料を総称していう言葉であり、次のような幅広い概念を有してい
るのです。
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バイオマス・エネルギーとは、エネルギーに変換できる生物の
量、主として植物体、農産廃棄物、畜産廃棄物、さらには産業
廃棄物、都市廃棄物を含む概念である。
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バイオマス・エネルギーがなぜ注目されるのかというと、次の
4つの意義があることです。
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1.再生可能なエネルギーである
2.世界中どこにも存在している
3.その資源量が膨大であること
4.CO2など環境適合性が高い
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しかし、良いことばかりではないのです。エネルギーとしての
利用技術が確立されていないことや、製造コストが高いという問
題点があります。日本でバイオエタノールを製造すると、ガソリ
ン製造コストよりも2倍〜3倍もコストがかかるからです。
しかし、日本の石油業界は、2007年4月27日から、首都
圏一都三県――東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県で、「バイオ
ガソリン」の試験販売をスタートさせているのです。この試験販
売は、経済産業省の補助金を得て実施する流通実証事業(バイオ
マス由来燃料導入実証事業)となっています。
ところで、「バイオガソリン」とは一体何でしょうか。
日本でいう「バイオガソリン」とは、ガソリンに7%の「ET
BE」――バイオエタノールと石油系ガスのガス・イソブテンの
合成物質です。
ちなみに、バイオエタノールとは、サトウキビやトウモロコシ
などのバイオマスを発酵させ、蒸留して生産されるエタノールの
ことです。エタノールという物質は、石油や天然ガスからも合成
することができ、そうして生産されるエタノールを合成エタノー
ルと呼ぶのです。
2007年は、50ヵ所の給油所において、一斉にバイオET
BEを配合したレギュラーガソリン(バイオガソリン)を販売し
2008年春からはその数を順次100ヵ所に増やし、本格導入
に向けた取組みを進めているのです。
しかし、日本の石油会社はバイオガソリンに関してはなかなか
慎重なのです。2007年1月に、新日本石油をはじめとする製
油元売り10社は「バイオマス燃料供給有限事業責任事業組合」
――JBSLを設立し、その事業組合を通してバイオガソリンを
売るという体制なのです。
日本における試験販売では、フランスからETBEを7800
キロリットル輸入し、新日本石油の根岸製油所において、バイオ
ガソリンを製造しています。JBSLの計画では、ETBEの原
料になるバイオエタノールの国内製造に関しては対応する計画は
なく、あくまでも海外からの調達を基本とするとのことです。
ガソリン以外の物質からエネルギーを製造するということは別
に新しいことではないのです。第2次世界大戦において米国から
石油の輸出を止められ、戦車や軍艦、戦闘機のための燃料調達に
困った日本は、松の切り株を乾燥させて作った「松根油」をゼロ
戦の燃料として使ったという話は有名です。
しかし、これはあくまで窮余の一策なのであって、あくまでメ
インにするものではないのです。というのは、バイオガソリンに
は3つの問題点があるからです。
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1.バイオエタノールが製造から消費される過程で、必ずしも
CO2を排出していないとはいい切れないこと
2.バイオエタノールの原料であるサトウキビやトウモロコシ
の資源量は有限で、あくまで人間の食糧である
3.バイオエタノールの製造コストはガソリンの精製よりも割
高であり、その経済合理性には疑問があること
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何よりも本来人間の食糧であるサトウキビやトウモロコシを燃
料にするという考え方は、これから深刻化する人類の食糧問題を
考えると大きな問題であるといえます。
既出の岩間剛一氏は、この問題に関して自著において次のよう
に述べています。
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米国やブラジルでは、バイオエタノールを生産するために、サ
トウキビ畑やトウモロコシ畑の作付面積が拡大している。その
一方で、オレンジ畑が次々とつぶされている。その結果、オレ
ンジの不作とともにオレンジジュースの値段が上がるという思
わぬ余波も発生しており、安易なバイオエタノール依存に警鐘
を鳴らす食糧専門家も多い。
――岩間剛一著/アスキー新書/025
『「ガソリン」本当の値段/石油高騰から始まる「食の危機」』
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ブラジルにおいて、バイオエタノールの利用開始時点では、地
球温暖化防止という視点よりも、農家保護という面が強かったと
いわれます。つまり、農家に新しいビジネスチャンスを与えると
いう面が強かったのです。
バイオエタノールが地球温暖化に寄与するというのは、後から
付けた理屈であるといえます。なぜなら、バイオエタノールを製
造するプロセスでも石油や天然ガスによるエネルギーが大量に消
費され、CO2を排出するからです。したがって、バイオエタノ
−ルが環境にやさしいということは、一概には言い切れないので
す。 ―― [石油危機を読む/46]
≪画像および関連情報≫
●ETBEとは何か
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ETBE――エチルターシャリーブチルエーテルとは、エタ
ノールとイソブテンから合成される化学物質である。自動車
燃料に混合してに混合して使用されている。ETBE混合ガ
ソリンは、水分が混入しても、ETBEが水と混和して分離
することがなく、水分を除去することも可能であり、ガソリ
ンの性状は変化しない。このため、金属の腐食やゴムの劣化
などが生じず、自動車の安全性や走行性能に問題を生じるこ
とはない。 ――ウィキペディア
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