2020年09月09日

●「米軍による限定軍事衝突はあるか」(EJ第5326号)

 米国の中国への圧力がエスカレートしつつあります。2018
年と2019年のペンス副大統領の対中国演説と、2020年の
4人のトランプ政権高官による連続演説は、まさにそれを表して
いるといえます。さらにこれは、11月に実施される大統領選と
も関係があるのです。
 「トランプ大統領の大統領選挙向けのパフォーマンス」という
意見もありますが、そのような低レベルのものではないのです。
トランプ政権としては、大統領選敗北も視野に入れて、「現政権
のうちに、対中国封じ込めを政権交代でも後戻りできない段階ま
で進めるべき」という考え方に立って動いているようです。
 7月26日付、米紙ウォールストリート・ジャーナルは、社説
において、このポンペオ演説を評価し、その解釈について、次の
ように中国に警告しています。
─────────────────────────────
 社説は「懸念されるのは中国が米政権の新たな対中姿勢を「大
統領選対策だ」と切り捨ててしまうことだ」とし、それは中国に
とって「過ちとなる」と警告する。中国の問題行動に対処すべき
だという認識は、米国内の超党派で共有されているからだ。米有
識者の間では、11月の大統領選で民主党のバイデン前副大統領
が勝利したとしても、現政権の対中強硬姿勢をおおむね継承する
との見方も少なくない。       https://bit.ly/3jP5MBZ
─────────────────────────────
 中国という国は、自前の国際法の勝手な解釈に基づいて、他国
が実効支配している領土を軍事力にものをいわせてで平然と強奪
しようとします。日本の尖閣諸島もその危険に晒されています。
 米国のオバマ政権は、中国が領有権を主張する南シナ海の複数
の岩礁の軍事基地化が進むのを座視し、何の手も打たず、それを
許した重大な責任があります。いくら口では批判しても、行動が
伴わなければ何もならないからです。中国は、力によって現状を
変えることを躊躇わないのです。
 ところで、現在南イシナ海の岩礁がどうなっているのかについ
て、われわれはどのくらい理解しているでしょうか。これについ
て、正確な知識を持つ必要があります。そうすることによって、
尖閣諸島をどう守るべきかわかります。
 南シナ海には、無数の岩礁がありますが、その岩礁を中国が埋
め立てて、人工島にしたのは、次の7つの礁です。
─────────────────────────────
      ◎ 1.ファアリークロス礁/3125メートル
        2.ジョンソンサウス礁
        3.   クアテロン礁
        4.    ヒューズ礁
        5.     ガベン礁
      ◎ 6.     スービ礁/3000メートル
      ◎ 7.   ミスチーフ礁/3125メートル
             ──◎印=3000級の滑走路装備
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 これら7つの人工島のうち、島の大きさは、ズービ礁、ミスチ
ーフ礁、ファイアリークロス礁の順で、ビッグ3といわれていま
す。これら3つの人工島には、ミサイル発射台、3000メート
ル級滑走路、広大な格納庫、人工衛星や外国の軍事活動・通信を
追跡できる設備などを備えています。
 最大の問題は、「国際的に違法だ」と口では激しく中国を批判
するものの、中国にそれらの岩礁を埋め立てし、ここにいたるま
で軍事化させた米民主党の責任です。これに関して、ポンペオ米
国務長官は、中国に対して次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国の南シナ海における権益主張は完全に違法なものであり、
世界は南シナ海を中国の“海洋帝国”とは決して認めない。
                  ──ポンペオ米国務長官
─────────────────────────────
 ここで重要なことは、これらの人工島には、民間人がいないこ
とです。なぜ、それが重要なのかについて、軍事社会学者の北村
淳氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 もともとは暗礁とも言える無人の環礁を埋め立てて造り出され
た7つの人工島には、当然のことながら住民は存在せず、軍事施
設をはじめとする人工島基地群建設関係者や施設運用者だけが滞
在している。したがって軍事拠点として本格稼働すると、7つの
人工島には原則、軍関係者だけが滞在していることになる。
 そうした状況は、中国人民解放軍にとっては都合が悪く、中国
の人工島に異を唱える米軍には都合が良い。というのは、軍関係
者だけがいる純然たる軍事施設としての人工島ならば、長射程ミ
サイルや精密誘導爆弾、それに強力な地中貫通爆弾などを撃ち込
むことで完全に破壊してしまうことが可能だからだ。
                  https://bit.ly/2EWc8kk ─────────────────────────────
 この「民間人がいないこと」は、重要な意味をもっています。
実際に米軍は、トマホークを3、4発命中させれば、例えば、ミ
スチーフ礁の軍事機能などは完全に破壊できると考えています。
何しろ砂を積んで固めただけの人工島ですから、待避壕などの地
下組織をつくることができないからです。トマホークミサイルの
攻撃と、B52戦闘による爆弾の集中投下で、人工島は一瞬で破
壊できるのは確かです。
 問題は、中国がどこまで反撃してくるかの米国の見極めです。
中国も、この段階での全面戦争は望まないし、それは米国も同様
です。今の段階なら中国は米国には勝てないからです。中国が7
つの人工島建設に投じた費用と、米国の空母「ロナルド・レーガ
ン」の建造費は、ともに200億ドル(約1兆1億円)といわれ
ます。軍事衝突は起きるかもしれませんが、全面戦争にはならな
いと考えます。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/070]

≪画像および関連情報≫
 ●人工島の軍事拠点化ほぼ完成──-南シナ海、米中衝突のシ
  ナリオ/小原凡司氏
  ───────────────────────────
   米国が中国を信用しないのと同様に、中国も米国を信用し
  ていない。同年10月に実施された「航行の自由」作戦は、
  中国にやはり米国は信用できないと思わせるものであった。
  中国は、自らが南沙諸島を軍事拠点化するのは、米国が軍事
  挑発を繰り返し地域の平和を脅かすからだと言う。
   中国は、2016年1月に、ファイアリー・クロス礁に建
  設した滑走路に、借り上げた民間機を用いて離発着試験を行
  い、続く4月には急患輸送を理由に軍用機を着陸させた。中
  国は、南シナ海における人工島に建設した施設を軍事的に利
  用する意図をこの時点で明確にしたのだ。
   中国は、南シナ海の人工島に軍事施設を建設するのは「必
  要な防衛施設の建設」であって「軍事化だと非難するのは間
  違っている」と主張する。中国のこのような理屈は、日米に
  は意味不明である。国際法に従わず、国家間の約束も守らな
  い中国は、単なる無法者に思える。しかし、全ての国家が国
  際法や条約その他の国際的な約束を守ることを前提とするの
  は、ユートピアニズムに陥っている証拠である。現実には、
  自己の生存が国際的な約束に優先される。
   特に、権威主義的な国家における「国家の生存」は「統治
  体制の生存」を意味し、レジーム・チェンジ(統治体制の転
  換)に関わると考える安全保障の問題に敏感に反応する
                  https://bit.ly/2ZcTYl4
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南シナ海の岩礁群.jpg
南シナ海の岩礁群
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2020年09月10日

●「オーストラリア中国化を脱出する」(EJ第5327号)

