2008年04月23日

●「無機成因説」の信憑性 その2(EJ第2312号)

 「生物由来説」が正しいとして、石油はあとどのくらい残って
いるでしょうか。
 精密な根拠に基づくものではありませんが、地球に残されてい
る石油の埋蔵量は、およそ1兆1000億バレル――ちょうど琵
琶湖4杯分といわれます。この量を今までの消費のペースで使う
と、2040年にはなくなってしまう計算だそうです。
 しかし、これは基本的には液体としての原油の残量であり、そ
れに、オイルサンドやオイルシェールというオイルを含んだ砂や
岩からの精製する分を加えると、あと10兆バレルは残っている
計算になります。
 しかし、オイルサンドやオイルシェールからの石油の精製はコ
ストと時間がかかり、どうしても原油価格は高騰せざるを得ない
ことになるのです。いずれにせよ、「生物由来説」が正しいとす
る限り、即座に何らかの対策を講ずる必要があります。このまま
では原油価格は急ピッチで高騰していくことになるはずです。
 しかし、「無機成因説」が正しいとすると、基本的に発想を転
換する必要があります。この説に立つと、実質的に原油は無限に
存在することになり、枯渇を恐れる必要はなくなります。しかし
油田の発見・探索に関しては、今までとは違った考え方で臨む必
要があるのです。
 前回、「無機成因説」の一部の根拠を示しましたが、もうひと
つの説を示しておきます。それは次の本です。
―――――――――――――――――――――――――――――
                 トーマス・ゴールド著
  「未知なる地底高熱生物圏/生命起源説をぬりかえる」
          丸武志訳  2000年/大月書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 この内容は驚くべきものです。石油は化石が原料なのではなく
地下の炭化水素が変質して石油やメタンガスに変わるという説な
のです。実際に地球の内部には膨大な量の炭素が存在するのが自
然であり、一部分は炭化水素の形で存在しているのです。この本
について記述しているブログを参考にしてその内容を示しておく
ことにします。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ●トーマス・ゴールドによれば、石油・石炭・天然ガスは「化
  石燃料」ではない。しかも実質的に無尽蔵である。
 ●しかし、だからといって無制限に使って良いものではない。
  資源の枯渇の心配は要らないかもしれないが、環境は間違い
  なく悪化する。
 ●トーマス・ゴールドによれば、地底には地表を凌ぐ生物圏が
  存在する。地表の生命は地底の生命の分家である。まさに母
  なる大地である。
 ●トーマス・ゴールドによれば、他の惑星にも地底生物圏が存
  在する。地球だけが特別なのではない。生命はいたるところ
  にある。
 ●トーマス・ゴールドによれば、科学の定説はしばしば根拠が
  希薄である。科学者だって思ったほど優秀なわけではない。
  思い違い、早とちりも結構多い。
        http://club.pep.ne.jp/~tatematsu/book8.html
―――――――――――――――――――――――――――――
 こういう説に立つと、資源のない日本でも地底には石油や天然
ガスがある可能性があるということになります。まだ記憶に残っ
ている事例として、渋谷のクアハウスの爆発事故がありましたが
原因は天然ガスだといわれています。
 東京都北区の温泉掘削現場から突然大量の天然ガスが噴出して
昼夜燃え続け、大量の泥水の注入でやっと鎮火したという事例、
千葉県九十九里浜町の「いわし博物館」の文書収蔵庫で大爆発が
起き、職員2名が死傷するという事例――いずれも天然ガスに関
係があるのです。
 石油や天然ガスに関しては、いつの頃からなのか、化石燃料で
あるという前提に立って、油田の探索が行われてきています。化
石燃料であれば、石油や天然ガスは堆積岩の下にしかないと考え
るのは常識であり、実際の油田調査はそういうところしかやって
いないのが現状です。
 ところで、日本には、地球深部掘削船『ちきゅう』という特殊
な船があり、これによる調査プロジェクトがあることをご存知で
しょうか。これは地球の地下深くにもぐることによって、「地殻
内流体の解明」を行っているのです。しかし、これは建前であっ
て本当の目的は「地下生物圏の解明」をすることによって「石油
・石炭・天然ガス無機起源説」の解明を目指しているのです。
 石油無機起源説の日本での提唱者に日本エネルギー経済研究所
の中島敬史氏という人物がいます。中島氏が執筆した「無機起源
石油・天然ガスが日本を救う!?―地球深層ガス説」の一部を次
にご紹介しておきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本は、2つの巨大な大陸地殻プレート――ユーラシアプレー
 トと北米プレートが接する境界線があり、サハリン西方から日
 本海を経由して新潟、長野、静岡まで縦断・横断していると推
 定されています。この大きな境界線沿いや、これに雁行して並
 走する断裂が存在すれば、将来の探鉱対象エリアとなるかも知
 れない。こうした新しい視点で日本列島を再評価することによ
 り、我が国に新たな石油・天然ガス資源の発見を導くのではな
 いか。これらの前では、"石油ピーク問題"は霧散する。しかし
 それら豊富な石油・天然ガス資源は決して地表付近に分布する
 ものではなく、深部探鉱に対する投資が不可欠である。石油資
 源量における悲観論が広がり、リスクを避けるべく探鉱への投
 資が滞れば、いずれ"石油ピーク"が訪れるであろう
                      ――中島敬史氏
―――――――――――――――――――――――――――――
               ―― [石油危機を読む/23]


≪画像および関連情報≫
 ●講演・座談会 石油の無機起源説について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  誰も予想しなかった石油高価格が続き、世界経済への悪影響
  が懸念される情勢を背景に、石油資源のピーク説が有力視さ
  れる一方で、その対極的とも言える無機起源説が最近の多く
  の事例を元に注目を集めてきている。人類の未来を考える大
  前提となるエネルギーの将来を検討するには、こうした考え
  を無視することはできない。これまであまり紹介されていな
  い無機起源説を取り上げて、その内容の理解を深めることと
  した。    ――日本エネルギー経済研究所/主任研究員
                      中島 敬史 氏
http://www.engy-sqr.com/member_discusion/document/sekiyu-mukisetsu051001.htm
  ―――――――――――――――――――――――――――

「未知なる地底高熱生物圏」/ゴールド.jpg
posted by 平野 浩 at 04:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 石油危機を読む | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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