2020年06月02日

●「中国は消防士のふりをする放火犯」(EJ第5258号)

 中国がまず狙いを定めたのはイタリアです。感染の爆発に医療
品不足で悩むイタリアに対して、中国は支援物資として大量のマ
スクを送り込んだのです。この中国のイタリア支援に関するダイ
ヤモンド・オンラインの記事があります。
─────────────────────────────
 3月12日、イタリア北部のロンバルディア州の空港に、中国
の医療チームが30トンの医療物資とともに到着した。この様子
は中国のテレビでも大々的に取り上げられて、「人類共通の枠組
み」で取り組んできた外交の成果だと自画自賛した。
 すでに2月以降、イタリアでは北部を中心に新型コロナウイル
ス感染が拡大して、深刻さを増していた。時を経るごとに死者が
激増。特に人工呼吸器などの医療機器が大幅に不足し、医療崩壊
が始まっていた。
 イタリア政府はすぐにEUに医療物資支援を求めたが、3月に
なってもそれに応える国はなかった。それどころかドイツが4日
にマスクなどの輸出を禁止。フランスも3日にマスクの政府管理
を始めて国境を閉鎖。イタリアはEUへの失望を隠さなかった。
 そんなときに、救いの手を差し伸べたのが中国だったわけであ
る。ロンバルディア州政府は中国の配慮に感謝の言葉を述べた。
 EU各国が中国への警戒感を強める中、EUの主要国でありな
がら、中国の国際投資政策「一帯一路」を受け入れたイタリアは
恩人でもある。最近はそのイタリアですら中国に警戒を見せ始め
ていたが、今回の速やかな対応はイタリア世論にも微妙な影響を
与えた。              https://bit.ly/2XFUiHz
─────────────────────────────
 イタリアにはこんな話もあるのです。中国の支援に対し、ルイ
ジ・ディマイオ外相は、李軍華イタリア大使に会って、感謝を伝
えたのですが、それだけでは収まらなかったのです。全国会議員
のもとに、イタリア語版の中国の宣伝誌が郵送され、議会として
中国への「感謝表明」を迫られたといいます。
 フランスに関してこんな情報もあります。2020年4月4日
に、米国のマーク・グリーン下院議員(共和党)が、FOXニュ
ースの番組で暴露したといわれています。既出の長谷川幸洋氏の
情報です。
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 中国の習近平国家主席は、フランスのエマニュエル・マクロン
大統領との電話会談で、中国がマスクを10億枚寄贈する見返り
に、華為技術(ファーウェイ)社製の第5世代移動通信システム
(5G)をフランスに導入するよう持ちかけた。FOXニュース
         ──月刊『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 この報道によって、中国への非難が殺到したといいます。中仏
の両政府ともに、その事実を否定したものの、誰もがファーウェ
イの真の意図を見抜いていたのです。中国にとって5G敷設は世
界のIT覇権を握るための中核ですが、マスク外交はそれを進め
るため手段でもあったのです。『選択』/2020年5月号にも
次の記事が掲載されています。
─────────────────────────────
 米ウィスコンシン州上院のロジャー・ロス議長は2月末、中国
の在シカゴ総領事館から、突然、メールを受け取った。「中国の
ウイルスとの闘いを支持し、称える決議を、州議会で採択してほ
しい」という内容だ。無視したところ、13日後にまたメール。
議長は「バカ野郎」と返事を送った。同州議会は結局、「中国の
隠蔽」を糾弾する決議を採択した。
              ──『選択』/2020年5月号
─────────────────────────────
 2月の下旬のことですが、中国の王毅外相は、イタリアのディ
マイオ外相と電話会談をし、イタリアに対して、次のように呼び
かけています。
─────────────────────────────
    イタリアと健康シルクロードをともに築きたい
                 ──王毅中国外相
─────────────────────────────
 中国はEUの一角が崩せると考えて、膨大な量の医療物資の提
供と3次にわたる医療チームを送り込んでいます。ちなみに、中
国が医療チームを送り込んだ国は、次の12ヶ国です。
─────────────────────────────
      イラン        ロシア
      イラク        カザフスタン
      イタリア       ミャンマー
      セルビア       フィリピン
      カンボジア      ベネズエラ
      パキスタン      ラオス
               ──2020年4月13日現在
─────────────────────────────
 ここまでの中国の一連の行動を見ると、中国は「消防士のふり
をする放火犯」以外の何者でもないといえます。こういう中国の
振る舞いについて、EUの外相に当るボレル外交安全保障上級代
表は、次のように警告をしています。
─────────────────────────────
 中国は、自分たちが、米国と違って責任感があり、信頼できる
パートナーであるとしているが、我々は、情報戦や「気前のいい
政治」を使って、影響力を高めようとする地政学的な要素がある
ことに注意しなければならない。     ──ボレルEU外相
─────────────────────────────
 このような中国の動きに関して、世界中が非難の目を向けつつ
あります。とくに米国との関係は、今回のコロナ禍について中国
が責任を回避するメッセージを出すに及んで、抜き差しならない
状況に陥りつつあります。中国と米国は、一触即発の状況に陥り
つつあります。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/002]

≪画像および関連情報≫
 ●イタリア支援でEUにくさびを打ち込んだ中国/マスク外交
  は中国の本領「トロイの木馬作戦」/みずほ銀行/唐鎌大輔氏
  ───────────────────────────
   欧州全域が新型コロナウィルス対応に苦慮する中、その隙
  を突くような中国の鋭い外交が展開されている。中長期的に
  欧州が抱える地政学リスクを考察するうえで、大変に重要な
  意味を持つ動きと見られるので簡単に整理しておきたい。
   過去、中国はギリシャの財政的困窮につけ込んで同国の港
  を買収し、近年はこれを足がかりにしてEU(欧州連合)域
  内に複数の戦略投資を行ってきた。中国は「一帯一路」構想
  の下、欧州各国の要衝で多くの投資を展開しており、一部で
  はEUの内側からの崩壊を狙う「トロイの木馬」作戦とまで
  呼ばれている。相手の弱みを見つけるや否や、機敏に攻め込
  む外交姿勢は中国の本領である。こうした文脈で、中国から
  イタリアへの人道支援は注目される。
   感染者の爆発的拡大に対応が追いつかず、いわゆる医療崩
  壊の状態に陥っているイタリアでは、マスクを筆頭とする医
  療物資支援をEUに求めてきた。しかし、イタリア当局者か
  ら「EUのどの国も応じてくれなかった(マッサーリ駐EU
  大使)」との不満が漏れるように、混乱のさなかでEUは連
  帯感を示すには至っていない。逆にフランスやドイツが国外
  へのマスク輸出を抑止する政策を行って、これをフォンデア
  ライエン欧州委員長が「一方的な行動は良くない」といさめ
  る体たらくである。       https://bit.ly/36L3qyt
  ───────────────────────────

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ディマイオ・イタリア外相/王毅中国外相
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2020年06月03日

●「コロナ禍は中国の高等戦略なのか」(EJ第5259号)

 5月29日のことです。トランプ米大統領は、対中政策を発表
しています。ポイントは2つあります。
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     1.WHO(世界保健機関)から脱退する
     2.香港への優遇措置を見直し、撤廃する
─────────────────────────────
 トランプ大統領の米国は遂にここまでやるかという感じです。
「2」については改めて述べるとして、「1」については、5月
18日に「WHOは中国に対し、新型コロナ発生源の独立調査を
公に求めなかった」とし、組織運営に関し、30日以内に本質的
な改善が見られなければ、現在暫定的に実施している「資金拠出
停止を恒久化する」と警告するとともに、WHO脱退の可能性も
示唆していたのです。
 しかし、「30日以内」として日限を切っているにもかかわら
ず、たった12日後のWHO脱退通告です。中国が香港への統制
を強める「香港国家安全法」の導入を決めたことで、まとめて対
中政策を発表したものと思われます。かなり、乱暴なことの決め
方です。WHOとしても、トランプ大統領の要請に対して、どう
対応していいかわからないでいたものと思われます。何しろ米国
は、WHOに対し、年間4億5千万ドルもの資金を拠出している
超大国です。脱退されると、WHOにとっては、その影響力にお
いても、資金的にも大問題になります。
 どうしてこのようなことになったのでしょうか。
 その背景的事実として認識しておくべきことがあります。それ
は、現在、習近平国家主席と中国共産党指導部が、数々の難問を
抱えていることです。例えば、香港での激しい抗議活動、独立を
志向する蔡英文台湾政府の再選、中国のイスラム教徒抑圧の暴露
と批判、そして、なかでも最も影響が大きいのは、米国トランプ
政権による厳しい貿易政策による中国経済のつまずきなどであり
これによる習近平主席への批判や反対意見が、共産党内で高まり
つつあることです。まさにこういうときに、新型コロナウイルス
感染拡大が起きたのです。
 こういう状況において、トランプ大統領は、CIA(中央情報
局)、NSA(国家安全保障局)、DIA(国防情報局)に命じ
て、中国が新型コロナウイルス感染症に責任があるかどうかを知
るためのあらゆる情報を調べ上げるよう指示しています。
 こういう情報機関の政治利用に関して、元CIA高官3人が、
米国の外交専門誌『フォーリン・ポリシー』に、やや批判的なレ
ポートを共同執筆しています。
─────────────────────────────
 アメリカがパンデミックに直面している現状において、こうし
た政治化が行われていること自体が特に懸念される。情報機関に
問われている重要な質問事項――新型コロナウイルスは自然界の
ものか、それとも中国の研究室から流出したものか?中国政府は
伝染病の範囲と規模をどの程度事実を曲げて述べていたか?――
への回答は、特に中国に関して、アメリカの安全保障政策の将来
に多大な影響を与えることになるであろう。
 こうした質問に対してトランプ大統領が求めている回答は知っ
ている。われわれが分からないのは、アメリカの情報機関でキャ
リアを積んでいる分析官が、真実が分かったときに、その真実を
語ることが許されるのかだ。     https://bit.ly/2ZOZcol
─────────────────────────────
 この調査結果がどのようなものであったかについてはわからな
いが、当初、トランプ大統領と側近補佐官たちは、今回の新型コ
ロナウイルスのパンデミックの原因について、ウイルスが中国武
漢のウイルス研究所から誤って流出したものの、その事実を隠蔽
し、時間稼ぎをしたと中国政府を非難しようとしていたのです。
しかし、最近では非難の度合いを一段と高めて、中国政府が故意
にこのウイルスを世界に拡散させたという大胆な告発に動いてい
るのです。
 このシナリオは、米国の保守系のシンクタンクである「ハドソ
ン研究所」の上級副社長、ルイス・リビー氏が、4月29日に発
刊された保守系雑誌『ナショナル・レビュー』に次のように書い
ています。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスが主に中国国内で猛威を振るっている限り
中国経済の成長だけを妨げ、中国政府だけが汚名を被る事態を招
くこととなる。習近平中国国家主席にとっては困難が増し、悪夢
のような展開が待っていた。その間ずっと、世界経済は予想どお
り飛躍し、中国から顧客を奪い、中国が長い間求めている栄光を
横取りするかに見えた。しかし、パンデミックは中国にとって僥
倖となる可能性も持っていた。新型コロナウイルスが蔓延すれば
中国政権内部の悩みは拡散し、また一方で、新型コロナウイルス
感染症で経済が弱体化した国々は、中国製品に対する依存度を高
めざるを得なくなる。トランプ大統領の再選はもはや確実ではな
くなり、アメリカ経済の弱体化は、アメリカの国防支出に影響を
与えるに違いない。         https://bit.ly/2Atk5KQ
─────────────────────────────
 ルイス・リビー氏は恐ろしいことをいっています。中国政府は
わざと数万人の旅行者を新型コロナウイルスに感染させ、欧米各
国に送り込んで感染を拡大させたというのです。しかし、本当に
中国は、そこまでやるでしょうか。
 このルイス・リビーなる人物は、ブッシュ(子)政権のチェイ
ニー元副大統領のかつての副大統領補佐官です。イラクが大量破
壊兵器を持っており、911のテロ攻撃に関わっているというシ
ナリオを書いて、イラク戦争に導いた人物です。2007年に偽
証罪と司法妨害の有罪判決を受けていましたが、2018年4月
にトランプ大統領によって恩赦を受けています。トランプ大統領
は、本当にそういう人の調査結果を信じているのでしょうか。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/003]

≪画像および関連情報≫
 ●特別リポート:なぜブラジルは「コロナ感染大国」に転落
  したのか
  ───────────────────────────
  [サンパウロ/リオデジャネイロ/26日/ロイター]─3
  月中旬、ブラジルは感染の足音が聞こえ始めていた新型コロ
  ナウイルスに先制攻撃を加えた。保健省はクルーズ船の運航
  停止を命じ、地方自治体に、大規模イベントの中止を要請し
  た。海外からの旅行者には1週間の自主隔離を呼びかけた。
  世界保健機構(WHO)がパンデミック(世界的大流行)を
  宣言してからわずか2日後、3月13日のことだった。この
  時点でブラジルでは新型コロナウイルスによる死者は1人も
  報告されていなかった。公衆衛生当局は、先手先手を打とう
  としているように見えた。
   だが、それから24時間も経たないうちに、保健省は各地
  の自治体から「批判と提言」があったとして、自らの勧告を
  骨抜きにしてしまった。当時の状況に詳しい関係者4人によ
  ると、この変化の背景にはボルソナロ大統領の首席補佐官室
  の介入があったという。
   「軌道修正は圧力によるものだ」と、保健省の免疫・感染
  症局長だった疫学者ジュリオ・クロダ氏は語る。当時、この
  方針転換が関心を集めることはあまりなかった。しかし、こ
  の関係者4によると、ブラジル政府の危機対応の転機になっ
  た。ウイルス対応の主導権は、公衆衛生に責任を持つ保健省
  から、「カーサ・シビル」と呼ばれる大統領首席補佐官室へ
  と移っていたという。同室を率いるのは、ウォルター・スー
  ザ・ブラガ・ネット陸軍大将である。
                  https://bit.ly/2BcI9lG
  ───────────────────────────

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習近平国家主席/トランプ大統領.
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2020年06月04日

●「ウイルスは武漢研究所からの流出」(EJ第5260号)

 重要なのは、中国の党中央が新型コロナウイルスの発生をどの
時点で知ったかです。今のところ2019年12月の後半という
ことになっていますが、もっと以前から知っていたという情報も
あります。WHOに対しては、「正体不明の肺炎の発生」を12
月31日に報告していることは既に述べた通りです。
 このウイルスは、「中国の生物兵器である」という情報がネッ
トなどで流布されていますが、これといった証拠もなく、いずれ
も信用できるレベルの情報とは思えない、いわゆる「陰謀論」の
類いといえます。中国が現在の時点で、新型コロナウイルスを意
図的にばら撒くメリットがないからです。
 しかし、この手の噂が消えないのには、武漢には次の2つのウ
イルスの研究所があり、そこから流出したのではないかと疑われ
ているのです。
─────────────────────────────
      1.中国科学院・武漢ウイルス研究所
      2.   武漢疾病管理予防センター
─────────────────────────────
 当初感染場所とされたのは武漢の海鮮市場です。上記の2つの
ウイルス研究所と海鮮市場との距離は、武漢ウイルス研究所から
は12キロメートル、武漢疾病管理予防センターからは、280
メートルしか離れていないのです。
 それでは、なぜ、これらのウイルス研究所からの流出説が出て
きているのでしょうか。トランプ大統領もそれなりの根拠に基づ
いてその流出説を疑っています。
 中国科学院・武漢ウイルス研究所は、国際基準で危険度が最も
高い病原体を扱える「バイオセーフティーレベル(BSL)4」
に位置付けられています。しかし、この研究施設について、英科
学誌『ネイチャー』が、2017年2月に「同研究施設は検体の
管理が杜撰であり、病原体が流出する恐れがある」という記事に
おいて警告を発しています。
 また、米紙ワシントン・タイムズ(電子版)は、今年1月26
日、この施設は中国の生物兵器計画に関係し「新型コロナウイル
スが流出した可能性がある」というイスラエル軍元関係者の分析
を伝えています。中国メディアによると、インドの研究者も「人
がウイルスをつくった」という推論をネット上に投稿しているな
ど、この研究施設についてはその管理の不備を伝える情報がいく
つも出ています。
 まだあります。2018年に外交官の肩書を持つCIAの科学
専門官も何度も武漢ウイルス研究所を視察し、その管理体制の問
題点などについて警告する外交公電を送っています。この件につ
き、もとCIA長官だったポンペオ国務長官はかなり重要な情報
を握っているようです。したがって、新型コロナウイルスがこの
研究所から流出したとする疑いは相当濃厚であるといえます。
 2020年4月17日のことです。トランプ米大統領は、「ウ
イルスが武漢P4研究所から流出したという情報が広く流れてい
るが、これについてどう考えるか」という記者の質問に対して、
次のように答えています。
─────────────────────────────
 我々もその点について関心をもっている。いま大勢の人が調べ
ている。武漢の研究所からのウイルス流出説は、理にかなってい
る。中国はある種のコウモリがウイルスの発生源との立場をとっ
ているが、そのコウモリは武漢に生息していない。市内の海鮮市
場でも売られていなかった。このコウモリの生息域は、武漢から
60キロ以上も離れている。したがって、ウイルスの自然発生は
あり得ない。             ──トランプ米大統領
─────────────────────────────
 トランプ大統領が「コウモリ」に言及したことは、非常に意味
があります。コウモリに由来するウイルスによる感染には次の3
つがあり、今回の新型コロナウイルスにも関係があるからです。
─────────────────────────────
 1.エボラ出血熱 ・・・・・・・・・・ 1976年以降
 2.SARS(重症性呼吸器症候群)・・ 2002年以降
 3.MARS (中東呼吸器症候群)・・ 2012年以降
─────────────────────────────
 こういう米国の主張について、中国の趙立堅報道官は、次のよ
うに反論しています。
─────────────────────────────
 WHOの事務局長も、ウイルスが武漢研究所でつくられたこと
を示す証拠はないと繰り返し、発表していることも念のため、申
し上げる。また、世界の多くの著名な医学者が、研究所から流出
したという説は、科学的根拠に乏しいと考えている。
                     ──趙立堅報道官
─────────────────────────────
 もうひとつ、そのさなかに、この問題に関して中国政府によっ
て消されたという論文があります。この論文は、広東省広州市の
華南理工大学・生物科学与工程学院の肖波濤(シャオ・ボタオ)
教授と生物学に通じる研究者が執筆したとする論文です。
 この論文は、2020年2月6日に研究者向けサイトにアップ
されましたが、ほどなくして中国政府によって削除され、肖波濤
教授ら2人の行方がわからなくなってしまっています。論文だけ
でなく、研究者の口をも封じたと思われます。
 しかし、最近はウェブサイトから削除しても復元できる技術が
進んでおり、EJはその全文を入手しているす。以下はその論文
のことを伝えているレポートです。ご一読ください。
─────────────────────────────
   ◎新型ウイルスの発生源は武漢の研究所のコウモリ
    The possible orgins of 2019-nCoV coronavirus
               https://bit.ly/2MgW1xI
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/004]

≪画像および関連情報≫
 ●「新型ウイルスは実験室で生まれた可能性もある」とする
  論文が登場
  ───────────────────────────
   パンデミック(世界的大流行)を引き起こした新型コロナ
  ウイルスについて、実験室で生まれた可能性も排除すべきで
  ないとする論文が発表された。アメリカのトランプ政権高官
  や情報機関は新型コロナウイルスの発生源が中国の武漢ウイ
  ルス研究所であると主張しているが、中国はそうした見方を
  陰謀論だと一蹴している。
   専門家はおしなべて中国の立場を支持しており、新型コロ
  ナウイルスは自然に(たぶん武漢の海鮮市場で)人間への感
  染力を手にしたと考えている。新型コロナウイルスが遺伝子
  操作を受けていないことを示す証拠も、そうした見方を補強
  している。
   本誌は複数の専門家に依頼し、問題の論文に目を通しても
  らった。そして得られた評価は、「この分析に使われた手法
  は有効性が証明されておらず、主張を裏付けるようなさらな
  る研究が出てくるまでは結論を急ぐべきではない」というも
  のだった。問題の論文はブリティッシュコロンビア大学やマ
  サチューセッツ工科大学、ハーバード大学の研究者の共著で
  コールドスプリングハーバー研究所が主催するウェブサイト
  「バイオアーカイブ」で発表された。査読は受けていない。
  この論文が新型コロナウイルスが何らかの実験室で生まれた
  可能性(ごく小さな可能性かもしれないが)を主張する根拠
  は、自然から生まれたものにしては「人間によく適応してい
  る」からだという。       https://bit.ly/2zPJnmw
  ───────────────────────────

趙立堅中国報道官.jpg
趙立堅中国報道官
 
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2020年06月05日

●「消去論文には何が書いてあったか」(EJ第5261号)

 昨日のEJの最後でお伝えした中国政府によって消された論文
は、インターネット上で削除されたコンテンツを回復させるツー
ル「ウェイバック・マシーン」で読むことができます。論文は英
語で記述されています。
─────────────────────────────
    The possible orgins of 2019-nCoV coronavirus
               https://bit.ly/2Y91ZGz
─────────────────────────────
 この論文について、ジャーナリストの時任兼作氏がその要約を
『WiLL』7月特大号に要約を掲載しています。EJでは、そ
の要約をさらに要約し、以下に説明つきで、掲載することにしま
す。論文は、新型コロナウイルスの発生源について、次の3つに
絞って検証しています。
─────────────────────────────
      1.      武漢海鮮市場発生説
      2.   武漢疾病管理予防センター
      3.中国科学院・武漢ウイルス研究所
─────────────────────────────
 まず、論文は、「1」の「武漢海鮮市場発生説」については、
可能性が低いとして、次のように否定しています。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスが中国で伝染病を発生させた。2020年
2月6日までに564人の死者を含め、2万8千60人が感染し
たことが検査で確認されている。
 今週の(学術誌)『ネイチャー』の解説によると、患者から検
出されたゲノム配列の96%あるいは89%が中型コウモリ由来
のZC45型コロナウイルスと一致したという。(中略)
 ZC45型コロナウイルスを運ぶコウモリは、雲南省または浙
江省で発見されたが、どちらも海鮮市場から900キロ以上離れ
ている。(そもそも)コウモリは通常、洞窟や森に生息している
ものだ。だが、海鮮市場は人口1500万人の大都市である武漢
の住宅密集地区にある。コウモリが市場まで飛んでくる可能性も
非常に低い。(中略)自治体の報告と31人の住民および28人
の訪問者の証言によると、コウモリは食料源だったことはなく、
市場で取引されてもいなかったという。
                ──『WiLL』7月特大号
─────────────────────────────
 続いて論文は、発生源の可能性として、海鮮市場周辺をスクリ
ーニングした結果、海鮮市場から280メートル以内の距離にあ
る「2」の「武漢疾病管理予防センター」(WHCDC)が発生
源の可能性があるとして、次のように書いています。
─────────────────────────────
 武漢疾病管理予防センター(WHCDC)は、研究の目的で所
内に数々の動物を飼育していたが、そのうちの1つは病原体の収
集と識別に特化したものであった。ある研究では、湖北省で中型
コウモリを含む155匹のコウモリが捕獲され、また他の450
匹のコウモリは浙江省で捕獲されていたこともわかった。収集の
専門家が、論文の貢献度表記の中でそう記している。
 さらにこの専門家が収集していたのがウイルスであったことが
2017年と2019年に全国的な新聞や、ウェブサイトなどで
報じられている。(中略)
 捕獲された動物には手術が施され、組織サンプルがDNAおよ
びRNAの抽出とシーケンシンク(塩基配列の解明)のために採
取されたという。組織サンプルと汚染された廃棄物が病原体の供
給源だった。これらは、海鮮市場からわずか280メートルほど
のところに存在したのである。またWHCDCは、今回の伝染病
流行の期間中、最初に感染した医者グループが勤務するユニオン
病院に隣接してもいた。確かなことは、今後の研究を待つ必要が
あるが、ウイルスが研究所の周辺に漏れ、初期の患者を汚染した
としてもおかしくない。     ──『WiLL』7月特大号
─────────────────────────────
 最後に論文は、海鮮市場から約12キロ離れている「3」の中
国科学院・武漢ウイルス研究所からの発生の可能性について、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 この研究所は、中国のキクガシラコウモリが、2002年から
2003年にかけて流行した重症急性呼吸器症候群(SARSコ
ロナウイルス)の発生源であるとの報告を行っている。
 SARSコロナウイルスの逆遺伝学システムを用いてキメラウ
イルス(異なる遺伝子情報を同一個体内に混在させたウイルス)
を発生させるプロジェクトに参加した主任研究者は、ヒトに伝染
する可能性について報告している。憶測ではあるが、はっきりと
言えば、SARSコロナウイルスまたはその派生物が研究所から
漏れたかもしれないということだ。
 要するに、誰かが新型コロナウイルスの変異と関係していたの
である。武漢にある研究所は、自然発生的な遺伝子組み換えや中
間宿主の発生源であっただけでなく、おそらく、猛威を振るうコ
ロナウイルスの発生源でもあったのだ。
                ──『WiLL』7月特大号
─────────────────────────────
 この論文が相当信憑性のあるものであることは、中国政府が直
ちにこの論文を削除し、執筆者の2人の学者の行方が分からない
ということでわかります。ポンペオ米国務長官は、5月3日、新
型コロナウイルスの発生源が、武漢の研究所であるとする「かな
りの量の証拠」があると発言しています。
 同じ武漢に2つもウイルス研究所があるのですから、疑われて
も当然といえます。だからこそ、中国政府は、何としてもそれか
ら目をそらさせるために、武漢の海鮮市場が発生源であることを
PRしたものと思われます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/005]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ、中国・武漢ウイルス研究所が発生源「かなりの
  証拠」=米ポンペオ国務長官
  ───────────────────────────
   ポンペオ米国務長官は5月3日、新型コロナウイルスにつ
  き、中国の研究所が発生源である「かなりの量の証拠」があ
  ると述べた。ただ、人為的に作り出されたものではないとの
  米情報機関の結論に異議は唱えなかった。長官は、ABCの
  番組で「このウイルスが武漢の研究所から出たことを示すか
  なりの量の証拠がある」と語った。
   また「最も優秀な専門家らはこれまでのところ、(新型ウ
  イルスが)人為的なものだと考えているようだ。現時点でそ
  れを信じない理由はない」と述べた。ただ、米情報機関の結
  論と異なることを指摘されると、「情報機関の見解を認識し
  ている。彼らが、間違っていると考える理由はない」とも述
  べた。米国家情報長官室(ODNI)は先月4月30日、新
  型コロナウイルスについて「人造でも遺伝子操作されたもの
  でもないという科学的な総意に同意する」との認識を表明し
  た。国務省は、ポンペオ長官の発言について説明を求めた取
  材に現時点で応じていない。中国共産党機関紙・人民日報傘
  下の環球時報は社説で、同長官の発言は「はったり」だとし
  長官は武漢の研究所が発生源である証拠を持っていないと指
  摘。米国に証拠を示すよう求めた。「トランプ政権は引き続
  き、異例の宣伝工作を展開するとともに、COVID−19
  (新型コロナウイルス感染症)との闘いにおける世界的な取
  り組みを妨げようとしている」と批判した。
                   https://bit.ly/3gL7O5f
  ───────────────────────────

中国科学院・武漢ウイルス研究所.jpg 
 
中国科学院・武漢ウイルス研究所



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2020年06月08日

●「19年12月10日のある出来事」(EJ第5262号)

 新型コロナウイルスの感染が始まった場所は、間違いなく武漢
です。中国政府は、米軍がウイルスを武漢に持ち込んだというあ
り得ない説を唱えていますが、感染元は武漢です。これだけは、
動かしようのない事実です。
 そして、その武漢には、2つのウイルス研究所があります。し
かもその1つは「バイオセーフティレベル4」(P4研究所)と
いう国際基準をクリアした中国唯一の研究所です。ちなみに、季
節性インフルエンザはレベル2(P2)、結核や狂犬病はレベル
3(P3)、そして、エボラ出血熱などの最もリスクの高いもの
はレベル4(P4)ということになります。人から人への感染力
の強い新型コロナウイルスもこのレベルに該当します。
 こういう状況が揃えば、今回のウイルスがそのP4研究所から
流出したのではないかと疑うことはごく自然なことです。まして
武漢P4研究所の検体の管理には問題があるという指摘が以前か
ら出ていたのです。
 この武漢P4研究所に関してこんな話があります。2019年
12月10日のことです。習近平主席が鋭意進める「一帯一路計
画」の一環である長江(揚子江)に関わる巨大プロジェクトがあ
り、昨年12月の上旬から一週間の予定で、中国内陸部の揚子江
一帯を視察する国際的専門家集団のツァーがあったのです。
 2019年12月10日、午前9時、その一行が地方の財界幹
部の案内で、武漢市内の中心部にある長江科学技術院にやってき
たのです。このツァーのスケジュールのひとつです。この同じブ
ロックのなかに「中国科学技術院P4研究所」があります。
 ツァーの一行は、中央本部棟の3階の応接室に通され、予定で
は、しかるべき科学院幹部が出迎える予定になっていたのです。
しかし、待てど暮らせどその幹部が登場しない。慌てた案内の財
界幹部は、科学技術院の職員に、しかるべき人物を連れてくるよ
うに強く求めたのです。
 そこに登場したのは、スカートとブラウスの上にジャケットを
羽織った女性で、名刺交換をしたところ、その名刺には次の記載
があったといいます。
─────────────────────────────
          長江科学技術院教授
                石正麗
─────────────────────────────
 一行はこの石正麗教授の案内で、技術院のなかをみせてもらっ
ています。しかし、技術院のなかは、ガランとしてほとんど人影
はなかったそうです。ただ、石正麗教授が「これは私のラボラト
リです」と紹介した部屋には多くの研究員がおり、何らかの実験
をしていたそうです。そのとき、自分は、SARSやMERSの
ような人類の敵になるウイルスの研究をやっているとその職務を
具体的に説明しています。
 以前にこの技術院を訪問したことのある人の話によると、技術
院の敷地内は乗用車や業者のトラックが頻繁に出入りし、技術院
のなかは、白衣の研究者が多く行き来する活気に満ちた場所だっ
たといいます。ところが、その日は技術院のなかにはほとんど人
はおらず、その後の武漢の市中案内でも、いつもなら必ず目にす
るはずの市民はほとんどいなかったというのです。
 この話は、月刊『Haneda』/2020年7月青葉号の、フリー
ジャーナリスト山口敬之氏のレポートに出ていたものです。この
日の技術院の様子は今にして考えると、重要な意味をもってくる
と思います。この日の技術院について、山口敬之氏は、次のよう
に述べています。
─────────────────────────────
 12月10日の武漢で一体何が起きていたのか。一行の1人は
こう類推する。武漢P4研究所の周辺で何らかの事故があって、
公的機関により一帯は「封鎖」もしくは「立入制限措置」が取ら
れていたのではないか。
 しかも、武漢在住の財界幹部が科学院幹部の不在に激怒したこ
とからみて、「封鎖情報」はごく一部の関係者だけに知らされ、
ほとんどの武漢市民には告知されていなかったのではないか。
 これらはあくまで類推であり、真相は闇のなかだが、ひとつだ
けはっきりしていることがある。他の全ての研究者や業者が去り
閑散とした研究施設で、ウイルス研究の専門家である石正麗のチ
ームだけが、何らかの研究を続けていたという事実だ。
           ──『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 この話が本当であるとすると、昨年の10月以降、何らかの事
故によって新型コロナウイルスが研究所から流出し、一部の関係
者には技術院からの隔離措置が取られ、石正麗教授のチームだけ
が分析を行っていたのではないかといわれています。12月10
日の時点で、技術院に人影がなかったのは、それが原因と考えら
れます。
 こういう情報もあります。米国のNBCが米政府当局者の話
として、次の情報を報道しています。
─────────────────────────────
 1019年10月7日から3週間、武漢P4研究所の高セキュ
リティ区域で、携帯電話の通信が完全に途絶えていた。
           ──『Haneda』/2020年7月青葉号
─────────────────────────────
 仮に10月の時点でウイルスが流出する事故があったとすれば
今年1月以降の武漢地域での感染爆発は整合性がとれます。中国
がWHOに「原因不明の肺炎の発生」を伝えたのが12月31日
であり、翌日の1月1日に海鮮市場を閉鎖していますが、それか
ら感染が急拡大するにはスピードが早過ぎるのです。ちなみに、
1月5日時点での感染者は59人、うち7人が重症、9日に初の
死者が出たことになっています。やはり、中国は意図的にヒト対
ヒト感染の情報をかなり長期間隠蔽していたことになります。こ
れは問題です。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/006]

≪画像および関連情報≫
 ●新型ウイルスの起源追跡 中国のコウモリ洞窟探る
  日経サイエンス
  ───────────────────────────
   今回の新型コロナウイルスはどこから来たのか?
   中国・武漢ウイルス研究所の石正麗(シー・ジェンリー)
  氏らは、中国南部・雲南省のキクガシラコウモリで同チーム
  が以前に発見していたコロナウイルスと新型ウイルスのゲノ
  ム配列が96%同じであることを突き止め、2月初めに学術
  誌に報告した。短期間で起源を特定できたのは、石らが長年
  にわたって動物が保有するウイルスを追跡してきたからだ。
  人間と野生動物が接触する機会が増え、アウトブレーク(集
  団感染)が起こりやすくなっている。
   野生動物が自然の保有宿主となっているウイルスが変異し
  人間に感染するケースが知られている。2002年に重症急
  性呼吸器症候群(SARS)を引き起こしたコロナウイルス
  もコウモリが保有宿主だった。これを特定したのが、非営利
  研究機関エコヘルス・アライアンス(本部ニューヨーク)と
  石らの国際チームだ。石はウイルス学者だが、中国各地のコ
  ウモリ洞窟を調査してきたことから、研究仲間からは親しみ
  を込めて「中国のバットウーマン」と呼ばれている。保有宿
  主を突き止めるには野生動物の血液や糞を採集し、ウイルス
  の遺伝物質(RNAやDNA)が含まれているかどうかを解
  析する。人里離れたコウモリ洞窟を踏査してこれを実行する
  のはたいへんな作業だ。石らはSARSウイルスの起源を追
  跡するなかで注目した雲南省の洞窟を徹底的に調べ、遺伝的
  に非常に多様な数百種のコウモリ媒介ウイルスを発見した。
                  https://bit.ly/3eTyn6t
  ───────────────────────────

石正麗研究員.jpg
石正麗研究員

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2020年06月09日

●「石正麗とはどのような学者なのか」(EJ第5263号)

 今回の新型コロナウイルスの中心人物とされる石正麗氏とは、
どういう人物でしょうか。
 石正麗氏は、中国の武漢の大学で生物学を学び、2000年に
フランスのモンペリエ大学でウィルス学の博士号を取得していま
す。2002〜2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)
流行後の2006年、オーストラリア連邦科学産業研究機構(C
SIRO)の管轄下のオーストラリア疾病予防センター(ACD
P)で3ヶ月間、訪問学者として「SARSとコウモリの関係」
を研究しています。そして、講演で石正麗氏は、いつも次のこと
を警告していたそうです。
─────────────────────────────
 野生動物の商取引を規制するなど、その危険性に細心の注意
 が払われないと、各種コロナウイルスがSARSと同じよう
 に猛威を振るうことになる。        ──石正麗氏
─────────────────────────────
 石生麗氏は、SARSやMARSなどのコウモリ由来のウイル
ス研究の第一人者であり、今回の新型コロナウイルスは、その遺
伝子コードが中国特有のキクガシラコウモリという小型コードに
酷似しているというのです。
 なお、MARSは「中東呼吸器症候群」といわれ、あるテレビ
局ではその感染源をラクダを正解とするクイズ問題を出していま
したが、これはコウモリからラクダに感染したもので、元はコウ
モリが正しいのです。このように、石正麗氏は、そのコウモリ由
来のコロナウイルス研究の専門家であり、武漢P4研究所にラボ
ラトリを持つウイルス学者です。したがって、今回の新型コロナ
ウイルスも武漢P4研究所から流出したのではないかと噂され、
そういう意味で石正麗氏はまさに渦中の学者であるといえます。
 4月末頃のことですが、この石正麗氏について、次のような気
になる情報がネット上を駆け巡ったのです。
─────────────────────────────
 石正麗氏は、1000件近い秘密研究文書を持ち出して、家族
と共に欧州に逃亡し、フランスの米国大使館に亡命を申請した。
─────────────────────────────
 ありそうな話ですが、当のフランス米国大使館からのメッセー
ジもなく、これはどうやら本当の話ではないようです。この亡命
説について、中国共産党機関紙・人民日報系「環境時報」は、石
正麗氏が「微信/ウィーチャット」上で、友人に向けて書いたと
する次の文章を掲載し、この情報を否定しています。
─────────────────────────────
 私(石正麗)と私の家族はみな元気です。いかに多くの困難が
あろうと『叛逃(国に背いて亡命すること)』のデマにあるよう
な状況にはなりえない。我々は何も間違ったことはしていない。
我々の心の中には、科学に対する揺るぎない信念がある。
                  https://bit.ly/3h1hZTC ─────────────────────────────
 しかし、現在、石正麗氏は行方不明です。「環境時報」が伝え
た上記の石正麗氏のコメントの報道は、本人が友人に対して発信
したコメントを紹介しているだけで、彼女が中国の国民に対して
話している言葉ではないのです。亡命がウソであるならば、中国
政府は本人をテレビに出して、堂々と否定させるべきです。
 まして石正麗氏によると、今回の新型コロナウイルスは、彼女
のチームが、2013年に雲南省で採取したサンプルと96%一
致しているそうであり、世界中のウイルス学者が石正麗氏の意見
を求めています。もし、中国政府が石正麗氏の口を封じているの
であるとすると、それこそ完全な情報隠蔽です。
 英語圏5ヶ国(米国、英国、オーストラリア、カナダ、ニュー
ジーランド)による最強の諜報ネットワークである「ファイブ・
アイズ」が、目下石正麗氏の行方に関して調査をしているという
情報があります。中国はWHOと組んで、明らかに事実を隠蔽し
ている疑いがあるからです。
 ことの経緯から考えて、トランプ米政権がいっているように、
今回の新型コロナウイルスは、武漢P4研究所から間違って流出
したものと考えられます。しかも、それは早ければ、10月後半
か、遅くても11月には起こっていたのではないかと考えられる
のです。もし、中国がWHOに報告した12月31日であるとす
ると、その後の武漢での感染拡大のスピートがあまりにも早過ぎ
るからです。
 実際に武漢P4研究所では、今回のウイルスと96%一致する
ウイルスが存在しており、それが何らかの事故で流出してしまっ
たと考えられます。そうすると、その責任者は、石正麗氏という
ことになります。そのカギを握る石正麗氏の行方は、現在のとこ
ろわかっていないのです。
 頻繁に中国に滞在し、中国各地方の人口動態や社会状況に詳し
い米国人学者のスティーブン・モシャー氏は、今回のウイルス流
出について、ニューヨークの有力新聞「ニューヨーク・ポスト」
2020年2月21日に次の記事を書いています。
─────────────────────────────
 人民解放軍の高度ウイルス使用の生物戦争の最高権威で細菌学
者の陳薇少将が1月に武漢へ派遣された。陳少将は軍内部でこれ
までSARS(重症急性呼吸器症候群)やエボラ熱、炭素病はじ
め、コロナウイルスの研究をしており、武漢の生物安全実験室と
の関係が深い。中国当局は武漢の海鮮物市場からコロナウイルス
が発生したという説を流しているが、当初の感染者たちはいずれ
も同市場に足を踏み入れたことがなかった。同市場で売買された
コウモリが発生源という説もあるが、この市場では当時、コウモ
リは売られていなかった。          ──古森義久著
           『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす/
       非常事態で問われる国家のあり方』/ビジネス社
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/007]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ“武漢研究所流出説”に複数の状況証拠/トラン
  プ政権は動かぬ証拠を示せるか?       木村太郎氏
  ───────────────────────────
   「動かぬ証拠」を示すのは、難しいとは思うが、「状況証
  拠」ならば既にいくつか明らかにされている。「武漢研究所
  の危険を警告する電報が国務省へ送られていた」(ワシント
  ン・ポスト紙電子版4月14日)
   同記事によれば、米国政府は、2018年1月以来、北京
  駐在のリック・スウィツアー参事官らの視察団を同研究所に
  派遣して実情を視察させていた。その結果、視察団は、同研
  究所の運営に問題があることを警告する報告を「取扱注意電
  報」として国務省に送っていた。
   「武漢ウイルス研究所では、コウモリから採取したコロナ
  ウイルスがヒトに感染し、SARSの時のような感染拡大を
  招く恐れがあることを発見していた」報告はこう伝え、さら
  に研究所の安全対策についてこうも述べていた。
   「同研究所の科学者たちとの交流で、同研究所にはウイル
  ス流出を防止するために必要な熟達した技術者や調査官が決
  定的に不足していることが分かった」
   この警告が中国側に伝えられたかどうかは定かではないが
  新型コロナウイルスの汚染が拡大した2020年2月16日
  中国共産党の英字紙「グローバル・タイムズ」電子版に次の
  ような記事が掲載された。「ウイルス研究所の疫学的運営の
  抜け穴を修正するためのガイドラインが発表された」
            https://www.fnn.jp/articles/-/39936
  ───────────────────────────

武漢P4研究所.jpg
武漢P4研究所.
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2020年06月10日

●「テドロス事務局長は何をやったか」(EJ第5264号)

 トランプ米大統領は、「WHO(世界保健機関)は中国寄り」
と批判し、WHO脱退を宣言しています。WHOが中国寄りとい
うことは、現職のテドロス・アダノム事務局長が中国寄りの姿勢
ということになります。WHO事務局長の権限はそれほど大きい
のです。テドロス事務局長は一体何をやったのでしょうか。
 テドロス事務局長がパンデミック宣言をしたのは、2020年
3月11日のことです。しかし、これは本当の意味のパンデミッ
ク宣言ではないという識者がいます。国際政治評論家で、翻訳家
の白川司氏です。まず、WHOのパンデミック宣言を伝える日経
電子版の記事をご覧ください。
─────────────────────────────
 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は3月11日、世
界で感染が広がる新型コロナウイルスについて「パンデミック」
とみなせると表明した。WHOがパンデミックと認定したのは、
2009年に流行した新型インフルエンザ以来11年ぶり。中国
以外での感染ペースが加速する現状に強い懸念を示し、各国に対
策の強化を促した。         ──日経電子版記事より
─────────────────────────────
 確かにテドロス事務局長は「パンデミックとみなせる」といっ
ているだけです。実際に事務局長は、正確には次のように述べて
います。以下は、白川司氏の分析にしたがって書きます。
─────────────────────────────
 過去2週間、中国以外で、新型コロナウイルスによる肺炎の患
者数は13倍になっており、ウイルスの上陸国は3倍になってい
る。114カ国に11万8000人以上の患者がおり、4291
人が亡くなった。それゆえ、私たちはCOVID−19がパンデ
ミックにあるとみなしうると評価した。 ──テドロス事務局長
─────────────────────────────
 ここで、わざわざ中国を外して、それ以外の国について述べて
いることは注目に値します。白川司氏は、パンデミック宣言とみ
なしうるという部分の英語を示し、次のように述べています。
─────────────────────────────
 We have therefore made the assessment that COVID-19 can
 be characterized as a pandemic.
 ここでcanが使われている点に注意すべきだろう。canは「で
きる」というのが中心の意味で、ここは「みなそうとすればみな
せる」という意味になり、「今その可能性がある」と言っている
にすぎない。つまり、「パンデミックの可能性があるだけであり
まだパンデミックではない」と解釈することも可能なのである。
 このことは、後に続く言葉からも裏づけされる。「パンデミッ
クという言葉を軽々しく使うべきではない。もし使い方が不適切
だと、過度に不安をあおったり、もう戦えないと根拠もなく諦め
たりして、不必要な病気や死につながるからだ」
                  https://bit.ly/3dIUdcS ─────────────────────────────
 テドロス事務局長は、事態をパンデミックと呼ぶには、制御不
能の状態にならないといけないと考えているようです。事務局長
はこうもいっています。「今回がコロナウイルスによって起きる
初めてのパンデミックということになるが、それは制御可能なパ
ンデミックになる」と。非常にまわりくどいいい方です。なぜ、
このようなことをいったのでしょうか。
 白川司氏は、会見でのテドロス事務局長の次の言葉に注目して
います。
─────────────────────────────
 114カ国11万8OOO人の患者のうち、90%以上が4カ
国に集中しており、そのうち中国と韓国の2カ国では罹患数が有
意に下がっている。       ──テドロスWHO事務局長
─────────────────────────────
 白川氏によると、ここでいう4カ国とは、中国、韓国、イラン
イタリアですが、この会見の行われた3月11日の時点では、中
国の感染者数が他国を圧倒的していたのです。事務局長はそのこ
とに触れず、その中国を韓国と一緒に「罹患数が有意に下がって
いる」という表現で、明らかに中国の感染者数の多さから目をそ
らさせようとしています。
 さらに会見の終りの部分では、感染の中心地はもはや中国では
なく、ヨーロッパであるとの布石を打っています。
─────────────────────────────
 いまや新型肺炎渦の中国で報告されたよりも多くの患者が、ヨ
ーロッパにおいて、日々、報告されている。
 More cases are now being reported every day than were
 reported in China at the height of its epidemic.
                  https://bit.ly/3dIUdcS ─────────────────────────────
 そのうえで、テドロス事務局長は、2日後の3月13日、「新
型コロナウイルスのパンデミックの中心はヨーロッパである」と
宣言しています。白川司氏によると、このときの「中心」という
言葉に「epicenter」 を使っていますが、これは中心というより
も「震源地」を意味するかなり強い言葉だそうです。
 このテドロス事務局長の宣言によってメディアの論調は、これ
までの中国発の新型コロナウイルスの蔓延のそれから、ヨーロッ
パ中心に変わってしまったのです。つまり、テドロス事務局長は
これによって見事に「中国外しとヨーロッパへの責任転換」を成
し遂げたことになります。これでは、WHOが中国と共闘を組ん
でいると疑われても仕方がないでしょう。
 それにしてもWHOはどうなってしまったのでしょうか。今回
は白川司氏のレポートを中心に、WHOのテドロス事務局長によ
る新型コロナウイルスのパンデミック宣言を中心にご紹介しまた
が、2020年1月〜3月11日までの間にも、いろいろ納得の
いかないことが多々あったのです。明日のEJでは、それについ
て述べます。   ──[『コロナ』後の世界の変貌/008]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の傀儡「WHOテドロス事務局長」トンデモ発言録
  忌み嫌う台湾に学べ
  ───────────────────────────
   コロナ禍は人災である。世界的な大流行を招いた戦犯は、
  WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長その人だ。数々
  のトンデモ発言を聞けば、もはや中国の傀儡で“免疫不全”
  に陥っているのは誰の目にも明らか。彼が忌み嫌う台湾にこ
  そ、対策を学ぶべきではないか。
   もはや失笑を禁じ得ないが、国連のホームページには、こ
  んな紹介文がある。〈WHOは、グローバルな保健問題につ
  いてリーダーシップを発揮し、健康に関する研究課題を作成
  し、規範や基準を設定する〉今回もテドロス事務局長がリー
  ダーとして早々に警告を発すれば、世界に危機が周知され各
  国政府は感染対策を徹底できたはずだ。さる海外通信社の東
  京特派員が解説する。「彼はWHOで初めて医師の資格を持
  たずにトップとなった人物。中国から多額の経済援助を受け
  るエチオピアで長く保健相を務め、首根っこを習近平国家主
  席に掴まれているのです」故にWHOは1月5日、「中国で
  原因不明の肺炎が見つかった」と認めながら、同月30日ま
  で「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を先
  送り。ようやく発表した席でも、テドロス事務局長は災いを
  招いた国をこう庇(かば)った。〈中国は短時間で病原菌を
  特定し、即座に共有し、診断ツールの迅速な発展を導いた。
  内外に完全な透明性を約束した〉 https://bit.ly/2UBu7kH
  ───────────────────────────

テドロスWHO事務局長.jpg
テドロスWHO事務局長
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2020年06月11日

●「WHOは1月には何をしていたか」(EJ第5265号)

 WHOのテドロス事務局長は、今回のコロナ禍で、中国のため
に、何をやったのでしょうか。3月11日のパンデミック宣言ま
でに、彼が何をやったか、時系列的に検証することにします。
 報道によれば、WHOが中国武漢で発生した正体不明の感染症
の情報を得たのは、2019年12月31日のことです。中国か
ら正式に情報が伝えられたのはこの日といわれます。この時点で
は、人から人へ感染するかどうかは不明とされています。しかし
複数の情報によれば、中国ではこのウイルスが人から人へ感染す
ることは、かなり早くから、わかっていたはずです。
 1月2日、WHOは対策チームを発足させ、中国国内の専門家
と協力しつつ調査をはじめています。この時点で感染の中心地は
武漢市内にある海鮮市場ということになっています。1月10日
になって、WHO対策チームは、武漢を中心にコロナウイルスの
新型の発生を確認しますが、人から人への感染は依然不明である
とするものの、武漢市からの渡航者との接触は避けるべきである
と加盟国に提唱しています。その間、武漢での感染の拡大は、ま
さに風雲急を告げていたのです。
 1月中旬になると、日本でも感染者が発生するようになってい
ます。中国武漢からの観光客を案内して感染した都内在住の70
代のタクシーの運転手が、都内の屋形船で開かれた個人タクシー
組合支部の新年会に出席して、クラスター感染が起きたのもこの
頃のことです。
 WHOでは、1月22日の午後8時に、第1回の国際保健規則
(IHR)に基づく緊急委員会を開催しています。WHOの事務
局長は、通常この緊急委員会において、国際的に懸念される公衆
衛生上の緊急事態(PHEIC)宣言を発出し、WHO加盟各国
に対して警告し、さらなる情報提供を求めることになります。そ
のとき武漢では、爆発的に感染が拡大していたのですから、当然
のことながらWHOは、緊急事態宣言を発出するものと思われた
のです。しかし、きわめて不可解な話ですが、このときの緊急委
員会では、中国とその同盟国の反対で、テドロス事務局長による
緊急事態宣言の発出を見送っています。時期尚早であるというの
です。1月23日のことです。
 ところが中国政府は、その同じ23日に武漢市をロックダウン
しています。実は、このロックダウンは、きわめて変則的な時間
に通告され、実施されているのです。正確にいうと、1月23日
の午前2時5分に発布され、23日の午前10時から開始されて
います。通告から実施まで実に8時間もあります。この8時間の
空白は謎ですが、これについては改めて述べることにします。
 1月28日、習近平国家主席からの急な連絡で、テドロス事務
長とスタッフは、急遽北京に飛んでいます。そして、ツートップ
である習近平首席と李克強首相と面会しています。そのとき、テ
ドロス事務局長は、次のように中国政府を絶賛しています。
─────────────────────────────
 中国政府は、オープンかつ透明性のある情報開示をしている。
新記録といえる短期間で病原体を突き止め、WHOや各国のウイ
ルスの遺伝子配列情報を進んでシェアしている。
                ──WHOテドロス事務局長
─────────────────────────────
 1月30日、WHOは再度緊急委員会を開催し、新型コロナウ
イルスについて緊急事態宣言(PHEIC)を発出しています。
どう考えても、あまりにも遅い緊急事態の発出ですが、その記者
会見で、「緊急事態宣言の発出が遅れたのではないか」と問われ
テドロス事務局長は、実に珍妙な発言をし、直ちに側近に発言を
訂正されるドタバタを演じています。
─────────────────────────────
 22日の緊急委での緊急事態宣言の発出の見送りは適切であっ
たと考えている。その時点では、感染者はわずか82名で、死者
数はゼロだったからである。      ──テドロス事務局長
─────────────────────────────
 この発言に対し、WHO技術部門のリーダー、米国のマリア・
バン・ケーコブ医師は、「感染者82名うんぬんは中国以外での
数字であり、中国ではこの段階で7711人の感染に加え、1万
2167人の感染の疑い、1370人の入院患者に加え、170
人の死者が出ていた」と指摘し、数字の訂正を求めたのです。テ
ドロス事務局長にいわせれば、中国は感染を十分押さえ込める実
力を有しており、中国以外の国が問題なのだとハナからそう考え
ているようです。彼は、これほどの中国信者なのです。しかも、
次の言葉まで添えています。
─────────────────────────────
 緊急事態は発出しますが、そうだからといって、国際的なヒト
やモノの移動制限は推奨しない。    ──テドロス事務局長
─────────────────────────────
 テドロス事務局長は確信犯です。国際保健衛生分野のトップ外
交官・政治家として、「中国寄り」といわれることを十分承知し
たうえで、WHO事務局長として職務を果しています。テドロス
事務局長について、キャノングローバル戦略研究所研究員の本多
倫彬氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 状況の把握と封じ込めを求めるWHOのトップの目には、そも
そも中国寄りという姿勢を差し引いても、中国の取り組みは頼も
しく映っただろう。中国と距離の近い事務局長だからこそ、中国
からの情報を広範に入手できた可能性もある。逆に言えば、中国
を批判すればそうした情報が取れなくなるし、自らの支持母体を
失うという計算も働いたのかもしれない。いずれにしても、検査
数自体が少なく、また封じ込めも自粛という形の日本のような国
と比べたとき、中国はテドロス事務局長にとって優れたものに見
えたことだろうことは指摘できる。  https://bit.ly/3h8osfz ─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/009]

≪画像および関連情報≫
 ●批判呼ぶテドロス事務局長の「中国擁護」/背景にWHOと
  中国の蜜月の仲
  ───────────────────────────
   肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり
  中国当局の初動の遅さを指摘する声が世界で高まる中、世界
  保健機関(WHO)のテドロス事務局長が中国を擁護し続け
  ている。テドロス氏が中国寄りの発言を続ける背景には、長
  年にわたる中国とWHOの「蜜月の仲」があるとされる。
   テドロス氏は2月12日、新型肺炎の治療法やワクチンに
  ついて話し合う専門家会合後の記者会見で語気を強めた。事
  の発端は、会場の記者が「WHOは、中国の対応を称賛する
  ように中国から圧力を受けたのか」とテドロス氏に批判的な
  質問をぶつけたことだ。
   質問を聞いたテドロス氏はこわばった表情で、「中国は感
  染の拡大を遅らせるために多くの良いことをしている」と説
  明。「ほとんどすべての加盟国が、中国の対応を評価してい
  る」と言い切った。
   テドロス氏はさらに、中国の習近平国家主席について「知
  識を持っており、危機に対応するリーダーシップを発揮して
  いる」と語り、称賛を繰り返した。これまで、テドロス氏は
  新型ウイルスの問題で、一貫して中国の肩を持つような発言
  を続けてきた。中国外務省によると、テドロス氏が1月28
  日に習氏と会談した際も「(中国は)時宜にかなった有力な
  措置を講じている」と対応を評価した。
                  https://bit.ly/2Ym1XLk
  ──────────────────────────

習近平国家主席とテドロスWHO事務局長.jpg
習近平国家主席とテドロスWHO事務局長
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2020年06月12日

●「WHO事務局長は時間稼ぎに協力」(EJ第5266号)

 テドロス事務局長は、緊急事態宣言を発出した2020年1月
30日の記者会見で次のようにいっています。
─────────────────────────────
 1.WHOは新型肺炎の発生を制御する中国の能力に対して
   自信を持っている。
 2.緊急事態宣言が発出されても、中国への渡航や交易を制
   限する必要はない。
 3.だが医療体制の整備が遅れている国への感染拡大防止の
   支援は必要である。
─────────────────────────────
 このようにいくら「中国寄り」と批判されても全く怯むことな
く、手放しで中国を礼賛しています。
 これによって中国は大助かりです。これを受けて、1月31日
付の「環境時報」と、中央テレビ局CCTVのニュースは、次の
ように報道しています。これは、中国の情勢に詳しい遠藤誉氏に
よる情報提供です。
─────────────────────────────
◎WHOは何といったか
 WHOは確かに緊急事態宣言を出したものの、しかしそれは決
して中国に対して自信がないことの表れではない。それどころか
全くその逆で、テドロスは「中国が疫病の感染予防に対して行っ
ている努力とその措置は前代未聞なほど素晴らしい」とさえ言っ
ているのだ。さらにテドロスは、中国は感染予防措置に関して、
「新しいスタンダード」を世界に先んじて打ち出すことに成功し
ているとさえ言っている。
◎中央テレビ局CCTVニュース
 たしかにWHOは緊急事態宣言を出したが、しかしこれはあく
までも中国以外の国での感染拡大を防止するために出されたもの
で、WHO事務局長はむしろ中国が現在行っている予防対策とあ
らゆる措置を高く評価し、「歴史上、ここまで立派にやった例は
ない」とまで断言し、中国を絶賛している。
                  https://bit.ly/2AS8Iwo ─────────────────────────────
 テドロス事務局長は、中国のための時間稼ぎに協力していたと
いえます。2020年1月といえば、新型コロナウイルスの感染
元は中国の武漢であり、感染者数も死者数も、すべて中国が中心
だったはずです。この状況を変えるきっかけになったのは、1月
23日の武漢市のロックダウンです。これによって、感染者数は
少しずつ押さえ込まれ、死者数も減っていったのです。そして、
3月になって、感染の中心地が中国ではなく、ヨーロッパに移る
と、すかさずパンデミックを宣言し、「中国武漢発のウイルス」
という印象を弱めることに成功しています。テドロス事務局長は
この中国の時間稼ぎに最大限の協力をしたのです。
 つまり、中国は、ヨーロッパでの感染の拡大を待ち、それらの
国に大量の医療物資や医師団を派遣するなど、まさに「放火犯が
消防士」に変身したかのような活動を行い、一帯一路に賛同する
国々を中心に支援を拡大したのです。それによって「中国寄り」
の国を増やして行こうという戦略です。テドロス事務局長は、こ
ういう状況になるように中国に協力して時間を稼ぎ、そのうえで
3月11日にパンデミックを宣言したのです。
 実は中国にとって一番重要だったのは、WHOが1月22日の
緊急委員会で、緊急事態宣言(PHEIC)の発出を先送りして
いることです。これに関連するのは、1月23日午前10時から
の武漢市のロックダウンです。
 1月22日に習近平主席は、フランスのマクロン大統領やドイ
ツのメルケル首相と電話会談を行っています。そこで習近平首席
は、次のことを訴えたそうです。
─────────────────────────────
 中国は感染発生以来、予防制御の措置を周到に行い、WHOな
どにも速やかに情報を提供している。中国は、国際社会と協力し
て、対策を取る考えである。       ──習近平国家主席
─────────────────────────────
 いうまでもなく、フランスやドイツはWHOの有力国であり、
発言力が強い国です。習近平主席が、それら2つの国のトップに
直接訴えたかったのは、「どうか、今回は緊急事態宣言を出さな
いでほしい」ということです。すべてうまくテドロス事務局長が
仕切ると思うものの、念のため、それらの有力国に根回しをした
ものと思われます。
 問題は、昨日のEJで述べているように、武漢市のロックダウ
ンの「通告」と「実行」には8時間もの時間差があることです。
このことを指摘しているのも中国分析の第1人者である遠藤誉氏
です。それでは、武漢市のロックダウンはいつ通告されたかとい
うと、1月23日午前2時5分に通告されていますが、その実行
は、午前10時からです。実行までに8時間もあります。ロック
ダウンの内容は、武漢市政府のウェブサイトに表示されたもので
すが、これを見たら、あなたは、武漢市に留まりますか、それと
も脱出しますか。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルス感染による肺炎の流行を防御することを全
面的に遂行し、効果的にウイルスの伝染経路を遮断し、疫病の蔓
延を断固阻止し、人民群衆の生命安全と健康を確保するために、
ここに以下のことを通告する。
 2020年1月23日10時を以て、全市のバス、地下鉄、フ
ェリーボート、長距離旅客輸送を含む公共交通を全て、暫定的に
停止する。特殊な原因がない限り、市民は武漢を離れてはならな
い。武漢から外部に移動する飛行場や列車の駅は暫時封鎖する。
いつごろ回復するかは追って通知する。広大なる市民と旅客の理
解と協力を求める!         https://bit.ly/2AcL9P7
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/010]

