2001年08月03日

青色LED開発の意義は白色LED(EJ672号)

 西沢潤一氏――現在岩手県立大学長であり、世界的な半導体研
究者で工学博士。高輝度な赤色、緑色発光ダイオードの開発者と
して知られる。75歳。ノーベル賞未受賞。
 中村修二氏――現カルフォルニア大学サンタバーバラ校教授。
1993年に高輝度青色LED、1999年に紫色レーザ−を発
明発見。工学博士。47歳。ノーベル賞未受賞。
 中村修二氏は現在最もノーベル賞に近い男といわれています。
しかし、本当に受賞できるのかというと、いくつか心配なことが
あります。それは、西沢氏や中村氏のやっている研究が物理学と
化学の中間領域のテーマだからです。いわゆる学際分野のテーマ
ということになります。
 ノーベル賞の候補者は、それぞれの分野の学者が推薦するので
す。物理学賞であれば物理学者、化学賞であれば化学者が推薦す
ることになります。こういう場合、学際的テーマは両方の分野か
ら推薦されないことがあり得るのです。推薦者自身が物理のテー
マなのか、化学のテーマなのか分からないケースもあります。
 物理学者は化学のテーマだと思い、化学学者は物理のテーマだ
と思っているということはあり得ます。米国では、半導体の材料
やプロセスの研究は、米国電気化学協会で発表されることが多い
ということです。化学者はもっと勉強していただく必要があると
思います。中村氏の青色発光ダイオードは1993年に発明発見
されているのに8年後の現在、未だに未受賞だからです。
 さて、発光ダイオード(LED)とは何でしょうか。
 まず、ことばから解明しましょう。LEDというのは、次のこ
とばの略です。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
        LED=Light emitting diode
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 発光ダイオードは、光を出す最もシンプルな固体の素子です。
「ダイ」というのは「2つの」という意味、「オード」というの
は「電極」のことで、「2つの電極」という意味です。2つの電
極とは次の2つです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  p型半導体 ・・・ プラスの電荷が電流を運ぶ半導体
  n型半導体 ・・・ マイナス電荷が電流を運ぶ半導体
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 pの方にプラスの電極、nの方にマイナスの電極をつなぐと光
を出すので「発光ダイオード」といわれています。「半導体レー
ザー」というのは別名「レーザーダイオード」といわれており、
構造は発光ダイオードと同じなのですが、性能が違うのです。2
つの端子の間で共振が起こり、そのため指向性の高いビーム状の
光が生まれるのです。
 中村修二博士はなぜ青色LEDの研究に取り組もうとしたので
しょうか。
 赤、橙、黄、緑、青、藍、紫――これは虹の7色です。この7
色のうち、青色、藍色、紫色がLEDではどうしても再現できな
かったのです。中村氏が青色LEDの開発に取り組んだのは19
89年のことですが、その時点では既に赤外、赤色、黄色、黄緑
色をLEDで発光させることが可能になっていました。
 LEDで一番波長の長いものは赤外線LEDです。以下、赤色
黄色、黄緑色の順になります。色が青色や紫外線になると、さら
に波長が短くなります。波長が短くなると光の特性で明るくでき
ないのです。当時、炭化珪素という化学物半導体を利用した青色
LEDは開発されていたのですが、その光はとても実用にならな
い暗い青色だったのです。
 中村氏は「明るい青色/高輝度青色LED」を作らなければ、
LEDの実用化はできないと考えて、高輝度青色LEDに取り組
むことを決意したのです。高輝度青色LEDが開発できれば、あ
らゆる色を発光させることができるからです。
 PCのモニター表示に使われるRGB――光の3原色は、レッ
ド、グリーン、ブルーです。これに対して印刷などで使われるC
MY(シアン、マゼンタ、イエロー)とは異なります。印刷など
の3原色が足し算で黒に近づくのに対して、光の3原色は引き算
であり、RGBの3色を同時に発光させると白色になるのです。
 つまり、高輝度青色LEDができると、白色LEDも開発可能
になるのです。そうすると、LEDを一般照明として使うことが
できることになります。
 これにより、大変な省エネが実現できるのです。それは、電気
が直接光に代わるため電気効率が良くなり、電力消費は現在の半
分以下にすることができます。それに熱に変換する過程で素材を
損なわないため、LEDの寿命は半永久的なのです。LEDは化
合物半導体といういわゆる「石」ですから、耐久性がよく屋外な
どの過酷な環境でも使えるのです。さらに、蛍光灯や電球のよう
にガラスを使う必要がないので、割れて破片をまき散らす危険も
ありません。いいことずくめです。
 5月15日のEJ615号でも述べましたが、青色半導体レー
ザーを使えば、CD、LD、DVDのメディアの容量を飛躍的に
拡大できます。現在は赤色半導体レーザーが使われていますが、
赤色は波長が長いのに対し青色は短いので、多くの情報を書き込
めるのです。
 だからこそ中村氏は高輝度青色LEDを開発しようと考えたの
です。しかし、人と同じことをやっても目的は達成できないので
人と逆のことをやろうと思ったのです。まず、LEDを作る素材
がポイントだと中村氏は考えたのです。
 それまでLEDを作るには、きわめて毒性の高い素材を使って
いたのです。ガリウム砒素、ガリウム燐、アルミニウム燐などで
す。そのため、砒素や燐は産業廃棄物として処理するにはコスト
がかるのです。
 中村氏が使ったのは「窒化ガリウム」です。窒化ガリウムには
毒性はないのです。それに耐久性があって、1万時間程度であっ
た半導体の寿命を約10倍に延ばすこともできるのです。


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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