲法の批准・成立につながるからです。
 こういう状況では、奴隷は当然スキを見て自由州に脱出しよう
とします。そのさい、追手の南部としては、その奴隷の奪還や殺
害を企てることの是非が、頻繁に議会に持ち込まれるようになっ
ていたのです。
 民主党の初代大統領のアンドリュー・ジャクソンは、奴隷に対
する思いやりに欠けた人物だったといわれています。次の広告は
ジャクソンが大統領になる前の1804年9月に、テネシー・ガ
ゼット紙に掲載されたジャクソンの逃亡奴隷に関する広告です。
南部では、こういうことは日常茶飯事に行われていたのです。
─────────────────────────────
 逃亡者捕獲に50ドル!
 ナッシュヴィル近くに住んでいた白人と黒人の混血児の奴隷が
6月25日逃亡。前記賞品は、同奴隷を捕捉して引き渡し、もし
くは捕捉後、刑務所に収監された方に進呈。後刻、当方引きとり
に参上。もし奴隷がすでに他州に逃亡の際には、前記賞金のほか
に必要経費を進呈。さらに何人であれ、この男に対するムチ打ち
100回ごとに、さらに10ドル進呈。最大300回を限度とし
支払の用意あり。──コルマック・オブライエン著/平尾圭吾訳
             『大統領たちの通信簿』/集英社刊
─────────────────────────────
 こういう時期に登場したのが、後に16代大統領になるエイブ
ラハム・リンカーンです。リンカーンは、奴隷制度反対論者だっ
たのですが、最初からそれを主張していたのではないのです。彼
が一番心配していたのは奴隷制度を巡る国家の分裂です。リンカ
ーンは、国家の分裂回避のために奔走しています。
 このとき、新規領土が奴隷州になることに反対して、民主党を
離党する人は多くなっていたのです。
            ──[孤立主義化する米国/072]

≪画像および関連情報≫
 ●奴隷解放の目的は何か
  ───────────────────────────
   高校の世界史では、19世紀半ばのアメリカ合衆国におけ
  る奴隷制問題を、「奴隷制を廃止したい北部とそれを維持し
  たい南部の対立」として説明します。またその具体的な対立
  点として、第一に、北部が推奨する保護貿易と南部が主張す
  る自由貿易の対立、第二に、西部開拓によって誕生した新し
  い州を、北部(自由州)と南部(奴隷州)のどちらに組み入
  れるかという勢力争い、さらに中央政府の権利を強める連邦
  主義(北部)と州の力を強める州権主義(南部)の対立など
  が挙げられています。
   これらは、政治や経済を中心にした解釈です。しかし、文
  化史的に見ると、「働くことへの価値観の変容」として奴隷
  制の問題をとらえることもできます。
   現在私たちは「働いて自立することはよいことであり、し
  なければならないことだ」という考え方に馴染んでいますが
  19世紀半ばのアメリカにおいて、その考え方は必ずしも一
  般化したのもではありませんでした。「働くこと」を奴隷に
  任せる南部では、労働が社会的に肯定される行為として認め
  られていなかったのです。他方で産業化が進み賃金労働者が
  増えていた北部では、各自の「自由な労働」を積極的に評価
  する社会になっていきました。奴隷制問題が深刻化する背景
  には、こうした南北間の「働くこと」をめぐる価値観の対立
  もあったのです。         http://bit.ly/2eU1BYK
  ───────────────────────────

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副島隆彦氏の新刊書
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2016年10月26日

●「共和党はどのように結成されたか」(EJ第4388号)

 米国の民主党といえばリベラルな党であり、人権にうるさい政
党であるという印象が少なくとも日本にはあります。したがって
そういう印象で民主党を考えると、きっと奴隷制度に反対したの
は民主党ではないかと思ってしまいます。これに関して共和党は
どちらかというと、こわもて(強面)で戦争好きな印象ですが、
日本にとっては共和党は「親日」というイメージが強いです。
 確かに太平洋戦争時、ときのルーズベルト大統領は民主党です
し、その大戦中の日系人の強制収容について公式に謝罪し、補償
を行ったのは共和党のブッシュ政権です。また、かつて安倍首相
が靖国神社に参拝したとき、オバマ政権は「失望」を表明しまし
たが、これについて自民党の萩生田光一衆院議員は次のように発
言しています。
─────────────────────────────
 共和党政権のときはこんな揚げ足をとったことはなかった。民
主党のオバマ政権だから言っている。
        ──自民党青年会議の話/萩生田光一衆院議員
                http://s.nikkei.com/1dZ6J12
─────────────────────────────
 しかしこれはいずれも間違いです。そのときどきの大統領の発
言やとった行動や、印象的な歴史的出来事だけで、そのように判
断ているに過ぎません。「民主党は反日」という考え方について
冷泉彰彦氏は、「ニーズウィーク/日本版」において、次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
 例えば、日本の文化について「クールジャパン」であるとして
高い関心を示す動きは、現在でもアメリカでは根強く続いていま
す。こうした異文化への関心、特にキリスト教的な善悪二元論と
は「異なる価値観」に興味と尊敬を示すというのは、アメリカの
場合は民主党カルチャーです。JFKが上杉鷹山の思想に私淑し
ていたとか、そのお嬢さんのキャロライン・ケネディ大使が『方
丈記』に象徴される日本の世界観に深く共感しているというよう
な例は、決して例外的な事象とは言えません。
 特に現在のオバマ政権の姿勢というのは、基本的に明確な親日
政権であり、多くの問題に関して「これ以上望みようのない」そ
して「ブレのない」姿勢で、軍事外交に関しても、二国間の文化
や社会的な交流にしても日本を重視していると言って過言ではな
いと思います。            http://bit.ly/1aFGYVW
─────────────────────────────
 既に述べているように、民主党はかつて連邦派といわれるフェ
デラリストの反対派のリパブリカン(民主共和党)なのです。こ
のリパブリカンは洲権派、すなわち、連邦政府よりも州の権利を
重視する一派です。
 そこで、北部で奴隷制廃止運動が盛り上がると、南部では奴隷
制を採用する(奴隷州となる)か採用しないか(自由州となる)
かは各州の裁量であるとの主張がなされ、奴隷制を正当化してい
たのです。
 もちろん民主党のなかにも奴隷制に反対する人がいて、それら
の人々は民主党を出て、ホイッグ党と自由土地党に分かれるので
す。彼らは奴隷制度には反対ですが、奴隷制度そのものを廃止し
ようというよりも、もうこれ以上奴隷州を増やさないという考え
方だったといえます。
 当時は、西部の開拓が進んでいて、米国の州は増加していった
のですが、今後なるべく奴隷州を増やさないように一定の歯止め
をかける「ミズーリ協定」と呼ばれる取り決めが、奴隷擁護派と
反奴隷制派の間に成立したのです。ミズーリを州にするさい、そ
こに奴隷制を認めるか否かをめぐり,連邦議会で北部と南部の議
員が対立し,その収拾策として成立したものです。
 しかし、1853年、大陸横断鉄道を敷くためにミズーリ州の
西方を准州にする構想が、イリノイ州選出の民主党上院議員であ
るスティーブン・ダグラスから提案されます。この准州は、18
20年のミズーリ協定によれば、当然自由州に編入されることに
なるので、南部の上院議員は激しく反対したのですが、鉄道敷設
に強い関心を持っていたダグラスは、この南部派の反対に対して
ネブラスカをも追加で准州とする案を出し、仮にカンサスが奴隷
州になっても、ネブラスカを自由州にして上院のバランスの維持
を可能にしようとしたのです。
 このダグラスによるこれらの法案はいわゆる「カンサス・ネブ
ラスカ法」として1854年5月に成立します。しかしこれは、
結局1820年のミズーリ協定を事実上破棄してしまうことを意
味し、そしてその結果、南部の奴隷州拡張を北部の方向へ推し進
めることを許し、実質的に南北の対立をかえって激化させる結果
になったのです。
 これに反発したのが、ほとんど消滅しかかっていたホイッグ党
と民主党を離党した自由土地党の人たちです。彼らは、1854
年3月20日、ウィスコンシン州リポンの学校校舎で、第1回の
「反ネブラスカ法」地方集会が開き、この場で新しい反奴隷制政
党を結成することに決定し、その政党の名を「共和党」と名付け
たのです。
 1854年7月6日、州規模の党大会がミシガン州ジャクソン
近郊で開催され、はじめて「共和党」の綱領を採択し、新規獲得
領土への奴隷制度拡大に反対することを宣言します。新政党の主
張は、準州における奴隷制度の問題だけに留まらず、米国の近代
化を大局的な目標に掲げたのです。
 西部の新規開拓領土については、奴隷所有者が好条件の土地を
買い上げるがままに任せるのではなく、奴隷制のない「自由」な
土地として農民に与えることを主張し、銀行を拡大し、鉄道や工
場の建設を推進しようとしたのです。
 共和党は、ミシガン、オハイオ、インディアナ、ニューイング
ランド、ニューヨークに発展、1855年頃には共和党は全国規
模組織になったのです。 ──[孤立主義化する米国/073]

≪画像および関連情報≫
 ●「ミズーリ協定」について/「世界史の窓」
  ───────────────────────────
   1819年段階で合衆国には22の州があり、11が奴隷
  州、11が自由州であった。北部では黒人奴隷制反対の感情
  が強まりつつあり、すでに禁止されたかあるいは急速に絶滅
  に向かっていたが、他方南部では綿花栽培が広まるにつれて
  奴隷制支持の感情が強まってきた。
   ワシントンやジェファーソンら古い南部出身の政治家は奴
  隷制度を害悪と見なしていたが、若い世代の南部人はそれを
  白人にとっても黒人にとっても、利益なものと考えるように
  なっていた。そのような情勢で、ミズーリが奴隷州として加
  入を申請してきたので、議会は大問題となり、北部諸州は激
  しく加入に反対した。結局妥協が成立しミズーリの加盟を認
  める代わりに、マサチューセッツ州からメイン州を自由州と
  して独立させることとし、均衡を保った。また合衆国がルイ
  ジアナとして獲得した地域でミズーリを除く北緯36度30
  分以北は奴隷制度が禁止された。
   その後奴隷制をめぐる対立はさらに激しくなり、1850
  年にカリフォルニアが州に昇格したときはそれを自由州とす
  るかわりに逃亡奴隷取締法を強化するという妥協(「185
  0年の妥協」と言われる)が成立したが、1854年のカン
  ザス=ネブラスカ法、また57年のドレッド=スコット判決
  での最高裁の見解などでミズーリ協定は否定される。
         ──「世界史の窓」 http://bit.ly/2eMAquc
  ───────────────────────────

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スティーブン・ダグラス上院議員
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2016年10月27日

●「映画『リンカーン』を観て考える」(EJ第4389号)

 16代大統領エイブラハム・リンカーン──おそらく米国の大
統領のなかで最も有名で、史上最高の最も尊敬されている大統領
の一人であり、新生共和党の初代の大統領です。
 リンカーンがはじめに注目されたのは、カンザス・ネブラスカ
法案に反対し、見事な雄弁と説得で民主党のスティーブン・ダグ
ラス議員に論戦を挑み、奴隷制度の反対を貫いたからです。
 共和党が結成され、リンカーンがみるみる頭角を現すのを見て
南部諸州は連邦離脱を宣言します。南部の民主党は、もともと州
権派であり、意見が合わなければ、離脱するという意思は強かっ
たのです。奴隷制度は彼らにとって不可欠なものであったからで
す。南北戦争はそのために起きたのです。
 ところで、リンカーンといえば、2013年劇場公開のアメリ
カ合衆国の伝記戦争映画があります。ハリウッドの巨匠、スピル
パーク監督の作品です。
─────────────────────────────
  映画『リンカーン』/スティーブン・スピルバーク監督
          主演/ダニエル・デイ=ルイスを主演
             予告編 http://bit.ly/2eN9HgS
─────────────────────────────
 この映画については、安倍首相も観て、リンカーンの奴隷制度
廃止を実現する「合衆国憲法修正第13条」の可決に奮闘するリ
ンカーンの姿に自分を重ね合わせたようです。これについては、
≪画像および関連情報≫に作家の阿川尚之氏のコメントを紹介し
てあります。
 この映画のあらすじは、次の通りです。ライブトアのサイトか
ら引用します。
─────────────────────────────
 1865年1月。大統領再選を果たしたリンカーンは大きな苦
境に立たされていた。自らの夢である「奴隷解放」の賛否を巡っ
て起こった国を二分する南北戦争は4年目に突入。“すべての人
間に本当の自由を”という理想に突き進む中で、多くの若い命が
失われていく。悲願を実現するためには、憲法修正を議会で成立
させねばならない。なりふり構わぬ政治工作を仕掛けるリンカー
ンだったが、戦争の長期化の影響で形勢は極めて不利。しかも法
案を通すためには、あと“20票”も足りないのだ。
 一方、長引く戦争はリンカーンの息子ロバートまでも戦場へと
駆り立てた。すでに2人の息子を亡くしていた母メアリーの反対
を押し切り、ロバートは軍に入隊。息子に反発され、妻からは叱
責を浴び、一国の指導者たるリンカーンは、政治家としての手腕
問われるだけでなく、父親としても大きな試練に直面していくの
だった・・・。本当の「自由」か、愛する「家族」か、一人の人
間としてリンカーンが下した究極の決断とは――?史上“最も愛
された大統領”リンカーンの知られざる“真実の物語”が、いま
明かされる。             http://bit.ly/2eEgUB0
─────────────────────────────
 リンカーンは奴隷制度反対論者なのですが、奴隷州が増えて行
くことに危機感を持ったのです。なぜなら、これが進むと、アメ
リカという国家が二分してしまうからです。この国家分裂回避こ
そリンカーンの狙いだったのです。映画『リンカーン』にはそれ
が描かれています。
 実はこの映画には原作があります。ピューリッツァー賞を受賞
している歴史家ドリス・カーンズ・グットウィンによる『リンカ
ーン』(中央公論新社刊)です。ここに描かれているのは、奴隷
廃止法案(「合衆国憲法修正第13条」)を成立させるためのあ
らゆる権謀術数工作です。
 例えば、大統領に当選後、リンカーンは選挙時の政敵だった4
人をそっくり主要閣僚に抜擢する奇手を使うなど、国政にとって
有能と判断すれば、リンカーンの失脚を謀略した財務長官でさえ
最高裁判所長官に任命したほどです。法案を成立させるためには
裏取引や根回しも含めてあらゆる手を使っている様子なども描か
れています。そして、リンカーンは南北戦争という未曾有の国難
を乗り切り、目的を果たしています。
 映画『リンカーン』は、このドリス・カーンズ・グットウィン
の原作を基にしているので、南北戦争の戦争シーンを期待してこ
の映画を観て、面白くなかったという批評もネットにはたくさん
出ています。
 リンカーンには、「ゲティスバーク演説」という有名な演説が
あります。ゲティスバークは南北戦争の激戦地です。この演説は
南北戦争での戦死者のための3分ほどの追悼演説なのですが、そ
のなかに、なぜ「人民の人民による人民のための政治」と言葉が
必要だったのかについて、冷泉彰彦氏は自著で次のように述べて
います。
─────────────────────────────
 どうして追悼の演説に「人民の人民による人民のための政治」
という一句を入れなくてはならなかったのかというと、その意味
合いは「諸君の死はムダではない。諸君はエスタブリッシュメン
トのために死んだのではなく、全員のために死んだのであり、諸
君が守ったアメリカ合衆国は一部の人間のための存在ではない」
というメッセージがどうしても必要だったからだ。
 戦争は南部社会の破壊だけでなく、北部においても甚大な被害
をもたらすことになった。その犠牲が「一部のエスタブリッシュ
メントのため」ということでは、とうてい国は治まらず、精神的
なスローガンとしての「人民の政治」という理念がどうしても必
要だった。この演説が偉大とされるのにはそうした背景がある。
っまり「ポピュリズム」を暴走させないという意識が計算されて
いるからであって、単に格好の良い民主主義のスローガンを思い
ついたからではない。   ──冷泉彰彦著/日本経済新聞社刊
          『民主党のアメリカ/共和党のアメリカ』
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/074]

≪画像および関連情報≫
 ●映画『リンカーン』と日米憲法改正比較/阿川尚之氏
  ───────────────────────────
   しばらく前に安倍晋三首相が都内で映画『リンカーン』を
  鑑賞されたそうだ。1865年1月、リンカーン大統領がい
  かにして反対派の強い抵抗を抑え、議会下院での憲法修正第
  13条可決を実現し、恒久的な奴隷制度廃止に道を開いたか
  を描く、スピルバーグ監督渾身の作である。
   首相は鑑賞後に記者団から感想を問われ、「常に指導者は
  難しい判断をしなければいけないということだ」と語ったと
  いう。日本国憲法第96条の改正によって、まず憲法が定め
  る改正手続きそのものを変え、それによって将来憲法の個別
  条項改正を実現させたい。そう考える安倍首相は、あらゆる
  政治手段に訴えて憲法修正実現をめざすリンカーン大統領の
  苦心と苦悩に共感したのだろう。メディアはそうコメントし
  た。しかしこのニュースには、映画『リンカーン』で取り上
  げられた修正第13条可決について、総理もメディアも触れ
  なかったことがいくつかある。
   第1に、下院による修正第13条可決には、3分の2の賛
  成が必要であった。合衆国憲法第5条は、議会は上下両院そ
  れぞれ3分の2の賛成によって憲法修正(改正)を提案する
  と定める。この規定は1788年にアメリカ憲法が発効して
  以来、一度も変わっていない。アメリカ憲法には他にも、条
  約の批准や最高裁判事任命の承認には議会上院の3分の2の
  賛成を必要とするなど、同じような規定がいくつかある。
   憲法96条改正を唱える人々の一部には、改正の発議・提
  案に衆参両院それぞれ総議員3分の2の賛成を必要とする現
  在の規定は厳しすぎて実質上改憲を不可能にするとの議論が
  あるが、アメリカ憲法と日本憲法の提案要件はこのとおり同
  じである。            http://bit.ly/2f5zXZd
  ───────────────────────────

映画『リンカーン』.jpg
映画『リンカーン』
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2016年10月28日

●「リンカーン暗殺には『謎』がある」(EJ第4390号)

 1861年4月12日に開始された南北戦争は1865年4月
9日に終了しています。この米国人同士の戦争に4年の歳月がか
かっているのです。南北戦争は、1864年4月から後に大統領
になるユリシーズ・グラント将軍が総司令官に就任して総指揮を
執るようになってから目に見えて戦況は北軍に優勢になり、18
65年4月に南部の首都リッチモンドを陥落させたことによって
戦争は終結したのです。
 しかし、戦争終結の5日後にリンカーン大統領は暗殺されてし
まうのです。実はこのリンカーン大統領暗殺事件は多くの謎に包
まれています。そこでリンカーンの話が出たところで、この「暗
殺の謎」について書いてみることにします。
 リンカーンは、戦争が終結した5日後のことですが、北軍総司
令官のグラント将軍と芝居を観に行く約束をしていたのです。こ
の日はグラント将軍がワシントンに帰還してくることになってい
たので、そこで戦勝の慰労を兼ねて劇場に行く約束をしていたの
です。ところが、ここでおかしなことが起こったのです。それは
次の2つの突然の変更です。
─────────────────────────────
     1.当日になって劇場が変更になったこと
     2.グラント将軍が誘いを断ってきたこと
─────────────────────────────
 「1」は、劇場の変更です。
 もともとは、グローバー劇場に行くことになっていたのですが
当日になって急遽フォード劇場に変更になったのです。劇場が変
更になれば、当然芝居の演目も変わることになるので、そんなこ
とは普通は起こり得ないことです。
 もちろんリンカーン自身が変更したのではなく、側近の誰かが
変更したのですが、誰がなぜ変更したかについては、いまもって
わかっていないのです。
 「2」は、同行者の変更です。
 本当はグラント将軍の慰労だったのです。したがって、本人と
事前に連絡を取り、将軍も承諾していたのです。大統領からの誘
いであり、よほどの理由がなければ断らないはずです。まして当
日になって断るなどということは、本人が急病にでもならない限
り、あり得ないことです。
 ところがそのあり得ないことが起きたのです。当日の朝、大統
領を中心に、ホワイトハウスで閣議が行われ、グラント将軍も出
席しています。もし、グラント将軍が当日に観劇に行けないので
あれば、真っ先に大統領にそのことを告げるはずです。
 しかし、グラント将軍はそうしていないのです。つまり、閣議
の始まる前までは大統領と観劇に行く予定だったのです。しかし
閣議が終わったとき、使いの者が持ってきたメモを見て、その場
で大統領にキャンセルしています。究極のドタキャンです。その
メモが誰からのものであり、何が書いてあったのかについては、
いまもってわかっていないのです。
 リンカーンは、単に自分の楽しみのために観劇をするつもりは
なかったのです。何よりも戦争が勝利で終結したことを国民に感
じてもらうことにあったのです。そのためには、大統領は総司令
官のグラント将軍を帯同する必要があったのです。そんなことは
グラント将軍はよくわかっていたはずですが、それを当日に自分
の都合でキャンセルするには、よほどのことがメモに書かれてい
たものと思われます。
 リンカーン大統領は、グラント将軍が行けなくなったので、代
わりの同行者について、エドウィン・スタントン陸軍長官に相談
しているのです。
─────────────────────────────
  今夜、エッケルト少佐を貸してくれないか。一緒に劇場に
  行って欲しいのだが・・・。   ──リンカーン大統領
─────────────────────────────
 エッケルト少佐とはスタントン陸軍長官の主席副官です。しか
し、スタントン長官は、これを重要な仕事があるという理由で即
座に断っています。非常に非協力な態度です。
 そこでリンカーン大統領は、若いラスボーン少佐に直接声をか
け、やっと了解をとったのです。これによって、フォード劇場に
行くメンバーは、リンカーン大統領夫妻とラスボーン少佐とその
婚約者であるクララ・ハリスの4人ということになったのです。
 1865年4月14日、20時10分頃、4人は馬車に乗って
フォード劇場に出発したのです。劇場には、20時30分に到着
し、4人は劇場に入り、2階のボックス席に案内されたのです。
 芝居ははじまっていたのですが、観客は総立ちで出迎え、俳優
たちも一時芝居を中断して大統領一行を迎えたといいます。その
ときの芝居の演目は次のものといわれます。
─────────────────────────────
   「われらがアメリカのいとこ」/Our American Cousin
─────────────────────────────
 ボックス席は2つ用意されていたのです。2階の7号室と8号
室です。2階のボックス席はもっとたくさんあるのですが、劇場
側はそれ以外は「満席」といっていたのです。しかし、これは事
実と異なります。実際には7号室と8号室以外はすべて空席だっ
たからです。2組みのカップルのボックス席は次のように割り当
てられたのです。
─────────────────────────────
   7号室 ・・・      リンカーン大統領夫妻
   8号室 ・・・ ラスポーン少佐とクララ・ハリス
─────────────────────────────
 重要なことがあります。ボックス席は内鍵がかかりますが、8
号室は鍵が壊れていたといいます。つまり、劇場側は、大統領夫
妻をわざわざ鍵の壊れている8号室に案内したのです。それに加
えて大統領夫妻の警備にも大きな問題があったのです。来週に詳
しく説明します。    ──[孤立主義化する米国/075]

≪画像および関連情報≫
 ●リンカーンはユダヤの金融制度に挑戦して暗殺された
  ───────────────────────────
   当初ロスチャイルド家は、北側(アメリカ南北戦争)には
  戦争を遂行するための金は一銭も渡せないという原案を発表
  していた。リンカーン大統領は、戦争を行うための金をニュ
  ーヨークで借りることができなかった。しかし彼はこの拒絶
  にひるまず、緑色の法定紙幣三億四六〇〇万ドルを発行して
  銀行家どもを狼狽させ、そして北軍の装備を整えた。この行
  為により彼は、憲法にのっとった最初の大統領、つまり国家
  主権という原則を最初に行使した大統領になったのだ。もし
  これだけの紙幣を銀行家が発行したとしたら、結果的には利
  子で一一〇億ドルも儲けることになっただろう。
   明らかに、リンカーンの行為によって銀行家たちは妨害を
  受けた。ロスチャイルドの息がかかっている新聞「ロンドン
  ・タイムズ」は、次のようなコメントを出している。「もし
  北米共和国ではじまったこの有害な財政政策が継続されて定
  着するようなことにでもなったら、そのさいには、北米共和
  国政府はコストなしで自国通貨を供給することになる。過去
  の負債を全額支払い、将来は負債なしでやっていくことにな
  る。商業活動に必要な通貨を、すべて所有するようになるの
  だ。世界の歴史にも先例のない繁栄がもたらされるだろう。
  あらゆる国の頭脳も富も、北アメリカに殺到するだろう。こ
  んな政府は叩きつぶしてしまわなければ、世界中の君主国が
  反対にやられてしまうことになる」。
                   http://amba.to/2eT57Pq
  ───────────────────────────

エイブラハム・リンカーン16代米大統領.jpg
エイブラハム・リンカーン16代米大統領
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2016年10月31日

●「暗殺できる状況を作ったのは誰か」(EJ第4391号)

 1865年4月14日、リンカーン夫妻、ラスボーン少佐と婚
約者は、フォード劇場の2階のボックス席に案内されます。ボッ
クス席は2つ用意されており、7号室にはリンカーン夫妻、8号
室にはラスボーン少佐のカップルが通されたのです。
 重要なのは、ボックス席は内鍵がかかるようになっていたので
すが、リンカーン夫妻が案内された7号室の鍵は壊れていたこと
です。おそらく犯人はわざと壊しておいたものと思われます。
 そもそも劇場が当日になって変更され、予定していた同行者が
キャンセル、そしてわざわざ鍵の壊れたボックス席に案内される
──これはどのように考えても暗殺者が可能な限り暗殺しやすい
状況を作り出そうとしていたとしか思えないのです。
 さらにお粗末なのは大統領の警備です。いうまでもなく、大統
領は最重人物であり、その警備は最も厳重であるべきです。とこ
ろが大統領の警備はジョン・パーカーという警察官が一人配置さ
れただけなのです。南北戦争の終わった直後のことであり、もっ
と厳重な警備体制が敷かれてしかるべきです。
 しかも、このジョン・パーカーという警察官は、日頃から勤務
態度は悪く、勤務中でも酒を飲んだり、たいした理由もなく拳銃
を発砲したり、上司に反抗したりと、札つきのワルの警察官であ
り、大統領の警備役としては最もふさわしくない人物だったので
す。どうして、このような警察官が大統領の警備役として任命さ
れたのでしょうか。
 実際にパーカーが大統領のボックス席を警備していたのは、ほ
んの数分、すぐに持ち場を離れて、2階の特等席に座って芝居を
観ていたかと思うと、すぐに劇場を離れ、外のバーで酒を飲んで
おり、まったく大統領を警備していないのです。ところが、不思
議なことにパーカーは、大統領が暗殺されたのにもかかわらず、
何の罰も受けていないのです。
 芝居が佳境に入った午後10時13分になったときです。ある
一人の男が大統領のボックス席のドアを開けて忍び込み、大統領
の背後に接近し、至近距離から大統領の後頭部めがけてに拳銃を
発射したのです。それは、男優のセリフに大きな笑い声が劇場中
に巻き起こった瞬間のことだったといいます。
 犯人が拳銃を発射した時間にはもうひとつ説があります。午後
11時17分という説です。昔の事件ではあるものの、一国の大
統領が殺害される一大事件であり、多くの目撃者がいるのに、犯
行時刻が1時間も違うもうひとつの説があるのはヘンな話です。
 この暗殺者は、ジョン・ウィルクス・ブースという俳優である
ことがわかっています。南軍の一員としてリンカーン大統領の北
軍と戦っており、その恨みということになっていますが、この暗
殺は単独犯行ではとうていできるものではなく、大きな組織が関
わっていると考えられます。
 大統領暗殺の状況について、ウィキペディアは次のように書い
ています。
─────────────────────────────
 ブースは、大統領の背後に近づいて、後頭部めがけて、デリン
ジャーピストルで銃弾を発射した。撃たれた大統領はイスに座っ
たまま、前のめりになった。これに気づいたラスボーン少佐は、
すぐさまブースに飛びかかったが、ブースは手にもっていたナイ
フを振り上げてラスボーンめがけて切りつけた。
 一瞬ひるんだラスボーンは、舞台に飛び降りようとするブース
を取り押さえようとした。ブースは手すりを超えて舞台に飛び降
りたが、かかとについた拍車が飾りの旗にひっかかって足をとら
れた。不安定な姿勢ながらなんとか舞台に飛び降りたブースはナ
イフをかかげ、観客に向かって、「シク・センペル・ティラニス
(ラテン語:暴君はかくのごとし)」と叫んだ。これはヴァージ
ニア州のモットーであった。このとき、彼が「南部は復讐を果た
した!」とも叫んだという証言もある。ブースはすぐにきびすを
返して舞台の裏手に出て、劇場の裏口から待たせてあった馬にま
たがった。観客の中でこれをすぐに追いかけた者もいたが、ブー
スは逃げ去った後だった。       http://bit.ly/1QP0yFC
─────────────────────────────
 リンカーンは即死ではなかったのです。大統領は病院に運ばれ
外科医の懸命な手当ても空しく、翌日の午前7時22分に息を引
き取っています。
 この暗殺事件の捜査の指揮をとったのは、陸軍長官のエドウィ
ン・スタントンです。ところがスタントの捜査は信じられないほ
どひどいものであったのです。彼は、犯人のブースが捕まらない
ようにむしろいろいろ捜査を妨害したのです。2つの大きな捜査
ミスがあります。
─────────────────────────────
 1.スタントンは犯人がブースであることを認めず、見当違
   いの方向を捜査していること
 2.ブースの手配書の写真を間違えて別の人物の写真を掲載
   して、逃亡を助けていること
─────────────────────────────
 「1」の捜査ミスについて述べます。
 スタントンは、犯人がブースであることをなかなか認めず、見
当違いの方向を探しています。事件は劇場で起きており、目撃者
は多数おり、観客のなかには俳優としてのバースの顔を知ってい
る者もいたのです。また、ブースが逃げた方向も南方面であると
証言する者もいたのに、スタントンはそれらの証言を信用せず、
逃げた方向と正反対の北方面を捜査するなど無駄な時間を過ごし
ています。スタントンが犯人をバースと認めたのは事件が起きて
から5時間も経過した後だったのです。
 「2」の捜査ミスについて述べます。
 手配書の写真を間違えるのは、あまりにも初歩的な捜査ミスで
あるといえます。それは、スタントンがなぜか犯人のブースの逃
亡を意図的に助けているとしか思えないのです。
            ──[孤立主義化する米国/076]

≪画像および関連情報≫
 ●リンカーン暗殺事件と犯人の末路
  ───────────────────────────
   今回は、第16代合衆国大統領の暗殺事件と、その犯人に
  関して語ります。とくに興味深いのが後者で、定説は追い詰
  められた農家の納屋で命を絶ったとされていますが、実はそ
  うではなかったのです。
   1865年4月14日、エイブラハム・リンカーンは奥方
  を伴い、ワシントンのフォード劇場で演劇を観賞します。ボ
  ックス席には、南北戦争の功労者であるグラント将軍とその
  奥方が招待されていましたが、この日、夫妻は急用と称して
  フィラデイフィアへ行きました。絶対的であるはずの、大統
  領の招待を断ったのです。また、彼らの代わりに招待された
  陸軍の高官も、それに応じませんでした。この経緯が現在で
  も尚、陰謀説が囁かれる要因です。
   そして、10時20分。役者の名演技が観客の目を舞台に
  惹きつけていたとき、リンカーンは背後のおよそ1メートル
  という至近距離から銃弾を受けました。ちなみにそのとき、
  大統領警護の警察官はなぜかひとりもリンカーンの周りにい
  なかったそうです。犯人は役者のJ・W・ブースという男性
  で、劇場から逃走し12日間逃げ回ったあげく、バージニア
  州の農家の納屋で警察隊に囲まれ、自ら命を絶った・・・と
  されております。         http://bit.ly/2eX5oRr
  ───────────────────────────

エドウィン・スタントン陸軍長官.jpg
エドウィン・スタントン陸軍長官 
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2016年11月01日

●「9人のリンカーン暗殺事件共犯者」(EJ第4392号)

 リンカーンが暗殺されたことを受けて、陸軍長官エドウィン・
スタントンの下に、大規模な軍捜索隊──第16騎兵連隊基幹が
特別に編成されています。コンガー大佐とベーカー中尉を指揮官
として、そこにドハティ中尉を副官として加えた将校3名、下士
官・兵が26名、合計29名の部隊です。
 事件から12日後の4月25日から26日の早朝にかけて、ブ
ースの逃亡を手助けした元南軍兵士ほかの証言から、ブースらの
潜伏先──ある農場の納屋にブースらが潜んでいることを捜索隊
は突き止めたのです。
 その納屋にリンカーンの殺害犯ブースをはじめとして数人の共
犯者が潜んでおり、銃撃戦の結果、ブースは射殺されたのです。
リンカーン暗殺事件の犯人と協力者とされる9名が逮捕され、軍
法会議にかけられたのです。その審理は7週間に及び、366名
の証人が喚問されています。そして、1865年7月5日に次の
ような判決が下されています。
─────────────────────────────
 <絞首刑>
  ・デイヴッド・ヘロルド、ルイス・パウエル、ジョージ・ア
   ツェロット、メアリー・サラット
 <終身刑>
  ・マイケル・オローリン、サミュエル・アーノルド、サミュ
   エル・マッド
 <懲役6年>
  ・エドマン・スパングラー
 <無罪>
  ・ジョン・サラット(メアリー・サラットの息子)
─────────────────────────────
 ところが、この事件はこれで終わりではなかったのです。射殺
されたはずのバースが実は別人で、しかもその遺体は陸軍長官ス
タントンの指示によって、ある秘密の場所に埋葬され、その場所
については明かすことはできないとスタントンは言明します。ス
タントン長官は、なぜ秘密裏に埋葬したのか、なぜ場所を明かせ
ないのかについて次のように釈明しています。
─────────────────────────────
 ジョン・ウィルクス・ブースが、南部の人たちの間で、リンカ
ーン大統領を暗殺した英雄(ヒーロー)になることを防ぐためで
ある。         ──エドウィン・スタントン陸軍長官
─────────────────────────────
 いかに最高指揮官であるとはいえ、大統領暗殺犯の遺体をろく
に捜査もせずに秘密裏に埋葬するなど、絶対にやってはならない
ことです。スタントン長官は、何らかの事情でバースをはじめと
する暗殺隊と通じていて、リンカーン暗殺に加担している可能性
が濃厚です。そのため、スタントンは、バースであるとしている
遺体が本当はバースではないことを知られたくなかったものと思
われます。
 スタントンについての疑惑は多くあります。大統領暗殺を成功
させるために、劇場を変更し、鍵が故障しているブースに大統領
を案内させ、警備をわざと手薄にする。このようなことは陸軍長
官というスタントンの地位なくしてできることではないのです。
 1867年になって、当時の捜索隊指揮官を務めたベイカー氏
は、上梓した『諜報機関の歴史』という書籍のなかで、スタント
ン長官に指示されたバースとされる遺体の埋葬先を旧監獄の地下
監房の床の下に埋めたことを暴露します。捜査機関は直ちにその
場所の捜査を行い、遺体を発見しますが、その遺体がバースであ
るかどうかは判定できなかったのです。
 さらにスタントンはその遺体のポケットに入っていたブースの
日記を入手していたのですが、彼はそれを隠蔽していたのです。
軍法会議で、容疑者の証言でそれが明らかになると、スタントン
は一転してその存在を認め、ブースの日記を証拠として提出した
のです。
 ところが、その日記は、リンカーン暗殺当日前後の期間に相当
する24ページ分が破り取られており、裁判の証拠品としては役
に立たない代物になっていたのです。そもそもこの裁判は一般裁
判で行われるべきものなのに、軍法会議になったのもスタントン
長官の強い要請があったからといわれています。一般裁判と違い
軍法会議は、検事も弁護士もすべて軍人であり、軍の管理下にあ
るので、軍の高官の意見に影響を受ける可能性大です。
 このようにスタントン長官は、最高指揮官でありながら、意図
的にバースの逮捕を遅らせ、遺体を隠したり、証拠を隠蔽するな
ど多くの疑惑に包まれているものの、誰も彼を訴追することはで
きなかったのです。なお、スタントンは、リンカーンの副大統領
をしていたアンドリュー・ジョンソン17代大統領の下でも陸軍
長官を務めているのです。
 リンカーンが暗殺される半日以上前に、ワシントンD.C.から
遠く離れたミネソタ州のセント・ジョセフという小さな村で、次
のような奇怪な噂が広がったのです。
─────────────────────────────
     リンカーン大統領が暗殺されたらしい!
─────────────────────────────
 この噂は、ニューハンプシャー州にまで本当のニュースのよう
に広がり、ニューヨーク州ミドルタウンの地元新聞「ホイッグ・
プレス」の記事になったのです。もちろん事実でないことはすぐ
分かったのですが、リンカーン大統領の耳にも入ったのです。
 本来であれば、たとえ噂であってもこのような事態になれば、
大統領の側近はその日の夜の芝居見物を中止させるか、警備を厳
重にすべきですが、そのどちらもやっていないのです。流石にリ
ンカーンは部下に「本当は今晩はどこにも行きたくないのだが、
劇場や関係者に迷惑をかけるしね」といったといわれます。リン
カーンは、何となく身の危険を感じていたのです。
          ──[孤立主義化する米国/077]