≪画像および関連情報≫
 ●WHOの中国賛美「過剰」/テドロス氏、政治家の側面
  ―元法律顧問
  ───────────────────────────
   【ベルリン時事】世界保健機関(WHO)の元法律顧問、
  ジネーブ国際開発高等研究所のジャンルカ・ブルチ非常勤教
  授は4月28日、時事通信の電話インタビューに応じ、新型
  コロナウイルスをめぐるWHOの中国賛美について、「過剰
  だ」と苦言を呈した。テドロス事務局長については、前任者
  より「政治家の側面」が強く、危機対応の手法にもそれが現
  れていると分析した。主なやりとりは以下の通り。
  ―中国への配慮で対応が遅れたと批判がある。
   WHOは警察ではなく、(加盟国の)調査権限はない。通
  常はNGOなど民間情報源も使うが、情報統制されている中
  国では、難しかった。情報提供の協力確保のため、友好姿勢
  に徹したのかもしれない。とはいえ繰り返される中国賛辞に
  は驚いた。理由を臆測したくないが、少々過剰だった。
  ―テドロス氏とチャン前事務局長の違いは?
   テドロス氏はエチオピアで保健相や外相を歴任し、政治家
  の側面が強い。チャン氏は政治のバックグラウンドはなかっ
  た。過小評価されていることであるが、このため、テドロス
  氏はトランプ米大統領など、大物政治家にコンタクトを取り
  やすい。
  ―WHOと政治の関係は?
   国連機関は政治的であるのは避けられない。緊急事態宣言
  は専門家委員会の助言に基づくが、政治的意味合いも強く、
  純粋に技術的なことと捉えるのは幻想だ。対象国の国民を驚
  かせないようにする必要がある。テドロス氏が1月末の宣言
  前に中国の習近平国家主席に会ったことを批判されたが、必
  要なことだった。        https://bit.ly/2YhTglq
  ───────────────────────────

中国・武漢鉄道駅前.jpg
中国・武漢鉄道駅前
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2020年06月15日

●「8時間の空白を設けた理由は何か」(EJ第5267号号)

   2020年1月23日、午前10時、武漢市のロックダウンが
スタートしています。しかし、その通告は、それより8時間も前
の23日の午前2時5分に武漢市政府のウェブサイトに掲載され
ていたのです。中国では、政府の重要な通告はウェブサイトに掲
示されるので、中国国民は日本人と違って、政府のウェブサイト
はつねによく見ています。
 当時武漢市は、新型コロナウイルスが蔓延し、感染リスクは非
常に高く、ある程度の財力のある家庭なら、逃げ出す家庭は少な
くないと思われます。まして春節の季節です。もともと海外旅行
を計画していた家庭も多いはずです。そういうとき、明日の10
時になったら、武漢市が封鎖されるということを知ったら、多く
の人が逃げ出すのは必至です。
 この「空白の8時間」という情報をブログで知らせてくれたの
は、中国分析の第1人者といわれる遠藤誉氏です。遠藤氏は、こ
の空白の8時間について次のように述べています。
─────────────────────────────
 なぜ、武漢市はわざわざ「さあ、脱出するなら今だよ!」とい
うような通告の仕方をしたのか。伝染が拡大するのを本気で防ぎ
たいと思うのなら、こんなことはしないはずだ。
 私は1947年から48年にかけて、長春において中国共産党
軍(八路軍)による食糧封鎖を受けている。封鎖を事前に知らせ
るどころか、封鎖は気づかれないようにジワジワと迫ってきた。
気が付いたら長春市全体が鉄条網で包囲され、市民は長春市から
出られないようになっていたことを知った。長春市内にいる国民
党の一派(正規軍から差別待遇を受けていた雲南60軍)が共産
党軍側に寝返って長春は48年10月に陥落したが、その間に餓
死した中国人一般庶民は数十万に及ぶ。長春食糧封鎖という経験
と中国政府の事実隠蔽に関して生涯をかけて闘っている私にとっ
て、この「空白の8時間」は「あり得ない措置」なのである。
          ──遠藤誉氏  https://bit.ly/3cVVLyX ─────────────────────────────
 武漢市は、中国の中部、湖北省の東部にある人口1000万人
を超える大都市です。当時この都市に新型コロナウイルスが蔓延
しており、このウイルスを春節の人の大移動によって、他に感染
を拡大させないために都市全体を封鎖しようというのです。大胆
な措置ですが、人の動きを止めれば、感染を封じ込めることは可
能になるものの、経済には壊滅的なダメージを与えます。
 感染を他に拡大させないためであれば、都市のロックダウンは
遠藤氏のいう通り、間髪を入れず行う必要があります。なぜなら
通告と実施の間に8時間もの空白時間を設ければ、その間に武漢
市を逃げ出す人が多くなり、感染が中国の他の都市や、海外に拡
がってしまう恐れがあるからです。それをあえてやったのです。
 ウイルスの感染源は、ここまでの検討によれば、武漢P4研究
所であると考えられ、その流出はおそらくミスと思われます。な
ぜなら、中国にとってわざとそれをやるメリットは少ないからで
す。本来であれば、中国はその情報を世界に公開し、早く押さえ
込むベきだったのですが、想定以上に感染が拡大してしまい、隠
蔽せざるをえなくなったものと思われます。
 ロックダウンの通告と実施の間に、大幅な時間を空けたことの
真相は推測するしかないのですが、習近平政権は感染を中国だけ
ではなく、全世界に拡散させたかったのではないでしょうか。と
くに米国やヨーロッパに感染を拡大させたかったものと思われま
す。そうすることによって、中国には大きなメリットがもたらさ
れるからです。
 ここで6月3日のEJ第5259号でご紹介したハドソン研究
所の上級副社長、ルイス・リビー氏の言葉を思い出す必要があり
ます。その言葉を再現します。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスが主に中国国内で猛威を振るっている限り
中国経済の成長だけを妨げ、中国政府だけが汚名を被る事態を招
くこととなる。習近平中国国家主席にとっては困難が増し、悪夢
のような展開が待っていた。その間ずっと、世界経済は予想どお
り飛躍し、中国から顧客を奪い、中国が長い間求めている栄光を
横取りするかに見えた。しかし、パンデミックは中国にとって僥
倖となる可能性も持っていた。新型コロナウイルスが蔓延すれば
中国政権内部の悩みは拡散し、また一方で、新型コロナウイルス
感染症で経済が弱体化した国々は、中国製品に対する依存度を高
めざるを得なくなる。トランプ大統領の再選はもはや確実ではな
くなり、アメリカ経済の弱体化は、アメリカの国防支出に影響を
与えるに違いない。         https://bit.ly/2Atk5KQ
─────────────────────────────
 もし、ミスによって武漢ウイルス研究所からウイルスが流出し
武漢市をはじめ、周辺地域へ感染が拡大した場合、感染が中国内
に留まっている限りにおいて、そのダメージは中国のみが負うこ
とになります。当たり前です。まして中国は、米国と経済貿易面
で深刻な経済戦争をしており、中国としては、一歩も引けない状
況にあります。これにウイルス感染拡大が加わると、中国経済は
大きなダメージを被ることは必至です。
 しかし、新型コロナウイルスの感染が全世界に拡がり、パンデ
ミックになれば、その痛みは全世界が均一に負うことになり、中
国だけが不利になることはないのです。いや、むしろ情報を握っ
ている分、中国にとって有利です。そして、放火犯であるのに消
防士の役割を演じ、中国への他国の依存度を高めることも可能で
す。そのために、空白の8時間を設けて、感染しているリクスの
高い武漢市民を世界に脱出させたのではないでしょうか。
 事態は、ルイス・リビー氏のいう通りになっています。コロナ
対策の失敗で、習近平主席にとって最大の難敵であるトランプ米
大統領の再選も難しくなりつつあります。しかし、この作戦を成
功させるにはWHOの全面協力が不可欠になります。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/011]

≪画像および関連情報≫
 ●中国はなぜコロナ大拡散から抜け出せたのか?
  ───────────────────────────
   中国がコロナから抜け出せたのは一党支配体制だからだと
  いう側面は否定しないが、しかしそれより大きいのは鍾南山
  という「体制に屈しない気骨の免疫学者」がいたからだ。ウ
  イルスの前に一党支配体制はむしろ脆弱だ。
   中国における免疫学や呼吸器学などの最高権威である鍾南
  山は1936年10月20日に江蘇省の南京市で生まれた。
  1960年に北京医学院(現在の北京大学医学部)を卒業し
  文化大革命時には下放され、文革が終わった1979年にイ
  ギリスのエディンバラ大学に。1992年から広州医学院院
  長(現在の広州医科大学学長に相当)などを務めた。
   父親は北京協和医学院とニューヨーク州立大学を卒業し、
  広東省の中山医学院の教授になり、母親も協和医科大学を卒
  業後、広東省で華南腫瘍医院を創設し副院長を務めたが、文
  化大革命で知識人として糾弾され自殺している。
   このことが大きな原因の一つになっているのだろう。鍾南
  山は「反体制」とまでは言わないにしろ、体制におもねるこ
  とがない。2002年に発生し、2003年に大流行したS
  ARS(サーズ。重症性呼吸器症候群)の時には、感染の中
  心地となった広東省で広州市呼吸器疾病研究所の所長として
  異常を察知し、SARSの脅威を隠蔽しようとする江沢民政
  権に対して異議を唱え、事態の深刻さを訴えた。結果、SA
  RSの(あれ以上の)拡大を抑えることに成功している。以
  来、民族の英雄として人民の尊敬を集めている。
                  https://bit.ly/37qnruy
  ──────────────────────────

遠藤誉氏.jpg
遠藤誉氏


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2020年06月16日

●「緊急事態宣言見送り万死に値する」(EJ第5268号)

 先日、久しぶりに書店に行ったところ、滝田洋一氏の新刊書を
見つけたので、購入しました。
─────────────────────────────
                    滝田洋一著
    『コロナクライシス』/日経プレミアシリーズ
─────────────────────────────
 私は、テレビ東京の報道番組「ワールド・ビジネス・サテライ
ト/WBS」を必ず見ており、いつも滝田洋一氏のニュース解説
を聞いています。この番組の現在のメインキャスターは大江麻理
子氏ですが、私は、現在東京都知事の小池百合子氏がキャスター
をしていた頃からこの番組を視聴しており、私の重要な知識源の
ひとつになっています。
 さて、滝田洋一氏の本で、1月22日〜1月末日まで──今と
なっては、この期間は新型コロナウイルスの日本の防疫にとって
非常に重要な10日間だったのですが──そのあたりの一般には
知られざる情報が載っていましたので、そのことについて、ご紹
介したいと思います。
 もし、WHOの緊急委員会が1月22日に緊急事態(PHEI
C)宣言を出していたら、日本の感染拡大の状況は大きく変わっ
ていたと思うのです。この時点でWHOが緊急事態宣言を出せば
日本政府は少なくとも武漢からの中国人の受け入れを制限してい
たと思われるからです。なぜなら、この宣言は、国際的に懸念さ
れる公衆衛生上の緊急事態宣言を意味するからです。
 日本政府は、習近平国家主席の国賓としての招聘を決めている
ので、中国人の入国制限措置は取りにくかったことは確かです。
しかし、WHOが緊急事態宣言を出せば話は別です。なぜなら、
入国制限をする強力な理由になるからです。日本だけでなく、世
界中の親中国の国家もWHOのお墨付きがあれば、入国制限をす
る国が続出したはずです。そういう意味において、WHOが22
日に緊急事態宣言を見送ったことは万死に値します。
 もっとも、この1月20日前後の日本の状況は、新型コロナウ
イルスの感染について、中国武漢の不幸な出来事ぐらいの感覚で
しか受け止めていなかったと思います。日本国内の新型コロナ患
者が最初に見つかったのは1月16日のことだったからです。
 この人は、30代の男性で、1月3日から発熱症状があり、6
日に武漢市から日本に帰国しています。9日になると、39度の
高熱が出て、肺炎の症状が見られたことから、10日から入院し
15日は自宅療養中だったといいます。しかし、この時点では、
ヒトヒト感染が起きるかどうかも不明だったのです。その重要な
情報を中国もWHOも隠蔽していたフシがあります。したがって
多くの日本人は、「武漢なんか行くから、そういう病気にかかる
んだ」ぐらいの感覚でほとんど警戒していなかったと思います。
滝田洋一氏は、著書で、この頃の印象について、次のように述べ
ています。
─────────────────────────────
 奇妙なことに、中国からの情報の時計は止まっていた。41人
の患者が確認され、61歳の男性1人が死亡、6人が重症──武
漢市の当局が感染の拡大を隠蔽していたためだが、日本で患者が
見つかったのに、なぜ現地で患者が増えないのだろう、ともっと
疑問を抱くべきだった。足元の出来事に目を奪われ、全体観を持
てなかったのは、記者としての反省点である。 ──滝田洋一著
        『コロナクライシス』/日経プレミアシリーズ
─────────────────────────────
 22日にWHOの緊急委員会が、PHEICを見送ったことに
ついて、仏紙「ルモンド」は、中国は、中国の友好国に圧力をか
けて、PHEIC発出に反対したと書いています。明らかに中国
は、この時点ではこのウイルスの感染を世界的に拡大させたかっ
たことは確かです。
 滝田洋一氏は、WHOの緊急会合に関連して、ウェブサイトに
掲載された写真のことを書いています。添付ファイルをご覧くだ
さい。その時点で掲げられていたのは、上の写真です。一見発生
地の中国のように見えますが、よく見ると日本の成田空港です。
NTTの電話が映っているからです。こんなところまでWHOは
中国に気を遣っているのです。滝田氏は、この件についてウェブ
で発信しているので、WHOも気が付いたのでしょう。その後、
下の写真に差し替えられています。下の写真の国籍は明確ではあ
りませんが、中国ではないと思います。テドロス事務局長は、そ
んなところまで中国に配慮しているのです。
 産経新聞ワシントン駐在客員特派員の小森義久氏は、1月の最
後の10日間がどれほど日本にとって重要であったかについて、
自著で、次のように述べています。
─────────────────────────────
 この1月の最後の10日ほどは、日本としても感染者を武漢か
ら自国内には入れないための防止策をとるには、もっとも効果の
ある期間でもあったのだ。だが安倍政権は、中国から日本へのウ
イルスの流入を止めるためには、なにもしなかった。
 他方、1月下旬の段階では他の多くの諸国がすでに中国からの
自国への入国を禁止、あるいは制限していた。北朝鮮、ロシア、
オーストラリア、フィリピン、香港、タイ、台湾、モンゴルなど
多数の国や地域が中国滞在歴のある外国人の入国、入城を全面停
止するようになった。明らかに危険な感染症の広がりを防ぐため
の医療上の必要、人道的な見地からの措置だった。その措置には
中国人を排斥するなどという民族差別的な意図などは皆無だった
ことは明白である。入国禁止の対象となったのは中国籍の人間と
いうことではなく、あくまで中国領内に最近まで滞在していた外
国人とされていたのだ。           ──小森義久著
           『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす/
      非常事態で問われる国家のあり方』/ビジネス社刊
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/012]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナウィルス対応から見る世界保健機関(WHO)
  の危機対応体制の課題
  ───────────────────────────
   新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は、国際協調が、全
  世界を巻き込む国家の危機においていかに脆いものであるか
  を白日の下に明らかにした。現代社会は、ヒト、モノ、カネ
  そして情報が国境を越えて流通するのを量的、質的、そして
  時間的に促進するグローバリゼーションによって、築かれて
  きた。しかし、今回の感染症危機は、まさにこのグローバリ
  ゼーションから復讐を受けているようだ。中国の武漢で最初
  の症例が報告されてから、世界中の死者が20万人を超える
  というグローバルな危機的状況に陥るまでわずか5か月しか
  かかっていない。そして、グローバル化したサプライチェー
  ンは、各国の危機管理にも大きな影響を及ぼした。世界各国
  がほぼ同時多発的に危機的状況へと陥いる中、感染症対応の
  ための医療機器や防護服、マスクをめぐり一部の国家間では
  中世さながらの争奪戦が起きる始末であった。
                  https://bit.ly/2zu0tGr
  ───────────────────────────
  ●添付ファイルの出典/https://bit.ly/3hmLQ94

WHOのウェブサイトの写真.jpg
WHOのウェブサイトの写真
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2020年06月17日

●「感染拡大の原因について解明する」(EJ第5269号)

 新型コロナウイルスが武漢市から感染が拡大したことは、間違
いのない事実です。しかし、中国政府は、何も証拠を示さずに、
それを公然と否定しています。中国は自分たちにとって不利なこ
とは認めない国です。ところで、武漢とは、どういう都市なので
しょうか。武漢には行ったことがないので、北京に駐在していた
こともある古森義久氏の文章をお借りして、ご紹介することにし
ます。無駄のない非常に適切な紹介であると思います。
─────────────────────────────
 武漢の人口は2019年の時点で千百万人ほどだった。中国の
主要都市のなかでは重慶の二千八百万人、上海の二千四百万人、
北京の千八百万人などにくらべても、それほどは劣らない住民の
多い都市なのだ。中国全体の各都市では人口に関して武漢は十数
位となる。ちなみに東京都の人口は千三百九十万人ほどである。
武漢より三百万人ほどしか多くない。武漢市を中心とする湖北省
の人口は五千九百万人ほど、日本の総人口のおよそ半分である。
 一方、面積でみると、湖北省が日本全体の半分ぐらい、武漢市
だけの面積はちょうど北海道に匹敵する。つまり、武漢は、北海
道ほどの広さの地域に、東京都並みの人口が住んでいるというこ
となのだ。やはり中国は面積も人口も巨大なのである。
                      ──小森義久著
           『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす/
      非常事態で問われる国家のあり方』/ビジネス社刊
─────────────────────────────
 もうひとつ頭に入れておくべきことがあります。それは、20
20年の中国の春節の期間です。それは、1月24日から30日
までです。もし、WHOが1月22日の緊急委員会で、緊急事態
宣言を出していれば、世界各国は中国からの旅行者を入国拒否す
るはずなので、新型コロナウイルスの世界拡散を相当防止できた
はずです。しかし、WHOは中国からの強い要請を受けて、この
時点での緊急事態宣言を見送っています。
 これを中国側から見ると、春節で、中国から海外へ旅行に出よ
うとしている膨大な旅行者を足止めをするのではなく、黙ってそ
のまま送り出しています。とくに武漢市からの海外旅行者につい
ては、感染者も相当含まれると思われるのに、この時点ではどこ
の国も、空港などで厳しい防御対策をとっていないので、感染は
世界中に拡がってしまうことになります。中国政府は、それを承
知のうえで、WHOに働きかけて、緊急事態宣言の発出を見送っ
たのです。とくに国際機関であるWHOとしては、絶対にやって
はいけないことです。
 1月23日の中国政府による武漢市封鎖は、通告から実施まで
8時間以上の時間があり、その間に、大勢の人が武漢市から脱出
してしまったことについて、古森義久氏は、産経新聞での同僚で
中国の事情に詳しい戸板記者の報告として情報を把握しており、
次のように伝えています。
─────────────────────────────
 その武漢全域の閉鎖という情報が事前にもれて、広がった。閉
鎖が実際に実行される1月23日午前10時の数10時間前に、
その情報が市民側に伝わってしまったのだ。
 矢板記者の報告によると、その結果、23日の未明から早朝に
かけて多数の武漢市民が市外へと脱出する動きが起きた。無数の
老若男女が鉄道の駅、空港、高速道路などに殺到し、大混乱が起
きた。矢板記者の知人の共産党幹部も家族とともに23日未明に
自動車で武漢を抜け出して、隣接する江西省の親戚の家に逃げた
という。その幹部はその後、インターネットで逃亡の様子を自慢
げに公開していたが、各地で「逃亡武漢人」への批判が高まると
あわててそれを削除してしまった。
 武漢市が周辺の地域から隔離され、市内にいる人間はだれひと
り他の地域に行けないとなれば、しかもその隔離の期限がどれほ
ど長くなるかもわからないとなれば、逃げ出したいと思う人たち
が多数いても、ふしぎはないだろう。
                ──小森義久著の前掲書より
─────────────────────────────
 古森義久氏によると、遠藤誉氏が指摘した武漢市封鎖の通告と
実施の約8時間の時間差に気がついて、武漢市から脱出した市民
は、約500万人以上としています。これは、後になって、武漢
市長が、記者会見で明らかにしています。実に500万人以上の
武漢市民が、武漢から逃げ出したのです。
 振り返ってみると、昨年の12月1日から今年の1月20日ま
での約50日間、新型コロナウイルスについて、中国政府として
は、一切公式な国際的対応をしていないのです。これでは、事実
を隠蔽していたと批判されても、仕方がないといえます。習近平
国家主席にとっては、どうしても春節が始まるまでは、本当のこ
とはいえないと考えていたものと思われます。しかし、テドロス
事務局長は、それがわかっていたはずです。
─────────────────────────────
 最近の中国の風潮では、この旧正月の休みに海外を旅する人た
ちも何十万、何百万という単位となっていた。武漢の市民たちの
間でも当然、同じ傾向があった。だから結果として、コロナウイ
ルス感染の確率の高い武漢の人たちが隔離の直前にどっと洪水の
ように流出していったのである。いまからみれば、この人たちこ
そが、新型コロナウイルスをグローバルに感染させた最大の容疑
者集団だった。武漢市内でそれまで激しい勢いで広がっていたウ
イルス、それに対してなんの防疫措置もとられなかった異様な環
境、その環境のなかで暮らしていた五百万の人々・・。感染の中
国全土から他の諸国への爆発的な広がりは、ごく自然な成り行き
となったのである。この武漢脱出の感染の疑いの濃い人たちがそ
の後、日本や韓国や、あるいはヨーロッパの諸国にまで避難して
いったことが明らかとなった。  ──小森義久著の前掲書より
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/013]

≪画像および関連情報≫
 ●武漢の新型コロナウイルス情報を「隠蔽」したのは誰か(渡
  辺真理子・学習院大学経済学部教授)
  ───────────────────────────
   4月に入ってから米トランプ政権が、中国が新型コロナウ
  イルスの発生を隠蔽したと追及を強めている。これは機密情
  報なども絡む可能性があり、真相はなかなかわからない。し
  かし、公開された情報から、官僚機構がこの新型感染症発生
  の情報をどう扱ったのか、ある程度見えてくる。
   中国の中央集権は塊問題」という課題を抱えている。ここ
  で、「条」は貫徹する、「塊」はブロックするという意味で
  あるが、中央政府による垂直的なコントロールと地方政府の
  裁量のせめぎあいを示す言葉として定着している。この問題
  は、中国のあらゆる政策に出没する。そもそも、ケ小平がス
  タートした改革開放も条塊問題の調整だった。中央のコント
  ロールよりも、地方政府の裁量を高めてインセンティブを生
  み、地方間の競争を通じて、経済発展を達成した。そのため
  に、本来は議会である人民代表大会の管轄である徴税権が、
  長らく地方政府に「授権」されてきた。
   地方政府による保護主義で市場のゆがみが発生したが、経
  済発展に貢献した。しかし、習近平政権は、徴税権を地方政
  府から人民代表大会に戻す決定をしている。実際、地方が収
  集する情報をなかなか把握できない中央政府がじれて独自の
  情報収集体制を構築することはままある。国内総生産(GD
  P)の集計を行う国家統計局はその形をとっている。
                  https://bit.ly/2UN1nFk
  ───────────────────────────

古森義久産経新聞ワシントン駐在客員特派員.jpg
古森義久産経新聞ワシントン駐在客員特派員
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2020年06月18日

●「なぜ米国がテドロスに怒ったのか」(EJ第5270号)

1月22日、WHOは、緊急委員会を開いたものの、中国に配
慮して緊急事態宣言(PHEIC)を見送っています。テドロス
事務局長のこの判断が、新型コロナウイルスが世界に拡散し、3
月11日のパンデミックにいたるのです。
 そのとき、米国ではこの新型コロナウイルスの感染に関しては
まったく無風の状態だったのです。米国のワシントン州で、新型
コロナウイルスの感染者が確認されたのは、WHOの緊急委員会
の前日の21日のことですから、きっと米国民は、その感染者は
武漢からの帰国者だろうぐらいの感覚だったと考えられます。
 2020年1月30日、WHOは緊急事態宣言を発出していま
すが、1月28日に、急遽習近平主席に呼び出されて、テドロス
事務局長は、中国に飛んでいます。おそらくそこで、習主席とは
1月30日の緊急事態宣言について打ち合わせがなされたものと
思われます。したがって、1月30日の緊急事態宣言のさいの彼
の中国への配慮は、次のように異常なものであったのです。
─────────────────────────────
 中国側は、前例のない疫病の拡大に対して、前例のない対応を
している。オープンかつ透明性のある情報開示をしているし、新
記録と言えるほどの短期間で病原体を突き止め、WHOや各国に
ウイルスの遺伝子配列情報を進んでシェアしている。宣言の理由
は、中国で発生したからではなく、他の国々で発生していること
だ。緊急事態宣言をしたからといって、中国との取引や旅行を取
りやめる理由はない。    ──テドロス事務局長の発言から
─────────────────────────────
 テドロス事務局長の発言を分析すると、中国での感染者が減り
はじめる2月中旬までは、楽観論をいい続けて、中国での感染者
が下火になったことが周知された後になると、一転して、悲愴な
表情で「世界全体でパンデミックを封じ込めなければならない」
といいはじめています。テドロス事務局長は、パンデミック宣言
に向けて、次のように述べています。
─────────────────────────────
    We have a simple message to all countries−
    test, test, test.
 私たちがすべての国に伝えるべき唯一のことは、検査あるのみ
ということだ。すべての国が、罹患の疑いのある患者を検査でき
るようにしなければならない。目隠しされたままで、このパンデ
ミックは戦えない。          ──テドロス事務局長
─────────────────────────────
 1月30日のWHOの緊急事態宣言によって、日本は、武漢市
のある中国・湖北省滞在の外国人の入国を拒否すると、安倍首相
は表明しています。実施は2月1日からです。
 1月31日、米国は、国務省が中国全土への渡航禁止を決め、
中国訪問者の入国拒否を発表しています。アレックス・アザー保
健福祉長官は「公衆衛生に関する緊急事態」を宣言し、過去14
日以内に中国を訪れた米国人に対し、帰国後14日間の隔離を義
務づけています。つまり、中国への人の出と、中国からの人の入
りの両方を禁じたのです。この措置に関し、中国は不満を訴えた
ほどです。これらの措置は非常に素早く行われ、トランプ大統領
は、2月10日のニューハンプシャーでの集会で、次のように、
楽観的なメッセージを送っています。
─────────────────────────────
 4月に暖かくなったら、コロナウイルスの影響はなくなるだろ
う。すべてはうまくいくだろう。    ──トランプ米大統領
─────────────────────────────
 2月中旬までは、米国は何もかも好調だったのです。2月12
日の米国株式市場で、ダウ工業株30週平均は、2万9551ド
ルを付け、史上最高値を記録しています。3万ドルまであと一歩
のところにきていたのです。
 しかし、2月25日、この株高はCDC(アメリカ疾病予防管
理センター)のナンシー・メッソニエ博士が、「コロナウイルス
が米国全土に拡散している可能性がある」との警告を出すに及ん
で、変調をもたらすことになります。
 この米国の株価に関連して、WBS解説キャスターの滝田洋一
氏は、自著のなかで、ニューヨーク大学のヌリエル・ルービニ教
授の2月26日の「マーケットは依然慢心」という警告を紹介し
ています。ルービニ教授は「ドクター・ドゥーム(破滅)博士」
の異名がある少し異色の経済学者です。
 ヌリエル・ルービニ教授によると、相場下落があっても、マー
ケットは慢心をしているとして、次のように述べています。
─────────────────────────────
@まず感染(エピデミック)は中国国内に限定され、グローバル
 な大流行(パンデミック)にはならない。
A次に感染は1〜3月期末までにピークを迎え、中国経済や世界
 経済に大きな打撃をもたらさない。
Bそして景気はいったん落ち込んでもX字型に回復し、4〜6月
 期以降は力強い成長軌道に乗る。
Cさらに金融・財政政策の担当者は、市場と経済を支えるために
 早期に強力な政策を講じるであろう。    ──滝田洋一著
        『コロナクライシス』/日経プレミアシリーズ
─────────────────────────────
 ヌリエル・ルービニ教授は、これら4つは、いずれも誤りであ
るといっています。実際に@は、パンデミックになっているし、
Aについては、3月になっても収まっていないし、中国経済や世
界経済に大ダメージを与えています。BのV字回復など、ナンセ
ンスそのものです。
 しかし、Cについては、幸いなことに、ルービニ博士は見通し
を誤っています。各国の中央銀行は、疾風怒涛の早わざをみせて
いるからです。いずれにしても、2月26日という早い時点での
ルービニ教授の的確な見通しは見事なものであるといえます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/014]

≪画像および関連情報≫
 ●ヌリエル・ルービニ教授「新型コロナにより10年間の景気
  低迷が訪れる」
  ───────────────────────────
   ニューヨーク大学のヌリエル・ルービニ教授が、新型コロ
  ナウイルスのために世界が10年間の景気低迷を経験するだ
  ろうと予測した。新興経済国は回復が先進国よりも早いだろ
  うが、米中の葛藤により困難に直面するだろうと明らかにし
  た。英国BBCとのインタビューで5月22日(現地時間)
  彼は「世界的な金融危機の間に、生産量が急減するまで約3
  年かかった」とし、「しかし、今回は3年はもちろん、3か
  月もかからなかった。3週間ですべてが自由落下した」と語
  った。彼は今年の経済が良くなるといっても「貧死状態」が
  続いて「U字型」や「L字型」の経済回復を示すことになる
  と予想した。U字型回復とは、成長の勢いが落ちて底を打ち
  その状態で、相当期間停滞すれば回復するというモデルであ
  る。L字型は、U字型よりもっと悪い状態で経済成長が急落
  し、低成長または無成長が長期間続く状況をいう。ヌリエル
  ・ルービニ教授は、このL字型の状況を「大大恐慌」と呼ん
  できた。ヌリエル・ルービニ教授は、ウイルスと闘うために
  めに世界各国が大規模な封鎖政策を行ってきた結果、多くの
  雇用が無くなり、消費者もいなくなったと説明した。ただ、
  し、アジアの新興国は、他の先進国より成長率が高くなると
  伝えた。しかし、米中の葛藤により、両国の間で選択を余儀
  なくされ、困難な状況に置かれるだろうと予測した。
                  https://bit.ly/30NVQ5m
  ───────────────────────────

ヌリエル・ルービニ教授.jpg
 ヌリエル・ルービニ教授.
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2020年06月19日

●「習近平政権の評判は最悪のレベル」(EJ第5271号)

最近になって、普通のドラックストアで不織布マスクが買える
ようになっています。アベノマスクもやっと届きました。今やマ
スクは、出掛けるさいの必需品であり、国内でも新種のマスクが
続々と登場しつつあります。
 このマスクビジネスに早くから手をつけたのは中国です。中国
は、ウイルスの発生を知ると、世界各国からマスクを買い占め、
世界的な品不足の状態にしておいて、ウイルスの感染で苦しむ国
に対して、大量のマスクや医療品をプレゼントするマスク外交を
展開しています。イメージの悪化を解消するためです。
 その中国が、現在、各国からのマスクの返品で、困り果ててい
ます。毎日のようにマスクが返品され、空港には返品の山が築か
れているからです。中国製のマスクは、国際的な医療基準を満た
しておらず、使いものにならないからです。
 そのため、マスク用の原料の不織布「メルトブローン」の価格
が暴落し、中国のマスク製造会社は、次々と操業停止に追い込ま
れています。メルトブローンの価格は、一時1トン45万元(約
765万円)まで価格が高騰したものの、今では2000元(約
3万4000円)と、実に225分の1にまで落ち込んでしまっ
ています。なぜ、そんなに下落したのでしょうか。これについて
「NEWSポストセブン」のレポートです。
─────────────────────────────
 中国製マスクが国際的な医療基準を満たしていないことを最初
に明らかにしたのはオランダだった。オランダ保健省は3月28
日、中国から届いた130万枚のマスクについて「フィルターに
欠陥があり、顔にもフィットできない『粗悪品』」と断定し、中
国に送り返した。
 これをきっかけに、他の国々も次々と中国製マスクは不良品だ
として、市場に出回らないように処分するなどしている。オース
トラリア政府は4月初旬、約80万枚を税関で押収。フィンラン
ド政府も4月8日、中国から200万枚のマスクは「すべて不良
品」と認定。EUは「中国製マスクは濾過率が不足しており、感
染のリスクが高まる可能性もあり、使用しないように」と警告。
カナダ政府も4月下旬、100万枚を送り返した。
 極めつけは米食品医薬品局(FTA)で、5月7日、企業60
社以上に対して、米国市場に向け高性能マスク「N95」を輸出
する許可を取り消したのだ。これらの影響をもろに受けたのがマ
スク製造関連の中国企業だ。各国政府によるあまりに厳しい対応
に、中国政府が指導に乗り出し、ほとんどの企業が操業停止処分
を受けることになった。       https://bit.ly/2YGKBJo
─────────────────────────────
 このように、国際社会で中国の評判は低下しています。マスク
外交は、中国のイメージ低下を防ぐための政策で、本来なら世界
各国から感謝されるべき行為なのですが、マスクの大多数が不良
品であることによって、評判は最悪になっています。
 WHOのパンデミック宣言後の3月16日、トランプ大統領は
ホワイトハウスでの記者会見で、次のような発言をしています。
─────────────────────────────
 とにかくこの事態はだれの罪でもないのだから・・・、いや、
もっとも「ウイルス発生の起源」についてまでさかのぼれば、話
は別かもしれないが・・・。       ──トランプ大統領
─────────────────────────────
 産経新聞ワシントン駐在客員特派員である古森義久氏は、この
時期、ワシントンにいて、現在の米国の状況をつぶさに知る立場
にありますが、トランプ大統領のこの「ウイルスの起源」という
発言について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 「ウイルスの起源」というのはいうまでもなく中国であり、中
国政府の隠蔽工作のことである。いまは「だれの罪」でもない、
とはいうが、「起源」に戻れば、別の話だというのである。その
「起源」には「罪」があるという示唆である。本音を率直に、と
きには率直すぎる表現で語るトランプ大統領にしては、抑制され
た言葉だった。アメリカ合衆国の命運がかかるとさえいえる国家
非常事態だからこそ、大統領としては、いまはだれかの罪を問う
ているときではない、という自制からだろう。だがそれでも「ウ
イルスの起源」という言葉がつい出てしまったのだ。
                      ──小森義久著
           『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす/
      非常事態で問われる国家のあり方』/ビジネス社刊
─────────────────────────────
 現在、トランプ政権の高官──ペンス副大統領、ポンペオ国務
長官、オブライエン国家安全保障担当大統領補佐官らに共通して
いることは、次の事実です。
─────────────────────────────
 このパンデミックは人災である。中国政府の新型コロナウイル
ス感染の拡大への対応は、カバーアップ(隠蔽)だった。そのた
めに国際社会は、適切な対応をするうえで、2ヶ月間もの遅れを
とることとなった。そのすべての責任は中国にある。
                ──小森義久著の前掲書より
─────────────────────────────
 トランプ政権は、共和党保守派ですが、そのトランプ政権と他
の政策においては、ほとんどすべて主張を異にする民主党リベラ
ル派でも、今回の新型コロナウイルスの感染の情報を隠し続けた
中国政府に対しては激しく批判しています。この件に関しては、
米国は一体なのです。
 したがって、仮に大統領選挙でトランプ氏が敗北し、民主党の
バイデン政権になっても、中国に対する批判は何ら変わることは
ないといえます。つまり、今や米国国内での政治的立場の違いに
かかわらず、「中国政府を批判する」というコンセンサスは形成
されているのです。これは、習近平政権にとって深刻な事態であ
るといえます。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/015]

≪画像および関連情報≫
 ●米国務長官「中国、悪辣な独裁政権」・・・習主席にも
  真っ向から批判
  ───────────────────────────
   マイク・ポンペオ米国務長官は、5月20日、中国政府を
  「悪辣な独裁政権」と呼び、圧力のレベルを上げた。ポンペ
  オ長官は習近平中国国家主席の世界保健機構(WHO)の演
  説を批判し、中国が懸念している香港と台湾問題も取り上げ
  て論じた。米国が中国を非難する過程で習主席を直接取り上
  げたことはかなり異例なことである。
   ロイター通信によると、ポンペオ長官は「新型コロナウイ
  ルス感染症に集中するあまり、中国が1949年以降、悪辣
  な独裁政権により統治されてきたという基本的な事実を見逃
  してはならない」という発言で記者会見を始めた。ポンペオ
  長官は「我々は中国が自由主義国家に対して理念的にも政治
  的にも、どれほど敵対的であるのかをかなり過小評価してき
  た。全世界がこの事実に気づき始めている」と指摘した。ま
  た「(中国の)共産党は生きているウイルスのサンプルを破
  壊し、新型コロナの発源地に対する独立的な調査を求めてい
  るオーストラリアに対して経済的報復で脅している。全く正
  しくない」と批判した。
   香港については「香港で何が起こっているのか注視してい
  る」とし「今週、親民主派議員たちが親中派議員たちによる
  不正行為を止めさせようとして攻撃を受けた。このような行
  動は香港が中国本土から高度の自治権を維持しているという
  評価を一層難しくしている」と指摘した。台湾については、
  「台湾の民主主義が世界のモデルとして上昇している。台湾
  は外部の強い圧力にもかかわらず、国民に発言権と選択権を
  与える知恵を発揮した」とほめたたえた。
                  https://bit.ly/2BjqMzW
  ───────────────────────────

オブライエン大統領補佐官.jpg
 
オブライエン大統領補佐官
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2020年06月22日

●「コロナ禍で中国を見る目の大変化」(EJ第5272号)

 現在、米国内で起きている習近平政権非難は、相当広範なもの
になっています。それは、中国寄りといわれる民主党リベラル派
からも、今回の新型コロナウイルス感染の情報を隠蔽し続けた中
国政府へ厳しい批判がぶつけられいることでわかります。
 それを裏付けるのは、2020年1月29日付の「ニューヨー
クタイムズ」紙に載った次のタイトルのコラム記事です。
─────────────────────────────
 コロナウイルスが広がり、全世界が中国の独裁体制への代償
 を払う。          ──2020年1月29日付
                 ニューヨークタイムズ紙
─────────────────────────────
 この記事を書いたのは、ニューヨーク・タイムズのベテラン記
者で、外交コラムニストのニコライ・クリストフ氏です。中国駐
在員を長く務め、中国に関する著作も多く、全米でも中国の専門
家として知られています。東京支局長だった時期もありますが、
日本に対してはあまり好感は持っていないようです。
 2013年12月26日、安倍首相が靖國神社に参拝したこと
に関しても、また、慰安婦のことに関しても、日本を非難する記
事ばかり書いている人です。奥さんが中国人ということも影響し
ているかもしれません。
 それほどの中国派のジャーナリストが、新型コロナウイルスに
関して中国を批判しているのです。これについて、産経新聞ワシ
ントン駐在客員特派員の古森義久氏は、上記のニコライ・クリス
トフ氏の記事の要点について、自著とウェブサイトで次のように
まとめています。
─────────────────────────────
◎中国政府がWHO(世界保健機関)に自国内の新型コロナウイ
 ルスの拡散を正式に通告したのは2019年12月31日だっ
 た。だが、中国内部ではこの情報は隠され、中国政府は対外的
 に感染が武漢市内だけに抑えられたという虚偽の報告をしてい
 た。その間、中国内ではこのウイルスは外国人にしかかからな
 い「愛国ウイルス」だなどという根拠のない噂が広がった。
◎中国政府は2020年1月23日に武漢市の「封鎖」を公式に
 宣言した。武漢市長は「ウイルスについて語ることは1月下旬
 まで許されなかった」と述べた。だが、それまでに武漢市内か
 らは、感染者を含む合計500万人の市民がすでに中国各地、
 世界各地へと移動してしまっていた。
◎感染者の最初の発見から公表までの2ヶ月ほどの期間は、感染
 自体が中央政府の指示で秘密にされた。そのため、各医療施設
 での検査、予防、治療などに必要な医薬品、器具、医療要員な
 どが致命的に不足する結果となった。(中略)
◎今回の情報隠蔽の理由の1つは、習近平主席が近年、公共に必
 要な情報の開示に役立つジャーナリズム、ソーシャルメディア
 非政府団体(NGO)、法律家集団などを体系的に抑圧し、そ
 の情報開示の機能を奪ってしまったことにある。これらの組織
 は以前から抑圧されていたが、習近平政権下ではその度合いが
 一段とひどくなった。           ──小森義久著
           『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす/
      非常事態で問われる国家のあり方』/ビジネス社刊
                  https://bit.ly/3dfNhmD ─────────────────────────────
 中国政府は、2019年11月ないし、12月はじめにウイル
スの発生を確認すると、その情報を国内に封じ込め、関連情報を
発信する者を強権で取り締まっています。情報が国外に出ること
を恐れたのです。
 「自分の周囲では原因不明の病気にかかった者が増えている」
とか、「華南海鮮市場には近づくな」というような相当控えめの
情報を発信しただけでも、共産党組織に摘発され、警察に出頭さ
せられたうえで、「虚偽の噂の拡散」の間違いを認める文書に署
名させられるなど、訓戒を受けています。そのため、武漢市民は
病気のことを発信すると、犯罪者になるという噂が広がっていた
といいます。それでいて、武漢市当局は、新型コロナの感染拡大
に対して、医療面の措置を全くとっていないのです。
 中国政府が自国内のウイルスの拡散を正式に通告したのは、昨
年の12月31日のことです。そこから、1月23日の武漢市封
鎖までは、習近平主席とWHOのテドロス事務局長の二人三脚で
情報を隠蔽し続けてきています。推測ですが、早い段階からテド
ロス事務局長は、かなりの情報を掴んでいたものと思われます。
この1ヶ月以上にわたる隠蔽によって、中国からは、春節を利用
し、世界中に感染を広げる十分な数の感染者を世界に送り出すと
いう犯罪的行為を行ったことになります。
 もともとトランプ政権は、中国の人権問題に関して、あまり口
うるさくいう政権ではないのです。しかし、最近の米国には、中
国を政治、軍事、経済、人権などの幅広い領域にわたって批判す
る風潮があります。それが、今回の新型コロナの拡散で、習近平
政権のとった非人道的措置に関して、相当厳しい対応措置をとら
ざるを得なくなっています。
 コロナウイルスの災禍が米国に伝わり、感染が拡大すると、中
国政府の国際規範無視の言動が原因で、人権弾圧を批判する報告
書が続々と出されるようになっています。その主要な報告書には
次の3つがあります。
─────────────────────────────
 1.「2019年度年次報告書/中国に関する議会・政府委
   員会」/2020年1月上旬公表
 2.「北京政府のグローバルなメガホン」/フリーダムハウ
   ス/2020年1月15日
 3.人権擁護の国際組織「人権ウオッチ」による報告書(中
   国での人権弾圧)/2020年1月中旬公表
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/016]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏、新型コロナで中国威嚇 「関係を遮断も」
  ───────────────────────────
  【ワシントン=永沢毅】トランプ米大統領は5月14日放映
  のFOXビジネステレビのインタビューで新型コロナウイル
  スへの中国の対応について「とても失望している」と重ねて
  不満を示した。同時に「私たちは多くの措置をとることがで
  きる。中国との関係を遮断することもできる」と表明した。
   トランプ氏は「もし関係を途絶えさせたら、5000億ド
  ル(約54兆円)を節約できる」とも述べた。2国間貿易の
  全面停止も念頭に強力な報復措置に動く姿勢を示したが、米
  大統領が断交とも受け取れる強い表現で中国を威嚇するのは
  異例だ。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席とは「良
  好な関係にあるが、今は彼と話したくない」と語った。トラ
  ンプ氏の一連の発言には、大統領選を控えて米国での感染拡
  大について批判の矛先を中国に向けるため対中強硬をアピー
  ルする狙いがある。
   ニューヨーク証券取引所に上場している中国企業への監視
  を強める必要性にも言及した。米規制当局は、中国政府に阻
  まれ、米国に上場する中国企業の監査記録を審査できていな
  い。不正会計を防ぐ上で大きな障壁となっていた。米国側が
  監視強化や基準の厳格適用を進めれば、中国企業が米国での
  上場を取りやめ、ロンドンや香港の取引所に移るとの見方も
  示した。トランプ政権は年金基金にも圧力をかけた。連邦職
  員向けに確定拠出年金を運営する連邦退職貯蓄投資理事会は
  13日、中国株への投資を延期すると発表した。米国の年金
  マネーが中国企業の成長を支えるのを阻む狙いだ。
               https://s.nikkei.com/2USZtTV
  ───────────────────────────

ニコライ・クリストフ記者.jpg
ニコライ・クリストフ記者
 
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2020年06月23日

●「『チャイメリカ』は終了している」(EJ第5273号)

 コロナ禍によって米中の対立が深刻化しつつあります。米国と
中国は、既に冷戦に突入しており、2019年1月が「第1次冷
戦」、今年の1月が「第2次冷戦」と呼ぶ学者もいます。コロナ
禍によって明らかにフェーズ(局面)が変化したからです。何が
起きているのかというと、米中の経済のデカップリング(切り離
し)が進みはじめているといえます。
 ニーアル・ファーガソン氏という英国の歴史学者がいます。米
フーバー研究所シニア・フェローを務めていますが、2020年
6月19日付の日本経済新聞に、ファーガソン氏のインタビュー
記事が掲載されています。今日はこれについて考えます。
 「チャイメリカ」という言葉があります。2007年に、ファ
ーガソン氏が、米中の経済的な相互依存関係のことをそう呼んだ
のです。チャイメリカは、ギリシャ神話のキメラをイメージして
ネーミングしたものです。キメラとは、ライオンの頭とヤギの胴
体、蛇の尻尾を持つ怪物です。
 2008年のリーマンショック以後の10年間は、チャイメリ
カによって、米中の経済関係は表面上はうまくいっているように
見えたのですが、トランプ氏が大統領選挙で勝利したとき、チャ
イメリカは死を迎えたとファーガソン氏はいいます。トランプ氏
は、中国が米国の製造業を破壊し、技術を盗んでいると訴えた唯
一の大統領候補だったからです。
 今回のコロナ禍によって、経済危機は地政学的にどのような影
響を及ぼすかという質問に対して、ファーガソン氏は次のように
答えています。
─────────────────────────────
 米国や中国、欧州連合(EU)といった超大国は機能不全をさ
らけ出し、死者数が拡大した。感染症の大流行のような危機下で
は、(大国ほど損害が拡大する)「規模の不経済」が如実に表れ
る。私がイタリア国民だったら、危機に団結して対応できないE
Uに幻滅したはずだ。EUが解体に向かうとはみていないが、統
合が深化することもない。うまく対処しているのは台湾や韓国、
イスラエル、アイスランドといった比較的小さな国・地域だ。感
染症のみならず、あらゆる危機に対して、政府の防衛意識が高い
からだ。           ──ニーアル・ファーガソン氏
               https://s.nikkei.com/2YUqp6H ─────────────────────────────
 これに加えて、新型コロナウイルスの感染の防疫ということに
なると、中国のような権威主義にして監視社会の国家の方が、民
主主義国家より有利ではないかと質問すると、ファーガソン氏は
次のように答えています。
─────────────────────────────
 全くそうは思いません。このパンデミックは、一党独裁国家が
初期の不手際を隠そうとした失敗で広がったものです。台湾や韓
国は民主主義です。米国や英国のようにうまく対処できなかった
国もありますが、ドイツのように対処した国もあります。これは
パンデミックには権威主義が必要だといった単純な話ではありま
せん。      ──2020年6月19日付の日本経済新聞
◎監視社会国家の方が有利かの質問に対して・・・
 過去の世界大戦で見られたように、自由主義社会でも非常時は
個人の自由が制限される。だが、国家主導の監視社会がテクノロ
ジーを使ってウイルス検査や接触関係の追跡を実施するのは明ら
かに危険だ。個人の自由とは両立しない。台湾の取り組みは注目
に値する。全地球測位システム(GPS)による監視の対象を海
外から戻ってきた人に限定した。監視社会までいかずに、感染拡
大の阻止に成功している。個人情報は自分で管理し、特別な場合
に限って一部を国家に委ねる。ハイテク企業にも渡さない。21
世紀社会において重要なことだ。https://s.nikkei.com/2YUqp6H
─────────────────────────────
 問題は、2008年のリーマンショックのときの金融危機とど
う違うかについて聞いたときのファーガソン氏の次の言葉です。
コロナ後の経済再生については、改めてEJでもしっかり考える
必要があると思います。
─────────────────────────────
 金融危機と同じように考えがちですが、分類を間違えていると
思います。これはパンデミックの結果、経済的なロックダウンに
よって、起きたことです。景気刺激策という呼び方は誤りです。
ロックダウン経済を刺激することはできません。失業者や休業し
た企業の救済措置を続けても、多くの企業が破綻し、飲食店が閉
じるでしょう。危機後に消費者の意欲がどの程度戻るのかを見極
める必要がありますが、金融市場は、一部のIT企業以外の株価
を正しく評価していないと私は考えます。
         ──2020年6月19日付の日本経済新聞
─────────────────────────────
 米国大統領選の結果はどうなるか。8日に発表されたCNNテ
レビの調査は「バイデン氏に投票する」と答えた人が55%に上
り、トランプ氏の41%を14ポイント上回っています。ロイタ
ー通信の調査でもバイデン氏は47%で、トランプ氏を10ポイ
ントリードしています。失業率が深刻なので、トランプ氏にとっ
て頭の痛い問題です。しかも、コロナの第2波が来ると、満足に
集会を重ねることができないトランプ氏にとってきわめて不利で
す。中国はそこに期待をかけているかもしれませんが、ファーガ
ソン氏は次のようにいっています。
─────────────────────────────
 バイデン氏が勝利しても中国に対する政策の方向は変わらない
と思います。この問題では超党派の合意があるからです。議会は
中国に強硬ですし、世論も急激に変化しています。第2次冷戦は
定着したと考えるべきです。唯一の問題はこれが「熱戦」になる
かどうかです。  ──2020年6月19日付の日本経済新聞
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/017]

≪画像および関連情報≫
 ●世界的歴史学者が読み解く「新型コロナが明らかにした
  米中“新冷戦”の利点」
  ───────────────────────────
   スコットランド出身の歴史学者でスタンフォード大学フー
  ヴァー研究所上級研究員のニーアル・ファーガソン。200
  4年に「タイム」誌の「世界でもっとも影響力のある100
  人」に選ばれた、いま世界が、最も注目する知識人のひとり
  だ。「文明:西洋が覇権をとれた6つの真因」(勁草書房)
  で中国の台頭と西洋の没落を論じたファーガソンは、新型コ
  ロナウイルス感染症(COVID−19)が米中間の「新た
  な冷戦」を改めて明らかにしたと分析する。仏誌「ル・ポワ
  ン」がおこなったインタビューをお届けする。
  ──現在のコロナ危機は国際秩序にどのような影響をもたら
  すでしょうか。あなたの質問に答えるために、まず「国際秩
  序」とは何かについて考えてみましょう。1年前、私は英紙
  「タイムズ」の日曜版「サンデー・タイムズ」の討論シリー
  ズの最初に、「新たな冷戦」について書きました。そのなか
  で私は、新たな冷戦はすでに始まっており、中国人たちとは
  逆に、私たちはまだそのことを知らない、という考えを主張
  しました。今回のパンデミックの影響を理解するための最良
  の方法は、感染拡大によって新たな現実が明らかになるとい
  う視点です。中国と米国の関係は、コロナ危機の最初から悪
  化の一途を辿りました。そのうえ、中国にこの危機の責任が
  あるとしても、中国はパンデミックを最も上手くコントロー
  ルしている国の1つであり、対照的に米国はパンデミックの
  管理が最悪な国家のうちの1つとなっています。
                  https://bit.ly/2zMrd5c
  ───────────────────────────

ニーアル・ファーガソン.jpg
ニーアル・ファーガソン
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2020年06月24日

●「日本政府は初動を誤っていないか」(EJ第5274号)

 新型コロナウイルスの感染に対する日本政府の対応について考
えてみます。6月20日現在の世界の主要各国の感染者数と死者
数は、次のようになっています。
─────────────────────────────
              2020年6月20日現在
            感染者数       死者数
  アメリカ  2231325人   119109人
  ブラジル  1032913人    48954人
   ロシア   569063人     7841人
  イギリス   301815人    42461人
  イタリア   238415人    34561人
  フランス   195953人    29619人
   ドイツ   188586人     8854人
   カナダ   100629人     8346人
  中国本土    83352人     4634人
   日 本    18528人      968人
                 https://tmsnrt.rs/37QB86y ─────────────────────────────
 これをみると、日本は感染者数で世界第50位、20日現在、
死者数は1000人以下です。これは、中国との付き合いが深い
日本としては、世界各国に比べると、非常に低い数値であり、数
値から見る限り、日本政府は新型コロナウイルスの感染拡大を押
さえ込んだといえます。
 しかし、日本政府が感染防止のためにやったことを分析すると
いくつもの大きな手抜かりがあり、正しく対応していれば、被害
をもっと小さくできたはずです。もともと日本人は、衛生意識が
強い国民であり、政府の対応が遅れても、この程度の被害に今の
ところ止めているのです。これは大変なことです。
 日本政府の感染拡大に対する対応の遅れは、日本での最初の感
染者の何人かを見ればよくわかります。
─────────────────────────────
  1.1月16日 中国人男性 神奈川県在住 神奈川県
  2.1月24日 中国人男性  武漢市在住   東京
  3.1月25日 中国人女性  武漢市在住   東京
  4.1月26日 中国人男性  武漢市在住  愛知県
  5.1月28日 中国人男性  武漢市在住  愛知県
  6.1月28日 日本人男性  奈良県在住  奈良県
  7.1月28日 中国人女性  武漢市在住  北海道
  8.1月29日 日本人女性  大阪府在住  大阪府
─────────────────────────────
 日本での最初の感染者の発見は1月16日、神奈川県に在住す
る30代の中国人の男性であり、武漢に里帰りし、日本に帰って
きて、感染が判明したのです。武漢の実家の父親も新型コロナウ
イルスに感染しており、彼はその濃厚接触者であるといえます。
感染経路は明確です。
 日本での感染者の2人目は、1月24日に東京都内の病院で確
認された武漢市在住の40代の男性で、武漢から香港経由で日本
に19日に入国し、症状が出たので、東京の病院で治療を受けて
感染が判明したのです。
 第3人目から第5人目までもすべて武漢在住の中国人の日本へ
の観光者です。第3人目は、1月25日に東京の病院でコロナと
診断された30代の中国人女性であり、武漢からは21日に日本
に入国しています。
 第4人目と第5人目は、ともに武漢在住の中国人の男性で、1
月26日と1月28日に、愛知県の病院と医療施設で、コロナの
感染が確認されています。
 日本での第1人目から第5人目の感染者は、すべて武漢在住の
中国人で、直前に感染地の武漢から日本に入国しているのです。
しかも、第4人目と第5人目は、1月22日に日本に入国してい
ます。第1人目から第5人目までは、「武漢→日本」のルートで
入ってきており、日本政府はこのルートを1日も早く閉じる必要
があったはずです。しかし、日本政府は何もせず、中国からの観
光客をフリーパスで受け入れていたのです。もっとも、空港で水
際対策とか称して、検温チェックぐらいはしていたはずですが、
それ以外は何もせず、入国を許していたわけです。
 日本政府として、そんなことはわかっていたと思いますが、習
近平主席の国賓での来日(予定は4月)があって、この時点での
武漢からの入国拒否の決断はできなかったのではないかと思われ
ます。しかし、国民の生命と財産を守るのが政府の仕事であるな
らば、この不決断は政府に重大な責任があります。
 それに1月22日といえば、WHOが中国の習近平主席の要請
を受け入れて、緊急事態宣言を見送った日です。もし、このとき
WHOが緊急事態宣言を発出し、日本がこれを理由にして、直ち
に中国からの、とくに武漢からの旅行者の入国拒否を行っていれ
ば、やはり感染者は大幅に減っていたはずです。そういう意味に
おいて、WHOの対応は厳しく批判されるべきですし、テドロス
事務局長は責任をとって辞任すべきです。
 第6人目の感染者は、奈良県在住の60代の日本人男性ですが
彼は観光バスの運転手であり、武漢からの中国人観光客グループ
を乗せたバスの運転を担当し、長時間を観光客とともに車内で過
ごしていたことからの感染と思われます。これは、このウイルス
がヒトからヒトに移ることの証明になります。
 第7人目は、武漢市在住の40代の中国人女性で、北海道を観
光旅行中に感染が判明しています。第8人目は大阪府在住の日本
人女性であり、武漢市からの団体旅行客を案内するバスガイドを
務め、感染しています。バスの運転手と同じ2次感染者です。
 中国政府は、23日に武漢市を封鎖しているのに、日本政府は
依然として、中国からの旅行客へ門戸を開いて、やすやすと受け
入れていたのです。これは、政府の大失策であるといえます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/018]

≪画像および関連情報≫
 ●日本の新型コロナウイルス対策が評価されない理由
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルス感染症(COVID−19)時代にお
  ける「英雄」的な場所と、「悪者」的な場所が明らかになり
  つつある。前者には香港、韓国、台湾が含まれる。後者は特
  に中国だ。北京はウイルスを制圧したかもしれないが、それ
  は明らかに独裁主義的なやり方であった。否、制圧できたの
  だろうか?そのデータには大きな疑問が残る。
   日本はこれらの両極の間の不安定なところに位置づけられ
  る。成熟し、安定した民主主義国家であり、隣国の韓国より
  も新型コロナウイルス感染症による死亡率が低い。人口が2
  倍以上で、国民は世界で最高齢であるにもかかわらずだ。日
  本のこの人口統計学的特徴は、パンデミックに対する同国の
  独特の脆弱(ぜいじゃく)さをもたらしている。
   しかし日本は、主要メディアやソーシャルメディアで正当
  な評価も敬意も得られていない。多くの議論において、日本
  は無視されるか中国と並列に扱われている。新型コロナウイ
  ルスへの対応に関して外交上の批判すら受けている。
   なぜだろうか?まさか、検査なし?
   日本に対する主な疑念は、検査を広範囲に行わないことで
  意図的に統計上の新規感染者数を抑えてきたのではないか、
  というものだ。これは疑惑というより単なる事実に近い。日
  本の方針は当初から、せきが出て不安な全国民を病院に向か
  わせて待合室をいっぱいにするような事態を避けるというも
  のであった。認めようと認めまいと、正当な戦略ではある。
                  https://bit.ly/2zQjR0H
  ───────────────────────────

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春節における中国人観光客/銀座
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2020年06月25日

●「フリーパスの中国からの入国規制(EJ第5275号)

