いたします。2014年4月1日から消費税が今までの5%から
8%にアップします。さらに計画では、2015年10月から8
%が10%に引き上げられます。無茶苦茶な暴挙です。
普通であれば、そういう無謀な増税を決めようとすると与党に
強い批判が行き、政権がひとつやふたつ崩壊するのは不思議では
ないのです。5%を2倍の10%に引き上げるのですから、世紀
の大増税といえます。
そもそも消費税増税10%を掲げて2010年の参院選を戦い
勝利したのは自民党なのです。衆参のねじれはこのとき生じてい
ます。しかし、増税を公約に掲げて勝利したといっても、そのと
きの自民党は野党だったのです。
野党の公約というものは、政権交代の可能性のあるときは別と
して、国民はあまり重視しないものです。実現する可能性が少な
いからです。もし、民主党が菅政権ではなく、鳩山政権のままで
あったなら、民主党は参院選で議席は減らしても、ねじれを生じ
させるような負け方はしていないはずです。
確かに鳩山政権にもいろいろ問題はあったものの、国民はこの
時点では民主党にまだ期待を持っていたのです。まして鳩山政権
であれば、選挙は小沢幹事長が仕切っていたはずであり、大敗は
していないと考えます。それでは、なぜ増税を掲げた自民党が勝
利し、菅民主党は負けたのでしょうか。
それは、政権幹部ですらあっけにとられた菅首相の「消費税増
税を選挙公約にする」という発言です。その言葉は、首相になっ
たばかりの菅直人首相が、2010年6月17日に開いた参院選
のマニフェスト発表会の席上で突然発表されたのです。
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もう少し、私の言葉でかみ砕いて言いますと、消費税について
あるべき税率や逆進性対策を含む改革案を、今年度中にとりま
とめていきたい。なお、当面の税率については、自由民主党が
提案をされている10%という、この数字を一つの参考にさせ
ていただきたい。 ──菅直人首相(当時)
──伊藤裕香子著(朝日新聞記者)/プレジデント社刊
『消費税日記/【検証】増税786日の攻防』
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民主党は「増税しない」ことを公約にして2009年の衆院選
を戦い、政権交代を成し遂げた政党です。その民主党が政権交代
後1年も経たないうちに、やらないといった消費税を実施すると
いうのですから、国民への裏切り以外の何ものでもないというこ
とになります。
実は自民党は「消費税10%」を公約にしたものの、党内に反
対者は多かったのです。そんな公約を掲げたら、参院選に勝てな
いという議員が多かったからです。しかし、時の自民党総裁は元
財務相の谷垣禎一氏であったので、公約になったのです。谷垣氏
は財務省に既に洗脳されている一人であるからです。
ところが、与党の民主党が堂々とマニフェスト破りを宣言し、
自民党と同じ公約を掲げたので、事情は変わったのです。批判は
与党である民主党に向い、自民党は批判を免れたのです。民主党
には次の批判が集中し、参院選に惨敗することになります。自民
党から見ると、これが思いがけない「敵失」になったのです。
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民主党はやると約束したことをやらず、やらないといったこ
と強行しようとしている。明確なマニフェスト違反である。
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いくら凡庸な政治家でも選挙に惨敗すれば、少しは反省するも
のですが、菅元首相はそれでも増税の実現を目指したのです。そ
の理由は、次の3つであると考えられます。
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1.消費税増税に反対する小沢一郎グループへのさや当て
2.日本の財政への認識や判断に決定的誤りがあったこと
3.増税問題の争点化で普天間基地問題は争点から外れる
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結局、菅元首相はその第2次政権において、かねてからの消費
税増税の主張者である与謝野馨元財務相を民主党の経財担当相に
招き増税のプランニングと準備をさせることまでして、増税実現
を目指したのです。
しかし、東日本大震災や福島原発事故の対応をまずさによって
菅氏が退陣させられると、今度は野田佳彦氏が首相になって、菅
氏の路線を継承し、こともあろうに野党の自民・公明両党と組ん
で、「税と社会保障の一体改革」として大増税の実現を図ったの
です。これによって、民主党は小沢氏を含む大量の離党者を出し
党の分裂までを招くことになったのです。
その結果、民主党は2012年の衆院選と2013年の参院選
に続いて惨敗し、増税強行の批判は民主党だけが負って、ねじれ
なしで自民・公明両党が政権を担うことになったのです。
しかし、消費税増税は本当に必要なのでしょうか。民主党が党
を壊してまで実現に執着すべきものだったのでしょうか。また、
必要だとしても今やるべきなのでしょうか。やることによってデ
フレ脱却はうまく行くのでしょうか。疑問がたくさんあります。
そこでしばらく消費税増税について考えてみることにします。
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消費税増税はなぜ必要かについて改めて考える
─ そのデフレ脱却に与える影響は? ─
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消費税増税については、賛否両論があります。社会保障のため
には不可欠であるという賛成論から、官僚が自らの懐具合を豊か
にするだけという反対論まであります。また、必要論でもデフレ
脱却を目指す今はやるべきでないという意見もあるのです。アベ
ノミクスとの関係についても述べていきます。明日からスタート
です。 ── [消費税増税を考える/01]
≪画像および関連情報≫
●消費増税首相決断!/産経新聞/2013年9月19日
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安倍晋三首相は18日、現在5%の消費税率について、来年
4月に8%に引き上げることを決断した。消費税増税の判断
材料になる各種経済指標は、景気回復を裏付けているものの
首相周辺には引き上げによる景気腰折れを心配し、増税幅を
2%に抑えるべきだとの声もあった。だが、党内調整や今後
の国会運営を考慮し、3%の引き上げが避けられないと判断
した。首相は同日、麻生太郎財務相に法人税減税の具体策検
討を指示。低所得者への現金給付などを合わせた経済対策の
総額は、5兆円超になる見通し。首相は、10月1日に日銀
が発表する9月の企業短期経済観測調査(日銀短観)や、8
月の有効求人倍率などを分析して最終判断し、消費税率引き
上げを発表する方針だ。消費税率引き上げは、4〜6月期の
国内総生産(GDP)改定値が、重要な判断材料になると注
目されていた。これに対し、9日発表された改定値は名目が
年率換算3.7%増、物価の影響を除いた実質が3.8%増
を確保し、消費税増税法の付則で目安とされる名目3%、実
質2%の成長率を上回った。8月下旬に、有識者60人から
その是非をヒアリングした消費税率引き上げの集中点検会合
でも、7割が増税に賛同。2020年の東京五輪開催が決定
し、インフラ整備などの経済効果が見込めることも後押しし
た。 http://bit.ly/19HUhog
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消費増税を発表する菅元首相