2012年07月09日

●「混沌としている日本の政治状況」(EJ第3339号)

 政治が混迷をきわめています。民主党が分裂し、小沢新党がこ
の11日にも設立総会を開く運びになっています。同じ日に参議
院で「社会保障と税の一体改革」特別委員会が立ち上がり、参議
院での審議がはじまります。
 参議院の採決がいつになるかわかりませんが、法案が可決され
ることは間違いないことです。問題は、野田政権がいつ解散総選
挙に踏み切るかです。そのかぎを握るのは、またしても特例公債
法案です。ちょうど一年前に菅内閣が退陣したのも、この特例公
債法案の成立と引き換えだったのです。
 本来このような国民の生活に直結する法案を政争の具にするの
は、あってはならないことです。しかし、菅内閣は自らの最初の
参院選で大敗し、ねじれを作った張本人なのですから、それは仕
方がないことであるともいえます。米国でもオバマ政権が同じ目
にあっています。
 このこともあって、解散は秋口に行われるとみられています。
あるいはもっと延びる可能性もあります。もし、解散総選挙が行
われた場合、民主党の惨敗は確実ですが、そうかといって自民党
と公明党が大勝するとは思えないのです。
 大阪の橋下市長の率いる地域政党・大阪維新の会は本当に国政
に進出してくるのか、石原東京都知事の新党はできるのかどうか
──現時点では予測がつかない状況です。
 既成政党としては、できれば大阪維新の会には国政に出てきて
欲しくないと考えるからなのか、民主、自民、公明、みんな、国
民新の与野党5党が「大阪都構想」の実現を後押しする法案に正
式合意しています。何となく橋下市長におもねっているように見
えなくもありません。
 このような政治の動きに対してテレビや新聞はどのように伝え
ているかというと、不偏不党の精神はどこへやら、きわめて偏っ
た報道を続けています。とくに小沢一郎氏に対する人物破壊的報
道は、小沢氏が検察審査会に強制起訴された小沢裁判で一審無罪
を勝ち取った現在でも、止むことなく続いているのです。
 現在、われわれはかなり発達したIT社会で生活しています。
そういう現代社会で正しい判断をするには、リアルとネットの両
方のメディアからの情報をチェックしないと、大きく判断を誤る
ことになります。
 その格好の例として上げられるのが小沢新党の支持率です。A
NNの調査によると、小沢新党の支持率は次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     小沢新党に期待する  ・・・・ 13%
     小沢新党に期待しない ・・・・ 80%
    1000人に対する固定電話調査/7月2日
―――――――――――――――――――――――――――――
 新党は本日時点でもまだ結成されていないのです。実は、でき
ていない時点で新党の支持率を世論調査したことは、今までに一
度もないことです。それを先回りして調査し、上記のような結果
を公表し、小沢新党の出鼻をくじく──このようなことを現在の
記者クラブメディアは平気でやります。
 この調査をもって、13%の支持率は民主党の支持率と大して
変わらないとする意見もあるようですが、これは統計的に考えて
間違っていると思います。
 これに対して「ヤフー・ジャパン/みんなの政治」は、7月2
日に、同じ趣旨で調査を行っていますが、その結果はリアルの新
聞調査とは真逆の結果になっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
   投票総数             12439
   支持する      ・・・ 73%(9137)
   支持しない     ・・・ 24%(2937)
   どちらともいえない ・・・  3%( 365)
―――――――――――――――――――――――――――――
 これまで新党結成というと、せいぜい数人から10人程度しか
集まらないのが普通であるなかで、40人近い国会議員が離党し
たのですから、本来なら大ニュースであるのに、メディアはそれ
を正しく伝えていないのです。
 みんなの党、立ち上がれ日本、新党改革、新党日本など──い
ずれも数人の規模です。あれほどメディアによって叩かれ、控訴
されているので今も刑事被告人でもある政治家が、そのハンデに
もかかわらず、現職国会議員、まして与党議員をこれほどの人数
引き連れて離党したのですから、そのリーダーシップは大変なも
のと考えるのが普通ではないでしょうか。
 そういう意味で、小沢新党が今後どのように仕掛けてくるか予
断を許さないものがあります。そういうとき、今後の日本政治の
かぎを握るといわれている橋下市長率いる大阪維新の会の動向が
注目されているのです。
 現在、橋下大阪市長が石原慎太郎都知事が立ち上げるとされる
新党と組むかどうかが話題の焦点になっていますが、橋下徹とい
う人物は何者なのでしょうか。大阪府知事として活躍し、現在は
大阪市長に転じて大阪改革に取り組んでいることは周知の事実で
すが、小沢氏と違って政治家としての経験はごくわずかです。
 そこで、今日からのEJの新しいテーマは、橋下徹という人物
に焦点を当てることにしたいと思います。
―――――――――――――――――――――――――――――
   橋下徹大阪市長研究/日本の政治はどこに向かうか
―――――――――――――――――――――――――――――
 私はテレビや報道を通してしか橋下氏のことを知りません。彼
が日本テレビ系の『行列のできる法律相談所』のレギュラー弁護
士だったときもその番組を見ていないのです。しかし、彼につい
て書かれた本も増えてきています。そういう情報をできるだけ集
めて熟読し、EJとしての「橋下徹大阪市長研究」を展開して行
くつもりです。         ―── [橋下徹研究/01]


≪画像および関連情報≫
 ●文藝評論家/山崎光太郎氏のブログより
  ―――――――――――――――――――――――――――
  誰が、どういう組織が「小沢夫人離縁状」なる紙爆弾・怪文
  書を全国にばら撒いたのか、という問題こそマスコミやジャ
  ーナリズムは追及すべきだと思うが、まったくその気配はな
  い。ましてや紙爆弾・怪文書を全国にばら撒いたのが野田佳
  彦首相周辺だとすれば、日本国の存亡にもかかわる大問題、
  大スキャンダルのはずだが、まったく追及の動きはない。マ
  スコミも、怪文書騒動の仲間、共犯者ではないのかと思うし
  かない。さて、この怪文書騒動に食いついてきたのが、また
  また立花隆である。立花隆は、つくづく怪文書、インチキ資
  料、偽造文書、ガセ証人・・・がお好きな人である。「金沢
  敬」という謎の人物が、「小沢一郎潰し」の生き証人として
  登場してきた時、すばやく「これで小沢一郎は終わった・」
  と宣言したのも立花隆だったが、今回も、早速、その立花隆
  センセイが、「小沢夫人離縁状」なる紙爆弾・怪文書に、ダ
  ボハゼのごとく食いついてきた。そして、「週刊文春」の続
  報に登場して、またまた「小沢一郎は終わった・・・」と宣
  言している。(以下、URL)
  http://d.hatena.ne.jp/dokuhebiniki/20120626/1340661689
  ―――――――――――――――――――――――――――

注目の橋下市長大阪市長.jpg
注目の橋下市長大阪市長
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月10日

●「会期末解散の可能性が強まる」(EJ第3340号)

 橋下徹氏について書く前に、現在の日本の政治状況について整
理しておきたいと思います。いろいろな状況を分析すると、衆院
選が近いと考えられるからです。
 もし、選挙になると、橋下氏の地域政党・大阪維新の会が国政
に進出してくることになります。その場合、橋下氏がどこと組む
かが注目されるからです。記者クラブメディアは「小沢抜きの第
三極」といっていますが、それは最後の状況まで水面下で激しい
駆け引きが続くことになると思います。
 現在、選挙は秋口、10月〜11月頃ではないかという予想が
一番多いのですが、果たしてそうでしょうか。現在の永田町の動
きを分析すると、8月ないし会期末解散を睨んだものになってい
るというのです。
 最近の野田首相の顔を見ていると、以前よりも自信に満ちてい
るように感じます。消費増税法案を衆院で可決したことに自信を
持ったのでしょう。誰が何をいっても、反対しても、俺は自分の
決めた道を行くという思いつめた表情です。
 小沢氏がなぜこの時期に相当無理をしてまで離党したのかとい
うと、「野田首相は3党合意のさい、解散を約束している」と確
信したからです。小沢氏は自民党の体質というものをよく理解し
ており、「選挙近し」と感じ取ったものと思います。
 自民党の谷垣総裁は、民主党を解散総選挙に追い込むことを宣
言しています。自民党も9月に総裁選をがあり、もし、それまで
に解散に追い込めないと、次の総裁にはなれないという事情があ
ります。したがって、谷垣総裁が3党合意に応じた以上は、解散
の約束があるものと考えてよいと思います。
 しかし、もし選挙をすれば民主党は間違いなく壊滅します。大
量の落選議員が出て、民主党の再建は困難になるでしょう。それ
を考えると、選挙は少しでも先に延ばしたいと考えるものです。
いずれにしても選挙は厳しいが、それでも最善のときを選んで行
いたいと考えるのが普通です。
 しかし、野田首相は民主党の再建には関心はなく、新しい保保
連合を考えているようです。7月7日の日刊ゲンダイで、官邸事
情通は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 野田総理の頭の中は、すでに総選挙後の保保連合で占められて
 いる。仲間は民主党議員でなく、松下政経塾の人脈と自民党保
 守議員なのです。民主党の再建に関心はない。仮に民主党内で
 反対が強く、総理が解散に躊躇したときは、間違いなく、自公
 が不信任案を突きつけてくる。小沢新党や鳩山グループも乗っ
 て可決される。そうなったら、総理は解散に打って出る。どっ
 ちにしても、総理と自公の間で終着点は設定されたのです。
       ──2012年7月7日発行、日刊ゲンダイより
―――――――――――――――――――――――――――――
 もうひとつ早期解散になる要因があります。それは「特例公債
法案」の採決です。7月6日、安住淳財務相は特例公債法案につ
いて、次のように発言しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 10月に財源は枯渇する。秋以降、予算執行は例外なく厳し
 い抑制を迫られる。          ──安住淳財務相
―――――――――――――――――――――――――――――
 7月7日のBSテレビ朝日「激論!クロスファイア」に自民党
の石原幹事長が出演し、民主党から特例公債法案についての話は
何もきていないと述べています。消費増税法案を通すことに精一
杯で、余裕がないのでしょう。
 本来この特例公債法案は、予算案と一緒に提出されていなけれ
ばならない法案ですが、現在は衆議院にさえも提出されていない
のです。しかし、もし、特例公債法案が通らないと、生活保護費
や地方交付税が行き届かない可能性があるのです。
 ちょうど1年前にも特例公債法案が成立せず、結局は菅首相の
退陣と引き換えにこの法案を通した経緯があります。したがって
もし野田政権がこの法案の採決を自民党に求めれば、やはり解散
を求められるのは必至です。
 それとも民主党としては、選挙が近いなか、弱者対策や自治体
向けの予算が削られることになるが、それでもいいのかと自民党
をはじめとする野党に訴えるつもりなのでしょうか。
 このように、たとえどのように解散総選挙を延ばしたとしても
10月ぐらいには選挙をしなければならなくなるのです。こうい
う状況を総合的に考慮して野田首相は、谷垣総裁の求める会期末
解散を決めたのではないかと思われます。
 もうひとつ注目すべきは、鳩山グループの動きです。鳩山元首
相を中心に24人が連日のように研究会を開いています。いつ解
散になっても対応できる準備をしているのです。
 実はいま多くの視線が小沢新党に集まっているのです。今後の
新党の規模によっては同一歩調を取る議員や政党が出てくる可能
性があります。民主党内には相当の離党予備軍がおり、このあと
も離党者は増えるものと思われます。それは消費増税法案の参院
採決後がきっかけになります。
 7月8日のテレビ朝日の番組に出演した田中秀征氏は、「法案
に反対して党に残留した人も最後は結局離党することになるだろ
う」と述べています。なぜかというと、選挙になれば「彼らはい
い訳をせざるを得ず、選挙にならない」からです。
 鳩山グループは、民主党や連合の支持団体の影響力が強い北海
道9区の選出であって、離党は困難でしょうが、弟の鳩山邦夫氏
との連携なら十分考えられるのです。小沢新党の幹事長を務める
牧義夫議員は、鳩山邦夫氏の元秘書であり、接点は十分あるとい
えます。しかし、小沢新党が結党後1ヵ月ぐらいの間にどのくら
いのパワーを持つかがかぎを握るのです。
 そして橋下徹大阪市長がどう出るかです。これによって日本の
政治は変貌します。       ―── [橋下徹研究/02]


≪画像および関連情報≫
 ●「増税騒動の感想」/経済コラムマガジン/714
  ―――――――――――――――――――――――――――
  正直に言って、これまで小沢一郎という政治家に筆者は好感
  を持っていなかった。中国に対する媚びた政治姿勢や小渕政
  権末期の訳の分らない連立離脱劇などに筆者も強い反感を持
  っている。しかしこの政治家の今回の造反劇と今後の活動に
  は注目と関心を持たざるを得ない。ところで今回の造反劇で
  筆者は「意外と造反者の数が少ない」と思った。頭がボケて
  いるマスコミや政治評論家は反対に「思ったより多かった」
  と言っている。一週間も経てば、今回やむなく賛成票を投じ
  た民主党の議員の中にも「反対票を投じておけば良かった」
  と強く反省する者がかなり出てくると筆者は見ている。また
  大手マスコミは小沢新党への期待が「15〜16%」と極め
  て低く、今回の造反と新党構想は大失敗と断じている。しか
  し自民党や民主党の支持率もその程度である。むしろ民主党
  の支持率は現状よりずっと下がると筆者は見ている。彼等は
  また連合の反発があり小沢新党はポスター貼りをやってくれ
  る者もいないと指摘している。たしかに財界だけでなく連合
  までが今回の増税に賛成している。しかし「よくぞ増税をし
  てくれた」と感謝して民主党のポスターを貼ってくれる末端
  の連合組合員や、喜んで自民党のポスターを貼ってくれる商
  工業者もほぼ皆無であろう。労組や財界の幹部は本当に頭が
  おかしい。連合なんて膨大な積立ててきた組合費を組合員に
  返して解散した方が良い。
             http://adpweb.com/eco/eco714.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

最近自信に満ちている野田首相.jpg
最近自信に満ちている野田首相
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2012年07月11日

●「ツイッターを駆使する異色の政治家」(EJ第3341号)

 橋下徹という政治家の最大の特徴は、ツイッターを駆使して、
双方向コミュニケーションを図る政治家であるということです。
まさにネットメディア時代の申し子のような政治家です。
 ヒットラーの時代のメディアといえばラジオでしたが、ヒット
ラーはそのラジオを縦横無尽に使いまくったといいます。時代が
変わって、小泉純一郎元首相はテレビを効果的に活用する政治家
だったのです。小泉氏の政治手法は劇場型政治といわれ、テレビ
メディアを非常に巧みに使って政治を行ったのです。
 そして、橋下氏はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サ
ービス)のツイッターを駆使して、自分の考え方を伝達し、ある
いは同調を呼びかけ、ときとして質問し、考え方を共有しながら
政治を行うのです。
 本稿執筆時点での橋下氏のツイッターのデータは、次のように
なっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
     2010年7月10日/10:00
        ツイート総数   6149
        フォロー数      23
        フォロワー数 786152
       https://twitter.com/t_ishin/
―――――――――――――――――――――――――――――
 今や多くの人が使っているツイッターですが、やっていない人
も多くいるので、橋下氏のツイッターのデータを使って、ツイッ
ターについて簡単に説明します。ツイッターがどういうものかわ
からないと、橋下氏の政治活動を理解できないと思うからです。
 ツイッターはアカウントを取得すると、2つの専用のページが
与えられます。上記の橋下氏のURLをクリックしてみてくださ
い。橋下徹氏のページが表示されます。このページには公式な名
称がないので「プロフィールページ」と名付けます。このページ
は、ユーザーのプロフィールや今までどのようなツイート(つぶ
やき)を投稿してきたかが、時系列にわかるページになっていま
す。誰かをフォローするときの参考データとして使えるページで
す。なお、このページは、ツイッターのアカウントを持っていな
くてもURLをアクセスすれば誰でも見ることができます。
 さて、橋下氏の「プロフィールページ」の左上の欄外に「ホー
ム」というボタンがあります。もしあなたが、ツイッターのユー
ザーであれば、「ホーム」のボタンを押せば、あなたのページが
表示されるのです。橋下氏には関係がありません。このページは
「ホーム」ないし「タイムライン」と呼ばれます。
 ちなみにツイッターのユーザーでない人がこの「ホーム」ボタ
ンをクリックすると、ツイッターのアカウントを取るように勧め
るメッセージが表示されます。
 それでは「ホーム」ページとは何でしょうか。「プロフィール
ページ」とはどう違うのでしょうか。
 あなたがツイッターのアカウントを取得したと仮定して説明し
ます。アカウントの取得作業が終わると、ページが表示されます
が、このページが「ホーム」です。ツイッターは、すべてこのペ
ージからスタートするのです。
 本当はこのページをお見せできるといいのですが、このページ
はアカウントを持つ本人しか見ることができないのです。本人以
外が見れるページは「プロフィールページ」だけです。
 「ホーム」ページの右上の欄外にあるペンのマークをクリック
してみましょう。そうすると、「いまどうしてる?」のサブペー
ジが表示されます。このサブページに140字以内でメッセージ
を書き込んで「ツイート」ボタンをクリックします。そうすると
ページの右サイドの「ツイート」のところに、いまあなたが書い
たメッセージが表示されます。このようにして発信したメッセー
ジをツイート(つぶやき)と呼ぶのです。
 しかし、この時点では、あなたのフォロワーは一人もいないの
で、ツイートはあなた一人にしか届かないのです。もう少し正確
にいうと、「プロフィールページ」にもツイートは届きます。こ
のページはネット上で誰でも見ることができるので、偶然にネッ
ト上で誰かの目にとまる可能性はあります。
 ツイッターでは、いずれにしてもフォロワーを作る必要があり
ます。しかし、フォロワーは他のツイッターのユーザーがあなた
に対して行ってくれる行為であり、自分の意思ではどうにもなり
ません。フォロワーを増やすには、次の2つの方法があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
         1.誰かをフォローする
         2.ツイートを発信する
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下氏の「プロフィールページ」を見ると、ページの右上の欄
内に「フォローする」ボタンがあります。このボタンをクリック
すると、あなたは橋下氏をフォローしたことになります。
 橋下氏にあなたがフォローしたことを知らせるメールが発信さ
れ、その瞬間から、橋下氏の発信するツイートがあなたの「ホー
ム」に時系列に積み上がっていきます。そのため「ホーム」のこ
とを「タイムライン」ともいうのです。
 これであなたは、橋下氏のフォロワーの1人になったのです。
橋下氏のフォロワーは約78万人です。これは、橋下氏がツイー
トを1本発信すると、一瞬で78万人に届くことを意味していま
す。なお、フォローはいつでも解消する──リムーブすることが
できます。したがって、フォローする数が、リムーブする数を上
回っているとフォロワーは増えることになります。
 しかし、この状態ではあなたのツイートは橋下氏には届かない
のです。橋下氏に何かを伝えたいなら、橋下氏のツイートに対し
て「リプライ(返信)」するしかないのです。これでも十分コミ
ュニケーションは成立します。2の「ツイートを発信する」は明
日述べます。          ―── [橋下徹研究/03]


≪画像および関連情報≫
 ●ツイッターを駆使する橋下徹は小泉純一郎を超える
  ―――――――――――――――――――――――――――
  橋下徹には、「理念を実現するためには殺されてもいい」と
  いう小泉純一郎のような覚悟、政治任用スタッフを活用して
  決定に持ち込む竹中平蔵のような実務能力、それに小泉・竹
  中時代以上に進んだ、ツイッターなど最新の情報コミュニケ
  ーション技術を活用するコミュニケーション能力を構成要素
  とするリーダーシップがあり、その対極に首相を務めた菅直
  人がいる。想定外の危機にこそリーダーシップの重要性が顕
  在化する。リーダーシップとフォロワーシップは表裏一体で
  あり、リーダーには人と人との相互作用の積み重ねのなかで
  組織においては部下を動かし、選挙においては国民を動かす
  能力が求められる。命令や強制は真のリーダーシップではな
  い。人々に目的・方向性・意欲を与えて、自ら進んで行動す
  るようにできる人が真のリーダーである。 ──真柄昭宏著
     「ツイッターを持った橋下徹は小泉純一郎を超える」
                        /講談社刊
  ―――――――――――――――――――――――――――

ツイッターを駆使する橋下大阪市長.jpg
ツイッターを駆使する橋下大阪市長
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2012年07月12日

●「橋下市長の野田首相擁護発言のウラ」(EJ第3342号)

 もう少しツイッターの話を続けます。2010年7月10日/
19:12時点における橋下徹氏のツイッターのデータです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     2010年7月10日/19:12
        ツイート総数   6149
        フォロー数      24
        フォロワー数 786466
       https://twitter.com/t_ishin/
―――――――――――――――――――――――――――――
 有名人はほとんどそうですが、橋下氏もフォローしている数は
24人であり、つねに連絡を取り合う人に限られています。橋下
氏の「プロフィールページ」の「24フォロー」とあるところを
クリックすると、この24人が誰であるかがわかります。
 河村たかし、逢坂誠二、孫正義、竹中平蔵、古賀茂明、堀江貴
文、池田信夫、高橋洋一氏などの名前が並んでいます。このよう
に、交友関係や人間関係もある程度わかるのです。
 もしあなたが橋下氏をフォローすると、橋下氏の発信するツイ
ートはあなたのタイムラインに飛び込んでくるので、リアルタイ
ムに読むことはできますが、橋下氏に対してメッセージは発信で
きません。それは、橋下氏があなたをフォローしてくれない限り
できないのです。
 ひとつ方法があります。それは橋下氏のツイートに対して「リ
プライ(返信)」するのです。橋下氏のツイートのなかで関心の
あるものがあれば、リプライするのです。ツイートの下の部分に
カーソルを近づけると、「返信」のボタンが表示されるので、そ
れをクリックすると、文字の書き込めるウインドウが開きます。
そこにメッセージを書き込んで「ツイート」ボタンを押せば、橋
下氏のタイムラインに届きます。もし、橋下氏がそのメッセージ
に関心があれば、リプライを返してくるはずです。
 橋下氏のような有名人は別として、誰かをフォローすると、そ
の人にあなたのフォローを知らせるメールが届き、何人かはフォ
ロー返しをしてくれる可能性があります。
 また、内容のあるツイートをコンスタンに発信し続けていると
フォロワーは少しずつ増えてくるものです。したがって、誰かを
フォローすることと、ツイートを発信することが、フォロワーを
増やす方法なのです。なお、橋下氏のフォロワー数は、政治家の
ツイッターユーザーのなかでトップを占めています。
 ツイッターについて、概要を掴んでいただいたうえで、実際に
橋下氏が発信したツイートを手掛かりに橋下氏がどういう政治家
なのかについて述べる予定だったのですが、7月10日に橋下氏
は次の不可解な発言をしたので、それから取り上げます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 野田首相、すごいですよ。集団的自衛権についてこれから議論
 されて、TPP(環太平洋連携協定)についても参加表明する
 とかね、当初言ってたことを着実に進めてるじゃないですか。
 中身については賛否両論ありますけどね。大阪都構想も5党で
 みんなで協議して決めたでしょ。税も上げて、これから社会保
 障の議論もしていく。確実に『決める政治』をされてると思い
 ます。      ──橋下大阪市長/朝の囲み取材での発言
―――――――――――――――――――――――――――――
 このところ橋下氏の発言は非常に揺れています。大飯原発の再
稼動について、あれほど批判していたくせに一転して容認姿勢に
転じて周囲を驚かせています。当初民主党政権には交代してもら
うとまでいっていたのです。
 10日の発言は、「小沢新党の立ち上げについての感想」を求
められたのに、それには正面から応えず、「民主党の支持率は上
がると思いますよ」といったあと上記のように発言したのです。
もともと野田政権が消費増税を衆院で採決したことについて、最
初は相当批判していたにもかかわらずです。
 この発言をそのまま素直にとらえると、大阪維新の会は「消費
増税賛成」「原発再稼動賛成」ということになり、今まで主張し
ていたことと真逆のことをいっているのです。実際に、ブレたと
いって怒っている大阪市民も多いのです。そのせいか直後に行わ
れた羽曳野市長選で大阪維新の会は初敗北を喫しています。
 正確なことは不明ですが、どうやらウラがありそうです。野田
政権は、大飯原発の再稼動についての橋下氏の強硬姿勢を深刻に
受け止め、あらゆる情報を集めて橋下潰しをやっているのです。
以下は維新幹部の話です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 政府民主党があらゆるチャンネルを使って橋下さんの耳に入れ
 た話が、「じゃあ、再稼働をやめましょう。その代わり、政府
 は厳密な長時間の計画停電を義務付ける。病院や自宅療養の患
 者はどうするのか。死人が出たら橋下さんの責任になる」とい
 うものだった」。維新の大阪市議は言う。「再稼働推進派の民
 主党幹部が、維新幹部のスキャンダルを直接橋下さんの耳に入
 れた。「あんまり飛び跳ねないほうがいい」と語ったという詰
 もある。         ──「サンデー毎日」7/22号
―――――――――――――――――――――――――――――
 この話が本当であるとすると、橋下氏は民主党に脅しをかけら
れたことになります。われわれが見ている橋下氏のイメージから
すると、そんな脅しに屈する人物にはみえませんが、その後の発
言は非常におかしなものになっています。
 それと、このところ橋下氏は何回も記者から「小沢新党との連
携はあるのか」と聞かれ、まともに返答していないのです。もっ
とも松井府知事は「連携はあり得ない」とはいっているものの、
橋下氏自身は何も述べようとしないのです。
 政治の世界は恐ろしいのです。あの剛腕小沢氏があれほどの人
物破壊をやられているのです。それが橋下氏にも行われようとし
ているのでしょうか。      ―── [橋下徹研究/04]


≪画像および関連情報≫
 ●維新が市長選で初敗北/橋下人気暴風から低気圧に!
  ―――――――――――――――――――――――――――
  大阪府羽曳野市長選が7月1日、投開票され、民主、自民が
  推薦する無所属現職・北川嗣雄氏(69)が、地域政党・大
  阪維新の会(代表・橋下徹大阪市長)羽曳野支部推薦の元市
  生活環境部長・麻野佳秀氏(62)、共産推薦の元市保健福
  祉部長・宇山鉄雄氏(65)の無所属新人2人を破り、3選
  を果たした。維新は首長選で公認・推薦する候補が2010
  年の結党以来、初めて敗れた。投票率は43・25%(前回
  38・08%)。 北川氏は地元経済団体などの組織票を手
  堅く固めたほか、麻野氏が公約とした市長報酬の「3割カッ
  ト」を上回る「5割カット」を打ち出して改革色を強めるな
  ど、維新を意識した選挙戦を展開した。一方、麻野氏は「橋
  下改革を羽曳野に」を合言葉に職員基本条例や教育基本条例
  の制定を公約に訴えた。選挙事務所には橋下氏の等身大ボー
  ドを置くなど維新色を前面に出したが、知名度の低さが響い
  た。維新にとっては11年の同府吹田市長選から続く首長選
  の連勝が5でストップした。地元府議らによる支部推薦は、
  維新が全面的に支援する本部推薦とは異なり、橋下市長や維
  新幹事長の松井一郎大阪府知事は今回、選挙応援に入ってい
  ない。維新幹部は「本部推薦ではないので、維新の勢いを判
  断する材料にはならないが、大阪市政改革で市民に厳しい姿
  勢を示す橋下市長をよく思わない空気が伝わった可能性はあ
  る」と指摘。民主党大阪府連の中村哲之助副代表は「大飯原
  発の再稼働を巡る橋下市長の態度のぶれや、強引な市政改革
  の影響が出たのだろう。我々にとって猛烈な暴風雨だった橋
  下人気が低気圧になったという印象だ」と話した。
                    ──読売オンライン
  ―――――――――――――――――――――――――――

維新が初敗北し羽曳野市長選.jpg
維新が初敗北し羽曳野市長選
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月13日

●「橋下徹氏に対する賛否両論」(EJ第3343号)

 最初に添付ファイルの右側の人物を見ていただきたいのです。
誰でしょうか。
 もちろん橋下徹氏であることはわかると思いますが、ずい分イ
メージが違うと思いませんか。もし、右の写真だけを出されたら
一瞬誰だかわからないのではないでしょうか。
 これは、日テレのテレビ番組「行列のできる法律相談所」に出
演していた頃の橋下徹大阪市長です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 長い茶髪に、濃いサングラス風の眼鏡。少し短めの無精髭。日
 焼けした肌。白い歯を見せて、橋下氏に反対意見を発するコメ
 ンテーターには、小馬鹿にするような口ぶりで「罵る」。現在
 の「大阪府知事・橋下徹」から「仮面」を剥いで素っ裸にして
 ストレートな「橋下節」を、テレビの画面に撒き散らしていた
 ころの姿です。 ──大阪の地方自治を考える会編/講談社刊
       『「仮面の騎士」橋下徹/独裁支配の野望と罠』
―――――――――――――――――――――――――――――
 もちろん大阪府知事選に出るのですから、橋下氏としてはイメ
ージを変える必要を感じたのでしょう。きっと「爽やかなイメー
ジ」を強調したかったのだと思います。大阪の地方自治を考える
会は、橋下氏をテレビに出ていた頃の素顔の上に仮面を被ってい
る「仮面の騎士」だと呼んでいるのです。
 大阪府知事になってからは、その注目度において、これまでの
大阪府知事とは比べものにならないことは確かです。1995年
〜1999年の横山ノック(山田勇氏)、2000年〜2004
年の太田房江(斉藤房江氏)に続く大阪府知事です。
 しかし、大阪府知事時代の橋下氏は、いろいろやったようで、
これといった実績を残していない。単に問題を指摘し、それを大
きくし、先送りしたたけである──大阪の地方自治を考える会は
そのようにいって橋下氏を批判しています。
 そして大阪府と大阪市が一体にならないと大阪の改革はできな
いと断じ、平松邦夫大阪市長が協力しないと批判したのです。最
初のうちは二人は仲が良いように見えましたが、たちまち考え方
の違いが露呈し、対立する関係になったのです。
 2011年10月、橋下氏は大阪府知事選・大阪市長選のダブ
ル選挙を敢行し、勝利して大阪市長に就任したのです。平松邦夫
前大阪市長と大阪市役所を悪者にして、メディアを味方につけて
選挙戦を戦い、圧倒的な勝利を収めたのです。
 橋下徹氏に関しては、人によって大きく評価が分かれます。そ
の対照的な評価を取り上げてみることにします。
 作家の堺屋太一氏──橋下氏を高く評価する人の一人で、橋下
徹氏を大阪府知事選に出馬させた仕掛け人で、後見人的な存在の
人です。彼は橋下氏のことを「平成の高杉晋作」と絶賛し、次の
ように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下徹という政治家を日本のメディアは異色の政治家と位置づ
 けて報じています。そうしたニュースに接している人たちも、
 彼のことを異端児と捉えているかもしれません。でも、この見
 方はまったく違います。実は彼こそが「本来の政治家」と言う
 べきです。いまの日本の政治家は、猟官者、つまり官職を欲し
 がって群がる人が多くなってしまっている。そのなかにあって
 この国に絶えて久しく登場しなかった本来の政治家が現れた。
 だから、橋下さんが異色に見えているにすぎません。(中略)
 私は橋下さんのことを、日本に絶えて久しくいなかった「本来
 の政治家」だと言いましたが、あえて彼を過去の人物と重ねる
 なら、高杉晋作です。            ──森田実著
     『「橋下徹」ニヒリズムの研究』/東洋経済新報社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 『「橋下徹」ニヒリズムの研究』の著者の森田実氏は、橋下徹
という政治家の批判者として、中島岳志北海道大学大学院准教授
を取り上げ、中島氏の言葉を紹介しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下という人は理念の政治家とかイデオロギーの政治家では全
 くない。一般的には日の丸・君が代とか、朝鮮総連に対する厳
 しい態度とかで保守系の政治家だと見なされがちですけれども
 日の丸・君が代の問題とて、そこにある精神の問題を重視して
 いるのではなくて、日教組に対するある種の見せしめとか、あ
 るいはそこに対するバッシングというもののツールとしてそれ
 が利用されている。ですから、彼にとっては既存政党とか、あ
 るいは市役所の職員とか公務員、組合全般もそうですし、そし
 て電力会社というのも等価の存在なわけです。関西電力は既得
 権益でけしからんと。自民党も関西電力も労働組合も、彼にと
 っては同じ古いものの象徴で、既得権益だし、それを徹底的に
 バッシングすることで弱者の側の憂さ晴らし、僕は「嗜虐的愉
 楽」と言うようにしているんですが、そういうものを与えて、
 そしてみんなが熱狂していく。(中略)結局起きているのは、
 ジェラシーの政治と言うか、引き下げデモクラシーみたいなも
 のなのではないか、というのが僕の率直な印象です。
                 ──森田実著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下氏の批判者はたくさんいます。橋下氏は、テレビタレント
時代からそうだったのですが、ある論点をとらえると、早口で徹
底的に相手を口撃する手法で圧倒します。
 さらにそのうえで、ツイッターのツイートで徹底的に相手をや
り込めるのです。実際に中島岳志氏も北海道大学の山口二郎教授
も同志社大学の浜矩子教授も、橋下氏の口撃やツイートの攻撃を
受けているのです。
 問題は、橋下氏については、マスコミがべったりとバックアッ
プしていることです。メディアはもっと公平に報道すべきなのに
まるで反省がないのです。    ―── [橋下徹研究/05]


≪画像および関連情報≫
 ●森田実の時代を斬る/森田実の言わねばならぬ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  いまや無責任なマスコミ「人気」が権力となる時代である。
  人気さえあれば選挙に強い。選挙に勝ちさえすれば権力者に
  なることができる。反対に、人気のない者は、どんなにすぐ
  れた政治家としての資質と能力をもっていても、当選できな
  い。「人気」はマスコミがつくる。マスコミに好かれた政治
  家は選挙で勝ち、マスコミから嫌われた政治家は排除されて
  しまう。マスコミをうまく使う者が勝つ時代である。理不尽
  である。大阪府には、マスコミがつくり出した大人気の政治
  家がいる。初めはマスコミがつくり出した人気者だが、今で
  はこの人気者は手がつけられないほどの巨大権力を持ってい
  る。一種の化け物である。橋下徹大阪府知事のことである。
  昨年9月、堺市長選挙があった。現職の木原市長は実績のあ
  るすばらしい市長だった。三期目をめざし、自民党、公明党
  民主党の地方市議会議員から一致した支持を受けていた。堺
  市民からも強い支持を受けていた。だが、そこへ橋下徹知事
  が、大阪府庁の部下を連れて乗り込んできた。堺市はこの直
  前に、大阪府と同格の政令指定都市になっていた。堺市は大
  阪府の下部機関から自立したのだった。橋下徹知事は、堺市
  の植民地化を狙って、大阪府庁の部下を堺市長にして、大阪
  府のもとに従属させようとした。部下を連れて乗り込んでき
  た橋下知事は大マスコミのバックアップを受けて、大阪府の
  部下を堺市長にすることに成功した。この時の論理は、「自
  公民三党相乗り反対」だった。マスコミが橋下側についた。
  その結果、善良で真面目で誠実で能力ある木原氏は敗れた。
      http://www.pluto.dti.ne.jp/mor97512/C06766.HTML
  ―――――――――――――――――――――――――――

右の人は誰?.jpg
右の人は誰?
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月17日

●「橋下氏はどのような弁護士だったか」(EJ第3344号)

橋下大阪市長はどういう人物なのでしょうか。
 大阪府知事から大阪市長への転身と何かと話題の多い人物なの
で、多くの人は好悪の感情を含めて、橋下氏に対して、それぞれ
自分なりの評価を下していると思います。しかし、それはあくま
で印象評価であって、正しく人物像をとらえているとはいえない
と思います。
 そこで、例によってEJでは、橋下氏が大阪府知事になるまで
のプロセスに重点を当て、その人物像を探ってみることにしたい
と思います。1991年に一浪して早稲田大学経済学部に入学し
1994年に卒業、その同じ年に司法試験に合格しています。金
儲けや事業に興味があったらしく、学生時代にビジネスまがいの
ことをやって失敗し、弁護士になることを決意したようです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下氏が弁護士になるきっかけとなったのも、早稲田の学生時
 代の経験です。革ジャンの卸売り販売の事業を行い、傷物の安
 い革ジャンを仕入れ、その傷に蝋を塗って隠し、詐欺まがいで
 高額で売り捌いていたのです。しかし、学生起業家の甘さで、
 騙されて不渡り手形を掴まされ、暴力団の取り立て屋から散々
 脅しをかけられたのをきっかけに、猛勉強して大学を卒業した
 1994年に司法試験に合格したのです。
         ──大阪の地方自治を考える会編/講談社刊
       『「仮面の騎士」橋下徹/独裁支配の野望と罠』
―――――――――――――――――――――――――――――
 2年間の司法修習で法曹資格を獲得すると、1997年に大阪
弁護士会に弁護士登録し、樺島法律事務所にいわゆるイソ弁とし
て勤務したのです。
 樺島正法弁護士は、人権派でも左翼思想を持ったタイプでもな
く、弁護士会内部では「温厚な弁護士」として知られています。
その樺島正法氏の橋下徹氏への印象です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 金の話ばかりしていた印象しか残っていない。うんざりするほ
 ど、お金への執着心が強い人物だと思った。橋下氏は弁護士会
 から回っている金にならない仕事は手早くこーなす一方で、若
 手起業家らを連日事務所に呼んで、人脈作りに励み、個人の仕
 事ばかり優先させていた。     ──産経新聞大阪社会部
              『橋下徹研究』/産経新聞社の本
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下氏の名誉のために付け加えると、その当時橋下氏は「1年
後には独立する」と周囲に宣言し、独立資金集めに必死であり、
文字通りカネ、カネだったようです。樺沢法律事務所では、固定
給は40万円、自分でとってきた仕事は、報酬の2割を事務所に
入れれば、あとは自分の収入になるシステムだったのです。
 そのためか、橋下氏は営業に熱心であり、飛び込みまでやった
といいます。その努力があって、橋下氏は、事務所に入所後3ヵ
月後には自分の収入が事務所からの固定給を超えたといいます。
そして、ちょうど10カ月後の1998年に、大阪に「橋下綜合
法律事務所」を設立して営業を開始したのです。
 独立した橋下氏は異業種交流会などに積極的に出席して、企業
関係者──とくに若手経営者、市会議員などには積極的に会い、
人脈を広げたのです。そういう営業活動のなかで、「アイフル」
グループの「シティズ」の顧問弁護士の仕事を獲得したのです。
そして、この仕事を8年間続けているのです。
 「シティズ」の顧問弁護士のときは、債務者側の年配弁護士に
対して一歩も引かず、理路整然とまくし立てたといいます。当時
シティズの法務社員の一人は、橋下氏は憎まれ役を買って出てく
れて本当に助かったといっています。
 このシティズの顧問弁護士時代のことを橋下氏は、読売テレビ
の「たかじんのそこまで言って委員会」で次のように話していま
す。2006年4月のことです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 消費者金融で一番問題なのは、グレーゾーン金利ですね。10
 万〜100万円未満の間だと利息制限法で18%です。これな
 ら十分に返済できる。しかし、グレーゾーン金利でいくと29
 %の金利、ちょっと前だと40%の金利。これはもう、金利だ
 けで精一杯で元金は減っていかない。実は、そこ、僕が顧問を
 やっていたシティズ。8年間は、このグレーゾーン金利の裁判
 で、一度も負け知らずでした。でも、この1月に、最高裁が、
 やっとそれをひっくり返しました。
         ──大阪の地方自治を考える会編/講談社刊
       『「仮面の騎士」橋下徹/独裁支配の野望と罠』
―――――――――――――――――――――――――――――
 利息制限法の上限を超える「みなし弁済」の規定をめぐって債
務者の起こす裁判で、橋下氏は「法律にのっとって貸しているの
だから、どこが問題なのか。それが悪というのなら、法律を改正
するしかない」と法廷で徹底的に主張し、裁判で勝利を勝ち取っ
ていたのです。
 このような体験を積むなかで橋下氏は、弁護士の世界の偽善め
いたものを感じていたようです。絶対的正義を遂行するという崇
高な話をしながら、基本的には弁護士という職業がサービス業だ
ということを弁護士たちは忘れている──橋下氏は、このように
いっているのです。
 こういう思いが有名な光市母子殺害事件の弁護団に対して向け
られた次の発言につながるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 光市母子殺人事件の弁護団に対して、もし許せないと思うなら
 一斉に弁護士に対して懲戒請求をかけてもらいたい。
          大阪の地方自治を考える会編の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
                ―── [橋下徹研究/06]


≪画像および関連情報≫
 ●光市母子殺害事件の弁護団に対する橋下氏の懲戒請求発言
  ―――――――――――――――――――――――――――
  大阪府知事に就任する前にタレントとしても活躍していた橋
  下が、2007年(平成19年)5月27日に放送された読
  売テレビの番組『たかじんのそこまで言って委員会』におい
  て、このようなむちゃくちゃな弁護をする弁護団には懲戒請
  求を送る方法があると提案。この時の放送では橋下だけでな
  く、司会のやしきたかじんやその他のパネラーも、弁護団に
  対してあまりにもひどい弁護団だと非難。そしてテレビを見
  ていたたくさんの人達が橋下の意見に賛同、この弁護団の懲
  戒請求を実施した。これは『懲戒請求』制度についての知識
  を世間へ広めるのに大きな影響を及ぼし、国民の司法への関
  心が高まるきっかけとなった。
        http://www.youtube.com/watch?v=bc54xKKS-vg
  ―――――――――――――――――――――――――――

タレント時代の橋下氏の懲戒請求発言.jpg
タレント時代の橋下氏の懲戒請求発言
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2012年07月18日

●「タレントとしての橋下氏の特質」(EJ第3345号)

 橋下徹氏は、タレントとしてはどういうスタートをしているの
でしょうか。
 橋下氏がはじめてタレントとしてデビューしたのは、2000
年6月、テレビではなく、ラジオの深夜放送だったのです。大阪
の劇団「南河内万歳一座」の座長・内藤裕敏がパーソナリティー
を務める「×××(クスクスクス」という生番組で、コメンテー
ターとして「17歳の犯罪」をテーマに3時間にわたって議論を
続けたのです。
 当時橋下氏は弁護士4年目で、13日のEJの写真でご紹介し
た茶髪でサングラスといういでたちで、とても弁護士には見えな
かったといいます。しかし、その弁舌はきわめて巧みであり、コ
メントも的を射る的確なものだったのです。
 番組への出演を口説いたのは、毎日放送ディレクター、井口岳
洋氏(現東京支社テレビ制作副部長)なのです。実は井口氏は橋
下氏の大阪府立北野高校ラグビー部の先輩に当るのです。当時井
口氏は、深夜番組への出演を承知してくれる弁護士が見つからな
いで苦労していたのです。そこで思いついたのが橋下氏だったと
いうわけです。
 しかし、橋下氏は最初はなかなか承知しなかったのですが、そ
こは先輩の権威で半ば強引に納得させたのです。そして実際に橋
下氏を出演させてみて、改めて井口ディレクターは、橋下氏のタ
レントとしての才能を認めたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 とても素人とは思えなかった。アガリもせず、気張りもせず、
 そのうえ、言葉に力があるなという印象を受けた。
           ──     ──産経新聞大阪社会部
              『橋下徹研究』/産経新聞社の本
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下氏がラジオの深夜番組に出演するようになってから半年後
の2001年のはじめのこと、放送プロデューサーのディープ・
スペクター氏は橋下氏とはじめて会っています。関西のローカル
の情報番組で顔を合わせたのです。その深夜番組の放送作家が橋
下氏のことを「面白い弁護がいる」とディープ・スペクター氏に
知らせたからです。
 何回か、共演を重ねるうちにディープ氏は「彼なら絶対に売れ
る!」と確信して、TBS系「サンデー・ジャポン」のプロデュ
ーサーに、橋下氏が出演したVHSテープを持ち込み、即レギュ
ラー入りが実現したのです。これが橋下氏のテレビ出演のいきさ
つです。在京テレビ局のプロデューサーは、橋下氏について次の
ように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 過激な発言も確信犯的で、何をどのように話せば視聴者にウケ
 るか、賛同をえられるか、よくわかっていた。彼にとってのス
 タジオは、法廷と変わらないのではなかったのではないか。
           ──産経新聞大阪社会部編の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下氏の最初の深夜番組をたまたま聞いていた朝日放送のプロ
デューサーの要請で、橋下氏は、朝日放送「ワイドABCDE〜
す」にジャーナリストの大谷昭宏氏と共演。その縁で「スーパー
モーニング」、「ムーブ!」にも共演するようになったのです。
 2003年4月から日本テレビ系全国ネット番組「行列のでき
る法律相談所」にレギュラー出演するようになり、同年7月から
関西ローカルの『たかじんのそこまで言って委員会』(読売テレ
ビ)でもレギュラーとなり、これらの番組におけるユニークな言
動で全国的に知名度が上がっていったのです。
 ところで、橋下氏の毒舌はどこからきたものでしょうか。
 それは、たけしからきているのではないかという人がいます。
橋下氏はちょうど小学校高学年で「漫才ブーム」を経験しており
たけしの影響を強く受けた世代なのです。
 そのため橋下氏は、たけしの著書、例えば『だから私は嫌われ
る』(新潮社刊)などを読んでおり、影響を受けていたと思われ
ます。橋下氏は未成年の犯罪などでも次のようなことを平気でい
いますが、そういうところはたけしとそっくりなのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ガキに人権なんてない。子供に人権を与えるなら、悪いことを
 したら刑務所に送るべきである。       ──橋下徹氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、たけしの場合は「あくまで芸人のたわごと」といって
逃げられますが、橋下氏の場合はあくまで弁護士であり、逃げ道
はないので、トラブルが発生しやすいのです。
 果たしてそういうトラブルが発生したのです。橋下氏がレギュ
ラーを務めていた「サンデージャポン」で、橋下氏の次の発言が
問題になったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     日本人の買春は中国へのODAみたいなもの
―――――――――――――――――――――――――――――
 局としては、橋下氏をやめさせたくないので、番組で謝罪すれ
ば、辞める必要はないと説得したのですが、橋下氏は耳を傾けな
かったのです。生放送の放映中に突然壇上から降りて、カメラの
前で謝罪して、番組を去って行ったのです。彼はタレントであっ
ても弁護士であり、その立場での発言には問題があったと認識し
ていたのです。
 橋下氏は自分が弁護士であることに強いこだわりを持っており
それは場合によっては、府知事や市長を上回るものがあります。
あるとき橋下氏は次のようにいっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  僕なんて弁護士じゃなかったら、誰も相手にしてくれない
―――――――――――――――――――――――――――――
                ―── [橋下徹研究/07]


≪画像および関連情報≫
 ●「サンデー・ジャポン」降板事件について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  橋下徹弁護士が「集団買春は中国へのODAのようなもの」
  (2003年10月5日放送分)と発言して、TBSの番組
  『サンデー・ジャポン』を降板させられたことは、広く知ら
  れている。その集団買春をした「大阪の建設会社」が訪販リ
  フォーム詐欺大手「幸輝」であったことは本ブログ「史上最
  大の買春作戦(上・中・下)」と「かたや死刑、かたや無罪」
  でくわしく述べてきた。2005年11月7日、京都府警と
  埼玉県警は「幸輝」大阪本社(吹田市広芝町)と東京支店を
  を一斉搜索。これまでに逮捕者17人。うち、13人と、法
  人「幸輝」が起訴され、現在までに9人が有罪。最高幹部4
  人と、法人「幸輝」を起訴した裁判が大詰めを迎えている。
  その「幸輝」の米盛昌敏社長には、闇社会との結びつきも指
  摘されていた。  http://www.actiblog.com/longan/52125
  ―――――――――――――――――――――――――――

「サンデージャボン」.jpg
「サンデージャボン」
posted by 平野 浩 at 02:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月19日

●「なぜ、大阪府知事になったのか」(EJ第3346号)

