2013年06月21日

●「中国は無人悪臭の荒野になる恐れ」(EJ第3573号)

 中国を東西に貫いて流れる長江の中流域に山峡ダムという世界
最大級のダムがあります。ダムの目的は水力発電と洪水予防です
が、現在このダムは、汚水のたまり場と化しています。
 その原因を作ったのは、不法投棄と汚水の垂れ流しです。不当
投棄については、次のように枚挙にいとまがないのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 2010年3月/山東省済寧市の河川に死産や堕胎による胎児
         ・乳児の遺体21体が発見
 2013年3月/黄浦江上流で、不法投棄したとみられる約1
         万頭ものブタの死骸を発見
 2013年4月/江西省鷹潭市の河川に業者が投棄したと考え
         られる鶏の死骸が大量漂着
―――――――――――――――――――――――――――――
 これら3つの不法投棄は、ごく特徴的なものだけを集めたので
あり、工場排水や生活排水の河川やダムへの垂れ流しは日常茶飯
事のように行われています。とくに今年4月の鶏の大量投棄につ
いては、鳥インフルエンザ(H7N9型)に関係していることは
確実なので、絶対にやってはならないことです。
 三峡ダムのひどさについては、中国に詳しい宮崎正弘氏は次の
ように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 三峡ダムは「巨大な汚水の肥溜め」と呼ばれている。共産党政
 権による建設工事の強行で、ダム自体が多くの汚染源を抱え込
 んでいるのです。ダム建設時に水没した土地には、工場や農場
 養豚場などが少なくありませんでした。中国政府はこうした施
 設の廃棄物や化学薬品、農薬などを放置したまま、住民を立ち
 退かせて強引に注水。結果、完成したダム湖の水には廃棄物や
 有害物質が混合し、ひどく汚染されているのです。現地の工場
 の公害対策はお粗末というより他ありません。ポリエチレンや
 塩化ビニールを製造する際の廃水をはじめ、化学工場からはベ
 ンゼンが、電池工場からは液漏れした内容物が長江に漏れ続け
 ています。人口3000万人の重慶市の生活排水も、そのまま
 垂れ流し状態です。       ──「週刊新潮」6/20
―――――――――――――――――――――――――――――
 山東省の利民村は、化学工場や製糸工場を誘致してからという
もの、がんを発症する村民が急増して「がん村」といわれるよう
になったのです。
 中国の現地紙「新京報」の今年の2月24日の記事によると、
こういう「がん村」は中国全土に200か所以上あると指摘して
います。この「がん村」の存在は国営テレビCCTVでも特集を
組んで伝えていますが、中央政府は本格的に改善に乗り出そうと
はしていないのです。
 中国では、河川の汚染レベルを分類する「地表水の環境基準」
が定められています。水源水に当るI類から、農業用水に当るV
類までの5つに分けられています。
 2008年に中国の水利部が公表したデータによると、中国の
主要河川の約20%が、生活用水はおろか、農業・工業用水にも
使えない水質であり、V類を超えるので、「劣V類」と呼ばれて
います。このレベルになると、いかなる使い道もないのです。そ
して、深刻なことはその割合が年々増加していることです。
 日本では、工業廃水を24時間体制でチェックしていますが、
中国では年に1度役人が来ればよい方であるといいます。
 この中国河川の汚染は、日本にも影響を及ぼしつつあります。
水質汚染が深刻な「三河」といわれる海河、准河、遼河のうち、
とくに海河と准河は日本に影響があるのです。
 海河は、北京や天津という大都市を流れる河川ですが、流域の
半分以上が汚染レベルは劣悪で「劣V類」の河川なのです。この
海河の水を使って落花生や小麦の栽培を行っており、日本にも輸
出されているのです。
 同様に流域の20%が「劣V類」とされる准河周辺では、米の
水稲栽培が盛んであり、日本にも多くの米が輸出されています。
日本へ輸出される米は「せんべい」などの菓子の原料として多く
使われており、そういう意味で格安のせんべい類は、その産地を
確かめて買う必要があると思います。
 米国のある食品会社が「チャイナフリー」という言葉を使って
当社の食品には一切中国製品を使っていないことをPRしていま
す。皮肉なことにこれに一番納得しているのは、中国人だといわ
れています。中国人自身が一番身の危険を感じているからです。
水が安心して使えないのでは、命に関わる問題だからです。
 中国の中央政府は地方政府をきちんとコントロールできないよ
うです。そのため、環境汚染対策が野放しになり、あれほどの広
大な地域を有しながら、だんだん住める地域が少なくなりつつあ
ります。これについて、宮崎正弘氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 水不足と水質汚染のため、中国は毎年、宮崎県と同等の面積が
 砂漠化しています。加えてマンション建設により、アメリカの
 ウエストバージニア州と同じ規模の農地が消滅しています。そ
 うした状況に嫌気が差して、中国の農民はアフリカに、富裕層
 や政府高官は欧米への移住が急増している。少なからぬ国民が
 環境汚染の深刻さから国土に見切りをつけているのです。たと
 え中国の一党独裁体制が滅びても、環境汚染が改善される日は
 来ないでしょう。        ──「週刊新潮」6/20
―――――――――――――――――――――――――――――
 強力な指導者の下で、13億人の中国人がいま取り組むべきは
中国をかつての五穀豊穣をもたらす大地や河川の国に戻すために
全力を尽くすことです。南シナ海の諸島や東シナ海の尖閣諸島に
領有権を主張して、軍備を拡張すべきときではないのです。
 もはや水質については、1000年は復活不可能で、このまま
では、中国は無人悪臭の荒野になるだけです。中国人の多くはそ
のことに気が付いています。だから、いつも国から逃げ出す機会
を窺っているのです。       ――─ [新中国論/71]

