2005年09月06日

ブール代数とクロード・シャノン(EJ1671号)

 1936年にMITの電気工学科の研究助手になったクロード
・シャノンは、その翌年の1937年に次の論文を発表して注目
されます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
     リレーとスイッチング回路の記号分析
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 シャノンは、ヴァネヴァー・ブッシュの開発した微分解析機に
取り組むうちに、微分解析機で使われている複雑なリレー回路は
ミシガン大学の数学科で習った記号論理とブール代数の0と1の
2進法に置き換えられることに気がつき、そのことを上記の論文
にまとめたのです。
 この論文はブッシュの推薦文によって、「38年AIEE」と
いう学術誌に投稿され、掲載されたのです。ときにシャノンは弱
冠22歳――この年齢で学術誌に論文が掲載されるのは、異例の
ことなのです。
 ところで、「ブール代数」とは何でしょうか。
 実はブール代数は、コンピュータにも通信にも関係があるので
簡単に説明をしておきたいと思います。少し理屈っぽくなります
が、しばらく付き合ってください。
 ブール代数を考え出したのは、ジョージ・ブール(1815―
1864)という英国の数学者です。この理論は、もともと論理
学のために考え出されたものです。
 ジョージ・ブールが現れるまでは、論理学は哲学の一種である
と考えられていたのです。ブールは、論理や推論を何とか数学に
置き換えることはできないものかと考えていたのです。
 しかし、人間が使っている10進法で考えている限り、それは
不可能なことだったのです。もし、10進法でやるとしたら、あ
まりにも複雑になってしまうからです。そんなとき、ふと「2進
法でやったらどうか」という考え方が浮かんだのです。論理が正
しければ1、間違っていれば0、これを基礎にして論理の数学化
を試みたのです。
 具体的にいうとジョージ・ブールは、AND、OR、NOTと
いう3つの演算子を使って「論理回路」というものを作ったので
す。これを論理代数学というのです。論理代数学には、次の3つ
の演算があります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       AND演算 ・・・ 論理積
       O R演算 ・・・ 論理和
       NOT演算 ・・・ 否 定
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 第1は「AND演算」です。
 「A AND B = C」という数式について考えます。こ
れは「〜かつ〜」という意味になります。論理学的な言葉でいう
と、「Aが正しくかつBも正しいときだけ、Cも正しい」という
ことになります。
 第2は「O R演算」です。
 これは「〜または〜」という意味になります。同じ数式につい
て考えると、「AかBのどちらかが正しければCは正しい」とい
うことになります。
 第3は「NOT演算」です。
 これは「〜ではない」という否定です。これは、ANDやOR
と違って2つの数値から答えを出すためのものではないのです。
「Aが正しいときNOT−Aは間違いであり、Aが間違いである
とき、NOT−Aは正しい」ということになります。
 なぜ、このような演算をするのかというと、これらはいずれも
2進法で表現できるからです。例えば、上記の「AND演算」は
次のように2進法で表現できます。ちなみに、1は「真」であり
0は「偽」を表しています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
          A  B  C
          0  0  0
          0  1  0
          1  0  0
          1  1  1
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 0と1をベースとして作られているブール代数の理論は、2進
数で計算する電子回路の設計にそのまま使えるのです。コンピュ
ータを開発しようとしていたエンジニアが飛びついたのは当然の
ことといえます。AND、OR、NOTを組み合わせれば、どの
ような計算も可能になるのです。
 クロード・シャノンの論文を高く評価したヴァネヴァー・ブッ
シュは、今後ブール代数が通信工学全般に大きな影響を及ぼすこ
とになるとして、シャノンにMITの数学科でさらに勉強をする
よう勧めたのです。
 シャノンはこれを受け入れ数学科の博士課程に進み、1940
年に博士号を授与されています。その後、シャノンはプリンスト
ン大学の先進研究所(IAS)を経由して、1941年にベル研
究所に移籍し、そこで15年間を過ごすのです。
 そして、1948年に彼は論文を発表します。それはシャノン
の最も有名な論文になります。
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         『通信の数学的理論』
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 この論文は、雑音の存在する通信チャンネルで、ひずみのない
信号を送ることができるということを証明してみせたのです。こ
の論文は各界に大きな衝撃を与え、クロード・シャノンは一躍有
名になるのです。しかし、彼は有名になることや人前に出ること
を嫌い、世間から身を隠すようになります。そして、シャノンは
正統的な通信理論を離れ、AI(人工知能)の研究に傾斜してい
くのです。       ・・・・・・・[インターネット11]


≪画像および関連情報≫
 ・1桁同士の足し算の回路
  AND、OR、NOTを組み合わせると、あらゆる演算が可
  能になる。コンピュータは数多くの論理回路の組み合わせで
  できている。参考までに、添付ファイルには「1桁同士の足
  し算の回路」を付けてある。
  坂村健著、『痛快!コンピュータ学』より。集英社インター
  ナショナル刊

1671号.jpg
posted by 平野 浩 at 08:42| Comment(0) | TrackBack(0) | インターネットの歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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