2005年10月31日

第0次世界大戦としての日露戦争(EJ1707号)

 本日からはじまる新しいテーマは「日露戦争」です。なぜ、日
露戦争なのかについては、3つほど理由があります。
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 1.日露戦争は100周年という節目を迎えており、振り返
   ることは懸案諸国との外交を考えるときに役に立つ。
 2.日露戦争は20世紀に入ってはじめての大戦争であり、
   この戦争を第ゼロ次世界大戦と命名する学者もいる。
 3.巷間伝えられている日露戦争には創作部分があり、この
   戦争の真実の姿を追求することには意義があること。
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 日本がロシアとの交渉を打ち切り、軍事行動に移ることを御前
会議で決めたのは、1904年2月4日のことです。それから、
実に101年の歳月が流れており、大きな節目を迎えています。
 現在、日本はロシアとの間に北方領土問題、北朝鮮や韓国、中
国ともさまざまな外交問題を抱えています。日露戦争はこれらの
問題と深い関わりがあり、日露戦争の真実を知ることは、これら
の懸案事項の解決を考えるとき役に立つと思います。
 もうひとつ、20世紀は総力戦と地球規模の紛争の世紀である
といわれますが、日露戦争は20世紀に入ってはじめての大きな
戦争であり、それ以後の戦争に大きな影響を与えたということが
いえると思います。日本のようなアジアの勢力が帝国主義の争い
に加わり、欧州の大国と対峙した、まさに最初の戦争が日露戦争
だったというわけです。
 米ジョージア・サザン大学準教授ジョン・スタインバーグ氏は
日露戦争を「第ゼロ次世界大戦」と命名しているのですが、その
根拠としているのは次の2つです。
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 1.この戦争に日露両国は当時としては前例のない水準の兵
   員を動員して戦っていること。
 2.日露戦争は10年後に起こる第1次世界大戦と軍事技術
   において非常に似ていること。
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 さらに、スタインバーグ氏は世界大戦という以上、いろいろな
面で他国を巻き込むことになるが、そのひとつに戦費調達という
側面があると指摘しています。
 日露戦争では、日本は戦費を工面するため米国のシンジケート
に多額の資金を借り入れているし、ロシアはフランスやドイツを
頼って資金調達しており、戦争の資金調達をめぐっても国際的な
のです。しかし、軍事資金は戦争が消耗戦の様相を呈するに及ん
で調達が困難になり、日露双方は中途半端な終戦調停を結ぶこと
になったのです。
 軍事技術において第1次大戦に似ている点というのは、当時の
主要な戦闘がすべて行われていることです。
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           1.海 上 戦
           2.機動作戦
           3.包 囲 戦
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 当時の国家は将来の海戦に備えて、いわゆる戦艦という名の大
艦を保有していたのですが、実際に大艦による海戦がはじめて行
われたのは日露戦争が最初だったのです。日本海海戦はその代表
的なものです。
 それでは機動作戦とは何でしょうか。機動作戦とは、鉄道、機
関銃、攻城砲などのあらゆる武器を使って戦う戦闘のことをいい
ます。日露戦争における遼東半島をめぐる戦闘は機動作戦そのも
のです。それに旅順攻撃は包囲戦です。このように日露戦争では
その当時の主要な戦闘はすべて行われていたのです。スタインバ
ーグ氏はそういう意味で世界ゼロ次大戦といっているのです。
 もうひとつ重要なことがあります。われわれが知っている日露
戦争には相当の創作部分があるということです。その創作は大正
末期から昭和初期にかけて行われたものです。
 よく国の歴史認識といいますが、国家にとって客観的にして正
しい歴史などというものはありえないのです。というのは、どう
しても自国にとって都合の悪い事実は隠そうとするし、まして戦
史となると、それを書く時点で作戦を続行中ということも少なく
なく、本当のことは書けないのです。
 日本においては、ごく最近まで軍事関係文書はもちろんのこと
公文書全般に関しても公開制度というものがなかったのです。こ
れによって、公開をはばかること、国にとって都合の悪いことは
隠蔽されやすいのです。
 これに関連して不自然なことがあるのです。真実が秘匿された
のとはうらはらに、日露戦争の情報は開戦直後から洪水のごとく
出まわり、小説や映画の題材にまでなったのです。
 「日露海戦史」の編纂に当たった東郷平八郎は次のように述懐
しています。
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 海戦史編纂はすこぶるやりにくいことだ。最も困難な点は、こ
 こにおられる部長をはじめ実戦に当った将官や上司の長官がほ
 とんど現存しておられることで、それぞれ立場を異にし観察を
 異にしていた人達から、色々な苦情が寄せられることがある。
 その人々の意見が一致していれば問題はないが、食い違いでも
 していたら大変である。双方の妥協で解決できる性質の問題で
 はないから、取捨選択が大変だった。    ――東郷平八郎
       加来耕三著『真説/日露戦争』より。出版芸術社
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 そこには、情報操作によって国民感情を意図的に1つの方向に
向けようとする狙いがあったと考えざるを得ないのです。それは
かつての日清戦争においても軍部がそれに近いことをやっている
のです。             ・・・・ [日露戦争01]


≪画像および関連情報≫
 ・ジョン・スタインバーグ氏
  米ジョージア・サザン大学準教授
  米ミズーリ州生まれ。オハイオ州立大学で博士号
  専門はロシア軍事史。48歳

1707号.jpg
posted by 平野 浩 at 08:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 日露戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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