2001年08月02日

光通信分野でノーベル賞がとれない理由(EJ671号)

 中村修二教授といえば、現在最もノーベル賞に近い学者といわ
れています。しかし、このノーベル賞ですが、必ずしも公平なも
のではなく極めて政治的な一面があるのです。
 白川英樹教授が2000年のノーベル化学賞を受賞しましたが
白川教授の導電性プラスチックの研究は、20年も前にすでに有
名で、当時「ノーベル賞候補」として新聞や雑誌に何度も取り上
げられたことがあるのです。
 しかし、一向にお呼びがかからず、世界も本人も忘れてしまっ
た頃になっての突然の受賞です。しかも、白川教授の受賞は3人
の共同受賞であり、他の2人の米国人学者を受賞させるべく米国
政府が強く働きかけた結果といわれています。
 白川教授らが受賞した「導電性プラスチック」とはどういうも
のかというと、静電気を帯びないフィルムや電磁波を防ぐスクリ
ーンなのです。携帯電話や小型テレビのディスプレイなどの電子
機器に普及したことが評価されての受賞とのことですが、非常に
実用的な製品につながる基礎技術の受賞は珍しいのです。
 ノーベル賞は今年で創設100年になるのですが、日本人受賞
者の数は9人で非常に少ないのです。それは、日本がノーベル賞
の受賞理由をきちんと調べて異議があれば申し立てるということ
をやらないことにも一因があるとされています。なぜなら、ノー
ベル賞を受賞してもおかしくない日本人の優れた発明発見が数多
くあるからです。
 白川英樹教授はノーベル化学賞ですが、そのとき同時に3人の
学者がノーベル物理学賞を受賞しているのです。これらの学者の
受賞理由に着目してみる必要があります。3人の受賞者の名前と
その受賞理由は次の通りです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 1.ロシア/ヨッフェ物理工学研究所アルフェロフ博士
   高速エレクトロニクスや光エレクロトニクスで使われる
   半導体ヘテロ構造の開発
 2.米カルフォルニア大学サンタバーバラ校/クレーマー博士
   1と同じ
 3.米テキサスインスツルメンツ社/キルビー博士
   集積回路の考案
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ここで注目すべきは1と2のテーマなのです。実はこの分野に
は日本人科学者が大変な貢献をしているからです。
 受賞理由である「光エレクトロニクスのヘテロ構造」について
簡単に説明しておきましょう。
 「光エレクトロニクス」というのは何でしょうか。
 これからのブロードバンド時代の通信の主要な部分を担うのが
「光ファイバー」です。そこに信号を伝えるのが半導体レーザー
です。半導体レーザーの光は、何の補強装置もなしで透明な光フ
ァイバーの中を約1万キロも伝わっていくのです。これは、日本
から米国までの距離に匹敵します。このような光が主役となって
いる電子技術を「光エレクトロニクス」というのです。
 続いて「ヘテロ構造」とは何でしょうか。
 光を出すのは半導体レーザーですが、これは「ダブルヘテロ構
造」という仕組みで作られているのです。詳しくは添付ファイル
を見ていただきたいのですが、これはちょうどサンドイッチみた
いな格好をしているのです。
 真ん中の部分に光を出す部分があって、その両側に光を閉じ込
める性質の「クラッド層」という部分があります。クラッド層に
は「p型」と「n型」の2つがあります。サンドイッチに喩えて
光を出す部分がハムで、クラッド層を仮に卵としましょう。
 ところが、この“ハムと卵”の両側にまたクラッド層があるの
です。つまり、これはパンに該当します。真ん中のハムの両側に
卵を挟み、それをパンで挟んだサンドイッチといったらよいでし
ょうか。ハムと卵とパン――それぞれ別のものですが、それらが
うまくつながっているというのが「ヘテロ構造」なのです。
 「ヘテロ」というのは「異種の」という意味であり、「ヘテロ
結合」と呼ばれています。このヘテロ接合が二重になっています
から「ダブルヘテロ結合」というのです。このヘテロ接合を最初
にレーザーで実現したのがアルフェロフ博士、それを考えたのが
クレーマー博士だったのです。
 なぜ、この説明をしたのかというと、この光通信の分野では日
本人科学者が大変な貢献をしているにもかかわらず、この分野で
ノーベル賞をもらっている日本人はひとりもいないからです。こ
れは次の理由でおかしなことです。
 そもそも半導体レーザーの提案は、西沢潤一博士です。西沢博
士の特許が世界で一番早いのです。
 さらに、クレーマー博士のヘテロ接合の着想を最初に実現した
のは、洲崎渉博士の「ヘテロ発光ダイオード」なのです。アルフ
ェロフ博士は、室温状態で半導体レーザーをはじめて発振させま
したが、数ヶ月遅れで当時ベル研究所にいてのちにNECに移籍
した林巌博士も成功させています。それまでは、素子を冷却して
発振していたのです。
 この他に、自動車のブレーキランプに水平に一列に並んでいる
のがありますが、これは明るい発光ダイオード(LED)なので
す。この発光ダイオードの三原色のすべてが日本人科学者の発明
によるものなのです。
 赤と緑は西沢潤一博士、そして青が中村修二博士なのです。そ
れなのになぜノーベル賞がゼロなのでしょうか。
 ノーベル賞を出した方の論理はこうです。こんなに明るいLE
Dができたのは「ヘテロ接合」の考え方があったからであり、そ
れを考えたアルフェロフ、クレーマー博士の貢献を多としたとい
うことです。
 しかし、「ヘテロ接合」だけで明るいLEDができたわけでは
ないのです。それ以外にいろいろな発明が組み合わさってはじめ
て明るい発光ダイオードが生まれたのです。