 テレビでも報道されましたが、2020年9月9日付の日本経
済新聞に次の記事が出ています。
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◎中国が聴取/豪記者帰国/2人、別の豪女性拘束めぐり
 【ジャカルタ=地曳航也】オーストラリア外務貿易省は8日、
中国に駐在していた豪国籍記者2人が、同日に帰国したと発表し
た。豪メディアによると、中国当局は拘束している別の豪国籍女
性を巡り、事情聴取を求めて出国を禁じていたが、豪政府の支援
で帰国が許された。帰国したのは豪公共放送ABCと、豪紙フィ
ナンシャル・レビューの記者。それぞれ北京と上海に駐在してい
た。3日の深夜、中国当局の係官らが2人の自宅を訪問し「出国
は禁じられている」としたうえで、事情聴取を求めた。
 2人は、その後、豪の在外公館でそれぞれ保護された。両国政
府の交渉の末、中国当局の聴取を受けた後の帰国が許されたとい
う。2人は中国が別に拘束する女性司会者のチェン・レイ氏につ
いて質問を受けたという。
        ──2020年9月9日付、日本経済新聞より
─────────────────────────────
 現在、オーストラリアと中国の関係は、きわめて悪化していま
す。中国の国営放送局・中国環球電視網(CGTN)の司会者、
オーストラリア国籍を持つチェン・レイ氏は、8月に入って中国
当局に拘束され、その件で、中国に駐在していた豪国籍記者2人
が取り調べを受けたのです。
 オーストラリアの現政権は、スコット・モリソン政権であり、
反中国の姿勢を明確にしていますが、その以前の政権のときは中
国に取り込まれ、オーストラリアの中国化が進んでいました。
 中国は、カネ、移民、留学生、スパイ、サイバー・スパイ、盗
聴、ハニートラップなどのあらゆる手段で、オーストラリアの政
界、財界、マスコミを籠絡し、オーストラリアを紅く染め上げて
いたのです。オーストラリアはすんでのことで、中国の一部にな
りかけていたともいえます。日本においても中国のさまざまな工
作は着々と進んでいます。
 2018年に、この中国によるオーストラリアの食い荒らしの
黒い手口を暴いた本が発刊されています。当時は、親中国色の強
いターンブル政権の時代であり、内容が内容だけに、当然スムー
ズには発刊できなかったのです。
─────────────────────────────
   クライブ・ハミルトン著/山岡鉄秀監訳/奥山真司翻訳
    『目に見えぬ侵略/中国のオーストラリア支配計画』
                  2020年5月29日
                       飛鳥新社刊
─────────────────────────────
 この本は、あまりにも衝撃的な内容であるので、オーストラリ
アでは3回も出版禁止になっています。日本語版が発刊されたの
は、今年の5月29日のことです。
 クライブ・ハミルトン教授は、調査を始めるまで、オーストラ
リアでの中国の浸透工作には、懐疑的であったといいます。しか
し、ある事件をキッカケに調査をはじめて、その実態が見えてき
たのです。この本の翻訳者である地政学者の奥山真司氏は、それ
について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 その事件とは、「ダスティヤリ事件」です。2016年8月、
「将来の労働党党首」との呼び声もあったサム・ダスティヤリ上
院委員が、中国人富豪との癒着問題で辞職します。彼は「南シナ
海での中国の活動は、中国の意思に任せるべき」と発言したり、
労働党の外交担当者が香港を訪問した際、民主活動家らと面会し
ないよう圧力をかけるなど、度を超えた親中姿勢に疑問の声が上
がっていました。(中略)
 そんな彼に政治献金をしていた1人が、黄向墨という中国人富
豪です。本国で不動産業などで財を成した彼は、2011年に、
オーストラリアへ移住したのち、複数の政治家や政党に献金し、
発言力を持つようになりました。
  ──奥山真司著「クライブ・ハミルトン『目に見えぬ侵略』
   豪州を食い荒らした中国の黒い手口」/WiLL/8月号
─────────────────────────────
 ダスティアリ上院議員は、日本に関係することでも発言をして
います。2014年に中国が日本が領有権を主張する東シナ海上
空に防空識別圏を設定したことに対し、日本に対して「反対すべ
きではない」と発言しています。日本からいえば、余計なお世話
です。しかし、人民日報はこのことを評価し、「国際的な親中派
のなかの主要な人物」と賞賛しています。彼は、「議員バッジを
つけた中国のスパイ」といわれていたのです。
 第24代オーストラリア首相のポール・キーティング氏も中国
に買収された1人です。「オーストラリアは同盟国アメリカの従
属国ではないと明確に言うべきだ」と主張し、自分は現実主義者
であり、「中国の台頭には完全な正統性があり、アメリカの戦略
策定者たちに迎合して、それを否定することはできない」と発言
しています。このポール・キーティング元首相は、なぜ親中国か
について、次のようにいっています。
─────────────────────────────
 中国の台頭は止められない。経済の運命は北京が握っており、
中国の規模を考えれば、彼らがアジアを支配すべきだ。この歴史
の流れに乗ってしまうのが最良の選択である。
       ──ポール・キーティング元オーストラリア首相
                   WiLL/8月号より
─────────────────────────────
 日本でも媚中派の二階幹事長に主導された菅政権が誕生しよう
としています。オーストラリアで起きていることは、日本にも当
てはまることであり、厳重な警戒が必要です。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/071]

≪画像および関連情報≫
 ●【有為転変】第135回/中国にモノ言える豪州
  ───────────────────────────
   オーストラリアのモリソン首相が、米国で、世界貿易機関
  (WTO)のルールでは中国はもはや「発展途上国」ではな
  く、「先進国」として重責を果たすよう求めたことが波紋を
  広げている。米トランプ大統領の主張に全面的に賛同した形
  だ。最大の貿易相手国への批判を遠慮してきたオーストラリ
  アが、国際舞台で踏み込んで発言したことにはやや驚いた。
   トランプ大統領は、モリソン首相が自身と同じく大番狂わ
  せで当選した経緯を重ね合わせ、「マルコム(ターンブル前
  首相)は好きだが、スコット(モリソン首相)とは非常に特
  別な関係を築けた」と、モリソン首相を絶賛して見せた。
   またモリソン首相は、シカゴで「中国は既に『新たな先進
  国』であり、貿易で透明性を高め、世界が直面する環境問題
  の責任を担う必要がある」などと述べた。トランプ大統領は
  その翌日、ニューヨークでの国連総会で、中国を批判し、W
  TOは大規模な改革が必要だとする演説を行った。モリソン
  首相と事前に調整したのだろう。さらに、ツイッターでも、
  「長年見過ごされてきた中国による世界貿易の搾取は終わり
  だ」と強調したほか、WTOの制度改革を米通商代表部に指
  示している。米国政府は2019年7月末時点でも、同じ内
  容の声明を発表し、90日以内に進展がなければ、米国は独
  自に優遇処置を取りやめると警告していた。10月末が期限
  ということになる。       https://bit.ly/3bEwxGl
  ───────────────────────────

ダスティヤリ豪元上院議員.jpg
ダスティヤリ豪元上院議員
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2020年09月11日

●「日本でも中国化が進行しつつある」(EJ第5328号)

 9月8日のことです。国民民主党の前原誠司元外相が2010
年に沖縄県尖閣諸島沖で起きた海上保安庁巡視船への中国漁船衝
突事件について、公務執行妨害で逮捕した中国人船長をすぐに釈
放したのは、当時の菅直人首相の強い要請によるものであったと
いう爆弾宣言を行ったのです。
─────────────────────────────
 前原氏によると、菅氏は同年9月18日、国連総会に向けた首
相公邸での訪米勉強会の席上、前原氏ら外務省幹部に対し、「中
国に船長を返せ」と発言した。11月に横浜市でのアジア太平洋
経済協力会議(APEC)首脳会議を控えており、「(菅氏は)
俺のAPECを台無しにするのかという感じだった」と振り返っ
た。この後、前原氏は、仙谷由人官房長官(当時)に「首相の意
向」を伝え、那覇地検は船長を処分保留で釈放。政府は、当時、
「(釈放は)検察独自の判断」「政治介入は一切なかった」と説
明していた。             ──JIJI.COM
                  https://bit.ly/2R7S54G ─────────────────────────────
 当時、国のトップである菅直人首相は、もし日本が中国人船長
を釈放しないと、日本が議長国を務めるAPECに当時の中国の
胡錦濤主席が来てくれないとうろたえ、前原外相(当時)に「釈
放しろ」と命令し、慌てて船長を釈放したのです。しかも、それ
は自らの判断であるといわず、那覇地検のせいにしたのです。何
という愚かで、浅はかで、卑怯な判断でしょうか。このように日
本もオーストラリアのように着々と中国化が進んでいるのです。
 これについて、国家基本問題研究所主任研究員の湯浅博氏は、
当時のオーストラリアのように、日本の経済人も中国寄りの人が
多いとして、次のように述べています。
─────────────────────────────
 ハミルトン氏に言わせると、財界エリートたちは無意識のうち
に外国の主人に忠誠を尽くす行動をとることになり、「オースト
ラリアの主権を内側から侵食している」ようだ。それは日本の経
済人にもみられる傾向で、彼らは「誰よりも中国を知っている」
と思い込み、政治や価値観の違いを差しはさむことを許さない。
 日本でも、民主党の菅直人政権は、中国にパイプを持つという
理由で、伊藤忠商事相談役の丹羽宇一郎氏を駐北京日本犬使に任
命している。政府内で対中政府開発援助(ODA)に厳しい声が
上がっているなか、丹羽大使は逆にODA増額の具申を本省にし
て批判を受けるなど、在任中の発言にも疑問の声が相次いだ。
         ──国家基本問題研究所主任研究員湯浅博氏
              『月刊Haneda』 /10月秋桜号
─────────────────────────────
 中国共産党の「属国化戦略」は、実に巧妙なのです。クライブ
・ハミルトン教授の本である『目に見えぬ侵略』は、その手口を
すべて暴いています。そのため、オーストラリアでは、3回も出
版が延期になっているのです。
 オーストラリアの元首相であるスコット・モリソン氏は、財務
長官時代の2016年8月、中国の国営企業が、ニューサウスウ
ェールズ州の配電会社オースグリッドを買収しようとしているの
に気付き、土壇場で回避したのです。もし、この配電会社が中国
の手に落ちると、オーストラリアは政府の意思決定にも影響が出
るところだったのです。
 すんでのことで気が付いたオーストラリアに対して、フィリピ
ンは、中国国有企業に電力を牛耳られています。フィリピン政府
は、2007年に全てのエネルギー網の管理権を中国の国家電網
公司に与えてしまっているからです。この企業一社がフィリピン
全土の配電盤を握っているのです。恐ろしい話です。中国系フィ
リピン人は、全人口の1・5%に過ぎませんが、これらの中国勢
がフィリピン資本の半分を制しているのです。
 日本はどうでしょうか。
 安倍首相の退陣で、菅義偉政権ができることが確実視されてい
ます。その政権で米国が不安視しているのは、その後ろ盾といわ
れる二階俊博幹事長です。この人は「媚中派」と見られているか
らです。二階幹事長といえば、今回のコロナ禍で、とんでもない
ことをやっていますが、日本では、なぜかあまり問題にされてい
ないのです。あるサイトの記事です。内容は真実です。
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 兵庫県、井戸敏三知事だが、兵庫県で備蓄していた120万枚
のマスクのうち100万枚を中国に寄付した。また、東京の小池
百合子都知事は、自民党の二階俊博議員からの要請で、既に送っ
た2万着の防護服に加え、5万〜10万着の防護服を支援すると
発表した。現在、日本ではマスクが不足しており、クルーズ船も
コロナウイルスを封じ込められていない。今後中国の武漢市のよ
うにならないとも限らない状況で、中国に防護服やマスクを大量
に送っている場合なのだろうか?確かに、人道的には支援するこ
とに越したことはないが、危機意識が欠如しているのではないで
しょうか?
 ちなみに、日本の医療機関ではマスク以外にエタノール等の消
毒剤も不足が始まっており、日本の医療機関を優先するほうが大
切であろう。二階俊博議員、小池百合子都知事、井戸敏三知事の
ポケットマネーで購入して支援していただきたいと思う。中国で
は、支援に対して感謝の言葉がSNSで溢れているが・・・
                  https://bit.ly/2ZlEpYw ─────────────────────────────
 その後、日本では、マスク、医療用の防護服の不足で困り果て
ることになります。後先を考えず、国民のために備蓄しておいた
マスクや防護服をほとんど中国に配ってしまう日本は実にお人好
しであるし、日本の政治家にいかに「媚中派」が多いことがこれ
でわかると思います。しかるにその中国のお返しは、尖閣諸島へ
の連日の公船立ち入りです。米国の識者は、日本の新政権を心配
しています。   ──[『コロナ』後の世界の変貌/072]

