2008年03月21日

●地球温暖化よりもっと怖い石油枯渇(EJ第2289号)

 現在、われわれ日本人は、何となく汚れた環境の中で生活して
いると考えていないでしょうか。
 結論からいうと、それは錯覚なのです。日本は世界に誇るべき
高度な環境技術を持っており、環境の汚染を目に見えて改善して
いるのです。
 実際問題として空気も水もとてもきれいになっているのです。
とくに日本の水道水は世界でもトップクラスであり、そのまま飲
んでも大丈夫です。しかもその安全性にいたっては、皮肉なこと
に市販の水よりも高いといわれているほどです。
 さらに食物も新鮮だし安全といいたいところですが、賞味期限
偽装や中国産ギョーザ事件で食の不安は高まっています。しかし
それでも国産の食品は世界的に見て安全といえます。
 人間の活動が急激に増えて、環境に大きな影響を与えたのは今
から200年前と70年前の2回だけです。200年前とは、産
業革命が成功し、蒸気機関が発明され、機械による大量生産がは
じまったときです。70年前とは、第2次世界大戦の直前におい
て工業技術が急速に発達した時代です。
 添付ファイルのグラフを見てください。グラフの下方に「自然
の活動による放出」というタイトルの付いた横線があります。自
然の活動による放出とは、大自然が火山の活動や生物の腐敗など
で硫黄を空気中に放出することを意味しています。その量はおよ
そ30兆グラムといわれています。しかし、グラフの線が横一線
になっているのは、自然は自らが出すものは自らが片付けている
からであり、だから一定を保っているのです。
 しかし、今から約70年前/1938年頃になると、人間の活
動が盛んになるにつれて、石炭や石油、鉱石の精錬などで硫黄の
放出量が高くなり、遂に1940年には人間の活動によって排出
する硫黄の量が、自然の出す硫黄の放出量を上回ってしまうので
す。かくして、「人間の活動による放出」のグラフが急上昇して
いくのです。
 1940年を超えると、環境への影響/公害が次々と発生した
のです。1952年のロンドンにおいて、1万人以上の死者を出
したスモッグ事件、日本においても1953年の水俣での公害患
者の発生に始まる次の4大公害事件が起こったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.水俣病/水俣市不知火海沿岸地域 ・・・ 1953年
 2.第2水俣病/新潟県阿賀野川流域 ・・・ 1967年
 3.イタイイタイ病/富山県神通川流域 ・・ 1968年
 4.四日市喘息/三重県四日市石油化学 ・・ 1967年
―――――――――――――――――――――――――――――
 EJ第2286号でご紹介したレイチェル・ルイーズ・カーソ
ンの『沈黙の春』はこういうときに発刊されたのです。環境問題
がこの本を契機に一気に社会問題化したのは当然でしょう。
 添付ファイルのグラフをもう一度見ていただきたいのです。こ
のグラフには、日本のダイオキシン排出量(−■−)、二酸化炭
素濃度(−○−)のグラフが加えられています。これを見ると、
1950年から1970年までの20年間というのは環境にとっ
て大変な時代だったということがわかります。
 しかし、日本は優れた環境技術の開発によって、この環境危機
を乗り超えています。ダイオキシンや二酸化炭素濃度は1970
年をピークに急激に下がり、現在では何も問題がないレベルにま
で達しているのです。
 環境に問題があると、一番身体の弱い乳幼児やお年寄りが真っ
先に被害を受けることになりますが、日本の乳幼児死亡率やお年
寄りの死亡率は世界でもっとも低い水準にあるのです。それは、
日本の環境が健全であることの何よりもの証明です。そういう意
味で、日本人はもっと環境問題に対して自信と誇りを持ち、世界
をリードするぐらいの気概が欲しいものです。
 しかし、ここにきて日本の環境対策には大きな疑問がいくつも
出てきています。最初のボタンのかけ間違いをしたのか、何かが
おかしくなっています。国民が努力して行っていることが、肝心
の目的の達成に結びつく可能性が低いからです。
 目下のところ世界レベルの環境問題は、各国の生産量の拡大に
よるCO2の排出量の増加が地球温暖化の危機を引き起こすとい
うものですが、CO2の問題はそんなに心配しなくても良いとい
う説もあるのです。
 それはどうしてかというと、そう遠くない将来に石油が枯渇す
るからというものです。これは実に恐ろしい話です。地球温暖化
と石油の枯渇は、確かに両方とも怖いですが、これら2つの危機
は同時には来ず、確実に石油の枯渇の方が先に来るのです。
 石油の枯渇が先に来ると、人類はCO2を排出したくてもでき
なくなります。現在の地球温暖化危機論は、石油が永遠に使える
という前提に立っているといえます。
 いや、石油は枯渇することは多くの人はわかっていますが、現
実問題としては認識できていないのです。それは、「いずれ」で
あって、そんなに「すぐ」には来ないと考えている人が多いから
です。また、そんなこと恐ろし過ぎて現実的に考えられないとい
う人もいるでしょう。
 まだまだ石油は枯渇しないと考える人もいます。しかし、昨年
来からの「1バレル=100ドル」を軽くオーバーする原油高は
今までにないものです。なぜ、原油価格が下がらないかというと
少しオーバーにいうと、石油の枯渇を前提にして、原油価格は今
後は下がらず、上昇するのみと判断した世界の大量の投機資金が
原油市場に流れ込んでいるからです。地球温暖化危機よりも石油
枯渇に対する対策こそ推進すべきなのです。石油をなるべく使わ
ないようにする――そうすれば確実にCO2は減って地球温暖化
の大きな原因は取り除かれることになります。
 このテーマは今回をもって終了しますが、石油問題を引き続き
取り上げます。引き続きご愛読のほどお願い申し上げます。
          ―― [地球温暖化懐疑論/31/最終回]


