2008年02月27日

●なぜ1990年が基準年になったか(EJ第2273号)

 日本はどうして1990年を基準年とする不平等条約を受け入
れたのでしょうか。
 このことを理解するには、少し歴史を振り返ってみる必要があ
ります。1990年という年は、ドイツ、英国、日本にとってど
ういう年だったでしょうか。
 最初にドイツから考えてみます。
 1990年10月3日に東西ドイツは統一されています。当時
の東ドイツは非効率な共産主義体制によって経済が低迷し、西ド
イツに比べてすべての面で大きく遅れていたのです。
 その東ドイツを抱え込んだドイツは、すべてが大底からのスタ
ートになったのです。したがって、1990年からの10年間で
二酸化炭素の排出量が19%も減ったのは当然のことです。
 続いて英国はどうでしょうか。
 英国は、マーガレット・サッチャーが首相になる1979年以
前はいわゆる「イギリス病」にかかっており、サッチャーが首相
になって10年間にわたって国有企業の民営化などの諸改革を行
い、イギリス病を直したのです。
 とくに旧態依然たる石炭火力発電所は次々に効率の高い現代的
なガス発電所に切り換えられ、その他のエネルギー政策によって
二酸化酸素の排出量は10年間で13%も削減することができた
のです。
 これに対して米国と日本は、特殊な事情はなく、日本は高度成
長が一段落したのが1990年であったのです。とくに日本では
省エネルギーや電子化を中心とする環境に優しい社会がドイツや
英国よりも先に完成していたといえます。しかし、1990年以
降は日本はバブルが崩壊し、いわゆる「失われた10年」の始ま
る年となるのです。
 環境問題はヨーロッパが早かったのです。1980年代から始
まっており、1992年には「地球サミット(環境と開発に関す
る國際連合会議)」が、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで行わ
れたのです。
 この会議には、181ヶ国、首脳が102人も集まる大会議と
なったのですが、日本からは環境庁長官しか出席しなかったので
す。これによって、「日本は環境よりも産業が大事な国」という
印象を持たれてしまったのです。
 ヨーロッパは早くから環境問題は自らを有利にする絶好の機会
としてとらえており、この地球サミットにおいて、時間的枠組み
として、次のコンセンサスを形成させているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  2000年における二酸化炭素排出を1990年のレベル
  まで落とすこと
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本の首脳が出ない国際会議で、このように1990年という
基準路線が早くも引かれてしまったのです。
 さらに、1995年にドイツのベルリンで開催された「気候変
動枠組条約第1回締結国会議」において、「ベルリン・マンデー
ト」という文章が合意されていますが、ここでも地球サミットで
の上記のコンセンサスが再確認され、1990年が基準年として
動かし難いものになっていったのです。
 そして1997年の京都会議では、もはや日本は基準年が19
90年にすることに日本として異議を唱えることはできず、日本
と米国はこの問題に関して、ヨーロッパ勢に主導権を握られっぱ
なしになったのです。
 しかし、日本は事態がよく読めていないのか、深刻にならず、
何の対抗策も取っていないのですが、米国は事態を分析して対抗
策を立てたのです。
 1997年7月、アメリカ上院において、バード民主党議員と
ヘーゲル共和党議員が、議会に次のように「バード=ヘーゲル決
議」を提出し、満場一致で採択されているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 アメリカ経済に深刻な被害を与えるような条約、発展途上国に
 よる地球温暖化防止への本格的な参加と合意が含まれない条約
 には批准しない。        ――武田邦彦著/洋泉社刊
         『環境問題はなぜウソがまかり通るのか2』
―――――――――――――――――――――――――――――
 何のことはない。米国は京都会議が始まる前から「調印すれど
も批准せず」と表明していたのです。日本では「バード=ヘーゲ
ル決議」についてはあまり報道されなかったので、知る人は少な
く、ブッシュ大統領が反対していると考えている人が多いのです
が、これは大きな事実誤認なのです。
 完全な日本の作戦負けなのです。これについて、武田邦彦教授
は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ヨーロッパ勢の作戦は自分たちがアメリカより強い立場にあっ
 て会議を主導できること、アメリカは抵抗せず調印し批准しな
 いこと、中国やインドは削減の義務を負わないこと、そしてタ
 ーゲットとなった日本だけが義務を負うことになること、それ
 はやがて日本の経済発展を阻止して、自らの国の産業に利する
 こと――それらは既に計算済みだったと思われる。
                 ――武田邦彦著/洋泉社刊
         『環境問題はなぜウソがまかり通るのか2』
―――――――――――――――――――――――――――――
 カナダは批准したものの次のように削減目標の履行断念を表明
したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 京都議定書における排出削減目標の2012年までの期限内達
 成は困難である。        ――カナダの履行断念表明
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、日本はできないのに約束しています。そこにどういう
成算があるのでしょうか。 ―――[地球温暖化懐疑論/15]


≪画像および関連情報≫
 ・地球サミットについて
  ―――――――――――――――――――――――――――
  地球サミットとは正式名称は「国連開発環境会議」で、19
  92年にブラジルのリオデジャネイロで開催。冷戦終了後、
  アメリカ・ロシアの首脳などほぼすべての国の代表が一同に
  会した画期的なものであったためこう呼ばれている。この会
  議でリオ宣言、21世紀のための行動計画――アジェンダ2
  1、生物多様性条約などが採択されたが、一番の成果は「持
  続可能な開発」のために必要な地球温暖化防止策を話し合う
  ことを取り決めた「気候変動枠組条約」の採択だろう。これ
  により、条約発効後にCOP(締約国会議)を開き、CO2
  などの温室効果ガスの削減について話し合うことになった。
   http://allabout.co.jp/glossary/g_politics/w007920.htm
  ―――――――――――――――――――――――――――

地球サミット/ブラジル.jpg
posted by 平野 浩 at 04:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 地球温暖化懐疑論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
RDF Site Summary