≪画像および関連情報≫
 ●大気汚染、土壌汚染、水汚染/中国で何が起きているか
  ―――――――――――――――――――――――――――
  2013年4月2日付の中国紙、21世紀経済報道によると
  中国で2010年に大気汚染が原因で健康を損ない死亡した
  人は123万4千人で、中国全体の死者の約15%を占めた
  といいます。驚くべき数字です。まあ、こうした数字は「推
  測」に基づくものですから、実際をどれだけ反映しているか
  はよくわかりません。しかし、中国における大気汚染は深刻
  であることは間違いないようです。微小粒子状物質「PM2
  ・5」などの汚染物質が人々の健康に大きな悪影響をもたら
  していることは容易に推察できます。本格的な健康被害のレ
  ベルにまできているといえます。大気汚染が注目されていま
  すが、私は土壌汚染、そして水汚染の方がさらにやっかいな
  ものだと思っています。とくに水汚染が与える影響は深刻で
  す。水は人間が生きていくうえで欠かせないものですし、産
  業においても必須のものです。飲み水も問題です。中国はか
  なり地下水に依存しています。その地下水が汚染されると浄
  化には非常に長い年月が必要になります。多くの人が飲み水
  として活用している地下水が汚れていれば、当然、大きな健
  康被害が出ます。飲み水だけではありません。農業にも畜産
  業にも水は不可欠です。その水が汚染されていれば、育った
  農作物は当然汚染されているといえます。また家畜もその汚
  れた水を飲んで育っていますから、有害物質が蓄積されてい
  る可能性もあります。水汚染に加えて、水不足も追い打ちを
  かけます。工業の発展にも影響を与える可能性が出てきてい
  ます。            ──児玉克哉三重大学教授
  http://bylines.news.yahoo.co.jp/kodamakatsuya/20130403-00024214/
―――――――――――――――――――――――――――――

もっともカラフルな河.jpg
もっともカラフルな河
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2013年06月24日

●「中国の夢が『悪夢』にならないか」(EJ第3574号)

 EJの今回のテーマ「新中国論」は、2013年3月11日か
ら書きはじめたのですが、同じ内容を掲載しているブログのユニ
ーク・ユーザー数やページ・ビュー数によると、大変多くの方に
読まれているようです。3月〜6月までの1日当りの平均値は次
の通りです。ご愛読を感謝します。
―――――――――――――――――――――――――――――
      ユニークユーザー数   ページビュー/PV
   3月     1444人       4538回
   4月     1786人       5135回
   5月     1917人       5504回
   6月     2122人       5992回
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、このテーマは6月28日をもって終了し、7月1日か
らは新しいテーマに入る予定です。今週は、テーマ全体のまとめ
になるようなことを書く予定です。
 6月14日のことです。ノーベル平和賞を受賞した中国の獄中
の人権活動家、劉暁波氏の妻である劉霞氏は、中国版ツイッター
微博上で、次の趣旨のツイートを発信し、習近平国家主席に対す
る公開書簡としたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 『中国の夢』は一人一人の市民によって実現されるものだ。
 あなたの唱える夢が、我々にとって『悪夢』にならないこと
 を期待する。                ──劉霞氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 劉暁波氏は現在も収監され、劉霞氏も自宅軟禁状態に置かれて
います。そういう状態で劉霞氏は、中華民族の偉大な復興を「中
国の夢」として掲げる習近平国家主席に対し、国家が個人に優先
する中国の現状を公開で批判したのです。
 劉暁波氏は中国の著作家ですが、2008年に民主的立憲政治
を求める「〇八憲章」を起草して拘束され、2020年6月21
日までの懲役刑の判決を受け、錦州監獄で現在も服役中です。劉
氏は、収監後の2010年にノーベル平和賞を受賞しましたが、
中国は受賞を決めたノーベル委員会を批判し、そのことを一切報
道せずに封印しようとしたのです。
 ところで「〇八憲章」とは何でしょうか。
 「〇八憲章」は、2008年12月9日に劉暁波氏がネット上
で発表した、中国の政治・社会体制について、中国共産党の一党
独裁の終結、三権分立、民主化推進、人権状況の改善などを求め
た宣言文なのです。この宣言文には、303名の署名が付けられ
ています。
 共産党一党支配の中国で「一党支配をやめろ」と宣言したので
すから、大変です。しかも、知識人を中心に303名の署名まで
付いている──一昔前の中国なら、署名した303名も全員逮捕
され、即処刑でしょう。
 1956年に毛沢東は「百花斉放百家争鳴」という言葉を使っ
て、知識人らに自由に意見を述べるように勧めたのです。最初は
警戒して何もいわなかった知識人が、毛沢東主席の再三の要請に
に応じ、2年経過後から、中国共産党の独裁政治や経済政策を批
判するようになったのです。
 そのあまりの激しい批判に危機感を抱いた毛沢東主席は、一転
して反右派運動を掲げ、知識人の弾圧を行ったのです。これによ
り、55万人が右派とされ、処刑されたり、辺境へ追いやられた
り、失職させられたりしたのです。
 現在もそのときと考え方は変わっていないのですが、石平氏に
よると、中国共産党の力が落ちて、一人を見せしめにする程度の
ことしかできなくになっているといいます。
 どうして中国では民主化が進まないのでしょうか。中国は多く
の思想家が出ている国です。ちょっと数えても、孔子、孟子、老
子、荘子、墨子といくらでも出てきます。そういう国では民主主
義が育つのですが、なぜ中国ではそうならないのでしょうか。
 それは、秦の始皇帝以前に限られているのです。前770年の
周の東遷から、秦の始皇帝が、韓・趙・魏・楚・燕・斉を制圧し
て天下を統一した前221年を春秋戦国時代といいますが、多く
の思想家が出たのは、この時代に限られているのです。この時代
の中国は自由の国だったのです。それ以後はずっと独裁政権が続
き、思想家は生まれないし、思想家を必要としなかったのです。
 唯一の例外としては、中国南宗の朱子による朱子学と王陽明の
唱えた陽明学がありますが、朱子学は思想とはいえず、治政のノ
ウハウのようなものであり、陽明学はきわめてよい哲学だったの
ですが、中国では異端として排斥されたのです。
 陽明学は日本に渡り、日本で評価されて、武士道の根幹を成す
思想になったのです。蒋介石が日本に留学して陽明学を学び、一
生を通して信奉したといわれます。まさに逆輸入です。
 そして、毛沢東の統治時代になってすべての学問が抹殺され、
共産主義だけが残ったというわけです。しかし、その共産主義は
真の共産主義ではなく、毛沢東によって勝手に歪められた共産主
義なのです。この中国の共産主義について、宮崎正弘氏と石平氏
は対談で次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 宮崎:マルクス・レーニン主義というのは外国の思想であって
    中国人には合わないということを、中国の民主、人権運
    動家が1980年代からいっていたんですよね。
 石 :でも、マルクス・レーニン主義というものは、毛沢東を
    通じて中国で長く支配的な立場に立っていた結果、二つ
    の大変な遺産を残したんですよ。ひとつはしょもない平
    等の概念。もうひとつは無神論。神様、仏様という概念
    を中国人から、特にエリートから消したのです。
                   ──石平/宮崎正弘著
     「2013年後期の『中国』を予測する」/ワック刊
―――――――――――――――――――――――――――――
                 ――─ [新中国論/72]

