2007年11月08日

●エルヴィス・ザ・ペルヴィス(EJ第2202号)

 「ハート・ブレイク・ホテル」の評判は上々だったのです。ま
ず、ポップチャートの第1位、それからカントリーチャートでも
第1位をとっているのです。さらに、リズム・アンド・ブルース
(R&B)の部門でも第5位に入る健闘ぶりです。
 レコード発売はさらに続きます。この「ハート・ブレイク・ホ
テル」に続いて、次の2曲が発売されたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
       Hound Dog / 「ハウンド・ドッグ」
        Don't Be Cruel/「冷たくしないで」
―――――――――――――――――――――――――――――
 これも大ヒットするのです。「ハウンド・ドッグ」は2つの部
門で、「冷たくしないで」は3つの部門で第1位に輝いているの
です。ここまでくると、もはやエルヴィスのロックンロールの勢
いを誰も止めることはできない状態になったのです。
 パーカー大佐は、全米ネットワークのテレビにエルヴィスを出
演させるためにテレビ局を飛びまわっており、彼の努力は少しず
つ実りつつあったのです。
 エルヴィスはニューヨークに行き、CBSテレビの「トミー・
ドーシー・ステージ・ショウ」を皮切りに、ABCテレビの「ミ
ルトン・バール・ショウ」などに複数回出演したのです。
 エルヴィスが「ミルトン・バール・ショウ」の2回目のショウ
で、「ハウンド・ドッグ」を歌ったときです。これが良識ある保
守層の人々の怒りに火をつけてしまったのです。そして、彼らは
次のような非難声明を出したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 エルヴィスなる者によるロックンロールは、労働者階級特有の
 下品なしぐさをし、黒人文化による過度にセクシーな動作を伴
 うものであり、許し難いことである。
―――――――――――――――――――――――――――――
 彼らは各地で一斉にロックンロール排斥運動を起こし、これが
全米に広がったのです。騒ぎは拡大し、ニューヨーク州、マサチ
ューセッツ州、カルフォルニア州においてはロックンロール・コ
ンサート禁止令が出され、多くの放送局がロックンロール放送を
中止し、警察、教会、PTA、婦人団体などまで出動して、エル
ヴィスを名指しで非難する事態になったのです。
 ある新聞は、次の見出しを付けて、エルヴィスを非難したので
す。どういう意味かわかりますか。
―――――――――――――――――――――――――――――
       エルヴィス・ザ・ペルヴィス
―――――――――――――――――――――――――――――
 「ペルヴィス」というのは、骨盤のことであり、現在ではそう
いうダイエット・エクササイズもあります。つまり、この新聞の
見出しは、エルヴィスの腰を揺らして歌うスタイルを批判してい
るのです。
 実はこういうときにこそ、パーカー大佐は役に立ったのです。
エルヴィス一人であればおそらくすくみあがってしまったであろ
う事態も大佐の指示通りにやることによって、うまく乗り切るこ
とができたのです。
 エルヴィスがフロリダ州でコンサートをやったときの話です。
コンサートが始まる前から大勢の警官が会場に張り込んで、エル
ヴィスが例のスタイルで歌ったら逮捕する構えでいたところ、大
佐の指示でプログラムをゴスペル調のバラード中心に変更し、指
一本しか動かさなかったので、警察は、エルヴィスを逮捕できな
かったということがあったのです。
 海千山千のパーカー大佐が付いていたからこそ、こういう修羅
場を乗り切ることができたのです。収益金の50%という大佐の
のギャラはけっして高くはなかったのです。エルヴィスの両親は
賢明な判断をしたことになります。
 しかし、全員が批判していたわけではなかったのです。黒人は
もとより白人の若者はこぞってエルヴィスを支持したのです。そ
して皮肉なことに、殺到する非難や抗議はエルヴィスを全米の家
庭の茶の間に入り込ませることになり、かえって若者たちを中心
にエルヴィスのファンは急増したのです。
 こういう状況の中において、パーカー大佐は、エルヴィスを何
としても出演させたいテレビ番組があったのです。その番組は、
「トースト・オブ・ザ・タウン」といい、一般的には「エド・サ
リヴァン・ショウ」として知られていたのです。
 このエド・サリヴァンとはどういう人物なのでしょうか。既出
の前田絢子氏の本からご紹介します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 エド・サリヴァンは、ニューヨーク生まれ、ニューヨーク育ち
 で、南部文化に対する知識も理解も持ち合わせていなかった。
 実生活でも、画面の上でも、生真面目でユーモアに欠け、融通
 のきかない堅物だった。まるで、時代の裁判官のような威厳を
 もって、毎週日曜夜8時から1時間、一流スターを紹介しつづ
 けた。         ――前田絢子著/角川選書/413
      『エルヴィス、最後のアメリカン・ヒーロー』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 エド・サリヴァンのような無骨な人物がどうして人気を勝ち得
たかについては、当時の米国の社会が伝統を重んじ、穏健にして
保守的であったことと無関係ではないと思います。彼のようなけ
っして羽目を外さない堅実さが、社会道徳の守護神として米国社
会に受けていたのです。
 エルヴィスが登場してきた1950年代の半ばにおいて、エド
・サリヴァンの人気は絶頂にあり、エルヴィスについて次のよう
にいっていたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 あのような下品な動作をする子供は私の番組には絶対に登場さ
 せない。              ――エド・サリヴァン
―――――――――――――    ――[エルヴィス/14]


≪画像および関連情報≫
 ・エド・サリヴァン・ショウとは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  エド・サリヴァン・ショウは、エド・サリヴァンがホスト役
  を務める、米国CBSで放映された、バラエティー番組。放
  映期間は、1948年6月20日〜1971年6月6日、当
  時の放送時間は日曜日:午後8時(現地)から。番組発足当
  時のタイトルは、'Toast Of The Town' (トースト・オブ・
  ザ・タウン、直訳すると「町の人気者」である。番組内容は
  ゲストとのトークと、その芸の披露とが主となっていて、出
  演したゲストは、コメディアン、バレエダンサー、曲芸師、
  クラシック音楽家、オペラ、ポピュラー音楽のシンガーなど
  である。              ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

エド・サリヴァン.jpg
posted by 平野 浩 at 04:23| Comment(0) | TrackBack(0) | エルヴィス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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