間の送信数は約250回ですから、1テーマにつき63回という
ことになります。
「長くて、重たい」という意見を何人もの方からいただいてい
るので、2013年度のEJは、20回、30回という短いテー
マも取り上げていくつもりです。
中国脅威論が高まっています。中国経済がこのまま成長を続け
たら、経済力においてはもちろん、軍事力においても米国とのパ
ワーバランスが逆転し、日本にとって深刻な事態を引き起こすこ
とが懸念されています。
尖閣問題については、現状では自衛隊は中国にけっして劣るこ
とはないという分析もご紹介しましたが、今後5年後、10年後
になると、中国の軍事力はさらに強大化し、日本は尖閣諸島を防
衛できなくなるという悲観論が拡がっています。
ところがです。2013年3月1日(金)のBSフジプライム
ニュースを見て少し考え方が変わったのです。津上俊哉氏という
現代中国研究家が「中国台頭はもう終わり?」という話をしたの
です。津上俊哉氏は、通産省出身で、中国日本大使館経済部参事
官を務めたこともある現代中国の研究家であり、専門家です。
今まで書店に行くと、多くの中国隆盛論、中国脅威論の本が多
く出ているのに、中国経済の先行きを不安視する本はほとんどな
かったのです。しかし、最近は少しずつ中国の深刻な未来予測の
本が出てきています。
現在の中国の隆盛は、何といっても7%を大きく超える経済の
活況にあります。2012年の実質経済成長率は「7.8%」に
なっていますが、津上氏によると、この数字の信憑性は低いとい
われます。これについては後で詳しく述べますが、中国という国
家が世界に発表している経済に関する数字は信用できないといわ
れているのです。数字が操作されているということです。
そういうことをいう人が増えたのは、習近平政権で首相を務め
る李克強氏が、駐中国米国大使に「中国のGDP統計は作為的で
信用できない」といったという情報が、ウィキリークスで暴露さ
れたからです。
それからもうひとつ気になるのは、第2期のオバマ政権の中国
寄りの姿勢です。2月に行われた日米首脳会談でオバマ大統領は
異常なほど尖閣諸島をめぐる日本と中国のトラブルを懸念してい
たといわれます。
オバマ大統領は当初安倍首相を警戒していたようです。選挙前
後の発言から、安倍氏を右寄りの政治家ではないかと判断してい
たようです。そのため、1月の日米首脳会談に即座に応じなかっ
たといわれています。中国との間で尖閣沖海戦でも起こされると
米国として対応に苦慮するからでしょうか。
そのせいか、安倍首相はオバマ大統領との会談で、「日本はあ
くまでも中国とは自制的に対応している」と述べたところ、大統
領は安心していたといわれます。
それに加えて米国では、回避できると信じられてきた「財政の
崖」のひとつ、「歳出の強制削減」が実施されることになったの
です。これによって米国の国防費は大幅に減額され、空母の運用
にも大きな影響が出るといわれています。日本の安全保障にも重
要な影響が及ぶことは必至の情勢です。
もともとこの財政の崖、とくに「歳出の強制削減」は、リーマ
ン・ショックへの対応とはいえ、オバマ政権の失政に基づくもの
といわれています。オバマ大統領は、2010年12月にリーマ
ン・ショック後の景気低迷に対応するため、ブッシュ減税を2年
間延長したのです。
しかし、これにより米政府の財政赤字が積み上がり、2011
年5月16日に米連邦債務は法定上限額に到達し、米財務省は、
デフォルト回避のために特別措置を行い、2011年8月2日に
民主・共和両党は政府の歳出を削減する内容を含んだ債務上限引
き上げ法案に合意・可決しているのです。
この法律によって、2013年2月末に米国の財政赤字の総額
が16兆3000億ドルを超えた場合は、自動的に政府の支払い
が停止されることが決まったのです。その結果、強制的に削減さ
れる予算の額は10年間で1兆2000億ドル(約110兆円)
そのうち、国防費は4920億ドル削減されるのです。ちなみに
今年度分は約850億ドル(約7.8兆円)です。
しかし、この取り決めはきわめて政治的なもので、話し合いで
回避できる可能性が十分あったのですが、オバマ大統領はそれに
も失敗し、歳出の強制削減が決まってしまったのです。
それに加えて、2期目のオバマ大統領は「50%大統領」とい
われているのです。それは、2012年の米大統領選でオバマ大
統領は勝利したものの、2008年のときに比べて500万票も
得票数を減らし、多くの重要な州で50%をほんの少し上回るぐ
らいの票しか取れなかったからです。だから、「50%大統領」
といわれるのです。これによってオバマ政権の政権運営に大きな
影響が出るのは避けられない情勢になったのです。それもあって
米政権はますます内向きの政治になりつつあります。
もし、中国がさらに経済で力を伸ばし、軍備拡張が続くと、日
本は苦しい情勢に立たされます。頼みの米国もさまざまな問題を
抱えており、変質しつつあるからです。
したがって日本は、中国と米国の動きには細心の関心を払って
観察し、分析する必要があります。とくに第2期のオバマ政権が
中国とどう向き合うのかについては、さまざまな情報を集め、日
本としての行動を決める必要があります。
そこで、明日からのEJのテーマを次のように設定し、考えて
いきたいと思います。
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中国の台頭は今後も継続・拡大するか
─日米はそれにどう対応すべきか─
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── [新中国論/01]
≪画像および関連情報≫
●中国の経済指標/さまざまなリスクを隠す可能性も
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中国の景気回復は世界市場の上昇を下支えする助けとなって
きた。しかし、実情は公式統計が示すほど好調ではないかも
しれない。同国政府の資料は、過去2年にわたる緩やかな景
気減速を示している。中国国家統計局が発表した中国201
2年の国内総生産(GDP)成長率は7.8%となり、10
年の10.4%から減速したが、同年の公式目標の7.5%
を上回った。しかし、スタンダード・チャータードの中国エ
コノミスト、スティーブン・グリーン氏は、これらの統計で
はインフレが過小評価されており、その結果実際の成長率が
過大評価されている可能性があると指摘した。グリーン氏は
家賃や医療および教育などのサービス価格の上昇をよりよく
反映する別のインフレ指数を利用した上で、12年のGDP
成長率は5.5%にとどまると算出している。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324838304578326651468588948.html
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日米首脳会談/安倍・オバマ