≪画像および関連情報≫
 ●製紙連会長、当面マスク不足は続くと見解。行政の備蓄マス
  クは中国に送られ、国民は税金払い損
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   2月12日の記者会見で、菅義偉官房長官は国内で品薄状
  態が続くマスクについて、「(国内業者による)24時間生
  産などの態勢強化で、毎週1億枚以上供給できる見通しがで
  きている」と述べていたが、一体何を根拠にそのような発言
  をしたのだろうか。
   共同通信、産経新聞が、日本製紙連合会の矢嶋進会長が、
  20日、都内で行われた定例記者会見で、マスクの供給につ
  いて「(平常に戻るのは)中国でウイルスが収まることにな
  るだろう」と、当面はマスクが手に入りにくい状況が続くと
  の見解を示したことを報じた。
   国内複数の製紙会社が原稿設備でマスクをフル生産し、需
  要に応えるべく努力をしているが、ウイルスは一時的な問題
  で、簡単に設備投資をするわけにもいかないのだという。当
  メディアでも、1月下旬から複数の記事でマスク不足の状況
  を伝えてきたが、1ヶ月が経とうとする現在もなお、店頭に
  マスクが並んでいる様子を見かけることはない。ネットでは
  先週の菅官房長官の発表を受けて、マスクが供給されるのを
  今か今かと待ち望んでいる声も多く上がっていたが、安定的
  に供給される日はまだずっと後のことになりそうだ。
   このような事態に対し、ネットでは安倍政権に対する不満
  の声が高まっている。まず、菅官房長官の発言が事実とは異
  なっていたことで、「政府が何をいっても信用できなくなっ
  ていく」「政府の言っていることは当てにならない」「不正
  隠しのために嘘ばかりつく安倍政府の音はペラペラのマスク
  より軽い」という悲痛な叫びが聞こえる。
                  https://bit.ly/3k4baB8
  ───────────────────────────

二階幹事長.jpg
二階幹事長
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2020年09月14日

●「オーストラリアで起きていること」(EJ第5329号)

 オーストラリアと中国の関係について、その実態をもう少し詳
しく述べることにします。その前提として、オーストラリアにつ
いて知る必要があります。
 オーストラリアは、「オーストラリア連邦」という連邦制です
が、より正確にいうと、政体は「立憲君主制・連邦制」というこ
とになります。国家元首は、イギリス国王・女王、すなわち、エ
リザベス女王が兼務するかたちになっています。次の6つの州と
その他の特別地域に区分され、首都はキャンベラです。
─────────────────────────────
 ≪州≫
  1.ニューサウスウェールズ州   シドニー
  2.ビクトリア州         メルボルン
  3.クイーンズランド州      ブリスベン
  4.南オーストラリア州      アデレード
  5.西オーストラリア州      パース
  6.タスマニア州         ホパート
 ≪特別地域≫
  7.首都特別地域         キャンベラ
  8.北部準州           ダーウィン
                  https://bit.ly/3k6rUYK ─────────────────────────────
 それぞれの州には知事がいますが、州知事は「首相」と呼ばれ
ています。そしてオーストラリア全体を仕切る首相(連邦首相)
がいます。現在は、スコット・モリソン氏が連邦首相です。
 世界中にいる中国人を「華僑」といいますが、中国共産党は、
たとえ外国籍を取得していても、それらの在外華僑を中国政府の
目的のために動員する戦略を2000年からとっています。これ
を「僑務工作」といいます。
 中国共産党は、ターゲットを州知事の首相に絞って入念な工作
を仕掛けてきています。そのターゲットにされた1人がメルボル
ンを擁するビクトリア州のダニエル・アンドリューズ知事です。
このアンドリューズ知事は、こともあろうに独断で中国の進める
一帯一路プロジェクトに加盟しようとしているのです。
 2018年に連邦政府の外務省から「連邦政府の方針と合致し
ない」といわれているにもかかわらず、既に基本合意を交わして
しまっています。2019年10月には、さらに詳細な覚書にも
署名し、2020年6月に最終的合意書を交換する予定だったの
ですが、コロナの関係で止まっています。
 アンドリューズ知事は、労働党に所属していますが、その労働
党内部からも反対の声が上がっているにもかかわらず、聞く耳を
持たないのです。これについて、米国のポンペオ国務長官は、次
のように懸念を表明しています。
─────────────────────────────
 もしこれにより、通信分野で米国に害を及ぼすことがあれば、
米国は重要情報共有において、オーストラリアをシャットアウト
することになり得る。        ──ポンペオ米国務長官
                  https://bit.ly/2FlORbB ─────────────────────────────
 これに関して、アンドリューズ知事は、次のように強く反論し
ています。
─────────────────────────────
 これはビクトリア州の経済と雇用に寄与するもので、ビクトリ
ア州民のためにやっていることだ。中国とすべてにおいて合意す
るものではない。たとえば、香港に関しては連邦政府と同意見で
ある。しかし、ビクトリア州のためになることをやるのはいいこ
とだ。          ──ダニエル・アンドリューズ知事
              『月刊Haneda』 /セレクション
─────────────────────────────
 「一帯一路計画」がビクトリア州で発動すると、一体何が起き
るのかについて考えてみます。
 まず、中国の巨額の融資によって、大規模なインフラの開発が
行われます。しかし、この工事を実施するのは、中国企業であり
多くの中国人労働者が投入されます。その多くはそのままビクト
リア州に住みついてしまいます。これも中国のひとつの狙いなの
です。中国村が出来ると、やがて政治を左右し、ますますオース
トラリアは中国に傾斜せざるを得なくなります。
 ビクトリア州のオートスラリアの企業に関しては、一帯一路関
連事業の第三国の仕事が優先的に割り振られるので、仕事は増え
るはずです。通常であれば、わざわざ中国から労働者をオースト
ラリアに連れてこず、ビクトリア州の企業を使ってインフラ開発
をやるべきですが、そういうことはけっしてしないのです。ここ
が中国のズルイところです。すべてを中国が握っている方が何か
と都合が良いからです。
 問題は、インフラ開発に要する巨額の費用の返済です。もし、
返済ができなくなると(そうさせるのが中国の狙いですが)、そ
のインフラをカタに取られ、中国が最初から狙っている港などを
強制的に99年間中国が借り受ける契約にサインさせられること
になります。いわゆる「債務の罠」です。そういう例は、枚挙に
にいとまがないことです。スリランカは、インフラ建設のカタに
ハンバントタ港を事実上失っています。
 それにしても、アンドリューズ知事は、なぜそこまで、中国の
罠に嵌ってしまったのでしょうか。あまりにも、中国寄りに成り
切ってしまっています。これについては、次のレポートが参考に
なります。
─────────────────────────────
           情報戦略アナリスト/山岡鉄秀著
  『「目に見えぬ侵略」で豪、州議会大物が家宅捜査』
              『月刊Haneda』 /セレクション
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/073]

≪画像および関連情報≫
 ●「一帯一路」と中国債務の罠/小原篤次氏
  ───────────────────────────
   ギリシャ危機は、政権交代をきっかけに、国債、つまり国
  の借金を過少申告したことが明るみになって起きた。政権交
  代しても「借金」は引き継がれる。同様のことがスリランカ
  やマレーシアで起きている。
   中国による「債務の罠」として、メディアが注目している
  のが、スリランカ南部の港、ハンバントタ港である。スリラ
  ンカ政府が、中国からの融資を受けて建設した港湾の運営が
  赤字続きで、しかも同政府が返済能力を欠き,返済資金を工
  面するため、2017年末,中国国営企業に運営権を譲渡し
  た。ハンバントタ港は,2015年までスリランカ大統領を
  務めたラジャパクサ氏の出身地、同国南部に、中国の融資で
  空港などとともに建設された。空港は、大統領にちなんで、
  「マッタラ・ラージャパクサ国際空港」となった。中国の政
  策銀行のひとつ中国輸出入銀行からの融資で建設され,施工
  は中国土木大手傘下の中国港湾工程(CHEC)が担った。
   スリランカ政府は2017年末、港湾運営会社の株式の大
  半を中国国有港湾大手の招商局港口に譲渡したうえで,99
  年間におよぶ長期リース契約で11億ドルを回収する計画で
  ある。債務と株式を交換するスキームはデットエクイティス
  ワップと呼ばれる。招商局港口はこれに先駆けて、主力港コ
  ロンビア港のターミナル運営会社の株式の大半を取得してい
  る。              https://bit.ly/32iR4Nx
  ───────────────────────────

ダニエル・アンドリューズ州知事.jpg
ダニエル・アンドリューズ州知事
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2020年09月15日

●「政治に巧みに入り込む女性工作員」(EJ第5330号)

