2008年05月26日

●原油高騰は投機筋と産油国の結託か

 原油価格の上昇に歯止めがかからなくなっています。2008
年5月22日には次のニュースが伝えられています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 【ニューヨーク21日共同】21日のニューヨーク・マーカン
 タイル取引所の原油先物相場は、需給関係悪化への警戒感から
 急伸し、指標となる米国産標準油種(WTI)7月渡しが通常
 取引終了後の時間外取引で一時1バレル=134・10ドルを
 つけ、前日の最高値(129・60ドル)を大幅に更新した。
 134ドル台となったのは初めてのことである。終値は前日比
 4・19ドル高の1バレル=133・17ドル。終値の最高値
 更新は4営業日連続。需要が膨らむ米国の行楽シーズン入りな
 どで供給不足への懸念が強く、上昇に歯止めがかからない展開
 になっている。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ところが、こういう状況にもかかわらず、産油国は増産を見送
る方針です。原油価格高騰の原因を産油国としては供給側の要因
ではなく、投機とみているからです。
 しかし、専門家の見方によると、今回の原油価格高騰を資源の
国家管理による原油増産の停滞と製油所の能力不足という供給側
の要因にあるとみているのです。中国の大地震の影響で石油製品
需要が増えるという見通しもあり、需給逼迫が長期化するのでは
ないかという懸念が原油価格の高騰を招いていると分析している
のです。そして、この原油の先高感がマネーの流入に拍車をかけ
ている――このようにみているのです。
 国際原油価格はWTIの原油先物価格によって決まりますが、
WTIの原油先物はニューヨークの商品取引所――NYMEXに
上場しています。ここでの先物取引は、米政府の商品先物取引委
員会によって監視されており、投機的な行為は取り締りの対象と
なっているのです。
 ところが、同じ先物商品はロンドンにあるICEという企業が
運営するネット上の先物取引市場でも取引されているのです。し
かし、ICEは外国の民間企業による相対取引の市場であって、
米政府の商品先物取引委員会の監視の枠外なのです。
 このことを利用して、ヘッジファンドや投資銀行などの投機筋
は原油価格をつりあげる目的で、NYMEXだけでなく、米政府
の監視の枠外のICEを通じて先物を売買しているという説があ
るのです。ちなみに「相対取引」とは株式用語で、公開株式の売
買に関して、市場を介さずに売買当事者間で売買方法、取引価格
取引量を決定して売買する取引のことです。
 この問題に関して米上院では報告書を出して、次の指摘を行っ
ているのですが、ブッシュ政権はこの報告書を無視し、何の対策
も取っていないのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 投機資金は、2000年から原油先物相場をつり上げている。
 WTIの先物取引の30%はロンドンICEで取り引きされて
 いる。 ――田中宇の国際ニュース解説/2008.5.14
―――――――――――――――――――――――――――――
 ウィリアム・エングダールという石油・地政学専門家は「現在
の国際原油価格のうち最大で60%が、投機筋によるつりあげ効
果の産物である」といっています。もし、このエングダールの分
析が正しいとすると、投機分を除外すれば原油価格は1バレル=
50ドル程度まで下がる計算になるのです。
 こういう情勢を受けて、米連邦上院議会では、原油市場におけ
る投機資金の規制を強化する「石油取引透明化法」を2人の民主
党議員が提案していますが、商品先物取引委員会は「原油高騰の
原因は投機ではない」として規制強化に反対しています。
 どうやらブッシュ政権は、意図的に原油価格を高騰させようと
しているフシがあります。そのウラには、モルガン、ロックフェ
ラー、ゴールドマンサックスというニューヨークの大資本家たち
がいるのです。米国の連邦準備制度(FRB)の設立のシナリオ
を描いたのも彼らなのです。
 彼らは、ウラ側で米政権を操る糸を握っており、今回の原油高
騰は彼らとブッシュ政権の共同作業ではないか――こういう見方
もあるのです。国際ジャーナリストの田中宇氏は次のように述べ
ています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ブッシュ政権がICEという原油投機の「抜け穴」を開け、ニ
 ューヨークの大資本家たちが石油価格をつり上げるという作業
 の結果、ロシアやサウジアラビア、イラン、ベネズエラなどの
 産油国の国庫が潤い、これらの国々はアメリカの覇権に対抗で
 きうるネットワーク(非米同盟)を強化している。
     ――田中宇の国際ニュース解説/2008.5.14
―――――――――――――――――――――――――――――
 田中宇氏のいう「非米同盟」――実は新セブンシスターズとい
われているのです。かつてのエクソン、シェル、BPなどのかつ
てのセブンシスターズが持つ油田の総埋蔵量は、世界の全埋蔵量
の10%を既に切っているのです。残りは、次の諸国の石油会社
が持っているのです。これら7社を「新セブンシスターズ」と呼
んでいます。
―――――――――――――――――――――――――――――
    1.ロシア        5.マレーシア
    2.イラン        6.ブラジル
    3.サウジアラビア    7.ベネズエラ
    4.中国
―――――――――――――――――――――――――――――
 これら米国に好意を持っていない新セブンシスターズと市場関
係者の思惑が一致すれば、需給バランスを崩すことなく、価格の
高騰を演出できるのです。つまり、現在起こっている原油の高騰
は、投機筋と新セブンシスターズが演出している――そういう見
方もあるのです。       ―― [石油危機を読む/43]


≪画像および関連情報≫
 ●新セブンシスターズ/田中宇氏のコラム
  ―――――――――――――――――――――――――――
  フィナンシャル・タイムスの「新しいセブンシスターズ」と
  いう記事は私から見ると、まるで「アメリカの中枢に陣取る
  多極主義の勢力が書かせた記事広告」である。「セブンシス
  ターズ」は7社で世界の石油利権を支配しているといわれる
  米英の石油会社でエクソン、シェブロン、モービル、ガルフ
  石油、テキサコというアメリカの5社とブリティッシュ・ペ
  トロ−リアムス(BP)ロイヤル・ダッチ・シェルというイ
  ギリス系の2社を指していた。1980−90年代の国際石
  油業界の再編によって、エクソンとモービルが合併し、テキ
  サコがシェブロンに吸収され、ガルフ石油は分割されてBP
  とシェブロンに吸収されたことで、セブン・シスターズは4
  社に減った。この4社が世界の「石油利権」を握り「石油は
  アングロ・サクソン(米英)が支配する」というのが、これ
  までの常識である。 http://tanakanews.com/070320oil.htm
  ―――――――――――――――――――――――――――

ガソリン高騰.jpg

posted by 平野 浩 at 04:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 石油危機を読む | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。