≪画像および関連情報≫
 ●ロンドン・スモッグに言及しているブログ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  このロンドンのスモッグ、「世の中が二間四方に縮」まるく
  らいなら罪はないのですが、何と1952年、死者1万人以
  上という大惨事を引き起こす原因に。世に言う「ロンドンス
  モッグ事件」。この年12月、寒気が居座るロンドンでは竃
  という竃が途切れる間もなく石炭を消費。遂には「暖房器具
  や火力発電所、ディーゼル車などから発生した亜硫酸ガス−
  二酸化硫黄などの大気汚染物質は冷たい大気の層に閉じ込め
  られ、滞留し濃縮されてpH2 ともいわれる強酸性の高濃度の
  硫酸の霧を形成した」。その結果、気管支炎、気管支肺炎、
  心臓病などにより死者は1万人を突破。こうした事態を受け
  イギリス政府は1956年、1968年と二度にわたって、
  「大気浄化法」を施行している。
http://paperbackwarehouse.jp/blog/C1692707094/E20070404142337/index.html  
  ―――――――――――――――――――――――――――

技術で克服された大気への汚染.jpg
posted by 平野 浩 at 04:22| Comment(1) | TrackBack(0) | 地球温暖化懐疑論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
アンケートへの回答のお願い:安価な石油時代の終り
 政治・社会・経済関連ブログのライターの方々に、表記アンケートをお願いしていきます。
 お手数ですがコメントの形でお書きいただくなり、自身のブログにお書きいただいてトラックバックを送っていただくなりで、あなたさまのご意見を私どもにお伝え願えませんでしょうか。

 ひとまずは1ヶ月以内(4月中旬まで)にご回答をいただければ幸いです。

【アンケート内容】

 NY原油先物価格が1バーレル110ドルを越え、インフレ調整後の価格としても史上最高値を更新中です。
 石油価格の高騰ばかりでなく、石油の戦略商品化、あるいはエネルギー安全保障を脅かす「資源戦争」までが云われ、供給の安定の問題となりつつあります。

●ここ4年間の原油高騰の原因としての、以下の項目からなるピークオイル論の妥当性はどの程度あると評価されますでしょうか?

●また、疑問点や想定される反論についてもお考えをお示しください。

◇◇◇
 以下、本体はURLをお読みください。
Posted by SGW at 2008年03月30日 23:15
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