2005年01月11日

歌手選定プロセスを明確化せよ(EJ1508号)

 多忙な歌手に懸命に出演交渉して出演してもらう大晦日の歌番
組に過ぎなかった紅白歌合戦は、回数を重ねるにつれてしだいに
歌手にとって無視できない重要な番組になっていったのです。と
くにテレビが一般家庭に普及してからは、全国放送の紅白歌合戦
は、歌手にとって出場を目指す大きな目標となったのです。
 そうなってくると、毎年紅白歌合戦にどの歌手が選ばれるかは
大きな関心事となり、それを決める側のNHKは大きな権限を持
つようになります。このあたりにNHKのこのたびの不祥事を生
む温床が出来上っていったといえます。
 しかし、どの歌手を紅白に出場させるかについては、その決定
プロセスが必ずしも明確ではなく、それがレコード会社や芸能プ
ロダクションとのトラブルの原因になることが多かったのです。
 そのひとつに「三浦洸一事件」というのがあります。三浦洸一
は、当時のビクターの看板スターであり、初期の紅白の常連歌手
だっのです。
 三浦は第6回紅白に「落葉しぐれ」で初出場し、第7回は選ば
れなかったものの、第8回から第14回まで連続出場を果たして
いるのです。しかし、1984年の第15回紅白歌合戦の出場リ
ストには三浦洸一の名前はなかったのです。表向きの理由は、三
浦にはその年に目立つヒット曲がなかったというものです。
 これに対してビクター側は反発します。確かにヒット曲はない
が、三浦のこれまでの実績はどうなるのかというわけです。そし
て、ビクター側は「三浦を出場させないなら、ビクター所属歌手
全員を引き上げる」とNHKに迫ったのです。
 ビクターには、雪村いづみを筆頭にフランク永井、橋幸夫、吉
永小百合、田辺靖雄、三田明、和田弘とマヒナ・スターズなどの
スター歌手を抱えており、これらの全員がすべて抜ければ、紅白
なんか成り立たないぞという圧力です。
 そもそもなぜ第15回で三浦が外されたかというと、本当はヒ
ット曲がないということではなかったのです。それは、NHKが
記念すべき第15回の紅白であるため、ベテラン歌手4人を出す
ことを決めたことにあるのです。そのため、それまで暗に認めて
いたレコード会社の枠を縮小せざるを得なくなったのです。ベテ
ラン歌手というのは、藤山一郎、渡辺はま子、伊藤久男、淡谷の
り子の4人です。
 ビクターの強硬な抗議に対し、NHKの態度は毅然たるもので
あったのです。「分かりました。そういうことなら(ビクター所
属歌手全員が引き上げても)仕方がありません」だったのです。
結局、このときはビクター側が折れるかたちで、ビクター所属歌
手の三浦抜きの紅白出場が決まり、この騒ぎはビクターの完敗に
終わったのです。
 しかし、その後紅白の視聴率が80%を超えるにいたって、も
はやレコード会社がNHKにビクターのような抗議をすることは
なくなったのです。これは、NHKの権限がそれだけ強力になっ
てきたことを意味しています。
 これに伴い、逆に歌手からの辞退という現象が生じてきたので
す。つまり、NHKから推薦されても歌手がそれを辞退するとい
う現象です。辞退の理由はいろいろあるのですが、NHKが紅白
出場の条件として、その歌手がNHKの他の番組に対する貢献度
をカウントしているという噂が広がり、それが大方の歌手の反感
を買っていたことは事実なのです。
 皮肉な見方をすれば、番組への辞退があるということ自体が、
紅白歌合戦という番組の価値を物語っているといえます。辞退す
る歌手自身が紅白を特別の番組として認めているからです。歌手
になった以上、一度は出てみたいという番組であるからこそ、推
薦されてもあえて辞退するという行為が生きてくるのです。
 しかし、NHKの不正が発覚し、世間の批判が高まっている現
在、紅白歌合戦はまさに正念場を迎えているといえます。視聴率
も40%を割っているのです。
 とくに長年批判の対象になってきた歌手選定のプロセスの明確
化はNHKとして早急に行う必要があります。一番良いのは、広
く視聴者からの世論調査を行い、その順位通りに出場させる方法
です。もし、辞退者が出れば順番を繰り上げれば良いのです。
 実はNHKは紅白に関する世論調査を今までもやっているので
すが、結果を公表してこなかったのです。しかし、2004年は
不祥事の発覚がきっかけで調査結果を公表しています。2004
年10月29日の公表結果を示しておきます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
   ≪白組≫           ≪紅組≫
   1.氷川きよし        1.天童よしみ
   2.SMAP         2.宇多田ヒカル
   3.北島三郎         3.柴咲コウ
   4.五木ひろし        4.坂本冬美
   5.平井 堅         5.浜崎あゆみ
   6.サザンオールスターズ   6.石川さゆり
   7.森 進一         7.小林幸子
   8.細川たかし        8.森山良子
   9.ポルノグラフィティ    9.夏川りみ
  1O.ゆず          10.大塚愛
  11.ORANGE RANGE      11.和田あき子
  12.Mr.Children       12.松田聖子
  13.鳥羽一郎        13.aiko
  14.美川憲一        14.島倉千代子
  15.さだまさし       15.BoA
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 これを見ると、出場歌手がいろいろな世代にわたっており、そ
れなりにバランスがとれていると思います。2004年の出場者
もこれに準拠しているといえます。しかし、55回という回数は
異常であり、紅白歌合戦は60回までに抜本的な改革をする必要
があることは確かであるといえます。・・・[紅白歌合戦04]


≪画像および関連情報≫
 ・今回のテーマは、次の文献を主として参照している。
  合田道人著『紅白/歌合戦の真実』幻冬社刊
 ・2部制(1989)になるまでの紅白歌合戦の視聴率

   第13回 80.4% 第22回 78.1% 第31回 71.1%
   第14回 81.4% 第23回 80.6% 第32回 74.9%
   第15回 72.0% 第24回 75.8% 第33回 69.9%
   第16回 78.1% 第25回 74.8% 第34回 74.2%
   第17回 74.0% 第26回 72.0% 第35回 78.1%
   第18回 76.7% 第27回 74.6% 第36回 66.0%
   第19回 76.9% 第28回 77.0% 第37回 59.4%
   第20日 69.7% 第29回 72.2% 第38回 55.2%
   第21日 77.0% 第30回 77.0% 第39回 53.9%

1508号.jpg
  紅白/歌合戦の真実
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 紅白歌合戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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