2008年04月02日

●近代石油産業はこうして誕生(EJ第2297号)

 探鉱・採掘・精製を一連の流れとする近代石油産業が誕生した
のは、1859年の米国においてです。ペンシルベニア州のタイ
タスビルにおいて、元鉄道員のエドアィン・ドレークが石油の機
械堀りに成功したのです。ドレークが採掘に成功した油田は「ド
レーク油田」と名づけられ、タイタスビルは近代石油産業発祥の
地といわれるようになります。
 もう少し詳しい経緯をお話しする必要があります。ニューヨー
クの弁護士だったゼビルは、原油から灯油が作れることを知って
世界最初の石油会社、ペンシルベニアロック社を1854年に設
立しています。
 ゼビルは株主に対して、灯油を作るために岩塩掘削技術を使っ
て原油を地下から掘り出すことを提案したのですが、同意が得ら
れなかったのです。そこで、1959年に掘削専門会社セネカ・
オイル社を設立したのです。
 ゼビルは、石油を汲み取るのではなく、穴を穿って抽出しよう
としたのですが、それを実現してくれる人物としてドレークだっ
たのです。ドレークが石油の機械掘りに成功したことを知ってい
たからです。
 しかし、採掘は簡単ではなく、周りの人から奇人、変人と冷笑
を浴びながらも黙々と採掘を続け、1859年8月28日に深さ
21メートルで約30バレルの採掘に成功したのです。しかし、
この油田はタイタスビルに最初に目を付けて、油田開発を進めた
のはゼビルだったのに、米国の人々は「ドレーク油田」と呼ぶよ
うになったのです。おそらく何をいわれても動ぜず、掘削を続け
たドレークの努力を多としたものと思われます。
 このセネカ・オイル社の成功を聞きつけて、ペンシルベニア州
には全米から投資家や山師が集まってきて、油田の開発を始めた
のです。そして、石油の採掘は、テキサス、カルフォルニア、カ
ナダへと急速に広がっていったのです。このようにして、米国は
世界ではじめて石油産業が成立することになったのです。
 さて、ドレークが油田を発見した当時はどのようにして原油を
運搬したのでしょうか。
 それは、原油を酒の樽(barrel/バレル)に入れて、当時鉄道
が引かれていたピッツバークまで馬車で運んだのです。モルト・
ウィスキーの熟成には「樽」を使うのですが、樽には次の3つが
あります。
―――――――――――――――――――――――――――――
          1.バーボン樽
          2.シェリー樽
          3.ブレーンオーク
―――――――――――――――――――――――――――――
 原油が詰められた「シェリー樽」は、スパニッシュオーク材で
作られており、シェリー酒を熟成するために使われたのです。そ
のため原油は「バレル」という単位を今でも使っているのです。
 当時のシェリー樽の内容量は「159リットル」であったので
それが「1バレル」とされたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
      1 バレル =   159リットル
      1 バレル =    42米ガロン
      1米ガロン = 3.785リットル
      1英ガロン = 4.546リットル
―――――――――――――――――――――――――――――
 ところで、1バレル、すなわち「159リットル」とはどのく
らいの量になるのでしょうか。
 ドラム缶――キャンプ場などで簡易風呂として使われているあ
のドラム缶のことですが、原油1バレルをドラム缶に入れると、
大体3分の2くらい入るといったらわかるでしょうか。結構量と
しては多いのです。
 ところで、「原油」とは何でしょうか。ここまで説明しないで
使ってきていますので、はっきりさせましょう。
 「原油」「石油」「ガソリン」の違いを明らかにするために、
英語での表記を示しておきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
       原油   ・・・・・ Crude Oil
       石油   ・・・・・ Oil
       ガソリン ・・・・・ Gasoline
―――――――――――――――――――――――――――――
 いわゆる一般的に「オイル」という場合は、それは石油という
ことになります。すなわち、石油とは、原油やガソリンを含めた
液体の炭化水素の総称なのです。常温・常圧で液体であり、火を
つければ燃える炭素と水素の化合物はすべて「石油」と呼ばれる
のです。
 これに対して「原油」とは、油田から生産される天然の液体炭
化水素のことをいうのです。そして、この「原油」を精製してで
きるものが「ガソリン」なのです。
 実は一口に原油といってもいろいろな種類があるのです。産地
や油質によって製品は異なるのです。原油の油質というのは、硫
黄や不純物が含まれている割合や有機物の構成比の違いによって
次の2つに分かれるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   1. サワー ・・・・・ 硫黄分の多い原油
   2.スイート ・・・・・ 硫黄分の少い原油
―――――――――――――――――――――――――――――
 また、比重の軽いものを「ライト」、重いものは「ヘビー」と
いいます。比重はAPI度という数字で表され、比重が軽いもの
ほど大きな数値になり、比重が重いものほど小さな数値になるの
です。比重の軽いものほど沸点が低く、重いものは沸点が高い成
分なのです。われわれの身近な存在であるガソリン、灯油、軽油
は、スイートでライトな部分に属するのです。一番ライトなのは
LPGなのです。       ―― [石油危機を読む/08]


≪画像および関連情報≫
 ●ドレーク油田と切手
  ―――――――――――――――――――――――――――
  切手で語る『石油の文化の光と影』も石油産業の誕生に触れ
  る必要があります。石油産業の二大発祥の地として、ペンシ
  ルバニア州タイタスビルのドレーク油田とカスピ海沿岸のバ
  クー油田が代表的な油田地帯として挙げられます。アメリカ
  における石油産業発祥の地を切手で紹介するにも石油切手と
  して発行されたのはドレーク油田開発125年切手しか発行
  されていませんので、特別記念印、メータースタンプ、日付
  抹消印の地名で紹介していきます。切手展特にテーマチィッ
  ク部門では、切手以外に様々な郵便材料を使います。
         http://www9.ocn.ne.jp/~petro/oilbirth.htm
  ―――――――――――――――――――――――――――

ドレーク油田/125年.jpg

posted by 平野 浩 at 04:20| Comment(1) | TrackBack(0) | 石油危機を読む | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
シェリー酒専門家の中瀬と申します。
非常に興味深い記事ですが、原油とシェリー樽のソースはどこからなのでしょうか?
それと、シェリー自体はスペインですが、樽材はアメリカン・オーク材なので、シェリー樽は基本100%アメリカン・オークです。
それと一般的なシェリー樽は500リットルないし、600リットルです。他にも500以上、以下もあります。
Posted by 中瀬航也 at 2015年03月23日 13:26
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