 ひとつ謎があります。中国政府は、1月23日に武漢市を閉鎖
しています。それに加えて、24日には、中国国内での団体旅行
を禁じ、さらに3日後の27日には、中国から海外ヘの団体旅行
を禁じています。
 このことを踏まえて、次の日の28日から日本政府は、武漢市
にいる日本人を対象に、緊急避難のための政府特別チャーター機
を飛ばしています。日本政府は、この第1便を含めて2月17日
まで、計5便のチャーター機を飛ばし、日本人やその家族の中国
人も含めて826人を日本に受け入れています。そのうちの13
人が新型コロナウイルスの感染者と認定されています。
 つまり、その時点で日本政府は、武漢にいることは感染のリス
クが高く、感染した場合、十分な医療を受けられる保障もないの
で、中国政府と交渉して、826人を日本に戻したのです。それ
だけのことをやっておきながら、1月23日から月末まで、日本
は門戸を開いて中国人を受け入れています。これは、大きな謎と
いえます。不思議なことに、メディアも、中国人の入国を規制す
べきであるとの主張をあまりしていないのです。
 普通の国であれば、中国政府が武漢を封鎖した23日の時点か
少し遅れても中国が海外への団体旅行を禁じた27日の時点で、
中国人の入国を制限するはずです。中国政府自身が海外旅行を禁
じているのですから、やるのは当然のことです。実際に、北朝鮮
ロシア、オーストラリア、フィリピン、香港、タイ、台湾、モン
ゴルなど、多数の国や地域が、中国滞在歴のある外国人の入国を
全面停止しています。それなのに、日本はなぜフリーパスで中国
人を受け入れていたのでしょうか。
 注目すべきは、香港と台湾です。いずれも感染地の中国に隣接
し、普段は中国本土と人間の交流が大量にあります。まして香港
は、行政権限こそ異なるものの、中国の一部であり、中国との人
の往来はきわめて盛んです。
 その香港は、1月28日には、中国からの団体、個人いずれも
原則として、すべての人間の入境を止めています。台湾でも、1
月中旬から、中国の湖北省に滞在した人の来訪を止め、2月に入
ると、中国本土の住民の流入をすべて止めています。その結果、
香港と台湾の感染者は非常に少ないのです。もし、日本も23日
の中国政府の武漢封鎖の時点で入国を制限していれば、感染者は
もっと少なかったと思われます。
 この間の事情について、産経新聞ワシントン駐在客員特派員の
古森義久氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 日本は、他の多くの国や地域がすでにとっていた厳しい水際で
のウイルス侵入防止措置の波には、あえて乗り遅れたといえる。
「あえて」というのは、この爆発的な感染症の広がりを日本では
官民ともにその公表の当初から熟知していたからだ。そのうえ日
本国内での実際の感染者発生がみな「武漢→日本」という直線的
な経路で起きていたことも、周知の事実だったからだ。
 他の多くの諸国が中国滞在者の入国を拒否した段階でも、そし
て、中国滞在者の入国こそが日本での感染拡大の主要因であるこ
とが明確になっ段階でも、日本は中国からの入国は無制限のまま
だったのである。
 日本政府は2月冒頭にやっと「最近まで武漢のある湖北省内に
滞在していた外国人」を入国拒否の対象とした。2月12日から
は、湖北省に加えて隣接の浙江省の滞在者も入国拒否の対象に含
めた。だがその時点では、中国の他の地域から日本にくる人たち
への規制はなにもなかった。ウイルス感染症はすでに中国全域に
広がっていたのに、だった。
 だがその部分的な「拒否」も空港での入国希望者の自己申告に
頼る場合が多く、現実はザル規制だった。私はその時期に成田空
港から帰国、入国した複数の知人たちに入国管理の実態を尋ねて
みた。すると、「湖北省、浙江省での滞在」という規制要件も入
国者が口頭でイエスか、ノーかを申告するだけだったという。そ
れでは規制がないことに等しいではないか。  ──古森義久著
           『新型コロナウイルスが世界を滅ぼす/
      非常事態で問われる国家のあり方』/ビジネス社刊
─────────────────────────────
 驚くべきことです。古森氏によると、「湖北省/浙江省での滞
在歴のある人」の入国を拒否するといっても、入国のさい、入国
審査の係員がそのことを口頭で質問し、「ノー」といえば、入国
できてしまうのです。これではザル規制であり、日本政府は本気
で感染者の入国を阻止する気はなかったということになります。
1月下旬だけで、中国から日本へ34万人は入国しており、その
うちのかなりの人数が北海道に向い、北海道での感染拡大を引き
起こしています。今や北海道は、中国人の最大の人気のスポット
になっているからです。
 米国はどうだったでしょうか。トランプ政権は、日本と同様に
1月中はまったく規制せず、中国からの入国を受け入れていたの
です。そこに少し油断があったといえます。1月末に中国からの
外国人の入国をすべて禁止するというきわめて厳しい措置をとっ
ていますが、このときはすでに遅く、多くの中国からの外国人が
米国に入国してしまっていたのです。
 これらの人々が2月〜3月にかけて、ニューヨーク市などで、
大感染を引き起こすことになります。米国をはじめとする西欧の
諸国は、マスクを付ける習慣はなく、一度感染してしまうと、と
めどもなく感染が拡大してしまうのです。
 4月になって、ワシントンポスト紙の報道でわかったことです
が、1月〜2月にかけて、トランプ大統領は、情報機関から新型
コロナウイルスについて繰り返し警告を受けていましたが、トラ
ンプ大統領は、新型コロナウイルスがパンデミック化する可能性
を軽視する発言を繰り返していたことがわかったのです。そこに
大きな油断があったといえます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/019]

≪画像および関連情報≫
 ●対策早ければ死者半分 米大推計、トランプ氏反発
  ―─新型コロナ
  ───────────────────────────
   【ワシントン時事】米国で「社会的距離」などの対策が、
  1週間早く講じられていれば、死者は半分以下に抑えられて
  いた。米コロンビア大の研究チームが新型コロナウイルスに
  関する研究報告で推計を公表した。対応の遅れが感染拡大を
  もたらしたと解釈できる内容で、トランプ大統領は反発して
  いる。
   同大チームは「米国内の感染拡大が本格化した2月から対
  策が始まった3月中旬まで」と、「対策開始から5月上旬ま
  で」の感染拡大ペースを郡単位で調べた。とりわけ都市部で
  「社会的距離などの対策によって、ウイルス拡散が大幅に減
  少した」と結論付けた。
   その上で、5月3日時点で約6万5000人だった死者数
  について、対策開始が1週間早ければ、55%少ない約2万
  9000人にとどまり、感染者数も62%少なかったと試算
  した。2週間早い3月初めに対策を講じていれば、死者は約
  6分の1の1万1000人余りだったと推計している。
   トランプ政権は当初、新型コロナの影響を楽観していた。
  景気に悪影響を及ぼす経済活動規制などの措置に後ろ向きで
  野党民主党から「対策が後手に回った」と批判されている。
   5月20日に公開されたコロンビア大の推計を聞いたトラ
  ンプ氏は21日、記者団に「私は誰が考えるよりも早く、反
  対を押し切って(感染が最初に拡大した)中国からの入国禁
  止を決めた」と反論。「コロンビア大は非常にリベラルだ」
  と述べ、政治的な意図があると訴えた。ベトナム戦争をはる
  かに上回る米国人が死亡する事態を前にして、神経質になっ
  ている。            https://bit.ly/3dkuaaT
  ───────────────────────────

空港での検疫体制は万全だったか.jpg
空港での検疫体制は万全だったか
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2020年06月26日

●「なぜ、日本は中国に配慮するのか」(EJ第5276号)

 新型コロナウイルスの日本の感染症対策については賛否の意見
が分かれています。しかし、日本側の中国に対する過分な気遣い
があったとする記事を2月20日付のワシントン・ポスト紙は報
道しています。
─────────────────────────────
 “Critics said Abe appeared keener to avoid offending
  China ahead of a visit by President Xi Jinping
 planned for April than tackling the problem head on.”
 「安倍は目の前にある差し迫った問題に取り組むよりも、4月
に計画されている習近平の訪日を前にして、ともかく中国を不愉
快にさせてはならないと必死なのである」と多くの評論家が言っ
ている。 ──2020年2月20日付、ワシントン・ポスト紙
                  https://bit.ly/312LsH9 ─────────────────────────────
 2月に入って日本は、「湖北省に滞在歴のある」中国人の入国
は制限したものの、2月12日までは、中国のそれ以外の地域か
らの観光客などは受け入れています。そして2月13日からは、
湖北省にプラスして浙江省の滞在歴のある中国人の受け入れも制
限していますが、それ以外の地域からは、フリーパスで入国でき
たので、きわめて緩やかな規制といえます。
 このような甘過ぎる日本の対応に対して米国は、1月31日に
「自国民以外の中国全域からの入国者は全員拒否」を宣言してお
り、大きな違いがあります。遠藤誉氏によると、これに対して、
当の中国政府は米国の対応を「非常に非友好的である」として強
く非難する一方、日本のそれを「非常に友好的な国」として、絶
賛の嵐を送っているといいます。
 これだけではないのです。どう考えても、中国へのゴマ刷り的
行為としか思えないことを安倍政権はやっています。遠藤誉氏の
ブログから2月20日付の記事を引用します。
─────────────────────────────
 2月7日、自民党の二階幹事長が公明党の斎藤幹事長と共に東
京にある中国大使館を訪れ、中国に新型肺炎への対応に関して、
(経費的などの)支援を申し出ただけでなく、中国が新型肺炎と
実によく闘っていると、WHOのテドロス事務局長並みに習近平
を褒めそやした。
 そのため、中国の中央テレビ局CCTVでは、連日このニュー
スをくり返し報道した。とくに二階幹事長が孔鉉佑・駐日中国特
命全権大使に「隣国であるだけに、隣の家で何か起こったのと同
じことだ」と言ったその場面をクローズアップしていた。
 二階氏の中国絶賛という一連の流れの中で、中国政府は、2月
15日、王毅外相に、ドイツのミュンヘンで開催された第56回
ミュンヘン安全保障会議において、茂木外相と会談させ、習近平
の国賓としての4月来日に関して、「これまで通り実行する」意
思確認を行わせている。       https://bit.ly/2V81fRf
─────────────────────────────
 この二階幹事長の中国へのゴマ刷りは、WHOのテドロス事務
局長のそれとまったく同じです。日本がこんなことをしておいて
テドロス事務局長を批判できません。このようなニュースは、日
本のメディアは報道しないのです。安倍政権は、なぜそこまで中
国に低姿勢なのでしょうか。
 1月23日のことです。23日といえば、中国政府が武漢市を
封鎖した日です。その日に安倍首相は、在中国日本大使館のウェ
ブサイトに次のメッセージを寄せています。WBSの滝田洋一氏
の本に出ています。もちろん現在では、この安倍首相のメッセー
ジは削除されています。コロナ禍がなければ安倍首相がこのよう
なメッセージを出すことはわかりますが、よりによって武漢封鎖
の日に掲載していることは大いに疑問があります。
─────────────────────────────
 春節に際して、そしてまた、オリンピック・パラリンピック等
の機会を通じて、更に多くの中国の皆様が訪日されることを楽し
みにしています。その際、ぜひ東京以外の場所にも足を運び、そ
の土地ならではの日本らしさを感じて頂ければ幸いです。
                      ──滝田洋一著
        『コロナクライシス』/日経プレミアシリーズ
─────────────────────────────
 安倍首相が中国に気を遣う理由は3つあると思います。1つは
中国からの観光客が日本のインバウンド市場において最大の消費
者だということです。2つは、4月には習近平国家主席が国賓と
して来日することが予定されていたこと。そして、3つは7月に
は東京オリンピックを控えていたことです。こういう日本にとっ
て大切な時期に、コロナ禍が起きたのです。日本にとって不幸と
しかいいようがありませんが、安倍首相にとって中国への配慮が
頭をよぎったとしても不思議ではありません。
 台湾の「今周刊」のブログによると、なぜ、日本が中国に気を
遣うのかについて、次のように書いています。
─────────────────────────────
 日本政府観光局(JNTO)によると、中国からの訪日観光客
数は、2015年に韓国と台湾を抜いて、1位に躍り出た。その
後、中国人観光客数は増加の一途をたどり、2019年には、延
べ959万人が日本を訪れたという。これは訪日外国人観光客の
30%を占めており、2位の韓国18%、3位の台湾15%を大
きく引き離している。
 中国からの訪日客は、数の多さだけでなく、消費力もすさまじ
い。中国人観光客の日本における旅行消費額は、2018年に、
1・5兆円にのぼった。これは全体の34%を占める数字だ。言
い方を変えると、2014年に安倍首相が打ち出した「観光立国
政策」に、中国が大きな貢献をしたということだ。そんな上客を
軽くあしらうことなどできるだろうか。https://bit.ly/3dtaimc
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/020]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ感染拡大でも、日本が「中国人」を受け入れ
  続ける理由
  ───────────────────────────
   いよいよ日本国内で新型コロナウイルスの感染拡大が本格
  的に始まった。というよりも、2月4日にタイ保健省が、1
  月下旬に日本を旅行したタイ人夫婦が感染したと報告をした
  ことからも、単に我々が認識していなかっただけで、ずいぶ
  ん前から国内では感染拡大が始まっていた可能性が高い。
   つまり、3700人を「軟禁」したダイヤモンド・プリン
  セスの前で、マスコミが「速報です!また新たな感染者が確
  認されました」なんてお祭り騒ぎをしていたときには既に、
  日本のいたるところで「スーパー・スプレッダー」(一度に
  多人数を感染させる患者)が徘徊(はいかい)し、満員電車
  であなたの隣でゲホゲホやっていたかもしれないのだ。
   なんて話を聞くと、「すべては安倍政権のずさんな危機管
  理が悪い!責任をとって総辞職せよ!」といきり立つ方も多
  いかもしれない。
   ご存じのように、454人(17日時点)という「史上最
  悪の船内感染」となったダイヤモンド・プリンセスの対応を
  アメリカなどが批判している。ニューヨーク・タイムズは、
  「公衆の衛生に関わる危機について『こうしてはいけない』
  と教科書に載る見本だ」など笑いものにしているのだ。
   中世からペストなどの「伝染病」と長く戦い、クルーズ文
  化の発祥でもある欧米では、「汚染された船内」に乗客を閉
  じ込めるのは二次、三次感染を引き起こす「悪手」という位
  置付けで、隔離するにしても、ちゃんと生活ができて、当局
  側もしっかりと監視下における施設を用意するのが常だ。
                  https://bit.ly/2ClcLlx
  ───────────────────────────

安倍首相の国会答弁.jpg
安倍首相の国会答弁
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2020年06月29日

●「世界で最も危険な場所それは日本」(EJ第2577号)

 中国への過分の配慮があるのではないかという疑いが持たれて
いる日本の新型コロナウイルスへの防疫体制にとって不幸だった
のは、大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で起きた
集団感染です。ダイヤモンド・プリンセス号は、約11万6千ト
ンの大型旅客船であり、船籍は英国、航行会社は米国企業だった
のです。なお、この船は日本で建造されています。つまり、日本
生まれなのです。
 ダイヤモンド・プリンセス号は、1月20日に横浜港を出港し
鹿児島、香港、ベトナム、台湾、沖縄の各地に寄港して、2月3
日に横浜に帰港しています。船内では、航行中の1月25日に、
80代の旅客の男性が香港で下船した後、新型コロナウイルスの
感染が発覚したことがわかり、日本政府当局は、ダイヤモンド・
プリンセス号を横浜港に隔離して、船内の乗客乗員のウイルス検
査を実施したところ、次々と感染者が発見されたのです。
 横浜港に停泊した時点では、乗客・乗員は次の通りです。
─────────────────────────────
 ◎乗船者全員 ・・・ 3711人
     乗客 ・・・ 2666人(日本人:1281人)
     乗員 ・・・ 1045人
 ◎陽性判定者 ・・・  705人 (陽性率18・9%)
     死者 ・・・    6人 (致死率0・85%)
─────────────────────────────
 2月の中旬までは、新型コロナウイルスの感染拡大といえば、
中国の湖北省、なかでも武漢が中心でしたが、ダイヤモンドプリ
ンセス号のニュースが世界に広がると、感染拡大の話題の中心は
日本に移っています。メディアはまるで日本国内で感染が広がっ
ているように報道したのです。これについて、古森義久氏は、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 この感染者の急増は、当初は日本国内での感染者として扱われ
全世界から注視されることとなった。同船の乗客たちは船内に閉
じこめられた形となり、その隔離のなかで感染者の数が連日、急
速に増えていくという状態となった。
 こうした窮状は日本側のコロナウイルスの検査実施能力が人数
的にまだ限られていたことや、船内の防疫措置が完全ではなかっ
たことが原因とされた。結果として世界各国のメディアがこの状
況「閉じ込められた船内での恐怖のコロナウイルスの感染拡大」
として報道した。 ──古森義久著/『新型コロナウイルスが世
界を滅ぼす/非常事態で問われる国家のあり方』/ビジネス社刊
─────────────────────────────
 この時期、米国は新型コロナウイルスの感染が広がっておらず
米国としては、世界最高といわれるCDC(米国疾病管理予防セ
ンター)があって、ウイルスの感染など問題ではないというスタ
ンスだったので、米国のメディアは、日本の対応をコンテンパン
に批判したのです。この時期のニューヨーク・タイムス紙とワシ
ントンポスト紙は、次のように日本を批判しています。
─────────────────────────────
◎2020年2月11日付、ニューヨーク・タイムズ紙
 日本政府は、公衆衛生危機の際にけっして行ってはならない対
応をしており、教科書に載るやってはならない見本である。
◎2020年2月13日付、ワシントンポスト紙
 日本政府は、乗客の検査と下船のために、なぜもっと迅速な対
応が取れなかったのか。乗船している乗客乗員は、感染の危険に
さらされ続ける。
◎2020年2月19日付、ニューヨーク・タイムズ紙
 日本の対応が感染症に関する専門知識を必ずしも持ち合わせて
いない公務員によって行われていることが問題である。日本には
疾病管理を専門に扱う政府機関がない。https://bit.ly/3eyilzp
─────────────────────────────
 米国において、新型コロナウイルスの感染者が見つかったのは
1月21日のことです。しかし、このときの感染の主戦場は武漢
だったので、誰も気にとめている様子はなかったのです。それで
いてWHOが1月30日に緊急事態宣言(PHEIC)を発出す
ると、米国務省は同日、中国全土への渡航禁止令を出し、31日
には中国訪問者の入国拒否発表しています。アレックス・アザー
保健福祉長官は「公衆衛生に関する緊急事態」を宣言。過去14
日以内に中国を訪れた外国人に対し、入国を禁止する措置をとり
また、過去14日以内に湖北省を訪れた米国人に対しても、14
日間は、自宅などで待機することを命令しています。初動はきわ
めてパーフェクトだったのです。
 その頃のトランプ大統領が何を考えていたか、トランプ氏のツ
イートをご紹介することにします。
─────────────────────────────
◎1月22日:中国から来たのは1人で、我々はその人を管理下
 に置いている。まったく問題ない。
◎2月 2日:中国から来るのをほぼ抑え込んだ。
◎2月10日:4月までには、理論上、少し暖かくなれば、奇跡
 的に消え去るようだ。それが本当だと願っている。ただ、我々
 の国はよくやっている。習(近平)国家主席と話をしたが、中
 国はものすごい努力をしている。きっと、すべてうまく行くと
 思っている。
◎2月11日:この国では、基本的に12人しか感染者がいない
 し、そのほとんどは回復していて、完全に回復した人もいる。
 だから実際にはさらに少ない。
◎2月24日:新型コロナウイルスはアメリカではほぼ掌握され
 ている。すべての人および関係各国と連絡を取っている。CD
 CとWHOは精一杯、非常に賢明な取り組みを続けている。
                  https://bbc.in/2CBVGUB ─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/021]

≪画像および関連情報≫
 ●日本批判、次は自国へ/「対岸の火事」終わる―新型肺炎・
  クルーズ船隔離
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイ
  ヤモンド・プリンセス」から下船が始まった。壮大な「隔離
  の実験」(英紙ガーディアン)と報じられた2週間が終わり
  下船した日本人以外の乗客乗員は順次帰国。海外各紙が「対
  岸の火事」として載せた日本への批判は、次は自国に突き付
  けられている。
   英紙サンは2月18日、ダイヤモンド・プリンセスを「疫
  病船」と見出しに掲げ「隔離計画にしくじって、中国本土以
  外で最大の感染拡大を引き起こした」と日本の対応を非難し
  た。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルも17日、船内
  で感染が拡大した点を問題視し「2週間も船内に大勢を押し
  込めた日本政府の方針に、日本国外の専門家からは疑問の声
  が上がっている」と指摘した。
   米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソ
  ニー・ファウチ所長は、17日の米紙USAトゥデーに対し
  「隔離は失敗した」と断言。「船の中でどんどん感染した。
  船内で隔離が甘かったからだ」と批判した。
   英紙ガーディアンも18日、ダイヤモンド・プリンセスを
  「感染で煮え立っている鍋だ」と語る専門家の言葉を紹介。
  ブルームバーグ通信は19日、日本が「世界で最も危険な場
  所の一つになりつつある」と伝えた。
                  https://bit.ly/2A2iVpX
  ───────────────────────────

横浜港のダイヤモンドプリンセス号.jpg
横浜港のダイヤモンドプリンセス号
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2020年06月30日

●「米国ではコロナはどう感染したか」(EJ第5278号)

 米国が中国への人の出と、中国からの人の入りの双方を禁じる
──これは中国との人の往来の遮断ですが、一見すると、実に手
際良い処置に見えます。トランプ大統領としては「どうだ、これ
でもう大丈夫だ」という気分だったのでしょう。
 しかし、トランプ大統領のこの決断は、今になって考えると、
いささか遅すぎたのです。それは、この措置が、WHOの緊急事
態宣言(PHEIC)に基づいて行われているからです。WHO
のこの措置は、本来であれば、遅くとも1月22日に発出される
べきだったのですが、中国の習近平主席の要請で、テドロス事務
局長が根回しし、30日までに延期させたからです。
 ときあたかも中国の春節の時期(1月24日〜30日)であり
中国の大量の旅行団が米国内に入ってしまっています。テドロス
事務局長は、「WHOとしては、国際的な貿易と渡航の制限を求
めない」といい、中国に助け舟を出しています。このことを後で
知って、トランプ大統領は「WHOは中国寄りであり、われわれ
はWHOとの関係を絶つ」と宣言するにいたるのです。WHOに
騙されたことを知ったからです。
 それでも2月の中旬まで米国は順調だったのです。2月12日
の米国株式市場で、ニューヨークダウ工業株30週平均は、2万
9551ドルを付け、史上最高値を記録しています。3万ドルの
達成は目前だったのです。
 しかし、2月24日になると、状況は一変します。イタリアで
大規模な感染が伝えられると、ダウ平均は突然1000ドル以上
下落したのです。そして、2月25日、CDCのナンシー・メッ
ソニエ博士が次の警告を発しています。
─────────────────────────────
  コロナウイルスが米国全土に拡散している可能性がある
          ──CDCナンシー・メッソニエ博士
─────────────────────────────
 このメッソニエ博士の発言を受け、米国株は連日急落します。
2月25日、CDCは「国内で感染が広がるのは時間の問題であ
る」と発表。この発言を受けて、ダウは2月12日の最高値から
3月23日まで大幅ダウンし、その下落幅は1万959ドル、下
落率にすると37%の暴落です。リーマンショック時のそれは、
54・4%の暴落だったので、まさにリーマンショック時に次ぐ
大幅な株の下落率ということになります。
 2月26日のことですが、サンフランシスコ市が新型コロナウ
イルスで非常事態を宣言しています。ところがその時点でサンフ
ランシスコ市内で感染者は1人も確認されていなかったのです。
サンフランシスコは、中国との人の往来が多く、感染が拡大する
予感があったようです。ちょうどその頃の日本経済新聞の記事は
カルフォルニア州における非常事態宣言について、次のように書
いています。
─────────────────────────────
【シリコンバレー奥平和行】中国系の住民が多い米カリフォルニ
ア州で、地方政府が非常事態宣言を出して新型コロナウイルスの
感染拡大に備える動きが広がってきた。シリコンバレーの大半を
含むサンタクララ郡などに続き、サンフランシスコ市も2月25
日に発令した。郡や市は危機管理センターの機能拡充といった対
策を加速する。
 サンフランシスコ市は米国で最大の中華街を抱えるなど中国と
の関わりが深い。感染者はまだ見つかっていないが、市幹部は、
「中国本土との往来が多く、発症のリスクが高まっている」と指
摘する。非常事態を宣言することで、発症や感染拡大に備える。
               https://s.nikkei.com/3eBQEFS ─────────────────────────────
 2月に関しては、米国は一部の州では、感染が確認されていな
いにもかかわらず、非常事態宣言を出すなど、警戒していた州も
ありましたが、3月に入って感染が爆発したニューヨークでさえ
も、2月中は危機感にほど遠いものがあったのです。滝田洋一氏
の本に、その頃のニューヨーク在住者からのメールが次のように
紹介されています。
─────────────────────────────
 NYは(いまのところ)、感染者はゼロ!のグリーンゾーンで
す。なんか、ゾンビ映画のセーフゾーンの要塞のなかにいる気分
です。皆マスクをしないで、まったく普段通りの生活です。オペ
ラもカーネギーホールもいつもどおり。むしろ咳をする人が外出
を控えているのか、観客マナーは向上したかも。
                      ──滝田洋一著
        『コロナクライシス』/日経プレミアシリーズ
─────────────────────────────
 2月29日のことです。米国の最初のコロナ感染者がワシント
ン州で亡くなっています。この人は、1月21日に感染が発覚し
ており、隔離されていたのです。これによって、ワシントン州は
州としてはじめて非常事態宣言を出しています。
 そして3月に入ると様相は一変します。とくにニューヨーク州
では、日に日に感染が拡大し、3月29日には1日の感染者数は
7千人を超えたのです。どのように拡がって行ったのか、米環境
・社会問題研究家/田中めぐみ氏は次のように書いています。
─────────────────────────────
 ニューヨーク州では、3月1日にイランへの渡航歴がある人の
感染が最初に市内で確認され、3日には2例目となる経路不明の
感染者1名を郊外で確認。その後、その人物と接触のあった人の
間で感染が広まり、翌4日に11人、5日に22人、6日に44
人と倍増し、17日には1000人を超え、29日には1日の感
染者数が約7千人、死者数は200人以上となっています。
             ──社会問題研究家/田中めぐみ氏
                  https://bit.ly/2Vnqf6X ─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/022]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ、ニューヨークの被害はなぜ大きいのか−当局者
  ら要因指摘
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルス感染症(COVID19)によるニュ
  ーヨーク市の死者数は今週の時点で少なくとも2万1000
  人に上った。この数はロサンゼルス郡の10倍で、イタリア
  で最も被害の大きいロンバルディア州の1万6000人をも
  上回る。英国の人口はニューヨーク市の8倍だが、死者の数
  は3万7500人前後だ。
   明るい兆しも見え始めている。ニューヨーク市のデブラシ
  オ市長は5月26日の記者会見で、新型コロナの感染拡大は
  減速しつつあり、6月半ばまでに経済活動再開に着手できる
  方向にあると語った。
   だが、重要な問いが依然残る。ニューヨークの被害がこれ
  ほど広がったのは、何が原因なのか。ブルームバーグでは新
  型コロナ対策に関与した当事者の過去の発言を振り返った上
  で、専門家や米疾病対策センター(CDC)、市長にこの問
  いをぶつけたところ、ニューヨークの爆発的な感染拡大を招
  いた大きな要因として以下の点が指摘された。
   米国は中国の感染者数が少なくとも1万4000人に上っ
  ていた2月2日、中国からの入国をほぼ禁止した。だが、欧
  州からの入国は3月13日まで禁止されることはなかった。
  その間に、イタリアの感染者は2人から1万5000人余り
  へと急増していた。       https://bit.ly/3eC44Sl
  ───────────────────────────

ニューヨークの市街.jpg
ニューヨークの市街.
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2020年07月01日

●「米国はなぜ感染を防げなかったか」(EJ第5279号)

 3月に入ってからの米国における新型コロナウイルスの感染拡
大について、30年以上ワシントンに在住している古森義久氏の
本から、探ってみることにします。
 「首都のワシントンから見るアメリカが一夜にして変わった」
──このようにいうと、誇張に聞こえるかもしれないが、自然な
感覚でそれは突如として起きたと古森義久氏はいいます。東海岸
の首都ワシントンDCからみると、新型コロナウイルスの感染拡
大は、米国北西部の西海岸のワシントン州で起きている遠くの出
来事という感覚だったのです。
 それが3月の上旬になると、少しずつ、しかし、着実に、一定
方向に変わりはじめ、そして、そのスピートが一気に上がったの
です。ワシントンDCで初めての感染者が出たのは、3月7日の
ことです。その人は、都心部のジョージタウン地区にあるキリス
ト教会の牧師だったのです。したがって、教会で信徒たちと多く
の接触の機会があり、感染者が広がったのです。
 連邦議会でも上院議員に感染者が出たのです。そのため、議会
関連の公聴会や集会が中止や延期になるなど、影響がではじめて
います。そして、3月11日にWHOはパンデミックを宣言し、
トランプ大統領による国家非常事態の宣言が行われます。
 ところで、日本では、とても不思議な現象があります。国会は
「3密」の見本のような場所です。しかも、最近までマスクすら
つけずに議論していたのです。しかるに、日本の国会議員でコロ
ナウイルスの感染者になった人はなぜかいないのです。聞いたこ
とがあるでしょうか。外国では、英国のジョンソン首相がかかっ
ていますし、他国の多くの議員も罹患しています。なぜ、日本の
国会議員は、感染者にならないのでしょうか。
 それはさておき、3月上旬の首都ワシントンでの感染者は合計
5人だったのです。しかし、それから18日後の3月25日にな
ると、同じ首都の感染者は1000人を超えてしまったのです。
オーバーシュートです。拡大のスピードが非常に早いのです。こ
れを米国全体で見ると、次のようになります。
─────────────────────────────
    1月21日 ・・         1(0)
    2月20日 ・・        14(0)
    2月29日 ・・        24(1)
    3月 5日 ・・      175(12)
    3月 8日 ・・      495(22)
    3月11日 ・・     1203(38)
    3月13日 ・・     2160(50)
    3月17日 ・・     5656(96)
    3月18日 ・・    7999(118)
    3月28日 ・・ 101657(1581)
                   括弧内の数字は死亡者
         ──古森義久著/『新型コロナウイルスが世
界を滅ぼす/非常事態で問われる国家のあり方』/ビジネス社刊
─────────────────────────────
 ここで考えてみるべきことがあります。米国は、名目国内総生
産(GDP)が世界一の経済大国であり、ニューヨークは、世界
で最も繁栄している都市です。それに加えて、これも世界一とい
われる米疾病対策センター(CDC)を有しており、その医療レ
ベルは非常に高い国です。
 その米国がなぜ新型コロナウイルスの感染を押さえ込めなかっ
たのでしょうか。その原因は2つあります。
─────────────────────────────
     @大統領が専門家の意見を信用しないこと
     ACDCの予算と人員を削減していること
─────────────────────────────
 @について考えます。
 トランプ大統領は、ビジネスマンとしての自分の能力を過信し
大統領就任直後から、米国の利益を最優先する「アメリカ・ファ
ースト(米国第一)」を掲げて、あらゆる分野の専門家の意見を
軽視する傾向があります。
 しかし、ウイルスには国境はなく、全人類の敵であるので、こ
れまでの米国は、世界60ヶ国以上に職員を派遣し、各国の専門
家とも交流を重ねながら、資金も拠出して、世界の牽引役となっ
てきたのです。
 トランプ政権以前の米国はそのスタンスを守ってきています。
2002年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が中国を襲った
とき、CDCの専門家40人を現地に派遣して支援していますし
H7N9型のインフルエンザが中国で発生したときは、米中が共
同研究を実施し、中国の開発したワクチンが米国側に提供されて
います。こういう問題で国と国とが争うのは、人類にとって不幸
なことだからです。
 続いてAについて考えます。
 しかし、トランプ政権の下では、国際保健分野は冷遇されてい
ます。トランプ政権は、CDCの予算と人員を削減し、エボラ出
血熱対策の教訓から設けられている国家安全保障会議(NSC)
のパンデミック担当チームも2018年には解体されています。
そんなものにカネをかけるのは、無駄だと考えているからです。
 このことに追い打ちをかけたのは通商分野での米中衝突です。
中国のCDCにも米国の専門家のポストが用意されているのです
が、トランプ政権の現在は空席のままです。しかし、武漢で新型
コロナウイルスの感染が広がったとき、米国は専門家派遣を中国
に打診していますが、中国側に断られています。
 こういう情報もあります。米CDCは、新型コロナウイルス用
の検査キットを開発しましたが、その検査キットに不備があり、
国内感染を防ぐことができなかったといいます。「アメリカ・フ
ァースト」では、こういうとき、国際的な連携がうまくいかなく
なり、結局は自国のマイナスになることが多いのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/023]

≪画像および関連情報≫
 ●アメリカと中国/パンデミック下の暗闘/その2
  ───────────────────────────
   「新冷戦」とも呼ばれるアメリカと中国の覇権争い。新型
  コロナウイルスの感染拡大の責任追及を巡り、情報戦が激し
  さを増す中、中国は、各国への医療支援を積極的に活用する
  「マスク外交」に乗り出している。これに懸念を強めるアメ
  リカ国内では、中国経済からの切り離し=デカップリングを
  求める声と米中の2大国の協力を促す声が交錯している。
   中国の外交官や国営メディアの英語版のツイッター上には
  中国から輸送された大量の医療物資が各国に到着した場面を
  撮影した画像や、受け入れ国の喜びの声であふれている。中
  国政府は4月10日、これまでに127の国に医療物資を輸
  送、11の国に医療チームを派遣したと発表。輸出した物資
  はマスク38億6000万枚、防護服3700万着、人工呼
  吸器1万6000台など総額で102億人民元、日本円で、
  1500億円余りに上るとしている。中国政府の、いわゆる
  「マスク外交」だ。
   中国のプロパガンダを監視するアメリカ国務省のガブリエ
  ル特使は、中国の情報戦の重点がこの「マスク外交」の宣伝
  に移ったと指摘する。「中国政府は当初は『ウイルスの発生
  源がアメリカ』という偽情報を各地で発信したもののアフリ
  カで否定的な反応が相次ぐなど功を奏さなかった。このため
  中国の情報発信は、中国政府の行動の賛美へと変わった」。
                  https://bit.ly/31kWFTr
  ───────────────────────────

米中の新冷戦.jpg
米中の新冷戦
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2020年07月02日

●「米国の感染者急増/経済再規制か」(EJ第5280号)

 6月26日のことです。ニューヨーク・タイムズ紙の集計によ
ると、米国では、4万5千人の感染者が確認されています。これ
は、3日連続で過去最高を記録しています。
 添付ファイルをご覧ください。米国の感染者数は、4月に一度
ピークを迎えています。これに対して、外出規制などの措置によ
り、感染者数は4月から5月にかけて減少をはじめたものの、米
国は6月に経済活動を再開しています。そうすると、米国のグラ
フは再び急上昇をはじめたのです。新たな感染者を比較的抑え込
んでいる欧州諸国とは対照的です。
 このグラフは、米国の焦りをあらわしています。トランプ政権
としては、11月の大統領選挙勝利に向けて、少しでも早く経済
を回復させたいという焦りがあるのです。
 これを受けて26日、トランプ政権の新型コロナウイルス・タ
スクフォースは会見を開いていますが、場所はホワイトハウスで
はなく、保健福祉省で、トランプ大統領は欠席です。この会見で
新型コロナウイルス対策の責任者であるペンス副大統領は、次の
発言をしています。
─────────────────────────────
 テキサス、フロリダ、アリゾナなどの州で、感染者が増えてい
ることは確かだが、医療態勢が整備されたこともあり、死者数は
減っている。多くの命を失った2ヶ月前に戻ると考える人もいる
が、それよりはだいぶいい状況だ。また、新規感染者の約半数が
重症化しにくい35歳未満の若者であるということは、ある程度
勇気づけられるニュースだ。       ──ペンス副大統領
             2020年6月28日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 このペンス副大統領の発言にも焦りが見られます。感染者の約
半数が若者でよかったといっていますが、そんなことはありえな
いです。この発言に対して、会見の場にいた国立アレルギー感染
症研究所のファウチ所長は次のようにクギをさしています。
─────────────────────────────
 若者であっても、感染すれば、知らぬ間に感染を広げる役割を
担うことになる。   ──国立アレルギー研究所ファウチ所長
─────────────────────────────
 若者の感染者の多くが無症状です。ということは、市中にはそ
ういう無症状の若者の感染者が多くいて、家族をはじめ、周辺の
人に自覚のないまま感染させていることを意味しています。これ
がこのウイルスの怖いところです。
 6月25日、米疾病対策センター(CDC)のロバート・レッ
ドフィールド所長は、米国のアメリカの新型ウイルス感染者数は
実際は報告数の10倍以上とみられるという衝撃的な発表を行っ
ています。その根拠について、レッドフィールド所長は、次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 根拠として、ウイルス検査は症状が出ている人に限定されてい
る。3月から5月にかけて使われた診断方法では、おそらく10
%程度しか確認できていない。米国民の5〜8%が新型ウイルス
にさらされた。社会的距離を保ち、マスク着用と手洗いに努める
ようにしてほしい。秋と冬に向かう時期に、これらは非常に、非
常に重要な防御策となる。  ──CDCレッドフィールド所長
                  https://bbc.in/2BLqVMJ
─────────────────────────────
 米国の感染者数は、28日に250万人を超えており、レッド
フィールド所長の予測では、米国の市中には、10倍の2500
万人の無症状の感染者がいることになります。
 南部のテキサス州は、米国のなかでロックダウンを一番早く解
除し、経済活動を再開した州ですが、25日に5996人の新規
感染者が確認され、グレッグ・アボット知事(共和党)は、経済
活動の規制を一部復活させています。バーの営業を停止し、レス
トランの収容人数を50%減らす知事令を出しています。
 同じ南部フロリダ州は、26日、1日8942人の感染者が判
明し、同州のデサンティス知事は、バーでのアルコールの提供な
どを禁止しています。気温が上がり、エアコンを求めて屋内に入
る人が増えていることなどが原因とみています。
 このように米国では、テキサス州やフロリダ州のように、1日
当りの感染者数が過去最高を記録する州が続出しています。アラ
バマ、アリゾナ、カルフォルニア、ミシシッピ、ミズーリ、ネバ
ダ、オクラホマ、サウスカロライナ、ワイオミングなどです。ま
さに感染爆発です。これでは、本格的な経済再開など、とても困
難な情勢です。しかし、これは、11月の大統領選に大きな影響
を与えることになります。
 感染のモデルを考えてみます。新型コロナウイルスは感染して
も無症状のまま治ってしまう人が多いといわれます。そういう人
は若い人が多いと推定されます。その無症状の感染者が、自覚の
ないままに誰かに感染させているのです。その場合、感染者のう
ち、症状の出る人がどのくらいの割合なのか、無症状の感染者の
感染の強さがどのくらいなのか、何もわかっていないのです。
 台湾疾病コントロールセンターからもたらされた情報がありま
す。この情報については、5月25日のEJ第5252号で取り
上げていますが、新型コロナウイルスに感染した100人とその
濃厚接触者2671人のデータです。次のデータは、2次感染者
22人が感染した時期を示しています。これによると、症状が出
る前の感染が10人とかなり多いのです。
─────────────────────────────
            症状が出る前 ・・ 10人
         発症日から3日以内 ・・  9人
    発症日から4日目ないし5日目 ・・  3人
         5日目以降の感染者 ・・  なし
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/024]

≪画像および関連情報≫
 ●米で新型コロナ感染者が再急増11日当たり4万人超え
  最多更新続く
  ───────────────────────────
   アメリカでは、新型コロナウイルスの感染者が再び急増し
  ていて1日当たりの感染者の数が4万人を超え、連日、最多
  を更新しています。これを受けて、ペンス副大統領は、近く
  予定していた秋の大統領選挙に向けたイベントの一部を延期
  することを明らかにしました。
   ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによりますと、アメリ
  カで26日に確認された新たな感染者の数は、前の日から、
  5000人余り増えて4万5255人と初めて4万人を超え
  2日連続して、これまでで最も多くなっています。
   なかでも南部フロリダ州では、1日の新たな感染者がおよ
  そ9000人に上り、観光地として知られるマイアミのビー
  チは、来月4日の独立記念日の前日から閉鎖されることにな
  りました。また、テキサス州は1日の新たな感染者がおよそ
  5000人、西部アリゾナ州もおよそ3400人に上り、い
  ずれも急増しています。
   ペンス副大統領は、フロリダ州とアリゾナ州で秋の大統領
  選挙に向けたイベントを近く行う予定でしたが、こうした状
  況を受けて延期することを決めました。選挙陣営は、ウイル
  スの感染に対する「念のための警戒」と説明していて、ペン
  ス副大統領は2つの州を訪問して、知事との会談などは予定
  どおり行う見通しだとしています。
                  https://bit.ly/385pLYv
  ───────────────────────────

人口10万人あたりの新型コロナウイルスの新たな感染者数.jpg
人口10万人あたりの新型コウイルスのロナ新たな感染者数
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2020年07月03日

●「無症状の感染者が感染を拡大する」(EJ第5281号)

 昨日のEJでご紹介した台湾疾病コントロールセンターのデー
タについて改めて考えてみることにします。テレビなどのメディ
アがどこも取り上げないからです。なお、この情報は、名古屋大
学名誉教授、小島勢二氏から伝えられたものです。
 PCR検査を受けて、新型コロナウイルスが陽性と診断された
人が100人います。この陽性の感染者100人の、濃厚接触者
2671人についての追跡調査です。そのうちの2次感染者は、
22人(0・8%)。感染歴のデータを再現します。
─────────────────────────────
            症状が出る前 ・・ 10人
         発症日から3日以内 ・・  9人
    発症日から4日目ないし5日目 ・・  3人
         5日目以降の感染者 ・・  なし
    ―――――――――――――――――――――
                      22人
─────────────────────────────
 まず、2次感染者22人では、軽症患者よりも重症患者に接触
した人の方が、感染リスクが高かったことが確認されています。
重症患者を診るのは、医療感染者ということになりますが、濃厚
接触者2671人のうち、697人は医療関係者です。
 これに対して、濃厚接触者2671人のうち、無症状の患者に
接触した人は91人いましたが、そのなかから、2次感染をした
人はいなかったといいます。
 問題は感染歴です。2次感染した22人のうち、約半数の10
人は症状が出る前の感染歴があり、9人は症状が出てから3日以
内、3人は発症日から4日目ないし5日目であり、5日以降につ
いては、感染者はゼロです。
 ここでわからないのは、無症状感染者の場合、どういう状況に
なったら、他の人に感染させるのかということです。他の人に感
染させられるかどうかは、ウイルスの量に関係があるようです。
 名古屋大学名誉教授、小島勢二氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 ウイルスが感染した時に症状がでるには、一定以上のウイルス
量が必要である。新型コロナウイルスについても、海外からリア
ルタイムPCR法でウイルスの量を測定した研究が数多く報告さ
れている。
 これらの研究によると、症状の発症前後が最も多量のウイルス
が検出され、感染から1週間を境に、ウイルス量は急速に減少す
る。台湾からの報告と合わせると、新型コロナウイルスが他人に
感染するには一定のウイルス量が必要で、発症から1週間経てば
この値を下回ると想像される。    https://bit.ly/2Zhu5Qm
─────────────────────────────
 つまり、こういうことです。新型コロナウイルスに感染しても
ウイルスの量が少ないと、症状も出ないし、他の人に感染もさせ
ないのです。それでは、そのウイルスの量はどのように計測する
のでしょうか。PCR検査でウイルス量は計れるのでしょうか。
 現在、一般的に「PCR検査」と呼ばれている検査法は、正確
には「PCR法」といい、目に見えないウイルスの遺伝子を特殊
な装置を使い、目的の遺伝子を増加させることによって、見えれ
ば陽性、見えなければ陰性と判定するものであり、ウイルスの量
を計測する検査法ではありません。
 ウイルスの量を計測するには、PCR法を発展させた「定量検
査」というものがあり、「リアルタイムPCR」と呼ばれていま
す。この検査では、PCRの1サイクルで目的のウイルスのDN
Aは2倍になるので、これを繰り返すことによって、DNAがあ
る量に達すると、増やしたDNAがその量に達するのに何サイク
ル回したかがわかれば、最初に存在するDNAの量を推定できる
のです。この方法であれば、ウイルスの量を測定できます。
 話が難しくなってきたので論点を整理します。人による違いや
年齢による違いは当然ありますが、新型コロナウイルスに感染し
ても、ウイルスの量がある一定の量に達するまではいっさい症状
は出ず、そのまま無症状のまま治ってしまう人もいます。
 こうした無症状感染者の体内のウイルス量がある一定の量に達
すると、咳や発熱の症状が出てきます。そういう症状が出る前の
数日の間は、体内のウイルス量が増えて、他の人に感染可能にな
ります。台湾のデータによる2次感染者22人のうち、10人は
無症状感染者から感染しています。症状が出ていないので本人は
無自覚のまま10人に感染させています。このケースを「A」と
します。
 続いて、感染者に症状が出てから、5日目まではウイルスの量
も増大し、非常に感染させやすくなります。このケースを「B」
とします。重傷者のウイルス量はもちろん多いです。
 このケースBについては、本人に咳や発熱の症状があるので、
常識的には本人も用心するし、第3者も警戒するので、感染には
抑止がかかります。それでも12人が感染しているのです。しか
し、症状が出てから5日以上経つと、ウイルスの量は減少するの
で、それ以後は、感染者が1人も出ていないのです。
 新型コロナウイルスについて、診断時から時間を負うごとに分
離培養を行ったドイツからの報告によると、診断直後は高い確率
でウイルスを分離できたものの、日を経るごとにウイルスの量が
減少し、発症から8日目以降は、検査した全員において分離する
ことができなかったのです。
 この情報が正しいとすると、新型コロナウイルスに感染しない
ためには、ケースA、すなわち、無症状であるが、実はウイルス
に感染している人をいかにして発見するかにかかっていることに
なります。もちろん本人も無症状であるので、感染していること
はわかっていないので、発見はとても困難を極めます。
 本人すら自覚しない無症状の感染者を把握するには、国民の全
員の検査以外に方法はありません。そのためには検査方法の改革
が必要です。   ──[『コロナ』後の世界の変貌/025]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ感染症:WHOはなぜ「無症状の感染者は感染さ
  せにくい」と発言したのか
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルス(COVID−19、以下、新型コロ
  ナ感染症)の感染メカニズムが少しずつわかってきたが、症
  状が軽かったり、無症状だったりする感染者から感染するか
  どうかで議論に混乱が生じている。これまでに出た論文から
  この問題の真偽について考える(この記事は2020/06
  11時点の情報に基づいて書いています)
   WHO(世界保健機関)が6月8日のメディア・ブリーフ
  ィングで、「無症状の人が他の人へ感染せるのはとても珍し
  い」と述べた。するとこの発言に対し、世界中の専門家から
  異議が唱えられた。WHOは対応に追われたが、この発言は
  新型コロナ感染症の感染拡大対策を根底からくつがえすかも
  しれないからだ。
   我々が発熱や、長引く咳、倦怠感といった症状を起こして
  いなくても、外出を自粛してテレワークをし、いわゆる「3
  密」を避けたり、ソーシャル・ディスタンシングをとり、手
  指衛生やマスクの装着に神経質になっているのはもしかした
  ら自分が感染してウイルスをもっているかもしれなかったり
  同じような人に接触する危険性があるからに他ならない。ま
  た、医療現場でも無症状(不顕性)感染者が患者さんとして
  来院することに注意し、医療関係者も自らがそうであるリス
  クを恐れながらウイルスに対峙してきた。6月8日のWHO
  の発言は、こうしたことを否定する危険性がある。では、無
  症状の感染者からは感染するのだろうか。
                  https://bit.ly/38c0trO
  ───────────────────────────

PCR検査風景.jpg
PCR検査風景

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2020年07月06日

●「マスクの効果を見直す必要がある」(EJ第5282号)

 なぜ、マスクをするのか。なぜ、人と社会的距離をとるのか。
それは、自分を含めて、誰も自分が新型コロナウイルスの感染者
である可能性を否定できないからです。実は、このことは、案外
理解されていないと思います。以下、このウイルスについて、わ
かってきたことについて書きます。
 ある人が新型コロナウイルスに感染したとします。感染当初は
ウイルスの量が少ないので、症状は出ませんが、ウイルス量があ
る一定の量に達すると、咳や発熱などの症状が出てきます。問題
は、その症状が出る何日か前から、このウイルスは人に対する感
染力を持つことです。感染できるだけのウイルスの量に達したか
らです。このことは当の感染者はもとより、他人がそれを知る由
もありません。だから、このウイルスは防御しにくいし、きわめ
て厄介なのです。
 この無症状感染者のほとんどは、その後のウイルスの量が症状
を起こす一定のレベルに達することなく、そのまま治ってしまう
人が多いのです。ウイルスの量と発症や感染との関係については
ウイルスの量を計測できる「リアルタイムPCR」という測定法
によるいくつもの論文が出ているようです。
 さて、症状が出た感染者について述べます。感染者の年齢、健
康状態による違いはありますが、重症化する人と軽症の人に分か
れます。重症化する人は、ウイルス量が継続的に増加しているの
で、感染力はきわめて高いのです。したがって、重傷者を診る医
師は、感染しないよう厳重に防護する必要があります。
 しかし、軽症の患者はどうかというと、1週間も経てば、ウイ
ルスの量が減り、他の人に感染させる恐れはなくなります。これ
は台湾やドイツからの報告によって確認されています。かつて日
本では、軽症患者は、病院以外のホテルなどに隔離し、PCR検
査で、2回連続して陰性にならなければ隔離を解かない方針でし
たが、この必要はまったくなかったことになります。
 以上のことを前提とすると、マスクをつけて人と社会的距離を
とるのは、人に自分の飛沫を浴びせたり、人から飛沫を浴びない
ためです。しかし、マスクをしている人のほとんどは、人からの
感染を防ぐためにやっており、自分が他の人に移さないためと考
えている人は少ないと思います。まさか自分が既に感染者である
と考えている人は少ないからです。
 米国のトランプ大統領がマスクをしないことに非難が集まって
います。マスクの有効性はわかっているのに、国のリーダーがマ
スクをしないのは問題があると、クオモニューヨーク州知事が批
判していますが、トランプ氏は馬耳東風です。
 こんな話があります。トランプ氏の対抗馬になる可能性の高い
バイデン氏は、5月下旬のメモリアルデーに黒いマスクをして姿
を現しています。トランプ氏は、このバイデン氏に「天気のいい
屋外でマスクを着用するのはかなり異常」と、その写真を添付し
てツイートしたところ、バイデン氏は、トランプ大統領が公のイ
ベントにもマスクを着用しないことについて「本当のバカ」と批
判したのです。
 もっとも、欧米人がマスクをしないのは、文化の違いもありま
す。コラムニストのサンドラ・ヘフェリン氏は、日本と欧米人の
違いについて次のように述べています。
─────────────────────────────
 欧米人は主に「口」で表情を作るので、顔の下半分が見えない
と、相手の表情が分からず怖い、不気味だと感じる傾向があるよ
うです。そのため、「顔の下半分」を隠すのは、相手に対して失
礼であり、礼儀に欠けている、というとらえ方をする欧米人が多
かったのです。
 逆に日本では「サングラスは失礼」だと考える人が多いです。
筆者が日本に来たばかりの頃、プールサイドにあるカフェでアル
バイトをしていたのですが、屋外であったためにまぶしくてサン
グラスをしていたら、「サングラスで接客をするのは失礼」と怒
られました。ただし、サングラスを外すと、まぶしくて目を開け
ていられなかったため、「目が弱いんです」と説明をし、サング
ラスをしてもよいことになりました。この時に、「日本ではサン
グラスをするのは『失礼』に当たるんだ」と知って、目からうろ
こが落ちる思いでした。       https://bit.ly/3gb4Xl9
─────────────────────────────
 確かに、欧米では鼻と口を隠すのは、不審者、悪漢、ドロボー
と相場が決まっており、目を隠しても、鼻や口元を隠さないもの
です。しかし、日本では、サングラスをしている人を怪しい人、
不審者とする傾向が、かつてはあったと思います。アメリカン・
コミックスに登場するスーパーヒーロー「バットマン」は、目と
鼻は隠していますが、口元は出しています。文化の違いであるこ
とは明らかです。
 問題は、無症状感染者──本人は感染しているとは考えていな
い無症状感染者──からの感染をいかにして防ぐかです。はっき
りしていることは、そういう感染者を発見するのは不可能である
ということです。そうであるとすると、方法は、家に閉じこもる
か、外に出掛けるときはマスクをするか、どちらかしかないので
す。そういう意味において、マスクは最小必要限度不可欠です。
どこにそういう感染者がいるか、だれもわからないからです。
 日本人の外出のさいのマスク装着率はほぼ100%です。こん
な国は、日本しかないと思います。今や外出に際してマスクを装
着することは、エチケットになっているからです。日本の感染者
数が、欧米諸国に比して明らかに少ないのは、案外マスク装着に
あるのではないかと思います。
 意外ですが、WHOはマスクをあまり重視しているように見え
ないことです。発熱や咳のある人は、マスクをするべきであると
いっています。これは不可解な話です。現在のWHOは、無症状
感染者による無自覚感染というものを重視していないのでしょう
か。どうやら、現在のWHOはあまり頼りにならないようです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/026]

≪画像および関連情報≫
 ●「マスクは無意味」の議論にもう意味がない理由
  ───────────────────────────
   4月1日、安倍晋三首相が国内の約5000万の世帯に、
  ガーゼマスクを2枚ずつ配布することを発表した。この対策
  に対して異論を唱える人たちが多い中、「このタイミングで
  配るのはどうかとか、1世帯2枚でいいのかといった議論は
  あるかと思いますが、洗って使い回せるマスクでしょ。すご
  くいいと思います」。
   こう持論を展開するのが、独立行政法人国立病院機構東京
  病院呼吸器センターの永井英明医師。日本感染症学会指導医
  日本結核・非結核性抗酸菌症学会指導医などを持つ、呼吸器
  感染症治療のプロフェッショナルだ。永井医師は、現在の新
  型コロナウイルス感染症に対するマスクの扱いについて、疑
  問に思うことが多いという。
   「例えば、WHO(世界保健機関)は、新型コロナウイル
  ス感染症の症状、とくに咳がある人やその人の世話をする人
  だけマスクを使うように呼びかけています。しかし、本当は
  すべての人がマスクを使ったほうがいいはずです」
   厚生労働省は、新型コロナウイルスに関するQ&Aのなか
  でマスクについて「自身の予防用にマスクを着用することは
  混み合った場所、特に屋内や乗り物など換気が不十分な場所
  では一つの感染予防策と考えられます」としている。
                  https://bit.ly/31B7gK7
  ───────────────────────────

バットマン.jpg
バットマン
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2020年07月07日

●「コロナウイルスの感染者増大傾向」(EJ第5283号)

 東京都を中心に、神奈川、埼玉、千葉で、新型コロナウイルス
の感染者が再び増加傾向にあります。7月3日の東京都の感染者
は124人ですが、年代別の感染者は次の通りです。
─────────────────────────────
          感染者          感染者
   10代     4人   40代     9人
   20代    60人   50代     6人
   30代    37人   60代     4人
              70代以上     4人
   ───────────────────────
                   合計 124人
             ──2020年7月4日/朝日新聞
─────────────────────────────
 これによると、10代〜30代を合わせると101人になり、
全体の78%を占めています。この現象をどのように判断すべき
でしょうか。ここまで検証してきたことをベースに考えると、次
のようにいえると思います。
 若い人の場合、たとえコロナに感染しても、発症する人は少な
く、そのまま治ってしまうケースが多いのです。発症するかどう
かを決めるのは、体内のウイルスの量によって左右されます。ウ
イルスの量がある一定の量に達すると、咳や発熱などの症状が出
てくるので、この状態のときにPCR検査を受けると、陽性と判
定される可能性が高いのです。
 問題は、どういう状況のときに他の人に移す感染力を持つかで
す。発症のおよそ3日ほど前から、このウイルスは感染力を持つ
といわれます。その約3日間は、本人に自覚はなく、その人と接
触した人にウイルスを感染させる可能性があります。そのことは
他人はもちろんのこと、本人もわからないのです。
 こんなケースも考えられます。ウイルスに感染して、咳や発熱
などの症状が出ても、PCR検査を受けなかったり、検査を希望
しても、受けられなかった場合──このケースはいまでもあると
いわれる──若い人の場合、治ってしまうケースも多いのです。
しかし、このケースでは、発症の出る前後から発症後1週間程度
は、他の人に感染させてしまう可能性が高いのでが、実際問題と
してこの状態の若者を発見することはきわめて困難です。誰が感
染者かわからないので、お互いにマスクをして、社会的距離をと
る以外方法はないと思います。日本人は、他国に比べると、マス
クに関しては、ほぼ徹底されているので、これによる感染者の抑
制効果は相当効いていると思います。
 124人の感染経路を調べると、次のようになっています。
─────────────────────────────
              ◎感染経路
         夜の街    58人
         会食     18人
         職場      6人
         施設      5人
         家庭      2人
        その他      9人
         不明     26人
        ───────────
               124人
             ──2020年7月4日/朝日新聞
─────────────────────────────
 感染経路を見ると、「夜の街」と「会食」を合わせると、6割
を占めています。いずれも、マスクが使えず、どうしても「密」
になりやすい環境です。こういう環境に、感染力を持つ人が1人
でも入り込むと、感染が拡大してしまいます。いくら入店時に体
温チェックをしたり、手の消毒をしたりしても、感染を防ぐこと
は困難です。
 そこで、東京都の小池知事は、政府の緊急事態宣言に合わせて
4月に東京としての緊急事態措置を発令し、都民には徹底した外
出自粛、事業者には、休業要請、営業時間短縮、施設使用、イベ
ントの使用制限などを実施したのです。こういう都の要請に応じ
た事業者には、都から一定の協力金が支払われています。
 つまり、東京都は、店舗側には休業要請を出して店を閉めさせ
都民には、外出自粛を呼び掛けるという両方に制限をかけたので
す。それでも強制ではないので、店を開く事業者もあるし、そう
いう店に出向く都民はいるとはいうものの、人の流れを止めたこ
とで、1日の感染者数をなんとか1桁台に押さえ込むことに一応
成功しています。
 しかし、外出自粛を解き、休業要請を元に戻せば、感染者は再
び増大することは確実です。このEJの原稿は4日に執筆してい
ますが、感染者数は明らかに増加傾向にあります。再び緊急事態
措置を発令し、人の流れを止めることは、大規模なオーバーシュ
ートでも起こらない限り、できないと思います。このようにこの
コロナ禍はなかなか厄介であり、かなり長引く恐れがあります。
 ここで知っておくべきことがあります。毎日、東京都が夕方頃
に発表している感染者数は、東京都が各保健所から聞き取り、集
計したものに過ぎず、正確な数字ではないのです。そのため、そ
の後、随時、更新・修正されています。東京都は別に各保健所か
ら提出された発生届と確定日別に整理したものを「確定日付けに
よる陽性者数」としてウェブサイトに公開しています。
 つまり、保健所は、ある日に陽性として確定した人の数を都に
報告していますが、その人は検査を受けた日には感染していたの
ですから、その日を「確定日」としているわけです。これによる
と、毎日の報告数よりも、確定日の陽性者数の方が多い傾向が目
立っています。例えば、6月9日の発表数は12人ですが、確定
日別陽性者数は25人と倍増しているのです。ほとんどは確定日
の方が多いといえます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/027]

≪画像および関連情報≫
 ●PCR検査増やせ大合唱の謎
  ───────────────────────────
  ・相変わらずテレビでは「PCR検査増やせ」報道が多い。
  ・「国民全員にPCR検査を」と主張する専門家もワイド
   ショーに出演。
  ・100万人当り感染者率と死亡率が断トツに低い日本は、
   成功例ではないのか。
   前記事で「PCR検査増やせ派」がメディアを中心に勢力
  を増し続けている現状を指摘した。その後、自分が現役時代
  に関わっていたBSフジLIVE「プライムニュース」に、
  本庶佑京都大学大学院特別教授がゲストとして出演した回、
  (2020年4月22日放送)で「PCR検査を増やせ」と
  の趣旨の発言をしたとことを同番組の記事で知って驚いた。
  タイトルは、「PCR検査の数断然足りない」・・・ノーベ
  ル賞本庶佑教授が語るコロナ対策「検査は大学研究室でもで
  きる」だ。本庶氏の主張は明確で、医療現場の感染拡大を防
  がねばならない、ということだ。その上で、「私が一番心配
  していること。戦争でいうと一つの小隊がころっとやられる
  状況。             https://bit.ly/2Z20FXD
  ───────────────────────────

東京都の新規感染者数/7月4日.jpg
 
東京都の新規感染者数/7月4日
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

●「米CDCはなぜ機能しなかったか」(EJ第5304号)