≪画像および関連情報≫
 ●劉暁波ノーベル授賞と中国政治改革のゆくえ/田中宇氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  2010年10月8日、ノーベル平和賞が、中国の反体制活
  動家の劉暁波氏に授与されることになった。この件を知って
  私がまず思ったことは、タイミングの悪さだ。劉暁波は08
  年末、共産党の一党独裁をやめて多党制に移行すべきだと主
  張する「08憲章」の立案を主導したため中国政府に逮捕さ
  れて有罪になった。今回のノーベル平和賞は、08憲章に代
  表される劉の中国民主化をめざす運動に対して与えられてい
  る。08憲章の発表後、劉に対する授賞は昨年も取り沙汰さ
  れた。だが結局、オバマ米大統領が授賞している。劉への授
  賞が今年でなく昨年だったら、授賞による影響は欧米(特に
  米英中心主義の勢力)にとって、まだましなものになったか
  もしれない。中国は当時まだ、国際社会における政治力が今
  より弱く、欧米に反撃するより低姿勢でやりすごそうとする
  傾向が強かった。しかしここ1年、中国の国際政治力は急拡
  大した。ドルの崩壊感が強まる中、中国の出方が国際基軸通
  貨制度の今後を決定する事態となっている。人民元が対ドル
  為替の切り上げを決めたら、ドルの崩壊感が強まるだろう。
  欧米の対イラン制裁は中国の協力なしには進まないし、北朝
  鮮も中国の傘下に入った。
         http://www.tanakanews.com/101016china.htm
  ―――――――――――――――――――――――――――

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ノーベル平和賞受賞者/劉暁波氏
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2013年06月25日

●「尖閣有事が起きる可能性はあるか」(EJ第3575号)