 橋下徹氏は、タレントとして芸能活動をしているときは、芸能
プロダクション「タイタン」に所属し、顧問弁護士も務めていた
のです。「タイタン」の社長は、お笑いコンビ「爆笑問題」の太
田光氏の妻で、創業者である太田光代氏です。
 橋下氏のもとには、彼が「行列のできる法律相談所」のレギュ
ラーを務めるようになった頃から、中央政界から、出馬の打診が
あったそうです。しかし、橋下氏は「興味がない」といい、その
窓口役を太田社長にまかせていたそうです。
 しかし、2007年頃から橋下氏は社長を通さず、自分で会う
ようになったのです。そして、2007年10月頃から橋下氏の
出馬がメディアで取り沙汰されるようになるのです。
 そのとき橋下氏は、当時の自民党の古賀誠選挙対策委員長にひ
そかに会い、大阪府知事選出馬を決めているのです。そのとき、
堺屋太一氏も同席しています。ただ、公表前にメディアに大阪府
知事選出馬が発覚したら、この話は最初からなかったことにする
という条件付きです。
 橋下氏が大阪府知事選に出馬することを最初にメディア関係者
に話したのは、大谷昭宏氏に対しての電話です。ジャーナリスト
の吉富有治氏は、自著でそのいきさつを書いています。
 ジャーナリストの大谷昭宏氏は、橋下氏の政界進出の話が出て
からは、何回も橋下氏に真偽を尋ねています。しかし、答えはい
ずれも「出ない」というもので、他のメディアには「2万%出な
い」といいだす始末。世間一般にはほぼ「出ない」という結論が
定着しつつあったのです。いずれにしても、2007年12月に
なればわかることです。
 そういう日が迫っていたある日、大谷氏は橋下氏に電話を入れ
たのです。ところが出ない。そこで留守電に次のように吹き込ん
でおいたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 これから「スーパーJチャンネル」(テレビ朝日)に出演する
 が本番まであまり時間がない。知事選に出るか出ないのかはっ
 きり教えてほしい。            ──大谷昭宏氏
  ──吉富有治著、『橋下徹改革者か壊し屋か/大阪都構想の
              ゆくえ』/中公新書ラクレ380
―――――――――――――――――――――――――――――
 そうしたら、本番10分前に橋下氏から大谷氏に電話がかかっ
てきたのです。出馬を確認すると「出ます」という返事。そこで
本人の了解を取って、そのあとの「スーパーJチャンネル」で発
表したのです。テレビ朝日の大スクープだったのです。
 ここで考えておくべきことがあります。それは、橋下氏が自民
党と公明党の支援で出ているということです。これについては、
橋下氏本人も「議会の協力がないと行政運営できないから」と理
由を述べています。
 しかし、自民、公明両党ともに党本部からの推薦・支持を見送
り、自民党は「府連推薦」、公明党は「府本部支持」とし、共に
府連レベルでの支援を決定したのです。公明党の「府本部支持」
は推薦よりは弱いものですが、橋下氏の「核武装論」などの過去
の過激発言もあり、「支持」にとどめたのでしょう。
 それでは、橋下氏はなぜ大阪府知事選に出ることを決めたので
しょうか。これについて吉富有治氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ところで、なぜ橋下弁護士は、府知事選に出ようと考えたので
 しょうか。後日、大谷(昭宏)さんが本人から聞いたところに
 よると、そのきっかけは、かれがコメンテーターとして出演し
 ていた『スーパーモーニング』(テレビ朝日のワンコーナー)
 「玉川総研」だったそうです。このコーナーはテレビ朝日の玉
 川徹記者が役所や天下り先の外郭団体、また官僚らによる税金
 のムダ遣いを追及するもので、これをスタジオで見た橋下弁護
 士は、役人らのあまりの無軌道ぶりに激怒。それまでは政治に
 興味がなかったにもかかわらず、番組を見て、完全に考えが変
 わったそうです。
  ──吉富有治著、『橋下徹改革者か壊し屋か/大阪都構想の
              ゆくえ』/中公新書ラクレ380
―――――――――――――――――――――――――――――
 確かに「玉川総研」は内容がしっかりとしており、私も見てい
たのです。現在でも「モーニングバード」(テレビ朝日)の木曜
日に玉川徹氏はコメンテーターとして出ているので、この日だけ
は「モーニングバード」を見るようにしています。
 かつての「スーパーモーニング」は毎日見ていたのですが、司
会者が羽鳥慎一氏になってからは「とくダネ!」を見ています。
こちらも問題はありますが、「モーニングバード」よりは多少マ
シだからです。羽鳥氏は局の意向に沿った司会をするので、嫌い
なのです。自分の意見を出そうとしないからです。
 このようにして、橋下徹氏は大阪府知事選に出馬し、2008
年1月27日に当選、そして、2008年2月6日に大阪府知事
に就任したのです。
 2月6日に大阪府庁に乗りこんだ橋下府知事は、さっそく幹部
職員を前にあの有名な演説をするのです。(≪画像および関連情
報≫参照)とくに次の言葉は痛烈なパンチになったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 皆さん方は破産会社の従業員である。その点だけは、厳に認識
 をしてください。民間会社であれば、職員の半数や3分の2の
 カットなど当たり前です。給料が半分に減るなどいうことも当
 たり前です。       ──橋下府知事の初登庁演説より
―――――――――――――――――――――――――――――
 かなり挑発的な言葉です。タレントとしての橋下氏しか知らな
い職員は「本気でいっているのか」とかなり面喰ったのです。弁
護士かもしれないが、しょせんは素人であり、できるはずはない
と甘く考えていたのです。    ―── [橋下徹研究/08]


≪画像および関連情報≫
 ●橋下大阪府知事の幹部職員への最初の演説
  ―――――――――――――――――――――――――――
  まず、職員の皆様にお願いしたいことがあります。総論です
  が、今の大阪は破産状態にあることを皆様方に認識して頂き
  たく思います。大変厳しい言い方になるかもしれませんが、
  皆さん方は破産会社の従業員である。その点だけは、厳に認
  識をしてください。民間会社であれば、僕も弁護士として破
  産管財の業務、破産の申告の業務をやりましたが、破産・倒
  産という状態になれば、職員の半数や3分の2のカットなど
  当たり前です。給料が半分に減るなどいうことも当たり前で
  す。特定の企業名を出すことはできませんが、ある金融機関
  に至っては、再建するまでは、ボーナスはゼロ。そして、そ
  の金融機関は見事、再生を果たし、ボーナス等も、最近に至
  って、支給されるという話も聞いております。地方公務員法
  など色々と法律上の制約もあり、その中でも皆さん方には労
  働三権が全て保障されていないという、そういうことも法律
  家として僕も十分認識していると思いますが、しかし、民間
  は本当に苦しみながら、血を流しながら何とかこの不景気の
  現状を乗り切っているのです。給料の削減、ボーナスの削減
  退職金の削減。これは民間では当たり前のことです。破産会
  社の従業員であるということは、すぐに人件費に手をつける
  ということではありませんが、但し、大阪府のおかれている
  状況というのは、皆様方、ぜひ厳しく認識して頂きたく思い
  ます。そして、この今の財政が危機状態にある大阪を立て直
  すには、やはり、今までと同じような行政のやり方、これを
  継続していては、何も変わらないと僕は思っています。
    http://www.pref.osaka.jp/kikaku/hatugen/200206.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

橋下大阪府知事初登庁.jpg
橋下大阪府知事初登庁
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2012年07月20日

●「堺市長選で知事は何をしたか」(EJ第3347号)

 政治評論家の森田実氏が尼崎に講演に行ったときの話です。そ
の夜主催者と飲みに行き、次のようにいわれたそうです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 森田さん。尼崎では絶対に阪神タイガース批判はしないでくだ
 さい。とくに夜、尼崎の一杯飲み屋では阪神タイガース批判は
 しないでください。巨人が好きだなどとは言ってはダメです。
 一杯飲んでいる阪神タイガースファンを怒らせたら、無事に帰
 ることはできませんから。絶対に阪神の悪口だけは言わないで
 くださいよ。                ──森田実著
     『「橋下徹」ニヒリズムの研究』/東洋経済新報社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 確かに大阪の居酒屋では、阪神戦のあるときは必ずテレビをつ
けており、タイガースが点を取ると大歓声が上がります。そんな
ところで巨人ファンだなんていったら大変です。そして、カラオ
ケでは必ずといってよいほど「六甲おろし」がかかります。とに
かく大阪の阪神贔屓は熱狂的なのです。
 ところが最近大阪では、阪神タイガースだけではなく、飲み屋
で橋下市長の悪口をいうのも危険な行為になっています。熱狂的
な橋下ファンがいて、けんかになりかねないからです。それほど
橋下氏の人気は凄いのです。
 大阪府知事に就任すると、橋下氏はエネルギッシュに大阪改革
に取り組み、それはテレビで頻繁に取り上げられたので、日本中
に大きな波紋を広げたのです。まさに「橋下劇場」がそこに展開
されたのです。
 それに橋下氏は頻繁に記者会見を開き、大阪には直接関係のな
い政治のニュースまで、記者が聞くのでコメントをしたり、それ
に加えてツイッターで自分の思いを発信したりで、大阪の首長の
レベルをはるかに超える注目を集めています。
 しかし、あまり報道されないこともたくさんあるのです。その
ひとつに堺市の市長選の話があります。これは橋下府政にとって
大きな誤算であったといえる出来事です。おそらく堺市は、橋下
氏が進めようとしている大阪都構想の大きなネックになり兼ねな
い存在になっています。
 橋下氏の大阪府知事就任は2008年2月であり、堺市の市長
選は2009年9月に行われたのです。ときあたかも民主党が自
民党から政権を奪取した直後に行われており、大阪ですらあまり
大きな話題にならなかったのです。
 橋下氏が大阪府知事に就任した2008年、堺市は木原敬介氏
が市長を務めていたのです。木原氏は、1964年に大阪府の職
員に採用され、地方課長や堺市助役、企業課長などを経て大阪府
を退職したのです。
 そして、2001年に木原氏は堺市長に初当選し、2期8年の
間、行政トップの座にあったのです。その間、堺市を政令指定都
市に移行させたり、臨海部にシャープの液晶・太陽電池パネル工
場を誘致したりと、堺市の発展に大きな貢献をしている名市長な
のです。
 橋下府知事も2008年11月に、堺市内で開かれた「木原敬
介堺市長を励ます会」に出席して、次のように賛辞を述べている
のです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 木原市長は自治体のトップの理想モデル、自治体トップの神様
 だと僕は思っています。木原市長がトップに立ってですね、確
 実に堺市が目に見える形でよくなつていることは皆様方はもう
 当然のこと、ほかの大阪府民もですね、「堺が元気ある」これ
 はもう、誰もがみんなそのように認識しているところでありま
 す(中略)。木原市長が堺の市長である限りは、皆さんは日本
 一幸せな市民であると思っています。逆になくなれば、堺市民
 は不幸になるんではないかと思います。──木原敬介著/『我
 知事に敗れたり』より/吉富有治著『橋下徹改革者か壊し屋か
        大阪都構想のゆくえ』/中公新書ラクレ380
―――――――――――――――――――――――――――――
 このように橋下府知事は木原市長を絶賛したのですが、木原氏
自身は橋下府知事のハラがいまひとつ読み切れず、賛辞のウラに
何らかの底意があるように感じたのです。
 木原氏の心配は当っていたのです。2009年9月に三選を目
指す木原市長に対し、橋下府知事は、7月まで府の政策企画部長
を務めた直属の部下である竹原修身氏を対抗馬として擁立し、橋
下府知事が全面的にバックアップすると宣言したのです。
 これは実におかしなことなのです。現職の知事がこれまで関係
が良好であった現職の市長を応援せず、自分の部下をその対抗馬
に立てて、知事自ら選挙を仕切って全力で応援したからです。し
かも、あれほど絶賛した木原市政を「慣れ合い」「談合」「太っ
た馬」と声高に罵り、木原陣営についた民主、自民、公明3党に
対しても「相乗りは最悪だ」と罵倒したのです。
 これは「木原対竹原」の選挙などではなく、竹原修身氏をそっ
ちのけにして、「木原対橋下」の選挙になってしまったのです。
何しろ現職の知事が選挙の前面に出てきたのですから、木原陣営
は勝てるはずがないのです。
 木原敬介氏は、このような橋下知事のやり方について、次のよ
うに述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 市長選で落選したのは私の責任ですが、自分の野望を実現する
 ためには謀略やデマ、中傷も辞さない橋下知事の政治手法は危
 険である。                ──木原敬介氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 かくして、木原氏は市長を追われ、竹原修身氏が現在堺市長に
なっています。橋下氏としては、これで堺市を自分の傘下に入れ
るのに成功したと考えたはずです。しかし、そうはならなかった
のです。            ―── [橋下徹研究/09]


≪画像および関連情報≫
 ●回顧録「我、知事に敗れたり」について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  2009年9月の堺市長選で落選した前堺市長の木原敬介さ
  ん(72)が、回顧録「我、知事に敗れたり」を出版した。
  市長選で橋下徹知事は、当時新人候補だった竹山修身市長を
  支援。3選を目指した木原さんは、4万7000票差で大敗
  した。回顧録で木原さんは、橋下知事の進める大阪都構想を
  痛烈に批判している。市長選で民主、自民、公明、社民の4
  党は事実上相乗りで現職候補の木原さんを支援。市議会(定
  数52)の約8割にあたる41市議が木原さんを応援した。
  橋下知事は街頭演説で、国政で対立する政党の相乗りを「な
  れ合い」「談合政治」と指摘して、有権者の共感を集めた。
  告示前まで圧倒的優勢が予想された木原さんの落選は「堺シ
  ョック」と呼ばれ、府内の首長や議員を震え上がらせた。木
  原さんは、堺の政令指定都市実現、シャープ新工場誘致、市
  財政健全化など実績を訴えたが、支持を得られなかった。回
  顧録で「橋下知事は分権改革を豪語しながら、自分の言いな
  りにならない首長は、例え実績があってもつぶしてしまう」
  「堺市長選の理不尽さを世に問わなければ、自由都市・堺の
  再生はない」「候補者に負けたのでなく、橋下知事の巧みな
  世論操作に負けた」と主張している。
        http://d.hatena.ne.jp/house6012/20100501/p1
  ―――――――――――――――――――――――――――

木原敬介氏の本.jpg
木原 敬介氏の本
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2012年07月23日

●「大阪都構想に反対する竹山堺市長」(EJ第3348号)

 大阪府知事(当時)は、自分の部下の竹山修身氏を堺市長候補
者として擁立し、木原敬介前堺市長の三選を阻んだことは前回述
べた通りです。橋下氏としては、これで堺市は自分の傘下に収め
たと考えたはずです。
 しかし、そうはならなかったのです。竹山氏は市長に就任する
と、いろいろな面で橋下知事との間で意見がぶつかるようになっ
て行ったのです。
 そして、遂に橋下知事(当時)は、竹山市長に対して「絶縁宣
言」をしているのです。2011年6月22日のことです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪橋下知事「絶縁宣言」・・・大阪都否定的な堺市長に≫
 大阪府の橋下徹知事は22日、自身が代表を務める地域政党・
 大阪維新の会の会合で、大阪都構想に否定的な堺市の竹山修身
 市長について、「(対立する)平松邦夫・大阪市長と同じ位置
 づけだ。一線を引く」と述べ、「絶縁宣言」をした。竹山市長
 は府の元政策企画部長で橋下知事の側近として仕え、2009
 年9月の市長選で知事の全面支援を受けて初当選した。しかし
 今月9日の市議会では、都構想の柱となる区長公選制について
 「(区長のもとに設けられる特別区を)別個の基礎自治体と認
 めることになる。(堺市の)7つの区は一体であるべきだ」と
 述べるなど、都構想に否定的発言を続けていた。橋下知事は会
 合終了後、報道陣に対し、「政治的には距離を置かざるを得な
 い」と明言した。  ──2011年6月22日付、読売新聞
―――――――――――――――――――――――――――――
 そして、橋下知事は2011年12月に大阪市長に転進すると
竹山市長に対し都構想に参加するよう働きかけを強めたのですが
竹山市長は賛成しなかったのです。2012年2月3日に橋下大
阪市長、松井知事、竹山堺市長の3者会談が開かれたのですが、
竹山市長は同調せず、物別れに終わったのです。詳細については
次のユーチューブ動画を見ていただきたいと思います。
―――――――――――――――――――――――――――――
http://www.dailymotion.com/video/xoc22u_yyyyyyyyyyyy-yyyyyy-yyyyyyy_news
―――――――――――――――――――――――――――――
 問題はこれをどう見るかです。今や関西では橋下人気は高く、
竹山市長を攻撃する声は多くあります。竹山市長を指して「狡猾
な役人」と罵る声も少なくありません。
 確かに、大阪都になれば4年間の退職金が4千万円から650
万円に減額されてしまうので、竹山氏は変心したのではないかと
いう声もあります。竹山市長はこういっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 堺市には二重行政はない。堺市は今の(政令市)制度でやって
 いくのがよい。堺市は政令市になって6年目で、もっと権限と
 財源を使って発展したい。納得できない条例案を議会に提出は
 できない。                ──竹山堺市長
―――――――――――――――――――――――――――――
 詳しくは大阪都構想のところでご紹介しますが、大阪都構想の
柱として、大阪維新の会が主張する「区長公選制」というのがあ
ります。言葉ずらから判断すると、「区長を選挙で選ぶ」という
ことになりますが、かなり違うのです。
 「区長公選制」は、「区長を選挙で選ぶ」というよりも、新た
に設ける特別区をそれぞれ別の基礎自治体(事実上の新しい市)
にするということで、実際には堺市の分割を求めているのです。
つまり、大阪都構想は「堺市を分割するもの」で、堺市にとって
問題があると竹山市長は発言したのです。
 これに対して橋下市長は、「誤解がある」とはいっていないの
です。橋下氏は、大阪都構想の異論についてはつねに「誤解があ
る」といってきたからです。また、よく口にする「協議し説得を
行う」ともいっていないのです。
 ということは、竹山市長の反対の指摘は真実を衝いていること
を意味しています。このように「説得する」という選択肢まで排
除している点で、大阪都構想が、スローガンや橋下市長の演説に
よって、市民から支持を取り付けることはできても、市民の利益
を預かる市長から、協力を取り付けるのは困難であることを自ら
認めたといえます。
 しかし、竹山市長の意志は固いようです。そこで、大阪維新の
会では、「維新八策」にならって「堺八策」を作り、維新が目指
す堺市の成長戦略などをまとめる予定です。さらに、堺市民向け
に大阪都構想を解説した冊子「堺ビジョン」の制作も準備するこ
とにしており、市議団の馬場伸幸代表は「都構想のメリットにつ
いて、わかりやすく説明したい」と話しています。あくまで20
13年9月の堺市長選を前に、堺市の合意形成を取り付けておき
たいのです。
 それに加えて、堺市維新団の提案で、松井知事の講演を市議会
特別委員会の研修会として実現し、大阪府市統合本部の議論など
が説明される見通しです。
 現在の堺市議会の定数は52であり、維新は第一会派の12人
です。つまり次期衆院選挙をにらんで接近している公明党の12
人を加えても、過半数に満たないのです。しかも、民主や自民な
どが反維新を鮮明にしつつあり、今後、市長選を見据えた駆け引
きが激化することは必至の情勢です。
 しかし、ここにきて橋下氏の影響力が落ちてきています。その
主因は、大飯原発再稼働でブレて容認姿勢に転じたことです。そ
のため、直後に行われた羽曳野市長選で大阪維新の会は初めての
敗北を喫しています。
 さらに『週刊文春』の不倫報道が追い打ちをかけると思われま
す。これによって、大阪府民の女性票が離れることは確実であり
大阪維新の会の「風」が果たして維持できるのか予断を許さない
状況になりつつあります。『週刊文春』はかなり政治を意識した
報道をしています。       ―── [橋下徹研究/10]


≪画像および関連情報≫
 ●「南江口のオジサン」のブログ/2011年5月12日
  ―――――――――――――――――――――――――――
  大阪市は、月内に「行政区制度調査研究会」を立ち上げるそ
  うです。同「研究会は、東京大の神野直彦名誉教授を顧問に
  大阪市立大や大阪大の教授ら有識者で構成」され、平松市長
  によれば「効率的な行政区について学識経験者らの英知を集
  めて研究しようということ」が目的で、行政区の区長の準公
  選制も「たくさんある選択肢の中の一つ」とのこと。(括弧
  内は日経新聞から引用)。これに対して、大阪府の「橋下知
  事は同日(5/11引用者)朝、報道陣の取材に応じ、都構
  想の肝である区長公選制と名前が似ている準公選制について
  「役人の究極のだましの手口と批判」」しているようです。
  皆さんは橋下さんの発言に違和感を感じませんか?私は大い
  に感じました、というか「案の定」というのが正直な感想で
  す。先の大阪市議会議員選挙の結果を受けて、橋下さんは確
  か、「選挙結果は大阪都構想が、大阪市民に受け入れられな
  かったということであり、維新の会の「敗北」だ」「大阪都
  構想をいったん白紙に戻して市議会他会派とあらためて協議
  したい」(いずれも著者による要旨)とおっしゃったはずで
  す。しかし、今回の発言によって、彼と維新の会には自分た
  ちの都構想を白紙に戻すつもりなど全くないことが端なくも
  明らかになりました。
   http://kadoojisan.blog135.fc2.com/blog-entry-162.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

橋下、松井、竹山3者会談.jpg
橋下、松井、竹山3者会談
posted by 平野 浩 at 03:19| Comment(1) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月24日

●「メディアの寵児/橋下大阪市長」(EJ第3349号)

 橋下徹大阪市長は、メディアの力を一番よく知る政治家の一人
であるといっても過言ではないと思います。それは次の橋下語録
によくあらわれています。
―――――――――――――――――――――――――――――
     メディアが相手にしなくなったら自分は終了
                   ──橋下語録
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下徹と小沢一郎──どちらもマスコミが好んで取り上げる特
異のキャラクターです。なぜマスコミが取り上げるのかというと
それは新聞の販売部数や視聴率に大きな影響が出るからです。
 とくに記事によって購読部数が大きく変化する夕刊紙──夕刊
フジと日刊ゲンダイでは、両者を取り上げたときとそうでないと
きは、売上高に大きな差が出るといわれています。ただ今のとこ
ろ、橋下氏と小沢氏の違いは、橋下氏は善玉、小沢氏は悪玉とし
て、取り上げられている点です。
 夕刊フジは、一日一回小沢氏の悪口を書いて販売部数を稼ぎ、
日刊ゲンダイは徹頭徹尾小沢氏を支持し、毎日小沢氏を取り上げ
ています。悪口でも取り上げられるのと無視されるのとでは影響
力が大きく異なります。「悪名は無名に勝る」という言葉がある
ように、小沢氏は、あれほど叩かれながら、根強い人気と固定支
持層によって安定的に支えられているのです。
 日刊ゲンダイ編集局次長・寺田俊治氏は、「小沢一郎ほど商品
力のある固有名詞はない」として、次のように述べています。橋
下徹市長とはレベルが違うといっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 まず、売り上げ以前の問題として、「国民の生活が第一」の公
 約を無視して増税に走る現政権を、大衆紙である日刊ゲンダイ
 が支持することはあり得ません。増税が阻止できるかどうかは
 小沢グループの興亡にかかっている。「粘れ小沢/あるぞ大逆
 転」など、直接応援する見出しになることがあるのは、致し方
 ないところです。ただ、率直に言えば「小沢一郎」ほど商品力
 のある固有名詞はありません。記事への支持はものすごい。野
 田首相を見出しにしても全然売れないです。橋下徹大阪市長と
 もレベルが全然違います。各メディアの世論調査結果などから
 見て、小沢氏を支持する層は有権者の2〜3割程度でしょう。
 だが、その2〜3割が強固で、崩れない。無罪判決が出ても、
 新聞やテレビが小沢バッシングをやめないのを「おかしい」と
 思う。民主党の変節に異議を唱える小沢氏を「正しい」と考え
 る。そんな人々が社会に一定割合いるのは、不思議でもなんで
 もありません。  ──日刊ゲンダイ編集局次長・寺田俊治氏
    2012年6月27日付、朝日新聞「オピニオン」より
―――――――――――――――――――――――――――――
 現在多くの人が橋下徹氏の実績を認めています。歯に衣を着せ
ない計算された適切な発言と情報発信のパワーと実行力、そして
物事を処理するスピードの速さなど、現代の政治が抱えている閉
塞感を吹き飛ばすような爽快感があるからだと思います。
 しかし、それはメディアが好感を持って橋下氏を取り上げてい
るので、そのように見えるのです。その点、正しいことをやって
いるのにメディアが素直に報道しない小沢氏とは大違いです。
 そして何といっても、危機に瀕していた大阪府の財政を立て直
し、2008年度の収支を11年ぶりに改善させ、収支不足から
一転して119億円の剰余金を計上するに及んで、橋下氏の人気
は沸騰したのです。しかし、それはメディアが橋下氏の行政手腕
を好意的に報道することによって、多くの人が橋下氏を稀代の政
治家のようにもてはやすことになったのです。
 橋下氏が知事に就任したのは、2008年2月のことです。当
時の橋下氏にとっては、弁護士ではあっても地方自治体の長は、
はじめての経験であり、行政の素人に過ぎない。むろんそういう
素人であったからこそ、問題点がよく見えて、気が付いたことを
果敢に進めて行くことができたともいえますが、それにしてもわ
ずか1年で府の財政の収支を改善するのは至難のわざです。
 それにこれほど鮮やかに改善が行われると、橋下氏の前の知事
である太田房江氏や横山ノック氏は今まで何をやっていたのかと
いわれても仕方がない状況です。そこで、まず、橋下氏が知事に
就任する前の大阪府がどういう状況であったかについてご紹介し
そのうえで、橋下氏が知事に就任して何をやったかについて見て
いきたいと思います。
 大阪府は、1998年度に当時の横山ノック知事が「財政非常
事態宣言」を出して財政再建に取り組んでいたのですが、効果が
上がらず、1999年には169億円の収支不足に陥ってしまい
それ以来ずっと財政赤字が続いていたのです。
 2000年2月に知事に就任した太田房江氏は、赤字解消に苦
しみ、遂に知事としてやってはならないことに手を染めてしまっ
たのです。それは「減債基金」を取り崩して赤字を埋める方法を
とったことです。
 減債基金とは、府債の償還財源を確保し、財政の健全な運営に
資するための資金を積み立てることを目的に設置された基金のこ
とです。つまり、自治体が歳入確保のために毎年発行する地方債
──大阪市の場合は「府債」の返済にあてるための積立金を減債
基金というのです。
 太田知事は、その減債基金から本来の目的以外に赤字を埋める
財源として、毎年500億円〜1000億円を取り崩し、一般会
計に入れていたのです。
 もちろん知事の独断でやったわけではなく、府議会にもきちん
と報告し、了承を得てやっていたのです。最初のうちは何の問題
もなく、年中行事のようにそれは行われていたのです。当然減債
基金はどんどん減少し、2004年度からは、償還期限を迎えた
府債が急増したことにより、減債基金がもう少しで底を打つ事態
に陥ったのです。        ―── [橋下徹研究/11]


≪画像および関連情報≫
 ●新・大阪市長に寄り添う太田房江知事の節度/ブログ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  2007年11月18日夜、大阪市長選の結果を気にしてい
  た経済界の多くの人がテレビを観ていて、「あれれ」「なん
  でや」と思ったそうです。当選確実となった平松邦夫氏に、
  ぴったりと寄り添い、バンザイを繰り返したり、関係者と握
  手したりしていた太田房江・大阪府知事の姿が映し出されて
  いたからです。今回の市長選では、自公が現職の関淳一氏を
  推し、民主が平松氏を推薦するという与野党対決の構図とな
  りました。太田知事は、これまで自公民の枠組みで当選を重
  ね、来年1月に行われる府知事選でも3選を目指して、自公
  民の推薦要請をする予定です。このため、今回の市長選では
  静観して、どちらの候補にも応援に行かなかったのです。と
  ころが、平松氏が当選確実との報道が流れると、平松事務所
  に駆けつけ、ちゃっかりとテレビに映り、アピールしている
  のです。 http://hirosec.iza.ne.jp/blog/entry/396706/
  ―――――――――――――――――――――――――――

横山ノック氏と太田房江氏.jpg
横山 ノック氏と太田 房江氏
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2012年07月25日

●「橋下府知事の猛烈な府政改革」(EJ第3350号)

 太田房江知事(当時)の禁じ手──減債基金に手をつけること
が報道されたのは2008年1月のことです。既に出馬を表明し
て選挙戦に入っていた橋下徹氏は、記者団に質問され、次のよう
に答えています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 記者:もし橋下さんが知事に当選すれば、この問題をどのよう
    に解決しますか。
 橋下:減債基金の取り崩しは一切認めない。歳入の範囲内で、
    歳出を行う。──吉富有治著『橋下徹改革者か壊し屋か
        大阪都構想のゆくえ』/中公新書ラクレ380
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下氏は当選し、府知事に就任すると、メディアの前で次の4
つのことを宣言しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.減債基金からの取り崩しはやらない
     2.2008年度の当初予算の白紙撤回
     3.9年間で6500億円の歳出カット
     4.今後は地方債をいっさい発行しない
―――――――――――――――――――――――――――――
 マスコミや大阪府民は、この橋下氏の発言に拍手喝采をしたの
です。しかし、減債基金からの取り崩しをしないで、地方債を発
行しなければ、予算は絶対に組めないのです。しかも、今後9年
間で6500億円の歳出をカットし、2008年度は1100億
円の歳出をカットするというのです。
 最初のうち、大阪府の職員は甘く考えていたのです。しょせん
は橋下氏は府政の素人であり、しかもやり方は性急過ぎる。その
うち、音を上げるに決まっていると。
 しかし、橋下氏のやり方は徹底していたのです。なぜなら、そ
のほとんどはメディアに公開され、多くの人が経費削減で橋下氏
が奮闘しているさまをテレビで見ることができたからです。まさ
に、橋下劇場そのものであり、十分に計算されたものだったので
す。橋下流の政治手法は、府民を味方につけて、官僚の頑強な抵
抗の壁を崩そうというものです。
 人件費の削減は、一般職の基本給を役職に応じて、約11%を
カットし、退職金のカットまで実施したのです。これによって、
大阪府の基本給は、都道府県では最低水準のレベルまで引き下げ
られたことになります。
 さらに庁内でのカラー・コピーを使用禁止にし、大相撲大阪場
所で優勝力士に贈られる知事杯を廃止、府政のPRを目的とする
テレビやラジオ番組をすべてカットしたのです。これらは、歳出
としてはそれほど巨額ではないものの、おそらく知事の決意を示
すものとして削減したのです。
 削減は外郭団体にまで及んだのです。橋下知事は、中之島図書
館と中央図書館以外の外郭団体はすべて売却するか廃止すると宣
言し、それに取り組んだのです。外郭団体というのは、日本にお
いて、官公庁の組織の外にありながら、その官公庁から出資や補
助金を受けるなどして補完的な業務を行う団体であり、大阪府に
は府立体育館や大阪府立上方演芸資料館──ワッハ上方をはじめ
そういう団体が83施設もあったのです。
 とくにもめたのはワッハ上方です。ワッハ上方は、現在吉本興
業の施設にあり、その年間経費は4億3000万円もかかるのに
対し、年間収入は約5000万円なのです。したがって、府の改
革PTは、観光名所・通天閣(浪速区)に移転する考えを打ち出
したのです。通天閣なら、スペースは10分の1になりますが、
賃料は年間2000万円で済むからです。
 しかし、吉本興業が11年度から2年間、運営に携わる意向を
示していることから、橋下知事は、2009年に年間約5万人の
入場者を2011年度に8倍の40万人に増やすことを条件に現
状維持を認めたのですが、もちろんその目標は達成できず、ワッ
ハ上方は、現松井知事に委ねられています。
 これに加えて橋下知事は、私学助成金の削減にまで手を染めて
います。私学助成金は、授業料の負担軽減などを目的に私立の保
育園や中学・高校などに出していた補助金のことで、総額600
億円の補助金を出しており、これまで予算上の聖域といわれてい
たものです。橋下知事は、これを小中学校で25%、高校で10
%の補助金をカットを断行したのです。
 これには、議会やPTAが大反発し、これによって学校側が授
業料値上げが見込まれることから、私学に子供を通わせる親から
猛烈な反対があったのです。
 しかし、橋下知事は2008年度と2009年度では補助金の
カットを強行する一方で、2010年度には、補助金のカットは
やめないものの、私立の小中学校や高校に通う年収350万円未
満の家庭に対して授業料を無償化する施策を行っているのです。
 さらに2011年度には、授業料無償化の対象になる世帯を年
収を610万円未満に引き上げています。補助金をカットするそ
の一方で、その浮いた資金で低所得世帯については、小中高校の
授業料無償化を実現させているのです。
 さらに橋下知事は、2008年4月、府下自治体の首長に対し
て、予定されていた補助金3357億円のうち79億円をカット
する提案を行ったのです。当然首長たちは猛反発します。
 このとき集まった首長のなかには大阪市長の平松邦夫氏がいた
のですが、もし補助金がカットされると医療費の助成がカットさ
れ、市民の負担が増えるとして、色をなして反対しています。他
の首長たちも同様に橋下知事を攻め立てたのです。
 橋下知事が涙を見せたのはこのときです。この場面がテレビで
報道され、府民たちは橋下知事を責め立てる首長たちを「抵抗勢
力」として、批判したのです。こういう場面にもテレビカメラを
入れているところに、橋下知事のしたたかな計算が読み取れるの
です。             ―── [橋下徹研究/12]


≪画像および関連情報≫
 ●ワッハ上方移転問題/高岳堂ブログ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  橋下知事がワッハ上方を通天閣に移す方針を表明したことに
  対して、現在入居するビルの大家である吉本興業が抗議文を
  発表したとのこと。「府に熱心に要請されたこともあり、恒
  久的な入居を大前提として(ビルを)府の要求仕様に従い建
  設した」「内装工事費も負担し」「賃料の切り下げにも応じ
  た」「正式な説明なしに一方的に発表され、遺憾。移転をす
  る場合は損害補償について府と協議する」との内容らしく、
  それに対して橋下知事は「府民をバカにした抗議だ。恒久的
  な施設なんて、世の中そんなに甘い商売はない。吉本さんだ
  けは賃料を得続けるなんて、がめつい」と言ったとか。まず
  府と吉本での交渉が決着していなかったことに驚き。知事の
  表明があったということは両者合意しているものだと思って
  いた。その上での「府民をバカにした」云々は「府民」の威
  を借りた恫喝に他ならない。国をヤーさん呼ばわりする知事
  なりゃこその言とも言える。吉本側からすれば「あれほど協
  力したのに」「話が違う」てなものなのだろう。献身したに
  も関わらず棄てられたようなもの。
  http://blog.livedoor.jp/kogakudo/archives/51545819.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

ワッハ上方/大阪府上方演芸資料館.jpg
ワッハ上方/大阪府上方演芸資料館
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2012年07月26日

●「太田府政は実績を上げている」(EJ第3351号)

 橋下知事の「涙」に関しては、賛否両論はあったものの、市長
たちに「抵抗勢力」のレッテルを貼ることには成功しているので
す。知事の「涙」についての賛否両論です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪賛成意見≫
 ◎知事には、泣くほどの真剣さがあるということが、伝わって
  きた。
 ◎泣いては議論ができないという人もいたが、笑っていては真
  剣な議論はできない。
 ◎市町村にお金がいるという事情は分かるが、カラの金庫の前
  でお金をくれといっても無い袖は振れない。橋下知事は妥協
  せず大阪府の大掃除を徹底的にしてほしい。ここは府民が我
  慢するしかない。
 ≪反対意見≫
 ◎感情で税金の使い道を決めるなといいたい。涙でなく理屈で
  相手を説得、納得させてほしい。
 ◎泣いてしまえば、すべてがパフォーマンスにしかみえなくな
  る。茶番のようで見ていてアホらしかった。
 ◎泣いたら話ができなくなる。泣きたいのはこっちの方だ。
    ──産経新聞大阪社会部編『橋下徹研究』/産経新聞社
―――――――――――――――――――――――――――――
 テレビを通じての橋下劇場によって、橋下知事が私欲を捨てて
頑張っていることは多くの大阪府民が認めています。知事の涙も
一部に批判はあるにせよ、真剣さのあらわれであるとして、評価
する府民も多いのです。
 しかし、太田前知事へ退職金が全額支払われていることについ
ての批判は非常に強いのです。その退職金の総額は8352万円
と巨額であるのに、橋下知事は返還を要求してしていないし、太
田前知事も返還する意思はさらさらないようです。もちろん、法
的には返還を求めることはできないのです。
 太田知事の前任者である横山ノック知事は、裁判で有罪になっ
たので、太田知事自身が退職金の返還を要求しているのです。横
山氏は分割で返還している途中で亡くなっているので、現在でも
遺族が返還を続けているそうです。
 しかし、大阪市の関淳一元知事(平松邦夫市長の前任者)は、
何の犯罪にもかかわっていないのに、大阪市の財政悪化などの責
任をとって、トップとしての道義的責任から退職金を返上してい
るのです。
 太田知事は、府知事退任後は、関西大などの客員教授に就任し
ときどきテレビにも出演しています。そして、橋下知事に対して
は、「府債残高を減らしていただきたいもの」というような注文
を出しているのです。
 そういう太田前知事に対し、橋下知事から「倒産会社の社員」
といわれた府の職員は、面白くないのです。大阪府庁の出先機関
で働いている一般職員から、次のメールがきています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎破産会社ならまず経営陣の責任が問われます。橋下知事は、
  責任者だった太田房江前知事や当時の議員たちの責任を問う
  べきでは・・。破産会社ならもらえるはずのない退職金を受
  け取った前知事と橋下知事が握手するシーンに違和感を覚え
  たのは私だけではないと思います。
 ◎太田前知事はテレビで批判ばかりしないで、自分がなぜでき
  なかったのか。なぜ、借金を増やしたのか説明してほしい。
           ──産経新聞大阪社会部編の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 それでは太田府政は、赤字を垂れ流す一方で、本当に何もしな
かったのかというと、必ずしもそうではないのです。
 添付ファイルを見てください。これは大阪府の歳入と歳出の決
算額と実質収支の推移を示しています。実質収支と言うのは、そ
の年度の実質的な黒字・赤字を示すものです。次の式で計算して
います。
―――――――――――――――――――――――――――――
  実質収支=(「歳入」−「歳出」)−翌年に繰り越す財源
―――――――――――――――――――――――――――――
 グラフを見ると、2000年に大阪府はマイナス383億円の
大赤字を計上しています。太田房江氏は、2000年(平成12
年2月)に府知事に就任しているのです。
 しかし、それから8年間にわたって大阪府は赤字を続けたもの
の、急速に回復しており、橋下知事が誕生する前年の2007年
には赤字は7億円にまで減少していたのです。そして、橋下府政
の第一年度の2008年には119億円の黒字化を達成している
のです。橋下氏は大変運が良かったわけです。もし、太田知事が
2008年も知事であれば、黒字転換を報告できたのです。
 こういう前任者の業績の上に立って、橋下氏は初年度に大幅な
歳出カットを断行し、第2年度の2009年には325億円の黒
字を計上しているです。これは確かに橋下知事の業績です。しか
し、メディアの報道はこういう点をあまり詳細に報道せず、何も
かも橋下氏の功績という雰囲気があるのですが、それは間違って
いると思います。太田房江知事の退職金返還が盛り上がらないの
は、こういう事情もあるといえます。
 2008年5月14日、橋下知事は記者会見で、職員の人件費
の削減案に言及し、次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 歴代の知事や副知事は職員に寄付の一つでもしてもらいたい
          ──「橋下語録」/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 大阪府知事の給料は、月額145万円、副知事は114万円。
他の都道府県に比べても、大阪府は高額なのです。
                ―── [橋下徹研究/13]


≪画像および関連情報≫
 ●太田府政の改革はなかったことになっている?/あるブログ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  府議会議員になってから8年8ヶ月、太田知事の頃から民間
  にできる事は民に任せるという提言を続けてまいりました。
  太田知事の頃は全く実現出来ませんでしたが、橋下知事にな
  って実現出来ました。それが、府営公園、府営住宅の維持管
  理です。この二つで毎年、約10億円の経費削減に繋がって
  います。
  上記のツイートでは、太田知事では全く民間への業務委託が
  なされなかったかの様な口ぶりですが、まあ間違っていまし
  て、大阪府では、太田府政の時に総務事務を他に先駆けて民
  間に業務委託するなどの取り組みを進めた実績があります。
  民間への業務委託で総計400人の人員削減の効果があり、
  経費削減効果も「府営公園、府営住宅の維持管理」以上の効
  果があったと見込まれている事業ですが、松井氏にとっては
  この「改革を行った」事実は存在しないことになっている様
  です。府議として「民間にできる事は民に任せる」という提
  言を続けてこられたのなら、府議に当選された直後に実施さ
  れたこの事業は当然お知りになられているはずの話だと思う
  のですが。僕ですら知っているんだし。
      http://d.hatena.ne.jp/opemu/20111105/1320437738
  ―――――――――――――――――――――――――――

大阪府の歳入歳出決算額と実質収支の推移.jpg
大阪府の歳入歳出決算額と実質収支の推移
posted by 平野 浩 at 03:18| Comment(1) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月27日

●「大阪市は減少、府の地方債残高は増大」(EJ第3352号)

 大阪府の毎年の実質収支は、橋下知事が就任した2008年度
から黒字に転換しています。しかし、これは橋下氏の実績という
よりも、太田房江知事が8年間かかって実質収支を黒字化する努
力をした結果なのです。橋下氏ひとりの実績ではないのです。
 しかし、実質収支が黒字化しても、当然のことながら、大阪府
の借金がなくなったわけではないのです。
 添付ファイルの棒グラフを見ていただきたいと思います。上の
棒グラフは、大阪府の地方債の残高です。一見するだけで、橋下
府政になってからの負債残高は急増しています。数字でも示して
おくことにします。
―――――――――――――――――――――――――――――
    ≪太田府政≫
     2001年 ・・・・・ 4兆0519億円
     2002年 ・・・・・ 4兆1456億円
     2003年 ・・・・・ 4兆2636億円
     2004年 ・・・・・ 4兆3298億円
     2005年 ・・・・・ 4兆2972億円
     2006年 ・・・・・ 4兆3005億円
     2007年 ・・・・・ 4兆3363億円
    ≪橋下府政≫
     2008年 ・・・・・ 4兆3986億円
     2009年 ・・・・・ 4兆5608億円
          ──吉富有治著『橋下徹改革者か壊し屋か
        大阪都構想のゆくえ』/中公新書ラクレ380
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下氏が知事になった最初の2008年度の地方債残高は、前
年よりも623億円も増加しています。続く2009年度になる
と、残高はさらに1622億円も増えているのです。どうしてこ
のようなことになっているのでしょうか。
 橋下知事は、就任前の段階から、次の3つのことを公約のよう
にいっていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
       1.歳入の範囲で、歳出を行う
       2.府債発行を原則ゼロにする
       3.減債基金取り崩しをやめる
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、これは明らかに理想論です。少なくとも府債を発行し
なければ予算は絶対に組める状況ではないのです。そこで、府の
幹部職員が橋下知事を説得し、「府債発行を原則ゼロ」の公約を
撤回させたのです。そのうえで、次の2つの債券を発行して、歳
入の不足を補ったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
          1.臨時財政対策債
          2.  減収補填債
―――――――――――――――――――――――――――――
 「臨時財政対策債」というのは、国の財源不足で、地方交付税
が十分に支払われなかったとき、その不足分を地方が地方債で集
められるのです。借金には違いないのですが、償還時には国が補
償することになっています。
 「減収補填債」は、税収が国の見積もりを下回った場合に発行
できる地方債のことです。大阪府は、この二つの特殊な地方債を
使って歳入を確保したのです。
 橋下府政の場合、就任前の公約と単年度の黒字額だけがメディ
アによって大きく報道されているので、本当の実態がよく見えて
いないのです。そのウラで、発行しないといってきた地方債が大
きく増加しているのです。
 もうひとつ、橋下府政において、問題のあることが行われてい
ます。2009年度における監査において、次のことが指摘され
ているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 府では実態として長期の貸付であるものを、年度末日に一旦全
 額の返済を受け、翌年度初日に再度貸付を行うという単年度貸
 付を5法人に対して、平成20年度中に1193億円行ってい
 る。これらの短期貸付は、いわゆるバブル崩壊後の府財政状況
 の悪化に伴い、府の歳入確保による財源対策の一環として、そ
 れまで各法人に長期で貸し付けていた資金の繰上償還を受け、
 その翌年度以降において単年度貸付(短期貸付)を反復・継続
 的に実施する方式で対応し、今日に至るものである。府の予算
 編成上、歳入欠陥とならないように、2日間だけ資金を引き揚
 げているだけであり、実質的には府からの長期貸付である。当
 該単年度貸付については、直ちに是正すべきである。
        ──2009年度包括外部監査結果報告書より
                ──吉富有治著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 何をいっているのかというと、大阪府が出資する5法人につい
て、年度末の3月31日に貸付金を全額返却してもらい、4月1
日に同額を貸しているという事実を指摘しているのです。つまり
一年ごとに貸しては返すの反復は、事実上一年を超える長期貸付
と同じであって、問題があるという指摘です。
 この操作によって2日間で大阪府が集めたお金は、全部で11
93億円にもなるのです。これだけの金額が5法人から戻ってい
ると、大阪府の財政数値は一日だけですが良くなります。つまり
赤字があっても隠されてしまうことになります。したがって、こ
の操作は「赤字隠し」以外のなにものでもないのです。
 これは全国紙にも掲載され、橋下氏は「どこの自治体でもやっ
ていることだが、こういう手法を許す会計制度がおかしい」と人
事のようなコメントを発しています。しかし、これは橋下氏の知
らないところで行われた形跡があります。太田府政でも行われて
きたものと思われます。     ―── [橋下徹研究/14]


≪画像および関連情報≫
 ●「橋下氏のコメントは詭弁である」/吉富有治氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「どこの自治体でもやっていることだが、こういう手法を許
  す会計制度がおかしい」の橋下コメントに対し、有富有治氏
  のコメント。「まやかし決算を許す制度があるから、その制
  度自体がおかしいと主張するのは、それこそまやかしではな
  いでしょうか。制限速度が時速60キロメートルの道路を、
  時速100キロメートルで走るのは道路交通法違反です。仮
  にスピード違反で警察に捕まったドライバーが「時速100
  キロメートルの速度を出せるクルマの能力に問題がある」と
  言い出せばどうでしょうか。警官からは「バカか、お前は」
  と一喝されるのがオチでしょう。制度(クルマの場合は、性
  能)が悪いのではなく、制度を利用してズルをする方がもっ
  と悪いのです」。──吉富有治著『橋下徹改革者か壊し屋か
        大阪都構想のゆくえ』/中公新書ラクレ380
  ―――――――――――――――――――――――――――

大阪府・大阪市地方債残高.jpg
大阪府・大阪市地方債残高
posted by 平野 浩 at 03:33| Comment(1) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月30日

●「なぜ、大阪府はWTCを購入したか」(EJ第3353号)