 中国は、世界各国に在住する中国人華僑を利用して、その国を
コントロールしやすい社会に変える「僑務工作」の実験場として
オーストラリアを選んだのです。
 「僑務工作」というのは、華僑の組織を利用し、中国系の人材
を当選させ、あるいは、息のかかった中国系の人材を政府高官に
送り込む仕掛けのことです。なぜ、オーストラリアが実験場に選
ばれたのかというと、オーストラリアには中国の移民がたくさん
いたからです。
 どうしてオーストラリアに中国人の移民が多いかについては、
国家基本問題研究所(理事長:櫻井よしこ氏)主任研究員、湯浅
博氏が次のように説明しています。
─────────────────────────────
 実は、オーストラリアのボブ・ホーク首相(当時)は1989
年の天安門事件で、人民解放軍が学生たちを殺戮する残忍な映像
に衝撃を受け、国内に滞在する中国人の希望者に永住権を与える
決断をした。これにより、4万2000人が永住権を獲得し、の
ちに彼らの近親者1万人が新たな中国系移民になった。
 しかし、留学生とはいえ、実際には語学研修との建前で働きに
来た就労者が多く、民主化とは無縁の人々だった。そこに日をつ
けた北京は、彼らを母国に責献する債務工作のターゲットになる
と判断した。「僑務」のほとんどの活動は、共産党中央委員会の
下にある統一戦線工作部(中央統戦部)により実行され、共産党
が得意とする大衆動員の戦術を駆使する。
         ──国家基本問題研究所主任研究員湯浅博氏
              『月刊Haneda』 /10月秋桜号
─────────────────────────────
 ボブ・ホーク連邦首相は、1983年3月の第1次から、第4
次の1991年12月までの長期間、連邦首相を務めたビクトリ
ア州出身のオーストラリア労働党の大物議員です。
 僑務工作の中国からの工作員は、あらゆる手段を駆使して、政
治家の選挙事務所に潜り込むのです。昨日のEJでご紹介したア
ンドリューズ首相のケースで考えてみることにします。アンドリ
ューズ首相のケースでは、2人の若い中国人女性が深く関わって
います。
 その1人、ナンシー・ヤン氏という中国人女性──2003年
に留学生として来豪し、2006年にメルボルン・チャイニーズ
・ユース・ユナイテッド・アソシエーション(MCYUA)とい
う団体を設立し、2016年まで会長を務めています。この団体
は、中国共産党統一戦線工作部とつながっています。
 このナンシー・ヤン氏は、中国領事館でビザ発給の仕事をしな
がら、あらゆる手段を使って、2013年から、アンドリューズ
首相の事務所のスタッフに潜り込むのです。
 もう1人の中国人女性は、ジーン・ドン氏といい、2015年
に、ACBRIという企業を設立しています。ジーン・ドン氏は
アデレーデ大学で商業を学んだあと、大手会計事務所のPWCに
21歳で就職しています。そして、2011年、24歳のときに
ミス・チャイニーズ・コスモスという中華系女性が美を競うコン
テストで優勝しています。大変な美人なのです。これによって、
ジーン・ドン氏は、オーストラリア大物政治家とコネクションを
重ねて、アドリューズ首相と結びつきます。ここから、彼女は複
数のコンサルタント会社を設立するのですが、そのひとつがAC
BRIというコンサルタント会社です。
─────────────────────────────
   ◎ACBRI
    Australia-China Belt and Road Initiative
─────────────────────────────
 2020年5月、アンドリューズ首相の事務所が、この一帯一
路を推進するコンサルタント会社と契約し、3万6850ドルが
アドバイス料として支払われています。驚くべきことに、ジーン
・ドン氏のアドバイザーには、アンドリュー・ボブ元貿易相(外
相)が名を連ねています。
 このアンドリュー・ボブ元貿易相は、現在、中国企業「嵐橋集
団」に就職していますが、この「嵐橋集団」は、中国に有利な豪
中自由貿易協定を推し進め、ダーウィン港を99年間リースする
契約を勝ち取った企業なのです。
 もちろん、ジーン・ドン氏は、中国共産党の尖兵であり、バッ
クの力でここまで食い込んでいるのです。これについて、情報戦
略アナリストの山岡鉄秀氏は、ジーン・ドン氏について、次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 いかに美人とはいえ、なぜ、ひとりのうら若き女性がここまで
の力を発揮しうるのか。その答えは自明の理だ。彼女は、サイレ
ント・インベージョンの美しき尖兵なのだろう。かくしてチャイ
ナマネーと中華系女性に絡めとられてしまったビクトリア州は、
サイレント・インページョンと戦う豪州の脇腹に突き付けられた
鋭い刃物となつている。
 このように、豪州の2大政党のひとつである労働党は完全に腐
敗し、サイレント・インページョンに深く侵されている。保守政
党である自由党も無傷ではない。中共の浸透工作は、オーストラ
リア市民となった現地の中華系人員を使って、地方から着実に食
い込んでくるのだ。             ──山岡鉄秀著
      「目に見えぬ侵略」で豪、州議会大物が家宅捜査」
              『月刊Haneda』 /10月秋桜号
─────────────────────────────
 このように考えると、どこかの政党が進めようとする道州制に
は大きなリスクがあります。中国共産党が国家を上げて、州を取
りに来た場合、連邦政府はそれを防ぐのは困難であるからです。
中国としては、オーストラリアや日本を米国から引き剥がそうと
しているのです。日本は大丈夫でしょうか。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/074]

≪画像および関連情報≫
 ●「新型コロナの真相調査を!」叫ぶオーストラリアに中国が
  ちらつかせる“制裁”
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、中国とオースト
  ラリアの間に険悪なムードが漂う。新型コロナウイルスの起
  源を調べるための独立調査機関の設立を呼び掛けるオースト
  ラリアに対し、中国は経済的圧力をちらつかせて封じ込めを
  図っているためだ。ただ国際社会では中国の責任を問う声が
  日増しに強まり、包囲網の拡大に中国は危機感を募らせてい
  る。オーストラリアの公共放送ABCによると、ダットン豪
  内相は4月17日のテレビ番組でこう主張した。
   「米国は『新型コロナウイルスに特定の経路あるいは起源
  があることを示す証拠を持っている』と言っている」「何が
  起きたかを正確に理解して再発を防止するためにも、中国に
  はこうした(新型コロナウイルスに関する)疑問に答え、情
  報を提供する義務があると思う」
   さらにペイン外相も19日のABCの番組で「(中国の透
  明性への懸念が)非常に高まっている」と指摘したうえ、発
  生源▽どう対処したか▽世界保健機関(WHO)とどのよう
  なやり取りをしたか――などのすべてをテーブルに乗せて検
  証する必要があると訴えた。これに対し、中国が激しく反発
  した。外務省の耿爽副報道局長は20日の定例記者会見で、
  「ペイン外相の発言は事実に基づくものではない」と反発。
  駐豪大使館報道官は21日にウェブサイト上で「オーストラ
  リアの一部政治家は最近、中国を攻撃する米国側の主張をオ
  ウム返しのように述べている」と皮肉った。
                  https://bit.ly/33mJHE7
  ───────────────────────────

ボブ・ホーク元オーストラリア連邦首相.jpg
ボブ・ホーク元オーストラリア連邦首相
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2020年09月16日

●「日本の中国化は浸透しつつあるか」(EJ第5331号)

 オーストラリアの中国化について述べてきましたが、もちろん
中国は、日本についても同様の工作をやってきています。その工
作の日本での浸透度はどうなのでしょうか。
 2020年7月23日のことですが、米国の有力なシンクタン
クの一つであるCSIS(戦略国際問題研究所)から次のレポー
トが発刊されたのです。
─────────────────────────────
                デヴィン・スチュワート著
 『日本における中国の影響』/China's Influence in Japan
                      ──CSIS
─────────────────────────────
 結論からいうと、中国による日本への工作は、あまり成功して
いるとはいえないというのです。このレポートに関して、情報戦
略アナリストの山岡鉄秀氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 このレポートが話題になったのは、日本における親中派を名指
しで挙げたからだ。特に、自民党の二階幹事長と官邸の今井尚哉
首相補佐官が「二階・今井派」と呼ばれる親中派グループを形成
し、安倍政権の対中政策の軟化に影響力を行使したと、はっきり
書いてあったのは衝撃的だった。(中略)
 その二階幹事長が対中援助であるODAの擁護者であること、
二階派に属する秋元司議員が、精華紫光集団を大株主に持つ「5
00ドット・コム」というオンラインカジノの会社から370万
円の賄賂をもらって逮捕されたことにも触れている。この部分が
集中的に紹介されると、いかにも日本における中国の浸透工作が
相当深いレベルにまで達しているという印象を受ける。しかし、
このレポートの副題が、
 「Everywhere Yet Nowhere in Particular」(そこら中にある
ようでいて、特定の場所はない)とあるように、全体としては日
本に対する中国の浸透工作は成功していないというのが、結論と
なっているのである。
   ──山岡鉄秀の突撃レポート「右から右へ進路を取れ!」
              『月刊Haneda』 /10月秋桜号
─────────────────────────────
 つまり、微妙な言い回しですが、日本では、オーストラリアで
見られるような中国化は起きていないと、デヴィン・スチュワー
ト氏は述べているのです。「東洋経済」のサイトでは、このレポ
ートについて、日本固有の事由と他国でも模倣できる事由がある
として、次のことを上げています。
─────────────────────────────
 ≪日本固有の事由/閉ざされた民主主義≫
  1.中国との長い紛争の歴史で培われた警戒
  2.日本の経済・文化的な孤立
  3.国民の政治的無関心と実質的な単独政党制
  4.厳しく統制されたメディア
 ≪他国も模倣できる事由≫
  1.権力の行政府・官邸への集中
  2.日本自身による対外PR攻勢
  3.戦略分野への投資規制や外国人の政治献金の禁止といっ
    た法整備          https://bit.ly/33kO8PL
─────────────────────────────
 デヴィン・スチュワート氏は、2000年から2002年まで
経済産業省所管の経済産業研究所の副所長特別補佐を務め、デイ
リー読売の記者もしていた日本通ですが、日本を「閉ざされた民
主主義」と極め付けていることは違和感があります。
 もうひとつ、日本が中国に関して警戒心を持つようになったの
は、天安門事件、尖閣問題を含む対日強硬策以来のことで、日中
国交正常化以降は、長期間にわたって友好な関係が続いていたの
です。それは世論調査の数字にもあらわれています。
 日中国交正常化以降、1980年代は、「中国に親しみを感じ
る」は70%前後で推移しており、きわめて良好であったといえ
ます。しかし、1989年6月の天安門事件が起きると、「中国
に親しみを感じる」は大幅に減少し、52%まで大きく下落して
いるのです。
 尖閣問題での中国の攻撃的姿勢が目立ち、中国の反日愛国主義
の高まりで、2010年の調査では「中国に親しみを感じる」は
20%まで下落し、「親しみを感じない」は78%にまで上昇し
現在に至っています。そういう意味で現在日本は、中国に対して
強い警戒心を抱くようになったのは確かです。それは警戒心から
恐れへと変化してきています。
 しかし、日本で中国の工作が、浸透しつつあるものもあるので
す。そのひとつに「孔子学院」があります。米国では、これをス
パイと認定し、各国で閉鎖が相次いでいますが、日本では逆に増
加が続いているのです。
 2005年に立命館大学で第1号がスタートしましたが、20
19年に山梨学院大学で15校目になっています。とくに早稲田
大学では、世界初の研究活動中心の孔子学院を北京大学との提携
で開設し、共同研究も行なっています。その結果、早稲田大学に
学ぶ全留学生の半分以上が中国人になっています。
 仲はけっして悪くないのですが、つねに警戒していることにつ
いて、山岡鉄秀氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 日本人は民族的均一性が高く、民主主義国家といえども比較的
閉ざされた社会であり、かつ、並外れて英語が下手なことが幸い
している。また、歴史的に隣国である中国との付き合いが長く、
「教師」であるとともに脅威でもあり続けたので、常に一定の警
戒感がある。                ──山岡鉄秀氏
              『月刊Haneda』 /10月秋桜号
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/075]