 現在の中国でははさまざまな問題が噴出しつつあります。最近
では、中国の良くない問題が新聞紙上に出ない日はないといって
いいほど、いろいろな問題が伝えられています。
 中国にとって残されている道は2つしかないと思います。それ
は、中国共産党の上が改革──具体的には民主化に向けての政治
改革をやるか、下からの革命を待つかの2つです。もし、上が政
治改革をやらなければ、やがてやり場のない怒りと不満が爆発し
下からの革命が起こるはずです。
 下からの革命は、劉暁波氏のような勢力が中心になって盛り上
がり、おそらくフランス革命のような規模の大革命に発展する可
能性があります。共産党の幹部たちが一番恐れている事態です。
 しかし、新しいエンペラーである習近平国家主席は、そのどち
らでもない方向を目指しています。それはナショナリズムの喚起
です。習主席は、毛沢東を褒め讃え、ケ小平詣でをしています。
イデオロギー的には完全に混乱しているのですが、ただ、ナショ
ナリズムだけは明確に打ち出しています。
 その狙いはどこにあるのでしょうか。ずばり、国民のやり場の
ない怒りや不満を外に向けさせたいのです。そういう人民の気持
をひとつにまとめ上げるテーマは「反日」しかないのです。
 中国のネット世論を扇動している代表的メディアである「環境
時評」は、2012年8月27日付の社説で次のように書いてい
ます。ちょうど尖閣をめぐる日中対立が激化していた時期です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 もし、中日間で戦争が起きれば、中国人の心理の上で、一世紀
 余りにおよぶ屈辱を晴らす戦争となるに違いない。たとえどの
 ような戦争であっても、中日戦争ほどこうした役割を果たすの
 にふさわしいものはない。中国の民間がどれだけ日本を嫌って
 いるかはともかく、いったん民意が対決すれば、中国人は必ず
 一致団結する。        ──加藤隆則/竹内誠一郎著
             「習近平の密約」/文春新書911
―――――――――――――――――――――――――――――
 もちろんここで中国人民の目を外に向けるのに仮に成功しても
問題は何も解決せず、むしろ世界の非難を浴びて、問題の解決を
遅らせるだけです。まして、不法な戦争などを起こせば、中国は
改革開放で得た果実をすべて失うことになるでしょう。
 もちろん中国メディアにも良心があります。「中国青年報」に
所属する「氷点週刊」の編集長である徐百村氏は、2012年9
月5日の同紙において、「メディアは『愛国』で商売をしてはな
らない」というタイトルで、次のように反論しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 無責任で大局をわきまえない言説で、我々が反対している外国
 の過激勢力と変わらない。こうした表現を用いることを習い性
 とするメディアは、筆を収めて、民衆に謝罪してほしい。
          ──加藤隆則/竹内誠一郎著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 このような冷静で理性的な言論が中国内部の過激な言論を抑え
ているのです。しかし、トップがナショナリズムに舵を切ってい
るのでは、いつ戦争が起きても不思議はないのです。
 習近平主席は尖閣諸島をめぐって、日本と戦争になる事態もあ
ると考えています。彼は昨年暮れに総書記に就任すると、すぐ部
下に命じて、「日本と開戦になった場合の影響」についてレポー
トを作らせているからです。
 もし、中国が尖閣諸島をめぐって、戦争を仕掛ける場合、次の
2つの条件がクリアされたときです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   1.日本の自衛隊が先に手を出したと主張できる状況
   2.米軍が絶対に介入してこないという確証がとれる
―――――――――――――――――――――――――――――
 「1」は、中国にとってはいくらでも手があるのです。例のレ
ーダー照射は、その手のひとつです。レーダー照射があったので
日本が反撃したとすると、レーダー照射は見えないので、日本が
先に手を出したことになるのです。
 このあたりのことは海上自衛隊はよくわかっているので、レー
ダー照射に反撃せず、政府を通してその事実を公表したのです。
中国はまさか日本が公表するとは思っていなかったので、かなり
慌てて対応に追われたのです。これは日本の勝ちです。
 1937年7月7日に日中戦争の発端になった盧溝橋事件──
北京郊外で日本軍が銃撃を受けたのです。そのとき、ひとりの日
本兵が行方不明になっていたので、日本軍は中国軍を攻撃し、日
中戦争がはじまったのです。
 中国側は日本側が最初に発砲したと主張していますが、真相は
日本を戦争に引きずり込みたい劉少奇が自分の部隊に命じて、日
中両国の部隊に向かって発砲させたといわれています。
 レーダー照射はこれと同じです。「レーダー照射があった」と
公表してもそれを証明することは困難であり、「そんなことはな
い」と否定できるのです。中国はそのようにしています。
 中国にとって大問題は「2」なのです。米国の本心がわからな
い──この点をはっきりさせようとして、習主席は先の米中首脳
会談で相当際どいことまでいって、オバマ大統領に迫ったのです
が、「日本が米国の同盟国であることを忘れるな」とクギを刺さ
れてしまったのです。結局、米国のハラを読めなかったのです。
これについて宮崎正弘氏は次のようにコメントしています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 アメリカが出てこれない範囲のなかで、小さな軍事事件として
 やるということなんです。だから、戦争というのはかなり拡大
 されて誤解される恐れがあるので、尖閣事件といったほうがよ
 い。もしくは尖閣軍事事故、そんな感じなんです。
                   ──石平/宮崎正弘著
     「2013年後期の『中国』を予測する」/ワック刊
―――――――――――――――――――――――――――――
                 ――─ [新中国論/73]

≪画像および関連情報≫
 ●日中「軍事衝突」に備えよ/「経済の死角」
  ―――――――――――――――――――――――――――
  2013年5月14日、人民解放軍のスポークスマン役を務
  める羅援少将が『中国新聞ネット』に出演し、次のような過
  激な『尖閣奪取宣言』を行った。「われわれは今後、3段階
  で釣魚島を奪取する。第一に、漁船を海域に放ち、主権を宣
  言する。第二に、国家海洋局の海監(巡視船)が重武装で赴
  く。すでに最近、島から0・6海里まで達している。そして
  満を持して中国海軍が出動するのだ。現在、東海、北海、南
  海の3大艦隊が共に、釣魚島付近で軍事訓練を行っている。
  これは刀を磨いているのだ。3艦隊が一体となって刀を抜け
  ばよい。制海権を奪うことが何より重要で、そのために力を
  つけるのだ」。羅援少将は翌15日、同番組で今度は、沖縄
  問題について吠えた。『人民日報』(5月8日付)が「沖縄
  は中国の領土」と主張したことを受けての発言だ。この日は
  沖縄が日本本土に復帰して41周年にあたる記念日だった。
  琉球は日本に帰属しているものではまったくない。なぜなら
  琉球は以前は独立した王国だったからだ。西暦1372年に
  琉球王国は明に朝貢を始めた。以来、琉球は明の属国となっ
  た。それを1872年に、日本の明治政府は、中国に何の相
  談もなく、琉球国王を軟禁し、王制を廃して琉球藩とし、そ
  の後、沖縄県にしてしまった。実際、琉球国の多くの国民が
  福建省、浙江省、台湾の出身だ。つづく
         http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35896
  ―――――――――――――――――――――――――――