 現在、橋下徹大阪市長が代表を務める「大阪維新の会」は、な
ぜ誕生したのでしょうか。
 それには「WTC問題」について知る必要があります。WTC
とは次の言葉の略語です。
―――――――――――――――――――――――――――――
     WTC=World Trade Center
     大阪ワールドトレードセンタービルディグ
―――――――――――――――――――――――――――――
 WTCは、大阪市住之江区南港の咲州(さきしま)というとこ
ろにあります。新幹線の新大阪駅から電車で約30〜45分のと
ころにあるのです。1995年2月に竣工しています。地上55
階、地下3階、高さ256メートルのビルです。総工費は、11
93億円です。
 ところで、このWTCは、2010年6月1日に大阪府に譲渡
され、次の名前になっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
   Osaka Prefectural Government Sakishima Building
   大阪府咲州庁舎
―――――――――――――――――――――――――――――
 WTCが大阪府咲州庁舎になるまでに一体何があったのか──
それがWTC問題といわれるものであり、橋下氏と大阪維新の会
に深い関わりがあるのです。その本質は「橋下VS府議会」の対
立です。この問題についてしばらく書くことにします。
 WTCの営業形態は、大阪市と民間の出資による第3セクター
方式ですが、実質的には大阪市が大株主です。大阪市は、この建
設プロジェクトに1200億円もかけているのです。
 大阪市としては、このビルを中心に大阪南港を世界的な貿易拠
点にしようとしたのです。そうすれば、世界各国から貿易会社や
商社などがテナントとして入るので、十分採算が取れる──その
ように考えたのですが、時期も悪く、テナント計画が甘すぎたの
で、どうしてもテナントが埋まらないのです。どうやっても全体
の20%程度しかテナントが入らないのです。
 困惑した大阪市は、水道局や建設局などの部局をビルに入居さ
せ、通常よりも高い家賃を支払って、何とかWTCを維持しよう
としたのですが、そんなことが続くはずもなく、2004年に破
綻してしまったのです。
 そして、WTC運営会社は銀行との間で特別調停を結び、再建
を目指したのですが、再建努力は実らず、遂にWTCは大阪地裁
に会社更生法の適用を申請したのです。2度目の破綻です。負債
総額は約643億円、その負債規模はその年で8番目の大型倒産
になったのです。
 売却すれば、総工費のせいぜい10%で売れればよいところで
すが、倒産ビルに100億円もの大金をポンと支払うところなど
ないので、大阪市は困窮していたのです。そこに「WTCを買い
たい」と申し入れてきた人がいるのです。それが、橋下徹大阪知
事(当時)なのです。
 それからはじまったのが、いわゆる「WTC問題」です。橋下
氏は、WTCを大阪府の新庁舎にするというのです。実は橋下知
事は、知事に就任した直後から、WTCが会社更生法の適用を申
請する一年も前から、部下に命じて、WTCを新庁舎にした場合
のシミュレーションを行わせていたのです。
 橋下知事がWTCに目をつけたのには、次の2つの理由がある
のです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    1.現在の大阪府庁舎の老朽化問題を解決する
    2.道州制実現のさい関西州の州都ビルにする
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1の理由は、「現在の大阪府庁舎の老朽化問題を解決する」
ことです。
 現在の大阪府庁舎は、1926年に建築されており、築86年
です。現在、都道府県の現役庁舎ビルとしては最古のものです。
ひのため、震度6以上の地震がくると倒壊するといわれています
が、耐震補強をするには150億円もかかるのです。何回も立て
直しの計画もあったのですが、バブルが崩壊して税収が落ち込み
これまで実現できなかったのです。
 橋下知事は、耐震補強に150億円かかると聞いたとき、ひら
めいたのです。WTCは既に特別調停に入っていて、潰れる可能
性もあり、今なら耐震補強の費用で買い取れると考えたのです。
そこで熟慮の結果、WTCの買い取り宣言をしたのです。
 第2の理由は、「道州制実現のさい関西州の州都ビルにする」
ことです。
 橋下知事としては、WTCの展望台からの眺めは、秀吉がいつ
も大阪城の天守閣からそうしていたように、天下を取った気分に
なれるからです。橋下知事は、道州制の推進論者です。関西2府
4県に徳島県を加えて関西州として統合するプランを持っていた
のです。確かに、WTCの展望台からは、和歌山や兵庫、徳島ま
で見通すことができるのです。したがって、きたるべき関西州の
州都にWTCはふさわしいと橋下氏は考えたのです。
 しかし、WTC獲得には大きな壁が存在したのです。それは大
阪府議会です。府議会反対の最大の理由は、橋下知事が議会に何
も根回しせず、WTC買い取りをマスコミに宣言したことです。
とくにベテラン議員はカンカンだったといいます。
 しかし、橋下知事の頭のなかは府議会よりもマスコミ重視なの
です。何しろ「メディアが相手にしなくなったら自分は終了」と
いう人だからです。
 それにもうひとつ、現在の庁舎は大阪城の目の前にあり、文字
通り大阪の中心であり、これを移転すると、府政のみならず、庶
民に大きな影響を与えることになるとして、府議会は絶対に反対
だったのです。         ―── [橋下徹研究/15]


≪画像および関連情報≫
 ●「バブルの塔」ともいわれるWTC
  ―――――――――――――――――――――――――――
  大阪南港、コスモスクエア。国際都市大阪の地位を確固たる
  ものにしようと、大阪ベイエリアの3つの人工島を開発して
  世界でも稀に見る臨海副都心計画が2兆2千億円もの巨費を
  投じて進められた。その「テクノポート大阪」のプロジェク
  トをもとに、この場所にコスモスクエアの中心的ランドマー
  クタワーが築かれた。それが、「大阪ワールドトレードセン
  タービルディグ」、通称「WTCコスモタワー」だ。西日本
  最大の高さ256メートル、地上55階建ての超高層オフィ
  スビルは総工費1193億円を投じ、バブル崩壊後の199
  5年に完成した。大阪市の第三セクターが経営する。隣接す
  る「アジア太平洋トレードセンター」と同様、国際貿易の拠
  点としてオフィスを誘致する計画だったが、やはりバブル期
  の地価下落と南港への交通の不便さ、賃料の高さなどが理由
  でテナントが埋まらず、結果、大阪市の関連部署がこぞって
  「穴埋め」に入居する事態に。そのことからWTCコスモタ
  ワーは「大阪市役所第二庁舎」と揶揄されるに至った。
       http://osakadeep.info/2007/07/08/222130.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

大阪府咲州庁舎.jpg
大阪府咲州庁舎
posted by 平野 浩 at 03:14| Comment(2) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月31日

●「大阪維新の会設立の要因を探る」(EJ第3354号)

 2008年1月27日投開票の大阪府知事選で橋下徹氏は、自
民党大阪府連の「推薦」と公明党大阪府本部の「支持」を受けて
183万2857票を獲得して当選しています。民主・社民・国
民新党の「推薦」を受けた熊谷貞俊氏には、80万票以上の大差
を付けての勝利です。
 しかし、府議会は橋下知事(当時)に対して協力的ではなかっ
たのです。2009年2月24日の府議会の施政方針演説で、橋
下知事はWTCへの府庁舎移転を訴えたのです。この移転を可能
にするためには、次の2つを可決させる必要があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
    1.府庁舎を他の場所に移設するための条例案
    2.        WTCを買い取る予算案
―――――――――――――――――――――――――――――
 上記「1」に関しては、出席者の3分の2以上、「2」に関し
ては過半数が賛成する必要があるのです。これはかなり高いハー
ドルであるといえます。
 もっとも府議会側の反対意見のなかには、感情的なものばかり
ではなかったのです。WTCは、防災対策や交通アクセス、テク
ノポート計画(WTC周辺の開発計画)の頓挫などの多くの問題
を抱えていたのです。ある府議会議員は、WTCの問題点につい
て、次のように述べているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 WTCビルは南港の埋立地にある。もし、阪神淡路大震災のよ
 うな巨大地震がふたたび起これば、あの一帯は液状化現象に見
 舞われ、WTCビルだって傾くかもしれない。しかし、大阪府
 警や国の出先機関と連絡を取ろうにも一般道や高速道路をクル
 マは走れないだろうし、電車も不通になる。湾岸からどうやっ
 て、大阪の中心に向かうのか。──吉富有治著『橋下徹改革者
   か壊し屋か大阪都構想のゆくえ』/中公新書ラクレ380
―――――――――――――――――――――――――――――
 この指摘は実は当っていたのです。この発言は、2009年2
月時点のものであり、あの東日本大震災は起きていなかったから
です。実際に、2011年3月11日にWTCビルで、大阪だっ
たにもかかわらず、大きな問題が発生したのですが、これについ
て改めて述べます。
 橋下知事は、水面下でベテラン議員に会って会食したり、酒席
を共にしたりして、移転への賛成を求めたのです。そして、20
09年3月24日、庁舎移転条例案とWTC買い取りの予算案の
採決が行われたのです。
 結果は否決です。庁舎移転条例案は、112名の出席者のうち
賛成46、反対65で否決され、予算案も過半数に届かなかった
のです。橋下知事の完全敗北です。
 この日、橋下知事が発信したツイートは次のようなものだった
のです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 府民が選んだ府議と、府民が選んだ知事による結論の責任は
 府民にある。                ──橋下徹
          ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 この結果を受けて、平松邦夫大阪市長(当時)は、WTC再建
をあきらめると発表し、WTCは既に述べたように会社更生法の
適用を申請したのです。
 しかし、橋下知事はまったくあきらめていなかったのです。そ
して、2009年9月の府議会で、前回とまったく同じ内容の条
例案と予算案の提案を行ったのです。その採決は同年10月27
日に行われ、次の結果になったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  府庁舎を他の場所に移設するための条例案 ・・ 否決
          WTCを買い取る予算案 ・・ 可決
―――――――――――――――――――――――――――――
 これによって、庁舎の移転は否決されたものの、WTCの買い
取りは実現することになったのです。2010年3月、WTCを
大阪府へ85億円で売却する内容を含む更生計画案に大阪市議会
が同意したことを受け、大阪府議会はWTC購入費や移転費の支
出を認める予算案を可決し、WTCの売買契約が締結されたので
す。そして、同年6月1日付けで、WTCは所有権が大阪府に移
転され、「大阪府咲州庁舎」に改称されたのです。
 確かにWTCは、近代的設備を備えているインテリジェントビ
ルであり、85億円は格安の買物といえます。しかし、その一方
で、府庁舎の移転は認めないのでは、大阪府庁の老朽化問題は何
も解決しないので、矛盾しています。府議会には「橋下には勝手
なことはさせない」という雰囲気があるので、こういう結果が出
たものと思われます。そして府議会は、橋下知事が庁舎移転案の
条例を三度出してくることを警戒し、次のようにいって知事を牽
制したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 知事が3度目の条例案を提案すれば、議会軽視以外のなにも
 のでもない。            ──大阪府議会有志
―――――――――――――――――――――――――――――
 これに対して橋下知事は強気だったのです。「知事室と議会以
外はすべて移転する」と発言し、咲州庁舎を実質的な府庁舎とす
ると宣言しています。しかし、2010年度秋の府議会には、条
例案の提案を見送っています。
 しかし、このように府議会が抵抗するのをみて、橋下知事とし
ては危機感を感じたのです。そこで府議会のなかでも知事の提案
に賛成する議員も多くいることから、そういう賛成勢力をまとめ
る必要があると橋下知事は感じたのです。今考えると、これが大
阪維新の会ができるきっかけになったのです。
                ―── [橋下徹研究/16]


≪画像および関連情報≫
 ●WTC移転問題についての意見/上山信一氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  現在の大阪府庁舎は老朽化が激しく耐震性にも問題がある。
  優秀な若い人は現庁舎で働きたいとは思わないだろう。財政
  状況が厳しい中、庁舎問題の解決にはWTC移転が一番合理
  的だ。安上がりで素晴らしいビルがあるのに、今が良いとい
  うのはアナクロニズム(時代錯誤)に過ぎない。移転条例案
  が否決された3月に比べ、今回は大阪市がWTCのある咲洲
  (さきしま)のエリア開発やアクセス改善により協力的な姿
  勢を示しており、府市連携を象徴するプロジェクトになる可
  能性が出てきた。政治は今やシングル・イシュー・ポリティ
  クス(単一課題の政治)の時代だ。小泉純一郎元首相は郵政
  民営化で、県レベルでは嘉田由紀子・滋賀県知事が東海道新
  幹線の新駅建設中止問題を掲げたように、今の政治は象徴的
  なテーマを示すことで、改革の方向性が決まる。橋下知事も
  大阪が抱えるテーマの象徴である庁舎移転で、リーダーシッ
  プを示せばよい。この政治手法は普段は選挙に無関心な層の
  票を掘り起こす力がある。4年前の郵政選挙がまさにそうだ
  った。大阪府の場合も府民がWTCへの移転を支持すれば、
  11年4月の府議選に何らかの影響を与える可能性があるの
  ではないか。
           http://www.actiblog.com/ueyama/109836
  ―――――――――――――――――――――――――――

吉富有治氏の本.jpg
吉富 有治氏の本
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2012年08月01日

●「6人の会派離脱がすべての発端」(EJ第3355号)

 橋下徹氏が府知事に就任したときの大阪府議会では、自民と公
明が過半数を占め、与党を形成していたのです。それに橋下氏自
身も、その自公の推薦や支持を受けて知事に当選していることを
知っておく必要があります。
 2009年4月24日のことです。大阪府議会では、府庁舎を
他の場所に移設するための条例案の賛否を巡り、それに反対する
与党執行部の対応に反発した自民党大阪府議団の若手議員6人が
同府議団を飛び出して新会派を作ったのです。それが「自民党・
維新の会」です。しかし、全員が当選1〜2回の議員ばかりであ
り、離党はしないと決めており、自民党大阪府議団に「離団届」
を提出したのです。
 自民党・維新の会の代表である今井豊議員は、記者会見で次の
ように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 脱中央集権、脱官僚政治を強く主張する橋下知事に共鳴して
 立ち上る。     ──「自民党・維新の会」今井豊代表
―――――――――――――――――――――――――――――
 そのとき、同会の政調会長をしていたのが、現在大阪府知事の
松井一郎氏です。自民党・維新の会の6人は早くから橋下知事に
心酔し、府庁舎移転問題でも、条例案と予算案に賛成するよう、
水面下で動き、過半の議員から賛成を取り付けていたのです。
 これに危機感を抱いた自民党は、投票を無記名投票にして賛同
者の切り崩しを行い、条例案と予算案を否決したのです。当初自
民党府議団は、6人の行動を歯牙にもかけておらず、あくまで離
団は認めず、離党処分にすべきであると主張する議員が多かった
のです。たった6人では議案の提出権もないし、何もできないと
多寡をくくっていたのです。
 2012年4月25日付の産経新聞がそのときの自民党府議団
の決定を次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 自民党府議団は、新会派から出ていた離団届を受理するととも
 に離党を要請することを議員団総会で決めた。浅田均幹事長は
 「説得したが、決意が固かった。責任を感じている」と沈痛な
 表情を浮かべた。こうした自民の内部分裂に、民主の西脇邦雄
 幹事長は「自民内部でシビアな議論があったとは聞いていたが
 分裂に至るとは」と驚いた様子。「知事の応援団にしか見えな
 い」と首をかしげた。橋下知事は「霞が関(国)は『分権を叫
 ぶ自治体の議会が無記名投票か』と高笑いしている。お力をお
 借りして議会も地方分権に耐えうる組織にしていきたい」と歓
 迎。同日夕には、新会派メンバーが待ち受ける会議室を訪れ、
 がっちりと握手を交わした。  ──4月25日付、産経新聞
          ──吉富有治著『橋下徹改革者か壊し屋か
        大阪都構想のゆくえ』/中公新書ラクレ380
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、自民党・維新の会を作った6人のメンバーは、離党に
は応じず、そのまま自民党に残ったのです。その間、自民党大阪
府議団からは、1人、3人、5人と自民党・維新の会への参会者
が増加し続けたのです。このようにして、櫛の歯が欠けるように
自民党会派は減少を続けたのです。まるで、今の民主党と同じよ
うな状態が続いたのです。
 この動きが重要なヒントになって、橋下知事は自らを党首とす
る地域政党の設立を考えたのです。このとき小沢一郎氏を党首と
する民主党は、自民党からの政権交代を目指して着々と準備を整
えていたのです。橋下知事は、複数の分権派知事と首長連合を結
成して、民主党の政権交代を支持するなど、民主党による政権奪
取に期待感を示していたのです。
 こうした政治活動は、これまで橋下知事による地方政権を支持
してきた自民党や公明党を裏切る行動であったのですが、知事は
そのことを意に介さなかったのです。その時点で橋下知事は自公
両党よりも、民主党に期待していたといえます。
 そして、2010年4月1日、大阪府議会において、府議会議
員22名と会派「大阪維新の会大阪府議会議員団」を設立し、4
月19日に8名の府議会議員を加えて、大阪府に基盤を持つ政治
団体──地域政党「大阪維新の会」を立ち上げ、橋下知事自ら代
表に就任したのです。
 こういう事態の動きを見て、危機感を深めた既成政党、とくに
自民党は、大阪維新の会への参加が拡大するのを恐れて、大阪維
新の会に参加表明し、離党していない議員に対し、「反党行為」
として処罰の対象とすることを発表したのです。
 これに対して橋下知事は、ツイッターで次のように宣言してい
るのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    自民と大戦争をする。府内で自民と勝負をかける
                     ──橋下徹
        ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 そして、現在、大阪府内における大阪維新の会議員の占有率は
次のようになっているのです。誰もが予測していなかった結果が
そこにあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
   大阪府議会議員数 ・・ 57/109(52%)
    大阪市会議員数 ・・ 33/ 86(38%)
    堺市議会議員数 ・・ 12/ 52(23%)
―――――――――――――――――――――――――――――
 このように、橋下知事率いる大阪維新の会は、大阪府議会の過
半数を制するなど、大阪を支配下に収めつつあります。大阪維新
の会は、この勢いで国政を目指すと宣言していますが、関西はと
もかくとして、果たして全国的に影響が及ぶかどうかは、現時点
では判断不能です。       ―── [橋下徹研究/17]


≪画像および関連情報≫
 ●暴走が目立つ大阪維新の会/池田信夫氏のブログ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  このところいろいろな週刊誌などに「橋下徹首相」という特
  集が出る。私にもその取材が来たが、記者は「政治ネタには
  読者が反応しないのだが、大阪維新の会だけは別だ」といっ
  ていた。私も橋下氏が旧来のイデオロギーにこだわらないで
  「負の所得税」などの思い切った政策を提唱していることは
  評価してきたが、このところ暴走が目立つ。1つは、大阪維
  新の会の市議団が(2012年)5月議会に提出しようとし
  た「家庭教育支援条例案」だ。これは「発達障害の原因は親
  の愛情の不足だ」という怪しげな説にもとづいて「1日保育
  士」の体験を義務づけるものだ。この条例案は橋下市長が、
  「差別を助長する」として市議団に見直しを要請して撤回さ
  れたが、維新の会のガバナンスの弱さと知的水準の低さを印
  象づけた。もう1つは関西電力大飯原発3・4号機の再稼働
  をめぐって関電に対して不可解な要求を出して混乱を助長し
  ていることだ。
http://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2012/05/post-500.php
  ―――――――――――――――――――――――――――

大阪維新の会/松井一郎氏.jpg
大阪維新の会/松井 一郎氏
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2012年08月02日

●「咲洲庁舎に全面移転しない理由」(EJ第3356号)

 橋下府知事(当時)率いる大阪維新の会は、2011年2月の
時点で大阪府議会では29人の議員を擁しており、自民党の24
人を抜いて第1党になっています。しかし、府庁舎を移転させる
条例案を可決するには、大阪府議会109人の3分の2、すなわ
ち、72人以上の賛成が必要なのです。
 現在の大阪維新の会の議員は57人と過半数を制しているとは
いうものの、3分の2にするにはどこかの政党と組む必要がある
のです。そこで、現時点での大阪府議会の勢力関係を調べてみる
と、次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
       大阪維新の会 ・・・・ 57人
       公明党    ・・・・ 21人
       自民党    ・・・・ 13人
       民主党    ・・・・  9人
       共産党    ・・・・  4人
       その他    ・・・・  4人
         ──大阪府議会ホームページ
―――――――――――――――――――――――――――――
 既に大阪府知事は松井一郎氏になっていますが、松井知事が府
庁舎移転条例案を通そうと思えば、公明党と連携を組めば実現で
きるのです。現在、大阪維新の会と公明党は次期衆院選に向けて
協力関係にあり、大阪維新の会がその気であれば、いつでも実現
できるのですが、なぜ、やろうとしないのでしょうか。
 ここまで書いてきたことからわかるように、大阪維新の会誕生
のきっかけは、この条例案を可決させるためであったはずです。
にもかかわらず、松井知事が動かないのには理由があるのです。
それは、3・11と関係があるのです。
 2011年3月11日の東日本大震災では、大阪府内の揺れは
最大でも震度3であり、全般的に大きな被害はなかったのです。
築80年を超える府本庁舎も別に問題はなかったのです。しかし
インテリジェントビルの大阪府咲州庁舎では大きな問題が起こっ
てしまったのです。
 咲州庁舎では、天井の落下や床の亀裂など360ヶ所が損傷し
防火戸の破損、エレベーター全26基が緊急停止する事態になっ
たのです。それらのエレベーター4基には、男性5人が閉じ込め
られ、エレベーターを支えるワイヤロープが絡まり、救出に5時
間以上もかかるという事態が発生しています。
 また、地震発生から丸1日が過ぎた12日夜の時点でも、なお
8基のエレベーターが復旧しないなど、耐震性への不安が露呈し
たのです。こうした事態は、WTCの購入の是非をめぐる議論で
も、指摘されていたのですが、誰一人そういう意見には耳を傾け
なかったのです。
 しかし、咲州庁舎におけるトラブルについて、かねてから府庁
舎の咲州庁舎への全面移転について反対意見を唱えていた府議会
議長の長田義明氏(自民党)は、次のような発言をして物議をか
もすことになったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 大阪にとっては、天の恵みというと言葉は悪いが、本当にこ
 の地震が起こってよかった。   ──長田義明府議会議長
―――――――――――――――――――――――――――――
 このあたりに府議会議員の劣化が見られます。さすがの自民党
もこれはまずいと考えたのでしょう。自民府議団は長田氏を除団
処分としたうえで、議長辞職を勧告、自民党大阪府連は長田府議
長の大阪府議選における公認を取り消すこととしたのです。これ
によって、長田氏は無所属で立候補することを余儀なくされ、あ
えなく落選してしまったのです。
 橋下知事は事態を重くみて、咲洲庁舎の安全性について改めて
専門家に調査を依頼して次の指摘を受けています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ・非常に揺れやすい構造であり、災害対応を担う庁舎に使用す
  るには不向きである
 ・抜本的な解決には庁舎の高さ(55階)を10階程度低くす
  る工事が必要となる
―――――――――――――――――――――――――――――
 こうした専門家の指摘を受けて、橋下知事は、「復旧・復興の
段階において、咲洲庁舎を災害対応の拠点とするのは困難」と判
断し、「咲洲庁舎への全面移転はあり得ない」と明言、全面移転
は断念したうえで、70億円を掛けて、本庁舎東館の耐震補強を
実施する方針を示しています。
 橋下知事は、大規模災害発生時には、咲洲庁舎と大阪中央区の
本庁舎の両方に「災害対策本部」を設置して、被害状況に応じて
使い分ける内容の構想を示していたのですが、咲洲庁舎の方は断
念する判断を示したのです。
 咲洲庁舎については、耐震補強を急ぎ実施するとともに、咲洲
地区などの特区申請を念頭に、通常業務を行う庁舎として、防災
関係以外の部署を入居させる方針であるとも述べています。
 このようにして、咲洲庁舎に大阪府庁舎を全面移転する橋下構
想は失敗に終わったのですが、このWTC問題が大阪維新の会を
誕生させる重要な要因のひとつになったことは見逃せない事実で
あるといえます。
 もともとWTCビルを作ったのは大阪市です。しかも、それを
256メートルの高さにすると決めたのは、大阪府が関西国際空
港の対岸に「りんくうゲートタワービル」という高層ビルを作っ
たことに対抗し、競争上その高さにしたものなのです。このビル
も経営が破綻し、総工費の約10%で売却されています。
 とにかく、「大阪府」と「大阪市」は以前から仲が悪く、「府
市あわせ」(不幸せ)といわれるほど、ひどいものであったので
す。そのため、橋下氏は自ら大阪市長になって、幸せな大阪を作
ろうとしているのです。     ―── [橋下徹研究/18]


≪画像および関連情報≫
 ●「りんくうゲートタワービル」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  総工費は約659億円で、「インテリジェントオフィス」・
  同時通訳設備を持った800平方メートルの「国際会議場」
  ・「ホテル」などで構成される巨大ビル。1996年8月竣
  工。運営会社で大阪府の第3セクターのりんくうゲートタワ
  ービル株式会社が会社更生法の適用を申請し破綻したため、
  2005年12月以降はビルメンテナンス・不動産管理会社
  ビケンテクノの子会社、ベスト・プロパティが管理・運営を
  行っている。大阪府の支援策として、府関係事務所などはそ
  のまま入居を続け、融資(無利子)した63億円全額を債権
  放棄、さらに公共性の高い「国際会議場」と「てんぼーるり
  んくう」の運営維持のために、同じ第3セクター「財団法人
  大阪府臨海・りんくうセンター」に運営を委譲し、大阪府が
  「財団法人大阪府臨海・りんくうセンター」(現・財団法人
  大阪府タウン管理財団を通じて運営資金として、りんくうゲ
  ートータワービルに今後10年間で約30億円(支出額は約
  34億円)を支払うこととしている。奇しくもWTCと全く
  同じ運命を辿ったビルである。    ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

りんくうゲートタワービル.jpg
りんくうゲートタワービル
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2012年08月03日

●「なぜ、参事(51歳)は自殺したのか」(EJ第3357号)

 あまり報道されていない橋下大阪府知事(当時)の振る舞いを
取り上げます。橋下知事がどういう人物か知るためです。大阪地
方自治を考える会編『「仮面の騎士」橋下徹/独裁支配の野望と
罠』/講談社刊をベースにしています。
 2011年2月8日の大阪府議会総務委員会で、2010年度
の大阪府職員の自殺者が6人であることが発表されたのです。そ
れ以前の5年間では、職員の自殺者は、年平均1〜2人であり、
明らかに倍増しています。
 その6人のうちの一人、商工労働部経済交流促進課参事中塚信
雄氏(当時51歳)の2010年10月の自殺は、府議会本会議
で自民党議員が取り上げ、橋下知事の責任を追求したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 知事は、即座に事実の詳細を知る立場にありながら、適切な行
 動をとっていない。あなたの自己満足と自画自賛で、多くの人
 が傷ついている。      ──大阪地方自治を考える会編
  『「仮面の騎士」橋下徹/独裁支配の野望と罠』/講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 これに対して橋下知事は激昂したのです。「事実関係を十分調
べもせず、適切な行動をとっていないなどと断定するのはけしか
らん」といい、府議会議長に対して抗議文まで提出したのです。
 それならば、どのような適切な行動をとったのかというと、そ
れがはっきりしないのです。自殺が起きたのは、2010年10
月のことであるのに、商工労働部が調査を開始したのは、12月
20日のことであり、人事室の調査はさらに遅れ、2011年1
月20日からやっているからです。これが適切な行動とはとても
いい難いのです。
 なぜ、参事が自殺に追い込まれたのかを探るために、事実関係
を明らかにしておく必要があります。実は橋下氏の身近なスタッ
フが同じ時期にもう一人死亡しているのです。府の国際交流・観
光課長(当時52)です。この観光課長は自殺ではなく病死です
が、仕事の過密さが死亡の原因になったといわれているのです。
 2010年に橋下知事は、7月に中国、9月に台湾に行く用事
があったのです。7月は上海万博大阪デーに出席するため、9月
は経済ミッションを引き連れての訪台です。
 橋下氏は「これは当然政治的にリスキーなこと」と考えていた
のです。とくに訪台は、中国に気を遣って慎重にことを運ぶ必要
があると考えたのです。
 そこで、橋下知事は、部下に対して「台湾要人との会談をセッ
トするな」と伝えていたといっているのです。これが本当だとす
ると、一体橋下氏は何のためにリスクを冒して台湾を訪問する必
要があったのかわからなくなります。要人と会談しないのであれ
ば、副知事か部長を訪台させれば済む話です。知事自身が台湾に
行く以上、要人と会わざるを得なくなるのは必定です。「会談を
セットするな」という要求自体がナンセンスです。
 さて、7月末に橋下知事は上海万博大阪デーに出席しましたが
そのとき知事と同道したのが国際交流・観光課長です。知事から
中国対応をうまくやれとしかいわれていなかったので、彼は中国
領事館との交渉に神経をすり減らしてしまったのです。
 この観光課長は日本に戻ると体調不良を訴えて緊急入院し、急
性骨髄性白血病と診断され、入院一週間で、不帰の人になってし
まったのです。必ずしも橋下知事の責任ではありませんが、知事
の命令によって、必要以上に中国との関係に強いブレッシャーを
感じており、無関係とはいえないでしょう。
 9月5日〜8日まで台湾を訪問した橋下知事は、9月8日、関
西国際空港に帰省したとき、記者団に対し、次のように述べてい
るのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
        台湾では要人と会談していない
                ──橋下知事
―――――――――――――――――――――――――――――
 さらに、橋下知事は、9月14日の部長会議(知事、副知事、
各部長出席)の冒頭に次のように不満をぶちまけたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 先日の台湾出張について行政の弱い面を痛感し、残念だった。
 台湾との交流については、就任直後府は非常に神経過敏になっ
 ていて、当時の幹部からも、リスクが高いので、レセプション
 などへの参加も控えているとの話を聞いていた。ところが、い
 ざ出張に行くとなると、リスク管理を誰もしてくれず、私は丸
 裸の状態。今回の所管である商工労働部が準備した当初の日程
 を見ると、要人との面談まで設定されており、大変驚いた。当
 初言っていたリスクの話はどうなったのか。府では、台湾とは
 民間交流の範囲内という外交方針を決めていたはず。結局、私
 が一人で部局に直接指示して、日程を取り仕切り、事なきを得
 たが、あれだけリスクを言っていたのに、いざ行くとなると全
 く無くなるのはどういうことか。府民文化部と商工労働部はき
 ちんと連携をとっていたのか。台湾との関係は微妙であるとい
 うことは、誰もがわかる話。経緯を知りたい。
               ──大阪府のホームページより
―――――――――――――――――――――――――――――
 知事による名指しの叱責をを受けた商工部長は、知事に対して
「知事の方向性・慎重に対応すべきという思いが十分に伝わって
なかった」と詫び、そのふんまんを直接担当者である中塚信雄氏
とその上司である商工振興室長にぶつけたのです。そのため2人
の板ばさみにあった参事は次の言葉を残して自殺したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 仕事上の課題が解決しない。がんばってもがんばっても出口が
 見えない。もう限界です。疲れました。   ──参事の遺書
―――――――――――――――――――――――――――――
                ―── [橋下徹研究/19]


≪画像および関連情報≫
 ●職員自殺質問で橋下知事逆切れ──月刊「中央ジャーナル」
  ―――――――――――――――――――――――――――
  大阪府の幹部職員、商工労働部の中塚伸雄参事が自殺した問
  題は、ようやくある府議の勇気ある質問から橋下徹大阪府知
  事がその責任を認めざるを得なくなることによって表面化し
  た。ところが、事もあろうに、橋下知事は責任を認め自らの
  言葉の問題や指示について反省するどころか、質問をしたこ
  の府議に対し誹謗中傷ともとれる発言があったと逆切れし、
  議長に対処するように求めていることがわかった。この府議
  は、東大阪市選出の自民党の宗清皇一議員。宗清議員は去年
  12月14日の常務常任委員会で、自殺した職員の問題に触
  れ、「知事は即座に事実の詳細を知る立場にありながら、適
  切な行動をとっておりません。知事が責任を感じるとおっし
  ゃるなら、適切な行動をとる機会はいくらでもあったはずで
  す。ご遺族のもとにお悔やみに行かれたのでしょうか」「知
  事はよその組織に文句を言う前に、自らが長を務める組織で
  ある大阪府庁が、今どのような状態になっているか、しっか
  り足元を見て発言し、行動を取るべきであります。あなたの
  自己満足と自画自賛で多くの人が傷ついていることを自覚し
  てください。大阪府知事として、責任ある発言と行動をとっ
  てください」と知事の責任を追及し猛省を促した。至極まっ
  とうな質問である。     ──月刊「中央ジャーナル」
       http://chuohjournal.jp/2011/01/post_2993.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

記者会見における橋下府知事.jpg
記者会見における橋下府知事
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2012年08月06日

●「橋下知事による訪台騒動の真相」(EJ第3358号)

 「台湾要人との会談をセットするな」と部下に指示して台湾を
訪問した橋下知事(当時)、日本に戻っての第一声は「台湾では
要人と会談していない」だったのです。
 この事実からすれば、中国との関係を考慮して知事は台湾要人
との会談を避けたのだなと誰でも思います。2010年9月14
日の部長会議でも知事は次のように述べているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ところが、いざ出張に行くとなると、リスク管理を誰もしてく
 れず、私は丸裸の状態。商工労働部が準備した当初の日程を見
 ると、要人との面談まで設定されており、大変驚いた。府では
 台湾とは民間交流の範囲内という外交方針を決めていたはず。
 結局、私が一人で部局に直接指示して、日程を取り仕切り、事
 なきを得たが、あれだけリスクを言っていたのに、いざ行くと
 なると全く無くなるのはどういうことか。 ──橋下知事発言
        ──2010年9月14日/大阪府・部長会議
                 大阪府のホームページより
―――――――――――――――――――――――――――――
 この発言からわかることは、知事が要人との会談をセットする
なと指示したにもかかわらず、商工労働部は会談をセットしてお
り、知事は台湾へ行ってそれを知ったことになります。これに知
事は次のように対応したといっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 今回、当初の日程をキャンセルしたが、台湾サイドに対して失
 礼極まりない話。(中略)台湾サイドには、私が謝罪し、中国
 への配慮もという事情もお話しして、何とか納得していただい
 たが、これは私だけではなく、府の問題でもある。
         ──上掲9月14日/大阪府・部長会議より
―――――――――――――――――――――――――――――
 この橋下発言から読み取れることは、台湾に行ったところ、予
定していないはずの要人との会談がセットされており、知事自身
が台湾サイドと交渉し、謝罪して日程をキャンセルしたというこ
とになります。だから、帰国したとき、「台湾では要人と会談し
ていない」と発言したのでしょう。
 しかし、9月8日付の台北駐日文化経済代表処(中華民国の中
日外交団)のホームページには次のように出ているのです。この
ことは、大阪商工会議所の「大商ニュース」にも掲載されており
間違いのない事実です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎台北で大阪の訪問団による「大阪の魅力と投資環境」説明会
  が開催され、施顔祥・経済部長(経済大臣)が出席して挨拶
  した。    ──台北駐日文化経済代表処のホームページ
 ◎台北で開かれた大阪セミナーには、現地政府の幹部や企業関
  係者、地元メディアなど約160人が参加。森(貿易)部会
  長、橋下知事が自ら大阪の魅力を訴えた。陳菊高尾市長や施
  顔祥・経済部長ほか、現地経済界の要人らと会談。投資や観
  光、中小企業間の連携など、多方面での相互交流の拡大につ
  いて意見を交換した。   ──大阪地方自治を考える会編
  『「仮面の騎士」橋下徹/独裁支配の野望と罠』/講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 この記事によると、知事は要人と会ってもいるし、会談もして
います。橋下知事は「要人との会談」をどのように定義している
のでしょうか。正式に日時を決めて行うのが会談であり、それ以
外は会談ではないとでもいうのでしょうか。
 地方自治体のトップが公式に外国を訪問する以上、要人と会談
するのは当然のことです。しかし、外交上の問題を引き起こさな
いように、台湾に行く場合は、中国に根回ししておくことは当然
のことです。しかも、7月末に中国を訪問しているのですから、
そのさいに根回しができたはずです。
 対照的なのは、麻生渡福岡県知事(当時)の訪台です。麻生知
事は2011年1月に訪台し、堂々と馬英九総統や施経済部長と
会談するとともに、「アジア中小企業交流プログラム」を経済部
と共催しています。また、宮城県の村井嘉浩知事も橋下知事の訪
台の直前に訪台し、要人と会談しています。宮城、福岡の両県は
それぞれ中国の吉林省と江蘇省との友好関係があって、中国に特
別に気を遣う必要のある両県ですが、きちんと訪台をこなしてい
るのです。
 このように考えると、知事の訪台が「リスク管理」というほど
大袈裟な問題ではないのではないかと思えてきます。ところで、
部長会議で名指しで叱責された商工労働部長は、反論らしい反論
をしないで、知事に謝っています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 日程は早めにとりかかっていたが、知事の方向性・慎重に対応
 すべきという思いが十分に伝わってなかった。商工労働部とし
 て、通常、経済交流を強化するのが仕事であり、先方との関係
 強化に向けた対応が望ましいものと考えていた。今回の件では
 当初は、府民文化部に相談してふわっとした内容では調整して
 いたが、ある程度スケジュールが固まってからは十分な調整が
 できていなかった。        ──商工労働部長の発言
                 大阪府のホームページより
―――――――――――――――――――――――――――――
 この件だけでは判断できないものの、部長会議での橋下知事の
振る舞いを想像すると、かなりきついものいいをしており、部長
たちは知事には余計なことをいわず、必要最小限度の対応しかし
ていない様子が伝わってきます。
 この問題に関係はありませんが、橋下知事の訪台の後で、橋下
知事と中国の間であるトラブルが起きています。この件で橋下知
事はにわかに「中国に強い知事」として有名になるのですが、こ
れについては、明日のEJでお話しします。
                ―── [橋下徹研究/20]


≪画像および関連情報≫
 ●台北で大阪の訪台団の「大阪の魅力と投資環境」会開催
  ―――――――――――――――――――――――――――
  台北で大阪の訪台団による「大阪の魅力と投資環境」説明会
  開催。大阪府の橋下徹知事は外交部の招きに応じ、9月5日
  〜同8日の日程で代表団を伴い台湾を訪問している。この代
  表団のメンバーには、大阪府内の企業14社も参加しており
  9月7日には、台北市内のホテルで投資商談会を開催した。
  「両岸経済協力枠組み協議(ECFA)」調印後、台日企業
  間の往来はより一層さかんになり、台湾企業は日本企業が中
  国大陸市場に進出する際の重要な戦略パートナーになった。
  同商談会の席で、橋下知事は「今回台湾を訪問した大阪の企
  業は、台湾の企業と提携しアジア市場を開拓することを希望
  している。とりわけ、大阪の企業は環境と新しいエネルギー
  面においてきわめて進歩しており、2011年3月には大阪
  で国際レベルの会議、『大阪新エネルギーフォーラム201
  1』を開催する予定である。同会議の焦点は、電気自動車に
  集中しており、台湾企業も同会議に参加してほしい」とあい
  さつした。
http://www.taiwanembassy.org/ct.asp?xItem=158342&ctNode=3522&mp=202
  ―――――――――――――――――――――――――――

大阪府・部長会議.jpg
大阪府・部長会議
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2012年08月07日

●「中国に強い政治家/橋下徹氏」(EJ第3359号)

 2010年9月7日──橋下知事(当時)が台湾を訪問してい
たときのことです。尖閣諸島付近で操業中であった中国の漁船と
これを違法操業として取り締まりを実施した日本の海上保安庁と
の間でトラブルが発生したのです。船長や乗組員は逮捕され、日
中との関係に影を落とす事件が起こったのです。
 ところで、橋下知事は、2010年10月31日の上海万博サ
ミットフォーラムにおいて、ゲストスピーチを依頼されていたの
ですが、上海世博会(上海万博)事務協調局から、突然に招聘が
中止になったと電話で知らせてきたのです。
 橋下知事サイドが理由を問うと、「プログラムが変更になった
ため」としかいわないのです。時期から考えて明らかに尖閣問題
の抗議と思われます。依頼は8月にあったので、橋下知事は10
月29日から1日までの上海出張を計画していたのです。フォー
ラムでは約15分間のスピーチ後、パネルディスカッションに参
加する予定だったといいます。当然のことですが、その時点で府
庁関係者のごく一部の人しか、橋下知事が中国に講演に行くこと
など知る由もなかったのです。
 これに対する橋下知事の対応はきわめてエキセントリックなも
のだったのです。橋下知事は記者会見を開き、中国に対して批判
を繰り広げたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 尖閣問題があるからこそ、少しでも力になれればと思ったが、
 しょうがない国。信頼はマイナス2万点。
           ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 このとき、橋下氏はこんなこともいっています。「カネを持っ
ていても人間に一番必要なのは信頼である。中国人みたいな人に
はなりたくない」と。さらに「12月に予定している香港の観光
プロモーションも僕は行かない」。メディアがこの発言に飛び付
き、大々的に放映したことはいうまでもないことです。
 本来こういう問題は、上海万博組織委員会に大阪府として抗議
すべき外交問題です。それを橋下知事は自らメディアの前に出て
その顛末を話し、中国を批判したのです。テレビの寵児といわれ
る橋下知事のことであり、尖閣問題で日本中に中国への非難が高
まりつつあったときでもあったので、効果的と判断したものと思
います。
 そのため、メディアでは「中国に敢然と抗議する政治家・橋下
徹」という印象が定着したのです。このあたりが橋下氏の狙いで
あったかもしれません。
 これが効いたのか、数日後に中国総領事館が、「万博事務局の
事務的ミス」として謝罪し、橋下知事の再招聘を伝えてきたので
す。しかし、中国は謝罪などしていないのです。それでは、どう
して再招聘されたのでしょうか。大阪地方自治を考える会は、そ
の理由を次のように伝えています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ではなぜ、再招聘をされたのでしょうか?
 真相はこんなところでしょう。知事の暴言に、慌てたのは府庁
 の幹部たちでした。中国を相手に喧嘩をしたのでは、今後の観
 光客の大阪誘致や交流の妨げになると判断したに違いありませ
 ん。中国総領事館に駆け込み、助けを求めたというのが実情の
 はずです。あるいは、尖閤諸島の中国漁船衝突問題で揺れ動い
 ていた時期でしたから、中国側としても、中日友好に水をさす
 「ヒール役」を求めていたのかもしれません。招待をいったん
 キャンセルしておいて、中国への暴言を引き出す。その姿を中
 国国内や海外メディアにも流させる。急転直下に再招待する。
 そして友好的な態度をアピールする。絶妙の対応であり、中国
 国内世論のガス抜きに利用された節もあります。
               ──大阪地方自治を考える会編
  『「仮面の騎士」橋下徹/独裁支配の野望と罠』/講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 真実はどうであったかはわかりませんが、この中国による招聘
中止を利用した橋下氏のメディアの扱い方は非常に巧みであり、
日本だけでなく、中国にも強い印象を残しています。2008年
のことですが、橋下氏は、産経新聞のインタビューで次のように
述べているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 僕はテレビから出てきた人間ですから、府民は視聴者だと考え
 ていた。だから目の前の役所組織とか、業者とかじゃなく、府
 民にどう映えるか、そこだけを重視した。
           ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 2012年4月22日のことです。橋下徹大阪市長と松井一郎
大阪府知事は、大阪市内で中国の対日交流団体「中日友好協会」
会長に就任した唐家セン元国務委員の表敬訪問を受けています。
 橋下氏と松井氏が出迎えると、唐氏は「どうも」と笑顔で握手
し抱擁したのです。橋下氏が「時には日中がぶつかることもある
かもしれないが、心の底からの結び付きがあれば、乗り越えられ
る」と挨拶すると、唐氏が橋下氏を「日本政界の明るい明日のス
ター」と持ち上げる一幕もあったそうです。知日派として知られ
る唐氏は、橋下氏が大阪府知事だった4年前から大阪や中国で会
談を重ね、友好関係を深めてきたのです。
 このように現在のところ橋下氏は、中国から一目置かれている
政治家の一人なのです。そのきっかけは、2010年の自身の上
海招聘中止問題に対するエキセントリックな対応だったのです。
 民主党には中国に強いパイプのある政治家は誰もいないのが実
情です。かつては小沢一郎氏がいたのですが、民主党の首脳部は
小沢氏に政治活動をさせないようにブレーキをかけており、その
パイプを十分生かせなかったのです。
                ―── [橋下徹研究/21]


≪画像および関連情報≫
 ●橋本大阪知事が上海万博閉会式に再招待/あるブログより
  ―――――――――――――――――――――――――――
  大阪の橋本知事が上海万博の閉会式に再招待されて、やっぱ
  り行くことになりました。中国側は、事前に連絡したので、
  橋本知事がこれほどまでに激怒して「中国との信頼は失われ
  た」「中国のような人間になりたくない」「マイナス2万点
  だ」などと言うとは夢にも思わなかったと思います。中国側
  の担当者は「事前に連絡した事は親切で良い事だった」と思
  っていたと思います。事前に連絡したにも関わらず、これほ
  ど橋本知事が怒ったのは「予想外」だった事でしょう。日本
  と中国の文化の違いが良く現れていたと思います。中国に限
  らず、アメリカ人でもそういう所はあるのですが、日本人ほ
  ど「事前準備」を重視しません。大阪知事ともなれば、事前
  に細かく日程を組んで動いており、それを変更するのは「非
  常にストレスがたまって頭の痛い話」なのです。中国側の発
  想からすれば「柔軟に日程変更すればいいじゃない」と思う
  かもしれませんが、そうはいきません。知事はこの上海万博
  の為に多数の部下を動かしただけではなく、自分自身もスピ
  ーチを細かい所まで考えたりなど周到な準備を行っているは
  ずです。少なくともスピーチを全て「誰かのコピー」を使っ
  たりするほど無責任ではないでしょう。
  http://www.chugoku-kabu.net/blog/2010/10/post-252.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

中国で講演する橋下知事(当時).jpg
中国で講演する橋下知事(当時)
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2012年08月08日

●「民主党の政策には2つの柱がある」(EJ第3360号)

 ここまで現在大阪市長の橋下徹氏がどういう人物かを探るため
に、彼の弁護士時代、タレント時代、大阪府知事時代のエピソー
ドのいくつかをご紹介してきました。今回からは、橋下徹氏が政
治家としてどういう信条を持つ政治家なのかについて探っていき
たいと思います。
 政治評論家の森田実氏は、橋下氏の発言語録を分析して、その
政治信条を探っています。その語録の1つは次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 民主党が言ったことが実現しなければ、ことあるごとに「ウソ
 つき、ウソつき」とメッセージを発する。
           ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは、橋下知事(当時)が、2009年8月28日、政権交
代が成し遂げられた衆院選の期日前投票を済ませた後、記者団に
対して発した言葉です。この言葉によると、当時橋下知事は、民
主党の政策を支持していたことになります。
 今や民主党のマニフェストといえば、選挙目当てで、できもし
ないことを並べた公約ということで散々ですが、その柱になって
いるのは、次の2つです。
―――――――――――――――――――――――――――――
        1.脱官僚主導・霞ヶ関解体
        2. コンクリートから人へ
―――――――――――――――――――――――――――――
 民主党という党は、右から左まで幅広い政治家の集合体であり
そのため、いまだに党の綱領を作れないでいるのです。それがこ
の2つの柱にあらわれています。
 「脱官僚主導・霞ヶ関解体」は、長年続いている官僚主導の政
治を国民主導の政治に転換しようという主張です。経済の考え方
としては、自由競争や規制緩和による経済成長を重視し、そのう
えで福祉を充実させようという主張であり、基本的には新自由主
義に立脚しています。
 これに対して「コンクリートから人へ」は、日本の社会民主主
義者の主張であるといえます。つまり、経済成長よりも福祉を重
視するのです。そういう意味において、同じ社会民主主義の立場
に立つフランスとは、雇用と成長を重視する点で、日本の社会民
主主義者と異なっています。
 このように民主党という政党は、新自由主義者と社会民主主義
者の混成部隊なのですが、勢力関係でいうと、社会民主主義者の
勢力は弱く、新自由主義者が党の主導権を握っています。
 政治評論家の森田実氏によると、民主党に合流している社会民
主主義者は本物ではなく、現在では民主党の主流である新自由主
義者の予備軍化していると、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 民主党の主導権は、新自由主義の立場に立つ松下政経塾出身者
 旧新党さきがけ出身者、旧日本新党出身者、旧新生党出身者が
 握っています。彼らは皆、米国共和党の手先のような政治家で
 す。今日では旧民社党系政治家も新自由主義の立場に立ってい
 ます。しかも社会民主主義の旧社会党の出身者は非常に軟弱で
 す。日本の社会民主主義者は、本来、社会民主主義者が強く主
 張すべき「雇用・成長」を主張しないのです。日本の社会民主
 主義者はホンモノの社会民主主義ではないのです。それゆえに
 日本の社会民主主義者はたやすく新自由主義の予備軍になって
 しまうのです。民主党は新自由主義者の政党なのです。
                       ──森田実著
     『「橋下徹」ニヒリズムの研究』/東洋経済新報社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 2009年8月に民主党が自民党から政権を奪取できたのは、
民主党のマニフェストの中身もさることながら、国民が自民党に
強い嫌悪感を持っていたからです。それを民主党の代表として先
頭に立って訴えたのが小沢一郎氏なのです。そのとき、一番強く
出ていた主張が、「脱官僚主導・霞ヶ関解体」です。これは、小
沢氏の政治信条そのものなのです。
 2003年(平成15年)の民由合併以来、小沢氏は、民主党
の一兵卒として、代表として、また選挙担当として、ひとつずつ
選挙を勝ち抜いて、自民党から民主党への政権交代を実現させた
のです。まさに政権交代の立役者なのです。もし、民由合併なか
りせば、民主党は与党にはなれなかったのです。この小沢氏の政
治信条と橋下徹氏のそれとは似ている点があり、これについては
改めて述べます。
 しかし、民主党の主流派は政権を取ると、小沢氏と距離を置き
「脱官僚主導・霞ヶ関解体」どころか官僚機構に屈服し、公約に
ない消費税増税をこともあろうに自民党や公明党と組んで、通そ
うとするに及んで、小沢氏を中心とするグループは、既に民主党
を離党し、「国民の生活が第一」党を設立させています。
 しかも、党を分裂させてまでして可決させようとした消費増税
法案も、自民党や公明党の出方によっては成立は風前の灯になっ
ています。もし、解散・総選挙になったら、民主党は、元の少数
政党に転落することは確実の情勢です。
 冒頭の橋下氏の語録は、民主党が勢いに乗って政権を奪取する
時点のものであり、民主党の掲げる「脱官僚主導・霞ヶ関解体」
に共鳴し、そこに期待したからこそ、ああいう表現になったと思
うのですが、それが失望に変わるのも早かったのです。
 民主党のマニフェストは、今ではすべて小沢主導で作ったとい
われていますが、そんなことはないのです。小沢氏には、民主党
生え抜きではないという遠慮があり、マニフェスト作成メンバー
の意見を十分に取り込んでいるのです。たとえそれが自らの主張
と違っていてもです。しかし、小沢氏は「脱官僚主導・霞ヶ関解
体」には強くこだわったのです。この点が橋下氏の主張に通ずる
ものがあるのです。       ―── [橋下徹研究/22]