≪画像および関連情報≫
 ●米国初の大統領暗殺の犠牲者、リンカーンの最後
  ───────────────────────────
   米国はどんなテロにも屈しない。それが9.11からの方
  針だ。だが、これの困った所は、例えばゲリラやテロが出る
  国に行く米国人にも通じる。だから誘拐されてもFBI、家
  族も一切の犯人との接触を禁じられている。唯一交渉人が交
  渉にあたれると言うことになる。そんな大国になった米国に
  は過去に大統領の暗殺という悲劇がある。
   有名な所ではJFKだが、噂によると今出回っている暗殺
  時の様子もカットが入っており、事実が報道されていないと
  いう話もある。そのJFKより先、暗殺されたエイブラハム
  ・リンカーンがいる。米国で初めて暗殺された大統領でもあ
  る。「奴隷解放の父」と呼ばれている彼だが、最初から奴隷
  に対して特別の思想を持っていたわけではなかった。彼の成
  長過程で育まれて行ったもののようだ。それほど、白人と黒
  人と言うのは米国では違う人種として固定観念が定着してい
  たのだろう。
   この時代はもちろん1861年代だから、テレビもない。
  映像がない。やっと写真を撮るカメラが普及し始めたばかり
  の時代だ。と言っても今のように簡単に撮れたわけではなく
  長い時間がかかった。たいがいのリンカーンの写真が気難し
  顔をしているのは、撮影に時間がかかり過ぎたせいだと言わ
  れている。本来の彼はもっと陽気な人間だったらしい。
                   http://bit.ly/2e7Da7W
  ───────────────────────────

刑が執行された旧アーセナルの刑務所.jpg
刑が執行された旧アーセナルの刑務所
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2016年11月02日

●「メール問題再捜査の選挙への影響」(EJ第4393号)

 今回は、米大統領選の状況にやや変化が生じているので、この
問題を取り上げます。やはり、「オクトーバー・サプライズ」と
いうべき事態が起こったようです。それは、FBI(米連邦捜査
局)がクリントン氏の私用メール問題に関する捜査を再開させた
ことです。
─────────────────────────────
 米連邦捜査局(FBI)は28日、民主党大統領候補のクリン
トン氏(69)が、国務長官時代に私用メールアドレスを使って
いた問題で、新たなメールが見つかったとして、捜査を再開した
ことを明らかにした。投票日が11日後に迫るなか、大統領選で
優勢のクリントン氏にとって、打撃となる可能性もある。
 FBIのコミー長官は同日、米議会あてに送った書簡で、捜査
チームが新たに「捜査に関連すると見られるメールを見つけた」
と報告。「FBIが適切な捜査を行うことに合意した」として、
捜査を再開したことを明らかにした。ただ、捜査にかかる時間や
致命的な内容が含まれている可能性があるのかなどについては現
段階で不明としている。    ──2016年10月29日付
       「朝日新聞デジタル」 http://huff.to/2epiBld
─────────────────────────────
 FBIのコミー長官は、現在は離党しているものの長く共和党
党員であり、それだけに大統領選挙直前になっての「捜査再開」
は賛否両論がありますが、いずれにしてもクリントン陣営に大打
撃を与えることは必至の情勢です。
 コミー長官は、このメール問題の公表に関し、次のような微妙
な表現をしています。
─────────────────────────────
 新たな捜査を公表した場合と、議会に知らせずに捜査を進め、
選挙後に重大な事実が見つかった場合の問題性を考慮して公表に
踏み切った。             ──FBIコミー長官
          2016年10月31日付、朝日新聞朝刊
─────────────────────────────
 この発言はいろいろ解釈できます。FBIを管轄する司法省内
では、選挙に影響を与えるとして「公表は避けるべき」という意
見が多かったのですが、コミー長官はあえて発表にこだわったと
いいます。長官の表現によると、捜索によって重大な事実が発見
される可能性を示唆しているようにもとれます。
 コミー長官の言葉には、もし公表しないで選挙が行われ、クリ
ントン氏が大統領になった後で、メール問題に重大な事実が出て
きた場合、FBIが公表しなかったことが問題になるというニュ
アンスがあるように感じます。
 問題は、このFBIの公表によって選挙の状況に影響が出てく
るかどうかです。30日に実施されたワシントンポスト、ABC
テレビの実施した世論調査によると、両者の支持率は次のように
1ポイント差になっています。23日の時点では、クリントン氏
が12ポイントリードしていたのですが、その差が1ポイントに
なったというのです。
─────────────────────────────
       ドナルド・トランプ ・・・ 45%
      ヒラリー・クリントン ・・・◎46%
─────────────────────────────
 しかし、大統領選の支持率調査は、メディアによって大きく異
なるので、「リアル・クリア・ポリティクス」(RCP)の総合
世論調査の20日時点と30日時点の調査を比較すると、次のよ
うになっています。
─────────────────────────────
                 30日     20日
  ドナルド・トランプ ・・ 41.6%   42.1%
 ヒラリー・クリントン ・・◎45.0%  ◎48.5%
─────────────────────────────
 これによると、クリントン氏は支持を下げてはいますが、トラ
ンプ氏の方も下げています。これは、FBIのメール問題の捜査
再開によって、状況が一変したというわけではないようです。し
かし、次のニュース(ヤフー・ニュース)もあります。
─────────────────────────────
 トランプ氏が大統領選を制するには絶対に負けられない州であ
るフロリダ州では、米紙ニューヨーク・タイムズとシエナ大学研
究所の共同世論調査でトランプ氏の支持率が46%と、クリント
ン氏の42%を上回った。前回はクリントン氏が1ポイントリー
ドしていた。 ──ヤフー・ニュース  http://bit.ly/2dTK7uQ
─────────────────────────────
 10月24日付のEJ第4386号に示したフロリダ州とオハ
イオ州の支持率を再現します。
─────────────────────────────
            トランプ   クリントン
     オハイオ ◎46.5%   46.0%
     フロリダ  43.8%  ◎47.4%
─────────────────────────────
 「オハイオ州とフロリダ州を制した者が大統領選を制す」とい
われていますが、10月21日の時点では、オハイオ州はトラン
プ氏がリードしているものの、フロリダ州では4ポイント差でク
リントン氏が優勢だったのです。それが上記ヤフー・ニュースで
はフロリダ州ではトランプ氏が逆転したと報道しています。
 そうであるとすると、オハイオ州とフロリダ州を制しつつある
トランプ氏が優勢ということになります。これに加えて今後メー
ル問題でさらに何かクリントン氏にとって不利な情報が出ると、
投票結果に致命的な打撃を与えることは確実です。
 いずれにしてもこの大統領選は最後まで「接戦」になることは
確実であり、クリントン氏の余裕ある勝利はとても望めない状況
です。トランプ氏にもクリントンシにも勝利の可能性がある状況
です。         ──[孤立主義化する米国/078]

≪画像および関連情報≫
 ●Eメール再捜査開始でもクリントン優勢は変わらず
  ───────────────────────────
   先週末の金曜日に突如、米連邦捜査局(FBI)が大統領
  選のヒラリー・クリントン候補の私用メール問題の捜査を再
  開すると発表した。これによりいわゆるリスク回避の円買い
  が強まり、上昇していたドル円はあっという間に105円半
  ばから104円半ばへと約1円も急落した(円高ドル安)。
  突然の発表に驚き、市場はトランプ大統領実現のリスクが再
  度高まったと受け止めたといえよう。
   ただ、FBIが議会に送った書簡をみると、「メールの重
  大性は判断できず、捜査にどれくらい時間がかかるか不明」
  という趣旨のことが述べられており、クリントン氏が不利益
  になる新たな証拠が発見されたというわけでもなさそうであ
  る。また、捜査には時間がかかるとみられ、大統領選まであ
  と10日ばかりしかないことから、これ以上選挙本番前に新
  たな材料が出る可能性は低い。
   一方、トランプ候補には女性へのセクハラ行動の証言者が
  さらに増えており、女性からの支持を大きく失っているため
  従来の支持率が回復する兆しはない。両者のスキャンダルや
  罵り合いで、史上最低の大統領選などと揶揄され、もはやど
  ちらがより最低ではないかを競う選挙になってきたといえよ
  う。               http://bit.ly/2flHvXC
  ───────────────────────────

コミー米FBI長官.jpg
コミー米FBI長官
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2016年11月04日

●「米大統領選と『テカムセの呪い』」(EJ第4394号)

 米大統領選まであと4日ですが、米国の大統領に関して「テカ
ムセの呪い」という伝説があるのをご存知でしょうか。
 アメリカ大陸の先住民はインディアンです。独立戦争後、アメ
リカ合衆国は、インディアンを虐殺し、彼らが支配していた土地
を奪って国土を広げていったのです。それは「西部劇」という映
画のかたちで米国開拓史として美化され、世界中の人々に伝えら
れましたが、実際には残虐きわまりない殺戮劇だったのです。
 インディアンには全般を束ねる指導者という概念は存在しませ
んでしたが、戦いの先頭に立って戦闘を指揮し、ときにはアメリ
カとの交渉役を務めた人物がいたのです。それがショーニー族首
長であるテカムセです。1811年に米軍は、ティペカヌー河と
ウォーバシュ河の合流点でインディアン連合軍を破っています。
このとき米軍を率いていたのは、ハリソンという将軍です。
 ハリソンは1812年にテームズ河の戦役でも、英国軍とイン
ディアンの連合軍を破り、この戦役でテカムセ首長は戦死したの
です。そのときハリソンはホイッグ党に所属する上院議員でした
が、政治的な実績はほとんどなかったのです。しかし、テカムセ
を葬った軍事的功績と知名度を買って、ホイッグ党の実力者たち
はハリソンを1840年の大統領選に出馬させたのです。「彼な
ら意のままに操れる」と考えたからです。ハリソンは首尾よく当
選し、1841年に9代米大統領に就任します。
 このハリソンが選挙に勝った1840年を起点として「テカム
セの呪い」は始まるのです。最初の犠牲者はなんとハリソン本人
だったのです。ハリソンは1841年3月4日に大統領に就任し
ちょうど1ヶ月後の4月4日に病死しています。大統領在任たっ
たの1ヶ月、あまりにも短いです。
 米国の大統領就任演説は少しでも多くの人々に聴いてもらうた
め、外部の広い会場で行われます。当日は冷え込みが厳しく、会
場では寒風が絶え間なく吹く日だったのです。そういう会場でハ
リソンは、コートも着ず、手袋もしないで1時間45分演説し、
風邪をひいて肺炎を併発し亡くなってしまったのです。それ以来
20年ごとの年代に選出される大統領はことごとく任期を全うす
ることなく、亡くなっているのです。
─────────────────────────────
   ★ 1840年  ウィリアム・H・ハリソン
       1841年 4月 4日/肺炎で死去
   ★ 1860年  エイブラハム・リンカーン
       1865年 4月14日/   暗殺
   ★ 1880年 ジェームズ・ガーフィールド
       1881年 7月 2日/   暗殺
   ★ 1900年  ウィリアム・マッキンリー
       1901年 9年14日/   暗殺
     1920年 ウォレン・G・ハーディング
       1923年 8月 2日/   病死
   ★ 1940年 フランクリン・ルーズベルト
       1945年 4月12日/   病死
     1960年    ジョン・F・ケネディ
       1963年11月22日/   暗殺
                   http://bit.ly/2feNxG7
─────────────────────────────
 米国の大統領は「1期4年2期まで」と決められています。上
記7人の大統領は、任期を全うできなかったことはいずれも共通
していますが、7人中5人は就任年に亡くなっているのです。★
印がそうです。
 もう少し詳しくいうと、ハリソンとガーフィールドは1期目の
就任年に、リンカーン、マッキンリー、ルーズベルトは2期目の
就任年に亡くなっています。しかも、7人中4人は暗殺されてい
るのです。かなり高い確率であるといえます。
 ジョン・F・ケネディの年度である1960年の20年後にあ
たる1980年に選出された大統領はドナルド・レーガンです。
レーガンは、1981年3月30日に暗殺されかかったものの、
未遂に終わり、2期8年の任期を満了しています。それ以来、こ
のテカムセの呪いは終了したといわれているのです。これについ
て、ウィキペディアは次のように書いています。
─────────────────────────────
 レーガンは1980年大統領に選出されたが直後の1981年
3月30日に暗殺未遂に遭いながらも、2期8年の任期を全うし
た。また、2000年に選出されたジョージ・W・ブッシュ大統
領も2期目の2005年5月10日にグルジアで演説中に手投げ
弾を投げ込まれたが不発に終わり、2期8年の任期を全うして現
在も存命中である。ブッシュ大統領はこの他にも2002年にプ
レッツェルを食べている最中に失神、こん倒し顔に傷を負うが窒
息は免れた。また、任期満了直前にイラク人記者に靴を投げつけ
られるもうまくよけて無傷であった(ブッシュの靴)。このため
いわゆる「テカムセの呪い」による大統領の不慮の死は単なる偶
然という結論になった。        http://bit.ly/2feNxG7
─────────────────────────────
 ウィキペディアは「テカムセの呪い」は単なる偶然と結論づけ
ていますが、本当にそうでしょうか。もし、この呪いがまだ生き
ているとすると、次に該当する年度は2020年──東京オリン
ピックの年になります。
 今年、2016年に選出される大統領は4日後に決まります。
トランプ候補かクリントン候補のいずれかです。どちらが大統領
に決まるにせよ、ひと騒動あると思います。何しろ2人ともまた
とないほどの不人気候補であり、2020年の大統領選で有力候
補が出馬すると、おそらくその2期目は勝てないと思われます。
いずれにせよ、2021年に就任する新大統領が「テカムセの呪
い」を受けるかどうかが注目されます。米国の大統領には、これ
以外にも不思議なことがたくさんあるのです。
            ──[孤立主義化する米国/079]

≪画像および関連情報≫
 ●アメリカ大統領を死に追いやるのは偶然か「呪い」か
  ───────────────────────────
   1840年のアメリカ大統領選挙で勝利したウィリアム・
  H・ハリソンは就任からわずか一月で病死する。そしてハリ
  ソンが大統領選挙に当選した1840年以降20で割り切れ
  る年に当選した大統領は任期途中で死亡することが続いた。
  人々はいつしかハリソンが1811年のティピカヌーの戦い
  で殺したインディアン、ショーニー族の酋長テカムセの呪い
  ではないかと噂するようになった。今回は、ハリソンからケ
  ネディまで7人の大統領が倒れたと言われる「テカムセの呪
  い」を考察したい。
   アメリカ大統領選挙は四年に一回行われる。アメリカ大統
  領は任期途中で辞任や死亡があっても副大統領が大統領職を
  前大統領の任期切れまで引き継ぎ、次の大統領選挙が行われ
  るので4年ごとに大統領選挙が必ず行われる仕組みになって
  いる。そして、1840年のハリソンから1960年当選の
  ケネディまで、20で割り切れる年に当選した大統領は任期
  途中で死亡しているのである。
   1840年当選 ウィリアム・H・ハリソン
   1860年当選 エイブラハム・リンカーン
   1880年当選 ジェームス・ガーフィールド
   1900年当選 ウィリアム・マッキンリー
   1920年当選 ウォレン・G・ハーディング
   1940年当選 フランクリン・ルーズベルト
   1960年当選 ジョン・F・ケネディ
   以上の7人の大統領が任期途中で死亡している。個々の大
  統領の死亡原因を見てみたい。  http://exci.to/2egnoEt
  ───────────────────────────

テカムセ首長.jpg
テカムセ首長
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2016年11月07日

●「ケネディはリンカーンの生れ変り」(EJ第4395号)

 米大統領選に関しては、「テカムセの呪い」だけでなく、もっ
と不思議なことがあります。それは、リンカーンとケネディとい
う2人の大統領の驚くべき類似点です。
 ごく大雑把に考えても、次の3つの類似点があります。しかし
これらは誰でも考えつくことです。
─────────────────────────────
 1.リンカーンとケネディはともにだれでも知っている米国
   の大統領であり、多くの人に敬愛されている。
 2.リンカーンとケネディはともに黒人の人権問題に対して
   真剣に取り組み、結果を遺した大統領である。
 3.リンカーンとケネディはともに任期の途中で国民の期待
   も空しく暗殺者の凶弾に倒れた大統領である。
─────────────────────────────
 詳細に調べてみると、リンカーンとケネディには驚くべき類似
点があります。それはけっして偶然の一致ということでは片付け
られない一致点であるといえます。
 まず、2人が下院議員に当選した年と大統領に選出された年に
は、次のように正確に100年の差があります。
─────────────────────────────
            下院議員に当選  大統領に選出
  リンカーン ・・・   1846年   1860年
   ケネディ ・・・   1946年   1960年
─────────────────────────────
 リンカーンは、ホイッグ党員として、1864年に下院議員に
選出され1期2年を務めています。ケネディは、その100年後
の1946年に下院議員のジェームズ・カーレイがボストン市長
になるため、民主党下院議員を辞職したことによるいわゆる補選
で勝利し、下院議員になっています。
 そしてリンカーンが大統領に選出された年は1860年であり
1861年3月4日から大統領になっています。これに対しケネ
ディは、リンカーンが大統領に選出された100年後の1960
年に大統領に選出され、1961年1月20日に大統領になって
いるのです。これは驚くべき一致です。
 リンカーンとケネディは、ともに暗殺されています。その暗殺
のされ方もとてもよく似ているのです。その主な類似点を上げる
と次の3つになります。
─────────────────────────────
    1.2人ともピストルで背後から撃たれている
    2.2人とも夫人の目の前で銃で撃たれている
    3.2人の暗殺はいずれも金曜日に起きている
─────────────────────────────
 暗殺に関してはまだ不思議なことがまだあります。リンカーン
が殺されたのはフォード劇場であり、ケネディが撃たれたのは、
リンカーン・コンチネンタルというフォード社が製造した車の上
であることです。
 それに、リンカーンには「ケネディ」という名前の秘書がおり
ケネディには「リンカーン」という名前の秘書がいたのです。ど
ちらの秘書も暗殺当日、大統領がその場所に行くことに反対を表
明していたといいます。ウソのような話ですが事実です。
 ちなみに、2人とも、死後に同名の空母が作られています。リ
ンカーンは「エイブラハム・リンカーン号」、ケネディは「ジョ
ン・F・ケネディ号」です。
 まだあります。2人の大統領の暗殺者は、リンカーンについて
はジョン・ウイリアム・ブース、ケネディについてはリー・ハー
ベイ・オズワルドですが、2人が生まれた年も100年違いであ
ることです。それに名前の文字数は同じです。
─────────────────────────────
    ◎John Wilkes Booth ・・ 1839年生まれ
    ◎Lee Harvey Oswald ・・ 1939年生まれ
─────────────────────────────
 米国では大統領が任期を全うできずに亡くなると、副大統領が
残りの任期を務めますが、その副大統領の名前は2人とも「ジョ
ンソン」であり、ファーストネームの文字数も同じ6文字です。
─────────────────────────────
    ◎Andrew Johnson アンドリュー・ジョンソン
    ◎Lyndon Johnson   リンドン・ジョンソン
─────────────────────────────
 類似点はまだあります。2人の副大統領の生まれた年が100
年違いなのです。アンドリュー・ジョンソンは1808年生まれ
であり、リンドン・ジョンソンは1908年生まれ、ちょうど、
100年違いです。そもそもリンカーンとケネディの副大統領の
名前が同じ「ジョンソン」であることも不思議なのです。しかし
これに関して「ウィキペディア」は「単なる都市伝説の類い」と
片付けています。
─────────────────────────────
 アメリカでは、テカムセの呪い、ケネディ家の呪いなどと結び
つけて語られることの多い話題で、オカルト系の書籍で題材とし
て取り上げられる場合も多い 。
 この話題が取り上げられるようになった背景には、ケネディ大
統領暗殺事件を検証したウォーレン委員会報告書の最終的な結論
が一般人には理解し難いもので、憶測も含めて様々な陰謀説が各
方面で囁かれ始めたことや、マルコムXやキング牧師、ロバート
・ケネディなどの暗殺事件が続発した当時の社会不安がある。
これらの社会不安と歴代大統領の中でも人気の高い2人を結び付
け、商業主義に利用した面も否定できない。何らかの因果関係を
見出そうとする人々がいるのも事実だが、都市伝説の類で単なる
偶然の一致とする説が一般的である。   ──ウィキペディア
                   http://bit.ly/2frEtfG
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/080]

≪画像および関連情報≫
 ●ナポレオンとヒトラーをつなぐ不可解な数字
  ───────────────────────────
   世の中には特定の人や物で、不思議な共通点や関連性があ
  ることあります。なかなか説明できないものが多く、単なる
  偶然、ごじつけですましているものも多い。今回は、こんな
  不思議な一致や共通点がある歴史上の有名人のお話です。
   ナポレオンとヒトラーはフランスとドイツの独裁者で、一
  時期には一大帝国を作り、近隣諸国を従えた歴史上の有名人
  です。ところがこの二人は129年の差で皇帝や総統になっ
  ています。また不思議なことに129という数字で二人は結
  ばれています。それでは、どのくらい129があるか見てみ
  ましょう。
  1.まずフランス革命が1789年でドイツ革命が1918
  年であり、その差129年です。
  2.ナポレオンがクーデターでフランスの政権を握ったのが
  1799年、ヒトラーのナチス党がドイツ議会に登場したの
  が1928年であり、その差129年です。
  3.ナポレオンがフランスで皇帝になったのが1804年。
  ヒトラーがドイツで総統になったのが1933年で、その差
  129年です。
  4.ナポレオンがオーストリアの挑戦に対し撃破したのが、
  1809年、ヒトラーがオーストリアを併合したのが、19
  38年で、その差129年。
  5.ナポレオンのロシア遠征が行われたのが1812年、ヒ
  トラーのソビエト侵攻が1941年で、その差129年で、
  両方とも冬季に敗北しているのも同じ。
                   http://bit.ly/2frFx3o
  ───────────────────────────

リンカーンとケネディ.jpg
リンカーンとケネディ
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2016年11月08日

●「米大統領選/結局どちらが勝つか」(EJ第4396号)

 本日は米国の大統領選挙の投票日です。泣いても笑っても、明
日の昼頃までに、次期米国大統領がトランプ氏かクリントン氏か
が決まります。
 選挙の終盤の10月28日、FBIによるクリントン氏の私用
メール再捜査の決定によって、トランプ氏が支持率で猛烈に追い
上げ、これまで一定のリードを保ってきたクリントン氏を急追し
ている──メディアはそのように報道しています。
 米国はメディアによって支持率の数字が大きく異なるので、そ
ういう世論調査を平均したRCP(リアル・クリア・ポリティク
ス)の最新調査と10月30日の支持率を比較してみます。
─────────────────────────────
               最新調査 10月30日
  ドナルド・トランプ ・・ 44.8%  41.6%
 ヒラリー・クリントン ・・◎46.6% ◎45.0%
─────────────────────────────
 これを見ると、いずれもクリントン氏が勝っていますが、10
月末には3・4ポイントあったトランプ氏との差が、最新調査で
は1・8ポイントに縮小しています。それでもまだクリントン氏
が優勢であることは変わっていないのです。
 ただ支持率の差が1ポイントになってくると、どちらが勝って
も不思議ではないのです。2012年の大統領選挙で、ロムニー
氏に1ポイント差で負けていたオバマ氏が、得票率51・1%で
勝利しています。1ポイント差は誤差の範囲内です。
 しかし、選挙人の獲得予測に関して、6日の日本経済新聞は次
のように報道しています。
─────────────────────────────
 クリントン氏が支持率で10ポイント超離した際は、選挙人の
獲得予測も、全米51州・地区の選挙人(538人)の過半数を
超える270人を超えた。
 直近は、クリントン氏が216人に下方修正され、トランプ氏
は164人に追い上げる。4日発表の米CNNテレビの獲得予想
ではトランプ氏は200人の大台に乗せた。
         ──2016年11月6日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 米国の大統領選挙では、どんなことがあっても共和党ないし民
主党が勝つと決まっている州があります。そのような州では、事
実上選挙戦は行われないのです。したがって選挙は、支持率が競
り合っている「激戦州」で主として行われるのです。
 現在激戦が続いているのは、次の8つの州であり、その勝敗に
よって結果が決まると考えられます。()は選挙人の数です。
─────────────────────────────
 ≪トランプ氏がリードしている州≫
  1.ニューハンプシャー州(4人)
    ・クリントン氏を「1・6ポイントリード」
  2.オハイオ州(18人)
    ・クリントン氏を「3・3ポイントリード」
  3.アイオワ州(6人)
    ・クリントン氏を「2・4ポイントリード」
  4.ネバダ州(6人)
    ・クリントン氏を「2・0ポイントリード」
 ≪クリントン氏がリードしている州≫
  5.ペンシルベニア州(20人)
    ・トランプ氏を「2・6ポイントリード」
  6.フロリダ州(29人)
    ・トランプ氏を「1・2ポイントリード」
  7.コロラド州(9人)
    ・トランプ氏を「3・0ポイントリード」
 ≪支持が拮抗している州≫
  8.ノースカロライナ州(15人)
    ・両者拮抗
         ──2016年11月6日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 1ポイントのリードは逆転もあり得ると考えると、現在、トラ
ンプ氏がリードしているニューハンプシャー州、クリントン氏が
リードしているフロリダ州、両者が拮抗しているノースカロライ
ナ州の勝敗が重要なカギを握ります。
 激戦州8州からこれら3州を外して、他の5州で2ポイント以
上リードしている候補が勝利するとすれば、その選挙人の獲得数
は次のようになります。
─────────────────────────────
      トランプ30人VSクリントン29人
─────────────────────────────
 既にクリントン氏は選挙人を「216人」固めているといわれ
ます。したがって、もしクリントン氏がトランプ氏を2ポイント
以上離している州──ペンシルベニア州、コロラド州の2州で勝
つとすると、245人になります。過半数の270人まで、あと
25人足りない状況です。したがって、クリントン氏が現在トラ
ンプ氏を1・2ポイント差でリードしているフロリダ州で勝てば
大統領選を制することができます。
 しかし、トランプ氏が既に獲得している選挙人は164人であ
り、2ポイント以上リードしている洲を全て取っても、「194
人」で200人に届かず、フロリダ州でクリントン氏を逆転した
としても「223人」、270人に47人に足りない状況です。
拮抗しているノースカロナイナ州を取っても「238人」、それ
でも270人に38人足りない状況です。
 このように考えると、支持率調査や選挙人獲得予測の状況では
トランプ氏が追い上げたとしても、なおかつクリントン氏優勢の
状況は変わらないのです。しかし、トランプ氏には「隠れトラン
プ派」がおり、最終版で姿を現すといわれています。結果は予断
を許さない状況です。  ──[孤立主義化する米国/081]

≪画像および関連情報≫
 ●米大統領選/市場の勝者と敗者を予想/投票日サプライズ
  ───────────────────────────
   現代の米国史上、最も異例の大統領選が最終盤を迎える中
  世界の金融市場は現状維持という結果に賭けている。民主党
  の次期大統領の行動を共和党支配の新議会が引き続き制約す
  るというものだ。
   だが、米連邦捜査局(FBI)が民主党候補ヒラリー・ク
  リントン前国務長官の私用メール問題の再捜査を開始したと
  の発表を含め、10月中の一連のサプライズを踏まえると、
  11月8日の大統領・議会選投票日に生じ得るさらなるサプ
  ライズへの投資家の準備は不十分かもしれない。
   エバーコアISIのアナリストは10月30日付のリポー
  トで、クリントン氏の私用メール問題をめぐる論争の再燃が
  「大統領選に根本的な変化をもたらす公算は小さい」との分
  析を示した。最も大きなショックとなるのは共和党候補ドナ
  ルド・トランプ氏の勝利か、クリントン氏と民主党の大勝だ
  ろう。これらいずれの展開になっても、6月の英国民投票で
  の欧州連合(EU)離脱選択の場合と同様、投資家はリスク
  が高い株式や新興市場資産から逃避し、最も安全とされる政
  府債やドル、円に駆け込む可能性がある。一方で、両候補と
  も歳出拡大と減税を推進したい意向で、それは株価に強材料
  債券相場には弱材料となる。    http://bit.ly/2eAPttz
  ───────────────────────────

トランプかクリントンか/米大統領選.jpg
トランプかクリントンか/米大統領選
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2016年11月09日

●「なぜメール問題捜査を再開したか」(EJ第4397号)

 今朝のEJが届く時点では、米大統領選の結果は出ていないと
思います。この原稿は6日の午後に書いており、その時点では、
大統領選の結果を見通すことは困難です。しかし、今日中にはど
ちらかに決着がつくことは確かです。
 もし、ヒラリー・クリントン氏がトランプ氏を破り、次期大統
領に決定したとしても、FBIの捜査は確実に進展すると思われ
ます。ここで重要なのは、FBIのコミー長官が10月28日に
なって、なぜクリントン氏のメール問題を再捜査すると宣言した
かということです。FBIのコミー長官は、7月にメール問題に
ついて次のように述べて、訴追しないことを明言しています。
─────────────────────────────
  情報の扱いが極めて不注意だったが、訴追の必要はない
                 ──FBIコミー長官
─────────────────────────────
 このようにして、いったん捜査を終了したはずのメール問題を
コミーFBI長官は、大統領選の投票日直前になって捜査再開を
表明したのです。それが大統領選に何らかの影響を与えることは
十分承知のうえでの表明と思われます。
 オバマ米大統領は、コミーFBI長官のこのメール問題再捜査
表明に対して、次のように批判したのです。大統領がFBI長官
を批判するのは極めて異例なことです。
─────────────────────────────
 私たちには、結果についてほのめかしたり、不完全な情報に基
づいて捜査をしたりしないとの原則がある。 ──オバマ大統領
                   http://bit.ly/2fdgVfg
─────────────────────────────
 ところで、FBIはどのようにして、クリントン氏の新しい私
用メールを入手したのでしょうか。
 アンソニー・ウィーナーという元下院議員がいます。FBIは
このウィーナー元議員がわいせつなメールを未成年者に送りつけ
た容疑で議員のノートPCを押収したのです。この捜査自体はク
リントン氏には何の関係もないのです。
 押収したノートPCには、65万通に及ぶ電子メールが含まれ
ていたのですが、その多くは、ウィーナー元議員の別居中の妻で
クリントン氏側近のフーマ・アベディン氏のアカウントに属する
ものだったのです。
 フーマ・アベディン氏とは何者でしょうか。副島隆彦氏の本に
アベディン氏についての紹介があるので引用します。
─────────────────────────────
 ヒラリーの選挙戦を指揮しているのが、フーマ・アベディンと
いう女性だ。ヒラリーの側近中の側近である。このアベディンが
ヒラリーの選対副本部長だ。選対本部長はクリントン政権で首席
補佐官を務めたジョン・ボデスタである。
 このアベディンは両親がパキスタン人でイスラム教徒だ。アメ
リカ生まれだが、両親の仕事の関係でパキスタンに行って育って
18歳でアメリカに戻ってきた。彼女の母と兄がムスリム同胞団
に関係している。
 アべディンはヒラリーがファーストレディであった時から補佐
官を務めていた。また、ヒラリーが国務長官を務めていた時期の
ほぼすべての期間に補佐官だった。以上は古村治彦氏の情報であ
る。ヒラリーはこのアべディンを「2人目の娘」と呼んでいる。
しかし本当はヒラリーの愛人だとも噂されている。
                      ──副島隆彦著
      『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社
─────────────────────────────
 そもそもなぜメール問題がそれほど重要なのでしょうか。
 これは、ヒラリー・クリントン氏が国務長官の時代のリビアの
ベンガジ襲撃事件に深く関係するのです。これを理解するには、
リビアのカダフィ大佐という指導者が、どのような政治家であり
何をやったか、何をやろうとしていたかということについて知る
必要があります。
 このことについてEJでは、「現代は陰謀論の時代」のテーマ
のときに書いています。このテーマでは、いろいろなものを取り
上げましたが、リビア問題は次の部分で述べています。
─────────────────────────────
    ◎「現代は陰謀論の時代」
    2016年5月16日付、EJ第4276号
              http://bit.ly/27pt5HJ
        〜5月31日付、EJ第4287号
              http://bit.ly/1RGI98p
─────────────────────────────
 ここで考えてみるべきことがあります。冒頭でも述べたように
コミーFBI長官は、なぜあえて批判されることを覚悟してまで
一度「訴追せず」と判断したクリントン氏のメール問題を再捜査
すると宣言したかということです。
 もし、これが原因でクリントン氏が選挙戦に破れ、大統領にな
れなかったとし、もしメール問題が後で訴追に値しないというこ
とにでもなったら、コミー長官はどのようにして責任をとるので
しょうか。そういう意味でこれは、コミー長官にとって、きわめ
てリスクの高い決断であるといえます。
 しかし、新しく発見したメールにクリントン氏に関して犯罪に
値する問題があり、訴追するような事態になったら、どうなるで
しょうか。この場合、選挙の直前だからといって、再捜査を先延
ばしにしたら、コミー長官はもっと厳しく非難されることになる
のではないでしょうか。
 コミー長官は、そのあたりのことを考慮して再捜査に踏み切っ
たものと考えられます。それは、新しく発見されたクリントン氏
のメールは犯罪性が高いという確信を長官自身がもったからこそ
再捜査を宣言したのではないかという考え方です。
            ──[孤立主義化する米国/082]

≪画像および関連情報≫
 ●「隠れ支持者」はトランプ氏の秘密兵器になるか
  ───────────────────────────
   【11月5日AFP】8日に投票日を迎える米大統領選で
  共和党候補のドナルド・トランプ氏に投票すると公にするの
  を控えている「隠れた」支持者はどれほどいるだろうか。
   民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官との大接戦
  が予想される中、こうした「隠れ支持者」がトランプ氏の秘
  密兵器となり、結果を左右するかもしれない。
   ホワイトハウス前で取材に応じた退役軍人のトーマス・ハ
  ドソンさんは、期日前投票でトランプ氏に票を投じたことを
  気が進まない様子で認めた。いつもは共和党候補に投票する
  ことを「とても誇りに」感じているが、今回は「良心の呵責
  (かしゃく)」があると語った。
   重要なのはトランプ氏の隠れ支持者が、英国民投票が欧州
  連合離脱という結果に終わったのと同じような衝撃の選挙結
  果をもたらすことができるのかということだ。政治学者らは
  こうした予想外の選挙結果を「ブラッドリー効果」と呼ぶ。
  1982年のカリフォルニア知事選で、世論調査では大きく
  リードしていた黒人のトム・ブラッドリー元ロサンゼルス市
  長が敗れたことに由来する。有権者の多くは人種差別だと批
  判されることを恐れて、ライバルの白人候補に投票すると認
  めたがらなかったとみられている。 http://bit.ly/2fQbw1j
  ───────────────────────────

フーマ・アベディン/ヒラリーの側近.jpg
フーマ・アベディン/ヒラリーの側近
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2016年11月10日

●「大統領選勝敗に影響/メール問題」(EJ第4398号)

 現在、米国大統領選挙の開票が続いています。開票直後からト
ランプ氏がクリントン氏をリードし、12時20分に、ニューヨ
ーク・タイムズ紙は「80%の確率でトランプ氏勝利」と報道し
たのです。
 そしてそれから10分後に「オハイオ州でトランプ氏勝利」の
ニュースが流れたのです。「オハイオ州を制する者は大統領選を
制す」といわれており、これでトランプ氏の勝利の可能性は、か
なり高くなったといえます。
 さらに、午後1時になって、大票田のフロリダ州でトランプ氏
の勝利が伝えられると、トランプ氏のリードはさらに広がり、も
はやクリントン氏の逆転は困難な情勢になっています。選挙結果
は午後遅くなって判明しますが、大統領選については明日のEJ
で取り上げることにします。
 クリントン氏の票が意外に伸び悩んでいるのは、やはり投票日
直前の10月28日、FBIのコミー長官によるメール問題再捜
査の発表にあると思われます。なぜなら、それまではどの調査で
もクリントン氏が優勢であったからです。
 しかし、11月6日になって、コミー長官は「メール問題でク
リントンを訴追せず」と発表したのです。FBIに一体何があっ
たのでしょうか。
─────────────────────────────
 10月28日 ⇒ クリントン氏のメール問題の再捜査発表
 11月 6日 ⇒ メール問題でクリントン氏を訴追しない
─────────────────────────────
 実は、FBIが再捜査を発表する前のことですが、トランプ陣
営では次のような噂が広がっていたのです。
─────────────────────────────
 10月の終わりに「大きな爆弾」が炸裂し、クリントン陣営
 が吹っ飛ぶだろう。          ──トランプ陣営
─────────────────────────────
 そして実際に10月28日に、FBIのコミー長官はメール問
題の捜査再開を発表したのです。まさに「大きな爆弾」の炸裂そ
のものです。まさか、FBIの捜査の情報が事前に漏れていたこ
とはないと思いますが、その疑いは濃厚です。コミー長官は元共
和党員であることも疑われている要因ですが、コミー氏は既に党
からは距離を置いており、真面目な人でもあるので、そんなこと
をする人ではないという人が多いのも事実です。
 コミー長官もクリントン氏の新しいメールが見つかって、捜査
を再開すべきかどうか相当悩んだはずです。選挙前であるからと
いって、再捜査をしないで後から問題が発生した場合、それこそ
大問題になります。
 そこでコミー長官は、メール問題の再捜査の決断について、米
議会に対して、次のような書簡を送ったのです。
─────────────────────────────
 私は以前行われた議会の委員会で、クリントン元国務長官の個
人メール・サーバーの私的な使用問題に関してFBIの捜査が終
了したという証言をしました。
 しかし、最近、事態に進展があり、私は過去の証言を補足する
ために本書簡を書いております。FBIは本件とは無関係な事件
の捜査過程で、本件に関連すると思われる電子メールの存在を知
るに至りました。昨日、私は捜査チームからその旨の説明を受け
たことを皆様にご連絡するために本書簡を書いています。
 私は捜査官によって新たに発見された電子メールの中に機密情
報が含まれているかどうか、また、本件にとってこれらの電子メ
ールが重要であるかどうかを判断するために、FBIが適切な捜
査を行えるよう適切な措置を講ずべきだということに同意しまし
た。FBIはこの資料が重要であるかどうか判断することはでき
ませんし、私にはこうした追加捜査を完了するのにどれだけの時
間が掛かるか予想もできませんが、私は過去において議会で行っ
た証言に照らし合わせて、FBIが現在行っている事柄に関して
諸委員会に新しい情報を提供することは重要だと信じています。
                   http://bit.ly/2eTbx0e
─────────────────────────────
 これに対し、民主党のハリー・リード上院院内総務は30日、
「法律に違反している可能性がある」として、FBIコミー長官
を激しく非難しています。また、オバマ大統領も、1日、ラジオ
のナウディスニュースとのインタビューで、「捜査はほのめかし
や不十分な情報、漏出情報に基づいて行うのではなく、具体的な
決定に沿って行うという原則があるはずだ」と語ったということ
は既に述べた通りです。
 こういう非難を受けたためか、コミー長官は、6日になって、
米議会に再び書簡を送り、米大統領選の民主党候補ヒラリー・ク
リントン氏による国務長官時代の私的な電子メール使用について
犯罪に相当しないという結論に変更はないと伝えたのです。これ
についてブルームバークは、次のように報道しています。
─────────────────────────────
 クリントン氏の私的メール使用と関係する可能性がある新たな
メールを調査していると10月28日に議会に伝えて以降、問題
のメールについて「FBIの調査チームが24時間体制で調査し
てきた」とコミー長官は説明。「その過程でクリントン氏が国務
長官時代に受信・送信した全てのやりとりを調べた結果、われわ
れが7月に示したクリントン前国務長官に関する結論は変わらな
かった」とコメントした。       http://bit.ly/2eMUi0s
─────────────────────────────
 要するに、FBIとしては、オバマ大統領や米議会から批判を
受けたので、新しいとされるメールをすべて調査した結果、犯罪
性なしと判断したというのです。60万通といわれるメールです
が、多くは既に調査したメールと重複しており、新しいメールは
数千通であったとFBIは発表しています。
            ──[孤立主義化する米国/083]