 米国CDC(疾病予防管理センター)といえば、「BSL4」
の実験室を持つ感染症に対する世界一の知見を有する研究センタ
ーとして有名ですが、新型コロナウイルス感染拡大という肝心か
なめなときに、世界のリーダーシップをとる活躍をしていないと
思います。昨日のEJに続き、なぜ、機能不全になったのかにつ
いての話を続けます。
 2020年8月6日付の新聞は、次の注目すべき記事を報道し
ています。
─────────────────────────────
◎米厚生長官が台湾訪問へ/断交後最高位/対中強硬姿勢の一環
 ・米厚生省は4日、アザール厚生長官が近く台湾を訪問すると
  発表した。米閣僚の台湾訪問は6年ぶりで、同省によると、
  1979年の台湾断交以来、最高位の閣僚の訪問になるとい
  う。台湾の外交部(外務省)によると、蔡英文総統との会談
  も予定されている。 ──2020年8月6日付、朝日新聞
◎米厚生長官、台湾訪問へ 総統と会談、関係強化
 ・【台北=中村裕】台湾の外交部(外務省)は5日、米国のア
  ザー厚生長官が近く台湾を訪問し、蔡英文総統と会談すると
  発表した。今後、数日以内に訪問するとし、歓迎の意を示し
  た。米国は1979年に台湾と断交して以降、最高位の高官
  の訪問としている。──2020年8月6日付日本経済新聞
─────────────────────────────
 日本の厚生労働大臣に当る米国の大臣は「保健福祉長官」。現
職はアレックス・アザー氏が務めています。しかし、このアザー
保健福祉長官の姿が久しくニュースから消えていたのです。それ
が、8月6日になって、アザー長官が突然台湾を訪問するという
ニュースが報道されたのです。これはこれで米中の対立がさらに
一段と激しくなるニュースですが、EJでは、今回は、それはさ
ておき、アレックス・アザー長官に注目します。
 現在、トランプ大統領の下で、タスクフォースを率いるのは、
マイク・ペンス副大統領。メディア担当は、ジェローム・アダム
ス公衆衛生局長であって、アザー保健福祉長官は公式会見には姿
を見せていない。米メディアは「トランプ大統領の怒りを買って
外された」と報道しましたが、これに対して、トランプ大統領は
ツイッターで、次のように否定しています。
─────────────────────────────
 それは、フェイクニュースだ。彼は、大変立派な仕事をして
 いる。          ──ドナルド・トランプ大統領
─────────────────────────────
 情報によると、このアザー長官は、正義感で大統領に楯突くタ
イプの人物ではないのです。何とか大統領のお気に入りになりた
いと思っている。大統領に嫌われることを心から恐れている人物
の1人。日本にもそういう官僚はたくさんいます。
 そのため長官就任後は、CDCのロバート・レッドフィールド
所長や、「メディケア・メディケイド・サービシズセンター」の
シーマ・パーマ所長らと激しく衝突したといいます。素人の大統
領が要求する無理難題を押し通そうとしたからです。
 しかし、CDCは検査キットで大ミスを犯し、アザー長官は、
トランプ大統領に一喝を食っています。そしてトランプ大統領は
「暖かくなれば病原体は奇跡のように消えてなくなる」という独
自の主張をゴリ押しし、その主張に異を唱え、対策強化を主張す
るCDC幹部を片っ端から、罷免したのです。
 アザー長官は、1月末に、全米向けに「緊急事態宣言」を発出
していますが、これによって、検査キット、ワクチン審査の認可
のハードルが一緒に跳ね上がったのです。米保健行政の官僚主義
がそうさせたのです。それ以来、アザー長官は公式の場から姿を
消してしまったのです。保健福祉長官が先頭に立って、最も活躍
しなければならないときにそうなったのです。
 トランプ大統領の最大の失敗は、ルイジアナ州ニューオーリン
ズでの「マルディグラ(肥沃な火曜日)」と呼ばれる謝肉祭を2
月下旬に強行したことです。マルティグラは、全世界から数十万
人の規模の観光客の集まる「3密」の権化のようなイベントであ
り、当然世界最大級のクラスターが発生し、人口500万人未満
のニューオーリンズで、死者は1000人を超えたのです。
 このように、世界最高の医療産業・学界を擁する米国が、世界
最悪の新型コロナウイルス感染国になる──あってはならない話
です。それは、トランプ大統領が、自己の再選のため、無責任な
行動をしたことが原因であるといえます。
 トランプ政権になってから、コロナが起きる前から、保健・衛
生行政全般のトップに、いかがわしい人物が続々と起用されてい
ます。これに関する『選択』の記事をください。
─────────────────────────────
 2017年初頭のことだ。元凶は、保健福祉長官に起用された
トム・プライス元下院議員だ。医師出身で、下院では予算委員会
の委員長を務めるほどの大物にのしあがった。彼は、米下院で出
世する過程で、悪癖を身につけた。医療関係法案を提出し、成立
のめどが立った直後に、関連企業の株を買うというインサイダー
取引である。これを何度も繰り返した。
 医療業界にとっては最も操りやすいタイプだ。新政権誕生時に
保健福祉長官候補になった。上院の指名投票では、民主党から激
しい反発を招き、僅差でやっと就任。ところが、長官就任後は出
張に政府専用機をたびたび使って問題化した。最後は大統領自身
の怒りを買い事実上解任された。このプライス氏がCDC局長候
補に引っ張ってきたのが、地元ジョージア州のブレンダ・フィッ
ツ・ジェラルド氏である。彼女も医師だが、本職は「アンチエイ
ジング・クリニック」経営。その後、州政界に入って、「医療行
政のプロ」を看板に保健行政のトップにまで出世した。
              ──『選択』/2020年5月号
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/048]

≪画像および関連情報≫
 ●世界最強の感染症対策機関を持つ米国が世界最大の感染国に
  なった理由
  ───────────────────────────
   世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルスだが、1
  つ気になることがある。それは米疾病管理予防センター(C
  DC)という「世界最強の感染症対策機関」を持つ米国が、
  世界最大の感染国になっていることだ。
   4月20日現在、世界の感染者数は238万人を超え、う
  ち米国は74万人(死者4万人)以上で世界全体の3分の1
  近くを占めている。なぜこんなことになっているのかと言え
  ば、その責任の大半はトランプ大統領の失策と無能さにある
  と言っても過言ではない。
   今年1月末、中国の武漢で感染が拡大していた頃、ホワイ
  トハウスには新型コロナについて警鐘を鳴らす報告書が情報
  機関などから上っていた。ところがトランプ大統領はそれを
  軽視し、「暖かくなる4月にはウイルスは消えてなくなる」
  などと、記者団に話していた。
   その結果、初動対応が大幅に遅れ、感染者が十分に把握で
  きず、感染経路の追跡や感染者の隔離などを徹底できずに、
  感染を拡大させてしまったのである。感染拡大のもう1つの
  主要因はウイルス検査の遅れだが、これもトランプ大統領の
  失策と無関係ではない。トランプ政権は世界保健機関(WH
  O)が各国に提供した検査キットを使用せず、米疾病管理予
  防センター(CDC)が独自に開発した検査キットを使うこ
  とを決定した。         https://bit.ly/2DH149K
  ───────────────────────────

アレックス・アザー米保健福祉長官.jpg
アレックス・アザー米保健福祉長官
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2020年07月08日

●「コロナにより米経済はどうなるか」(EJ第5284号)

 今回のEJのタイトルは「『コロナ』後の世界の変貌」ですが
最近は「ポストコロナ」ではなく、「ウイズコロナ」というよう
になってきています。現在の状況を見ると、よほど強力なワクチ
ンでも開発されない限り、コロナを完全に抑え込むことは不可能
のようです。したがって、これからの世界は、「つねにコロナは
身近にいる」という前提の下に、あらゆることをやっていかなけ
ればならないのです。それが「ウイズコロナ」です。
 コロナによる経済の落ち込みが懸念されます。とくに失業率の
悪化が心配です。これについて、中国に詳しい評論家の宮崎正弘
氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 失業率が1パーセント悪化すると、日本では自殺者が、1年に
2000名増える。中国では、GDPが1パーセント下がると、
5000万人が失業する。失業が増えると、真っ先に不要となる
のは外国人労働者。ついで時給が下がり、正社員にはなれず、派
遣社員の雇用もしない方向に経営者は傾く。アルバイトで生活し
て学費を稼いできた学生は悲鳴をあげ、学生ローンに走った。消
費は大きく減退する。            ──宮崎正弘著
『WHAT NEXT/コロナ以後全予測/次に何が起こるか』
                        ハート出版
─────────────────────────────
 現在は、日本をはじめとする世界主要国では、政府が国民に現
金を配付しています。一般的にこのような大判振る舞いが続くと
インフレになるはずですが、経済の実体はデフレ基調です。どう
なっているのでしょうか。
 今回のコロナ禍は、リーマンショックや大恐慌とも比較して論
じられます。リーマンショックとの違いについて考えてみます。
リーマンショックのときは、住宅ローンが商品化され、欧州の投
資家が大量に保有しているという状況において、大手証券会社が
破綻し、カネの流れが止まったのです。これに対して今回のコロ
ナ禍は、人とモノの流れが止まっています。この違いについて、
滝田洋一氏は次のように解説しています。
─────────────────────────────
 もちろん危機発生のメカニズムは異なる。リーマンの際は、ま
ず大手証券会社が破綻し、お金が流れなくなったことで、企業活
動が止まり、世界的な需要蒸発が起きた。今回の危機は順番が逆
である。外出自粛、店舗の営業停止、国境の封鎖。感染拡大を防
ぐ一連の措置が、企業の売り上げ急減を招き、資金繰りをぎゅっ
と締め付ける。そして金融が急収縮している。
 いま必要なのは、資金の供給だ。米連邦準備理事会(FRB)
は、数兆ドル(数百兆円)規模の巨額の資金を金融市場に流し込
んでいる。                 ──滝田洋一著
        『コロナクライシス』/日経プレミアシリーズ
─────────────────────────────
 世界大恐慌は、一般的には、1929年から1934年の5年
間といわれていますが、実際の経済回復には、10年の歳月を要
しています。1929年の米国のGDPは1044億ドルですが
それが1000億ドル台に戻るのには、10年かかっています。
なお、「←」の1933年からは、フランクリン・ルーズベルト
氏が大統領に就任し、ニューディール政策を行い、米国経済の回
復に力を尽くしています。
─────────────────────────────
◎大恐慌時代の米国GDPと失業率の変化
               GDP     失業率
   1929年   1044億ドル    3・2%
   1930年    911億ドル    8・7%
   1931年    763億ドル   15・9%
   1932年    583億ドル   23・6%
   1933年    560億ドル   24・9% ←
   1934年    650億ドル   21・7%
   1935年    725億ドル   20・1%
   1936年    827億ドル   16・9%
   1937年    908億ドル   14・3%
   1938年    852億ドル   19・0%
   1939年    911億ドル   17・2%
   1940年   1066億ドル   14・6%
                      ──菊池英博著
       『金融大恐慌と金融システム』/東洋経済新報社
─────────────────────────────
 このコロナ禍で世界経済は一体どうなるでしょうか。
 2008年のリーマンショック直後の米国のGDPは、マイナ
ス8%だったのです。この数字はウォール街では一大衝撃になっ
て、ウォール街全体が冷え込んだといいます。しかし、今回のコ
ロナ禍は、そんなものでは到底済まない落ち込みになると予想さ
れます。世界の株式市場は、まさに底が抜けたようになり、3月
18日にダウ平均株価は、一時2319ドル安の1万8017ド
ルに下落し、トランプ大統領が就任した2017年1月20日の
終値である1万9827ドルを大きく下回ったのです。トランプ
相場は、これによって吹っ飛んでしまったかたちです。次の日の
19日、米国の感染者数は、遂に1万人を突破しています。
 4月25日、米国予算局は、当初マイナス28%と予測してい
た数値を大幅に下方修正して、2020年度第2・四半期(4月
〜6月)のGDPを「マイナス39・6%」と予測しています。
実に40%のマイナス成長です。
 世界一の投資家、ウォーレン・バフェット氏が率いる「バーク
シャー・ハサウェイ」は、「ウイルスの感染拡大によって世界は
変わる」として、保有していた米航空株を全部損切りで売却した
と発表しています。これにより同社の最終損益は、5兆円の赤字
になるといわれています。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/028]

≪画像および関連情報≫
 ●【新型コロナ】米経済崩壊への最悪のシナリオ、これから
  3カ月で何が起こるのか
  ───────────────────────────
   人口800万で全米第1位のニューヨーク市やその他の大
  都市で新型コロナウイルスが大流行し、感染者数は、累計約
  19万人、死者数は約3900人(米ジョンズ・ホプキンズ
  大学調べ)を突破して中国やイタリア、スペイン、英国をし
  のぐ「世界一の新型肺炎震源地」になった米国。各州や自治
  体が感染拡大予防を目的とする外出禁止令を次々と発令する
  中、世界一巨大な「米国経済」という列車に急ブレーキがか
  かる。経済のロックダウンによる失業率は最終的に1930
  年代初頭の大恐慌時の24%を優に超えると予想される。米
  議会は国民への現金給付など2兆ドル(約240兆円)規模
  の過去最大の経済対策法を成立させたが、現時点のデータや
  専門家の見解では、「医療危機から生じる金融危機」という
  最悪のシナリオを覚悟すべきかもしれない。
   トランプ大統領が2016年11月の大統領選挙で勝利し
  てから右肩上がりであった米株価は、コロナショックで「ト
  ランプ相場」の上昇分がすべて消えうせた。その後いくらか
  回復しているものの、ペンス副大統領が主張するような「米
  経済のファンダメンタルズは依然として強いため、チャレン
  ジを乗り切れば再び大躍進できる」との見方は少数派にとど
  まる。             https://bit.ly/2VOmuYt
  ───────────────────────────

ウォーレン・バフェット氏.jpg
ウォーレン・バフェット氏
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2020年07月09日

●「米国はコロナ禍にどう対応したか」(EJ第5285号)

 コロナ禍が一挙に顕在化した3月の一連の米国の経済対策につ
いて、WBSの滝田洋一氏の意見を参照にご紹介します。
 米国経済の深刻さをあらわす事実があります。3月の新規失業
保険申請者数が990万人、ほぼ1000万人に達していること
です。急速な雇用市場の悪化です。その結果、4月3日に発表さ
れた米国の失業率は4・4%、2月の3・5%から、0・9ポイ
ントも跳ね上がったのです。いや、これでも過小評価で、現在の
米国の失業率の実勢は10%に近いともいわれています。
 米国の失業者の対応について、WBSの滝田洋一氏は、次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 失業者の増加に対しては、雇用そのものを積み増す公共投資が
浮上している。トランプ大統領は「2兆ドル規模のインフラ投資
で雇用の再建が必要だ」と主張し始めた。1930年代のルーズ
ベルト大統領のニューディールを思わせる公共投資政策である。
 ペロシ下院議長も「次は高速通信網や水道インフラの整備など
を盛り込むべきだ」と強調。民主党の十八番である公共投資にト
ランプ大統領が乗ったことで、民主党も共和党もなくなった。
                      ──滝田洋一著
        『コロナクライシス』/日経プレミアシリーズ
─────────────────────────────
 これに対して、日本の日銀総裁に当るFRBのパウエル議長は
どのように対応したでしょうか。
 3月15日、FRBは17日と18日に予定していたFOMC
(連邦公開市場委員会)を前倒しして開き、緊急利下げを行って
います。フェデラルファンド金利を1%引き下げ、0〜0・25
%とする決断を行ったのです。これは、2008年12月に実施
したゼロ金利政策の復活です。
 それに加えて、量的緩和として国債5000憶ドルと住宅ロー
ン担保証券(MBS)2000億ドルを合わせて、7000億ド
ルを買い入れすることを決めています。
 トランプ大統領は、株価を上げるための利下げを求め、ことあ
るごとにFRBに「パウエル議長を解任する権限がある」と、プ
レッシャーをかけていたのですが、パウエル議長は、頑としてト
ランプ大統領の要請を無視していたのです。それだけにトランプ
大統領は、今回のパウエル議長の素早い決断を高く評価し、「金
融当局におめでとうといいたい」といっています。このFRBの
決断について、滝田洋一氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 パウエル議長はFOMC後の記者会見で「市場の流動性に強い
ストレス」と指摘した。3月16日、日本銀行も18〜19日に
開く予定だった金融政策決定会合を前倒しし、追加の金融緩和を
決めた。カギとなるのは株式を購入するための上場投資信託(E
TF)の買い入れ増額だった。それまでの年6兆円を年12兆円
に倍増したのである。      ──滝田洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 FRBの決断はこれだけではないのです。3月23日になると
FRBは、連銀法13条(第3項)の発動に踏み切っています。
連銀法13条(第3項)とは何でしょうか。これには、少し説明
が必要になります。
 米国の中央銀行制度は「連邦準備制度」といわれ、ワシントン
D.C.にある「連邦準備制度理事会/FRB」が全国に散在する
連邦準備銀行(連銀)を統括しています。その連銀の通常の貸出
対象は銀行だけですが、この条項を発動すると、銀行以外の金融
機関や企業、ファンドなどに対しても、融資ができるようになり
ます。そのため「伝家の宝刀」といわれているのです。
 2008年のリーマンショックのときも連銀法13条を発動し
ています。まさに「何でもやる」という姿勢です。具体的には、
雇用主、消費者、企業へのお金の流れを支援するために新たな基
金を発足させ、銀行を後押しするとともに、FRB自身もお金を
出そうというのです。滝田洋一氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 大手の雇用主のためには、FRBが社債の購入に踏み切ること
にした。社債の購入はベン・バーナンキ、ジャネット・イエレン
の2人のFRB議長経験者によるアドバイスである。米国ではこ
ういう時の当局者の結束は固い。通常の中央銀行の仕事は、金融
システム維持のための「最後の貸し手」である。それに対し、今
のFRBは、コロナで止まった経済を動かす「最初の貸し手」と
なったのだ。(中略)
 果たして米議会で3月27日に成立した大型経済対策には、F
RBが新たに4兆ドル相当の社債購入や融資ができるような仕組
みが組み込まれた。コロナで打撃を被った企業に資金提供する基
金を立ち上げる。この基金の貸し倒れに備えて財務省は4250
億ドルの資本を拠出する。大型経済対策のための法律の条文には
「企業や州政府、地方政府などへの貸出を支援する金融システム
に流動性を供給する目的で、FRBにより設立された基金あるい
はプログラム」とある。その流動性供給の手段のなかに、「発行
体からの債務やその他株式の直接買い入れ」という文言があるの
が目を引く。          ──滝田洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 「1ドルの損失吸収力、つまり資本があれば、10ドルの融資
が可能である」──これはFRBのパウエル議長の言葉です。こ
のように、米国は財務省とFRBの役割分担が明確になっていま
す。財務省はリスクを吸収する資本部分、FRBは焦げ付きの恐
れのない負債部分の面倒をみるという分担です。
 滝田洋一氏は、これら米国の一連のコロナとの戦いのための対
策は、政府と中央銀行が一体となったまさにマネーのバラマキ、
すなわち、へりコプターマネーと同様であるといっています。そ
の成否はコロナとの戦いの期間にかかっているといわれます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/029]

≪画像および関連情報≫
 ●米4800億ドルの追加対策合意/中小企業の給与補填増額
  ───────────────────────────
  【ワシントン/河浪武史】トランプ米政権と与野党の議会指
  導部は4月21日、4840億ドル(約52兆円)の追加の
  新型コロナウイルス対策で最終合意した。中小企業の雇用対
  策などに3700億ドルの追加資金を用意し、医療体制の整
  備にも1000億ドル強を投じる。上院は関連法案を同日可
  決。下院も23日に通過する方向だ。これまでの3回の経済
  対策と合わせ、財政出動は3兆ドルに迫る。
   トランプ大統領は21日の記者会見で「中小企業に追加資
  金を供給するため、迅速に関連法を成立させる。その後は、
  すぐに『経済対策第4弾』の議論に入るつもりだ」と表明し
  た。同席したムニューシン財務長官は「これまでの中小企業
  の資金支援で既に3000万人の雇用維持につながった」と
  政策効果を強調した。
   追加対策の柱は、中小企業への資金支援の拡大だ。3月末
  に成立した2・2兆ドルの経済対策には、中小企業の給与支
  払いを補填する3500億ドルの雇用対策を盛り込んだ。今
  回はさらに3100億ドルを追加。資金規模は6600億ド
  ルと当初の1・9倍に増える。中小の雇用対策費は開始2週
  間で上限に達して受け付けを停止していた。追加資金を用意
  して早期に支援を再開する。https://s.nikkei.com/38tPr1b
  ───────────────────────────

FRBパウエル議長.jpg
FRBパウエル議長
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2020年07月10日

●「コロナで変わる世界10大リスク」(EJ第5286号)

 ユーラシア・グループというシンクタンクがあります。毎年年
初に「世界10大リスク」というものを発表していて、その内容
について、全世界の政治や経済の関係者たちが注目しています。
2020年についても1月初めに発表されましたが、3月19日
になって、グローバル・リスクの評価を変更しています。
─────────────────────────────
 ◎世界10大リスク/2020
   1.不正!誰が米国を統治するか      ↑
   2.超大国間デカップリング        ↑↑
   3.米中関係               ↑↑
   4.頼りにならない多国籍企業       ――
   5.モディ政権が推し進めるインドの変貌  ↑
   6.地政学的変動下にある欧州       ――
   7.政治VS気候変動の経済学       ↓↓
   8.シーア派の高揚            ――
   9.不満が渦巻く中南米          ↑↑
  10.トルコ                ↑
 ◎リスク記号の説明
  ↑ :リスクが高まる    ↓↓:リスクが大幅に減る
  ↑↑:リスクが大幅に高まる ──:リスク変わらず
  ↓ :リスクが減る       https://bit.ly/2BUpqvT
                      ──滝田洋一著
        『コロナクライシス』/日経プレミアシリーズ
─────────────────────────────
 第1位に「不正!米国を統治するか」が上がっています。ユー
ラシア・グループによると、米国の国内政治をこれまでトップに
したことはないそうです。それは、これまでの米国の政治制度・
枠組みが世界で最も強固であり、強靭なものであったからです。
なぜ、「不正!」が付いているのでしょうか。これについて、ユ
ーラシア・グループーは、次のように説明しています。
─────────────────────────────
 制度・枠組上の制約は、トランプ大統領を(これまでの大統領
たちと同じように)その公約の大部分を断念することを余儀なく
させてきたが、彼が国を分断するのを、止めることはできなかっ
た。国家たるものが、これほど二極化した状態のまま、先に進む
ことが可能なのだろうか?下院はトランプの弾劾を可決したが、
上院の裁判で彼は無罪になると予想される。こうした動きの結果
11月の大統領選挙の正統性は、次のようにして、失われるだろ
う。すなわち、民主党は、大統領を法を超越した存在にするため
に弾劾案が政治的にもみ消されたと感じる一方で、トランプは、
弾劾手続が、もはや有効な政治的制約手段でなくなったので、選
挙結果に干渉する力を得たと感じるようになる。
                 https://bit.ly/2BUpqvT
─────────────────────────────
 問題は、第2位と第3位の米中関係です。この項目を「リスク
が大幅に高まる」としています。第2位の「超大国間デカップリ
ング」は、貿易にプラスして、5Gに代表される先端技術分野で
の米中のせめぎ合いだったのですが、新型コロナの流行は、この
分断を加速させる結果になったのです。これに関して、ユーラシ
ア・グループは次のように説明しています。
─────────────────────────────
 すでに米中間における技術・人材・投資の有益な流れを混乱さ
せているこのデカップリングは、米中紛争の中心にある一握りの
戦略的技術分野(半導体、クラウドコンピューティング、5G)
を超えて、より広範な経済活動へと拡大していく。市場規模が5
兆ドルに達する世界のテクノロジー産業全体のみならず、メディ
アやエンターテインメントから学術研究に至るまで、他の多くの
産業や機関にも影響を与え、ビジネス、経済、そして文化におけ
る深く解消し難い分裂をつくりだしていく。
                 https://bit.ly/2BUpqvT
─────────────────────────────
 第3位の「米中関係」も「リスクが大幅に高まる」深刻な問題
です。2019年の「世界10大リスク」では、「米中関係」は
2位にランクされていたのです。その理由としては、2018年
暮れに、カナダ当局が米国の要請を受けて、中国通信機器最大手
である華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・副会長兼最高財務責
任者(CFO)を逮捕したからです。この問題は現在も決着して
いないのです。
 今回の新型コロナに関連して、「米中関係」は一層深刻化して
います。これについて、WBSの滝田洋一氏は、次のようにコメ
ントしています。
─────────────────────────────
 米中両国ともに今回の爆発的な感染拡大を、新たな地政学的な
さや当てと見なしている。米国は今回の感染症を、「中国ウイル
ス」と呼び、それを引き起こした中国を非難する。一方、中国は
コロナの早期封じ込めに成功したとして、それを自らの統治シス
テムの正当化に用いている。中国は金融や医薬品の提供を通じた
「コロナ外交」を仕掛けている。
 20年11月の大統領選が近づくにつれて、受け身に立たされ
ているトランプ大統領は中国非難を強めるだろう。対する中国は
米ジャーナリストの追放に象徴される、強権的な報復に打って出
ようとしている。米中間の緊張の高まりとともに、鳴り物入りで
喧伝された米中貿易合意の履行にも疑問符が付く。米中通商協議
の第2段階など思いも寄らない。華為技術(ファーウェイ)など
中国のハイテク企業に対する米国の取り扱いや香港、台湾問題は
対立激化の火種である。「たとえコロナ・パンデミック」が終息
したとしても、米中は新たな冷戦に突入しているであろう。
                ──滝田洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/030]

≪画像および関連情報≫
 ●今年の世界最大のリスクは「米大統領選」 米企業が予測
  ───────────────────────────
   米コンサルティング会社ユーラシアグループは1月6日、
  2020年の「世界のリスク」トップ10を発表した。1位
  には「米大統領選」がランキング。政府や議会、司法への信
  頼が揺らぐなか、選挙結果が有権者に受け入れられず混乱す
  る可能性を指摘した。
   リーダーなき世界を「Gゼロ時代」と名付けて注目された
  国際政治学者イアン・ブレマー氏が社長を務める同社は、年
  初にその年の世界政治や経済に深刻な影響を及ぼしそうな事
  象を予測している。米国内政を1位にあげるのは初めてとい
  う。ブレマー氏はトランプ米大統領の弾劾(だんがい)やロ
  シアなどによる選挙干渉の可能性をあげ、「多くの人が『不
  正を仕組まれた』と感じる前代未聞の選挙になる」と懸念。
  トランプ氏の勝敗にかかわらず訴訟が起こされ、政治的空白
  が生まれる恐れがあるとして、その状況を「米国版ブレグジ
  ット」と評した。
   2位と3位には、米中経済の分離(デカップリング)の拡
  大と、米中対立の激化をあげた。先進国で分断が進む現状や
  気候変動とともに、「数十年間、グローバル化が機会を生み
  出し、貧困を減らし、平和をもたらしてきたが、2020年
  は国際政治の転換点になる」としている。
                  https://bit.ly/3fdSyg3
  ───────────────────────────

WBS/滝田洋一氏.jpg
WBS/滝田洋一氏
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2020年07月13日

●「東京都民全員のPCR検査が必要」(EJ第5287号)

 東京都では、新型コロナウイルスの感染者が拡大しつつありま
す。東京都では、9日に224人、10日には243人のPCR
検査による陽性者が確認されています。
 この原稿は、11日に執筆していますが、さらに感染者が増え
るかどうかわからない状態で書いています。これを受けて東京都
の小池知事は、次のように呼びかけています。
─────────────────────────────
 近隣の県で感染者が増えています。不要不急の他県への移動は
ご遠慮いただきたい。          ──小池東京都知事
─────────────────────────────
 小池知事としては当然の他県への移動自粛要請です。東京由来
の感染者が、埼玉、千葉、神奈川などの首都圏に拡大しては困る
からです。
 しかし、安倍首相、菅官房長官、西村コロナ担当大臣は、次の
ように小池氏の発言を事実上否定しています。
─────────────────────────────
◎安倍首相
 高い緊張感を持って感染状況を注視している。会食の場などに
よる集団感染も確認されており、3つの密を避けるなど、若い皆
さんも含めて感染リスクを避ける行動を徹底していただきたい。
◎菅官房長官
 医療提供体制がひっ迫している状況にはない。直ちに再び緊急
事態宣言を発出する状況に該当するとは考えていない。
◎西村コロナ担当大臣
 ある程度感染源がわかっているので、国の方針はこれまで通り
都道府県をまたぐ移動は自由に行えるが、小池知事の発言は体調
が不調の人は外出や移動を自粛していただくという意味である。
─────────────────────────────
 安倍首相は、「感染状況を注視している」とまるで他人事のよ
うなコメントをしており、「3つの密を避けるように」と国民に
責任を押し付けています。当事者意識がないようです。
 菅官房長官は、医療提供体制に話をすりかえ、それをもって、
たとえ200人を超える感染者が出ても、緊急事態宣言を発出す
る状況にないことを強調しています。
 西村大臣にいたっては、小池知事のいう「不要不急の他県への
移動自粛」は、熱など体調に違和感がある人には、外出や移動を
控えてもらう」という意味であって、都道府県をまたぐ移動は自
由に行ってよいと小池発言を修正しています。
 ところで政府が「余裕がある」とする医療提供体制ですが、こ
れが胸をはるほどのことでないことがわかっています。7月10
日付の「リテラ」によると、東京都の医療提供体制について、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 これまで政府は、「医療体制に余裕がある」という立場を取り
つづけているが、東京都が現在確保しているベッド数は1000
床。対して7月9日時点で、入院患者数は441人と、6月20
日の204人から倍以上も増加している。昨日の東京都のモニタ
リング会議でも、坂本哲也・帝京大学医学部附属病院院長が「だ
いぶ逼迫してきている状態」と認めていた。
 さらに、9日放送の「ニュース23」(TBS)によると、都
の関係者は、入院患者数が増加しているのは「“夜の街”で感染
が拡大している若者たちが病院に入院していることにある」と説
明。東京都では無症状者や軽症者を受け入れるホテルの多くが、
6月末で契約が終了、今月末にも終了するホテルもあるとした。
そのため無症状者や軽症者をホテルでなく、病院に入院させざる
を得なくなっているのだ。実際、同番組の取材に対し、東京都の
新型コロナ連絡調整担当の課長はカメラの前でこう語っている。
 「すべてを受け入れるのが難しくなってきたなと。病院もたし
かに逼迫していると思うんですけども、ホテルのほうも逼迫して
いるというのがいまの状況です」。つまり、病院も、さらには軽
症者を受け入れるホテルも、ともに余裕がない、というのだ。
                  https://bit.ly/3fkEUrw ─────────────────────────────
 なぜ、政府は、連日感染者が過去最高を記録するという目の前
で起きている重大な危険な兆候を無視するのでしょうか。
 その理由は、はっきりしています。それは、経済を活性化させ
るため、「GoToキャンペーン」を8月から実施するつもりだ
からです。政府としては、コロナ対応で失敗し、経済が落ち込ん
でしまった状態では、選挙には到底勝てないからです。そのため
政府として自粛要請は絶対出したくないからです。
 中国の武漢市は、4月8日に都市封鎖が解除されています。し
かし、職場復帰などのために、PCR検査を受けた人のなかから
無症状の感染者の発覚が続き、5月にひとつの団地で、新たに6
人の感染者が確認されたことを機に、武漢市は、「社会の中の恐
怖を取り除く」ことを目的として全員検査に踏み切っています。
たった6人の感染者が出ただけで、武漢市民全員検査をやってい
るのです。200人を超える感染者が連日出ているのに何もしな
い日本とは大変な違いです。
 武漢市民全員のPCR検査で、約990万人を調べ、300人
に陽性反応が出ましたが、全員が無症状だったといいます。もし
この300人を放置すれば、この300人を中心として、多くの
感染者が出たことでしょう。これで誰もが安心して、日々の生活
を送れるようになったといいます。
 日本政府がいまやるべきことは、新型コロナウイルスに関する
不安感を国民から取り除くことです。感染を封じ込めることは不
可能ではありません。「ウイズコロナ」というような誤魔化しを
することなく、せめて東京都だけでも、全件検査を行い、無症状
の感染者を隔離することです。そうしない限り、国民の不安は、
けっして解消しないでしょう。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/031]

≪画像および関連情報≫
 ●小池都知事、200人超に「2週間前の一人一人の行動が...」
  →ネット「2週間前の対策が誤りだったと...」
  ───────────────────────────
   東京都の小池百合子知事は、新型コロナウイルスの新規感
  染者数について、「2週間前の一人一人の行動がこのような
  形で数字となって表れている」と2020年7月10日にコ
  メントした。
   東京都では9日に224人が、10日には243人の感染
  者がそれぞれ新たに確認され、1日に確認された数としては
  2日連続で過去最多を更新した。「ステイホームをそのまま
  続けていただくというよりは...」
   小池都知事は定例会見の中でも確認された人数について、
  「243人と聞いております」と説明した。また、記者から
  経済活動の再開に伴い感染者が出続けていることに関して都
  民へのメッセージを求められると、その中で「皆様方に改め
  て申し上げますと、今出ている数字もやはり2週間前の一人
  一人の行動がこのような形で数字となって表れているという
  ことは、これはずっと変わらないわけですね」と強調。また
  緊急事態宣言中の外出自粛要請を指してか、「あの時ステイ
  ホームなどで本当にご協力いただいた。これをまた、ステイ
  ホームをそのまま続けていただくというよりは、皆さんが気
  を付けていただき、事業者としても気を付けていただき、経
  営者としても気を付けていただいて、新しい日常を作ってい
  くという、その過程でございます」https://bit.ly/2W6JX7B
  ───────────────────────────

東京都の感染者/日別.jpg
東京都の感染者/日別

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2020年07月14日

●「コロナ禍を予告した映画多く存在」(EJ第5288号)

 2020年1月〜3月まで、新型コロナウイルスの感染者が世
界中に拡大するなか、カナダでは、あるテレビ映画がカナダTV
Aネットワークによって放映され、「ジャスト・タイムリー」と
話題になっています。
 実はこの映画が撮影されたのが、2019年で、中国で最初の
感染者が発見されるよりも前なのです。しかし、その内容は、現
在の世界の現状を“予言”していたかのように正確で、リアルな
描写の数々に、誰もが驚かずにはいられない映画です。この映画
は7月には日本にも配信されており、その予告編(日本語対応)
をご紹介します。
─────────────────────────────
     映画『アウトブレイク/感染拡大』予告編
           1分19秒  https://bit.ly/2ZkaekH ─────────────────────────────
 実は、この『アウトブレイク』という題名の映画は、1995
年に米国でも制作制作されているのです。ダスティン・ホフマン
主演の映画ですが、これはパンデミック映画の古典的地位を占め
ていると、映画評論家が批評しています。これについても、英語
ですが予告編があるので、ご覧ください。
─────────────────────────────
       映画『アウトブレイク』予告編
           2分25秒  https://bit.ly/3gVGCAh ─────────────────────────────
 もうひとつあります。映画『コンティジェン』です。この映画
は、中国起源のウイルスがコウモリから子豚に感染し、中華レス
トランのコックへ感染。そのコックと握手した人物が米国にウイ
ルスを持ち込み、パンデミックとなってスーパーを襲撃、都市封
鎖が実施される。武漢ウイルスの感染ルートに酷似している点が
不気味です。予告編は次の通りです。
─────────────────────────────
       映画『コンティジョン』予告編
            1分02秒 https://bit.ly/2CuP8ac ─────────────────────────────
 映画『コンティジェン』のキャッチコピーは、映画の内容もさ
ることながら、なかなか強烈です。「【恐怖】はウイルスより早
く感染する」というのです。
 映画『コンティジェン』について、ノンフィクション作家の川
添恵子氏は、「悪夢は予告されていた」というレポートで、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 ウイルスよりも「恐怖」のほうが、人を支配する、特別かつ確
実な「感染力」を持った“魔物”ではないかと。捕捉すると、直
接会わなくても「恐怖」は「感染力」がある。 ──川添恵子氏
              『WiLL』/2020年8月号
─────────────────────────────
 いずれも、現在の事態をまるで予測したような映画ですが、こ
ういう映画は比較的作り易いといえます。政府として、ウイルス
への最初の対応を誤ってしまうと、こうなってしまうことが十分
予測できるからです。そういう意味で、いわゆる、この種のパン
デミック映画は、そういう事態にならないための啓蒙映画である
といえます。
 英国人の著名コラムニストに、マーチン・ウルフ氏という人が
います。世界銀行のエコノミストなどを経て1987年にフィナ
ンシャル・タイムズに入社しています。経済政策の間違いが第2
次世界大戦を招いたとの問題意識から経済に関心を持ち、一貫し
て経済問題について執筆し、現在最も影響力のあるジャーナリス
トとされ、その論評、発言は各国の財務相や中央銀行総裁も注目
するといいます。
 そのマーチン・ウルフ氏は、今回のコロナ禍について、フィナ
ンシャル・タイムズ紙に次のように書いています。
─────────────────────────────
 これは、第2次世界大戦以降、世界が対峙する圧倒的に最大の
危険であり、1930年代の大恐慌以来、最大の経済的惨事だ。
世界は大国が分裂し、政府の上層部が恐ろしいほど無能な状態で
この瞬間を迎えた。我々はいずれこの局面を通り過ぎるが、その
先には何が待ち受けているのか。多くのことが依然、不透明だが
重要な不確実性のひとつは、近視眼的な指導者たちがこの世界的
な脅威にどう対応するかにかかっている。   ──宮崎正弘著
        『──次に何が起きるか/WHAT NEXT
             /コロナ以後全予測』/ハート出版
─────────────────────────────
 マーチン・ウルフ氏が、今回のコロナ禍を世界大恐慌に次ぐ最
大の経済的惨事になると予測したのは、「(米中)の大国が分裂
し、政府の上層部が、恐ろしいほど無能な状態で、この瞬間を迎
えたからである」としています。
 とくに米国のトランプ大統領は、次の言葉に代表されるように
あまりにも事態を楽観視していたといえます。3月の段階での大
統領の発言です。
─────────────────────────────
     イースター(4月12日)までに解決する
              ──トランプ米大統領
─────────────────────────────
 しかし、米国を筆頭に欧米で死者が戦争並みの犠牲を超えてい
ることを知って、ウォール街も経済学者も愕然とします。それま
での被害者想定を4月初旬までトランプ大統領と同様にきわめて
楽観的に診ていたのです。
 米国の死者は、その時点で朝鮮戦争での犠牲者を超えていたし
それどころか、被害は、香港風邪の規模をはるかにオーバーし、
チェルノブイリを超え、広島の原爆犠牲者を超えたのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/032]

≪画像および関連情報≫
 ●世界経済に「大遮断」の危機/マーティン・ウルフ氏
  ───────────────────────────
   国際通貨基金(IMF)は4月14日に発表した最新の世
  界経済見通しの中で、世界の現状を「グレート・ロックダウ
  ン」と表現した。だが、筆者は現状を踏まえると、むしろ、
  「グレート・シャットダウン(大遮断)」と呼んだ方がよい
  と考える。そもそも今の惨状はロックダウン(都市封鎖)が
  根本の原因ではないし、封鎖を強行していなかったとしても
  世界経済は崩壊していただろうし、封鎖を解除しても経済の
  崩壊は続くかもしれないからだ。
   呼び方はともかく、これだけははっきりしている。これは
  第2次世界大戦後、世界が直面する最大の危機であり、19
  80年代の大恐慌以降、最大の経済的惨事だ。しかも世界は
  大国間の溝が深まり、多くの国の政府の高いレベルが恐ろし
  い無能ぶりをさらけ出す中で、この危機を迎えている。この
  危機はいずれ終わるが、その後、どんな世界が待ち受けるの
  か――。
   IMFは、今年1月時点では迫り来る厄災に気づいていな
  かった。中国が他国に全く情報を伝えていなかっただけでな
  く、自国政府内でも、適切に情報交換をしていなかったため
  だ。おかげで我々はパンデミック(世界的な大流行)のただ
  中にあり、甚大な被害を受けている。
                  https://amba.to/3iZ3JeK
  ───────────────────────────

マーティン・ウルフ氏.jpg
マーティン・ウルフ氏

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2020年07月15日

●「コロナ禍で何が起こりつつあるか」(EJ第5289号)

 今回のコロナ禍で、何が起こりつつあるか考えてみます。コロ
ナ禍による大変化の筆頭は、中国に対する印象の悪化です。少し
オーバーにいえば、全世界が中国を敵視しはじめるという変貌が
国際環境で起きているのです。国際外交におけるかつての中国へ
の注目、期待は薄れ、中国熱は雲散霧消しつつあります。
 2020年4月22日に発表された米国人を対象とするビュー
リサーチ調査は、次のような結果になっています。
─────────────────────────────
 ◎あなたは中国が好きですか、嫌いですか
  ・嫌いです ・・・・・・・・ 66%
  ・好きです ・・・・・・・・ 26%
 ◎あなたは習近平が正しい方向の政治をしていると思いますか
  ・正しいとは思わない ・・・ 71%
  ・正しいと思う    ・・・ 22%
                      ──宮崎正弘著
        『──次に何が起きるか/WHAT NEXT
             /コロナ以後全予測』/ハート出版
─────────────────────────────
 中国の未来に、これまで大きな期待をかけてきたのは、ほかな
らぬ米国なのです。米国がサポートを続ければ、中国は必ず民主
化するし、米国と中国による「G2関係」が築けると本気で考え
ていた中国びいき──パンダハガーがたくさんいたのです。いわ
ゆる親中派です。
 クリントン元大統領をはじめ、ゼーリック元国務副長官、ニク
ソンの忍者外交を主導したキッシンジャー元国務長官、カーター
政権でのブレジンスキー安全保障担当補佐官など、親中派の政治
家はたくさんいたのです。なかでも、ゼーリック元国務副長官に
いたっては、大の反日家で、中国を「競合相手」ではなく、「責
任あるステークホルダー」としても持ち上げるほどの親中派だっ
たといいます。
 しかし、このコロナ禍によって、親中派は激減し、様変わりを
きたしています。5月27日、上院本会議では「ウイグル人権法
案」を全会一致で可決しています。下院では、昨年師走に同法案
を407対1の賛成多数で可決しています。そして、6月17日
トランプ大統領は、この法案に署名しています。
 このように、中国を排除するための米国の法制度が多くなって
おり、それは中国を一歩一歩追い詰めています。このまま行くと
中国はあらゆる面で追い詰められ、将棋でいうところの詰んだ状
態になってしまいます。グローバリズムは、ヒト、モノ、カネの
移動の自由化であるので、中国を市場から排除するためには、こ
こに壁をつくればよいことになります。
 中国共産党の幹部が一番怖がっているのは自国民です。恐いか
ら弾圧するのです。彼らは、共産党の体制が崩壊することも予測
し、外国、とくに米国に資金や財産を移しています。習近平主席
の親族も米国にいるといわれます。もちろん米国はそれらをすべ
て把握しており、香港のようなことが起きると、そうした中国人
の財産を凍結したりします。
 中国排除の米国の法制度の概況について、経済評論家の渡邊哲
也氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 まずヒトですが、大統領令によるIEEPA法で米国国内での
経済活動を制限できます。モノは商務省の輸出管理であるEAR
(輸出管理税別)とECRA(輸出管理現代化法)があり、制裁
はエンティティリスト、カネは財務省のOFAC(外国資産管理
宅)規制によるSDNリストで、資金調達や融資を含む金融取引
が即時に停止されます。
 たとえば、SDNリストでカネの制限を掛ければドルを必要と
する海外展開をしている企業は即死します。ファーウェイを例に
とると、TSMCからのSOCの輸入、日本からの基幹部品の輸
入が停止した時点で、製品の生産ができなくなり、取引先との契
約も切れ、従業員の雇用も継続できなくなる。(中略)
 基本的に最先端の半導体やプログラムの基本部分は米国企業が
特許を保有しており、米国原産技術が含まれています。そして、
それを利用した再輸出も規制対象ですから、台湾だけでなく、日
本企業もその影響を受けることになります。違反すればドル決済
ができなくなり、輸出企業は破綻することになります。どちらに
しても、SOCが手に入らなくなれば、製品は作れません。世界
各国ファーウェイを採用しても、製品の生産が停止するので、い
つまで待ってもネットワークが完成しないことになりそうです。
                ──宮崎正弘/渡邊哲也共著
    『コロナ大恐慌/中国を世界が排除する』/ビジネス社
─────────────────────────────
 博成玉という中国人がいます。中国海洋石油(CNOOC)と
シノペックのCEOを務めた人物です。ティラーソン前国務長官
とは親しい関係といわれます。その博成玉氏が『財訊』という雑
誌の最新号で、アフター・コロナについて、次のように述べてい
ます。米国をよく知る、なかなか冷静な分析です。
─────────────────────────────
 コロナ以後の国際環境は中国にとって冷風、そのうえに米国が
繰り出した悪玉論の蔓延で地政学的環境はさらに中国の立場を悪
化するだろう。コロナはブラックスワンだったのだ。中国への冷
視は、向こう1、2年はおさまらない匂いがする。
   ──博成玉氏/──宮崎正弘・渡邊哲也共著の前掲書より
─────────────────────────────
 ここで「ブラックスワン」とは、あってはならないことが起き
ることを意味しています。マーケットにおいて、予想ができず、
起きたときの衝撃が大きい事象のことを「ブラックスワン」とい
うのです。今回の新型コロナウイルス禍は、まさにブラックスワ
ンそのものだったといえます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/033]

≪画像および関連情報≫
 ●新型肺炎で「反中感情」が世界に広がる根本理由
  ───────────────────────────
   日本ではツイッターのハッシュタグで「#中国人は日本に
  来るな」がトレンド入りした。シンガポールでは、何万人も
  の住民が中国人の入国を禁止するよう政府に求める請願書に
  署名した。
   香港、韓国、ベトナムではレストランなどが中国本土から
  の客を歓迎しないという張り紙を出し、フランスの地方紙は
  トップページに「黄色警報」という見出しを掲載。カナダの
  トロント郊外では、保護者らが最近中国から帰国した家庭の
  子どもについて17日間学校を休ませるよう求めた。
   中国を中心に新型コロナウイルスの感染が急速に拡大して
  いることで、世界各地でパニックが広がり、一部であからさ
  まな反中感情が生じている。
   世界保健機関(WHO)は1月30日に「国際的に懸念さ
  れる公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、アメリカ国務省は中
  国への渡航自粛を勧告するなど、当局は危機の封じ込めを急
  いでいる。しかし、感染拡大に対する不安が、ゼノフォビア
  (外国人嫌悪)を助長している。パニック拡大の波は時に実
  際的な懸念をはるかに上回っている。中国の経済力と軍事力
  の増大がアジアの隣国や西側のライバル国を不安にさせる中
  コロナウイルスは中国本土の人々に対する潜在的な偏見をあ
  おっている。          https://bit.ly/2We66k6
  ───────────────────────────

ゼーリック元国務副長官.jpg
ゼーリック元国務副長官

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2020年07月16日

●「一帯一路構想はコロナで崩壊寸前」(EJ第5290号)

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、嫌中現象が拡大しつ
つあります。これについて、中国海洋石油の元CEOの博成玉氏
は「この状態は1〜2年続く」と予測していますが、今回のコロ
ナ禍はそんな程度では終らないと考えられます。
 ハーバード大学の調査チームによると、この災禍の完全な収束
には、二次感染、三次感染が起きるので、ワクチンが開発される
ことが必要条件であり、そのためには2024年を待たなければ
ならないというのです。
 目下習近平政権が鋭意進める「一帯一路計画」は、コロナ禍に
よって、どうなるでしょうか。中国に詳しい評論家の宮崎正弘氏
と渡邊哲也氏は、一帯一路について次のように述べています。
─────────────────────────────
宮崎正弘:中国経済は、貿易戦争で明らかになった米中の全面対
 立で、ただでさえ悲鳴を上げていたところに、武漢コロナの大
 災禍が加わり、崩壊寸前です。中国を中心とした世界的なサプ
 ライチェーンが見直さざるをえず、日本、韓国、台湾のみなら
 ず、アジア一帯がおかしくなる。つまり、一帯一路の頓挫はも
 はや決定的となった。
渡邊哲也:一帯一路は全滅でしょうね。
宮崎正弘:ヒトの出入りが止まれば、自ずとモノの流れも滞る。
 次はカネの流れも止まる。
渡遵哲也:実際、サプライチェーンの麻痺は物流の麻痺へと拡大
 しています。たとえば、工場が止まれば工場に入るはずの資材
 の搬入も止まり、倉庫に荷物があふれていく。結果的に、上流
 の物流が止まり、モノは身動きが取れなくなってしまう。中国
 近海には、そのような貨物船が多数停泊中で、輸出のための荷
 物も動かなくなっている状況です。一部の税関も機能が停止し
 たままであるため、モノの出入国ができなくなっています。そ
 してモノが止まれば必然的にカネも止まる。中国では感染拡大
 を防ぐために人が集まったり会食したりすることを制限する動
 きが出ており、その影響が飲食業やサービス業を直撃していま
 す。すでに、北京市の有名カラオケ店が破産手続きに入ること
 が報じられているほどです。  ──宮崎正弘/渡邊哲也共著
    『コロナ大恐慌/中国を世界が排除する』/ビジネス社
─────────────────────────────
 1月17日〜18日にかけて、習近平主席は、ミャンマーを初
めて訪問し、アウンサン・スーチーミャンマー国家顧問との間で
「中国・ミャンマー経済回廊」の一環のインフラ建設協力に署名
していたのです。
 1月17日〜18日といえば、武漢でコロナウイルスの感染が
拡大し、その押さえ込みに、国のトップとして全力を尽くさなけ
ればならない重大なときであるのに、「一帯一路」の署名のため
に、のんびりとミャンマーを訪問していたのです。このせいで、
中国国内でのコロナ対応への初動が遅れたのではないかと批判さ
れているのです。その翌週の1月23日、武漢市は突如封鎖され
ています。
 この習近平主席が主導する巨大経済圏構想「一帯一路」につい
ては、インフラ開発の名の下に参加国が重い借金を背負わされ、
計画が遅れたり頓挫したりする事態も生じています。
 具体的にいうと、エチオピア〜ジブチ鉄道は棚上げとなり、マ
レーシア〜シンガポール間高速鉄道プロジェクトは中止、パキス
タンの政権交代に伴う一帯一路事業の見直しなど、2018年以
来、計画の頓挫が続いているのです。欧米諸国からは、返済見込
みのない事業に多額の融資をして相手国を借金漬けにして支配す
るやり方を「債務の罠」とか、「中国式植民地主義」などと非難
されてイメージも地に落ちています。それに加えて、今回のコロ
ナ禍です。
 6月19日時点で16万人以上が感染しているパキスタンでは
一帯一路を象徴する620億ドル(約6兆6200億円)規模の
巨大インフラ事業「中国パキスタン経済回廊(CPEC)」計画
が大きく遅れています。パキスタンは、中国からの300億ドル
(約3兆2000億円)の融資について、返済期間の延長を要請
しています。
 中国の一帯一路計画と、新型コロナウイルスの影響について、
中国の事情に詳しい福島香織氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 一帯一路戦略全体については、ロイター通信が一帯一路に参画
する10企業以上のハイレベル幹部たちに取材したところ、新型
コロナ肺炎の影響でかなり支障が出ている。一帯一路沿線国家の
インフラ建設現場への労働者派遣ができず、また中国国内の工場
運営や物流もコロナ肺炎の流行によって阻害されているため、一
帯一路建設に必要な中国からの輸入資材が届いてないことから、
各地で一帯一路関連建設が棚上げ状態になっているという。
 中国国営中鉄国際集団がインドネシアで60億ドル投資した高
速鉄道建設計画がその一例だ。140キロに及ぶこの高速鉄道建
設工事は、首都ジャカルタと紡績工業都市のバンドンをつなぐ予
定だが、中鉄国際集団の匿名の幹部によれば、新型コロナ肺炎の
影響をうけて、社内で新型コロナ肺炎監視チームがつくられてお
り、春節休みに帰国していた社員らがインドネシアに戻らないよ
うに監督しているという。このため、100人以上のエンジニア
や管理部門の人員がインドネシアに戻れず、工事が中断せざるを
得ない状況らしい。またインドネシアは今月はじめから中国から
の航空便を全面的に暫定停止。過去14日間に中国滞在歴のある
人の入国を禁止した。        https://bit.ly/3fuZ826
─────────────────────────────
 結局のところ、一帯一路の本質は何かといえば、金による買収
モデルであり、新興国をはじめ、貧しい国への投資と政治家や有
力者に対する資金援助なのです。しかし、地元の雇用は生まず、
それが原因で、地元住民との対立は避けられなかったのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/034]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナで狂う中国「一帯一路」、労働者不足の影響
  じわり
  ───────────────────────────
   中国の習近平国家主席が進める、広域経済圏構想「一帯一
  路」はこれまで、同国の影響力を世界中に見せつけるための
  策と見なされてきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡
  大は、この構想がいかに同国からの問題の輸出につながるか
  を示している。
   感染拡大の影響で、中国が国外で進めるインフラ建設や投
  資計画には遅れが生じている。検疫措置によって中国人労働
  者は他国の建設現場に行けず、国外プロジェクトを担当する
  中国企業は深刻な労働力不足に直面している。中国人労働者
  が自覚症状のないまま新たな現場でウイルスをまき散らしか
  ねないとの懸念も高まっている。
   新型コロナは既に総工費55億ドル(約5800憶円)の
  インドネシア高速鉄道計画など複数のプロジェクトに影響を
  与えている。インドネシアのルフット調整相(海事・投資担
  当)は5日、一帯一路の旗艦プロジェクトであるジャカルタ
  とバンドンを結ぶ高速鉄道プロジェクトが遅延に直面しそう
  だと述べた。300人以上の労働者が中国で足止めされてい
  るという。隣のマレーシアでは、総工費104億ドルの東海
  岸鉄道の建設に従事している約200人の中国人労働者のう
  ち、12人が新型コロナ発生地である武漢市の出身だ。彼ら
  はマレーシアに再入国することが許されていない。
                  https://bit.ly/3j3wTte
  ──────────────────────────

中国の「一帯一路構想」.jpg
中国の「一帯一路構想」
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2020年07月17日

●「米国の金融制裁で孤立化する中国」(EJ第5291号)

 今回のコロナ災禍にさいして、北京大学のエコノミストが次の
主張をしています。中国政府は、この主張をどのように受け止め
たのでしょうか。
─────────────────────────────
 日本政府は、国民1人1人に対して10万円を支給する。米国
政府も、1200ドルから2000ドルの現金を支給する。これ
に倣って中国政府は国民全員に千元(15万円)を支給せよ。
                      ──宮崎正弘著
        『──次に何が起きるか/WHAT NEXT
             /コロナ以後全予測』/ハート出版
─────────────────────────────
 宮崎正弘氏によると、中国という国は、莫大な軍拡予算を確保
しても、国民の生活を守るという意識は希薄であるといいます。
今回のコロナ災禍で、中国国民の生活は本当のところ、どうなっ
ているのでしょうか。宮崎正弘氏の本に基づいて考えてみます。
 日本各地でよく見かける中国の旅行団、個人旅行者は、そのほ
とんどが、中国の中産階級の都市部生活者です。相当羽ぶりがよ
さそうにみえますが、その実体はどうなのでしょうか。
 4月22日の中国人民銀行(中央銀行)の発表によると、全土
の都市部生活者、およそ3万世帯の財務内容は、全世帯の56・
5%が住宅ローンなどの借金を抱えていることが明らかになって
います。宮崎正弘氏は、彼らの生活に関して、次のように紹介し
ています。
─────────────────────────────
 背伸びしてマイカーを持ち、子供にピアノを買い、スマホは新
型を追いかけ、通信費の支払いにも事欠くと、贅沢品を忌避する
のではなく食事を削るのだ。この統計はコロナ以前のことであり
それ以後は想像を絶する惨状だろう。げんにコロナの元凶となっ
た湖北省ではGDPはマイナス40パーセントを示している。調
査結果に戻ると、家庭の借財の59・1パーセントが不動産で、
全家庭の20・4パーセントしか金融資産をもっていないことが
分かった。中間層といわれる中国の都会人の大半が、実は安定収
入を欠き、小口の現金にも事欠き、ほかの財産となるようなもの
がない。このような家庭が都会生活者の中産階級の実態だった。
可処分所得は平均11691元(18万円)で、それも全世帯の
3・9パーセントしかないという。(中略)
 借金でマンションを買い、マイカーを買い、ツァーで日本やイ
タリアに観光旅行に行くのも借金。さぁ支払いになると、ローン
残高の巨額に震えて、生活不安に怯える。それが中国の中産階級
の実像だった。これから中国人の海外旅行もマイカーも、ピアノ
も「突然死」を迎える。日本のインバウンド業界の期待する中国
人ツァーの再来は考えにくい。  ──宮崎正弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 今回のコロナ災禍による景気後退に対して、中国政府は、一応
家賃延長、支払い猶予、償還時期の延長などの政策を表明し、中
小企業の支払い補助に1・8兆元(27兆円)、物価安定に38
億元(570億円)、失業保険対策にも予算をつけると表明して
いますが、とくにそれ以上の措置を取る予定はないようです。
 それに加えて、米国で7月14日にトランプ大統領が署名して
成立した「香港自治法案」があります。中国の「香港国家安全維
持法」の制定や香港での抗議デモ弾圧に関与した政府当局者につ
いて、資産凍結や米国への入国制限といった制裁を科すという内
容ですが、どのくらい影響があるかは、この法律をどのように運
用するかにかかっています。
 問題は、そういう当局者と「かなり大きな取引」がある金融機
関も制裁の対象になります。その金融機関が米国銀行から融資を
受けたり、ドル決済に関わったりすることを止めることもできる
のです。そうなると、香港の世界的な金融センターとしての将来
性に対する不透明感が一段と強まってきます。
 つまり、この法律は、中国の大手銀行への金融制裁の道を開く
可能性があり、米国当局は、米銀との取引の禁ずる次の8つの手
法を明らかにしています。
─────────────────────────────
 1.米銀による融資の禁止  4.米国内の視察凍結
 2.外貨取引の禁止     5.米国からの投融資制限
 3.貿易決済の禁止     6.米国からの物品輸出制限
         ──2020年7月16日付、日本経済新聞
                      7、8項目不明
─────────────────────────────
 基軸通貨であるドルの封じ込めは、中国への強烈なる脅しにな
ります。そのため、制裁発動までには1年間の猶予を金融機関に
与えることになっています。これに対して中国政府は、次のよう
な反対の声明を発表しています。
─────────────────────────────
 香港と中国内政に対する乱暴な干渉であり、中国政府は断固反
対する。国安法に反対する米国の試みは、永遠に実現不可能であ
り、もし米国が押し通すなら中国は必ずやり返す。──中国政府
           ──2020年16日付、朝日新聞より
─────────────────────────────
 中国としては、「米国がどのような手を打とうとも、中国は香
港への統治強化を緩めない」といっていますが、この強硬姿勢で
ことを進めると、米国が主導する「中国封じ」が国際社会に広が
り、中国が孤立してしまうこともあります。
 そのため、中国は、アジアを中心に切り崩しを図っています。
国連人権理事会は、6月、英国の呼びかけで、国安法への懸念を
示す共同声明に27ヶ国が賛成しましたが、アジアから加わって
のは日本だけだったのです。韓国もこの声明には加わってはいま
せん。しかし、米国は自国第一で動いており、追従する国は以前
よりは少なくなっています。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/035]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ「香港国家安全法」を各国が支持するのか?メディアが
  報じない思惑
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの感染拡大に世界が頭を悩ませるなか
  中国と周辺諸国との間で緊張が高まっている。東シナ海では
  尖閣諸島を巡って日中の間で緊張が走り、南シナ海では中国
  の内海化政策が進んでいる。また、新型コロナウイルスの発
  生源や香港国家安全維持法を巡って、中国と米国、オースト
  ラリアなど欧米諸国との間ではこれまで以上に関係が冷え込
  んでいる。さらに中国とインドの国境付近でも衝突が発生し
  45年ぶりに死者が出る事態となり、両国の緊張も高まって
  いる。そのような中、6月30日、スイス・ジュネーブで第
  44回国連人権理事会が開催された。同会合では、香港国家
  安全維持法に対する審議が行われ、反対する国と賛成する国
  で意見が分かれた。
   反対する国は、日本を始め、オーストラリア、カナダ、フ
  ランス、ドイツ、スウェーデン、スイス、イギリスなどの、
  27か国で、欧米諸国が圧倒的多数となった。ちなみに、米
  国はトランプ政権になってから国連人権理事会から脱退して
  いる。賛成する国は、中国を始め、カンボジア、キューバ、
  エジプト、イラン、イラク、パキスタン、北朝鮮などの53
  か国だった。同法を巡って、日本の多くのメディアは自由や
  民主主義が奪われる香港への悲観的な見方、米国や英国の懸
  念的なコメントを流すしかしておらず、これについて大々的
  に報じていない。        https://bit.ly/3ftIXSu
  ───────────────────────────