≪画像および関連情報≫
 ●森田実の言わねばならぬ【1195】より
  ―――――――――――――――――――――――――――
  民主党の2009年総選挙マニフェストの中でマスコミがこ
  ぞって支持し支援した公約は「政治主導、脱官僚、霞が関解
  体」だった。総選挙に勝った民主党はさっそく「脱官僚、霞
  が関解体」に取り掛かった。ほとんどすべての中央官庁で、
  政務三役(大臣、副大臣、政務官)がすべてを取り仕切ること
  を宣言した。ある中央官庁では、大臣が事務次官、局長ら幹
  部の仕事をすべて取り上げてしまった。事務次官、局長は大
  臣の承認なしに行動することができなくなった。その上、天
  下りを全面禁止とする国家公務員法改正案が作成された。法
  案作成段階で一部手直しされたが、中央官庁内の空気は一変
  した。政治家の天下り批判に便乗したマスコミの反官僚キャ
  ンペーンが展開された。多くの官僚は使命感を減退させた。
  この改正案は廃案になったが、中央官庁のしらけた空気は元
  に戻ることはなかった。民主党は百数十名の国会議員を大臣
  副大臣、政務官として中央官庁に送り込み、官僚の仕事を奪
  おうと試みたが、中央官庁約30万人の官僚の仕事を百数十
  名の国会議員で請け負うことは、もともと不可能なことだっ
  た。民主党の指導者たちの考えはあまりにも幼稚だった。こ
  のため民主党政権になってから、行政は著しく停滞すること
  になった。
      http://www.pluto.dti.ne.jp/mor97512/C07143.HTML
  ―――――――――――――――――――――――――――

森田実氏.jpg
森田 実氏
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2012年08月09日

●「新自由主義に立つ橋下市長」(EJ第3361号)

 民主党が自民党から政権交代した時点では、民主党の政策に関
心を示していた橋下徹氏は、その後急速に民主党に関心を失い、
民主党を批判する発言が多くなっています。その種の橋下語録を
ピックアップしておきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎民主党には失望感、絶望感、権力志向の強さをまざまざと見
  せつけられた。これぞ究極の中央集権志向政党
 ◎民主党は公務員組合から決別しないといけない。政権交代の
  時の民意は、役所を変えてという一点だったと思う
 ◎直轄事業がコンクリートから人へのオンパレード。社会主義
  か共産主義か何をやりたいのか分からない
           ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 さて、2010年6月8日のことです。首相が鳩山由紀夫氏か
ら菅直人氏に代わったとき、民主党政権について記者団に質問さ
れ、橋下氏は次のように答えています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 僕は、競争を前面に打ち出して規制緩和する小泉・竹中路線を
 さらにもっともっと推し進めることが、今の日本には必要だと
 思っている     ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下氏は、小泉・竹中路線──すなわち、構造改革路線を強力
に推進すべきであると主張していますが、この発言によって橋下
徹氏の政治手法は、米国共和党政権の経済理論の指導者であるミ
ルトン・フリードマンのやり方──新自由主義の立場に立ってい
るように思われます。
 ところで、新自由主義とは何でしょうか。
 新自由主義は、これからの日本の経済政策を考えるとき、理解
しておくべき重要テーマであると思うので、歴史的観点からも少
していねいに述べることにします。
 1970年代まで、先進諸国の経済政策の主流はケインズ主義
であったのです。これによって先進各国の経済は高度成長を成し
遂げることができています。
 ケインズ主義は「フォーディズム」とも呼ばれているのです。
フォーディズムとは、米国のフォード・モーターの科学的管理法
を応用した生産システムのことであり、大量生産、大量消費を可
能にした生産システムのモデルのことです。高度成長には、欠か
せないモデルであったのです。
 ケインズ主義においては、「市場」というものを次のようにと
らえるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 市場は基本的に不安定なものであり,自己調整機能をもたな
 いものである
―――――――――――――――――――――――――――――
 市場にはこのように自己調整機能がないので、その市場を円滑
に機能させ、持続的な経済発展・成長を実現するためには、政府
がマクロ経済政策──すなわち、適切な金融財政政策を行い、有
効需要を創り出す必要があると考えるのです。
 このようにケインズ主義においては、政府は完全雇用を目指し
て積極的に経済に介入するのです。具体的には、公共事業による
景気の調整を行い、主要産業の国家によるコントロールなどを推
進するのです。潤沢な財政支出を基にして国家が経済に積極的に
介入し、製造業を中心とした産業や貿易を振興して経済成長を図
るという考え方がケインズ主義です。
 確かにこのケインズ主義によって、先進国の経済は1970年
代までは順調に成長してきたのです。しかし、時代が進むにつれ
て、企業は高コストに見舞われ、政府は財政危機に陥って、景気
が悪いのにインフレーションが進行するスタグフレーションが世
界を襲うに及んで、フォーディズムの維持は、事実上困難になっ
てきたのです。
 それに官僚機構の非能率性も加わって、「大きな政府」や「福
祉国家」と呼ばれる体制は、政策の有効性への疑問を招くように
なります。とくにマネタリストやサプライサイダー(供給重視の
経済学)から批判の的にされたのです。
 ケインズ主義が国家にもたらす最も典型的な結果として「英国
病」があります。当時、英国は慢性的な不況に陥って財政赤字が
拡大し、スタグフレーションが進行、失業率が増大したのです。
 サッチャー政権は、電話・石炭・航空などの各種国営企業の民
営化、労働法制に至るまでの規制緩和、社会保障制度の見直し、
金融ビッグバンなどを実施し、労働者を擁護する多くの制度・思
想を一掃し、英国病を克服したのです。しかし、サッチャー首相
の在任中は不況は改善されなかったのです。
 こうした行き詰まりの状況を生み出した責任は、国家による経
済への恣意的な介入と政府部門の肥大化にあるというのです。そ
して、フォーディズムに代わる資本主義の調整様式として、新自
由主義が唱導されたのです。
 新自由主義の創始者は、ミルトン・フリードマンという米国の
マクロ経済学者です。マネタリズムなるものを主唱して、ケイン
ズ政策を批判し、ノーベル経済学賞を受賞しています。
 ミルトン・フリードマンに関する本で私が最も参考になったの
が次の書籍です。
―――――――――――――――――――――――――――――
    ロバート・ライシュ著/雨宮寛・今井章子訳
      『暴走する民主主義』/東洋経済新報社
―――――――――――――――――――――――――――――
 本書は「民主主義の力が弱まりつつある資本主義」がどれほど
危険であるか警鐘を鳴らし、その弊害を指摘しているからです。
≪画像および関連情報≫に同署の「序」を示しておきます。
                ―── [橋下徹研究/23]


≪画像および関連情報≫
 ●ライシュ著『暴走する民主主義』の序・パラドックス
  ―――――――――――――――――――――――――――
  1975年3月、経済学者のミ〜トン・フリードマンは、そ
  の18ヵ月前に民主政府サルバドール・アジェンデ政権を転
  覆して軍事政権を樹立したチリのアウグスト・ピノチェト大
  統領から招待を受けた。フリードマンのチリ訪問について米
  国メディアは強く批判したが、彼は大統領を支持しているわ
  けではなかった。むしろ、ピノチェトに自由市場資本主義を
  採り入れるよう説得に行ったのである──長年にわたる民主
  政権下で広がっていた経済規制を緩和し、膨らんだ福祉予算
  を削減し、国を開放して外国との貿易や投資を積極的に行っ
  ていくことを進言するためであった。フリードマンはチリで
  の講演の中で、自由な市場経済には、政治的自由と民主化の
  持続が前提条件であるという彼の持論を唱えた。ピノチェト
  大統領はフリードマンの自由市場経済のアドバイスには従っ
  たものの、その冷酷な独裁政権をその後15年間も続けた。
  そして、奇しくもこの二人は、2006年末に数週間違いで
  相次いで他界したのであった。
       ──ロバート・ライシュ著/雨宮寛・今井章子訳
           『暴走する民主主義』/東洋経済新報社
  ―――――――――――――――――――――――――――

ミルトン・フリードマン.jpg
ミルトン・フリードマン
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2012年08月10日

●「衆院解散は今国会の会期末か」(EJ第3362号)

 8月8日夜の自民党の谷垣総裁と野田首相のドタバタ劇、あれ
は一体何だったのでしょうか。
 次期衆院選をめぐる政局ですが、その総選挙を契機に、大阪維
新の会は国政に進出する構えを見せており、消費税政局の動きと
関係があるので、EJなりの分析をすることにします。
 国民の声を無視し、謀略の限りを尽くして、本日参院で可決さ
れる「社会保障と税の一体改革」は4人の財務大臣による共同作
業で実現されたのです。改めて日本という国は、財務省──官僚
機構のトップ組織によって支配されている国であることがよくわ
かります。4人の財務大臣の名前を上げておきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
      第3・4・5代財務大臣/谷垣禎一氏
         第11代財務大臣/与謝野馨氏
         第13代財務大臣/菅 直人氏
         第14代財務大臣/野田佳彦氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 社会保障と税の一体改革の原案は、第13代の財務大臣を務め
た菅直人首相の下で、たちあがれ日本を離脱して民主党入りし、
経済財政担当大臣に就任した与謝野馨氏が作り上げたものです。
与謝野氏は第11代の財務大臣を経験している人物です。
 それを受け継いだのは、第14代の財務大臣経験者である野田
佳彦首相なのです。野田氏は民主党の代表選で消費増税のことは
触れないで首相になると、影の首相といわれる勝栄二郎財務事務
次官が率いる財務省の全面支援を受けて、すべてを捨てて消費増
税法案の成立に突っ走ったのです。そして野田首相は、あろうこ
とか野党の自公両党と談合し、3党合意を取り付けて消費増税法
案を衆院で可決、参院に送ったのです。これに協力したのが、小
泉内閣で3期財務大臣を務めた谷垣禎一自民党総裁なのです。
 しかし、これに反発して小沢グループが大量離党したのですが
そのとき、首相周辺は小沢一郎が離党すれば、民主党の支持率は
上がると見込んでいたというのです。ところが、野田内閣の支持
率は逆に22%までダウンし、そこを自民党につけ込まれること
になります。自民党は、極秘の世論調査で良い結果が出たことで
強気になり、3党合意を破棄して民主党を解散に追い込もうとし
たのです。そのきっかけを作ったのは小沢氏の次の発言です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 法案を政府・与党と野合の上で賛成した後で、内閣不信任案
 などを出すのは本当にどういう理屈なのか、私のような者に
 はよくわからない。           ──小沢一郎氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 痛烈な皮肉ですが、小沢氏は自公抜きの野党7会派で、消費増
税法案の参院の採決前に「消費増税法案反対」を理由として、野
田内閣の不信任案を衆院に、首相問責決議案を参院に提出するこ
とを示唆したのです。これに直前まで自民・公明の両党は気がつ
かなかったのです。
 今までは、自民・公明両党を抜きにして野党は内閣不信任案な
どの重要法案を提出できなかったのですが、国民の生活が第一が
加わったので、それが可能になったのです。自公両党は、自分た
ちがこれまで野党を仕切ってきたという奢りから、そのことを忘
れていたのです。このように、小沢氏が野党にいることを忘れた
り、甘く見ると今回のようなことが起きるのです。
 果たせるかな、そのときから民自公のドタバタがはじまったの
です。自民党は焦って野党7会派が提出する不信任案や問責決議
案とは別に自民党独自にそれらを提出するといいだしたのです。
自民党は増税に賛成しているので、7会派提出の不信任案や問責
決議案には乗れないからです。そして民主党が自公の求めた8日
の採決を決めると、7党会派は7日に内閣不信任案と問責決議案
を提出したのです。
 しかし、衆院で7会派提出による内閣不信任案が否決されると
自民党は、たとえ理由を変えても、今国会の会期中には原則とし
て衆院に内閣不信任案を提出できないのです。それは法律ではな
いものの、「一事不再議」という慣例があるからです。
 衆院で内閣不信任案を採決することは、衆院としてこの内閣を
信任するか否かを決することです。したがって、その結果が出た
後は、その理由が何であれ、同じ国会の会期中には内閣不信任案
を提出することは条理に合わないとされているのです。
 実は自民党は、菅政権への内閣不信任決議案を出して否決され
たとき、内閣不信任案の再提出を検討したことがあるのです。だ
から、自民党は、独自の内閣不信任案を出すと今も強弁している
のです。一事不再議は無視する構えです。おそらく野党7会派に
先を越された自民党は周章狼狽し、提出すれば必ず反論が出るこ
とは承知で、独自の内閣不信任案の提出にこだわったのです。
 少なくとも自民党は内閣不信任案の中身を検討したはずです。
しかし、それを提出することにいろいろ困難があることが8日に
なってわかったとすると、自民党が野田首相の申し出に軟化した
ことが理解できるのです。それまで固く拒んでいた党首会談を応
諾、「近いうちに解散」という玉虫色の表現を受け入れ、本日、
消費増税法案の採決を決めたことも納得がいくのです。野党7会
派を使って仕掛けた小沢氏の戦略に自民党は敗れたのです。
 野田首相と谷垣総裁は、2人だけで20分話しています。おそ
らくそこで今国会会期末の解散を匂わしたものと思います。たと
えその約束を野田首相が破ったとしても、解散についてのウソは
許されるので約束が履行される保証はないのです。
 しかし、自民党としては、7会派の不信任案には欠席せざるを
得ず、自民党独自の不信任案を出すのは困難であることから、一
応満足な結果になったといえます。いずれにしても、今国会の会
期末選挙の可能性は高いのです。果たして橋下市長率いる大阪維
新の会は出馬するのでしょうか。しかし、現在、維新の会は大変
なことになっているのです。   ―── [橋下徹研究/24]


≪画像および関連情報≫
 ●「一事不再議」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  一事不再議の原則は会議が非能率となることを防ぎ能率的な
  運営を進めること、同一事件可決後にそれが否決されること
  となれば朝令暮改というそしりを免れず、また、議会の最終
  的な意思が会期終了まで確定されないという不安定な状態に
  おかれること、さらには、議会として2つの意思が存在する
  ことになるため議会の権威の点からも好ましくはないと考え
  られる点から認められている原則である。会議体の合理的運
  営を目的とするロバート議事規則の4つの原則の1つにもな
  っている。一事不再議において基本的問題となる「一事」の
  認定は容易ではなく一概にこれを決することは困難であると
  される。実際には、案件の性質・内容・客観的諸事情を考慮
  して場合に応じて個別的に判断すべきとされる。再議に十分
  かつ合理的理由が認められるか否かという点についての判断
  は議会の決定に委ねられるているものと解されている。
                    ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

8日夜の谷垣・野田会談.jpg
8日夜の谷垣・野田会談
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2012年08月13日

●「菅義偉氏が語る自民党の問題点」(EJ第3363号)

 10日に社会保障と税の一体改革法が成立したので、消費税政
局と大阪維新の会の動きについて今日も述べます。橋下徹氏の政
治手法の話は、明日のEJで書くことにします。
 8月10日夜のBSプライムニュース(フジTV)に出演した
自民党の菅義偉氏は、自民党の支持率が思ったほど伸びていない
原因について次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
      自民党は真の野党になり切れていない
             ──自民党・菅義偉氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 菅義偉氏は、野党6党7会派が共同で提出した野田内閣不信任
決議案に、自民党で賛成票を入れた7人の議員の1人です。中川
秀直、小泉進次郎、菅義偉、塩崎恭久、河井克行、柴山晶彦、松
波健太の7議員です。
 自民党の問題点について菅義偉氏は、今回の内閣不信任案に自
民党の大半の議員が欠席したことを上げています。菅義偉氏は次
のように主張するのです。
 基本的に野党は与党の対極の政党であり、内閣に問題があると
きは国会で反対の論戦を挑み、それを修正させるか断念させるこ
とに努力するのが務めです。そして何よりも総選挙で与党を破り
政権を奪取するのが役割のはずです。
 そのための唯一の武器が内閣不信任決議案と首相問責決議案な
のです。野党はそれしか武器はなく、しかも一度出して否決され
たら、その国会会期中は二度と出せない大事な武器なのです。
 その内閣不信任決議案を野党第二党以下の7会派によって提出
されるヘマを冒したばかりか、こともあろうにその決議に欠席す
るという醜態を晒したことはあってはならないことであり、それ
すなわち、自民党が野党になり切れていない証拠である──この
ように菅義偉氏は主張するのです。
 さらに菅義偉氏は続けます。確かに今回の内閣不信任案は、そ
の提出理由が「消費増税が民主党の公約に書いていない」である
にせよ、内閣不信任決議案が出された以上、野党としての自民党
は野田内閣を支持していないのだから、賛成すべきです。
 自民党はひたすら解散を求めているのですから、内閣不信任決
議案に賛成すれば必ず解散になるのです。3党合意があるにせよ
賛成すべきです。確かに増税法案は廃案になりますが、総選挙に
勝って本当に必要であるなら、自民党が消費増税法案を上げれば
よいのです。野党なのですからスジが通っているのです。
 しかし、そうしないで谷垣自民党は談合に近い3党合意を結ん
だうえ、確実に解散が担保される不信任決議案に「欠席」すると
いうわかりにくい行動を取り、総理に「解散時期を明示せよ」と
迫る無理難題を突き付けた挙句、密室談合までやってさらに評判
を下げています。これが菅義偉氏がBSプライムニュースで述べ
たと主張です。それなりにスジは通っています。
 なお、菅義偉氏は「一時不再議」の慣例は守られるべきと考え
ており、2度目の内閣不信任案が自民党で検討されたとき、多く
の議員が反対したこと明かしています。谷垣総裁は不信任案を一
時封印するといっていますが、実際は出せないのです。
 谷垣総裁が菅義偉氏のいうような行動が取れなかったのは、財
務省の圧力が強かったからです。一度でも財務大臣になった議員
は、財務省には絶対に逆らえないのです。財務省としては、ここ
で増税法案を通しておかないと、選挙では何が起きるか不安なの
です。日本は、このように財務省に支配されているのです。
 政治評論家の有馬晴海氏によると、自民党は次の3つに分かれ
るといいます。
―――――――――――――――――――――――――――――
   1.引退表明議員など解散すれば失業してしまう議員
   2.民主党に増税をさせ、選挙を有利に進めたい議員
   3.消費増税に反対し、3党合意破棄を主張する議員
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1のグループは、引退を表明した森喜朗元首相や選挙をして
も勝ち目のない議員です。第2のグループは、谷垣総裁を中心と
する自民党執行部であり、第3グループは、中川秀直氏や菅義偉
氏、そして小泉進次郎氏らのグループです。
 さて、民自公のゴリ押しで消費増税法が成立し、国民の多くが
強い怒りを持っています。過去の例からいっても、増税を争点と
した選挙でそれを推進した政党が勝ったためしはないのです。橋
下市長率いる大阪維新の会にとっては、まさに中央政界に打って
出るチャンスが到来しているのです。橋下氏がこの好機を見逃す
はずはありません。実際に同党の松井幹事長は候補者選定を急ぐ
と発言しています。しかし、そういう大阪維新の会の行動を潰そ
うとする動きも発生しています。
 橋下市長は「全選挙区に候補者を立てて政権を奪取する」と宣
言し、塾生を募集して教育しています。この動きに既成政党は戦
々恐々であり、どのような候補者が出てくるのかわからないこと
が一層不安を増幅しているのです。
 しかし、その総選挙候補者である888人(男性785人、女
性103人)の全リストが流出し、それが、『週刊ポスト』8/
17/24号に一挙に掲載されたのです。公開されたのは、氏名
/年齢/職業のリストですが、住所もわかっているのです。した
がって、自分の選挙区に出馬すると思われる候補者がある程度特
定できるのです。
 内部の者しか持ちだせない情報であり、おそらく内部の犯行と
思われます。これは、大阪維新の会にとってはこれは大誤算で、
責任問題になっており、最悪の場合、松井府知事が大阪維新の会
の幹事長を下りる可能性すらあるということです。
 ところで、橋下氏はこの全国展開の大選挙作戦を本当に指揮で
きるのでしょうか。しかも、橋下氏自身は選挙には出馬しないで
戦うのです。          ―── [橋下徹研究/25]


≪画像および関連情報≫
 ●菅義偉とは何者か/文藝評論家/山崎行太郎の政治ブログ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  全国の郵便局長を主な読者とする業界新聞で、「通信文化新
  報」という名の新聞があるが、実は、その新聞編集部から原
  稿依頼があり、三回に分けて、「郵政民営化」批判、ないし
  は「竹中経済学」批判を書かせてもらうことになった。とこ
  ろで、「郵政民営化見直し」「かんぽの宿疑惑」等の、いわ
  ゆる「小泉・竹中構造改革」の本丸と位置づけられるところ
  でのスキャンダルの発覚は、麻生太郎内閣の政治的テーマに
  なりかけていたが、再びここに来て、鳩山総務大臣の必死の
  努力にも関らず、ある強力な政治勢力からの抑圧とブレーキ
  がかかりつつあるようであるが、その中心にいるのが、自民
  党選挙対策副委員長・菅義偉氏であることは間違いない。自
  民党の一部が選挙対策として打ち出そうとしている「世襲議
  員制限論」でも、菅義偉氏は、圧倒的多数の自民党内の世襲
  議員たちの反対にもかかわらず、平然としてその政策を推し
  進める中心人物としての言動を繰り返しているが、それをを
  見ていると、とても菅義偉氏一人の単独行動とは思えず、菅
  義偉氏の背後に、何か大きな政治勢力が控えており、その政
  治勢力の威光をバックに菅義偉氏が動いていることは明らか
  であるように見える。
  http://d.hatena.ne.jp/dokuhebiniki/20090525/1243203339
  ―――――――――――――――――――――――――――

自民党/菅義偉氏.jpg
自民党/菅 義偉氏
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2012年08月14日

●「サプライサイド経済学とは何か」(EJ第3364号)

 橋下徹氏の主張について、政治評論家の森田実氏はフランスの
前大統領サルコジ氏に似ているとして次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下徹氏の主張はニコラ・サルコジ氏の主張に似ています。と
 もに新自由主義の側に立っています。パフォーマンスも似てい
 ます。これに対し、今回勝利したオランド新大統領は、地味で
 堅実という点で平松邦夫前大阪市長や木原敬介前堺市長に似て
 います。ともに、中道的・社会民主主義的政策を主張していま
 す。2011年11月の大阪市長選においては橋下徹氏が勝ち
 平松邦夫氏が敗れました。新自由主義が勝ち社会民主主義が負
 けたのでした。しかし、2012年5月のフランス大統領選で
 は逆の結果になりました。社会民主主義が勝ち、新自由主義が
 負けたのです。               ──森田実著
     『「橋下徹」ニヒリズムの研究』/東洋経済新報社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 新自由主義を理解するには「サプライサイド経済学」について
知る必要があります。経済に関する基本的な考え方として、「需
要」──デマンドサイドにテコ入れをするか、「供給」──サプ
ライサイドに力を取れるかの判断が重要になります。
 サプライサイド経済学というのは、供給側、すなわちサプライ
サイドをテコ入れして経済成長を促すという考え方の経済学のこ
となのです。
 ここでサプライサイドとは、「企業」と考えると分かりやすい
と思います。サプライサイドにテコ入れをする方策としては、企
業減税を実施し、民間投資を促す規制緩和を行い、競争原理を導
入するため、国営企業を民営化するなどがあります。その結果と
して「小さい政府」の実現を目指すのです。
 そして、民営化を進めても競争相手が必要であるので、そのた
め外国資本を積極的に受け入れるのです。各種の関税を撤廃すれ
ば、外資系企業が一気に参入し、民営化された国営企業の供給力
は上がってくるのです。そのため、TPPへの参入も推進するこ
とになります。いわゆる小泉・竹中路線と同様のやり方です。し
かし、その後、格差が拡がるなどの大きな後遺症を残しているこ
とも事実です。
 サプライサイド経済学というと、必ず引き合いに出されるのが
レーガノミックス──第40代米国大統領、ロナルド・レーガン
が取った経済政策です。
 このレーガノミックスについて、国際経済評論家の田中宇氏が
興味深い論文を書いておられるので、その要旨をご紹介すること
にします。
 ロナルド・レーガンが米大統領になったのは、1980年のこ
とです。レーガンと共和党で予備選を争っていたのは、ジョージ
・ブッシュ(パパブッシュ)だったのです。レーガンとブッシュ
は経済理論がまるで違うのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 予備選でレーガン候補は「裕福層に対する減税によって税収入
 を増やす」という政策論を展開した。裕福層は、減税によって
 増えた実収入を株式などの投資に回し、その金は企業の資金に
 なって経済活動を盛んにし、法人税やキャピタルゲイン税(株
 などの売買益への課税)の収入が増えるので、結局は政府の税
 収増につながる、という経済理論だった。
        ──田中宇著「帰ってきたブードゥー経済学」
           http://tanakanews.com/d1227voodoo.htm
―――――――――――――――――――――――――――――
 パパブッシュはこの政策を「ブードゥー教的である」といって
批判したのです。ブードゥー教とは、呪術を使う宗教として知ら
れており、それをレーガンの経済理論に喩えたのは、「減税すれ
ば税収が増える」というレーガンの主張が呪術と同じで根拠がな
いと考えたからです。
 しかし、選挙ではとうてい勝てないし、レーガンなら民主党候
補にも勝てると判断したブッシュは、レーガンと組む戦略を立て
たのです。共和党内で中道派とタカ派が談合し、ブッシュがレー
ガンの副大統領候補になるという「連立」が図られ、実際に民主
党候補を破って、レーガンは大統領、ブッシュは副大統領に就任
したのです。ブッシュとしては、経済でレーガンの暴走を抑えよ
うという気持ちがあったのです。
 案の定というべきか、レーガンが行った富裕層への減税は、税
収の増加にはつながらなかったのです。レーガン政権は増収を前
提に軍事費を拡大し、軍事費が増えた分だけ米国の財政赤字が急
拡大する結果になったのです。
 当然のことながら、大量の国債を発行したのですが、なかなか
売れず、長期金利は14%まで跳ね上がったのです。この高金利
によって米国には世界中から大量の資金が流れ込んだのですが、
それによって起こったのはドル高だったのです。
 ドル高になると、米企業の輸出競争力は弱体化し、輸出入のバ
ランスが崩れて貿易赤字が急拡大したのです。そして、財政赤字
と貿易赤字という「双子の赤字」が経済の足を引っ張り、アメリ
カは不況に陥ったのです。こうしたレーガン政権の下でブッシュ
は副大統領として必死に米国経済を支えたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 レーガンの経済政策は減税案のほか、規制緩和、政府支出の縮
 小(財政赤字の削減)など、企業と投資家(サプライサイド)
 を優遇して経済を活性化させようとするもので、総称して「サ
 プライサイド経済学」「レーガノミックス」などと呼ばれた。
 規制緩和(民営化)の推進はその後、冷戦終結を機にIMFな
 どによって世界中に広げられたが、減税政策は失敗し、財政赤
 字も減るどころか軍事費増加で拡大した。──田中宇著の論文
―――――――――――――――――――――――――――――
                ―── [橋下徹研究/26]


≪画像および関連情報≫
 ●サプライサイド経済学/日経ビジネス経済・経営用語辞典
  ―――――――――――――――――――――――――――
  古典派的な前提を一段と強力に推し進めるとともに、税制が
  供給サイドに与える影響を強調した理論。1970年代に発
  展した。サプライサイド経済学を主張する一派(サプライサ
  イダー)は、古典派的な立場から、「供給がそれ自身に対す
  る需要を作り出す」というセイの法則が短期的にも成立し、
  需給ギャップの拡大は起こり得ないと主張。したがって需要
  サイドの調整に焦点を当てた政策はすべて否定した。フリー
  ドマンらのマネタリストは、景気のファインチューニング策
  としての金融政策を否定する一方、中長期的な視点からイン
  フレ期待を安定させるという意味での金融政策の役割を限定
  的に認め、マネーサプライの管理を主張したが、サプライサ
  イダーは実体経済とマネーサプライは無関係とし、金融政策
  は短期的にも長期的にもすべて無効とした。一方で、減税は
  有効とする。
  http://business.nikkeibp.co.jp/article/keyword/20120221/227522/
  ―――――――――――――――――――――――――――

レーガンとブッシュ両米大統領.jpg
レーガンとブッシュ両米大統領
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2012年08月15日

●「新自由主義とケインズ主義の違い」(EJ第3365号)

 ロナルド・レーガン大統領は、大統領に就任すると直ちに富裕
層に対する減税を実施しましたが、それによって何が起きるので
しょうか。
 富裕層に対して減税すると、銀行にお金が集まってきます。そ
の結果、銀行は預金量が増えるのでお金を貸しやすくなり、貸し
出しが増えると、金利は下がってきます。したがって、サプライ
サイドの企業がお金を借りて投資を行い、供給能力を引き上げる
ことが可能になる──これはサプライサイド経済学の理論であり
新自由主義の考え方そのものです。
 しかし、常識的に考えて、供給能力がいくら高まっても、需要
がそれに追いつかなければ、経済が成長することはあり得ないの
ではないかという疑問が湧きます。この疑問に答えるものとして
「セイの法則」というものがあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
     供給が増えれば需要は自動的に創出される
                 ──セイの法則
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここで「需要」とはGDPを意味しているのですが、セイの法
則は、供給能力を高めれば、自然に経済成長するという考え方な
のです。サプライサイド経済学の考え方そのものです。
 具体的にいうと、企業がモノを作って供給すると、そのモノが
自ら需要を創り出し、売れるということを意味しています。確か
に戦後の高度成長期には、モノを作れば売れる状況があったので
セイの法則は成立していたといえます。当時は供給能力が需要を
下回っており、そこにインフレギャップが存在していたのです。
こういう状況ではセイの法則は成立するのです。
 しかし、現在の日本はどうでしょうか。モノは豊富にあるが、
売れない状況になっています。それは、現在の日本はデフレであ
り、国内には、巨額のデフレギャップが存在するからです。そう
いう状況のときはセイの法則は成立しないのです。
 セイの法則は古典派経済学に基づく考え方であり、新自由主義
も古典派経済学の流れを汲んでいます。これに対して、ケインズ
経済学はどういう位置を占めるのでしょうか。
 植草一秀氏によると、ケインズは、古典経済学派のセイの法則
が働かない局面があることを想定し、その局面でも有効性を発揮
する経済政策を提示したのであり、それがケインズ経済学になっ
たと述べています。
 それではセイの法則が働かない場合に何が起きるかについて、
植草一秀氏は自著で次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 (もし、セイの法則が働かない)場合には、供給量は需要の水
 準によって制約を受ける。つまり、供給能力をフルに生かすた
 めには、政府が人為的に需要を追加してやることによって、そ
 の遊休化してしまった供給力を生かせると考えるのである。い
 わゆる裁量的な政府支出の追加=有効需要の追加によって、失
 業問題を解消するという処方箋が生まれてくる。このような政
 策は、大不況を脱出するための方策として有効性を発揮した。
 しかしながら、このような裁量的な政策には問題点もあった。
 政府が財政支出を拡大することによって、経済を浮上させる政
 策をとれば、景気が浮上する。議会制民主主義の国では、選挙
 の際に政党は多くの議席を獲得するために、有権者に受け入れ
 やすい政策を提示する傾向が強い。裁量的な政府支出の追加政
 策は経済を浮上させる効果を持つが、副作用として財政赤字を
 拡大させる側面を持つ。          ──植草一秀著
  『機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却/日本の再生』
                         青志社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 このようにケインズ流の経済政策は、副作用として必然的に巨
額の財政赤字を招き、どうしてもそれが増大化してしまうものな
のです。本来は、国の経済のインフレ率が高いときは増税など財
政黒字を増やす政策が必要なのですが、どうしても政権党は選挙
で政権を喪失することを恐れて、インフレ率の高いときも財政出
動させ、財政赤字を膨らませてしまうのです。
 日本は、戦後の高度成長期から続けてケインズ的財政政策を続
け、膨大な財政赤字を膨らませてしまっています。そしてバブル
がはじけてデフレになると、今度は増税などの財政黒字を増やす
政策に転じてさらにデフレを深刻化させています。巨大なデフレ
ギャップがあるときほど、財政赤字を増やす政策が必要なのに日
本は逆のことをやっているのです。
 こういう政治的背景のもとに登場したのが、ミルトン・フリー
ドマンが説く新しい新自由主義的な経済政策、すなわち、新自由
主義です。このフリードマンの新自由主義について、植草氏は次
のように解説しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 長期的な経済の強化のためには、需要を追加して経済活動を高
 めるケインズ政策よりも、経済の供給側のさまざまな制約を取
 り払う、あるいは経済の供給側の効率を改善することのほうが
 重要であるというサプライサイド(供給側)を重視する経済学
 あるいは消費者などの経済主体がさまざまな経済政策の長期的
 な帰結をも正確に予測して行動するとの前提──これを合理的
 期待と呼ぶが、合理的期待を前提に置く経済学などの諸勢力が
 台頭し、ケインズ経済学を否定する風潮が一気に広がっていっ
 たのである。         ──植草一秀著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 この新自由主義に近い主張をする政治家が、現在橋下徹大阪市
長のもとに集まりつつあります。とくに注目されるのは、自民党
で先の内閣不信任決議案に賛成した7人を中心に橋下氏との連携
を探る動きがこれから加速すると思われます。
                ―── [橋下徹研究/27]


≪画像および関連情報≫
 ●ミルトン・フリードマンとは何者か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  フリードマンは、「巨匠」や「異端児」、「小さな巨人」な
  ど数々の通り名を持つ。20世紀後半における自由主義的経
  済学者の代表的存在。戦後、貨幣数量説を蘇らせマネタリス
  トを旗揚げ、裁量的総需要管理政策に反対しルールに基づい
  た政策を主張。1970代までは先進国の各国政府は「スタ
  グフレーション」で悩んでいたが、スタグフレーションのう
  ち、インフレーションの要素に対しての姿勢、政策を重視し
  た。フリードマンにとっての理想は、規制のない自由主義経
  済であり、従って詐欺や欺瞞に対する取り締まりを別にすれ
  ば、あらゆる市場への規制は排除されるべきと考えた(自由
  放任主義)。そのため、新左翼勢力は、フリードマンを新自
  由主義の代表的存在と位置づけた。「新」が付くのは、自由
  放任論からの脱却として現れた、国家管理・官僚統制型ニュ
  ーリベラリズムに基づくケインズ経済学を、再び古典的な自
  由主義の側から批判する理論だからである。
                    ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

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ジョン・メイナード・ケインズ
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2012年08月16日

●「上げ潮派が接近する大阪維新の会」(EJ第3366号)

 8月11日のことです。民主党の松野頼久、石関貴史両衆院議
員、自民党の松浪健太衆院議員、みんなの党の上野宏史、小熊慎
司両参院議員の5氏が、大阪市内で橋下徹同市長と会合を持った
のです。総選挙が間近かになり、今後もこういう動きは活発にな
ると考えられます。
 この5人のなかで松野頼久氏は鳩山グループに属し、小沢氏に
も近い議員ですが、民主党からの離党が取り沙汰されています。
注目すべき動きであるといえます。松野氏は、自民党、みんなの
党などの他党議員との接触を頻繁に重ねており、既成政党の複数
の国会議員とともに、橋下氏が代表を務める「大阪維新の会」と
何らかの連携を図るための会合だったとみられています。
 象徴的なのは、地域政党である大阪維新の会が、現職国会議員
5人以上を確保すれば政党要件を満たし、次期総選挙で小選挙区
と比例区の重複立候補ができるようになるだけに、橋下市長が5
人の国会議員と会ったのは注目されます。
 松野頼久氏は、地元の熊本市で8月4日に開いた国政報告会で
次のように述べています。離党が取り沙汰されているというのは
これが原因になっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 今の民主党の政治スタイルに限界を感じている。次の選挙まで
 に政界が流動化して、新しい流れが出てくるかもしれない。そ
 の流れの中に身を置くことになるかもしれない。
            ──2012年8月5日付、読売新聞
―――――――――――――――――――――――――――――
 松野氏周辺からの情報によると、九州選出の議員による地域政
党を結成する構想も浮上しています。
 実は注目すべき動きが自民党にもあるのです。それは小泉進次
郎議員らの動きです。小泉議員は今国会の採決で造反を2回やっ
ています。1回目は、2012年4月12日の郵政民営化法改正
案で反対票を入れています。中川秀直元幹事長、菅義偉元総務相
も反対しており、リーダーは中川氏と見られています。つまり、
このときの造反者は3人です。
 2回目は、8月9日の野田内閣不信任案の採決での造反です。
自公をのぞく野党7会派の提出した野田内閣不信任案に賛成票を
投じたのです。造反者は、中川秀直、小泉進次郎、菅義偉、塩崎
恭久、河井克行、柴山晶彦、松浪健太の7議員です。
 11日に橋下市長に会った5人の1人である松浪健太氏が造反
者に入っています。松浪氏は大阪出身であり、もし大阪維新の会
が総選挙に参戦すると、自民党では議席を確保できない可能性が
高いのです。
 自民党は党議拘束をかけているので、造反すれば当然処分を受
けることになります。しかし、自民党執行部は当初処分に動こう
とはしなかったのです。
 ところが、自民党は、社会保障と税の一体改革の特別委員会に
おいて、民主党で増税法案の採決で反対した議員に対する党の処
分が甘いといって、さんざん野田首相を責め立てたのですが、自
分の党の造反者に対しては大甘です。さすがに、これではマズい
と思ったのか、13日に戒告処分を下しています。
 それでは、なぜ、重く処分しようとしないのでしょうか。
 それは、処分すると、彼らが離党しかねないからです。これら
の造反者は、自民党のなかで「上げ潮派」と呼ばれるグループに
属している人たちが多いのです。自民党の政策面において、今ま
でことあるごとに執行部を批判してきたグループです。「上げ潮
派」とは一体何でしょうか。
 上げ潮派は、きわめて新自由主義に近い考え方をもっているグ
ループです。「改革なくして成長なし」を掲げた小泉政権の構造
改革を継承する立場であるといってよいでしょう。国家が経済に
介入することをできるだけ少なくすることによって、経済を成長
させ、税収を増やそうとし、消費税の税率を上げなくても財政再
建が可能であると主張するグループです。
 上げ潮派の名前は、小泉内閣時に自民党政調会長であった中川
秀直氏が、2006年10月に『上げ潮の時代』という書籍を上
梓したことに由来するといわれています。
 こんな話があります。日本の政治のバックには米国がいるとい
うのです。小泉政権のとき、小泉首相とブッシュ大統領の間で、
「自民党を共和党化する」という合意がなされ、小泉首相はそれ
にしたがって、共和党のポリシーである新自由主義に基づく構造
改革や郵政民営化を推し進めたというのです。上げ潮派はその流
れを汲んでいます。
 この上げ潮派に近い存在が渡辺喜美代表率いるみんなの党なの
です。このみんなの党が大阪維新の会に一番近い存在であると巷
間いわれていますが、現時点では大阪維新の会と連携が整ったと
いうわけではないのです。渡辺代表が口癖のようにいう「アジェ
ンダ」が大阪維新の会のそれと似ているというだけのことです。
 実は、自民党時代の渡辺代表は、上げ潮派の幹部的存在である
中川秀直氏のグループに所属していたのです。しかし、中川氏は
森喜朗元総理との権力抗争に破れ、自民党内でははぐれ烏のよう
な存在になってしまっています。
 みんなの党の渡辺喜美代表がよく日にする公約を意味する「ア
ジェンダ」という言葉は、竹中平蔵氏が政治家時代によく使って
いたのです。何かつながっているのです。渡辺氏はみんなの党を
立ち上げた頃からよくこの言葉を使うようになっています。
 現在大阪維新の会には、この竹中平蔵氏をはじめ、小泉政権時
代のスタッフが集まりつつあります。小泉進次郎氏は父からアド
バイスを受け、地方議員との付き合いを深めています。このよう
に、上げ潮派は大阪維新の会と比較的考え方が近いのです。総選
挙までには同じアジェンダを持つ人たちが参集し、それが一大勢
力になることは確実な情勢になりつつあります。
                ―── [橋下徹研究/28]


≪画像および関連情報≫
 ●マスコミが悪役に仕立て上げる、かつての「上げ潮派」
  ―――――――――――――――――――――――――――
  財政再建において、増税に頼らず、イノベーションや金融緩
  和などによる経済成長に伴う税の自然増収によってプライマ
  リーバランスの黒字化の達成を目指す「上げ潮派」。少し前
  までは、増税によって財政再建を目指す「財政再建派(財政
  タカ派)」の対抗勢力だった。しかし、「上げ潮派」は国内
  ではいまや死語と化し、「増税反対派」という新たなレッテ
  ルの下、今やマスコミの批判の対象となっている。2011
  年7月28日付日本経済新聞の「復興財源民主で異論噴出」
  という記事では、菅首相が目指す今後5年間で10兆円の臨
  時増税論に民主党内で反対論と反発が相次いでいることを、
  「『ポスト管』をにらむ勢力と、次期衆院選を懸念する議員
  たちの声が大きく、欧米では世界的な問題となっている財政
  赤字の観点からの議論はなかった」と「増税反対論」に批判
  的な論調で報じている。そして、「日本の民主党は増税に反
  対し、歳出増には積極的だ。金融市場や世界経済への影響に
  は無頓着な議論に経済官庁では『かつての責任政党では考え
  られない姿だ』との諦観が漂う」と厳しく論評をしている。
  ご丁寧にこれまで批判の標的にしてきた官僚の言葉まで持ち
  出して来たところをみると、日本経済新聞は「増税反対論=
  落選に怯える議員による無責任論」という世論を煽ろうとし
  ているかのようである。http://blogos.com/article/18044/
  ―――――――――――――――――――――――――――

松野頼久衆院議員.jpg
松野 頼久衆院議員
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2012年08月17日

●「橋下市長はコーラのような人である」(EJ第3367号)

 橋下新党をめぐって政界が大揺れです。超党派の道州制型統治
機構研究会のメンバーの5議員が橋下市長にスリ寄ったり、自民
党の安倍元首相まで連携を匂わせたり、慌ただしいことです。
 しかし、橋下徹氏はまだ評価の定まっていない政治家です。そ
れなのに、実績のある政治家まで橋下氏にスリ寄っており、みっ
ともない話です。とかく政治家というものは、選挙になると、見
境がなくなるものです。
 今日まで28回にわたって橋下徹氏について調べてきましたが
いまひとつその正体がわからないのです。橋下氏が誰にもわかる
凄い実績を上げたでしょうか。
 ここまで調べてきている限りでは、とくにないのです。大阪府
政にしても赤字は増大しているし、WTC移転問題でも物議を醸
しています。実績から見れば、普通の地方の首長に過ぎないと思
います。ただ、刺激的なものいいが他の首長と違う点です。上田
清司埼玉県知事は、橋下氏について次のように発言しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
     橋下徹氏はコカ・コーラのような人である
             ──上田清司埼玉県知事
―――――――――――――――――――――――――――――
 きっとスカッとさせてくれるが、いくら飲んでも栄養にならな
いという意味でしょう。まことにいいえて妙です。
 しかし、そういう刺激的な発言もマスコミが伝えなければ、ま
わりにいる人しかわからないはずです。普通の首長なら少しぐら
い刺激的な発言をしてもマスコミは報道しないので、だれも知る
ことはないのです。
 なお、ここでEJにおけるマスコミとメディアの違いについて
述べておきます。マスコミとは主に大新聞、TVなどのメディア
──記者クラブメディアのことを指し、メディアとは、主として
ネットを含めたメディア全般を指しています。
 メディアは、橋下氏のような刺激的な発言をする人が好きなの
です。「好き」というと語弊がありますが、マスコミとして「使
える」人物、「役に立つ」人物と考えているのです。橋下氏は大
阪府知事になる前から、タレント弁護士として有名人であったの
で、最初からその動向は注目を浴びていたのです。
 政治評論家の森田実氏は、かつては常時テレビに主演していた
人ですが、郵政民営化に反対したことで、出演の依頼がまったく
来なくなったのです。当時マスコミは小泉首相の側についており
森田氏のような影響力のある政治評論家は排除されたのです。
現在の野田政権がヨレヨレになっても崩壊しないのはマスコミが
情報をコントロールして守っているからです。森田氏は、政治家
とテレビについて次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 テレビの仕事をした者なら誰でも経験することですが、テレビ
 局の実力あるプロデューサー、ディレクターはつねに、彼らが
 裏で動かすことのできる従順な出演者を求めています。田中康
 夫氏や橋下徹氏のような利口で器用な政治的野心をもつタレン
 トは、実力あるプロデューサー、ディレクターの忠実な代弁者
 になり、テレビ局と一体化します。そしてテレビ出演回数を増
 やし、知名度を上げるのです。知名度によって政治的地位を得
 るのです。                 ──森田実著
     『「橋下徹」ニヒリズムの研究』/東洋経済新報社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 現在の橋下徹氏は、マスコミが育てた英雄なのです。マスコミ
は常時取り上げることで英雄にもできるし、小沢一郎氏のように
まるで犯罪者のようなイメージに仕立てることもできるのです。
そういう意味で現在の日本のマスコミは、真のメディアの使命を
忘れているといえます。
 森田氏があるテレビのディレクターに「なぜ、橋下氏ばかりを
取り上げるのか」と聞いたところ、そのディレクターは「視聴率
を上げるためだ」と答えたそうです。タレントなら話は別ですが
政治家を視聴率狙いで必要以上に取り上げることは、不偏不党の
立場から許されないことです。しかし、現在の日本のマスコミは
まるで反省の色はありません。
 したがって、橋下氏からはそういうメディアが持ち上げている
影響力を差し引いてその素顔を探ることが必要です。既に絶版に
なっているコメンテーター時代の橋下氏の著書には次のようなこ
とが書いてあるのです。まるで悪ふざけのような語録をマスコミ
は好んで取り上げるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 政治家を志すっちゅうのは、権力欲、名誉欲の最高峰だよ。そ
 の後に、国民のため、お国のためがついてくる。自分の権力欲
 名誉欲を達成する手段として、様々国民のため、お国のために
 奉仕しなければならないわけよ。・・・別に政治家を志す動機
 付けが権力欲、名誉欲でもいいじゃないか!・・・ウソをつけ
 ないヤツは政治家と弁護士になれないよ!嘘つきは政治家と弁
 護士のはじまりなのっ!           ──橋下徹著
               『まっとう勝負!』/小学館刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 案外これが本音ではないかと思います。橋下氏に限らずメディ
アの寵児を額面通りに受け取るのは考えものです。「とんでもな
い」「とほうもない」「とてつもない」という3つの形容詞が、
橋下イズム──ハシズムのエッセンスであるという人がいます。
―――――――――――――――――――――――――――――
  「日本を核武装化する」 ・・・ とんでもない
  「殺人犯は全員死刑に」 ・・・ とほうもない
  「維新代議士200人」 ・・・ とてつもない
          ──山本健治著『橋下徹論』/第三書館刊
―――――――――――――――――――――――――――――
                ―── [橋下徹研究/29]


