します。ビットコインは、「仮想通貨」とか「暗号通貨」とか日
本語に訳されていますが、その正体は何でしょうか。
ビットコインといえば、誰でも「マウントゴックス/MTGO
Xの2月破綻」のニュースを思い浮かべます。当日のWeb版日
本経済新聞の記事を再現します。
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インターネット上の仮想通貨ビットコインの取引所「マウント
ゴックス」を運営するMTGOX(東京・渋谷)が28日、東
京地裁に民事再生法の適用を申請し、同日受理されたと発表し
た。債務が資産を上回る債務超過に陥っていた。顧客が保有す
る75万ビットコインのほか、購入用の預かり金も最大28億
円程度消失していたことが判明した。MTGOXのマルク・カ
ルプレス社長は28日夕の記者会見で、「ビットコインがなく
なってしまい、本当に申し訳ない」と謝罪した。消失したのは
顧客分75万ビットコインと自社保有分10万ビットコイン。
金額にして「114億円程度」としているが、他の取引所の直
近の取引価格(1ビットコイン=550ドル前後)で計算する
と、470億円前後になる。流動負債の総額は65億円で「債
務超過の状態にあると判断した」という。同社は25日昼ごろ
からサービスを停止していた。顧客12万7000人の大半は
外国人で、日本人は0.8 %、約1000人という。
──2014年2月28日付、Web版日本経済新聞
http://s.nikkei.com/VWuGnD
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一体何が起きたのでしょうか。ビットコインが何であり、その
仕組みを知らないほとんどの人は、ビットコインというシステム
そのものが破綻したととらえたと思います。これがとくに日本に
おいて大きい誤解を生むことになるのです。
この報道を受けて麻生財務大臣は、次のような発言をしている
のです。
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ビットコインなんか長続きしないし、いつかは破綻すると思っ
ていたが、意外に早かった。早急に対策を詰める。
──麻生財務相発言
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麻生財務相の発言を聞くと、ビットコインシステムが破綻した
ように解釈できますが、結論からいうなら、これは麻生財務相が
ビットコインについていかに何も知らないかを見事に示している
と思います。
どうしてかというと、マウントゴックスは、ビットコインの取
引所──というよりも、円やドルをビットコインに両替したり、
その逆のビットコインを円やドルに替える「両替所」のようなも
のに過ぎないからです。
これについて、ビットコインに詳しく、その著作もある経済学
者の野口悠紀雄氏は次のように述べています。
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重要なのは、「両替所はビットコインの維持システムの外にあ
る」ということである。両替所はビットコインシステムの利用
者であり、運営者ではない。だから、マウントゴックスが破綻
しても、ビットコインの運営そのものには影響が及ばない。シ
ステムの外で起きたことがシステムの運営に影響を与えないと
いうのは、日本銀行券についてつぎの事例を考えれば、明らか
だ。いま銀行強盗があって日銀券が盗み出されたとしよう。こ
の場合、「銀行は広い意味での通貨制度の一部だから、日銀券
の脆弱性が明らかになった」と言うだろうか?普通はそうは言
わない。ガードが甘かったのは、被害にあった銀行である。日
銀はそこまでは責任を持てない(ましてや、個人が自宅で保管
している日銀券の盗難までは、到底責任を持てない)。「これ
は、日銀券維持システムの外で起きた事件であり、日銀券の信
用が失われたわけではない」と考えるのが普通だ。
──野口悠紀雄著/ダイヤモンド社刊
『仮想通貨革命/ビットコインは始まりにすぎない』
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誤解の原因をつくったのは何といってもマスコミです。「ビッ
トコインの脆弱性の露呈」と大々的に報道したのです。テレビで
わかったような説明をする識者とやらも、「ビットコインなんて
円天と同じ」とか、「中央銀行なしに通貨制度を維持できるわけ
がない」とコメントし、誤解を日本中に拡散したのです。また、
ビットコインを企業通貨──ポイント制のようなものと同じであ
ると誤解している人も少なくないと思います。
ビットコインのシステムを理解するのはけっして容易なことで
はないのです。理解しにくいので、誤解が生ずるのです。マウン
トゴックスの破綻があっても、ビットコインのシステム自体は何
も問題はないのです。むしろ、今後世の中を変革するツールにな
る可能性があります。
そこで、ビットコインとそのシステムを正しくとらえ、それが
世の中にどのような変革をもたらそうとするのかについて、EJ
のテーマとして明らかにしていきたいと思います。タイトルは、
次の通りとします。
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「ビットコインとは何か/何が社会に変革をもたらすのか」
── 第3のIT革命の衝撃/ビットコイン ──
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マウントゴックスが破綻してから丸6ヶ月が経過しましたが、
その間に3つの取引所が日本国内に新設されています。この事実
をもってしても、マウントゴックスの破綻がビットコインそのも
のに影響を与えていないことがわかると思います。明日からビッ
トコインの解明を行っていくことにします。
──── [ビットコインについて考える/01]
≪画像および関連情報≫
●マウントゴックス倒産後に浮上した「疑惑」/東洋経済OL
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2014年3月11日付けで東京地裁に対し、倒産後のマウ
ントゴックスの動向が不可解だとして、債権者の代理人から
「上申書」なるものが提出されたのだ。上申書の中にはビッ
トコインの取引履歴を示す「COINSIGHT(コインサ
イト)」というウェブサイトの資料が添付され、3月7日〜
10日にかけて、マウントゴックスで少なくとも53万ビッ
トコイン(約300億円相当)の取引の形跡があったと表示
されている。これについて、「再生債務者(マウントゴック
ス)の代表者(カルプレス氏)らビットコイン交換所への特
別なアクセス権を有する者以外がなし得ないはずの、大量の
ビットコインの引出しに関するリクエストが行われておりま
す」と書かれている。”特別なアクセス権を有する者以外が
なし得ない”とするのは、民事再生の申請で同社の財産処分
が禁じられているほか、ビットコイン交換所のアクセスが遮
断され、一般ユーザーは取引できない状態にあるからだ。マ
ウントゴックスは経営破綻にあたり、ユーザーと同社自身が
保有していた合計約85万ビットコインについて、「ほぼ全
てがなくなっていることが判明した」と説明している。その
ため、上申書は「消えたはずのものが、どうして取引できる
のか」と言いたいわけだ。 http://bit.ly/1qPWRRf
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マウントゴックス破綻会見