≪画像および関連情報≫
 ●クリントン氏よりトランプ氏の肩を持ったFBI長官
  ───────────────────────────
   米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントンの陣営は、
  投開票まで11日となったタイミングで「メール疑惑」に関
  連するかもしれない新たなメールの発見と捜査の再開を発表
  したジェームズ・コミーFBI長官について「あからさま」
  「開いた口が塞がらない」と、ダブルスタンダードを批判し
  た。コミーは一方で、ロシアが米共和党候補ドナルド・トラ
  ンプを支援する目的で米大統領選に介入していることの公表
  には反対していたからだ。
   米ケーブルテレビCNBCやニュースサイトのハフィント
  ン・ポストは、匿名の元FBI高官の証言を入手。それによ
  るとコミーは、ロシアが選挙に介入していることを公式に批
  判するには「大統領選投票日に近過ぎる」と言って反対した
  という。コミーは大統領選挙への影響だけでなく、法執行機
  関が自らの立場を利用して、選挙に影響を与えることを禁じ
  たハッチ法に抵触する可能性があると懸念していた。
   10月7日、米国土安全保障省長官と国家情報長官は、ロ
  シアのサイバー攻撃を断定した内容の共同声明を発表した。
  「米政府の情報機関は、最近米国人や政治組織がハッカー攻
  撃を受けてメールが流出したのはロシア政府の指示によるも
  のだと確信しており、一連の情報収集の目的はアメリカの選
  挙に干渉することだ」。コミーは声明の内容には同意したも
  のの、公表は遅らせようとしたという。声明にもFBIの名
  前は含まれなかった。       http://bit.ly/2f6XoNr
  ───────────────────────────

コミ―FBI長官.jpg
コミ―FBI長官
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2016年11月11日

●「トランプの勝利を予言した評論家」(EJ第4399号)

 大方の予想を裏切って、誰もが予想していなかったドナルド・
トランプ氏が第45代大統領になることが決まったのです。英国
のEU離脱に続く衝撃的なニュースです。
 それにしても、勝利会見のトランプ氏が一転してまともだった
ので、1000円下落した日経平均が下落分を取り戻し、10日
午前10時現在、1万7千円台を取り戻しています。しかし、ト
ランプ氏はそれほど甘い人間ではありません。選挙中に公約した
ことは、全部ではないにせよ、実現を図ろうとするはずです。
 ところで、既にこのテーマのEJの読者にはお知らせしている
ように、トランプ大統領の実現を今年の5月の段階で公言してい
た人がいます。評論家の副島隆彦氏です。8月18日付、EJ第
4342号のその部分を再現します。
─────────────────────────────
 2016年5月3日、共和党のインディアナ州予備選でトラン
プが勝った。当日、競争者のテッド・クルーズ候補(テキサス州
上院議員)が選挙戦から撤退した。これで、トランプの勝ちが決
まった。
 このあと5月12日にトランプは、アメリカの共和党の実力者
で下院議長のポール・ライアン(若い。46歳)と話をつけた。
これでトランプは共和党の大統領候補指名を確実にした。ポール
・ライアンと何を話したか。「私たちの間には今もいくつかの相
違点がある。しかし、大きいところでは意思一致(合意)」でき
た」と互いに承認し合った。これは「トランプ=ライアン・ステ
ートメント(宣言)」と呼ばれるべきものだ。共和党本部がトラ
ンプに折れたのだ。
 どうやら、ここでドナルド・トランプが、次のアメリカ大統領
になる流れが生まれた。そして私は5月22日に「トランプが大
統領になる」と決断した。自分なりに10日間真剣に考え込んだ
あとでの結論だった。            ──副島隆彦著
      『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社
                   http://bit.ly/2b0mMYc
─────────────────────────────
 これは大胆な予言です。もし、外れれば著名な評論家の名声に
も傷がつくことにも考えられます。しかし、本選が始まるとトラ
ンプ氏の暴言やスキャンダルもあって、一貫してメディアの世論
調査では、クリントン氏のリードが続いたのです。
 さらに、両候補による3回のテレビ討論を経て、さらにクリン
トン氏が有利に選挙戦を進め、「ヒラリー圧勝」が伝えられても
副島氏はひるまず、10月になると『ヒラリーを逮捕、投獄せよ
/Lock Her Up』(光文社) という本を上梓して、オクトーバー
・サプライズとしてクリントンは沈むと主張したのです。この本
の第1章の冒頭には次のように書かれています。
─────────────────────────────
 世界は大きな変動期に入っている。いま起きつつある事態を、
先へ先へと私は予測、予言してゆく。まず、アメリカ国民の怒り
を、テレビ番組の司会者やコメンテイターたちの、怒鳴り声での
ヒラリー糾弾の様子を知ってほしい。「ロック・ハー・アップ」
「ヒラリーを捕まえろ、牢屋に入れろ」のアメリカ全土を揺るが
しているアメリカ国民の叫び声が現にあるのだ。
 トランプ支持者たちは、全米のどこの会場でも、毎日、「ヒラ
リーを逮捕せよ、投獄せよ」と怒号している。これは国民政党で
ある共和党の多数意見だ。今やアメリカ国民の多数意見だ。それ
が「ロック・ハー・アップ!ロック・ハー・アップ!」は、「ヒ
ラリーを逮捕せよ、投獄せよ」の大合唱である。それなのに日本
国民はこの事実をほとんど知られていない。  ──副島隆彦著
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
                         光文社刊
─────────────────────────────
 いくらなんでも「ロック・ハー・アップ!」は激し過ぎると思
うかもしれませんが、実はトランプ氏の集会では、支持者からこ
の叫び声は、何回も何回も繰り返されていたのです。
 トランプ氏が正式に共和党の大統領候補の指名を受けた共和党
全国大会は、2016年7月18日〜21日にわたって、オハイ
オ州クリーブランドのクイッケン・ローンズ・アリーナで開催さ
れ、その初日の模様は日本でもテレビで報道されましたが、大会
の2日目に起きたことは報道されていません。何が起きたかにつ
いて、副島氏の本から引用します。
─────────────────────────────
 ・・・大会2日目、予備選から撤退したニュージャージー州知
事のクリス・クリスティーが登壇した。彼はトランプへの支持も
そこそこに、民主党の指名獲得を確実にしているヒラリー・クリ
ントンを糾弾した。国務長官時代の私用メール問題について「模
擬裁判」を始めた。会場から「有罪!」「牢屋にぶち込め!」と
声が上がった。
 ・・・同じ日、ニューハンプシャー州下院議員のアル・バルダ
サロがラジオ番組に出演した。大使ら4人が死亡した2012年
のリビア米領事館襲撃事件(=ベンガジ事件)について、当時国
務長官だったクリントンは「国家反逆罪で銃殺されるべきだ」と
言い放った。          ──副島隆彦著の前掲書より
─────────────────────────────
 「私用メール問題」といっても多くの日本人は、ことのいきさ
つを知らないから、確かにルール違反ではあるが、そんなに悪い
ことではないのではないかと思う人が多いと思います。
 日本では閣僚クラスの政治家でも平気で私用のスマホを使って
電話したり、メールを送受信しています。安倍首相もドコモの携
帯電話で電話し、タブレットを使い、LINEでスタンプまで送
っています。だから、国務長官が私用メールを使うことをそんな
に深刻な犯罪だとは思っていないのです。しかし、クリントン氏
の私用メール問題は、ベンガジ事件に関連しており、きわめて深
刻なのです。      ──[孤立主義化する米国/084]

≪画像および関連情報≫
 ●クリントン攻撃に終始した共和党全国大会
  ───────────────────────────
   ドナルド・トランプの公式指名は最終日の木曜日になると
  予測されていたが、大多数の代議員はトランプに投票したた
  め、昨日の大会の初めに突然、指名を獲得したことが公表さ
  れた。今日三日目を迎えた大会は、トランプとの党内統合及
  び政策について語ることより、クリントンを攻撃することで
  共通の目的を見出したようである。ニュージャージー州知事
  のクリス・クリスティは一連の度重なる不運により、主に苛
  立ちからヒラリー・クリントンを攻撃し始めた。クリスティ
  はトランプにオバマ大統領に任命された全ての閣僚を解雇す
  ることを容易にする法律改正を提案したと伝えた。
   トランプは最初の副大統領の選択として、オハイオ州知事
  のジョン・ケイシックを希望していたが拒絶されたため、残
  されたショート・リストから社会保守派のインディアナ州知
  事マイク・ペンスを選択する結果になった。指名を公表する
  数日前、イバンカを含むトランプの子供達はペンスに会い彼
  を承認したようである。トランプとペンスは多数の政策にお
  いて著しい違いがあるため、両氏の間には既にぎこちない雰
  囲気があるが、ペンスを選択したことで、指名に必要な12
  37を無理なく獲得し、19日トランプは共和党大統領候補
  者として正式に指名を受けた。中絶や同性結婚に反対する強
  力な社会保守派の代議員らは、そのような課題で立場が頻繁
  に変わるトランプを信用していなかったため宗教を最も重視
  すると宣言し、社会政策で極右派であるペンスを副大統領に
  選択したことが著しく効果的であったようだ。
                   http://bit.ly/2fEKCqN
  ───────────────────────────

クリス・クリスティー知事.jpg
クリス・クリスティー知事
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2016年11月14日

●「ヒラリーメール疑惑捜査再開必至」(EJ第4400号)

 米大統領選挙中、共和党のトランプ陣営は、トランプ氏の価値
に言及するよりもひたすらクリントン候補の欠点を痛烈に批判す
ることに重点を置いたのです。それは、このさい何が何でも政権
を民主党から取り戻す共和党の戦略だったといえます。
 予備選においてトランプ氏は、当初泡沫候補の扱いをされてい
ましたが、意外にも予備選を勝ち抜いて、共和党の大統領候補の
資格を勝ち取っています。しかし、その時点でもトランプ陣営は
政治経験と知名度抜群のヒラリー・クリントン候補に勝てるとは
到底思えないほど劣勢だったのです。トランプ陣営にとって、ク
リントン氏はそれほど強大な候補であったといえます。
 したがって、トランプ陣営は、政策で争ったら到底勝てないの
で、相手の欠点を徹底的に衝く戦略をとったのです。その最大の
焦点はクリントン氏のメール問題です。トランプ陣営はこの問題
を徹底的に調べ上げ、そのウラに恐るべき事実があるのことを把
握します。そして、選挙期間中にひたすらこの事実を支持者に訴
えて、勝利を勝ち取る選挙戦を展開します。
 それは、2016年7月18日〜21日の4日間にわたる共和
党全国大会で、はっきりと示されていたのです。今回の大統領選
では、日本の各種メディアは、大勢の記者を米国に派遣し、現地
で取材していたはずですが、なぜか、共和党全国大会の2日目以
降を報道していないのです。
 大会2日目のクリス・クリスティーニュージャージィー州知事
の演じたクリントン模擬弾劾裁判については、前号でお知らせし
ましたが、実はそれだけではないのです。大会3日目に、著名な
ラジオ・パーソナリティのローラ・イングラハム女史のきわめて
激しいヒラリー糾弾演説が行われているからです。
 これは、全米では報道されたものの、日本のメディアはクリン
トン氏に遠慮してか、まったく報道されていないのです。日本の
メディアは、アタマからクリントン氏の勝利を信じ切っていたの
か、メール問題もきちんと報道されているとはいえません。
 ローラ・イングラハム女史の演説は、クリントン氏のメール問
題の真実を真剣に報道しようとしない米国のメディアに激しく怒
りが向けられています。
─────────────────────────────
 ハイ、ハニー。ハイ、マイ・フレンズ。(この党大会の会場の
一番上の階にいるアメリカのメディア報道陣に向って)お前たち
が、一番腐敗しているんだ。お前たちがこの国で最悪なんだ。お
前たちが、真実を報道しないで、ウソばかり報じている。お前た
ちが、一番責任がある。      ──副島隆彦著/光文社刊
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
─────────────────────────────
 誠に激しいローラ・イングラハム女史の演説ですが、日本のメ
ディアに対してもそっくりそのままいえることです。添付ファイ
ルの写真を見ていただくとわかるように、ローラ・イングラハム
女史は、とてもかっこいいです。日本のラジオ・パーソナリティ
やテレビのコメンテーターとは随分違います。副島隆彦氏は、日
本のメディアを次のようにこてんぱんに糾弾しています。
─────────────────────────────
 私は日本のメディアに向かって、ローラ・イングラハムに倣っ
て、「お前たちが、一番、悪いんだ。最悪の人間どもだ。いくら
安倍政権というヒラリー派、ネオコン派に属する、権力独占体に
睨まれるのが恐いからといって、それで、これほどの偏向報道を
続けていいのか。恥を知れ!」と、私も、最大級の声で怒りを表
明する。            ──副島隆彦著の前掲書より
─────────────────────────────
 いま振り返ってみると、共和党全国大会以後も共和党はクリン
トン氏のメール問題に関して、いろいろな働きかけを行っていま
す。この共和党の揺さぶりと、その後のFBIの捜査の再開など
の対応は無関係ではありません。
 共和党全国大会の行われた2週間ほど前の7月5日に、コミー
FBI長官は、ヒラリー氏のメール問題について「国家機密文書
の取扱に関して極めて不注意であったが、刑事起訴する問題では
ない」と発表し、同じ日にリンチ米司法長官はヒラリー氏を「起
訴しない」と決定し、共和党員を激怒させていたのです。
 そのときクリントン氏はまだ正式に民主党の大統領候補には決
定していませんでしたが、FBIや司法当局が、まるでクリント
ン氏の出陣の前の露払いをしているように見えたからです。だか
ら、共和党全国大会が盛り上がったのです。通常であれば、最後
の日に登場するトランプ氏が初日に登場したのも、クリントン氏
糾弾の演出を効果的にするためであったと考えられます。
 ところで、日本のメディアではあまり大きく取り上げられてい
ませんが、9月3日になって、突然FBIが「ヒラリーへの捜査
記録」を公開したのです。これも共和党側からの強い要請に基づ
くものです、それが共和党の選挙戦術だったからです。
 この「ヒラリーへの捜査記録」は、全58ページ中14ページ
はすべてブランクだったのです。日本流にいうと「海苔弁」とい
うわけです。これは、国家機密であって、クリントン氏が国家機
密をセキュリティの甘い自分のサーバーを使って発信していたこ
とを意味します。問題はその内容が何であるのかは公開できませ
んが、外に出せない内容ということになります。
 こういう状況のもとで、10月に入ってさらに新しいクリント
ン氏のメールが発見されたので、FBIコミー長官しては公開せ
ざるを得なかったと考えられます。
 ところが再捜査を公表したところ、今度はクリントン陣営から
はもとより、オバマ大統領自身からもFBIに対してクレームが
来たのです。これらの共和党とオバマ大統領の批判のせいか、コ
ミー長官はまたしても「訴追せず」と火消しを行っています。こ
ういう状況ですから、トランプ政権になると、この問題は、必ず
再々捜査が行われることは必至です。
            ──[孤立主義化する米国/085]

≪画像および関連情報≫
 ●共和党全国大会、有名女性キャスターがナチス敬礼
  ───────────────────────────
   ドナルド・トランプ氏が共和党大統領候補に指名された共
  和党全国大会で21日、トランプ氏の応援演説に駆け付けた
  保守系の女性有名ラジオキャスターのローラ・イングラハム
  さんが演説の後半でトランプ氏に対して右手をピンと張り上
  げる格好のナチス式敬礼を行った。
   共和党全国大会の模様はTVを通じて全米に生中継されて
  いたこともあり、保守系の女性有名ラジオキャスターがトラ
  ンプ氏に対してナチ式敬礼を行ったことは、疑問と同時に波
  紋を呼ぶところともなっている。
   イングラハムさんは、自分がナチス式敬礼を行ってしまっ
  たことに気付くと、直ぐに、手を折り曲げて拍手喝采に応え
  るかのような動作をすることで、自分の動作を隠してしまっ
  たが、イングラハムさんが行った身振りは明らかにナチス式
  敬礼そのもので、一体、なぜ、女性有名ラジオキャスターが
  こうした行動をとったのか、様々な憶測が飛び交っている。
   トランプ氏はその言動からこれまで度々、ヒトラーに例え
  られてきたが、イングラハムさんは熱狂的なトランプ氏支持
  派ということもあり、トランプ氏を批判する意味で、トラン
  プ氏に対してナチ式敬礼を行ったわけではないことだけは確
  かだ。              http://bit.ly/2ftaZ1W
  ───────────────────────────

ローラ・イングラハム氏.jpg
ローラ・イングラハム氏
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2016年11月15日

●「メール問題はこのままにできない」(EJ第4401号)

 「反トランプ」デモが止まらない。選挙から4日経つのに拡大
するばかりです。クリントン候補に60%以上の州民が投票した
というカルフォルニア州では、アメリカ合衆国からの離脱・独立
の動きがはじまっています。これを英国離脱の「Brexit」にちな
んで「Calexit」 を呼んでいます。
 米国では、南部11州が奴隷制度廃止に反対し、1860年代
に連邦を離脱し、「アメリカ南部連合」を結成したことがありま
したが、合衆国からの離脱の動きはそれ以来のことです。それほ
どトランプ大統領の誕生は米国にとって大衝撃なのです。
 今回のトランプ氏の選挙戦の戦いを見ていると、共和党とトラ
ンプ氏の「デキレース」ではなかったかと思われます。共和党と
しては、予備選のトランプ氏の戦いを見ていて、共和党としては
トランプ氏には予備選のように自由に選挙戦を戦わせ、ときにト
ランプ氏の発言をめぐって党本部と対立することはあっても、党
本部としては、ひたすらクリントン氏の最大の弱点である「私用
メール問題」を徹底的に追及する高等戦略をとったのではないか
と思われます。見事な役割分担が功を奏したのです。
 それを象徴するように、トランプ氏は勝利宣言では、選挙戦と
は一変してまともな発言をし、対立していたライアン下院議長と
会うとともに、政権移行チームのトップに副大統領になるペンス
氏を据えて、共和党本部の支えを得ながら、新政権づくりを進め
ようとしています。11月13日の朝日新聞は、その模様をトッ
プ記事に掲げています。
─────────────────────────────
◎政権移行 共和党頼み
 米国のトランプ次期大統領が11日、政権移行チームの陣容を
刷新した。来年1月の政権発足に向け、閣僚など膨大な政治任用
ポストを埋めるには準備不足は否めず、ワシントンでの政治経験
の長いペンス次期副大統領を執行委員長に充てた。選挙期間中は
対立してきた共和党の支えも得ながら人選し、新政権づくりを進
めたい考えとみられる。    ──2016年11月11日付
                       朝日新聞朝刊
─────────────────────────────
 ところで、クリントン氏の私用メール問題は今後どうなるので
しょうか。
 これは、単なる選挙用の攻撃材料としては終わらないと考えら
れます。しかし、真相が明らかになると、米国の国益にも深く関
わる事件であるので、捜査は継続されるものの、本当のところは
どうだったのかはわからないままになる可能性があります。そし
て、陰謀論的なかたちでいい伝えられると思います。
 しかし、副島隆彦氏の本では、メール問題について衝撃的な真
相が明らかにされています。EJでは、副島氏の本を手掛かりと
して、ネットの情報も加えて真相に迫るつもりです。
 ヒラリー・クリントン氏が国務長官に就任したのは、2009
年1月21日のことです。就任直前の1月13日、クリントン氏
は国務省には内緒で自宅の地下にある個人サーバーで、マイクロ
ソフト社と契約し、次のアカウントを登録しています。それまで
の上院議員時代には別のメールアドレスを使っていたのです。
─────────────────────────────
  Clintonemail.com /プロバイダー=マイクロソフト社
─────────────────────────────
 クリントン氏は、2009年3月18日から、上院議員時代の
メールアドレスを使うことをやめ、自宅地下の個人サーバーのア
カウントを使いはじめたのです。そして、上院議員時代のすべて
のメールを削除し、復元しないようにしています。このような私
用メールは政府の閣僚が絶対にやってはならないことです。
 米国では、閣僚は私用のメールアドレスを使って公務をするこ
とは許されず、国家機密が厳重に保護されている国務省のアカウ
ントを使うことになっています。これは携帯電話でも同様であり
閣僚になると、たとえ私的な会話であっても、外部に流出すると
問題になるので、セキュリティが万全の特殊な携帯電話を使うこ
とになっています。
 2012年9月11日、エジプトやリビアなどアラブ諸国のア
メリカ在外公館が次々と襲撃されたのです。これによって、在リ
ビア・アメリカ領事館のクリストファー・スティーブンス駐リビ
ア大使ら4人が殺害されたのです。これがリビア・ベンガジ事件
といわれる事件です。死亡したスティーブンス大使は、ヒラリー
・クリントン氏の忠実な部下の一人だった人物です。
 ところがこの事件に不審を抱いた民間団体があるのです。ジュ
ディシャル・ウォッチという行政を監視する民間団体です。この
民間団体によって新事実が次々と暴かれるのです。その新事実と
は、次のようなことです。
─────────────────────────────
 2012年9月11日にベンガジの米領事館と中央情報局(C
IA)の活動拠点がテロリストに襲撃された数日後にホワイトハ
ウスが送信した電子メールで、新たな事実が発覚した。これらの
メールは昨年、事件への対応と事後処理に関するすべての文書だ
とオバマ政権が主張した資料には含まれていなかった。保守系の
監視団体ジュディシャル・ウォッチによる情報公開請求を受けて
4月29日に公表されたこのメールを見ると、オバマ政権がなぜ
メールを隠そうとしたのかが分かる。
                 http://on.wsj.com/2f4Rtbf
─────────────────────────────
 この事件がどうして起きたのかについて、オバマ政権は、ユー
チューブに投稿された不明瞭な反イスラム動画に対する自然発生
的な抗議行動が原因であるとし、自らの関わりを一貫として否定
したのです。このときは、クリントンのメール問題は何も表には
出ていないのです。それが明らかになるのは、2013年3月3
日のことです。あるハッカーによるハッキングがきっかけで判明
したのです。      ──[孤立主義化する米国/086]

≪画像および関連情報≫
 ●「ベンガジ疑惑」を乗り越えたヒラリ−と暴言トランプ
  ───────────────────────────
   ヒラリー・クリントンに対して共和党は「ベンガジ事件」
  に関する疑惑を執拗に追及しています。この事件は2012
  年9月11日にリビアのベンガジにあったアメリカ領事館で
  クリストファー・スティーブンス駐リビア大使ら国務省およ
  びCIAの職員4人が、重武装をした勢力の攻撃を受けて殺
  害されたものです。
   この事件に関して共和党は、発生直後から事件当時国務長
  官として在外公館の安全確保に責任を負っていたヒラリーに
  「過失」があったのではないかという追及を続けています。
  重要なドラマとしては、まず2013年1月には「上下両院
  合同の調査委員会」が開催され、ジョン・マケイン上院議員
  (共和)などが代わる代わるヒラリーを追及したのです。
   その13年の喚問では、感情的にふるまって悪印象を与え
  たヒラリーですが、2015年10月にあらためて下院調査
  委員会に証人として召喚された時には、慎重に言葉を選びつ
  つ堂々と受け答えをしており、11時間におよぶロングラン
  の喚問を「破綻なく」乗り切りました。ですが、共和党の追
  及はこれで完全に止むことはありませんでした。その追及で
  は、まず「当時ベンガジで起こりつつあった武装勢力の攻撃
  について、アメリカで発生した『ムハンマド侮辱ビデオ』に
  反対する平和的なデモと同様だと誤認したこと」が、結果的
  に大使の死につながったのではという疑惑、そして「その疑
  惑に関してモミ消しを図ったのではないか?」という疑惑の
  2点が焦点になっています。    http://bit.ly/29avNdY
  ───────────────────────────

ベンガジ米領事館襲撃事件.png
ベンガジ米領事館襲撃事件
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2016年11月16日

●「ヒラリーメールは何を意味するか」(EJ第4402号)

 なぜ、大方の予想に反して、ドナルド・トランプ氏が大統領に
決まったのでしょうか。それは、共和党を含むトランプ陣営が対
抗相手であるヒラリー・クリントン氏の私的メール問題を手を替
え品を替え攻撃したからです。なぜなら、この私的メール問題が
リビア・ベンガジ事件に深く関わっているからです。
 トランプ陣営と共和党本部は、トランプ氏の数々の暴言によっ
て不仲になっていたはずです。しかし、そのウラではきちんと連
携して動いていたと思われます。確かに共和党はFBIに対して
クリントン氏にFBIが行った7月2日の尋問資料(供述調書)
の全面公開を求めたり、クリントン氏を訴追しない方針を決めた
コーミーFBI長官を批判しています。
 また、共和党は、選挙期間中にクリントン候補に対して行われ
るインテリジェント・ブリーフィングを実施しないよう要求した
りしているのです。インテリジェント・ブリーフィングとは、大
統領候補者に対して、国家情報長官室やCIAから行われる国家
機密の開示のことです。共和党としては、私的メールの内容いか
んによっては逮捕・訴追されるかもしれないクリントン氏に国家
機密を話すのは問題であるという考え方です。
 逆に民主党としては、ロシアのプーチン大統領に親近感を示す
トランプ氏に国家機密を明かすことへの懸念を表明しています。
8月5日付、産経ニュースは、インテリジェント・ブリーフィン
グについて次のように述べています。
─────────────────────────────
【ワシントン=加納宏幸】米共和党の不動産王トランプ氏、民主
党のクリントン前国務長官が大統領候補として国家情報長官室や
中央情報局(CIA)から国際情勢の説明を受ける「インテリジ
ェンス・ブリーフィング」(情報説明)が近く始まる。テーマは
「イスラム国」(IS)やロシア情勢などだ。来年1月の就任後
すぐに米軍最高司令官を務めるための準備だが、両候補に機密情
報を伝えることへの慎重論も出ている。
 オバマ大統領は4日の記者会見で、「(野党の)共和党であれ
候補になれば、大統領の職をゼロから始めることのないよう安全
保障に関する説明を受ける必要がある」と述べた。一方で情報機
関から受けた説明を外に漏らすことのないようクギを刺した。ト
ランプ氏が念頭にあるとみられる。
 トランプ、クリントン両氏に対して情報説明を始めることには
民主、共和両党から、情報漏洩(ろうえい)を懸念する意見が出
ている。CIA長官を務めたパネッタ元国防長官ら民主党有力者
は、トランプ氏がロシア政府に対して、クリントン氏のメールを
ハッキングするよう求めた発言を問題視。リード上院院内総務は
情報機関に対し、「トランプ氏は危険人物なので、(機密情報に
ついて)何も言わず偽の情報説明をすればいい」と求めている。
          ──2016年8月5日付、産経ニュース
                   http://bit.ly/2fTUFIF
─────────────────────────────
 上記の産経ニュースの記事のなかで「トランプ氏がロシア政府
に対して、クリントン氏のメールをハッキングするよう求めた発
言」はきわめて重要です。これは何らかの事情でトランプ陣営は
メールの内容の一部を把握しており、それに基づいてトランプ氏
は演説などで繰り返し発言しているとみられます。
 トランプ氏は、FBIや司法当局がメールに重大な内容が書か
れていたとしても、国家機密ということで公開しないことが考え
られるので、ロシアに働きかけて、メールの内容を公開してくれ
と要請しているのです。ロシアには、ウィキリークスのジュリア
ン・アサンジ氏がいるからです。
─────────────────────────────
 ロシアよ。私の演説を聞いていたら、ヒラリーが勝手に(証拠
隠滅)削除した3・3万通のメールを見つけ出してくれ。
                 ──副島隆彦著/光文社刊
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
─────────────────────────────
 しかし、クリントン氏を支持するオバマ政権では、これらの発
言は「暴言」として、問題視しないで無視しています。しかし、
クリントン氏の私的メール問題をフォローしていくと、単なる暴
言とはいえなくなってきているのです。
 8月10日になってトランプ氏は、「IS/イスラム国」の創
設者はオバマ大統領であり、クリントン前国務長官は共同創設者
であるとするとんでもない発言を行っています。まさに暴言の類
いですが、これとても単なる暴言とはいえない真実味を帯びてい
るのです。
─────────────────────────────
 米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏(70)が8月
11日のフロリダ州での集会で、過激派組織「イスラム国」(I
S)について「オバマ大統領に敬意を払っている。彼がISの創
設者だからだ。共同創設者は、ひねくれクリントンだ」と語る場
面があった。
 トランプ氏は最近の世論調査で、民主党候補ヒラリー・クリン
トン前国務長官(68)に大きくリードを許している。トランプ
氏の発言はオバマ氏とクリントン氏の失策がISの台頭を招いた
と訴える趣旨とみられるが、再び暴言と受け止められ、物議を醸
す恐れもある。    ──2016年8月11日付、時事通信
                 ──副島隆彦著/光文社刊
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
─────────────────────────────
 「オバマ大統領とクリントン氏がイスラム国(IS)を創設し
た」というのは、いかにも根拠のない暴言のように聞こえますが
EJでも前回テーマで取り上げたように、そうとはいえないので
す。これはベンガジ事件と深い関係があり、クリントン氏の私的
メール問題とも無関係ではないのです。
            ──[孤立主義化する米国/087]

≪画像および関連情報≫
 ●ヒラリーが土壇場で大苦戦する「3つの理由」/東洋経済OL
  ───────────────────────────
   いよいよ、11月8日のアメリカ大統領選挙まであとわず
  かとなった。10月分の雇用統計も発表され、民主党のヒラ
  リー・クリントン候補を応援する主要メディアは、堅調な雇
  用の数字はオバマ政権の成果であり、民主党の政策は正しか
  ったと国民に訴えている。
   ところが、そのヒラリーの勝利を前提にしていた米国の株
  式市場は、S&P500が4日で9営業日連続の下落となっ
  た。これは1980年以来初めての現象だ。これに対する一
  般的な解説は、10月28日の金曜日、突如出たFBI(米
  連邦捜査局)によるヒラリーのメール問題の再調査で、ヒラ
  リーの勝利が「確定」から「不安」になったということであ
  る。だが筆者にはその前から、大統領がどちらになっても株
  はいったん下がることを織り込み始めていたように見える。
  一例は、日本で恐怖指数といわれるVIX指数の先物の残高
  と、それを対象とするETF(上場投資信託)・ETN(指
  標連動証券)の派生商品の値動きに乖離が生じていたことで
  ある。VIX先物の買いがどんどんたまっているのに、VI
  XのETF・ETNの価格は、それほどは変動しなかった。
  これは大地震の前、プレートへじわじわと圧力がかかるって
  いるのに、限界を迎えるまで地上では危険を感じない状態に
  似ている。            http://bit.ly/2fT5r3I
  ───────────────────────────

次期米大統領ドナルド・トランプ氏.jpg
次期米大統領ドナルド・トランプ氏
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2016年11月17日

●「バノン氏が力を握るトランプ政権」(EJ4403号)

 来年1月に誕生するトランプ政権には権限が対等な次の2人の
補佐官が就任する模様です。
─────────────────────────────
       プリーバス大統領首席補佐官
       バノン首席戦略官・上級顧問
─────────────────────────────
 首席補佐官というのは閣僚級ポストで、大統領への面会や文書
の管理などのほか、ホワイトハウスの職員を監督・統括する官房
機能も担う役職で、日本の官房長官に匹敵します。共和党本部は
首相補佐官に誰が選ばれるのかについて、緊張感を持って見守っ
ていたのです。候補者として、プリーバス氏とバノン氏の2人が
候補に上がっていたからです。
 というのは、共和党で公職の最高位にあるライアン下院議長は
バノン氏との仲は最悪であるのに対し、プリーバス氏とは、同じ
ウィスコンシン州出身で、気心は通じている人物だからです。し
たがって、もし首席補佐官にバノン氏が就くと、共和党本部との
関係は最悪になり兼ねなかったからです。
 結果として首席補佐官にラインス・プリーバス氏が就き、参謀
役としてスティーブン・バノン氏が政権をサポートするという人
事配置になったのです。この人事について、ライアン議長と反ト
ランプの急先鋒であるグラハム上院議員は次のような歓迎のコメ
ントを出しています。
─────────────────────────────
 ◎ライアン下院議長
  わが友を誇りに思い、興奮している。
 ◎グラハム上院議員
  プリーバス氏を首席補佐官にした選択はすばらしい。統治に
  ついて真剣に考えていることを示すものだ。
        ──2016年11月15日付、朝日新聞朝刊
─────────────────────────────
 しかし、トランプ氏は明らかにバノン氏に重点を置いているよ
うに見えます。トランプ氏は11月13日に発表した声明におい
て、バノン氏の名前を先に上げ、首席戦略官・大統領上級顧問に
指名しています。
 バノン氏は、トランプ氏がイラクで戦死したイスラム教徒の米
兵の遺族を中傷したことで支持率が急下落したときに、トランプ
陣営の最高責任者に就任した人物で、以後体制を立て直し、トラ
ンプ陣営を勝利に導いた立役者であり、トランプ氏から厚い信頼
を得ています。
 トランプ氏は、プリーバス氏に首席補佐官として、共和党本部
との橋渡しをする役割をさせ、バノン氏に大きな権限を与えると
思われるので、トランプ政権の政策にはバノン氏の意向が強く反
映される可能性があります。
 それでは、バノン氏とはどういう人物なのでしょうか。朝日新
聞は次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 バノン氏は、以前は最右派系ニュースサイト「プライバート・
ニュース」の会長だった。このサイトは「反エスタブリッシュメ
ント(既得権層)」が特徴で、2007年設立以来、既存の政治
やメディアを批判的に扱うことで存在感を伸ばしてきた。しばし
ば信頼性の低い、陰謀史観的な「ニュース」を掲載。白人至上主
義や反イスラム、反ユダヤなど人種差別的論調を牽引してきたこ
とでも知られる。
 サイトでは、トランプ不支持を打ち出した保守派の論客ビル・
クリストル氏を「裏切り者のユダヤ人」などと人種差別的な表現
で批判。共和党主流派を敵視することでも有名で、以前はティー
パーティー(茶会)を支持。最近も「我々に必要なのは、共和党
に平手打ちを食らわせてやることだ」などと、発言し、主流派内
にも懸念が広がっていた。
        ──2016年11月15日付、朝日新聞朝刊
─────────────────────────────
 これによると、選挙中のトランプ氏の言動の源泉がこのバノン
氏であることがよくわかります。バノン氏は、米海軍やゴールド
マン・サックス勤務の経験もあり、さまざまなルートから、多く
の情報を収集しています。クリントン氏の私的メールの内容につ
いても、そのルートから多くの情報を収集し、選挙戦に有利にな
るよう展開してきています。そういう意味で、バノン氏は「米国
の最も危険な政治職人」と呼ばれているのです。
 選挙中にトランプ氏が発言したいわゆる「暴言」といわれるも
のは多いですが、なかでも「イスラム国(IS)はオバマ大統領
とクリントンが創設者である」というのは、まさに決定打という
べき発言といえます。しかし、これは必ずしも暴言とはいえない
のです。イスラム国が組織として結成された経緯を考えると、も
ともとシリア政府に対抗する反政府軍のひとつなのです。
 米国はイスラム国に対して空爆を行っていますが、その戦い方
は非常に不可解です。米軍のイスラム国への空爆は、その多くが
爆撃しないで戻ってきているからです。2015年1月〜3月で
米爆撃機は7319回出撃していますが、空爆を実行したのは、
1859回しかないのです。とても米国が本気でイスラム国の制
圧をしようと努力しているとは思えないのです。やはり、米国は
イスラム国の創設に関わっているのでしょうか。
 これについては、EJの前回のテーマ「現在は陰謀論の時代」
の次の部分を参照していただきたいと思います。
─────────────────────────────
 2016年 6月 1日/EJ第4288号〜
            http://bit.ly/1P2nbRA
        2016年 6月21日/EJ第4302号
                  http://bit.ly/28K3Qcg
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/088]

≪画像および関連情報≫
 ●わざとイスラム国に負ける米軍/MAG2 NEWS
  ───────────────────────────
   数的優位な有志連合軍が「イスラム国」(ISIS)にイラ
  クの戦略的要衝ラマディを奪われるなど、不可解とも取れる
  戦況が続く中東情勢。しかし国際情勢解説者の田中宇さんの
  無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』はこの状況につ
  いて、決して不可解ではなく、米軍がわざとISISに負け
  ているだけだと断言します。
   2015年5月17日、米軍が指導するイラク政府軍の約
  1万人の部隊が、イラク中部のスンニ派の都市ラマディで、
  自分らの10分の1しかいない1000人程度の過激派テロ
  組織「イスラム国」(ISIS)と戦って敗北、敗走し、ラマ
  ディはISISの手に落ちた。米国とイラクにとって、昨年
  6月のモスル陥落以来の大敗北だ。イラク軍は装甲車大砲な
  ど大量の兵器を置いて敗走し、それらの兵器はすべてISI
  Sのものになった。ラマディは、首都バグダッドから130
  キロしか離れていない。東進を続けるISISは、イラクを
  危機に陥れている。敗北時、イラク軍には世界最強の米軍が
  ついていた。米軍は制空権を握り、戦闘機でいくらでもIS
  ISを空爆できた。しかし、地上で激戦のさなかの空爆は4
  回しか行われず、それも市街の周辺部を小規模に空爆しただ
  けだった。            http://bit.ly/1U7zLGF
  ───────────────────────────