≪画像および関連情報≫
 ●京都新聞社説:日米安保と中国「脅威」の実態を見極めよ
  ───────────────────────────
   これに対抗して、米国は軍艦船を南シナ海や台湾海峡に航
  行させ、インド太平洋地域で潜水艦の動向を公表するなど、
  中国へのけん制を一段と強めた。
   日本周辺では、沖縄県・尖閣諸島周辺で中国海警局の船が
  日本領海に侵入するなど、「平時とはいえない」(日本政府
  関係者)状態が再び続いている。
   日本は、米軍の打撃力に頼ることを前提に、日本施政下の
  武力攻撃への対処を定めた安保条約第5条が尖閣にも適用さ
  れることを繰り返し確認してきた。宮古島などへのミサイル
  部隊配置や共同訓練など、中国を念頭にした自衛隊と米軍と
  の一体化も加速させている。
   すでに集団的自衛権行使を解禁して地理的な制約なしに米
  軍の後方支援を可能にし、宇宙作戦隊創設などで宇宙やサイ
  バーにも協力分野を広げた。その対象は憲法解釈の変更など
  「国のかたち」に関わる部分にまで深く入り込んでいる。中
  国の存在が強大になるほど、米国との一体化はますます強ま
  る。このままでは、米国への依存しか外交上の選択肢がなく
  なることにならないだろうか。安倍晋三首相は、トランプ政
  権との良好な関係を「最大の対中抑止力」と考えているよう
  だ。だが、トランプ氏は安保条約を「不公平」と批判、米軍
  駐留経費などの負担増を求めている。
                  https://bit.ly/2ZuOKS0
  ───────────────────────────


二階幹事長と習近平国家主席.jpg
二階幹事長と習近平国家主席
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2020年09月17日

●「米中衝突の結果中国はどうなるか」(EJ第5332号)

 ここまで見てきたように、米国による中国へのプレッシャーは
厳しくなる一方です。重要なポイントは、トランプ政権は、習近
平国家主席というよりも、中国共産党を問題視しており、誰が国
家主席になっても、中国共産党体制が続く限り、中国は変わらな
いと考えているようです。
 米国からのプレッシャーとコロナ禍の影響は、当然中国の経済
に色濃く出てきています。中国はコロナからいち早く立ち直った
とアナウンスしていますが、7月16日に発表された経済数字を
見ると、第2四半期の消費がマイナス3・1%、上半期の固定資
産投資がマイナス3・1%、輸出がマイナス3・2%──第3四
半期は、これに水害の影響が加わるので、さらにひどい数字にな
ることは確実です。
 しかし、この数字を専門家は誰も信用していません。そもそも
6月30日までの詳細な経済統計が7月16日に発表できるはず
がないのです。なぜなら、中国は国土が日本の26倍もあり、人
口も11倍大きいのです。そんな巨大な国の統計が2週間で出せ
るはずがないからです。
 これらの中国の経済統計数字について、嘉悦大学教授の高橋洋
一氏と、中国に詳しいジャーナリスト、近藤大介氏が次のように
話しています。2人の話には説得力があります。
─────────────────────────────
高橋:財務省にいた者として断言しますが、不可能ですよ。GD
 Pの統計のとり方は世界で決められていますが、中国はそのや
 り方をとっていません。どんな国だって、二週間でできるはず
 がない。
近藤:しかも、国家統計局は、残業もほとんどなく、土日はしっ
 かり休んでいるのですよ。
高橋:じゃあ、なおさら無理ですよ(笑)。そもそも中国は、旧
 ソ連とほぼ同じ統計部署組織を導入しています。本家の旧ソ連
 は70年近く経済統計をごまかしてきましたが、1991年の
 崩壊によって、それまでの経済統計がデタラメだったことが、
 判明しました。ソ連と同じ統計組織を導入して、正確な数字を
 出せるわけがない。社会主義国の統計が当てにならないのは、
 失業率統計をまともに公表していないことがあります。GDP
 と失業率の間には負の相関関係があり、GDPと失業率を観察
 すると、それぞれ統計値が信頼できるかどうかチェックできる
 のですが、社会主義国では正確な失業率統計がないから、経済
 統計を客観的に検証できません。4月に中国の証券会社が失業
率を分析したレポートを発表したら、中国政府からお仕置き〃
を喰らいましたね。
近藤:中国10大証券会社の一つである中泰証券のシンクタンク
 です。4月14日、コロナの感染拡大がもたらした景気悪化で
 も7千万人が失業し、実際の失業率は20・5%前後だとする
 レポートを発表しました。中国当局の公式統計では、調査に基
 づく3月の失業率は5・9%でしたから、かなりのギャップが
 あります。これが当局の逆鱗に触れ、中泰証券のシンクタンク
 はすぐに撤回、トップはクビになってしまいました。
            ── 『月刊Haneda』/10月秋桜号
─────────────────────────────
 上記で分かるように、中国の統計数字は、まったく信用できる
ものではないのです。とにかくこの国は、国際的ルールを守らず
国際法でも何でも、自国の都合の良いように変更して解釈してし
まうところがあります。米国の親中派は、そういう国を国際機関
に加えてしまったのです。豊かになれば、中国は必ず民主主義国
家になるというきわめて希望的観測に基づいて、国際機関入りを
推進してしまいます。しかし、これはとんでもない間違いだった
ことがわかってきています。
 その結果、国連はほとんど中国に乗っ取られつつあります。国
連には15の専門組織がありますが、そのうち、4つの専門機関
の長は、中国人が占めているのです。しかもこの4つのポストへ
の中国人の就任時期は、いずれも習近平氏が国家主席に就任した
2013年以降なのです。その他、国際機関のほとんどが中国に
よって占有されつつありますが、これについては、改めて、詳し
く述べることにします。
 ところで、中国共産党では「反米は仕事、生活はアメリカ」と
いうことがよくいわれるそうです。つまり、表では米国を批判し
ますが、それはあくまで中国共産党の仕事であって、本心では、
アメリカで暮らしたいと考えているのです。
 習近平主席の1人娘の習明択氏もハーバード大学卒業で、米国
にいるときが多いし、他の共産党幹部の多くの子弟が米国に留学
しています。それに、共産党の幹部の多くは、中国国民による暴
動を心の底から恐れていて、中国共産党が将来崩壊することも予
測し、米国をはじめとする西欧諸国に財産を移しているのです。
国を捨てて米国に逃げ出そうとしているわけです。
 米国はそういう中国共産党幹部個人をターゲットとし、制裁を
加えています。これは、米国に財産を保有している共産党幹部に
とっては、相当きつい制裁になります。
 最近の制裁対象者について、ジャーナリストの長谷川幸洋氏は
次のように述べています。
─────────────────────────────
 7月9日、米政府は、中国西部の新疆ウイグル自治区でのイス
ラム教徒に対する人権侵害にかかわったとして、高官である陳全
国書記、新疆公安局の王明山長官、共産党の同自治区幹部の朱海
侖、元公安幹部の霍留軍らを制裁の対象にしたと発表しました。
 この制裁措置により、4人のアメリカ国内の資産は凍結されま
す。さらに8月には、香港の林鄭月蛾行政長官や中国政府の高官
ら11人に対し、アメリカ国内の資産を凍結する制裁を科しまし
た。          ── 『月刊Haneda』/10月秋桜号
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/076]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平も恐れ震える・・・米の経済制裁から始まる「中国崩
  壊」のシナリオ
  ───────────────────────────
   話は制裁される個人だけにとどまらない。彼のローンはも
  ともとHSBCが提供していたが、中国銀行(香港)に移され
  た。HSBCは国家安全維持法を導入した香港当局を支持す
  る姿勢を表明したが、一方で、米政府にも逆らえない。彼と
  の取引を続けていたら、HSBCは、米国に制裁されてしま
  う。そうなったら事実上、国際金融界から追放されたも同然
  になる。
   中国銀行は中国政府の機関のようなものなので、米政府の
  意向を無視できるが、HSBCはそうもいかず、中国と米国
  の間で股割き状態になってしまった。同じようなケースは、
  これから、頻発するだろう。金融機関だけでなくホテルや航
  空会社など、高官が利用しそうな企業は、いずれも「中国を
  とるか、米国をとるか」二者択一を迫られるのだ。
   クレジットカードや住宅ローンより強烈なのは、もちろん
  米国内にある資産凍結、それから米国への入国制限である。
  中国共産党幹部の多くが米国に不動産などの資産を保有して
  いるのは、よく知られている。これらの資産が凍結され、事
  実上米国に没収されたら、彼らは怒り狂うに決まっている。
   もともと米国の不動産を入手したのは、引退後、あるいは
  逃亡した後、米国で暮らすためだ。そのうえ、入国まで制限
  されたら彼らの人生設計は完全に狂ってしまう。
                  https://bit.ly/35zqOk0
  ───────────────────────────

