かという核心に入っていく予定ですが、あまり固い話ばかりが続
くと頭が痛くなるので、今回はその幕間というか間奏曲というか
――そういう話題から入っていきたいと思います。
1956年の米国映画に『ジャイアンツ』という作品がありま
す。あのジェームス・ディーンが演じた名作です。ジェームス・
ディーンは自分の出演シーンを撮り終えた数日後に自動車事故で
死亡してしまうのです。
ところで、ここでいう「ジャイアンツ」とは何のことかご存知
ですか。実は映画『ジャイアンツ』は石油掘削がドラマの背景に
あるのです。簡単にどのような映画か物語を紹介します。
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メリーランド州の牧場に馬の買い付けに来たテキサスの牧場主
ヴィック・ベネディクトと牧場の娘レズリーは恋に落ち、結婚
してテキサスにあるヴィックの農場に移る。レズリーは東部と
西部の生活習慣の違いに最初は戸惑うものの、やがてベネディ
クト家の女主人として一家を支えるようになる。レズリーに片
思いするベネディクト家の使用人ジェットは、石油を掘り当て
一夜にして億万長者となるが、空しい心は満たされず孤独な人
生を送る。『陽のあたる場所』(51)や『シェーン』(53)の
名匠ジョージ・スティーブンス監督が開拓者たちの30年にも
及ぶ壮大なドラマをダイナミックに描いた大河ウェスタン。
http://www.geocities.co.jp/hollywood/5710/giant.html
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この映画の監督はジョージ・スティーブンスですが、そのキャ
ストを決めるのが大変だったのです。まず、スティーブンス監督
は、主役のヴィック役にウイリアム・ホールディンを考えていた
のですが、途中で気が変わってロック・ハドソンに変更し、ホー
ルディンを落胆させたといいます。
それからヒロインのレズリー役――監督としては絶対にグレー
ス・ケリーに決めていたのですが、彼女はモナコの大公と結婚し
て映画界から引退してしまったため、出演は不可能になったので
す。今度は監督ががっくりしてしまったという次第です。
次の候補として、オードリー・ヘップバーンとマレーネ・ディ
ートリッヒが上がったのですが、監督がダメを出し、結局決まっ
たのはエリザベス・テーラーだったのです。ところが、撮影開始
前にテイラーの妊娠が発覚、テイラーの出演に固執したスティー
ブンスは彼女が子供を出産するまで撮影を延期するのです。
ロック・ハドソンとエリザベス・テーラーに比べれば、ジャー
ムス・ディーンなんか小者です。彼は『ジャイアンツ』が映画化
されることを聞くと、『エデンの東』の撮影中だったにもかかわ
らず、頻繁にスティーブンスのオフィスを訪ねてジェット役をや
らせてくれと懇願してやっとOKをもらったのです。
映画『ジャイアンツ』といえば、音楽を担当したディミトリー
・ティオムキンにもふれる必要があります。ティオムキンはロシ
アの作曲家ですが、もともとはピアニストです。1925年に米
国に渡り、映画音楽を書きはじめたのです。
以降、西部劇では「真昼の決闘」、「赤い河」、「アラモ」、
「リオ・ブラボー」。戦争映画では「ナバロンの要塞」などなど
――すばらしい音楽でヒットを連発したのです。とくに「ジャイ
アンツ」は、「アラモ」、「ナバロンの要塞」と並ぶティオムキ
ンの代表作のひとつとなっています。
さて、「ジャイアンツ」というのは、ここでは米国のテキサス
州のことを指すのです。映画では、ヴィックとジェットとの対立
を古い時代から新しい時代への変遷として描いています。具体的
にいうなら、大牧場が石油産業という時代の変革の流れに押し流
されつつ土地を取られていくさまを描いているのです。
大牧場の使用人をしていたジェットが牧場主の姉の死に伴い、
遺言どおりに土地の一部を譲り受けたところ、そこで彼は油田を
掘り当てるのです。ところで、当時、1日5万バレル以上出る油
田のことを「ジャイアント」といっていたのです。
「ジャイアント」は「ジャイアンツ」の単数形――どうやら、
映画『ジャイアンツ』は、テキサス州とこの油田の「ジャイアン
ト」をもじっているのでは・・と考えて、映画『ジャイアンツ』
の話題を取り上げたのです。映画のジェットのように、当時テキ
サス州では複数の「ジャイアント」を掘り当てて、大金持ちにな
った人はたくさんいたのです。
このように近代的な石油産業は米国で起こったのです。それは
米国内で油田の発見が相次いだことが大きな理由だったのです。
米国で油田開発が本格化した10年後に、ロシアのカスピ海沿岸
のバクーで油田が発見され、ヨーロッパに出荷されるようになり
ます。そして、第1次世界大戦後にも油田の開発ブームが起こり
イランやベネズエラなどに波及していくのです。
1932年には、バーレーンでアラビア湾最初の油田が発見さ
れ、サウジアラビアやクウェートでの油田発見が続いたのです。
第2次世界大戦後も中東での油田の発見が相次ぎ、遂に1948
年になって、世界最大のサウジアラビアのガワール油田が発見さ
れるにいたるのです。この油田は日量500万バレル――これは
サウジアラビアの生産量の約半分に当ります。
世界第2の油田は、クウェートのブルガン油田です。日量にし
て、160万バレル――1991年にイラクが侵攻してきた際に
攻撃された油田です。この油田はいまだに原油が地表に自噴する
ため、生産コストが非常に安い点が魅力であり、イラクはこの油
田を手に入れたかったものと思われます。
このように中東の油田が発見されるはるか前から米国では石油
に関するあらゆる技術が開発されていたので、米国の力を借りて
油田を発見したり、生産したりしたのです。そういう意味で米国
には頭が上がらなかったのです。かくして、こと石油に関しては
今まで米国が主導権を取ってきたのです。石油がドル建てである
こともこれと深い関係があります。― [石油危機を読む/11]
≪画像および関連情報≫
●映画『ジャイアンツ』の批評/ブログ
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映画『ジャイアンツ』はロックフェッラーより後の1920
年代を舞台とするが、アメリカ石油事業の様子をよく描いて
いて見逃せない。エリザベス・テーラー、ロック・ハドソン
が美男美女過ぎて少し浮ついた感じがするが。・・・南部の
牧場に突然石油が噴出し、独立石油会社がにょきにょき現れ
る、時あたかもモータリゼーション7。石油はいくらでも要
る。ひねくれた牧場の使用人ジェームス・ディーンが、わず
かにもらった土地に石油が噴出すシーンが印象的だ。
http://blog.goo.ne.jp/ys386kyam/e/41d5959b2078d64c6b980164f8a772e6
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