2001年05月02日

日本は80年代のソ連と同じである(EJ608号)

 4月26日のニュースステーション(テレビ朝日)を、ご覧に
なったでしょうか。
 当日はゲストとして、デイビット・アッシャー氏が登場したの
です。アッシャー氏は、アメリカン・エンタープライズ公共政策
研究所(AEI)/アジア研究プログラム担当部長という長い肩
書きを持っています。
 その日アッシャー氏は、久米キャスターの質問に答えるかたち
で、巧みな日本語を駆使して次のようにいったのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 『日本の経済の状態は、80年代のロシア、つまり、ソ連に似
ています。小泉首相はゴルバチョフなんですよ』。
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 私はこのことばを聞いて何か背筋が寒くなったのです。日本は
ソ連と同じ運命をたどるのではないかと思ったからです。アッシ
ャー氏は、ゴルバチョフのペレストロイカを「非常に薄っぺらな
政策」をこきおろしており、小泉政権がよほどの覚悟で構造改革
に取り組まないとソ連と同じ運命をたどるといっているのです。
 そもそもこのデイビット・アッシャーなる人物は、何者なので
しょうか。
 アッシャー氏が現在属するAEIは日本ではあまり知られてい
ない組織ですが、元会長がチェイニー副大統領、グレン・ハバー
ドCEA委員長(大統領経済諮問委員会)、オニール財務長官、
リンゼー経済担当大統領補佐官など、ブッシュ政権を支える経済
閣僚の大半がAEIの出身なのです。したがって、アッシャー氏
の意見はブッシュ政権の意見といっても過言ではないのです。
 デイビット・アッシャー氏は、ちょうど3年前に『悲劇は起こ
りつつあるかもしれない』(ダイヤモンド社刊)という著書の中
で、日本には「5つのD」が問題であると指摘しています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 第1のD ・・・ Debit     ・・・ 負債
 第2のD ・・・ Default    ・・・ 債務不履行
 第3のD ・・・ Deflation   ・・・ デフレ
 第4のD ・・・ Demography   ・・・ 少子化・高齢化
 第5のD ・・・ Deregulation ・・・ 規制緩和
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 アッシャー氏は、本の中でこれら5つのDに同時に対処する必
要があると述べているのですが、日本の経済戦略会議もこれと同
趣旨の提言を政府に対して行っています。
 しかし、日本政府はこの3年間ほとんど何もやらず、問題を先
送りしてしまっているのです。そのため日本はこの3年間で世界
でも例を見ないほど大きな負債を抱えてしまったのです。その間
に日本政府がやったことは、名目GDPだけを増大させる景気刺
激策を打ち続けただけといえます。
 80年代のソ連となぜ似ているかについてアッシャー氏は、構
造改革が急務であるのにそれを先送りしているうちに、経済その
ものが非常に成熟度を増してきてしまったといっていますが、こ
れは現在の日本経済の状況とそっくりだというのです。
 それに加えて、ソ連の指導者たちは基本的な問題を先送りし、
ペレストロイカやグラスノスチを進めようとしたのですが、これ
は非常に薄っぺらな弱い政策だったのです。もし、根本的な改革
をすると、指導者たちは自らの地位に居座ることができなくなっ
てしまうので、あえて先送りを図ったのです。こういうソ連の状
況は、この10年間の日本とコワイぐらい似ているとアッシャー
氏はいっているのです。
 アッシャー氏は、日本人はよく「仕方がない」といいますが、
簡単にあきらめないで欲しいと警告しています。「仕方がある」
政策をなぜとらないのでしょうか。
 日本は、自動車業界や半導体業界などでの生産性は非常に素晴
らしいのに、国家政策という意味での日本の生産性は、近代の歴
史の中でも最も低いのです。国の富をこんなに無駄使いする国も
珍しい――とまでいっているのです。
 アッシャー氏は、日本はアグレッシブな国家政策を行うべきで
あるといいます。米国は、経済危機のとき、通信においては国民
の利益を考えて、AT&Tを解体したり、航空業界でも大幅な規
制緩和を進めるなど打てる手をすべて打っています。危機がくる
のを待っていないで、アグレッシブにやらないと駄目なのです。
国の富を取り崩して危機に当たる――それ以外に選択肢はないと
アッシャー氏は警告します。
 アッシャー氏は、現在の日本の経済の状態について、次のよう
な非常に不気味な表現をしています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 『今の日本の状態は、いってみれば“幸福な衰退”で、たとえ
 ば、温泉につかって日本酒をちびちび飲みながら、自分で手首
 を切るようなものです。どんどん血が流れて、お湯の中に美し
 い赤い模様を描くのを「ああ、いいな。きれいだな」と思って
 楽しんである。崩壊が起こるのを待っているような気がするの
 です』。(週刊「ダイヤモンド」4.28/5.5合併号)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 また、アッシャー氏は、「日本の経済状態はダリの絵のようで
ある」といっています。日本の戦略は形式主義的であり、それに
実質成長と名目成長に大きな差があるなど、日本の経済状況は超
現実的になっているとアッシャー氏はいいます。そのまま問題を
先送りしていると、経済が良くなると思っている――彼はこれを
シュールリアリズム、超現実主義といっているのです。
 アッシャー氏のいうように、日本が「仕方がない」とあきらめ
てしまうのは無責任です。米国は日本に対して大きな債務があり
債権国の日本が揺らぐと債務国の米国に大きな影響を与え、世界
中の経済がおかしくなってしまうからです。
 まさにいいたい放題ですが、アッシャー氏の警告は的を射てい
ます。日本人よりも日本のことを心配してくれています。

608号.jpg
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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