≪画像および関連情報≫
 ●橋下市長は「原理主義者」か/渡辺学氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  各方面で橋下徹論がかまびすしい。ヒトラーを想起させると
  いう渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長の論文が出たかと
  思えば、「橋下徹は『保守』ではない!」(正論5月号)と
  いったタイトルも目に飛び込んでくる。君が代斉唱に厳格な
  ことから橋下氏を「保守」とみなすむきもあるのかもしれな
  いが、保守とは、歴史認識や皇室観などにおける一定の価値
  体系の持ち主を言う。橋下氏からそのような点で強烈なメッ
  セージが発せられたとは思えない。靖国参拝を強行した一方
  で女系天皇容認論議を巻き起こした小泉純一郎元首相が「保
  守」と言われないのと同じだろう。競争重視の意向からは弱
  肉強食の「新自由主義者」との批判もあるが、半面、反貧困
  系の人々も主張する最低限の収入保障制度「ベーシック・イ
  ンカム」に関心を示すなど、左派的な思想もチラつかせる。
  君が代斉唱問題で言えば、決まりごとは決まりごと、絶対に
  守らなければいけないという考え方の人間だと理解した方が
  分かりやすい。グレーゾーンさえも許さない姿勢は、目下の
  話題となっている「喫煙で駅助役免職」問題で明らか。つま
  りは規則に厳しい「原理主義者」なのであって、岡田克也副
  総理の代名詞となっているこのニックネームは、むしろ橋下
  氏にこそふさわしい。  
  http://www.tokyo-sports.co.jp/blogwriter-watanabe/132/
  ―――――――――――――――――――――――――――

山本建治氏の本.jpg
山本 建治氏の本
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2012年08月20日

●「維新の会は小泉・竹中政治と同類か」(EJ第3368号)

 2011年12月19日、橋下徹氏は、大阪市長就任後の初の
記者会見で、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎大阪のかたちを変えるにあたって、国が言うことを聞かな
  いなら、国会議員を擁立する。    ──橋下大阪市長
          ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 大阪府知事選と大阪市長選のダブル選挙に圧勝した後の発言で
すが、これは一種の脅しです。この発言に既存政党がびびったの
はいうまでもありません。その後、既存政党が大阪都構想実現に
必要な地方自治法などの改正の実現に、前向きに動き出したのは
ご承知の通りです。
 橋下市長は、そのときは国が動いてくれたら、国政進出までや
る必要がないといっているのです。そのため、既存政党としては
何とか国政進出は見送って欲しいという思いで法改正に動いたも
のと思われます。「あの勢いで選挙をやられたら、とてもかなわ
ない」という恐怖感からです。
 この地方自治法などの改正案は既に衆議院を通過し、参議院に
送られており、今国会会期中に成立する見通しです。しかし、こ
のように国がいうことを聞いたのに、大阪維新の会は政治塾を開
いて、全国から塾生を募集し、候補者の擁立を図っています。さ
らに、既成政党から国会議員を5人以上入党させ、政党化要件を
整えようとしています。それでいて、今でも橋下市長は、「国政
進出をまだ決めたわけではない」と発言しているのです。
 もはや大阪維新の会の国政進出は間違いありませんが、今のと
ころ代表の橋下市長は出馬しないといっています。もちろん最後
の最後までわかりませんが、党代表が出ない選挙になると思われ
ます。そこで、ひそかに担ごうとしたのが、自民党の安倍晋三元
首相なのです。松井幹事長らは、何回も安倍氏に会い、ひざ詰め
談判で離党を促し、大阪維新の会に参加して欲しいと口説いたと
いわれます。今のところ安倍元首相は維新側に明確な返事をして
いませんが、離党はあり得ないと思われます。
 この動きで、大阪維新の会の正体はかなり見えてきています。
松井知事をはじめ、維新の会の大半は自民党出身者であり、橋下
氏自身も自民党と公明党の協力のもとで大阪府知事選に出馬し、
府知事になっているのです。つまり、「既存政党と対峙する」と
いいながら、その根っこは自民党なのです。
 この大阪維新の会の正体について、植草一秀氏は次のように喝
破しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
     大阪維新の会と小泉・竹中政治は同類である
                  ──植草一秀氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 このことは、大阪維新の会に群がる人脈を見ると、一層はっき
りします。まず、当の竹中平蔵氏は維新政治塾の講師を務めるな
ど橋下氏に近く、その竹中氏に仕えて、小泉純一郎首相に政策提
言をしたことがある嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、財政関係を担
当する大阪市特別顧問の一人なのです。
 それに大阪維の会が担ぎ出そうとしている安倍元首相にしても
小泉政権の下で自民党幹事長、幹事長代理、官房長官などの要職
を務めるなど、小泉元首相の信任が厚い人物であり、小泉・竹中
政治の中核的存在なのです。
 それに、自民党にあって、郵政民営化法改正案の採決に反対し
この8月でも野党7会派が提出した野田内閣不信任案に賛成する
など、造反を連発する中川秀直、菅義偉、塩崎恭久、小泉進次郎
らの議員も小泉・竹中ラインに近い存在です。さらにみんなの会
を率いる渡辺喜美代表も、自民党在籍時には中川秀直議員に近い
存在であったのです。
 このように考えると、大阪維新の会の実像が小泉・竹中政治に
近いことがわかるはずです。植草一秀氏は、今年の2月に大阪維
新の会が発表した「維新八策」について、BLOGOSにおいて
大阪維新の会が小泉・竹中政治と同類である証拠として、次の3
つを上げています。
―――――――――――――――――――――――――――――
         1.対米従属主義である
         2.市場原理主義である
         3.官僚利権を温存する
             http://blogos.com/article/32520/
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1は「対米従属主義である」ということです。
 植草氏は、言葉としては「自主独立の軍事力を持たない限り日
米同盟を基軸」としているものの、「要するに、米国にひれ伏す
ということ」であると述べており、小泉・竹中政権時代と同じで
あると断じています。
 第2は「市場原理主義である」ということです。
 小泉・竹中政権では、市場メカニズムに過度の信頼を置くとこ
ろがあったのですが、大阪維新の会も基本的にはそれと同様の考
え方に立っています。市場メカニズムや競争原理が持つ弊害は無
視できないほど、大きいのです。
 第3は「官僚利権を温存する」ということです。
 これについて、植草一秀氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 「みんなの党」も「大阪維新」も、官僚利権排除と言いながら
 実際には、官僚機構と妥協を図る。本当に行政の仕組みを変え
 るというのであれば、公務員に定年までの雇用を保証する代わ
 りに、天下りを根絶することを実行しなければならない。しか
 し、その実行には強い抵抗が発生する。この抵抗をはねのけな
 ければ本当の改革は実現しない。  ──植草氏BLOGOS
――――――――――――――  ―── [橋下徹研究/30]


≪画像および関連情報≫
 ●橋下地域政党の維新八策、第三極の旗印になるか
  ―――――――――――――――――――――――――――
  八策は「決定できる政治」を実現するため、トップダウンで
  政策を決めやすくする仕組みも盛った。首相公選制や各省の
  人事権を内閣に一元化する公務員制度改革が代表例で「橋下
  氏には、各省庁の権限を弱める意図もある」(維新府議団幹
  部)とみられる。維新の政策立案は主に橋下氏と政調会長の
  浅田均大阪府議会議長が担う。首相公選制や道州制など統治
  機構の主張の大半は橋下氏自らの持論だが、税制や外交など
  地域政党になじみの薄い分野では外部の有識者に力を借りて
  いる。社会保障では現役世代の活性化を重視する立場を取り
  経済財政担当相などを務めた竹中平蔵慶大教授らの考えが色
  濃い。税制は消費や投資を促す成長重視型とし、竹中氏を支
  えた財務省出身の高橋洋一嘉悦大教授が助言した。「小泉政
  権も間違いをただす『大掃除政権』だったが、もっと大変な
  大掃除になる」。維新政治塾で講義した竹中氏はこうハッパ
  をかけた。
    http://kuromacyo.livedoor.biz/archives/1656110.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

安倍晋三元首相.jpg
安倍 晋三元首相
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2012年08月21日

●「語録から橋下市長の政治信条に迫る」(EJ第3369号)

 橋下市長は、どのような政治信条の持ち主なのでしょうか。昨
日のEJで、「小泉・竹中政治と同類」であるとする植草一秀氏
の説を取り上げましたが、今回は、政治評論家の森田実氏の説を
ご紹介します。
 橋下氏の著書を読んでも、その政治信条が必ずしも浮かび上が
ってこないのです。森田実氏は、橋下語録にこそ資料的価値があ
るとし、語録から次の5つ政治的特色を抽出しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
         1.憲法改正論者である
         2.民主主義と独裁政治
         3.競争原理重視主義者
         4.選挙に対する考え方
         5.公務員に対する態度
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1は、橋下市長が「憲法改正論者である」ことです。
 「橋下語録」から、憲法改正に関するものをピックアップする
と次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎小泉元首相みたいなスーパーマンじゃないと、政権運営は
  できない。大統領制は天皇制に反するので、憲法を改正し
  て首相公選制を目指すべきだ
 ◎憲法9条は、自分が嫌なことはしないという価値観だ。自
  己犠牲しないのなら、僕は別の国に住もうかと思う
 ◎首相公選制や参院廃止は国会議員は絶対認めない。既存の
  仕組みでやってきた人は船中八策は受け入れられない
          ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
                      ──森田実著
    『「橋下徹」ニヒリズムの研究』/東洋経済新報社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 これによると、橋下徹氏は明らかに憲法改正論者であると読み
取れます。憲法9条を改正し、首相公選制を実施し、参議院を廃
止するには、憲法改正が不可欠だからです。
 第2は、「民主主義と独裁政治」についてです。
 橋下語録から、民主主義と独裁政治に関するものをピックアッ
プすると次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎今の日本の政治に必要なのは独裁。チェックするのは議会
  選挙、メディア。このバランスのなかで政治は独裁しない
  といけない
 ◎独裁政治にならぬよう民主主義がある。権力者が意思を通
  そうとすれば、民主主義のコストとしてお金がかかる
          ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 これに対して森田実氏は、独裁的強権政治は百害あって一利な
しと批判しています。いま必要なのは独裁政治ではなく、調和と
合意の政治です。
 第3は、「競争原理重視主義者」であることです。
 ここでいう「競争原理重視主義者」は「市場原理主義者」のこ
とをいっているのだと思います。語録は次のものがあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎競争力が働いていない。競争力は僕の政治哲学だ。
 ◎僕は、競争を前面に出して規制緩和する小泉・竹中路線を
  もっともっと推し進めることが、今の日本には必要だと思
  っている    ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 森田氏は、現在の日本の混迷と低迷は、競争原理重視の姿勢に
原因があるといっています。そして現在は競争至上主義を見直し
修正資本主義に移行すべきであると説いています。
 第4は、「選挙に対する考え方」についてです。
 選挙については多くの語録があります。ここでは、次の2つの
み上げておきます。これについて改めて取り上げます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎今度の選挙は「政策選択選挙」だ。候補者が誰かなんてこ
  とは重要じゃない。
 ◎選挙が全てじゃないと言われるが、民主主義の世の中で、
  じゃあ選挙以外にどうやって物事を決めるのかといえば選
  挙しかない   ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
――――――――――――――――――――――――――――
 森田氏は、現行の小選挙区比例代表並列制についての反対論者
です。これによって日本の政治は劣化し、幼稚化し、政治家がチ
ルドレン化したと嘆いています。政策選択選挙ではなく、「人を
選ぶ」選挙にすべきであると主張しています。
 第5は、「公務員に対する態度」についてです。
 公務員に関しては語録は多くあります。これについても、改め
て取り上げるつもりです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎僕はどういう理由があったにしても公務員は政治家の決定
  に従わなければならないと思う
 ◎選挙に関与した(府市)職員は本当なら身分を失うところ
  だ。選挙に負けたら全員クビ。仕事があるだけありがたい
  と思わないといけない
          ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 森田氏は、政治主導は貫かねばなりませんが、それは公務員を
説得して行われるべきであり、強制や命令で動かすのは真の政治
主導にはならないと述べています。独裁的な強制や命令によって
軍隊的に公務員を働かせようとすることは、あってはならないし
正しいことではないと説いています。
                ―── [橋下徹研究/31]


≪画像および関連情報≫
 ●『橋下語録』/産経新聞出版:「まえがき」から
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「橋下さんって、本当はどういう人ですか」
  私たちは、よくそうした質問を受ける。読者や有権者にして
  みれば、常に橋下徹氏の身近で取材を続ける私たちは、何か
  よほどの素顔を知っていると思われがちだが、実際にほ「よ
  くわからない」というのが正直なところでもある。なぜか。
  彼はほとんど裏表を見せないからである。有権者にしてみれ
  ば、メディアを通じて見たまま、しやべったまま。取材者側
  にしても、自論を述べたまま、質問に答えたまま、が全てで
  あり、それ以上でも以下でもない。よく言えば、「本音の政
  治家」、あえて言えば、膨大な「本音」を発信し続けるがゆ
  えに、「本当は何が本音なのか」「本音の向こうが見えにく
  い政治家」のような気もするのである。
  ―――――――――――――――――――――――――――

『橋下語録』/産経新聞出版.jpg
『橋下語録』/産経新聞出版
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2012年08月22日

●「大阪府市W選分析/中間派が支持」(EJ第3370号)

 ある有名な政治学者の橋下徹評です。彼は、橋下氏を評して、
ある種のポピュリストの典型といっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下徹氏はある種のポピュリストの典型で、鬱屈した気持ちの
 人たちに夢を見せている。吉本新喜劇のドタバタを好む大阪の
 風土にうまく乗っかった「小泉劇場」の大阪版。しかも彼はそ
 れを自覚し、メディアのことも上手に使えると思っている節が
 ある。今のように数頼みを続けると、どんどん過激な方向に進
 む。彼がオールマイティーで全部抑えられない時期が来ると思
 います。政治にはそういう怖さがある。
                ──御厨貴東京大学名誉教授
―――――――――――――――――――――――――――――
 ポピュリズムは必ずしも悪い政治手法ではありませんが、日本
ではそのよう捉えられる傾向があります。ところで、ポピュリズ
ムとは何でしょうか。定義を示しておきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 政治に関して理性的に判断する知的な市民よりも、情緒や感情
 によって態度を決める大衆を重視し、その支持を求める手法あ
 るいはそうした大衆の基盤に立つ運動をポピュリズムと呼ぶ。
                    ──知恵蔵2012
―――――――――――――――――――――――――――――
 とくに2011年11月27日に投開票の行われた大阪市長・
府知事同日選挙──大阪ダブル選挙において、橋下前知事と大阪
維新の会幹事長・松井一郎氏が圧勝したことによって、一部の有
識者から、橋下氏を「ポピュリスト」と呼ぶ人が増えたことは事
実なのです。
 このような状況を受けて、善教将大、坂本治也両氏という若き
研究徒の手になる「大阪維新の会に対する大阪府市民の支持態度
の分析」という調査レポートが発表されたのです。なかなか興味
深い研究であるので、2回にわたりご紹介することにします。
 橋下市長がポピュリストであるかどうかについて、有権者に焦
点を当てて調査・分析していますが、論点は2つあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
  第1の論点:大阪維新の会への支持は熱狂的であるか否か
  第2の論点:その支持の背後には政治不信があるのか否か
―――――――――――――――――――――――――――――
 このダブル選挙は、大阪維新会の圧勝といわれていますが、見
方によっては、かなりの接戦であったともいえるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
            得票率       投票数
    橋下  徹氏  59%   750813票
    平松 邦夫氏  41%   522641票
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下氏と平松氏の相対得票率は、6対4で、橋下氏への反対票
が4割あり、けっして「圧勝」とはいえないと思います。松井氏
の当選にしても、大阪維新の会への反対票が、倉田氏と梅田氏に
割れてしまい、それが松井氏を利したともいえるのです。
 この調査では、大阪維新の会への「支持態度」を次の4つに分
けて行っています。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.「熱狂」層 ・・・・ 強く支持する
     2.「穏健」層 ・・・・ 弱い支持態度
     3.「潜在」層 ・・・・ 拒否はしない
     4.「拒否」層 ・・・・ 絶対支持せず
―――――――――――――――――――――――――――――
 熱狂層と拒否層については、イメージがはっきりしていますが
穏健層と潜在層の差はあまりはっきりしていないと思います。中
間派なのですが、大阪維新の会にどちらかというと好印象を持っ
ているのが穏健層、あまり良い印象を持っていないのが潜在層と
考えればよいと思います。
 この4つの支持態度において、それぞれがどの程度いるのかに
ついて観測した数値(観測数値)は次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     「熱狂」層 ・・・・  36  10%
     「穏健」層 ・・・・ 164  50%
     「潜在」層 ・・・・  53  18%
     「拒否」層 ・・・・  77  22%
―――――――――――――――――――――――――――――
 それでは、市長選、府知事選において、これらの4層はどのよ
うに投票したでしょうか。
 投票態度の詳細は、添付ファイルのグラフを見ていただきたい
のですが、「市長選の投票先と支持態度」については、次に数字
で示しておきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
          橋下 徹候補  平松邦夫候補
     熱狂層   95.7 %    4.3 %
     穏健層   92.9 %    7.1 %
     潜在層   56.0 %   44.0 %
     拒否層   23.1 %   76.9 %
―――――――――――――――――――――――――――――
 注目すべきは、中間派の穏健層の9割以上、潜在層の5割以上
が橋下氏に投票している点です。松井氏への投票についても橋下
氏と同様の傾向が見られます。平松氏や倉田氏の得票率が橋下氏
や松井氏を上回っているのは拒否層だけなのです。
 このことから、大阪維新の会が選挙に勝ったのは、必ずしも熱
狂的な支持というわけではなく、比較的冷静な穏健層と潜在層が
橋下、松井両氏を支持したことは明らかです。それだけ、大阪府
市民の大阪維新の会の支持はかなり盤石のものであったといえる
と思います。          ―── [橋下徹研究/32]


≪画像および関連情報≫
 ●「ハシズム」と民主主義/ダイヤモンド・オンライン
  ―――――――――――――――――――――――――――
  橋下氏に対しては、派手に政策をぶち上げ、反対する政治家
  や官僚を「国民の敵」とレッテルを貼って激しく罵り、市民
  を扇動しているとの厳しい批判がある。その「政治手法」は
  ファシズムを捩って「ハシズム」と呼ばれる。確かに、「ハ
  シズム」批判に妥当な部分がないわけではない。橋下氏は、
  「日本の政治で一番重要なのは独裁」などの、強烈な発言が
  目立つ。だが、客観的に見て、彼は議会制民主主義のルール
  を破っているわけではない。府知事選で当選して府知事とな
  った。議会で政策を通すために、「大阪維新の会」を立ち上
  げ、府議会議員選挙を経て、最大多数派を形成した。「大阪
  都構想」実現のために、府知事を辞職し、大阪市長選に当選
  した。       http://diamond.jp/articles/-/15049
  ―――――――――――――――――――――――――――

市長選/府知事選の投票態度.jpg
市長選/府知事選の投票態度
posted by 平野 浩 at 03:23| Comment(4) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月23日

●「大阪維新の会の人気と政治不信」(EJ第3371号)

 大阪ダブル選挙において、大阪維新の会が躍進したことについ
て、岡田克也副総理は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下氏が有権者から高い評価を与えられている理由は、「既成
 政党への不満」であると思われる。   ──岡田克也副総理
―――――――――――――――――――――――――――――
 岡田副総理の立場からは、大阪維新の会が大きな支持を集めて
いるのは、大阪維新の会が実現しようとしている理念や政策とい
うよりも、政治の閉塞感から「橋下なら、何とかしてくれるに違
いない」という、漠然たる期待と願望を託している──そのよう
に見ているのだと思います。つまり、岡田副総理としては、大阪
維新の会の政治理念や政策に支持が集まっていることはどうして
も認めたくないのだと思います。
 なぜなら、大阪維新の会の支持が政治不信の裏返しなら、その
人気が大阪維新の会への理念や政策には関係がない情緒的なもの
に過ぎないということになるからです。
 善教将大、坂本治也両氏の研究では、そのことについて調べて
います。政治に対する不信は、政治家に対する不信と、政党に対
するそれに分けられます。
 そこで、この調査では次の2つについて、熱狂、穏健、潜在、
拒否の4層について調査しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.政治家不信と大阪維新の会支持との関係
     2.政 党不信と大阪維新の会支持との関係
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1のテーマは、「政治家不信と大阪維新の会支持との関係」
についての調査結果です。
 添付ファイルの上のグラフ(「政治家不信と維新支持」)を見
てください。前回の復習ですが、4層を次のように解釈します。
―――――――――――――――――――――――――――――
    大阪維新の会支持層 ・・・・・ 熱狂/穏健
    大阪維新の会反対層 ・・・・・ 潜在/拒否
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1のテーマでは、次の2つの質問を設けて、それに賛成する
か否かを聞いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ≪質問1≫
   ・政治家は自分中心に国民の生活をなおざりにしている
  ≪質問2≫
   ・政治家は選挙が終わると有権者のことを考えなくなる
            ≪質問1≫    ≪質問2≫
       肯定的  57.8 %    59.0 %
       中 間  61.7 %    67.8 %
       否定的  69.7 %    66.7 %
―――――――――――――――――――――――――――――
 「質問1」について考えます。
 政治家は選挙が終わると、国民のことを考えなくなる──これ
について肯定するのは「政治家不信」であり、否定するのは「政
治家信頼」ということになります。数値は、大阪維新の会を支持
する層(熱狂+穏健)の割合をあらわしていますが、否定する割
合が多くなっています。すなわち、大阪維新の会を支持する人は
政治家を信頼していることになります。
 「質問2」について考えます。
 政治家は自身のことばかり考えて国民の生活をなおざりにして
いる──これについては、「質問1」ほど明確ではないものの、
これを否定する割合は66.7 %と高く、大阪維新の会を支持す
る人は、政治家をそのような存在としてにとらえていないことを
あらわしています。
 続いて、第2のテーマの「政党不信と大阪維新の会支持との関
係」についての調査です。この調査では政党や選挙制度といった
「制度」に対する不信感について尋ねているので、それらと大阪
維新の会への支持の関係について確認するのが目的です。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ≪質問≫
   ・政党があるからこそ民意が政策に反映される
            ≪質問の賛否≫
       否定的    65.1 %
       中 間    57.1 %
       肯定的    60.7 %
―――――――――――――――――――――――――――――
 調査結果の数値は、「政党があるからこそ民意が政策に反映さ
れる」という質問に対して否定的な数字(65.1 %)が明らか
に多くなっています。これは、政党(制度)に対する不信を抱い
ている人が多いことを示しており、そういう否定的態度を取る人
が大阪維新の会の支持者であることをあらわしています。
 以上をまとめると、こうなります。大阪維新の会への支持は、
けっして「熱狂」層ではなく、比較的冷静な中間派「穏健」層が
支えているという事実です。したがって、橋下大阪市長がポピュ
リストであるという批判は的外れということになります。
 加えて、大阪維新の会の支持者は、政治家に対しては不信感を
抱いていない人が多い一方で、政党(制度)に対しては不信を抱
いている人が多く、大阪維新の会が掲げる理念や政策──今後大
阪をどのようにするのかということに対して期待を持っていると
読み取ることができます。
 少なくとも大阪ダブル選挙のデータによる推論に過ぎませんが
大阪維新の会への支持は、関西圏に関する限り、熱狂などという
浮ついたものではなく、政治理念や政策に期待を持つ比較的底堅
い安定的な支持層を形成していると感じられます。既成政党から
見ると、大阪維新の会恐るべしです。── [橋下徹研究/33]


≪画像および関連情報≫
 ●調査のまとめとして/善教将大、坂本治也両氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  大阪維新の会への支持は、政治家や既成政党に対する不信を
  その基盤としているわけではない。大阪維新の会を支持する
  人の多くはたしかに政治不信を抱いているが、同様に不支持
  者の多くも、現在の政治に対しては辟易している。両者の間
  に明確な関連性があるわけではないし、あるとしても信頼が
  高い人が大阪維新の会を支持するという通説的見解とは逆の
  関連が見られる。以上の結果は、これまで多くの論稿などに
  おいて論じられてきた「橋下現象」の解釈が、部分的にでは
  あれ誤っている可能性が高いことを示唆するものである。確
  かに橋下氏の政治手法や政策については、その是非をめぐっ
  て賛否が大きく分かれるところである。そのこと自体を否定
  するわけではないが、しかしそれは論者の独断と偏見に基づ
  く印象論を展開してよいことを意味しない。自身が扇動され
  たのかどうかは、有権者が何より理解している。有権者の判
  断がすべて正しいというわけではないだろうが、少なくとも
  大阪ダブル選に関していえば、有権者は意外にも冷静な視点
  から投票先を決めていた可能性が高いのである。
   http://webronza.asahi.com/synodos/2012072200003.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

政治不信と大阪維新の会の関係.jpg
政治不信と大阪維新の会の関係
posted by 平野 浩 at 06:54| Comment(1) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月24日

●「橋下市長は小泉元首相に似ている」(EJ第3372号)

 大阪維新の会に参画しているメンバーを見ると、小泉・竹中政
治に近い人たちが多いことは既に指摘しているところです。実際
に小泉純一郎元首相と橋下大阪市長は大変よく似ているのです。
 嘉悦大学教授・高橋洋一氏によると、小泉氏と橋下氏には次の
3つの共通点があるといいます。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.スパーリングのように政策議論をする
     2.人と話してもけっしてメモをとらない
     3.自分は大筋を決めて、細部はまかせる
―――――――――――――――――――――――――――――
 小泉元首相といえば、「ワン・フレーズ・ポリティクス」で知
られています。いわく「改革なくして成長なし」、「聖域なき構
造改革」、「自民党をぶっ壊す」など、本質をズバリと衝くスロ
ーガンのようなワン・フレーズを連発します。作家の大下英治氏
は、小泉元首相のワン・フレーズ・ポリティクスを次のように表
現しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ワン・フレーズ・ポリティクスといわれた小泉さんの言葉は
 相手のもろさを一言で突く攻撃言語なんです。
         ──大下英治氏/『週刊ポスト』8/31
―――――――――――――――――――――――――――――
 言語攻撃といえば、橋下大阪市長のディベートはまさにそれで
あるといえます。2012年1月27日に放送された「朝まで生
テレビ」/「激論!『大阪市長橋下徹は日本を救う?!』」をご
覧になったでしょうか。
 この番組は、橋下氏の政治行動を「ハシズム」として批判する
7人の論客をわざわざ集め、田原総一郎氏を司会者として、大阪
都構想について、橋下市長と長時間にわたるディベートを繰り広
げたのです。橋下市長の要望により、実現した番組です。
 橋下氏は、雨あられに浴びせられる批判のひとつ一つに冷静に
対応し、話が脇道にそれるとさっと話を本筋に戻して、本質論を
展開するのです。そして相手の話の矛盾を発見すると、一挙に攻
撃言語でそこに切り込むのです。橋下市長はなかなかのディベー
ト巧者です。確かに小泉元首相と似ているところがあります。
 メモを取らないということについて、いわゆる橋下本のひとつ
を書いている元自民党幹事長特別秘書の真柄昭宏氏は次のように
述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 メモを取らないということは、自分の頭のなかにある思考枠組
 みのパーツに組み込まれるところだけが記憶されていくことを
 意味する。そして思考枠組みのパーツに組み込まれない情報は
 受け取りを拒否される。自分の心に落ちたことだけを話すから
 人々の記憶に残るような演説をすることができるのであろう。
                 ──真柄昭宏著/講談社刊
     『ツイッターを持った橋下徹が小泉純一郎を超える』
―――――――――――――――――――――――――――――
 このようにメモを取らない橋下氏が、2008年2月8日に石
原慎太郎東京都知事に表敬訪問をしたあと、次のようにいってい
るのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 一言一句がすべて勉強になった。何十年ぶりかにノートを取
 りましたよ。               ──橋下市長
          ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 小泉元首相にはよく「丸投げ」批判が行われたのです。とくに
経済問題について小泉元首相が竹中大臣にすべてをまかせている
のではないかということがよくいわれたものです。
 総理大臣だからといって、国政のすべてのことを知っている必
要はないのです。そのために官邸スタッフがついているし、大臣
もいるのです。総理はそれらの人たちの意見を聞き、彼らの力を
借りて決断をするのです。これは市長にしても同じことです。小
泉元首相は、これについて次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 物は言いようで、任せるべき人に任せると丸投げと。当たり前
 じゃないですか、任せる人の場合は。私は全知全能じゃありま
 せんよ。各省庁、そのために各役所があり、担当大臣がいて、
 総理大臣がいるのです。そういう役割を無視して何でも総理や
 れ、細かいことまで口出せと。そうすると独裁と言う。任せる
 人に任せると丸投げと言う。それこそ勝手な論理ですよ。任せ
 るところは任せるというのが総理として大事だと私は心得てお
 ります。    ──2003年3月5日/参議院予算委員会
                ──真柄昭宏著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 このとき、大事なのは「人の意見をよく聞く」ことです。その
点、小泉氏も橋下氏も実によく人の意見を聞くのです。まして橋
下氏は弁護士ですから、人の意見をよく聞かないと、反論もでき
ないわけで、しっかりと意見を聞き取るのです。
 そのように十分意見を聞いたうえで、案件によっては、信頼で
きる人にまかせた方がよいこともあります。小泉元首相は竹中平
蔵氏を心から信頼していたので、まかせて自分が責任を取るとい
うかたちで、金融構造改革を成し遂げたのです。
 橋下氏は、特別顧問と特別参与を「自分の分身」と考えていて
それぞれの行政課題を任せています。信頼してまかせ、そのうえ
で自ら責任を取るので、けっして「丸投げ」というわけではない
のです。
 このように橋下市長は小泉元首相にとてもよく似ています。さ
らに、互いにポピュリストといわれる点も同じです。小泉・竹中
人脈が大阪維新の会に対して、特別なシンパシーを感じているの
ではないでしょうか。       ── [橋下徹研究/34]


≪画像および関連情報≫
  ●橋下大阪市長と市民社会の組織化/Seibun Satow
  ―――――――――――――――――――――――――――
  橋下徹大阪市長の政治的意見は、「僕の感覚」を乱発するよ
  うに、未熟である。おまけに、批判に対する反論も子供の悪
  口の域を出ない。そんな彼への支持率が高い理由の一つにマ
  スメディアの使い方の巧みさが挙げられる。マスメディアの
  利用に長けていた最近の政治家として小泉純一郎元首相が思
  い浮かぶ。彼は、「構造改革」や「改革なくして成長なし」
  などキャッチーなフレーズを繰り返し用いて有権者に印象づ
  け、その手法は「ワンフレーズ・ポリティクス」とも呼ばれ
  ている。もっとも、小泉元首相の決め台詞はほとんどが剽窃
  である。「改革なくして成長なし」は、1970年の公害国
  会での佐藤栄作首相によるスローガン「福祉なくして成長な
  し」のもじりである。一方、橋下市長の場合、こうしたワン
  フレーズが思い当たらない。話は、むしろ、長い。彼は自ら
  決め台詞を発するのではなく、マスメディアの報じる言葉や
  数字の印象の一人歩きを巧妙に利用している。橋下市長は大
  阪市や役所に関する各種の統計の数字を公表する。市職員の
  電子メールをめぐる調査の中間報告がその一例である。これ
  は事実なので、マスメディアは報道しないわけにいかない。
  (続きを読む)
   http://www.geocities.jp/hpcriticism/oc/hashimoto.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

真柄昭宏氏の本.jpg
真柄 昭宏氏の本
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(15) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月27日

●「みんなの党と維新の会の関係」(EJ第3373号)

 大阪維新の会に動きが出てきているので、これについて現時点
でわかっている範囲で述べることにします。事態は現時点では、
非常にわかりにくくなっていると思います。
 2012年8月20日の夜、大阪市内のホテルで橋下大阪市長
と松井知事は、みんなの党の渡辺代表と会談しています。そこで
何が話し合われたのでしょうか。
 その会談のさいに橋下市長から渡辺代表に伝えられた新事実が
あります。それは新党を結成をするという話です。これまで伝え
られていたことは、地域政党である大阪維新の会が、5人以上の
国会議員の参加を得て政党要件を満たし、国政に進出するという
構想だったのですが、大阪維新の会は大阪の課題を解決するため
に地域政党のまま残し、別に新党を立ち上げるというのです。
 橋下・松井両氏は、渡辺代表に対し、みんなの党を解党して新
党に丸ごと参加しないかと訴えたようです。しかし、会談は3時
間にわたりましたが、渡辺代表は最後まで「イエス」とはいわな
かったといいます。
 問題は、22日の松井知事のコメントです。松井氏は「みんな
の党とは組まない」と明言しているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 みんなの党は、われわれと同じような政策を掲げているが、
 みんなの党と組むことは、今のわれわれの考え方にはない。
                   ──松井大阪府知事
―――――――――――――――――――――――――――――
 同じ22日に渡辺代表は、次のようにいっています。何となく
はっきりしないコメントです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 地域ごとのすみ分けや、選挙における相互推薦、それに双方
 の合流など、維新の会との連携のしかたはいろいろな枠組み
 があるが、一致させて政界再編することが望ましい。
              ──みんなの党・渡辺喜美代表
―――――――――――――――――――――――――――――
 もともとみんなの党は、次期衆院選で「東のみんな、西の維新
が補完して、二大政党に対抗する無党派層の受け皿になる」戦略
を考えていたのです。これは、「国民の生活が第一」の小沢代表
が主張する「オリーブの木」と同じ構想です。
 しかし、これについて松井氏は明確に否定しているのです。彼
は次のようにもいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 われわれは、みんなの党に限らず、どこかの党と連携する考
 え方はない。            ──松井大阪府知事
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは、党対党の連携はしないが、維新の会の衆院選公約「維
新八策」への合意を前提とし、既成政党を離党してくるか、党を
解党して合流するなら受け入れるという意味なのです。かなり、
上から目線の傲岸不遜の態度に見えます。
 みんなの党・衆議院大阪府第9区支部長の足立やすし氏は、大
阪維新の会とみんなの党のトップ会談の不調の原因について、自
身のブログで次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 政策/政局に関する原理主義度の違いが、いわゆる、ケミスト
 リーの違いとして影を落としているように感じている。みんな
 の党は、政策については原理主義的(=教条主義的)であるが
 政局については現実主義的(=急進的ではない)、一方の大阪
 維新の会は、反対に、政策については現実主義的であるが、政
 局については急進主義的だ。(ここで「現実主義的でない(=
 原理主義的)」というのが「現実的でない」という意味でない
 ことは言うまでもない。)        ──足立やすし氏
             http://blogos.com/article/45498/
―――――――――――――――――――――――――――――
 足立氏の主張する大阪維新の会とみんなの党の違いを整理する
と、次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
               政策      政局
    大阪維新の会  現実主義的   急進主義的
     みんなの党  急進主義的   現実主義的
―――――――――――――――――――――――――――――
 みんなの党は、「脱官僚・地域主権・生活重視」という3つの
理念を掲げて、2009年に結党し、「小さな政府・活力重視・
日米同盟基軸」の政策群をパッケージとして訴えてきたのです。
 その政策は、その体系や整合性にも十分留意した完成度の高い
ものであり、それがゆえに、消費税増税に賛成したり、郵政民営
化に反対したりした議員は同志でないというような原理主義とい
うか、教条主義的なところがあるのです。
 しかし、政局に関しては、かなり現実的なところがあります。
2010年の参院選、2011年の統一地方選をポップ、ステッ
プと位置付け、2012年に行われるとされる衆院選をジャンプ
として大飛躍を成し遂げる。そしてみんなの党が触媒として政界
再編を引き起こしたいと考えているのです。
 その結果、みんなの党としては、政界再編の触媒としてその過
程で消えてもよいとまで考えているのです。しかし、国会議員が
16名のみんなの党と、新人ばかりの維新の会が組んでも政府を
構成できるわけでもなく、もっと大きな枠組みで業界再編が行わ
れる必要があると考えているのです。きわめて現実的な考え方で
あるといえます。
 それなら、なぜ、渡辺氏は、橋下・松井両氏が立ち上げる新党
に合流しないのでしょうか。それは、政局観が維新の会とはかな
り違うからです。それに、ここにきて維新の会の意図が少し見え
てきたからではないでしょうか。維新の会の意図については、明
日のEJで取り上げます。     ── [橋下徹研究/35]


≪画像および関連情報≫
 ●みんな・渡辺氏と大阪維新の会、思惑にズレ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  みんなの党・渡辺代表と大阪維新の会の大阪市・橋下市長と
  大阪・松井府知事が20日に会談していたことがわかった。
  両者の合流も含めた次の衆議院議員選挙での連携について話
  し合われたとみられるが、両者の思惑にはズレが出ている。
  松井知事によれば、会談は渡辺氏から呼びかけられた。会談
  では、次の衆院選での連携について、両者の合流も含めて話
  し合われたとみられるが、みんなの党全体での連携を模索し
  ている渡辺氏と、大阪維新の会側とでは思惑にズレがあるよ
  うだ。松井知事は「我々は『新しい政治集団をつくりたい』
  と申し上げた。どこかと、それがみんなの党さんであっても
  そこと組むということについては、今の僕らの考え方の中に
  はございません」と述べ、みんなの党全体との合流には難色
  を示した上で、「政治判断は議員個々人でされるべき」など
  と、議員が個人で合流することには期待感を示した。一方、
  大阪維新の会との連携を模索している民主・自民・みんな3
  党の国会議員らが22日、道州制型統治機構研究会の会合を
  開き、大阪維新の会が政策として打ち出している消費税の地
  方税化について議論した。会合の後、自民党・松浪議員は、
  11日に橋下市長と会談した際、大阪維新の会との共同勉強
  会を提案されたことを明らかにした上で、今後も連携を強め
  ていく考えを示した。 ──読売テレビニュース&ウェザー
  ―――――――――――――――――――――――――――

渡辺・橋下/松井会談.jpg
渡辺・橋下/松井会談
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月28日

●「維新の会の政局観は急進的である」(EJ第3374号)

 昨日のEJで取り上げた大阪維新の会とみんなの党の政策観と
政局観の違いの表を再現します。
―――――――――――――――――――――――――――――
               政策      政局
    大阪維新の会  現実主義的   急進主義的
     みんなの党  急進主義的   現実主義的
―――――――――――――――――――――――――――――
 みんなの党については、昨日既に述べているので、大阪維新の
会について述べることにします。大阪維新の会の橋下代表は、維
新の会との合流は、維新の会の政策──維新八策についての公開
討論が必要だといっています。意見が一致しない限り、連携も合
流もないというのです。
 しかし、完全に一致しなければ組まないといっているわけでは
ないのです。現に維新の会の松井幹事長は、次のような発言もし
ているからです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 維新八策について、譲れる範囲がどこまでなのかをフルオープ
 ンで議論したい。「これしか駄目だ」と言うと、広がりをつく
 ることができない。        ──松井維新の会幹事長
―――――――――――――――――――――――――――――
 このように、主要政策以外では柔軟に対応する考えを表明して
います。これは、現時点でも維新八策の内容が自信の持てるレベ
ルに達していないことを意味しています。現時点で発表されてい
る維新八策は次の2つです。まだ、「維新八策」の最終版は発表
されていないのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  1.維新・次期衆院選公約「維新八策」たたき台/2月
  2.次期衆院選公約「維新八策」政治塾レジュメ/3月
―――――――――――――――――――――――――――――
 つまり、たたき台やレジュメ以上のものがまだ発表されていな
いのです。このたたき台を見た評論家の佐々惇行氏は、『産経新
聞』にかなり激しい批判論文を掲載したときの顛末を次のように
述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 「維新八策」に失望した私は、2月24日付の『産経新聞』に
 「『維新』の『船中八策』に異議あり」という論考を寄せた。
 国政を担うには外交・安全保障分野への認識が著しく欠けてい
 る、と厳しい論調で批判したのだ。そのうえで、「天皇制の護
 持」や「憲法9条改正」などが必要だと指摘した。すると同日
 午後1時過ぎに橋下氏はツイッターで私に対するコメントを発
 表した。「佐々さんの主張はまさに正論。反論はありません」
 と。この素早さと素直さに私は驚いた。続いて、彼は次のよう
 に述べた。「日本は国家安全保障が弱い。これは全てに響いて
 きています」。そして「全ては憲法9条が問題だと思っていま
 す」といい、憲法改正の必要性を認めたのである。さらに、現
 行の憲法のままでは改正は容易ではない、だから、憲法改正要
 件を定めた第98条を緩和して国民投票を行えるようにする、
 も述べた。                ──佐々惇行氏
              VOICE編集部一同/PHP刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 このように、政策に関しては自信がないのか、基本方向が同じ
であれば、その修正については比較的柔軟なのです。そういう意
味で政策に関しては現実主義的であるといえます。
 全国に維新の会ができて橋下氏は困惑していますが、維新は国
のかたちを変えるという意味で使われるべきであり、軽々しく乱
用すべきではないと思います。
 さらに、「船中八策」とか「維新八策」と呼称するのは、もっ
と違和感を覚えます。坂本龍馬の「船中八策」は、当時藩制──
地方分権をとっていた日本の政治体制を壊し、列強諸国に劣らな
い中央集権国家に脱皮させる政策について述べたものであり、維
新の会の船中八策はその真逆をやろうとしているからです。
 さて、政策には現実主義的な大阪維新の会ですが、その政局観
は、きわめて急進的です。これについて、みんなの党・衆議院大
阪府第9区支部長の足立やすし氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 大阪維新の会の政局観であるが、同じ会見で松井知事は「(み
 んなの党の政策は国会で)広がっていない状況があり、実現で
 きない集団になってしまう。政治は結果責任。決定できる態勢
 を作れるチームが必要」と指摘し、大阪府市で首長と議会の過
 半数(大阪市は公明党と連携し過半数)を獲得したのと同じよ
 うに、国政にあっても、一気に政権獲得にチャレンジすると受
 け取れる考え方を表明されている。    ──足立やすし氏
             http://blogos.com/article/45498/
―――――――――――――――――――――――――――――
 今や選挙の生き残りを賭けて、民主党をはじめとして多くの議
員が大阪維新の会に擦り寄っています。また、維新政治塾を開い
たところ、信じられないほど多くの応募があり、維新の会では、
塾生を888人に絞って、全国選挙区に候補者を立てることも可
能な体制になってきています。
 こういう状況を受けて、大阪維新の会は、当初考えていた方針
を変更したフシがあります。当初はみんなの党と組んで、全国に
候補者を立てて選挙を行う予定だったと思います。
 しかし、事態は、橋下氏や松井氏の想像以上に大阪維新の会に
期待が寄せられているのを知って、離党してくる議員に維新八策
の踏み絵を踏ませ、その勢力を中心にして、大阪維新の会とは別
に新党を立ち上げ、このさい、一挙に天下を取ろうと考えたので
はないかと思います。大阪維新の会の政局観が急進的であるとい
うのは、そういう観点からいわれているのです。
                 ── [橋下徹研究/36]


≪画像および関連情報≫
 ●石原新党はどうなったのか/2012年8月24付
  ―――――――――――――――――――――――――――
  東京都の石原慎太郎知事を党首に想定している「石原新党」
  の動きが停滞している。野田佳彦首相が「近いうち」の衆院
  解散を明言し、大阪市の橋下徹市長率いる「大阪維新の会」
  などの第3極の動きが激化しているのに、この静けさの背景
  は何か。石原氏側近が「3つの真相」を明かした。石原新党
  をめぐっては、中枢メンバーである「たちあがれ日本」の平
  沼赳夫代表が7月、8月にも石原氏が正式に態度表明すると
  の見通しを語ったが、石原氏は10日、「こちらは新党より
  も尖閣(諸島購入計画)のほうで手一杯なんだ」とけむに巻
  いている。石原氏側近は「新党の動きは現在ストップしてい
  る」と話し、理由として(1)尖閣と2020年の五輪招致
  という都政の重要課題が残っている(2)中枢メンバーであ
  る国民新党を離党した亀井静香衆院議員と平沼氏の不仲が解
  消されていない(3)長男である自民党の石原伸晃幹事長の
  反対−を挙げた。尖閣については、政府も「国有化」を表明
  したが、地権者は「石原氏にしか売らない」と話しており、
  常識的には途中で投げ出すことは難しい。2020年五輪の
  開催地は来年9月に決まる予定だが、20日に東京・銀座で
  行われたロンドン五輪メダリストのパレードには50万もの
  人々が集まり、招致機運は高まっている。(続きを読む)
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20120824/plt1208241122004-n1.htm
  ―――――――――――――――――――――――――――

足立やすし氏/佐々淳行氏.jpg
足立 やすし氏/佐々 淳行氏
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2012年08月29日

●「橋下新党に合流する条件とは何か」(EJ第3375号)