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デンプシー/習近平会談
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2013年06月26日

●「死刑囚決死隊による尖閣上陸作戦」(EJ第3576号)

 米政府は日中間で紛争になっている尖閣諸島問題について、領
有権問題で特定の立場を取らないとしているものの、さまざまな
角度で中国を牽制をしています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.中国は尖閣諸島について「不適切に引かれた直線基線」
   を使って領有権主張を強めているが国際法に違反
 2.中国は測量をしていないのに尖閣諸島は自国領であると
   主張しているが、それは未成熟国家の証しである
―――――――――――――――――――――――――――――
 これらの米国による指摘で中国にとって一番痛かったのは、未
測量の指摘です。それ以来、中国はさまざまなルートを通じて米
国に「測量のために尖閣諸島に上陸させて欲しい」という働きか
けをしているといわれています。
 実効支配をしている日本ではなく、米国に測量上陸の許可を求
めるのは、とんでもない筋違いであり、日本を馬鹿にした話です
が、中国はそういうことを平気で行う国なのです。日本の防衛力
をなめきっているのです。
 そういうときに、次のような信じられない情報が入ってきたの
です。2013年6月18日のことです。
―――――――――――――――――――――――――――――
       「習近平」尖閣上陸/死刑囚利用
          スクープ最前線/加賀孝英
    ──2013年6月18日付/夕刊フジ
―――――――――――――――――――――――――――――
 米中首脳会談のあと、習近平国家主席は怒り狂ったように、ど
んな手段を使ってもいいから尖閣諸島に上陸する作戦を考えよと
人民解放軍に激しいゲキを飛ばしたそうです。尖閣諸島の領有権
問題についてオバマ大統領から予想外の強い反発を受けたことが
原因のようです。
 そういうとき、米国防総省関係者から、恐るべき情報がもたら
されたのです。その作戦について、ジャーナリストの加賀孝英氏
は、作戦の概要を次のように明かしています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 軍部は、死刑囚を利用するプランをひそかに考えている。死刑
 囚数人を選抜して決死隊を結成させ、武器や弾薬を与え、漁船
 で尖閣諸島に向かわせる。死刑囚への見返りは残された家族へ
 の金だ。海上保安庁の巡視船が現れたら、彼らは漁船を体当た
 りさせ、死に物狂いの銃撃戦を仕掛けて、強行突破で尖閣に上
 陸する。                 ──加賀孝英氏
             2013年6月18日付/夕刊フジ
―――――――――――――――――――――――――――――
 少し詳しく作戦を解説します。こういうストーリーを作ってい
るのです。武装した凶悪犯数人が、漁船を強奪して尖閣諸島方面
へ逃亡したという想定です。こういうケースでは、緊急警察活動
として中国の監視船数隻がその漁船を追跡することになりますが
日本側は簡単にはそれを阻止できないのです。
 しかし、漁船が尖閣周辺海域に入って来ると、海上保安庁の巡
視艇は漁船を阻止する行動を行います。漁船は巡視船に体当たり
して銃撃してきます。巡視船も応戦しますが、漁船は死に物狂い
で巡視船を振り切り、尖閣(魚釣島)に上陸したとします。
 問題は、漁船を追ってきている中国の監視船数隻の行動です。
中国の監視船数隻は一挙に日本の領海に入ってきます。犯人たち
を追ってきているという名目があるので、日本側はそれを制止す
ることは困難であると思います。
 そして、上陸用ボートに乗った警備隊員(実は軍人)と特殊の
任務を帯びたスタッフ(軍人)が尖閣(魚釣島)に上陸するので
す。軍人は上陸するや死刑囚全員を追いまわして銃撃戦を行い、
全員を射殺します。そこで警備隊員は現場検証を行うとして、時
間稼ぎをします。その間に特殊任務を帯びたスタッフが、島の測
量を素早く行うという段取りになっているのです。特殊任務とは
測量をすることなのです。
 その後、おそらく死刑囚の遺体を乗せて、中国の監視船の警備
隊は島から引き上げると思います。ストーリーから考えてもその
まま島に居座ると、話の整合性が取れなくなり、ストーリーがウ
ソであることがわかってしまうからです。
 日本側としては、もし中国の監視船の警備隊が島に残るという
ことになると、日本としては尖閣諸島に不法に上陸されたことに
なるので、防衛出動を宣言し、海上自衛隊が出動して、尖閣諸島
の奪還作戦を展開することになります。
 当然日本側が自衛隊を出してくると、中国側も海軍が出動して
きて、間違いなく戦争になります。その尖閣諸島をめぐる戦闘の
模様は、前回のテーマ「日本の領土」においてシミュレーション
を行っているので、ご参照ください。
―――――――――――――――――――――――――――――
     2013年2月26日/EJ第3494号
           〜3月5日/EJ第3499
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、このさい懸念されることがあります。それは、例のス
ノーデン事件です。加賀孝英氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 米中央情報局(CIA)元職員のエドワード・スノーデン氏の
 告発によって、米国家安全保障局(NSA)が通話記録や電子
 メールなどの情報を違法収集していたことが暴露され、オバマ
 大統領は窮地に立たされている。米国は今後、香港にいるスノ
 ーデン氏の身柄引き渡しを中国に要請するが、これが取引材料
 にされる危険がある。つまり、「身柄は引き渡す。その代わり
 尖閣で何が起こっても米国は目をつぶれ」と。
             2013年6月18日付/夕刊フジ
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、この計画は表沙汰になっています。それを果たして中
国が実施するかどうかは疑問です。 ――─ [新中国論/74]

