2008年02月22日

●ゴア氏の論法なら日本は被害国(EJ第2270号)

 アル・ゴア氏の労作『不都合な真実』をどのように読み解くか
については、いろいろな意見があります。そのなかにあって、既
出の武田邦彦教授の解釈は説得力があります。その解釈をご紹介
する前にゴア氏がどういう経緯でこの本を書いたのかについて簡
単にふれておく必要があります。
 ゴア氏は、ハーバード大学の政治学専攻の学生だったとき、ロ
ジャー・レヴェル教授の講義を聴講する機会があったのです。レ
ヴェル教授は、地球の大気中に含まれる二酸化炭素の測定を最初
に提案した人物なのです。
 ハーバード大学はロースクールに代表される米国文系教育の牙
城として有名ですが、物理、化学から地球環境科学までの優れた
理系部門も有しており、文系の学生も自由に理系の授業を聴講で
きるのです。
 『不都合な真実』を読むと、そこには多くの誤りや誇張はある
ものの、ゴア氏が理系と文系の両方の知識を持ち、両方をクロス
オーバーして思考できる優れた才能の持ち主であることが明確に
読み取れます。彼がコンピュータや通信ネットワークに非常に強
く、IT革命の原動力とされるスーパーハイウェイ構想の提案者
であることもそれを裏付けています。
 そのゴア氏がクリントン政権の副大統領のときの1997年に
京都議定書が採択されたのですが、ゴア氏は立役者の一人だった
のです。しかし、肝心の米国議会が批准を渋っている間にゴア氏
は大統領選挙に出馬し、ブッシュとフロリダで大接戦を行った末
に破れたのです。当然ブッシュ大統領は政敵ゴアを利する京都議
定書を批准するはずもなく、米国は2001年に京都議定書から
正式な離脱を宣言したのです。
 おそらくゴア氏にとっては、それは相当くやしい思いであった
に違いないのです。そのくやしさが『不都合な真実』には色濃く
反映されているからです。
 『不都合な真実』には、現ブッシュ政権が環境問題に背を向け
ていることに対する怒りが次のようにストレートに表現されてい
る部分があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ◎地球温暖化などの重要な問題に関する、科学的に一致してい
  る意見を無視することによって、(ブッシュ大統領とその政
  権は)地球の将来を脅かしている。
 ◎(132ヶ国の批准国をすべて表示し、最後に未批准国とし
  て赤でオーストラリアと米国を表記)以下の国はすでに、行
  動することを決めている。現在では、132ヶ国が京都議定
  書を批准している。先進国では京都議定書を批准していない
  国は2つしかない。そのうちの1つが米国である。もう1つ
  はオーストラリアだ。   ――アル・ゴア著/枝廣淳子訳
       『不都合な真実』より ランダムハウス講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 以上のことをふまえて、武田邦彦教授の解釈をご紹介すること
にします。『不都合な真実』を通じてゴア氏が一番訴えたいポイ
ントは次の2つです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.グリーンランドと南極を覆う棚氷の崩壊。つまり「氷が融
   けて水になる」のではなく、「割れ目ができて氷のまま滑
   り落ちる」場合である。
 2.もしグリーンランドの棚氷や南極の氷が「氷のまま」滑り
   落ちる事態になると、メキシコ暖流が止まり、ヨーロッパ
   全域が寒冷になってしまう。      ――武田邦彦氏
   『暴走する「地球温暖化論/洗脳・煽動・歪曲の数々」』
                       文藝春秋社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ゴア氏は、地球が温暖化することは環境破壊をもたらすけれど
も決定的ではないといっているのです。そして、氷がゆっくり融
けていくだろうが、それによって海水面が上がる可能性は低いと
いっています。
 むしろ氷が融けずに氷のまま滑り落ちる事態は深刻であり、以
上の2つのことが起きる可能性が高いというのです。したがって
これによって影響を蒙るのはヨーロッパであり、その他はアメリ
カ、インド地方、中国北部の一部の地域であって、世界的な問題
ではない――ゴア氏はこう指摘しているのです。
 この主張は筋が通っているといえます。地球温暖化問題にヨー
ロッパが異常に熱心な理由もわかります。さらにゴア氏は次のよ
うにもいっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 地球温暖化の原因は「人間」が出している二酸化炭素であるが
 責任は「人類全体」にあるのではない。二酸化炭素の排出量は
 アメリカが30.3%、ヨーロッパが27.7%と世界全体の
 約60%も占める。だから、地球温暖化はアメリカとヨーロッ
 パの問題であり、それ以外の国はむしろ一方的な被害者である
 といえる。強いてつけ加えるなら将来、急速に発展している中
 国が原因に入る可能性がある。      ――アル・ゴア氏
 ――『暴走する「地球温暖化論/洗脳・煽動・歪曲の数々」』
                       文藝春秋社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ゴア氏の主張によると、地球温暖化の原因を作っているのはア
メリカとヨーロッパであり、その被害を受けるのも主としてアメ
リカとヨーロッパであるということになります。彼らこそ不都合
でしょうが、真実を知るべきなのです。
 この論法でいくと、日本は被害国ということになります。日本
の二酸化炭素の排出量は、世界の3.7%でしかないのです。二
酸化炭素の排出量はその国のGDPに左右されます。米国のGD
Pは日本の2.6倍(2005年/ドルベース)であるにもかか
わらず、二酸化炭素排出量は8.2倍――GDP当りの二酸化炭
素排出量は日本の3.1倍です。―[地球温暖化懐疑論/12]


≪画像および関連情報≫
 ・映画『不都合な真実』について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  地球温暖化。肌で感じる暑すぎる夏、多すぎる台風、止まな
  い豪雨、日本で生活を営む中でも、既に「日々病んでいる地
  球」を感じずにいられない。それでもなぜ世界は環境を破壊
  し続けるのか? 温暖化に対する人々の意識を改革すべく、
  アメリカのみならず、ヨーロッパやアジアをも訪れて、10
  00回以上行われたアル・ゴアの講演を追ったのがこの作品
  だ。豊富なデータを使い、地球の歴史の中でいま急激に起き
  ている変化への警鐘を、ニュースのような大きな話ではなく
  より個人レベルでの観点でとらえ、見る者を「再教育」する
  この作品は、アメリカドキュメンタリー史上、記録的なヒッ
  ト作となっている。
  http://plusd.itmedia.co.jp/d-style/rensai/cinema/6.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

ロジャー・レヴェル教授.jpg
posted by 平野 浩 at 04:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 地球温暖化懐疑論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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