 橋下徹氏が次期衆院選を目指して設立を計画している新党(以
下、橋下新党)は、どのようになるのでしょうか。
 橋下・松井両氏の発言から読み取れる橋下新党への合流条件は
次の4つです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.政党対政党の連携のかたちはとらない
     2.既成政党から離党してくることが条件
     3.解党し政党丸ごと参加することは可能
     4.いずれも維新八策の合意が不可欠条件
―――――――――――――――――――――――――――――
 まず、選挙前に政党対政党で連携することはない──松井氏は
このように明言しています。みんなの党が橋下新党との連携がう
まくいかなかったのはこれが原因と思われます。
 しかし、これは少しみんなの党に酷ではないかと思います。渡
辺代表は、大阪ダブル選挙のときは代表自ら勝手連として大阪各
地で応援演説を行い、橋下市長や松井府知事の当選に協力してい
るのです。さらに、大阪都構想を実現するための地方自治法改正
案をみんなの党は議員立法でまとめ上げています。
 そこまで協力し、政策もほとんど変わらないみんなの党を橋下
・松井両氏は、「合流したければ、みんなの党を解党して加わっ
て欲しい」と渡辺代表にいったそうです。渡辺代表は、合流も視
野に入れていたようですが、そんなに簡単に飲める話ではないと
思います。問題は、会談後の松井氏の発言です。これは、昨日の
EJでご紹介しましたが、再現します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 みんなの党の政策は、国会で拡がっていない状況があり、実現
 できない集団になってしまう。政治は結果責任。決定できる態
 勢を作れるチームが必要である。     ──松井大阪知事
―――――――――――――――――――――――――――――
 抽象的な表現ですが、松井氏は何をいいたいのでしょうか。何
となくみんなの党を見下しているような感じがします。これまで
大阪維新の会に対し、誠意をもって協力してきたみんなの党に対
するとても冷たい対応であると感じます。
 しかし、これは橋下新党とみんなの党の連携はないと思わせる
芝居である可能性もあります。みんなの党が維新の会の対応につ
いて、怒りを見せていないからです。
 そこに何があったのでしょうか。
 それは、盛り上がる橋下人気で、既成政党の議員が大挙して橋
下新党に押しかけてくるような状況ができつつあり、橋下氏自身
が考え方を変えたのだと思います。つまり、何年もかけて着実に
政権を奪取するのではなく、このさい橋下新党を一層ブレークさ
せて、一挙に政権を奪取するのに可能な数を確保することを考え
ているのではないかと思います。
 その核になる存在が超党派勉強会「道州制型統治機構研究会」
のメンバーです。中心議員は、民主党の松野頼久議員、自民党の
松浪健太議員です。8月11日に橋下・松井両氏と会談した5人
の議員のうちの2人です。
 この松野議員は民主党の離党者の窓口になり、松浪議員は自民
党とのつなぎ役になる。ちなみに、5人の中にはみんなの党の上
野貴史、小熊慎司の両議員がおり、みんなの党の対応しだいでは
おそらく彼らは橋下新党に合流すると思われます。
 そして、維新政治塾の新人約30−50人、現職国会議員が約
50人、現在の既成政党の落選組約30人の計130人程度の議
員を確保するという計画です。このくらいの数が確保できると、
政界再編が起きる可能性が出てきます。この時点で、みんなの党
減税日本、中京維新の会などと連携を組めば、衆院で200人〜
250人程度の勢力になり、政権が奪取できるという計画です。
 しかし、既成政党からの離党者──とくに民主党の離党者を大
量に受け入れると、明らかに選挙目当てであるので、橋下新党の
評判が下がる恐れもあります。下手をすると、「永田町ガラクタ
市」になってしまう可能性が十分あるからです。
 そのためにやるのが、維新八策の公開の「踏み絵」です。公開
の踏み絵──具体的にどのようにやるのでしょうか。テレビ局が
主催して、番組として構成し、そこで公開討論をすれば、橋下新
党にとってもの凄い宣伝になり、維新八策が何を狙っているかに
ついて知らしめるよいPRになります。橋下氏が出れば、テレビ
局は視聴率が取れるので、乗る可能性があります。現時点では新
党も立ち上がっていないし、選挙も予告されていないので、テレ
ビ局が番組として企画する可能性は十分あります。
 そのモデルになると思われるのが、8月24日のEJでご紹介
した次の『朝まで生テレビ』です。
―――――――――――――――――――――――――――――
    激論!「大阪市長橋下徹」は日本を救う?!
      2012年1月27日放送/テレビ朝日
―――――――――――――――――――――――――――――
 「踏み絵」の議論で、一番焦点になる議論は「道州制」である
と思います。なぜなら、維新八策の根っこの政策が「道州制」で
あるからです。「道州制型統治機構研究会」の超党派のメンバー
議員が核になるのはそのためです。
 大阪都構想は、大阪という一つの都市を変えるための構想では
ないのです。その先にある「道州制」というビジョンに到達する
ための一里塚としてとらえているのです。それは、単なる地方分
権ではなく、国の仕組みを変革し、金の流れも変える一大改革で
す。そのため公開討議に参加して、橋下新党のメンバーとみなさ
れるためには、相当の勉強が必要になります。
 このように、選挙目当ての付け刃では、橋下新党には合流でき
ないでしょう。したがって、維新八策の「踏み絵」は橋下新党に
とっては、それがどのようなかたちで行われるにせよ、実に効果
的なことといえます。       ── [橋下徹研究/37]


≪画像および関連情報≫
 ●同床異夢の第三極結集は失敗に終わる/あるブログより
  ―――――――――――――――――――――――――――
  次期総選挙で躍進すると見られている大阪維新の会ですが、
  この地域政党が自民党の別働隊であり、対米隷属志向である
  ことは、つとに指摘してきた通りです。徴兵制の導入を検討
  したり、首相公選制を唱えたりしていますが、TPP推進も
  方針として掲げています。橋下徹氏率いる大阪維新の会に擦
  り寄る政治家が増えていますが、橋下氏はTPPについて、
  「踏み絵」をして、受け入れるかどうか決めるようです。大
  阪市の橋下徹市長が、国会議員に対する“公開踏み絵”を打
  ち上げた。次期衆院選に向けて、自らが代表を務める大阪維
  新の会に、現職国会議員が合流を検討しているが、「われわ
  れと考えが一緒なのか、公開の場で明らかにしないといけな
  い」と語り、維新の公約への賛否を、衆人環視の中で確認す
  るという。橋下氏は先々週、民主党の松野頼久元官房副長官
  ら「道州制型統治機構研究会」のメンバー5人と会談した。
  「維新に合流へ」と報じたメディアもあったが、橋下氏は、
  21日、「意見交換した程度だ」と市役所で記者団に説明。
  「人数だけをそろえるのでは、有権者の理解は得にくい」と
  述べ、政策を中心に連携を進める意向を強調した。その過程
  で飛び出した“公開踏み絵”発言だが、いつもは国会の赤じ
  ゅうたんを闊歩(かっぽ)している議員センセイが審査され
  るだけに、実現すればメディアが殺到するのは間違いない。
  http://blog.goo.ne.jp/capitarup0123/e/f507fb7fbbdcf0b06a9482769c360552
  ―――――――――――――――――――――――――――

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橋下市長と渡辺代表
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2012年08月30日

●「改革者が必ず口にする霞ヶ関改革」(EJ第3376号)

 なぜ、橋下新党は提携や合流を望む者に対して、頑なまでに自
分たちの政策──維新八策への完全同意を求めるのでしょうか。
それは、次の橋下氏の言葉によくあらわれています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 今までの制度を維持したい勢力は全部向こう側についた。虫
 を退治するのも、一ヵ所に集めてバチーンとするほうがやり
 やすい      ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは、2011年10月8日に大阪維新の会の区民会議で、
大阪市長選に出馬を表明している平松邦夫市長を既成政党や労働
組合が応援しているのを指摘して述べた言葉です。
 つまり、橋下氏は、誰が味方で誰が敵かをはっきりさせて選挙
をやったほうが効果的であり、白黒決着がつけられると考えてい
るのです。そのため、合流しようとする勢力に対しては、徹底的
に純化を求めるわけです。これはかつての小泉元首相が自分に反
対する勢力に「反対勢力」というレッテルを貼り、論争したやり
方に通じるものがあります。
 しかし、政党対政党の連携ではそこまでの純化を求めることは
できず、政策もその分曖昧になります。政党というのはそれぞれ
違いがあって当然であり、政策が完全一致するなら、同じ政党に
なればよいからです。これが橋下氏のいう選挙前にはどこかの党
と連携しないという理由なのです。
 橋下氏は改革論者です。改革論者は、必ず「国のかたちを変え
る」といいます。橋下氏はどのようにいっているのでしょうか。
語録から拾ってみると、関連するものは次の3つです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎国のかたちを変えないと、10年後、20年後には国会議
  員と霞ヶ関しか残らない ・・・その1
 ◎地方は国の奴隷。奴隷を解放してほしい ・・・その2
 ◎国は暴力団以上の組織。上納させられるので、やろうと思
  っていることができない ・・・その3
          ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
                      ──森田実著
    『「橋下徹」ニヒリズムの研究』/東洋経済新報社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 現在日本の政治は、官僚主導体制になっています。国のかたち
を変えるとは、この官僚主導体制を変革することを意味します。
民主党も「政治主導」を掲げて選挙を戦い、政権交代を実現しま
したが、何一つ変えられずに敗退しています。
 その失敗の原因は、民主党が小沢一郎氏を排除したことにあり
ます。霞ヶ関は早くから小沢氏が天下を取ると、本気で霞ヶ関を
変革しかねないと警戒して、検察まで動員して潰しにかかり、小
沢氏の影響力を消すことにある程度成功しています。政治家の実
力は官僚が一番的確に掴んでいるのです。
 ちなみに「霞ヶ関」といえば、官僚機構のことですが、政界や
財界も次のように東京の地名で呼ぶのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
         政界 ・・・・ 永田町
         財界 ・・・・ 丸の内
         官僚 ・・・・ 霞ヶ関
―――――――――――――――――――――――――――――
 語録のその1は、府知事時代の2008年9月の大阪府連の会
議で、府連会長の中山太郎衆院議員や自民党府議団の浅田均幹事
長が同席しているところでの発言です。その後、浅田均氏は橋下
氏に心服し、現在では大阪維新の会の政調会長を務め、維新八策
の策定担当者になっています。
 語録のその2は、テレビで放映されたので、知っている人も多
い思います。2009年2月に、橋下知事が当時の国交相金子一
義氏(自民党)と国直轄事業負担金についての会談で出た言葉で
す。そのはっきりとしたものいいに注目が集まったのです。
 語録のその3は、2008年11月に大阪市の北摂市長会で、
市長と意見交換をしたときに発した発言です。国を暴力団に喩え
たので、話題を呼んだのです。
 橋下氏はこれら3つの語録で「霞ヶ関」を批判しています。し
かし、政治評論家の森田実氏は、霞ヶ関は政治権力のシンボルで
あるので、改革者は必ずそれを批判し、それにマスコミが絡んで
くるとして、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 多くの政治家は、国政への国民の不信が高まりますと、その責
 任を「霞が関」(官僚)に押しつけます。「霞が関」(官僚)
 は何を言われても沈黙したままです。反論しません。政治家の
 官僚への責任転嫁の合唱が広がると、これにマスコミが参加し
 ます。経済界も参加します。官僚の一部も参加します。これら
 官僚内の造反者はマスコミの庇護を受けます。やがてマスコミ
 の寵児となります。さらに地方自治体の首長の一部が加わりま
 す。一部がマスコミの大スターになります。橋下徹大阪市長や
 石原慎太郎東京都知事や河村たかし名古屋市長などはマスコミ
 がつくつた大スター政治家です。       ──森田実著
     『「橋下徹」ニヒリズムの研究』/東洋経済新報社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 森田実氏は、橋下氏自身もマスコミが作り上げた改革派のシン
ボルであるといっています。その橋下氏がやはりマスコミの一大
スターである石原慎太郎東京都知事と組むということで、大いに
盛り上がったのです。そんなことが起きれば、大きな話題になる
ので、マスコミにとっては大歓迎です。改革者はマスコミにこの
ように祭り上げられることが多いのです。
 しかし、橋下氏と霞ヶ関とは、現在ツイッターやブログを使っ
て既に論争中なのです。つまり、前哨戦が始まっているのです。
明日のEJで述べます。      ── [橋下徹研究/38]


≪画像および関連情報≫
 ●「国のかたちを変える」/手代恕之氏のブログより
  ―――――――――――――――――――――――――――
  地方自治体首長として実感した「国と地方は奴隷関係」とい
  うことだろうが、この言葉は支配と従属の関係と言うよりも
  きつい表現となっている。「奴隷関係」とは人間性をも上下
  の価値観で計る人間関係を言う。中央政治家と中央官僚を優
  越的上位に置き、地方政治家と地方役人を劣後的下位に置く
  人間観である。では、なぜ国と地方の間にこういった「奴隷
  関係」、あるいは支配と従属の関係が生じるかというと、何
  度もブログに書いてきたことだが、日本人がすべてにおいて
  人間までも上下の価値で権威づけて、上が下を従わせ、下が
  上に従う権威主義性を行動様式・思考様式としているからに
  他ならない。この権威主義的行動様式・思考様式の発動を受
  けて、国は地方の上に位置しているという思いからだろう、
  地方支配の意識が働き、結果として「奴隷関係」、あるいは
  支配と従属の関係が国と地方の人間間に色濃い如実な反映を
  受けることとなっている。大阪都が区よりも上の優越的位置
  に立っているという歪んだ権威づけから、こういった上下・
  主従関係が大阪都と都下の20区の関係に置き換えられて、
  そのヒナ型でもあった場合、当然支配下にある区は有形無形
  の形で大阪都の役人の支配を受けることとなって、財源的に
  も職務上もその支配の範囲内での活動を余儀なくされて、区
  の効率性は失われることになる。(続きを読む)
  http://blog.goo.ne.jp/goo21ht/e/3f537fd730d081ddd89b2b266b324f88
  ―――――――――――――――――――――――――――

「霞ヶ関」に乗り込む橋下知事(当時).jpg
「霞ヶ関」に乗り込む橋下知事(当時)
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月31日

●「警察マターを口にしない橋下市長」(EJ第3377号)

 『週刊現代』8/11号に次の記事が掲載されています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 【官僚匿名座談会】
 「橋下徹だけは潰してやる」/この男が総理になると心底困る
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは、財務省、経産相、国交省のキャリアが匿名で本音を語
る座談会です。このなかで財務省のキャリアは、橋下氏について
次のように発言しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 誤解されてるみたいだけど、オレたちは「政治主導」が嫌なん
 じゃない。「バカな政治家のアホな主導は無視する」だけ。も
 し橋下がオレたちをうまく活用する気があるなら、いくらでも
 力は貸す。反対に公務員叩きで人気を取るだけの邪魔者なら、
 消えてもらうしかないけどね。大阪市なんか、1800ある市
 町村の一つに過ぎない。政令指定都市でも20分の1である。
 同じ手法は国政では通用しない。市の職員とオレたちを一緒に
 するな!         ──財務省のキャリアの発言より
                   「週刊現代」8/11
―――――――――――――――――――――――――――――
 思い上がりもはなはだしい中央官庁の官僚の本音です。橋下市
長を指して1800分の1の首長ごときが何をエラソーにいって
いるんだというような調子で批判しています。これに対して橋下
氏はツイッターで次のように応酬したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎先週の週刊現代は勉強になった。あの官僚覆面座談会は本物
  だね。よく細かなところまで分析してやがる。あっぱれだ。
  「政治主導は構わないが、バカな政治家の政治主導だけは勘
  弁だ」は、一理ある。
 ◎しかし政治家がバカかどうかは官僚が判断するんじゃねえ。
  国民が判断する。こういう記事を見ると、燃えてくるぜ!
                ──橋下大阪市長の反論より
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下氏は「あの官僚覆面座談会は本物だ」と一応評価していま
すが、どこを評価したのでしょうか。それは、おそらく次の部分
であると思います。
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下氏は、国家の安全保障と国内の治安維持、つまり外交と警
 察マターについてはいっさいコメントしない。理由は、外交に
 ついてはまだ優秀なブレインがいないからであり、警察につい
 ては敵に回すとどれだけ恐ろしいか、弁護士時代に骨身に染み
 て知っているからだ。しかし、外務省と警察庁こそが、「霞ヶ
 関」のなかで最も既得権益にあぐらをかいている組織である。
 「自治体に経営の理念を持ち込む」のが橋下氏の信念であるな
 らば、警察組織の無駄と天下りにも矛先を向けなければ、一貫
 性を失うことになる。橋下氏がやったことは、人れ墨批判とか
 国歌斉唱の不起立問題とか、バス運転手の給与カットとか、要
 は「組合との闘争」ばかり。戦っても怖くない相手としか、ま
 だケンカしていない。     ──「週刊現代」9/1より
―――――――――――――――――――――――――――――
 確かに橋下氏は外交や安全保障の話をあまりしないのです。そ
れを指摘する論文を評論家の佐々淳行氏に書かれ、橋下氏はその
意見を受け入れ、維新八策を修正したことは、既に述べた通りで
す。確かに、現在橋下氏のところに集まっている人たちを見ると
外交や安全保障の専門家はあまりいないと思います。
 要するに橋下氏は痛いところをつかれたのです。だからこそ、
「細かなところまで分析してやがる」といったのです。それにし
ても警察に関しては、これほどまでいわれても、橋下氏はだんま
りをきめ込んでいます。確かに国会議員でも「警察改革」を唱え
る人はきわめて少ない、いやいないのです。やはり、敵に回すと
怖い存在なのでしょうか。
 現在、さまざまの警察・刑事ドラマがテレビで放送されていま
す。代表的なものはおそらく『相棒』シリーズでしょう。興味深
いのは、どのドラマも基本的な筋立ては同じだということです。
 一方に事件を解決するために全力を尽くす正義感に燃える刑事
──多くの場合、窓際に追いやられている刑事がいて、他方、自
分の出世のことしか考えない上層部がいるのです。彼らは自分の
出世と、警察という組織を守るためには、殺人事件も自殺として
処理することなど平気で行い、正義感に燃える刑事の活動を妨害
する──しかし、正義感に燃える刑事は、そういう困難な状況に
もかかわらず、地道に捜査を積み重ねて事件を解決するのです。
『相棒』にしても『踊る大捜査線』にしても、他の警察ドラマに
しても同じパターンです。
 これらのドラマは、警察に対する批判や不信の一種のガス抜き
になっているように思います。自殺として処理されていた大阪・
西成の女医の不審死事件がようやく殺人事件として捜査すること
が決まった事件がありましたが、これなどは警察の怠慢が引き起
こした事案といえます。なぜ、政治家は警察改革を取り上げない
のでしょうか。
 かつて行方不明者を探す『TVのチカラ』というテレビ朝日の
生放送番組があったのですが、相当人気があったにもかかわらず
番組は突然打ち切りになっています。理由はプロデューサーの使
途不明金疑惑ということのようですが、警察関係が圧力をかけた
のではないでしょうか。何かというと、自殺で処理したがる警察
にとって、この番組は迷惑な話であり、潰しに動いたとしても不
思議はないのです。
 戦っても怖くない相手としかケンカしない──そんなことでは
官僚機構の改革など不可能です。橋下氏には天下を取ったら、怯
まず、強大な官僚組織とケンカしてほしいものです。
                 ── [橋下徹研究/39]


≪画像および関連情報≫
 ●官僚匿名座談会/国交省キャリアの発言
  ―――――――――――――――――――――――――――
  次の選挙の比較第一党は自民党です。いや、そうなってもら
  わないと困る。そして二階さん、古賀さんという信用できる
  政治家が主流派になってほしい。民主党の『コンクリートか
  ら人へ』は最悪の政策でした。まあ、僕らが徹底的に反抗し
  て、仕事もサボタージュして、前原さんなんか結局何もでき
  なかったわけですが・・・。デフレを脱却するためには公共
  事業で地方に雇用を生むしかない。その差配は我々がやる。
  橋下氏は地方分権だとか言いますが、ほとんどの自治体は、
  「霞が関」に仕切ってもらいたいと思っています。古い政治
  に戻る?新しい政治とか言う人間が、何かいいことしました
  か?道路だけじゃなく、都市インフラまで含めた公共事業で
  地方を潤す。日本再生の道はそれしかない。だが、次の選挙
  でそれをぶち壊しかねないのが橋下氏だ。鮮烈な行政改革、
  地方分権を打ち出されたら、古めかしい「国土強靭化」など
  国民から見向きもされなくなってしまう。
                ──「週刊現代」9/1より
  ―――――――――――――――――――――――――――

警察ドラマの典型『相棒』.jpg
警察ドラマの典型『相棒』
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2012年09月03日

●「議員定数半減は道州制導入が前提」(EJ第3378号)

 8月26日、橋下大阪市長は、松山市で開催した中村時広・愛
媛県知事との公開対談で、衆議院議員定数を現在の480人から
240人に半減させ、あわせて議員歳費と政党交付金の3割削減
を次期衆院選の公約にするという注目の発言を行ったのです。
 これに対して、民主党と自民党の両幹事長は次のようにコメン
トしています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎二院制の憲法下で定数を半減して民意が反映できるのか。一
  気に半減はできないだろう。  ・・・ 民主党輿石幹事長
 ◎過疎地と都市部との配分をどうするのか、完全に1票の格差
  をなくすのか。詳細がわからない。 ・ 自民党石原幹事長
―――――――――――――――――――――――――――――
 この発言を聞くと、これら与野党の両幹事長が、橋下新党が実
現を目指そうとしている政策について、いかに勉強していないか
がよくわかります。
 この衆院議員定数半減には、「道州制が実現すれば」という前
提条件がつくのです。多くの人は、橋下大阪市長のやりたいこと
は、大阪府市を一体化させ、大阪都をつくること──このように
とらえていると思います。なかには、たかが一都市のことで日本
中が騒ぎ過ぎだと考えている人もいます。
 8月29日の参院本会議で、「大都市地域特別区設置法」が成
立しましたが、この法律は、橋下大阪市長が推進する大阪都構想
を実現するために不可欠な法律であり、かねてから橋下大阪市長
が求めていたものです。
 橋下氏は、当初この法案が成立しなければ、大阪維新の会を率
いて国政にうって出ると公言していたのです。既成政党側として
は、2011年の大阪ダブル選挙の大阪維新の会の勢いを恐れ、
法案を成立させて国政への進出は遠慮してもらおうという気持ち
もあって、大都市地域特別区設置法の成立に協力したのです。
 しかし、橋下氏は、大阪都構想を実現する要件が整うと、国政
への進出を断念するどころか、かえって当然のことのように、国
政進出の構えを強く見せています。唯一「自分は出馬に出ない」
といい続けているだけですが、それもやがて撤回するものと思わ
れます。ところで、道州制とは何でしょうか。橋下氏が何を狙っ
ているを知るには、道州制を理解する必要があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 道州制とは、国、都道府県、市区町村となっている現在の国の
 構造を、既存の市区町村を再編した「基礎的自治体」、基礎的
 自治体の集合体である「道州」、そして「国」という三層構造
 にすることである。       ──高橋洋一著/中経出版
     『日本の「お金の流れ」を変える!大阪維新の真相』
―――――――――――――――――――――――――――――
 問題は、どうして道州制が必要なのかということです。それは
人口規模が1億人を超える日本ほどの規模の国になると、全国一
律で行政を行うのは困難であるというのが理由です。
 多くの日本人は日本の国を実際よりも小さくとらえています。
確かに日本の国土は狭いですが、人口規模でみると、日本は世界
有数の大国なのです。現在日本の人口は、1億2653万人で、
世界第10位です。
 それでは、どのくらいの人口ならマネジメントしやすいのかと
いうと、1000万人程度ではないかといわれています。欧州で
はその規模の国は多くあります。そのため、中央集権体制を廃し
日本を10〜12の道州に分けて、マネジメントしようというの
が道州制なのです。
 中国、インドに次いで世界第3位の人口規模を有する米国は、
「連邦制」をとっています。現在50の州があり、各州はアメリ
カ合衆国連邦とは主権を共有しながら、それぞれ独立した主体に
なっています。
 橋下氏は、大阪府知事に就任して大阪を改革しようとしたので
すが、主要な権限はすべて国が握っており、地方の首長がいくら
がんばっても肝心な改革は何もできないことがわかったのです。
そして、発したのが次の有名な語録です。
―――――――――――――――――――――――――――――
     ◎地方は国の奴隷。奴隷を解放してほしい
         ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 さらに大阪府の場合、府と市の関係がおかしく、似たようなこ
とを府と市の両方でやっていて効率が悪い。権限にしても、府よ
りも市の方が強い権限を持っていて府としてやれることに限界が
あるなど、数々の矛盾に気が付いたのです。地方の首長の立場か
ら国のあり方を考えてみて、そこに多くの問題点を発見し、それ
を解決する政策として、大阪都構想を打ち出したのです。
 この大阪都構想をさらに進めると、道州制の導入が現在の日本
には必要であることがわかったのです。道州制は、3ゲン──権
限、人間、財源を国から地方に移すことを意味するので、国とし
ては外交、防衛、安全保障、財政金融政策など、国にしかできな
い仕事だけを担うことになります。そうすれば、国としての仕事
は減るので、衆議院議員は現在の半分で十分というのが、今回の
衆院議員定数半減の橋下宣言なのです。
 しかし、道州制のような大きな問題は、そう簡単には実現でき
ない大問題です。にもかかわらず、それを実現する前提で橋下氏
は議員定数半減を打ち出したのです。選挙が近いので、衆目を集
めるための大胆な発言といえます。
 本来なら「道州制の実現」を公約として打ち出すべきですが、
それではあまりインパクトがないし、意味がわからない人も多い
ので、道州制が導入された成果のひとつである衆院議員定数半減
を訴えたのでしょう。これは、選挙対策としては効果的かもしれ
ませんが、誤解を招きやすい発言であることは確かです。
                 ── [橋下徹研究/40]


≪画像および関連情報≫
 ●地域主権道州制とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  道州制とは、全国を10程度の道州に再編し、国の役割を主
  に外交・安全保障などの対外的な仕事に純化し、産業や生活
  など内政に関わる仕事の大半を道州に移すというものです。
  なかでも「地域主権型道州制」とは国が内政全般に関与して
  きた中央集権体制を廃し、国、道州、基礎自治体(市町村)
  が明確な役割分担のもと、それぞれが独立した権限とみずか
  らの税財源をもつことで、地域が自由で独創的な活動をでき
  るようにするという「新しい国のかたち」を意味します。こ
  の「地域主権型道州制」は、単なる都道府県合併でもなけれ
  ば、国の出先機関を統合する国主導型道州制とも異なり、中
  央政府の解体再編と地域政府の確立を目指すものです。ただ
  し、アメリカのように各州が独自に憲法や軍を持つ連邦制と
  は違い、現行の日本国憲法の中で実現できる改革なのです。
  (続きを読む)
       http://research.php.co.jp/devolution/faq.php
  ―――――――――――――――――――――――――――

高橋洋一著/大阪維新の真相.jpg
高橋 洋一著/大阪維新の真相
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2012年09月04日

●「道州制を見据えている大阪都構想」(EJ第3379号)

 人口が1億を超える国は世界に11しかなく、日本はそのひと
つです。1億人以上の人間を一律にマネジメントする──それは
最初から不可能であり、そのために地方ごとに首長がいるのです
が、これらの首長がやれることはきわめて限られており、本当に
大事なことはすべて国が決めているのです。これが日本の現状な
のです。
 福島原発事故のさい、当時の枝野官房長官が記者会見でいった
ことばを覚えていると思います。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ただちに健康に影響はない。一定の距離があれば避難の必要
 はない。         ──枝野幸男官房長官(当時)
―――――――――――――――――――――――――――――
 この発言は、官房長官としては当然の発言ですが、福島の人々
や福島の近くに住んでいる人は納得がいかないでしょう。そのた
め、「そんなことをいうなら、オマエが福島に住め!」という人
も多く出たのです。
 東京と福島はそんなに離れていませんが、現地に住んでいる人
とは感覚が相当異なるはずです。まして関西や四国や九州の人々
になると、感覚的にはもっと差があると思います。したがって、
現場にいる首長が中心になって問題解決に当るべきです。そんな
ことは、当たり前のことですが、実際の復興計画の立案や進め方
は地元中心になっていない現実があります。
 しかし、福島の原発事故は起きてしまったことなので、地方と
国が共同で解決に当るのは当然のことですが、大飯原発の再稼動
についてはどうでしょうか。高橋洋一氏は、これに関して次のよ
うに述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 もしも大飯原発で問題が生じた場合、いちばん困るのは、地元
 の福井の人、京都の人、滋賀の人、大阪の人である。もちろん
 原発は国全体の問題でもあるし、地元以外の人には関心がない
 ということではないだろうが、地元の人から見れば、関係のな
 い地域の人間からあれこれ言われるのは嫌だろう。それなのに
 なぜ国が判断するのか。みんなが自分のこととして考えるのは
 いいが、国ではなく、地元が中心になって考え、判断を下せば
 いいのではないか。       ──高橋洋一著/中経出版
     『日本の「お金の流れ」を変える!大阪維新の真相』
―――――――――――――――――――――――――――――
 要するに、地方の問題は地方で解決する、いや解決できるよう
にするという構想が「道州制」なのです。話を具体的にするため
に、道州をどのように分けるかについて、ひとつの分け方を示し
ておきます。道州の適正規模は、人口1000万人〜2000万
人です。いろいろな案があり、以下はひとつの考え方です。
―――――――――――――――――――――――――――――
      北海道    北陸信越州  四国州
      東北州      東海州   九州
     北関東州      関西州  沖縄州
     南関東州    大阪特別州
    東京特別州      中国州
                ──高橋洋一著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 道州の下には、人口30〜50万人規模の「基礎自治体」があ
り、道州の上位組織として「国」があるのです。基礎自治体、道
州、国の三層構造です。
 現在、大阪市の人口は267万人です。これは基礎自治体のレ
ベルをはるかに超えており、これを人口30万人程度から成る7
〜9の基礎自治体に分割し、それを総合したものを「大阪都」に
するというのが「大阪都構想」です。
 しかし、それで終わりではなく、大阪都の先に「関西州」の実
現を考えているのです。上記の13分割案は、大阪特別州を関西
州から切り離す案になっていますが、このようにいろいろな案が
考えられるのです。
 ところで、地方分権とか地域主権を主張する政治家は少なくな
いと思います。地方分権・地域主権は、現在の都道府県制をその
ままにして、3ゲン──権限、人間、財源を地方に移譲すること
を意味しています。そうすれば、地方分権・地域主権は達成され
ますが、それは道州制とは異なる考え方です。
 したがって、地方分権とか地域主権を口にする政治家の本心が
道州制まで考えているのかどうかを見極める必要があります。少
なくとも橋下徹大阪市長は道州制を見据えています。
 道州制には、メリットもデメリットもありますが、誰でも思い
つくメリットは、次の2つです。
―――――――――――――――――――――――――――――
       1.広域行政の効率化が図られる
       2.行政コスト削減化につながる
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1は「広域行政の効率化が図られる」ことです。
 地方には、都道府県をまたがる課題が非常に多いのです。道路
政策や河川政策などがそうです。これは、激しい自治体間抗争を
巻き起こすのがつねであり、それに国や業界が介入し、税金の無
駄遣いや非効率的な施策の展開が行われてきたのですが、道州制
はそれを効率化できるのです。
 第2は「行政コスト削減化につながる」ことです。
 道州制を導入すれば、当然のことながら、公務員や知事や議員
の大幅なリストラが可能になります。これは行政コストの大幅な
削減に結びつきます。橋下大阪市長の衆院議員定数の半減宣言は
ここから出ています。
 もちろん、デメリットもたくさんあり、その実現ということに
なると、簡単にはいかないことも確かです。選挙で絶対的多数を
握らないと、実現困難です。    ── [橋下徹研究/41]


≪画像および関連情報≫
 ●特区法案に内在する「道州制」に対し/2010年8月メモ
  ―――――――――――――――――――――――――――
   「道州制」のメリット、デメリットについては、積年の間
  一部で議論がなされて来たことかと思います。おそらく、論
  の上でも「賛」「否」が分かれるコンセプトではないかと思
  われます。この「道州制」については、経済施策や行政上の
  メリット、デメリットのみに関して議論すべき性質にはなく
  むしろ、それらの議論に視点を奪われるうちに、実は、中国
  共産党の他国解放(侵略)政策における行政区画の一環とし
  て進められていた、それが国内の傀儡(かいらい)勢力によ
  ってなされていた、との結果を招く危惧がありはしないか。
  その点まで掘り下げる必要があろうかと考えます。本年5月
  「原口一博総務相は19日午前、道州制導入に向けて来年の
  通常国会に道州制推進基本法案を提出したい考えを示した」
  (日本経済新聞)として、「導入を求める日本経団連の御手
  洗冨士夫会長ら経団連幹部との会合で明らかにした」との報
  道がありました。事実とすれば、「道州制」を推進する法案
  が民主党によって国会に提出され、法制化される。その可能
  性が否定できない状況へと変移することになりかねません。
  http://torakagenotes.blog91.fc2.com/blog-entry-533.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

道州制区分の例.jpg
道州制区分の例
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2012年09月05日

●「維新八策最終版の問題点を探る」(EJ第3380号)

 8月31日、大阪維新の会は、次期衆院選の公約「維新八策」
の最終版をまとめ、発表しています。八策の大きな柱を以下に示
しておきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
   ≪維新八策/最終版≫
   第1策:統治機構の作り直し
       〜決定でき、責任を負う統治の仕組みへ
   第2策:財政・行政・政治改革
       〜スリムで機動的な政府へ
   第3策:公務員制度改革
       〜官民を超えて活躍できる政策専門家へ
   第4策:教育改革
       〜世界水準の教育復活へ
   第5策:社会保障制度
       〜真の弱者支援に徹し、持続可能な制度へ
   第6策:経済政策・雇用政策・税制
       〜未来への希望の再構築
   第7策:外交・防衛
       〜主権・平和・国益を守る万全の備えを
   第8策:憲法改正
       〜決定できる統治機構の本格的再構築
―――――――――――――――――――――――――――――
 具体的な政策としては、読売新聞オンラインのまとめた主要項
目を次に示します。数字は該当する八策の番号です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎衆院の議員定数半減/2
 ◎国会議員歳費と政党交付金の3割カット/2
 ◎首相公選制/1
 ◎道州制/1
 ◎消費税の地方税化/1
 ◎年金は積み立て方式に/5
 ◎ベーシックインカム(最低生活保障)的な考え方を導入/5
 ◎環太平洋経済連携協定(TPP)への参加/6
 ◎廃止を視野に参院の抜本改革/1
 ◎ネットを利用した選挙活動の解禁/2
 ◎地方公務員が勤務自治体首長選挙に関与することを制限/3
―――――――――――――――――――――――――――――
 大阪維新の会では、この維新八策/最終版を「政策のセンター
ピン」として衆院選の争点にすると橋下代表はいっています。そ
して、この政策のセンターピンについて、橋下新党へ参加を検討
する現職国会議員らを対象に9月9日に公開討論会を開催するこ
とになっています。おそらくテレビ局は協力すると思われるので
橋下新党の絶好の宣伝になってしまうことは確実です。
 現職国会議員を衆人環視の場で、橋下新党の政策の踏み絵を踏
ませる──政策について議論し、国会議員をテストする。これぞ
上から目線そのもの。こんなことがかつて行われたことがあった
でしょうか。もし、これによって合流を断られた国会議員は、か
えって選挙にマイナスになると思います。
 この維新八策/最終版については、次の問題点があることが指
摘できます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.国の基本政策である原発・エネルギー政策については、
   明確な記述がほとんどない
 2.日本が直面する当面の課題である急速に進む少子高齢化
   への対応を明示していない
 3.消費税の地方税化を打ち出したが、自治体間の財政格差
   への対応が示されていない
 4.数値目標として掲げた「衆院議員定数半減」には、大衆
   迎合であるとの批判がある
 5.憲法改正を維新八策の一つとして掲げているが、憲法改
   正を前提とする政策が多い
―――――――――――――――――――――――――――――
 もともと維新八策は、マニュフェストや政策集というよりも、
政党の綱領に近いものです。そのため、抽象的、曖昧な部分がど
うしても多くなるのでしょうが、あれほど大飯再稼動にこだわっ
ていたのに、原発・エネルギー政策については、「新エネルギー
政策を含めた成熟した先進国経済モデルの構築」と「先進国をリ
ードする脱原発依存体制の構築」という抽象的な表現の項目だけ
しか出ていない。これは、どうしたことでしょうか。
 これはおそらく、維新の会としては、選挙後に様々な既成政党
や第3極勢力との連携を視野に入れて、交渉の余地を残したいと
いう思惑によるものです。既に述べたように、大阪維新の会の政
局観は急進主義的ですが、政策観は現実主義的なのです。
 このように、維新八策は、橋下新党の綱領的なものと公約的な
ものが混在しています。そういう意味で、最終版と銘打っている
ものの、整理が十分に行われていない中間的なものと位置づける
ことができると思います。
 ただ、選挙が迫っているので、これまでの叩き台を一歩前進さ
せたものと考えることができます。確かにこれだけでも、ある程
度その目指そうとする国のかたちは見えてきます。
 ただ気になることは、実現を目指す政策のなかには、憲法改正
を前提とするものが多いことと、「決定できる統治機構の構築」
を築くとしていることです。橋下氏はその性格上、政策を長い年
月をかけて実現して行くタイプではないのです。一気呵成にやろ
うとしているように見えます。
 そのためには、橋下新党は相当の議員数を獲得しなければなら
ないことになります。その場合、橋下氏自身が出馬するかどうか
によって事態は違ってきます。そうでないと、目標とする数はと
れないと思うからです。      ── [橋下徹研究/42]


≪画像および関連情報≫
 ●「維新八策」を国会議員に問う
  ―――――――――――――――――――――――――――
  地域政党・大阪維新の会代表の橋下徹大阪市長は8月21日
  次期衆院選の公約とする「維新八策」を巡り、公開の場で維
  新との合流を模索する現職国会議員と意見交換する考えを明
  らかにした。市役所で報道陣に語った。維新は公職選挙法上
  の政党要件を満たすため、国会議員5人以上の確保を目指し
  ており、維新八策への賛否を問うことで、事実上、合流する
  議員を「選考」する場になるとみられる。橋下氏は「国会議
  員が維新八策について、どこまで賛同し、何が反対なのか、
  公開の場で明らかにしないといけない」と述べた。一方、維
  新幹事長の松井一郎大阪府知事は同日、この意見交換で考え
  が一致した国会議員について「日本を変えるための即戦力。
  経験や知識を活用していただきたい」と述べ、次期衆院選で
  維新の公認候補とする方針を明らかにした。維新はこれまで
  衆院選の候補者を公募するとしていたが、松井氏はこの日、
  考えが一致した現職は公募から外す考えも示した。橋下氏と
  松井氏は今月11日、民主党の松野頼久元官房副長官や自民
  党の松浪健太衆院議員ら5人の国会議員と会談するなど、維
  新の政党化に向けた準備を進めている。
            ──2012年8月21日/読売新聞
  ―――――――――――――――――――――――――――

維新八策を検討する橋下市長.jpg
維新八策を検討する橋下市長
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2012年09月06日

●「橋下徹氏と大前研一氏の関係」(EJ第3381号)

 橋下大阪市長の大阪維新の会について語るとき、経営コンサル
タントの大前研一氏の存在を抜きにそれはできないのです。「大
阪維新の会」の名称も、大阪都構想も、橋下氏は大前研一氏の次
の著作の主張を下書きにして構築しているからです。
―――――――――――――――――――――――――――――
                 大前研一著
      『平成維新』/1989年講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 大前氏によると、橋下氏が大阪維新の会を立ち上げるさい、本
人が連絡してきて、『平成維新』の著作を大阪問題の参考にさせ
ていただいていると断ったうえで、「大阪維新の会」という名前
の政治団体を作るので、了承して欲しいといってきたというので
す。それは大前氏がかつて「平成維新の会」という政治団体を立
ち上げ、政治活動をしていたことと関係があります。
 平成維新の会は、1992年11月に発足し、大前氏が会長に
就任したのです。同会は、いわゆる無党派と呼ばれる大都市圏サ
ラリーマン層を中心とする会員が「生活者主権の国」を掲げ、道
州制・規制緩和などの新自由主義的政策に賛同する国会議員を党
派を超えて推薦・支持したのです。
 当時同会に所属していた人の多くが、同会の公認候補として立
候補し、現在自民党や民主党の国会議員になっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  事務総長    ・・・ 茂木敏充・現自民党衆院議員
  事務局長    ・・・ 長島昭久・現民主党衆院議員
  事務局長代理  ・・・ 長妻 昭・現民主党衆院議員
  事務局次長   ・・・ 風間直樹・現民主党衆院議員
  事務局長補佐  ・・・ 花咲宏基・現民主党衆院議員
―――――――――――――――――――――――――――――
 1993年の衆院選では、108人を推薦し、82人を当選さ
せ、当選議員で「平成クラブ」を結成、議員立法で多くの法案に
トライしたのてす。しかし、政治資金規正法の改正によって、ミ
ニ政党が存続できなくなり、「平成クラブ」は事実上機能しなく
なって、平成維新の会の党勢も衰えたのです。
 1995年に大前研一氏は平成維新の会と志を同じくする「平
成都民リーグ」を母体に東京都知事選に立候補し、都に限定して
「維新」実現を目指したのですが、力およばず落選しています。
さらに同年夏の参院選に10人を立候補させるも惨敗し、その年
の年末に平成維新の会は解散届を提出しています。
 注目すべきは、大前氏が「道州制」を強く主張していたことで
す。橋下氏が大前氏の本を読んで「これだ!」とひらめいたのは
間違いないと思います。それが縁で、橋下氏は大前氏と連絡して
相談するようになり、そのアドバイスを受け入れるようになった
といいます。
 橋下氏が大飯原発再稼動に猛烈に反対していたとき、大前氏は
橋下氏に電話を入れ、アドバイスしたのです。「もし大飯原発の
再稼動に反対し、電力が一瞬でも不足したら、『ブラックアウト
の橋下』といわれ、再起不能になるぞ!」と。これによって橋下
氏が、一挙にトーンダウンしたのはご承知の通りです。
 大前研一氏は、橋下徹氏のことを取り上げた書籍に一文を寄稿
し、反原発運動の先頭に立っている橋下氏について次のように苦
言を呈しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下氏の考えでもう一つ問題を感じるのは、反原発運動の先頭
 を切っていることだ。株主総会にまで乗り込んで株主権を行使
 するのは、一種の桐喝政治だろう。もっと冷静な視点で停止し
 ている原子炉の実情を調べ、再稼働できるものは積極的に稼働
 させないと、おそらく今年の夏は乗り切れない。この冬、関西
 電力の電力使用量は供給能力の94%にまで達した。これは新
 鋭の火力発電所が一つ停止すればブラックアウトするという、
 非常に危険なレベルである。仮に計画停電などで乗り切れたと
 しても、そのような地域の経済は衰退するし、外から新しく企
 業が来ることもない。ただでさえ大阪は「人が住めない街」と
 いわれている。実際のところ大阪の財界人ですら、神戸や芦屋
 に住んでいるわけで、そこで関西電力とのケンカが続くような
 ら、ますます企業が腰が引けてしまうに違いない。
                  ──VOICE編集部編
       『橋下徹は日本を救えるか』より大前研一氏論文
―――――――――――――――――――――――――――――
 大前研一氏は、日本では名うての原子力学者で、バリバリの原
発推進論者なのです。大前研一氏の経歴を調べると、早稲田大学
理工学部卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号、マ
サチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を取得して
います。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年にマッ
キンゼー・アンド・カンパニー・インクに入社しているのです。
その後、企業コンサルタントとして活躍しているので、原子力の
プロであることを知っている人は案外少ないと思います。
 大前研一氏は、かねてから次のような印象的な言葉を口にして
います。
―――――――――――――――――――――――――――――
    日本は2005年以降、改革ができなくなる
            大前研一著の前掲論文より
―――――――――――――――――――――――――――――
 なぜ、2005年以降は改革できないのでしょうか。それはそ
の時点で、日本人の平均年齢が50歳に達したからであるという
のです。平均年齢が50歳を過ぎてしまうと、なかなか大きな変
化が起こせなくなるからです。そういうなかにあって、橋下氏は
日本に残された数少ない希望の星である──そのため、大前氏は
いくつかの点で考え方は異なるが、今後も橋下氏を支援していき
たいと考えているのです。     ── [橋下徹研究/43]


≪画像および関連情報≫
 ●「橋下徹/大前研一共闘宣言」
  ―――――――――――――――――――――――――――
  橋下徹大阪市長/国の仕組みを変えるというのは、道路や施
  設をつくるような話と違って地味ですから、理解してもらう
  のがなかなか難しい。先の大阪府知事選と大阪市長選のダブ
  ル選挙でも、なかなか伝わりにくいところがあったのですが
  僕は統治機構の組み替えをやらなければもはや日本は立ちゆ
  かないと思っています。政治家は政策を語りたがります。で
  も、政策は大前先生や専門家の皆さんのお力をお借りすれば
  政治家などが語らなくてもいいものができる。いい政治家な
  ら、選挙で有権者が選べばいいわけです。ところが、どんな
  にいい政策を出しても、どんなにいい政治家が出てきても、
  統治機構や行政機構という国のシステムがマッチしなければ
  何も実現できないんです。学生時代から大前先生の『平成維
  新』を勉強させていただいていますが、明治時代から続いて
  いる中央集権体制、そして国と地方の無責任なもたれ合いの
  融合型の統治機構ですね、とにかくこの仕組みを変えなけれ
  ば日本は何も変わらないし、変われない。だからまず大阪の
  統治機構、行政システムから変えたいと思っているんです。
            http://president.jp/articles/-/5489
  ―――――――――――――――――――――――――――

橋下大阪市長と大前研一氏.jpg
橋下大阪市長と大前 研一氏
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2012年09月07日

●「日本は3つの訣別が必要である」(EJ第3382号)

 もう少し、大阪都構想の原点になったと思われる大前研一氏の
主張について考えていきます。
 大前研一氏はこういうのです。この国には過去から連綿と続く
三つの呪縛があり、現在はそれらが重なった状態にある。今こそ
過去から訣別し、それらの3つの呪縛を解き放つことが必要であ
る。具体的には次の3つの訣別が今求められており、だから「維
新」なのである、と。
―――――――――――――――――――――――――――――
   第1の訣別/江戸時代から続く中央集権からの訣別
   第2の訣別/明治時代から続く行政改革からの訣別
   第3の訣別/均衡ある国土の発展の思想からの訣別
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1の訣別は「江戸時代から続く中央集権からの訣別」です。
 江戸幕府──それは、実に巧妙に構築された組織運営機構であ
り、それがゆえに270年も続いたのです。それは、各地の大名
(藩主)の家族を江戸で預かり、それらの大名を参勤交代させる
ことによって、藩の経済力があまり過大にならないよう調節する
のです。
 そのうえで殖産興業を奨励するのですが、造船、架橋、港湾事
業など、軍事につながることは基本的に認めず、実施するときは
幕府が必ず介入するのです。このシステムによって、叛乱を起こ
されるのを事前に防いでいるのです。
 しかし、欧米列強によって、日本は開国するのですが、このメ
カニズムは現在でも生き続けているのです。現在、地方の首長の
多くは、少なくとも月に一度、多い場合は週に1回は東京に出て
きているはずです。これは「現代版の参勤交代」であると、大前
氏はいっています。
 第2の訣別は「明治時代から続く行政改革からの訣別」です。
 ここで「明治時代から続く行政改革」とは、明治4年(187
1年)に行われた「廃藩置県」のことです。いうまでもないこと
ながら、これは現在も残っています。しかし、この廃藩置県は壮
絶なる大改革だったのです。なぜでしょうか。
 明治維新以前は、地方の自治権は藩主が握っていたのです。と
ころが廃藩置県は、藩をなくすのですから、藩主の自治権を奪い
あわせて土地や権力も取り上げたのです。これによって藩主は、
何か職を持たないと、生活ができない身分になり、クーデターが
起きてもおかしくない情勢だったのです。それをどのようにして
実現させたのでしょうか。
 大きかったのは薩長土肥──薩摩藩、長州藩、土佐藩、肥前藩
が連合を組んだことです。彼らは率先して版籍奉還と廃藩置県を
上奏し、明治政府に入り込み、役人による官僚体制を作ったので
す。このようにして、明治時代の国政は、薩長土肥主導で行なわ
れたのです。
 この薩長土肥主導政治は、次の2つの思想によって推し進めら
れたことを大前研一氏は指摘しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.国家生存のためには軍事が必要である
     2.天皇の代行役として官僚の権限が強化
―――――――――――――――――――――――――――――
 明治政府は、明治天皇をいただいて日清、日露戦争に勝利し、
1についての思想は強化されたのですが、これは、太平洋戦争の
敗戦によってオールクリア―されたのです。
 2に関しては、もともと官僚は天皇の代行役として位置づけら
れたのですが、敗戦によって天皇が象徴天皇になったのにもかか
わらず、官僚はそのまま権力を維持し、現在の官僚主導政治体制
が出来上がったのです。これについて、大前研一氏は次のように
述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 敗戦後、日本は民主主義国家になり、絶対君主制ではなく象徴
 天皇制になったが、この中央集権的な統治機構は温存された。
 あれだけ抜本的な改革を日本に押し付けたアメリカだが、さし
 ものマッカーサーも、州の力の強い連邦制で育っているために
 日本の中央集権がここまで組織的かつ絶対的な力をもっている
 とは気づかなかったのだろう。したがって、新憲法は統治機構
 のあり方についてほとんど言及していない。国民の権利や義務
 を30条にもわたって細かく記しながら、地方自治について触
 れているのはわずか4条である。  ──VOICE編集部編
       『橋下徹は日本を救えるか』より大前研一氏論文
―――――――――――――――――――――――――――――
 第3の訣別は「均衡ある国土の発展の思想からの訣別」です。
 大前研一氏は、日本は田中角栄元首相の「日本列島改造論」に
代表される「均衡ある国土の発展の思想」から脱却すべきである
と主張しています。
 1977年に策定された「三全総」──第三次全国総合開発計
画は、中央の繁栄を全国均等に分けるという発想に基づいていま
す。しかし、結局それらの資金は、無駄な公共事業に使われ、土
建事業に過度に依存するようになって、長い間にわたって、地方
から自立の精神を奪ったのです。もはや「全国一律、全国均等」
という発想は、経済活性化の観点からも、国家財政の面からも持
続可能ではないのです。大前氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 現在の都道府県の枠組みをリセットして、10くらいの組織に
 括り直し、好き好きに競争させて自活の道を探してもらう。中
 央から税金を交付してもらうのではなく、世界から繁栄のため
 の資金と人材を集めてくる「自由」を地方に与える。これこそ
 橋下氏のいう「大阪都」の背景にある哲学にほかならない。
            ──VOICE編集部編の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 大前氏のいう「3つの訣別」をクリアするということが、平成
維新、すなわち、大阪都構想、道州制につながっているのです。
                 ── [橋下徹研究/44]


