るのは尖閣諸島だけです。その尖閣諸島は、まさに一触即発の危
機に陥っています。毎日のように中国の公船が日本の領海を侵犯
し、日中お互いにその領有権を主張する事態になっているからで
す。これに加えて、今年に入ってからは中国の航空機が日本の領
空を侵犯するようになっています。
もし、尖閣諸島付近の海域において不測のトラブルが発生する
と、日中間で、尖閣沖海戦が起きても何ら不思議はないのです。
まさか戦争なんてと考える人が多いかもしれませんが、それはい
つ起きても不思議ではないほど、事態は逼迫しているのです。
日本と同様に中国も政権交代が行われ、最高権力者が交代して
います。中国の習近平政権は、どういう考え方を持っているので
しょうか。習近平というのはどういう人物なのでしょうか。
一般的な観測では、前任の胡錦涛総書記は、西側に近く、反日
姿勢もそれほどではない穏健派といわれています。それに対して
新しい総書記の習近平氏は強い反日派であり、尖閣諸島の国有化
が原因で中国全土に巻き起こった反日デモを裏側から指揮してい
たとまでいわれている人物です。
また、習近平氏を支える6人の政治局常務委員も反日の権化で
ある江沢民氏に近い人物でほとんど占められているのです。おそ
らく尖閣問題では相当きついことをやってくるはずであると思っ
ている人が多いと思います。
しかし、そうでない見方もあるようです。石平(せき・へい)
氏という中国評論家がいます。現在、拓殖大学客員教授をしてい
ますが、中国の四川省成都で生まれた中国人です。1988年に
来日し、民間研究機関の勤務の後、評論活動に入っています。そ
して、2007年に日本に帰化し、最近ではよくテレビにも出演
していますので、顔を知っている人も多いと思います。
この石平氏の習近平氏の見方は少し違うのです。石平氏は、野
田政権が尖閣諸島を国有化したときの次の中国首脳の発言を比較
しています。
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温家宝/領土問題に関しては1ミリたりとも譲らない
習近平/ 日本の尖閣国有化は「茶番」である
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温家宝首相は、領土問題については一切譲らない、話し合いも
しないといっています。これでは取りつくシマはありません。こ
れは強硬発言です。
これに対して習近平氏の発言は「茶番」。茶番というのは「底
の見え透いた下手な芝居」のことであり、それから転じて、「ば
かげた振る舞い」という意味になっています。石平氏は、この習
近平発言について次のように述べています。
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習近平氏が、日本側の国有化の動きを指して、「茶番」だと批
判した点も実に興味深い。だいたい、相手のやっていることを
「茶番」だと嘲笑うのには、「真面目に受け止める必要のない
ただの茶番だ」というニュアンスが含まれているのが普通であ
る。つまり、習近平氏は、日本側の動きを「茶番」だと壊小化
することによって、「われわれとしては過剰反応しなくてもよ
い」という姿勢を暗に示している、とも考えられるのである。
──石平著『尖閣問題。真実のすべて』/海竜社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
習近平氏がこの茶番発言をしたのは、パネッタ米国防長官(当
時)との会談のときで、習氏がまだ国家主席の座についていない
ときのことです。そのとき習氏は、パネッタ国防長官に米国は中
日の間の領土問題には介入しないで欲しいと要請し、それに続い
て「茶番」発言をしています。
実際にその後、中国外務省の洪磊副報道局長は、習近平総書記
の意向を受けて、次の発言をしているのです。
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日本側との交渉によって領土問題を解決する軌道に戻るべき
である。 ──洪磊副報道局長
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つまり、習近平総書記の考え方は、日本側は中国との間に尖閣
諸島問題という領土問題があることを認めて、交渉によって解決
するべきであるといっているのです。しかし、日本はこの誘いに
絶対に乗ってはならないのです。
習近平氏の「茶番」発言には、別の解釈もあるのです。野田首
相は、尖閣諸島の実効支配のレベルを上げようとして、石原都知
事を動かして、尖閣諸島の東京都購入を宣言させ、それを収拾さ
せるかたちで国が国有化をするという芝居をしている──このよ
うに、習近平氏は考えて「茶番」と発言したというのです。
これが事実でないことは日本人なら誰でも分かります。突然石
原東京都知事(当時)が尖閣購入発言をし、地権者と交渉をはじ
めたので、野田首相が慌てて国有化に動いたことは間違いないか
らです。かねてアンチ中国派で鳴る石原都知事が尖閣諸島を手に
入れると、測量のため上陸したり、港を作ったりするに決まって
いるので、大変なことになると野田首相が考えたからです。
中国では、国のトップが、地方の一行政の長をコントロールで
きないなどということは考えられないことであり、野田首相が一
芝居打ったと考えても不思議ではないのです。
それでは、どのように解決すべきなのでしょうか。
尖閣諸島問題に関して多くの識者が提案していますが、大別す
ると、次の3つになると思います。
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1.尖閣諸島棚上げの継続
2.国際司法裁判所で決着
3.海域の利用制限で対処
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これら3つの解決策について、明日からひとつずつ検証してい
きます。 ―─ [日本の領土/71]
≪画像および関連情報≫
●習近平氏の「領土問題は平和的解決」の意味するもの
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尖閣諸島(中国名・釣魚島)領有権をめぐり日本と「戦争も
辞さない」と述べていた中国が、突然、「平和」カードを持
ち出した。中国の習近平国家副主席は2012年9月21日
広西チワン族自治区南寧で開かれた中国・東南アジア諸国連
合(ASEAN)博覧会のビジネス首脳会議基調演説で「国
家主権と安保・領土を断固たる姿勢で守っていくが、隣国と
の領土・領海・海洋権益紛争問題を友好的な交渉を通じて平
和的に解決する」と述べた。また「中国は発展するほど、よ
り安定的かつ平和的な国際環境を必要とする」とその理由を
説明した。習副主席は2日前の19日、パネッタ米国防長官
に会った席で、日本に向けて「危険に直面した後に目を覚ま
す(懸崖勒馬)愚を冒すな」と警告していた。中国の外交で
この言葉は軍事行動直前の最後通告と変わらない意味だ。共
産党機関紙の人民日報は、1950年の韓国戦争参戦と19
62年のインド国境戦争の直前の社説で、米国とインドに対
してこの言葉を使っていた。中国が突然態度を変えた背景に
は、米国の確固たる意志が影響を与えたと分析される。(最
後まで読む)
http://japanese.joins.com/article/025/160025.html
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習近平中国共産党総書記