「香港自治法案」を発表するトランプ大統領.jpg
「香港自治法案」を発表するトランプ大統領
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2020年07月20日

●「藤井聡太新棋聖誕生に考えること」(EJ第5292号)

ジャーナル」(第5292号)をお届けします。
 今朝のEJは、思うところがあって、テーマとは直接関係はあ
りませんが、将棋の藤井聡太七段の「棋聖」位獲得の快挙につい
て、書くことにします。私自身、藤井七段のお蔭で、スマホによ
る「将棋観戦」を人生のひとつの楽しみして覚えたからです。
 私自身は将棋はルールを知る程度で詳しくはないし、最近では
指すことはありませんが、藤井七段のタイトル戦は、開始から最
後まで、感想戦を含めて、ABEMA・TVをスマホをつけっぱ
なしにして、毎回視聴しています。最近は「観る将」といって、
こういう見方をしている人は多いらしく、18日の日本経済新聞
の朝刊は、次のように報道しています。
─────────────────────────────
 新たなスターの登場とともに、AIの普及は将棋観戦の楽しみ
も広げた。多くの将棋対局を中継するインターネットテレビ「A
BEMA(アベマ)」は、「先手56%〜後手44%」といった
AIによる評価値を映し出し、形勢判断は一目瞭然。自分では指
さない「観る将」と呼ばれるファンの開拓に貢献している。
 アベマの20年上半期人気番組トップ10は、アイドルグルー
プ「乃木坂46」の番組などに続き、将棋中継が5、6、8位に
ランクイン。新棋聖が誕生した棋聖戦第4局は視聴数は600万
を超えた。     ──2020年7月18日/日本経済新聞
─────────────────────────────
 意外に知られていないことですが、藤井聡太七段は、いつも試
合会場にはリックを背負ってきますが、そのなかには複数社の新
聞が入っているのです。自分のことが載った新聞を持ち歩いてい
るのではなく、その日の朝刊をリックに入れています。
 現在、20代の若者の新聞の購読率はわずか8%(2015年
現在)であり、17歳の藤井聡太七段が新聞を読んでいるとは誰
も信じないでしょう。7月18日付の日本経済新聞の「春秋」に
次の記事があります。
─────────────────────────────
 デビューから無敗の29連勝。前人未踏の新記録を打ち立てた
のが中学の制服姿が初々しい藤井聡太さんだった。連勝が止まっ
た際のコメントが凄い。朝日新聞の取材に「まだ実力的に及びま
せん。むしろこのあたりで『平均への回帰』が起こるのではない
かと」。保険料の算出などに登場する統計学の概念に触れ、今の
成績はサンプルが少なく、本物と評価できないと謙遜したのだ。
理詰めのリアリストだ」。    ──2020年7月18日付
                       日本経済新聞
─────────────────────────────
 17日のことです。朝日新聞記者に感想を問われた藤井七段は
「醍醐味」という言葉を口にしています。これまでも、「実力か
らすると、『望外の結果』」といい、「『僥倖』としかいいよう
がない」と答えています。とてもじゃないが、17歳の少年の使
う語彙ではあり得ない。それは、日頃から新聞をていねいに読ん
でいる成果であると思います。母親の裕子さんによると、小学校
高学年で、司馬遼太郎「竜馬がゆく」や沢木耕太郎「深夜特急」
などを読破しているといいます。
 将棋の戦法のことは詳しくはわかりませんが、新聞によると、
今回の棋聖戦は次の戦法で戦われています。
─────────────────────────────
               渡邊棋聖   藤井七段
   第1局 ・・・・ 矢倉    ●      〇
   第2局 ・・・・ 矢倉    ●      〇
   第3局 ・・ 角換わり    〇      ●
   第4局 ・・・・ 矢倉    ●      〇
─────────────────────────────
 「矢倉」というのは王将をがっちり固める戦法であり、中原誠
16世名人や、米長邦雄永世棋聖が得意とした戦法で、米長邦雄
氏は、矢倉のことを「将棋の純文学である」という明言を残して
います。渡邊棋聖はこの「矢倉」を得意とし、藤井七段は「角換
わり」を得意とするのですが、第3局は「角換わり」で戦ってな
ぜか敗れています。加藤一二三・九段は、渡邊棋聖に「矢倉」の
力比べで勝っているのは、藤井聡太七段の今後にとってプラスで
あるといっています。
 2020年7月18日付、朝日新聞の社説「『感想戦』に学び
たい」は、なかなか感動的です。
─────────────────────────────
 新聞を愛読し、「僥倖」「望外」といった言葉を使いこなす高
校生棋士が、若者らしさを一番感じさせるのは負けた時だ。投了
後に両者が一緒に対局をふり返って、勝因、敗因などを分析する
「感想戦」では、何度もため息をつき、うなだれる。藤井新棋聖
は、多くの有力棋士と同じく、この感想戦を大切にしてきた。
 かつて好きな言葉を聞かれて「感想戦は敗者のためにある」と
答えた。「感想戦という行為自体が他(の世界)では珍しいと思
う」。おとといの対局後も、相手の渡邊明棋聖(棋王/王将)と
30分ほどの感想戦に臨んだ。
 それぞれの場面で自分が何を考えたのかを語り合い、より良い
一手があったのかを共同作業で探究する。人工知能(AI)でも
すべてを解明することはできないといわれる将棋の奥深さと、そ
こに一歩でも近づこうという熱意。悔しい負けを喫したばかりの
渡辺棋聖が、ていねいな言葉づかいで19歳下の藤井新棋聖に意
見を請うシーンには、胸を打つものがあった。
     ──2020年7月18日付、朝日新聞「社説」より
─────────────────────────────
 もうひとつ心に残る話があります。「将棋の神様にもし会えた
ら、何をお願いしますか」と聞かれた藤井聡太七段は次のように
答えています。「一局、お手合わせをお願いしたい」。なかなか
いえる言葉ではないです。藤井新棋聖が、既に2勝している「王
位」戦でもタイトルを獲得することを願っています。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/036]

≪画像および関連情報≫
 ●藤井新棋聖誕生!/現役棋士・真田圭一八段が考えるタイト
  ル獲得決め手となった一手とは
  ───────────────────────────
   藤井聡太七段(17)渡邊明棋聖(棋王、王将)に挑んだ
  第91期棋聖戦五番勝負の第4局が7月16日、関西将棋会
  館(大阪市福島区)で指され、後手の藤井七段が勝利。3勝
  1敗でシリーズを制し、17歳11か月の史上最年少で初タ
  イトルを獲得した。この第4局の藤井七段の戦いぶりについ
  て、25歳でタイトル戦・竜王戦の挑戦経験がある真田圭一
  八段(47)に聞いた。
   まずは藤井新棋聖、タイトル獲得おめでとうございます。
  第4局も期待に違わぬ大熱戦となりました。この対局も非常
  にハイレベルの戦いになりましたが、藤井将棋の特徴がよく
  出た一局だったと思います。
   彼の最大の長所は、悪い手を指さないこと。常にすごい手
  を指すわけではないですが、自らバランスを崩す手は決して
  指さない。簡単なようですが、タイトルホルダー相手でも先
  に崩れない。これはすごい手を一手指して勝つより実は相当
  に大変で、真の実力がないとできないことです。若さとか勢
  いとかの要素は極めて少なく、実力を発揮してのタイトル獲
  得と評していいと思います。難解な第4局でしたが、勝因と
  なった手を挙げれば、終盤の82手目、△86桂と打った局
  面だと思います。飛車をタダで取られてしまうので指しにく
  い手ですが、好手でした。タイトル獲得がかかった一戦でし
  たが、一局を通してプレッシャーを感じさせない内容で素晴
  らしかったと思います。     https://bit.ly/2ZE1wxH
  ───────────────────────────

藤井聡太新棋聖誕生!.jpg
藤井聡太新棋聖誕生!
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2020年07月21日

●「どさくさ紛れの中国の仕掛けとは」(EJ第5293号)

 これほどの時間が経過しても、その正体を明確に捉えることが
できない新型コロナウイルスの感染拡大で、世界中がパニックに
陥っています。日本も例外ではなく、東京都をはじめとして日本
全国に感染者は蔓延しつつあります。
 無症状の感染者が感染を拡大しているというのですから、始末
が悪いです。だれが感染者かわからないので、人と会って話すこ
と自体がリスクであり、マスク、ソーシャルディスタンス、手洗
いが不可欠になり、飲食店などは、そのため多くの客を入れるこ
とができず、破綻に瀕ししつつありま0">す。
 2020年7月17日、午後3時現在の新型コロナウイルスの
感染者と死亡者のベスト10は、次のようになっています。
─────────────────────────────
              感染者数    死亡者数
       米国  3576157  138358
     ブラジル  2012151   76668
      インド  1003832   25602
      ロシア   751612   11920
      ペルー   341586   12615
    南アフリカ   324221    4669
     メキシコ   324041   37574
       チリ   323698    7290
       英国   294116   45204
      イラン   267062   13608
    ──────────────────────
       中国    83613    4634
                  https://bit.ly/3hceWqO
─────────────────────────────
 もともと新型コロナウイルスの発生地は、中国は認めませんが
中国の武漢市です。しかし、現在の米国の感染者数は、357万
6157人、死亡者数は13万8358人であるのに対し、中国
の感染者数は8万3613人、死亡者数は4634人です。この
数字が正しい数字であるかは不明ですが、死亡者数については、
中国は米国の30分の1です。もし、新型コロナウイルスが生物
兵器であったなら、事実上使えない核兵器などより、はるかに強
力な兵器であるといえます。
 何らかの事情で、武漢市においてウイルスが発生したことは確
かです。ところが、中国はこの情報を隠蔽し、身内の事務局長の
いるWHOの協力も得て、何とか人から人への感染の事実を隠蔽
し通したものと考えられます。しかし、その1ヶ月間に中国の春
節の旅行団は世界中の街を訪れ、感染を拡大させています。ここ
までは、これまでの検討でほぼ間違いないと思います。
 世界中の国がウイルスの感染対策に追われるなか、中国はウイ
ルスをほぼ押さえ込み、余裕を取り戻します。世界中に医療団を
送り込んだり、マスクや医療用品を届けたり、販売したりして、
外交上有利なポジションを築きます。まさに放火犯が消防士の役
割を演じたといえます。
 彼らのやったことは、それだけではないのです。いわゆるどさ
くさに紛れて、南シナ海や東シナ海で、軍事演習を行うなど、軍
事面でも好き勝手に振る舞ったのです。日本の尖閣諸島の領海や
接続水域には、40日以上にわたって、連日中国公船の接近侵入
を繰り返し、それは現在もまだ続いています。
 5月20日のことですが、米国のマルコ・ルビオ上院議員を筆
頭に、トム・ティルス、ベン・サッセ、ジョン・コーニョン、ト
ム・コットン、ミット・ロムニーらの共和党の上院議員と、民主
党のジェフ・メークレイ議員らがムニューヒン財務長官に書簡を
送り、次の緊急対策をとるよう求めたのです。
─────────────────────────────
 米国の中小企業で、ハイテク、宇宙開発、エネルギー分野の枢
要部品を製造するなどしている企業が、コロナ災禍により、経営
がふらついている隙を衝いて、中国資本に狙われている。至急対
策を講ずる必要がある。
 とくにコロナ以後、株価が下落して、資金調達に難儀をきたし
ている企業を、中国政府のファンドに支えられた中国資本が民間
ファンドを装って買収攻勢をかける傾向が見られる。
                      ──宮崎正弘著
        『──次に何が起きるか/WHAT NEXT
             /コロナ以後全予測』/ハート出版
─────────────────────────────
 こういう傾向は、米国だけでなく、EUやオートスラリア、イ
ンドなどでも見られるのです。
─────────────────────────────
◎エレン・ロード米国務次官
 中国資本が巧妙に米国の軍需産業の中小企業買収に動いている
のは深刻な安全保障の問題である。
◎マレグレッタ・ヴェスタヤーEU競争委員会コミッショナー
 中国関連株の投資を抑制しなければならない。また中国資本が
EU域内のヘルス、バイオ、医薬品企業の買収に動いていること
に警戒すべきである。
◎ジョシュ・フライデンバーグオーストラリア財務長官
 オーストラリア企業で、経営難に陥ったところが中国のカネに
狙われている。オーストラリアは法改正が必要となった。
                ──宮崎正弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 5月20日には、米上院で、「外国企業説明責任法」が可決さ
れ、下院に送致され成立しています。この法律は、ウォール街に
上場している怪しげな中国企業のあり方を問うものです。会計報
告、企業報告の不透明な情報公開を続ける企業に対しては、強制
的に上場廃止ができる内容になっています。当局は会計検査を義
務付け、3年しても改善が見られない企業を対象としています。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/037]

≪画像および関連情報≫
 ●中国企業、検査拒否なら米上場廃止 上院が法案可決
  ───────────────────────────
  【ニューヨーク=宮本岳則】米上院本会議は5月20日、米
  国に上場する外国企業に経営の透明性を求める法案を可決し
  た。外国政府の支配下にないことを証明するよう求めるほか
  米規制当局による会計監査状況の検査を義務付ける。3年間
  検査を拒否した場合は上場廃止となる。中国企業の「締め出
  し」につながりかねない内容で、米国の対中強硬姿勢が一段
  と強まる。
   このほど上院で可決した法案「外国企業説明責任法」は、
  2019年に共和党と民主党の議員が超党派で提出したもの
  で、20日に全会一致で可決した。下院が可決しトランプ大
  統領が署名すれば成立する。
   法案は名指しはしていないものの、事実上、中国を念頭に
  置いたものだ。提案者の1人、民主党のクリス・ヴァン・ホ
  レン上院議員は声明で「中国企業は長年、米国の開示ルール
  を無視し、投資家を誤解させる情報を出してきた」と批判し
  た。法案によると、米国に上場する外国企業は政府の支配下
  にないことを証明しなければならない。米株式市場には電子
  商取引(EC)大手のアリババ集団やインターネット検索最
  大手の百度(バイドゥ)、中国のネットサービス大手、騰訊
  控股(テンセント)系の音楽配信サービス会社など中国の有
  力民間企業が多数上場する。https://s.nikkei.com/2CtYXFV
  ───────────────────────────


米国に上場している中国企業に圧力.jpg

米国に上場している中国企業に圧力 


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2020年07月22日

●新型コロナ19年10月から流行」(EJ第5294号)

 2020年6月4日のことです。米国のABCニュースは、次
のタイトルのニュースを報道しています。
─────────────────────────────
 衛星データは、コロナウイルスが以前に中国を襲った可能性
 を示唆している。       ──ハーバード大学医学部
        ジョン・ブラウンスタイン教授の研究チーム
 河添恵子著『習近平が隠したコロナの正体/それは生物兵器
                    だった』/WAC
─────────────────────────────
 どういう調査かというと、2018年10月と2019年10
月の「商業衛星画像」を分析したところ、2019年の夏の終わ
りから秋にかけて、武漢市の5ヶ所の主要な病院の周辺地域で車
両数が2018年10月よりも67%も多くなっている事実がわ
かったというものです。つまり、2019年10月には、それら
の武漢市周辺では、病院を出入りする車両が多くあり、病院を利
用する何かが起きていたのではないかというわけです。
 さらに同時期の中国の検索エンジン「百度/パイドウ」での検
索キーワードが、新型コロナウイルスの特徴である「咳」や「下
痢」「発熱」などであるケースが激増していたことです。つまり
武漢市の新型コロナウイルスの感染は、2919年12月ではな
く、2019年10月ではないかと分析できるのです。
 そうであったとしたら、WHOのテドロス事務局長は、おそら
く中国のウイルスに関する情報をかなり早い時点から知っており
中国に協力したものと思われます。
 ノンフィクションライターで、この問題を鋭意調査している河
添恵子氏は、近著の「おわりに/2019年夏、すでに起きてい
たのか」で、次のように興味深いことを書いています。
─────────────────────────────
 私は武漢ウイルスをさまざまな角度から追究していくなかで、
12月というより、「もっと以前から漏れていたのでは?」と考
えていました。日本でも昨秋、「なかなか治らない不可解な肺炎
が流行っている」と医師が語っていたことを聞いていました。さ
らに、昨秋から、顕著に増えていた死因が「肺炎による死」だっ
たことも葬儀関係者からのオフレコ話として、教えてもらってい
ました。武漢市には約200社の日本企業が進出しており、人々
の往来は頻繁だったのです。
 ならば、日本にも同時期、武漢ウイルスが入ってきていた可能
性は捨てきれません。さて、私は、ブラウンスタイン教授の研究
チームが選んだ武漢市の5つの主要病院、@天祐医院、A湖北省
婦幼保健院、B武漢大学中南医院、C武漢中心医院、D武漢協和
医院を、いつもの通りグーグルマップで確認しでみました。
 まず、@CDは、本書で名前が登場する病院です。そして@A
Bは、同市に二ヶ所ある「中国科学院武漢病毒(ウイルス)研究
所」のなかの「新しいラボ」ではなく、長江の東側、武昌区にあ
る「古いラボ」に極めて近い場所にある病院です。とすると、武
昌区にある「古いラボ」が発生源!?
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスが人工のものであるか、遺伝子操作された
ものであるか、あるいは、そうでないかについては、意見が分か
れています。
 HIVの発見で有名なリュック・モンタニエ(フランスの生理
・医学ノーベル賞受賞者/2008年)博士は、武漢ウイルスを
「人工ウイルス」とほぼ断定しています。そのため、中国武漢の
生物化学兵器研究所から漏れた説が欧米では、確実視されるよう
になっています。ポンペオ国務長官が、しきりに「確実な証拠を
もっている」と発言しているのは、これに基づいているものと思
われます。
 コロラド大学の社祖健(アンソニー・トゥー)名誉教授は、武
漢ウイルスはHIVの配列に酷似しているため、人工の遺伝子が
人工的に混入され、人に感染しやすくなった可能性があるとして
います。この説については、中国科学院ウイルス研究所の石正麗
研究員が、論文でそのことを示唆しています。この論文は既に削
除され、石正麗氏研究員も5月下旬まで行方不明だったのです。
 しかし、米国の国家情報長官室は、「ウイルスは人工のもので
も遺伝子操作されたものでもない」としており、その起源に関し
ては目下調査中というスタンスです。また、フランスのパスツー
ル研究所も人工説には疑問を呈しており、それをはっきりさせる
ためにも、中国政府に対して、西側調査団を武漢の研究所に受け
入れての調査を求めていますが、中国政府は拒否しています。
 毒素や生物化学を研究している研究所から、人工ウイルスが意
図せずして、外部に漏れるということはあり得ることです。上記
の社祖健(アンソニー・トゥー)名誉教授は、河添恵子氏に対し
て、こんな話をしてくれたそうです。
─────────────────────────────
 1979年、スヴェルドロフスクの住民が多数(一説には68
名)死亡した事件がありました。ソ連当局は「腐った羊肉を食べ
たことで、炭疽菌が蔓延し、住民が死亡した」と発表しました。
しかしアメリカは「生物兵器研究所から漏れたのだろう」と推測
しました。ソ連崩壊後に、科学者を現地に派遣して調査をしまし
た。結果はアメリカの予想通り。事件は、生物兵器研究所からの
炭疽菌の漏洩でした。空調のパイプが詰まっていて、炭疽菌が別
のところから漏れ出てしまい、住民が亡くなったというのが真実
だったのです。         ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 生物兵器など人道的に絶対に許されるものではありませんが、
もし新型コロナウイルスが生物兵器であった場合、その破壊力は
すさまじいものがあります。世界中がこのウイルスひとつで現に
完全に世界中がパニックになっているからです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/038]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ、19年夏に発生していた可能性・研究
  ───────────────────────────
  【ワシントンAFP=時事】中国・武漢市内の病院の訪問者
  数、および新型コロナウイルス感染症(COVID−19)
  の症状に関する同市からのインターネット検索数の急増から
  2019年8月には新型コロナウイルスの流行が始まってい
  た可能性があることが分かった。米ボストン大学とハーバー
  ド大学の研究チームの予備調査で示唆された。
   査読のある専門誌にはまだ掲載されていない今回の研究論
  文は、比較的新しい分野である「デジタル伝染病学」に基づ
  いている。ボストン大のイレーン・ゾイジー氏率いる研究チ
  ームは、2018年1月から2020年4月に撮影した武漢
  市の衛星写真111枚を分析。また、中国のインターネット
  検索エンジン百度で特定の症状が検索された頻度も調べた。
   研究チームによると、武漢市内の病院の駐車場に止められ
  た車の数が「2019年8月から急増し始め」、その数は、
  「2019年12月にピークを迎えた」という。
   また百度については、「せき」の検索数は例年のインフル
  エンザの流行に合わせて増加していたため、よりCOVID
  −19に特有の症状とされる「下痢」の検索数を調べた。こ
  の結果、8月に増加がみられたことが分かった。これはこれ
  までのインフルエンザの流行時期にはみられなかった現象で
  あるとともに、せきの検索データとも異なったという。
                  https://bit.ly/3eIHE0V
  ───────────────────────────

社祖健コロラド大学名誉教授.jpg
社祖健コロラド大学名誉教授

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2020年07月27日

●「どこからも同情されない国になる」(EJ第5295号)

 沖縄県・尖閣諸島周辺での中国海警局の武装公船などの侵入が
続いており、22日で「100日」連続です。世界中が中国発の
新型コロナウイルス対策で必死になっているスキを見て、中国は
尖閣諸島に毎日堂々と公船を乗り入れているのです。
 5日のことですが、中国公船が30時間以上領海侵犯し、外交
ルートを通じて「釣魚島(尖閣諸島の中国名)周辺の中国領海で
日本漁船を操業させないよう管理すべきだ」と主張してきていま
す。つまり、日本の実効支配を弱めようとしてきているのです。
安倍政権に支配されている日本のメディアは、ニュースを積極的
に伝えませんが、このままいくととんでもないことになります。
 これに対して、21日、エスパー米国防長官は、英・国際戦略
研究所で講演し、このことを次のように批判しています。
─────────────────────────────
 中国は、東シナ海と南シナ海で攻撃的な行動を続けている。日
本の施政下にある尖閣諸島周辺海域で、侵入の回数と時間を増や
している。             ──エスパー米国防長官
             2020年7月22日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 中国を止めるには、尖閣海域を封鎖する必要があります。その
ためには、米軍の射撃練習場になっている尖閣諸島・大正島など
に、日本が自衛隊の軍事拠点を作り、米軍とともに軍事演習を行
えばいいのです。そうすると、中国は太平洋に出る手段を失うこ
とになります。もはや習近平国家主席の日本国賓招待などは、も
し決行すれば、日本中で超大デモが起き、日本は大恥をかくこと
になります。
 どのように考えても、現在の中国にとって、現在の時点で武力
にものをいわせて尖閣諸島を占拠すれば、中国は完全に世界から
孤立します。コロナ災禍で、中国は世界中から信頼を失っていま
す。米軍も日米安全保障条約上、日米両軍が総力を挙げて、島の
奪還に動かざるを得なくなります。
 しかし、中国にも人物がいるようです。中国軍部の代表的なタ
カ派である中国攻防大学戦略研究所の戴旭教授です。この人は、
10年前に「2010年インターネット9大風雲児」と呼ばれ、
故郷の河南省では「河南の三傑」の1人ともいわれています。
 戴旭教授は、「中国が米国について思いもよらなかった4つの
こと」というタイトルで講演を行っていますが、中央日報のサイ
トから、その4つとは何かについて、要約・整理してお伝えする
ことにします。
─────────────────────────────
 戴氏が話す最初の「中国が米国について思いもよらなかったこ
と」は、中国に対する米国の怨恨がこれほどまでに大きかったと
いうことだ。これによると、トランプ米大統領は、中国に対して
少しの好感さえ持っていない。トランプ氏は中国を「貿易テロリ
スト」「グローバル経済侵略者」「詐欺師」「こそ泥」「ルール
破壊者」などと呼んでいるが、これは中国が、夢にも思っていな
かったことだ。
 中国の第二の「思いもよらなかったこと」は、米国のやり方が
情け容赦のない非常に手厳しいものだったということだ。米国政
府の中国バッシングが少しの談判の余裕も与えず、そして電撃的
に行われるとは、中国官僚や専門家のほとんどが予測できなかっ
た。米中貿易が密接に絡み合い、長い歳月をかけて形成されたも
ので、中国は米国の気が触れない限り、中国産製品に対する関税
を2000億ドル(約21兆4000億円)も追加で課すわけが
ないと考えたが、米国は中国に対して相次いで強硬姿勢を取り、
中国の予想をはるかに超えた。
 第三のことは、中国がこのように米国から不利益を被っている
にも関わらず、中国に同情や支持を示す国が一つもないという点
だ。多くの国々が米国の貿易政策に反対しながらも、これによる
最大被害者である中国の味方になって反米戦線を構築しようとい
う国はない。中国は今まで世界各国に援助を惜しんでこなかった
し、援助を受けた国々もまた中国から多くの利益を持っていった
が、いざ重要な時期には中国と共に行動する国がない。
 第四のことは、中国バッシングのために米国国内が一糸乱れず
統一戦線を構築した点だ。米国の共和党と民主党は事あるごとに
対立しながらも、中国に対する政策だけは完全に統一された立場
を見せている。特に驚くのは、米議会で中国のために話をしよう
という政治家がたった一人もいないということだ。
            ──中央日報/中央日報日本語版より
                  https://bit.ly/2E4eFb7 ─────────────────────────────
 この戴旭教授の講演は、本当の意味での中国の反省であるかど
うかわかりませんが、そのように考えている有名人がいるという
ことは、わるいことではないと思います。要するに、中国は米国
という国を間違ってとらえていたということになります。戴旭教
授は、この講演で、「米国に対する新しい認識」についても触れ
ていますが、これについては、次のサイトを参照してください。
─────────────────────────────
  ◎米国にやられてもわれわれに同情する国はない(2)
   米国に対する新しい認識  https://bit.ly/2ZOxd7P
─────────────────────────────
 上記の「米国に対する新しい認識」でも述べられていることで
すが、戴旭教授は、中国政府に対して、「米国は戦略のプロであ
り、一度米国から『敵』という烙印を押されると、反テロ戦争で
見せたように、米国は、すべての手段を動員して最後まで追いか
けてくる恐さがある」と、米国という国に対して、警戒心をあら
わにしています。さらに、たとえトランプ大統領が選挙で交代し
ても、「米国を偉大にする」という核心戦略は不変であるとも述
べています。本当に中国は、そうあって欲しいし、尖閣において
も、いまのようなことはやめて欲しいものです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/039]

≪画像および関連情報≫
 ●徹底的な隔離はなぜ実行できたのか/中国の「大衆を動かす
  仕組み」の底力
  ───────────────────────────
   中国に「居民委員会(居委会)」と呼ばれる組織がある。
  日本で言えば町内会とか、町の自治会みたいな位置づけの組
  織だが、もちろん社会主義体制なので、その性格は大いに異
  なる。いわば中国という国の政策を実行するための、住民の
  代表で組織された実働部隊である。今回の新型コロナウイル
  スに感染症の蔓延で、事実上の「全国民自宅軟禁」の政策を
  実行し、感染の拡大阻止を実現するうえで最も大きな役割を
  担ったのが、この「居委会」だと思う。
   居委会は、中国という国の「いざ」という時の底力、権力
  体制のすさまじさを、まざまざと見せつけた。表舞台ではあ
  まり目立たないが、この居委会を手がかりに、中国社会の仕
  組みについて今回は考えてみたい。
   中国国内の感染拡大が落ち着きを見せ、経済活動が動き始
  めたのとは逆に、日本では感染爆発の危機が叫ばれるように
  なって、日本にいたビジネスパーソン、大学が休みになった
  留学生などが中国に戻る例が私の周囲にも増えてきた。空港
  によって扱いは多少違うが、例えば上海の場合、それらの人
  たちは国籍を問わず、中国入国後は14日間の自宅もしくは
  指定ホテルでの隔離の対象となる(注:その後、上海では日
  本からの渡航者は14日間の隔離対象から除外された。他の
  主要感染国からの渡航者は、3月26日現在、同措置が継続
  中)。             https://bit.ly/2CE8NVA
   ──────────────────────────

エスパー米国防長官.jpg
エスパー米国防長官
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●「米政府による中国総領事館の閉鎖」(EJ第5296号)

 7月21日、米国政府は驚くべき行動を起こしています。突然
ヒューストンの中国総領事館の閉鎖を通告し、当総領事館の3日
以内の閉鎖と職員の撤収を求めたのです。22日、この件に関し
ポンペオ国務長官は次のように述べています。この情報は、新聞
記事よりも詳細な情報の一部です。全文を読みたいときはURL
をクリックすれば読むことができます。
─────────────────────────────
 中国との闇雲な関与の古い方法論は失敗した。我々はそうした
政策を継続してはならない。戻ってはならない。自由世界はこの
新たな圧政に勝利しなくてはならない。
 米国や他の自由主義諸国の政策は中国の後退する経済をよみが
えらせたが、中国政府はそれを助けた国際社会の手にかみついた
だけだった。中国に特別な経済待遇を与えたが、中国共産党は西
側諸国の企業を受け入れる対価として人権侵害に口をつぐむよう
強要しただけだった。
 中国は貴重な知的財産や貿易機密を盗んだ。米国からサプライ
チェーンを吸い取り、奴隷労働の要素を加えた。世界の主要航路
は国際通商にとって安全でなくなった。
 今日の中国は国内でより独裁主義的となり、海外ではより攻撃
的に自由への敵意をむき出しにしている。トランプ大統領は言っ
てきた。「もうたくさんだ」と。https://s.nikkei.com/3jA36Zx
─────────────────────────────
 米国政府がここまでやるのは、よくよくのことです。なぜ、南
部テキサス州ヒューストンなのかについて、スティウェル国務次
官補(東アジア太平洋担当)は、米南部にはハイテク、宇宙など
の重要産業があり、そのため、中国軍による知的財産窃盗の「震
源地」になっていたといっています。スティウェル氏は、中国の
窃盗行為がここ半年間で急増しているのは、新型コロナウイルス
のワクチン開発競争も関係していると述べています。
 この突然の中国総領事館の閉鎖に対して、中国政府は猛反発し
ており、中国の米国の在外公館の閉鎖を検討しているものと思わ
れます。米国の在外公館は中国内に7か所あり、なかでも千数百
人のスタッフがいる香港総領事館の縮小や閉鎖を検討していると
いう情報もあります。
 当然中国政府としては、米国による一方的な中国総領事館の閉
鎖に対しては、相応の報復措置をとってくるものと思われ、米中
関係はさらに悪化することは確実です。加えて中国は、米国のみ
ならず、英国との関係も悪化しつつあるのです。
 このところボリス・ジョンソン首相率いる英国政府が中国政府
によるウイグル族への人権侵害を激しく批判しはじめています。
ウイグル族の人権侵害に関しては、トランプ米大統領が先月「ウ
イグル人権法案」に署名し、成立させていますが、英国もこれと
歩調を合わせています。
 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を引き起
こしながら、香港の「一国二制度」を奪い、軍事的覇権を強める
中国の習近平政権に対し、米英両国が「人権」というカードで米
英両国が足並みを揃えて対峙するかたちをとっています。これは
中国にとって大変な脅威です。
 それだけではないのです。香港市民が持つ「英国海外市民(B
NO)旅券」に関しても、中国政府は「有効性を認めない」とい
う声明を出しています。「英国海外市民(BNO)旅券」という
のは、1997年の香港返還以前に生まれた香港市民の持つ旅券
のことですが、英国政府は、この旅券の保有者に関し、7月22
日に次の声明を出しています。
─────────────────────────────
 BNO旅券の保有者とその扶養親族に対し、2021年1月か
ら特別ビザを発行する。この特別ビザで英国に5年間住むと、英
国の永住権が与えられ、その1年後に市民権も得られる。
                    ──英国政府の発表
─────────────────────────────
 英国政府は、中国の新型コロナウイルスの初期対応に不信感を
高めており、それに加えて、香港の旧宗主国として、中国の「国
家安全維持法」の施行に香港の基本的人権が侵害されるとの懸念
から、BNO旅券の保有者とその扶養親族に対し、救済策を打ち
出したものと思われます。
 なお、英国は既に香港政府と結んだ犯罪人の引き渡し条約の停
止を表明し、香港住民の英国への移住の促進や、次世代通信規格
「5G」分野での中国のファーウェイの排除などを打ち出すなど
反中政策を相次ぎ打ち出しているのです。
 こうした米国や英国の対応について、中国事情に詳しい石平氏
は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 人権や民主主義の本家である英国の果敢な対応は、歴史的な一
歩だ。高く評価する。次は、フランスやドイツなど欧州の他の先
進国の姿勢が問われる。これまで尻込みしていた国が反発して報
復に出れば、かえって国際社会から見放されるだろう。
      ──石平氏/2020年7月21日発行/夕刊フジ
─────────────────────────────
 ヒューストンの中国総領事館は、米国政府から閉鎖を通告され
ると、すぐ機密文書を燃やして処分したようです。それも相当大
量の文書を処分したようで、消防隊まで出動しています。火事と
間違えるほどですから、大変な量を処分したことになります。と
ころで、なぜ、焼却という方法を選んだのでしょうか。
 デジタルデータの消去は、相当注意しても、復元される可能性
が高いし、データ通信はもっとリスクがあります。結局、焼却し
てしまうのが、一番安全な方法と思われます。したがって、大量
の書類を焼却したということは、見られては困る文書がたくさん
あった証拠ともいえます。このように、中国への包囲網は拡大し
つつあります。これに対して、中国はどう対応しようとしている
のでしょうか。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/040]

≪画像および関連情報≫
 ●米の中国総領事館閉鎖/スパイ活動のほか「米への敵対
  行為」が原因か
  ───────────────────────────
   米国務省のオルタガス報道官は7月22日、米政府がテキ
  サス州ヒューストンの中国総領事館に対して、72時間以内
  に閉鎖するよう通告したと発表した。報道官は声明で「米国
  の知的財産と米国民の個人情報を守るため」「中国による主
  権の侵害や米国民への脅迫を容認しない」と強調した。中国
  総領事館の閉鎖は、1979年に米国が中国共産党政権と国
  交を樹立して以来、初めてのことだ。
   デイビッド・スティルウェル国務次官補はニューヨーク・
  タイムズ紙に対して、在ヒューストン中国総領事館の蔡偉総
  領事と中国人外交官2人を、ヒューストン空港で現行犯逮捕
  したと語った。総領事らは、偽の身分証明書を使って、中国
  人訪問客を中国国際航空(エアチャイナ)の中国行きチャー
  ター機に乗せようとしたという。
   スティルウェル国務次官補は、在ヒューストン中国総領事
  館は、中国軍のスパイ活動の拠点だと指摘した。中国軍が中
  国人留学生を米大学に送りこみ、情報を窃盗している。さら
  に、同氏は、過去6カ月、中国当局による米科学分野の研究
  での窃盗が加速化していると述べ、中共ウイルス(新型コロ
  ナウイルス)のワクチン開発と関連していると考えている。
  中国総領事館はこれまでにも、エアチャイナを利用して、米
  国にいる諜報員の中国逃亡を手伝ったことがある。
                  https://bit.ly/2WOH9w2
  ───────────────────────────
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2020年07月28日

●「米政府による中国総領事館の閉鎖」()


7月21日、米国政府は驚くべき行動を起こしています。突然
ヒューストンの中国総領事館の閉鎖を通告し、当総領事館の3日
以内の閉鎖と職員の撤収を求めたのです。22日、この件に関し
ポンペオ国務長官は次のように述べています。この情報は、新聞
記事よりも詳細な情報の一部です。全文を読みたいときはURL
をクリックすれば読むことができます。
─────────────────────────────
 中国との闇雲な関与の古い方法論は失敗した。我々はそうした
政策を継続してはならない。戻ってはならない。自由世界はこの
新たな圧政に勝利しなくてはならない。
 米国や他の自由主義諸国の政策は中国の後退する経済をよみが
えらせたが、中国政府はそれを助けた国際社会の手にかみついた
だけだった。中国に特別な経済待遇を与えたが、中国共産党は西
側諸国の企業を受け入れる対価として人権侵害に口をつぐむよう
強要しただけだった。
 中国は貴重な知的財産や貿易機密を盗んだ。米国からサプライ
チェーンを吸い取り、奴隷労働の要素を加えた。世界の主要航路
は国際通商にとって安全でなくなった。
 今日の中国は国内でより独裁主義的となり、海外ではより攻撃
的に自由への敵意をむき出しにしている。トランプ大統領は言っ
てきた。「もうたくさんだ」と。https://s.nikkei.com/3jA36Zx
─────────────────────────────
 米国政府がここまでやるのは、よくよくのことです。なぜ、南
部テキサス州ヒューストンなのかについて、スティウェル国務次
官補(東アジア太平洋担当)は、米南部にはハイテク、宇宙など
の重要産業があり、そのため、中国軍による知的財産窃盗の「震
源地」になっていたといっています。スティウェル氏は、中国の
窃盗行為がここ半年間で急増しているのは、新型コロナウイルス
のワクチン開発競争も関係していると述べています。
 この突然の中国総領事館の閉鎖に対して、中国政府は猛反発し
ており、中国の米国の在外公館の閉鎖を検討しているものと思わ
れます。米国の在外公館は中国内に7か所あり、なかでも千数百
人のスタッフがいる香港総領事館の縮小や閉鎖を検討していると
いう情報もあります。
 当然中国政府としては、米国による一方的な中国総領事館の閉
鎖に対しては、相応の報復措置をとってくるものと思われ、米中
関係はさらに悪化することは確実です。加えて中国は、米国のみ
ならず、英国との関係も悪化しつつあるのです。
 このところボリス・ジョンソン首相率いる英国政府が中国政府
によるウイグル族への人権侵害を激しく批判しはじめています。
ウイグル族の人権侵害に関しては、トランプ米大統領が先月「ウ
イグル人権法案」に署名し、成立させていますが、英国もこれと
歩調を合わせています。
 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を引き起
こしながら、香港の「一国二制度」を奪い、軍事的覇権を強める
中国の習近平政権に対し、米英両国が「人権」というカードで米
英両国が足並みを揃えて対峙するかたちをとっています。これは
中国にとって大変な脅威です。
 それだけではないのです。香港市民が持つ「英国海外市民(B
NO)旅券」に関しても、中国政府は「有効性を認めない」とい
う声明を出しています。「英国海外市民(BNO)旅券」という
のは、1997年の香港返還以前に生まれた香港市民の持つ旅券
のことですが、英国政府は、この旅券の保有者に関し、7月22
日に次の声明を出しています。
─────────────────────────────
 BNO旅券の保有者とその扶養親族に対し、2021年1月か
ら特別ビザを発行する。この特別ビザで英国に5年間住むと、英
国の永住権が与えられ、その1年後に市民権も得られる。
                    ──英国政府の発表
─────────────────────────────
 英国政府は、中国の新型コロナウイルスの初期対応に不信感を
高めており、それに加えて、香港の旧宗主国として、中国の「国
家安全維持法」の施行に香港の基本的人権が侵害されるとの懸念
から、BNO旅券の保有者とその扶養親族に対し、救済策を打ち
出したものと思われます。
 なお、英国は既に香港政府と結んだ犯罪人の引き渡し条約の停
止を表明し、香港住民の英国への移住の促進や、次世代通信規格
「5G」分野での中国のファーウェイの排除などを打ち出すなど
反中政策を相次ぎ打ち出しているのです。
 こうした米国や英国の対応について、中国事情に詳しい石平氏
は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 人権や民主主義の本家である英国の果敢な対応は、歴史的な一
歩だ。高く評価する。次は、フランスやドイツなど欧州の他の先
進国の姿勢が問われる。これまで尻込みしていた国が反発して報
復に出れば、かえって国際社会から見放されるだろう。
      ──石平氏/2020年7月21日発行/夕刊フジ
─────────────────────────────
 ヒューストンの中国総領事館は、米国政府から閉鎖を通告され
ると、すぐ機密文書を燃やして処分したようです。それも相当大
量の文書を処分したようで、消防隊まで出動しています。火事と
間違えるほどですから、大変な量を処分したことになります。と
ころで、なぜ、焼却という方法を選んだのでしょうか。
 デジタルデータの消去は、相当注意しても、復元される可能性
が高いし、データ通信はもっとリスクがあります。結局、焼却し
てしまうのが、一番安全な方法と思われます。したがって、大量
の書類を焼却したということは、見られては困る文書がたくさん
あった証拠ともいえます。このように、中国への包囲網は拡大し
つつあります。これに対して、中国はどう対応しようとしている
のでしょうか。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/040]

≪画像および関連情報≫
 ●米の中国総領事館閉鎖/スパイ活動のほか「米への敵対
  行為」が原因か
  ───────────────────────────
   米国務省のオルタガス報道官は7月22日、米政府がテキ
  サス州ヒューストンの中国総領事館に対して、72時間以内
  に閉鎖するよう通告したと発表した。報道官は声明で「米国
  の知的財産と米国民の個人情報を守るため」「中国による主
  権の侵害や米国民への脅迫を容認しない」と強調した。中国
  総領事館の閉鎖は、1979年に米国が中国共産党政権と国
  交を樹立して以来、初めてのことだ。
   デイビッド・スティルウェル国務次官補はニューヨーク・
  タイムズ紙に対して、在ヒューストン中国総領事館の蔡偉総
  領事と中国人外交官2人を、ヒューストン空港で現行犯逮捕
  したと語った。総領事らは、偽の身分証明書を使って、中国
  人訪問客を中国国際航空(エアチャイナ)の中国行きチャー
  ター機に乗せようとしたという。
   スティルウェル国務次官補は、在ヒューストン中国総領事
  館は、中国軍のスパイ活動の拠点だと指摘した。中国軍が中
  国人留学生を米大学に送りこみ、情報を窃盗している。さら
  に、同氏は、過去6カ月、中国当局による米科学分野の研究
  での窃盗が加速化していると述べ、中共ウイルス(新型コロ
  ナウイルス)のワクチン開発と関連していると考えている。
  中国総領事館はこれまでにも、エアチャイナを利用して、米
  国にいる諜報員の中国逃亡を手伝ったことがある。
                  https://bit.ly/2WOH9w2
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中国総領事館閉鎖を告げるポンペオ国務長官.jpg

中国総領事館閉鎖を告げるポンペオ国務長官
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2020年07月29日

●「中国による成都米国総領事館閉鎖」(EJ第5297号)

 中国外務省は、米国政府によるヒューストンの中国総領事館の
閉鎖への対抗策として、24日正午に在成都米国領事館の設置取
り消しを発表しました。この成都総領事館は、1985年に設置
されましたが、管轄地域のなかにチベット自治区が含まれるので
中国としては、実際のところ、真っ先に閉鎖したかった総領事館
だったと考えられます。
 中国外交当局関係者は「成都の米国外交官は、特にチベットの
軍事活動に関心を示してきた」と指摘しています。汪副報道官は
会見で、ふさわしくない活動に従事する米国の外交官が成都にい
たと強調しています。「米国だって、やっているじゃないか」と
いいたいのでしょう。
 どうしてこのようなことになったのでしょうか。ポンペオ米国
務長官は、敵意をむき出しにして、次のように述べています。
─────────────────────────────
 歴代の政策当局者は、中国が繁栄すれば自由で友好的な国にな
ると予測したが、関与は変化をもたらさなかった。習近平(シー
チンピン)総書記は失敗した全体主義イデオロギーの信奉者だ。
レーガン大統領はソ連について「信用するが検証せよ」としたが
中国共産党については「信用せず、検証せよ」だ。
                   ──ポンペオ国務長官
      2020年7月25日付、朝日新聞/「時時刻刻」
─────────────────────────────
 ポンペオ国務長官は、「中国が繁栄すれば自由で友好的な国に
なる」といっていましたが、中国に自由世界への門戸を開く努力
をしたのは、クリントン元大統領です。EJでも、2017年に
「米中戦争の可能性」のなかで取り上げているので、その一節を
再現します。中国は米国の好意を裏切ったのです。
─────────────────────────────
 クリントン元大統領は、中国に相応の市場開放を確約させるこ
となく、米国が市場を大幅に開放すれば、経済的に大きなダメー
ジを受けることは最初からわかっていたのです。中国のWTO加
盟を認めることはそれを意味しているのです。
 WTOに加盟すれば貿易は増大する。そうなれば中国は民主主
義国へと変化せざるを得ない──クリントン元大統領はそのよう
に考えたのです。確かに世界の人口の5分の1を擁する巨大な市
場が開かれれば、米国にも大きな利益がもたらされます。そして
中国が民主国家になれば、合わせて平和がもたらされるに違いな
いと考えたのです。
 しかし、中国は、あらゆる機会をとらえて自由貿易システムを
操作し、それによって利益を最大化することによって、自国経済
のみを発展させたのです。そして、米国経済に深刻なダメージを
与えたのです。「経済的関与が民主化と平和を促進する」という
考え方は、中国には通じなかったのです。
        ──2017年5月29日/EJ第4529号
                  https://bit.ly/2ZXxtS1 ─────────────────────────────
 中国がソ連の場合と違う点は、ソ連は自由世界の外にいたけれ
ども、中国は既に内側にいることです。したがって、ソ連のよう
に中国を封じ込めると、世界経済全体が大きなダメージを受ける
ことになります。そのため、1国では対処できず、自由主義の側
が団結して本気で中国を変えないと、中国が自由主義の側を変え
ることになってしまうことになります。ポンペオ国務長官の演説
は、そのことを訴えているのだと思います。
 今回の米国の中国総領事館の閉鎖は、トランプ大統領の11月
の大統領選のパフォーマンスであるという意見もありますが、中
国の知識人は「そうではない」といっています。対米関係の北京
の専門家は、次の指摘をしています。
─────────────────────────────
 大統領選が終わるまでの我慢だという意見もあるが、どちらが
勝っても米中関係が元に戻る可能性は低いだろう。我々はその前
提で、対米政策を考える必要がある。
      2020年7月25日付、朝日新聞/「時時刻刻」
─────────────────────────────
 そもそも社会主義国が自由主義国のなかで経済活動を営むこと
には無理があるのです。アリババの対米投資は、2018年には
12億ドルになっていましたが、シリコンバレーからの撤退を決
めています。子会社による米決済企業の買収が、CFIUS(対
米外交投資委員会)によって阻止され、後退を余儀なくされたの
です。米国では無理なのです。
 これに関連して、渡邊哲也氏と宮崎正弘氏は、次のようにやり
とりしています。
─────────────────────────────
渡邊哲也:結局、マルコ・ルビオなどは、中国企業をウォールス
 トリートから完全に追い出せと言ってしまっている。なぜかと
 いうと、中国の場合、法律で会計資料や会計データを国外に持
 ち出せないのです。
宮崎正弘:無茶苦茶なのだよね。よく今まで許してきた。それに
 してもフロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員の活躍は目覚
 ましい。かれはキューバ系です。
渡邊哲也:資料を持ち出せないということは、監査ができないわ
 けだから、それを上場させていること自体がおかしい、という
 のが、マルコ・ルビオの論説なのです。
                ──宮崎正弘/渡邊哲也共著
    『コロナ大恐慌/中国を世界が排除する』/ビジネス社
─────────────────────────────
 社会主義の国が自由主義の国のルールでうまくやっていけない
ように、その逆もうまくいかないのです。米中貿易戦争の激化で
GAFAが中国事業の拡大に大きなネックが生じてきているのも
そこに無理があるからなのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/041]

≪画像および関連情報≫
 ●中国・成都の米総領事館の閉鎖を通知/米国への対抗措置
  ───────────────────────────
   中国政府は7月24日、アメリカ政府がテキサス州ヒュー
  ストンにある中国総領事館の閉鎖を命じたことに対抗して、
  四川省成都にあるアメリカ総領事館を閉鎖するようアメリカ
  側に通知したと発表し、両国の関係悪化は深刻さを増してい
  ます。中国外務省は、内陸部の四川省成都にあるアメリカ総
  領事館の設置許可を取り消し、一切の業務を停止するよう、
  24日午前、アメリカ側に通知したと発表しました。
   これについて汪文斌報道官は24日の記者会見で、「アメ
  リカ側が21日に突然、テキサス州ヒューストンにある中国
  総領事館の閉鎖を要求してきた。これは国際法や国際関係の
  基本原則に違反し、両国関係を著しく破壊するものだ」と強
  く非難したうえで、アメリカ総領事館の閉鎖は「いわれのな
  い行為への正当な対応だ」として、対抗措置であることを明
  らかにしました。
   そして、今回の措置に至った責任について、「完全にアメ
  リカ側にある」と指摘し、ヒューストンの中国総領事館の閉
  鎖を撤回し、両国関係を正常な状態に戻すよう求めました。
  また、「成都のアメリカ総領事館員の中には、その資格と異
  なる活動をしている人がいて、中国の内政に干渉し、中国の
  安全や利益を損なっている」と指摘し、アメリカ側をけん制
  しました。一方、アメリカのポンペイオ国務長官が23日の
  演説で、習近平国家主席を名指しして、「全体主義のイデオ
  ロギーの信奉者だ」などと強く非難したことについて、汪報
  道官は、「中国共産党と中国の社会制度を悪意をもって攻撃
  したものだ。事実をねじ曲げ、イデオロギー的な偏見に満ち
  ている」と激しく反発するなど、両国の関係悪化は深刻さを
  増しています。         https://bit.ly/32VyrQu
  ───────────────────────────

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中国が米総領事館閉鎖を通知 
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2020年07月30日

●「ファーウェイの封じ込めは可能か」(EJ第5298号)

 米政府による在ヒューストン中国領事館閉鎖事件について、も
う少し述べることにします。日本としても今後の中国との向き合
い方について、熟慮する必要があるからです。
 前にも述べたように、今回の中国領事館閉鎖は、米国政府とし
ては、よくよくのことがあってのことだと思います。そうでなけ
れば、いきなり領事館を閉鎖するなどという乱暴なことはしない
はずです。それほど、中国の情報スバイ行為は、度を超していた
ものと考えられます。
 領事館閉鎖について、当該領事館のスタッフは「証拠を示せ」
といっていましたが、米国からすれば、証拠は山ほどあるようで
す。そんなものを米政府が公表するはずがないことを踏まえたう
えで、国内向けに「証拠を示せ」といっているのです。
 今回の件に関係して、中国軍との関係を隠して不正にビザを取
得して入国し、大学などで、研究活動に従事していた中国人3人
と、在サンフランシスコ中国領事館に逃げ込んだ中国人女性研究
者の身柄を拘束したことを米国司法省は明らかにしています。こ
れらの4人は、米研究機関にいる中国人のスパイに、どのような
情報を盗むべきかを具体的に指示し、米国の捜査の手からどのよ
うにして逃れるかなどについて指導する立場のスタッフとみられ
ヒューストンの総領事館がスパイ活動の拠点となっていたことを
示しています。法律によって、国民総スパイ化を進めている中国
では、おそらく今後も、このような活動をやめないものと考えら
れます。これでは、他国から非難を浴びて当然です。
 中国との関係の温度差を計る指標として、米国のトランプ政権
が求める「5G」からの中国通信機器大手の為華技術(ファーウ
ェイ)の排除についての対応があります。既に指摘しているよう
に、英国はこれまで条件付きで認めてきた「5G」からのファー
ウェイ排除を決めています。
 といっても、すぐ排除はできず、最長2028年までに排除す
ることになります。ファーウェイの機器を使う通信会社に対して
は、事業許可を3〜8年しか与えないという方法で、ファーウェ
イ製品の完全排除を行うのです。
 問題はフランスの意向です。フランスのマクロン政権は、トラ
ンプ米政権とは水と油の関係で、これまでファーウェイを排除し
ないと公的に宣言し、その一方で情報漏洩などのリスクを見極め
ようとしてきたのです。しかし、中国による新型コロナウイルス
発生後の攻撃的な発言、香港の自治侵害、ウイグル族への弾圧疑
惑などが相次ぎ、ファーウェイ排除に関して、英国と同様に20
28年までの排除を決めています。これによって、中国の関係は
確実に悪化します。
 なぜ、「5G」がそれほど重要なのかについて、渡邊哲也氏が
宮崎正弘氏との対談で語っています。
─────────────────────────────
渡邊哲也:「G」というのはゼネレーション、世代という意味で
 す。1Gが昔あったショルダーフォン、アナログ電話、2Gが
 デジタル携帯、3Gとなると、iモードやEZWEBなどの通
 信ができる携帯、そして4Gが今のスマートフォンです。それ
 で、5Gがどういうものか簡単にいうと、これまで片側相互通
 行だったのが、一気に片側100車線程度まで広げる、という
 規模になります。
宮崎正弘:率直にいって個人ユーザーなら4Gで十分でしょう。
渡邊哲也:そうです。したがって5Gというのは電話ばかりでは
 なく、デジタルによる新たな社会インフラ構築のことです。自
 動運転、スマートグリッドと呼ばれる電力の効率化、医療の遠
 隔操作を可能とします。(一部略)
宮崎正弘:中国はそれを悪用して超管理社会を作ろうとしている
 わけだ。
渡邊哲也:ですから、逆に言えば、5Gの世界は通信ネットワー
 クテロの危険性の増大を意味します。アメリカはファーウェイ
 排除の口実として個人情報の保護やスパイ活動を問題視してい
 ますが、本当はサイバーテロです。個人の情報なんて盗まれた
 ところで大した問題ではないけれど、ネットワークが破壊され
 ればAIの自動運転による自動物流が止まる、電力も止まる。
 下手なミサイル1発撃つよりよほど効果的で、国家の機能を止
 める破壊力を持ちうる。だからこそ、5Gにファーウェイを使
 うなと各国に圧力をかけている。──宮崎正弘/渡邊哲也共著
    『コロナ大恐慌/中国を世界が排除する』/ビジネス社
─────────────────────────────
 これに関連して「ファイブ・アイズ」というものがあります。
これは、西側の諜報機関同盟のことです。米国のCIA、英国の
M16をはじめとした西側の情報機関の連携のことで、カナダ、
オーストラリア、ニュージーランドの5ヶ国のことを「ファイブ
アイズ」といっているのです。フランスは入っていないのですが
フランスと日本を加える案もあります。
 しかし、ファーウェイを本当に締め出すことは、本当に可能な
のでしょうか。
 ファーウェイは意外に強く、有利なポジションを占めているの
です。もし、西側陣営からファーウェイを閉め出すと、5Gのネ
ットワークは、ファーウェイ、ノキア(フィンランド)、エリク
ソン(スウェーデン)の3陣営の争いになりますが、基地局から
端末生産まで一貫生産しているのはファーウェイだけなのです。
ノキアは基地局をNECやサムソンに、エリクソンは富士通に委
ねているし、端末は各携帯キャリアが生産しています。一貫した
構造をとっているのは、ファーウェイだけです。
 つまり、5Gの世界では、既にファーウェイが有利なポジショ
ンにいるので、ファーウェイに勝つには、6Gにおいて、主導権
を取るしかないのです。そのためには、西側がお互いに協力体制
を取る必要があります。日本企業は、6Gに向けて既に動き出し
ており、NTTは6Gの世界標準「IOWN(アイオン)」を提
唱しています。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/042]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイ締め出し、米通信機器業界に再編機運も
  ───────────────────────────
  [ニューヨーク/1月24日ロイター]米政府が中国の通信
  機器大手、華為技術(ファーウェイ)を締め付ける結果、同
  社をサプライヤーとして取引してきた企業にとっては、真空
  地帯が生まれるかもしれない。米政府はこの機を捉えて、ま
  るで通信機器業界におけるM&A(合併・買収)仲介役にな
  ることができるという誘惑に駆られても不思議ではない。
   だが、中国企業バッシングの空気が米政府を「その気」に
  させようとも、政府が企業同士のマッチングを仕切るという
  のは、「見栄え」のよい対応とは言えない。トランプ米政権
  はファーウェイを市場から完全には締め出していないが、同
  社が米国の顧客から利益を得るのは難しくなった。一部の例
  外を除くと、米企業は海外でファーウェイに部品を供給する
  ことができず、国内で次世代通信規格5Gのネットワークを
  構築する際にファーウェイ機器を使うこともできない。
   ロイターは24日、米商務省がファーウェイに新たな規制
  を計画していたが、一部米政府機関の反対で導入を見送った
  と報じた。ファーウェイは5G機器の分野で世界屈指のメー
  カーで、製品価格が比較的安いサプライヤーである以上、こ
  れは驚きではない。こうしたことから、通信機器市場での、
  ファーウェイの優位後退に乗じて、米政府や政府機関が特定
  企業に国内の5G向けサプライチェーン強化のための新たな
  提携模索や、中国系企業が手放さざるを得なくなった技術資
  産の買収を検討するよう、提案する気になるかもしれない。
                  https://bit.ly/2BAhqQK
  ───────────────────────────

中国総領事館から中国退去.jpg
中国総領事館から中国退去 

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2020年07月31日

●「『新しいラボ』地図上からの消滅」(EJ第5299号)

 新型コロナウイルスは、どこから来たのでしょうか。その感染
元はどこかということです。中国の武漢市といわれていますが、
中国が曖昧な態度をとっているので、このことを明らかにする必
要があります。この件に関して、2020年4月14日付、ワシ
ントンポスト紙は気になるニュースを伝えています。それについ
て、次の「ワシントン共同」の記事をご覧ください。
─────────────────────────────
【ワシントン共同】米紙ワシントン・ポストは14日、米当局者
が2018年に中国湖北省武漢市の中国科学院武漢ウイルス研究
所を訪問後、同研究所が行っていた、コウモリのコロナウイルス
研究の危険性に警鐘を鳴らす公電を米国務省に送っていたと伝え
た。新型コロナウイルスが同研究所から漏えいした証拠はないが
トランプ政権内でこの公電が再び注目を集めているという。
 同紙によると、在中国米大使館員らは18年1月に研究所を数
回視察。公電には研究内容に関し「コウモリのコロナウイルスが
人に感染し、SARSのような病気を引き起こす可能性を強く示
唆している」と明記していたという。 https://bit.ly/39GsRTj ─────────────────────────────
 中国に詳しいノンフィクション作家の河添恵子氏の本によると
ワシントン・ポスト紙は、同研究所を「新しいラボ」と呼び、次
のように伝えています。
─────────────────────────────
◎彼らの「新しいラボ」は、高度封じ込めの実験室を安全に操作
 するために必要な訓練を受けた技術者と研究者が、深刻なほど
 不足している。
◎ラボには、大規模な管理上の弱点があり、深刻な健康上のリス
 クをもたらす危険性があり、ワシントンが関与するよう・・・
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 要するに、この情報は、2018年1月19日に、駐中国の環
境・科学・健康部門の米国の大使館員が外電で伝えたものの一部
ですが、実際に2020年になってコロナウイルスの感染が拡大
したので、ワシントンポスト紙がそれを報道したのです。
 ところで、ここでいう「新しいラボ」とは何でしょうか。
 中国の武漢市には、2つのウイルス研究所があるのですが、も
ともとあったのは、武漢市武昌区にある研究所です。1958年
に設立され、「中国科学院武漢病毒(ウイルス)研究所」という
のが正式名称です。
 この武昌区の研究所は、今回のウイルスの発生元とされる華南
海鮮卸売市場とは、長江を隔てて、東南方向に約12キロ離れた
地点にあります。したがって、米国の大使館員が指摘した「新し
いラボ」というのはこの研究所のことではありません。
 もうひとつの研究所は武漢市郊外の江夏区にあります。海鮮卸
売市場からは、南へ直線距離で32キロほど離れた位置にありま
す。この研究所は2015年1月に建設工事を終えており、官制
メディアは、少なくとも数年前までは、この研究所を次のように
呼んでいたのです。
─────────────────────────────
   ◎武漢国家生物安全(バイオ・セーフティ)実験室
    武漢市江夏区中国科学院武漢病毒研究所鄭店園区
    ヂェンディエン・サイエンスパーク
─────────────────────────────
 つまり、「新しいラボ」とは、この研究所のことです。最近で
は、この新しいラボは、上記の名称から「中国科学院武漢病毒研
究所」へと変更され、明らかにこの「新しいラボ」を中心の研究
所にするつもりのようです。実は、このラボの設立にはフランス
が深く関与しているのです。4月中旬のことですが、フランスの
エマニュエル・マクロン大統領は英紙フィナンシャル・タイムズ
(FT)紙記者とのインタビューで、次のように述べています。
─────────────────────────────
  われわれが知らないことが起きているのは明らかである
                 ──マクロン仏大統領
─────────────────────────────
 この研究所とフランスの関係は、来週のEJで述べるとして、
この「新しいラボ」の異変についてお知らせすることからはじめ
ることにします。河添恵子氏によると、新しいラボ、すなわち、
江夏区に新設された研究所は、2020年1月下旬の時点では、
グーグルマップで確認することができたのですが、現在は地図上
からは、完全に消滅しています。
 添付ファイルの2枚の地図(グーグルマップ)は、河添恵子氏
の本に出ていたものです。上の地図は、今年の1月下旬に河添氏
自身が確認した地図であり、これには、武昌区の研究所も江夏区
の研究所も確かに存在しています。
 しかし、下の地図は、同じ場所をグーグルマップで検索したも
のですが、現在では江夏区のいわゆる「新しいラボ」は、完全に
消滅しています。中国では、中国共産党が都合が悪いと判断した
ものは、何でも隠蔽してしまうことは、珍しいことではありませ
んが、存在を消したということは、その研究所の存在を知られた
くないという国家の意思が働いています。
 河添恵子氏は、これに加えて、武漢の2つの研究所のトップ人
事についても次のように触れています。
─────────────────────────────
 若い女性研究者だった王延軼氏(1981年生まれ)が、20
18年後半から、中国科学院病毒研究所の所長に抜擢されたこと
だ。バイオ・ハザード・レベル4に対応するP4実験室も備わる
「新しいラボ」(江夏区)と武昌区のウイルス研究所を統括する
所長だと考えられる。      ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/043]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナは武漢研究所から出た?
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスが中国の武漢にある生物学の研究所か
  ら流出したという疑惑が米国などで再び強まっている。今回
  はSNSではなく、ドナルド・トランプ政権内で公式に提起
  されたものだ。トランプ大統領は15日(現地時間)の定例
  ブリーフィングで、新型コロナウイルスが初めて広がった中
  国武漢の研究所に同ウイルスが由来する可能性を調査してい
  ると述べた。彼は新型コロナウイルスが武漢のウイルス研究
  所に由来するという主張があるとの質問に「我々は今起きて
  いる残酷な状況に対して非常に徹底した調査を行っている」
  と答えた。トランプはコロナ禍勃発以降、中国責任論を主張
  してきたが、同ウイルスが中国の研究所由来だと具体的に言
  及したのは今回が初めてだ。   https://bit.ly/2Dhqdri
  ───────────────────────────
 ●図出典/河添恵子著の前掲書より