≪画像および関連情報≫
 ●「メタ釈明」に徹するオバマ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  米国家安全保障局(NSA)が市民の通話記録を収集してい
  たことにショックを受けた!オバマ政権に言わせると、集め
  たのはただの「メタデータ」だ。「収集された情報には通信
  内容は含まれていない」と、ホワイトハウスのジョシユ・ア
  ーネスト副報道官は保証した。分析官が調べられるのは「電
  話番号と通話時間だけ」だとオバマ大統領も断言し、「中身
  はチェックしていない」と、ジェームズ・クラッパー国家情
  報長官が請け合った。ここで言う「メタ」とは、情報につい
  ての情報のこと。メタデータは「他のデータに関する情報を
  提供するデータ」だ。オバマ政権の言うメタデータとは、そ
  こには中身がないということ。通話があったことは分かって
  も、通話内容は分からない。あくまで表面的で空疎なデータ
  だということだ。 残念ながら、この表現はそっくりそのま
  まオバマ政権の釈明にも当てはまる。監視プログラムの存在
  を知って動揺したアメリカ人は、それがどんなプログラムで
  何がのぞかれるかを知りたがっている。
       ──「ニューズウィーク日本版」より/6・25
            特集「アメリカの陰謀?ネット監視」
  ―――――――――――――――――――――――――――

決死隊による魚釣島上陸作戦.jpg
決死隊による魚釣島上陸作戦
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2013年06月27日

●「琉球諸島は日本領/『人民日報』」(EJ第3577号)

 中国は「核心的利益」という言葉をよく使います。尖閣諸島に
ついても中国は「核心的利益」といっています。核心的利益とは
「絶対に一歩たりとも譲らない」、つまり、一切妥協しないとい
う意味なのです。
 それでいて習近平国家主席は「話し合いで解決する」ともいっ
ています。しかし、「絶対に一歩たりとも譲らない」と考えてい
るものを話し合いで解決できるはずがないのです。これは巧妙な
レトリックです。「釣魚島は中国の核心的利益である」というの
は日本に対しての発言ですが、「話し合いで解決」というのは、
日本以外の国に対するアナウンスなのです。
 世界に対して核心的利益と強弁すると、覇権国家や強権国家と
の非難を浴びるので、日本以外の他国へは、平和的手段である話
し合いを口にしているだけなのです。
 尖閣諸島に関心を持っているのは、当事国の日本と中国、関係
国である韓国と台湾、それに米国ぐらいのものです。それ以外の
国は尖閣のことなんか知らないし、関心もないのです。日本が他
国の領土問題のことを知らないのと同じです。
 そういう国からみると、中国が話し合いで解決といっているの
だから、日本は中国と真摯に話し合って解決すればよいと思うは
ずです。つまり、「話し合いで」というのは、他国に中国のソフ
トな印象を与えるための巧妙ないい方なのです。日本に対して譲
る気など、まったくもっていないのです。
 そもそも日本が長い間にわたって実効支配を続けている尖閣諸
島を、中国が魚釣島(尖閣諸島)は自分たちの領土であり、それ
を「核心的利益」と世界に公言する感覚は、日本としては、とて
も容認できるものではありません。
 最近わかったことですが、日本の尖閣諸島国有化宣言で日中関
係が騒然としていた2012年9月頃から、中国版ツイッターの
「微博」上で、尖閣諸島に関する驚くべき情報が伝えられている
のです。それは、1950年代のことですが、中国共産党の機関
紙「人民日報」が社説で、尖閣諸島を日本領と認める記述をして
いることがわかったのです。これは、ニューヨークに本部を置く
報道社「大紀元グループ」のサイトに掲載されています。
 1950年から1960年という年代は、東西冷戦が過熱する
なかで、沖縄は米国の施政権下に置かれていたのですが、沖縄基
地は、ソ連や中国、北朝鮮などの東側諸国に対しての抑止力を持
つ軍事基地であり、フィリピンやタイの基地と並ぶベトナム戦争
の爆撃機拠点および後方支援基地として、重要性を持ちつつあっ
たのです。「人民日報」の社説というのは次の2つです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   ◎『人民日報』/1953年1月 8日付、社説
    「琉球諸島の人民は米国の占有を反対する戦い」
   ◎『人民日報』/1958年3月26日付、社説
    「恥知らずの捏造」
―――――――――――――――――――――――――――――
 「人民日報」の1953年1月8日付の社説で、「琉球諸島は
台湾の東北から九州の西南の間に点在し、尖閣諸島や先島諸島、
大東諸島、沖縄諸島など7組の島からなっている」と書き出し、
そういう琉球諸島を米国は軍事基地に変えようとしていることに
島の人民たちは強く反対していることなどを伝えています。
 これに加えて同社説では、周恩来元総理の発言を次のように伝
えています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 周恩来元総理は1951年8月15日、対日講話条約(米英草
 案)およびサンフランシスコ会議に関する声明文において、琉
 球諸島と小笠原諸島などの地域への管理権を主張する米国を批
 判した。その際、同元総理は、「これらの島々は過去のいかな
 る国際協定において、日本からの離脱を定められていない」と
 述べた。            ──「大紀元」の記事より
―――――――――――――――――――――――――――――
 注目すべきは、周恩来首相の「これらの島々は過去のいかなる
国際協定において、日本からの離脱を定められていない」という
発言です。尖閣諸島を含む琉球諸島は日本のものであることを認
めています。続いて、1958年3月26日の社説です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 米国側は中国政府のラジオ放送に成りすまして、中国外交部の
 公式見解として、「中国は琉球諸島への主権を絶対に放棄しな
 い」という「デマの情報」を広げている、と同紙は報じ、「こ
 れは悪意たっぷりの楔打ちだ」、「米国の狙いは、日本への領
 土返還を求める沖縄人民の強い感情に水を差すためだ」と批判
 した。             ──「大紀元」の記事より
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここで注目すべきは、中国外交部が「中国は琉球諸島への主権
を絶対に放棄しないという『デマの情報』を広げていると書いて
おり、それは尖閣諸島を含む沖縄諸島が日本の領土であるという
前提に立って書かれていることです。
 そして、「米国の狙いは、日本への領土返還を求める沖縄人民
の強い感情に水を差すためだ」と、日本に成り変わって米国に怒
りをぶつけています。
 はっきりしていることは、この時点で中国では尖閣諸島はあく
まで日本のものであることを前提として主張しています。昨年の
9月頃からこの記事がネット上に出ると、中国人民から、次のよ
うな書き込みが殺到し、「人民日報」に事実関係の説明を求める
声も上がっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ・昔は米国帝国主義を孤立させるため、我が政府は釣魚島が、
  日本のものと認めていたのではないか
 ・かつては釣魚島を人に渡し、今度は国民を煽って取り戻させ
  ようとしている。国民をバカ扱いか  ──「大紀元」より
―――――――――――――――――――――――――――――
                 ――─ [新中国論/75]

