2001年08月01日

大学入試を廃止せよ/教育の構造改革(EJ670号)

 最近、中村修二氏の本を夢中で読んでいます。中村修二氏は、
青色発光ダイオードの発明発見で世界中にその名を知られるカル
フォルニア大学サンタバーバラ校の教授です。
 毎週日曜日朝のフジテレビの番組に『報道2001』というの
があります。7月29日のこの番組に中村教授が米国からテレビ
出演したのです。テーマは「奇跡を起こした男がアメリカから一
発逆転の秘策提言」となっていました。ご覧になった方もあると
思います。
 中村教授は、日本再生の条件で一番ネックになるのは「大学受
験」であり、これを廃止すべきであるといっています。日本の大
学受験は「超難関ウルトラクイズ」そのものであり、完全丸暗記
の詰め込み勉強が不可欠です。そんなもの将来に何の役にも立た
ない代物だというのです。
 このウルトラクイズに合格するために、最も夢が多く、頭が柔
軟な中学校から高校までの貴重な期間を無駄に過ごしてしまって
いるというのです。このままでは世界に負けてしまうと・・・。
 そして、目指す大学に合格するとそれで目標を果たしたという
気持ちになって、大学時代はバイトをやったり、適当に遊んで卒
業し、安定を求めるために今度はひたすら大企業に入ろうとしま
す。つまり、「大学受験」を中心とする日本の教育システムは、
大量のサラリーマンを創り出しているに過ぎない――と中村教授
は強調するのです。
 それでは、中村教授のいうように、大学入試を全廃すると何が
起こるのでしょうか。
 大学入試をなくせば、当然行きたい大学に誰でも入学すること
ができます。仮に無制限、無条件で入学できるとします。最初の
何年かは有名大学の有名学部ばかりに学生が殺到するはずです。
教室に入れず、外にあぶれてしまう学生も出るはずです。
 校舎の中で座って講義を受けたければ、朝早く行って並ぶなり
して、努力しないといけないのです。それが嫌ならやめればいい
のです。もっと空いている大学に行く学生もいるでしょう。この
ようにして何年か経つと、おそらく入学人数の極端な偏りはなく
なっていくはずです。
 誰でも自由に大学に入ることができる代わり、進級試験、卒業
試験は非常に難しくするのです。したがって、合格し、卒業する
には、相当真剣に勉強しなければならないことになります。なお
卒業試験は毎年行われ、希望すれば学年に関係なく誰でも受けら
れますが、落第すると即退学させられます。その代わり一年生で
も合格すれば卒業することができます。当然、試験問題はそれに
ふさわしい内容である必要があります。
 このような大学ができると、現在のように「入ること」を目的
にしている学習システムは壊れます。大学入試を目的とする学習
塾や予備校のようなものはなくなるでしょう。例えば、東大に行
くのが目的ではなくて、東大で「何を勉強するか、いかに卒業す
るか」が目的となります。
 それに大学入試がなくなると、いい大学に入るために、いい高
校へ、いい中学へ、いい小学校に、しまいに有名幼稚園入試のた
めに塾に入れるというようなイタチごっこも消滅します。
 このように大学入試がなくなると、学校の授業内容が充実する
はずです。大学も魅力的な講座を開いたり、学問の内容や実績を
高めていく努力をしなければ、どんどん学生から見放されてしま
います。
 中村教授によると、米国の大学では教授と学生は対等であり、
上下関係はないそうです。学生は学部を選べるので、自分が関心
のあるテーマを解決してくれる教授の話を聞きにくるのです。で
すから、それは真剣に受講します。授業中に寝たり、私語をする
学生なんかいないといいます。
 そして、教授の話が分かりにくかったり、説明が不十分の場合
は、たちまち学生の非難の対象になります。それに、もし、正当
な理由がないのに休講にしたりすると、日本の学生なら喜びます
が、米国では訴訟の対象にすらなってしまいます。だから、教授
は大変であり、それは大変な準備をして授業に臨むそうです。
 現在、中村教授は週に2回の授業ですが、この準備はかなりき
ついそうです。しかし、中村教授の講座は大変評判がよく、大勢
の学生が話を聞きにくるそうです。もっともカルフォルニア大学
の場合、平均点で上位12.5%以内に入っている学生でないと
入学資格が与えられないとのことですが・・・。
 さて、先ほど日本の学生は安定を求めて大企業に入ろうとする
と述べましたが、その大企業は、大きく様変わりしています。あ
の松下電器産業ですらも終身雇用制度を廃止したように、「企業
家族主義」は崩壊しつつあります。
 例をあげましょう。1998年に米国のシテイグループと資本
提携をした日興証券は、見る間にドライな会社に変貌してしまい
ました。年功序列賃金を廃止し、総合職の職員の年俸は一律36
0万円と決められ、その代わり年収の0〜4倍の範囲で会社への
貢献度に応じてボーナスがつくシステムです。この計算によると
会社への貢献度が低いと最低年棒は360万円、貢献度が高いと
き年棒は1800万円になるという計算になります。
 最近日興証券は、土曜と日曜を利用する経費自己負担の研修会
をはじめましたが、満員の盛況であるといいます。研修所までの
交通費もすべて自弁です。自分に必要なスキルは自己負担で身に
つけよということです。大企業は変わりつつあるのです。
 しかし、日本では中村教授の主張する「入学は易しく、卒業は
難しい」という大学制度は実現しそうもありません。教育改革と
いうことがよくいわれますが、その改革で考えられていることは
学校のクラスの人数を半分にし、週休2日制にし、さらには教科
書の内容を簡単にする――こんなことでは日本がダメになってし
まいます。日本をよくするためには、小泉政権が掲げる政治や経
済の構造改革だけでなく、教育も構造改革が必要なのです。これ
が基本だと思います。

670号.jpg
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
というか、大学もとい高校もひつようないのではないのか。私が考えるのは医療にしろ弁護士にしろ
企業に入ってから企業が一から教えれば 新入生の負担が減る。
Posted by たかゆき at 2015年08月06日 15:04
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