地図上から消滅した「新しいラボ」.jpg
地図上から消滅した「新しいラボ」
 
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2020年08月03日

●「中国P4実験室とフランスの関係」(EJ第5300号)

 中国に詳しいノンフィクション作家である河添恵子氏によると
グーグルマップ上から消滅した「新しいラボ」、武漢市江夏区に
あるはずの「中国科学院武漢病毒研究所」は、どのようにして設
立されたかについて、河添恵子氏の本も参考にして、そのいきさ
つについて調べてみることにします。
 2004年1月のことです。あのSARS(重症急性呼吸器症
候群)が流行した翌年です。胡錦濤国家主席がフランスを訪問し
シラク大統領に会っています。このとき、「中仏予防・伝染病の
制御に関する協力」の枠組みが話し合われ、同じ年の10月にシ
ラク大統領が訪中して、中国とフランスの間で「中仏予防・伝染
病の制御に関する協力」の合意書に調印が行われています。
 目的は、「BSL/4」に対応できるウイルスの研究所を作る
ことです。「BSL」とは、バイオ・セーフティー・レベルのこ
とで、BSLに対応できる防御レベル4の実験室を持つ研究所を
設立することです。リスク・グループには、4段階ありますが、
最高レベルの4段階とは、危険性の最も高い次のウイルスを扱え
る防御レベルを持つ実験室のことです。
─────────────────────────────
   ◎第4レベル/BSL4
    ・天然痘ウイルス     ・ラッサウイルス
    ・エボラウイルス     ・アレナウイルス
    ・マールブルグウイルス
                  https://bit.ly/3jZCK3g ─────────────────────────────
 この中国武漢における「新しいラボ」にフランスがいかに力を
入れていたかは、ジャック・シラク大統領、ニコラ・サルコジ大
統領に加えて、外交官で、医師のベルナール・ジャン・クシュネ
ル氏の3氏が深くかかわっていることでも分かります。クシュネ
ル氏は、「国境なき医師団」や「世界の医療団」というNGO設
立者の1人であり、元国連高等職員も務め、サルコジ大統領政権
下のフィヨン内閣では、外務大臣も務めた大物です。
 当然のことながら、「新しいラボ」の設立には、巨額の資金が
投じられていますが、その資金集めについて、河添恵子氏は次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 「新しいラボ」の資金集めの受け皿として、「フランス中国基
金会」が発足した。同基金会のフランス側メンバーには、ヘアカ
ラー商品で世界的に名を馳せるロレアルのジャンーポール・アゴ
ン会長兼CEO(最高責任者)、グッチ、サンローランなどグロ
ーバル・ラグジュアリーブランドを有するケリング・グループ他
ユダヤ社会の重鎮で、ディープステート(国際金融資本・ユダヤ
系左派)の一員とされるジャック・アタリ氏の名前もある。欧州
復興開発銀行の初代総裁で歴代フランス大統領のブレーンであり
「欧州のキッシンジャー」的存在の超大物だ。
 在仏の識者から「マクロン大統領にエドゥアール・シャルル・
フィリップ氏(共和党)を首相候補に推薦したのはアタリ氏」と
聞いたが、そのフィリップ首相もメンバーである。同じく、メン
バーの、社会党のローラン・ファビュウス元首相(オランド大統
領時代の2012〜2016年の外務・国際開発大臣)は、アタ
リ氏とパリ十六区の高校で同級生という間柄にある。
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 2014年3月には、習近平国家主席が、フランスを訪問し、
フランス第2の都市、リヨンのメリュー生物化学研究センターを
見学しています。そして、2017年2月23日、フランスのベ
ルナール・カズヌーヴ首相が訪中し、「新しいラボ」の落成式で
テープカットを行っています。このとき、フランス国立保健医学
研究機構、認定委員会、外務省など、中仏の本プロジェクト関係
者ら100名以上が参加していのです。
 フランスは、この中国の「新しいラボ」のために、大変な協力
をしているといえます。設立資金などは「フランス中国基金会」
を作り、フランスを上げて協力しています。
 こういう大統領肝いりの肩入れに関して、中国側はどのように
対応したのでしょうか。この中国側のメンバーについて、河添恵
子氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 では、中国科学院をトップ人事とともに長年、牛耳ってきたの
が誰なのか?1999年以降、「鉄のグリップ」を維持しできた
のが江ファミリーで、具体的には(現在は90歳半ばの)江元主
席と長男の綿恒氏、というのが一つの説として長年、定着してい
る。「新しいラボ」の資金集めの受け皿である「フランス中国基
金会」の中国側のメンバーには、江ファミリーに近いアリババ元
CEO(最高責任者)のジャック・マー(馬雲)氏やテンセント
CEOのポニー・マー(馬化騰)氏、バイドゥ(百度)のロビン
・リー(李彦宏)氏などが関わっている。
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 ところがです。これほど、フランス政府の全面的協力を得て設
立された武漢の「新しいラボ」、P4実験室は、設立されるや中
国側は手のひらを返す行動を取り始めたのです。いや、その設立
の過程において、フランスの要求する技術の導入に対して、中国
側が反対するなど、トラブルが続いたのです。
 P4実験室は、原子力潜水艦に匹敵する高い気密性が要求され
るので、高い信頼性と技術力を持つフランスの専門企業15社が
世界最高レベルの技術力を提供する予定だったのです。しかし、
その過程において中国側と何回もトラブルが起こり、フランスの
技術供与を拒否し、結局、中国企業が大部分の建設を行うように
なってしまったのです。一体そこに何があったのでしょうか。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/044]

≪画像および関連情報≫
 ●武漢P4ラボ誕生の内幕/計画から締め出された仏と中国
  の暴走=RFI
  ───────────────────────────
   フランスの全面的協力で建設した中国科学院武漢ウイルス
  研究所のP4実験室(武漢P4ラボ)。中共ウイルス(新型
  コロナウイルス)を漏えいした疑いが持たれ、世界の注目を
  集めている。実験室の建設過程で、中国側がフランスを意図
  に排除し協力関係を形骸化させたことが明らかになった。
   仏国際放送局ラジオ・フランス・アンテルナショナル/R
  FIは、4月17日、調査報道記事を掲載した。それによる
  と、武漢P4ラボが、ランスの技術を導入して建設されたが
  実験室の運営を支えるための技術者の養成や共同研究プログ
  ラムが中国側の排除によって計画通りに進まず、中途半端な
  形で終わってしまったと伝えた。
   実験室は2015年1月に建設工事が完成し、18年1月
  に稼働を開始。アジア初のP4実験室となり、科学研究と健
  康の分野における中仏両国の協力関係のシンボルとみなされ
  ていた。それによると、2003年に中国でSARSが発生
  したことを受け、フランスでは中国の研究者らが危険ウイル
  スを粗末に取り扱わないように、必要な設備や専門知識と技
  術において中国のウイルス研究を支援すべきだという声が高
  まっていた。
   パリのサン・ルイ病院で研修医を勤めた陳竺氏(前中国科
  学院副院長、現中国赤十字会会長)の斡旋で、2004年に
  ジャック・シラク大統領(当時)が訪中の際、当時の胡錦濤
  国家主席(2003年3月着任)と「新感染症の予防・制御
  に関する協力合意」を締結した。こうして中国初のP4実験
  室の建設計画が生まれた。    https://bit.ly/2Pibyi0
  ───────────────────────────

シラク元仏大統領.jpg
シラク元仏大統領

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2020年08月04日

●「実験室の設立をめぐる中仏の対立」(EJ第5301号)

 どこの国にも中華街があります。フランスの中華街について、
河添恵子氏は、次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 パリにも中華街は複数ある。パリ三区のタンプル通り周辺──
古くからの温州系移民を中心に、皮革製品や貴金属や宝石を扱う
商店が集中する。パリ二十区のベルビル地区周辺──かつてマグ
レブ系(北アフリカ)などアフリカ系移民が多く住んでいた、が
70年代に温州系、カンボジア出身の潮州系華人、香港系が移住
した。その他、主要都市にもインドシナ系、中国系移民の集住す
る地区があり、フランス生まれの二世や三世もいる。
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 中国があまり経済的に豊かでなかったときは、各国にある中華
街はその国にとって何のリスクもなかったのです。しかし、高度
経済成長を続けて豊かになった中国共産党政権は、世界中にいる
留学生を含む中国人に、国家のために、情報収集をさせるように
なっていったのです。最近ではそれを国民の義務にする「国家情
報法」という法律まで作って、情報収集を強制させるようになっ
ています。国民総スパイ化です。
 ましてフランスでは、シラク大統領の時代から中国にP4実験
室を作るプロジェクトを立ち上げて中国を支援しており、中国は
それを口実に、パスツール研究所やリヨンのメリュー生物化学研
究センターなどに超エリートを送り込み、フランスが世界に誇る
技術、バイオテクノロジー、ワクチン生産などについて学ばせよ
うとしていたのです。
 民主主義国家であれば、そういう技術者を受け入れることは普
通に行うことですが、そこには一定の厳格なルールというものが
あって、まして不正な手段で情報を窃取するようなことは絶対に
やってはならないことです。実はこのプロジェクトの実行に当っ
て、フランス当局としては、中国側とたびたび意見が対立してい
たのです。
 今年に入って、新型コロナウイルスの感染が広がると、中国の
P4実験室のフランスの関係者は、なるべくフランスに矛先が向
かないよう発言には相当気を遣っていたのです。ただでさえ、マ
クロン政権とトランプ政権とはも水と油であり、ギクシャクして
いたからです。
 ところが、今年の4月に入ると、米英メディアは、新型コロナ
ウイルスは、武漢のウイルス研究所から流出した可能性について
さかんに報道するようになったのです。ちょうどそのときです。
フランスのリュック・モンタニエ博士の次の発言が飛び出したの
は。これは、4月16日のフランスのサイト「どうして?ドクタ
ー」の音声インタビューでの発言です。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスは人工的なもので、武漢の研究所でつくら
れたのだろう。事故で流出したはず。
               ──リュック・モンタニエ博士
─────────────────────────────
 リュック・モンタニエ博士は何者でしょうか。
 モンタニエ博士は、1983年にノーベル生理学・医学賞を受
賞していますが、河添恵子氏によると、次のようにスゴイ人物な
のです。
─────────────────────────────
 ノーベル生理学・医学賞を受賞する以前から、モンタニエ博士
は、ラスカー医学賞(アメリカ財団)、シェーレ賞(スウェーデ
ン)、ガードナー賞(カナダ)、ファイサル王医学賞(サウジア
ラビア)、ハイネケン医学賞(オランダ王立アカデミー)、アス
トゥリアス皇太子医学賞(スペイン)、日本からは科学技術者
に贈られる「日本国際賞」を授与されたスゴい人物である。
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 この発言のあった次の日、4月17日のことです。フランス国
際放送局ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)が、
次のような報道をしたのです。
─────────────────────────────
 「フランス国内には、中国武漢に『P4実験室』を造る計画の
妥当性を疑問視する声が以前から相次いでいた。おもな理由は、
中国当局がSARS後にフランス政府の援助で建てた幾つかのP
3実験室の用途の公表を拒否し続け、恐ろしいほど透明性に欠け
ていることだった。P4実験室もその二の舞になり『生物兵器庫
と化してしまうのではないか』との不安も高まっていた」「ただ
外務省、国防省と国防国家安全保障事務総局(首相府)の担当閣
僚や、細菌戟など生物兵器研究の専門家らは態度を保留した。政
治家は反対を退け計画を承認した」
 「アラン・メリユー氏は2008年にフランス側の代表として
中国側の陳竺氏とともに実行委員会の委員長に就任。計画は20
10年より本格的に始動した」  ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 この「中仏共同プロジェクト」は、シラク大統領とラファラン
首相が主導したもので、フランス議会の総意とは大きな隔たりが
あったにもかかわらず合意へと突っ走ったのです。医療機器関連
や製薬業からの強い要請を受け入れたのです。
 それでは、どういう点で中国と意見が一致しなかったのでしよ
うか。とにかく中国側は情報を公表するのを嫌がるのです。「B
SL/4」の実験室は、生物兵器庫の疑いが持たれるので、そこ
には強い透明性が求められるのですが、中国はそれを嫌がるので
す。自国の利益のために自国の法律を国際法に優先させる中国の
ことですから、そういうことは十分起こりうるのです。しかし、
フランスは後に引けなくなっていたのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/045]

≪画像および関連情報≫
 ●武漢市「ウイルス研究所」に“中国とフランスの闇”は
  暴かれるのか?
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスをめぐる米中対立が激化するなか、欧
  州でも発生国・中国への不信感が強まっている。初動対応の
  失敗や隠蔽疑惑に加え、「マスク外交」を展開して自己正当
  化に利用しているのだ。こうしたなか、米国メディアが報じ
  た湖北省武漢市の「ウイルス研究所」設立に協力したとされ
  る、フランスの動向が注目されている。感染者約12万13
  00人、死者約2万2200人(25日、世界保健機関=W
  HO=調べ)という甚大な被害を受けた科学・文化大国は対
  中戦線に加わるのか。ノンフィクション作家、河添恵子氏の
  緊急寄稿第12弾。
   「われわれが知らないことが起きているのは明らかだ」フ
  ランスのエマニュエル・マクロン大統領は、4月中旬、英紙
  フィナンシャル・タイムズ(FT)紙のインタビューでこう
  述べた。この表現には、同国ならではの「特別な事情」が含
  まれていそうだ。
   武漢には、「中国科学院武漢病毒(ウイルス)研究所」が
  2カ所(武昌区と江夏区)存在する。米国などは「新型コロ
  ナウイルスの発生源の可能性がある」として、フランスの全
  面的協力で完成した「P4実験室」が備わる研究所(通称、
  『新しいラボ』=江夏区)の査察を求めている。フランス大
  統領府は一応、「現時点で新型コロナウイルスの由来が『新
  しいラボ』であることを証明するものは何もない」との声明
  を発表している。        https://bit.ly/2XlpqwF
  ───────────────────────────

リュック・モンタリエ博士.jpg
リュック・モンタリエ博士
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2020年08月05日

●「フランスだけでなく米国も肩入れ」(EJ第5302号)

 新型コロナウイルスの感染がフランスにも広がると、フランス
のメディアは、一斉に中国の批判に転じたのです。フランスの右
派の代表的な雑誌『フィガロ』誌は、その2020年4月24日
号で「中国の大嘘」と題する特集を組んでいます。以下はその要
約です。河添恵子氏の本から引用します。
─────────────────────────────
 「武漢P4実験室はリヨンのP4実験室のコピーとして、メリ
ユー財団とパスツール研究所、その他15社ほどの金銭的支援に
より建設された」「完成した途端に、パリと北京の間の愛の炎は
途絶えた。新しいラボに派遣されるはずだった50人のフランス
人研究員は、そこに一歩足りとも足を踏み入れることが出来てい
ない」「それどころか、2016年以降、両国の感染症委員会の
会合すらない」「両国で締結した内容、フランス側の意図に反し
て『武漢P4実験室』は中国人の研究者で占められ、フランスの
科学者による制御を逃れている。   ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 ここで思い出すべきは、2018年に米当局者が当該研究所を
訪問後、米国務省に送っていた公電の内容です。武漢P4実験室
には管理上の弱点があり、必要な訓練を受けたスタッフも大幅に
不足しているというものです。これについては、7月31日付の
EJ第5299号に詳しく書いています。
 この武漢ウイルス研究所の建設の途中で、フランスは「P4実
験室」が備えなければならない高度の気密性や用途の透明性の公
表をめぐって中国側と深刻な争いがあり、結果としてラボに、十
分な安全性が確保されていない可能性があるのです。フランスは
一時は工事を中断することも考えたのですが、中断による経済的
損失に耐えられなかったといっています。
 これが本当であるとすると、新型コロナウイルスが武漢ウイル
ス研究所から流出したのではないかという疑いが強くなってきま
す。そうすると、リュック・モンタニエ博士の発言が気になりま
す。モンタニエ博士は、エイズウイルスのHIVウイルスの発見
者であり、その発言は重いものがあります。河添恵子氏の本には
博士のさらなる次の発言が紹介されています。
─────────────────────────────
 驚いた。そこには別のウイルスの配列が入っていたのだ。それ
は自然に混ざったものではない。大元はコウモリのウイルスだか
ら、それを組み替えたのだ。海鮮市場から出たというのは、美し
い伝説だ。そのような可能性はない、乏しい。最も合理的な仮説
は、誰かがエイズ(HIV)のワクチンを作りたかった、そのた
めにコロナウイルスを使ったと考えることだ。陰謀論ではない。
陰謀論とは、何かを隠す人のことだ。ウイルスは武漢の研究所か
ら逃げたものだろう。中国政府が知っていたのなら、彼らには責
任がある。中国は大きいので、間違いは起こるだろう。
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 河添氏は、このモンタニエ博士の発言を、フランス政府組織で
通訳をしている今井佐緒里氏(欧州研究者・文筆家・編集者)の
抄訳として紹介していますが、その今井佐緒里氏がそのことにつ
いて述べたサイトを発見したので、ご紹介しておきます。
─────────────────────────────
                       今井佐緒里氏
 検証:ノーベル賞受賞の仏ウイルス学者「コロナは武漢研究所
の人工操作」発言をどうみるべきか。 https://bit.ly/2Xm3dyC
                   2020年4月22日
─────────────────────────────
 中国武漢のウイルス研究所については、河添恵子氏の本では触
れていないことにがあります。それは、2014年に米国のオバ
マ前大統領が、米国内でのウイルスに関する研究を禁止し、米国
立衛生研究所(NIH)で行われていたウイルスの研究をことも
あろうに中国の武漢ウイルス研究所に外部委託しているのです。
 これは、「日経バイオテク」に記事として出ているので、ご紹
介します。
─────────────────────────────
 武漢ウイルス研究所(武昌区)の付属施設(新しいラボ)が完
成する前年の2014年、米オバマ大統領は米国内でのウイルス
に関する研究を禁止する方針を打ち出した。米疾病対策センター
(CDC)で重大な事故が多発したためだ。そして米国立衛生研
究所(NIH)で実施されていたウイルスの研究を、武漢研究所
に外部委託することにした。同研究の外部委託を積極的に推し進
めたのが、NIH傘下の米国立アレルギー・感染症研究所(NI
AID)のアンソニー・ファウチ所長だ。また、NIHからのグ
ラントの直接の受取先となったのが、感染症研究で実績のある非
営利組織(NPO)で同研究のコーディネーターを務めたEHA
(EcoHeath Alliance)だった。   https://nkbp.jp/30kPp9e
─────────────────────────────
 ここで、「グラント」というのは、資金配分主体が一般の研究
者などを対象に、研究開発課題を募り、採択された課題に対して
研究資金を配分する米国の制度のことです。
 そのNIHのグラントとして、米国は2014年から2019
年までの5年間で310万ドル(約3億4100万円)が支出さ
れています。テーマは「コウモリ由来コロナウイルスの出現リス
クの解明」です。そのうち約60万ドル(約6600万円)が、
コウモリの遺伝子解析のための設備投資費用として中国にわたっ
ているのです。つまり、米国は、フランスが設立に肩入れしてい
る中国の新しいラボがまだ完成する前から、前倒しで、コウモリ
由来コロナウイルスの出現リスクなどの研究に相当の資金提供を
しているのです。こうなると、フランスのみならず、米国までが
この新しいラボに肩入れしていたことになります。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/046]

≪画像および関連情報≫
 ●新型ウイルスの「研究所流出」説、証拠はあるのか?
  ───────────────────────────
   アメリカ国務省の公電によると、在中アメリカ大使館の職
  員から、中国・武漢市にあるウイルス研究所のバイオセキュ
  リティーについて懸念の声があがっている。この研究所は、
  新型コロナウイルスのアウトブレイク(大流行)が最初に世
  界の注目を集めたのと同じ都市にある。
   ドナルド・トランプ大統領は、新型ウイルスがこの研究所
  から流出したものだという未確認情報について調査すると発
  言している。この説は果たして、現在のパンデミック(世界
  的流行)の理解に寄与するのだろうか?
   米紙ワシントン・ポストは、入手した外交公電をもとに、
  これについて報じている。それによると、2018年にアメ
  リカの科学専門の外交官がたびたび、中国の研究施設視察に
  繰り返し派遣されていた。その上で本国の政府へ、研究所の
  安全性に問題があるという警告を2件送っていた。記事によ
  ると、米外交官たちは武漢ウイルス研究所(WIV)の安全
  性と管理体制に脆弱性があり、支援が必要だと求めていた。
   また、この研究所が行っていたコウモリのコロナウイルス
  の研究が、重症急性呼吸器症候群(SARS)のようなパン
  デミックを起こしかねないと、視察した米当局者たちは懸念
  してたと、ワシントン・ポストは続けている。その上で同紙
  は、米政府内ではこの外交公電をもとに、WIVあるいは武
  漢市内の別の研究所が、今のパンデミックを起こしているウ
  イルスの発生源ではないか、という議論が加速していると報
  じた。             https://bbc.in/2EEVwg9
  ───────────────────────────

ノンフィクション作家/河添恵子氏.jpg
ノンフィクション作家/河添恵子氏
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2020年08月06日

●「世界最強米CDCはどうしたのか」(EJ第5303号)

 2020年5月3日のことです。ポンペオ米国務長官はABC
テレビの番組で、次のように発言しています。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスが中国湖北省武漢市にある中国科学院武漢
ウイルス研究所から拡散したとの疑惑について、多くの証拠があ
る。しかし、新型コロナウイルスは遺伝子操作されたり、人工的
に作られたりしたものではない。   ──ポンペオ米国務長官
─────────────────────────────
 これより前にトランプ米大統領も同趣旨のことを発言しており
ポンペオ国務長官は、大統領の発言のフォローをしたのです。こ
れを受けて、CNNは、5月4日、次の報道を行い、大統領と国
務長官の発言を否定しています。
─────────────────────────────
 “Intel shared among US allies indicates virus outbreak more likely came from market, not a Chinese lab”
 アメリカの同盟国(ファイブアイズ)は、ウイルスのアウトブ
レーク(爆発的流行)は、中国の研究室からではなく、市場(い
ちば)から来た可能性が高いという認識を共有した。
                  https://bit.ly/2PnXKCN ─────────────────────────────
 さらに、4月29日には、英国のBBCは、次の報道を行って
います。武漢ウイルス研究所への米国の関与を暴いたのです。
─────────────────────────────
 アメリカはコロナウイルス研究資金援助を中止した。このプロ
ジェクトは、これまで武漢ウイルス研究所と協力していた。
                  https://bit.ly/2PnXKCN ─────────────────────────────
 この報道は、トランプ政権がウイルスが流出したと批判する武
漢ウイルス研究所(新しいラボ/江夏区)に、オバマ政権時代か
ら、資金を出していることを暴いたものです。おそらくトランプ
大統領はそのことを知らなかったものと思われます。この米国の
関与について、中国分析の第一人者といわれる遠藤誉氏は、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 イギリスのBBCは4月29日、「アメリカはコロナウイルス
研究資金援助を中止した。このプロジェクトはこれまで武漢ウイ
ルス研究所と協力していた」と報道している。
 BBCニュースによれば、ニューヨークにある「エコ・ヘルス
連盟」は過去20年間に渡り、25ヶ国とウイルスに関する共同
研究をしてきたが、2015年からは研究経費を「オバマ政権時
代の国際医療研究協力の一環」として位置づけ、アメリカ政府が
国立衛生研究所経由で370万ドルを支払ってきた。共同研究の
相手には、なんと武漢ウイルス研究所も含まれており、研究テー
マはこれもまた、なんと、「コロナウイルス」である。
 つまり、武漢ウイルス研究所のコロナウイルス研究に関する資
金の一部は、アメリカ政府から出ていたことになる。おまけに、
「アメリカとの共同研究」だ。ポンペオが「膨大な証拠がある」
と言うのも「むべなるかな」。あれだけオバマ政権の施策を批判
してきたトランプだが、これもまた、なんとトランプ政権になっ
てからもこの科研費を支払い続けており、最後の支払いは、20
19年7月となっている。      https://bit.ly/2PnXKCN
─────────────────────────────
 ここまでの話を総合すると、感染症対策には世界最強の評価の
ある米国CDC(疾病予防センター)を持つ米国の稚拙な対応が
目立ちます。米国は、今回の新型コロナウイルスの流出源とされ
る武漢ウイルス研究所(江夏区/現在グーグル・マップ上から消
滅)に、オバマ政権の時代から、「コロナウイルス」の研究のた
めに、この2019年7月まで、研究資金を援助していたことに
なるからです。
 2020年8月3日現在、米国における新型コロナウイルスの
感染者は471万3540人、死亡者は15万4402人で世界
一です。世界一のCDCを有しながら、米国は何をやっていたの
でしょうか。
 米国の初の感染者は、1月21日、武漢地域を訪れた35歳の
男性です。この男性は、帰国の機内で発症し、ワシントン州シア
トルに戻っています。
 ウイルスの米国上陸に、CDCは危機モード全開になり、局内
の「緊急オペレーションセンター」を稼働させています。そして
米国内の研究者・衛生関係者で作るインターネット網「赤い暁」
には、CDC情報が逐次報告されています。実に素早い対応であ
るといえます。
 CDCは、中国からの遺伝子配列情報を入手し、1月末には検
査キットの製作に入っています。そして、2月4日には、超スピ
ードで、FDA(食品医薬品局)の認可にこぎつけています。こ
の検査キットの空輸便がニューヨーク市に届いたのは、2月8日
の朝です。ここまでは、米国は世界のトップ集団にいたことは確
かです。なぜなら、ニューヨーク市で初の感染者が確認されたの
は、それから3週間後のことだからです。
 ところが、検査キットが届いた2月8日の夜に問題が起きたの
です。ニューヨーク市の衛生局から次の情報が入ったのです。
─────────────────────────────
   検査結果にブレがある。正確な結果が得られない。
             ──ニューヨーク市の衛生局
─────────────────────────────
 CDCは、大慌てで、修正作業に入っています。そこにホワイ
トハウスからさまざまな干渉が加わってCDCは大混乱に陥るの
です。トランプ大統領は、人の話を10分と聞けない人です。専
門家の発言の都合のよい部分をとらえ、次のようにいいはじめた
のです。「暖かくなれば、病原体は奇跡のように消える」と。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/047]

≪画像および関連情報≫
 ●CDCのある米国が新型コロナ検査で失態を演じた理由
  ───────────────────────────
   米国疾病予防管理センター(CDC)が、新型コロナウイ
  ルス感染症の検査体制の整備で大きな遅れを取っている。感
  染症対策で「お手本」とされることが多い世界的な保険機関
  は、なぜ初期対応を誤ったのか。
   米国疾病予防管理センター(CDC)は、世界的に有名な
  保健機関の1つだ。それだけに今回、CDCが新型コロナウ
  イルスの検査キットを全米各地へ配布するのにこれほどひど
  くしくじってしまったのは、一層不可解なことに感じる。他
  国が数百万件の検査を実施する一方で、CDCは本稿執筆時
  (3月5日)で1235人の患者しか検査できていない。感
  染症のエピデミック(局地的な流行)の早期対応では迅速さ
  が重要だ。今回のCDCの不手際が、米国国内のアウトブレ
  イクの追跡における損失につながることは確実だ。
   CDCは2月5日に新型コロナウイルスの検査キットの配
  布を開始した。だが、その後間もなく、検査キットの多くが
  試薬が汚染された結果、ネガティブコントロール(コロナウ
  イルスが存在しないときに陰性を示すと分かっている対照実
  験)で異常が見つかった。恐らく検査キットの開発に急いだ
  ことによる副次的影響だろう。ネガティブコントロールで失
  敗した研究機関は、検査のためにサンプルをCDCに送り返
  す必要があった。        https://bit.ly/30qOkgg
  ───────────────────────────

CDC/米疾病予防センター.jpg
CDC/米疾病予防センター
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2020年08月07日

●「米CDCはなぜ機能しなかったか」(EJ第5304号)

 米国CDC(疾病予防管理センター)といえば、「BSL4」
の実験室を持つ感染症に対する世界一の知見を有する研究センタ
ーとして有名ですが、新型コロナウイルス感染拡大という肝心か
なめなときに、世界のリーダーシップをとる活躍をしていないと
思います。昨日のEJに続き、なぜ、機能不全になったのかにつ
いての話を続けます。
 2020年8月6日付の新聞は、次の注目すべき記事を報道し
ています。
─────────────────────────────
◎米厚生長官が台湾訪問へ/断交後最高位/対中強硬姿勢の一環
 ・米厚生省は4日、アザール厚生長官が近く台湾を訪問すると
  発表した。米閣僚の台湾訪問は6年ぶりで、同省によると、
  1979年の台湾断交以来、最高位の閣僚の訪問になるとい
  う。台湾の外交部(外務省)によると、蔡英文総統との会談
  も予定されている。 ──2020年8月6日付、朝日新聞
◎米厚生長官、台湾訪問へ 総統と会談、関係強化
 ・【台北=中村裕】台湾の外交部(外務省)は5日、米国のア
  ザー厚生長官が近く台湾を訪問し、蔡英文総統と会談すると
  発表した。今後、数日以内に訪問するとし、歓迎の意を示し
  た。米国は1979年に台湾と断交して以降、最高位の高官
  の訪問としている。──2020年8月6日付日本経済新聞
─────────────────────────────
 日本の厚生労働大臣に当る米国の大臣は「保健福祉長官」。現
職はアレックス・アザー氏が務めています。しかし、このアザー
保健福祉長官の姿が久しくニュースから消えていたのです。それ
が、8月6日になって、アザー長官が突然台湾を訪問するという
ニュースが報道されたのです。これはこれで米中の対立がさらに
一段と激しくなるニュースですが、EJでは、今回は、それはさ
ておき、アレックス・アザー長官に注目します。
 現在、トランプ大統領の下で、タスクフォースを率いるのは、
マイク・ペンス副大統領。メディア担当は、ジェローム・アダム
ス公衆衛生局長であって、アザー保健福祉長官は公式会見には姿
を見せていない。米メディアは「トランプ大統領の怒りを買って
外された」と報道しましたが、これに対して、トランプ大統領は
ツイッターで、次のように否定しています。
─────────────────────────────
 それは、フェイクニュースだ。彼は、大変立派な仕事をして
 いる。          ──ドナルド・トランプ大統領
─────────────────────────────
 情報によると、このアザー長官は、正義感で大統領に楯突くタ
イプの人物ではないのです。何とか大統領のお気に入りになりた
いと思っている。大統領に嫌われることを心から恐れている人物
の1人。日本にもそういう官僚はたくさんいます。
 そのため長官就任後は、CDCのロバート・レッドフィールド
所長や、「メディケア・メディケイド・サービシズセンター」の
シーマ・パーマ所長らと激しく衝突したといいます。素人の大統
領が要求する無理難題を押し通そうとしたからです。
 しかし、CDCは検査キットで大ミスを犯し、アザー長官は、
トランプ大統領に一喝を食っています。そしてトランプ大統領は
「暖かくなれば病原体は奇跡のように消えてなくなる」という独
自の主張をゴリ押しし、その主張に異を唱え、対策強化を主張す
るCDC幹部を片っ端から、罷免したのです。
 アザー長官は、1月末に、全米向けに「緊急事態宣言」を発出
していますが、これによって、検査キット、ワクチン審査の認可
のハードルが一緒に跳ね上がったのです。米保健行政の官僚主義
がそうさせたのです。それ以来、アザー長官は公式の場から姿を
消してしまったのです。保健福祉長官が先頭に立って、最も活躍
しなければならないときにそうなったのです。
 トランプ大統領の最大の失敗は、ルイジアナ州ニューオーリン
ズでの「マルディグラ(肥沃な火曜日)」と呼ばれる謝肉祭を2
月下旬に強行したことです。マルティグラは、全世界から数十万
人の規模の観光客の集まる「3密」の権化のようなイベントであ
り、当然世界最大級のクラスターが発生し、人口500万人未満
のニューオーリンズで、死者は1000人を超えたのです。
 このように、世界最高の医療産業・学界を擁する米国が、世界
最悪の新型コロナウイルス感染国になる──あってはならない話
です。それは、トランプ大統領が、自己の再選のため、無責任な
行動をしたことが原因であるといえます。
 トランプ政権になってから、コロナが起きる前から、保健・衛
生行政全般のトップに、いかがわしい人物が続々と起用されてい
ます。これに関する『選択』の記事をください。
─────────────────────────────
 2017年初頭のことだ。元凶は、保健福祉長官に起用された
トム・プライス元下院議員だ。医師出身で、下院では予算委員会
の委員長を務めるほどの大物にのしあがった。彼は、米下院で出
世する過程で、悪癖を身につけた。医療関係法案を提出し、成立
のめどが立った直後に、関連企業の株を買うというインサイダー
取引である。これを何度も繰り返した。
 医療業界にとっては最も操りやすいタイプだ。新政権誕生時に
保健福祉長官候補になった。上院の指名投票では、民主党から激
しい反発を招き、僅差でやっと就任。ところが、長官就任後は出
張に政府専用機をたびたび使って問題化した。最後は大統領自身
の怒りを買い事実上解任された。このプライス氏がCDC局長候
補に引っ張ってきたのが、地元ジョージア州のブレンダ・フィッ
ツ・ジェラルド氏である。彼女も医師だが、本職は「アンチエイ
ジング・クリニック」経営。その後、州政界に入って、「医療行
政のプロ」を看板に保健行政のトップにまで出世した。
              ──『選択』/2020年5月号
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/048]

≪画像および関連情報≫
 ●世界最強の感染症対策機関を持つ米国が世界最大の感染国に
  なった理由
  ───────────────────────────
   世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルスだが、1
  つ気になることがある。それは米疾病管理予防センター(C
  DC)という「世界最強の感染症対策機関」を持つ米国が、
  世界最大の感染国になっていることだ。
   4月20日現在、世界の感染者数は238万人を超え、う
  ち米国は74万人(死者4万人)以上で世界全体の3分の1
  近くを占めている。なぜこんなことになっているのかと言え
  ば、その責任の大半はトランプ大統領の失策と無能さにある
  と言っても過言ではない。
   今年1月末、中国の武漢で感染が拡大していた頃、ホワイ
  トハウスには新型コロナについて警鐘を鳴らす報告書が情報
  機関などから上っていた。ところがトランプ大統領はそれを
  軽視し、「暖かくなる4月にはウイルスは消えてなくなる」
  などと、記者団に話していた。
   その結果、初動対応が大幅に遅れ、感染者が十分に把握で
  きず、感染経路の追跡や感染者の隔離などを徹底できずに、
  感染を拡大させてしまったのである。感染拡大のもう1つの
  主要因はウイルス検査の遅れだが、これもトランプ大統領の
  失策と無関係ではない。トランプ政権は世界保健機関(WH
  O)が各国に提供した検査キットを使用せず、米疾病管理予
  防センター(CDC)が独自に開発した検査キットを使うこ
  とを決定した。         https://bit.ly/2DH149K
  ───────────────────────────

アレックス・アザー米保健福祉長官.jpg
アレックス・アザー米保健福祉長官
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2020年08月11日

●「新型コロナは生物兵器の可能性大」(EJ第5305号)

 先日、書店に行ったら、偶然次の本を見つけました。角川新書
の新刊です。著者は、アンソニー・トゥー氏です。
─────────────────────────────
              アンソニー・トゥー著
    『毒/サリン、VX、生物兵器』/角川新書
─────────────────────────────
 アンソニー・トゥー(杜祖健)氏の名前については、河添恵子
氏の本を読んで知っており、7月22日のEJ第5294号でも
取り上げています。だから、目にとまったのであり、購入するこ
とができたのです。
 私はネットで本は購入せず、頻繁に書店に通うのは、そのため
です。思いがけない本の発見があるからです。ネットで本を買う
ときは、購入したい本が決まっているときのみです。ネットで、
役に立つと思われる本を偶然見つけるのは困難なことです。
 それはさておき、アンソニー・トゥー博士は、台湾大学理学部
を卒業後に渡米し、ノートルダム大学、スタンフォード大学、イ
エール大学で、生化学研究に従事し、コロラド州立大学教授に就
任しています。
 専門はヘビ毒などの毒物で、生物兵器についても造詣の深い人
です。日本で松本サリン事件、東京地下鉄サリン事件が起きたと
き、日本の警察に協力し、事件解明のきっかけを作っています。
これにより、2009年に旭日中綬章を受章しています。
 フランシス・ボイル・イリノイ大学教授は、2月の上旬にイン
ドの英字メディアに次の発言をしています。ボイル教授は、ジョ
ージ・ブッシュ(パパブッシュ)大統領が、1989年に署名し
た「生物兵器禁じ条約」の国内法を起草した人物です。
─────────────────────────────
    新型コロナウイルスは、攻撃的な生物兵器である
             ──フランシス・ボイル教授
─────────────────────────────
 アンソニー・トゥー博士は、ボイル教授の発言について、次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 もし、武漢の研究所でウイルスを作っていたとしたら、やはり
攻撃用でしょう。流行っていないものを研究する必要はあります
か。(中略)中国政府は「生物兵器とはまったく関係がない、嘘
だ」と言いますが、自分から「作っています」なんて言うはずが
ないでしょう。           ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 このように、アンソニー・トゥー博士は、新型コロナウイルス
が生物兵器で作られた可能性を肯定していますが、それが何らか
のミスで外に流出したのではないかという見解をとっています。
その根拠として、自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 最近になって中国政府は、真相を調べるため武漢へ陳薇少将を
派遣した。彼女は浙江大学を卒業後、フランスのモンペリエ大学
で博士号を取得した。その後、人民解放軍に入り、アフリカでエ
ボラウイルスの研究に従事した生物兵器のエキスパートである。
これについても、台湾では「新型コロナウイルスの影響を調べる
ためであれば、医学の専門家を送るべきなのに、生物兵器の専門
家を送るということは、病原はやはり武漢のウイルス研究所では
ないか」と報道している。さらに、一説によると、武漢のウイル
ス研究所のトップは江沢民派の人物だったが、習近平国家主席は
今回の新型コロナウイルスの責任を彼らに押し付けて罷免したの
ち、自分の派閥の人を入れた。その後、武漢からの新しい患者は
報告されていないようだ。
           ──アンソニー・トゥー著の前掲書より
─────────────────────────────
 もうひとつ、トゥー博士が注目しているのは、武漢のウイルス
研究所に所属する石正麗氏(現在の所属は不明)が、2003年
頃から米国や英国の学術雑誌に掲載している4編の論文です。石
正麗氏は、コウモリウイルスを人工的に改良していることを発表
しており、フランスや米国の化学者が「そのようなウイルスが、
もし研究所から漏れたりしたら、大惨事になる」という警告を出
していたのです。
 トゥー博士は、「なぜ、石正麗氏がそのような研究を行ったの
か」について、3つ(@珍しい研究をしたい、Aワクチンを作り
たい、B攻撃用の生物兵器を作りたい)を上げて、それぞれにつ
いて、次のように述べています。
─────────────────────────────
 @の可能性は、やはりあると思う。世の中には誰もやったこと
のない新しい研究をしたいという人は多く、化学者もまったく同
様だ。ただ単に、そのような意思で危険な研究をしたということ
も十分考えられる。Aも医学治療のためで、これは良いことであ
る。しかし、コウモリのウイルスは当時まだ研究中であり、流行
していたわけでない。病気が流行ってないのに、そのようなワク
チンを作ることは考え難い。
 Bの生物兵器の開発の可能性は、台湾側が考えているようだ。
それは、かつて台湾でも秘密裏にSARSウイルスを研究して、
それが漏れて研究員が一人感染する事態が起きたからだ。幸いに
も、この事件はすぐにコントロールされたので、大きな問題には
ならなかった。しかし、どの国でも同様の開発は考えられる。
           ──アンソニー・トゥー著の前掲書より
─────────────────────────────
 トゥー博士の本を読むと、台湾のメディアでは、新型コロナウ
イルスが生物兵器であるかどうかなどの報道が堂々と行われてい
るようです。しかし、日本では、そのような報道は皆無です。そ
の差は何なのでしょうか。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/049]

≪画像および関連情報≫
 ●「コロナの出どころは武漢研究所」の虚実
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの出どころについて、当初指摘されて
  いた武漢市の海鮮市場ではなく、同市のウイルス研究所が発
  信源ではないか。このウイルスの起源をめぐる攻防に集約さ
  れ、主に「情報戦」の様相を帯びている。「ポストコロナ」
  時代の米国と中国との覇権争いは、既に過熱気味だ。
   米国が新型コロナウイルスの起源だと主張する武漢ウイル
  ス研究所付属のP4と呼ばれる施設は、バイオセーフティー
  レベルが最高度の4であり、2018年に正式運用が始まっ
  た。このP4施設の建設には当初フランスの支援があったが
  同国は中国政府が情報の透明化に消極的であったり、一部安
  全保障の観点から「生物兵器への転用」懸念も指摘されたり
  したため協力に消極的になったと仏メディアは伝えている。
   特にこの研究所に勤務していた石正麗主任は、コロナなど
  多数の病原体を保有しているコウモリの研究で有名であり、
  この主任が研究所から流出したかどうかを知っているのでは
  ないかとされる。ただ、こうした中国の真実を知る可能性の
  ある人たちは、その後姿を見せていない。一方、中国は研究
  所起源説を全面否定している。また、ここにきて昨年10月
  に武漢で開催された各国の軍関係者の競技大会、「ワールド
  ミリタリーゲームズ」の際にウイルスが広まったのでは、と
  の見方も出ている。       https://bit.ly/2DDI6Rl
  ───────────────────────────

アンソニー・トゥー博士(杜祖健).jpg
 
アンソニー・トゥー博士(杜祖健)
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2020年08月12日

●「武漢研究所からのウイルス流出説」(EJ第5306号)

 現在、中国が世界中から非難を浴びています。新型コロナウイ
ルスの感染拡大のこともありますし、台湾に対する中国の姿勢や
チベット、東トルキスタンにおける民族浄化など、世界の非難を
浴びて当然のことを中国はやっています。
 しかし、日本のマスコミは、こういう中国の振る舞いについて
ほとんど報道しません。日本固有の領土である尖閣諸島において
中国の公船が、毎日のように傍若無人に振る舞っても、マスコミ
の報道は、たんたんと事実を伝えるのみです。一体どうなってい
るのでしょうか。
 それは、「日中記者交換協定」というものがあるからです。日
本と中国は、1964年4月19日に、「新聞記者交換会談メモ
修正に関する取り決め事項」と題する文書に調印しているからで
す。その結果、日本のマスコミは、次の3つを守らざるを得なく
なっています。
─────────────────────────────
     1.中国を敵視しない
     2.2つの中国をつくる陰謀に加わらない
     3.日中国交正常化を妨げない
─────────────────────────────
 こういう中国との取り決めがあることを多くの日本国民、とく
に若い人は知る由もないはずです。新聞でもテレビでも報道しな
いので、本を読まない若い世代では、中国が現在世界で何をして
いるのか知らないし、関心も薄いと思います。
 これについて、中国に詳しいノンフィクション作家の河添恵子
氏は、怒りをもって次のように述べています。
─────────────────────────────
 台湾はそもそも中国ではない。主権があり、総統も首長も立法
委員も国民による投票で選ばれ、軍隊を持ち、独自の教育システ
ムがあり(高学歴者の割合は世界最多とされる)、独自の経済シ
ステムも有する。人権に至っては「世界一と言って過言でないほ
どである。「日中国交正常化を妨げない」の原則にしても、南シ
ナ海や東シナ海で日中国交正常化を妨げる野蛮な行為を繰り返し
ているのは中共軍なのだ。
 世界各国が、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な流
行)で危機的状況にあるなかでも、人民解放軍が戦闘モード″
にあることも明らかだ。習近平国家主席はこれまでも「(台湾)
統一のために、武力行使も放棄しない」と公言してきた、が、東
部戦区(元南京軍区)は国家安全教育日の4月15日、公式アカ
ウント「人民前線」に「幻想を捨て、戦闘を準備せよ」とのメッ
セージを掲載した。東部戟区の任務は「台湾有事」「日本有事」
に備えることとされる。       ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスの感染が世界中で止まらないなか、トラン
プ米大統領は、「何としてもウイルスが流出した発生源を突き止
める」といっている。実際に米国では、口先だけでなく、本気で
リサーチしています。それに対して中国は防戦一辺倒になってい
る。そこで、河添恵子氏の本とアンソニー・トゥ博士の本を参照
に、発生源の問題を整理することにします。
 新型コロナウイルスが中国湖北省武漢市で発生したことは間違
いない事実です。中国側はこれについては認めています。問題は
武漢市のどこから発生したかです。これに対して中国側は、「海
鮮市場にいた動物から」としています。その動物とは、コウモリ
ではないかといわれています。
 その武漢市には、武昌区と江夏区にそれぞれウイルス研究所が
あります。このうち、江夏区の研究所である「中国科学院病毒研
究所」の方が新しい研究施設であり、バイオ・セーフティーレベ
ル4(BSL/4)の能力を持っているといわれます。
 この研究所について、アンソニー・トゥ博士は、自著で、次の
ように書いています。
─────────────────────────────
 この研究所は、2004年、伝染病について共同研究するため
にフランスが中国と結んだ協定によって設立された。はじめは、
この二国で建設が行われたが、途中から中国がフランスの参加を
拒絶し、最後の2年間は中国だけが建設に携わった。
                 ──アンソニー・トゥー著
         『毒/サリン、VX、生物兵器』/角川新書
─────────────────────────────
 このことは、8月3日のEJでも既に述べていますが、フラン
スは、BSL/4実験室にとって技術的に最も大切なところで、
中国側の意向で、建設に参加できなくなってしまったようです。
これが、2018年1月の米外交官の訪問によって、安全対策上
の危惧の念が表明される原因になっていると思われます。トゥー
博士によると、現地では「研究員が、市場で実験済みの動物を販
売している」という噂が立っていたといいます。
 また、トゥー博士によると、既出の石正麗氏は、この江夏区の
新しいラボ──中国科学院病毒研究所において、コウモリ由来の
コロナウイルスを猿に感染させ、それから血清を作る研究をして
いたと指摘しています。大変リスクのある実験であり、ここから
ウイルスが漏れたことも十分考えられるそうです。
 トゥー博士は、中国政府が3月10日に上海の復旦大学に対し
「新型コロナウイルスの発生源については、一切発表してはなら
ない」という通達を出しているといっています。おそらくこの通
達は、他の大学や研究所にも出されていると思われ、出所を何と
か隠蔽しようとしているものと思われます。
 そして、この江夏区の新しいラボが、今やグーグルマップから
消えていることを河添恵子氏は指摘しています。武昌区のラボは
残っています。「都合の悪いものは何でも徹底的に隠蔽する」の
が中国の方針のようです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/050]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナウイルス 「研究所から流出」説の真偽を追う
  ───────────────────────────
   中国・武漢市に世界トップレベルのウイルス研究所「中国
  科学院武漢病毒(ウイルス)研究所」がある。この研究所が
  備える最新鋭の設備の1つが、BSL4(バイオセーフティ
  ーレベル4)実験室だ。実験室では、SARSやエボラ出血
  熱のような、感染力が強くて、危険なウイルスのコントロー
  ルも可能で、洪水の被害が及ばない場所に設置され、マグニ
  チュード7の揺れにも耐えうるという。
   しかしいま、この研究所から新型コロナウイルスが流出し
  たのではないかという疑惑が持ち上がっている。1月末、イ
  ンド・デリー大学とインド理工学院に所属する研究者たちが
  まとめた「新型コロナウイルスにエイズウイルスと不自然な
  類似点がある」とする論文が物議をかもした。さらにこの研
  究者たちは「このウイルスが自然発生することは考えられな
  い」とした。この論文は大バッシングののちに撤回されたが
  一部のネットユーザーの間で内容が拡散。「新型コロナウイ
  ルスはSARSウイルスとエイズウイルスを武漢ウイルス研
  究所が人工的に合成したものでは」という憶測も飛び交い、
  不安が高まったのだ。さらに1月28日、ハーバード大学公
  衆衛生学教授のエリック・ファイグルーディン博士は、自身
  のツイッターで、「武漢市の海鮮市場はウイルスの発生源で
  はない」と発信。たちまち、世界中のメディアで取り上げら
  れた。             https://bit.ly/3fM6w8F
  ───────────────────────────

中国科学院病毒研究所/武漢市江夏区.jpg
中国科学院病毒研究所/武漢市江夏区
 
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2020年08月13日

●「コロナにまつわる4人のリケジョ」(EJ第5307号)

 河添恵子氏は、今回の新型コロナウイルスに関して、中国の4
人の女性研究員(リケジョ)が絡んでいると、述べています。
─────────────────────────────
            1.黄燕玲
            2.武小華
            3.石正麗
            4.王延軼
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 第1は「黄燕玲」氏です。
 黄燕玲氏は中国科学院武漢病毒研究所(新しいラボ/江夏区)
の研究員です。2012年度、試験を免除されて修士研究員に昇
格した名簿の公示が2011年11月4日に行われましたが、そ
のなかに、黄燕玲氏の名前はあります。しかし、2019年のい
つの頃なのか、行方不明となっています。
 武漢病毒研究所のスクリーンショットには、「診断微生物学科
組」に、黄燕玲氏の氏名と顔写真が出ていましたが、現在は氏名
むはあるものの、顔写真とコンタクト先の電話番号は、すべて空
欄になっていたのです。この黄燕玲氏について、河添恵子氏の本
には、次のように書かれています。
─────────────────────────────
 研究所に送られできたウイルスの扱いを、彼女がミスって浴び
て亡くなり、その際に運び出した人、葬儀屋などから一気に武漢
ウイルスが広がった。絶対に彼女が感染0号だ!」との内容が、
(真偽は別として)噴出した。
 ここで動いたのが北京の「新京報新聞」だった。2月16日付
で記事が出たが、まさに「超特急の火消し工作」のような印象を
抱いた。2月15日の夜、武漢ウイルス研究所の石正麗研究員他
と記者が話をした。石正麗氏は「同研究所に黄燕玲という名前の
研究員が所属しているかを把握していない」とのことだ。石研究
員は「私が保証できるのは、研究生を含む内部の人間は誰一人と
してウイルスに感染していないこと。0号は絶対にいない、フェ
イクニュースだ」と語った」との内容だった。
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 渦中の黄燕玲氏は、その後SNSを通じて「皆さんこんにちは
私は元気で暮らしています」というメッセージを出していますが
本当に本人が生存しているか疑わしい限り。中国政府がよくやる
手法です。
 第2は「武小華」氏です。
 この人は告発者のようです。2月頃の話です。武小華という博
士がウェイボ(微博)を通じて、次の告発を行ったのです。
─────────────────────────────
 武漢P4実験室では、自然界に存在せず変異から生まれない人
工的なウイルスを編集する実験を行っている。 ──武小華博士
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 武小華博士は、新型コロナウイルスを作り出したのは、武漢P
4実験室に所属する石生麗主任のグループであると特定していま
す。その特定の根拠として、2015年11月、米科学雑誌「ネ
イチュア・メディシン」に発表した石生麗主任ら15人による論
文がクーズアップされることになります。この武小華博士につい
て、河添恵子氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 武小華博士が何者なのか、彼女が博士だとして論文が見当たら
ない、といった声も出ている。石正麗研究員の存在やその研究内
容を世界に知らせるための架空の人物を使っての“仕掛け”だっ
たのだろうか?石正麗研究員と同僚の周鵬研究員は、情報諜報ネ
ットワーク「ファイブ・アイズ」に「この2人を調査中」と名指
しされた。両氏は、オーストラリアに留学していた時期があり、
その間、誰と接触して何をしていたか、オーストラリア保安情報
機関(ASIO)は際どい証拠をつかんでいるのだろう。
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 第3は「石正麗」氏です。
 石正麗氏については、これまでEJでも、何回も取り上げてい
ます。この人も現在、その所在は不明です。この人は世界から、
「バット・ウーマン」と呼ばれるほどコウモリのウイルスの専門
家として知られています。その所属は、武漢ウイルス研究所の学
術委員会主任、新発伝染病研究中心主任、新発病毒学科組組長と
いうさまざまな肩書を持っています。
 孫向文氏(漫画家、正体不明)は、石正麗氏について、次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 石正麗主任が2015年に「ネイチュア・メディシン」で発表
した論文を見た、アメリカの北カロライナ州にある小さな医学研
究団体は、彼女がリードした研究チームと提携を結びました。そ
の際に見たのは、コウモリから抽出したコロナウイルスを人間の
細胞にあるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)と融合する
実験に成功した、との内容が書かれた論文だったのです。
 これをアメリカのCDC(疾病管理予防センタ−)は、「自然
界に存在しないウイルスをつくるのは、モラル違反であり、中国
が生物兵器に転用しかねないリスクを推測した」としています。
同年にその医学チームは彼女との提携を解除しました。
                ──河添恵子著の前掲書より
─────────────────────────────
 今回取り上げられなかった4の「王延軼」氏については、明日
のEJで述べることにします。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/051]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナの危険察知の“コウモリ女”の口を封じた17歳
  下“美人”上司
  ───────────────────────────
   中国湖北省の中国科学院武漢ウイルス研究所でコウモリ関
  連のコロナウイルス研究を統括してきた石正麗氏(1964
  年生まれ)について、オーストラリアのメディアが「中国当
  局に口止めされていた」と伝え、波紋を呼んでいる。そこに
  は“情実人事”で研究所トップに抜擢された30代女性も関
  与しており、石氏ら第一線研究者との確執が複雑に絡んでい
  る。オーストラリアのニュースサイト「news.com.au」 は5
  月3日、石氏と武漢ウイルス研究所をめぐる確執を詳細に記
  している。
   同サイトは、中国当局が12月30日、石氏の研究チーム
  に血液サンプルを分析するよう求めた▽分析の結果、石氏は
  新型コロナウイルスが人を殺すということを知った▽したが
  って石氏は、新型コロナウイルス感染により武漢で人が死ん
  でいたことを知る世界最初の科学者の1人ということになる
  ――と位置づけている。
   新型コロナウイルス感染拡大後、石正麗氏は中国人ジャー
  ナリストと接触。このジャーナリストは、同サイトの取材に
  「武漢ウイルス研究所は今年1月2日の段階で遺伝子配列と
  関連の実験を終えていた。だが口封じされた」との見方を示
  したという。実験の詳細は記されていない。
                  https://bit.ly/3ijLX51
  ───────────────────────────

石生麗武漢研究所研究員.jpg
石生麗武漢研究所研究員
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2020年08月14日

●「王延軼は共産党の『選民』である」(EJ第5308号

─────────────────────────────
            1.黄燕玲
            2.武小華
            3.石正麗
          ⇒ 4.王延軼 ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 第4は「王延軼」氏です。
 この人は、2018年後半から、新しいラボ、江夏区の中国科
学院武漢病毒(ウイルス)研究所と、武昌区の研究所の両方の所
長に抜擢され就任しています。正式には、中国共産党党委員会書
記・所長ということになります。年齢は37歳の若さです。なぜ
王延軼氏が武漢ウイルス研究所の所長になったのか。多くの実績
を持つ石生麗氏との関係についてはどうなっているのか、情報を
整理していきます。
 王延軼氏は、北京大学生命科学学院を卒業し、2006年に米
コロラド大学で修士号を獲得し、帰国して2010年、武漢大学
生命科学学院で博士号を取得しています。
 王延軼氏と、新しいラボ、江夏区のウイルス研究所の石正麗研
究員との関係について、河添恵子氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 石正麗氏は学術委員会の主任、新発伝染病研究中心の主任、新
初病毒学科組の組長という立場であり、武漢ウイルス研究所の責
任者ではない。一方、30代の王延秩氏は超エリート街道を歩む
「選民」であることは間違いない。
 2020元旦、国家衛生委員会が武漢ウイルス研究所の王延秩
所長に電話し、流行に関連するすべての検査、実験データ、結果
結論を自己メディアやSNSで公開したり、官製メディアを含む
協力機関(技術サービス会社を含む)に開示したりしないように
と、特別な通知を伝達したとされる。実際、王延軼所長は、1月
2日に、「武漢ウイルス研究所」研究員すべてにこれらの内容を
伝達したことが、スクリーンショットで残されている。
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 王延軼武漢ウイルス研究所長と石正麗研究員の関係については
8月6日のEJの≪画像および関連情報≫でご紹介したジャーナ
リストの西岡省二氏の一文が参考になります。
 西岡省二氏のレポートでは、オーストラリアのニュースサイト
「news.com.au」が、2つの重要情報を明らかにしています。
 1つは、王延軼武漢ウイルス研究所長が、1月2日に全研究員
に送ったメール「武漢の原因不明の肺炎に関連した情報の公開を
厳禁とする通知に関して」です。これについては、昨日のEJで
述べています。
 2つは、4月に石正麗氏がオンラインで講義を行い、次のよう
に述べたという情報です。
─────────────────────────────
 自分たちのチームは、1月14日、自分たちが特定したウイル
スが、ヒトに感染する可能性があることを確認した。
                       ──石正麗氏
─────────────────────────────
 この2つの情報から、中国当局が、今回の新型コロナウイルス
の発生源を特定されることを恐れて、早い時点で、研究所に対し
て、それについての口止めを行っていることがわかります。
 中国当局が「ヒト・ヒト感染する可能性」があることを発表し
たのは、1月20日になってからです。しかし、石生麗氏が発表
したのは14日であり、6日も早いのです。
 この4月末日に、インターネット上に石生麗氏が大量の秘密文
書を持って欧州に脱出し、フランスの米国大使館に亡命の申請を
したという情報が流れたのです。しかし、その後5月になって、
微信(ウィチャット)上に本人のメッセージで、その情報がデマ
であると表明していますが、以来、石生麗氏は行方不明です。
 そもそもオーストラリアのニュースサイトが、なぜ石生麗氏に
関心を持っているかというと、ファイブアイズが石生麗氏をマー
クしているからです。ファイブアイズとは、米国・英国・カナダ
・オーストラリア・ニュージーランド5ヶ国による諜報活動の協
定のことです。最近、日本にも加盟の要請があります。
 石生麗氏は、武漢の大学で生物学を学び、2000年には、フ
ランスのモンペリエ大学で、ウイルス学の博士号を取得していま
す。したがって、英語もフランス語も堪能です。2002年から
2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が大流行した後
の2006年に、オーストアリア連邦科学産業研究機構(CSI
RO)管轄下のオーストラリア疾病予防センター(ACDP)で
訪問学者としてコウモリを研究しており、オーストラリアでは、
よく知られた存在だったからです。
 続いて王延軼武漢ウイルス研究所長については、「若過ぎる」
として、次のような批判が出ています。
─────────────────────────────
 この人事に批判が集中している。本人の実力ではなく、15歳
年上の夫・舒紅兵武漢大学副学長の七光りをバックにしていると
いう声が根強いのだ。舒紅兵氏は1967年、重慶生まれ。免疫
学が専門で、2013年には武漢大学副学長、2014年には武
漢大学医学研究院長を兼任している。北京大学生命科学学院で特
任教授を務めていた2000〜2004年、教え子だった王延軼
氏と知り合った。インターネット上では「王延軼氏は舒紅兵氏の
4度目の結婚相手」と噂されている。こうした事情もあり、武漢
ウイルス研究所では不満が噴出し、規律が緩んでいたという。
                  https://bit.ly/3gMGGSW ─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/052]