≪画像および関連情報≫
 ●橋下徹は日本を変える希望の星/大前研一
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「国民が期待しているのは、関西電力にケンカを売る橋下市
  長ではなく、日本を変える希望の星としての橋下徹であると
  いうことを忘れないでもらいたいですね」。
  橋下市長のブレーンで経営コンサルタントの大前研一氏は、
  こう語るのだった。6月27日に行われた関電の株主総会。
  資料を手に質問に立った橋下徹・大阪市長はまくしたてた。
  「核燃料サイクル、核燃料の再処理事業は今後も継続するの
  ですか」「中間貯蔵施設は増設するのですか」「高放射性廃
  棄物の最終処分地はいつまでに作るのですか」「このような
  状況で関電管内の使用済み核燃料をいつまでもたせるのです
  か」「原発は何基止まれば赤字になるのですか」。関電・大
  飯原発の再稼働を容認したはずの橋下市長の詰問に紛糾する
  会場。だが、これも作戦どおり。民意に沿って追及はするが
  大ゲンカはしない・・彼は事前に大前氏のアドバイスを受け
  ていたのだ。橋下市長の戦略の根幹に大前氏の構想がある。
  彼の発言を読み解く上で、キーを握るのが大前氏の存在だ。
         http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32960
  ―――――――――――――――――――――――――――
大前研一氏.jpg
大前 研一氏
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2012年09月10日

●「橋下新党は衆院選を席巻できるか」(EJ第3383号)

 大阪維新の会の国政進出が決まりましたが、早速産経新聞が次
の衆院選の比例投票先について世論調査をやったところ、大阪維
新の会がトップになり、大きな話題を呼んでいます。
―――――――――――――――――――――――――――――
    ≪次期衆院選の比例投票先≫
     大阪維新の会   ・・・・ 23.8 %
     自民党      ・・・・ 21.7 %
     民主党      ・・・・ 17.4 %
     国民の生活が第一 ・・・・  4.4 %
     公明党      ・・・・  3.3 %
     みんなの党    ・・・・  3.3 %
     共産党      ・・・・  3.2 %
     以下、省略          ──FNN世論調査
―――――――――――――――――――――――――――――
 まだ新党が立ち上がっておらず、もちろん候補者も決まってい
ない政党の比例投票先を世論調査するなど前代未聞です。当の橋
下大阪市長も述べているように、明らかに産経新聞社のやり過ぎ
です。おそらく現在の橋下人気を考えると、トップになるだろう
と読んで、調査をやったのでしょうが、そこまでして橋下氏をヨ
イショしたいのかと考えてしまいます。
 これは現在の民自公の政治がいかに劣化しているかのあらわれ
です。ところで、大阪維新の会の「23.8 %」よりも、国民の
生活が第一の「4.4 %」の方が大ニュースです。公明党、みん
なの党、共産党に1ポイント以上の差をつけています。あれほど
メディアに不公平に扱われ、誹謗中傷の限りを尽くされている国
民の生活が第一の支持がこのところ急伸しているのです。それは
同党の選挙準備が着々と進んでいるからです。
 夕刊フジという夕刊紙があります。この新聞は、ネタがあって
もなくても、一日一回は小沢一郎の悪口を書くことをポリシーに
している夕刊紙ですが、ジャーナリスト・鈴哲夫氏が書く特別レ
ポートのときだけは、明らかにトーンが違うのです。その夕刊フ
ジが、2012年9月3日付の一面トップに次のタイトルを掲載
したのです。もちろん鈴木哲夫氏のレポートです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    橋下/小沢 連携工作/反権力の手法が共通
      ──2012年9月3日発行、夕刊フジ
―――――――――――――――――――――――――――――
 現在テレビも新聞も、「橋下新党は国民の生活が第一とは距離
を置いていると報じています。しかし、鈴木哲夫氏だけは違うの
です。かなり早い段階から「橋下氏の意中の人は小沢一郎」と一
貫して主張しています。その根拠は何でしょうか。
 小沢氏との連携はあり得ない──これは松井大阪府知事が繰り
返し述べている言葉です。おそらくこれは松井氏の本心であると
思います。鈴木哲夫氏は橋下氏と松井氏の関係について、『週刊
現代』9/8日号掲載の山田恵資氏との緊急対談で、次のように
述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 鈴木:もうひとつ注目したいのは、松井一郎大阪府知事とのコ
 ンビです。この2人は、おたがいに気を遣いながら、一定の距
 離感をもった、いい関係を維持している。松井氏はもともと自
 民党にいた人で、これまで橋下氏と会ったとメディアに報じら
 れた既成政党の議員はみんな松井氏がセットしているんです。
 維新の会がラブコールを送っていると言われる安倍氏にしても
 取材してみると、橋下氏のほうから会いたいと言ったわけでは
 ない。昨年の12月ごろから、松井氏は橋下氏に「安倍さんは
 いいですよ」などと話をもちかけているのです。
  ──『週刊現代』9/8日号掲載の山田恵資氏との緊急対談
―――――――――――――――――――――――――――――
 鈴木哲夫氏によると、大阪維新の会と国会議員との合流連携話
は、すべて松井氏から出ていますが、橋下氏が本当に組みたい国
会議員は別におり、そこに橋下氏と永田町を結ぶ地下水脈がある
といわれています。このことは明日のEJで詳しく述べます。
 ここで大阪維新の会との連携について整理しておくことがあり
ます。それは選挙前の連携と選挙後の連携です。選挙前の党対党
の連携については、維新の会は明確に否定しています。それは、
維新の会とみんなの党との連携が決裂したように、その方針は変
わらないと思われます。
 しかし、選挙後の連携は十分あり得るのです。それは維新がど
のくらい勝てるかによっても違ってきます。しかし、選挙が終わ
った後の連携といっても、橋下氏がどうしても組みたいと思う意
中の党があるとすれば、その党には選挙に勝ってもらわなければ
困るわけで、そこにはしかるべき配慮が払われるはずです。
 現在、橋下新党では、候補者を300人立てるといっています
が、せいぜい200人が限界であると思います。しかも、選挙に
当っては、橋下新党の立候補者は、原則として次の3つの条件を
守ることが求められています。
―――――――――――――――――――――――――――――
           1.政策丸飲み
           2.落下傘候補
           3. 自己資金
―――――――――――――――――――――――――――――
 政策の丸飲みは当然のこととして、立候補は原則として落下傘
候補になるということです。少なくとも大阪維新の会政治塾生の
立候補者は、維新の会の指定する小選挙区から出馬しなければな
らないことになります。
 しかも選挙費用はすべて自己負担です。衆院選小選挙区の供託
金だけでも300万円、比例区は600万円が必要です。比例区
に重複立候補するには900万円かかります。その他の費用──
ビラ、選挙はがき、宣伝カー、広告、人件費などを合わせて最低
でも1000〜2000円はかかるのです。しかも、選挙はスブ
の素人なのです。         ── [橋下徹研究/45]

≪画像および関連情報≫
 ●異常に高い選挙費用・供託金が議員を特権階級化させる
  ―――――――――――――――――――――――――――
  日本の選挙は費用が高くつくと言います。衆議院選挙の場合
  は法定の選挙期間12日で、2300万円も掛かると言いま
  す。内訳は事務員やウグイス嬢、選挙カーにかかる費用など
  です。また、得票が得られないと没収される供託金は300
  万円で、アメリカ、フランス、イタリア、ドイツは供託金制
  度が無く、イギリスは約10万円、カナダ7万円からみると
  極めて高額です。比例区は更に高く600万円です。日本の
  国会議員は、国に仕える公僕ではなく、下々を支配する特権
  階級になっています。選挙にお金がもの凄く掛かる、得票が
  ないと没収される供託金も高いなど、誰もが立候補できない
  よう制限を設け、ハードルを高くしています。特に、親や親
  族が政治家の世襲候補の場合は、地盤(親の後援会と政治団
  体)看板(親の知名度)鞄(政治団体の政治資金)、選挙の
  三バンで、明らかに有利です。世襲でなければ、非常に有名
  であるか、お金を有り余るほど持っているかでなければ、立
  候補すらできません。お金がないか、有名でないと普通の人
  は、立候補はできません。日本の選挙は、立候補を制限して
  いるのです。
  http://jiyugaichiban.blog61.fc2.com/blog-entry-434.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

松井一郎大阪府知事.jpg
松井 一郎大阪府知事
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2012年09月11日

●「橋下・小沢/連携の可能性」(EJ第3384号)

 現在、松井大阪府知事と橋下大阪市長の関係は微妙になってい
ます。今のところ2人は、一定の距離間をもって、よい人間関係
を築いており、お互いに支え合っています。しかし、根本的なと
ころで2人の意見は一致するのかどうかは疑問です。
 橋下氏は、国政進出に関しては、自民党出身で自民党に人脈の
ある松井氏に任せており、この面は松井氏主導で動いています。
橋下氏は、国政関係に関しては今のところ自分の考えを明確にし
ていないからです。コトは、はじまったばかりであり、現時点で
は事態はか流動的であるからです。
 大阪維新の会は、みんなの党と連携しないことを明らかにしま
したが、これも松井氏主導であり、橋下氏は今でも渡辺喜美代表
にシンパシーを感じていて、その後も毎日メールの交換を続けて
います。したがって、橋下新党の得票次第では、渡辺氏を突然首
相にかつぐことだってあり得るのです。
 橋下新党はどこと組むのか──各テレビ局は、真ん中に橋下氏
の顔をおき、周りの既成政党からのラブコールを描いたフリップ
で解説していますが、そのなかで一番可能性のない政党として、
解説者は必ず国民の生活が第一を上げるのです。
 しかし、国民の生活が第一からは橋下氏への働きかけはしてい
ないのです。それは小沢氏が同党の関西出身議員たちに働きかけ
を止めているからです。昨日のEJでご紹介した『週刊現代』9
/8日号の鈴木哲夫氏と山田恵資氏との緊急対談では、次のやり
とりがあるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 鈴木:橋下氏が総理を目指すのであれば、合流してくれるのは
 言葉はわるいけど「そこそこの人」がいいと思っているんじゃ
 ないですか。だって、安倍氏のような大物じゃ、総理大臣の座
 をさらわれるかもしれませんからね。では、彼の意中の人は誰
 かというと、いっさい口にしていない。僕は小沢一郎氏ではな
 いかと思っています。
 山田:橋下氏と小沢氏は組みにくいじゃないですか。原発にし
 ろ消費税にしろ、政策に大きな違いがあるわけではないけれど
 どうも橋下氏に小沢アレルギーがあるように見受けられます。
 鈴木:いや、小沢氏はまだ維新の会との連携をあきらめていな
 いと思いますよ。私の取材では、維新と接触しようとしていた
 「生活」の関西出身議員たちに、小沢氏が「お前らは動くな。
 維新は俺がやる」と宣言しているそうですから。
  ──『週刊現代』9/8日号掲載の山田恵資氏との緊急対談
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下氏は、国の統治機構を変えると宣言しています。それをす
るには、霞ヶ関とは壮絶な戦いになります。それがどれほど厳し
い闘いであるか、橋下氏は大阪でやってみて体験的に掴んでいま
す。そして、それを今まで国政レベルで実現するため、長年にわ
たって懸命に取り組んでいる唯一の政治家が小沢氏だということ
もよくわかっているのです。
 橋下氏は、小沢氏の話になると、顔が真顔になって引き締まる
といいます。今まで彼の口から小沢氏を批判する言葉は一度も発
せられたことはないのです。
 鈴木哲夫氏が取材すると、維新の会のある幹部は橋下氏と小沢
氏の関係について次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 維新内部では「小沢氏とは組むべきではない」という意見が多
 いが、橋下氏は「小沢氏は、権力のすごさも怖さも分かってい
 る」と評価している。「反体制側から迫る」という政治手法を
 考えると、反権力側にいて権力抗争の経験が豊富な小沢氏とは
 十分組めるはず。  ──夕刊フジ/2012年9月3日発行
―――――――――――――――――――――――――――――
 8月30日、小沢氏は関西のローカルテレビ番組「キャスト」
に出演して、キャスターから「もし、橋下市長が力を貸してほし
い」といってきたら、どう対応するかと聞かれて、次のように述
べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 統治機構を改革するには、強いリーダーが必要である。今、橋
 本さんに対する世間の期待が集まっている。私は自分が前面に
 出てどうこうしようとするつもりはないが、何としても大改革
 を緒につけたいので、橋本さんのようなリーダーであれば、ど
 んなかたちでも協力したい。──小沢一郎氏「キャスト」より
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは小沢氏から橋下氏へのエールです。これに対して橋下氏
は翌朝の会見で、次のようにメッセージを返しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢先生は「統治機構を変えなくては」という強い思いを持っ
 ておられる。(小沢先生は)日本の政治史で、いろんなことに
 挑戦してこられた。いろいろ(批判)はあるだろうが、突き進
 めようとすれば反対者は山ほど出てくる。でも、反対者のいな
 い政治家の方が役に立たない。エールはうれしい。
        ──橋下大阪市長/9月3日発行「夕刊フジ」
―――――――――――――――――――――――――――――
 鈴木哲夫氏は選挙前に橋下・小沢会談が行われると予想してい
ます。橋下氏のいちばん知りたいことは、素人集団の橋下新党で
次期衆院選をどう戦うかの具体的なアドバイスです。おそらくこ
のアドバイスができるのは、小沢氏しかないと思われます。「生
活」の選挙準備は着々と進んでいるからです。
 本当は維新塾の講師として橋下氏がいちばん招きたかったのは
小沢氏ではなかったかと思います。感情的に小沢氏を忌み嫌う石
原知事はそのことを感じたからこそ、維新塾の講義の冒頭でこう
いったのです。「君たちのなかで小沢一郎が好きな人はいるか。
いたら手を上げてくれ。オレは小沢が大嫌いなんだ」と。
 現在、官僚サイドがいちばん恐れているのは、小沢/橋下連合
だと思います。そんなことになれば、現在の統治機構は破壊され
てしまうからです。        ── [橋下徹研究/46]

≪画像および関連情報≫
 ●橋下大阪市長と松井大阪府知事の仲?!
  ―――――――――――――――――――――――――――
  深刻なのは、代表の橋下とナンバー2の松井一郎府知事のズ
  レ。大飯原発の再稼働では橋下が「事実上の容認」として民
  主党政権「倒閣」に白旗を揚げたのに対し、松井は「容認し
  たわけでも理解したわけでもない」と不満げだった。橋下の
  「国政見送り発言」に対しても、松井は「国会議員が行財政
  改革をやらないなら、国政進出をやらなければならない」。
  と断言。2トップのの食い違いが目立つ。維新の会所属の府
  議がこう言う。「幹部はメディアに「松井はあえて違うこと
  を言っている。計算ずく」と説明していますが、いかにもズレ
  ているのを隠そうという焦りです。もともと橋下・松井の盟
  友関係は利害と打算の産物。府知事時代に議会で味方が欲し
  かった橋下さんと、橋下人気にあやかりたい松井さんが手を
  組んだことから始まった。しかし、松井さんはいまや府知事
  に上り詰め、安倍元首相など自民党の大物まで近寄ってくる
  ようになった。維新の会は3年先どうなるか分かりませんか
  ら、橋下さんと別れた後のことを考えて、独自に動き出した
  のでしょう。(最後まで読む)
    http://asumaken.blog41.fc2.com/blog-entry-6052.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

橋下徹氏/小沢一郎氏.jpg
橋下 徹氏/小沢 一郎氏
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2012年09月12日

●「自民党は本当に選挙に勝てるのか」(EJ第3385号)

 大阪維新の会の人気はすさまじいものがあります。9月1日と
2日に行われた産経新聞社とFNNの合同世論調査をブロック別
で見ると、大阪維新の会は、全国11ブロック中5ブロックで、
単独トップ(★印)を占めているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ≪衆院選/ブロック別の比例代表投票先≫
           維新     自民      民主
  全  体 ★23.8 %  21.7 %   17.4 %
  北 海 道 ★22.7 %  18.2 %   15.9 %
  東  北 ★32.4 %  16.2 %   16.2 %
  北 関 東 ★19.8 % ★19.8 %  ★19.8 %
  南 関 東  19.0 % ★23.0 %   20.6 %
  東  京  14.7 % ★25.5 %   16.7 %
  北陸信越  16.7 %  16.7 %  ★20.0 %
  東  海 ★22.4 %  17.2 %   20.7 %
  近  畿 ★34.6 %  21.6 %   12.3 %
  中  国  18.6 % ★25.4 %   22.0 %
  四  国 ★28.1 %  18.8 %   21.9 %
  九  州  27.2 % ★29.8 %   12.3 %
      ──産経・FNN合同世論調査/2012年9月
―――――――――――――――――――――――――――――
 確かに比例代表先は党名を書くので、その新党に人気があれば
得票する可能性が高く、今選挙が行われれば維新が比例では大き
く得票する可能性があります。しかし、小選挙区になると、候補
者しだいで事情は大きく変わってきます。
 興味深いのは、データが、次期衆院選では第一党が確実といわ
れている自民党がそれほど得票できないのではないかと思われる
事実を示していることです。次の表は、上記の自民党と民主党の
比例代表投票先(世論調査の数字)を2009年衆院選のときの
実際の得票率と比較したものです。()内の数字は自民党が大敗
し、民主党が圧勝した2009年衆院選の実際の得票率です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪衆院選/ブロック別の比例投票先/2009年得票率≫
              自民          民主
 全  体 21.7 %(26.7) 17.4 %(42.4)
 北 海 道 18.2 %(24.2) 15.9 %(40.6)
 東  北 16.2 %(27.9) 16.2 %(45.5)
 北 関 東 19.8 %(25.8) 19.8 %(42.1)
 南 関 東 23.0 %(26.0) 20.6 %(43.0)
 東  京 25.5 %(25.5) 16.7 %(41.0)
 北陸信越 16.7 %(29.5) 20.0 %(44.4)
 東  海 17.2 %(26.1) 20.7 %(46.3)
 近  畿 21.6 %(23.2) 12.3 %(42.4)
 中  国 25.4 %(32.4) 22.0 %(39.7)
 四  国 18.8 %(32.0) 21.9 %(43.2)
 九  州 29.8 %(29.2) 12.3 %(38.1)
       ()は2009年衆院選における実際の得票率
      ──産経・FNN合同世論調査/2012年9月
―――――――――――――――――――――――――――――
 これを見ると、自民党では九州をのぞく全ブロックで2009
年の得票率を下回っています。2009年衆院選では自民党は惨
敗して政権を失っているのですが、今回の調査ではその数字をこ
とごとく下回っているのです。九州ブロックがわずかに上回って
いますが、ほとんど差はありません。こんな状態で第一党を確保
できるでしょうか。
 民主党は政権交代を成し遂げたときの数字との比較ですから、
もっとひどい状態になっています。ほとんどのブロックにおいて
得票率は半分以下になっています。民主党の惨敗はこれでは避け
ることはできないと思われます。
 それでは、維新、すなわち橋下新党は、世論調査の数字の通り
議席を独占できるかというと、そうともいえないのです。それは
橋下新党の次の事情によるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.ほとんどの人が選挙初挑戦であること
     2.選挙資金は原則として自己負担である
     3.ほとんど人が落下傘候補者であること
―――――――――――――――――――――――――――――
 既存の政党は、政党交付金から所属議員に資金を配り、選挙に
なると、「公認料」などの名目で候補者の選挙資金の面倒を見る
のが普通です。しかし、橋下新党の候補者になる維新政治塾塾員
888人に対しては、すべての選挙資金は自己資金で賄うという
約束で入塾させているのです。
 既に述べたように、選挙には巨額の資金がかかります。供託金
だけで300万円、比例に重複立候補するとさらに600万円、
計900万円必要で、それに加えて選挙費用が最低でも2000
万円かかります。供託金を含めると、3000万円は用意する必
要があります。
 橋下新党では、300の小選挙区に候補者を立てるといってい
るので、それだけの資金を自分で用意できる人を300人確保す
る必要がありますが、可能なのでしょうか。それに、供託金は一
定の得票率に達しないと没収されてしまうのです。
 さらに困難なのは、すべての議員が落下傘候補で、自分のぜん
ぜん知らない選挙区で、選挙をしなければならないことです。し
かもほとんどの人は選挙未経験者です。政治塾の参加者のなかに
は地方議員経験者もいるので、全員が選挙の未経験者ではないで
しょうが、少なくとも80%以上の人は、選挙などやったことの
ない候補者ばかりです。もちろん、選挙を指導できる人などおら
ず、果たして選挙になるのでしょうか。
 しかし、これほど人気のある維新の会のことですから、スポン
サーも名乗りを上げつつありますが、これについては明日のEJ
で述べることにします。      ── [橋下徹研究/47]

≪画像および関連情報≫
 ●維新政治塾入塾者のプログから
  ―――――――――――――――――――――――――――
  面接で選挙資金を聞かれた際は、「すぐには無理ですが、な
  んとか手当てします」と答えて、くぐり抜けた。首都圏の大
  学では商学部。「公認会計士や司法書士は肌に合わず、法律
  を一度勉強してみたくて」関西の法科大学院に再入学。「司
  法試験の勉強中に、障害者福祉も面白そうかなと思って」、
  NPOの就労支援事業を2010年4月に開始。今春からは
  その運営をスタッフに任せつつ、「より知識を深め、社会福
  祉士の資格をとるために」、大阪府内の福祉系大学に編入し
  た。政治に関心を持ちつつ、関わりは持たない。国の将来に
  不安を覚えつつ、「自分探し」を続ける。そんな政治の周縁
  を歩く人たちを引き込む力が橋下氏には、ある。樫根さんに
  入塾式で最も心に残った橋下氏の言葉を聞くと、次の締めく
  くりのフレーズだった。「みなさんと一緒に、一回こっきり
  のこの人生において、激しく熱い時間を過ごしたい。政治な
  んかで命をとられるわけじゃない。政治生命をかけるなんて
  そんな薄っぺらいものはありませんよ。政治やめても、違う
  職業につけばいい。僕なんか、政治生命なんか二つでも三つ
  でも捨ててやりますよ。違うんです。命をなげうつ覚悟を持
  って、日本国の未来、我々の次世代、子供、孫のため、激し
  く熱い時間を共にしましょう!」。(最後まで読む)
  http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120828-00000302-chuokou-pol
  ―――――――――――――――――――――――――――

維新政治塾への誘い.jpg
維新政治塾への誘い
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2012年09月13日

●「維新の会の大口スポンサーはいるか」(EJ第3386号)

 橋下新党「日本維新の会」は、全国で300人規模の候補者擁
立を目指すといっています。もし、300人が全員重複立候補す
ると、供託金だけで1人900万円かかるので、全部で27億円
必要になります。
 それに選挙費用が一人平均2000万円かかるので、300人
で60億円、これに供託金の27億円をプラスすると、87億円
になります。それに党本部の費用を加えると、約100億円の資
金が必要になります。
 それでは大阪維新の会の収入はどのくらいあるのでしょうか。
『週刊ポスト』9/7日号を参考にして、大阪維新の会の資金源
を探ってみることにします。
―――――――――――――――――――――――――――――
   ≪2010年分の政治資金収支報告書≫
    ・大阪維新の会の収入 ・・  6792万円
    ・橋下徹後援会の収入 ・・  4439万円
                 ――――――――
                  11231万円
―――――――――――――――――――――――――――――
 国会議員と違って政党助成金がもらえないので、仕方がないと
思いますが、維新の会と後援会の両方をあわせて1億円を少し超
える程度しかないのです。これはかつての自民党の中堅議員クラ
スの集金力です。
 維新の会の収入の6792万円のうち、4549万円が政治資
金パーティーの収入です。しかし、政治資金パーティーで集めら
れる金額はたかがしれています。あの大阪W選挙でも、選挙運動
収支報告書によると、橋下・松井両氏をあわせても、566万円
の寄付しか集められていないのです。
 この集金力の低さに対して、豊富な資金を貯め込んでいる民主
党と現在でも強固な地方組織を有する自民党は、維新の会の候補
者と戦っても十分勝機があると見ているのです。
 大阪維新の会には、資金源はないのでしょうか。あれほどの人
気者ですから、資金面でも多くの支援が得られると一般的には考
えますが、案外そうでもないようなのです。
 「経済人・大阪維新の会」というのがあります。大阪維新の会
が旗揚げしたときに、関西経済の復活を求める地元・大阪の中小
企業経営者を中心に、学者や弁護士などが加わって結成された応
援団です。現在では、会員が700人ほどいます。
 しかし、年会費は1万円で700万円、それとは別に、年に2
回、会費1万5000円のパーティーに集まる人が300人ほど
いるので450万円、両方合わせても1120万円なのです。し
かし、この会には国政選挙の応援はしないというきまりがあると
いうのです。
 しかし、実際に衆院選になれば、1人100万円〜200万円
ぐらいの資金ならすぐに出すという人は100人は下らないとい
われます。実際に昨年の夏には、大阪市西区の金属加工会社・井
上特殊鋼の井上豊治会長は、大阪維新の会にポンと1億円寄付し
たといいます。
 しかし、今回は100億円の資金が必要なのです。もっと大口
のスポンサーが必要です。それでスポンサーになるのではないか
と取り沙汰されているのが、全国276店舗を展開するパチンコ
ホールの最大手企業、マルハン(韓昌祐会長)です。
 なぜ、マルハンかというと、橋下氏が府知事時代から大阪カジ
ノ構想を推進していることに関係があります。橋下氏は府知事時
代にカジノ構想の研究会「大阪エンターテイメント都市構想研究
会」を立ち上げましたが、その会員企業としてマルハンが参加し
ているのです。維新の会について情報収集をしている民主党関係
者は、これについて次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 カジノ構想に熱心な企業が京都のマルハン。全国にパチンコ店
 やボウリング場、ゲームセンターなどを展開する年商2兆円と
 いう遊技場最大手で、マカオのカジノに出資したり、カンボジ
 アに銀行まで設立している。しかし、日本では国の規制が強く
 てカジノの実現にはハードルが高い。そこでマルハンがカジノ
 に理解のある橋下維新の会の国政進出を支援するという情報が
 ある。Jリーグ・大分トリニータに十数億円出したスポンサー
 としても知られる資金力豊富な企業だけに、絶新の会の人気に
 大口スポンサーが結びつけば大変な脅威になる。
             ──『週刊ポスト』9/7日号より
―――――――――――――――――――――――――――――
 この他にも橋下氏は、ソフトバンクの孫正義社長、宮内義彦・
オリックス会長、パソナの南部靖之社長とも親交があるといわれ
ています。実はこれらの企業は、いずれも安倍晋三元首相と関係
が深いのです。
 宮内義彦氏は、小泉内閣の総合規制改革会議議長として、郵政
民営化を推進した人物であり、孫正義氏と南部靖之氏は、安倍元
首相のブレーン経済人なのです。このあたりに松井府知事が安倍
氏との関係を築くのに熱心な理由があると思われます。
 日本維新の会の橋下党首は、国政進出に当って、既得権を液状
化させ、統治機構を変えると宣言しています。これは、国の規制
に守られた経団連本流の大企業にとって敵になります。したがっ
て、橋下氏を支持するのは、ベンチャーから大をなした経営者た
ちということになります。
 しかし、そういう企業の代表であるソフトバンクもパソナも橋
下氏とは特別の関係はないと表向きは冷淡の姿勢をとっているの
です。橋下ブレーンはその事情をこう説明しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 民自公3党連立政権を望む霞ヶ関、財務省は国税を動かし、日
 本維新の会を支援しようとする経営者を牽制しています。その
 ため、どうしても水面下の支援に限られてしまうのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
                 ── [橋下徹研究/48]

≪画像および関連情報≫
 ●「幹部が僕を批判」で橋下氏「経済人・維新の会」を欠席
  ―――――――――――――――――――――――――――
  橋下徹大阪市長率いる地域政党「大阪維新の会」に賛同する
  企業経営者らでつくる「経済人・大阪維新の会」の会合が、
  8月29日、同市内で開かれた。維新幹事長の松井一郎大阪
  府知事らは出席したが、橋下氏は欠席。理由について橋下氏
  は記者団に、週刊誌上で同会幹部が、自身を批判する記事が
  載ったことを挙げ「快くない。僕に対して反対という表現を
  でしたので、ちょっと行けない」と述べた。同会には企業ト
  ップらを中心に約500人が参加。政治資金面などで維新を
  バックアップしている。松井氏は会合前、記者団に「橋下氏
  から、今日は具合が悪い(行きづらい)、任せますといわれ
  た。(同会との関係は)こじれていない」とフォローしたが
  維新の国政進出を前に、橋下氏の憤慨をきっかけにすきま風
  が生じた形だ。         ──MSN産経ニュース
  ―――――――――――――――――――――――――――

橋下市長と韓昌祐会長.jpg
橋下市長と韓昌祐会長
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年09月14日

●「維新の会の原発政策は曖昧である」(EJ第3387号)

 日本維新の会の候補者擁立が急ピッチで進んでいます。小選挙
区と比例で計350〜400人規模の候補者を擁立して、過半数
を目指すというのです。
 しかし、いかんせん「急ごしらえ」の感は否めないのです。昨
日のEJで取り上げた選挙資金の問題や、全国にどのようにして
支援組織を作るのかという問題もあります。
 日本維新の会としては、候補者に関しては既に888人プール
しており、選挙資金は原則として自己資金ということになってい
るので、350〜400人規模の候補者を全国に配備することが
できるのです。
 しかし、本当に自己資金ということになると、果たして全国に
候補者を擁立できるのかどうかは疑問です。一人平均3000万
円もの大金を自己資金で出せる人が350〜400人もいるのか
どうかは不透明です。
 支援組織づくりについて、日本維新の会は、全国の比例11ブ
ロックに、入党する国会議員や地方議員を急遽派遣し、急ピッチ
で進めるといっています。都道府県ごとに地域政党を設立する動
きもありますが、急にはできないでしょう。候補者の大半が落下
傘候補になると思われるので、支援組織はきわめて重要です。い
かに維新に「風」が吹いていても、選挙は素人が勝てるほど甘い
ものではないからです。
 ここにきて、日本維新の会にとって、いくつかの不安材料が出
てきています。それは、次期衆院選の重要な争点になると思われ
る「脱原発」に対する橋下大阪市長自身の気持ちの揺れというか
不可解な行動です。
 橋下市長は、当初はエネルギー問題には相当力を入れていたの
です。そのため、元改革派経産官僚の古賀茂明氏や、環境エネル
ギー政策研究所の飯田哲也所長らのエネルギー問題の専門家を集
め、大阪府市エネルギー戦略会議において密度の濃い議論を積み
重ねてきています。
 橋下氏自身も大飯原発再稼動に反対し、4月10日には国民が
信頼できる規制庁の設立や、安全基準の根本からの作り直しなど
を「原発再稼働の8条件」としてまとめ、松井府知事と一緒に官
邸に乗り込み、藤村官房長官に直接手渡しています。
 しかし、それにもかかわらず、政府が大飯原発再稼動は妥当と
の判断を示すと、次のメッセージを発し、野田政権の倒閣前言を
したのです。4月中旬のことです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 僕はアタマにきた。民主党政権はノーです。維新政治塾のメ
 ンバーは国政に行ってほしい。     ──橋下大阪市長
―――――――――――――――――――――――――――――
 これに対し、政府側も橋下市長に対して何らかの手を打ったと
思われます。そのせいか、橋下市長は5月19日の関西広域連合
の会議で、自らの主張を絶対反対から時限稼動という容認路線に
転ずるのです。明らかなトーンダウンです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 原発がどうしても必要だという場合にも、動かし方はいろいろ
 ある。安全基準ができるまで、1〜3カ月の臨時運転という方
 法もあるのでは・・・。         ──橋下大阪市長
―――――――――――――――――――――――――――――
 そして、5月31日に橋下市長は、関西広域連合が前日に出し
た大飯原発再稼働に賛成する声明について、一転容認し、敗北宣
言を出したのです。
 しかし、橋下氏がこういう発言をすることを古賀氏や飯田氏を
はじめとする戦略会議のメンバーは知らなかったのです。戦略会
議としては、再稼動なしでも今夏は乗り切れることを確信してお
り、そのための電力需給計画を関電と詰めているときに容認発言
が飛び出したので、メンバーは愕然としたわけです。
 橋下市長に変心をもたらしたものは何でしょうか。9月6日の
EJ第3381号で述べたように、直接的には、原子力の専門家
である大前研一氏のアドバイスだったと思われますが、それとは
別の要因も考えられるのです。
 その1つは、関西財界人からの圧力です。そのバックには経産
省がいると思われます。そのひとつが、『週刊現代』7/7日号
に掲載されたミキハウスの木村皓一社長の次の一文です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 原発反対、節電といっても、それで大阪はどうするのですか。
 経営者にクビをくくれと言いたいのですか。(中略)橋下さん
 は、ただ単に注目を浴びたいだけだと思いますよ。
                ──『週刊現代』7/7日号
―――――――――――――――――――――――――――――
 ミキハウスは橋下氏にとって無関係ではないのです。大阪維新
の会を支援する「経済人・大阪維新の会」の会員会社であり、木
村社長は副会長なのです。おそらく経産省がウラで動き、そのよ
うに発言させたものと思われます。橋下氏はこの木村発言を不快
に思っており、8月29日に行われた総会に欠席しています。
 もうひとつは安倍元首相の存在です。安倍氏は原発の推進者で
あり、ましてこの7月31日に投開票が行われた山口県知事選で
は、安倍氏自身が山口県出身であることから、自民党の山本繁太
郎氏を支援するのは当然のことです。
 その山口県知事選に大阪市の特別顧問である飯田哲也氏が出馬
したのです。このときは大阪維新の会と安倍元首相の関係が明ら
かになっていなかったので、橋下氏が応援に行かない理由がわか
らなかったのですが、安倍氏に配慮した結果なのです。飯田氏は
山本氏を6万7千票差まで追い込んだので、橋下氏が応援に行け
ば勝てたはずです。そのとき橋下氏は「飯田氏を応援すれば世論
が反発する」というメッセージを発して応援しなかったのです。
 日本維新の会は、一応脱原発ですが、このようにブレがあって
わかりにくいのです。維新八策の最終版でも脱原発に関する記述
は曖昧のままです。これでは戦略会議のスタッフとは距離ができ
るのは当然です。         ── [橋下徹研究/49]

≪画像および関連情報≫
 ●古賀茂明氏の苦言/安倍元首相との連携について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  古賀氏といえば、山口県知事選の真っただ中の7月16日、
  山口県岩国市で「自民党の大罪」について解説する講演を行
  った。ここで古賀氏は、消費税を上げる一方で、10年間で
  200兆円もの公共事業を防災目的でバラまく国土強靭化基
  本法案などを徹底批判したが、これは安倍に向けられたもの
  だ。この講演のちょっと前、山本の応援に入った安倍は「消
  費増税の民自公の3党合意の中に『経済弾力条項』があって
  名目経済成長を3%にしましょうと書いてある」と解説、増
  税で悪化する景気対策として「公共事業で火をつける」「そ
  の財源は建設国債を発行し、日銀に買い取らせればいい」と
  いう主張を展開したのである。そんな安倍と維新の会の連携
  話やら、党首打診の話が出てくる「いい加減さ」こそが、維
  新の会の正体に見えるのだ。改めて古賀氏がいう。「安倍元
  首相は『バラマキではない』と反論するだろうが、維新の会
  の連携相手とは、消費増税や原発政策などの基本政策につい
  て一致する必要があると思います」と。
            ──9月4日発行、日刊ゲンダイより
  ―――――――――――――――――――――――――――

飯田哲也/古賀茂明両氏.jpg
飯田 哲也/古賀 茂明両氏
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2012年09月18日

●「300人も候補者を立てられるか」(EJ第3388号)

 日本維新の会が旗揚げしましたが、それに伴っていくつか重要
なことが確認されています。まとめておきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.橋下市長は日本維新の会の代表であるが、次期衆院選には
   出馬せず、党本部を大阪に置いて大阪から指揮を執る
 2.松井知事は日本維新の会の幹事長であるが、やはり次期衆
   院選には出馬せず、代表と同様に大阪から指揮を執る
 3.日本維新の会からの立候補者は、選挙で必要になる費用を
   すべて自己資金で用意して、選挙戦を戦うことになる
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋下代表は、この日本維新の会を率いて、次期衆院選での過半
数獲得宣言を行っています。衆院の過半数は241議席です。そ
のため、全選挙区300と比例を合わせて300〜400人の候
補者を擁立する方針であるといいます。
 そんなことは可能でしょうか。
 確かに日本維新の会は、維新政治塾の塾員として立候補可能な
888人を既に確保しています。それらの塾員が国会議員の候補
者としてふさわしいかどうかは別として、頭数としては揃ってい
るのです。
 しかも、その888人全員に、選挙のために党からは金は出な
いが、自己資金で最低1000万円〜1500万円用意できるか
どうか、落下傘候補になるがそれでもいいかと聞き、イエスの返
事をもらっているというのです。要するに、日本維新の会の看板
は貸してやるから、金は自分で用意しろというわけです。確かに
それなら300〜400人の候補者の擁立は可能になります。
 しかし、1000万円〜1500万円の大金を300〜400
人もの政治塾の塾生が本当に用意できるかどうかは不明です。日
本維新の会の旗揚げのとき、会場のホテルでテレビ局の記者が政
治塾の塾生の何人かにインタビューしたところ、次のような返事
が返ってきているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 国政候補のテストの直前に、こんな噂が流れたのです。お金は
 用意できるかと聞かれるが、もし、ノーといえば落とされる、
 と。確かに自分のときも金のことを聞かれたので、金はなかっ
 たが「なんとかする」と答えて合格した。他のほとんどの塾員
 も同じだと思いますよ。   ──テレビ朝日のニュースより
―――――――――――――――――――――――――――――
 9月15日、維新政治塾の塾生は、早速大阪の市街に出て、街
頭演説をはじめていますが、これはあくまで研修の一環です。維
新八策を訴えるのが課題です。実にうまい宣伝のやり方であると
思います。しかし、これらの人がすべて選挙に出てくるわけでは
ないのです。
 お金もあって、県(府)議や市議やなど、ある程度選挙の経験
のある人が中心になると思います。実際にはどのくらいの候補者
が立てられるかについて、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏と山
田恵資氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 鈴木:(候補者として立ててくる人は)いろいろ言われてます
 けど、現実的には府議や市議といった地方議員と、既成政党か
 らの移籍組が中心になると思います。比例のほうで、選挙運動
 の顔になる有名人を少し立ててくるといったところでしょう。
 888人の維新政治塾の塾生については、次の次の選挙に向け
 て鍛えている人たちとみるべきです。次期選挙に候補者として
 立てる人数は、比例も入れて、120〜140人くらいという
 のが僕の予想です。
 山田:小選挙区だけで100人くらい。私もそれくらいだと思
 います。民主党はもちろん、自民党も強い候補者を立てられる
 と、かなり厳しいでしょう。
  ──『週刊現代』9/8日号掲載の山田恵資氏との緊急対談
―――――――――――――――――――――――――――――
 問題は、そこから、どのくらい当選できるかです。似たような
ケースとして上げられるのが、かつての日本新党です。まったく
組織がないところからの立ち上げだからです。
 1992年5月9日、元熊本県知事の細川護煕氏は、『文藝春
秋』に、次の論文を書いて新党参加を呼び掛けたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
       「『自由社会連合』結党宣言」
―――――――――――――――――――――――――――――
 この呼びかけに応えて、松下政経塾関係者、ブレーントラスト
(各分野の知能顧問団)、知事時代の秘書、後援者などの人材が
集まってきたのです。このときの参加者の1人が現総理大臣野田
佳彦氏です。
 このとき集まった数少ないメンバーで協議し、基本政策、党則
選挙対策、党名などを決定し、1992年5月22日に日本新党
を結党したのです。代表には細川護煕氏が就任し、6月に高輪に
党本部を設置しています。
 1992年7月の第16回参院議員選挙で、比例区に公認候補
17人を擁立し、4人当選を果たしています。この当選者のなか
に、細川氏と小池百合子氏がいるのです。
 1993年6月に宮沢内閣が解散すると、自民党から離党者が
続出します。武村正義氏は離党して新党さきがけを結党し、小沢
一郎氏らは新生党は結成します。細川氏率いる日本新党は、新党
さきがけと政策合意し、選挙後に1つの政党になることを宣言し
ています。
 そして、1993年7月、第40回衆院議員総選挙には、既に
参院議員だった細川、小池両氏も含め、57人を公認・擁立し、
35人が当選しています。このなかには野田佳彦氏をはじめ、約
500人の公募生から2人が立候補し、1人が当選しています。
この1人が現経産相の枝野幸男氏です。このとき、日本新党には
「風」が吹いており、日本維新の会の当選予測にはきっと役立つ
と思われます。          ── [橋下徹研究/50]

≪画像および関連情報≫
 ●日本新党非自民の連立政権で政権与党へ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  1993年7月23日に「政治改革政権」溝想を発表、キャ
  スティングボートを行使する形で小選挙区比例代表並立制の
  導入など連立政権参加の条件を非自民勢力と自民党に提示し
  た。両勢力ともに受け入れを表明したが、結局、非自民を掲
  げて選挙戦を戦った議員の意向や新生党代表幹事であった小
  沢一郎が細川に首相就任を打診し、細川が受諾したことで非
  自民勢力と連立政権を組むことになった。こうし8月9日、
  38年ぶりの政権交代が実現し、政治改革を掲げる細川を首
  班とする非自民・非共産8党派連立内閣(細川内閣)が発足
  した。               ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

第79代内閣総理大臣/細川護煕氏.jpg
第79代内閣総理大臣/細川 護煕氏
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2012年09月19日

●「橋下新党はどの程度議席がとれるか」(EJ第3389号)

 1992年7月の第16回参院選で、日本新党は比例区に17
人の候補者を立て、党首の細川護煕、小池百合子両氏を含む4人
の当選を勝ち取っています。当選率は23.5 %です。当時日本
新党には何の組織もなかったのですが、かなりメディアで話題に
なっており、初陣にしては大きな成果を上げたのです。
 その人気の高さを証明したのは、1993年1月の新潟県白根
市市議選です。日本新党の単独推薦候補者が、自民党と日本社会
党両党の推薦候補を破るという快挙を成し遂げたのです。これは
日本新党の人気が地方にも浸透していたことを示しています。
 さらに1993年6月の東京都議会議員選挙では、22人の公
認候補者を擁立し、実に20人を当選させ、都議会第3勢力に躍
り出たのです。その勢いで、同年7月の第40回衆院選で、候補
者57人中35人を当選させたことは、昨日のEJで述べた通り
です。当選率は実に60%を超えているのです。
 しかし、日本新党の選挙は、人気の中心人物である代表の細川
護煕氏がつねに先頭に立って行われているのに対し、日本維新の
会の場合は、人気の中心の橋下代表が選挙には出馬せず、大阪市
政を担っているのです。これでは、大阪を中心とする関西圏では
強いものの、その人気はとても全国には及ばないでしょう。
 そういう点を考慮して、日本維新の会の当選者数を推測すると
平均当選率は「風」を考慮しても、せいぜい25%程度ではない
かと思われます。政治評論家の鈴木哲夫氏による比例も入れての
候補者数120〜140人を前提にすると、30人〜35人程度
ということになります。多くても50人以下でしょう。
 テレビの報道や新聞をみると、橋下旋風で過半数だって可能性
があるような気がしますが、同じ「風」でも、民主党が政権交代
したときの「風」とは違うような気がします。明らかに、異質の
「風」なのです。
 民主党は長い野党時代に、国会活動を通じて、当時の与党であ
る自民党を相当追い詰めています。あの消えた年金問題をはじめ
政官財の癒着の追及や、小泉構造改革(新自由主義)の否定など
鋭く政権与党に迫っています。そういう民主党の活躍を国民は目
にして、「一度民主党にまかせてもいいのではないか」と思った
に違いないのです。
 それに加えて見逃せないのは、2003年(平成15年)の民
由合併です。当時の民主党は、地方組織が磐石ではなく、どちら
かというと、都市部を中心に「風」頼みの選挙を行ってきたので
す。小沢氏は、各議員・候補者に徹底した地元活動を求めるなど
地盤の強化に力を注いだのです。
 その結果が2007年4月の統一地方選挙の勝利に結びつき、
7月の第21回参院選で自民党を破って大勝利し、参議院での与
野党逆転を果たしているのです。さらに小沢氏は、参議院での多
数を武器に与党に激しく抵抗する「対立軸路線」を敷き、自民党
政権を追い込む戦術を駆使し、遂に2009年8月の衆院選で与
野党逆転を実現したのです。
 民主党の巻き起こしたあの「風」は、以上のような長年の積み
上げによるものであり、現在日本維新の会に吹いている「風」と
は違うのです。それに国政選挙において、過半数を獲得するのは
「風」だけでは無理なのです。
 まして、今回は人気を背負っている党代表の橋下徹氏が選挙の
先頭に立たないのです。いや、本当は立ちたいのでしょうが、立
てないのです。なぜなら、もし、橋下氏が大阪市長を投げ出して
国政に進出したら、現在橋下氏に吹いている「風」は、逆風にな
る恐れがあるからです。「橋下は国政に出るために大阪府市を利
用した」と判断されていまうからです。大阪といえども、4割も
の反橋下勢力があって、完全支配ではないのです。
 もうひとつ日本維新の会には、不安材料が出てきています。そ
れは、2トップの橋下市長と松井知事の間に明確な考え方のズレ
が出てきていることです。それは、みんなの党との連携の決裂か
ら目立つようになってきているのです。
 最近の出来事でいうと、国民新党の松下金融担当相の自殺に伴
う鹿児島3区補選について、松井知事はすぐに「候補擁立を検討
する」と発言したのですが、次の日に橋下氏は「擁立すべきでは
ない」と反対しています。そして、正式に補選には出ないことが
決定されたのです。
 このツートップはかなり意見が違うのです。しかし、国会議員
を日本維新の会に招致することについては、もともと自民党員で
ある松井氏が詳しいので、橋下氏はかなり自分の意見を抑えて松
井氏の提案を受け入れているようにみえます。
 この橋下、松井両氏の関係について、政府事情通は次のように
述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 あの2人は持ちつ持たれつ、利用し合っているのが実情です。
 府議から知事にまでノシ上がった松井は、橋下あっての松井。
 ただし、橋下も、市議団と府議団を松井が押えているため、彼
 に頼らざるを得ないのです。        ──政府事情通
      ──9月15日付、日刊ゲンダイ「橋下徹の正体」
―――――――――――――――――――――――――――――
 選挙をコントロールしているかに見える松井氏ですが、これま
で国政選挙の経験はなく、とくに地方の組織づくりについては素
人同然です。維新の関係者は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 橋本さんと松井さんのズレが大きくなっています。たとえば、
 みんなの党との関係です。橋本さんはみんなの党とも手を結び
 たいが、松井さんは消極的。小沢一郎氏との関係もそうです。
 橋本さんは小沢氏のことを政治家として高く評価しているが、
 松井さんが毛嫌いしている。(中略)もともと我が強く、利害
 で一緒に行動している2人だけに、いずれ決定的に対立するの
 ではないか。 維新の会関係者/日刊ゲンダイ「橋下徹の正体」
―――――――――――――――――――――――――――――
                 ── [橋下徹研究/51]

