ることをご存知でしょうか。
ロシアにおける旧「準博士」は、社会主義国では博士として扱
われるそうです。少年時代のプーチンの家庭環境はあまり裕福で
はなく、共同アパートで過ごしたと自伝で述べています。
子供の頃からKGBに憧れており、そのために国立レニングラ
ード大学(現国立サンクトペテルブルグ大学)法学部に入り、大
学卒業後にKGBに就職したのです。
プーチンはKGBの一員として1985年から1990年まで
東ドイツのドレスデンに派遣され、在ドレスデンソ連領事館のナ
ンバー2として勤務していたのです。しかし、1989年にベル
リンの壁が崩壊し、東ドイツの体制が変わったので、故郷のサン
クトペテルブルグに戻ってきたのです。そしてサンクトペテルブ
ルグ市役所で働き始めたのです。
といっても、これからプーチン首相の出世物語を述べるわけで
はないのです。彼がサンクトペテルブルグ鉱山大学に提出した博
士論文について述べたいからです。その論文のタイトルは、次の
通りです。論文提出は1997年6月のことです。
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市場関係形成の条件下における地域の鉱物・原料資源的基礎
の再生産の戦略的計画/218ページ ――1997年6月
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この論文の骨子は、修正・書き換えが行われて、1999年に
「ロシア経済の発展戦略における鉱物資源」というタイトルで出
版されています。
問題はこの論文の内容です。木村汎教授によるとこの論文では
次の3つのことが強調されているといいます。
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1.ロシアは巨大な天然・原料資源に恵まれた国である。なか
でもその鉱物資源は豊富で世界一である
2.ロシアがこのエネルギー資源の力を国家のために利用する
ためには同資源を国家管理下におくこと
3.天然資源を国家管理下おくことはロシアの地政学的利益の
促進やロシアの内外政策の遂行に役立つ
木村汎著、『プーチンのエネルギー戦略』より/北星堂刊
―――――――――――――――――――――――――――――
この論文の内容を見てすぐわかることは、その内容がプーチン
前大統領が実際にやったこと、そのものであるということです。
つまり、この論文の骨子は、プーチン前大統領のエネルギー戦略
の基本線をあらわしているのです。
また、木村汎教授は、このプーチン論文は「盗作」ではないか
として次のように述べています。
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「盗作」との結論を下したのは、クリフォード・ガディとイー
ゴリ・ダンチェンコの2人。ともにブルッキング研究所(ワシ
ントンDC)に席をおくロシア研究者である。(一部略) ガ
ディとダンチェンコの2人は、2006年3月25日付の「ワ
シントン・タイムズ」紙上で、プーチン準博士論文の重要部分
が2人の米国人経済学者の著書を盗用したものであると発表し
た。2人の米国人学者とはウィリアム・R・キングとデービッ
ト・I・クリーランド。ともにピッツバーグ大学教授(当時)
である。彼らの著作『戦略的計画と政策』(現在、絶版中)は
ロシア語に翻訳され、ソ連邦でプログレス出版所から1982
年に刊行された。
木村汎著、『プーチンのエネルギー戦略』より/北星堂刊
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問題はなぜプーチン前大統領は、大統領になる前にこのような
論文をまとめる必要があったのでしょうか。これによって博士号
を取得して、自らの政策が正しくて権威のあるものであることを
強調したかったのでしょうか。
ところで、このプーチン論文は代作ではないかといわれている
のです。というのは、この論文が提出された1997年6月時点
においてプーチンは大統領府監督局長、論文が本として出版され
た1999年には連邦保安庁長官と安全保障会議書記を兼任する
という最も忙しいときなのです。とても論文なんか書いていられ
るときではないからです。1999年12月にはプーチンは大統
領代行になっているのです。
論文を書いたのがプーチンではないとしたら、一体誰が論文を
書いたのでしょうか。
木村教授によると、代作説を唱えているのは、ジョージタウン
准教授のハーレイ・バルザー氏であるというのです。バルザー氏
によると、論文はプーチン自身が書いたものではなく、プーチン
の考え方を受けて、「クドリン・チーム」が代筆したものである
としています。
このクドリン――アレクセイ・クドリンはプーチン前大統領に
近い人物で、サンクトペテルブルグ市役所でプーチンと一緒に仕
事をし、プーチン政権では財務相を務めている人物です。
木村教授によると、プーチン政権を支える派閥には2つがある
そうです。ひとつは旧KGB、軍部、検察庁、内務省などのいわ
ゆる「権力省庁」に勤務する「シラヴィキー」と、アレクセイ・
クドリンによって代表されるリベラル・エコノミストたちのグル
ープです。いずれもサンクトペテルブルグ出身者です。
前者は「武闘派」といわれ「武力」を重視し、後者は「経済」
を重視するのです。しかし、ロシアのエネルギー資源を最大限に
国益に生かすという点では両派とも一致しているのです。
プーチン前大統領の公式な伝記といわれる『一人称で語る』と
いうものがあるのですが、その中では彼の「経済科学準博士」の
学位については一切ふれられていないというのです。盗作である
という説がウワサになったので、ふれなかったのでしょうか。名
誉なことではないからです。 ―― [石油危機を読む/38]
≪画像および関連情報≫
●プーチン露大統領、博士論文ねつ造発覚
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自分が優位に立つためにはどんなことでもすると言われる男
ロシアのウラディミール・プーチン大統領の博士論文が盗作
・剽窃だったことが発覚し、プーチンは赤っ恥をかいた自分
の顔色を隠すためにウォッカを鯨飲しているという報道が入
った。問題となったのは、プーチンが90年代半ばに博士号
を取った論文で、その大半が米国の論文の引き写しであると
米国の研究者らが発表した。この告発を行ったのはワシント
ンにあるシンクタンク、ブルッキングス研究所の2人の研究
者で、78年にピッツバーグ大の研究者2人が書いた論文を
ロシア語に逐語訳したものを元にしているという。
http://0000000000.net/p-navi/info/news/200604012136.htm
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