≪画像および関連情報≫
 ●武漢ウイルス研究所の女性所長、突然の登場背景に米中
  衝突か/NWSポストセブン
  ───────────────────────────
   「新型コロナの発生源が武漢ウイルス研究所というのは、
  でっち上げだ」。ウイルスの発生源を巡って米中が火花を散
  らすなか、突如口を開いたのがその研究所所長である王延軼
  (ワンエンイー)氏だった。5月24日に中国・国営中央テ
  レビに登場し、強い口調と、若々しい見た目のギャップが注
  目を集めた。39歳の若さでトップに就く彼女の素性とは?
  『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)の著者で経
  済ジャーナリストの浦上早苗氏が語る。
   「彼女は北京大学卒で、2012年に同研究所に入った後
  3年で副所長になり、そのまた3年後に所長へ就任。エリー
  トには違いありませんが、同研究所は一地方機関にすぎず、
  彼女が就任した際もそこまで話題にはならなかった。
   ただし、今回のコロナ騒動で彼女に目が向けられ、経歴が
  明らかになる中で、14歳年上で武漢大学の副学長を務め研
  究者として名高い夫にも注目が集まっています。彼女が北京
  大学に入った頃、夫も北京大学大学院に特任教授として在籍
  しており、その時に教え子として知り合い結婚したとされて
  いる。そのことから彼女のスピード出世には、夫による裏の
  力が働いているのではという批判的な書き込みがネットで出
  回っています」中国で感染が拡大した2月には首都医科大学
  学長が彼女の夫にSNSで「彼女の研究レベルはまだ低い」
  「多くの研究者たちも彼女をリーダーとして認めていない」
  などと苦言を呈している。    https://bit.ly/3agdWiY
  ───────────────────────────

王延軼氏(武漢病毒研究所ウェブサイト).jpg
王延軼氏(武漢病毒研究所ウェブサイト)
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2020年08月17日

●「石生麗研究員の現在の消息を探る」(EJ第5309号)

 新型コロナウイルスの感染は世界中で終息の気配が見えない状
況が続いています。もし新型コロナウイルスが、何らかの事情で
武漢病毒(ウイルス)研究所から漏洩し、もし、それを中国政府
が隠蔽を図ったとすれば、それこそ、数千兆円規模の賠償請求と
国際的な批判が中国共産党政権に殺到することになります。その
カギを握る人物は石生麗氏といっても過言ではないでしょう。
 その石生麗氏の消息は、はっきりしていないのです。石生麗研
究員とその上司の王延軼武漢ウイルス研究所長の関係を探ると、
何かが見えてくると思います。このことについてフリー・ジャー
ナリストの山口敬之氏が、「月刊HANEDAセレクション」で
次のタイトルで書いているので、この記事を参考にして、真相に
迫って行きます。この記事は、「月刊HANEDA」7月号と8
月号の論稿が再構成されています。
─────────────────────────────
                       山口敬之著
  「武漢P4研究所の『蝙蝠女』石生麗だけが知っている」
          ──「月刊HANEDAセレクション」
─────────────────────────────
 石生麗氏は、いまどこにいるのでしょうか。今年に入ってから
の石生麗氏の発言の記録を追っていきます。
 最初の発信は、今年の2月です。新型コロナウイルスは、武漢
のウイルス研究所から流出し、武漢市民に感染したのではないか
という噂が出始めた頃です。
─────────────────────────────
◎ウイルスの発生源が自身の研究所でないことを命に賭けて約束
 する。悪意のあるメディアの噂を信じて拡散する人たちには、
 その臭い口を閉じるよう忠告する。
            ──上記、山口敬之著のレポートより
─────────────────────────────
 この文字による発信は、石生麗氏のものではないという分析も
あります。石生麗氏を知る内外の研究者は、寡黙で学究肌の石氏
が、「臭い口を閉じるよう忠告する」というような下品な表現を
使うとは考えられないという反論です。
 この発言後の4月末には、ネット上に例の亡命説が出てくるの
です。この真偽ははっきりしませんが、亡命先であるとされるフ
ランスの米国大使館が沈黙を守っているので、デマであることに
なっています。
 しかし、この情報の発信源は、トランプ政権発足時にホワイト
ハウスで首席戦略官兼上級顧問を務めた対中強硬派のスティーブ
・バノン氏であったといわれており、単なるデマではないという
見方もあります。
 5月2日、中国共産党の国際情報誌「環境時報」は、石生麗氏
の友人とのやり取りとして、次の文章を公表しています。
─────────────────────────────
 「私と私の家族はみな元気です。いかに多くの困難があろうと
亡命などしない」
 「我々は何も間違ったことはしていない。我々の心のなかには
科学に対する揺るぎない信念がある」
            ──上記、山口敬之著のレポートより
─────────────────────────────
 中国の対応もおかしいのです。武漢ウイルス研究所のコロナウ
イルスの研究を仕切っていていた石生麗研究員が疑われているの
ですから、何もやましいことがないなら、石生麗研究員自身が武
漢ウイルス研究所で記者会見を開き、ウイルスの研究所からの流
出を明確に否定すれば済むことです。それをしないということは
それができない中国側の事情があると思われます。
 ここまでのEJの記述については、興味のある方は、本テーマ
の6月4日のEJ第5260号から6月9日のEJ第5263号
の4本の記事を読み直していただきたいと思います。とくに6月
8日のEJによると、2019年12月10日の武漢ウイルス研
究所周辺は、人影もなく静まり返っていたといいます。
─────────────────────────────
     ◎2020年6月4日/EJ第5260号
       「ウイルスは武漢研究所からの流出」
             https://bit.ly/31Kh42Y
     ◎2020年6月8日/EJ第5262号
       「19年12月10日のある出来事」
             https://bit.ly/3kMLBpI
─────────────────────────────
 2019年12月10日の武漢ウイルス研究所周辺の異常な静
まりの原因は何だったのでしょうか。以前にこの技術院を訪問し
たことのある人の話によると、技術院の敷地内は乗用車や業者の
トラックが頻繁に出入りし、技術院のなかは、白衣の研究者が多
く行き来する活気に満ちた場所だったといいます。ところが、そ
の日は技術院のなかにはほとんど人はおらず、その後の武漢の市
中案内でも、いつもなら必ず目にするはずの市民はほとんどいな
かったというのです。
 これについて、米共和党のトム・コットン上院議員は、武漢ウ
イルス研究所でそのとき何かトラブルが起き、研究所周辺には人
が立ち入りできないよう規制されていたのではないかと発言して
います。つまり、新型コロナウイルスの感染確認は、中国当局の
いう12月31日ではなく、12月10日以前だったのではない
かと疑いが出てきたのです。
 5月25日のことです。それまで消息不明であった石生麗氏が
国営テレビのインタビューに登場したのです。テレビに本人が登
場したのです。そのときのテロップには、「石生麗/武漢ウイル
ス研究所研究員」と明記されていたのです。ということは、石生
麗氏は、少なくとも5月25日時点では、武漢ウイルス研究院の
研究員として在籍しているようです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/053]

≪画像および関連情報≫
 ●謎深まるコロナウイルス感染源/中国内の報道から検証
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスをめぐり、トランプ米大統領らは、中
  国湖北省武漢市にある武漢ウイルス研究所からの流出説を唱
  えている。一方、中国側は猛反発し、米中対立の火種となっ
  ている。真相≠ヘ、今後の調査に待たれるが、中国ウオッ
  チャーの龍氏がこれまでの報道などをまとめ、検証した。
  (編集部)
   中国では早い段階から、武漢にある国や地元政府の研究所
  と、新型ウイルスとの関係を議論してきた。一部専門家も、
  武漢発のウイルスが人災であり、天災ではないと追究し、政
  府の抑圧と対峙(たいじ)してきた。疑いの目は武漢にある
  二つのウイルスと関係がある施設に向けられた。武漢ウイル
  ス研究所と武漢疾病対策センター(CDC、以下センター)
  だ。今回のウイルスを研究していた武漢ウイルス研究所から
  漏れたのではないかとささやかれた。センターからウイルス
  が広まったのではないかともいわれた。もちろん、現時点で
  は確認されていない。感染公表後、武漢政府は素早く「武漢
  華南海鮮卸売市場」(以下、海鮮市場)を封鎖し、ここが新
  型コロナの発生源だ、と世界に印象づけた。一方、中国のウ
  イルス専門家や一部マスコミは、それは真実を隠した、中国
  政府のカモフラージュだと主張した。中国華南理工大学生物
  科学与工程学院教授の肖波涛氏は、今回のウイルスが「市場
  以外」のところから流出した可能性があると指摘する。
                  https://bit.ly/3gYUSIW
  ───────────────────────────

石正麗研究員.jpg

石正麗研究員
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2020年08月18日

●「コロナ中国主犯説を裏付ける証拠」(EJ第5310号)

 米国では、新型コロナウイルスの発生源は武漢ウイルス研究所
から漏洩したものであることを確信していますが、生物兵器説は
明確に否定しています。メリーランド州にあるクロム・バイオセ
ーフティ・バイオセキュリティ・コンサルティングの創始者であ
るティム・トレパン所長は、新型コロナウイルスが生物兵器でな
い理由を次のように説明しています。
─────────────────────────────
 生物兵器として危険な病原体を培養するとしたら、作る方は前
もって、ワクチンや抗毒剤を大量に準備しないといけないが、い
まのところそういう存在は出てきていない。
                 ──アンソニー・トゥー著
         『毒/サリン、VX、生物兵器』/角川新書
─────────────────────────────
 ということは、新型コロナウイルスが武漢ウイルス研究所から
間違って漏洩したものであるという説には説得力が出てきます。
しかし、米国当局は中国が主張する新型コロナに気が付いたのは
2019年12月30日ではないとしています。
 これに対して当の石生麗研究員は、「最初に原因不明の検体に
触れたのは2019年12月30日であり、1月12日にWHO
にすべての情報を提供している」といっていますが、感染の拡大
はもっと早くからはじまっていたと米国当局は分析しています。
断片的な情報をていねいに積み上げると、感染が起きたのは2ヶ
月以上早くなるのです。これについて、山口敬之氏は、そのタイ
ムラインを次のように整理しています。
─────────────────────────────
 これまで、中国当局が武漢ウイルスの危険性を把握したのは、
早くても昨年末とされてきた。武漢の眼科医・李文亮氏が未知の
肺炎の蔓延を告発する動画を公開したのが、12月30日だった
からだ。ところが最新の情報を読み上げると、タイムラインは、
2ヶ月以上早まる。
・昨年10月上旬に武漢P4研究所でウイルス漏洩事故(ないし
 事件)があり、
・当該エリアは繰り返し封鎖され、
・石正麗のチームが市内で流行している疫病の分析を進め、
・12月までに武漢ウイルスの正体を突き止め当局に報告した。
 とすれば、断片情報の全てが矛盾なく像を結ぶ。
 しかも、「最初のヒト/ヒト感染が12月下旬とすると、武漢
地域での感染爆発のスピードがあまりに早すぎる」というこれま
での疫学上な疑問も、10月段階でウイルス蔓延が始まっていた
とすれば合点がいく。            ──山口敬之著
   「武漢P4研究所の『蝙蝠女』石生麗だけが知っている」
           ──「月刊HANEDAセレクション」
─────────────────────────────
 アンソニー・トゥー氏の本では、中国政府が各大学や研究所に
新型コロナウイルスの発生源に関するレポートは一切発表しては
ならないという通達を出していたという事実や、4月17日に中
国政府が、武漢の死者数の訂正を行っていることが、次のように
指摘されています。
─────────────────────────────
 さらに不思議なのは、4月17日に中国が出した武漢の死者数
の訂正だ。それまでは武漢での死亡数を2579人と報じていた
が、急にその数を約1・5倍の3869人としたのである。さら
に、「実際はその10倍から100倍の人が死んでいるのではな
いか」というのがアメリカの見立てだ。中国は一貫して研究室か
らの流出も生物兵器の製造も、堂々と否定している。たしかに、
傍証はあれど中国は絶対にその可能性を認めないだろう。しかし
私の意見として、確信を持って言えることは、今世界中でこれほ
どまでに多くの犠牲者が出た原因の大部分は、中国の発表が遅す
ぎたことにある、ということである。──アンソニー・トゥー著
         『毒/サリン、VX、生物兵器』/角川新書
─────────────────────────────
 5月中旬のことです。トランプ米大統領は、WHOのテドロス
事務局長に書簡のなかで、「武漢では12月上旬か、それ以前か
ら感染爆発がはじまっていた」と断定しています。国際社会でそ
ういう声が高くなると、中国の報道官はムキになって、「証拠を
示せ」と反論します。これについて、山口敬之氏は、欧米の研究
機関からの次の情報を伝えています。
─────────────────────────────
 6月に入ると、欧米の複数の研究機開から、感染の開始時期を
昨年8月と推定する報告書が出た。
 たとえばアメリカのハーバード大学医学大学院は、
・衛星画像の分析などから、武漢市内の主だった病院駐車場の利
 用率が、昨年8月に急増、
・同じ時期「咳」や「下痢」といった、武漢ウイルスによって引
 き起こされる諸症状に関するインターネット検索が、武漢地域
 で急増、と発表したのである。
 この報道について、中国外務省の華春瑩報道官は、「交通量と
いう表面的な観察に基づき結論を出すとは、信じがたいほど、ば
かげている」と不快感を露わにした。
            ──山口敬之著の前掲のレポートより
─────────────────────────────
 2019年10月から12月31日までの間に、中国の武漢で
は、何かが起きていたことは確かです。武漢には、2つのウイル
ス研究所があり、江夏区の新しい研究所は、バイオセーフティレ
ベル4の実験室を有しています。
 しかもそこには、石生麗研究員という中国が世界に誇るコロナ
ウイルスの権威が研究者が所属しているのです。したがって、新
型コロナウイルスがその研究所から漏れる可能性は限りなく高い
といえます。だから、世界が中国主犯説を疑っているのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/054]

≪画像および関連情報≫
 ●中国武漢の死者数を大幅に訂正/新型コロナウイルス
  ───────────────────────────
   中国で新型コロナウイルスの感染拡大が最も深刻だった湖
  北省武漢市の当局は、これまでの統計に漏れがあったなどと
  して、死者の数を2500人余りから3869人へと大幅に
  訂正しました。武漢市の対策本部が4月17日発表したとこ
  ろによりますと、情報の正確性を確保するため、市内の医療
  機関や住民組織、それに火葬施設などの記録を調べ直した結
  果、新型コロナウイルスに感染して死亡した人の数はこれま
  で発表していた2579人から1290人増えて、3869
  人だったということです。また感染者の数も、これまでの5
  万8人から325人増えて、5万333人に訂正するとして
  います。
   これに続いて、中国の保健当局も、全土の感染者は8万2
  692人、死亡した人は4632人と訂正しました。武漢市
  当局は訂正の理由について、感染拡大の初期に患者が急増し
  て医療施設が不足し、病院で治療を受けられずに自宅で死亡
  した人がいたことや、病院の担当者が多忙だったことから統
  計に漏れがあったためなどとしています。ただ医療崩壊が起
  きた武漢では、感染が確認されないまま亡くなった人もいた
  とみられ、こうした死者の数は今回の訂正にも含まれていな
  い可能性があります。
   中国で感染拡大が最も深刻だった武漢では、4月3日以降
  新たな感染者が確認されず、8日には1月から行われていた
  都市の封鎖を2か月半ぶりに解除しましたが、実際の感染者
  や死者の数は、発表より多いのではないかという指摘が出て
  いました。           https://bit.ly/3iEYJez
  ───────────────────────────

中国外務省/華春瑩報道官.jpg
中国外務省/華春瑩報道官
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2020年08月19日

●「王延秩と石生麗はどういう関係か」(EJ第5311号)

 新型コロナウイルス流出のカギを握る人物といわれる石生麗研
究員──所在不明が伝えられていましたが、5月25日、国営テ
レビのインタビューに登場したのです。本来、これは世界中が注
目する大ニュースのはずです。
 しかし、本稿執筆時にネットを検索してもこのインタビューに
関する記事は皆無です。明らかに何らかの方法で削除されている
ものと考えられます。そういう意味で、山口敬之氏の記事は貴重
なレポートになります。石生麗氏は次のように答えています。
─────────────────────────────
  私の研究が新型コロナウイルスの起源になった事実はない
                    ──石生麗研究員
                      ──山口敬之著
   「武漢P4研究所の『蝙蝠女』石生麗だけが知っている」
           ──「月刊HANEDAセレクション」
─────────────────────────────
 きわめてすっきりしない表現です。なにしろ、トランプ米大統
領が武漢の研究所からウイルスが流出した証拠を掴んだと発言し
た後のキーパーソンの発言としては、きわめて曖昧な表現です。
山口敬之氏は発言について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 満を持して強い言葉で決然と疑惑を全否定すると思われていた
だけに、石生麗の発言は弱すぎた。その後のインタビューの度重
なる質問に対しても、石生麗は歯に衣着せたような言い方に終始
したのである。         ──山口敬之著の前掲書より
─────────────────────────────
 ここで強調しておくと、石生麗氏は、コロナ研究者としては、
世界が認めている研究者てあるということです。16年に及ぶ彼
女のコウモリの研究は、ウイルスの治療薬開発にも生かされてい
ます。日米がコロナウイルスの治療薬としてその効果を認めたと
いう「レムデシビル」も、石生麗氏の遺伝子情報が開発の重要な
足がかりとなったといいます。レムデシビルとはギリアド・サイ
エンシズというアメリカの製薬会社が作っている薬です。
 日本や米国では、石生麗研究員ほどの世界レベルの実績がある
と、武漢ウイルス研究所の所長に任命してもおかしくはないです
が、中国では、学問的業績よりも、あくまで中国共産党を守ると
いう大命題があるので、彼女を所長にはできないのでしょう。そ
ういうわけで、2018年頃から、武漢ウイルス研究所の所長に
なったのが、王延軼氏という人物です。王延軼氏の正式な職名は
「党委員会書記兼中国科学院武漢病毒研究所(武昌区/江夏区)
所長」となります。若いのに大変な出世です。
 この王延軼所長と石生麗研究員の関係について、山口敬之氏は
次のように述べています。
─────────────────────────────
 2018年に32歳の若さで所長に就任した王延秩は、コロナ
研究の世界的権威で17歳も年上の石正麗の「上司」となった。
研究者として中国内外にネットワークを持つ石正麗と、中国国内
で高位の政治的後ろ盾をもつ王延秩の間には、いろいろな捻れが
生じていたはずである。
 こうした事実を知れば、「私の研究が新型コロナウイルスの起
源となった事実はない」という石正麗の表現に、含みを感じる人
は少なくないだろう。石正麗が明確に否定したのは、自分に掛け
られた嫌疑だけであって、研究所全体への疑惑を否定したわけで
はない、とも受け取れるのである。──山口敬之著の前掲書より
─────────────────────────────
 王延秩所長の出世について、中国では、王所長の夫が、中国の
科学技術研究の総本山ともいうべき、中国科学院を牛耳る学閥の
武漢地域の幹部であることによるものとされています。これに対
して、河添恵子氏は、これとはぜんぜん違う説を立てています。
─────────────────────────────
 王所長の夫は、15歳年上で武漢大学副学長、武漢大学医学研
究院長も兼任している。識者の一部は「夫の威光で彼女が所長の
ポジションに就いた」と解説しているが、果してそうだろうか。
 それよりは、一部で噂される「王岐山国家副主席の隠し子」説
の方が、私にはより合点がいく。王岐山国家主席は、2018年
6月から中国赤十字会の名誉会長に就いている。ちなみに、会長
は、江沢民元国家主席と長男・綿恒氏に近く、リヨンのメリユー
家とも長年、深い関係にあると考えられる陳竺氏だが、「新しい
ラボ」が王岐山(一派)の牙城になりつつある、ということなの
か?赤十字会と聞けば日本人は「美しいイメージ」を抱くだろう
が腐敗の温床。誰も献金したがらない“黒い会”であることも補
足しておく。
 「バットウーマン」の石正麗主任をはじめ「選民」以外の研究
者は、所詮、中国共産党の軍拡──生物化学兵器、毒素兵器の開
発に利用されるク“頭脳コマ≠ノ過ぎず、いざとなったら「捨て
られる存在」なのかもしれない。   ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 王延秩所長は、石生麗研究員がインタビューに応じた5月25
日の前日の24日、中国中央電視台(CCTV)のインタビュー
に応じ、次の趣旨の発言をしています。
─────────────────────────────
 武漢研究所から新型コロナウイルスが漏洩したとの見方がある
が、でっちあげである。研究所が、初めて新型コロナウイルスを
扱ったのは、2019年12月30日であり、12月30日以降
に、原因不明の肺炎の臨床サンプルの検査を進め、全く未知の新
たなウイルスが含まれることを発見した。それ以前には、扱った
ことも、研究したことも、保存したこともない。
            ──河添恵子著/WACの前掲書より
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/055]

≪画像および関連情報≫
 ●武漢のバットウーマン、ウイルス流出を否定 続く情報戦
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスが中国・武漢の研究所から拡散したと
  する米国の主張に対し、真相を知る立場にあると見られてい
  た同研究所研究員が25日、中国国営メディアに登場しウイ
  ルス流出の可能性を否定した。米国を含む国際協力の舞台だ
  った研究所は、激しい情報戦の渦の中にある。
   中国国営の中国国際テレビ(CGTN)のインタビューに
  応じたのは、コウモリを宿主とするウイルス研究が専門の石
  正麗研究員。フランスの大学で博士号を取り、米国の微生物
  学アカデミーの会員にも選ばれている。コウモリを求めて雲
  南省の洞窟などに通う姿から、「バットウーマン」とも呼ば
  れる著名研究者だ。
   石氏は新型コロナウイルスについて、昨年12月30日に
  原因不明の肺炎患者の検体として初めて研究所に持ち込まれ
  たとし、「遺伝子配列を調べ、我々が知っているどのウイル
  スとも違う未知のものだとわかった」と説明。それ以前に新
  型ウイルスの存在は知らなかったとの立場を強調した。
   石氏は「伝染病の研究は透明性を持ち、国際的に協力して
  いかなくてはいけないものだ」と強調。新型ウイルスの起源
  をめぐり米中が対立する現状について、石氏は「政治と科学
  が混ざり、科学が政治化されている。全世界の科学者が望ん
  でいない状況だ」と述べた。   https://bit.ly/31VvHAw
  ───────────────────────────

王延軼武漢研究所所長.jpg
王延軼武漢研究所所長 
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2020年08月20日

●「武漢ウイルスの新しい発生源判明」(EJ第5312号)

 昨日のEJで述べたように、「新型コロナウイルスは武漢ウイ
ルス研究所から漏洩したのではないか」という疑いに対して、5
月25日、渦中の石生麗研究員が、国営テレビの中国中央電視台
(CCTV)のインタビューに応じたのです。これは、世界中が
注目した大ニュースです。
 その前日の5月24日、中国科学院武漢ウイルス研究所所長の
王延秩氏が、中国中央電視台(CGTN)のインタビューに応じ
ています。この問題に関心のある人は、誰でも両方見たいと思う
はずです。ところが、石生麗研究員のインタビューは、現在ネッ
トからすべて消去されているのに対して、24日の王延秩所長の
インタビューは簡単に見つかったのです。これは、中国政府の考
え方として、石生麗研究員のインタビューは見て欲しくないが、
王延秩所長のインタビューは、多くの人に見て欲しいと思ってい
る証拠です。そこで石生麗研究員のインタビューは削除し、王延
秩所長のそれは、各国向けに、動画を提供しているようです。中
国とはそういうことをする国です。
 王延秩所長のインタビューをご案内します。中国語のやりとり
ですが、日本語のテロップが出るので、内容は理解できます。時
間は7分27秒ですが、ぜひご覧ください。王延秩所長がいかに
切れ者であるかよくわかります。テレビチャンネルはCGTNに
なっていますが、これは、中国中央電視台の中国グローバルテレ
ビジョンネットワーク(中国環球電視網)で、外国向けに提供す
る動画であることを示しています。
─────────────────────────────
  ◎武漢ウイルス研究所の王延軼所長へ独占取材=CGTN
                 https://bit.ly/2PYtyOX
                  収録時間/7分27秒
─────────────────────────────
 台湾の毒性学および生物兵器・化学兵器の専門家、アンソニー
・トゥー氏の本に、とても気になる情報が載っています。
─────────────────────────────
 2020年の2月に、華南理工大学で生物学を教えている肖波
濤教授が、研究者向けのSNS「リサーチ・ゲート」に発表した
論文「新型コロナウイルスで考えられる発生源」が、英文で発表
されたが、それがすぐに中国政府によって発表を取り消された。
 このペーパーでは、漏れた場所を明確に「武漢市疾病予防管理
センター」であると指摘している。 ──アンソニー・トゥー著
         『毒/サリン、VX、生物兵器』/角川新書
─────────────────────────────
 まず、肖波濤教授とはどういう人物でしょうか。
 肖波濤教授は、中国の理系トップクラスの国立大学である広東
省広州市の華南理工大学の教授で、生理学、生物物理や医薬生物
学、生物データ学、生化・分子生物学、微生物学の専門家です。
2017年まで武漢市の華中科技大学物理学院生物物理所の教授
と副所長を務めていたので、武漢市の地理に詳しい人です。
 この肖波濤教授の主張によると、新型コロナウイルスの発生場
所は、「武漢市疾病予防管理センター(WHCDC)」であると
特定していますが、この施設ははじめて聞く名前です。
 ここまで、武漢市には、武昌区と江夏区に2つのウイルス研究
所があるとしてきましたが、もうひとつ「武漢市疾病予防管理セ
ンター」(以下、WHCDC)というものが出てきたのです。こ
のWHCDCは、どこにあって、これまで何をしてきたところで
しょうか。この論文内容のまとめについて、河添恵子氏の本から
引用します。
─────────────────────────────
 コウモリが市場に飛ぶ可能性は非常に低い。自治体の報告と、
31人の居住者と28人のビジターの報告と証言によれば、コウ
モリは市民の食糧源では決してなく、市場で売り買いされていな
い。他に何か考えられる感染経路はあるだろうか?我々(肖教授
ら)は海鮮市場周辺で、コウモリのコロナウイルスの研究をして
いる2つの研究所を特定した。市場から280メートル以内に、
武漢市疾病予防管理センター(WHCDC)がある。
 WHCDCは、研究目的で動物を確保し、病原体収集と識別を
専門にしていた。WHCDCは、過去2年以内にコウモリを湖北
省から155匹、浙江省から450匹調達している。WHCDC
は医師らのグループが最初に感染した協和医院に隣接している。
 第2の研究所は、海鮮市場から約12キロメートル離れた中国
科学院武漢病毒(ウイルス)研究所(武昌区)がある。この研究
所は、中国の馬蹄コウモリが重度のSARS(重症急性呼吸器症
候群)の大流行を2002年から2003年に引き起こしたこと
を報告している(中略)。直接の推測は、SARS・COVまた
はその誘導体が実験室から漏れる可能性がある。
 要約すると、誰かが2019─nCOVコロナウイルスの進化
と絡み合っていた。天然組換え及び中間宿主の起源に加えて、キ
ラーコロナウイルスはおそらく武漢の研究室から発生した。
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 論文全文を見ていないので、理解できない部分もありますが、
この論文が指摘する感染源は、武昌区のウイルス研究所でも新し
いラボの江夏区のウィルス研究所でもなく、海鮮市場から280
メートルも離れていない武漢市疾病予防管理センター(WHCD
C)であるということになります。
 それにしても武漢市には、新型コロナウイルスの発生源になり
うる研究施設が3つもあることになります。問題は、その3つの
研究施設の位置関係です。肖波濤教授は、論文できわめて重大な
ことを指摘したことになります。中国政府は、慌てて消去しまし
たが、いったんアップロードしたものは、誰かが所有しているも
のです。3つの研究施設の位置関係については、明日のEJで検
証します。    ──[『コロナ』後の世界の変貌/056]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナウイルス発生源を巡るミステリー
             ──斎藤 直樹 山梨県立大学教授
  ───────────────────────────
   現在、新型コロナウイルが世界各地で猛威を振っているが
  新型コロナウイルスの発生源はミステリーに包まれたままで
  ある。本稿は同ウイルスの発生源を巡るミステリーの解明の
  鍵となりうる研究報告を概説すると共に、発生源を巡る米中
  間の激しい対立について焦点を当てる。そもそも新型コロナ
  ウイルスの感染により肺炎を発症した患者が出た地域は中国
  湖北省に位置する武漢市であり、その時期は2019年12
  月であったことは周知のとおりである。当初、41人の感染
  者が肺炎を発症したとされるが、その中で27人が同市の華
  南海鮮市場との関係を疑われた。これを受け、同海鮮市場に
  おいて585に及ぶサンプルが採集されたが、そのうち33
  のサンプルから新型コロナウイルスが検出されたという。こ
  れにより、新型コロナウイルスは2003年に流行したSA
  RS(重症急性呼吸器症候群)の原因となったSARSコロ
  ナウイルスと極めて類似していることが明らかになった。と
  ころが、謎が残った。と言うのは、新型コロナウイルスを運
  んだのではないかと疑われたキクガシラコウモリが同海鮮市
  場で売買された事実はなかったからである。キクガシラコウ
  モリの生息地は、浙江省や雲南省であり、同海鮮市場から、
  900キロ・メートル以上離れている。コウモリが市場に飛
  んできた可能性は考え難かった。 https://bit.ly/3g56WXL
  ───────────────────────────

王延秩所長へのCGTNのインタビュー.jpg
王延秩所長へのCGTNのインタビュー

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2020年08月21日

●「コロナ発生源はWHCDCである」(EJ第5313号)

 昨日のEJでご紹介した中国政府によって消された論文──肖
波濤教授による「新型コロナウイルスで考えられる発生源」につ
いて、河添恵子氏と評論家の宮崎正弘氏の対談の動画をご紹介し
ます。ともに中国に詳しい2人の対談ですが、昨日のEJでご紹
介したことをさらに詳しく話しています。動画の収録時間は14
分11秒。視聴すると、詳しい事実を知ることができます。
─────────────────────────────
      ◎周政権が画策するコロナの脱中国化
          河添恵子氏/宮崎正弘/対談
            https://bit.ly/3iME6gz
            収録時間/14分11秒
─────────────────────────────
 情報を整理しておきます。肖波濤教授による論文──正確には
もう1人執筆者がいますが、この論文が訴えているのは、新型コ
ロナウイルスが何らかのミスによって外部に流出し、公表されて
いるよりも、はるかに多い感染者が発生し、それによる膨大な死
者が出ているということです。中国政府の公表する数字には多く
のウソがあり、額面通り受け取ることは困難です。
 問題は、ウイルスの発生源がこれまでEJが想定していたとこ
ろとは違うことです。これまで湖北省の武漢には、次の2つのウ
イルス研究所があるとして説明してきています。
─────────────────────────────
   1.中国科学院武漢病毒(ウイルス)研究所/武昌区
                 1958年7月に成立
   2.中国科学院武漢病毒(ウイルス)研究所/江夏区
                 2017年2月に成立
─────────────────────────────
 これら2つの研究所のうち「2」は、バイオ・セーフティ・レ
ベル4の実験室を有する「新しいラボ」であり、ここがウイルス
の発生源ではないかといわれてきたのです。しかし、肖波濤教授
が感染源として指摘しているのは、上記「1」と、もうこひとつ
別の場所だというのです。それが「3」です。
─────────────────────────────
   3.武漢市疾病予防管理センター(WHCDC)
─────────────────────────────
 添付ファイルに地図を付けています。3つの研究施設のある周
辺の地図です。地図の真ん中を貫いて流れる川は長江です。一番
最初の感染場所として中国政府がアナウンスしたのは、華南海鮮
卸売市場です。海鮮市場は長江の向こう側にあります。
 いわゆる武漢病毒(ウイルス)研究所といわれている「1」と
「2」の研究所は、長江の手前にあります。武昌区と江夏区のウ
イルス研究所です。このうち、新しいラボといわれている江夏区
の研究所は、華南海鮮卸売市場からは、長江を挟んで、約30キ
ロ以上離れています。東京を中心に30キロというと、柏市や所
沢市や町田市ということになり、相当の距離があります。
 しかし、「3」の武漢市疾病予防管理センター(WHCDC)
は、華南海鮮卸売市場はすぐ近くにあります。そして、このWH
CDCの周辺には、次の3つの医療機関があるのです。
─────────────────────────────
          1.武漢市中心病院
          2. 湖北航天医院
          3.   協和病院
─────────────────────────────
 武漢での感染の初期、これらの医院や病院で感染が広がり、医
療崩壊が起きていたのです。この間の事情について、河添恵子氏
は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 このリポートで実のところ、私が最も注目したのは、「武漢市
疾痛予防管理センター」が、医者らのグループが最初に感染した
協和医院に隣接している」という部分だった。
 協和医院は、2020年1月中旬以降、医療関係者が「1人の
肺炎患者を治療したところ14人の医療従事者が同時感染した」
「我々の多くが、感染しているはずだが、検査すらしてもらえな
い。我々は隔離ではなく、軟禁状態にある」などと、SNSで発
信した、早々から医療崩壊が起きWいることが、推測される病院
だった。CNNが報じた、2月に武漢肺炎で亡くなった李文亮眼
科医らの勤務先、武漢市中心医院も協和病院と近かった。もう一
つ、これら2つの病院とも比較的近いエリアにある湖北航天医院
の医師も、SNSを通じて早々から事情を訴えていた。(中略)
 旧ソ連のスヴェルドロフスクの例のように、研究所から何らか
の不具合で「空気中に漏れた」のであれば、「新しいラボ」では
なく、長江を隔てた対岸の武昌区にある中国科学院武漢ウイルス
研究所でもなく、肖教授の論文が存在を教えてくれた「動物を確
保し、病原体収集と識別を専門にしていた、武漢市疾病予防セン
ター」(WHCDC)かもしれない、と推測し直した。
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 この肖波濤教授のレポートに、中国当局はおそらく肝を冷やし
たものと思われます。ズバリ核心を衝いているからです。そのせ
いか、4月13日に、中国政府は、新型コロナウイルスに関する
学術論文は、今後出版前に、全てが政府当局の審査対象になるこ
とを通達しています。つまり、政府当局の承認がないと、出版で
きないようになったのです。その通達が上海の復旦大学のウェブ
サイトに出ていたのをCNNが発見し、大学に問い合わせたこと
から、数時間後にその記述はサイトから削除されています。都合
の悪いことは何でも隠すという中国の悪しき姿勢です。ますます
肖教授の指摘が正しいことを裏付けています。未確認情報ですが
肖波濤教授は現在行方不明になっています。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/057]

≪画像および関連情報≫
 ●失踪した中国人研究者の「消されたコロナ論文」衝撃の全訳
  を公開する
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの「出所」について、議論が渦巻いて
  いる。「中国の生物兵器だ」などとする説がネット上ではま
  ことしやかに流れる一方、中国政府は「米軍が中国へ持ち込
  んだのだ」と主張。さらに、そうした「新型コロナウイルス
  は人為的に生まれた」という論調を「陰謀説だ」として否定
  する向きもあり、世界中で感染が本格的に拡大する中、錯綜
  している状況だ。
   こうした最中、日本ではほとんど伝えられていないが、中
  国の研究者が書いた「消された論文」が海外メディアなどで
  話題となっている。そこには、中国に存在する「2つの研究
  所」が発生源として明記されていた――。
   この衝撃的な論文を発表したのは、広東省広州市にある華
  南理工大学・生物科学与工程学院肖波濤(シャオ・ボタオ)
  教授ら、生物学に通じる研究者。2020年2月6日、新型
  コロナウイルスの発生源について研究者向けサイト」に投稿
  したのである。
   この論文はその後、ほどなくして削除された。そして、肖
  教授らも消息を絶ってしまった。中国政府の情報操作や工作
  活動に通じる外事関係者が語る。「論文には、遺伝子レベル
  で新しいウイルスが開発されていたことを示唆する記述など
  があった。中国政府にとっては、とうてい看過できないもの
  だ。場合によっては、国民の暴動などにつながりかねないし
  国際的な非難も相当なものになるとみたからだ。論文の削除
  には中国政府がかかわっている可能性もある。肖教授らも、
  身柄を拘束されたとみられている」https://bit.ly/2DUS3KJ
  ───────────────────────────

武漢市の3つのウイルス研究所.jpg
武漢市の3つのウイルス研究所

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2020年08月24日

●「トランプはバイデンに勝てるのか」(EJ第5314号)

 米民主党全国大会は、オンラインで、8月18日から20日ま
で行なわれ、20日にはバイデン氏が、大統領候補指名受託演説
を行っています。その演説は、現政権を「闇」、自身を「光」に
たとえた次のような演説だったのです。
─────────────────────────────
 現在の米国大統領は、あまりにも長く米国を暗闇で覆い、多く
の怒りと恐怖と分断を生み出した。連帯すれば、暗闇を克服する
ことができる。現在の大統領は、この国を守るという最も基本的
な義務を果し損ねた。光は闇よりも強い。後世、米国の闇の終わ
りが、今夜ここから始まったと言えることを願う。
                  ──ジョー・バイデン氏
           2020年8月22日付、朝日新聞より
─────────────────────────────
 トランプかバイデンか──トランプ大統領は、確かに問題の多
い大統領であることは確かですが、日本にとっては、けっして悪
い大統領ではないのです。
 日本は、頭の痛い外交問題として、北朝鮮との拉致問題、中国
との尖閣諸島の領有権を巡る問題を抱えています。この両方の難
問について、オバマ政権のときはどうだったでしょうか。
 オバマ政権は、北朝鮮の問題に関しては「戦略的忍耐」と称し
て、北朝鮮に対しては放置を決め込んでいます。北朝鮮の首脳が
どれほど米国との交渉を望んでも、一切関与しない姿勢です。米
国の民主党政権は、一貫してそういう姿勢です。
 尖閣問題に関しては、日米安全保障問題の範囲内とは認めたも
のの、中国に対して甘い政策を取る民主党政権では、実際にコト
が起きたとき、本当に対処してくれるのか、きわめて疑問です。
そもそも中国をここまで増長させたのは、米国の民主党政権に責
任があります。民主党のクリントン政権のときに、中国のWTО
加盟を推奨したからです。
 しかし、トランプ政権では、どうでしょうか。
 確かに、ブッシュ大統領もオバマ大統領も、拉致被害者家族と
は会ってくれています。しかし、トランプ大統領は2017年に
米国で1回、2018年の国賓として来日時に、東京・元赤坂の
迎賓館で再度会っています。面会後の記者会見で、家族らは「ト
ランプ氏から勇気をもらった」と感謝の思いを語っています。
 それだけではないのです。会って励ますのは、誰でもできます
が、トランプ大統領は、金正恩委員長と2回も会談を行い、拉致
問題について金委員長に、直接言及してくれています。ここまで
やってくれた米国の大統領はトランプ氏だけです。
 それでは、尖閣諸島の問題ではどうでしょうか。
 トランプ政権は、何よりも中国に対して、きわめて厳しい対応
をとっています。普通なら、戦争になってもおかしくないほどの
厳しさです。貿易に関しても、技術窃盗に関しても、新型コロナ
ウイルス蔓延の責任に関しても、香港問題に関しても、南シナ海
の問題に関しても、厳しい態度をとっています。これは、尖閣問
題を抱える日本にとって心強い限りです。
 米国は尖閣諸島について、これまでそれが日米安保条約の範囲
内であることは認めています。しかし、連日のごとく尖閣諸島の
領海近くに侵入を繰り返す中国の公船の執拗な行為に関しては何
もいっていませんでした。しかし、7月21日に、エスパー米国
防長官は、次のように中国を名指しして非難しています。
─────────────────────────────
 中国は、東シナ海と南シナ海で攻撃的な行動を続けている。日
本の施政下にある尖閣諸島周辺海域で、侵入の回数と時間を増や
している。             ──エスパー米国防長官
             2020年7月22日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 これは、米国としては大変な踏み込みです。単に「東シナ海で
の攻撃的な行動」というだけでなく、「日本の施政下にある尖閣
諸島周辺海域で」と明確に尖閣諸島を名指しして、その侵入行為
を批判しているからです。
 日本にとって、米国の民主党政権は相性がよくないのです。こ
の点について、人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資ア
ナリストの大原浩氏は、次のように警告しています。
─────────────────────────────
 もちろん、香港、ウイグル、チベットなどの人権法案は、ほぼ
全会一致で可決されていることを考えれば、特に人権問題につい
ては民主党も厳しく中国共産党に接しているのは事実だ。しかし
米国民主党が「反日・媚中」であるのは歴史的伝統である。最も
象徴的なのが、民主党のクリントン大統領が1998年、日本に
立ち寄ることなく9日間にわたって中国に滞在したため、「ジャ
パン・パッシング」と非難された「事件」である。
 第二次世界大戦中に日系人を強制収容所に送ったのも民主党の
ルーズベルト大統領だ。同じ敵国だったドイツ系、イタリア系の
扱いと比べたら、明らかに有色人種の日本人を狙いうちにした人
種差別だ。戦後、88年にレーガン大統領、92年に、ブッシュ
(父)大統領が謝罪と賠償を行ったが、どちらも共和党だ。日本
人が決して忘れるべきではないのは、民主党のトルーマン大統領
が日本に原爆を投下させたことである。長崎と広島に違ったタイ
プの爆弾を落としたのは、効果を測定する「人体実験」と言われ
ても仕方がない。          https://bit.ly/34niVxJ
─────────────────────────────
 副大統領候補には、カマラ・ハリス上院議員が指名されました
が、そうなると、バイデン政権が誕生すると、スーザン・ライス
氏が国務長官になる可能性が出てきます。このスーザン・ライス
なる人物は、「中国に優しく、日本に厳しい」人物であり、かつ
て日本政府はその対応に苦慮した相手です。ということになると
日本としては、トランプ大統領にがんばってもらうしかないこと
になります。その可能性はどのくらいあるのでしょうか。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/058]

≪画像および関連情報≫
 ●バイデンは本当にトランプに勝てるのか?
  ───────────────────────────
   今回のテーマは、「民主党副大統領候補の長所と短所」で
  す。米国人男性の平均寿命は78・54歳(2017年)で
  す。民主党大統領候補を確実にしたジョー・バイデン前副大
  統領は、すでに77歳と7カ月です。大統領就任時は、78
  歳になっています。仮に大統領に就任しても、バイデン氏は
  1期で終わる可能性が高いといえます。ということは、バイ
  デン氏の副大統領候補は24年米大統領選挙の本命になる公
  算があります。そこで、本稿では民主党副大統領候補の長所
  と短所に焦点を当てます。
   16年米大統領選挙において、民主党の大統領候補ヒラリ
  ー・クリントン元国務長官は、南部バージニア州のティム・
  ケイン上院議員を副大統領候補に選びました。激戦州である
  バージニア州が勝敗の鍵を分けると判断したからでしょう。
  この読みは外れました。勝敗を左右したのは、中西部ミシガ
  ン州、ウィスコンシン州及び東部ペンシルべニア州でした。
  クリントン氏は、激戦州を基準に副大統領候補を選択したの
  です。一方、ドナルド・トランプ大統領は、中西部インディ
  アナ州マイク・ペンス知事(当時)を副大統領候補にしまし
  た。その主たる理由は、キリスト教福音派の票の獲得です。
  信仰心が薄いとみられているトランプ大統領は、福音派のペ
  ンス氏を指名して、自分の弱点を補いました。
                  https://bit.ly/32dXSei
  ───────────────────────────

バイデン氏とトランプ氏.jpg
バイデン氏とトランプ氏
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2020年08月25日

●/「トランプ氏勝利の予測も十分ある」(EJ第5315号)

 バイデン候補有利といわれる米国大統領選ですが、これに異を
唱える人が出てきています。国際エコノミストの今井澂氏は、次
のように、トランプ氏の再選を予測しています。
─────────────────────────────
 1.一般的な世論調査では、バイデン候補がトランプ大統領
   を6ポイント程度リードしているが、「投票する」と答
   えた有権者への調査では、逆に3〜5ポイント、トラン
   プ候補が優勢である。
 2.選挙資金の潤沢さ(トランプ氏2億5000万ドル、バ
   イデン氏6000万ドル)。選挙戦では、高額なTVス
   ポット広告ができ、もし攻撃されたら、直ちに反撃でき
   る。この差は大きい。
 3.中国叩き。米国民の67%は習近平体制に反感を持って
   おり、トランプ政権の反中政策は人気。一部の共和党の
   有名人はトランプ氏反対の表明をしているものの93%
   はトランプ氏の支持。     https://bit.ly/3hr3qbC
─────────────────────────────
 今回の大統領選のキーワードは「対中国政策」であるというの
です。トランプ大統領の中国叩きは、議会が支持していますが、
民主党政権になると、トランプ政権のようにはいかないことは目
に見えています。民主党は親中国です。
 したがって、トランプ陣営にとって、中国攻撃は、民主党を叩
くことにつながるのです。その責任は、8年間のオバマ政権の親
中国政策にあるといえるからです。
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、バイデン氏の
息子が、中国との間に持つ利権などについて、トランプ陣営は目
下調査しており、また、民主党幹部の中に、中国に利権を持つ人
物が複数浮上してきているといわれます。まだ、時間があるので
何が起きるか予断を許さないといえます。
 2020年4月22日に発表された米国人が対象の直近のピュ
ーリサーチの世論調査によると、中国に対する米国人の好感度は
大きく下っています。
─────────────────────────────
 ◎あなたは中国が好きですか、嫌いですか?
  嫌いです ・・・・・・・ 66%(前回44%)
  好きです ・・・・・・・ 26%
 ◎あなたは習近平が正しい方向の政治をしていると思いますか
  正しいとは思わない ・・ 71%(前回50%)
  正しいと思う ・・・・・ 22%
                ──宮崎正弘著/ハート出版
『WHAT NEXT/コロナ以後全予測/次に何が起こるか』
─────────────────────────────
 この調査は、2020年3月3日から29日にわたって行なわ
れたものですが、6月30日の香港国家安全維持法成立の後でこ
の調査をやれば、「中国が嫌いです」は90%以上に達していた
と思われます。米国の民主党は、この対中国政策に甘いし、それ
が大統領選の結果を大きく左右すると思われます。
 新型コロナウイルスの感染への国としての対応は、国のトップ
リーダーの資質を問うものですが、ウイルスの発生情報について
は、疑惑がたくさんあります。疑われるのは、ウイルスの発生源
に関する中国政府の情報隠蔽です。EJのリサーチによると、武
漢には、ウイルスを扱う研究所が3つもあるのです。そのような
研究所がなぜそんなにたくさん必要なのでしょうか。
 2020年2月28日のことです。ある著名な中国人がツイッ
ターで、次のような世論調査を行っています。
─────────────────────────────
  ◎新型コロナウイルスは、次のいずれだと思うか。
   @天然ウイルス/ 自然に感染 ・・・ 12%
   A天然ウイルス/  過失漏れ ・・・ 13%
   B人工ウイルス/  過失漏れ ・・・ 51%
   C人工ウイルス/悪意ある拡散 ・・・ 24%
                  ──河添恵子著/WAC
『習近平が隠蔽したコロナの正体/それは生物兵器だった!?』
─────────────────────────────
 この「ある著名な中国人」を河添恵子氏は、崔永元氏であると
特定しています。元中国中央電視台(CCTV)の有名なニュー
スキャスターであるというのです。中国のなかにあっても、こう
いう気鋭の人物はいるようです。
 それにしても、中国人自身が、新型コロナウイルスは、人工ウ
イルスであり、それが過失により、外部に漏洩したと考えている
人が51%もいるのは驚きです。これに対するコメントとして、
河添恵子氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 ニュースキャスターの世論調査で、私が迷わず選ぶのは、Bの
「人工ウイルス/過失漏れ」だが、実のところ脳裏では、Bから
始まり、Cの「人工ウイルス/悪意ある拡散」をして、パンデミ
ックへ向かったのではないかと考えた。あるいはCから始めたの
ではないかと。     ──河添恵子著/WACの前掲書より
─────────────────────────────
 「過失漏れ」は、肖波濤教授が論文で指摘した武漢の第3のウ
イルス研究所である「武漢市疾病予防管理センター」において起
こり、武漢市中心医院、湖北航天医院、協和病院に原因不明の肺
炎の患者が溢れ、感染が拡大したものと考えられます。これらの
医療施設のすぐ近くに華南海鮮卸売市場があります。
 この「過失漏れ」は、2019年のおそらく秋頃に起きたもの
と考えられます。そこで中国政府は、「武漢市疾病予防管理セン
ター」の存在を隠し、華南海鮮卸売市場を発生源としたものと考
えられます。このように考えると、すべて辻褄が合うのです。そ
して、中国は「悪意の拡散」をした可能性も考えられます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/059]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ支持率急上昇のなぜ/古森義久氏/3月25日
  ───────────────────────────
   アメリカのトランプ大統領の支持率が急上昇した。しかも
  同大統領のコロナウイルス感染の防止対策方法への支持60
  %という意外なほど高い水準を示し、これまで同大統領の防
  止策を批判してきた民主党側を当惑させている。
   アメリカのウイルス感染防止はまだ顕著な効果をあげてい
  ないのだが、ここへきてなぜトランプ支持が増えたのだろう
  か。3月24日のアメリカのメディアはいっせいに世論調査
  大手機関のギャロップ社が公表した最新の大統領支持に関す
  る調査結果を報道した。3月22日までの1週間の全米調査
  ではトランプ大統領への支持率が49%と、ギャロップ社が
  これまで3年余り実施してきた同大統領に関する世論調査で
  は最高レベルの数字を示した。3月前半の同じ調査では44
  %だったから、わずか2週間で、5ポイントの急上昇となっ
  た。同調査結果によると、トランプ大統領への支持率は共和
  党支持層では92%(前回は91%)、無党派層では43%
  (前回は35%)、民主党支持層では、13%(同7%)と
  なった。これらの数字は中間層と民主党支持層でのトランプ
  支持が顕著に増えたことを示した。アメリカのメディアがさ
  らに大きなニュースとして報じたのは、同じギャロップ社の
  調査でトランプ大統領のコロナウイルス対策への支持率が、
  60%という高水準を記録した点だった。
                  https://bit.ly/2YtXnM6
  ───────────────────────────

コロナに関するブリーフィング風景.jpg
コロナに関するブリーフィング風景
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2020年08月26日

●「コロナの感染を予言した米国小説」(EJ第5316号)

 新型コロナウイルスは「人工ウイルス」であり、過失により拡
散されたものである──元中国中央電視台の著名キャスター、崔
永元氏のツイッターによる中国人へのリサーチで、51%の中国
人がそう認めています。問題なのは、「人工ウイルス/悪意ある
拡散」と考えている人が、24%もいることです。
 河添恵子氏は、ウイルスは過失によって拡散したが、その後中
国政府が「悪意ある拡散」をし、パンデミックを引き起こしたと
推理しています。確かにこの考え方が、EJがここまで調べたこ
とと、奇妙に一致するのです。
 ところで、1981年に出版された次のスリラー小説が話題に
なっていることをご存知ですか。
─────────────────────────────
                ディーン・R・クーンツ著
     『闇の眼』(The Eyes of Darkness)/光文社文庫
─────────────────────────────
 この小説は1990年に光文社から再版され、内容の一部が変
更されています。さらに、今年の5月15日になって、復刊され
ています。なぜ、話題になっているのかというと、この小説には
「武漢─400(Wuhan-400)」 というウイルスが登場するから
です。光文社が5月15日に復刊したのはそれが理由です。今回
の「武漢ウイルス」とそっくりだからです。
 この小説について記述しているサイトでは、「武漢─400」
について、次のように書かれています。
─────────────────────────────
 『闇の眼』では、「武漢─400」人造ウイルスは、中国共産
党政府が反対者を絶滅させる用途に開発されたものとして表現さ
れている。ワクチンも治療薬もない、無数の政治犯の体で試験さ
れた「完璧な武器」と設定された。人がそのウイルスに接触する
と、僅か4時間で伝染性宿主になってしまう。
 武漢肺炎が中国で全面的に広まってからは、武漢ウイルス研究
所の研究用サンプルが漏洩したため、大流行になったと世論に疑
われている。このため、武漢市に位置する中国科学院武漢国家生
物安全実験室(すなわち、武漢BSL−4実験室、略称「P4実
験室」)が社会から注目を浴びている。
 この実験室は北京当局の秘密生物兵器計画と関係しているとい
う。該当ウイルスはAIDSのたんぱく質成分が人工により挿入
されたことを、あるインドの科学者により発見された。この発見
により、武漢肺炎が生物兵器であることを証明できるかのように
思われたが、論文が発表して僅か数日間で撤回された。
                  https://bit.ly/2CSPfgx
─────────────────────────────
 この小説について、河添恵子氏は興味ある事実を指摘していま
す。1981年のこの本の初版での舞台設定は、「ソ連・ゴーリ
キー研究所」だったのですが、1996年の改定版から、「中国
・武漢研究所」に変わっていることです。当時こういうことをや
りそうな国は中国しかないと考えたので、そういう設定にしたと
考えられます。
 これは、小説ですが、新型コロナウイルスが人工ウイルスであ
り、それが中国のウイルス研究所から過失で漏洩したとして、そ
の後中国政府が情報を隠蔽し、それが原因で全世界に感染が拡大
したとなると、全世界から中国政府に対して、とんでもない額の
賠償を請求する動きが相次ぐと思われます。
 実際にそういう動きは、既に起きています。米マイアミのパー
マン法律グループは、3月13日、「中国と湖北省、武漢市及び
複数の中国政府機関が、新型コロナウイルス発生の初期段階の処
理を誤った」とし、人身傷害や不当な死亡、財産の損害、その他
の損害を受けた人々に、数10億ドルの損害賠償を支払うように
求める連邦集団訴訟を起こしています。
 今後こういう動きが世界的に波及する可能性があり、中国政府
は、その動きを潰すためのプロパガンダを早速始めています。ま
ず、国家衛生健康委員会ハイレベル専門家グループの鐘南山グル
ープ長は、2月27日に次のようにアナウンスしています。鍾南
山氏は中国の感染症の権威です。米国への責任転換工作です。
─────────────────────────────
 肺炎の感染が始まったのは中国だが、発生源は必ずしも中国と
 は限らない。            ──鐘南山グループ長
─────────────────────────────
 中国政府は、こういう発言をSNSで拡散するのです。そのと
き、中国では使用を禁止しているツイッターを使うのです。ター
ゲットは中国以外の国ですから、その方が多くの人が見ることに
なるからです。
 3月12日に、中国外務省の趙立堅報道官が次のツイートを配
信しています。このツイートは、米国政府、議会内で次々にシェ
アされ、大きな波紋が広がったのです。
─────────────────────────────
 このウイルスはアメリカ軍が武漢に持ち込んだものかもしれな
い。透明性を!アメリカはわれわれに説明する必要がある!
                     ──趙立堅報道官
─────────────────────────────
 趙立堅報道官は「戦狼報道官」という異名で知られます。その
名の由来は、中国の大ヒット映画「戦狼」です。中国軍特殊部隊
の精鋭隊員がアメリカ人たちと戦う内容で中国版ランボーともい
われています。趙報道官のツイッター上での愛国的でアメリカに
攻撃的な発言が「我が中国を侵害する者は必ず討伐する」という
映画のメッセージと重なって見えるらしいのです。
 それにしてもこの報道官、いかにも憎々しげに各国記者の受け
応えをするので有名です。あまりテレビでニュースなど見ない人
でも、この報道官の顔は見たことがあると思います。しかし、世
界はプロパガンダなどには、騙されることはありません。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/060]

≪画像および関連情報≫
 ●【緊急復刊!】中国・武漢から恐怖のウイルスが――
  ───────────────────────────
  「現在のコロナウイルスの発生を予言していた小説がある」
  と、しばらく前からネット上で話題になっていたのが本書。
  中国・武漢の研究所から殺人ウイルスが持ち出されるという
  衝撃的な内容で、それがアメリカのベストセラー作家、ディ
  ーン・クーンツの『闇の眼』だった。
   原著は1981年に刊行され、日本では‘90年に光文社
  文庫で刊行されたが、その際には、ウイルスはソ連からアメ
  リカに持ち出されたことになっていた。しかし‘96年に、
  著者自身が内容を改訂し、“中国・武漢から持ち出されたウ
  イルス”という設定に変更された。今回の復刊にあたっては
  その改訂された原書をもとに、翻訳を全面的に修正した。
  【あらすじ】
   ティナ・エヴァンズはラスベガスの舞台プロデューサー。
  一年前に、ボーイスカウトのバス旅行に参加した一人息子の
  ダニーを、雪のシエラ山中での事故で亡くしていた。その死
  をいまだに信じられずにいたティナだったが、大きなショー
  を手掛け、その開演がまもなくというときに、身辺で次々と
  不可解な出来事が起きる。子供部屋が荒らされ、そこにあっ
  た黒板に「シンデハイナイ」とのなぐり書きが。さらに、オ
  フィスでのコンピューターの画面には「ココカラダシテ」の
  文字が浮かび上がった。ダニーは、生きているのか?弁護士
  のエリオットに相談し、ダニーの墓を掘り起こそうとした矢
  先に、二人は何者かに襲われる。ラスベガスから、シエラ山
  中へ向かう二人の前に、恐るべき陰謀が待ちかまえていた。
                  https://bit.ly/34q0dVY
  ───────────────────────────

趙立堅報道官(中国).jpg
趙立堅報道官(中国)
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2020年08月27日

●「ツイッターを情報戦に生かす中国」(EJ第5317号)