671号.jpg
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(6) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
2009年の中国系米国人チャールズカオの受賞はまさに盗作である。日本の特許庁にはカオより先に西澤博士による出願がなされている。
それとほぼ同じ内容で受賞しているのである。これはコーニング社がアメリカ政府をバックにしてとらせたという背景があるようだ。
盗人猛々しくもコーニングはその後日本企業を相手に訴訟を起こすのである。
Posted by e2 at 2013年09月26日 19:11
西沢潤一さんはなぜノーベル賞受賞にならないのでしょうか!????????
NHKアーカイブス 西沢潤一さん平成25年 9月22日■NHK特集「光通信に賭けた男 〜独創の科学者・西澤潤一〜」 1985年3月にすでに放送されたということを知って衝撃を感じました。 当時にこの番組を見ていたはずです。しかしいま見ても、今だから衝撃です=ムラ社会。 電子−光の半導体の開発について西沢さんがNTT研究所や多くのメーカーをたずねて協力をお願いしたということ。ベル研にも匹敵していたNTT研究所ですら共同開発もしようとしなかった、、、 喜安善市さんの発言のように西沢さんを葬り去ろうとする日本の学会等のムラ社会の存在。自分の特許について当然のことを主張しようとするとそれを非難して封じ込めようとする学会や社会---よくぞここまで踏み込んだ取材をNHKはされたのだなという感慨。
Posted by とだ-K at 2013年10月14日 20:57
さきのe2さんのことも 下記番組に出ています。
NHKアーカイブス 西沢潤一さん平成25年 9月22日■NHK特集「光通信に賭けた男 〜独創の科学者・西澤潤一(1985/3放送を紹介)
Posted by とだ-K at 2013年10月14日 21:02
洲崎渉博士の「ヘテロ発光ダイオード」とありますが、須崎渉博士の間違いです。須崎渉博士と林巌博士、クレーマー博士はお互いの仕事をとても評価し、互いに尊敬しあっていました。
Posted by 梶川 靖友 at 2014年10月10日 21:24
林巌博士とコピペしてしまいましたが、これも林巌雄(いずお)博士の間違いです。
Posted by 梶川 靖友 at 2014年10月10日 21:31
>この発光ダイオードの三原色のすべてが日本人科学者の発明
によるものなのです。
>赤と緑は西沢潤一博士、そして青が中村修二博士なのです。

これは事実誤認でしょう。

LED発明はGE研究者 西沢潤一・東北大名誉教授、赤・緑の実用化貢献 :日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGKDASGG08005_Y4A001C1MM0000/

青に関しても、窒化ガリウムで青を発光させる基礎研究の発明者は赤崎勇教授であり、中村氏はその量産化に貢献したに過ぎません。


>e2さん

光ファイバー分野でのノーベル賞に日本人受賞者がいなかったは確かにおかしいですね。
Posted by ぽん at 2014年10月11日 11:38
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