2005年10月18日

初期の3層構造のプロトコル(EJ1698号)

 PARC内のアルトがイーサネットで接続され、そのネットワ
ークがARPAネットに接続されて巨大なネットワークに成長す
る――しかし、まだインターネットは登場していないのです。
 この段階で「通信は階層構造になっている」という少し複雑な
話をする必要があります。しかし、読んでいただければわかるこ
とであり、お付き合いください。
 9月29日のEJ第1686号1687号でご紹介したウェ
スリー・クラークのメモの図(添付ファイル参照)を思い出して
いただきたいのです。
 ホスト・コンピュータ同士の通信を行うために、間にIMPに
よるサブネットワークを挟むというのがクラークの提案だったの
ですが、これにより次の2つの通信が生ずるのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 1.ホストとIMPの間の通信 ・・   シンクロナス
               ――大学・研究機関の責任
 2.IMPとIMPの間の通信 ・・ アンシンクロナス
               ――開発会社BBNの責任
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 この場合、通信は二つの階層に分かれることになります。「ホ
ストとIMPの間の通信」と「IMPとIMPの間の通信」の2
つです。この場合、前者はホスト・コンピュータが置かれている
大学や研究機関が担当し、後者はIMPを受注したBBN社が責
任を負うことになります。
 この方式において注目すべきことは、大学・研究機関とBBN
社がそれぞれ独立して自分たちの仕事を行えば、2つの通信は繋
がることになります。通信に関してとくに緊密に打ち合わせをす
る必要はないわけです。これが階層化のメリットなのです。
 しかし、これにはひとつ問題があるのです。ホストAからファ
イルをホストBに送る場合について考えます。ホストAから送り
出されたファイルはホストAに接続されているIMPに送られ、
IMP間のネットワークを経由してホストBに接続されたIMP
に送られ、IMPからホストBに届きます。
 これによって、確かにファイルそのものは、ホストAからホス
トBに届きましたが、それで目的が果たされたわけではないので
す。なぜなら、そのファイルがちゃんとホストB上に開けないと
意味がないからです。
 ファイルをちゃんと開けるようにするためには、そのための環
境――アプリケーションなど――が受信側のホストになければな
らないのです。そういう意味において、送信側のホストと受信側
のホストの間には何らかの連携が必要になります。
 つまり、IMPとIMPレベルの層、ホストとホストレベルの
層――それぞれが対称的に連携している必要があるのです。この
ことをとくにうるさくいったのは、当時のIPTO部長であった
ロバーツです。その結果、ホストとIMP、ホスト相互間用のプ
ロトコルとして「NCP」が開発されたのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
     NCP = Network Control Program
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ここで、IMPによるサブネットが支える「通信層」とNCP
によってコントロールされる「ホスト層」という2つの層ができ
上がったのです。後にこのNCPがTCPになるのです。
 しかし、このときARPAネットを使う研究者の間でとくに求
められていたのは次の2つです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  1.遠隔ログイン ・・・ 遠くのコンピュータを使う
  2.ファイル交換 ・・・ ファイルを相互に交換する
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 これら「遠隔ログイン」と「ファイル交換」のために「ホスト
層」を2つに分けて、次の3層構成にしたのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
   アプリケーション層 ・・・ ユーザ・レベルの層
        ホスト層 ・・・ ホスト・レベルの層
         通信層 ・・・ IMPによる通信層
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ここで「通信層」と称しているのは、IMPのサブネットワー
クのことですが、ここが機能しないと通信はできないわけです。
そのため「通信層」と称しているのです。試行錯誤のすえうまく
機能するようになると、この層は当たり前の環境とみなされ、上
の層に関心は移っていくのです。
 これら3層は、各階層間のインタフェースの整合性さえあれば
上の階層は下の階層でどのような処理が行われているかは関知し
ないで独立して作業ができるのです。
 1973年に行われたARPAネットの現状をまとめた学会報
告では、この3層構造という表現が使われているのです。そして
この時点では、「通信層」の技術が安定してきていることが報告
されています。
 この時点で問題になっていたのは「ホスト層」なのです。なぜ
かというと、それが異種のコンピュータ同士の接続であったから
です。その当時既に実働していたネットワークはいずれも同機種
のコンピュータ同士を結んだものであり、ARPAネットのそれ
とは根本的に異なっていたのです。
 これと関連があるのは、ネットワークとネットワークを接続す
る異種ネットワーク間接続の問題です。これについては、ARP
Aネット側と次のヨーロッパの研究グループとの研究がスタート
しています。ここに国際ネットワーク・ワーキング・グループが
誕生したのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
     英国の国立物理研究所のグループ
     フランスのCYCLADESグループ
−−−−−−−−−−−−− ・・・・・[インターネット38]


≪画像および関連情報≫
 ・IMPによるサブネットワーク

1698号.jpg
posted by 平野 浩 at 08:47| Comment(0) | TrackBack(0) | インターネットの歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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