 周知のように中国国内では、ツイッターやフェイスブックは利
用できないようになっています。中国政府が使用することを認め
ていないからです。「金盾=グレート・ファイアウォール」と呼
ばれる中国のネット検閲システムで、ツイッターやフェイスブッ
クへのアクセスを遮断していて、接続はVPNなどを使用するし
かないのです。
 「金盾=グレートファイアーウォール」というのは、中国にお
けるネット検閲システムのことです。現在、中国ではこのように
インターネットの検閲システムが存在しており、国民に対して中
国共産党や政府にとって、都合の悪い情報を閲覧できないように
なっているのです。「金盾(きんじゅん)」というのは、グレー
トウォールすなわち、「万里の長城」をもじって、「グレート・
ファイアウォール(防火長城)」と呼ばれているのです。
 それにもかかわらず、中国政府は、2019年からツイッター
で自国の立場を海外に英語で宣伝する工作に本格的に乗り出した
のです。これは、ツイッターの国際社会への影響力と発信力に利
用価値を見い出し、有効な情報戦の武器になると判断したからで
す。そして何よりも、トランプ大統領がツイッターを頻繁に使っ
ていることも関係があります。
 ここに新型コロナウイルスに関する米国の国務省のオータガス
報道官と、中国外務省の華春瑩報道官とのツイッターのやり取り
があります。女性報道官同士の応酬です。
─────────────────────────────
◎華春瑩報道官の投稿
  中国は、1月3日以降、コロナウイルスについて、アメリカ
 に最新の状況を伝えてきた。今になって連絡が遅いと中国を責
 めるの?
◎オータガス報道官の投稿
  1月3日までに、中国政府はコロナウイルスの検体の破壊を
 命じ、武漢の医師たちの口を封じ、ネット上の検閲を終わらせ
 たからね。時間と行動を国際社会が調査しなければならない。
◎華春瑩報道官の投稿
  あなた知らないかもしれないけど、武漢の保健当局は、12
 月31日に通知文を出したのよ。時間をとって状況を理解して
 から、つぶやいてください。    https://bit.ly/3gl1sIB
─────────────────────────────
 新聞やテレビを見ているだけでは知る由もありませんが、ツイ
ッターでこういうやり取りが行われているのです。例えば、趙立
堅報道官が中国にとって都合の良い内容のツイートを発信したと
します。そうすると、各国の中国大使館がそれをリツィートし、
世界各地に中国のメッセージを拡散するのです。
 趙立堅報道官のフォロワーは56万人、華春瑩報道官のそれは
34万人です。それを各国の大使館やその関係者がリツィートす
るので、その影響力はバカにできません。中国の外交官や国営メ
ディアを情報戦の「表の兵士」とするならば、情報拡散専門の分
子のような「裏の兵士」も存在するのです。表の兵士と裏の兵士
が力を合わせると、ウソの情報も何回も流すことによって、本当
の情報に見えてしまうものです。
 中国版ツイッターである「微信/ウエイシン」で検索すると、
次のようなツイートを見ることがあります。産経新聞、台北支局
長矢板明夫氏の情報です。
─────────────────────────────
◎ソ連のレニングラードで、ある医師が自分の勤務する病院の劣
 悪な医療環境に対する不満を知人に漏らしたため、厳重注意を
 受けた。
◎自国の医療物資が足りないのに、ソ連は多くの外国に支援をし
 ている。
─────────────────────────────
 一見すると、何のことか意味不明です。旧ソ連で起きた昔話に
ついて書いているようにみえますが、これは、現在中国で起きて
いることを書いています。この場合、ソ連は「中国」、レニング
ラードは「上海」の隠語なのです。
 しかし、こうした隠語を使っての「微信」のツィート交換も今
年の3月から困難になると思われます。矢板明夫産経新聞台北支
局は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 以前からネット規制が厳しい中国で、今年3月1日から、史上
最も厳しいインターネットの書き込み規制「ネット情報コンテン
ツ環境管理規定」が施行され、経済や社会の秩序を乱す情報の徹
底的な取り締まりが始まっている。「ネットコンテンツの制作者
は国益を損なつてはならない」との規定を盛り込み、中国政府や
共産党の功績を否定する内容をはじめ、重大な自然災害や事故に
関する「正しくない情報」や「ふさわしくない評論」を全面的に
禁止した。違反者には、罰金や最大15日間の拘束のほか、重大
な結果をもたらした場合は起訴もあり得る。新規定は、武漢発の
新型コロナウイルスを意識して作られたといわれている。
      ──矢板明夫著/「中国発表の数字は全部嘘だ!」
               『Haneda』/2020年6月号
─────────────────────────────
 もし、この「ネット情報コンテンツ環境管理規定」に違反する
と、「微信」の個人アカウントが閉鎖され、使えなくなってしま
うのです。現在、「微信」の利用者は10億人を超えており、中
国人の生活の一部になっています。したがって、これが利用でき
なくなると、仕事や人間関係などに重要な影響が出てしまうので
本当のことを普通に発信できなくなっているのです。
 中国がこれほど厳しく情報を規制しているとすると、コロナ関
連の数字──感染者数、死亡者数などは、果して本当の数字なの
でしょうか。上記の矢板支局長のレポートを基にして、コロナ関
連数字を検証してみたいと思います。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/061]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の発表は信用できる?新型ウイルスの「死者はゼロ」
  ───────────────────────────
   中国は4月7日、新型コロナウイルスによる死者が、過去
  24時間で初めてゼロになったと発表した。しかしこの集計
  と、それをまとめる中国当局は、どこまで信用できるのだろ
  うか。BBCのロビン・ブラント記者が解説する。
   中国当局はここ数カ月間、毎日午前3時に国内の新型ウイ
  ルス感染に関する最新状況を発表している。7日の発表では
  感染者8万1740人、死者3331人とした。
   中国の新型ウイルス対策については、世界保健機関(WH
  O)が称賛している。その一方で、同国の発表には疑いの目
  も向けられている。イギリスのマイケル・ゴーヴ内閣府担当
  閣外相は先週、「中国の発表の一部は、新型ウイルスの規模
  や性質、感染力について明確ではなかった」とBBCに述べ
  た。アメリカのドナルド・トランプ大統領も先週、中国の死
  者数と感染者数について、「やや少なめではないか」と評し
  た。アメリカでは議員らも、中国は流行の規模について過小
  報告しているとしばらく前から批判している。
   中国の発表に対する疑念の背景には同国のデータの扱いに
  関する歴史と透明性の欠如がある。中国が発表する統計は評
  判が悪い。国の成長の指標となる経済関連の数値は特にそう
  だ。中国の国内総生産(GDP)の四半期ごとのデータは、
  現実を正確に反映したものではなく大まかな方向を示すもの
  と受け止められている。     https://bbc.in/2YvxJX9
  ───────────────────────────

中国と米国の女性報道官.jpg
中国と米国の女性報道官 
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2020年08月28日

●「中国のコロナ関連数値は正しいか」(EJ第5318号)

 現在、世界に新型コロナウイルスの感染者はどのくらいいるで
しょうか。6月16日現在の数字は次の通りです。集計は何種類
かありますが、これは、米ジョンズ・ホプキンス大学の集計を基
にしたデータです。
─────────────────────────────
                感染者       死者
  1位:  米国 211万4026人 11万6127人
  2位:ブラジル  88万8271人  4万3959人
  3位: ロシア  54万4725人    7274人
  4位: インド  34万3091人    9900人
  5位:  英国  29万8315人  4万1821人
  6位:スペイン  24万4109人  2万7136人
  7位:イタリア  23万7290人  3万4371人
  8位: イラン  18万9876人    8950人
  9位: ドイツ  18万8213人    8814人
 10位: トルコ  17万9831人    4825人
 11位:フランス  15万7372人  2万9436人
 12位: カナダ  10万0763人    8228人
 13位:  中国   8万3221人    4634人
       日本   1万7639人     938人
      ──米ジョンズ・ホプキンス大学の集計に基づく
─────────────────────────────
 ここで注目すべきは中国の数字です。中国は新型コロナウイル
スの感染発祥国てす。それにしては少な過ぎると思いませんか。
中国の感染者が8万人を超えたのは、3月2日のことです。それ
から3ヶ月以上経過した6月16日の数字が8万3221人とい
うのは、信じられないほど少ない数字です。中国全土で1日平均
30人前後の感染者しか出なかった計算になるからです。そんな
に少ないはずはないのです。
 中国という国は、共産党を守るためなら数字の誤魔化しぐらい
平気で行なう国です。中国当局の発表する数字を時系列で分析す
ると、習近平国家主席が新型コロナウイルス関連の防疫に関して
講話を行うと、新規感染者が劇的に減ったりするのです。そのた
め、中国では次のようなことがいわれています。
─────────────────────────────
 コロナウイルスはみんな共産党に入党しているのではないか。
総書記のいうことを素直に聞いている。
      ──矢板明夫著/「中国発表の数字は全部嘘だ!」
               『Haneda』/2020年6月号
─────────────────────────────
 産経新聞台北支局長の矢板明夫氏によると、武漢の死者数は過
少評価されているのではないかとして、その証拠について次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 たとえば、武漢市では、3月23日から4月4日まで、遺族へ
の遺骨の引き渡しが行われたが、この間、市内のこの間、市内の
計8つの葬儀場は毎日、約4千人分の遺骨を処理した、と中国メ
ディアが伝えている。
 単純計算で期間中、合計5万2千人分の遺骨が遺族に返された
ことになるが、実際に返された遺骨はそのごく一部に過ぎない。
武漢市が封鎖されている2ヶ月半の間、各地域の葬儀場から遺体
を処理する応援チームが数多く武漢に派遣されており、彼らが処
理した分は含まれていないのだ。一家全員が亡くなり、遺骨の引
き取り手がないケースも多いという。
 4月8日の封鎖解除後に武漢市に入った中国人記者の試算によ
れば、閉鎖当時、約900万人が残った武漢市で、2・5ヶ月で
ウイルス以外の自然死亡者数は約1万人強、返された遺骨が5万
2千人分なら、少なくとも約4万人が武漢ウイルスで死亡した計
算になるという。武漢市だけで、中国当局が発表した3千300
人あまり10倍をはるかに超えている。
               ──矢板明夫著の前掲論文より
─────────────────────────────
 矢板明夫台北支局長は、中国国内における携帯電話の解約数に
注目しています。新型コロナウイルスが、中国で猛威を振るった
2020年1月と2月に、中国大手携帯電話会社3社で1450
万件が解約されているといいます。2ヶ月の解約数としては、異
常に多い数字です。このなかには新型コロナウイルスで亡くなっ
た人の数も少なからず入っているのではないかというのです。
 中国に限らず共産主義政権は、国家にとってマイナスな情報は
隠蔽するのが常識になっています。こんな話があります。200
3年にSARSが発生したときの話です。このときは胡錦濤政権
がスタートしたばかりのときのことで、共産党内で改革派の勢力
が強くなり、国際社会における中国の評価をとくに気にしていた
時代だったのです。
 WHOもきちんと機能しており、SARS蔓延直後に北京に調
査団を派遣し、北京市内で軍が直営するいくつかの病院の調査に
入っています。しかし、病院側はWHOの調査団が病院に到着す
る前に、SARSの患者を隠すため、患者を救急車に乗せて、市
内を走り回っていたというのです。しかし、このことが後で外国
メディアにバレて、胡錦濤首席の面子が丸つぶれになるというこ
とがあったのです。胡錦濤首席は、激怒し、北京市長と衛生相を
更迭したといいます。
 今回もWHOの調査団が派遣されたのか、されていないのか、
今になってもはっきりしませんが、ウイルスが発生した中国が主
張する華南海鮮卸売市場は、閉鎖、解体され、WHOは現場を見
ていないはずです。それなのにテドロス事務局長は、中国の処置
を絶賛し、結果としてパンデミックを引き起こしてしまったので
すから、その責任は重大です。このように、中国が発表するデー
タは、信用するに値しないのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/062]

≪画像および関連情報≫
 ●「中国のウソ」を葬るため、日本はコロナに絶対に負けられ
  ない理由
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を巡って、中国政
  府が自らの正当性を誇示するために欧米の対応の甘さについ
  て批判を強めている。世界中が新型肺炎対策に追われて弱っ
  ているときに、「中国=権威主義が正しい」としつこく言わ
  れ続けたら、それを信じる人が増えてしまうかもしれない。
  そこで注目すべきは、中国のような強権的手法を用いずに、
  コロナの感染者・死亡者数を抑え込んでいる日本だろう。欧
  米が崩れつつある今、日本は自由民主主義陣営の最後のとり
  でとなっているのかもしれない。(立命館大学政策科学部教
  授/上久保誠人)
   中国国家衛生健康委員会は3月19日、武漢市・湖北省を
  含めて18日に中国国内で発生した新規感染例が「ゼロ」だ
  ったと発表した。新型肺炎は、中国・湖北省武漢市で発生し
  て拡散。19日時点での中国国内の累計感染者数は8万09
  28人。死亡者は3245人に達していた(『新型コロナウ
  イルス、現在の感染者・死者数(19日午後8時時点)』/
  AFP)。だが、国内での新型肺炎の拡散は終息したと、事
  実上宣言したのだ。一方、新型肺炎は欧州や米国に猛烈な勢
  いで拡散している。NHKがまとめた「感染者多い国や地域
  (23日午前2時)新型コロナウイルス」によると、イタリ
  アでは、感染者が5万9138人、死者が中国を上回る54
  76人に達し、致死率が9%超と完全な「医療崩壊」を起こ
  した。             https://bit.ly/2QpRQS9
  ───────────────────────────

新型コロナウイルスは共産党に入党?.jpg
新型コロナウイルスは共産党に入党?
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2020年08月31日

●「新型コロナはやっかいなウイルス」(EJ第5319号)

 「安倍首相/突然の辞意表明」──安倍内閣はコロナ禍によっ
て崩壊したようなものということができます。なぜなら、安倍首
相の持病である潰瘍性大腸炎という難病にとって最大の敵は過度
のストレスです。総理大臣という仕事自体がストレスのかかる仕
事であり、それにコロナ禍が加わったことにより持病が悪化した
と考えられるからです。
 実際安倍内閣のコロナ対応はさんざんであったことは確かであ
るといえます。低収入世帯への30万円給付から全世帯10万円
給付への変更、アベノマスクの不人気、緊急事態宣言発出の遅れ
など、感染者数、死者数などはけっして国際的に見て悪くはない
のに、国民の安倍内閣への評価は低迷したのです。
 それに加えて、桜を見る会の私物化、森友問題、河井克行前法
相、妻の案里参院議員による大型買収問題、官邸が特定の検察官
の人事権を握る検察庁法改正案をめぐるトラブルなど、頭の痛い
ことが続発していたのです。その結果、全体としては、物凄いス
トレスがそれに加わったものと考えられます。
 実際この新型コロナウイルスは、実にやっかいなウイルスであ
ると思います。特徴を上げてみます。
─────────────────────────────
     1.感染しても無症状の人間のほうが多い
     2.無症状の感染者からも他人へ感染する
     3.多くの臓器にも侵入することができる
     4.自然変異の速度が早く正体が掴めない
     5.集団免疫ができず、再感染の可能性大
─────────────────────────────
 このように新型コロナウイルスは、掴まえどころのないウイル
スであり、生物兵器として理想的な特性を持っています。台湾の
医師で評論家の林建良氏は、このウイルスについて次のように論
評しています。同氏は、1987年に日本交流協会奨学生として
来日し、94年、東京大学大学院医系研究科博士課程を修了して
います。2007年に林一洋医師記念賞を受賞するなど、数々の
賞を受賞していますし、メールマガジン「台湾の声」編集長を務
めています。なお、文中の閣麗夢氏は、香港大学公共衛生学院の
ウイルスの専門家で、香港から米国に亡命した人物です。
─────────────────────────────
 事ほど左様に、このウイルスは生物兵器として「都合がよすぎ
る」のです。武漢コロナウイルスの遺伝子配列の4ヶ所がエイズ
ウイルスと同じになることは自然に起こる現象とは考えにくく、
人工である可能性が高い。閣麗夢も、今年7月29日にスティー
ブ・バノンのテレビ番組「WAR ROOM」に出演し、「武漢
コロナウイルスは、人民解放軍の実験室で保管されている舟山蝙
蝠から採取したコロナウイルスを加工して作ったものだ」と証言
しています。       ──『月刊Haneda』/10月秋桜号
─────────────────────────────
 林建良氏は、「どう考えても、武漢コロナウイルスは習近平に
都合が良すぎる」というのです。だから、人工ウイルスであると
いいます。そして、中国政府は数々のきわめて肝心なことを隠し
ています。だから、米国は怒っているのです。
 何を隠しているのかというと、「第一号患者は誰か」を特定し
ていないことです。第一号患者を特定し、感染ルートを追跡する
ことは、ウイルスの発生源の特定にもつながるので、疫学調査の
基本です。中国の場合、特定できていないのではなく、特定はし
たが公表していないのです。日本では武漢に滞在していた神奈川
県在住の30代の男性が第1号患者とわかっています。
 新型コロナウイルスには謎が多過ぎるのです。蝙蝠から人に感
染したといいますが、これまでの研究によると、蝙蝠から人間に
直接感染した事例はゼロです。鳥や豚のインフルエンザは人に感
染しますが、それは鳥や豚が人間とよく接触している家畜である
からです。しかし、蝙蝠はそれとは違い、人間に感染するには、
中間宿主が必要ですが、それがわかっていないのです。
 仮に感染するとしても、11月〜12月は蝙蝠は冬眠中であり
感染のしようがないのです。しかも、その蝙蝠の生息地は雲南省
であり、武漢から1000キロも離れているので、物理的に感染
しようがないといえます。
 それに中国政府はもっとも肝心なことを隠蔽しています。20
19年の時点では、中国政府は「人から人への感染は確認されて
いない」といっていたのですが、それは情報を隠蔽したことが明
らかになったのです。これについて、林建良氏は次のように述べ
ています。
─────────────────────────────
 1月20日になって中国政府の専門家チームのトップが「人か
ら人に感染していることは間違いない」と発表しましたが、人か
ら人への感染への可能性は、2019年11月17日の段階です
でに判明していたことが、2020年3月13日の英字紙サウス
チャイナ・モーニング・ポストで明らかになりました。
 バイオセーフティレベル3(P3)の実験施設を持つ、上海の
復旦大学附属上海公共衛生臨床センターの張永振教授の研究チー
ムが、武漢コロナウイルスに感染した海鮮市場の従業員を調べて
いました。1月5日に、ウイルスのゲノム配列の解読に成功し、
同日に中国国家衛生健康委員会に報告しています。
 この時点で「SARSに類似する未知のウイルスで、呼吸器経
由で、伝播する可能性が高い」と人から人への感染のこ可能性を
指摘し、感染拡大の防止措置を講ずるよう提言していたのです。
             ──『月刊Haneda』/10月秋桜号
─────────────────────────────
 人の命がかかっている重要な情報です。なぜ、中国はそういう
情報を隠蔽するのでしょうか。しかし、どうしてこのウイルスは
人に感染するようになったのでしょうか。蝙蝠から人には直接感
染しないはずだからです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/063]

≪画像および関連情報≫
 ●「コウモリ」はなぜ「ウイルスの貯水池」なのか
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルス(SARS−CoV−2)感染症(C
  OVID−19、以下、新型コロナ感染症)が世界中で猛威
  をふるっているが、このウイルスはSARS(重症急性呼吸
  器症候群)と同じ人獣共通感染症だ。こうしたウイルスの自
  然宿主(最初にウイルスにかかった生物)はコウモリとされ
  ているが、なぜコウモリ起源のウイルスがこんなに多いのだ
  ろうか。
   人獣共通感染症はヒトの感染症の60%以上を占める。世
  界で毎年約10億人が病気になり、数百万人が死ぬ病気だ。
  人獣共通感染症では、野生生物を自然宿主にしていた病原体
  (ウイルス)が、家畜などの脊椎動物や昆虫などの無脊椎動
  物を経由し、あるいは直接にヒトへ感染して広がっていく。
  ウシから天然痘や結核、ブタやアヒルからインフルエンザ、
  ヒツジやヤギから炭疽症、ネズミ(齧歯類)からペスト、主
  にイヌ(ネコやコウモリなども)から狂犬病といった人獣共
  通感染症があるが、サル免疫不全ウイルス(SIV)が変異
  してヒトに感染してヒト免疫不全ウイルスになったようにヒ
  トと野生生物の接触によって感染が広がることも多い。
   自然宿主にはコウモリが多く、コウモリの次は霊長類、齧
  歯類の順になるようだ。また、世界で新たな人獣共通感染症
  が発生するリスクの高い地域としては、コウモリはアジアの
  一部と中南米で多く、霊長類は中米、アフリカ、東南アジア
  に集中し、齧歯類は北米、南米、中央アフリカの一部と予測
  されている。          https://bit.ly/31AYlYG
  ───────────────────────────

蝙蝠は直接人には感染しない.jpg
蝙蝠は直接人には感染しない.
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2020年09月01日

●「新型コロナは人工的なものである」(EJ第5320号)

新型コロナウイルスの感染で世界中が混乱していますが、なぜ
か、中国は素早くウイルスの処理をして、経済回復に力を入れて
います。ウイルスの発生源の国としてはきわめて不自然です。そ
のため、新型コロナウイルスが人工的なものではないかという説
がなかなか消えないのです。
 それから米中対立、トランプ大統領が自身の選挙のために、あ
えて中国をあおっているというか、強調しているように見えます
が、米国は中国のやっていることを実際には正確に把握していて
そのうえで中国をデカップリングしようとしているのです。
 新型コロナウイルスが人工的なものであるという根拠は、例の
石生麗氏の論文にあります。その論文は、2015年に国際医学
誌に掲載された次の論文です。
─────────────────────────────
          石生麗編/2015年11月9日
      「人畜共通ウイルスの起源としての蝙蝠」
   ──国際医学誌「ネイチャー・メディシン」所載
─────────────────────────────
 この論文にどういうことが書かれているのかというと、簡単に
いうと、蝙蝠のSARSウイルスの遺伝子を組み替えて、新しい
キメラを作ったという内容です。キメラというのは、同一の個体
内に異なる遺伝情報を持つ細胞が混じっている状態や、そのよう
な状態の個体のことをいいます。
 これについて、台湾出身の既出の医師で評論家の林建良氏は次
のように説明しています。
─────────────────────────────
 蝙蝠のSARSウイルスにはSスパイクという蛋白質の突起物
があるのですが、本来は人間の気管支にあるACE2受容体とは
結合できません。そのため、ウイルスは蝙蝠から人には直接感染
しないのです。しかし、石生麗は、このウイルスのSスパイクを
組み換えて、ACE2に結合できるようにした。すなわち、蝙蝠
のSARSウイルスを人に感染できるようにしたのです。
        ──林建良氏/『月刊Haneda』/10月秋桜号
─────────────────────────────
 石生麗氏によるSARSウイルスの改良の結果、ウイルスがエ
イズウイルスと非常に似てきたのです。具体的にいうと、ウイル
スの4つの部分が、エイズウイルスと同じ遺伝子配列になってし
まったのです。自然変異では、このような配列になることは到底
考えられないことです。
 林建良氏によると、人間にはウイルスが体内に入ると、CD4
細胞が抗体を作って免疫機能を持つ仕組みになっているのですが
エイズウイルスは、人間の体内に入ると、そのCD4細胞を攻撃
して、免疫機能を失わせてしまうのです。石生麗氏の改良したウ
イルスは、その恐ろしい攻撃機能を持ったことになるということ
です。これは、新型コロナウイルスも有している特性であり、遺
伝子配列であるということです。
 1月26日のことですが、北京の衛生健康委員会は「抗HIV
薬」が新型コロナウイルスによる肺炎の臨床治療に効くことを発
表しています。これは驚きの発表です。エイズウイルスと新型コ
ロナウイルスによる肺炎──私はこのニュースを新聞で読んだと
き、なぜ、エイズの薬が新型コロナウイルス肺炎に効くのか疑問
に思ったものです。
 どうして中国は、この段階で、新型コロナウイルスによる肺炎
にエイズの薬が効くということを知ったのでしょうか。それは、
最初から新型コロナウイルスとエイズウイルスがよく似ているこ
とを知っていたとしか考えられないのです。
 この問題と関連するもう一つの情報があります。2020年7
月15日付の日本経済新聞に次の記事が出たのです。
─────────────────────────────
 ◎中国ワクチン開発、軍が支援/新興カンシノはや供給許可
                  コロナ治療、カナダと
 【大連=渡辺伸】中国の新興製薬企業、康希諾生物(カンシノ
・バイオロジクス、天津市)が新型コロナワクチン開発を急いで
いる。第1段階の臨床試験(治験)では世界で初めてヒトで効果
を確認した。軍の強力な支援と海外製薬から学んだ技術が背景に
ある。米欧との開発競争が過熱するなか、有効性や安全性の担保
が課題となる。「中国人民解放軍にコロナワクチンを供給する許
可を獲得した」。カンシノは6月末、こう発表した。許可を出し
たのは軍を掌握する中央軍事委員会だ。実用化のめどが立ってい
ない開発途中の段階にもかかわらず、軍が「採用」した形だ。
         ──2020年7月15日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 添付ファイルに、この新聞記事に付けられていた写真を示して
おきます。林建良氏は、この写真を拡大してみたところ、「20
20・02・26」という数字が書かれていることを発見してい
ます。この日がこのワクチンが製造された日なのです。
 ワクチンの製造というものは、どんなにスピードでやっても最
低6ヶ月かかります。なぜなら、ワクチンは、ウイルスを分析し
何が効くのかを考察し、数次にわたる動物実験のすえ、人体実験
を経て、ようやく使えるようになるからです。
 もし、このワクチンの製造日が2020年2月26日だとする
と、遅くても、2019年8月下旬にはスタートしなければ間に
合わないことになります。つまり、その時点で、中国は、新型コ
ロナウイルスの存在を把握していたことになります。そうである
とすると、中国がウイルスの存在に気が付いたのは、2019年
12月末日ではなく、2019年の秋だったのではないかという
ことになります。
 中国は、この新型コロナウイルスの存在をかなり早くから把握
していたことになります。既に中国共産党の要人分のワクチンは
存在しているという説もあります。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/064]

≪画像および関連情報≫
 ●「新型コロナは中国の人工ウイルス」と信じる人が後を絶
  たない理由/ノンフィクションライター/窪田順生氏
  ───────────────────────────
   4月21日、世界保健機関(WHO)の報道官は、新型コ
  ロナウイルスについてこのような考えを示した。「研究所な
  どで人為的に操作や作成されたものではなく、動物が起源で
  あることをあらゆる根拠が示している」
   この発言は、トランプ大統領が声高に主張し、米メディア
  も盛んに報じる「武漢ウイルス研究所の安全性に問題があっ
  て、そこから“0号患者”が出たのではないか」という疑惑
  の火消しを意識したものであることは明らかだ。
   アメリカの世論調査会社が今月行った調査では、23%の
  人がウィルスが「意図的に作られた」と回答。「偶然に作ら
  れた」と答えた6%を合わせると、29%が「人工ウイルス
  説」を信じている。年齢別で見ると、18〜29歳が35%
  と高くなっており、ネットやSNSで情報を入手している若
  い人たちの間で、この説が広まっていることがうかがえる。
   1500株以上のウイルスを保管する、このアジア最大規
  模の研究施設に疑惑の目を向けているのは、なにもアメリカ
  人だけではない。例えば、今月16日には、エイズウイルス
  の発見によって2008年にノーベル生理学賞・医学賞を受
  賞したフランスのリュック・モンタニエ氏も、「武漢ウイル
  ス研究所起源説」に言及。コウモリ由来のコロナウイルスで
  エイズワクチンの開発を進めていた中で、何らかのアクシデ
  ントで施設外に漏れてしまったという考えを示している。
                  https://bit.ly/3b8J0Su
  ───────────────────────────

中国の製薬会社カンシノ開発中の新型コロナのワクチン.jpg
中国の製薬会社カンシノ開発中の新型コロナのワクチン
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2020年09月02日

●「世界軍人運動会で何があったのか」(EJ第5321号)

 2019年秋に何かがあったのです。2020年2月26日に
完成したとされる新型コロナウイルス用の中国ワクチン。その開
発着手時期を探ると、2019年秋になります。2019年秋に
何があったのでしょうか。
 国際政治学者、藤井厳喜氏によると、2019年9月18日に
中国は、武漢において、今から思うと、不思議な軍事演習を行っ
ています。9月26日付の胡北日報は次のように伝えています。
─────────────────────────────
 9月18日、武漢税関連合軍運動会事務局が武漢の漢天河空港
で「国の安全を守り、軍運動会の平和を守る」をテーマとした応
急処置演習を行なった。演習は実戦形式を用い、旅客用通路で1
つの基準値を超えた放射線を帯びた荷物が見つかったという設定
と、空港の出入国審査の通路で新型コロナウイルスが発見された
という設定で行なわれた。演習は流行病に関する医学的な徹底的
な調査、臨時検疫区の設置、隔離検査、患者搬送と衛生処理など
多岐にわたった。 ──2019年9月26日付、「胡北日報」
      ──藤井厳喜著『米中最終決戦/アメリカは中国を
               世界から追放する』/徳間書店
─────────────────────────────
 記事文中に「武漢税関連合軍運動会」という言葉がありますが
これは「世界軍人運動会」のことで、2019年10月18日〜
27日まで武漢で開催されています。記事は、この軍人運動会の
安全を守るため、行なわれた軍事演習のことであり、これについ
ては後述します。その軍事演習は、次の2種類があります。
─────────────────────────────
       1.   核テロに対する演習
       2.ウイルステロに対する演習
─────────────────────────────
 「1」に関しては、空港の旅客用通路で、基準値をオーバーし
ている放射能を帯びた荷物が見つかったという想定に基づく演習
であり、「2」に関しては、空港の出入国審査の通路で、新型コ
ロナウイルスが発見されたという想定での演習です。
 「1」の演習は理解できるものの、「2」、すなわち、新型コ
ロナウイルス発生に対する演習を、なぜ、この時期に実施したの
でしょうか。これについては、藤井厳喜氏の本に詳しい説明があ
ります。
─────────────────────────────
 2003年のSARS鎮静化後も、チャイナがSARSウイル
スの研究を続けており、ウイルス株が漏れて集団感染が起きた事
件が記録されている。2003年4月16日には、新型のSAR
Sコロナウイルスが特定されたが、その後、幸いなことに7月5
日に終息宣言が出されている。
 しかしその後、2003年9月にシンガポール、12月に台湾
でSARSウイルスに関する実験室内の感染が報告された。さら
に2004年1月に入り、広東省において3例の市中感染が疑わ
れる症例が発生している。
 さらに2004年4月に北京および安徽省において、実験室内
感染と思われる事件をキッカケに合計9例(うち死亡1例)の患
者発生が確認された。これは、チャイナが国内においてSARS
ウイルス株を使った実験を繰り返していた証拠となる。
 また、コウモリの体内のウイルスを利用する研究が継続されて
おり、このウイルスからSARSの強化型ウイルス兵器が開発中
であったという研究レポートがチャイナ国内で堂々と公刊されて
いる。             ──藤井厳喜著の前掲書より
─────────────────────────────
 それでは、世界軍人運動会とは何でしょうか。
 世界軍人運動会は国際軍事体育理事会(CISM)が主催する
世界の軍人にとって最も格式の高い大型総合性運動会で、4年毎
に開催されています。中国での開催は、2019年がはじめての
ことです。140ヶ国が参加していますが、日本、英国、オース
トラリア、ニュージーランドは欠席しています。
 新型コロナウイルスによるパンデミックに関する責任を厳しく
追及するトランプ米政権に対して、中国共産党は、この世界軍人
運動会において米軍兵士がウイルスをバラ撒いたというデマを流
していますが、中国がこの世界軍人運動会の参加者にウイルスを
感染させて、世界に広めたという疑いもあるのです。
 このように考えていくと、「新型コロナウイルスは人工的に創
られたものある」という疑いが非常に濃くなってきます。決定的
なものは、2020年4月16日にある番組で「コロナウイルス
はエイズウイルスから出たものではないか」との質問に対するフ
ランスのリュック・モンタニエ教授の次のメッセージです。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルスは、武漢にあるウイルス研究所から事故で
漏洩してたもので、人工的に創られたウイルスだ。HIV配列を
ゲノムに挿入するには、分子工具を使用しなければならず、患者
が出来ることではない。実験室の人間のやったことだ。感染市場
のウイルス発生説は「耳触りのよい伝説」でしかない。
               ──リュック・モンタニエ教授
                ──藤井厳喜著の前掲書より
─────────────────────────────
 これについては8月4日のEJ第5301号でも言及していま
すが、モンタニエ教授は、エイズウイルスの発見者であり、その
業績で2008年にノーベル医学生理学賞を受賞した権威です。
モンタニエ教授の研究には、数学者ジャン・クロードベレズ氏も
参加しており、ベレズ氏も「これは時計職人が行うような精密な
もので、自然に存在することはあり得ない」と断じています。
 これほどの専門家が断定しているのです。新型コロナウイルス
が人工物であることはもはや明らかです。中国は重要なことを隠
蔽していることは確かです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/065]

≪画像および関連情報≫
 ●「米軍ウイルス持ち込み」の根拠は?新型コロナウイルス
  感染源めぐる米中舌戦/共同通信/岡田充氏
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルス「COVID−19」の発生源をめぐ
  る米中「舌戦」が止まらない。トランプ米大統領や高官が、
  「チャイニーズ・ウイルス」「武漢ウイルス」と呼ぶと、中
  国外務省高官は、「米軍が武漢に持ち込んだかもしれない」
  とツイート。「中国が責任回避している」と批判する論調が
  目立つが、中国側の主張は全く根拠のない主張なのか。発生
  源論争の根拠と狙いをまとめた。
   「感染源は分かりません。だが、2019年10月末に湖
  北省武漢で行われた世界軍人オリンピックに参加した米軍軍
  人5人が、原因不明の伝染病にかかり、武漢で治療を受けた
  のが(米軍持ち込み説の)根拠の一つかもしれません」
   こう主張するのは、現代中国が専門の矢吹晋・横浜市立大
  名誉教授。3月19日、参議院議員会館で開かれたコロナウ
  イルスに関する緊急シンポジウム(主催・国際アジア共同体
  学会)で、「米軍持ち込み説」についてこう述べた。
   日米など西側SNSでは、中国が武漢を封鎖した2月末ご
  ろから、ウイルスが「中国の生物化学兵器施設でゲノム加工
  によってできた生物兵器」とする「陰謀論」が飛び交った。
  矢吹氏はまず、この陰謀論に対して、英医学専門誌「ランセ
  ット」(1月24日付)に掲載された中国の専門家の論文な
  どを紹介した。         https://bit.ly/2YQHwYb
  ───────────────────────────


世界軍人運動会/中国武漢.jpg
世界軍人運動会/中国武漢
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2020年09月03日

●「中国のフェイクニュースの作り方」(EJ第5322号)

 中国の情報拡散のプロパガンダについて知っておく必要があり
ます。その概要は、8月27日のEJ第5317号でも伝えまし
たが、今日はそれをさらに掘り下げます。
 8月30日のことです。チェコのミロシュ・ビストルチル上院
議長ら90人が台湾を公式訪問しました。これは、中国にとって
は大問題です。早速中国の王毅国務委員兼外相は、これについて
「高い代償を払う」ことになると恫喝しています。こういう場合
中国の報道局のこわもての報道官が定例記者会見で、メッセージ
を発信することになっています。ほとんどは、副報道官が出てく
るのですが、どういう序列であるのかご存知でしょうか。
 この定例会見(月曜〜金曜)に出てくる報道官は、次の3人で
あり、あの女性の華春瑩氏が局長で一番エライのです。
─────────────────────────────
        華春瑩局長(2019年〜)
        耿爽副局長(2016年〜)
       趙立堅副局長(2020年〜)
                  https://bit.ly/31QULdk ─────────────────────────────
 「武漢ウイルス感染症を中国に持ち込んだのはアメリカ軍かも
しれない」──この発言をしたのは趙立堅副報道官です。発信し
たメディアはツイッターです。趙副報道官のツイッターのフォロ
ワーは50万人以上いるので、彼のツイートは相当大きな影響力
があるといえます。
 実は「武漢ウイルスを中国に持ち込んだのはアメリカ軍」とい
う主張は、趙副報道官自身の主張ではなく、ローレンス・デルビ
ン・ロマノフというカナダ人のインターネット上のエッセイでの
主張なのです。
 このローレンス・デルビン・ロマノフという人が何者かについ
て藤井厳喜氏は自著で次のように説明しています。
─────────────────────────────
 このローレンス・デルビン・ロマノフなる人は、いかなる人物
なのであろうか。彼は70代後半のカナダ人で、同氏自身がイン
ターネットに投稿した略歴によれば、2000年代半ばに上海に
移住し、チャイナ製の葉巻を販売すると共に自身のエッセイを自
費出版したという。また、上海の復旦大学の客員教授を2006
年から務めているとも自己紹介している。ロマノフ氏のエッセイ
は、様々な問題でアメリカを批判し、チャイナを擁護する類のも
のである。
 ロマノフ氏は1989年の天安門事件についても、「軍の発砲
は学生の民主化デモに向けられたものではなく、暴漢や無政府主
義者が兵士を攻撃したことに対する自衛行為に過ぎない」と主張
している。同氏はラリー・ロングという別名ももっており、復旦
大学の客員教授を自称しているが、復旦大学関係者はそのことを
否定している。          ──藤井厳喜著/徳間書店
    『米中最終決戦/アメリカは中国を世界から追放する』
─────────────────────────────
 関連情報がすべて消去されているので、正確なことはよくわか
らないのですが、藤井厳喜氏によると、このロマノフ氏のエッセ
イの引用元は、「人民日報」の英語版であることが判明したので
す。これによってわかることがあります。
 まず、中国のことを好意的に発信しているサイトを収集してお
きます。ローレンス・デルビン・ロマノフ氏のサイトもそのひと
つです。おそらく中国はそういうサイトを多く確保しているはず
です。続いて、「人民日報」が引用されることを念頭において、
ある情報を発信します。それが「ウイルスは2019年の世界軍
人運動会のときに米国から中国に持ち込まれた」という情報だっ
たとします。
 しかし、「人民日報」は中国共産党の機関紙です。そういう機
関誌で、米国に都合の悪い情報をいくら流してもだれも信用しな
いはずです。しかし、その情報を第3者の立場(と思っている)
ローレンス・デルビン・ロマノフ氏のサイトが取り上げて流すと
それは「本当かもしれない」と思ってしまうものです。誰もその
情報の発信元までは注目しないからです。
 そして、この情報を中国の趙立堅副報道官がツイッターで拡散
するのです。フォロワーは50万人以上おり、この情報に興味の
ある人がさらにリツィートするので、このツィートは世界中に拡
散されることになります。これが彼らのデマ情報の拡散の手法で
あるといえます。
 中国は、新型コロナウイルスに関する真実が暴露されることを
極端に恐れています。これについて、既出の藤井厳喜氏は、次の
ように解説しています。
─────────────────────────────
 中国共産党が武漢ウイルスに関する真実を隠蔽し、それゆえに
世界に向けての真実の報道をどれほど恐れているかを物語る2つ
の状況証拠が存在する。第1は米国人記者の追放であり、第2は
チャイナ国内の市民記者の身柄拘束である。
 3月17日、チャイナ外務省は、アメリカを代表する「ニュー
ヨークタイムズ」「ウォールストリート・ジャーナル」「ワシン
トンポスト」という3紙のアメリカ国籍の記者に対して、202
0年度のビザ更新を行なわず、事実上国外追放の措置をとった。
事実を報道する外国特派員はチャイナには無用であるという宣言
である。これで3紙の記者は、チャイナ本土のみならず、マカオ
や香港でも取材活動が出来なくなった。
 言論の自由を徹底して抹殺しようとする中国共産党の動きは、
いわゆる「市民記者の身柄拘束」にも表れている。チャイナでは
武漢ウイルス事件の実態を報道してきた公民記者(フリーランス
の記者)が相次いで行方不明となっている。
           ──藤井厳喜著/徳間書店の前掲書より
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/066]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ巡る2つの陰謀説を徹底検証する
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている。3月
  24日までに米国やイタリアなど少なくとも20の国・地域
  の政府が非常事態や緊急事態を宣言している。
   各国当局の発表に基づきAFP通信がまとめた統計による
  と、日本時間24日午前4時現在での世界の新型コロナウイ
  ルス感染者数は174の国・地域で36万1510人に達し
  うち1万6146人が亡くなっている。
   感染症が流行すると、必ず流れるのが、陰謀説である。陰
  謀説とは、社会の構造上の問題を、背後にひそむ個人ないし
  は、集団の陰謀のせいにすることである(ブリタニカ百科事
  典)。陰謀説が真実であることは稀である。
   SARSの時は、中国の急成長やアジアの人口増加を恐れ
  た米国が起こしたバイオテロだとする陰謀説や新型インフル
  エンザのワクチンであるタミフルの売り上げを伸ばすため、
  米政府と製薬会社が共謀して感染症を広めたとする陰謀説が
  流布された。
   また、エボラ出血熱を発症させるエボラウイルスは、CI
  A(米中央情報局)が開発した生物兵器ではないかとする陰
  謀説が流布された。さて、今回の新型コロナを巡っては、こ
  れまでのところ2つの陰謀説が流布されている。一つは、新
  型コロナウイルスは、中国の生物兵器である、とするもので
  ある。もう一つは、新型コロナウイルスは、米軍が武漢に持
  ち込んだものである、とするものである。
                  https://bit.ly/3lzsT54
  ───────────────────────────

チェコの高官/台湾への公式訪問.jpg
チェコの高官/台湾への公式訪問
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2020年09月04日

●「トランプ政権高官5人の連続演説」(EJ第5323号)

 ヘッジファンド世界最大手ブリッジウォーター・アソシエイツ
の創業者で、著名投資家のレイ・ダリオ氏という人物がいます。
7月16日、このダリオ氏が自身のリンクトインに次の投稿をし
ています。リンクトインとは、世界最大級のビジネス特化型のS
NSです。その投稿の趣旨は次の通りです。
─────────────────────────────
 アメリカと中国は今、経済戦争の状態にあり、これは武力紛争
へと発展する可能性がある。第一次世界大戦や第二次世界大戦の
数年前の状況と現在の状況を比較して、米中間の経済的な緊張が
武力紛争にまでエスカレートする可能性がある。
        ──レイ・ダリオ氏/https://bit.ly/2EZTG9L
─────────────────────────────
 危ないのは、中国が南シナ海に建設した人工島です。ポンペオ
米国務長官は、7月13日に南シナ海の人工島について次の声明
を出しています。
─────────────────────────────
 南シナ海の大半の地域にまたがる中国の海洋権益に関する主張
は完全に違法である。世界は南シナ海の中国の「海洋帝国」とは
決して認めない。          ──ポンペオ米国務長官
─────────────────────────────
 8月26日になって、中国軍は弾道ミサイルを南シナ海に撃ち
込んでいます。明らかに米国への警告です。このとき、中国軍は
南シナ海だけでなく、東シナ海、黄海、渤海の4海域で軍事演習
を行っており、これは極めて異例のことです。
 しかも発射されたミサイルは、グアムの米軍基地に届くミサイ
ルで、「グアム・キラー」と呼ばれる中距離弾道ミサイル「東風
26B」と「空母キラー」と呼ばれる対艦弾道ミサイル「東風2
1B」です。明らかに米国への威嚇であり、「南シナ海に介入す
るな」という警告です。
 多くの人は、米国の中国への貿易や軍事へのプレッシャーは、
トランプ大統領が大統領選を有利にするためではないかと考えて
います。しかし、これはトランプ政権として相当考えて、計画的
に、プレッシャーをかけているのです。それは、必ずしも選挙目
当てでやっているわけではないのです。トランプ政権の高官が計
画的に中国に対して、メッセージを発信しているからです。
 トランプ政権は、2018年と2019年に、ペンス大副統領
が、中国向けの演説をそれぞれ行なっています。
─────────────────────────────
◎ペンス副大統領による中国向け演説
 第1回:2018年10月 4日/  ハドソン研究所
 第2回:2019年10月24日/ウイルソンセンター
─────────────────────────────
 もちろんペンス副大統領による上記の演説は、ペンス副大統領
が勝手にやったものではなく、トランプ大統領と関係者が集まっ
て、その内容をていねいにチェックした上で行なわれています。
これについて、福井県立大学教授、島田洋一氏は次のように述べ
ています。
─────────────────────────────
 約2年前、中国共産党を全面批判して世界に衝撃を与えた「ペ
ンス演説」(2018年10月4日)は、その前日に、トランプ
大統領がマイク・ペンス副大統領、ジョン・ボルトン大統領安保
担当補佐官、ニック・エアーズ副大統領補佐官の3人を集め、1
行1行チェックしたうえで、ゴーサインを出したものだ、とボル
トンが回顧録で述べています。 ──島田洋一福井県立大学教授
              『月刊Haneda』 /10月秋桜号
─────────────────────────────
 トランプ大統領は、2020年に関しては、6月から7月にか
けて、トランプ政権の高官4人の演説を次のように、行なってい
ます。これは明らかに計画的です。
─────────────────────────────
◎トランプ政権4人の高官による中国向け演説
 第1回:2020年6月24日
     ロバート・オブライエン大統領安保問題担当補佐官
 第2回:2020年7月 7日
     クリストファー・レイFBI長官
 第3回:2020年7月16日
     ウイリアム・バー司法長官
 第4回:2020年7月23日
     ポンペオ国務長官
─────────────────────────────
 このトランプ政権4人の高官による連続演説の目的は、なんで
しょうか。
 これは、とくに国務省内部のパンダハガー(親中国派)を一層
する狙いがあると思われます。これについて、島田洋一福井県立
大学教授は次のように述べています。
─────────────────────────────
 従来、トランプ政権としての包括的な中共非難演説は2018
年、2019年と続けてペンス副大統領が行ってきた。すなわち
ホワイトハウス主導であって、宥和派の牙城というべき国務省の
官僚機構においては、「自分たちはあずかり知らず」とやや距離
を置く風も見えた。
 今回は、国務長官が全体を取り仕切る格好を取っている。長官
の重要演説となれば、同省幹部らが原稿の作成、調整に深くかか
わり、結果に連帯責任を持つことになる(あくまで内容に反対な
ら辞任を求められる)。国務長官主導とすることで、同省内に多
いパンダハガー(親中派)官僚らの逃げ道を塞いだと言えるだろ
う。今後は懲罰を覚悟せずには実行をサボタージュできない。
            ──『月刊Haneda』 /10月秋桜号
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/067]

≪画像および関連情報≫
 ●「共産主義の中国 変えなければ」米国務長官の演説要旨
  ───────────────────────────
   中国との闇雲な関与の古い方法論は失敗した。我々はそう
  した政策を継続してはならない。戻ってはならない。自由世
  界はこの新たな圧政に勝利しなくてはならない。
   米国や他の自由主義諸国の政策は中国の後退する経済をよ
  みがえらせたが、中国政府はそれを助けた国際社会の手にか
  みついただけだった。中国に特別な経済待遇を与えたが、中
  国共産党は西側諸国の企業を受け入れる対価として人権侵害
  に口をつぐむよう強要しただけだった。
   中国は貴重な知的財産や貿易機密を盗んだ。米国からサプ
  ライチェーンを吸い取り、奴隷労働の要素を加えた。世界の
  主要航路は国際通商にとって安全でなくなった。ニクソン元
  大統領はかつて、中国共産党に世界を開いたことで「フラン
  ケンシュタインを作ってしまったのではないかと心配してい
  る」と語ったことがある。なんと先見の明があったことか。
   今日の中国は国内でより独裁主義的となり、海外ではより
  攻撃的に自由への敵意をむき出しにしている。トランプ大統
  領は言ってきた。「もうたくさんだ」と。対話は続ける。し
  かし最近の対話は違う。私は最近、ハワイでヤン・ジェチー
  中国共産党政治局員と会った。言葉ばかりで中国の態度を変
  える提案はない、相変わらずの内容だった。楊の約束は空っ
  ぽだった。彼は私が要求に屈すると考えていた。私は屈しな
  かった。トランプ大統領も屈しない。
               https://s.nikkei.com/2ET6aAn
  ───────────────────────────

島田洋一福井県立大学教授.jpg
島田洋一福井県立大学教授
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2020年09月07日

●「TSMCの誘致と情報窃盗を捜査」(EJ第5324号)

 4日のEJで示したトランプ政権4人の高官による中国向け演
説のリストに演説場所を加えて再現します。
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◎トランプ政権4人の高官による中国向け演説
 第1回:2020年6月24日/アリゾナ州フェニックス
     ロバート・オブライエン大統領安保問題担当補佐官
 第2回:2020年7月 7日/ハドソン研究所
     クリストファー・レイFBI長官
 第3回:2020年7月16日/フォード大統領博物館
     ウイリアム・バー司法長官
 第4回:2020年7月23日/ニクソン大統領記念図書館
     ポンペオ国務長官
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 これらの中国向けの演説の高官のメンバーを見ると、トランプ
政権が中国に対してどのように考えているかがわかってきます。
島田洋一福井県立大学教授のレポートを参考にして、以下に解説
をすることにします。
 連続演説を担当した4人の高官のなかに、司法長官とFBI長
官という法執行部門のトップが入っているのは注目すべきことで
す。司法長官は検察の総元締めであり、FBI長官は公安警察の
トップです。FBI(連邦捜査局)は、行政組織上は司法省の下
部組織であり、FBI長官は、司法長官の指揮監督を受ける立場
にあります。
 そうであるならば、司法長官が演説すれば、FBI長官の演説
は本来は必要ないはずですが、あえてFBI長官を加えたのは、
これらの司法カードを対中国締め付けの切り札にするという意思
を内外に知らせるためであると考えられます。中国共産党のスパ
イや協力者、制裁破りの企業の摘発を強化するぞというトランプ
政権の警告です。
 連続講演のトップは、ロバート・オブライエン大統領安保問題
担当補佐官です。場所は、アリゾナ州フェニックスです。実は演
説する場所にも重要な意味があります。オブライエン補佐官は、
演説の冒頭で、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)を取り上げ
その新工場がアリゾナに出来ることを歓迎すると伝えています。
TSMCは、5月15日にアリゾナに大型工場新設計画を発表し
ています。TSMCは米商務省のガイドラインに従い、2020
年9月以降、ファーウェイ向けの新規半導体は出荷しないことを
明らかにしています。これについて、島田洋一教授は次のように
述べています。
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 トランプ政権は、台湾随一の戦略企業を露骨に中国から引きは
がし、同時に、露骨にアメリカに引き寄せた。それを象徴する場
所がアリゾナであったが、そこで、大統領の最側近たる安保補佐
官が、中共批判連続演説をスタートさせたわけである。オブライ
エンも、ポンペオ同様、「いわゆる『習近平思想』の学習を強要
し、・・・イデオロギーをコントロールしようという習近平の野
望は自国民の範囲に留まらない」と、独裁者を名指しで指弾して
いる。           『月刊Haneda』 /10月秋桜号
─────────────────────────────
 さらにオブライエン補佐官は、中国共産党による国際機関の乗
っ取りにも注意を喚起し、次のように述べています。
─────────────────────────────
 中国はいまや、15ある国連の専門機関のうち4つで、トップ
のポストを取っている。これは安保理の残りの常任理事国、米英
仏ロ4ヶ国が得ている数の合計よりも多い。中国はこれらの事務
局長を使って、中国政府の主張をオウム返しに発信させ、また中
国の通信機器を国際機関の諸施設に据え付けさせている。
    ──ロバート・オブライエン大統領安保問題担当補佐官
              『月刊Haneda』 /10月秋桜号
─────────────────────────────
 この国際機関の人事敗北は、これまでの民主党政権の責任であ
るという意味合いもあるといえます。
 連続演説の二番手は、クリストファー・レイFBI長官です。
演説した場所は、ワシントンの保守系シンクタンク、ハドソン研
究所です。ペンス副大統領の演説もここで行なわれています。
 演説の冒頭でレイ長官は、中国はアメリカ人の個人データを盗
んでいると警告を発し、次のように述べています。
─────────────────────────────
 2017年に中国軍が(米大手信用情報会社の)エクィファッ
クスにハッキングを仕掛け、米国民1億5千万人の個人情報を盗
み取った。アメリカの全人口の約半分を意味し、大人のほとんど
はデータを取られたことになる。現在FBIは、10時間に1件
の割合で中国がらみの防諜事案の捜査を始める状態にある。全米
で、捜査中の5千件の事案のうち、ほぼ半数が中国に関連してい
る。さらに、捜査中の中国関連事案のうち、1千件以上がテクノ
ロジーの窃盗に関連しており、過去10年間に中国による経済ス
パイ事件は13倍に増えている。
            ──クリストファー・レイFBI長官
              『月刊Haneda』 /10月秋桜号
─────────────────────────────
 FBIには、各方面から膨大な量の捜査の依頼があります。し
かし、人員には限りがあるので、優先順位を決めざるを得なくな
ります。どの捜査を優先するかは、FBI長官に権限があります
が、国家安全保障に関しては、トランプ大統領の意思が司法長官
を通じてFBIに伝えられており、現在では「中国案件」を最優
先に取り上げることになっているといわれます。
 つまり、現在FBIは異例の中国シフトをひいており、中国ス
パイの摘発に乗り出しています。7月22日、この流れでヒュー
ストンの中国大使館が閉鎖されることになったのです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/068]

≪画像および関連情報≫
 ●米テキサスの中国総領事館閉鎖「知財窃取の一大拠点」
  ───────────────────────────
   【ワシントン=永沢毅】米南部テキサス州ヒューストンに
  ある中国総領事館が、7月24日夕、閉鎖された。米国は報
  復措置をとらないよう要求したが、中国は対抗措置に動く方
  針。米中の応酬に歯止めがかかる兆しはない。
   米メディアによると、米国が求めた期限である、現地時間
  24日午後4時ごろまでに中国の館員は撤収したもようだ。
  館員がトラックで荷物を運び出す姿が目撃されたという。そ
  の後まもなく米政府当局者とみられる複数の人物が5階建て
  の建物に入った。
   米政府高官によると、総領事館は米国の知的財産を窃取す
  る一大拠点だった。米研究機関にいる中国人のスパイにどん
  な情報を盗むべきかを具体的に指示。米国の捜査の手から免
  れたり妨害したりする方法を手ほどきし、情報収集活動を支
  援していたという。
   香港の民主派活動家を批判する活動や、中国の反体制派を
  本国に強制送還するチームの滞在拠点にもなっていた。米政
  府高官は「これは氷山の一角だ」と指摘。「受忍できる限度
  をはるかに超えた。このまま放置すれば、より攻撃的になり
  かねなかった」と批判した。中国の蔡偉ヒューストン総領事
  は、24日、米の閉鎖命令は「国際法と国際関係の基本的な
  ルールに違反しており、関係を破壊しようとするものだ」と
  抗議する書簡を発表した。 https://s.nikkei.com/2F0e6Qi
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オブライエン補佐官/レイFBI長官

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2020年09月08日

●「これまでの中国政策の誤り認める」(EJ第5325号)

 トランプ政権4人の高官の連続演説の続きです。演説者と場所
を再現します。島田洋一福井県立大学教授のレポートを参照して
解説しています。
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 第3回:2020年7月16日/フォード大統領博物館
     ウイリアム・バー司法長官
 第4回:2020年7月23日/ニクソン大統領記念図書館
     ポンペオ国務長官
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 演説の3番手と4番手は、ウイリアム・バー司法長官とポンペ
オ国務長官です。演説場所は、バー司法長官はフォード大統領博
物館、ポンペオ国務長官はニクソン大統領記念図書館ですが、こ
れにもちゃんとした意味があります。
 フォード政権とニクソン政権の外交を担った国務大臣は、ヘン
リー・キッシンジャー氏です。彼は、共和党ですが、米中和解、
対ソ連デタント政策の象徴的人物です。デタントというのは、戦
争の危機にある2国間の対立関係を緊張緩和する政策です。つま
り、ソ連の人権抑圧を事実上黙認した上で、交流を拡大する政策
です。これに反対し、厳しく批判したのは、大統領になる前の同
じ共和党のドナルド・レーガン氏です。デタントは、自由の闘士
を見捨てる政策であり、自分の政権では、キッシンジャー氏を絶
対に国務長官はしないことを公約にして大統領選を戦ったといわ
れています。
 島田洋一教授によると、ウイリアム・バー司法長官とポンペオ
国務長官の演説場所の選択には、対中強硬路線で共和党が一枚岩
であることを示すために、トランプ政権が進めるレーガン的政策
に対して、ニクソン、フォード派の人々もそれに同意する「仕切
り」という配慮が込められているといいます。
 さて、3番手のバー司法長官は、中国がらみの犯罪の起訴件数
を上げ、次のように訴えています。
─────────────────────────────
 連邦における経済スパイ起訴事案のうち、約80%が中国国家
を利するであろう行為に関する。企業秘密の窃取事案のうち、約
60%が中国につながりを有している。中国の支配層らの究極的
野望はアメリカとの貿易(トレードtrade) することではなく、
アメリカを乗っ取る(レイドraid)ことだ。
               ──島田洋一福井県立大学教授
              『月刊Haneda』 /10月秋桜号
─────────────────────────────
 つまり、中国の目的は、トレードではなく、レイドすること、
乗っ取ることだというのです。tradeとraidの韻を踏んだ表現を
使っています。また、バー司法長官は、次のようなことも述べて
います。
─────────────────────────────
 米国は、中国の商品やサービスに過度に依存しており、特に今
回の新型コロナウイルス感染症の流行から、米国がマスクや防護
服、医療設備などの面で、中国に依存しすぎていたことが分かっ
た。中国政府とつながるハッカーが米国の大学や企業を標的とし
ワクチンに関する研究資料を盗んでいる。中国共産党に取り入る
企業は、短期間では利点を得るかもしれないが、中国共産党の最
終目的はこれらの会社に取って代ることだ。
                  https://bit.ly/31YBAOv ─────────────────────────────
 トランプ政権高官による掉尾の演説はポンペオ国務長官です。
これについては、日本語字幕付きの動画があります。詳しくは、
こちらをご覧ください。時間は25分です。
─────────────────────────────
◎ポンペオ長官:リチャード・ニクソン大統領図書館での演説
   収録時間:25分10秒/  https://bit.ly/2Z8kzj0
                    翻訳:樺島万里子
─────────────────────────────
 ポンペオ国務長官は、習近平氏を中国のトップである習近平国
家主席とは呼ばず、あえて「習近平総書記」と呼称し、中国の国
家主席ではなく、中国共産党のトップととらえています。ポンペ
オ国務長官は、中国共産党の野望をくじくため、インド太平洋地
域の民主国家の新たな同盟が必要であると力説しています。
─────────────────────────────
 習近平総書記は、破綻した全体主義のイデオロギーの真の信奉
者だ。われわれは両国間の根本的な政治的、イデオロギーの違い
をもはや無視することはできない。アメリカの歴代政権が続けて
きた、一定の関係を保ちながら経済発展を支援し、ひいては中国
の民主化を促す「関与政策」は「失敗」だった。
 中国は覇権を狙っている。ウィンウィンというが米国の利益は
甚だしく損なわれている。毒気を含んだ中国共産党は中国国内で
はますます独裁的になり、対外的には、ますます自由に敵対的に
なっている。かつて旧ソ連についてレーガン大統領は「信用する
しかし検証する」と言ったが、中国共産党については「信用せず
検証しなければならない」
 我々が中国に求めているのは公平性、相互性、透明性、アカウ
ンタビリティである。中国人は共産党とは全く別であり、ダイナ
ミックな自由を愛する人たちである。我々は中国人を助け、エン
パワーしなければならない。
 我々が今行動しなければ、中国共産党は我々の自由を侵害し、
ルールに基づいた秩序を覆すだろう。自由世界が中国共産党を変
えなければ、彼らは我々を変えるだろう。中国について同じ考え
の国々が、新しいグループを、新しい民主主義の同盟を形成すべ
き時が来ている。          ──ポンペオ米国務長官
                  https://bit.ly/3gZgqnW ─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/069]

≪画像および関連情報≫
 ●ポンペオ演説ににじむ「対中政策」後悔の端緒
  ───────────────────────────
   米中の“新冷戦”が新たな局面に入った。アメリカのマイ
  ク・ポンペオ国務長官は7月23日の演説で、中国との対立
  姿勢を強烈に打ち出した。「習近平総書記は、破綻した全体
  主義のイデオロギーの真の信奉者だ」と断言。「われわれは
  両国間の根本的な政治的、イデオロギーの違いをもはや無視
  することはできない」と、中国の共産主義に批判の矛先を向
  けた。さらに、アメリカの歴代政権が続けてきた、一定の関
  係を保ちながら経済発展を支援し、ひいては中国の民主化を
  促す「関与政策」を「失敗」と断じた。
   演説の場所が、カリフォルニア州にあるリチャード・ニク
  ソン大統領図書館・博物館であったことも、その意義を強調
  している。中国への電撃訪問で国交を開き、「関与政策」を
  始めたのも、ニクソン大統領だったからだ。
   この演説の前に、アメリカ政府はテキサス州ヒューストン
  にある中国総領事館を閉鎖させている。これについて、ポン
  ペオ国務長官は「スパイ活動と知的財産窃盗の拠点」だった
  ことを理由とした。中国はこの報復として、四川省成都のア
  メリカ総領事館を閉鎖させた。ポンペオ国務長官はこうも発
  言している。「自由世界が共産主義の中国を変えなければ、
  中国がわれわれを変えるだろう」この意味するところは大き
  い。言い換えれば、このままだと中国の共産主義が世界をの
  み込んでしまう、ということであり、もはや中国共産党によ
  る国家体制を破壊することすら意味している。
                  https://bit.ly/2Z6HZoY
  ───────────────────────────

連続演説の掉尾を飾るポンペオ演説.jpg
連続演説の掉尾を飾るポンペオ演説
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