中国評論家/近藤大介氏.jpg
中国評論家/近藤大介氏

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2020年09月18日

●「チェルノブイリの話をする中国人」(EJ第5333号) 

 中国政府が内心一番恐れているのは、実は米国でも欧州でもな
く、自国民であるといわれます。自国民が中国共産党政府に不満
を持ち、暴動を起こし、天安門事件のような騒ぎになることを最
も恐れています。中国の軍隊は「人民解放軍」といいますが、そ
れは他国のように国や国民を守るというよりも、中国共産党とい
う組織を守るために存在しているといわれます。
 その規模は約230万人、国内の治安維持を専門とする準軍事
組織の人民武装警察66万人を合わせた約300万人の武装軍が
中国共産党を常時守っているのです。つまり、この存在こそが、
まともな選挙をせず、独裁を続けられる理由になっています。
 2019年6月30日付の日本経済新聞(電子版)は、中国共
産党の党員について、次のように報道しています。
─────────────────────────────
 【北京=高橋哲史】中国共産党の中央組織部は6月30日、1
日の党創設98周年を前に、2018年末時点の党員数が初めて
9千万人を突破したと明らかにした。ドイツの人口(約8300
万人)を上回る世界最大の政治集団は習近平総書記(国家主席)
を頂点に存在感を増している。
 中央組織部の統計によると、18年末時点の党員数は前年末よ
り103万人多い9059万人だった。国民の16人に1人が党
員という計算になる。うち女性は3割弱の2469万人。学歴別
では大卒以上が3394万人でほぼ半分を占める。
               https://s.nikkei.com/2ZzqGgv ─────────────────────────────
 しかし、中国の人口は約14億人、全国民が立ち上がると、共
産党政権はいっぺんに吹き飛んでしまいます。だから、中国共産
党幹部は、国民の暴動を恐れています。そのため、そういう騒ぎ
が起こらないよう、最先端のAIテクノロジーを使って、極端な
監視社会を築き上げているのです。
 コロナ下でこんな話があります。2月7日のことです。李文亮
医師(眼科医)が亡くなったのです。李文亮医師は12月に「華
南海鮮市場で7名がSARS(重症急性呼吸器症候群)に似た肺
炎に罹り、我々の病院の救急科に隔離されている」という情報を
グループチャットに書き込み、原因不明の肺炎の発生に警鐘を鳴
らしたのです。しかし、警察に呼び出され、逆に処分の対象にな
り、訓戒を受けたのですが、その後、2月7日未明、本人も新型
コロナウイルス感染症で死亡しています。
 3月5日、孫春蘭副首相が新型コロナウイルスの発生地である
湖北省武漢を視察中、騒ぎが起こったのです。怒りは2つあった
のです。1つは感染者に対する武漢市政府関係者の対応のわるさ
です。自宅に隔離をさせながら、マスクなどの衣料品や食料品を
十分配付しないなどへの怒りです。2つは、李文亮医師がせっか
く警戒情報を事前に流したのに、李医師を警察に連行し、訓戒処
分を下したことに対する怒りです。これはSNSで幅広く拡散さ
れ、ソーシャルメディア全体に怒りの炎が広がっていたのです。
 武漢市で肺炎対策の現場指揮を執る孫春蘭副首相が現地を視察
することになって、地元の市政府関係者は慌てて、食料品を各戸
に運び、敷地内のごみをきれいに掃除するなど表面的な対応をし
たのです。住民を甘くみたようです。そして市政府関係者は、孫
春蘭副首相に対して、「住民には食料を毎日配達しており、マス
クなどの日常用品も十分足りています」と、さも地元政府がきめ
細かい配慮をしているかのように説明し、孫副首相を視察に連れ
出したのです。
 ところがとんでもないことが起きたのです。孫春蘭副首相が団
地のような建物を訪れると、武漢の人々は歓迎をするどころか、
バルコニーに出て、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の歌「民衆
の声が聞えるか」を歌い、根本的な政治改革を要求し、孫春蘭副
首相視察の演出をブチ壊したのです。この歌は、政治色の強い歌
で、香港の民主化運動でも盛んに歌われています。
 さらに、住民たちは、「嘘だ。全部嘘」や「役人のパフォーマ
ンスだ」「食料も日常用品も不足して困っている」などの大きな
声が聞こえてきたといいます。物資の供給が満足に行われてない
にもかかわらず、順調であるかのように装って孫氏の視察が行わ
れたことに住民の怒りが爆発したかたちです。
 これによって、3月10日に予定されていた最高指導者である
習近平国家主席が武漢市内の住宅街を視察した際には、副首相の
視察の二の舞いにならないようにと、多数の警官が高層住宅のベ
ランダに立って住民を監視するという、ものものしい警戒ぶりに
なったのです。こうした対応について、ネット上では「武漢市民
は最大の犠牲者なのに、やることが小役人すぎる」などと強い批
判を受けています。
 3月19日、事態を重視した中国政府は、政府最高の監察機関
である国家監察委員会の調査チームが李文亮医師の処遇について
「警察が訓戒書を作ったことは不当であり、法執行の手順も規範
に合っていなかった」との結論に基づき、警察に対し訓戒書の取
り消しと関係者の責任追及などを求めたのです。
 「中国共産党は必ず崩壊する」と主張する弁護士でジャーナリ
スト、ゴールド・チャン氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 いま中国人は「チェルノブイリ」のことをしきりに話題にして
います。1986年にウクライナで起きた原発事故であり、ソ連
崩壊の5年前の出来事です。事故によってソ連政府の失策が次々
と暴露され、ソ連崩壊のきっかけとなりました。
 今回のコロナウイルスによって、それがいまなのか五年後か分
かりませんが、その時は必ず来ます。以前、私が予測した時期は
外れましたが、その兆候はすでにあるのです。中国共産党は必ず
崩壊します。            ──ゴードン・チャン氏
              『月刊Haneda』 /セレクション
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/077]

≪画像および関連情報≫
 ●今頃になって武漢を訪れた習近平の胸の内/3月12日
  ───────────────────────────
   中国の新型コロナ肺炎の感染は徐々に鎮静化に向かってい
  るらしい。1日あたりの新たな感染者は5日連続で50人以
  下にとどまり、中国の人々はおそるおそると、日常を取り戻
  そうとしている。
   そういう中で、習近平国家主席は3月10日、感染発症後
  初めて新型コロナ肺炎の“震源地”である武漢を訪問した。
  さて、武漢市民としては、今頃来やがって!と思うか、よう
  やく来てくださった!と思うか。
   新華社によれば、習近平は3月10日、武漢市の感染拡大
  防止コントロール任務を視察に訪れ、「今回の感染症との戦
  いで、湖北と武漢が重要中の最重要な戦勝の地である」と強
  調。勝利宣言とまではいかなかったが、「艱難辛苦努力を経
  て、湖北と武漢が感染状況を積極的に好転させ、重要な成果
  を獲得した。だがこの任務はまだまだ厳しい戦いが続く」と
  述べ、まるで“俺たちの戦いはまだ続く”といった少年漫画
  の最終回みたいなセリフを決めた。
   それだけでは終わらない。「武漢は英雄都市の名に恥じな
  い。武漢人民は英雄的人民の名に恥じない。この新型肺炎と
  の闘争の勝利を通じて、彼らの名は再び党の歴史書に刻まれ
  るだろう。全党全国各族人民は、みなあなた方に感動し、感
  嘆し、党と人民は武漢人民に感謝するのだ!」
                  https://bit.ly/3iy5uiu
  ──────────────────────────

武漢を視察する習近平国家主席.jpg
武漢を視察する習近平国家主席

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2020年09月23日

●「中国政府が警戒する岸信夫防衛相」(EJ第5334号)

