2005年09月02日

クロード・シャノンは何をやったか(EJ1669号)

 ヴァネヴァー・ブッシュのもうひとつ大きな業績は、クロード
・シャノンという人物を世に出したことです。ところで、クロー
ド・シャノンという人物をご存知でしょうか。
 アインシュタインを知らない人はいないでしょうが、シャノン
の名前は意外に知られていないのです。何はともあれ、彼は何者
であり、何をやったのかを明らかにする必要があります。
 クロード・シャノン(1916〜2001)は、情報理論の創
始者なのです。ヴァネヴァー・ブッシュのアナログ・コンピュー
タもフォン・ノイマンのデジタル・コンピュータ――いずれもコ
ンピュータは「計算機」であり、そこには「情報」という概念は
存在しなかったのです。この「情報」という概念を作ったのが、
シャノンであり、もし、シャノンなかりせば情報処理マシンとし
ての現代のコンピュータは誕生していなかったといえます。
 19世紀から20世紀にかけての100年間は物理学の時代と
いわれます。すべてのものは物理学で説明できると考えられてい
た時代なのです。
 そういう時代にクロード・シャノンは、次のようなことをいっ
ていたのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  物理学だけでは解き明かすことができないものがある
  それが「情報」である   ――クロード・シャノン
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 シャノンの情報の概念を説明する有名な話があります。タイプ
ライターをサルに与えて、タイプの打ち方を教えたとします。サ
ルは利口ですから、タイプライターを打つことはすぐ覚えてしま
うはずです。
 しかし、打ち出された紙には意味不明の文字が並んでいるだけ
です。一方、人間がタイプライターを使ってシェイクスピアの文
章をタイプしたとします。
 この人間が打ったシェイクスピアの文章が印字された紙とサル
が打った意味不明の文字を印字した紙とは、物理学の観点から見
れば、物質の構成も、光の反射もほとんど同じものです。しかし
人間が見ればその差は歴然としています。
 この物理学で測ることのできない「差」こそ「情報」であると
シャノンはいうのです。物理学では、世界は物質とエネルギーで
作られているとされてきたのですが、シャノンは宇宙を形作る第
3の要素として「情報」というものを指摘したことになります。
 クロード・シャノンの優れた業績には次の2つがあります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         1.情報のコード化
         2.情報の最小単位
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 シャノンの優れているところは、「物理学では情報を扱うこと
はできない」と指摘しただけでは終わらなかったところにあると
いえます。当時「情報」という言葉は既に存在したのですが、き
わめて曖昧に使われていたのです。
 シャノンは「情報」を科学的に定義し、数式や方程式で扱える
ようにしたのです。それを可能にしたのが「情報のコード化」な
のです。情報のコード化の最も分かりやすい例として「モールス
信号」をあげることができます。
 モールス信号は、「トン」(短音)と「ツー」(長音)という
2種類の信号の組み合わせで、文字を伝える方法です。添付ファ
イルに、アルファベットのモールス信号を付けておきますが、こ
れを見ると面白いことがわかるのです。
 英文の中に使われる文字には、よく使われる文字とそうでない
文字があり、統計的に判明しています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ≪最もよく使われる文字≫
  E ・・・ −         トン
  T ・・・ ――        ツー
 ≪あまり使われない文字≫
  Q ・・・ ―― ―― − ――  ツー・ツー・トン・ツー
  Z ・・・ ―― ―― −    ツー・ツー・トン
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 どうでしょう。最もよく使われる文字は短く、あまり使われな
い文字には長い音を割り付けています。少しでも早く情報を伝え
るための処置といえるでしょう。これがシャノンの考えた「情報
のコード化」なのです。
 これに加えてシャノンは「情報の基本単位」を明らかにしてい
るのです。物理学では、物資の基本となるものは「原子」である
としています。あらゆる物質は原子から作られている――正確に
いえば、原子を構成する素粒子である――情報の世界にも最小の
単位があることを明らかにしているのです。
 この情報の最小単位を「ビット」というのです。ビットとは、
「0」か「1」ということになります。シャノンは「ビットこそ
が最も基本的な情報であり、あらゆる情報はビットの単位に分解
できる」と指摘したのです。これは、ありとあらゆる情報は2進
数で表現できるということを意味しています。
 さらにシャノンは、ビットの単位までコード化できるのは、数
字だけではなく、文字、音、映像といった情報もビット化するこ
とができるとしたことです。それだけではないのです。空気の温
度や天体の運動という物理的変化・・・この世の中にあるすべて
の情報はビット化できるシャノンはいっているのです。
 このシャノンの理論から、次のように、アナログとデジタルの
考え方が出てきているのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    アナログ ・・・ コード化されていない情報
    デジタル ・・・ コード化されている 情報
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
           ・・・・・・・・[インターネット09]


≪画像および関連情報≫
 ・クロード・シャノンの略歴
  クロード・シャノンは1916年米国ミシガン州ペトスキー
  で生まれる。小さい頃から自分でものを作るのが好きな少年
  だったらしい。1932年に地元のミシガン大学に入学し、
  電気工学と数学を専攻。ここで学んだジョ−ジ・ブールの記
  号論理学は後に彼の情報理論に大きな役  割を果たすこと
  になる。1936年に卒業するとマサチューセッツ工科大学
  の研究助手になり、同時に大学院に進んだ。ここで、ヴァネ
  ヴァー・ブッシュが作った微分解析機の操作を担当している
  うちに、解析機のリレー回路をもっとうまくできないものか
  と考え、記念碑的な修士論文を書き上げる。1940年、M
  ITの博士課程を卒業し、数学博士号を取得した。その後、
  プリンストン大学にいたヘルマン・ワイルのもとで研究して
  いたが、第二次世界大戦の勃発のため1941年にベル研究
  所に入り、対空防御システムの研究を行った。戦後もベル研
  究所に残り、情報通信理論の研究をすることになった。この
  時代に情報理論の基礎的な仕事をした。1956年MITの
  教授に招かれた。一時期は一輪車で通う名物教授だったそう
  だ。1978年に引退し、2001年に逝去。

1669号.jpg
posted by 平野 浩 at 08:42| Comment(0) | TrackBack(0) | インターネットの歴史 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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