し下げに転じているようです。
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29日のNYMEXで原油先物相場は大幅反落。WTI原油は
期近の7月物は前日比4.41ドル安の1バレル126.62
ドル取引を終えた。2008.54.30日付/日本経済新聞
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原油先物相場の反落――大変良い傾向であり、株価もそれを好
感して上昇しています。このテーマは今週で終了しますが、最後
に、日本にとってエネルギーに関する少し明るいニュースをお伝
えしたいと思います。
石油に代わる代替エネルギーの確保において、日本にとって最
も可能性があるものといえば、原子力発電と太陽光発電であると
思います。このうち、原子力の平和利用の技術において日本はと
くに進んでいますが、マイナス面も多々あるのは事実です。
太陽光発電については、もともと日本が世界の先陣を切った技
術であり、日本のお家芸ともいうべきものです。当時の国策の失
敗によって現在はドイツの後塵を拝していますが、現在でもシャ
ープ(株)は、太陽電池の世界シェアの約25%を占めるトップ
企業なのです。
現在太陽光発電で使われている電池は「結晶シリコン型」と呼
ばれるものですが、最近結晶型に比べて材料を100倍節約でき
きる「薄膜シリコン型」と呼ばれる電池が一部で使われるように
なっています。
日本ではこの「薄膜シリコン型」をさらに進化させた「薄膜型
CIS太陽電池」の実用化に成功しており、順調に発達すれば、
2030年までには国内エネルギー消費量の10%程度を太陽光
発電で賄えるようになるはずです。しかも、これまで普及のネッ
クになっていた発電コストを化石燃料並みの7円/1キロワット
に改善できるというので有望です。
ところが、太陽光発電は天候によって発電量が左右されるとい
うマイナス面があります。これをカバーするためには現在の技術
を上回る蓄電技術が必要になります。
しかし、この面においても解決の光は見えています。独立行政
法人・新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、
「レドックスフロー」といわれる新型蓄電池の実証実験を開始し
ており、世界的に注目を集める成果が上がっているからです。
もうひとつ「メタンハイドレート」といわれるエネルギーが日
本を資源立国に変える可能性を秘めています。このことがいわれ
出したのは1990年代の後半からです。
「メタンハイドレート」とは何でしょうか。
メタンハイドレートとは、数百万年以上の時間をかけて、プラ
ンクトンなどの有機物が堆積し、高圧と低温状態において天然ガ
スの主成分であるメタンCH4が生成され、氷の結晶に閉じ込め
られてシャーベット状になっているものをいうのです。
1996年に旧通産省(経済産業省)作成の論文により、日本
周辺の近海の海洋において、国内の天然ガス消費量の100年分
に相当するメタンハイドレートの存在の可能性が指摘されたので
す。これによって日本のエネルギー業界は色めき立ったのです。
通産省の委託を受けた当時の石油公団は、日本近海において試
掘調査を開始し、2000年には御前崎沖合の海底で実際にメタ
ンハイグレードを発見するという成果を上げているのです。
在来型の天然ガスは、1立方メートル当たり10立方メートル
から20立方メートルの含有量があるが、メタンハイドレートは
1立方メートルの貯留岩に50立方メートルのメタンが存在する
ことが立証されており、経済的な回収率はきわめて高いのです。
しかし、実際の果実を手にするには、まだ大きな壁が存在する
のです。というのは、メタンハイドレートは潜水士が作業できな
い深海に存在し、また地層中や海底で氷のような状態で存在する
ため、石油やガスのように穴を掘って簡単に汲み上げることも、
石炭のように掘ることもできない。ゆえに低コストでかつ大量に
採取することは技術的に困難であるからです。したがって、現在
のところ採掘にかかるコストが販売による利益を上回ってしまう
のです。そのため商用としての採掘は成立できず、研究用以外の
目的では採掘されていないのです。
これまで行われた科学的調査によると、メタンハイドレートは
東海沖合いから熊野灘の東部南海トラフにおいて、日本における
天然ガス国内消費の14年分の埋蔵量が確認されています。それ
に加えて、さらに日本近海全体で100年分にも及ぶメタンハイ
ドレードが存在しているといわれているのです。
商用としての採掘が成功していないのは、日本政府が南海トラ
フでのメタンハイドレート採取に固執しているからです。なぜな
ら、南海トラフのメタンハイドレートは、海底の泥の中に埋まっ
ており、探索・採取が困難を極めているからです。
しかし、南海トラフに対して日本海沿岸には、魚群探知機でも
発見できるほど海底面に露出しているのです。したがって、採取
には大幅なコストダウンが可能になります。しかし、政府はこれ
までにかけた500億円を超えるコストが足かせとなって、行政
責任の問題からいまだに日本海沿岸での調査・採取を行っていな
いのです。
いずれにせよ、政府は2016年までに環境対策をクリアした
うえで、メタンハイドレートの商用生産技術を確立させようとし
ているのです。
このほかに日本のエネルギー開発の研究に変わったものがあり
ます。それは、歩行や話し声による空気振動をエネルギーに変換
するという音力・振動力発電です。このような研究をしている国
はないそうです。この技術では、昼間に車が通った時の振動・騒
音エネルギーを貯めておき、それを夜間に電灯で利用しようとい
うのです。エネルギー資源を持たない日本では、こういう技術力
が資源になるのです。 ―― [石油危機を読む/48]
≪画像および関連情報≫
●メタンハイドレートへの期待と不安/BPスペシャル
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「独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOG
MEC)は、次世代エネルギーと期待されるメタンハイドレ
ートを地中から連続して産出する実験に世界で初めて成功し
た」との記事を2008年4月8日の日本経済新聞夕刊が掲
載した。さらに、2008年4月18日の日経産業新聞は、
このJOGMECの実験について触れ、「メタンハイドレー
ト開発では日本が世界のトップランナーであり、日本のメタ
ンハイドレート開発に刺激を受けて、中国や韓国などアジア
の周辺諸国も研究を加速しつつある」と解説した。2008
年4月28日の朝日新聞朝刊は、メタンハイドレート関連の
特許出願動向を報じた。この記事によると、全出願件数に対
する日本のシェアは64%と世界のトップだという。
http://www.nikkeibp.co.jp/news/eco08q2/572423/
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