最大級のダムがあります。ダムの目的は水力発電と洪水予防です
が、現在このダムは、汚水のたまり場と化しています。
その原因を作ったのは、不法投棄と汚水の垂れ流しです。不当
投棄については、次のように枚挙にいとまがないのです。
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2010年3月/山東省済寧市の河川に死産や堕胎による胎児
・乳児の遺体21体が発見
2013年3月/黄浦江上流で、不法投棄したとみられる約1
万頭ものブタの死骸を発見
2013年4月/江西省鷹潭市の河川に業者が投棄したと考え
られる鶏の死骸が大量漂着
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これら3つの不法投棄は、ごく特徴的なものだけを集めたので
あり、工場排水や生活排水の河川やダムへの垂れ流しは日常茶飯
事のように行われています。とくに今年4月の鶏の大量投棄につ
いては、鳥インフルエンザ(H7N9型)に関係していることは
確実なので、絶対にやってはならないことです。
三峡ダムのひどさについては、中国に詳しい宮崎正弘氏は次の
ように述べています。
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三峡ダムは「巨大な汚水の肥溜め」と呼ばれている。共産党政
権による建設工事の強行で、ダム自体が多くの汚染源を抱え込
んでいるのです。ダム建設時に水没した土地には、工場や農場
養豚場などが少なくありませんでした。中国政府はこうした施
設の廃棄物や化学薬品、農薬などを放置したまま、住民を立ち
退かせて強引に注水。結果、完成したダム湖の水には廃棄物や
有害物質が混合し、ひどく汚染されているのです。現地の工場
の公害対策はお粗末というより他ありません。ポリエチレンや
塩化ビニールを製造する際の廃水をはじめ、化学工場からはベ
ンゼンが、電池工場からは液漏れした内容物が長江に漏れ続け
ています。人口3000万人の重慶市の生活排水も、そのまま
垂れ流し状態です。 ──「週刊新潮」6/20
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山東省の利民村は、化学工場や製糸工場を誘致してからという
もの、がんを発症する村民が急増して「がん村」といわれるよう
になったのです。
中国の現地紙「新京報」の今年の2月24日の記事によると、
こういう「がん村」は中国全土に200か所以上あると指摘して
います。この「がん村」の存在は国営テレビCCTVでも特集を
組んで伝えていますが、中央政府は本格的に改善に乗り出そうと
はしていないのです。
中国では、河川の汚染レベルを分類する「地表水の環境基準」
が定められています。水源水に当るI類から、農業用水に当るV
類までの5つに分けられています。
2008年に中国の水利部が公表したデータによると、中国の
主要河川の約20%が、生活用水はおろか、農業・工業用水にも
使えない水質であり、V類を超えるので、「劣V類」と呼ばれて
います。このレベルになると、いかなる使い道もないのです。そ
して、深刻なことはその割合が年々増加していることです。
日本では、工業廃水を24時間体制でチェックしていますが、
中国では年に1度役人が来ればよい方であるといいます。
この中国河川の汚染は、日本にも影響を及ぼしつつあります。
水質汚染が深刻な「三河」といわれる海河、准河、遼河のうち、
とくに海河と准河は日本に影響があるのです。
海河は、北京や天津という大都市を流れる河川ですが、流域の
半分以上が汚染レベルは劣悪で「劣V類」の河川なのです。この
海河の水を使って落花生や小麦の栽培を行っており、日本にも輸
出されているのです。
同様に流域の20%が「劣V類」とされる准河周辺では、米の
水稲栽培が盛んであり、日本にも多くの米が輸出されています。
日本へ輸出される米は「せんべい」などの菓子の原料として多く
使われており、そういう意味で格安のせんべい類は、その産地を
確かめて買う必要があると思います。
米国のある食品会社が「チャイナフリー」という言葉を使って
当社の食品には一切中国製品を使っていないことをPRしていま
す。皮肉なことにこれに一番納得しているのは、中国人だといわ
れています。中国人自身が一番身の危険を感じているからです。
水が安心して使えないのでは、命に関わる問題だからです。
中国の中央政府は地方政府をきちんとコントロールできないよ
うです。そのため、環境汚染対策が野放しになり、あれほどの広
大な地域を有しながら、だんだん住める地域が少なくなりつつあ
ります。これについて、宮崎正弘氏は次のように述べています。
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水不足と水質汚染のため、中国は毎年、宮崎県と同等の面積が
砂漠化しています。加えてマンション建設により、アメリカの
ウエストバージニア州と同じ規模の農地が消滅しています。そ
うした状況に嫌気が差して、中国の農民はアフリカに、富裕層
や政府高官は欧米への移住が急増している。少なからぬ国民が
環境汚染の深刻さから国土に見切りをつけているのです。たと
え中国の一党独裁体制が滅びても、環境汚染が改善される日は
来ないでしょう。 ──「週刊新潮」6/20
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強力な指導者の下で、13億人の中国人がいま取り組むべきは
中国をかつての五穀豊穣をもたらす大地や河川の国に戻すために
全力を尽くすことです。南シナ海の諸島や東シナ海の尖閣諸島に
領有権を主張して、軍備を拡張すべきときではないのです。
もはや水質については、1000年は復活不可能で、このまま
では、中国は無人悪臭の荒野になるだけです。中国人の多くはそ
のことに気が付いています。だから、いつも国から逃げ出す機会
を窺っているのです。 ――─ [新中国論/71]
≪画像および関連情報≫
●大気汚染、土壌汚染、水汚染/中国で何が起きているか
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2013年4月2日付の中国紙、21世紀経済報道によると
中国で2010年に大気汚染が原因で健康を損ない死亡した
人は123万4千人で、中国全体の死者の約15%を占めた
といいます。驚くべき数字です。まあ、こうした数字は「推
測」に基づくものですから、実際をどれだけ反映しているか
はよくわかりません。しかし、中国における大気汚染は深刻
であることは間違いないようです。微小粒子状物質「PM2
・5」などの汚染物質が人々の健康に大きな悪影響をもたら
していることは容易に推察できます。本格的な健康被害のレ
ベルにまできているといえます。大気汚染が注目されていま
すが、私は土壌汚染、そして水汚染の方がさらにやっかいな
ものだと思っています。とくに水汚染が与える影響は深刻で
す。水は人間が生きていくうえで欠かせないものですし、産
業においても必須のものです。飲み水も問題です。中国はか
なり地下水に依存しています。その地下水が汚染されると浄
化には非常に長い年月が必要になります。多くの人が飲み水
として活用している地下水が汚れていれば、当然、大きな健
康被害が出ます。飲み水だけではありません。農業にも畜産
業にも水は不可欠です。その水が汚染されていれば、育った
農作物は当然汚染されているといえます。また家畜もその汚
れた水を飲んで育っていますから、有害物質が蓄積されてい
る可能性もあります。水汚染に加えて、水不足も追い打ちを
かけます。工業の発展にも影響を与える可能性が出てきてい
ます。 ──児玉克哉三重大学教授
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kodamakatsuya/20130403-00024214/
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