2008年04月03日

●炭化水素について知る(EJ第2298号)

 原油というのは、油田から汲み上げられる自然界に存在する資
源です。ガソリンや灯油は、原油を原材料として、精製して作ら
れる石油製品なのです。
 「油田」という言葉から、地底湖のように地下深くに原油が液
体のまま貯まっているように想像するかも知れません。しかし、
実際の油田とは地下数千メートルの地層に埋もれているのです。
その地層は「貯留岩」という無数の細かい粒からできている砂岩
という岩石で形成されており、原油はその貯留岩の中に存在して
いるのです。
 それでは、その貯留岩から原油を採取するにはどのようにする
のでしょうか。
 「リグ」という油田掘削装置があります。リグはダイヤモンド
を先端に取り付けた装置で、貯留岩に貯まっている油層目がけて
掘り進むのです。油層にたどりつくと、シームレスパイプを突き
立てるのですが、そうすると、地層内の圧力で原油が地上に噴き
出してきます。原油の採取はこのようにして行なわれます。
 原油は、化学的には炭素と水素の化合物である炭化水素なので
す。原油の中には、硫黄、窒素、酸素、金属などの化合物も含ま
れているので、原油を炭化水素の種類ごとに分離し、不純物を取
り除くことで、ガソリンや灯油といった石油製品化することを石
油の精製といっています。
 炭化水素というと、高校の理科で習ったフレーズ――メタン、
エタン、プロパン、ブタンを思いだす人がいるかも知れません。
これらはいずれも炭素(O)と水素(H)が結び付いた炭化水素
という物質の仲間です。
 炭化水素には炭素の数が少ないものと多いものがあります。炭
素の数が増えるほど、1個の分子の質量は増加し、沸点が高くな
る傾向があります。沸点が高くなるということは、液体から気体
になる温度が高いことを意味します。
 ここで液体か気体かは重要な意味を持つのです。なぜなら、液
体であれば、運搬したり、貯蔵したりすることが便利であるから
です。天然ガスのような気体の場合、運搬をするのに高度な技術
が必要になります。これに沸点の高低がからんできます。つまり
沸点が低いものほど、気体になりやすいのです。
 沸点と炭素の数、分子の質量の関係を次のようにまとめておく
ことにします。
―――――――――――――――――――――――――――――
  沸点が低い ・・・ 炭素の数が少い/分子が軽い
  沸点が高い ・・・ 炭素の数が多い/分子が重い
―――――――――――――――――――――――――――――
 炭素が1個のメタンは分子が軽いので、地中に埋蔵されている
状態でも気体になっています。よく原油を採掘すると、天然ガス
が出てくることがあります。しかし、かつては、気体を運ぶ技術
がなかったので、無為に燃やすしかなかったのです。
 ところが、現在では技術が進んで、パイプラインで運んだり、
液化してLNG(液化天然ガス)のかたちでタンカーで運んだり
できるようになっているのです。メタンはマイナス160度で液
化され、体積は気体のときの600分の1になるので、大量輸送
が可能になるのです。
 日本はLNGを中東から輸入し、タンクの中を超低温に保つこ
とができるLNGタンカーで輸送しているのです。また、天然ガ
スに含まれるメタンは、都市ガスに利用されています。
 炭素が3〜4個になると、分子の質量が大きくなり、沸点が高
くなります。つまり、気体にはなりにくく、液体になるのです。
プロパンやブタンは、原油の中に溶けて存在するのですが、少し
圧力を加えると、液化します。天然ガスのように超低温にしなく
ても、比較的簡単に液化できるのです。
 液化できれば、ガスポンベに詰めて、輸送したり、保存したり
できるので、用途は大きく広がります。プロパンを中心とするL
PG(液化石油ガス)は、「プロパンガス」と呼ばれて、家庭用
のガスとして使用されています。
 炭素が5〜10個程度の炭化水素は、ガソリンとして使用され
ています。ガソリンはよく知られているように次の2種類があり
ます。
―――――――――――――――――――――――――――――
  1.レギュラー・ガソリン
  2.プレミアム・ガソリン ―――ハイオクガソリン
―――――――――――――――――――――――――――――
 いわゆるハイオクガソリン――オクタン価を上げるとは、発火
点温度を上げてノッキングを起こりにくくするガソリンのことを
いうのです。
 ところで、ガソリンに関連付けて覚えておいて欲しいことがあ
ります。それは「ナフサ」です。ナフサというのは、ガソリンと
同じ沸点の留分のことですが、原材料段階のものを「ナフサ」、
製品化したものを「ガソリン」と呼んでいるのです。つまり、ナ
フサとは、石油化学工業製品の原料となるものなのです。
 暖房用に使われている灯油は、炭素が9〜15個の炭化水素が
中心となっています。灯油は「ケロシン」と呼ばれ、ジェット機
の燃料(ジェット燃料)も、この灯油の留分から製造されている
のです。
 灯油の次に高い沸点の留分は「軽油」です。軽油は、ディーゼ
ル車や船舶やガスタービンの燃料になります。欧州では、ディー
ゼルエンジンの自動車が多く、自動車の燃料のかなりの部分を軽
油が占めているのです。
 とくに寒冷地用のディーゼル燃料は、温度が低くても気化しや
すい灯油を混合した製品となっています。気化しないと、着火・
燃焼が正常に行われなくるのです。
 さて、蒸留により、分留していった残りが「残油」と呼ばれる
のです。重油は、軽油留分、残油などを混合して、粘度や硫黄分
を調節して作られます。    ―― [石油危機を読む/09]


≪画像および関連情報≫
 ●「ナフサ」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ナフサとは、原油を常圧商流装置によって蒸留分離して得ら
  れる製品のうち沸点範囲がおおむね35〜180℃程度のも
  のである。粗製ガソリン、直留ガソリンなどとも呼ばれる。
  ナフサのうち沸点範囲が35〜80℃程度のものを軽質ナフ
  サといい、日本では石油化学工業でのエチレンプラント原料
  として多く使用される。輸入原油を国内で精製して製造する
  ものと、ナフサとして輸入するものが相半ばする。
                    ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

「ナフサ原油価格推移」.jpg

posted by 平野 浩 at 04:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 石油危機を読む | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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