スティーブン・バノン氏.jpg
スティーブン・バノン氏
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2016年11月18日

●「なぜクリスティー氏は外されたか」(EJ第4404号)

 トランプ次期米大統領の政権移行チームがもめています。これ
はヒラリー・クリントン氏のメール問題にも影響が及ぶ可能性が
あるので、取り上げることにします。
 これについて、ブルームバークのサイトでは、次のように伝え
ています。
─────────────────────────────
 ドナルド・トランプ米次期大統領の政権移行チームでは、内紛
で新政権の人選が妨げられているようだ。その根拠の一つがトラ
ンプ氏の長女の夫、ジャレッド・クシュナー氏がクリスティー・
ニュージャージー州知事のグループを排除しようとしているとの
情報だ。
 こうした見方の背景となったのは、クリスティー氏が政権移行
チームの国家安全保障分野のリーダーに起用したマイク・ロジャ
ース元下院議員が11月15日、突然同チームを離れると表明し
たことだった。事情に詳しい2人の関係者が人事問題を理由に匿
名を条件に明らかにしたところによれば、議員時代に下院情報特
別委員長を務めていたロジャース氏の離脱はクリスティー氏とク
シュナー氏の摩擦による実質的な解任だという。クリスティー氏
は政権移行チームを率いていたが、11日に発表された新体制で
降格となり、新たなリーダーにはマイク・ペンス次期副大統領が
就いた。   ──2016年11月16日付、ブルームバーク
                   http://bit.ly/2fYdwk7
─────────────────────────────
 クリス・クリスティーニュージャージー知事といえば2016
年度米大統領選の予備選に立候補しながら、自分への支持が集ま
らないと見ると、早くからトランプ氏への支持を表明し、トラン
プ氏の選挙活動に付き添ってサポートしていた人物です。
 7月19日の共和党全国大会では、党大会の演説で、模擬裁判
を開廷し、クリントン候補の犯罪疑惑リストを読み上げて糾弾し
たことは既に述べた通りです。
 つまり、早くからトランプ氏有利とみて、トランプ氏勝利のさ
いは、人事などで、主導権を取ろうとしたフシがあります。そし
て実際にトランプ氏が勝つと、政権移行チームの委員長になると
思われていたのです。
 しかし、委員長になったのは、次期副大統領のマイク・ペンス
氏であり、クリスティー氏は副委員長にとどまったのです。この
ことが、クリスティー氏に近いマイク・ロジャース元下院議員の
政権移行チームからの離脱につながったとみられています。政権
移行チームは、明らかにクリスティー氏一派を外そうとしている
ことは確かです。
 なぜ、クリスティー氏は外されたのでしょうか。クリスティー
氏は、トランプ陣営に取って、今回の選挙の功労者の一人です。
クリスティー氏が外された理由について、11月17日付の朝日
新聞朝刊は次のように書いています。
─────────────────────────────
 米メディアによれば、移行チームの委員長から、ニュージャー
ジー州のクリス・クリスティー知事を外させたのは、クシュナー
氏(トランプ氏の長女イヴァンカ氏の夫)の意向とされる。かつ
てクリスティー氏が検事時代に、クシュナー氏の父を脱税や違法
政治献金などで起訴、刑務所暮らしを強いられたことへの意趣返
しとも報じられる。
 今回のロジャー氏の離脱も、クリスティー氏に近い人物だから
との説もささやかれる。首席補佐官にプリーバス氏を強く推した
のも、クシュナー氏とイヴァンカ氏だった。
        ──2016年11月17日付、朝日新聞朝刊
─────────────────────────────
 クリス・クリスティー氏が副委員長にとどまった理由について
は別の見方があります。それは、10月にトランプ氏の女性蔑視
発言が報じられたときに、クリスティー氏はトランプ氏を擁護す
ることを拒否し、トランプ氏の不興を買ったのが原因であるとい
う説で、17日付の日本経済新聞が報じています。
 このように、クリスティー氏はニュージャージー連邦地検検事
正を務めていたことがあり、今回政権移行チームを離脱したマイ
ク・ロジャー氏も連邦捜査局(FBI)の特別捜査官や下院情報
特別委員長を歴任しているなど、クリントン氏のメール問題摘発
に深く関与している人物です。この2人が新政権の主流から外れ
つつあることは、クリントン氏のメール問題の今後の進展に影響
を与えるものと思われます。
 しかし、その一方において、クリスティー氏が司法長官になる
可能性はあります。何といってもクリスティー氏は早い段階でト
ランプ氏への支持を表明しており、トランプ政権誕生の功労者の
一人です。確かにクシュナー氏との確執はあったとしても、閣僚
になる可能性は残っています。そうなると、クリントン氏のメー
ル問題は真相解明に急速に動くと思われます。
 ヒラリー・クリントン氏の私的メール問題は、リビア・ベンガ
ジ事件に深く関与しており、副島隆彦氏や巷間いわれている噂が
本当であるとすれば、オバマ政権にも関わる国家犯罪ともいえる
ものであり、ヒラリー氏への訴追は不可避になります。共和党と
しても、あれほど選挙期間中に問題にし、アッピールし続けたク
リントン氏の私的メール問題を、選挙に勝利したからといって、
このまま放置することは許されないことです。
 次期トランプ政権は、ブッシュ(子)政権以来の共和党政権で
あり、議会も上下両院を共和党が制しています。この問題に決着
をつけるには絶好の環境にあります。コミーFBI長官が「問題
なし」としたクリントン氏への捜査を新しい体制によって、捜査
再開が行われるものと思われます。
 EJでは、これまでと同様に、今後のトランプ氏の政権づくり
の動きを注視しながら、副島隆彦氏の本などを参照して、クリン
トン氏のメール問題を追及していきます。
            ──[孤立主義化する米国/089]

≪画像および関連情報≫
 ●米政権移行チームが大混乱/2分で分かるアメリカ
  ───────────────────────────
   アメリカのドナルド・トランプ次期大統領が、政権始動に
  向けホワイトハウスの重要ポストや閣僚の人選を本格化して
  います。
   政権移行チームのリーダーを務めるのはマイク・ペンス次
  期副大統領。先週金曜日、ニュージャージー州のクリス・ク
  リスティーズ知事から代ったばかりです。チームには、トラ
  ンプ氏の長女であるイヴァンカさんをはじめとした家族、シ
  リコンバレーの投資家ピーター・ティール氏、弁護士で元ニ
  ューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニ氏のほか、ワシン
  トンに拠点を置くシンクタンク、ヘリテージ財団の関係者が
  含まれています。
   こうした中、政権移行チームで安全保障問題を担当してい
  たマイク・ロジャーズ氏が15日、チームを抜けました。ロ
  ジャーズ氏は、下院の諜報委員会の元委員長で重鎮。また、
  ジュリアーニ氏は司法長官のポストを辞退しました。
   ニューヨーク・タイムズ紙は政権移行チームの作業が「遅
  れ」から「停止寸前」に変わりつつあると報じました。政権
  移行は通常、速やかに、計画的に進むものだが、スタート時
  点の遅れと不透明感がトランプ政権のスタートに影響する可
  能性があるとしています。     http://bit.ly/2f3pPuK
  ───────────────────────────

ジャレッド・クシュナー/イヴァンカ夫妻.jpg
ジャレッド・クシュナー/イヴァンカ夫妻
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2016年11月21日

●「カダフィー大佐を殺したのは誰か」(EJ第4405号)

 民主主義国家から見ると、「独裁国家=悪」という考え方を持
つものです。とくに民主主義国家を世界中に拡大したいと考えて
いる米国はそのように考えるのがつねです。しかし、独裁国家で
あってもきちんと統治されている国家は少なくないのです。かつ
てのイラクもそういう国のひとつだったのです。
 ところが米国は、イラクが実際には保有していなかった大量破
壊兵器を確証もないのに保有しているとし、イラクに戦争を起こ
してフセイン大統領を排除したのです。このさい、大量破壊兵器
の有無など、どうでもよかったのです。米国が戦争を起こした理
由は他にあります。
 それは一言でいえば米国の国益を守るためです。本当の理由は
イラクが米国に対して、絶対に容認できないことをやったからで
す。それは、イラクが自国の原油の取引をドルからユーロに変更
したことです。
 原油は現在ドルでしか取引できませんが、もし他の産油国がイ
ラクに同調してユーロでの取引に切り替えるようなことが起きる
と、米ドルは基軸通貨の地位を失いかねないことになります。そ
のため、イラクが大量破壊兵器を保有しているという不確かな情
報に基づいて戦争に踏み切ったのです。つまり、イラクは米国の
虎の尾を踏んでしまったのです。実際にイランでもドルをユーロ
に切り替えており、これに対して米国はイランに対し、厳しい経
済協力を課したのです。
 それでは、リビアのカダフィ大佐は、なぜ殺されたのでしょう
か。リビアも資源豊かな産油国であり、独裁国家であることはイ
ラクと同じです。リビアはアフリカでも屈指の石油産出国であり
2010年のGDPは779億ドル、アフリカ第7位の豊かな国
です。リビアを統治していたカダフィ大佐は、独裁者ではあった
ものの、国民に対しては善政を行っていたのです。
 ただ、カダフィー大佐は、アフリカを何とかひとつにまとめよ
うと努力していたのです。しかし、そのためにやろうとした次の
3つのことが、欧米諸国の国益を損ねたといえます。ちなみにこ
れら3つのうち、カダフィー大佐が実際にやったのは「1」だけ
で、「2」と「3」は実現する前に殺害されています。
─────────────────────────────
 1.コミュニケーション用衛星を独自に打ち上げ、英米資本
   家に損害を与えた。
 2.「ユナイテッド・ステート・オブ・アフリカ」を作り上
   げようと努力した。
 3.AMF(アフリカ通貨基金)を設立して、IMFに損害
   を与えようとした。
─────────────────────────────
 このなかで、「3」はストロスカーン前IMF専務理事と組ん
で、カダフィー大佐は、米ドルに替わる基軸通貨を作る方向で動
いていたのです。この点はフセイン大統領と同じであり、とくに
米国にとっては、とても受け入れられないことだったのです。
 しかし、リビアの場合は、イラクの場合と違って、世界の関心
が日本の311(東日本大震災)に向いているときに、こっそり
とNATOによる空爆が行われ、地上では米国が後押しする反政
府勢力によって、カダフィー大佐が殺害されたのです。かたちの
うえでは、カダフィ大佐の殺害は反政府勢力によって行われたと
されています。
 カダフィー大佐は、2011年4月30日、空爆を続けるNA
TOに対して、次のメッセージを発信しています。
─────────────────────────────
 NATOの人々よ、聞きなさい!あなたたちは、アフリカから
欧州への移民流入を堰き止めてきた壁を爆撃しているのでり、ア
ルカイダのテロリストを抑えてきた壁を爆撃しているのです。リ
ビアがその壁だったのでしょう。それをあなたたちは破壊しよう
としているのです。あなたたちは馬鹿ものだ。アフリカからの数
千の移民のせいで、アルカイダに対する支援のせいで、あなたた
ちは地獄に落ちるがよい。実際、そうなるだろう。私は、嘘はつ
かない。今言っていることは嘘ではない。
         ──カダフィー大佐/2011年4月30日
─────────────────────────────
 それでは、米国は何をやったのでしょうか。
 米国は、リビア第2の都市であるベンガジを中心に反政府軍を
密かに組織し、武器を貸与してカダフィー大佐の殺害を企てたの
です。その中心人物はベンガジ米領事館のスティーブンス大使な
のです。スティーブンスは大使ですから、当時国務長官をしてい
たヒラリー・クリントン氏の部下ということになります。このク
リス・スティーブンス大使について、副島隆彦氏は次のように述
べています。
─────────────────────────────
 このクリス・スティーブンスは、国務長官だったヒラリーの直
属の外交官で、CIAの人殺し部隊というか特殊部隊の責任者で
もあった。スティーブンス大便はその前年に、自分が直接指揮を
してカダフィ大佐を惨殺した。リビアの独裁者カダフィ殺し──
2011年10月20日の最高責任者はヒラリーである。ヒラリ
ーはカダフィが殺される2日前に、リビアの首都トリポリに自ら
乗り込んでいる。そして暗殺部隊と写真に収まっている証拠写真
がある。                  ──副島隆彦著
      『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社
─────────────────────────────
 カダフィー大佐が殺害されてから、クリス・スティーブンス大
使の周辺は危険が増していたのです。米国のベンガジ領事館は、
領事館としての最小限度の警備も設備も備えておらず、単なる派
出所に過ぎなかったからです。スティーブン大使は、何回もベン
ガジの警備体制を整えて欲しいとクリントン国務長官に申請した
のですが、クリントン国務長官は、なぜか、その申請のすべてを
却下したのです。    ──[孤立主義化する米国/090]

≪画像および関連情報≫
 ●カダフィーの真実/理想社会を創った英雄
  ───────────────────────────
  カダフィー大佐。
   2年前のリビア戦争で話題になった人です。最期は反政府
  軍らに殺害されます。「独裁者」とか「アラブの狂犬」とか
  悪の象徴であるかのような感じでしたね。確かに緊張みなぎ
  った強面ですし。腕っ節の強そうな剛毅な感じもします。
   40年以上も独裁者だった、とい言われていましたね。ま
  た武装もしていないリビア国民をも無差別に攻撃したとか。
  残虐非道で、悪魔のような人物。リビア国民は恐怖と圧政に
  強いられていたんだろうな、という感じでした。
   ですので、リビア戦争では、「民主主義万歳!」「反政府
  運動イケイケ!」という感慨をおそらく全世界の人達が持っ
  たでしょう。欧米メディアでは、カダフィー大佐を「悪者」
  として報道していましたし。無差別攻撃の映像が流れたり。
  そんな報道一色でした。これに対して「正義の味方」の「国
  連・NATO」といった感じでもあったりします。しかし、
  カダフィー大佐は、報道されていた人物とは真逆でした。
  「え!?」と想うかもしれません。最初知った時は、私も驚
  きました。カダフィーの本当の姿は、独裁者でも無ければ、
  狂犬でもありませんでした。なんとリビアの国民の全てを愛
  し、リビア国民の幸福の実現のために、本気で取り組んだ方
  だったのです。          http://bit.ly/1TCa8HJ
  ───────────────────────────

クリス・スティーブンス大使.jpg
クリス・スティーブンス大使
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2016年11月22日

●「カダフィー暗殺部隊と米国務長官」(EJ第4406号)

 ヒラリー・クリントン前国務長官の私的メール問題がいかに重
要であるかを理解するには、リビア・ベンガジ事件で何が起きて
いたかを知ることがきわめて重要です。なぜなら、これは犯罪で
あり、事実が明らかになれば、クリントン氏の逮捕は十分あるし
オバマ大統領の関与も取り沙汰される可能性があります。
 しかし、逆にいうと、国家機密に関する問題なので発表すれば
国益を害する恐れがあるので、そのまま不問にしてしまう可能性
もあるのです。いずれにせよ、トランプ新政権が発足すると、こ
の問題はもう一度蒸し返されることになると思います。
 リビア・ベンガジ事件というのは、リビア第2の都市ベンガジ
で、2011年9月11日(911)に米領事館が多数の暴徒に
襲われ、スティーブンス大使ら4名が殺害された事件です。領事
館の職員が4人も殺されるのは大事件です。
 ところが当初クリントン国務長官は「領事館職員1名死亡」と
発表。しかし、実際は領事館職員3名と特命全権大使のスティー
ブンス氏の4名が死亡しているのですが、そのことを在リビア大
使館も国務省も正確な情報を掴んでいなかったのです。
 その約1年前にカダフィー大佐が殺害されているのですが、そ
の時点では誰もカダフィー殺害事件と領事館襲撃事件とを結び付
けて考える人がいなかったのです。領事館が暴徒に襲撃されたの
は、2011年の米国映画『イノセンス・オブ・ムスリム』で、
予言者ムハンマドが残酷な殺人者であるとする部分の14分間の
映像がユー・チューブに動画投稿されたのが原因とであると米国
務省は強く主張したからです。
 しかし、これは事実と異なります。なぜ、領事館が襲撃された
のかについての真相を知るには、カダフィー大佐が誰によってど
のように殺害されたかを知る必要があります。
 まず、添付ファイルをご覧ください。この写真は、副島隆彦氏
の新刊書『ヒラリーを逮捕、投獄せよ』(光文社刊)の95ペー
ジ出ていた写真です。そこには、次の説明がついています。
─────────────────────────────
 2011年10月18日にトリポリの飛行場で。一緒に写真に
写っている者たちはリビア人ではなく、アフガニスタン人の傭兵
の殺人部隊だ。彼らは、このあと自国に帰って「事故で」殺され
る。首からぶら下げているのは、後ろの米軍輸送機に搭乗するた
めの許可証である。        ──副島隆彦著/光文社刊
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
          カラー写真の出所 http://bit.ly/2f9i32f
─────────────────────────────
 この写真を見て驚いたことがいくつもあります。1つは、この
時期に米国の国務長官が、なぜりビアの首都トリポリにいたのか
ということです。この時期というのは、リビアにはNATOの空
爆が行われている最中でいわば戦場なのです。そんな危険な場所
に国務長官がなぜ赴くのでしょうか。まるで陣頭指揮です。しか
もその2日後に、カダフィー大佐は殺害されているのです。
 副島氏によると、クリントン長官を取り巻いているのは、アフ
ガニスタンの殺人部隊であるということです。その全員が飛行機
の搭乗証をぶら下げているのをみると、後ろに写っている米国の
輸送機に乗ってどこかから飛んできたものと思われます。それは
おそらくアフガニスタンからだと思われます。
 クリントン国務長官を取り巻いているのは、アフガニスタン人
の傭兵で、彼らがカダフィーを殺害したといわれています。それ
にしても米国の国務長官がどうしてこのような殺人集団と一緒に
写真に収まっているのでしょうか。もしクリントン氏ではなく、
スティーブンス駐リビア全権大使であれば理解できます。なぜな
ら、スティーブンス氏は任務としてCIAと一緒にリビアで反政
府勢力を育てようとしていたからです。
 もうひとつ重要なことがあります。それは、「彼らはこのあと
自国に帰って「事故で」殺される」という部分です。これに関し
て、副島氏は次のように説明しています。
─────────────────────────────
 この暗殺部隊は、リビア人ではなくて、アフガニスタン人であ
る。彼らはこのあと自国のカブールに英雄として凱旋しようとし
た。だがカブール空港に着陸しようとして、「タリバーンの攻撃
があって」輸送機ごと爆殺された。口封じで殺されたのだ。ヒラ
リーというのは、こういう恐ろしいことをやってきた女なのであ
る。                    ──副島隆彦著
      『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社
─────────────────────────────
 カダフィー大佐を殺害するために、米国はアフガニスタンの傭
兵を雇い、目的を果たした時点で、その殺人部隊全員を殺害した
ことになります。爆破された輸送機はおそらく写真に写っている
米軍輸送機であると思われます。ひどい話ですが、CIAであれ
ばそのぐらいのことはやり兼ねないのです。
 このようにクリントン国務長官は、リビア事件に深く関与して
いたのです。そのとき、クリントン長官の指示を受けて動いてい
た人物は、次の2人です。
─────────────────────────────
       1. クリス・スティーブンス
       2.シドニー・ブルメンソール
─────────────────────────────
 「1」のクリス・スティーブンス氏は、当時駐リビア米国大使
であり、ベンガジ事件で殺害されています。「2」のシドニー・
ブルメンソールは、夫のクリントン元大統領時代にホワイトハウ
スで側近を務め、自分に最も近いアドバイザーの一人です。
 クリントン氏は、自分が国務長官になるとき、ブルメンソール
氏に国務省のポストを与えようとしたのですが、オバマ政権から
拒否されています。しかし、クリントン氏は何かとブルメンソー
ル氏にアドバイスを求め、私的な秘書のように扱っていたといわ
れています。      ──[孤立主義化する米国/091]

≪画像および関連情報≫
 ●新ベンチャー革命/2016年5月8日
  ───────────────────────────
   筋金入りの反戦主義者であるケリー米国務長官はヒラリー
  のカダフィ暗殺関与とベンガジ米領事館襲撃事件の闇を是非
  暴露して欲しい、それこそが日本を乗っ取っている戦争中毒
  勢力の弱体化に貢献する。
  1.次期米大統領選は、ヒラリーに仕掛けられていると思わ
    れるスキャンダル爆弾がさく裂するかどうかで決まる。
  2.本ブログでは今、次期米大統領選を取り上げていますが
    米共和党指名候補がトランプ氏で確定し、一方ヒラリー
    氏が米民主党指名候補として有力となっています。
   まったく政治経験のないトランプ氏が決選に勝ち残ったこ
  とから、この選挙戦は前例のない異例なものとマスコミは報
  じています。常識的に予想すれば、政治経験豊富なヒラリー
  の方が有利なはずですが、好事魔多しであるヒラリーにはス
  キャンダル爆弾が仕掛けられていると本ブログでは観ていま
  す。さて、本ブログは、日本を乗っ取っている米国戦争屋の
  ウォッチをメインテーマとしていますが、ヒラリーは米民主
  党における米戦争屋エージェントであると本ブログでは観て
  います、なぜなら、ヒラリーをNY州上院議員にしてくれた
  恩人は米戦争屋ボス・デビッドRFだからです。
                   http://bit.ly/2g9q61B
  ───────────────────────────

シドニー・ブルメンソール氏.jpg
シドニー・ブルメンソール氏
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2016年11月24日

●「党派性の強いベンガジ特別委員会」(EJ第4407号)

 そもそも「ヒラリーメール」(以下、この表現で統一)はいつ
頃からいわれるようになったのでしょうか。副島隆彦氏の本を中
心に時系列に事件を追ってみることにします。
 クリントン国務長官が退任したのは2013年2月1日のこと
です。同年3月3日に、あるハッカーがシドニー・ブルメンソー
ル氏のメールをハッキングしたのです。ブルメンソール氏という
のは、ビル・クリントン元大統領の補佐官であり、国務長官に就
任したヒラリー・クリントン氏の私的な相談相手を務めていた人
物といわれています。
 したがって、ブルメンソール氏のメールのなかには、当然のこ
とながら、クリントン国務長官とやりとりしたメールが多く含ま
れていたのです。このハッカーは、「グッシファー」と呼ばれる
ルーマニア人であり、ブルメンソール氏のメールアカウント経由
でクリントン国務長官のメールをハッキングしたことを明らかに
したうえで、クリントン氏が国務省の国家機密を勝手に使ってい
たという事実を暴露したのです。
 しかし、このことは表に出ていないので、ヒラリーメールのこ
とは多くの人の知ることにならなかったのです。その後その男は
ルーマニアで逮捕され、7年の刑を宣告されています。2015
年に米国に移送され、現在バージニア州の拘置所に収監されてい
るといわれます。
 ちょうどその頃、元CIA職員であるエドワード・スノーデン
氏は、政府が違法な情報収集をしているとして、主要メディアに
国家機密を送り始めたのです。実はそのなかに、ヒラリーメール
が多数含まれていたのです。しかし、身の危険を感じたスノーデ
ン氏は、2013年5月20日に香港に脱出し、6月23日にモ
スクワに政治亡命しています。
 2014年5月2日に米議会下院に「ベンガジ特別委員会」が
設置されます。委員長は共和党のトレイ・ガウディ氏です。この
特別委員会の設立は、ヒラリーメールが発覚したことと無関係で
はないのです。ヒラリーメール(一部ではあるものの)その内容
が尋常ならざるものであったからこそ、特別委員会を立ち上げた
ものと思われます。
 さらにその頃から、次期大統領選には、民主党からヒラリー・
クリントン氏が出馬することが既定事実になっており、共和党と
してはその意味からもヒラリーメールとの関連でベンガジ事件を
究明することによって、ヒラリー・クリントン氏の出馬を牽制し
たかったのではないかと考えられます。
 果せるかな、この特別委員会には民主党が猛烈に抵抗したので
その開催が3ヶ月間も遅れたのです。もし開催され、調査がはじ
まると、ベンガジ事件が暴かれ、オバマ政権にとって不利な事態
になると考えたうえでの抵抗です。
 2014年8月に調査が行われると、ベンガジ特別委員会の要
請に基づいて国務省はヒラリーメールの一部を提出したのです。
このあたりから、クリントン氏が国務長官時代の公務に、私的な
メールアカウントを使っていたことが明るみに出たのです。
 2014年11月に、ベンガジ特別委員会は、クリントン氏が
私的に使用したメールをすべて提出するよう命令しています。こ
れを受けて、ヒラリー事務所は3万490通の印刷されたメール
(約5万5千ページ)を国務省に提出しています。なお、このメ
ールの数については、いろいろいろな情報があってはっきりして
いないのです。
 2015年3月3日付けのニューヨーク・タイムズ紙が、ヒラ
リーメール問題を取り上げたのです。これによって、この問題が
世界的に知られることになったのです。このニューヨーク・タイ
ムズ紙の記事について、新田容子日本安全保障・危機管理学会主
任研究員は次のように報じています。
─────────────────────────────
 2015年3月3日付けのニューヨーク・タイムズ紙によると
クリントン氏が国務省時代の4年間、個人のメールアカウントを
使用して職務に当たっていたという。
 側近が5万5千ページに渡る同氏のメール内容をアメリカ国立
公文書記録管理局(米国連邦政府下の独立機関)へ提出した後に
明るみに出た。タイムズ紙はクリントン氏が職務用に個人メール
を使用した初めての政府高官ではないとしているが、このスクー
プは懸案を引き起こしている。評論家や政治家達がこの問題にか
かる倫理性と合法性について論じている一方、クリントン氏の通
信の安全性が取りざたされている。   http://bit.ly/2fpO21F
─────────────────────────────
 クリントン氏は、2015年10月22日のベンガジ特別委員
会の公聴会で「自分はきちんと職務を果たしている。やましいこ
とはしていない」と証言しています。この公聴会は、10時間に
わたり議論が行われましたが、新しい事実はほとんど出なかった
のです。肝心のメールが表には出ていないからです。
 しかし、ガウディ委員長は、ブルメンソール氏とやり取りした
メールの内容にこだわり、民主党委員と激しい論戦になったとい
います。BBC系のサイトは次のように述べています。
─────────────────────────────
 ガウディ委員長が、クリントン氏の友人のシドニー・ブルーメ
ンソール氏が、リビア関連の機密情報をメールでクリントン氏に
送っていた事実にこだわったのだ。ガウディ委員長は、ブルーメ
ンソール氏がクリントン氏のリビア政策に不当に影響を及ぼし、
スティーブンス大使よりも頻繁にクリントン氏に連絡をとってい
たのではないかと示唆した。
 民主党の委員たちはそれに強く反発し、ブルーメンソール氏の
証言内容を公開するよう要求した。そのやり取りをクリントン氏
は、面白がっているような表情で超然と眺めるだけだった。
                   http://bbc.in/2f5n6Wx
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/092]

≪画像および関連情報≫
 ●ベンガジ事件やメール問題の追及かわす/下院公聴会
  ───────────────────────────
   ワシントン(CNN)2012年に起きたリビア・ベンガ
  ジの米領事館襲撃事件をめぐり、ヒラリー・クリントン前米
  国務長官は22日、下院特別委員会の公聴会に出席した。
   襲撃事件ではクリス・スティーブンス駐リビア大使ら米国
  人4人が死亡した。公聴会では、下院の過半数を占める共和
  党の議員たちが、国務長官としてのクリントン氏の事件への
  対応や、長官在任中に個人の電子メールアカウントを使用し
  ていた件などを追及した。
   党派色の非常に強い公聴会で、多くの米国民の見方に影響
  を及ぼすものではなかったかも知れない。共和党は在外公館
  の警備に関するクリントン氏の失策が事件を招いたと考え、
  前国務長官が徹底調査に応じていないとの立場を崩そうとし
  ない。一方、民主党から見れば、公聴会は同党の大統領選指
  名候補争いで最も有力視されているクリントン氏を傷つける
  ために開かれた一種の「魔女狩り」だ。
   クリントン氏は終始落ち着いた様子で、質疑の主導権を握
  っていた。それでも時間が経つにつれ、共和党からの質問内
  容や、何度も発言に横やりを入れられることにいらだちの表
  情も見せていた。だが結果としてクリントン氏は、約11時
  間にわたる公聴会をさしたる痛手も受けずに切り抜けること
  ができた。            http://bit.ly/2gfZTAr
  ───────────────────────────

ベンガジ特別委員会/公聴会でのクリントン氏.jpg
ベンガジ特別委員会/公聴会でのクリントン氏
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2016年11月25日

●「トランプ次期政権は対中強硬政権」(EJ第4408号)

 トランプ次期米大統領は、日本時間の22日、就任初日に実行
する政策を示したビデオメッセージで、「TPPから離脱する」
という声明を発表しています。選挙中にあれほど明確にいってい
たのですから、「やっぱり!」という感じです。
 TPPをアベノミクスの成長戦略の柱に位置づけていた安倍首
相としては、さぞがっかりしていると思いますが、TPPはそれ
ほど日本にとって利益のある協定なのでしょうか。
 当の安倍首相も首相になる前はTPPに反対だったはずです。
それを米国に歩調を合わせるため、それが中国封じ込めにもつな
がるとの判断から加盟に踏み切った経緯があります。それに協定
の内容の細部はまだ国民に十分知らされてはいないのです。
 元大阪市長の平松邦夫氏は、TPPについてブログで次のよう
にコメントしています。
─────────────────────────────
 「戦後史の正体」で孫崎享さんが指摘されているように、対米
追随外交の歴史が日本をここまで「属国、属領」的な形に落とし
込めているという指摘をどう受け止めるのでしょうか。
 東京新聞がすっぱ抜いたように、見えない情報、いや意図的に
見せない情報の存在が明らかになっているのに、政治家も、大手
メディアも、経済界も「見えないことにしていきましょう」とい
う前時代的な国民懐柔(誘導)策がいつまで通用すると思ってい
るのでしょうか。
 自民党は、「日本国憲法」をアメリカから押し付けられた憲法
であり、「自主憲法」制定を党是としていた筈。なのに、国民の
暮らしを支えているはずのわが国の健康保険制度、ただでさえ確
かでない食糧自給、そんなこの国の現状を、より、アメリカ主導
型の見せかけの貿易自由協定に踏み込もうというのか。
           ──平松邦夫氏 http://bit.ly/2fT1D20
─────────────────────────────
 確かに中国のなりふり構わない力にものをいわせる現状変更は
許しがたいものがあります。しかし、対中国封じ込めに関しては
ここにひとつの重要な情報があります。
 11月22日発行の「夕刊フジ」の冒頭で、ジャーナリストの
加賀孝英氏が、米情報当局者の間で、トランプ氏が「対中強硬方
針を決断した」という情報が広がっていると伝えています。そし
て、加賀孝英氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 トランプ氏は選挙期間中、日本やドイツも批判していたが、一
番激しく攻撃していたのは中国だ。彼は以前から「アンチ・チャ
イナ」を前面に出していた。いわく、「大統領就任初日に中国を
『為替換作国』に認定する」「中国のハッカーや模造品に規制強
化する」「中国の輸入品に45%の関税を課す」「中国の覇権主
義を思いとどまらせる。米軍の規模を拡充し、南シナ海と東シナ
海で米軍の存在感を高める」・・。まさに中国との「通貨戦争」
「貿易戦争」「全面衝突」すら辞さない決意表明ではないか。
        ──2016年11月22日発行「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 加賀氏はもうひとつ重要な情報を伝えています。それは「なぜ
トランプ氏は勝利できたのか」ということです。それは、米国防
当局と米軍、そしてFBI周辺の陰ながらのバックアップがあっ
たからだという考え方です。つまり、いわゆる「隠れトランプ支
持者」とは、国防当局と軍とFBIであるというわけです。
 加賀氏は、複数の米軍、米情報当局関係者から得た情報として
次のように述べています。
─────────────────────────────
 国防当局と軍は、オバマ政権の「対中腰抜け政策」に激怒して
いた。彼らは常に、南シナ海や東シナ海で、中国への強硬策を進
言してきたが、オバマ政権は口だけで逃げた。米国のアジアでの
威信は地に落ち、混乱した。オバマ政治を継続するヒラリー氏は
容認できなかった。         ──前掲の「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 確かにオバマ大統領の対中国政策は、ひどいものだったといえ
ます。その証拠に任期中に国防大臣が3人も辞任しています。ロ
バート・ゲイツ、レオン・パネッタ、チャック・ヘーゲル3氏が
辞任し、現在は4人目のアシュトン・カーター氏が国防長官を務
めています。こんなことは前代未聞です。
 トランプ氏は、次期国防長官に対中強硬派で知られるジェーム
ズ・マティス元中央軍司令官を検討しているといわれます。この
マティス氏は海兵隊上がりで、最終階級は大将。NATO変革連
合軍最高司令官、アメリカ統合戦力軍(USJFCOM)司令官
アメリカ中央軍(CENTCOM)司令官などの要職を歴任して
います。もし、マティス氏に決まると中国は大ショックです。
 さらにトランプ氏は、ロシアのプーチン大統領と会い、連携を
考えています。もし、これが実現すると、シリア内戦をめぐる米
露対決は解決し、イスラム国掃討作戦で結束できます。
 そのためにトランプ氏は、今後軍事費を約300億ドル(約3
兆3237億円)増額させ、米軍の大増強を図るものと思われ、
同盟国にも相応の負担増を求めてくると思われます。
 こういった話は、11月17日の安倍VSトランプ会談でも出
ているはずです。アジア問題を重視しているからこそ、他国に先
がけてトランプ氏は安倍首相と会ったのです。そのため、中国は
相当神経質になっているのです。
 確かに加賀氏の情報が正しいとすると、FBIのコミー長官が
ヒラリーメール問題を小出しにして、クリントン氏を揺さぶった
ことは理解できます。それはトランプ氏勝利に貢献したのです。
FBI内部では「なぜヒラリー氏を起訴しないのか」という不満
がうず巻いていたといわれます。
 コミー氏は、国防総省に近いロッキード・マーチン社の役員も
務めており、内部から相当強い突き上げがあったものと考えられ
ます。         ──[孤立主義化する米国/093]

≪画像および関連情報≫
 ●次期米大統領、対中政策は強硬に/WSJ
  ───────────────────────────
  【上海】中国の指導部は、米大統領選挙の候補者たちによる
  中国バッシングに耳を塞ぐことを学んできた。米選挙戦での
  結局は無害な気まぐれだとして、そうしたバッシングを無視
  したのだ。投票が終われば元の鞘に収まっていつも通りにな
  るだろう、と彼ら中国指導者は予想している。
   彼らは何度となく正しかった。ニクソン大統領による19
  72年の訪中以降、共和党であれ民主党であれ新政権は中国
  政策について、前政権が中断したところからまた始めるのが
  常だった。
   だが、今回の選挙は、従来とは異なる結果をもたらすはず
  だ。それはニクソンの関与政策のおおざっぱな練り直し(つ
  まり米政策担当者サークルと企業役員室において依然として
  根強い支持を集めているアプローチ)ではなく、ある種の再
  調整である。中国に向けた米国の態度は現在、政策スペクト
  ラム全域で硬化しつつある。ヒラリー・クリントン氏とドナ
  ルド・トランプ氏のいずれが勝つにしても、勝者は貿易と投
  資から南シナ海に至るまで、さまざまな争点で従来以上に強
  硬な路線を追求する公算が大きい。一方、中国の習近平国家
  主席は、毛沢東時代の反米的な態度とスローガンをこれまで
  復活させてきたが、来週の米大統領選投票を前に自らの権力
  を一段と高めた。       http://on.wsj.com/2gnPeBq
  ───────────────────────────

ジェームズ・マティス氏.jpg
ジェームズ・マティス氏
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2016年11月28日

●「激戦3州の投票数再計算の可能性」(EJ第4409号)