≪画像および関連情報≫
 ●「尖閣諸島が日本領でないという証拠を出せ」/李登輝氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  2012年6月5日、台湾の李登輝元総統が台湾中央大学で
  講演を行った際、尖閣諸島に関する中国本土学生からの質問
  に対し、「日本領でないと言うのなら、証拠はどこにあるの
  か?」と詰め寄り、会場が一時騒然となった。6日付で香港
  ・中国評論新聞社が伝えた。質疑応答で手を挙げた中国本土
  の学生はまず、「両岸(中台)学生は今後どのように発展し
  ていくべきか?」と質問。これに対し、李元総統は「良い関
  係を維持するべき。台湾は中国の一部などと言うべきではな
  い」と回答した。その後、李元総統が台湾メディアで「尖閣
  諸島は日本のもの」と主張していることに触れ、「本当にそ
  う思われているのか、この場を借りて確認したい」と問いか
  けると、「尖閣諸島は漁業をする場所。領土問題は存在しな
  い。だが、君が日本領でないと言うのなら、証拠はどこにあ
  るのか?」と詰め寄り、会場は一気に険悪な雰囲気に。司会
  者が慌てて「時間も時間なので」と質疑応答を終わらせよう
  としたが、学生はさらに食い下がり、「台湾は捨てられた存
  在に思える。誰からも関心を寄せられていない」と応酬。李
  元総統が講演で「台湾は50年間の日本統治時代に日本から
  多大な影響を受け、現代化が進んだ」と話したことに対して
  も、「台湾の現代化は米国の影響、日本は近代化に影響を与
  えただけ」と否定した。会場はさらに緊迫した雰囲気となっ
  たが、李元総統は寛容な態度で「この学生が台湾に学びに来
  ているということは、台湾の歴史に大変興味を持っているの
  だろう」と述べ、台湾の歴史について書いた自身の著書をこ
  の学生に贈ったという。(翻訳・編集/NN)
   http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=61909
  ―――――――――――――――――――――――――――
 ●「大紀元」のサイト
   http://www.epochtimes.jp/jp/2012/09/html/d97871.html

1953年1月8日付「人民日報」社説.jpg
1953年1月8日付「人民日報」社説

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2013年06月28日

●「中国が米国を追い抜く日は来ない」(EJ第3578号)

