限付きの退陣を表明した日です。その日に首都圏で行われた世論
調査があります。もちろん退陣表明後の調査です。
この調査結果を見ると、非常に興味深いことがわかります。菅
内閣の支持率は次の通りです。
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『菅直人内閣を支持するか』
支持する ・・・・・・・ 37.4%
支持しない ・・・・・・・ 58.4%
分からない ・・・・・・・ 4.2%
──6月6日付、産経新聞
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支持率は菅政権にしてはやや高目に出ていますが、相変わらず
不支持率は高い状態のままです。他の世論調査と大きく変わると
ころはないのです。ただ、ひとつだけこの調査では今までの数値
と大きく違うところがあったのです。
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『次の衆院選でどの党に投票?』
民主党 25.0 % みんなの党 6.8 %
自民党 24.6 % たちあがれ日本 0.8 %
公明党 3.2 % 新党改革 0.0 %
共産党 2.0 % 無所属・他 3.0 %
社民党 1.4 % 棄権する 4.4 %
国民新党 0.4 % 未定 28.0 %
新党日本 0.4 % ──6月6日付、産経新聞
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この調査は、日曜日午前7時30分からのフジTVの政治番組
「新報道2001」の最後にいつも表示されるのですが、この数
字は6月5日の同番組で公表されています。
これによると、民主党に投票するという数値がわずかではあり
ますが、自民党を上回っているのです。私の記憶では29日の調
査では民主党は15.0 %であったので、10ポイントも回復し
たことになるのです。
それだけではないのです。この数値は今年の1月20日の調査
(1月23日公表)で自民党が民主党を逆転して以来、実に18
週ぶりの再逆転なのです。突然のこの逆転は、何を意味している
のでしょうか。
それは、国民の民主党への期待がまだ少しは残っていたことを
意味しています。しかし、2009年の政権交代以来、とくに菅
政権になってからの政権運営は、あまりにもひどいので、支持率
が下がってきたのです。
それでも2011年の1月上旬までは、この調査『次の衆院選
でどの党に投票?』の1位は民主党だったのですが、1月20日
に遂に自民党に逆転されてしまったのです。
しかし、菅首相が曖昧なかたちにせよ、退陣を表明したことで
民主党への期待が少し回復したのです。自党の首相が辞める時期
を口にしたことで、民主党への支持率が回復するのは皮肉なこと
ですが、それでも少しは期待をしたのです。けっして自民党政権
に戻したいと考えているわけではないからです。民主党に一票を
投じた国民は、民主党ならば日本政治の閉塞状態を少しは変えて
くれるのではないかと期待をかけていたのです。
もっともその退陣時期を表明した菅首相は、その後、時期を明
確にするどころか、続投すら匂わせたので、12日の「新報道2
001」の数値を心配したのですが、民主党の25.0 %は変わ
らず、逆に自民党は23.6 %に減少しています。これは、民主
党への期待が消えていないことを示していると思うのです。
それでは民主党に投票した国民は民主党に具体的には何を期待
したのでしょうか。
自民党が「バラマキ4K」と揶揄する民主党の主要政策──子
ども手当、高校無償化、(農家の)戸別補償制度、高速道路無料
化が財源不足で菅政権はその撤回を画策していますが、これは国
民に対するとんでもない裏切りです。
これらの政策自体は、けっして悪い政策ではないのです。経済
政策としても間違っているとは思えないのです。しかし、その実
現には、恒久的な安定財源が必要です。その財源は事業仕分けを
するぐらいでは出てこないのです。その実現には一にも二にも公
務員制度改革を実現し、予算そのものの基本的な組み替えが必要
になるのです。そのことについて、小沢一郎氏は代表時代に明言
しています。
しかし、それはきわめて難しい事業なのです。少しオーバーに
いえば命がけでないとできないと思います。強力なリーダーシッ
プを持つ首相の下に党が一丸となって取り組んでも何年もかかる
はずです。
民主党によるそういう改革が本当に進められると困る向きがた
くさんあるのです。やって欲しくないそういう連合体は、それを
実現させまいと、さまざまな妨害を仕掛けてきます。それは何で
もありです。現在の小沢一郎元代表がまさにそういう目に遭って
いるといえます。
現在、日本の政治は混迷を極めています。今回の大震災にも政
治はきちんと対応できているとはいえません。根本的に何かが欠
如しています。何がどうなっているのでしょうか。何もかもおか
しいです。一体この国は何者によって支配されているのでしょう
か。明日から、次のテーマでこの問題についていろいろな角度か
ら書いていくつもりです。
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この国は何によって支配されているのか
─ 日本政治の現況について考える ─
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─── [日本の政治の現況/01]
≪画像および関連情報≫
●小沢一郎に対する人物破壊が行われている
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小沢氏は日本が変わらなければならないことを知っている。
しかも彼は本気でそれに取り組んでいる。そしてだからこそ
日本の旧態依然とした体制を変えまいと固執する勢力から見
れば、そんな小沢氏は脅威なのだという事実を我々ははっき
りと認識しなけれ ばならない。そのときどきで程度の差こ
そあれ、小沢氏に対する「人物破壊」の試みが、1993年
当時から現在にいたるまでずっと続いてきたのはなぜか?そ
れは彼が実際になにをしたかどんな過ちをおかしたかなどと
いうこととはまったく関係がない。彼という存在が体制側に
とって最大の脅威であることそれこそが理由なのである。
──カレル・ヴァン・ウォルフレン著/井上実訳
『誰が小沢一郎を殺すのか?』/角川書店刊
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ウォルフレン氏の本