2008年05月23日

●ガソリン価格の内部構造(2331号)

 道路特定財源の議論が国会で続いているとき、自民・公明両党
の議員の何人かは、次のようにいっていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本のガソリン税は、暫定税率分を含めても国際社会の中では
 かなり低い方である。   ――自民・公明両党議員の言い分
―――――――――――――――――――――――――――――
 このこと自体は間違っていないのです。最もガソリン価格の高
い国を4つ上げると次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
        ガソリン価格       税  金
   英  国   233円       150円
   ド イ ツ   229円       143円
   フランス   216円       134円
   韓  国   193円       111円
―――――――――――――――――――――――――――――
 ガソリン価格については、それぞれの国によって事情は違って
きます。例えば、1リッター当たり150円を取っている英国で
は、高速道路は無料であるためそういう高い税になっているので
す。与党議員は日本でも150円も税を取れば高速道路を無料に
できるといっています。
 このほか、環境税という性格の税をガソリン税に含めている国
もあります。車を走らせればCO2を排出し、環境を害するので
ガソリン税に環境税を含めるのは合理的であるといえます。
 しかし、与党議員のウェブサイトには、日本よりもガソリン価
格が高い国のケースしか出ていませんが、日本よりガソリン価格
の安い国もたくさんあるのです。主要国だけを上げても、米国、
カナダ、メキシコ、ニュージーランドなどがそうです。
 ところで、あれほど国会でガソリン税について議論が行われな
がら、日本のガソリン価格の内訳について正確な提示がなかった
と思います。そこで、EJではガソリン価格の構造を示しておき
たいと思います。
 現在は、レギュラーガソリンが1リットル当たり160円を超
えていますが、ここでは、便宜上1リットル=129円として、
その内訳について詳しく考えてみることにします。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.原材料費/原油費 ・・・・・・・・・・ 25.80円
 2.ガソリン精製費 ・・・・・・・・・・・ 25.80円
 3.輸送費/ガソリンスタンドのマージン ・ 15.50円
 4.ガソリン税 ・・・・・・・・・・・・・ 53.80円
    ・揮発油税  ・・・ 48.6円
    ・地方道路税 ・・・  5.2円
 5.消費税(1+2+3+4)×0.05 ・・  6.05円
 6.石油石炭税 ・・・・・・・・・・・・・  2.04円
   ――――――――――――――――――――――――――
                         129円
           ――岩間剛一著/アスキー新書/025
『「ガソリン」本当の値段/石油高騰から始まる「食の危機」』
―――――――――――――――――――――――――――――
 これでわかるように、本当のガソリンの価格は約67円≪1〜
3の合計≫であり、あとの約62円はすべて税金なのです。それ
におかしいのは、1〜4までの金額(ガソリン価格+ガソリン税)
に対して、5%の消費税をとっていることです。つまり、税金に
さらに税金をかけているわけです。これはタックス・オン・タッ
クスといって二重課税であり、石油業界は猛反発しているのです
が、そのままになっています。
 野党議員の追及のなかに、このタックス・オン・タックスを問
題にした議員はいなかったはずです。これだけでも6円違ってく
るのです。なぜ、問題にしないのでしょうか。
 揮発油税は1949年に創設されたのですが、1954年には
道路特定財源に定められています。そして1955年には地方道
路税が創設されています。当初揮発油税と地方道路税は次の通り
だったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ガソリン1リットル当たり
          揮発油税 ・・・ 24.3円
         地方道路税 ・・・  4.4円
         ―――――――――――――――
                   28.7円
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、1973年に第一次石油危機が起こったのです。第4
次中東戦争のあおりを受けて石油価格が急騰し、狂乱物価など激
しいインフレーションを生んだ石油危機に対して、日本は国家を
あげて「省エネ化」をめざしたのです。深夜放送が自粛され、ネ
オンサインが消えるなど、その努力は相当真剣だったのです。
 そして、省エネのため石油資源を節約し、石油の消費を抑制す
ることを狙いとして、揮発油税などの税率を上乗せする暫定税率
が課せられることになったのです。暫定税率はガソリン税だけで
なく、同じ年に自動車取得税、自動車重量税に、1976年には
軽油取引税にも創設され、これらはすべて現在に至るまで続いて
いるのです。ガソリン税(揮発油税と地方道路税)についてだけ暫
定税率を示すと次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
            ガソリン1リットル当たり/暫定税率
  揮発油税  24.3円 + 24.3円 = 48.6円
 地方道路税   4.4円 +  0.8円 =  5.2円
 ――――――――――――――――――――――――――――
        28.7円 + 25.1円 = 53.8円
―――――――――――――――――――――――――――――
 道路特定財源が廃止され、一般財源化されることは一歩前進で
あることは確かです。     ―― [石油危機を読む/42]


≪画像および関連情報≫
 ●タックス・オン・タックスについて
  ―――――――――――――――――――――――――――
  少し前、(社)日本自動車工業会、(社)石油連盟、自動車総連
  などが「ガソリン税は二重課税」とか「消費税と自動車取得
  税との二重課税」という内容で広告をしたり、税制建議をし
  たりしていました。国会でも揮発油税と消費税はタックス・
  オン・タックスになっており改めるべき、などという議論も
  なされました。二重課税はあってはいけない。これらの主張
  の中では「二重課税」が併課と重複課税との両方の意味に使
  われています。税金に対して税金を重複して直接課すること
  を「二重課税」といいます。関税等を除き原則的にありえな
  いことになっています。
   http://ikenokoi.at.webry.info/200610/article_16.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

タックス・オン・タックス.jpg
posted by 平野 浩 at 04:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 石油危機を読む | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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