 9月16日に菅義偉政権が誕生しました。今日で1週間が経っ
ていますが、これについて少し書くことにします。閣僚人事につ
いて多くのマスコミが触れていないことがあります。それは、防
衛相の人事についてです。安倍首相の実弟である岸信夫氏が防衛
相に就任しましたが、ネット上に中国に詳しいジャーナリスト、
近藤大介氏の興味深いレポートがあります。中国に関係すること
なので、今回はこれを参考にして述べることにします。
 岸信夫氏は、安倍晋三前首相の実弟ですが、幼少時に母方の実
家に養子として迎えられ、母方の祖父である岸信介の姓を名乗っ
ています。先月、A級戦犯14人が合祀された靖国神社を参拝し
ていますが、これは兄の晋三氏の代りの参拝ということをいう人
もいます。
 岸信夫防衛相の人事について、テレビ朝日のコメンテーターで
ある後藤健次氏は、次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
 安倍氏は、辞任を控えて防衛政策関連の談話を発表するなど意
欲を見せており、菅首相としては、岸氏を防衛相に起用すること
によって、「敵地攻撃能力」など安倍氏が完遂できなかった政策
を最後まで成し遂げるというメッセージを安倍氏に伝えようとし
たのではないか。              ──後藤健次氏
─────────────────────────────
 一方、これは、安倍前首相から米国に対するメッセージという
見方もあります。この人事は、菅首相と安倍氏が予め示し合わせ
た人事ではないかという見方です。そういえば、閣僚人事におい
て、河野防衛相が変わることは、早い時期からアナウンスされて
いたのです。最初から変わることが決まっていたようです。20
17年8月に外相、2年で防衛相に横滑りし、さらに1年で行革
担当相に就任とは、あまりにも慌ただしいです。
 恵泉女学園大学の李泳采(イ・ヨンチェ)教授は、この人事は
米国へのメッセージとして解釈し、次のように述べています。
─────────────────────────────
 米国は短期間に終わる可能性がある菅義偉体制にまだ信頼を持
てずにいるが、岸氏を防衛相に据えたことは、安倍氏の下の日本
の安全保障路線、強力な日米同盟を継承していくというメッセー
ジとみることができる。       https://bit.ly/2H2i0cc
─────────────────────────────
 なぜ、岸信夫氏の防衛相就任が、強力な日米同盟を継承してい
くという米国へのメッセージになるのでしょうか。これを理解す
るには、岸信夫氏という人物について、もっと詳しく知る必要が
あります。これについては、中国最大の国際紙『環球時報』が、
9月17日付で、岸防衛相に関する長文の記事を発表しているの
で、その肝心な部分を次に示すことにします。
─────────────────────────────
 岸信夫は、2つの点において注目に値する。第1に、岸信夫は
日本の政界において著名な「親台派」である。現在まで岸信夫は
日本の国会議員の親台団体である「日華議員懇談会」の幹事長を
務めている。第2に、岸信夫は何度も靖国神社を参拝している。
2013年10月19日、岸信夫は靖国神社を参拝したが、これ
は兄(安倍首相)の代理で参拝したと見られている。安倍晋三本
人も、2013年12月26日に参拝している。
       ──2020年9月17日付、『環球時報』より
                  https://bit.ly/33EPo0r ─────────────────────────────
 中国政府は、台湾の政治家、李登輝元総統、陳水扁元総統、蔡
英文現総統の3人を「民族の3逆賊」と呼んで警戒していますが
岸信夫防衛相は、少なくともその「民族の3逆賊」の2人と親友
なのです。李登輝氏とは長年にわたって親交があり、8月9日に
は森喜朗元首相とともに、李元総統の弔問のため、台北を訪れて
います。そのさい、蔡英文総統にも面会しているのです。なお、
蔡総統に関しては、総統就任直前の2015年10月に日本に招
待し、自分と安倍首相の故郷である山口県下関市まで、わざわざ
案内しているのです。
 この李元総統の弔問に、米国がまたしても高官を派遣し、中国
を揺さぶっています。9月16日の台北共同の記事です。
─────────────────────────────
【ワシントン、台北共同】米国務省は16日、19日に行われる
台湾の李登輝元総統の告別式に参列するために、クラック国務次
官を派遣すると発表した。次官は長官、副長官に次ぐポスト。中
国側は米高官の訪台に反発しており、台湾を巡る情勢が一層緊迫
化する恐れがある。
 トランプ政権は8月にもアザー厚生長官を訪台させたばかり。
中国が軍事・外交両面で台湾への圧力を強める中、相次ぐ高官派
遣によって、台湾を支援する姿勢を強調する狙いがあるとみられ
る。台湾外交部は、クラック氏が蔡英文総統との会談も行うと発
表。1979年の米国との断交以降で最高位の訪台とし「心から
の歓迎」を表明した。        https://bit.ly/3mtAbI7
─────────────────────────────
 しかし、中国政府は、岸防衛相を警戒しつつも、菅新政権を歓
迎しています。それは、二階幹事長が留任しているからです。
─────────────────────────────
 菅義偉新首相が誕生しそうだということよりも、その際に二階
俊博幹事長が留任するだろうことが大きい。極論すれば、日本の
次の首相が誰になろうと、二階幹事長さえ留任してくれればよい
のだ。二階幹事長は、日本政界の親中派筆頭で、わが王毅国務委
員兼外交部長(外相)も、二階幹事長と会った時だけは、まるで
旧友と再会した時のように両手を差し出し、相好を崩すほどだ。
習近平国家主席にも面会してもらっている。
                  https://bit.ly/35JVoaX ─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/078]

≪画像および関連情報≫
 ●菅新総裁誕生/中国の反応は?
  ───────────────────────────
  ◆千々岩森生中国総局長の報告です。
   中国政府が最も警戒しているのは、トランプ政権が菅新総
  理に、中国と手を切れと圧力をかけてきた時に、菅新総理が
  今の日中関係を維持してくれるのか、それができるのか、こ
  こに最大の焦点が絞られています。早速、中国外務省は菅新
  総裁の誕生を受けて、「引き続き、日中関係の改善を進めた
  い」というメッセージを出しました。これは、中国の本音と
  言えます。
   実は、安倍総理の辞任会見の直後から、中国側の関係者か
  ら私のようなところにまで、「次の日本総理大臣は誰になる
  か」、「日本の外交路線は変わるのか」といった“探り”と
  言ったら言葉が悪いですが、そうした連絡が何度も入ってき
  ました。中国側が、日本の動向に敏感になっているというこ
  とを肌で感じます。
   菅さんは、中国に対して基本的にタフで、それを中国側も
  わかっています。しかし、“実務型”で、ウィンウィンの関
  係を目指していける相手ではないかということで、基本的に
  いま、中国政府は、菅新政権の誕生を歓迎しているというこ
  とです。            https://bit.ly/2HavPpd
  ───────────────────────────

岸信夫防衛相.jpg
 
岸信夫防衛相
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2020年09月24日

●「中国をどのようにして切り離すか」(EJ第5335号)

 米国と中国の対立はますます激しくなっています。その対立点
を探ってみることにします。米中経済戦争の対立点を整理すると
次の6項目になります。
─────────────────────────────
   @              貿易赤字の解消
   A             知的財産権の保護
   B         不正な産業補助などの廃止
   C         企業の財産権と活動の保証
   D  為替の最終的自由化と通貨切り下げの禁止
   E外国企業差別、投資制限撤廃と資本移動の自由
                 ──渡邊哲也著/徳間書店
              『「新型コロナ恐慌」後の世界』
─────────────────────────────
 2020年1月15日のことです。まだコロナ禍が深刻化する
前、米国と中国は米中経済戦争において、「第1弾合意」に達し
ています。主な合意内容としては、中国側は2年間で2000億
ドル(約22兆円)の米国製品の輸入の拡大を行い、米国側は、
中国からの輸入消費財の関税を引き下げるという内容です。これ
により、上記の対立点の@「貿易赤字の解消」の一助になること
は確かです。また、Aの知的財産権についても合意に達したと伝
えられています。
 合意文書によると、その履行期限を2021年12月までとし
ており、そのプロセスにおいて、米国はその履行状況をチェック
し、もし、履行状況が悪ければ、米国はさらなる制裁を課すこと
になります。
 中国では、外資系の企業が単独で会社を設立することができな
いのです。必ず、中国企業との合弁会社をつくって起業すること
が求められます。しかも、中国の場合、海外への送金規制によっ
て、外国企業が中国国内で生み出した利益は、中国国内に投資す
るしかないのです。
 まだあります。外国企業は中国から撤退したり、会社を清算し
たくても、当局の許認可が必要であり、事実上できないのです。
したがって、撤退する場合は、会社の財産はすべて合弁会社に譲
り渡して撤退することになります。
 米国としては、この不合理さの是正を上記の対立点CとEで求
めたのですが、中国は2019年の全人代で「外国投資法」を成
立させ、2020年1月1日から施行させることによって、一応
法的には整備されたかたちになっています。しかし、中国の法律
は、ある法律でできるようになっても、別の法律でそれを制限で
きるようにしてあることが多く、結局肝心なところは絶対に譲ら
ないのです。法解釈も恣意的に運用できる余地を残しています。
 経済評論家の渡邊哲也氏は、「外商投資法」の問題点について
次のように述べています。
─────────────────────────────
 JETRO(日本貿易振興機構)も、「現在、地方政府が実務
上採用している「年間限度額」などの措置が引き続き適用される
のか、政治やマクロ経済の状況により発動される一時的な外貨管
理規制措置が今後も外資系企業にも適用されるのか、「外商投資
法」の規定に合わない実務上の規制がどうなるのか、留意が必要
だ」(「ビジネス短信」2019年1月31日付)としており、
実質的に送金や撤退は非常に困難であるという状況は変わってい
ない。中国としては、外資系企業の海外への資金移動を許してし
まえば、一気にキャピタルフライト(資本逃避)が起こる可能性
がある。そうなると外貨準備高は急速に減少し、人民元の暴落を
招きかねない。          ──渡邊哲也著/徳間書店
            『「新型コロナ恐慌後の世界」』より
─────────────────────────────
 中国のやり方は、表向きは自由化をつくろうが、実質的には規
制するというかたちで、これまでやってきています。人民元は、
2016年にIMFのSDR(特別引き出し権)の構成通貨に採
用され、国際通貨になったのですが、そのときの条件が人民元と
中国市場の自由化だったのです。しかし、まったく進んでいない
のです。そのため、対立点のDに上げられています。
 このDに加えて、米国から中国に突き付けた要求Bの「不正な
産業補助などの廃止」は、中国政府が国有企業に補助金を給付し
その莫大な資金力によって、商品を安価で大量生産して売り、世
界の市場を独占したり、外国企業を買収したりして、技術移転を
進めるなど、共産党の支配による計画経済そのものへの全否定で
あり、中国としては絶対に飲めない対立点です。
 したがって、絶対に譲れないBとDについては、他の点で合意
することによって、時間稼ぎをする方針で臨んでいるのは明らか
です。しかし、米国は、ここにきて本気になって中国をデカップ
リング(切り離し)しようとしています。それは、中国が「中国
製造2025」を発表したからです。
 それでは、どのようにしたら、中国をデカップリングすること
ができるでしょうか。それには基本的に次の2つがあります。
─────────────────────────────
    1.重要技術を中国には輸出しないようにする
    2.重要技術を中国には盗まれないようにする
─────────────────────────────
 これら2つのことを実現するために、米国は「国防権限法/
2019」を作り、2018年8月13日に成立させています。
そして、これに基づいて米国は、上記の「1」と「2」を実現す
る2つの法律を作っています。これがEJでは、何回も説明して
いる次の2つの法律です。
─────────────────────────────
         「1」:  ECRA
         「2」:FARRMA
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/079]

≪画像および関連情報≫
 ●米中新冷戦への警鐘─デカップリングの陥穽
  ───────────────────────────
   2018年3月の米中貿易戦争の本格化以来、幾度かトッ
  プレベルでの改善のための調整、合意がなされ、米中関係が
  好転に向かうかに思われた時もあった。しかし、中国発の新
  型コロナウイルスのパンデミック(大流行)を正面からかぶ
  り、最大の被害国となった米国の感情的な反発、11月に控
  えた大統領選挙も重なり、この夏、米国の対中姿勢は一段と
  ヒートアップしている。ポンペオ米国務長官は、過去の対中
  関与政策に対して、「古いパラダイムは失敗した」と宣言し
  た。あわせて、テキサス・ヒューストンにある中国総領事館
  の閉鎖を決定した。これに対抗し、中国政府も四川省成都の
  米総領事館の閉鎖を決定した。こうして新冷戦の様相は次第
  に強まっている。
   1990年前後のソ連・東欧諸国の崩壊により冷戦構造が
  解体して以来、米国イニシアチブで市場、金融、製造業、ハ
  イテク産業などのグローバル化が進展し、経済・社会面での
  相互依存、カップリングの状況が急速に進んだ。金融・経済
  の国際化=多国籍化に加えて、原材料調達から製造・販売・
  商品に至るサプライチェーンの形成が、国際社会の主流とな
  った。1997年のアジア通貨危機、2007〜10年のサ
  ブプライムローンに端を発したリーマン・ショックと呼ばれ
  る世界金融危機などは、金融・経済面での国際的なカップリ
  ングの連動によって引き起こされたものであった。
                  https://bit.ly/35Plb1q
  ───────────────────────────

経済評論家/渡邊哲也氏.jpg
経済評論家/渡邊哲也氏

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2020年09月25日

●「ECRAはかつての新COCOM」(EJ第5336号)

 ECRAとFIRRMA──これは、中国をデカップリングす
る米国の法的規制です。ECRAは、重要技術を中国には輸出し
ないようにする法律であり、FIRRMAは、重要技術を中国に
盗まれないようにする法律です。ECRAとFIRRMAは、次
の言葉の省略形です。
─────────────────────────────
 ◎米国輸出管理改革法
   ECRA/Export Control Reform Act
 ◎外国投資リスク審査現代化法
  FIRRMA/Foreign Investment Risk Review Act ─────────────────────────────
 「ECRA/エクラ」から考えます。
 ECRAは、既存の輸出規制ではカバーできない「新興・基盤
技術」のうち、米国の安全保障にとって必要な技術を省庁間で特
定し、輸出規制の対象とするものです。それは、次の14分野と
しています。しかし、その細則については、まだ発表されていま
せんが、2020年中には発表されることになっています。
─────────────────────────────
     1.バイオテクノロジー
     2.AI・機械学習
     3.測位技術
     4.マイクロプロセッサー
     5.先進コンピューティング
     6.データ分析
     7.量子情報・量子センシング技術
     8.輸送関連技術
     9.付加製造技術(3Dプリンタなど)
    10.ロボティクス
    11.ブレインコンピュータインターフェース
    12.極超音速
    13.先端材料
    14.先進セキュリティ技術
─────────────────────────────
 もとより、米国企業が上記分野に含まれる技術およびその技術
が内蔵されている製品を輸出することが禁じられることはいうま
でもありませんが、これは、米国企業だけではなく、外国企業も
対象になります。もし、外国企業がそのようなことをすれば、米
国との取引ができなくなるので、事実上外国企業にもこの法律は
適用されるといえます。これについて、既出の藤井厳喜氏は、自
著で次のように説明しています。
─────────────────────────────
 ECRAによる輸出規制の対象となるのは、アメリカ企業ばか
りではない。日本企業を含む外国企業も、この規制対象となる。
また、日本企業がチャイナと共同技術開発をしたり、チャイナ国
籍の人間を取締役として雇用していた場合などは、特別に厳格な
審査の対象となる。つまりECRAは単にチャイナをはじめとす
る敵対国に対する輸出規制として機能するばかりでなく、アメリ
カを中心とする友好国の製造業のサプライチェーンからチャイナ
を排除しようとする狙いがある。その点で日本企業は、このEC
RAの実行細則に万全の注意を払わなければならない。
      ──藤井厳喜著『米中最終決戦/アメリカは中国を
               世界から追放する』/徳間書店
─────────────────────────────
 ECRAによって、中国は相当苦しい立場に追い込まれること
になります。TSMC(台湾積体電路製造)という台湾の企業が
あります。半導体製造ファウンドリ(半導体製造専門)としては
世界第1位の企業です。ファーウェイは、ハイシリコンという専
用の半導体メーカーを有しているのですが、ハイシリコンは製造
設備を持っていないので、TSMCに半導体チップの生産を委託
していたのです。しかし、ECRAによって、ファーウェイには
半導体の供給が出来なくなってしまうことになります。
 なお、TSMCの工場は、台湾に集中していますが、中国政府
の要請で、南京に先端半導体の工場を建設し、2018年から稼
働しています。しかし、5月15日のことですが、TSMCは、
米国アリゾナ州に最先端の半導体工場を建設する計画を発表して
います。この場合、ECRAによってTSMCの南京の工場では
半導体の生産はできなくなるはずです。
 同じことがオランダのASML社もファーウェイと取引があり
ますが、今後それはできなくなると思われます。ASML社は、
米国の半導体製造装置を輸入していますが、もし、ファーウェイ
向けの半導体の生産を続けると、米国とは取引が出来なくなって
しまうのです。
 中国では、民間航空機を開発していますが、実はエンジンは米
国製なのです。ECRAによってエンジンの輸出も禁じられたの
で、中国は民間航空機の開発は非常に難しくなったといえます。
このECRA規制が強化された場合、中国はどうなるかについて
藤井厳喜氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 兵器分野においては、チャイナは今後おそらく、ロシアへの兵
器輸出を積極的に推進するだろう。しかしオランダASML社や
台湾TSMC社が高性能半導体をチャイナに売れなくなれば、5
Gのみならず、様々な産業分野でチャイナが最先端の製品を開発
してゆくことは難しくなる。ボディーブローのように効いてくる
対チャイナのECRA規制である。──藤井厳喜著の前掲書より
─────────────────────────────
 かつての米ソ冷戦時代、ソ連を中心とする共産圏に対するハイ
テク技術の輸出規制に「COCOM(ココム)規制」というもの
があったのですが、ECRAは米中対決時代における新COCO
M規制であるということができます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/080]

≪画像および関連情報≫
 ●米国の対ファーウェイ禁輸措置と台湾TSMCの半導体工場
  誘致の深層/細川昌彦氏
  ───────────────────────────
   米中技術覇権の主戦場である半導体を巡る米中の綱引きが
  激化している。中国を半導体の供給網(サプライチェーン)
  から分離する米国の戦略は確実に進展している。拙稿「新型
  肺炎から垣間見えた、対中・半導体ビジネスの危うさ」で指
  摘した「部分的分離」戦略は決定的だ。
   5月15日、世界第1位の半導体ファウンドリーである、
  台湾の台湾積体電路製造(TSMC)が米国のアリゾナに最
  先端の半導体工場を建設する計画を発表した。米国の連邦・
  州政府からの支援を受けて総額約120億ドルを投じ、20
  21年から建設を始める計画だ。
   TSMCを巡って米中が工場誘致に激しい綱引きを演じて
  いたのは周知の事実だ。米中がそれぞれ、自国の半導体供給
  網(サプライチェーン)にTSMCを取り込もうと争奪戦を
  繰り広げた。TSMCの半導体工場は台湾に集中しているが
  中国政府の要請で、南京に先端半導体の工場を建設しており
  2018年から稼働している。一方、米国に有する工場は世
  代が古い工場であった。この報道に関していくつかの誤解を
  招きかねない点もある。米国に建設する半導体工場は“最先
  端”ということになっている。だが、現時点では微細加工の
  線幅5ナノというのは確かに最先端ではあるが、TSMCは
  22年に台湾で3ナノの量産を始める予定だ。さらに2ナノ
  も開発段階にあり、24年に生産開始を計画している。つま
  り、その時点では5ナノも最先端ではなくなっている。まだ
  まだ米国と中国の取引、駆け引きは続きそうだ。
                  https://bit.ly/2FW5Fpi
  ───────────────────────────

TSMC.jpg
TSMC 
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