2008年02月21日

●素人と専門家の差/アル・ゴア(EJ第2269号)

 IPCCの報告書で記述されていることと、それに基づいて各
国が国民に伝えていること、その間には大きなギャップが存在し
ます。日本の場合も環境省の報告がかなり過大・過激であること
ことは既に指摘した通りです。
 米国とオーストラリア――先進国で京都議定書を批准していな
い2国です。その米国にあって、先陣に立って環境危機を訴えて
いるのは前米副大統領アル・ゴア氏です。
 そのゴア氏の著書『不都合な真実』――ランダムハウス講談社
刊は私もていねいに読みましたが、その内容は大変な労作である
と思います。世界中で売れているそうですが、ゴア氏が本当に訴
えたいことを正しく読み取っている人は案外少ないのではないか
と考えます。
 しかし、『不都合な真実』には多くの誇張や間違いがあるので
す。ゴアは環境問題や気象の専門家ではないのですから、多少の
間違いは仕方がないとしても、環境問題に関する誤解を助長する
恐れはあるのです。とくに「海水面が6メートル上昇する」など
は、その根拠はまったくなく、完全な誤りです。
 ゴア氏の著書である『不都合な真実』と同じ題名の映画が、2
007年度のノーベル平和賞に該当し、ゴア氏とIPCCが共同
受賞するにいたっています。そのため、映画は全世界的に上映さ
れつつありますが、この映画の上映について英国では「待った」
がかかったのです。
 映画でのゴア氏の警告に対して英国の中学生の保護者が求めた
訴訟で、英国の高等法院は次のように注文をつけたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 【ロンドン12日共同】地球温暖化を警告したゴア前米副大統
 領のドキュメンタリー映画「不都合な真実」の内容が「政治的
 だ」などとして、英国の中等学校で上映しないように保護者が
 求めた訴訟で英高等法院は10日、「大筋で正確である」とし
 て原告の訴えを退けたものの、映画には9つの「科学的な間違
 い」があると指摘した。 ――2007.10.12読売新聞
―――――――――――――――――――――――――――――
 その結果、映画『不都合な真実』を英国の中等学校で上映する
ときは、その前に先生が指定のマニュアルにしたがって注意を与
えることになったのです。英国の高等法院が指摘した「9つの疑
問/誤り」とは次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.南極とグリーンランドの氷床の融解で海面が上昇する
 2.太平洋の島嶼国は人為的海面上昇で水没の危機にある
 3.地球温暖化により「海洋熱コンベヤー」が遮断される
 4.大気中CO2濃度上昇と平均気温には因果関係がある
 5.地球温暖化で、キリマンジャロの雪冠が激減している
 6.アフリカのチャド湖が干上がった原因も温暖化である
 7.ハリケーン・カトリーナは、地球温暖化が原因である
 8.北極の氷床が溶けて、ホッキョク熊の溺死が増加する
 9.海水温度の上昇によって珊瑚の白化・枯死が拡大する
―――――――――――――――――――――――――――――
 これら9つの疑問についてひとつずつ述べるのはやめますが、
環境問題に関してよく勉強しているとはいってもゴア氏は素人で
あり、その素人ゆえにやってはならない判断ミスを多く冒してい
ると、横浜国立大学教授である伊藤公紀氏はいっています。
 ヘミングウェイの『キリマンジャロの雪』でも知られるキリマ
ンジャロの山頂に厚く形成されている氷層は年々少なくなってい
るといわれます。ゴア氏はその原因は地球温暖化であるとしてい
るのですが、これについて伊藤公紀教授は次のように反論してい
ます。伊藤教授の専門は環境計測・環境回復科学であり、地球温
暖化論の懐疑論者として知られています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 最近の詳しい現場調査によれば、(キリマンジャロの雪冠は)
 気温上昇で融けたのではなく、太陽熱で昇華(固体の蒸発のこ
 と)したことが分かってきた。融解と昇華では壁面の様子が全
 く異なるので、専門家には一目瞭然である。昇華の原因は湿度
 の低下であり、それは周囲の樹木が失われたことなどが原因で
 あると指摘されている。
 ――『暴走する「地球温暖化論」/洗脳・扇動・歪曲の数々』
          所載伊藤公紀氏の論文より 文藝春秋社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 大気中の二酸化炭素が増えると、海水や植物では吸収できない
ので、大氣の組成が変化してしまうのです。大気がとても薄いか
らです。これを人間にたとえると、カロリーを摂りすぎて、消費
できずに体重が増えて、血糖値が上昇している状態――ちょうど
生活習慣病にかかった状態です。
 それでは、二酸化炭素が増大したとき気温がどうなるかですが
これが実は大変予測が困難なのです。これについて伊藤教授は次
のように述べています。原因はまだ究明できないのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 気象モデルとスーパーコンピュータがあれば、気候変動は良く
 分かるはずだ、と思われる向きもあるだろう。ゴア氏は「現代
 のスーパーコンピュータや高度な気象モデルの助けを借りて、
 ・・何年も先の将来を予測することもできる」と書いた。しか
 し、現在のモデルはまだ発展段階だ。米国の気象学者ロジャー
 ・ピールケは、地球全体の気候を扱うグローバル気候モデルの
 発達を三つに分けて「@基礎研究、A診断、B予想」とした。
 そして、現在のモデルは基礎研究の段階だとしている。・・と
 いうことは、例えば、強力なハリケーンが生まれたとき、その
 原因は何かという診断を気候モデルでやろうというのはまだ難
 しいということだ。  伊藤公紀氏の論文より 文藝春秋社刊
 ――『暴走する「地球温暖化論」/洗脳・扇動・歪曲の数々』
―――――――――――――――――――――――――――――
              ――[地球温暖化懐疑論/11]


≪画像および関連情報≫
 ・太陽活動と地球温暖化/伊藤公紀教授
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  時事通信が、京都大学大学院付属天文台の太陽表面に新たな
  黒点が確認され、太陽の次の活動周期が始まったとの発表を
  報じていました。この記事を読んでいて「地球温暖化」(伊
  藤公紀著 日本技術評論社 2003年)で、太陽の黒点と地
  球の気温の関係が書かれていたことを思い出しました。黒点
  は太陽活動が活発になると増えるそうです。太陽活動が活発
  になれば、到達するエネルギーが増え、地球の気温が上昇す
  るという考え方です。この本では、黒点数と気温の相同性の
  高いいくつかの研究結果も紹介されています。
http://shizuoka.cocolog-nifty.com/gard/2008/01/post_c6e2.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

伊藤公紀教授.jpg
posted by 平野 浩 at 04:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 地球温暖化懐疑論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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