 昨年11月にOECDが発表した2060年までの長期予測に
おいて、早ければ2016年に中国が米国を抜いて、GDP世界
第1位になると予測しています。本当にそうなるでしょうか。
 これに関して興味深い話があるのです。中国当局の統計による
と、2013年1〜4月の輸出は前年同月比17.4 %増、輸入
は10.6 %増となかなか好調だったのです。
 ところが、この輸出の好調は偽装輸出による水増しの疑惑が指
摘され、中国国家外為管理局は、5月から偽装輸出を取り締まる
と発表したのです。そういう前提で、ブルームバーク・ニュース
が34人のエコノミストの予測の集計をしたところ、5月の中国
の輸出については次の予測値が出たのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
        輸出前年同月比 7.1 %増
        輸入前年同月比 6.9 %増
―――――――――――――――――――――――――――――
 ところがエコノミストたちの予想は大きく外れ、5月の輸出は
前年同月比1%増であったのです。どうしてそんなに外れたので
しょうか。
 エコノミストの予測のべースになるのは、過去のデータであり
それに最新の経済情報を加味して予測するのです。ところが中国
の場合、過去のデータがデタラメなのです。デタラメのデータを
ベースに予測しても正しい予測値が得られるはずがないのです。
 これについて、勝又寿良氏──『東洋経済』の経済記者として
30年の経験を持ち、大学教授を16年勤めた経済の専門家は、
自身のブログで次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 さらに遡れば中国の過去の輸出統計も同じ手口で改ざんされて
 いたという驚くべき事実に突き当たる。中国のこれまでのGD
 P統計すべてが、誤魔化しの「ゲタを履いていた」ことになる
 のだ。はっきり言えば、嘘で塗り固められた「中国経済統計」
 である。こうした嘘のGDP統計で、日本を追い抜いたとか、
 米国を将来追い抜けるなどと豪語してきたのである。そのこと
 が、いかに虚しいことであったか。中国社会特有の「メンツ」
 「見栄」が、こうした「嘘統計」の背後に存在する事実が、浮
 かび上がってくる。いくら「厚顔」の中国政府といえども、何
 らかの釈明があって当然であろう。「嘘」が露見した以上、こ
 れを糺さなければならないが、すでに中国の金融市場で短期資
 金の逼迫化をもたらしている。短期金利の急騰を招き、中国経
 済に予想外の混乱を招いているのだ。
     ──「勝又寿良の経済時評」/2013年6月24日
   http://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/page-1.html#main
―――――――――――――――――――――――――――――
 中国の経済データ──とくにGDPデータがデタラメなのは事
実です。それについて、李克強首相自身が遼寧省書記をしていた
2007年に「中国のGDPデータは参考程度」と明言している
のだから、これほど確かなことはないのです。
 それなのにIMFなどの国際機関をはじめ、米国をはじめとす
る先進諸国も、中国の発表するデータを額面通りに受け取ってい
ます。データを精査すれば、多くの矛盾が容易に発見できるのに
誰も疑問を投げかけていないのです。
 日本は2010年のGDP統計で中国に経済大国世界第2位の
座を奪われましたが、その3年ほど前から、GDP統計には人為
的な操作が疑われるのです。明らかに2010年に日本を抜くと
いう意図の下に、統計を操作していたものと思われます。
 問題なのは、そうして膨らませたGDPのかなりの割合を軍事
費に投入していることです。したがって、中国の軍備は最近近代
化され、他国に大きな脅威を与えつつあります。米国の軍備増強
は歓迎されるのに、中国のそれは脅威を感じる──中国の指導者
は考えるべきです。
 今回のテーマを調べるに当って、中国について書かれた多くの
本を読みましたが、中国の将来予測については、次の2つの結論
があります。意見が2極分化しているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.中国は今後ますます発展し、世界最大の経済大国になる
 2.中国の前途は厳しく、20年以内に世界の最貧国になる
―――――――――――――――――――――――――――――
 上記2つの意見では、「1」の意見が圧倒的に多いのですが、
最近になって「2」の立場に立って発言する人も増えてきていま
す。実際に中国は抜本的な政治改革をやらないと、「2」になる
可能性が十分あります。「2」については、クリントン米前国務
長官が明言しています。本当に最貧国になるかどうかは別として
「中国がGDPで米国を追い抜く日は来ない」ということはいえ
ると思います。
 これについて、現代中国研究家の津上俊哉氏は、自著で中国の
現体制や経済の情勢を分析し、結論づけていますが、米国の優位
性についても、次のようにその判断に加えています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 他の国と比べて米国には少なくとも以下のような強みがある。
 第一は、何といっても「市場経済本位」の国であり、労働、資
 本移動など、他の国なら時間のかかる構造調整が速いことだ。
 第二は、少子高齢化の影響を受けない唯一の先進国であること
 だ。米国自身は「今後は人口ボーナスがなくなる」と不安を訴
 えているが、東アジアからみれば、人口オーナスで急ブレーキ
 がかからないだけでも「御の字」だろう。第三は、基軸通貨国
 の強みを持つことだ。いまは世界中が量的緩和で足並みを揃え
 ているようなものだが、これも米国の先行があってこそ。基軸
 通貨国でない国は、ひとり金融緩和をすることに大きな不安を
 感ずるものだろう。
  ──津上俊哉著「中国台頭の終焉」/日経プレミアシリーズ
―――――――――――――――――――――――――――――
             ――─ [新中国論/76/最終回]

≪画像および関連情報≫
 ●「人口ボーナス」/「人口オーナス」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  人口ボーナス・オーナスという考え方は、従属人口指数とい
  う概念を使って説明するのが便利です。人口は「生産年齢人
  口」と「従属人口」に分かれます。生産年齢人口は、15歳
  から64歳であり、この年齢層の人々が働いて経済社会を支
  えると考えます。「従属人口」は15歳以下の「年少人口」
  と65歳以上の「老年人口」の合計です。いわば生産年齢人
  口の人々に「支えられている」人口に当たります。この従属
  人口を生産年齢人口で割ったものが「従属人口指数」です。
  さて、「人口ボーナス」というのは、人口の動きが経済にプ
  ラスに作用する状態を示す言葉であり、従属人口指数が低下
  している局面がこれに当たります。従属人口指数が低下する
  と、人口全体の中で働く人の割合が高くなり、経済には追い
  風の状態になります。逆に、従属人口指数が上昇するのが、
  「人口オーナス」です。オーナスというのは「重荷」という
  意味です。従属人口指数が上昇すると、人口の中で働く人の
  割合が小さくなり、経済には逆風になります。4人家族で4
  人働いていたのが、親世代が引退して、働き手が、3人、2
  人と減っていくと、家計が苦しくなる(一人当たり所得が減
  る)のと同じです。この人口ボーナスと人口オーナスは「人
  口ボーナス状態がやがて人口オーナス状態になる」という具
  合に連続して現れることになります。
      http://www.xhotzone.net/vh/y10/vh10091602.php
  ―――――――――――――――――――――――――――

現代中国研究家/津上俊哉氏.jpg
現代中国研究家/津上俊哉氏
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