 米大統領選は、トランプ氏が勝利し、次期大統領に決まってい
ますが、厳密にいうとまだ確定していないのです。12月19日
に選挙人による投票が行われ、来年1月6日に正式に次期大統領
が決まります。そして、1月20日に大統領就任式が行われるこ
とになっています。
 11月23日、米インターネット・メディアである「クック・
ポリティカル・リポート」は、今回の米大統領選の正式な得票数
は、次の通りであることを発表しています。
─────────────────────────────
                   最終得票数
    クリントン氏 ・・ 6422万7373票
     トランプ氏 ・・ 6221万2752票
             ―――――――――――
               201万4621票
─────────────────────────────
 これによると、敗者のクリントン氏の方が201万票多くなっ
ています。しかし、米国の大統領選挙は、民主党と共和党が州ご
とにそれぞれ決めた選挙人を一般投票で選ぶのであって、大統領
候補者を直接選ぶのではないのです。
 選挙人はあらかじめ投票する候補者を決めており、そのため、
獲得選挙人が多い方が勝利するのですが、選挙人は絶対にあらか
じめ決めている候補者に、投票しなければならないというわけで
もないのです。一般的にはあり得ないことですが、12月19日
も造反が起きる可能性はゼロではないのです。そういう意味では
大統領選の勝負はまだついていないといえます。
 今回の米大統領選は何もかも異常であり、何が起きても不思議
ではないのです。2016年11月25日付の朝日新聞には次の
記事が出ています。
─────────────────────────────
 今月8日に投開票された米大所額選で、激戦となったペンシル
ベニア、ミシガン、ウィスコンシンの3州について再集計を求め
る動きが広がっている。コンピューターヘのハッキングで投票が
不正操作された可能性があるとしている。
 ミシガン大のコンピューター科学者アレックス・ホルダーマン
教授らは、以前から州の集計システムの脆弱性を指摘していた。
大統領選では、民主党全国委員会やクリントン前国務長官の陣営
幹部のメールがハッキングされ、内部告発サイト「ウイキリーク
ス」が次々暴露。ロシアの関与が指摘されている。科学者のみな
らず、支持者が投票用紙の再点検と再集計を求める請願書を州に
提出する動きもある。
        ──2016年11月25日付/朝日新聞朝刊
─────────────────────────────
 確かにこれらの激戦各州での両候補者の差は1・2ポイント以
下とわずかであり、もし3州で逆転すると、勝者と敗者は逆転し
クリントン氏が勝利することになります。単なる集計ミスではな
く、ロシアによるとみられる不正操作が原因とみられており、再
集計される可能性はあります。
 今のところクリントン陣営に再集計を求める動きはないですが
トランプ大統領誕生に反発する勢力はけっして少なくなく、そう
いう勢力が、今後再集計を強く求める可能性は高いといえます。
カルフォルニア州などは合衆国離脱まで口にしているのです。
 米国では大統領が代わるというのは大変なことなのです。政権
交代によって閣僚が代わるのは当然のことですが、閣僚以外に約
3000人は“首が切られる”ことになります。これらは政治任
用されている公務員です。その数は全体の公務員の10%以下に
抑えられるようにはなっているものの、やはり、それは大移動で
す。約3000人の内訳は次の通りです。
─────────────────────────────
     1.  高級管理職 ・・・ 1050人
     2.  上級管理職 ・・・  650人
     3.スケジュールC ・・・ 1290人
─────────────────────────────
 「1」と「2」は管理職ですが、「3」のスケジュールCとは
幹部の秘書が中心であり、一般職も含みます。主がいなくなれば
“首が切られる”のは当然です。
 この大統領交代、とくに今回のように党の代わる交代(民主党
から共和党)は大変な騒ぎになります。したがって、どのような
ことが起きても不思議ではないのです。この政権交代の騒ぎにつ
いて、副島氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 (政権交代になると)ワシントンの各省の高級官僚どもが、大
量に失職する。総取り替えになる。アメリカ人は、官僚、公務員
たちでも政権交代の時に首を切られる。年功序列で、定年まで安
心、ということはない。日本の公務員制度にも、民間企業と同じ
首切り、失業があるべきなのだ。(中略)
 官僚たち内部のこのイス争い(権力闘争)が、今、アメリカの
各省の本省の、幹部公務員たちの間で起こっている。それで朝か
ら晩まで、この人事を巡る大騒動の噂話でもちきりで、ワシント
ン全体を揺るがしている。公務員としての仕事どころではない。
ものすごい騒ぎとなって、アメリカ政治が、激しく揺れている。
失業したら、いまどきは、アメリカの上級公務員でも、なかなか
再就職先は、簡単には見つからない。──副島隆彦著/光文社刊
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
─────────────────────────────
 このように大統領選挙は、その結果によって、自分の運命が大
きく変化してしまう人がたくさんいるのです。閣僚クラスになる
と、もともと大学教授や事業家などの何らかの職業を持っており
元に戻るだけですが、それはレアケースなのです。ほとんどの人
は職を失ってしまうのです。彼らにとってそれは死活問題である
といえます。      ──[孤立主義化する米国/094]

≪画像および関連情報≫
 ●米大統領選、専門家が3州の結果の再確認提案
  ───────────────────────────
   ミシガン大学のコンピュータサイエンスを専門とする教授
  のJ. Alex Halderman氏ら3人の専門家は、 投票結果の確認
  を呼びかけている。電子投票マシンのハッキングが可能であ
  ることを示す大きな証拠があるという。ただし、ほとんどの
  専門家が、ハッキングによって国政選挙に影響を与えるのは
  非常に難しいはずだという見解で一致している。このような
  マシンは、3州の複数の郡で使用されていたと Halderman氏
  は指摘している。
   Halderman 氏は、そのようなハッキング行為があったこと
  を示す証拠はないと認識しているという。それでも、得票数
  が拮抗したいくつかの州では、不安を取り除くため、また多
  くの電子投票マシンが生成する紙のバックアップを常に確認
  するという前例を作るために、再集計する価値があると同氏
  は主張している。
   Halderman氏は、 「選挙がハッキングされたというよりも
  世論調査が体系的に誤っていたというのがおそらく最もあり
  得る説明だと思う」とMedium のブログに記した。「しかし
  このような一見あり得ないような説明のうちの一方が他方よ
  りも圧倒的に可能性が高いとは思わない」(Halderman氏)
                   http://bit.ly/2gtlXp7
  ───────────────────────────

米国バージニア州投票所.jpg
米国バージニア州投票所
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2016年11月29日

●「失敗したヒラリーメールの火消し」(EJ第4410号)

 米大統領選におけるテレビ討論において、トランプ氏とクリン
トン氏は次のやり取りをしています。
─────────────────────────────
 クリントン:ドナルド・トランプのような人間に米国の法律が
       任されていないのは喜ばしいことだ。
  トランプ:もし、俺様が法律を担う立場なら、お前は確実に
       刑務所行きだ!
─────────────────────────────
 まことに低レベルのやり取りですが、クリントン氏には、リビ
ア侵攻、アルカイダ支援、ショックドクトリン、それにクリント
ン財団、ウォール街との癒着、そして公務に私的メールの使用と
まるで米国版「疑惑の総合商社」です。これでもし選挙に負ける
と「刑務所行き」も十分あり得ることだったのです。実際にヒラ
リーメール問題についてトランプ氏は、特別検察官を任命して、
問題を追及すると明言していたのです。
 しかし、選挙終了後、トランプ氏は、ヒラリー疑惑をどうする
のかについてニューヨーク・タイムズ紙の記者に問われると、次
のように答えているのです。
─────────────────────────────
 私は前に進みたい。後退したくない。クリントン一家を傷つけ
たくないんだ。本当にそんなことしたくない。彼女は大変な思い
をしてきたし、いろいろな形でとても苦しんできたからね。
                 ──ドナルド・トランプ氏
─────────────────────────────
 まるで「仏のトランプ」への変貌です。しかしこれについて、
トランプ氏の支持者たちは強く反発しています。共和党支持者で
ある「レッド・ステイト・コム」は、約束していた特別検察官を
任命しないなら、「この候補は、これまで本人が主張していたよ
うな人間ではないという赤裸々な事実」が明かされることになる
と書いています。赤(レッド)は共和党の色であり、共和党の強
い州は「レッド・ステイト」と呼ばれるのです。
 また、トランプ氏を強力に支持してきた右派メディア「ブライ
トバート・ニュース」は、「約束が違う」とトランプ氏の立場修
正を非難しています。ブライトバートの前最高経営責任者は、ス
ティーブ・バノン氏であり、彼は次期トランプ政権の首席戦略官
に任命されているので、ヒラリーメール問題がトランプ氏のいう
ようにこのままになるとはとても思えないのです。
 今回の米大統領選においてクリントン陣営は、終始ヒラリーメ
ールの対応に追われ、その結果選挙に敗れるという最悪の結果に
終わっています。しかも、この問題は大統領選が終了してもまだ
終わっていないのです。
 ヒラリーメール問題があまねく世界の知るところとなったのは
2015年3月3日付のニューヨーク・タイムズ紙の報道です。
その翌日、AP通信がヒラリーメールを追跡した結果、ニューヨ
ークチャパクア地区にあるクリントン氏の自宅のサーバーにたど
り着いたと報道しています。
 クリントン氏のITの知識は十分ではなく、自宅のサーバーは
元国務省職員でクリントン氏の選挙スタッフのブライアン・パグ
リアンス氏によってセットされたこともわかっています。しかし
そのサーバーには何のセキュリティ対策も施されていなかったと
いわれます。これでは、メールが流出するはずです。もし表に出
せないメールをやり取りするのであれば、もっと厳重なセキュリ
ティー対策を施すべきであったのです。
 そして、ニューヨーク・タイムズ紙報道の1ヶ月後の2015
年4月12日に、ヒラリー・クリントン氏は大統領選への出馬を
正式に表明しています。クリントン氏にとって最悪のタイミング
での出馬表明になってしまったといえます。
 その点日本の政治家は、閣僚でも平気で個人のメールアカウン
トを使うし、普通の携帯電話で重要な会話をやり取りしているの
です。安倍首相ですらドコモのケータイを使っています。要職に
ある者は、たとえ個人的な対話でもすべてが公務になると認識す
べきです。ヒラリーメールの深刻さについて、副島隆彦氏は次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 ヒラリーが国務長官に就任した(2009年1月)後、すぐに
この私的なメール・アカウントを契約して使い始めた。ヒラリー
が、国家機密が厳重に保護されている国務省のアカウント(暗号
化され三重に防衛されている)を使わずに、個人アカウントのメ
ールで、自分の手下、配下の国務省の下部組織である、CIAの
特殊部隊(暗殺部隊、破壊工作班)をいいように使っていた。そ
れが、ヒラリー・メールの公表とともに今どんどんバレようとし
ている。それがまさしくべンガジ事件であり、ヒラリー・メール
問題だ。ヒラリーはもう逃げられない。
                 ──副島隆彦著/光文社刊
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
─────────────────────────────
 クリントン陣営としては、当然ヒラリーメール問題の火消しを
必死になってやっています。気になるのは、2016年6月27
日に、ロレッタ・リンチ米司法長官が、ビル・クリントン元大統
領と密談していたことです。ヒラリー氏の夫であるビル・クリン
トン元大統領はこの事件の利害関係人であり、司法長官は会うべ
きではないのです。
 それも話し合っている場所が異常な場所なのです。アリゾナ州
の空港に駐機していた司法長官専用機の中で、2人は何かを話し
ていたのです。時期が時期だけにそれがヒラリーメール問題であ
ることは明らかであると思います。
 しかし、後に何を話したのかについて聞かれたリンチ司法長官
は「ビル・クリントン氏とは孫とゴルフの話をしただけ」と答え
ています。そんな話なら、空港のティールームでも話せばよいの
です。         ──[孤立主義化する米国/095]

≪画像および関連情報≫
 ●ヒラリー氏/夫の失態で窮地に!
  ───────────────────────────
   クリントン元大統領と言えば、マサチューセッツ州の予備
  選でも選挙違反と思しき行動を取って一部で猛烈な批判を浴
  びたものです。今度は、妻ヒラリーのメール問題の調査をめ
  ぐり最終段階にある米司法省の長官に歩み寄るという失態を
  犯してしまいました。
   オブザーバーによると、アリゾナ州のフェニックス空港に
  て離陸するはずのクリントン元大統領が乗ったプライベート
  ・ジェット機は、ロレッタ・リンチ米司法長官が控える航空
  機が同じ滑走路に着陸するまで待機していたといいます。明
  らかに、クリントン元米大統領が面会する機会を伺っていた
  と解釈できますよね?リンチ米司法長官と言えば、当時大統
  領だったクリントン氏にNY東部地区連邦地方裁判所の判事
  に指名された人物です。
   妻のクリントン候補は暫く沈黙していたものの、FBIで
  聴取を受けた後にNBCのインタビューに応じるなかで夫と
  ロレッタ米司法長官との面会に触れ「短い、偶然の機会だっ
  た」と振り返っていました。その上で、両者の顔合わせがい
  かに政治的に批判を招くものだったかとお互い認識したと言
  及、二度とこうした面会はないと述べた一方で「後の祭り」
  と断っていました。もともと、クリントン元大統領は空港で
  誰かに話しかける癖があったようです。
                   http://bit.ly/2gtUVQW
  ───────────────────────────

ロレッタ・リンチ米司法長官.jpg
ロレッタ・リンチ米司法長官
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2016年11月30日

●「クリントン周辺で連発する不審死」(EJ第4411号)

 2016年の米大統領選の最中の6月〜8月に、クリントン陣
営に何らかの関係のある人物が次々と5人も亡くなっています。
それらは次の人物です。
─────────────────────────────
 1. ジョン・アッシュ ・・ 2016年6月22日死亡
 2.   セス・リッチ ・・ 2016年7月10日死亡
 3. ジョー・モンタノ ・・ 2016年7月25日死亡
 4.ヴィクター・ソーン ・・ 2016年8月01日死亡
 5.ショーン・ルーカス ・・ 2016年8月04日死亡
─────────────────────────────
 「1」は、ジョン・アッシュ氏の死です。
 ジョン・アッシュ氏は、黒人エリートの国連職員ですが、民主
党本部とヒラリー・クリントン氏のことで、議会で宣誓証言をす
る前日(諸説あり)の6月22日に亡くなっています。ヒラリー
氏に不利な証言をする予定だったようです。死因は、自宅でベン
チ・プレスをしているときに心臓麻痺を起して亡くなったことに
なっています。なお、ニューヨーク州ドッブス・フェリーの警察
当局は、後になって死因を修正、練習時に喉を損壊し亡くなった
としています。
 しかし、ジョン・アッシュ氏の場合は一応病死であり、死亡に
よって、ヒラリー氏を利することはあっても、ヒラリー陣営の仕
業とはいえないと考えられます。
 「2」は、セス・リッチ氏の死です。
 セス・リッチ氏は28歳、民主党の全国委員会の幹部職員です
が、FBIの捜査官との面会に向う途中で、銃弾を数発受けて死
亡しています。7月10日のことです。
 セス・リッチ氏は、民主党本部の腐敗というか不祥事に強い怒
りを持っていて、それらを内部告発しようとしていたのです。と
くに当時民主党本部のやっていたバーニー・サンダーズへの選挙
妨害や、ヒラリーメールの証拠をFBIに提出しようとして、そ
れによって被害を受ける関係者に殺されたものと思われます。
 セス・リッチ氏が暴こうとしていたことは、ロシア情報局が実
施したとみられるハッキングによって、結果として暴かれること
になったのです。これに関する次の記事があります。
─────────────────────────────
 米国民主党全国委員会のコンピューター・サーバーがハッキン
グされ、民主党本部によるバーニー・サンダース議員への意図的
なサボタージュを示す2万通のEメールがウィキリークスによっ
て報じられました。
 この事件の責任を取って、民主党全国委員会の委員長であるデ
ビー・ワッサーマン・シュルツ議員が辞任しています。このハッ
キングには、ロシア情報局が関連していたと見られ、FBIやC
IAの捜査では、米国大統領選挙において、民主党ヒラリー・ク
リントン候補のダメージを狙い、ドナルド・トランプ氏の当選を
促す意図があったという見方が強まり、ホワイトハウスもこれを
確認しています。           http://bit.ly/2gueTeg
─────────────────────────────
 「3」は、ジョー・モンタノ氏の死です。
 ジョー・モンタノ氏は民主党全国大会の元議長で、セス・リッ
チ氏と同様に、ヒラリー・クリントン氏が選出されるために行っ
てきた違法的な活動をすべて把握していたといわれます。
 ジョー・モンタノ氏の死については、「ヒラリーと不審な仲間
たち」のサイトに次のように出ています。
─────────────────────────────
 ジョー・モンタノ氏の家族によると、彼が遺体で発見されたの
は、民主党全国大会に出席するため、でかける準備をしている時
だったという。家族によると彼の健康は絶好調だった。
 彼の死は民主党全国大会(DNC)の当時、議長だったデビ―
・ワッサーマン・シュルツの件を表沙汰にしたウィキリークスの
暴露から数時間内のことだった。モンタノはまた、副大統領候補
であり、機密にあずかってると推察されているティム・ケインの
補佐役でもあった。インサイダー紙によるとモンタノはDNCの
不祥事とティム・ケインについてあまりにも知りすぎていたと解
説している。             http://bit.ly/2gufnNT
─────────────────────────────
 「4」は、ヴィクター・ソーン氏の死です。
 ヴィクター・ソーン氏については、その著書を副島隆彦氏は翻
訳しています。副島氏はソーン氏について、驚きをもって次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 ヴィクター・ソーン氏が死んだのは8月1日だ。彼は作家で、
クリントン財団の秘密を暴いた本を書いた人だ。自分の家のそば
の山で、銃弾を浴びて死んでいるのが発見された。何と、このヴ
ィクター・ソーン氏は、私、副島隆彦が、2006年に翻訳出版
した『次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた』(徳間書
店)の著者である。(中略)私はヴィクター・ソーン氏とメール
を交信しながら、この本を翻訳した。だから、人ごとではない。
私は、彼を同志、仲間として、追悼する。
                 ──副島隆彦著/光文社刊
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
─────────────────────────────
 「5」は、ショーン・ルーカス氏の死です。
 彼は民主党のサンダース氏の支持者で、クリントン財団と民主
党本部(DNC)の秘密の利益供与を調べていた弁護士です。ル
ーカス氏は、DNCの不正行為を暴露しようと準備していたので
す。彼は、8月4日に自宅で不審な死を遂げています。
 このように、クリントン陣営と民主党にとって都合の悪い人物
が、6月〜8月に実に5人も死亡しているのです。しかし、米国
のメディアはこのことをほとんど報道していないのです。なぜで
しょうか。       ──[孤立主義化する米国/096]

≪画像および関連情報≫
 ●クリントン夫妻の友人47人の不審死
  ───────────────────────────
   夫は第42代米国大統領ビル・クリントンで、自身も米国
  初の女性大統領を狙うヒラリー・クリントン。昨今、彼女の
  名前をメディアで見聞きしない日はない。しかしビルとヒラ
  リーの周囲には、どす黒い疑惑が渦巻いていた──!?
   クリントン夫妻の周りに「不自然な死」が多いことをご存
  じだろうか?実は最近になって、複数の海外メディアがこの
  疑惑を報じていて、その数何と47人。「クリントン夫妻の
  友人たちは、変な死に方をする癖をお持ちのようだ」と皮肉
  られている。その中でも特に有名な10人を紹介したい。
  ■ジェームス・マクドゥガル:1998年/心臓発作
   マクドゥガルはアーカンソー時代、クリントン夫妻の不動
  産ビジネスのパートナーであった。しかしこのビジネスには
  不正があり、後に社名を取って「ホワイトウォーター疑惑」
  と呼ばれるようになった。マクドゥガルはこの不正を訴追さ
  れ、3年半の懲役刑を受けて服役中に持病の心臓発作を起こ
  した。彼が発作を起こした時、除細動器が刑務所に常設され
  ていたが使用されず、時間のかかる遠方の福祉病院に運ばれ
  た。彼はクリントン夫妻を訴追しようとしたスター検察官側
  の最重要証人として裁判に出廷予定であったが、彼の死によ
  り訴追は困難となった。      http://bit.ly/2f7VTPN
  ───────────────────────────
 ●写真出典/──副島隆彦著の前掲書より

クリントン周辺で次々と起きる不審死.jpg
クリントン周辺で次々と起きる不審死
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2016年12月01日

●「異様づくめだった両党の全国大会」(EJ第4412号)

 今回の米大統領選には、予備選の段階から各種の日本のメディ
アは多くの記者を派遣し、長期間にわたって大統領選の取材して
います。しかし、肝心なことは何も伝えてきていないのです。
 今振り返ると、最終的に2大政党の候補者を決定する共和党全
国大会と民主党では、両方とも異常なことが起きていたことを日
本のメディアは何も伝えていません。
─────────────────────────────
 1.共和党全国大会 ・・ 2016年7月18日〜21日
 2.民主党全国大会 ・・ 2016年7月25日〜28日
─────────────────────────────
 これらの両大会は、予備選を勝ち抜いた両党の候補者を正式候
補者として決定し、それぞれの党が一丸となってその正式候補者
を応援し、盛り上げる大会のはずです。しかし、今回は両大会と
もきわめて異常な状況に陥っていたのです。
 共和党全国大会については、本来であれば、党の長老や大統領
経験者が出席し、党の正式候補者であるドナルド・トランプ氏を
党の支持者に紹介し、その健闘を讃えるとともに、本選に向けて
激励するべきですが、そのようになっていないのです。
 なぜなら、党の重鎮や大統領経験者はほとんど大会を欠席し、
そのため、トランプ陣営としては、4日間のスケジュールが埋ま
らず、1日目からトランプ氏本人が登場し、家族などをフル動員
して、家族が応援演説をやっています。
 2日目からは、既に述べたように、クリスティーニュージャー
ジー知事が登壇し、トランプ氏を支持すると表明し、対抗相手で
あるヒラリー・クリントン氏の模擬裁判を実施したのです。彼は
ヒラリー氏の罪状を読み上げ、ひとつずつ「彼女は有罪か」と会
場に問いかけると、会場からは「ギルティー!(有罪だ)」の大
合唱が起こっているのです。そして、「ヒラリーを逮捕、投獄せ
よ!」と声を揃えるのです。異常そのものです。
 この状況を日本のメディアは取材しているはずですが、大会1
日目は伝えたものの、2日目以降は一切伝えていないのです。ど
うしてでしょうか。日本のメディアもクリントン氏に不利な情報
は伝えたくないのでしょうか。これについて、副島隆彦氏は、自
著の「まえがき」の冒頭で、次のように書いています。
─────────────────────────────
 いったい、超大国アメリカの政治に何が起きているのか。なぜ
ヒラリーは逮捕され、裁判で有罪判決を受け、刑務所に入らなけ
ればならないのか。その理由を日本国向けに書く人がいない。だ
から私が詳しく書く。
 アメリカの共和党の党大会(7月19日)で、7千人の党員が
集まった大会会場で、「ロック・ハー・アップ」──「ヒラリー
を逮捕せよ、投獄せよ」の激しい怒号の大合唱が沸き起こった。
(添付ファイル)の大会会場の様子の写真のとおりである。とこ
ろが不思議なことに日本ではこういう真実が少しも広まらない。
                 ──副島隆彦著/光文社刊
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
─────────────────────────────
 この共和党全国大会と負けず劣らず異様だったのは民主党全国
大会も同じです。民主党大会では、共和党の大会と違って、表面
上は、オバマ大統領が応援に駆け付け、党の重鎮も出席し、通常
の大会運営が行われたのですが、実際は開催前からてんやわんや
だったのです。
 というのは、民主党全国大会の4日前の7月22日のことです
が、とんでもないものが内部告発サイトのウィキリークスに公開
されたのです。それは民主党の全国大会(DNC/デモクラット
・ナショナル・コミティ)のサーバーがハッキングされ、デビー
・ワッサーマンシュルツ委員長のメールが大量に公開されたので
す。副島氏によると、民主党全国委員会のトップは、日本でいえ
ば、自民党の幹事長に相当する大物だということです。
 問題は、そのメールの中身です。それは、大統領選の予備選に
おいて、党の全国委員会のメンバーが、予備選で、好調な同じ民
主党の候補者であるサンダーズ氏の評判をいかに下げるか、どの
ように対抗するかについて指示したり、どのように選挙運動を妨
害するかについて指導したりする内容だったのです。
 当然のことですが、これにサンダーズ支持派は怒り狂ったので
す。この反発を受けて、全国大会前日の7月24日、ワッサーマ
ン・シュルツ全国委員長は、大会閉幕と同時に辞任すると表明し
たのです。
 そのようにして、25日から行われた民主党全国大会の様子に
ついて、副島隆彦氏は次のように書いています。
─────────────────────────────
 そして民主党大会が開かれた4日間にもヒラリー非難の激しい
嵐が続いた。ヒラリーがやってきたことは犯罪だ、という怒りが
まじめな民主党員の活動家たちの中に広がっていった。「代議員
35人が、ウォーク・アウト(大会場から抗議の退場)をした」
と報じられたが、実際にはそんな少数ではなくて、300人以上
いた。3千人の代議員のうちの300人だ。
 彼らは、このあと会場の外のプレス・テントの前に座り込んで
「真実を世界中に報道してください」と要請した。しかしメディ
アは知らん顔だ。やがて、大会を警備する警備員たちに排除され
た。彼ら、ヒラリー反対派は「ヒラリー・フォー・プリズン(ヒ
ラリーを刑務所へ)」の看板(プラカード)を掲げて行進した。
                ──副島隆彦著の前掲書より
─────────────────────────────
 何のことはない。共和党全国大会も民主党全国大会も両方とも
ヒラリー・クリントン氏を非難しているのです。共和党の場合は
まだわかるとしても、民主党全国大会までクリントン氏を非難す
るのはきわめて異常なことです。それにしてもロシアは、なぜ、
ハッキングしたのでしょうか。
            ──[孤立主義化する米国/097]

≪画像および関連情報≫
 ●「民主党はサンダースを勝たせたくなかった」
  ───────────────────────────
   7月25日から4日間の日程で始まる、アメリカ民主党全
  国大会。ところが、開幕の前日から波乱が起きた。党全国委
  員長のデビー・ワッサーマンシュルツ氏が「党大会が終わっ
  た後に委員長を辞任する」と発表したのだ。
   引き金になったのは、22日に発表された内部告発サイト
  「ウィキリークス」の告発だ。同サイトは、民主党全国委員
  会の幹部の間で交わされた1万9252通にも上るEメール
  を公開。民主党予備選挙で、ヒラリー氏がサンダース氏に勝
  つよう働きかけていたことを明らかにした。
   例えば、委員会の最高財務責任者である、ブラッド・マー
  シャル氏は、サンダース氏が「無神論者」であることを理由
  に同氏に不利な選挙戦を仕掛けようとしたと思われるEメー
  ルを送っている。メールでは人物の名前は書かれていないが
  サンダース氏だとみられている。マーシャル氏自身は「メー
  ルはサンダース氏について触れたものではない」と疑惑を否
  定している。
  民主党がサンダース氏を、支援しない態度をとっていること
  を、党全国委員長のワッサーマンシュルツ氏は、何カ月前か
  らも批判されていた。同氏は11月の大統領選までは委員長
  の座に留まると主張していたが、今回のウィキリークスのE
  メール公開により、辞任を避けられなくなった。
                  http://huff.to/2gs7Qjf
  ───────────────────────────
 ●写真出典/副島隆彦著の前掲書より

共和党全国大会/2016.jpg
共和党全国大会/2016
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2016年12月02日

●「ロシアの2つのハッカーグループ」(EJ第4413号)

 民主党全国委員会(DNC)のサーバーへのハッキングは、本
当にロシアのやったことなのでしょうか。
 民主党全国委員会への侵入というと、1972年のウォーター
ゲート事件を思い出します。DNCは、1972年の事件当時は
事件名になったポトマック川近くのウォーターゲートビルにあっ
たのですが、現在は、そこから南東4・3キロ離れた連邦議会議
事堂近くのビルにあります。
 DNCがネットワークの異常に気が付いたのは、2016年5
月のことです。早速ネットワーク・セキュリティ企業のクラウド
ストライク社に調査を依頼して情報流出が判明したのです。6月
にDNCと米当局はこれを「ロシア政府による諜報活動」と断定
しています。
 その直後、「グッシファー2・0」と名乗るハッカーが、次の
声明を発表したのです。
─────────────────────────────
 これは私が単独で行った犯行である。すでに主要な数千点の
 ファイルやメールはウィキリークスに提供している。彼らは
 近いうちにそれを公開するだろう. http://bit.ly/2ghDaDZ
─────────────────────────────
 「グッシファー(GUCCIFER)」というと、ヒラリー・クリント
ン氏の側近であるシドニー・ブルメンソール氏のメールをハッキ
ングしたハッカーの名前を思い出します。犯人はそれを知ってい
て、「グッシファー2・0」という名前を使ったのではないかと
思われます。
 7月22日にウィキリークスは、DNCのサーバーから流出し
たと思われるメールを公開したのです。公開者はそのさい、公開
したデータは、「米民主党の中心人物7人」のメールボックスか
ら得たものであることを断っています。
 これらの公開メールのなかには、なかなか興味深いものがあり
ます。それは、民主党全国委員会の最高財務責任者であるブラッ
ド・マーシャル氏の次のメールです。
─────────────────────────────
◎表題「No Shit/そんなことは分かってんだよ」
 ケンタッキー州とウエストバージニア州において「あなたの信
仰は?」と彼に質問してもらえるよう誰かに頼めないだろうか。
 彼は無神論者だろう。彼が無神論者であることが判明すれば少
しは違った結果になりそうだ。南部バプテスト協議会のメンバー
が多い私の票田の人々は、「ユダヤ人」と「無神論者」の間に明
確な境界線を引くだろう。       http://bit.ly/2ghDaDZ
─────────────────────────────
 ここでいう「無神論者のユダヤ人」といっているのは、明らか
に、バーニー・サンダーズ氏を指しています。要するに、予備選
においてサンダーズ氏が困る質問をして、その勢いを止めようと
していることがこのメールでわかります。
 何しろ、同じ共和党の候補者のサンダーズ氏の勢いにブレーキ
をかけて、クリントン氏を有利にしようと民主党全国委員会が仕
組んでいることが明らかになったのです。これは、どうみても不
公平そのものです。
 今回サンダーズを熱心に支持していた人々は、もともと極端な
ヒラリー嫌いであり、それに加えて民主党全国大会の直前にウィ
キリークスの情報公開で、民主党全国委員会が最初からサンダー
ス氏を潰そうと画策していたことがわかったので、怒り狂ったの
は当然です。これでは、サンダース氏の支持者が素直にヒラリー
氏支持に回れなくなったのは当然で、クリントン氏の敗因のひと
つになったといえます。
 この民主党全国委員会のハッキングに対して、FBIなどの米
当局は、ロシアによるものであると断定したのです。それは、ロ
シアの次の2つのハッキング・グループの侵入の形跡を掴んでい
たからです。
─────────────────────────────
     1.ファンシーベア(別名:APT28)
     2. コージーベア(別名:APT29)
─────────────────────────────
 「1」は「ファンシーベア」です。
 これは、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の指揮下にある
グループです。
 このグループは、2000年代半ばから活動し、これまでに米
航空宇宙局(NASA)や国防総省、エネルギー省などの米政府
機関やメディアなどに対して、サイバー攻撃を行っています。そ
れは米国のみならず、西ヨーロッパ、ブラジル、カナダ、中国、
イラン、マレーシア、韓国、日本でも積極的に活発に活動を行っ
ているのです。
 典型的な手法は、標的とした組織のドメイン名を取得し、偽の
ウェブサイトを立ち上げて、内部システム侵入のパスワードなど
の情報を盗み出すというものです。
 「2」は「コージーベア」です。
 コージベアは、ファンシーベアよりもさらに高いスキルを持つ
グループとされています。これはソ連国家保安委員会(KGB)
の後継組織で、諜報活動を行うロシア連邦保安庁(FSB)との
関連が指摘されています。
 2015年のホワイトハウスや国務省、統合参謀本部へのサイ
バー攻撃や、西ヨーロッパ、ブラジル、中国、メキシコ、ニュー
ジーランド、韓国、トルコ、日本への攻撃が疑われています。
 このグループの典型的な手法は、特定の組織や個人に向けてカ
スタマイズした内容の偽メールを送り、侵入プログラムをダウン
ロードさせる「スペア型攻撃」を得意とし、PCのウイルス対策
ソフトにはひっかからない特性を持っています。
 しかし、ファンシーベアとコージベアはそれぞれ独立してハッ
キングを行っており、連携している形跡はないのです。競争して
いるようです。     ──[孤立主義化する米国/098]

≪画像および関連情報≫
 ●米大統領選 露ハッカー集団「コージーベア」が暗躍か?
  ───────────────────────────
  【ワシントン=加納宏幸】米大統領選の民主党候補クリント
  ン前国務長官の陣営幹部のメールが暴露された問題で、米政
  府はロシア情報機関がハッキングに関与したとみている。ク
  リントン氏の秘密を暴き、プーチン露大統領を「力強い指導
  者」とたたえる共和党候補トランプ氏を勝たせようとしてい
  るとの見立てだ。同氏は苦戦しているとはいえ、サイバー攻
  撃への米国の脆弱さは露呈し、クリントン氏は19日のテレ
  ビ討論会で、プーチン、トランプ両氏の「結託」を印象づけ
  ようとした。
   「プーチン氏は操り人形(トランプ氏)を米大統領にしよ
  うとしている。ロシアは米国へのサイバー攻撃に携わり、ト
  ランプ氏は私たちの仲間へのスパイ行為をけしかけた」
   クリントン氏の念頭には、自らの私用メール問題でトラン
  プ氏が今年夏に発した一言がある。同氏はロシアに対し、消
  去されたメールへのハッキングを呼びかけていたのだ。クリ
  ントン陣営は10月18日、「トランプ氏はプーチン氏のス
  パイ活動を悪用しているが、クリントン氏は大統領として、
  プーチン氏の容認できない行為に抵抗し彼を甘やかさない」
  との声明を発表した。       http://bit.ly/2fK7D9F
  ───────────────────────────

バーニー・サンダーズ氏.jpg
バーニー・サンダーズ氏
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2016年12月05日

●「ロシアは真にハッキングの犯人か」(EJ第4414号)

 絶対有利とみられていたヒラリー・クリントン氏が大統領選に
敗れた原因はいろいろあるものの、最も大きなダメージは、その
出陣式ともいうべき民主党全国大会の直前に「民主党の中心人物
7人」の1万9000通以上のメールが、内部告発サイトのウィ
キリークスによって白日の下に晒されたことであるといえます。
 どうしてかというと、これによって予備選でサンダーズを支持
した共和党の支持者がクリントン氏から完全に離れたからです。
それは当然です。候補者をサポートすべき民主党全国委員会(D
NC)が、クリントン氏を当選させるために、サンダーズ氏を潰
そうと画策していたことがバレてしまったからです。
 もし、民主党全国委員会のサーバーのハッキングが本当にロシ
アによるものであるとすれば、このハッキングとメールの公開は
クリントン氏を不利にさせ、トランプ氏を勝たせるためにはきわ
めて効果的であったことになります。
 しかし、当のロシアのプーチン大統領は、2016年9月1日
にブルームバークの取材に応じ、DNCのサーバー侵入事件につ
いて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ・よく聞きなさい。そもそも誰がハッキングしたのかは重要で
  はない。重要なのは国民に公開された情報の内容だ。そちら
  について議論するべきである。
 ・犯人捜しにつながる些細な物事を論点にして、国民の関心を
  「問題の本質」から反らす必要はない。
 ・それでも私は、ふたたび言おう。この事件に関して私は何も
  知らない。またロシアが国家レベルで、それを行ったことは
  一度もない。           http://bit.ly/2gXsOKA
─────────────────────────────
 ロシアがこの情報漏洩に関わったかどうかは本当のところは不
明ですが、常識的に考えれは、ロシアのサーバー攻撃を担当する
チームが、DNCのサーバーをハッキングし、そのメール情報を
ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジ氏に提供した可能
性は高いと思います。しかし、当然のことながら、アサンジ氏は
「そのような証拠は一切ない」という微妙な表現で、そのことを
否定しています。
 しかし、プーチン大統領は「ロシアがやったのではない」と明
確に否定しているものの、まるでブルームバークの記者をからか
うかのように、次のような趣旨のことを述べています。
─────────────────────────────
 仮にロシアが、機密情報を利用して、米国の大統領選挙に影響
を与えたいと願ったとしても、米国の政治は複雑な色合いを持っ
ており、それを理解することは、わが国の外務省にいる専門家で
すら、それを汲むのに充分な感性を持っているのか、私には確信
がもてない。   ──プーチン大統領 http://bit.ly/2gXsOKA
─────────────────────────────
 これに対して米国当局は、2016年7月25日、この情報漏
洩事件について、「どのようにしてDNCのサーバーがハッキン
グされたのか。またこの侵害が、ロシアがトランプに利益をもた
らすための事件か否かについて、現在FBIは、鋭意捜査してい
る」という見解を表明したのです。
 つまり、FBIは、DNCのサーバーのハッキングが、プーチ
ン大統領と犬猿の仲のヒラリー・クリントン氏より、プーチンに
友好的なトランプ氏を大統領にすることを望んで行われたロシア
によるハッキングではないかということがいいたいのです。
 これに対して、9月7日付の「RT/旧ロシア・トゥデイ」は
次のように米当局に反論しています。
─────────────────────────────
◎タイトル「米国のメディアが、DNCのスキャンダルを誤魔化
 すため、反ロシアの『魔女狩り』を始めた」
 極めて重要な選挙が行われる年に、大量の漏洩メールによって
「民主党の姑息な取引」が暴かれたとき、米国のメディアは何を
しようとするだろう?もちろん、ロシアの批判だ。
 さまざまな国に諜報活動を働いている張本人でありながら、証
拠もないまま、米政府はロシアへの帰属ばかりを続けている。米
メディアも、国内のスキャンダルに触れようとせず、米国の主張
をまことしやかに伝えている。     http://bit.ly/2gXsOKA
─────────────────────────────
 ロシアによると思われる米大統領選の関与は、投票にまで及ん
でいる可能性があります。現在、米国での選挙の投票は、電子投
票と紙による投票の二本立て行われています。
 しかし、電子投票機は不正操作などに弱く、紙による記録も残
らないので、正確に集計できないとの懸念が根強いのです。それ
でも未だに広く普及しており、ロイターの調べによると、11月
の米大統領選では、国民の4人に1人が電子投票機で投票するこ
とになります。ロシアのハッキングは、この電子投票に影響を与
えた可能性があります。
 ロイターが、米国勢調査局、選挙補助委員会、選挙監視団体な
どのデータを分析したところ、全国民の25%に当たる4400
万人の有権者が、電子投票機を使う管区に住んでいる計算になり
ます。このなかには、ジョージア、ペンシルベニア、バージニア
といった激戦州も含まれているのです。
 とくに次の3州は票差が非常に少なく、再集計が求められてお
り、ウィスコンシン州は再集計をすることが決まっています。も
し、この3州の結果が覆ると、クリントン氏が逆転します。
─────────────────────────────
              選挙人     票差
     ウィスコンシン  10人   0・7%
     ペンシルベニア  20人   1・2%
        ミシガン  16人   0・3%
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/099]

≪画像および関連情報≫
 ●米大統領選3州で不正操作か/専門家が不審な傾向を指摘
  ───────────────────────────
  (CNN)今月8日に投開票された米大統領選をめぐり、激
  戦となった一部の州で票数が不正に操作されたり、コンピュ
  ーターシステムへの不正侵入があったりした可能性を、著名
  な専門家らのグループが指摘していることが23日までに分
  かった。
   ミシガン大学のコンピューター科学者、アレックス・ホル
  ダーマン教授らによると、大統領選で民主党地盤とされなが
  ら共和党のドナルド・トランプ氏が制したウィスコンシン、
  ミシガン、ペンシルベニア各州の集計結果に不審な傾向がみ
  られるという。同教授らのグループは17日、敗北した民主
  党候補、ヒラリー・クリントン氏の陣営幹部らに対し、3州
  の再集計を要請するべきだと申し入れた。
   申し入れの内容に詳しい情報筋によれば、これらの州では
  機械を使った電子投票方式の郡でクリントン氏の獲得票が少
  なく、投票用紙に記入する方式の郡での票数を7%も下回っ
  ていたことが判明した。グループは、不正侵入の証拠が見つ
  かったわけではないとしたうえで、独立機関による調査が必
  要だと主張している。米誌ニューヨーク・マガジンが最初に
  報じた。CNNは、同グループやトランプ氏の政権移行チー
  ムに取材を試みたが、22日夜の時点で回答は得られていな
  い。クリントン陣営の関係者は、この指摘に基づく監査を要
  請するかどうかについて明言を避けた。
                   http://bit.ly/2fOxvBq
  ───────────────────────────

米国の電子投票機.jpg
米国の電子投票機
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2016年12月06日

●「メール問題と苦闘/ヒラリー陣営」(EJ第4415号)

 7月11日から執筆している今回のテーマ「孤立主義化する米
国」は、今回でちょうど100回になります。しかし、12月に
入っているので、このままこのテーマを続け、新年から、新しい
テーマに取り組みます。12月はヒラリーメール問題の真相究明
トランプ次期政権の正体、日本との関係、とくに日米安全保障条
約への影響などにも言及するつもりです。
 さて、ヒラリーメール問題が、いかにしてクリントン氏を追い
詰めたのかについて、選挙本番の2016年6月と7月について
時系列に追ってみると、次のようになります。1行メモをつけて
おきます。EJ第4411号で取り上げたクリントン周辺の不審
死5人中3人は、6月と7月に死亡しています。
 これをみると、7月の共和党全国大会と民主党全国大会の前後
に実にさまざまなことが起きているのがわかると思います。これ
までの大統領選挙では考えられなかったことであり、きわめて異
例なことです。
─────────────────────────────
◎ 6月22日
 ・ジョン・アッシュ氏がヒラリー氏関連の議会証言前日に死去
◎ 6月27日
 ・ビル・クリントン氏がリンチ司法長官と長官専用機内で密談
◎ 7月02日
 ・FBIがクリントン氏を呼び、事情聴取。3・5時間かかる
◎ 7月05日
 ・コミー長官声明。ヒラリー氏は不注意だが、刑事訴追できぬ
◎ 7月06日
 ・リンチ司法長官はクリントン氏を立件・訴追はしないと発表
◎ 7月07日
 ・下院の行政監視委員会はコミーFBI長官を呼び、喚問実施
◎ 7月10日
 ・DNC職員のセス・リッチ氏FBIとの面接に行く途中射殺
◎ 7月12日
 ・リンチ司法長官は、下院ベンガジ特別委員会に呼ばれて喚問
◎ 7月18日
 ・共和党大会第1日目。初日からトランプ候補が登場する異例
◎ 7月19日
 ・共和党大会第2日目。クリスティー知事のヒラリー模擬裁判
◎ 7月21日
 ・共和党大会第4日目。トランプ氏が候補者指名受諾演説実施
◎ 7月22日
 ・ウィキリークスがDNCの大物7人の内部メールの束を公開
◎ 7月24日
 ・共和党全国委員長のワッサーマンシュルツ氏が突然辞任表明
◎ 7月25日
 ・民主党全国大会初日、サンダーズ支持者が大会から大挙退場
 ・副大統領候補ケイン氏の補佐役のジョン・モンタノ氏が急死
─────────────────────────────
 2016年7月25日の民主党全国大会に向けて、クリントン
陣営としては、いわゆるヒラリーメール問題を何とか鎮静化させ
ておきたかったものと思われます。
 そこで、ヒラリー氏の夫であるビル・クリントン元大統領は、
ロレッタ・リンチ司法長官と会って、「訴追しない」との言質を
取りたかったのです。1999年にクリントン大統領はロレッタ
・リンチ氏をニューヨーク州東部地区連邦裁判判事に任命してお
り、関係は良好だったといわれます。
 2016年6月27日、ビル・クリントン氏は、プライベート
・ジェット機で、アリゾナ州のフェニックス空港に行き、飛行機
から降りずに機内で、ロレッタ・リンチ司法長官の専用機が来る
のを待っていたのです。
 事前の約束があったのか、待ち伏せしたのかはわかりませんが
その後リンチ司法長官の専用機が空港に着陸すると、ビル・クリ
ントン氏はプライベート・ジェット機から降りて、司法長官専用
機に乗り込み、そこで30分間にわたって密談しているのです。
 しかし、この「密会」は、2日後に地元のフェニックスの新聞
にスッパ抜かれてしまいます。そのためリンチ司法長官は、6月
30日に記者会見をせざるを得なくなり、「クリントン氏と会っ
たが、ヒラリーメール問題については話していない。旅行やゴル
フや孫のことを話しただけ」と述べています。
 しかし、7月2日にFBIはヒラリー・クリントン氏をワシン
トンに出頭させ、3時間30分にわたって尋問しています。この
尋問調書(58ページ)は、9月3日にFBIによってメディア
に公開されていますが、そのうちの14ページ分は、日本でいう
ところの「ノリ弁」状になっていたのです。これは国家機密に関
わるメールの交信内容であることを示しています。
 ところがFBIのコミー長官は、ヒラリーメール問題の調査に
おいて、「クリントン氏は国家機密の扱いについては非常に不注
意だったが、このことで刑事告訴できるほどのことではない」と
いう意見を付けて、司法省の判断にまかせています。
 このFBIのレコメンディションを受けてリンチ司法長官は、
その翌日の7月6日に次の決定を発表したのです。
─────────────────────────────
 FBIの判断を全面的に受け入れて、ヒラリー・メール問題を
起訴(立件・訴追)しないことを司法省として決定する。
               ──ロレッタ・リンチ司法長官
                 ──副島隆彦著/光文社刊
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
─────────────────────────────
 リンチ司法長官とビル・クリントン氏との「密会」がバレてい
るので、この司法当局の判断について、米国国内で強い批判の嵐
が巻き起こったのは当然のことといえます。
            ──[孤立主義化する米国/100]

≪画像および関連情報≫
 ●FBI、クリントン氏メール問題見直すと発言
  ───────────────────────────
   クリントン氏が、米国務長官時代に公務メールを私用サー
  バーで扱っていた問題で、FBIはすでに機密情報を含むメ
  ールも私用サーバーを経由していたと確認。コーミー長官は
  7月、クリントン氏とスタッフの行動は「きわめて不注意」
  だったものの、訴追には相当しないと発表していた。
   しかしコーミー長官は28日、連邦議会に対して書簡で、
  捜査員が発見した「別件に関する」メールが「(メール問題
  の)捜査に関係する様子」のため、メール問題を「見直す」
  と説明した。「この資料が重要かどうかまだ精査できていな
  いし、この追加作業を終えるまでどれくらいかかるのか予測
  できない」と長官は書いている。
   消息筋によると、問題のメールは、クリントン氏の右腕と
  も言われる最も近い側近、フマ・アベディン氏の別居中の夫
  アンソニー・ウィーナー元下院議員に対する捜査の中で発見
  された。FBIは、ウィーナー元議員が15歳少女に性的な
  メールを送っていた疑いに関連して、元議員やアベディンさ
  んの電子端末を押収して調べていた。メールが何通あり、誰
  が発信あるいは受信したものかは明らかにされていない。ア
  イオワ州デモインで記者会見したクリントン氏は、「米国の
  人たちはただちに、すべての事実を完全に知らされるべきで
  す」と強調。「この問題がなんであれ、(FBIは)なんと
  しても、滞りなくこの問題を説明しなくてはならない」と求
  めた。              http://bbc.in/2fVxfAm
  ───────────────────────────

クリントン夫妻.jpg
クリントン夫妻
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2016年12月07日

●「サンダース支持者を取り込めない」(EJ第4416号)

 昨日のEJでお知らせした2016年7月の出来事のうち、4
つを再現します。
─────────────────────────────
◎ 7月07日
 ・下院の行政監視委員会はコミーFBI長官を呼び、喚問実施
◎ 7月12日
 ・リンチ司法長官は、下院ベンガジ特別委員会に呼ばれて喚問
◎ 7月22日
 ・ウィキリークスがDNCの大物7人の内部メールの束を公開
◎ 7月25日
 ・民主党全国大会初日、サンダーズ支持者が大会から大挙退場
─────────────────────────────
 クリントン陣営としては、2016年7月25日〜28日の民
主党全国大会前に何とかしてヒラリーメール問題を鎮静化させた
かったのです。そのため、ビル・クリントン氏は、旧知のロレッ
タ・リンチ司法長官と直接会って、「ヒラリー不起訴」の確約を
とろうとしたのです。そのため、6月27日にビル・クリントン
氏は、フェニックス空港でリンチ司法長官に密かに面会し、おそ
らくその確約を得ているはずです。
 しかし、一方の共和党としては、まともに戦ったのでは、知名
度はもちろんのこと、政治家としても実績のあるクリント氏に勝
てないので、むしろヒラリーメール問題で突破口を開こうと考え
たものと思われます。
 ビル・クリントン氏とリンチ司法長官の「密会」はメディアの
知るところとなり、ヒラリーメール問題は、鎮静化どころか、か
えって炎上する結果になったのです。
 7日7日、下院の行政監視委員会はコミーFBI長官を呼び、
喚問を実施しています。喚問のポイントは、コミー長官が踏み込
み過ぎた発言をしたからです。これについて、副島隆彦氏は次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 ジェームズ・コーミーFBI長官がヒラリー・メール問題の捜
査について、「クリントン氏は国家機密文書の取り扱いできわめ
て不注意であった。しかし、このことで刑事起訴できるほどのこ
とではない」と司法省(=検察庁)に対して、推奨(レコメンデ
ーション)を出した。
 ここでコーミーFBI長官が「ヒラリー・クリントンを不起訴
にすることが妥当である」とまで、司法省に対して判断を示した
ことが問題となった。本来なら、「FBIとしては極めて違法性
が高いと判断する。しかし、刑事起訴するか否かは司法省が決め
てください」とコーミー長官は言うべきであった。コーミー長官
自身に疑惑が出て非難されることになった」。
                 ──副島隆彦著/光文社刊
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
─────────────────────────────
 コミーFBI長官へのこの喚問を契機に、FBIと司法省は合
同で、終了したはずのヒラリーメールの再調査を開始しているし
国務省もそれまで中断していたヒラリーメールの内部監査を再開
すると発表しています。いや、そうせざるを得なかったのです。
 これに対して、ヒラリー派に属する国務省高官は、過去の悪事
が暴かれることを恐れ、内部監査にさまざまなブレーキをかけて
妨害したといいます。
 さらに7月25日には、ロレッタ・リンチ司法長官が下院ベン
ガジ事件特別委員会に呼ばれて喚問を受けています。これは、5
時間に及ぶ長時間喚問で、ガウディ委員長が「リンチをリンチし
た」といわれるほど厳しかったといわれます。
 副島隆彦氏によると、「リンチ=私刑/私的制裁」という言葉
は、昔リンチ(Lynch) という名前の裁判官が南部にいて、たく
さんの犯罪容疑者の黒人に死刑判決を出したことから生まれたと
いわれています。
 このようにして、民主党全国大会までに何とかヒラリーメール
騒ぎの鎮静化を狙ったヒラリー陣営の画策は失敗し、かえって騒
ぎが大きくなる最悪の結果になってしまったのです。それに加え
て、クリントン陣営にさらなるダメージを与えたのは、7月22
日、ウィキリークスがDNCの大物7人の内部メールの束を公開
したことです。
 こともあろうに、DNCがクリントン氏を確実に勝たせるため
に、民主党の予備選の候補者であるバーニー・サンダース氏の選
挙妨害をやっていた事実が白日の下に晒されたのですから、サン
ダース支持者が怒ったのは当然です。
 しかし、それでもサンダース氏は、自身の支持者に対して、次
のように訴えていたのです。
─────────────────────────────
 「ブーイング、背中を向けること、退出すること。そういった
デモストレーションで、私たちの運動の信頼性は損なわれてしま
う」。代議員たちに向けたメッセージの中で、サンダース氏はこ
う述べた。「それこそ、商業主義のメディアが求めているものな
のです。それこそ、ドナルド・トランプが求めているものなので
す。しかしそれは、この国の革新的運動を発展させるものではあ
りません」。            http://huff.to/2ae2GGv
─────────────────────────────
 しかし、サンダース氏のこの説得にもかかわらず、民主党全国
大会の初日には、サンダース支持派の各州代議員たちは反発して
「ウォーク・アウト」と叫んで退場したのです。そのため、大会
会場に多くの空席が生じ、あわてて党本部がエキストラを雇って
穴埋めをしたほどだったといいます。
 この傾向は、全国大会だけではなく、各州のクリントン氏の集
会でも人が集まらず、エキストラや映像処理による仮装を施した
といわれています。しかし、トランプ氏の集会はどこも満員だっ
たといいます。     ──[孤立主義化する米国/101]

≪画像および関連情報≫
 ●サンダース支持者/ヒラリーよりもトランプを
  ───────────────────────────
   米大統領選の民主党候補指名でヒラリー・クリントン前国
  務長官と争ったバーニー・サンダース上院議員は25日の党
  大会初日、11月の本選でクリントン氏に投票するよう自ら
  の支持者らに呼び掛けた。
   ところが、支持者の一部からはブーイングも上がり、サン
  ダース氏がもはや自身が始めた「政治革命」をコントロール
  できなくなったことを印象付けた。サンダース氏から支持表
  明を得たことはクリントン氏にとっては大きな勝利となった
  が、サンダース氏支持者の取り込みに不安を残した。
   数百人のサンダース氏支持者は党大会の会場周辺で、クリ
  ントン氏の候補指名に反対するデモ行進を決行。サンダース
  氏の演説中には、同氏支持者とクリントン氏支持者の間で小
  競り合いも発生したという。
   クリントン氏と共和党ドナルド・トランプ氏の支持率が拮
  抗するなか、クリントン氏はこれまで以上にサンダース氏支
  持者の票が必要だ。サンダース氏は指名レースの党員集会・
  予備選で1300万票を獲得。コロラド、インディアナ、ミ
  シガン、ニューハンプシャー各州で勝利を収め、アイオワ州
  でも勝利の一歩手前に迫った。これらの州は11月の本選に
  おいても激戦が予想されるため、クリントン氏がトランプ氏
  に勝つには、サンダース氏支持者らの票の一部がぜひとも必
  要となる。            http://bit.ly/2gmYtkH
  ───────────────────────────

サンダース支持者のデモ.jpg
サンダース支持者のデモ
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2016年12月08日

●「1700通メールの意味するもの」(EJ第4417号)

 2016年8月〜9月11日までのヒラリーメール関連の出来
事を時系列に示します。一口メモも付けておきます。
─────────────────────────────
◎ 8月01日
 ・トランプ氏はオハイオ州集会で選挙集計の不正について言及
 ・クリントン財団の秘密を暴いた作家ソーン氏が山中で不審死
◎ 8月 3日
 ・英BBCはヒラリーメール問題が大統領選の中心議論と報道
◎ 8月 4日
 ・クリントン財団の秘密を調査中の弁護士ルーカス氏の不審死
◎ 8月 9日
 ・アサンジはヒラリーメール1700通を投票直前に公表予告
◎ 8月10日
 ・オバマ大統領はISISの創立者であるとトランプ氏が発言
◎ 8月11日
 ・FBIと司法省がメールとクリントン財団への合同捜査開始
◎ 8月22日
 ・裁判所は1万4900通の復元メールの公開を国務省に命令
◎ 9月 3日
 ・FBIがヒラリー氏への尋問書(供述調書)公開に踏み切る
◎ 9月 5日
 ・WSJ紙は尋問書を読んでヒラリー氏を批判。信頼崩壊宣言
◎ 9月11日
 ・クリントン氏は追悼式典の最中に気分不良で中途で退席する
◎ 9月26日
 ・第1回大統領選討論/  オハイオ州デイトン、ライト大学
◎10月 9日
 ・第2回大統領選討論/    ミズーリ州、ワシントン大学
◎10月19日
 ・第3回大統領選討論/  ネバダ州ラスベガス、ネバダ大学
─────────────────────────────
 トランプ氏は、テレビ討論のさい、司会者に投票結果を受け入
れるかと聞かれ、明言を避けています。そのあとで「自分が勝っ
たときは受け入れる」と発言をしましたが、これは米国の投票シ
ステムに疑問があるからです。これについて副島隆彦氏は、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 トランプが、「大統領選で(各州の得票計算の段階で)不正行
為が行われるのではないかと私は危惧している」とオハイオ州の
演説で語った。トランプが心配しているのは「アリストス・シス
テム」“Alistossystem” という名の選挙集票の不正計算のコン
ピュータ・ソフトであり、これが使用されると、集票計算に変更
が加えられて投票結果をねじ曲げる不正が行われる。日本でも、
2000年ごろから「ムサシ」という名の不正選挙用のソフトが
使われ始めたと囁かれるようになった。
                 ──副島隆彦著/光文社刊
    『ヒラリーを逮捕、投獄せよ/ロック・ハー・アップ』
─────────────────────────────
 2016年8月9日、ウィキリークスの創設者のジュリアン・
アサンジ氏は、次のように発言しています。
─────────────────────────────
 ヒラリーとリビア・ベンガジ事件に関係するヒラリーメール
 1700通を10月中に公開する。 ジュリアン・アサンジ
─────────────────────────────
 このアサンジ氏のいう「1700通のメール」とは、どういう
内容のメールなのでしょうか。
 メールの正確な総数は不明ですが、おそらく全部で5〜6万通
はあったと考えられます。メールを使っている人ならば容易にわ
かると思いますが、1万通のメールが溜まるのにたいして時間は
かからないからです。
 ヒラリー・クリントン氏が国務長官を務めたのは、2009年
〜2013年の4年間です。私用メールの問題は、2012年9
月にリビア東部ベンガジで起きた米領事館襲撃事件をめぐる調査
の過程で発覚しています。
 クリントン氏は、国務長官退任後の2014年に、国務省の求
めに応じ、在任中の3万件のメールを提出しています。FBIは
クリントン氏が在任中に使っていた複数のサーバーや携帯端末を
徹底的に調査したものの、クリントン氏のアカウントには、直接
何者かが侵入した形跡はないことがわかっています。
 しかし、メールは他の誰かとやり取りするものであり、通信相
手のアカウントがハッキングされる可能性もあります。実際に、
クリントン氏が国務長官のとき、私的側近を務めていたシドニー
・ブルメンソール氏に送ったメールが多数ありますが、ブルメン
ソール氏のアカウントがハッキングされ、外部に流出してしまっ
ています。これについては、11月22日付、EJ第4406号
で取り上げています。         http://bit.ly/2gaxc4l
 実はヒラリーメールのうち、最も重要なのは2011年のメー
ル──カダフィー殺害とリビア国崩壊時点のメールなのです。こ
れに関連するメールが「1700通のメール」なのです。結果と
して、これらのメールは既に国務省は把握していますが、国家機
密として公開されていないのです。開示してもその部分は、いわ
ゆる「のり弁」になっているのです。
 ウィキリークスの創設者であるジュリアン・アサンジ氏が、8
月9日に「ヒラリーメール1700通を選挙投票の直前に公開す
る」と通告したのは、クリントン陣営や国務省に対する脅し(ブ
ラフ)です。もし、本当に公開されれば、クリントン氏が勝つこ
とは不可能になるだけでなく、米国という国の権威にも関わる重
大事態となります。これについて国務省は直ちに行動を起こして
います。これについては明日のEJで述べます。
            ──[孤立主義化する米国/102]

≪画像および関連情報≫
 ●ウィキリークス「ヒラリーの証拠メール持っている」
  ───────────────────────────
   アメリカ大統領選挙は外交政策(過激イスラム主義、移民
  規制政策)が表の大きな争点ですが、裏の争点というか本当
  の争点は「オバマとヒラリーの外交政策の失敗」です。それ
  が「アラブの春」を引き金とする中東のブッシュ政権終了時
  以上の混乱です。
   それは何かというと、シリア、リビア、エジプトの政権転
  覆で、これにアメリカ国務省が関わっていたのではないかと
  するものです。ずい分前からアメリカがシリアの反体制派に
  武器を供与していて、その結果として、アルカイダよりも更
  に恐ろしいISIS(イスラム国)が生まれたということは
  言われてきました。「いや、アメリカは穏健派の反アサド大
  統領派にだけ武器を供与するんだ」と言っていましたが、実
  際はそうではなくものすごく過激な勢力に武器を与えていた
  のではないかという疑惑。それがまさしくリビアのベンガジ
  領事館襲撃(2012年9月11日の事件)ですが、ここの
  オペレーションにヒラリー・クリントン国務長官が関わって
  いたのではないかと言われていた。ただ、いまままでは断片
  的な状況証拠やメールしかなかった。その証拠となるメール
  を、ウィキリークス代表のジュリアン・アサンジが持ってい
  ると発言しました。発言した場所は、日本でもよく知られる
  「デモクラシーNOW」という番組でのインタビューの中で
  ヒラリーとリビア関連のメールは1700通あるそうで、こ
  れをしかるべくタイミングを見て、検索できる形で公開する
  とアサンジは言っている。    http://amba.to/2fZeDQe
  ───────────────────────────

ジュリアン・アサンジ氏.jpg
ジュリアン・アサンジ氏
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2016年12月09日

●「1700通のメールの内容は何か」(EJ第4418号)

 1700通のヒラリーメール──ウィキリークスの創始者であ
るジュリアン・アサンジ氏は、このメールを米大統領選の投票の
直前に公開すると宣言していたのですが、本当に公開されたので
しょうか。
 結論からいうと、1700通のメールは、公開されなかったの
です。ジュリアン・アサンジ氏のインターネット回線が切断され
たからです。どうしてこのようなことが起こったのかについては
現在アサンジ氏がどのような状況に置かれているのかについて知
る必要があります。
 アサンジ氏は、2012年よりロンドンのエクアドル大使館に
いるのです。彼は、オーストラリア人のジャーナリストですが、
ウィキリークスの活動をしている関係上、いろいろあって、ロン
ドンのエクアドル大使館に政治亡命したのです。
 アサンジ氏の「1700通のヒラリーメール」の公開予告に慌
てたケリー米国務長官がエクアドル政府に掛け合って、アサンジ
氏のインターネット回線を切らせたのです。ケリー国務長官は、
コロンビア革命軍(FARC/反政府左翼ゲリラ)の和平の実現
を引き替え条件に出したといわれます。
 アサンジ氏のいるエクアドル大使館はロンドンの中央にありま
すが、アサンジ氏は大使館を一歩でも出ると、ロンドン警察に逮
捕され、米国に引き渡されます。しかし、インターネットの回線
を切断されてしまうと、外部との連絡がとれず、ウィキリークス
の活動に影響が出ることになります。
 そこで、アサンジ氏は、同じオーストラリア人のジョン・ピル
ガー氏のインタビューを受けることにしたのです。インタビュー
は2016年11月5日にエクアドル大使館において、25分間
にわたって行われています。
 このインタビューのなかから「1700通のヒラリーメール」
の関連部分を抜き出すことにします。ジュリアン・アサンジ氏は
「JA」、ジョン・ピルガー氏は「JP」と略記します。
─────────────────────────────
JP:彼女は一体なぜ、リビアの破壊にこれほど熱心だったので
   すか? 電子メールで一体何がわかるか、 そこで何が起き
   たのか、少しお話し願えますか?というのは、リビアは今
   のシリアにおける余りに多くの破壊行為の大変な源なので
   すから。ISILや聖戦主義など。あれは、ほとんどヒラ
   リー・クリントンの侵略でした。電子メールで、あれにつ
   いて何がわかりますか?
JA:リビア、誰の戦争というよりも、ヒラリー・クリントンの
   戦争でした。バラク・オバマは当初、反対しました。一体
   誰がこれを主張したのか。ヒラリー・クリントンです。
    彼女の電子メールに証拠として残っています。彼女は、
   お気に入りの代理人、シドニー・ブルーメンソールをこれ
   に当てました。我々が公表した3万3千通のヒラリー・ク
   リントン電子メールの中には、リビアに関する1700通
   以上の電子メールがあります。リビアに安価な石油があっ
   たからではないのです。カダフィ排除と、リビア国家の打
   倒・・・大統領本選挙への準備に利用したいものだと、彼
   女は感じていたのです。
    2011年末に、ヒラリー・クリントンのために作成さ
   れた「リビアのチクタク」と呼ばれる内部文書があり、そ
   れは、リビア国内で約4万人の死者をもたらし、聖戦士が
   入り込み、ISISが入り込み、ヨーロッパの難民・移民
   危機を招いたリビア国家の破壊で、彼女がいかに中心人物
   であるかという時系列的説明になっています。
                   http://bit.ly/2gWYuPE
─────────────────────────────
 上記のアサンジ氏の話によると、クリントン国務長官(当時)
は、何が何でもリビアのカダフィー大佐を殺害し、リビアが保有
する富や武器を奪う強い意思を持っていたように思います。
 クリントン国務長官は、国務長官在任中、20カ国に総額16
50億ドルの武器売買取引を成立させています。武器輸出の商談
成立の前後に、軍事産業からクリントン財団への寄付が行われて
きているのです。これによって、オバマ政権は米国史上もっとも
大量の武器を輸出した政権になったほどです。このあたりのこと
を副島隆彦氏は、次のように明確に書いています。
─────────────────────────────
 カダフィを惨殺して(2011年10月20日)、リビアの国
家資金をすべて、アメリカの特殊部隊(スペシャル・フォーシズ
/CIAとの合同軍)が奪い取った。この資金おそらく200億
ドル(2・4兆円)ぐらいが、今のIS(アイエス)の凶暴な7
万人の傭兵部隊(マーシナリー)の設立資金になったのである。
ISは2014年6月10日に、突如、北イラクの都市モスルを
制圧して出現した。時間の流れがきちんと符合する。
                      ──副島隆彦著
      『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社
─────────────────────────────
 アサンジ氏によると、米国の国務長官という地位の人が、独裁
者というだけで、米国にとって脅威ではなく、何の罪もないアフ
リカの星であるリビアの国家元首の殺害に加担し、それによって
得られる武器はシリアの反政府軍の支援に回し、そこから得られ
る資金は、こともあろうに自らの大統領選挙に使おうとしていた
のではないかといっているのです。
 つまり、ヒラリーメール──それも1700通のメールの内容
は、カダフィー殺害に関してクリントン国務長官からのスティー
ブンス大使やブルメンソール氏に対する指示や、さまざまな報告
などのやり取りがわかるものとなっているのです。したがって、
このメールについては、米国としては、絶対に外に出させないと
して、アサンジ氏の通信手段であるインターネットを切断したも
のと思われます。    ──[孤立主義化する米国/103]

≪画像および関連情報≫
 ●ウィキリークスの創始者、ジュリアン・ポール・アサンジ
  ───────────────────────────
   ジュリアン・アサンジという男を覚えているだろうか。
   ウィキリークスの創始者であるジュリアン・ポール・アサ
  ンジは現在、未だに、イギリスのエクアドル大使館に身を潜
  めている。もう彼是2012年から3年以上の間にわたって
  同国大使館から一歩も出ていないのではと推測される。
   というのもエクアドル大使館周りでは厳重な警戒態勢が敷
  かれており、イギリス政府がアサンジの身柄拘束を狙ってい
  るためだ。大使館内に留まっている間はイギリス政府は手出
  しはできないが、一歩でも外を出た瞬間に捕まえられてしま
  うだろう。外交官ではないので外交官特権を行使することは
  できず、車で大使館から出たとしても移動後も警察車両に追
  跡され、車から出たところを確保されるに決まっている。
   要するに、アサンジは今軟禁状態にあるのだ。しかも、い
  つ解放されるかも分からない。一度捕まってしまえば、イギ
  リスからスウェーデンに引き渡され、その後アメリカに連れ
  て行かれるのは明白だ。アサンジはそれをもっとも恐れてい
  る。ウィキリークスで大損害を与えた、アメリカに連れて行
  かれることを。ウィキリークスでは米英を中心とした国家機
  密などの文書を大量に流出・公開させており、トップシーク
  レットの文書が流出することなどで国家が隠蔽し続けていた
  悪事などが一挙明るみに出ており、国家レベルでの自国民に
  対する諜報活動などに批判が続出している。
                   http://bit.ly/2g1nVLi
  ───────────────────────────

アサンジVSクリントン.jpg
アサンジVSクリントン
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2016年12月12日

●「クリントン氏を潰した2つの爆弾」(EJ第4419号)

 クリントン疑惑の最後に「クリントン財団」の疑惑について書
くことにします。そもそもこの財団は何を目的として設立され、
どのように利用されてきたのでしょうか。
 クリントン財団が設立されたのは2001年のことです。20
01年といえば、ビル・クリントン元大統領が8年の任期を経て
退任した年です。財団の目的は、次の大統領選で妻のヒラリー・
クリントン氏を大統領にするための資金作りです。大統領選への
出馬時期は、2008年の大統領選に絞られていたのです。
─────────────────────────────
    ◎ビル・クリントン大統領の任期
    1993年1月20日〜2001年1月20日
─────────────────────────────
 そのためか、ビル・クリントン大統領の講演料は、10万ドル
(約1050万円)単位の超高額であり、それに加えて、2万〜
4万ドルの高額のチャーター機利用料を請求するのです。ところ
が、2008年の大統領選では、バラク・オバマ氏との対決でし
たが、ヒラリー氏はこの戦いに敗れてしまいます。
 しかし、新大統領のオバマ氏から、国務長官の就任を求められ
受け入れます。これによって、次の大統領選の出馬は2016年
にターゲットを絞ったのです。ヒラリー・クリントン氏が国務長
官に在任中にクリントン財団の集金力は急速に増えるのです。
─────────────────────────────
    ◎バラク・オバマ大統領の任期
     2009年1月20日〜2017年1月20日
    ◎ヒラリー・クリントン国務長官の任期
     2001年1月20日〜2013年1月20日
─────────────────────────────
 米国の大統領経験者が任期満了後に企業や団体、大学などで講
演を行い、高額の謝礼を受け取ることはよくあることです。しか
し、慈善活動の普及のために財団を設立しながら、、実はその目
的が妻の大統領選出馬のための資金作りというのは異例です。
 クリントン家のカネ作りがどれほどエゲツナイかについて、ザ
・ウォルストリート・ジャーナル(WSJ)は、次のように書い
ています。
─────────────────────────────
 ◎ビル・クリントン氏公演で多額のチャーター代請求
 内部告発サイト「ウィキリークス」は、今週(2016年10
月)、クリントン一家の慈善団体「クリントン財団」の資金調達
担当者が、同財団に寄付を行った企業に対しビル氏に講演などの
「営利」行為を依頼して謝礼を支払うよう促すメールを送ってい
たことを暴露し、ヒラリー氏の選挙運動に打撃を与えている。
 WSJが入手した資料によれば、一部の大学関係者は、ビル氏
側が講演を知らせるプレスリリースの掲載やソーシャルメディア
への投稿についても、事前チェックを要求したことにいら立ちを
みせた。ビル氏側は、講演に当たってメディアのインタビューな
どを受け付けないことが多いが、プレスリリースにはそのことを
載せないよう求めたという。
 クリントン夫妻はここ数年、1回20万〜50万ドルの超高額
の講演をしてきたことをめぐって批判を浴びている。講演先には
財政難に見舞われている大学もあった。こうした講演はヒラリー
氏が国務長官を辞任し、今回の大統領選への出馬を表明するまで
の間の2014年に急増した。   http://on.wsj.com/2hhprxC
─────────────────────────────
 今回の大統領選において、このクリントン財団に関して、次の
2つの爆弾が炸裂したのです。書籍と映画です。
─────────────────────────────
      1.書籍『クリントン・キャッシュ』
      2. 映画『クリントン財団の疑惑』
─────────────────────────────
 まず、「1」の書籍は、2015年に米国で発売され、日本語
版は、2016年2月10日に発売されています。選挙戦の年に
ぶつけてきているのです。
─────────────────────────────
         ピーター・シュバイツァー著/小濱由美子訳
 『クリントン・キャッシュ/外国政府と企業がクリントン夫妻
             を「大金持ち」にした手法と理由』
         ──LUFTメディアコミュニケーション刊
─────────────────────────────
 この本を映画化したのが、「2」の映画『クリントン財団の疑
惑』です。この映画は2016年5月にカンヌ映画祭で上映され
現地で衝撃を与えたあと、世界にそのインパクトが波及。注目の
なか、7月に全米で公開されたドキュメンタリーです。残念なが
ら、日本では上演されていませんが、予告編は次のニコニコ動画
のサイトで観ることができます。
─────────────────────────────
      映画『クリントン財団の疑惑』予告編
             http://bit.ly/2hhhXrL
─────────────────────────────
 この映画では、ヒラリー氏が国務長官になった時期に、夫の元
米大統領ビル・クリントンが設立したクリントン財団で起こした
資金洗浄と収賄の数々が示されます。
 アメリカのウラン鉱山がカナダ企業からロシア企業に買収され
る上での不正。サウジアラビアほか20ヶ国余への武器売買に絡
む軍事産業との癒着。スウェーデンの通信機メーカー、エリクソ
ン社が当時、経済制裁中のイランで営業できた理由・・などなど
驚愕の内容が続くのです。あまりの強烈な情報の羅列に、観るも
のはただただ呆然となるといった内容です。
 これらの2つの爆弾が2016年の大統領選の年に炸裂したの
です。クリントン陣営にとっては大ショックです。
            ──[孤立主義化する米国/104]

≪画像および関連情報≫
 ●クリントンに脅威になる映画
  ───────────────────────────
   昨年出版された「クリントン・キャッシュ」は、クリント
  ン一家の慈善団体「クリントン財団」に海外の政府や企業が
  多額の寄付を行った見返りに、当時、国務長官であったヒラ
  リー・クリントン氏から何らかの有利な取り計らいを受けた
  説を資料や証言などで裏付けた本である。クリントン氏の国
  務長官としての影響力が、「お金」で買われてきたとも言え
  る。法律上、外国からの政治献金は禁じられているが、海外
  からの財団への寄付は可能である。そこで慈善団体と称する
  クリントン財団への寄付として海外の政府や企業から資金を
  受けとったのである。出版当初、疑惑はでっち上げで根拠が
  ないとクリントン側は反論していた。その後本の内容の信憑
  性を巡り、ニューヨーク・タイムズ紙、CNN、ワシントン
  ・ポスト紙、ウォール・ストリート・ジャーナル紙など主要
  メディアが分析と調査を行った。本の内容の裏付けは取れ、
  信憑性が確認された。したがって、本が発売された去年とは
  状況が違い、クリントン氏が映画の内容を否定、反論するこ
  とはできない。
   著者のピーター・シュヴァイツァー氏は、本の中で「クリ
  ントン元大統領のエゴと政治家ヒラリーのキャリアを押し上
  げ、夫婦に世界的な影響力と金銭的な報酬をもたらした」と
  主張している。クリントン夫妻は国益より個人の利益を優先
  したのである。          http://bit.ly/2hkkvpt
  ───────────────────────────

書籍「クリントン・キャッシュ」.jpg
書籍「クリントン・キャッシュ」
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2016年12月13日

●「国務長官の地位とクリントン財団」(EJ第4420号)

 クリントン財団──その本質は「慈善団体」です。それでいて
「財団」なのです。慈善財団として有名なのは、古くは、ロック
フェラー財団、カーネギー財団、フォード財団などがあります。
これらの慈善団体は、集めたお金を寄付しているのではなく、集
めたお金で営利事業を行い、その利益の一部を寄付しているので
す。したがって、非営利事業といっても営利事業なのです。
 仮に「トヨタ財団」は100兆円売り上げても、1000億円
程度を寄付すれば、非課税になるという仕組みです。したがって
ビル・ゲイツ氏やパフェット氏などの米国の富豪は、こぞって財
団を作って一種の節税をしているのです。ビル・クリントン元大
統領も当初はそういう目的で財団を設立したのです。
 クリントン財団は、当初「クリントン大統領記念図書館」の建
設資金を集めるために設立されています。その後、慈善事業を行
う非営利財団法人に模様替えしています。そして現在では、スタ
ッフが2000人を超えるグローバルな組織になっています。
 クリントン財団の理事長は別にいますが、事実上クリントン一
族がオーナーの財団です。ビル・クリントンと妻のヒラリー・ク
リントン、そして娘のチェルシー氏はいずれも理事会のメンバー
です。なお、ヒラリー氏は大統領選に出るため、2015年で理
事を退任しています。
 この財団について、米国在住の日本出身のジャーナリストであ
る高濱賛氏は、クリントン元大統領とのインタビューで、次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 この財団はビル・クリントンとクリントン一族にとっての「リ
ビング・レガシー」(living legacy =生きつづける遺産)だっ
た。最初は自分の「大統領記念図書館」を作るつもりだったのが
その後、なにか「世のため、人のために活動を続けたい」と考え
るようになった。これだけ世界規模でチャリティ活動をやってい
る米大統領経験者はほかにいない。  http://nkbp.jp/2hjBfiY
─────────────────────────────
 しかし、クリントン財団のカネ集めは、クリントン国務長官の
地位を利用する悪質なものに変質していったのです。日本では昨
今、政治家の地位を利用して「口利き」をする行為は、「あっせ
ん利得処罰法」という法律に触れますが、クリントン国務長官は
クリントン財団を利用してこれに近いことをやっていたと考えら
れるのです。
 それは、国務長官時代のクリントン氏のメールがウィキリーク
スによって暴かれてわかったことですが、これに関するひとつの
例が「ニューズウィーク」のサイトに出ています。
─────────────────────────────
 2009年のメールで、クリントン財団幹部のダグラス・バン
ドは、財団に大口の寄付をしたレバノン系ナイジェリア人富豪を
国務省のレバノン専門家に紹介したいと依頼していた。クリント
ンの側近フーマ・アベディンが役に立てそうだと示唆すると、バ
ンドはすぐに駐レバノン米大使に電話してほしいと応じた。「非
常に重要な案件だ」と、バンドは付け加えた。
 AP通信は国務長官就任以来2年間のヒラリーの公式日程を分
析し、彼女が面会したアメリカや外国の政府関係者を除く民間人
の半数以上がクリントン財団か、財団の国際プログラムに寄付を
していたと結論付けた。85人の寄付者が総額1億5600万ド
ルを寄付している(ヒラリーは、財団に総額1億7000万ドル
を寄付した少なくとも16ヶ国の外国政府代表者とも会談してい
るが、この数字には含まれていない)。 http://bit.ly/2hjIIi6
─────────────────────────────
 つまり、簡単にいうと、クリントン国務長官と何らかのコンタ
クト──直接会うとか、頼みごとがある場合は、何はともあれ、
クリントン財団に自発的に寄付せよとのメッセージを出している
のです。米国では、寄付者と会って話したり、もてなしたりする
のは当たり前の行為になっているのです。
 また、米国では、大統領選において、その陣営に対して資金調
達を行い、およそ50万ドル(約5000万円)以上の資金協力
をして当選に一役買った人物を各国の大使に任命することはよく
あることです。つまり、お金で地位を買うということになります
が、そういうことは米国ではよく行われているのです。
 まして、クリントン氏は国務大臣ですから、大使の任命には強
い権限があるのです。第1次オバマ政権で日本駐在米大使に任命
されたジョン・ルース氏(2009年〜2013年)も、オバマ
氏への多額献金者の一人であったといいます。これについて、高
濱賛氏は、カリフォルニア大学バークレー校の政治学教授の一人
の言葉として、次のように述べています。
─────────────────────────────
 歴代の大統領は多かれ少なかれ、大口の献金者に便宜を供与し
てきた。巨額の選挙資金を出した支持者を主要国の駐在大使や政
府高官に任命するのは通例にすらなっている。誰も咎めたことが
ないが、大使のポストをカネで買うなどということが他の国で罷
り通るのだろうか。
 通常、大統領職を終えた政治家はおとなしく、悠々自適な隠居
生活を送る。だが、ビル氏の場合はちょっと違う。置かれた生活
環境が他の大統領経験者とは違っていた。何せ、奥さんが現役バ
リバリの政治家で国務長官になったり、大統領になろうとしたり
していること自体、前代未聞だよ。  http://nkbp.jp/2hnp5TH
─────────────────────────────
 もっともクリントン財団は、人権や保健事業で慈善団体として
高い業績を上げているのは確かです。だが、ヒラリー・クリント
ンが、大統領になった場合、寄付者はクリントン財団を彼女の影
響力を勝ち取る絶好のルートとみなすはずです。もちろん、ビル
・クリントン氏やヒラリー・クリントン氏が財団から離れたとし
ても、財団が存在している限り、そうなることは明らかにいえる
と思います。      ──[孤立主義化する米国/105]

≪画像および関連情報≫
 ●今さら言われても/クリントン財団の倫理問題けじめ
  ───────────────────────────
   ビル・クリントン氏は、自身の財団がビルとヒラリーの同
  夫妻、あるいは米政府に倫理的な衝突ないし葛藤を一切もた
  らさないと長年にわたって主張してきた。だが、ここに来て
  彼は真実をようやく認めた。それも、少しだけだが。ビル氏
  は、ヒラリー氏が大統領になればクリントン財団(それは慈
  善団体を装った「スーパーPAC=特別政治行動委員会であ
  る)は、外国あるいは企業の献金を受け取らないと述べたの
  だ。ビル氏はまた、財団の理事を辞任し、財団の理事長的存
  在である娘のチェルシー氏は財団のための資金集めをやめる
  という。彼らに今さらそう言われても、という感がある。
   ヒラリー氏が大統領になると、この種の資金集めが問題に
  なるというのならば、彼女が国務長官だった時、あるいは大
  統領選に立候補している今、なぜ問題でなかったのか?答え
  は、それは問題であったし、問題であり続けている。そして
  彼らはそのことを知っている。しかし、この財団は彼らクリ
  ントン家の政治的な将来にとって余りにも大切なので、クリ
  ントン王朝のカップルが、ホワイトハウスの大統領執務室に
  戻って行く態勢になるまで、それを手放せなかった。今やヒ
  ラリー氏が、共和党候補のドナルド・トランプ氏を支持率で
  リードしている。このため、ビル氏は彼らのペイ・ツー・プ
  レイ(参加したいならカネを払え)式の政治に対する新たな
  制約をうやうやしく受け入れられるのだ。
                 http://on.wsj.com/2htQOW3
  ───────────────────────────

ビル・クリントン氏の講演.jpg
ビル・クリントン氏の講演
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2016年12月14日

●「トランプ言及/一つの中国に疑問」(EJ第4421号)

 今回の米国の大統領選がはじまったとき、日本にとっては次の
米国の大統領が、クリントン氏でもトランプ氏でもかまわないが
中国に対して毅然とした態度を取る大統領が望ましいと多くの日
本人は考えていたと思います。
 結果は次期米大統領はドナルド・トランプ氏に決定したのです
が、本当のところはまだわからないものの、閣僚人事やトランプ
氏の台湾の蔡英文総統との電話会談などを見ている限り、次期政
権の対中国強硬姿勢が読み取れます。
 トランプ氏の蔡英文総統との電話会談には、12月12日には
米中の間で第2ラウンドがあり、トランプ氏と中国との関係は一
段と厳しくなりそうな雰囲気です。何が起きたのか整理しておく
ことにします。
─────────────────────────────
◎蔡英文総統からの電話について
 ・「聞かされたのは1、2時間前だ。会話は短時間で、お祝
  いを受けた。電話を取らないのは失礼ではないか」。
◎「1つの中国」の政策について
 ・「『一つの中国』政策については十分に理解しているが、
  中国と貿易などについて合意でもしない限り、なぜ堅持す
  る必要があるのかわからない」。
◎電話会談の中国の反論について
 ・「中国が人民元の価値引き下げについて(米企業が競争上
  厳しくなる)、あるいは中国に輸出される米製品に高率の
  税を課すこと(米国は中国製品に課税していない)、南シ
  ナ海の真ん中に大規模な軍事施設を建設することに、われ
  われに許可を求めただろうか。私はそうは思わない」。
─────────────────────────────
 この発言に中国政府は衝撃を受けたのです。米国の新政権とは
絶対にモメたくはないが、中国が核心的利益として位置付けてい
る問題を真正面から批判され、外交上後に引けなくなりつつあり
ます。しかし、この件で沈黙を続けていると、国民の批判が強ま
るのは必至で、中国は、12日に次の反論をAFP通信に展開し
たのです。しかし、少し言葉が過ぎたようです。
─────────────────────────────
【12月12日AFP】(更新)中国の国営メディアは12日、
中国本土と台湾は不可分の領土だとする「一つの中国」の原則は
「交渉の余地がない」として、この原則を維持しなければ中国が
米国の敵対勢力を支援する可能性があるとドナルド・トランプ次
期米大統領に警告した。
 これに先立ちトランプ氏は、11日放送された米FOXニュー
スのインタビューで、「中国と貿易などで合意していない限り、
なぜ『一つの中国』政策に縛られないといけないのか」と疑問を
呈し、中国が貿易や外交政策などで譲歩しなければ、米国は、こ
の原則を維持しない可能性があると示唆していた。「『一つの中
国』の原則は、取引材料にはならない」。中国の国営英字紙・環
球時報は、12日にインターネットに掲載した無記名の解説記事
でこのように述べ、トランプ氏を「外交に無知な子ども」とこき
下ろした。              http://bit.ly/2hDkgon
─────────────────────────────
 中国の対応は最悪である──実に上から目線で、次期米大統領
のトランプ氏を「外交に無知な子ども」と決め付け、「一つの中
国の原則を認めないなら、中国は米国の敵対勢力を支援する可能
性がある」とまで言及したからです。これでは、米中両国の間に
は簡単には修復できない亀裂が生じてしまいます。
 ところで、中国の発言で興味があるのは、「米国の敵対勢力」
とはどこを指しているのでしょうか。
 今まで米国と敵対しているのは、北朝鮮、イラン、シリア、そ
してロシア、その他、911などのテロを仕掛けてくるテロ組織
ということになります。しかし、テロ組織は別として、米国新政
権の出方によっては、イランやロシアは、必ずしも敵対勢力には
ならないと思います。
 注目すべきなのは「支援」という言葉です。これは、小さい国
ではあるが、中国が支援すれば、米国にとっては手ごわい相手に
なるぞといっているのです。
 それに該当する国はひとつあります。それは北朝鮮です。北朝
鮮はもともと中国が相当に肩入れしており、ミサイルの発射や核
実験など、中国は国連の度重なる制裁決議に賛成しながら、ウラ
で支援を続けてきたのは北朝鮮です。したがって、中国としては
ウラでやってきたことを今度は堂々と支援するぞという脅しでは
ないでしょうか。しかし、それをすると、中国は国際社会を敵に
回してしまうことになります。
 このニュースについて、新聞休刊日明けの12日の日本経済新
聞の夕刊は、このニュースを「一つの中国に縛られず/トランプ
氏が言及」というタイトルでトップ記事に掲げ、次のように報道
しています。トランプ氏は「私は完全に『一つの中国』の政策を
理解している」と力説したうえで、表記の発言をしています。こ
れに対する中国外務省の反応です。
─────────────────────────────
 中国は台湾問題を譲歩できない「核心的利益」と位置づけてい
る。2日の蔡総統との電話協議についてトランプ陣営に抗議した
ばかり。台湾問題を適切に扱うよう求めていただけに衝撃は大き
い。中国外務省はトランプ氏の出方を見極めるため、正式就任前
の言動は抑制的に反応する方針を示している。
 ただ、外交関係者の中にはトランプ氏の外交政策への不信感が
徐々に高まっている。共産党機関紙の人民日報系の「環境時報」
(電子版)は「トランプ氏は外交経験がないため、強硬派の影響
を受けやすい」と警戒心を示した。2016年12月12日付、
                   日本経済新聞夕刊より
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/106]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏、「一つの中国」政策終わりを示唆
  ───────────────────────────
   ドナルド・トランプ次期米大統領は11日、米政府が19
  79年以来堅持してきた「一つの中国」政策を続けるべきか
  疑問視する発言をした。米フォックス・ニュースとのインタ
  ビューで述べた。
   トランプ氏は、「通商を含めて色々なことについて中国と
  取り引きして合意しない限り、どうして『一つの中国』政策
  に縛られなきゃならないのか分からない」と述べた。米国は
  1979年に台湾と断交して以来、台湾を分離した省とみな
  す中国の「一国二制度」方針を尊重し、台湾を独立国家とし
  て扱うことは避けてきた。これに対してトランプ氏は2日、
  米大統領や次期大統領としての37年来の慣例を破り、台湾
  の蔡英文総統と電話で会談。中国はこれに正式抗議したが、
  トランプ氏はさらに中国の為替政策や南シナ海での活動を批
  判するツィートを連発した。
   トランプ氏はフォックス・ニュースに対して、自分が台湾
  総統からの電話に出るか出ないか決めるのは、中国政府では
  ないと強調。「中国に命令されたくないし、これは、僕にか
  かってきた電話だった。とても素敵な電話だった。短くて。
  それに、いったいなんでどこかの国が僕に、その電話は受け
  るなとか言えるんだ?正直いえば、あの電話をとらないのは
  とても失礼なことだったと思う」とトランプ氏は述べた。
                   http://bbc.in/2hkJlIf
  ───────────────────────────

トランプ次期米大統領/蔡英文台湾総統.jpg
トランプ次期米大統領/蔡英文台湾総統
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2016年12月15日

●「トランプ政権の対中国戦略を探る」(EJ第4422号)

 トランプ次期米大統領は思っていた以上に、なかなかしたたか
です。トランプ氏は、外国の首脳としては最初に安倍首相に会っ
ていますが、それだけではないのです。世界のビジネスパーソン
に先駆けてソフトバンクの孫正義氏にも会っています。なぜ、日
本人とばかり会うのでしょうか。
 それは、日本がカネを持っていることを知っているからです。
孫正義氏は、12月5日にトランプ氏と会い、総額500億ドル
(約5兆7200億円)を米国のIT分野に投資し、5万人の雇
用を創出することを約束しています。
 孫氏としては、かつて傘下の米スプリント社に加えてTモバイ
ルUSを買収しようとしたとき、オバマ政権にストップをかけら
れ、米国戦略の修正を余儀なくされています。そのため、次期大
統領に誰よりも早く会って、大統領の求める投資を約束し、買収
戦略を前進させようとしているのです。おそらく約束が果たされ
れば、今度はトランプ政権はソフトバンクの邪魔はしないと思わ
れます。ビジネスの取引だからです。まさにビジネス・ファース
トといえます。
 それでは、トランプ次期大統領は、安倍首相には何を要求して
くるのでしょうか。
 これに関して、ジャーナリストの歳川隆雄氏は、夕刊フジのコ
ラム「永田町・霞が関インサイド」で次のように述べています。
─────────────────────────────
 ハッキリしていることがある。トランプ氏が大統領選挙期間中
に掲げた公約に、法人税を15%まで引き下げること、国内イン
フラに1兆ドル(114兆4300億円)投資する、2つがあっ
た。一方で減税して、他方で財政出動するというのは、相いれな
い。財源はどこにあるのか、ということである。
 だから、トランプ氏は安倍首相に対して、@米国債の買い増し
A米国製武器購入とシェールガスの輸入B日本企業の米国進出に
よる工場建設──を求めている。──「歳川隆雄の永田町・霞が
関インサイド」/2016年12月12発行/「夕刊フジ」より
─────────────────────────────
 しかし、外交とビジネスとは違います。米国にとって外交上最
も難しいのが中国への対応です。中国は、オバマ大統領の弱腰を
見抜いて、南シナ海に人工島を埋め立て、その軍事基地化を超ス
ピードで進めています。これによる米国の威信は大きく低下した
といっても過言ではないでしょう。
 これに対してトランプ氏は「強いアメリカ」を標榜して大統領
選を戦っています。問題はこの強いアメリカをどのようにして実
現させるかです。現時点で考えられるトランプ氏の戦略としては
次の3つが考えられます。
─────────────────────────────
 1.国防長官や国家安全保障担当大統領補佐官などの安全保
  障関連スタッフに軍部強硬派を起用する。
 2.あえて中国を刺激する発言を行い、オバマ政権との安全
  保障の考え方が異なることを知らしめる。
 3.しかし、中国との対話の窓口はいつでも開けておき、い
  つでも話し合いができる状況を確保する。
─────────────────────────────
 「1」については、早くからトランプ氏が国家安全保障補佐官
にマイケル・フリン氏を起用したことからはじまっています。フ
リン氏は、元アメリカ陸軍中将で、2012年から2014年ま
で、国防情報局長を務めた人物です。イラク戦争やアフガニスタ
ン戦争にも従軍しています。軍人出身です。
 問題は国防長官です。国防長官にはジェームズ・マティス氏が
指名されています。マティス氏は、アメリカ海兵隊の軍人で、最
終階級は大将です。NATO変革連合軍最高司令官、アメリカ統
合戦力軍司令官、アメリカ中央軍司令官などの要職を歴任してい
ます。つまり、大ベテランの軍人出身です。
 トランプ次期米大統領が安全保障の閣僚に元軍人の強行派を起
用するということは、米国との間にトラブル案件を持つ国に対す
る大きなプレッシャーになります。とくに中国は、違法に南シナ
海に人工島を建設しているので、強いプレッシャーを感じている
はずです。なぜなら、まだ現在の中国の軍事力では、とうてい米
国には勝てないからです。
 トランプ氏が続いてやったことは、中国駐在米国大使に、中西
部アイオワ州の知事を務める共和党のテリー・ブランスタド氏を
指名したことです。これは「3」に該当します。対話の窓口を設
けたのです。ブランスタド氏は習国家主席の古い友人なのです。
以下は、NHKニュース・ウェブの紹介記事の一部です。
─────────────────────────────
 アメリカメディアによりますと、ブランスタド氏は30年余り
前の1985年に、当時、河北省の農村部の幹部としてアイオワ
州を訪れた習近平氏と出会ったということです。習主席は4年前
に中国の最高指導者に就く直前に国家副主席として訪米した際に
もアイオワ州を訪れています。その際にはブランスタド氏が夕食
会を行うなど、両者は交流を続けていて、ブランスタド氏は習主
席を「古い友人」だとしています。   http://bit.ly/2hnEgyL
─────────────────────────────
 そして、今回トランプ氏は、中国に対して、中国が絶対に譲れ
ない「一つの中国」に疑問を呈したのです。これは「2」に該当
しますが、歴代の米国の大統領では絶対にいえなかった痛烈なパ
ンチです。まだ大統領になっていない現時点を利用して、中国が
激怒することを十分承知したうえで、あの発言をしたのです。
 いずれにせよ、トランプ氏の発言は、米中関係の根幹を揺るが
す言動であり、政権がスタートすると同時に米中は話し合いを持
つと考えられます。そのさい、ブランスタド中国駐在米国大使を
通して行われるものと思われます。このようにトランプ氏はなか
なかしたたかです。日本も油断は禁物です。
            ──[孤立主義化する米国/107]

≪画像および関連情報≫
 ●中国が強い懸念表明/「一つの中国」めぐるトランプ発言で
  ───────────────────────────
  [北京 12日 ロイター]──中国外務省の耿爽報道官は
  12日、米国政府がこれまで維持してきた「一つの中国」政
  策を必ずしも堅持する必要はないとしたトランプ次期米大統
  領の発言について、極めて強い懸念を表明した。
   外務省は、台湾における中国の核心的利益を米国が認識で
  きない場合、米国との協力は「論外」であると主張。両国間
  に存在する多くの商業や安全保障問題について、この論点を
  交渉材料にしようとするトランプ氏のあらゆる試みを拒否す
  ると示唆した。耿報道官は「中国は報道について認識してお
  り、深刻な懸念を持っていると表明する。台湾問題は中国の
  主権と領土の保全にかかわるものであり、中国の核心的利益
  を内包するものであることをここに強調する」と述べた。
   さらに「『一つの中国』政策の支持は、中国と米国の関係
  発展のための政治的基礎となる指針だ。この基礎が妨げられ
  るか損害を受けた場合、中米関係や重要分野における両国の
  協力を健全に発展させることは不可能となる」と言明した。
  報道官は、外務相より上位に位置する楊潔チ・国務委員(外
  交担当)が最近ニューヨークを訪問し、フリン元米国防情報
  局長を含めトランプ氏の顧問と会見したと述べ、「中米関係
  や重要課題に関する意見交換を行った」と話した。会見の時
  期など詳細については触れず、今回の台湾をめぐる発言より
  前のことなのかどうかについても説明しなかった。
                   http://bit.ly/2hhcNi1
  ───────────────────────────

習国家主席とアイオワ州知事ブランスタド氏.jpg
習国家主席とアイオワ州知事ブランスタド氏
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2016年12月16日

●「親ロ/中東が重視のトランプ政権」(EJ第4423号)

 14日にトランプ次期政権における安全保障関係の中心閣僚が
ほぼ決まったようです。
─────────────────────────────
  国務長官 ・・・・・・・ レックス・ティラーソン氏
  国家安全保障補佐官 ・・    マイケル・フリン氏
  国防長官 ・・・・・・・  ジェームズ・マティス氏
─────────────────────────────
 結局、トランプ次期米国大統領は、国務長官に、米石油大手エ
クソン・モービル会長兼最高経営責任者(CEO)のレックス・
ティラーソン氏を選んだのです。ティラーソン氏は企業経営者で
はありますが、外交経験ゼロの民間人です。国務長官にこのよう
な民間人を起用するのはきわめて異例なことです。
 ティラーソン氏は石油事業を通じてロシアのプーチン大統領と
長い親交があり、ロシアに接近したいと考えているトランプ氏に
とって願ってもない人材といえます。しかし、ティラーソン氏は
ロシアのクリミア併合による米国などが実施した対ロ制裁には反
対の立場です。したがって、同氏の国務長官就任によって、米国
は、これまでの対ロ路線を大きく変える可能性があります。
 問題は、ティラーソン国務長官が上院の承認を得られるかどう
かです。新政権の閣僚は上院の承認手続きが必要ですが、与党の
共和党は、伝統的に「反ロ」の傾向が強いのです。ティラーソン
氏の起用について、党重鎮のジョン・マケイン氏と、上院議員で
トランプ氏と予備選を戦ったマルコ・ルビオ氏は、ティラーソン
氏の起用に次のように難色を示しています。
─────────────────────────────
 ◎ジョン・マケイン上院軍事委員長
  ・ティラーソン氏がプーチン大統領と個人的に親しい間柄
   であることが懸念される。
 ◎マルコ・ルビオ上院議員
  ・国務長官として望む人物はプーチン氏の友人ではない。
         ──2016年12月14日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 トランプ氏と共和党幹部は、まだ完全には和解していないので
す。したがって、共和党の上院議員が数人反対に回ると、国務長
官就任が承認されない可能性は十分あります。
 それにもうひとつ重要な問題があります。それは、大統領選挙
において、ロシアがトランプ氏が有利になるように、民主党の全
国委員会のサーバーをハッキングし、ウィキリークスに提供した
との米中央情報局(CIA)の分析結果の発表です。これは、ロ
シアによるハッキングであるとほぼ断定しています。
 これに対してジョン・マケイン氏は、12月12日に「これは
深刻な問題であり、一つの戦争である」とあからさまにロシアを
批判しています。トランプ氏は「馬鹿げている」と一蹴していま
すが、共和党との仲がこれ以上悪化すると、トランプ新政権は、
出だしから、つまづくことになってしまいます。
 トランプ政権の安全保障関係閣僚の布陣を見ると、次の2つの
特色が明確になっています。
─────────────────────────────
           1.親ロシア
           2.中東重視
─────────────────────────────
 「1」については、選挙期間中からトランプ氏はロシアのプー
チン大統領に親ロのメッセージを送り、大統領に決まると、ロシ
ア通のティラーソン氏を国務長官に任命するなど、親ロの実現を
図ろうとしていることから、明らかであるといえます。
 「2」に関しては、国防長官にジェームズ・マティス元中央軍
司令官、国家安全保障補佐官にマイケル・フリン氏を任命したこ
とで明らかです。マティス氏は、湾岸戦争やイラク戦争など、中
東での紛争で、長く指揮をとっており、経験豊富です。フリン氏
は、元国防情報局長であり、中東での情報活動や戦闘指揮経験豊
かな軍人です。いずれも中東の専門家なのです。
 明らかに、IS掃討や対テロで、ロシアと共闘して成果を上げ
ようとしているのです。したがって、アジアで台頭する中国とど
う向き合うのかが注目されます。しかし、トランプ氏の台湾をめ
ぐる対応を見ても相当強い姿勢で臨むことは考えられます。
 少なくとも、クリントン氏が大統領選で勝利し、大統領になっ
た方が、日本と中国との関係は厳しくなっていたと思われます。
なぜなら、中国とクリントン家の関係は非常に深いからです。表
面的にはともかく、クリントン夫妻は「親中国」であることは明
らかです。
 しかし、民主党(現民進党)時代に、中国との間で尖閣諸島で
もめたとき、訪米した前原外相に対して、クリントン国務長官は
尖閣諸島に関して、次のように明言しています。確か尖閣諸島に
関して、米国の高官がここまで踏み込んだ発言をしたのは、はじ
めてのことです。2010年10月29日のことです。
─────────────────────────────
 はっきり改めていいたい。尖閣諸島は日米安保条約第5条の
 (適用)範囲に入る。日本国民を守る義務を重視している。
                 ──クリントン国務長官
─────────────────────────────
 このとき多くの日本人は、クリントン国務長官の発言を好感し
たと思います。そしてこのクリントン国務長官の発言が、後のオ
バマ大統領の同様の発言につながったといえます。
 しかし、国務長官の立場と大統領の立場は基本的に異なるので
す。クリントン氏は確かにこの発言をしましたが、大統領になっ
ても、この発言を繰り返すとは限らないのです。それは、夫のク
リントン大統領と中国との関係、クリントン財団と中国との関係
を見ていくと、わかります。このクリントン財団と中国との関係
については、来週のEJで述べることにします。
            ──[孤立主義化する米国/108]

≪画像および関連情報≫
 ●サイバー攻撃 関与を指摘されるロシアとトランプの関係
  ───────────────────────────
   ロシア政府が関与した疑いのあるサイバー攻撃が世界中で
  相次いでいる。7月には米民主党全国本部のサーバーにサイ
  バー攻撃が仕掛けられ、内部メールの内容が流出し、民主党
  内部でサンダース候補(当時)の勢いを落とすための協議が
  行われていた事実が判明。委員長が辞任する騒ぎへと発展し
  たが、クリントン候補はサイバー攻撃をロシア情報機関が関
  与したものであったと断言している。9月にはホワイトハウ
  スのスタッフのメールがハッキングされ、ミシェル・オバマ
  大統領夫人のパスポート用写真などが流失。米ヤフーも約5
  億人分の個人情報が盗まれたと発表したが、複数の米メディ
  アは政府関係者の話として、これらのサイバー攻撃にロシア
  政府が関与している可能性が非常に高いと伝えている。一方
  でトランプ陣営とロシアとのつながりを指摘する声もある。
   大統領選挙まで1週間を切ったが、複数の米メディアはク
  リントン候補が依然としてトランプ候補に数ポイントの差を
  つけてリードしていると伝えているものの、トランプ候補の
  支持率が直前になって再び上昇傾向にあると伝えるメディア
  もあり、最後まで展開が読めないのも今回の選挙の大きな特
  徴だ。これまでの大統領選挙でも舌禍によって道半ばにして
  自滅した候補は存在したが、トランプ候補には自らの発言に
  よって支持率を下げてしまうケースが頻繁にあり、メディア
  を何度も賑わせてきた発言が、ここに来て自身の首を絞めて
  いるようにも思われる。      http://bit.ly/2hrssvw
  ───────────────────────────

レックス・ティラーソン氏.jpg
 
レックス・ティラーソン氏
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2016年12月19日

●「クリントン家と中国との黒い関係」(EJ第4424号)

 米国大統領選が始まったとき、多くの日本人は、ヒラリー・ク
リントン候補の勝利を願ったと思います。少なくとも予備選にお
いて、強く日本への非難を繰り返していたドナルド・トランプ候
補よりもマシと考えたからだと思います。
 日本の安全保障上脅威なのは中国の存在です。中国は日本の尖
閣諸島を核心的利益と位置づけ、いずれ武力によって奪い取るつ
もりで、実際に何回もアタックをかけてきています。そのさい、
日本の後ろ盾になってくれる存在は米国であり、どのような人が
米国の大統領になるかは最大の関心事項になります。
 トランプ氏についての詳しい情報がなかったときの状態におい
ては、少なくとも米国の国務長官として「尖閣諸島の紛争は日米
安保条約第5条の適用範囲に入る」と明言してくれたクリントン
氏が大統領としてベストであると考えたのは当然です。
 しかし、結論から先にいえば、対中国を気にするのであれば、
ヒラリー・クリントン大統領は最悪だったといえます。なぜなら
クリントン家はあまりにも中国にべったりの関係だからです。そ
の関係は、1980年代にはじまるのです。今から46年も前か
らのことなのです。
 中国では、ケ小平主席の後を継いだ江沢民氏は、自身が国家主
席になる1990年代から、米国とのパイプ作り工作をはじめて
います。そのとき、なぜか、当時米国のアーカンソー州知事を務
めるビル・クリントン氏とその妻であるヒラリー・クリントン氏
に目をつけたのです。
 もともとビル・クリントン氏が、なぜ突如大統領選に出馬し、
当時湾岸戦争に勝利して人気上昇中のジョージ・ブッシュ(父)
大統領の再選を阻んだのかは疑問ですが、これについては既に述
べているので、さらなる言及は避けることにします。江沢民氏も
当時のビル・クリントン氏が大統領になる可能性が高いという情
報をどこからか掴んでいたものと思われます。
 そのとき、ビル・クリントン氏は、アーカンソー州の2期目の
知事を務めていたのです。ビルとヒラリー両氏は1975年に結
婚し、1978年にビル氏が32歳の若さでアーカンソー州知事
に当選すると、アーカンソー州のファースト・レディとして積極
的に活躍するかたわら、弁護士の仕事もしていたのです。そして
ヒラリー氏は、アーカンソー法律事務所の上級パートナーを務め
るようになります。
 中国の江沢民氏は、このアーカンソー法律事務所に目をつけた
のです。彼は、自らの支配下にあるリッポ・グループをアーカン
ソー法律事務所と顧問契約を締結させ、そこを通して巨額の報酬
をクリントン家に送り込んだのです。
 ところでリッポ・グループ(リッポ財閥)とは何でしょうか。
 リッポ・グループは、インドネシアの華僑華人のかたちをとっ
ていますが、明らかに中国と密接につながっているのです。日本
の評論家で、国際政治・米国金融アナリストである伊藤貫氏の著
作から引用します。
─────────────────────────────
 中国共産党と人民解放軍は、クリントン夫妻に対して多額の贈
賄をするパイプとして、インドネシア・香港・中国に拠点を持つ
リッポ・グループ(力宝集団)を使用した。リッポ・グループは
インドネシアの華僑財閥・リアディ家が所有する企業集団であり
銀行業・不動産業・流通業・観光業等を経営している。
               ──伊藤貫著/PHP研究所刊
               「中国の『核』が世界を制す」
─────────────────────────────
 つまり、リッポグループは、人民解放軍のスパイ機関といって
よいのです。そういうグループから資金支援を受けて、ビル・ク
リントン氏は、1992年の大統領選に出馬し、大方の予想を覆
して大統領に就任します。そして、2期目も同グループからの支
援を受けて再選を果たしたのです。
 つまり、ビル・クリントン氏は、1993年1月20日〜20
01年まで大統領の地位にあったのですが、その間、当然のこと
ながら、クリントン家とリッポ・グループとの関係は、ますます
深くなっていったのです。
 1997年頃のことですが、米国民主党の政治家たちが中国か
ら収賄している疑惑があるというニュースが米国のマスコミに流
れ、それが中国政府スパイ組織による深刻な外交問題に発展する
のです。これを受けてFBIは事実関係の調査に乗り出しますが
たちまち、捜査の中断に追い込まれます。これについて伊藤貫氏
は次のように書いています。
─────────────────────────────
 しかし、FBIと連邦政府検察官による贈賄事件の捜査は、数
ヶ月しか続かなかった。1997年初頭、ホワイトハウスの命令
を受けた司法省が、この件に関する捜査を打ち切る決定を下した
からである。
 この事件の捜査を続行するために独立検察官を任命することを
主張したキャリア検察官、チャールス・ラベラは、即刻、解雇さ
れた。他の検察官たちはラベラが即座にクビになったのを見て、
「この事件には、深入りしないほうがよい」と理解した。
                 ──伊藤貫著の前掲書より
─────────────────────────────
 1998年のことですが、クリントン大統領は企業家1200
人を連れて中国を訪問します。そのときクリントン氏は、多くの
米国の利権を中国に渡したと思われます。中国全土にマクドナル
ド店舗が広まり、核兵器や軍事技術も中国に供与し、中国軍隊の
近代化にも貢献したといわれています。
 しかも、このときクリントン大統領は、9日間も中国に滞在し
ながら、日本に立ち寄ることなく帰国したことから「ジャパン・
パッシング(日本無視政策)」という言葉が流行し、米民主党政
権は「反日・親中」という認識を再確認させることになったので
す。          ──[孤立主義化する米国/109]

≪画像および関連情報≫
 ●中国から狙われたクリントン夫妻
  ───────────────────────────
   中国はケ小平時代に発足させた人民解放軍系企業が、兵器
  や麻薬の密輸など非合法ビジネスを含め、対外ビジネスに積
  極的に参入していった。米国にも、人民解放軍系のペーパー
  カンパニーが続々と増えていった。
   並行して、世界の華僑華人財閥とのネットワーク強化に力
  を注ぐ政策を打ち出し、中国共産党幹部は、華僑華人の資金
  をどこへ避難させ、どこへ投下するか、情報力と機動力のあ
  る華人らと連携しながら管理運営をしていった。
   こういった中国共産党の対外工作において、米政治家の中
  で早々にターゲットとなった1組が、民主党のクリントン夫
  妻だった。その“物語”は1980年代初頭−アーカンソー
  州知事のビル・クリントン氏が脚光を浴び始めた時代にまで
  遡(さかのぼ)る。インドネシアの華人財閥、リッポー・グ
  ループ(力宝集団)は、ヒラリー氏が当時、上級パートナー
  を務めていたアーカンソーの法律事務所を顧問とし、高額の
  報酬を支払う。
  銀行の買収など、リッポーは米国で勢力を拡大させつつ、人
  民解放軍系企業からクリントン夫妻への資金提供や、民主党
  への政治献金などでのパイプ役を務めていったとされる。米
  国の法律では、大統領選や知事選などの立候補者が、外国人
  や市民権を持たない人間から選挙資金の提供を受けることを
  禁じている。           http://bit.ly/2he69pE
  ───────────────────────────

クリントン米大統領と江沢民国家主席.jpg
クリントン米大統領と江沢民国家主席
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2016年12月20日

●「米新政権をテストする中国の策略」(EJ第4425号)

 ヒラリー・クリントン氏が大統領選に敗北したことによって、
米国と中国との間の不自然な結びつきが防止できたことは日本に
とって幸いであったと思います。
 しかし、トランプ次期米政権の対中国政策はまだ十分見えてき
ていませんが、安全保障関係の閣僚人事やトランプ氏による「一
つの中国の原則に縛られない」という発言によって、中国に対し
て相当強い姿勢で臨む可能性も高まってきています。
 そのような矢先に、中国と米国の間で、ひとつのもめ事が発生
したのです。米海軍の水中グライダーが中国海軍に捕獲されると
いう事件です。これは「トランプ/米国」VS「習/中国」の前
哨戦とでもいうべき出来事であるといえます。
 事件の内容については、12月17日付「ヤフー・ニュース」
から引用します。
─────────────────────────────
◎中国艦船、米潜水機奪う=南シナ海で海洋調査中/国防総省
 米国防総省は16日、中国海軍の艦船が南シナ海の公海で15
日に、米海軍海洋調査船の無人潜水機を「違法に」奪ったと発表
した。米側は中国に対し、潜水機の即時返還を公式に要求した。
国防総省のデービス報道部長は「ほかに同種の例は聞いたことが
ない」とし、中国の行動を国際法違反と批判した。
 潜水機が奪われた現場は、フィリピンのスービック湾北西沖約
50カイリ(約93キロ)で、米調査船「バウディッチ」は無線
で中国艦船に潜水機を返すよう要求した。「(中国)艦船は無線
連絡を認識したが、(返還)要求は無視された」という。デービ
ス部長によれば、調査船が潜水機2機を回収しようとしたところ
中国艦船が近づき、小型ボートを出して1機を奪った。潜水機は
海水温や塩分濃度など一般的な情報を収集しており、機密情報に
は全く関係していないという。     http://bit.ly/2gOsnOd
─────────────────────────────
 実は中国は、新しい米政権が発足するタイミングで、同じよう
なことをこれまでも仕掛けてきているのです。新政権の反応を見
ようとしているのです。これは中国の常套手段です。
 ジョージ・ブッシュ(子)政権が発足した2001年4月、海
南島沖約110キロメートルの国際空域で、米海軍EP─3と中
国戦闘機が接触し、中国人のパイロットが行方不明になるという
事件が起きています。この事件(海南島事件)について、ウイキ
ペディアは次のように伝えています。
─────────────────────────────
 2001年4月1日、午前8時55分(中国標準時)海南島か
ら東南に110キロメートルの南シナ海上空の公海上で、中国国
内の無線通信傍受の偵察活動をしていたアメリカ海軍所属の電子
偵察機EP─3Eと中国人民解放軍海軍航空隊所属のJ─811
戦闘機が空中衝突する事故が発生した。そのため、中国人民解放
軍機が墜落しパイロットが行方不明になった。一方のアメリカ軍
偵察機は大きな損傷を負ったが、至近の海南島の飛行場に午前9
時33分に不時着した。搭乗員は中国当局によって身柄を拘束さ
れた。                http://bit.ly/2hMsUlq
─────────────────────────────
 事故が起きたのは、あくまで「南シナ海上空の公海上」です。
しかし、米国の情報収集飛行に苛立った中国の戦闘機は米海軍の
EP─3に異常接近し、接触して両機とも墜落したのです。
 事件を知ったブッシュ大統領は、江沢民国家主席にホットライ
ンを使って電話をかけたのですが、江主席は一向に電話に出ず、
13回目にやっとつながったといいます。
 実はこのとき、江沢民は事件を知るとうろたえて、ブッシュ大
統領からの電話に出ず、「どうしょう」と側近を集めてその対応
について協議したといいます。まさか衝突して両機が落ちること
は考えていなかったからです。当時の米中関係は極めて悪く、米
中戦争になる危険性もあったのです。これが海南島事件です。
 そのブッシュ政権が終わってオバマ政権が発足したのは、20
09年1月20日のことです。その3月8日、南シナ海の公海上
で、米海軍の音響測定艦インペッカブルが中国海軍の調査船5隻
にさまざまな妨害されたのです。その事件の詳細は、次のAFP
の記事を参照してください。
─────────────────────────────
【3月10日AFP】米国防総省は、南シナ海の公海上で8日、
5隻の中国艦船が、米海軍の非武装の調査船「インペッカブル」
に対し、約8メートル以内に近づくなどの危険な妨害行為を行っ
たと発表した。同省はまた、この事態に対し中国当局に抗議した
ことを明らかにした。
 国防総省によると、インペッカブルは中国・海南島の南120
キロメ点で活動中、5隻の中国の艦船に取り囲まれた。このうち
2隻が15メートル以内まで接近し、中国国旗を振りながら同海
域から退去するように要求したという。インペッカブルは中国艦
船に向け放水を行ったが、この際、中国艦船の乗組員は下着姿に
なったという。            http://bit.ly/2hMJG3Z
─────────────────────────────
 またしても公海上での進路妨害です。中国は、国連海洋法条約
(UNCLOS)を都合良く解釈し、ここはわれわれの海だと主
張し、他国に実力行使をしているのです。誠に傍若無人な対応で
あると思います。
 今回の潜水機捕獲事件が起きたのは、フィリピンのスービック
湾北西約50カイリの国際水域で、中国が実効支配しようしてい
るスカボロー礁よりずっとフィリピン寄りの位置です。ここの水
中での調査で中国にクレームをつけられるいわれはないのです。
 在英の国際ジャーナリストの木村正人氏は、この事件は「『一
つの中国』の原則という中国の核心的利益を踏みにじったトラン
プ氏への牽制と、南シナ海は中国の海であることを周辺国に知ら
しめる狙いがある」と述べています。
            ──[孤立主義化する米国/110]

≪画像および関連情報≫
 ●米海軍の水中グライダー捕獲事件
  ───────────────────────────
   中国が軍事要塞化を進める南シナ海の国際水域で海洋調査
  をしていた米海軍の無人水中グライダーが12月15日、中
  国海軍に捕獲される事件が起きました。米国防総省は、主権
  国家は他国の管轄権に属さないという「主権免除」を前面に
  打ち出し、水中グライダーの即時返還を求めています。
   米国のトランプ次期大統領は11日放送の米テレビ番組で
  米中関係の出発点となってきた「一つの中国」原則について
  「どうして我々が縛られなければならないのか」と疑問を呈
  したばかりです。台湾は中国の一部であるという「一つの中
  国」政策は、習近平国家主席の核心的利益をなすだけに中国
  は敏感に反応したようです。
   この事件は、トランプ・習時代の米中関係を占う重要な意
  味を持っています。ユーラシア大陸の地政学を考えると、大
  国の中国とロシアに手を組まれるほど厄介なことはありませ
  ん。トランプ氏はロシアのプーチン大統領に宥和的な発言を
  繰り返す一方で、中国には非常に厳しい発言を繰り返してい
  ます。トランプ氏が「米国の国防費を負担しろ」と日本や韓
  国などの同盟国に無理難題を押し付け、中国経済圏に対して
  防波堤を築く環太平洋経済連携協定(TPP)を破棄すれば
  アジア太平洋で米国のプレゼンスは間違いなく低下するでし
  ょう。              http://bit.ly/2gYNbps
  ───────────────────────────

米国製/水中グライダー.jpg
米国製/水中グライダー
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2016年12月21日

●「中国を追い詰めている4つの事実」(EJ第4426号)

 現在中国は、米国からすさまじいプレッシャーを受けていると
いえます。それは次の4つの事実と深く関わっています。これに
より、中国軍が南シナ海と東シナ海で、不穏な動きを見せる可能
性があります。
─────────────────────────────
 1.次期米国トランプ政権の安全保障関連の閣僚人事構想が
   極端に「反中国」である。
 2.トランプ次期大統領が台湾の蔡英文総統からの祝意の電
   話を受け、対話したこと。
 3.トランプ氏がFOXテレビのインタビューで「一つの中
   国」に疑問を示したこと。
 4.米日露が連携を結ぶ動きがあり、安全保障面で中国が脅
   かされる恐れがあること。
─────────────────────────────
 「1」の反中国閣僚人事構想について述べます。偶然ではなく
十分練られた人事構想であるといえます。
 次期トランプ政権の閣僚人事において、「反中国」の傾向が見
られることは既に述べていますが、さらに新しい情報について書
くことにします。
 トランプ氏は、国務長官にエクソン・モービルCEOのレック
ス・ティラーソン氏を指名しています。ティラーソン氏を強く推
薦した人物は3人いますが、すべて強硬な反中国派であることで
す。いずれもブッシュ(子)政権時の閣僚です。
 1人は、国防長官のロバート・ゲーツ氏です。そしてもう1人
は、国務長官や大統領補佐官を務めたコンドリーザ・ライス氏、
さらにもう1人は、ウィルバー・ロス次期商務長官の下で米通商
代表部(USTR)代表に就く予定の、米大手鉄鋼メーカーCE
Oのダン・ディミッコ氏です。これらの3人は、コテコテの対中
強硬派として知られています。
 さらに、閣僚ではありませんが、ロス商務長官のスタッフに就
任するR・ライティザー、J・ゲリッシュ両弁護士は、中国の鉄
鋼ダンピング問題や国際貿易訴訟を得意としています。よくぞこ
こまで集めたりと思えるほど、反中国の強硬派ばかりの布陣なの
です。中国も当然のことながら、分析をしていると思うので、不
安になるのは当然です。
 「2」と「3」は、トランプ氏による「一つの中国」に対する
見直し発言です。
 トランプ氏の台湾発言は、ついうっかり口にしたのではなく、
十分考えたうえでの発言です。この発言の背景について、中国分
析の第一人者である遠藤誉氏は、次のように解説しています。
─────────────────────────────
 トランプ氏の周囲には「米国は中国との通商交渉で強硬姿勢を
貫け」と主張する経済学者のピーター・ナブァロ氏や、タカ派の
ジョン・ボルトン元国連大使がいて、中国に対し、「台湾カード
を使え」とアドバイスしているようだ。     ──遠藤誉氏
               ──19日発行の「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 米国は「一つの中国」をなぜ認めたのでしょうか。これには少
し歴史を振り返る必要があります。
 中国と米国は、1972年から国交正常化交渉を始めていたの
です。そのとき台湾が中国の一部かどうかをめぐって、もめにも
めたのです。それで7年の月日が流れています。
 結局ニクソン政権は、泥沼化したベトナム戦争からの撤退のた
め、中ソ対立を抱えていた中国に接近したのです。そのため、米
国は中国が主張する「一つの中国」を受け入れたのです。しかし
現在も台湾とは民間レベルで親密な関係を保っているし、台湾と
の間における事実上の軍事同盟によって「台湾関係法」を結び、
武器を売却するなど、親密な関係にあります。
 これについて、中国はその都度反発しながらも、米国が一応は
「一つの中国」の原則は認めているので、大いに不満ではあるも
のの、米中関係を平和裡に保ってきたのです。
 ところがトランプ氏は、まだ大統領就任前ではあるものの、そ
の「一つの中国」の原則の見直しに言及したのですから、中国が
反発するのは当然といえます。もし、トランプ氏があくまでこれ
にこだわるとどうなるでしょうか。これについて、遠藤誉氏は次
のようにいっています。
─────────────────────────────
 問題は、トランプ氏が本当に台湾の独立を支持すれば、戦争が
起きる、ということ。中国は2005年に「反国家分裂法」を制
定した。「台湾が独立するなら、武力を行使して鎮圧する」と書
いてある。その心配は。「ビジネスのため、そこまでいかないと
思う。だがトランプ氏は何を言い、何をやるか予測不可能だ」。
               ──19日発行の「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 こういう状況ににおいて、東シナ海と南シナ海において、中国
は、それぞれ不可解なアクションを起こしてきています。
 12月10日、中国軍機6機が沖縄本島と宮古島の間を通過し
たさい、航空自衛隊のF─15戦闘機が、スクランブル(緊急発
進)しています。当然の防衛措置ですが、中国国防省は「空自機
が『妨害弾』を発射して安全を脅かした」と抗議したのです。
これに対して日本側は、妨害弾など発射していないので、「事実
と異なる」と反論・抗議しています。これが東シナ海での中国の
アクションです。
 南シナ海については、12月15日午後、中国海軍が、米海軍
の測量艦「パウディッチ」が、水中グライダー2機を回収しよう
としたところ、中国海軍艦艇が割って入り、1機を強奪するとい
う不可解な行動をとったことです。これについては、昨日のEJ
で詳しく述べています。中国は何を狙っているのでしょうか。こ
れについては、明日のEJで続いて取り上げます。
            ──[孤立主義化する米国/111]

≪画像および関連情報≫
 ●宮古海峡沖を中国軍用機6機が通過
  ───────────────────────────
   12月10日午前、沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡の上
  空を中国軍のSU30戦闘機2機や情報収集機など合計6機
  が通過したと発表されました。航空自衛隊戦闘機がスクラン
  ブル発進(緊急発進)し対応しましたが、中国機による領空
  侵犯はなかったようです。同日夜になり、中国国防省が定例
  の遠洋訓練をしていた中国空軍機に対し、虚空自衛隊の戦闘
  機「F−15」2機が接近し、妨害弾(フレアとみられる)
  を発射し乗員の安全に危害を与えたとして、日本側に厳重な
  申し入れを行ったと発表しました。
   自衛隊機による同様の対応は今年夏頃にも起きており、中
  国軍機による攻撃動作(ミサイルロックオン)を回避する為
  フレアを作動させ退避しています。防衛省によると「中国機
  の飛行を妨害した事実はない」とコメントしており、この騒
  ぎは日本国内でも報じられています。
   防衛省の発表によると10日午前、中国軍用機(戦闘機な
  ど)6機が東シナ海から沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を
  抜け、太平洋の方面に飛行したということです。確認された
  のは「SU30戦闘機」2機、「H6爆撃機」2機、「TU
  154情報収集機」1機、「Y8情報収集機」1機の合わせ
  て6機。その後、SU30戦闘機2機はUターンして東シナ
  海方面に戻ったということですが、ほかの4機は先島諸島の
  太平洋側を南西方向に飛行したということです。
                   http://bit.ly/2hM0QBu
  ───────────────────────────

中国軍戦闘機/沖縄/宮古島.jpg
中国軍戦闘機/沖縄/宮古島
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2016年12月22日

●「東/南シナ海で中国が決起する?」(EJ第4427号)

 トランプ次期米大統領は、コミュニケーションの手段としてツ
イッターを多用します。現代は、コミュニケーションの手段がた
くさんあります。メール、ブログ、ツイッター、フェースブック
LINE、インスタグラムなどです。
 これらのコミュニケーションツールのなかで、ツイッターは一
番シンプルで、ストレートで、拡散性が高いと思います。それは
私も使っているので、よくわかります。しかし、次の米国の大統
領になる超有名人がツィートを連発すると、世界中に大きな影響
を与えることになってしまいます。
 それに、これらのコミュニケーション手段を使ってのコミュニ
ケーションには問題があります。それは、それらがキューレス・
メディアであることです。ここで「キューレス」とは、言葉が足
りないという意味です。つまり、言葉が足りないので、誤解を招
き、相手を必要以上に怒らせてしまう恐れがあることです。とく
にツイッターは、文字が140字に制限されているので、超キュ
ーレス・メディアということになります。
 このことについて書かれている本があります。2000年の発
行なので、SNSがまだ登場していない時期であり、メールが取
り上げられていますが、SNSも同じことです。
─────────────────────────────
 メールは「キューレス」であるところに特徴があります。相手
から与えられる情報が少ないからこそ、相手がほんとうは何を感
じているか、考えているかがわからないのです。情報が限られる
となると、人は勝手に相手のことを想像力で補います。
 この「キューレス」は悪い方向にも作用します。微妙な言い回
しやメールの文章の中で一瞬むかっとしたような気持ちがあると
微妙に文章に反映されます。その微妙な感情の揺れの部分が、想
像を膨らませている相手にダイレクトに響いていくということも
起きてきます。そして、それは人を非常に感情的にします。
             ──小林正幸著/ダイヤモンド社刊
 『なぜ、メールは人を感情的にするのか/Eメールの心理学』
─────────────────────────────
 もし、SNSでの対話が“感情的”になりやすいとすれば、現
在、中国とトランプ氏のやり取りは最悪であるといえます。トラ
ンプ氏は、台湾の蔡英文総統からの電話を受けたことを中国から
非難されたとき、次のようにツィートしています。
─────────────────────────────
 中国が通貨切り下げや、中国に入る米国製品への重い課税、南
シナ海の真ん中での大規模な軍事複合施設の建設を、われわれに
了解を求めてきただろうか。そうは思わない。 ──トランプ氏
─────────────────────────────
 これに関して中国は国際情報紙「環球時報」を使って、次のよ
うにトランプ氏を徹底的に罵倒しています。中国もここまでいっ
てしまうと、その修復はきわめて困難なものになります。
─────────────────────────────
 中国共産党中央機関紙「人民日報」傘下の国際情報紙『環球時
報』(12月12日付)は、「トランプよ、お聞きあれ・・「一
つの中国』は売買できない」と題した社説を掲載した。「(次期
アメリカ大統領は外交を理解しないガキだ。『一つの中国』政策
は、売買できないものだ。単なる商人であるトランプは、何にで
も値段を付けられ、かつ自分の実力は強大で、自分の好きなよう
に売買できると、思い上がっているようだ。それならアメリカの
憲法にも値段を付けて、サウジアラビアやシンガポールなど盟友
の政治制度と売買してみろ。中国はトランプと、がっぷり四つの
闘争を展開していくべきだ。奴にクギを打ちつけて、中国を痛め
つけてはならないと思い知らせてやるがよい。中国は十分な弾薬
を準備していく・・」    ──「週刊現代」新春合併特大号
─────────────────────────────
 12月16日に中国海軍が米海軍の水中グライダーを奪ったと
き、トランプ氏は次のようにツィートしています。そして17日
に、中国が水中グライダーの返還の用意があるというと、またし
ても、それに対応してツィートを発信しています。
─────────────────────────────
◎中国は公海で米海軍無人潜水機を盗んだ。水中から奪い、中国
 に持ち帰る前代未聞の行為だ。
◎返還するそうだが、盗んだ無人潜水機などいらないと中国にい
 いたい。そっちで持っておけ!
─────────────────────────────
 ますます事態は深刻になりつつあります。未確認情報ですが、
中国は退任間近のオバマ政権に対し、トランプ政権が発足する1
月20日までに、「一つの中国」見直しの方針変更を要求してい
るといいます。複数の米軍、米情報当局関係者から得た情報に次
のようなものがあります。
─────────────────────────────
 中国政府関係者、工作員が「トランプ氏が対中強硬策に出たら
報復する」と米国の政財界関係者を脅している。報復対象米企業
リストを作成し、「トランプ氏と決別しろ」と関係者に迫ってい
るという。        ──12月19日発行「夕刊フジ」
─────────────────────────────
 そこで、現在囁かれているのは、中国が来年1月のトランプ政
権発足までに、南シナ海と東シナ海で、中国が決起するという極
秘情報です。具体的には、事実上オバマ政権が「死に体」である
現在、南シナ海の人工島の軍事基地化を一段と進め、東シナ海で
は、偽装漁船による海上民兵を使って尖閣諸島上陸を行い、既成
事実化する作戦です。
 まさかとは思いますが、中国が焦っているのは間違いないこと
で、これ以上中国とトランプ氏の冷たい会話が繰り返され、ヒー
トアップすると、そういうことが絶対に起こらないとはいえない
のです。日本はそこまで見極めて行動することが求められている
のです。        ──[孤立主義化する米国/112]

≪画像および関連情報≫
 ●中国、トランプ氏の真意見極め 台湾は対米関係強化
  ───────────────────────────
   【北京=山田周平、台北=伊原健作】中国外務省は3日、
  トランプ次期米大統領と台湾の蔡英文総統の電話協議につい
  て「米国が一つの中国の政策を守り、台湾問題を慎重かつ妥
  当に処理することを促す」とけん制する耿爽副報道局長の談
  話を発表した。トランプ政権の発足を機に米台が接近するこ
  とを警戒している。
   ただ、談話は中国の従来の立場を確認するにとどめ、トラ
  ンプ氏への直接の批判はない。中国の王毅外相は談話に先立
  ち「台湾の小細工にすぎない」と香港メディアの取材に答え
  批判の矛先を蔡総統に向けた。まずはトランプ氏の真意を見
  極める構えとみられる。
   中国の共産党政権は台湾統一を悲願としているが、武器供
  与など米国による台湾支援が大きな障害だと認識。トランプ
  次期政権が台湾との交流拡大に動けば米台へ厳しい対抗措置
  をとる見通しだ。
   一方、台湾の蔡英文政権はトランプ氏の当選直後から関係
  強化を切望。安全保障と経済でトランプ氏の内向き志向に危
  機感を深めていたためだ。電話協議を現地メディアは「歴史
  的」と評価。ただ中国側からの圧力が強まることへの懸念も
  残る。「特に経済発展と『国防』の強化について意見と理念
  を分かち合えた」。台湾の総統府は3日、会談の成果を誇示
  するコメントを出した。その後「台米、両岸(中台)関係は
  ともに非常に重要で、衝突しない」とも表明、中国側に理解
  を求めた。         http://s.nikkei.com/2hTQBrP
  ───────────────────────────

ドナルド・トランプ次期米大統領.jpg
ドナルド・トランプ次期米大統領
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2016年12月26日

●「トランプ次期政権とゴールドマン」(EJ第4428号)

 2016年も今日を含めてあと6日です。EJは28日までお
届けします。それでこのテーマは終了します。
 ところで、次期大統領に決まったトランプ氏は、世界に先駆け
てなぜ安倍晋三首相に会ったのでしょうか。
 12月24日のことですが、BS朝日の「激論!クロスファイ
ア」に出演した菅官房長官は、司会の田原総一朗氏に同じ質問を
され、会談が成功した理由として次の2つを上げています。
─────────────────────────────
 1.大統領選投票日の3日前に日本政府はトランプ事務所に
   電話を入れ、当選したときの祝いの電話はどこにかけれ
   ばよいか尋ねている。
 2.当選直後の安倍VSトランプの電話会談の内容は極めて
   好感触で、同席した菅官房長官は「2人はウマが合う」
   ことを感じたという。
─────────────────────────────
 日本政府がトランプ氏にお祝いの電話をかけたとき、先方の対
応が非常に好意的であったことは確かのようです。菅官房長官に
よると、安倍首相が会談を提案すると、トランプ氏はすぐに同意
してくれたといいます。
 これだけではないのです。EJでここまで述べてきているよう
に、トランプ次期米政権は中国の「一つの中国」を批判し、中国
に対する強硬派を次々と安全保障関係の要職につけています。こ
れを見ると、トランプ次期米政権は、中国に対して相当の強い姿
勢で臨むという強い意思を感じます。
 この米国の中国に対する強硬姿勢は、何かと中国から脅威を受
けている日本にとって好都合です。果たしてこれは偶然なのか、
それともトランプ次期米政権に何らかの狙いがあってあえてやっ
ていることなのでしょうか。
 結論からいうと、けっして偶然ではなく、ちゃんとした考え方
に基づいて行われているのです。その知恵をトランプ氏に授けて
いるのが、米外交政策の超大物であるヘンリー・キッシンジャー
博士ではないかといわれています。
 ここで思い出していただきたいことがあります。トランプ氏は
大統領予備選を勝ち抜き、共和党の大統領候補になることが確定
した直後の2016年5月18日、ニューヨーク在住のキッシン
ジャー博士の自宅を訪ねているのです。これは実に重要な意味を
持っています。
 評論家の副島隆彦氏は、トランプ氏のキッシンジャー博士宅訪
問によって、トランプ氏が次期米大統領になることを確信したと
いいます。それは、トランプ氏がデイヴィッド・ロックフェラー
氏につながってくることを意味するからです。このとき、娘婿の
ジャレッド・クシュナー氏もトランプ氏に同行しています。これ
については2016年8月18日のEJ第4342号でご紹介し
ています。http://bit.ly/2b0mMYc
 もうひとつ、トランプ次期米政権の経済関係の要職の顔ぶれを
見ると、政権の中枢にゴールドマンサックスをはじめ、ニューヨ
ークのウォール街出身の大物が陣取っていることがわかります。
例えば、2016年12月1日付の日本経済新聞には、次の記事
が掲載されています。
─────────────────────────────
【ニューヨーク=山下晃】トランプ次期米大統領の政権移行チー
ムがゴールドマン・サックスの社長兼最高執行責任者(COO)
のゲーリー・コーン氏(56)を政権の要職に据える検討を進め
ていることが分かった。すでに同社出身のスティーブン・ムニュ
ーチン氏が財務長官に指名されており、実現すればトランプ政権
でのゴールドマン色が一段と色濃くなる。
 米メディアによると、米行政管理予算局(OMB)局長などで
の起用が検討されている。コーン氏は11月29日にトランプ氏
の自宅のトランプタワーを訪れ面会している。
 コーン氏は、現在ゴールドマンのナンバー2。最高経営責任者
(CEO)のロイド・ブランクファイン氏がトップの座を譲らず
コーン氏の行く末はウォール街で度々話題に上る。起用が検討さ
れている行政管理予算局は予算の調整や執行を担う。局長は大統
領に直属し現在のルー財務長官も同ポストを経験しており、政権
の重要ポスト。だが金融業界での格はコーン氏の方がムニューチ
ン氏より上との見方があり、コーン氏が引き受けるかは不透明な
部分が残る。   ──2016年12月1日付、日本経済新聞
                http://s.nikkei.com/2i3ZIcH
─────────────────────────────
 ゴールドマンサックスが政権の中枢に座る体制は、米国の政権
ではずっと続いています。クリントン政権、ブッシュ(子)政権
そしてオバマ政権でも同様です。しかし、これらの政権において
彼らは、いずれも中国の利権狙いの政権であり、日本には厳しい
政権だったのです。しかし、2008年にリーマン・ショックに
見舞われると状況は少しずつ変化してきたのです。
 しかし、トランプ氏は、選挙期間中、ゴールドマンサックスを
「特別利益団体ゴールドマンサックス」と厳しく攻撃していたの
です。クリントン氏とのゴールドマンサックスの資金面での癒着
を批判しての言動です。実際にウォール街は、大統領選では、民
主党のヒラリー・クリントン氏へ7800万ドルもの献金をした
のに対し、トランプ陣営にはその100分の1しか出していない
のです。
 しかし、トランプ氏は選挙に勝利し、大統領になることが確定
すると、ゴールドマンサックスへの批判をひっこめ、逆に積極的
にゴールドマン出身者を採用し始めたのです。財務長官にゴール
ドマンサックスの元幹部のスティーブン・ムニューチン氏を指名
し、新聞報道にあるように、ゴールドマンサックスの社長兼CO
Oのゲーリー・コーン氏を米行政管理予算局の局長に任用しよう
としています。そこには何があったのでしょうか。
            ──[孤立主義化する米国/113]

≪画像および関連情報≫
 ●ウォール街の敵か味方か/2016年11月14日
  ───────────────────────────
   米次期政権の財務長官候補に、JPモルガン・チェースの
  ジェイミー・ダイモンCEOや、ゴールドマン・サックス元
  幹部、スティーブン・ムニューチン氏などの名が挙がってい
  ることが、米CNBCの報道から明らかになった。「大手銀
  行の敵か味方か」と論じられてきたトランプ氏だが、ゴール
  ドマンCEOは「強気の経済政策が市場にポジティブな影響
  をもたらす」と歓迎の意を示している。
   ロイター通信は、下院金融委のジェブ・ヘンサーリング委
  員長も有力視されていると報じている。いずれも内部の事情
  に詳しい関係者筋からの情報で、トランプ氏側から正式なコ
  メントは発表されていない。
   過去に何度か財務長官候補として浮上したことのあるダイ
  モンCEOは、以前から財務長官の地位には興味がない意思
  を明確にしている。またトランプ氏の政治界進出に関しても
  「政治経験のない実業家が大統領になれるはずがない」と一
  貫して否定的な態度を貫いてきた。
   新政権誕生後には「世界に変化の時期が訪れている」とい
  うメモを社内にまわし、「組織リーダーが協力しあって、経
  済成長に貢献する手段を模索する必要がある」と現実を受け
  とめながら前向きに進んでいく方向性を打ちだしている。し
  かしトランプ氏に対する不信感が突如消滅したというわけで
  はないはずだ。          http://bit.ly/2hT0uZc
  ───────────────────────────

ウォール街はトランプ次期政権の味方か.jpg
ウォール街はトランプ次期政権の味方か
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2016年12月27日

●「トランプ政権が対中国強硬な理由」(EJ第4429号)

 なぜ米国の政権は、ウォール街、とりわけゴールドマンサック
スの出身者を財務長官などの経済閣僚クラスの要職に採用するの
でしょうか。実際にクリントン政権とそれに続くブッシュ(子)
政権では、次のように、ゴールドマンサックスのトップが就任し
ています。
─────────────────────────────
   クリントン政権 ・・・  ロバート・ルービン氏
    ブッシュ政権 ・・・ ヘンリー・ポールソン氏
─────────────────────────────
 オバマ政権では、ゴールドマンの出身者ではないが、財務省の
出身で、国際担当財務次官も務めているティモシー・ガイトナー
氏が財務長官に就任しています。ガイトーナー氏は、ルービン財
務長官の下で働いていた経験の持ち主です。
 なぜ、米政権の財務官僚に、ウォール街の大物が必要なのかと
いうと、米国は世界最大の債務国であって、世界中からカネを集
める仕組みを作らないと、米国という国がもたないからです。そ
のため、米政権とウォール街は運命共同体として機能せざせるを
得ないのです。実際にどのような仕組みを作ったのかについて、
産経新聞特別記者の田村秀男氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ウォール街では金融危機が起きるたびにゴールドマンやその出
身者が辣腕を振ってきた。ルービン財務長官(当時、以下同じ)
は、1990年代前半に日本叩きの手段としたドル安・円高を止
めて強いドルを演出し、海外からの資金流入を促す一方で、アジ
ア諸国に金融自由化を強要し、投資資金を流し込んだ。(中略)
 株式市場が低迷する2001年に、ゴールドマンは「BRIC
s」の金融用語を発案し、ブラジル、ロシア、インド、中国をひ
とまとめにした投資手法を編み出し、外部のカネを集めて世界に
再配分、さらに米国に還流させ、幾度も稼ぐウォール街特有のビ
ジネスモデルを再強化した。       ──田村秀男氏論文
           「トランプ政権は日本経済のチャンス」
        ──「月刊Haneda2月号」/新春特大号
─────────────────────────────
 ところが、このウォール街中心政権は、2007年にサブプラ
イム危機、2008年にはリーマンショックに見舞われます。こ
の未曽有の危機処理に当たったのは、時のポールソン財務長官で
す。このときポールソン氏が何をしたかについては、彼の回想録
に詳しく書かれています。
 ポールソン長官は、実は親中派であり、財務長官に就任以来、
中国の要人との間に人脈を築き、ひたすら中国に米国債を持たせ
ることに腐心したのです。そのため中国でポールソン長官は「米
国債のセールスパーソン」といわれたのです。
 したがって、リーマン・ショックが起きたとき、ポールソン長
官は、中国の王岐山副首相に電話し、経営破綻しかけているモル
ガン・スタンレーへの緊急融資を打診します。しかし、これは実
現には至らなかったものの、時の中国の胡錦濤政権は米国債を継
続的に買い増しし、米国経済を支えたのです。そのため、中国の
米国債保有額は日本を抜いて世界一になったのです。
 この構図があるからこそ、その後のオバマ政権では、中国の人
権問題には目をつむり、南シナ海での人工島建設についても、口
では批判するものの、せいぜい航行の自由作戦と称して人工島の
近くを軍艦で航行する程度でお茶を濁していたのです。
 さらに習国家主席が執念を燃やしていた人民元のIMFの特別
引き出し権(SDR)入りまで容認したのも、大量の米国債を中
国に握られているため、今後も継続して国債を買ってもらわなけ
ればならないので、どうしても対中外交は軟弱なものになってし
まったのです。誰の目にも、人民元の国際通貨化は、時期尚早で
あることは明らかであったにもかかわらずこれを認めたののも、
中国が米国債を大量に保有しているからだったのです。
 しかし、トランプ次期政権は、その中国に対して、「一つの中
国」を含め、経済、安全保障の両面において、強硬な姿勢を打ち
出しています。あれほど、中国に対して弱腰であったオバマ政権
とは大きな違いです。それは、事情が変わったからなのです。
 添付ファイルを見てください。このグラフは、日中の対米貿易
収支と日中の米国債保有の推移をあらわしています。
 これによると、中国の対米貿易黒字は急膨張しているのに対し
日本のそれは縮小傾向にあります。これに対して、太い折れ線は
中国の米国債保有残高を示しています。これはサブプライム危機
の2008年頃に日本を抜き、2009年のリーマンショック以
降、急速に増えています。
 しかし、2011年頃から中国の米国債保有額は減少に転じ、
2016年になって、その保有額の日中逆転が生じています。一
方、中国の貿易黒字は膨張の一途をたどり、今や米貿易赤字総額
の5割ぐらいを占めるようになっています。どうしてこのような
変化が生じたかについて、産経新聞特別記者の田村秀男氏は、次
のように明解に分析しています。
─────────────────────────────
 中国は、対米貿易黒字で年間約3500億ドルのドルを稼いで
いるが、それを米市場に還流させるどころか、さらに米市場から
投資を引き揚げている。不動産バブル崩壊不安が漂う中国からの
巨額の資本流出に伴い、北京当局が外貨準備のドル資産を売って
人民元を買い支えざるをえなくなっている。
 安値輸出攻勢をかけて米国の中間層を痛めつけているうえに、
中国はいまや米金融市場の足をすくう巨大な問題勢力になった。
ワシントンは中国の金融パワーにへりくだる必要は全くなくなっ
た。「中貨(中国製品)排斥」で何の不都合があるものか。とは
言え、このままトランプ次期政権は強硬路線を貫徹できるのか。
                ──田村秀男氏前掲論文より
─────────────────────────────
            ──[孤立主義化する米国/114]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏が仕掛ける中国試し、「台湾カード」の危険性
  ───────────────────────────
  [ワシントン5日/ロイター]ドナルド・トランプ次期米大
  統領は先週、台湾の蔡英文総統と電話会談し、中国に対する
  強硬姿勢を示唆したが、貿易や北朝鮮といった問題をめぐり
  中国から譲歩を引き出すための危険な賭けをどこまで推し進
  めるのかは定かではない。
   米国と台湾の首脳は1979年の米中国交正常化以来、直
  接コンタクトを取っていなかった。トランプ氏と蔡氏の電話
  会談を受け、中国政府は外交ルートを通じて、米国政府に抗
  議。来年1月に退陣するオバマ政権は、長年かけて共和/民
  主両党による政権が慎重に築き上げてきた対中関係の進展を
  損ないかねないと警告した。
   もしトランプ氏が過度に自分の考えを通そうとするなら、
  中国との軍事対立を招く可能性があると、専門家らは指摘す
  る。同氏の側近とマイク・ペンス次期米副大統領は、蔡氏と
  の10分間に及ぶ電話会談は「表敬」であり、対中政策の変
  更を示すものではないとして、火消しに追われている。
   しかしトランプ氏は4日、中国の経済・軍事政策をツイッ
  ターで批判し、火に油を注いだ。一方、同氏の経済顧問であ
  るスティーブン・ムーア氏は、中国が気に入らなくても「お
  好きなように」と述べた。元米高官を含む専門家らは、台湾
  首脳との電話会談は中国に対する警告の第一弾にすぎないと
  みている。            http://bit.ly/2gYwGYg
  ───────────────────────────
 ●図表出典/田村秀男氏前掲論文より

米国の対日中貿易赤字と日中の米国債保有残高(億ドル).jpg
米国の対日中貿易赤字と日中の米国債保有残高(億ドル)
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2016年12月28日

●「『一つの中国』原則に疑問がある」(EJ第4430号)

 トランプ次期米大統領の「一つの中国」の見直し発言が波紋を
広げています。「一つの中国」という言葉がある以上、「二つの
中国」があったことを意味します。それは次の2つの国です。
─────────────────────────────
     1.   中華民国 ・・・ 現在の台湾
     2.中華人民共和国 ・・・ 現在の中国
─────────────────────────────
 つまり、「中国」と名乗る国が2つあり、いわゆる本家争いの
紛争があって、それを制した現在の中国(中華人民共和国)が他
国と国交を結ぶときは、「中華人民共和国こそが正式の中国であ
り、台湾は中国の一部である」とする原則を相手国に認めさせて
きたのです。これが「一つの中国」の原則です。
 しかし、米国は共産主義国家を忌避し、あくまで台湾を中国で
あるとし、米国と中華人民共和国との間には、深い溝があったの
です。その溝を埋め、中華人民共和国と和解して国交を回復させ
たのは、第37代大統領のリチャード・ニクソンです。
 ニクソン大統領は、米軍のベトナムからの撤退を公約にして当
選したのですが、その処理に手こずっていたのです。この難問解
決に尽力したのがあのヘンリー・キッシンジャー氏なのです。こ
の問題にキッシンジャー氏が関与していたことと、今回のトラン
プ氏の発言とは無関係ではないのです。
 キッシンジャー氏の戦略は、北ベトナムの最大の軍事援助国で
あった中華人民共和国と国交を回復することによって、北ベトナ
ムを牽制し、北ベトナムとの秘密和平交渉を有利に進めるという
ものです。それは、中華人民共和国と対立を続けていたソ連を牽
制することにもなる実に巧妙な外交戦略といえます。
 しかし、この戦略によって米国は「一つの中国」の原則を飲ま
されることになります。しかし、この原則には、キッシンジャー
博士が仕掛けた巧妙なトリックがあるのです。1979年の米中
共同コミュニケーションには次のように書かれています。
─────────────────────────────
 ・アメリカ合衆国は中華人民共和国を中国唯一の合法政府で
  あることを「承認」する。
 ・アメリカ合衆国政府は、中国はただ一つであり、台湾は中
  国の一部あるとする中国の立場を「認識」する。
─────────────────────────────
 なぜ、前半の部分は「承認」で、後半の部分が「認識」なので
しょうか。それは国際法上、台湾は中国に帰属していないからで
す。そのため、「台湾は中国の一部である」と主張する中国の立
場を認識(理解)するといういい方しかできないのです。
 その証拠に、米国は1979年に中華民国との国交断絶と同時
に「台湾関係法」を制定しています。これは事実上の米国と台湾
との軍事同盟なのです。これについて、戦略国際問題研究所上級
顧問のE・ルトワック氏は、評論家の加瀬英明氏との対談で、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 アメリカには米中国交を行った時に、政権が台湾を守ることを
義務づけた台湾関係法があります。台湾が中国から攻撃を蒙った
場合、アメリカ大統領が台湾を守ろうとしなかったら、議会が台
湾関係法によって台湾を守ることを要求するでしょう。日本との
安保条約よりも台湾の方がしっかりと守られていますよ。
               「大失敗!習近平の海洋進出」
        ──「月刊Haneda2月号」/新春特大号
─────────────────────────────
 実は、トランプ氏の「一つの中国」の見直しの言及は、相当周
到な計画の下で行われているのです。まず、キッシンジャー博士
がトランプ氏らへ、十分なブリーフィングを行ったうえで中国を
訪問して、習近平国家主席と会談します。その会談の時間に合わ
せてトランプ氏はツィートが発信しているのです。
 既に何度も述べているように、トランプ氏はキッシンジャー氏
と十分なコミュニケーションを取っており、トランプ氏がキッシ
ンジャー氏の面子を潰すことをあえてやるはずがないのです。し
たがって、これは計画的に行われているのです。つまり、外交交
渉を有利に進めるために、「台湾カード」を切ったのです。
 中国も「一つの中国」の原則だけでは弱いと感じていたはずで
そのために、2005年に「反国家分裂法」を制定し、台湾が独
立を唱えれば、武力で鎮圧することを定めています。中国情勢に
詳しい遠藤誉氏はこれに関して次のように述べています。
─────────────────────────────
 「一つの中国」論への疑義は、今となっては「台湾独立」とい
う可能性しか示唆しておらず、それは不可能ではないが、しかし
中国(北京)が黙っていない。必ず、「反国家分裂法」が火を噴
く。そのために中国は昨年、建国後初めて抗日戦争勝利記念日に
軍事パレードを挙行し、「反国家分裂法」が実行された際の威力
を、台湾にそしてアメリカに見せつけた。
 そんな中国に誰がした、と言いたいが、アメリカが過去におけ
る自国の選択を反省してみるのは悪いことではない。日本も経済
繁栄のために、その結果、何を招いているかを考えてみる必要は
あるだろう。             http://bit.ly/2hEoRqZ
─────────────────────────────
 7月11日から115回にわたって「孤立主義化する米国」と
いうテーマで米国論を書いてきましたが、今回でこのテーマは最
終回になります。ほとんどの人が予測していなかったドナルド・
トランプ大統領の誕生ですが、副島隆彦氏をはじめ、アメリカの
ことを熟知し、勘所を押さえている人には、彼が大統領に選ばれ
ることは最初から見えていたのだと思います。
 トランプ政権は、来年1月20日に発足しますが、このアメリ
カ大転換で、世界はどうなるのでしょうか。来年は1月4日から
新しいテーマでEJをお届けします。長期間のご愛読を感謝いた
します。    ──[孤立主義化する米国/115]/最終回

≪画像および関連情報≫
 ●エスカレートするトランプ米次期大統領の中国“口撃”
  ───────────────────────────
   2016年12月16日、トランプ米次期大統領の、中国
  “口撃”がエスカレートしている。米国が維持してきた「一
  つの中国」政策の見直しにも言及した。その一方で、トラン
  プ氏は中国大使には習近平国家主席の知人を起用。硬軟織り
  交ぜて中国を揺さぶり、貿易などで譲歩を引き出す狙いとみ
  られる。
   トランプ氏は、11日放送された米FOXテレビの番組で
  「『一つの中国』政策は完全に理解している」と前置きしな
  がらも、「貿易関係などで合意が得られなければ、なぜ『一
  つの中国』に縛られないといけないのか」と疑問を呈した。
   さらに、「中国は為替操作などで米国に不利益を与えてい
  る」と批判。「南シナ海の真ん中での巨大な要塞の建設によ
  り、私たちは非常に大きな被害を受けている」「北朝鮮の核
  開発を中止するため中国が協力していない」とも指摘した。
   日本メディアによると、トランプ氏は今月2日の台湾・蔡
  英文総統との電話会談の直前、米情報当局から、中国の南シ
  ナ海進出に関する3時間に及ぶ説明を受けていた。軍事拠点
  化が進む岩礁の衛星画像を見たトランプ氏は「こんなに広範
  囲に行われているのか。元に戻すことはできないのか」と激
  怒したという。          http://bit.ly/2itx0yc
  ───────────────────────────

習近平国家主席とキッシンジャー博士.jpg
習近平国家主席とキッシンジャー博士
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