≪画像および関連情報≫
 ●橋下市長と松井知事のちぐはぐな関係
  ―――――――――――――――――――――――――――
  大阪維新の会が9月12日、大阪市で政治資金パーティーを
  開き国政進出を目指す新党「日本維新の会」結成を正式に宣
  言した。維新の会代表の橋下徹大阪市長(43)はこの日、
  衆院鹿児島3区補欠選挙への対応をめぐり、同会幹事長の松
  井一郎大阪府知事(48)の方針を一喝。順風満帆の新党だ
  が、幹部の「対立」騒動という思わぬ船出となった。橋下氏
  を困惑させたのは松井氏が示した「ハイエナ作戦」だ。金融
  郵政民営化担当相だった松下忠洋氏の死去に伴う10月28
  日投開票の衆院鹿児島3区補欠選挙に、松井氏はこの日午前
  日本維新の候補者擁立を検討する方針を表明。自殺した閣僚
  の選挙区に真っ先に狙いを定めた点を報道陣に問われた橋下
  氏は「すべきじゃない。選挙屋として見られるのは間違いな
  い。国民がすぐに引いてしまう」と反発した。「2トップ」
  の意見が食い違うのは初めてではない。今月3日、日本維新
  党首のポストを巡り、松井氏が「橋下さんしかいない」と発
  言したことに対し、翌4日、橋下氏は「あくまで松井知事の
  個人的な見解だ」と反論。最終的には党首は橋下氏に落ち着
  いたが、ちぐはぐな対応を見せていた。
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20120913-OHT1T00024.htm
  ―――――――――――――――――――――――――――

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日本維新の会結党宣言
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2012年09月20日

●「なぜエネ戦略会議を中止するのか」(EJ第3390号)

 日本維新の会にはよくわからないことがたくさんあります。エ
ネルギー政策は、かつて維新の会の中心政策であったはずです。
橋下氏の肝煎りで立ち上げた大阪府市エネルギー戦略会議は、政
府が2030年代原発ゼロといいながら原発推進を進めているの
に対して、原子力ムラの住人でない最高の専門家を集めて客観的
な検討を行い、適切な提言を行ってきているのです。
 橋下市長も戦略会議の提言にしたがって当初は大飯原発再稼動
反対を宣言して精力的に動いていたのです。しかし、一転橋下氏
は夏期限定再稼動発言にトーンダウン、さらに再稼動容認へとず
るずると発言を後退させています。これは完全なブレであり、そ
の時点で橋下人気に若干陰りが出てきたのです。
 それを証明するのは、その直後の2012年7月1日に行われ
た羽曳野市長選に大阪維新の会が破れていることです。羽曳野市
長選は、民主・自民両党推薦の現職の市長に、元市職員の維新の
会推薦候補と共産党候補が挑んだのですが、現職市長が勝利して
います。大阪維新の会の選挙としては初の敗北です。これは橋下
氏のブレと無関係ではないのです。
 ここで重要なのは、橋下氏の発言のトーンダウン、原発再稼動
容認発言は、エネルギー戦略会議には何の相談もなく突如として
橋下氏から発せられたものであることです。当然戦略会議のメン
バーは、ショックを受けたといいます。
 それでいて、9月4日にエネルギー戦略会議は、関西電力に対
し、大飯原発の停止を提言しているのです。これを知って、戸惑
いを覚えた人は多いのではないでしょうか。「あれっ、橋下氏は
原発反対の姿勢に戻ったのかな」と思った人は多いと思います。
この会議には間違いなく橋下氏が参加しているからです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 大阪府と大阪市は4日、エネルギー戦略会議を開き、今夏の節
 電要請期間が7日に終わるのに先立ち、関西電力大飯原発3、
 4号機(福井県おおい町)の停止を政府と関電に求める緊急声
 明をまとめた。電力需給には余裕があり、多くの国民は原発ゼ
 ロを目指しているとして、節電期間終了後の停止を要請してい
 る。声明は「明確な長期的方針や十分な安全基準もなく原発を
 動かすのは、国民の意思をくんだものではない」と、大飯原発
 の再稼働に踏み切った野田政権を批判している。
       ──2012年9月4日付/東京新聞ウェブ夕刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ところが、9月17日に開催予定であったエネルギー戦略会議
が大阪府からの通告で突然中止されたのです。中止の理由として
は「エネルギー戦略会議は違法である可能性が高くなった」から
であるとしています。大阪府環境農林水産部の担当者は次のよう
に説明しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 条例で位置付けられていない有識者会議を問題視する判例が相
 次いでいるため、今年に入って全庁的に会議規定の見直しを行
 っています。府市にまたがる会議の規約はないので、これから
 始まる府議会と市議会に規約を提案し、議決をもらうことにし
 ました。したがって、議決がもらえるまで、エネルギー戦略会
 議は開きません。    ──大阪府環境農林水産部の担当者
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、このエネルギー戦略会議はなかなかよい仕事をしてき
ているのです。政府に突き付けた原発稼働の8条件、大飯原発再
稼働反対声明、関電の株主総会での大阪市の株主提案の策定、原
発なしでも電力が足りることの実証など、数々の実績を挙げてい
るのです。そしてこの11月には、最終案のまとめをすることに
なっていたのです。
 これについて、戦略会議のメンバーの古賀茂明氏は次のように
懸念を表明しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 政府が原発を推進する中で、対抗する勢力は大阪の戦略会議し
 かありません。それをストップさせられたら、大阪だけじゃな
 く、日本にとってもマイナスです。
   ──古賀茂明氏/2012年9月12日付、日刊ゲンダイ
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、ここにきていきなり中止というのはおかしいのです。
そもそも府市統合本部の存在自体が異例であり、条例などないこ
とは最初からわかっていたことなのです。今頃になっていいだす
のはおかしいのです。
 戦略会議のメンバーである飯田哲也氏は、ここでいきなり中止
するのは何らかの意図があるとして、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 違法になるかもしれないという話は5月からあったのに、3〜
 4ヵ月放置していた。なぜ今なのか。不自然です。何百も要綱
 設置がある中で、エネルギー戦略会議が狙い撃ちされている。
 “まとめ”を先送りしたい意図があるのではないか。
       ──環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 明らかに維新の会のエネルギー政策にはトップにいろいろな変
節があります。したがって、戦略会議が11月に出す予定のまと
めを先送りしたい意図があるのではないかとの飯田氏の指摘は当
たっていると思います。
 なぜなら、大阪府市はエネルギー戦略会議について、一転して
非常に冷たい態度だからです。大阪府市ともに会議のためには一
切お金は出さないし、府市のいかなる会議場も貸さないといって
いるのです。一体何があったのでしょうか。
 これに関して古賀茂明氏は手弁当でも続けるといっています。
予定日であった17日は、とりあえず手弁当で実施しているので
す。しかし、マスコミに入ってもらわなければいけないので、会
議場にはお金がかかるのです。そこで、市内の小さな劇場を借り
て実施したのです。それにしても松井氏も橋下氏も自分の戦略会
議になぜこうも冷たいのでしょうか。── [橋下徹研究/52]

≪画像および関連情報≫
 ●大阪府市統合本部のエネ戦略会議、自主開催へ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  大阪府市統合本部の「エネルギー戦略会議」が議会の議決な
  く設置され、違法の疑いがあるとして開催を見合わせている
  問題で、同会議の委員有志が、会場費に公費を充てず自主的
  に会議を開くことを決めた。委員は自主開催の理由を「国の
  エネルギー政策が決まった今の時期に議論を止めるべきでな
  い」と主張。府議会からは「違法状態の会議の事実上の再開
  だ」との批判も上がっている。同会議は2月に設置され、府
  市のエネルギー戦略について議論。地方自治法では、審議会
  などを設置し、委員に報酬を支払う場合は議会の議決が必要
  と定めているが、同会議など計134会議の設置根拠が府の
  内規に当たる「要綱」や「規則」だったことが判明。府は設
  置のための議案を9月議会に提出し、議決まで開催は中止す
  る予定だった。自主会議は、委員有志が大阪市淀川区の劇場
  を借り上げ、17日に開催。傍聴者から500円の参加費を
  募って会場費に充て、不足分は委員が負担する。委員10人
  のうち、座長の植田和弘・京大教授や元経済産業省官僚の古
  賀茂明氏ら少なくとも6人が出席予定で、各委員の会場まで
  の交通費も自己負担するという。
           ──2012年9月16日付、読売新聞
  ―――――――――――――――――――――――――――

エネ戦略会議/古賀茂明氏.jpg
エネ戦略会議/古賀 茂明氏
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2012年09月21日

●「市長と国政政党代表の兼務は可能か」(EJ第3391号)

 9月17日付の読売新聞によると、全国世論調査で日本維新の
会の期待度は、「期待する」は58%で、「期待しない」が35
%。「期待する」理由は「橋下氏に期待できる」が39%、「ほ
かの政党より良さそう」が37%がほぼ並び、「政策が期待でき
る」は19%だったのです。
 新聞社の固定電話にかける世論調査の結果としては、何の不思
議もない結果といえます。しかし、ネットではどうなのでしょう
か。橋下大阪市長はネットの支持が高い人のはずです。
 政治関係の調査では定評のある「ヤフー!みんなの政治」では
新聞とはまるで違う結果が出ています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 『あなたは日本維新の会に期待しますか』   4784票
  期待する          ・・ 17%  809票
  どちらかというと期待する  ・・  9%  450票
  どちらかというと期待しない ・・  9%  426票
  期待しない         ・・ 63% 2990票
  わからない         ・・  2%  109票
   http://seiji.yahoo.co.jp/vote/result/201209130001/
―――――――――――――――――――――――――――――
 興味深いのは、この投票をした人たちの支持政党です。0%は
除外して、順位を示します。
―――――――――――――――――――――――――――――
      国民の生活が第一 ・・・・ 27%
      自民党 ・・・・・・・・・ 16%
      みんなの党 ・・・・・・・  5%
      民主党 ・・・・・・・・・  4%
      たちあがれ日本 ・・・・・  3%
      共産党 ・・・・・・・・・  2%
      公明党 ・・・・・・・・・  1%
      社民党 ・・・・・・・・・  1%
      新党日本 ・・・・・・・・  1%
      公明党 ・・・・・・・・・  1%
      その他 ・・・・・・・・・・ 3%
      支持政党なし ・・・・・・ 36%
―――――――――――――――――――――――――――――
 大新聞やテレビは、自民党の総裁選や橋下市長を異常なほど取
り上げるくせに、小沢一郎氏の動静は意識して伝えないようにし
ています。そもそも大阪の一市長に過ぎない橋下氏の会見をテレ
ビが、なぜ毎日のように取り上げるのでしょうか。これはきわめ
て異常なことです。
 小沢氏の場合は、きっと控訴審がはじまったら、メディアはマ
イナスのイメージを増大させるために大きく取り上げるに決まっ
ています。どうしようもない偏ったメディアの姿勢です。しかし
国民の生活が第一は目下着々と選挙準備を進めており、ネットで
の支持も広がっているのです。
 ちなみに、「ヤフー!みんなの政治」の投票は、ヤフーのID
を持った人が一人一票だけ投票できるシステムです。ネットだか
らといって、必ずしも若い人というわけではなく、40歳代以上
が83%を占め、正社員28%、会社役員・経営者が11%、自
営業・自由業が18%という層の人であり、必ず選挙に行く人た
ちであるといえます。
 なぜ、この層の人が橋下氏の日本維新の会に危やふさを感じて
いるのでしょうか。その点について、考えていくことにします。
 日本維新の会が目指す統治機構は、国政政党の党首に地方の首
長が就くというもので、今まで例のないスタイルになります。添
付ファイルの「維新が想定する組織イメージ」を参照しなから、
読んでいただきたいと思います。
 日本維新の会の代表は橋下徹大阪市長、幹事長は松井一郎大阪
府知事であり、2人とも次期衆院選には出馬しないので、国会議
員にはならないのです。日本維新の会は、地域政党大阪維新の会
とは別に立ち上げているので、橋下氏と松井氏は、大阪維新の会
の代表と幹事長も兼務することになります。
 日本維新の会の下には国会議員団──政党要件を満たすために
入党した国会議員5人が位置し、大阪維新の会の下には、大阪府
議団と大阪市議団が位置します。この場合、国会議員団、大阪府
議団、大阪市議団は並列の関係にあるのです。
 この組織には問題点がたくさんあります。まず、橋下市長は、
大阪市長と国政政党の党首を兼務することになります。つまり、
二足のわらじです。そんなことは可能でしょうか。
 市長が国政政党の党首を兼務したことは、今までに一度ありま
す。1977年12月、当時横浜市長であった飛鳥田一雄氏が横
浜市長のまま、当時の社会党委員長に就任したケースです。
 しかし、そのときは、党の幹事長に当る書記長は多賀谷真稔衆
院議員が務めており、日本維新の会のように、幹事長まで大阪府
知事と兼務というのは例がないのです。しかし、飛鳥田氏の兼務
は3ヵ月で終了し、その後6年間委員長を務めています。
 日本維新の会の代表との兼務について、橋下氏は「自分の時間
を削ればできる」といっていますが、そういう物理的制約とは別
に、そういうことをすべきではないという意見が多いのです。元
民主党衆院議員で政治評論家の木下厚氏は、次のように兼務を批
判しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 兼任はとても無理。どちらも中途半端に終わるでしょうし、そ
 もそも国民に失礼だ。大阪市の代表としてしか選ばれていない
 市長が、国民の代表である国会議員を支配するのは本末転倒か
 つ無責任で、民主主義に反するのではないでしょうか。責任の
 所在をはっきりさせるためには、国会議員が党首になり、橋下
 松井両氏はその下に付くべきでしょう。
             ──「サンデー毎日」9/30日号
―――――――――――――――――――――――――――――
                 ── [橋下徹研究/53]

≪画像および関連情報≫
 ●できるの? 首長と党首の兼任/橋下氏の二足のわらじ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  地域政党「大阪維新の会」が近く立ち上げる国政新党のトッ
  プ人事が、就任前から論議を呼んでいる。党首に橋下徹大阪
  市長、幹事長に松井一郎大阪府知事という布陣に、「首長と
  国政政党の舵取りという大役の兼務は困難では」と疑問の声
  も上がる。松井氏は「道なき道を進む」と意気込むが、前例
  のない“二足のわらじ”は可能なのか。「地方分権を主張す
  るなら、地方から首長が先頭に立って中央に乗り込み、権限
  と財源を移す。そういうことをやるのはごく自然だ」。9月
  5日、松井氏が兼務の意義を強調すれば、橋下氏は「国政政
  党に地方の首長が就くことの問題点について大いに議論した
  い。こんなもん、誰もやったことがないわけだから」と好戦
  的に語った。地方自治法では、首長と国会議員は兼務できな
  いと定めているが、首長と国政政党党首の兼務を禁ずる法規
  定はない。(中略)両氏が党運営を通じて目指すのは「中央
  集権打破の具現化」だ。衆院選で維新新党が議席を取れば国
  会議員団が組織されるが、重要政策の決定など、党運営の要
  は常に“大阪”が握る。     ──産経ニュース9/6
  ―――――――――――――――――――――――――――

維新が想定する組織イメージ.jpg
維新が想定する組織イメージ
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2012年09月24日

●「非国会議員の国政政党党首の矛盾」(EJ第3392号)

 党首が非国会議員の国政政党や地域政党は、日本維新の会と大
阪維新の会以外にも2つあります。国政政党は「新党大地・真民
主」、政党化を狙っている地域政党は「減税日本」です。
 新党大地・真民主は、党首の鈴木宗男氏が公民権停止中であり
やむをえない事情があります。減税日本については、党首の河村
たかし氏は名古屋市長を務めており、維新の会と似ていますが、
河村氏は国政政党化するにあたって、次期衆院選に立候補する構
えを見せている点が維新の会とは違います。
 新党大地・真民主と減税日本が日本維新の会とさらに決定的に
違う点は、ナンバー2の幹事長が、次のようにいずれも国会議員
が務めていることです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    新党大地・真民主 ・・・・ 松木謙公幹事長
    減税日本     ・・・・ 小泉俊明幹事長
―――――――――――――――――――――――――――――
 これに対して日本維新の会は、非国会議員が党首と幹事長を独
占しているのです。これは、非国会議員が国会議員を差配する構
図であるといえます。
 この体制の問題点は、日本維新の会が次期衆院選で目標とする
241議席以上を獲得し、政権与党になったときに出てくるので
す。日本維新の会が過半数を獲得すると、首班指名が行われます
が、党首の橋下氏は非国会議員なので、指名されることはありえ
ないのです。そうなると、日本維新の会は、所属国会議員の中か
ら、首相を決める必要があります。
 この場合、日本国の首相は、選挙の洗礼を受けていない最大与
党の党首、橋下大阪市長の下に位置することになるのです。こん
なことがあってもいいのでしょうか。実際問題として、日本維新
の会がいきなり、過半数を占めることなどあり得ないでしょうが
そういう大きな矛盾をはらんでいることになります。
 これについて元民主党衆院議員で政治評論家の木下厚氏は次の
ように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 大阪市の代表としてしか選ばれていない市長が、国民の代表で
 ある国会議員を支配するのは本末転倒かつ無責任で、民主主義
 に反するのではないでしょうか。責任の所在をはっきりさせる
 ためには、国会議員が党首になり、橋下、松井両氏はその下に
 付くべきでしょう。       ──政治評論家の木下厚氏
             ──「サンデー毎日」9/30日号
―――――――――――――――――――――――――――――
 こんな矛盾に橋下氏が気がつかないはずはないのです。だから
こそ、「国政には出ない」といくらいっても、いざとなったら、
橋下氏はやはり国政に出るのではないかという噂が消えないので
す。なにしろ「出馬は2万パーセントない!」といって大阪府知
事選に出馬した橋下氏のことですから、前言を翻すことは十分あ
ると考えている人は多いのです。
 しかし、私は次の2つの理由で橋下氏は次期衆院選には出馬し
ないだろうと考えます。
―――――――――――――――――――――――――――――
  1.もし大阪市長をやめたら、大阪市民から見放される
  2.次期衆院選で過半数を取っても参議院議員がいない
―――――――――――――――――――――――――――――
 いうまでもないことながら、国政選挙に出るには大阪市長を辞
任し、再び大阪市長選を行わなければならないことになります。
実にムダな話です。
 しかし、橋下氏に代わる強力な候補者はおらず、次期市長に橋
下氏が擁立する候補者が勝つ保証はないのです。きっと橋下氏が
辞めるとなると、前市長の平松邦夫氏が出馬すると思われ、もし
橋下陣営が選挙に破れると、大阪都構想の実現に赤ランプが灯っ
てしまいます。
 それに橋下氏が市長を投げ出したら、大阪市民は黙っていない
はずです。「橋下は大阪を捨て石にするのか」という不信を買う
ことは必至です。そうなると、現在維新に吹いている「風」は一
瞬にやんでしまうことを橋下氏はよくわかっています。
 もうひとつの理由は、たとえ日本維新の会が今回過半数を獲得
したとしても、日本維新の会には参議院議員は一人もいないので
結局どこかと連立を組むことになり、思うように改革はできない
のです。したがって、橋下市長としては日本維新の会の全国的な
伸びがどこまで広がるのか見極めるため、今回は出馬せず、状況
によっては来年の参院選に出馬するのではないかと思われます。
 しかし、党首も幹事長も選挙に出ないことのマイナスは計り知
れないのです。新党では党首が先頭に立って政策を訴えて選挙を
戦うのが常識です。日本新党でも細川護煕党首は、1992年に
まず参院選を勝ち抜き、翌年の衆院選に出馬して当選を果たして
いるのです。まさに率先垂範が不可欠なのです。
 ところが日本維新の党では、次期衆院選に党首も幹事長も出馬
せず、合流した国会議員以外は選挙の素人が、「橋下徹」の名前
だけを旗印に落下傘候補として全国で選挙を戦うのです。果たし
て勝てるでしょうか。党首と幹事長の不出馬は選挙の当落に大き
く影響するのです。
 ところで日本維新の会は、9月15日、党規約を巡って合流予
定議員と協議しています。大議論になったのですが、代表選での
投票権など党の方針を決める権限について、国会議員と地方議員
を同列に扱うとする規定を盛り込むことに、何とか同意に達した
のです。
 民主党や自民党では、国会議員と地方議員で1票の価値に差が
あるとして同列の扱いは行っていないのです。数千票でも当選で
きる大阪府市議団とその何10倍の票をとらないと当選できない
国会議員と同列にするのは問題であるとして、一部の合流議員が
反対して、相当もめたのです。しかし、合流議員はあまり強くい
える立場にないので、同列に扱うことに合意してしまったものと
思われます。           ── [橋下徹研究/54]

≪画像および関連情報≫
 ●日本維新の会 「二足のわらじ」は無理だ/産経ニュース
  ―――――――――――――――――――――――――――
  大阪市長という重要な業務を担いながら、国政政党の党首も
  つとめるなど無理である。「大阪維新の会」を率いる橋下徹
  氏は、党首か市長いずれかに専念すべきだ。維新の会は9月
  8日の全体会議で、国政への進出を正式に決めた。近く立ち
  上げる新党「日本維新の会」の党首には、橋下氏が市長のま
  ま就任する。幹事長を兼ねる松井一郎大阪府知事とともに、
  2人の地方首長が国会議員を指示していくという極めて異例
  の党運営だ。「二足のわらじ」について橋下氏は「誰もやっ
  たことがないので、『やっていく』としか言いようがない」
  としている。認識が甘いのではないか。外交や安全保障、治
  安の確保や教育、産業の振興、さらには災害などの緊急事態
  もある。国政上の諸課題への対応を決断することは、市長の
  傍らでこなせるほど簡単ではない。そもそも、国会に議席を
  持たない者が国政政党の党首をつとめること自体に、強い違
  和感を覚える。しかも世論調査によれば、日本維新の会は次
  期衆院選で政治の行方を左右しかねない議席数を獲得する可
  能性もある。国政への重い責任があるのだ。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120909/stt12090903090002-n1.htm
  ―――――――――――――――――――――――――――

「首長と国政政党党首は両立可能」/橋下市長.jpg
「首長と国政政党党首は両立可能」/橋下市長
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2012年09月25日

●「維新の会と距離をおく3人のブレーン」(EJ第3393号)

 大阪の一市長に過ぎない橋下徹氏の記者会見を大手メディアは
毎日取材し、少しでも面白い発言があると、それをニュースにし
て伝えています。きわめて異常な現象であると思います。
 このようにメディアは、橋下氏をメディアに超露出させること
によって、意識的に時代の寵児につくり上げようとしているよう
に見えます。その一方で大手メディアは、橋下氏の考え方に反対
の人を少しずつ、慎重にメディアから外していっています。これ
について、政治評論家の森田実氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 マスコミはおそろしい存在です。マスコミは「無視する」とい
 う武器を使うのです。マスコミはマスコミが気に入らない人物
 や考えは無視して、報道しないのです。日本のマスコミは一枚
 岩のように団結していますから、無視された人物や考えは、こ
 の世に存在していないかのように扱われてしまうのです。マス
 コミは、言論人を選別します。選ばれた人の考え方だけが世論
 のように扱われるのです。          ──森田実著
     『「橋下徹」ニヒリズムの研究』/東洋経済新報社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 森田実氏は、かつてはテレビの政治番組の常連だったのです。
しかし、森田氏は小泉郵政民営化をテレビで厳しく批判したこと
によって、大手メディアから相手にされなくなったのです。最近
では森田氏は大手メディアにまったく登場せず、ネットや一部の
夕刊紙などに評論を書いています。森田氏の述懐によると、「森
田実はもうこの世にいない」と思われていたそうです。
 同じ政治評論家でも後藤謙次氏、鈴木敦夫氏、田崎史郎氏など
はほとんど毎日のようにテレビに登場しますが、それは基本的な
ところでマスコミの論調を守っているからです。彼らに共通して
いるのは、「反小沢」であることです。マスコミのウラには財務
省がおり、政治番組に出演する政治評論家をチェックしていると
いわれています。
 橋下氏についての好意的なメディアの報道は、これから選挙に
臨む日本維新の会にとって大きなメリットがあります。選挙のな
いときならともかく、こういう報道のしかたには公平性の観点か
ら考えても、大いに問題があります。
 橋下氏と対照的なのは小沢一郎氏です。小沢氏が新党「国民の
生活が第一」を立ち上げ、着々と選挙準備を積み上げているのに
メディアは完全に無視しています。そのくせ明日からはじまる小
沢氏の控訴審は、きっと大々的に取り上げると思います。小沢氏
にとってマイナスの報道は喜々として報道を行うのです。
 さて、真偽のほどはまだわかりませんが、これまで維新の会の
政策を大阪市特別顧問として支えてきた中心スタッフ、脱藩官僚
の古賀茂明氏(経産省)、原英史氏(経産省)、高橋洋一氏(財
務省)の3人が、近く「集団離反」すると、9月20日発行の日
刊ゲンダイ紙は伝えています。一体何があったのでしょうか。
 維新の会(日本維新の会と大阪維新の会)では、その合流者や
連携しようとする政党に対して、その綱領ともいえる維新八策に
完全一致しなければ組まないと明言していたはずです。それも公
開の場で徹底的に討論を行うことによって、価値観が一致すれば
合流を認めるし、連携するというのです。
 しかし、最近の維新の会はその大原則から大きくブレはじめて
います。それは同会が、ほとんどの政策が一致しているみんなの
党との連携を拒否し、その一方において必ずしも政策が一致して
ない自民党の安倍元首相に接近していることが明らかになってか
ら、大きなブレになったといえるのです。
 維新八策に盛られている政策は、憲法改正や地方自治法改正、
道州制の実現などを前提とするものが多く、しかも、その政策実
現までの工程表が一切ついていないのです。そのなかにあって、
次の2つは、その気になれば前進させられる政策といえます。
―――――――――――――――――――――――――――――
           1.増税法反対
           2.脱原発政策
―――――――――――――――――――――――――――――
 かつて維新の会は消費増税に反対を唱えていたはずです。20
11年1月26日、菅政権が消費税を含めた税制改革の検討を始
めたことについて橋下氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 まずは自分の所から身を削る姿勢を示さないと、消費税論議
 を国民は支持しない。支持しちゃいけない
          ──『橋下語録』/産経新聞大阪社会部
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、消費増税に関しては、維新八策の最終版の第1策のな
かに「消費税の地方税化」として載っているだけです。最近では
増税は決まったことであるので、今さら議論しても仕方がないと
いっており、事実上消費増税を認めています。
 脱原発政策──これは維新の会が最も力を入れていた政策のは
ずです。そのために橋下氏は、大阪府市エネルギー戦略会議を設
立して、原子力ムラ出身ではない優秀なスタッフによって、ここ
まで20回にわたって大阪市のエネルギー政策を検討してきたの
です。しかるに橋下氏は、突如原発容認姿勢に転じ、こともあろ
うに戦略会議まで中断してしまったことは、9月20日のEJ第
3390号で述べた通りです。それは維新の会のツートップが安
倍元首相と連携を組むことが原因であったようです。
 安倍氏は原発政策では橋下氏のように関西電力との対決姿勢を
鮮明にしたり、再稼動に反対していないのです。それどころか、
安倍氏は脱原発が争点になった先の山口知事選において、原発容
認派の山本繁太郎候補(現山口県知事)を応援しています。しか
し、橋下氏は、その山本氏に対抗して立候補した脱原発の元大阪
市特別顧問の飯田哲也氏を応援せずに見殺しにしています。
 こういう維新の会のツートップのブレに対し、大阪市特別顧問
のブレーンが距離を置き始めているのは、むしろ当然のことであ
るといえます。          ── [橋下徹研究/55]

≪画像および関連情報≫
 ●維新の会に距離を置きはじめた3人の橋下ブレーン
  ―――――――――――――――――――――――――――
  古賀茂明氏、原英史氏、高橋洋一氏は、維新の会の「変節」
  にかなり違和感を持っているようです。「脱原発」のエネル
  ギー戦略会議が中止になってしまったことも大きい。消費増
  税についても、橋下市長は「決まったことは受け入れる」と
  容認してしまった。なにより、最近の維新は安倍晋三にラブ
  コールを送ったり、改憲に熱心だったりと、改革派の「第三
  極」というより、「第2自民党」のようになっている。さす
  がに政策づくりに熱心な3人はついていけないでしょう」。
  もともと3人はみんなの党のブレーンだったこともあって、
  橋下新党とみんなの党がケンカ別れしたのをキッカケに、み
  んなの党にシフトするだろうとみられていた。19日も「み
  んなの党」が開いた勉強会に3人そろって参加している。
  (霞が関関係者)   ──9月20日発行の日刊ゲンダイ
  ―――――――――――――――――――――――――――

大阪市特別顧問の3氏.jpg
大阪市特別顧問の3氏
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2012年09月26日

●「松井一郎大阪府知事とは何者か」(EJ第3394号)

 日本維新の会は驚くべきスピードで変質しています。日本維新
の会は「第3極」といわれていますが、既に第3極ではなくなり
つつあります。
 第3極とは、2大政党以外の政治グループを指していう言葉で
す。つまり、民主党、自民党以外のもうひとつの政治グループが
第3極です。したがって第3極としての政党は、民主党や自民党
と政策面で対極に立つ必要があります。ところが、最近の維新の
会は、かつて掲げていた基本的な政策でのブレが大きくなってい
ます。どうしてそうなったのでしょうか。
 それは、橋下代表と松井幹事長の考え方のズレがここにきて、
一層ひどくなっているからです。そのため、これまで維新の会を
支えてきたブレーンとの溝も広がりつつあり、これ以上政策のブ
レが拡大すると、ブレーンの離脱も十分あり得ることです。しか
し、松井氏にはその危機感がまるで感じられないのです。
 それどころか、「嫌ならやめてもらっても構わない」という高
姿勢です。どうやら彼は完全に思い上がっているようです。その
高姿勢がみんなの党との訣別となってあらわれたのです。維新の
会の政策づくりに深く関わっている古賀茂明、原英史、高橋洋一
の3氏は、もともとみんなの党のブレーンであり、党代表の渡辺
喜美氏の好意で維新の会の政策づくりを手伝ってきたのです。
 橋下市長は、現在大阪都構想実現のための仕事に忙殺されてお
り、日本維新の会に合流する議員の選定などを含めて、新党づく
りは松井氏にまかせています。橋下氏から見ると、松井氏と意見
が違うことが多くなってきているはずですが、トップの2人がぶ
つかってしまうと、党が空中分解せざるを得なくなるので、じっ
と我慢しているようにみえます。
 松井氏は、橋下氏あっての存在であり、本人もそれを自覚して
いると思います。しかし、松井氏が大阪府議団と市議団を押えて
いるので、橋下氏としては、今は松井氏に頼らざるを得ない状況
にあるのです。
 しかし、松井氏の動きは、明らかに日本維新の会を「第2自民
党」にしようとしているとしか思えないのです。みんなの党との
訣別は、自民党内部での、みんなの党の渡辺喜美代表に対する強
烈な拒絶反応が原因だったのです。もし、みんなの党と組むと選
挙後、自民党と組めなくなると考えているのです。同様に、小沢
氏が率いる国民の生活が第一と組むのも、当然自民党の強い拒否
反応があるので反対なのです。
 25日に日本維新の会は東京事務所を設けましたが、その事務
所長に前自民党衆院議員の近江屋信広氏が就任しています。この
近江屋信広という人物は、2005年の衆院選で、自民党比例南
関東ブロックから初当選しており、その後当選してきた小泉チル
ドレンの1人である杉村太蔵議員(当時)の教育係を務めていま
す。しかし、2011年4月には、大館市長選に挑戦して、落選
しています。
 また、日本維新の会の選挙戦略アドバイザーに就任したとされ
る元自民党衆院議員の米田健三氏は、1993年7月の衆院選で
初当選しましたが、次の年に自民党を離党して、新進党に参加し
小沢党首の補佐役をやっています。しかし、その後小沢氏と訣別
し、自民党に復党し、江藤・亀井派に属していたのです。
 しかし、2005年9月の衆院選に出馬を表明したものの、敗
北が決定的であったため立候補せず、2007年7月の参院選に
出馬して落選するなど、選挙にはあまり強くない人物なのです。
その人物を選挙戦略アドバイザーに招くセンスはいかがなものか
と思いますが、アンチ小沢ということがミソです。松井氏は小沢
氏を嫌っているのです。おそらくとても自分がコントロールでき
ない政治家だと思っているからでしょう。
 松井一郎氏というのは、どういう人物なのでしょうか。
 松井氏について、9月14日発行の日刊ゲンダイは次のように
紹介しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 松井は、大阪府八尾市出身だ。学歴は福岡工付属高→福岡工大
 工学部。地元の関係者は「ヤンチャして大阪にいられなくなり
 コネで福岡の高校に編入した」という。元大阪府議会議長まで
 務めた自民党府連の実力者の父・良夫氏は、競艇場の照明設備
 を担う会社の経営者です。日本の競艇界のドン・笹川良一氏の
 運転手をしていたことがあり、その関係で住之江競艇の仕事を
 請け負いました。笹川氏が福岡工大高の理事だったことから、
 松井知事は編入できたのです。
      ──2012年9月14日発行/日刊ゲンダイより
―――――――――――――――――――――――――――――
 その後、松井氏は2003年に自民党公認で大阪府議に初当選
しています。つまり、松井氏は典型的な2世議員なのです。そう
いう意味で古い自民党政治家の典型みたいなところがあります。
府知事選に出ることが決まったとき、「あの政策オンチがやれる
のか?」という声が上がったそうです。しかし、橋下氏に吹いた
「風」のお蔭で府知事になれたのです。
 2012年6月11日に松井氏は、物議をかもす発言をしてい
ます。10日に大阪市内で発生した通り魔事件の被疑者が自殺に
失敗した後に犯行に及んだことについての次の発言です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 「死にたい」と言うんだったら、自分で死ねよと。人を巻き
 込まずに自己完結してほしい。    ──ウィキペディア
―――――――――――――――――――――――――――――
 実に冷たい発言です。彼の人間性がよく出ています。しかも松
井氏は自殺予防対策に取り組む大阪府のトップなのです。この発
言は、当然物議をかもしたのですが、メディアは積極的に取り上
げず、あまり大きな問題にならずに済んでいます。
 今や日本維新の会の幹事長になり、橋下氏に会おうとする国会
議員の窓口になって、権勢を振るいはじめています。こんな人物
が幹事長で、日本維新の会はうまくいくのでしょうか。橋下氏は
何を考えているのでしょうか。   ── [橋下徹研究/56]

≪画像および関連情報≫
 ●あるブログ「かっちの言い分」より
  ―――――――――――――――――――――――――――
  日本維新の会幹事長の松井一郎大阪府知事は9月14日、大
  阪市で共同通信の単独インタビューに応じ小泉政権の構造改
  革路線を継承する考えを表明、憲法改正に向け衆院選後の自
  民党との連携に前向きな姿勢を示した。成立の見通しが立た
  ない公債発行特例法案について「法案を人質にしない」と賛
  成する立場を強調、厳しい財政状況を理由に消費税率引き上
  げは容認すると明言した。統治機構改革が次期衆院選の争点
  になるとの見通しを示し「1期4年」の覚悟で道州制導入な
  ど基本政策実現に取り組むよう候補者に求めた。小沢一郎代
  表率いる新党「国民の生活が第一」とは「政策が違う」とあ
  らためて連携を否定。維新代表の橋下徹大阪市長や自身の次
  期衆院選への出馬も重ねて否定した。
   http://31634308.at.webry.info/201209/article_15.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

松井一郎氏/米田健三氏.jpg
松井 一郎氏/米田 健三氏
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2012年09月27日

●「3つの争点の2極の戦い」(EJ第3395号)

 民主党の輿石幹事長の続投が決まったことで、当面選挙が先送
りされることは確実の情勢です。選挙が先送りされて困る政党は
自民党、公明党、日本維新の会であると思います。
 自民党は資金不足であり、選挙が延ばされれば延ばされるほど
苦しくなります。ちょうど民主党が、麻生首相に2008年10
月から2009年夏まで選挙を延ばされて資金不足に苦しみ抜い
たのと同じ目に遭うことになります。
 自民党では消費増税でできた余力の資金を使い、ゼネコンに対
して「10年間で総額200兆円の公共事業」というニンジンを
ぶら下げ、カネと票を集めるべく既に動き出しています。しかし
選挙の時期が先送りされると、自民党は苦しくなります。
 これに対して日本維新の会は、選挙が先送りされればされるほ
ど選挙準備が進むので有利であると考える人が多いですが、それ
は逆です。それは、次の2つの面でマイナスです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  1.最近の維新はブレが拡大し、「風」がやみつつある
  2.個人資金での選挙戦であり、長期戦では苦しくなる
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここまで述べて来ているように、最近の維新は2011年の大
阪府市ダブル選挙のときに比べると、勢いが衰えつつあります。
維新八策をめぐるブレが多くなっているのが原因で、時間が経つ
につれて、「風」がやむ可能性が高くなります。
 さらに日本維新の会の今回の選挙戦は、個人資金での戦いであ
り、長期戦になると軍資金が切れる恐れがあります。供託金に加
えて選挙事務所の運営には人件費を含めると、数千万円の経費が
かかり、それを長期間続けると、資金切れになる候補者が続出す
ることになります。
 それでは、選挙までの時間があると、有利になる政党はあるの
でしょうか。
 それがあるのです。国民の生活が第一をはじめとする野党7会
派による「国民連合」です。これは時間があればあるほど選挙準
備が整い、無視できない存在になります。
 選挙戦を熟知している小沢氏のことですから、現在着々と手を
打っています。しかし、大メディアはこの国民連合の動きは知り
ながらあえて黙殺し、報道しないようにしています。
 しかし、そのため、大方の政党は、国民連合の動きがわからな
くなっています。きっと小さい政党の集まりなので、馬鹿にして
どう動こうが影響がないと考えているのだと思いますが、そう考
えているとしたら、きっと選挙で手痛い目に遭うことは確実であ
ると思われます。
 次期衆院選は、「3つの争点をめぐる2極の戦い」になるとい
えます。
―――――――――――――――――――――――――――――
          1.消費増税法凍結
          2.原発ゼロを実現
          3.TPP当面反対
―――――――――――――――――――――――――――――
 3つの争点から考えてみます。1の「消費増税法凍結」につい
ては、自公民プラス日本維新の会は消費増税に賛成なので、国民
連合はあくまで消費増税に反対し、増税法の凍結を目指すという
ことを争点にします。先の中小野党連合による野田首相問責決議
案の趣旨に沿う動きです。
 2の「原発ゼロを実現」は、自公は基本的には容認姿勢ですし
民主党も討議の結果、「2030年度に原発ゼロ」の目標を閣議
決定しようとしたのですが、結局できなかったのです。日本維新
の会も当初は大飯原発再稼動反対を唱え、脱原発を明確に打ち出
していたのですが、最近は大きくトーンダウンし、維新八策最終
版では、この問題は抽象的な表現に後退してしまっています。
 TPPについては、明確に賛成を唱えているのは日本維新の会
だけです。自公については「情報がない」といって一応反対して
いますが、その本音は賛成であろうと思います。
 これに対して国民連合ではTPP反対を打ち出していますが、
国民の生活が第一では、小沢代表としては基本的に自由貿易は賛
成であり、最後まで態度を明らかにしなかったのです。しかし、
このほど3のように「TPP当面反対」を打ち出したのです。こ
の件についての小沢一郎代表の見解です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ひとつは自由貿易という基本的な経済原則の要素。もうひとつ
 は米国特有の思惑があります。自由競争、自由貿易の原則は誰
 も否定できない。できる限り世界中で自由な経済取引が行われ
 ることは良いことですが、今、米国が主張しているTPPをそ
 のまますぐ受け入れることとは別問題。日本の国民生活をちゃ
 んと守るシステムをつくったうえで、吟味してやらなければな
 らない。(現時点で交渉に参加すれば、米国の)意のままにや
 られてしまいます。        ──小沢一郎代表の見解
      http://etc8.blog83.fc2.com/blog-entry-1649.html
―――――――――――――――――――――――――――――
 続いて、なぜ「2極の戦い」になるのかです。本来は次の「3
極の戦い」になるはずだったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
           1. 自公民連合
           2.日本維新の会
           3.  国民連合
―――――――――――――――――――――――――――――
 ところが、日本維新の会が消費増税を容認し、原発政策に関し
ても少なくとも反対はしない容認姿勢を見せているので、限りな
く自公民連合に近くなっています。そのため、1と2は1つの極
を形成し、3はその対極というかたちで、「2極の戦い」になる
はずです。もっと正確にいうならば、日本維新の会が第2自民党
化しつつあって、その基本姿勢は大きく変質しつつあるのです。
                 ── [橋下徹研究/57]

≪画像および関連情報≫
 ●「生活」東祥三幹事長の定例記者会見より
  ―――――――――――――――――――――――――――
  一般論で言えば、小沢代表が明確にしているように、私たち
  はいわゆる国内、内政の事ではなくて貿易として考えたとき
  に自由貿易を主体的に推進していかなくてはならない。そう
  いう立場に立っている人々だろうと考える。そういう意味に
  おいて、将来、理想的に言えば関税が撤廃されていくという
  のは当然前提として考えていかなければならない。アメリカ
  は、野田総理とのTPPに関する議論のなかで、アメリカの
  TPPにおける国益をきわめて明快に定義されている。それ
  は自動車、医療、保険だと。この三つの分野において、アメ
  リカとしてはそこに国益を見出すとしている。ところが、日
  本の交渉の仕方は、TPPを通じて何を国益として得ようと
  しているのかという交渉の方針がない。ただ言っていること
  は、枠組みつくりに参加したいということだけだ。今TPP
  に参加しなければ、その枠組みのルール作りにも参加できな
  いというきわめて抽象的な話しかない。これでは、賛成せよ
  といっても、賛成することはできないということを言ってい
  る。全面的に、このTPPにすぐに参加することまで賛成し
  ているわけではない。基本的には交渉する人間が何をもって
  TPPから国益を追求するのかということが不明確である限
  りそれに対して賛成はできない。
      http://etc8.blog83.fc2.com/blog-entry-1649.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

「生活」東祥三幹事長.jpg
「生活」東 祥三幹事長
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2012年09月28日

●「次期衆院選後に何が起きるか」(EJ第3396号)

 自民党の総裁選は、9月26日に行われ、元首相の安倍晋三氏
が勝利して総裁に就任しました。党員・サポーターは、圧倒的に
石破氏を支持したものの、議員は安倍氏に過半数を与えて、決選
投票で安倍氏が自民党の総裁になったのです。第1回目の投票と
決選投票の結果は次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪第1回投票≫
        議員票  党員・サポーター票   合計
  安倍晋三   54         87  141
  石破 茂   34        165  199
  石原伸晃   58         37   38
  町村信孝   27          7   34
  林 芳正   24          3   27
 ≪決選投票≫
 ◎安倍晋三  108 ・・・・・ 108−54=54
  石破 茂   89 ・・・・・  89−34=55
―――――――――――――――――――――――――――――
 地方票の計算が「ドント式」というわかりにくい方式で行なわ
れたので、ピンとこないのですが、実は地方は石破氏の圧勝だっ
たのです。47都道府県で石破氏が制したのは、実に41道府県
に及ぶのです。石破氏の負けた道府県は、北海道(町村)、福井
(安倍)、奈良(安倍)、和歌山(安倍)、山口(安倍)、福岡
(安倍)の6道府県だけであり、文字通り圧勝です。
 1回目の投票で石破氏が獲得した議員票は34、安倍氏は54
で20票の差があります。それが決選投票で安倍氏は54票上積
みして108票としたのに対し、石破氏は55票増の89になっ
たのです。19票差です。この石破氏に回った55票は、石破氏
を支持しているわけではないが、自民党の党員・サポーターの民
意に配慮して石破氏に投票した人たちということができます。
いわば良心票といえるのです。もちろん、最初は石破氏に投票し
たのに決選投票では、安倍氏に入れた人もいることをあわせて述
べておきます。
 これに対して安倍氏へ上積みされた54票は、安倍氏を支持し
ているわけではないが、所属派閥に配慮したり、単に石破氏が嫌
いだったりするきわめて内向きな票ということができます。今回
の投票結果において、これら良心票と内向き票が半々だったとい
うことは、自民党の改革が、あまり進んでいないことを物語って
います。やはり、まだ派閥の力学が少し働いているのです。
 政治評論家の田崎史郎氏によると、谷垣グループと安倍グルー
プは事前に約束ができていたというのです。その約束とは、第1
回の投票では石破氏に投票するが、もし決選投票があるときは、
安倍氏に投票する。その代り石破氏の幹事長起用を要求したとい
うのです。わかりにくい対応ですが、1回目の投票では、石原氏
を潰すために石破氏に入れるという作戦だったようです。
 事実であるかどうかは分かりませんが、こういう話が漏れて、
政治評論家の耳に入るのはお粗末です。こういう話を聞くと、自
民党が何も成長していないことがよくわかります。
 この総裁選の結果を受けて、日本維新の会との関係はどうなる
でしょうか。これについて、自民党総裁選の終了後に橋下大阪市
長は安倍晋三氏について、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 安倍氏は非常に信頼のおける政治家だと思っている。維新の会
 と方向性はほぼ同じである。しかし、消費税の地方税化やTP
 P(環太平洋パートナーシップ協定)、原発政策について考え
 方が完全一致ではない。選挙の時は戦わざるを得ない。
                     ──橋下大阪市長
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本維新の会は、次期衆院選に300人〜400人の候補者を
立てると豪語していますが、それはとても無理です。専門家は比
例も入れて、せいぜい120〜140人と見ています。そうする
と、当選者は現在の支持率からみて、50〜60人ぐらいと考え
られます。
 しかし、ここにきて日本維新の会の支持率が低迷しています。
このままもし、選挙が先送りされると、支持率はさらに低下する
と思われます。そうかといって、支持率が大きく回復する要素は
これといって何もないのです。
 自民党はどうでしょうか。この原稿執筆時点で安倍自民党の支
持率は出ていませんが、もし、支持率が思うように伸びないと、
選挙も苦しくなってきます。今回安倍総裁が選出されたことで、
自民党の鳥取、山形、秋田県連を中心に反発の声が上がっており
秋田県連では、抗議のために役員が辞任を決めています。支持率
にこれがどう響くかです。
 いずれにしても自民党と日本維新の会は選挙でガチンコで戦う
ことになります。政治ジャーナリストの角谷浩一氏によると、自
民党は130議席程度とみています。単独過半数どころか150
議席にも届かないだろうと見ているのです。それに、現在の状況
なら、民主党は100議席を切るといわれています。
 一方、角谷浩一氏は、「国民の生活が第一」と「新党きずな」
「新党大地・真民主」の3党で50〜60議席は取ると分析して
います。選挙が先送りされればされるほど、増税反対の「国民連
合」が伸びるとみているからです。
 おそらく自民党が比較第一党になりますが、50〜60議席の
政党が多く乱立することになり、すんなり、自民党の政権になる
とは限らないのです。もし、それらの政党の連携によっては、か
つての細川政権のような連合政権ができる可能性もあります。生
活の小沢代表はそこまで読んで選挙戦略を立てています。
 7月9日から58回にわたり、橋下徹論を書いてきましたが、
今回で終了します。すべては選挙が終わって、日本維新の会がど
のくらい票を取っているかによって、日本の政治は大きく変わる
可能性があります。10月1日からは、現在もっとも関心のある
テーマを取り上げます。  ── [橋下徹研究/58/最終回]

≪画像および関連情報≫
 ●自民党総裁選/地方の声とずれ──朝日新聞デジタル
  ―――――――――――――――――――――――――――
  安倍晋三元首相が、地方票で圧勝した石破茂前政調会長を国
  会議員の決選投票で破った自民党総裁選。県内でも党員・党
  友票は石破氏が圧勝した。石破氏支持の県議からは「地方の
  結果を重く受け止めて」と注文も。民主党などからは「政権
  を放り投げた人」と対決を意識した声も出た。党員・党友の
  県内の投票率は58・77%で前回(2009年、46・0
  6%)を12ポイントほど上回った。得票は石破氏6774
  票、石原伸晃幹事長2575票、安倍氏2224票、町村信
  孝元官房長官397票、林芳正政調会長代理161票。県連
  に割り当てられた7票は、石破氏5票、石原、安倍両氏が各
  1票と配分された。石破氏の得票率は約56%で、同党県議
  32人中17人が石破氏支持と回答した朝日新聞の事前アン
  ケートと同様の結果だった。    ──朝日新聞デジタル
  http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000001209270002
  ―――――――――――――――――――――――――――

橋下維新と自民党の連携?.jpg
橋下維新と自民党の連携
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 橋下徹研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする