2013年07月01日

●「なぜ与党は予算委を欠席したのか」(EJ第3579号)

 第183回通常国会──就任以来終始フル回転の活躍で大いに
支持を広げた安倍首相は、都議選にも完勝して、野党との審議が
済んでいる数本の重要法案を可決して国会を閉じる予定であった
のです。しかし、そうはならなかったのです。
 6月24、25日の両日、野党が求める参院予算委員会の集中
審議に、首相ら政府側と公明党が突然欠席したのです。そのとき
野党としては、アベノミクスの問題点や高市早苗政調会長の「原
発での死亡者ゼロ」発言などを追及し、批判を浴びせたうえで、
参院選に臨むことを考えていたのです。
 しかし、私は自公両党のこの動きはおかしいと思っていたので
す。もし、予算委員会に欠席すれば、国民の生活に影響する次の
重要法案が廃案になる恐れがあるからです。しかし、それにもか
かわらず、与党は予算委員会を欠席したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
      1.       生活保護法改正案
      2. 生活困窮者向けの自立支援法案
      3.      日本船警備特措法案
      4.       電気事業法改正案
      5.        自衛隊法改正案
      6.水源保全のための水循環基本法案
―――――――――――――――――――――――――――――
 政府は、アベノミクスの問題点などはいくら追及されても問題
なく対応できますし、高市政調会長の発言にしても既に本人は撤
回しており、政府にとって大きなダメージにはならないのです。
むしろそれよりも、6本の重要法案が廃案になることの方が与党
としてダメージが大きいはずです。
 それでも与党が予算委員会を欠席したのには、別な理由があっ
たのです。委員会で野党からそれを持ち出されると、自民党が深
刻なダメージを受ける恐れがあったのです。
 与党の予算委員会欠席にいち早く動いたのは、生活の党、みど
りの風、社民党の3党です。安倍首相の問責決議案を提出して自
民党を揺さぶったのです。この動きのウラには小沢一郎生活の党
代表がいます。彼は、他の野党は絶対についてくるとの信念の下
に、先行して問責決議案を出したのです。そして、結果はその通
りになったのです。
 お粗末なのは民主党です。海江田代表と細田幹事長は、何とか
重要法案を成立させようとして、問責決議案の採決を最後にしよ
うとしたのです。ところが、当の自民党が問責決議案の先行採決
に賛成したので、問責決議案は可決されたのです。民主党として
は、問責決議案の採決に、最大野党として絶対に「反対」できな
かったのです。
 問題はその後のメディアの論調です。それは「野党は束になっ
て国民の生活に直結する重要法案を葬った」という論調で、すべ
ての責任は野党にあると糾弾したのです。事情のわからない国民
にはそうみえないこともないのです。しかし、問責が出る原因を
作ったのは予算委員会に欠席した与党なのですが、それをメディ
アは批判せず、すべては野党が悪いという報道を一斉に行ったの
です。自民党のメディア対策の勝利といえます。
 それでは、与党の自民党が予算委員会を欠席した本当の理由は
何でしょうか。
 それは、衆議院議院運営委員長の佐田玄一郎氏と内閣府副大臣
の西村康稔氏の買春疑惑の週刊誌報道なのです。掲載誌が27日
に発売されることを知った自民党は、急遽予算委員会を欠席し、
すばやく作戦を建て直したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    「佐田玄一郎議運委員長/常習的買春の現場報告」
              ──『週刊新潮』7月4日号
 「安倍側近西村康稔副大臣/ベトナム買春スッパ抜き!」
              ──『週刊文春』7月4日号
―――――――――――――――――――――――――――――
 衆議院の議院運営委員長といえば、衆議院ナンバー3の重要ポ
ストです。そのようなポストにある人が長年にわたって女子大生
と買春行為をしていたことが暴かれたのです。『週刊新潮』は相
手の女性と会い、買春の事実を確認しています。週刊誌にはラブ
ホテルから出てくる佐田氏の写真まで掲載されています。
 西村康稔内閣府副大臣は、2012年7月にベトナムのハノイ
において買春行為を行っています。『週刊文春』は現地に取材に
行き、相手の女性(複数)を特定し、西村氏の写真を見せて確認
をとっており、事実は動かしようがないのです。
 問題は、週刊誌が発売された27日と28日の新聞やテレビの
報道です。佐田委員長は委員長辞任を表明していますが、西村氏
は事実を否定しています。27日のテレビでは佐田氏の委員長辞
任表明をコメントなしのニュースとして流すか無視しています。
 28日の「とくダネ!」をはじめとする朝のワイドショーも完
全にこの事件を無視しています。一人は議院運営委員長まで務め
る重要議員であり、かたや安倍首相側近の副大臣なのです。そう
いう2人が、こともあろうに、恥ずべき買春行為をした事実が明
らかになったのです。これがなぜベタ記事やコメントなしで伝え
るような小さなニュースでしょうか。日本のメディアは腐ってい
ます。メディアの自民党寄りの姿勢は目に余るものがあります。
 EJでは、今日から新しいテーマに入ります。選挙も近いので
次のテーマについてしばらく書くことにします。
―――――――――――――――――――――――――――――
    本当に自民党でよいのか/小沢一郎最後の挑戦
    ──このままでは済まされない問題を探る──
―――――――――――――――――――――――――――――
 この自民党安倍首相側近の2人のスキャンダルに対し自民党は
その影響を最小限にしようとしています。メディアはそれに協力
しているのです。官僚機構もメディアも自民党の政権への完全復
帰を望んでいますが、それは自分たちにとって大きなメリットが
あるからです。      ――─ [自民党でいいのか/01]

≪画像および関連情報≫
 ●2つの週刊誌はこういっている/『週刊新潮』『週刊文春』
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ◎『週刊新潮』/7月4日号より
  「21日に湯島のラブホテルへ行った件ですが」と問い質す
  と、「何?」と言って立ち止った佐田委員長。そこに記者が
  ホテルの裏口から出る写真を出す。すると、平静を装ってい
  たものの、一瞬、口端に微かな笑みを浮かべた。後は、記者
  が何を聞いても「オレは知らん」の一点張り。そのくせ、女
  子大生によれば、「週刊新潮さんの取材を受けた後、私の携
  帯に寺井(佐田氏のこと)さんから電話がきています。今日
  一日だけで20件くらいの着信があります」。何と往生際の
  悪い男。立法府のナンバー3が、常習的な買春。国民が知っ
  たらどう思うか。佐田委員長はよく考えるべきである。
  ◎『週刊文春』/7月4日号より
  ベトナムでは買春が刑法で禁止されており、違反すると罰金
  や懲役刑が下される。そもそも日本国民の代表である国会議
  員が海外で買春行為をしていたとなれば道義的に許されない
  のは言うまでもない。さらに現在、ベトナムでは日本の政官
  業が一体となって原発などのトップセールスを進めようとし
  ている。その相手国に、日本の政治家が弱みを握られるよう
  なことがあれば、国益を棄損する可能性さえあるのだ。西村
  氏の犯した「罪」は重い。
  ―――――――――――――――――――――――――――

佐田玄一郎氏/西村康稔氏.jpg
佐田 玄一郎氏/西村 康稔氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月02日

●「メディアの伝え方で事実は変わる」(EJ第3580号)

 政治でも行政でも事業経営でもそうですが、長くやっていると
そこに既得権益というものが生まれてきます。その既得権益のさ
いたるものは官僚機構です。
 しかし、長い間に世の中が構造的に変化して、これまでの仕組
みがうまく機能しなくなって、その仕組みを壊さなければならな
くなるときが必ずやってきます。
 そういう既得権益を壊そうとする改革勢力が現れると、既得権
益を守ろうとする勢力との間で必ず壮絶なバトルが繰り広げられ
るのがつねです。そのバトルはすさまじいもので、改革勢力がよ
ほど強力でない限り、既得権益擁護勢力のために潰されてしまう
ことになります。
 1955年に結党した自由民主党は、その長い政治統治におい
て、こうした既得権益を守ろうとする勢力とうまく折り合いをつ
け、巧妙に共存共栄を図ってきた政党です。長く権力の座にあっ
たので、そういう手練手管を修得している政党なのです。
 その既得権益を守ろうとする勢力のひとつにマスメディアがあ
ります。自民党はマスメディアを味方につけるためにさまざまな
ことをやっています。その目玉というべきもののひとつが記者ク
ラブです。民主党は、政権交代のさい、この記者クラブを廃止し
ようとしましたが、マスメディアのさまざまな抵抗にあって、断
念しています。
 マスメディアは、民主党から自民党回帰は大歓迎なのです。そ
れが最も鮮明に出たのは今国会の終盤の与野党の攻防です。マス
メディアが自民党側に立つことによって、事実が大きくねじ曲げ
られて伝えられ、多くの国民がそれを信じています。
 すべての原因は、野党が要請した参院予算委員会に与党が欠席
したことにあります。野党から要請されれば、首相は委員会に出
席する義務があるのです。それに欠席する理由もはっきりしない
のです。これは明らかに憲法違反です。
 今まで野党が委員会を欠席することはたくさんありましたが、
与党が委員会を欠席することはなかったのです。しかるに安倍内
閣は先の国会では2回も欠席しています。党利党略の欠席です。
 これに異を唱えて、生活の党、社民党、みどりの風が首相問責
決議案を提出します。これに、民主党以外の他の野党も同調する
動きが伝えられたものの、民主党は同調しなかったのです。民主
党が同調しなければ問責決議案は成立しないのです。
 しかし、国会運営のプロが揃っている自民党は、この時点で残
りの重要法案の成立を断念し、その責任を野党に押し付けること
ができると考えたのです。それはメディアの協力が得られるとい
う前提があったからです。
 カギを握ったのは法案採決の順序です。問責決議案の採決を先
にするか、重要法案を先にするかです。法案を通したい民主党は
重要法案の採決を先にすると主張したのです。責任野党としてス
ジを通したいと思っていたからです。
 民主党にしてみれば、当然自民党はそれに賛成すると信じてい
たのです。ところが、狡猾な自民党は、問責決議案の採決を先に
するといい出したのです。与党としてはあり得ない決断です。
 これによって問責決議案の採決がはじまります。そうなると、
民主党は問責決議案に反対はできないのです。かくして、問責決
議案は採決され、重要法案は廃案になったのです。
 これについて、マスメディアはどのように伝えたでしょうか。
 与党の予算委員会欠席を不服として問責決議案が出され、その
問責決議案が可決されて重要法案は廃案になったのです。与党が
予算委員会に出席していれば重要法案は廃案にならなかったし、
欠席しても民主党の提案にしたがい、与党が重要法案の採決を先
にしていれば、重要法案は成立しているのです。明らかに非は与
党、なかんずく自民党にあります。
 マスメディアは24日〜25日の予算委員会に与党が欠席した
ことを事実として報道したものの、与党が委員会を欠席する異常
事態をほとんど批判していないのです。もし、こんなことを許す
と、与党が都合がわるいことがあると、委員会を欠席して逃れる
という前例を残すことになります。したがって、メディアはもっ
とそこを鋭く衝くべきであったのです。
 この論点をぼかすと、首相問責決議案が野党から提出されたの
で重要法案は廃案になったということになってしまうのです。つ
まり、野党がわるいということになります。つまり、終盤国会で
重要法案が残っているのに、野党は問責決議案の採決を強行させ
重要法案を葬ったというトーンで報道されてしまったのです。
 まして、与党が民主党の提案を受け入れ、重要法案の採決を先
にしていれば、重要法案が可決されたといういきさつに関しては
メディアは、ほとんど伝えていないのです。これでは、国民は野
党が意味のない問責決議案を提出して、あえて重要法案の成立を
潰したと考えてしまいます。
 このように明らかにマスメディアは、一見そうとは見えないか
たちで、露骨に与党寄りの報道をしています。それは、安倍政権
がメディアの既得権益を守ってくれると信じているからです。
 安倍首相は、2012年末に政権交代を成し遂げると、1月7
日から4月5日まで、合計11回にわたって、大手メディア幹部
と会食を共にしています。こういうことは珍しいことです。
 読売新聞グループ本社の渡辺恒雄会長を皮切りに、産経新聞会
長、朝日新聞社長、日本経済新聞社長、フジテレビ会長、テレビ
朝日社長、日本テレビ社長、毎日新聞社長など、それに時事新報
の解説者田崎史郎氏にいたるまで、個々に時間をかけて懇談して
いるのです。それでいてストレートに事実を伝える東京新聞とは
コンタクトしていないのです。
 本来報道メディアは、たとえ首相からこういう接待を受けても
報道事実は曲げないものです。しかし、日本のメディアは腐って
いるので、いろいろ加減をして、安倍政権がダメージを受けるよ
うなことは伝えないのです。その結果、重要法案が廃案になった
責任はすべて野党ということになっているのです。
             ――─ [自民党でいいのか/02]

≪画像および関連情報≫
 ●泡沫野党に主導権を握られた海江田民主党
  ―――――――――――――――――――――――――――
  これも東京都議選惨敗の影響か。安倍晋三首相に対する問責
  決議の採決をめぐり、民主党は26日、電気事業法改正案や
  生活保護法改正案など「国民生活に影響のある法案」(海江
  田万里代表)を捨てて、野党共闘を選択した。しかも、国会
  運営の主導権を他の野党に握られ、行き当たりばったりの対
  応だった。国会での野党共闘が参院選で役立つ保証はなく、
  都議選で信任された安倍政権を否定した民主党は政権担当能
  力のなさをさらけ出した。(一部略)民主党は25日の段階
  で、26日の本会議では、まず平田健二議長の不信任決議案
  を処理し、休憩をはさんで、電事法改正案などの採決をして
  から問責決議案を採決するシナリオを描いていた。安倍政権
  は信任できないが、重要法案を成立させれば実績としてアピ
  ールできるとみていた。ところが、都議選で善戦したみんな
  の党だけでなく、一議席も獲得できなかった生活の党なども
  参院選に向けて野党として存在感を発揮しようと安倍政権と
  の対決色を強め、法案よりも問責案の採決を先に行うよう主
  張。民主党は「問責案を先に採決しないと、議長不信任案の
  採決で賛成に回るぞ」と同党出身の平田議長の進退を他党か
  ら揺さぶられた。海江田氏とともに記者会見に臨んだ細野豪
  志幹事長は、「与党に法案を仕上げる熱意がまったくなかっ
  た。政府・与党が成立を阻止したんだ」と述べ、法案の廃案
  は与党に非があると強弁した。しかし、賛成すべき法案より
  問責案の採決を優先した事実は消せない。民主党は「最悪の
  シナリオ」に突き進んだ。
  http://blog.livedoor.jp/news_keywordtoday/archives/28876342.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

安倍首相と大手メディア幹部と会食.jpg
安倍首相と大手メディア幹部と会食
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月03日

●「小沢一郎はだれに嫌われているか」(EJ第3581号)

 2013年6月29日、BS朝日「激論!クロスファイア」に
小沢一郎生活の党代表が出演し、参院選の戦略について語ったの
です。時間はわずか30分でしたが、話は明快であり、昔と何も
変わらず、強い意欲も感じました。
 そのとき、田原総一郎氏と小沢一郎氏の間で、次のやり取りが
あったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 田原:小沢さんは、いろいろな人から嫌われているように思う
    のですが、どうしてなのでしょうか。
 小沢:それはおそらくぼくが本当に改革をやるといっているの
    で、それを嫌がる人が多いのではないでしょうか。
   ──BS朝日「激論!クロスファイア」/6月29日より
―――――――――――――――――――――――――――――
 「改革」を口にする政治家はたくさんいます。しかし、ほとん
どの政治家はその改革を実現できないで終わっています。しかし
小沢氏は、これまでの政治活動のなかで、数多くの改革を成し遂
げてきているのです。
 細川連立政権では政治改革関連法案を成立させ、小選挙区比例
代表並立制を実現しています。この選挙制度を軸とする政治改革
は、小沢氏の悲願であり、自民党幹事長のときから成立させよう
と努力したものの成就できず、自民党から離党し、総選挙を経て
細川政権において実現させたものです。
 さらに、自民党の小渕内閣との連立政権では、政治主導を前進
させるため、国会法の改正を実現させています。現在の大臣、副
大臣、政務官のポストはこのときの改正でできたのです。そして
何よりも小沢氏の実力を天下に示したのは、万年与党の自民党を
2度にわたって政権の座から引きずり下ろし、政権交代を実現し
た実績です。総理でなく、連日政権のときの改革であり、本物の
実力であるといえます。
 そういう小沢氏の過去の実績を知っている人は、小沢氏がもし
総理になったら、何をするかわからないと恐れ、改革されると困
る人たちは、何とかそうさせないようにしようとしたのです。
 小沢氏の政治実績は以上の通りですが、そのことを知らない人
は多いです。メディアによる「小沢一郎=悪徳政治家」という刷
り込みは執拗で、小沢氏がどのような政治家であるかについて、
ろくに知ろうとせず、批判だけをしている人が多いのです。
 最近の政治家はよく本を上梓します。その大半は自分で執筆し
て出版するケースです。総理になったときや、選挙のときなどに
自分の政治信条や政策などを知ってもらうことが目的です。
 それに加えて、第三者、例えば政治評論家などがその政治家の
ことを取り上げて本を書くケースもありますが、これは大物政治
家の場合だけです。しかし、小沢氏の場合は、本の数が圧倒的に
多いのです。「小沢一郎ウェブサイト」を見ると、24冊の本が
出ています。それも本人が執筆する本よりも、第三者が執筆して
いる本の方が圧倒的に多いのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
      「小沢一郎ウェブサイト/関連図書」
 http://www.ozawa-ichiro.jp/profile/book.htm
―――――――――――――――――――――――――――――
 実はこの24冊以外にも本はたくさん出版されているのです。
まず、小沢氏を批判する本は、当然ですが、このウェブサイトに
載っていません。批判本でなくても、「小沢一郎」の名前を使っ
た本は数知れずあるのです。さらに驚くべきは、現在の生活の党
──現在国会議員の数は過去最低の15人──の代表になってか
らも、4〜5冊の新刊書が出ていることです。
 どうしてこんなに本が多いのでしょうか。それには明確な理由
があります。「売れる」からです。「買う人がいる」からです。
だから、小沢氏の批判者でも「小沢一郎」の名前を使って本を上
梓し、小沢氏を批判しています。そういう本をすべて総合すると
60冊はゆうに超えると思います。現在、そういう政治家が他に
いるでしょうか。
 我が家にも小沢本は20冊以上あります。小沢氏を批判する人
は、そういう本は一切読まず、テレビや新聞などのメディアの印
象だけで小沢氏を批判しています。日本維新の会共同代表の石原
前東京都知事などはまさにその典型です。そして、小沢氏のこと
を少しでも好意的に書いたり、話したりすると、その人に「小沢
信者」というレッテルを貼るのです。
 現在日本の政治は重度の閉塞状態にあります。それを打破する
には、明確な改革のビジョンを持ち、並外れた「剛腕」が政治家
に求められます。小沢氏は間違いなくその稀有な政治家の一人で
あるといえます。
 さて、小沢氏は誰に批判されているでしょうか。小沢氏の盟友
といわれている元参議院議員の平野貞夫氏は、小沢氏を「謀殺」
しようとしてする仕掛け人として、次の5つを上げています。
―――――――――――――――――――――――――――――
   仕掛け人候補その1        「政治家」
   仕掛け人候補その2         「官僚」
   仕掛け人候補その3         「財界」
   仕掛け人候補その4     「巨大メディア」
   仕掛け人候補その5  「ジャパンハンドラー」
               ──平野貞夫著/ビジネス社刊
     『新説/小沢一郎謀殺事件/日本の危機は救えるか』
―――――――――――――――――――――――――――――
 「謀殺」とは、「あらかじめ計画して人を殺すこと」を意味し
ています。平野氏は小沢氏に関するバッシングは「『嫌われる』
などという言葉では生易しすぎる。『排除』でもまだ弱い。小沢
一郎を社会的に葬り去ろうとする『謀殺』というべき」といって
います。しかし、小沢氏に対し、これほどひどい仕打ちをしてお
きながら、政治の世界では、まるで何事もなかったようにアベノ
ミクスに明け暮れています。このようなことをそのままにしてお
くことはできません。   ――─ [自民党でいいのか/03]

≪画像および関連情報≫
 ●日々坦々「小沢一郎の一貫した政治理念が簡単にわかる本」
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「小沢一郎アンケート」で、好きか嫌いかの単純なもので、
  最初は3:7で「嫌い」が多かったが、次第に「好き」が逆
  転し、今ではダブルスコアになっている。嫌いの理由はほと
  んど感情論になっていて、マスコミの影響が覗われる。その
  人たちに是非読んでもらいたいのが、気軽に読める2006
  年に出版した「小沢主義」(小沢一郎著)だ。私が読んだ本
  人著の本としては「日本改造計画」に続き2冊目である。対
  談集とか評論が多い中、13年ぶりの書下ろしとなった本書
  には、本人の考え方がストレートに伝わり、今の政治状況を
  理解するためのヒントがつまっている。「日本改造計画」は
  1993年に出版された当初は各界にかなりインパクトを与
  えた本である。それから一貫した政治理念、理想を掲げ、政
  権交代を実現した今も、目標とする改革に向けてひたすら走
  り続けていることがよくわかる。この2冊を読めば、今の民
  主党が掲げる「脱官僚依存政治」の政策は、全て小沢さんの
  考えが反映されていることがよくわかる。
       http://etc8.blog83.fc2.com/blog-entry-83.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

田原総一朗氏.jpg
田原 総一朗氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(5) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月04日

●「小沢一郎はどういう政治家なのか」(EJ第3582)

 小沢一郎を「謀殺」しようとしている仕掛け人について述べる
前に、小沢一郎という政治家がどういう政治家であるかについて
述べることにします。小沢氏について知っていただくと、現在の
政治家のレベルの低さがよくわかると思います。
 小沢一郎という政治家の政治活動の原点は、次のことを実現す
ることにあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
      戦後民主主義の誤った内容を正したい
               ──平野貞夫著/ビジネス社刊
     『新説/小沢一郎謀殺事件/日本の危機は救えるか』
―――――――――――――――――――――――――――――
 要するに、小沢氏は真の民主主義社会を作りたいのです。その
ためには、戦後の民主主義の誤っていることを正す必要がありま
す。この誤った民主主義では国民は不幸になるし、国家社会は滅
亡する──小沢氏はそう考えているのです。
 小沢一郎という政治家は、この原点から一度もぶれることなく
現在でも政治活動をやっているのです。小沢氏が政界に進出した
のは1969年12月27日のことです。父親の突然の死によっ
て、第32回衆議院総選挙に岩手2区から初出馬したのです。そ
のとき、小沢氏は次の公約を掲げて選挙戦を戦い、トップで初当
選を果たしています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 現代の社会は多種多様化した欲望が生まれ、政治がこれに応え
 きれず、国民生活と遊離している。このために政治不信が生ま
 れ、社会的に大きな混乱が起きている。さらに政治が無力化し
 て官僚に政策決定を任せているため、生き生きとした政治が行
 われていない。このままでは日本の行く末は暗澹たるものだ。
 こうした弊害をなくするため、まず官僚政治を打破し、政策決
 定を政治家の手に取り戻さなくてはならない。政治に新しい考
 えを取り入れ、浄化と刷新を行う。
                ──平野貞夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 これを見て驚くことは、小沢氏の公約が現在とまったくぶれて
いないことです。小沢氏が初当選した翌年の3月には大阪万博が
開催されており、日本は高度成長の最盛期にあったのですが、小
沢氏は早くも高度に成長した資本主義の矛盾に気が付き、その修
正が必要だと考えたのです。
 1972年には、読売新聞社が安倍晋太郎(現安倍首相の父)
代議士を含む自民党の代議士の論文を集めて掲載した次の書籍を
上梓したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    『自民党改造案/明日の保守政権を考える』
            1972年/読売新聞社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 実は小沢氏は新人代議士ながらこの企画に応募し、「保守政党
体質改善案」というテーマで論文を書き、本への掲載が認められ
ているのです。その論文において、小沢氏は次の4つの提案をし
ています。
―――――――――――――――――――――――――――――
  1.組織面における改革
    ・党員拡大と党組織の整備
  2.資金面における改革
    ・政治資金の大衆化による財界依存からの脱出
  3.政策立案面における改革
    ・党政調各部会の改組による官僚依存の改善
  4.総裁選挙の改善
    ・米大統領選の予備選方式の導入
                ──平野貞夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 既にこの時点で小沢氏は政治資金の「財界依存からの脱出」を
説き、政策立案面において「官僚依存の改善」を指摘し、政治主
導を主張しているのです。明らかにこの時点で、小沢氏は政治家
として一頭地抜けた存在になっていたのです。
 1972年5月には沖縄が返還され、7月には第1次田中角栄
内閣が発足しています。そして、9月には田中首相は中国を訪問
し、日中国交正常化を実現しているのです。
 小沢氏は、田中角栄首相の下で政治修業をすることになり、い
わゆる「金竹小」(金丸、竹下、小沢)の金権政治の枠内に入れ
られ、いわゆる田中流政治のよい面と問題点を身をもって体験す
ることになります。しかし、世間は小沢氏を「金竹小」の1人の
金権政治家としてみるようになるのですが、小沢氏自身はその金
権政治の実態を知ることによって、その金権政治からの脱却をそ
の時点で決意するのです。それが、それから約20年後の小沢氏
の自民党離党につながるのです。
 しかし、新人代議士の改革案を受け入れるほど自民党は甘くは
なかったのです。1974年には田中金脈騒ぎで田中首相が退陣
し、三木内閣が発足します。そして、1976年にロッキード事
件で田中前首相は逮捕されましたが、自民党の田中派は最大派閥
であり続けたのです。
 しかし、小沢氏の党内での出世は年齢が若いということもあっ
て意外に遅かったのです。1975年に三木内閣で科学技術政務
次官、1976年に福田内閣で建設政務次官、1981年に鈴木
内閣で自民党政調会長になり、1985年に第3次中曽根内閣で
自治大臣・国家公安委員長に就任したのです。はじめての大臣就
任です。その年に田中元首相が脳梗塞で倒れています。
 1987年に竹下内閣が発足し、小沢氏は内閣官房副長官に就
任します。そして1989年7月に第15回参院選挙で自民党は
大敗し、参院の与野党議席数で逆転され、ねじれの状態になって
しまったのです。その年に発足した海部内閣で、小沢氏は幹事長
に就任するのですが、自民党としてはじめて党運営の困難なとき
の幹事長就任です。    ――─ [自民党でいいのか/04]

≪画像および関連情報≫
 ●「金竹小」の関係はどうだったか
  ―――――――――――――――――――――――――――
  もともと、竹下と金丸は国対族として野党とのパイプを築い
  ており、自民党が参議院で過半数を割りねじれ国会となった
  局面でその重要性を増し、党幹事長の小沢をして公明党・民
  社党との折衝に当たらせ、自公民路線を固めて政権運営の道
  筋をつけた。この野党両党とのつながりと、当時他派より結
  束力が強いと言われていた最大派閥の経世会を背景に、政権
  の死命を制する位置にあった。3者は縁戚関係で結ばれ相互
  扶助の関係によって日本の政治を動かしていたが、再登板を
  狙う竹下と小沢を会長にして更なる世代交代を見据える金丸
  ・小沢との間に次第に隙間風が吹くようになる。また、海部
  内閣退陣表明後に金丸が小沢に後継出馬を強く勧め、小沢が
  断ると当時一般人気の高かった派内の橋本龍太郎を差し置い
  て他派の宮澤喜一を推すことを金丸・小沢主導で決定するな
  どしたことから、両名に反発する機運が派内にも生じた。そ
  して金丸が東京佐川急便事件で議員辞職すると、竹下側近の
  橋本・小渕恵三・梶山静六らと金丸側近の小沢・羽田孜・渡
  部恒三・奥田敬和らの間で派閥の実権を争って、経世会は遂
  に分裂に至った。          ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

最新の小沢本/「小沢一郎謀殺事件」.jpg
最新の小沢本/「小沢一郎謀殺事件」
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月05日

●「日本は民主主義が根づいていない」(EJ第3583号)

 小沢一郎氏がよく口にする言葉に「自立と共生」というのがあ
ります。これは小沢氏のゆるぎない政治理念になっています。こ
の「自立と共生」という政治理念は、小沢政治のバイブルともい
うべき小沢氏の著書、『日本改造計画』(1993年講談社刊)
に詳しく述べられています。
 小沢氏は政治家になった直後から、日本には米国式の戦後民主
主義が導入されたものの、まだ真の民主主義が根付いていないこ
とを指摘して、「自立」というコンセプトを打ち出しています。
小沢氏は『日本改造計画』で次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 民主主義の前提は、国民が自分の価値観を持ち、自分の判断で
 行動できる自立した個人であるということだ。この前提が日本
 人に欠けたままであり、アメリカ式の『戦後民主主義』が導入
 されても、実際には民主政治が根付かないまま現在に至ってい
 る。戦前の官僚組織が存続したなどの問題があるが、基本的に
 は、国民の側に民主主義を実現する条件が揃っていなかったか
 らだ。    ──小沢一郎著、『日本改造計画』/講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢氏は「民主主義は国民の自立からはじまる」という前提が
必要であることを強調しています。しかし、日本では現在におい
てもとくに政治的には個人が自分の価値観を持ち、自分の判断で
行動できていないといっています。
 国民が「自立」していないと、国民が選挙で選んだ代議士が官
僚依存政治を許してしまうことにつながるのです。つまり、国民
の政治意識が低いということを意味しています。
 第23回参議院選挙は昨日5日に公示され、21日に投開票が
行われます。今回の選挙は安倍政権になってはじめての国政選挙
であることと、与党の自公が過半数を獲得して、いわゆる「ねじ
れ」が解消できるかどうかに注目が集まっています。
 しかし、今回の参院選の投票率はきわめて低くなることが予想
されるのです。なぜなら、街頭で国民の声を聞くと、次のような
答えが返ってくるからです。
―――――――――――――――――――――――――――――
      ◎どうせ、自公が勝つに決まっている
      ◎誰が当選しても、政治は変わらない
      ◎どの政治家を選んだらよいかが困難
―――――――――――――――――――――――――――――
 これらの国民の声は、今回の選挙に限らず、いつの選挙でもほ
とんど同じなのです。これはそれだけ国民の政治意識が低いこと
をあらわしています。国民が政策を吟味し、候補者がそれを実行
できる人物かどうかを判断して投票するという意識の人が少ない
のです。投票率が低いのは、それをあらわしています。これでは
「お任せ政治」になってしまいます。つまり、国民が「自立」し
ていないのです。
 ちなみに、今回の選挙から公示日以降でもネットの利用ができ
るネット選挙が解禁されています。しかし、海外の多くの国では
選挙運動は原則自由であり、今頃になってネット選挙だけを解禁
した日本は稀有な存在です。しかも全面解禁ではなく、まだ多く
の不可解な規制が残っています。
 規制が多いということは、政治を役人まかせにしていることの
結果です。もう少し正確にいうと、国民が選んだ代議士が規制を
変えようと努力しなかった結果なのです。そういう規制に対して
国民が声を上げないからです。
 選挙を例にとると、日本の選挙制度は、規制のオンパレードな
のです。米国、英国、ドイツ、フランスと比較してみると、次の
ようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
          日本 米国 英国 ドイツ フランス
    戸別訪問   ×  ○  ○   ○    ○
  選挙運動期間   ×  ○  ○   ○    △
   ネット利用   △  ○  ○   ○    △
     演説会   ×  ○  △   ○    △
  文書頒布掲示   ×  ○  ○   ○    ×
            ○規制なし △一部規制 ×禁止
         ──「WEDGE」/2013年6月号より
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本の選挙は公職選挙法(公選法)の下で実施されます。公選
法の原型は、1925年に制定された男子普通選挙法にさかのぼ
るのです。当時は、納税額によって選挙権が与えられる制限選挙
だったのですが、選挙運動自体には規制はなかったのです。しか
し、選挙権の制限が少しずつ撤廃され、有権者の数が増えるにし
たがって、戸別訪問の禁止や文書図画の制限などが加えられ、戦
前の選挙法ができていったのです。
 しかし、その選挙法とからめて、悪名高い治安維持法が制定さ
れ、政治活動が抑制されるようになっていきます。そして、それ
が、1942年の「翼賛選挙」につながるのです。
 戦後になって治安維持法は廃止され、憲法も改正されたのです
が、選挙法だけはなぜか戦前の規制を残したまま、現在の公選法
が制定され、1950年に交付・施行されています。そしてその
公選法にさらに細かい規制を加えたものをこれまで使ってきてい
るのです。
 公選法は国民が候補者の情報を詳しく知ることを制限していま
す。それはネットを解禁しても十分ではありません。これでは国
民から「誰を選んでいいかわからない」という声が出るのは当然
です。選挙期間についても日本では、衆院議員は12日、参院議
員は17日とあまりにも短いです。1950年の時点では衆参と
もに30日になっていたのを改正のたびに少しずつ短縮していっ
たのです。これでは候補者をますます選びにくくなります。こう
いうことを国民はこれまで黙認してきたのです。それは、国民が
本当の意味で政治的に自立していないからなのです。
             ――─ [自民党でいいのか/05]

≪画像および関連情報≫
 ●ネット選挙解禁で公選法はぶっ壊れる/加藤秀樹氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ネット選挙が次の参議院選挙から解禁される。ウェブサイト
  やSNSを使って候補者や政党、選挙に関する情報が流せる
  ようになるのだ。私が注目しているのは、今度の参院選挙へ
  の影響よりも、ネット選挙解禁が公職選挙法(以下公選法)
  が細かく定めている現在の選挙のし方そのものを、無意味な
  ものにしてしまうだろう、という点だ。法律というものは普
  通読んでも面白くない。ところが、公選法は大いに笑える。
  そこで、選挙のし方について公選法が何を定め、ネット選挙
  解禁がどんなインパクトを持つか整理してみたい。そしてそ
  のことが、皆さんによってこの古風で滑稽な法律に引導を渡
  すような議論につながり、「ネット選挙解禁」が「選挙その
  ものの解放」につながればと期待している。公選法は、昭和
  25年に施行されて以来、毎年のように改正され、今や、約
  270条からなる膨大な法律だ。その中には選挙権、選挙区
  から投開票まで、公職の選挙に関する詳細な規定が並んでい
  る。とりわけ、選挙運動については、約50条、全体の五分
  の一近くが費され、非常に細かな、そのくせ曖昧で解釈に困
  るような規定が並んでいる。
  http://bylines.news.yahoo.co.jp/katohideki/20130603-00025415/
  ―――――――――――――――――――――――――――

ネット会見する小沢一郎氏.jpg
ネット会見する小沢 一郎氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月08日

●「共生のコンセプトと今西進化理論」(EJ第3584号)

 小沢一郎氏は「自立」に加えて「共生」という概念を大事にし
ており、「自立」と「共生」を新しい国づくりの理念としている
のです。「共生」とは何でしょうか。
 「共生」とは、人間の生き方にかかわる考え方であり、『日本
改造計画』には次の記述があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 人類は、人間による自然支配という西洋的価値観から人間は自
 然の一部であるという東洋的価値観への転換を迫られている。
 東洋的価値観、とくに古代日本の縄文時代においては、人間は
 まったく自然と共生していた。人間が自然を支配するのではな
 く、自然によって生かされていた。
        ──小沢一郎著、『日本改造計画』/講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 この「共生」の考え方と関係するのは、ダーウィンの『種の起
源』、すなわち「進化論」です。ダーウィンの「進化論」といえ
ば、知る人ぞ知る「自然淘汰説」であり、「適者生存説」です。
 ダーウィンによると進化というものは、種個体、あるいは少数
の種個体から始まると考えられており、この特定の種個体のこと
を突然変異と呼ぶのです。
 この突然変異によって発生した個体が他者と比較して生存する
ための優位性を持っている「適者」である場合にのみ、生存競争
に生き残り、敗れたものは死滅する──これがダーウィンの「進
化論」の本質です。
 しかし、このダーウィンの進化論は、自然科学的に証明された
ものではなく、単なる一学説に過ぎないといわれているのです。
もともとこの考え方は、英国の経済学者であるマルサスが『人口
論』で展開した次のコンセプトを生物社会に取り入れたものに過
ぎないといわれているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 人口の増加は等比級数的であるのに対し、食料の生産は等差級
 数的にしか伸びないから、一部の人間の貧乏・飢餓は一種の自
 然現象として不可避である。 ──マルサスの「人口論」より
―――――――――――――――――――――――――――――
 このダーウィンの進化論に対して、日本人として異を唱えた学
者が今西錦司氏(1902〜1992)です。今西錦司氏は、日
本の社会人類学、生態学の草分け的存在であり、登山家としても
知られています。
 今西錦司氏の学説は「今西進化論」といわれており、その骨子
をまとめると、次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ある種から新しい種が生まれても、従来種は駆逐されることな
 く、新しい種と共存してゆくものであり、その発生事態も突然
 変異などによる偶発的なものでなく、環境の変化などによって
 時期が来たら複数の個体が、あたかも化学反応のように、同時
 多発的に変化してゆく現象が進化なのである。
                 ──今西錦司/吉本隆明著
    『ダーウィンを越えて/今西進化論講義』/朝日出版社
―――――――――――――――――――――――――――――
 今西進化論は「棲み分け理論」と呼ばれており、ダーウィンの
進化論が競争原理に基づいているのに対して、今西進化論は共存
原理をペースとしています。
 これは小沢氏のいう「共生」の考え方に通じるのです。そして
この考え方は、米国の新自由主義と対極の考え方です。新自由主
義は、まさにダーウィンの適者生存/自然淘汰の考え方にとても
よく似ているのです。
 次の演説は、小沢一郎氏が2006年4月7日、民主党の代表
選の政見演説の一部です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小泉政治は自由と身勝手を混同した結果、弱肉強食の格差社会
 という妖怪を生み出してしまいました。本当の自由とは誰もが
 共に生きていける『共生』の理念が前提であり、それを保証す
 る規律と責任を伴うものであります。その『共生』のルールが
 公正なのであります。           ──平野貞夫著
              『わが友・小沢一郎』/幻冬社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 2006年4月、小沢一郎氏は、メール問題で退任した前原誠
司代表の後任として民主党代表に就任しています。この「共生」
の考え方は、民主党として、当時の小泉政権がブッシュ米大統領
の市場経済至上主義に追随した政策を強行し、そのために生じた
深刻な格差社会を是正しようとして、小沢民主党が打ち出した新
しい国づくりのコンセプトなのです。
 「共生」を新しい国づくりの理念として掲げ、あらゆる面で筋
の通った「公正の国・日本」をつくる。そのために国民一人ひと
りが自立し、国家としても自立することを目指すとともに、人間
と人間、国家と国家、人間と自然の「共生」を国是とすると、小
沢民主党は宣言したのです。そして基本政策のキャッチフレーズ
を次のように決めたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
        公正な社会、共に生きる国へ
―――――――――――――――――――――――――――――
 民主党の政権交代の快進撃はこのときからはじまったのです。
そして2007年夏の参院選を迎えます。そのときのマニフェス
トのテーマとして次を掲げ、「三つの約束」と「7つの提言」を
掲げたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
           国民の生活が第一
―――――――――――――――――――――――――――――
 このかつての民主党のシンボルテーマである「国民の生活が第
一」は、実は鳩山元首相のいう「友愛」と「共生」のコンセプト
があって、はじめて生まれたのです。
             ――─ [自民党でいいのか/06]

≪画像および関連情報≫
 ●小沢一郎の「共生」理念の原点は今西進化論/内田良平氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  この今西進化論を要約すれば「生物界を種社会による有機的
  調和体」とし「進化とは競争で相手を淘汰するのではなく、
  切磋琢磨によってより強い共生関係を作り上げていく」とい
  う考え方を採っている。今西進化論を社会に当てはめると、
  「進歩は自由競争によって獲得されるようにみえるが、実は
  社会の中で形成された共通の文化と、その文化が持つ共生の
  メカニズムによって創られる」と読み解くことができる。日
  本人は元来レベルの高い文化を保有しており、その文化に根
  ざした経済環境を作ることこそ国家の力を高めていく事にな
  ると今西らは主張する。ところが「市場原理主義」を信奉す
  る欧米や、彼らに操られる日本の政治家や経済人にとって小
  沢一郎の主張する「自立と共生―国民の生活が第一」の「共
  生国家の建設」は彼らの「賢い人間だけが生き残り、劣った
  人間は淘汰される」という理念に反することになる。彼らに
  とって、この「競争を絶対とする米国資本主義」を守るため
  小沢一郎という政治家を葬り去る必要があり、またTPPと
  いう米国資本主義のための「競争による収奪装置」に日本を
  参加させることが重要なのである。もし民主党政権が国民を
  豊かにしたいと考えるならば、国民を競争で煽りたてたり、
  金儲けの上手い人間を優遇する狩猟民族的政策ではなく、小
  沢一郎が説く「共生」の理念を基に、道徳的倫理観や礼節、
  弱者への思いやりといった日本文化の良さを生かした新しい
  経済政策を打ち出すべきだろう。
     http://www.asyura2.com/11/senkyo122/msg/596.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

今西錦司氏.jpg
今西 錦司氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月09日

●「友愛共生社会をどのように創るか」(EJ第3585号)

 今やすこぶる評判の悪い筆頭は鳩山由紀夫元首相です。尖閣諸
島問題で中国寄りの発言をして大きな非難を浴びています。この
鳩山由紀夫氏が2009年5月に民主党代表になったときに掲げ
た基本理念が「友愛」であり、そのときの代表選の公約のタイト
が次のフレーズです。
―――――――――――――――――――――――――――――
           友愛の日本を創る
―――――――――――――――――――――――――――――
 このタイトルに対して、2009年5月17日付、朝日新聞は
「浮世離れしたキャッチフレーズ」と決めつけましたが、朝日新
聞は、はしなくも自らの無教養を明らかにしたといえます。鳩山
氏のいう「友愛」は、そんな薄っぺらな概念ではないからです。
 鳩山由紀夫氏の祖父である鳩山一郎氏は、戦後の1952年に
政界復帰後初めての演説で「友愛革命」を主張しています。その
とき、鳩山一郎氏は、孟子の「惻隠の心」を引用し、米国の思想
家で、ユニテリアンであるエマソンの思想を紹介したりして、真
の友情や人類愛の必要性について論じたのです。そして民主主義
の確立のためには「智」が必要であることを説き、もし「智」な
かりせば、衆愚政治になると述べています。
 ここで「ユニテリアン」について説明する必要があると思いま
す。これについては、政治思想史に詳しい平野貞夫氏の本から引
用します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ユニテリアンは万人救済を教義とし、人類愛や隣人愛を主張す
 る。異宗教間の交流に極めて積極的で、自由と理性と寛容を重
 んじ、権威への盲従を嫌う。米国のユニテリアン運動の発祥は
 1620年にメイフラワー号で英国を去り、マサチューセッツ
 州のプリマスに上陸した清教徒が結集した「会衆派」をルーツ
 としている。19世紀中頃は、ボストンを中心にユニテリアン
 運動が最も盛んだった。          ──平野貞夫著
              『わが友・小沢一郎』/幻冬社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本人として最も早くユニテリアンに触れたのは、日本からの
漂流少年であるジョン万次郎です。万次郎は、1843年から3
年間にわたって、黄色人種を受け入れるボストン郊外のユニテリ
アン教会で、「困った人は助けなければならない」という人類愛
のユニテリアン信仰を深めているのです。
 万次郎は、帰国後、幕府や土佐藩で米国の政治や社会の啓蒙運
動に力を入れましたが、その背景にあった考え方は、エマソンら
の説くユニテリアンの思想──草の根デモクラシーの思想を反映
したものだったのです。その影響を最も受けたのは、坂本龍馬で
あり、勝海舟であり、福沢諭吉だったのです。
 その後、明治、大正、昭和と年を重ねるにつれて、いつしかユ
ニテリアンの精神は忘れ去られ、ほとんど人々の心から消えてし
まったのです。そういうとき、聡明な自由社義者である鳩山一郎
元首相は、そのユニテリアンの精神を友愛活動として戦後の日本
に生かそうとしたのです。鳩山由紀夫氏はその精神を祖父から引
き継ぎ、民主党の基本理念として「友愛」を掲げたのです。
 小沢一郎氏は、ジョン万次郎の活動を歴史に位置付け、その生
涯に「自立と共生」、そして「人間愛」の思想を発見して、その
啓蒙のために「ジョン万次郎の会」を創立したのです。
 さて、問題は「自立と共生」の理念にユニテリアンの精神を
加える「友愛・共生社会」──そういう社会をどのようにして
創るかです。そのために必要なことは次の2つです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  1.現代という時代において正確な歴史認識を持つこと
  2.現代の混迷を解決するために歴史に学ぶということ
―――――――――――――――――――――――――――――
 時代は、農業社会が産業革命によって工業社会になり、さらに
情報革命が始まって情報社会に移行し、それがさらに高度な知識
社会に発展するといわれています。そして現代は、その情報社会
の真っ直中にあります。
 工業社会は、経済は右肩上がりに成長し、技術や産業の成果が
多くの人に還元される社会だったのです。こういう時代は官主導
の利権政治でもうまくいったのです。
 しかし、情報社会に移行すると、それが一変してしまったので
す。情報社会では、IT技術が高度に発達し、急激なグローバル
化が進行して、人々の生活を激変させたのです。なぜなら、情報
社会の生み出す富は、工業社会のときと違って、一部の限られた
人にしか還元されなくなったからです。
 ITをはじめとする高度な技術の発達は、かつて工業社会でも
機械が工場労働者の仕事を奪い、仕事のやり方を変えたように、
コンピュータ・通信技術の発達は、働く人々を代替可能な定型型
の単純労働に追いやり、もっと大きなスケールで、多くの人の仕
事を奪い、深刻な雇用問題を生み出しているのです。
 情報社会では、コンピュータを駆使して情報の収集、整理、創
造などの仕事に携わり、新しい価値を創造できる一部の者だけが
「勝ち組」になり、多くの者が「負け組」になったのです。それ
は、資本主義が変質したことが大きく影響しています。
 日本においては、こういう勝ち組と負け組の二極化が進むなか
で、かつての小泉政権がそれを加速化させるアクセルを踏んだた
め、深刻な格差社会を生み出してしまっています。
 これにより、将来に希望を失った人々が増大し、それに伴う異
常な犯罪が続発するようになったのです。これは世界的な傾向で
すが、その行き着く先は「テロ」なのです。平野貞夫氏の言を借
りると、最近日本で続発しているDVや凄惨な子殺しや親殺しは
「ドメスティック・テロリズム」という名のテロなのです。
 しかるに多くの政治家や有識者は、それが資本主義の変質のも
らたすものであることに気づいておらず、事態をいたずらに深刻
化させています。小沢氏はこの歴史認識に立って、この混迷を救
う方策を考えたのです。  ――─ [自民党でいいのか/07]

≪画像および関連情報≫
 ●「ユニテリアン主義」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  キリスト教で伝統的に用いられてきた三位一体──父と子と
  聖霊の教理を否定し、神の唯一性を強調する主義の総称をい
  う。歴史的には、ユニテリアンはイエス・キリストを宗教指
  導者としては認めつつもその神としての超越性は否定する。
  ユニテリアンの思想的先駆者はポーランド王国で1556年
  1月22日に活動を開始しのちにポーランド・リトアニア共
  和国で広まったポーランド兄弟団である。彼らはユニテリア
  ンの思想を確立していたが、「ユニテリアン」という用語は
  しばらくの間使用しなかった。これとは別に、1567年に
  トランシルヴァニア(当時はハンガリー王国で現在はルーマ
  ニア)で「ユニテリアン」を自称する教団が成立している。
  ポーランド兄弟団はこのあともしばらく「ユニテリアン」の
  用語を使用しなかったが、これは世の中にトランシルヴァニ
  アでの宗教運動と自分たちの運動とを内容的に混同されるこ
  とを避けたものと推測されている。この宗教思想が流入して
  きたイギリスではしばらくの間かれらは自由思想家や非国教
  徒として位置付けられ、また合理主義やヒューマニズムの思
  想を発展させたという説もある。   ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

平野貞夫氏.jpg
平野 貞夫氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月10日

●「日本型セーフティーネットを作る」(EJ第3586号)

 昨日のEJで、政治家は正確な歴史認識を持つことが必要であ
ることを強調しました。現在、世界は第3次産業革命といわれる
情報社会の真っ直中にいますが、社会の変化に国や国民が対応で
きなくなりつつあります。
 産業革命とは、技術革新による産業構造の変化および経済発展
のことですが、第1次から第3次まであります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎第1次産業革命/18世紀〜19世紀
  ・石炭、蒸気機関を動力源とする軽工業中心の発展である
 ◎第2次産業革命/19世紀〜20世紀
  ・石油を主な動力源とする重工業中心の工業の発展である
 ◎第3次産業革命/21世紀〜
  ・情報技術の発展により、もの作りや社会が変革すること
―――――――――――――――――――――――――――――
 産業革命によって社会や生活は激変し、混迷を極めます。第1
次産業革命が起こった18世紀半ばの英国の混迷を救ったのは、
議会制民主主義の確立であり、それによって自由と平等が保障さ
れたのです。民主主義の第一歩です。
 第2次産業革命では、労働者の反乱が起きたのです。これをめ
ぐって、共産主義国と資本主義国ではイデオロギーの対立が激化
したのですが、激動のなかで資本主義社会の混迷を救ったのは、
福祉社会の実現だったのです。
 福祉社会とは何か。収入の多い人が多くの税を負担する「所得
再配分」によって公共サービスを行い、社会保障を整備する──
そういう福祉社会を資本主義国は実現していったのです。
 このとき、活躍したのが英国のジョン・メイナード・ケインズ
なのです。あまり知られていないのですが、ケインズもユニテリ
アンであったといわれています。
 しかし第3次産業革命が起きると、これまで築いてきた福祉社
会の仕組み──社会主義的なシステムが崩壊しつつあります。理
由は、グローバル化による国の税収の激減と支出の拡大です。こ
れにかわって生まれたのは、弱肉強食による過激な競争資本主義
です。第3次産業革命によって、400年続いてきた資本主義が
変質してしまったのです。
 2007年9月に急に退陣した安倍首相に代わって福田康夫政
権が発足したのですが、その直前の参院選で民主党をはじめとす
る野党は勝利し、与党の議席数を上回り、いわゆる「ねじれ」が
はじまったのです。
 実は、その参院選の時点で小沢氏は米国の投機資本主義と金融
資本主義の崩壊を予想し、「友愛・共生社会」を創るために「国
民の生活が第一」という政策を掲げたことを明かしています。そ
のとき、小沢氏のいった言葉を平野貞夫氏は次のように紹介して
います。
―――――――――――――――――――――――――――――
 参院選で「国民の生活が第一」の政策理念を作ったのは、その
 予感(投機資本主義と金融資本主義の崩壊)があったからだ。
 これから、「日本型セーフティーネット」を整備して、混乱す
 る国民生活を守ったうえで、公正で活力ある市場経済社会を創
 るようにしなければならない。       ──平野貞夫著
              『わが友・小沢一郎』/幻冬社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 「日本型セーフティーネット」──これに基づく具体策として
小沢氏は「新しい生活をつくる5つの約束」を発表しています。
それは、次の5つです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    1.すべての国民が安定した生活を送れる仕組み
    2.   安心して子育てと教育ができる仕組み
    3.  まじめに働く人が報われる雇用の仕組み
    4.     地域社会を守り再生させる仕組み
    5.    国民の生活コストを安くする仕組み
             ──平野貞夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 この2つ目の仕組み「安心して子育てと教育ができる仕組み」
の具体策として民主党は、子ども手当毎月2万6000円、高校
無償化──公立高校生の授業料である月額9900円を徴収せず
国が負担する。私立高校生には年間約12万円の「就学支援金」
を学校に支給する──これらをマニフェストに掲げ、民主党は政
権交代を成し遂げています。
 今では「できもしないウソの公約」といわれていますが、予算
ですからそれを全面的に組み替えて、優先順位をつければできる
のです。ただ、民主党の一部の勢力が政権交代をするや小沢外し
を行い、自分たちの手でやろうとして失敗しただけなのです。彼
らにはそれを実現させる腕力も能力も気力もなかっただけのこと
です。この経緯については改めて述べます。
 現在、参院選が行われていますが、各党とも「マニフェスト」
という言葉を使わず、公約を記載した冊子の部数を減らしていま
す。なぜなら、候補者が公約冊子を配付しようとしても有権者が
受け取ってくれないからです。民主党があまりにも劣悪な政治を
行い、「マニフェスト=できもしない約束」と国民に印象づけて
しまったからです。この罪は万死に値します。
 ちなみに改正公選法では、政党のホームページに掲載された公
約やビラを印刷して配付すると、2年以下の禁固、または50万
円以下の罰金になるのです。実にバカげた規制です。
 「国民の生活が第一」は、単なるスローガンではないのです。
現在の日本の国家・社会構造は第2の産業革命による重化学工業
社会を前提としてできていますが、それは第3の産業革命による
高度情報社会に適合していないため、社会にさまざまな混迷が生
じています。この混迷によって国民生活が混乱しないためのセー
フティネットとして、「国民の生活が第一」の5つの約束を掲げ
民主党は2009年の衆院選に臨んだのです。そして待望の政権
交代を実現したのです。   ── [自民党でいいのか/08]

≪画像および関連情報≫
 ●新しい共生社会の柱とは何か/平野貞夫氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  第一次世界大戦の後には、マックス・ウェーバーは「良き資
  本主義、良き民主主義は死んだ。今あるものは、しょせん偽
  物だ」と、ある日本人に語っている。資本主義や民主主義を
  健全に持続させるために、人間の倫理観では不可能になった
  のが、近代化した人間社会の現実である。それは制度によっ
  て保証されなければならない問題だ。そこで健全な市場経済
  社会・資本主義を機能させる前提として、2つの条件が必要
  となる。ひとつは「基礎的社会保障──基礎年金、介護、高
  齢者医療、保育等──を国の責任で整備する」こと。もうひ
  とつは「地球環境の保全を国家、企業・団体のみならず、す
  べての人間に義務づける」ことだ。CO2削減問題で国際的
  にも国内的にも激論が続いているが、地球環境が保全されて
  いて、人間を含むすべての生物が生存できるのである。この
  前提条件を憲法の中に規定して、新しい共生社会の柱とすべ
  きである。               ──平野貞夫著
              『わが友・小沢一郎』/幻冬社刊
  ―――――――――――――――――――――――――――

「わが友・小沢一郎」/平野貞夫著.jpg
「わが友・小沢一郎」/平野 貞夫著
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月11日

●「小沢一郎は吉田茂の最後の継承者」(EJ第3587号)

 マイケル・サンデルというハーバード大学の教授がいます。こ
の大学で最も人気のある授業がサンデル教授の「JUSTICE
/正義論」です。テレビでも「サンデル教授の白熱教室」として
放送されているので、ご存知の方も多いと思います。
 平野貞夫氏の最新刊書では、達増拓也岩手県知事が平野氏の主
宰する「メルマガ日本一新」に寄稿した論考の一部が紹介されて
いるので、小沢氏の「自立と共生」に関連して、少しご紹介する
ことにします。
 達増知事は、サンデル教授の「正義論」が注目を浴びているの
は、リーマンショックで欠陥が明らかになった米国流自由主義の
修正を訴えているのではないかと指摘しています。米国流の自由
主義は、次の2つを柱としています。
―――――――――――――――――――――――――――――
    1.  功利主義/ユーティリタリアニズム
    2.自由至上主義/   リバタリアニズム
―――――――――――――――――――――――――――――
 功利主義というのは、社会全体の幸福を重視する思想で、「最
大多数の最大幸福」を実現させることです。これに対して自由至
上主義とは、自由主義のなかでも個人の自由の貫徹を重視し、自
己の意志以外は何物にも縛られないという考え方です。ここから
自己決定と自己責任がいわれるのです。リベラリズムと区別する
意味で、自由主義ではなく、自由「至上」主義、「完全」自由主
義といわれるのです。
 この功利主義と自由至上主義が合体すると、市場原理主義、す
なわち、リーマンショックを引き起こした米国生まれのグローバ
ル・スタンダードになるのです。日本においては「小泉/竹中路
線」がそれに当ります。これが現在の安倍自民党において復活し
つつあるのです。
 ザンデル教授は、功利主義と自由至上主義だけでは駄目であり
「共同体主義」(コミュニタリアニズム)が必要であると説いて
います。この「共同体主義」について、達増知事は次のように述
べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 共同体主義は、共同体において個人が「役割を果たす」ことを
 重視し、共通の価値である「徳」を大切にする。損得や個人の
 好みとは別に、「為すべきこと」があるのではないか、それを
 集団において共通のものにしていく必要があるのではないか、
 という考え方である。経済・社会に関しては、優勝劣敗だけで
 は良い社会にはならないのではないか、経済主体は損得や好み
 以外にも共同体に対して為すべきことがあるのではないか、と
 いうことになる。政治の場では、ある役に就いている者は、好
 き勝手に行動していいのではなく、局面ごとに当然為すべきこ
 とがあるのではないか、その為すべきことについて多数の合意
 を形成していかなければならないという事になる。(一部略)
 小沢氏は、政策的にはセーフネット重視であり、政治手法は、
 理念・政策を共有する政治家や支持者を結集して多数の形成を
 目指し、必要であれば波風を立ててでも徹底的に議論をする。
 意思決定の手続きはもちろん尊重するが、こだわるのは内容で
 ある。              ──達増拓也岩手県知事
               ──平野貞夫著/ビジネス社刊
     『真説/小沢一郎謀殺事件/日本の危機は救えるか』
―――――――――――――――――――――――――――――
 サンデル教授のいう共同体主義は、小沢一郎氏のいう「共生」
そのものであるといえます。小沢氏自身は、サンデル教授のいう
共同体主義のことは知らなかったようですが、政治の世界に身を
置いて、経済・社会に対しては、優勝劣敗だけでは良い社会には
ならないことを体得していたのではないかと思われます。
 麻生元首相(現財務相)は、2008年の首相就任後に小沢氏
の「国民の生活が第一」の「5つの約束」(昨日のEJ参照)を
知って、次のように述べたそうです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢っていう政治家は、社会主義者である。こんな男を首相
 にしてはいかん           ──麻生太郎元首相
―――――――――――――――――――――――――――――
 これに敏感に反応したのが、官僚中の官僚といわれる検察なの
です。これについては、「官僚」のところで詳しく述べます。
 麻生太郎氏といえば、吉田茂元首相の孫として知られますが、
平野貞夫氏によると、吉田茂の政治理念を現在最も継承している
政治家は麻生太郎氏などではなく、小沢一郎氏なのです。
 新憲法を制定して第2次吉田内閣が成立したとき、吉田元首相
は次のように発言しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 デモクラシーの実現には、政権交代が必要で、そのためには
 社会党を育成しなくてはならない。   ──吉田茂元首相
               ──平野貞夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 そのとき、社会党は「よけいなお世話だ」と批判したといいま
すが、二大政党の必要性を早くから認識していたのです。吉田元
首相は、1962年(昭和37年)に『大磯随想』という冊子に
「政治の貧困」と題して、おおよそ次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本では現在、政治の貧困と言うことが叫ばれている。その
 原因は、日本のデモクラシーは戦後になって与えられたもの
 であり、大部分の民衆がその真意を理解していない。そのた
 めに議会政治にも貧困性が現れているが、我々は議会政治よ
 り他に日本の向かう道はないので、あらゆる努力をしなけれ
 はならない。        ──平野貞夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 吉田元首相は、日本の民主主義は戦後与えられたもので、まだ
根付いていないという同じ認識を、時代の違う政治家の小沢一郎
氏も認識していたのです。  ── [自民党でいいのか/09]

≪画像および関連情報≫
 ●『大磯随想』における吉田茂の随筆
  ―――――――――――――――――――――――――――
  吉田茂が出筆した『大磯随想』という本の最初の一部を掲げ
  てみた。久し振りにこれを読んで見ると、吉田茂が外交官・
  政治家として生きた時代と現代社会を比較して見ても、政治
  的には悲しいかな少しも代わっていない事がよく分かる。む
  しろ敗戦で打ち萎れる日本を何とかしようという気概につい
  て考えるのならば、吉田茂が生きた時代の政治の方がまだま
  しであったし、国民も緊張感を持って生活をしていたような
  気がする。政治の貧困、それはまた同時に日本のマスコミの
  貧困にも起因しているような気がする。政治の貧困を連日の
  ように誇張し続け、また弱い人間の愚かさを滑稽に民衆にア
  ピールすることだけでは決して政治の貧困は解決されないし
  民主主義の本質もまた導くものでもない。そんなことを考え
  ながら次の吉田茂の本の一説を読んでもらいたい。「日本で
  は現在、政治の貧困ということが叫ばれている。事実、日本
  の政治は貧困に違いない。だが、ある種の人が今更、誇張し
  て貧困を言う気味もある。今の政治形態ではいけない、デモ
  クラシーではやって行けない、という方向へ論理を持って行
  くために、政治の貧困を誇張する向きもある。すると、それ
  は民衆にアピールする、事実、貧困なのだから。しかしそれ
  は現在の議会政治否定の方向を示すもので、我々は十分に注
  意する必要がある。
   http://www.townnews.co.jp/0606/2011/04/29/103642.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

「大磯随想」/吉田茂著.jpg
「大磯随想」/吉田 茂著
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月12日

●「なぜ『小沢は終り』と報道するか」(EJ第3588号)

 参院選がはじまって昨日で一週間が経過しました。自民党が全
国で圧倒的に勝ち進むなか、「小沢は終った」とか、「小沢の影
響力が低下」とかいう類いの報道が頻繁に行われています。
 昔から小沢嫌いで鳴る田崎史郎氏、星浩氏、伊藤敦夫氏などの
テレビによく出てくる政治評論家を筆頭に、メディア全般が小沢
氏の影響力の低下をうれしそうに報道しています。
 それは、小沢氏の擁立した前岩手県議の関根敏伸候補者が岩手
選挙区で、自民と民主の落下傘候補者に苦戦しているからです。
しかし、苦戦は当然のことです。いくら岩手で強い小沢氏でも、
あれだけいわれなきバッシングを長年にわたってメディアから受
ければ、その政党の候補者が苦戦するのは当然のことです。巨大
メディアを敵に回すとこうなるのです。
 民主党の劣悪な政治のうち、一番許せないことは、こともあろ
うに野党の自民・公明両党と組んで、選挙前のマニフェストでや
らないといっていた消費増税を成立させたことです。そのため、
民主党は全国的に大苦戦を強いられていますが、民主党はここに
至っても、そのことがわかっていないようです。
 小沢氏らは、これでは国民の理解は得られないとして、スジを
通すために離党して新党を立ち上げたのです。それは苦渋の選択
だったと思います。しかし、そのスジを通した小沢氏率いる生活
の党に対して国民は、メディア報道を真に受けて、民主党と同様
にバッシングをしているのです。これはスジの通らない話です。
 信念のある政治家ならば、国民との約束を破ったとして離党す
るのが当然であるのに、民主党は離党はけしからんとして、民主
党の執行部は岩手に刺客を送り込んでいるのです。露骨な小沢潰
しです。岩手選挙区の情勢について、岩手の地元紙記者は次のよ
うに書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 自民新人と無所属の平野が接戦。そこに生活の関根がどこまで
 食い込むかという構図です。平野は地元で知名度がありますが
 決して評判は良くない。人間として信用できないとみられてい
 るのです。小沢の力で当選し、復興大臣にまでなったのに、袂
 を分かって民主党に残った。そのくせ、民主党では勝てそうに
 ないからと、自民入りを画策して離党。結局、自民にフラれて
 無所属で出馬することになりましたが、当選後は自民党の二階
 派入りが決まっているともっばらで、「そうなれば、自分も自
 民党に入れる」と張り切って平野を支持している無所属系の県
 議・市議もいる。ただ、自民党サイドは「平野の入党はない」
 と打ち消しに躍起です」(地元紙記者)
    ──2013年7月10日発行/「日刊ゲンダイ」より
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、小沢一郎氏はこれまでに「もう終わり」と何回もいわ
れているのです。それでもつねに小沢氏は政界の中心にいたので
す。この点について小沢氏は、「VOICE」8月号の対談にお
いて、次のように述べています。司会は、40年以上にわたって
政治をウオッチしてきている政治評論家の篠原文也氏です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 篠原:とても厳しい言い方になりますが、いま永田町には「小
    沢一郎は終った」「小沢一郎の時代ではない」という声
    があります。ご自身はどう思われますか。
 小沢:私自身、政界に入って40年が経ち、いい齢ですから、
    次の世代に引き継ぐべき時期であることは十分自覚して
    いますよ。ただ問題は、私が理想としてきた日本の「国
    づくり」がいまだ道半ばであることです。これは私個人
    ではなく、有権者の皆さんや日本国にとって重要なこと
    です。一言でわかりやすくいえば、日本にはまだ民主主
    義が根付いていない。「VOICE」2013年8月号
―――――――――――――――――――――――――――――
 確かに選挙に強いはずの小沢氏は、昨年末の衆院選、6月の都
議選に続けて惨敗しています。参院選も現在の情勢では、おそら
く議席を減らすと思われます。それでも、小沢氏は3年後に行わ
れるであろう衆参ダブル選挙に焦点を絞っています。そこでもう
一度政権交代をやるといっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢:(もう一度政権交代する)と私がこう述べると、「民主
    党は衆議院で50人前後、生活の党も10人程度で、衆
    参合わせても100の勢力に満たないではないか」とい
    う人がいます。国民にも「政権交代はもうない」と思っ
    ている節があります。でも、考えてみてください。いま
    の状態は、あの2003年に自由党と民主党が合併する
    前の状態に戻ったのです。
 篠原:そうでしたね。合併当時の衆院勢力は、民主114、自
    由22でした。
 小沢:必ずしも政界再編に議員の数は必要ない。要は政策の意
    思決定が明確で、国民に対して正しいメッセージを訴え
    ることができればよいのです。
            ──「VOICE」2013年8月号
―――――――――――――――――――――――――――――
 本来であれば、与党が割れるということは、事例的には珍しい
ことである──このように小沢氏はいいます。民主党がもう少し
しっかりしていれば、たらればの話になりますが、マニフェスト
でやらないといっていた消費増税に加担しなければ、100人以
上の議員が離党することはなかったのです。
 さらに加えて、負けるとわかっているのに、任期前の無謀な解
散などしなければ、政権を奪われることはなかったはずです。そ
うしていれば、自民党の方も党内整理ができて「新しい自民党」
になっていたのです。残念ながらそうならず、中途半端なまま自
民党が政権復帰してしまい、すべては一からのやり直しになって
しまったのです。安倍首相がCMで「取り戻す」といっているの
は「古い自民党を取り戻す」なのです。しかし、小沢氏はまった
くあきらめていないのです。 ── [自民党でいいのか/10]

≪画像および関連情報≫
 ●非自民協力の旗振り役は野党第一党であるべき/小沢一郎
  ―――――――――――――――――――――――――――
  篠原:次の衆院選は参院選とのダブル選挙になる可能性性が
     高い。となると準備にあと三年あるわけですが、これ
     から具体的にどう動きますか。参院選後に小沢サイド
     から野党再編に向けた呼びかけをするつもりですか。
  小沢:いや、私自身は以前から、非自民協力の旗振り役は野
     党第一党でなければいけないという考えです。それが
     手っ取り早いし、国民が理解しやすい。意義のある呼
     びかけに対しては、もちろん一定の政策的合意が必要
     ですが、いつでも参加する態度です。
  篠原:中坊公平さんがよく嘆かれていましたよ。日本の民主
     主義は「観客民主主義」で実質化していない、と。小
     沢さんの目からみて、そうした国民の意識はまだ変わ
     っていない?
  小沢:徐々に変わってきていると思います。第一の証しは、
     四年前に民主党政権ができたことです。そして、いま
     なお国民は、自民党に代わるしっかりした政権を望ん
     でいます。それが参院選後、大きな動きとなって現れ
     てくるでしょう。
            ──「VOICE」2013年8月号
  ―――――――――――――――――――――――――――

「VOICE」8月号/2013年.jpg
「VOICE」8月号/2013年
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月16日

●「小沢排除の影の仕掛け人は竹下登」(EJ第3589号)

 平野貞夫氏は、小沢一郎氏を政治的に「謀殺」しようとした真
犯人を特定するために上梓した新刊書において、5つの仕掛け人
候補を上げています。7月3日のEJ第3581号でご紹介しま
したが、以下に再現します。ここから「仕掛け人候補その1」に
ついての話に入ります。
―――――――――――――――――――――――――――――
   仕掛け人候補その1        「政治家」←
   仕掛け人候補その2         「官僚」
   仕掛け人候補その3         「財界」
   仕掛け人候補その4     「巨大メディア」
   仕掛け人候補その5  「ジャパンハンドラー」
               ──平野貞夫著/ビジネス社刊
     『新説/小沢一郎謀殺事件/日本の危機は救えるか』
―――――――――――――――――――――――――――――
 「仕掛け人候補その1」は政治家です。小沢氏と同じムラの住
人である政治家のなかに犯人がいるというのです。同じムラの住
人であれば、どうしても利害がからんでくるからです。
 ある人を好きか嫌いかというのは印象に基づく評価です。その
多くは見た目の印象です。人間というものは、何となくイメージ
の悪い人には近づかないので、その人のことを積極的に知ろうと
しないものです。それだけに、その人のさらなる悪いイメージが
出てくると、さらに距離を取ろうとし、なかにはその人を公然と
批判するようになるのです。
 その典型が民主党です。2003年の民由合併時点における民
主党幹部──仙谷、前原、野田、玄葉、安住氏らは、2006年
に小沢氏が代表に就任してからも、同じ党内にいながら、ほとん
ど接触していなかったようなのです。
 それが分ったのは、2011年の民主党代表選の直前のことで
す。代表候補の野田佳彦氏は、細川護煕氏を通じて小沢氏に会っ
ていますが、野田氏が小沢氏に会って話すのはそのときがはじめ
てだったというのです。民由合併から8年も経過しているのに、
民主党幹部の野田氏が一度も小沢氏と会って親しく話したことが
なかったのです。それでいて野田氏は小沢批判は何回もやってい
るのです。負け犬の遠吠えです。野田氏にしてそうですから、他
の幹部も同様であったと思われます。
 小沢氏が政界入りしたのは1969年です。それから20年後
の1989年に小沢氏は自民党幹事長になっています。その20
年間は小沢氏を批判する人は誰もいなかったのです。小沢氏が政
治家から反感や反発を買うようになったのは、47歳で自民党幹
事長に就任してからのことです。
 「反感」や「反発」は、その前段階の「嫌悪」が発展したもの
です。しかし、それが「排除」にまで発展するには、そこに相当
強い動機が働いているものです。これについて平野貞夫氏は自著
で次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢氏を政治の世界から排除、さらにはその謀殺を企図するま
 で忌み嫌うとなると、それなりの強い動機が必要である。「謀
 殺」はともかくも、単なる「反感」から「排除」にまで動機が
 高まるのには、契機がある。それは、小沢氏が「有言実行」の
 人だからである。それによって、「いやなやつだ」と小沢氏に
 反感を抱いていた多くの政治家が、「この男にいてもらっては
 困る」、つまり「反感」から「排除」へと気分が大きく変わっ
 たのである。        ──平野貞夫著/ビジネス社刊
     『真説/小沢一郎謀殺事件/日本の危機は救えるか』
―――――――――――――――――――――――――――――
 平野貞夫氏は、自民党内の小沢排除の仕掛け人は、竹下登元首
相であるとみています。その理由は何かというと、竹下氏が退陣
の置き土産として残した「政治改革」を小沢氏が本気で実行して
しまったからです。
 「政治改革」とは、自民党の政治改革推進本部(伊東正義本部
長、後藤田正晴本部長代理)が作成した「政治改革大綱」のこと
です。小沢氏はこの「政治改革大綱」を本気で実現させるべく動
き出したのです。竹下氏はそれを見て愕然とし、それ以後、さま
ざまな局面で小沢潰しを行うようになったのです。
 なぜ、竹下氏は小沢潰しを仕掛けたのでしょうか。
 小沢氏としては、その「政治改革大綱」には大いに不満があっ
たのです。そこには派閥の解消などは掲げられていたものの、選
挙制度の改革などはぼかされ、全般的にキレイゴトが並んでいる
だけの代物だったからです。
 しかし、竹下氏をはじめとする自民党のベテラン議員の多くは
いわゆる55年体制を本音では壊したくなかったのです。なぜな
ら、与党の自民党と野党第一党の社会党は、55年体制の名の下
で、ウラでは実質的に手を組み、自民党の一党独裁を支えていた
からです。そのため、建前としては「政治改革」を唱えるものの
それはあくまで単なるポーズであって、実現は先送りしてきたの
です。その建前の政治改革を小沢氏は本気で実現させようとした
ので、竹下一派は、危険人物として小沢排除に動いたのです。そ
こに深刻な利害の対立があったのです。
 宇野首相が女性問題で退任した後の海部政権で幹事長に就任し
た小沢氏は、「政治改革大綱」の作成者である伊東正義氏と後藤
田正晴氏に対し、次のように迫ったといわれます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 先輩には失礼だが、この改革案はキレイ事ばかり言っていて
 一番大事な問題を避けている。それは選挙制度の改革を本気
 でやるかどうかです。派閥解消だけをいくら叫んでも派閥は
 なくならない。原稿の選挙制度を変えなければならない。
               ──平野貞夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、選挙制度の改革は、現在の議員定数の削減の動きをみ
ても簡単にはまとまらないのです。自分の議席に関わる問題であ
るからです。        ── [自民党でいいのか/11]

≪画像および関連情報≫
 ●「死して尚残る竹下登の影響」/竹下登とは何者か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  竹下は、自分の政治手法を、「政治とはハーモナイゼーショ
  ン(調整力)である」(「政治とは何か 竹下登回顧録」)
  と語っている。つまり、自らビジョンを示して人々を誘導し
  たり強圧的な政治を行うトップダウン型ではない。それぞれ
  の部署にそれぞれの仕事を任せて自らは気配りや根回しとい
  った調整役に徹して合意形成を行うボトムアップ型である。
  この竹下の手法には致命的な問題がある。他人からの合意形
  成を重視するあまりにリーダーとして組織の目標を掲げない
  ことである。そのため、自民党はこの10年間確固たる目標
  もなくひたすら利権のみを追求する政党、ハマコーこと浜田
  幸一元衆院議員のいうところの「自眠党」になってしまった
  のである。しかも竹下は自分の発言に付け入られる隙を作ら
  せまいとして常に自分自身の明確な意見を出さなかった。竹
  下は自らを表現した「言語明瞭、意味不明」は適切である。
  しかし、政治家は自らの言葉で国民に訴えかけることによっ
  て国民の信頼を得て政策を実行するのが責務なのに、自分自
  身の言葉で語らないということは、政治不信を招くのは明ら
  かである。それは今の日本の現状を見れば十分納得できるだ
  ろう。   http://www.hit-press.jp/column/sk/sk40.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

竹下登氏と小沢一郎/国会にて.jpg
竹下登氏と小沢一郎/国会にて
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月17日

●「消費税がついて回っている政治家」(EJ第3590号)

 小沢一郎という政治家は、どういうわけか消費増税がついてま
わっているようです。消費税はこれまで4回にわたって創設ない
し、税率の引き上げが行われていますが、その3回に小沢氏がか
かわっているからです。
 1986年(昭和61年)7月のことです。時の中曽根首相は
1980年に次いで2度目の衆参同日選を行い、自民党は、衆院
選で追加公認を含めて304議席を獲得して圧勝したのです。こ
れが有名な「死んだふり解散」です。
 この内閣で竹下登氏は幹事長に就任し、小沢一郎氏は無役で幹
事長を補佐することになったのです。そのとき、中曽根首相は、
とんでもないことをやったのです。それは、いったんやらないと
約束した大型間接税を1987年の第108回通常国会に「売上
税法案」として提出したのです。
 少していねいに述べることにします。中曽根首相の売上税に関
する国会での答弁は、次の通りです。非常にトリッキーないい方
をしています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 縦横十字に投網をかけるような大型間接税はいたしません。
    ──1986年6月14日、中曽根首相国会答弁より
―――――――――――――――――――――――――――――
 この「縦横十字に投網をかけるような大型間接税」とは、まさ
に今の消費税です。日本の現在の消費税には軽減税率はなく、国
民が何かを購入すれば一律に税金がかかります。「縦横十字に投
網をかける」とはそのことをいっているのです。
 中曽根首相は間接税をやらないとはいっていないのです。「縦
横十字に投網をかけるような」大型間接税はやらないといっただ
けです。しかし、これは詭弁です。国民は「間接税はやらない」
と解釈したのです。
 当時中曽根首相の頭にあったのは「蔵出し税」であるといわれ
ます。ガソリン税は蔵出し税です。蔵出し税の語源は酒税です。
酒蔵から外へ持ち出した時点で課税されることから「蔵出し税」
と呼ばれています。どちらにせよ、国民が税金を負担することに
代わりはないのですが、蔵出し税は徴税元が少ないので、徴税コ
ストが安くて済むのです。
 しかし、国民と野党は猛反対し、国会は連日騒然となり、国会
運営に支障をきたすまでになったのです。結局、原健三郎衆院議
長の調停によって、売上税法案は事実上廃案になったのです。こ
の原衆院議長の調停案づくりに議運委員長の経験を生かして活躍
したのが小沢一郎氏なのです。小沢氏はこのように売上税(消費
税)導入騒動を1回経験しているのです。
 小沢氏は、ここで国民に売上税はやらないといったのに議席が
多く取れたら、手のひらを返して増税法案を通すことが、どれほ
ど国民を怒らせることになるかをイヤというほど体験しているの
です。そういう意味で国民を裏切り、菅・野田元首相をはじめと
する消費増税を成立させた民主党議員は、今後政治家を続ける限
り、選挙には苦しむことになるでしょう。ネット選挙が解禁され
たので、国会議員の過去の政治行動はクリックするだけで今より
も簡単に調べられるようになるからです。
 1987年11月に中曽根首相が退陣し、竹下内閣が発足しま
す。このとき、小沢氏は官房副長官として、消費税の導入に取り
組むことになります。小沢氏にとって消費税には2回目のかかわ
りになります。
 しかし、内閣ができる4ヵ月前のことですが、竹下登氏は、田
中派を分裂させ、経世会を結成しており、小沢氏もそれに参加し
ています。これは大変評判が悪く、経世会はバッシングを浴びた
のです。それに加えて、リクルート事件が表面化し、自民党だけ
でなく、野党まで巻き込むかたちで、国民に政治不信を植え付け
る結果になったのです。そのため、竹下内閣は小沢氏の努力で、
消費税創設(3%)だけを成果として幕を閉じています。しかし
この消費税の基本的性格は、皮肉なことに、「縦横十字に投網を
かけるような大型間接税」になっていたのです。
 小沢氏は消費税導入には反対していないのです。反小沢の中心
人物である菅元首相は、小沢氏が『日本改造計画』で消費税導入
に賛成しているのに消費増税に反対するのは首尾一貫しないとご
く最近も発言していますが、菅元首相は『日本改造計画』を読ん
でいるとは思えないのです。『日本改造計画』で小沢氏は、消費
税を導入するが、直接税である所得税と法人税を半分程度にする
述べているからです。後の部分をカットして、「小沢は消費増税
派」と決めつけているのです。これも詭弁です。
 次の消費増税(3%を5%に引き上げ)は、橋本内閣時の19
97年ですが、そのとき小沢氏は自民党を飛び出して、新進党に
参画しているので、かかわっていないのです。折しもこの頃は新
党の設立・解党が相次いでいます。1996年には民主党が結成
され、1997年12月に新進党が解党され、1998年1月に
は自由党が結成され、小沢氏が代表に就任しています。
 次に小沢氏が消費増税にかかわることになるのは、政権交代を
成し遂げた2010年からです。この年の参院選で、菅政権は党
内議論のないまま、消費増税を掲げて参院選を行い、惨敗し、参
院での「ねじれ」を生んでいます。
 これは、まさに中曽根内閣時の「売上税」と同じ展開であり、
民主党内の小沢グループとしては猛然と反対します。それがどの
ような結果を招くのか、小沢氏にはよくわかっていたからです。
その後、党内の流れを変えるために小沢氏は、参院選後の代表選
にも出馬しますが、陸山会事件による秘書逮捕や、検察審査会で
の強制起訴などの重圧によって思うように政治活動ができず、代
表選に破れています。
 消費増税の責任を一身にかぶっているのは民主党ですが、それ
に協力した自民党と公明党には追い風が吹いています。国民の対
応も一貫していません。大きな流れができると、すぐそれに乗っ
てしまうところがあります。まさに国民が政治的に「自立」して
いないのです。       ── [自民党でいいのか/12]

≪画像および関連情報≫
 ●中川秀直事務所「志士の目」/2011年1月
  ―――――――――――――――――――――――――――
  増税オールスターズ進駐後の菅民主党政権はどうなってしま
  うのか?民主党の若いみなさまには、記憶に薄いかもしれま
  せんので、1986年衆参同日選挙後の売上税騒動はなぜ起
  きたのかをみてみましょう。中曽根首相は86年6月の衆参
  同日選挙で大勝したが、中曽根首相はこの選挙で「国民が反
  対し、党員も反対するような大型間接税は導入しない」と公
  約していた(86年6月14日)。さらに国会審議の中で、
  「縦横十字に投網をかけるような大型間接税はしない」と中
  曽根首相は答弁しており、政府税調に対して「国会で言った
  ことは守ってほしい」と大型間接税を行わない旨を確認して
  複数の選択肢をもってくるよう注文しています。しかし、中
  曽根首相にもってきた4つの選択肢は「ヨーロッパタイプの
  付加価値税がよろしい」というものでした。1979年、大
  平首相はこれを鵜呑みにして選挙で敗れました。そのことに
  教訓を得ている中曽根首相は出てきた案をみて、「私は、君
  らには殺されないよ」と「日本的な消費税」を作れと命じま
  した。この「日本的な消費税」も、同日選挙のときの公約に
  違反するとの強い批判を受けることになります。この批判を
  かわすために、大型間接税の課税範囲を限定すれば必ずしも
  大型ではないとしましたが、配慮したつもりの自民党の伝統
  的支持者である中小事業者、零細小売業者の反発は、課税範
  囲の対象外にしても弱まらず、税制の「公平」の原則を重視
  する自民党の新たな支持者であるサラリーマン層らの離反を
  招きました。なぜ、このようなことがおきたのか?
  http://ameblo.jp/nakagawahidenao/entry-10768010052.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

売上税騒動時の中曽根元首相.jpg
売上税騒動時の中曽根元首相
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月18日

●「自民党幹事長になった経緯と背景」(EJ第3591号)

 自民党の政治家で「小沢排除」の影の存在として君臨していた
のは、竹下登元首相です。当時の自民党内にも改革を唱える議員
はたくさんいましたが、それは「自民党が政権から下りるような
ことになる改革は必要ない」という範囲での改革論であったので
す。竹下氏は、党内の改革議論がその範囲をはみ出さないよう慎
重にチェックしていたのです。
 しかし、小沢氏が進めようとする政治改革は、衆議院に比例代
表制を加味した小選挙区を導入し、政権交代を可能にするもので
あって、自民党の下野も前提にするものであったので、竹下氏に
とってはとうてい許容することができなかったのです。
 竹下内閣が退陣した後の自民党の総理・総裁選びは難航したの
です。なぜなら、ポスト竹下と目されていた安倍晋太郎、宮澤喜
一、渡辺美智雄ら自民党の有力者は軒並みリクルート事件に関与
していたため身動きが取れず、河本敏夫は三光汽船経営危機問題
から敬遠され、さらに伊東正義や田村元、坂田道太、後藤田正晴
からも断られて後継の総理・総裁選びは難航したのです。
 小沢氏は竹下内閣の官房副長官から党務に転じて、経世会の総
務局長をやることになったのです。総理・総裁は混迷のすえ、宇
野宗祐氏に決まり、幹事長には橋本龍太郎氏が就任したのです。
 その宇野内閣で、小沢氏は携帯電話の日米交渉の特使として難
交渉をまとめ上げ、一仕事しています。私が小沢氏に注目したの
は実はそのときです。彼は、この交渉で米国のモトローラ社製の
携帯電話を受け入れ、「国賊」といわれましたが、結果として携
帯電話代金を大幅に引き下げ、日本の携帯電話の普及に大いに貢
献したのです。
 これについては、巻末の「関連情報」フォーリン・アフェアー
ズ・1995年11月号/日本語版『小沢一郎/追い詰められた
改革者』が小沢一郎風の外交交渉を知るうえで参考になります。
 しかし、宇野内閣は女性問題で足元をすくわれ、1989年7
月の第15回参議院議員通常選挙では、改選議席の69議席のう
ち36議席しか獲得できず、とくに一人区では3勝23敗と惨敗
したのです。その結果、自民党は参議院では結党以来初の過半数
割れ、すなわち「ねじれ」の状態になったのです。
 宇野内閣はその責任を取って退陣を表明、首相在位69日の短
命内閣になったのです。そのときポスト宇野の筆頭候補に橋本龍
太郎氏が浮上します。
 宇野首相の女性問題に懲りた自民党は、橋本氏の身体検査を徹
底させることになります。経世会の金丸会長は身体検査を小沢総
務局長に命じたのです。調査の結果、橋本氏には致命的な女性問
題があり、ポスト宇野から外れることになったのです。
 問題はそれを誰が橋本本人に伝えるかです。従来の自民党では
長老が説得するのですが、小沢氏はそれは総務局長の仕事であり
悪役は私が負うとして橋本氏に事実を伝えたのです。しかし、橋
本氏は自分のことは棚に上げ、自分の総理・総裁の足を引っ張っ
たとして、以後小沢批判を強めることになります。
 結局自民党は最小派閥・三木派の海部俊樹氏を総理総裁に選び
幹事長に小沢氏を据えたのです。参議院がねじれになっており、
国会運営が厳しくなっていたことと、党内基盤の弱い海部氏を経
世会の小沢氏が補佐するという意味で、幹事長は小沢氏しかいな
かったのです。事実上の「海部・小沢内閣」であり、実権は小沢
氏にあったといって差し支えないと思います。実際に小沢氏はこ
の内閣で、獅子奮迅の活躍をしているのです。
 このときの印象があるので、政権交代後の鳩山政権の小沢幹事
長を「鳩山・小沢内閣」ととらえている人が多いのですが、これ
は大きな間違いです。そのとき、小沢氏は政権には一切口を出せ
ない選挙対策の幹事長であったからです。これについては、改め
て述べることになります。
 海部内閣での小沢幹事長起用について、平野貞夫氏はその経緯
を次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 幹事長職はそれなりのキャリアの人物を起用するのが「自民党
 の常識・常道」である。これは金丸信経世会会長の指示による
 ものだったが、まず竹下前首相が反対。竹下氏は私には「一郎
 は政調会長か大蔵大臣を経験してから幹事長になるべきだ」と
 言っていた。一方、金丸会長は「参院が逆転で世界が乱れてい
 るとき、一郎が幹事長でなくて海部政権がやれるのか」と親し
 い記者に語っている。この直感は当たったと思うが、小沢氏に
 とってはあまりにも副作用がきつかった。しかし本人は田中直
 伝の「総理より幹事長のほうが政治家としてやりがいがあって
 面白い」を思い出し、幹事長として自民党の改革に政治生命を
 懸ける覚悟をするのである。 ──平野貞夫著/ビジネス社刊
     『新説/小沢一郎謀殺事件/日本の危機は救えるか』
―――――――――――――――――――――――――――――
 よく小沢氏は権力主義者といわれます。当時の自民党の幹事長
といえば最高権力者であり、小沢氏が首相になろうと思えばなれ
るチャンスは十分あったのです。しかし、小沢氏は幹事長就任の
時点から日本の政治のあり方に疑問を抱き、政治改革の必要性に
強くこだわっていたのです。当時の小沢氏の発言です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 このままの自民党が続くのなら、私は総理になれないし、なる
 つもりもない。総理になるためにどれだけの資金がいるか。こ
 のままにしておけば、2年に1回は派閥の首領は司直に捕まる
 ことになる。まともな政治はできなくなる。解党的出直しと、
 冷戦後の国際社会に対応できる政治の仕組みをつくりたい。政
 治倫理とか政治資金の規制とか、世論受けのする格好のよい話
 だけでは駄目だ。選挙制度そのものを抜本的に改革して、政党
 中心、政策中心の政治ができるように、政治家や国民の意識を
 変えなくてはいけない。 ──平野貞夫著/イースト・プレス
  『小沢でなければ日本は滅ぶ/政治の悪霊と戦い続ける男』
―――――――――――――――――――――――――――――
              ── [自民党でいいのか/13]

≪画像および関連情報≫
 ●「小沢一郎/追い詰められた改革者」/フォーリン・アフェ
  アーズ/日本語版1995年11月号
  ―――――――――――――――――――――――――――
  1988年、日本の公共事業市場を米国企業に開放させるこ
  とを目的とした日米交渉を小沢は妥結に導いたが、以来、彼
  は米国の貿易交渉者にとって貴重な友人である。モトローラ
  社のビジネスを日本市場で立ち上げるのを助け、大幅な価格
  の引き下げを実現した携帯電話市場をめぐる昨年の合意の影
  の立役者もまた小沢だった。最近の自動車交渉にしても──
  もし小沢が交渉していれば、次期自民党総裁の呼び声の高い
  橋本龍太郎通産大臣が行なったような、2国間関係を損ない
  かねないスタンドプレーはみせなかったはずだ。小沢なら、
  米国車の日本市場でのシェアを保証することを回避しつつも
  米国との取り決めを目立たぬように妥結へと導く、地味な努
  力を重ねていただろう。米国の重要な同盟者である小沢は、
  自民党の旧指導層のように米国のイニシアティブに対する盲
  目的な追随者ではなく、問題があると感じた場合には、はっ
  きりと物をいい、ときには批判さえする。もっとも小沢は、
  日米同盟の存在が、日本が他のアジア諸国に引き続き受け入
  れられるかどうかの鍵をにぎっていると見ているし、もっと
  最近では、しだいに愛国主義的となり、脅威となりつつある
  中国に備えるためにも、日本はカウンター・バランスとして
  の米国を必要としていると強調している。
  http://www.foreignaffairsj.co.jp/essay/200909/0909_1.htm
  ―――――――――――――――――――――――――――

「小沢でなければ日本は滅ぶ」/平野貞夫著.jpg
「小沢でなければ日本は滅ぶ」/平野 貞夫著
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月19日

●「国家観なく政局観しかない政治家」(EJ第3592号)

 海部俊樹首相と小沢幹事長の海部政権は、国際情勢の歴史的激
動のなかで翻弄されたのです。当時ソ連は、1986年頃から、
ゴルバチョフ書記長の下でペレストロイカと呼ばれる社会主義改
革運動がはじまっていたのですが、1989年にベルリンの壁の
崩壊でそれが本格化します。そして同じ年の暮れに「米ソ冷戦」
は終結したのです。
 こういう国際情勢の激動期に政治家に求められるのは、的確な
時代認識を持つことです。しかし、そのさい小沢幹事長(当時)
の時代認識と自民党や官僚のそれとは大きな差があり、紛糾する
原因になったのです。
 米ソ冷戦が終結したとき、小沢氏は次のように「予告」してい
るのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本人のほとんどはこれで資本主義が勝った。これから平和と
 繁栄の時代となると言っている。僕は冷戦の終結はパンドラの
 箱が開いたと同じことだと思う。これから資本主義の暴走が始
 まる。米ソの戦争はないだろうが、富の偏りによる地域紛争や
 民族や宗教の対立が激化する。戦後政治の惰性で生きてきた日
 本は、自立して世界の中で活動するため、何をすべきかだ。
               ──平野貞夫著/ビジネス社刊
     『真説/小沢一郎謀殺事件/日本の危機は救えるか』
―――――――――――――――――――――――――――――
 その後の国際情勢は、まさに小沢氏の発言通りになっているの
です。1990年8月に湾岸戦争が勃発しています。そのときの
対応をめぐって日本政治は混乱状態に陥ったのです。
 誰も何も考えられない、判断できない、決められないで混乱が
生じたのです。なぜなら、自民党の結党以来、国家にとってその
ような難事が発生したことがなかったからです。米国の懐のなか
でぬくぬくとし、食べることと、金儲けのことだけを考えていれ
ばよかったからです。つまり、国家観を持たなくても政治家は務
まったのです。
 国連決議によって米国を中心に多国籍軍が編成されるなか、日
本は対応に苦慮したのです。小沢幹事長はとくに外務官僚の根強
い抵抗のなかで、政治主導ではものごとが決められないことを痛
感したのです。このときの体験が、『日本改造計画』を書く動機
になっているのです。日本の政治を変えなければならないという
思いからです。
 このことに関連する、自民党幹事長当時の小沢一郎氏のあるイ
ンタビューでのやり取りを抜粋します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ──時代認識については、幹事長と党内のギャップはかなりの
   ものがある?
 あるある、ものすごくある。だから、僕だけ突出しているみた
 いに見える。アメリカの人が来て、今回いろんな人と会ったが
 あなたのような話をした人はいないと言っていた。俗に言えば
 天下国家の話は誰もしないんだ。テクニカルな話ばっかりなん
 だな。具体的政策判断は根本があってその上で判断することだ
 が、それがないんだな。個別のことばかりあーでもない、こー
 でもないでね。
 ──しかし永田町では幹事長の考え、政治手法がなかなか理解
   されず、批判もある。
 わからないということが、僕にはわからないわな。それはね、
 要するに国家観という意識がなくて、政局観しかないんだな、
 多分。彼はどうやろうとしているのかとか、個人的な利害損失
 の中の、政局の中の意識でしかとらえられないから、彼はなに
 をしようとしているのかという感じになってしまうと思う。直
 接話していない人は多いけど、いろんな所に僕の考えは載って
 いる。わからないことはないと思う。
  ──小田甫著「小沢一郎・全人像」/行研出版局/1992
                  平野貞夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 よく政治評論家は、小沢氏のことを「政局しか頭にない男」と
いいますが、こういうことをいう人は、いかに小沢氏について何
も調べていない、読んでいないかがわかります。
 小沢幹事長は、湾岸危機というポスト冷戦の新たな国際社会の
変化に対し、日本はどう対応すべきか熟慮し、政治論、法律論の
両面から論理を組み立て、自衛隊の派遣を唱えたのです。
 これに対して外務省は「自衛隊派遣は国益を失う」の一点張り
で断固反対します。もし、外務省が国際社会の動向を分析し、外
交政策論を展開して自衛隊派遣反対を唱えたのであったら、少し
は議論になったでしょうが、はじめから反対ありきで、そんなこ
とは幹事長ごときが決めることはでなく、国家を担っているわれ
われの決めることであるといわんばかりのことを慇懃無礼に主張
し、小沢幹事長の指示を一蹴したのです。小沢一郎という政治家
が、明治維新以来日本の政治の世界に巣食っている、こうした時
代に合わない官僚機構を根こそぎ変えなければ日本は良くならな
いと考えたのは、実はこのときだったのです。
 このときのいきさつについては、既に2010年1月のEJで
書いていますので、読んでいただきたいと思います。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎2010年1月21日/EJ第2727号
 http://electronic-journal.seesaa.net/article/138904816.html
 ◎2010年1月22日/EJ第2728号
 http://electronic-journal.seesaa.net/article/138995647.html
―――――――――――――――――――――――――――――
 だからこそ、小沢氏が民主党を率いて政権交代を目の前にした
2009年2月、官僚機構は心底恐れおののいたはずです。「小
沢なら、官僚機構を根こそぎ改革しかねない」と。そしてなりふ
り構わず、巨大メディアと組んで、総力戦による「小沢潰し」が
開始されたのです。「小沢を総理にしてはならない」と。
              ── [自民党でいいのか/14]

≪画像および関連情報≫
 ●「世相を斬る/生活の党基本政策」/あいば達也
  ―――――――――――――――――――――――――――
  今日は6月3日に発表した「生活の党」の参院選に向けた基
  本政策の検討案を紹介しておく。筆者の個人的印象だが、こ
  の検討案こそが小沢一郎の主張する21世紀的な「日本改造
  計画」なのだろう。かなり長い検討案の引用なので、項目ご
  との検討、評価は後日に回す。このような日本が実現した時
  現在の既得権益集団の中で、生き残れる集団、個人はどのく
  らい居るのだろう。永遠に米国依存社会で生きるのか、弱肉
  強食の世界に身を委ねるのか、「自立と共生」をモットーに
  責任と義務と権利を調和させた自主独立の国家に生きようと
  するのか、明確な岐路が提示されている。1%の支配社会に
  唯々諾々と従うか、多少のリスクは抱えるが、99%がそこ
  そこ生きている実感の持てる社会を構築するか、そろそろ日
  本人の決断時期は近づいているような気がする。先ずは、そ
  れぞれの読解力で、“小沢ワールド”を確認し、そんな日本
  をイメージして貰いたい。利益圧力団体の意向沿う政党であ
  る自民党や民主党のような20世紀の遺物の修繕でもなけれ
  ば、みんなの党や維新の会のようにパックスアメリカーナな
  市場原理に身を委ねる事もなく、自尊、自主独立と共生の理
  念(殆どイデオロギー)が如何なく語られている。小沢一郎
  の場合、政治家として傑出しているのは、彼が口にした言葉
  通りの日本と云う国の姿を、明確にイメージ出来ている点が
  他の政治家と異なる部分である。しかし、間違いなくアンシ
  ャン・レジーム陣営からは嫌悪されるし、排斥のターゲット
  になるのだろう。         http://bit.ly/18TP25f
  ―――――――――――――――――――――――――――

ミハイル・ゴルバチョフ.jpg
ミハイル・ゴルバチョフ
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月22日

●「定数削減の約束はどこへ行ったか」(EJ第3593号)

 2012年11月14日の党首討論──野田首相は安倍自民党
総裁に対して、解散の約束をしています。しかし、それには条件
があったはずです。その部分を再現します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 定数削減をするという約束、私はこの国会がベストだと思って
 います。でも、最悪の場合、必ず次の国会(2013年1月)
 で定数削減をする。それはゼロ増5減のレベルじゃありません
 よ。お互いに数10単位で言ってきてるわけですから、そこで
 成案を得るということを、必ずやる。嘘はつかない。共に責任
 を持つ。そして、それまでの間は、たとえば議員歳費の2割削
 減等々、国民の皆様の前に身を切る覚悟をちゃんと示しながら
 ご負担をお願いをする。制度ができるまでそれを担保する。そ
 こを是非お約束をして欲しいと申し上げてるんです。
                 ──野田佳彦首相(当時)
―――――――――――――――――――――――――――――
 これに対して安倍総裁は、言質をとられないよう多くの言葉を
使いながら、曖昧な発言を積み重ねながらも肯定的な返事をして
いるのです。だから、野田首相は16日に衆議院を解散すると宣
言したのです。その後も安倍総裁はくどくどと多言を弄しながら
言い訳めいたことを繰り返したので、最後に野田首相に次のよう
にいわれてしまうのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 技術論ばっかりですね。覚悟のない自民党に政権は戻さない。
 それを掲げて我々は頑張ります。 ──野田佳彦首相(当時)
――――――――――――――――――――――――――――−
 この党首討論をテレビで見ていて、安倍氏の対応に、古い自民
党のずる賢さを感じたものです。自民党はゼロ増5減以上の定数
削減など絶対にやらない政党です。それに議員歳費の2割削減は
どこに行ったのでしょう。これについては、民主党のマニフェス
トにも自民党の公約にも載っていないのです。
 それにしても野田氏の対応にも疑問があります。安倍氏は明ら
かに野田氏が迫る約束から逃げており、やる気のないことは明白
であったのに、なぜ解散を口にしたのでしょうか。「約束してい
ただけないなら、解散はしない」といえばよいのです。あのとき
解散を望んでいたのは自民党と公明党だけなのですから。
 野田氏は党首討論の前から解散を決めていたのです。その真の
ねらいは「小沢潰し」です。「いま選挙をすれば、小沢は惨敗す
る」と考えたのでしょう。事実その通りになり、小沢氏は国民の
生活が第一→未来の党→生活の党と、非常に苦しい事態に陥って
います。彼らにとってはしてやったりというわけです。
 国民との約束を反故にして消費増税をごり押しし、民主党を破
綻の淵に追い詰めた野田氏をはじめとする当時の民主党の主流派
の議員たちは、勝てないことはわかっていたものの、まさかこん
なに大敗するとは思っていなかったのです。
 したがって、一定の数を確保できれば、状況によって時期を見
極め民主党を割って新党を結成し、自民党と連携するという計画
もあったといわれています。
 定数削減は、議員自身の身を切る改革です。議員歳費の2割削
減も同様です。議員としては、本音ではなるべくやりたくないの
です。その身を切る改革を実現するには、それを推進する議員の
剛腕と揺るぎない信念がないと絶対不可能です。小沢一郎という
政治家はそれをやり遂げているのです。小沢氏が、当時「政治改
革」といっていたのは、具体的には次の3つの法案(「政治改革
3法案」)を成立させることです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.「公職選挙法改正案」
   ・衆院議員の総定数を471人とし、300人を小選挙区
    で、171人を全国を単位とする比例区から選ぶ小選挙
    区比例代表並立制とする。
 2.「政治資金規正法改正案」
   ・5年間の経過措置をおき、企業等の団体の寄付は原則と
    して政党に限る。そのため所属国会議員5人以上とする
    などの政党条件や選挙違反の連座制を強化する。
 3.「政党助成法案」
   ・国会議員5人以上を有する政治団体、または総選挙もし
    くは参院通常選挙のいずれかで得票率が100分の2以
    上の政治団体とする。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢氏は海部内閣でこれを実現させようとしたのですが、野党
はもとより自民党内に根強い反対があって実現できず、次の宮沢
内閣にそれを託します。しかし、これも自民党内──とくに経世
会内の反対があって難航します。政治改革の提案者であるはずの
竹下登元首相がバックで反対の指示を出していたのです。
 小沢氏らは、経世会を割って「改革フォーラム21」(衆議院
35人、参議院8人)を立ち上げ、その実現を目指したのですが
それでも実現できなかったのです。
 小沢氏らはその結果、宮沢内閣不信任案に賛成票を投じて可決
させ、自民党を離党して新生党を結党します。その直後の衆院選
の後、小沢氏は細川連立政権を結成し、1回目の政権交代を実現
させ、この内閣で「政治改革3法案」を成立させています。
 政治改革を口にする国会議員は多いですが、口先だけの議員が
多いのです。本気でそれを実現させるには、何としても実現する
ぞという強い信念と、相当の腕力がないとできないのです。小沢
氏はそれを過去2回も実現させています。まして自民党は昔も今
も守旧派が多く、この党で改革を望むのは困難です。
 このような経過から、小沢一郎という政治家を恐れ、嫌い、警
戒し、反感を持つ政治家はあまりにも多いのです。現在では「小
沢は今度こそ本当に終り」といわれていますが、本人は3年後の
次の衆参同一選挙を見据えて活動しています。彼自身が成立させ
た選挙制度でやれば、何回でも政権交代は実現できると彼は信じ
ているのです。       ── [自民党でいいのか/15]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ、政治改革は必要なのか
  ―――――――――――――――――――――――――――
  思えば、平成時代に始まる「政治改革」をめぐる政治紛糾は
  与野党にわたり、真に日本を改革しようとする勢力と、改革
  の仮面をかぶって、既得権益を守ろうとする勢力との闘いと
  なる。それは今日でも続いているといえる。これについては
  今も小沢氏と私は同じ認識である。政権交代を行いやすくす
  る衆議院の選挙制度の改革は、『政治改革大綱』の趣旨を生
  かして実現されるが、そのときの政棒は、自民党ではなく非
  自民細川連立政権であったことは歴史の皮肉といえる。そし
  て、その主導者のトップが小沢一郎氏という政治家であった
  ことは誰も否定できないだろう。それがために小沢一郎氏は
  嫌われ忌諱されるようになるのである。
               ──平野貞夫著/ビジネス社刊
     『真説/小沢一郎謀殺事件/日本の危機は救えるか』
  ―――――――――――――――――――――――――――

野田/安倍党首討論.jpg
野田/安倍党首討論
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月23日

●「自民党離党後の小沢の軌跡を辿る」(EJ第3594号)

 1982年11月のことです。中曽根内閣が発足したときのこ
とです。そのとき小沢一郎氏は、当選5回生の中堅議員で、自民
党総務局長をやっていたのです。
 1983年は、4月に統一地方選、6月に参院選、12月には
衆院選の3大選挙が控えていたのです。小沢氏は総務局長として
全国を走り回ったのです。しかし、この年の10月にロッキード
裁判で受託収賄容疑に問われていた田中角栄元首相に一審有罪判
決が下されたことにより、自民党には大逆風が吹いたのです。
 その結果、12月の総選挙では、小沢氏自身も大苦戦をしてい
ます。NHKの開票速報では「落選」のテロップが出たのですが
最後まで最下位の社会党候補と争い、何とか競り合い、次点との
差が2071票の薄氷を踏む6回目の当選を勝ち取ったのです。
選挙に強いといわれる小沢一郎の唯一の苦戦だったのです。
 1993年6月に小沢氏は政治改革を目指す同志44人と共に
自民党を離党し、新生党を結成します。そして、1993年7月
の総選挙では大幅に議席を増やし、新生党は63人の勢力になっ
たのです。
 それからというもの、日本の政界は激動期を迎えます。多くの
新党が結成されては解党し、さらに新党を誕生させるなど、政治
情勢は混迷します。その中心にはつねに小沢氏がいたのです。簡
単にその流れを振り返ってみることにします。
 1993年8月に、小沢氏の努力によって細川護煕氏を首班と
する非自民連合政権が誕生。これによって、自民党ははじめて下
野することになったのです。そして、1994年1月に小沢氏念
願の政治改革関連4法案が成立したのです。
 ところが、1994年4月に佐川便事件で細川首相が辞任。次
期首相として羽田孜氏を首相として指名し、羽田内閣が誕生。し
かし、その直後に、新生党、日本新党、民社、自由党・改革の会
が衆院会派「改新」を結成したことをめぐって社会党が連立を離
脱し、6月に羽田内閣は総辞職したのです。そして、村山富市社
会党委員長を首相とする「自社さ」政権が発足。結果として、こ
れが社会党(現社民党)凋落の原因になります。
 1994年12月に、日本新党、新生党、公明党が解党し、衆
参国会議員214名が参加して新進党を結成します。小沢氏とし
ては、これが自民党と並ぶ二大政党のひとつになると考えていた
と思われます。
 1995年は、1月に阪神淡路大震災、3月に地下鉄サリン事
件があり、日本に暗雲が漂いはじめます。そして7月には第17
回参院選があり、自民49、社会16と惨敗したものの、新進党
は40と議席を倍増し、野党第一党に躍進したのです。
 1996年1月に村山首相が辞任。橋本龍太郎氏が第82代首
相に就任します。国会は住専問題で空転が続き、大荒れになりま
す。そしてこの年の9月に民主党が結成されたのです。鳩山由紀
夫、菅直人氏ら衆参合わせて57人が結集しています。
 同じ年の10月の総選挙で自民党は239人と復調し、11月
には自民党単独政権が発足します。第2次橋本内閣がスタートし
たのです。ここで新進党がしっかりしていれば、二大政党ができ
ていたのですが、新進党内では内紛が続き、党内がまとまらなく
なっていたのです。
 まず、12月に羽田孜氏ら衆参国会議員13人が新進党を離党
し、太陽党を結成します。続いて1997年6月に、細川元首相
が新進党を離党したのです。そこで小沢氏は新進党の解党を決断
し、1998年1月に自由党を旗揚げしたのです。衆参あわせて
54人の小党からのスタートです。
 一方、1998年4月に新進党を離れた諸会派が民主党に合流
し、衆院96、参院38の計131人の勢力になります。代表は
菅直人氏、幹事長は羽田孜氏です。民主党は漁夫の利を得て党勢
を拡大させたのです。
 その年の7月の参院選を前にさかんにいわれたのが、「小沢再
起不能説」です。どう考えても自由党は、新進党の負の遺産を背
負っているし、おそらく7月の参院選で惨敗し、消滅するのでは
ないかとみられていたのです。
 しかし、このときの小沢氏はきわめて積極的だったのです。自
由党を「真の保守」と謳い、「脱官僚」と「国民が主役の政治実
現」を前面に押し出し、大胆な構造改革を掲げて国会論戦の先頭
に立ったのです。その結果、多くの予想を覆して国民支持のバロ
メーターといわれる比例区の総得票数で520万票を獲得したの
です。このとき、自民党は惨敗し、日本共産党も票を伸ばしたの
で、参議院では野党が過半数を握ったのです。
 橋本内閣が退陣し、小渕内閣になります。小渕首相と親しい小
沢氏は、自自連立、自自公連立を結び、与党として国会法の改正
などの実現に取り組んだのです。
 しかし、小渕首相は別として、小沢アレルギーの強い自民党議
員の根強い反対で、連立合意した政策がいくつも実施できないま
まになっていたのです。そして2000年4月1日に、自自公3
党で党首会談を行ったのです。
 しかし、そのときには野中自民党幹事長が、小沢氏が連立離脱
をする可能性が高いと考えて、自由党議員をひそかに説得して、
自由党から離党させる工作が進んでいたのです。もちろん、自民
党入りをちらつかせての説得です。
 予定外のことが起きたのは、翌日の2日に小渕首相が脳梗塞で
倒れたことです。小渕内閣は小渕首相が昏睡状態のまま、4月4
日に総辞職し、密室談合で森喜朗政権が発足したのです。
 4月3日に自由党は連立政権から離脱することを決定します。
しかし、野中幹事長に唆されて、これに反対する26名が小沢氏
を裏切って「保守党」を結成し、扇千景参院議員を党首として、
自民党と連立を組んで、自公保連立になったのです。
 それから2ヶ月後の6月、森内閣は解散し、総選挙が行われた
のです。そのとき、消滅必至といわれていた自由党は22議席を
獲得し、とくに比例区では660万票もの驚異的な票を伸ばして
快勝したのです。      ── [自民党でいいのか/16]

≪画像および関連情報≫
 ●「保守党」結成のいきさつ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  自由党国会議員のうち26名が小沢に反旗を翻して離党し、
  「保守党」を結成した。扇千景参院議員が党首に就任し、森
  自公保連立政権に参加していく。そして自民党メディアをた
  きつけて「小渕首相を病気に追い込んだのは、小沢一郎だ」
  と、小沢叩きのキャンペーンをやらせたのだ。それでも小沢
  さんは「自由党を離れるかどうかは、すべて議員個人の見識
  にまかせよ」と、指示していた。ただ小池百合子衆院議員だ
  けは、彼女と親しい事務局スタッフを通じて慰留に努めてい
  た。小池さんは前年秋以来、自由党の独自路線を主張し小沢
  党首に協力していた。いわば自由党の広告塔の役割をしてい
  たのが小池さんだった。4月2日深夜、八尋護白由党事務局
  長から私に電話があった。その電話で開口一番、「小池さん
  の説得に失敗した。小沢党首から直接、次の稔選挙で近幾ブ
  ロック比例1位にすると、口説いてもらうしかない。小沢党
  首を説得してほしい」と懇願されたのだ。すぐに深夜、小沢
  党首を電話で起こし説明したところ、「私は何もしないつも
  りだったが、小池さんに電話するよ」と応じてくれた。10
  分後、「話をした。小池さんから自由党が比例区で当選者を
  出せると思っていますかと言われたよ」との電話があった。
  結局、小池さんは離党することになつた。
               ──平野貞夫著/ビジネス社刊
     『真説/小沢一郎謀殺事件/日本の危機は救えるか』
  ―――――――――――――――――――――――――――

小池百合子氏/小沢一郎氏.jpg
小池 百合子氏/小沢 一郎氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月24日

●「自公に生殺与奪の権を与えた国民」(EJ第3595号)

 予想されたことですが、今回の参院選は自公の圧勝という結果
に終っています。こういう結果に導いたのは、他ならぬ日本国民
なのです。
 確定投票率が52.61 %であるということは、やはり若者が
ほとんど投票に行っていないのです。私が投票に行ったとき、若
者は一人もおらず、がらんとしていたのです。この投票率は19
95年の44.52 %、1992年の50.72 %に次ぐ、3番
目に低い投票率です。これでは民意は反映されないのです。
 今の日本では、選挙に行かなくても会話に困ることはないし、
マトモじゃないと思われる恐れもないので、平気で選挙を棄権す
る若者が多いのです。政治なんか話題にもならないのです。その
くせ、AKB総選挙には目の色を変える──情けない限りです。
 欧米先進国では、選挙が近くなると、若者の間では政治の話題
が多く出るので知っていないと会話に加われないし、政治に対し
てきちんとした意見を持っていないと恥をかきます。
 今回の選挙の結果、自民党の参院勢力は115人、これに公明
党の20人を加えると、135人になり、「安定多数」の129
人を超えています。ところで、この「安定多数」とは何を意味す
るか、ご存知でしょうか。
―――――――――――――――――――――――――――――
 「安定多数」とは、全ての常任委員会で委員の半数を確保し
 かつ各委員会で委員長を独占するのに必要な議席数である。
―――――――――――――――――――――――――――――
 もし、与党の数字が162人(衆院320人)になると、「圧
倒的多数」となり、与党は何でもできてしまうのです。秘密会の
開催、国会議員の除名、憲法改正の発議などです。162人とい
えば、現在の与党にみんなの党(18人)と日本維新の会(9)
が加わると、162人になってしまうのです。現在の衆議院は与
党が325人で、「圧倒的多数」を軽く超えています。
 今回の選挙結果について、法大教授の五十嵐仁氏は次のように
述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 選挙結果を見て、暴走のためのブレーキが解除されただけでな
 く、強力なアクセルまでついてしまった印象です。恐ろしいの
 はこの列車がどこに行くのかハッキリしないことですよ。選挙
 戦では巧みに争点を隠して、衆参安定多数という白紙委任状を
 得てしまった。選挙後は隠していたものを表に出して、実行し
 てくるでしょう。改憲だけでなく、消費増税も原発再稼動もや
 る。TPPは米国の言いなりになり、社会保障は聖域なきカッ
 トになると思います。        ──五十嵐仁法大教授
       ──2013年7月22日付、「日刊ゲンダイ」
―――――――――――――――――――――――――――――
 今回の選挙での自民党の圧勝には、次の3つのことが原因とし
てあると思います。
―――――――――――――――――――――――――――――
  1.アベノミクスで円安・株価高の流れになったこと
  2.民主党の政治の失敗の影響が尾を引いていること
  3.元民主党系の野党にも強い批判が加えられている
―――――――――――――――――――――――――――――
 自民党勝利の最大の要因は、アベノミクスによって円安になり
株価が上昇したことに尽きます。もちろんアベノミクスの真の成
果はまだ見通せませんが、経済好転の空気を感じさせることには
成功しています。
 さらに、自民党が勝利したバックボーンには、民主党の稚拙な
政権運営に対する国民の怒りがあるのです。消費増税は自民党が
もともと主張していたことであるのに、むしろ民主党の方が積極
的だったので、マニフェストで約束したことをやらないで、約束
していないことをやるという怒りが爆発したのです。
 矛盾しているのは、そういう姿勢を批判し、離党してスジを通
した生活の党、みどりの風などの政党に対しても、国民の怒りが
向けられたことです。その結果として、生活の党、みどりの風は
議席がとれず「0」に終っています。
 これまでの国民の自民党評価は、民主党と比較しての相対評価
であったのです。これが衆院選と参院選で自民党に有利に働いた
といえます。しかし、これからは自民党に対する絶対評価に変わ
るので当然評価は厳しくなります。
 今回のテーマの中心に取り上げている小沢一郎氏率いる生活の
党は衆院選に続いて惨敗していますが、開票終了直前の開票セン
ターでのインタビューで小沢氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 記者:岩手選挙区で生活の党の候補が敗れていますが、今のお
    気持をお聞かせください。
 小沢:岩手選挙区の結果につきましては、正直申しまして、大
    変驚いております。平野氏は昨年末までに民主党内閣の
    国務大臣を務めていました。しかし、総選挙で政権が崩
    壊し、自民党政権になったので、平野氏は民主党を離党
    し、自民党に加わろうとして断られ、無所属で今回の選
    挙を戦ったのです。このような政治家としての生き方を
    している人に岩手県でかくも大きな支持が集まるという
    ことは、私の政治信条からも人間としての生き様として
    考えても今もって信じられません。
 記者:小沢代表は、参院選後は野党が結集して3年後の衆参同
    一選で、政権交代を成し遂げるとおっしゃっていますが
    そのお気持に変わりはありませんか。
 小沢:変わりません。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢氏の怒りは、多くの岩手県議が平野達男氏は自民党の二階
俊博議員の引きで参院選後に自民党入りをするという情報に踊ら
され、政権与党に繋がっていたいという保身から、落ち目の小沢
氏を見限り、平野陣営に参画したことへのものと思われます。実
に情けない限り。      ── [自民党でいいのか/17]

≪画像および関連情報≫
 ●「小沢王国」沈む・・・岩手・分裂選挙
  ―――――――――――――――――――――――――――
  岩手選挙区(改選数1)では、民主党から無所属に転じた前
  復興相の平野達男氏が自民新人の田中真一氏らを破り3選を
  果たした。小沢一郎・生活の党代表が権勢をふるったかつて
  の「小沢王国」は今回、平野氏、生活新人の関根敏伸氏、民
  主新人の吉田晴美氏の3陣営に分裂。関根氏は王国の威信を
  懸けて戦ったが分裂選挙で埋没した。小沢氏が自民を離党し
  た1993年以降、岩手選挙区で同氏の推す候補が敗れたこ
  とはなかった。関根氏は盛岡市内の事務所で「党の政策と理
  念を全力で訴えたが力不足だった。この結果を厳粛に受け止
  めたい」と落選の弁を述べた。「小沢氏の力が落ちたと思う
  か」との記者の質問に「そうは思いません」とだけ述べ、足
  早に事務所を後にした。一方、平野氏は盛岡市の事務所で支
  持者の拍手に包まれ「組織がないと言われたが、超党派の県
  議団と同級生によってどこにも負けない組織ができた。今回
  生まれた絆を大切にし、復興最優先で国政に取り組みたい」
  と語った。【金寿英、根本太一】  http://bit.ly/14u5YOa
  ―――――――――――――――――――――――――――

参院選を振り返って/小沢生活の党代表.jpg
参院選を振り返って/小沢生活の党代表
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月25日

●「岩手選挙区に一体何があったのか」(EJ第3596号)

 昨日のEJでお知らせしたように、参院選後のインタビューで
小沢氏は、岩手県──具体的には同県で平野達男氏を担いだ県議
たちに対して──かなり激しい怒りを含んだ発言をしています。
これには理由があるのです。
 現在、自民党のベテラン議員として重要なポジションを占めて
いる二階俊博、野田毅、小池百合子の3氏は、もともと小沢氏の
自由党にいた衆院議員たちです。
 ところが自自連立と自自公連立で与党になったとたん与党病に
取りつかれ、小沢氏が連立のさいの約束が守られないとして、自
民党との連立を解消したさい、これに反対して自由党を離党して
保守党を結成し、自公保連立を組んだ26人中の3人です。
 保守党は後で自民党に合流するための前段階の党であり、自民
党議員になるための予定の行動です。そのウラで動いていたのは
当時自民党幹事長の野中公務氏です。彼は小沢氏の力を削ぐため
に26人の議員を自由党から寝返らせたのです。
 これは、民主党と国民新党との連立解消のさいの騒ぎと酷似し
ています。国民新党代表の亀井氏が民主党が消費増税法案を提出
するのは約束違反であるとして連立離脱を決めたのに、自見庄三
郎議員をはじめとする所属議員が連立離脱に反対したあの騒ぎで
す。外から見ていると実に見苦しい騒ぎであり、自由党の連立離
脱のときとそっくりです。
 二階俊博氏は、もともと自民党員で、竹下派の分裂には小沢氏
と行動を共にし、その後、自民党を離党して新生党、細川連立政
権、新進党、自由党と一貫して小沢氏と一緒に行動してきている
人物です。しかし、自自公連立離脱のさいは、行動を共にせず、
自民党に残って以来、小沢氏とは疎遠になっています。
 衆院選の直前のことですが、当時総務会長代理をしていた二階
氏は民主党の平野達男議員と密かに接触し、同氏に対し、民主党
を離党し、自民党候補として選挙戦を戦うよう勧めたのです。そ
れは自民党の岩手県連が候補者の田中真一氏を擁立する前のこと
です。自民党は、過去一度も勝利したことのない岩手選挙区を重
点選挙区として位置づけ、そこで勝てる候補を擁立したかったの
です。小沢氏の影響力は落ちており、チャンスた゜ったのです。
 平野氏は二階氏とも親しく、小沢氏の支援の下にこれまでの2
回の参院選に勝利してきたのですが、小沢氏が民主党を離党する
さい、行動を共にしなかったのです。大臣になりたかったからで
す。これを見て二階氏は平野氏に接近したのです。
 しかし、平野氏はなかなか民主党を離党しなかったのです。こ
の動きを知った石破幹事長は岩手選挙区に田中真一氏を擁立した
のです。それでも二階氏の平野氏への説得は続いていたのです。
それは、落下傘候補の田中氏では岩手選挙区は勝てないと考えて
いたからです。
 この選挙区には小沢氏が地元の候補者を立てることは間違いな
く、それに勝てる候補者は平野氏しかいないと読んだのです。し
かし、平野氏は何とか民主党で勝てないかと分析したのですが、
無理と判断し、結局民主党を離党し、無所属で出ると宣言したの
です。そして、二階氏と連絡を取り、選挙に勝利すれば自民党に
入れて欲しいと要求し、了解をとったと思われるのです。
 自民党内では、麻生財務相が二階氏の考え方に同調していると
いわれます。麻生氏は検察による小沢潰しにも関与したフシがあ
り、それに政権交代された恨みもあり、小沢氏の岩手王国を潰し
てやるという気持ちもあったのでしょう。
 しかし、これに一貫して反対の姿勢をとっているのは、石破幹
事長であり、何回も次のように明言しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 平野達男氏が無所属で当選して、自民党に入ることは断じてあ
 り得ない。             ──石破自民党幹事長
―――――――――――――――――――――――――――――
 岩手県は被災地で、復興のために財源が必要であり、与党の議
員を立てたいのです。自民党の候補者はいますが、田中氏は素人
であり、どれほど活躍ができるか疑問符がつきます。
 その点平野氏は直前まで復興大臣を務めており、現地の事情が
わかっているし、旧知の間柄でもあるので、県議としては、何か
と相談しやすいという事情もあるのです。まして、自民党入りが
決まっているのであれば、本当は生活の党に回す票を平野氏に集
める方が得策である──そのように考えたものと思われます。
 それに小沢氏は衆院選でも惨敗して力が弱っている。おそらく
参院選でも勝てず、その力には陰りが見られる──今が(小沢氏
を裏切る)チャンスだと判断したものと思われます。
 いずれにしてもこういう事態になったのは、小沢氏が国民との
約束は破れないとスジを通して離党せざるを得なかったことや、
検察との戦いや、衆院選挙の不意打ちを食って惨敗し、小沢陣営
の力が衰えたので、こういうことになったのです。
 しかし、小沢氏は一向にひるんでいないのです。それは彼が心
血を注いで作った小選挙区制があるからです。小沢氏はあるイン
タビューで次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 (次の選挙で変わる)そういう選挙制度にしたのですよ。一党
 で権力を持ち続けるのはいけない。政権与党がいい加減な政治
 をすればいつでも野党にとって代わられる。そういう緊張感の
 中で、政党がお互い競い合って良い政治を実現する。それが民
 主主義だということです。だから、ちょっとの得票でもって政
 権交代できるようにと。その中でだんだん大人になっていけば
 いいと。      ──宮崎学/辻恵/青木理著/角川書店
        『政権崩壊/民主党政権とはなんだったのか』
―――――――――――――――――――――――――――――
 政治は裏切りの世界です。これまでも、二階、野田、小池氏な
ど、多くの政治家が小沢氏のもとを去っていますが、別に小沢氏
があの「杉下右京」のように、人材の墓場ではないのです。去っ
て行く人にも問題があるのです。これについては、改めて述べる
機会があると思います。   ── [自民党でいいのか/18]

≪画像および関連情報≫
 ●「平野氏は小沢系」/他党「負け惜しみ」
  ―――――――――――――――――――――――――――
  達増岩手県知事は7月22日の記者会見で、参院選岩手選挙
  区で3選した平野達男氏を「小沢系」とする見方を示した。
  知事は、生活の党の小沢一郎代表の支持基盤が平野氏や民主
  党との間で3分裂したことを踏まえ、「小沢系から3人が立
  候補し、うち1人が当選したとも見られる」と述べた。平野
  氏や民主候補が、小沢氏の支持者だった有権者から票を得て
  いることに皮肉を込めた発言とみられるが、選挙中に小沢氏
  の全面支援を受けた生活候補は大差で落選。平野氏も、小沢
  氏との連携は明確に否定しており、他党からは「単なる負け
  惜しみだ」(自民県議)と冷ややかな声が漏れた。また、知
  事は「復興を強く願う県民の思いが(平野氏当選の)背景に
  ある。それぞれの党に呼びかけ、一致協力して復興を進めて
  いきたい」と語った。
           ──2013年7月23日付、読売新聞
  ―――――――――――――――――――――――――――

平野達男氏と二階俊博氏.jpg
平野 達男氏と二階 俊博氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月26日

●「民由合併における3条件とは何か」(EJ第3597号)

 自民党から新生党、細川連合政権を経て新進党、そして自由党
へ──小沢一郎という政治家の前半の軌跡です。ここまでは既に
述べています。ここからは民由合併にいたる話です。
 政治の世界は魑魅魍魎のいる世界です。小沢一郎氏はそういう
世界のなかで生き抜き、しかもつねに中心人物であり続けたので
すから、多くの政治家に心酔され、信頼され、頼りにされ、支持
される一方で、妬みや偏見、憎悪や恨みを買うケースもあり、な
かには小沢氏を排除しようとする政治家も出てくるはずです。
 さて、民由合併の調印が行われたのは、2003年9月のこと
です。この合併は多くの人を驚かせましたが、どのようにして実
現したかについて知っておく必要があると思います。参院選後の
野党のあり方のヒントが見つかるかもしれないからです。
 民主党と自由党の合併話を最初にいい出したのは政界の指南役
といわれる松野頼三氏(日本維新の会・松野頼久氏の父)である
といわれています。松野氏は鳩山由紀夫民主党代表(当時)にそ
の構想を話し、当時自由党の幹事長をしていた藤井裕久氏に自由
党内の根回しを密かに要請しています。
 もともと簡単な話ではなかったのです。しかし、自民党の小泉
政権に対抗する勢力をつくるため、民主党と自由党が力を合わせ
ていこうということで定期的な協議をはじめたのです。メンバー
は次の通りです。2002年の話です。
―――――――――――――――――――――――――――――
         ◎民主党側
          岡田克也政調会長
          島聰代表補佐
         ◎自由党側
          藤井裕久幹事長
          平野貞夫代表補佐
―――――――――――――――――――――――――――――
 ところが、2002年11月29日に鳩山民主党代表がいきな
り記者会見をして、その合併構想を発表してしまったのです。こ
れによって民主党も自由党も党内が騒然となります。結局、鳩山
氏はその騒動の責任を取って代表を辞任し、菅直人氏が代表に就
任します。多くの人はこれでこの話は終りと思ったのです。
 しかし、代表が代わっても民主党と自由党の定期協議は進めら
れたのです。そして、2003年1月から、民主党と自由党の代
表者である菅氏と小沢氏が会談する「政権構想協議会」が発足し
たのです。
 なぜ、合併構想がこんなに急ピッチで話し合われるようになっ
たかですが、それは自由党の小沢代表が次の意見を主張するよう
になったことに関係があります。案外鳩山氏の記者発表は、小沢
氏と鳩山氏のデキレースであったかもしれません。
―――――――――――――――――――――――――――――
 これ以上小泉政権の棄民政治を続けさせるわけにはいかない。
 日本に残された時間は長くない。一挙に(民主党と自由党)が
 合流してひとつの政党として政権を担うべきだ。─平野貞夫著
              『わが友・小沢一郎』/幻冬社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 この発言は、小沢代表が民主党の合併条件をそのまま受け入れ
るという意思表示でもあったのです。それにしても、この合併条
件は自由党にとってあまりにも屈辱的なものだったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  1.民主党を存続政党とし、自由党は解散することとする
  2.代表は菅氏とし、執行部の顔触れも現状のままとする
  3.規約および政策は民主党のものを継承することとする
―――――――――――――――――――――――――――――
 この合併条件は、民主党が自由党に突き付けたというよりも、
話し合いのなかで、小沢代表の方から申し出たものではないかと
思われます。民主党側としては、少なくとも小沢氏に対して副代
表ぐらいのポストは用意したと思われるからです。
 しかし、小沢氏はそれを断り、民主党員が最も受け入れやすい
条件を提示したのではないかと思われます。それが上記の3条件
なのです。民主党は党としてまだ若く、政権交代まではやること
がたくさんあると判断したからです。
 しかし、収まらないのは自由党の方です。緊急常任幹事会が開
催され、小沢代表から話があったのですが、反対意見と沈黙とた
め息が交差してただ時間だけが空しく過ぎていったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 6月の時点では合併しないと決めていた。7月中旬から突然に
 合併の話が再燃して、本気だと確認できたので、一日も早く政
 権交代を実現するため、あえて自由党の解党を決断した。すべ
 ては小泉政治の欺瞞性と闘うためだ。このままでは、国民生活
 は崩壊する。理解してほしい。 ──平野貞夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢代表は平野氏に対して「何か話してくれ」と目で合図して
きたので、平野氏は、たまたまその日の午前中のセミナーで聞い
た話を使って話したといいます。そうしたら、常任幹事の反対意
見は収まったそうです。
 平野氏の話は、倫理運動の創始者・丸山敏雄先生の「万人幸福
の栞」17条のなかの第12条についてです。「得るは捨つるに
あり」は、まさにこの場合にぴったりであり、これによって反対
意見は出なくなったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 一切を投げ打って、捨ててしまう。地位も、名誉も、財産も、
 生命も。このときどういう結果が生まれるであろうか。まこと
 に思いもよらぬ好結果が突如現れる。いわゆる奇跡は、こうし
 た瞬間に起こる。常識をはるかに超えた現象に名付けたもので
 ある。          ──倫理法人会バイブル第12条
                ──平野貞夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
              ── [自民党でいいのか/19]

≪画像および関連情報≫
 ●『万人幸福の栞17ヵ条』について
  −――――――――――――――――――――――――――
  丸山敏雄氏──幸せになる法則を発見した人・という副題。
  本のカバーには、『万人幸福の栞17ヵ条』とある。これは
  丸山敏雄が発見した幸福にいたる条件である。
   第一条 今日は最良の一日、今は無二の好機
   第二条 苦難は幸福の門
   第三条 運命は自らまねき、境遇は自ら造る
   第四条 人は鏡、万象はわが師
   第五条 夫婦は一対の反射鏡
   第六条 子は親の心を実演する名優である
   第七条 肉体は精神の象徴、病気は生活の赤信号
   第八条 明朗は健康の父、愛和は幸福の母
   第九条 約束を違えれば、己の幸いを捨て他人の福を奪う
   第十条 働きは最上の喜び
   第十一条 物はこれを生かす人に集まる
   第十二条 得るは捨つるにあり
   第十三条 本を忘れず、末を乱さず
   第十四条 希望は心の太陽である
   第十五条 信ずれば成り、憂えれば崩れる
   第十六条 己を尊び人に及ぼす
   第十七条 人生は神の演劇、その主役は己自身である
           http://rinrisetagaya.com/shiori.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

丸山敏雄先生.jpg
丸山 敏雄先生
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月29日

●「民主党/誰も責任をとらない政党」(EJ第3598号)

 参院選での惨敗を受けて、民主党では7月26日に両院議員総
会を開き、参院選の総括として細野幹事長が辞任し、大畠章宏氏
が幹事長に就任して、海江田代表の続投が決定したのです。
 民主党は今や「責任を取らない政党」という評価が定着しつつ
あります。2009年の衆院選で民主党が自民党を破って政権交
代してからの最初の国政選挙は、菅首相と枝野幹事長による20
10年参院選です。この選挙で民主党は惨敗し、衆院での過半数
を失い、ねじれの状況をつくっています。
 しかし、そのさい、代表はもちろん枝野幹事長も責任を取って
いないのです。しかも民主党はそれ以後のほとんどの選挙で負け
が続いたのですが、執行部は誰も責任を取っていません。
 今回も細野幹事長は辞任したものの、海江田代表が続投するこ
とで、「責任を取らない政党」のイメージを払拭できているとは
いえないのです。
 しかし、民由合併当時の民主党は比較的おおらかな政党であり
何か不祥事があれば代表はすぐ責任を取っていたのです。民主党
結党時の1998年の初代代表は菅直人氏であり、1999年1
月の代表選で菅氏が正式に民主党の代表に選出されたのです。
 1999年9月の代表選では鳩山由紀夫氏が代表になり、20
00年9月、2002年9月と鳩山由紀夫氏は代表3選を重ねる
のです。その頃から民由合併の話が出てきたのですが、2002
年11月にその件に関連して鳩山代表は辞任し、またしても菅代
表に交代したのです。つまり、この時点までは、菅氏と鳩山氏が
交互に民主党の代表を務めてきたのです。そして、2003年9
月に民由合併の調印が行われたのです。
 このとき、民主党では仙谷、枝野両氏をはじめ、前原氏などの
松下政経塾出身の議員たちは、民由合併に絶対反対の姿勢だった
のですが、自由党が吸収合併を受け入れることを知って、不承不
承了承したのです。小沢氏が屈辱の3条件を受け入れたのは、そ
ういう反対派を押さえるためだったのです。
 かくして小沢氏率いる自由党は無役で民主党入りをしたのです
が、小沢氏には1年もしないうちに代表就任の話が持ち込まれて
きたのです。2004年5月のことです。
 2004年といえば年金制度改革を巡るいわゆる「年金国会」
において、民主党は小泉自民党を追及している真っ最中だったの
です。しかし、菅代表の年金の納付記録に未納期間があることが
判明し、代表辞任へ追い込まれたのです。しかし、これは後に事
務サイドのミスであったことがわかっています。
 しかし、そのとき小沢氏はいったんは代表就任を決めていたの
ですが、自分にも年金の未納期間があることをマスコミに報道さ
れ、急遽代表を固辞し、岡田克也氏に代表になるよう説得したの
です。岡田氏は新進党で一緒だったこともあり、小沢氏は岡田氏
の能力を高く評価していたのです。
 かくして岡田代表率いる民主党は、2004年7月の参院選で
50人を当選させ、順調に議席を伸ばしたのです。このとき小沢
氏は民主党が最も苦手とする地方の一人区を徹底的に回り、大量
に得票して岡田代表を支えています。民主党はいわゆる都市型の
政党であり、「風」を頼んでムードで選挙を戦うところがあり、
地方は苦手だったのです。このように小沢氏は民主党議員に対し
て、選挙のやり方を変革させようと努力したのです。
 これに対して自民党は年金改革法案の強行採決などもあって苦
戦し、改選議席51に対して49議席しか獲得できなかったので
す。しかし、自民党と公明党による過半数の議席を崩すには至ら
なかったのです。
 ところが、2005年の郵政解散で岡田民主党は敗北してしま
うのです。2005年8月8日のこと、参議院本会議で郵政民営
化関連法案が否決されたのです。会期中から郵政法案が否決され
た場合は衆議院を解散して総選挙を行うことを明言していた小泉
首相は衆院解散の手続きをはじめます。このとき、小沢氏は、次
のように考えていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   もし、小泉が衆院を解散すれば、憲法違反を問える
                   ──小沢一郎氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 法案が参院で否決されたことを理由にして衆院の解散はできな
いのです。参院の審議権を侵害することになるからです。参院で
否決された法案は衆院へ返付され、両院協議会で審議するか、衆
院で再可決するか、廃案にするかが審議されるのです。その協議
の結果が内閣の方針に沿わない場合、内閣は衆院をはじめて解散
できるのです。
 しかし、自民党は直ちに衆院解散手続きを開始したのですが、
衆院の議員運営委員会理事会では、法案返付の報告があっただけ
で取り扱いについては何の議論も行われなかったのです。このま
まで解散すれば憲法違反になると小沢氏は考えていたのです。
 しかし、小沢氏には民主党の対応について、もうひとつ危惧し
ていることがあったのです。それは次のことです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 民主党執行部は「郵政改革法案で小泉が強行してくれば、自民
 党は分裂する。解散・総選挙となれば民主党が勝てる」と思っ
 ている。自民党から多少の造反が出るかもしれないが、民主党
 が総選挙で勝って政権をとれるほど、政治は甘くないんだ。
      ──平野貞夫著/『わが友・小沢一郎』/幻冬社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 この小沢氏の予感は的中したのです。民主党の執行部は、小泉
政権が解散手続きをしているときに、小泉内閣不信任案を提出し
たのです。これは小泉内閣が解散する理由をわざわざ与えてやっ
たことと同じです。あのとき自民党は、参院で法案が否決された
という理由だけで解散しようとしており、それを違憲として提訴
すれば自民党に大きなダメージを与えることができると考えたの
です。もっとも最高裁では憲法違反ではないという判決が出ては
いますが。         ── [自民党でいいのか/20]

≪画像および関連情報≫
 ●上告棄却された解散違憲訴訟
  ―――――――――――――――――――――――――――
  参議院否決を原因として衆議院を解散すること、解散に反対
  する閣僚を罷免してまで衆議院解散を閣議決定したことは憲
  政史上初の事態であるため、解散権の濫用ではないかとの議
  論になった。しかし、内閣による助言による天皇の国事行為
  としての衆議院解散は日本国憲法第7条で、首相による閣僚
  罷免は日本国憲法第68条においてそれぞれ明記されている
  権限であり、問題ないとされる。総選挙後の2005年9月
  15日、郵政法案が参議院で否決されただけで衆議院を解散
  したのは憲法に違反するとして、宇都宮市議が衆議院解散の
  無効確認を求める訴訟を東京高裁に起こした。原告は「憲法
  第59条に基づき、両院協議会や衆議院で3分の2以上の賛
  成を得るための法案再議決をしなければ解散ができない」と
  主張した。しかし、法案の採決が両院で異なる場合の両院協
  議会開催や衆議院の法案再議決の実施は法律上は強制ではな
  く任意であるとして12月15日、東京高裁は訴えを棄却し
  その後最高裁第三小法廷も2006年3月28日東京高裁判
  決を支持して上告を棄却、類似の訴訟でも同じく上告棄却と
  なっている。            ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

郵政解散のさいの小泉首相演説.jpg
郵政解散のさいの小泉首相演説

posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月30日

●「なぜ、側近が小沢氏から離れるか」(EJ第3599号)

 最近では、小沢一郎氏の側近といえば、平野貞夫氏や岩手県知
事の達増拓也氏ですが、かつては錚々たる政治家が小沢氏の側近
に名を連ねていたのです。
 問題は、そういう人たちが次々と小沢氏から離れて行くことで
しょう。ちょっと名前を上げるだけでも、船田元、熊谷弘、二階
俊博、小池百合子、中西啓介氏らの名前が出てきます。現在も政
治家として活躍中の人もいれば、議員を辞めた人、亡くなった人
もいます。
 これらの人々はどういうわけか、必ず反小沢になって現在でも
小沢氏にとってマイナスの発言を繰り返しています。反小沢陣営
にとっては、元小沢側近だった人は価値ある人材なのです。
 なぜなら、元側近の人物が小沢氏のことを悪しざまにいえば、
そのイメージを大きくダウンさせ、その人格まで否定できるなど
絶大な効果があるからです。元側近のほとんどは自民党に入った
り、戻ったりしていますが、小沢攻撃をやることを暗黙の条件に
自民党入りを許しているものと思われます。
 現職の自民党衆院議員に船田元という政治家がいます。船田氏
は、小沢氏が竹下派から離れて、自民党内に改革フォーラム21
を作ったとき、一緒に参加した元自民党のエリートです。
 小沢氏は船田氏を買っており、宮沢内閣の経済企画庁長官に史
上最年少の閣僚として入るなど、船田氏は、若手政治家のホープ
的存在だったのです。その後、船田氏は細川政権では、小沢氏の
特命で、新生党の国会対策委員長に就任しています。このとき、
船田氏はおそらく得意絶頂であったと思われます。
 この船田元氏には小沢氏の指示により、平野貞夫氏が国対の教
育係に就いているのですが、平野氏は船田元氏について、次のよ
うに論評しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 船田氏は残念ながら、とにかく形式論理でしか国会対策を考え
 られず、小沢の腹も読めなかった。小沢に正面からぶつかるこ
 ともできなかった。こうしたことから、船田氏は途中で交代さ
 せられた。──平野貞夫著/『わが友・小沢一郎』/幻冬社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 船田氏はこれを機に小沢氏と距離を置き、新進党時代に反小沢
グループに入ってしまうのです。そして、船田氏は自民党の加藤
紘一衆院議員に誘惑されるかたちで、小沢批判のフロント役を務
めるまでになり、自民党に戻っているのです。
 小沢氏の信条は「去る者は追わず。来る者を拒まず」であり、
去る者を絶対に追わないのです。この他にも二階俊博氏や小池百
合子氏がいますが、両氏はマスコミを通じて小沢批判を繰り返し
小沢氏を政界から排除する動きのパイロット役として今も活躍し
自民党支配の継続に貢献しています。
 二階氏にいたっては、小沢批判をするだけでなく、小沢氏の力
が落ちている現在を狙って、岩手選挙区の平野達男氏に裏から手
を差し伸べて支援し、岩手における小沢・達増勢力排除を仕掛け
ているのです。何とも醜い争いです。
 もう一人小沢氏を裏切った側近の一人として中西啓介氏がいま
す。中西氏は自由党まで小沢氏と行動を共にしていますが、自由
党が自自公連立を解消するとき、保守党を結成して小沢氏から離
れています。
 その後長男が大麻所持で逮捕されたため、衆議院議員を辞職し
てから、いろいろな事件に巻き込まれて力を失い、2002年に
心不全のため亡くなっています。小沢氏は、そのとき中西氏の葬
儀に駆けつけ、怨讐を乗り越えて、霊前に冥福を祈っています。
 最近になって、作家の立花隆氏が週刊誌で、こうした側近の小
沢離れについて、小沢氏の人格を疑問視する評論を発表していま
す。これについて、平野貞夫氏は、怒りを持って次のように反論
しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 とんでもない話です。それではもっぱら小沢側に問題があり、
 離れた人たちに正当性があるかのような見方ですが、一般的に
 見ても人間関係というのは、どちらか一方に責任を求めるもの
 ではないでしょう。ましてや、政治家は自分の利害や打算で動
 くことが多い。そんなことでいちいち人格を疑われていたら、
 友人と絶交したり離婚したりする人たちは全て、理由に関係な
 く人格を疑われなければならなくなります。小沢さんの場合、
 相手のほとんどは自信をもって対峙できず、どこに問題がある
 かという議論もきちんとできないから逃げてしまうだけです。
 その意味では思慮の浅い政治家、不誠実でいい加減な人間には
 付き合いにくいかもしれません。繰り返しますが、小沢一郎と
 いうのは腹を固めてきちんと直言すれば聞いてくれる男です。
 小沢さんから離れた人々が、その後どういう行動を取ったか、
 どうなったかを見れば、それが答えになるのではないでしょう
 か。熊谷弘、二階俊博、小池百合子氏らなどは、小沢一郎を利
 用して地位と利権を得ようとした「側近」だったでしょう。
                      ──平野貞夫著
       『日本一新/私たちの国が危ない!』/鹿砦社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 このように、自民党が中心となって、小沢一郎という政治家を
排除する政治集団ができています。これが大マスコミと一体にな
り、「三宝会」なる小沢排除組織まで結成されているのです。
 しかし、これが日本の改革と発展を阻害していることがわかっ
ている人も増えており、小沢氏を支える勢力になっています。
 しかし、平野氏によると、小沢氏にも問題があると指摘してい
ます。小沢氏には「人を信じすぎる」面があり、「情の人間」で
あることです。縁のあった人とはどんな問題があっても、自ら縁
を切ることができない性格です。そして「他人はしょせん他人で
あり、自分ではない」ことが分っていない。小沢氏は自分に近づ
いてくる人間を自分と同じ感性を持っていると勘違いしてしまう
ところがあり、誤解されやすいのです。
              ── [自民党でいいのか/21]

≪画像および関連情報≫
 ●小沢潰しの「三宝会」とは何か/EJ第2756号
  ―――――――――――――――――――――――――――
  竹下登、金丸信両氏、それに小沢一郎といえば、旧経世会の
  三羽烏といわれていたのです。竹下、金丸とひとくくりにし
  ていうと、金のノベ棒によって象徴される金権体質の政治家
  というイメージがあります。そして、小沢はそのDNAを引
  き継いでいる現代の金権体質の政治家の代表ということにな
  ってしまいますが、この見方は完全に間違っています。日本
  の政治の世界はそんなにきれいなものではありません。権力
  をめぐって権謀術数が渦巻き、政官業と大マスコミが癒着し
  己の利益のためなら、マスコミを使って世論操作でも何でも
  するというひどい世界になっています。ですから、本気でこ
  れを改革しようとする政治家があらわれると、政官業と大マ
  スコミが謀略を仕掛けて追い落とすことなど、当たり前のよ
  うに行われるのです。それは現在でも続いているのです。現
  在そのターゲットとされている中心人物が、小沢一郎なので
  す。彼が本気で改革をやりそうに見えるからです。
                   http://bit.ly/d1L29v
  ―――――――――――――――――――――――――――

元小沢側近3議員.jpg
元小沢側近3議員
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(6) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月31日

●「小沢の秘書逮捕は国策捜査である」(EJ第3600号)

 小沢一郎という政治家を政治的に「謀殺」しようと企んでいる
仕掛け人の一角を占めるのは「政治家」です。ここまで述べてき
たように、最大の敵である自民党所属の政治家だけでなく、かつ
ての側近までが謀殺の片棒を担ぎ、小沢氏の政治活動にブレーキ
をかけようとしているさまについて述べてきました。
 ここからは、「仕掛け人候補その2」についての話に入ること
にします。だんだん話は核心に入ってきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
   仕掛け人候補その1        「政治家」
   仕掛け人候補その2         「官僚」←
   仕掛け人候補その3         「財界」
   仕掛け人候補その4     「巨大メディア」
   仕掛け人候補その5  「ジャパンハンドラー」
               ──平野貞夫著/ビジネス社刊
     『真説/小沢一郎謀殺事件/日本の危機は救えるか』
―――――――――――――――――――――――――――――
 「仕掛け人候補その2」は官僚です。官僚は、何事であれ、自
ら率先して行動を仕掛けるということはしないのです。しかし、
政権政党の上層部の政治家、具体的には官邸の意向を忖度して、
それに向けて最大限サポートするために行動を起こすことは十分
あり得ることです。
 いわゆる検察による小沢氏への強制捜査の最初は、2009年
3月3日の「西松事件」による大久保隆規秘書の逮捕です。何の
前触れもなしにいきなり逮捕したのです。
 これについて小沢氏は、ある書籍の対談で次のように話してい
るのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢:あのとき僕は民主党の代表でしたが、政権交代の可能性
 のある総選挙の半年前に、その野党第一党の代表を検察が根拠
 もなしに捜査に手を付けるというのは、官邸が「ウン」と言わ
 なきやできないことです。絶対できない、これは。必ずお伺い
 を立てているはずです。だからこれはその時の官邸が「やれ」
 って言ったってことです。それがあの官房副長官の言葉にも表
 れていましたよね(笑)。
 宮崎:漆間巌官房副長官ですよね。元警察庁長官だった。
 小沢:象徴的でした、あの言葉は(註・漆間巌官房副長官は、
 2009年3月5日に行われた記者団との懇談会の席で、西松
 事件に関して「自民党に及ぶことはない」と発言した。
 青木:ということは、小沢さん御自身はこの事件はやはり、政
 権交代を警戒する動きだと思われたのですね。官僚なのか検察
 なのか自民党なのかは別としても。
 小沢:基本的には官僚でしょうね。検察も官僚ですから。検察
 イコール官僚です。ただ、自民党も、内閣もいっしょにそこに
 同調したっていうことじやないですか?内閣が直接「やれ」っ
 て言ったわけじゃないでしょうけど、検察が「やりたい」って
 言ったとき、「あ、そう、どうぞ」って言った、そういう意味
 で同調したんでしょうね。   ──宮崎学・辻恵・青木理著
   『政権崩壊/民主党政権とはなんだったのか』/角川書店
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢氏は重要なことをいっています。あのとき、小沢氏の公設
第一秘書の大久保隆規氏を証拠もなしにいきなり逮捕したウラに
は、麻生官邸の容認があったといっているのです。これに関連し
て平野貞夫氏は、次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 自公政権の末期、政権交代を前に麻生首相が「小沢一郎は社会
 主義者である。こんな人物が支配する民主党に政権を委ねてい
 いのか」という発言をした。時の政権のトップからこんな強烈
 なメッセージが発せられたら、官僚としては「これはまずい」
 「なんとかトップの意を体して阻止しなくてはならない」と思
 い、小沢排除にあらゆる知恵をしぼり荷担しようとする。それ
 にもっともビビッドに反応したのが検察であったというのであ
 る。             ──平野貞夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 実は、大久保秘書逮捕2日前の3月1日にこんなことがあった
のです。その日、千葉市で開かれた堂本暁子知事の推す候補の知
事選事務所開きがあり、平野貞夫氏と時の法務大臣・森英介氏が
同席したのです。そのとき、森法相は挨拶で次のように話したと
いいます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 平成になって日本の政治をメチャクチャに崩したのは小沢一郎
 だ。小沢は悪人だが、もっと悪いのは、ここにいる平野だ。
              ────平野貞夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 森法相は平野氏と親しいので、冗談めかしていったのでしょう
が、平野氏は何となく違和感があったというのです。それから2
日後に大久保秘書は逮捕されたのです。
 後日平野氏はある友人から、森法相との会食の席で、「あれは
俺が指示したのだよ」という話が出たことを聞かされるのです。
つまり、これは法相による指揮権発動が出たことを意味している
のであり、きわめて重大なことです。
 平野氏は、このことをスカパー専門チャンネル「朝日ニュース
ター」で話したことから、国策捜査という話が拡がり、森法相は
自身のホームページで釈明しています。しかし、メディアはこの
件を完全に抹殺したのです。これが国策捜査であることは、あの
漆間官房副長官の「自民党には波及しない」という発言でも明ら
かなことです。
 その張本人ともいうべき、麻生氏は副総理兼財務相として復帰
し、大きな顔をしています。このような事態を考えるとき、日本
はとてもじゃないが民主主義国ではなく、独裁国家のやり口と何
も変わらないのです。愚かなことに国民は、そういう自民党政権
を圧勝させたのです。    ── [自民党でいいのか/22]

≪画像および関連情報≫
 ●漆間官房副長官と検事総長/2009年3月10日
  ―――――――――――――――――――――――――――
  西松建設不正献金事件の捜査に関する内閣官房副長官発言の
  主が、元警察庁長官、漆間巌だと公表されたことで、事務次
  官会議を仕切る官僚トップにしては目立たなかった漆間の存
  在が一躍、脚光を浴びている。公表されなくとも、常識的に
  考えて、政治家の官房副長官である松本純、鴻池祥肇ではな
  く、元警察庁長官の漆間がオフレコ会見に気を許して余計な
  ことを言ったに違いないと、目星はつく。「自民党に捜査が
  及ぶことは絶対ない」と松本や鴻池が語っても、記者はいち
  いち記事にしないだろう。警察庁長官と検事総長の関係を考
  えれば、不正献金事件捜査に関するその発言の重大さは、よ
  くわかる。(一部略)組織のトップである警察庁長官と検事
  総長の関係はどうなのかというと、「国家公安委員会は検事
  総長と常に緊密な連絡を保つ」とされている。国家公安委員
  会の実務は警察庁が担っており、実質的には警察庁長官と検
  事総長は「緊密な連絡」を取り合うことになっているのであ
  る。そのころ噂されたのは、小沢一郎への対抗心をむき出し
  にしていた麻生首相が、小沢や民主党関係のネガティブな情
  報を捜査ルートから得るための秘密兵器として漆間を近くに
  置いたのではないかというものだった。そういう背景がある
  だけに、西松建設不正献金事件に関して漆間が「自民党に捜
  査が及ぶことはない」との趣旨の発言をしたという今回の報
  道は、種々の憶測や疑惑を呼んで当然だった。いまのところ
  漆間はそれについて「記憶がない」としているが、酒席で話
  したわけでもなく、20人ほどの記者との懇談会での数日前
  の発言を覚えていないというのは、誰が考えても不自然であ
  ろう。             http://amba.to/1bxCwui
  ―――――――――――――――――――――――――――

漆間元官房副長官.jpg
漆間元官房副長官
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月01日

●「検察は官僚の中の官僚装置である」(EJ第3601号)

 民主党の長妻昭氏──政権交代前は国会での年金問題の厳しい
追及で自民党政権をきりきり舞いさせた人物です。国民の間でも
長妻氏の期待は大きく、政権交代に大きく寄与した政治家の一人
であるといえます。
 その長妻氏は鳩山内閣で厚労大臣を務めましたが、官僚はなか
なか彼のいうことを聞かず、相当苦労したのです。いわゆる官僚
の壁というものを強く感じた民主党の政治家の一人といってよい
と思います。
 長妻氏はそのときの感想を踏まえて、官僚組織について次のよ
うに述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 中央官庁の官僚組織は一つの生命体のように見える。私はそこ
 にぽんと置かれた異物のように感じたものだ。生命体は異物が
 入り込むと抵抗、抗体反応で排除に動く。霞が関の抵抗を目の
 当たりにするたびに、そんな感覚に囚われた。おそらく異物は
 私だけではなかったのだろう。民主党政権全体が彼らには異物
 に見えたのかもしれない。   ──宮崎学・辻恵・青木理著
   『政権崩壊/民主党政権とはなんだったのか』/角川書店
―――――――――――――――――――――――――――――
 まったくその通りなのです。小沢氏や長妻氏だけでなく、民主
党自体が官僚組織にとっては異物だったのです。だから、官僚組
織が異物排除に動くのは必然だったのです。
 しかし、自民党と官僚組織は50年以上にわたる長い年月の間
に権力の棲み分けが行われており、官僚組織にとって自民党は異
物ではないのです。まして小沢民主党は統治機構の改革を行って
真の政治主導をやろうとしたのですから、官僚組織が過剰に反応
するのはむしろ当然なのです。だからこそ、自民党に政権を戻し
てはならなかったのです。
 問題は検察による小沢捜査が検察の総意であったか、血気には
やった一部の青年将校の暴走であったかです。もちろん検察は後
者の立場で事件を締めくくるつもりです。まして現在は、自民党
政権になっているので、幕引きはどうにでもなるのです。
 陸山会事件は、大久保、池田元秘書は2審有罪の判決に控訴を
断念して刑を受け入れていますが、石川知裕氏は最高裁に上告し
てまだ戦っています。しかし、前途は厳しいものがあります。
 「官僚」の冒頭で書いたように、官僚は何事であれ、自ら率先
して行動を仕掛けるということはしない存在です。したがって、
小沢捜査に当時の官邸が何らかのかたちで関わっていたことは間
違いのない事実です。
 現在、検察は陸山会事件の幕引きを図っています。野田政権末
期のことですが、この事件に関係して、時の小川敏夫法務大臣は
指揮権を発動しようとしたのです。しかし、野田首相によって小
川法務大臣は更迭されています。この件については改めて書きま
すが、この処置を見ても、野田佳彦氏が自民党側の人間になって
いることがよくわかります。
 「官僚」といってもその中心はどこなのか、今ひとつはっきり
しません。しかし、次の対談によると、検察という組織が「官僚
の中の官僚装置」であることがわかります。なお、インタビュー
アーの「青木」は青木理氏のことです。元共同通信記者のジャー
ナリストで、法務・検察・警察について強く、公安警察の実態を
明らかにした著作もあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 青木:検察が今回やったことは一部検事の暴走だとしても、法
 務・検察が入居する合同庁舎の住所は霞が関1の1の1なんで
 すよ。天皇の認証が必要な認証官も、外務省は大使が認証官で
 すからかなりいますけど、普通の役所は事務次官だって認証官
 じゃない。ところが法務・検察は認証官が10人もいる。つま
 り事務次官の上にずらっといます。
 宮崎:そうです。
 青木:給与だって検事総長は大臣といっしょなんですよ。
 長妻:たしか昔調べたら、退職金が一番高かった。
 青木:そうです。すごく高いんですね。僕は検察官僚に何人も
 知り合いがいるんですけれど、司法試験を通っているというこ
 ともあって、財務省や外務省とはまた別の意味で、俺たちはエ
 リートなんだという意識がすごく強い。実際違うわけじゃない
 ですか。行政権の一翼にあるのに、強い独立性が担保されてい
 る。警察もそうですけれども。だから官僚の中の官僚装置とい
 うこともできる。 ──宮崎学・辻恵・青木理著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 考えてみて欲しいのです。2009年9月に民主党が政権交代
して鳩山政権が発足し、菅、野田という2つの内閣を経て、20
12年12月の総選挙で敗れて政権を降りています。
 この約3年3ヵ月の間、ずっと小沢政治捜査(秘書に対する西
松建設事件と陸山会事件、小沢氏に対する検察審の強制起訴、裁
判、控訴審)が続いていたのです。それは、2009年3月の大
久保秘書逮捕から、2012年11月の小沢氏の無罪確定まで、
ずっと続いているのです。
 実際に悪いことをしているのであれば仕方がないでしょうが、
結果として小沢氏は無罪判決になっているのです。秘書は有罪に
なっていますが、それは小沢氏が無罪になった以上、秘書を有罪
にしないと、この一連の小沢潰し政治捜査に整合性が、とれなく
なってしまうからです。現に「小沢は無罪でも石川は有罪にして
やる」と検察幹部が発言しているのです。
 なぜ、負けるとわかっていて野田首相は12月に解散を強行し
たのかについては、いろいろな説があります。そのなかの有力な
説としては、野田首相を中心とする一派が、小沢氏の復活を何よ
りも、恐れたからです。小沢氏が完全無罪を勝ち取ったのは20
12年11月のことです。衆院選前であれば小沢氏はかなりの手
勢を持っており、復調してくる可能性があったのです。突然の衆
院選でそれを潰して手勢を奪い、参院選でも惨敗に追い込んだも
のと考えられます。     ── [自民党でいいのか/23]

≪画像および関連情報≫
 ●野田首相の解散決断のウラに小沢潰し/鈍想愚感
  ―――――――――――――――――――――――――――
  野田佳彦首相が天下に大見えを切った。11月14日行われ
  た野党との党首討論で、安倍自民党総裁らの挑発に乗って、
  16日解散を明言してしまったのだ。もともと支持率が低迷
  し、いま総選挙に突入しても惨敗が見えている民主党内部は
  猛反発しているが、首相の公的な場での発言は重い。(一部
  略)それと、民主党をここまでガタガタにした最大の戦犯は
  小沢一郎だ、との思いもあったと推察される。その小沢一郎
  の「国民の生活が第一」党にだけは引導を渡したい、との思
  いがあったのだろう。仮に総選挙が来年になれば、毎年末に
  各政党にわたされる政党交付金が4、5億円もいきわたって
  しまう。小沢一郎が党を割って新党を結成したのはこの政党
  交付金をもらうのがねらいだった、といわれており、これを
  断てば今後の小沢一郎にとって政治生命を断たれる等しいダ
  メージとなるのは必至だろう。そんな野田佳彦の思いが16
  日解散を口走らせたのだが、民主党の崩壊を招くことになら
  なければいいのだが、と祈りたい。2012年11月15記
                   http://bit.ly/1aRKGd7
  ―――――――――――――――――――――――――――

「政権崩壊/民主党政権とはなんだったのか」.jpg
「政権崩壊/民主党政権とはなんだったのか」
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月02日

●「小沢は無罪でも秘書は有罪にする」(EJ第3602号)

 2009年が明けると、民主党の勢いはますます盛んになり、
麻生政権が、もし総選挙に踏み切れば、民主党による政権交代は
ほぼ確実の情勢になっていたのです。
 追い詰められた自民党は、ありとあらゆる手を使って民主党の
勢いを止めようとしたのです。官邸の意向を体した検察は、その
ターゲットを次の2つに絞ったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   小沢一郎民主党代表 ・・・・・ 東京地検特捜部
   石井一民主党副代表 ・・・・・ 大阪地検特捜部
―――――――――――――――――――――――――――――
 検察が一番阻止したいのは小沢内閣の誕生です。そのためには
小沢氏を民主党代表から下ろす必要があります。この狙いで行わ
れたのが、3月3日の大久保隆規公設秘書の逮捕です。証拠も何
もない、まさに問答無用、いきなりの逮捕です。証拠は逮捕して
から探せばいくらでも出てくると検察は考えていたのです。
 これは、麻生政権にとって千載一遇のチャンスです。例によっ
て新聞・テレビは検察がリークする情報を一斉に書き立てたので
「小沢=悪者」の民主党にとってマイナスのイメージが固まった
ところで総選挙に討って出れば、勝てないまでも大敗は避けられ
る──麻生首相はきっとそう考えて、選挙の時期を探っていたも
のと思われます。
 マスコミは、小沢代表の「西松建設献金疑惑」を追求し、「世
論調査の結果国民の6割が小沢代表の辞任を求めている」と、連
日キャンペーンを張って小沢代表の辞任を求めたのです。
 小沢代表としては、選挙を控えているので、ここは代表を下り
ざるを得なかったのです。5月11日、小沢代表は辞任し、鳩山
代表に代わります。この事態を自民党/検察側から見ると、これ
によって、たとえ民主党政権になっても、少なくとも小沢内閣は
避けられる情勢ができたのです。秘書のいきなり逮捕は一応成功
したといえます。
 しかし、民主党の勢いは衰えなかったのです。5月27日に国
会で麻生首相と鳩山代表の党首討論が行われたのですが、これは
圧倒的に鳩山代表の評価が高かったのです。ところが、小沢氏の
批判記事を集中豪雨のように流していたマスコミは、この党首討
論の世論調査結果は公表しなかったのです。あまりにも麻生首相
の評価が低く過ぎて、公表できなかったのでしょう。
 このときの党首討論45分間は、ユーチューブ映像で全て試聴
できます。当時の鳩山氏は気力が充実し、見違えるほどです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  2009年5月27日/麻生首相VS鳩山代表党首討論
  (5トラック)        http://bit.ly/uCFLhJ
―――――――――――――――――――――――――――――
 6月14日、大阪地検特捜部は、郵便割引制度を悪用して多額
の郵送料を免れた事件において、偽の証明書が厚労省から発行さ
れていたことが判明し、その責任者である村木厚子・同省元局長
らを虚偽有印公文書作成・同行使容疑で逮捕したのです。
 この事件では「凛の会」の倉沢邦夫代表が既に逮捕されていた
のですが、倉沢代表は民主党の石井一副代表の元公設秘書を務め
ていたことがあり、大阪地検特捜部は石井一副代表逮捕まで攻め
登る構えだったのです。小沢氏の秘書の逮捕に続き、検察の放っ
た二の矢だったのです。
 しかし、ご承知の通り、この事件は完全なでっち上げで、村木
厚子氏は無罪になっています。それに小沢氏の元公設秘書大久保
隆規氏に課せられた西松建設献金疑惑も無罪だったのです。事件
の内容については述べませんが、2010年1月の裁判の終盤で
は西松建設の政治団体には実体があることが西松建設側から証言
され、無罪が必至の情勢だったのです。
 しかし、この事件で無罪判決が出ると、責任問題になりかねな
いと考えた東京地検特捜部は、政治資金収支報告書の虚偽記載を
理由にして、大久保氏を含め、小沢氏の元秘書で衆院議員の石川
知裕氏、会計担当の池田光智氏の3人を逮捕したのです。またし
ても、いきなりの逮捕です。
 政治資金収支報告書に虚偽記載などないのです。これについて
は、今までEJで何回も述べているので省略しますが、仮に記載
ミスがあったとしても、訂正すれば済む微罪であり、3人を逮捕
までする事案ではないのです。まして石川氏は当時衆院議員であ
り、逮捕は昔の特高と同じで、あまりにも乱暴です。
 それでは、西松建設献金疑惑はどうなったのかというと、裁判
の訴因変更(西松建設献金疑惑から政治資金収支報告書の虚偽記
載へ変更)を行うことによって、西松建設献金疑惑の方をうやむ
やにしてしまったのです。本来そのような訴因変更は認められな
いのですが、検察と裁判所は一体であり、どのようにでもなるよ
うなのです。これが現在の日本の司法の実態です。
 一方、小沢氏については、検察の事情聴取を受けたものの、結
果は不起訴だったのです。このとき、テレビ朝日の「サンデー・
プロジェクト」に出演していた元東京地検特捜部検事の宗像紀夫
氏は、田原総一朗氏から、小沢不起訴について聞かれたとき、次
のように答えているのを私は聞いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢さんは今回不起訴になりましたが、あとは検察審査会の
 方できちんと対応されると思います。   ──宗像紀夫氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 まるで、「小沢不起訴→検察審査会強制起訴」に進むことをそ
の時点で知っているような口ぶりです。そのとき、検察は次のよ
うに考えていたことは確かです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢は不起訴になっても検察審査会で強制起訴する。そして
 裁判で無罪になっても、秘書は有罪にする。これによって小
 沢には重い足枷をつけることができる。
―――――――――――――――――――――――――――――
その通りにことは進んでいます。─ [自民党でいいのか/24]

≪画像および関連情報≫
 ●小沢氏への検察の事情聴取の場所はどこか
  ―――――――――――――――――――――――――――
  青木:2010年の1月23日、東京地検で取り調べってい
  うか事情聴取を受けられていますけれど、これは場所はどこ
  だったんですか。
  小沢:どこかのホテルでしたね。どこだったかな。オータニ
  かオークラだったかな。3回くらいでしたか。
  青木:ホテルというのは地検側が取ったんですよね。
  小沢:こっちが取りました。
  青木:そうなんですか。
  小沢:弁護士を通じて検察に呼び出されるんですが、弁護士
  に「俺、検察庁に行ってもいいよ」って言ったら、弁護士が
  「いや、そんなことしたら大変なことになるから、ホテルで
  お願いします」って言うので・・・。
  青木:小沢さんの側がホテルの部屋を取ったと。
  小沢:確かそうです。
  青木:お茶ぐらいは出してくれるんですか。
  小沢:お茶は僕がついだ。「どうぞ、どうぞ」なんて言って
  ね・・・。それで「小沢です。どうもご苦労さんです」って
  名刺を出したら、向こうは「仕事柄名刺は出さないことにし
  てますから」って。
  青木:仕事柄名刺を出さないって、そんなことたぶんないと
  思うんですけどね。
  小沢:出しますね、普通は。 ──宮崎学・辻恵・青木理著
   『政権崩壊/民主党政権とはなんだったのか』/角川書店
  ―――――――――――――――――――――――――――

麻生/鳩山党首討論/09.5.27.jpg
麻生/鳩山党首討論/09.5.27
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月05日

●「検察が大久保秘書を逮捕した理由」(EJ第3603号)

 法務・検察による小沢裁判の欺瞞性を暴くためには、当時の小
沢氏の公設第一秘書である大久保隆規氏が何で逮捕されたかにつ
いて知る必要があります。どうしてかというと、陸山会事件はま
だ終わっていないからです。
 西松建設に対する捜査は、大久保秘書が逮捕される9ヵ月前か
らはじまっていたのです。といっても別に大久保氏が捜査のター
ゲットだったわけではないのです。西松建設が無届けで海外から
約1億円を国内に持ち込んだという外為法違反容疑です。
 捜査が進み、東京地検特捜部は2009年1月に西松建設社長
の国沢幹雄らを次々と逮捕したのです。特捜部としては、西松建
設がこのようにして不正に持ち込んだ資金を裏ガネにして、政界
にバラまいていたのではないかと、捜査を政界にまで拡大しつつ
あったのです。
 現在の政治資金規正法では、企業・団体からの献金は政党の本
部や支部に対するものは認められていますが、政治家個人や資金
管理団体に対しては禁じられています。しかし、個人や政治団体
からの献金は、政治家個人や資金管理団体でも受けることはでき
ます。なお、政治団体とは政治的な目的のために作られた団体の
ことですが、政治的な活動実態、事務所の家賃や職員への給与の
支払いなどの活動実態があることが条件になります。
 ここからは、シンプルなモデルに基づいて説明します。西松建
設の詳細については、EJ第2769号で書いているので、次を
参照してください。
―――――――――――――――――――――――――――――
     2010年3月9日付、EJ第2769号
              http://bit.ly/cUv8af
―――――――――――――――――――――――――――――
 ある政治団体「A」と「B」が小沢氏の政治資金管理団体「陸
山会」に献金したのです。これは合法的です。これらの政治団体
AとBは、自民党の複数の政治家に対しても、同様の政治献金を
行っています。陸山会の場合は、その献金者である政治団体名と
献金額が政治資金収支報告書にきちんと記載されており、そこに
何の瑕疵もないのです。
 そういうときです。当時の麻生首相が、民主党の選挙マニフェ
ストを見て、「小沢一郎は社会主義者である。こんな男に日本を
まかせていいのか」と発言したのです。これを意に体して検察が
動き出したのです。そのとき、小沢氏を牽制する一番よい方法が
捜査中の西松建設の事案にからめて、公設第一秘書を逮捕するこ
とだったのです。
 それは、政治団体AとBが西松建設の献金をするためのダミー
団体であり、そこを通しての献金は、事実上西松建設からの献金
とみなせるという理屈です。この場合、陸山会側がそれら2つの
政治団体が西松建設のダミー団体であることを知っていた場合は
違法献金を受けたということになります。しかし、陸山会側がそ
のことを知らず、AとBが政治団体としての実態があれば、適法
ということなるのです。
 この大久保秘書の逮捕を受けて、民主党の小沢代表は、逮捕翌
日の3月4日に記者会見し、次のように述べています。少し長い
ですが引用します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 私の秘書である大久保の逮捕を含め、西松建設からの政治献金
 にかかわることで強制捜査が行われたわけですけれども、根拠
 を聞きますと、政治団体からの献金か、あるいは企業からの献
 金か、その認識の違いを根拠にし、企業からの献金を認識した
 上で虚偽の記載をしたという検察の言い分のようです。私ども
 政治家は、法人であれ、個人であれ、献金をいただいて、その
 浄財で政治活動をやっているわけです。私は、その収入、献金
 の入りも出も、支出も含めてすべて公開してきております。こ
 の二つの政治団体から献金を受けたということについても、政
 治資金規正法にのっとって適法に処理し、報告をし、公開され
 ているところです。(両団体から)献金を受けたことは事実で
 す。秘書からの報告も「この政治団体が寄付をしてくれる」と
 いうことでしたから、政治資金管理団体で受領することにした
 ということで、当然のことだろうと解釈をしております。もし
 これが西松建設そのものからの企業献金だという認識に立って
 いるとすれば、政党支部は企業献金を受けることが許されてお
 りますので、政党支部でそれを受領すれば、何の問題も起きな
 かったわけで、政治団体からの寄付という認識であったから政
 治資金管理団体として受領したということであったと報告を受
 けておりますし、また、私はそれはしごく当たり前のことだろ
 うと思っています。      ──宮崎学・辻恵・青木理著
   『政権崩壊/民主党政権とはなんだったのか』/角川書店
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢氏のいっていることは明解です。もし、政治団体AとBが
西松建設のダミー団体だと認識していたとするなら、政党支部で
献金を受けており、それは適法なのです。AとBがきちんとした
政治団体であると認識していたからこそ、資金管理団体で受領し
たといっているのです。
 結局、大久保隆規氏は2009年3月24日に起訴され、総選
挙後に裁判は始まるのですが、もともと無理筋の逮捕による裁判
であり、検察側不利の状況で推移したのです。そして、2010
年1月13日の第2回公判で、検察側の証人として出廷した西松
建設の岡崎彰文・元取締役総務部長が「2つの政治団体は事務所
も会社とは別で、家賃や職員への給料も団体側が払っていた」こ
とを証言するにいたったのです。
 岡崎彰文氏は検察側の立てた証人であり、検察側は一挙に追い
込まれてしまうのです。裁判は次の公判で結審し、2月か3月に
は「無罪判決」が出ることは必至の情勢になったのです。しかし
検察側は誰も想像できない驚くべき手を打ってきたのです。それ
は西松建設裁判をうやむやにし、小沢氏に一層のダメージを与え
る奇策です。        ── [自民党でいいのか/25]

≪画像および関連情報≫
 ●植草一秀の「知られざる真実」/2010年5月9日
  ―――――――――――――――――――――――――――
  昨年の三三事変の公判で大久保隆規氏の無罪判決が示される
  ことは、昨年来の小沢一郎氏攻撃の本質を広く国民に周知さ
  せる結果をもたらす。その本質とは何か。小沢一郎氏が主導
  する民主党を、「政治的理由で」攻撃し続けてきた「大きな
  力」が存在してきたことが明らかにされることになるのだ。
  戦後の65年間、日本を支配し続けてきたのが「米官業の三
  大勢力」である。利権政治屋と腐敗マスメディアは、その代
  理人として、走狗となってきた勢力である。この五者が「政
  官業外電=悪徳ペンタゴン」である。米官業による日本支配
  構造を根底から刷新しかねない新勢力が小沢−鳩山ラインの
  民主党執行部である。悪徳ペンタゴンは、小沢一郎氏が20
  06年4月に民主党代表に就任した瞬間から、激しい小沢一
  郎氏攻撃を展開し続けてきた。2007年参院選でのネガテ
  ィブ・キャンペーン、2007年秋の大連立構想、2008
  年春の日銀幹部人事、2008年秋の民主党代表選、のすべ
  ての機会を通じて小沢一郎氏攻撃が展開され続けた。小沢一
  郎氏はこれらの修羅場を、ことごとくくぐり抜けてきた。小
  沢氏の影響力排除という悪徳ペンタゴンの至上課題が実現し
  ないまま2009年総選挙のタイミングを迎えたのである。
  ここに至り、遂に悪徳ペンタゴンは禁断の領域に足を踏み入
  れた。これが三三事変の基本背景である。ところが2010
  年1月13日の西松建設岡崎彰文氏証言は、三三事変の不正
  を白日の下に晒す結果をもたらした
  http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-5c6a.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

小沢一郎氏/大久保隆規氏.jpg
小沢 一郎氏/大久保 隆規氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月06日

●「こんな無理筋捜査が許されるのか」(EJ第3604号)

 裁判員裁判が開始されたのは2009年5月のことです。これ
を受けて、2008年1月に、日本新聞協会は次の指針を出して
います。
―――――――――――――――――――――――――――――
 被疑者を犯人と決め付けるような報道は、将来の裁判員である
 国民に過度の予断を与える恐れがあるとの指摘もある。そこで
 次の3点に留意して報道する。
 1.捜査段階の供述の報道は、内容のすべてがそのまま真実で
   あるとの印象を読者・視聴者に与えることのないよう記事
   の書き方に十分配慮する。
 2.被疑者のプロフィルは、事件の本質や背景を理解するうえ
   で必要な範囲内で報じる。
 3.識者のコメントや分析は、被疑者が犯人であるとの印象を
   読者・視聴者に植え付けることのないよう十分留意する。
                ──宮崎学・辻恵・青木理著
   『政権崩壊/民主党政権とはなんだったのか』/角川書店
―――――――――――――――――――――――――――――
 「推定無罪の原則」というものがあります。「何人も有罪と宣
告されるまでは無罪と推定される」という、近代法の基本原則の
ことです。「10人の犯罪者を見逃してでも、1人の冤罪者をつ
くってはならない」という言葉もあります。これは民主主義の根
本的な考え方のはずです。
 しかし、日本にはそれはないようです。ひとたび逮捕されると
即座に犯罪人のレッテルが貼られてしまうのです。日本では起訴
されるとそのほとんどは有罪になってしまうからです。
 そういう意味もあって、裁判員裁判の開始に先立つ1年以上前
に報道機関に対して、改めて推定無罪の原則を守るよう求める指
針が出されたのです。
 大久保隆規氏の逮捕は、ちょうどそういうときに行われたので
す。ところがどうでしょう。対象者は半年後に政権交代をめざす
野党第一党代表の公設第一秘書なのです。大久保氏の逮捕から、
起訴翌日の2009年3月25日までの、読売、朝日、毎日3紙
は、推定無罪そっちのけの報道を展開しているのです。その関連
記事の総数は、読売51件、朝日33件、毎日57件です。その
ごく一部の見出しをご紹介します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ▽小沢王国の番頭、地元工事でゼネコン統率
  ──2009年3月4日朝日朝刊
 ▽小沢氏側、西松建設に献金請求書、企業献金認識か
  ──3月4日読売夕刊
 ▽小沢氏秘書、西松側と献金調整、額・配分先決める
  ──3月5日朝日朝刊
 ▽小沢氏側、献金分散を指示、「西松」隠す狙いか
  ──3月5日読売夕刊
 ▽西松建設献金、下請け介し小沢氏側へ、年1000万円
  ──3月6日毎日夕刊
 ▽東北の業者、一斉聴取、献金全容解明狙う
  ──3月12日朝日朝刊
 ▽秋田でも小沢氏側配慮、談合組織、県事業で
  ──3月16日朝日朝刊
 ▽「胆沢ダムは小沢ダム」、大久保秘書、西松に献金要請
  ──3月24日毎日朝刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 容疑者の取り調べの模様は、メディアとしても検察側の発表が
なければ、知るすべはないのです。したがって、これらの報道は
すべて検察側からのリークに基づいています。大久保氏があたか
も有罪の確定した犯人のように、検察側の描いたストーリーにし
たがって、事件の構図や捜査の動き、それに西松側の供述などが
連日、まるで一編の物語のようにリークされたのです。
 これによると、大久保氏が地元の公共事業について業者から献
金を要請するフィクサーのように描かれており、小沢一郎氏がい
かにカネに汚い代議士であるかをイメージづけるために、大マス
コミが連日のように煽っており、完全な小沢潰しのキャンペーン
そのものです。しかし、そのとき小沢氏は野党の代表に過ぎず、
地元の公共事業の差配ができるはずがないのです。
 2010年1月、東京地検特捜部は完全に追い詰められていた
のです。大久保隆規容疑者の裁判は無罪必至だったからです。も
ともと無理筋の裁判だったのですが、もし、無罪判決が出ると、
東京地検特捜部としては大黒星になります。総選挙の直前に野党
第一党代表の公設第一秘書をさしたる証拠もないのにいきなり逮
捕し、挙句のはてに無罪だったでは済まないのです。まして既に
民主党政権であり、小沢氏は民主党幹事長なのです。官邸が動け
ば、検察の崩壊につながりかねない事態です。
 しかし、日本の多くの国民は、大久保氏の裁判が検察不利に進
んでいることなど知るはずがないのです。なぜなら、検察はそう
いう情報は流さず、「大久保、一部容疑を認める」など大久保氏
が自白をはじめたかのような真逆のウソ情報のリークを繰り返し
ていたからです。
 そして、2010年1月15日に東京地検特捜部は動いたので
す。小沢氏の元秘書であり、陸山会の会計責任者であった3人、
石川知裕衆議院議員、池田光智元私設秘書、大久保隆規元公設第
一秘書をいきなり逮捕したのです。容疑は、政治資金規正法違反
です。簡単にいってしまえば、政治資金収支報告書の記載ミスの
容疑で、またしても小沢氏の元秘書を3人逮捕したのです。
 国民からすると、小沢は西松建設から不当な献金を受領して、
秘書が逮捕され、裁判にかけられているというイメージがありま
す。したがって、またしても当の大久保秘書を含めて、他の秘書
や会計担当者が逮捕されるとなると、また小沢の旧悪が暴露され
たと受け取ってしまいます。しかし、これは西松建設の事件では
無罪にさせないための検察側の策略なのです。こんなことは許し
難いことです。       ── [自民党でいいのか/26]

≪画像および関連情報≫
 ●「推定無罪」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「推定無罪」とは、狭義では刑事裁判における立証責任の所
  在を示す原則であり、「検察官が被告人の有罪を証明しない
  限り、被告人に無罪判決が下される(=被告人は自らの無実
  を証明する責任を負担しない)」ということを意味する(刑
  事訴訟法336条等)。広義では、有罪判決が確定するまで
  は何人も犯罪者として取り扱われない(権利を有する)こと
  を意味する(国際人権規約B規約14条2項等、「仮定無罪
  の原則」という別用語が用いられることもある)。無罪の推
  定という表現が本来の趣旨に忠実であり、刑事訴訟法学では
  こちらの表現が使われるが、近時、マスコミその他により、
  推定無罪と呼ばれるようになった。この原則は刑事訴訟にお
  ける当事者の面から表現されている。これを裁判官側から表
  現した言葉が「疑わしきは罰せず」であり「疑わしきは被告
  人の利益に」の表現から利益原則と言われることもあるが、
  上述の通り、「疑わしきは罰せず」より無罪の推定の方が広
  い。  http://bit.ly/19EPuF3
  ―――――――――――――――――――――――――――

佐久間達哉元東京特捜部長.jpg
佐久間 達哉元東京特捜部長
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月07日

●「訴因変更のめくらましを図る検察」(EJ第3605号)

 ある検察のOBは、当時の佐久間東京地検特捜部長らの西松建
設や陸山会事件の捜査のやり方について、次のように述懐してい
るのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 笠間が09年1月16日付で広島高検検事長に移動しなければ
 西松建設の献金事件もその後の陸山会事件もなかったのではな
 いか。順繰りの異動ではあったが、佐久間らを抑える人がいな
 くなり、一連の不祥事まで一気に行ってしまった。
                ──宮崎学・辻恵・青木理著
   『政権崩壊/民主党政権とはなんだったのか』/角川書店
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここで「笠間」といっているのは、笠間治雄次長検事のことで
す。笠間次長検事は、政治資金収支報告書に記載されている西松
建設にからむ小沢事件についての捜査には、きわめて消極的だっ
たといわれます。
 なぜなら、西松建設の2つの政治団体から小沢氏の政治団体と
まったく同じスタイルで献金を受けていた自民党議員は大勢いた
からです。
 ちょっと上げて見ると、二階俊博元経済産業大臣、尾身幸次元
財務大臣、加藤紘一元幹事長、藤井孝男元運輸大臣、森喜朗元首
相、藤野公孝元参議院議員、山口俊一首相補佐官、加納時男国交
副大臣、川崎二郎元厚生労働大臣、山本公一元総務副大臣、林幹
雄前国家公安委員長、古賀誠元幹事長、渡辺具能元国交副大臣と
いった面々です。
 こういう状況下で、小沢氏の秘書だけ逮捕・起訴して有罪にす
れば、他との整合性がとれなくなります。笠間次長検事はそのた
め、佐久間部長らが主張する西松建設元社長の外為法違反容疑で
の逮捕を許さなかったのです。
 しかし、笠間治雄次長検事は、2009年1月16日付で、広
島高検検事長に転出したのです。次長検事の後任者は伊藤鉄男氏
で、特捜部長経験者ですが、笠間氏ほどの実績はなかったといわ
れます。しかし、伊藤次長検事は着任するや佐久間特捜部長から
報告を聞くと、西松建設元社長の逮捕にゴーサインを出したので
す。こうして西松建設事件は動き出したのです。
 したがって、大久保元秘書逮捕は、樋渡検事総長、伊藤鉄男次
長検事、佐久間達哉特捜部長のときに断行されたのです。もし、
笠間次長検事なら、大久保元秘書逮捕にゴーサインは出さなかっ
たと思われます。たとえ上から命令が出てもです。
 佐久間特捜部長らは、2010年1月15日に、石川知裕衆議
院議員、池田光智元私設秘書、大久保隆規元公設第一秘書を「政
治資金規制法違反」で逮捕しましたが、その狙いは、裁判の訴因
の変更をして、無罪判決の可能性のある大久保氏に課せられた西
松建設不正献金事件をうやむやにすることだったのです。
 もちろん大久保隆規側の弁護士は訴因変更には大反対をしたの
ですが、裁判所は検察側の要求に簡単に応じているのです。検察
と裁判所はしょせん同じ穴のむじななのです。それが以後の陸山
会裁判での1審と2審の有罪判決につながってくるのです。
 この検察側のからくりをメディアは報道しないので、そのこと
を知っている人は少ないと思います。当時検察の名誉は傷ついて
いないので、まさか検察がそんな卑劣なことをするとは誰も思っ
ていなかったと思います。
 これに関連して、森ゆうこ前参院議員は自著で書いています。
2010年12月14日、森氏は「みのものたの朝ズバッ!」に
出演を依頼されたのです。実は私は、この番組はフェアでない番
組なので、一切見ないことにしています。
 その日は、みの氏をはじめ、毎日新聞論説委員の与良正男氏、
TBSテレビ解説委員の杉尾秀哉氏らがコメンテーターとして出
ていたのです。森氏はその番組で次の質問をしています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 「そもそもあれだけ大騒ぎした西松建設事件がどうなったか、
 知っていますか?」私が質問すると、自分が知らないというこ
 とを問題と思っていないのだろう。みの氏はすぐに「どうなっ
 たんですか?」と問い返してきた。「裁判が事実上なくなった
 のです」と答えると、みの氏は「そりや初耳だ」という顔をし
 て領いた。のんきなものである。黙っていてはまずいと思った
 のか杉尾氏は、「なくなつたんじゃなくて、始まっていないっ
 てことでは・」と問い返してきた。これで「ああ、この人は何
 もわかっていないな」と確信した私は落ち着いて続けた。「そ
 うではありません。裁判はもう何度もやりました」。(中略)
 わかりやすいといえばわかりやすい。みのもんた氏をはじめ、
 コメンテーターたちがこの事実を知らないのは、検察の作戦が
 成功したからともいえる。大失態をさらした検察は、「訴因変
 更」という手続きによって訴訟の中身を変更した。裁判のテー
 マを変え、西松建設事件から撤退したのだ。「事実上西松建設
 事件の裁判はもうすでにありません。あれだけ大騒ぎしたもの
 がもうないんですよ。こういうことをマスコミはまったく報道
 しない」私の声は自然と大きくなっていた。向かいの席に座っ
 たコメンテーターの面々は黙り込んだ。   ──森ゆうこ著
    「検察の罠/小沢一郎抹殺計画の真相」/日本文芸社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 実は2010年1月13日に、検察は小沢事務所に強制捜査に
入っているのです。この捜査の意味は、その日に西松建設事件の
裁判で決定的な検察不利の証言が飛び出したので、その新聞報道
を潰すか、記事を小さく扱わせるためにあえて強制捜査をやった
のです。私はその小さく扱われた記事を読んで知ったのです。
 したがって、もし陸山会裁判の秘書裁判で無罪を出すと、すべ
てが白日の下に晒され、検察は立ち直れなくなってしまいます。
既に秘書3人のうち、大久保氏と池田氏は2審有罪判決を受け入
れ、刑が確定しています。気力もお金も続かないからでしょう。
しかし、石川知裕氏は議員を辞めて、最高裁に上告していますが
その前途は厳しいです。   ── [自民党でいいのか/27]

≪画像および関連情報≫
 ●るいネット/2010年5月22日
  ―――――――――――――――――――――――――――
  西松建設違法献金事件で公判中の小沢一郎民主党幹事長の元
  公設第1秘書、大久保隆規被告について、東京地裁(登石郁
  朗裁判長)は21日、西松建設事件の起訴内容に陸山会事件
  を加える訴因変更を認める決定をした。すでに始まっている
  西松事件の公判のなかで、陸山会事件の審理がされることに
  なった。     ──2010年5月21日付、産経新聞
  この記事を読んで、これが何を意味するかわかる人は少ない
  と思うのです。大久保隆規被告がどのような訴因で起訴され
  たかというと、2009年3月に西松建設事件で、2003
  年〜06年に、同社から受けた計3500万円の献金を「ダ
  ミー団体」から受けたと偽って政治資金収支報告書に記載し
  たというものです。しかし、大久保隆氏は今年の1月16日
  に陸山会の土地購入をめぐって同報告書に虚偽記載した容疑
  で再び逮捕されているのです。そのため、検察としては西松
  建設事件と重複する04、05年分について、2009年3
  月の訴因に加えたいと、東京地裁に訴因変更を請求していた
  のです。             http://bit.ly/15EmtVN
  ―――――――――――――――――――――――――――

森ゆうこ著「検察の罠」.jpg
森ゆうこ著「検察の罠」
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月08日

●「検察の暴走捜査を国民は許すのか」(EJ第3606号)

 検察による小沢謀殺計画──検察にとっていくつか重大な失敗
はあったものの、大メディアの全面的バックアップによって、謀
殺計画は成功直前まできつつあります。
 まして、今の政権与党は小沢氏を最も排除したいと考え、20
09年の大久保隆規逮捕を後押ししたとされる自民党ですから、
計画は間違いなく成就すると思われます。
 現在小沢一郎の率いる生活の党は、2012年の衆院選と今年
の参院選に惨敗して、衆院議員7人、参院議員2人のたったの9
人しかいない状態です。
 非合法的捜査ともいえる強引な捜査で小沢一郎という政治家の
イメージはズタズタの状態になっています。小沢氏に対する検察
の強制捜査は、2009年3月3日にはじまり、2012年4月
26日に無罪判決を受けたものの、控訴され、2012年11月
12日に控訴が棄却されて無罪が確定しています。
 その間実に3年8ヵ月──捜査は民主党が政権交代する前から
はじまり、その民主党が政権を失うまでのほぼ全期間に及んだの
です。そして無罪確定の約1ヵ月後に総選挙です。これでは、い
かに選挙の神様といわれる小沢氏でも戦うすべはないでしょう。
それでも自身の選挙は勝ち抜いているのです。並みの政治家であ
ればとっくに潰されています。
 これだけではないのです。小沢氏自身の裁判より前に始り、今
も続いている秘書たちの陸山会事件裁判があるのです。これは、
2011年9月26日の一審判決は3被告とも有罪、そしてその
控訴審も、2013年3月13日に有罪判決になっています。
 この秘書たちに対する2回の有罪判決は、あまりにも欺瞞に満
ちたもので、司法の信頼性を根底から貶めるほどひどい判決だっ
たのです。これでは最高裁に訴えても無罪判決を得られないと考
えた大久保、池田両元秘書は、控訴を断念して判決を受け入れて
います。現在は石川元秘書だけが最高裁に控訴しており、裁判の
決着はついていないのですが、その前途には厳しいものがありま
す。ここで判決を差し戻すと、この小沢謀殺計画の全貌が蒸し返
され、日本の司法・検察の権威失墜が免れないからです。そんな
ことを最高裁がやるはずがありません。
 政治の世界では何が起きるかはわからないのです。活躍して欲
しくない政治家が人知れず、政治的に「抹殺」されることはよく
あることです。
 しかし、そういう場合でも普通の民主主義の国では、検察やメ
ディアがそういう悪を暴く役割を果たすものです。しかし、日本
では、その役割を担う検察やメディアが一体となって、堂々と小
沢潰しをやっているのです。これでは、日本は民主主義国ではな
く、独裁国家と同じです。
 既に述べたように、検察の狙いは「小沢を有罪にできなくても
秘書は絶対に有罪にする」ことにあります。既に元秘書3人のう
ち2人は有罪になっており、検察の狙いはほぼ成就しています。
 検察は次のように小沢「謀殺」計画を立てたと思われます。そ
のうち、1と2は成功し、3は失敗していますが、「小沢を有罪
にできなくても秘書は絶対に有罪にする」は成就しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.大久保秘書を逮捕することによって、小沢民主党代表(当
   時)を代表から下ろし、政権交代のムードを壊すか、政権
   交代が起こっても小沢政権の成立を潰す。
 2.西松建設裁判で大久保被告に無罪判決が出る可能性が出て
   きたので、政治資金収支報告書虚偽記載で3人の秘書を逮
   捕し、訴因を変更して裁判で有罪にする。
 3.小沢一郎は事情聴取して不起訴にするが、検察審査会に告
   発させ、そこで2回の「起訴相当」議決を出させることに
   よって強制起訴させ、裁判で有罪にする。
―――――――――――――――――――――――――――――
 陸山会事件というと、何やら重大な事件のような印象を持ちま
すが、その内容はごくつまらない──というといい過ぎかもしれ
ませんが、政治資金収支報告書という書類の記載ミスに過ぎない
のです。少なくともそれを原因として対象者を逮捕したり、起訴
して裁判にかけるという類いのものではないのです。
 政治資金収支報告書の記載ミスは毎年多数あり、通常この手の
ミスは指摘されるとそれを修正すれば終りなのです。悪質な場合
でも会計担当者が罰金刑に処せられる程度で終わっています。
 それが陸山会事件の場合は、衆議院議員を含む小沢氏の3人の
元秘書を逮捕し、起訴して裁判にかけたのです。明らかに常軌を
逸しているにもかかわらず、メディアはそれがまるで大事件のよ
うに書き立ててきたのです。
 政治資金収支報告書の記載ミスを検察は「虚偽記載」といって
います。その内容は何かというと、世田谷の土地の代金の支払い
日と土地の登記日が異なるという「期ずれ」をもって「虚偽」と
決めつけているのです。ただ、代金を支払ったのが11月末日で
登記をしたのが翌年の1月であり、年度をまたがっている点が問
題であると検察はいっているのです。
 それでは、検察審査会によって強制起訴された小沢氏の裁判の
容疑は、秘書たちがそういう「虚偽記載」をするのを陸山会の代
表の小沢氏が知っていたかどうかというもっとつまらない容疑な
のです。したがって、無罪になったからといって虚偽記載の容疑
が晴れたわけではないという理屈です。
 いずれにせよ、検察はそのような取るに足らない容疑で、有力
な国会議員の政治活動を長い年数にわたって制約していいのかと
いうことが問われるのです。もちろん、そういうことは検察もわ
かっていて、取るに足らない期ずれ事案を重大事件のように見せ
るために、陸山会の支払った土地代金のなかに、水谷建設からの
不法献金が含まれているというストーリーを作り、それをメディ
アにリークして報道させたのです。完全な目くらましです。
 問題は裁判所でも検察の作ったストーリーに沿って証人尋問を
し、いかにもそれが悪質なことであることであるように演出した
のです。          ── [自民党でいいのか/28]

≪画像および関連情報≫
 ●小沢氏無罪判決をどう受け止めるべきか/郷原信郎氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  政治資金収支報告書への真実記載義務を会計責任者・職務補
  佐者に課す一方、代表者には会計責任者の選任・監督両方に
  過失がある場合の罰金刑のみ定めている現行政治資金規正法
  の下では、代表者が虚偽記入の共犯の責任を負うのは、代表
  者自身の積極的な関与がある場合に限られ、報告書の内容に
  ついて報告・了承したという程度では共謀は認められないと
  いうのが刑事司法関係者の常識である。本件では陸山会の代
  表者の小沢氏の刑事責任追及は困難だとして、検察が二度に
  わたって不起訴としたのも当然の判断であった。今回の判決
  は、そういう「当然の判断」を、法解釈論で一刀両断的に行
  うのではなく、虚偽記入の犯意を根拠づける具体的事実の認
  識が立証されていないという点から丁寧に行っている。判決
  では、石川氏らについての収支報告書の虚偽記入に関する事
  実関係や故意について詳細に認定し、小沢氏との共謀が認め
  られるとする検察審査会の議決や指定弁護士の主張に対して
  も、「相応の根拠があると考えられなくはない」と述べた上
  で、4億円の借入金の記載の必要性と、本件土地取得を平成
  17年ではなく16年の収支報告書に記載する必要性につい
  ての小沢氏の認識を否定し、無罪の結論を導いている。
   http://www.gohara-compliance.com/uploadPDF/ozawa.pdf
  ―――――――――――――――――――――――――――

石川知裕氏.jpg
石川 知裕氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月09日

●「ミスター『推認』プラス『追認』」(EJ第3607号)

 2013年3月13日のことです。「生活の党」の小沢一郎代
表の資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件の
控訴審の判決が出たのです。
 飯田喜信裁判長は、衆院議員の石川知裕被告ら元秘書3人をい
ずれも執行猶予付き有罪とした一審判決を支持し、無罪を主張し
た弁護側の控訴を棄却したのです。つまり、一審の判決のままと
いうことになります。一審判決を再現します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 大久保隆規被告 ・・・・・      禁錮3年6月求刑
               禁錮3年/執行猶予5年判決
 石川 知裕被告 ・・・・・        禁錮2年求刑
               禁錮2年/執行猶予3年判決
 池田 光智被告 ・・・・・        禁錮1年求刑
               禁錮1年/執行猶予3年判決
―――――――――――――――――――――――――――――
 これを見ると、大久保隆規被告だけが重い「禁錮3年/執行猶
予5年判決」となっていますが、実はここには西松建設からの献
金を違法献金とみなし、その分の罪状が含まれているのです。森
ゆうこ氏は「裁判が事実上なくなった」といっていますが、なく
なったのではなく、それを巧妙に隠したのです。
 もし、西松建設からの違法献金事件に無罪判決が出ると、検察
の威信は丸潰れになります。世間からは民主党への選挙妨害であ
り、特定の政治家潰しであるなどの批判が噴出します。国策捜査
であるとの批判も高まるはずです。
 それでは、有罪判決を出したらどうなるかです。西松建設の2
つの政治団体から献金を受けた議員は既に述べたように自民党内
に大勢います。そういう状況のなかで、小沢氏の秘書だけ有罪に
すれば、整合性がとれなくなります。最終的には、該当者全員に
ついて捜査しなければならなくなるでしょう。
 そこで陸山会について政治資金規正法違反事件をでっちあげた
のです。そして被疑者が重複するからと訴因を変更し、西松建設
事件をそのなかに入れ、こっそり有罪判決を下したのです。大久
保隆規被告は精魂尽きてそれを受け入れてしまったので、人知れ
ず西松建設の裁判は既に終了しているのです。あざといというか
官僚は自らの組織を守るためには、ここまでやるのです。
 検察側の要請による訴因変更を認め、3元秘書に有罪判決を下
した裁判長は登石郁朗氏です。彼はそこには何の証拠もないのに
検察の作ったストーリーを「推認」したのです。これについて森
ゆうこ氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 (2011年)9月26日に東京地裁で元小沢秘書3人に対す
 る有罪判決が下った。これまでの公判で、検察が有罪の証拠と
 した3人の供述調書は、威迫や利益誘導などによってでっち上
 げられたものであるとして、任意性が否定されて証拠から排除
 されていた。裁判所は検察の捜査を否定したのだ。だが、その
 裁判所が、なんと有罪判決を出した。小沢一郎は公共事業の業
 者選定への影響力を背景に企業から多額の闇献金を受け、それ
 を隠すために秘書たちが共謀して政治資金収支報告書に虚偽記
 載を行なった──という検察が作り上げた妄想のストーリーを
 認めたのである。存在しない証拠のかわりに、推認に推認を重
 ねることによって。判決を下した登石郁朗裁判長についた「ミ
 スター推認」というあだ名には、判決を読んだ心ある人びとの
 痛烈な抗議が表れている。裁判所が、法と証拠に基づいてでは
 なく、「推認」という名の妄想に基づいて判断するのはとても
 恐ろしいことだ。裁判所にも期待してはならない、という事実
 を突き付けられた気分だった。       ──森ゆうこ著
    「検察の罠/小沢一郎抹殺計画の真相」/日本文芸社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 「まさか裁判所がそんなことするはずがない」と普通の人は誰
でもそう考えます。私もそう考えていました。そうでなければ日
本の裁判は中世の暗黒裁判と同じです。狙った人間はすべて有罪
にするという強い意思を感じます。登石郁朗裁判長のやったこと
は、まさに暗黒裁判そのものです。
 登石裁判長は、世間で明らかになった検察側の威迫や利益誘導
による証拠をすべて採用しませんでしたが、その代りにそういう
事実があったことを「推認」して有罪にしたのです。こんなこと
が認められたら、誰だって有罪になってしまいます。
 しかも、控訴審の飯田喜信裁判長は、登石裁判長の意思を受け
継ぎ、弁護側が提出した新証拠をすべて採用せず、控訴審をたっ
たの2回で結審させ、でたらめの推認有罪をそのまま認めたので
す。こういうことを繰り返して行くと、誰も何の裁判だがわから
なくなってしまいます。ネットでは、これらの登石、飯田両裁判
長のことを次のように呼んでいます。国民の怒りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  登石郁朗裁判長 ・・・・・ ミスター「推認」裁判長
  飯田喜信裁判長 ・・・・・ ミスター「追認」裁判長
―――――――――――――――――――――――――――――
 これら2人の裁判長のやったことについては、来週のEJで詳
しく述べることにします。彼らは裁判官としてとうてい許されざ
ることをやっているのです。
 そういう意味で、現在石川知裕氏のやっている最高裁への上告
が注目を集めています。これまでの情勢をみると、最高裁は一審
と控訴審判決を支持して「上告棄却」をすると思われます。それ
には理由があるのです。
 それは、最高裁と検察審査会は密接に関係しているからです。
小沢一郎氏に対する検察審査会の2度にわたる「起訴相当」には
多くの人が疑問を抱いています。その決定に最高裁がからんでい
る可能性があるのです。したがって、最高裁が原判決の破棄を認
めると、検察審査会の件を蒸し返される恐れがあるのです。小沢
潰しに最高裁までからんでいることが明らかになったら、大変な
騒ぎになります。      ── [自民党でいいのか/29]

≪画像および関連情報≫
 ●小沢暗黒裁判は中国文化大革命の「人民裁判」だ!
  ―――――――――――――――――――――――――――
  哲学者で作家の山崎行太郎氏が、「人民裁判と化した小沢叩
  き」という題で「毛沢東の文化大革命で多くの有能な政治家
  を血祭りにあげた「人民裁判」が、いま日本でも小沢氏に対
  し行われている」と「月刊日本」10月号で指摘している。
  これを読んで私は恐ろしい時代になるのではないかという恐
  怖感を感じた。(内田良平氏)
  法というルールに準じて、世論の復讐感情に走らず、独自の
  判断をくだすこと、これが裁判所に求められる役割だ。そし
  てルールの変更を行うのは立法府なのだ。これが「好悪にか
  かわらずルールには従う」というローマ法以来の伝統に基づ
  く、近代国家の原理だ。さて、小沢氏をめぐる事件では、ま
  さに大衆の怨念がルールをねじ曲げるという現象が起きてい
  る。法が適正に運用されているかではなく、小沢一郎という
  政治家を有罪にするためには、ルールは無視しても構わない
  という事態が起きているのだ。大衆の怨念が法を左右する状
  態、これを普通、人民裁判と呼ぶ。少し年配の人ならば文化
  大革命が吹き荒れた頃の中国の様子を思い出すだろう。『毛
  沢東語録』を振りかざした青年たちが絶叫しながら被告を糾
  弾する、そして被告の頭には赤い三角帽子が被せられ、弁護
  する機会も与えられず、有罪判決が下されていくのだ。今日
  本で起きているのは、あの人民裁判なのだ。左翼がそのよう
  な形で小沢氏を糾弾するのは、むしろ真正の左翼らしくて当
  然のことかもしれない。問題は、法学者のみならず右翼・保
  守陣営と称される人々・メディアまでもが、小沢氏糾弾とい
  う、右翼が最も嫌うはずの人民裁判に熱狂していることであ
  り、左右両陣営の熱狂に後押しされて、裁判所が法をねじ曲
  げ、人民裁判所と化しつつあることだ。
                   http://bit.ly/14wYPhi
  ―――――――――――――――――――――――――――

登石郁朗裁判長.jpg
登石 郁朗裁判長
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月12日

●「絶対看過できない検察の違法捜査」(EJ第3608号)

 大方の日本人は、いくらネット時代になっても、大新聞の記事
を信用しています。まして日本は記者クラブ制度があるので、検
察サイドから流される情報は、そのまま新聞やテレビで流される
ことになります。
 もし、流さなかったり、独自の取材で別の情報を流したりする
と──それは本来新聞社の自由であるはずですが、その新聞社は
記者クラブへの出入りができなくなるのです。そうすると、新聞
社は有力な情報源を失うことになります。
 よく東京地検特捜部が大物政財界人を強制捜査するとき、本社
に強制捜査に踏み込む場面がテレビ映像で報道されますが、これ
は司法記者クラブ──裁判所にある記者クラブへの加盟社には、
その場所や人物が、その当事者本人よりも早く検察から知らされ
るからできることなのです。
 このような事情なので、検察などから情報が出れば、新聞社は
躊躇いもなく、それに基づいて記事を作り、報道することになり
ます。そして多くの日本人はその記事をそのまま鵜呑みにし、信
用してしまうのです。「小沢一郎=悪者」のイメージはこうして
作られたのです。
 まさか検察がうそをつくはずがない──こういう思い込みがあ
るので、新聞で流れる記事を信用するのです。しかし、検察が証
拠を偽造し、うその捜査報告書を書いて多くの冤罪事件を生み出
していることは残念ながら事実なのです。
 さらにそういう小沢氏を少しでも擁護しようものなら、「小沢
信者」というレッテルを貼り、怪しげな新興宗教の信者のように
扱い、批判を抑え込む雰囲気も既にに出来上がっています。そう
いう批判をする人に限って小沢氏についてろくに調べもせず、感
情的に「悪い奴」と決めつけています。
 政治系のフリージャーナリストの一人に鈴木哲夫氏という人が
います。テレビ西日本報道部、フジテレビ政治部長を務めた人で
夕刊「フジ」の政治のトップ記事を書いている人です。夕刊「フ
ジ」といえば、小沢一郎氏の露骨な批判記事で溢れている新聞で
すが、それでも私は毎日買って読んでいます。小沢氏についての
批判記事もあえて読み込んでいるつもりです。
 そういう批判記事のなかで唯一まともな記事を書いているのが
鈴木哲夫氏です。その鈴木氏は今年の6月に『最後の小沢一郎』
(株式会社オークラ出版)を上梓されていますが、その中に次の
一節があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 記者:政治資金は世論とのギャップがあるんじゃないですか。
 小沢:あなたたちの報道でしょ。でも、みなさんに理解してい
 ただけるよう常日頃から努力します。
 記者:小沢さんは記者会見はサービスと言ったことがあるそう
 ですが、今でもそうだと思っていますか。
 小沢:サービスという言葉を曲げて取らないで。サービスとは
 私たちの義務だし奉仕ですよ。そういう意味で言ってるわけで
 す。小沢が代表や幹事長を務めていたころの定例記者会見での
 ひとコマだ。こんなストレートな質問を強面の小沢に遠慮なく
 ぶつけるのは至って30代前後の若い記者が多い。そのたびに
 小沢はこう答え、会見室の空気は決して悪くないのである。と
 ころが、記者たちが、それぞれの社に戻って小沢の言い分や大
 義をデスクや部長に伝える。そうするとこう言われるという。
 「お前は小沢を知らない。きれいごとを言っているが本音は違
 うんだ」。そうやって若い記者の報告は無視されるというので
 ある。当事者である新聞社の若い記者の一人は苦笑交じりにこ
 う言う。「うちのデスクは昔小沢さんに相当いじめられたんで
 すかね」。常にヒール役として偏った報道に晒されてきた小沢
 だが、記事が作られる背景には少なからずこんなやりとりが編
 集局内であるという。      ──鈴木哲夫著、『最後の
 小沢一郎/誰も書けなかった「剛腕」の素顔』/オークラ出版
―――――――――――――――――――――――――――――
 もうひとり既にご紹介している青木理(おさむ)というジャー
ナリストがいます。元共同通信記者で、警察、公安、司法に強く
『日本の公安警察』(講談社現代新書)という著作もあります。
 青木氏は、「小沢一郎という政治家が好きではない」としなが
らも次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 余計な話であることを承知の上で記せば、私個人(青木)は小
 沢という政治家を好まない。ひどく強引に見える振る舞いにせ
 よ、かつて自自公体制下の与党トップの一人として数々の治安
 法導入の旗ふり役となった経歴にせよ、どちらかといえば嫌悪
 の対象であり、小沢に過大な期待を寄せているらしき人々の気
 持ちが理解できない。ただ、東京地検特捜部が小沢と小沢の周
 辺に向かって振上げた捜査の刃が、これまでの検察捜査と比べ
 て明らかにハードルが低く、極めて不当なものであった。しか
 も、戦後初の本格的政権交代を目前に控えた時期に、政権奪取
 を窺う野党トップを狙い撃ちするかのように繰り広げられた捜
 査は、どう考えても常軌を逸していたばかりか、戦後政治の重
 要局面を歪めてしまったと考えている。いつもながら検察ベッ
 タリの姿勢に終始した大手メディアはともかく、特捜捜査への
 疑念と不審が相当広く共有されたのは、その何よりの証左だっ
 たろう。           ──宮崎学・辻恵・青木理著
   『政権崩壊/民主党政権とはなんだったのか』/角川書店
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢嫌いの青木理氏にして、この厳しい検察批判です。法務・
検察といっても行政権の一翼に位置する官僚組織に過ぎず、民意
の洗礼を受けることもないのです。そんな官僚組織が政治の重要
局面を弄び、瓦解にまで追い込む──こんなことを看過してもよ
いのかと青木氏はいっているのです。
 検察組織の自己防衛本能から、裁判所まで巻き込んでとんでも
ないことが、今も続く陸山会裁判で行われているのです。
              ── [自民党でいいのか/30]

≪画像および関連情報≫
 ●日々坦々「どう見る?小沢氏秘書ら逮捕」/青木理氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  検察監視の視点も必要。私は小沢一郎という政治家が好きで
  はない。その強圧的な政治姿勢にせよ、傲岸不遜な立ち居振
  る舞いにせよ、はたから眺めて感じるのは不快ばかりだ。し
  かし、小沢氏と対峙する検察組織には、さらに強い嫌悪を覚
  える。言うまでもなく検察は、公訴権を基本的に独占すると
  いう強大な権限を有している。また、検察が起訴した際の有
  罪率が99%を越えるのはよく知られる通りだ。即ち検察が
  逮捕・起訴に踏み切れば、その時点で有罪はほぼ確定し、無
  罪となる可能性などゼロに近い。加えて密室での取り調べに
  逆らえば保釈を得られず、延々と勾留され続ける。こうした
  刑事司法の現状にも数々の瑕疵はあるのだが、一方でそれほ
  どまでに強大な権限を有するからこそ、検察権の行使には徹
  底した公平が求められる。だが、小沢氏の元秘書が逮捕され
  た今回の事件は、直接の容疑事実がいかにも形式犯で悪質性
  が高いように見えない。これまで自民党議員の周辺で浮かん
  だ同種事案などでは、今回より悪質でも見逃されたケースが
  あった。過去に検察は組織内部の不正を告発しようとした幹
  部を口封じのため逮捕するという信じ難き挙に出た「前科」
  もある。検察が決して正義を顕現しているわけではないこと
  は銘記すべきだろう。       http://bit.ly/Te1KAa
  ―――――――――――――――――――――――――――

青木理氏.jpg
青木 理氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月13日

●「ありもしない話を作る検察の悪辣」(EJ第3609号)

 2010年1月の小沢氏の元秘書3人の逮捕と起訴は、きわめ
て周到に練られたストーリーに基づいて行われています。
 2009年6月19日、西松建設元社長國澤幹雄被告に対する
初公判で、検察側は次の冒頭陳述を行っています。これは大久保
隆規被告を有罪に追い込む伏線になっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 岩手、秋田両県における公共事業の談合をめぐつては、小沢事
 務所の意向が「天の声」として業者選定に決定的な影響力を及
 ぼしており、公設第一秘書の大久保が「天の声」を発する役割
 を果たしていた。       ──宮崎学・辻恵・青木理著
   『政権崩壊/民主党政権とはなんだったのか』/角川書店
―――――――――――――――――――――――――――――
 剛腕の噂の高い小沢氏のことであり、田中元首相、金丸元副総
理の下にいたことから金権政治家のレッテルを貼られていること
もあって、そういうことがあっても不思議はないと世間一般は考
えたはずです。しかし、当時小沢氏は野党の代表に過ぎず、公共
事業の差配を振るうことは事実上無理なのです。しかも、検察が
総力を挙げてゼネコンなどを捜査したにも関わらず、この事実を
証明する証拠は何ひとつ出なかったのです。
 しかし、検察としてはイメージだけで十分だったのです。20
10年1月に検察側は大久保被告も含め、石川知裕、池田光智3
氏を次の政治資金規正法違反容疑で逮捕したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢の資金管理団体「陸山会」は2004年10月29日、陸
 山会名義で東京都世田谷区の土地を約3億4000万円で購入
 した。ところが石川は、陸山会の会計責任者だった大久保らと
 共謀し、この事実を2004年分の政治資金収支報告書に記載
 しなかった。また、この購入原資となった小沢個人からの借り
 入れ約4億円についても記載しなかった。
          ──宮崎学・辻恵・青木理著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 容疑はこうなっていますが、真実は次の通りなのです。1つの
事実と1つの表現不足、それに1つのうそがあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.土地の購入を2004年分の政治資金収支報告書に記載
   していないことは事実である。
 2.小沢個人からの4億円の借入金を記載していないことは
   事実ではない。記載している。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1については、事実ですが、翌年に記載しています。登記と同
時に記載しており、記載がなかったわけではないのです。つまり
約40日程度の「期ずれ」があっただけです。ただ、年度をまた
がっていることは事実です。でもそういうことだって十分ありう
ることです。
 2についてはうそです。EJでは何度も書いていますが、4億
円の記載はあります。しかし、陸山会では小沢氏からの4億円を
銀行の定期預金にし、それを担保にして4億円借りています。検
察は小沢氏からの4億円の記載は無視し、銀行からの融資金の4
億円の記載はないといっているのです。
 しかし、これはあきらかに検察側の間違いです。政治資金規正
法第4条によると、銀行からの融資金などは政治資金規正法でい
う「収入」には該当しないのです。したがって、政治団体が手元
資金を銀行預金で運用し、それを担保に相当額を借り入れても、
その借入金は政治資金規正法上の「収入」には該当せず、記載す
る必要はないのです。http://bit.ly/dp9Opq
 しかし、仮に虚偽記載があったとしても、それは「形式犯」そ
のもので、訂正すれば済む問題なのです。一般的に、一定の法益
の侵害または侵害の危険の発生が内容とされている犯罪を「実質
犯」と呼び、法益侵害の抽象的危険すら必要とされない犯罪を形
式犯と称するのです。
 まして、このような形式犯で現職の与党の国会議員を逮捕する
ことは稀有なことであり、よほどそこに悪質性がないとできない
のです。もし、これによって石川知裕被告が無罪になると、検察
側の重大な責任問題になることは必至です。
 ここで西松建設元社長に対する初公判の検察側冒頭陳述が効い
てくるのです。2010年1月1日付の読売新聞は、検察のリー
クを受けて、次の記事を掲載したのです。元旦の一面ブチ抜きで
すから、耳目を集めたのです。いま考えると、これは石川知裕議
員(当時)逮捕の布石だったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 中堅ゼネコン「水谷建設」の幹部らが2004年10月中旬、
 小沢氏の私設秘書だった石川知裕衆院議員に5千万円を手渡し
 たと東京地検特捜部に供述し、石川議員がその直後に、同額の
 現金を同会(陸山会)の銀行口座に入金していたことが、関係
 者の話で分かった。関係者によると、水谷建設の元幹部や幹部
 は特捜部の事情聴取に対し、04年10月中旬に都内のホテル
 で、石川議員に現金5千万円を渡したなどと供述したという。
 特捜部も小沢氏側と建設業界の癒着構造について慎重に捜査を
 進めているもようだ。 ──2010年1月1日付、読売新聞
―――――――――――――――――――――――――――――
 つまり、検察側は、期ずれで争うと非難を浴びるので、小沢氏
からの借り入れの4億円のなかの1億円は、水谷建設からの違法
献金であるというストーリーを作り、それを持って悪質性を印象
付け、国会議員を含む元秘書3人を逮捕したのです。
 その経緯は明日のEJで詳しく述べますが、結論からいうと、
これはまったくのでっち上げであり、それについて公判で証人と
して証言した水谷建設の元社長川村尚氏は、内容は事実でないこ
とを認める意見陳実書を秘書側の弁護士に渡しているのですが、
控訴審の飯田喜信裁判長は、その意見陳実書を証拠として採用せ
ず、一審判決を支持したのです。しかし、新聞はそういうことは
一切書かないのです。    ── [自民党でいいのか/31]

≪画像および関連情報≫
 ●実質犯と形式犯の区別/ひからびんの時空通信ブログ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  政治資金規正法第12条は,政治団体の会計責任者は、当該
  政治団体にかかるその年のすべての収入・支出を記載した収
  支報告書の提出をを選挙管理委員会に提出しなければならな
  いと定める。小沢氏の資金管理団体の会計責任者であった元
  秘書の石川衆議院議員は,世田谷区深沢の土地購入代金に関
  する4億円の収入を収支報告書に記載をしなかったのである
  から,同法12条(虚偽記載)に違反することとなる。とこ
  ろで,同条の適用を巡っては,まず同条が形式犯なのかそれ
  とも実質犯なのかの議論が聞かれる。実質犯であるか形式犯
  であるかは,現職の国会議員による政治資金規正法違反事実
  の起訴価値に影響するのであって,単なる形式犯であるとす
  れば,起訴の正当性を裏付けるそれなりの理由が必要になっ
  てくるからである。        http://bit.ly/1ezDCSH
  ―――――――――――――――――――――――――――

ミスター追認/飯田喜信裁判長.jpg
ミスター追認/飯田 喜信裁判長
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月14日

●「1億円の裏金の根拠は崩れている」(EJ第3610号)

 2010年1月15日──小沢氏の元秘書3人が東京地検特捜
部によって逮捕された日です。その1日前の毎日新聞朝刊には次
の記事が出ています。検察が3秘書逮捕のための環境づくりをし
ていることがよくわかります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」に計1億円を
 提供したとされる「水谷建設」の元幹部らが大久保隆規被告の
 要請で資金提供したと供述していることが分かった。うち04
 年10月の5千万円は大久保被告の代理として、当時の事務担
 当者で小沢氏の私設秘書だった石川知裕衆院議員に渡したと話
 しているという。元幹部らは「計1億円は大久保氏の要請で提
 供した。最初の5千万円は04年10月、東京都内のホテルで
 大久保氏の代理として現れた石川氏に、二度目の05年4月に
 は同額を同じホテルで大久保氏に渡した」などと供述。理由に
 ついては、国発注の胆沢ダム(岩手県)の下請け工事を受注し
 た成功報酬だったと説明しているという。
         ──2010年1月14日付、毎日新聞朝刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 2010年1月の前半は、西松建設裁判が行き詰まり、無罪判
決もあると一部週刊誌や夕刊紙に記事が出ていた頃です。この日
の記事で話が西松建設から水谷建設に代わったのです。
 今になってわかったことですが、水谷建設が5000万円ずつ
2回、1億円の裏金を全日空ホテルで、小沢氏元秘書に渡したと
いうのは、水谷建設のうそであることがわかっています。
 陸山会事件第10回公判──2011年4月27日、この日は
川村尚水谷建設元社長が証人として出廷し、5000万円の受け
渡しの場面を証言しています。本当は大久保秘書が来る予定だっ
たのですが、石川氏に代わったのです。法廷でのやり取りを再現
します。「──」は検察官です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ──石川氏は来ましたか
 川村:はい。石川氏に私の名刺を渡して、フロント前のロビー
 のソファーに座りました。
 ── どんな感じで座ったのですか
 川村:フロントの前に椅子がありまして、私と石川氏ははす向
 かいのような形で座りました。
 ──その後は
 川村:ご挨拶申し上げて「紙袋をお納め下さい」と言いまして
 2〜3分だったと思いますけど、その場でお別れしました。先
 に石川秘書が出て行かれたと思います。
 ──紙袋はどのように渡しましたか
 川村:極力目立たないように紙袋をスライドさせてお渡ししま
 した。
 ──あなたの行動を示すものはありますか
 川村:JRの領収書とホテルの領収書です。
              ──THE JOURNALより
―――――――――――――――――――――――――――――
 生々しい裏金受け渡しの場面です。その日は2004年10月
15日です。「週刊金曜日ニュース」は取材に基づいて、次の事
実をスクープしています。川村元社長はその日、全日空ホテルに
は行っていないことを示しています。そして水谷建設側もその事
実を認めています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 水谷元会長と川村元社長は金銭の授受があったとされる日──
 2004年10月15日に、仙台に朝からいたという。2人は
 行動をともにし、仙台からいったん東京に戻り、その足で三重
 県に帰った。受け渡し場所となった全日空ホテルには、そもそ
 も立ち寄る余裕がなかったらしい。そうなると、水谷建設から
 石川議員に5000万円が2回に分けて渡されたというのは現
 実的に不可能ということになる。   http://bit.ly/XfMrfg
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、このことを報道した新聞はないのです。検察のリーク
情報と矛盾するからです。日本の新聞は検察の広報機関のような
ものであり、冤罪づくりに協力していることになります。
 水谷建設からの2回目の5000万円受け渡しに関する川村氏
の証言です。水谷側は日は覚えていないといっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ──次に、2005年4月にわたした5000万円についてお
 聞きします。受け渡しの日時は?
 川村:同じホテルの喫茶店です。
 ──具体的には
 川村:一度目は中国出張があったので具体的な日時を思い出せ
 ましたけど、平成17年4月は覚えていません。協力会社のA
 社長と行きました。朝、東京支店に出社しまして、A社長がき
 ました。約束の時間に間に合うように(ホテルまで)車で行き
 ました。フロントの出入り口の近くで大久保氏を待ち、3人と
 も喫茶店に座りました。
 ──印象に残っているのは
 川村:(大久保氏は)ヨーグルトを頼みましたので、私も同じ
 ものを頼みました。
 ──5000万円はどのように渡しましたか。
 川村:「約束のものです」とテーブルの下から大久保氏に渡し
 ました。
 ──大久保氏の反応は
 川村:「ありがとうございます」だったと思います。
              ──THE JOURNALより
―――――――――――――――――――――――――――――
 今になってわかったことですが、こうしたやり取り自体が検察
の誘導であったことがわかっています。水谷建設側はそのことを
認め、意見陳述書を出しているのです。
              ── [自民党でいいのか/32]

≪画像および関連情報≫
 ●水谷建設「裏金」はやっぱり作り話か?
  ―――――――――――――――――――――――――――
  全てが「作り話」だったということなのか。2012年11
  月12日の控訴審判決で「無罪」が確実視されている「小沢
  裁判」だが、事件の発端となった「陸山会」への水谷建設か
  らの1億円の「裏金疑惑」に衝撃情報が浮上した。ズバリ、
  「裏金は存在しなかった」という内容だ。水谷建設の裏金疑
  惑は、東京地検特捜部が小沢に狙いを付けたキッカケとされ
  る。特捜部は水谷功元会長や川村尚元社長から「裏金証言」
  を得て「陸山会」が東京・世田谷の土地購入費に紛れ込ませ
  た──との筋書きを描いて強制捜査に突っ走った。小沢の元
  秘書の石川知裕衆院議員ら3人の裁判では、川村元社長が石
  川に「裏金を渡した」と証言し、東京地裁は裏金授受を「推
  認」したのである。ところが、そもそも水谷建設は1億円を
  支出していなかった可能性が高まってきたのだ。経営破綻し
  た水谷建設の管財人が、帳簿をどんなに調べても、1億円の
  不正支出が見当たらないというのだ。管財人の北浜法律事務
  所を直撃すると、担当者はこう答えた。
  ――裏金は確認されましたか。
  「不当な支出があったとは認められていません」
  ――裏金は存在しなかった、という意味ですか。
  「確認できていないということです。古すぎるし、検察から
  も任意の資料提出を求められていて、関係資料が手元にあま
  り残っていません。そもそも最初の事件で資料がゴッソリ押
  収されているので・・・」
  これは驚きではないか。プロの管財人が数ヶ月かけてカネの
  流れを丹念に調べているのだ。それでも裏金の痕跡すら見つ
  からないのは不思議である。
      http://mango.doorblog.jp/archives/18137132.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

ひとり裁判を戦う石川知裕氏.jpg
ひとり裁判を戦う石川 知裕氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月15日

●「陸山会控訴審は裁判の自殺である」(EJ第3611号)

 陸山会裁判は、今や石川知裕氏の最高裁上告の結果にすべてが
かかっています。大久保隆規、池田光智両被告は控訴審の結果を
受け入れ、有罪が確定しているからです。おそらく精も魂も金も
尽き果てての有罪受け入れと思われます。
 陸山会裁判1審判決で、石川知裕被告に対して、登石裁判長が
下した判決は次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.小沢一郎から4億円の借入金を不記載 ・・・・ 有罪
 2.水谷建設から小沢一郎事務所へ闇献金 ・・・・ 認定
 3.土地取得経費3億5200万円不記載 ・・・・ 有罪
―――――――――――――――――――――――――――――
 「1」に関しては既に述べたように記載があるし、「3」につ
いても次の月に記載されている。それでも有罪とはとんでもない
判決です。はじめから「有罪ありき」です。
 なかでもひどいのは「2」の「水谷建設から小沢一郎事務所へ
闇献金」を証拠もないのに有罪と認定していることです。実は検
察は2の立件は諦めていたといわれます。証拠もないし、矛盾一
色だからです。それがこの判決ですから、検察は大喜びだったと
いわれます。これによって、検察と裁判所が同じ穴のむじなであ
ることが証明されたといえます。
 それでは裁判所はなぜあえて「2」を認定したのでしょうか。
 それは、事件そのものが政治資金収支報告書の記載ミスという
形式犯であり、「2」を有罪に認定しないと、与党の国会議員を
含む秘書3人を逮捕・起訴した大袈裟な捜査と整合性がとれない
からです。そこには何としても「小沢を潰してやる」という官僚
組織の強い意思が感じられます。
 そのミスター「推認」の登石裁判長の劣悪な判決をろくに調べ
もせず、弁護側の新証拠をことごとく却下し、2回で結審、1審
判決を支持した飯田喜信裁判長は、最初からそうすることに決め
ていたとしか思えない判決です。
 このミスター「追認」の飯田喜信裁判長は、無実の人を有罪に
することで悪名高い裁判長なのです。東電OL殺人事件で逮捕さ
れたゴビンダ・マイナリ氏を有罪にし、15年間も長期服役させ
たあの裁判官が飯田喜信氏なのです。
 飯田裁判長は、ゴビンダ氏が無罪になっても詫びることもなく
職を辞することもなく、平然と今度は陸山会の3秘書に有罪の判
決を下しているのです。とんでもない裁判官です。
 問題は、最高裁はどのように決断するでしょうか。検察と裁判
所は親戚ですから、自分たちのムラの安全を守るなら、上告棄却
をすると思われます。
 しかし、小沢一郎氏の検察審査会による強制起訴で最高裁には
大きな疑惑が出ているだけに、もし簡単に棄却すれば、石川氏も
黙っていないでしょうから、大問題になります。新聞、テレビは
例によって一切報道しませんが、その分ネットでは陸山会裁判は
大きな問題になっているのです。
 それに石川知裕側の弁護士には、今年の1月からあの安田好弘
弁護士がついているのです。この弁護士は少しクセがあり、毀誉
褒貶の多い人物ですが、最高裁もマークしている強い弁護士であ
ることは確かです。
 安田弁護士は、石川知裕氏の担当になると、控訴審に向けての
証拠集めでは大きく貢献しているのです。安田氏は、水谷建設が
全日空ホテルで石川氏に5000万円を渡した事実が虚偽である
ことの証明を試みたのです。
 そのために安田弁護士は、次の3つの手帳(2004年分)を
手に入れたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    1.          大久保隆規の手帳
    2.           石川知裕の手帳
    3.大手ゼネコン「鹿島」東北支店長の手帳
―――――――――――――――――――――――――――――
 問題は10月15日の予定です。大久保氏の手帳は、その日は
午後7時までは予定が入っていないのです。石川氏の手帳も重要
な予定はなしの状態です。
 一方、「鹿島」東北支店長の手帳には、午前中に水谷建設の水
谷功会長に会ったことが記載されていたのです。しかし、水谷建
設の川村尚社長は次のように証言していたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 15日午前に1人で鹿島の東北支店(仙台)におじゃまし、
 その後、新幹線で東京に戻り、水谷の東京支店で裏金を準備
 して、全日空ホテルへ向かった。 ──水谷建設川村尚社長
―――――――――――――――――――――――――――――
 安田弁護士は、「鹿島」の東北支店長から15日は水谷会長と
川村社長の2人と会ったことを聞き出し、そのことを川村社長に
突き付け、会長と同行していた事実と、それから東京に戻り、そ
の足で会長と一緒に三重県の本社に戻っていることを認めさせた
のです。つまり、その日は全日空ホテルに行っておらず、少なく
とも、小沢事務所への裏金の引き渡しはなかったのです。これは
川村社長が偽証したことを認めたことになります。
 それなのに、なぜ、川村社長が10月15日にこだわったかと
いうと、検事から「裏金の授受は絶対に10月15日でないとだ
めだ」とくぎを刺されたからであることも白状しているのです。
 安田弁護士は、水谷会長と川村社長の2人にそのことを認める
意見陳実書を書かせ、それを飯田裁判長に証拠として採用するよ
う求めたのです。
 ところが、飯田裁判長はそれを含む87通の新証拠のほとんど
を却下したのです。もし、検察と裁判所がつながっていて、「小
沢は無罪でも秘書は有罪にする」という目標を共有していたとす
れば、裁判所は棄却するしかなかったのです。安田弁護士は判決
後の記者会見で、「これは裁判の自殺である」と怒りをぶつけて
います。このような状況で、最高裁でも同じことをすれば何が起
きるかわからないのです。  ── [自民党でいいのか/33]

≪画像および関連情報≫
 ●テレビマスコミが報道しない陸山会裁判
  ―――――――――――――――――――――――――――
  陸山会事件の公判。次から次へと新事実が明らかになってき
  た。それでもテレビは無視し続ける。それは何故だろう?週
  刊現代で森功氏は、「5000万円は2回とも私の後ろの金
  庫から出した」(水谷建設元経理担当常務)「ホテルのロビ
  ーで、テーブルの下をスライドさせてカネを渡した」(元社
  長)「ホテルのラウンジでは、ヨーグルトドリンクを注文し
  た」(ダイナマイト業者)といった生々しい証言が飛び出す
  たび、法廷は静まり返った。おまけに証言だけでなく、水谷
  建設の経理資料など物証も証拠提出されている。これまで裏
  金の授受について全面否認してきた小沢側は、絶体絶命のピ
  ンチに陥っている。(中略)が、あれほど騒いでいたマスメ
  ディアが、ベタ記事扱いとまではいわないが、全く無視して
  いる民放のニュース番組などまである。もとよりニュースは
  それぞれ報道現場の判断で扱いの大小が決められるものだ。
  震災のせいで普段より扱いが小さくなるのもやむを得ない。
  しかし、政界きっての実力者の重大事について、ここまで報
  道が少ないのは、やはり不自然と言うほかない。(以下略)
  という具合にマスコミが陸山会事件の公判を意図的に扱わな
  い姿勢を批判している。この西松建設と水谷建設は福島原発
  の工事を請け負っていた事まで明らかになってきた。
      ─「週刊朝日」6月3日号)http://bit.ly/1cpSBTs
  ―――――――――――――――――――――――――――

安田好弘弁護士.jpg
安田 好弘弁護士
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月16日

●「法律がわからない東京地検特捜部」(EJ第3612号)

 2010年2月4日のことです。東京霞が関の法務・検察合同
庁舎で、東京地検特捜部長の佐久間達哉氏が記者会見を行ったの
です。陸山会の土地購入をめぐる収支報告書への虚偽記載問題で
逮捕した石川知裕被告を含む3人の拘留期限が満期を迎えたので
その処分内容を発表するためです。以下は、佐久間部長と記者団
とのやり取りの概要です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ──事件の動機は何だと判断しているのか
 「ひと言で言えば、陸山会が2004年10月に世田谷区の土
 地を買ったのに、(同年の収支報告書に)4億円の収入を記載
 しなかったためバランスが狂った。その調整のため、いろいろ
 な工作をした」
 ──小沢氏は原資は「個人資産」と説明したが、それは認める
   のか。
 「必ずしもそういうことではない」
 ──ゼネコンからの資金が含まれているのか
 「原資については具体的コメントは控える」
 ──これで事件は終結か
 「現時点で立件すべきものはすべて処理した」
 ──形式犯という指摘もあるが
 「虚偽記入の規模が大きいことや、原資の実態、隠ペい工作の
 手口などについて解明するために3人を起訴した」
 ──小沢氏を狙い撃ちしたという指摘もあるが
 「特定の政治家を狙ったということは毛頭ない」
                ──宮崎学・辻恵・青木理著
   『政権崩壊/民主党政権とはなんだったのか』/角川書店
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここで佐久間部長は、「陸山会が2004年10月に世田谷区
の土地を買ったのに、(同年の収支報告書に)4億円の収入を記
載しなかった」といい、これが虚偽記載だといっていますが、こ
れは誤解を招く表現です。
 陸山会事件について比較的詳しく事実を知っている人でも、陸
山会は政治資金収支報告書に虚偽記載をしたと思っています。そ
うは思っていなくても、虚偽かどうかは別として、少なくとも記
載ミスをしたとは思っているはずです。
 結論からいうなら、陸山会は、虚偽記載はもちろんのこと、記
載ミスもしていないのです。事実を記載します。
―――――――――――――――――――――――――――――
     ◎2004年10月 5日
      ・土地売買予約締結──対象者:小沢一郎
     ◎2004年10月29日
      ・所有権移転仮登記──対象者:小沢一郎
     ◎2005年 1月 7日
      ・所有権の移転登記──対象者: 陸山会
―――――――――――――――――――――――――――――
 世田谷の土地を購入するために、陸山会はその代金相当額の4
億円を小沢氏から借り入れ、それを政治資金収支報告書に記載し
ています。実に奇怪なことですが、検察はあくまで「記載してい
ない」といっていますが、記載はあるのです。陸山会の2004
年分の政治資金収支報告書は、『官報/平成17年9月30日』
(号外第223号)P247に出ています。
 これについては、2012年5月4日のEJに詳しく書きまし
たので、参照してください。記載はあるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎2012年5月4日付、EJ休日特集号第02号
  http://bit.ly/IqJ4aC
―――――――――――――――――――――――――――――
 2004年10月5日に陸山会は世田谷の土地の所有者と土地
売買予約を締結しています。このときの対象者は陸山会代表であ
る小沢一郎個人です。政治団体は「権利能力なき社団」であるか
らです。したがって、この段階では陸山会ではなく、小沢個人が
権利者になったのに過ぎないのです。
 続いて、同年10月29日に土地代金を支払って所有権移転仮
登記を行っていますが、土地所有者からの申し出によって、登記
は2005年1月7日ということになったのです。こんなことは
不動産取り引きの世界ではよくあることであり、そこに犯罪性の
かけらもないのです。
 なお、所有権移転仮登記の段階でも同じ理由から対象者は小沢
一郎個人です。つまり、この段階では陸山会は法律上土地の取引
には関係なく、もちろん政治資金収支報告書に記載する必要はな
い、というかしてはならないのです。検察は、それを虚偽記載と
いっているのですが、そのとき政治資金収支報告書に記載する方
が虚偽なのです。司法試験に合格している検事サンがなぜこのこ
とがわからないのでしょうか。
 2005年1月になって世田谷の土地の登記が行われ、土地は
小沢一郎の所有物になります。そして小沢氏と陸山会の間で「使
用権に関する確認書」が交わされ、はじめて問題の土地は陸山会
の資産となったわけです。そのため、この日に陸山会の政治資金
収支報告書に資産計上されたのですが、どこが虚偽であり、隠蔽
なのでしょうか。
 法を取締る検察がこんな初歩的なことを知らないはずがないの
です。そのため、ありもしない水谷建設からの違法献金をからま
せ、何が何でも小沢を潰すことに執念を燃やしたのです。水谷建
設の会長や社長は、他の不祥事を見逃す代わりにうその証言をさ
せられたのでしょう。彼らはそのうそを認め、意見陳述書を石川
知裕側弁護士に渡しています。
 検察をはじめとする官僚組織にとって安倍首相などは子供のよ
うなものです。どうにでもできる。しかし、何よりも小沢氏が国
家権力を握るのは怖い。なぜなら、小沢氏なら本当に官僚機構を
壊しかねないからです。小沢氏は政権交代を二度もやった実績を
持つ実力者であるからです。 ── [自民党でいいのか/34]

≪画像および関連情報≫
 ●「会計処理は許容範囲」 陸山会の土地購入で専門家
  ―――――――――――――――――――――――――――
  資金管理団体「陸山会」の収支報告書虚偽記入事件で、政治
  資金規正法違反罪に問われた民主党元代表小沢一郎被告の第
  11回公判が2011年12月20日、東京地裁(大善文男
  裁判長)であった。証人出廷した筑波大学弥永真生教授(商
  事法、制度会計)が陸山会の土地購入に関して「会計処理上
  は許容範囲で、必ずしも違法ではない」との考えを示した。
  陸山会は2004年10月に土地を購入し、05年1月に所
  有権移転の登記をした。弁護側は登記をした05年分の報告
  書に記載しているとして虚偽記入を否定。弥永教授は弁護側
  の主張に沿う意見書を提出しており、検察官役の指定弁護士
  と弁護側の双方が証人申請した。弥永教授は、収支報告書は
  「企業会計とは違い、家計簿のレベルに近い」と指摘。客観
  的に土地の所有権移転が明らかになる登記に合わせて資産計
  上することも許されるとした。指定弁護士と弁護側では、実
  質的な所有権移転の時期にも争いがある。裁判官が「事件を
  具体的に検討したのか」と弥永教授に確認すると、弁護側の
  主張を前提に意見を述べただけだ、と説明した。
                   http://bit.ly/15FRRzS
  ―――――――――――――――――――――――――――

佐久間達哉元東京地検特捜部長.jpg
佐久間 達哉元東京地検特捜部長
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月19日

●「野田首相はなぜ法相を罷免したか」(EJ第3613号)

 まず、次の報告書を読んでいただきたいのです。おそらくびっ
くりされると思いますが・・・。
―――――――――――――――――――――――――――――
 【平成24年6月5日午後6時、法務省法務大臣室において、
 小川敏夫法務大臣は、笠間治雄検事総長に対し、虚偽捜査報告
 書事件について、
   ・公判請求も念頭に置いて厳正なる捜査を行うこと
   ・捜査体制を新たに構成すること
   ・虚偽内容の公表等、情報の公開に努めること
 を行うよう検察庁法14条の規定に則り指示した。次いで、同
 日午後7時、小川法務大臣は、緊急記者会見に臨み、右の指揮
 権を発動したことを以下のとおり公表した。指揮権の発動につ
 いては、公正であるべき捜査を政治が介入して歪めてはならな
 いという見地から努めて抑制すべしとするなど様々な見解があ
 るが、検事が虚偽の捜査資料を捏造するような検察内部の事件
 について検察が消極的対応に終始し、このような対応が検察に
 対する信頼回復を願う国民の期待に背くような場合、国民の声
 を代表する法務大臣は、検察の信頼を回復するために指揮権を
 発動して適正な対応をするよう検察に求めることが真の職責で
 あると判断し、本日、指揮権を発動しました】
    ──小川敏夫著「指揮権発動/検察の正義は失われた」
                      朝日新聞出版刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 「そんなことあったっけ?」と思う人がほとんどであると思い
ます。それは当然です。これが実行に移されることはなかったか
らです。この報告書を書いた人物は、元法務大臣の小川敏夫氏で
あり、彼はこれを実行する6月5日の1日前の6月4日に法務大
臣を罷免されているからです。時の野田首相は法務大臣を罷免し
てまで検察の一大不祥事を世間の目から蔽い隠したのです。
 2012年5月11日に小川法相は野田首相と会い、指揮権発
動行使の決意を伝えています。そのとき、野田首相は驚いて、次
のようにいったそうです。そのときのやり取りを公開します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小川:指揮権を行使しなければならない状況なので、行使しよ
    うと思っています。
 野田:指揮権って50年くらい前に騒ぎになったあれですか。
 小川:そうです。
 野田:大騒ぎになるんじゃないですか。
 小川:なるように思います。
 野田:やれば喜ぶ人もいるでしょうが、少し考えましょう。
                ──小川敏夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 このとき小川法相が指揮権を発動するといったのは、陸山会裁
判を巡り、東京地検特捜部の田代政弘検事(当時)が事実とは異
なる虚偽捜査報告書を作成した件についてです。
 捜査報告書は、供述者が内容をチェックできない検察内部の文
書であり、そこにうそが書かれるといくらでも罪のない人を犯罪
者にできる恐ろしい文書です。政治資金収支報告書の記載ミスで
国会議員を逮捕・起訴する検察が、自らは虚偽の捜査報告書を書
いて、無実の犯罪者を作っている。それがばれると、今度はその
検事を懲戒処分とい微罪で幕引きを図ろうとしている──小川法
相はそれをチェックしようとしたのです。これについて小川元法
相は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 検察が行った虚偽捜査報告書の作成は、検察の公正さ、捜査の
 適正さを根底から覆すもので、これを看過してはならない。こ
 の不正を見過ごせば、検察は同じ不正を繰り返し、罪もない国
 民に罪を被せる結果をもたらすことになるだろう。また、国民
 が検察に対する信頼を失えば、国民は、検察の捜査に協力しな
 くなる。検察崩壊の危機である。この危機を回避し、検察に対
 する国民の信頼を回復するためには、虚偽捜査報告書について
 事実とその責任の所在を国民に明らかにしなければならない。
 それによって初めて検察の信頼回復を語ることができる。
                ──小川敏夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 小川法相の考え方は正しいと思います。検察が2009年3月
に小沢氏の秘書を逮捕して以来、検察の不祥事は目に余るものが
あります。しかし、野田首相はこれを民主党内の政治家同士の争
いの次元に矮小化しようとしています。それは「やれば喜ぶ人も
いるでしょうが」という言葉によくあらわれています。
 この知られざる指揮権発動の件はさておき、そもそも田代政弘
検事は、石川知裕氏に対してなぜ事情聴取したのでしょうか。事
情聴取は、2010年5月17日に行われており、石川氏は既に
起訴されているのです。
 起訴した被告を裁判の前に検察に呼び出して事情聴取する──
きわめて異例なことであり、通常では行われないものです。それ
では、何のための事情聴取なのでしょうか。
 それは、ずばり小沢一郎氏を検察審査会で強制起訴するために
必要だったのです。検察としては小沢氏については不起訴処分に
せざるを得なかったので、検察審査会に2回にわたって「起訴相
当」議決を出させ、強制起訴する計画を既に着実に実行に移しつ
つあったのです。
 田代検事の上司である当時の斉藤隆博特捜部副部長は田代の虚
偽報告書を大量に引用して、新たな次の文書を作成し、田代検事
作成の捜査報告書とともに検察審査会に提出しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 捜査報告書─再捜査の結果を踏まえた証拠の評価等について
―――――――――――――――――――――――――――――
 虚偽の報告書を引用してさらに虚偽文書を作り、これによって
小沢一郎氏を強制起訴に追い込む計画──これはきわめて計画的
に行われたのです。     ── [自民党でいいのか/35]

≪画像および関連情報≫
 ●小川前法相の指揮権発動について考える/郷原信郎氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  小川敏夫前法務大臣が、2012年6月4日の退任会見で、
  虚偽報告書作成問題に関して、「指揮権の発動を決意したが
  野田佳彦首相の了承を得られなかった」ことを明らかにした
  (朝日)。多くの記事では、「指揮権発動相談」と表現して
  いるが、小川氏は「相談」などという言葉は使っていないし
  検事総長に対する指揮権は法相の固有の権限であって、権限
  行使に関して総理大臣に「相談」すべきことではない。「了
  承」が得られなかったという朝日新聞の表現が正しい。とは
  言え、小川氏が指揮権の「発動」という言葉を使い、それに
  ついて野田総理に「了承」を求めたことは事実である。虚偽
  報告書作成問題について検察の判断だけに委ねておいて良い
  のか、という問題提起としては評価できるが、この「発動」
  と「了承」に関しては、法相指揮権の本来の在り方にも関連
  する大きな問題がある。      http://bit.ly/M8XdtU
  ―――――――――――――――――――――――――――

小川敏夫元法相.jpg
小川 敏夫元法相
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月20日

●「検察審/さらなる検察の起訴手段」(EL第3614号)

 田代政弘検事(当時)が既に起訴されている石川知裕被告に事
情聴取ができたのは、2010年4月27日に第5検察審査会が
「起訴相当」を議決したからです。検察はそれを受けて再捜査を
行うことになり、その再捜査の一環として石川氏から事情聴取し
たのです。石川氏の録音はこのとき行われています。2010年
5月17日のことです。
 検察審査会は、ある被告について検察が不起訴処分を出したさ
いにそれを不服として申し立てを行う、いわば検察をチェックす
る機関であるといえます。この法律──検察審査会法によって、
検察官が独占している起訴の権限(公訴権)の行使に民意を反映
させ、また不当な不起訴処分を抑制することを期する制度であり
その趣旨は決して悪くはないのです。
 法案が作られるプロセスを考えると、議員立法以外は官僚機構
(検察審査会のような公訴権に関する法案は法務省)が作成する
ので、官僚たちにとって都合の悪い部分は、さまざまな抜け道を
用意して、事実上骨抜きにしてしまうことが多いのです。
 もちろん国会で法案は審議されますが、現在の審議の状況を見
る限りでは、法案のすべてに議員のチェックが入るわけではなく
まして官僚の作った抜け穴など、ほとんどの議員は見逃してしま
うはずです。検察審査会法は1948年にできた法律ですが、そ
の後何回も変更が行われており、法律によほど精通していない限
り、いくら法務に強い議員でも細部まではチェックできず、その
まま成立してしまうことが多いのです。
 そういう意味で、この検察審査会は検察にとってそれほど恐ろ
しいチェック機関ではないのです。むしろこの制度を悪用し、証
拠不十分で不起訴にせざるを得なかった容疑者を検察審査会の審
査によって強制起訴することも不可能なことではないからです。
小沢一郎氏の場合がまさにそれに該当します。
 「起訴相当」の議決が出ると、検察は再捜査はしますが、必ず
不起訴処分を出します。十分捜査・取り調べをしたうえでの不起
訴処分ですから、そうせざるを得ないのです。したがってこの再
捜査は儀式のようなものであるといえます。
 検察審査会の審査員は一般の国民から選ばれますが、多くは法
律の素人であるので、専門家として審査補助員の弁護士が指導や
解説を行うことになっています。さらに検察官も検察審査会に出
席して意見を述べることができるのですが、起訴相当を出された
側は出席することが一切できないのです。
 しかも、審査はすべてが秘密裏・非公開で行われ、審査員のメ
ンバーの選定、審査の経過は一切公表されないのです。いわば密
室裁判そのものです。ここが裁判員裁判と根本的に違う点です。
起訴議決を出された側は、何も抗弁する機会が与えられないので
すから、これではあまりにも不公平です。
 強制起訴に関しては、2005年の検察審査会法の改正により
2009年から実施されていますが、そのとき議員たちは、何を
していたのでしょうか。自民党が政権を失う直前のことであり、
まさか小沢氏を狙い撃ちをしたわけではないでしょうが、何とな
くきなくささを覚えます。
 検察審査会は、全国の地方裁判所と地方裁判所支部がある場所
に149ヶ所165会設置されています。検察審査会法第3条に
は「検察審査会は独立してその職務を行う」とありますが、実際
には最高裁の管轄のもとにあります。予算を管理するのは最高裁
であり、職員は裁判所のスタッフが出向しているのです。
 検察と裁判所は親戚のようなものです。もし審査補助員の弁護
士が検察側と気脈を通じている人物が任命され、検察側の提出す
る証拠や捜査報告書の内容、それらを説明する検察官の話し方な
どによって検察に有利な結論を得ることも可能なのです。
 審査補助員の弁護士がどのようにして決められ、どのような捜
査報告書が提出され、どのようにして審議が行われたかについて
は、すべてが秘密裏に行われ、公開されないのですから、検察は
何でもできるのです。明らかに検察に有利です。
 繰り返しますが、捜査報告書は検察の内部資料であり、公開さ
れないのです。どんなうそでも書くことができます。それは検察
の力では起訴できなかった小沢氏を「起訴相当」に誘導する狙い
があったと考えられます。既出の青木理氏はこの点について次の
ように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 一般的に言えば、検察が不起訴とした処分に対して検察審査会
 が「起訴相当」と議決するのは、当該の判断にあたった検察官
 にとって「恥」と受け止められる。検察官の判断は誤っていた
 と言われるに等しいからである。なのに東京地検特捜部はなぜ
 わざわざ検察審査会の「起訴相当」議決を誘発するかのような
 捏造報告書を作成し、提出したのか。答えはおそらく一つしか
 ない。検察組織としては有罪に持ち込むのはムリだと判断して
 起訴を見送ったものの、「市民目線」は小沢の訴追を求めてい
 ることを示したかった。もっと言うなら、躍起になって繰り広
 げた特捜検察の暴走捜査を「市民」は支持していたのだと満天
 下にアピールしたかった。歪み切った暴走検事たちの思い上が
 りだったが、東京第5検察審査会はその誤誘導にまんまと乗せ
 られてしまった。       ──宮崎学・辻恵・青木理著
   『政権崩壊/民主党政権とはなんだったのか』/角川書店
―――――――――――――――――――――――――――――
 検察にとっては、最初の「起訴議決」が重要だったのです。そ
こでとくに検察が検察審査会に提出する捜査報告書の内容にこだ
わったのです。そのため、内容を「小沢=クロ」の印象になるよ
う捏造したのです。
 このようなことが一検事にできるわけはなく、検察の組織的犯
罪であると見抜いた小川敏夫元法相は、指揮権発動を仕掛けよう
として、野田首相に罷免されています。これによって、検察は生
き残り、次の犠牲者が出かねない情勢にあります。議員はなぜ動
かないのでしょうか。今となっては誰も検察審査会法是正に動こ
うとしないのです。     ── [自民党でいいのか/36]

≪画像および関連情報≫
 ●小沢氏強制起訴に見る、検察審査会の危うさ/「誠」
  ―――――――――――――――――――――――――――
  小沢氏自身はかつてこう語ったことがある。検察が2度にわ
  たって起訴を断念したのだから「自分は真っ白」だと。しか
  し検察の起訴断念と「真っ白」とは同義ではない。「黒であ
  ることを公判で立証するのが難しい」ということが断念した
  理由である。だからこそ検察審査会が2度にわたって起訴相
  当とした。しかし検察審査会のあり方には強烈な違和感があ
  る。個人を罪に問えるのは、国家である。だから国家組織と
  しての検察庁が存在し、そこが組織としての判断に基づいて
  人に刑事責任を問う(もちろん国家が、それだけの正統性を
  もっていることが条件だ)。はるか昔には、小さなコミュニ
  ティが罪に問うたこともあるが、およそ近代国家では人を罪
  に問うのは国家に限られる。検察審査会とは一般市民から無
  作為に選ばれた人々が、検察庁という司法機関の判断に対し
  信用できないとか納得できないと異議申し立てをする機関で
  である。2005年の法改正前は、検察審査会の判断に強制
  力はなかった。検察は再度捜査した上で検察審査会の判断を
  無視することもできたのである。しかし今では検察の判断を
  超えて、起訴することが可能になった。これが強制起訴であ
  る。               http://bit.ly/g0seV3
  ―――――――――――――――――――――――――――

田代政弘元検事.jpg
田代 政弘元検事
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月21日

●「法相のクビをすげ替える野田首相」(EJ第3615号)

 このところテレビ朝日では、平日の午後の時間帯にドラマ『相
棒』を繰り返し放送しています。このドラマは台本が優れており
演技陣も充実しているので、何回見ても飽きはこないのですが、
3回〜5回ともなると、いささかうんざりします。
 『相棒』に限らず、いわゆる刑事ドラマには、ひとつのパター
ンがあります。それは、社会正義のため悪に立ち向かう優秀な刑
事(杉下右京警部と亀山薫巡査部長)と事件の解決よりも自分の
出世のことばかり気にして彼らの行動を邪魔する上層部(内村刑
事部長と中園参事官)との対立の構図です。
 実はこれは警察組織に限らず、どの省庁でも見られる官僚の世
界の醜い出世争いなのです。内村刑事部長や中園参事官が犯人を
逮捕して社会正義を貫くことよりも、どう振る舞えば自分の得点
になるか、どうすれば責任を取らないで済むかをいつも考えてい
るように、官僚世界の上層部は彼らに真に求められていることを
忘れているようです。もちろんすべての官僚がそうであるといっ
ているわけではありませんが・・・。
 2011年1月5日の検察庁は、正月にも関わらず、騒然とし
ていたのです。この日陸山会事件を巡る石川知裕衆院議員の公判
前手続きのなかで、石川議員の弁護側から東京地検特捜部が20
10年5月17日に石川氏を取り調べたときの状況をすべて録音
したテープとその録音反訳書が証拠として提出されたからです。
 公判担当検事が法廷から資料を持って戻り、上司に報告するや
特捜部長室に当の田代検事が呼ばれ、副部長など関係者が集まっ
て緊急会議が開かれています。まるで、『相棒』で小野田官房長
室に内村刑事部長、中園参事官が集まり、顔をしかめて鳩首協議
をしているシーンとそっくりの光景が、そのとき検察庁内で展開
されていたと思うのです。
 問題は検察がなぜこれほどまでに慌てたかです。実はこの時点
では、田代検事の作成した問題の捜査報告書は表に出ていないの
です。弁護側も捜査報告書の存在を掴んでいないし、その報告書
が検察審査会に提示された事実も知っていないのです。しかし、
検察では全員が知っていたのです。これは虚偽記載のある捜査報
告書の作成が組織ぐるみであったことをあらわしています。
 ここで野田政権になってからの法務大臣の異動について述べる
必要があります。2011年8月に菅内閣は終り、野田内閣が発
足します。今にして思えば、菅内閣もひどかったが、野田内閣も
史上最低の内閣であったといわざるを得ないのです。
 野田内閣のやったことの最も許されないことは、自民党と組ん
で消費税増税法案を成立させたことです。これによって民主党は
分裂し、さらに2012年末の無謀な解散・総選挙によって民主
党を崩壊させたことです。それに加えて、石原前都知事の挑発に
乗って尖閣諸島を国有化することによって、中国との関係を悪化
させ、ほとんど修復不能の状態に追い込んだことです。しかし、
野田氏はこれらのことを何ら反省していないようです。
 野田内閣発足のさい、法務大臣には平岡秀夫氏が就任していま
す。ところが平岡法務大臣は、2012年1月13日の内閣改造
を隠れ蓑に罷免されているのです。なぜ、罷免されたのかについ
ては、一切報道されていないのです。
 平岡秀夫氏は、死刑制度の反対論者です。野田首相はそういう
人を法務大臣に任命したのです。果たせるかな、平岡法相は死刑
制度の存続を議論する有識者会議を立ち上げようとしたのです。
 いうまでもなく法務省は死刑制度存続の方針です。ですから、
こういう場合、法務省は国民受けのいい人物をメンバーに数人入
れるものの、全体的には間違いなく役所の意図する結論になるメ
ンバーを主導して選定するのが普通です。しかし、平岡法相はメ
ンバーの人選に自分の意見を通そうとしたのです。
 これはきわめて非自民党的対応です。自民党なら、役所にまか
せて口出ししないからです。平岡氏は法務大臣であり、自らの信
ずることをやればいいのです。しかし、平岡法相は、何も落ち度
はないのに、2012年1月13日に罷免されるのです。目立た
ないように、このとき問責を受けていた2人の大臣と一緒に辞任
させられたのです。事実上の罷免です。
 平岡大臣のやろうとしていることを法務省の高官が野田首相に
訴えて、平岡法相の首を切らせたのです。そして、その平岡秀夫
氏の後任として、小川敏夫氏が法務大臣に就任したのです。この
ように、野田首相は官僚のいうことをそのまま受け入れる最低の
総理大臣であったといえます。
 小川敏夫元法相は、平岡法相辞任の状況を次のように自著で述
べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 法務大臣就任後、法務省高官に「平岡さんは何か問題があった
 のか」と聞いたところ、「平岡さんが死刑に関する審議会を法
 務大臣権限で立ち上げようとしたことが官邸で問題視されたよ
 うですよ」と耳打ちしてくれた。「官邸が、と言うけども、そ
 ういうことを法務省が上げなければ官邸だって知らないことだ
 ろう」と言葉を返すと、高官は軽く笑みを浮かべたまま何も答
 えなかった。私の指摘通りだから、話はその程度にしましょう
 ということだ。              ──小川敏夫著
   「指揮権発動/検察の正義は失われた」/朝日新聞出版刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 このように官僚は自らの支配領域に政治家を絶対に立ち入らせ
ないのです。それを突破できる政治家は、どのように考えても、
小沢一郎氏しかいないのです。それを一番よく知っているのが官
僚自身なのです。そうでなければ、官僚組織が非常に危ない橋を
渡ってまで、小沢潰しはやらないからです。
 法務大臣に就任した小川敏夫氏は、他のボンクラ大臣と違って
彼なりに、検察のあり方の正常化に向けて努力しています。しか
し、虚偽捜査報告書の不祥事を隠蔽しようとする法務・検察に勝
てず、またしても野田首相によって、罷免させられてしまうので
す。一体この総理は何人法務大臣のクビを切れば、気が済むので
しょうか。ひどい総理大臣です。─ [自民党でいいのか/37]

≪画像および関連情報≫
 ●増え続ける死刑囚/「執行なければ事件は終わらない」
  ―――――――――――――――――――――――――――
  死刑執行が止まる中、膨れあがる一方の確定死刑囚。平岡秀
  夫法相は死刑制度について「考えを整理したい」「国民的な
  論議を呼びかけたい」などと繰り返し、9月の就任以降、慎
  重な姿勢を貫いている。民主党政権になって法相は次々と交
  代した。法相個人の意思で執行が止まっている現状に犯罪被
  害者や遺族からは刑事訴訟法の改正を求める声も出始めた。
  今月2012年12月19日、法務省内で開かれた「死刑の
  在り方についての勉強会」。死刑廃止国のイギリス、フラン
  スの専門家が、廃止の経緯や現状などの説明を行い、平岡氏
  らが熱心に聞き入った。死刑執行がストップしている間、法
  務省内で続けられてきたのが、この勉強会だ。昨年8月、当
  時の千葉景子法相が「国民的議論の契機としたい」と設置し
  計10回開かれたが、進展はない。法曹関係者からは「勉強
  会は執行しないための時間稼ぎにすぎないのでは」との声も
  上がる。平岡氏は27日の閣議後会見で、「勉強会が何らか
  の結論を出す性格のものではない以上、個々の問題をしっか
  り考えていかなければならない」と述べ、勉強会を開く間も
  執行に含みを残したが、真意は不明だ。
                   http://bit.ly/tzCVWL
  ―――――――――――――――――――――――――――

平岡元法相.jpg
平岡元法相
posted by 平野 浩 at 08:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月22日

●「なぜ虚偽捜査報告書を作成したか」(EJ第3616号)

 陸山会事件の流れを振り返ってみます。政治資金収支報告書の
虚偽記載の容疑は次の2つがあるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.2004年/2005年分の虚実記載
     2.      2007年分の虚実記載
―――――――――――――――――――――――――――――
 04/05年分の虚実記載は、世田谷の土地の代金支払いと登
記の期ずれ問題であり、07年分の虚偽記載は、小沢氏に4億円
を返却したさいの記載漏れなのです。
 これらの帳簿の記載漏れだけの容疑で、特捜部は国会議員を含
む3人の小沢氏の元秘書を逮捕し、起訴したのです。小沢氏に関
しては、その両方の記載漏れに関与したのではないかとの疑いで
何度も事情聴取され、そのつどメディアが大袈裟に報道し、小沢
氏の評判を地に貶めたのです。
 しかし、世間では新聞のデタラメ報道によって、小沢氏が西松
建設や水谷建設から巨額の不正献金を受けた容疑で取り調べを受
けていると思っていたはずです。いや、今もそのように思ってい
る人がたくさんいるでしょう。
 2010年2月4日、特捜部は、04/05年分の虚実記載は
小沢氏に対しては「嫌疑不十分」で不起訴処分にしています。し
かし、一週間後の2月12日にある市民団体(といっても1人)
が、小沢氏への不起訴処分は不当であるとして、東京第5検察審
査会に審査を申し立てています。この工作は誰でもできます。お
そらくその1人の市民団体は検察とつながりのある人物であると
思われます。
 2月23日、特捜部は、07分の虚偽記載も小沢氏に関しては
「嫌疑不十分」で不起訴処分を出しています。ところがしつこい
ことに、これに対してもその後誰かが、東京第1検察審査会に審
査の申し立てをしています。
 そして4月27日に東京第5検察審査会は小沢氏について「起
訴相当」を議決しています。特捜部としては、ここまでは筋書き
通りと考えていたと思います。
 「起訴相当」の議決が出ると、検察はもう一度再捜査をしなけ
ればならないのです。そのため、5月15日に特捜部は小沢氏か
ら事情を聞いています。そして、5月21日に特捜部はまたして
も不起訴処分を出しています。こうなると、世間は何が何やらわ
からなくなります。あんなに何度も調べられているのだから、よ
ほど悪いことをしたのだろうと誰でも思います。
 なお、東京第1検察審査会は、07年分の虚偽記載容疑に関し
て「不起訴不当」の議決を行っています。この議決も特捜部は再
捜査しなければならないので、9月18日に小沢氏から4回目の
事情聴取を行い、9月30日に特捜部は不起訴処分を出します。
これによって07年分の虚偽記載容疑審査は終了し、この容疑に
関する小沢氏の不起訴はやっと確定したのです。
 問題は、同じ東京第5検察審査会がもう一度「起訴相当」を出
さないと、小沢氏を強制起訴できないのです。意図的にそれを狙
うとなると、検察審査会に対して相当の工作をしないと強制起訴
は実現しないことになります。第1回目の「起訴相当」を出した
審査員とは違うメンバーによる議決になるので、「不起訴不当」
になる可能性もあったのです。
 その工作の第1段が5月17日の石川知裕氏の取り調べです。
「虚偽記載に関して小沢の関与を決定づける証言を引き出す必要
がある」ということで取り調べが行われたのです。しかし、そこ
で石川氏による隠し録音が行われたのです。これは特捜部の大誤
算になったのです。
 石川氏への取り調べの結果、田代政弘検事は、その後上司に提
出した捜査報告書に次の事実を記載しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 私(引用者註・石川のこと)が、「収支報告書の記載や定期預
 金担保貸付については、私自身の判断と責任で行ったことで、
 小沢先生は一切関係ありません」などと言い張っていたら、検
 事から、「貴方は11万人以上の選挙民に支持されて国会議員
 になったんでしょ。そのほとんどは貴方が小沢一郎の秘書だっ
 たという理由で投票したのではなく、石川知裕という候補者個
 人に期待して国政に送り出したはずですよ。それなのに、ヤク
 ザの手下が親分を守るために嘘をつくのと同じようなことをし
 ていたら、貴方を支持した選挙民を裏切ることになりますよ」
 と言われちゃったんですよね。これは結構効いたんですよ。そ
 れで堪えきれなくなって小沢先生に報告しました、了承も得ま
 した、定期預金担保貸付もちゃんと説明して了承を得ましたっ
 て話したんですよね。(原文ママ)
                ──宮崎学・辻恵・青木理著
   『政権崩壊/民主党政権とはなんだったのか』/角川書店
―――――――――――――――――――――――――――――
 この捜査報告書によれば、明らかに石川氏は小沢氏に対して報
告し、了承を取っています。まさに動かぬ証拠です。しかし、石
川氏の録音によると、この部分は存在しないのです。つまり、田
代検事による完全な作文ということになります。
 政治資金収支報告書の虚偽記載で捜査している検事が捜査報告
書の虚偽記載を行い、被疑者を有罪にしようとしているのです。
政治資金収支報告書の虚偽記載(といってもこれは虚偽記載でも
記載ミスでもない)は形式犯かもしれませんが、捜査報告書の虚
偽記載は重罪です。もし、石川氏があのとき隠し録音をしていな
ければ、小沢氏は確実に有罪になっていたと思われます。
 証拠改ざんのあの前田検事によると、捜査報告書は田代検事の
一存で書かれたものではなく、上司の指示で書かかされたもので
あるとネット上で匂わせているそうです。
 しかし、2011年1月の時点でこの捜査報告書はオープンに
なっていないのです。このまま黙っていればそれで終りと検察幹
部は胸をなで下ろしたことでしょう。検察審査会は秘密裁判だか
らです。          ── [自民党でいいのか/38]

≪画像および関連情報≫
 ●「泥」にまみれた正義の使者──法務・検察
  ―――――――――――――――――――――――――――
  法務・検察も無傷では済まなかった。東西の特捜検察の奥底
  に埋蔵されていた「地雷」が、相次いで火を噴いたからであ
  る。長きにわたり、まるで「正義の使者」かのように崇めら
  れてきた法務・検察組織にとっては、未曽有の事態が出現し
  たといっていいだろう。最初の「地雷」は西の特捜=大阪地
  検特捜部で火を噴いた。菅政権が発足した時から数えれば、
  約3ヵ月後にあたる9月10日、大阪地裁では午後2時から
  注目の判決が言い渡され法務・検察に激震が走った。大阪地
  検特捜部が虚偽公文書作成などの容疑で逮捕、起訴していた
  厚労省元局長・村木厚子の判決公判で無罪が言い渡されたか
  らである。公判の過程で杜撰な捜査の実態が次々露呈し、検
  察立証の柱となる調書の証拠採用が軒並み却下されていたか
  ら、十分予想された判決ではあったものの、特捜検察が大々
  的な捜査を繰り広げた事件での完全無罪は法務・検察の顔色
  を失わせた。        ──宮崎学・辻恵・青木理著
   『政権崩壊/民主党政権とはなんだったのか』/角川書店
  ―――――――――――――――――――――――――――

代表辞任を発表する小沢一郎氏.jpg
代表辞任を発表する小沢一郎氏
posted by 平野 浩 at 04:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月23日

●「捜査報告書はなぜ明るみに出たか」(EJ第3617号)

 田代政弘検事の取調べの一部始終を石川知裕氏が録音したのは
2010年5月17日のことです。その取り調べのなかには捜査
手法上問題になるところが多くあり、石川弁護団としては、この
内容を精査し、2010年12月15日に録音の反訳書を証拠と
して採用するよう裁判所に求めたのです。検察側が録音の反訳書
の存在を知ったのはそのときがはじめてです。
 しかし、そのとき石川弁護団は、それに基づく捜査報告書があ
り、それが第5検察審査会に捜査資料として提出されていたこと
を知らなかったのです。ただ、録音反訳書の存在を知った検察が
あまりに驚愕したのを不思議に思っていたのです。
 一方東京地検特捜部側は、「これはまずい」と思ったのです。
上から下まで捜査報告書──田代政弘検事の捜査報告書とそれを
ベースとした斉藤隆博特捜部副部長の捜査報告書の内容を知って
おり、録音反訳書の中身と合致しない、すなわち虚偽部分がある
ことを知っていたからです。
 しかし、捜査報告書はこの時点では表に出ていないのです。捜
査報告書は内部資料であり、公表する必要はないし、検察審査会
は秘密裁判だから、その提出資料は公表されない──そう考えて
検察はだんまり作戦でことを収めようとしたのです。
 しかし、これは検察側の大誤算だったのです。それは、小沢氏
が2011年1月31日に強制起訴され、小沢側弁護団が強制起
訴の判断材料になった特捜部の第5検察審査会への提出資料の全
面開示を求めたからです。
 小沢弁護団は、強制起訴そのものが違法であると主張しており
その判断資料の開示を求めるのは当然のことです。まして小沢弁
護団は弘中惇一郎弁護士を主任とする強力な弁護団であり、検察
審査会へは何らかの捜査報告書が提出されているに違いないと見
て、全資料の開示を求めたのです。
 これに対して検察官役の指定弁護士は拒否しましたが、小沢弁
護団は裁判所にそのことを強く訴えた結果、裁判所からの要請で
指定弁護士は検察が検察審査会へ提出した全資料を開示せざるを
得なかったのです。ここで、はじめて田代検事と斉藤副部長の捜
査報告書の存在が明らかになったのです。
 この場合、検察が起訴した裁判であったなら、裁判所に何をい
われても、捜査報告書は提出しなかったはずです。なぜなら、も
し虚偽捜査報告書が明らかになれば大不祥事になり、検察が崩壊
しかねなかったからです。しかし、小沢裁判は検察審査会による
強制起訴であって、相手が検察官役の指定弁護士だったから、表
に出てしまったのです。彼らが命がけで守らなければならないも
のではなかったからです。
 捜査報告書が表に出ると、広がるのも早かったのです。田代捜
査報告書などはネットを通じて広がり、私自身も全文手に入れて
います。さすがの新聞もこれを大きく伝えたので、検察がこうい
うデタラメな捜査報告書を作って罪のない人を犯罪人にしている
ことが分ってしまったのです。
 当然法務・検察は防衛本能を発揮して、組織を守ろうと動き出
したのです。2012年1月に法務大臣になった小川敏夫氏は、
虚偽捜査報告書について、法務省の高官にそのことを聞いていま
す。そのやり取りをご紹介します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小川:捜査報告書と録音を比べてみれば、虚偽としか言えない
    んじゃないか。
 高官:ま、そこはいま検察のほうで、しっかりと検討している
    と思いますが。記憶違いと言っているものを嘘だと断定
    するのもなかなか難しいところがあると思います。
 小川:それでは国民は納得しない。比べてみれば誰でも嘘だと
    思う。国民の理解を得られないと検察の信頼はますます
    地に落ちてしまう。
 高官:検察も努力していると思いますが、大臣もおわかりのよ
    うに、嘘だと完全に立証しなければ立件できません。
 小川:国民に事実を明らかにして声を聞いてみたらどうか。
 高官:なにぶんにも捜査資料ですから、公表はちょっと。
 小川:検察の信頼を回復するためには事実を明らかにすること
    が大切だ。田代検事だって正義感に燃えて検事になった
    んだろう。検察の使命を説いて説得すれば、話すんじゃ
    ないか。
 高官:そこがなかなか。
 小川:裁判所の指摘も随分と厳しいし、週刊朝日が特報した記
    事(田代検事の虚偽捜査報告書と5通の捜査報告書につ
    いて検察審査会の議決誘導疑惑を報じたもの)も的を射
    ているじゃないか。それが国民の受け止め方だと思う。
 高官:大臣の考えは、改めて検察に伝えておきます。
    ──小川敏夫著「指揮権発動/検察の正義は失われた」
                      朝日新聞出版刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 法務省高官は防戦一方です。田代捜査報告書にある「ヤクザの
子分が親分をかばうなんて」といっておきながら、法務・検察全
体がそれと同じことをして、田代検事には不起訴処分(検察審査
会も捜査終了)を下す一方で、石川氏をはじめとする小沢3元秘
書全員を有罪(石川氏のみ最高裁に上告)にしているのです。こ
んなことを許せるでしょうか。
 官僚は組織を守るためには何でもするのです。ヤクザもそれは
同じです。田代元検事がヤクザを例にとって表現したのは、自分
たちがいつもやっていることを書いたまでです。ところで、田代
氏はまた告発されたそうです。何回やっても結果は同じでしょう
が、これは国民が怒っていることのあらわれです。
 官僚組織の広報紙に成り下がっている大メディアは、こういう
検察の許されざる不正を糾弾しませんが、いずれ信用が失墜して
経営不振になり、アマゾンあたりに買収されてしまうのではない
でしょうか。いずれにせよ日本は官僚機構の大改革が必要ですが
自民党では駄目です。    ── [自民党でいいのか/39]

≪画像および関連情報≫
 ●虚偽報告書事件の隠蔽捜査について/前田恒彦元検事
  ―――――――――――――――――――――――――――
  昨年(2012年)の5月8日。満期出所が1週間後に迫った
  私は、配役先の静岡刑務所・図書計算工場で担当刑務官らに
  謝辞を述べた後、釈放前教育用の独居房に移った。ここは、
  教育ビデオを見たり、必要書類を作成したり、不要品を処分
  するなど、刑務所における最後の反省の時間を一人静かに過
  ごすところだ。その矢先の午後1時すぎころ、「取調べだ」
  と言われて刑務官から突然呼び出され、事務棟にある取調べ
  室に向かうこととなった。受刑者には事前に何の情報も伝え
  ないというのが刑務所のルールだから、誰が何のために来た
  のか全く分からない。すると、取調べ室には2名の男性がい
  た。私のよく知る中村孝検事と、初めて見る東京地検の若い
  検察事務官だった。この中村検事は、検察の序列で言うと私
  の6期上であり、先輩に当たる。九州出身。細身だが、当た
  りは柔らかい。東京地検特捜部にも通算で2年在籍し、元建
  設大臣による受託収賄事件など、著名事件の捜査に携わった
  経験もある。また、国税や証券取引等監視委員会と並ぶ「特
  捜部の兄弟組織」の一つである公正取引委員会への出向歴も
  ある。上意下達やストーリー先行といった「東京特捜方式」
  を十分に知り尽くした人物だ。   http://bit.ly/14ewyow
  ―――――――――――――――――――――――――――

小川元法相の本.jpg
小川元法相の本
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月26日

●「退任会見で本音を語る小川元法相」(EJ第3618号)

 2012年6月4日の午後、法務省内において、小川敏夫法務
大臣は退任記者会見を開いたのです。実は、小川法務大臣はその
翌日5日午後4時30分に野田首相に会うためのアポイントメン
トを取っていたのですが、前日の4日に電撃的に法務大臣の職を
解かれたのです。
 5日に小川法相が野田首相と会う目的は、検察に対して指揮権
を発動することを改めて伝えるためであり、そのことがわかって
いた野田首相は小川法相を罷免したのです。
 小川敏夫氏が法務大臣に就任したのは、2012年1月13日
のことであり、就任後わずか4ヵ月4日後の罷免です。法務大臣
としての職責には何も問題はなかったので、明らかに指揮権発動
を口にしたために罷免されたことは明らかです。
 小川法相は2012年5月11日に野田首相と会い、指揮権発
動をする必要があることを伝えたところ、野田首相は「しばらく
考えましょう」と反対していたことは既に述べています。
 おそらく野田首相は、その後、法務省関係者を呼んで事情を聞
いたか、あるいは法務省高官が野田首相を密かに訪ね、小川法相
の指揮権発動を止めて欲しいと請願したものと考えられます。
 常識から考えれば、被疑者の取り調べの後で、検事が上司に提
出する捜査報告書が捏造されていたという事実は、大阪地検の証
拠改ざん事件のあった直後のことだけに、法務大臣としてはもち
ろんのこと、総理大臣としても絶対に見逃してはならないことで
あり、指揮権を発動すべきだったのです。
 まして、その捏造捜査報告書が、小沢一郎氏を強制起訴した第
5検察審査会に捜査資料の一部として提出されていたことを考え
ると、小沢氏はその捜査報告書によって強制起訴されたともいえ
るのです。このような検察の振る舞いを国のトップとして容認す
ることは本来ならできないことです。
 それにこの時点では小沢氏は民主党を離党しておらず、野田氏
にとって小沢氏は同じ党の仲間なのです。もし、この件で野田首
相が小川法相の指揮権発動を認めていれば、それは小沢氏にとっ
てはもちろんのこと、民主党にとってもイメージ回復に資するこ
とは確かであったのです。
 したがって、野田首相の腹のなかでは、消費増税で反対された
腹いせもあり、このさい小沢氏を潰しておこうという気持があっ
たものと考えられます。小沢氏にとってプラスになることはひと
つもやりたくないと考えたのでしょう。愚かな宰相です。
 このまま処置を検察に任せると、検察としては捏造捜査報告書
の件は、田代検事の記憶の混同として懲戒処分で済ませ、幕引き
を図るに決まっています。事実検察はそれをやっていますが、野
田首相はそれを助けたのです。政治主導が聞いてあきれます。
 しかし、野田首相は就任4ヵ月でどこにも落ち度のない小川法
相を罷免するのは苦労したはずです。基本的には、問責決議を受
けている田中直紀防衛大臣と前田国土交通大臣を交代させるとい
う名目でついでに小川法務大臣も切られたのです。しかし、小川
大臣には落ち度はない。そこで密かに何か探せということで出て
きたのが、委員会室でケータイで競馬サイトを見ていたことが大
袈裟に報道されたのです。しかし、これは「委員会中」ではなく
「委員会前」に40秒ほど見ていたに過ぎず、大臣の罷免に値す
るものではないのです。小川氏自身はこれについて次のように述
べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 そのとき私は党首討論に遅れないよう早めに委員会室に向かっ
 たところ、開会の14分前に着いてしまった。閑散とした室内
 で何気なく、私は携帯端末を取り出し、競馬サイトを開いた。
 競馬をやる、すなわち馬券を買うためではない。私は趣味で競
 走馬を持っているが、その日が水曜日で週末にレースに出場す
 る予定の愛馬の調教日だつたので、サイトでその調教を確認し
 た。iモードから「メニュー」→「マイページ」→「競馬サイ
 ト」→「登録馬情報」→「馬検索」→「調教」と進み、調教時
 計を確認して終わり。時間にして40秒ほどである。委員会が
 始まる13分ほど前のことであり、私は非難の集中砲火を浴び
 なければならないような行為ではないと思っているのだが、マ
 スコミには大きく取り上げられた。     ──小川敏夫著
   「指揮権発動/検察の正義は失われた」/朝日新聞出版刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここで話を小川法相の退任記者会見の場面に戻します。法務大
臣としての最後の会見に小川法相は、ある覚悟を秘めて臨んだの
です。会見は、穏やかな雰囲気で始まり、ある程度進んだところ
で、記者から「大臣としてやり残したことは?」という質問が出
たので、小川氏は次のように口火を切ったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 検察に対する国民の信頼が大きく傷ついています。検察が身内
 に甘い、適当な形で幕引きをしてしまうということがあれば、
 国民の信頼回復は得られないのではないか、と非常に心配しま
 した。そうした中で、私自身は指揮権の発動ということを決意
 したのでありますが、総理の了解を得られないということで、
 大変残念に思っております。  ──小川敏夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 会見場の雰囲気は一変したのです。法務省の高官は口をへの字
に結び、何人かは席を立ったのです。さらに、小川法相は、捜査
報告書は明らかに捏造であり、指揮権の発動は慎重であるべしと
の意見もあるが、検察内部の事件に対し検察が消極的対応をして
いる場合には、むしろ積極的に指揮することが、法務大臣の職責
であると一気に発言したのです。
 その後、小川氏は多くの職員に見送られて法務省を出ています
が、多くの記者が小川氏を取り囲んで質問を続けたのです。しか
し、小川氏はそれに一切応じようとはしませんでした。そして、
新しい法相は、再び滝実氏が任命されたのです。しかし、法務・
検察当局は、早くも対策を協議して小川氏への反撃を開始しはじ
めたのです。        ── [自民党でいいのか/40]

≪画像および関連情報≫
 ●「なぜ、クビになったかわからない」/小川元法相
  ―――――――――――――――――――――――――――
  現在も余波の続く6月4日の小川敏夫前法相「指揮権発動」
  発言──小川氏は、小沢一郎氏の陸山会事件をめぐり、東京
  地検特捜部の田代政弘検事(当時)が虚偽の捜査報告書を作
  成したとされる問題について指揮権の発動を決意したが、総
  理の了承を得られなかったと述べた。多くのメディアは政治
  と検察の均衡を損なうとして批判的に報じている。その真意
  をジャーナリスト・青木理氏が質した。
  ――昨年末、関係者の間では麻原死刑囚の執行も間近と取り
  ざたされていました。
  小川:僕の大臣就任はオウムの平田(信)が逮捕された後の
  1月13日。その前には一切麻原の件には関わらなかった。
  その後逃亡犯が次々と出てきたからとりあえず消えたんじゃ
  ないか。でも実際、彼らもやりたかったと思うよ。共犯者の
  裁判が終わり舞台が整ったなんてことが新聞で盛んに流され
  ていましたから。あのマスコミへのリーク情報を見ると、執
  行への環境作りをしようとしたとしか思えない。
  ――小川さんの(指揮権)発言に対しても大手紙から一斉に
  批判がでました。
  小川:各社横並びの記事ですよ。法務官僚が総力をあげて法
  務記者クラブに吹き込んだのでしょう。
  ――田代検事が不起訴になったら検察審査会にかければよい
  との社説(朝日)もありました。とはいえ、検察が捜査をす
  るつもりがなければ証拠も何もない。
  小川:そうですし、検察審査会は捜査機関じゃない。僕は今
  回の発言を政治介入だと批判記事を書いた記者に聞きたいで
  すよ。          つづき/http://bit.ly/1d7CU3p
  ―――――――――――――――――――――――――――

退任会見の小川元法相.jpg
退任会見の小川元法相
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月27日

●「他の省庁と異なる法務省の特殊性」(EJ第3619号)

 退任記者会見で小川元法相が指揮権発動の話をした次の日の新
聞は、小川法相への非難の嵐だったのです。しかし、報道は一回
限りで、以後は一切なかったのです。法務省としては、この話題
は何が何でも隠蔽したかったからです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     「慎重さ欠く『指揮権』発言」
     「指揮権発動発言 あまりにも軽すぎる」
     「法相の指揮権 見識欠く危うい発言だ」
                      ──小川敏夫著
   「指揮権発動/検察の正義は失われた」/朝日新聞出版刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 これらの報道は、法務官僚が法曹記者クラブにリークして書か
せたものです。小川氏がある新聞社の論説委員に聞いたところ、
「現場(法曹記者クラブ)が、こう書いてくれなければ困る」と
編集部に必死で頼んできたそうです。
 法務大臣の持つ最高の権限である「指揮権」について考える前
に法務省がどういう役所なのかについて知っておく必要がありま
す。なぜなら、この役所ほど、一般国民の知らないことが多い役
所はないからです。
 小川敏夫という政治家は、裁判官、検察官、弁護士の3つを経
験している珍しい存在です。弁護士や検察官出身の政治家は多数
いますが、裁判官までやっている人はあまりいないからです。そ
ういう意味で、小川氏の本を読むと、一般には知られていない法
務省の特殊性が見えてきます。
 まず、裁判官、検察官、弁護士の関係について、小川氏は次の
ように解説しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 裁判所は、一般的には検事の証言を重要視する。裁判官と検事
 は、弁護士と同じ司法試験に合格して法曹資格を取得した者の
 中から任命される。しかし、弁護士はビジネスであり、いわば
 金儲けだ。検事は、金儲けを捨てて社会正義を実現する信念を
 持った者が任官する。裁判官から見れば、検事は自分たちとは
 職は違っても社会の正義を実現する同じ仲間なのだ。
                ──小川敏夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここで重要なことは、裁判所は検事の証言や証拠を最も重視す
るという点です。裁判所は検事を社会正義を実現する信念を持つ
仲間と考えるからであり、それだけ弁護側は不利になります。
 この関係が成り立つのは、検事は不正なことは絶対にしないと
いう前提が必要です。しかし、最近の検事を見ると、必ずしもそ
うであるとはいい切れないのです。陸山会事件の秘書裁判は、こ
の関係が悪い方向に働いていると思います。これはきわめて由々
しき問題です。
 続いて、法務省と検察庁の関係です。これについて、小川氏は
次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 検察庁は法務省に属する組織だが、独立性を与えられた組織で
 ある。この両者の関係はどうなのかといえば、「一体」とみな
 していいだろう。法務省は、事務次官、官房長といった最高幹
 部をはじめ、幹部職員のほとんどが検事で占められている。そ
 して検事の最高ポストは検事総長である。ほかの省庁と違って
 法務省最高ポストの事務次官は、検事総長に上り詰めるまでの
 一つの通過点でしかない。主要な人事も検事総長が主導する。
 事務次官が必ず検事総長になれるわけではないが、事務次官か
 ら地方の高等検察庁検事長に転出した後に東京高等検察庁検事
 長に納まれば、「検事総長」のポストを待つことになる。
                ──小川敏夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 驚きなのは、法務省の最高幹部や幹部職員のほとんどが検事で
あるということです。これはある意味において当然のことですが
一般には知られざることです。
 それから、各省庁の事務次官といえば、その官僚組織のトップ
ですが、法務省の場合は、トップは検事総長であって、法務省の
事務次官は検事総長の待ちポストであるということです。これに
よって法務省はかなり特殊部落であるといえます。
 それでは「検事総長」とは何者でしょうか。検事総長には2つ
のルートがあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
           1.赤レンガ派
           2.叩き上げ派
―――――――――――――――――――――――――――――
 「赤レンガ派」とは、法務官僚を務めた検事が事務次官を経て
検事総長になるケースであり、現在の小津博司検事総長がこのタ
イプに該当します。なぜ、「赤レンガ」かというと、法務省の建
物が赤レンガ造りであるからです。
 「叩き上げ派」とは、検察現場上がりの検事総長です。小津検
事総長の前任の笠間治雄氏はこのタイプの検事総長です。これま
での叩き上げ派の代表格は、今年6月23日に亡くなった吉永祐
介氏です。東京地検特捜部副部長のときにロッキード事件を仕上
げた名検事総長といわれています。
 法務省はこういう役所なのです。普通の行政官庁であれば、大
臣の権限は絶対です。大臣に力があれば、事務の中身についても
自ら指示ができるのです。
 しかし、法務省の場合、組織上は検察は法務省の一部組織では
ありますが、法務大臣が直接指示できないようになっているので
す。なぜなら、刑事捜査や公訴の提起と遂行が、刑事司法に準じ
る位置付けになっているからです。つまり、独立性が保障されて
いるといえます。
 かつてある法務大臣が「法務大臣なんか誰でもできる」といっ
て罷免されましたが、あまり積極的にやろうとしなければ、誰で
も大臣が務まる役所なのです。── [自民党でいいのか/41]

≪画像および関連情報≫
 ●小川敏夫著『指揮権』/朝日新聞出版刊の書評/栗下直也氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「指揮権」。政治経済の教科書に出てくる「あれ」である。
  検察は独立性を保障されているが、法務大臣は個々の事案で
  は検事総長を指揮できると検察庁法14条は規定している。
  過去に発動されたのは戦後一度のみ。1954年、世に言う
  「造船疑獄事件」で、後の首相である佐藤栄作氏に対する逮
  捕状請求を当時の法務大臣が無期限に延期するように指揮し
  た。その指揮権が実は50年以上の時を経て、昨年6月5日
  に発動される可能性があった。当時の法務大臣は野田佳彦首
  相(当時)に指揮権発動を打診、準備を整えていたが、指揮
  を決めていた一日前の4日に解職される。「本当かよ」と思
  われる人もいるだろうが、本当だ。本書の著者は当時の法務
  大臣である小川敏夫氏なのだから。(中略)指揮権発動を検
  討するとは、どれほどでたらめだったのかが気になるところ
  だろう。そこが本書の読みどころのひとつである。本書には
  でたらめだらけの報告書、取り調べを一部隠し録りしたデー
  タをテキスト化した文書の両方が掲載されており、読み比べ
  られる。もちろん、捜査報告書のずさんさは著者が本文内で
  端的に指摘しており、検察のめちゃくちゃな行動が白日のも
  とにさらされている。いずれの文書も読まなくても理解でき
  るのだが、隠し撮りの文書は本書全316ページ中134ペ
  ージもあるのだから嫌でもペラペラとめくりたくなる。私の
  ような暇人にはたまらない。「検察は取調べ対象者からこの
  ような誘導で言葉を引き出そうとしているのか」など敏腕検
  事の手の内を見られるだけで純粋に興味深い。
                   http://honz.jp/25713
  ―――――――――――――――――――――――――――

小津博司検事総長.jpg
小津 博司検事総長
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月28日

●「犬養法相の指揮権発動に疑問あり」(EJ第3620号)

 田代政弘元検事の作成した虚偽捜査報告書事件について法務検
察当局はどのように処理したのでしょうか。
 東京地検が2010年5月17日に行われた石川知裕氏の取り
調べの全録音の反訳書があることを知ったのは、2011年1月
7日のことです。
 この時点で石川氏に関する捜査報告書の存在を知っていたのは
当の東京地検特捜部だけだったのです。したがって、東京地検は
反訳書の存在に驚愕したのです。そこでその日のうちに反訳書を
入手し、検討に入ったのです。
 捜査報告書と反訳書を突き合わせてみると、多くの齟齬が発見
されたので、田代政弘元検事から事情を聞くなど、部内調査を行
い、1月12日には捜査報告書の記載の齟齬は田代検事の記憶の
混同から生じたもので、犯罪性はないと判断しているのです。そ
してその顛末を13日に東京高検、最高裁に報告し、了承されて
いるのです。
 驚くべきことに、たったの一週間で「犯罪性なし」として、上
司への報告を済ませているのです。この処理は部内処理であり、
当時公表されていないのです。しかし、これによって捜査報告書
に虚偽記載があったことを法務検察の上層部は、2011年1月
13日の時点ですべて知っていたことになります。
 その後、市民団体から刑事告発されていた田代検事に「嫌疑不
十分」として「不起訴処分」を下したのは2012年6月27日
のことであり、当日に人事処分として関係者に懲戒処分を課して
最終処理をしています。
 実はその2ヵ月前に東京地検にとって重要な判決が下されたの
です。2012年4月26日、東京地裁は、強制起訴された小沢
一郎被告に無罪判決(一審判決)を出したのです。
 そのさい、異例なことですが、判決は虚偽捜査報告書について
次のように検察を厳しく批判したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 検察官が、任意性に疑いのある方法で取調べを行って供述調書
 を作成し、また、事実に反する内容の捜査報告書を作成し、こ
 れらを送付して、検察審査会の判断を誤らせるようなことは、
 決して許されないことである。事実に反する内容の捜査報告書
 が作成された理由、経緯等の詳細や原因の究明等については、
 検察庁等において、十分、調査等の上で、対応がなされること
 が相当であると言うべきである。      ──小川敏夫著
   「指揮権発動/検察の正義は失われた」/朝日新聞出版刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 裁判所にこれほど厳しくいわれても、法務検察は何らひるむこ
となく、虚偽捜査報告書事件の幕を早々と引いたのです。それを
野田首相は、指揮権を発動して検察の不法な捜査手法を正そうと
した小川法相を切って検察の幕引きを助けたのです。
 昨日のEJで述べたように、他の行政官庁と違って法務省は、
刑事捜査や公訴権の提起と遂行の関係から「独立性」が保障され
ており、法務大臣が直接指示できる構造になっていないのです。
しかし、法務検察がいくら独立性が保障されているとはいえ、ど
こからもチェックが入らなくては、強大な権力組織である法務検
察の暴走を止められなくなってしまいます。
 こうした事態を防ぐために調和を図ったのが検察庁法14条で
あり、法務大臣は個々の事件について検事総長のみを指揮するこ
とを規定しているのです。これが法務大臣の「指揮権」です。
 この法務大臣の指揮権が発動されたのは、1954年の造船疑
獄事件のときの1回だけです。造船疑獄といっても知らない人も
多いと思うので、簡単にその概要を述べます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1954年1月から、東京地検特捜部による海運、造船業界幹
 部の逮捕から始まった捜査は政界・官僚におよび、捜査主任検
 事の河井信太郎による大野伴睦の取り調べからはじまり有田二
 郎ら国会議員4名の逮捕などを経てさらに発展する気配をみせ
 た。そして同年4月20日、検察庁は当時与党自由党幹事長で
 あった佐藤栄作を収賄容疑により逮捕する方針を決定した。し
 かし、翌4月21日、犬養健法務大臣は重要法案の審議中を理
 由に検察庁法第14条による指揮権を発動し、佐藤藤佐検事総
 長に逮捕中止と任意捜査を指示した。4月30日には参議院本
 会議で指揮権発動に関する内閣警告決議が可決された。衆議院
 は9月6日に証人喚問をおこない、佐藤検事総長は「指揮権発
 動で捜査に支障が出た」と証言。その後、衆議院は吉田首相を
 証人喚問議決をするも、吉田は病気を理由に拒否。その後、衆
 議院は拒否事由が不十分として議院証言法違反で吉田を告発す
 るも不起訴処分となった。       ──ウィキペディア
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、犬養法相の指揮権発動は、当時の特捜部に乗せられて
行わされたものであったことが明らかになっています。当時特捜
部はやり過ぎて捜査が行き詰まり、捜査から「名誉ある撤退」す
るために、当時の検察幹部の描いたシナリオによって指揮権発動
が行われた可能性が強いことが、最近になって、当時の関係者の
証言などから判明しています。     http://nkbp.jp/6oLLB1
 それ以来、騒ぎが大きくなることを理由に、法務大臣は、指揮
権を発動しにくくなり、それがこれまで検察の暴走を許してきた
ともいえるのです。
 もし、小川元法相が指揮権を発動していたとすると、2011
年12月の小沢裁判での田代政弘元検事の証言が偽証ということ
になり、検察にとって大ダメージになります。というのは、田代
捜査報告書の作成には、特捜部の組織ぐるみの関与が濃厚であり
検察組織は再起不能になる可能性すらあるのです。
 したがって、検察としては何が何でも幕引きをしないと、東京
地検特捜部が組織ぐるみで「小沢潰し」を仕掛けた構図が明らか
になってしまうのです。それを知りながら、野田首相は「小沢憎
し」もあって、この虚偽捜査報告書事件からの検察の幕引きを助
けたのです。       ─── [自民党でいいのか/42]

≪画像および関連情報≫
 ●対談/小川敏夫氏対江川紹子氏──指揮権発動について
  ─――――――――――――――――――――――――――
  小川:安倍政権になってから、検察改革の話をすっかり聞か
  なくなりました。谷垣(禎一=さだかず=法相)さんはこの
  間委員会で、別の議員に「虚偽捜査報告書」のことで質問を
  受けた際、『指揮権発動』を読んだかと聞かれて「すみませ
  ん、読んでません」って言ってました。ぜひ読んで、検察改
  革に取り組んでいただきたい。
  江川:検察は虚偽捜査報告書の問題を、いまやっている「再
  捜査」で終わりにしたいはずです。最高検は昨年6月、市民
  団体から刑事告発されていた東京地検特捜部の田代政弘元検
  事を不起訴(嫌疑不十分)とし、不服申し立てを受けた検察
  審査会は今年4月に「不起訴不当」の議決を下しました。議
  決書には「虚偽記載があったと言わざるを得ない」などと、
  かなり厳しい言葉が並びました。
  小川:「不起訴不当」とは、検察にもう一度きちんと捜査を
  しろという意味です。再捜査の結果もそろそろ出ておかしく
  ない。ただ、検察は起訴しないでしょう。フタをしたまま、
  だんまりを決め込むと思います。
  江川:それで国民の関心が消えたらまずいですよ。その点で
  も、小川さんが今回、本を書いたことは意味があります。執
  筆の動機は何だったんですか?
  小川:今回の問題を記録として残さなければいけないと思っ
  たんです。本来は、法務大臣の在職中に「虚偽捜査報告書」
  の問題について、虚偽内容の公表をし、厳正な捜査をするよ
  うに、当時の笠間治雄(はるお)検事総長に対して、「指揮
  権」を発動しようと考えていたんです。
  週刊朝日/2013年6月28日号 http://bit.ly/19mhLxj
  ―――――――――――――――――――――――――――

犬養健元法務大臣.jpg
犬養 健元法務大臣
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月29日

●「捜査報告書はどう書かれているか」(EJ第3621号)

 石川知裕氏に対する田代検事(当時)の2010年5月17日
の取り調べの目的は、政治資金収支報告書の虚偽記載に小沢氏が
関与していた証言を石川氏から聴取することです。
 捜査報告書の冒頭には、次の4つの項目について石川氏に確認
したが、新たな供述が得られなかったと記載されています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.土地を取得しているのに、それを2004年分の政治資
   金収支報告書に記載していない
 2.政治資金収支報告書の不記載について、小沢一郎へ報告
   し、了承を受けているかどうか
 3.定期預金担保貸付について、小沢一郎に対し説明し、そ
   れについて了承を受けているか
 4.小沢一郎に対して政治資金収支報告書を提出し、説明を
   したうえで了承を受けているか
―――――――――――――――――――――――――――――
 そのうえで、捜査報告書では、上記4点を石川氏が否定したの
で、田代検事が石川氏を説得するという流れになっています。し
かし、録音反訳書によると、そのような説得は行われていないの
です。取り調べは正午から午後5時10分までの長時間、だらだ
らと締りなく続いており、上記の4点についてふれたところもな
くはないが、ただの雑談のように感じられるのです。
 田代検事は、石川氏に対し、これまで石川氏が供述して調書に
した内容について、間違いはないかと質問しています。それに対
して石川氏は次のように答えたと書かれています。少し長いです
が、大事な部分なので、小川氏の本から引用します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 まあ、4億の収入と土地代金の支出を意図的に書かなかったこ
 とやその理由については、これまでどおりでいいですよ。問題
 は小沢先生に関わるところですよね。だって、一昨日、小沢先
 生は検事に対し、改めて、私から収支報告書への不記載などに
 ついて一切説明を受けていないし、定期預金担保貸付の必要性
 などについても説明を受けていない、収支報告書案も見せても
 らっていないなどと言って供述調書を作ったわけですよね。そ
 れなのに、私が、今日「これまでの供述はそのとおり間違いあ
 りません」ってやったら、小沢先生の説明を否定することにな
 りますよね。でも、先ほどの4点については、これまで検事か
 ら何回も聞かれ、わたしの記憶している限りのことを話して供
 述調書も取られてるわけですから、それを今更否定して「あれ
 は嘘です」なんて言えないと思いますし、本当にどうするのが
 良いのか分からないんですよ。今日は話だけして、供述調書は
 作らないという選択はないんですか。    ──小川敏夫著
   「指揮権発動/検察の正義は失われた」/朝日新聞出版刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは全くの田代検事の作文です。録音反訳書にはこのような
記述は一切ないからです。続いて田代検事は、石川氏に対し、逮
捕された次の日、2010年1月16日の取り調べの状況につい
て、「小沢先生に対する報告とその了承や、定期預金担保貸付の
必要性の説明について、貴方がどういう形で供述して調書を録取
したか覚えていますか」と質問したちころ、石川氏は次のように
答えたと書かれています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 確か、逮捕された次の日でしたから、今年1月16日土曜日の
 夜の取調べでは、収支報告書の不記載などにつき、小沢先生に
 報告をして了承を得たことや、小沢先生からの4億円を表に出
 さないために定期預金担保貸付を受けるという説明をして了承
 を得たことを大まかには話したと思いますが。私が「収支報告
 書」の記載や定期預金担保貸付については、私自身の判断と責
 任で行ったことで、小沢先生は一切関係ありません」などと言
 い張っていたら、検事から「貴方は11万人以上の選挙民に支
 持されて国会議員になったんでしょ。そのほとんどは貴方が小
 沢一郎の秘書だったという理由で投票したのではなく、石川知
 裕という候補者個人に期待して国政に送り出したはずですよ。
 それなのに、ヤクザの手下が親分を守るために嘘をつくのと同
 じようなことをしていたら、貴方を支持した選挙民を裏切るこ
 とになりますよ」って言われちゃったんですよね。これは結構
 効いたんですよ。それで堪えきれなくなって、小沢先生に報告
 しました、了承も得ました、定期預金担保貸付もちゃんと説明
 して了承を得ましたって話したんですよね。
                ──小川敏夫著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、これも録音反訳書のどこにも書かれておらず、田代検
事の作文なのです。捜査報告書は、次の5種類がセットになって
おり、これをすべて読むと、世田谷の土地の購入に関して、3人
が共謀して、それに小沢氏が関与しているさまが鮮明になるよう
になっています。明らかに小沢氏以下、秘書3人全員を有罪にす
るための捜査報告書であるといえます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.田代政弘検事作成捜査報告書/平成22年5月17日付
   東京地方検察庁特別捜査部長 ・佐久間達哉宛て
 2.木村匡良検事作成捜査報告書/平成22年4月30日付
   東京地方検察庁特別捜査副部長・斉藤 隆博宛て
 3.木村匡良検事作成捜査報告書/平成22年5月16日付
   東京地方検察庁特別捜査副部長・斉藤 隆博宛て
 4.木村匡良検事作成捜査報告書/平成22年5月19日付
   「4億円の出所に関する捜査の状況について」
   東京地方検察庁特別捜査副部長・斉藤 隆博宛て
 5.斉藤隆博検事作成捜査報告書/平成22年5月19日付
   「再捜査の結果を踏まえた証拠の評価等について」
   東京地方検察庁特別捜査部長 ・佐久間達哉宛て
―――――――――――――――――――――――――――――
             ─── [自民党でいいのか/43]

≪画像および関連情報≫
 ●虚偽捜査報告書、歯切れの悪い説明に終始/産経ニュース
  ―――――――――――――――――――――――――――
  陸山会事件をめぐる虚偽の捜査報告書問題で、法務・検察当
  局は27日、元東京地検特捜部の田代政弘検事(45)らを
  不起訴とした。最高検は会見で虚偽記載は田代氏の判断だっ
  たことを強調。「公判中の内容も含まれるので詳しく話せな
  い」とするなど歯切れの悪い説明に終始した。「捜査活動に
  対し国民の皆さまに疑念を抱かせるような事態を招いた」。
  処分を受け、笠間治雄検事総長は自身も10年以上在籍した
  特捜部の不祥事に遺憾の意を示した。最高検は午後5時から
  会見を開き、捜査を担当した長谷川充弘検事は「捜査報告書
  は口語調で書かれたやりとりだったことが誤解を受けかねな
  い」と説明。ただ、虚偽記載は「彼自身の判断でそうしたこ
  とだ」(上野友慈検事)と強調し、虚偽記載をするよう上司
  の指示があったことは否定した。民主党元代表、小沢一郎被
  告(70)の弁護団も午後7時から会見。弘中惇一郎弁護士
  は「今回のような形で決着をつけたことで検察庁は威信を下
  げた」と不満を漏らし、喜田村洋一弁護士も「通常の刑事事
  件ではありえない甘い認定だ」と批判した。
  2012年6月27日/    http://on-msn.com/QjBofJ
  ―――――――――――――――――――――――――――

田代検事・捜査報告書.jpg
田代検事・捜査報告書
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月30日

●「捜査報告書を偽造する検察の悪辣」(EJ第3622号)

 捜査報告書とは何でしょうか。検察官などの捜査機関が、拘留
前であれ、拘留中であれ、被疑者を取り調べ、その取り調べ状況
を上司に報告する文書です。間違ってはならないのは、供述調書
とはまったく違うものであるということです。
 供述調書というのは、検察官が被疑者を取り調べるとき、被疑
者の供述を記録するために、被疑者本人に確認のうえ、作成する
文書です。
 刑事訴訟法によると、被疑者が自ら供述書を作成することも可
能ですが、通常は、被疑者の供述に基づき検察官が調書を作成し
ます。その場合、調書を被疑者本人に見せ、または読み上げるこ
とによって、被疑者が内容を確認したのちに署名指印を求めるの
が通常です。しかし、被疑者はその内容が自分の供述と異なると
きは、修正を求めるか、その調書への署名指印を拒絶することが
できます。
 これに対して捜査報告書は、検察官が取り調べの状況を記述し
て、上司の検察官に報告する内部文書です。検事の署名指捺印は
ありますが、被疑者のそれはありません。それどころか、被疑者
はその内容はもちろんのこと、その文書の存在すら知らされてい
ないのです。しかし、それでいて捜査報告書はその内容に基づき
被疑者を逮捕したり、被疑者宅を家宅捜査する場合などの重要な
判断材料になるので、ただの内部文書ではないのです。
 したがって、検察官がどうしても被疑者を逮捕して取り調べた
いと思えば、事実ではないことを誇張して書けば、ほとんど間違
いなく、逮捕状は発行されるのです。しかも、公開する必要のな
い内部文書であり、外に漏れることは絶対ないのです。したがっ
て、検察官は安心してうその報告書が書けるし、それによって責
任を問われることはないのです。
 東京地検特捜部が、石川知裕被告に関する5通の捜査報告書を
検察審査会議決の参考資料として提出したのも検察審査会の審議
が秘密裏に行われ、公開されないからです。しかし、これによっ
て小沢氏に対して強制起訴が行われ、検察官役の指定弁護士が裁
判を行ったことにより、外に出てしまったのです。
 陸山会裁判で問題なのは、田代検事が自分の判断で捜査報告書
を書いたのではなく、上司の指示を受けて書いている疑いが濃厚
であることです。
 このことを裏付けるこんな話があるのです。実は石川知裕議員
(当時)は2010年1月15日に逮捕されたのですが、それ以
前に何度か事情聴取され、そのさい田代検事から「在宅起訴」に
なると聞かされていたというのです。石川氏は国会議員であり、
国会休会中といえども逮捕には大きな壁があったのです。
 検察も新聞社に対してこの情報をリークしており、新聞にも次
の記事が出ていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎2010年1月5日付、日本経済新聞夕刊
  今後、特捜部は土地取引当時、会計事務担当だった石川知裕
  衆院議員からも再聴取。月内にも政治資金規正法違反で在宅
  での刑事処分を下すとみられる。
 ◎2010年1月13日付、朝日新聞夕刊
  検察当局は石川氏を近く政治資金規正法違反(不記載)罪で
  在宅起訴する方向で検討しており、4億円の原資を中心にさ
  らに事情を聴く             ──小川敏夫著
   「指揮権発動/検察の正義は失われた」/朝日新聞出版刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、東京地検特捜部内部で方針が変わったのです。その最
大の原因は、大久保隆規被告に対する西松建設裁判がほぼ結審し
「無罪判決」必至の情勢になったことです。「ここで無罪判決が
出るのはまずい」と考えた東京地検特捜部は、元秘書3人全員を
逮捕し、訴因変更によって無罪判決を潰そうとしたのです。これ
については既に述べた通りです。
 そこで、田代検事は当時上司の事件担当副部長の木村匡良検事
の指示で、取り調べのさいに石川議員が、「小沢先生に申し訳な
くて生きていけない」と述べたという、うその捜査報告書を書か
されたのです。
 佐久間達哉特捜部長は、その田代検事の虚偽捜査報告書に基づ
いて、「石川議員は自殺の恐れがある」ことを理由に、石川議員
の逮捕状を取り、1月15日に急遽逮捕したのです。18日から
通常国会が始まるので、どうしても15日に逮捕したかったから
です。このように虚偽捜査報告書は使われており、検察内部では
日常茶飯事になっているのです。
 しかし、これほど不法なことをしているにもかかわらず、検察
は何の反省も行わず、まさにやりたい放題です。メディアの論調
も虚偽捜査報告書について表面上批判はするものの、それはけっ
して鋭いものではなく、検察に遠慮しながら淡泊なものになって
います。小川法相(当時)が指揮権発動をしようとしたのは、こ
ういう検察の不正を正そうとしたのです。
 法務検察当局は、田代検事に関して、市民団体の告発を受けた
刑事事件に関しては既に「不起訴処分」の決定を下しています。
さらにその検察の不起訴処分を不服とする検察審査会への告発の
審査に関して出された「不起訴不当」議決に関しても嫌疑不十分
として不起訴処分を出し、幕引きを図ったのです。
 普通なら田代検事に対する訴追はこれで終りのはずですが、意
外にも検察は再び検察審査会に告発されたのです。告発者は「健
全な法治国家のために声を上げる市民の会」(八木啓代代表)で
す。今回の告発は、2010年1月13日に石川知裕氏に対して
行われた任意の取り調べで、担当の田代検事は、石川氏に自殺の
恐れはなかったのに、上司の命令でその旨記述した虚偽の捜査報
告書の存在に対してのものです。
 この事実は、前田恒彦元検事がヤフー・ニュースに書いた記事
で明らかになったものであり、告発はその前田発言に基づいてい
ます。しかし、これについても検察は不起訴処分を出すに決まっ
ているといえます。    ─── [自民党でいいのか/44]

≪画像および関連情報≫
 ●前田恒彦/元特捜部主任検事のつぶやき/facebook
  ―――――――――――――――――――――――――――
  私の記事に基づき、市民団体が「最初の虚偽報告書」の件で
  元検事らに関する告発状を提出した。そもそも今の検察には
  自浄能力などないので、どんな告発を出そうとも、捜査を尽
  くさず、必ず不起訴にするだろう。例えば再告発の件は、既
  に問題の報告書そのものが廃棄されている可能性も高く(特
  に元秘書らの逮捕状取得直後)、そんな報告書は存在しない
  という理由を付け、告発不受理にすれば終わりだ。仮に報告
  書が残っていたとしても、重要なのは元検事の私に対する告
  白が真実か否かという点ではない。私が元検事から告白を受
  けたことは間違いなく、私自身、当時、これを周囲の関係者
  に伝えており、そのことを裏付ける客観証拠も存在する。し
  かし、あくまで虚偽公文書作成罪の成否を判断する上では、
  「報告書記載そのものが事実に反するか否か」が分水嶺にな
  る。その点は元検事と秘書の供述が相反するし、前回と違っ
  て、取調べ録音もないから、私の事情聴取など必要とせず、
  直ちに「嫌疑不十分」として不起訴にできる。ましてや、前
  回同様、元秘書が取調べを持込みレコーダーで録音させてほ
  しいと要求すれば、これ幸いと拒否し、「最重要人物の取調
  べ不能」を理由として、より簡単に不起訴で落とすことがで
  きる。これらは私としても当初から織り込み済みの話であり
  私の言う「第二幕」とは、今回の再告発とは全く別の事案に
  ほかならない。いずれにせよ、私が公の場に出て何かを語る
  機会は、検察審査会による証人尋問(検察審査会法37条)
  しかないと考えているし、もし検察審から要請があれば、全
  面的に協力するつもりだ。もちろん、検察審=国民が証人尋
  問を実施してまで真相を知りたいと思うか否かにかかわる話
  だが、各弁護士会としても、さすがに今後は、「ヤメ検弁護
  士」を審査補助員に据えるといった愚行に出ることもないだ
  ろう。              http://bit.ly/12rMOsg
  ―――――――――――――――――――――――――――

八木啓代代表.jpg
八木 啓代代表
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月02日

●「トーンが違う秘書裁判と小沢裁判」(EJ第3623号)

 陸山会事件には2つの裁判があります。この2つを整理して考
える必要があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
   1.秘書裁判 ・・・・・ 一審/控訴審有罪判決
   2.小沢裁判 ・・・・・ 一審/控訴審無罪判決
―――――――――――――――――――――――――――――
 「秘書裁判」の本質は、陸山会の政治資金収支報告書の虚偽記
載です。「小沢裁判」は、陸山会代表の小沢一郎氏が秘書たちの
行った政治資金収支報告書の虚偽記載に関わっていたかどうかが
ポイントになる裁判です。
 これら2つの裁判の中心は「秘書裁判」です。しかし、くどい
ようですが、この裁判で問われている収支報告書の「虚偽」記載
は、既に述べているように虚偽ではありません。
 2004年10月末日の土地代金の支払いは、陸山会は「権利
能力なき社団」であるため陸山会名義ではできないので、所有権
移転仮登記は小沢一郎名で行われているのです。したがってこれ
は、陸山会としての取り引きではないので、収支報告書に記載す
る必要はないのです。しかも、2005年1月7日には土地の登
記と同時に代金が支払われている旨の記載があるのです。どこが
「虚偽記載」なのでしょうか。
 百歩譲ってそれが政治資金収支報告書の記載のミスであること
を認めたとしても、それは単なる記載ミスであり、会計担当者に
よる訂正と罰金程度で済まされてしかるべきです。毎年多くの会
計責任者が当局から記載ミスの指摘を受け、修正しています。な
ぜ、陸山会の場合だけ、逮捕・起訴・有罪なのでしょうか。
 しかし、検察としてはこの「虚偽記載」の線が崩れてしまうと
「秘書裁判」はもちろんのこと、それが前提である「小沢裁判」
まで崩れてしまいます。そんなことになると、検察の完敗であり
検察トップの責任問題になり、検察は完全に崩壊します。
 虚偽捜査報告書が明るみに出たとき、検察幹部はそういう危機
を感じ取ったと思います。このとき、検察としてのとるべき道は
「秘書裁判」の被告を絶対に有罪にすることです。
 そうしておけば、「小沢裁判」が無罪になっても、検察として
のメンツは保てると考えたのです。「小沢は無罪でも秘書は有罪
にする」という方針です。
 その証拠に「小沢裁判」と「秘書裁判」は、同じ陸山会事件の
裁判であるのに、まるで様相が異なっています。「小沢裁判」、
小沢一郎被告に無罪判決(第一審)を出した東京地検では、その
判決文で、田代政弘検事(当時)の取り調べの手法の悪辣さを徹
底的に批判しています。
 石川氏は逮捕された直後の田代検事の取り調べにおいて、検事
の誘導に引っかかって、小沢代表への報告・了承があったととら
れても仕方のない供述調書──甲89と甲90を取られていたの
ですが、「小沢裁判」の裁判長はそれを証拠として採用せず、そ
の理由を次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 石川が、建設会社からの金銭受領や被告人の関与を否認してい
 たところ、田代検事において、そのような供述をしていると、
 捜査が拡大し、別件での再逮捕などの不利益を被ることがあり
 得ることを示唆し、また、石川とのやりとりの中で被告人の関
 与を認める調書の案文を示し、この程度の記載であれば被告人
 が起訴されることはなく、被告人の関与を全面的に否定してい
 るとかえって被告人が起訴されるなどと石川を懐柔、説得する
 などの取調べ方法により、調書の作成に応じさせたとの疑いに
 は、具体的で相当の根拠がある。このような経緯で作成された
 との疑いがある以上、甲89、甲90については供述の任意性
 に疑いがあり、特信性は否定されるといわなければならない。
                 ──鳥越俊太郎・木村朗編
         『20人の識者がみた「小沢事件」の真実/
   捜査協力とメディアの共犯関係を問う!』/日本文芸社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 一方の「秘書裁判」の一審では、検察側は石川・大久保秘書に
対する、ありもしない水谷建設による1億円裏金資金提供があっ
たとして数人の証人を呼んで尋問し、単なる政治資金収支報告書
の記載ミスを超える大犯罪であるかのような演出をした結果、裁
判長はそれがあったと推認して、有罪判決を出しています。
 さらに「秘書裁判」の控訴審では、弁護側が強く求める「小沢
裁判」の判決書と証人に呼ばれた水谷建設の元会長と元社長が一
審で供述したことが誤りであったとする意見陳述書のほか、被告
の無罪を証明する新証拠87通すべてを却下して、証拠採用せず
一審を支持して、有罪判決を出しています。
 明らかに「秘書裁判」と「小沢裁判」とは、トーンが異なるの
です。まるで検察と裁判所が協力し、「秘書裁判」では何が何で
も、どんなに批判されても、有罪に追い込もうとしているようで
す。既に大久保被告と池田被告は力尽きて判決を受け入れており
裁判は検察の狙い通りになりつつあります。
 問題なのは、もし石川氏が2010年5月17日の取調べで録
音をしていなかったら、どうなったかということです。
 この場合は、小沢氏にとって不利な石川氏の誘導供述調書──
甲89と甲90──それが検事に誘導されたものであったとして
も裁判長はそのことを知る由もなく、証拠として採用されていた
はずです。そうすると、小沢氏は有罪判決になっていたと考えら
れるのです。つまり、あの録音が小沢氏を救ったのです。
 取り調べの可視化に自民党はまるで関心がありません。取り調
べで、誘導して供述調書をでっち上げ、虚偽の捜査報告書を書い
て被疑者を有罪にしても、田代検事は不起訴です。一方は政治資
金収支報告書のささいな記載ミスは有罪です。このアンバランス
は何でしょうか。メディアはこの問題にはシカトです。このこと
は検察は誰でも逮捕して、有罪にできることを意味しています。
こんな無法が許されていいのでしょうか。世間はこの問題にもっ
と関心を持つべきです。  ─── [自民党でいいのか/45]

≪画像および関連情報≫
 ●「もし、石川氏の録音がなかったら」/小川敏夫元法務大臣
  ―――――――――――――――――――――――――――
  その録音記録が存在しなかったならどうなったであろうか。
  取調べに問題があったという証拠は、取調べを受けた石川氏
  の証言しかない。一方で検事は適正な取調べだと証言する。
  その時に、裁判所はどう判断するか。一般に、被告人やその
  関係者は被告人の罪責を免れるために嘘をつくものだ、検事
  は適正な取調べに心掛けているはずだということになると、
  石川氏の証言が検事の証言を排斥して採用されるとは考えが
  たい。そうすると、小沢氏への報告と了承を認めた石川氏の
  供述調書は証拠として採用されることになる。その結果、小
  沢氏は、有罪になっていたのではないかと想像するわけであ
  る。その有罪は、間違った証拠が間違って採用された結果と
  して出された判決であるから、正しくはない判決である。し
  かし、間違った証拠が間違った証拠であると明らかにならな
  ければ、そうした結果になってしまう。それは、小沢氏の政
  治生命に決定的影響を与えたであろう。小沢氏は、無罪の判
  決を受けたが、秘書が有罪となり、自分も強制起訴手続きに
  よって被告の身に立たされたことで、政治生命に大きなダメ
  ージを受けた。これが有罪とでもなっていたならば、そのダ
  メージは決定的であっただろう。それが、検察が作り上げた
  間違った証拠によって作り出されようとしていた。石川氏の
  録音は検察の大罪をあぶり出す結果をもたらしたのである。
         ──鳥越俊太郎・木村朗編/小川敏夫氏論文
         『20人の識者がみた「小沢事件」の真実/
   捜査協力とメディアの共犯関係を問う!』/日本文芸社刊
  ―――――――――――――――――――――――――――

「20人の識者がみた『小沢事件』の真実」.jpg
「20人の識者がみた『小沢事件』の真実」
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月03日

●「郵便不正事件での特捜部の悪辣さ」(EJ第3624号)

 陸山会事件と郵便不正事件は、ある意味において、とても対照
的な事件なのです。共通している点、対照的なポイントをまとめ
ると、次の4つになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.両方とも2009年に起こっている
     2.ともに民主党の政治家が絡んでいる
     3.検察の不法な取り調べに問題がある
     4.検察の関係者の処分が対照的である
―――――――――――――――――――――――――――――
 「郵便不正事件」はどういう事件であったかについてまとめる
ことにします。障害者のための郵便料金割引制度というものがあ
ります。一般には120円かかるものが8円で送れるのです。も
ちろんそのためには、厚労省発行の証明書が必要です。
 この制度に目をつけたのは倉沢邦夫という人物です。倉沢氏は
障害者団体「凛の会」をもっていて、当時の村木厚子社会・援護
局障害保健福祉企画課長の部下であった上村勉厚労省元係長に頼
んで、郵便料金割引を認める偽証明書を発行してもらうことに成
功したのです。
 「凛の会」はこの証明書を使って、電通や家電量販会社のダイ
レクトメールの発送業務を行い、莫大な利益を得ていたのです。
そのことが摘発されたのは、2009年のことです。
 本来この郵便不正事件は、これだけの事件として、終わる予定
だったのです。しかし、2009年といえば、東京地検特捜部が
当時の民主党代表小沢一郎氏の公設第一秘書を3月に逮捕した年
です。そのとき東京地検特捜部としては、小沢逮捕の計算ができ
ているように見えたのです。
 そこで大阪地検特捜部は、嫉妬からなのか、われわれもこの事
件に乗っかるべきだと考えて、厚労省に絡むこの事件を民主党の
政治家を巻き込んで、もっと大事件にしようと企んだのです。そ
して、次のストーリーをでっち上げます。ターゲットにされた民
主党の政治家とは、石井一参院議員だったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 大阪地検の最終ターゲットは、警察と癒着関係にある公明党の
 敵でもある民主党副代表の石井一参議院議員だった。当時「政
 治とカネ」の問題で、バッシングを受けている民主党に致命傷
 を与えるためだった。『凛の会』の倉沢邦夫元会長から頼まれ
 て、石井議員から厚労省の塩田幸雄部長に証明書を発行するよ
 う要請があったというのはどうだ。塩田部長が決裁権のある村
 木課長に便宜を図るよう指示し、村木から上村係長に証明書発
 行の指示が下りたことにしよう。   http://bit.ly/cY4Rqm
―――――――――――――――――――――――――――――
 そして、大阪地検は2009年5月に厚労省の上村係長、同年
6月に村木課長を逮捕し、取り調べを開始したのです。同時に厚
労省職員7人を証人として取り調べ、このシナリオを元に検事が
誘導尋問して、シナリオに沿わない証言メモはその場で廃棄し、
村木被告の上司を通じて、石井一民主党参院議員から証明書を発
行するよう口添えがあり、厚労省が組織ぐるみで偽証明書を作っ
たとするシナリオどおりの調書を作り上げていったのです。
 信じ難いことですが、こういう滅茶苦茶なことが現実に特捜部
の内部で日常的に行われていたのです。しかし、これは大阪地検
特捜部の大誤算であったのです。それは、村木厚子氏の弁護を引
き受けたのがあの弘中惇一郎弁護士であったからです。
 弘中弁護士は、大阪地検特捜部の作り上げた供述調書の矛盾点
をていねいかつしらみつぶしに調査し、調書が検察の作文である
ことを暴いたからです。そのなかで、石井一参院議員の関与もな
かったことも明らかになったのです。
 郵便不正事件の裁判は、2010年1月15日の小沢氏の3秘
書逮捕、小沢一郎氏への検察の事情聴取の騒ぎのなかで、あまり
大きく報道されないまま進行したのです。
 しかし、第5回公判あたりから、出廷した証人たちから、次々
と検察の誘導尋問にひっかかって真実と違うことを述べたり、事
実無根の供述調書に無理やり署名させられたなどという驚くべき
証言が飛び出したのです。
 そして、村木厚子氏に対しては大阪地裁は2010年9月10
日に無罪判決を言い渡したのです。そして、同年9月21日に主
任検事・前田恒彦が証拠隠滅容疑で最高検察庁刑事部の長谷川充
弘検事によって逮捕され、自宅官舎及び大阪地検の執務室が捜索
を受けることになったのです。この騒ぎのなかで、検察側は控訴
を断念し、村木厚子氏の無罪は確定したのです。
 この郵便不正事件の裁判で興味深い判決があったのです。これ
は、当時の厚労省係長上村勉被告と「凛の会」の倉沢邦夫被告が
共謀した犯罪です。
 上村被告に対しては虚偽公文書作成罪と同行使罪が課せられて
いたのですが、このままでは無罪になってしまうのです。なぜな
ら、虚偽公文書作成罪は、文書作成権限がある者が虚偽の文書を
作成する犯罪なのですが、係長には、証明書を独断で作成できる
権限がないので、虚偽公文書作成罪は成立しないのです。
 本来であれば、作成権限がある村木課長の指示を受けて、それ
に共謀して作成したというかたちを取る必要があります。しかし
村木課長は無罪になったので、このままでは上村被告も無罪にな
るのです。
 そのため、検察は上村被告に対しては、公文書偽造罪および偽
造公文書行使罪に訴因変更を裁判所に申請し、認められたので懲
役1年執行猶予3年の有罪判決を受け、上村被告はこれを受け入
れています。
 しかし、「凛の会」の倉沢邦夫被告ほか関連者の裁判では、訴
因変更を裁判所が認めなかったので、無罪判決になっています。
裁判長の考え方によって、本来有罪になるべき者が無罪になって
しまうこともあるのです。もともと大阪地検特捜部がありもしな
い犯罪をでっち上げようとしたことが、こういう矛盾を生んだの
です。          ─── [自民党でいいのか/46]

≪画像および関連情報≫
 ●佐藤優の「眼光紙背」/村木厚子氏に対する無罪判決
  ―――――――――――――――――――――――――――
  中央官庁の官僚が、課長名で偽造証明書を作るなどというこ
  とはあってはならない重大な犯罪だ。筆者自身外務官僚だっ
  た。外務省での相場観からすると、課長名で偽造外交文書を
  作成したことが露見すれば、それを行った職員は確実にクビ
  だ。課長も少なくとも管理責任を問われ、処分される。今回
  村木氏に無罪が言い渡されたが故に、厚労省官僚による偽造
  文書作成という犯罪の真相究明がおろそかになってはならな
  い。村木氏に関し、無罪が言い渡されることは、公判におけ
  る証拠採用の段階で明白だった。調書の信用性が否定された
  わけだ。調書がどのように作られたかについて、9月10日
  発売の『文藝春秋』2010年10月号の手記で村木氏はこ
  う述べている。「調書の作成というのは、検事さんとの交渉
  なんですね。私は一度、弘中先生(引用者註*弘中惇一郎弁
  護士)から叱られたことがあります。「なんでみんな、こん
  なに嘘をつくんだろう」と私が嘆いた時です。弘中先生は、
  「みんなが嘘をついているわけじゃない。検事が自分の好き
  な調書をまず作ってしまう。そこから交渉が始まるんだ。調
  書とはそういうものだ」って。どんなに説明しても、結局検
  事さんが書きたいことしか書いてもらえない。いくら詳しく
  喋っても、それが調書になるわけではないんです。話した中
  から、検事さんが取りたい部分だけがつまみ出されて調書に
  なる。そこから、どれだけ訂正をしてもらえるかの交渉が始
  まるんです。なので、いくらやりとりをしても自分が言いた
  いこととはかけ離れたものにしかなりません。がんばって交
  渉して、なんとかかんとか「少なくとも嘘はない」というと
  ころまでたどりつく、という感じです。(村木厚子「私は泣
  かない、屈しない」『文藝春秋』2010年10月号)
             http://blogos.com/article/23428/
  ―――――――――――――――――――――――――――

村木厚子氏名誉回復.jpg
村木 厚子氏名誉回復
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月04日

●「検察が厳しく処断/郵便不正事件」(EJ第3625号)

 2010年9月21日、朝日新聞は、証拠改ざん事件について
次のように報道しています。これは検察が朝日新聞にリークして
書かせた記事で、証拠改ざん事件の第1報です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 郵便割引制度をめぐる偽の証明書発行事件で、大阪地検特捜部
 が証拠品として押収したフロッピーディスク(FD)が改ざん
 された疑いがあることが朝日新聞の取材でわかった。取材を受
 けた地検側が事件の捜査現場を指揮した主任検事(43)から
 事情を聴いたところ、「誤って書き換えてしまった」と説明し
 たという。しかし、検察関係者は取材に対し、「主任検事が一
 部同僚に『捜査の見立てに合うようにデータを変えた』と話し
 た」としている。検察当局は、21日以降、本格調査に乗り出
 す。朝日新聞が入手した特捜部の捜査報告書などによると、F
 Dは昨年5月26日、厚生労働省元局長の村木厚子氏(54)
 =一審・無罪判決=の元部下の上村勉被告(41)=虚偽有印
 公文書作成・同行使罪で公判中=の自宅から押収された。FD
 内には、実体のない障害者団体が郵便割引制度の適用を受ける
 ため、上村被告が2004年6月に発行したとされる偽の証明
 書や文書の作成日時などに関するデータが入っていた。特捜部
 は証明書の文書の最終的な更新日時を「04年6月1日午前1
 時20分06秒」とする捜査報告書を作成。FDは押収の約2
 ヵ月後にあたる7月16日付で上村被告側に返却され、村木氏
 らの公判には証拠提出されなかった。
         ──2010年9月21日付、朝日新聞より
―――――――――――――――――――――――――――――
 これに対して最高検の対応は非常に素早かったのです。長谷川
充弘刑事部検事を主任とする7人の検事のチームで直接捜査を開
始し、21日夜、大阪地検特捜部検事で本事件の元主任検事の前
田恒彦を証拠隠滅容疑で逮捕したのです。
 続いて2010年10月1日、大阪地検元特捜部長・大坪弘道
及び大阪地検元特捜部副部長・佐賀元明を犯人隠匿容疑で逮捕し
たのです。そして、これを受けて、上級庁である柳俊夫大阪高検
検事長が陳謝しています。
 10月11日、最高検は前田恒彦を大阪地裁に起訴、21日に
は、大坪弘道と佐賀元明についても両者否認のまま、大阪地裁に
起訴しています。
 ことはそれで終わっていないのです。起訴された大坪、佐賀の
上司に当る検事正や次席検事、そして事件発覚時には福岡高検検
事長に栄転していた前検事正らも、監督責任を問われて辞職して
います。加えて、引責辞任ではないとしつつも、時の大林検事総
長は就任後わずか6ヵ月で辞職しているのです。まさに検察引責
ドミノ倒しです。
 こういう引責ドミノが起きたのは、2010年10月のことで
す。一方、陸山会事件については、9月14日に小沢氏は民主党
の代表選で敗れ、10月4日に第5検察審査会は、2回目の起訴
議決が出たことを公表しています。
 東京地検特捜部の立場からいうと、「大阪地検よ、こちらはこ
れからが本番。必ず、小沢と秘書3人を有罪にして仇を取ってや
る」というところでしょう。しかし、この時点で検察は、まだ石
川氏の録音の存在を知っていないのです。
 それが明らかになったのは、2011年1月5日のことです。
この日、陸山会事件をめぐる石川知裕衆院議員の公判整理手続き
が行われ、弁護士から2010年5月17日に検察による石川氏
の取り調べのさいの状況が、同氏によって「隠し録音」され、そ
の録音反訳書があることが告げられ、裁判所に証拠として申請さ
れたのです。
 早速石川側の弁護士から、次の1月6日に録音データ、7日に
は反訳書が公判担当検事に提出されています。想像ですが、この
ときの東京地検としては、大阪地検の失態でさんざん引責ドミノ
が起きた後であり、このうえ東京地検も同じ目に遭ったら、検察
は本当に崩壊すると思ったはずです。
 東京地検は絶体絶命の危機です。それでは検察はそれをどのよ
うに収拾したでしょうか。それは時の野田総理大臣の力を借りて
何とか検察を守ったのです。いや、まだ決着は完全には着いてお
らず、守りつつあるといってよいと思います。
 検察がどういう処理をしたのかについて、小川敏夫元法務大臣
の本から引用します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 およそ1年半後の12年6月27日、法務検察当局はこの虚偽
 捜査報告書事件について、刑事事件としては「不起訴処分」の
 判断を下し、すべて人事処分として関係者に懲戒処分を科して
 最終処理をした。そしてその際、「国会議員の資金管理団体に
 係る政治資金規正法違反事件の捜査活動に関する捜査及び調査
 等について」と題する調査報告書を公表した。この調査報告書
 (以下、「報告文」)によれば、東京地検は11年1月7日に
 反訳書を入手して検討したところ、件の捜査報告書と反訳書の
 内容に齟齬があることが判明したので、ただちに部内調査を行
 い、5日後の同月12日には記載の齟齬は取り調べ検事の記憶
 の混同から生じたもので犯罪性はないと判断し、その顛末を翌
 13日に東京高検、最高検に報告して了承されたと記されてい
 る。                   ──小川敏夫著
   「指揮権発動/検察の正義は失われた」/朝日新聞出版刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 大阪地検特捜部の処分の迅速さ、厳しさに比べて、東京地検特
捜部の幕引きは何と強引で、雑なやり方でしょうか。
 それはメディアの報道の違いもあったと思います。村木氏の場
合は、メディアがはっきりと検察を批判したのに対し、政治的思
惑の強い陸山会事件はメディアが検察におもねって、検察寄りの
報道に終始したからであると思います。
 こんなことはあってはならないことです。明日からこの問題を
追及します。       ─── [自民党でいいのか/47]

≪画像および関連情報≫
 ●郵便不正事件・倉沢被告への判決を読んで/江川紹子氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  実にスカッとしない良い判決だ――郵便不正事件で、自称障
  害者団体「凛の会」元代表・倉沢邦夫被告に対する大阪地裁
  の判決を読んでみて、しみじみそう思った。スカッとしない
  のに良い、と感じたのはなぜか。それはあとでゆっくり述べ
  るとして、裁判所は、偽の公的証明書作成に関与したとする
  虚偽有印公文書作成・同行使罪については倉沢被告に無罪を
  言い渡した。倉沢被告は、裁判で捜査段階での検察官調書と
  異なる供述をしているが、判決はいくつもの点で調書の信用
  性に疑問を呈している。とりわけ、厚生労働省元局長の村木
  厚子被告(事件当時は課長)が倉沢被告の求めに応じて、郵
  政公社の幹部に電話をしたという部分については、倉沢調書
  は「不自然」とまで言い切っている。公判での供述・証言よ
  り供述調書の方が信用できるとする主張を退けられた検察側
  は、審理が終盤に入っている村木被告の裁判でも、一層苦し
  い立場に追い込まれた、と言える。ただ今回の判決は、村木
  被告が偽の公的証明書に関わっていないとは言っていない。
  その点についての判断はせず、事件の真相を解き明かしては
  いない。そういう点で、実にスカッとしない。けれど、そこ
  が今回の判決のいいところだ。
        http://www.egawashoko.com/c006/000323.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

郵便不正事件の元3検事.jpg
郵便不正事件の元3検事
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月05日

●「大阪地検と東京地検の処分の違い」(EJ第3626号)

 郵便不正事件で、3人の検事に対して課せられた罪状は、次の
通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    ◎前田恒彦
     証拠隠滅罪/刑法104条
     2年以下の懲役刑または20万円以下の罰金
    ◎大坪弘道・佐賀元明
     犯人隠避罪/刑法103条
     2年以下の懲役刑または20万円以下の罰金
―――――――――――――――――――――――――――――
 証拠のフロッピーディスクを改ざんするという悪質な犯罪です
が、量刑自体はこのように意外に軽いのです。もっとも彼ら検事
は起訴された時点で懲戒免職になり、社会的名誉は失われるので
量刑以上の厳しい罰を受けることになるのは当然のことです。
 しかし、虚偽の捜査報告書を書き、それを検察審査会での議決
判断資料として提出したということになると、それを行使したこ
とになるので、罪状は次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
    ◎虚偽公文書作成・同行使罪/刑法156条
     1年以上10年以下の懲役刑
―――――――――――――――――――――――――――――
 収賄罪は「5年以下の懲役刑」であるし、強制わいせつ罪でも
「6ヵ月以上10年以下の懲役刑」なのです。これにより、虚偽
公文書作成・同行使罪が重罪であることがわかると思います。な
ぜかというと、虚偽公文書作成罪は、公権力を持つ者がその地位
を利用して虚偽の公文書を作成し、それを行使して社会に混乱を
与える重大犯罪だからです。まして国民の人権に影響を与える捜
査権や公訴権を持つ検事が、虚偽の文書を作成し、行使するなど
あってはならないことであり、そのため罪が重いのです。
 2011年1月7日に録音反訳書を入手した東京地検は、それ
と田代検事作成の捜査報告書を突き合わせて調べています。その
結果、反訳書と同検事作成の捜査報告書には大きな違いがあり、
捜査報告書の虚偽性は歴然としていたのです。
 これについて、東京地検はどのように対処したでしょうか。
 1月12日に、反訳書と捜査報告書の内容の違いは、検事の記
憶の混同によるものであり、犯罪性はないと判断し、その顛末を
翌13日に東京高検、最高検に報告し了承を受けているのです。
つまり、法務検察としては、わずか一週間でこの問題の幕引きを
図っているのです。なぜ、そんなことができたのでしょうか。
 それは、その時点で捜査報告書の存在を知っているのは東京地
検内部と東京第5検察審査会の関係者(審査員など)しかいない
からです。東京地検内部は黙っていればわからないし、検察審査
会は秘密審査であり、公開義務はないのです。もちろん石川被告
の弁護団にも虚偽捜査報告書の存在は知られていないのです。
 しかし、虚偽捜査報告書は強制起訴による小沢裁判の証拠調べ
のさいに表沙汰になってしまったのです。そのため、虚偽捜査報
告書は世間で大きな話題になり、再び検察批判の嵐が巻き起ころ
うとしていたのです。法務検察としてはもっと早く幕引きをしよ
うとしていたのにそれができなくなって、ずるずると結論を先延
ばしにすることになります。
 それに加えて東京地検を慌てさせたのは、2012年1月に法
務大臣に就任した小川敏夫氏です。当時小川法相は、虚偽捜査報
告書事件について、検察は国民の信頼が得られる対応をしなけれ
ばならないといい続けたのですが、法務検察当局はこれに無視し
続け、事件の詳細を知らせようとしないまま、刑事処分を見送り
単なる職務上の間違いとして、軽い人事処分で幕引きを図ろうと
したのです。
 そのような処分のやり方では、大阪地検の厳しい対応と整合性
がとれないと小川法相は考えたのです。小川氏は、大阪地検と東
京地検の対応の違いについて次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 大阪における厳しい対応と、東京における緩慢な対応の違いは
 なぜなのか。大阪地検の事件では実行行為と隠蔽を行った当事
 者は大阪地検特捜部内の検事であり、検事正は当事者ではない
 が監督責任を取らされた。東京地検の場合はどうか。当事者は
 実行行為を行った東京地検だけでなく、これを記憶違いとして
 処理することを承認し事件を隠蔽した最高検、東京高検までが
 含まれる。即ち、検察首脳の最高検までが実は当事者なのであ
 る。検察首脳は、厳しい対応をするならば自らを厳しく律しな
 ければならない立場に置かれてしまい、それができない検察首
 脳が、結局は、虚偽捜査報告書事件をうやむやに幕引きさせて
 しまったということではないのか。──鳥越俊太郎・木村朗編
         『20人の識者がみた「小沢事件」の真実/
   捜査協力とメディアの共犯関係を問う!』/日本文芸社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 フロッピーディスクのデータを改ざんした前田恒彦元検事は逮
捕され、証拠隠滅罪に問われ実刑を受けています。しかし、田代
元検事は逮捕を免れ、不起訴処分です。田代検事は逮捕されたら
虚偽公文書作成・同行使罪(刑法156条)に問われ、前田恒彦
氏よりも重い罪になるにもかかわらずです。大阪地検では、前田
氏の上司である大坪、佐賀両氏も逮捕され、犯人隠避罪で、まだ
法廷闘争を続けているのです。
 それに比べて、単なる記憶の間違いとして処理した岩村修二東
京地検検事正や佐久間達哉特捜部長などの幹部検事、それにその
処理を承認した最高検、東京高検の責任は一体どうなるのでしょ
うか。もし、田代検事を逮捕していれば、責任者はすべて責任を
とらなければならなくなります。だから、軽い処分でお茶を濁す
──そうなったら、日本の検察は終りです。小川法相が指揮権を
発動しようと決意した背景はこういうことだったのです。しかし
慌てた検察幹部が野田首相に直訴して、首相は小川法相を罷免し
て検察を救ったのです。  ─── [自民党でいいのか/48]

≪画像および関連情報≫
 ●法務官僚のいいなりになって指揮権発動を潰した野田首相
  ―――――――――――――――――――――――――――
  小川法務大臣は、退任にあたり記者会見し、民主党の小沢元
  代表の政治資金を巡る事件で、事実と異なる捜査報告書を検
  察審査会に提出していた検事への捜査を徹底させるため、指
  揮権の発動を検討したものの、野田総理大臣の了承が得られ
  なかったことを明らかにしました。小沢元代表の政治資金を
  巡る事件では、捜査が進められていた当時、東京地検特捜部
  にいた検事が、事実と異なる内容の捜査報告書を作成し、検
  察審査会に提出していたことが明らかになりました。これに
  ついて、小川法務大臣は、4日の退任の記者会見で、「検察
  庁に対する信頼が損なわれているときに、検察が身内に甘い
  適当な形で幕引きをすれば、信頼回復ができないのではない
  かと心配した」と述べました。そのうえで、小川法務大臣は
  「検察が身内に消極的である場合に、積極的ならしめること
  が法務大臣の本来の姿ではないか。そういう意味で、指揮権
  の発動はふさわしいケースで、私自身は指揮権の発動も決意
  したが、野田総理大臣の了承が得られなかったので大変残念
  に思っている」と述べ、検事への捜査を徹底させるため、指
  揮権の発動を検討したものの野田総理大臣の了承が得られな
  かったことを明らかにしました。ただ、小川法務大臣は、内
  閣改造で退任することや、実際には指揮権を発動しなかった
  ことから、検討した指揮の内容については公表しませんでし
  たが、法務大臣が指揮権の発動を検討していたことが明らか
  になるのは極めて異例なことです。一方、検察は、問題の捜
  査報告書の作成が意図的だったとまでは言えないとして、検
  事らの刑事責任は問わないものとみられます。
                   http://bit.ly/1dzLCXv
  ―――――――――――――――――――――――――――

東京地検/岩村/佐久間両氏.jpg
東京地検/岩村/佐久間両氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月06日

●「小沢氏無罪/一審と控訴審の違い」(EJ第3627号)

 自民党政権になってから、検察改革の話がまったく出てこなく
なっています。それはそうです。自民党という政党に官僚組織の
改革や公務員改革を期待してもそれは無理というものです。
 先般の衆院法務委員会で谷垣法相が野党の議員から「虚偽捜査
報告書」のことで質問を受けたさい、小川元法相の著作『指揮権
発動』を読んだかと聞かれて、「すみません、読んでません」と
答弁しています。谷垣氏は、この問題には興味も関心もないし、
小川氏の本を今後も読むつもりはないでしょう。彼は自民党の政
治家であり、小沢氏は天敵であるからです。
 日本の行政は、官僚によって明治維新以来仕切られてきている
のです。もともと官僚は天皇の部下であり、政治家の部下ではな
いのです。戦後になって天皇は象徴天皇になりましたが、官僚組
織はそのまま残り、官僚としては戦前と同じ感覚でやっているの
です。それは今もなお続いており、たとえ大臣であっても官僚の
意に沿わないことについては頑強な抵抗を受けるのです。
 50年以上政権を担ってきた自民党にはそれがよく分っていま
す。そこで官僚と折り合いをつけて、棲み分けを図ってきたので
す。つまり、官僚が聖域とするところに大臣が踏み込まない限り
その大臣のやろうとすることを支えるという暗黙の了解です。
 小沢一郎という政治家は、その官僚機構全体を壊し、政治を官
僚から政治家、すなわち国民の手に取り戻すことを旗印に掲げて
政治改革を進めてきたのです。そして野党時代から、着実に政治
改革を実現し、2度も自民党を政権の座から引きずり下ろすとい
う実績を持っている政治家です。
 そのため、小沢氏の実力をよく知る官僚としては、絶対に「小
沢総理」だけは実現させてはならないということで、無理を承知
で民主党の政権交代前から、「小沢潰し」を仕掛けてきた結果が
陸山会事件をめぐる一連の裁判です。
 官僚の仕掛ける「小沢潰し」工作の知られざるひとつが、政権
交代した民主党の、とくに松下政経塾出身の議員への「洗脳」で
す。これは「民主党の自民党化」が狙いです。民主党政権が迷走
し、本来目指していた方向と逆走して、遂に民主党が「誰からも
拒否される政党」になり果てたのはこの洗脳工作の成果です。
 この官僚機構の総攻撃によって、小沢氏の率いる「生活の党」
は衆参あわせてたった9人の政党になりましたが、結局潰し切れ
なかったのです。小沢氏のことですから、3年後には必ず復活し
てくるはずです。
 官僚たちは自分の組織を守るためなら何でもします。虚偽捜査
報告書事件は、現在も市民団体から検察審査会に告発されていま
すが、検察としては「不起訴処分」にするはずです。なぜなら、
そうしないと検察機構が破壊されてしまうからです。したがって
この問題はこれで終りです。自民党には期待していません。
 もうひとつ問題なのは裁判所です。陸山会事件の秘書裁判では
その控訴審において納得できない有罪判決が出ています。これに
よって、大久保、池田両氏は罪を受け入れ、石川氏のみが最高裁
に上告しており、まだ、決着はついていないのです。
 そこで、陸山会裁判を中心に、日本の裁判の問題について考え
ていくことにします。小沢裁判は、一審、控訴審ともに無罪判決
が出ています。しかし、無罪判決を出した理由において、一審と
控訴審は大きく異なるのです。小沢裁判の一審と控訴審の裁判長
は次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    小沢裁判 一審担当 ・・・ 大善文夫裁判長
    小沢裁判控訴審担当 ・・・ 小川正持裁判長
―――――――――――――――――――――――――――――
 テレビや新聞の大メディアでは、裁判の結果しか伝えていない
ので多くの国民は知りませんが、一審の判決理由と控訴審の判決
理由は大きく異なるのです。
 その点に注目した郷原信郎氏は、自身のブログ「郷原信郎が斬
る」で次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 陸山会事件では、小沢氏の秘書3人が政治資金収支報告書の虚
 偽記入で逮捕・起訴された事件(以下、「秘書事件」)と虚偽
 記入について秘書3人との共謀の刑事責任が問われ、検察では
 不起訴となったものの検察審査会の起訴議決によって起訴され
 た小沢氏本人の事件(以下、「小沢氏事件」)の二つの刑事裁
 判が行われた。この中で、東京地検特捜部の捜査において、不
 当な威迫、利益誘導等による取調べを行ったり、虚偽の捜査報
 告書によって検察審査会の判断を誤らせようとするなどの重大
 な問題があったことが、小沢氏を無罪とした一審の東京地裁判
 決(大善文夫裁判長)で指摘されただけではなく、最終的には
 秘書3人を有罪とした一審の東京地裁の公判の過程でも指摘さ
 れた(検察官調書の証拠却下決定)。そして2012年11月
 12日、小沢一郎氏に対する政治資金規正法違反事件の控訴審
 判決(小川正持裁判長)では、一審の無罪判決が維持されただ
 けでなく、一審判決は認めていた小沢氏の秘書3名の虚偽記入
 の犯意や、4億円の銀行借入れ、定期預金担保が隠蔽の意図に
 よるものであったことも否定する判断が示され、この事件の捜
 査で検察が前提にした事件の構図そのものが否定された。
     ──「郷原信郎が斬る」より/http://bit.ly/ZFHmeY
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢裁判の大善文夫裁判長による一審無罪判決では、政治資金
収支報告書の虚偽記載は認め、それに小沢氏の関与はなかったと
して、無罪になったのです。ところが、小川正持裁判長による控
訴審では、秘書3名の虚偽記載や、4億円の銀行借入れ、定期預
金担保が隠蔽の意図に基づくものであったことの両方を否定して
いるのです。
 つまり、小沢氏だけでなく、秘書3人も罪に値しないという結
論なのです。だからこそ、秘書裁判の飯田喜信裁判長は、弁護側
の申請したこの判決文の証拠採用を却下して強引に有罪判決を出
したのです。       ─── [自民党でいいのか/49]

≪画像および関連情報≫
 ●小沢秘書の控訴審について/鈴木一生氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  2013年3月13日の東京高裁判決は元秘書3人を再び有
  罪とし、無罪が確定した小沢一郎氏とは正反対の判断となっ
  た。結果を左右したのは、政治団体代表が刑事責任を追及さ
  れにくい政治資金規正法の構造と、高裁判決が改めて認定し
  た「小沢事務所とゼネコンの深い関係」の立証の有無にあっ
  た。元秘書の公判で検察側は、政治資金収支報告書の虚偽記
  載の背景として、ゼネコンからの裏献金の存在を指摘した。
  「記載ミス」ではなく、元秘書に「隠蔽に向けた強い意思」
  があったという動機を描くためだといえる。同種の背景を持
  つ西松建設違法献金事件も併せて審理された結果、二つの事
  件が「深い関係」の証明を補強し合う形になった。一方、検
  察審査会の議決で強制起訴された小沢氏の公判では、検察官
  役の指定弁護士は時間的制約などから裏献金の立証をせず、
  元秘書との共謀に重点を置いた。虚偽記載の動機はあいまい
  になり、高裁判決も「追及的な取材や批判的な報道を避ける
  ため」などと指摘するにとどまった。そこに規正法の限界が
  加わった。規正法は、収支報告書を作成する会計責任者や事
  務担当者の責任を中心に位置づける。代表者は虚偽記載を指
  示するなど共謀するか、会計責任者の選任・監督に重大な過
  失がない限り、罰せられることはない。今回の判決で、小沢
  氏に関係する事件の実質的審理は終結したというのが一般的
  な見方だが、ゼネコンからの多額の裏献金を認めた元秘書公
  判と、小沢氏の無罪判決の隔たりはあまりに大きい。二つの
  判決の未消化な部分は、有権者の評価に委ねられた。
                   http://bit.ly/174aOQX
  ―――――――――――――――――――――――――――

郷原信郎弁護士.jpg
郷原 信郎弁護士
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月09日

●「小川/飯田両裁判長因縁のバトル」(EJ第3628号)

 小沢裁判と秘書裁判──一審と控訴審のそれぞれの裁判長名を
示して話を進めます。
―――――――――――――――――――――――――――――
    ≪小沢裁判≫
     ・一 審担当 ・・・・ 大善文夫裁判長
     ・控訴審担当 ・・・・ 小川正持裁判長
    ≪秘書裁判≫
     ・一 審担当 ・・・・ 登石郁朗裁判長
     ・控訴審担当 ・・・・ 飯田喜信裁判長
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢裁判と秘書裁判──この2つの裁判の一審と控訴審で陸山
会事件は4人の裁判官によって4回審議されています。小沢裁判
では、一審、控訴審とも無罪判決が出ていますが、判決理由は一
審と控訴審ではまったく異なるのです。
 これに対して秘書裁判は、一審、控訴審とも有罪判決が出てお
り、控訴審では一審の判決をそのまま支持しているので、判決理
由は同じです。
 そもそも何でもない土地取引を検察側は、不法献金を隠す意図
をもって政治資金収支報告書に虚偽記載したといっているのです
が、陸山会事件の検察側の描いているストーリーは、次のように
まとめられます。秘書裁判で登石裁判長はこのストーリーを大筋
で認め、有罪判決を出したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.小沢一郎が世田谷の土地購入のために出した4億円のなか
   の1億円は水谷建設からの違法献金である。
 2.石川秘書らはその4億円を定期預金にし、同額の融資を受
   けるなど4億円の隠蔽工作をはかっている。
 3.土地を入手した04年10月は隠蔽のため、政治資金収支
   報告書へ記載せず、1ヵ月先送りしている。
―――――――――――――――――――――――――――――
 何度も述べているように、「1」に関しては証拠がないし、秘
書裁判の一審で証人として法廷で証言した水谷建設の元会長と社
長は、一審判決後に「証言は事実ではない」ことを認める意見陳
述書を石川弁護団に提出しています。しかし、石川弁護団は控訴
審において、それを証拠として採用するよう申請したのですが、
却下されているのです。
 これら3つのポイントを考えると、「1」が成立しないと、4
億円を隠蔽する理由がなくなり、「2」と「3」は説得力を失い
ます。しかし、登石裁判長は「1」はあったと十分推認できると
して、有罪判決を出しています。
 さて、小沢裁判で一審の大善文夫裁判長は、「1」は言及しな
いものの、秘書たちの虚偽記載はあったとしたうえで、小沢氏は
それに関わっていないとして、無罪判決を出しています。ここに
も「秘書は有罪にしてやる」という意図が感じられます。素人が
考えても、虚偽記載などないことが明白だからです。
 しかし、小沢裁判の控訴審で小川正持裁判長は、小沢氏に無罪
判決を出すだけでなく、秘書たちの隠蔽・虚偽記載もないとして
上記のストーリー──陸山会事件の構図そのものを否定している
のです。やっとまともな裁判が行われたという感じです。
 したがって、秘書裁判の石川弁護団としては、控訴審において
水谷建設幹部による意見陳述書と小沢裁判の控訴審判決文を証拠
提出すれば無罪は確実として、87通の新証拠を提出したのです
が、飯田喜信裁判長はそのすべてを棄却して、一審判決を全面支
持して有罪判決を出したのです。
 無罪を立証できる可能性のある証拠──しかもその1つは小沢
裁判控訴審の判決文である──公平であるベき裁判長がこれを却
下するとは考えられないことです。明らかに裁判所も「小沢は無
罪でも秘書は有罪にする」ことを意図しているようです。
 ところで、飯田喜信という裁判官は、あの東電OL事件で一審
無罪判決を受けたゴビンダ氏を拘留し、控訴審で逆転有罪判決を
出して15年間服役させた裁判官なのです。このときは裁判長で
はなかったものの、拘留決定においても判決においても主導的な
役割を果たしているのです。
 ゴビンダ氏の15年の服役後に、東電OL事件は再審が開始さ
れ、再審においてゴビンダ氏に無罪判決が出されたのです。これ
について、郷原信郎弁護士は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 この再審開始決定は、「新証拠の有無」だけではなく、確定判
 決の心証形成にまで踏み込んで事実認定の誤りを指摘したもの
 で、従来の再審に関する判断と比較すると異例の積極的な再審
 判断との受け止め方もあった。その後冤罪の決定的証拠が発見
 されたことで、結果的には再審開始決定の事実認定が正しかっ
 たことが証明された。
     ──「郷原信郎が斬る」より/http://bit.ly/ZFHmeY
―――――――――――――――――――――――――――――
 これによって、飯田喜信裁判官は、無実のゴビンダ氏を15年
間服役させた「冤罪裁判官」のレッテルを貼られ、ハリのむしろ
に座らされ、世間の非難を浴びています。
 奇遇というべきか、運命というべきか、ゴビンダ氏の再審公判
を担当した裁判長が小川正持裁判官なのです。つまり、小沢裁判
と秘書裁判のそれぞれの控訴審を担当する裁判長が期せずして顔
あわせたことになるのです。
 飯田裁判長にとって小川裁判長は、自分を「冤罪裁判官」に貶
めた憎き相手です。もとより、小川裁判長を恨むのは逆恨みもい
いところですが、そこは人間です。控訴審は、裁判長にとって生
かすも殺すも自由になるといわれている世界です。それを利用し
て、裁判官として当然成すべき公平な裁定を怠り、新証拠をすべ
て却下し、ろくに審理もせず、一審判決をそのまま支持したので
はないかと思われるのです。これについての郷原信郎弁護士のコ
メントを「関連情報」に記載しておきますので、ぜひ読んでいた
だきたいと思います。   ─── [自民党でいいのか/50]

≪画像および関連情報≫
 ●小川正持裁判長に敵意むき出しの飯田喜信裁判官
  ―――――――――――――――――――――――――――
  飯田裁判長にとって、小川裁判部からのメッセージを受け入
  れて、秘書事件について一審の有罪判決を覆して無罪の判断
  をするのは、何より耐え難いことだったはずだ。小川裁判部
  とは全く反対の結論、つまり、一審判決秘書の犯意や隠蔽の
  意図を認める結論を出そうとするのも、小川裁判部にここま
  でコケにされた飯田裁判長の「心情」としては、わからない
  でもない。問題は、その判決の中身だ。小川裁判部とは反対
  の結論を出すことでリベンジしたいというのなら、自ら、或
  いは合議体の他の裁判官の力も活用して、小沢氏無罪判決の
  秘書に関する判示について問題点を徹底的に洗い出し、それ
  を否定する根拠を示す方向で最大限の努力を行い、その方向
  で、説得力のある判決文を書くというのが、刑事裁判官の最
  上位の東京高裁部総括にまで上り詰めた「刑事裁判のプロと
  しての矜持」というものであろう。しかし、実際の判決文の
  内容は、それとは凡そかけ離れたものだ。健全な常識に基づ
  く事実認定とは凡そかけ離れた異常な「推認」判決としか言
  いようのない秘書事件一審判決を丸ごと容認したものであり
  秘書事件の控訴審開始の直前に出された小川裁判部の小沢氏
  控訴審無罪判決の緻密な事実認定と比較すれば、その中身の
  ひどさ、杜撰さは素人目にも明らかだ。そして、それ以上に
  異様なことは、飯田裁判部による秘書事件控訴審判決の中に
  小川裁判部による小沢氏無罪判決の判決文を意識し、敵意を
  むき出しにしたと思える記載があることだ。
     ──「郷原信郎が斬る」より/http://bit.ly/ZFHmeY
  ―――――――――――――――――――――――――――

小川/飯田裁判長.jpg
小川/飯田裁判長
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月10日

●「最高裁は石川上告を棄却できるか」(EJ第3629号)

 日本の刑事裁判は三審制ですが、最高裁に上告する理由は、憲
法違反、判例違反に限られているのです。事実認定や法律適用に
ついては、事実上控訴審が最終判断であり、その当否が上告審で
見直されることはほとんどないのです。つまり、控訴審裁判長は
「絶対権力者」になることを郷原信郎弁護士は指摘しています。
 ということは、小沢氏の元秘書3人は、裁判において、一審と
控訴審で最悪の裁判官にあたったことになります。しかし、これ
は話ができ過ぎています。東京地検と東京地裁は、明らかに陸山
会裁判については次の意思が働いているように思います。これは
改革政治家と官僚組織の戦いなのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     小沢が無罪になっても秘書は有罪にする
―――――――――――――――――――――――――――――
 陸山会事件の裁判において、唯一の救いは、小沢裁判の控訴審
を担当した小川正持裁判長です。この裁判長は、小沢裁判の控訴
審判決で、小沢氏に無罪判決を下しただけでなく、石川元秘書の
収支報告書への虚偽記入に故意、隠蔽の意図がないことを論旨明
快に指摘した判決文を書いているからです。
 秘書裁判の控訴審判決が出たとき、小沢事務所は直ちに次の声
明を出しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎東京高裁判決について
 本日の東京高等裁判所の判決は、明確な証拠も合理的な根拠も
 全く示さないまま、元秘書たちのそれぞれの主張を全面的に認
 めない驚くべきものであり、極めて遺憾です。本件は、無罪が
 確定した私自身の件も含めて、法務・検察官僚が歴史的な政権
 交代の前後に、国家権力を濫用して自らの政治的かつ権力とし
 ての思惑を達成するために強行した不当な捜査であり、それに
 基づく裁判にほかなりません。それは、法と証拠に基づく法治
 国家の裁判の原則を自ら踏みにじる行為であり、民主主義国家
 においては絶対あってはならないことです。それがまかり通っ
 ていることに、強い憤りと深い悲しみを覚えます。
         平成25年3月13日/衆議院議員小沢一郎
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは明らかに最高裁に対する牽制です。「もしこれ以上不当
判決は許さない」という強い意思が示されています。しかも、同
じ事件を裁いた裁判で、無罪と有罪という真逆の判決が出ている
のです。こういう判決が出ている以上、最高裁としても簡単には
上告棄却はできないはずです。
 しかし、最高裁が控訴審判決を差し戻すと、事件はもう一度洗
い直され、法務検察は大きなダメージを受けることになります。
いずれにせよ、この事件はこのままでは終わらないということで
す。郷原信郎氏は、これについて、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 石川氏は、控訴審判決を不服として即日上告した。憲法違反、
 判例違反等の上告理由はなくても、高裁の二つの判決で同一の
 事実についての認定・評価が真っ二つに割れているのであるか
 ら、「原判決を破棄しなければ著しく正義に反する」事由が問
 題になることは明らかだ。最高裁は、事実審理を行った上、小
 川裁判部の判断と飯田裁判部の判断のいずれが正しいのか、裁
 判所としての最終判断を示すべきである。
     ──「郷原信郎が斬る」より/http://bit.ly/ZFHmeY
―――――――――――――――――――――――――――――
 すべては秘書裁判の一審の登石郁朗裁判長による無茶苦茶な有
罪判決にあるのです。このことを明らかにするために、あの東電
OL事件を振り返って見ることにします。
 東電OL殺人事件は、1997年(平成9年)3月に東京電力
の従業員だった女性が東京都渋谷区円山町にあるアパートで殺害
された事件です。
 ネパール人ゴビンダ・マイナリ氏(当時30歳)が容疑者とし
て逮捕されましたが、犯人を特定する直接の証拠はなく、検察側
は状況証拠を複数積み上げることで、ゴビンダ氏が犯人であるこ
とを立証できるとして、東京地方裁判所に起訴したのですが、ゴ
ビンダ氏は無罪を主張したのです。
 2000年4月14日、東京地裁は検察から無期懲役の求刑の
出ていたゴビンダ被告に対し、証拠不十分であるとして、無罪判
決をいい渡したのです。この判決でコビンダ氏は拘留を解かれ、
不法滞在でネパールに強制退去の手続きがとられることになった
のです。
 ところが、検察側は控訴したうえ、「ネパールへの出国を認め
て送還してしまうと、その後逃亡され、裁判審理や有罪確定時の
刑の執行が事実上不可能になるとして、裁判所に職権による再勾
留を要請したのです。
 本来これは無理な要求なのです。刑事被告人、とくに無罪判決
が出た場合は、無罪の推定が強く働くケースなのです。したがっ
て、再勾留が認められるとすれば、一審の無罪判決に明白な誤り
があるとか、判決後に、有罪を決定づける新証拠が見つかったと
いうような場合に限られるのです。
 ところが検察はこれにこだわったのです。それは、コビンダ氏
が犯人であるという確証があったわけでなく、無期懲役を求刑し
た容疑者が無罪判決になるということは、検察のメンツが丸潰れ
になるというだけのことで組織として再拘留を要求したのです。
 それでも東京地裁と、東京高検の要請を受けた東京高裁第5特
別部は拘留にゴーサインを出さなかったのです。しかし、控訴審
を担当する東京高裁刑事4部は、勾留を認める決定を出したので
す。このとき、拘留決定に主導的役割を果たしたのが、飯田喜信
裁判官なのです。
 当然弁護側は異議申立てを行ったのですが、認められず、さら
に最高裁に特別抗告をしたのですが、最高裁もこれを認めず、拘
留が決まったのです。これによって、ゴビンダ氏には無期懲役の
有罪判決が下されたのです。─── [自民党でいいのか/51]

≪画像および関連情報≫
 ●山口一臣/陸山会裁判の判決要旨を読んで
  ―――――――――――――――――――――――――――
  問題とされたふたつの政治団体は西松建設がその社名を隠し
  て政治献金を行うための隠れ蓑だったとする論法は、私にも
  違和感はない。その理由も丁寧に説明されている。したがっ
  て、大久保隆規元秘書が寄付の主体が西松建設であるという
  ことを認識していたというのも、普通に納得できる。ところ
  が、ここから先、迷走が始まる。判決は〈岩手県や秋田県で
  は、公共工事におけるいわゆる本命業者の選定に関して、小
  沢事務所の意向が決定的な影響力を持っており、その了解が
  なければ本命業者になれないという状況であった〉と、何の
  根拠も示さず断定しているのだ。その上で、大久保氏が「天
  の声」の発出役を務めていたと認定する。これらはいかなる
  証拠に基づくものなのか、判決要旨からはわからない。そも
  そも「天の声」の存在自体は、09年7月の西松建設国沢幹
  雄元社長の判決で明確に否定されている。献金をして「天の
  声」をもらって、工事を受注するといった単純な話はもうな
  いといってもいい。しかし、今回の判決がここまでハッキリ
  断定しているということは、国沢元社長の裁判でも出て来な
  かった何らかの根拠や証拠があるのだろうか。もしないとし
  たら、登石郁朗裁判長は頭がどうかしていると考えるのが、
  自然かつ合理的だ。        http://bit.ly/oADSvJ
  ―――――――――――――――――――――――――――

ゴビンダ・マイナリ氏.jpg
ゴビンダ・マイナリ氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月11日

●「ざまあみろ判決の飯田喜信裁判長」(EJ第3630号)

 ゴビンダ・マイナリ氏の再拘留を決める決定を行ったのは、東
京高裁刑事4部です。再拘留を決めた理由は「罪を犯したことを
疑うに足りる相当な理由」となっています。
 本来無罪判決を受けた被告を、検察側が控訴したとはいえ、身
柄を拘束して再拘留することはあり得ないし、絶対にあってはな
らないことです。たとえ被告が外国人であってもです。
 問題なのは、ゴビンダ氏の控訴審を担当するのが再拘留を決め
た東京高裁刑事4部であることです。この裁判部は「罪を犯した
ことを疑うに足りる」理由があるとして検察側の要求する再拘留
を認めたのですから、再拘留を決めた時点で、控訴審での有罪判
決が決まったようなものなのです。ちなみに、この裁判部の裁判
官は次の3人です。
―――――――――――――――――――――――――――――
           高木俊夫裁判長
           飯田喜信裁判官
           芦沢政治裁判官
―――――――――――――――――――――――――――――
 このとき、裁判長ではなかったものの、ゴビンダ氏の再拘留の
決定から控訴審全般にわたってリーダーシップを発揮したのが、
飯田喜信裁判官だったのです。この飯田喜信氏が小沢秘書裁判の
控訴審を担当した裁判長なのです。
 そして2000年12月22日、この裁判部は一審の無罪判決
を覆して無期懲役をいい渡したのです。逆転有罪判決です。弁護
側は最高裁に上告したものの、2003年10月20日、最高裁
判所第三小法廷で上告が棄却され、無期懲役の有罪判決が確定し
たのです。
 しかし、ゴビンダ氏は獄中から東京高裁に再審請求を行ったの
です。これに対して、有罪判決が出るまでの経緯から冤罪事件の
疑いがあるとして、日本国民救援会が結成され、日本弁護士連合
会も支援を行ったのです。
 2011年7月23日、東京高裁の再審請求審において、弁護
側が求めた物証の再鑑定を東京高裁が実施するよう検察側に要請
し、DNA鑑定などが行われることになったのです。その鑑定に
おいて、コビンダ氏の無実を証明する決定的な証拠が発見された
のです。
 2012年6月7日、東京高裁は再審の開始を決めたのです。
このときの裁判長が小川正持氏なのです。小沢裁判の控訴審を担
当した裁判長です。小川裁判長は、直ちにゴビンダ氏の刑の執行
を停止する処置を取り、ゴビンダ氏はその日のうちに釈放された
のです。検察側は職権で拘留を続けるよう要請したものの、小川
裁判長は聞く耳を持たなかったのです。
 2012年10月29日に再審初公判が開かれ、検察は、「被
告以外が犯人である可能性を否定できない」として無罪を主張し
て結審。そして、同年11月7日、東京高裁はゴビンダ氏に対し
て、無罪判決をいい渡したのです。
 コビンダ・マイナリ氏には、2013年5月、補償の最高額で
ある一日当り12500円、計6800万円が支払われ、事件は
決着したのです。
 控訴審を担当した高木俊夫裁判長は既に亡くなり、実質的にゴ
ビンダ氏の再拘留を認め、無期懲役の有罪判決を出した飯田喜信
氏は、謝罪をするわけでもなく、職を辞するわけでもなく、平然
として、秘書裁判の控訴審で不可解な有罪判決を出しているので
す。一体何人無実の人を有罪にすれば気が済むのでしょうか。
 弁護士の郷原信郎氏は、秘書事件の控訴審判決で有罪を出した
飯田喜信裁判長の気持になって、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小川裁判部がどういう認定をしようとクソくらえだ。私の裁判
 部では、どんな判断をしようと私の勝手だ。ざまあ見ろ!
   ────「郷原信郎が斬る」より/http://bit.ly/ZFHmeY
―――――――――――――――――――――――――――――
 郷原信郎氏によると、小川裁判長が小沢裁判の控訴審において
収支報告書の虚偽記入について秘書と小沢氏の共謀を否定しただ
けでなく、さらに踏み込んで、収支報告書への秘書の虚偽記載に
犯意がないことまで与えられた証拠に基づいて証明し、「裁判の
判決とはこうするもの」として、秘書裁判の登石判決を痛烈に批
判して見せたのです。
 秘書裁判の控訴審判決は、小沢裁判の約4ヵ月後の2013年
3月13日に出されており、同じ事件の裁判であるので、当然こ
の小川裁判部の判決の影響を受けているはずです。
 控訴審の裁判長としては、小沢裁判の控訴審判決も参考にして
裁くのは常識です。しかし、飯田裁判長としては、東電OL事件
では、小川裁判長に煮え湯を飲まされており、とても平常心でそ
れに当れなかったのでしょう。
 そのため、弁護側の提出する証拠のほとんどを不採用にしてま
るで小川裁判長に当てつけるかのように、登石裁判長による一審
判決を全面支持して有罪判決を出しているのです。郷原信郎氏は
これを「私怨のようなもの」であるとして、上級裁判所の裁判官
の公正な判決とはとてもいえないと批判しています。
 諸悪の根源は、登石裁判長による有罪判決にあるのです。郷原
氏はこれを強く批判しています。この裁判長は、いわゆる陸山会
事件の検察の暴走捜査に協力し、明らかに同じ司法ムラの検察を
助ける判決を出しています。登石裁判長のやったことで許されざ
ることは次の3つです。
−――――――――――――――――――――――――――――
   1.西松建設事件を蔽い隠す検察の訴因変更に協力
   2.水谷建設からの不法献金を受領したことの推認
   3.検察のストーリーをほぼ丸飲みして、有罪判決
―――――――――――――――――――――――――――――
 郷原信郎氏は、秘書裁判を有罪に導いた登石判決の構図は東電
OL事件の裁判のやり方に酷似しているといいます。明日のEJ
で述べます。       ─── [自民党でいいのか/52]

≪画像および関連情報≫
 ●北海道独立義勇軍:Butch隊長ブログ/秘書裁判について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  江川紹子氏は「小沢氏の元秘書の控訴審を仕切る飯田喜信裁
  判長は、東電OL事件でゴビンダさんに逆転有罪判決を出し
  た裁判官。つい先日、その判断の誤りが指摘されたばかりだ
  が、そういう裁判官が何の検証も受けず、反省もないまま、
  人を裁き続けるとどうなるか、ということが、よく分かる今
  日の訴訟指揮だった」とつぶやいている。ちなみに東電OL
  事件では、一審無罪を勝ち取ったゴビンダさんの拘留継続を
  認めるという、人権無視の判断を下している。初めから有罪
  ありきと疑われても仕方がない逆転有罪判決だった。その結
  果の冤罪である。その裁判所の責任は一切問われていないの
  である。先の小沢裁判の控訴審無罪判決は、小沢の虚偽の認
  識どころか秘書らの虚偽認識さえ否定し、さらに4億円の簿
  外処理が違法な処理とさえ認定していない。秘書裁判での検
  察のストーリーでは、裏献金1億円を隠すための簿外処理と
  虚偽記入だったはずだが、小沢裁判ではこの両方とも否定さ
  れており、検察ストーリーは完全に崩壊しているのだが、秘
  書裁判控訴審を裁く飯田喜信は、それでも推認に推認を重ね
  て有罪とした登石判決を踏襲するつもりなのか。
                   http://bit.ly/17U3zxO
  ―――――――――――――――――――――――――――

推認裁判長/登石郁朗氏.jpg
推認裁判長/登石郁朗氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月12日

●「登石裁判長は掟破りを冒している」(EJ第3631号)

 ここまで検察捜査のひどさを指摘してきましたが、裁判官も同
じ穴のムジナであり、ひどい裁判官がたくさんいるようです。し
かし、なかには、小川正持氏のような立派な裁判官もいることも
わかってきています。
 そこで陸山会事件の秘書裁判の一審──登石裁判長の裁判の進
め方がいかに問題があるのかについて、郷原信郎氏の所説にした
がって述べることにします。
 郷原弁護士は、登石裁判部の問題点を明らかにするために、一
つの事例を次に示します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 A被告人はBを殺害した事実(事実1)で起訴されたが、殺人の
 事実を全面的に否認している。そのAが起訴事実より前にもB
 を殺害しようとして未遂に終わった容疑事実(事実2)があって
 その事実について徹底した捜査が行われたが、結局容疑が固ま
 らず起訴されなかった。
     ──「郷原信郎が斬る」より/http://bit.ly/LMs69e
―――――――――――――――――――――――――――――
 このAの殺人事件の公判で、「事実1」の動機・背景として、
「事実2」の殺人未遂の事実を実証することが裁判として許され
るかどうかという問題です。司法修習所では、このような問題が
出されて、全員で討議が行われるのです。
 答えをいうと「許されない」が正解です。なぜなら、もし「事
実2」を取り上げると、起訴していない「事実2」を「事実1」
の公判で立証して処罰しようとしているのに等しいからです。こ
れは、刑事事件の「不告不理の原則」といい、検察官が起訴して
いない事実は審理の対象とされないという原則なのです。
 秘書裁判一審の公判前整理手続きで問題になったのは、検察側
が強く要求する水谷建設から陸山会への1億円の不法献金を立証
するための証人尋問請求を認めるのかどうかだったのです。
 しかし、水谷建設の不法献金は起訴事実に入っていないのです
が、検察側としては、石川氏らが収支報告書の虚偽記載をした動
機が、水谷建設からの不法献金の隠蔽にあるというストーリーを
作り上げているので、証人尋問を求めたのです。
 不法献金については、石川、大久保両被告とも全面的に否認し
ており、検察側の徹底した捜査でも、それを裏付ける証拠は何一
つなく、起訴事実に入れることができなかったのです。
 しかし、登石裁判長はこの証人尋問を許可したのです。検察が
あまりにも強硬に証人尋問を要求したので、根負けして許可して
しまったのです。
 これは上記の事例で、Aの公判で「事実1」の殺人の動機・背
景として、「事実2」の殺人未遂事件を立証しようとするのと同
じなのです。証拠がなくて起訴事実に含めることができなかった
水谷建設からの不法献金を、収支報告書の虚偽記載を争う裁判に
おいて立証しようということになるからです。明らかに「不告不
理の原則」に違反しており、裁判所としては絶対にやってはいけ
ないことなのです。
 それにしても検察側はどのようにして証人を立てることができ
たものでしょうか。
 水谷建設という企業は、問題の多い企業で叩ければ埃の出る企
業なのであり、水谷元会長は別件での逮捕歴もあるのです。東京
地検特捜部は、取り調べにおいて、こういう証言をすれば、この
件は見逃してやるという一種の司法取引のようなことをやってい
るのです。秘書裁判での水谷建設の証人はそういうかたちで決め
られたものと思われます。
 一審判決後の話ですが、この証人として出廷した水谷建設の川
村元社長は、石川側の弁護士から動かぬ証拠を突き付けられて証
言が事実でないことを認め、意見陳述書を取られています。これ
では検察側から嘘の証言をするよう強要されたといわれても反論
できないはずです。
 証人尋問の許可をもらった検察側は冒頭陳述として、陸山会が
水谷建設から不法献金を受けた経緯を盛り込み、その不法献金を
隠すために政治資金収支報告書に虚偽記載したという、事実と異
なるのストーリーを読み上げたのです。
 もちろんマスコミはそれを大々的に報道し、それが小沢氏には
大きなダメージとなったのです。小沢氏自身は無罪になったもの
の、現在でもそのダメージが消えておらず、小沢氏率いる未来の
党や生活の党が選挙で惨敗したのは、この検察のデタラメ捜査と
裁判所の原則無視の裁判の影響なのです。「小沢は無罪でも秘書
は有罪にする」という官僚組織による小沢潰しです。
 しかし、裁判所は起訴事実にない証人尋問を認めてしまった結
果、判決でそれを無視することは困難になったのです。これにつ
いて、郷原信郎弁護士は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 結局、裁判所は、検察の「無理筋」の立証を認め、水谷建設関
 係の証人尋問請求を容認してしまった。そうなると、判決でも
 その判断を前提とする認定を行わざるを得ない。それが水谷建
 設からのヤミ献金を隠すことが虚偽記入の動機だったという凡
 そ理解しがたい判決の事実認定につながったものと思われる。
     ──「郷原信郎が斬る」より/http://bit.ly/LMs69e
―――――――――――――――――――――――――――――
 裁判官だって後から自分の行なった判決にあれこれいわれたく
ないものです。登石裁判長は秘書裁判の一審判決以来、「推認裁
判長」という悪名で呼ばれます。そのすべての原因は、起訴事実
にない水谷建設からの不法献金に関する証人尋問を認めるという
掟破りにあるのです。そのため、判決では多くの「推認」を重ね
ないと裁判の整合性がとれなかったのです。
 それを引き継いだのが控訴審の飯田喜信裁判長です。彼は登石
裁判部のミスを正し、東京地裁の名誉を守るべきだったのに、弁
護側提出の証拠を却下し、登石判決を支持したのです。何という
愚かな裁判官でしょうか。「冤罪裁判官」のレッテルは終生つい
てまわるでしょう。    ─── [自民党でいいのか/53]

≪画像および関連情報≫
 ●飯田喜信裁判長を罷免しよう/山崎行太郎の政治プログ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  一昨日、東京高等裁判所で行われた、所謂「陸山会事件」の
  判決公判は、日本の裁判史上最悪の公判となった。裁判所が
  誤審することは遺憾ながら「有り得る」ことだし、控訴審で
  審議が尽くされた結果、間違った判決が出たのであれば、そ
  れは仕方の無いことである。しかしこの判決(控訴棄却)は
  裁判官あるいは裁判所が意図的に審議を忌避した「手抜き裁
  判」であり、一審判断の追認を目的として、重要な証拠を故
  意に排除する・・・いう、許されざる所業の結果である。当
  該裁判で裁判長を務めた飯田喜信判事は、東電OL殺人事件
  で無実のゴビンダ・マイナリさんを一審無罪判決後、再拘束
  を求める検察に拘束許可を出し、控訴審で「逆転有罪判決」
  を下した、悪名高き裁判官であるが、彼は両方のケースに於
  いて、事件のことも被告のことも、ロクに調べることをせず
  ただただ検察の要求に応じることで自らの責任、職務を放棄
  した常習犯である。公判レポートをしてくださった「マッド
  マン」氏によれば、裁判長は終始うつむき加減で、声に自信
  が無く、目は書面に釘付けであったと聞く。とすれば、判決
  文はおそらく彼の作文ではなく、最高裁事務総局が用意した
  シロモノであろう。国会答弁で大臣が事務方の作成した答弁
  書を朗読するのと同じことが、裁判所でも行われているわけ
  だ。飯田は単にスポークスマンあるいはアナウンサーでしか
  ないと言える。          http://bit.ly/160FLnS
  ―――――――――――――――――――――――――――

登石裁判長による秘書裁判一審有罪判決.jpg
登石裁判長による秘書裁判一審有罪判決
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月13日

●「決着はまだ着いていない小沢謀殺」(EJ第3632号)

 官僚組織の中枢は検察です。それは「捜査」と「公訴の提起」
という強大な権限を行使できる組織だからです。これらの権限の
行使を受ける側の立場から見れば、自己の否定や消滅を意味する
ほど決定的な影響力を持つことになります。
 もし、この強大な権限を持つ組織が暴走したらどうなるでしょ
うか。そのあり得ない「暴走」が民主党が政権交代する直前から
現在にいたるまで、小沢一郎という一人の政治家に向けられ、そ
のために民主党は昨年末の総選挙で政権を失っています。
 その検察は、政権交代を目指す総選挙の直前に小沢氏の公設秘
書をいきなり逮捕し、小沢氏を民主党代表の座から引きずり下ろ
したのです。それでも民主党が政権を自民党から奪取すると、今
度は一人の国会議員を含む小沢氏の元秘書3人を証拠もないのに
逮捕し、起訴したのです。これによって小沢氏は幹事長の座から
も下りざるを得なかったのです。
 それでも小沢氏を起訴できないと、「小沢=クロ」を印象づけ
る虚偽の捜査報告書を複数作成し、それを検察審査会に提出する
ことによって、2度にわたって「起訴議決」を出させ、小沢氏を
強制起訴に追い込んだのです。まさに手段を選ばない検察の「暴
走」といえます。
 その強制起訴で小沢氏が一審、控訴審で無罪を勝ち取ると、今
度は裁判所を巻き込んで、裁判の常識を破る掟破りの有罪判決を
出し、「小沢は無罪でも秘書は有罪にする」を実現することによ
り、小沢氏の政治生命を断とうとしています。
 このあってはならない検察の暴走を政治家は見て見ぬふりをし
ているように思います。権力を行使する側をチェックすべきマス
コミはその役割を放棄し、最初から検察の広報機関を務め、無罪
判決を受けた小沢氏をいまだに批判しています。それは異常とい
うか、おぞましい光景です。
 そういう壮絶な小沢バッシングのなかで、当時山口一臣氏が編
集長を務めていた「週刊朝日」は、陸山会事件について、きわめ
て筋の通った報道を続けていたのです。「小沢=クロ」ではない
のですから、まともに報道すれば「小沢擁護」になるのです。そ
のためか、山口編集長は解任されてしまうのです。
 その山口元編集長は「『週刊朝日』は小沢を擁護していたわけ
ではない」として、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 はっきり言って、政治家としての小沢氏を擁護しているつもり
 はまったくなかった。「小沢事件」においては、小沢氏は捜査
 権力を行使される側であって、メディアが監視すべきは権力を
 行使する側(検察)だと考えていたからだ。権力を行使される
 側が誰であっても、それは同じだ。常に弱者の側、虐げられる
 側、支配される側に立って、その声を拾っていこうというのは
 私の編集者としての姿勢でもある。もちろん、小沢氏の側に明
 確な不正があれば、それはきっちり追及するつもりだった。だ
 が、週刊朝日の力不足かもしれないが、いくら取材しても、違
 法献金、脱税、あっせん利得といった事実を示す証拠は出てこ
 なかった。「政治とカネ」、「天の声」といった抽象的な言葉
 はやたらと飛び交っていたが、それが5W1Hに結び付くこと
 はなかった。考えて欲しいのは、百歩譲って、一議員の事務所
 が政治資金収支報告書に間違ったことを記入したということと
 国家権力を代表する捜査機関が証拠を改ざん、捏造しながら恣
 意的な捜査を繰り返しているのと、どちらが「不正義」かとい
 うことだ。法をねじ曲げ、無理やり人を犯罪者に仕立てるよう
 な行為は先進法治国家ではあってはならないことだ。
                 ──鳥越俊太郎・木村朗編
   『20人の識者がみた「小沢事件」の真実/日本文芸社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 民主党に政権交代をもたらした最大の功労者は小沢一郎です。
これを否定する者は誰もいないはずです。小沢氏は民主党の恩人
といえるでしょう。その小沢氏が検察からいわれなき迫害を受け
ているのに民主党の幹部は誰も助けようともせず、逆に小沢排除
という信じられない行動を起こしたのです。それが民主党を今の
惨状を招いたのです。
 2013年5月のことですが、民主党は政権担当時の失敗を総
括する「公開大反省会」を開催したのです。そのとき、出席した
のは、菅直人元首相、枝野幸男元官房長官、長妻昭元厚労大臣の
3人ですが、司会者から「小沢一郎氏についてひと言」と聞かれ
て次のように答えています。何と彼らは、3人そろって小沢氏を
批判したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 菅 :自分の権力が最大限の状態を維持したい人。これほど
    どひどいとは思わなかった
 枝野:何をしたいのかが分からない。とにかく分らない人だ
 長妻:私とはちょっと感覚の違う政治家
          ──鳥越俊太郎・木村朗編の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 何という小沢評でしょうか。彼らは民主党がこうなったのは党
を割った小沢氏のせいだと思っているようです。この期に及んで
も、彼らには何も見えていないし、事態を何も読めていないので
す。これでは民主党の再生などとても無理です。
 この3人衆については、元共同通信記者で、現在同志社大学教
授の浅野健一氏がコメントを述べているので、「関連情報」に掲
載しておきます。
 さて、今回のテーマも既に54回目です。現在は小沢「謀殺」
の仕掛け人候補として「官僚」について述べてきていますが、も
うひとつ大事なことが残っています。それは検察審査会の闇につ
いての追及です。
 小沢氏はこの検察審査会によって2回「起訴相当」議決が出さ
れ、強制起訴されています。問題はその2回目の議決が謎に包ま
れているのです。来週から、これについて、EJスタイルで述べ
ることにします。     ─── [自民党でいいのか/54]

≪画像および関連情報≫
 ●小沢政権阻止のための検察の政治介入/浅野健一氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  この3人──菅、枝野、長妻の小沢氏評こそ、松下政経塾と
  対米隷属政治家によって第二自民党に変質させた民主党幹部
  の精神的退廃ぶりを見事に表している。小沢氏は官僚機構と
  対略し、米国との対等な関係を求め、原発を20年以内に全
  廃するなど、「何をやりたいか」を民衆に訴えていた。日本
  にしかない「記者クラブ制度」の解体も訴え、外国と同じよ
  うな自由な記者会見を実践していた。小沢氏が首相になるの
  を阻止したい政治勢力は、検察の国策捜査を操作して、強制
  起訴という手段を使い、小沢氏を刑事被告人にでっちあげて
  小沢氏のやりたいことを封殺したのではないか。日本の民衆
  にとって「とにかくわからない人たち」は枝野氏らだ。菅、
  枝野両氏は東電福島第一原発「事件」(刑事告訴・告発され
  ており「事故」ではない)で、原子力マフィアと共謀して、
  原発事件に関する情報を隠蔽し、無数の市民を被曝させた張
  本人で、野田氏ともども、今も衆議院議員を続けていること
  が間違っている。
                 ──鳥越俊太郎・木村朗編
   『20人の識者がみた「小沢事件」の真実/日本文芸社刊
  ―――――――――――――――――――――――――――

民主党大反省会出席の3人.jpg
民主党大反省会出席の3人
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月17日

●「検察が悪用できる検察審査会制度」(EJ第3633号)

 陸山会代表の小沢一郎氏とその元秘書で元衆院議員の石川知裕
氏をめぐる陸山会裁判において、最高裁が石川氏の上訴にどのよ
うな裁定を下すかが注目されています。
 というのは、いま、小沢氏を強制起訴に追い込んだ検察審査会
に重大な疑惑が渦巻いており、その検察審査会を仕切っているの
が最高裁判所の事務総局であるからです。
 重大な疑惑とは、小沢氏を強制起訴した2度目の検察審査会が
実際には開かれておらず、架空の「起訴議決」であった可能性が
きわめて高いことです。もし、それが真実であったとすると、こ
れはきわめて重大なことになります。
 これに対して疑惑を抱き、前参院議員の森ゆうこ氏の力を借り
ながら、何回も最高裁事務総局に足を運んで疑惑の究明に尽くし
たのが志岐武彦氏です。志岐武彦氏は2009年からブログ「一
市民が斬る!」を主宰し、陸山会事件の取材をされています。こ
こからの記述は、森ゆうこ氏と志岐武彦氏の次の2冊の著書を中
心に、ネットの情報を加えて書いていきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 志岐武彦/山崎行太郎著『最高裁の罠/the Trap for Ozawa』
                      /K&Kプレス
 森ゆうこ著『検察の罠/小沢一郎抹殺計画の真相』
                       /日本文芸社
―――――――――――――――――――――――――――――
 検察審査会という制度はどのような目的で作られたのかという
と、検察の裁判所への公訴(起訴)を国民目線でチェックするこ
とを目的としています。なぜなら、事件について起訴する権限は
日本では検察官が独占しているからです。
 たとえば、ある犯罪事件について検察が容疑者を不起訴にした
場合、国民目線から見てその処分が不服である場合、その判断の
妥当性を審査するのが、検察審査会の役割なのです。議決には次
の3つがあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
           1. 起訴相当
           2.不起訴不当
           3.不起訴相当
―――――――――――――――――――――――――――――
 「起訴相当」という議決は、検察官は不起訴にしたけれども、
国民目線から考えると、起訴すべきであるという議決です。これ
は検察審査会としては一番強い議決であり、この議決が出される
と検察には再捜査が求められるのです。
 「不起訴不当」も「不起訴にしたのは不満である」という「起
訴相当」に近い議決であり、検察には再捜査が求められます。し
かし、再捜査の結果、もう一度不起訴処分が出ると、それで不起
訴処分が確定するのです。この場合、その不起訴処分を不服とし
て、検察審査会に告発することはできないのです。
 捜査報告書を偽造した田代元検事に対しては、「不起訴不当」
の議決が出されましたが、検察の再捜査はやはり不起訴だったの
で、田代氏の不起訴処分が確定しています。
 「不起訴相当」は、検察の不起訴処分を不服として審査した結
果、やはり検察の下した不起訴処分は妥当であるという結論が出
た場合に出される議決です。
 これら3つの議決のうち、「起訴相当」議決が出て、検察によ
る再捜査が行われ、やはり不起訴処分が出されたとき、これに関
しては再び検察審査会に告発できるのです。そして、検察審査会
で再び「起訴相当」議決が出されると、検察によらず強制起訴す
ることができます。小沢氏の場合がそれに当たります。
 2009年5月20日以前は、検察審査会の議決に拘束力はな
かったのです。しかし、それ以降は検察審査会によって2回「起
訴相当」議決が出ると、強制起訴できるようになったのです。
 2009年といえば、自民党麻生内閣のときであり、政権交代
前で小沢民主党が圧倒的な力を有していたときです。陸山会事件
や郵便不正事件など、検察の暴走がはじまった時期に一致してい
るのが気になります。
 ちょっと考えると、検察にとって検察審査会制度は、自らの刑
事処分にケチがつけられるわけですから、面白くない制度のはず
です。しかし、そこは法律のプロの検察のことですから、法律の
条文に検察が不利にならないような細工を施しているのです。
 検察審査会の審査は、国民のなかからくじ引きで選ばれる審査
員11人によって行われますが、審査員全員出席が条件になって
いるので、補充員が11人用意され、欠席人数は補充員が充てら
れるようになっています。検察審査会の議事は過半数で決められ
ますが、「起訴相当」や「起訴議決」は審査員8人以上の賛成を
必要とするのです。
 審査に当たっては、審査員のほとんどは法律の素人ばかりであ
るので、不起訴処分を出すにいたった経過や捜査状況、証拠など
の捜査資料、捜査報告書などに基づき、担当検察官が検察審査会
に出向いて説明を行うことになっています。また、検察審査会が
審査を行うに当たって、法律に関する専門的な知見を補うため、
「審査補助員」という名の弁護士がつくことになっています。
 もし、検察がある被疑者について、現在の証拠に基づいては起
訴できないが、どうしても起訴させたいと考えたとき、検察とし
ては不起訴処分を行うが、検察審査会に強制起訴させるべく誘導
することは十分可能なのです。
 小沢氏の場合はまさにそれに該当するのです。検察は不起訴処
分に関する捜査資料のほかに、検察の内部文書である捜査報告書
を偽造して検察審査会に送致し、それに基づいて担当検察官が出
向いて説明を行っているのです。もし、検察官が悪意をもって、
小沢氏を強制起訴させたいと思えば、十分可能です。被疑者の小
沢氏には何も抗弁する機会を与えないのですから。しかも、審査
補助員は、いずれも「ヤメ検」であり、検察とは意を通じやすい
弁護士が任命されているのです。─ [自民党でいいのか/55]

≪画像および関連情報≫
 ●世論操作で動いた検察審査会!/あるブログより
  ―――――――――――――――――――――――――――
  検察審査会は非公開だ。検察審査会のメンバーには誰が選ば
  れ、どのような議論をしたかは国民には公開されてない。闇
  の中から「議決」が出てくる。まるで神か悪魔のお告げだ。
  あなたにも私にも、その神か、悪魔のお告げの力が与えられ
  ることがある。面白いと思うか、怖いと思うか。小沢政治資
  金問題は不正な証拠がないのに、いかにもあるかのように捏
  造歪曲報道されている。革新の大政治家小沢議員は、検察に
  とっては目の上のたんこぶの敵だ。決して味方ではない。そ
  の敵の検察が裁判では小沢議員を有罪にできないと判断して
  起訴してない。その検察は無実な人を落とし入れようと証拠
  の改ざんまですることが暴露されている。検察官が証拠隠滅
  の罪で起訴された。恐ろしい世の中だ。その検察さえ、小沢
  資金問題では不正な証拠を見つけられず、証拠をでっち上げ
  することもできずに起訴をあきらめた。なのに、素人の国民
  から選ばれた検察審査会は小沢議員を起訴しろと議決を出し
  た。有罪にする証拠もないのに、裁判で有罪にできるわけが
  ないだろう。審査委員は「世論」と言う得体の知れない群集
  心理にかられて、正しい洞察力を喪失してしまったのではな
  いか。操作された「世論」は容易に国民を洗脳して、その思
  考能力を奪い去ることもできることは歴史が実証している。
  審査委員には一般家庭のおじさん、おばちゃんが選ばれる。
  裁判のことは何も知らない人が多いのは当たり前だ。その審
  査委員は何を根拠に「小沢議員を裁判にかけろ」といってい
  るのだ。映画の西部劇の縛り首のリンチ裁判を連想する。町
  の黒幕が民衆をそそのかし、宿敵をリンチ裁判にかける構図
  である。             http://bit.ly/18hrdyG
  ―――――――――――――――――――――――――――

森ゆうこ前参院議員.jpg
森ゆうこ前参院議員
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月18日

●「審査補助員の検察審議決の影響力」(EJ第3634号)

 なぜ、検察は検察審査会を自分たちの思うようにコントロール
できるのでしょうか。制度の内容をみると、とてもそんなことは
できそうもないように見えます。
 検察審査会は、全国の地方裁判所と地方裁判所支部がある場所
に149ヶ所165会設置されています。霞が関には6ヶ所あり
ます。それぞれの検察審査会は独立して職権を行使すると検察審
査会法第3条に定められています。
 しかし、それぞれの検察審査会の事務局の職員数は非常に少な
いのです。志岐武彦氏によると、小沢氏を強制起訴した東京第5
検察審査会事務局の職員はわずかに2人だそうです。もちろん、
こんな人数では職権は行使できないので、上部組織があることは
確かですが、最高裁のホームページ上では組織上それは明らかに
されていないのです。なぜ、明らかにしないのでしょうか。
 その上部組織は、最高裁判所の司法行政部門(裁判官会議)の
事務総局なのです。ここには職員が740人もおり、裁判官のな
かでもとくに優秀なエリート裁判官が結集しており、日本の司法
行政を司ってきているのです。ここが、検察審査会の組織管理も
行っているのです。
 ちなみに、この司法行政部門の傘下には「司法研修所」があり
司法試験合格者はすべてここに集められるのです。ここで1年間
の研修を受けたうえで、それぞれ裁判官、検事、弁護士の道に進
むのです。したがって、司法試験合格者(司法修習生)は、裁判
官であっても検事であっても弁護士であっても、同じ司法ムラの
一員であり、いわば親戚のようなものなのです。
 検察審査会では、法律に素人の審査員に対して指導をする審査
補助員という弁護士が任命されます。審査補助員は、最高裁が弁
護士会に依頼し、委嘱するかたちをとります。審査補助員を務め
る弁護士の選定でも、同じ司法ムラのことであり、どうにでもな
ると考えられます。
 さて、検察審査会の審査では、素人の審査員と法律のプロの審
査補助員ですから、法律の知識量がまるで違うし、一定の結論に
誘導しようと思えば可能です。実際に検察審査会における審査は
審査補助員が審査員をどのように導くかによって、審査結果の議
決に大きな影響を与えているのです。
 審査補助員が審査員に対して行う職務は次の4つです。これを
みると、議決は審査補助員次第ということがわかると思います。
―――――――――――――――――――――――――――――
   1.当該事件に関係する法令及びその解釈を説明する
   2.当該事件の事実上及び法律上の問題点を整理する
   3.上記の問題点に関する証拠や捜査資料を整理する
   4.当該事件の審査に関し、法的見地から助言を行う
―――――――――――――――――――――――――――――
 検察にとっては、東京第5検察審査会で小沢氏に最初の「起訴
相当」が出せるかどうかが重要なカギを握っていたのです。強引
に元秘書3人を逮捕して起訴した以上、裁判で無罪にするわけに
はいかないし、親分の小沢氏も裁判にかけることがどうしても必
要だったのです。
 そのため、小沢氏が虚偽記載の事件に深く関与していたと思わ
せる虚偽の捜査報告書を田代検事(当時)に書かせ、他の捜査報
告書も含めて第5検察審査会に送ったのです。そして、まんまと
第1回目の「起訴相当」を勝ち取っています。
 しかし、その虚偽捜査報告書がバレて白日の下に晒され、法務
検察としては追い詰められたのです。検察組織ぐるみの犯罪であ
ることを避けるため、田代検事一人に責任を負わせて幕引きを図
ろうとしても、その裁判において、組織ぐるみの関与が明らかに
なる恐れがあったからです。
 そのため、虚偽捜査報告書は、田代検事の「記憶の混同」であ
ることにして、不起訴処分を出したのです。当然検察審査会に告
発されることは覚悟のうえです。検察審査会は非公開ですから、
どのようにでもできるのです。
 予測通り、田代正弘元検事は東京第1検察審査会に告発された
のです。常識的に考えれば、今回は虚偽捜査報告書という動かぬ
証拠があるのですから、「起訴相当」が出るのは間違いのないと
ころです。しかし、そうはならないのがこの司法の世界です。
 ポイントは、その検察審査会の審査補助員として任命された澤
新なる弁護士にあります。
 この弁護士の素性について、2012年4月25日の「日刊ゲ
ンダイ」は、次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 検察ムラのためなら、「誘導」してでも結論を捻じ曲げる──
 そんなムラの支配を感じさせるのが、今回の東京第1検察審の
 審査補助員を務めた澤新弁護士(70)の素性だ。東京地検特
 捜部の所属した経歴を持つ新潟地検検事正。つまり、被疑者の
 田代とは先輩、後輩の関係だ。「澤氏は新潟地検検事正在任中
 妻の遺産相続をめぐって2億数千万円の申告漏れを指摘された
 さい、国税当局に『圧力』をかけたとして戒告処分になり、辞
 職しています」(司法記者)。つまり、田代と同様、検察に弱
 みを握られた「フダ付き」である。そんな人物がなぜ審査補助
 員に選ばれたのか。推薦した東京弁護士会に聞くと、「具体的
 な選出方法はお答えしていません。結果についての評価はコメ
 ントする立場にありません」と回答した。これでは弁護士会も
 検察ムラの一員ではないか──と疑われかねないだろう。
         ──2012年4月25日付、日刊ゲンダイ
―――――――――――――――――――――――――――――
 澤新弁護士には、もっと驚くべきことがあります。澤弁護士と
小沢代表がともに昭和36年3月に小石川高校を卒業し、同じク
ラスだった事実です。田代正弘氏の検察審は小沢裁判と密接に関
係するのです。検察はそういう事実を掴みながら、平気で検察審
の審査補助員を任命しているのです。こんなことが許されるので
しょうか。        ─── [自民党でいいのか/56]

≪画像および関連情報≫
 ●澤新弁護士と小沢一郎の関係/あるブログより
  ―――――――――――――――――――――――――――
  さて、昨日の参議院法務委員会で、有田芳生議員が質問に立
  ち、作文・田代元検事の「不起訴不当」議決を出した検察審
  査会の補助弁護人であるヤメ検・澤新弁護士について、とか
  くの疑惑があることを追求。その中で、なんとまあ、小沢一
  郎と澤新が、小石川高校の同級生であることが判明した。し
  かも、クラスも同じというから、火スペ(ちょっと古いか)
  も真っ青な展開になってきました。で、そのことについて問
  われた法務省の岩崎刑事局長は、ノラリクラリと「東京弁護
  士会の決めたことだから」と「知らぬ存ぜぬ」の一点張り。
  しかし、東京弁護士会が推薦してきた弁護士がどんな人物か
  くらいは、調査していないはずはないと思うのが常識っても
  んじゃないの。ていうより、調査したんだと思う。でもって
  こりゃあ、最適だわ、ってなったんだろうね。でなけりゃ、
  こんな曰く付きの胡散臭いヤメ検を補助弁護人にするわきゃ
  ありません。さらに、小沢一郎を強制起訴した検察審査会の
  平均年齢が34.55歳であることの疑惑に対しても、この
  刑事局長は、「検察審査会のことなので」と、こちらもあず
  かり知らぬとシラを切っとりました。法務省がここまで「知
  らぬ存ぜぬ」を押し通せちゃうってのは、つまるところ検察
  審査会には監督官庁がないからなんですね。ようするに、有
  田議員が言うように「ブラックス・ボックス」なわけで、そ
  れにしたった法務省がまったく我関せずってのは間尺に合い
  ません。ひょっとしたら、そもそもからして、政治的に利用
  するために検察審査会ってのは設置されたんじゃないのかな
  あ。でなけりゃ、ここまで独立性を担保された司法組織の存
  在って、ありえないと思うけどね。 http://bit.ly/148oRSX
  ―――――――――――――――――――――――――――

志岐武彦氏の本.png
志岐 武彦氏の本
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月19日

●「小沢事件シナリオは最高裁が作成」(EJ第3635号)

 いわゆる陸山会事件とは、政権交代直前の民主党の小沢一郎代
表(当時)を潰し、小沢首相を中心とする民主党政権を実現させ
ないようにするために東京地検特捜部が仕掛けた罠である──こ
こまでEJはそういう論調(仮説)に立って書いてきています。
 つまり、「検察の暴走」ということになるわけですが、この仮
説に立つと、割り切れないことが出てくるのです。それは、官僚
機構の中心は本当に検察なのだろうかという疑問です。
 確かに検察庁は法務省に属する組織ですが、刑事捜査や公訴の
提起と遂行が準司法的位置づけにあるがゆえに独立性を有してい
るのです。そのため、法務省を仕切っているのは法務大臣ではな
く、検事総長なのです。したがって、他の省庁では権限上は大臣
は行政を自由に指揮できるのですが、法務大臣だけは直接指揮は
できない構造になっています。
 しかし、検察が暴走する懸念があると判断したとき、法務大臣
は検事総長に対して指揮権を発動できるのです。しかし、それを
発動するには強い政治力が求められます。
 したがって、政権が法務大臣を選ぶとき、政治力の弱い議員を
就任させることが多いのです。大臣が行政を指揮しなくてもいい
ので、失敗が少ないからです。こういう大臣が指揮権を発動する
ことは考えられないので、法務検察当局としては歓迎です。
 民主党政権のときに柳田稔という法務大臣がいたことを覚えて
いるでしょうか。彼は、次のような発言をし、国会審議をストッ
プさせています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 法相はいい。2つのことを覚えておけばいい。「個別の事案に
 ついては回答を差し控える」と「法と証拠に基づいて、適切に
 やっている」の2つ。これで大臣は務まる。──柳田稔元法相
―――――――――――――――――――――――――――――
 このように考えてくると、どうやら官僚機構の中心は検察では
ないことがわかってきます。なぜなら、検察は確かに暴走したも
のの、自らも多くの返り血を浴びています。そうであるとすると
陸山会事件の本当のシナリオを書いたのは、検察ではなく、法務
検察当局のなかの別の強大組織ではないかと考えられるのです。
小沢氏を強制起訴に追い込んだ検察審査会の闇を追及していくと
それが明らかになってきたのです。文芸評論家で『最高裁の罠』
(K&Kプレス)の志岐武彦氏の共著者である山崎行太郎氏は次
のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 それでは、「最高裁の罠」とはどういうことか。
 小沢氏を強制起訴に持ち込むことになった起訴議決は2010
 年9月14日、つまり、小沢氏と菅直人氏が対決した民主党代
 表選のまさに当日に検察審査会議が開かれ、そこで行われたと
 言われている。しかし、本当にその日に11人の検察審査会メ
 ンバーが出席し、検察審査会が開かれたのか。我々の調査と関
 係資料の分析によると、必ずしも検察審査会が開かれたとは言
 えない。小沢一郎起訴議決は架空議決だった可能性さえ否定で
 きない。これは検察審査会を舞台にしたスキャンダルではある
 が、検察のスキャンダルとみるべきではない。これらの問題を
 検察問題として追及することはできない。なぜなら、検察審査
 会を管轄・支配しているのは最高裁であり、検察審査会のメン
 バー選びから、経費、日程表、平均年齢の計算などの実務は、
 最高裁の実質的な司令塔の役割を担っている最高裁事務総局が
 行っているからだ。その意味で、これは最高裁が主体のスキャ
 ンダルで、文字通り「最高裁スキャンダル」と言うべきものに
 他ならない。         ──志岐武彦/山崎行太郎著
     『最高裁の罠/the Trap for Ozawa』/K&Kプレス
―――――――――――――――――――――――――――――
 裁判官というと、当然裁判をする人と考えますが、「裁判をし
ない裁判官」もいるのです。それは、司法行政を担当するエリー
ト裁判官のグループです。三権分立と司法権の独立のため、裁判
官の人事や裁判所の経理などを含めた司法行政は最高裁判所に委
ねられているのですが、最高裁判所にはそのための「事務総局」
という部署が置かれているのです。ここには「裁判をしない裁判
官」が多くおり、司法行政全般を担当しているのです。
 検察審査会は、その事務総局の管理下にあり、そのコントロー
ルを行っているのです。陸山会の構図としては、秘書3人を逮捕
した時点で小沢氏の起訴は困難であることは、はじめからわかっ
ていたのです。そこで小沢氏については、検察審査会を利用とし
て、強制起訴に持ち込むという計画が進められたのですが、これ
には、最高裁の事務当局が全面的に協力しない限り、絶対に成功
するものではないのです。
 確実に小沢氏に対して強制起訴を出すには、それぞれ違う審査
員による2回の審査の結果、審査員11人のうち8人以上の審査
員が「起訴議決」を出さなければならないのです。これは相当高
いハードルです。
 EJでは、2回の検察審査会のうち、少なくとも1回目はルー
ル通り審査が行われ、「起訴議決」を出させることに成功したと
考えたのです。検察寄りの審査補助員を任命し、検察には虚偽捜
査報告書を提出させて、審査補助員によって審査を「起訴相当」
に誘導した結果ではないかと考えたのです。
 しかし、2回目については数多くの疑惑があり、検察審査会は
実際には開かれなかったのではないかという仮説を立てて、検証
に入ろうとしていたのです。
 しかし、志岐武彦氏は、多くのデータの分析の結果、2回とも
検察審査会は開催されていないという驚くべき仮説を立てておら
れます。それはもし審査員がきちんとくじで選ばれているのであ
れば、自分(志岐氏)のような意見の人間も選ばれる可能性があ
る。そうであれば、11人中8人以上が「起訴議決」を出すのは
難しいと考えたのです。志岐氏ご教示の資料によると、その可能
性は十分あるのです。   ─── [自民党でいいのか/57]

≪画像および関連情報≫
 ●スケープゴート理論とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  生け贄としての犠牲を拠出することによって、「負」の側を
  帳消しにすることです。現代社会的には、不祥事を起こした
  組織が、一名あるいは一部の者たちにすべての責任を負わせ
  て切り捨て、組織全体を守る場面で使われる言葉です。つま
  り、受けるであろう社会的批判に対する、生け贄としての犠
  牲と言えます。古代から、洋の東西を問わず、生け贄という
  儀式は存在しました。これは「人の営為に対する神の怒り」
  への畏れから拠出する犠牲でした。ここにもまた、「人がこ
  の世にあり、人の世界を守らなければならない」ときにどう
  すべきなのか?の構図があります。個人的には、守らなけれ
  ばならない側の「自らを切る」ことによっての「取り引き」
  としての行為と思います。     http://bit.ly/1gxYSZU
  ―――――――――――――――――――――――――――

柳田稔元法務大臣.jpg
柳田 稔元法務大臣
posted by 平野 浩 at 03:07| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月20日

●「民主代表選/2010で何があったか」(EJ第3636号)

 小沢一郎氏に対する2回目の検察審査会は実際に行われておら
ず、架空会議による「起訴相当」議決であった可能性が高まって
きています。もし、これが本当なら、最高裁は非常に危ない橋を
渡ったことになりますが、それは2010年9月の民主党の代表
選「小沢対菅」の対決に深く関係しているのです。
 この民主党代表選について詳細を語ろうとしている人はほとん
どいないのですが、植草一秀氏が、ご自身のブログ「植草一秀の
『知られざる真実』」や書籍でその真実を書いておられるので、
それをベースに振り返ってみることにします。一体あの代表選で
何があったのでしょうか。
 小沢一郎氏が影響力を発揮できる内閣を非常に恐れている勢力
があるのです。自民党、官僚機構、記者クラブメディア、政権と
癒着している大企業などの既得権益を持つ勢力と米国です。植草
一秀氏は、これを「米・官・業・政・電」利権複合体と名付けて
います。彼らにとって、小沢一郎のような政治家はまさに天敵の
ような存在なのです。
 民由合併が行われたのが2003年9月のこと。民主党による
自由党の吸収合併にもかかわらず、2006年4月に民主党代表
になり、それからわずか3年ちょっとで民主党は自民党を倒し、
政権交代を成し遂げています。これだけ見ても小沢一郎という政
治家の実力はわかると思います。
 もし、2009年3月の小沢氏の公設第一秘書の逮捕がなけれ
ば、小沢首班の内閣ができていたのです。これは、反小沢勢力に
とって最悪です。陸山会事件はそのために起きたのです。これは
反小沢勢力にとって満足すべき効果を収め、今や小沢氏は小政党
の党首にまで貶められています。彼らは政治の中心に小沢がいな
い開放感を味わっていることでしょう。
 問題はどうしてそうなったかです。政治に「たられば」はあり
ませんが、政権交代したとき、民主党が一丸となって小沢氏を支
えていたら、どうなっていたでしょうか。
 もしそうしていたら、民主党は現在でも政権与党の座にあった
はずです。しかし、民主党が現状のように見るも無残に崩壊した
のは、政権交代直後から、党内の反小沢グループ──菅、岡田、
仙谷などのグループ、野田、前原、玄葉など松下政経塾のグルー
プなどが徹底して小沢氏の足を引っ張ったからです。これらの勢
力の一部は、党外の反小沢グループとも連携して小沢降ろしに狂
奔したのです。
 党外の反小沢グループは、鳩山首相/小沢幹事長体制にも不安
を抱いていたのです。もし、この内閣が一定の実績を上げると、
小沢政権ができる可能性も十分あったからです。そこで、さまざ
まな方法で鳩山政権を失脚に追い込み、小沢幹事長も一緒に退陣
させたのです。これには、米国のオバマ政権も確実に一枚噛んで
います。米国も小沢政権には警戒をしていたからです。
 これらの反小沢グループが驚愕したのは、幹事長を降りた小沢
氏が2010年9月の代表選への出馬を突如決断したことです。
なぜなら、これなら、非常に高い確率で小沢内閣が誕生する可能
性が出てきたからです。これに検察審査会の2回目の議決がから
んでくるのです。
 鳩山政権までは、民主党は「国民の生活が第一」の理念を掲げ
ていたのです。ところが、菅内閣は「強い経済、強い財政、強い
社会保障」を標榜し、その経済政策の中核として、消費増税10
%と法人税減税を推進しようとしたのです。そこには、「国民の
生活が第一」の理念などかけらも残っていなかったのです。現在
の自民党の安部政権とまったく同じです。しかも消費増税は民主
党の完全なるマニュフェスト違反なのです。
 秘書が逮捕・起訴され、その裁判がはじまっていない段階であ
り、小沢氏自身も検察審査会で1回目の「起訴相当」の議決が出
て、第2回目の議決が注目されているという厳しい立場であるに
もかかわらず、代表選出馬を決意したのは「国民の生活が第一」
の理念を掲げて政権交代を成し遂げたにもかかわらず、その国民
との約束を踏みにじることになると判断したからです。
 政権交代の目的は、企業重視の自民党政治から、政治を国民の
手に取り戻すことにあったはずです。菅政権はそれを180度転
換し、元の自民党政治に戻そうとしたのです。代表選における演
説で、小沢一郎氏は次のように話しているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 地域の特色にあった町作りの中で、お年寄りも小さな子供たち
 も近所の人も、お互いがきずなで結ばれて助け合う社会。青空
 や広い海、野山に囲まれた田園と大勢の人たちが集う都市が調
 和を保ち、どこでも一家だんらんの姿が見られる日本。そのよ
 うな日本に作り直したいというのが、私の夢である。
 ──植草一秀著「日本の独立/主権者国民と『米・官・業・政
           ・電』利権複合体の死闘」/飛鳥新社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 菅直人首相はマニュフェスト破りの消費増税を打ち出したこと
で直前の参院選で惨敗しており、既に傷を負っていたのです。し
かし首相をそんなにころころ変えていいのかという同情論も一部
にあったことは確かです。
 しかし、選挙戦がはじまってみると、圧倒的に小沢氏が有利に
推移したのです。この選挙情勢に反小沢グループは危機感を持っ
たのです。このままでは小沢総理が実現してしまうという危機感
です。単なる党内の選挙ではありますが、日本の首相を選ぶ選挙
でもあったのです。
 これに対して積極的に動いたのは、記者クラブメディアです。
選挙の最中に秘書の不正疑惑や検察審査会関連の小沢氏にとって
マイナスのニュースを意図的に報道し、メディア主催の公開討論
会では、小沢嫌いのメディア幹部が「政治とカネ」の問題を持ち
出して、小沢氏を貶めたのです。しかし、小沢優勢は変わらず、
選挙戦は最終段階に入ったのです。カギを握るのは党員・サポー
ター投票だったのです。  ─── [自民党でいいのか/58]

≪画像および関連情報≫
 ●天木直人氏のブログ/民主党代表選の重大さに気づくべき
  ―――――――――――――――――――――――――――
  国民は民主党代表選挙を報じるメディアの異常さに気づかな
  ければならない。小沢叩きがあまりにもひどい。だからと言
  って菅もダメだから手放しで菅を褒めるわけにはいかない。
  だから、国民不在の政争だと今の政治を貶める。とんでもな
  い国民誤導だ。情報操作だ。今度の民主党代表選挙は、ただ
  の権力争いではない。権力争いと同時に、戦後65年の政治
  史の中で、初めて国の方向に白黒つける一大政策選択の選挙
  なのである。そして国民は今度の選挙をそのような選挙にさ
  せなくてはいけない。それを小沢、菅の二人に求めなくては
  いけない。その選択とは何か。日本という国を対米従属の政
  ・菅・財支配の国から、米国から自立した国民支配の国にさ
  せられるかどうかという選択である。この国は戦後65年間
  対米従属で保身を図ってきた日本国民と、その埒外に置かれ
  てきた一般国民に分断され続けてきた。この国の格差社会の
  本質はそこにある。今度の小沢・菅の対決はそれを変えるか
  変えないかの選択である。これほど明確な政策選択は無いの
  に、なぜメディアはその事を言わないのか。ここまで小沢叩
  きに傾斜し、あるいは小沢・菅の戦いは国民不在の権力争い
  に過ぎない、と貶めるのか。それはメディアが支配者側につ
  いてきたからだ。
       http://www.amakiblog.com/archives/2010/08/28/
  ――――――――――――――――――――――――

民主党代表選/2010/菅直人/小沢一郎.jpg
民主党代表選/2010/菅直人/小沢一郎
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月24日

●「陸山会事件のウラには米国がいる」(EJ第3637号)

 2010年9月14日に行われた民主党の代表選──小沢一郎
氏にとって、首相になれるかどうかの2回目の挑戦だったといえ
ます。民主党政権時の代表選であり、勝てば首相に就任すること
になる天下分け目の決戦です。
 菅首相(当時)としては、「しばらくおとなしくしてくれ」と
引導を渡した小沢氏がまさか代表選に出てくるとは思ってもいな
かったことでしょう。菅氏としては、参院選で勝利して代表選に
臨むつもりだったのですが、参院選で惨敗し、ねじれ状態を作っ
てしまったあとの代表選です。形勢はきわめて不利です。
 この2010年の民主党代表選がもしフェアに行われたならば
間違いなく小沢氏が勝利し、総理大臣になっていたと思います。
しかし、この党内選挙では、小沢氏を落とすためにさまざまな力
が働いたのです。
 それは検察だけでなく、最高裁まで巻き込み、記者クラブ全メ
ディアを総動員し、壮絶きわまる「オザワ・ネガティブ・キャン
ペーン」を展開して小沢氏を貶め、菅首相が勝利したのです。
 このようにいうと、まさか「国家とイコールともいえる法務検
察がそこまでやるだろうか」という疑問を持つ人が少なくないと
思います。あまりにもやることが大胆過ぎるからです。私も最初
はそう思ったのです。
 しかし、そこに米国の影があるとしたらどうでしょう。米国が
後ろ盾になっていると考えると、その大胆さが理解できると思い
ます。米国は「鳩山首相/小沢幹事長」の体制に不安感を持った
のです。もともと米国にとって民主党政権は歓迎できるものでは
ないのです。
 しかし、小沢一郎という類まれな能力を持つ政治家の力によっ
て政権交代が実現してしまったのです。孫崎亨氏によると、小沢
氏は「最後の対米自主の政治家」であり、こんな人物を日本の首
相にしては米国の国益にとってマイナスである──米国がそう考
えても不思議はないのです。
 そこで、米国は民主党の対米従属派の政治家を使って、鳩山政
権直後から小沢氏の行動を縛り、消費増税を仕掛けて小沢一派を
離党させ、野田首相にクーデター的解散を打たせることによって
自民党政権に戻したのです。その裏には一貫して米国の後押しが
あったと考えられます。
 陸山会事件を追及する主役である東京地検特捜部は、実は米国
のいうことなら何でも聞く組織なのです。なぜなら、東京地検特
捜部は、1947年の米軍による占領時代に発足した「隠匿退蔵
物資事件捜査部」という組織がその前身だからです。
 終戦のどさくさに紛れて、旧日本軍が貯蔵していた莫大な資材
──もともと日本のものである──がさまざまなかたちで隠匿さ
れ、横流しされ、行方不明になっていたのですが、それを探し出
してGHQに献上する機関が「隠匿退蔵物資事件捜査部」です。
 したがって、東京地検特捜部は米国の命令なら何でも聞くので
す。ロッキード事件も完全に米国に操られて、やはり対米自立の
政治家である田中角栄元首相をはじめ、多くの政治家や事業家が
罪に問われ、失脚させられたのです。
 私は現在次の本を読んでいます。作家は「亡国のイージス」の
福井晴敏氏で、終戦直後の隠匿物資である「М資金」のことを描
いているのです。映画化も決まっており、今年の10月19日に
ロードショウが行われます。
―――――――――――――――――――――――――――――
         福井晴敏著『人類資金』
              講談社文庫刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 このように、米国と東京地検特捜部はつながっているのです。
つまり、小沢氏に関する一連の事件には、そのバックには米国が
いると考えられるのです。法務検察の大胆さはこれが原因である
かもしれません。これについて、孫崎亨氏は著書で次のように述
べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 東京地検特捜部のエリートのなかには、アメリカと縁の深い人
 物がいます。ロッキード事件でコーチャンに対する嘱託尋問を
 担当した堀田力は、在米日本大使館の一等書記官として勤務し
 ていた経験があります。また、西松建設事件・陸山会事件を担
 当した佐久間達哉・東京地検特捜部長(当時)も同様に、在米
 日本大使館の一等書記官として勤務しています。この佐久間部
 長は、西松建設事件の捜査報告書で小沢の関与を疑わせる部分
 にアンダーラインを引くなど大幅に加筆していたことが明らか
 になり、問題になっています。この一連の小沢事件は、ほぼ確
 実に首相になっていた政治家を、検察とマスコミが結託して激
 しい攻撃を加えて失脚させた事件と言えます。(中略)アメリ
 カにとっては、自主自立を目指す政治家は「日本にいらない」
 のです。必要なのはしっぽを振って言いなりになる政治家だけ
 です。小沢が陥れられた構図は、田中角栄のロッキード事件の
 ときとまったく同じです。          ──孫崎亨著
        「アメリカに潰された政治家たち」/小学館刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 結果として小沢氏は、2010年9月14日の民主党代表選に
敗れたのです。しかし、この選挙には重大な不正があったといわ
れています。この選挙は首相を選ぶ選挙ですが、公職選挙法に基
づく選挙ではないので、不正は何でもありなのです。
 植草一秀氏によると、この選挙では次の3つの不正が行われた
というのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   1.メディアが総力を上げて小沢攻撃を展開したこと
   2.9月14日の検察審査会の議決が悪用されている
   3.党員・サポーター投票が改ざんされた疑いがある
―――――――――――――――――――――――――――――
             ─── [自民党でいいのか/59]

≪画像および関連情報≫
 ●達増拓也:民主党代表選で巻き起こった「オザワ現象」
  ―――――――――――――――――――――――――――
  今回の民主党代表選で、多くの国民が、小沢一郎氏の演説や
  討論の姿を直接あるいはテレビやインターネットで見聞きし
  少なからず驚き、考えさせられた。その結果、小沢支持がか
  つてないほど拡大・深化すると共に、マスコミ情報を鵜呑み
  にしないで、自分で見聞きし自分で考え自分で判断する態度
  が、国民に広がった。これを私は「オザワ現象」と呼んでい
  る。脳科学者の茂木健一郎氏も、次のようにツイートしてい
  る。「今回、お互いに連絡しあったわけでも、誰かが指示し
  たわけでもなく、心ある人たちの間に小沢一郎さんを支援す
  る動きが自然発生的に生まれたことは、近年の憲政史上、実
  は画期的なことだったと思う。明らかに質的に違う何かが現
  れた。その名前はまだない」。民主党代表選が始まる9月1
  日以前から、ネット上では「政治とカネ」問題が虚構である
  ことが様々に指摘されており、全国紙やテレビの異常な小沢
  叩きが話題になっていた。マスコミ各社の世論調査の小沢・
  菅支持率と、ネット調査のそれが、正反対であることも知ら
  れていた。9月1日、小沢・菅両氏の共同記者会見生中継で
  全国に衝撃が走った。二人の力量の差が、一目瞭然だったの
  である。ツイッターにも「小沢一郎氏の圧勝だった。正直こ
  こまで政治家としての資質に差があるとは思わなかった」。
  「菅さんはネチネチと個人攻撃するけど、小沢さんはやらな
  い。まさか品性の差が記者会見でここまではっきりするとは
  思わなかった」といったツイートがあふれた。
                   http://bit.ly/91SNo6
  ―――――――――――――――――――――――――――

映画「人類資金」.jpg
映画「人類資金」
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月25日

●「党員・サポーター票の大差の原因」(EJ第3638号)

 2010年9月14日に行われた民主党代表選の結果は次のよ
うになっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
        総得点  議員票  地方票  党員票
  菅 直人  721  412   60  249
  小沢一郎  491  400   40   51
―――――――――――――――――――――――――――――
 菅直人氏721点に対して小沢一郎氏491点ですから、数字
だけをみると、小沢氏の完敗です。しかし、議員票を見ていただ
きたいのです。「菅412対小沢400」──議員1人は2ポイ
ントになるので、実際の議員数では、菅氏に入れた議員は206
人、小沢氏には200人の議員が投票したのです。その差はたっ
たの6人です。
 奇怪なのは、党員・サポーター票の「菅249対小沢51」で
す。これは大差です。小沢氏の街頭演説では各地で小沢コールが
巻き起こり、その盛り上がりはなかなかのものだったので、この
大差は容易には納得できないものがあります。
 ところで、選挙の対象になった党員・サポーターの人数は34
万2493人であり、これに対して300ポイントを割り当てて
いるのです。300という数字は衆議院小選挙区の数であり、そ
れぞれの選挙区で得票1位の者を1ポイントとし、それを集計し
たものです。ということは菅氏は全国300の小選挙区のうち、
206ポイントを取ったことになるのです。実に68.6 %で菅
氏が圧勝しています。
 実は、党員・サポーター票については、統計のしかたや集計の
方法には大きな疑惑があるのですが、これについては改めて述べ
ることにして、これほどの大差を生み出したとされる原因は、や
はり大メディアによる小沢バッシングにあります。
 メディアは信じられないほど多い頻度で世論調査を行い、いか
に小沢氏が国民に期待されていないかを繰り返し強調する偏向報
道を行ったのです。元秘書3人が起訴され、小沢氏自身も検察審
査会で告発されていることを書き立てるなど、ほとんど常軌を逸
した小沢バッシングが執拗に繰り広げられたのです。
 そして、選挙になると必ず行われるメディア主催の公開討論会
においては、いつもの大新聞社のお偉方のメンバーが小沢氏に対
してきわめて無礼な質問を行ったのです。これについては、植草
一秀氏の著書から引用します。
―――――――――――――――――――――――――――――
  橋本五郎氏(読売新聞)、倉重篤郎氏(毎日新聞)、星浩氏
 (朝日新聞)、原田亮介氏(日本経済新聞)の四名が質問を行
 ったが、とりわけ、橋本氏と倉重氏は、一介の新聞記者である
 との身分もわきまえない、非礼極まる対応に終始した。
  橋本氏は普天間問題について、小沢氏が沖縄県民と米国の両
 者が納得できる案を得るために知恵を出すべきだと言ったこと
 について、具体的腹案があるのかを詰問した。仮に腹案がある
 にせよ、安易に公開できるはずもない。この回答に、橋本氏は
 「皆県外だと受け止めてますよ」とぞんざいに対応した。「皆
 そう受け止めている」ことを確認したわけでもないのに平気で
 嘘をつく。(一部略)
  朝日新聞の星浩氏は、不動産取得の収支報告書への記載問題
 について、「虚偽記載額は計算にもよるが、18億に上るわけ
 だが」と発言した。4億円の資金を2往復以上しなければ18
 億円にはならない。内容を知りながら、内容を知らない国民に
 虚偽の印象を植え付けるためにこのような表現を用いたことは
 明白だ。この一言で、星浩氏はジャーナリストとして、また人
 間としての信用を完全に失ったが、そこまでの偏向報道を展開
 したのがメディアの現実だった。
 ──植草一秀著「日本の独立/主権者国民と『米・官・業・政
           ・電』利権複合体の死闘」/飛鳥新社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢一郎という政治家は、自分にとってどんな不都合なことが
あっても、「絶対に言い訳はしない」のです。それどころか、自
分が悪者になって物事を解決することを何回もやっています。窮
地に追い込まれても辞任しない鳩山首相(当時)に対し、自分が
悪者になって幹事長を辞任し、鳩山氏を辞任させています。それ
は父親の言いつけを厳格に守っているからといわれます。
 メディアは小沢氏が言い訳しないことを知っていて、あえて常
軌を逸したバッシングを平気で仕掛けています。もし、小沢氏が
名誉棄損などで新聞社を告訴したら、犯罪として成立することが
たくさんあると思いますが、絶対に告訴してこないと読んでいる
からこそ、小沢叩きをやめないのです。
 この執拗な大メディアによる小沢バッシングは世間一般の小沢
評を大きく下げる効果を呼んでいます。しかし、そうであるから
といって、党員・サポーター票が「菅249対小沢51」になる
とはとても思えないのです。党員・サポーターが急激に増えたの
は、幹事長時代の小沢氏がそれに力を注いだからであり、党員・
サポーターに小沢支持者が大勢いたからです。
 なぜ、大メディアがこれほどまで小沢氏に対して牙をむいて襲
いかかるのでしょうか。それは彼が真の改革政治家であり、やる
といったら必ずやる政治家だからです。なぜなら、小選挙区制度
をはじめとする数々の政治改革は、ことごとく小沢氏の手による
ものだからです。これは誰も否定ができない事実なのです。
 自社さ政権ができて自民党が政権与党に復帰したとき、その中
心にいたのは竹下登氏です。しかし、小沢氏が率いる新進党には
公明党が解党して参加し、その支持母体の創価学会が支援するこ
とになって自民党は愕然とすることになります。
 そのため竹下氏は「三宝会」なる組織を作り、小沢氏の動きを
牽制しようとしたのです。この組織がどのようなものかについて
はEJ第2756号をご覧ください。  http://bit.ly/d1L29v
             ─── [自民党でいいのか/60]

≪画像および関連情報≫
 ●「三宝会」とはどんな組織なのか
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「三宝会」は竹下元首相の指示で1996年につくられた秘
  密組織で、新聞、テレビ、週刊誌、政治家、官僚、評論家が
  集まり、自民党にとって最大の脅威である小沢一郎氏をメデ
  ィアの力で抹殺する作戦が行われている。現在も存在し強力
  な指導力は健在だが、日本の裏社会を操作するこの会の内容
  は黒いベールに包まれている。その中心的存在は自民党であ
  る事は言うまでもない。「三宝会」趣意書は次の通り。
   激動する現代社会では、多角的で、迅速な情報の伝達が必
  須要件とされております。これらの情報は、複雑多岐にわた
  るマスメディアの発達によって、政治、文化、経済など、社
  会のあらゆる分野から絶え間なく生み出されてきています。
  こうした情報を逸早く正確にキャッチし、吸収、消化して、
  行動の指針とするためには、それぞれの分野における人々が
  己の属する世界のみに閉じこもり、それにとらわれることな
  く、よりオープンに、立場を異にする各分野の仲間たちと円
  滑な人間関係を築き上げていくことが求められます。そうす
  ることによってはじめて、微視的ではない巨視的な判断と、
  公正で客観的なものの考え方が得られるようになるのです。
  この目的を果たすために、このたび親しい者同志が相語らっ
  て、新聞、テレビ、雑誌など、マスコミの第一線で活躍して
  いるジャーナリストを中心に、政、財界の関係者らが定期的
  に集まり、情報交換を行ない、相互研鑽に励み、個々の資質
  の練磨と向上をはかるべく、新しく一つの会を設立すること
  に致しました。 (以下、名簿あり)http://bit.ly/1gNYbvx
  ―――――――――――――――――――――――――――

橋本五郎氏と星浩氏.jpg
橋本 五郎氏と星 浩氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月26日

●「10年民主党代表選での重要疑惑」(EJ第3639号)

 2010年9月14日の民主党代表選の党員サポーター票の結
果である「菅249対小沢51」について、これから真相を究明
して行くことにします。これについては植草一秀氏のブログ『植
草一秀の知られざる真実』の記事や写真を参照させていただいて
います。http://bit.ly/aXggW8
 結論からいうと、この「菅249対小沢51」は、明らかに不
自然であるといえます。もともとネットでは小沢人気ははるかに
菅首相(当時)を上回っていましたし、街頭での小沢コールは絶
大なものであったからです。
 それがどのくらい凄いかは、添付ファイルの写真を見れば一目
瞭然でしょう。これは小沢氏の演説を聞くために、大阪某所に集
まった大観衆です。
 これについて、いつも小沢氏に批判的な浅川博忠氏は「これは
小沢側が動員したもの」と発言して、同番組のコメンテーターで
あるなかにし礼氏に「そんなことはない」と否定されています。
テレビ番組にいつも登場する御用評論家の田崎史郎氏も同様の見
解です。彼らは小沢氏を擁護すると、テレビ番組から外されてし
まうので、小沢氏にとってプラスの発言は絶対にしないのです。
テレビの番組には財務省がいつも目を光らせているからです。
 この状況を見て大いに焦ったのは菅陣営です。こうなると、議
員票では小沢氏に勝ち目がないので、党員・サポーター票で勝つ
しかないのです。多くの議員が、菅首相が突然消費増税を打ち出
して参院選で惨敗したことに反発しているので菅首相が不利であ
り、一定割合の議員は勝ち馬に乗ろうと考えているので、もし小
沢氏が有利とみると、地滑り的に票が小沢氏に集まる可能性が高
いのです。もちろん逆もありますが・・・。
 そこで党員・サポーター票が当日どのようにして会場に運び込
まれたのか、チェックしてみたいと思います。この党員・サポー
ターは34万2493人でしたが、有効投票数は22万9030
票であり、11万3463票もの票が無効になっています。なぜ
こんなに大量の無効票が出たのかです。
 党員・サポーター票の投票方法は郵送であり、9月11日必着
となっています。郵送先はなぜか茨城県の筑波学園支店留になっ
ているのです。これは、開票集計作業をどこかの業者に委託した
可能性をあらわしています。
 問題なのは、党員・サポーター用の投票用紙です。通常は見開
きのはがきで、右ページの上部に「候補者名記入欄」、左のペー
ジの上部に「プライバシー・シール」があります。そして、次の
ように記載されています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 記入した候補者名が(開票作業より前に)人目に触れること
 を避けたい方は、このシールを候補者記入欄に貼って、投函
 してください。なお、シールが貼ってあるかないかは投票の
 有効・無効判定には関係しません。 http://bit.ly/18jK7sE
―――――――――――――――――――――――――――――
 ところが、植草一秀氏の指摘によると、2010年9月のとき
の投票用にはプライバシー・シールがなかったというのです。つ
まり、候補者名はむき出しで郵送されたことになります。
 それに公職選挙法に基づかない党内選挙ですから、事務局がそ
のつもりになれば、党員・サポーターでない人が当選させたい候
補者名を大量に書いて郵送することも可能なのです。それでも、
11万票も無効票(郵送されない票と考えられる)が出ているの
ですから、そのあたりのことはどうにでもなります。
 真偽のほどはわかりませんが、そういう不正が行われたことも
それをやった人物の名前もネット上に出ているのです。何らかの
かたちで、小沢票の廃棄、菅票の水増しが行われた可能性はきわ
めて高いと思われます。
 さて、筑波学園支店留で郵送された投票用紙は、その後どのよ
うにして、東京港区のザ・プリンスパークタワー東京での開票作
業会場に持ち込まれたのでしょうか。
 考えてみると、当時の民主党の執行部も杜撰な選挙を行ったも
のです。民主党の党内選挙とはいえ、内閣総理大臣を選ぶ選挙な
のです。そういう大事な選挙に、意図的かそうでないかはわかり
ませんが、プライバシー・シールを付けない投票用紙を使い、外
部業者に委託する──こんなことはあってはならないことです。
 プライバシー・シールを使わなかったことに対して、植草一秀
氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 党員・サポーター票集計作業に強い疑惑が生じている最大の理
 由は、投票用紙にプライバシー・シールが使用されなかったこ
 とにある。プライバシー・シールを貼ったままの状態で衆人環
 視の開票所に投票用紙を搬入するなら、不正が入り込む余地は
 格段に低くなる。この措置を取るのに膨大な費用がかかるなら
 措置を取らなかった根拠のひとつにはなる。しかし、措置を取
 ることへの障害は一切存在しなかったはずだ。
       http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/20109/
―――――――――――――――――――――――――――――
 さらに、民主党の選挙関係者が、次のアナウンスをしていたこ
とは明らかになっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.投票用紙は茨城県内の倉庫に保管する
     2.投票用紙はデータ集計業者に外部委託
     3.集計業者による仕分け、集計作業実施
     4.投票用紙は14日未明にホテルに搬送
―――――――――――――――――――――――――――――
 もし、不正が行われたとすれば、投票用紙の集計プロセスにあ
るといえます。この集計結果は、投票日の午前9時頃に外部に漏
えいし、これによって小沢氏に投票しようとしていた多数の国会
議員が菅陣営に寝返っています。それでも結果は、わずか6票差
でしかなかったのです。  ─── [自民党でいいのか/61]

≪画像および関連情報≫
 ●2010年民主党代表選の不正疑惑を追及するブログ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ここまで、日本の重要選挙における不正疑惑が濃厚になって
  くると、日本の民主主義はもはや瀕死の重傷でしょう。日本
  の司法は彼らに不都合な人間の冤罪追及は蛇のように執念深
  いのですが、このような選挙不正追及にはまったく無関心で
  す。2010年民主党代表選の不正で、その後の日本の運命
  が変わった。2010年、唐突にTPP参加を言い出した菅
  ・元総理よ、だまされ続ける日本国民を覚醒させるために、
  民主党代表選挙の真実を告白してください!さもないとおの
  れの歴史に汚点を残すことに・・・。昨年暮れの衆院総選挙
  の不正疑惑を追及している小野寺光一氏のメルマガにて、重
  大な疑惑が紹介されています、それは民主党の元議員であっ
  た松木謙公氏が、著書『日本をダメにしたこの民主党議員た
  ち』(日本文芸社)にて重大疑惑を証言している事実です。
  この証言は民主党の内輪に居た人物のものですから、非常に
  信ぴょう性が高いと確信します。本ブログでも、2010年
  民主党代表選挙に不正があったという疑惑をもっていますが
  元民主議員・松木氏の証言にてそれが裏付けられました。松
  木氏のこの証言にて2010年の民主党代表選に不正があっ
  たのはほぼ間違いないと断定してよいでしょう。
                   http://bit.ly/1bAa6PP
  ―――――――――――――――――――――――――――

大阪での小沢氏の街頭演説の光景.jpg
大阪での小沢氏の街頭演説の光景
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月27日

●「なぜムサシに集計を依頼したのか」(EJ第3640号)

 2010年の民主党の代表選──この選挙で菅氏ではなく、小
沢氏が選ばれていたら、民主党の運命も日本の現在も、大きく変
わっていたと思います。2年3ヵ月に及ぶ菅・野田の失政は目を
覆うばかりです。まして、その選挙に不正が行われていたとなる
と、国民は民主党をとうてい許すことはできないでしょう。
 さて、党員・サポーター票の郵送先は、茨城県つくば市所在の
「筑波学園郵便局」だったのです。なぜ、こんな場所が郵送先に
指定されたのでしょうか。
 株式会社ムサシ・エービーシー(以下、ムサシ)という企業が
あります。デジタル化サービスがメインの企業です。この企業は
選挙におけるデータ集計作業を請け負っており、茨城県つくば市
にはムサシの「つくばセンター」という名前のデーターセンター
が2つもあるのです。したがって、党員・サポーター票の集計は
ムサシによって行われたと考えて間違いないと思われます。
 さて、このムサシですが、単にデータの集計だけではなく、日
本の選挙で使う投票箱も投票用紙計数機も、投票所に行くと紙が
出てくる投票用紙自動交付機も、そして投票用紙もすべてムサシ
の製品なのです。どうやら、日本の選挙システムのかなりの部分
をムサシが行っているようです。ちなみに、ムサシ以外に選挙業
務を行っている企業・団体としては、電子投票普及協業組合、東
芝ソリューション、NTT東日本などがあるので、独占というこ
とではないようです。
 実はこの「ムサシ」については、ネット上で不正選挙との関連
で、かなり大きな話題になっているのです。とくに2012年末
の衆院選の結果にも大きな疑惑があったことを指摘しているブロ
グもあります。
 ところでムサシにはきわめて重要な事実があるのです。それは
この企業が自由民主党群馬県第四選挙区支部(代表福田康夫──
2011年当時)に政治献金をしていることです。政治献金はべ
つに違法ではありませんが、日本の選挙のシステム業務のかなり
の部分を実施している企業が自民党というひとつの政党に献金し
ていることには強い違和感を覚えます。ましてムサシは過去に選
挙の集計で問題を起こしたことがあるようなのです。
 さらにこれに加えて、ムサシの社外監査役である浅野修一氏や
公認会計士税理士の浅野修一事務所が、社団法人原子燃料政策研
究会の監事も務めている事実です。原子力の問題は、現在日本で
きわめてセンシティブな問題であり、こういう企業が原子力ムラ
を代表する代議士の当落に関わる選挙業務を行うことには、大き
な問題であるといえます。
 ムサシに関する詳細な調査を行っているサイトがあります。コ
メントもたくさん付いています。何しろ選挙の不正との関係もあ
るので、賛否両論ですが、ぜひ一読してください。
―――――――――――――――――――――――――――――
 <不正選挙疑惑を調べてみた>選挙開票・企業株式会社ムサ
 シにまつわる事実
  http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-2682.html
―――――――――――――――――――――――――――――
 公職選挙法に基づく選挙であれば、少なくとも開票業務に関し
ては不正の入り込む余地はないように思います。もし、そんなこ
とがあるようなら、日本の民主主義は終わりです。
 しかし、2010年の民主党代表選は、内閣総理大臣を選ぶ選
挙ではありますが、民主党の党内選挙であり、公職選挙法の適用
を受けないのです。
 したがって、主導権を握っている菅首相を中心とする一派が何
としても「小沢には政権を渡さない」と考えれば、何をしようと
罪には問われないのです。それと同じ思いの「米・官・業・政・
電」利権複合体もこの選挙に、小沢落としのために関わった可能
性はきわめて高いと思います。
 植草一秀氏のブログ『植草一秀の知られざる真実』によると、
2010年の民主党代表選で、ムサシが使われたことは間違いな
いようです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 総務省サイトに掲載されている「平成22年分政党交付金使途
 等報告書」のなかの、「民主党(その4)政治活動費(1)」
 をご覧いただきたい。平成22年(2010年)8月25日付
 でデータ処理・発送業務委託費で71,750,619円、平
 成22年(2010年)10月25日付で代表選挙機材及び関
 係費で87,578,156円が、(株)ムサシに支払われて
 いる。               http://bit.ly/Xkfs7y
―――――――――――――――――――――――――――――
 2010年9月14日、民主党の代表選の直前に多くの民主党
代議士に伝えられた情報には2つがあるとみられています。
―――――――――――――――――――――――――――――
   1.党員・サポーター票で菅氏が圧勝していること
   2.第5検察審の2回目の「起訴相当」が出たこと
―――――――――――――――――――――――――――――
 「1」に関しては、集計作業は13日中に終わっているはずで
あり、それを菅陣営が自派の議員や「菅か小沢か」で迷っている
中間派の議員に伝えることは可能です。それに「菅圧勝!」の情
報が事前に漏れていたことは、周知のことになっています。
 問題は「2」です。これについてメディアは、9月8日の時点
では、「10月下旬までに議決が出される公算が大」という報道
を行っています。これが正しければ、9月14日に議決が出され
るはずがないのです。
 しかし、実際には9月14日に「起訴相当」議決は出され、な
ぜか、10月4日に公表されたのです。一体これはどういうこと
なのでしょうか。
 実際には、9月14日の代表選の投票直前に「小沢氏に起訴相
当議決」の情報は流れていたのです。なぜ、こんな結果になった
のでしょうか。      ─── [自民党でいいのか/62]

≪画像および関連情報≫
 ●不正選挙は常にある/「不正選挙疑惑」に対するコメント
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「ムサシ」に対する疑問は、あちらこちらであった話です。
  その信憑性はともかく、会社として政治献金しているという
  のは、大企業であっても中小企業であっても、許されない行
  為です。日本は後進国ですから、法規制がされていないだけ
  の話です。国際感覚からすれば完全に『賄賂』ですからね。
  それはともかく、各種選挙の開票立会人は、何度かした経験
  がありますので、開票に関する不正は難しいと考えておりま
  す。不正を考える者からすれば、ヤバイところでしょうね。
  ただし、壊せない金庫を作る人がいれば、必ず破る賊もいる
  モノです。選挙にまつわる不正は、古典的なモノから、ハイ
  テクを駆使したものまで限りなくあるというのが実態です。
  選挙の三か月前から、住民票を移動するなど、古典的であり
  今でも大々的に行われていると考えています。選挙通に言わ
  せれば、開票結果から、どれくらいの移動があったもの・・
  と、平然と言うのが実際です。旅行に行っている人の投票所
  入場券で、投票を依頼する人が、過去のことですがに何人も
  いました。選挙にかかわると、そんな話は普通にあります。
  さて、今回は「日本未来の党」が異常に見える完敗をしまし
  た。非常に大きな勢力が負けたことで、選挙に対する不信が
  大きかったのだと考えています。実際は、随分以前から、普
  通に疑惑は山ほどあった訳です。前回の民主党完勝と、今回
  の自民党の圧勝と、誰が得をするために、そうなったのかと
  疑問の方向性を持つこともお忘れなく。選挙に関しても、政
  治に関してと同じように、国民が常に監視する意思を示さな
  ければ、バカを見るのは常に国民です。いずれにしても、サ
  イト管理者さんの実力には脱帽です。http://bit.ly/YSXjgj
  ―――――――――――――――――――――――――――

ムサシが自民党に政治献金.jpg
ムサシが自民党に政治献金
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月30日

●「民主党はなぜ国民から嫌われるか」(EJ第3641号)

 9月27日の日本経済新聞によると、民主党は次のテーマで世
論調査を行うことを検討しているといいます。
―――――――――――――――――――――――――――――
        なぜ私たちが嫌いなのですか
―――――――――――――――――――――――――――――
 どうやら、現在、民主党にまだ残っている議員たちは、自分た
ちが何をしでかしたのか、なぜそれが国民の激しい怒りを買って
いるのかがわからないようです。わからないなら、世論調査なん
かするより、EJが教えてあげることにします。
 2009年の衆院選では、民意は「小沢総理」を期待していた
のです。「現在の政治の閉塞感を小沢なら打ち破ってくれるかも
しれない」──小沢嫌いの人でもそのときは小沢に期待して民主
党を圧勝させたのです。
 ところが待望の政権交代を実現するや、その恩人である小沢一
郎氏を、手の平を返して例の「米・官・業・政・電」利権複合体
と一緒になって足を引っ張ったのは、現在も民主党に残っている
議員たちなのです。少しでも志を持っている人、まともな政治家
は、既に民主党を去っています。
 「国民の生活が第一」を掲げて選挙をし、当選したのに国民の
生活をピンチに陥れる消費税の大増税を、敵方の野党の自民党と
手を組んで成立させたこと。これは、国民に対する正面きっての
裏切りであり、絶対に許されざることです。そのことがわかって
いない人が現在民主党に残っている政治家たちなのです。
 民主党は、2009年の衆院選以来、ほとんどの選挙でことご
とく敗北しています。そして、クーデターに等しい2012年の
衆院選と、2013年の参院選では超大敗しています。それでも
負けた真の原因がわかっていないようです。もし、このままなら
次の衆院選と参院選で民主党は消滅してしまうはずです。離れた
民主党支持者は戻ってはこないのです。「半沢直樹」ではありま
せんが、国民は民主党に「倍返し!」をしているのです。
 突如として消費増税を打ち出して、参院選に完敗した菅直人首
相に対して、植草一秀氏が作詞した「『菅敗』の歌」をご紹介し
ましょう。しかし、まだこのときは民主党に対して期待が残って
いた時点です。
―――――――――――――――――――――――――――――
   かたい絆を あっさり捨てて
   仁義を尽くさぬ裏切りの日々
   小沢を傷つけ 出世を喜び 
   総理の椅子に座った あの日

   あれからどれくらい たったのだろう
   参院議席を いくつ数えたろう
   民主支援者は いまでも君の
   心の中にいますか?

   完敗! いま君は人生の厳しく悲しい舞台を去り
   はるか険しい道のりを歩き始めた
   民主に幸せあれ!

   スポットライトの 中の総理は
   責任逃れに 血眼(ちまなこ)になる
   消費税大増税 言い出したのは君
   言い訳なんか しないほうがいい!

   選挙の洗礼を 身体に浴びて
   振りかえらずに そのまま引けばよい
   風に吹かれても 雨に打たれても
   信じた政策に 背を向けるな

   完敗! いま君は党内の歪んでねじれた舞台を去り
   再編始まる道のりが開き始める
   民主に出直しあれ!

   完敗! いま君は党内の歪んでねじれた舞台を去り
   国民主権の道のりが開き始める
   民主に再生あれ! 民主に再生あれ!
    「植草一秀の知られざる真実」/http://bit.ly/bzXiZf
―――――――――――――――――――――――――――――
 2013年9月24日の産経新聞によると、現在落選中の仙谷
元官房長官は、2010年の中国漁船衝突事件のさい、公務執行
妨害で逮捕した中国人船長を釈放したのは「那覇地検の判断」と
したことはウソであったことを認めています。あのとき、菅首相
と仙谷官房長官はこういっていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎検察当局が国内法に基づいて粛々と判断した結果である。
                   ──菅首相(当時)
 ◎検察の判断を了としている。検察官が総合的な判断のもと
  にどうするかを考えたとすれば、そういうこともあり得る
  のかなと。         ──仙谷官房長官(当時)
―――――――――――――――――――――――――――――
 この問題についての時事通信の世論調査では、79.9 %の国
民が「信用できない」と回答しているのです。それに、仙谷氏は
ウソを認めたかもしれませんが、菅元首相は知らん顔です。これ
では民主党の信用がなくなるだけです。
 2010年の民主党の代表選は党員・サポーター票に関して不
正が行われたことは確実です。それが証拠に、集計された投票用
紙は早々に処分されているからです。
 もうひとつの疑惑である検察審査会の議決に関する疑惑につい
ては、明日のEJから検証していきます。果たして本当に議決が
行われたかどうかです。  ─── [自民党でいいのか/63]

≪画像および関連情報≫
 ●消費増税法案可決の大きな代償/民主党の大罪
  ―――――――――――――――――――――――――――
  2012年8月10日、参議院本会議で消費税増税法案を含
  む社会保障と税の一体改革関連法案が可決され、成立した。
  「消費税の引き上げは2009年の総選挙のマニフェストに
  は明記していません。深く国民にお詫びしたい」議決後、記
  者会見で野田佳彦首相は開口一番、陳謝の言葉を口にした。
  「政治生命をかけて」と明言して取り組んだ法案が難渋の末
  実現を見たのだ。達成感と充足感は大きかったはずだが、高
  揚した様子はうかがえなかった。一方で失ったものも甚大だ
  ったからだ。第一は、野田も認めるようにマニフェスト違反
  による国民への背信である。第二は、自民党との連携だ。総
  選挙で「歴史的な政権交代」を選択した有権者に対する裏切
  りであるのは間違いない。第三は、民主党を分裂させた。第
  四は、党勢の低迷と凋落を阻止できず、逆に加速させ、支持
  率低落、政権崩壊と党解体の危機という絶望的な事態を招来
  させた。野田はそれだけの犠牲と代償を覚悟のうえで「今国
  会での増税法案成立」で突き進んだ。6月26日に増税法案
  が衆議院で可決される。国会を9月8日まで延長して参議院
  の採決に備えた。だが、衆議院の早期解散をもくろむ自民党
  と、解散先送りを狙って参議院の採決の先延ばしを図る民主
  党との綱引きが続いた。
            http://president.jp/articles/-/7413
  ―――――――――――――――――――――――――――

仙谷由人元官房長官.jpg
仙谷 由人元官房長官
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月01日

●「検察審査員はどう選定されるのか」(EJ第3642号)

 小沢氏の側近であった前衆院議員の松木謙公氏が、2010年
の代表選で、党員・サポーターの支持を訴えて地元を回ったとき
の感触では、小沢支持と不支持の割合が「900対40」ぐらい
の圧倒的な割合だったというのです。しかし、選挙後発表された
結果は、勝ちはしたものの僅か11票差であったといいます。こ
れに関して松木謙公氏は自著で次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ある日、国会議員が集まったときに「実は、自分の所もおかし
 いと思っている。どう考えても数字が合わないんですよ」とい
 う議員が何人かいた。小沢さんに、それを一度話したことがあ
 るが、小沢さんに「松木、そういうことは言うな!」と一喝さ
 れた。小沢さんがそう言ったので、私は、それ以上騒ぐことは
 なかった・・。地方議員の票が、菅と小沢で6対4ぐらいだっ
 たのは、地方議員は自分の選挙にはどちらが有利か考えたのだ
 ろう。それも仕方がないことだと思う。それで、その後の統一
 地方選で地方はえらい目に遭っているのだ。「間違えた。バカ
 なほうを選んでしまった!」と後悔しても遅い。本質を見ない
 で、目の前の事象ばかりにとらわれるからそうなるのだ。
   ──松木謙公著「日本をダメにしたこの民主党議員たち/
         私が見た最も最低な政治家」/日本文芸社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 地元で確認した数字と投票結果として発表された数字とはまっ
たく合わないのです。明らかに小沢票が激減しているのです。そ
ういう声が多く出ていたにも関わらず、民主党の選挙管理委員会
は代表選直後にすべての投票用紙を処分しているのです。
 しかし、代表選は公職選挙法に基づく選挙ではないので、極端
にいえばどんな不正を行っても罪には問われないのです。しかし
このときの民主党の菅陣営、すなわち反小沢陣営がきわめて疑わ
しい選挙操作をやったことは間違いないと思います。しかも、そ
うして選ばれた菅政権と野田政権は、きわめて劣悪な政権運営を
行い、政権を再び自民党に奪われるという結果を招いたことに、
現在も民主党に残っている議員には重大な責任があります。
 こういう民主党の疑惑に加えて、第5検察審査会による小沢氏
に対する強制起訴にも疑惑があるのです。本当に法律通りに審査
が行われ、起訴議決が行われたのでしょうか。これについては既
にご紹介しているように、前参議院議員森ゆうこ氏と「一市民が
斬る!」というサイトを運営されている志岐武彦氏の労作があり
ますが、ここで主張されていることを理解するには、検察審査会
についてある程度詳しい知識を持つ必要があります。
 検察審査会は、全国の地方裁判所と地方裁判所支部がある場所
に149ヶ所165会設置されています。まず、検察審査会は、
「検察審査員候補者予定者名簿」というものを作成するところか
ら始まるのです。これは年中行事です。
 検察審査会事務局長は管轄する地域の市町村の選挙管理委員会
に対して名簿の作成を通知します。検察審査員候補の名簿は、各
検察審査会の管轄地域の衆議院議員の選挙権を有する国民のなか
から、くじで無作為に選出されることになっています。通常通知
は毎年9月に行われ、10月15日までに作成し、各検察審査会
事務局に送付することが義務づけられています。
 このとき最高裁が作成委託した「審査員選定くじ引きソフト」
が使われるのです。このソフトは各検察審会にもあって、候補者
名簿から検察審査員と補充員を選定するときに使われるのですが
あとでこれが問題になるので、記憶に留めておいてください。
 通知を受けた市町村の選挙管理委員会は、衆議院議員の選挙権
を有する者として、選挙人名簿に登録されている者のなかから、
各検察審査会ごとに、第一群から第四群までの四群に分けられた
各100人の計400人の検察審査員候補者予定者をくじで選定
し、検察審査員候補者名簿を作成するのです。この名簿が次の年
の検察審査会での検察審査員の選定に使われるのです。
 ところで、第一群から第四群とは何でしょうか。これは検察審
査員の任期を示しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ◎第一群
   ・任期: 2月 1日〜 7月31日まで
   ・選出:前年12月28日まで
   ・人数:名簿100人から検察審査員および補充員各5人
  ◎第二群
   ・任期: 5月 1日〜10月31日まで
   ・選出: 3月31日まで
   ・人数:名簿100人から検察審査員および補充員各6人
  ◎第三群
   ・任期: 8月 1日〜翌年 1月31日まで
   ・選出: 6月30日まで
   ・人数:名簿100人から検察審査員および補充員各5人
  ◎第四群
   ・任期:11月 1日〜翌年 4月30日まで
   ・選出: 9月30日まで
   ・人数:名簿100人から検察審査員および補充員各6人
―――――――――――――――――――――――――――――
 1つの検察審査会は、11名の検察審査員によって構成されま
す。この人数が揃わないと審査ができないので、審査員が欠けた
場合に備えて、補充員が用意されるのです。もし、検察審査員が
11人揃わないときは先の審査員選定くじ引きソフトによって補
充員の選定が行われるようになっています。
 検察審査員が国民のなかから公正に選定されるのは当たり前の
ことです。ところが、小沢氏に対して「起訴相当」の議決を行っ
た第5検察審査会の検察審査員の平均年齢を求めたとき、事務局
が何回も間違えたことから、果たして公正に検察審査員が選定さ
れているのかについて国民の間に疑惑が生じ、その選定プロセス
に疑惑が生じたのです。  ─── [自民党でいいのか/64]

≪画像および関連情報≫
 ●「日刊ゲンダイ」紙/2012年2月15日付の記事
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ここへきて、強制起訴に至った「経緯」にも不信の目が向け
  られている。強制起訴を議決した「検察審査会」の審査員選
  定に関して、重大疑惑が浮上しているのだ。検察審査員は、
  各地の選挙管理委員会が選挙人名簿から抽出した100人の
  候補者名簿をもとに「検察審査員候補者名簿管理システム」
  という選定ソフトを使って、10ないし12人の審査員・補
  充員が「無作為に」選ばれることになっている。ところが、
  本紙が選定ソフトの内部資料を入手し、検証してみたところ
  「作為的に」審査員を選ぶことが可能なことが分かった。選
  定ソフトに詳しい関係者が言う。「操作マニュアル上は、暗
  号化された。選管の名簿しか読み込めないことになっていま
  すが、実際はエクセルファイルで作った名簿でも読み込めま
  す。つまり、候補者名簿に名前がない人を後から潜り込ませ
  ることができる。そして、当選させたい人以外はすべて不適
  格の欄にチェックを入れて抽選を行えば、意図する人だけが
  残る。つまり、恣意的に審査員を選ぶことは可能なのです。
  あらかじめ小沢に反感を抱いている人物を選定して送り込む
  こともできるし、政治に興味がなさそうな若者だけを選ぶこ
  とだって自在だ。
   http://toracyan53.blog60.fc2.com/blog-entry-2013.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

松木謙公前衆院議員.jpg
松木 謙公前衆院議員
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月02日

●「指定弁護士はどうして控訴したか」(EJ第3643号)

 小沢一郎氏に対する東京第5検察審査会が2回にわたり「起訴
相当」議決を出した日付けを示しておきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
   ◎第1回「起訴相当」議決/2010年4月27日
   ◎第2回「起訴相当」議決/2010年9月14日
―――――――――――――――――――――――――――――
 この2回の「起訴相当」議決によって小沢一郎氏は、2011
年1月31日に裁判所が指定した指定弁護士によって強制起訴さ
れたのです。
 2012年4月26日、東京地裁は小沢氏に対して無罪判決を
下したものの、同年5月9日、指定弁護士は東京高裁に控訴して
います。この控訴審でも小沢氏は、同年11月12日に無罪判決
を受け、晴れて完全無罪を勝ち取っています。
 この指定弁護士による控訴は「無駄な控訴」とか「嫌がらせ控
訴」といわれ、指定弁護士は批判されましたが、小沢陣営にとっ
ては、価値のある控訴審勝訴だったのです。
 なぜなら、一審の無罪判決は、秘書らの虚偽記載を認めたうえ
で、上司である小沢氏の共謀なしという判決だったのに対し、控
訴審は、秘書の虚偽記載も小沢氏の関与もなしという無罪判決で
あったからです。しかし、それにも関わらず、秘書裁判では虚偽
記載を認定し、控訴審でも有罪になっています。もし、秘書も無
罪になれば、ことはただでは済まないからです。日本の法務検察
・司法の信頼は地に落ち、泥にまみれるでしょう。
 それにしても指定弁護士は、なぜ勝ち目のない控訴を行ったの
でしょうか。実は無罪判決直後は、無罪判決が出てくやしいが、
小沢氏も政治家であり、いつまでも被告人という立場に置くべき
ではないとして、3人の指定弁護士の間では裁判はもはやこれま
でというムードだったからです。
 しかし、無罪判決の出た2012年4月26日の夜に報道され
たテレビ番組と小沢裁判を継続して欲しい向きの強い要請によっ
て、負け覚悟の控訴審に打って出たのです。儲からない裁判でも
あり、何らかの資金提供がなされたともいわれています。「小沢
にはもう少し静かにしておいて欲しい」ということを希求してい
る向きもあるのです。
 そのテレビ局はTBSで、番組名は、「NEWS23X(クロ
ス)」。そこで小沢氏を強制起訴した検察審査会の「元検察審査
員X氏」という男性を登場させ、ナレーションのみで、次の匿名
証言を報道したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ウソの報告書がなかったとしても、結論は同じだったのでは。
 判決後の今でも当時の起訴議決は正しかったと思っている。
           ──「SAPIО」/2013年8月号
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここでいう「ウソの報告書」とは、あの田代元検事の虚偽捜査
報告書のことです。これは実に不思議な報道です。検察審査会の
個人情報は一切非公表で、検察審事務局は一切照会に応じないな
かで、TBSはどうしてX氏を知り、本人をどうして本物の検察
審査員と認定したのでしょうか。しかも、無罪判決の出た16日
の夜のことであり、事前にそういうお膳立てができていたと考え
られるのです。
 TBSには前科があるのです。TBSは小沢事件を検察の捜査
中に突然「小沢氏側に裏ガネを渡しているところを見た」という
匿名証言のスクープ告発を報道し、その模様を動画まで作ってテ
レビで繰り返し報道したのです。
 これは、水谷建設の石川社長(当時)が、石川知裕氏にホテル
で5000万円の入った紙袋を渡しているシーンを動画にしたも
のですが、これは水谷建設の当の社長自身が後日そういう事実が
なかったことを認め、意見陳述書を書いて石川氏に詫びているの
です。あのようなデタラメの報道を平然と行い、何の反省もしな
い。だからこそ、小沢無罪判決にケチをつけるようなX氏をテレ
ビに登場させているのです。TBSはこれに対してどう責任を取
るつもりでしょうか。
 検察審査会の審査は「闇の裁判」です。検察審査員がどのよう
に選ばれ、いつ、何回、どのように審査が行われ、どのような議
論があって議決が行われたかについては一切が非公開であり、誰
もわからないのです。もちろんメディアといえども知るはずがな
いはずです。
 ところがメディアでは、その知るはずのないスクープが頻繁に
報道されます。しかも、各社記事は横並びです。これは最高裁事
務総局からのリーク以外のなにものでもないのです。事実を確か
めもせず、与えられる情報をそのまま流すのでは、もはや社会の
公共の報道機関には値しないと思います。
 小沢氏に関わる第5検察審査会は、調べれば調べるほど、多く
の疑惑が出てきます。本当に検察審査会は正しく行われているの
でしょうか。「一市民が斬る!」の志岐武彦氏ははっきりと「架
空議決」であるといっています。つまり、検察審査会は2回とも
開催されておらず、架空で「起訴相当」議決が出されたといって
いるのです。小沢事件では、検察を市民感覚で規制する制度であ
る検察審査会制度が最高裁に逆利用されているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 本来、検察審査会は検察をチェックする機関だ。検察関係者は
 断じて検審の(関係者)であってはならない。しかし陸山会事
 件は、検察審査会が素人揃いであることを司法権力が逆手に取
 り、政治家を「市民感覚」で起訴させて、政治的に抹殺しよう
 とした権力暴走の疑念が拭えない。最も恐ろしいのは、それを
 チェックすべきメディアが、自ら司法権力のプロパガンダ機関
 となって暴走に荷担していることなのだ。
           ──「SAPIО」/2013年8月号
―――――――――――――――――――――――――――――
             ─── [自民党でいいのか/65]

≪画像および関連情報≫
 ●「NEWS23X」の映像公開/TBS
  ―――――――――――――――――――――――――――
   本日のEJで指摘したTBSの「NEWS23X」の映像
  をご紹介します。TBSはあくまで「小沢=悪者」という前
  提に立ってこの映像を作っています。無罪判決が出た当日の
  夜の番組でこういう映像が作れるとは思えません。当然事前
  に準備されていたはずです。完全非公開の検察審査会のこと
  がどうしてこのように手に取るようにわかるのでしょうか。
  「民主党の小沢一郎元代表の強制起訴を決めた検察審査会。
  その審査の実態は秘密のベールに包まれている。小沢氏が主
  張する検察の誘導はあったのか?うその捜査報告書は議論の
  影響したのか?そして、小沢氏の無罪判決をどう受け止めて
  いるのか?多くの疑問ばかりが積み重なる中、小沢氏の起訴
  議決をした検察審査会の審査員が追跡クロスの取材に対し、
  初めて重い口を開いた」。     http://bit.ly/JFe6jT
  ―――――――――――――――――――――――――――

「NEWS23X」.jpg
「NEWS23X」
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月03日

●「情報開示請求を順守しない検察審」(EJ第3644号)

 東京第5検察審査会が小沢一郎氏に出した「起訴相当」議決の
日を再現します。
―――――――――――――――――――――――――――――
   ◎第1回「起訴相当」議決/2010年4月27日
   ◎第2回「起訴相当」議決/2010年9月14日
―――――――――――――――――――――――――――――
 第2回目の「起訴相当」議決から検証していくことにします。
議決は2010年9月14日に出ていますが、その日は民主党代
表選挙の日です。検察審査会関係者は「あくまで偶然」を装って
いますが、代表選のドロドロした状況を考えると、素直には偶然
とは思えないのです。
 まずやるべきことは、第2回の「起訴相当」を議決した検察審
査会が、いつ審議を行ったのかを知る必要があります。これにつ
いては、森ゆうこ参院議員(当時)と、志岐武彦氏や「市民オン
ブズマンいばらぎ」事務局長の石川克子氏らが、別々に情報入手
に挑戦したのです。
 検察審査会の開催状況を事件ごとに把握できる「審査事件票」
というものがあります。審査事件票には、審査期間、会議回数、
検察官などの出席者の延べ人数、審査補助員の延べ出頭数などが
記載されているので、小沢氏に関する事件の審査事件票を入手で
きれば、少なくとも9月14日までの検察審査会の開催状況がわ
かるはずです。
 実は、小沢氏に関する審査事件票については、既に日刊ゲンダ
イ紙が、第5検察審査会に対して、情報公開法に基づく情報開示
請求を行ったところ、必要事項がすべて塗りつぶされた審査事件
票が届いていたのです。志岐氏らのグループもこれと同じ目に何
度もあっています。
 情報公開法は、正式には「行政機関情報公開法」といい、国の
行政機関が保有する情報の公開(開示)義務を定めたもので、国
民から情報の開示を求められたときは、当該行政機関はそれに応
ずる義務があります。
 日刊ゲンダイ紙は、その法律に基づいて情報開示請求をしてい
るのに、すべてを黒塗りの審査事件票を出してくるのでは、情報
開示にはならず、本来それは許されることではないのです。
 なぜなら、情報公開法が施行される2001年4月1日の直前
の3月29日付で、最高裁判所事務総局刑事局長・白井勇名で、
全国の検察審査会事務局長宛に「最高裁刑─第108号」という
通達が出されているからです。通達の趣旨は次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.定義
   この通達において「検察審査会行政文書」とは、検察審査
  会事務局の職員が職務上作成し、又は取得した検察審査会行
  政事務に関する文書であって、検察審査会事務局の職員が組
  織的に用いるものとして、検察審査会が保有しているものを
  いう。
 2.開示の原則
   検察審査会事務局長は、検察審査会の保有する検察審査会
  行政文書の開示を求められた場合は、何人に対しても、当該
  検察審査会行政文書を開示するものとする。
             ──「最高裁刑─第108号」より
―――――――――――――――――――――――――――――
 この定義によると、審査事件票は「検察審査会行政事務に関す
る文書」であり、「検察審査会が保有しているもの」に該当する
ので情報開示の対象になります。
 森ゆうこ参院議員(当時)は、何とかしてこの黒塗り文書の黒
塗りを外させようとしたのです。森氏は与党の国会議員であり、
予算委員会の理事をやっていたので、最高裁の事務総局と刑事局
のスタッフを事務所に呼んで話を聞いたのです。
 そのさい、審査事件票を提出して欲しいが、個人情報以外のと
ころは黒塗りを外してくれと念を押したのです。ところが何日か
たって、検察審査会は「出せない」と断ってきたのです。理由を
聞くと、「非公開だから」という返事です。
 そこから森氏は最高裁と大議論を展開します。森氏は最高裁が
各検察審査会に通達を出し、種々の報告をさせている事実を掴み
これに基づき、次のように最高裁を追い詰めたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 森議員:何のために検察審査会に報告をさせているのか。
 最高裁:予算の適正な執行状況確認と統計データの集約のため
     に報告させている。
 森議員:通達というのは命令である。何の権限があって命令し
     ているのか。
 最高裁:予算の計上のために必要である。
 森議員:それなら私の場合も同じではないか。立法府の一員と
     して予算委員会の理事として、予算が適正に執行され
     ているかをチェックする必要がある。
 最高裁:部内で検討したが、やはり出せない。
 森議員:検察審査会は独立しており、どこからも命令を受けな
     いはずではないか。
 最高裁:「非公開」と「独立」の原則だけはどうしても守らな
     ければならない。
 森議員:その原則は最高裁も守らなければならない。最高裁が
     報告を求めている資料は「非公開」の原則の対象でな
     いものを報告させていることか。それとも無理やり出
     させたのか。
 最高裁:違う。そんなことはない。
 森議員:それなら出せるはず。最高裁と同じ目的で私が使うこ
     とに何も問題はないはずである。  ──森ゆうこ著
     『検察の罠/小沢一郎抹殺計画の真相』/日本文芸社
―――――――――――――――――――――――――――――
             ─── [自民党でいいのか/66]

≪画像および関連情報≫
 ●そこまでやるか!法務・検察!!/ゲンダイのみかた
  ―――――――――――――――――――――――――――
  森議員といえば、これまで「陸山会事件は冤罪だ」と主張し
  続け、検察捜査のデタラメを追及してきた議員のひとり。不
  適格な検事を罷免できる「検察官適格審査会」のメンバーで
  もある。検察にとっては目の上のタンコブみたいな存在だ。
  もし、この恫喝発言が事実なら、検察の“特高化”と言うし
  かない。森議員に詳しい話を聞いた。「小沢元代表が起訴さ
  れた1月31日、大メディアの司法記者が『検察内部にこん
  な話があります』とこういうことを言ってきたのです。『あ
  る検察幹部が、私の調査にナーバスになっていて“鉄槌を下
  してやる”と言っている。私の不祥事を探している』と。検
  察が事件を捏造(ねつぞう)すれば、議員ひとりを潰すこと
  くらい簡単にできる。この検察幹部は、現場の検事ではなく
  法務省幹部です。名前はあえて伏せておきますが、私に何か
  あったら、検察にやられたと思ってください」。検察幹部が
  ナーバスになっている「調査」とは、おそらく、小沢元代表
  に起訴議決を下した素人集団・検察審査会の実態調査だ。森
  議員は矛盾、デタラメを暴き、疑惑の核心に迫っていた。そ
  のひとつが審査員11人の“怪しい”選考方法だ。審査員は
  各自治体の選管から送られた名簿から無作為で選ばれるとさ
  れるが、検察審査会事務局が抽選に使用する「くじ引きソフ
  ト」を調べてみると呆れるほどインチキくさい代物だった。
      http://octhan.blog62.fc2.com/blog-entry-51.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

国会で質問する森裕子前参院議員.jpg
国会で質問する森 裕子前参院議員
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月04日

●「苦労の末判明した検察審の審査日」(EJ第3645号)

 森ゆうこ議員(当時)の論理的な追及に、最高裁(事務総局)
は、遂に黒塗りを外した小沢一郎氏に関わる審査事件票を提出し
てきたのです。
 おかしいのは、なぜそこまでして隠蔽しようとしたかです。情
報公開法に基づく行政文書の開示請求ですから、検察審査会は提
出する義務があるのです。それでも隠そうとするのは、開示した
くない事情があるからです。
 検察審査会第3条によると、検察審査会はあくまで独立した組
織ということになっています。これが「独立性の原則」です。さ
らに検察審査会第26条では、検察審査会議の内容は公開しない
ことを原則としています。これが「非公開性の原則」です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 【検察審査会法第3条】
  ・検察審査会は、独立してその職権を行う → 独立性
 【検察審査会法第26条】
  ・検察審査会議は、これを公開しない   → 非公開
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、検察審査会の予算と人事権は最高裁事務総局にありま
す。そのため、予算の執行状況のチェックと統計データの収集の
ため検察審査会から、必要な書類を提出させており、命令も出し
ています。したがって、実際上は検察審査会は最高裁事務総局の
下部組織なのです。その証拠に、最高裁事務総局刑事局長から検
察審査会に通達が出されています。
 それなら、組織上の位置づけをはっきりさせるため、検察審査
会を事務総局の下部組織にすればよいのですが、そうしてしまう
と、検察審査会の独立性と非公開の原則をアッピールできなくな
り、最高裁としては都合が悪いのです。そのため、事実上は下部
組織であるが、外へはそうでないように見せている──そういう
ことになります。こんなことはあってはならないことです。なぜ
なら、国民に知られずに最高裁は検察審査会をコントロールでき
るからです。
 森氏はそこを衝いたのです。「最高裁といえども検察審査会の
独立性と非公開の原則を守る必要がありますね」と最高裁事務総
局にいい、イエスを引き出しています。
 そのうえで、「それなら、予算執行のチェックなどのために検
察審査会から提出させている審査事件票などの資料は、あくまで
非公開の原則に該当しないものということになりますね」と詰め
寄っています。理屈からいえばその通りで、最高裁はこれにもイ
エスといわざるを得なくなり、審査事件票の黒塗りを外して森氏
に提出することになったのです。
 しかし、これで終わりではなかったのです。資料は33枚提出
されたのですが、肝心の2回目の分の審査事件票が含まれていな
いのです。これについて、森氏は最高裁に対して次のように反論
したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 私は「なぜ2回目の分がないの?もし本当にないのなら、今か
 らでも作るべきだ」と問い詰めた。さらに、予算委貞会の筆頭
 理事として、もしも審査事件票を出さないなら、予算委貞会で
 最高裁の予算案を追及するという姿勢をちらつかせた。実際に
 党の法務部会で問題提起し、「検察審査会の適正な予算執行が
 確認できなければ、来年度予算案を認めることはできない」と
 確認した。おそらく「こいつはやると言ったらやるなと思った
 のだろう」。               ──森ゆうこ著
     『検察の罠/小沢一郎抹殺計画の真相』/日本文芸社
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここまでやられれば、最高裁といえども白旗を上げるしかない
でしょう。与党の議員はやろうと思えばここまでやれるのです。
要はやる気があるかないかの問題です。
 森ゆうこ氏は先の参院選で残念ながら落選しましたが、これで
最高裁関係者は胸を撫で下ろしたことでしょう。森ゆうこ氏には
次回の選挙にはぜひ頑張ってもらって、検察審査会の問題点を改
正して欲しいものです。自民党ではまったく期待できません。
 このようにして、やっと2回目の「起訴相当」議決を出すまで
の第5検察審査会の日程が明らかになってきたのです。それは、
次の日程です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 2010年 7月13日(火)
 2010年 7月27日(火)
 2010年 8月 4日(水)
 2010年 8月10日(火)
 2010年 8月24日(火)
 2010年 8月31日(火)
 2010年 9月 6日(月)
 2010年 9月14日(火) 起訴議決
 2010年10月 4日(月) 議定書作成、署名、掲示
                ──森ゆうこ著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 この検察審査会開催日が正しいとすると、新聞報道と合わなく
なってくるのです。9月8日付、朝日新聞は次のように報道して
います。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢一郎・前民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地取
 引事件で、東京第5検察審査会の審査を補助する弁護士が選ば
 れたことが分かった。2004年、05年分の政治資金収支報
 告書をめぐる政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑について、
 小沢氏を強制的に起訴するかどうかの審査が本格化するとみら
 れ、10月末までに結論が出る公算が大きい。
          ──2010年9月8日付、朝日新聞より
―――――――――――――――――――――――――――――
             ─── [自民党でいいのか/67]

≪画像および関連情報≫
 ●森ゆうこ前議員の置き土産/検察審査会法改正案提出
  ―――――――――――――――――――――――――――
  生活の党・民主党・社民党の三党にて共同提案致しました。
  指揮権発動を決意し、更迭された小川敏夫元法務大臣にも提
  案者に名を連ねて頂いた。検察審査会法改正案を提出した後
  記者会見を行いました。その後、各会派及び、法務委員長や
  理事会メンバーに対して、法案審議の実現に向けて協力をお
  願いに回りました。本日の提出までに、各政党の部会などで
  法案の説明を繰り返し行ってきました。議員立法が提出・審
  議・採決まで至るのは稀なケース。幅広く賛同を得られるも
  のでなければ少数会派は提出さえおぼつきません。賛同を得
  られるように、「非公開の原則」と施行されて間もない「強
  制起訴制度」は維持しつつ、ブラックボックスの弊害を出来
  るだけ無くすことを優先しました。検察が「ねつ造捜査報告
  書」で検察審査会を悪用した事実がある以上、放置すれば全
  ての国民が人権侵害にあう可能性があります。警察の証拠ね
  つ造も再び話題になっています。検察審査会法改正は国民の
  基本的人権を守るために改正を早急に行う必要があります。
                   http://bit.ly/12nJLAd
  ―――――――――――――――――――――――――――

検察審法改正案提出.jpg
検察審法改正案提出
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月07日

●「あってはならぬ最高裁の法律違反」(EJ第3646号)

 小沢一郎氏に関わる2回目の東京第5検察審査会の開催回数は
次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
         7月 ・・・・・ 2回
         8月 ・・・・・ 4回
         9月 ・・・・・ 2回
        10月 ・・・・・ 1回
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢氏に対する2回目の「起訴相当」議決は、2010年9月
14日(民主党代表選投票日)に行われ、10月4日に発表され
ています。しかし、発表後の10月6日付、読売新聞は次のよう
に書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 関係者によると、11人の審査員たちは、お盆休みのある8月
 中は隔週でしか集まれなかったが、9月に入ってからは、平日
 に頻繁に集まり審査を行った。9月上旬には、「起訴議決」を
 出す場合に義務付けられている検察官の意見聴取も行った。意
 見聴取では、東京地検特捜部の斎藤隆博副部長が1時間以上に
 わたって説明。斎藤副部長は「元秘書らの供述だけでは、小沢
 氏と元秘書らの共謀の成立を認めるのは難しい。有罪を取るに
 は、慎重に証拠を検討することが必要です」などと、審査員ら
 に訴えたという。  ──2010年10月6日付、読売新聞
―――――――――――――――――――――――――――――
 森氏が最高裁事務総局に提出させた検察審査会の2回目の審査
日が正しいとすると、読売新聞は明らかに事実と異なることを報
道しています。
 「お盆休みのある8月中は隔週でしか集まれなかった」という
が、毎週1回ずつ4回集まっています。「9日に入ってからは平
日に頻繁に集まり審査を行った」というが、9月は2回しか集ま
っていないのです。2回では「頻繁」とはいわないでしょう。し
かも、14日は「起訴相当」議決を出した日なのです。
 それにしても読売新聞社はどうしてこんなに詳しい情報を知っ
ているのでしょうか。検察審査会の審査会議は「非公開」が原則
なのです。そのため、森ゆうこ氏は最高裁をあれだけ問い詰めて
やっと開催日だけ知ったのに、新聞は審査会議の内容を詳しく報
道しています。いったいどんな取材をしたのでしょうか。
 当然最高裁事務局が報道機関に情報をリークしています。これ
は最高裁自ら「独立性」と「非公開」という2つの原則を破る法
律違反を犯しています。最高裁が法律違反!?──絶対にあって
はならないことです。
 新聞記事の内容を読むと、国民の代表である審査員が何日もか
けて審査会議を開いて真摯に議論し、東京地検特捜部の斎藤隆博
副部長の意見も聴取して「起訴相当」議決を出した様子がうかが
える内容になっています。前記の読売新聞記事の後半部分には次
のような記述も載っているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 起訴議決が出たのは、民主党代表選当日の9月14日。第5検
 察審査会の定例の審査日は毎週火曜日で、この日は偶然、審査
 日にあたっていた。ただ、この日に議決を出すことが予定され
 ていたわけではなく、議長役を務める審査会長が審査中に「議
 決を取りますか。それとも先にのばしますか」と提案したとこ
 ろ、審査員から「議論は煮詰まった」との声が上がり、議決を
 出すことになった。議決の後、「こんな日になっちゃったね」
 と漏らす審査員もいたという。多数決の結果、起訴議決が出た
 のは午後3時頃。代表選で開票の結果、小沢氏の落選が決まっ
 たのはその約30分後だった。 ──上記日付、読売新聞より
―――――――――――――――――――――――――――――
 検察審査会は、検察審査員の氏名はもちろんのこと、生年月日
さえ個人情報であるとして教えないのです。それなのに新聞社は
検察審査員を特定し、インタビューまでしている──そうでない
と、書けない記事です。
 2回目の「起訴相当」議決を出した第5検察審査会の開催日の
情報は最高裁事務総局から出されています。また、新聞記事のソ
ースも最高裁事務総局からのリークでない限り、新聞社は知るす
べはないはずで、これも最高裁が出しているはずです。しかし、
両方見るとわかるように、両者は明らかに矛盾しています。どち
らがウソか、両方ともウソかです。
 おそらく最高裁事務総局の考えはこうでしょう。9月14日と
いうきわめて疑わしい日に議決をしているのです。したがって、
審査会議の非公開の原則を守って、2回目の「起訴相当」議決だ
けの発表をすれば、この議決を疑う人が多く出てくる可能性があ
ります。そうすれば、審査会議内容の開示を迫る世論が強くなる
恐れがあります。
 そこで審議内容や結果を大新聞社やテレビで流してしまえば、
その内容に多少矛盾があったり、真実でないことが含まれていた
としても、メディアの情報をそのまま鵜呑みにする日本人はかな
り多いので、やがてそれが「真実」になる──そう考えたのでは
ないかと思います。
 読売新聞記事の1日前の10月5日には、朝日新聞社も次のタ
イトルの記事で、本来知るはずのない審査会議の詳細な記事を載
せています。
―――――――――――――――――――――――――――――
         「強制起訴/市民の選択@」
      検察側「慎重な上にも慎重な審査」
          ──2010年10月5日付、朝日新聞
―――――――――――――――――――――――――――――
 最高裁事務総局は「非公開」を盾にして、一貫して知らぬ存ぜ
ぬを主張していれば、メディアを味方にとっているので、尻尾を
掴まれることはないと踏んでいます。国民を頭からなめきってい
るのです。        ─── [自民党でいいのか/68]

≪画像および関連情報≫
 ●板垣英憲「マスコミに出ない政治経済の話」/強制起訴
  ―――――――――――――――――――――――――――
  小沢一郎元代表が2011年1月31日、東京第5検察審査
  会の議決に基づき強制起訴された。2010年9月14日の
  議決から4か月半も経ての起訴である。この意味で、検察審
  査会というものの機能、性格に様々な疑問、というより疑惑
  を与えており、これが刑事事件を審査するのに相応しい機関
  であるかという根本的な疑念を抱かせている不可解な存在で
  ある。以下、疑問、疑惑、疑念を思いつくままに列挙してお
  こう。
  @小沢一郎元代表を検察庁に告訴、検察審査会に審査申立て
  した「市民団体」、その代表者は、一体何者か。東京地検特
  捜部、検察審査会ともに秘密にしているのは、刑事事件の訴
  訟手続き上、明らかにおかしい。とくに検察審査会の政治的
  利用という疑義がある。
  A検察審査会に審査申立てした「市民団体」、その代表者は
  そもそも申立人となる資格を持っていたのか。国会議員が国
  民全体の代表である政治家であるからと言って、国民のだれ
  もが審査申立人になれるというのは、利害関係があまりにも
  抽象的ではないか。「訴えの利益」は、厳密であるべきでは
  ないか。そうでなければ、国会議員をだれかれも無制限に人
  民裁判にかける危険が生まれる。政治的背景を調べ上げる必
  要がある。
  B米国流の検察審査会の性格が、一体、検察機関なのか、裁
  判機関なのか、三権分立制度のなかでの位置づけが、不明で
  あり、その存在形体が曖昧である。
  C検察官役の弁護士の選任権は、とこに属するのか、これも
  また不明である。公務員であるなら、公職選挙で選ばれるべ
  きではなかったのか。       http://bit.ly/gEqrv0
  ―――――――――――――――――――――――――――

小沢一郎総理ならず.jpg
小沢 一郎総理ならず
posted by 平野 浩 at 03:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月08日

●「9月14日第5検察審議決の疑惑」(EJ第3647号)

 10月4日に志岐武彦氏から、審査会議の日程を明らかにさせ
たのは、森ゆうこ氏ではなく、いばらぎオンブズマンの石川克子
氏が、会計検査院と東京地裁に「歳出支出証拠書類」の情報開示
請求をし、それを森ゆうこ氏に提供したものであるとの連絡があ
りましたので、ご紹介させていただきます。
 検察審査会による2回にわたる「起訴相当」議決には、多くの
疑問があります。現在は、森ゆうこ氏の本による主張に基づいて
書いています。そのあと、志岐武彦氏の主張に基づいて書く予定
でいます。そのうえで、この不可解な2回の「起訴相当」議決の
真相を読者に推理していただきたいと考えています。
 2010年9月14日に第5検察審査会は、小沢一郎氏に対し
2回目の「起訴相当」議決を出し、10月4日にそれを発表して
います。ここで、疑問なのは次の2つのことです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   1.なぜ、民主党代表選当日に急遽議決をしたのか
   2.なぜ、10月4日までその発表を延期したのか
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1の疑問です。「なぜ、民主党代表選当日に急遽議決をした
のか」について考えます。
 もともと東京第5検察審査会は、9月から10月にかけて集中
的に審議して10月末に議決を行う予定だったのです。それは、
2010年9月8日付の朝日新聞の記事(EJ第3645号を参
照)と一致します。ちなみに他紙も同様の記事を伝えているので
す。明らかに最高裁事務総局によるリークと思われます。
 この記事によると、第5検査審査会の審査を補助する弁護士で
ある審査補助員が選定され、審査が本格化することを伝えていま
す。それなのに9月14日に議決しているのです。きわめて唐突
という感じです。しかも、議決は代表選投票の30分前に行われ
ているのです。そこに何があったのでしょうか。
 民主党代表選の当日に、第5検察審会は候補者の1人である小
沢一郎氏に関わる2回目の議決を行い、しかも投票の30分前に
「起訴相当」議決を決めています。30分あれば民主党の反小沢
陣営にそのことを伝えることは物理的に可能です。とても無関係
とは思えないのです。
 なぜそんなことをするのか。それは、民主党の代表選では菅陣
営の旗色が悪く、もし負けると、小沢一郎氏が総理大臣になって
しまうからです。これだけは、「米・官・業・政・電」利権複合
体──それに民主党反小沢派にとっては、絶対に阻止しなければ
ならず、多少の危険があってもやる可能性があります。
 この問題は、改めて追及するとして、第2の疑問の検討に移り
ます。「なぜ、10月4日までその発表を延期したのか」の疑問
です。その答えは森ゆうこ氏が出しています。森氏の推理を基に
して述べます。
 森ゆうこ氏は提出された資料を突き合わせて、検察審査会の各
開催日にどの審査員が参加したかという「出席簿」を作成してい
ます。審査員の名前は黒塗りされていますが、審査員にはコード
番号がつけられているので、誰がいつ審査会に出席したかは特定
できるのです。
 既に述べているように、検察審査会は審査員が11人揃わない
と開くことはできないのです。そのため、原則として審査員11
人と補助員11人が出席することになっています。
 そこで、審査員を1〜11、補助員をA〜Kとして、9月14
日の出席状況を示します。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ◎2010年9月14日検察審査会出席者
    ・審査員 ・・・・ 9人(1〜9)
    ・補充員 ・・・・ 9人(A〜I)
    ・審査員5が早退
  ◎審査員11人の選定(補助員から3人をクジで選定)
    ・審査員 1〜9
    ・補充員 C、B、F        ──森ゆうこ著
     『検察の罠/小沢一郎抹殺計画の真相』/日本文芸社
―――――――――――――――――――――――――――――
 14日の「起訴相当」議決は、審査員1〜4、6〜9と補助員
からクジで選定されたC、B、Fの11人によって議決されてい
ます。当日の審査員と補充員はそれぞれ9人出席しています。
 実はこの日は議決日ではなかったのですが、急遽議決をするこ
とになったようです。2010年10月6日付の読売新聞の再現
ですが、「議長役を務める審査会長が、審査中に『議決を取りま
すか。それとも先にのばしますか』と提案したところ、審査員か
ら『議論は煮詰まった』との声が上がり、議決を出すことになっ
た」とあり、一致します。しかし、その日は議決の予定日ではな
いので、議決書を用意していなかったのです。そこで、議決書に
審査員にサインしてもらうため、もう1日必要になったのです。
それが10月4日です。
 ところで、10月4日の出席簿をみると、審査員1〜9、補充
員A〜Iの18人。審査会議を始めるには補充員からクジで2人
を選定すればよいのです。しかし、議決に参加した人は、なぜか
前回よりも1人多い3人で、補充員は前回と同じC、B、Fにな
っています。クジで選んで、同じC、B、Fが選ばれるはずがな
いので、検察審査会法に違反しています。そうした理由について
森氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 なぜ、ルール違反を犯してまで3人の臨時審査員が選出された
 のか。理由は明らかだ。前回の議決に参加したメンバーが署名
 しなければ議決書は無効になる。有効な議決書を作るためには
 何としても前回と同じメンバーをそろえなければならなかった
 のだ。            ──森ゆうこ著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
             ─── [自民党でいいのか/69]

≪画像および関連情報≫
 ●『検察の罠 小沢一郎抹殺計画の真相』はなぜ売れた?
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ――政治関連の本が売れない時代にあって、本書はすでに5
  万部発行。その要因とはなんでしょうか?
  森議員:過激なタイトルがよかったんでしょうか?(笑)西
  松建設事件や陸山会事件発生後の約3年間、新聞やテレビな
  どの大手マスメディアでは、「小沢一郎は、政治とカネの問
  題で真っ黒である」という情報が毎日洪水のように流されて
  きました。一方、ネット上では一連の小沢先生の問題に関す
  る検察の動きに対して疑問の声が上がっており、私もネット
  を通して、真実はどこにあるかについて発信してきました。
  そしてこの4月、小沢先生の裁判は一審で無罪判決を受けま
  した。これらの問題は、本当に複雑でいびつなので、その全
  体像をわかりやすく知りたいという国民のニーズと本書の内
  容が合致したのではないでしょうか。私自身、一般にはなじ
  みのない、検察審査会や政治資金規正法の問題を書くにあた
  って、難しくならないよう気をつけました。それと、まるで
  推理小説を読むような感じで、「小沢一郎抹殺計画の真相」
  に近づいていくというスリリングさも出ているのかもしれま
  せん。こういうとフィクションのようですが、驚くべきこと
  にノンフィクション。ここに書いていることは、全部事実な
  のです。             http://bit.ly/LL1RAh
  ―――――――――――――――――――――――――――

2回目の「起訴相当」議決の発表.jpg
2回目の「起訴相当」議決の発表
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月09日

●「議決前に真に検察審に行ったのか」(EJ第3648号)

 東京第5検察審査会が小沢氏に対し、「起訴相当」議決をした
のは、2010年4月27日のことです。そして、この議決を受
け、東京地検特捜部が再度嫌疑不十分で不起訴を決定したのは、
5月21日のことです。
 検察審査会は、検察から再度不起訴にした通知を受けた場合、
審査を開始しなければなりませんが、そのさい次の2つのことを
する必要があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
  1.検察官を検察審査会議に出席させ意見を述べさせる
  2.専門家として弁護士を審査補助員に委嘱し審査する
―――――――――――――――――――――――――――――
 「1」の小沢事件を担当している検察官は、斎藤隆博東京地検
副部長です。検察審査会法第41条により、第5検察審査会は議
決をする前に担当の検察官から意見聴取する必要があります。
 問題はその意見聴取をいつ実施したかです。EJ第3646号
(10月7日)でご紹介した2010年10月6日付、読売新聞
には、次の表現があるので、再現します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 9月上旬には、「起訴議決」を出す場合に義務付けられてい
 る検察官の意見聴取を行った。意見聴取では、東京地検特捜
 部の斎藤隆博副部長が1時間以上にわたって説明。
          ──2010年10月6日付、読売新聞
―――――――――――――――――――――――――――――
 これによると、「9月上旬」に第5検察審査会は斎藤副部長か
ら意見聴取したことになっています。上旬とはいつかは特定でき
ませんが、もし本当であれば、9月14日の議決の成立要件を満
たしています。
 しかし、斎藤副部長が9月14日前に検察審査会に出席したと
いう証拠は何ひとつないのです。もし、本当に検察審査会に出席
しているのであれば、それを証明できる書類が残っているはずな
のですが、何も残っていないのです。これは行っていないことを
あらわしています。
 2011年2月のことですが、森ゆうこ氏はこの件について法
務省刑事局の刑事課長などを呼び、意見を聞いています。斎藤副
部長が検察審査会に行ったのであれば、「出頭命令書」か「復命
書」があるはずで、それを提出して欲しいと要請したのです。こ
れについて、森氏は自著で次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 「本当に斎藤さんが9月14日以前に行ったという証拠がある
 んですか?・・・本当は斎藤さん、行ってないじゃないの?後
 でアリバイ作りのために行ったってことはない?」そう聞いた
 ときの刑事局の反応を私は忘れない。とくに刑事課長は顔面蒼
 白になり、ブルブルと震えていた。     ──森ゆうこ著
     『検察の罠/小沢一郎抹殺計画の真相』/日本文芸社
―――――――――――――――――――――――――――――
 復命書というのは、職員が上司から会議への出席、調査など特
定の事項を命ぜられて出張した場合に、その経過、内容及び結果
について上司に報告するために作成する文書のことです。
 森氏は、自分が社会教育指導員を務めていた経験から、少なく
とも「復命書」はあるはずで、それがなければ管理職は職員の行
動を管理できないはずだと刑事課長に迫ったのです。
 その結果、しばらくすると、法務省刑事局からは次の文書が送
られてきたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 検察審査会が審査を行っている個別の事件について、具体的に
 どの検察官が、いつ、意見を述べるため、検察審査会に出頭し
 たかは、捜査機関としての具体的活動内容に関わる事柄であり
 かつ、検察審査会の審査の内容に関わる事柄であることから、
 お答えすることは困難ですが、検察審査会法の規定に則し、当
 該起訴議決よりも前に、検察官が検察審査会に意見を述べるた
 め出席したことは承知しております。なお、東京地方検察庁に
 所属する職員が東京地方裁判所内の検察審査会に業務で出向い
 た場合、両庁舎問の距離が近距離であり、旅費の支給対象とも
 ならないことから、出張扱いとはしておらず、いわゆる出張記
 録は作成しない取扱いとなっております。
                ──森ゆうこ著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 要するに東京地検の職員が、目と鼻の先にある東京地裁に出向
く場合は、徒歩であり、旅費の支給対象とならないので、出張扱
いではなく、書類もないといっているのです。
 しかし、この法務省刑事局の主張は正しくないのです。それは
志岐武彦氏から提供された資料(添付ファイル参照)によって明
らかです。この資料は、特別捜査部の「出張管理簿」ですが、佐
久間達哉部長が東京地裁に徒歩で出張した記録がちゃんと残され
ています。
 したがって、斎藤副部長が第5検察審査会に出張した記録がな
いはずがないのです。東京地検特捜部ともあろうものが、なぜこ
のような事実と異なることを文書にするのでしょうか。
 これに関して、ちょうどこの時期に法務副大臣をしていた小川
敏夫氏が森氏に対し、次のように「忠告」したことが森氏の本に
書かれています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 森さんが今調べていることは的はずれだ。斎藤副部長が、9月
 14日の前に東京第5検察審査会に行ったのは役所の言った通
 りだから、調べても無駄だ。(中略)無理に普段開示させない
 資料まで開示させて、動かぬ証拠を出されたら君が糾弾される
 ことになる。         ──森ゆうこ著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 小川敏夫氏の言葉は忠告にもとれますが、調査に対しての圧力
ともとれるいい方です。  ─── [自民党でいいのか/70]

≪画像および関連情報≫
 ●国民会議、最高検、法務省に乗り込む/12年5月30日
  ―――――――――――――――――――――――――――
  冤罪に陥れられている小沢一郎元代表だけでなく、多くの冤
  罪被害者を救済するために立ち上がった森ゆうこ参義院議員
  や「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」が、「司
  法改革を実現する国民会議」を結成し、「ストップ!検察の
  暴走!!」ということで、5月29日参議院会館講堂で緊急
  アピールを採択し、法務省・最高検察庁へ要請文を持って乗
  り込んだ。開始時間が予定より早まったため、所用を終え、
  駆けつけた時には、すでに始まっていた。そのため、鈴木宗
  男氏のスピーチの途中からの中継となり、小沢一郎新政研会
  長の挨拶は聞くことができなかった。鈴木宗男氏・森ゆうこ
  議員のスピーチや緊急アピールの採択後、森ゆうこ議員らと
  一緒に法務省・最高検察庁に乗り込み、緊急アピール文を手
  渡した。私達、市民の思いを知り、検察や法務省が正義の場
  として国民の期待に応えられるためにも、特捜の報告書偽造
  などの犯罪をうやむやに葬り去ることなく、田代検事は勿論
  当時の樋渡検事総長や佐久間特捜部長、大鶴検事・民野検事
  ら組織ぐるみの犯罪を厳しく糾弾していってもらいたい。検
  察審査会を欺くことになった特捜部の犯罪を、裁判所で糾弾
  されたことで終わらせず、検察はそのつとめを果たさなけれ
  ば、国民は納得することはできない。
                   http://bit.ly/18ZRvtH
  ―――――――――――――――――――――――――――

佐久間特捜部長の徒歩出張.jpg
佐久間特捜部長の徒歩出張
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 自民党でいいのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする